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進行非小細胞肺がん(NSCLC)では、治療標的となるドライバー遺伝子異常の有無を遺伝子検査で確認することが一般的である。しかし、間質性肺炎(IP)を合併するNSCLC患者は、薬剤性肺障害のリスクが懸念され、一般的なドライバー変異(EGFR、ALKなど)の頻度が低いことが報告されていることから、遺伝子検査が控えられる場合がある。そこで、池田 慧氏(関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座)らは、びまん性肺疾患に関する調査研究班の分担・協力施設による多施設共同後ろ向き研究を実施し、IP合併NSCLC患者における遺伝子検査の実態、ドライバー遺伝子異常の頻度、分子標的治療の安全性・有効性を調査した。その結果、マルチ遺伝子検査の実施率は依然として低い一方で、特定の遺伝子変異(KRAS、BRAF、METなど)は一定頻度で検出された。また、ドライバー遺伝子異常を同定して適切に治療を行うことで、生存期間の改善につながる可能性も示唆された。本研究結果は、European Journal of Cancer誌で2026年1月12日にオンライン先行公開された。 研究グループは、本邦の37施設において2019年6月~2024年6月に診断した進行・再発の慢性線維化性IP合併NSCLC患者1,256例を対象として、後ろ向きに解析を行った。遺伝子検査の実施状況、ドライバー遺伝子異常の検出頻度、分子標的治療の安全性・有効性、全生存期間(OS)などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者の年齢中央値は74.0歳、喫煙歴ありが95.5%であった。IPの臨床診断は、特発性間質性肺炎(IIPs)が88.1%(1,106/1,256例)を占め、特発性肺線維症が48.7%(612/1,256例)となり、IIPsのなかで最多であった。・遺伝子検査の実施割合は59.2%(95%信頼区間[CI]:56.5~62.0)、治療開始前のマルチ遺伝子検査は41.0%(95%CI:38.3~43.8)にとどまった。・治療開始前にマルチ遺伝子検査を実施した患者(515例)において、13.2%にドライバー遺伝子異常が検出された。最も頻度が高かったのはKRAS遺伝子変異(4.7%、G12C変異が1.9%)であった。EGFR遺伝子変異(2.9%)、BRAF V600E遺伝子変異(1.6%)、MET遺伝子exon14スキッピング変異(1.6%)が続いた。・非扁平上皮NSCLC(320例)に限ると、KRAS遺伝子変異が6.9%(G12Cは3.1%)、EGFR遺伝子変異は3.8%であった。・ドライバー遺伝子異常が検出された患者(84例)のうち、33.3%が分子標的治療を受けた。分子標的治療を受けた患者(28例)における薬剤性肺臓炎の発現割合は、全体で25.0%であり、オシメルチニブ以外の薬剤性肺臓炎はGrade1であった。薬剤別の発現割合は以下のとおり。 ソトラシブ0%(0/6例) オシメルチニブ50.0%(4/8例:Grade2が3例、Grade5が1例) アレクチニブ33.3%(1/3例) ダブラフェニブ+トラメチニブ25.0%(1/4例) テポチニブ25.0%(1/4例)・ドライバー遺伝子異常の状況別にみたOS中央値は、陽性の集団が22.1ヵ月、陰性/不明の患者が13.8ヵ月であり、陽性の集団が良好であった(ハザード比[HR]:0.46、95%CI:0.33~0.64)。・ドライバー遺伝子異常陽性患者のうち、分子標的治療の有無別にみたOS中央値は、分子標的治療ありの集団が39.2ヵ月、なしの集団が24.0ヵ月であった(HR:0.67、95%CI:0.33~1.36)。・多変量解析において、ドライバー遺伝子異常陽性はOS改善と有意な関連がみられた(全体集団のHR:0.57、95%CI:0.38~0.86、p=0.007、何らかの遺伝子検査実施集団のHR:0.42、95%CI:0.23~0.77、p=0.005)。 本研究結果について、本論文の筆頭著者の池田氏にコメントを求めたところ、以下の回答が得られた。【池田氏のコメント】 これまで実臨床の現場では、「IP合併例ではEGFR変異などの頻度が低い」「分子標的薬は薬剤性肺障害のリスクが高い」という懸念から、遺伝子検査、とくにマルチ遺伝子検査の実施自体が手控えられてきた側面が少なからずあったと思います。しかし本研究により、マルチ遺伝子検査を行うことで、KRAS G12C、BRAF V600E、MET exon14スキッピング変異といった、近年治療薬が登場した希少フラクションが一定の割合で確実に存在することが明らかになりました。また、リスク管理を行いつつ適切な分子標的治療へつなげることで、生存期間の延長が得られる可能性も示されました。治療の選択肢が少ないこの患者層において、治療標的を見いだすことは、患者さんにとって大きな希望となります。本研究結果が、IP合併例に対しても「まずはマルチ遺伝子検査を行う」という診療行動への動機付けとなり、1人でも多くの患者さんの治療機会の拡大と予後改善につながることを強く期待しています。