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コーヒー摂取量と便秘・下痢、IBDとの関連は?

 コーヒーは現在世界で最も広く消費されている飲料の1つであり、米国では成人の約64%が毎日コーヒーを飲み、1日当たり約5億1,700万杯のコーヒーが消費されているという。コーヒーに含まれるカフェインが消化器症状に与える影響は、世界中で継続的に議論されてきた。カフェイン摂取と排便習慣、および炎症性腸疾患(IBD)との関連性を調査した中国医学科学院(北京)のXiaoxian Yang氏らによる研究結果が、Journal of Multidisciplinary Healthcare誌2025年6月27日号に掲載された。 研究者らは、2005~10年の国民健康栄養調査(NHANES)のデータを利用し、カフェイン摂取量を導き出した。排便習慣(便秘・下痢)およびIBDはNHANESの自己報告データに基づいて定義された。ロジスティック回帰モデルを用いて、カフェイン摂取量と慢性便秘、慢性下痢、IBDとの関連を評価した。年齢、性別、人種、教育レベル、社会経済的地位、喫煙状況、飲酒状況、BMIなどの潜在的な交絡因子を調整した。 主な結果は以下のとおり。・計1万2,759例の成人が対象となった。この中には腸機能正常(n=1万785)、慢性下痢(n=988)、慢性便秘(n=986)が含まれていた。・カフェイン摂取量と慢性下痢には、正の関連性が認められた。1日当たりのカフェイン摂取量が1単位(100mg)増加するごとに、慢性下痢のリスクは4%増加した(オッズ比[OR]:1.04、95%信頼区間[CI]:1.00~1.08)。・カフェイン摂取量と慢性便秘には、統計的に有意な関連性は認められなかった(OR:0.97、95%CI:0.93~1.02)ものの、U字型の非線形関係が認められた。便秘のリスクが最も低くなるのは1日当たり2.4単位(204mg)摂取した場合だった。これ未満の場合は、カフェイン摂取量が1単位増加するごとに慢性便秘のリスクが18%減少したが、これを超えると摂取量が1単位増加するごとにリスクが6%増加した。・カフェイン摂取量とIBDの間には有意な関連性は認められなかった。・サブグループ解析と相互作用検査の結果、60歳以上の高齢者において、カフェイン摂取量が増加するごとに慢性便秘のリスクが14%減少した(OR:0.86、95%CI:0.77~0.95)。 研究者らは「適量のカフェイン摂取は排便に役立つ可能性があるが、過剰なカフェイン摂取は慢性便秘を引き起こす可能性がある。また、高齢者の適切なカフェイン摂取は慢性便秘の予防に役立つ可能性があった。これらの結果から、臨床実践においては、排便の状態に応じてカフェイン摂取量を適切に調整することが推奨される可能性がある」とした。

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潰瘍性大腸炎の予後因子、思考を説明できるAIで特定

 潰瘍性大腸炎(UC)は慢性の炎症性腸疾患であり、その病態生理は多岐にわたる。そのため、症例ごとに最適な治療法を選択することが大切だ。今回、全国規模のレジストリを説明可能な人工知能(日立製作所)を用いて解析することで、難治性UCの予後因子を特定できることが報告された。レジストリ登録時の偽ポリープが存在することが、寛解と有意に負の相関を示したという。研究は東海大学医学部消化器内科の佐野正弥氏らによるもので、詳細は「Annals of Medicine」に5月5日掲載された。 UCは、重度の下痢、血便、激しい腹痛、発熱を特徴とし、再発と寛解を繰り返す難治性の炎症性腸疾患だ。UCの寛解を目指す場合、コルチコステロイド(CS)の導入が有効とされるが、CSには長期使用による有害事象のリスクがあり、早晩にCSに依存しない薬剤への切り替えが不可欠と考えられる。そのため、従来の研究では、どの治療がどの疾患型に対してより高い寛解率をもたらすかが検討されてきた。しかし、UCの疾患の多様性が影響し、包括的な予測モデルの開発は困難となっている。このような背景を踏まえ、著者らは、全国の医療記録に基づく機械学習モデルを用いて、難治性UCの予後因子を特定することとした。 解析対象は2003年4月から2012年3月(日本で生物学的製剤が普及する前)の期間に、全国レジストリに登録された新規UC症例7万9,096名とした。この中から3年分のデータがあり、初回診断時のMayoスコアが3以上で、登録以来CSを使用している4,003名(うち1,373名が3年以内に寛解達成)を最終的な解析対象とした。機械学習にはポイントワイズ線形モデル(PWLモデル)を用いて、3年後の寛解誘導と患者の層別化を予測した。モデルのパフォーマンスを示すスコアとして、曲線下面積(AUC)とF値を用いた。 長期寛解(3年以上持続)を予測するために、登録時、登録後1年、登録後2年までのデータに基づき開発された3つのPWLモデルが評価された。登録時、登録後1年目、登録後2年目のAUCはそれぞれ0.628、0.641、0.774であり、増加が認められた。また、登録後2年後までのテストデータセットにおける、適合率、再現率、F値はそれぞれ0.55、0.70、0.62だった。 次にk-means+法を用いて患者を予測される寛解率の高いグループと低いグループに分類した。さらに、登録時データのみを使用して寛解に関連する重要な因子の相関係数を調べたところ、偽ポリープ(0.695)、腹痛(0.689)、S字結腸炎(0.578)、5-ASAの使用(0.513)などいくつかの因子が相関していることが分かった。これらの因子の重み値は、偽ポリープ(-0.056)、腹痛(-0.054)で負の値を、S字結腸炎(0.054)、5-ASAの使用(0.049)で正の値を示した。登録後1年目までのデータを解析した結果、重要な因子として、偽ポリープ(0.982)、手術(0.964)、血球成分除去療法(0.940)が特定された。重み値は偽ポリープ(-0.159)が負の相関を示し、手術(0.094)と血球成分除去療法(0.109)が正の相関を示した。登録後2年までのデータでは、偽ポリープ(0.893)、2年目の日常生活(0.743)、1年目におけるCSの使用(0.736)が重要な因子となっていた。 本研究の結果について著者らは、「登録後2年目までの臨床データを組み込むことで、過学習のリスクなしにモデルの精度が向上した。さらに、3つ全ての予測モデルにおいて、登録時の偽ポリープの存在が寛解導入の成功を阻害することが示された。UCのように炎症と寛解を繰り返す疾患では、長期予後を予測する際に時系列データの影響を考慮する必要があるが、従来の統計手法には一定の限界がある。このような背景から、PWLモデルは予後予測とその影響因子の特定に有効なのではないか」と述べている。

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5月19日 IBDを理解する日【今日は何の日?】

【5月19日 IBDを理解する日】〔由来〕「世界IBDデー」に准じ、クローン病や潰瘍性大腸疾患などの「炎症性腸疾患」(IBD)への理解促進のため、IBDネットワークとアッヴィの共同で2013年に制定。関連コンテンツ第82回「IBD診療ブラッシュアップ」【診療よろず相談TV】アトピー性皮膚炎の成人・小児はIBD高リスク活動期クローン病の導入・維持療法、ミリキズマブが有効/Lancet中等症~重症の潰瘍性大腸炎、グセルクマブは有効かつ安全/Lancet中等症~重症の潰瘍性大腸炎、抗TL1A抗体tulisokibartが有望/NEJM

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クローン病患者の便意切迫感を改善するミリキズマブ/リリー・持田製薬

 日本イーライリリーと持田製薬は、ミリキズマブ(商品名:オンボー)のクローン病(CD)に対する適応追加にあたり、4月10日にメディアセミナーを開催した。 今回適応拡大されたミリキズマブは、2023年6月に同じ炎症性腸疾患の潰瘍性大腸炎の治療薬として発売され、今回、中等症~重症の活動期CDの治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)の適応が追加された。 セミナーでは、同社が行ったCD患者へのアンケート結果やミリキズマブの適応拡大における第III相臨床試験VIVID-1試験の概要が説明された。クローン病患者が苦しんでいる日常生活 「クローン病の疾患概要と課題、便意切迫感の影響と実態に関する調査結果について」をテーマに日比 紀文氏(慶應義塾大学医学部 名誉教授)が、病態などの説明と持田製薬が行った患者アンケートの概要を述べた。 CDは、免疫異常などの関与で起こる肉芽腫性炎症性疾患であり、わが国には約7万例の患者が推定され、男性に多く、わが国では10代後半からの発症が多いという。主な症状としては、下痢、腹痛、発熱などがある。また、潰瘍性大腸炎と異なり、大腸のほかにも胃や小腸でも病変が認められ、縦走潰瘍、敷石像などが内視鏡で観察される。また、全層性の炎症で、瘻孔や狭窄もあり、痔ろうなど腸管合併症も認められる。そして、CDの病型分類では、小腸大腸型で1番患者数が多く、小腸型と大腸型では同じ割合で患者がいる。 CDの症状に対する患者と医師の認識の差について、「QOLに最も影響を与える症状」では、患者が「便意切迫感」(65%)が1番多かったのに対し、医師では「腹痛」(82%)だった1)。 この患者が挙げる便意切迫感は、「突然かつ緊急に感じる排便の必要性」と定義され、患者のQOLを著しく悪化させている。そこで、日比氏と持田製薬は、2025年1~2月にアンケートを実施し、CDにおける便意切迫感の影響と実態に関する調査結果を発表した。 調査は、CD患者100人、一般人431人、医師106人にインターネットで実施された。質問で「便意切迫感に襲われた経験がある人(98人)に頻度」を聞いたところ、「1日1回以上」と回答した人が42.8%だった。また、CD患者100人に「便意切迫感にどの程度困っているか」を聞いたところ、「日常生活を普通に過ごせないくらい」が14.0%、「困っているが普通の生活を努力して維持できる」が62.0%と全体で約75%の患者が困っていると回答していた。そのほか、日常生活の便意切迫感で困っていることでは「トイレの待ち時間に不安を感じる」が54.0%、人生において便意切迫感で困っていることでは「仕事・学校を辞めた」が24.0%と患者に多大な影響を及ぼしていることがうかがえた。CDの症状や便意切迫感について、「どのように理解され、対応してほしいか」を患者に聞いたところ、「困るときがあるので、求められたら手を差し伸べてほしい」が45.0%で1番多い回答だった。 以上から「便意切迫感の課題」として、患者は日常生活だけでなく人生のイベントに影響を受けていること、日常生活の維持に患者の努力があること、本音では患者は「便意切迫感から解放されたい」と思っていること、この「便意切迫感」は、周囲には伝えきれていないことを示した。最後に日比氏は、「今後は日常生活の中で『便意切迫感』に不安にならない環境作りが大切だ」と指摘し、「その実現には、周囲の偏見や誤解をなくすことが重要だ」と語った。臨床試験でミリキズマブは便意切迫感を改善 「クローン病に対する新しい治療選択肢について」をテーマに、久松 理一氏(杏林大学医学部消化器内科学 教授)が、ミリキズマブの特徴と第III相臨床試験VIVID-1(AMAM)試験の概要について説明した。 「令和5年クローン病治療指針(内科)」2)では、軽症~中等症~重症まで3段階に分けて使用する薬剤が示されている。ミリキズマブは、既存治療で効果不十分な場合に、中等症以上の病変で使用することができる治療薬。 本剤は、抗IL-23p19モノクローナル抗体製剤として、腸管炎症の原因となるサイトカインを作る免疫細胞に指令を出すIL-23に付着し、指令を阻害することでサイトカイン産生を阻む機序を持つ。使用に際しては、治療開始時に寛解導入療法として点滴静注製剤1回900mgを4週間隔で3回投与し、その後は維持療法として皮下注製剤1回300mgを4週間隔で投与する。 そして、今回適応拡大で行われた第III相臨床試験VIVID-1(AMAM)試験では、CD患者を対象に(1)患者報告型アウトカム(PRO)による12週における臨床的改善かつ52週における内視鏡的改善、(2)PROによる12週における臨床的改善かつ52週におけるCrohn’s disease activity index(CDAI)による臨床的寛解の2つを主要評価項目として、プラセボに対するミリキズマブの優越性を評価した。 試験対象は、ステロイド系薬剤、免疫調節薬などに対し効果不十分、効果減弱または不耐の中等症~重症の活動性CD患者1,152例(日本人28例を含む)。 試験の結果、12週時点でPROによる臨床的改善かつ52週時点で内視鏡的改善を達成した患者の割合は、ミリキズマブ群(579例)で38.0%に対し、プラセボ群(199例)で9.0%だった。また、12週時点でPROによる臨床的改善かつ52週時点でCDAIによる臨床的寛解を達成した患者の割合は、ミリキズマブ群(579例)で45.4%に対し、プラセボ群(199例)で19.6%だった。 そのほか、52週時点の排便回数・腹痛スコアのベースラインからの変化量は、ミリキズマブ群(579例)は-3.28であったのに対し、プラセボ群(199例)は-1.39だった。腹痛スコアも52週のミリキズマブ群(579例)は-1.16だったのに対し、プラセボ群(199例)は-0.52だった。 では、既存の治療薬との効果の違いはあるのか。ウステキヌマブとの比較で、52週時点でのCDAIによる臨床的寛解を達成した患者の割合は、ミリキズマブ群(579例)が54.1%でウステキヌマブ群(287例)の48.4%に対し非劣性であった。同じく52週時点での内視鏡的改善を達成した患者の割合は、ミリキズマブ群が48.4%、ウステキヌマブ群が46.3%だった。 安全性については、死亡事例はなく、主な有害事象としては、貧血、関節痛、頭痛などが報告された。 最後に久松氏は「ミリキズマブは、中等症~重症の活動期CD患者の臨床症状、粘膜炎症および患者報告アウトカムをいずれも改善したこと、排便回数、腹痛および便意切迫感の有意な改善が認められたこと、CD患者を対象とした臨床試験で新たな有害事象の懸念は認められなかったこと」に言及して講演をまとめた。

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潰瘍性大腸炎に対する1日1回の経口薬オザニモドを発売/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは2025年3月19日、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得したスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節薬オザニモド(商品名:ゼポジア)を発売した。 オザニモドは、潰瘍性大腸炎に対する新規作用機序の治療薬である。S1P1受容体および S1P5受容体に高い親和性を持って選択的に結合するS1P受容体調節薬であり、リンパ球上に発現するS1P1受容体に結合し、S1P1受容体の内在化および分解を誘導することにより、リンパ球を末梢リンパ組織内に保持する。この作用によってリンパ球の体内循環を制御し、病巣へのリンパ球の浸潤を阻害することで、潰瘍性大腸炎の病理学的変化を改善すると考えられている。 本薬剤は、海外では再発型多発性硬化症の成人患者および中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の患者に対する治療薬として、2020年以降に米国、欧州などの多くの国で承認されており、長期的な安全性プロファイルを有する。また、1日1回投与の経口薬であり、患者の負担を軽減し、QOLの向上に寄与することが期待されている。<製品概要>販売名:ゼポジアカプセルスターターパック、ゼポジアカプセル0.92mg一般名:オザニモド塩酸塩製造販売承認日:2024年12月27日薬価基準収載日:2025年3月19日薬価:12,313.30円(スターターパック1シート)、4,792.80円(0.92mg 1カプセル)効能又は効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)用法及び用量:通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与する。製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社

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新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬オザニモド、その特徴は?/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2024年12月27日にオザニモド(商品名:ゼポジア)について、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得した。そこで潰瘍性大腸炎およびオザニモドへの理解を深めることを目的として、2025年2月25日にメディアセミナーを開催した。本セミナーでは、仲瀬 裕志氏(札幌医科大学医学部 消化器内科学講座 教授)が、潰瘍性大腸炎の概要、潰瘍性大腸炎患者を対象としたアンケート調査の結果、オザニモドの特徴や臨床成績などについて解説した。再燃への不安が大きな負担 指定難病として認定される潰瘍性大腸炎は、若年で発症することも多く、患者数が年々増加傾向にある。難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班が2014年に実施した調査では、潰瘍性大腸炎の患者数は約22万例と推計されており、令和5年度末の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は14万6,702例となっている。 潰瘍性大腸炎は寛解と再燃を繰り返すことが特徴であり、仲瀬氏は「再燃があると思うだけで患者はすごく不安になり、日常生活にも大きな影響を及ぼす」と述べる。そこで、30代以上の潰瘍性大腸炎患者106例を対象に、インターネットによるアンケート調査が実施された。本調査の対象患者は、罹病期間5年以上の割合が71%、中等症から重症の割合が63%であった。再燃に関して、再燃経験を有する患者の割合は71%であり、再燃に対する不安を有する患者の割合は89%にのぼった。これについて、仲瀬氏は「さまざまな治療薬が使用可能となった時代においても、患者の89%が再燃の不安を感じているというのは、非常に重要なデータである。こうした不安を取り除くために、医療者は治療に取り組む必要がある」と述べた。S1P受容体調節薬オザニモドの登場 仲瀬氏は「潰瘍性大腸炎はヘテロな疾患である」と述べる。つまり、潰瘍性大腸炎の病態にはさまざまなサイトカインが関与するため、個々の患者で炎症のパターンが異なり、治療への反応も異なる。そのため、さまざまな作用機序の治療薬が開発されているが、それでも治療効果が不十分な患者が存在するのが現状であり、アンメットメディカルニーズが存在するといえる。 そこで新たに登場したのがオザニモドである。オザニモドは、S1P(スフィンゴシン-1-リン酸)受容体を調節するという新しい作用機序を有する※。オザニモドの特徴は、リンパ球上に発現するS1P1受容体に結合し、内在化および分解を誘導することにより、リンパ球がリンパ節から循環血中へ移動するのを抑制することで、結果的に大腸内の炎症を抑制するという点にある。また、1日1回投与の経口薬であることから、患者の負担を軽減することも期待される。※同様の作用機序を有する薬剤として、多発性硬化症治療薬のシポニモドが存在する日本人患者198例を対象とした臨床試験で有用性を検証 オザニモドは、欧米では中等症から重症の潰瘍性大腸炎を適応として2021年に承認を取得しているが、本邦では未承認であった。そこで、日本人の中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者198例を対象とした国内第II/III相試験「J-True North試験」が実施された。 本試験の主要評価項目である投与12週時の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は、プラセボ群が32.3%であったのに対し、オザニモド0.92mg群は61.5%であり、オザニモド0.92mg群が有意に改善し(p=0.0006)、プラセボ群に対する優越性が検証された。オザニモド0.92mg群の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は長期にわたって維持され、投与52週時ではプラセボ群16.9%、オザニモド0.92mg群49.2%であった(名目上のp値=0.0001)。 副次評価項目の臨床的寛解率、内視鏡的改善率、粘膜治癒率もオザニモド0.92mg群がプラセボ群と比べて改善する傾向にあり、いずれの項目も投与52週時のほうが投与12週時よりも良好な傾向にあった。 安全性について、投与52週時までの副作用発現割合は、プラセボ群が13.8%、オザニモド0.46mg群が20.6%、オザニモド0.92mg群が32.3%であった。オザニモド0.92mg群の主な副作用は、ALT増加(4.6%)、γ-GTP増加、AST増加、肝機能検査値上昇、肝機能異常、帯状疱疹、回転性めまい(各3.1%)であった。また、オザニモド0.92mg群の投与中止に至った副作用は4例に発現した(ALT増加・AST増加2例、薬剤性肝障害1例、黄斑浮腫1例)。死亡に至った副作用は報告されなかった。副作用報告数としては少ないが、帯状疱疹をはじめとする感染症や黄斑浮腫には注意を払う必要がある。 また、オザニモドの特徴としてリンパ球数の減少がある。これについて、仲瀬氏は「減少が大きければ休薬を考えないといけないが、リンパ球数の減少と治療効果は相関するという側面もあるため、リンパ球数の絶対値をフォローしながら、上手に使っていく必要がある」と述べた。<J-True North試験の概要>・対象:経口5-アミノサリチル酸製剤またはステロイドの投与歴がある中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎患者198例・方法:プラセボ群、オザニモド0.46mg群、オザニモド0.92mg群に1:1:1の割合で無作為に割り付け、オザニモド0.92mg群には1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、以降は0.92mgを1日1回12週まで経口投与。12週時点のレスポンダーは維持期に移行し、導入期と同じ治験薬を52週まで1日1回経口投与・評価項目[主要評価項目]投与12週時の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率(完全Mayoスコアがベースラインから3ポイント以上かつ30%以上低下、かつ直腸出血サブスコアがベースラインから1ポイント以上低下または絶対値が1ポイント以下)[副次評価項目]投与12週、52週時の臨床的寛解率(直腸出血サブスコアが0ポイントで、排便回数サブスコアが1ポイント以下で[かつ排便回数サブスコアがベースラインから1ポイント以上低下]、かつ内視鏡所見サブスコアが1ポイント以下)、内視鏡的改善率、粘膜治癒率など<製品概要>販売名:ゼポジアカプセルスターターパック、ゼポジアカプセル0.92mg一般名:オザニモド塩酸塩製造販売承認取得日:2024年12月27日効能又は効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)用法及び用量:通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与する。製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社

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1日1回、新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬「ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg」【最新!DI情報】第31回

1日1回、新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬「ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg」今回は、スフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬「オザニモド(商品名:ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg、製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ)」を紹介します。本剤は、1日1回服用の新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬であり、既存薬で効果不十分であった患者や利便性の向上を望む患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)を適応として、2024年12月24日に製造販売承認を取得しました。本剤は、過去の治療において、ほかの薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイドなど)で適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与します。<用法・用量>通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与します。<安全性>重大な副作用として、感染症(帯状疱疹[2.8%]、口腔ヘルペス[0.6%])など)、進行性多巣性白質脳症(頻度不明)、黄斑浮腫(0.6%)、肝機能障害(4.5%)、徐脈性不整脈(1.7%)、リンパ球減少(10.2%)、可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)が報告されています。本剤投与による心拍数の低下は、漸増期間中に生じる可能性が高いので、循環器を専門とする医師と連携するなど適切な処置が行える管理下で投与を開始する必要があります。また、黄斑浮腫に備えて、眼底検査を含む定期的な眼科学的検査を実施する必要があります。その他の副作用は、頭痛、高血圧、γ-GTP増加、ALT増加(いずれも1%以上)、発疹や蕁麻疹を含む過敏症(1%未満)、上咽頭炎、末梢性浮腫、努力呼気量減少、努力肺活量減少(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.本剤は、中等症~重症の潰瘍性大腸炎に用いられる薬です。結腸に浸潤するリンパ球数が減少することで、潰瘍性大腸炎を改善すると考えられています。2.過去の治療において、ほかの薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイドなど)で適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に使用されます。3.服用開始から徐々に用量を増やしていきますが、心拍数が低下することがあるので、異常を感じたら直ちに医師に連絡してください。4.服用中に重篤な眼疾患が現れることがあるので、異常を感じたら直ちに医師に連絡してください。<ここがポイント!>潰瘍性大腸炎(UC)は、主として粘膜にびらんや潰瘍が生じる非特異性炎症疾患です。再燃と寛解を繰り返すことが多く、長期間の医学管理が必要となります。薬物療法には、5-アミノサリチル酸製剤や副腎皮質ステロイドが用いられますが、これらの治療薬が無効であった場合には、免疫調整薬やヤヌスキナーゼ阻害薬、抗TNF抗体製剤、抗IL-12/23抗体製剤などが使用されます。しかし、無効例や通院での注射投与が困難な場合のほか、安全性の問題などで治療薬の変更が生じる懸念もあることから、とくに中等症~重症のUC患者に対しては、既存薬と異なる新たな作用機序で、症状や粘膜損傷などの改善効果が高く、難治性に移行させない経口治療薬が求められていました。オザニモドは、1日1回の経口投与で中等症~重症のUCに効果を示します。オザニモドは、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体のサブタイプ1(S1P1)と5(S1P5)に対して高親和性で結合し、リンパ球の遊走を抑制します。これにより、循環血中のリンパ球数が減少することで、炎症性細胞のさらなる動員や炎症性サイトカインの局所的な放出を防ぎ、腸粘膜が継続的に損傷する状況を改善します。日本人の中等症~重症の活動性UC患者を対象とした国内第II/III相試験(J-True North試験)において、主要評価項目である投与12週時点の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は、本剤0.92mg群で61.5%、プラセボ群で32.3%と、本剤群で統計学的に有意に高い改善が認められました(p=0.0006)。同様に、副次評価項目である投与12週時点の臨床的寛解率は、本剤群で24.6%、プラセボ群で1.5%と、本剤群で統計学的に有意に高い改善が認められました(p=0.0002)。

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中等症~重症の潰瘍性大腸炎、グセルクマブは有効かつ安全/Lancet

 グセルクマブは、中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎(UC)に対する導入療法および維持療法として有効かつ安全であることが、32ヵ国254施設で実施された第IIb/III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「QUASAR試験」において示された。米国・シカゴ大学のDavid T. Rubin氏らQUASAR Study Groupが、第III相導入試験および維持試験の結果を報告した。グセルクマブは、インターロイキン(IL)-23を阻害するとともに、CD64にも結合する二重作用のヒト型ヒト抗IL-23p19モノクローナル抗体製剤で、IL-23の阻害がUCの治療に有望であることが示唆されていた。本邦ではUCへの適応は承認申請中。Lancet誌オンライン版2024年12月17日号掲載の報告。第IIb、第III相導入・維持試験でグセルクマブvs.プラセボを比較 QUASAR試験は、第IIb相試験、第III相導入試験および維持試験で構成された。 第IIb相および第III相導入試験の対象は、既存の治療(ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害薬)で効果不十分または忍容性不良の中等症~重症の活動期UCの成人患者で、グセルクマブ群(第IIb相では200mg群、400mg群、第III相導入試験では200mg群とし、それぞれ0、4、8週時に静脈内投与)またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 第IIb相および第III相導入試験において、12週時に臨床的反応が認められたグセルクマブ群の患者、ならびにプラセボ群で12週時に臨床的反応が認められずグセルクマブ200mgを投与され24週時に臨床的反応が認められた患者は、第III相維持試験に組み込まれ、維持療法0週時にグセルクマブ200mgの4週ごと皮下投与(q4w)群、100mgの8週ごと皮下投与(q8w)群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、それぞれ44週間投与した。 主要エンドポイントは、導入試験における12週時の臨床的寛解、および維持試験における44週目の臨床的寛解であった。グセルクマブによる臨床的寛解率は、導入療法12週時23%、維持療法44週時50% 第III相導入試験は、2021年5月18日~2022年6月2日に無作為化が行われ、ベースラインの修正Mayoスコアが5~9の患者701例が解析対象集団となった(グセルクマブ200mg群421例、プラセボ群280例)。 第III相維持試験には、2020年7月31日~2022年11月11日に、846例(第IIb相導入試験から267例、第III相導入試験から579例)が登録され、ベースラインの修正Mayoスコアが5~9の患者568例が主要解析対象集団となった(グセルクマブ100mg q8w群188例、200mg q4w群190例、プラセボ群190例)。 導入試験における12週時の臨床的寛解率は、グセルクマブ群23%(95/421例)、プラセボ群8%(22/280例)であり、グセルクマブ群で有意に高率であった(補正後群間差:15%、95%信頼区間[CI]:10~20、p<0.0001)。 維持試験における44週時の臨床的寛解率は、グセルクマブ200mg q4w群50%(95/190例)、100mg q8w群45%(85/188例)、プラセボ群19%(36/190例)であり、プラセボ群よりグセルクマブ両群で有意に高率であった(補正後群間差:200mg q4w群30%[95%CI:21~38、p<0.0001]、100mg q8w群25%[95%CI:16~34、p<0.0001])。 安全性プロファイルは良好で、承認された適応症におけるグセルクマブの安全性プロファイルと一致していた。導入試験では、両群の49%(グセルクマブ群421例中208例、プラセボ群280例中138例)に有害事象が報告され、重篤な有害事象はグセルクマブ群3%(12例)、プラセボ群7%(20例)、治療中止に至った有害事象はそれぞれ2%(7例)、4%(11例)に報告された。維持試験では、有害事象の発現率は治療群間で同程度であり、主な有害事象はUC、COVID-19および関節痛であった。両試験において、活動性結核、アナフィラキシー、血清病あるいは臨床的に重要な肝障害は報告されなかった。

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COVID-19罹患で自己免疫・炎症性疾患の長期リスクが上昇

 COVID-19罹患は、さまざまな自己免疫疾患および自己炎症性疾患の長期リスクの上昇と関連していることが、韓国・延世大学校のYeon-Woo Heo氏らによる同国住民を対象とした後ろ向き研究において示された。これまでCOVID-19罹患と自己免疫疾患および自己炎症性疾患との関連を調べた研究はわずかで、これらのほとんどは観察期間が短いものであった。著者は「COVID-19罹患後のリスクを軽減するために、人口統計学的特性、重症度、ワクチン接種状況を考慮しながら、長期的なモニタリングと管理が重要であることが示された」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月6日号掲載の報告。 研究グループは、Korea Disease Control and Prevention Agency-COVID-19-National Health Insurance Service(K-COV-N)コホートを対象に、COVID-19罹患後の長期における自己免疫疾患および自己炎症性疾患のリスクを調べた。対象は、2020年10月8日~2022年12月31日にCOVID-19罹患が確認された住民(COVID-19罹患群)、2018年に一般健康診断を受けた住民(対照群)とした。 主要アウトカムは、COVID-19罹患後の自己免疫疾患および自己炎症性疾患の発症率とリスクとした。逆確率重み付け法を用いて、人口統計学的特性、一般的な健康データ、社会経済的状況、併存疾患などの共変量を調整して解析した。 主な結果は以下のとおり。・観察期間180日超のCOVID-19罹患者314万5,388例、対照376万7,039例の計691万2,427例(男性53.6%、平均年齢53.39[SD 20.13]歳)が解析に含まれた。・COVID-19罹患群でリスクが高かった疾患(調整ハザード比、95%信頼区間)は以下のとおりであった。 円形脱毛症(1.11、1.07~1.15) 全頭脱毛症(1.24、1.09~1.42) 尋常性白斑(1.11、1.04~1.19) ベーチェット病(1.45、1.20~1.74) クローン病(1.35、1.14~1.60) 潰瘍性大腸炎(1.15、1.04~1.28) 関節リウマチ(1.09、1.06~1.12) 全身性エリテマトーデス(1.14、1.01~1.28) シェーグレン症候群(1.13、1.03~1.25) 強直性脊椎炎(1.11、1.02~1.20) 水疱性類天疱瘡(1.62、1.07~2.45)・人口統計学的特性(男性/女性、40歳未満/以上)別のサブグループ解析では、COVID-19罹患による自己免疫疾患および自己炎症性疾患のリスクは、性別や年齢によって異なることが示された。・とくに、ICU入室を要する重症COVID-19罹患、デルタ株優勢期の感染、ワクチン未接種はCOVID-19罹患後の自己免疫疾患および自己炎症性疾患のリスクが高かった。

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潰瘍性大腸炎に対する抗TL1Aモノクローナル抗体tulisokibartの第II相試験(解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療は、軽症例には従来の治療法すなわち5-ASA製剤、ステロイド、アザチオプリン、6-MP等免疫抑制薬が使用されるが、寛解が困難である症例やステロイド依存症例の中等度から重度UCの治療には、生物学的製剤や低分子化合物を用いた治療が主流になっている。厚生労働省の難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班の治療指針によると、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNF阻害薬、インターロイキン(IL)阻害薬のウステキヌマブやミリキズマブ、インテグリン拮抗薬であるベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブやフィルゴチニブなどの使用が推奨されている。しかし、UC症例の中には新たな薬剤でも十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される患者が少なくなく、さらなるアプローチが必要となっている。 今回、ステロイド依存性または免疫抑制薬やTNF阻害薬などの生物学的製剤や低分子化合物による治療によっても寛解しない活動期UC患者を対象として、炎症性腸疾患の発症に対する関与が示唆されているヒト腫瘍壊死因子様サイトカイン1A(TL1A)に対するモノクローナル抗体であるtulisokibartの寛解導入に対する有効性と安全性を評価することを目的とした国際共同試験の結果が2024年9月のNEJM誌に掲載された。試験の結果、tulisokibartはプラセボと比べて安全性には差がなく、治療開始12週目の臨床的寛解および内視鏡的改善効果が有意に高率であったことが示されている。なかでも、プラセボの臨床的寛解率が1%であるのに対して実薬で26%と高率であった点は、対象症例が治療抵抗性の高い集団であったことを意味している。 一般の診療現場では、市販されている薬剤に抵抗性を示す患者を対象として本試験のようにプラセボ対応のRCTによる新規薬剤の臨床的寛解効果、内視鏡的粘膜改善効果、組織学的粘膜改善および粘膜治癒の有効性を検証する研究結果が重要であり、さらに、簡便に使用可能な高感度CRPや糞便中カルプロテクチンなど、炎症のバイオマーカーによる評価の結果は一般臨床現場のUC診療にとって大きな助けになると思われる。 なお、本試験は第II相試験であるが、症状の改善効果が非常に早い時期に確認されており、今後、より多くの症例を対象として、より長期の寛解導入および寛解維持効果を検証する第III相試験の結果からTL1A阻害薬が臨床の現場で使用可能となることが期待される研究結果と思われた。 最後に、クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患に対する新規薬剤が次々と上市されていることから、ガイドラインの改訂方法も考慮すべきであると同時に感染症などの有害事象にも注意が必要であることを忘れてはならない。

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中等症~重症の潰瘍性大腸炎、抗TL1A抗体tulisokibartが有望/NEJM

 中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療において、プラセボと比較して抗腫瘍壊死因子様サイトカイン1A(TL1A)モノクローナル抗体tulisokibartは、臨床的寛解の達成率が高く、有害事象の発現状況は両群で同程度であることが、米国・マウントサイナイ医科大学のBruce E. Sands氏らARTEMIS-UC Study Groupが実施した「ARTEMIS-UC試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年9月26日号で報告された。国際的な無作為化プラセボ対照第II相試験 ARTEMIS-UC試験は、14ヵ国の施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2021年7月~2022年10月に参加者を登録した(Prometheus Biosciencesの助成を受けた)。 年齢18歳以上、中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎の診断を受け、グルココルチコイド依存性であるか、潰瘍性大腸炎に対する従来治療または先進治療が無効であった患者を対象とした。被験者を、tulisokibart(1日目に1,000mg、2週・6週・10週目に500mg)を静脈内投与する群、またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 コホート1には、効果の可能性を評価する遺伝子診断検査の結果を問わずに患者を登録し、コホート2には、同検査で効果の可能性があると判定された患者だけを登録した。 主解析はコホート1で行い、主要エンドポイントは12週の時点での臨床的寛解とした。臨床的寛解は、修正Mayoスコアの内視鏡サブスコアが0または1、直腸出血サブスコアが0、便の回数サブスコアが0または1で、ベースラインの値より大きくないことと定義した(3つのサブスコアはいずれも0~3で評価、スコアが大きいほど重症度が高い)。また、コホート1のうち効果の可能性があると判定された患者と、コホート2の患者を合わせた患者集団でも解析を行った。効果の可能性がある患者集団でも有意に良好 コホート1に135例を登録し、tulisokibart群に68例(平均[±SD]年齢40.4[±14.4]歳、女性34例[50%])、プラセボ群に67例(42.2[±16.3]歳、29例[43%])を割り付けた。 コホート1における12週時の臨床的寛解の達成率は、プラセボ群が1%であったのに対し、tulisokibart群は26%と有意に優れた(群間差:25%ポイント、95%信頼区間[CI]:14~37、p<0.001)。 また、コホート1では、内視鏡的改善や組織学的改善などのすべての副次エンドポイントに関して、一貫した有効性が示された。 一方、効果の可能性があると判定された患者は2つのコホートを合わせて75例で、tulisokibart群が38例(平均[±SD]年齢37.3[±15.7]歳、女性20例[53%])、プラセボ群は37例(同38.6[±13.0]歳、13例[35%])であった。 この患者集団における臨床的寛解の達成率は、プラセボ群が11%であったのに比べ、tulisokibart群は32%であり有意に良好だった(群間差:21%ポイント、95%CI:2~38、p=0.02)。とくに注目すべき有害事象は感染症 コホート1と2を合わせた患者集団における有害事象は、tulisokibart群で46%、プラセボ群で43%に発現した。重篤な有害事象は、それぞれ1例(1%)および7例(8%)に認めた。 両群とも5%以上の患者で発現した有害事象としては、COVID-19がtulisokibart群で5例(6%)、プラセボ群で4例(5%)に、潰瘍性大腸炎の悪化がそれぞれ1例(1%)および9例(10%)に認めたのみであった。とくに注目すべき有害事象では、感染症が両群とも16例(18%)で報告された。 著者は、「コホート1では、プラセボ投与後の臨床的寛解の割合が1%と低かったことから示唆されるように、治療抵抗性が高度な患者集団において、このような効果が確認されたことは注目に値する」と述べ、「これらの知見を総合的にみると、TL1Aの遮断は、中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎における新たな作用機序であり、先進治療歴の有無にかかわらず有効であることを示すエビデンスとなる」としている。

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炎症性腸疾患関連消化管腫瘍診療ガイドライン 2024年版

IBD関連消化管腫瘍のガイドラインが誕生!炎症性腸疾患(IBD)患者数は増加の一途をたどり、長期罹患患者では消化管癌が合併することが知られている。本ガイドラインではUC(潰瘍性大腸炎)関連消化管腫瘍とCD(クローン病)関連消化管腫瘍のそれぞれの解説に加え、計28のCQを最新のエビデンスに基づいて設定した。各施設からの貴重な切除標本や病理アトラスなどのカラー図も豊富に取り扱っており、まさに他の追随を許さないIBD関連消化管腫瘍診療に携わる医療者必携の1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する炎症性腸疾患関連消化管腫瘍診療ガイドライン 2024年版定価3,850円(税込)判型B5判頁数152頁(図数:9枚・カラー図数:42枚)発行2024年7月編集大腸癌研究会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法におけるリサンキズマブの有用性 (解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療は、生物学的生物学的製剤や低分子化合物の出現により大きく変化している。わが国では、既存治療である5-ASA製剤、ステロイド、アザチオプリン、6-MP等に対して効果不十分または不耐容となったUC患者には、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNF阻害薬、インターロイキン(IL)阻害薬のウステキヌマブやミリキズマブ、インテグリン拮抗薬であるベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブやフィルゴチニブなどの使用が推奨されている(『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和5年度改訂版(令和6年3月31日)』厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度 総括・分担研究報告書)。しかしながら、中等度以上の活動性を有するUC症例の中には新たな薬剤でも十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される患者が少なくなく、新たな作用機序を有する治療薬が次々と開発されている。 今回、日本人を含む中等度から重度のUC患者を対象としたUCの寛解導入および寛解維持に対する新たなIL阻害薬であるリサンキズマブの有効性と安全性を検証した国際共同試験の結果が2024年7月22日号のJAMA誌に掲載された。なお、わが国の保険診療現場ではIL阻害薬としてIL-12とIL-23に共通するp40サブユニットを標的とするウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)とIL-23に特有のp19サブユニットを標的とするミリキズマブ(同:オンボー)が使用されている。 リサンキズマブ(同:スキリージ)はIL-23p19サブユニットを選択的に標的としてIL-23受容体を介したシグナル伝達を阻害するモノクローナル抗体であり、わが国でクローン病、尋常性乾癬、乾癬性関節炎の治療薬として、すでに薬事承認および保険適用を有している。今回は、中等度以上のUCに対する寛解導入および寛解維持目的とした治療薬として2024年6月に薬事承認を取得している。なお、リサンキズマブはウステキヌマブと同じIL-12ファミリーに属する炎症性サイトカインを標的とするが、IL-23のp19サブユニットに対してのみ特異的に結合して大腸粘膜の炎症を抑えることから感染症や悪性腫瘍の発生リスクを軽減する可能性が期待されている。 今回も昨年承認されたミリキズマブと同様、国際共同治験の成績がトップジャーナルに掲載される前に薬事承認されていることは驚きであるが、今後は国際共同治験の結果がジャーナルに掲載される前に保険適用の承認を取得する薬剤が増加するものと思われる。 一方、難治性のUCに対する薬物療法に関する臨床現場からの要望としては、既存の薬物治療に抵抗性を示す患者を対象として、プラセボを対照とした臨床試験の結果から次々に市販されている生物学的製剤それぞれの役割と具体的な使用方法に関するガイドラインの改訂が必要と思われる。

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クローン病に対するリサンキズマブとウステキヌマブの直接比較(解説:上村直実氏)

 完全治癒が見込めないクローン病(CD)に対する治療方針は、病気の活動性をコントロールして患者の寛解状態をできるだけ長く維持し、日常生活のQOLに影響する狭窄や瘻孔形成などの合併症の予防や治療が重要である。薬物治療に関しては、アミノサリチル酸塩(5-ASA)、免疫調整薬、ステロイドなどを用いた従来の治療法が無効な場合、ステロイド長期使用の副事象を考慮して、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブなど腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬が使用されることが多くなっている。しかし、中等症以上の活動性を有するCD症例の中には、抗TNF療法の効果が得られない患者、時間の経過とともに効果が消失する患者、あるいは副作用により治療が中断される患者が少なくなく、新たな作用機序を有する薬剤の追加が求められた結果、活動性とくに中等症から重症のクローン病に対しては、インターロイキン(IL)阻害薬(ウステキヌマブ、リサンキズマブなど)や抗インテグリン抗体薬(ベドリズマブ)などの生物学的製剤が使用されることが多くなっている。 新たに開発された生物学的製剤の有用性と安全性を検証するための臨床試験は薬事承認を目的としたものが多く、既存の治療において有効性に乏しい患者を対象としたプラセボ対照の無作為化比較試験(RCT)が常套手段となっており、実際の診療現場で治療方針に迷うことのある生物学的製剤同士を直接比較した検討は見当たらない。しかし、臨床現場での意思決定には先進的治療法の直接比較試験のデータがきわめて有意義である。 以前行われた唯一の直接比較試験として、中等症〜重症活動期のCD患者を対象として抗TNF薬のアダリムマブとIL阻害薬であるウステキヌマブ単剤療法の有効性を検討した結果、臨床的寛解率および種々の副次的評価項目(内視鏡的有効性、入院の低下率、ステロイドフリー率、腸管切除の減少率など、長期的な予後の改善に強く関連する項目)および安全性について両群間に有意な差は認められなかった(Sands BE, et al. Lancet. 2022;399:2200-2211.)。今回は、抗TNF療法が奏効しなかった中等症から重症の患者を対象として、IL阻害薬のリサンキズマブ(商品名:スキリージ)とウステキヌマブ(同:ステラーラ)の有用性と安全性を直接比較したオープンラベルの国際共同試験「SEQUENCE試験」の結果が2024年7月のNEJM誌に掲載された。24週目の臨床的寛解率は両群間に差がなかったが、48週目の内視鏡的寛解率はリサンキズマブ群が有意な優越性を示した結果であった。 オープンラベルでプラセボのない実薬同士の直接的な比較試験であり、成績には種々のバイアスが生ずると思われるが、診療の現場では個々の患者に対してどの薬剤が最適なのかに迷う機会が少なくなく、本試験のような高い有用性を有する薬剤同士の比較試験結果は診療現場にとって重要と思われる。今後、日本でも同様の精度の高いガチンコ勝負とともに、患者背景の違いにより薬剤の選択方法を示唆するような臨床研究を期待したい。

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中等~重症の潰瘍性大腸炎、リサンキズマブの導入・維持療法が有効/JAMA

 中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎患者において、IL-23p19阻害薬リサンキズマブは寛解導入療法および維持療法として、プラセボと比較し臨床的寛解率を改善することが示された。ベルギー・リエージュ大学病院のEdouard Louis氏らINSPIRE and COMMAND Study Groupが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「INSPIRE試験」および「COMMAND試験」の結果を報告した。JAMA誌オンライン版2024年7月22日号掲載の報告。導入療法、2用量の皮下投与による維持療法の有効性と安全性をプラセボと比較 導入療法試験「INSPIRE試験」は、2020年11月5日~2022年8月4日(最終追跡日2023年5月16日)に41ヵ国261施設で実施された。 中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎を有し、1種類以上の従来の治療、先進治療、またはその両方に不耐容または効果不十分で、リサンキズマブの前治療歴がない患者977例を、リサンキズマブ(1,200mg)群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、0週、4週および8週に静脈内投与した。 主要アウトカムは、12週時の臨床的寛解(Adapted Mayoスコアの排便回数サブスコアが1以下でベースラインを超えない、血便スコアが0、内視鏡所見サブスコアが1以下で易出血性の所見がない)であった。 維持療法試験「COMMAND試験」は、2018年8月28日~2022年3月30日(最終追跡日2023年4月11日)に37ヵ国238施設で実施された。 維持療法試験では、導入療法試験において12週時に臨床的改善(Adapted Mayoスコアがベースラインから2ポイント以上かつ30%以上低下し、さらに血便スコアが1以下または1以上低下)を達成した適格患者584例を、リサンキズマブ180mg群、360mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、8週ごとに52週にわたり皮下投与した。 維持療法試験の主要アウトカムは、52週時の臨床的寛解であった。リサンキズマブ群の臨床的寛解率は導入療法で20.3%、維持療法で37.6~40.2% 導入療法試験の解析対象は975例(年齢42.1[SD 13.8]歳、973例中586例[60.1%]が男性、677例[69.6%]が白人)で、12週時の臨床的寛解率はリサンキズマブ群20.3%(132/650例)、プラセボ群6.2%(20/325例)であった(補正後群間差:14.0%、95%信頼区間[CI]:10.0~18.0、p<0.001)。 維持療法試験の解析対象は548例(年齢40.9[SD 14.0 ]歳、男性313例[57.1%]、白人407例[74.3%])で、52週時の臨床的寛解率は、リサンキズマブ180mg群40.2%(72/179例)、リサンキズマブ360mg群37.6%(70/186例)、プラセボ群25.1%(46/183例)であった。リサンキズマブ180mg群とプラセボ群の補正後群間差は16.3%(97.5%CI:6.1~26.6、p<0.001)、リサンキズマブ360mg群とプラセボ群の補正後群間差は14.2%(4.0~24.5、p=0.002)であった。 導入療法試験における主な有害事象は、リサンキズマブ群がCOVID-19(4.8%)、貧血(3.4%)、プラセボ群が潰瘍性大腸炎(10.2%)、貧血(6.5%)で、重篤な有害事象の発現率はそれぞれ2.3%および10.2%であった。 維持療法試験における主な有害事象は、潰瘍性大腸炎(リサンキズマブ180mg群13.0%、360mg群13.8%、プラセボ群14.8%)およびCOVID-19(180mg群8.8%、360mg群13.3%、プラセボ群11.7%)で、重篤な有害事象の発現は180mg群5.2%、360mg群5.1%、プラセボ群8.2%であった。 著者は、追跡期間が短期であったことから、「52週間の追跡期間を超えた有益性を確認するためには、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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働き盛りに発症が多いIBDには社会の理解が必要/ヤンセン

 ヤンセンファーマは、5月19日の「世界IBD(炎症性腸疾患)デー」に合わせIBD患者の就労上の課題、その解決に向けた取り組みの啓発にメディアセミナーを開催した。 IBDは小腸や大腸の粘膜に慢性炎症や潰瘍を引き起こす国の指定難病で、現在国内には患者が約29万人いると推定される。発症年齢のピークは男女ともに10代後半~30代前半で、治療と仕事の両立が患者にとっては課題となる。 メディアセミナーでは、専門医による治療と仕事の両立での課題、患者視点による就労上の問題や患者アンケ―トの結果、ヤンセンファーマが推進する「IBDはたらくプロジェクト」で行なったIBD患者の就労に関する調査結果などが講演された。IBD治療と仕事の両立に必要なのは社会のサポート 「IBD患者さんがはたらき続けるために」をテーマに小林 拓氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター センター長)が、IBD疾患の概要や診療、働き世代の患者フォローについてレクチャーを行った。 IBDは消化管に起こる炎症疾患の総称を指すが、感染性や薬剤性などの特異性と、主にクローン病や潰瘍性大腸炎などの非特異性の2つに大別される。この非特異性の両疾患は社会的によく知られており、現在では継続的な治療と日常のケアで良い状態を維持することができるようになっている。 環境要因、遺伝的要因、腸内細菌、免疫応答の4つがIBDの要因として考えられ、その患者数は急激に増加しており、両疾患ともトータルで約29万人(400人に1人)近くの患者が推定されているほか、患者分布では、いわゆる働き盛り世代の30~40歳代に多いとされる。そのため、いかに仕事を続けつつ、治療継続ができる環境作りを社会が構築できるかが重要となる。 クローン病、潰瘍性大腸炎の共通症状として「下痢」「血便」「腹痛」があり、クローン病では「体重減少」「発熱」「肛門の異常」などの症状が、潰瘍性大腸炎では「便意切迫」「貧血」などの症状がみられ、患者としては隠しておきたい症状が並ぶ。そして、これらは寛解と再燃を繰り返しながら慢性の経過をたどるために、継続的な治療と定期的な通院が必要となる。再燃の原因は、個々の患者で異なり、その原因は現在も不明である。 治療では、炎症を抑えるステロイド、5-ASA製剤、生物学的製剤、JAK阻害薬、インテグリン阻害薬などの経口薬、注射薬などの薬物療法、消化管の狭窄を広げる内視鏡的バルーン拡張術、外科手術が行われ、クローン病では栄養療法も行われている。また、患者が日常生活で気を付けることとして、食事、適量のアルコール、妊娠・出産、仕事、運動などがあるが、とくに「たばこ」についてはクローン病で悪化、再燃する可能性があり、注意が必要されている。 患者の労働環境につき小林氏は、「職場に潰瘍性大腸炎と言えず悪化した例」「クローン病ゆえに進学・就職などができなかった例」「潰瘍性大腸炎の治療を中断して悪化、入院した例」「クローン病の発症で就業制限された例」「潰瘍性大腸炎で大腸を摘出し、その後のQOLに影響が出た例」と5つの症例を示した。症例で共通していることは、いずれも人生で重要なステージである10~20代でIBDを発症したことで、進学や就職に多大な影響が出ていることであり、社会的な疾患への理解の必要性を訴えた。 最後に小林氏は、「難病のある人の雇用管理マニュアル」から治療と仕事の両立について資料を示し、難病でも仕事を無理なく続けられている人は3割に過ぎず、7割の人は仕事が続けられないか、病気に配慮のない環境で働いていることを示すとともに、「IBDは適切な治療で寛解を維持できれば、仕事や生活で制限はないので、『通院ができる』などの環境作りをサポートしてもらいたい」と語り、レクチャー終えた。患者の約6割が就職・転職で困っている IBDネットワークの就労特任理事の仲島 雄大氏が「難病と就労の両立~当事者が話す、病気と付き合いながら働くということ」をテーマに、患者視点からIBD患者の悩みやアンケート結果などを説明した。 仲島氏は、病歴32年の潰瘍性大腸炎患者であり、自身の体験から患者は外面から難病と理解してもらえず困っていること、病状も寛解と再燃を繰り返すことが悩みであり、常に将来への不安がつきまとうなどと語った。同ネットワークが行った会員へのアンケ―ト(n=64)によると発症は20~29歳が1番多く、働き方は会社員が最多で、重労働に従事している人も1割いた。長く働き続けられる理由としては、「職場の配慮」が1番多く、スムーズに受診をさせてもらえる仕組みが重要だった。仲島氏は、「今後はこうした内容を含め小冊子を作成する予定」と展望を語った。 ヤンセンファーマの村崎 仁美氏(メディカルアフェアーズ本部)が、同社が行った「IBD患者さんの抱える就労における課題-調査結果より」について、概要を説明した。 アンケートは2023年11月に実施され、クローン病または潰瘍性大腸炎と診断され、薬物治療を受けつつ、フルタイムで働いている男女の患者200人に行われた。 「就職・転職活動中の苦労や困ったこと」では、55.9%の人が「苦労や困ったことがあった」と回答し、「困ったこと、悩んだこと」の中でも「病気のことを伝えるかどうか悩んだ」という事項が1番多かった。 「病状悪化(再燃)による仕事への影響」では、全体で「急な欠勤をした」が1番多く、「仕事のスケジュールを変更した」、「休職した」の順で多かった。とくに症状が中等症以上の人はこれらの比率が高かった。 「治療と仕事の両立」では、全体で70%の人ができていたが、症状が中等症以上の人では53.3%と比率は下がった。 「自分らしく働くために必要なこと」では、「周囲(社会)の理解」が49.0%、「行政による支援」が39.0%、「医師の支援」が18.5%の順で多かった。 「IBDであることを伝えるか」では、「職場の人に伝えている」が80.0%、「直属の上司」が43.5%、「とくに気にせず伝えている」が28.5%の順で多かった。

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尿が黄色くなるメカニズムが明らかに

 尿中の黄色色素としてウロビリンが同定されているが、この発見から125年以上の間、ウロビリンの産生に関与する酵素は不明とされていた。しかし、米国・メリーランド大学のBrantley Hall氏らの研究グループが腸内細菌叢由来のビリルビン還元酵素(BilR)を同定し、この分子がビリルビンをウロビリノーゲンに還元し、ウロビリノーゲンが自然に分解されることで尿中の黄色色素ウロビリンが産生されることを明らかにした。また、BilRは健康成人ではほぼ全員に存在していたが、新生児・乳児や炎症性腸疾患(IBD)患者で欠損が多く認められた。本研究結果は、Nature Microbiology誌2024年1月3日号で報告された。 研究グループは、ビリルビンをウロビリノーゲンへ還元する酵素を同定し、微生物によるビリルビンの還元と健康との関係を検討することを目的として本研究を実施した。腸内細菌のスクリーニングと比較ゲノム解析により、ビリルビンを還元する候補分子を探索した。また、黄疸を発症しやすい生後1年未満の新生児・乳児(4,296例)、血清ビリルビン濃度が変化していることの多いIBD患者(1,863例)、健康成人(1,801例)を対象としてメタゲノム解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ビリルビンをウロビリノーゲンに還元する酵素としてBilRが同定され、Firmicutes門に属する腸内細菌が多くコードしていた。・BilRが検出されない割合は、健康成人(1,801例)では0.1%であったが、生後1ヵ月未満の新生児(1,341例)は約70%(p<2.2×10-16)、クローン病患者(1,224例)および潰瘍性大腸炎患者(639例)はいずれも30%以上(いずれもp<2.2×10-16)であった。・1歳までに、ほとんどの乳児でBilRが検出された。 本研究結果について、著者らは「新生児では、ビリルビンを還元する微生物が腸内に存在しないか少ないために、新生児黄疸が発生・悪化するという仮説を支持するものであった。IBD患者では、ビリルビンを還元する微生物が存在する割合が低いことから、ビリルビン代謝の破綻と非抱合型胆汁酸の増加が組み合わさることで、ビリルビンカルシウム胆石の発生率が上昇している可能性があると考えられる」と考察している。ただし、「結論を出すにはさらなる研究が必要である」とも述べている。

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コーヒーや炭酸飲料、潰瘍性大腸炎リスクを減少/日本人での研究

 食事は潰瘍性大腸炎リスクに影響する可能性があるが、日本人でのエビデンスは乏しい。今回、日本潰瘍性大腸炎研究グループが、コーヒーやその他のカフェインを含む飲料・食品の摂取、カフェインの総摂取量と潰瘍性大腸炎リスクとの関連を症例対照研究で検討した。その結果、欧米よりコーヒーの摂取量が少ない日本においても、コーヒーやカフェインの摂取が潰瘍性大腸炎リスクの低下と関連することが示された。愛媛大学の田中 景子氏らがJournal of Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2023年12月10日号で報告。 本研究では、潰瘍性大腸炎の症例群として384人、対照群として665人が参加した。コーヒー、カフェインレスコーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、炭酸飲料、チョコレート菓子の摂取量について半定量的食物摂取頻度調査票を用いて調査し、性別、年齢、喫煙、飲酒量、虫垂炎既往、潰瘍性大腸炎の家族歴、学歴、BMI、ビタミンC、レチノール、総エネルギー摂取量で調整した。なお、本研究は厚生労働科学研究費補助金の「潰瘍性大腸炎の発症関連及び予防要因解明を目的とした症例対照研究」班として実施された。 主な結果は以下のとおり。・コーヒーと炭酸飲料の摂取量が多いほど潰瘍性大腸炎リスクが減少し、有意な用量反応関係が認められた。一方、チョコレート菓子の摂取量が多いほど潰瘍性大腸炎リスクが有意に高かった。・カフェインレスコーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶の摂取量と潰瘍性大腸炎リスクとの関連は認められなかった。・カフェインの総摂取量は潰瘍性大腸炎リスクと逆相関し、両極の四分位間の調整オッズ比は0.44(95%信頼区間:0.29~0.67)であった。

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