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皮膚科の次世代型医療:Z世代の医学部生を中心に開発

 東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野では、志藤 光介氏の研究グループの協力のもと、医学部5年生の柳澤 祐太氏が主体となり、スマートフォンなどで簡便に撮影された画像から病変部位を認識し、その病変部位を検出し着目させる病変部抽出システムを、深層学習を用いて開発することに成功した。デジタル環境で育ったZ世代の医学部生の目線で作成された皮膚科関連AI研究である。東北大学 2023年1月26日付プレスリリースの報告。 近年、皮疹の画像を撮影しAIで解析をするシステムは世界中で開発されており、病院内でも実用化されている。患者が利用するAIでは、専用の画像撮影機器などを用いずに、スマートフォンなどを使って簡便に撮影した画像から画像解析を行えることが望ましいものの、スマートフォン撮影では一定の条件下で撮影されないため、被写体との距離が一定せず、同じ皮膚病変であっても撮影距離によって皮疹の様子が異なるという問題があった。このような撮影バイアスは疾患判別精度に大きく影響することがあり、深層学習を用いた画像解析を行ううえで技術的な課題であった。 とくにアトピー性皮膚炎は慢性疾患であり、治療が長期化することでさまざまな合併症を併発する。その中でも早期の対応が必要な細菌感染症やウイルス感染症、早期発見が予後に影響する悪性腫瘍の発見が遅れると重症化し、生命予後に関わることもある。そのため、アトピー性皮膚炎患者自身が病変の変化に気が付くのを助け、医療機関への受診を促すために気軽に使用できる疾患判定AIツールの普及が望まれていた。 そこで、柳澤氏は、志藤氏らのグループの協力のもと、デジタル機器で撮影された病変の部位を認識し、自動的に病変部位を着目して画像をトリミングする病変部抽出システムを開発した。病変部抽出システムを利用して病変部位を着目させる解析と、疾患判定画像診断解析の2段階の画像解析を行うことで、さまざまな拡大率で撮影された画像でも安定した深層学習による画像解析が可能となる。 さらに、この病変部抽出システムを利用して、アトピー性皮膚炎に合併しやすい疾患(感染症並びに悪性腫瘍)を対象に、深層学習モデルを利用したアトピー性皮膚炎合併疾患判定AIソフトウェア(AD-AI)を開発した。アトピー性皮膚炎に合併しやすい、単純ヘルペスウイルス感染症、カポジ水痘様発疹症、伝染性膿痂疹(とびひ)、菌状息肉症を対象に解析モデルの検証を行った。アトピー性皮膚炎への感染症や悪性転化を画像から判定する課題において、研究グループが開発したシステムで自動的にトリミングした画像と皮膚科専門医がトリミングした画像を用いて深層学習モデルを作成し精度を比較したところ、同程度に疾患が判定できることがわかった。 今回開発したアトピー性皮膚炎合併疾患判定AIソフトウェア(AD-AI)によって、患者が気になったときにスマートフォンで皮疹を撮影し、AIで感染症の合併が起きていないか判定ができると、これまで以上の早期発見と早期治療介入が可能となることが期待される。今後は、このAD-AIをアプリに実装し、広く一般の患者に利用してもらえるように、さらなる精度の向上ならびに使用上の規制への対応を目指し開発を進める方針とのこと。 本研究は、Journal of Dermatological Science誌オンライン版2023年1月11日号に掲載された。

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オミクロン株の感染爆発のファクターを解明/日本大学ほか

 わが国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第8波の主な感染原因であるオミクロン株。この変異株について、今井 健一氏(日本大学歯学部感染症免疫学講座 教授)らの研究グループは、オミクロン株感染者の唾液中には、宿主細胞の内外に付随していない裸のウイルス(セルフリーウイルス)が、従来株やデルタ株よりも高比率に含まれていることを世界で初めて発見し、JAMA Network Open誌2023年1月9日号に報告した。 細胞に付随しているウイルスと比較すると、セルフリーウイルスはとても小さく軽いため、唾液に覆われた状態でも室内に長時間漂うことができる。オミクロン株では、このセルフリーウイルスの唾液への排出量がデルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加したことが、エアロゾル感染によるCOVID-19の爆発的拡大につながったものと考えられるという。セルフリーウイルスがオミクロン株では従来株の17.8倍 新型コロナウイルスは、口腔内の上皮や唾液腺の細胞に感染し増殖するため、唾液中には多くのウイルスが含まれている。そのため、会話、せき・くしゃみのたびに放出される飛沫や微細なエアロゾルによって伝播され感染が広がる。オミクロン株は、従来株やデルタ株などと異なり、飛沫感染に加えてエアロゾル・空気感染によって伝播するため、現在の爆発的な感染拡大につながったと考えられているが、その仕組みは良くわかっていなかった。今回の研究はこの仕組みを明らかにすることを目的とした。 研究グループでは、新型コロナウイルスは、従来株→デルタ株→オミクロン株とウイルスが変異するのに伴い、唾液中に排出されるウイルスの量自体が多くなっていると推測。また、エアロゾル感染が成立するためには、ウイルスが飛沫に含まれて拡散する状態よりも遠くに飛散し、かつ飛沫よりも長時間室内に漂うエアロゾルに含まれて拡散する状態が必要とも考慮した。 そこで、従来株、デルタ株、およびオミクロン株の感染者から採取した唾液を、全唾液と遠心分離で細胞成分を除いた上澄み液とに分け、それぞれに含まれるウイルス量を定量した。 主な結果は以下のとおり。・従来株では、全唾液1mL中に約123万個(中央値、以下同じ)のウイルスが存在していることがわかった。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約18万個で、全唾液中のウイルスに占めるセルフリーウイルスの割合は約5.9%だった。・デルタ株では、全唾液1mL中に約1,860万個と従来株に比べて15倍ものウイルスが存在していた。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約117万個で、全唾液中に占める割合は約4.8%で従来株と類似した値だった。・オミクロン株では、全唾液1mL中にデルタ株の半分強、約952万個のウイルスが存在していた。一方で、セルフリーウイルスは1mL中に約321万個が存在し、デルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加していた。全唾液中に占める割合は約21.3%で、従来株やデルタ株と比較して約4倍もセルフリーウイルスの割合が増加していた。 以上から、唾液中のセルフリーウイルスの量が多ければ、新たな宿主に到達した際に新型コロナウイルスの受容体であるACE2への結合がしやすく、感染効率も自然と高まる。さらに、セルフリーウイルスは細胞付随ウイルスよりも3倍近い速さで新たな未感染の細胞に感染するため、セルフリーウイルスが唾液中に多く含まれることは感染爆発の主要な原因となり得ると考えられた。 同研究グループは、「今回の研究から大規模クラスターが多発している現状を説明し得るものと考えられ、また、感染予防策として換気の必要性と密閉空間でのマスク着用励行の根拠ともなる」と考察している。さらに本研究は、「『エアロゾル・空気感染におけるセルフリーウイルスの重要性を初めて提唱した』という点で重要であり、今後、インフルエンザや麻疹、水痘などの他のウイルス感染症への適応や未知のウイルス感染症が発生した際、そして、ウイルス変異が生じるたびにそのウイルスの性状を知り、感染対策を立てる基本概念として適用される」と展望を述べている。

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TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」【下平博士のDIノート】第113回

TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」今回は、チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬「デュークラバシチニブ錠(商品名:ソーティクツ錠6mg、製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ)」を紹介します。本剤は、TYK2を選択的に阻害する世界初の経口薬で、既存治療で効果が不十分であった患者や、副作用などにより治療継続が困難であった患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得し、同年11月16日に発売されました。光線療法を含む既存の全身療法(生物学的製剤を除く)などで十分な効果が得られず皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ場合や、難治性の皮疹や膿疱を有する場合に使用します。<用法・用量>通常、成人にはデュークラバシチニブとして1回6mgを1日1回経口投与します。なお、本剤使用前には結核・B型肝炎のスクリーニングを行い、24週以内に本剤による治療反応が得られない場合は、治療計画の継続を慎重に判断します。<安全性>国際共同第III相臨床試験(IM011-046試験)において、本剤投与群の22.0%(117/531例)に臨床検査値異常を含む副作用が発現しました。主なものは、下痢2.6%(14例)、上咽頭炎2.4%(13例)、上気道感染2.3%(12例)、頭痛1.9%(10例)などでした。なお、重大な副作用として、重篤な感染症(0.2%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の原因となる酵素の働きを抑えることで、皮膚の炎症などの症状を改善します。2.免疫を抑える作用があるため、発熱、寒気、体がだるい、咳が続くなどの一般的な感染症症状のほか、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの症状に注意し、気になる症状が現れた場合は速やかにご相談ください。3.本剤を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種ができないので、接種の必要がある場合は医師にご相談ください。4.感染症を防ぐため、日頃からうがいや手洗いを行い、規則正しい生活を心掛けてください。また、衣服は肌がこすれにくくゆったりとしたものを選び、高温や長時間の入浴はできるだけ避けましょう。<Shimo's eyes>本剤は、TYK2阻害作用を有する世界初の経口乾癬治療薬です。TYK2はヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーの分子ですが、本剤のようなTYK2だけを選択的に阻害する薬剤は比較的安全に使用できるのではでないかと期待されています。乾癬の治療としては、副腎皮質ステロイドやビタミンD3誘導体による外用療法、光線療法、シクロスポリンやエトレチナート(商品名:チガソン)などによる内服療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在、乾癬に適応を持つ生物学的製剤は下表のとおりです。また、同じ経口薬としてPDE4阻害薬のアプレミラスト(同:オテズラ)が「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬」の適応で承認されています。臨床試験において、本剤投与群ではアプレミラストを上回る有効性を示しており、この点が評価されて薬価算定では40%の加算(有用性加算I)が付きました。安全性では、結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可能性があるため注意が必要です。また、感染症の発症、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化の懸念もあるため、症状の発現が認められた場合にはすぐに受診するよう患者さんに説明しましょう。TYK2阻害薬は自己免疫疾患に対する新規作用機序の薬剤であり、今後の期待として潰瘍性大腸炎や全身性エリテマトーデスなどの幅広い疾患に適応が広がる可能性があり、注目されています。

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サル痘ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第14回

新型コロナに次いで緊急事態が宣言されたサル痘周知の通り、サル痘感染が世界的に拡大している。アフリカ熱帯地方に限局した風土病であったサル痘が、ナイジェリアからの輸入例として英国から世界保健機関(以下、WHO)に報告されたのは2022年5月7日であった(発端症例はナイジェリア滞在中の同年4月29日に発症、5月4日に英国に到着)1)。以後、非常在国への輸入例およびそれらを発端とした国内感染例が続々と発見・報告されてきた。急激な世界的拡大を踏まえ、WHO事務局長は2022年7月23日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern:PHEIC[フェイク]と発音)」を宣言した2)。PHEICとは、「緊急かつ世界的な健康問題に対して、WHO加盟各国が集中的に資源投下して早期の封じ込めまたは安定化を目指すよう」にとWHO事務局長が発する宣言である。2020年の新型コロナウイルスパンデミックへの宣言に続いて、史上7件目のPHEICとなった。PHEIC宣言後も加盟各国での発見が相次ぎ、2022年9月21現在では105ヵ国から累計6万1,753例の確定患者と23例の死亡がWHOに報告されている3)。わが国でも同9月21日までに、計5例の確定患者が厚生労働省に報告されている4)。うち3例は直近の海外渡航歴があったが、残る2例に渡航歴はない。渡航歴のない2例とも発症直前に海外渡航者との接触があり、輸入例を発端とした国内感染と推定される。ただし、諸外国のように輸入発端例を追跡できないような国内感染拡大には現時点で至っていない。サル痘とはサル痘は人獣共通感染症である。1958年にデンマークの研究所が実験用にアジアから輸入したサルが発疹性疾患を発症し、病変からサル痘ウイルスが分離発見された。これがサル痘 monkeypox の命名由来であるが、後の研究により本来の自然宿主はアフリカ熱帯地域のリス、その他の齧歯類と推定された。実験的感染も含めると、サル痘ウイルスはヒトをはじめとする40種以上の動物種に感染することがわかっている5)。アフリカ熱帯地域の野生動物間で循環しているサル痘ウイルスが、感染動物と接触したヒトにも感染する例が、1970年以降コンゴ盆地(アフリカ中央部)および西アフリカの諸国で散発的に報告されてきた。ヒト発端例から数100例に拡大したアウトブレイクも同地域で何度か発生している。サル痘ウイルスは天然痘(痘瘡)ウイルスと同じオルソポックスウイルス属に属し、クレードI(旧称:コンゴ盆地型)とクレードII(旧称:西アフリカ型)の2系統に分類される6)。クレードIによる致死率は10%前後だが、クレードIIのそれは1~数%と比較的軽症である。現在世界で拡大しているサル痘ウイルスは主としてクレードIIとされており7)、確定症例中の死亡数が少ないのはそのためと考えられる。サル痘ウイルスは主として接触感染する。ごく近距離かつ長時間の対面による飛沫感染もありうるが、大半は皮膚と皮膚、またはウイルスの付着した衣類などと皮膚の濃厚接触による感染とされる。性的接触後の感染も多く報告されているが、性的接触に伴う皮膚同士の濃厚接触が感染経路と考えられ、一般的な性行為感染とは異なる。現時点では圧倒的に男性の報告が多く、女性や小児の報告は一部である。サル痘の症状は、根絶された天然痘(痘瘡)のそれにかなり似通っている。ウイルス感染後1~2週間(最大21日間)の潜伏期を経て、発熱、リンパ節腫脹等の非特異的な前駆症状で発症する。前駆症状の1~3日後に全身に発疹が出現するが、天然痘と同じくすべての発疹が同期して丘疹→水疱→膿胞→痂皮へと進行する。類似の水疱性疾患である水痘の発疹が互いに同期せずバラバラに進行するのとは異なるが、多数のサル痘報告の中には発疹が同期しないケースも散見されるため、鑑別に注意を要する。発疹は痂皮が脱落するまでの2~4週間は感染性を保ち、その間の濃厚接触によって感染が拡がる。ほとんどが自然治癒するが、まれに発疹部への細菌2次感染、肺炎、脳炎、角膜炎などの合併症を生ずる。妊婦や小児が特に合併症を生じやすいとされる。診断は発疹病変検体からのウイルス遺伝子検出(PCR法)が有用であり、厚生労働省による届出基準でも採用されている8)。特異的治療薬として、欧州では tecovirimat が承認されている。わが国には承認済みの特異的治療薬はないが、「tecovirimat のサル痘への効果と安全性を検証する特定臨床研究」が国立国際医療研究センターにて進行中である。サル痘のより詳しい臨床情報については、他の総説記事などをご参照いただきたい。 日本の法令上の扱いサル痘はわが国では感染症法で4類感染症に指定されており、全数届出疾患である。1・2類感染症とは異なりまん延防止のための公費入院制度がないため、入院および治療の費用は患者負担となる(前述の tecovirimat の特定臨床研究の対象となれば研究費が適用される)。検疫法にはサル痘の指定がないため、海外から到着した疑い症例を検疫所が発見しても検疫法に基づく行政検査ができない。近隣自治体に知らせて感染症法に基づく検査につなげる(自治体が指定する医療機関へ移送を検討する)必要があり、患者自身のためにもまん延防止のためにも検疫所と自治体との連携が重要である。オルソポックスウイルス属と天然痘ワクチン(種痘)本稿の本題はサル痘に対するワクチンであるが、サル痘ワクチンを知るにはまず天然痘とそのワクチンを知らねばならない。1)天然痘ワクチンサル痘ウイルスは天然痘ウイルスと同じオルソポックスウイルス属に属する。天然痘は数千年にわたり人類を脅かしてきたウイルス性発疹性疾患である。WHO主導の世界的な天然痘ワクチン接種(種痘)キャンペーンにより、1980年についに世界からの根絶が宣言された。有効なワクチンがあった以外に、動物宿主がなくヒトにしか感染しない、持続感染例がないなどの好条件が重なり、人類初の根絶病原体となった。サル痘の臨床症状は天然痘と似通っている。天然痘という病名は英語で smallpox だが、病原体である天然痘ウイルスは variola virus と呼ばれる。天然痘ウイルスには variola major および variola minor の2種があった。Variola major は19世紀末まで猛威を奮い、致死率は30%前後に及んだ。Variola minor は19世紀末に登場し、majorに取って代わって世界に拡大した。Variola minor の致死率は1%前後とmajorよりは軽症であったが、それでも1%の致死率は重大であり根絶の努力がなされた。死亡は感染の1~2週後に生じたが、死に至る詳細な病態生理はわかっていない。重度のウイルス血症やそれに伴うサイトカインストームが主因だったのではと推測されている9)。2)天然痘ワクチンの歴史とワクシニア vaccinia ウイルスオルソポックスウイルス属には牛痘ウイルスも含まれる。牛痘ウイルスはその名の通り牛に感染して水疱性疾患を生ずる病原体だが、牛を扱う農夫など濃厚接触するヒトにも感染することが古くから知られていた。ヒトに限局される天然痘とは異なり、牛痘は人獣共通感染症である。そして、牛痘感染歴のある者は天然痘に感染しないことも経験的に知られており、西暦1000年ごろにはすでにインドや中国で天然痘予防目的にヒトに牛痘を感染させる手法が行われていたとされる。これを世界で初めて科学的に確立し19世紀初頭に論文として世に報告したのが、英国のエドワード・ジェンナーであった10)。ラテン語で牛を意味する vacca を語源として、接種に用いる牛痘製剤を vaccine、牛痘接種(種痘)を vaccination とジェンナーが名付けたことは広く知られている。後に種痘に限らず、病原体予防薬全般について vaccine/vaccination の語が使われるようになった。そして、ジェンナーによる論文出版後の19世紀に種痘は世界へ急速に拡大した。種痘製剤を量産するために、牛の皮膚に人為的に牛痘ウイルスを植え付けて感染させ、病変から次の原料を採取するという手法が広く行われた。驚くことに、牛以外にも羊、水牛、兎、馬なども利用され、時には牛痘ではなく馬痘ウイルスすら使われた。20世紀に近代的なワクチン製法が確立される過程で、種痘製剤に含まれるウイルスはワクシニア vaccinia と名付けられた。その時点でワクシニアウイルスは、自然界の牛痘ウイルスからは遺伝的に大きく異なっていた。ジェンナー当時の牛痘ウイルスが100年以上にわたり生体動物を用いて継代培養される過程で、変異を繰り返した上に、他のオルソポックスウイルス属との交雑も起きたと推測されている。したがって現代の種痘製剤(天然痘ワクチン)の原料は、自然界の牛痘ウイルスではなく、実験室にのみ存在するワクシニアウイルスである。3)天然痘ワクチンの世代と種類これまで実用化されてきた天然痘ワクチンは表1のように3世代に分類される。表1 天然痘ワクチンの世代と特徴画像を拡大する天然痘の根絶に向けて接種キャンペーンが実施されていた当時の天然痘ワクチンを第1世代と呼ぶ。19世紀のままの生体動物による製法で生産され、無菌処理を施して凍結乾燥されていた。この間に免疫原性が高い優良株がいくつか確立された。しかし、キャンペーン進行による自然罹患者の減少と引き換えに、ワクチンの重篤な副反応が目立つようになった。種痘性湿疹 eczema vaccinatum、進行性ワクシニア progressive vaccinia、全身性ワクシニア generalized vaccinia といった致死性の極めて高い重篤皮膚病変や、高い致死率と神経学的後遺症に至る種痘後脳炎・脳症などが報告された。いずれも数10万接種~100万接種に1件程度と低頻度ではあったが、わが国を含む各国で問題視された11)。やがて1980年に根絶が宣言されると種痘は中止され、生産済みの第1世代ワクチンは凍結保存された。その後の1987年旧ソ連崩壊に伴う天然痘ウイルス拡散懸念や、2001年の米国同時多発テロ後の炭疽菌テロなどがきっかけで、天然痘ウイルスを利用した生物テロを想定してワクチンを常備する気運が米国を中心に高まった。この時期に生産された製剤を第2世代と呼ぶ。第2世代は、第1世代で確立されたワクチン株を生体動物ではなく細胞培養やニワトリ胚培養など現代的製法で生産したものである。天然痘はすでに根絶されていたため、ワクチンの効果は被験者の免疫応答(すなわち代理エンドポイント)を第1世代ワクチン当時と比較する形で測定された。しかし、第1世代と同じウイルス株を使っていたため、安全性の懸念は払拭されなかった。米国軍人などに第2世代製剤を接種した際の複数の2000年代の研究で、接種後心筋炎が背景リスクよりも有意に高いことが示されている12-15)。第1世代で問題視された安全性問題をクリアするために、免疫原性を保ったまま副反応を減らすよう、弱毒化ワクシニアウイルス株も順次開発された(第2世代までは非弱毒株)。弱毒化ワクシニアウイルス株由来の製剤を、第3世代と呼んでいる。遡ること1950~60年代にはアンカラ株(modified vaccinia Ankara:MVA)と呼ばれる弱毒株が開発されている。トルコのアンカラで数100世代継代培養されて遺伝子の15%が変異したこの株は、既存製剤よりも免疫原性は劣るが副反応も避けられるため、根絶前のキャンペーンでは既存製剤接種に先立つ接種に用いられた。また、1970年代には、わが国の橋爪 壮氏がヒト体内での増殖能を不活性化した LC16m8株を開発している16)。現在わが国でテロ対策に備蓄されている天然痘ワクチン(痘そうワクチン LC16「KMB」)は LC16m8株由来であり、自衛隊での小規模な研究であるが免疫原性と安全性は確認されている17)。一方、欧米ではMVA由来の新たな製剤が2010年代に開発されて同じく備蓄されている(Bavarian Nordic社による開発で通称 MVA-BN、商品名は国・地域ごとに異なる)18)。ワクシニアウイルスによるワクチンとオルソポックスウイルス属の交叉抗原性上記の歴史からわかる通り、天然痘ワクチンは天然痘ウイルス自体が原料ではなく、同じオルソポックスウイルス属である牛痘ウイルス(誕生当時)またはワクシニアウイルス(現代)が原料である。同じウイルス属とはいえ異なる種のウイルスを用いたにもかかわらず、このワクチンは天然痘ウイルスを根絶するほどの効果を示した。他のワクチン予防可能疾患において、異なる種の病原体を原料としたワクチンが充分な効果を示した例はない。すなわち、オルソポックスウイルス属は種同士の交叉抗原性が非常に強いと言える。属内での交叉抗原性の強さから、天然痘ワクチンを同じくオルソポックスウイルス属であるサル痘ウイルスの予防にも応用する発想につながる。サル痘予防としての天然痘ワクチン今回の世界的流行以前にも、サル痘はアフリカでアウトブレイクを繰り返し、時に非常在国での小規模アウトブレイクも起こしてきた19)。繰り返すが、サル痘ウイルスは天然痘ウイルスや牛痘ウイルス/ワクシニアウイルスと同じオルソポックスウイルス属である。属内の交叉抗原性が強いことの証左として、アフリカでのサル痘アウトブレイクで天然痘ワクチン(種痘)が結果的に奏効した実績がある。1980年代の古い観察研究ではあるが、当時のザイール(現コンゴ民主共和国)でのサル痘アウトブレイク時に、濃厚接触者の種痘歴の有無と発症の関連を調査したものがある。これによると、種痘歴がある場合の濃厚接触後発症は、種痘歴なしでの濃厚接触後発症に比べて、相対リスク減少が85.9~87.1%であった(※データから著者算出)20)。すなわち、種痘歴があることでサル痘発症リスクが80%以上低減された可能性がある。こうした知見からサル痘コントロール目的に天然痘ワクチンの接種が検討され、各国でのアウトブレイク時には適応外使用として接触者に曝露後接種されることもあった19)。しかし、天然痘ワクチンによるサル痘ヒト感染の予防効果を直接検証した質の高い介入研究はいまだ発表されてない。また、天然痘根絶後の天然痘ワクチンに関する研究のほとんどは、接種後(種痘後)の中和抗体上昇などの免疫学的指標および安全性評価に留まる。根絶前のかなり限定的な観察から、中和抗体価と天然痘の感染阻止にはある程度の相関があることが示唆されてはいるが21)、絶対的な感染阻止指標と証明されたわけではない。ましてや、種痘後の中和抗体価がサル痘の感染阻止とどの程度関連するかも不明である。天然痘ワクチンのサル痘予防効果は、真のエンドポイントでの評価がなされていない点に留意が必要である。こうした状況ではあるが、急激な世界的拡大を踏まえてWHOをはじめ世界の各機関は複数の間接的研究結果を根拠に天然痘ワクチンをサル痘予防に用いるよう承認し、推奨接種対象者を公表している。WHOは2022年8月発表の暫定ガイダンスにおいて、第2世代および第3世代ワクチン双方を表2の対象者に、十分な意思決定の共有(shared decision-making)の下に接種するよう推奨している22)。安全性の観点では第3世代が有利といえるが、第3世代はいまだ生産量および備蓄量が少ないため、世界全体のバランスを重視するWHOの立場としては第2世代も同程度に推奨していると考えられる。表2  WHOによる天然痘ワクチンのサル痘予防使用の推奨対象者画像を拡大する米国は天然痘予防に承認済みの第2世代 ACAM2000 および第3世代 MVA-BN(商品名:JYNNEOS)の計2種をサル痘予防に緊急承認し、欧州も同じく第3世代 MVA-BN(同:IMVANEX)をサル痘予防に承認し、それぞれにWHOと類似の対象者向けに接種を推奨している23)。なお米国では第2世代 ACAM2000 は第3世代 MVA-BN(JYNNEOS)の代替品substituteの位置付けである。わが国でも2022年8月に、天然痘に承認済みの第3世代 LC16m8株「痘そうワクチンLC16『KMB』」の適応にサル痘予防が追加された24)。接種対象者の選定について同9月現在で厚生労働省からは公式な発表はないが、厚生科学審議会で議論が行われている。また、治療薬 tecovirimat の特定臨床研究と並んで、国立国際医療研究センターにおいて同ワクチンの曝露前接種および曝露後接種が共に特定臨床研究として実施されている(同ワクチンの適応追加前に計画されたため、通常の臨床研究ではなく特定臨床研究が選択された)。わが国もサル痘侵入に対して迅速に対応していると言えよう。おわりに2022年9月時点ではわが国へのサル痘侵入例は数えるほどであり、諸外国のような国内感染拡大には至っていない。一般医療機関でサル痘患者に対応したり、天然痘ワクチンを接種する状況からは、現時点では程遠い。よって現状ではワクチンの接種手技や副反応などに通暁する必要は乏しく、本稿では天然痘ワクチンの歴史とサル痘流行における現状を整理するに留めた。しかし、新型コロナウイルス同様、国内感染例がある閾値を超えれば急速に拡大する可能性が常にある。読者には最新情報を収集していただくと共に、天然痘ワクチン接種が広範囲の医療機関で実施される状況が訪れるならば筆者も情報更新に努めたい。参考となるサイト厚生労働省 サル痘について1)WHO Disease Outbreak News. Monkeypox-United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland.; 2022.(2022年8月8日閲覧)2)WHO. Second Meeting of the International Health Regulations (2005) (IHR) Emergency Committee Regarding the Multi-Country Outbreak of Monkeypox.; 2022.(2022年8月8日閲覧)3)WHO. Multi-Country Outbreak of Monkeypox --- External Situation Report 6, Published 21 September 2022.2022.(2022年9月22日閲覧)4)厚生労働省. サル痘について. Published 2022.(2022年9月21日閲覧)5)Parker S, et al. Future Virol. 2013;8:129-157.6)WHO. Monkeypox: Experts Give Virus Variants New Names.2022.(2022年8月21日閲覧)7)Benites-Zapata VA, et l. Ann Clin Microbiol Antimicrob. 2022;21:36.8)厚生労働省. サル痘 感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について.(2022年9月9日閲覧)9)Martin DB. Mil Med. 2002;167:546-551.10)Jenner E. An Inquiry into the Causes and Effects of the Variolae Vaccinae.; 1802.(2022年9月9日閲覧)11)平山宗宏. 小児感染免疫. 2008;20:65-71.12)Arness MK, et al. Am J Epidemiol. 2004;160:642-651.13)Eckart RE, et al. J Am Coll Cardiol. 2004;44:201-205. 14)Lin AH, et al. 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サル痘患者に遭遇する前に…押さえておきたい鑑別方法とワクチン接種の注意点

 国内でも症例がじわじわと増えているサル痘。皮膚病変だけではなく、扁桃炎や口腔病変が報告され、ペットからの感染リスクも出てきているというから、医療者はいつ自分が感染者対応に追われるかわからない。そんな時のためにもサル痘やそのワクチンの知識を蓄えておく必要がありそうだ。8月2日にはKMバイオロジク社の天然痘(痘そう)ワクチンLC16「KMB」にサル痘の効能追加が承認され、順次、感染リスクの高い医療者への接種が見込まれる。しかしこのワクチン、添付文書の用法・用量を見てみると“二叉針を用いた多刺法により皮膚に接種”となかなか特徴的である。 そこで今回、氏家 無限氏(国立国際医療研究センター/国際感染症センター トラベルクリニック医長・予防接種支援センター長)に協力いただき、同氏の所属施設が医療者向けに提供する動画「天然痘ワクチンガイド」とその補足情報についてお届けする。◆参考◆ 添付文書だけではわからない!?サル痘ワクチンの打ち方――― ―接種対象者は誰ですか? 厚生労働省の資料にも挙げられていますが、とくに泌尿器科、救急部門、皮膚科、眼科、性感染症を扱うクリニックの方が対象になるでしょう。また、患者検体を扱う臨床検査技師や保健所の方も該当すると考えます。―過去に接種経験があっても接種するべきでしょうか? 痘そうワクチンは1976年に定期接種が廃止されているので、1975年以前に生まれている方は接種経験があります。しかし、今回サル痘に効能追加が承認されたLC16ワクチンは当時打っていたワクチンとは異なります。また、海外ではハイリスク者には定期的な接種が推奨されています。加えて、今回の流行における感染者には接種歴のある方も一定数いるので、適応があれば、接種を受けることが望ましいだろうと思います。―接種方法と注意すべきポイントはなんですか。 サル痘の効能追加に伴い、LC16ワクチンの添付文書の用法・用量や妊婦、産婦、授乳婦等への接種の項などが改訂されたのでここは注意が必要です。痘そう予防の時の接種方法は「初種痘で5回、その他の種痘で10回」の記載でしたが、現在は「通常、専用の二叉針を用いて15回を目安」となっています[添付文書の6.接種時の注意(4)を参照]。また、妊娠している方に接種を行わないことが明記されました。―接種後は免疫獲得の指標となる「善感反応」を確認するそうですが、これについて教えてください。 善感反応とは、種の跡がはっきりと付いて免疫が獲得されたことを示す状態(接種部位の膿疱、硬結、痂疲などの局所反応が確認できた状態)1)のことで、接種10~14日後にその反応を確認します。見た目は米国・CDC(疾病予防管理センター)のホームページに具体例が提示してあるので参考にしてください。この反応の出方も個体差が大きく、ひとつの模範例を示すのはなかなか難しいです。また、接種部位には弱毒化されたワクチンのウイルスが存在しているので、触らないようにしてください。データは乏しいですが、完全に皮膚が良くなるまでは注意が必要だと思います。―副反応はどんなものが挙げられますか。男女差はありますか? 主な副反応として、過去の臨床研究2)では接種側の腋窩リンパ節腫脹が10~20%、37.5℃以上の発熱が1~3%程度報告されています。また、一般に安全性評価の臨床研究において女性のほうが副反応を報告しやすい傾向がありますが、重篤な副反応での明らかな性差は報告されていません。―――疑わないと診断できず、診断できないと感染対策につながらない このほか、氏家氏はサル痘が4類感染症に位置付けられていることや世界情勢を踏まえ、各医療者に向けて以下について強調した。 「サル痘は4類感染症のため感染症指定医療機関のみが診療するものではなく、さまざまな症状(皮膚病変、口腔病変、眼病変など)を有することから種々の鑑別疾患が挙げられ、誰もが診る可能性のある疾患だ。現在は海外での男性同士の性的接触が感染拡大の主な原因だが、感染がさらに広がると海外渡航歴がないなど典型的ではない患者が診断されることも想定される。そのため、感染症の非専門医であっても、今回の流行で報告されている症状や感染経路(性交渉などに伴う接触感染など)、世界の感染者数増加を踏まえ、鑑別疾患に挙がる疾患(水痘、梅毒など)3)4)が典型的な経過ではない場合では、ほかの疫学情報(性別、年齢、性交渉歴など)と併せて、サル痘を疑う目を持つことが重要である。“疑わないと診断できず診断できないと感染対策につながらない”という問題を起さないためにも、社会的に感染状況を評価するためにも、常に情報を更新しながら適切な診療にあたってほしい」サル痘は4類感染症、ただちに届出を サル痘を診断あるいは検体した場合には感染症法に従い、ただちに最寄りの保健所へ届出を行う必要がある。厚生労働省は「サル痘への対応」通知において、疑い例及び接触者に関する暫定症例定義を以下のように示している。1)「疑い例」の定義:原則、下記の[1]~[2]全てを満たす者とするが、臨床的にサル痘を疑うに足るとして主治医が判断をした場合については、この限りではない。[1]少なくとも次の1つ以上の症状を呈している。・説明困難*1な急性発疹(皮疹又は粘膜疹)*1:水痘、風疹、梅毒、伝染性軟属腫、アレルギー反応、その他の急性発疹及び皮膚病変を呈する疾患によるものとして説明が困難であることをいう。ただし、これらの疾患が検査により否定されていることは必須ではない。・発熱(38.5℃以上) ・頭痛 ・背中の痛み ・重度の脱力感 ・リンパ節腫脹・筋肉痛 ・倦怠感 ・咽頭痛 ・肛門直腸痛 ・その他の皮膚粘膜病変[2]次のいずれかに該当する。・発症21日以内にサル痘常在国やサル痘症例が報告されている国に滞在歴があった。・発症21日以内にサル痘常在国やサル痘症例が報告されている国に滞在歴がある者と接触があった。・発症21日以内にサル痘の患者又は[1]及び[2]を満たす者との接触があった。・発症21日以内に複数または不特定の者と性的接触があった。・臨床的にサル痘を疑うに足るとして主治医が判断をした。感染状況を患者に聞かれたら… 9月1日現在、WHO5)がまとめた報告によると、世界で5万496例が確定、301例が可能性ありと報告され、死亡は16例にのぼる。男性同性愛者を除いた感染経路を見ても半数以上が性的接触によるもので、医療従事者の感染もほとんどが地域社会で院内感染は少ないと記されている。 これらの報告を踏まえ、患者に感染力や感染経路について聞かれた場合の説明について「麻疹などの感染症のように必要以上に日常生活での感染を恐れる必要はない。法律上でも行動範囲の規制があるわけではなく、性交渉による接触感染を筆頭に考えられ得る感染経路(性感染症、飛沫感染、エアロゾル感染など)は多々あるものの、新型コロナウイルスでも実施している、密接を避ける、手洗いをする、換気を行うといった基本的な感染対策をしていれば、感染リスクは低い」と述べた。参考1)国際医療研究センター病院:天然痘(痘そう)ワクチンについて2)Saito Tomoya, et al. JAMA. 2009;301:1025-1033.3)国立国際医療研究センター 国際感染症センター:感染症対策支援サービス4)国立感染症研究所:令和4年度緊急企画サル痘研修会(令和4年7月29日開催)5)WHO:Emergency situation reports厚生労働省:サル痘厚生労働省事務連絡:サル痘に関する情報提供及び協力依頼について

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サル痘疑い患者にはN95マスク、手袋、ガウン、眼の防護/国立感染症研究所・国立国際医療研究センター

 国立感染症研究所と国立国際医療研究センター国際感染症センターは、連名で「サル痘患者とサル痘疑い例への感染予防策」を2022年6月15日に発表し、今回その内容を改正し、7月8日に同研究所のホームぺージに公開した。全世界でサル痘の感染拡大が懸念される中、診療にあたる医療者が注意すべきポイントについて本対策ではコンパクトに記している。サル痘の感染経路 サル痘は接触感染や飛沫感染を起こすが、日常生活の中で空気感染を起こすことは確認されていない。ただし、空気感染を起こすと考えられている麻しんや水痘との臨床的な鑑別が困難であるため、発熱と発疹がありそれらの感染症が否定できない間は、サル痘疑いの患者には空気予防策の実施が求められる。サル痘の診療時の態勢と装備 医療従事者がサル痘確定患者に接する場合(検体採取時含む)は、患者を換気良好な部屋に収容し、N95マスク、手袋、ガウン、眼の防護具を着用する(患者のリネン類を扱う者や清掃担当者も同様)。 患者が使用したリネン類は、診断が確定するまでなるべく触れずに管理し、診断が確定してから適切な処理を行う。サル痘が確定したら、リネン類は、前述の個人防護具を着用して自身の粘膜に触れないように運搬し、通常の洗剤を用い常温で洗濯を行う(WHOなどは温水を推奨)。手指衛生を頻回に行い、とくにリネン類を扱った後は必ず手指衛生(流水と石鹸による手洗い、または擦式アルコール性手指消毒薬での消毒)を行う。 患者が滞在する、または滞在した環境は通常に清掃を行い、その後消毒(エンベロープウイルスに対して強い消毒効果を発揮する薬剤[消毒用エタノールなど])を行う。廃棄物は感染性廃棄物として扱う。 サル痘疑い例やサル痘患者は、可能な限りサージカルマスクを着用し、水疱を含む皮膚病変はガーゼなどで被覆する。家庭内などでのサル痘の感染対策はどうする サル痘疑い例やサル痘患者は、自宅などの滞在場所では、以下に留意する。・患者は同居人と肌や顔を接しないようにし、リネン類の共有を避ける。・患者が使用したリネン類は、病変や体液からの感染性粒子が飛散する可能性があるため、不用意に振り回したりせず、静かにビニール袋などに入れて運搬し、洗濯機に入れる。洗濯した後は再利用可能である。・ベッド、トイレ、患者が接触した場所(家具や床など)は、使い捨て手袋を着用して清掃し、その後消毒薬で清拭する。清掃や消毒後は手指衛生を行う。・患者が使用した食器や調理器具は、石鹸や洗剤などで洗った後に再利用可能である。・常に十分な換気を行うよう配慮する。 すべての皮疹が痂皮となり、すべての痂皮が剥がれ落ちて無くなるまで(おおむね21日間程度)は上記の感染対策を継続する。

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サル痘に気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さん、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。さて、2年ぶりに連載が再開した「気を付けろッ!」ですが、いつの間にか私の所属も大阪大学に変わってしまいました(まあ変わったのもすでに1年前なんですが…)。冨樫義博先生(漫画家)が『HUNTER×HUNTER』(週刊少年ジャンプ)の連載再開に向けて動き出しているということで、私も頑張らなあかんな~と思い、筆を取った次第です。この連載とは別に『ちょっくら症例報告を書いてみよう』という連載も開始しましたので、こちらの連載の方はCareNet.comの担当者からは「最後に1つ書いて終わってください」と言われていますが、「いやいや、くつ王、連載やめへんで! CareNet.comの連載2本持ちをしている文豪(&遅筆)としてこれからも邁進してまいります」ということで今回は「サル痘」についてです。サル痘はアフリカ由来サル痘は、1970年にコンゴ民主共和国で初めてヒトでの感染例が報告されたサル痘ウイルスによる動物由来感染症です。サル痘という名前ですが、サルも感染することがあるというだけで、もともとの宿主はネズミの仲間のげっ歯類ではないかと考えられています。天然痘ウイルスやワクシニアウイルスと同じオルソポックスウイルスに属するサル痘ウイルスによる感染症であり、アフリカの異なる地域にそれぞれ別の系統が分布しています。コンゴ民主共和国などの中央アフリカのサル痘ウイルスよりも、ナイジェリアなどの西アフリカのサル痘ウイルスの方が病原性が低いことがわかっています。これまでに報告されているサル痘患者の大半はアフリカからのものですが、同様に近年、アフリカでサル痘患者が増えているとナイジェリアやコンゴ民主共和国などから報告されております。その理由として、天然痘の根絶後、種痘の接種歴のある人が減っていることでサル痘患者が増加してきているのではないかと懸念されています。アフリカ以外でも、まれに旅行や動物の輸入に関連したサル痘患者がアメリカ、イギリス、シンガポール、イスラエルなど海外でも散発的に報告されていました。ほかの感染症との鑑別とサル痘の主症状そんな中、2022年5月からイギリスを発端としてアフリカ以外の地域でサル痘の患者が急増しています。2022年6月2日現在、600人を超えるサル痘患者が30ヵ国から報告されています。これまでにわかっている確定例は大半が男性患者であり、20代~40代の比較的若い世代に多いことも特徴です。また、今回の感染者のうち、ゲイやバイセクシュアルなど男性とセックスをする男性、いわゆる男性同性間性的接触者(MSM)の間で発生したケースが多いことが指摘されています。表 サル痘、天然痘、水痘の特徴の違い画像を拡大する(文献5と6をもとに筆者が作成)サル痘は1980年に世界から根絶された「天然痘」に病態がとても良く似ており、症状だけでこれら2つの疾患を鑑別することは困難だと言われています。しかし、サル痘では人から人へ感染する頻度は天然痘よりも低く、また重症度も天然痘よりもかなり低いことが知られています。ヒトがサル痘ウイルスに感染すると約12日の潜伏期の後に発熱や発疹などの症状がみられます。アメリカにおける2003年のアウトブレイクの際にサル痘と診断された34人の患者では、以下の症状がみられました。●サル痘の主な症状発疹(97%)発熱(85%)悪寒(71%)リンパ節の腫脹(71%)頭痛(65%)筋肉痛(56%)この報告では発熱が発疹よりも2日ほど先行し、発熱は8日間、発疹は12日間続いたとのことです。通常、全身に発疹がみられますが、今回のアウトブレイクでは性器や肛門周辺にのみ発疹がみられた事例も報告されているようです。アフリカにおけるサル痘患者の致死率は約1〜10%とされていますが、先進国ではこれまでに死亡者は確認されていません。サル痘の皮疹は天然痘と非常に似ており、水疱がみられることが特徴です。同様に水疱がみられる水痘では、水疱の時期、痂皮になった時期などさまざまな時期の皮疹が混在しますが、サル痘や天然痘では全身の皮疹が均一に進行していくのが特徴です。天然痘と比べると、サル痘では首の後ろなどのリンパ節が腫れることが多いと言われています。診断は水疱内容物や痂皮などを検体として用いたPCR検査を行うことになります。サル痘が疑われた場合は、最寄りの保健所を経由して国立感染症研究所で検査が実施されます。サル痘の治療は治療は原則として対症療法となります。海外ではシドフォビル、Tecovirimat、Brincidofovirなど天然痘に対する治療薬が承認され、実際に投与も行われている国もありますが、わが国ではこれらの治療薬は現時点では未承認です。感染経路は、接触感染(サル痘ウイルスを持つ動物に噛まれる、引っかかれる、血液・体液・皮膚病変に接触する、サル痘に感染した人の体液・発疹部位)と飛沫感染(サル痘に感染した人の飛沫を浴びる)の2つと考えられています。今回のアウトブレイクでは、ゲイやバイセクシュアルなど男性とセックスをする男性(MSM)の間で発生したケースが多いことから、性交渉の際の接触が感染の原因になっているのではないかと疑われています。種痘(天然痘ワクチン)はサル痘にも有効です。コンゴ民主共和国でのサル痘の調査では、天然痘ワクチンを接種していた人は、していなかった人よりもサル痘に感染するリスクが5.2倍低かったと報告されています。しかし、1976年以降日本では種痘は行われていませんので、昭和50年以降に生まれた方は接種していません。院内感染対策については、サル痘患者における科学的研究はほとんどなく、そのほとんどがアフリカで実施されたものです。サル痘ウイルスの人から人への感染は、天然痘と同じメカニズム、すなわち飛沫または接触によって起こると考えられていますので、天然痘と同様に考え、標準予防策、接触予防策、飛沫予防策を行うことになります。なお、アメリカの疾病対策予防センター(CDC)は、サル痘ウイルスが空気感染する理論的なリスクがあるということで、可能な限り陰圧個室隔離の上で空気感染予防策を適用することを推奨しています。1)Rimoin AW, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107:16262-16267.2)Traeger MW, et al. Lancet Infect Dis. 2022;S1473-3099.3)Sklenovská N,et al. Front Public Health. 2018;6:241.4)Huhn GD, et al. Clin Infect Dis. 2005;41:1742-1751.5)McCollum AM,et al. Clin Infect Dis. 2014;58:260-267.6)Frey SE, et al. N Engl J Med. 2004;350:324-327.

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2種のIL-17を直接阻害する乾癬治療薬「ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター」【下平博士のDIノート】第99回

2種のIL-17を直接阻害する乾癬治療薬「ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター」提供:ユーシービージャパン(2022年4月現在)今回は、ヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体製剤「ビメキズマブ(遺伝子組換え)(商品名:ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター、製造販売元:ユーシービージャパン)」を紹介します。本剤は、乾癬の症状の原因となる炎症性サイトカインIL-17AとIL-17Fを選択的かつ直接的に阻害することで、強力な炎症抑制効果が期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2022年1月20日に承認され、同年4月20日から発売されています。なお、次のいずれかを満たす患者に投与されます。光線療法を含む既存の全身療法(生物製剤を除く)で十分な効果が得られず、皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者。難治性の皮疹または膿疱を有する患者。<用法・用量>通常、成人にはビメキズマブ(遺伝子組換え)として、1回320mgを初回から16週までは4週間隔で皮下注射し、以降は8週間隔で皮下注射します。なお、患者の状態に応じて16週以降も4週間隔で皮下注射可能です。<安全性>臨床試験で報告された主な副作用は、口腔カンジダ症(13.2%)、鼻咽頭炎(5.1%)、毛包炎(1.7%)、上気道感染(1.5%)、中咽頭カンジダ症(1.2%)、咽頭炎・結膜炎(1.1%)などでした。また、重大な副作用として、重篤な感染症、好中球数減少(各0.5%)、炎症性腸疾患(0.1%未満)、重篤な過敏症反応(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の症状の原因となる炎症性物質の働きを抑えることで皮膚の炎症などの症状を改善します。2.薬の使用により感染症にかかりやすくなる場合があるので、発熱、寒気、体がだるいなどの症状が現れた場合には、医師にご連絡ください。3.この薬を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種はできないので、接種の必要がある場合には医師に相談してください。4.口腔内や舌の痛み、白い苔のようなものが付着する、味覚がおかしく感じるなどの症状が現れた場合には、医師にお申し出ください。5.感染症を防ぐため、日頃からうがいや手洗いを行い、規則正しい生活を心掛けてください。また、衣服は肌がこすれにくくゆったりとしたものを選びましょう。高温や長時間の入浴によりかゆみが増すことがあるので、温度はぬるめにして長い入浴はできるだけ避けましょう。<Shimo's eyes>乾癬の治療として、副腎皮質ステロイドあるいはビタミンD3誘導体の外用療法、光線療法、または内服のシクロスポリン、エトレチナートなどによる全身療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在発売され乾癬に適応を持つ生物学的製剤は、本剤と同様にIL-17Aの作用を阻害するセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)、イキセキズマブ(同:トルツ)およびブロダルマブ(ルミセフ)、IL-23阻害薬のグセルクマブ(トレムフィア)、リサンキズマブ(スキリージ)、ウステキヌマブ(ステラーラ)、チルドラキズマブ(イルミア)、TNF阻害薬のアダリムマブ(ヒュミラ)、インフリキシマブ(レミケード)およびセルトリズマブ ペゴル(シムジア)などがあります。本剤の特徴は、IL-17Aに加えてIL-17Fにも結合することです。乾癬の病態において、IL-17AとIL-17Fはそれぞれ独立して炎症を増幅すると考えられているため、両方を直接阻害することで、強力な炎症抑制効果が期待できます。また、16週以降の投与間隔は8週間隔、患者さんの状態に応じて16週以降も4週間隔を選択することができます。安全性に関しては、ほかの生物学的製剤と同様に、結核の既往歴や感染症に注意する必要があります。投与に際しての安全上の留意点については、日本皮膚科学会「乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2018年版)」「ビメキズマブ使用上の注意」等で参照できると思います。本剤には2種類の剤形(シリンジ、オートインジェクター)が存在しますが、2022年6月時点においては医療機関で投与が行われます。薬局では感染症や口腔カンジダ症の兆候がないか聞き取り、必要に応じて生活上のアドバイスを伝えるなど、治療中の患者さんをフォローしましょう。参考1)PMDA 添付文書 ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/ビンゼレックス皮下注160mgオートインジェクター2)UCB Japan 医療関係者向けサイト

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サル痘とは?

サル痘とは?患者さんからの質問に答える出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘とは? サル痘は、サル痘ウイルス感染による急性発疹性疾患である。 感染症法では4類感染症に位置付けられている。 主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、自然宿主はアフリカに生息するげっ歯類が疑われているが、現時点では不明である。稀に流行地外でも、流行地からの渡航者等に発生した事例がある。 症状は発熱と発疹を主体とし、多くは2~4週間で自然に回復するが、小児等で重症化、死亡した症例の報告もある。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘ウイルスの感染経路は? 動物からヒトへの感染経路は、感染動物に咬まれること、あるいは感染動物の血液・体液・皮膚病変(発疹部位)との接触による感染が確認されている。 ヒトからヒトへの感染は稀であるが、濃厚接触者の感染や、リネン類を介した医療従事者の感染の報告があり、患者の飛沫・体液・皮膚病変(発疹部位)を介した飛沫感染や接触感染があると考えられている。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘の流行地は? サル痘は1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)で初めて報告されて以降、アフリカ中央部から西部にかけて主に発生してきた。 日本国内では感染症発生動向調査において、集計の開始された2003年以降、輸入例を含めサル痘患者の報告はない。 2022年5月、海外渡航歴のないサル痘患者が英国より報告されまた、欧州、米国でも患者の報告が相次いでおり、調査が進められている。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘の症状・致命率は? サル痘の潜伏期間は5~21日(通常7~14日)とされる。 潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などが1~5日続き、その後発疹が出現する。 発疹は、典型的には顔面から始まり、体幹部へと広がる。 発症から2~4週間で治癒する。 致命率は0~11%と報告され、とくに小児において高い傾向にある。ただし、先進国では死亡例は報告されていない。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘の治療方法は? 対症療法が行われる。 一部の抗ウイルス薬について、in vitroおよび動物実験での活性が証明されており、サル痘の治療に利用できる可能性がある。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.家庭・市中での感染対策は? 発熱、皮疹がありサル痘が疑われる場合、マスク着用を行い、咳エチケットを守り、手指衛生を行う。 患者が使用したリネン類や衣類は、手袋などを着用して直接的な接触を避け、密閉できる袋に入れて洗濯などを行い、その後手洗いを行う。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.病院での感染対策は? 確定患者および疑い患者に対しては飛沫予防策、接触予防策を取る必要がある。 サル痘の主な感染経路は接触感染や飛沫感染であるが、水痘、麻疹等の空気感染を起こす感染症が鑑別診断に入ること、サル痘に関する知見は限定的であること、他の入院中の免疫不全者における重症化リスク等を考慮し、現時点では、医療機関内では空気予防策を実施することが推奨される。 診療行為に伴うエアロゾル感染の可能性が否定できないため、N95マスクなど空気予防策を取る事を検討する。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘のワクチンは? 天然痘のワクチンである痘そうワクチンがサル痘予防にも有効であるが、日本では1976年以降、痘そうワクチンの接種は行われていない。 サル痘ウイルス曝露後4日以内に痘そうワクチンを接種すると感染予防効果があり、曝露後4~14日で接種した場合は重症化予防効果があるとされている。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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アトピー性皮膚炎を全身治療する経口JAK阻害薬「サイバインコ錠50mg/100mg/200mg」【下平博士のDIノート】第89回

アトピー性皮膚炎を全身治療する経口JAK阻害薬「サイバインコ錠50mg/100mg/200mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「アブロシチニブ(商品名:サイバインコ錠50mg/100mg/200mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、全身療法が可能な経口剤であり、既存治療で効果不十分な中等症~重症のアトピー性皮膚炎の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎(AD)の適応で、2021年9月27日に承認され、同年12月13日に発売されました。なお、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬による適切な治療を一定期間施行しても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に使用します。<用法・用量>通常、成人および12歳以上の小児には、アブロシチニブとして100mgを1日1回経口投与します。患者の状態に応じて200mgを1日1回投与することもできます。なお、中等度の腎機能障害(30≦eGFR<60)では50mgまたは100mgを1日1回投与し、重度の腎機能障害(eGFR<30)では50mgを1日1回経口投与します。本剤投与時も保湿外用薬は継続使用し、病変部位の状態に応じて抗炎症外用薬を併用します。なお、投与開始から12週までに治療反応が得られない場合は中止を考慮します。<安全性>AD患者を対象に本剤を投与した臨床試験の併合解析において、発現頻度2%以上の臨床検査値異常を含む有害事象が確認されたのは3,128例中2,294例でした。主な副作用は、上咽頭炎、悪心、アトピー性皮膚炎、上気道感染、ざ瘡、筋骨格系および結合組織障害などでした。なお、重大な副作用として感染症(単純ヘルペス[3.2%]、帯状疱疹[1.6%]、肺炎[0.2%])、静脈血栓塞栓症(肺塞栓症[0.1%未満]、深部静脈血栓症[0.1%未満])、血小板減少(1.4%)、ヘモグロビン減少(ヘモグロビン減少[0.9%]、貧血[0.6%])、リンパ球減少(0.7%)、好中球減少症(0.4%)、間質性肺炎(0.1%)、肝機能障害、消化管穿孔(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、皮膚バリア機能を低下させたり、アレルギー炎症を悪化させたりするJAKという酵素の産生を抑えることで、アトピー性皮膚炎の症状を改善します。2.本剤には免疫を抑制させる作用があるため、発熱や倦怠感、皮膚の感染症、咳が続く、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの感染症の症状に注意し、気になる症状が現れた場合は、すみやかにご相談ください。3.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合は主治医に相談してください。4.(女性に対して)この薬を服用中、および服用中止後一定期間は適切な避妊をしてください。5.これまで使用していた保湿薬は続けて使用してください。<Shimo's eyes>近年、ADの新しい治療薬が次々と発売されており、難治例における治療が大きく変化しつつあります。本剤と同じ経口JAK阻害薬のほかにも、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体製剤や外用JAK阻害薬などがすでに発売されています。本剤は、ADの適応を得た経口JAK阻害薬として、バリシチニブ(商品名:オルミエント錠)、ウパダシチニブ水和物(同:リンヴォック錠)に続く3剤目となります。また、12歳以上のアトピー性皮膚炎患者に使用できる製剤としてはウパダシチニブに続いて2剤目となります。相互作用については、フルコナゾール、フルボキサミンなどの強力なCYP2C19阻害薬、あるいはリファンピシンのような強力なCYP2C19および CYP2C9誘導薬との併用に注意が必要です。これらの薬剤と併用する場合、可能な限りこれらの薬剤をほかの類薬に変更する、または休薬するなどの対応を考慮します。経口JAK阻害薬は、肺炎、敗血症、ウイルス感染などによる重篤な感染症や結核の顕在化および悪化への注意が警告に記載されています。生ワクチンの接種は控え、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化にも注意する必要があります。調剤時の注意に関しては、抗うつ薬/慢性疼痛治療薬デュロキセチン(商品名:サインバルタカプセル)と販売名が類似していることから、取り違え防止案内が発出されています。薬剤の登録名や調剤棚の表示などを工夫して、取り違えを防ぎましょう。本剤は、米国においてブレークスルー・セラピー(画期的治療薬)の指定を受け、優先審査品目に指定されています。参考1)PMDA 添付文書 サイバインコ錠50mg/サイバインコ錠100mg/サイバインコ錠200mg

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第69回 コロナワクチン接種者の74%がブレークスルー感染!一体どんな状況だった?

現在、世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の変異株であるデルタ株。従来の新型コロナウイルスの基本再生産数が1.4~3.5と言われるなか、米国疾患予防管理センター(CDC)がデルタ株に関しては水痘と同程度の5~9.5との内部資料を作成していたことが明らかになった。日本でも東京都をはじめとする首都圏を中心に過去最高を更新する感染者数の報告が続いているが、国立感染症研究所によると7月27日時点で新型コロナ陽性検体に占めるデルタ株の割合は関東地方で75%を占めると推定されている。現在、アメリカでもデルタ株による感染は急増中と伝わってきているが、そんな最中、ぎょっとする以下のようなニュースを目にした。多くの皆さんも目にしていると思われる。「米東部クラスター、ワクチン接種者が74% 当局分析 「重症化防ぐ」接種は推奨」(日本経済新聞)まず、記事から読める事実関係を箇条書きする。マサチューセッツ州バーンスタブル郡でクラスターが発生同郡では7月初旬、数千人の観光客が訪れた大規模イベントを開催報告された感染者は469人感染者のうち74%(346人)がワクチン接種を終えたブレークスルー感染ブレークスルー感染者346人のうち79%(274人)はせき、頭痛、のどの痛み、筋肉痛、熱といった通常のコロナ感染と同じ症状27日時点で死者はいないブレークスルー感染者346人の接種ワクチンはファイザー製が46%、モデルナ製が38%、J&J製が16%デルタ型に感染したワクチン接種者からは、未接種者と同等のウイルス量これらから、CDCは「ワクチン接種完了者も屋内でマスクを着用するよう推奨」をしたという。正直、私も一瞬は見出しにあった「74%」という数字の大きさにぎょっとした。そしてSNS上ではワクチン忌避者を中心に「それみたことか」とばかりにこの記事の引用が目についた。しかし、どうにもすっきりしない。そこで実際、CDCのホームページを訪れたら詳細な報告が掲載されていた。新たに分かった情報を以下に箇条書きで追記する。イベント開催は7月3~17日感染者133人から採取した検体の遺伝子解析ではデルタ株関連が89%入院者5人のうち4人はワクチン接種完了者ワクチン接種完了者の入院4人は20~70歳、うち2人は基礎疾患あり死亡例なしワクチン接種完了者127人、ワクチン未接種者・部分接種者・ワクチン接種状況不明者84人の各リアルタイムPCR(RT-PCR法)の Ct値(中央値)は22.77、21.54でほぼ同様感染者はバー、レストラン、ゲストハウス、レンタルホームなどで行われる屋内外の密集したイベントに参加症例の多くは男性(85%)で年齢中央値は40歳感染者の半数近い199人(42%)がバーンスタブル郡の町に居住ブレークスルー感染者のうち87%は男性で、年齢中央値は42歳ブレークスルー感染者346人の接種ワクチンはファイザー製が159人、モデルナ製が131人、J&J製が56人ブレークスルー感染者でのワクチン接種完了14日後以降から発症するまでの期間の中央値は86日(範囲:6~178日)ただ、そこはやはりCDCと言うべきか、この報告にはリミテーションが4つ記述されていた。 簡単に要約して記述すると(1)集団レベルでのワクチン接種率が上昇すればブレークスルー感染が新型コロナ感染者のより大きな割合を占めるようになる、(2)検出バイアスのために無症候性のブレークスルー感染が過小評価されている可能性がある、(3)成人男性を対象としたイベントで感染者の属性は一般的な市中感染の属性を反映していない、(4)RT-PCR法で得られたCt値はサンプル中に存在するウイルス量との粗い相関関係を示す可能性があり、ウイルス量以外の要因にも影響される可能性がある、というものだ。まず、私は(1)の要素は見逃せないと考える。今回、クラスターでの全感染者報告数の約4分の3(346人)がブレークスルー感染者という数字だけを見て驚いたのは私だけではないと思う。しかし、確かにワクチン接種が進むほど見かけ上のブレークスルー感染者数の絶対値が大きくなるのは確かだ。そこでこのブレークスルー感染がどの程度の頻度で起きるかだが、最近、イスラエルから報告された日本でのコミナティ筋注、すなわちファイザー製のワクチン接種完了14日後以降、PCR検査で追跡が可能だった医療従事者1,497例での研究からは、ブレークスルー感染(無症候を含む)発生率は2.6%と分かっている。もっともこの2.6%は、一般人よりも感染対策がソフィストケートされている医療従事者での数字あり、しかもアルファ株流行時のもの、さらにファイザー製に限定した結果という点は注意する必要がある。それでも仮としてこの確率を使うと、ワクチン接種完了者が100人ならばブレークスルー感染者は2~3人発生することになるが、1万人ならば260人。つまり母集団の規模によって評価は変わる。前述のように今回のマサチューセッツ州のクラスターではファイザー製ワクチン接種者でのブレークスルー感染者は159人で、ブレークスルー感染率2.6%を援用すれば、母集団のワクチン接種完了者が6,115人以上ならば何も問題はない数字である。では今回のクラスター事案は母集団がどれくらいになるかだが、前述のように全米から観光客だけで数千人が集まったことが明らかになっている。開催地のマサチューセッツ州バーンスタブル郡の人口は約21万6,000人だが、調べていくうちにこのイベントの開催地は人口約3,000人のプロビンスタウンと判明した。この町に全米から数千人が押し寄せたことになるわけで、ほぼ町全体を巻き込んだイベントだろうと考えられた。そこでまず数千人を5,000人と仮定し、ワクチン接種完了率をマサチューセッツ州の約70%、全米の約50%という数字を使って計算すると、ワクチン接種完了者はプロビンスタウン住民で2,100人、参加者で2,500人、合計4,600人となる。この数字から逆に今回のブレークスルー感染率を逆算すれば約10%となる。やや高めにも思えるが、一般人では医療従事者ほど日常的な感染対策が徹底されていない、基本再生産数から見るデルタ株の感染力が従来株の3倍弱、アルファ株との比較でデルタ株の感染力が約1.6倍と言われていること、J&J製はファイザー製やモデルナ製と比べ、有効率が低いことなどを考慮すればあり得ない数字ではない。もっともブレークスルー感染率が仮に10%だったとしても、その他大勢はワクチンによって守られていることになるし、入院以上を重症と考えた場合、今回のブレークスルー感染者での重症化率は1.2%という計算になり、一般的な新型コロナの重症化率の20%からはかなり低く、重症化予防効果は十分にある。ワクチン接種のメリットはまだまだ高いと言えるだろう。そんなこんなを考えながら、そもそもこのイベントとは何なのだという疑問が浮かんできた。答えはインターネット上の検索で容易に判明した。すでに前述した発生地の地名を見て気づいていた人もいるかもしれない。私は検索でようやく知ったのだが、プロビンスタウンは世界的にも有名なゲイ・タウンで同性婚も認められており、感染者多発の原因になったイベント自体がゲイ向けのもの。全米から駆け付ける参加者も例年は1万人超で、前述の数千人=5,000人という設定も過少かもしれない。過去の同様のイベント写真なども見つけたが、肩が触れ合うほど密集した場所で連日ダンスなどをして楽しむなど、誤解を恐れずに言えば三密・濃厚接触前提。ワクチン接種完了者全員が同一のブレークスルー感染率ならば、当然三密状態にある人はそうでない人に比べ、感染リスクは高まる。もっともCDCがリミテーションで指摘しているように無症候感染者が十分にカウントされていないため、そこまで補足すればさらにブレークスルー感染率は上昇するだろう。だが、いずれにせよこれまで指摘した諸条件から考えれば今回のクラスター発生そのものは特段不思議なものではないし、ワクチンの信頼性を低下させるようなものではないと考えられるだろう。

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第69回 「骨太」で気になった2つのこと(後編) 制度化4年目にして注目集める地域医療連携推進法人の可能性

首都圏に緊急事態宣言再発令も手詰まり感、ロックダウン法制化も現実味こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。オリンピックの競技が佳境に入る中、新型コロナ感染症の新規感染者数もうなぎ登りになって来ました。首都圏の病床の逼迫具合も深刻さを増しており、菅 義偉首相が繰り返し国民に約束してきた「安全、安心」のオリンピック開催は既に破綻状態と言えます(オリンピック関係者の陽性者も増えています)。7月28日、東京都の新規感染者数が初めて3,000人を超え、3,177人と発表された日、テレビ朝日系列の報道ステーションは興味深い指摘をしていました。約1ヵ月前に厚生労働省が発表したシミュレーションでは、緊急事態宣言を出した場合、東京都の7月の新規感染者数は1,000人程度のピークで留まり、その後は減少していく、という予測だったそうです。一方、緊急事態宣言を出さずに人流も減らなかった場合は、28日の段階で3,000人規模になり、その後も上昇する、という予測でした。つまり、現在の東京の感染状況は、「緊急事態宣言を出さなかった場合の予測」とほぼ同じになっているのです。それにも関わらず、8月2日から埼玉、千葉、神奈川の各県と大阪府に再び緊急事態宣言が発令されました。もはや感染拡大を抑える効果がほとんどない緊急事態宣言は、国が国民に感染拡大の責任の一部を押し付けるためのエクスキューズのようにも見えます。政府が首都圏での緊急事態宣言発令を決定する前日の7月29日には、日本医師会、日本病院会など9つの医療関係団体が、緊急事態宣言の対象を全国にすることも検討するよう、政府に求める緊急声明を発表しています。年初から散々、コロナ対応病床不足や地域での連携不足を指摘され、その反省のもと医療体制を整えてきたはずなのに、この慌てぶりは何なのでしょう。政府も日医をはじめとする医療関係団体も、ワクチン接種に過大な期待をかける一方で、デルタ株の恐ろしさ(7月末に明らかになった疾病対策センターの内部資料では「デルタ株はより重篤な症状を引き起こし、水痘と同じくらい容易に蔓延するとみられる」とされています)を甘く見ていたのではないでしょうか。7月30日の政府の基本的対処方針分科会では、将来的にはロックダウン(都市封鎖)を可能とする法整備の検討を求める声も出たようです。菅首相はこの時点では否定的な考えだったとのことですが、このまま感染拡大が収まらなければ、日本でもロックダウンの法制化があるかもしれません。8月2日に開かれた関係閣僚会議では、重症患者や重症化リスクの高い人には、必要な病床を確保するとともに、それ以外の人は自宅療養を基本とし、症状が悪化すれば、すぐに入院できる体制を整備する方針が示されました。自宅などを医師が往診した場合、診療報酬が950点増額されるとのことですが、これで新たに往診を始めよう、件数を増やそうという医療機関がそれほど出てくるとは思えません(往診に取り組んでいるところはもうやっているでしょう)。むしろ、コロナ患者の往診や訪問診療に慣れておらず感染対策も不十分な医師の新規参入は、逆に地域で感染を拡大させる危険性すらあります。「かかりつけ医」と「地域医療連携推進法人」をフィーチャーさて、前回に続き、政府が臨時閣議で決定した「経済財政運営と改革の基本方針2021」(「骨太の方針2021」)について、気になったことを書いていきます。「骨太の方針2021」では、感染症拡大の緊急時の対応を、より強力な体制と司令塔の下で推進する考えが示されました。中でも医療提供体制については、感染症に対応するため、医療定休体制の「平時」と「緊急時」の体制を迅速・柔軟に行うべき、としています。そのための具体的方策としては「かかりつけ医」と「地域医療連携推進法人」がフィーチャーされています。前回は日本医師会が頑なに制度化を反対する「かかりつけ医」について書きました。今回はもう一つの要となりそうな制度、地域医療連携推進法人について考えてみたいと思います。連携推進法人制度を活用し、病院の連携・機能強化と集約化進める「骨太の方針2021」では、地域医療連携推進法人について「第3章 感染症で顕在化した課題等を克服する経済・財政一体改革」の中で、「今般の感染症対応の検証や救急医療・高度医療の確保の観点も踏まえつつ、地域医療連携推進法人制度の活用等による病院の連携強化や機能強化・集約化の促進などを通じた将来の医療需要に沿った病床機能の分化・連携などにより地域医療構想を推進する」と明記されました。地域医療連携推進法人制度がスタートして4年、当初は「単なる医療機関の統廃合の促進策」「経済的なメリットがほとんどなく手を挙げるところは少ないのでは」などと医療関係者の多くから揶揄され、認定される数も全国で年数法人程度と超スローペースでした。しかしここに来て、コロナ禍の中、地域医療連携推進法人に参加している病院・施設間で、コロナ患者の重症度による患者振り分けを行っているところも出てきており、より有機的な医療連携のモデルとして改めて着目されています。コロナ禍にあっても設立を検討する医療法人や自治体が増えていると聞きます。制度ができる前から、各地で地域医療連携推進法人の設立をサポートしてきた知人の医療コンサルタントは、閣議決定直後、「雌伏4年、やっと連携法人の時代がやって来る!」とわざわざ連絡してきたくらいでした。危機感を持つ医療法人同士が連携と効率化を自発的に進める仕組みでは、地域医療連携推進法人とはいったいどんな制度なのでしょうか。簡単におさらいしておきましょう。この制度は、「医療機関相互の機能の分担および業務の連携を推進し、地域医療構想を達成するための一つの選択肢」として、2015年の医療法改正で創設が決まり、2017年4月から制度がスタートしました。「競争よりも協調を進め、地域において質が高く効率的な医療提供体制を確保」するため、それまで個々の経営理念、方針に基づき運営されてきた複数の病院などを一つの方向性に導き、より良い機能分担や連携、経営効率化を進めるための仕組みが制度に盛り込まれています。元々は「ホールディングカンパニー型」を提案もっとも、国は当初、違った思惑と目的を持って制度化を検討していました。今から8年前の2013年8月、「社会保障制度改革国民会議報告書」は、「地域における医療・介護サービスのネットワーク化を図るためには、当事者間の競争よりも協調が必要であり、その際、医療法人等が容易に再編・統合できるよう制度の見直しを行うことが重要である」とし、制度改革の一例としてホールディングカンパニー型を提案しました。そもそも医療法人には、合併制度はあるもののハードルが高く、一方、公的病院は合併制度自体が存在しません。こうした状況を踏まえての提案でした。その後、2014年6月に閣議決定した「日本再興戦略(改訂2014)」で、「複数の医療法人や社会福祉法人等を、社員総会等を通じて統括し、一体的な経営を可能とする『非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)』を創設する」として新制度創設に向けて議論が本格的に動き出しました。しかし、紆余曲折を経て、最終的には現行の医療法の枠組みの中で「新型法人」として検討が進み、地域の医療機能の連携強化や資源効率化のための手段、という役割が全面に出された今の制度に落ち着いたわけです。「地域医療構想を達成するための一つの選択肢」という役割も付与されています。地域医療連携推進法人の3つの業務地域医療連携推進法人の主な業務内容は、1)統一的な医療連携推進方針の決定2)医療連携推進業務等の実施3)参加法人の統括の3つです。1)の「統一的な医療連携推進方針」とは、複数の医療機関で、診療内容や病床機能、在宅復帰への流れなどについて統一した方針を定めるということです。核となる2)の「医療連携推進業務」は、診療科・病床の再編、医療従事者らの共同研修、医師の配置換え、医薬品等の共同交渉・共同購入、医療機器の共同利用等、かなり幅広い業務が認められています。なお、診療科・病床の再編に関しては、参加法人内の病院間の病床の融通も可能です。ある病院で産科病床を閉めて病床が余った場合、他の病院のがんの病床の増床に振り向ける、といったこともできるわけです。経営者のセンスが試される「医療連携推進業務等の実施」つまり、参加した医療法人が有する病院間で、診療科や医療機能の棲み分けを行い、より効率的に地域医療を展開するためのツールが地域医療連携推進法人なのです。医師ばかりでなく、看護師や診療放射線技師などの医療スタッフを必要に応じて法人間で融通したり、地域フォーミュラリーを策定して薬剤を共同購入したりしている地域医療連携推進法人もあります。参加法人の了解を取り、「医療連携推進業務」をどこまで広げられるかが活用のポイントであり、経営者のリーダーシップやセンスが試される制度と言えるでしょう。北海道から鹿児島県まで28法人が認定2021年7月1日現在、北は北海道から南は鹿児島県まで28法人が地域医療連携推進法人として認定されています。厚生労働省のサイトには、その一覧が掲載されています。各都道府県の当該サイトでは、個々の地域医療連携推進法人の詳細を見ることもできます。大病院を核に中小病院や介護保険施設などが集まり、地域包括ケアシステムの構築を視野に入れるもの(山形県の日本海ヘルスケアネットなど)から、へき地において医師の確保に主眼を置くもの(広島県の備北メディカルネットワークなど)、県立病院と民間病院の統合をスムーズに進める前段階として認可を受けたもの(兵庫県のはりま姫路総合医療センター整備推進機構)まで、制度の活用の仕方はさまざまです。大学病院が主導して地域医療連携推進法人をつくる例もあります。愛知県の藤田医科大学が中心となってつくった尾三会や、大阪府の関西医科大学が主導してつくった北河内メディカルネットワークなどがそれに当たります。大学病院から退院する患者の受け皿整備が狙いとみられます。各地の地域医療連携推進法人に共通するのは、将来への危機感を持つ病院が生き残りをかけて集まっていることです。国や都道府県が進める地域医療構想では医療機能の棲み分けや、経営効率化が進まないことから、リーダーシップのある病院経営者が地域の医療機関を説得し、地域医療連携推進法人の設立を考えるケースもあるようです。日医は「株式会社の参入につながる」と懸念を表明地域医療連携推進法人は、医療法において5年ごとに制度見直しを行うことが決まっており、2022年度から厚労省は制度見直しに着手する予定です。政府の「成長戦略フォローアップ工程表」では、国は2021年度中に資金融通等の制度面・運用面の課題を把握し、2022年度から検討を踏まえ措置する、とされており、地域医療連携推進法人の取り組みに対しインセンティブが働くような制度に改善されるでしょう。そうなると、生き残りをかける地域の医療機関にとっては、なくてはならない制度になる可能性もあります。もっとも、「骨太」で脚光を浴び、制度も改善の方向で動き始めた一方で、日本医師会はこの制度の普及・発展にはあまり乗り気ではないようです。中川 俊男会長は6月23日の定例記者会見で「骨太の方針2021」に明記された事項に対する日医の見解を説明しましたが、地域医療連携推進法人については、国や都道府県主導M&Aの推進、更には病院経営への株式会社の参入につながることへの懸念を表明したとのことです。医療機関が自主的に連携を強化し、機能の役割分担をしようという動きをも牽制するとは、相変わらずの守旧派ぶりと言えるでしょう。そう言えば、この制度がスタートしたばかりの2017年、九州のある県の医療審議会に、乳がん専門病院と泌尿器科の専門病院同士が地域医療連携推進法人を設立しようと認定を申請したことがありました。しかし、結果は「認定見送り」でした。書類等は完全に揃っていたにもかかわらず「見送り」となった理由は、「地元の医師会への事前の挨拶がなかったなど、医師会への配慮不十分だったため」(乳がん専門病院理事長の話)とのことでした。前回のかかりつけ医の制度化だけでなく、地域医療連携推進法人にまで横槍を入れる日本医師会。未曾有の医療危機にあっても変革をことごとく嫌うその姿勢には、正直呆れるほかありません。

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皮膚病変からコロナ重症度もわかる?その具体的な症状とは

 新型コロナ患者での皮膚病変が報告されているが、具体的にはどのような症状なのだろうか。福田 知雄氏(埼玉医科大学総合医療センター皮膚科 教授)がメディアセミナーにおいて、「皮膚は健康のバロメーター ~意外と多いコロナの皮膚症状、爪からわかる健康状態~」と題し、皮膚病変が新型コロナ重症度判定にも有用な可能性を示唆した(主催:佐藤製薬)。蕁麻疹などの皮膚症状でコロナ重症度も判別できる 福田氏はまず、昨年3月にイタリアの皮膚科医が報告した論文1)を挙げ、「彼らは“新型コロナ(以下、COVID-19)病棟の多くの患者に皮膚症状が出ていた”ことに注目し調査を実施した。その結果、20.4%(18/88例)に皮膚症状(紅斑性皮疹、広範囲の蕁麻疹、水痘様皮疹など)が認められたことを報告した」と説明。しかし、この段階ではCOVID-19と重症度の相関関係は認められておらず、その後9月に発表されたドイツの研究者の論文2)で、COVID-19のリスク層別化などに役立つ可能性が示唆された。これを踏まえ同氏は、「ある症状はより軽度のCOVID-19の経過を示す臨床的徴候であり、別の症状はより重度の経過を示す赤旗であることが示された。つまり、どんな皮膚症状から何がわかるのか、皮膚症状の理解を深めておくことがCOVID-19の指標確認にもなる」とコメントした。 そこで、同氏はCOVID-19患者での注意すべき皮膚症状3)のパターンとして、斑状丘疹状皮疹、蕁麻疹、水痘様皮疹、点状出血、しもやけ、そして網状皮斑(リベド)を提示。なかでも“網状皮斑パターン”が見られる患者には新型コロナ重症例が多いことから、「皮膚病変からコロナを疑ったら血液検査にて凝固亢進などのチェックも必要」と注意を促した。 以下に新型コロナ重症度別の主な皮膚病変を示す。(軽症例)・凍傷様の浮腫および紅斑状の皮疹(Chilblain-like eruptions on fingers and toes) 若年層の軽症例に観察、平均して2週間後に消失。 手指より足趾/足裏に出現。・点状出血/紫斑を伴う皮疹(Rash with petechiae/purpuric rash) 鑑別診断には薬疹、他の細菌/ウイルス感染に伴う発疹など。・多形紅斑様皮疹(Erythema multiforme‐like rash) 軽症の経過をとる傾向がある。小児に多く見られる。 鑑別診断には単純ヘルペス感染症に伴う多形紅斑など。(重症例)・水痘様皮疹(Chickenpox-like rash) 中年患者の体幹に認められた。 イタリアの症例では、重症患者88例のうち1例で水痘様皮疹が観察された。・蕁麻疹様皮疹(Urticarial rash) 発熱を伴う蕁麻疹様皮疹は新型コロナと判断してよい。広範囲で見られるとCOVID-19が重症化する傾向。 蕁麻疹も重症ならCOVID-19も重症になる傾向。・斑状丘疹状皮疹(Maculopapular rash) 最も頻度が高い皮疹で、新型コロナの重篤な経過と関連。 小児ではまれ、成人では重篤な経過をたどる指標になる可能性がある。 鑑別診断には、はしか、EBウイルス感染症、薬疹、移植片対宿主病など・男性型脱毛症(Androgenetic alopecia) 男性ホルモンであるアンドロゲンは新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を促進するTMPRSS2プロテアーゼに関与するだけではなく、免疫抑制作用を持っている。男性型脱毛症の特徴的な症状である前頭部-側頭部および頭頂部の退行とCOVID-19による肺炎の発症に対し、関連性が示唆されている。 これらを総括し、「COVID-19の皮膚症状は、早期診断、陽性患者のトリアージおよびそのリスク層別化に役立つ可能性がある。凍傷様の肢端の皮疹、紫斑・多形紅斑様の皮疹は、無症状あるいは軽症の小児や若年成人の患者に認められる。対照的に、先端部の虚血性病変や斑状皮疹は、より重篤な経過をたどる成人患者に多く見られる。発熱を伴う蕁麻疹は、COVID-19が確認されていない場合の初期症状であるため、診断上の意義がある」とまとめた。 このほか、爪による健康状態の判別にも触れ、「健康な人の爪はきれいなピンク色で、艶があり、滑らかで押すとうっすら白くなる。爪は年齢、生活週間、基礎疾患など、爪に影響を与える因子は極めて多い」と患者の爪の健康状態の確認も重要であることを述べ、締めくくった。

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アトピー性皮膚炎に正しい理解を―患者1,000人への意識調査

 アトピー性皮膚炎は、罹患率だけでなく認知度も高い疾患でありながら、その疾患特性、患者に及ぼす影響、治療法などについての理解は十分ではない。 4月16日、アッヴィ合同会社は、『アトピー性皮膚炎による患者さんの生活や対人関係への影響~患者さん1,000人を対象にした疾病負荷 調査結果を発表~』と題したセミナーを開催した。 本セミナーでは、片岡 葉子氏(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 副院長兼主任部長 アトピー・アレルギーセンター長)と江藤 隆史氏(東京逓信病院皮膚科客員部長、あたご皮フ科副院長)が、アトピー性皮膚炎の正しい理解をテーマに講演を行った。単純なアレルギー反応? 薬は塗り続ける? 疾患への誤解 片岡氏は「成人アトピー性皮膚炎 疾患の理解・社会の理解」と題して講演を行った。同氏は、疾患に関するさまざまな誤解が、アトピー性皮膚炎を治りにくくする可能性があることを語り、病態、病気、患者の全体像についてポイントを解説した。1)病態:アトピー性皮膚炎は、単純なアレルゲン除去で治る疾患ではなく、患者の遺伝的因子に環境因子が刺激を与えて引き起こされる疾患である。遺伝的因子としては、皮膚のバリア機能障害や免疫学的素因などがあり、とくにTh2型リンパ球の増殖とそれに伴うIgE抗体産生の促進が、炎症の悪循環を引き起こすポイントとなる。2)病気:抗炎症外用薬の使用で、見た目には炎症が抑えられても、Th2型リンパ球は増殖した状態であることが多い。そのため、薬を早期に中止することで再び炎症が現れ、症状を繰り返す患者が多い。3)患者の全体像:成長とともに寛解する小児患者もいるが、全例が寛解するわけではない。また、セルフケアが適切に出来ていないために、寛解に至らない患者も多い。 アトピー性皮膚炎は増悪・軽快を繰り返す慢性の疾患だが、疾患の特性を正しく理解し、適切に治療することで症状のない状態を長く保つことが期待できる。片岡氏は「(適切な治療で症状を抑えることで)患者の疾病負荷を減らし、今まで理解されていなかった患者を救い出すことが可能になる」と語った。アトピー性皮膚炎の「疾病負荷」 日常生活へのさまざまな影響 アッヴィ合同会社が実施した『アトピー性皮膚炎が生活に与えている影響に関する意識調査』の結果について、片岡氏が紹介した。この結果から、疾病が患者の生活に大きな負荷をかけており、社会の正しい理解が求められることが明らかになった。・7割以上の患者が「症状が繰り返されること」に対して不安や悩みを抱えており、「治らないと諦めている」患者が約5割であった。・3割以上の患者が「アトピー性皮膚炎に由来する、日常生活での負担やストレス」について周囲の理解が十分ではないと感じると回答した。・患者の約10人に1人が「アトピー性皮膚炎が原因で学業や仕事を中断、断念せざるを得なかった経験」があると回答した。・5割以上の患者が「周囲から掛けられた言葉に傷ついた、または嫌な思いをした経験」があると回答した。その時期については「社会人時代」(53.5%)が最も多かった。・6割以上の患者が「アトピー性皮膚炎が原因で、恋愛・結婚・子供を持つことに対し不安・悩みを感じる、または感じたこと」があると回答した。ステロイドは怖い薬? 治療への誤解 江藤氏は「患者さんの苦しみや患者さんとの関わり方を体験談から学ぶ」と題して講演を行った。同氏は、自身が顧問を務めるNPO法人 日本アレルギー友の会に寄せられた患者の体験談を通して、眼合併症やカポジ水痘様発疹症などを解説した。 これらの合併症の背景には、誤った治療の選択、とくにステロイドに対する誤解があるという。「ステロイドはなるべく使わないほうがいい」「ステロイドは効かない」と考える患者は少なくない。治療を続けてもらうためには、患者会など、正しい知識を持ち、相談できる人が周囲にいることも重要となる。江藤氏は「患者さんにとっては適切な治療にたどり着くこと、周囲の人にとっては正しい疾患の知識を持つことが、引き続き課題である」と締めくくった。

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患者が訴えるこの「めまい」症状は危険なサインか!? 【Dr.山中の攻める!問診3step】第1回

第1回 患者が訴えるこの「めまい」症状は危険なサインか!?―Key Point―回転性めまい、前失神、平衡障害、めまい感の分類は重要でない患者の訴えは経過中に変化する「めまい」を訴える患者はとても多いです。起床後にトイレに行く途中、天井が回り出しびっくりして救急車をコールする人がいます。雲の上を歩いているような浮遊性めまいが続くと内科外来を訪れる人もいます。小脳梗塞などの重大な中枢性めまいは見逃したくないですね。椎骨脳底動脈領域の障害を示唆するめまい以外の症状や心血管系リスクファクターを考慮すると、鑑別診断をかなり絞り込むことができます。症状や神経所見から脳梗塞を強く疑う場合には、当日のMRI検査で異常がなくても経過観察入院で経過を確認する慎重な姿勢が大切です。この連載では、患者の訴える症状が危険性のある疾患を示唆するかどうかを一緒に考えていきます。シャーロックホームズのような鋭い推理ができればカッコいいですよね。◆今回おさえておくべき疾患はコチラ!【中枢性めまいを起こす疾患】椎骨脳底動脈領域の脳梗塞(小脳梗塞、脳幹梗塞)、片頭痛、中枢神経感染症、脱髄疾患(多発性硬化症)が鑑別診断となる片頭痛に伴うめまい(前庭性片頭痛)の頻度はかなり高い。めまいの持続は数分から数日。片頭痛の既往や家族歴、光過敏、スピンする運動が苦手である【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】中枢性めまいを見逃さないめまいを訴える患者の約10%は中枢性めまいである心血管系リスクを評価し、めまい以外の脳神経症状が出ていないかを確認する。しかしながら、椎骨脳底動脈系の脳梗塞を起こした患者の20%はめまい症状だけであるHINTS(Head Impulse test、Nystagmus、Test of Skew)で中枢性めまいか末梢性めまいかを確認する1)垂直性眼振、方向交代性眼振は中枢性めまいを示唆する歩くことがまったくできなければ中枢性めまいの可能性が高い【STEP3】中枢性めまいではなさそうなら、末梢性めまいの診察へ頭位変換(寝返り、臥床)でめまいが誘発され、持続時間が1分程度なら、良性発作性頭位めまい症(BPPV: benign paroxysmal positional vertigo)の可能性が高い。耳鳴と聴力低下はない。末梢性めまいで最多の原因Dix-Hallpike法で誘発し、Epley法で治療を行う(85%に有効)2)末梢性めまいの他の原因として前庭神経炎、内耳炎、メニエール病、Ramsay-Hunt症候群、薬剤性がある前庭神経炎ではウイルス感染が先行することが多い。めまいは数日続き、眼振は方向固定性かつ急速相は健常側へ向かう水平性である。耳鳴なし。難聴なし内耳炎は前庭神経炎と症状が似ている。聴力低下ありメニエール病の3徴は回転性めまい、耳鳴、聴力低下である。症状は発作的に何度か繰り返す。めまいの持続は数分~数時間。聴力検査は重要である。メニエール病を疑えば、専門的な治療が必要なので耳鼻科へ紹介するRamsey-Hunt症候群では水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)により顔面神経麻痺と耳介の発赤・水疱、めまい、難聴、耳痛を起こすめまいに伴う症状(嘔気嘔吐、不安神経症など)を改善するための治療薬(抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン系薬、制吐薬)は、めまいに対する代償作用を損なうので漫然と使ってはいけない <参考文献・資料>1)ステップ ビヨンド レジデント6. 羊土社. 2016. p.55.2)BPPV(良性発作性頭位めまい症)に対するエプリー法(YouTube)プライマリ・ケア 外来診療目利き術50. 南山堂. 2020. p.10-11.MKSAP18. General Internal Medicine. 2018.p.55-59.Kim J-S, et al. N Engl J Med. 2014;370:1138-1147.Kaski D, et al. BMJ. 2019;366:I5215.

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コロナ流行下で小児のライノウイルス感染リスクが2倍超

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行が1年以上続き、マスクや手洗いなどのコロナ感染予防はいまや一般常識レベルに浸透している。この対策はCOVID-19のみならず、あらゆる感染症予防に有用と考えられる。東京大学の河岡 義裕氏(医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野教授)は、共同研究グループと共にCOVID-19流行下の呼吸器感染症ウイルス検出状況を調査したところ、全年齢層においてインフルエンザをはじめとする代表的な呼吸器感染症ウイルスの検出率は低下していた一方、10歳未満の小児では、風邪を引き起こすライノウイルスの検出率が著しく上昇していたことを発見した。研究結果は、Influenza and Other Respiratory Viruses誌オンライン版2021年3月15日号に掲載された。ライノウイルス検出率はCOVID-19流行期に著しく上昇 本研究では、COVID-19流行前後における呼吸器感染症ウイルスの検出状況を比較するため、2018年1月~2020年9月の期間、横浜市で2,244例の呼吸器疾患患者(COVID-19患者を除く)から採取された呼吸器検体(鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、鼻汁、唾液、気管吸引液、喀痰)を解析し、代表的な呼吸器感染症ウイルス(インフルエンザウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルスA/B、エコーウイルス、エンテロウイルス、ヒトコロナウイルス229E/HKU1/NL63/OC43、ヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス1/2/3/4、パレコウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ボカウイルス、パルボウイルスB19、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス)の検出を行った。 COVID-19流行前後におけるインフルエンザウイルスやライノウイルスなど呼吸器感染症ウイルスの検出状況を比較した主な結果は以下のとおり。・2,244例の内訳は、男性1,197例(53.3%)、女性1,044例(46.5%)、性別不明3例(0.1%)。年齢分布は、10歳未満1,119例(49.9%)、10歳以上1,105例(49.2%)、不明20例(0.9%)。・全検体のうち、最も多く検出されたのはインフルエンザウイルス(592例)で、次いでライノウイルス(155例)だった。475例からは、その他の呼吸器感染症ウイルスが検出された。・インフルエンザウイルスやその他の呼吸器感染症ウイルスの検出率は、全年齢層でCOVID-19流行後に低下していた。対照的に、ライノウイルス検出率はCOVID-19流行期に著しく上昇し、例年の2倍以上だった。 本研究では、インフルエンザ症例数の増加期にはライノウイルス感染数が減少しており、インフルエンザウイルスがライノウイルスに何らかの干渉作用がある可能性が示唆された。著者らは、SARS-CoV-2出現後、感染対策が奏功し市中のインフルエンザ感染者が減少したことが、10歳未満の小児におけるライノウイルス感染増加と関連しているのではないかと指摘している。ライノウイルスは、コロナウイルスやインフルエンザウイルスと異なり、ノンエンベロープウイルスであるため、アルコール消毒よりも石鹸と水を使った手洗いが有効だという。

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流行性耳下腺炎(ムンプス)【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第3回

ワクチンで予防できる疾患(疾患について・疫学)ムンプスもしくは流行性耳下腺炎は、ワクチンで予防できる疾患Vaccine Preventable Diseaseの代表疾患である。1)ムンプスの概要感染経路:飛沫感染潜伏期:12~24日周囲に感染させうる期間:耳下腺腫脹の7日前から発症後9日頃まで感染力(R0:基本再生産数):11~14注)R0(基本再生産数):集団にいるすべての人間が感染症に罹る可能性をもった(感受性を有した)状態で、1人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表す。つまり、数が多い方が感染力は強いということになる。感染症法:5類感染症(小児科指定医療機関による定点観測、直ちに届出が必要)学校保健安全法:第2種感染症(耳下腺、顎下腺または舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで)2)ムンプスの臨床症状(表)ムンプスは、多彩な経過や合併症に特徴がある1)。ムンプスは主に唾液による飛沫によりヒト-ヒト感染を起こす。感染から発症までの潜伏期間は典型例で17~18日と非常に長いうえ、発症する6日前から唾液や尿中にウイルスが排泄され感染性がある。さらに、感染しても平均30%は不顕性感染で終わる。不顕性感染は低年齢者に多く,年齢があがるほど症状が現れやすく腫脹も長期化する傾向にある。ただし,無症状でも唾液中のウイルスには感染性がある。耳下腺の腫脹は最も有名かつ高頻度の症状で,発症者のうち90~95%に出現するとされる。しかし、前述の通り感染者全体では70%前後にすぎず、腫脹も両側とは限らない。ここで重要な点として,耳下腺や顎下腺の腫脹は他のウイルス感染症でも起こるため、発熱と耳下腺腫脹だけでムンプスとは確定診断できない。したがって「熱と耳下腺腫脹があった」だけではムンプス罹患といえず、ワクチン不要と判断すべきでない。耳下腺腫脹に続いて多い症状は、思春期以降の男性に起こる睾丸炎で、感染者の1/3に起こるほど多い。片側性の腫脹が多く、睾丸が萎縮し精子数も減少するが、完全な不妊に至ることはまれとされる。女性では感染者の5%に卵巣炎が起こるが,不妊との関連はいまだ証明されていない。このほか無菌性髄膜炎から脳炎、乳腺炎、膵炎といった症状も知られている。無症候の髄液細胞数増多は感染者の50%に認められるとの報告もある。このようにムンプスは潜伏期間が長く、無症候性感染が多いうえ、発症前からウイルスを排泄する。つまり、発症者や接触者を隔離しても伝搬は防げない。表 自然感染の症状とワクチンの合併症1)画像を拡大する3)ムンプスの疫学4~5年おきに大きな流行があり、年間報告数は4~17万例で推移している。ここ数年では、2016年に比較的大きな流行が確認されており、2020年の再流行が懸念されていた(図1)。合併症として問題になる難聴について日本耳鼻咽喉科学会が実施した調査によると2)、上記2年間の流行中に少なくとも335例がムンプス難聴と診断されていた。調査デザインの限界から考えると、症例はもっと多いことが推定される。図1 ムンプスウイルス診断名別分離・検出報告数の推移(2000年1月~2019年9月)画像を拡大するワクチン概要単味の生ワクチンであり、年齢を問わず0.5mLを皮下注する。正確には、ワクチンキットに付属している溶解液0.7mLをバイアル瓶に注入したうち0.5mLを吸い出して接種する。ワクチンで一般にみられるアレルギー反応、接種部位の腫脹、短時間の発熱、といった副反応のほかに特異的なものはない。弱毒化した病原性ウイルスそのものを接種する生ワクチンであり、妊娠中の女性には接種は禁忌である。また、接種後2ヵ月間は妊娠を避けるべきである。同様にステロイドを含む免疫抑制薬を投与中、もしくは免疫抑制状態にある患者も接種禁忌である。現時点では任意接種に位置付けられており、自治体などの補助がなければ接種費用は自己負担となる。なお、先進国の中で日本だけが定期接種化されていない(図2)。図2 世界のムンプスワクチンの接種状況画像を拡大する(From data reported to WHO by 193 WHO Member States as of February 2015より引用)国内では、鳥居株を用いたタケダと星野株を用いた第一三共の2製品が流通している。両者とも無菌性髄膜炎の発生頻度は同様(鳥居株が1/1,600、星野株が1/2,300)。国際的に広く流通しているJeryl-Lynn株は、国産品に比べて免疫獲得能がやや低い一方で無菌性髄膜炎の発症は少ない。接種スケジュール「1ヵ月以上の間隔で2回以上の接種」が原則となる。添付文書では生後24ヵ月~60ヵ月の間に接種することが望ましいとされているが、妊娠中などの禁忌がなければ成人でも接種可能である(図3)。画像を拡大するその他の注意事項は以下の通りである。他の生ワクチン接種:27日以上空ける(4週目の同じ曜日から接種可能)不活化ワクチン接種:6日以上空ける(翌週の同じ曜日から接種可能)輸血およびガンマグロブリン製剤の投与:投与3ヵ月以降に接種ガンマグロブリンを200mg/kg以上の大量投与:投与6ヵ月以降に接種ワクチン接種後14日以内にガンマグロブリン製剤投与:投与後3ヵ月以降に再接種ステロイドや免疫抑制剤:投与中止後6ヵ月以降に接種罹患歴については前述の通り、医療機関でムンプスウイルス感染を証明された場合のみ意義ありとして、臨床症状のみで罹患歴としないことが望ましい。ムンプス成分を3回以上接種しても医学的には問題はない。Jeryl-Lynn株ワクチンを採用している先進国によってはむしろ、10年程度で抗体価が低下することによる“Secondary vaccine failure”への対策として追加接種を検討している。また、ウイルス曝露の早期にワクチン接種することで発症を予防する曝露後緊急接種について、麻疹や水痘では有効性が確認されているが、ムンプスワクチンでは無効と考えられてきた。しかし、2017年に“The New England Journal of Medicine”で一定の効果が報告されるなど3)、近年ムンプスワクチンの接種戦略は世界的に見直しが検討されつつある。ただし、この研究で用いられたのはJeryl-Lynn株を含むMMRワクチンであり、日本製品とは素性が異なる。また、日本のムンプスワクチンには曝露後接種の適応はない。日常診療で役立つ接種ポイント(例.ワクチンの説明方法や、接種時の工夫)外来などでは、おおむね以下の点について説明することが望ましい。「いわゆる『おたふく風邪』を予防するワクチンです。1回接種の予防効果は75~80%で、確実な予防のために2回接種しましょう」「『おたふく風邪』で死亡することはまれですが、多様な合併症が起きます。特に難聴は、年間300人前後も発症している可能性があるうえ、もし発症すると回復不能です」「感染から発症まで2週間以上と長いことや、感染しても1/3は無症状のままウイルスを広げている、といった特性から発症者の隔離は意味がなく、確実な予防法はワクチンだけです」「接種間隔を伸ばすメリットはないので、幼稚園などの集団生活を始める前に2回接種を済ませましょう」「海外へ移住する方は、お子さんだけでなく大人も接種を検討しましょう。幼少時に耳下腺が腫れた、というだけではムンプスとは限りませんし、追加接種しても問題ありません」今後の課題・展望ワクチンギャップ解消の機運を受け、厚生労働省の厚生科学審議会は2012年に「広く接種を促進することが望ましい」と7つのワクチンを提示した4)。これら7つのうち、2020年現在いまだに定期接種化を果たしていないのはムンプスだけになった。これには、1989年のMMR統一株ワクチンによる無菌性髄膜炎が大きく影響している。それまで積極的だったワクチン行政を決定的に転回させ、日本にワクチンギャップが生まれる遠因ともなった渦中のムンプスワクチンが、その影響を最後まで受けているともいえる。しかし、そもそも自然感染に比べれば現行ワクチンでも無菌性髄膜炎の発症率は1/20以下であるし、さらに1歳前後で早期接種すると無菌性髄膜炎の発生率が減ることが明らかになってきた。そして、現在、無菌性髄膜炎の発生率は、MMR統一株ワクチン当時の1/10にまで減っている。ムンプスワクチン定期接種化のメリットは感覚的にも明らかだが、医療経済学的な試算でも有効性は示されており5)、学術団体からも繰り返し要望が出ている。しかしながら、無菌性髄膜炎が減ったことでワクチン接種の効果を自然感染と比較する調査のハードルは高くなっており、承認申請のために治験を通過する必要がある輸入ワクチンの導入やワクチン株の新規開発を一層難しくなっている。一方、諸外国では、Jeryl-Lynn株ワクチン2回接種後の感染が問題となっており、不活化ワクチンの新規開発や曝露後接種の検討なども始まっており、日本と世界の現状は乖離しつつある。2020年1月の厚生科学審議会の評価小委員会では、ムンプスワクチンについて審議が行われたが、明確な方針決定には至らなかった6)。 参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト1)おたふくかぜワクチンに関するファクトシート2)2015-2016年にかけて発症したムンプス難聴の大規模全国調査3)Cardemil CV, et al. N Engl J Med. 2017;377:947-956.4)予防接種制度の見直しについて(第二次提言)5)大日康史、他. ムンプスの疾病負担と定期接種化の費用対効果分析.厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)「水痘、流行性耳下腺炎、肺炎球菌による肺炎等の今後の感染症対策に必要な予防接種に関する研究(研究代表者:岡部信彦)」、平成15年度から平成17年度総合研究報告書.p144-154:2006.6)厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会)第37回講師紹介

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Dr.長門の5分間ワクチン学

第1回 ワクチンの基礎第2回 接種の実際第3回 被接種者の背景に応じた対応第4回 接種時期・接種間隔第5回 予防接種の法律・制度第6回 Hibと肺炎球菌第7回 麻疹・風疹・おたふく第8回 水痘・BCG・4種混合第9回 肝炎・日本脳炎第10回 インフルエンザ・ロタウイルス第11回 子宮頸がんワクチン・渡航ワクチン第12回 トラブルシューティング CareNeTV総合内科専門医試験番組でお馴染みの長門直先生が、自身の専門の1つである感染症について初講義。医療者が感じているワクチンにまつわる疑問を各テーマ5分で解決していきます。テーマは「ワクチンの基礎」をはじめとした総論5回と「麻疹・風疹・おたふく」など各論7回。全12回で完結のワクチン学を、CareNeTV初お目見えのホワイトボードアニメーションでテンポよくご覧いただけます。第1回 ワクチンの基礎医療者でも意外と知らなかったり、間違って覚えていることが多いのがワクチン接種。第1回は「ワクチンの基礎」として、まず最初に押さえておきたい、「ワクチンの種類」と「ワクチンを取り扱う上で覚えておきたいこと」をまとめました。ワクチンの種類の違いは?アジュバントの意味は?ワクチンの保存方法で気を付けたいことは?「ワクチン学」の講義時間はたったの5分。CareNeTV初お目見えのホワイトボードアニメーションでテンポよく解説していきます。第2回 接種の実際今回の「ワクチン学」のテーマは「ワクチン接種の実際」。医療者からよく質問に出る「ワクチンの接種方法」と「ワクチン接種後の対応」について確認していきます。ワクチン接種方法では、皮下注射と筋肉注射の具体的な方法を確認していきます。接種部位は?使用する針の太さは?長さは?角度は?そして、ワクチン接種後の対応については、意外と知られていないことや、間違って覚えてしまっていることを解決していきます。第3回 被接種者の背景に応じた対応被接種者が抱える背景によって、ワクチン接種の可否や気を付けておきたいことを確認していきます。今回「ワクチン学」で取り上げる被接種者の背景は8つ。(1)早産児・低出生体重児(2)妊婦・成人女性(3)鶏卵アレルギーがある人(4)発熱者(5)痙攣の既往歴のある人(6)慢性疾患のある小児(7)HIV感染症の人(8)輸血・γ-グロブリン投与中の人。それぞれに応じた対応をポイントに絞り、解説していきます!第4回 接種時期・接種間隔接種時期・接種間隔は予防接種ごとに決められています。今回は、原則と被接種者からよく聞かれる質問、そしてその対応を確認します。小児の場合、不活化ワクチンの第1期接種では、なぜ複数回接種する必要があるのか?成人や高齢者の場合は?生ワクチンで押さえておきたいポイント。被接種者からよく聞かれる質問は「感染症潜伏期間の予防接種は可能かどうか」など、3つをピックアップしました。第5回 予防接種の法律・制度法律・制度の観点から定期接種、任意接種を確認します。近年の法改正の流れ、それぞれの費用負担の違い、現在の対象疾病の種類。副反応に関する制度では、報告先と救済申請先を確認。また、医療者の中でも賛否が分かれるワクチンの同時接種についても言及します。第6回 Hibと肺炎球菌今回から各論に入ります。まずはHibワクチンと肺炎球菌ワクチン。よくある質問とそれぞれの特徴を見ていきます。よくある質問は「Hibワクチンや肺炎球菌ワクチンは中耳炎の予防になるの?」「肺炎球菌ワクチンは2つあるけどどう違うの?」。それぞれの特徴では、Hibワクチンは接種スケジュールのパターン、肺炎球菌ワクチンは2種類の成分、接種対象者と接種方法を確認していきます。第7回 麻疹・風疹・おたふく今回は生ワクチンシリーズ。麻疹、風疹、MR、ムンプスを確認します。内容は、それぞれの接種時期をはじめ、2回接種する理由、非接種者が感染者と接触した場合の対応について。そして2018年に大流行した風疹についてはより具体的に「ワクチン接種者からの感染はあるのか?」「ワクチン接種した母親の母乳を飲んだ乳児への影響」「妊娠中の女性への風疹ワクチン対応」など、よくある疑問を解決していきます!第8回 水痘・BCG・4種混合今回は水痘・BCG・4種混合ワクチン。それぞれの接種回数、接種時期をはじめ、注意すべき点について触れていきます。水痘ワクチンでは2回接種する理由を確認します。そして、医療現場で課題となりやすいBCGワクチンの懸濁の仕方については、均一に溶かすポイントを紹介。さらに、4種混合ワクチンの追加接種を忘れた場合の対応、ポリオワクチンの現状について学んでいきます。第9回 肝炎・日本脳炎今回は、肝炎、日本脳炎。肝炎は渡航ワクチンとして使われる任意接種のA型肝炎ワクチンと定期接種のB型肝炎ワクチン、そして医療保険適用となる母子感染予防のB型肝炎ワクチンについて見ていきます。それぞれの接種スケジュールとB型肝炎ワクチンの現場で迷うことを解決します。日本脳炎は、接種スケジュールの確認に加え、日本小児科学会が言及している標準的接種時期以前の発症リスクについて紹介します。 第10回 インフルエンザ・ロタウイルス今回は冬から春にかけて流行するインフルエンザ、ロタウイルス。それぞれのワクチンを接種するタイミングとおさえておきたいポイントを確認します。インフルエンザワクチンは定期接種対象者、卵アレルギーの被接種者の方への対応、予防効果について。ロタウイルスワクチンは1価と5価、それぞれの有効性、接種スケジュールの違い、接種する時期、期間を学んでいきます。第11回 子宮頸がんワクチン・渡航ワクチン今回は、女性のHPV関連疾患を予防する2種類の子宮頸がんワクチンと海外渡航者に気を付けてほしい渡航ワクチンについて触れていきます。子宮頸がんワクチンは2種類の違いとそれぞれの接種スケジュール、日本における接種率激減に対するWHOの見解を確認します。渡航ワクチンは数ある中から黄熱ワクチン、狂犬病ワクチン、髄膜炎菌ワクチンの有効性と接種推奨地域を見ていきます。第12回 トラブルシューティングワクチンは通常、定期接種ですが、不慮の事態で至急打たなければならない場合があります。最終回はそのようなワクチンの“トラブルシューティング”を取り上げます。具体的には、感染者と接触した際の緊急ワクチン接種、外傷時の破傷風トキソイド接種、針刺し時の対応です。さらに、ワクチンの接種間隔に関する規定の改正など、2019年から2020年の大きなトピックを3つ取り上げてワクチン学をまとめていきます。

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皮膚科医デルぽんのデルマな日常

連載でおなじみのデルぽん先生が放つ、笑いありタメになる話ありのコミックエッセイ!!皮膚科といえば、医療界いちのジミ(?)な存在。いまだテレビドラマの主役になったことはなく、命のやり取りをすることもほぼなし。そんな脇役に甘んじていた皮膚科ですが、ここに笑撃の一冊が誕生しました。著者のデルぽん先生は CareNet.comの連載でもおなじみの現役の女医さん。大の漫画好きが高じて、「医療あるある」をテーマにブログを始めたところ、大人気になりました。そんな4年にわたるブログ漫画を「皮膚科医vs.患者さん」「皮膚科のお仕事」「華麗なる(!?)医者の世界」「皮膚科医からのアドバイス」の章に分けて再構成し、新たにエッセイや漫画を書き下ろしたのが本書。皮膚科のみならず、他科のお医者さんや看護師さんにもぜひ読んでいただきたい一冊!著者・デルぽんより発刊のご挨拶皮膚科外来のオモシロ事件簿や、医療業界あるある話、皮膚科女医の日常と妄想など、患者さんに馴染みの深い皮膚科の世界を赤裸々に綴る、業界初(?)4コマコミックエッセイ本。日常診療に役立つ皮膚科豆知識や、患者さんによく訊かれる話題もとりあげています! エッセイあり、実用あり、笑いながらためになる(?) 外来の片隅に一冊、いかがでしょうか?画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。 皮膚科医デルぽんのデルマな日常定価1,300円 + 税判型A5判頁数128頁 発行2020年7月著者デルぽんAmazonでご購入の場合はこちら

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