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歯の痛み、どのくらいの頻度で“虫歯リスク”なのか

 日本歯内療法学会が、直近3ヵ月で歯の痛みを感じたことがある20~60代の800名を対象に『歯の痛みの放置』に関するアンケート調査を実施。その結果、痛みの強さや頻度に関わらず断続的に痛みを感じている人には一定の「虫歯リスク」があることが推察された。 主な結果は以下のとおり。・痛みの頻度ごとの内訳は、いつも痛む人(痛みが1~3日に1回程度)25.9%、ときどき痛む人(痛みが毎週~2、3週ごとに1回程度)32.1%、まれに痛む人(1~3ヵ月に1回程度)42.0%だった。・まれに痛む人の半数以上は違和感程度で、痛みを感じる箇所は特定のところだった。・痛みを感じた後に歯科受診したのは、全体の4割程度だった。・歯科検診で「虫歯」と診断された割合は、いつも痛む人33.0%、ときどき痛む人31.0%、まれに痛む人43.1%だった。・歯科検診していない人のうち、痛みを半年以上放置した割合は、まれに痛む人で56.8%にのぼった。一方、いつも痛む人でも半年以上も痛みを放置した割合は43.4%と長期間放置する人が多くみられた。 歯に痛みが生じるケースとして虫歯以外には、1)知覚過敏、2)歯肉炎・歯周病、3)ストレス、4)親知らず、5)かみ合わせやかむ力の異常、6)歯のヒビや割れなどがある。虫歯の場合には冷たい物・甘い物だけではなく、熱いものを食べたり、飲んだりした際に数秒の痛みを感じた場合は歯髄近くまで進んでいる場合が多いそうなので、熱い物がしみた場合には虫歯の可能性を考慮して歯科受診を検討したほうがよいかもしれない。―――【調査概要】調査主体:一般社団法人 日本歯内療法学会調査対象:直近 3ヵ月で歯の痛みを感じたことがある20~60代の800名(20代、30代、40代、50代、60代を男女に分け、それぞれ80名を調査。「医薬品、健康食品、薬品、化学、石油化学」「市場調査」「医療、福祉」「出版、印刷」「メディア・マスコミ・広告業」にお勤めの方は除く)調査方法:WEBアンケート調査時期:2023年5月19日~23日―――

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第163回 マウスピース矯正で集団訴訟、歯科ならではの診療報酬が影響か

ここで歯科領域の話を扱うのは初めてだが、6月6日に歯列矯正をめぐって300人以上が総額4億5,000万円の損害賠償を求めて、集団提訴した事件が報じられた。歯列矯正というと、ちょっと昔の世代は歯に接着したブラケットにワイヤーを通して歯に力を掛けて矯正するワイヤー矯正を思い浮かべがちだ。矯正中に歯を見せて笑うと、歯に装着されたワイヤーにドキッとしてしまうアレだ。このワイヤー矯正は見た目の問題以外に加え、ワイヤーで引っ張るために時に痛みを感じる、装着した歯では食事や歯磨きがしにくいなど患者にとっては生活に一定の影響がある。これに対し、近年登場してきたのがマウスピース矯正である。患者の歯列に合わせた透明な薄い樹脂製のマウスピースを作成し、これを1日20時間以上装着して矯正状況に応じてマウスピースを1~2週間ごとに交換する。治療期間は2~2.5年といわれている。目立たない、食事や歯磨きの際に取り外し可能、ワイヤー矯正ほど痛くないうえに、実は治療費も45~70万円くらいでワイヤー矯正よりも安価、と患者にとってはかなりメリットが多いと言われる。デメリットはワイヤー矯正と比べて適応が限られることである。今回の事件ではこのマウスピース矯正を希望する人をモニターとして集め、まずは歯科医院に1人あたり150万円前後を支払って、マウスピース矯正を開始。モニター謝礼としてクリニック側が毎月5万円をキャッシュバックして実質無料にするというものだった。しかし、途中でキャッシュバックの支払いが止まり、歯科医院も閉院して矯正治療も中断されたというものだ。一部報道ではこのモニター制度に関わった運営会社や関連会社、歯科医院の関係者それぞれが取材に応じ、自身のほうが騙された旨の発言をしているが、現時点でどの主張が本当かはわからない。もっとも個人的にはこの件を見るにつけ、歯科医療そのものの構造的な問題を感じてしまう。1つはご存じのように歯科治療の場合、医科よりも自由診療が占める部分が大きい。このため国内で自由診療扱いになるものに関しては、医科ほどには信頼性が高いエビデンスがあるとは言い難い。加えて今回の歯列矯正に加え、ホワイトニングもそうだが、治療目標が定めがたい。と言うのも、治療目標が患者の期待値に縛られていることが多く、医科のように明確なエンドポイントが設定しにくい。もっといえば歯列矯正やホワイトニングは、必ずしも医学的必要から行われるものばかりではなく、患者が歯の見た目(審美性)を重視するために行われるケースも多くを占める。その意味では、患者の持つコンプレックスに一部の不埒な歯科の専門性を持つものが付け込みやすい構造が存在する。しかも、そこに自由診療という金目の問題までもが入り込みやすい。今回の事件にそんな意味でため息をついていた矢先、政府が「経済財政運営と改革の基本方針(通称・骨太の方針)」の2023年版の案を公表し、その中身を見た。昨今、高齢者の医療・介護で口腔ケアが重視され始めているのは、多くの医療関係者にとっては周知のことだろうが、今回の骨太の方針案では、昨年初めて「国民皆歯科健診」が盛り込まれ、今年もこの方針が堅持された。また、従来から口腔ケアと全身の健康状態との関連のエビデンスを国民に広く伝えていく姿勢を強調している。しかしだ、こうした普及をすること以前に歯科が取り組まなければならないのは、自由診療という枠内で行われている治療行為や処置に関するより信頼性の高いエビデンスの構築ではないだろうか? こういうと「いや自由診療で行われていることにもエビデンスはある」という声も出てくるだろうが、医科領域と比べるとチャンピオンデータの強調という側面がぬぐい切れないものが多いと私は感じている。参考(1)経済財政運営と改革の基本方針2023(仮称) (原案)

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第162回 止められない人口減少に相変わらずのんきな病院経営者、医療関係団体(後編) 「看護師に処方権」「NP国家資格化」の行方は?

ジャニーズの性加害問題報道でNHKが「反省」の弁こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末、メディアはG7広島サミットの話題に加え、ジャニーズ事務所の「謝罪」動画、歌舞伎役者の自殺未遂事件など社会部ネタが頻発し、バタバタだった模様です。ジャニー喜多川氏によるジャニーズJr.の少年への性的虐待については、この連載の「第155回 日本はパワハラ、セクハラ、性犯罪に鈍感、寛容すぎる?WHO葛西氏解任が日本に迫る意識改造とは?(後編)」でも簡単に触れたのですが、「謝罪」動画公開後の5月17日にNHKで放送された「クローズアップ現代」(クロ現)はなかなか興味深い内容でした。「“誰も助けてくれなかった” 告白・ジャニーズと性加害問題」と題されたこの回の「クロ現」では、元ジャニーズJr.の男性が実名で登場、自身が受けた性被害の詳細を語っていました。印象的だったのは、桑子 真帆キャスターが、「なぜこの問題を報じてこなかったのか。私たちの取材でもこうした声を複数いただきました。海外メディアによる報道がきっかけで波紋が広がっていること。私たちは重く受けとめています」と反省の弁を述べ、番組の最後に「私たちは、これからも問題に向き合っていきます」と語ったことです。日本で長年に渡って起こっていた性被害事件にもかかわらず、日本のメディアで報道してきたのは週刊文春などごくわずかです。英国BBCのドキュメンタリーが放映されたので渋々動きました、というのではNHKも報道機関としての存在意義が問われても仕方ありません。今回、NHKの顔とも言えるキャスターが番組で反省の弁を述べたというのは、とても大きな意味があることだと思います。逆に言えば、ジャニーズ事務所に忖度し、BBCのドキュメンタリーや今回の「謝罪」動画に関しても、お茶を濁した報道しかしていない民放(「クロ現」ではジャーナリストの松谷 創一郎氏が「民放の人たち、テレビ朝日やフジテレビなんかはとくにそうですけれども」と名指しして批判していました)は、報道機関としては完全に“失格”と言えそうです。人口減少に対する、医療関係団体の希薄過ぎる危機感さて、今回も4月26日に厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した「将来推計人口」に関連して、日本の医療に及ぼす影響について考察してみます。前回は、一向に進まない地域医療構想や、病院の役割分担の明確化や病床削減などへ取り組みの遅れなど、医療提供体制における問題点について書きました。今回は、急速に進む人口減少が招くであろう医療・介護人材難に対して、日本医師会や日本薬剤師会といった医療関係団体の危機感が希薄過ぎる点について書きます。訪問看護ステーションに配置可能な医薬品の拡大案に「断固反対」と日本薬剤師会会長5月12日付のメディファクス等の報道によれば、日本薬剤師会の山本 信夫会長は5月10日に開かれた三師会の会見で、政府の規制改革推進会議で議論が進められている、訪問看護ステーションに配置可能な医薬品の拡大案について、「配置可能薬を拡大するということについては断固反対という立場だ」と述べたとのことです。この案は、規制改革推進会議の医療・介護・感染症対策ワーキング・グループで3月6日、医師の佐々木 淳専門委員(医療法人社団 悠翔会理事長)と弁護士の落合 孝文専門委員が提案したものです。佐々木氏は関東を中心に在宅医療専門のクリニックを複数ヵ所運営する医療法人を経営しています。佐々木氏らが提案したのは、訪問看護ステーションに配置する薬剤の種類を増やし、訪問看護師がある程度自由に使用できるようにするための新しいスキームです。現状では看護師が薬局で薬剤を入手してから患者宅に向かうか、看護師から連絡を受けた薬剤師が薬剤を配達しているのですが、このスキームによって患者への薬剤提供が効率化される、としています。このスキームでは、薬剤師はオンラインで訪問看護ステーションに配置された薬剤を遠隔管理(倉庫室温、ピッキングの適切性、在庫など)し、薬局がステーションに随時医薬品を授与します。一方、ステーションの看護師は、必要に応じて医師の指示内容を薬局と共有、処方箋の写しに基づいてステーションの倉庫から薬剤をピッキング、患者に投薬します。なお、倉庫内に配置する薬剤としては、脱水症状に対する輸液、被覆剤、浣腸液、湿布、緩下剤、ステロイド軟膏、鎮痛剤などを想定しているとのことです。薬剤師の調剤権を著しく侵害することにつながり「極めて問題がある」現状、薬剤師法などで、調剤を行えるのは、医師、歯科医師、獣医師が自己の処方箋により自ら調剤するときを除いて薬剤師に限られています。山本会長は、この改革案は医師の処方権、薬剤師の調剤権を著しく侵害することにつながり「極めて問題がある」と述べたそうです。その上で、在宅医療の提供について、「チームを組んで医療を提供するのが本来の姿。専門職が集まってその患者さんに対してどんな医療が必要か、医師や看護師、薬剤師など各専門職種が議論していくことが大前提だ。それを抜きにして、ただ置けばいいという発想について私どもとしては大変断固反対だ」と述べたとのことです。他の医療・看護・介護拠点が薬局機能を代替して何が悪い?「薬局の遠隔倉庫」案と呼ばれるこの案、患者が薬剤を手に入れるまでの時間が短縮されるだけでなく、調剤をする薬局自体がない地域や、土日や夜間は営業しない薬局しかない地域では、とても便利で現実的な方策に見えます。「薬剤師の調剤権を侵害」「チーム医療が本来の姿」と山本会長は語っています。しかし、そもそも薬局薬剤師が機能しない地域や時間帯があるなら、ほかの医療・看護・介護拠点がその機能を代替して何が悪いというのでしょう。山本会長の発言は、薬剤師のことは考えているが、患者のことは考えていないように感じます。ちなみに、令和4年度の厚生労働白書によれば、2020年度において、無薬局町村は34都道府県で136町村あるそうです。「包括指示」の仕組みを活用、「訪問看護師に一定範囲内の薬剤の処方箋を発行できるようにする」案も規制改革推進会議の医療・介護・感染症対策ワーキング・グループは先週、5月15日にも開かれ、佐々木氏は「薬局の遠隔倉庫」案をベースとした、もう一歩踏み込んだ改革案を提案しています。5月16日付のCBnewsマネジメントの報道によれば、佐々木氏は一定の条件下で訪問看護師が処方箋を発行して投薬できる規制緩和策を検討すべきだと提案したとのことです。具体的には、医師に連絡がついたものの処方箋を発行できない場合、看護師は医師の指示に基づいて処方箋を発行できる医師と連絡がつかない場合、看護師は医師の包括的指示に基づいて処方箋を発行できる24時間対応を標榜する薬局がある場合、薬剤師は迅速・確実に患者宅に薬剤を届ける。24時間対応の薬局がなければ訪問看護事業所に薬剤を配備し、看護師がその備蓄から薬剤を使用することができる24時間対応する薬局の有無にかかわらず、訪問看護事業所内への輸液製剤の配備を可能とするなお、佐々木氏は、これらの対象となる薬剤(輸液製剤を含む)の範囲をあらかじめ指定しておくことも提案しています。医師から看護師への「包括指示」の仕組みを活用して、「訪問看護師に一定範囲内の薬剤の処方箋を発行できるようにする」という大胆な提案です。日本薬剤師会が再び激怒しそうですが、働き方改革や人材難を背景に、タスクシフト/タスクシェア推進が叫ばれる中、とても理に適った提案ではないでしょうか。「NPを導入し、国家資格として新たに創設するというのは適切ではない、反対だ」と日本医師会政府の規制改革会議ですが、その議論や提案はいつもラジカルで、旧態依然とした医療関係団体を時折怒らせています。2月13日、規制改革推進会議の医療・介護・感染症対策ワーキング・グループは、医師と看護師のタスクシェア、とくにナース・プラクティショナー(NP)について日本医師会等にヒアリングを実施しました。NPとは、端的に言えば、医師と看護師の中間的な技量を有した医療専門資格です。現行の特定行為研修を修了した看護師ができる医療行為の範囲を超えて、“医師のように”自主的に医療行為が行える新しい国家資格(NP)をつくろうというのがNPの国家資格化のコンセプトです。米国においてNPは医師の指示・監督がなくても診察、診断、治療・処方のオーダーができる資格として確立しています。この回のワーキング・グループに日本医師会から参加した常任理事の釜萢 敏氏は「外国で行われているものを日本に導入すれば必ずうまくいくというものでは決してない。特定行為研修の修了者を増やしていくという方向に大きく踏み出したので、まずそれをしっかり実現することが喫緊の課題。NPという新たな職種を導入し、国家資格として新たに創設するというのは、現状において適切ではない、反対だ」と述べました。日本医師会などが慎重な姿勢を示してきたため業務範囲の拡大は遅々として進まず医療・介護分野のタスクシェア・タスクシフトを巡っては、これまで日本医師会などが慎重な姿勢を示してきました。そのため、実際の医療現場での業務範囲の拡大は遅々として進んでいません。2021年5月の医療法等改正においても、業務範囲が拡大されたのは診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士のみで、“本丸”とも言える看護師には踏み込んでいません(「第66回 医療法等改正、10月からの業務範囲拡大で救急救命士の争奪戦勃発か」参照)。政府の規制改革推進会議が昨年5月に決めた令和4年度の最終答申には「医療・介護分野のタスクシェア・タスクシフトの推進」は記述されていますが、より本格的な検討は今期の同会議の“宿題”となりました。その後、議論を進めてきた規制改革推進会議は、昨年12月に当面の改革テーマに関する中間答申をまとめました。そこには、医師や看護師が職種を超えて業務を分担する「タスクシェア」の推進が明記され、医師の業務の一部を看護師らに委ねる「タスクシフト」も進めると書かれました。それを踏まえ、看護師らが担える業務の対象拡大を主要テーマとして、医療・介護・感染症対策ワーキング・グループが議論を進めてきた、というのがこれまでの流れです。6月にまとめられる規制改革推進会議の最終答申に注目それにしても、医師や薬剤師がタスクシェア・タスクシフトをこうも毛嫌いする理由はなんでしょう。自分たちの仕事が、「看護師ごときには対応できないほど高度なもの」とでも考えているのでしょうか。あるいは逆に、「意外に簡単で誰にでもできそうであることがバレるのが怖い」のでしょうか。確か、日本医師会は医師増(医学部新設)にも反対していましたから、単に自分たちの既得権を守りたいだけなのかもしれません。前回の冒頭で書いた青森の下北半島ではないですが、現状、医師確保にあえいでいる地域は全国にたくさんあります。人口減が今以上に進めば、無医町村も増えていくでしょう。そんな中、相応の資格を得た訪問看護ステーションなどの看護師が、処方を含む医療行為を自らの判断で行うことができるようになれば、地域医療に一定の安心感を与えるのではないでしょうか。また、老人保健施設や介護医療院は医師でなければ施設長になれませんが、高齢者医療を専門とするNPが施設長になることができれば、貴重な医師人材の節約にもつながります。今年6月にもまとめられる予定の令和5年度の規制改革推進会議の最終答申に、医師から看護師への包括指示の活用や、訪問看護師への処方権付与、NP国家資格化といった、ワーキング・グループで議論されてきた内容がどれくらい盛り込まれることになるか、注目されます。

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医療者の不足する地域は死亡率が高い/BMJ

 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ―「すべての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」(厚生労働省)―を2030年までに達成するには、健康を促進または改善するさまざまな職業の保健医療人材(Human Resources for Health:HRH)が重要であるが、HRHの不平等は過去30年間で世界的に減少しているものの依然として残っており、全死亡率およびほとんどの死因別死亡率は、医療従事者が限られている、とくにHIV/AIDS・性感染症、母体・新生児疾患、糖尿病、腎臓病といった、優先疾患におけるいくつかの特定のHRHが限られている国・地域で相対的に高いことが、中国・北京大学のWenxin Yan氏らの調査で示された。著者は、「本結果は、2030年までにユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するために、公平性を重視した医療人材政策の策定、医療財政の拡大、不十分なHRHに関連した死亡を減少するための標的型対策の実施に向けた政治的取り組み強化の重要性を浮き彫りにしている」とまとめている。BMJ誌2023年5月10日号掲載の報告。172の国・地域のHRHの傾向と不平等を評価し、全死亡率と死因別死亡率を解析 研究グループは、2019年版の世界疾病負荷研究(Global Burden of Disease Study)のデータベースを用い、172の国・地域を対象として、1990~2019年までの各国・各地域の総HRH、特定のHRH、全死亡率、死因別死亡率に関する年次データを収集するとともに、国連統計(United Nations Statistics)およびOur World in Dataのデータベースから、モデルの共変量として用いる人口統計学的特性、社会経済的状態、医療サービスに関するデータを入手し、解析した。 主要アウトカムは、人口1万人当たりのHRH密度に関連する人口10万人当たりの年齢標準化全死亡率、副次アウトカムは年齢標準化死因別死亡率とした。HRHの傾向と不平等を評価するため、ローレンツ曲線と集中指数(concentration index:CCI)を用いた。HRHの不平等は過去30年間で減少も、総HRHレベルと全死亡率に負の相関 世界的に、人口1万人当たりの総HRH密度は、1990年の56.0から2019年には142.5に増加した。一方で、人口10万人当たりの年齢標準化全死亡率は、1990年の995.5から2019年には743.8に減少した。ローレンツ曲線は均等分布線の下にあり、CCIは0.43(p<0.05)であったことから、人間開発指数で上位にランクされている国・地域に医療従事者がより集中していることが示された。 HRHのCCIは、1990~2001年の間、約0.42~0.43で安定していたが、2001年の0.43から2019年には0.38へと低下(不平等が縮小)していた(p<0.001)。 多変量一般化推定方程式モデルにおいて、総HRHレベル(最低、低、中、高、最高の五分位)と全死亡率との間に負の相関が認められた。最高HRHレベル群を参照群として評価すると、低レベル群の発生リスク比は1.15(95%信頼区間[CI]:1.00~1.32)、中レベル群は同1.14(1.01~1.29)、高レベル群は1.18(1.08~1.28)であった。 総HRH密度と死亡率との負の相関は、顧みられない熱帯病やマラリア、腸管感染症、母体および新生児疾患、糖尿病や腎臓病など、いくつかの死因別死亡率でより顕著であった。医師、歯科スタッフ(歯科医師と歯科助手)、薬剤スタッフ(薬剤師、調剤補助者)、緊急援助および救急医療従事者、オプトメトリスト、心理学者、パーソナルケアワーカー、理学療法士、放射線技師の密度が低い国・地域の人々は、死亡リスクがより高くなる可能性が高かった。

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糖質過剰摂取は糖尿病患者のみならず万人にとって生活習慣病リスクを高める危険性がある?―(解説:島田俊夫氏)

 私たちは生きるために食物を食べることでエネルギーを獲得している。その主要なエネルギー源は3大栄養素であり、その中でも代表的なエネルギー源が糖質である。 糖質の摂り過ぎは糖尿病患者では禁忌だということは周知されている。しかし健康人においてさえ、糖の摂り過ぎには注意が必要だとの警鐘を告げる論文も散見され、その中には糖質過剰摂取1,2)が3大死因に密接に関連し、生活習慣病を引き起こす可能性について言及した論文も少なくない。しかしながら、エビデンスレベル不ぞろいの論文が混在しており、玉石混交の中で可能な限り厳密に分析・評価し、糖質過剰摂取に関する情報の真実を明らかにすべく行われた、中国・四川大学のYin Huang氏らにより解析されたUmbrella Review(包括的Review)が、BMJ誌の2023年4月5日号に期せずして掲載された。一読に値するとの思いで取り上げた。Umbrella Reviewの概略 今回のUmbrella Reviewのデータソースは、検索により、観察研究のメタアナリシスにおける74のユニークなアウトカムと無作為化対照試験のメタアナリシスでの9アウトカムを含む、8,601のユニークな論文から73のメタアナリシスと83の健康アウトカムを特定した。健康に関するアウトカム83項目中、食事由来の糖質摂取と有意な関連を認めた45項目の内訳、内分泌/代謝系18項目、心血管系10項目、がん7項目、その他10項目(神経精神、歯科、肝臓、骨、アレルギーなど)に関して有害性が確認された。 食事の砂糖消費量の最高と最低では、体重の増加(加糖飲料)(クラスIVエビデンス)および異所性脂肪の蓄積(加糖)(クラスIVエビデンス)と関連していることを示唆した。低品質のエビデンスでは、1食分/週の砂糖入り飲料消費の増加は、痛風の4%リスク(クラスIIIエビデンス)増加と関連し、250mL/日の砂糖入り飲料消費の増加は、冠動脈疾患(クラスIIエビデンス)および全死因死亡(クラスIIIエビデンス)のそれぞれ17%および4%のリスク増加と関連することを示した。さらに、低品質のエビデンスでは、フルクトース消費量が25g/日増加するごとに、膵臓がんのリスクが22%増加(クラスIIIエビデンス)することを示した。 現時点では糖質過剰摂取の有害性をすなおに受け入れることが賢い選択だと考えるが、全面的に信じることはせず、多少の疑問を残しておくことが大事である。糖質の過剰摂取が肥満を招くことは欧米ではすでに受け入れられており、糖尿病のみならず肥満是正に糖質制限食が好んで使用されていることを考えれば、今回の解析結果は理にかなっている。その反面、長期にわたる糖質制限食に関しては議論の多いところであり3,4)、安全性への不安が根強く残っていることも忘れてはならない。現時点では、長期の糖質制限食への不安が払拭されない限りは、この結果を無条件に受け入れるのは時期尚早ではないかと考える。

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第145回 5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府

<先週の動き>1.5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府2.コロナ後遺症の診療報酬、5月8日から特定疾患療養管理料を加算へ/厚労省3.緊急避妊薬の市販化、パブコメで97%が賛成/厚労省4.進まぬ電子処方箋、普及に向け、導入拡大を加速化/厚労省5.少子化対策の財源の議論開始、社会保険料や税で/財務省6.認知症患者の遺族が寄付金3億円をめぐって金沢医科大学を提訴/石川1.5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府政府は、新型コロナウイルス感染の感染症法での位置付けが5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行するのに伴い、新型コロナウイルス感染症対策本部を同日に廃止することを閣議決定した。5類移行後の公費負担での対応が大きく変わり、新型コロナウイルスのPCR検査や抗原検査を病院や診療所で行う場合も、検査キットを使用する場合も自己負担となる。また、各自治体による検査キット配布事業も終了となる。ただし、医療機関や介護施設などで陽性患者が発生した場合、医療スタッフなどへの検査を都道府県が実施する場合のみ行政検査として無料で実施される。そのほか、外来診療も従来は公費負担で行われていたものが、インフルエンザとほぼ同じ程度の自己負担が必要となり、入院時の医療費も同様に保険診療となるが、9月末までは、高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額する措置が講じられる。5月8日以降は、医療機関では「コロナ患者である」ことだけを理由とした診療拒否は「応招義務違反」となり、自院での対応が困難な場合には他の「対応可能な医療機関に対応を依頼する」あるいは「患者に対して対応可能な医療機関を伝える」ことを行うことが必要となる。(参考)政府 「5類」移行に伴い新型コロナ対策本部の廃止を決定(NHK)コロナ5類 感染した時は? 医療費負担 外出 療養支援 相談 証明書(同)コロナ「5類」正式決定 5月8日からどうなる?(同)「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」等の一部訂正について(厚労省)5月8日以降、「コロナ感染のみ」を理由とした診療拒否は不可、自院対応困難な際は「対応可能医療機関を患者に伝える」等の配慮を-厚労省(Gem Med) 2.コロナ後遺症の診療報酬、5月8日から特定疾患療養管理料を加算へ/厚労省厚生労働省は新型コロナウイルスに感染後のいわゆる「後遺症」について患者を診た医療機関の診療報酬を加算することを各都道府県に対して通知した。新型コロナ感染症の位置付けが「5類」に移行する5月8日から開始となる。加算対象は、新型コロナ感染と診断された3ヵ月目以降も後遺症が2ヵ月以上続く患者に対して、診療の手引きを参考にした診療に対して3ヵ月に1度、特定疾患療養管理料147点を加算する。支払いを受けるには、都道府県が公表している罹患後症状に悩む方の診療を行っている医療機関のリストに掲載されている必要がある。期限は令和6年3月31日。(参考)味覚・記憶障害など1年以上続くこともある「コロナ後遺症」、診療報酬を加算(読売新聞)コロナ後遺症の診療、3か月ごと147点 報酬特例で評価へ、来年3月まで(CB news)「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」にかかる疑義解釈資料の送付について[その2](厚労省)「コロナ後遺症の専門医療機関」を各都道府県で本年(2023年)4月28日までに選定し、公表せよ-厚労省(Gem Med)3.緊急避妊薬の市販化、パブコメで97%が賛成/厚労省厚生労働省は「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で緊急避妊薬を市販薬とするスイッチOTC化について検討を重ねてきた。去年12月から今年の1月にかけて厚生労働省が実施したパブリックコメントの結果、市販化に賛成の意見が約4万6,000件、反対の意見が約300件と、全体の約97%が賛成する内容だった。厚労省は5年前にも同様の検討を行ったが、このときは転売の可能性や不十分な性教育などを理由に「時期尚早」として見送られた経緯がある。しかし、2019年にはオンライン処方も可能になるなど環境の変化もあり、今後、同省は専門家を交えた検討会議の議論をもとに、結論を出す見込み。(参考)緊急避妊薬OTC化の議論、5月以降に 厚労省、パブコメ整理で大きくずれ込む(日刊薬業)緊急避妊薬の市販化 パブコメに4万6300件の意見 97%が賛成(毎日新聞)第22回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議(厚労省)4.進まぬ電子処方箋、普及に向け、導入拡大を加速化/厚労省厚生労働省は、4月28日に第2回電子処方箋推進協議会を開催した。この中で電子処方箋の導入状況は、4月23日時点で全国3,352施設で運用開始されていた。内訳は病院9、医科診療所250、歯科診療11、薬局3,082。同日公開された公的病院への導入計画に係る調査結果では、回答した施設のうち、令和5年度中に電子処方箋の導入予定の病院が214施設だった。寄せられた意見の中には、オンライン資格確認などシステム利用が伸び悩んでおり、導入後に電子処方箋の利用が伸びるのか疑問といった声が上げられている。電子処方箋導入施設の面的拡大を重点的に行うため、導入意欲が特に高く、稼働中または近日中に稼働予定の病院「気仙沼市立本吉病院」、「静岡市立静岡病院」、「公立松任石川中央病院」、「公立西知多総合病院」、「徳島市民病院」、「長崎みなとメディカルセンター」を中心に周辺施設の導入拡大を加速化する方針を固めた。(参考)第2回 電子処方箋推進協議会 資料(厚労省)電子処方箋「面的拡大」、導入意欲高い病院など中心に 厚労省(CB news)【電子処方箋】“面的拡大”、6病院を列挙/リフィル機能など先行検証/「気仙沼市立本吉病院」「静岡市立静岡病院」、「公立松任石川中央病院」、「公立西知多総合病院」、「徳島市民病院」、「長崎みなとメディカルセンター」(ドラビズ on-line)5.少子化対策の財源の議論開始、社会保険料や税で/財務省財務省は4月28日に財政制度等審議会を開催、少子化対策の議論に着手した。わが国でも、最終学歴が大卒以上の女性の出生こども数は近年増加しており、女性が出産・育児でキャリアを中断することに伴う機会費用が相当な額にのぼっていることが示唆されている。このため女性の出産支援がさらに必要であり、現時点では少子化対策予算として令和5年度の予算では国費6.3兆円が計上されているが、諸外国と比較すると、現金給付の割合が低いとの指摘もあり、財源について「企業を含む社会・経済の参加者全員が広く負担する新たな枠組みの検討が必要」と指摘がなされた。出席した委員からは社会保険料や税の組み合わせを財源とする意見が出た。この前日、内閣府は第2回のこども未来戦略会議を開催しており、財源について、社会保険料引き上げの案が浮上しているが、経済界や労働団体からは消費税を含む幅広い税財源の検討を求める声が出されていた。(参考)少子化財源、消費税含め議論を 労使、現役負担増に懸念-こども会議(時事通信)少子化財源、財制審で議論開始 「社会保険料や税で」(日経新聞)財政制度等審議会 財政制度分科会 財政各論(2)(財務省)財政制度等審議会 財政制度分科会 財政各論(3)(同)第2回 こども未来戦略会議(内閣府)6.認知症患者の遺族が寄付金3億円をめぐって金沢医科大学を提訴/石川認知症の疑いがある高齢患者の寄付をめぐって、3億円の寄付を患者にさせたのは無効だとして、患者の遺族が大学病院と当時の主治医を相手取って2億4,000万円余りの損害賠償請求を求める裁判を金沢地裁に起こした。訴えられたのは金沢医大病院。遺族によれば、患者は一昨年の1月に同院に入院し、認知機能の低下が指摘され検査結果で大脳の萎縮などが確認された。同年5月に大学創立50周年の募金に対して3億円を寄付し、同年10月に90歳で亡くなった。遺族がこの寄付を知ったのは死亡後。遺族らは「家族に確認することなく、認知機能の低下に乗じて非常識な金額を寄付させた」と主張し、金沢医科大学と当時の病院長で主治医だった男性に対し2億4,000万円余りの賠償を求めており、大学側は「寄付は正当な手続きをして受け入れている。今後、訴状内容を確認してから対応したい」としている。(参考)父親の3億円寄付「異常で不当」 遺族が金沢医大を提訴(産経新聞)認知症疑い患者の3億円寄付、原告代理人「寄付が原因で借金残る」「極めて異常な額」(読売新聞)認知症なのに「3億円を寄付させた」 遺族が金沢医大病院側を提訴(朝日新聞)認知機能低下の患者に巨額の寄付持ち掛け 遺族らが金沢医科大学を提訴(日テレ)

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糖類の過剰摂取、心代謝疾患リスクを増大/BMJ

 食事による糖類(単糖類、二糖類、多価アルコール、遊離糖、添加糖)の過剰な摂取は、一般的に健康にとって益よりも害が大きく、とくに体重増加、異所性脂肪蓄積、心血管疾患などの心代謝疾患のリスク増大に寄与していることが、中国・四川大学のYin Huang氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年4月5日号で報告された。糖類摂取と健康アウトカムの関連をアンブレラレビューで評価 研究グループは、食事による糖類の摂取と健康アウトカムの関連に関する入手可能なすべての研究のエビデンスの質、潜在的なバイアス、妥当性の評価を目的に、既存のメタ解析のアンブレラレビューを行った(中国国家自然科学基金などの助成を受けた)。 データソースは、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Database of Systematic Reviews、および参考文献リスト。対象は、急性または慢性の疾患のないヒトにおいて、食事による糖類の摂取が健康アウトカムに及ぼす影響を評価した無作為化対照比較試験、コホート研究、症例対照研究、横断研究に関する系統的レビューとメタ解析であった。 8,601本の論文から、73件のメタ解析と83項目の健康アウトカム(観察研究のメタ解析から74項目、無作為化対照比較試験のメタ解析から9項目)が特定された。体重増加、異所性脂肪蓄積と有意な関連 83項目の健康アウトカムのうち、食事による糖類の摂取と有意な関連が認められたのは、有害な関連が45項目(内分泌/代謝系:18項目、心血管系:10項目、がん関連:7項目、その他:10項目[神経精神、歯科、肝、骨、アレルギーなど])、有益な関連が4項目であった。 エビデンスの質(GRADE)が「中」の有害な関連としては、食事による糖類の摂取量が最も少ない集団に比べ最も多い集団では、体重の増加(砂糖入り飲料)(エビデンスクラス:IV)および異所性脂肪の蓄積(添加糖)(エビデンスクラス:IV)との関連が認められた。 エビデンスの質が「低」の有害な関連では、砂糖入り飲料の摂取量が週に1回分増加するごとに痛風のリスクが4%(エビデンスクラス:III)増加し、1日に250mL増加するごとに、冠動脈疾患が17%(エビデンスクラス:II)、全死因死亡率が4%(エビデンスクラス:III)、それぞれ増加した。 また、エビデンスの質が「低」の有害な関連として、フルクトースの摂取量が1日に25g増加するごとに、膵がんのリスクが22%高くなることが示唆された(エビデンスクラス:III)。 著者は、「既存のエビデンスはほとんどが観察研究で、質が低いため、今後、新たな無作為化対照比較試験の実施が求められる」と指摘し、「糖類の健康への有害な影響を低減するには、遊離糖や添加糖の摂取量を1日25g(ほぼ小さじ6杯/日)未満に削減し、砂糖入り飲料の摂取量を週1回(ほぼ200~355mL/週)未満に制限することが推奨される」としている。

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添付文書改訂:フォシーガが左室駆出率にかかわらず使用可能に、アセトアミノフェンが疾患・症状の縛りなく使用可能に ほか【下平博士のDIノート】第119回

フォシーガ:左室駆出率にかかわらず使用可能に<対象薬剤>ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ錠5mg/10mg、製造販売元:アストラゼネカ)<承認年月>2023年1月<改訂項目>[削除]効能・効果に関連する注意左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性および安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。[追加]臨床成績左室駆出率の保たれた慢性心不全患者を対象とした国際共同第III相試験(DELIVER試験)の結果を追記。<Shimo's eyes>これまで、本剤は「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性および安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること」とされていましたが、この記載は削除され、左室駆出率を問わず使用可能となりました。これは、左室駆出率が40%超の慢性心不全患者を対象に行われた国際共同第III相試験(DELIVER試験)の結果に基づいた変更です。なお、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)も、2022年4月に左室駆出率にかかわらず使用可能となっています。アセトアミノフェン:疾患や症状の縛りなく「鎮痛」で使用可能に<対象薬剤>アセトアミノフェン製剤(商品名:カロナールほか)<承認年月>2023年2月<改訂項目>[削除]効能・効果下記の疾患ならびに症状の鎮痛頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、変形性関節症[追加]効能・効果各種疾患および症状における鎮痛<Shimo's eyes>アセトアミノフェン製剤(カロナールほか)について、疾患や症状の縛りなく「鎮痛」の目的での使用が認められました。厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を踏まえた変更です。欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品がわが国では保険診療において使用できない「ドラッグラグ」解消の1つであり、効能または効果は疾患名の列挙ではなく「各種疾患および症状における鎮痛」とすることが適切とされました。シルガード9:2回接種が追加され、接種無料に<対象薬剤>組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来)(商品名:シルガード9水性懸濁筋注シリンジ、製造販売元:MSD)<承認年月>2023年3月<改訂項目>[追加]用法・用量9歳以上15歳未満の女性は、初回接種から6~12ヵ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができる。[追加]用法・用量に関連する注意9歳以上15歳未満の女性に合計2回の接種をする場合、13ヵ月後までに接種することが望ましい。なお、本剤の2回目の接種を初回接種から6ヵ月以上間隔を置いて実施できない場合、2回目の接種は初回接種から少なくとも5ヵ月以上間隔を置いて実施すること。2回目の接種が初回接種から5ヵ月後未満であった場合、3回目の接種を実施すること。この場合、3回目の接種は2回目の接種から少なくとも3ヵ月以上間隔を置いて実施すること。<Shimo's eyes>本剤は、わが国で3番目に発売されたHPVワクチンです。既存薬の1つである2価ワクチン(商品名:サーバリックス)は、子宮頸がんの主な原因となるHPV16型と18型の感染を、もう1つの既存薬である4価ワクチン(同:ガーダシル)は上記に加えて尖圭コンジローマなどの原因となる6型と11型の感染を予防します。本剤は、これら4つのHPV型に加えて、31型・33型・45型・52型・58型の感染も予防する9価のHPVワクチンです。本剤について、9歳以上15歳未満の女性に対する計2回接種の用法および用量を追加する一変承認が取得されました。これまでは計3回接種となっていましたが、接種回数が減ることで、ワクチン接種者や医療者の負担軽減が期待できます。また、既存の2価/4価ワクチンは定期接種の対象で、小学6年生~高校1年生相当の女子は公費助成によって無料で接種を受けることができますが、これまで本剤は任意接種で自費での接種でした。2023年3月7日の厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で、小学校6年生~15歳未満までに対する9価HPVワクチンの2回接種も、4月1日から定期接種化することが決定され、自費から公費接種に移行する準備が進められます。エンハーツ:HER2低発現乳がんにも使用可能に<対象薬剤>トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ点滴静注用100mg、製造販売元:第一三共)<承認年月>2023年3月<追記項目>[追加]効能・効果化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能または再発乳癌<Shimo's eyes>HER2低発現乳がんを標的にしたわが国初の治療薬となります。HER2低発現乳がんとはHER2陰性乳がんの新たな下位分類で、細胞膜上にHER2タンパクがある程度発現しているものの、HER2陽性に分類するほどの量ではない乳がんのことを指し、再発・転移のある乳がんの約50%を占めるとされます。本剤はこれまで有効な治療選択肢のなかったHER2低発現乳がんに対する薬剤となります。化学療法による前治療を受けたHER2低発現の乳がん患者を対象としたグローバル第III相臨床試験(DESTINY-Breast04)の結果に基づく申請となりました。この試験では、再発・転移のあるHER2低発現乳がん患者557例(494例はホルモン受容体[HR]陽性、63例人はHR陰性)が、3週間ごとにT-DXdを投与する群(373例)と、医師の選択した化学療法を受ける群(184例)にランダムに割り付けられました。その結果、エンハーツ投与群では、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)のいずれにも改善が認められました。PFSとOSの中央値は、T-DXd投与群で9.9ヵ月と23.4ヵ月、医師の選択した化学療法群で5.1ヵ月と16.8ヵ月でした。なお、本適応追加に関連して、ロシュ・ダイアグノスティックスのがん組織または細胞中のHER2タンパク検出に用いる組織検査用腫瘍マーカーキット「ベンタナultraView パスウェーHER2(4B5)」が3月3日に一変承認され、HER2低発現の乳がん患者を対象とした本剤のコンパニオン診断薬として使用できることになりました。

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水素吸入で院外心停止患者の救命・予後改善か/慶大ほか

 心停止の際に医療従事者が近くにいないなど、即座に適切な処置が行われなかった場合、1ヵ月の生存率は8%とされる。また、生存できた場合でも、救急蘇生により臓器に血液と酸素が急に供給されることで、非常に強いダメージが加わり(心停止後症候群と呼ぶ)、半数は高度な障害を抱えてしまう。このような心停止後症候群を和らげる治療として、体温管理療法があるが、その効果はいまだ定まっていない。そこで、東京歯科大学の鈴木 昌氏(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)らの研究グループは、病院外で心停止となった後に循環は回復したものの意識が回復しない患者を対象に、体温管理療法と水素吸入療法を併用し、効果を検討した。その結果、死亡率の低下と後遺症の発現率の低下が認められた。本研究結果は、eClinicalMedicine誌2023年3月17日号に掲載された。 HYBRID II試験は、日本国内の15施設で2017年2月~2021年9月に実施された多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験である。心臓病のために病院外で心停止となり、心肺蘇生により循環が回復したものの意識が回復しない20~80歳の患者73例が対象となった。対象患者を体温管理療法と同時に、2%水素添加酸素を吸入する群(水素群:39例)、水素添加のない酸素を吸入する群(対照群:34例)に分け、18時間吸入させた。主要評価項目は、90日後に主要評価項目は脳機能カテゴリー(CPC)1~2(脳神経学的予後良好)を達成した患者の割合、副次評価項目は90日後のmodified Rankin Scale(mRS)スコア(0[まったく症候がない]~6点[死亡]で評価)、90日後の生存率などであった。 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目の90日後にCPC 1~2を達成した患者の割合は、対照群が39%であったのに対し、水素群では56%であった(リスク比[RR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.46~1.13、p=0.15)。・副次評価項目の90日後のmRSスコアの中央値は、対照群が5点(四分位範囲[IQR]:1~6)であったのに対し、水素群は1点(IQR:0~5)であり、有意に低かった(p=0.01)。・mRSスコア0点の達成率は、対照群が21%であったのに対し、水素群は46%であり、有意に高率であった(RR:2.18、95%CI:1.04~4.56、p=0.03)。・90日後の生存率は、対照群が61%であったのに対し、水素群が85%であり、有意に生存率が上昇した(RR:0.39、95%CI:0.17~0.91、p=0.02)。・90日後までの有害事象の発現率は、対照群88%、水素群95%であった。重篤な有害事象の発現率は、対照群21%、水素群18%であった。有害事象は、いずれも水素吸入に起因するものではないと判断された。 研究グループは、「新型コロナウイルス感染症による救急医療のひっ迫の結果、本研究は早期終了となったため、目標症例数の90例には到達しなかった。そのため、水素吸入療法の有効性を検証するには至らなかった。しかし、水素吸入療法により90日後の生存率や症状や障害がない患者の割合が有意に上昇したことから、水素吸入療法は、心停止後症候群に陥った患者の意識を回復させ、神経学的後遺症を残さないようにする画期的な治療法になることが期待できる」とまとめた。

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第153回 閣議決定、法案提出でマイナ保険証への一本化と日本版CDC創設がいよいよ始動

マイナ保険証関連法案と日本版CDC法案を閣議決定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。大きな盛り上がりを見せたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ですが、この原稿を書いている段階ではまだ優勝は決まっていません。個人的に衝撃を受けたのは、3月15日(現地時間)、1次ラウンド・プールDの第4戦のプエルトリコ対ドミニカ共和国の戦いです。プエルトリコは9回にクローザー、エドウィン・ディアス投手を投入、3者連続三振に打ち取って見事勝利を収めました。しかし、ディアス投手はその直後、マウンド上で選手たちと喜び過ぎて右膝の膝蓋腱を断裂、今季絶望となってしまったのです(プエルトリコは準々決勝でメキシコに破れました)。ディアス投手はニューヨーク・メッツの”守護神”で一度聴いたら耳から離れない独特の登場曲・Narcoも有名です。昨シーズン終了後には救援投手では史上最高の5年1億200万ドル(約136億円)で契約延長したばかり。WBC出場がMLB選手にとってどれだけリスクがあるのかをまざまざと示す結果になってしまいました。今回のWBCには大谷 翔平投手やダルビッシュ 有投手などが参加していますが、今後はこうしたスター選手の出場が抑えられる可能性もありそうです。さて、今回は3月7日に政府が閣議決定した2つの法案について書いてみたいと思います。一つはマイナンバーカード関連、そしもう一つは日本版CDC、国立健康危機管理機構関連の法案です。2024年秋に健康保険証を廃止しマイナ保険証に一体化政府は3月7日、2024年秋に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一体化する関連法改正案を閣議決定しました。カードを持たない人には保険証の代わりに「資格確認書」を健保組合などの保険者が発行します。ただ、有効期限が1年の更新制となるだけでなく、医療機関を受診する際は現行と同様、マイナ保険証に比べて窓口負担が重くなります。マイナンバーカードを保険証として使うマイナ保険証については、昨年10月、河野 太郎デジタル大臣が一本化を表明して以来、この連載でも「第132回 健康保険証のマイナンバーカードへの一体化が正式決定、『懸念』発言続く日医は『医療情報プラットフォーム』が怖い?」などで度々書いてきました。今年2月には全国保険医団体連合会(保団連)が「健康保険証を廃止する理由は一つもない」として、法案撤回を厚生労働大臣に求める動きもありました。しかし、この閣議決定によって、マイナ保険証の普及・定着が加速されると共に、マイナンバーカード取得の事実上の義務化もなされたことになります。マイナンバーの利用範囲拡大で気になるHPKIカードの今後関連法案は、健康保険法やマイナンバー法など13の法律の改正案からなり、国会では束ね法案としてまとめて審議されます。マイナンバーは、利用できる範囲が法律で社会保障と税、それに災害対策の3分野に限定されていますが、今回の改正案によって国家資格の手続きや自動車に関わる登録、外国人の行政手続きなどの分野にも範囲が広がるとしています。さらに、こうした分野について、すでに法律に規定されている事務に「準ずる事務」であれば、法律を改正しなくてもマイナンバーの利用が可能になるとのことです。「国家資格の手続き」で思い出したのは、「第146回 病院・診療所16施設、薬局138施設と低調な滑り出しの電子処方箋、岸田首相肝いりの医療DXに暗雲?」で書いたHPKIカードの存在です。電子処方箋の発行に必要とされるHPKIカードは、厚生労働省が所管する医師をはじめとする27個の医療分野の国家資格を証明するためのシステムです。電子処方箋を発行する医師・歯科医師、そして電子処方箋を調剤済みにする薬剤師ごとにHPKIカードによる電子署名が必要とされています。ただ、2022年12月末時点で取得しているのは医師の11%、薬局の薬剤師の7%に留まっており、1月26日から運用開始となった電子処方箋が低調なスタートになった一因として指摘されていました。素人考えですが、マイナンバーカードも国家資格の手続きに使えるとなれば、HPKIカードはもう必要ないのではないでしょうか。厚生労働省の意向を汲んでHPKIカード導入の旗振りをしてきた医療関係団体への配慮はもちろん必要ですが、このデジタル社会、あえて古い仕組みに拘泥する理由はありません。この際、医療現場での医療者の資格確認も、基本マイナンバーカードに一本化すべきだと思いますが、皆さんいかがでしょう。国立健康危機管理研究機構設置は2025年以降同じ日、医療関連の政策でもう一つ閣議決定されたのは、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、新たな専門家組織として「国立健康危機管理研究機構」を設立する新法案です。米国で感染症対策を中心的に担う疾病対策センター(CDC)をモデルとする国立健康危機管理研究機構については、この連載でも「第140回 次のパンデミックに備え感染症法等改正、そう言えば感染症の『司令塔機能』の議論はどうなった?」でも書きました。いよいよ法案ができ、実現に向けて動き出したというわけです。なお、設立するための国立健康危機管理研究機構法案のほか、現在の両組織の業務を引き継ぎ、新たな業務を加えるため、感染症法や新型インフルエンザ等対策特別措置法、地域保健法も改正するとのことです。国立健康危機管理研究機構はCDCをモデルに、感染研の基礎研究と、国立国際医療研究センターの臨床医療のそれぞれの機能を併せ持つ、感染症研究の拠点を目指すとしています。内閣官房に設置する内閣感染症危機管理統括庁(内閣官房に秋ごろ設置予定)の求めに応じ、政策決定に必要な知見を提供したり、治療薬などの研究開発力を強化したりするとのことです。設置は2025年度以降としています。科学的根拠に基づいて政府に物が言える日本版CDCにこの連載の140回を書いた時点では不明だった法人形態ですが、特別の法律により設立される法人(特殊法人)で、政府が全額出資する形となります。厚生労働大臣による広範な監督権限が付与される予定で、理事長・監事は厚労大臣が任命、副理事長・理事は厚労大臣の認可を得て理事長が任命することとなりました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックで政策のご意見番として機能してきた「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」は、時として政府や厚労省が上手くコントロールできない状況もあったようです。そうした反省も踏まえての厚労省管轄の特殊法人と考えられます。しかし、新たに設立される国立健康危機管理研究機構では、逆に感染症対策において専門家を国がコントロールし過ぎたり、政府判断を追認するだけの専門家組織になってしまうのではないかという危険性も指摘されています。国の組織であっても、科学的根拠に基づいて政府にきちんと物が言えるような日本版CDCができることを願っています。

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第136回 マイナ保険証の代わりの資格確認書、窓口負担は増額の方針/厚労省

<先週の動き>1.マイナ保険証の代わりの資格確認書、窓口負担は増額の方針/厚労省2.健康保険証の廃止、マイナ保険証義務化に反対、医師274人が国を提訴へ/東京保険医協会3.「かかりつけ医機能」報告は、無床診療所も在宅医療機関も報告対象に/厚労省4.コロナ後遺症に対応する医療機関のリストを全都道府県で公表を/厚労省5.梅毒報告件数が過去最多に、3月に無料の即日検査などを実施/東京都6.製薬企業の寄付講座、大学内で不適切なメールを発信した医師が懲戒処分/広島大1.マイナ保険証の代わりの資格確認書、窓口負担は増額の方針/厚労省厚生労働大臣は2月24日の記者会見で、2024年秋に健康保険証の廃止に伴ってマイナンバーカードによる「マイナ保険証」を持たない人への資格確認書について、加藤厚労大臣は、患者の窓口負担を割高にする方針を明らかにした。厚生労働省は、デジタル庁の「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」の中間取りまとめについての議論のため、同日に社会保障審議会医療保険部会を開催した。これによれば、マイナンバーカードを取得せず、オンライン資格認証が得られない人については、無償で資格確認書を発行するが、有効期間は最大1年となる見込み。なお、デジタル庁はマイナンバーカードの申請を推進のため、カード申請すると2万円分のマイナポイントを付与してきたが、このキャンペーンによる申請期限については2月28日までとして延期は行わないとしている。(参考)「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」中間とりまとめについて(厚労省)資格確認書の無償発行に異論なし 社保審・医療保険部会(CB news)医療の窓口負担、「資格確認書」ならマイナ保険証より割高に 厚労相(朝日新聞)2万円付与のマイナポイント、カード申請期限は2月28日まで-「延長はしない」と河野大臣(CNET Japan)2.健康保険証の廃止、マイナ保険証義務化に反対、医師274人が国を提訴へ/東京保険医協会政府が進めている、2024年秋に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードを健康保険証として運用する「マイナ保険証」の導入を、医療機関に義務付けたのは違法だとして、東京保険医協会の医師、歯科医ら274人が2月22日に、国に対してマイナ保険証の導入義務の無効と1人10万円の慰謝料を求める訴訟を東京地裁に起こした。東京保険医協会は、去年12月にまとめられた中医協の答申書に対して、12月26日に厳重な抗議をしていたが、オンライン資格確認のシステム導入の原則義務化の撤回を求めていた。(参考)オンライン資格確認 「義務化」撤回訴訟へ(東京保険医協会)マイナ保険証、導入義務化は違憲 保険医274人が東京地裁に提訴(毎日新聞)“マイナ保険証 導入義務はリスク負担大きい” 医師ら提訴(NHK)3.「かかりつけ医機能」報告は、無床診療所も在宅医療機関も報告対象に/厚労省岸田内閣は2月24日に、全世代型社会保障構築会議を開き、持続可能な社会保障制度を構築するために、健康保険法などの改正案について議論した。この改正案には、出産育児一時金を後期高齢者医療制度からの支援金の導入のほか、後期高齢者医療制度の後期高齢者負担率の見直し、かかりつけ医機能が発揮される報告制度についても含まれている。出席した委員からは、厚生労働省が従来から行なっている「病床機能報告」と令和7年4月から開始される「かかりつけ医機能」の報告制度との違いについて質問があり、担当官から「『かかりつけ医機能』報告の対象には無床診療所や、在宅医療機関が含まれる」と回答がなされた。今後、具体化がさらに進む見込み。(参考)「かかりつけ医機能」報告、無床診なども対象 厚労省が見通し示す(CB news)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案について(全世代型社保構築会議)(内閣府)4.コロナ後遺症に対応する医療機関のリストを全都道府県で公表を/厚労省厚生労働省は全国の都道府県に対し、コロナ後遺症の患者を診療する専門医療機関のリストを4月28日までにホームページなどで公表するよう、2月20日付で事務連絡を行った。厚労省によれば、2月現在でリストを公表しているのは約4割の都道府県にとどまっており、格差が認められている。国立国際医療研究センターの報告によれば、新型コロナウイルス感染の後遺症は、感染から1年半後にも4人に1人が記憶障害や集中力の低下、嗅覚異常といった後遺症を訴えていることが明らかになっている。(参考)新型コロナウイルス感染症の罹患後症状に悩む方の診療をしている医療機関の選定及び公表等について(厚労省)コロナ後遺症を診る医療機関、都道府県に選定と公表を要請 厚労省(朝日新聞)コロナ後遺症対応医療機関のリスト公表へ 厚労省、都道府県に作成要請(CB news)「コロナ後遺症の専門医療機関」を各都道府県で本年(2023年)4月28日までに選定し、公表せよ-厚労省(Gem Med)“コロナ後遺症” 症状と傾向は 感染1年半後でも4人に1人が訴え(NHK)Epidemiology of post-COVID conditions beyond 1 year:a cross-sectional study.5.梅毒報告件数が過去最多に、3月に無料の即日検査などを実施/東京都東京都は都内の令和4年の梅毒報告数が3,677件と、平成11(1999)年の調査開始以来、過去最多になったと発表した。最近は女性の報告数が増加しており、直近10年で約40倍なっている。年齢別では、男性は20~50代、女性は20代が多くを占めている。東京都は梅毒の急増に対応するため、3月に梅毒に関する正しい知識の普及と早期発見に向けて、即日検査を行うほか、3月22日には医療従事者向けオンライン講習会の実施など集中的な取り組みを行う。(参考)梅毒患者が過去最多、女性は10年で40倍 都内で昨年3,677人(朝日新聞)性感染症の梅毒が急増 来月 無料の検査会場設置へ 東京都(NHK)都内で梅毒が急増しています!3月にとくべつ検査など早期発見・治療につながる取組を行います(東京都)6.製薬企業の寄付講座、大学内で不適切なメールを発信した医師が懲戒処分/広島大学広島大学は2月22日に、製薬企業の寄付金によって開設された寄付講座の医師が、不正行為をしたとの公益通報を受け、調査の結果、同僚医師らへ不適切なメール送信を行なったことを確認したと発表した。不適切とされたメールは寄付金を受けた製薬企業の製品の使用推奨を求める内容で、医師の行為は違法行為に当たらないが、利益相反の観点で、不適切な行為とし、2ヵ月の停職とする懲戒処分としたが、同日付で医師は依願退職した。大学によれば、この寄付講座は2018年度に開設され、製薬企業から3年間で4,500万円を拠出を受けた。医師は同僚向けのメールに「院内採用が条件で寄付の2年延長が約束された」と記載し、2019年12月、当該の医薬品が院内採用が決まった後は処方を働きかけていた。(参考)広島大医師が不適切メール 寄付講座巡り、違法性否定(共同通信)製薬会社の寄付講座巡り不適切メール 広島大医師を懲戒処分(産経新聞)広大 “利益相反の観点から問題あった” 寄付講座めぐり謝罪(NHK)広島大学 寄付講座めぐり医師がグラクティブの使用働き掛け「利益相反の観点から問題」調査会が報告書(ミクスオンライン)

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第149回 医師免許はそんなに簡単に不正取得できるのか?ALS嘱託殺人で発覚した厚生労働省の“謎ルート”

厚生労働省の手続きの瑕疵を批判する声は意外と少ないこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末、関東は寒気が去って暖かい陽気となりました。近所にある梅も七分咲きとなり、春が近づいているのを感じました。同時に花粉も飛び始めたようで、早速アレロックを飲む羽目となりました。ただ、今年は花粉症と新型コロナウイルス感染症の鑑別云々といった報道はほとんどみられません。こちらもやっと“春到来”ということのようです。さて、今回は難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の嘱託殺人事件の捜査途上で発覚した、医師免許の不正取得事件について書いてみたいと思います。20年ほど前に事件となった大学医学部の裏口入学や、5年前に事件となった女性や複数年浪人生に対する不当な差別入試は大々的に報道され、社会問題ともなりました。しかし、この医師免許の不正取得については、厚生労働省の手続きの瑕疵を批判する声は意外と少なく、あまり話題になっていません。謎です。嘱託殺人事件の捜査の過程で医師免許不正取得も明らかに2月7日、京都地方裁判所は、難病のALSの患者を本人の依頼で殺害したとして嘱託殺人の罪で起訴された元医師・山本 直樹被告(45)に対し、この事件とは別に自分の父親を殺害した罪に問われた裁判員裁判において、懲役13年を言い渡しました。山本被告は20日までにこの判決を不服として控訴しました。山本被告は12年前、ALS患者の嘱託殺人の罪で同じく起訴されている医師の大久保 愉一被告(44)と自分の母親と共に、父親(当時77)を入院先の病院から連れ出し、何らかの方法で殺害したとして、殺人の罪に問われていました。山本被告と大久保被告が2019年に、難病のALSを患っていた京都市の女性から依頼を受けて殺害した嘱託殺人事件については、事件発覚当時、本連載の「第17回 安楽死? 京都ALS患者嘱託殺人事件をどう考えるか(前編)」、「第18回 同(後編)」でも書きました。各紙報道等によれば、山本被告と大久保被告は学生時代に知り合ったそうです。その後、病死に見せかけて高齢者を殺害する方法を説く電子書籍を共著で出版。大久保被告はブログなどで安楽死を肯定する持論を展開するなどし、ALS患者の嘱託殺人へとつながっていったと見られています。この嘱託殺人事件の捜査の過程で、山本被告の父親の殺人事件が浮上し、さらに山本被告の医師免許不正取得も明らかとなりました。医政局医事課に務めていた大久保被告のアドバイス山本被告は灘高校卒業後、浪人を経て東京医科歯科大学に入学するも、2006年に学費未納で中退しています。その後、韓国の医師免許を取得したとして、2009年10月付で日本の医師国家試験の受験資格認定を受け、翌2010年の国家試験に合格し、医師免許を取得しました。報道等によれば、医師免許の不正取得は、当時厚労省医政局医事課に試験専門官として務めていた大久保被告のアドバイスに従ったとのことです。山本被告は裁判で「恥ずかしく申し訳ないことだが、大久保被告の提案で、韓国の医大を卒業したという嘘の書類を厚労省に提出して資格を得た」と話しています。国外の医学部を卒業し医師国家試験を受けるルートとは山本被告は、「韓国の医大を卒業した」という嘘の書類で日本の医師国家試験の受験資格を得て同試験を受験、見事合格して医師免許を得たわけです。少なくとも国家試験に合格するだけの医学知識、学力等はあったということになります。さすが灘高出身です。そもそも海外の医大の卒業資格で日本の医師国家試験を受けるというのは、どんな仕組みなのでしょうか。日本で医師の資格を得るには、通常国内の医学部で6年間学んで卒業し、国家試験を受ける必要があります。一方、海外の医学部を卒業した場合、厚生労働大臣の受験資格認定が必要となります。その場合、現状では2つのルートがあります。1)医師国家試験の受験資格認定を受け、医師国家試験を受ける。2)医師国家試験予備試験受験資格認定を受け、その後医師国家試験予備試験を受験、同試験に合格してから、さらに1年以上の診療及び公衆衛生に関する実地修練の後に、医師国家試験を受験する。2)の予備試験受験資格は、先進国並みの医師養成カリキュラムがない後進国で医師教育を受けた人向けで、予備試験、本試験と関門が2つあることになります。なお、受験資格認定には医師教育を受けた国の医師免許が必要ですが、予備試験受験資格認定には医師教育を受けた国の医師免許がなくても受けられるようです。ちなみに2022年2月に実施された第116回医師国家試験では1万61人の受験者のうち合格者は9,222人、合格率は91.7%でした。このうち、前者の受験資格認定と後者の予備試験受験資格認定からの受験者は160人で合格者は78人、合格率48.8%と国内医学部からの受験生の合格率の約半分でした。海外医学部卒業証明書や海外医師免許証の写しが欠落、医師免許取り消しに山本被告については、韓国の医師免許を取得したとして受験資格を得ているので、2)ではなく、認定されれば受験できる1)のルートを取ったとみられます。ただ、煩雑な書類作成に加え、厚労省の厳格な書類審査もあるため、医政局医事課の試験専門官だった大久保被告がどのような手順で山本被告に受験資格を与えることができたか、多くの謎が残ります。事件発覚後の2021年12月24日、厚労省は「医師国家試験の受験資格を満たしていなかった」として、厚生労働大臣の職権で山本被告の医師免許を取得した2010年5月7日まで遡って取り消した、と発表しました。報道等によれば、厚労省が受験資格認定申請書を改めて確認したところ、山本被告の海外医学部卒業証明書や海外医師免許証の写しが欠落していたとのことです。また、韓国で大学に通えるだけの出国期間も確認できませんでした。厚労省は当時の医事課職員に調査したものの受理した職員を特定できず、さらに山本被告は同省の聞き取りを拒んだとのことです。厚労省は、「海外医学部の卒業証明書は複数の職員で原本を確認するなど、再発防止に努める」としましたが、受験資格認定がずさんだった理由についてはきちんと説明がされていません。まだ他にも受験資格認定を不正に受け、医師免許を不正取得した医師がいる可能性はあります。もし、そうだとしたら大問題です。ひょっとしたら、厚労省はこの問題がうやむやになるのを待っているのかもしれません。本丸である大久保被告の裁判で、そのあたりの謎も解明されることを願います。メキシコから帰国して国家試験をすべり続けた友人の教訓とここまで書いてきて、高校時代のある友人のことを思い出しました。彼は医師の子弟でしたが、日本の医学部に合格できるだけの学力がつかず、数年浪人した後、メキシコの医大に入学しました。そこで無事医師となり、現地で心臓カテーテル治療の名医となりました。メキシコで結婚し、奥さんもできたのですが、日本の父親から家を継げと懇願されて渋々帰国。日本の病院でカテーテル検査の“手伝い”をしながら、日本の医師国家試験の受験勉強をしました。25年ほど前、メキシコの医師免許が受験資格認定対象だったのか予備試験受験資格だったのかはわかりませんが、何度かすべり、最終的に彼は医師国家試験に合格できず、日本で医師として働く道は閉ざされてしまいました。もう10年以上会っていないので、彼が今何をしているかわかりません。ただお金を積んで海外で医師になっても、最終的に日本の医師国家試験を合格できるだけの“頭”がないと、その後は大変だなと感じた次第です。ちなみに最近では、医師志望者向けのハンガリーの医大の広告を度々見かけますが、厚労省の「医師国家試験受験資格認定について」のサイト1)には、こんな注意書きが赤字で書かれてあります。最近、卒業後に日本の医師国家試験の受験資格が得られる旨認可を厚生労働省から受けていること等を示して、外国の医学校への入学を勧誘する広告を行っている例が見受けられますが、厚生労働省は、外国の医学校を卒業した方から、医師国家試験の受験資格認定の申請があった後に、当該申請者個々人の能力や、当該申請者が受けた教育等を審査することとなっており、海外の医学校等に対し、当該医学部の卒業生への医師国家試験の受験資格を一律に認定することはありません。このため、こうした外国の医学校等を卒業されても、日本の医師国家試験の受験資格が認められないことが十分想定されますのでご注意下さい。現在、2023年の医学部入試がたけなわです。メキシコの医大に行った私の友人のように、どれだけ勉強しても学力がつかない子供をどうしても医学部に入れたい、医師にしたい、と考えている親御さんは重々お気を付けください。参考1)医師国家試験受験資格認定について/厚生労働省

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「骨転移診療ガイドライン」-新たな課題を認識しつつ改訂

 『骨転移診療ガイドライン』の改訂第2版が2022年12月に発刊された。2015年に初版発刊後、骨修飾薬の使用方法や骨関連事象のマネジメントなどの医学的エビデンスが蓄積されてきたことを踏まえ、7年ぶりの改訂となる。今回、骨転移診療ガイドライン作成ワーキンググループのリーダーを務めた柴田 浩行氏(秋田大学大学院医学系研究科臨床腫瘍学講座)に、2022年の改訂のポイントや疫学的データの収集などの課題について話を聞いた。骨転移診療ガイドラインは機能維持を念頭に置いた がん治療で病巣を取り除けたとしても身体機能の低下によって生活の質(QOL)が低下してしまっては、患者の生きがいまでも損なわれてしまうかもしれない。骨転移はすべてのがんで遭遇する可能性があり1)柴田氏らはがん患者の骨転移がもたらす身体機能の低下をいかにして防ぐことができるのかを念頭に置いて『骨転移診療ガイドライン』を作成した。「骨転移が生じる患者の多くはStageIVではあるが、外科的介入に対するエビデンスが蓄積されつつあることから、今回の改訂には多くの整形外科医にご参加いただき、外科領域のClinical Questionを増やした」と話し、「作成メンバーが、診断・外科・放射線・緩和・リハビリテーションと看護の5領域に分かれて取り組んだ点も成果に良く反映されている」と骨転移診療ガイドライン作成時の体制について説明した。 治療については、上市から10年が経過した骨修飾薬(BMA:ビスホスホネート製剤、RANKL抗体薬)に関する長期経過報告がまとめられ、近年では骨修飾薬を投与することで骨関連事象の発生が低下していること、骨修飾薬投与前の歯科検診や投与中のカルシウム値の補正が行われていることなどが示された(p.15 総説3)。一方で、その投与間隔や至適投与期間を有害事象やコスト面から検討する必要性も指摘され課題になっている。 それらを踏まえ、「標準的な診療の概要を示し、骨転移患者の診療プロセスの改善や患者アウトカムの改善を期すること」を目的とし、4つの総説(1.骨転移の病態、2.骨転移の診断、3.骨転移の治療とケア、4.高齢者・サルコペニア・フレイル患者の骨転移治療)、Background Question(36個)、Clinical Question(38個)、Future Research Question(41個)を盛り込んだ。骨転移診療ガイドラインで読んでおきたい項目 『骨転移診療ガイドライン』を作成し、その成果をモニターする上で疫学的な情報は不可欠であるが、「骨転移の実態を知ることはなかなかに困難である」と同氏は話した。がんの罹患状況は2016年に厚生労働省がスタートさせた『全国がん登録』2)の集計結果などを参考にするが、そこには遠隔転移の記載のみで、骨転移を含む個別の転移部位については登録されない。結果、がんの『転移部位』はすべて“転移”に包含されてしまい、どの部位への転移なのかを入力する項目がないことから、「その集計結果から骨転移の実数などを把握できない。現在の骨転移に関する必要情報はカルテを直接調べるしかないのが実情」と残念がった。なお、『骨転移診療ガイドライン』には日本の調査例として胸椎~腰椎の組織学的骨転移の剖検報告3)が示されており、それによると乳がんや前立腺がんでは75%、肺がんや甲状腺がんでは50%、消化器がん(消化器、肝胆膵)では20%前後の骨転移が認められている。このデータは約25年前のものであるが、2010~16年に米国の医療保険データベースを用いた研究結果と傾向は同様であった(p.2 総説1)。 このほか、『骨転移診療ガイドライン』で読んでおきたい項目は以下のとおり。・CQ5「骨転移を有する原発不明がん患者において、骨転移巣を用いた遺伝子パネル検査は原発巣の同定に有効か?」・CQ8「病的骨折や切迫骨折のリスクのある四肢長管骨の骨転移に手術は有効か?」・CQ19「過去に外照射を受けた骨転移の痛みの緩和に再照射は有効か?」・CQ37「去勢抵抗性前立腺がん骨転移においてラジウム-223内用療法は有効か?」・FRQ31「骨転移の治療に外照射と骨修飾薬(BMA)の併用は有効か?」・FRQ32「骨代謝マーカーは骨転移を有するがん患者の治療モニタリングに有用か?」・FRQ39「病的骨折のある患者の外科的治療後にリハビリテーション医療は有用か?」・FRQ40「痛みのある骨転移患者に対するマネジメント教育は有効か?」骨転移診療ガイドラインの作成から患者の未来を変えたい さらに同氏は「ガイドラインの改訂というのは医療者側の知識のアップデートだけではなく、患者への骨転移の病態啓発や、骨転移に関する症状の有無を問診する際などの医師と患者の医療面接おいても重要」だと話した。さらに骨転移診療ガイドラインの内容を基に同氏は患者が理解を深めやすい資料作成にも意欲的に取り組み、秋田大学医学部附属病院ではオリジナル漫画を患者に配布している。また、昨今、盛んに行われる骨転移キャンサーボードも「多施設間で行うことも新たな情報や知識、視点が加わることになるので実施することをお薦めする」と話した。 ガイドラインは発刊後もその使用状況や患者アウトカムの改善についてモニタリングが必要で、作成して終わりではない。『骨転移診療ガイドライン』の場合は発刊1年以降を目途に、臨床的アウトカム(1:骨転移のがん種別頻度、2:外科的介入の割合、3:放射線治療の割合、4:骨修飾薬の使用割合、5:ADLの評価[通院、入院治療の別]など)への影響に関して調査を行う予定である点にも触れた。 最後に同氏はガイドラインを山登りに例え、「ガイドラインは“山岳ガイド”のようなもの。トップクライマーは遭難のリスクを冒してでも前人未踏の頂きを目指すかもしれないが、山岳ガイドは登山客を遭難させる冒険はできない。派手さはなくとも、安全に、確実に登頂できるように先導することが重要。もちろん、もっと高い頂きを目指す必要は常にあるが、現状でそれが無理なら技術を磨いたりルートを開拓したりする必要がある」と話し、医師の知識のアップデートに留まらず、患者一人ひとりの病態に応じて参考にされることや骨転移診療ガイドラインの課題が新たな臨床試験の推進力になることを願った。

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SNRI使用と口渇リスク

 口腔乾燥症や口渇は唾液量の減少および欠如を起因とする状態であり、特定の薬剤の使用に続発してみられる。Joseph Katz氏らは、口腔乾燥症患者とセロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)使用との関連を分析した。その結果、SNRIを使用している患者は、使用していない患者と比較し、口渇リスクが約5倍であることが明らかとなった。結果を踏まえて著者らは、SNRIを処方する専門医、唾液の産生やQOLへのSNRIによる影響を認識していない医師、口腔乾燥症の治療に携わっている歯科医師にとって、本結果は有益な情報であろうと報告している。Quintessence International誌オンライン版2023年1月10日号の報告。 2015年6月~2022年9月の期間に、米国・フロリダ大学の統合データであるi2b2を用いて、口渇の診断(ICD-10)およびSNRI使用に関するデータを抽出した。オッズ比の算出には、MedCalc Softwareを用いた。 主な結果は以下のとおり。・SNRI使用の口渇リスクのオッズ比は、5.95(95%CI:5.47~6.48、p<0.0001)であった。・性別または年代別のSNRI使用による口渇リスクのオッズ比は、以下のとおりであった。 ●女性:5.48(95%CI:4.97~6.02、p<0.0001) ●男性:5.48(同:4.56~6.95、p<0.0001) ●小児:2.87(同:1.19~6.96、p=0.0192) ●成人:4.46(同:4.09~4.86、p<0.0001)・使用するSNRIごとの口渇リスクのオッズ比は、以下のとおりであった。 ●ベンラファキシン:5.83(同:5.12~6.60、p<0.0001) ●デュロキセチン:6.97(同:6.33~7.67、p<0.0001) ●desvenlafaxine:5.24(同:3.65~7.52、p<0.0001) ●ミルナシプラン:9.61(同:5.66~16.31、p<0.0001)

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第146回 病院・診療所16施設、薬局138施設と低調な滑り出しの電子処方箋、岸田首相肝いりの医療DXに暗雲?

コロナ5類移行は5月8日に決定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。政府は1月27日、新型コロナウイルスの感染症法上の分類を5月8日に「5類」に引き下げることを正式決定しました。5類移行後は新型インフルエンザ等対策特別措置法の適用外となり、入院勧告や行動制限といった強い措置は取られなくなります。特措法に基づく緊急事態宣言やまん延防止等重点措置もなくなり、飲食店の営業時間の短縮といった要請もできなくなります。コロナ疑いの発熱患者は、原則すべての一般医療機関で受診できるよう対応施設を段階的に広げていくとしています。治療や入院といった医療費の公費負担は段階的に縮小する方針です。マスク着用の指針も緩和されます。原則着用を求めていた屋内については、個人の判断に委ねるようにする方針です。諸々の具体策は3月上旬を目処に公表するとしています。この180度の方針転換に日本国民は果たしてついていけるでしょうか?「屋外では季節を問わずマスクの着用は原則不要」との方針が国から示されているのに、大半の人が屋外でも未だに律儀にマスクをしています(飲み屋ではマスクを外して大声で話していますが)。5月連休明けに国民がどんな動きをするか見ものです。マイナ保険証の基盤である「オンライン資格確認等システム」を用いた仕組みさて今回は1月26日から運用開始となった電子処方箋について書いてみたいと思います。厚生労働省は26日から運用が始まった電子処方箋について、対応する医療機関・薬局のリストをホームページで公表しました。1月25日に公表した対応施設は154施設(うち病院・診療所16施設、薬局138施設)ときわめて低調な滑り出しとなりました。電子処方箋は、これまでの紙で交付していた処方箋をデジタル情報にし、オンラインでやりとりを行うというもの。医師は患者に電子処方箋の番号を伝え、薬剤師は患者の示した番号をもとにネットで処方箋情報を閲覧し処方します。マイナ保険証の基盤である「オンライン資格確認等システム」を用いた仕組みで、国が推進しようとしている医療DXの柱の一つに位置付けられています。厚生労働省のホームページなどによれば、電子処方箋によって医療機関・薬局間の処方箋のやり取りが効率化されるとされています。とくに医療機関には、処方箋の発行業務の効率化や、処方データを活用した診察・処方の実現が期待されています。薬局には、処方箋の受付に関わる業務の効率化や、処方データを活用した調剤、服薬指導の実現が期待されています。一方、患者自身も電子的に記録された処方薬のデータを自ら閲覧できるため、健康管理にも寄与すると期待されています。「オンライン資格確認等システム」を導入する医療機関はまだまだ少ないそれなのに、スタート時のこの低調ぶりはなんでしょう。厚生労働省は1月からの運用スタートに向け、幾度も医療機関向けの説明会を開いてきました。直近では昨年12月にオンラインによる説明会を開いています。大きな課題の一つは、マイナ保険証の基盤である「オンライン資格確認等システム」を導入する医療機関がまだまだ少ない点です。導入が進んでいるのは対象となる医療機関や薬局のうち45%に留まっているとのことです(1月15日時点)。マイナ保険証の本格運用は、電子処方箋より1年4ヵ月も早い2021年10月にスタートしています。それでも普及は遅く、業を煮やした政府は2022年8月、オンライン資格確認(いわゆるマイナンバーカードの保険証利用)導入の2023年4月からの原則義務化を決定しました。また、従来保険証の2024年秋の廃止も決定しています(「第124回 医療DXの要「マイナ保険証」定着に向けて日医を取り込む国・厚労省の狙いとは(前編)未対応は最悪保険医取り消しも」、「第125回 同(後編)かかりつけ医制度の議論を目くらましにDX推進?」参照)。もっとも、世界的な半導体不足、専用機器の納入遅れ、医療機関に出向きシステム改修を行う業者不足などもあって、全国の病院や診療所におけるシステム導入は遅れています。結局、オンライン資格確認の原則義務化には半年の猶予期間が設けられ、期限は2023年9月末に変更されています。ちなみにこのシステム改修を行う業者不足は電子処方箋対応にも影響が出ていて、NHKニュースなどの報道によれば、電子処方箋のモデル事業を行った山形県酒田市では、あわせて23の医療機関や薬局が参加することになっていましたが、実際に1月26日時点で運用が始まったのは5つの施設に留まっているとのことです。HPKIカードの取得は医師で11%もう一つの大きな課題は、処方箋の発行や閲覧に必要な「HPKIカード」の取得が進んでいないことです。HPKIは「Healthcare Public Key Infrastructure」の略称で、厚生労働省が所管する医師をはじめとする27個の医療分野の国家資格を証明することができる仕組みです。電子処方箋を発行する医師・歯科医師、電子処方箋を調剤済みにする薬剤師ごとに、HPKIカードによる電子署名が必要とされています。しかし、2022年12月末時点で取得しているのは医師の11%、薬局の薬剤師の7%に留まっているそうです。その背景には資格確認システムに対する政府の曖昧な姿勢もあるようです。1月22日付の日本経済新聞は「電子処方箋、低調なスタートに 医師ら資格取得1割のみ」と題する記事でHPKIカード取得の低さを報じるとともに、「資格取得に関する政府の姿勢があいまいなことが足を引っ張る」と書いています。HPKIカードの利用を始めるには発行費用がかかることに加え、カードリーダーの購入、ソフトウェアのインストールなど結構な手間がかかります。しかし、今回運用がスタートした電子処方箋以外に医療現場で必要とされる場面がないため、普及してきませんでした。その一方で、政府はマイナンバーカードの用途拡大を進めようとしています。医療者の資格確認もマイナンバーカードに一本化すべきだという意見も出てきています。マイナンバーカードは運転免許証とも紐付け可能なのですから、医師などの国家資格との紐付けもやろうと思えばすぐにでもできそうです。しかし、HPKIカード導入の旗振りをしてきた医療関係団体や、既に導入した医療機関等への遠慮もあってか、今後の方針を明確に打ち出せない状況のようです。マイナンバーカードは「デジタル社会のパスポート」と岸田首相コンピューターやネットの世界は日進月歩で、いつまでも古いシステムや仕組みにこだわっていては、円滑な普及が妨げられてしまうのは世の常です。マイナンバーカードを医療者が常時携行することの是非はともかく、何種類ものカードがあって、それらが混在して運用されるシステムが望ましいかと言えば、それは否でしょう。岸田 文雄首相は23日に開会した通常国会の施政方針演説で、マイナンバーカードは、「デジタル社会のパスポート」だと重要性を強調、「医療面では、スマートフォン一つあれば、診察券も保険証も持たずに、医療機関の受診や薬剤情報の確認ができるようになる」とメリットを説明しました。「デジタル社会のパスポート」というなら、医療者の資格確認もこれでやってしまったほうがシンプルだし、わかりやすいと思います。電子処方箋について言えば、より普及させ、患者にとっての利便性を高めるために、「第126回 アマゾン処方薬ネット販売と零売薬局、デジタルとアナログ、その落差と共通点(前編)」、「第127回 同(後編)」でも書いたように、服薬指導のプロセスの見直しもぜひ検討してもらいたいと思います。もし、患者の希望によって、あるいは一部の薬剤においてそのプロセスを省略することができれば、電子処方箋の運用はもっとスムーズになるはずだからです。たとえば患者はオンライン診療を受けるだけで(オンライン服薬指導を受けなくても)、薬剤が手元に届くようになればどれだけ便利でしょう。それこそDXの世界だと思いますが、皆さんいかがでしょう。

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第131回 新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府

<先週の動き>1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府岸田総理は、感染症法で現在「2類相当」として取り扱っている新型コロナウイルスについて重症化率が2022年夏時点で60歳未満が0.01%、80歳以上でも1.86%と季節性インフルエンザ並みになったとして、麻疹や風疹と同じ「5類」扱いとする方針を固めた。今後は、一般の医療機関でも新型コロナウイルスの患者の受け入れは可能としている。厚生労働省では、ワクチンの公費負担での接種対象を高齢者とするほか屋内でのマスク着用のあり方など、今後の方針について検討を開始している。来週には、専門家からなる厚生科学審議会で今後の方針について議論を行う。(参考)新型コロナ 今春「5類」移行検討 公費負担など本格議論へ(NHK)コロナ「5類」移行、5月の連休前後案も…ワクチン公費負担は高齢者ら限定検討 (読売新聞)コロナ、今春にも「5類」に 首相指示、公費負担縮小へ マスク着用「見直す」(日経新聞)2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重三重大学附属病院の臨床麻酔部において、薬の処方の見返りに、奨学寄付金を受け取ったことで、第三者供賄罪と詐欺罪に問われた元教授の被告に対して、1月19日津地方裁判所は、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を言い渡した。判決によれば、2018年3月に、被告に対して小野薬品工業の薬剤「オノアクト」を大量に発注するように依頼された見返りに、被告が代表を務める一般社団法人に現金200万円を振り込ませた疑い。さらに、2019年から2020年には、手術患者60人あまりに対して、この薬剤を使用したように装って、未投薬にもかかわらず、約82万円の診療報酬を詐取した。被告は、この他に元講師と共謀して日本光電工業(東京都)の医療機器納入で便宜供与の見返りに、一般社団法人の口座に寄付金名目で200万円を振り込ませていた。(参考)三重大病院元教授に有罪判決 薬剤納入で供賄と詐欺罪 地裁判決(毎日新聞)病院汚職200万円は「賄賂」 地裁判決 三重大元教授有罪(読売新聞)三重大病院汚職事件 元教授に執行猶予付き有罪判決(NHK)3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省厚生労働省は1月19日に「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」を開催し、昨年「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」からの提言を踏まえて定められた、がん診療連携拠点病院等の整備指針に基づき、2023年4月から「がん診療連携病院」を新たに指定することとした。全国の都道府県がん診療連携拠点病院は一般型49施設、特例型2施設、地域がん診療連携拠点病院は一般型325施設などが指定される見込み。検討会の意見を踏ませて、加藤厚労大臣が指定の手続きを行い、本年4月1日から新たながん診療拠点として指定される。なお、一部の病院では指定要件を充足していないため指定を見送ることも検討されたが、充足の見込みがたっておらず「空白医療圏」となってしまうため指定となった病院もみられた。(参考)都道府県がん拠点病院51施設、地域がん拠点病院350施設など、本年(2023年)4月1日から新指定-がん拠点病院指定検討会(Gem Med)第22回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会(厚労省)がん診療連携拠点病院の指定要件(同)4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省厚生労働省は、1月16日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、オンライン資格確認などシステムについて討議を行った。今年4月に施行される保険医療機関・薬局のオンライン資格確認導入の義務化について、令和4年度末時点で「現在紙レセプトでの請求が認められている医療機関・薬局」については、やむを得ない事情があるとして、期限付きの経過措置を設けられたが、猶予期間の延長について、保険者らからは延長を懸念する声が上がった。医療機関・薬局でのオンライン資格確認システムの導入は、顔認証付きカードリーダー申込数は、義務化対象施設では97.7%と高いものの、準備完了は義務化対象施設でも52.6%と伸び悩みがみられていることが明らかになった。国としては、来年秋には、現行の健康保険証がマイナンバーカードに1本化されることもあり、令和5年3月末までのさらなる導入の加速化を図りたいとしている。(参考)第162回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)マイナカード、進まぬ活用 医療、免許どうなるか(産経新聞)オンライン資格確認、電子処方箋など医療DXの推進には国民の理解が不可欠、十分かつ丁寧な広報に力を入れよ-社保審・医療保険部会(Gem Med)オンライン資格確認の導入猶予、延長をけん制 社保審・部会で複数委員(CB news)5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に東京工業大学と東京医科歯科大学が2024年に統合されるのを受けて、大学側は新たな大学の名称を「東京科学大学(英語表記:Institute of Science Tokyo)」とすることを1月19日に発表した。両大学は新大学の目指す姿として、「両大学の尖った研究をさらに推進」、「部局などを超えて連携協働し『コンバージェンス・サイエンス』を展開」、「総合知に基づき未来を切り拓く高度専門人材の輩出」、「イノベーションを生み出す多様性、包摂性、公平性を持つ文化」を謳っており、できる限り早期の統合を目指して、今月中に大学設置・学校法人審議会へ提出することを決定している。(参考)新大学名称を「東京科学大学(仮称)」として 大学設置・学校法人審議会への提出を決定(東京医科歯科大学)東工大・医科歯科大、統合後の新名称「東京科学大学」に(日経新聞)東京科学大「皆が覚えられる名に」「親しみが大事」…「工業」「医科」使用も見送り(読売新聞)「東京科学大学」正式発表、略称は「科学大」…英語「Institute of Science Tokyo」(同)6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府内閣官房内閣サイバーセキュリティセンターは、近年、サイバー攻撃の脅威の高まりを受けて、被害を受けた組織が攻撃の内容や被害情報について外部に共有するためのガイダンス案を作成し、現在パブリックコメントを募集している。日本病院会の相澤会長は、1月17日の定例記者会見で、サイバーセキュリティに関する責任の範囲について統一基準を明確化するとともに費用負担について国側に求める方針を明らかにした。今後、日本病院会はサイバー攻撃に対する対応について、厚生労働省に対して提言をまとめたいとしている。なお、パブリックコメントは1月30日が締切となっている。(参考)「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス(案)」に関する意見募集について(内閣府)サイバー攻撃被害「枠組み超えた情報連携が必要」内閣官房がガイダンス案公表、フローやFAQも(CB news)サイバーセキュリティ対策における医療機関・ベンダー等の間の責任分解、現場に委ねず、国が「統一方針」示すべき?日病・相澤会長(Gem Med)

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日本人統合失調症入院患者における残存歯数とBMIとの関係

 統合失調症入院患者において、BMIに対する歯の状態の影響に関するエビデンスはほとんどない。新潟大学の大竹 将貴氏らは、日本人統合失調症入院患者の残存歯数とBMIとの関連を調査するため、横断的研究を実施した。その結果、歯の喪失や抗精神病薬の多剤併用が統合失調症入院患者のBMIに影響を及ぼすこと、また、統合失調症入院患者は一般集団よりも歯の喪失が多いことが示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月7日号の報告。 統合失調症入院患者212例を対象に、BMIに対する潜在的な予想因子(年齢、性別、残存歯数、抗精神病薬処方数、クロルプロマジン換算量、抗精神病薬の種類)の影響を評価するため、重回帰分析を行った。次に、統合失調症入院患者と日本人一般集団3,283例(平成28年歯科疾患実態調査[2016年])の残存歯数を比較するため、年齢および性別を共変量として共分散分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・重回帰分析では、残存歯数(標準偏回帰係数:0.201)と抗精神病薬処方数(同:0.235)がBMIと有意に相関していることが示された。・共分散分析では、統合失調症入院患者の平均残存歯数(14.8±10.9)は、日本人一般集団(23.0±8.1)と比較し有意に少なかった。

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第140回 次のパンデミックに備え感染症法等改正、そう言えば感染症の「司令塔機能」の議論はどうなった?

改正感染症法案、岸田文雄首相の約束通り今国会で成立こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、友人の版画家、宇田川 新聞氏の個展「木版画パラダイス」を観に、池袋のB-galleryに行って来ました。「宇田川新聞」と言われても、ピンと来ないかもしれませんが、テレビ東京系で放映されている「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」1)で、赤色、緑色、黒色を使った特徴的なイラストを描いている(厳密には彫っている)版画家と言えばおわかりかと思います。芸能人の表情を絶妙にとらえたシンプルでほのぼのとした版画は、いつ見てもほっとします。彼女(女性です)との付き合いはもう25年近くになりますが、最近の売れっ子ぶりには頭が下がります。ただ、ギャラリーで「オリジナルの作品より、出川番組関連の版画の方が多いんじゃない?」と本音を言ったら、しょぼんとうなだれていました。芸術家は扱いが難しいです。あの独特の版画の実物を見たい方はぜひ覗いてみて下さい2)。さて、今回は先ごろ成立した感染症法改正と、検討が進められている(はずの)、「司令塔機能」について書いてみたいと思います。改正感染症法案は、参院選前の岸田 文雄首相の約束通り、今国会で成立しました。もう一つの“公約”とも言うべき、一元的に感染症対策を行う新しい「司令塔機能」については、その後、あまり報道もありません。一体どうなっているのでしょうか。地域医療支援病院や特定機能病院などと協定を結び医療の提供を義務付け新型コロナウイルス対応の教訓を活かし、今後の感染症のまん延(パンデミック)に備えるための改正感染症法などが11月2日、参院本会議で可決され、成立しました。都道府県は地域医療支援病院や特定機能病院などとあらかじめ協定を結び、病床確保や発熱外来といった医療の提供を義務付けることになります。協定に沿った対応をしない医療機関には勧告や指示を行うほか、場合によっては承認の取り消しもあり得るとされています。施行(協定を締結する規定も)は来年、2023年4月1日付です。医療の提供が義務付けられるのは、自治体などが運営する「公立・公的医療機関」(約6,500施設)、400床以上で大学病院中心の「特定機能病院」(87施設)、200床以上で救急医療が可能な「地域医療支援病院」(685施設)です。また、都道府県は上記を含む全国すべての医療機関と、医療提供を事前に約束する協定を結べるようになります。都道府県は平時から計画をつくり、病床、発熱外来、人材派遣などの数値目標を盛り込み各医療機関への割り当てを決めます。医療機関は協議に応じる義務はありますが、実際に協定を結ぶかは任意です。付則には、新型コロナの感染症法上の位置付けについて速やかに検討するよう政府に求める文言も加わりました。これについては、法案成立直前の11月29日、加藤 勝信厚生労働大臣は会見で、新型コロナを感染症法の「2類相当」から「5類」に見直す検討を本格的に始める方針を示しています。なお、感染症法とあわせて医療法や予防接種法、新型インフルエンザ等対策特別措置法、検疫法なども一括で改正されています。特別措置法では、厚生労働大臣が協力を要請した時に限って、歯科医師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士にワクチン接種を認めました。検疫法では、水際対策により実効性をもたせるため、入国後の個人に自宅待機などを指示できるようにしたうえ、待機中の体調報告に応じない場合の罰則が設けられました。一般の民間病院や診療所については、協定締結は任意この3年間あまりの医療機関のドタバタぶり、個々の医療機関に対する国の権限のなさ(お願いしかできず命令できなかった)を考えると、地域医療支援病院や特定機能病院などへの病床確保や発熱外来といった医療提供の義務付けは、とても意味のあることで、特定機能病院などの承認を取り消す行政処分も含まれていることから、相当の強制力を持つことも確かです。ただ一方で、一般の民間病院や診療所については、都道府県との協議に応じなければならないものの、協定締結は任意のため、どの程度協力を得られるかは不透明です。今回のパンデミックでも、とくに民間病院や診療所の対応に批判が集まったことからも、協議から協力に至るプロセスをもう少し明確にしておく必要がありそうです。岸田首相がぶち上げたもう一つの大きな計画さて、今回の感染症法等の改正は、岸田首相が今年6月15日、通常国会の閉会を受けて行った記者会見で語った「新型コロナをはじめとする感染症に対する新対策」の中に盛り込まれていたことです。岸田首相はこの時、「昨年の総裁選で約束したとおり、国・地方が医療資源の確保等についてより強い権限を持てるよう法改正を行う。医療体制については、(2021年)11月の「全体像(次の感染拡大に向けた安心確保のための取り組みの全体像)」で導入した医療機関とあらかじめ協定を締結する仕組みなどについて、法的根拠を与えることでさらに強化する」と語っていました(「第114回 コロナ新対策決定、協定結んだ医療機関は患者受け入れ義務化、罰則規定も」参照)。当時は参議院選挙を睨んだパフォーマンスと見る向きもありましたが、岸田首相は感染症法改正については、約束を守ったと言えるかもしれません。岸田首相はこの時、もう一つの大きな計画をぶち上げています。それは、一元的に感染症対策を行う「内閣感染症危機管理庁」の新設と、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合して「日本版CDC」をつくるというものです。そう言えば、この計画について、最近は話をあまり聞きません。「内閣感染症危機管理庁」を内閣官房に設置し司令塔機能を強化岸田首相の6月15日の会見では、新型コロナウイルスを含む今後の感染症に対応する「内閣感染症危機管理庁」を内閣官房に設置し、司令塔機能を強化することを表明していました。内閣感染症危機管理庁は、感染症の危機に備えて「首相のリーダーシップの下、一元的に感染症対策を行う」組織で、同庁の下で平時から感染症に備え、有事の際は物資調達などを担う関係省庁の職員を同庁の指揮下に置き、一元的な対策を行うとしました。トップには「感染症危機管理監(仮称)」が置かれる予定とのことでした。さらにこの時は、厚労省における平時からの感染症対応能力の強化も表明しています。その施策の目玉は、研究機関である国立感染症研究所と、高度な治療・研究の拠点である国立国際医療研究センターを統合、米疾病対策センター(CDC)をモデルとした、いわゆる「日本版CDC」を厚労省の下に創設するというものでした。この2つの計画は6月17日、新型コロナウイルス感染症対策本部において正式決定しています。新型コロナウイルス感染症対策本部が公表した司令塔機能の具体的な姿その後、内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策本部は9月2日、「新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の具体策」を公表し、その中で、司令塔機能の具体的な姿を提示しました。それによれば、司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁(仮称)」については、2023年度中の設置を目指すとして、以下の組織、業務等にするとしています3)。1)感染症対応に係る司令塔機能を担う組織として「内閣感染症危機管理統括庁(仮称)」を設置し、感染症対応に係る総合調整を、平時・有事一貫して所掌する。総理・官房長官を直接助ける組織として内閣官房に設置し、長は官房副長官クラス、内閣官房副長官補を長の代行とし、厚生労働省の医務技監を次長相当とする等、必要な体制を整備する。2)統括庁は、平時から、感染症危機を想定した訓練、普及啓発、各府省庁等の準備状況のチェック等を行う。3)緊急事態発生時は初動対応を一元的に担う(内閣危機管理監と連携して対応)。4)特措法適用対象となる感染症事案発生時は、同法の権限に基づき、各府省庁等の対応を強力に統括する。各府省庁の幹部職員を庁と兼務させる等により、政府内の人材を最大限活用する。これら有事の際の招集職員はあらかじめリスト化し十分な体制を確保する。5)平時・有事を通じて厚生労働省の新組織(いわゆる日本版CDC)とは密接な連携を保ち、感染症対応において中核的役割を担う厚生労働省との一体的な対応を確保する。6)必要となる法律案を次期通常国会に提出し、2023年度中に設置することを目指す。――これらの案から見えてくるのは、今回のコロナ禍にあって、統率がとれなかった各省庁を強力にコントロールしたい、という内閣の強い意思です。とくに、厚生労働省(今回官邸の言うことを聞かなかった、対応がグダグダだったという批判もありました)とそこにつくる新組織(日本版CDC)をきちんと統括したい、という強い思いが伝わって来ます。国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合した「日本版CDC」この「具体策」では、国立感染症研究所と、国立国際医療研究センターを統合して作る新組織、「日本版CDC」についても提示しています。それによれば、新組織については、1)厚生労働省における平時からの感染症対応能力を強化するため、健康局に「感染症対策部(仮称)」を設置し、内閣感染症危機管理統括庁(仮称)との連携の下、平時からの感染症危機への対応準備に係る企画立案や感染症法等に係る業務を行う。2)国立感染症研究所と国立研究開発法人国立国際医療研究センターを統合し感染症等に関する科学的知見の基盤・拠点国際保健医療協力の拠点、高度先進医療等の総合的な提供といった機能を有する新たな専門家組織を創設する。3)必要となる法律案を次期通常国会に提出し感染症対策部の設置及び厚生労働省の一部業務移管は2024年度の施行、新たな専門家組織の創設については2025年度以降の設置を目指す。――などとなっています。専門家組織をきっちりコントロールしたい厚労省内閣感染症危機管理統括庁と、厚生労働省、日本版CDCが整備されれば、機動的かつ科学的な対応が100%可能になるかのように書かれてある点が気になります。今回のパンデミックで機能してきた「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」のような、ある意味“第三者”の立場で検討・提言する組織についての記述は、日本版CDCの中に「新たな専門家組織を創設する」と書かれています。ただ、厚労省傘下にしっかり置いて、専門家組織をきっちりコントロールしようという意図が透けて見えます。また、専門家組織が感染症の専門家ばかりで、臨床や医学研究の分野に偏りそうな点も気がかりです。危機管理やIT、経済対策、メディア対策など、医学以外の分野の専門家もしっかりとメンバーに入れておくべきだと思いますがいかがでしょう。さらに、現在、国立感染症研究所は国立の機関、国立研究開発法人 国立国際医療研究センターは国立研究開発法人と、組織形態が異なります。仮に、組織が圧倒的に大きい国立国際医療研究センターに国立感染症研究所が身を寄せる形で統合するとなれば、組織は国立研究開発法人ということになります。国からは一応は独立した組織になるとすれば、危機管理統括庁や厚生労働省がどういう形で影響力を及ぼすかも今後の大きな検討課題でしょう。現在のところ、厚労省が中心となって、これらの新組織の詳細を詰めているとのことです。内閣感染症危機管理統括庁は2023年度中の設置、日本版CDCは2025年以降の設置を目指すとされていますが、実際の稼働まで、まだまだひと悶着、ふた悶着ありそうです。参考1)出川哲朗の充電させてもらえませんか?/テレビ東京2)宇田川新聞個展《木版画パラダイス》(12/13(火)〜12/25(日)、池袋B-gallery、14:00〜18:00、月曜休廊)3)新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の具体策/新型コロナウイルス感染症対策本部

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第124回 マイナカード、救急医療や生活保護受給者でも活用へ/政府

<先週の動き>1.マイナカード、救急医療や生活保護受給者でも活用へ/政府2.社会保障、高齢者も経済力に見合った負担を/厚労省3.糖尿病の病名の変更を要望/日本糖尿病協会4.社会保障に対する意識調査、「高齢者の負担増はやむをない」4割強/健保連5.財務省提案の「要介護1と2の保険外し」案に反論も/財務省6.マイナカードによるオンライン資格確認システム義務化に反対/保団連1.マイナカード、救急医療や生活保護受給者でも活用へ/政府総務省消防庁は第二次補正予算の概要を公表した。マイナンバーカードを用いた「オンライン資格確認等システム」を活用することで、傷病者の医療情報などを閲覧できるようにして、救急業務の迅速化・円滑化に向けたシステム構築の検討のため、1億円の予算を要求した。また、厚生労働省は社会保障審議会の生活困窮者自立支援および生活保護部会を11月14日に開催し、生活保護受給者の医療機関の受診時に、これまで用いてきた医療券の代わりにマイナンバーカードを原則とすることとし、医療扶助の適正化のため、福祉事務所による早期の把握や改善を助言する案を提案しており、同省では来年の通常国会以降に関連法案を提出する見通し。なお、生活保護費は令和2年度実績で3.5兆円(国費2.6兆円)であり、その約半分を医療扶助、約3割を生活扶助が占めている。(参考)令和4年度総務省消防庁 第2次補正予算(案)について(消防庁)生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の見直しに関するこれまでの議論の整理(中間まとめ)案(厚労省)マイナンバーカード活用の救急システム構築検討へ 総務省消防庁が第2次補正予算案概要を公表(CB news)マイナカードで生活保護受給者の受診状況を早期に把握 厚労省(毎日新聞)2.社会保障、高齢者も経済力に見合った負担を/厚労省内閣府は11月11日に全世代型社会保障構築会議を開き、子育て世代への支援拡充や持続的な社会保障制度を実現するため、高齢者にも経済力に見合った負担を求めていく方針を固めた。これを受け、厚生労働省は11月17日に社会保障審議会を開催し、現在は年66万円となっている75歳以上の後期高齢者の年間保険料の上限額を、現在よりも14万円引き上げ80万円とする見直し案を提案した。後期高齢者全体の1%強が影響を受けるが、これによって現役世代の負担は1人当たり年間平均300~1,100円軽減する見込み。(参考)第8回 全世代型社会保障構築会議(内閣府)第158回 社会保障審議会医療保険部会(厚労省)全世代型社会保障 年金、医療、介護 制度改正の焦点(産経新聞)75歳以上の4割が負担増…年金収入153万円超の医療保険料引き上げ案を提示(読売新聞)3.糖尿病の病名の変更を要望/日本糖尿病協会日本糖尿病協会は、糖尿病に対する社会的偏見が、不正確な情報や知識に起因する誤った認識により生じることが多いとして、「糖尿病」という病名について、糖尿病のある人がどのように感じているかを調査した。その結果、糖尿病の患者約1,100人のうち、糖尿病という名前に抵抗感や不快感があると90.2%が回答し、病名を変更したほうがいいと79.8%が回答した。糖尿病という病名にまつわる負のイメージを放置することで、糖尿病をもつ人が社会活動で不利益を被るのみならず、治療に向かわなくなるという弊害があるため、糖尿病であることを隠さずにいられる社会を作っていく必要があるとして、今後、1~2年のうちに新たな病名について、日本糖尿病学会とも連携して、変更を求めていくとしている。(参考)糖尿病の病名変更を提唱へ“不正確でイメージ悪い”専門医団体(NHK)糖尿病「名称変えて」 団体調査、患者の9割不快感 怠惰・不摂生…負の印象つながりかねず(日経新聞)糖尿病にまつわる“ことば”を見直すプロジェクト(日本糖尿病学会・日本糖尿病協会)4.社会保障に対する意識調査、「高齢者の負担増はやむをない」4割強/健保連11月16日、健康保険組合連合会(健保連)は「医療・介護に関する国民意識調査」を発表した。健保連は平成19年から定期的にわが国の公的医療保険・介護保険制度や医療提供体制に対する国民の認識について意識調査を行っており、令和4年もwebアンケート方式で3,000人を対象に実施した。少子高齢化が進む中で、1人の高齢者を支える現役世代の人数が今後も減り続けることが予想されることについて、今後高齢世代の負担が重くなることはやむを得ないとする回答(42.3%)が、現役世代の負担増はやむを得ないとする回答(19.5%)を上回った。年齢別でも、70歳以上の高齢者の45.8%が高齢世代の負担増についてやむを得ないと回答していた。また、健康保険について1人当たり月額16,300円(令和2年)の健康保険料について、「非常に重いと感じる」「やや重いと感じる」と回答した割合は合計68.7%となり、負担感が強いことが明らかになっている。(参考)医療・介護に関する国民意識調査(健保連)高齢世代の負担増、4割超「やむを得ない」健保連・国民意識調査(CB news)5.財務省提案の「要介護1と2の保険外し」案に反論も/財務省財務省は、11月に開催した財政制度等審議会・財政制度分科会において、2024年度の介護保険制度改正で、要介護1・2のサービスの見直しについて言及した。この中で、要支援者に対する訪問介護・通所介護は、地域支援事業へ移行を完了したが、要介護1・2への訪問介護・通所介護についても効果的・効率的なサービス提供を可能にするため、段階的に地域支援事業への移行を目指す方向性を提案した。今後、75歳以上の高齢者が2030年頃まで増加し、その後も要介護認定率や1人当たり介護給付費がことさらに高い85歳以上人口の増加が見込まれており、膨らみ続ける介護費の抑制に対応する。この方針に対して、現場の介護関係者からは批判が出ており、自治体側の受け皿が十分に整っていないまま給付を削減することについて反対の意見が出ている。(参考)社会保障(財務省)“要介護1と2の保険外し”、財務省が一部見送りを容認 「段階的にでも実施すべき」と提言(JOINT)要介護1、2のサービス切り離しに現場反発…なぜ? 厚労省が介護保険給付から市町村事業に移行案(東京新聞)6.マイナカードによるオンライン資格確認システム義務化に反対/保団連全国保険医団体連合会(保団連)は、政府が医療機関等に2023年3月末までのオンライン資格確認の原則義務化や、2024年度秋から保険証廃止を進める方針について、マイナンバーによるオンライン資格確認システムやマイナンバーと保険証の一体化について、撤回を求める意見を発表した。保険医協会、保険医会会員に対して今年の10月14月~31日に行ったアンケートの回答(計4,747)のうち医科診療所62%、歯科診療所28%、病院6%が回答しており、保険証廃止については65%が反対、賛成はわずか9%のみであり、マイナンバーカード利用に不慣れな患者への窓口応対の増加やマイナンバーカードの携帯・持参が困難な患者(単身高齢者など)への対応など保険証廃止による医療現場や患者への影響・危惧する意見が多く寄せられた。また、2023年4月のオンライン資格確認の義務化については、運用開始済みが26%、準備中が54%、導入しない・できないが14%にも上ることが明らかとなった。このほか、オンライン資格確認について運用開始済みと回答した回答者(n=1,242)のうち、利用患者がほとんどいないとする意見が83%であり、十分な議論がされていないとして義務化の撤回を求めている。(参考)保険証廃止・オンライン資格確認義務化 意識・実態調査(保団連)オン資義務化・マイナ保険証の「撤回」を 保団連が会見(MEDIFAX)

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PEACEを受講しよう【非専門医のための緩和ケアTips】第39回

第39回 PEACEを受講しよう緩和ケアが広がるにつれて専門誌や書籍も増え、独学でも学びやすくなりました。一方で、緩和ケアは個別性が高かったりコミュニケーションの要素が多かったり、書籍だけでは学べない部分も多くあります。今回は、そうした部分が学べる研修会をご紹介します。今日の質問緩和ケアについて学ぶには、何をすればいいでしょうか? 緩和ケアの連携は地域の実情によって異なる部分も多く、そういった面を学ぶのは本だけでは難しく感じます。ご質問いただいた方の着眼点は素晴らしいですね。おっしゃるとおり、地域の医療機関同士の連携や、在宅療養への移行などの際には地域ごとに事情が異なります。こうした座学では学びにくい領域って、どのように学べばよいのでしょうか? そんな方にお薦めなのが、今回ご紹介する「PEACE」という研修会です。PEACEの正式名称は、「がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会(Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education)」と長いため、PEACEの略称や単に「緩和ケア研修会」と呼ばれています。この研修会は、厚生労働省の委託事業として日本緩和医療学会と日本サイコオンコロジー学会がコンテンツを作成しています。事前学習としてE-learningを受講し、グループワークを含む集合研修に1日参加する、というのがその内容。対象は「がん等の診療に携わるすべての医師・歯科医師、緩和ケアに従事するその他の医療従事者」です。E-learning緩和ケア概論/全人的苦痛と包括的アセスメント/がん疼痛/呼吸困難/消化器症状/気持ちのつらさ/せん妄/コミュニケーション/療養場所の選択と地域連携/ACP、看取りのケア、家族・遺族のケアが必修コンテンツです。集合研修コミュニケーションのロールプレイ/全人的苦痛や症状緩和に関するケーススタディ/療養場所の選択と地域連携に関するケーススタディ/患者を支える仕組みについてのレクチャーといった、一人では学びにくいテーマのグループワークが中心です。がん拠点病院では、年に1回以上PEACEを開催することが施設要件になっているため、どの地域でも受講可能です。開催スケジュールは各都道府県の担当部署のサイトに公開されており、「都道府県名+緩和ケア講習会」などで検索すれば出てきます。地域の基幹病院の緩和ケアに関わる医療者と一緒に学ぶことは、連携構築の上での大きな機会となるでしょう。新型コロナの影響で集合研修をオンラインで開催するケースもあり、遠方でも参加しやすくなっています。少し注意が必要なのが内容の「レベル感」です。あくまでも基本的な緩和ケアについて学ぶ研修会であり、受講者の多くが初期研修医を含めた若手です。ベテランの方からすると少し簡単に感じられるかもしれません。一人では学べないことを学び、顔の見える関係をつくるための貴重な機会として、ぜひPEACEを活用してみてください。今回のTips今回のTips地域のがん拠点病院で開催されているPEACEを受講してみましょう。PEACEプロジェクトホームページ/日本緩和医療学会

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