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10年ぶりの改訂 「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン」のポイントは?

 2014年4月17日(木)、東京都千代田区で、日本骨代謝学会により10年ぶりの改訂となる「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン」に関するプレスセミナーが開催された。 はじめに、日本骨代謝学会の理事長である田中 良哉氏(産業医科大学医学部第1内科学講座)が、2004年度版の課題として、骨密度測定とレントゲンが必要であったため、その遵守率が20%程度にとどまっていたことを挙げた。そのうえで、今回の改訂について、骨密度測定やレントゲンを行わない場合でも、ある程度の骨折リスクを評価できるようになった点が大きな特徴である、とした。『ステロイド性骨粗鬆症について、なぜ管理が必要か』 次に、近畿大学医学部奈良病院 整形外科・リウマチ科の宗圓 聰氏が講演した。冒頭で、宗圓氏により、ステロイド性骨粗鬆症は続発性骨粗鬆症のなかでも頻度が高く、骨折リスクがきわめて高い疾患であるとことが述べられた。 骨は常に「吸収」と「形成」が繰り返されている。閉経後骨粗鬆症においては、骨吸収と骨形成が同時に促進する高代謝回転という状態にあるが、ステロイド性骨粗鬆症では、骨を形成する速さよりも骨が吸収される速さが上回っている状態であるため、原発性骨粗鬆症よりも悪影響が大きいという。 ステロイド性骨粗鬆症は、(1)若年、(2)骨密度が高い、(3)既存の骨折がない、(4)男性のようなケースであっても骨折リスクが高まる点に注意が必要である。 ステロイドによる骨折リスクはその投与量に依存的に増加する。プレドニゾロン換算で1日7.5mg以上投与すると、椎体骨折率は5倍を超えるとされているが、1日投与量が2.5mg未満であっても、椎体骨折のリスクは1.55倍になるという1)。このことから、ステロイド投与量に安全域はなく、ステロイドを投与する際には低用量でも骨粗鬆化を念頭に置く必要があるとした。 さらに、ステロイド性骨粗鬆症では、その進行の速さも特徴である。実際、ステロイドの投与初期から骨折リスクが上がり、投与後3~6ヵ月でピークに達すると報告されている2)。投与中止により骨密度は回復するが、骨折リスクは数年間、回復しないことも指摘されている。このようなことから、ステロイドの投与と同時に骨粗鬆症の治療に介入する必要があるといえる。 骨折、とくに大腿骨近位部骨折や椎体骨折は死亡率が高いため、ステロイド投与例においては骨折を起こさないよう、確実に骨折を予防できる手を打つことが何より重要である、と述べた。『2014年版ガイドライン改訂のポイント』 次いで、東海大学医学部 内科学系リウマチ内科学の鈴木 康夫氏により、本ガイドラインの変遷や改訂に至った背景、改訂ポイントなどが公表された。 今回の改訂は、海外ではなく、あくまでわが国のステロイド性骨粗鬆症のコホート解析により独自の骨折危険因子を抽出し、その結果をもとに薬物療法開始の基準判定に初めてスコア法を導入している点が特徴だという。さらに、このスコア法は、種々の基礎疾患、低用量から高用量のステロイド治療、1次予防と2次予防のいずれの場合でも対応できる点がポイントである。 とくに、「既存骨折あり」、「年齢65歳以上」、「ステロイド投与量7.5mg/日以上」、「腰椎骨密度70%未満」である場合、これらは単一でも高い危険因子であるため、どれか1つでも満たされる場合を治療開始の目安とする。低骨密度以外の因子がある場合は、骨密度測定値がなくても治療開始の判断ができる。さらに、複数の危険因子のスコアの合計で評価することにより、単一因子では評価できない複合的なリスクも評価できるようになっている。 薬物療法の推奨は、国内で骨粗鬆症治療薬として承認されている薬剤の中から、骨密度減少と骨折抑制の効果があり、かつ1次予防と2次予防の両方において有効性が確認されている薬剤が優先されている。具体的には、アレンドロネートおよびリセドロネートが推奨度Aで第1選択薬として推奨されており、これらが使用できないときの代替薬として、イバンドロネート、アルファカルシドール、カルシトリオール、遺伝子組み換えテリパラチドが推奨度Bで推奨されている。 セミナーの最後に、田中氏は「ステロイド骨粗鬆症は医師が自らの手で処方したステロイドで骨粗鬆症が起こる可能性がある。だからこそ、処方した医師がしっかりと管理と治療をする必要がある」と述べ、「さまざまな診療科の、より多くの医師にこのガイドラインを活用してほしい」と締めくくった。 なお、本ガイドラインの和文概略版は近日、日本骨代謝学会のホームページで公開される予定である。1) Van Staa TP, et al. J Bone Miner Res. 2000; 15: 993-1000. 2) Cohen D, et al. J Steroid Biochem Mol Biol. 2004; 88: 337-349.

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Stop at one! 骨折連鎖を止める骨粗鬆症治療の最前線

 2月6日(木)、「骨で人生は変わる!忍び寄る“骨粗鬆症”の恐怖とその治療最前線」と題し、日本イーライリリー株式会社主催のプレスセミナーが開催された。 はじめに、同社の臨床開発医師 シニアメディカルアドバイザーの宗和 秀明氏が、骨粗鬆症治療薬テリパラチド(商品名:フォルテオ)の製造販売後調査の中間報告について説明した。 レポートの概要は、骨折の危険性が高い骨粗鬆症患者1,671例(うち女性1,552例)について、1~24ヵ月時における安全性、有効性を評価したものである。対象患者の平均年齢は75.3歳、骨折歴が1,046例(62.6%)にあり、テリパラチド処方前の治療(上位3つ)はアレンドロネート(27.6%)、アルファカルシドール(17.2%)、リセドロネート(14.5%)というものであった。主な副作用(上位3つ)は悪心(0.78%)、めまい(0.48%)、頭痛(0.48%)の順で、12ヵ月後の治療継続率は71.9%であった。 効果として、すべての骨代謝マーカーがベースラインより有意に上昇したものの、骨吸収マーカーは骨形成マーカーほどの上昇はなく、骨密度の変化では、腰椎に有意な増加が認められる結果となった。また、投与12ヵ月後の椎体骨折の発生率は1.21%、非椎体骨折発生率は3.18%であり、背部痛では減少傾向を認めたと報告した。 続いて「骨で人生は変わる!忍び寄る“骨粗鬆症”の恐怖とその治療最前線」と題して、梅原 慶太氏(浜松南病院整形外科・リハビリテーション科 副部長)による、骨粗鬆症の概要(疫学、病態、症状)と治療薬についてのレクチャーが行われた。 骨粗鬆症は、周知のように患者のQOLを著しく阻害する疾患であり、とくに高齢女性の脊椎の圧迫骨折は、自覚症状なく突然起こり、これが連鎖骨折を引き起こすことで、予後を悪化させる怖い病気である。 わが国では、骨粗鬆症患者は1,300万人と推定され、うち治療を受けている患者は200万人程度といわれる。多くの患者が治療を受けず、骨折してはじめて骨粗鬆症に気づき治療を開始するのが現状である。そのため日本骨粗鬆症学会は「骨折連鎖を断つ!」、国際骨粗鬆症財団は「Stop at One!」を合言葉に、骨粗鬆症の啓発に努めている。 骨粗鬆症は、患者の身長が3~4cm低下した、問診で「戸棚の上が遠くなった」などの患者の気づきなどからおおよその診断がつく。また、60代に起こる手首の骨折は、骨粗鬆症のサインであり、このような患者にはとくに注意が必要であることが述べられた。 現在、骨粗鬆症の治療薬は、大きく骨吸収抑制薬と骨形成促進薬とに分けられる。前者は、破骨細胞を抑えることで骨強度・骨質の低下を防ぐもので、ビスホスホネート薬に代表され、内服・注射と種類も多彩である。後者は、骨芽細胞により骨形成を促進させることで骨強度・骨質の増加を促すもので、現在は注射薬のみである。 そして、今回は、骨形成促進薬のテリパラチドの使用と効果について詳しく報告が行われた。テリパラチドは、毎日自己注射を行うものと、週1回医療機関で注射を行うものがあるが、ここでは自己注射製剤フォルテオ®の効果が紹介され、骨密度の増加、微細構造の改善、骨石灰化分布の適正化などの効果や、腰椎骨密度で13.4%の増加、椎体骨折リスクで84%の低下が報告された。また、実際に24ヵ月使用した患者らの感想も動画で披露され、骨折連鎖が止まった症例などが報告された。 最後に梅原氏は、骨粗鬆症は「患者さんの骨を折るだけでなく、精神的にも疲弊させ心を折る疾患であること」、「高齢者であれば骨折による介護の負担も発生すること」を述べたうえで、「そうならないために、早期に骨粗鬆症予防と治療を行うことで健康寿命を延ばすことが、健康長寿社会の今、大事なことである」と結び、レクチャーを終えた。

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腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~

腰痛診療ガイドライン策定の背景腰痛は一つの疾患単位ではなく、“症状”の名称であり、その背景には数多くの病態・疾患が潜んでいる。そして腰痛を有する患者数は非常に多く、わが国においては最も代表的なcommon disease(一般的な、ありふれた病気)、つまり「国民病」の一つとなっている。実際、日本人の有訴者率をみると、男性では1位、女性では2位と男女ともに腰痛は上位を占めている(平成22年 厚生労働省 国民生活基礎調査)。国民病であるがゆえに、腰痛に関する研究、文献や書籍は非常に多く存在している。また、一般向けの雑誌やテレビなどでも腰痛に関わる記事や番組の特集企画は後を絶たない。腰痛という国民病に対し、玉石混淆の情報が発信され氾濫している、というのが現状である。そうした背景を鑑み、われわれ整形外科医が運動器のエキスパートとしてすべきことは何か。本ガイドラインは、そうした想いから、日本整形外科学会が企画し日本腰痛学会が主体となって作成されたものである。その理念は、「腰痛治療のプライマリケアに焦点を絞り、腰痛に苦しむ患者さんに対して、正しく的確なトリアージを可能せしめること」である。腰痛に関して最も豊富な治療経験をもつ整形外科医はもちろん、内科をはじめとする各領域の先生方に対しても、EBMに則った適切な情報を提供するとともに、本ガイドラインを有効活用していただきたいと願っている。腰痛におけるトリアージの重要性腰痛というと、「腰部に存在する疼痛」という定義が成り立つが、その部位に関してはさまざまな見解がある。具体的には、「触知可能な最下端の肋骨と殿溝の間の領域」とするのが一般的である。有症期間については、急性、亜急性、慢性と分類される。3ヵ月以上持続する腰痛を「慢性腰痛」とし、発症から4週間未満を「急性腰痛」、そして慢性と急性の間、つまり4週間以上3ヵ月未満の腰痛を「亜急性腰痛」と定義した。原因からみると、「原因の明らかな腰痛」と「原因の明らかでない腰痛(非特異的腰痛)」に大別される。原因の明らかな腰痛の代表としては、腫瘍(原発性・転移性脊椎腫瘍)、感染(化膿性脊椎炎など)、外傷(椎体骨折など)の3つがとくに重要である。また、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、脊椎すべり症などの神経症状を伴う腰椎疾患もこれに含まれる。一方、非特異的腰痛は、前述したような明らかな原因のない腰痛、あるいは原因を特定できない腰痛を総称する言葉である。下肢症状を伴わない腰痛の場合、その85%が非特異的腰痛である。実際、広く長い脊柱の中で、どこに痛みの原因があるか、X-PやMRIにおける変性所見と症状が必ずしも一致するわけではなく、原因部位を特定することは困難である。よって、腰痛治療においては、初診での正しい鑑別(トリアージ)が非常に重要となってくる。何よりも大切なのは、注意深い問診と身体検査(診察)であり、これにより(1)危険信号(red flags)を有し重篤な脊椎疾患の合併が疑われる腰痛、(2)神経症状を伴う腰痛、(3)非特異的腰痛 という3つのトリアージを的確に行うことが大切である。日本整形外科学会、日本腰痛学会.腰痛診療ガイドライン2012.南江堂;2012.画像を拡大するプライマリ・ケアにおける問診では、発症以前の症状、治療歴、治療効果だけでなく、痛みの部位、症状の頻度、痛みの持続期間などを尋ね、脊椎以外の内科的疾患由来の腰痛の可能性を考慮する。とにかく、重篤な脊椎疾患(腫瘍、炎症、骨折など)を見逃さないことが非常に重要であり、そのためには危険信号(red flags)の有無をしっかりと見極めることが基本となる。危険信号がなく、神経症状もない場合には、「非特異的腰痛」と仮に判断する。そして4~6週間の保存的治療を行い、それによる改善の有無を観察する。そこで改善のない場合には、画像診断の再実施、危険信号の再評価、あるいは心因性要素の再評価によって、隠れている病気を探し出していただきたい。また、初診で危険信号がなくても、神経症状(足の痛み、しびれ、麻痺など)がみられる場合には、積極的に前述の再検査を行うべきである。そして、発熱や体重減少などの危険信号がある場合には、何か原疾患が隠れているのではないかという疑いをもって画像検査や血液検査をしっかりと行っていただきたい。原疾患が特定された場合には、それに応じた治療を進めるべきである。日本整形外科学会、日本腰痛学会.腰痛診療ガイドライン2012.南江堂;2012.画像を拡大する運動療法は腰痛に有効か運動療法には、ストレッチやエアロビクスなどさまざまな方法があるが、慢性腰痛に対する有効性には高いエビデンスがある。慢性腰痛における運動療法については、開始後1年以内で欠勤日数を軽減させ、職場復帰率を増加させるというデータがある。日本におけるランダム化比較試験においても、運動療法実施群での腰痛関連QOLの改善が良好であったという研究結果も出ている。このように、運動療法は慢性腰痛に対して強く推奨される治療法であるといえる。また、日常生活においても、以前は腰痛に対して安静にするよう指導することが多かったが、近年は動ける範囲で動くことを推奨している。一方、急性腰痛に対してはあまり効果がない。亜急性腰痛に対しても、効果はあるものの慢性腰痛の場合に比べると限定的であり、時期に応じた適切な運動療法を行うべきであろう。心理社会的因子と腰痛の関係心理社会的因子が腰痛の遷延に関与するというエビデンスをもった論文は多い。これはとくに慢性腰痛にみられる特徴である。具体的に挙げると、ストレス、うつ状態、過労、職場環境や収入への低い満足度、人間関係の不良などが慢性腰痛の出現や悪化に関与している。ここで一つ興味深いのは、慢性の肩の痛みや膝の痛みの場合にはそうした関与があまり指摘されていないことである。心理社会的因子は、肩や膝よりも腰との関係性が深いように思える。ただ、誤解しないでいただきたいのは、“慢性腰痛の患者さん=(イコール)うつ病”という単純な図式にはならない、ということである。慢性腰痛の患者さんがすべてうつ病だということはありえないし、慢性腰痛のすべての要因が精神的なものだと決めつけてしまうのは非常に危険なことである。個人的な見解としては、非特異性腰痛の原因の多くは、脊柱の支持組織、つまり椎間板や椎間関節の老化、筋力の低下、筋・筋膜などの支持性軟部組織の拘縮などによるものが多いと考えている。これは画像検査では発見しにくい部分であるし、また仮に椎間板が老化していても症状が出ないケースも多々あるため、その判断は難しい。ガイドライン策定から一年を経て 全国の先生方へ腰痛診断ガイドラインが策定されてから一年になる。その間、全国各地で講演を行ってきたが、EBMを重視する先生方が増えてきたように感じられた。腰痛は民間療法や代替療法などさまざまな治療法が散見される分野であるため、エビデンスを重視することは非常によい動きであり、歓迎すべきことだと受け止めている。薬物治療に関しても大変よく勉強されている先生が多かった。また、慢性腰痛における運動療法の有効性についても多くの先生が認識してくださっており、本ガイドラインが徐々に浸透してきていると肌で感じることができた。最後に付け加えておきたいのは、このガイドラインはあくまでも一つの目安でしかない、ということである。われわれガイドライン委員会でも、患者さん一人ひとり病態が異なるのにアルゴリズム(診断手順)にまとめられるのだろうか、という議論があった。しかし、common diseaseである腰痛に対し、数多くの情報が氾濫している昨今において、整形外科専門医だけでなく、一般の臨床医の先生方にも実地で活用していただけるような指針を打ち出すことは、腰痛に苦しむ患者さんのためにも意義のあることだという考えに至った次第である。先生方にはその点を念頭に入れて腰痛の診察にあたっていただきたい。そして専門医への紹介が必要な患者さんを見逃すことのないよう、的確なトリアージのために細心の注意を払っていただきたいと願ってやまない。

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高齢女性では脊椎骨折歴が腰痛と関連

 高齢者の健康関連QOL(Health-related quality of life:HRQL)に対する、脊椎骨折既往歴の影響はほとんど知られていない。ノルウェー・トロムソ大学のSvanhild Waterloo氏らは、地域住民ベースの「トロムソ研究」に参加した50歳以上の男女について解析し、女性においては脊椎骨折既往歴が腰痛リスクの増加およびHRQL低下に関連することを明らかにした。BMC Geriatrics誌オンライン版2013年9月30日号の掲載報告。 研究グループは、高齢者における脊椎骨折既往歴と腰痛、頸部痛およびHRQLとの関連、ならびに疼痛とHRQLの性差について調査した。 脊椎骨折既往歴は椎体骨折評価(VFA)法(二重エネルギーX線吸収測定法 [DXA]、GE Lunar社製Prodigy)により確認し、大腿部の骨密度をDXA法により測定するとともに、EuroQolグループで開発されたEQ-5D 3段階版(3L)と、EQ VASを用いたHRQLを評価した。 解析対象は、2007~2008年に行われたトロムソ研究の参加者2,887例(平均年齢65.4±9.4歳)のうち、50歳以上の男性1,177例、女性1,615例であった。 主な結果は以下のとおり。・女性では、脊椎骨折の既往は腰痛リスクの増加と関連していた(年齢、身長、体重およびBMDで補正後のオッズ比1.76(95%信頼区間:1.24~2.50)であった。・脊椎骨折を有している女性は、有していない女性に比べEQ-5D-3Lスコアが補正後も低かった(p<0.001)。・男性では、女性で示されたような関連は認められなかった。・骨折型はEQ-5D-3Lスコアと関係していなかったが、骨折数の増加(p<0.001)および骨折の重症度(p<0.002)は、女性においてEQ-5D-3Lスコアの減少と関係していた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?

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シンポジウム「最小侵襲脊椎安定術MISt」第20回記念 日本脊椎・脊髄神経手術手技学会より

2013年9月6~8日、名古屋市にて第20回記念 日本脊椎・脊髄神経手術手技学会が行われた。学会中、今大会の会長である名古屋第二赤十字病院 整形外科・脊椎脊髄外科の佐藤公治氏が企画したシンポジウム「最小侵襲脊椎安定術MISt」が開催された(座長:慶応大学 石井賢氏、関西医科大学 齋藤貴徳氏)。シンポジウムでは世界のオピニオンリーダー10名による講演が行われ、 平日にも関わらず450名を超える参加者が日本およびアジアから集まり、 MIStについての熱い議論が交わされた。 ※最小侵襲脊椎安定術(MISt:Minimally Invasive Spine Stabilization)とは、低侵襲に脊椎固定するだけでなく制動や安定化も含めた手技の総称です。Limitation of MIS in Complex Deformity and Revision SurgeryJeffery S. Roh氏(Division of Proliance Surgeon, ProOrtho, Seattle Minimally Invasive Spine Center)The use of Minimally Stabilization(MISt) in Management of Advanced Metastatic Spinal DiseaseMun Keong Kwan氏(Department of Orthopaedic Surgery, Faculty of Medicine, University of Malaya)MIS-PLIFのアプローチによる低侵襲性向上の限界有薗 剛氏(公立学校共済組合九州中央病院 整形外科)腰椎変性側弯症に対する多椎間MIS-TLIF中野 恵介氏(高岡整志会病院 整形外科)転移性脊椎腫瘍に対する低侵襲脊椎安定術(MISt)の応用中西 一夫氏(川崎医科大学 脊椎・災害整形外科)骨粗鬆症椎体骨折に対する骨切りを併用したMIStによる治療経験富田 卓氏(青森市民病院 整形外科)PLIFに併用したCBTScrewの工夫~術後1年の短期成績より~大和田 哲雄氏(関西労災病院 整形外科)内視鏡支援下のXLIF手術稲葉 弘彦氏(岩井整形外科内科病院 整形外科)経皮的頚椎椎弓根スクリューを用いた低侵襲頚椎後方固定の工夫と限界染谷 幸男氏(国保小見川総合病院 整形外科・脊椎脊髄センター)化膿性脊椎炎に対する経皮的挿入椎弓根スクリューを用いた固定術の有用性男澤 朝行氏(帝京大学ちば総合医療センター 整形外科)総合討論※ 所属・施設等は、制作当時のものです。

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ビタミンDが健康に及ぼす影響(まとめ)

 近年、ビタミンDが健康、疾病に及ぼす影響を検証した臨床研究結果がケアネット・ドットコムでも散見されるようになってきた。そこで今回、編集部ではビタミンDに関する記事をまとめてみることにした。後半のいくつかはケアネット・ドットコムで初めて紹介するものも含まれている。“ビタミンD不足の高齢者は日常の活動に支障” 【高齢者】 ビタミンDの不足する高齢者は、着替えや階段を上るなどの日常的な身体活動に困難を来す可能性のあることが、新たな研究で示された。高齢集団では、ビタミンD値最低群の70%に少なくとも1つの身体的制限がみられたのに対し、ビタミンD値が中等度または高い群の多くでは身体的制限がみられなかったと報告されている。さらに、ビタミンD欠乏のみられる人には、時間の経過とともに新たな身体的制限が発生する可能性が高いことが判明した。(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌2013年7月17日オンライン版の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/general/hdn/35685“アルツハイマー病にビタミンD不足が関連” 【認知症】 ビタミンDの摂取が認知機能や認知症発症に与える影響をメタアナリシスにより検討した結果より、アルツハイマー病群ではコントロール群と比較し、ビタミンD濃度が低かったことが報告されている(Neurology誌2012年9月25日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/risk/carenet/31480“うつ病治療にビタミンD投与は有用” 【うつ】 ビタミンD欠乏症を認めるうつ病患者におけるビタミンD投与の有用性を検討した結果より、ビタミンD投与がうつ状態を改善すると報告されている(Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2013年6月号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/head/carenet/34687“ビタミンDの摂取がパーキンソン病の症状を安定化させる” 【パーキンソン病】 東京慈恵会医科大学の鈴木正彦氏らは、ビタミンD受容体遺伝子多型のうちFokI T/T型またはFokI C/T型を持つ患者が、ビタミンD3を摂取することで、高カルシウム血症を引き起こすことなく、短期的にパーキンソン病の症状を安定化させる可能性を示唆している(The American Journal of Clinical Nutrition誌2013年5月号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/head/carenet/34819“高用量ビタミンD摂取、65歳以上の骨折リスクを低減” 【骨折予防】 11の二重盲検無作為化比較試験の被験者を対象に行ったメタ解析の結果、65歳以上高齢者の高用量ビタミンD摂取(毎日≧800 IU)は、大腿骨頸部骨折およびあらゆる非椎体骨折の予防に多少ではあるが有望であることが示されている(NEJM誌2012年7月5日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/29116“ビタミンD+カルシウム、高齢者の骨折予防に効果” 【骨折予防】 高齢者の骨折予防におけるビタミンD単剤の用量は10~20μg/日では不十分であるが、カルシウムと併用すると大腿骨頸部骨折および全骨折が有意に抑制されることが、報告されている(BMJ誌2010年1月16日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/11991“女性高齢者への年1回、高用量ビタミンD投与、転倒リスクを増大“ 【転倒】 70歳以上の女性高齢者2,200人超を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、高用量ビタミンDを年1回投与することで、転倒リスクが増大してしまうことが示唆された。また投与後3ヵ月間の転倒リスクは、約30%も増加したという(JAMA誌2010年5月12日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/14363“ビタミンDサプリ摂取で膝OA改善せず“ 【膝OA】 症候性変形性膝関節症(膝OA)患者に対して2年間にわたり、十分量のビタミンD3サプリメントとプラセボとを投与し比較検討した無作為化試験の結果より、サプリメント群はプラセボ群と比較して、膝の痛みの程度や軟骨減少について、低下はみられなかったことが報告されている(JAMA誌2013年1月9日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/33205“母親の血中ビタミンD値、子どもの骨塩量とは無関係” 【妊婦】 妊娠中の母体における血中ビタミンD値と、その子どもの9~10歳時の骨塩量との関連について、約4,000組の母子について行った前向き調査「エイボン縦断試験」の結果より、有意な関連は認められなかったことが報告されている(Lancet誌2013年6月22日号[オンライン版2013年3月19日号]の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/34604“ビタミンDサプリ摂取はビタミンD欠乏小児の骨密度を改善する” 【小児骨密度改善】 ビタミンDサプリメントは、ビタミンDが正常レベルの小児、青少年の骨密度にベネフィットをもたらさないが、欠乏している場合は一定の改善効果が得られることが、メタ解析で明らかとなったと報告されている(BMJ誌2011年1月29日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/19686“肺結核症に高用量ビタミンD補助薬は有効” 【肺結核】 肺結核症の集中治療期に標準的な抗生物質治療を受けている患者に、高用量のビタミンD補助薬を投与すると、ビタミンD受容体TaqI tt遺伝子型の患者で喀痰培養陰転時間の短縮効果を認めることが明らかとなった(Lancet誌2011年1月15日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/19346“ビタミンD服用、上気道感染症の発症・重症度を抑制しない“ 【上気道感染症】 健常者が半年間、月1回10万IUのビタミンDを服用し続けても、上気道感染症の発症および重症度を抑制しなかったことが、無作為化比較試験の結果より示されている(JAMA誌2012年10月3日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/31659“ビタミンD投与、左室心筋重量係数に変化なし-左室肥大を伴うCKD患者を対象としたRCTより-” 【心肥大抑制】 左室肥大を伴う慢性腎臓病(CKD)約230人に対する無作為化試験において、48週間にわたる活性型ビタミンD化合物paricalcitolを投与した結果、左室心筋重量係数に変化は認められなかったことが示されている(JAMA誌2012年2月15日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/27016“血清ビタミンD値と小児アトピーの重症度、統計学的に有意な関連は認められない” 【アトピー性皮膚炎】 血清25ヒドロキシビタミンD値と小児アトピー性皮膚炎の重症度との関連について、統計学的に有意な関連はみられないことが報告されている。両者の関連については、逆相関の関連性が示唆されていた(Journal of the American Academy of Dermatology誌2013年7月号[オンライン版2013年2月14日号]の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/general/carenet/33851“ビタミンDサプリ摂取で血圧が低下” 【降圧効果】 アフリカ系米国人を対象とした大規模ランダム化比較試験を行った結果、ビタミンDサプリメントを摂取した群ではプラセボ群と比べ血圧が有意に低下したことが発表されている。この前向き試験では、対象者に3ヵ月間毎日ビタミンDサプリメントを摂取させたところ、収縮期血圧がサプリメントの摂取用量に応じて0.7~4.0mmHg低下した(Hypertension誌2013年4 月号の掲載報告)。“ビタミンDサプリ摂取で、コレステロール値は改善しない” 【コレステロール低下】 ビタミンD値の低い人がサプリメントを用いてビタミンDを増加させても血中コレステロール値は改善しないことが示唆された。研究者らはビタミンD欠乏例に、5万国際単位のビタミンD3を8週間投与した。その結果、ビタミンD投与群ではプラセボ群と比べてコレステロールの改善はみられず、副甲状腺ホルモン値が低下し、カルシウム値が上昇した。(Arteriosclerosis, thrombosis, and vascular biology 誌2012年10月号の掲載報告 )。“ビタミンD低値は2型糖尿病の発症リスクを高める“ 【糖尿病】 ビタミンD欠乏と不足状態は2型糖尿病の発症リスクを高める独立した危険因子である可能性が報告されている。研究者らは、2型糖尿病の危険因子を1つ以上有するが糖尿病を発症していない成人1,080人を平均32.3ヵ月間追跡。その結果、血清25ヒドロキシビタミンD低値はBMI、インスリン抵抗性、インスリン分泌指数とは独立して2型糖尿病発症リスクと関係していた(The American journal of clinical nutrition誌2013年3月号の掲載報告)。“血中ビタミンD濃度の低い人では虚血性心疾患の発症リスクが増大” 【心疾患】 デンマーク人1万例以上の血中ビタミンD濃度と心疾患および死亡との関係を検討した結果、血中ビタミンD濃度の低い人では虚血性心疾患と心筋梗塞のリスクが著しく高いことが明らかにされている。 研究者らはCopenhagen City Heart Studyに参加した1万170例のうち、血中ビタミンD濃度が5パーセンタイル未満の者と50パーセンタイル以上の者を比較した。その結果、血中ビタミンD濃度が高い者と比べ、低い者では虚血性心疾患の発症リスクが40%、心筋梗塞の発症リスクが64%高かったことを発表している(Arteriosclerosis, thrombosis, and vascular biology誌2012年11月号の掲載報告)。“ビタミンD摂取不足が脳梗塞の発症リスクを高める” 【脳梗塞】 食事によるビタミンDの摂取不足は脳卒中、とくに脳梗塞の発症と関係することがホノルル心臓プログラムより発表されている。登録時の食事によるビタミンD摂取と追跡中の脳卒中発症との関係を検討した結果、ビタミンD摂取最高四分位群と比較した最低四分位群のハザード比は脳卒中全体が1.22(p=0.038)、脳梗塞が1.27(p=0.044)と有意に高かった(Stroke誌2012年8月号の掲載報告)。Kojima G, et al. Stroke. 2012; 43: 2163-2167.

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募集した質問にエキスパートが答える!骨粗鬆症診療 Q&A (Part.2)

今回、骨粗鬆診療に関連する3つの質問に回答します。「骨折ハイリスク例の見分け方」「薬剤の併用療法」。日頃の悩みがこれで解決。骨折のハイリスク例の見分け方について教えてください。既存椎体骨折、大腿骨近位部骨折の既往は骨折ハイリスク例となります。今年、改訂された「原発性骨粗鬆症診断基準(2012年度改訂版)」と「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン(2011年版)」ではこれらの骨折既往がある場合には骨密度検査をせずに骨粗鬆症と診断し薬物治療を開始することが推奨されています(図)。その他のハイリスク例として、ステロイド性骨粗鬆症があげられます。プレドニン換算で5mg/日を3ヵ月以上投与する患者には、ステロイド開始と同時にビスホスホネート製剤などの薬物治療を開始することが推奨されています。図画像を拡大する併用療法について教えてください。現在の薬剤は単剤治療の効果のエビデンスに基づいているので、原則的には単剤治療を行うべきでしょう。併用にはいろいろなパターンがありますが、複数薬を併用する場合には互いに薬剤効果が相殺されないこと、有害事象がおきないこと、単剤使用の場合よりも明らかに相乗効果が認められることが条件になります。近年、活性型ビタミンD3はビスホスホネート製剤と併用すると、重症患者ではビスホスホネート製剤単独で使用するより骨折予防効果が高いことが報告されています(A-TOP研究)。

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読影クイズ【基本編】 (脊椎のエックス線I画像)

半定量的評価法(SQ法)を用いた椎体骨折の判定にチャレンジ!!それぞれの症例のX線画像をみて、各椎体のSQグレードを答えなさい。SQ法とは、椎体骨折評価基準(2012年改訂版)の中で、椎体骨折の評価法として新たに追加された。従来の定量的評価法(QM法)に比べ簡便であることから、幅広い活用が期待されている。具体的には、X線画像を下図に照らし合わせ、グレードの判定を行う。画像を拡大する

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腰部硬膜外ステロイド注射によって椎体骨折のリスクが増加

 腰部硬膜外ステロイド注射(LESI)は神経根障害や脊髄神経の圧迫から生じる神経性跛行の治療に用いられるが、副腎皮質ステロイドは骨形成を低下し骨吸収を促進することで骨強度に悪影響を及ぼすことが示唆されている。米国・ヘンリーフォード ウェストブルームフィールド病院のShlomo Mandel氏らは、後ろ向きコホート研究において、LESIが椎体骨折の増加と関連していることを明らかにした。LESIの使用はこれまで考えられていたより大きなリスクを伴う可能性があり、骨粗鬆症性骨折のリスクを有する患者には慎重に行わなければならないとまとめている。The Journal of Bone & Joint Surgery誌2013年6月5日の掲載報告。 本研究の目的は、LESIが、椎体骨折のリスクを増加するのかについて評価をすることであった。 ヘンリーフォード ウェストブルームフィールド病院のデータベースから、ICD-9診断コードを用いて、椎間板障害など脊椎に関連した疾患を有する患者計5万345例(うち1回以上のLESIを受けていた患者は3,415例)を特定した。 LESI施行例3,000例を無作為に抽出するとともに、傾向スコアマッチングによりLESI非施行例3,000例を選び出し、両群における椎体骨折の発生率を生存時間分析にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・LESI施行群と非施行群で、年齢、傾向スコア、性別、人種、甲状腺機能亢進症、ステロイド使用に差はなかった。・生存時間分析の結果、注射回数の増加は骨折リスクの増加と関連していた。・注射が1回増えるごとに、骨折リスク(共変量調整後)は1.21倍(95%信頼区間:1.08~1.30)増加した(p=0.003)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説

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乳がん予防にSERMは有効か?(コメンテーター:勝俣 範之 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(103)より-

女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏は、骨粗鬆症や高脂血症の原因となる。また、エストロゲン補充療法は、これらの症状を改善させる作用を持つが、乳がんのリスクを増加させることが問題となる。SERMとは、選択的エストロゲン受容体モジュレーターのことであり、エストロゲン受容体に相互作用を示すことにより、臓器特異的に、アゴニスト作用あるいは、アンタゴニスト作用を有する治療薬として期待がされている。 第1世代のSERMであるタモキシフェンは、乳がんの治療薬としても有名であるが、化学予防薬として、乳がんの高リスク女性に対して予防効果を示し(NSABP-P-1試験)、世界で初めて、がん予防薬としてFDAで承認された(1998年)薬剤である。タモキシフェンの1つの問題点は、子宮内膜がん・血栓塞栓症を増加させることであった。第2世代のラロキシフェンは、骨組織およびコレステロール代謝に対してアゴニスト作用を示すとともに、乳腺組織および子宮に対してアンタゴニスト作用を有しており、その効果が期待され、乳がん予防をエンドポイントに、タモキシフェンとラロキシフェンのランダム化比較試験が行われた(STAR試験) 結果は、ラロキシフェンはタモキシフェンと同様に乳がん発症を抑える一方で、血栓塞栓症・子宮内膜がん発症をタモキシフェンと比べ低下させたが、子宮体がん発症に関しては、統計学的有意差は無かった。また、非浸潤性乳がんの予防効果は、タモキシフェンの方が優れていた。その後、STAR試験の結果と、これまでに行われたRUTH、CORE/MORE試験と合わせて、2007年にラロキシフェンは乳がん予防薬としてFDAで承認されている。Lasofoxifene、Arzoxifenは新しいSERMであり、今後の期待がなされるところである。 今回のLancetに掲載されたメタアナリシスは、これらSERMの乳がん予防に関するメタアナリシスであるが、結果としては、SERMはER陽性乳がん発症を予防するが、その効果は最初の5年間くらいであり、5年以上になると効果が減弱する、また、椎体骨折を減らすが血栓塞栓症を増やす、というものであった。SERMは、乳がん発症を予防し骨合併症を減らすという、女性にとっては有望な薬剤として期待がある一方、血栓塞栓症の増加というリスクもあり、現時点では、ベネフィットがリスクを大きく上回るものではないため、安易に処方されるべき薬剤ではないと考えられる。 日本では、本論文中の薬剤のうち、タモキシフェンは乳がん治療薬として承認されているが、乳がん予防薬としての適応はない。ラロキシフェン(商品名:エビスタ)は、骨粗鬆症の治療薬として承認されているが、乳がん予防薬としての適応はない。日本人の乳がん発症率が低いことを考えると、絶対リスクの低下は欧米人と比べると小さいことが推察されるため、やはり乳がん予防を目的に安易に処方されることは慎まれるべきである。 今後もSERMの開発は、世界中でなされていくと思われるが、乳がん予防薬としても期待されている薬剤であるため、日本人でのエビデンスにも期待したい。勝俣 範之先生のブログはこちら

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「かくれ骨粗鬆症」を救うために

 2013年4月23日(火)、日本イーライリリー株式会社開催のセミナーにて、近畿大学医学部奈良病院の宗圓 聰氏(整形外科・リウマチ科)と聖隷浜松病院の森 諭史氏(骨・関節外科)が、原発性骨粗鬆症の診断基準ならびに椎体骨折評価基準の改訂がもたらす積極的な診断・治療の広がりと、臨床に潜む「かくれ骨粗鬆症」の実態について語った。 講演の中で、宗圓氏は「新たな診断基準を知ってもらうことで、自覚症状のない『かくれ骨粗鬆症』への積極的な治療介入につながれば」と期待を述べた。以下、内容を記載する。痛みを伴わない場合も・・・骨粗鬆症の脊椎骨折 わが国の骨粗鬆症の患者数は推計1,280万人だが、治療を受けている患者さんは200万人にとどまっている。要因として、骨粗鬆症と診断されていない「かくれ骨粗鬆症」の存在が考えられている。なぜ、診断されないのか。一つには、骨粗鬆症の脊椎骨折には痛みがなく、変形が進行する例が多いことが考えられている。実際、痛みを伴う骨折は全体の3分の1にすぎないとの報告もある。このため、背骨の骨折により円背の状態になっていても、痛みを伴わないため、いわゆる「老化」と判断されて、放置されている可能性がある。1~2回目の骨折を防ぐことを目標に治療介入を しかし椎体骨折は1度起こると、2回目以降の骨折リスクが高まるとの報告もあり、いわゆる「骨折ドミノ」の状態を助長してしまう。また大腿骨近位部骨折や椎体骨折は死亡率を増加させるとの報告もある。このことから、骨折に至る前の骨密度が下がってきた時点から介入し、最初の骨折を防ぐことが重要といえる。しかし、現実的には、まだ骨折を起こしていない方への治療介入は難しい。そこで、一旦骨折を起こした人が次の骨折を防ぐことを目標に診断、治療を行うことが望ましい。原発性骨粗鬆症の診断基準:改訂のポイント こうした背景から診断基準の改訂が行われ、「原発性骨粗鬆症の診断基準 2012年度改訂版」が作成された。旧診断基準では、WHOとの整合性がとれていないという問題点のほか、脆弱性骨折がある場合でも骨密度を測定し低骨量(骨密度がYAM※の80%未満、あるいは脊椎X線像で骨粗鬆化がある場合)であることを確認する必要がある、といった治療介入までのハードルがあった。※YAM:Young Adalt Mean若年成人平均値(20~44歳) 今回の改訂により、すべての脆弱性骨折が対象ではないものの、とくにリスクとなる椎体骨折または大腿骨近位部骨折がある場合は骨密度と無関係に診断ができるようになった(※その他の部位の脆弱性骨折については骨密度のしばりあり)。これにより、椎体もしくは大腿部の骨折があれば薬物治療を行ってもよいことになり、治療介入の可能性が広がったといえる。椎体骨折評価基準も改訂 さらに椎体骨折評価基準の改訂によって、多くの診療科で共通に使える尺度が導入された。具体的には、椎体変形をX線画像で判定する際に、椎体の形のみから骨折のグレードを判定するSQ法(semi-quantitative method)の導入がある。計測が必要な従来のQM法(quantitative method)より簡便なことから、実臨床での有用性も高い。またMRIによる診断も付記された。これにより椎体骨折の評価がより簡便になったといえる。体型変化や患者の症状にも注意を ただし、すべての患者に検査を行うわけにはいかないとの指摘もある。自覚症状がないため診断は難しいが、閉経後女性や50歳以上の男性で、短期間で円背などの体型変化がある、-2~3cmの身長低下がみられる、といった場合には「かくれ骨粗鬆症」を疑ってみてもよいだろう。また、円背に伴って逆流性食道炎の症状を訴えるケースも多いので、参考にしていただきたい。まとめ 講演後、森氏から「今回の改訂内容を、内科や婦人科といった『かくれ骨粗鬆症』を診る可能性のある多くの医師に知ってほしい」といったコメントがあった。整形外科に来院した時にはすでに骨粗鬆症が進行し、処置が困難なケースもあるという。新たな診断基準が広く普及し、患者が健康的な生活を送る機会が増えることを期待したい。

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腰痛患者の椎体骨折スクリーニングで“レッドフラッグ”の診断精度は低い

 各国の腰痛診療ガイドラインでは、椎体骨折など追加検査や特別な治療を要する病変を有している可能性が高い患者を特定するため“レッドフラッグ”の使用を勧告している。しかし、オーストラリア・シドニー大学のChristopher M Williams氏らによるシステマティックレビューの結果、ほとんどのレッドフラッグが椎体骨折のスクリーニングには役に立たないことが明らかとなった。レッドフラッグを複数組み合わせた場合は有用性が改善する可能性はあるものの、多くは偽陽性率が高く、レッドフラッグに基づいた腰痛の診療は医療費と治療成績に影響するだろうとまとめている。Cochrane database of systematic reviews 2013年1月31日掲載の報告。 腰痛患者における椎体骨折のスクリーニングに関する“レッドフラッグ”の診断精度を評価することを目的とした。 電子データベースから主要な研究論文ならびに被引用・引用論文を検索し(最も初期から2012年3月7日まで)、腰痛患者の既往歴や検査結果を参照基準(画像診断)の結果と比較した研究を2名のレビュアーが別々に選択した。 3名のレビュアーがそれぞれ、11項目からなる診断精度研究の質評価(QUADAS)ツールを用いてバイアスリスクを評価するとともに、研究デザインの特性、患者、指標検査および参照基準に関するデータを抽出して各検査に関する尤度比を算出し、臨床的有用性の指標とした。 主な結果は以下のとおり。・8件の研究(プライマリ・ケア4件、二次医療1件、三次医療[救命救急]3件)がレビューに組み込まれた。・バイアスリスクは中等度で、指標検査と参照基準の報告は不良であった。・椎体骨折の有病率は、プライマリ・ケアで0.7~4.5%、3次医療で6.5~11%であった。・指標検査は29種あったが、2件以上の研究で採用されたのは2種だけであった。・陽性尤度比が得られた“レッドフラッグ”は、プライマリ・ケアでは3項目あったものの大部分は不正確であった(著しい外傷、年齢[高齢]、ステロイド使用:尤度比推定値範囲はそれぞれ3.42~12.85、3.69~9.39、3.97~48.50)。一方、3次医療では1項目であった(挫傷/擦過傷:尤度比推定値31.09、95%CI:18.25~52.96)。・複数の“レッドフラッグ”の組み合わせは、陽性尤度比が大きく単独より有用と思われた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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高用量ビタミンD摂取、65歳以上の骨折リスクを低減

メタ解析の結果、65歳以上高齢者の高用量ビタミンD摂取(毎日≧800 IU)は、大腿骨頸部骨折およびあらゆる非椎体骨折の予防に多少ではあるが有望であることが示された。スイス・チューリッヒ大学のHeike A. Bischoff-Ferrari氏らによる解析結果で、「居住場所、年齢、性別とは独立して骨折リスクを低減する可能性があることが示された」と報告している。ビタミンD摂取と骨折の減少についてこれまでのメタ解析の結果は一貫していない。Bischoff-Ferrari氏らは、11の二重盲検無作為化比較試験の被験者を対象に解析を行った。NEJM誌2012年7月5日号掲載報告より。11試験の65歳以上被験者3万1,022例のデータをメタ解析解析には、カルシウムを併用または非併用のビタミンD経口摂取群(毎日、毎週、4ヵ月ごと)について、プラセボ群と比較またはカルシウム単独群との比較が行われた11の二重盲検無作為化比較試験の65歳以上被験者3万1,022例(平均年齢76歳、女性91%)が含まれた。主要エンドポイントは、年齢、性別、居住場所、試験で補正後のCox回帰分析による大腿骨頸部骨折とあらゆる非椎体骨折の発生だった。主要目的は、全試験の介入群におけるビタミンDの実際摂取量(各被験者の治療アドヒアランス分と試験プロトコール以外のサプリメント摂取分を含む)の四分位範囲からのデータを、対照群と比較することだった。骨折リスク低下は実際摂取の最高用量群でのみ解析の結果、大腿骨頸部骨折発生は1,111件、非椎体骨折発生は3,770件だった。ビタミンD摂取群に無作為化された被験者は、対照群と比較して、有意ではなかったが、大腿骨頸部骨折リスクが10%低く(ハザード比:0.90、95%信頼区間:0.80~1.01)、非椎体骨折リスクは7%低かった(同:0.93、0.87~0.99)。実際摂取量の四分位範囲での解析の結果、骨折リスクの低下は、最高用量摂取群(毎日の摂取量範囲:792~2,000 IU、平均800 IU)でのみ示され、大腿骨頸部骨折リスクは30%低下(ハザード比:0.70、95%信頼区間:0.58~0.86)、非椎体骨折リスクは14%低下(同:0.86、0.76~0.96)した。高用量のビタミンD摂取のベネフィットは、年齢層、居住場所、ベースラインの25-ヒドロキシビタミンD値、カルシウム摂取によって定義されるサブグループ群別にみた場合も一貫していた。(武藤まき:医療ライター)

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高齢の母親が訴える腰痛に、骨折の恐れがあることを知らない女性は7割もいる

日本イーライリリー株式会社は6日、高齢の母親をもつ45歳から60歳代の女性4,700名(47都道府県から各100名ずつ)を対象に行った、母親の健康と介護に関するインターネット調査の結果を発表した。調査は2012年6月9日~10日に、インターネット上で行われた。調査の結果、高齢の母親をもつ娘の7割以上(73.6%)は、高齢者の腰痛の原因に「骨折」の可能性があることを知らないことが明らかになった。原因として最も多く挙げられたのは、「年齢(高齢者だから)」(68.6%)、次いで 「普段の姿勢の影響」(43.9%)、「血行不良」(同)との回答が多くみられた。また、娘の約4割が、母親が「腰痛」を抱えていることを認識していることもわかった。母親が訴えている「痛み」の症状を聞いたところ、最も多い回答は「手足の関節」(38.1%)、次いで「腰」(33.0%)であった。「背中」という回答も1割弱(9.0%)あり、「腰」と「背中」を合わせた約4割(35.1%:1,650名)の母親が娘に「腰痛」を訴えていることがわかった。さらに、高齢の母親に、「背中・腰の曲がり」「身長の縮み」いずれかがあるとした娘(67.8%:3,187名)に、母親のその姿勢・外見の変化の原因として考えられることについて尋ねたところ、「年齢(高齢者だから)」(77.6%)との回答が最も多くみられた。「骨折」の可能性があると考える娘は1割未満(4.2%)であり、9割以上(95.8%)が骨折リスクについて認識していないことが示された。同社はこの結果から、「腰痛や、背中・腰の曲がり、身長の低下は、骨粗鬆症による椎体骨折の可能性があり、女性高齢者では特に注意が必要です。しかし、高齢の母親をもつ娘の大半が単に「年のせい」と考えており、骨折が見過ごされる危険性が示唆されました」と述べている。詳細はプレスリリースへhttps://www.lilly.co.jp/pressrelease/2012/news_2012_115.aspx

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日本人対象のテリパラチド週1回皮下注射の有用性(TOWER試験)

テリパラチドは骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者に対し使用することで、骨形成と骨量増加を促す薬剤である。産業医科大学などの研究グループにより、テリパラチド56.5μg、週1回皮下注射によって骨折リスクが低下することが報告された。The Journal of clinical endocrinology and metabolism誌オンライン版2012年6月20日報告。この国内第III相試験は骨粗鬆症患者における椎体骨折の発生率の減少を目的として、多施設二重盲検プラセボ対照試験として行われた。対象は既存の椎体骨折を有する65歳から95歳までの日本人骨粗鬆症患者578例。被験者は無作為にテリパラチド56.5μg週1回皮下注射群(テリパラチド週1回群)とプラセボ群に割り付けられ、72週間投与された。プライマリエンドポイントは新規椎体骨折の発生率で、X線写真よって評価された主な結果は以下のとおり。 ・テリパラチド週1回群は新規椎体骨折の累積発生率を減少させた(テリパラチド週1回群3.1%、プラセボ群14.5%、P

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骨粗鬆症治療剤 注射用テリパラチド酢酸塩(商品名:テリボン)

2011年11月、骨折の危険性の高い骨粗鬆症を適応とするテリパラチド酢酸塩(商品名:テリボン)が発売された。本剤は骨形成促進作用を有するヒト副甲状腺ホルモン製剤である。骨粗鬆症への対策は重大な課題骨粗鬆症の患者数は推定1,280万人1)と言われており、高齢化社会を迎えるわが国において、増加の一途を辿っている。骨粗鬆症の増加に伴い、骨折の発生数も年々増加している。骨粗鬆症に伴う骨折は寝たきりの原因ともなり、QOLやADLを著しく低下させるだけでなく、死亡リスクを上昇させることも報告されており2)、骨粗鬆症の予防・治療により骨折を予防することは極めて重要な課題である。骨粗鬆症患者の多くは未治療骨粗鬆症に伴う骨折が増加する要因の1つとして、未治療患者が多いことがあげられる。骨粗鬆症は自覚症状に乏しく、骨折をきっかけに発見されるケースが多い。また、骨折後、医療機関で治療を受けた際でも、骨折の原因である骨粗鬆症の治療が行われないケースも少なくない。実際、大腿骨近位部骨折後1年の間に骨粗鬆症治療が行われていなかった患者は半数以上にのぼるとも報告されている3)。さらに、骨粗鬆症治療を行った患者においても、治療効果が実感しづらいなどの理由により、治療を中断してしまうこともある。骨粗鬆症に伴う骨折を予防するためには、早期に診断し、治療介入を行うことだけでなく、患者が治療を継続できるように疾患啓発やライフスタイルに合わせた治療法の選択が求められている。骨形成を促進するテリパラチド酢酸塩骨粗鬆症の治療では食事・運動療法が基本となり、適切な時期から薬物療法を開始する必要がある。これまで薬物治療の中心となっていたのは、骨吸収を抑制する作用を有するビスフォスフォネート製剤であるが、最近では新しい作用機序を有する薬剤が開発され選択肢が増加している。その1つが骨形成促進薬のテリボンである。テリボンは骨芽細胞系細胞に作用し、前駆細胞から骨芽細胞への分化を促進したり、骨芽細胞のアポトーシスを抑制することで、骨形成を促進する薬剤である。新規椎体骨折発生率を78.6%低下65歳以上の骨折の危険性の高い原発性骨粗鬆症外来患者578例を対象とした無作為化二重盲検群間比較試験であるテリボンの第Ⅲ相試験(TOWER試験)によると、テリボン投与72週後における新規椎体骨折の発生率は3.1%であり、プラセボ群14.5%に比べ新規椎体骨折の発生率を有意に抑制した(p<0.0001、log-rank検定)4)。また、投与72週後における新規椎体骨折のプラセボ群に対する相対リスク減少率(RRR)は78.6%であった。そして、新規椎体骨折の抑制効果は早期から認められており、投与24週後までのプラセボ群に対するRRRは53.9%であった。さらに、投与継続により新規椎体骨折発生率は低下しており、投与49~72週では新規椎体骨折の発生は認められなかった。患者ごとに合わせた治療選択を骨粗鬆症に伴う骨折は、日常生活に多大なる影響を与えることから、その予防を積極的に行うことが求められる。このような中、新たな治療選択肢が増えた意義は非常に大きい。テリボンは週に1回、皮下注射する製剤であり、72週間まで投与することで骨折発生リスクの低下が期待できる薬剤である。個々の患者のライフスタイルに合わせ治療薬を選択できることは、治療継続率の向上にも寄与すると考えられる。今後、さらに専門医と在宅看護やかかりつけ医との連携が強まり、多くの骨粗鬆症患者の治療がより適切に実施されることが望まれる。

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