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第55回 透析しながらフィットネス/血栓症をAZ社ワクチン副作用と欧州が判断

透析中の自転車漕ぎ運動で心臓の調子が改善透析患者は年々増えており、2019年の調査では日本人のおよそ1,000人に3人(100万人当たり2,732人)が慢性透析患者でした1)。それら透析頼りの患者の死亡原因で最も多かったのは心不全であり、死亡原因の22.7%を占め、心不全に加えて脳血管障害と心筋梗塞も含む心血管疾患全般は死亡原因の約1/3の32.3%を占めました。慢性疾患患者の心血管疾患予防には運動が良いことが報告されています。血液透析頼りの末期腎疾患(ESRD)患者はとくにじっとしていがちであり、運動で心血管機能や体調の改善が期待できるでしょう。とはいえ透析に出向いて4時間透析を受けて帰宅することを多くの場合週に3回繰り返す患者がその他のことをする時間は非常に限られています2)。ではその長い透析の最中に運動してもらったらいいじゃないかということで実施されて好成績を収めた無作為化試験の結果が国際腎臓学会(ISN)発行のKidney International誌に掲載されました3)。試験は英国の血液透析センター3ヵ所で実施され、130人が参加しました。半数の65人は週3回の透析中に30分間自転車漕ぎ運動をしてもらい、残り半数はいつもの治療を受けました。6ヵ月後のMRI写真を調べたところ自転車漕ぎ運動をした患者の心臓の大きさは正常化しており、心臓の瘢痕が減っていました。血管にも良い影響を及ぼしたらしく大動脈硬化の指標が改善しました。また、自転車漕ぎ運動をした患者の入院はより減り、1人当たりの6ヵ月間の医療費はそうしなかった患者に比べて諸費用・装置導入や人件費(理学療法士の給与)差し引きで1,418ポンド少なくて済みました4)。透析の都度自転車漕ぎ運動をすれば否が応でも運動習慣を身につけることができ、長い透析がより有意義なものになるでしょう2)。透析中の自転車漕ぎ運動は心血管の調子を改善するようであり、果ては生存改善につながるかどうかを今後の試験で調べる必要があると著者は言っています。血栓症をAZ社ワクチンの非常に稀な副作用と欧州が判断~J&Jワクチンでも同様の血栓症が発生血小板減少を伴う普通じゃない血栓症をAstraZeneca社COVID-19ワクチンVaxzevria(AZD1222)の非常に稀な副作用と欧州医薬品庁(EMA)が結論しました5,6)。およそ2,500万人がAstraZenecaワクチン接種済みの欧州地域から主に自主的に3月22日までに報告された脳静脈洞血栓症(CVST)62例と内臓静脈血栓症(splanchnic vein thrombosis)24例を詳しく調べてEMAはその結論に至りました。欧州連合(EU)の薬剤安全性データベースEudraVigilanceに集まったそれら86例のうちおよそ5例に1例(18例)は死亡しています。その約2週間後の4月4日時点でのEudraVigilanceへのCVST報告数は3月22日までより3倍近い169例、内臓静脈血栓症は2倍以上の53例に増えています。とはいえ血小板減少を伴う血栓症は非常に稀であり、AstraZenecaワクチンのCOVID-19予防効果は副作用リスクを上回るとEMAは依然として考えています。先週紹介したヘパリン起因性血小板減少症(HIT)様の免疫反応を原因の一つとEMAは想定しています。心配なことにJ&JのCOVID-19ワクチンでも同様の血栓症が発生してEMAは調査を開始しています7)。また、AstraZenecaワクチンの別の安全性懸念・毛細管漏出症候群の調査も始まっています。毛細管漏出症候群は血管の液漏れを特徴とし、組織を腫らして血圧低下を招きます。参考1)新田孝作ほか. 透析会誌. 53:579~632,2020 2)Cycling study transforms heart health of dialysis patients / Eurekalert 3)Matthew P.M.et al. Kidney International. April 08, 2021. [Epub ahead of print]4)Daniel S. M.et al.Kidney International. April 08, 2021.[Epub ahead of print]5)AstraZeneca’s COVID-19 vaccine: EMA finds possible link to very rare cases of unusual blood clots with low blood platelets / EMA6)Blood Clots a Very Rare Side Effect of AstraZeneca Vaccine: EMA / TheScientists7)Meeting highlights from the Pharmacovigilance Risk Assessment Committee (PRAC) 6-9 April 2021 / EMA

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ミドリムシ摂取でコロナ禍の不安疲労が解消する?

 コロナ自粛により自律神経が乱れ、多くの日本国民が不安や疲労に苛まれている。これを打破するために、一躍ブームとなったミドリムシが改めて見直されるかもしれないー。3月17日、『コロナ禍における新たな社会課題「不安疲労」の実態と「腸ツボ」刺激によるアプローチ~多糖成分パラミロン最新研究報告~』(主催:パラミロン研究会)が開催。久保 明氏(東海大学医学部客員教授/内分泌・糖尿病専門医)と内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学 准教授)らが登壇し、ミドリムシの生成物がいかに現代社会に必要か解説した。ミドリムシが生成するパラミロンとは パラミロンとはユーグレナ(和名:ミドリムシ)だけが生成する細胞内に貯蔵される多糖体で、摂取すると腸に直接作用し、便中から未分解、無傷の状態で検出される成分である。これまでの臨床試験では、身体的・精神的疲労感軽減をはじめ、血糖値の上昇抑制やLDLコレステロールの低下のような代謝機能改善に対する有効性が報告されている。パラミロンの中でもEOD-1株が有用だが、機能性についてはまだ解明途中であり、現在、免疫系や消化器系をはじめとするさまざまな領域の研究者が探求している。コロナ禍、4人に1人が不調を感じている その研究者の1人で、コロナ禍で顕在化した新しいタイプの疲労を『不安疲労』として提唱する久保氏は「不安疲労とは、“なんとなくだるい”という身体的疲労感と“やる気が出ない”、“不安だ”という精神的疲労感が結びついたもの」と解説し、「Twitter上でも長引くコロナ禍で多くの人がこの不安疲労を抱えていることが如実に表れている。実際に本研究会が行った実態調査(n=1,200)でも52.7%が不安疲労を感じることが増えたと回答した」と説明し、「なかでも若い世代の女性は社会的サポートの不足や女性特有の体調変化に悩み、さらには女性ホルモンのエストロゲンの分泌不足により自律神経の機能低下が生じて不安疲労に陥りやすい」とも話した。また、この状態が続くと、うつ病だけではなく、活性酸素とともに動脈硬化の進展など老化を加速させる可能性があるが、「パラミロンを含んだ食品を摂取した群では早期に副交感神経活動が優位になり、身体的・精神的いずれの疲労感も軽減したことから、自律神経の乱れを整えるために姿勢を正したウォーキングなどを行うとともにパラミロン摂取が対策の一助になる」と説明した。パラミロンが腸の感覚受容体を刺激 続いて、内藤氏がパラミロンによる腸管の乱れ解消法について説明した。消化管は脳腸相関で相互に密接に影響し合っているため、ストレスがかかると腹痛が生じ下痢や便秘などの消化・吸収機能に影響が出る。一方、消化管にはさまざまな化学的・物理的刺激を感受するセンサーが備わっており、温度感受性Transient Receptor Potential(TRP)チャネルや甘味を感知する味覚受容体T1R2、嗅覚受容体はその代表例だ。つまり、味は舌の味蕾だけではなく胃や小腸で、匂いは鼻以外に大腸でも感じている。この腸管粘膜にある受容体などのセンサー(腸ツボ)を同氏は整体のつぼ押しに例え“腸ツボ”と称し、「腸管粘膜の細胞に点在する腸ツボを刺激することで神経系・免疫系・内分泌系の細胞が活性化することが解明されてきた。その物理的な刺激を担うのがパラミロンである」と解説した。 今回のコロナ禍の事例として、同氏は大島 忠之氏らの論文1)を紹介。それによると消化器症状の悪化を訴えたのは健康成人で6%程度に対し、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群を罹患している方では40%に上った。この状況を踏まえ、「これらの症状もパラミロンによって腸内細菌叢を改善させることで良い方向に向けることができるのかもしれない」と締めくくった。

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ファイザー社ワクチン6ヵ月後も有効、南ア変異株にも

 米国・Pfizer社は4月1日付のプレスリリースで、同社とBioNTech(ドイツ)が開発した新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2、商品名:コミナティ筋注)について、第III相臨床試験で観察されたワクチンの有効性に関する最新の分析結果を発表した。それによると、2回目のワクチン接種から6ヵ月後までの有効性は91.3%であり、南アフリカにおいて流行が確認されている変異株B.1.351系統のCOVID-19症例の予防に対しても有効性を示したという。 発表によると、第III相臨床試験には4万6,307例が参加。2回目のワクチン接種後7日から6ヵ月までのCOVID-19罹患状況を調べたところ、927例が確認された。このうち77例がBNT162b2群(ワクチン接種)、850例がプラセボ群(ワクチン未接種)で、ワクチンの有効性は91.3%であった(95%信頼区間[CI]:89.0~93.2)。 また、SARS-CoV-2変異株B.1.351系統が流行している南アフリカの参加者800例では9例のCOVID-19が確認されたが、いずれもプラセボ群であり、ワクチン有効性は100%を示した(95%CI:53.5~100.0)。探索的分析では、9例中6例がB.1.351系統(南アフリカ変異株)であり、本データは、BNT162b2が南アフリカ変異株に対する強い中和抗体応答を誘導したことを実証した従来の試験結果を、引き続き支持するものであった。 2回目の投与から6ヵ月までの試験参加者については、深刻な安全上の懸念は認められなかった。副作用は、一般的に以前に報告された結果と一致していた。ワクチンの安全性については、現在16歳以上の4万4,000例以上の参加者で評価され、1万2,000例以上の予防接種参加者が2回目の接種後少なくとも6ヵ月のフォローアップを受けており、さらなる長期的なフォローアップと分析が進められる見通しだ。

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第50回 今日から高齢者ワクチン接種、医師・看護師不足は解消される?

<先週の動き>1.今日から高齢者ワクチン接種、医師・看護師不足は解消される?2.医療者・高齢者のワクチン供給に目途、6月末までに3.75歳以上の自己負担2割に引き上げ、衆議院にて審議開始4.新型コロナの影響は周産期医療にも、出生数激減5.相次ぐジェネリック問題、信頼回復に向けた取り組みを1.今日から高齢者ワクチン接種、医師・看護師不足は解消される?65歳以上の高齢者3,600万人を対象とする新型コロナワクチン接種が本日(12日)開始される。政令指定都市と東京都特別区の計43市区を対象とした日本経済新聞の調査によると、6割の自治体が高齢者向けワクチン接種のピーク時に必要な医師・看護師の確保が間に合っていない。全国知事会では、新型コロナウイルス緊急対策本部会議を4日に開催し、厚生労働省に対して緊急提言を行った。離島やへき地での接種に必要な医療従事者の確保に向け、潜在看護師の掘り起こしや各団体に派遣の働きかけ、僻地や離島以外でも医師や看護師の派遣を可能とするなど、国に必要な支援を求めている。看護師不足に対して、厚労省は4月1日付で、へき地の医療機関への看護師派遣を解禁しており、僻地以外への全国的な看護師派遣の解禁についても労働政策審議会へ提案している。(参考)高齢者ワクチン接種、主要都市6割で医師不足の懸念(日経新聞)第4波の到来を受けた今後の新型コロナウイルス感染症対策についての緊急提言(全国知事会)ワクチン接種の特設会場、2割が「看護師不足」…厚労省が派遣解禁を提案(読売新聞)2.医療者・高齢者のワクチン供給に目途、6月末までに新型コロナワクチン接種について、9日の閣議後の記者会見で、河野 太郎規制改革相が、6月末までに1億580万回分のワクチンを供給できる見通しを明らかにした。現在実施している医療従事者480万人と高齢者3,600万人のワクチンは、6月末までに全国に配送を完了し、一部は持病のある患者に対しても供給が可能になる見込み。欧州連合からのワクチン輸出承認を前提としながらも、供給体制は整ってきたことを説明した。未定の自治体もある一般向けの接種開始時期を明確にできるような供給体制が引き続き求められる。(参考)6月中、確保見通し 高齢者のコロナワクチン 河野担当相(朝日新聞)河野氏「高齢者へのワクチン供給にメド」…6月中に4,500万回分確保の見通し(読売新聞)3.75歳以上の自己負担2割に引き上げ、衆議院にて審議開始8日、年収200万円以上の後期高齢者の医療費の窓口負担割合を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法案が衆議院本会議にて審議開始された。一方、7日に開催された財務省の財政制度分科会では、悪化した国の財政健全化に向けた意見を取りまとめるため、今後の社会保障費の伸びをどう抑制していくかなどについて議論している。今後、保険料の引き上げなど持続可能な制度設計を行うとみられ、国民の負担感が増す中で、実効性のある対策の検討が望まれる。(参考)医療費2割負担法案が審議入り 首相「能力応じ負担を」衆院本会議(日経新聞)社保費抑制へ議論開始 財制審、75歳以上の急増が課題(同)財政制度分科会(令和3年4月7日開催)資料一覧(財務省)4.新型コロナの影響は周産期医療にも、出生数激減新型コロナ感染拡大の影響が周産期医療に影響を及ぼしていることが明らかとなった。厚労省がまとめた人口動態統計速報によれば、今年1月の出生数は前年同月に比べ、14.6%減の6万3,742人であり、死亡者数は前年に比べ6.2%増の14万844人と、人口7万7,102人の純減となっている。なお、妊娠届の件数は昨年の5月から減少している。東京都でも5年連続で出生数が減少し、歯止めがかからないため、産後ケア事業など子育て支援の充実を急いでいる。(参考)人口動態統計速報(令和3年1月分)1月の出生数急落、14%減 コロナ禍で出産控え加速(朝日新聞)都内の出生数10万人割れ寸前 自治体、育児支援手厚く(日経新聞)5.相次ぐジェネリック問題、信頼回復に向けた取り組みを最近、ジェネリック医薬品の回収や出荷停止が立て続けに発生しており、後発品への信頼性を揺るがす事態が生じている。厚労省の林経済課長は、これまで医療費削減のため、後発品の安定供給に主軸を置いてきたが、質確保への転換が必要としている。調剤薬局では、他社製品への切り替えや、患者側から先発品への変更希望を受けるなどの対応事例が続いている。今後、厚労省は後発品メーカーに対する指導を強化し、供給と品質の改善を求め、信頼回復を働きかけていくことになる。(参考)「日医工から他社へ」8割 都内の薬局、強い不信感(朝日新聞)厚労省・林経済課長「後発医薬品の安心を取り戻すことが振興策」 今夏にも流通改善GL見直しに着手(ミクスOnline)

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COVID-19、退院後もさまざまな臓器疾患リスクと関連/BMJ

 COVID-19元入院患者は一般集団と比較して、予想される多臓器の機能障害(とくに呼吸器と心血管代謝)のリスクが高いことが、英国国家統計局のDaniel Ayoubkhani氏らによる検討で明らかにされた。同リスクの増大は高齢者に限ったものではなく、また特定の人種・民族に認められるものでもないという。これまでに心血管系・代謝系・腎臓系・肝臓系に影響を与える肺外機能障害と、COVID-19との関連の可能性が指摘されており、最近のエビデンスとして、COVID-19で入院した患者は、退院後に死亡および再入院する割合が高いことが示されているが、多臓器疾患の長期疫学については定量化されていなかった。結果を踏まえて著者は、「post-covid syndromeの診断・治療・予防は、特定の臓器・疾患に限定することなく統合的なアプローチで臨むことが必要であるとともに、リスク因子を確定するための研究が急がれる」とまとめている。BMJ誌2021年3月31日号掲載の報告。イングランドCOVID-19元入院患者4万7,780人と適合一般集団を比較 研究グループは、病院から退院したCOVID-19患者の臓器別の機能障害発生率を、適合対照の一般集団と比較し定量化する検討を、後ろ向きコホート研究で行った。 イングランドのNHS病院から2020年8月31日までに生存退院したCOVID-19元入院患者4万7,780人(平均年齢65歳、男性55%)を特定し、イングランド住民約5,000万人より過去10年の電子健康記録で個人的および臨床的特徴について正確にマッチさせた対照と比較検討した。 主要評価項目は、2020年9月30日までの再入院(対照群はあらゆる入院)率、全死因死亡率、呼吸器・心血管・代謝・腎・肝の各疾患診断率であった。それぞれ年齢、性別、人種・民族別の割合も算出した。元入院患者の再入院率は一般集団の4倍、退院後死亡率は8倍 平均追跡期間140日間で、生存退院したCOVID-19元入院患者の約3分の1(1万4,060/4万7,780人)が再入院し、退院後の死亡は10人に1人超(5,875人)であった。それぞれの発生頻度は適合対照群と比べて、再入院率は4倍、死亡率は8倍高かった。 呼吸器疾患(p<0.001)、糖尿病(p<0.001)、心血管疾患(p<0.001)の診断率も、COVID-19元入院患者で有意に上昇した。それぞれ1,000人年当たりの診断例は770(95%信頼区間[CI]:758~783)、127(122~132)、126(121~131)であった。 率比は、70歳以上よりも70歳未満の患者のほうが大きく、白人集団よりも少数人種・民族群で大きかった。最も大きな差がみられたのが、呼吸器疾患についてで、70歳未満10.5(95%CI:9.7~11.4)vs.70歳以上4.6(4.3~4.8)、非白人11.4(9.8~13.3)vs.白人5.2(5.0~5.5)であった。

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第52回 40~50代は必見!ワクチンオタクの筆者が薦める新型コロナ以外のワクチン4選

コロナ禍の影響で私自身が週刊誌などから新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ)について取材を受ける機会が増えている。もちろん週刊誌なども最初はいわゆる「大御所」の医師にあの手この手でコンタクトを取ろうとするのだが、こうした医師たちは多忙なことに加え、取材を受ける場合でも新聞、テレビなどの大手メディアに予定を押さえられていることが多く、捕まえにくい。そんなことで第2候補、第3候補としてコロナ禍でのさまざまなテーマで取材依頼が舞い込んでくる。まあ、同じメディアに身を置くゆえに頼みやすいことも影響しているのだろう。先日もある取材依頼があったのだが、それは珍しく直接的にコロナに関連するものではなかった。たまたま、SNSのFacebookに書いた私の投稿に知人の編集者が目を止めて、取材をさせてほしいと連絡があったのだ。その投稿とは私のワクチン接種歴である。3月半ば、私は国立国際医療研究センターで国内未承認のダニ脳炎ウイルスに対する3回目のワクチン接種を完了。これにより過去約2年で20種類のワクチン接種を終了した。以下はこの間に私がワクチン接種を完了した感染症である。A型肝炎B型肝炎麻疹風疹ポリオジフテリア破傷風百日咳おたふく風邪帯状疱疹腸チフス狂犬病コレラヒトパピローマウイルス髄膜炎(B群も含む)インフルエンザダニ脳炎黄熱病肺炎球菌日本脳炎現在私は51歳。この年齢と照らし合わせておやっと思うものもあるだろう。たぶん、その筆頭は麻疹・風疹ではないだろうか。私の場合、どちらも罹患歴もなく、これまでワクチン接種歴もなかった。風疹に関しては男子がワクチン接種対象となっていなかった年代、なおかつたまたま罹患したことがなかった。麻疹は私の世代でも1歳時にワクチン接種を受けるはずだが、ある事情によりワクチン接種をスキップしてしまった。それは生後3ヵ月の頃、当時4歳だった姉が麻疹を発症、姉か私のいずれかを隔離するわけにもいかず、かかりつけ医が私に免疫グロブリンを注射。当時こうしたケースは1歳時点でのワクチン接種で抗体が作られにくいと考えられ、通常の接種をスキップされてしまっていたのである。また、学生時代にバックパッカーだったこともあり、当時は抗体価持続期間10年と言われていた黄熱病ワクチンを接種したことがある。現在では抗体持続期間は生涯とされている。しかし、当時のイエローカードは10年経過した段階で無効と思い廃棄してしまっていた。そんなこんなで再接種した次第である。そもそも、なぜこんなにワクチンを打ったのか? きっかけは2つある。最初のきっかけは2018年2月4日にさかのぼる。この日は語呂合わせで「風疹の日」で、たびたび流行していた風疹のワクチン接種を呼びかけるイベントが成田空港で行われていた。その取材に赴き、妊娠中に風疹に感染し、先天性風疹症候群の娘さんを出産した「風疹をなくそうの会『hand in hand』」共同代表の可児 佳代氏の講演を聞いた。可児氏の娘・妙子(たえこ)さんは先天性風疹症候群により生まれつき目、耳、心臓に重い障害を持ち、闘病の末に18歳で短い命を終えていた。妙子さんの写真を手に話す可児氏の姿に衝撃を受け、その後しばらくぼーっとしたまま空港内を徘徊したのを覚えている。この時のイベントで実施していた無料抗体検査を受け、後日郵送で届いた結果で私にはやはり抗体がないことが判明した。そこで知人の医師に相談し、麻疹・風疹混合ワクチンを接種した。多くの方がご存じのように、かつては麻疹も風疹もワクチン接種は1回のみだったが、その後ワクチン接種での抗体獲得状況に関する研究が進み、2回接種で抗体獲得がほぼ確実になることが分かった。今では麻疹、風疹ともワクチン接種は2回が原則となっている。この時は知人の医師と2回目をどうしようか話し合ったが、医師からは「流行地域に行くならばまた来月接種するというのもありかもしれないが、そうでなければ1~2年後でいいのではないか?」と提案され、そのようにすることになった。そうこうするうちに2019年に家族と南アジアのブータンを旅行することになったのが第2のきっかけだ。このとき渡航前に調べたところ、現地では狂犬病、腸チフス、日本脳炎、コレラといった感染症のリスクがあることが分かった。たまたま前述の知人の医師のところでは国内未承認のものも含め、これらのワクチンがすべて接種できることがわかり、早速接種することにした。その際に知人医師のところではかなり数多くのワクチンを接種できることが分かった。経歴にもある通り、私は災害現場や海外の紛争地の取材などもする。その意味では数多くのワクチンを接種しておいて損はない。ということで、次々に接種し始めたのである。知人医師のところで接種できなかったダニ脳炎、髄膜炎B群、帯状疱疹(シングリックス)は国立国際医療研究センターのトラベルクリニックで接種した。ちなみにこのうちヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関しては、接種を申し出た際に知人医師からは「もういいんじゃないの?」と笑われた。そりゃ50代の不活発なおじさんにはほぼ不要である。ただ、ご存じのようにHPVワクチンに関してはさまざまな問題が噴出している。その報道にかかわる際にこのワクチンに懐疑的な人たちから「じゃあ、あなたは接種したんですか?」と問われて、接種していないと答えればそれだけで揚げ足を取られかねない。ということで、少しでも説得力を付けるために接種したというのが実際だ。さて前置きが長くなったが、ではどんな取材を受けたかというと、端的に言えば「新型コロナをきっかけにワクチンに関する関心が高まっている今、一般の人に接種をお薦めするワクチンを教えて欲しい」というテーマだった。ちなみに取材依頼元の週刊誌のメイン購読層は40~50代の男性である。そこで私がお薦めしたのが麻疹・風疹ワクチン、HPVワクチン、おたふく風邪ワクチン、破傷風ワクチンである。麻疹・風疹ワクチンを薦めたのは、私のような公的に風疹ワクチンを接種する機会がなかった1962年4月2日~1979年4月1日に生まれた男性は、近年の風疹流行の媒介者であることが明らかなため、国が2019年~2022年3月末までの3年間は無料で抗体検査と予防接種を受けられるクーポンを発行しており、一部の男性にとっては確実にお得だからだ。しかも、このクーポンで抗体がないと判定されてワクチンが接種される際は、基本的に麻疹・風疹混合ワクチンが選択される。つまり、主に空気感染し一度流行すると厄介な麻疹の阻止にもつながるという接種者個人はもちろん、社会全体にとっても「2度おいしい」のである。HPVに関しては、ご存じのように性感染症であり、男性ではオーラルセックスなどをきっかけに中咽頭がんに罹患するおそれがある。中咽頭がんは胃がんや大腸がんのように定期健診もなく、見つかった段階でかなり進行しているケースも少なくない。そして手術や化学放射線療法の合併症である発声困難や味覚障害でQOLが著しく低下するケースもあるほか、最悪は死に至る。それがワクチン接種で大幅にリスクを低下させることができる。おたふく風邪ワクチンは睾丸炎による男性不妊の予防、破傷風ワクチンは災害ボランティア活動などで比較的感染の機会が多いというのが推奨理由である。まあ、この辺は本サイトの読者である医療者の方々からは異論があるかもしれないが、少なくとも個人的には大きく外れてはいないと思っている。ちなみにこれまでこの接種にかかった費用は約40万円。もはや趣味の域であると言っても差し支えなく、私自身も最近では「趣味はワクチン接種」と公言している。実際、趣味の域を極めるべく、将来的には国内で接種が不可能なEU承認のエボラワクチン、中国のみで承認のE型肝炎ワクチン、アメリカのみで承認の炭疽菌ワクチンもコロナ禍終息後に機会があれば接種してみたいところ。これは冗談ではなく真面目な話。もちろん飛行機に乗って接種しに行きますので、何らかの情報や伝手がある方は編集部にご一報ください(笑)。ちなみにどの雑誌に掲載されるかというと、一部では男性でも購入しにくいと言われる数少ないカタカナ名の男性週刊誌である。まあ、どんな反応があるか、それともまったく反応がないのか、個人的にもちょっと興味がある。

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「ワクチン・パスポート」、制度導入にあたっての論点/NEJM

 世界中で新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種が進むにつれ、ワクチン接種済みの証明書を発行し、国内外の移動やイベント参加時などに提出を義務付ける制度、いわゆる「ワクチン・パスポート」に関する議論が生じている。現時点で考えられる論点が、NEJM誌オンライン版2021年3月31日号Perspectiveに掲載された。 ワクチン・パスポートは、既に米国、英国、EUが導入を検討しているほか、オーストラリア、デンマーク、スウェーデンが導入を表明しており、国民1人当たりのワクチン接種数で世界トップのイスラエルでは、すでにワクチン接種を受けた住民に「グリーンパス」を発行し、ホテル、ジム、レストラン、劇場、音楽会場など、入場制限が行われている場への立ち入りを許可する際に使われている。ニューヨーク州が発行する電子ワクチン・パスポート「エクセルシオール・パス」は劇場、イベント会場、大規模な結婚式などへの参加を許可する際に使われている。 これらのプログラムの基本的な考え方は、自由や社会的価値のある活動を限定する公衆衛生上の制限は、検証可能なリスクに合わせて調整されるべき、というものだ。 しかし、COVID-19のワクチン・パスポートによる制限調整には、いくつかの重大な懸念事項に基づく反対意見がある。それは以下のようなものだ。1)ワクチン供給に制限がある時期に、早期にワクチン接種を受けた幸運な人を優遇にするのは、道徳的に問題がある。2)ワクチン供給の制限が緩和されても、人種的マイノリティや低所得者層の接種率は不均衡に低いままだと考えられる。3)ワクチンの有効率、特に新たな変異株に対する有効性はまだ十分に検証されておらず、ワクチン接種者の再感染の可能性を否定できない。4)ワクチン接種者を優遇することは、宗教的または哲学的理由からワクチン接種に反対する人にペナルティを与えることになる。5)ワクチン接種を正確に証明するためのコンセンサスが得られていない。 国民の間でもワクチン・パスポート導入は賛否が分かれ、政府の公式な政策として採用するのは早いだろう。一方、私たちは提起された異論は、ワクチン・パスポートを一切禁止することを正当化するには至らない、と考える。ワクチン接種数は急増しており、不利な立場にある人々の接種に対しても特別な努力が払われている。ワクチン接種の正確な証明手段については主要テクノロジー企業が開発に取り組んでおり、ワクチン接種を拒否する人々に何らかの負担をしてもらうことは、集団免疫に与える影響から見て一定の公平性があると思われる。 重要な出発点は、ワクチン・パスポートと義務化を区別することだ。政府が、ワクチン・パスポートを仕事や教育などの重要な活動への参加条件とするならば、それは本質的にワクチン接種の義務化となる。 「パスポート」の概念が最も現れるのは旅行だ。現在、連邦および州当局は、州または国境を越える人に隔離を強制しており、ほとんどの場合にはワクチン接種者も例外ではない。しかし、いくつかの州では例外にすることを検討しており、米国疾病予防管理センター(CDC)はワクチン接種者に対する隔離の除外と、既感染者の入国制限解除を承認している。ワクチン・パスポート保有者にも同様の方針が適用されるのは時間の問題だろう。 ワクチンの渡航政策を主導するには、政府はまず予防接種を受けたことを確実に証明する基準づくりからはじめるべきだろう。このような基準づくりは、旅行業界との官民連携によって比較的スムーズにでき、その後はイベント等の他領域に拡大するだろう。こうしたケースは政府による管理の必要性は低く、スポーツ試合、コンサート会場、クラブ、レストラン・バーなどで、顧客のワクチン接種状況に応じて入場可否を決定することは合理的であり、ワクチン接種の促進にも役立つだろう。 政府には、ワクチン・パスポートを使った違法な差別を含む、民間に対する基準づくりと、ワクチン接種プログラムの推進が求められる。とくに、ワクチン・パスポートが雇用に影響を与える場合、規制は重要となる。宗教上の理由でワクチンを受けない人や障害者への差別にあたらないよう、雇用主のワクチン接種への方針は、労働者や顧客の健康に対する実際のリスクに基づく必要がある。 政府のもう一つの重要な役割は、ワクチン・パスポート制度の設計者が、ワクチンの有効性と限界に関する最新情報に容易にアクセスできるようにすることだ。そして、柔軟な適応が重要となる。過去1年間の経験から、ある月には賢明な感染対策も1ヵ月後には再考する必要があることがわかっている。合理的かつ倫理的なワクチン・パスポート制度は、ワクチンの入手可能性が高まり、集団免疫獲得が近づき、ワクチンの有効性や限界に関する科学的証拠が増えるにつれ、定期的に変更される可能性がある。

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認知症、脳・心血管疾患、1型糖尿病などがCOVID-19重症化リスクに追加/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)は、3月29日、成人において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクとなる病状リストにいくつかの新しい項目を追加した。以前から可能性が指摘されていた、「1型糖尿病(2型糖尿病に追加)」「中等度~重度の喘息」「肝疾患」「認知症またはその他の神経学的疾患」「脳卒中・脳血管疾患」「HIV感染症」「嚢胞性線維症」「過体重(肥満に追加)」のほか、新しく「薬物依存症」がリストアップされた。新しいリストでは、特定のカテゴリごとに病状が記載されている。COVID-19重症化リスクとなる成人の病状リスト(アルファベット順)・がん・慢性腎臓病・慢性肺疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(中等度~重度)、間質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺高血圧症など・認知症またはその他の神経学的疾患・糖尿病(1型または2型)・ダウン症・心臓病(心不全、冠状動脈疾患、心筋症、高血圧など)・HIV感染・免疫不全状態(免疫力の低下)・慢性肝疾患:アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患[NAFLD]、とくに肝硬変、肝線維化など・過体重と肥満:BMI>25(過体重)、BMI>30(肥満)、BMI>40(重度の肥満)・妊娠・鎌状赤血球症またはサラセミアなどの異常ヘモグロビン症・喫煙(現在または以前)・臓器または造血幹細胞の移植・脳卒中または脳血管障害・薬物依存症(アルコール、オピオイド、コカインの中毒など) CDCは、これらの病状がある人は、周りの人の協力を得ながら注意深く安全に管理することが重要だとし、「現在の処方・治療計画の継続」「(病状に対応できる)常温保存食品の用意」「病状悪化のトリガーを避ける」「ストレスへの対処」「異変があった場合の迅速な救急要請」などを呼び掛けている。

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英国のCOVID-19検査・追跡・隔離システム、順守率低調/BMJ

 COVID-19パンデミックの当初11ヵ月間における英国での検査・追跡・隔離システムの順守について調査した結果、経時的に多少の改善は認めるものの順守率は低調だったという。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのLouise E. Smith氏らが、オンライン調査の結果を報告した。検査・追跡・隔離システムは全英のCOVID-19回復戦略の柱の1つであり、このシステムの成功は、症状が認められた場合は隔離し、発症した場合は検査し、感染が確認されたら濃厚接触者の情報提供を得ることに依存している。著者は、「実用的なサポートと金銭的補償がシステムの順守を改善する可能性がある。男性、若年層、医療福祉関連等の労働者を対象としたメッセージや政策も必要かもしれない」とまとめている。BMJ誌2021年3月31日号掲載の報告。オンライン調査のデータを解析 研究グループは、英国保健省に代わりBMG Researchが実施したオンライン調査を用い、「COVID-19 Rapid Survey of Adherence to Interventions and Responses(CORSAIR)study」の一環として解析した。対象は、2020年3月2日~2021年1月27日(調査開始第6週~第42週の計37週)の調査データで、16歳以上の英国在住者5万3,880例から得られた7万4,697件の回答(37週、各週約2,000件)。 調査項目は、COVID-19の主な症状の有無(咳嗽、高熱/発熱、嗅覚/味覚消失)、症状を有する場合は自己隔離しているか、症状が現れた場合は自己隔離する意思があるか、症状を有する場合は検査を要請したか、症状が現れた場合は検査を要請する意思があるか、濃厚接触者について詳細を共有する意思があるか、であった(いずれも自己報告)。症状を有し自己隔離した人は42.5%、検査を自ら受けた人は18% 参加者の51.5%(95%信頼区間[CI]:51.0~51.9、2万6,030/5万570例)のみに、COVID-19の主な症状が認められた。最新の調査週(2021年1月25日~27日)に収集されたデータでは、50.8%であった(95%CI:48.6~53.0、1,019/2,007例)。 すべての調査週にわたる期間補正後完全自己隔離順守率は42.5%(95%CI:39.7~45.2%、515/1,213例)であり、最新の調査週では同51.8%(40.8~62.8、43/83例)であった。 COVID-19検査の要請は、全週で18.0%(95%CI:16.6~19.3%、552/3,068例)であり、最新の調査週では22.2%まで上昇した(14.6~29.9%、26/117例)。 濃厚接触者の詳細を共有する意思があると報告した人の割合は、全週で79.1%(95%CI:78.8~79.5%、3万6,145/4万5,680例)、最新週で81.9%(80.1~83.6、1,547/1,890例)であった。 非順守は、男性、若年、扶養の子供がいる世帯、社会経済的に低階級、パンデミック中の経済困難の大きさ、主要セクター(医療福祉関連等)での労働と関連していた。

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医師がマスコットとしてSNSで発信する理由 コロワくん×コム太の犬対談

日米欧で活躍する日本人医師ら10人が、新型コロナワクチンに関する一般市民の不安や疑問を解決するために結成した「コロワくんサポーターズ」。代表は山田 悠史氏(米国内科専門医)が務め、LINEボット「コロワくんの相談室」などの情報提供プロジェクトを手掛ける。今回、プロジェクトの公式マスコット「コロワくん」と、ケアネットの公式マスコット「コム太」の対談が実現。ワクチンに関する真面目な話から、SNSで犬として発信する裏話まで、2人(匹)で語り合った。コロワくん「コロワくんサポーターズ」の公式マスコット。LINEボット「コロワくんの相談室」では、寄せられた疑問に日々真面目に答えている。秘めたる思いがあり、コム太に今回の対談を申し込んだ。好物は大福餅。コム太ケアネットの公式マスコット。主にTwitterに生息しているが、本サイトではとくに推されていない。バナーでの汎用性がウリで、社内に熱狂的なファンが数人いる。好物はサーロインステーキ。※いずれも、中の人は内科医ですが、この対談ではマスコットキャラクターになりきって話をしています。「コロワくんサポーターズ」公式HP副反応は大丈夫?新型コロナワクチンの疑問に答えるLINEボット医師が主体のプロジェクトにマスコット犬がいる理由 コロワくんはじめまして、コム太さん!「コロワ」というワン。SNSで活躍している先輩として、尊敬しているワン!! 今日はよろしくワンワン!!  コム太こちらこそよろしくだわん!センパイだなんて照れるわん。コロワくんにさっそく質問なんだけど、「コロワくんサポーターズ」は医師たちのプロジェクトなのに、どうしてマスコットキャラクターがいるの? コロワくんそれはですね、一般的な注射やワクチンって、痛い、怖い、とがっている…など、どうしてもマイナスなイメージがありませんか?このプロジェクトでは、「注射やワクチンに対する不安の緩和につながるような、あたたかい存在が必要なんじゃないか」という話になったワン! コム太なるほど。それでマスコットキャラとして、コロワくんが生まれたわんね!でも、なんで犬なの? コロワくん実は、先に「コロワ」っていう名前が決まったワン。新型コロナワクチン…コロナワクチン…コロワ、みたいな。それで、「コロワ」っぽいキャラクターは犬だろうって、連想ゲーム的な発想で生まれたワン。コム太センパイは、なんで犬のアカウントになったワン? コム太コム太は実は最初から犬だったわけではなくて、3年前に中の人が変わって、「研修医や若い世代にもリーチできるように」って方針になったわんけど、アカウント自体はニンゲンで、最初は全然うまくいかなかったわん。 コロワくんどんな感じだったんですかワン? コム太キャラ作りに思いっきり迷走して、最初は「魁!!◯塾」の江◯島平八みたいなテイストにしてた時期もあったわん。「これが研修医にオススメなのである!見るべし!」みたいな。これがまぁ刺さらなくて…。そもそも世代的に合うわけがないわんけど(笑)。 コロワくん大変な時代もあったんですワンね。そこから犬アカウントに行き着いたのは? コム太キャラをつかみかねた結果、上から「昔作った犬のキャラがあるんで、今後はこれで」って、言われるがまま犬になったわん。だから、コロワくんみたいに、「不安を和らげよう」という立派な志があったわけではなく、要するに社内事情だわんね。 コロワくん「ケアネットの犬コム太」っていうアカウント名の裏事情を垣間見た気がしますワン…(笑)。 コム太幸運なことに、犬キャラがハマって、そこからフォロワー数が伸び始めたわん。まさに「自然体でのアカウント運営が一番よい」って、SNS運用ノウハウ本とかに書かれがちなとおりになったわん。とりあえず「〜わん」をつけておけば丸く収まるみたいなとこもあって助かってるわん(笑)。ところで、コロワくんの活動は順調ですかわん? コロワくんはい!! ありがたいことに、LINEボット「コロワくんの相談室」は、NHKをはじめとするテレビや朝日新聞などの全国紙、さらには米国のCNNやワシントン・ポスト、英国のBBC、ロイターなど海外のメディアでも紹介されたんですワン。 コム太すでに海外からも注目されているマスコット犬とは…!ところで、コロワくんは何犬なのかわん? コロワくん柴犬です!! 誕生当初、犬種は決まっていなかったのですが、Twitterで柴犬愛好家の方のアカウントにフォローされて(笑)、それから柴犬ということになりましたワン。CNNの記事にも「Corowa-kun is a Shiba Inu-inspired chatbot」と書かれています。参考Why Japan took so long to start Covid-19 vaccinations, even with the Olympics looming(CNN) コロワくん別の取材では、代表の山田先生に対して、「この犬はあなたをモチーフにしたの?」と聞かれたこともあります。イメージして作ったわけではないのですが、山田先生からは「毎日向かい合っているからか、だんだん似てきている気がする」って言われてちょっとうれしかったですワンワン! コム太「犬は飼い主に似る」ってことわざを体現しているわんね(笑)。ちなみにコム太の犬種は“純血種の社畜”って設定にしてるわんけど、愛好家の方にフォローしていただけるなら、今日から柴犬ってことでもいいかもしれないわん…!そういえば、先日、本の表紙でコロワくんを見つけたわん!2021年4月22日発売!! コロワくんそうなんです!! LINEボットやSNS公式アカウントには、日々たくさんの新型コロナワクチンに関する疑問が寄せられるので、その一部を一問一答形式でまとめましたワン。これをきっかけに、普段LINEを使わない人にも、正しい情報が届くといいなと思っています。LINEボットでは答えきれないことも書いているので、すでに使ってくださっている人にも役立つ内容になっていますワン!! コム太めちゃくちゃ社会貢献活動してるわん…!SNSでは、誰かを不用意に傷つけない発信が大前提 コロワくんコム太さんは、もう3年ほどTwitterをやっているそうですが、SNSでのキャラクター作りで気を付けていることはありますかワン? コム太そうだわんねぇ…。一番大事にしてるのは、言いたいことを言うために、そうではない物事を否定しないこと。安易な「二項対立」にしないようにしてるわん。その分、表現がふんわりしてシャープさに欠けることもあるわんけど、傷つく人がなるべく少ない切り口を模索してるわん。 コロワくんそれって、日常的な患者さんとの対話で気を付けていることとも通じて、なんだか染みますワンね。僕も広く受け入れてもらえるキャラを目指していますが、ワクチン反対派からは辛辣なコメントがつくこともあって…。その言葉に僕たちが傷つくだけならまだいいのですが、「ワクチンを打とう」という前向きな気持ちを持っている人たちに対しても、ネガティブに響いてしまったらどうしようと思ってしまいますワン。 コム太ワクチンもそうだけど、人はそもそも「わからないもの」に対して不安を抱きやすいわん。確かに、そうやって不安が連鎖して、ワクチンの接種率が下がってしまうと困るけど、それに対する反論がストリクト(厳格)過ぎるのもよくないと思ってて。なぜなら、不安を抱えている人に正論を掲げても、わかり合えることってほとんどないからだわん。 コロワくんそうですよね。今の活動では、理論的なことやエビデンスを機械的に投げかけるようなことはしないように心掛けていますワン。 コム太うんうん。情報の正しさはもちろんだけど、相手の不安やいろんなネガティブな感情を理解しようとすることも同じくらい大事で、それがその先の相互理解につながる第一歩だと考えているわん。だから、コロワくんの活動にはとっても共感できるわん!まるっこいフォルムもやわらかいイメージにピッタリだわん!! コロワくんありがとうございます!!あと、これもぜひ聞いておきたいのですが、これまでSNSをやっていて、苦しい局面に出合ったことはありますかワン? コム太うーん、「これ絶対おもしろいだろ!」っていう渾身のボケツイートに、まったく「いいね」がつかなかったときだわん…(笑)。 コロワくん(苦笑) コム太幸い、これまで大きな炎上経験もなく、たまにコム太のイラストを描いてくれる人もいて、フォロワーさんとのコミュニケーションは今のところうまくいってると思えているわん。ときには、「この情報古いですよ」ってご指摘を頂くこともあるわんけど、すぐに謝罪・訂正ツイートで対応して、ツイ消しはしないようにしてるわん。 コロワくん勉強になりますワン!! コム太逆に、公式アカウントで犬キャラをやっていると、個人アカウントでもつい「わん」って言っちゃって、焦ったことは何度もあるわん(笑)。 コロワくんわかります!!以前、僕も個人アカウントで「ワン」をつけてつぶやいてしまって、慌てて消したのですが、数人には見られてしまいました(汗)。 コム太あるある(笑)。それでは最後に、今後の目標を聞かせてもらってもいいかわん? コロワくんLINE友達は数万人いるのに、Twitterのフォロワーが少ないので、SNS上での活動もしっかりやっていきたいと思っていますワン。今は時期的にもワクチン関係の活動に注力していますが、今後ワクチン接種が進んで活動が一段落したら、SNS上などでデマや誤情報が拡散されてしまうところにどうアプローチするかなど、もう少し手を広げて長期的な視野で考えていきたいと思っていますワンワン。 コム太いやぁ、大きくて素晴らしいビジョンだわんね!夢があるわん。コム太の目標はねぇ、そういう大きいのじゃなくて、まず「年内にフォロワー7,000人」っていう具体的な数値目標を果たさないと、中の人がクビになってしまうわん…(涙)。 コロワくん世知辛いですワン…。 コム太でも、今日の対談がとっても楽しかったから、これからも、このアカウントをきっかけに面白い人と対談する機会があればいいなと思うわん。仲良くなった証しに、顔交換するアプリで写真撮ろうわ〜ん! コロワくんいいですね!犬同士盛り上げていきましょう!! 今日はありがとうございましたワン!参考Why Japan took so long to start Covid-19 vaccinations, even with the Olympics looming(CNN)2021年4月22日発売!!SNSでは、誰かを不用意に傷つけない発信が大前提

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良い睡眠には就寝環境も関係する/アイスタット

 世界的にみてもわが国の睡眠時間、睡眠の質は低いといわれている。そして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍の中で、私たちの睡眠環境に変化はあったのであろうか。 3月19日の「春の睡眠の日」に合わせ、「睡眠が快適な人とそうでない人は何が違うのか」また「昼間の眠気は、睡眠事情が関係しているものなのか」を知る目的で、株式会社アイスタットは睡眠に関するアンケートの調査を行った。 アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~59歳の有職者300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2021年3月16日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~59歳/全国地域/有職者)を対象アンケート結果の概要・最近1ヵ月間の睡眠状況が快適な人は34%。若い世代ほど快適が多い・平日の平均睡眠時間は5~6時間未満(35%)が最多。対象が有職者のため短い傾向・睡眠時間数が満足の割合は約30%で、睡眠時間が長い人ほど満足の人が多くなる傾向・睡眠が快適・そうでない人の違いは、睡眠時間が6時間以上で満足、6時間未満で満足ではない・日中の睡魔、居眠り、昼寝は、「たまにある(50%)」が最多。睡眠時間数が長い人ほど「ほとんどない」が多く、短い人ほど「頻繁にある」傾向・日中の睡魔・居眠り・昼寝が頻繁・たまにある人とほとんどない人の違いは、睡眠時間が6時間以上か未満・調査結果から、健康推進のためにいかに快適な睡眠をとることが大切か示唆された健康のために確保したい7時間の睡眠時間 「最近1ヵ月間の睡眠状況は、快適(ぐっすり眠れている、睡眠で身体の休養がとれるなど)かどうか」を聞いたところ、「非常に」「やや」を足し合わせた「快適」は34.0%、「あまり」「まったく」を足し合わせた「快適でない」は37.0%で「快適」が下回る結果となった。年代別では、「快適」と回答した人は「20・30代」(38.9%)で最も多く、年代が高くなるにつれ、快適の割合が低くなる傾向だった。また、睡眠時間別では、「快適」と回答した人は「7時間以上」(54.2%)が最も多く、睡眠時間が短くなるほど、快適の割合が低くなる傾向だった。 「最近1ヵ月間の平日の平均睡眠時間」について聞いたところ、最近1ヵ月間の平日の平均睡眠時間では、「5~6時間未満」(35.0%)が最も多く、次に「6~7時間未満」(29.0%)と続いた。回答者が有職者対象のため、睡眠時間数が短い傾向がうかがえた。年代別では、「5時間未満」と回答した人は「50代」(24.1%)で最も多く、「5~6時間未満」では「40代」(38.1%)、「6~7時間未満」では「20・30代」(33.3%)、「7時間以上」では「20・30代」(20.4%)で最も多かった。 先の質問と関連し、「睡眠時間数の満足度について」聞いたところ、「非常に満足」「やや満足」を足し合わせた「満足」は29.3%、「やや睡眠不足」「非常に睡眠不足」を足し合わせた「睡眠不足」は43.3%で、「睡眠不足」と回答した人の方が多かった。年代別では、「満足」と回答した人は「20・30代」(35.2%)で最も多く、「睡眠不足」と回答した人は「50代」(47.5%)で最も多い結果だった。また、睡眠時間別でみると、「満足」と回答した人は「7時間以上」(58.3%)だった。 「休日以外の日中で、睡魔に襲われる、居眠り、昼寝をすることがあるか」と聞いたところ、「たまにある」(50%)が最も多く、次に「ほとんどない」(35%)、「頻繁にある」(15%)と続いた。年代別では、「頻繁にある」と回答した人は「50代」(17.0%)で最も多く、「たまにある」と回答した人は「20・30代」(57.4%)で、「ほとんどない」と回答した人は「40代」(37.1%)で最も多い結果となった。睡眠時間別では「頻繁にある」と回答した人の睡眠は「5時間未満」(35%)で最も多く、「ほとんどない」と回答した人の睡眠は「7時間以上」(56.3%)で最も多い結果だった。睡眠時間の長短だけでなく、中年期以降では睡眠時無呼吸症候群などの慢性疾患も併存している可能もあり、必要によっては治療の必要性も示唆される結果となった。 「最近1ヵ月間の起床の仕方について(平均して最も多い起床の仕方なども含む)」を聞いたところ、「自然に目が覚める(体内時計)」が35.7%で最も多く、次に「携帯電話や目覚まし時計などのアラーム1回で起きる」の33.3%が続いた。年代別では「自然に目が覚める」は「50代」(39.7%)で最も多く、「携帯電話アラーム1回」は「20・30代」(35.2%)で最も多い結果だった。 「最近1ヵ月間の睡眠について、11個の選択肢であてはまるもの」を聞いたところ、第1位は「トイレで起きることがある」(47.3%)、第2位は「眠りが浅い」(26.7%)、第3位は「朝起きても眠気を感じる、毎朝スッキリしない」(26.0%)だった。年代別では、睡眠にマイナスと思われる選択肢11個のうち、50代は「トイレで起きることがある」「眠りが浅い」「寝ているのに疲れが残っていてだるい」「寝付きが悪い」「朝早くに目覚めてしまう」「いびきをかいているとよく言われる」「睡眠導入剤や快眠サプリメントを服用している」「寝相が悪い」の8個が最も多かった。 「就寝する部屋の状況」について7個の選択肢からあてはまるものを聞いたところ、「部屋は一人で寝ている」が44.7%で最も多く、次に「ベッドや布団の周りには物があまりなく、整理整頓されている」が33.7%と続いた。年代別では、睡眠にプラス的と思われる選択肢7個のうち、50代は「部屋は一人で寝ている」「外部の騒音など気にならない・静かである」「日当たりが良い部屋である」「部屋は日々、掃除機をかけたり、換気をしてキレイである」「就寝前、就寝中の部屋の温度、湿度は常に快適である」の5個が最も多く、快眠のための工夫がされている傾向がうかがえた。 「最近1ヵ月間の日々の生活状況」について15個の選択肢からあてはまることを聞いたところ、「ストレスがある」(36.7%)が最も多かった。睡眠時間別では、「ストレスがある」「仕事が忙しい」「コロナ禍により、収入面・雇用面・生活面で大きなダメージを受けている」「肥満傾向である」「栄養バランスの良い食事を摂取していない」「規則正しい生活を送っていない」「持病がある」と回答した人の睡眠時間は、「5時間未満」が最も多かった。一方、「どれもあてはまらない」と回答した人は「7時間以上(35.4%)」が最も多い結果だった。睡眠時間の長さが、ストレスの軽減に役立つことが示唆された。

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ワクチン接種者、検査・隔離なしで旅行が可能に/CDC

 2021年4月2日、米国疾病予防管理センター(CDC)はガイドラインを更新し、新型コロナワクチン接種を完了した人は、PCR検査の陰性証明や隔離期間なしに米国内を旅行できるとした。これまでのガイドラインではワクチン接種者であっても国内外の旅行を控えるよう呼びかけていたが、ワクチン接種者が急激に増加し、ワクチンの有効性に関するデータも集積されてきたことを受け、今回の変更が行われた。ワクチン接種完了の定義は、最後の接種を受けてから2週間経過後とされており、今回追加された項目は下記のとおり。・ワクチン接種完了者は、海外の目的地で必要とされない限り、旅行前に検査を受ける必要はなく、帰国後の隔離の必要もない。・ワクチン接種完了者は、米国へのフライトの搭乗前にCOVID-19検査を受けて陰性である必要があり、帰国後3~5日以内に再度検査を受ける必要がある。・ワクチン接種完了者は、海外旅行中もマスクやソーシャルディスタンスの確保といった感染予防策をとる必要がある。 米国では1日300万件あまりのワクチン接種が行われており、4月3日時点で65歳以上の74%が少なくとも1回の接種を受け、52%が接種を完了。計1億人近い国民が少なくとも1回の接種を受け、5,600万人が接種を完了している。

1975.

AZ製ワクチン、英国型変異株に有効率70.4%/Lancet

 新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新たな変異株であるB.1.1.7系統への中和活性は同系統以外の変異株との比較において低いことがin vitroにおいて示されたが、変異株B.1.1.7に対する臨床的有効率は70.4%で有効であることが示された。なお、同系統以外のウイルスに対する有効性は81.5%だった。英国・オックスフォード大学のKatherine R. W. Emary氏らが同国で行った、約8,500例を対象とした第II/III相無作為化試験の事後解析の結果で、Lancet誌オンライン版2021年3月30日号で発表した。変異株B.1.1.7は2020年11月以降、英国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主因を占めるようになっていた。NAAT陽性サンプルをシークエンシング 試験は18歳以上のボランティアを登録して行われた。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはChAdOx1 nCoV-19ワクチンが、もう一方の対照群には髄膜炎菌結合型ワクチン(MenACWY)が投与され、上気道スワブ検査を毎週実施、または咳や37.8度以上の発熱といったCOVID-19症状を呈した際にも実施された。 採取したスワブについては、SARS-CoV-2に関する核酸増幅検査(NAAT)を行い、陽性サンプルは、COVID-19ゲノム英国コンソーシアムでシークエンシングを行った。生ウイルス・マイクロ中和抗体測定法によりB.1.1.7系統ウイルスに対する中和抗体反応と、標準的な非B.1.1.7系統ウイルス(Victoria)に対する中和抗体反応を測定した。 有効性の解析では、血清反応陰性でNAAT陽性者の、ワクチン2回目接種後14日以降の症候性COVID-19などが評価された。被験者が接種を受けたワクチン別の解析も実施。ワクチン有効性については、ポアソン回帰モデルを用いて算出した1-相対リスク(ChAdOx1 nCoV-19群vs.MenACWY群)で評価した。実験室でのウイルス中和活性、B.1.1.7系統は非B.1.1.7系統より低値 有効性コホートの被験者は2020年5月31日~11月13日に集められ、同年8月3日~12月30日に2回目のワクチン接種を受けていた。主要有効性コホートの被験者数は8,534例で、うち6,636例(78%)が18~55歳、5,065例(59%)が女性だった。 2020年10月1日~2021年1月14日に、520例がSARS-CoV-2感染を呈した。これら感染者から1,466個のNAAT陽性スワブが採取され、401個のスワブ(311例)について、シークエンシングに成功した。 実験室でのワクチン誘導抗体に対するウイルス中和活性は、Victoria系統よりもB.1.1.7系統は低値だった(幾何平均値の比:8.9、95%信頼区間[CI]:7.2~11.0)。 症候性NAAT陽性感染者に対する臨床的ワクチン有効性は、B.1.1.7系統で70.4%(95%CI:43.6~84.5)、非B.1.1.7系統では81.5%(67.9~89.4)だった。

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新型コロナウイルスの血栓対策(解説:後藤信哉氏)-1374

 当初肺炎が主病態と考えられた新型コロナウイルス感染症であるが、症例が蓄積されるとともに主な病態は血管系におけるimmunothrombosisであることがわかってきた。結果として静脈血栓症、脳梗塞などの典型的な血栓症の病態を呈することもあるが、血栓形成の開始機序は明確に異なる。成長メカニズムには相同性と特殊性があると想定される。静脈血栓症、心筋梗塞などの動脈血栓症を標的として抗血小板薬、抗凝固薬が開発されてきたが、新型コロナウイルス感染に対する至適抗血栓療法は現時点では未知である。 欧米では静脈血栓リスクが一般に高いためICUに入る症例では全例抗凝固療法を受けるのが普通であった。静脈血栓予防と治療では用量が異なる。血栓治療量は血栓症に対して使用される。新型コロナウイルス感染では、一般的な静脈血栓の有無の判定に用いるD-dimerが陽性のことが多い。ならば血栓予防量と治療量のランダム化比較試験を企画しても倫理的問題は起こらない。本研究では新型コロナウイルス感染にてICUに入院した症例における予防量と治療量の抗凝固療法が比較された。 新型コロナウイルスの血栓形成メカニズムはわからない。動脈硬化も経過の長いimmunothrombosisと考えれば、心筋梗塞などの動脈硬化・血栓性疾患の発症予防・治療に有効なスタチンも新型コロナウイルス感染のimmunothrombosisに有効かもしれない。このスタチンの有効性も探索的に検討された。 日本以外の諸国では静脈血栓症予防・治療の標準治療として低分子ヘパリンが確立されている。低分子ヘパリンのうち、エノキサパリンを1日40mgの固定用量として使用する群と、体重1kg当たり1mgにて使用する群にランダムに振り分けた。有効性の1次エンドポイントとして静脈あるいは動脈血栓症・ECMO使用・死亡の複合エンドポイントを用いた。ICUに入院する新型コロナウイルス感染は怖い。30日以内の1次エンドポイント発現率は予防量低分子ヘパリン群にて44.1%、用量を増やしても発現率は45.7%であった。圧倒的多数の有効性1次エンドポイントは死亡に直結した。心筋梗塞、脳梗塞、静脈血栓が多いわけではない。病態の主因がimmunothrombosisであっても、現在われわれがもっている抗凝固介入では予後を大きく改善できない。 遠回りかもしれないが、新型コロナウイルス感染によるimmunothrombosisのメカニズムを解明し、予後不良に寄与する因子を解明し、その因子に対する選択的治療薬の開発が必要である。抗血栓薬開発は既存の心筋梗塞、脳梗塞、静脈血栓に対しては出揃った感があるが、新型コロナウイルスに対しては基本に立ち返って革新的創薬が必須であることを本研究は示したことになる。

1978.

第52回 整形外科医へのリベート問題、企業に厳重警告も医師はお咎めなし

景品表示法に基づく公正競争規約に違反すると認定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は開幕した米国MLB(大リーグ)の試合を、NHKのBSで何試合か観戦しました。鳴り物入り(というかキャチャー付き)でサンディエゴ・パドレスに移籍したダルビッシュ 有投手、昨年からミネソタ・ツインズの中核となった前田 健太投手が共に4月1日(現地)の開幕戦を任されたのですが、どちらも白星をあげることはできませんでした。4月4日には大谷 翔平選手が投手、打順2番で登場、先制ホームランを放つなど幸先の良いスタートでしたが4回に走者と交錯、負傷降板しました。また日本ハムからテキサス・レンジャーズに移籍した有原 航平投手は3日に登板しましたが5回に連打を浴びこちらも白星お預けです(シアトル・マリナーズの菊池 雄星投手は10三振を奪うも勝敗つかず)。キャンプ中とは違うMLBの強打者たちの本気度に、日本人エースたちは皆、押され気味の印象。今後の活躍に期待したいと思います。さて、この連載もなんとか1年続けることができました。できるだけ“俗っぽい事件”を取り上げるのがこの「水曜日」の役割なのですが、ついつい新型コロナの動向に目を奪われてきたことを少々反省しています。ということで今回は、昨年この連載で取り上げた「ある事件」の新たな展開です。米系医療機器メーカー・グローバスメディカルの日本法人が機器を購入した病院の医師側にリベートを提供していた問題で、業界団体でつくる医療機器業公正取引協議会(公取協)が3月24日、景品表示法に基づく公正競争規約に違反すると認定し、最も重い厳重警告の処分を下した、というニュースが入ってきました。公取協は同社に対し、再発防止の是正措置報告、同様の行為を行わない旨の誓約書、1年後の再発防止策の改善状況報告の提出を課しました。10%前後を医師側の会社の口座に振り込みこの事件、本連載では昨年12月に、「第35回 著名病院の整形外科医に巨額リベート、朝日スクープを他紙が追わない理由とは?」で取り上げました。11月24日付の朝日新聞が、米国の医療機器メーカー・グローバスメディカルの日本法人が同社の機器を購入した病院の医師に対し、売上の10%前後をキックバックしていた、と報じたことで事件が発覚しました。同記事によれば、キックバックは2019年の1年間で少なくとも20数人に対し、総額1億円超となっており、医師本人ではなく、各医師や親族らが設立した会社に振り込むかたちで行っていた、とのことでした。グローバスメディカルの日本法人は、背骨や腰の治療で使う脊椎インプラントなどを販売する、整形外科専門の医療機器メーカーです。前身の会社、アルファテック・パシフィックも米国の医療機器メーカーであるアルファテック・スパインの日本法人でした。2016年に米国でアルファテック・スパインがグローバスメディカルに買収され、日本でも同年よりグローバスメディカルの日本法人(以下、グローバス社)として営業活動を行っています。グローバス社の関係者の話や内部資料を基にしたという昨年の朝日新聞の報道によれば、同法人は、医師本人やその親族らが設立した会社と「販売手数料」を支払う契約を締結。この契約は病院が医療機器を購入するたびに販売額の10%前後を医師側の会社の口座に振り込むという内容で、医師側が昨年1年間で受け取った「手数料」は、1人あたり百十数万円から2千数百万円にものぼった、とのことでした。なお、20数人の医師は関東や関西、九州の大規模な民間病院に勤務していたとのことで、同紙の続報では、東京慈恵会医科大学病院や岡山済生会病院などの名前が上がっていました。公正競争規約違反は犯罪ではないが…朝日新聞は一面で大々的に報じたこの事件、他紙は全く後追いしませんでした。贈収賄罪の対象となる公務員と異なり、企業と民間人の間のリベート供与を罰する法律が日本にはまだ整備されていないため、企業・医師共に法律上は「何の罪も犯していない」ためとみられます。日本には、過大な景品提供などによる不公正な取引を防ぐため、個々の業界が定めた自主規制ルールである「公正競争規約」があります。同規約は景品表示法第31条に基づくものですが、あくまで業界の自主ルールのため、そこに法律違反は発生しないのです。昨年の朝日新聞も、「機器の購入費用は、公的な財源からなる医療費で賄われている。医師への不当なリベートを日本でも規制することは、治療を受ける患者の立場だけでなく、国民の立場からも必要ではないか」と問題提起するかたちで終わっていました。ただ、朝日新聞の報道を受け、医療機器の業界団体でつくる医療機器業公正取引協議会(公取協)は、グローバス社の調査を開始していました。医師や親族が役員であっても医師本人への提供と判断3ヵ月かけて調査した公取協は3月24日に「医療機器業公正競争規約違反事案について」題した文書を公表しました。同文書と3月25日の朝日新聞によると、グローバス社は「エージェント」と称する会社に対して販売協力業務に対する対価として、自社製品の保険償還価格や売上高等を基に算出した額を「販売手数料」(すなわちリベート)として支払っていたとのことです。リベートの提供先(エージェント)は20社。いずれも医師や親族が役員となっていたものの、公取協はいずれも医師本人への提供だと判断しています。そして、この20社を通じ、少なくとも92の医療機関に機器が販売されていたとのことです。さらに、この20社以外にも同法人が不当な資金提供があったとしてコンプライアンス上問題だと判断した取引先が21社確認されていました。これら計41社への不当な資金提供は2018〜2020年の直近3年間で7億1,600万円にのぼっていました。不当な取引誘引手段としての金銭提供公取協は文書で、グローバス社の行っていた行為について「売上高等を基に算出した販売手数料を支払うことは、取引先医療機関が使用する医療機器について、その選択権を有するもしくは選択に多大な影響力を持つ医師に対する金銭提供であると認められる」とし、さらに「グローバス社製品を使用すればするほど当該医師に金銭が入るという構図は、医療機関等に対する不当な取引誘引手段としての金銭提供であると認められる」と断じています。なお、グローバス社は3月24日付けで 代表取締役社長のステファン・R・ラニーヴ 氏の名前で「医療機器業公正取引協議会の措置について」という文書を公表、「公取協の判断についてこれを真摯に受け止め、今後再発防止に努めて参ります。(中略)医療機器業界の社会的信用に重大な影響を及ぼしたことにつき、深くお詫び申し上げます」と謝罪と共に公取協の判断に従う旨を表明しています。リベート受け取りも「国民への背信」結局この事件、業界団体でつくる公取協が自主ルールに基づき厳重警告の処分を下し、グローバス社が非を認めて幕引きになりそうです。リベートを受け取っていた医師たちは当然のことながら何の罪にも問われていません。公取協は医療機器の業界団体でつくる組織のため、ユーザーである医師に物申すことなどあり得ないからです。昨年11月時点では、リベートを受け取っていた医師が2人いた東京慈恵会医科大学病院が「調査を開始する」という報道もありましたが、調査結果が公表されたという話は聞きません。ことの本質は、「医師自身の規律性」ということになりますが、リベートを受け取っていた医師たちが所属する日本整形外科学会は、事件発覚直後の12月、会員医師に対し「保険料を負担する国民全体からみて、その選定・納入の公正さに疑念を抱かせることのないよう、慎重に行動してください」と告知したのみです。今回の公取協の決定に関し、とくにコメントは発表していません。医療機関は、購入した医療機器や医療器具を保険診療で使用することで診療報酬(保険料、公費、患者負担で賄われています)を得て、採算を取り、利益を得ます。その利益をまた機器購入の代金に回すわけですが、もし機器の価格にリベートが予め含まれているとしたら、それは大きな問題です。法律で裁けない状況下、リベートを提供した企業に対して業界団体が警告を発するのであれば、医師の団体もそれなりの警告なりペナルティをリベートを受け取った医師に課すのが規律性を保つための手段だと思うのですが、どうでしょう。厚労省職員の宴会に対し、日本医師会の中川 俊男会長は「極めて遺憾に思う。国民への背信」と語ったそうですが、グローバス社の事件でリベートを受け取っていた医師に対しても、「極めて遺憾に思う。国民への背信」とコメントしてほしかったと思います。

1979.

ワクチン接種の経済価値は10年間で50兆円―英国調査

 COVID-19ワクチン接種による集団免疫獲得は経済にどのような影響をもたらすのか。英国において年齢構造化感染モデルと経済モデルを使った試算が行われた。The Lancet Infectious Diseasesオンライン版3月18日号掲載の報告。 研究者らは、今後10年間に渡る英国のワクチン接種プログラムについて、さまざまなシナリオを検討した。【ワクチン接種率】15歳以上の75%にワクチンを接種(および15〜64歳の50%と65歳以上の75%に毎年再接種)と、ワクチン接種なしを比較。【ワクチンの有効性】ワクチンの有効性50%もしくは45週間の感染防止効果(最悪のシナリオ)と、ワクチンの有効性95%と3年間の感染防止効果(最良のシナリオ)を比較。自然免疫は45週間以内に消失すると仮定した。【フィジカルディスタンス】ワクチン接種がフィジカルディスタンスへ与える影響についても検討し、最初のロックダウン後に自発的にフィジカルディスタンスをとる、あるいは感染者増による最初のロックダウン後にフィジカルディスタンスが義務付けられる、と想定した。 QALYs(Quality-Adjusted Life-years:質調整生存年)による利益と、医療費負担者と国民経済の両方に対するコストを考慮した。将来のコストとQALYsを毎年3~5%で割り引き、QALYあたりの金銭的価値を2万ポンド(約300万円)、ワクチン接種1回あたりの長期的なコストを15ポンド(約2,300円)と想定した。 初期ロックダウン、ワクチン接種、およびフィジカルディスタンス増加がないシナリオでは、今後10年間で1億4,800万(95%信頼区間:4,850万~1億9,880万)人が感染し、310万(84万~450万)人が死亡する、という推計だった(英国の人口は約6,800万人)。 最良のシナリオでは、将来のフィジカルディスタンスの増加がなくても、ワクチン接種によって感染数は最小限に抑えられたが、最悪のシナリオでは、COVID-19は年2回定期的に流行する感染症となった。 最良のシナリオでは、ワクチン接種プログラムによって、今後10年間に120億~3,347億ポンド(約1兆8,200億~50兆8,700億円)、最悪のシナリオでも11億~569億ポンド(約1,670億~約8兆6,400億円)の正味貨幣価値が増加する、との試算だった。ただし、フィジカルディスタンスの増加による正味貨幣価値の増分は、国民経済の損失が持続的で大きい場合には、社会的観点からはマイナスとなる可能性がある。 研究者らは、この調査結果は、ワクチン接種プログラムの健康上および経済上の大きな価値を裏付けるものだとしている。

1980.

がん関連3学会、がん患者への新型コロナワクチン接種のQ&A公開

 2021年3月29日、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A―患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版―」を公開した。昨年に公開された新型コロナとがん診療に関するQ&Aに付随した「ワクチン版」となる。 「Q1:がん患者はワクチンを受けた方がよいのですか」 「A:前向きに検討しましょう。ベネフィットとリスクを理解し、主治医の先生と相談して判断することが大切です」 ワクチン開発段階の臨床試験では、がん患者が対象に組み入れられることは少なかったが、世界各国で接種が進み、がん患者に関するエビデンスが集まりつつある現状を紹介。現状国内で承認された唯一のワクチンであるファイザー製のワクチン(BNT162b2)について、「イスラエルで実際に多くの人にBNT162b2が接種され、60万人と非接種者60万人と比較し報告されていますが、両群にはがん患者さんが2%、約12,000人が含まれています1)。全体として90%以上の発症予防効果示され、併存疾患に関する検討では、がん患者さんだけのデータは示されていませんが、3つ以上の併存疾患を有する場合の予防効果は86~89%でありその差はごくわずかです」と解説している。 「COVID-19ワクチンには予防効果というベネフィットと様々な副反応が生じるかもしれないというリスクがあります。がん患者さんのワクチン接種のベネフィットとして、発症や重症化の予防、検査やがん治療を遅滞なくより安全に進められることがあります」としたうえで、「がん患者さんにおける副反応についての調査や報告はありませんが、がん患者さんにおける重症化の可能性を考慮すると、ベネフィットがリスクを上回ると思われ接種が推奨されます。がん患者さん一人一人がそのベネフィットとリスクを正しく理解して、主治医の先生と相談して、接種するかどうかを自分で判断することが必要です」としている。 その他、放射線や薬物など治療ごとに考慮すべき点や、接種後の注意点などがまとめられている。

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