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添付文書改訂:オルミエント錠に新型コロナ肺炎追加/イグザレルトがDOACで初の小児適応追加/オキシコンチンTR錠に慢性疼痛追加【下平博士のDIノート】第73回

オルミエント錠に新型コロナ肺炎の適応追加<対象薬剤>バリシチニブ錠(商品名:オルミエント錠2mg/4mg、製造販売元:日本イーライリリー)<承認年月>2021年4月<改訂項目>[追加]効能または効果SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)<Shimo's eyes>ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬バリシチニブ(商品名:オルミエント錠)の効能または効果に、新型コロナウイルスによる肺炎が追加されました。わが国では、レムデシビル、デキサメタゾンに続いて3剤目の新型コロナウイルス感染症治療薬となります。現在、新型コロナウイルス感染症に係る入院加療は全額公費負担となっており、本剤もその対象となります。投与対象は、入院下で酸素吸入、人工呼吸管理、体外式膜型人工肺(ECMO)の導入が必要な中等症から重症の患者で、レムデシビルとの併用で最長14日間投与することができます。経口投与ができない患者には、同剤を粉砕・懸濁して、胃ろうや経鼻移管などの方法で投与します。使用にあたっては、RMP資材である、「適正使用ガイド SARS-CoV-2による肺炎」を参照してください。バリシチニブの主な排泄経路は腎臓のため、透析患者または末期腎不全の患者は禁忌です。また、リンパ球数が200/mm3未満の患者にも禁忌となっています。治療成績としては、1,033人の患者が登録された国際共同第III相試験で回復までの期間を比較した結果、バリシチニブ+レムデシビルの併用群(バリシチニブ群)は7日、レムデシビル単独群(対照群)は8日と有意差がありました。また、重症患者216人に絞って評価したところ、回復までの期間は、バリシチニブ群で10日、対照群は18日とより大きな差が見られました。なお、本剤は2020年12月にアトピー性皮膚炎の追加適応も得ています。参考日本イーライリリー プレスリリースイグザレルトがDOACで初の小児適応追加<対象薬剤>リバーロキサバン(商品名:イグザレルト錠・OD錠・細粒分包10mg/15mg、製造販売元:バイエル薬品)<改訂年月>2021年1月<改訂項目>[追加]効能または効果小児:静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制<Shimo's eyes>抗凝固薬のリバーロキサバン(商品名:イグザレルト錠・OD錠・細粒分包)の効能または効果に、小児に対する「静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制」が追加され、小児適応を持つ唯一の直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)となりました。また、新生児や乳幼児の服用にも適した剤型であるドライシロップ(同:イグザレルトドライシロップ小児用51.7mg/103.4mg)も承認されました。本剤は、エドキサバン(同:リクシアナ錠・OD錠)、アピキサバン(同:エリキュース錠)とともに経口活性化凝固第Xa因子阻害薬に分類されます。血液凝固系におけるXa因子の活性化部位を直接的に阻害することで、トロンビンの生成を阻害して抗凝固作用を発揮します。近年の疾患に関する認知や診断技術の向上により、静脈血栓塞栓症(VTE)と診断される小児患者数は増加しています。小児における従来のVTE治療では、ワルファリンのみが適応を持っていたため、採血による定期的な凝固系のモニタリングだけでなく、薬物相互作用や食事など多方面で配慮が必要でしたが、本剤の適応追加により、患児および介助者の負担を軽減できることが期待されています。参考バイエル薬品 プレスリリース同 イグザレルト.jp 小児:静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制(小児VTE)オキシコンチンTR錠の適応に慢性疼痛<対象薬剤>オキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(商品名:オキシコンチンTR錠5mg/10mg/20mg/40mg、製造販売元:シオノギファーマ)<改訂年月>2020年10月<改訂項目>[追加]警告慢性疼痛に対しては、本剤は、慢性疼痛の診断、治療に精通した医師のみが処方・使用するとともに、本剤のリスクなどについても十分に管理・説明できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ用いること。また、それら薬局においては、調剤前に当該医師・医療機関を確認したうえで調剤を行うこと。[追加]効能・効果非オピオイド鎮痛薬またはほかのオピオイド鎮痛薬で治療困難な中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛[追加]用法・用量慢性疼痛に用いる場合:通常、成人にはオキシコドン塩酸塩(無水物)として1日10~60mgを2回に分割経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。<Shimo's eyes>オピオイド鎮痛薬のオキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(商品名:オキシコンチンTR錠)の効能・効果に、慢性疼痛が追加されました。本剤は容易に砕けない硬さと、水分を含むとゲル化するという乱用防止特性を有する徐放性製剤です。本剤は、依存や不適正使用につながる潜在的なリスクがあるため、今回の適応追加に際しては、医薬品リスク管理計画を策定して適切に実施するなどの承認条件が付され、医療機関・医師・薬剤師による厳重な管理が求められています。【オキシコンチンTR錠を慢性疼痛で使用する際の確認事項】<処方する医師>1.製造販売業者が提供するeラーニングを受講し、確認テストに合格し、確認書をダウンロードする。2.処方時に確認書の内容を患者に説明し、医師・患者ともに署名をして確認書を患者に交付する。3.確認書の控えを医療機関で保管する。<調剤する薬剤師>1.患者が持参した麻薬処方箋と確認書について、処方医名、施設名、交付日が一致していることを確認する。なお、患者が確認書を持参しておらず、がん疼痛か慢性疼痛か判断できない場合は、処方医に患者の適応を問い合わせる。2.確認書の患者確認事項を説明し、患者の理解を確認し、確認書にチェックを入れ、調剤する。近年、がん患者だけでなく、非がん患者の痛みに関する身体的症状と精神症状のケアが課題となっています。このような背景から、非がん性疼痛に適応を持つオピオイド鎮痛薬が増えてきました。すでに、トラマドール、コデインリン酸塩、ブプレノルフィン貼付薬、モルヒネ塩酸塩、フェンタニル貼付薬がありますが、今回、オキシコドン製剤として初めて本剤が慢性疼痛への適応を取得しました。参考PMDA「オキシコドン塩酸塩水和物徐放製剤の使用に当たっての留意事項について」同「確認書を用いた管理体制の全体図」シオノギ製薬「オキシコンチンTR錠で慢性疼痛の治療を受けられる患者さまへ」

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第55回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの(前編)

奈良県、感染症法で50床確保へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ゴールデンウイークがやって来ます。私は、去年に断念した南会津の登山を計画していたのですが、再びの4都府県に対する緊急事態宣言で都道府県をまたぐ不要不急の移動の抑制が求められたことで、今年もどうやら行けそうにありません。「緊急事態宣言 3度目発令」を報じた4月24日付の日本経済新聞は朝刊一面で、論説委員が「1年間何をしていたのか」と国の医療提供体制の施策を厳しく批判していましたが、本当に1年間何をしていたのでしょう。今回の宣言発令でも、国の真剣さが感じられないのが気になります。「オリンピック止めます。だから…」くらいは言ってほしかった、と思う今日このごろです。前回(第54回 なぜ奈良県で?「県内全75病院に病床確保要請」をうがった見方をしてみれば…)で書いた奈良県の改正感染症法に基づく病床確保要請ですが、4月23日付の毎日新聞によれば、約15病院で計50数床確保できる見通しになった、とのことです。感染症法にも相応の効果があったということで、こうした要請は他の都道府県にも広がるかもしれません。さて、今回は厚労省が都道府県知事宛に発出していた通知について書いてみたいと思います。最近、複数の医療関係者と話していると、補助金がらみのややきな臭い話を聞くことがあります。曰く、「某大学病院はコロナの補助金で過去最高益になったらしい」「コロナ患者を受け入れていないのに、コロナで焼け太りしている病院がある」…。世の中、コロナ対応で医療現場は崩壊寸前という趣旨の報道が大半です。1年ほど前は、医療機関の患者が激減し、経営が大変だという報道もありました。しかし、ここに来て、あまり「経営が大変だ」という声が聞こえなくなってきたところに、この手の話です。現場は大変ですが、経営は良好なのでしょうか…。と首を傾げていたら、こんな厚労省通知に関する報道がありました。コロナ患者受け入れへ聴取、医療機関の状況確認へ4月20日付の産経新聞は、「コロナ患者受け入れへ聴取 医療機関の状況確認へ 厚労省が通知」という記事を掲載しました。それによれば、「厚生労働省が、正当な理由なく新型コロナウイルス感染症患者の入院を断っている医療機関に対し聴取を行い、受け入れを要請するよう求める通知を各都道府県に出したことが20日、分かった」とのことです。通知が発出されているのに「分かった」というのも変な話ですが、「感染拡大地域で病床が逼迫する中、すぐに受け入れが可能な『即応病床』を確保するのが狙い」と記事は書いています。なお、後追いする形で朝日新聞も4月23日付の朝刊で同内容の記事を掲載しています。今回取り上げられたのは、いったいどの通知だろうと調べてみました。コロナ関係の通知はそれこそ膨大にあるのと、通知したい内容とタイトルが微妙にズレているので、なかなか見つけ出すのが大変です。受け入れ困難と判断した場合は即応病床数見直しそんな中、多分、これだろうという通知が見つかりました。それは、2021年4月1日付けで、厚生労働省の医政局長 、健康局長、医薬・生活衛生局長連名で発せられた「令和3年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施について」です。内容的にはコロナ対策の支援事業の実施の概要を通知するものです。その中の病床確保料の補助対象について記述した部分がニュースになっていたのです。1日に発出され、20日に「分かった」と報道されたのは、記者たちは最初その意味が把握できなかったのかもしれません。「コロナ患者受け入れへ聴取、医療機関の状況確認対象」となる医療機関は、病床確保料の補助対象となる新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関です。具体的には、病棟単位で新型コロナ感染症患者、または、その疑いのある患者用の病床を確保している「重点医療機関」と、新型コロナ感染症の疑いのある患者専用の個室を持っている「協力医療機関」とのことです。通知では、各都道府県に対し、医療機関の稼働状況、病床や医療スタッフの状況、人工呼吸器などの医療機器の確保状況を一元的に把握する情報システム「G-MIS(ジーミス)」などを使って、患者の受け入れ状況を確認するよう求めています。その上でさらに、「適切に受入れを行っていない」「受入要請を正当な理由なく断っている」などの場合は、受け入れ体制について聴取し、受け入れるよう要請する。聴取の結果、受け入れるのが困難と判断した場合は、その医療機関の即応病床数(つまり、病床確保料の補助)を見直すと明記しています。厚労省によると、4月7日時点で全国に重点医療機関は1,058機関、協力医療機関は986機関あるとのことです。「手を挙げても受け入れない」病院の存在この通知の意味するところは明らかです。「コロナ病床確保します」と手を挙げて確保料をもらいながら、コロナ患者を受け入れていない病院が存在する、ということです。病床確保料の補助を見直す通知をわざわざ出すということは、そうした病院が相当数あるからでしょう。この連載でも、これまでに進まないコロナ患者受け入れ体制の原因として、コロナ受け入れに手を挙げない民間病院の消極性について書いてきましたが、「手を挙げても受け入れない」病院があるとは…。まさにコロナで“焼け太り”病院です。1床当たり最高1日43万6,000円現在、コロナ病床に対する診療報酬上の対応や国の補助は相当な金額となっています。病床に対する補助に限って言えば、病床が逼迫する都道府県において新型コロナの受入病床を割り当てられている医療機関に、重症者病床1床当たり1,500万円、その他の病床、および協力医療機関の疑い患者病床は1床当たり450万円を上限に補助が行われています。さらに、2020年12月25日~2021年2月28日に新たに割り当てられた確保病床については、緊急事態宣言が発令された都道府県では1床当たり450万円、それ以外の都道府県でも300万円が補助上限額に加算されています。つまり、最大で1床当たり1,950万円の補助を受けることができるのです。病床確保料はこれとは別に、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ態勢を確保するための確保病床および休止病床について補助されるものです。補助額の上限は、「重点医療機関」は1床当たり1日7万1,000円~43万6,000円、「協力医療機関」の疑い患者病床は5万2,000円~30万1,000円、「その他の医療機関」は1万6,000円~9万7,000円などとなっています。たとえば重点医療機関である一般病院でICU内の病床を1床確保すると、患者が入っているかどうかにかかわらず、1日30万1,000円が補助されます。「入院率」導入の意味そう考えてくると、感染状況を示す指標として4月16日から「入院率」が新たに加わったことにも納得が行きます。「入院率」とは、療養中の全感染者に対する入院者の割合です。これまで重視してきた「病床使用率」は各都道府県が確保した病床に占める入院患者の割合を示すものです。ただ、病床を(病院の都合等で)コロナに使用していないケースや、本来は入院の必要がない軽症者が入院しているケースなどを除外できず、病床の逼迫度を計るには不十分との指摘がありました。入院率という指標によって、国は病床数ではなく、無症状者も含む療養中の全感染者数に対する入院者数に着目することにしたわけです。数値が低くなるほど、入院できない人が増えている(病床が逼迫している)ことになります。入院率が25%以下だと最も深刻な「ステージ4」(感染爆発)、40%以下だと2番目に深刻な「ステージ3」(感染急増)に相当するとしています。ちなみに、4月23日更新のデータでは大阪府の入院率は12.0%、東京都は30.9%でした。「即応病床」として病床確保料をもらいながら、コロナ患者を避けてきた病院の存在は、税金の無駄遣いであるばかりでなく、病床逼迫度を推し量る上でも邪魔で困った存在だったわけです。今回の通知によって、そこにメスが入ることになったわけです。それにしても、ジャブジャブとも言われる医療機関に対するコロナ補助金を、国の財政を司る財務省はどう見ているのでしょう。次回は、それについて少し考えてみます(この項続く)。

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コロナの現状を鑑み、識者らが東京五輪の再考求め提言/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はここへ来て急拡大の様相を呈している。これに対し政府は、東京など4都府県に対し緊急事態宣言を発出。まん延防止等重点措置よりも強い規制力をもって感染拡大を抑え込みたい考えだ。それは今夏に延期・開催が予定されている東京オリンピックまで3ヵ月を切り、待ったなしの状況への強い憂慮にほかならない。そんな状況の中、4月14日付のBMJ誌に、「大会の安全管理には重大な疑問があり、再考すべき」と断じる論文(エディトリアル)が掲載された。 本稿は、英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの清水 和希氏、同・エディンバラ大学メディカルスクールのDevi Sridhar氏、同・キングズカレッジロンドン人口衛生研究所の渋谷 健司氏、国立病院機構三重病院の谷口 清州氏の4人が連名で発表した。 著者らは、COVID-19の現状について「世界的に依然としてパンデミックの真っただ中にある。SARS-CoV-2変異種は国際的な関心事であり、公衆衛生および社会対策の維持、行動変化の促進、ワクチン普及、保健システムの強化により、パンデミックの封じ込めと終息に向けた取り組みを加速しなければならない」との認識を示した。さらに、「アジア太平洋地域諸国と異なり、日本はいまだCOVID-19の感染制御ができていない。日本における限られた試験能力とワクチン接種開始の遅れは、政治的リーダーシップの欠如に起因している」とし、「一般市民はいうまでもなく、医療従事者や高リスク人口に対してもオリンピック開始までにワクチンを接種できない」と指摘した。 その上で著者らは、「今夏のオリンピック・パラリンピック開催計画は、喫緊の課題として再考されるべきだ。国際社会全体が、コロナ・パンデミックを封じ込め、命を救う必要性を認識している。科学的・道徳的ルールを無視し、日本が自国の政治・経済目的で東京2020(オリンピック・パラリンピック)を開催することは、国際的な健康および安全保障に対する向き合い方と矛盾するものだ」と断じている。

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COVID-19を経験した男性は勃起不全になりやすい?

 勃起不全(ED)は、COVID-19の短期的または長期的な合併症の可能性がある。今回、イタリア・ローマ大学のAndrea Sansone氏らが、COVID-19と診断された被験者におけるEDの有病率を調査し、COVID-19とEDの関連を検討した。Andrology誌オンライン版2021年3月20日号に掲載。 本研究では、2020年4月7日~5月4日、イタリアで実施されたSex@COVIDオンライン調査(心理的、社会的、性的健康を調査する匿名のWebアンケート)に参加した18歳以上6,821例(女性4,177例、男性2,644例、平均年齢32.83±11.24歳)のデータから、性的に活発なイタリア人男性985例が抽出され、そのうち25例(2.54%)がSARS-CoV-2陽性だった。 被験者は、GAD-7(Generalized Anxiety Disorder-7)とPHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)によって、心理的健康スコアが測定された。各テストでスコアが10以上の場合、全般性不安障害とうつ病性障害をそれぞれ示唆していると見なされた。勃起機能は、IIEF-5(国際勃起機能スコア)またはその簡易版SHIMによって測定された。スコア21以下はED、スコア22〜25は正常と見なされた。 主な結果は以下のとおり。・1:3の傾向スコアマッチングに従って、985例の性的に活発なイタリア人男性から、SARS-CoV-2陽性者25例(COVID+)とSARS-CoV-2感染歴のない75例(COVID-)がマッチングされた。・2つの群間の年齢、GAD-7およびPHQ-9スコア、BMIについて、統計的に有意な差は見られなかった。・EDの有病率は、COVID+群(7/25例、28%)のほうが、COVID-群(7/75例、9.33%)よりも高かった(p=0.0274)。・年齢、BMI、および心理的健康スコアを調整したロジスティック回帰モデルにより、SARS-CoV-2感染とED発症との関連を確認したところ、COVID-19既往歴を持つ男性におけるED発症のオッズ比は5.66(95%信頼区間[CI]:1.50~24.01)だった。・同じサンプルで、年齢とBMIを調整したロジスティック回帰モデルにより、ED診断後に SARS-CoV-2感染が発覚した場合を調査したところ、ED有病者におけるSARS-CoV-2感染のオッズ比は5.27(95%CI:1.49~20.09)で、有意な関連を示した。 研究者らは、「COVID-19発症リスクは、ED発症の危険因子と似ており、われわれの研究結果は、ED、血管内皮機能障害、およびCOVID-19に関連する病態生理学的メカニズムと一致している。ワクチンやマスクの着用は、おそらく性機能障害を防ぐという追加の利益をもたらす可能性がある」とコメントしている。

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英国株(B.1.1.7)の遺伝子変異、疫学、臨床、今後の重要性(解説:山口佳寿博氏)-1380

 2019年の末に発生した新型コロナの原型である武漢原株は、2020年2月末ごろからD614G株(S蛋白614位のアミノ酸がアスパラギン酸(D)からグリシン(G)に置換、その他、4個の遺伝子変異を伴う)に置換された。D614G変異は生体へのウイルス侵入量を増加させ武漢原株より高い感染性を示す(山口. 医事新報 No.5026:26-31, 2020)。2020年9月ごろまではD614G変異株が世界の中心的ウイルスであったが、9月以降、英国、南アフリカ、ブラジルを中心にD614G株からさらなる変異を遂げたN501Y株(S蛋白501位のアミノ酸がアスパラギン(N)からチロシン(Y)に置換)が蔓延するようになった。以上のような背景を鑑み、本論評ではD614G株を“従来株”と定義する。英国、南アフリカ、ブラジルで播種しているN501Y変異株は同じウイルスではなく互いに独立したものであるが3種の変異株の共通項がN501Y変異である(山口. 医事新報 No.5053:32-38, 2021)。PANGO lineageに則った名称として、英国株はB.1.1.7、南アフリカ株はB.1.351、ブラジル株はP.1と命名された。別名として、英国株はVOC 202012/01、20I/501Y.V1、南アフリカ株はVOC 202012/02、20H/501Y.V2、ブラジル株はVOC 202101/02、20J/501Y.V3とも呼称される。2021年4月13日現在、世界206ヵ国/地域の中で英国株は132ヵ国/地域(64%)、南アフリカ株は82ヵ国/地域(40%)、ブラジル株は52ヵ国/地域(25%)で検出され、N501Y株がD614G株を凌駕し世界に流布するコロナウイルスの中心的存在になりつつある(WHO 2021年4月13日)。これら代表的なN501Y変異株に加え、フィリピンではN501Y変異を有するが英国株、南アフリカ株、ブラジル株とは異なる変異株が同定されている(B.1.1.28.3/P.3)。以上のN501Y関連変異株以外にN501Y変異を有さない5種類の変異株が米国(B.1.427/B.1.429、B.1.526)、英国(B.1.525)、フランス(B.1.616)、ブラジル(B.1.1.28.2/P.2)、ナイジェリア(B.1.525)において同定されている。以上の変異株にあって英国株の流布範囲が最も広く、アフリカ、中南米の一部を除き多数の感染者が確認されている。アフリカ、中南米の一部で英国株が検出されていないのは、検査不十分である可能性が高く、実際は、これらの地域にも英国株は侵入しているものと考えなければならない。すなわち、今後の世界的ウイルス播種として、この数ヵ月の間に従来株が英国株を中心とするN501Y株に置換されていくものと推察される。 本邦においてもN501Y株の播種は始まっており、2020年12月25日に英国株が英国からの帰国者において、2020年12月28日に南アフリカ株が南アフリカからの帰国者において、2021年1月6日にはブラジルからの渡航者からブラジル株が検出された。2021年4月6日現在、1,038例のN501Y株の感染者(検疫:152例、国内発症:886人)が確認されている(厚生労働省2021年4月6日)。国内事例は、47都道府県の81%に当たる38都道府県で発生しているが、英国株が92%、南アフリカ株が1.7%、ブラジル株が6.3%を占めている。1週後の4月13日には、変異株の検出は42都道府県(89%)まで増加している(厚生労働省2021年4月13日)。N501Y株感染者の多くは、大阪府、兵庫県を中心とする関西圏で検出されており、北海道、関東圏がこれに続く。変異株陽性率(変異株陽性/変異株総検査数)は、3月初旬で6.6%であったものが3月下旬では20.1%に上昇しており、この傾向が持続するならば、この数ヵ月の間に英国株を中心とするN501Y株が従来株を凌駕し本邦で播種するウイルスの主流を占めるようになるものと予測される。英国では、9月末の発症から3ヵ月間でウイルスの75%が英国株に置換(Challen R, et al. BMJ. 2021;372:n579.)、カナダのトロント地域でも12月中旬より3ヵ月の間にウイルスの75%が英国株に置換された(Brown KA, et al. JAMA. 2021 Apr 8. [Epub ahead of print])。 以上のような播種ウイルスの質的変化を考えるならば、今後のコロナ感染症は従来株で明らかにされた内容から英国株を中心に考え直す必要がある。まず遺伝子配列の変化を考えていく。英国株は従来株から発生した変異株でD614G変異を含めウイルス全体で18個の非同義変異(アミノ酸配列の変化あり)と6個の同義変異(アミノ酸配列の変化なし)を発現している(Public Health England)。S蛋白にはD614G変異を除いて8個の非同義変異を有し、N501Y変異はS蛋白とACE2の親和性を高め感染性を増強する。同様に、P681H(S蛋白681位のアミノ酸がプロリン(P)からヒスチジン(H)に置換)は生体のserine proteaseによるS蛋白の切断力を高めN501Y変異と同様に感染性を増強する。69~70位のアミノ酸欠損(Δ69~70、69位、70位におけるヒスチジン(H)とバリン(V)の欠損)とY144変異(144位におけるチロシン(Y)の欠損)はS蛋白に対する抗体(自然感染、ワクチン接種により形成された抗体)の結合を阻害し“免疫回避反応”を惹起する(英国株の免疫回避反応は南アフリカ株に比べ弱い)。興味深い事実として、Δ69~70はS蛋白を標的としたPCR反応を阻害する(SGTF:S-gene test failure)。そこで、nucleocapsid(N)、open reading frame-1ab(ORF1ab)を標的としたPCRが陽性であるにもかかわらずSGTFを示す場合には、遺伝子解析を施行せずとも英国株感染と診断できる(診断精度:99.5%)。 上記の遺伝子変異を背景として英国株の臨床的特徴を従来株と比較しながら考察する:(1)英国株の播種性は従来株より43~90%高く(Davies NG, et al. Science. 2021;372:eabg3055.)、実効再生産数(R)は1.5~2.0倍に達する(Volz E, et al. Nature. 2021 Mar 25. [Epub ahead of print])。(2)本論評で採り上げたChallen氏らの論文(Challen R, et al. BMJ. 2021;372:n579.)では、英国株は従来株に比べ重症度が高く、死亡率を1.64倍上昇させると報告されたが、英国株が重症度、死亡率を変化させないという逆の報告もあり(Frampton D, et al. Lancet Infect Dis. 2021 Apr 12. [Epub ahead of print])、この問題に関してはさらなる検討が必要である。(3)英国株感染者の男女比、年齢分布は従来株とほぼ同様である(Public Health England)。(4)再感染率に関しても従来株と明確な差を認めない(従来株:0.2~0.65%、英国株:0.7%)(Boyton RJ, et al. Lancet. 2021;397:1161-1163.、Graham MS, et al. Lancet Public Health. 2021 Apr 12. [Epub ahead of print])。(5)mRNAワクチン(Pfizer社BNT162b2、Moderna社mRNA-1273)は、英国株に対する液性中和反応を維持した(Liu Y, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 17. [Epub ahead of print]、Wu K, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 17. [Epub ahead of print])。この基礎的結果を支持する知見として、データ集積時に英国株が80%を占めたイスラエルでの解析においてBNT162b2の発症予防効果は94%であり、従来株に対する発症予防効果(95%)と同一であることが示された(Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.)。(6)一方、AstraZeneca社のadenovirus-vectoredワクチン(ChAdOx1)の英国株に対する液性中和反応は従来株に比べ約9倍低かった。それにもかかわらず、ChAdOx1の英国株感染に対する実際の発症予防効果は70.4%であり、従来株に対する予防効果(81.5%)より低いものの有効な範囲に維持されていた(Emary KRW, et al. Lancet. 2021;397:1351-1362.)。ChAdOx1に関する液性中和反応と臨床的予防効果の解離は、T細胞性免疫の維持によって説明できる。ワクチン接種によって記憶T細胞を介する細胞性免疫が賦活されるが、このT細胞性免疫機能は限局した変異に規定されるものではない(山口. 医事新報 No.5053:32-38, 2021)。それ故、たとえ、遺伝子変異によって液性中和反応が低下したとしてもT細胞性免疫機能の賦活によって英国株に対する発症予防効果が維持されたものと考察される。 本邦においても小数例(n=874、92%までが英国株)であるが英国株を中心とするN501Y変異株感染に関する臨床的特徴が発表された(国立感染症研究所2021年4月5日)。内容は海外で報告されたものとほぼ一致し、実効再生産数は従来株の1.32倍であった。海外の報告と異なった点は、15~29歳の若年層におけるN501Y株感染率が従来株の場合に比べ少し高値であったことである。再感染率、入院率、死亡率などは検討されていない。英国株感染に起因する臨床像には人種差が存在する可能性があり、本邦を含め世界各国においてさらなる解析を期待するものである。

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第57回 運動が良いのはヒスタミンのおかげ/抗老化成分がヒト試験で効果/mRNAワクチンの威力

運動はおそらく骨格筋順応を介して体調を上向かせ、骨格筋の衰えは老化を招きます。そんな健康維持に不可欠な骨格筋にまつわる2つの研究成果を紹介します。また、mRNAワクチンの威力を示した介護施設での感染解析結果を簡単にお知らせします。運動はヒスタミン受容体を介して体を鍛えるヒスタミンに関わる研究といえば主にアレルギー・炎症・胃酸分泌ですが、運動とのおそらく重要な関わりが随分古くから知られており、今から遡ること100年近く前の1935年には犬の静脈血のヒスタミンが筋肉収縮で増えることが報告されています1)。そのおよそ20年後の1958年には人の血中のヒスタミンが運動で増えることを示した報告2)があり、同時期の報告では人の前腕や手の動脈でヒスタミンが血管拡張作用を担うことが確認されています3)。時代は進んで今世紀初めの2006年の報告では人の運動後の骨格筋の血流増加(postexercise hyperemia)にヒスタミンH1/H2受容体が携わることが示され、幾つかの報告をまとめるとヒスタミンは運動後の回復に与る血管拡張にどうやら寄与すると示唆されました4)。有酸素運動はなんであれ体によく、心疾患などの慢性疾患の治療や予防に大変役立ちます。運動が健康に良いことを支える仕組みはよく分かっていませんでしたが、Science Advances誌に今月中頃に発表された試験報告によるとヒスタミンは運動後の回復に与するのみならず運動の健康増進作用にもなくてはならない働きをどうやら担っているようです5,6)。ベルギーのゲント大学の運動生理学者Wim Derave氏らのチームは健康な男性20人を募り、きつめのインターバル運動を6週間にわたって週3回繰り返してもらいました。男性の半数は運動の1時間前にヒスタミン受容体H1とH2を遮断する薬フェキソフェナジンとラニチジンかファモチジンを服用し、残り半数はプラセボを服用しました。そうして6週間後、ヒスタミン受容体遮断薬を服用した男性はプラセボ服用男性に比べて運動性能指標やミトコンドリアのエネルギー生成の改善が劣りました。また、血中の糖を細胞に移すインスリンの働きはプラセボ群では改善していたのにヒスタミン受容体遮断薬服用群ではそうなっていませんでした。ヒスタミン受容体遮断薬服用群では脚の筋肉の毛細血管形成が少なく、内皮細胞の形成に不可欠な内皮型一酸化窒素合成酵素の上昇が見られませんでした。先達の研究でも示唆されている通りヒスタミンは運動後の筋肉血流の最適化に関わって運動への全身反応を指示するのかもしれないと著者は考察しています。ヒスタミンH1/H2受容体が体調を整える仕組みや慢性疾患がヒスタミン作用にどう影響するかを今後調べることで新たな薬の標的の発見や運動の最適化の道が開けそうです5)。抗老化成分NMNでヒトのインスリンの働きもマウスと同様に改善マウスの老化の弊害を食い止めて代謝を改善することが知られる細胞成分・ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の元となるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を糖尿病になりそうな太った女性に投与した無作為化試験で有望なことにインスリン感受性改善が認められました7)。糖尿病の水準には至っていないものの血糖値が高めで太り過ぎか肥満の女性25人が試験に参加しました。13人はNMN 250 mgを10週間毎日服用し、残り12人にはプラセボが同じように投与されました。その結果、骨格筋に糖を受け取らせるインスリンの働きがNMN投与で改善し、骨格筋の構えや作り変え(remodeling)に関わる遺伝子発現も向上しました。ただし、血糖値や血圧は残念ながら下がりませんでした。それに血液中の脂質や肝臓のインスリン感受性の改善も認められず、肝臓の脂肪も減りませんでした。骨格筋のインスリン感受性が改善すればたいてい他の代謝指標も同様に改善するのですが今回の試験ではそうなりませんでした。とはいえ今回の試験結果は抗老化治療の開発を確かに一歩前進させるものです。インスリンは筋肉の糖の取り込みや貯蔵を促し、その効果が衰えると2型糖尿病を生じ易くなります。その衰えをどうやら食い止めるらしいNMNが骨格筋でどう働くかを今後の研究で詳しく把握する必要があります。また、前糖尿病や糖尿病を予防したり乗り切るのにNMNが役立つかどうかを試験しなければなりません。NMNは雌のマウスにとくに有効なので今回の試験は女性を募りましたが、男性も含めた試験に研究者はすでに着手しています8)。介護施設でmRNA COVID-19ワクチン接種が威力を発揮Pfizer/BioNTechかModernaのmRNAワクチンを去年12月から接種し始めた米国イリノイ州シカゴの75の介護施設で3月末までに居住者7,931人と職員6,834人が2回目接種を済ませ、その期間に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染した627人のうちワクチン2回目接種から14日以降に感染したのはわずか22人(4%;22/627人)のみでした9,10)。感染したとはいえそれら22人の6割以上14人は無症状で、22人から施設の他の人への感染は認められませんでした。また、PCR検査結果によると22人のウイルス量は少なめでした。同国ケンタッキー州の介護施設1つでのCOVID-19感染流行を調べた別の報告でもPfizer/BioNTechのmRNAワクチンの効果を裏付ける結果が得られています。2回目のワクチン接種から2週間が過ぎた居住者や職員の感染率はおよそ87%低かったと推定されました11)。参考1)McCord JL,et al. J Appl Physiol (1985). 2006 Dec;101:1693-701. 2)DUNER H, et al. Scand J Clin Lab Invest. 1958;10. :394-6.3)DUFF F, et al. J Physiol. 1954 Sep 28;125:581-9.4)Luttrell MJ, et al.Exerc Sport Sci Rev. 2017 Jan;45:16-23.5)Van der Stede T, et al. Sci Adv. 2021 Apr 14;7:eabf2856.6)Regular HIIT Exercise Enhances Health via Histamine / TheScientist7)Yoshino M, et al. Science. 2021 Apr 22:eabe9985. [Epub ahead of print]8)Anti-aging compound improves muscle glucose metabolism in people / Eurekalert9)Postvaccination SARS-CoV-2 Infections Among Skilled Nursing Facility Residents and Staff Members - Chicago, Illinois, December 2020-March 2021. MMWR. April 21, 2021.10)US administers 200 million COVID-19 vaccine doses / University of Minnesota11)COVID-19 Outbreak Associated with a SARS-CoV-2 R.1 Lineage Variant in a Skilled Nursing Facility After Vaccination Program - Kentucky, March 2021. COVID-19 Outbreak Associated with a SARS-CoV-2 R.1 Lineage Variant in a Skilled Nursing Facility After Vaccination Program - Kentucky, March 2021. MMWR. April 21, 2021.

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新型コロナワクチン接種、間違い防止チェックリストの活用を/厚労省

 厚生労働省は各医療機関などが新型コロナワクチン接種を実施するにあたり、ホームページ内の「新型コロナワクチンの接種を行う医療機関へのお知らせ」「新型コロナワクチンに関する自治体向け通知・事務連絡等」ページにて『予防接種を適切に実施するための間違い防止チェックリスト』を公開している。 このリストは、「確認チェックリスト」「医師がチェックする確認事項の解説」「事故予防対策の例」の3つに項目立てされており、受付・問診から救急搬送措置に至るまで、注意すべきポイントが一連の流れに沿って記載されている。 医師がチェックする確認事項は多岐にわたり、ワクチンの種類(メーカー名)や接種量はもちろんのこと、受付で確認済みの診察券、予診票、母子健康手帳、予防接種済証も医師が再確認することになっている。また、現時点では16歳未満への接種は推奨されていないが、沖縄の離島で年齢確認を誤り15歳の高校生に接種してしまった事例が報告されており、「来場者がワクチンの対象接種年齢であるか」「直前の予防接種実施日(新型コロナワクチン以外の場合は、原則13日以上の間隔が空いていること)」などの確認について、医療者より知識の少ない一般市民への接種には十分な配慮が必要である。 以下はリストの項目のみ抜粋したもの。1 確認チェックリスト(医師、看護師、保健師等及び事務従事者が分担し、ダブルチェックを行う。)(1)個別接種A.受付時の確認事項B.問診時の確認事項C.接種時の確認事項D.接種後の確認事項E.ワクチン保管の確認事項I.救急搬送措置の確認事項(2)集団接種A.受付時の確認事項 B.問診時の確認事項 C.接種時の確認事項 D.接種後の確認事項については、(1)個別接種と同じ。F.事前の準備での確認事項G.当日の準備での確認事項H.予防接種液の調整I.救急搬送措置の確認事項2 医師がチェックする確認事項の解説 医師は、上記のチェックリストの「B.問診時の確認事項」「C.接種時の確認事項」「D.接種後の確認事項」「E.ワクチン保管の確認事項」について、看護師、保健師等及び事務従事者のチェックが適切に行われているか再確認する。 とくに、以下のBの1)、2)、3)、4)、5)及びCの4)については、慎重に確認する。B.問診時の確認事項C.接種時の確認事項D.接種後の確認事項E.ワクチン輸送・保管の確認事項3 事故予防対策の例1)予定外のワクチン接種(ワクチンの取り違え)2)接種量の誤り3)接種回数の誤り4)接種方法の誤り5)接種間隔の誤り6)接種開始時期の誤り7)予診票確認の不備8)有効期限切れワクチンや注射器での接種9)接種後の安全確保10)ワクチン保管の不備11)特設の接種会場における事故

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COVID-19の第3の治療薬、バリシチニブ承認/日本リリー・インサイト

 2021年4月23日、日本イーライリリー株式会社とインサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社は、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤バリシチニブ(商品名:オルミエント)がSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)に対する治療薬として、適応追加の承認を取得したと発表した。 現在、バリシチニブは関節リウマチ、アトピー性皮膚炎の治療薬として承認されている。今回の適応追加では、通常、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブ4mgを1日1回経口投与し、総投与期間は14日間まで。本剤は、酸素吸入、人工呼吸管理または体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うことで承認された。 バリシチニブのSARS-CoV-2による肺炎に対する有効性および安全性は、米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー感染症研究所(NIAID)主導による、SARS-CoV-2による肺炎の成人入院患者1,033例を対象とした国際共同第III相臨床試験「ACTT-2試験」で確認されている。「ACTT-2試験」は、レムデシビル併用下におけるプラセボ対照二重盲検比較試験で、レムデシビル単独療法と比較し、本剤投与群では、回復までの期間を短縮するという主要評価項目を達成した。また、投与開始から15日時点の患者の転帰を完全な回復から死亡までを8段階で評価するスケールを用いて比較した主要な副次的評価項目もそれぞれ達成した。バリシチニブの概要(下線部分が今回の追加箇所)商品名:オルミエント錠(4mg/2mg)一般名:バリシチニブ効能または効果:既存治療で効果不十分な下記疾患 関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)/アトピー性皮膚炎 SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)用法および用量:<関節リウマチ、アトピー性皮膚炎>通常、成人にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。<SARS-CoV-2による肺炎>通常、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、総投与期間は14日間までとする。薬価:オルミエント錠4mg 5,274.90円/2mg 2,705.90円(2021年4月時点)製造販売元:日本イーライリリー株式会社

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第52回 上がらないワクチン接種率、歯科医参入が打開策となるか?

<先週の動き>1.上がらないワクチン接種率、歯科医参入が打開策となるか?2.基礎疾患者のワクチン、高齢者の接種待たずに開始/厚労省3.元三重大の准教授、カルテ捏造で執行猶予4年の有罪判決4.75歳以上の医療費負担引き上げ法案、収入に応じた制度に5.コロナの影響大、けんぽ組合の8割が赤字に転落/健保連6.病室Wi-Fi導入は申請で全額補助、患者団体らの申し入れから1.上がらないワクチン接種率、歯科医参入が打開策となるか?厚労省は、全国1,741市町村のうち、集団接種を予定する会場で18.1%が医師不足、22.8%が看護師不足とする3月25日時点の調査結果をもとに、歯科医の協力なしに集団接種が困難であるとし、歯科医も(1)筋肉注射の経験がある、(2)必要な研修を受けている、(3)接種者の同意を得ている、などの条件を満たせば、新型コロナワクチンの実施を特例的に認める方針を決めた。首相官邸によると、22日時点で1回以上接種した医療従事者等は約162万人、高齢者は約5万人(全例1回接種)で、全人口に対する接種率は先進国と比べると極端に低い水準にある。(参考)新型コロナワクチン注射、歯科医も 厚労省が方針決定(朝日新聞)新型コロナワクチン 歯科医師が接種 特例で認める方針 厚労省(NHK)これまでのワクチン総接種回数(首相官邸)2.基礎疾患者のワクチン、高齢者の接種待たずに開始/厚労省厚労省は、新型コロナウイルスワクチンの接種について、65歳以上の高齢者向けの接種が完了する前でも、がんや慢性心臓病などの基礎疾患を持つ者に対しての接種を認める方針を示し、自治体にも通知を発出した。認知症の高齢者などで、意思確認が難しい場合についても、ほかの季節性インフルエンザなどの定期接種と同じく、状況に応じて、家族やかかりつけ医、高齢者施設の介護者などの協力を得て、本人の意向を丁寧にくみ取って行う。また、意思は確認できても、自署ができない場合には、家族などによる代筆を行うなど適切な運用を求めている。(参考)基礎疾患者の接種、高齢者の完了待たず可能 厚労省(日経新聞)コロナのワクチン優先接種の基礎疾患(NHK)資料 新型コロナウイルスワクチンに係る予防接種の高齢者に次ぐ接種順位の者(基礎疾患を有する者等)への接種の開始等について(事務連絡 令和3年4月21日)資料 新型コロナ予防接種の実施に係る留意事項について(事務連絡 令和3年4月23日)3.元三重大の准教授、カルテ捏造で執行猶予4年の有罪判決22日、津地方裁判所は、三重大学附属病院で行われた手術において、使っていない薬の電子カルテを改ざんし、診療報酬をだまし取ったとして詐欺罪などを問われた元准教授に、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を言い渡した。判決理由は、「自らの立場を悪用した犯行で、医療現場での重要な記録に対する社会の信用が害された程度は大きい」と非難し、懲戒解雇された点などを考慮し、執行猶予となった。この事件を巡っては、被告の上司にあたる元教授も詐欺罪で起訴されている。(参考)カルテ改ざん有罪判決 津地裁、三重大元准教授に(日経新聞)当院臨床麻酔部における不正事案に対する取り組みについて(三重大学)4.75歳以上の医療費負担引き上げ法案、収入に応じた制度に菅総理大臣は23日に開催された衆議院厚生労働委員会で、75歳以上の医療費の自己負担を年収200万円以上の人を対象に2割に引き上げる医療制度改革関連法案について、「現在の社会保障制度を次の世代に引き継いでいくため、負担能力に応じた制度に改める必要がある」と述べ、理解を求めた。なお、法案は2022年1月1日からの施行を予定しており、単身世帯で年収200万円以上、複数世帯では75歳以上の年収合計が320万円以上の場合に対象となる者は約370万人。引き上げ後3年間は、激変緩和措置を設ける方針が打ち出されている。(参考)菅首相 社会保障制度「負担能力に応じた制度に改める必要」(NHK)全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案概要(衆議院)5.コロナの影響大、けんぽ組合の8割が赤字に転落/健保連22日、健康保険組合連合会(健保連)が、全国の大企業の社員が加入している健康保険組合の財政について、2021年度は77.9%の赤字が見込まれると推計を発表した。実質保険料率が初めて10%を超え、義務的経費に占める拠出金割合が50%超の健保組合が全体の26.2%を上回っている。加入者の所得減に伴う保険料収入の減少など、さらに厳しくなっている財政状況に、今後の展開が危ぶまれる。2022年以降は団塊世代が後期高齢者入りするため、さらに拠出金負担が増大することが見込まれ、想定より早く保健財政に危機が到来したと考えられる。国民皆保険制度の維持、現役世代の負担軽減のため、現在、国会で法改正について審議を行なっているが、後期高齢者2割負担導入による現役世代の負担軽減は必須とし、早期の施行を求めている。(参考)健保組合、8割が赤字の見通し 21年度予算を公表(毎日新聞)コロナ響き、健保組合の8割が赤字 保険料率引き上げも(朝日新聞)資料 令和3年度 健康保険組合の予算早期集計結果(概要)について(健保連)医療保険制度改革関連法案に関する資料(同)6.病室Wi-Fi導入は申請で全額補助、患者団体らの申し入れから23日、新型コロナ感染拡大時に闘病生活を送ったフリーアナウンサーの笠井 信輔氏を始め、神経難病患者らで作る団体や病院に入院中の患者らが、院内で無線LAN(Wi-Fi)を使えるようにしてほしいと厚労省に申し入れをした。これは、笠井氏が悪性リンパ腫を患って入院中、コロナの影響で友人などのお見舞いも受けられず孤立していた時に、スマホのデータ通信で毎月1万円近くの追加料金がかかったことや、オンラインでお見舞いの会を開いてもらったことなどをきっかけとして、難病患者らとともに病院がWi-Fiを設置できるよう国に政策として予算をつけてほしいと訴えた形。今回、補正予算で通信関連設備への補助がつき、上限はあるものの、申請があれば全額補助可能となった。電波環境協議会の2019年のサンプル調査によると、医療機関のうち81.1%がWi-Fiを導入し、電子カルテなどの医療系システムやインターネットサービスを利用しているが、患者にWi-Fiアクセスを提供しているのは27.3%に過ぎない。申請に当たっては、「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金に関するQ&A」を参照されたい。(参考)病室にWiFi「今やライフライン」 笠井アナら訴え(朝日新聞)#病室WiFi協議会 ホームページ【拡散希望】病室のWi-Fi開設に国の予算が付きました(笠井信輔氏のブログ)

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COVID-19感染流行下における血液疾患診療の指針まとめ/日本血液学会【Oncologyインタビュー】第32回

日本血液学会は3月半ば、「新型コロナウィルス感染症蔓延下における血液疾患診療について」と題した声明を発表した。血液腫瘍を専門とする医療者に向け、疾患別に分けたうえで新型コロナ流行下での診療方針と、患者へのワクチン接種の推奨について留意事項をまとめたものだ。この声明をまとめた日本血液学会理事、造血器腫瘍診療ガイドライン委員会委員長である筑波大学の千葉 滋氏(血液内科 教授)に作成の経緯と狙いを聞いた。インタビューはzoom形式で行われた―このタイミングで声明を出された経緯は?これまでも、学会としては米国血液学会(ASH)や欧州血液学会(EHA)が発表した情報(Q&Aなど)を紹介、アップデートしてきました。ただ、日本は感染蔓延状況が欧米に比べればマイルドであり、また治療を入院で行うか外来で行うかが異なることもあります。このため、欧米における危機対応の判断の中には必ずしも日本の現状にそぐわない点もある、という声がありました。そこで、作業のためのワーキングチームで議論を始めました。また、学会誌である「臨床血液」の2月号がCOVID-19の特集号となっており、こちらと相互補完的に情報共有ができればよい、とも考えました。―COVID-19の影響で血液疾患の治療にはどんな変化がありましたか?日本では感染者の絶対数が北米や欧州諸国ほど多くありません。日本で血液疾患を診療しているのは中〜大規模医療機関が主体ですが、こうした病院において血液疾患の診療を大幅に抑制せざるを得なくなったところはあまり多くないのではと思います。血液疾患には「急速に病態が進む」ものと「緩やかな経過をたどる」ものがあります。急速に病態が進む疾患は、COVID-19感染リスクを勘案したとしても、治療を待てないケースが大半です。一方で、緩やかな経過をたどる疾患では、計画どおり治療を進めるべきか、COVID-19感染リスクを考慮して計画を変更すべきか、慎重に判断すべき時期があります。血液疾患は疾患そのものが要因で免疫不全になり、さらに治療によって一段と深刻になるケースが多いため、治療のベネフィットと感染リスクの見極めが必要になるからです。たとえば悪性リンパ腫の中で緩やかな経過をたどる疾患における寛解後の維持療法では、ベネフィットがリスクと比して少ないと医師が判断した場合には、治療を延期・中断するなどの判断が行われると思います。日本血液学会のサイト上で公開されている声明他のがんでは、「COVID-19による受診控えでがんの診断や治療が遅れる」といった問題も指摘されてきました。しかし、血液腫瘍は病態進行の速さから何ヵ月も受診を控えることが現実的でない場合が多いですし、一般に血液腫瘍が疑われるとなるべく早く専門施設の受診を勧められるケースが大半です。ですから、COVID-19蔓延のための受診控えによって治療の遅れが多数のケースで生じた、ということはなかったのではないかと想像しています。血液学会で計画されている「COVID-19レジストリ―研究ワーキンググループ」の調査により、血液疾患を持つ新型コロナ感染者の実態の一部が明らかになると思います。―今回の声明では、ASH等の海外学会が発信しているQ&Aと違う意見が述べられているのでしょうか?米国はもともと人口当たりの病床数が日本に比べて圧倒的に少なく、入院費用も非常に高額であるため入院期間が短く、日本では入院となるような治療(たとえば自家造血幹細胞移植など)でも外来で行われてきたという実態がありました。ここに、日本よりも2桁多い累計3,000万人を超えるような数の新型コロナの感染者が発生したことから、外来・入院それぞれで病院機能が受けた影響は日本に比べ格段に大きかったと推察されます。このために、血液疾患の治療も平時の治療から変更せざるを得ないケースが出てきて、そのノウハウが情報発信されているものです。一方で、日本では先にお話ししたように、血液疾患の治療を平時のものから変更しなければならないような事態には必ずしも至っていないため、今回の声明でも「従来のガイドラインに沿った治療を継続すべき」との見解が多くなっています。ただ、一部には、通院間隔を空けるため投与間隔の長い薬剤に変更する、維持療法を見送る、等の提案をしている箇所もあります。―血液疾患患者に対するワクチン接種の推奨はどのようになっていますか?基本的には「打てる状況ならば、打っておいたほうがいい」というスタンスです。実際には、ワクチン開発中の治験に組み入れられた血液疾患の患者はおらず、エビデンスが蓄積されるのはこれからです。一般にがん患者がCOVID-19に罹患すると重症化リスクが高いとさまざまに報告されており、ワクチンの有効性のデータからも血液がんあるいは他の血液疾患で接種を推奨しない理由はありません。ただ、実際はそれほど単純ではありません。血液疾患患者は免疫不全状態にあることが多く、抗がん剤や免疫抑制剤による治療中であればさらにそれが顕著となります。結果として、一般の方よりもワクチンの効果が低くなることが予想されます。もともとワクチン接種による免疫獲得の成功率は100%ではありませんが、血液疾患患者の成功率はさらに下がる可能性が高い。とくに同種造血幹細胞移植後の患者さんは免疫がほとんど消えてしまいます。移植後に免疫が回復するには時間がかかりますので、これまでも移植後は6ヵ月経過し免疫抑制剤を中止した後に、肺炎球菌や麻疹・風疹などへの予防接種をしていました。生ワクチンは移植後1年経過してからです。新型コロナワクチンについては、移植後いつ接種すべきかが一層深刻な問題です。免疫回復を待っている間にも感染する危険がありますので。こうした点について声明では、欧米の推奨と共に、基本的な考え方を記述しています。一方、新型コロナワクチンを優先接種したすぐ後で抗がん剤治療や移植を実施すれば、ワクチンの効果が消えてしまう可能性もあります。「消えたら再接種ができるのか」という問題はまだ議論もされていない状況ですから、抗がん剤治療や移植が計画されている場合にいつ接種するかは、慎重な判断が求められるわけです。骨髄腫など治療が長期に及ぶ疾患においても、治療中のどのタイミングでワクチンを接種するのか、という別の判断が必要です。骨髄腫についてはつい先頃、日本骨髄腫学会が独自に留意点などを公表しています。こう見ていくと、大多数の血液疾患の患者さんにワクチン接種は推奨されるものの、実際にどのタイミングで接種するかは、個々の患者さんの疾患と治療の段階に応じて主治医と相談しながら決めていただく、という結論になるでしょう。血液疾患といっても多種多様です。血液学会のほかに移植・免疫療法、骨髄腫、血栓・止血、小児血液・がんなどの専門学会があるので、そちらからの声明もご確認いただければと思います。参考サイト日本血液学会「新型コロナウィルス感染症蔓延下における血液疾患診療について-留意事項-」日本骨髄腫学会「骨髄腫患者に対する新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン接種について」

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内科レジデントを終え次のステップへ、臨床留学医の挑戦はなお続く【臨床留学通信 from NY】第20回

第20回:内科レジデントを終え次のステップへ、臨床留学医の挑戦はなお続く全世界の死者が300万人を超える中、米国ではワクチン接種が進み、4月6日以降は16歳以上の全員が接種できるようになりました。それでもニューヨーク州は、変異株の影響で依然として1日5,000人程度の感染者数が続いています。しかしながらCOVID-19のために入院を要する高齢者の数は劇的に減少し、4月になってからは、ほぼ新規の入院はなくなりました。そんな中、私は7月よりAlbert Einstein Medical College/Montefiore Medical Centerという同じニューヨーク市にある病院でCardiology fellowをすることになり、その書類作業に追われております。日本と違って、入職前に健康診断を済ませる必要がある上、HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)の兼ね合いから、数多くのweb based moduleをこなさないと働かせてもらえないのです。さて、今回よりフェローシップのマッチングについて話をしていきたいと思います。レジデント同様、内科のサブスペシャリティのフェローについても、マッチングのアルゴリズムに則って、ウェブ上で出願する必要があります。誰もが希望する診療科に進める日本と異なり、そこは残酷な競争の原理が働いています。例えば、内科系で最も競争の激しい循環器内科は、全米で1,083のスポットしかありません。それは、1,000人強ほどのフェローに対し必要十分な研修が行えるように、国全体でspotの数を定めているからです。それに対し、通年ならば1,400人弱ほどの出願数があるのですが、昨年は新型コロナの影響でより多く循環器科などのフェローシップへの道に流れ、さらにzoomなどによるウェブ面接となったことで、強い候補者が例年ならあまり行かないような遠隔地にある病院の面接を数多く勝ち取った上、通常ならば出るキャンセル待ちもなくなってしまい、弱肉強食の原理が色濃く出る結果となりました。そのため昨年は例年より多い1,567人の出願者数に対し、3人に1人はアンマッチという現実でした。残念ながら私の同僚でほかに4人が循環器科に出願していましたがいずれもアンマッチという状況でした(例年ならば、当院からはアンマッチは循環器科にはありません)。詳しくはこちらのウェブサイトをご覧ください1,2)。このPDFを見ると具体的な数字がありますが、IMG (international medical graduates)は、AMG (American Medical Graduates)に比べてビザ保有という点で圧倒的に不利な中で、DOと呼ばれるMDとは違う医学部の医学教育を得て卒業した米国人や、主にカリブ海地域の医学部を卒業した米国人(US Foreign)と遜色のないマッチ率となっていますが、ここに至るまでには非常に熾烈な競争を余儀なくされます。次回以降、マッチのための準備やプロセス等について述べていきたいと思います。参考1)https://mk0nrmp3oyqui6wqfm.kinstacdn.com/wp-content/uploads/2020/12/MSMP-Match-Results-Report-AY2021.pdf2)https://mk0nrmp3oyqui6wqfm.kinstacdn.com/wp-content/uploads/2019/12/415_MRS.pdfColumn画像を拡大する日本よりも数週間遅れでニューヨークにも春が来て、セントラルパークで花見を楽しむ人の姿がありました。なかなか風情のある景色が都会のオアシスに広がっています。

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新型コロナワクチン、既感染者での効果は?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)既感染者にワクチンを接種すべきかどうか、まだはっきりしていない。これまでに既感染者が未感染者よりワクチンによる抗体応答が有意に高かった報告は少ない。今回、イタリア・シエナ大学のGabriele Anichini氏らが実施したコホート研究では、既感染者でのワクチン単回接種後の中和抗体価が、未感染者における2回接種後より有意に高いことが示された。NEJM誌オンライン版2021年4月14日号のCORRESPONDENCEに報告。 本研究では、SARS-CoV-2既感染者38人(男性9人と女性29人、平均年齢35.1歳、95%信頼区間[CI]:31.7~38.6歳、感染からワクチン接種までの平均日数:111日)と、未感染者62人(男性25人と女性37人、平均年齢44.7歳、95%CI:41.0~47.6歳)の計100人の医療従事者が参加した。 両群ともファイザー社製mRNAワクチンBNT162b2を接種。既感染者は初回接種の10日後に、未感染者は2回目接種の10日後に血清サンプルを採取した。すべての参加者において、化学発光微粒子免疫分析を用いて、特異的抗SARS-CoV-2スパイクIgGの有無を調べた。 主な結果は以下のとおり。・血中循環抗スパイクIgG抗体力価は、既感染者と未感染者で有意差はなかった。・特異的抗SARS-CoV-2中和抗体の幾何平均力価は、既感染者(569、95%CI:467〜670)と未感染者(118、95%CI:85〜152)に差がみられた(p<0.001)。年齢や性別による実質的な差はなかった。・既感染者(血中循環抗スパイクIgG抗体が検出されなかった1人を除く)を感染からワクチン接種までの期間が1〜2ヵ月(8人)、2〜3ヵ月(17人)、3ヵ月以上(12人)の3グループに分類したところ、血中循環IgG抗体の平均力価は、感染1〜2ヵ月後に接種したグループ(1mL当たり15,837任意単位)と2〜3ヵ月後に接種したグループ(同21,450任意単位)で差がみられた。感染2~3ヵ月後に接種されたグループと3ヵ月以降に接種されたグループ(同21,090任意単位)の間には有意差はみられなかった。中和抗体の幾何平均力価では、感染1〜2ヵ月後に接種されたグループが437(95%CI:231〜643)、2~3ヵ月後に接種されたグループが559(同:389~730)、3ヵ月以降に接種されたグループが694(同:565~823)であり、感染後3ヵ月以上以降に接種するとブースター反応がより効果的であることを示しているが、決定的な結論を下すには十分ではなかった。 著者らは、「これらの結果は、SARS-CoV-2既感染者のワクチン単回接種後は未感染者の2回目接種後より強い液性応答を示すというエビデンスを提供する」と述べている。

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イスラエルの新型コロナワクチンの効果、地域や年齢による差は?

 新型コロナワクチンの接種が各国にて急ピッチで進められているが、社会における実質的な効果の検証が求められている。イスラエル・ワイツマン科学研究所のHagai Rossman氏ら研究チームが、国内におけるワクチン接種の開始前後におけるCOVID-19症例数と入院数の経時的変化について分析したところ、ワクチン接種における年齢および地域の優先順に、COVID-19症例数および入院者数が大幅かつ速やかに減少傾向を示していたことがわかった。イスラエルでは、2020年12月20日から新型コロナワクチン接種が始まり、優先対象の60歳以上では、2月24日時点で85%が2回の接種済みだという。著者らは、本結果がコロナパンデミックに対する全国的なワクチン接種キャンペーンの実効性を示唆するものだと述べている。Nature Medicine誌オンライン版2021年4月19日号に掲載の報告。 本研究では、2020年8月28日~2021年2月24日に収集したイスラエル保健省のデータを後ろ向きに分析。2020年12月20日に開始されたファイザー社製ワクチン(BNT162b2 mRNAワクチン)接種キャンペーン後の新しいCOVID-19症例数と入院数の経時的変化を検証した。具体的には、(1)優先接種対象の60歳以上とそれ以下の年齢層(2)2020年9月のロックダウンと2021年1月のロックダウン(3)ワクチン接種の実施が早かった都市と遅い都市―の3項目について、ワクチン接種がどのように影響しているか調べた。 年齢層の検証では、ワクチン接種の優先順位の高かった60歳以上で、それ以下の年齢層よりもCOVID-19症例数および入院数が大幅かつ速やかな減少が見られた。この傾向は、国のワクチン接種優先スケジュールの順番と正比例していた。また、同様の減少傾向は2021年1月のロックダウン時には見られたが、ワクチン接種の実施前となる2020年9月のロックダウン時には観察されなかった。 地域の検証では、早期にワクチン接種を実施した都市において、60歳以上のCOVID-19症例数および入院数の大幅かつ速やかな減少が見られた。具体的には、早期に実施した都市では、ピーク値と比べCOVID-19症例数は88%、重症者入院率は79%減少したのに対し、後期に実施した都市ではCOVID-19症例数78%、重症者入院率66%の減少にとどまった。

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第54回 専門家コメントの揚げ足を取る奴ら、新型コロナ感染対策の赤点取るなよ

もう高校を卒業してから30年以上が経過しているが、先日同世代のある方と電話で話していて「赤点」という懐かしい言葉を耳にした。いうまでもなく学習の習熟度を測る基準点で、高校時代はこの点数を下回ると最低でも追試、最悪は留年となった。赤点ラインは学校によってかなり差があり、私の高校では全教科一律で50点未満が赤点。ちなみに大学入学後、この母校の赤点ラインは周囲と比べてかなり厳し目であることを初めて知った。かくいう私は2度の赤点経験者だが、なんとか無事に卒業はしている。そんなこんなを思い出しながら、ふと今のコロナ禍に思いが至った。というのも、この電話をしていた日に以下の記事が文藝春秋の運営する情報サイト「文春オンライン」に掲載され、話題を呼んでいたからだ。「『東京五輪1年再延期の検討を』 西浦教授が提言」西浦教授とは言うまでもなく、コロナ禍の当初、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症クラスター対策班の一員として活動し、流行拡大を阻止のために人と人との接触を8割減にする必要があると繰り返し主張してきた通称「8割おじさん」こと、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻教授(クラスター対策班当時は北海道大学大学院医学研究院教授)の西浦 博氏のことである。内容は何のことはない。「今の感染急増を踏まえると、ワクチン接種の機会が医師ですら不足する可能性もある。そのことを考慮して、国民に広くワクチンが行き渡るであろう来年に東京オリンピック・パラリンピックを再延期してはどうか」という西浦氏の提言が紹介された記事だ。この記事は「Yahoo!ニュース」で配信されると瞬く間にネット上で拡散され、4月21日時点で「Yahoo!ニュース」コメント欄には6000件超のコメントが寄せられている。コメントの多くは、おおむね西浦氏の主張には理解を示している。ただ、「延期はない。中止だろう」の趣旨のものが目立つ。私は西浦氏の本音は中止なのだろうが、大会関係者の意向も忖度して「再延期」と表現しているのだと勝手に推測している。ただ、このコメント欄や記事を引用したTwitterやFacebookの投稿の一部には、もはや誹謗中傷の域としか思えないコメントも見受けられる。この記事に対する反響は配信直後から良くも悪くも相当大きかったのだろう。西浦氏はTwitter上でお詫びも含めたツイートをしている。悪いほうの反響で多く見かけるのが、西浦氏が2020年4月に発表した数理モデルを利用した試算への批判だ。これは感染拡大に無対策だった場合、流行終息までに日本国内では約42万人が死亡するというもの。当時、社会に衝撃を与えた試算だったが、前述の批判とはこれを「大外れだったではないか」と指摘するものである。その多くは医療と無関係な一般人だが、ごく一部には医療従事者もいるようだ。私はこの批判は的外れだと思っている。そもそも試算は、「無対策ならば」などの条件付きであり、試算結果のようにならないために「人と人の接触8割減」が必要という提言もセットで発表されている。冒頭のテストに例えれば、私たちは予め問題と模範解答を示され、赤点を回避するよう迫られていたわけである。もし試算が的中したら政治、アカデミアも含め国民全員の敗北、言葉は汚いが日本は「国民総アンポンタン」との烙印を押されていたのである。この西浦氏の「人と人の接触8割減」提言について、政治の側で満額回答を示したわけではなかったが、インフルエンザ等特別措置法(特措法)に基づく初の緊急事態宣言発出とそれを根拠にした飲食店の時短営業や一部商業施設の休業、イベントの中止・延期、テレワークの推奨などといった対策に落とし込まれ、さらに国民には「3密の回避」「マスク着用」「手洗いの励行」などのメッセージが繰り返し伝えられた。その結果として一時的とはいえ感染拡大はかなり抑制できた。今現在、私たちは第4波とでも言うべき感染急増に晒されている。4月5日以降、特措法に基づく「まん延防止等重点措置」が10都府県に順次発出されたが、それでも連日1,000人を超える感染者が報告されている大阪府、感染拡大傾向を見せる東京都はともに緊急事態宣言発出が確実視されている。この感染急拡大の原因の一つとして英国株を中心とする感染力が強い変異株の流行が指摘されている。それは事実だろうが、改めて言うまでもなく、野生株だろうが、変異株だろうが、▽人と人との接触減(その中でもとりわけ3密の回避)▽マスク着用▽手洗いの励行といった感染拡大阻止の対策は変わらない。むしろその徹底がより必要となってくる。強いて言うならば、これらの対策に「接種できる人は速やかにワクチン接種をする」という対策が加わる。いずれにせよ西浦氏の最初の試算発表時から今まで、私たちは同じ問題とそれに対応したほぼ同じ模範解答が示され、その徹底を求められている。医療従事者と私たち報道関係者は、自分自身の徹底に加え、他者への呼びかけも今まで以上に求められることになる。最終的に東京オリンピック・パラリンピックが予定通り1年遅れで開催されるのか、再延期となるのか、それとも中止となるのか。この点は医学的な判断のみならず高度に政治的な判断も加わるため、今の時点で予測不可能だ。現在、緊急事態宣言発出を巡って、一部への休業要請も含めたより強い対策をどこまで行うのかは水面下で調整が行われている。が、まん延防止等重点措置にしろ緊急事態宣言にしろ、一度発出されてしまえばその後は単に政治家や医療従事者だけでなく、対象となる地域の住民も行動の真価が問われることになる。そして私たちに「赤点」が付くかどうかは数ヵ月以内に判明することになる。

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中和抗体カクテル療法で症候性COVID-19発症リスクが81%減/ロシュ

 ロシュ社(スイス)は4月12日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染者との家庭内での濃厚接触者を対象に、中和抗体カクテル療法によるCOVID-19発症リスクおよび負担軽減を評価した第III相臨床試験(REGN-COV 2069試験)において、良好な結果を確認したと発表した。casirivimabとimdevimabの皮下投与により、試験開始時に感染していなかった人の症候性感染の発症リスクが81%減少したことが示されたという。 REGN-COV 2069試験は、SARS-CoV-2感染者との家庭内における濃厚接触者への症候性感染予防を目的に、casirivimabおよびimdevimabの有効性と安全性を評価する複数コホートからなる二重盲検ランダム化プラセボ対照試験で、ロシュ社が米国・国立アレルギー・感染症研究所と共同で実施したもの(日本は不参加)。過去4日以内にSARS-CoV-2陽性と判定された人と同居し、ベースラインでSARS-CoV-2に感染しておらず、casirivimab+imdevimab(1,200mg)またはプラセボを単回皮下投与した1,505例が対象。主要評価項目は、29日間の評価期間におけるSARS-CoV-2の症候性感染が生じた人の割合とした。その結果、casirivimab+imdevimab群において症候性感染の発症リスクがプラセボ群に比べ81%減少(p<0.0001)したことが示された。 本試験ではさらに、新規感染の無症候性患者204例について、casirivimab+imdevimab(1,200mgの単回皮下投与)またはプラセボに無作為に割り付け、抗体カクテル療法を評価した。その結果、casirivimabとimdevimabは、症候性COVID-19に進行するリスクを全体で31%減少させた。 また、casirivimabとimdevimabによる治療を受けたものの症候性COVID-19感染を発症した人では、平均1週間以内に症状が消失したのに対し、プラセボ群では症状が消失するまでに3週間を要した。新たな、あるいは重大な安全性シグナルは認められなかった。 casirivimabとimdevimabによる抗体カクテル療法の国内開発は、中外製薬が実施している。

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アビガン、発症早期COVID-19患者に対する第III相試験開始/富士フイルム富山化学

 富士フイルム富山化学は、アビガン(一般名:ファビピラビル)について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者を対象とした新たな第III相試験を国内で開始したことを、4月21日に発表した。本試験は、重症化リスク因子を有する、発症早期のCOVID-19患者において有効性・安全性を検証する二重盲検プラセボ対照試験。 アビガンについては、非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者を対象とした国内第III相試験において主要評価項目で統計学的有意差を確認したことから、製造販売承認事項一部変更承認申請を行っている。 今回の第III相試験は、昨年実施した臨床試験の中でとくに発症早期の患者で症状改善を早める効果が示唆されたことから、重症化リスク因子を有する、発症早期のCOVID-19患者(発熱などの症状発現から72時間以内かつ基礎疾患や肥満などの重症化リスク因子を有する50歳以上のCOVID-19患者)を対象に、重症化した患者の割合を主要評価項目として有効性を検証していくという。

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第54回 最悪のタイミングで導入された「レセプト記載要領コード化」、どこが問題?

2020年度の診療報酬改定により、電子レセプト請求に「レセプト記載要領の電算コード」が1,700項目追加された。同年10月診療分から本格適用されたが、コロナ禍で医療人材が不足し、業務の効率化が求められる中、医療機関からはかえって事務作業量が増え、現場が混乱しているという声が上がっている。9割以上の医療機関で業務量が「増えた」大阪府では新型コロナウイルスの感染者数が過去最多を記録する中、大阪府保険医協会はこのほど、「電子レセ請求におけるレセ記載要領コード化」に関するアンケートを、府内約500病院を対象に実施し、100病院から回答を得た(3月15日現在)。それによると、9割以上の病院で業務量が「増えた」ことが明らかになった。アンケートでは、レセプト記載コード化の実施による請求事務部門の業務時間の増減について尋ねたところ、100病院中54病院が「増えた」、37病院が「多少増えた」と回答。「減った」と回答した病院は0件だった。とくに在宅医療では「重複した年月日を別コードで何度も入力しなければならない」「月の請求書であるレセプトになぜ元号から入力しないといけないのか」、検査でも「病名で部位がわかるのに、なぜ超音波の部位をコード入力するのか」など批判の声が上がっているという。また、診療報酬請求だけではなく、電子カルテと連携している場合にはカルテ記載の際にもコード入力を求められ、「診療が止まってしまう」との意見も寄せられている。合理化・簡素化を目的として実施されたレセプト記載コード化が、医療機関の負担軽減とは真逆の内容であることが浮き彫りになった。新たに入力しなければならない項目などが増加電子カルテの導入状況などについて尋ねた項目の回答を見ると、導入状況は半数程度であり、病院ということで一括りにはできず、請求事務と医療現場を繋ぐシステムの状況は病院ごとにかなり異なることが伺えた。とくに苦労している点などについて記述してもらったところ、回答した病院の8割以上(81件)から具体例が挙げられた。主に問題点は以下の3点だった。(1)救急医療管理加算における記載事項、リハビリテーションにおける起算日の内訳の入力に代表されるように、請求事務部門で完結できない確認作業が伴うため、時間がかかった。また、恒常的に対応するため、現場のメディカルスタッフに当該数値や情報の入力・報告を求めるなど、医療現場との業務調整まで行う必要があったことなどが指摘されている。(2)レセプト記載コード化だけでなく、新たに入力しなければならない事項が増えているのも問題であるとする指摘も多数見られた。(3)レセプトコンピュータや電子カルテの対応状況やメディカルスタッフの保険請求への理解など病院の実情により、負担感の違いが伺えるが、院内の体制が手薄な中小規模の病院ほど、レセプトをまとめる医事課などの請求事務部門の負担が大きいと推察される。実態は医療側ではなく「審査側の効率化」このように、医療情報のデータ化に伴う作業は多大な負担を伴っている。この負担の大きさに見合う意義があるのか、その成果が医療機関側にどのようにもたらせられるか、大阪府保険医協会は疑問を呈している。その成果が「審査側の効率化」というのでは、コロナ禍の中でこの作業に従事している医事課職員をはじめ医療機関職員が報われない。言うまでもなく、請求事務の目的は、医療機関で行われた医療行為(療養の給付)を診療報酬点数表に則って保険請求を行い、対価を得ること。その対価が医療従事者の給与や医療機器の整備等に充てられ、国民医療の継続的な提供や医療の質を担保している。審査側にとっての「効率化」を行うのであれば、厚労省や審査・支払機関、保険者が汗をかいて行うべきでは、との意見も寄せられている。大阪府保険医協会には診療所からも意見が寄せられ、3月下旬現在、レセプト記載コード化の凍結を求める院長署名が約1,700件集まっているという。同協会は3月25日、中央社会保険医療協議会(中医協)委員に要望書を送付した。厚労省の説明は現場の実態と乖離レセプト記載コード化について、厚労省は「事務作業量の軽減に資する」と説明しているが、現場の実態とはあまりに乖離している。また、混乱の要因を「新型コロナ感染拡大による周知不足」とも説明しているが、その内容自体に大きな問題があり、周知徹底を行ったところで医療機関の納得を得られるものではないと思われる。医療機関は、新型コロナ感染対策により大きな緊張を強いられた状況で診療を行っている。レセプト記載コード化は、導入のタイミングの悪さも一因ではあるが、医療機関にとっては余計な負担増にほかならない。医療のIT化は大きな流れとはいえ、2022年度の診療報酬改定を議論する中医協には、医療現場にこれ以上の負担をかけない議論が望まれる。

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新型コロナ既往者の再感染リスクは84%減少/Lancet

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染既往者は、非既往者に比べ感染リスクは約84%減少し、その効果持続期間の中央値は7ヵ月であることが、英国・Public Health England ColindaleのVictoria Jane Hall氏らによる、英国内の病院に勤務する医療従事者やスタッフなど約2万6,000例を対象とした大規模前向きコホート試験の結果で示された。なお期間については、セロコンバージョンを含んでおらず最短である可能性があるという。COVID-19からの回復者に再感染の保護効果があるのかについて理解を深めることは喫緊の課題とされている。著者らは、SARS-CoV-2への獲得抗体が症候性および無症候性の再感染リスク減少と関連するのかどうかを検討した。結果を踏まえて著者は、「SARS-CoV-2への感染既往は、大半の人にとって将来的な感染に有益な免疫をもたらすことを示すものであった」と述べている。Lancet誌2021年4月17日号掲載の報告。PCR検査陽性群の再感染と、陰性群の初回感染の発生率を比較 研究グループは2020年6月18日~12月31日にかけて、英国内すべての公的病院を通じて、医療従事者、支援スタッフ、事務職員を対象にコホート試験を開始した。被験者は、SARS-CoV-2のPCR検査と抗体検査を2~4週ごとに、症状や感染曝露に関する質問票への回答を2週間ごとに行った。試験参加時点で、被験者を抗体陽性群(抗体陽性またはPCR/抗体検査の陽性歴あり)と抗体陰性群(抗体陰性またはPCR/抗体検査の陽性歴なし)に分類した。なお、登録後のPCR検査を受けなかった場合や、2020年12月31日以降の登録、PCRおよび抗体データが不十分の場合は除外した。 主要アウトカムは、陽性群の再感染、または陰性群の初回感染で、PCR検査で確認した。再感染については臨床的レビューも行い、ケースの定義(確定、ほぼ確定、可能性)およびエビデンスの階層に準じて症状で分類した。陰性群の初回感染については、初回PCR検査陽性と定義し、セロコンバージョンは、PCR検査陽性に関連しない場合は除外した。 ポアソン分布を用いた比例ハザード異質性モデルにより、罹患率比(IRR)を求め、2群で比較した。10万人日当たり罹患密度、陽性群7.6、陰性群57.3 登録された被験者数は3万625例で、そのうち51例が試験を中断、4,913例が除外され、抗体検査およびPCR検査データの突き合わせができた2万5,661例を対象に解析が行われた。全ソースからのデータ抽出は2021年2月5日に行われ、同年1月11日時点のデータが解析に含まれた。 陽性群は8,278例で、延べ204万7,113人日の追跡期間中、再感染は155件検出された。陰性群は1万7,383例で、延べ297万1,436人日の追跡期間中、初回感染は1,704件検出された。 2020年6月~2021年1月の罹患密度(incidence density)は、陽性群の再感染が7.6/10万人日に対し、陰性群の初回感染は57.3/10万人日だった。初回感染と比較した全再感染の補正後IRRは、0.159(95%信頼区間:0.13~0.19)だった。また、陽性群の初回感染から再感染までの期間中央値は、200日超だった。

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第54回 なぜ奈良県で?「県内全75病院に病床確保要請」をうがった見方をしてみれば…

感染症法に基づき病床確保や患者の受け入れを要請こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週末、以前から決まっていた仕事があり、久しぶりに大阪に日帰りで行ってきました。「まん延防止等重点措置」が適用されたにもかかわらず、新型コロナの患者数増加に歯止めがかからず緊急事態宣言が発令される予定の大阪ですが、梅田や難波などの繁華街はさすがに人出が激減していました。個人的には東京の繁華街よりも”自粛”の度合いが強い印象でした。緊急事態宣言で感染者数が収まっていけばよいのですが……。さて、4月20日から埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県と愛知県の4県に「まん延防止等重点措置」が新たに適用されました。全国で新型コロナウイルスの感染が再び急拡大する中、4月15日に奈良県は、2月に改正された感染症法(第16条の2)に基づき、民間病院を含む県内全ての75病院に病床確保や患者の受け入れを要請しました。改正感染症法に基づく要請は全国初です。これにより、正当な理由なく応じない病院には勧告が行われ、病院名を公表できることになります。このようなコロナ未対応病院への“圧力”ともとれる要請に、奈良県はなぜ先陣を切って踏み切ったのでしょうか。病床確保の目標数や時期など明確な数字は示さず日本経済新聞などの報道によれば、奈良県は感染者を原則、病院か宿泊療養施設で受け入れることとしており、自宅療養を認めていません。専用病床の使用率は15日時点で72%に達している、とのことです。すでに患者を受け入れている16の医療機関(計376床)は大半が公立・公的病院で、民間病院はわずか2病院(計10床)とのことです。県はこれまでも民間病院にコロナ病床の確保を求めてきたものの、新型コロナ以外の患者の受診抑制などを危惧し、対応は進んでいませんでした。今回の病床確保や患者の受け入れ要請はそうした経緯から行われました。要請対象は病院(病床20床以上)で、15日午前、県内全75病院に対し、新型コロナ感染者用の病床確保などについて改正感染症法に基づく協力要請の内容を伝えた、とのことです。病床確保の目標数や時期などについては明確な数字は示さず、病院の回答までに1週間の時間を置くなど、ややマイルドな要請となっています。県医療政策局の鶴田 真也局長は記者会見で「マンパワーや設備の不足で受け入れが難しいという理由があることもわかっている。病院と丁寧な協議を行いながら進めていきたい」と語ったとのことです。奈良県は医療政策では厚労省の“出先”コロナ未対応の病院、特に中小民間病院に、感染症法を持ち出して県が病床確保や患者の受け入れを要請するという今回の対応、うがった見方をすれば、厚生労働省が裏で手を引いて打ち上げた“アドバルーン”の可能性がある、と私は考えます。今年2月に改正された感染症法では、わざわざ国や地方自治体の権限を強化しました。同法第16条の2は「厚生労働大臣又は都道府県知事等は、緊急の必要があると認めるときは、医療関係者・民間等の検査機関等に必要な協力を求め、その上で、当該協力の求めに正当な理由がなく応じなかったときは勧告することができる(正当な理由がなく勧告に従わない場合は公表することができる)こととすること」となっています。しかし、コロナ病床の不足が続いても、どこの都道府県もこの改正感染症法を活用しようとはしません。そこで、この法律の効果や医療機関や医療団体の反応を見るために、医療政策では厚労省の“出先”とも言える奈良県で試してみることにした、というわけです。奈良県の医療政策を取り仕切る医療政策局の局長は、代々厚労省からの出向者(医系技官)が務めています。現在の鶴田局長は、2019年7月に厚労省医政局総務課保健医療技術調整官から現職に就いています。また、前任の林 修一郎氏(現、厚労省健康局予防接種室長)も厚生労働省保険局医療課課長補佐から同職に就いていました。実際のところ、奈良県はこれまでも度々、医療政策において先進的な案を世の中に提示してきました。地域医療構想実現に向けた取り組みの中では、「断らない」重症急性期と「面倒見のよい」軽症急性期といった2つのわかりやすいコンセプトを提示、「奈良方式」として注目を集めました。また昨年8月には、新型コロナウイルス感染拡大による受診抑制で経営が悪化した医療機関を支援するという名目で、医療機関に支払われる診療報酬を都道府県別に引き上げる「地域別報酬」についての意見書案を発表、奈良県知事名で厚生労働大臣に提出しています。診療報酬は全国一律で「1点10円」ですが、2008年に都道府県が違う点数を設定できる特例が設けられています。その特例が適用されたことはないのですが、コロナによる経営悪化を理由に、奈良県が時限的に「1点11点」を求めたわけです。11点は実現しませんでした。なお、このとき全国一律を堅持したい日本医師会は反対を表明しています。他の都道府県にも波及していくかこうした先鋭的な施策案は、中央で大々的にアピールすると各方面とさまざまな軋轢が起きてしまいます。しかし、中央官庁から出向している若手官僚が奈良県などの地方で実験的に打ち出せば、それは世間や医療界の反応を見るアドバルーンとして機能します。今回の県内全ての病院に病床確保や患者の受け入れを要請するという奈良県のアクションも、全国の知事たちに感染症法を活用してもらうための判断材料を提供するべく仕組まれた、と考えれば何となく腑に落ちます。ただ、現実問題として、奈良県でこれまでコロナに対応してこなかった病院がどこまで要請に応えられるかは未知数です。人員や建物の構造、感染症に対するスタッフのスキルなど、一朝一夕にはいかない事情もあるからです。4月16日付の朝日新聞は「県の協力要請は理解できる。県民のために協力したいと当然考えている。だが、民間病院が実際に受け入れられるかは別問題だ」という奈良県の病院協会会長の声を報じています。果たして、感染症法を持ち出すことでコロナ病床はどれくらい増えるのでしょうか。奈良県の“成果”次第では、他の都道府県が追従する可能性もあります。今後の動きが気になるところです。

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ファイザー製ワクチン、免疫チェックポイント阻害薬投与がん患者での安全性

 全身薬物療法で治療後もしくは治療中のがん患者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡リスクが高いため、ワクチン接種の優先度が高いグループと見なされる。しかし、がん患者におけるワクチンの安全性および有効性データはない。また、一部の専門家から、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与患者において、ワクチンで免疫関連有害事象を誘発または増強する可能性が指摘されている。今回、イスラエル・Tel Aviv Sourasky Medical CenterのBarliz Waissengrin氏らは、ICIで治療されたがん患者におけるファイザー社製ワクチン(BNT162b2 mRNAワクチン)の安全性について調査した。Lancet Oncology誌オンライン版2021年4月1日号に掲載。 Tel Aviv Sourasky Medical CenterおよびBnei-Zion Medical Centerでは、積極的治療を受けているがん患者すべてに対し、病期、PS、余命に関係なくワクチン接種を推奨した(SARS-CoV-2感染歴のある患者、感染している患者、免疫関連有害事象が制御されていない患者は除外)。本調査では、この2施設において、ICIで治療された患者におけるBNT162b2mRNAワクチンの有害事象を対照群(性別および生まれ年をマッチさせた健康成人)と比較した。2021年1月11日~2月25日に、ICIで治療されていたがん患者170例のうち、副反応を恐れて接種を拒否した33例を除いた137例が初回のワクチン接種を受け、うち134例が2回目のワクチン接種を受けた。ワクチンは1日目と21日目に標準用量で接種し、アンケートは電話で行った。 主な結果は以下のとおり。・初回投与後に3例が死亡し、うちCOVID-19による死亡が1例、がんの進行による死亡が2例だった。初回投与後に最も多かった有害事象は注射部位の痛みで、134例中28例(21%)にみられた。全身性では倦怠感(4%)、頭痛(2%)、筋肉痛(2%)、悪寒(1%)などがみられた。・2回目の投与後の観察期間中に、134例中4例(3%)が入院した(がん関連の合併症3例、発熱1例)が、全例が治療後に退院した。初回より2回目のほうが、全身性および局所性の有害事象が多く観察された。主な有害事象は、局所性では注射部位の痛み(63%)、局所発疹(2%)、局所腫脹(9%)で、全身性では筋肉痛(34%)、倦怠感(34%)、頭痛(16%)、発熱(10%)、悪寒(10%)、消化器合併症(10%)、インフルエンザ様症状(2%)で、入院または特別な介入は必要な例はなかった。・がん治療はICIのみが116例(87%)、ICIと化学療法の併用が18例(13%)だったが、全身性の有害事象はどちらも同程度だった。免疫関連有害事象の新規発現、既存の免疫関連有害事象の悪化はみられなかった。・筋肉痛はがん患者で有意に多かったが、それ以外はがん患者群と対照群で類似していた。両群ともワクチン接種後に免疫関連筋炎はみられなかった。・ワクチン接種前に免疫関連有害事象を報告していた患者(54%)と報告しなかった患者で、2回目接種後に全身性の有害事象を報告した患者数に有意な差はなかった(p=0.94)。過去に免疫関連有害事象を経験した患者でもワクチン関連有害事象は軽度で、入院や治療中止に至らなかった。 著者らは、「これらのデータは、ICIで治療されたがん患者におけるBNT162b2 mRNAワクチンの短期的な安全性を示唆している」としている。

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