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ワクチン接種者のlong COVIDリスク

 ブレークスルー感染者においてもコロナ罹患後症状(いわゆる後遺症、long COVID)が発現するか、米国退役軍人のコホート研究で調査した結果、急性期以降の死亡やコロナ罹患後症状発現のリスクがあることが確認されたが、ワクチン未接種の感染者より発現リスクが低いことが示された。本結果は、Nature Medicine誌オンライン版2022年5月25日号に掲載されている。 本調査では、2021年1月1日~10月31日の期間での退役軍人保健局の利用者で、ブレークスルー感染(BTI)群(3万3,940例)と、コロナ既往歴のない同時期対照群(498万3,491例)ほか、ワクチン未接種の感染群(11万3,474例)や、季節性インフルエンザ入院群(1万4,337例)など複数のコホートを構成し、2つの尺度でリスクを比較検証した。1つは死亡もしくは特定の症状発現(肺、心血管、血液凝固、消化器、腎臓、精神、代謝、筋骨格など)の補正ハザード比(HR)、もう1つは、BTI群におけるSARS-CoV-2検査陽性後6ヵ月間の各アウトカムについて1,000例当たりの補正超過負荷(excess burden)を推定した。 BTI群は、ジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチン初回接種から14日以上、もしくはファイザー製またはモデルナ製ワクチン2回接種から14日以上経過し、コロナ検査陽性後30日間生存した人が対象となる。ワクチン接種完了者のうちBTIの割合は1,000例当たり10.60例(95%信頼区間[CI]:10.52~10.70)だった。 主な結果は以下のとおり。・BTI群は同時期対照群と比べて死亡リスクが上昇しており(HR:1.75、95%CI:1.59~1.93)、BTI後6ヵ月の患者1,000例当たりの超過負荷が13.36例(95%CI:11.36~15.55)増加することが示された。・BTI群は同時期対照群と比べて、コロナ罹患後症状と考えられる症状を1つ以上経験するリスクが上昇した(HR:1.50、95%CI:1.46~1.54)。超過負荷はBTI後6ヵ月の患者1,000例当たり122.22例(95%CI:115.31~129.24)増加。・BTI群は同時期対照群と比べて、罹患後症状のリスクが次のように上昇した。肺機能障害HR:2.48(95%CI:2.33~2.64)、超過負荷:39.82(95%CI:36.83~42.99)心血管障害HR:1.74(95%CI:1.66~1.83)、超過負荷:43.94(95%CI:39.72~48.35)血液凝固障害HR:2.43(95%CI:2.18~2.71)、超過負荷:13.66(95%CI:11.95~15.56)疲労HR:2.00(95%CI:1.82~2.21)、超過負荷:15.47(95%CI:13.21~17.96)消化器障害HR:1.63(95%CI:1.54~1.72)、超過負荷:37.68(95%CI:33.76~41.80)腎臓障害HR:1.62(95%CI:1.47~1.77)、超過負荷:16.12(95%CI:13.72~18.74)精神障害HR:1.46(95%CI:1.39~1.53)、超過負荷:45.85(95%CI:40.97~50.92)代謝障害HR:1.46(95%CI:1.37~1.56)、超過負荷:30.70(95%CI:26.65~35.00)筋骨格系障害HR:1.53(95%CI:1.42~1.64)、超過負荷:19.81(95%CI:16.56~23.31)神経系障害HR:1.69(95%CI:1.52~1.88)、超過負荷:11.60(95%CI:9.43~14.01)・BTI群において、コロナ急性期に入院していない人よりも、入院した人、さらにICUに入院した人のほうが、罹患後症状のリスクが有意に上昇していた。・BTI群はワクチン未接種の感染群と比べて、死亡リスクが低く(HR:0.66、95%CI:0.58~0.74)、超過負荷は-10.99(95%CI:-13.45~-8.22)であった。・BTI群はワクチン未接種の感染群と比べて、罹患後症状のリスクが低く(HR:0.85、95%CI:0.82~0.89)、超過負荷は-43.38(95%CI:-53.22~-33.31)であった。・BTI群はワクチン未接種の感染群と比べて、調査した47の罹患後症状のうち24のリスクを低下させた。・BTI群は季節性インフルエンザ入院群と比べて、死亡リスクが高く(HR:2.43、95%CI:2.02~2.93)、超過負荷は43.58(95%CI:31.21~58.26)であった。・BTI群は季節性インフルエンザ入院群と比べて、罹患後症状のリスクが高く(HR:1.27、95%CI:1.19~1.36)、超過負荷は87.59(95%CI:63.83~111.40)であった。 研究グループはこの結果に対して、ワクチン接種は感染後の死亡と罹患後症状のリスクを部分的にしか減少させることができないため、SARS-CoV-2感染による長期的な健康への影響のリスクを軽減させるためには、ワクチンだけではなく予防対策が必要であるとしている。

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アストラゼネカ、新型コロナの新規抗体カクテル療法を国内承認申請

 アストラゼネカは6月9日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症抑制および治療を適応として、長時間作用型抗体の併用療法AZD7442の製造販売承認(特例承認)を厚生労働省に申請したことを発表した。AZD7442(海外での商品名:Evusheld)は、現在までにEUでの販売承認、英国医薬品医療製品規制庁の条件付き販売承認、米国食品医薬品局の緊急使用許可を取得している。 AZD7442は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染し回復した患者により提供されたB細胞に由来する、2種類の長時間作用型抗体であるtixagevimabとcilgavimabの併用療法だ。それぞれがSARS-CoV-2のスパイク蛋白に特異的に結合し、ウイルスのヒト細胞への侵入を阻止する。AZD7442を筋注で1回投与後、少なくとも6ヵ月間ウイルスからの保護が持続するという。 AZD7442のCOVID-19曝露前予防について、第III相試験PROVENTほか、The Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2022年6月7日付1)に掲載された第III相試験TACKLEなど、複数の臨床試験でプラセボ群と比較してCOVID-19の発症リスクが統計学的に有意に減少することが示されている。 第III相試験TACKLEは、2021年1月28日~7月22日に、米国、中南米、欧州、日本の95施設にて、910人が参加した無作為化二重盲検プラセボ対照試験。COVID-19発症から7日以内の軽症から中等症Iの入院していない18歳以上の成人を対象とした。そのうち併存疾患や年齢により重症化のリスクが高い患者が90%だった。被験者をAZD7442群(456例)とプラセボ群(454例)に分け、AZD7442群にAZD7442600mg筋注投与し、29日後までの重症化または死亡の相対リスクを調査した。 主な結果は以下のとおり。・AZD7442群はプラセボ群と比較して、重症化または死亡の相対リスクが50.5%(95%信頼区間[CI]:14.6~71.3)減少した。さらに、発症から3日以内に治療を受けた患者では88.0%(95%CI:9.4~98.4)、発症から5日以内に治療を受けた患者では66.9%(95%CI:31.1~84.1)減少した。・呼吸不全リスクが71.9%(95%CI:0.3~92.1)減少し、人工呼吸やECMOなどを必要とした患者は、プラセボ群11人(2.6%)に対して、AZD7442群3人(0.7%)だった。・有害事象は、AZD7442群が29%(うち重篤例7%)に対しプラセボ群は36%(うち重篤例12%)だった。最も多かったのはCOVID-19肺炎で、AZD7442群26例(6%)、プラセボ群49例(11%)に発生した。COVID-19による死亡は、AZD7442群3例、プラセボ群6例だった。 このほか、複数の独立したin vitroおよびin vivo試験により、オミクロン株に対する効果の検討も進められている。米国ワシントン大学医学部の研究結果によると、オミクロン株BA.2に対しても中和活性を保持しており、同研究ではin vivoにて、AZD7442がオミクロン株のウイルス負荷を軽減し、肺の炎症を抑制することが示された。さらに、英国オックスフォード大学が実施した非臨床試験では、オミクロン株の新たな亜種であるBA.4およびBA.5に対しても、中和活性を保持していることが確認されているという。

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mRNAコロナワクチンにギラン・バレー症候群の注意喚起/使用上の注意改訂指示

 厚生労働省は6月10日、新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:コミナティ筋注、コミナティ筋注5~11歳用、スパイクバックス筋注)について、使用上の注意の「重要な基本的注意」の項にギラン・バレー症候群に関して追記するよう改訂指示を発出した。ギラン・バレー症候群がコロナワクチン接種後に報告されている 今回の改訂指示は、第80回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第5回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)(2022年6月10日開催)における審議結果などを踏まえたもので、「重要な基本的注意」に以下を追加するよう指示がなされた。「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)接種後に、ギラン・バレー症候群が報告されている。被接種者又はその保護者に対しては、ギラン・バレー症候群が疑われる症状(四肢遠位から始まる弛緩性麻痺、腱反射の減弱ないし消失等)が認められた場合には直ちに医師等に相談するよう、あらかじめ説明すること。」

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第112回 「あなたの体温は23℃です」-こんな感染対策はもういらない!?

先日、ある一般の方から「結局、コロナ対策のマスクって自宅以外はどんな時に外して良いんですかね?」と尋ねられた。「いや、それはもうテレビで言っている通りなんですけど」と言いたかったが、尋ねてきた人はとにかく真剣そのものだったので、「たとえば、近所を散歩する時とかごみを捨てに行く程度、夜間に外を歩いていて周囲にほとんど人がいない時とかは、そもそも感染リスクが少ないシーンなので外していてもとくに問題はないと思います。周囲にたくさん人がいるか、他人と話す機会があるかどうかが基準になると思います」と答えた。すると、「人と話すつもりもその予定もなく外出している際に、偶然誰かと話す機会はありますよね?」と。いや、それを言い出しているとキリがないのだが。仕方なく、「その時はサッとマスクをつければ良いと思います」と返したが、「それだと相手は気分を悪くしないですかね?」とのこと。「『すみませんね。念のための感染対策ですから』とお伝えすれば、このご時世、理解してくれると思いますよ」と答え、なんとかようやく理解してもらうことができた。コロナの流行が始まった直後、政府の新型コロナウイルス感染症専門家会議の提言により作成された「新型コロナウイルスを想定した『新しい生活様式』の実践例」が公表されたことを記憶している人もいるだろう。当時、作成に関わったある関係者に「こんなことを言っては何ですが、あれって大きなお世話ですよね」と伝えたところ、「いや、私たちだってあそこまで細かなものを提言する気はなかったんですよ。ただ、お役所の事務方から『具体的に示してほしい』と言われたから、あそこまで書いただけで」と聞かされ、お気の毒様と思ったものだ。今現在、街中を見ていると、とにかく無駄だなと思う感染対策は多い。私がとくに思うのが非接触式体温計だ。そもそも新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)はご存じのように感染者の3~4割は無症状である。しかも、新型コロナではなくとも体温が37℃前後の人は少なくない。38℃超となったらもはや出歩けない人も相当数に上るはずである。加えて非接触式体温計は1~2℃の誤差は避けられない。昼食のために入った飲食店で非接触式体温計を当てられ、店員が「あれ?あれ?」と言いながら何度も測定を繰り返されたことは一度や二度ではない。ある時にその体温計のデジタル表示を覗いたところ「34.1℃」と表示されていて、やっぱり不正確なのだと実感したものである。しかし、何よりも一番驚いたのは首都圏のある地方都市のホテルでの出来事だ。エレベーター前に顔面を映すことで体温を測定する非接触式体温測定器が設置してあったのだが、その前を通り過ぎた際に機械音声で「あなたの体温は23℃です」とのメッセージが流れ、測定器に向かって思わず「私、生きてますんで」と言ってしまったことがある。また、スーパーのレジを担当する店員が常に手袋をつけているのも、正直いまだに慣れない。レジ担当者本人の感染対策という意味では多少意味はあるかもしれないが、あれをつけっぱなしの状態で接客されれば、新型コロナは別にして何らかの病原体で汚染されたものを、さらにパスしてしまう可能性はある。現在はスーパーやコンビニエンスストアに入店している客のほとんどがマスクをしていることが前提になっている以上、レジ前の床にあるソーシャルディスタンス用の印も意味はないだろう。実際にも有名無実化している。一方、コロナ禍を機に始まった対策の中で、私個人は限定的ではあれ残したほうが良いと思う対策もある。それはアルコール消毒だ。これについては賛否が分かれるが、私は飲食店に限って言えば継続しても良いのではないかと思っている。そもそも感染症対策は新型コロナが登場する以前から本来は必要なものであったはずだし、接触感染する感染症が少なくない中で、感染対策として手指衛生は基本中の基本である。その意味で飲食は飛沫感染だけでなく接触感染の危険性が高いシーンである。アルコール消毒に消極的な専門家の中には頻用による手荒れや最も基本中の基本の手指衛生手段である手洗いの軽視を危惧する声があるのは承知している。しかし、食事前の手洗いは基本とはいえ飲食店入店後にわざわざ洗面所に行くのは多くの人にとってかなりおっくうである。これを回避するなら飲食店入口に洗面所を設置するのが究極の対策になるが、店舗の構造変化を伴う以上、そう簡単ではない。とりわけコロナ禍で経済的に大きなダメージを食らった飲食業界にさらなる投資を強いるのは酷とさえいえる。また、アルコール消毒の機会が飲食店入店時だけならば過剰使用による手荒れは最小限に抑えられるとも言える。もちろんアルコール消毒も設置だけでは有名無実化する恐れはあるが、コロナ禍で多少なりともアルコール消毒が一般人にとって習慣化してしまったことを考えれば、入口にアルコール消毒を設置しているだけで、スルーする人もいる反面、しっかり消毒をする人もいるだろう。ないよりははるかにましと言える。今後の感染状況の収束次第でアクリル板やテーブルの過度な消毒はなくしてもかまわないとは思うが、こうした点から手指のアルコール消毒は社会全体での広い意味での感染対策として残してもいいのではないかと思っている。まあ、それにしてもいまだ街中が律儀にマスクを着用した人であふれる日本の状況を考えれば、こうした感染対策は「ポストコロナ時代の新しい感染対策」として要不要の実際も含めて公的に提示することが必要になるのかもしれないが。

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デルタクロン株、ワクチンや感染による免疫から逃避する?/NEJM

 新型コロナウイルスオミクロン株BA.3とデルタクロン株が、ワクチン接種や感染による誘導免疫を逃避するかどうかは不明である。今回、米国・オハイオ州立大学のJohn P. Evans氏らが、3種類の血清サンプルでオミクロン株BA.3とデルタクロン株に対する中和抗体価を調べた結果、BA.3株は免疫逃避変異株ではないが、デルタクロン株はBA.1株やBA.2株における強力な耐性を保持していることが示唆された。NEJM誌オンライン版2022年5月18日号のCORRESPONDENCEに掲載された。デルタクロン株はBA.1株およびBA.2株と同様の中和抗体耐性を示した Evans氏らは、オハイオ州立大学Wexnerメディカルセンターでワクチンを接種した医療従事者と、オハイオ州コロンバス地域でデルタ波とオミクロン波の各時期のCOVID-19患者から得た血清サンプルについて中和抗体価を調査し、スパイクタンパクにD614G変異*のある祖先株と、BA.3株とデルタクロン株に対する中和抗体価を調べ、BA.1株、BA.2株、デルタ株の既報のデータと比較した。*COVID-19流行早期からみられた変異で、現在は世界中で検出されるほとんどの株にみられる オミクロン株BA.3とデルタクロン株に対する中和抗体価を調べた主な結果は以下のとおり。・モデルナ製ワクチン(3人)もしくはファイザー製ワクチン(7人)を2回接種した医療従事者の2回目接種から3〜4週間後に採取した血清サンプルの中和抗体価を調べたところ、D614G変異株に対する抗体価と比較して、BA.3株に対する抗体価は3.3分の1、デルタクロン株に対する抗体価は44.7分の1だった(どちらもp<0.001)。また、同じ医療従事者における3回目接種(最初の2回と同じワクチンを接種)後の中和抗体価は、D614G変異株に対する抗体価と比較して、BA.3株に対する抗体価は2.9分の1、デルタクロン株に対する抗体価は13.3分の1だった(どちらもp<0.001)。デルタクロン株はBA.1株およびBA.2株と同様の中和抗体耐性を示したが、BA.3株は2回接種および3回接種の医療従事者のいずれの血清サンプルに対しても感受性が高かった。・デルタ波におけるICU入院患者18例(ワクチン未接種12例、2回接種5例、3回接種1例)の入院3日後に採取した血清サンプルの中和抗体価を調べたところ、D614G変異株に対する抗体価と比較して、BA.3株に対する抗体価はほぼ同じだったが、デルタクロン株に対する抗体価は137.8分の1だった。デルタクロン株の中和抗体耐性はBA.1株およびBA.2株と同様だったが、BA.3株は中和に対する感受性をほぼ維持していた。ワクチン接種患者(6例)は、ワクチン未接種患者よりもD614G変異株およびBA.3株に対する抗体価が大幅に高かったが、デルタクロン株はほとんど耐性だった。・オミクロン波の時期に入院したがICUには入らなかった患者(31例)の血清サンプルでは、デルタクロン株およびBA.3株の中和反応はD614G変異株の中和反応と同様であり、力価はデルタ波での患者サンプルよりも大幅に低かった。デルタクロン株およびBA.3株の中和反応はBA.1株およびBA.2株の中和反応と同様だった。・3回のワクチン接種を受けた医療従事者は、オミクロン波での感染者(ワクチン接種の有無によらず)よりも強力で幅広い免疫を持ち、D614G変異株に対する中和抗体価はオミクロン波での感染者の59.9倍、2回接種を受けた医療従事者の4.2倍、デルタ波での感染者の2.8倍であった。 これらの結果は、BA.3株は免疫逃避変異株ではないことを示し、それについて著者らは、BA.3株がBA.1株やBA.2株より受容体結合ドメインの変異の数が少ないためと考察している。一方、デルタクロン株は、BA.1株やBA.2株での強い耐性を保持し、デルタ波での患者の血清サンプルに対する感受性の増強は見られなかった。デルタ株由来の変異は中和耐性を弱めないようだと著者らは述べている。

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ワクチン忌避に対抗できるか?植物由来の新しいコロナワクチン(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 新型コロナウイルスに対するまったく新しいタイプのワクチンの効果がNEJM誌に報告された。本研究で検討された「植物由来ワクチンCoVLP+AS03」は、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)という植物内でコロナウイルスのスパイクタンパクを発現し、コロナ様粒子(CoVLP)とアジュバント(AS03)を組み合わせた新しいタイプのワクチンである。 本研究は、過去にコロナワクチン接種歴のない方で18歳以上の約2万4,000例が今回の接種対象となっている。1:1でワクチン接種群とプラセボ群に割り付けられ、コロナ感染が確認された165例での解析がなされている。結果は症候性コロナ発症に対する有効性は69.5%、中等症~重症コロナ発症に対する有効性は78.8%と比較的高い効果を示していることがわかる。90%以上の発症予防効果を誇る従来のmRNAワクチンと比較すると、この植物由来ワクチンCoVLP+AS03は数字上ではやや劣るように感じる。ただ、2つのワクチンを比較検討したわけではなく、研究が行われた時期や背景、患者群が異なるので一概に効果の違いはわからない。特筆すべきはワクチン接種群で重症例は認められなかったことと、コロナ診断時にプラセボ群はワクチン接種群に比べてウイルス量が100倍以上高かったことも、重要なポイントと考えることができる。副反応は、局所的な有害事象(92.3% vs.45.5%)も全身的な有害事象(87.3% vs.65.0%)もワクチン接種群の頻度が高かったことは理解可能であるが、Grade4や5の有害事象の報告は認められなかったことは評価される。 今回の研究の中で、コロナ感染が確認された165例中122例でウイルス配列が同定され、ガンマ株が43.4%、デルタ株が45.9%で大多数を占める。2021年3月~9月に行われた研究であり、時期的にオミクロン株は含まれていない。そのような時代背景の中でも症候性コロナ感染を約70%、中等症~重症を約80%抑えるという高い有効性が期待できるこの植物由来ワクチンCoVLP+AS03ではあるが、2022年6月の時点で80%以上の国民が1回以上のコロナワクチンを接種した日本においては、本試験の対象に該当する症例は限られている。また過去にコロナワクチン接種歴のない方で、かつ18歳以上が今回の接種対象となっているが、被検者の年齢の中央値が29歳ということで若年者が対象となっていることから、高齢者や基礎疾患を持つ方に対する有効性が示されたわけではないことは差し引いて考える必要がある。 まったく医学的ではないが、新しいコロナワクチンではあるものの「mRNA」や「ウイルスベクター」ではなく「植物由来Plant-based」ということで、今までのコロナワクチンに忌避感を示している方に少し受け入れられやすい可能性がある。ワクチン未接種者が本研究の主な対象ということで、今後のウィズコロナ時代においてさらに感染者や重症者に対する対策という意味では、もしかしたら1つの選択肢となりうる。今後幅広く活用されるためには、従来のmRNAワクチン接種後の交互接種のデータや、基礎疾患のある症例や高齢者に対するデータが補完されることを期待したい。

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ワクチン3回目、異種・同種接種での有効性~メタ解析/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのあらゆるプライマリ接種におけるブースター接種にはmRNAワクチンが推奨されること、異種・同種ワクチンの接種を問わず3回接種レジメンが、種々の変異株のCOVID-19予防に比較的有効であることを、中国・香港大学のWing Ying Au氏らが、システマティック・レビューとネットワークメタ解析の結果、報告した。ただし、3回接種レジメンのCOVID-19関連死への有効性については不明なままだったとしている。BMJ誌2022年5月31日号掲載の報告。ワクチン有効性、SUCRAスコアを比較 研究グループは、ブースター接種の有無を含む異種・同種COVID-19ワクチンレジメンのCOVID-19感染、入院および死亡に対する予防効果を評価するシステマティック・レビューとネットワークメタ解析を行った。 世界保健機関(WHO)の38のCOVID-19データベースについて、2022年3月から毎週検索を行う方法(Living systematic review)にて、COVID-19ワクチンの同種または異種レジメンの有効性について評価した試験を抽出した。ブースター接種の有無は問わなかった。 解析対象としたのは、ワクチン接種群と非接種群について、症候性や重症COVID-19、COVID-19関連の入院や死亡数を記録した試験だった。 主要評価項目は、ワクチンの有効性で、1-オッズ比で算出し評価。副次評価項目は、surface under the cumulative ranking curve(SUCRA)スコアとペアワイズ比較の相対的効果だった。 バイアスリスクについては、非無作為化介入試験バイアスリスク評価ツール「ROBINS-I」を、無作為化比較試験については、コクランバイアスリスク評価ツール「ROB-2」を用いて評価した。mRNAワクチン3回接種、免疫不全でも高い有効性 53試験を対象に、初回解析を行った。COVID-19ワクチンレジメンの24の比較のうち、mRNAワクチン3回接種が、非症候性・症候性COVID-19感染に対し最も有効だった(ワクチン有効性:96%、95%信頼区間[CI]:72~99)。 アデノウイルスベクターワクチン2回接種+mRNAワクチン1回接種の異種ブースター接種の非症候性・症候性COVID-19感染に対する有効性は88%(95%CI:59~97)と良好なワクチン効果が認められた。また、mRNAワクチン2回の同種接種の、重症COVID-19に対する有効性は99%(79~100)だった。 mRNAワクチン3回接種は、COVID-19関連入院においても最も有効だった(有効率:95%、95%CI:90~97)。mRNAワクチン3回接種者における死亡に対する有効性は、交絡因子により不明確だった。 サブグループ解析では、3回接種レジメンは、高齢者(65歳以上)を含むすべての年齢群で同程度の有効性が認められた。mRNAワクチンの3回接種レジメンは、免疫低下の有無にかかわらず比較的良好に機能することが認められた。 同種・異種のワクチン3回接種レジメンは、COVID-19変異株(アルファ、デルタ、オミクロン)のいずれに対しても、感染予防効果が認められた。

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第112回 規制改革推進会議答申で気になったこと(前編)タスクシフトへの踏み込みが甘かった背景

新型コロナは医療関連制度の不全を露呈させた」と答申こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週の過酷な皇海山登山の身体へのダメージがことのほか大きかったため、今週末は街で、映画を2本観て過ごしました。話題の2作、「シン・ウルトラマン」と「トップガン マーヴェリック」です。「シン・ウルトラマン」は庵野 秀明氏が企画・脚本・総監修ということで期待して観たのですが、今一つでした。「ウルトラマンの内面にまで迫った」と高く評価する映画評もありますが、個人的には少々理屈っぽく、かつ怪獣(禍威獣)も宇宙由来のものが主体で、これではウルトラマンではなくウルトラセブンではないか、と落胆した次第です。一方の「トップガン マーヴェリック」は、前作から36年ぶりの新作ですが、トム・クルーズの立ち位置(前回はやんちゃな戦闘機乗り、今回はやんちゃな若者を導く教官)や、前回エピソードの活かし方、圧倒的な空中戦のシーンなど、素晴らしい出来でした。時節柄、戦争や“敵国”の描き方への批判もあるようです。しかし、娯楽作としては群を抜いた映画だと感じました。映画評論家(で時代劇研究家)の春日 太一氏は、5月27日付の日本経済新聞夕刊の「シネマ万華鏡」で、「『トップガン』のファンなら誰もがそう夢想する何もかもを、本作は最高レベルで提示してくれる」と激賞しています。まったく同感です。個人的には、冒頭場面で主人公マーヴェリックが、36年前も乗っていたカワサキのオートバイ、GPZ900Rに今も乗っていることに、映画の作り手のこだわりを感じました。この映画はできるだけスクリーンが大きいIMAXシアターで観ることをお勧めします。さて、今回は政府の規制改革推進会議(議長:夏野 剛・近畿大学特別招聘教授/情報学研究所長)が5月27日に取りまとめた答申、「規制改革推進に関する答申~コロナ後に向けた成長の「起動」~」1)について書いてみたいと思います。同答申は、医療改革のためだけのものではありませんが、「新型コロナは医療デジタル化の遅れをはじめ医療関連制度の不全を露呈させた」と指摘、医療や介護に関する規制改革の項目が大きな柱となっています。医療DXの基盤整備に重点「医療・介護・感染症対策」については、表のような内容です。画像を拡大する表:規制改革推進会議答申に盛り込まれた「医療・介護・感染症対策」に関する項目「医療DXの基盤整備(在宅での医療や健康管理の充実)」のため、オンライン診療については、1)デジタルが不得意な高齢者らがデイサービス施設や公民館など、自宅以外でも受診できるようにする、2)患者の本人確認手続きを簡略化する…、ことなどを求めています。また、コロナ対応で特例的に認めている薬局での抗原検査キット販売の本格解禁も求めています。事前のオンライン注文を条件に、販売資格を持つ人がいないコンビニなどでも一般用医薬品を受け取れる制度の検討も要請しました。いずれも、コロナ禍で問題となった自宅での検査・療養態勢の充実のためです。政府は近く、この答申を反映した規制改革実施計画を閣議決定、同計画が今後の規制改革の指針となります。ワーキング・グループ委員は在宅医療寄り規制改革推進会議は、企業や医療現場などの生産性向上に向け、首相の諮問に応じて規制の緩和を議論する場です。内閣府に設置されており、行政改革推進会議などと併せてデジタル臨時行政調査会が統括しています。テーマごとにワーキング・グループを設けて関係省庁や有識者が参加して改革案をつくります。現在は「人への投資」「医療・介護・感染症対策」「デジタル基盤」など、5つの部会があります。医療・介護・感染症対策ワーキング・グループには5人の専門委員がおり、印南 一路・慶應義塾大学総合政策学部教授、大石 佳能子・株式会社メディヴァ代表取締役社長、佐々木 淳・医療法人社団悠翔会理事長・診療部長らが構成メンバーです。臨床の現場で働いているのは在宅医である佐々木氏のみです。大石氏は在宅医療も展開する用賀アーバンクリニックなどを運営する医療法人プラタナスの経営に関わるコンサルタント会社、メディヴァの社長ですが医師ではありません。ということで、専門委員は在宅医療の関係者に少々偏っている印象を受けます。タスクシェアは在宅現場の薬剤師の業務拡大のみそれはさておき、今回の答申で気になった点が2つあります。一つは、「医療人材不足を踏まえたタスクシフト/タスクシェアの推進」の項目です。タスクシフト/タスクシェアは、医師をはじめとする医療現場の働き方改革を進めていく中でとても重要な施策と考えられています。今回の規制改革推進会議の答申でも、人手不足が見込まれる介護施設で人員配置の基準緩和や、薬剤師などが看護の仕事の一部を担う「タスクシフト/タスクシェア」を求めてはいます。しかし、実際の医療現場の改革については、「在宅医療を受ける患者宅において必要となる点滴薬剤の充填・交換や患者の褥瘡への薬剤塗布といった行為を、薬剤師が実施すること」の検討を厚生労働省に求めたくらいで、特段踏み込んだ内容とはなっていません。「聖域になっていた医師の業務独占にもメスを入れるべきだ」と日経新聞医療関係職種のタスクシフト/タスクシェアについては、「第66回 医療法等改正、10月からの業務範囲拡大で救急救命士の争奪戦勃発か」でも詳しく書きました。2021年5月に成立した医療法等改正法によって、医師の負担軽減を目的に、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士の4職種の資格法が改正され、それぞれの職種の業務範囲が同年10月から拡大されました。昨年の規制改革推進会議の答申では、これらのタスクシフトの動きについて「規制改革実施計画通りの進捗を確認した。今後も引き続きフォローアップを行っていく」としていました。今回の答申についても、その先の大改革の提案を期待した向きもあったようですが、物足りない内容に終わっています。日本経済新聞の6月1日付の社説は「医療人材生かす幅広いタスクシェアを」というタイトルで、「医療従事者のタスクシェアはこれに限らず広く実現していくべきだ。例えば米国やカナダで、ワクチンを打つのは薬局の薬剤師の仕事だ。日本でも再教育を受けた薬剤師が打ち手になれば、感染症危機への対応力が高まる」、「聖域になっていた医師の業務独占にもメスを入れるべきだ。日本の看護師は医師の指示がないと湿布を貼ることすらできない。(中略)能力のある看護師は自らの裁量で一定の医行為を行えるよう法改正すべきだ」と、今回の答申の不十分さを厳しく指摘しています。診療看護師が医師の指示なしで診療行為ができるようになれば答申でタスクシフト/タスクシェアの項目が在宅における薬剤師の業務範囲拡大だけに留まったのは、夏の参議院選挙を前に日本医師会を刺激したくなかったから、との見方もあるようです。また、内容が在宅医療関係だけに絞られたのは、先述したようにワーキング・グループのメンバーに在宅医療の関係者が多かったことも関係しているかもしれません。私自身は、日医が“内紛”や会長選でバタバタしている今こそ、大胆なタスクシフト/タスクシェアの内容を盛り込むべきではなかったかと考えます。特に重要なのは、看護師業務の大胆な拡大でしょう。2017年4月に厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」が報告書を取りまとめました。同報告書は医師と他の医療職間で行う「タスク・シフティング(業務の移管)、タスク・シェアリング(業務の共同化)」を提言、新たな診療看護師(NP)の養成や、薬剤師による調剤業務の効率化、フィジシャン・アシスタント(PA)の創設などを盛り込みました。しかし、日本における診療看護師の制度自体はそれから大きくは変わっていません。今でも、2015年に創設された「特定行為に係る看護師の研修制度」に基づき、あらかじめ作成した手順書に沿って、特定行為をはじめとする診療行為しか行うことはできません。医師の働き方改革が叫ばれる中、多忙な医師の業務を軽減するには、診療看護師に相当の業務をシフトし、米国などにならって医師の指示がなくても一部の診療行為や医薬品の処方までできるようにすることだと思いますが、皆さんどう思われますか。併せて、老健施設の施設長も看護師が担えるようにすれば、介護の現場も大きく変わると思うのですが……。今回の答申で気になったもう一つは、薬(処方薬の市販化、SaMD)に関してです。それについては次回で。(この項続く)参考1)規制改革推進に関する答申 ~コロナ後に向けた成長の「起動」~/規制改革推進会議

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コロナ罹患後症状、中年者に多い/厚労省アドバイザリーボード

 厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードは、6月1日に第86回の会議を開催し、その中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の遷延症状に関する研究2題が報告された。中等症以上の患者を対象とした研究では、退院後12ヵ月後でも13.6%の対象者に何らかの罹患後症状が存在していた。 また、もう一方の長期合併症の実態把握と病態生理解明の研究では、12ヵ月後でも疲労感、呼吸困難、筋力低下、集中力低下などの症状が続いていた。退院後、12ヵ月後でも13.6%に何らかの罹患後症状 「COVID-19後遺障害に関する実態調査(中等症以上対象)」(研究代表:横山 彰仁氏[日本呼吸器学会/高知大学 教授])は、わが国の中等症以上のCOVID-19の、特に呼吸器関連における他覚・自覚症状の遷延(いわゆる後遺症)の実態とバイオマーカーなどの予測因子を検討するとともに心疾患の影響(潜在性/顕性心筋炎)についても検討したもの。【研究概要】対象:2020年9月~2021年9月にCOVID-19で入院した中等症以上の患者(20歳以上で同意が得られた者)調査施設:全国55施設(n=1,003例)方法:退院後3ヵ月後に受診し、医師の問診(罹患後症状)、アンケート(睡眠、不安・抑鬱、QOL)、肺機能検査、胸部CTを施行。罹患後症状が残る場合はさらに3ヵ月後に受診し、最長12ヵ月間フォロー。【研究の結果】・肺CT画像所見 3ヵ月の時点で画像所見は遷延することが多かったが、12ヵ月の時点で6.3%まで低下していた。胸部CT異常(主治医判定)がある群は無い群と比べて、呼吸困難や筋力低下の割合が多く、肺拡散能も低下していた。・肺機能 肺機能低下の遷延程度は重症度に依存、肺拡散能が障害されやすかった。・自覚症状 筋力低下、呼吸困難、倦怠感の順に多く、時間経過に伴って頻度は低下した。罹患後症状のうち、筋力低下と息苦しさは明確に重症度に依存していた。・心臓への影響(対象31例) 退院3ヵ月後に心臓MRIで評価したところ、42%で心障害を認め、26%で心筋炎の基準を満たした。また、左室心筋の短軸方向の収縮が有意に低下していた。・リスク因子についての検討 3ヵ月後の呼吸器系罹患後症状について、多変量解析で検討したところ、重症度と既存の呼吸器疾患が独立した因子であった。肺機能検査異常に関しては年齢、重症度、バイオマーカーであるセレクチンリガンドを有するKL-6(SLAK)が寄与していた。まとめ 退院後12ヵ月の時点で、何らかの罹患後症状は13.6%、肺機能検査異常は7.1%、胸部CT検査異常は6.3%で残存していた。中年者(41~64歳)には罹患後症状が多い傾向が明らかに 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究」(研究代表者:福永 興壱氏[慶應義塾大学呼吸器内科教授])では、わが国におけるCOVID-19の長期合併症の実態把握と病態生理の理解のために行われた。【研究概要】対象:2020年1月~2021年2月にCOVID-19 PCRもしくは抗原検査陽性で入院した18歳以上の患者調査施設:全国27施設(n=1,200)方法:関連する診療科の専門家の意見を統合した症状に対する問診項目を網羅的に作成し、研究対象から自覚症状について回答を得た。国際的に確立した各種質問票を用いた多面的かつ高精度の調査研究を実施。【研究の結果】・患者背景 男性679例、女性387例と男性が多く、年代は50代以上が多く、わが国のCOVID-19臨床を反映した背景となっていた。・重症度 軽症(無症状含む)が247例、中等症Iが412例、中等症IIが226例、重症が100例であり、軽症および中等症Iの患者を多く含んでいた。・遷延する症状の影響 1つ遷延症状が存在すると健康に関連したQOLは低下し、不安や抑うつ、COVID-19に対する恐怖、睡眠障害を自覚する傾向は強まった。・遷延症状の経時的経過 代表的な24症状(例:倦怠感、呼吸困難、筋力低下など)の多くは経時的に低下傾向を認めた。・遷延症状の12ヵ月後の経過 12ヵ月後に5%以上残存していた遷延症状は次の通り。疲労感・倦怠感(13%)、呼吸困難(9%)、筋力低下(8%)、集中力低下(8%)、睡眠障害(7%)、記憶障害(7%)、関節痛(6%)、筋肉痛(6%)、咳(5%)、痰(5%)、脱毛(5%)、頭痛(5%)、味覚障害(5%)、嗅覚障害(5%)。・年齢による特徴 中年者(41~64歳)は他の世代と比較して罹患後症状が多い傾向を認めた。個別の症状として、12ヵ月時点で咳、痰、関節痛、筋肉痛、筋力低下、眼科症状は高齢者に多く、感覚過敏、味覚障害、嗅覚障害、脱毛、頭痛は若年者に多く、罹患後症状の分布に世代間での差異を認めた。・性差による特徴 3ヵ月時点では女性で男性と比べて咳、倦怠感、脱毛、頭痛、集中力低下、睡眠障害、味覚障害、嗅覚障害などさまざまな症状が高頻度で認められた。一方、12ヵ月時点で咳、痰、関節痛、筋肉痛、皮疹、手足のしびれが男性で高頻度となり、全体の頻度としては性差が減少した。・重症度による特徴 入院中に酸素需要のあった重症度の高い患者は酸素需要のなかった患者と比べて3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。全体での罹患後症状の有症状率は酸素需要有りが45.7% (6ヵ月)、36.1% (12ヵ月) 、酸素需要無しが37.7% (6ヵ月)、31.8%(12ヵ月)であった。重症度による頻度の差は10%未満であった。まとめ 1,000例を超える日本最大規模の罹患後症状に関する研究を実施、臨床の実情を反映したものとして有用性の高い基盤データを構築した。※本研究では、非感染者との比較は行っておらず、結果の解釈には注意が必要である。

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モデルナアームが発現しやすい人は?/自衛隊中央病院

 モデルナ社の新型コロナワクチン(mRNA-1273ワクチン、商品名:スパイクバックス筋注)接種により一時期話題となった「モデルナアーム」。このモデルナアームの原因が遅発性大型局所反応(DLLR:delayed large local reaction)*と言われるも詳細は不明であった。しかし、今回、自衛隊中央病院皮膚科の東野 俊英氏らはDLLRがIV型アレルギーを原因として生じるアレルギー性接触皮膚炎に類似している可能性があること、女性は男性より5.3倍も発症しやすいことなどを突き止めた。このようにモデルナアームの原因や発症しやすい対象者が特定できれば、今後、この副反応を回避する対応ができそうだ。本研究はJAMA Dermatology誌オンライン版2022年6月1日号に掲載されたほか、自衛隊中央病院のホームページでも報告している。*ワクチン接種後、7日程度経過した後に接種部位周囲が赤くなったり、腫れたり、硬くなったりする副反応。痛みやかゆみ、灼熱感などを伴うこともある。モデルナアームの原因と言われるDLLR発生率は男性より女性で優位に高い 本研究は、モデルナ社ワクチンmRNA-1273(以下、ワクチン)接種後の性別と年齢およびDLLRの感受性との関連を調べるため、5人の経験豊富な皮膚科医が、2021年5月24日~11月30日に2回目接種のために新型コロナワクチン接種会場へ出向いた1,273例(4〜6週間前に初回投与接種)を対象にインタビューを実施し、ワクチン初回投与後にDLLRの症状を経験したかどうかを評価した。 モデルナアームの原因と言われるDLLRの感受性と性別や年齢との関連を調べた主な結果は以下のとおり。・本横断研究の対象者5,893例のうち男性は3,318例(56.3%、年齢中央値55歳[IQR:38~68歳])、女性は2,575例(43.7%、年齢中央値50歳[IQR:34~67歳])だった。・インタビューによると、747例(12.7%)がワクチン初回投与後にDLLR症状を経験したが、症状は軽度であったため、ワクチン禁忌とはみなされなかった。・DLLRの発生率は、男性(5.1%[170例])よりも女性(22.4%[577例])で有意に高かった(OR:5.30、95%信頼区間[CI]:4.42~6.34)。・その発生率を年齢層別でみると、18〜29歳で9.0%(81例、参照値)、30〜39歳で14.3%(129例、OR:1.68、95%CI:1.25~2.26)、40〜49歳で15.8%(136例、 OR:1.89、95%CI:1.41~2.53)、50〜59歳で14.9%(104例、OR:1.76、95%CI:1.29~2.40)、60〜69歳で12.6%(182例、OR:1.45、95%CI:1.10~1.91)であり、30歳以上での発生率は30歳未満と比較して有意に高かった。一方で、70歳以上での発生率は10.5%(115例、OR:1.19、95%CI:0.88~1.56)と18~29歳の発生率と有意差が認められなかった。・年齢調整後の発症平均時間(±SD)は、男性のほうが女性よりも有意に早かった(6.97 ±1.26日vs. 7.32±1.44日、β=0.345日、95%CI:0.105~0.586、p=0.005)。・一方で、発症時間と性別調整後の年齢との間に関連はなかった(β=0.003日、95%CI:-0.003〜0.009日、p=0.30)。・年齢調整後の症状の平均期間(±SD)は、男性のほうが女性よりも有意に短かった(4.83±3.27日vs. 5.98±4.43日、β= 1.535日、95%CI:0.901〜2.169日、p

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第115回 COVID-19入院患者の生存が関節リウマチ薬で改善

関節リウマチの治療でよく知られる免疫調節薬2つ・J&J社のTNF 阻害薬・インフリキシマブ(infliximab)やBristol Myers Squibb社のCTLA-4活性化薬・アバタセプト(abatacept)が米国国立衛生研究所(NIH)主催のプラセボ対照無作為化試験(ACTIV-1 IM試験)でどちらも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の死亡を減らしました1)。COVID-19患者の免疫系は炎症を誘発するタンパク質を悪くすると過剰に解き放ち、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全、その他の死に至りうる合併症を招くことがあります。ACTIV-1 IM試験はそういう過度の免疫を抑制しうる薬剤で中等~重度COVID-19入院成人の回復が改善するかどうかや死亡を減らせるかどうかを調べることを目的として実施されました。NIHの舵取りのもとでCOVID-19治療/ワクチンの開発促進を目指す産官学の提携(ACTIV) の一環として2020年10月に始まった2)ACTIV-1 IM試験の被験者はいつもの治療に加えて免疫調節薬幾つかの1つまたはプラセボを投与する群に割り振られました。ほとんどの被験者にはいつもの治療としてステロイド・デキサメタゾンやギリアド社の抗ウイルス薬・レムデシビル(remdesivir)が投与されました。デキサメタゾンはおよそ85%、レムデシビルは約90%の被験者に投与されています。退院を指標とする回復までの期間が主要転帰(プライマリーエンドポイント)で、両剤ともその改善傾向をもたらしたものの残念ながらプラセボとの差は有意ではありませんでした。しかしながらより深刻で究極の転帰・死亡率の低下を両剤のどちらももたらしました。インフリキシマブ投与群518人の死亡率は10%、プラセボ群519人の死亡率は約15%(14.5%)であり、同剤投与群の死亡率はプラセボ群より率にして約41%(40.5%)少なくて済んでいました。アバタセプトも同様で、その投与群509人の死亡率は11%、プラセボ群513人の死亡率は15%であり、同剤投与群の死亡率はプラセボ群に比べて率にして約37%(37.4%)少なくて済んでいました。もう1つの試験薬cenicriviroc(セニクリビロック)は残念ながら無効で、同剤投与群への被験者組み入れは去年9月に打ち切りとなっています。cenicrivirocはAbbVie社の開発段階のCCR2/CCR5阻害薬です。インフリキシマブやアバタセプトと同様にCOVID-19入院患者の死亡を減らすことが試験で示されているEli Lilly社の免疫調節薬・バリシチニブ(baricitinib)は重度以上のCOVID-19患者に使用すべき治療選択肢の一つとすることが世界保健機関(WHO)のガイドラインですでに強く推奨されています3)。レムデシビルやデキサメタゾンなどのいつもの治療に加えて投与することで死亡率のかなりの低下が見込めるインフリキシマブやアバタセプトもCOVID-19入院患者の治療選択肢に仲間入りしうるとACTIV-1 IM試験のリーダーWilliam Powderly氏は言っています1)。参考1)Immune modulator drugs improved survival for people hospitalized with COVID-19 / NIH2)NIH Begins Large Clinical Trial to Test Immune Modulators for Treatment of COVID-19 / NIH3)Agarwal A,et al.. BMJ. 2020 Sep 4;370:m3379

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コロナワクチン3回接種者は感染しても他人にうつしにくい!?

 新型コロナウイルスのブレークスルー感染が新型コロナの蔓延に大きく寄与する可能性があるかどうかについてのデータは限られている。そこで、韓国・ウルサン大学のJiwon Jung氏らは新型コロナワクチンの3回接種を終えた完全接種者(ブレークスルー感染群)と1~2回接種の部分的接種/未接種者(非ブレークスルー感染群)の新型コロナの他人へ感染を広げる(2次感染)割合やウイルス排出動態に関するコホート研究を実施した。その結果、 初期のゲノムウイルス量はワクチン接種者とワクチン未接種者の間で類似していたが、完全接種者のブレークスルー感染群では、部分的接種者/ワクチン未接種者よりも生存可能なウイルスの排出期間が短く、2次感染率が低いことが示された。JAMA Network Open誌2022年5月2日号掲載の報告。ブレークスルー感染群のほうが2次感染率は有意に少ない 本研究は 2次感染率に関する試験とウイルス排出動態試を実施するために、2020年3月1日~2021年11月6日の期間に入院または3次医療機関への受診で新型コロナと診断された医療従事者、入院患者、および介護者の疫学データを分析した。そのために新型コロナウイルスのゲノムRNAをPCRで測定し、2021年7月20日~8月20日に韓国・ソウル市にある施設で分離されたデルタ変異株に感染した新型コロナ軽症例の唾液サンプルのウイルス培養を毎日行った。  コロナワクチンの3回接種を終えたブレークスルー感染群と部分的接種/未接種者の新型コロナの他人へ感染を広げる割合やウイルス排出動態に関する研究を実施した主な結果は以下のとおり。・新型コロナ感染者173例(年齢中央値[IQR]:47歳 [32~59歳]、女性:100例[58%])が2次感染率の試験に含まれた。彼らに感染歴はなく、50例(29%)がブレークスルー感染だった。 ・院内での2次感染率は、ブレークスルー感染群のほうが非ブレークスルー感染群よりも有意に少なかった(43例中3例[7%]vs. 110例中29例[26%]、p=0.008)。・ウイルス排出動態試験では、デルタ変異体に感染した45例(年齢中央値:37歳[IQR:25~49歳]、女性14例[31%])が含まれ、そのうち6例(13%)は完全接種、 39例(87%)は部分的接種/未接種だった。・初期ゲノムウイルス量は2群間で同等だったものの、細胞培養での生存ウイルスは完全接種者(症状発症後4日間)のものと比較して、部分的接種者(同8日間)とワクチン未接種者(同10日間)のもので著しく長い期間検出された。 研究者らは「本研究データは、新型コロナワクチンでもブレークスルー感染の可能性があるにせよワクチン接種はウイルス蔓延を制御するのに非常に有用であるという重要な証拠を提供する」としている。

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第103回 「モデルナアーム」女性の発症率は男性の5.3倍/自衛隊中央病院

<先週の動き>1.「モデルナアーム」女性の発症率は男性の5.3倍/自衛隊中央病院2.コロナ後遺症、1年後も1~3割に何らかの症状/アドバイザリーボード3.宿日直許可未申請の病院は6割以上、1割は申請も許可下りず4.DPC病院、参加数・病床数ともに増加、感染症対策の要件新設5.進まぬ病床再編、積み立て基金2,779億円の執行率は約4割6.医療・福祉従事者増加、女性の労働力率も総じて上昇/2020年国勢調査7.コロナ感染拡大で特定健診、受診率が初めて減少/厚労省1.「モデルナアーム」女性の発症率は男性の5.3倍/自衛隊中央病院モデルナ製の新型コロナウイルスワクチン接種後に少し遅れて現れる腕の腫れや痛みについて、大規模調査により女性が男性よりも約5.3倍発症しやすいとわかった。また、30~60代では30歳未満の1~2倍発症しやすいという。自衛隊中央病院の東野 俊英皮膚科医長らの研究グループが2日発表した。論文はJAMAダーマトロジー誌オンライン版に掲載。同研究グループは2021年に開設された自衛隊東京大規模接種センターで、2回目の接種を受けた約5,900人を調査した。1回目の接種から6日目以降に、接種した部分に腫れや痛みなどがあったかを尋ねたところ、女性では約22%が、男性では約5%がモデルナアームを発症していた。接種を避ける必要があると思われる重い症状の報告はなかった。若い人のほうが発症しにくいという特徴はアレルギーの分類の一つ「IV型アレルギー」と似ており、発症メカニズムの解明や今後のワクチン開発につながる結果かもしれない。(参考)「モデルナアーム」の女性、男性の5倍 自衛隊調査(日経新聞)接種後に痛む「モデルナアーム」女性の発症率、男性の5.3倍と推計(毎日新聞)2.コロナ後遺症、1年後も1~3割に何らかの症状/アドバイザリーボード新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、診断から1年後も倦怠感や呼吸困難、睡眠障害など何らかの症状が残ることがわかった。厚労省の2つの研究班による調査結果が1日、「アドバイザリーボード」の会合で報告された。なお、オミクロン型の変異ウイルス流行以前の調査で、最近の傾向とは異なる可能性がある。日本呼吸器学会などの研究グループは、2020年9月~21年9月に入院した中等症以上のCOVID-19患者約1,000人を調査。患者の14%が退院から1年後も何らかの症状を訴えており、睡眠障害が10%、筋力低下が9%、息苦しさが6%に残っていた。慶応大学のグループは、20年1月~21年2月に入院した軽症以上のCOVID-19患者1,000人余りを調べた結果、診断から1年後に患者の3割超が症状を訴えた。疲労感が13%、呼吸困難が9%、筋力低下や集中力低下が8%だった。後遺症は41~64歳で多かった。後遺症については東京都も、都立・公社病院が受け付けた直近の電話相談の分析結果を公表している。オミクロン株流行期の1~4月に陽性となった2,039例の症状では、咳が最多の38.6%、倦怠感が34.0%であり、デルタ株以前(昨年3~10月の電話相談)の3,857例における咳22.2%、倦怠感26.0%から大きく増加した。このほか、栃木県などもコロナ後遺症の実態調査に着手したことを明らかにしている。(参考)コロナ後遺症、1年後も患者の1割超に 厚労省研究班(日経新聞)オミクロン、せき・倦怠感増 新型コロナ、都が後遺症分析―専門医「長期化の傾向」(時事通信)栃木県がコロナ後遺症の実態調査 1000人抽出、693医療機関も(下野新聞)3.宿日直許可未申請の病院は6割以上、1割は申請も許可下りず厚労省は、3日に社会保障審議会医療部会をオンラインで開催した。2024年4月から医師の時間外労働時間の上限規制が導入されるため、厚労省が病院を対象に施行に向けた準備状況(院内の医師の労働時間の把握体制や特例水準の指定取得の意向等)についての調査結果について議論した。年960時間を超える医師がいる529病院のうち宿日直許可を得ているのは、168病院(32%)で、残りの病院の244病院(44%)は宿日直許可を申請予定であり、ほかには申請したが許可が得られなかったと回答した医療機関が40病院あった。現時点で厚労省が時間外・休日労働時間を把握できている病院が4割程度のため、今回の調査では病院の準備状況等、総合的な評価は困難であるとされたが、今後、全国の医療機関に対して業務改善に向けた取り組みが求められる。(参考)宿日直許可、6割の病院が未申請 約1割が申請後に取得できず(CB news)医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査 調査結果(厚労省)資料 労働基準法の宿日直許可のポイント(同)4.DPC病院、参加数・病床数ともに増加、感染症対策の要件新設1日、厚労省は中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開催し、2022年度改定を踏まえたDPC/PDPSの現況を公開した。前回の改定以降、DPC病院として新たに14病院が参加、5病院が退出し、2022年4月1日時点では1,764病院となった。また、DPC準備病院は新たに30病院が参加し、同時点では259病院。DPC算定病床総数は約48万床と前年度より約2,000床増加した。またDPC病院の医療提供体制への取り組みを評価する機能評価係数IIの見直しが行われ、6つの係数(保険診療、効率性、複雑性、カバー率、救急医療、地域医療)を基本的評価軸としている。今回の改定では新型コロナウイルス感染症対策に係る要件を新設するなど一部の見直しが行われ、各医療機関の診療実績に対して報酬に反映される方向となっている。(参考)DPC対象1,764病院に、「14増5減」4月時点(CB news)2022年度機能評価係数II内訳、自院と他院との比較が重要だが、「コロナ特例」の影響にも留意を—中医協(2)(Gem Med)資料 令和4年度改定を踏まえたDPC/PDPSの現況(厚労省)5.進まぬ病床再編、積み立て基金2,779億円の執行率は約4割政府が2日、「行政事業レビュー」に提出した資料で、病床再編基金の執行が4割にすぎないことが明らかになった。厚労省が地域医療構想の実現に向け、自主的な病床削減や病院統合による病床廃止を支援する目的で2014~20年度に積み立てた累計2,779億円の病床再編基金のうち、執行されたのは1,221億円(43.9%)だった。都道府県でもばらつきがあり、最も執行率が高い熊本県は83.4%、最低の愛知県は12.0%だった。厚労省は「地域関係者との協議に時間がかかり、新型コロナウイルス対応で協議が困難な事例もあった」としている。(参考)病床再編基金、執行率4割 行政事業レビューで公表(日経新聞)新たな病床機能の再編支援について(厚労省)行政事業レビュー(政府の行政改革)6.医療・福祉従事者増加、女性の労働力率も総じて上昇/2020年国勢調査総務省は、2020年に実施された国勢調査の結果、労働力率は男性が72.4%、女性が54.2%と、2015年に比べて共に上昇しており、女性の労働力率はすべての年齢階級で上昇していることを明らかにした。また「医療、福祉」に従事する者の割合は+1.0ポイントと最も上昇しており、産業別の割合では「製造業」(15.9%)、「卸売業、小売業」(15.8%)、「医療、福祉」(13.5%)の順だった。今後も医療・介護ニーズの増加に伴い、医療機関や福祉介護施設での就業者増加が見込まれる。また、出産や育児のため、30代を中心に働く女性が減る「M字カーブ現象」の解消が進んでいる。35~39歳で働く女性の比率は78.2%と、5年前に比べて5.2ポイント上昇していた。(参考)「医療、福祉」従事者の割合が上昇 総務省が国勢調査の就業状態集計結果概要を公表(CB news)30代女性「M字カーブ」解消進む 2020年労働力率上昇(日経新聞)資料 令和2年国勢調査 就業状態等基本集計 結果の要約(総務省)7.特定健診の受診率、制度開始以来初めての減少/厚労省厚労省は、2020年度の特定健康診査・特定保健指導の実施状況を公表した。その結果、特定健康診査の対象者約5,420万人のうち実施率は53.4%(受診者約2,890万人)と、2019年度と比較して2.2ポイント低下したことが明らかとなった。また、2020年度の特定保健指導の対象者は約522万人だったが、終了した者は22.7%(約119万人)と、2019年度と比較して0.5ポイント低下した。一方、メタボリックシンドロームの該当者および予備群は推計947万人で、前年度から28万人増えた。新型コロナウイルスの感染拡大などにより受診を控えた影響や、コロナ下の自粛生活で運動不足になった可能性がみられる。(参考)メタボ健診、初めて受診率が下がる コロナ禍影響で20年度は53%(朝日新聞)メタボ健診の受診率初低下、受診者100万人減…巣ごもりで「予備軍」は増加(読売新聞)資料 特定健診・特定保健指導の実施状況について(2020年度)(厚労省)

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コロナ罹患後症状を大規模調査、成人の2割以上が発症/CDC

 米国疾病対策センター(CDC)が実施したコロナ罹患後症状(post-COVID、いわゆる後遺症)についての約200万人の大規模調査によると、急性肺塞栓症や呼吸器症状の発症リスクが2倍となり、18~64歳の5人に1人、65歳以上の4人に1人が、コロナ罹患後症状と考えられる症状を1つ以上発症しているという。研究結果は、CDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年5月27日号に掲載されている。 本調査は、米国50州の18歳以上のCerner Real-World Dataに登録された電子健康記録(EHR)データを用いて、2020年3月~2021年11月の期間、過去にCOVID-19の診断を受けた、または検査で陽性となった群(症例群:35万3,164例)におけるコロナ罹患後によく見られる26の対象症状の発生率と、コロナ既往歴がない群(対照群:164万776例)における対象症状の発生率について、後ろ向きコホート研究で比較評価した。解析では、18~64歳(症例群:25万4,345例、対照群:105万1,588例)と65歳以上(症例群:9万8,819例、対照群:58万9,188例)に層別化した。 主な結果は以下のとおり。・全年齢層の症例群38.2%、対照群16.0%が、少なくとも1つの対象症状を経験した(18~64歳:症例群35.4%、対照群14.6%。65歳以上:症例群45.4%、対照群18.5%)。・症例群と対照群のリスク差は、18~64歳では20.8%ポイント、65歳以上では26.9%ポイントであった。・全年齢層で最も多い罹患状況は、呼吸器症状と筋骨格系疼痛だった。リスク比が最も高い対象症状は、急性肺塞栓症(18~64歳:2.1、65歳以上:2.2)、呼吸器症状(両年齢層:2.1)であった。・65歳以上では、26の対象症状すべてにおいて対照群より症例群が、リスク比が高かった。一方、18~64歳では、22の対象症状で対照群より症例群が、リスク比が高かった。・心不整脈のリスク比は、65歳以上(1.5)よりも、18~64歳(1.7)が有意に高かった。・筋骨格系疼痛のリスク比は、65歳以上(1.4)よりも、18~64歳(1.6)が有意に高かった。・65歳以上では、味覚・嗅覚障害などの神経学的症状や、気分障害、不安、物質関連障害などの精神症状のリスク比が、18~64歳と比べて有意に高かった。 本研究により、コロナ既感染者の成人では、18~64歳の5人に1人、65歳以上の4人に1人が、コロナの既往に起因すると考えられる症状を経験していることが示された。若年者に比べ高齢者のほうがリスクが高く、感染から1年後まで持続することが報告されている神経学的症状などは、脳卒中や神経認知障害のリスクがすでに高い高齢者に対して、追加支援などが必要になる可能性があるため、とくに懸念されるとしている。研究グループは、コロナ罹患後症状のリスク上昇に関連する病態生理学的メカニズムを理解するため、今後もさらなる調査が必要だとしている。

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第111回 患者に聞かれたら、何をもって新型コロナ収束と答える?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の全国での新規陽性者報告は、ゴールデン・ウイーク直後にごく一時的に増加局面に入ったものの、今週前半には2万人台前半まで減少してきた。この数字は今年1月7日に新型インフルエンザ等特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置(まん防)」が導入された直後の水準である。背景には2月中旬~3月中旬にかけて新型コロナワクチンの3回目接種が加速し、現在では全人口の約6割が3回接種を完了済みであること、まん防の発出から5月末までに延べ約677万人が感染したという幸と不幸の両面から「集団免疫」を確立した結果と見るのが妥当だろう。そして、最近では日本政府による外国人の入国制限緩和措置や諸外国での同様の措置により、国内外をまたぐ人流も増加しつつある。6月から観光ビザ発給を再開した東京都港区の韓国大使館領事部前には初日の開館前に1,000人を超える申請者が行列を作ったという。そんな最中、周囲からは「これで新型コロナのパンデミックは収束するのか?」とよく聞かれるようになった。正直、これは非常に答えにくい。医療従事者の皆さんは同じ質問にどう答えるのだろうか? 私自身は「今年いっぱいはまだ警戒する必要があるのではないか」と答えるようにしている。理由は極めて単純である。まず、現在の感染状況の鎮静化に一定の効果があっただろうとされるのが新型コロナワクチンの3回目接種である。すでに各種研究で報告されているように、オミクロン株に対するワクチン3回接種直後の発症予防の有効率は60~70%台。そしてこの効果は一部研究では約5ヵ月でほとんどなくなると言われている。さらに高齢者や基礎疾患保有者を対象に始まった4回目の追加接種の有効率は、発症予防で55%、重症化予防で62%との報告があり、当然ながらこの有効率も経時的に減衰していく。これらの報告から推察するに、3回目接種の実施件数のピークが今年3月であったから、その効果がほぼなくなるのは8月くらいだろう。また、4回目接種については、高齢者などの3回目接種のピークが2~3月、4回目接種の適応がそこから5ヵ月以上となるため、4回目接種件数のピークは7~8月ぐらいになるだろう。4回目接種後の抗体価の変化が、2回目や3回目と同様に半年程度で低下すると仮定した場合、そのタイミングは年末年始あたりとなる。このように考えると、今後の判断の山は今秋から年末にかけてだろう。この時点で医療ひっ迫や社会経済状況に大きな影響を与える感染動向にならなければひとまずは収束へ向けた大きな壁を一つ越えたと言える。もっとも最終的な感染の収束、すなわち社会に過度な負荷がなく新型コロナウイルスと共存できる状況と考えると、もう少し先になるだろう。それを決定付けるのは重症化リスクの有無にかかわらず使える汎用治療薬とより効果持続期間の長いワクチンの登場である。あとはこの間に厄介な新規変異株が登場しないことを願うのみである。

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コロナ感染率、ワクチン2回接種vs.感染後1回接種/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染歴がある人では、ワクチン接種の有無や感染前後での接種にかかわらず、再感染予防効果は最後の免疫獲得イベントからの経過時間が長くなるほど低下したが、この予防効果は、未感染でワクチンを2回接種し同じ時間が経過した場合での予防効果より高く、感染後のワクチン1回接種は再感染予防効果を増強することが、イスラエル・テクニオン-イスラエル工科大学のYair Goldberg氏らの研究で示された。SARS-CoV-2感染は、再感染に対する自然免疫を獲得することが知られる。最近の研究では、BNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)による免疫効果の減衰が示されたが、自然免疫ならびに感染後のワクチン接種で得られるハイブリッド免疫の減衰に関しては不明であった。NEJM誌オンライン版2022年5月25日号掲載の報告。570万人以上を対象に、最後の免疫獲得イベントからの経過時間に分けて感染率を比較 研究グループは、イスラエル保健省の全国データベースを用い、B.1.617.2(デルタ)変異株が優勢であった2021年8月1日~9月30日のデータを抽出し、2021年7月1日以前にSARS-CoV-2感染陽性となった16歳以上の人、または研究期間終了の7日前までにBNT162b2ワクチンを2回以上接種した人を対象として、研究期間中の感染について調査した。SARS-CoV-2感染から回復後にBNT162b2ワクチンを2回以上接種した人や、BNT162b2ワクチンを2回以上接種した後にSARS-CoV-2感染から回復した人は解析から除外した。 解析対象を免疫獲得イベント(感染またはワクチン接種)歴によって、(1)ワクチン未接種回復群、(2)2回接種群(未感染で、研究期間終了7日前までに2回目接種を完了)、(3)3回接種群(未感染で、研究期間終了12日前までに3回目接種を完了)、(4)回復後1回接種群(COVID-19から回復後、研究期間終了7日前までに1回目接種)、(5)1回接種後回復群(1回目接種後、研究期間の90日以上前に感染が確認された人)の5つのコホートに分け、さらに各コホートを最後の免疫獲得イベントからの経過時間によってサブコホートに分け、交絡因子を調整したポアソン回帰を用い最後の免疫獲得イベントからの時間の関数として感染率を比較した。 解析対象は、5つのコホート全体で572万4,810人であった。免疫獲得イベントから6~8ヵ月未満での感染率は、回復後1回接種群が最も低い SARS-CoV-2感染者数/10万人日(補正後率)は、3回接種群を除くすべてのコホートで経時的に増加した(3回接種群はサブコホートが1群のみ)。 すなわち、(1)ワクチン未接種回復群では、感染からの期間4~6ヵ月未満の10.5から、1年以上では30.2に増加し、(4)回復後1回接種群では、接種後0~2ヵ月未満の3.7(すべてのサブコホートで最も低値)から、接種後6~8ヵ月未満では11.6に増加した。 一方、(2)2回接種群では、この補正後率は接種後0~2ヵ月未満の21.1から、接種後6~8ヵ月未満では88.9まで増加した。

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ASCO2022スタート!注目演題を特設サイトでチェック

 6月3日~7日(現地時間)まで、世界最大の腫瘍学会であるASCO2022(米国臨床腫瘍学会年次総会)が、米国シカゴとオンラインのハイブリッド形式で開催される。新型コロナ感染拡大の影響でにより、2年間オンラインのみの開催だったが、今年のASCO2022は久しぶりに現地に世界のオンコロジストが集うこととなり、各種カンファレンスや交流会なども多く企画されている。ASCO2022の注目演題を複数のエキスパートが選定 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」(医師会員限定)では、ASCO2022のスタートにあわせ、数千を超す演題の中から、複数のエキスパートが選定した「注目演題」をピックアップ。ASCO2022期間中にオープンする特設サイトにおいて、「肺がん」「消化器がん」「乳がん」「泌尿器がん」「血液がん」のがん種別に、コメントとともに紹介している。 ASCO2022終了後は、視聴レポートやまとめ記事なども続々アップしていく予定だ。Doctors’Picks ASCO2022特設サイトDoctors’Picks【医師会員限定】

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4回目のコロナワクチン、感染予防の持続期間は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の4回接種は、3回接種と比較して新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染予防とCOVID-19重症化予防の両方の有効性が認められたが、感染予防効果は比較的早期に減弱することが示唆された。イスラエル・Maccabi Healthcare ServicesのSivan Gazit氏らが、後ろ向き診断陰性デザインによる症例対照研究の結果を報告した。BMJ誌2022年5月24日号掲載の報告。約9万7,500例の10週間のデータを解析、4回目接種者vs.マッチング3回接種者 研究グループは、イスラエルの健康保険組織Maccabi Healthcare Services(MHS、250万人が加入)のデータベースを用い、同国でオミクロン株が優勢であった2022年1月10日(初めて4回目接種が行われた日の7日後)から2022年3月13日までのデータを解析した。 解析対象は、SARS-CoV-2感染歴がなく2022年1月3日から4回目接種を受ける資格を有していた(すなわち、3回目接種から4ヵ月以上経過)60歳以上のMHS会員で、追跡期間中に少なくとも1回のPCR検査を受けた9万7,499例であった。COVID-19の既往歴を完全に把握できない可能性のある2020年3月以降にMHSに加入した人は除外された。 主要評価項目は、SARS-CoV-2感染(BNT162b2ワクチン4回目接種後7日以上経過した時点でのPCR検査陽性)、および重症COVID-19(COVID-19関連の入院または死亡)とした。 追跡期間中のPCR検査において、最初の陽性判定(または重症度分析ではCOVID-19に関連した最初の入院または死亡)で症例、陰性判定のみを対照とし、性別、年齢(70歳未満、70歳以上)、居住地、社会経済状態、最初に検査を受けた週、3回目接種月、生活環境(医療介護施設、介護付き住宅、個人宅)の7因子に基づき、1症例に対して最大5例の対照をマッチングさせた。条件付きロジスティック回帰モデルを用い、4回目未接種(3回接種)に対する4回接種の相対的なワクチンの有効率を、接種後の各週で(1-オッズ比)×100(%)として算出した。感染予防効果は3週目が65%でピーク、重症化予防効果は72%以上を維持 解析対象の9万7,499例のうち、追跡期間中に4回目接種を受けたのは2万7,876例、3回接種が6万9,623例であった。 4回目接種後最初の3週間は、3回接種と比較してSARS-CoV-2感染およびCOVID-19重症化の両方に対して有効性が認められたが、感染予防効果は時間とともに低下した。すなわち、SARS-CoV-2感染に対する4回接種の相対的な有効率は、接種後3週目(14~20日)に65.1%(95%信頼区間[CI]:63.0~67.1)でピークに達した後、以降は急速に低下し、接種後10週目(63~69日)には22.0%(95%CI:4.9~36.1)となった。 一方、重症COVID-19に対する4回接種の相対的な有効率は、追跡期間を通じて高率に維持された(接種後7~27日で77.5%、28~48日で72.8%、49~69日で86.5%)。ただし、重症化は比較的まれな事象で、追跡期間中のCOVID-19関連入院・死亡の発生は全体でもわずか572例(0.25%)であった。COVID-19による死亡は106例で、このうち77例は3回接種のみ、23例は3回接種後の最初の3週間に4回目接種を受けていた。

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オミクロン株優勢下、小児~青少年でも追加接種が必要か/JAMA

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株が優勢な時期に、年齢5~15歳の小児・青少年では、BNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の2回接種後の推定有効率は高くなく(約60%)、その後2ヵ月後までに急速な低下が認められたが、12~15歳では3回目の追加接種により上昇に転じたことが、米国・疾病予防管理センター(CDC)のKatherine E. Fleming-Dutra氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年5月13日号で報告された。米国の検査陰性デザインの症例対照研究 研究グループは、オミクロン変異株優勢期の小児および青少年における症候性SARS-CoV-2感染症とBNT162b2ワクチン接種との関連を評価し、当ワクチンの有効率を推定する目的で、検査陰性者を対照とする症例対照研究を行った(米国・CDCの助成を受けた)。 解析には、Increasing Community Access to Testing(ICATT)プラットホームのデータが用いられた。ICATTは米国保健福祉省(HHS)のプログラムで、ドライブスルー形式のSARS-CoV-2検査を全国的に展開する4つの商業的な薬局チェーンが参加しており、今回は、このうち1つのチェーンのデータについて解析が行われた。 対象は、2021年12月26日~2022年2月21日の期間に、SARS-CoV-2の核酸増幅検査(NAAT)を受けた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)様疾患を呈する小児(5~11歳)および青少年(12~15歳)であった。6,897ヵ所の検査所(ノースダコタ州を除く49州とワシントンDC、プエルトリコ)で行われた12万1,952件(5~11歳:7万4,208件、12~15歳:4万7,744件)の検査が解析に含まれた。 5~11歳では、SARS-CoV-2検査の2週間以上前にBNT162b2ワクチンの2回目接種を受けた集団と未接種の集団、12~15歳(追加接種が推奨された)では、検査の2週間以上前に2回または3回の接種を受けた集団と未接種の集団の比較が行われた。 主要アウトカムは症候性SARS-CoV-2感染症(COVID-19様疾患を呈し、NAATでSARS-CoV-2陽性の場合と定義)とされた。ワクチン接種と症候性SARS-CoV-2感染症の関連の補正後オッズ比(OR)を用いて、推定ワクチン有効率([1-OR]×100%)が算出された。5~11歳で追加接種が必要となる可能性も 年齢5~11歳の7万4,208件のSARS-CoV-2検査のうち、3万999件が陽性(症例)で、4万3,209件は陰性(対照)であった。また、12~15歳の4万7,744件の検査では、2万2,273件が陽性(症例)、2万5,471件は陰性(対照)だった。全体では、症例が5万3,272人(43.7%)、対照は6万8,680人(56.3%)であった。 全体で、検査を受けた集団の年齢中央値は10歳(IQR:7~13)、6万1,189人(50.2%)が女児で、7万5,758人(70.1%)は白人、2万9,034人(25.7%)はヒスパニック系/中南米系であった。5~11歳の7万4,208件の検査のうち、5万8,430件(78.7%)はワクチン未接種者のもので、1万5,778件(21.3%)は2回接種者であった。12~15歳の4万7,744件では、それぞれ2万4,767件(51.9%)および2万2,072件(46.2%)で、残りの905件(1.9%)は3回目の追加接種を受けていた。 2回目接種後2~4週の時点において、5~11歳では、補正後ORが0.40(95%信頼区間[CI]:0.35~0.45)で、推定有効率は60.1%(95%CI:54.7~64.8)であり、12~15歳では、補正ORが0.40(95%CI:0.29~0.56)、推定有効率は59.5%(95%CI:44.3~70.6)と、有効率は高い値ではなかった。 また、2回目接種後2ヵ月の時点では、5~11歳の補正後ORは0.71(95%CI:0.67~0.76)、推定有効率は28.9%(95%CI:24.5~33.1)で、12~15歳はそれぞれ0.83(95% CI:0.76~0.92)および16.6%(95%CI:8.1~24.3)であり、いずれの年齢層でも有効率は急速に低下していた。 2回目接種後1ヵ月までは、5~11歳と12~15歳で推定有効率に有意差はなかったが、2ヵ月後には5~11歳が12~15歳よりも推定有効率が高かった(0ヵ月後p=0.99、1ヵ月後p=0.40、2ヵ月後p=0.01、0~2ヵ月後p=0.06)。 12~15歳のうち追加接種を受けた集団では、3回目接種後2~6.5週の補正後ORは0.29(95%CI:0.24~0.35)、推定有効率は71.1%(95%CI:65.5~75.7)であり、推定有効率の上昇が認められた。 著者は、「これらの知見は、オミクロン変異株が優勢な時期に成人で観察されたパターンと類似する」とし、「成人におけるmRNAワクチン2回接種後や追加接種後の有効率の漸減パターンを考慮すると、12~15歳では追加接種による感染防御の期間の監視が重要であり、5~11歳でも、オミクロン変異株に対する感染防御効果を最適化するために、追加接種が必要となる可能性がある」と指摘している。

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ワクチンはlong COVIDに有効か/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)におけるlong COVID(罹患後症状、いわゆる後遺症)の発現は、COVID-19ワクチンの登場以降に減少し、2回目の接種後は少なくとも約2ヵ月にわたり持続的な改善が得られることが、英国・国家統計局のDaniel Ayoubkhani氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2022年5月18日号に掲載された。英国の地域住民ベースの観察研究 研究グループは、COVID-19ワクチン接種前に重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染した成人において、ワクチン接種とlong COVIDの症状の関連を評価する目的で、地域住民ベースの観察研究を実施した(特定の研究助成は受けていない)。 対象は、英国・国家統計局が行ったCOVID-19 Infection Survey(CIS)の参加者のうち、2021年2月3日の時点で年齢が18~69歳であり、SARS-CoV-2感染陽性と判定されたのち、アデノウイルスベクターワクチンまたはmRNAワクチンの接種を少なくとも1回受けた集団であった。 主要アウトカムは、2021年2月3日~9月5日の期間に、感染から12週以上が経過した時点におけるlong COVIDの症状の発現とされた。アウトカムの軌道解析では、各ワクチン接種前の受診時を0と設定して追跡が行われた。long COVID症状発現率は23.7% 2万8,356例(mRNAワクチン1万2,859例、アデノウイルスベクターワクチン1万5,497例)が登録された。平均(±SD)年齢は45.9(±13.6)歳で、1万5,760例(55.6%)が女性であり、2万5,141例(88.7%)が白人だった。 追跡期間中央値は、1回目接種(全参加者)から141日で、2回目接種(参加者の83.8%)からは67日であった。追跡期間中に、6,729例(23.7%)から、重症度を問わず少なくとも1回のlong COVIDの症状が報告された。 ワクチンの1回目接種により、long COVIDの症状発現のオッズが当初12.8%(95%信頼区間[CI]:-18.6~-6.6、p<0.001)減少し、その後、2回目接種までの週当たりの軌道には増減(0.3%/週、95%CI:-0.6~1.2、p=0.51)が認められた。 2回目接種では、long COVIDのオッズが当初8.8%(95%CI:-14.1~-3.1、p=0.003)減少し、その後は週当たり0.8%(95%CI:-1.2~-0.4、p<0.001)減少した。 一方、アデノウイルスベクターワクチン接種者とmRNAワクチン接種者で、接種後のlong COVIDの軌道に差はなかった。また、社会人口学的特性(年齢、性別、人種、5段階の地理的剥奪)、健康関連因子(自己報告による健康状態、急性期COVID-19による入院の有無)、SARS-CoV-2感染からワクチン接種までの期間の違いで、ワクチン接種とlong COVID症状発現に関連はみられなかった。 1回目接種後に発現率が数値上で最も低下したlong COVID症状は嗅覚障害(-12.5%、95%CI:-21.5~-2.5、p=0.02)で、次いで味覚障害(-9.2%、-19.8~2.7、p=0.13)、睡眠障害(-8.8%、-19.4~3.3、p=0.15)の順であった。2回目接種後は、疲労(-9.7%、-16.5~-2.4、p=0.01)、頭痛(-9.0%、-18.1~1.0、p=0.08)、睡眠障害(-9.0%、-18.2~1.2、p=0.08)の順で低下の幅が大きかった。 著者は、「この観察研究のエビデンスから因果関係を導き出すことはできないが、ワクチン接種はlong COVIDによる住民の健康負担の軽減に寄与する可能性がある。今後、より長期の追跡調査が必要である」としている。

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