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ヒドロキシクロロキンで新型コロナ陰性化せず、有害事象は3割/BMJ

 主に軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者の治療において、標準治療にヒドロキシクロロキン(HCQ)を併用しても、標準治療単独に比べ重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の陰性化の割合に差はなく、ウイルス除去効果は改善されないことが、中国・上海交通大学医学院のWei Tang氏らの検討で示された。また、HCQ併用で有害事象の発生率も増加した。研究の成果は、BMJ誌2020年5月14日号に掲載された。HCQは、COVID-19の治療薬としてin vitro研究や臨床試験で有望なデータが得られているが、その効果は十分に明確化されていないにもかかわらず、中国のガイドラインでは適応外使用が推奨されているという。また、HCQは、世界的に注目を集めたこともあり、その負の側面が目立たなくなっているが、マラリアやリウマチ性疾患の治療では、網膜症や消化器・心臓への副作用が報告されている。 本研究は、中国の16ヵ所の指定COVID-19治療センターが参加した非盲検無作為化対照比較試験であり、2020年2月11日~29日の期間に実施された(中国Emergent Projects of National Science and Technologyなどの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、上気道または下気道の検体を用いたリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)で確定されたCOVID-19入院患者であった。登録時の胸部CTによる肺炎所見は必須ではなかった。 被験者は、HCQ+標準治療または標準治療単独を受ける群に、無作為に割り付けられた。HCQは、負荷投与量1,200mg/日を3日間投与後、維持投与量800mg/日を連日投与した。治療期間は、軽症~中等症患者は2週間で、重症患者は3週間とされた。 主要アウトカムは、28日以内のSARS-CoV-2の陰性化とし、intention to treat解析を行った。陰性化の定義は、24時間以上間隔を置いた2回の検査でSARS-CoV-2が連続して陰性で、試験終了までに陽性の報告がない場合とした。150例を登録、99%が軽症~中等症 150例が登録され、HCQ併用群に75例、標準治療単独群にも75例が割り付けられた。全体の平均年齢は46.1(SD 14.7)歳で、82例(55%)が男性であった。148例(99%)は軽症~中等症で、重症例が2例含まれた。 症状発現から無作為割り付けまでの平均期間は16.6(SD 10.5、範囲:3~41)日であった。無作為割り付け前に90例(60%)が併用薬物療法を受けており、52例(35%)には抗ウイルス薬が投与され、32例(21%)は抗HIV薬ロピナビル・リトナビルの投与を受けていた。割り付け後の抗ウイルス薬や抗菌薬の投与状況は、両群でほぼ同様であった。 2020年3月14日(データカットオフ日)の時点で、追跡期間中央値は、HCQ併用群が20日(IQR:3~31)、標準治療単独群は21日(2~33)であった。HCQ併用群のうち6例がHCQの投与を受けなかった。HCQ併用群の中等症の1例が、重症COVID-19に進行した。死亡例はなかった。28日陰性化割合:85.4% vs.81.3% 28日以内に、109例(73%、HCQ併用群53例、標準治療単独群56例)でSARS-CoV-2が陰性化した。残りの41例(27%、22例、19例)は、ウイルスの陰性化が達成されなったため打ち切りとした。カットオフ日の時点で、最長SARS-CoV-2陽性期間は23日だった。 28日陰性化割合は、HCQ併用群が85.4%(95%信頼区間[CI]:73.8~93.8)、標準治療単独群は81.3%(71.2~89.6)とほぼ同様であり、群間差は4.1%(95%CI:-10.3~18.5)であった。陰性化までの期間中央値も、HCQ併用群が8日(5~10)、標準治療単独群は7日(5~8)と、ほぼ同様だった(ハザード比[HR]:0.85、95%CI:0.58~1.23、p=0.34[log rank検定])。 4、7、10、14、21日時の陰性化割合にも両群間に差はなかった。また、28日時の症状軽減例の割合(HCQ併用群59.9% vs.標準治療単独群66.6%、群間差:-6.6%、95%CI:-41.3~28.0)および臨床症状軽減までの期間中央値(19日vs.21日、HR:1.01、95%CI:0.59~1.74、p=0.97[log rank検定])も、両群間に差を認めなかった。有害事象は30%、重篤2例、下痢10% 安全性の評価は、HCQ投与群(70例)と非投与群(80例)で行った(HCQ併用群のうちHCQの投与を受けなかった6例を非投与群、標準治療単独群のうちHCQの投与を受けた1例を投与群に含めた)。HCQ投与群のHCQ投与期間中央値は14日(範囲:1~22)だった。 有害事象は、HCQ投与群が21例(30%)、非投与群は7例(9%)で認められた。HCQ投与群は重篤な有害事象が2例(病勢進行、上気道感染症)で発現したが、非投与群では発現しなかった。 非重篤有害事象のうち、HCQ投与群で最も頻度が高かったのは下痢(7例、10%)であり、非投与群では下痢の報告はなかった。HCQ投与群で、霧視のため1例が投与を中止し、口渇を訴えた1例では減量が行われたが、いずれも一過性の有害事象であり、症状は1~2日で消散した。 著者は、「今回の研究は、COVID-19の治療におけるヒドロキシクロロキンのベネフィット・リスク評価に関する初期のエビデンスをもたらし、今後の研究を支援するリソースとして役立つ可能性がある」としている。

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第9回 5月分診療報酬などの一部概算前払い、6月5日が申請期限

<先週の動き>1.5月分診療報酬などの一部概算前払い、6月5日が申請期限2.日本医師会・横倉会長が5選を目指して同会長選挙出馬へ3.コロナウイルス感染で、地域医療構想は見直しとなる見込み4.厚労省が臨時サイト開設、コロナ対策で不足する医療人材確保を支援5.「希望出生率1.8」の明記、子育て支援が一段と打ち出される1.5月分診療報酬などの一部概算前払い、6月5日が申請期限5月27日、第2次補正予算案の閣議決定を受け、医療機関の資金繰り対策として、5月診療分診療報酬などの一部概算前払いの措置が取られることとなった。6月下旬の診療報酬など支払い時に、4月診療分に加えて、5月診療分が概算前払いされる。その分は、7月下旬における本来の5月診療分診療報酬などの支払時に減額調整される。今回の措置は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、受診抑制のために資金繰りが厳しくなっている医療機関などを支援するために臨時で行われる。前払いを希望する医療機関は、【6月5日(金)】までに、社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険連合会の両方に、オンライン、または郵送での申請(6月5日必着)を行うことが必要となる。(参考)令和2年5月診療分診療報酬等の一部概算前払について(厚労省)2.日本医師会・横倉会長が5選を目指して同会長選挙出馬へ日本医師会の横倉 義武会長は、6月27日に予定されている同会長選挙に5選を目指して立候補する意向を固めた。2012年から4期8年を務めており、この春には勇退するという報道もあったが、「新型コロナウイルス対策で引き続き政府と連携していく考え」などとあらためて報じられた。現執行部の中川 俊男副会長が会長選の出馬準備を進めており、事実上の一騎討ち選挙となる見込み。(参考)日本医師会の横倉会長、5選目指す 安倍首相らとパイプ(朝日新聞)3.コロナウイルス感染で、地域医療構想は見直しとなる見込み5月26日、日本医師会の横倉会長は、緊急事態宣言の全面解除を受け、厚生労働省が進めている「地域医療構想」について、「二次医療圏ごとに感染症病床を一定数確保することが必要」とする意見を緊急記者会見で述べた。これまで人口減少時代を見据えた病床削減が進めてきた地域医療構想は、経営・経済効率などが中心であり、感染症対策などが計画に入っていなかったことを見直す形になると考えられる。翌日27日には、地域医療構想のスケジュールは、7月に予定されている「骨太の方針2020」において提示される見込みであることが、定例記者会見で明らかにされた。医療計画の一部である地域医療構想に新興感染症への備えが不足しており、これらを見直すことを厚労省医政局地域医療計画課に提案しているという。(参考)緊急事態宣言の解除を受けて(日本医師会)第二次補正予算の取りまとめを受けて」(同)4.厚労省が臨時サイト開設、コロナ対策で不足する医療人材確保を支援厚生労働省は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う医療現場での人手不足に対応して、人材募集する医療機関や保健所と、医師・看護師らの求職者をマッチングさせる求人サイトを6月上旬にも新設する。収束するまでの臨時的な対応として、利用する医療機関に手数料などは発生しない。厚労省が開設するのは、「医療のお仕事Key-Net」。各医療機関・保健所などにおける募集情報は、新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)を通じて調査され、医療機関や保健所設置自治体などから随時収集する。募集の対象となる職種は、医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、薬剤師、救急救命士および事務職。(参考)厚生労働省に開設するWebサイト「医療のお仕事Key-Net」等を通じて行う医療人材等の緊急的な確保を促進するための取組(緊急医療人材等確保促進プラン)の実施に向けた準備について(厚労省 事務連絡 令和2年5月27日)5.「希望出生率1.8」の明記、子育て支援が一段と打ち出される新たな「少子化社会対策大綱」が5月29日に閣議決定された。わが国では2003年に少子化社会対策基本法を施行しており、少子化社会対策大綱は2004年に初めて策定され、5年ごとに見直してきた。2018年の出生数は91万8,400人、昨年(2019年)は86万4,000人(推定)と、前年に比べ5万人以上の減少によって、今後の総合的かつ長期的な少子化に対処するための具体的な施策の指針として取りまとめが急がれていた。少子化の進行は、日本の社会経済に影響を与えるため、若い世代が家庭を持ち、子供を育てることに希望が持てるよう、経済的な環境整備に重点を置く。今回、子供が欲しい人の希望が叶った場合に見込める出生率「希望出生率1.8」という数値目標が初めて明記され、これの達成のために、出産や子育て支援策が打ち出される見込み。(参考)少子化社会対策大綱(内閣府)第4次少子化社会対策大綱の策定に向けた提言(令和元年12月23日)

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コロナ感染流行に一服、診療所医師の懸念はどう変化?~連続アンケート結果

 ケアネットでは、2020年4月第2週から週次で、病床を有していない診療所で勤務する会員医師を対象に「直近1週間のCOVID-19疑い例の診療状況」についてアンケートを行っている。調査対象地域は関東(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、名古屋(愛知県)、関西(京都府、大阪府、兵庫県)、福岡(福岡県)の4エリア、現在は第7回分まで、50日間の経過を掲載中だ。 毎回750~900人の医師から回答が集まり、エリアごとに多少の差はあるものの、全体で見ると4月第3週(調査対象期間:4月9~15日)をピークに、疑い例の平均患者数は50日間で半分近くまで減り(4月第3週:2.77人→5月第3週1.14人)、PCR検査で陽性となった平均患者数も半減した(4月第3週:0.12人→5月第3週0.06人)。また、PCR検査の照会から実際に検査実施した割合は4月第3週の21.7%だったものが5月第2週には31.4%と10ポイント近く上昇し、検査態勢に余裕が出てきたことが伺われる。 アンケートでは、自由回答で「現状の診療所における新型コロナウイルス感染症診療に関する問題点や今後の懸念、要望」についても聞いた。週次で集まった自由記述の回答からは診療所の現場の変化も見て取れる。 「PCR検査」の文字を含む回答が最も多かったのは4月第3週で62人が記述していた。以後、60→47→47→24→29人と5月第2週の時点で大きく減少しており、検査態勢が改善したことを伺わせる。記述内容にも変化があり、4月第2週時点では「保健所の対応が一番問題。PCR検査が遅すぎて、陽性と出た時点で挿管となってしまった」「保健所に電話し、指定の病院へ紹介しましたが、検査して頂けませんでした」といった、検査の遅さや検査適応基準を懸念する声が多数を占めていた。これが5月第2週以降になると「さすがにPCR検査適応のラインが厳しすぎていた気がする。保健所が一括して対応していたのも限界であったと思う」といった初期対応を振り返る声や、「唾液PCRが妥当かどうか早く知りたい」という新たな検査手法に関心を寄せる声に代わりつつある。 備品不足も大きな方向では解消に向かいつつあるようだ。自由回答内に「防護服」「PPE」「マスク」「フェイスガード(シールド)」の文字を含んだ記述(重複あり)が最多だったのは4月第3週。それが翌週の4月第4週には半減し、5月第2週には3分の1にまで減った。 一方で、週数が経過するにつれて増えてきたのが診療所の経営に関する不安の声だ。5月に入ってから「外来患者が減少し、経営が悪化する」「患者数が普段よりかなり減少し、収益が下がっています」「患者数が右肩下がり。4月は前年度比50%、5月は45%と減少が止まらない」といった回答が見られるようになった。 アンケート開始直後から多かったのが、感染症外来・発熱外来の設置要望だ。「PPEやN95マスクなどの資源を集中させて、発熱外来を作って運営することが必要」「防護服が少ないのですべての診療所では対応できず、発熱患者は地域ごとに発熱外来を設置して、集約して対応する必要がある」との声が5月に入ってからも依然多く寄せられている。「診療所での対応には限界がある。感染症指定病院や発熱外来をしている医療機関の情報がない。PPEなども手に入らない中でどうしろというのか」と悲鳴に近い声も上がる。 とはいえ、疑い数、患者数ともに減少傾向にあることは診療の最前線にいる回答者の実感と一致しているようで、5月第2週以降には「関西は収束傾向」「かなり数は減ってきている印象」といった記述が見られるようになった。 今後については「第2波の襲来の恐れが常にあり慎重を要する」「緊急事態宣言が解除されると患者が増加するのではないか」「学校再開による感染拡大が心配」「現在一旦終息しており、今後第2波が来たときにどのように対応するかを整備する必要あり」といった、警戒と体制整備を継続する、という声が目立っている。 アンケートの詳細については、以下のページに掲載中。COVID-19疑い例の診療状況とPCR検査の実施率について-会員医師アンケート

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23%が以前の生活に戻れないと回答/アイスタット

 新型コロナウイルス感染症の拡大について、一般市民の意識変遷の実態を知る目的に、株式会社アイスタット(代表取締役社長 志賀保夫)は、5月20日に3回目の「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」を行った。 アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の会員で20~79歳の300人を対象に調査を実施したもの。 同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。調査概要 形式:WEBアンケート方式 期日:2020年5月20日 対象:セルフ型アンケートツール“freeasy”の登録者300人(20歳以上)アンケート結果の概要・新型コロナウイルス拡大について、緊急事態宣言一部解除後も約8割の人が「怖い」と思っている!(前回より11%減少)・新型コロナウイルス感染症の予防対策実施は83.0%。「きちんと対策を実施」では今回が最多!・新型コロナウイルスに感染しない自信はあるかは、「ない」32.0%が「ある」21.7%を上回る!・緊急事態宣言のときのステイホーム遵守度は81.7%!・緊急事態宣言中に生活で困ったことの1位「マスクなど衛生用品の入手」、2位「趣味や外出の制限」・新型コロナウイルスの拡大は、収入面に不安を与えているが53%!(前回より4%減少)・いつ落ち着いた生活に戻れるかは、「12月以降」が25.3%で最多。次に「もう戻れない」の23.3%!アンケート結果の詳細 質問1の「新型コロナウイルス拡大について、どう思いますか」では、「怖い」(81.0%)、「それ以外」(19.0%)の回答結果であり、前回よりも約11%「怖い」が減少した。 質問2の「新型コロナウイルス予防対策を実施してますか」では、「実施している」(83.0%)、「どちらでもない」(9.3%)、「実施していない」(7.6%)の回答結果だった。前回と比べてほぼ横ばいであり、予防意識の継続性がうかがわれた。 質問3の「新型コロナウイルス感染症予防策として行っていることはなんですか(複数回答)」では、「手洗い」(89.0%)、「マスク着用」(85.3%)、「不要な外出を控える」(66.7%)の順だった。5%以上伸長した対策では「アルコール・エタノール消毒の利用」(60.3%)、「室内の換気」(56.7%)、「テレワークの実施」(18.7%)があり、新しい環境整備も進められていた。 質問4の「新型コロナウイルス感染症に感染しない自信はありますか」では、「自信がある」(21.7%)、「どちらでもない」(46.0)%、「自信がない」(32.0%)の回答だった。前回と比べ「自信がある」と回答した人が増え、社会的な感染対策の効果が出ていることをうかがわせた。 質問5の「緊急事態宣言のとき、あなたのステイホーム遵守度」では、「守れた」(81.7%)、「どちらでもない」(13.7%)、「まったく/あまり守れなかった」(4.6%)だった。働き盛りの40代・男性で否定的な回答が多く、今後の課題となる結果だった。 質問6の「緊急事態宣言の時、あなた自身が生活で困ったこと(複数回答)」では、「マスクなどの衛生用品の入手」(41.3%)、「趣味や外出の制限」(34.0%)、「ストレス」(32.3%)の順で多かった。20・30代では男女ともに約20%が「特になし」と回答し、生活困窮度が低かった。 質問7の「新型コロナウイルス感染症の拡大は、あなた自身の収入面に不安を与えたか」では、「不安である」(53.0%)、「どちらとも言えない」(24.3%)、「不安でない」(22.7%)の回答で、前回と比較し「不安である」の回答は約4%減少した。政府の給付金など追加の施策が望まれる結果となった。 質問8の「新型コロナウイルス拡大前の生活(あなた自身が落ち着いた生活)に、いつぐらいに戻れるか」では、「12月以降」(25.3%)、「もう戻れないと思う」(23.3%)、「7月」(17.3%)の順で多く、ネガティブな回答が多かった。

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COVID-19の入院リスク、RAAS阻害薬 vs.他の降圧薬/Lancet

 スペイン・University Hospital Principe de AsturiasのFrancisco J de Abajo氏らは、マドリード市内の7つの病院で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の調査「MED-ACE2-COVID19研究」を行い、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬は他の降圧薬に比べ、致死的な患者や集中治療室(ICU)入室を含む入院を要する患者を増加させていないことを明らかにした。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月14日号に掲載された。RAAS阻害薬が、COVID-19を重症化する可能性が懸念されているが、疫学的なエビデンスは示されていなかった。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、そのスパイクタンパク質の受容体としてアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を利用して細胞内に侵入し、複製する。RAAS阻害薬はACE2の発現を増加させるとする動物実験の報告があり、COVID-19の重症化を招く可能性が示唆されている。一方で、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)は、アンジオテンシンIIによる肺損傷を抑制する可能性があるため、予防手段または治療薬としての使用を提唱する研究者もいる。また、RAAS阻害薬は、高血圧や心不全、糖尿病の腎合併症などに広く使用されており、中止すると有害な影響をもたらす可能性があるため、学会や医薬品規制当局は、確実なエビデンスが得られるまでは中止しないよう勧告している。他の降圧薬と入院リスクを比較する症例集団研究 研究グループは、COVID-19患者において、RAAS阻害薬と他の降圧薬による入院リスクを比較する目的で、薬剤疫学的な症例集団研究を実施した(スペイン・Instituto de Salud Carlos IIIの助成による)。 2020年3月1日~24日の期間に、マドリード市内の7つの病院から、PCR検査でCOVID-19と確定診断され、入院を要すると判定された18歳以上の患者を連続的に抽出し、症例群とした。対照群として、スペインの医療データベースであるBase de datos para la Investigacion Farmacoepidemiologica en Atencion Primaria(BIFAP)から、症例群と年齢、性別、地域(マドリード市)、インデックス入院の月日をマッチさせて、1例につき10例の患者を無作為に抽出した。 RAAS阻害薬には、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、ARB、アルドステロン拮抗薬、レニン阻害薬が含まれた(単剤、他剤との併用)。他の降圧薬は、カルシウム拮抗薬、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬であった(単剤、RAAS阻害薬以外の他剤との併用)。 症例群と対照群の電子カルテから、インデックス入院日の前月までの併存疾患と処方薬に関する情報を収集した。主要アウトカムは、COVID-19患者の入院とした。重症度にかかわらず、入院リスクに影響はない 症例群1,139例と、マッチさせた対照群1万1,390例のデータを収集した。年齢(両群とも、平均年齢69.1[SD 15.4]歳)と性別(両群とも、女性39.0%)はマッチしていたが、心血管疾患(虚血性心疾患、脳血管障害、心不全、心房細動、血栓塞栓性疾患)の既往(オッズ比[OR]:1.98、95%信頼区間[CI]:1.62~2.41)と、心血管リスク因子(高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎不全)(1.46、1.23~1.73)を有する患者の割合が、対照群に比べ症例群で有意に高かった。 RAAS阻害薬の使用者では、他の降圧薬の使用者と比較して、入院を要するCOVID-19のリスクに有意な差は認められなかった(補正後OR:0.94、95%CI:0.77~1.15)。また、ACE阻害薬(0.80、0.64~1.00)およびARB(1.10、0.88~1.37)のいずれでも、他の降圧薬に比べ、入院を要するCOVID-19の有意な増加はみられなかった。これらの薬剤は、単剤および他剤との併用でも、入院リスクに有意な影響はなかった。 性別、年齢別(<70歳vs.≧70歳)、高血圧の有無、心血管疾患の既往、心血管リスク因子に関しては、他の降圧薬と比較して、RAAS阻害薬の使用による入院を要するCOVID-19のリスクに有意な交互作用は確認されなかった。一方、RAAS阻害薬を使用している糖尿病患者では、入院を要するCOVID-19患者が少なかった(補正後OR:0.53、95%CI:0.34~0.80、交互作用検定のp=0.004)。 COVID-19の重症度を最重症(死亡、ICU入室)と、低重症(最重症以外のすべての入院患者)に分けた。いずれの重症度でも、RAAS阻害薬、ACE阻害薬、ARBは、他の降圧薬と比較して、入院を要するCOVID-19のリスクに有意な差はなかった。 これらの結果を踏まえて著者は、「RAAS阻害薬は安全であり、COVID-19の重症化を予防する目的で投与を中止すべきではない」と指摘している。

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第8回 コロナ修行と化した「新しい生活様式」を導入してみたら

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに伴い、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づいて発令された緊急事態宣言が5月25日、5都道県で解除された。これにより緊急事態宣言は、一旦は全国で解除となった。もっともこれですべて元通りの生活に戻るわけではない。現時点で決定打となる治療薬やワクチンもない以上、当面は第2波流行を常に気にしながら、程度の差はあっても恐る恐る生活を続けていくということになるだろう。実際、東京都は「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ」を公表し、7つのモニタリング指標を軸に段階的に外出・営業自粛を緩和していく方針だ。ロードマップに従うと、首都東京で限りなく以前に近い生活に戻せるのは最短でも7月半ば以降となる。また、政府は既に5月4日、新型コロナウイルス感染症専門家会議からの提言を踏まえ、新型コロナウイルス感染を想定した「新しい生活様式」の実践例を公開した。その中身を見て、娯楽、スポーツ等の項目では「歌や応援は、十分な距離かオンライン」、食事の項目では「料理に集中、おしゃべりは控えめに」などとまで記述されており、「大きなお世話だろう!」と怒鳴りたくなるような内容である。国を代表する「専門家」が参集してこんな細かい議論をやっていたのかとびっくりするのだが、ある専門家会議のメンバーによると「そもそも専門家会議も当初はあそこまで示すつもりはなかった。しかし、外部から『もっと具体例を示すべき』というプレッシャーが強く、あのような形になった」とのこと。専門家の皆さんもなかなか気苦労が絶えないらしい。そしてこの「新しい生活様式」を実践した飲み会を開いたという記事も登場した。まあ、有志で試しにやってみたという程度だが、写真を見ると何とも言い難い。記事には「飲食を楽しんだ」と書いてあるが、私がデスクだったらこの紋切り型表現はボツである。決して楽しそうには見えない、むしろ「新型コロナ真理教」かなんかの苦行にしか見えないからだ。しかも、これだけならまだしも、現実にはいたるところでトンチンカンな「対策」もどきが散見される。たとえば「新しい生活様式」を考慮し、感染予防対策を施した居酒屋、さらにはタクシーなど。これらはいずれも次亜塩素酸水を噴霧し、空間消毒を行うというもの。しかし、次亜塩素酸水に関しては認可を受けたものが手指消毒に使える程度で、厚生労働省が出した事務連絡では、次亜塩素酸を含む消毒薬の噴霧は吸入した場合は有害であると明記している。これほどひどいものではないにしても、福岡県の粕屋町は公立の小中学校の授業再開に当たって全生徒にフェイスシールドを配布し、体育の授業と給食以外のシーンではマスクとともに着用すると報じられている。これから気温が上昇していく中でマスクの着用ですら苦痛なはずなのにさらにフェイスシールドとなると、子供たちの苦痛はどれほどかと気の毒に感じてしまう。だが、そもそもこれまで専門家が提唱している感染予防対策は、手洗い励行、「3密」の回避、これに加えてマスクぐらい。多くの方がご存じのようにマスクの感染予防効果はまだまだコントラバーシャルである。今回、やや珍奇な対策が報じられた(報じている側がチンキと思っていないことも問題なのだが)ケースはいずれも「3密」が回避しにくいための追加の措置とも言えなくもないが、それでもやり過ぎ感が否めないと感じるのは私だけだろうか?その意味でここから本格的な出番となる人たちがいる。まずは感染制御の専門家たちである。テレビや新聞にコメンテーターとして登場している「専門家」の中には、ややトンデモな人が混じっているのは本連載第3回でも触れたこと。いわば真の感染制御の専門家ほど現在日常的に忙しいのは承知しているが、少しでもメディアからオファーがかかったら、今こそ難しい時間のやりくりをして登場して欲しいと切に思う。報道に身を置く立場から言うとやや横柄に聞こえるかもしれないが、やはり報道の拡散能力は絶大だからだ。もっとも1回の報道で何かが確実に伝わることが稀なのは、やはり報道側として常に感じている。たとえば、私ごときの存在は報道界の中でも「蟷螂之斧(とうろうのおの)」といってもいい存在だが、それでも感染症におけるマスクの存在について「あくまで感染が疑われる人が他人に感染させないためが第一義。まずは手洗いを」と繰り返し記事に書いている。1回1回はほぼ無力と分かっても、過去の経験上、報道のリフレイン効果は実感しているからだ。COVID-19騒動では、このリフレイン効果の実例がある。ずばり「PCR検査」という単語だ。PCRが何の略かは分からない人がほとんどだろうが、今やこの単語を耳にしたことがないという人はいないはず。だが、この単語を知ることで「それって何?」と理解を深めようとする人のすそ野は確実に増えてくる。繰り返し同じことを訴えるというのは確実に一般生活者での情報リテラシー向上に資するのである。また、今回感染制御の専門家とともに出番となると思われるのが、「学校薬剤師」である。ちなみに医療関係者の間でも「学校薬剤師」の存在はあまり知られていないこともあるようだが、これは学校保健安全法で大学以外の学校では設置が義務付けられている。学校医や学校歯科医と同じ存在である。これは1930年、北海道小樽市の小学校で風邪をひいた女児にアスピリンと間違って塩化第二水銀を服用させ、死亡した事件をきっかけに、同市が学校薬剤師を委嘱し、これが全国に広がって後の学校保健安全法の制定時に制度化されたものだ。では、この学校薬剤師は何をしているかといえば、学校環境衛生の維持管理に関する指導・助言などであり、具体的には換気の指導やプール開きの際の塩素濃度チェックなどだ。まさに感染を防ぐための環境整備にも資する役割である。そもそも薬剤師は、現状では一般人はもちろんのこと医療従事者の間ですら存在感が薄い。このような表現をすると腹が立つ人もいるかもしれないが、「白衣を着て調剤室にこもって袋詰めをしている根暗な人たち」が一般人のイメージといってもいいが、学校薬剤師の経験を持つ人は少なからず存在し、消毒薬などについての知識も有している。しかも、医師と比べ、一般人にとってはやや距離が近い存在である。やや過激な言い方になるかもしれないが、劇作家・寺山修司の言葉を借りれば、今こそ「処方箋を捨てよ、町へ出よう」である。同時にすべての医療従事者に伝えたいのは、「腐らず繰り返し伝えよう」ということ。「お前らメディアが悪い」と言われがちではあるが、目を皿にしてみてもらえば、腐らず地味な情報を繰り返し伝えているメディアも数多くある。実際のところ私たちメディア人も同じ方向を向いていることを知っていただけたら幸いである。

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COVID-19、医療従事者の感染リスクは?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療にあたる医療従事者の感染リスクと臨床的特徴について、中国・華中科技大学のXiaoquan Lai氏らが武漢の3次医療機関における約1万人の医療従事者を調査した。その結果、医療従事者の感染のほとんどがアウトブレークの初期に発生していた。また、これまでのウイルス感染症の流行時とは異なり、発熱外来や発熱病棟などで勤務する医療従事者に比べ、それ以外で勤務する医療従事者の感染率が高かった。著者らは、感染した可能性がある医療従事者を迅速に特定し、無症状者に対する定期的なスクリーニングを行うことで医療従事者を守ることができるとしている。JAMA Network Open誌2020年5月21日号に掲載。医療従事者の感染率は発熱外来/発熱病棟で0.5%、それ以外は1.4% 本研究では、武漢のTongji Hospitalに勤務する医療従事者9,684人について、2020年1月1日~2月9日のCOVID-19発症者のデータを収集した。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の曝露・疫学・人口統計に関する情報はアンケートから、臨床・検査・放射線学的な情報は電子記録から収集した。また、335人の医療従事者を無作為に抽出し、高リスクで無症状者における感染率を推定した。環境表面のサンプルも収集した。 医療従事者の感染リスクについて調査した主な結果は以下のとおり。・9,684人の医療従事者のうち110人がSARS-CoV-2陽性で、感染率は1.1%であった。そのうち女性が70人(71.8%)、年齢中央値は36.5歳(四分位範囲:30.0〜47.0歳)、職種は看護師62人(56.4%)、医師26人(23.6%)、医療助手22人(20.0%)であった。・発熱外来/発熱病棟で勤務する医療従事者の感染率は0.5%(3,110人中17人)、それ以外で勤務する医療従事者では1.4%(6,574人中93人)であった。・発熱外来/発熱病棟以外で勤務する45歳未満の看護師は、45歳以上の発熱外来/発熱病棟で勤務する医師より感染率が高かった(感染率比:16.1、95%CI:7.1~36.3、p<0.001)。・無症状者における感染率は、発熱外来/発熱病棟で勤務する医療従事者において0.74%(135人中1人)、それ以外で勤務する医療従事者で1.0%(200人中2人)であった。・環境表面における90検体はすべて陰性であった。・110人中93人(84.5%)の医療従事者が軽症~中等症で、1人(0.9%)が死亡した。・主な症状は、発熱(60.9%)、筋肉痛/倦怠感(60.0%)、咳嗽(56.4%)、咽頭痛(50.0%)、筋肉痛(45.5%)であった。・医療従事者の主な感染経路は、患者(59.1%)、同僚(10.9%)、家族や友人(12.7%)であった。

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COVID-19、ヒドロキシクロロキンの使用は支持されない/BMJ

 ヒドロキシクロロキンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する有効な治療薬として期待され世界的に注目されていたが、リアルワールドで収集した観察データを用いた臨床研究の結果、酸素投与を要するCOVID-19肺炎入院患者へのヒドロキシクロロキン使用は、支持されないことを、フランス・パリ・エスト・クレテイユ大学のMatthieu Mahevas氏らが報告した。COVID-19による呼吸不全や死亡を予防する治療が緊急に必要とされる中、ヒドロキシクロロキンは、in vitroでCOVID-19の原因である新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抑制効果が報告され、小規模な臨床試験でも有効性が示唆されていた。BMJ誌2020年5月14日号掲載の報告。フランスの4施設におけるCOVID-19肺炎入院患者におけるヒドロキシクロロキンの有効性を後ろ向きに解析 研究グループは、2020年3月12日~31日の期間に、フランスの3次医療施設4施設に入院したCOVID-19肺炎患者全例について電子カルテをスクリーニングし、18~80歳で酸素投与を必要とするが集中治療室(ICU)への入室は必要としないSARS-CoV-2感染が確認された肺炎患者を適格症例として、入院48時間以内にヒドロキシクロロキン600mg/日の投与を開始した患者(治療群)と、ヒドロキシクロロキンを投与せず標準治療を行った患者(対照群)に分け比較した。 主要評価項目は21日時点でのICU入室を伴わない生存率、副次評価項目は全生存期間、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を伴わない生存率、酸素投与からの離脱、自宅退院またはリハビリテーション施設への転院である(すべて21日時点)。解析は、逆確率重み付け法により交絡因子を調整した。ヒドロキシクロロキン治療群と対照群とで生存率に有意差なし 主要解析の対象集団は全体で181例、治療群が84例、対照群が89例であり、入院後48時間以降にヒドロキシクロロキンの投与を開始した8例も追加された。 主要評価項目である21日時のICU入室を伴わない生存率は、治療群76%、対照群75%であった(加重ハザード比[HR]:0.9、95%信頼区間[CI]:0.4~2.1)。また、21日時点の全生存率は治療群89%、対照群91%(加重HR:1.2、95%CI:0.4~3.3)、ARDSを伴わない生存率はそれぞれ69%、74%(加重HR:1.3、95%CI:0.7~2.6)、酸素投与から離脱した患者の割合は82%、76%(加重リスク比:1.1、95%CI:0.9~1.3)であった。 治療群の8例(10%)に、治療の中止を要する心電図異常が認められた。

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第8回 新型コロナ予防・治療・メンタルヘルスへの活用が期待される漢方薬の可能性

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する既存薬の活用が期待される一方、新型コロナの感染予防・軽傷者の重症化予防やメンタルヘルスに対する漢方薬の活用が注目されている。日本東洋医学会では、漢方薬などによる対症療法とその後の重症化の有無との関連を調べるため、医療機関に症例の報告を呼び掛けている1)。また、薬局・薬店からなる日本中医薬研究会は新型コロナ治療の予防・治療に対し、中国漢方である中医薬(中国伝統医薬)の有効性を探るため、日中の医師や薬剤師らによるウェブ交流会を4月に行った。振り返ると、2009年の新型インフルエンザ流行時には、麻黄湯や銀翹散、小柴胡湯などの漢方薬に抗ウイルス作用が確認されている。タミフルやリレンザといった抗インフルエンザ治療薬に麻黄湯などの漢方薬を合わせて使うと一定の効果が見られたという。COVID-19に関連し、中国は3月、顕著な治療効果が見られたという「三薬三方(三つの処方と薬)」を選出し、清肺排毒湯、化湿敗毒方、宣肺敗毒方という3つの中医薬を推奨している。このうち、COVID-19用に創薬され、軽症から重症までカバーするという清肺排毒湯には麻黄湯と小柴胡湯が構成生薬の一部として使われている。新型コロナの感染確認者の91.5%が中医薬を使い、臨床治療の効果観察では、中医薬の総有効率は90%超に上っているという。日本国内においても、清肺排毒湯を日本で処方可能なエキス剤で作り、軽症者の重症者化予防に処方している医療機関がある。無症状者を含めた予防には、免疫力を高める効果が報告されている補中益気湯や十全大補湯などがある。メンタルヘルスに関しては、新型コロナによる自粛生活で、高齢者を中心に運動不足による持病悪化や、ストレスや経済的不安によるうつ病症状を訴える人が増えている。また、経済の悪化に伴う失業者の増加により、累計自殺者数が27万人増との試算もある。「コロナうつ」への対応も重要な課題だが、精神科や心療内科の受診をためらう人は少なからずいる。それに比べると、漢方薬はハードルがいくぶん低くなるようだ。ストレス緩和効果が得られる漢方薬には、加味逍遙散や柴胡加竜骨牡蛎湯、酸棗仁湯などがある。ただ、漢方薬は西洋薬の処方のようにはいかないのはご存じの通り。漢方薬は病名ではなく、患者個々人の体質と症状に対する処方が原則だ。漢方薬においても、現段階でCOVID-19への特効薬がない以上、予防段階では体力を付けて免疫力を上げる、感染したら発熱しないようにする、発熱したら早く治るようにするというように、段階によって使う漢方薬が異なり、患者ごとに症状を見ながら処方を判断しなければならない。ただ、新型コロナウイルスは変異の速いRNAウイルスの一種で、現在効いている新薬がいつ効かなくなるかわからない懸念がある。漢方薬を扱っている医療従事者は「免疫力の強化を本来重視する漢方薬は、変異に対してもある程度有効なのでは」と期待している。1)COVID-19一般治療に関する観察研究ご協力のお願い(日本東洋医学会)

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COVID-19に伴う乳がん診療トリアージについて/日本乳癌学会

 日本乳癌学会は5月25日、COVID-19に伴う乳がん診療トリアージについて指針を公開した。欧米の診療トリアージを参考に、日本における現在の診療に即した形となるようまとめたもの。外来診療、画像診断、外科療法、放射線療法、薬物療法それぞれについて、緊急度を高優先度/中優先度/低優先度の3つに分けて指針を示している。本稿では、外科療法、放射線療法、薬物療法について抜粋して下記紹介する。【外科療法】A)高優先度(できるかぎり通常通りの迅速な対応を要する)1)膿瘍の切開排膿2)術後合併症に対するサルベージ手術(血腫除去術や血流不全の皮弁に対する処置など)3)自家再建組織の血行再建術・修復術4)急速に増大する葉状腫瘍B)中優先度(治療の遅延が後に生存に影響を与える可能性がある)1)StageI・IIホルモン受容体陽性症例*に対しては、術前内分泌療法を施行して手術を延期することは可能である。*ルミナルAタイプや小葉がんの症例に対する6~12ヵ月の術前内分泌療法は、安全性および有効性が示されている。2)術前化学療法中の症例の方針変更T2またはN1のホルモン受容体陽性HER2陰性症例:状況によっては術前内分泌療法へ変更できる。トリプルネガティブまたはHER2陽性症例:施設環境などの状況によるが、易感染性の症例は手術に切り替えてもよい。3)局所再発の腫瘤切除術4)再建を伴う手術は、人工物再建として自家組織再建は極力行わない。C)低優先度(緊急性はなくパンデミックの期間中は延期することができる)1)良性疾患2)予防的切除3)非浸潤がんが確実な症例4)追加切除術5)術前内分泌療法が奏効している症例**中優先度の外科治療の項参照【放射線療法】A)高優先度1)他に有効な手段がない出血を伴う腫瘍2)術後照射中および再発巣に対する治療中の症例3)脊髄圧迫や脳転移、その他致命的な転移性病変を有する症例B)中優先度1)高リスク症例に対する照射炎症性乳がん、リンパ節転移陽性およびトリプルネガティブ乳がん、術前化学療法後に残存病変がある症例、若年(40歳未満)などの高リスク症例は、手術・化学療法終了後から20週以内に照射を行う。2)低〜中間リスク症例に対する照射65歳未満のStage I、Stage IIのホルモン受容体陽性乳がんなど低〜中間リスク症例は、手術・化学療法終了後から6ヵ月以内に照射を行う。また来院回数を減らすために寡分割照射も考慮する。C)低優先度1)65~70歳以上のホルモン受容体陽性/HER2陰性のStage I症例では、術後内分泌療法が行われている場合、生存率に影響を与えずに放射線照射を延期または省略できる。2)非浸潤がん症例では、術後内分泌療法を行われている場合、放射線照射は生存率に影響を与えないので省略できる。【薬物療法】A)高優先度1)トリプルネガティブまたはHER2陽性症例に対する術前・術後化学療法2)すでに開始されている術前・術後治療*の継続3)予後改善が見込まれる転移再発乳がんの初期化学療法[考慮すべき事項]・術前・術後治療*でも内分泌療法中の高齢者や、5年以上経過している症例などでは一時的な休薬も考慮する。・来院回数を減らすため、用量用法または投与間隔を調整する。・発熱性好中球減少症を避けるため、PEG-GCSF製剤は積極的に投与する。・免疫機能を考慮してデキサメタゾンの使用は適切な範囲で制限する。・トラスツズマブ・ペルツズマブやフルベストラントは免疫機能に影響を与えない。・LHRHアゴニストは長期製剤を使用する。B)中優先度1)緩和的化学療法[考慮すべき事項]・術後トラスツヅマブ治療中の症例では、12ヵ月間から7ヵ月間に短縮することは可能である。・転移再発例に対する抗HER2療法は、投与間隔の延長は可能である。・HER2陽性転移再発症例で、抗HER2療法が2年以上奏効している症例では、進展がなければ抗HER2療法の休止を考慮してもよい。・内分泌療法単独で治療可能な症例や奏効している症例に対しては、CDK4/6阻害薬や mTOR阻害薬の追加を延期する。C)低優先度1)骨転移に対する骨吸収抑制薬2)ポートフラッシュ

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COVID-19、NY重症患者の死亡リスク増加因子が明らかに/Lancet

 検査で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が確認され、米国・ニューヨーク市内2ヵ所の病院に入院した重症患者257例について前向きコホート試験を行った結果、高年齢、慢性肺疾患、慢性心臓病などが入院死亡リスク増加の独立リスク因子であることが確認された。米国・コロンビア大学アービング医療センターのMatthew J. Cummings氏らが行った試験の結果で、年齢の因子では10歳増加ごとに死亡リスクは1.31倍に、慢性肺疾患は死亡リスクを2.94倍に増加することが示されたという。また、侵襲的機械換気の実施率は重症患者の79%に上っていた。2020年4月28日現在、ニューヨーク市におけるCOVID-19入院患者は4万人を超えている。現況下でのCOVID-19患者の疫学、臨床経過、および重症転帰のデータの必要性から本検討は行われた。Lancet誌オンライン版2020年5月19日号掲載の報告。臨床的リスク因子やバイオマーカーと、院内死亡率の関連を検証 研究グループは2020年3月2日~4月1日に、検査でCOVID-19が確認され、2ヵ所のニューヨーク・プレスビテリアン病院(マンハッタン区北部、コロンビア大学アービング医療センターの関連病院)に入院し、急性低酸素呼吸不全が認められた18歳以上の重症患者を対象に前向き観察試験を行った。被験者について、臨床情報やバイオマーカー、治療データを集め、死亡リスクとの関連を分析した。 主要アウトカムは、入院死亡率だった。副次アウトカムは、侵襲的機械換気の実施率と期間、昇圧薬の使用や腎代替療法の頻度、入院後の院内臨床的増悪までの期間などだった。 Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、臨床的リスク因子やバイオマーカーと、院内死亡率との関連を検証した。追跡期間は全被験者28日以上で、4月28日で追跡を打ち切った。慢性心臓病で死亡リスク1.76倍、高IL-6・高D-dimer値もリスク因子 試験対象期間中に、COVID-19が確認され2ヵ所の病院に入院した成人は1,150例で、うち重症患者は257例(22%)だった。被験者の年齢中央値は62歳(IQR:51~72)で、うち男性は67%(171例)だった。重症患者のうち82%(212例)に1つ以上の慢性疾患があり、最も多くみられたのは高血圧症(63%、162例)、次いで糖尿病(36%、92例)だった。また、46%(119例)が肥満だった。 4月28日時点で、死亡は39%(101例)、入院継続は37%(94例)だった。侵襲的機械換気を実施したのは79%(203例)で、その期間中央値は18日(IQR:9~28)、昇圧薬を使用したのは66%(170例)、腎代替療法の実施は31%(79例)だった。入院後の院内臨床的増悪までの期間中央値は、3日(IQR:1~6)だった。 多変量Coxモデル解析の結果、入院死亡に関連した独立リスク因子は、高年齢(10歳増加ごとの補正後ハザード比[HR]:1.31、95%信頼区間[CI]:1.09~1.57)、慢性心臓病(補正後HR:1.76、95%CI:1.08~2.86)、慢性肺疾患(同:2.94、1.48~5.84)、高IL-6値(十分位増加ごとの補正後HR:1.11、95%CI:1.02~1.20)、高D-dimer値(同:1.10、1.01~1.19)だった。

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第8回 「つぶれる前に助けてくれ!」 医療機関の叫びをどうとらえるか(前編)

病院の医業収入、前年比10%減!こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。5月25日、首都圏と北海道の緊急事態宣言が解除されました。その前の週末あたりから飲食店や飲み屋はほぼ平常運転に戻りつつありましたが、私自身はまだ街の飲み屋には行っていません。あまりにも退屈なので、話題の特別定額給付金のオンライン申請に挑戦してみました。使用したのはパソコンではなくiPhone。スマホからであればパソコン申請で必要なカードリーダーが要らずに比較的簡単にできる、と聞いたからです。実際のところはどうだったか。マイナンバーカードの読み取りエラーやSafari(iPhoneのウェブブラウザ)の設定変更など、いろいろなトラブルが重なり、やり直すこと十数回…。結局、申請完了まで2時間ほどかかってしまいました。私自身のITリテラシーの問題もありますが、マイナンバーカードのシステム全体の使い勝手の悪さは相当なものです。申請は受理されたようですが、給付金がスムーズに受け取れるのかが心配です。さて、今回気になったのは、個別の事件ではなく、新型コロナウイルス感染症の影響で医療機関の経営が苦境に陥っていると伝える、さまざまなメディアの報道です。3月末から5月にかけて、外来・入院・救急患者等が減り続け、医療機関の経営が大変だということは、折々に多くのメディアが報道してきました。ここに来て、医療関係団体の調査結果なども公表され、その厳しさを訴える声が日に日に高まっています。日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会の「病院経営状況緊急調査(速報)」によると、20年4月の医業収入は前年同月比で10.5%減(有効回答病院の平均)。新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた病院はさらに深刻で12.7%減でした。一時的に病棟を閉鎖した病院も14.9%減と大幅に落ち込みました。医業利益率もそれぞれ9.0%、11.8%、16.0%の減少です。4月分の診療報酬が基金から支払われるのは6月なので、実際に資金がショートしたり、倒産したりするケースが出るとすれば夏以降だと思われますが、その前に医療関係団体が「つぶれる前に助けてくれ!」とSOSを発した、というわけです。日医は第二次補正予算に向けて医療機関への支援を要望大学病院や診療所の経営も大変なようです。全国医学部長病院長会議によると、大学病院の経営状況も深刻で、会員大学の4月の診療報酬請求額は前年同月比で外来が7.35%、入院が10.61%減でした。入院では手術件数が1万2,780件と大きく減少したことが響いています。一方、日本医師会が4月20日の会見で公表した「新型コロナウイルス対応下での医業経営状況等アンケート調査」によると、診療所の3月の診療報酬額は前年同月比で総件数10.9%、総日数10.7%、総点数9.4%減と、各約1割の減少でした。さらに、88.0%の診療所の診療報酬が対前年比でマイナスとなり、総点数で30%減以下の診療所が7.5%ありました。こうした状況を受け、日本医師会の横倉 義武会長は5月18日、全国医学部長病院長会議の山下 英俊会長らとともに、安倍 晋三首相、萩生田 光一文科大臣、加藤 勝信厚生労働大臣らと面会、第二次補正予算に向けて新型コロナウイルス感染症対応に当たる医療機関への支援を要望しました。空床発生等に伴う支援や危険手当、PCR検査の拡充等の5本柱、総額約7兆5,213億円の要望です。診療報酬も見直しの方向だがそうした中、5月27日にも閣議決定される予定の第2次補正予算案では、新型コロナウイルスの感染長期化や第2波に備え、医療・介護の現場への支援を手厚くする方針が示されています。医療・介護の現場支援は都道府県向け交付金の拡充で対応。地域の重点病院において専用病棟を多く設置できるようにするほか、新型コロナ患者を受け入れる医療機関や介護事業所の従事者に対する最大20万円の一時手当の給付も行われる予定です。診療報酬そのものも、見直しが検討されています。日本経済新聞は5月22日付け朝刊で「厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の重症患者を受け入れる病院が受け取る診療報酬を引き上げる検討に入った」と報じました。報道では、「本来の入院料から3倍に引き上げる案が軸だ。(中略)来週にも中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)の総会を開いて了承を得る考え。(中略)例えば集中治療室(ICU)の入院料は本来1日8万~14万円程度で、これを3倍にするといった検討を進めている」としています。なお、診療報酬については、自民党の「国民医療を守る議員の会」が5月19日、加藤勝信厚労大臣に手渡した新型コロナウイルス感染症対策に向けた2次補正予算案についての緊急提言書の中で、同感染症患者以外を診療する地域医療の確保に向けて、院内感染防止対策のために基本診療料の2割引き上げを要請しています。一律の“営業保証”に疑問新型コロナウイルス感染症に懸命に対応した医療機関への資金援助は納得できます。病床を閉鎖したり、他科のスタッフを感染症対策に振り向けたりした結果としての患者減の対応も納得できます。しかし、新型コロナウイルス感染症の患者を直接診療することもなく、ただ診療所を閉めていただけのところにも、“営業保証”をするかのような基本診療料引き上げの施策はいかがなものでしょうか。診療報酬は、税金と国民一人ひとりが支払う保険料で賄われています。今回のコロナ禍による医療機関の減収分を安易に一律に補填しようとするやり方は、同じ収入減に困っている国民の納得を得られるものではないでしょう。今回はちょっと長くなり過ぎましたので、この問題については来週もう少し考えてみたいと思います。(この項続く)

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第21回 アフターコロナも患者は戻ってこない【噂の狭研ラヂオ】

動画解説新型コロナウイルス感染症によって患者さんが病院と薬局を避ける事態になりました。今後も患者さんの受療行動がビフォーコロナのそのままの形で戻ってくることはないでしょう。例年のインフルエンザ流行も今年はありませんでした。感染症流行の特需・恐慌に揺るがない、アフターコロナを生き抜くために薬局が今やるべきこととは?

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COVID-19と関連?流行期に川崎病類似疾患の集団発生/Lancet

 イタリア・ロンバルディア州・ベルガモ県は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の流行の影響を広範囲に受けており、小児では川崎病類似疾患の集団発生が確認されている。同国パパ・ジョバンニ23世病院のLucio Verdoni氏らは、COVID-19流行期に診断を受けた川崎病類似疾患患者の発生状況と臨床的特徴を調査した。その結果、過去5年間と比較して、COVID-19流行期の2ヵ月間で月間発生率が30倍以上に増えており、患児は比較的年齢が高く、心臓の障害が多く、マクロファージ活性化症候群(MAS)の特徴を呈する患者が多く、重症川崎病の発生率が高いことが示された。川崎病は、急性の中型血管炎で、ほぼ小児のみが罹患する。急性期の患児は血行動態が不安定となる可能性があり、これは重症の病型である川崎病ショック症候群(Kawasaki disease shock syndrome:KDSS)として知られる。また、MASの判定基準を満たす場合があり、2次性の血球貪食性リンパ組織球症に類似の症状を呈する。原因は不明だが、感染性の病原体が、本症を引き起こすカスケードの引き金となることが示唆されている。Lancet誌オンライン版2020年5月13日号掲載の報告。流行の前後で発生状況を比較 研究グループは、COVID-19流行期の川崎病類似疾患の発生状況を評価する目的で後ろ向きコホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 過去5年間に、ベルガモ市のパパ・ジョバンニ23世病院の一般小児科で川崎病類似疾患と診断された患児を、COVID-19流行の開始前(I群)と後(II群)に分けて解析した。 川崎病類似症状を呈した患児は、米国心臓協会(AHA)の適応症に準じて川崎病として管理された。KDSSは、収縮期動脈低血圧、基礎収縮期血圧の20%以上の低下、または末梢循環不全の徴候を伴う川崎病と定義された。MASの診断は、小児リウマチ国際試験機関(PRINTO)の判定基準に準拠した。 鼻咽頭および口咽頭ぬぐい液を用いた定量的な逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)と、SARS-CoV-2のIgMとIgGを検出する血清学的定性検査により、現在と過去の感染の有無を調べた。 II群の患児は、全例が免疫グロブリン療法(2g/kg)を受け、RAISE試験(Kobayashiスコア)のリスク層別化に基づく治療を受けた。PCR陽性は2例のみ、IgG陽性8例、IgM陽性3例 2015年1月1日~2020年2月17日の期間に、川崎病類似疾患と診断されたI群の患者は19例(男児7例、女児12例、平均年齢3.0[SD 2.5]歳)であった。発熱から入院までの平均期間は6日(範囲4~11日)で、定型が13例(68%)、不全型川崎病が6例(31%)であった。低血圧や低灌流の徴候などはみられず、MASと診断された患児もいなかった。全例が、冠動脈瘤の残存もなく完全に回復した。 一方、2020年2月18日~4月20日の期間に診断されたII群の患児は10例(男児7例、女児3例、平均年齢7.5[SD 3.5]歳)であった。このうちPCR検査陽性は2例で、8例がIgG陽性、3例はIgMも陽性だった(血清学的検査が陰性の2例のうち1例は、大量免疫グロブリン療法後に検査を受けた)。 II群の10例の発熱から入院までの平均期間は6日(範囲4~8日)であった。5例(50%)は定型、残りの5例(50%)は不全型の川崎病であった。胸部X線検査は全例で行われ、5例(50%)で肺炎が認められた。このうち胸部CT検査を受けた2例では、両肺底部の肥厚が確認された。 II群の5例(50%)には、低血圧と低灌流の臨床徴候が認められ、KDSSの判定基準を満たした。また、5例(50%)がMASと診断された。II群の患者は全例が退院し、アスピリン治療を継続している。他の流行国でも、同様の集団発生が予測される I群に比べII群では、川崎病の月間発生率が30倍以上高かった(I群0.3例/月vs.II群10例/月、p<0.0001)。また、II群は、発症時の平均年齢が高く(3.0[SD 2.5]歳vs.7.5[3.5]歳、p=0.0003)、平均BMIも高値を示した(15.93[SD 1.72])vs.19.11[3.21]、p=0.0016)。II群の10例中5例(50%)に、COVID-19確定例との接触が認められた。 I群に比べII群は、白血球数(19.4[SD 6.4]×109/L vs.10.8[6.1]×109/L、p=0.0017)、リンパ球数(3.0[SD 1.8]×109/L vs.0.86[0.4]×109/L、p=0.0012)および血小板数(457[SD 96]×109/L vs.130[32]×109/L、p<0.00001)の値が低かった。 また、II群は、心エコー図の異常(2/19例[10%]6/10例[60%]、p=0.0089)の割合が高く、KDSS(0/19例[0%]vs.5/10例[50%]、p=0.021)およびMAS(0/19例[0%]vs.5/10例[50%]、p=0.021)の頻度が高かった。 Kobayashiスコア≧5点の患児(2/19例[10%]vs.7/10例[70%]、p=0.0021)の割合はII群で高く、ステロイドによる補助治療の必要性(3/19例[16%]vs.8/10例[80%]、p=0.0045)も、II群の患児で高かった。 著者は、「SARS-CoV-2流行国では、同様の川崎病または類似症候群の集団発生が予測される」としている。

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コロナ患者への薬の配達費補助 宅配便なら全額でスタッフ持参だと300円の違和感【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第47回

緊急事態宣言が一部地域で解除され、新型コロナウイルス感染症の国内での流行は収束に向かいつつありますが、今もなお医療現場は大変な状況です。特例的ではあってもオンライン診療・服薬指導が進むことはありがたいのですが、緊急事態宣言前の3月あたりから患者さんの来局が減って処方箋単価も下がっている実感がある中で、この状況が続くと薬剤の配送費や手間がばかにならない…と思っている薬局経営者の方も少なくないのではないでしょうか。そんな薬局経営者の声が届いたのでしょうか。4月30日に国会で成立した新型コロナウイルス感染症に関する緊急経済対策の補正予算の中に、「薬局における薬剤交付支援事業」という項目があり、新型コロナウイルス感染症患者やオンライン服薬指導を受けた患者への薬剤配送料や薬局スタッフが薬剤を届けた場合の交通費および人件費が補助されるようになりました。予算成立と同日に、厚生労働省より「電話や情報通信機器を用いた服薬指導等の実施に伴う薬局における 薬剤交付支援事業について」という事務連絡が発出され、5月8日には日本薬剤師会から「薬局における薬剤交付支援事業の実施に当たっての留意点」が発出されました。厚生労働省からの事務連絡の内容は以下のとおりです。支援事業の実施団体は都道府県薬剤師会である。支援の対象は、4月30日以降に行った処方薬の配送料、配送に係る費用。薬局スタッフが直接届けることを基本とし、それが困難な場合に配送業者の利用を検討する。支援の申請時には、患者に配送料を請求していない分も含めてオンライン服薬指導を実施した内容を報告する。日本薬剤師会からの文書には、より具体的に薬局が行う対応が記されています。対象処方箋は、「CoV宿泊」「CoV自宅」のグループと「0410対応」の2種類に分けられる。処方箋の備考欄に「CoV宿泊」または「CoV自宅」と記載されている場合:薬局スタッフが宿泊施設や患者宅に届けた場合は、距離を問わず1件につき300円を薬剤師会に請求することができる。1施設で複数人分を届けた場合も1件のカウントとする。配送業者によって配送を行った場合は、配送料全額を請求できる。いずれの場合も患者負担はない。処方箋の備考欄に「0410対応」と記載されている場合:患者負担として200円を患者から徴収する。薬局スタッフが患者宅に届けた場合は100円を薬剤師会に請求でき、配送業者による配送を行った場合は患者負担の200円を差し引いた全額を請求できる。請求の手続きは、各都道府県の薬剤師会に従って、翌月15日までにデータを送信する。処方箋の写しや配送料の金額がわかる伝票などの資料は薬局に保存する。処方箋に「0410対応」と記載されていても、患者が来局して受け取った場合には請求できない。予算の上限に達した場合は、その時点で終了する。この対応で私が気になった点は、処方箋の備考欄に「CoV宿泊」または「CoV自宅」とあり、薬局スタッフがその施設や自宅まで薬を届けた場合は、距離に関係なく300円しか請求できない、という点です。もし、患者さんがコロナ陽性となりホテルで療養されている場合はかかりつけの薬剤師がオンライン服薬指導を行い、自ら足を運んで届けることも考えられますが、その場合でも一律300円です。配送業者に頼んだ場合は費用の全額を請求できるのに…と少し違和感を覚えますが、これらの対応によって、患者さんの負担が明確になり、薬局の運営でも助かる部分があると思います。なお、東京都薬剤師会からの通知には、予算利用上限金額は1薬局5,000円程度と記載されており、このほかにも地域の取り決めがある可能性がありますので、ぜひ各都道府県薬剤師会のホームページなどで詳細をご確認ください。オンライン服薬指導では薬をお届けする方法など確認することが多くて煩雑ですが、患者さんも慣れない状況や方法で大変だと思います。感染拡大を防止するためにオンライン診療を使用した意識の高さを褒めてみてはどうでしょうか。実際、私は電話で診察してもらった医師に「今後どうなるかわからないので、いつもより多く薬を出してほしい」と伝えたところ、危機管理の意識が高いと褒められてちょっとうれしくなりました。初診も可能となったオンライン診療の特例はもうしばらく続くと思いますので、患者さんのモチベーションを上げながら一緒にこのコロナ禍を乗り切りましょう。

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COVID-19関連の超過死亡算出するオンラインツール開発/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の医学的、社会的、経済的な影響は、総人口死亡率に未知の作用を及ぼしているといわれる。これまでの死亡率モデルは、高リスクの基礎疾患や、それらのより長期のベースライン(COVID-19流行以前)の死亡率は考慮されていないが、英国・University College LondonのAmitava Banerjee氏らは、さまざまな感染抑制レベルに基づくCOVID-19発生のシナリオと、基礎疾患の相対リスクに基づく死亡率の影響を考慮して、COVID-19の世界的流行から1年間の超過死亡者数を、年齢、性、基礎疾患別に推定するモデルを確立するとともに、これを算出するオンラインツールを開発し、プロトタイプを公開した(オンラインリスク計算機のプロトタイプ)。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月12日号に掲載された。電子健康記録データを用いて超過死亡を推定するコホート研究 研究グループは、英国のプライマリケアおよびセカンダリケアの電子健康記録(Health Data Research UKのCALIBER)にリンクされたデータを用いて人口ベースのコホート研究を行った(英国国立衛生研究所[NIHR]University College London病院バイオメディカル研究センターなどの助成による)。  1997~2017年の期間に、医療機関に登録された30歳以上の個人を対象に、Public Health Englandのガイドラインで定義された基礎疾患の有病率(2020年3月16日以降)を調査した。  COVID-19の世界的流行の相対的影響を、COVID-19流行前のバックグラウンド死亡率と比較した相対リスク(RR)とし、RRを1.5、2.0、3.0と仮定した場合に、完全抑制(0.001%)、部分抑制(1%)、軽減(10%)、何も対策をしない(80%)などの異なる感染率のシナリオで、COVID-19関連の超過死亡の簡略なモデルと計算ツールを開発し、各疾患の1年間の死亡率を推定した。 また、超過死亡を推算するためのオンライン公開用のプロトタイプのリスク計算機を開発した。超過死亡に直接・間接に及ぼす全体の影響の評価が必要 386万2,012人(女性195万7,935人[50.7%]、男性190万4,077人[49.3%])を対象とした。対象の20%以上が高リスクであり、そのうち13.7%が70歳以上の高齢者で、6.3%は1つ以上の基礎疾患を有する70歳以下の高齢者と推定された。 高リスク集団の1年死亡率は4.46%(95%信頼区間[CI]:4.41~4.51)と推定された。年齢と基礎疾患が複合的にバックグラウンドリスクに影響を及ぼし、疾患によって死亡率に顕著なばらつきが認められた。 英国の集団における完全抑制のシナリオでは、超過死亡者数(COVID-19流行前のベースラインの死亡との比較)は、RRが1.5の場合は2人、RRが2.0で4人、RRが3.0では7人と推定された。 また、軽減シナリオでは、RRが1.5の超過死亡者数は1万8,374人、2.0で3万6,749人、3.0では7万3,498人と推定された。何も対策をしないシナリオの超過死亡者数は、RRが1.5の場合は14万6,996人、2.0で29万3,991人、3.0では58万7,982人であった。 著者は、「これらの結果は、持続的で厳格な抑制対策とともに、基礎疾患があるため最もリスクが高い集団を対象に、さまざまな予防介入による継続的な取り組みを行う必要性を示唆する。各国は、COVID-19の世界的流行が超過死亡に直接・間接に及ぼす全体的な影響を評価する必要がある」と指摘している。

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第8回 初診のオンライン診療、継続的実施の検討へ

<先週の動き>1.初診のオンライン診療、継続的実施の検討へ2.病院の医業収入は前年比10.5%減、コロナ受け入れ病院では12.7%減も3.コロナの影響で先延ばしされた新たな社会保障制度改革4.新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬の開発が待たれる1.初診のオンライン診療、継続的実施の検討へ19日に開催された国家戦略特区諮問会議において、新型コロナウイルスの影響により、全国で時限的・特例的措置として可能になっている「初診患者のオンライン診療」について議論された。そこでは、安倍 晋三首相より、コロナ収束後も初診のオンライン診療が引き続き活用できるよう、継続的実施に向けて規制や制度の改革を進める方針を表明した。厚生労働省によると、5月14日現在、オンライン診療などを実施しているのは全国で約1万4,500施設、うち初診からの実施は約6,000施設。今後、利点や課題を洗い出した上で、全国的に認めるのかどうかも含めて検討され、年内に取りまとめを急ぐ。(参考)第44回 国家戦略特別区域諮問会議 配布資料2.病院の医業収入は前年比10.5%減、コロナ受け入れ病院では12.7%減も21日、自民党の岸田 文雄政調会長が「令和2年度第2次補正予算の編成に向けて」の提言を安倍首相に提出した。新型コロナの影響で、受診控えなどにより収入が大きく減少し、経営危機に直面している医療機関や薬局が経営破綻しないように求めている。最近、医療機関における経営状態の悪化についてたびたび報道されているが、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の病院経営状況緊急調査(速報)によれば、前年の2019年4月と今年4月を比較した医業収入は、回答した病院で10.5%減少しており、コロナ患者入院受入病院では12.7%減となっている。日本医師会は、半年間で7兆5,000億円の予算措置などにより、医療機関や薬局などの経営支援を行うことを求めている。取り急ぎ、厚労省は5月分の診療報酬支払いについて、本来より1ヵ月繰り上げた6月に概算で給付する案を検討しており、医療従事者に支払うボーナスなどの原資を確保できるように動く見込み。(参考)第2次補正予算に向けた提言概要(自由民主党政務調査会)新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査(速報)(日本病院会)3.コロナの影響で先延ばしされた新たな社会保障制度改革22日に開催された第7回全世代型社会保障検討会議において、安倍首相が今夏に取りまとめる予定だった最終報告を半年ほど遅らせることを表明した。新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ、社会保障の新たな課題を取り上げたことなどによる影響。ウイルス感染リスクがある中、医療・介護に従事する労働者が安全に就労できるよう、マスクや消毒液などの衛生用品の確保などの支援や、感染リスクを恐れて受診抑制や介護サービス利用控えなどの動きに対して、オンライン診療や非接触サービスの活用についての言論を求めている。これを受け、75歳以上の患者の窓口負担を1割から2割に引き上げる法案の国会提出が2021年に先送りになるなど、今後の医療改革や健康保険財政などに影響が出る可能性もある。(参考)全世代型社会保障検討会議(第7回)配布資料(首相官邸)新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた社会保障の新たな課題に関する基礎資料4.新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬の開発が待たれるコロナ治療薬開発の進捗状況について、日々報道がなされているが、民間の医療機関が手にする段階は、現時点ではまだ先になりそうである。7日に承認された、新型コロナウイルス感染症に対する国内初の治療薬レムデシビル(商品名:ベクルリー)は、重症患者が対象とされ、一般の患者に用いることは難しいと考えられる。今後、中等症患者を対象とした2本目の第III相試験の結果など、5月下旬に初期のデータが公表される見込み。また、政府が早期承認するとしていたファビピラビル(同:アビガン)については、動物実験で催奇形性(外表異常、内臓異常、骨格異常、骨格変異)が認められており、精液への移行もあるなど、内服投与に当たっては細心の管理が必要である。その上、17日に日本医師会の「COVID-19有識者会議」が発表した「新型コロナウイルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言」によれば、承認を早める事務手続きの特例処置は理解できるとしているが、科学的根拠の不十分な候補薬を治療薬として承認すべきでないとしており、今後の治験結果の公表や承認申請を待つことになる。ワクチン製造を手掛ける大手製薬企業を中心として、開発治験が進んでいると発表されているが、安全性・有効性の確認中であり、正式な承認申請はまだである。第二波の襲来に備えるために、各国と協調体制を取りながら、迅速な開発、供給態勢の整備が進むことが待たれる。(参考)新型コロナウイルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言(日本医師会COVID-19有識者会議)新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】(Answers News)

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禁煙をし続けるために本当に必要なこと(2)【新型タバコの基礎知識】第19回

第19回 禁煙をし続けるために本当に必要なこと(2)Key Points加熱式タバコも含めたすべてのタバコを止め続けることが禁煙ニコチン依存症から脱出するために必要なスキルは「知る」ということタバコ会社はわれわれが生まれる前から嘘をつき続けてきていることをしっかり認識するべき(タバコ会社に幻想を抱いてはいけない)禁煙することの重要性は、新型コロナ問題があろうがなかろうが大きくは変化しません。しかし、現在が禁煙するための一つの機会であることは間違いないでしょう。禁煙することにより、新型コロナウイルスに感染しても重症化や死亡を防げる可能性が高まると考えられます。そのため、欧米でも日本でも禁煙にチャレンジしている人が多くいるようです。そこで、改めて禁煙の定義を明確にしておきたいと思います。「加熱式タバコも含めたすべてのタバコを止め続けることが禁煙」です。少しでも多くの人が禁煙に成功することを願って、今回は禁煙し続けるために必要なことをお伝えしたいと思います。患者さんにぜひ伝えておきたい、「タバコから逃げる方法」とは?ニコチン依存だけでなく、アルコール依存や違法薬物依存等さまざまな依存症から脱出するために必要なスキルは、共通して「知る」「知ってもらう」ということです。自分から知ろうとしてもらうことが、回り道のようで、止め続けるための近道と言えるでしょう。タバコの場合には、「タバコの害」や「タバコを吸わないメリット(禁煙で人を喜ばせることができ、そして自分が幸せになること)」、「喫煙者はタバコ会社に搾取されていること(世界がタバコ会社によって歪められている現実)」、「タバコから逃げる方法(人に勧められたときの断り方など)」について知ってもらわなければなりません。たとえば、「タバコから逃げる方法」としては、吸いたくなる環境に行かないようにすることや、吸いたくなった場合の気の紛らわし方など具体的な手段をリストアップしておくと良いでしょう。より多くの知識を得てもらうことで、喫煙再開の危機から逃れることができるようになります。タバコを止め続けるためには、具体的に逃げるための手段等を知り、忘れないように繰り返し思い出し、知識として定着させる必要があります。医師など医療者も、患者に禁煙指導するためには、これらの知識を習得しておかなければならないでしょう。意外に知られていない、タバコ会社の2つの嘘タバコのことなんて十分に知っているよ、という声が聞こえてきそうですが、きっと意外と知らないことに驚くだろうと思います。私がいつも経験している展開です。タバコ会社はわれわれが生まれる前から嘘をつき続けてきました。社会はわれわれが生まれる前から大きく歪められているので、異常な状況が当たり前に感じられて、異常に気付かないようになってしまっています。日本ではタバコが原因で毎日300人以上が死亡していますが*1、メディアは新型コロナウイルス感染による死亡者数を伝えるとしても、タバコで死亡した人数は報道しません。これも、今に始まったことではなく、われわれが生まれる前からずっとそうなのです。当たり前を疑わなければ、現在の異常な状況は見えてきません。*1:健康日本21等でも引用された下記の論文では、日本の1年間の死亡者数83万4,000 件のうち、喫煙は12万9,000件、高血圧は10万4,000件の原因だったと示されています。年間約13万人は1日当たりにすると300人以上となります。Ikeda N,et al.PLoS Med.2012Jan;91:e1001160.加熱式タバコを販売しているのはすべてタバコ会社です。1950年代にタバコの有害性が実証されて以降、タバコ会社はずっと人々に嘘をつき続けてだまし続けてきたということが、タバコ会社の内部資料や内部告発などの多くの証拠により、明らかにされています。タバコ会社がまっとうな形で情報提供する会社に変わるなどと、幻想を抱いてはいけません(その期待はいつも、何度も裏切られてきた歴史を知るべきです)。その代表的な嘘について紹介します。タバコを吸う人の多くは、程度の差はあれニコチン依存症の状態になっています。しかし、タバコ産業はその事実を知りながら、「依存はない」とずっと嘘をついてきたことがタバコ会社の内部文書から明らかになっているのです(映画「インサイダー」ではタバコ会社による意図的な悪事が詳細に描写されています)。タバコ産業は添加物を加えてより依存症になりやすいタバコを開発するなどしていたにもかかわらず、「タバコに依存性はない」と繰り返し、主張してきたのです。タバコ会社は人々が誤解した状況(この場合にはタバコには依存はないと信じる人もいて、タバコに手を出しやすくなること)を少しでも長く維持することを意図して嘘をつき続けてきた歴史があります。現在は、タバコ会社もタバコの依存性を認めています。もう一つの嘘を紹介します。実はいまだに、JTは受動喫煙に害があることを認めていません。JTは「受動喫煙に害があるかどうかは科学的に証明されていない」など、世界的に研究者や専門家が導いた結論とは明らかに違うことを訴えています。都合のいい情報に群がる人がいると分かって、意図的に情報を操作してタバコを吸う人を囲い込んでいるのです。JTは受動喫煙について次のようにコメントしています1)。“受動喫煙については、周囲の方々、特にタバコを吸われない方々にとっては迷惑なものとなることがあります。また、気密性が高く換気が不十分な場所では、環境中たばこ煙は、眼、鼻および喉への刺激や不快感などを生じさせることがあります。このため、私たちは、周囲の方々への気配り、思いやりを示していただけるよう、タバコを吸われる方々にお願いしています。”“受動喫煙(環境中たばこ煙)は非喫煙者の疾病の原因であるという主張については、説得力のある形では示されていません。受動喫煙への曝露と非喫煙者の疾病発生率の上昇との統計的関連性は立証されていないものと私たちは考えています。”こういったコメントに対して、国立がん研究センターは反論をホームページ上に掲載しました2)。“受動喫煙は「迷惑」や「気配り、思いやり」の問題ではなく、「健康被害」「他者危害」の問題である。受動喫煙には健康被害・他者危害があるという科学的事実に基づいて、公共の場および職場での喫煙を法律で規制するなど、たばこ規制枠組み条約で推奨されている受動喫煙防止策を実施することが必要である。”このような指摘を受けてもなお、今もかわらずJTは受動喫煙の害を認めていません。もし認めると、その情報を知った喫煙者が他人に配慮してタバコを吸いづらくなって、タバコをやめてしまう人が増えると考えているからこそ、意図的に受動喫煙の害を認めていないのでしょう。空気を読む国民性の日本だからこその判断かもしれません。世界の他のタバコ会社(たとえばフィリップモリス社など)は、受動喫煙の害を認めています。日本ではタバコ会社がなりふり構わず、タバコを吸い続けてもらうように誘導しているのです。政府や一般市民をだますために、タバコ会社は嘘をつくことをこれまでずっと繰り返してきました。「タバコの新製品は、今までのタバコ製品と違ってクリーンで害が少ない」というのはタバコ会社がやってきた基本戦略と言えるでしょう。そして、あとになって振り返ってみると、そのタバコの新製品にはやはり従来のタバコと変わらない害があった、となっているのが現状です。第20回は、「すべての診療科に関わる! タバコ問題を自分事にするために知っておきたいこと(1)」です。1)JTホームページ,喫煙と健康に関するJTの考え方:環境中たばこ煙2)国立がん研究センター,情報提供:受動喫煙と肺がんに関するJTコメントへの見解, 2016年9月28日

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新型コロナのピーク超えたニューヨーク、市内の状況と懸念される小児疾患【臨床留学通信 from NY】番外編4

新型コロナのピーク超えたニューヨーク、市内の状況と懸念される小児疾患こちらCOVID-19の激震地となったニューヨークでは、ピークを4月中旬に超え、私の勤めるMount Sinai Beth Israel病院の内科には、一時期は病床数(最大120)を上回る200人近くが入院していましたが、日々減少傾向にあり、5月15日現在では40人前後まで減りました。ICU患者も一時期は病床数の5倍にまで膨れ上がりましたが、現在は通常の2倍程度まで落ち着きました。これまでに感染者はトータルで30万人超、死者は2万人を超えました。ニューヨーク市内では依然、待機的手術や外来診療は禁止されていますが、ほかの郡においては徐々に再開が認められつつあります。外出禁止令(散歩やランニングは可能、レストランなどは営業停止)は今もなお続き、休校も継続中ですが、職種ごとに段階的に再開していく形になっています(建設業などは優先、レストラン、ホテルは後、娯楽系は最後)。5月11日現在における経済再開の基準は、下記のようになっています。<患者数・死者数>(1)総入院患者数が少なくとも14日間連続減少しているか、1日の新たな入院患者の数が15人以下であること(CDC基準)。(2)1日の死者数が少なくとも14日間連続減少しているか、1日の死者数が5人以下であること。(3)新たな入院患者数が10万人当たり2人未満であること。<病院のキャパシティ>(4)全ベッドのうち、少なくとも30%が常に利用可能なこと。(5)ICUベッドのうち、少なくとも30%が常に利用可能なこと。<検査と追跡>(6)1ヵ月で人口1,000人当たり30人が検査を受けていること。(7)10万人当たり30人以上の追跡要員を有していること。これらの基準の狙いは、患者数のピークおよび病院のキャパシティを政策でコントロールすることにあり、それが死亡率軽減につながるというエビデンスに基づいています1)。また検査体制、追跡体制を重視しており、第2波に備える形になっています。さらに、経済再開を準備する段階で感染者を推定するため、1万5,000人ほどの大規模な抗体検査を行っており、ニューヨーク市民の平均抗体陽性率はおよそ20%でした。一方、医療従事者は12.2%と低めに抑えられており(5月2日現在)、PPEは有効であったことが示唆されます。また、死亡者の人種別内訳も公表されており、マイノリティの被害が強く、アジア人は比較的低めではあります。ニューヨーク市における内訳は、ヒスパニック:34%(人口比29%)、黒人:28%(同22%)、白人: 27%(同32%)、アジア系:7%(同14%)でした。 抗体陽性率は、アジア系は11.1%で、ヒスパニック25.4%、黒人17.7%と比べて低めとなっています。なお、白人は7%でした。ニューヨーク市内において現在注意を呼びかけているのは、子供の川崎病に類似した多臓器系炎症性疾患(Pediatric Multi-System Inflammatory Syndrome)であり、市内で110件(うち死亡は3例)とのことです(5月16日現在)。年齢別割合は0~4歳:35%、5~9歳:25%、10~14歳:24%、15~21歳:16%となっており、性別では、男性が57%、女性が43%となっており、年齢については川崎病の好発年齢とは類似していないと考えられます。これら小児の54%において、PCR検査陽性もしくは抗体が陽性になっており、注意が呼びかけられています。1)https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/208354

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