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肌の色はパルスオキシメーターの測定精度に影響する

 パルスオキシメーターで測定した血中酸素飽和度(SpO2)は、肌の色が濃い人では誤った値を示す可能性があり、医療に影響を及ぼす恐れのあることが、新たな研究で明らかになった。パルスオキシメーターは、肌の色が濃い患者に対しては実際よりも高いSpO2値を示す傾向があり、低酸素状態を見逃してしまう可能性のあることが示唆されたという。パルスオキシメーターは、光を使ってSpO2を測定する。ほとんどの人において、SpO2の正常値は95〜100%であり、90〜92%未満になると医療的注意が必要となる。英プリマス大学周術期・集中治療医学分野のDaniel Martin氏らによるこの研究結果は、「The BMJ」に1月14日掲載された。 本論文の付随論評の著者の1人である米コロラド大学の肺専門医・集中治療専門医であるThomas Valley氏は、「本研究で評価した5種類のパルスオキシメーターは、いずれも肌の色が濃い患者に対して、肌の色が明るい患者よりも高いSpO2を示した。この誤った測定値は、治療に実質的な影響を及ぼす可能性がある」と述べている。同氏はさらに、「医師はSpO2の値に基づいて重要な医療判断を行っている。SpO2が正常値を示せば、救急救命士は患者を病院に搬送しないかもしれないし、救急科の医師は患者を入院させないかもしれない。また、パルスオキシメーターの測定値が不正確な場合、集中治療室(ICU)で治療を受けている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の低酸素状態が適切に判断されず、ステロイドなどの救命薬が投与されない可能性もある」と指摘している。 今回の研究では、2022年6月から2024年8月の間に、イングランドの24カ所のICUで治療を受けた903人の成人患者のデータを用いて、肌の色がパルスオキシメーターの測定値と診断精度に与える影響が検討された。パルスオキシメーターは、英国の国民保健サービス(NHS)が、COVID-19対策の一環として家庭に配布していた5種類を対象とした。対象者の肌の色は、携帯型の分光光度計を用いて、利き手ではない方の手の甲の皮膚の明るさを測定して評価した。SpO2の測定値は、動脈血ガス分析の測定値(動脈血酸素飽和度〔SaO2〕)と比較された。 最終的に、全体で1万1,018組のSpO2とSaO2測定値が解析された。その結果、いずれのパルスオキシメーターも、SaO2が低値の範囲では過大評価し、高値の範囲では過小評価する傾向が認められ、肌の色が濃い患者では、肌の色が明るい患者に比べてSpO2が平均0.6~1.5パーセントポイント高く測定されていた。また、SpO2の閾値(92%以下、94%以下)のいずれを用いても、SaO2が92%以下であることを判別する際の偽陰性率は、肌の色が濃くなるほど上昇していた。具体的には、SaO2が92%以下であるのにSpO2が94%超であった患者の割合は、肌の色が明るい患者で1.2~26.9%、肌の色が濃い患者で7.6~62.2%であり、後者は前者に比べて5.3~35.3パーセントポイント高かった。 研究グループは、医師は肌の色が濃い患者を治療する際には、SpO2だけに頼らず、他の症状や兆候と照らし合わせて判断することを提案している。Valley氏らも付随論評の中で、「現時点では、医師は最善を尽くすしかなく、機器の欠点を理解しながら対応する必要がある。目的はSpO2の測定を放棄することではなく、その限界を理解し、公平性を確保し、酸素測定の技術自体が医療格差を助長しないようにすることだ」と述べている。

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第281回 インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省

<先週の動き> 1.インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省 2.在宅医療「頻回・囲い込み」に診療報酬改定で歯止め、訪問看護は1日包括も/厚労省 3.診療報酬改定で看護配置基準を柔軟化、ICT活用を厳格要件化/厚労省 4.わいせつや盗撮で医師・歯科医師28人を行政処分、医師3人が免許取消/厚労省 5.医療保険改革で高額療養費を見直し加速、負担上限を「2年ごと検証」へ/政府 6.電子カルテで患者取り違え、経過観察患者に前立腺全摘出手術/千葉県がんセンター 1.インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省2月6日に厚生労働省は、1月26日~2月1日の第5週に全国約3,000の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数が1医療機関当たり30.03人となり、警報基準(30人)を超えたと発表した。前週比の約1.8倍で4週連続の増加となり、患者総数は11万4,291人に達した。今シーズンは1度警報水準を下回った後に再び増加しており、1季で2度警報レベルに達するのは少なくとも過去10シーズンで初めてとされる。都道府県別では大分県52.48人、鹿児島県49.60人、宮城県49.02人、山梨県46.97人、千葉県46.08人など22県で警報基準を上回った。その一方で、香川県8.61人、鳥取県9.45人、北海道10.33人は比較的低水準だった。ウイルス型はA型56%、B型44%で、年明け以降はB型の検出割合が増加し、流行再拡大の一因とみられている。B型は学校など集団生活で小児を中心に広がりやすく、嘔吐や下痢など消化器症状を伴う例も報告される。重症例として脳症や筋炎後の腎機能障害がまれに生じうるため注意が必要となる。休校・学級閉鎖は約6,200校に増加した。なお、新型コロナウイルス感染症の定点報告も前週比25%増の2.49人と上昇している。厚労省はマスク着用、手指衛生、換気など基本的対策の徹底を呼びかけ、今後1~2週間は患者増加が続く可能性があるとして警戒を促している。 参考 1)インフルエンザ患者数 前週の倍近くに増加 B型 半数近く占める(NHK) 2)全国インフル定点報告 前週の1.8倍に 1月26日-2月1日(CB news) 3)コロナ新規感染者 前週比25%増 1月26日-2月1日(同) 4)インフルエンザ、再び警報水準に 2度の警報は過去10シーズンで初(日経新聞) 2.在宅医療「頻回・囲い込み」に診療報酬改定で歯止め、訪問看護は1日包括も/厚労省厚生労働省は2026年度の診療報酬改定で、在宅医療を「量の拡大」から「必要性に見合う質と適正化」へ転換する方針を示した。1月30日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で提示された個別改定項目では、通院可能にもかかわらず頻回の訪問診療を受けるケースや、高齢者住宅に併設・隣接する訪問看護ステーションが同一建物内で短時間に多数利用者を回ることで報酬が膨らむような過度な同一建物対応に歯止めをかける。訪問診療では、在宅時医学総合管理料(在医総管)・施設入居時等医学総合管理料(施設総管)の高い評価を、末期がんや要介護度の高い患者を一定割合以上診療する医療機関に限定し、医療・介護ニーズの低い患者への頻回訪問を抑制する。24時間往診体制の評価も、自院での実働体制や連携・委託の関与度に応じてメリハリを付ける。看取り実績の高い在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の評価は「在宅医療充実体制加算」へ再編し、地域の24時間体制を面的に支える往診時医療情報連携加算の対象も拡大する。また、訪問看護では、同一建物居住者への評価を細分化し、人数が多い区分は月内訪問日数で段階化、20分未満は算定不可とする。さらに併設・隣接ステーションが高齢者住まいに頻回提供する場合、利用者数と1日当たり提供時間に応じた「包括型訪問看護療養費(1日定額)」を新設し、同日の回数増で報酬が伸びにくい仕組みとする。その一方で、情報通信技術(ICT)による情報共有を評価する訪問看護医療情報連携加算など質向上策も導入する。背景には同一建物での訪問看護急増や高収益事例への問題意識がある。運営基準では値引き誘引や紹介対価、特定施設への誘導を禁止し、安全管理と記録の正確性を求める。事業継続計画(BCP)策定や残薬管理、電子処方せん活用も要件化される。詳細は告示・通知待ちだが、契約・記録・連携体制の再点検が急務となる。 参考 1)個別改定項目について(厚労省) 2)在宅医療「もうけすぎ」にメス 診療報酬見直し、高齢者囲い込み防止(日経新聞) 3)2026年度診療報酬改定でも、「適切な形の在宅医療」が量・質の双方で拡大することを目指した対応図る(Gem Med) 4)訪問看護ステーションが隣接等の高齢者住まい居住者に行う訪問看護を「1日当たり包括」療養費で評価(同) 5)在宅医療巡り病院・診療所にBCP策定義務化へ…厚労省、災害時の地域連携促す(読売新聞) 6)高齢者住まい等への頻回訪問に包括評価を導入(日経メディカル) 3.診療報酬改定で看護配置基準を柔軟化、ICT活用を厳格要件化/厚労省2026年度診療報酬改定で、厚生労働省は病院の看護配置基準を「人手不足への救済」と「医療DXによる業務量削減」を前提に柔軟的な設定とする。突発的な欠員で夜勤時間などが一時的に基準から外れても、超過が1割以内で3ヵ月を超えない場合は、入院基本料などの施設基準の変更届を不要とする方向で、感染症対応の特例を人材不足にも広げ、恒久化も視野に入れる。対象は平時からハローワークや都道府県ナースセンターなどの公的紹介を活用し、求人票の提示など採用努力を行う医療機関とし、民間紹介会社の高額手数料による経営圧迫も抑えたい考え。加えて、見守り、記録作成、職員間情報共有などでICT機器を病棟で広く活用し、超過勤務が平均10時間以下で増加傾向がないこと、導入前後の業務量評価・安全配慮、調査への協力など複数の要件を満たす場合、看護要員数や看護師比率等を「基準の9割以上(最大1割減)」でも基準充足と扱い、急性期一般入院料や7対1・10対1、地域包括医療病棟、緩和ケア病棟などに適用する方針。さらに医師事務作業補助者も、生成AIによる退院サマリー・診断書・紹介状などの原案作成、音声入力、RPA、説明動画活用などを条件に、配置要件の見直し(緩和)も検討する。急性期医療機関では救急搬送・全麻手術件数を要件とする新たな入院基本料(A・B)も構想され、看護必要度は項目追加や救急応需状況の反映で基準見直しが議論されている。看護職は全体では増加傾向でも、病院就業者は減少し、求人倍率も高い。算定要件を満たせず収入が落ちる事態を避け、夜勤負担の軽減と地域医療の持続を図る狙い。看護職就業者は2023年時点で約174.6万人、需要推計は2025年約180.1万人とされ、病院就業者は約98.7万人まで減少。日本病院団体協議会は、ICT前提の緩和と一時救済を歓迎している。その一方で、患者安全と効果検証のデータ提出が求められており、今後、医療現場での投資と運用体制が鍵となる。 参考 1)病院の看護職員、必要数を緩和 人手不足の施設の経営安定後押し(日経新聞) 2)ICT利活用・適切な業務遂行等の厳格な要件を前提として「看護職員や医師事務作業補助者の柔軟配置」を認める(Gem Med) 3)ICT利活用により看護師業務負担が減少、この分の看護配置基準柔軟化は病院団体として歓迎-日病協・望月議長・神野副議長(同) 4)救急・手術件数を評価する急性期病院一般入院基本料を新設(日経メディカル) 4.わいせつや盗撮で医師・歯科医師28人を行政処分、医師3人が免許取消/厚労省厚生労働省は2月4日、医道審議会医道分科会の答申を受け、刑事事件で有罪判決を受けるなどした医師16人、歯科医師12人の計28人に対する行政処分を決定した。内訳は免許取消5人、業務停止22人(3ヵ月~2年6ヵ月)、戒告1人で、2月18日に発効する。別途10人には行政指導(厳重注意)が行われた。このうち免許取消は、児童へのわいせつ行為や健診時の盗撮、診療報酬詐欺や脱税などの事案で有罪が確定した医師3人と歯科医師2人。業務停止は収賄、詐欺、薬物関連、暴行・傷害、迷惑行為防止条例違反、道路交通法違反など理由は多岐に及ぶ。2025年12月3日の医道審議会の議事要旨では、医師16件中、免許取消1件、停止3年~3ヵ月の各処分、戒告3件とされたほか、歯科医師7件で免許取消3件、停止7~3ヵ月が答申された。また、元医師1人の再免許付与については適当とする答申は出されなかった。処分は医療への信頼確保を目的とし、医療機関には不祥事の予防とガバナンス、コンプライアンス教育の徹底が改めて求められる。さらに、健診や学校現場での診療行為における倫理遵守、金銭・契約関係の透明化、薬物・交通事案を含む私生活上の法令順守も含め、組織的な再発防止策の整備が重要となる。今回の一連の処分では、刑事有罪事案が中心であり、医師個人の資質管理に加え、採用時のバックグラウンド確認や通報体制の整備など、医療機関側のリスク管理体制の実効性が問われている。 参考 1)医道審議会医道分科会議事要旨(厚労省) 2)医師、歯科医師28人処分 免許取り消しや業務停止(共同通信) 3)厚労省、医師・歯科医師28人の処分決定 免許取り消しや業務停止(毎日新聞) 5.医療保険改革、高額療養費を「2年ごと検証」へ 患者自己負担増の時代に/政府政府が検討する医療保険改革法案で、高額療養費制度の患者負担上限を「少なくとも2年ごとに検証」する規定が新設される見通しとなった。医療費総額の抑制を目的に、上限額が定期的に引き上げられる可能性がある一方で、決定に当たっては「長期治療患者の家計影響を考慮する」と明記する。昨年末には上限を来年8月までに最大38%引き上げる方針が示され、給付抑制で保険料負担を軽くする狙いだ。併せて、出産費用の無償化(分娩費の全国一律化と保険適用)や、OTC類似薬に薬剤費25%を上乗せする新制度、75歳以上の金融所得の保険料・窓口負担への反映徹底も盛り込む。こうした「負担と給付」の再設計が進む中、がん医療では費用の見える化が始まった。日本肺癌学会は『肺がん診療ガイドライン(Web版)』の付録に薬物療法別の薬剤費一覧(保険適用前)を掲載した。術後補助療法では、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)が月56万円×3年で約2,030万円、アレクチニブ(同:アレセンサ)は月168万円×2年で約4,032万円、アテゾリズマブ(同:テセントリク)は総額902万円、再発小細胞肺がんの二重特異性抗体タルラタマブ(同:イムデトラ)は1年で約3,184万円と示している。推奨度の根拠には用いないが、患者から費用を問われた際の説明材料とし、今後の制度変更で自己負担が増え得る現実を共有する狙いがある。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が、臨床研究の医療経済評価を基本方針化するなど、効果・安全性に加え「費用と持続可能性」を臨床判断に組み込む動きが広がっている。高額療養費は、重い疾患ほど利用頻度が高く、上限の見直しは治療継続や就労、家族介護に直結する。こうした高額な医薬品を用いた医療を提供する医師は、治療選択肢の効果・副作用に加え、想定される自己負担の幅(多数回該当、年間上限など)について患者への説明責任が一段と増す。同時に、薬価・給付の議論は選挙の争点化も進むため、現場から実データを発信しつつ、費用対効果と公平性の両立を問う姿勢が求められる。治療内容のみならず、診療費用の自己負担についての情報提供が、今後いっそう重要になる。 参考 1)高額療養自己負担、2年ごと検証(共同通信) 2)医療保険制度を維持するには 医療費削減で患者が負担? 高額療養費制度の見直しで治療を受けられない恐れも(中日新聞) 3)年収700万円の人なら約3万円の負担増!「高額療養費の見直し」再燃で、8月からどう変わる?(ダイヤモンドオンライン) 4)肺がん診療指針に薬剤費の一覧、数千万円の治療も 見える化の狙いは(朝日新聞) 6.電子カルテで患者取り違え、経過観察患者に前立腺全摘出手術/千葉県がんセンター千葉県がんセンターは2026年2月6日、60代男性患者に対し、検査結果の取り違えにより不要な前立腺全摘出手術を行った、医療事故を公表し、患者に謝罪した。事故は2025年に発生。男性は前立腺生検の結果、経過観察が妥当とされていたが、検査を担当した医師が、同日に別患者から得られた悪性度の高い前立腺がんの病理結果を、誤って当該患者の電子カルテに貼り付けた。主治医は、この誤った情報を基に高リスク前立腺がんと診断し、約3ヵ月後に前立腺全摘出および骨盤内リンパ節切除を実施した。手術後、摘出組織の病理所見がカルテ記載と大きく異なることに主治医が気付き、調査の結果、検査結果の取り違えが判明した。患者の身体には手術に起因するとみられる影響が出ているが、詳細は公表されていない。病院は賠償について協議中としている。その一方で、検査結果を誤って外された別患者には、主治医が原本確認を行っており、治療への影響はなかった。同センターでは、11年前にも乳がん検査結果の取り違えによる誤切除事故が発生しており、再発防止が課題となっていた。病院は外部委員を含む医療安全調査委員会を設置し、電子カルテへの検査結果貼付時の患者確認、主治医による原本確認の徹底など、原因究明と再発防止策を検討するとしている。 参考 1)千葉県がんセンターにおけるアクシデントの発生について(千葉県) 2)検査結果取り違え前立腺摘出 電子カルテ誤追記、千葉県がんセンター(朝日新聞) 3)千葉県がんセンター 検査結果取り違え不必要手術 患者に謝罪(NHK) 4)千葉県がんセンター、誤って前立腺摘出 60代男性を別患者と取り違え(日経新聞)

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第299回 いよいよ明後日投票日、今回の各党の医療・社会保障政策は?~野党各党編

INDEX国民民主党日本共産党れいわ新選組減税日本・ゆうこく連合参政党日本保守党社民党チームみらいさて2026年2月8日投開票の衆院選に関連し、前回は与党の自民党、日本維新の会、最大野党の中道改革連合が掲げる医療・社会保障政策を取り上げた。今回は残る野党各党を取り上げる。国民民主党まずは昨今、議席増を続け野党内でも台風の目になりつつある同党は、5つの大きな政策を掲げ、そのもとで中項目(<>内)、さらに小項目(数字項目)を置き、小項目の下にさらにナンバリングした政策各論を提示している。その中身は以下に要約・列挙した。詳細は以下のとおり1.手取りを増やす<1.令和の所得倍増計画>1「消費」の拡大(1)介護職員、看護師、保育士等の給料倍増(介護職員、看護師、保育士等の給料、10年で倍増。処遇改善加算等を対象者に直接給付)(4)社会保険料軽減策の導入(社会保険料還付制度の導入、130万円の壁突破助成金の創設、社会保険料に上乗せされる「子ども・子育て支援金」の廃止)2「中小企業・非正規賃上げ応援10策」1)社会保険料負担軽減(中小・中堅企業の新規正規雇用の増加に伴う社会保険料の事業主負担の半分相当を助成)3.「人づくり」こそ国づくり<5.出産・子育て支援策の拡充と所得制限撤廃>8妊娠・出産に係る公費支援(不妊治療への公的支援やノンメディカルな卵子凍結の助成拡充、小児、若年性がん治療薬の妊孕性温存療法[精子・卵子保存]を保険適用、安全な無痛分娩を受けられる体制整備)9日本型ネウボラの創設(保健師・医師などによる妊娠時から高校卒業までの「伴走型支援」を制度化)<6.子どもの安全と福祉の確保>2子どもの死亡検証(チャイルドデスレビュー)の導入3ヤングケアラー対策(ヤングケアラー支援法の施行状況の検証、実態調査の定期的実施、実態調査に基づく効果的な支援の方法の調査研究)11介護と仕事の両立支援(ビジネスケアラー対策)12ダブルケアラー対策(ダブルケアラー支援法の制定)<10.現役世代と次世代の負担適正化と医療・介護の質向上を両立させる社会保障制度の確立>1年齢ではなく能力に応じた負担(後期高齢者の医療費自己負担の原則2割化、現役並所得者3割。現役並所得の判断基準での金融所得、金融資産等の保有状況を反映)2高齢者医療制度への公費投入増3科学的根拠に基づいた保険給付範囲の見直し(OTC類似薬の医療保険対象見直し、保険外併用療養費制度の弾力化)4ヘルスリテラシー教育の推進5セルフメディケーションの推進(医療用成分のスイッチOTC化推進、検査薬OTC化、リフィル処方箋普及)6中間年薬価改定の廃止(経済成長率を踏まえた新たな薬価改定ルールの策定、中央社会保険医療協議会への医薬品関連業種の代表者の追加)7予防医療・リハビリテーション(認知症・フレイルの予防、リハビリテーションの充実による健康寿命の延伸)8医療提供体制の充実、医療の質と効率の改善(1)医療従事者の負担軽減と働き方改革(医師・看護師・薬剤師等が実施可能な行為や役割の見直し、女性医療従事者の就業継続・再就職支援)(2)地域医療体制の見直しと機能強化(医師の地域偏在や診療科偏在の是正に資する診療報酬評価、かかりつけ医[日本版GP]・かかりつけ薬局[日本版CPCF]制度の導入、人頭払制度、薬剤師の職能活用、地域フォーミュラリー[医薬品の使用指針]の推進)(3)医療DXの推進(オンライン診療、標準型電子カルテ、電子処方箋の普及の推進、「全国医療情報プラットフォーム」の整備を通じた医療情報の共有化)9終末期医療の見直し10介護サービス・認知症対策の充実(訪問介護の基本報酬を引き上げ、全介護職員の賃金を引き上げ、介護福祉士の上位資格「地域包括ケア士(仮称)」の制度化)11介護研修費用の一部補助12介護福祉士国家試験に外国人人材向けの母国語併記13ケアマネジャー研修の負担の軽減(ケアマネジャー研修内容・体制の全国一律化)<12.ジェンダー後進国脱却、多様性社会実現>1生理、更年期障害政策(「生理の貧困」に対応した生理用品の無償配布)4.自分の国は「自分で守る」<1.防災・減災対策強化>4熱中症対策(公共施設、商業施設等の冷房設備を備えた「クーリングシェルター」の指定促進と周知、熱中症警戒アラートのわかりやすい発信と高齢者などへの周知)<3.「総合的な経済安全保障」の強化>1国内調達の拡充(1)国民の命と生活を守る医薬品や医療機器の安定供給確保(革新的新薬へのアクセス確保とドラッグラグ・ドラッグロス改善のため、欧米と比較して相対的に低い新薬収載時の価格算定方式を見直し、特許期間中の薬価維持制度、市場拡大再算定制度の市販後にイノベーションを再評価できる仕組みへ、共連れルール廃止、供給不安に陥っている医薬品について増産支援、不採算に陥ることのない薬価下支え制度、急激な物価高騰に対応できる制度の構築、医薬品メーカーの生産・在庫・出荷状況等を一元管理するデータベース構築)(2)イノベーション創出環境の整備(医薬品や医療機器での「社会課題(公的医療介護費、生産性損失)の解決につながるイノベーション」や「世界に先駆けて生み出されたイノベーション」、「医療の質の向上や医療の効率化に資するイノベーション」を積極的に評価、創薬エコシステム・イノベーション拠点を構築、医薬品や医療機器のイノベーションを促進に向けた各種法規制の国際的調和の推進、質の高い効率的な医療の提供と医薬品や医療機器の研究開発の効率化に向けた「仮名加工医療情報」の二次利用にかかる法整備、臨床試験等に活用しうるデータの標準化と信頼性確保等の推進、フェムテック関連医療機器や医薬部外品の届出、認証の円滑化) 以前から指摘していることだが、同党の医療・社会保障政策は与野党すべてを見回しても、もっとも充実していると言っていい。そして今回の内容は昨年の参院選時のものとまったく同じである。まあ、作り込んでいるがゆえに今さら変更の必要はないということなのだろう。日本共産党現存する日本最古の政党(1922年結党)である同党だが、今回公表された医療・社会保障政策は、かなり数が多い。以下に列挙する(歯科は除く)。詳細は以下のとおり患者負担増や保険料の負担増を起こさないための国費投入・国庫負担の引き上げを行い、診療報酬のさらなる増額・改善を進め、医療従事者の賃上げを実現「地域医療構想」による病床削減、強引な病院統廃合の阻止医師養成数の削減計画を中止し、「臨時増員措置」を継続するなど医師の計画的増員を推進病院の勤務医などの時間外労働上限を引き下げ看護師の計画的な増員を推進OTC類似薬の「特別料金」徴収の阻止70歳以上の窓口負担を一律1割に引き下げ、軽減・無料化を推進1兆円の公費投入増で国保料を協会けんぽの保険料並みへ保険料の「均等割」「平等割」を廃止。「所得割」の保険料率の引き下げ、低所得世帯に重い「資産割」改善生活困窮者の国保料を免除し国庫で補填「国保の都道府県化」による国保料引き上げに反対保険料滞納者への支援なしの10割負担(特別療養費の支給)の中止保険料滞納者の生活相談による収納活動へ転換保険料・窓口負担の軽減障害者、高齢者などの医療費無料化(現物給付)を行う自治体への国保の国庫負担を減額制度の中止国保法第44条の規定にもとづく、生活困窮者の窓口負担(一部負担金)の減免を積極的に推進国保組合が行う独自給付への国庫補助削減を止めて拡充へ18歳までの医療費無料化現役世代の窓口負担の2割への引き下げ高額療養費制度の改善・拡充後期高齢者医療制度の保険料・窓口負担の引き上げを中止。制度を廃止高齢者医療への国庫負担を増額し、現役世代の支援金負担、高齢者の保険料負担を軽減マイナ保険証の強制をやめて健康保険証を存続資格確認書はマイナ保険証の有無に関係なく国民全員に交付不具合続出のマイナカードによるオンライン資格確認の中止・見直し「子ども・子育て納付金」の廃止高額療養費制度の患者負担増案の“復活”を許さず、制度の改善高額療養費制度の負担限度額の上限を引き下げ、「1%」の定率部分を廃止高額療養費限度額の設定を“月ごと”から“治療ごと”に変更世帯の所得区分ごとに年間を通じた高額療養費負担上限額を設定3疾患(血友病、HIV、人工透析の腎臓病)限定の「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」を拡大し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養費給付制度(仮称)」を創設新型コロナ感染症の抗ウイルス薬などに公費補助の仕組みを設定し、患者の自己負担を、インフルエンザのタミフル並みに新型コロナワクチン接種の経済負担軽減の仕組みを創設新型コロナワクチン接種後の有害事象の原因を徹底究明と接種と症状との因果関係の認定に至らなかった事例も含めた幅広い補償・救済コロナ感染者や疑いのある人に対する十分な検査と治療の体制整備(救急・入院の拡充など「コロナ以外」の医療の逼迫が起こらないようにする体制の強化、高齢者・障害者施設、医療機関などにおける検査等の防護措置の実施を国が支援)国の負担で肺・心臓の長期的障害や筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)など、「コロナ後遺症」の治療・研究、患者への生活支援を推進コロナ危機の教訓を踏まえ感染症病床の2倍化、保健所の箇所・職員数の大幅増、集中治療室(ICU)設置を支援する制度の創設ワクチンや治療薬の研究・開発に対する財政支援、水際・検疫体制の抜本的な強化新興・再興感染症の発生・拡大に備える検査・医療体制を拡充し、体制・人員・資器材等を確保教育・保健の連携による性に関わる正しい知識の普及と予防法の周知、検査体制の強化、一般医療機関への情報提供による性感染症の予防・早期発見・治療の実現安全性・有効性が確認されたワクチンの公費接種事業を推進。ワクチン接種後に有害事象が起こった事例の原因の徹底究明と調査、被害者の治療・補償・救済を、国の責任で推進。医療費適正化計画の撤廃混合診療、保険外治療の拡大の阻止差額ベッド料などの自費負担を廃止株式会社による医療経営解禁を阻止協会けんぽへの国庫補助を法定上限の「20%」に引き上げ、労働者・中小企業の負担軽減にむけた、国の支援を強化国民の健診データ・情報の営利企業に引き渡しに反対薬価構造を根本的に見直し新薬などの高薬価是正で得られた財源を医療の充実や医療従事者の処遇改善などへ必須医薬品の安定供給を確保するため、後発品(長期収載品)の薬価を採算のとれる水準にするよう見直し。同時にメーカーに責任を課し、委託生産の規制強化や、原薬の国産化を推進無料低額診療への支援を強化し、薬剤費への制度適用を目指す医薬品・医療機器に偏った報酬評価のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価する診療報酬に改革「包括払い(定額制)」の導入・拡大に反対初・再診料、入院基本料の引き上げ標準算定日数を超えたリハビリを「保険外併用療養」とする制限を廃止人工透析「夜間・休日加算」を患者負担の軽減とともに適切な水準へ引き上げ出産一時金のさらなる増額と出産費用の無償化助産師の養成数を増やし、助産院へ公的支援助産院を地域の周産期医療ネットワークに位置付け、助産師と産科医の連携を国の責任で推進通常分娩の保険適用・窓口無料化の実現時は助産師による出産、妊産婦へのケアや各種指導なども産科医療機関との連携など安全確保を前提に保険適用医療事故の検証を行う調査機関に関する制度の改善産科医療補償制度の抜本的見直しを進めつつ、無過失補償制度を創設患者の権利を明記し、医療行政全般に患者の声を反映する仕組みをつくる「医療基本法」の制定現行の「診療明細書の発行」を見直し国の責任で、がんの専門医の配置や専門医療機関の設置を推進未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進保険診療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税を還付社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置、医療機関の概算控除の特例の継続・存続救急・救命体制への国の補助を2倍化。新しい国の補助制度をつくり、ICU病床(HCUを含む)の2倍化救急隊員の抜本増、ドクターヘリの充実、地域医療の再生とあわせた救急・搬送体制の整備・拡充国の責任で小児救急体制を整備し、新生児特定集中治療室(NICU)の増設はり・きゅうの保険適用の改善・拡充在宅医療・介護における駐車問題の解決 いやはや、今回の同党の政策の多いこと多いこと。ただし、率直に言えば既存政策への「反対」「撤廃」「中止」などの文言が多く、実現の可能性について、私個人は相当疑問符が付く。もっとも、どの政党も提案していない新型コロナワクチンの定期接種に関する接種費用補助は目を引く。この辺は他党に見習ってもらいたいものである。れいわ新選組ご存じ山本 太郎氏を代表とする同党だが、山本氏が「多発性骨髄腫の一歩手前」と公表し議員辞職。そして最近は共同代表の大石 あきこ氏が代わりにメディアに登場している。同党のマニフェストでは5つの大項目を掲げ、その下に具体的な政策を標榜している。以下、要約・列挙する。詳細は以下のとおり03.社会保険料は国のお金で引き下げる後期高齢者医療制度は廃止し、全額国費負担介護保険の国負担割合を50%以上に引き上げ04.生きててよかったと思える国~今すぐできる少子高齢化対策~介護・保育の月給10万円アップ民間事業者が少ない地域で介護士を公務員化し「公務員ヘルパー」を復活介護保険の利用者負担を一律1割。低所得者の利用料免除・減免を制度化要支援1、2のホームヘルプ、デイサービス利用の保険給付復活介護保険サービスを趣味など生活の充実にも利用可能に 上記以外にも「国立病院、公立病院の統廃合、病床の削減(地域医療構想)の中止」「マイナンバーカード廃止」「健康保険証の復活」などがあるが、基本的に同党も2025年の参院選と政策に変更はない。減税日本・ゆうこく連合衆院解散直前の立憲民主党と公明党の新党結成に反発した立憲民主党の原口 一博氏(元総務相)と、日本保守党を離党し、衆院内会派で「減税保守こども」を結成していた河村 たかし氏(元名古屋市長)、竹上 裕子氏、平岩 征樹氏、参政党を離党した鈴木 敦氏が参加して、原口・河村両氏が共同代表で結成した。当初5人の国会議員がいることで、政党要件を満たしたが、最終的には鈴木氏が出馬を見送ったため、現状は4人。今回は4つの大きなスローガンを公約として発表している。その中の1つ「三、日本救世【命・安全・教育】国民の命を利権から守り抜き、次世代へ豊かな国土を引き継ぎます」の項で以下のような公約を掲げている。詳細は以下のとおり命を守る決断:新型コロナワクチン(遺伝子製剤)の接種を直ちに中止し、被害の実態解明と全ての被害者の救済を最優先医療・福祉の最適化:ICTを活用した「かかりつけ医制度」の導入により、過剰医療や医療過誤を是正。難病・障害者基本法の改正により合理的配慮を徹底 2番目はまだしも、1番目ははっきり言っていただけない。ご存じのように共同代表の原口氏は、mRNAワクチンについて、かなり出所不明な情報を発信するワクチン懐疑派。このためmRNAワクチンの製造・販売元の1社であるMeiji Seikaファルマから、名誉棄損による損害賠償請求訴訟を起こされている。参政党さて、前回の参議院選も含め昨今の選挙では、国民民主党とともに議席を伸ばしている同党。以前も取り上げたように、失礼ながらややトンデモ政策が多いのだが、今回はどうだろう?今回は3つの柱と9の政策(<>内)を掲げ、9つの政策の下に詳細な説明も加わっているほか、分野別の詳細政策も掲げている。詳細は以下のとおり1の柱 日本人を豊かにする~経済・産業・移民~<政策1“集めて配る”より、まず減税>消費税減税と社会保険料軽減で国民負担率上限35%実現2の柱 日本人を守り抜く〜食と健康・一次産業〜<政策6 安心医療で健康国家>診療・介護・障害福祉報酬を抜本的に引き上げ、基礎年金の受給額の底上げ医療・介護・福祉従事者の賃金アップと過重労働の改善健康維持・重症化予防に取り組む人へのインセンティブ付与新型コロナ対応を検証し、実効的な感染症対策を再構築以下は「健康・医療」の分野別政策守る医療、正す医療。現場を救い、制度を持続させる仕組みを再構築診療・介護・障害福祉報酬(各サービスの公定価格)を抜本的に引き上げ、医療・介護・福祉従事者の賃金をアップし、過重労働を改善不必要な重複検査や過剰な治療・投薬等については、医学的妥当性を重視し、適正化かかりつけ医機能を重視し、継続的な健康管理や相談に取り組む医療機関を評価する報酬体系を検討OTC医薬品で対応可能な軽症疾患はセルフケアを基本とし、安易な処方を抑制(重症化や合併症のリスクが高い疾病での必要な治療・投薬を妨げるものではない)フリーアクセスで、いつでも何回でもどの医療機関でも受診ができる仕組みを見直す医療DXを活用し、業務効率化や研究開発に繋げる予防医療の推進により、医療費適正化と地域経済活性化を両立科学的根拠が確立した予防医療・重症化予防を段階的に保険対象へ生活習慣病、フレイル、認知症等について、予防・再発防止に取り組んだ医療機関を評価する制度を導入健康診断、重症化予防、生活習慣改善等により、医療費適正化に貢献した方を評価する仕組みを導入。評価に応じて、国内旅行クーポンや地域消費につながるインセンティブ制度を検討。新型コロナ対応とmRNAワクチン施策の検証~次なる感染症に備えるための、責任ある再構築政府で新型コロナ対応およびmRNAワクチン施策全体について、独立性・透明性を確保した検証実施を求め、検証結果を国民に分かりやすく公表mRNAワクチンは短期的な効果だけでなく、中長期的影響を見据えた安全性評価と治験・調査を徹底新型コロナウイルスを含む新興感染症でウイルスの発生経緯・拡大要因・対応について、政府が専門的かつ独立性の高い検証を実施WHOなど国際機関の情報や勧告などは、日本の実情に即して妥当性を科学的に評価し、主体的に判断できる体制を整備。国際機関の判断が日本の状況に適さないと合理的に判断される場合は、国内専門機関の評価を優先できる制度設計高リスク病原体を扱う国内研究施設について、立地、管理、運用に関する安全基準を厳格化し、事故・流出リスクを最小化科学的根拠の明確な提示と、国民一人ひとりの自己決定権を最優先とするワクチン政策ワクチン接種は、年齢・基礎疾患・重症化リスクを踏まえた任意接種を原則効果と副反応などのリスクについて、国民に分かりやすく情報提供接種後の健康影響について、中長期的な追跡調査と結果の公表を実施医師による副反応報告と健康被害救済制度への協力体制を強化がん・難病の“治療と生活”を国の責任でしっかり守る総合支援がん・難病に関し、国の責任で「治療と生活」を守る。診断の遅れ、手続きの壁、医療格差、地域格差をゼロへがん・難病の患者が抱える就労・学業・介護・移動・家族負担を含む「生活困難」に対し、医療にとどまらず、福祉・労働・教育・地域政策を束ねて一体で実装治療法の確立と新薬開発支援を拡充し、実用化までの期間短縮。そのための研究投資とデータ基盤整備を推進有効性が確認されたがん検診の費用補助等により、受診率を全国的に引き上げ老老介護やヤングケアラーを地域全体で支える仕組みを構築介護を社会の基盤へ:地域包括ケア強化と年金改革で老後不安を解消「65歳以上を高齢者」の定義の見直し介護報酬を引き上げ老老介護や介護離職を防ぎ、制度と地域で支える仕組み作り加算の申請手続きなど、行政が現場に要求する過剰な負荷を減らし、DX化も推進介護・医療・住まい等を包括的に捉えて、地域で密に連携する仕組み作りフレイル・認知症予防への積極的取組、地域の居場所・見守りを国が支援本人が望んでいない終末期における過度な延命治療を見直す本人の意思を尊重し、医師の法的リスクを回避するための尊厳死法制を整備人生会議(ACP)、事前指示書、生命維持治療に関する医師の指示書(POLST)の普及と制度的位置づけの明確化緩和ケア、在宅看取り、ホスピス等、尊厳を保持した医療の拡充終末期の延命措置医療費の負担の在り方の見直し さてざっと見まわすと、以前に本連載で批判的に捉えた予防医療のインセンティブ(Go Toトラベル)やすべてのワクチンを任意接種にするなど、まるで米国・保健福祉長官ケネディ氏のような政策が目につく。一方、がん・難病でのデータ基盤整備や介護での加算申請手続きの軽減などは玄人的な政策がある点も目を引く。誰かが入れ知恵したのだろうか?日本保守党移民反対を前面に打ち出す同党の医療・社会保障政策は結党以来、まったく変更はなく以下の2点である。詳細は以下のとおり移民政策の是正―国益を念頭に置いた政策へ健康保険法・年金法改正(外国人の健康保険・年金を別立てに)教育と福祉出産育児一時金の引き上げ(国籍条項をつける) そもそもシングルイシューの政党と言ってもよく、有体に言えば、少なくとも現時点では社会保障政策自体にそれほど強い関心はないのだろう。社民党旧日本社会党を源流とし、社会民主党、社民党と名称を変えてきた同党だが、最盛期の日本社会党時代に衆院で166議席も有していた議席は今やゼロ。参院で2議席のみである。今回は「社民党8つの提言」の中で「最低保障年金制度の樹立で老後の安心を!介護と医療の負担を軽減!」を掲げ、以下のような政策を提唱している。詳細は以下のとおり介護報酬を引き上げ、介護従事者の待遇を改善して人手不足を解消。混合介護と自由診療を規制高額医療費や一般用医薬品(OTC)医薬品の自己負担増に反対マイナ保険証の取得強制に反対し、紙の健康保険証を継続国公立病院の統廃合を認めない 今回唱えている政策は、ほとんどが前回の参院選時に掲げていたもの。唯一異なる点があるとするならば、「混合介護」と表現している介護の保険外サービス利用と自由診療の規制の点である。チームみらいAI研究者だった安野 貴博氏が創設した新党で、昨年の参院選では安野氏自身が比例で1議席を獲得して政党要件を満たした。2024年東京都知事選挙に立候補した時に本連載でも本人に取材し、安野氏の政策はアジャイルな設計で、有権者からの意見を受け付け柔軟に変化することがわかった。そのため、ここに記述したものも投票日までに変更されている可能性がある。政策は大きく3つの大項目で構成され、その下にテーマ(<>内)、さらに個別政策という構成。以下、要約・抜粋する。詳細は以下のとおり(2)「今」の生活をしっかり支援<経済財政・社会保障>現役世代の社会保険料負担を軽減し、フェアな税・社会保障制度を目指す「税収」(1)現役世代の過度な負担を回避し、国民全体で支えられる方法を検討(2)入国税や非居住外国人に対する固定資産税の引上げ、外国人旅行者の消費税免税制度の見直しなど日本の生活者に影響の小さい歳入源の拡充も検討「支出」影響が大きい方への配慮を行いながら、医療費の自己負担割合の一律3割を目指す。 加えて、「医療」パートに示す制度改革に取り組む<医療>1.医療の有効性・重要度に応じたきめ細やかな自己負担へ高額医療費制度の上限の拙速な引き上げを見直し中長期的に診療行為のエビデンス、費用対効果や重症度に基づく自己負担割合の複数段階化を検討電子レセプトに連携し窓口で即時に自己負担額が算出できるAI、システムの開発を支援。医療DXを推進する支援の枠組みも整備2.治療成果に報いる医療アウトカム評価制度の導入「どれだけ診療が行われたか」だけでなく、「どれだけ良くなったか」にも報いる医療制度への転換を目指し、成果連動型の診療報酬制度を導入(治療の効果が高い医療機関に対しての報酬加算、患者に対しての還元を設計し、医療機関・患者の双方に動機づけを行う)診療データを匿名化し、全国医療データベース(NDB)で一元管理。AIを活用した公平で迅速な評価を行う仕組みを整備(電子カルテの標準化、相互運用性の確保を推進。診療記録や検査結果をデータ化して治療成果を判定、成果加算が自動的に反映される仕組みを設計。アウトカム評価指標の提出、確認が行われることで医療機関の負担が増えないよう、民間企業と連携した電子カルテの解析システムの開発を促進)3.オンライン診療/処方受け取り方法を充実し、通院のない受診を実現オンライン診療普及のための診療報酬、インセンティブの設計(オンライン診療を普及促進の診療報酬の加算を検討)安全性を担保するためのガイドライン整備(本人確認、重症化時のバックアップ体制など、オンライン診療を安全に行い、標準的なサービスを担保するための規定を整備)薬の受け取りまでオンラインで完結するための枠組みの整備(自動運転やドローンでの配送物流コストの診療報酬での手当を検討)4.画像診断AIで見逃しリスクと医師不足の解消を同時にシステム導入費の補助による画像解析システムの導入診断AIへの加算を制定し継続利用を促進。AI画像解析の成果について評価を実施人とAIが協働する医療のルール整備<福祉>5.福祉・介護従事者の処遇改善・テクノロジーによる業務負担軽減を推進障害福祉・介護従事者の給与水準を全産業平均に近づける賃上げ方策の検討テクノロジー活用推進、福祉・介護従事者の待遇改善を目的とした基本報酬改定の検討生産性向上推進体制加算の拡充とテクノロジー活用を標準とした新たな報酬類型を創設施設類型を中心に進められている生産性向上推進体制加算の適用を在宅系サービスへ拡大福祉・介護職員等処遇改善加算による賃上げ効果を向上のため、テクノロジー活用と経営改善による利益を福祉・介護職員へ還元する制度の改定 さて比較的AIに懐疑的な人は、これらを見て「テクノロジーで解決できるほど医療は簡単ではない」と言うかもしれない。ただ、ここで提言されている政策をよく読めば、実はテクノロジー一辺倒ではないことがわかるのではないだろうか?たとえば、医療者が嫌うであろう診療報酬のアウトカム評価も何を行ったかの実績評価との併用で語っている。また、ここでは私が要約したが、実はチームみらいのホームページに行くと、それぞれの政策を掲げるテーマの背景まで深く分析している。私見を言えば、既存政党は長らく政治に関わりながら、こうした背景分析をきちんとしているだろうか?ここまで超長文、かつかなり駆け足で各党の政策を紹介した。このように駆け足になったのはひとえに戦後最短の選挙期間というのが最大の理由であるため、ご容赦願いたい。さて8日の投開票結果はいかに?

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不思議の国のアリス症候群、特定の薬剤が関連か

 不思議の国のアリス症候群(Alice in Wonderland syndrome:AIWS)は、物体や人の大きさが変わって見える、体が宙に浮くような感覚、時間の歪みなどの視覚的・知覚的歪みを伴う神経疾患である。従来から片頭痛やてんかん発作との関連が指摘され、その後、腫瘍や感染症、さらには薬物との関連も報告されている。フランス・ニース大学病院のDiane A. Merino氏らによる研究グループは、世界保健機関(WHO)の医薬品安全性データベースを解析した結果、モンテルカストやアリピプラゾールなどの特定の薬剤がAIWSの発現に関与している可能性を明らかにした。Psychiatry Research誌2026年2月号に掲載。 本研究では、1967年~2024年12月15日までにWHO医薬品安全性データベースVigiBaseに登録されたAIWS症例を抽出し、小児(0〜17歳)と成人(18歳以上)に分けて不均衡分析を実施した。AIWSと薬剤の関連性は、シグナル指標としてInformation Component(IC)と95%信頼区間(CI)を算出し、95%CIの下限値(IC025)が正の値を示す場合をシグナルが検出されたとみなした。 主な結果は以下のとおり。・抽出されたAIWS 87例のうち、小児は26例(29.9%)で平均年齢7.1歳(標準偏差[SD] 4.0)、成人は45例(51.7%)で40.6歳(SD 13.0)であった。・56例(64.4%)が重篤と判断された。転帰が判明している症例のうち43例(79.6%)が回復または回復中であることが確認された。・小児群では、喘息・アレルギー治療薬のモンテルカスト(IC:3.2、95%CI:1.7~4.2)および注意欠如・多動症(ADHD)治療薬のメチルフェニデート(IC:2.3、95%CI:0.3~3.5)において有意なシグナルが検出された。・成人群では、抗うつ薬のセルトラリン(IC:3.4、95%CI:2.1~4.4)、抗てんかん薬のトピラマート(IC:3.1、95%CI:1.3~4.2)、抗精神病薬のアリピプラゾール(IC:3.6、95%CI:2.5~4.4)、およびモンテルカスト(IC:2.7、95%CI:0.7~3.9)に有意な関連が認められた。・新型コロナウイルスワクチンも頻繁に報告されていたが(17例、19.5%)、統計的に有意なシグナルは検出されなかった(IC:0.63、95%CI:-0.26~1.31)。一方で、髄膜炎菌ワクチンについては有意なシグナルが認められた(IC:2.7、95%CI:1.2~3.7)。 本研究により、メチルフェニデートやモンテルカストといった特定の薬剤が年齢層に応じてAIWSを引き起こすトリガーとなる可能性が示唆された。著者らは、AIWSは通常、薬剤の投与中止により回復するが、視覚的・知覚的歪みの症状が患者に混乱をもたらす可能性があるため、慎重なリスク・ベネフィット評価が必要であり、本研究は自発報告データベースに基づくため、今後さらに大規模な集団ベースの調査が必要だとまとめている。

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第47回 脅威の致死率「ニパウイルス」について、私たちが知っておくべきこと

南アジアを中心に、散発的ながらも深刻な被害をもたらし続けている「ニパウイルス」。高い致死率とパンデミックを引き起こす潜在的なリスクから、世界保健機関(WHO)も「最優先で対策すべき病原体」の一つに指定しています1)。日本とニューヨークの医療現場ではもちろん出会ったことのない感染症ではありますが、最近になりインドで感染者が確認され、話題となっています。今回は、このウイルスの正体や感染の仕組み、そして希望の光となりうるワクチン開発状況について、これまで報告されている論文に基づいて解説します。「最優先病原体」ニパウイルスの正体とは ニパウイルスは、1998年にマレーシアで初めて確認されたウイルスで、オオコウモリを自然宿主としています1)。当初はブタを介してヒトへ感染しましたが、その後のバングラデシュやインドでの流行では、ウイルスに汚染されたナツメヤシの樹液を摂取することによる感染や、ヒトからヒトへの直接感染も確認されています2)。 このウイルスが恐れられている最大の理由は、その高い致死率にあります。流行の場所やウイルスの変異などによっても異なりますが、致死率は40%から、高い場合では75〜100%にも達すると報告されています1, 2)。ただし、新興感染症が生じた場合の常ですが、軽症者や無症状の患者は検出されていない可能性があり、実際の致死率は報告されている数値よりも低くなる可能性が高いと考えられます。しかしいずれにしても、新型コロナウイルスと比較すると、感染した場合の重症度は桁違いでしょう。 感染すると、発熱、頭痛、筋肉痛といった風邪のような症状から始まり、多くの場合は急速に悪化して重篤な脳炎を引き起こします2)。けいれんや意識障害が現れ、発症からわずか24〜48時間で昏睡状態に陥ることもまれではありません1, 2)。また、回復した場合でも、約20%の人に神経学的な後遺症が残るとされており、長期的な生活の質への影響も甚大とされています1)。ヒトからヒトへはどう広がるのか? 一般的にニパウイルスのヒトからヒトへの感染伝播(基本再生産数)は起こりにくいとされていますが、特定の条件下では「スーパースプレッダー」のような現象が起こりうることも指摘されています。この点について、バングラデシュでの14年間にわたる調査データがNew England Journal of Medicine誌に掲載されているのでご紹介します3)。 この研究によれば、ヒトからヒトへの感染リスクを高める要因として、呼吸器症状、年齢、濃厚接触かどうかといった点が指摘されています。 呼吸困難などの呼吸器症状がある患者は、そうでない患者に比べて、他者に感染させるリスクが劇的に高いようです。この研究では、呼吸器症状のない患者からの感染拡大は、きわめてまれであったのに対し、呼吸困難を伴う患者は感染源になりやすいことが示されています3)。これは、咳などによる飛沫が感染の主要なルートとなりうることを裏付けています。 また、患者の年齢が高い場合や、看病などで長時間(とくに48時間以上)患者と接した場合、または患者の体液に直接触れた場合に、感染リスクが有意に増加するようです。実際、配偶者への感染率は他の親族よりも高いという結果が報告されています3)。 こうしたデータは、私たちが住む地域で万が一感染者が発生した場合にどう行動すべきかを教えてくれます。つまり、呼吸器症状のある患者との接触には飛沫感染予防策を含む最大限の警戒が必要で、体液への曝露を防ぐための厳重な感染防御策も不可欠だということです。進むワクチン開発 現在、ニパウイルス感染症に対して承認された特効薬やワクチンは残念ながら存在しません1)。治療はあくまで症状を和らげる対症療法に限られており、これが高い致死率が報告される一因となっています。リバビリンなどの抗ウイルス薬が試されたこともありますが、その効果は限定的あるいは不明確のようです1)。 しかし、希望がまったくないわけではありません。すでに、ニパウイルスワクチンの第I相臨床試験の結果が発表されています4)。 この試験で用いられたのはサブユニットワクチン。これは、ニパウイルスと非常に似た構造を持つヘンドラウイルスのタンパク質(G糖タンパク質)を利用したもので、交差免疫(似たウイルスに対する免疫反応)によってニパウイルスも防ごうという戦略です。 この試験は18~49歳の健康な成人を対象に行われていますが、深刻な副反応や死亡例は報告されず、主な副反応は注射部位の痛みなどの軽度なものでした。 また、100μgのワクチンを28日間隔で2回接種したグループで最も高い効果が得られ、2回目の接種から7日後には、ニパウイルスに対する中和抗体(ウイルスを無力化する抗体)が劇的に上昇しました4)。 この結果は、まだ初期段階の試験ではあるものの、将来的にこのワクチンが実用化されれば、流行地域で感染拡大を防ぎ医療従事者を守る予防接種として使える可能性を示唆しています。今、どう向き合うか ニパウイルスは、現時点ではヒトからヒトへの感染伝播が起こりにくい以上、日本国内で大規模な感染流行が起こったり、世界的なパンデミックを起こすリスクは低いと考えられます。そこは冷静に捉えておくべきでしょう。しかし、グローバル化が進む現代において「対岸の火事」と決めつけることもできません。 同時に、私たち人間は無力でもありません。ワクチンのような科学の進歩が、着実に解決への道を切り開きつつもあります。今私たちに必要なのは、「ただ恐れる」ことではなく「解像度の高い理解」でしょう。病原体が身近になればなるほど、誤情報も増加します。データが示す科学的根拠とともに、今後の動向を冷静に見つめていく必要があります。 1) Madhukalya R, et al. Nipah virus: pathogenesis, genome, diagnosis, and treatment. Appl Microbiol Biotechnol. 2025;109:158. 2) Ganguly A, et al. The rising threat of Nipah virus: a highly contagious and deadly zoonotic pathogen. Virol J. 2025;22:139. 3) Nikolay B, et al. Transmission of Nipah Virus - 14 Years of Investigations in Bangladesh. N Engl J Med. 2019;380:1804-1814. 4) Frenck RW Jr, et al. Safety and immunogenicity of a Nipah virus vaccine (HeV-sG-V) in adults: a single-centre, randomised, observer-blind, placebo-controlled, phase 1 study. Lancet. 2025;406:2792-2803.

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日本人高齢者の緊急入院で死亡率が高いのは? インフルvs.コロナvs.RSV

 50歳以上(平均年齢81.4歳)を対象とした前向きコホート研究において、急性呼吸器症状による緊急入院では、RSウイルス(RSV)陽性者がSARS-CoV-2やインフルエンザA/B陽性者と比較して、30日全死亡率が高かった。このことからRSV感染症は、高齢者の看過できない死亡リスク因子であることが示唆された。本研究結果は、森本 剛氏(兵庫医科大学)らによって、Clinical Microbiology and Infection誌オンライン版2026年1月10日号で報告された。 研究グループは、日本の3施設(島根県立中央病院、洛和会音羽病院、奈良市立病院)において、急性呼吸器症状または徴候を呈して緊急入院した50歳以上の成人を対象に、前向きコホート研究「EVERY study」を実施した。登録期間は2023年7月1日~2024年12月31日とした。入院後24時間以内に採取された鼻咽頭ぬぐい液を用いて、FilmArray呼吸器パネル2.1による多項目遺伝子検査を行い、RSV、SARS-CoV-2、インフルエンザA/Bの陽性割合と臨床転帰(30日全死亡、下気道疾患[LRTI]、modified LRTI[画像所見を組み込んだ定義])を検討した。また、ワクチン接種歴(COVID-19[新型コロナウイルス感染症]ワクチンとRSVワクチンは過去に1回以上接種で接種あり、インフルエンザワクチンは当該シーズンに1回以上接種で接種ありとした)も調べた。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった3,067例(平均年齢81.4歳、男性55.3%)において、各ウイルスの陽性割合は、インフルエンザA/Bが2.3%、SARS-CoV-2が18.0%、RSVが1.6%であった。・解析対象(3,067例)のワクチン接種割合は、インフルエンザワクチン37.9%、COVID-19ワクチン62.3%、RSVワクチン0%であった。・抗ウイルス薬の投与割合は、インフルエンザA/B群62.3%、SARS-CoV-2群71.8%、RSV群0%であった。・30日全死亡率は、インフルエンザA/B群が2.9%であったのに対し、SARS-CoV-2群8.4%、RSV群14.3%であった。・インフルエンザA/B群を対照とした場合の30日全死亡の調整オッズ比は、SARS-CoV-2群が2.9(95%信頼区間[CI]:0.83~17.9)、RSV群が5.2(95%CI:1.2~36.7)であり、RSV群が高かった。・入院時のLRTIの割合は、インフルエンザA/B群88.4%、SARS-CoV-2群82.8%、RSV群87.8%であった。modified LRTIは、それぞれ95.7%、93.1%、93.9%といずれも高率であった。 本研究結果について、著者らは「急性呼吸器症状で緊急入院する高齢者において、RSVはインフルエンザやCOVID-19よりも高い死亡率に関連するリスク因子であった」と結論付けている。また「RSV陽性者の高い死亡率の背景には、抗ウイルス薬の使用機会がないことやワクチン未接種が影響している可能性がある」と考察し、日常診療におけるRSVの認識向上とともに、ワクチン接種を含む予防の重要性を強調している。

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コロナワクチン接種を躊躇する理由を大規模解析についてのコメント(解説:栗原宏氏)

特徴・ワクチン接種に関して「どの階層」が「どんな理由で」ためらったかを明らかにし、経時的な変化と実際の接種行動を調査している。・自己申告ではなく、本当に接種したかまでNHSワクチン記録で追跡している。 本調査は、イギリスの一般住民を対象とした大規模COVID-19モニタリングプログラムに参加した成人113万人を対象として、COVIDワクチンに対する態度(ためらいや拒否など)とその後実際にワクチンを接種したかどうかをNHSワクチン記録と照合して分析したコホート研究である。 この研究のポイントは、ワクチン接種への考え方が変化しやすい群と拒否や不信が強く接種に至りにくい群を、理由・属性と併せて定量的に示した点にある。 多変量ロジスティック回帰の結果では、接種を躊躇する傾向が強いのは、若年層(18~24歳)、女性、白人以外の民族(とくに黒人)、社会経済的な不利、低学歴、失業・非労働人口、COVID既感染、うつ病・不安症、喫煙者であった。最終的に接種しなかったことと関連した要因として・学歴が低い・失業・非労働人口・COVID既感染歴・喫煙者・うつ病、不安症などの精神疾患(自己申告)が挙げられている。未接種の理由としては、・ワクチン全般に反対・COVIDの影響が誇張されていると認識している・ワクチン開発者を信頼していない・COVIDは自分にとってリスクではないと感じているといった回答と強く結びついていた。 COVIDワクチンへの躊躇の多くは「効果」「安全性」「長期的影響」に関する具体的な懸念に由来しており、これらは時間経過、情報提供によって解消されやすい。これに対して、「ワクチン全般への拒否感」「COVIDそのものへのリスク認識の低さ」「政府・専門科・情報への不信」を背景にした人たちは最後まで接種しない傾向が強い。 本研究よりも小規模な調査が日本国内でも実施されており、ほぼ同様に若年層や女性、低学歴・低所得・既感染・不信感の強い層では接種に躊躇する傾向が報告されている。イギリスでの調査ではあるが、日本においても属性による経時的な考えの変化があると推測される。ワクチン接種を推奨するに当たり、一律の情報提供では不十分で、理由・属性ごとに「変わりやすさ」が異なることを踏まえた対応が求められる。

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コロナ禍で新規診断が増えた疾患・減った疾患/BMJ

 英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMark D. Russell氏らによる、OpenSAFELY-TPPを用いたコホート研究の結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、うつ病、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、骨粗鬆症の新規診断は予測値を下回ったのに対し、慢性腎臓病は2022年以降に診断数が急増し、サブグループ解析ではとくに認知症に関して民族および社会経済的状況により新規診断数の回復パターンに差があることが示された。著者は、「本研究は、日常診療で収集される医療データを用いた疾病疫学のほぼリアルタイムのモニタリングの可能性を示すとともに、症例発見の改善や医療の不平等を検討するための戦略立案に寄与する」とまとめている。BMJ誌2026年1月21日号掲載の報告。イングランドの約3千万例対象、COVID-19パンデミック前後の慢性疾患の新規診断と有病率を解析 研究グループは、2016年4月1日~2024年11月30日に、OpenSAFELY-TPPプラットフォームにデータを提供している一般診療所に登録され、かつ診療所に対して直接の医療に関与しない組織への個人データの共有を希望しない旨の登録をしていない患者2,999万5,025例を対象として、19の慢性疾患について年齢・性別標準化発症(新規診断)率および有病率の経時推移を検討した。 19の慢性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、冠動脈心疾患、慢性腎臓病(ステージ3~5)、セリアック病、COPD、クローン病、認知症、うつ病、2型糖尿病、てんかん、心不全、多発性硬化症、骨粗鬆症、リウマチ性多発筋痛症、乾癬、関節リウマチ、脳卒中/一過性脳虚血発作、潰瘍性大腸炎。 COVID-19パンデミックが、これら慢性疾患の診断に与えた影響を評価する目的で、パンデミック前のパターンから予測された期待診断率に基づく季節変動自己回帰和分移動平均(seasonal autoregressive integrated moving average:SARIMA)モデルを用い、パンデミック発生後の予測診断率と実際の観察診断率の差を比較した。パンデミック初年度に新規診断が急減、4年後もうつ病などは減少したまま パンデミック発生後の新規診断率はパンデミック前と比較し、初年度(2020年3月~2021年2月)に19疾患のすべてで急減した。ただし、その後の回復傾向は疾患ごとに異なった。 2024年11月時点でも、いくつかの疾患では新規診断数が予測値を下回っており、とくにうつ病(予測より-73万4,800件[-27.7%]、95%予測区間[PI]:-76万6,400~-70万3,100)で減少幅が最も大きく、喘息(-15万2,900件[-16.4%]、95%PI:-16万8,300~-13万7,500)、COPD(-9万100件[-15.8%]、-9万8,900~-8万1,400)、乾癬(-5万4,700件[-17.1%]、-5万9,200~-5万100)、骨粗鬆症(-5万4,100件[-11.5%]、-6万1,100~-4万7,100)も大きく減少した。 一方、慢性腎臓病の診断数は、パンデミック初期に減少したものの、2022年以降はパンデミック前の水準を上回る増加を示した(予測より35万9,000件[34.8%、95%PI:33万3,500~38万4,500]増加)。 人種および社会経済的状況で層別化したサブグループ解析の結果、パンデミック初期の減少後、白人および社会経済的困窮度が低い地域では、認知症の診断率がパンデミック前の水準を上回って増加したが、他の人種および困窮度が高い地域では増加しなかった。

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第300回 東大皮膚科教授、高級クラブやソープランドで約30回、約180万円の接待受け収賄で逮捕、国際卓越研究大学の認定に黄信号

消費税減税、自民党議員の中にも反対多数こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週末、とある医療・介護関係者向けのセミナーに参加し、いくつかの興味深い話を聞きました。1つは東北地方の病院長の話です。患者数減少などのため病床数を削減、診療科目も制限する中、地元の大学医学部からの医師派遣の申し出も断るようになった、とその病院長は話していました。医師の賃金に加え、交通費等も加えると1日当たり10万円近くとなり、年間では馬鹿にならない金額になるため、経費削減目的でもあるとのことです。地方では医師不足が叫ばれていますが、病床削減や再編・統合が今まで以上に進めば、医師のポストのみならず、派遣医の需要自体も減っていくことになります。近い将来、東北地方のみならず全国で、医局のジッツだけではなく大学の若手医師のバイト先も減りそうです。もう1つは、自民党の参議院議員(医系議員)の話です。高市 早苗総理大臣は衆議院解散の意向を発表した1月19日、「軽減税率が適用されている飲食料品については、2年間に限り消費税の対象としない」との方針を打ち出しました。しかし、この議員は、消費税減税について、減税分の財源の目処が立っていないことや、社会保障費への影響が大きいことなどを理由に「反対」の姿勢を明確に示していました。自民党内でも消費税減税に反対する声は多そうです。消費税減税について高市氏は「私自身の悲願」と語っていましたが、自民党の公約の記述には「財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速します」と書いてあるだけです。「検討を加速」は典型的な“霞ヶ関文学”で「何もしないという意味」と解釈するメディアもあります。衆院選で仮に与党が勝利したとしても、消費税減税の行方は当面は不透明、場合によっては実現しない可能性もありそうです。ほかの医師の逮捕が相次いでも「自分は大丈夫」と堂々と賄賂を受け取る医師たちところで、本連載も今回で無事300回を迎えることになりました。ちょうど新型コロナ感染症のパンデミックが本格化し始めた2020年4月1日に「第1回 医療関係者が医療関係者を『バイ菌』扱いしちゃダメだろ」でスタートした本連載、「無事」とはいうものの少々書き過ぎた回もあり、幾度かは“クレーム”や“反論”対応することもありました。幸いいずれもボヤ程度で済み、連載をなんとか続けてこられました。担当編集者と、鷹揚な読者の皆さまのおかげと言えます。深く感謝申し上げます。本連載でとくに多く取り上げて来たのは医師や医療機関が起こした不祥事です。中でも「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」を皮切りに、幾度も取り上げた三重大臨床麻酔部の元教授が起こした贈収賄事件は、裁判の資料を入手するために三重の津地裁を訪れたりもしており、印象に残る事件です。医学部教授が自らの地位を利用して製薬会社や医療機器メーカーから現金を受け取っていたこの事件(裁判は最高裁まで行き、昨年有罪が確定)ですが、こうした他大学や病院の医師が逮捕される事件が相次いでも、「自分がやっていることは大丈夫」と堂々と賄賂を受け取る医師がいなくならないのはとても不思議です。先週末の1月24日にも、東京大学大学院医学系研究科のS教授(62、専門は皮膚科学)が収賄容疑で逮捕されました。東大は昨年11月にも整形外科医が逮捕されています。世の中は「また東大かよ」とあきれているに違いありません。「第298回 東大、国際卓越研究大学にまたまた選ばれず継続審査へ、その“敗因”はどこに?」でも書いたように、東大は国際卓越研究大学の選定において、2025年11月にも医学部の准教授が収賄容疑で立件されるなど不祥事が相次いだことで、大学トップを含む責任体制の構築が必要とされました。最長1年間審査は継続されますが、有識者会議は「継続審査中に、法人としてのガバナンスに関わる新たな不祥事が生じたと判断された場合、審査を打ち切る」としており、いよいよ「東大アウト」の宣告がなされることになるかもしれません。接待の自主規制ルールもなく、これ幸いと“金づる”のようにたかったか1月25日付の日本経済新聞等の報道によれば、S容疑者は2023年3月~2024年8月、研究相手の一般社団法人・日本化粧品協会(文京区)の代表理事の男(52)から銀座の高級クラブや吉原のソープランド(一部報道によれば1人約8万円)で約30回にわたり、計約180万円相当の接待を受けた疑いがあるとのことです。大麻に含まれる物質の効果について共同研究をする「臨床カンナビノイド学講座」の設置や研究の実施にあたって便宜を図った謝礼の趣旨だったとしています。S容疑者の部下だった同研究科の元特任准教授の男(46)についても、代表理事から約190万円相当の接待を受けた疑いがあるとして、警視庁は1月26日、書類送検しました。一方、警視庁は同日、接待をした代表理事も書類送検しました。なお、接待の総額は「10万円超のスーツケース含め、2人合わせて少なくとも490万円相当に上る」(1月26日付のNHKニュース)との報道もあります。前述の三重大臨床麻酔部事件や、「第291回 東大病院の整形外科医、収賄の疑いで逮捕 『国際卓越研究大学』の認定にも影響か?」で書いた東大病院の整形外科医の事件もそうですが、国立大学法人の職員らは、収賄罪の対象になる「みなし公務員」に当たります。それにしても、収賄の内容が「高級クラブやソープランドで約30回、計約180万円相当」という点は相当情けないですね。現在、製薬企業における医療従事者(医師など)への接待・飲食提供は、日本製薬工業協会の自主規制により、厳格に制限されています。かつての多くの不祥事を受けての対応です。そのため、医学部教授になったからといって、製薬企業から過剰な接待を受けることはほとんどないと言っていいでしょう。今回の日本化粧品協会は日本製薬工業協会に加盟しておらず、おそらく接待の自主規制ルールもないため、そこに目を付けたS教授らが、これ幸いと“金づる”のようにたかった、というのがことの真相ではないでしょうか。また、医薬品よりも化粧品を下に見る姿勢もあったかもしれません。2025年5月にはS容疑者らや東京大学を相手取り計4,200万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴1月25日付の朝日新聞等の報道によれば、共同研究は2023年4月に「臨床カンナビノイド学講座」を設置してスタート、S容疑者と元特任准教授はこの講座の運営のほか、研究内容の選定や研究の実施の権限があったとのことです。しかし、日本化粧品協会と代表理事の間で金銭トラブルが起き、講座は2025年3月に廃止されました。日本化粧品協会などは講座が突然廃止されたことなどから、2025年5月にS容疑者らや東京大学を相手取って、計4,200万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴、訴状で協会側は、S容疑者から高額な接待を強要され、研究も一方的に中止されたと主張していました。この協会とS容疑者とのトラブルについては、週刊文春が2025年3月に「東大皮膚科カリスマ教授が求めた1,500万円“違法エロ接待”」と題する記事で、すでに報じています。週刊文春はさらに5月11日に文春オンラインで配信した「《1,500万円“違法エロ接待”》東大医学部カリスマ教授が収賄容疑で逮捕、銀座クラブ接待写真を入手 共同研究者が実名で告発していた…『Tバック写真』と『証拠音声』も独占公開」と題する記事で、銀座のクラブや接待による熱海旅行の写真などとともに、恐喝まがいの金銭要求や、接待のおねだりぶりを詳細に報じています。同記事は「東大の倫理規程違反はもとより、国立大の教授はみなし公務員であるため『贈収賄』など法律違反にあたる可能性もある」と書いていますが、実際に警視庁が捜査に着手、今回の逮捕に至ったわけです。今回の逮捕を受けて東大の藤井 輝夫学長は1月25日、「度重なる教員の逮捕は痛恨の極みであり、言語道断で、遺憾であると言わざるを得ない。この事態を極めて重いものと受け止め、厳正に対処する」とのコメントを出しています。逮捕されるまで教授の地位を与えてきた体制こそガバナンス欠如の典型S教授の逮捕で私が驚いたのは、昨年トラブルが発覚し、事態が損害賠償事件にまで発展、贈収賄事件になる可能性が当初からあったにもかかわらず、S教授は教授のまま、さしたる処分も受けずにいたことです。日本化粧品協会が損害賠償を求める訴えを起こした後の昨年6月、東京大学は「社会連携講座等検証・改革委員会」を設置し、制度の検証を進めました。そして、10月には「民間企業等から資金等を受け入れて行う研究・教育における制度の改革策」を公表、その中で「一部教職員の倫理意識が欠如し、事案を未然に防げなかった」などとしていました。しかし、その倫理意識が欠如した教授を辞めさせることもせず(あるいはできず)、逮捕されるまで教授の地位を与えてきたのです。こうした体制こそがガバナンス欠如と言えるでしょう。1月26日付の日本経済新聞は「東大の卓越大認定 瀬戸際」と題する記事で、「容疑者の逮捕は審査結果の公表後だが、事案自体は25年に浮上しており有識者会議も把握していたとみられる。文科省幹部は『逮捕をもって直ちに審査打ち切りになる可能性は低い』とみる。ただ、東大が瀬戸際に立たされている状況に変わりはない」と書いています。組織の巨大さゆえ、医学部の不祥事は医学部任せで、大学全体としてガバナンスが効かない組織体制であることが問題視されています。東大は今春までに一連の不祥事を受けた再発防止策やガバナンス改革案をまとめる予定とのことですが、単なる「案」ではなく、実現性、実効性のある改革案であるかどうかが問われることになるでしょう。

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コロナワクチン接種を躊躇する理由を大規模解析/Lancet

 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMatthew Whitaker氏らは、同国の成人約114万人を対象とした大規模コホート研究において、国民保健サービス(NHS)のCOVID-19ワクチン接種記録データとの連携により、ワクチンの接種率や接種躊躇の要因を分析した。接種躊躇の大半は具体的で対処可能な懸念によるものであり、時間の経過や情報提供の充実によって克服可能であることを明らかにした。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する有効なワクチンが存在したにもかかわらず、パンデミック期間中、英国の一部集団ではワクチン接種を躊躇する傾向が続き、その割合や動機は人口統計学的グループによって異なっていた。著者らは、「今回の知見は、将来のワクチン接種の展開において、ワクチン受容を促進するのに役立つだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年1月12日号掲載の報告。ワクチン接種を躊躇する理由や、ワクチン接種率を分析 研究グループは、まずベースラインでのワクチン接種躊躇について横断分析を行った後、続いて接種躊躇集団におけるワクチン接種率について縦断分析を実施した。 2020年5月1日~2022年3月31日に、NHSリストを用いて英国の一般診療所の登録患者から無作為に抽出した住民を、SARS-CoV-2ウイルス陽性率および抗スパイク抗体陽性率をモニタリングする「Real-time Assessment of Community Transmission:REACT研究(REACT-1およびREACT-2)」に定期的に招待した。参加者は、人口統計学的情報、併存疾患、行動(喫煙、マスク着用など)、COVID-19既往歴、ワクチン接種状況や接種に対する姿勢を含む詳細な調査に、オンラインまたは郵送で回答した。 COVID-19ワクチンの接種を拒否した、拒否する予定である、または接種するかどうか未定であると回答した参加者を「ワクチン接種躊躇集団」と分類した。自己申告では未接種と回答したものの、NHSの記録では接種済みと確認された参加者は、以降の解析から除外した。 主要アウトカムは、横断分析ではワクチン接種躊躇、縦断分析ではワクチン接種躊躇集団のうち調査後にNHSワクチン接種記録との連携に同意した参加者における調査後のワクチン接種であった。 ワクチン接種躊躇の理由はコンセンサスクラスタリング法を用いて分類し、横断分析および縦断分析ではロジスティック回帰モデルを用いてワクチン接種躊躇およびその後の接種の予測因子となる人口統計学的要因を特定した。ワクチン接種躊躇者の65%はその後にワクチンを接種 REACT研究の全参加者435万4,480人のうち、2021年1月6日~2022年3月31日に調査された18歳以上の成人113万7,927人が解析対象となった。 解析対象集団のうち3万7,982人(3.3%)が調査期間中にワクチン接種躊躇を示した。接種躊躇率は2021年1月の調査では7.9%と高かったが、2022年初頭には1.1%まで低下し、その後2022年2月および3月には再び2.3%に増加した。 ワクチン接種躊躇集団のうちNHSのワクチン接種記録との連携に同意した2万4,229人において、1万5,744人(65.0%)は1回以上のワクチン接種を受けていた。 クラスター分析の結果、ワクチン接種躊躇の理由として、有効性や副作用への懸念、COVID-19のリスクが低いとの認識、ワクチン開発者への不信感、ワクチンや副作用への恐怖など、8つのカテゴリーが特定された。有効性や副作用への懸念に関連する最も一般的な接種躊躇カテゴリーは、調査期間中に大幅に減少し、後のワクチン接種との強い関連性は認められなかった。信頼性の低さ、リスク認識の低さ、一般的なワクチン反対感情に関連する一部の接種躊躇形態はより抵抗性が高く、2022年に再燃し、その後のワクチン接種の可能性の低下と強く関連していた。

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ムコ多糖症II型、新たな酵素補充療法が有望な可能性/NEJM

 ムコ多糖症II型(MPS II、ハンター症候群)は、イズロン酸-2-スルファターゼ活性の欠損によって発生する進行性のX染色体連鎖型のライソゾーム病で、神経系を含む臓器機能障害や早期死亡をもたらす。tividenofusp alfaは、イズロン酸-2-スルファターゼと改変トランスフェリン受容体(TfR)結合Fcドメインから成る、血液脳関門の通過が可能な融合タンパク質で、MPS IIの神経学的および末梢症状の治療を目的に開発が進められている新たな酵素補充療法(ERT)である。米国・University of North Carolina School of MedicineのJoseph Muenzer氏らは、小児男性患者を対象に行った、本薬のヒト初回投与の臨床試験の結果を報告した。NEJM誌2026年1月1日号掲載の報告。国際的な非盲検第I/II相試験 研究グループは、tividenofusp alfaの安全性および中枢神経系、末梢症状に対する効果の評価を目的に、国際的な非盲検第I/II相試験を実施した(Denali Therapeuticsの助成を受けた)。年齢18歳までのMPS IIの男性患者を対象とした。 tividenofusp alfa(週1回、静脈内投与)を24週間投与した後、80週間の安全性に関する延長試験と157週間の非盲検延長試験を行った(全261週)。 47例(用量設定コホート20例、15mg/kg投与コホート27例)を登録した。年齢中央値は5歳(四分位範囲:0.3~13)だった。44例(94%)が神経症状を伴うMPS IIで、3例(6%)は神経症状を伴わないMPS IIであり、15例(32%)がERTを受けた経験があった。注入反応の頻度が高いが管理可能 47例の全例で、3段階の試験期間中に少なくとも1件の有害事象を認め、最も高い重症度は、中等度が68%、重度が28%であった。死亡例の報告はなかった。治療関連の重篤な有害事象は3例(注入反応[infusion-related reaction]2例、貧血1例)に認めたが、これらの患者はすべて治療を継続した。 41例(87%)で、試験期間中に少なくとも1件の注入反応が発現し、最も頻度の高い有害事象であった。中等度が55%、重度が6%だった。注入反応の症状では、発熱、蕁麻疹、嘔吐の頻度が高く、ルーチンに前投薬を行ったにもかかわらず40%以上の参加者に発現した。 注入反応は全般に、担当医の判断による前投薬、注入速度の減速、減量によって管理可能であった。注入反応の発生は時間の経過とともに減少し、グルココルチコイドを含む前投薬も試験の進行に伴い減少した。ヘパラン硫酸値が低下、適応行動、肝臓容積も改善 その他の一般的な有害事象として、上気道感染症(60%)、発熱(55%)、咳嗽(47%)、嘔吐(43%)、下痢(40%)、発疹(40%)、貧血(38%)、新型コロナウイルス感染症(38%)、鼻漏(38%)を認めた。ベースライン時に19%(47例中9例)で貧血がみられたが、貧血を理由に試験を中止した参加者はいなかった。また、尿中総グリコサミノグリカン(GAG)値が悪化することはなく、改善の傾向を示した。 バイオマーカーについては、ベースラインと比較した24週時の脳脊髄液(CSF)中および尿中のヘパラン硫酸が、それぞれ91%および88%減少した。ヘパラン硫酸濃度の低下は153週目まで持続し、適応行動は安定化または改善した。ベースライン時に、24%(21例中5例)で肝臓容積に異常を認めたが、24週時には、これらを含む全例(18例中18例)で正常化または正常を維持していた。 著者は、「MPS II小児男性患者に対する週1回15mg/kgの静脈内投与によるtividenofusp alfa治療では、ERTの既知のリスクである注入反応を含む有害事象が高頻度に発現した」「中央値で2年間の治療により、基質の蓄積および神経細胞損傷の、中枢神経系および末梢のバイオマーカーが減少傾向を示し、臨床エンドポイント改善の可能性が示唆された」としている。

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第301回 アルブミンの抗カビ作用を発見

血中のありふれたタンパク質であるアルブミンの抗カビ作用が発見されました1,2)。ケカビ(Mucorales)の類いの真菌が引き起こすムコール症は、場合によっては死に至りもする日和見感染症で、打つ手は限られ、発症の仕組みはあまりわかっていません。死と隣り合わせでもあり、患者全体の死亡率は50%を超え、播種性患者の死亡率は100%近くになります。ムコール症は組織の甚大な壊死を特徴とし、そのため抗真菌薬は感染病巣に到達できず、ひどく外観を損ねる手術をしばしば必要とします。他の真菌感染症と異なり、ムコール症はもっぱら代謝不調患者に発生します。具体的には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う免疫代謝不調、制御不良の糖尿病、アシドーシス、鉄過剰症、栄養失調などがムコール症を生じ易くします。半世紀以上も前3)からヒトの血清のケカビ阻止効果が報告されています。ギリシャのクレタ大学のAntonis Pikoulas氏らの新たな検討でもその効果が改めて確認され、健康なヒトの血清はケカビの増殖を防いだのに対して、ムコール症患者の血清のその効果はほぼ皆無でした。アルブミンは血清に最も豊富なタンパク質で、血管内、間質、粘膜表面で生理機能を担います。興味深いことに、ムコール症を生じ易くする種々の免疫代謝失調患者に低アルブミンがよく認められます。そこでPikoulas氏らはムコール症へのアルブミンの働きを詳らかにすることを思い立ち、まず初めに血清アルブミン濃度とムコール症の生じやすさやその経過との関連にあたりました。ムコール症を生じ易いことが知られる血液がん患者を調べたところ、実際に肺ムコール症に陥った患者のほとんどのアルブミンは、細菌性肺炎やアスペルギルス・フミガーツス(A. fumigatus)による肺炎患者に比べて有意に乏しいことが示されました。糖尿病やCOVID-19を主な危険因子とする肺ムコール症患者などでも同様の結果が得られ、さらには重度の低アルブミン(2.5g/dL以下)が調べたどのムコール症集団でも転帰不良と関連しました。アルブミンこそどうやらケカビ阻止に寄与するらしく、アルブミンを省いた健康なヒトの血清はケカビ阻止活性が低下していました。一方、A. fumigatus阻止活性は保たれていました。そして、アルブミンこそケカビの増殖を防ぐ作用を担うことが精製アルブミンやマウスを用いた実験で明らかになります。精製アルブミンはケカビの増殖に限って阻止し、他の主な病原性細菌や真菌への有意な活性はありませんでした。アルブミンを欠くマウスはムコール症に限って生じ易くなり、その血清にアルブミンを与えるとケカビを阻止できるようになりました。アルブミンがケカビを阻止する仕組みにはアルブミンを結合した遊離脂肪酸(FFA)の流通が貢献しています。アルブミンは抗真菌活性を失わせるFFAの酸化を防ぎ、アルブミンが結合したFFAはケカビのタンパク質合成を阻止することで病原因子の発現を制してケカビを無毒化します。ムコール症患者ではその仕組みが機能していないらしく、血清のFFAがより酸化されていました。FFAがケカビのタンパク質合成に限って阻止する仕組みの詳細が今後の研究で明らかになるだろうと著者は言っています。参考1)Pikoulas P, et al. Nature. 2026 Jan 7. [Epub ahead of print]2)Blood protein thwarts deadly fungal disease / Nature3)Gale GR, et al. Am J Med Sci. 1961;241:604-612.

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15分で判定可能なC型肝炎ウイルス迅速PCR検査を開発

 米ノースウェスタン大学が開発した迅速検査のおかげで、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているかどうかを15分以内に判定できるようになった。この検査により、医師は診察中に感染症を診断し、その場で治療を開始できるようになる。ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部グローバルヘルス研究所・グローバル感染症および新興感染症センターのClaudia Hawkins氏らが開発したこの検査に関する詳細は、「The Journal of Infectious Diseases」に12月10日掲載された。 Hawkins氏は、「この検査は、診断を劇的に改善し、治療の普及を加速させ、より多くの人に対するより早期の治癒を可能にすることで、米国および世界のHCV治療に革命をもたらす可能性がある」とニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「遅延を減らし、検査に至るまでの流れを簡素化することで、未治療のHCVによる壊滅的な肝臓関連の合併症から何百万人もの命を救う可能性がある」と付け加えている。 C型肝炎は、世界中で推定5000万人に影響を与え、主に肝臓の瘢痕化と肝臓がんにより、毎年24万2,000人が死亡している。研究グループは背景情報の中で、C型肝炎は8~12週間の投薬で治癒できるが、治療率は依然として低いと述べている。 通常、活動性のHCV感染の有無を調べる検査では、血液サンプルを検査機関に送る必要がある。検査機関から医師のもとに結果が届くまでには、数日から数週間かかることもあるという。 今回、開発された検査は、DASH(Diagnostic Analyzer for Specific Hybridization〔特異的ハイブリダイゼーション診断解析装置〕)迅速PCRシステムと呼ばれるもので、装置に血液サンプルを入れるだけでPCR検査の結果が得られる。この装置は当初、鼻腔スワブで採取したサンプルから新型コロナウイルスを検出するために開発された。 現状で利用可能なHCVの迅速検査は、米食品医薬品局(FDA)が2024年6月に承認したXpert HCV検査である。この検査は、結果が出るまでに40~60分かかる。一方、Hawkins氏らが開発した検査の所要時間は15分であり、Xpert HCV検査よりも最大で75%速く結果が判明するという。 この検査の臨床での有用性を確認するために、米ジョンズ・ホプキンス大学の共同研究者らは、97個の血漿サンプルを用いて独自の評価を行った。その結果、本検査は既存の検査法との比較において、陽性一致率および陰性一致率がともに100%であった。 論文の上席著者であるノースウェスタン大学マコーミック工学部のSally McFall氏は、「患者の診察中にポイントオブケアで実施できる診断検査を開発することができた。これにより、HCV撲滅に向けた取り組みを支援するための即日診断と治療が可能になる」と述べている。 研究グループは、この検査は世界保健機関(WHO)が掲げる「2030年までにHCVを根絶する」という目標の達成において、重要な役割を果たす可能性があるとの期待を示している。

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妊娠前・中のコロナワクチン接種、母体の重症化および早産リスク低下/JAMA

 妊娠前および妊娠中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種(新型コロナウイルス感染症[COVID-19]の診断前)は、変異株の流行時期にかかわらず母体の重症化リスクおよび早産リスクの低下と関連することが、カナダで行われたサーベイランスプログラムで示された。同国ブリティッシュ・コロンビア大学のElisabeth McClymont氏らCANCOVID-Preg Teamが報告した。COVID-19およびワクチン接種が妊娠アウトカムに及ぼす影響については、知見が不足していた。JAMA誌オンライン版2025年12月15日号掲載の報告。COVID-19関連入院、CCU入室および早産のリスクを解析 研究グループは、カナダのサーベイランスプログラム「CANCOVID-Preg」を用い、9つの州・準州にて2021年4月5日(デルタ株流行期開始およびカナダにおける妊娠中ワクチン接種推奨開始日)~2022年12月31日に診断されたSARS-CoV-2感染妊婦およびその乳児を特定し、2023年まで母体・周産期アウトカムの追跡調査を実施した。 主要アウトカムは、COVID-19関連入院、クリティカルケアユニット(CCU)入室および早産で、ワクチン接種の有無で分類して解析した。ワクチン接種で、入院、CCU入室および早産のリスクが低下 特定されたSARS-CoV-2感染妊婦2万6,584例のうち、ワクチン接種状況が判明していた1万9,899例が解析対象となった。大半は30~35歳(46.3%)および白人(55.9%)で、1万4,367例(72%)はCOVID-19診断前に少なくとも1回ワクチンを接種しており、未接種は5,532例(28%)であった。 ワクチン接種例のうち、80%(1万1,425例)は妊娠前に、20%(2,942例)は妊娠中に接種を受けており、接種からCOVID-19診断までの期間の中央値は18週(四分位範囲:11~25)であった。また、全対象のうち6,120例はデルタ株流行期、1万3,799例はオミクロン株流行期の症例であった。 ワクチン接種はCOVID-19関連入院リスクの低下と関連していた。デルタ株流行期における入院率は、ワクチン接種者4.8%、未接種者13.5%で、相対リスク(RR)は0.38(95%信頼区間[CI]:0.30~0.48)、絶対リスク差(ARD)は8.7%(95%CI:7.3~10.2)であった。オミクロン流行期ではそれぞれ1.5%と5.3%、0.38(0.27~0.53)、3.8%(2.4~5.2)であった。 CCU入室も同様の傾向を示し、デルタ株流行期ではRRは0.10(95%CI:0.04~0.26)、ARDは2.4%(95%CI:1.8~2.9)であり、オミクロン株流行期ではそれぞれ0.10(0.03~0.29)、0.85%(0.27~1.44)であった。 早産率は、ワクチン接種者(7.2%)と比較し未接種者(9.6%)で有意に高かった。デルタ株流行期ではRRは0.80(95%CI:0.66~0.98)、ARDは1.8%(95%CI:0.3~3.4)であり、オミクロン株流行期でそれぞれ0.64(0.52~0.77)、4.1%(2.0~6.2)であった。 多変量解析の結果、併存疾患を補正後もワクチン接種は両変異株流行期においてCOVID-19関連入院リスクの低下と関連していた。ワクチン接種者と比較し未接種者の補正後入院RRは、オミクロン株流行期で2.43(95%CI:1.72~3.43)、デルタ株流行期で3.82(2.38~6.14)であった。

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ナーシングホームでの感染症対策に関する新ガイダンスが公表される

 高齢者や病気からの回復期にある人、あるいは長期的な健康問題を抱えて暮らす人が多いナーシングホームでは、感染症が大きな懸念事項となっている。薬剤耐性菌、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどは、このような環境では急速に広がり、入居者の命を脅かす可能性がある。 こうした中、2008年に発行された、ナーシングホームにおける感染予防・管理(IPC)に関する国の推奨事項に代わるものとして、米国医療疫学学会(SHEA)や米国感染症学会(IDSA)など5つの主要学会や専門団体が共同で作成・承認した新しいガイダンスが、「Infection Control & Hospital Epidemiology」に10月28日公表された。 ガイダンスの筆頭著者である米ミシガン・メディシンの老年医学専門医であるLona Mody氏は、「ナーシングホームでの感染予防に特効薬はない。われわれが推奨する介入は全て複数の要素から成っている。全体的な効果は部分の総和よりも大きいからだ」とニュースリリースで述べている。 このガイダンスでは、重要な変更点の一つとして、全てのナーシングホームに感染予防を専門で担う職員を少なくとも1人配置することを求めている。規模が大きな施設の場合、この役割を担う職員が複数必要になる可能性がある。 また、以下のような取り組みも推奨されている。・臨床スタッフの教育を継続的に行うこと。・職員・患者・訪問者に対してワクチンの重要性を教育し、接種を受けやすい環境を整えること。また、清掃員やIT担当者などの医療従事者以外のスタッフを、手指衛生などの感染予防活動に参加させること。・感染症例が出た場合には、地域の病院や公衆衛生機関との連携を強化すること。・感染拡大時でも、訪問や社会的な活動、ケアやリハビリを含む日常的な活動を許可し、その間に患者、スタッフ、訪問者を保護するための予防措置を講じるなど、ナーシングホームの「家庭」としての側面を維持し、感染を予防しながら入居者の社会的孤立を防ぐこと。 さらにガイダンスでは、「スーパーバグ」と呼ばれる多剤耐性菌(MDRO)が増大し、問題となっていることを強調している。研究によれば、これらの細菌は病院からナーシングホームまで患者とともに移動するケースが多く、個室を越えて共有のジムや食堂にまで広がる可能性があるという。 Mody氏は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、ナーシングホームが医療制度にとっていかに重要か、また、適切な保護措置が取られなければ入居者がいかに脆弱になり得るかが明らかになった。入院患者をナーシングホームに入居させれば全てがうまくいくと考えるわけにはいかない。ナーシングホームの中でも、入居者を保護することが必要だ」と強調している。 現在、多くの患者は、入院後すぐにナーシングホームに入居するようになり、これまで以上に複雑なケアが必要とされている。それに伴い、感染症のリスクも高まっている。Mody氏は、「感染症を防ぐことは患者とスタッフ双方にとって正しいことであり、長期的にはコスト削減にもつながる」と述べている。

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第297回 「子どもを医師にしますか?」2026(後編) 「人の命を救いたい」という単純な夢だけで医師を目指すのは、今やリスクが高過ぎる人生の選択

歴史的改定率の診療報酬、本体部分3.09%引き上げこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。年末年始もいろいろなことがありました。医療界の最大の関心事、2026年度の診療報酬改定率は、医師の技術料など医療行為の対価に当たる本体部分が3.09%引き上げられることが決定しました。賃上げ対応分1.70%と物価対応分0.76%で全体の半分以上を占めます。診療報酬本体の改定率が3%を超えるのは、1996年度の3.4%以来30年振りのことです。なお、今回決定した改定率の3.09%は、2026年度と2027年度の平均値であり、実際は2026年度で2.41%、2027年度で3.77%と変動させるとのことです。この歴史的とも言える改定率について医療界は沸き上がっています。日本医師会の松本 吉郎会長は12月24日、財務省と厚生労働省を訪れ、片山 さつき財務大臣、上野 賢一郎厚労大臣と相次いで会談。両大臣による折衝により、令和8年度の診療報酬の改定率が本体プラス3.09%に決定したことについて、深い謝意を伝えたとのことです。そして、同日開かれた定例会見では、「政府・与党をはじめ、多くの関係者に医療機関の厳しい経営実態をご理解いただけたものと実感し、深く感謝している」と語りました。改定率を上げることが高市首相の長期政権につながると片山財務相も判断か最終的に財務省が高市総理大臣、片山財務相、厚労省に押し切られる結果となったわけです。その経緯について、12月25日付の日本経済新聞は、「『3%ありき』政治の圧力 診療報酬、厚労省案丸のみ 財務相自ら接近」と題した記事で詳しく解説しています。同記事は、「日本医師会や自民党厚労族の意向を受けた厚労省が3%以上の引き上げを求める中、財務省は1%台で調整していた。通常は両者の綱引きの末に中間地点をにらんで落とし所を探るが、首相が決めたのは厚労省が提示した通りの3.09%だった」、片山財務相は当初「厚労省側に『野放図な財政運営はしない』との姿勢を示し」ていたものの、次第に「周囲に3%に近づけるべきだとの考えを隠さなく」なっていった、と書いています。そして同記事は、「医師会は自民党の有力な支持団体だ。発足間もない高市政権が距離を取るのは難しい。財務省幹部は『片山氏は高市政権の重要閣僚として、改定率を上げることが長期政権につながり最善と考えたのだろう』と漏らす」と、財務相自身が高市政権のために日本医師会に配慮した可能性を示唆しています。診療報酬については今後、「議論の整理」を経て「短冊」(個別改定項目)作成、「答申」(2月上旬)という流れで進みます。単なるバラマキで終わるのか、あるいは「第293回 佳境迎える診療報酬改定議論、「本体」引き上げはほぼ既定路線も、最大の焦点は病院と診療所間の『メリハリ』」でも書いた、相応のメリハリ(病院と診療所の差別化等)が付けられることになるのか、注目です。今、子どもを医師にする、医学部受験をさせるのは得策なのか?さて、前回の本連載では、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」でのコメンテーターの玉川 徹氏の「僕はこれから人口も減っていくし、AIもどんどん導入されるなかで、今のように医師の地位が社会的な地位とか収入とかも含めて、ずっと高いまま続いていくのかなと(疑問に)思っているのに、何でみんな医学部行こうとするのか不思議。なんでしょうね?」という問い掛けを紹介しつつ、今、子どもを医師にする、言い換えれば医学部受験をさせるのは得策なのかどうかについて考えました。同様の議論は昔もあり、私は今から17年前、まだ紙の雑誌だった日経メディカルの2009年1月号に掲載された「子どもを医者にしますか?」というタイトルの特集記事を思い出しました。同記事は、「過重労働、訴訟の増加、医療費抑制など医師を取り巻く環境が悪化する中、『子どもは医師にしたくない』という医師が目立つようになった」として、当時の子どもを持つ医師の本音をアンケートで調査するとともに、将来を予測しています。少々古い記事ですが、なかなか先見の明がある内容でしたので、簡単に紹介しておきましょう。17年前、「子どもに医師になってほしい」と考えていた医師は4割超いたが…同記事は、高校生以下の子どもを持つ医師1,000人にアンケート、773人の回答を得ています。「子どもに医師になってほしいか」との問いに対し、「なってほしい」「どちらかといえばなってほしい」と回答した医師は42.9%でした。それに対し、「なってほしくない」「どちらかといえばなってほしくない」と答えた医師は19.7%でした。「なってほしくない」理由としては、「患者とのトラブルに関する悩み」(57.9%)、「医療費抑制策による医療環境の悪化」(57.9%)、「過酷な長時間労働」(51.3%)、「訴訟リスクがますます高くなる」(50.7%)が上位を占めていました。現在ほど医療機関経営が悪化しておらず、医師の働く環境が改善されていなかった時代の回答としては、まあこんなものかなという数字と言えます。現在、医療機関を取り巻く経営環境は、人口減少、医療人材不足、新型コロナウイルス感染症禍後の患者数減少、物価高、円安、人件費高騰など、17年前に比べ桁違いに厳しさを増しています。さらに「働き方改革」スタート後も、外科系を中心に長時間労働は一向に改善されていません。おそらく、このアンケートを今改めて行ったら、「医師になってほしい」と「なってほしくない」の結果は逆転していると思われます。なお同記事は、「30年後、勤務医・開業医の世界はこう変わる」として、「外来需要は減少」し、「急性期病院の再編が始まり」、「科目別養成数に上限が設定」され、「総合医養成が強化」、医師にも「実力本位の格差社会がやってくる」と予想しています。2009年の30年後ですから2039年、「新たな地域医療構想」のほぼ目標年の状況というわけですが、なかなか鋭いところを突いた未来予想だったと言えるでしょう(美容外科等への逃散、直美はさすがに予想できていませんが)。「希少な人材の最適配分を実現する観点からも、医学部定員数の適正化は『待ったなし』」と財務省ということで、今、高校生以下の子どもを持つ医師の皆さんは子どもを医師にしようと考えるのでしょうか。そして、進学校の先生たちは、今後も「医学部偏重、東大至上主義」を貫いていくのでしょうか(東大は国際卓越研究大学になれないかもしれませんよ)。昨年、本連載の「第292回 藤田医科大の学費800万円値下げから見えてくる、熾烈を極める大学医学部サバイバル戦」では、「財務省は11月11日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の分科会を開き、教育の質を持続的に確保するために大学の統合や縮小、撤退を促進することが必要だと提言しました。また、厚生労働省は11月20日、医学部の入学定員を全体として『削減』する案を省内の検討会に提示しています。これまで『適正化』を進めるとしていましたが、減らす方針を初めて明確にしました」と、医師養成に関する国の方針も転換期に入ったと書きました。将来、医療機関を取り巻く環境が悪化するだけでなく、医師の数自体も過剰になっていくのです。財務省は12月2日に公表した「2026年度予算の編成等に関する建議」(通称、秋の建議)の中でも、図1、2に示すような資料を提示、「日本の社会経済全体における希少な人材の最適配分を実現する観点からも、医学部定員数の適正化は『待ったなし』と認識すべきであり、仮に、定員数の抑制が進まない場合には、国家試験の合格率により医師の供給数をコントロールすることも含めあらゆる選択肢を検討すべきではないか」と提言しています。図1画像を拡大する図2画像を拡大する財政制度等審議会・令和8年度予算の編成等に関する建議 資料IIより中学生、高校生の子どもをお持ちの医師の皆さんは、ぜひこうした資料も参考にしながら、お子さんの進路について家族会議を持たれることをお勧めします。「実家の医療法人を継がなければならない」という経済的な理由があるならば仕方ありませんが(ただ、その医療法人も2040年に生き残っているかどうかは微妙です)、「人の命を救いたい」という単純な夢だけで医師を目指すのは、今やリスクが高過ぎる人生の選択なのです。

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新生児に対するビタミンK投与を拒否する親が増加傾向

 米国では、1961年に全ての新生児に対するビタミンKの筋肉内投与が開始されて以来、ビタミンK欠乏性出血症がほぼ解消された。ビタミンKは、血液凝固を助ける目的で投与される薬剤であり、ワクチンではない。しかし新たな研究で、近年、新生児へのビタミンK注射を拒否する親が増えていることが明らかにされた。研究グループは、注射の拒否により新生児が深刻な出血リスクにさらされる可能性があると警告している。米フィラデルフィア小児病院の新生児専門医であるKristan Scott氏らによるこの研究結果は、「The Journal of the American Medical Association(JAMA)」に12月8日掲載された。 この研究でScott氏らは、2017年から2024年の間に米国50州にある403カ所の病院で、妊娠35〜43週で生まれた509万6,633人の新生児の医療記録を調べた。その結果、全体の3.92%に当たる19万9,571人がビタミンKの注射を受けていないことが明らかになった。注射を受けていない新生児の割合は、2017年の2.92%から2024年の5.18%へと有意に増加しており、特に新型コロナウイルス感染症パンデミック以降に急増していた。この結果についてScott氏は、「増加自体は驚くことではないが、増加の大きさには驚いた」とNBCニュースに語っている。 新生児のビタミンK体内濃度は非常に低い。米疾病対策センター(CDC)によると、ビタミンKの投与を受けない場合、危険な出血を起こす可能性が80倍以上高くなるという。出血は、生後6カ月までの間にあざや内出血などの形で現れる可能性があり、最も重篤な場合には障害や死亡につながる脳出血が生じることもある。 このことを踏まえてScott氏は、「われわれは、出血リスクのある新生児の集団を作り出しているに等しい。本当に心配なのは脳出血、つまり脳卒中だ。脳出血が起こると、最終的には死に至る可能性がある」と話している。 専門家らは、オンライン上の誤情報やビタミンK注射とワクチンの混同が、こうした傾向の根底にあるのではないかと疑っている。この研究には関与していない米テキサス小児病院の新生児科医であるTiffany McKee-Garrett氏は、「親は、ビタミンK注射をワクチン接種と同等に捉えている」とNBCニュースに語っている。 一部の国では、新生児に経口ビタミンKを投与している。しかし医師らは、経口ビタミンKは信頼性が低く、場合によっては複数回投与する必要があるのに対し、ビタミンKの注射は1回の投与で効果があるとしている。 米NYC Health + Hospitalsの新生児科医であるIvan Hand氏は、「ビタミンK欠乏性出血症は予防可能であり、そもそも発生していること自体が問題だ」と話す。医師らは、現状のようなビタミンK投与が拒否される状態が続けば、出血イベントの発生数が増加する可能性が高いとの見方を示している。Hand氏は、「ビタミンK投与は極めて効果的であるが、人々はそのことを十分に理解していない。重度の出血を起こした乳児を見たことがないため、そのようなことは起こらないと思っているのだ。しかし、それが見られないのは、われわれがそうした乳児の治療をしているからだ」と話している。

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「グーフィス」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第83回

第83回 「グーフィス」の名称の由来は?販売名グーフィス®錠5mg一般名(和名[命名法])エロビキシバット水和物(JAN)効能又は効果慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)用法及び用量通常、成人にはエロビキシバットとして10mgを1日1回食前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、最高用量は1日15mgとする。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.腫瘍、ヘルニア等による腸閉塞が確認されている又は疑われる患者[腸閉塞を悪化させるおそれがある。]※本内容は2026年1月5日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2022年4月改訂(第6版)医薬品インタビューフォーム「グーフィス®錠5mg」

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飛行機や病院の空気中の微生物は皮膚由来の無害な細菌が優勢

 飛行機の中や病院内の空気が気になる潔癖症の人を少し安心させる研究結果が報告された。米ノースウェスタン大学土木・環境工学准教授のErica Hartmann氏らによる研究で、機内や病院内の空気に含まれている微生物は、主に人の皮膚に常在する無害な細菌で構成されていることが明らかになった。この研究結果は、「Microbiome」に12月4日掲載された。 この研究では、使用済みマスクの外側表面と航空機のエアフィルターから微生物を回収し、そこに含まれるDNAを抽出してショットガンメタゲノム解析を行った。解析には、8,039時間使用された後に回収された航空機のエアフィルター1つと、飛行機利用者10人と、勤務後の医療従事者12人から入手した使用済みマスクが用いられた。 Hartmann氏らがこの研究のアイディアを思い付いたのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下の2022年1月だったという。同氏は、「当時、飛行機内での新型コロナウイルス感染リスクが深刻に懸念されていた。機内のHEPAフィルターは非常に高い効率で空気をろ過するので、空気中のあらゆるものを捕捉する優れた方法であると考えた」と話す。同氏はさらに、「ただし、これらのフィルターは、車や家庭に備え付けられているフィルターとは違う。何千ドルもする上、取り外すには航空機整備のために運休させなければならず、これには当然、莫大な費用がかかる。これは大きな驚きだった」と振り返る。 そこで、研究グループがはるかに安価な代替手段として目をつけたのがマスクであった。さらに、機内だけでなく病院も加えることにした。Hartmann氏は、「われわれは、マスクを、個人がどんな空気にさらされているのか、あるいは周囲の空気がどのような状態なのかを調べるための安価で簡便な空気サンプリング装置として使えることに気が付いた」とニュースリリースの中で述べている。 解析の結果、407種類の微生物種が確認された。飛行機のフィルターでも医療従事者や旅行者のマスクでも共通して高頻度で認められたのは、Cutibacterium acnes、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus hominisなどの皮膚常在菌であった。Hartmann氏は、「ある程度、予想されたことではあったが、検出された細菌の多くは屋内空間の空気に典型的に存在するタイプのものだった。つまり、屋内の空気は『屋内の空気らしい微生物構成』をしており、人の皮膚の常在細菌とよく似ていた」と話している。一方、Sphingomonas hankookensisやMethylobacterium radiotoleransなどの環境由来の細菌も、特にエアフィルターから高い頻度で検出された。さらに、大腸菌や緑膿菌、サルモネラ菌など、病原性を持つ可能性のある細菌もわずかに検出されたが、いずれも極めて低レベルであり、活性や感染の兆候は認められなかった。 このように、屋内の空気は比較的安全であることが示された一方で、感染性の微生物は他の経路、特に接触により広がることを研究グループは指摘している。Hartmann氏は、「今回の研究でわれわれは、空気中に何が含まれているのかだけを調べた。環境表面からの病原体の伝播を防ぐ上では、手指の衛生が依然として有効だ。われわれが関心を持ったのは、たとえ手を洗っていたとしても、人々が空気を通じて何に曝露されているのかという点だった」と話している。

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ワクチン接種率の低下により世界で麻疹患者が急増

 世界保健機関(WHO)は11月28日、麻疹(はしか)排除に向けた世界の進捗状況をまとめた報告書を発表した。それによると、2000年から2024年の間に、世界の麻疹による死亡者数は88%減少し、およそ5800万人の命が救われた。一方で、かつて麻疹排除を目前にした国々で再び感染が広がっている事実も明らかにされた。これは、麻疹ワクチンの定期接種を受けていない小児が増えていることを示唆している。報告書では、「世界的な麻疹排除の達成は、依然として遠い目標だ」と指摘されている。 2024年には、米州を除く全てのWHO地域(アフリカ、南東アジア、欧州、東地中海、西太平洋)の59カ国で麻疹の大規模または深刻な流行(アウトブレイク)が59件発生した。これらのうち、23件(39%)がアフリカ地域、20件(34%)が欧州地域、10件(17%)が東地中海地域、5件が西太平洋地域、1件が南東アジア地域で報告された。麻疹のアウトブレイク数は、2021年には21件、2022年には37件であり、2024年のアウトブレイク数は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの発生以降では最多で、2003年以来2番目に多かった。 WHOは、麻疹ワクチンの定期接種や感染監視体制がパンデミック以降、十分に回復していないことが、これまでの成果を危うくしていると警告している。 米国は2000年に麻疹排除を達成した。これは、「12カ月間以上、伝播を継続した麻疹ウイルス(国内由来、国外由来を問わず)が存在しない状態」と定義されている。しかし、米疾病対策センター(CDC)は今年、1,798件の麻疹確定症例を報告した。これは、排除達成以降で最多である。WHOは現在、米国やカナダをはじめ、かつて麻疹排除を達成したにもかかわらず感染が再燃している国々を注視している。 WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長は、「麻疹ウイルスは、依然として世界で最も感染力の強いウイルスだ。有効で低コストのワクチンがあるにもかかわらず、ウイルスは接種率のすき間を突いて広がる」とCNNに対して語っている。 WHOで予防接種プログラムを統括するDiana Chang Blanc氏によると、2024年に麻疹ウイルスに対する免疫が十分でなかった小児は、世界で3000万人以上に上ったという。2024年の世界全体での麻疹ワクチンの初回接種率は84%であり、ワクチンの効果を95%まで高めるために必要な2回目の接種率は76%でしかなかった。 一方で、前進も見られている。今年、カーボベルデ、セイシェル、モーリシャスがアフリカ地域で初めて麻疹排除を達成した。さらに、太平洋地域の21の島嶼国では、麻疹と風疹の両方の排除を達成した。 Blanc氏は、「麻疹排除に向けて確かな進展があるのは事実だ。それでも、症例数と死亡者数は今なお容認できないほど高水準だ」と話す。同氏は、麻疹による死亡はワクチンの2回接種を受けることで全て予防可能であることを強調する。 WHOによると、接種率低下の背景には、パンデミック中の接種機会の喪失やワクチンに関する誤情報、紛争地域などワクチンを届けることが困難な地域の存在、資金減少が要因だとしている。さらにWHOは、麻疹・風疹実験室ネットワークへの支援縮小など、近年のグローバルヘルス分野における資金削減により免疫ギャップが拡大し、今後さらに大規模なアウトブレイクが発生する可能性があると警告している。

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