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身体的な検査を行わなくても、通常の問診のみで得た情報が、中高年者の全死因死亡を最も強力に予測する可能性があることが、英国のバイオバンク(UK Biobank)の約50万人のデータを用いた検討で明らかとなった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAndrea Ganna氏とウプサラ大学のErik Ingelsson氏がLancet誌オンライン版2015年6月2日号で報告した。とくに中高年者の余命を正確に把握し、リスクを層別化することは、公衆衛生学上の重要な優先事項であり、臨床的な意思決定の中心的課題とされる。短期的な死亡に関する予後指標はすでに存在するが、これらは主に高齢者や高リスク集団を対象としており、サンプルサイズが小さい、リスク因子数が少ないなどの限界があるという。地域住民ベースの前向き研究で問診の予測スコアを開発 2人の研究者は、UK Biobankのデータを用いて全死因および死因別の5年死亡の評価を行い、個別の死亡リスクを推定するために、患者の自己申告による情報のみを用いて5年死亡の予後指標に基づく予測スコアを開発し、その妥当性の検証を行った。 UK Biobankへの参加者の登録は、2007年4月~2010年7月の間に、イングランド、ウェールズ、スコットランドの21施設で、標準化された方法を用いて行われた。約50万人から、採血、質問票、身体検査、生体試料に基づくデータが収集された。 血液検査、人口統計学、健康状態、生活様式などに関する10群、655項目のデータと、全死因死亡および6つの死因別の死亡カテゴリー(新生物、循環器系疾患、呼吸器系疾患、消化器系疾患、意図的自傷行為や転倒などの外因によるもの、その他)の関連を、Cox比例ハザードモデルを用いて男女別に評価した。参加者の80%以上で欠損した測定値や、サマリデータが得られなかったすべての心肺健康検査の測定値は除外した。 予測スコアの妥当性の検証は、スコットランドの施設で登録された参加者で実施した。英国の生命表と国勢調査の情報を用いて、スコアを英国の全人口に換算した。重篤な疾患がない場合の最大の死亡リスク因子は喫煙 37~73歳の49万8,103例が解析の対象となった。女性27万1,029例(平均年齢56.36歳)、男性22万7,074例(56.75歳)であった。 追跡期間中央値4.9年の間に8,532例(39%[3,308例]が女性)が死亡した。最も多い死因は、男性が肺がん(546例)、女性は乳がん(489例)だった。 男性では、自己申告による健康状態が最も強力な全死因死亡の予測因子であった(C-index:0.74、95%信頼区間[CI]:0.73~0.75)。女性では、がんの診断歴が全死因死亡を最も強力に予測した(0.73、0.72~0.74)。 重篤な疾患を有する者(Charlson comorbidity index:>0)を除外した35万5,043例(55%が女性)のうち、4.9年間に3,678例が死亡し、この集団における最も強力な全死因死亡の予測因子は男女とも喫煙習慣であった。 予測スコアは、男性が13項目、女性は11項目の自己申告による予測因子から成り、男女とも良好な識別能が達成された(男性のC-index:0.80、95%CI:0.77~0.83、女性は同:0.79、0.76~0.83)。死亡率は英国の一般人口より低かったため、生命表と国勢調査の情報に基づいて予測スコアを調整した。 専用のウェブサイト(http://ubble.co.uk/)では、対話形式のグラフ(Association Explorer)で655項目の変数と個々の死因の関連性を閲覧できると共に、オンライン問診票により5年死亡の個別のリスク計算(Risk Calculator)が可能である(正確な予測は40~70歳の英国居住者のみ)。 著者は、「この研究からはさまざま重要なメッセージが読み取れるが、最も重要な知見は、身体的な検査なしに通常の口頭での問診で得られる情報(たとえば、患者の自己申告による健康状態や日常的な歩調など)が、中高年者の全死因死亡の最も強力な予測因子であることが示唆される点である」と結論している。 また、「この予測スコアを用いれば、看護師などの医療者は、患者の自分の健康状態への認識を高め、医師は、死亡リスクの高い患者を同定して特定の介入の対象を絞り込み、政府や保健機関は、特定のリスク因子の負担を軽減することが可能と考えられる」と指摘している。