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そっちはいいんです!【Dr. 中島の 新・徒然草】(206)

二百六の段 そっちはいいんです!先日のこと。高齢の男性患者さんにペコペコ謝られました。患者「すっかり忘れていまして、どうもすみません」中島「いやいや、いいんですよ」患者「10月に予約だったのに、気づいたら12月でした」中島「皆さん、よくあることですから、お気になさらないで」患者「そう言っていただけると救われます」何が起こったかというと、頭部MRIの検査予約と診察日を忘れて来院されなかったのです。小さな脳動脈瘤とか髄膜腫とか、1年に1回の経過観察だけの患者さんというのは随分多いのですが、何せ1年に1回です。来年の同じ時期にまた撮影しましょう、と言って予約票を発行しても何処かに失くしてしまうのですね。そうならないように毎年誕生日のころ、と決めている方もおられるのですが、その誕生日が夏や冬となるとちょっと躊躇します。寒い中を無理に病院にやってきて体調を崩したら本末転倒です。そんなわけで、MRIの予約や診察予約を忘れていて、後で気づいたという人が続出するのです。中島「予約を忘れていてもですね、また、取り直したら済むことですから」患者「いやあ、恐縮です」中島「忘れるってのはいいんですよ、忘れるってのは」患者「いいんですか?」中島「ええ、あるはずの物を忘れていたというのは、われわれにとっては大したことではありません。そっちはいいんですよ」患者「はあ」中島「本当に困るのは、ありもしない検査を『あるはずだ!』とやって来る患者さんですよ」患者「そんな人いるんですか!」中島「いますよ」多くはありませんが、『今日は採血があるはずだ』とか『MRIがあるはずだ』とか言って来院する患者さんもおられるわけです。採血なら、医師の方がオーダーを入れ忘れていた、ということもあり得ますが、さすがにMRIの方はそういうこともなく、カルテの本文を確認すると「次回の検査は3年後に行う」などと書いてあったりします。とはいえ、一般に「存在しない」という主張は「悪魔の証明」とも言われ、なかなか相手に理解してもらえません。ある医療機関では、患者さんに「検査結果を渡せ」と言われて「そもそもそんな検査してまへんがな」と言ったら訴えられたそうです。こうなったらもはや喜劇です。当事者には気の毒ですが。まあ、こういうこともあるのだと思って、いつもニコニコ対応を心掛けておくのが無難のようですね。最後に1句ありもせぬ 検査めぐって ひと悶着

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循環器内科 米国臨床留学記 第26回

第26回 院内急変時における対応米国では、院内急変時に対するシステムが日本と異なり、最初は驚きました。私が研修した日本の施設では、院内急変が起きると院内にコードブルーが鳴り響き、医者が全員集合するというシステムでした。現場に近い医師やスタッフがいち早くたどり着けるというメリットがありましたが、すべての科の医者が仕事をストップして現場に向かうため、場合によっては1つの急変に30人近い医者が集まるという点で、非効率的なシステムのようにも感じました。私が研修医の時代はACLSの普及し始めで、「船頭多くして船山に上る」という感じで、指揮系統も統一されていませんでした。今は、日本でもACLSの教育が普及して、このようなことはなくなってきていると思います。ラピッドレスポンスとは現在、私が働いているカリフォルニア大学を始め、米国の病院では、院内急変時のコードとして、コードブルー、ラピッドレスポンス(Rapid Response)、コードストローク、エアウェイエマージェンシーなどがあります。ラピッドレスポンスシステム(RRS)は、最近日本でも導入が進んできているようです。ひとたびコードブルーで心肺停止状態に陥り、CPR(心肺蘇生)が必要になると、院内といえども死亡率は高くなります。このため、コードブルーに至る前に循環、呼吸、意識、尿量、胸痛や痙攣などに素早く対応し、コードブルーに至るのを防ぐRRSが、米国では10年以上も前から導入されています。挿管はもっぱら麻酔科医や集中治療医の役割また米国では、急変時に内科や外科のレジデントや指導医が挿管することはまずありません。ほとんどの医師は挿管の必要性を判断できても、挿管自体はできません。というより、挿管ができるようになるべくトレーニングを受けていません。挿管するのは、ほとんどの場合、麻酔科医もしくは集中治療医(病院によってはレスパイラトリーセラピスト[呼吸療法士]が行う)です。もちろん自信があれば、内科や外科のレジデントやフェロー、指導医が挿管しても良いのですが、その場に麻酔科医や集中治療医がいるにもかかわらず、あえてリスクを冒してまで挿管を試みる必要もないため、最初から彼らに任せるケースがほとんどです。私も、夜間に麻酔科医が来られないというまれな状況で挿管せざるを得なかったことが数回ある程度で、実質的には内科医が挿管する機会がほとんどありません。実際、日本人と比べると肥満患者が多く、声門が見えづらいため、難易度は比較的高いと思われますし、麻酔科医も最初から喉頭鏡を用いることも多いです。多職種で編成するコードチーム上記のエマージェンシーコードに対応するのは、当直中のレジデントと集中治療(フェローや専門医)、麻酔科医、看護師、薬剤師、レスパイラトリーセラピスト、検査技師などからなる専門のチームです。多くのコメディカルが現場に集合するのも、米国の分業制を象徴しています。日本のように、ほとんどの医者が挿管できるという状況ではなく、夜間は集中治療医が毎日当直しているわけではないので、麻酔科医がコードチームに必ず含まれています。また、複数の看護師が、書記、投薬、採血、ベッドコーディネートなど異なった役割を果たします。このオンコールのチームが日夜を問わず、院内で待機しています。急変時には指示出しに加え、挿管、心臓マッサージ、採血、ラインの確保など“手を動かす作業”に忙しい日本の研修医と比べて、こちらのレジデントは指示を出したりするのは得意ですが、逆に言うと手があまり動かず(点滴や血液ガスも上手ではない)、CPRは漫然と進んでいるが、採血やエコーなどが行われず、原因検索が進んでいないと感じることがよくあり、ついつい率先して採血やライン確保なども自分でやってしまいます。急変時に手がすぐに動かせるというのは、日本での研修のお蔭だと常々感じています。

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Dr.志賀のパーフェクト!基本手技

第1回 腰椎穿刺 第2回 気管挿管 第3回 胸腔ドレーン挿入 第4回 胃管挿入第5回 中心静脈挿入第6回 大腿動脈採血 第7回 肘内障整復 第8回 動脈内留置カテーテル挿入 第9回 指脱臼整復 臨床医がマスターしなければならない必須の基本手技を、シミュレーターを使用して、臨床現場さながらに実演し、解説します。このシリーズでは、腰椎穿刺をはじめとして、気管挿管、中心静脈挿入、大腿採血など9の手技を取り上げます。各手技を実践するうえで必要な手順の確認はもちろんのこと、ポイントやコツ、ピットフォール、そしてトラブルシューティングまでしっかりとカバーします。Dr.志賀の現場目線にこだわった、アツい!レクチャーは必見です。第1回 腰椎穿刺 第1回目の基本手技は、腰椎穿刺。腰椎穿刺は解剖から立体的な構造を意識して挑む必要があります。また、穿刺後頭痛、神経根症状など、手技に伴う合併症は、ちょっとしたコツで防ぐことができます。秘訣をお教えします!この番組で、ぜひ、腰椎穿刺をマスターしてください。第2回 気管挿管 今回の基本手技は、“気管挿管”。気道を制する者は救急を制する!この番組では、一刻を争う状況下で行う気管挿管の手技を見せるだけでなく、それぞれのポイントで陥りがちなピットフォールを提示し、正確に行うためのコツをしっかりと伝授します。迅速かつ正確な気管挿管の手技をマスターしてください!第3回 胸腔ドレーン挿入 今回の基本手技は胸腔ドレーン挿入。胸腔ドレーン挿入は患者さんの覚醒下で行う手技なので、痛みをきちんとコントロールすることが重要です。また、致死的な合併症を起こし得る手技なので、安全に行えるようコツをしっかりとマスターしてください!第4回 胃管挿入今回の基本手技は「胃管挿入」。胃管挿入は、単純そうに見えますが、決して簡単な手技ではありません。覚醒下で行うため、患者さんにとって非常につらく、不快感があるの手技です。手技を行う際には、しっかりとした配慮が必要です。また、頭蓋内挿入、気管内挿入、そして穿孔など、重大な事故につながる恐れもあります。それらを避けるためのポイントとコツ、そしてトラブル対処法をしっかりと分かりやすく伝授します。この番組で、ぜひ、胃管挿入をマスターしてください。第5回 中心静脈挿入今回の基本手技は、中心静脈挿入。最近では、安全にかつ、成功率を高めるため、超音波を使用して行う手技が当たり前となってきました。より安全に、正確に手技が行えるためのポイントを伝授します。もちろん超音波画像もお見せしながら解説します。この番組で、中心静脈挿入をマスターしてください。第6回 大腿動脈採血 今回の基本手技は「大腿動脈採血」。動脈血の採取は、いくつかの部位で行うことができますが、最も、簡単で、合併症の少ない大腿部での採血の手技をお教えします。ポイントは、解剖を理解することと皮膚に対する針の角度。この番組で、大腿動脈採血の手技をマスターしてください。第7回 肘内障整復 今回の手技は肘内障整復です。肘内障は5歳くらいまでの乳幼児に起こる橈骨頭亜脱臼で、整復は数秒で完了します。この番組では、回内法と回外屈曲法の2通りの方法を説明します。整復が成功するポイントは、「迅速」に行うこと。この番組で肘内障整復をマスターしてください。第8回 動脈内留置カテーテル挿入 今回の基本手技は持続的な血圧測定や、頻回な採血を必要とする場合に実施する手技である「動脈内留置カテーテル挿入」。穿刺部位はいくつかありますが、安静の制限や感染の少ない橈骨動脈の手技を解説します。手技の手順はもちろんのこと、ちょっとしたコツやトラブルシューティング術などをしっかりとお教えします。第9回 指脱臼整復 今回の基本手技は経験が少ないとハードルの高い「指脱臼整復」。左中指背側脱臼を例に2種類の整復方法を提示します。一方で整復できないときは、もう一方を行いましょう。この番組でぜひ指脱臼整復をマスターしてください!

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魔法のパッチで子供の注射の怖さを軽減

 2017年12月5日、佐藤製薬株式会社は、外用局所麻酔剤のリドカイン・プロピトカイン配合貼付剤(商品名:エムラパッチ)の発売を前に、「注射の痛みに我慢は必要ですか?」をテーマとしたメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、「痛み」の概要と小児の痛みのケアについてディスカッションが行われた。なお、同貼付剤は12月13日に発売された(薬価251.60円/1枚)。子供のころの痛みは記憶として大きくなる はじめに同社代表取締役社長の佐藤 誠一氏があいさつし、医薬マーケティング部による製品説明の後、基調講演が行われた。 基調講演では、加藤 実氏(日本大学医学部麻酔科学系麻酔科学分野 診療教授)が、「その『医療の痛み』は本当に必要ですか?~痛みが無くなっても痛みの影響は終わらない~」をテーマに、主に小児における「痛み」の診療について現状や課題を語った。 痛みとは、組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか、このような傷害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚、情動体験と定義される。それは主観的な体験であり、患者本人にしかわからない。しかし痛みは、たとえば手術前の麻酔のように、予防することもできる。それにもかかわらず、1980年代までは新生児や小児への痛みの対応はなおざりだったという。 それは、新生児は痛みを感じにくいと思われていたからであり、1980年代後半に報告された論文以降、大きく変化した。すなわち新生児は、痛みの抑制系が未発達ゆえに痛みを感じやすく、新生児の外科的処置時には、成人同様、局所麻酔薬や全身麻酔薬を使用し、減量および中止も成人と同じ基準で行うべきという考えに変化した1)。 さらに小児期での痛みの体験は、一時的なものではなく成長後にも影響を与え、中枢性感作、不安・恐怖など記憶を介した認知を獲得する。たとえば、小児期の機能的な腹痛は、成人後の慢性痛リスクを増加させるという報告もあるという2)。局所麻酔を行い、痛みを中枢神経に伝えないようにすることは、痛みや恐怖から脳を守ることにつながると同氏は説明する。小児の痛みをマネジメントする時代へ 小児の痛みの予防について、まず小児が怖がる痛みの代表に、予防接種、採血、点滴などの注射が挙げられる。現在わが国では、こうした痛みを医療者も患者も「仕方がない」「一時的」「我慢できる」などの理由で、まだ看過しているのが現状だと、加藤氏は問題を指摘する。一方、欧米では、先述の理由から積極的に痛みのマネジメントについて取り組みが行われ、たとえばカナダでは「小児のためのワクチン摂取の痛みのマネジメント(Pain Management During Immunizations for Children)」が作成され、ガイドラインによって痛みの軽減が図られている3)。また、世界保健機関(WHO)も「ワクチン接種時の痛みの軽減についての提言」を2015年に発表するなど、世界的な動きが示されている。 加藤氏は講演のまとめとして、「小児の医療における痛みへの対応が向上するには時間がかかるかもしれないが、防げる痛みを防ぎ、子供を痛みから守る医療を一緒に目指そう」と、小児医療に関わる人々へ向け抱負を述べた。痛みの軽減だけではない患児へのメリット 引き続き、「子どもたちが怖がらずに済む医療へ」をテーマに、先の演者の加藤氏に加え、富澤 大輔氏(国立成育医療研究センター 小児がんセンター 血液腫瘍科 医長)、平田 美佳氏(聖路加国際病院 小児総合医療センター 小児看護専門看護師)によるディスカッションが行われた。 「小児期の疼痛対策の必要性」について、医療者だけでなく患児の親も持つ「痛みは仕方がない」という思い込みから、ケアがされていない現状であるという。わが国は我慢の文化であり、薬も使わない、痛みの弊害に目が向けられない状態が続いている。海外(英国)を例に平田氏は、「10年以上前から子供の痛みのケアが行われ、エムラクリームのような局所麻酔クリームを日常的に使用し、子供たちの間では『マジック・クリーム』の愛称で親しまれ、注射などの処置の前に塗布する習慣ができていた」と説明した。また、「病院での工夫」としては、「患児の疑問に答え、希望に沿うようにしているほか、事前におもちゃの注射器を見せて、準備をさせることも不安軽減に大事だと考えている。注射などの際は、患児の集中力を分散させる環境作りや処置後のフォローを行い、ケースによっては、エムラクリームなどの情報提供をしている」と同氏は付け加えた。 次に、「小児がんの治療の現場」を富澤氏が語った。「診療の中で、患児に痛みを伴う検査や治療が多いのが現状。痛みへのケアがないと、患児は診療に消極的になってしまうので、親を良いサポーターにする努力が医療者側には必要であり、同時に痛みに対する親の意識を変える必要性もある。注射への配慮としては、不必要な検査は避け、患児に痛みを除く方法もあることを説明しておく必要がある。急性リンパ性白血病(ALL)でのエムラクリームを使用したコントロール研究では、局所麻酔下だと患児の動きがなく、心拍数も変わらないという報告もある4)。これは大事な点で、ALL治療の予後にも影響することなので、治療時の患児の動きを抑えることは重要だと考える」と、同氏は実臨床をもとに説明した。患児の痛みのケアには医療者と社会の認知が必要 最後に、各演者が医療者へのメッセージを述べた。平田氏は「血友病の患児がエムラクリームのおかげで、治療を在宅で行えるようになり、表情が明るくなった。患児の感じる痛みを今後もマネジメントしていきたい」と事例を挙げて語り、富澤氏は「小児科は比較的患児の痛みケアが進んでいる分野だが、一般的に多くの医療者は患児の痛みのケアやこうした製剤を知らない。患児の親が医療者に適用を依頼するケースもあり、わが国も欧米並みに知識の普及と診療使用を考え、実践する必要がある」と見解を述べた。 最後に加藤氏は、「痛みをなくすには、体と心の両方の治療が必要で、エムラクリームのように痛みを軽減するツールがあるのに使われていないのが問題。医師への啓発だけではなく、いかに一般社会に広く浸透させるかが今後の課題」と問題を提起し、ディスカッションを終えた。■参考佐藤製薬株式会社 ニュースリリース「エムラパッチ」新発売のご案内(PDF)

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血小板輸血後に女児死亡、厚労省から注意喚起

 2017年11月29日、血小板製剤輸血による細菌感染が疑われていた症例について、患者の死亡が確認されていたことが、厚生労働省の有識者会議にて報告された。患者は、急性骨髄性白血病の再発に対する同種骨髄移植を受けた10歳未満の女児。移植の約1ヵ月後に、血小板製剤の投与が行われ、投与20分後より振戦、呼吸促拍の出現により投与が一時中止された。その後、投与が再開されたものの、嘔吐、下痢により再び中止に至った。女児は投与後4日目に一時心肺停止状態となり、投与後1ヵ月6日目、敗血症性ショックによる多臓器不全で死亡した。 今回、女児が投与されたのは、「照射濃厚血小板-LR」(採血後4日目)20mlで、その後の検査により、残りの製剤および女児の血液から同一の大腸菌が同定された。担当医は「細菌感染と輸血血液との因果関係はあると考えられる」との見解を出している。 この問題に関して、厚生労働省は12月4日付で、血小板製剤使用時の安全確保について都道府県などに向けた通知を出した。 主な内容は以下のとおり。・少なくとも輸血開始後約5分間は患者の観察を十分に行い、約15分経過した時点で再度観察を行う。・輸血には同種免疫などによる副作用やウイルスなどに感染する危険性がありえるので、他に代替する治療法などがなく、その有効性が危険性を上回ると判断される場合にのみ実施する。・輸血を行う場合は、その必要性とともに感染症・副作用のリスクについて、患者またはその家族などに文書にてわかりやすく説明し、同意を得る。

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点から線の血糖管理で7%クリアへ

 2017年9月22日、アボット ジャパン株式会社は、フラッシュグルコースモニタリングシステム 「FreeStyle リブレ」(以下「リブレ」)の保険収載を受け、都内でプレスカンファレンスを開催した。当日は、本機の機能説明のほか、糖尿病患者からも使用経験が語られた。リブレの基本概要 リブレは、組織間質液中のグルコース値を記録するセンサーと、その測定値を読み取って表示するリーダーから構成される。500円玉大のセンサーを上腕後部に装着し、そこから極細のフィラメントが皮下に挿入され、グルコース値を毎分測定する。センサーは防水性で、最長14日間装着できる。そして、リーダーをセンサーにかざしスキャンするだけで、痛みを伴わず1秒でグルコース値を測定することができる。 さらに、測定されたデータを専用ソフトウェアで読み込むことで、グルコース値や変動データはAGP(Ambulatory Glucose Profile)と呼ばれるレポートとして、パソコン上で確認することができる。 本機は、国内では2017年9月1日より保険適用となった。患者の血糖動態を「見える化」して診療に活かす 講演では西村 理明氏(東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 准教授)が、「糖尿病ケアは次の時代へ」と題して、糖尿病診療における「見える化の重要性」について語った。 厚生労働省が発表した「平成28年 国民健康・栄養調査」によると、糖尿病有病者と糖尿病予備群はいずれも約1,000万人と推計されることに触れ、患者数と医療費の増加に懸念を示した。とくに糖尿病合併症では医療費が高額になることが多く、合併症予防のためにも、日本糖尿病学会提唱のHbA1c 7.0%未満は、治療の目標として重要である。そして、血糖コントロールの大切なポイントは、血糖レベルの改善、低血糖の回避、血糖変動の最小化の3点だという。 近年の研究では、平均血糖変動幅(MAGE)と心血管イベントの相関(MAGEが大きいほど心血管イベントも多い)や低血糖と不整脈、心筋虚血の合併症も報告されている。低血糖の予防では血糖自己測定(SMBG)が行われ、インスリン量の調節や糖の摂取などの目安とされる。 ここで、2016年に西村氏が報告した「アンケートによる血糖自己測定の満足度と患者ニーズの調査」(n=1,050)が紹介された。その中で患者さんの半数以上が現在のSMBGは満足と答え、8割以上が低血糖対策としてのSMBGに満足と回答しているものの、低血糖発生の予防には必ずしも寄与していないことが示された。その原因として、測定回数の少なさ、血糖変動が見えないなどの得られる情報の少なさのほか、採血の痛さ、測定の煩雑さなど利用の際の手間もあると氏は指摘する。 こうした課題に応えるように開発されたリブレは、ほぼ痛みもなく、時間・場所を選ばずに着衣の上から1秒で測定ができる。従来の持続血糖測定(CGM)では測定記録が複雑で傾向がわかりにくかったが、リブレではわかりやすく視覚化されているため、血糖の日内変動を可視化でき、医療者もこれを診療に役立てることができるという。 実際、リブレの臨床試験では、1型糖尿病患者(n=239)を対象としたIMPACT試験1)と2型糖尿病患者(n=224)を対象としたREPLACE試験2)が行われ、両試験ともHbA1cの低下、低血糖発現時間の減少など血糖コントロールの質を改善することが示された。 最後に西村氏はリブレについて、「患者さんや医療従事者の負担を軽減しながら、豊富な血糖関連データを簡単に『見える化』する機器であり、広く普及すると思われる。この見える化で良質な血糖コントロールの達成を実現する患者さんが増え、糖尿病診療にパラダイムシフトをもたらすのではないかと感じている」と展望を語り、講演を終えた。MBGは患者にとって大きなストレス 次に患者視点から大村 詠一氏(日本IDDMネットワーク 専務理事)が、「FreeStyleリブレで変わった血糖管理」をテーマに、本機登場の意義、患者のメリットなどを語った。 エアロビックの演者・指導者である大村氏は1型糖尿病患者であり、インスリンを1日5回注射しているため、必要量の把握のためSMBGを余儀なくされている。しかし、SMBGの針は大きく痛みを伴うだけでなく、測定が煩雑であり、時間と場所の制約を受けることが多い。一方、リブレでは、こうした課題が解決されるうえ、自身の早朝における血糖上昇に気付くことができ、血糖動態改善につなげることができたという。 「リブレには、患者側から厚生労働省に承認要望を出し、適用となった経緯がある。この新ツールを活用することで、患者のライフスタイルの変化や治療の改善に寄与することを希望する」と大村氏は語る。 続いて、自身も2型糖尿病患者である華道家の假屋崎 省吾氏と西村氏の対談となった。SMBGについて假屋崎氏は、「指先が痛く、仕事柄、指に影響するのでストレスを感じる」と語り、リブレの使用感については、「痛みもなく、日常生活にまったく問題がない。運動もできる。1日平均10回くらい食前食後、運動前に測定して日常生活に役立てている。血糖測定についての悩みがなくなった」と感想を語った。 最後に、假屋崎氏は糖尿病患者さんに向けて「糖尿病の進行を防ぐ努力をしよう。病気とは友達付き合いで、プラス思考で生きよう」とメッセージを送り、西村氏が「リブレで合併症を防ぐことができたり、血糖測定のストレスから解放されるかもしれない。今後の普及を見守りたい」と述べてセミナーは終了した。●参考文献1) Bolinder J, et al. Lancet. 2016;388:2254-2263.2) Haak T, et al. Diabetes Ther. 2017:8;55-73.■参考FreeStyleリブレ オフィシャルサイト

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170)中性脂肪の代謝を阻害する“喫煙”【脂質異常症患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者今日は朝食を食べて採血をしました。医師なるほど。中性脂肪が300mg/dLと驚くほど上昇していますね。空腹時は150mg/dL前後なのですが…。患者中性脂肪って食事で動くんですね。医師そうですね。食事で大きく変動します。食後の中性脂肪が高いと心筋梗塞になりやすいと言われています。患者どうやったら、中性脂肪を下げることができますか?医師食事をすると中性脂肪が上がりますが、血管の内側で中性脂肪は代謝されます。でも、その機能を落としてしまうのが「タバコ」です。患者やっぱり、タバコですか。肺がん以外にもいろいろと悪さをするんですね。明日から禁煙、いえ今日から禁煙準備を始めます。●ポイントすぐに禁煙に取り組む自信がない人には禁煙準備(例:灰皿の整理、カートン 買いを止めるなど)から始めてもらいます1)Staniak HL, et al. Atherosclerosis. 2014;233:381-386.2)Kabagambe EK, et al. Atherosclerosis. 2009;203:633-639.

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救急エコー最速RUSH!

第1回 ショックの鑑別にはエコー! 第2回 ダッシュで“RUSH”をモノにする 第3回 PUMP 第4回 TANK① 第5回 TANK② 第6回 PIPES ショック患者が来たときにどう対応しますか?採血、心電図、X線、CT・・・・。CT室に運んでいるときに患者の容態が悪化・・・そんな経験はありませんか。ショックの原因をベッドサイドでルールイン、ルールアウトできるのがエコーです。そんな救急エコーのプロトコルの中でも、最も早く、最も広範囲をカバーする「RUSH Exam.」。わずか2分でショックの原因検索ができます。このDVDで、RUSHをモノにして、ショックに立ち向かいましょう!第1回 ショックの鑑別にはエコー!ショックは原因によって対応や処置が異なり、とくに素早い診断が重要となります。そこで、エコー!X線よりも、CTよりも早く、確実にショックを鑑別します。今回は、ショックの原因検索にエコーがいかに有用かを解説します。第2回 ダッシュで“RUSH”をモノにする 最速エコーテクニック「RUSH Exam.」の概要について解説します。RUSHの基本は、PUMP、TANK、PIPESの3つのコンポーネントをそれぞれ、3ステップの計9ステップで見ていくことです。まずは、ショック患者が来たとき、どのような手順で、何をどう見ていくのか確認しましょう。第3回 PUMP RUSH Exam.の3つのコンポーネントのうちの1つ「PUMP」を見ていきます。PUMPで見るべきビューとそれぞれの施行ポイント、そしてその所見の取りかたをお教えします。実際のエコー映像もたっぷり。原因がわかったらすぐに処置・治療につなげられるのも、エコーならでは!まずはPUMPをマスターしましょう!第4回 TANK① PUMPに続いて、TANKについてみていきます。TANKのメインは、“FAST”。体腔内に液体貯留がないかどうかの検索を行います。でも、もちろん、ただのFASTではなく、Step Beyond FAST!TANKの見るべきビューとそれぞれの施行ポイント、そしてその所見の取りかたをしっかりとマスターしましょう!第5回 TANK② 今回は前回のTANKの続きです。最後のビューポイント前胸部についてみていきます。前胸部では主に「気胸」を診断、あるいは否定をしていきます。X線での気胸の感度は50%程度、それに対して、超音波では90%以上!それでも、X線を使いますか?さあ、エコーを使いこなして、迅速な診断と治療につなげましょう!第6回 PIPES 最後のコンポーネントPIPESです。PIPESでは、腹部、胸部大動脈瘤、解離とDVT(肺塞栓)について診断、除外をおこないます。見るべきビューは6つ。しっかりとマスターしましょう。これで、RUSH Exam.すべてのコンポーネントが揃いました!さあ、RUSHをモノにして、ショックに立ち向かいましょう!

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第6回 深刻な世代間ギャップの存在【患者コミュニケーション塾】

深刻な世代間ギャップの存在今では医学教育で義務化され、当たり前となったOSCE(客観的臨床能力試験)における医療面接。COMLでは、相手役となる模擬患者の養成と派遣に、1992年から取り組んできました。医学部の講義へ模擬患者を派遣すると、医学生たちから感想文が送られてきます。その内容を読んでいて、ある時期から気になる記載を目にするようになりました。それは、「子供の頃から友人のプライバシーにも深く立ち入らないように気を付けてきたのに、突然出会ううえに年齢も異なる患者さんに、どう対応すれば踏み込み過ぎずに済むか悩む。」といった内容です。友人と違うことをしたり目立ったりするといじめに遭う、というような不安から、真正面からぶつかることを避けてお互い傷つけないように付き合っていくことが、彼らにとっての処世術なのでしょうか。そう考えれば、このような悩みも理解できないわけではありません。しかし、患者の立場としては、違和感を覚えるのです。なぜなら、医師とは患者の究極のプライバシーと向き合う仕事だからです。「どこまで踏み込んでいいのか」ではなく、しっかり踏み込まないと仕事にならないはずです。私はむしろ多くの患者は、「あなたのことを知りたい」と向き合ってくれて、自分のことを十分理解したうえで医療を提供してほしいと望んでいるのではないかと思います。高齢患者の発言を理解できず真逆の行動にまた、コミュニケーションを取るうえで欠かせないのが「言語」です。ところが最近、異なる世代間での共通言語が危機的に少なくなってきていると感じます。年配の世代が若い世代の流行語や略語、「ビミョー」「フツー」「ヤバイ」とカタカナで表現される独特の言葉の使い方についていけないのもその1つです。一方、年配の世代が使う表現を理解できない若者も増えています。それを痛感したのが、ある研修医の体験談を聞いた時でした。その研修医は高齢の男性患者から採血をしようとしたそうですが、採血に適した血管がなかなか見つからず、2度失敗したそうです。そこで上級医に交代してもらおうとしましたが、急変患者が複数発生していて、手が空いている医師がいませんでした。その高齢男性は血液検査の結果が至急必要な患者だったので、「もう少し頑張ってみよう」とさらに2回試みましたが、またもや失敗してしまいました。それまでずっと黙って採血の様子を見守っていたその高齢患者が、4回目の失敗の後、おもむろに「なぁ、兜を脱ぐか?」と言ったそうです。しかし研修医はその意味が理解できず、「どうしよう、何か僕に言っている…」と戸惑い、一生懸命「かぶと、かぶと…」と考えているうちに、兜をかぶった侍が刀を抜いて闘う姿がイメージされて、その勇ましい姿から「そうか、僕は励まされてるんだ!」と考えたのです。そして再び、2回採血を強行したことを私に打ち明けました。この話を聞いた時に、私は大変な世の中がやってきたと思いました。日本語でコミュニケーションが取れなくなってきているのです。医療現場は0歳から100歳代までのあらゆる世代の患者、家族とのコミュニケーションが求められます。この世代間の共通言語をいかに増やしていくかも、喫緊の課題ではないかと思っています。

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治療できるライソゾーム病 ―ポンペ病を見逃さないために―

ポンペ病(糖原病II型/酸性マルターゼ欠損症[AMD])ポンペ病は、ライソゾーム酵素である酸性α-グルコシダーゼの欠損・活性低下を原因とする常染色体劣性遺伝疾患で、多くの組織のライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し、主に骨格筋や心筋、平滑筋が障害される。発症率は約4万人に1人と報告されており1-3)、国内では100人程度の患者が確認されている。治療としては、各症状に対する対症療法に加え、酸性α-グルコシダーゼを補充する酵素補充療法が行われる。ポンペ病を疑う特徴的な症状臨床症状はきわめて多岐にわたるが、発症する年齢により、乳児型と小児型・成人型(遅発型)の3つに分けられる。乳児型は生後6ヵ月までに発症し、心肥大などの重度の心機能障害、筋力低下・筋緊張低下(フロッピーインファント※)、呼吸障害、哺乳不良、発達障害などがみられるが、とくに心肥大と筋力低下・筋緊張低下はポンペ病を疑う。小児型は生後6~12ヵ月以降、成人型は10~60歳代に発症し、いずれも重度の心機能障害は来さないが、小児型では進行性ミオパチー、成人型では緩徐進行性ミオパチーを特徴とする。小児型・成人型では、近位筋の筋力低下、呼吸機能障害、早朝の頭痛、高CK血症などからポンペ病を疑う。最重症である乳児型は約3分の1の頻度を占め2)、心肺不全により生後1年以内に死亡する急速進行性の経過をたどるため4,5)、とくに早期診断・治療が求められる。※筋肉が柔らかくなり、正常な子供にみられない特異な姿勢になる。首の座りやお座り、はいはいや歩行といった発達が遅れる。ポンペ病の早期診断のためにポンペ病を疑う症状や所見が認められたら、「新生児マス・スクリーニング用ろ紙※」を用いた酸性α-グルコシダーゼ酵素活性測定による簡便なスクリーニング検査の実施が推奨される(図1)。本スクリーニング検査は、検体に乾燥ろ紙血を用いるため、侵襲が少なく、常温で郵送可能などの利点があり、国立成育医療研究センター臨床検査をはじめとした幾つかの医療機関で原則無料で実施されている。酵素活性測定の結果は、2~4週間程度で報告され、酵素活性低下が確認できれば、確定診断として遺伝子検査や筋生検が必要となることがある。ポンペ病は、患者数が少なく、疾患の認知があまりされていないうえに、他の疾患と類似した症状や所見を示すことがあるため、診断がつかないまま適切な治療を受けられないでいる患者さんが存在している可能性がある。ポンペ病の患者さんの予後を考えるうえでは、早期診断・治療がきわめて重要である。図1 ろ紙血検体作業・依頼方法(国立成育医療研究センターの場合)(1)1~2mL採血後、新生児マス・スクリーニング用ろ紙に血液を2、3滴滴下する。◇点線丸印からはみ出るように滴下する◇ろ紙の裏側にしみるまで滴下する拡大する(2)ろ紙に患者さんの名前(もしくはイニシャル、匿名化番号)、生年月日、採取日、性別を記入する。(3)吊り下げずにそのまま水平に置き、室温で5時間以上乾燥させる(2~3日の室温放置も可)。(4)完全に乾燥させた後、ビニール袋に入れ、郵送までの間、冷蔵で保存する。(5)「検査申込書(酵素活性検査用)」に必要事項を記入し、ろ紙血(ビニールに入れた状態)とともに常温で検査実施機関に郵送する。1)Hirschhorn R & Reuser AJJ. Glycogen storage disease type II: acid alpha-glucosidase (acid maltase) deficiency. In: Scriver CR, et al. eds. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. 8th ed. NewYork: McGraw-Hill; 2001.p.3389-3420.2)Martiniuk F. et al. Am J Med Genet. 1998;79:69-72.3)Ausems MG et al. Eur J Hum Genet. 1999;7:713-716.4)van den Hout HM. et al. Pediatrics. 2003;112:332-340.5)Kishnani PS. et al. J Pediatr 2006;148:671-676.

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アクション指向型メモ【Dr. 中島の 新・徒然草】(132)

百三十二の段 アクション指向型メモいささか季節外れの話になりますが、今年の1月に年賀状の整理をしながら気付いた事について述べたいと思います。年末年始というと、大慌てで年賀状を出したり受け取ったり、というのが恒例です。とはいえ、年賀状というものは出して受け取ったらそれで終わりということはありません。その後に、住所録の変更とか、書き損じた葉書の処理とか、当選したお年玉付き年賀葉書の景品引き換えとか、いろいろなこともする必要があります。まず行うことは、手元の葉書の分類です。以前の私は、喪中葉書とか、書き損じ葉書とか、自分に来たものとか、家族に来たものとか、それぞれの属性に応じて分類していました。でも、この分類だと住所録をアップデートしようとしたときに、「何をすべきか」を再び考えなくてはなりません。つまり二度手間になってしまうのです。そこでお勧めするのが、アクション指向型分類です。すなわち、自分に来たものだろうが、家族に来たものだろうが、年賀状に対するアクションは2軸しかないので、これに従って分類するのです。(1)住所録:変更する(訂正、削除、新規登録)、変更なし(2)郵便局:持っていく(景品と交換、新しい葉書と交換)、持っていかないということですね。たとえば当選したお年玉付き年賀葉書 → 郵便局で景品に引き換える自分が書き損じた葉書 → 郵便局で新しいものと交換する宛先不明で戻ってきたもの → 住所録から削除するといったところ。まあ大部分の葉書は住所録を変更する必要もないし、郵便局に持っていく必要もありません。なので、残りの少数の葉書をアクション別に分類しておきます。そうすると5つくらいの山になるので、それぞれに「住所新規登録のみ」とか「住所訂正と景品に交換」というアクションを書いたメモを上に貼っておけばOK。1月半ば頃にメモに従って住所録をアップデートし、郵便局に持っていって交換します。最初に分類する時には少しだけ頭を使いますが、後で行動する時には頭を使わなくていいので楽です。この方法は冷蔵庫の食べ物の賞味期限にも応用できます。たとえば、開封してある牛乳を飲んでいいのか悪いのか、という現代人にとっての大問題。これを決める要素は、賞味期限開封後の日数という2つです。賞味期限を過ぎたものは、もちろん捨てるしかありません。また、開封から5日以上経ったら私は賞味期限内であっても捨てています。ヘンなものを飲んだらえらいことになりますから。ということは、開封した時点で捨てるべき日は一義的に決まってしまうので、牛乳パックに「~8月24日」などと書いておけばいいです。飲もうと思った日が8月24日なら躊躇なく飲む。8月25日なら躊躇なく捨てる。ただそれだけ。頭を使わなくていいので楽ですね。では、このアクション指向型メモを日常診療で応用する場面があるのか?私がやっているのは、外来カルテのSOAPの「P」の部分。ここに次の外来診察日にやることを書いておきます。P:〇〇を新たに処方する。次回の外来で効果と副作用のチェック、採血結果の確認。こんな風に書いておくと、次の外来診察の時に患者さんと世間話だけに終始して肝心な事を忘れていた、ということにはならないかと思います。読者の皆様、他にも応用する場面がありましたら、是非、教えてください。最後に1句メモ書いて 未来の自分へ 指示を出す

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年とれば【Dr. 中島の 新・徒然草】(104)

百四の段 年とれば患者さんが外来診察の予約時間に遅れて来ることは珍しくありません。診察予約日を忘れている人も1日に少なくとも1人くらいはおられるように思います。窓口担当者も慣れたもので、「忘れとった、御免!」という電話があるたびに、淡々と別の日を案内しています。一方、患者さんの中には診察予約日を忘れていたことをものすごく謝る人もおられます。今も現役で働いている70代男性の患者さんは、予約日を忘れていたことに大変恐縮され、次の診察のときにも平身低頭でした。患者「別の病院の予約日に気をとられていましてね」中島「ええ」患者「そちらの診察が無事終わったところで、『はて、国立(病院機構大阪医療センター ※編集部補足)はいつだったかな?』と思って調べてみたら」中島「はい」患者「もうとっくに過ぎていたんですよ」中島「あらまあ」患者「それで慌てて電話して許してもらいました」中島「許すも何もアアタ」患者「案外あっさり対応していただいたので驚きました」中島「いやいやいや、診察予約日を忘れる人なんか大勢おられますから」患者「そうなんですか!」実際、数日経ってから電話がかかってくることなど日常茶飯事です。中島「でもね、本当に困るのは逆の場合なんです」患者「逆の場合?」中島「ありもしない診察日だとか、検査を主張して譲らない患者さんです」患者「そんな人がいるんですか!」中島「『採血があるはずだ』とか、『今日が診察日だ』とか、いろいろ言われてしまうんですよ」突然、採血室から電話がかかってきて驚かされるパターンですね。検査室「〇〇様とおっしゃる方が、今日、採血があるはずだとお越しになっているのですが、検査オーダーが入っていません」こんな感じです。患者さんが勘違いしているのか、こちらが入れ忘れているのか一々事実確認するのも面倒なので、私なんかはその場で検査オーダーを入れてしまいます。時には診察時間外に外来に現れる患者さんもおられます。そんな時はたいてい一悶着あってから外来看護師さんから電話がかかってくるのですが、手が空いていれば診察することにしています。患者「今日診察があるはずなのに、一体どうなってるんや!」中島「診察予約券をお持ちですか?」患者「いやそれが何処かにいってしまって」中島「カルテには〇月〇日と、別の日に診察予約になっているようですけど」患者「おかしいなあ。確かに先生から今日と聞いたんやけどな」中島「じゃあ私がカルテと違うことを言ってしまったのかもしれません。すみません、私も最近もの忘れがひどいんで」患者「いやいや、先生はそんなことないでしょう」中島「まあ、ちょっとぐらいの勘違いは堪忍したってください」最近、私も物忘れや勘違いが多いので、案外、患者さんの主張のほうが正しかったのかもしれませんね。最後に1句年とれば 医者も患者も もの忘れ

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皮膚T細胞リンパ腫〔CTCL : cutaneous T cell lymphoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義皮膚T細胞リンパ腫は、菌状息肉症、セザリー症侯群、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫など、皮膚を主座とするすべてのT細胞リンパ腫を指す。リンパ節に原発する全身性リンパ腫との鑑別が重要であるが、診断時に皮膚外病変を認めた場合でも、病歴や臨床像から皮膚T細胞リンパ腫と判断することもある。■ 疫学1)皮膚T細胞リンパ腫の発症数日本皮膚悪性腫瘍学会 皮膚がん予後統計委員会によると、2007~2011年における皮膚T細胞リンパ腫の新規発症は年間約260例であった。2)皮膚T細胞リンパ腫の病型皮膚T細胞リンパ腫の病型分類では、菌状息肉症が約50%、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫とリンパ腫様丘疹症からなる原発性皮膚CD30陽性リンパ増殖症は約10%、皮膚病変が主である成人T細胞白血病・リンパ腫が約7.5%であった。■ 病因皮膚に親和性の高いTリンパ球が悪性化し、主に皮膚で増殖している状態である。成人T細胞白血病・リンパ腫は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)が発症に関与していると考えられている。菌状息肉症は、成人T細胞白血病・リンパ腫と類似した臨床・組織像を取ることが多いため、以前よりウイルス病因説があるが、今のところ原因といえるウイルスは同定されていない。それ以外の皮膚T細胞リンパ腫についても、明らかな病因は不明であるが、免疫抑制状態が病勢の増悪に寄与していると考えられている。■ 症状1)皮膚症状紅斑、局面、腫瘤、紅皮症(全身が紅斑で覆われた状態)、皮下結節、潰瘍、紫斑などを呈する。2)リンパ節腫脹表在リンパ節が腫脹する。腫瘍細胞の増殖によるものと、反応性のものがある。3)末梢血中異型細胞成人T細胞白血病・リンパ腫やセザリー症候群では、末梢血液中に腫瘍細胞が検出されることがある。4)生化学的異常LDH、可溶性IL-2受容体など、悪性リンパ腫のマーカーが高値を示す。菌状息肉症・セザリー症候群では、血清中のTARC(thymus and activation-regulated chemokine)が病勢を反映することが知られている。5)発熱・体重減少・盗汗(B症状)B症状を示すことは、皮膚T細胞リンパ腫では一般的にまれであるが、進行例で陽性になることがある。■ 分類菌状息肉症、セザリー症候群、原発性皮膚CD30陽性リンパ増殖症(原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫とリンパ腫様丘疹症)、成人T細胞白血病・リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫(非特定)、原発性皮膚γδT細胞リンパ腫、原発性皮膚CD4陽性小・中細胞型T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8陽性進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫などがある。■ 予後予後は病型分類と病期によって異なる。菌状息肉症全体の5年生存率は約90%であるが、早期例(病期 IA)の疾患特異的5年生存率は98%である。一方、リンパ節病変もしくは内臓病変を有する病期IVでは、5年生存率が約20%である。セザリー症候群の5年生存率は約25%であり、成人T細胞白血病・リンパ腫、原発性皮膚γδT細胞リンパ腫では、5年生存率が算出不能なほど予後不良である。原発性皮膚CD30陽性リンパ増殖症は、5年生存率が90%以上であるという報告が多く、生命予後良好な病型である。皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD4陽性小・中細胞型T細胞リンパ腫なども予後良好であるが、これらは疾患概念の変遷があり、過去の論文を読む際は注意を要する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)身体診察、皮膚生検・リンパ節生検(HE染色、免疫染色、サザンブロットまたはPCRによるモノクロナリティの検索)、血液検査(血算、目視による血液像、LDH、可溶性IL-2受容体、フローサイトメトリー)、骨髄穿刺、画像検査(胸部X線、腹部エコー、胸腹骨盤部CT、FDG-PET)などから総合的に判断する。紅斑、局面が主体の皮膚T細胞リンパ腫の鑑別診断としては、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、扁平苔癬などの皮膚疾患や薬疹などが挙げられる。腫瘤や皮下結節が主体のものは、有棘細胞がんや悪性腫瘍の皮膚転移などが鑑別となる。潰瘍や紫斑を主症状とする皮膚T細胞リンパ腫では、血管炎が鑑別疾患となる。いずれも病理組織が診断の決め手となる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療は病型分類と病期によって異なる。一般的に予後良好な皮膚T細胞リンパ腫では、ステロイド外用、紫外線、外科的切除、放射線療法などの局所療法が主体となる。予後不良な病型では全身化学療法、骨髄移植などの治療が選択される。■ 菌状息肉症・セザリー症候群(図1)菌状息肉症とセザリー症候群が同一の疾患であるか、いまだに議論があるが、病期分類は同じものが使用されており、治療法も基本的には共通である。紅斑、局面が主体の早期の症例では、ステロイド外用、紫外線を中心に治療するが、治療抵抗例ではレチノイドやインターフェロンを併用する。局所的に放射線療法を用いることもある。腫瘤が多発している症例では、当初からこれらの治療を組み合わせた集学的治療を行う。紅皮症では体外光化学療法が推奨されるが、わが国で行っている施設はほとんどない。リンパ節や内臓病変を伴う場合は、化学療法がメインとなる。若年者の場合は同種造血幹細胞移植も考慮する。画像を拡大する■ 原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(図2)皮膚病変が限局している場合は、外科的切除や放射線療法を検討する。これらの治療が有効でない場合、単剤化学療法を考える。皮膚病変が広範囲に多発している場合、出現消退を繰り返しているか否かが重要となる。皮疹の出現消退があれば、リンパ腫様丘疹症と考えられるため、経過観察や紫外線照射を行う。症状が増悪する場合、単剤化学療法を考える。広範囲に多発している皮膚病変に消退傾向がなければ、最初から単剤化学療法を考える。単剤化学療法の実施が難しい場合、あるいは効果が不十分な病変に対し、放射線療法を考慮してよい。皮膚外病変がある場合は、多剤併用化学療法を行う。実施が困難な場合、あるいは効果が不十分な病変に対し、放射線療法を考慮する。画像を拡大する■ 成人T細胞白血病・リンパ腫(図3)ここでは、予後不良因子のない慢性型もしくはくすぶり型で、皮膚病変があるものに対する治療法を述べる。一般的に、紫外線もしくは放射線療法を用いる。これらが無効の場合、レチノイド、インターフェロン、単剤化学療法の併用を考慮する。定期的に採血を行い、急性転化を見逃さないように注意する。画像を拡大する■ それ以外の病型病変が皮膚に限局している場合、ステロイド外用、紫外線、外科的切除、放射線療法などの局所療法が主体となる。皮膚外病変がある場合は、全身化学療法、造血幹細胞移植などの治療が選択される。予後不良な病型では、皮膚外病変がなくても化学療法を検討してもよいが、マイナーな病型の場合は経過の予測が難しく、症例ごとに治療法を検討する姿勢が望ましい。4 今後の展望菌状息肉症に対する治療については、レチノイドの一種であるベキサロテン(商品名:タルグレチン)が臨床試験を終了し、現在承認申請中である。また、CCR4陽性の成人T細胞白血病・リンパ腫、再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫および皮膚T細胞リンパ腫に保険適用となっている抗CCR4抗体について、CCR4の発現の有無を問わない治験が、菌状息肉症に対して行われている。成人T細胞白血病・リンパ腫については、予後不良因子を持たない慢性型およびくすぶり型を対象に、インターフェロン-αとジドブジン(AZT 同:レトロビル)の併用療法の臨床試験が行われている。5 主たる診療科皮膚科を中心に血液内科、放射線科と相談して治療を進めていく。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報National Cancer Institute, Mycosis Fungoides and the Sezary Syndrome Treatment(PDQ®).(米国がん研究所の同疾患の診療情報)National Comprehensive Cancer Network (NCCN), NCCN Practice Guidelines in Oncology: Mycosis Fungoides/Sezary syndrome of the cutaneous T-cell lymphomas.(NCCN提供の同疾患のガイドライン: 視聴には会員登録必要)1)Swerdlow SH, et al,editors. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues ,4th ed.Lyon:IARC Press;2008.2)Sugaya M, et al. J Dermatol.2013;40:2-14.3)日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編. 科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版.金原出版;2015.公開履歴初回2013年08月01日更新2016年01月05日

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小児のIgE感作と疾患の関連 4分の1が疾患を有さず

 小児は皮膚炎、喘息および鼻炎に罹患することが多いが、それらの有病率は年齢とともに変化する。また、IgE抗体保有と疾患との関連もよくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のNatalia Ballardini氏らは、感作と疾患との関連を明らかにする目的で、出生コホート研究にて16歳まで追跡された小児を調査した。その結果、特異的IgE抗体は小児期全体における皮膚炎およびアレルギー性疾患の複数罹患と関連していること、また4歳からの喘息および鼻炎と強く関連していたことを報告した。一方で、IgE感作を認める小児の23%が、小児期にいかなる疾患も呈しないことも判明したという。Allergy誌オンライン版2015年10月27日号の掲載報告。 対象は、スウェーデンの出生コホート研究BAMSEに登録された小児2,607例であった。 1~16歳の間6評価時点で、親の報告に基づき皮膚炎、喘息、鼻炎の罹患を確認した。また、4、8、16歳時の採血結果からIgE感作の有無を調査。一般的な食物または吸入アレルゲンに対するアレルゲン特異的IgE≧0.35kUA/Lの場合を感作ありと定義した。 一般化推定方程式を用い、感作による皮膚炎、喘息、鼻炎および複数罹患のオッズ比を算出した。 主な結果は以下のとおり。・16歳までに少なくとも1回の感作が報告された小児は、51%であった。・感作を受けている小児の約4分の1(23%)が、いかなる疾患も有していなかった。・潜在的な交絡因子を補正後、感作と次の有意な関連が認められた。 (1)小児期全体に及ぶ皮膚炎 (2)1~16歳時の皮膚炎・喘息・鼻炎の複数罹患(オッズ比:5.11、95%信頼区間[CI]:3.99~6.55) (3)4~16歳における喘息および鼻炎

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事例64 悪性腫瘍特異物質治療管理料(その他2項目)の査定【斬らレセプト】

解説事例では、胃がん、膵がんを疑い、D009腫瘍マーカー検査2項目を測定していたのでB001[3]悪性腫瘍特異物質治療管理料を算定したところ、C事由(医学的理由による不適当)により査定となった。腫瘍マーカー検査そのものの復活は無く、静脈採血料が復活されていた。同管理料の留意事項には、「悪性腫瘍と既に確定診断された場合に腫瘍マーカー検査を行い、当該検査の結果に基づいて計画的な治療管理を行った場合に、月1回に限り算定できる」とある。事例では「疑い病名」のままで算定していたため同管理料の算定は不適当と判断された。また、レセプト上の検査などの実施状況から悪性腫瘍を強く疑った理由が読み取れないため、腫瘍マーカー検査の復活が認められなかったものと推測できる。再審査を考えるために、本来は悪性腫瘍が確定していたのではないかとカルテを確認したが、治療計画の記載など確定診断が読み取れる記載が確認できなかったため、再審査は行われなかった。同管理料と腫瘍マーカー検査は、査定例が多く、個別指導などでも指摘が多い項目である。算定要件に十分に留意して算定をお願いしたい。

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問診と自己申告で全死亡が予測できる?(解説:桑島 巌 氏)-378

 英国のBiobankの約50万人の登録追跡研究から、身体所見や採血データを用いなくとも、問診や健康状態の自己申告によって全死因死亡を予測できるという発表である。 とくに重篤な疾患を合併していない症例では、男女とも最大の死亡リスクは喫煙であったという。また、全体として、男性の最も強力な死亡予測因子は自己申告による健康状態、女性ではがんの診断歴であったという。採血、身体検査、生体試料など655項目と全死亡との関連について、統計学的に解析しているが、そのうち自己申告による予測スコアは疾患歴、喫煙歴、飲酒歴、薬剤服用状況、自立機能、歩行障害、生活様式など、男性が13項目、女性は11項目である。 これだけ膨大なデータを用いた研究としては、喫煙とがんの既往歴が死亡を予測するという、当たり前のような結果を示したにすぎないが、健診業務や日常診療において、問診や自己申告が予後予測に非常に重要であることを示した点では意義のある研究である。 高齢者社会という多様性の時代の健診や診療においては、数値にこだわるよりも個々との問診や自己申告、すなわち、対話に基づいた診療が重要であることを示している。とくに診療ガイドラインによるコレステロール値、血糖値、血圧値などの数値に拘泥する傾向があるわが国の健診あるいは診療にとって、考えさせられる論文である。

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急性心筋梗塞に匹敵するほど血清トロポニンが上昇するスポーツ【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第45回

急性心筋梗塞に匹敵するほど血清トロポニンが上昇するスポーツ >Wikipedeiaより使用 温泉旅館に行くと卓球台が必ずといっていいほど置いてありますね。私は卓球が恐ろしく下手で、これまでスマッシュが成功したことはおそらく一度もありません。卓球は非常に運動量が多く、とくに足にかかる負担はすさまじいものです。福原 愛選手がその昔、第5中足骨基部骨折(Jones骨折)を起こしたことがあります。これは、卓球の激しい動きによって身体の外側に体重がかかってしまい、それを繰り返すことによって第5中足骨に機械的ストレスがかかったためといわれています。 そんな激しいスポーツである卓球は、子供の頃から打ち込む選手も多いためか、成長期に整形外科的なトラブルを抱える選手もいます。 Ma G, et al. Influence of repeated bouts of table tennis training on cardiac biomarkers in children. Pediatr Cardiol. 2014;35:711-718. 激しい運動をすると血清トロポニンが上昇するといわれていますが、もちろんこれは心筋由来ではなく、骨格筋由来といわれています。この研究は、卓球に打ち込む子供の血清トロポニンを測定したものです。なぜこのような研究を企画したのかよくわかりませんが、興味深いですね。28人の小児が5分の休憩を挟みながら10分間のフォアハンド練習を6セット行いました。血清トロポニンT、トロポニンI、クレアチンキナーゼMB分画(CK-MB)が運動前に測定され、最終運動直後、4時間後、24時間後、48時間後にも測定されました。また、心機能は安静時に超音波検査を行い評価しました。その結果、血清トロポニンT、トロポニンI、CK-MBは有意に運動直後で上昇していました。この上昇は48時間後には元に戻っていたそうですが、心筋障害を起こしているのではないかと思われるくらい上昇が大きかったそうです。運動4時間後の採血では、何人かの小児では急性心筋梗塞のカットオフ値を上回っていました。そのためトーナメントなどで1日に何度も試合に出場している小児は、血清トロポニンが上昇している可能性が高いです。「だから何がどうなんだ」といわれると、それまでの報告なのですが……。インデックスページへ戻る

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問診のみで5年以内の死亡を予測可能?50万人の前向き研究/Lancet

 身体的な検査を行わなくても、通常の問診のみで得た情報が、中高年者の全死因死亡を最も強力に予測する可能性があることが、英国のバイオバンク(UK Biobank)の約50万人のデータを用いた検討で明らかとなった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAndrea Ganna氏とウプサラ大学のErik Ingelsson氏がLancet誌オンライン版2015年6月2日号で報告した。とくに中高年者の余命を正確に把握し、リスクを層別化することは、公衆衛生学上の重要な優先事項であり、臨床的な意思決定の中心的課題とされる。短期的な死亡に関する予後指標はすでに存在するが、これらは主に高齢者や高リスク集団を対象としており、サンプルサイズが小さい、リスク因子数が少ないなどの限界があるという。地域住民ベースの前向き研究で問診の予測スコアを開発 2人の研究者は、UK Biobankのデータを用いて全死因および死因別の5年死亡の評価を行い、個別の死亡リスクを推定するために、患者の自己申告による情報のみを用いて5年死亡の予後指標に基づく予測スコアを開発し、その妥当性の検証を行った。 UK Biobankへの参加者の登録は、2007年4月~2010年7月の間に、イングランド、ウェールズ、スコットランドの21施設で、標準化された方法を用いて行われた。約50万人から、採血、質問票、身体検査、生体試料に基づくデータが収集された。 血液検査、人口統計学、健康状態、生活様式などに関する10群、655項目のデータと、全死因死亡および6つの死因別の死亡カテゴリー(新生物、循環器系疾患、呼吸器系疾患、消化器系疾患、意図的自傷行為や転倒などの外因によるもの、その他)の関連を、Cox比例ハザードモデルを用いて男女別に評価した。参加者の80%以上で欠損した測定値や、サマリデータが得られなかったすべての心肺健康検査の測定値は除外した。 予測スコアの妥当性の検証は、スコットランドの施設で登録された参加者で実施した。英国の生命表と国勢調査の情報を用いて、スコアを英国の全人口に換算した。重篤な疾患がない場合の最大の死亡リスク因子は喫煙 37~73歳の49万8,103例が解析の対象となった。女性27万1,029例(平均年齢56.36歳)、男性22万7,074例(56.75歳)であった。 追跡期間中央値4.9年の間に8,532例(39%[3,308例]が女性)が死亡した。最も多い死因は、男性が肺がん(546例)、女性は乳がん(489例)だった。 男性では、自己申告による健康状態が最も強力な全死因死亡の予測因子であった(C-index:0.74、95%信頼区間[CI]:0.73~0.75)。女性では、がんの診断歴が全死因死亡を最も強力に予測した(0.73、0.72~0.74)。 重篤な疾患を有する者(Charlson comorbidity index:>0)を除外した35万5,043例(55%が女性)のうち、4.9年間に3,678例が死亡し、この集団における最も強力な全死因死亡の予測因子は男女とも喫煙習慣であった。 予測スコアは、男性が13項目、女性は11項目の自己申告による予測因子から成り、男女とも良好な識別能が達成された(男性のC-index:0.80、95%CI:0.77~0.83、女性は同:0.79、0.76~0.83)。死亡率は英国の一般人口より低かったため、生命表と国勢調査の情報に基づいて予測スコアを調整した。 専用のウェブサイト(http://ubble.co.uk/)では、対話形式のグラフ(Association Explorer)で655項目の変数と個々の死因の関連性を閲覧できると共に、オンライン問診票により5年死亡の個別のリスク計算(Risk Calculator)が可能である(正確な予測は40~70歳の英国居住者のみ)。 著者は、「この研究からはさまざま重要なメッセージが読み取れるが、最も重要な知見は、身体的な検査なしに通常の口頭での問診で得られる情報(たとえば、患者の自己申告による健康状態や日常的な歩調など)が、中高年者の全死因死亡の最も強力な予測因子であることが示唆される点である」と結論している。 また、「この予測スコアを用いれば、看護師などの医療者は、患者の自分の健康状態への認識を高め、医師は、死亡リスクの高い患者を同定して特定の介入の対象を絞り込み、政府や保健機関は、特定のリスク因子の負担を軽減することが可能と考えられる」と指摘している。

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多発性骨髄腫治療薬「レナリドミド」、ワルファリンとの相互作用は

 多発性骨髄腫の治療において、レナリドミドは2次治療に位置付けられており、その効果の大きさから重要な役割を担っている。現在、初発の多発性骨髄腫に対して適応追加の申請中であり、その重要性はますます大きくなっていく可能性がある。 レナリドミドは重大な副作用として静脈血栓症があるため、予防目的でワルファリンが併用されていることも多い。ワルファリンは薬物相互作用が多い薬剤として有名であるが、米国・セルジーン社・Daniel Weiss氏らの調査の結果、レナリドミドとの併用は、薬物相互作用の観点において問題ないことが示唆された。Clinical Drug Investigation誌オンライン版2015年5月30日号にて掲載報告。 調査はプラセボ対照、無作為化二重盲検2期クロスオーバー試験にて行った。対象は18人の健康な男女で、レナリドミドを1日10mgまたはプラセボを9日間投与した。投与4日目に、両群に対して1日25mgのワルファリン単回経口投与を行った。採血を行い、両薬剤のINR・PT・AUC・Cmaxを測定した。 主な結果は以下のとおり。・レナリドミド、プラセボの両群間におけるAUCやCmaxの幾何平均値比は、ワルファリンの光学異性体(R体およびS体)について生物学的同等性の範囲内(80~125%)であった(90%信頼区間)。・ワルファリン投与後0時間~144時間のAUCINRとINRのピーク値は、レナリドミド群・プラセボ群ともに85~125%の範囲内であった(90%信頼区間)。・レナリドミドのAUCとCmaxはワルファリンの併用によって変化はなかった。

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呼吸数は何秒測るべき?-身体診察の重要性

 2015年4月30日、都内にて金原出版創業140周年記念の特別講演が行われた。本講演では、実臨床ですぐに実践できる内科診療のコツが紹介された。身体診察には技術が必要 第1部では、「身体診察のアプローチ」をテーマに徳田 安春氏(地域医療機能推進機構本部 総合診療顧問)が血圧、心拍、呼吸数をはじめとする身体診察の重要性をレクチャーした。 日常診療において、患者の様態が思わしくない際に、われわれは採血結果やCT・MRIといった検査に目がいきがちであるが、まず身体診察を行うことで多くの重要な情報が得られる。たとえば、「ショック状態」の患者にはまず静脈圧を測り、静脈圧が下がっている低静脈圧型ショック、上がっている高静脈圧型ショックに分類する。それぞれのカテゴリーで治療方針が異なるため、初期診断において確実に静脈圧を測定することが求められる。 また、身体診察にはその1つひとつの診察に技術を要する。たとえば「呼吸障害」ではとくに呼吸数が重要であり、これを省くと重要なバイタルサインを見逃してしまう可能性がある。具体的な呼吸数の測定では、少なくとも20秒は測定する。15秒未満では誤差が大きくなるためで、切迫した状況下であっても十分な時間で測定する必要があるという。 徳田氏は、日々の診療の中で、身体視察の技術を磨く重要性を強調し、第1部を締めくくった。感染症治療を志す研修医へのメッセージ 第2部では、岩田 健太郎氏(神戸大学医学部附属病院 感染症内科 教授)が、自身の感染症専門医としての経験、そして、自院の研修医への教育について、熱く語った。 岩田氏は、2014年12月~2015年1月に西アフリカに渡航し、エボラ出血熱の感染症対策を行った経験を語り、十分な検査機器もない環境で、身体診察の重要性を痛感したという。 研修医の育て方の話題では、研修医が胃腸炎や肺炎患者のグラム染色を省略した結果、診断に必要な細菌を見逃しそうになった例を挙げ、日常のルーチン検査の重要性を述べた。そして、グラム染色で何か検出されそうにない場合でも、まずは行ってみること、グラム染色の限界──「何がみえるか」「何がみえないか」を認識し、診療に当たるべきであることを示した。 最後に、岩田氏は研修医に向け、「自分がどこまでできて、どれができていないかという現状認識をしっかりとし、そのうえで現状に満足せず上のレベルを目指してほしい」とエールを送り、第2部を締めくくった。原因不明の発熱診療はこう診る 第3部では、「不明熱」の症例についてパネルディスカッションとなり、パネリストによる活発な意見交換が行われた。 「下がらない原因不明の発熱」で救急外来を訪れた患者の症例では、発熱の原因を鑑別診断するに当たり、以下の2点が大切であると示唆された。1) さまざまな検査結果のみならず、来院するまでの様子、患者の置かれている社会状況や背景などを丁寧に問診すること。2) この症例ではリンパ腫が疑われるが、生検を行うのが容易ではない場合、適切な生検部位を 同定し、外科に迅速な生検依頼を行うためにも陽電子放出断層撮影(以下「PET」)を活用すること。 PETを用いることでCTなどでは特定しづらい病巣の広がりを把握することができる。また、患者の腎機能が不良でも検査可能である。さらに、造影剤アレルギーのリスクが少ないという利点もある。 最後に 「不明熱であっても漫然と診療を行わず、PETなどの検査機器を用いて迅速に診断し、治療に繋げよう」と結ばれて、パネルディスカッションは終了した。

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