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「心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」13年ぶりの改訂/日本循環器学会

 日本循環器学会、日本心臓病学会、日本小児循環器学会の合同ガイドライン『心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン』が、2011年以来の13年ぶりの改訂となった。3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会で、本ガイドラインの合同研究班班長である今井 靖氏(自治医科大学 臨床薬理学部門・循環器内科学部門 教授)が、ガイドライン改訂の要点を解説した。 本ガイドラインは2006年に初版が刊行され、2011年に改訂版が公表された。当時、遺伝子解析の大半は研究の範疇に属し、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に沿って実施されていた。その後、2021年の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」により、他の医学系研究指針と統合され、ヒト遺伝子情報が他の医学・生命科学の情報と同列に扱われるようになった。さらに最近では、診療として実施される遺伝学的検査が大幅に増加しており、がんなどの他の診療分野での遺伝学的検査の普及と並行し循環器疾患においても今後さらに適応が増加することは必至と考えられる。今回の改訂はこれらの状況を踏まえて行われた。 2024年改訂版では、総論において、遺伝学的検査の指針・目的、遺伝学的検査の方法・実施体制、診療・遺伝カウンセリング、周産期における対応・妊娠前のプレコンセプションケアについて追加した点が、前版と大きく異なると今井氏は述べた。 日常診療で遺伝学的検査を行う指針として、日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」や「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(2023年改訂)」に則している。また、遺伝学的検査によって得られる情報は、とくに慎重な配慮を要する個人情報であるため、個人情報保護法などの法令の趣旨に則するように記述・改訂されている。遺伝学情報の特徴 遺伝学情報には以下のような特徴があり、これらを理解したうえで患者に説明し理解を促すことが必要となる。・生涯変化しないこと。・血縁者間で一部共有されていること。・血縁関係にある親族の遺伝型や表現型が比較的正確な確率で予測できること。・非発症保因者(将来的に病的バリアント[変異]に起因する疾患を発症する可能性はほとんどないが、当該病的バリアント[変異]を有しており、次世代に伝える可能性のある者)の診断ができる場合があること。・発症する前に将来の発症の可能性についてほぼ確実に予測することができる場合があること。・出生前遺伝学的検査や着床前遺伝学的検査に利用できる場合があること。・不適切に扱われた場合には、被検者および被検者の血縁者に社会的不利益がもたらされる可能性があること。・曖昧性が内在していること(曖昧性とは、結果の病的意義の判断が変わりうること、症状、重症度などに個人差があること、調べた遺伝子が原因ではなく、未知の他の原因による可能性などがある)。遺伝学的検査の対象と目的 遺伝学的検査を行うためのワークフローとして、対象と目的の整合性を確認しておく必要がある。検査を受ける対象は、患者本人または血縁者、発症患者または非発症者の場合がある。また、遺伝学的検査を行う目的として、以下のものが挙げられている。・病因診断を目的とした原因の同定。・精微な層別化による疾患の病型分類。・分類された病型に基づく病態管理と治療法選択。・病態進展の理解と疾患予後の予測。・突然死を含む急性イベント発症の予防。・未発症者の発症予防や早期診断・早期介入。 遺伝学的検査の目的に応じた検査が重要となり、循環器診療部門と遺伝子医療部門が協同して実施する必要がある。検査を行う際の留意点として、検査対象者は通常は採血の負担しかないため身体的侵襲は少ないが、検査をしても異常が検出できないこともある。また、患者自身やその血縁者に遺伝子異常が見つかった場合、今後の病状が急激に悪化していくことなどのリスクを持ち合わせていることに対して、心理的負担を生じる可能性がある。一方で、早期の診断によって治療介入できる可能性もある。遺伝子解析の手法 遺伝子解析の手法として、次世代シーケンス(NGS)法が近年急速に進歩した。この技術により、候補となる遺伝子をまとめて解析するパネル解析や、全エクソーム解析法や全ゲノム解析法も可能となっている。また、小児を対象とした新生児マススクリーニングも先天性疾患の検出に有用なアプローチである。染色体異常については、染色体検査(G分染法)やFISH法によって確認することができる。 診療用に供する検体検査は、平成30年度改正医療法等に従い、保険診療での検査として行う場合(S006-4遺伝学的検査)は医療機関の検査部門、ブランチラボや衛生検査所で実施することとなった。これは研究所・大学の研究室などでのゲノム・遺伝子解析研究として実施されるものとは明確に区別することとなっている。保険収載されている遺伝子学的検査 現在、循環器領域で保険収載されている遺伝学的検査は、3,880点のものがFabry 病、Pompe病、家族性アミロイドーシス、5,000点のものが肥大型心筋症、家族性高コレステロール血症、CFC症候群、Costello症候群、Osler 病、先天性プロテインC欠乏症、先天性プロテインS欠乏症、先天性アンチトロンビン欠乏症、8,000点のものが先天性QT延長症候群、Noonan症候群、Marfan症候群、Loeys-Dietz症候群、家族性大動脈瘤・解離、EhlersDanlos 症候群(血管型)、Ehlers- Danlos症候群(古典型)、ミトコンドリア病となっている。遺伝カウンセリング 遺伝カウンセリングは、「疾患の遺伝学的関与について、その医学的影響、心理学的影響、および家族への影響を人々が理解し、それに適応していくことを助けるプロセス」と定義される。遺伝要因は不変であるため、自身のコントロールが及ばない。さらには、その遺伝要因によって、突然死などの重篤なものを含むさまざまな症状が、一般集団よりはるかに高い確率で起こりうるという脅威にさらされることとなる。そのような状況の患者や家族に生じうる、否認、怒り、疾患への脅威、コントロール感の喪失などのさまざまな心理的影響への対応が求められる。心理社会的課題に、患者や家族が対処する能力を身につけられるよう具体的な対処方法を提示するとともに、エンパワーメントや自己効力感の向上を目的に実施される。 遺伝カウンセリングのための専門職種である臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー、遺伝看護認定看護師とともに循環器系の医師が協力して遺伝子検査を進め、より良い形で患者へ情報提供することが考えられる。遺伝カウンセリングについては、保険収載されている検査においてのみ診療報酬が設定されているため、未発症者の遺伝子解析や研究で行われる遺伝子解析に対してのカウンセリングは対象外となっている。このような点が今後改善されることを強く望むと今井氏は述べた。周産期の女性に対する対応 今井氏が今回のガイドラインでとくに力を入れた点として挙げたのが、周産期に対する対応である。若年の患者における先天性心疾患やQT延長症候群のような遺伝性疾患があるが、そのような女性患者の妊娠前の遺伝カウンセリングは重要で、思春期の段階から行っていく必要がある。妊娠出産に関する可能性や、次世代にどのように遺伝するかといったプレコンセプションケアも重視しなければならない。本ガイドラインでは、各疾患群の妊娠前遺伝カウンセリングをまとめている。今井氏によると、現在日本では思春期から20代の対象者について、カウンセリングが必ずしも十分にできていない状況にあるため、患者へのカウンセリングの可能性について検討してほしいと訴えた。疾患ごとに推奨事項を確認できる巻末付表 講演の後半では、疾患ごとにガイドラインに沿った解説がなされた。本ガイドラインの巻末付表に「循環器遺伝医療の実践」を設け、各疾患に関して、循環器遺伝医療における推奨事項を簡単に参照できるポケットガイドを付けている。この表では、疾患名、原因遺伝子、浸透率、推奨事項として発端者への介入や血縁者のスクリーニング・サーベイランス・介入が端的に示されている。 今井氏は最後に多遺伝子因子疾患について述べた。本ガイドラインでは単一遺伝子のみに言及してきたが、たとえば冠動脈疾患については、遺伝子の多型の組み合わせで示されるPolygenic risk score(多遺伝子リスクスコア)によって、低リスクと高リスクの集団の予測ができる。また、高遺伝リスク群であっても生活習慣リスクを低減することで、リスクを相殺する可能性も示されている。このような多遺伝子因子疾患の解析は、心房細動、血管炎、末梢動脈疾患にも応用可能とされ、今後の臨床利用が期待されるという。

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医師の働き方改革に必須なのは財源の確保、米国の医療保険制度から考える(2)――米国の医療費削減方法、プライマリケアがゲートキーパーに【臨床留学通信 from NY】第58回

第58回:医師の働き方改革に必須なのは財源の確保、米国の医療保険制度から考える(2)前回に引き続き、医師の働き方改革と財源確保について、米国の医療保険制度から考えます。医療費削減のために米国で行われていること米国の医療費は、高い人件費や薬物などの物品を賄うため、救急外来を経由して1泊なんてするものなら、ざっと100万円ほどかかってしまうことも珍しくありません。そのため、政府保険であるMedicaid(メディケイド)、Medicare(メディケア)は、医療費削減のために不必要な薬や手技を減らすことに目を光らせ、プライベート保険もプランによってカバーする薬の範囲が変わるという仕組みです。高くて良い薬にはCo-pay(自己負担)が多くかかってしまい、自然と安い薬を使うように仕向けられます。たとえばアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)は心不全に有効な薬で、日本ではそれを高額であるにもかかわらず高血圧にも処方できるように国が承認していますが、米国では心不全の病名なしには処方できません。また循環器疾患の狭心症。心筋梗塞とは違い、致命的ではないことがほとんどですが、まれに不安定狭心症かな、とこちらが思うものであっても、負荷心筋シンチグラフィなどの事前検査をなくして外来から直接カテーテル検査・入院はできないことがあります。その際はやむを得ず、救急外来を経由して入院した体裁にすることもあります。なお医療費削減のため、カテーテル治療も簡単なものはThe Same Day Discharge(同日退院)となり、それをすることで病院にメリットがあるように金額が決まっています。そのため、カテーテル室専用のリカバリールームがあり、朝6~7時に患者さんが来て、7時過ぎにはPCI開始、その後数時間観察して、午後には退院することや、12時くらいにPCI開始であっても、夜11時までスタッフを配置してモニターして退院、なんてことがあります。予約を取るのも一苦労、プライマリケアがゲートキーパーに外来では、簡単な薬の処方のみの人は(たとえば高血圧のみ)、プロブレムが少ないためあまりお金にならず、半年後にしか予約が取れないようになっていて、3ヵ月の処方を電子的に薬局に送信し、リフィルを3回出して1年分の処方を出すことがあります。予約を取るのも一苦労です。患者によって保険がさまざまなため、医師から直接予約を取れず、大半はいちいち事務に電話などをして、うまくいって10~20分かけてなんとか予約を取る形です。医師がカルテ上3ヵ月後と言えば、どんなに受診したくても、病状が落ち着いていれば予約が取れないようになっています。プライマリケアがゲートキーパーとなり、好き勝手に循環器内科、腎臓内科、内分泌内科など専門医に受診できないようになっており、いわゆる紹介状(きちんとした手紙でなくとも1文程度でも)が必要にもなります。また、専門医を受診するには、保険にもよりますがCo-payを支払わなければなりません。私の保険の場合は50ドルほど払わなければならず、不用意に何となく気になるからという理由で患者が受診することを制限しています。インフルエンザなどで受診するUrgent Careは私の保険は75ドル。ちょっとした風邪で病院にかかることはありません。なお、いわゆる一般外来は発熱患者はお断り。その分薬局で購入できる薬は日本より充実しています。Emergency Department(救急外来)は150ドルで、簡単に受診しようとする意思を抑制しています。以前私が針刺事故未遂のようなほぼかすっていない程度で救急外来を受診した時、採血と問診で3,000ドル(約45万円)の請求書が来てたまげました。幸い職員なので医療費はかからず、問題ありませんでしたが…。1泊入院すると1万ドル前後かかってしまうとはいえ、基本的に保険から下りると思いますが、どのくらいカバーされるかはまちまちです。裏を返せば、この莫大な医療費によって医療従事者の給料が保証されていることにもなります。これらの折衷案として、日本では何ができるか、次回は私なりの提案をしたいと思います。

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緩和ケアにおける低ナトリウム血症【非専門医のための緩和ケアTips】第71回

第71回 緩和ケアにおける低ナトリウム血症電解質異常には、いろいろな種類がありますが、遭遇する機会が最も多いものが「低ナトリウム血症」でしょう。頻度は高くとも、程度によっては意識障害や痙攣といった重篤な症状を引き起こします。緩和ケアでは、低ナトリウム血症とどのように向き合えば良いのでしょうか?今回の質問訪問診療で診ている終末期がん患者さん、低ナトリウムにどの程度介入すべきかを悩んでいます。低ナトリウム血症の原因は、SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)だと考えています。水分制限も考えるのですが、口渇が苦痛のようで、厳密に取り組むのは難しそうです。がん患者の低ナトリウム血症の原因として、しばしば見かけるのがこのSIADHですね。抗利尿ホルモンが不適切に分泌されることで水分の再吸収が過剰となり、低ナトリウムに至ります。この病態は、さまざまな原因で生じることが知られており、痛みや吐き気といった、がん患者でよく経験する症状でも悪化します。SIADHの治療は、原因除去と併行して、低ナトリウムの程度によっては水分制限を行います。回復可能な病態の高齢者に生じたSIADHに関しては、これらに取り組むことで改善することが通常です。ただし、緩和ケア領域で悩ましいのはここからです。改善可能な原疾患がないことが多いため、厳しい闘いを強いられます。水分制限も、今回のように口渇がある場合には、どこまで厳密に行うかは悩ましいところです。ここで考えるべきは予想される予後とのバランスでしょう。予想される予後が月単位を切っている状況であれば、すでにコントロール困難な低ナトリウム血症に対して、厳密な介入はデメリットのほうが大きい、と判断する専門家が大半でしょう。もちろん、この辺りは関係者で擦り合わせながら取り組むべき領域です。患者は口渇感を和らげるために飲水を望みますが、実はここでは口腔ケアも有効です。スポンジブラシなどで口の中を湿らしながらケアすることで、口渇感が和らぐことが知られており、検討するのも良いかもしれません。口腔ケアは病態改善だけでなく、症状緩和の観点からも重要なので、積極的に看護師と相談したい分野です。近年、予後が比較的保たれる状況での低ナトリウム血症に対する介入に、新たな選択肢が増えました。心不全患者に使用されていたトルバプタンが、2020年にSIADHへ適応拡大されたのです。予後の問題から私は処方経験があまりありませんが、状況によっては選択肢になるでしょう。ただし、採血でナトリウムを頻回に確認する必要があり、在宅医療における有効性は難しいところがあります。今日のTips今日のTipsがん患者の低ナトリウム血症、SIADHに注意しよう。

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高齢になると糖尿病有病率が高くなる理由/順天堂大学

 加齢に伴うインスリン感受性と分泌の低下により、高齢者では糖尿病の有病率が高いことが知られている。一方で、インスリン感受性と分泌の両方が65歳以降も低下し続けるかどうかは、まだ解明されていなかった。この疑問について、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の内藤 仁嗣氏らの研究グループは、65歳以降の糖代謝に対する加齢の影響を調査し、その決定因子を明らかにする研究を行った。その結果、高齢者では加齢に伴い、インスリン抵抗性が増加、膵β細胞機能が低下していることが明らかになった。Journal of the Endocrine Society誌オンライン版2023年12月20日号に掲載。内臓脂肪の蓄積などが関連する高齢者の糖尿病発症 本研究では、文京区在住高齢者のコホート研究“Bunkyo Health Study”に参加した65~84歳の糖尿病既往がなく、糖尿病の診断に用いられる検査である75g経口糖負荷検査(OGTT)のデータが揃っている1,438例を対象とした。 対象者全員に二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)による体組成検査、MRIによる内臓・皮下脂肪面積の測定、採血・採尿検査、75gOGTT、生活習慣に関連する各種アンケートを行い、5歳ごとに4群(65~69歳、70~74歳、75~79歳、80~84歳)に分け、各種パラメータを比較した。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢は73.0±5.4歳、BMIは22.7±3.0kg/m2だった。・新たに糖尿病と診断された人の有病率は年齢とともに増加した。・食後初期のインスリン分泌を示す指標であるInsulinogenic indexや、血糖値に対するインスリン分泌指標である75gOGTT中のインスリン曲線下面積/血糖曲線下面積(AUC)は、各年齢群間で同等だった。・インスリン感受性の指標(Matsuda index)、膵β細胞機能の指標(Disposition index)は加齢とともに有意に低くなった。・加齢に伴う脂肪蓄積、とくに内臓脂肪面積(VFA)の増加、遊離脂肪酸(FFA)濃度の上昇が観察された。・重回帰解析により、Matsuda indexおよびDisposition indexとVFAおよびFFAとの強い相関が明らかになった。 研究グループでは、この結果から「高齢者において耐糖能が加齢とともに低下するのは、加齢によるインスリン抵抗性の増加および膵β細胞の機能低下によるもので、それらは内臓脂肪蓄積やFFA値上昇と関連する」としている。

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緩和ケアでもよく経験する高カルシウム血症【非専門医のための緩和ケアTips】第70回

第70回 緩和ケアでもよく経験する高カルシウム血症緩和ケアでは、急性期ほど頻繁に検査は行いませんが、そうした中でも検査がカギとなる疾患もあります。そのうちの1つが高カルシウム血症です。どのようなときに、この疾患を疑うべきなのでしょうか?今日の質問訪問診療で担当する終末期の肺がん患者さん。1週間ほどでどんどん意識状態が悪化し、経過が速いことを心配して採血をしたところ、カルシウム値がかなり上昇していました。基幹病院に搬送したところ、回復して食事摂取も可能となりました。こうしたことは、よくあるのでしょうか?今回のご質問は、がん患者の高カルシウム血症についてです。私もこうした状況はよく経験します。文献にもよりますが、がん患者の10〜20%に高カルシウム血症が生じるという報告もあります。高カルシウム血症を疑う症状としては、倦怠感や口渇、多飲、便秘などがあります。可逆性も期待できる病態ですが、重症になるとせん妄や意識障害を引き起こすことがあります。がん患者に生じやすい電解質異常だと知ったうえで、これらの症状に注意して診療することが重要です。臨床的に問題になるのは、進行したがん患者には、そもそもの病状進行やオピオイドの使用などによって傾眠をはじめ、さまざまな症状が生じることです。こうした要素がある分、高カルシウム血症を疑うタイミングが遅れてしまうことがよくあります。今回の質問者はファインプレーをした、という見方もできるでしょう。がん患者の高カルシウム血症の治療は、ビスホスホネートの投与と脱水の補正が中心となります。私が研修医の頃は、まだビスホスホネートがなかったので、大量に輸液をしていました。最近は脱水の補正ができれば十分、という推奨が増えています。ここまで、がん患者における高カルシウム血症を中心にお話ししましたが、非がん患者でもこの病態が問題になることがあります。さて、ここからは私の失敗談です。患者は80歳代の女性。頸部骨折の手術後にリハビリ入院をした際に、私の担当となりました。入院からしばらくして、それまで元気だったのに、突然意識障害が進行しました。採血するとカルシウム値が非常に高くなっています。原因は、手術前から継続していたビタミンDでした。入院後に軟便で脱水になったタイミングがありましたが、その際も内服を継続しました。脱水傾向が出ているにもかかわらず内服を継続したことでカルシウム値が上昇し、さらに脱水が悪化する、という悪循環が生じていたのです。身体状況の変化で調整が必要になった薬剤に気付かず、高カルシウム血症を生じさせてしまった……。この苦い経験を通じて、緩和ケアに限らず、高齢者の診療では高カルシウム血症の可能性を忘れないようにしよう、と誓いました。今回は私の失敗談も含めてお話ししました。皆さまの参考になれば幸いです。今日のTips今日のTipsがん患者、とくに高齢患者では、高カルシウム血症を常に疑う。

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腎機能を考慮して帯状疱疹治療のリスク最小化を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第56回

 帯状疱疹治療はアメナメビルの登場により大きく変わりました。しかし、すべての患者さんがアメナメビル1択でよいわけではありません。既存の治療薬であっても腎機能を適切に評価することで安全に治療を行うことができます。ただし、過剰投与によるアシクロビル脳症や急性腎障害は重篤な副作用であることから、薬剤師のチェックが非常に重要です。患者情報75歳、女性(施設入居)体重40kg基礎疾患高血圧症、大動脈弁狭窄症、慢性心不全帯状疱疹ワクチン接種歴なし主訴腰部の疼痛と掻痒感直近の採血結果血清クレアチニン 0.75mg/dL処方内容1.バラシクロビル錠500mg 6錠 分3 毎食後 7日分2.ロキソプロフェン錠60mg 疼痛時 1回1錠 5回分3.アゾセミド錠30mg 1錠 分1 朝食後4.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後5.カルベジロール錠10mg 1錠 分1 朝食後6.ダパグリフロジン錠10mg 1錠 分1 朝食後本症例のポイントこの患者さんは慢性心不全を基礎疾患として、循環器系疾患の併用薬が複数あります。今回、帯状疱疹と診断され、バラシクロビルとロキソプロフェンが追加となりました。しかし、この患者さんは低体重であり、かつ腎機能が低下(CG式よりCcrを算出したところ推算CCr40.9mL/min)していることから、腎排泄型薬剤の投与量の補正が必要と考えました。表1 バラシクロビル添付文書画像を拡大する現在のバラシクロビルの処方量では、代謝産物の9-carboxymethoxymethylguanine(CMMG)の蓄積による精神神経系(アシクロビル脳症)の副作用の発症リスクが高くなる可能性があります1)。利尿薬を併用していることから、腎機能増悪の懸念もありました。さらに、疼痛コントロールで処方されているロキソプロフェンも腎機能の増悪につながるので、できる限り腎機能への負担を軽減した治療薬へ変更する必要があると考え、処方提案することにしました。処方提案と経過医師に電話で疑義照会を行いました。腎機能に合わせたバラシクロビルの推奨投与量は1,000mg/回を12時間ごとの投与であり、現在の処方量(1,000mg/回を毎食後)では排泄遅延によるアシクロビル脳症や腎機能障害が懸念されることを説明しました。また、ロキソプロフェンは腎機能に影響が少ないアセトアミノフェンへの変更についても提案しました。医師より、肝代謝のアメナメビル200mg 2錠 夕食後に変更するのはどうかと聞かれました。治療薬価(表2)に差があるため、今度は費用対効果の問題が生じることを伝えたところ、バラシクロビル1,000mg/回を12時間ごとに変更するという指示がありました。また、ロキソプロフェンはアセトアミノフェン300mgを疼痛時に2錠服用するように変更すると返答がありました。その後、発症4日目に電話でフォローアップしたところ、腰部の疼痛および掻痒感は改善していて、その後も意識障害や精神症状の出現はなく経過しています。表2 治療薬価(著者作成、2023年12月時点)画像を拡大する1)筒井美緒ほか. 2006. 富山大学医学会誌;17:33-36.

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増加する化学療法患者-機転の利いた専攻医の検査オーダー【見落とさない!がんの心毒性】第26回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別70代・女性(BMI:26.2)既往歴高血圧症、2型糖尿病(HbA1c:8.0%)、脂質異常症服用歴アジルサルタン、メトホルミン塩酸塩、ロスバスタチンカルシウム臨床経過進行食道がん(cT3r,N2,M0:StageIIIA)にて術前補助化学療法を1コース受けた。化学療法のレジメンはドセタキセル・シスプラチン・5-fluorouracil(DCF)である。なお、初診時のDダイマーは2.6μg/mLで、下肢静脈エコー検査と胸腹部骨盤部の造影CTでは静脈血栓症は認めていない。CTにて(誤嚥性)肺炎や食道がんの穿孔による縦隔炎の所見はなかった。2コース目のDCF療法の開始予定日の朝に37.8℃の微熱を認めた。以下が上部消化管内視鏡画像である。胸部進行食道がんを認める。画像を拡大する以下が当日朝の採血結果である(表)。(表)画像を拡大する【問題】この患者への抗がん剤投与の是非に関し、専攻医がオーダーしていたために病態を把握できた項目が存在した。それは何か?a.プロカルシトニンb.SARS-CoV-2のPCR検査c.Dダイマーd.βD-グルカンe.NT-proBNP筆者コメント本邦のガイドラインには1)、「がん薬物療法は、静脈血栓塞栓症の発症再発リスクを高めると考えられ、Wellsスコアなどの検査前臨床的確率の評価システムを起点とするVTE診断のアルゴリズムに除外診断としてDダイマーが組み込まれているものの、がん薬物療法に伴う凝固線溶系に関連するバイオマーカーに特化したものではない。がん薬物療法に伴う静脈血栓症の診療において、凝固線溶系バイオマーカーの有用性に関してはいくつかの報告があるものの、十分なエビデンスの集積はなく今後の検討課題である」と記されている。一方で、「がん患者は、初診時と入院もしくは化学療法開始・変更のたびにリスク因子、バイオマーカー(Dダイマーなど)などでVTEの評価を推奨する」というASCO Clinical Practice Giudeline Updateの推奨も存在する2)。静脈血栓症の症状として「発熱」は報告されており3)、欧米のデータでは、実際に肺塞栓症(PE)発症患者の14~68%で発熱を認め、発熱を伴う深部静脈血栓症(DVT)患者の30日死亡率は、発熱を伴わない患者の2倍になることも報告されている4)。このほか、可溶性フィブリンモノマー複合体定量検査値は、食道がん周術期においても中央値は正常値内を推移することが報告されており、その異常高値はmassiveな血栓症の指標になる可能性もある5)。がん関連血栓症の成因として、(1)患者関連因子、(2)がん関連因子、(3)治療関連因子が2022年のESC Guidelines on cardio-oncologyに記載された6)。今後一層のがん患者の生存率向上とともに、本症例のようなケースが増加すると思われる。1)日本臨床腫瘍学会・日本腫瘍循環器学会編. Onco-cardiologyガイドライン. 南江堂;2023. p.56-58.2)Key NS, et al. J Clin Oncol. 2023;41:3063-30713)Endo M, et al. Int J Surg Case Rep. 2022;92:106836. 4)Barba R, et al. J Thromb Thrombolysis. 2011;32:288–292.5)Tanaka Y, et al. Anticancer Res. 2019;39:2615-2625.6)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;43:4229-4361.講師紹介

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英語で「指先で血糖を測る」は?【1分★医療英語】第104回

第104回 英語で「指先で血糖を測る」は?《例文1》We will check your fingerstick glucose before meals.(食前に血糖を測りますね)《例文2》What was his fingerstick?(彼の簡易血糖測定はいくつでしたか?)《解説》入院中の患者さんには、指先で簡易血糖測定をすることがありますが、英語では指先での血糖測定のことを“fingerstick glucose”といいます。“finger”(指)と“stick”(刺す)という単語を組み合わせた単語で、文字通り「指先を刺して血液検査をする」ことを表します。成人では、指先採血で検査を行うのはほぼ簡易血糖のみであるため、臨床現場では“fingerstick”という単語のみで血糖測定を表し、“What was his fingerstick?”(彼の簡易血糖測定はいくつでしたか?)というように使います。食前は“before meals”、食後は“after meals”と表現することも併せて覚えておきましょう。講師紹介

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多がん早期検出血液検査は、がんスクリーニングで実行可能か/Lancet

 多がん早期検出(multicancer early detection:MCED)血液検査は、腫瘍から循環血中に排出された遊離DNA(cell-free DNA:cfDNA)のがん特異的DNAメチル化パターンを検出し、がんシグナルが確認された場合はその起源(cancer signal origin:CSO)を予測することから、1回の採血で50以上のがん種の検出が可能とされる。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのDeb Schrag氏らは、「PATHFINDER研究」にてMCED血液検査を用いたがんスクリーニングは実行可能であることを確認し、今後、臨床的有用性を検証する研究を進める必要があることを示した。研究の成果は、Lancet誌2023年10月7日号で報告された。米国の前向きコホート研究 PATHFINDER研究は、がんスクリーニングにおけるMCED検査の実行可能性(feasibility)を調査する前向きコホート研究であり、米国の7つの医療ネットワークに属する腫瘍科およびプライマリケア外来施設が参加した(米国・GRAILの助成を受けた)。 対象は、年齢50歳以上、がんの徴候や症状がなく、MCED検査と1年間の電子健康記録の追跡調査に同意した集団であった。 参加者の血液を採取してcfDNAの解析を行い、結果を参加施設の医師に伝えた。がんを示唆するメチル化シグネチャーを検出した場合は、予測されるCSOを知らせた。 主要アウトカムは、MCED検査で陽性となった後、がんの有無を確定するのに要した時間と、確定診断までに行った検査の範囲であった。検査から確定診断までの期間は79日 2019年12月12日~2020年12月4日に6,621人を登録した。年齢中央値63.0歳(四分位範囲[IQR]:56.0~70.0)、女性63.5%、白人91.7%で、がん既往参加者は24.5%であった。 がんシグナルは6,621人のうち92人(1.4%)の参加者で検出した。このうち、がんと診断された真陽性は35人(38%)で、残りの57人(62%)はがんと診断されず偽陽性であった。 MCED検査の結果が出る前に診断のための評価が開始された2人を除くと、診断が確定するまでの期間中央値は79日(IQR:37~219)であった。偽陽性者の診断までの期間中央値は162日(44~248)である一方、真陽性者では57日(33~143)と短かった。 がんシグナルを検出した90人(上記の2人を除く)の多くが、診断が確定するまでに臨床検査(真陽性者79%[26/33人]、偽陽性者88%[50/57人])と画像検査(真陽性者91%[30/33人]、偽陽性者93%[53/57人])を受けていた。 また、処置(非外科的または外科的)を受けた参加者の割合は、真陽性者(82%[27/33人])に比べ偽陽性者(30%[17/57人])で低く、外科的処置を受けた参加者はほとんどいなかった(真陽性者3人、偽陽性者1人)。 著者は、「これらの知見は、がんスクリーニング戦略としてのMCED検査の安全性、有用性、臨床的有効性を調査するための大規模研究の基礎を築くものである」としている。

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効率よく紹介状を作成するには?(最終回)【紹介状の傾向と対策】第8回

<あるある傾向>きちんとした紹介状を書く時間がない<対策>日頃の診療録がそのまま紹介状になるようにしておく多忙な臨床業務の中で紹介状(診療情報提供書)の作成は負担の大きな業務の1つです。しかし、紹介状の不備は、依頼先(紹介先)の医師やスタッフに迷惑をかけるだけではなく、患者さんの不利益やトラブルにつながりかねません。このため、できる限り依頼先が困らない紹介状の作成を心がけたいものです。【紹介状全般に共通する留意点】(1)相手の読みやすさが基本(2)冒頭に紹介する目的を明示する(3)プロブレムと既往歴は漏れなく記載(4)入院経過は過不足なく、かつ簡潔に記載(5)診断根拠・診断経緯は適宜詳述(6)処方薬は継続の要否、中止の可否を明記(7)検査データ、画像データもきちんと引き継ぐ本連載では「より良い患者紹介とは」をテーマに紹介状作成について連載をしてきました。勤務医、開業医を問わず紹介状にまつわる不満やトラブルは多々あり、紹介状を作成するにあたり、注意しているポイントを書いてきました。しかし、多忙極める医療現場で、理想的な紹介状を作成することはとても大変です。とくにDPC制度を導入している医療機関は、患者一人あたりの入院期間がどんどん短縮され、患者の回転が速くなり、現場医師が1年間に対応する入退院の処理業務は確実に増えていると予測されます。筆者自身も日常診療業務の中で書類作成にさく時間の割合は大きく、書類作成に常日頃ストレスを感じています。書類作成の中でも「診療情報提供書」と「退院時サマリー」の作成はとても負担が大きいです。文章を書くこと自体がとても大変な作業ですが、重要事項の記載忘れがないか、確認し忘れていた検査結果がないかなど、患者の退院前の準備にはとても神経を使います。また、紹介先に添付する診断画像をCD-ROMにする依頼、心電図、採血結果、各種レポートなどの出力は地味に手間がかかります。また、筆者は現在DPC病院に勤務し、受け持ち患者は20名を超えます。約2日おきの頻度で誰かが急変し、高次医療機関へ転院を余儀なくされる日々です。大きな急変の場合にはその対応に追われ、ほかの業務がストップしてしまい、病診連携室から頼まれていた転院打診用の紹介状作成も後回しにせざるを得ません。このようなとき、理想的な紹介状の作成ができるかと言えば現実的に難しいです。退院サマリーにも応用できる書き方多くの先生方が多忙な臨床業務の中でご自身の業務スタイルを確立し、業務をこなされていることと思います。決して要領が良いわけではない筆者は、どうすれば効率よく紹介状や退院サマリーの記載業務をこなしていけるのか、日々考えてきました。その中で現在たどり着いた方法は、入院日に入院サマリーをできる限り作成しSOAP記録の下に併記する方法です。そして入院後は、SOAP+入院サマリーで構成される記録を日々コピー&ペーストし、適宜、入院経過や検査結果のみを追記していきます。(表)脳出血の患者のカルテ記載の一例画像を拡大するこれにより急な転院の紹介状作成の際も、この入院サマリーを引用し編集することで、短時間で情報欠落のない紹介状を作成することが可能になりました。また転院打診用の紹介状も基本はこの入院サマリーをペーストして作成できるようになりました。そして退院サマリーも入院サマリーをコピー&ペーストすればほぼ完成です。このスタイルを取り入れて最も良かったのは、自分自身や同僚医師、またその患者に関わるスタッフが筆者のカルテを見たとき「その患者がどういう経緯で入院し、今、どのような状態にあるか」、SOAP部分を見れば瞬時に把握できることです。時折、当直中に呼ばれ、主治医の記録をみても、何の疾患で入院しどんな病歴の患者なのかわからないことが多々あり、当直の際はとても困ります。院内で患者が急変したとき、その患者を診るのが初めての医師でも瞬時にその患者の情報を把握できるカルテ記載をしておくことが、筆者はとても大切だと考えています。紹介状についても同様で、紹介を受ける医師が困らない記載を心掛けたいものです。

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静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(後編)【見落とさない!がんの心毒性】第24回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。前回は、深部静脈血栓塞栓症に対する治療選択、がん関連血栓塞栓症のリスクとして注目すべき患者背景について解説を行いました。今回は同じ症例でのDVT治療継続における問題点を考えてみましょう。《今回の症例》年齢・性別30代・男性既往歴なし併存症健康診断で高血圧症、脂質異常症を指摘され経過観察喫煙歴なし現病歴発熱と咳嗽が出現し、かかりつけ医で吸入薬や経口ステロイド剤が処方されたが改善せず。腹痛が出現し、総合病院を紹介され受診した。胸部~骨盤部造影CTで右下葉に結節影と縦隔リンパ節腫大、肝臓に腫瘤影を認めた。肝生検の結果、原発性肺腺がんcT1cN3M1c(肝転移) stage IVB、ALK融合遺伝子陽性と診断した。右下肢の疼痛と浮腫があり下肢静脈エコーを実施したところ両側深部静脈血栓塞栓症(deep vein thrombosis:DVT)を認めた。肺がんに伴う咳嗽以外に呼吸器症状なし、胸部造影CTでも肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は認めなかった。体重65kg、肝・腎機能問題なし、血圧132/84 mmHg、脈拍数82回/min。肺がんに対する一次治療としてアレクチニブの投与を開始した。画像所見を図1に、採血データを表1に示す。(図1)中枢性DVT診断時の画像所見画像を拡大する(表1)診断時の血液検査所見画像を拡大するアレクチニブと直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)の内服を継続したが、6ヵ月後に心膜播種・胸膜播種の出現と肝転移・縦隔リンパ節転移の増悪を認めた。ALK阻害薬の効果持続が短期間であったことから、がん治療について、ALK阻害薬から細胞傷害性抗がん薬への変更を提案したが本人が希望しなかった。よって、ALK阻害薬をアレクチニブからロルラチニブへ変更した。深部静脈血栓症(Venous Thromboembolism:VTE)に関しては悪化を認めなかったためDOACは変更せず内服を継続した。その後、肺がんの病勢は小康状態を保っていたが、1ヵ月後に胸部レントゲン写真で左下肺野にすりガラス陰影が出現し、造影CTを実施したところ新規に左下葉肺動脈のPEを認めた(図2)。(図2)PE発症時の画像所見画像を拡大する【問題】DOAC内服中にVTEが増悪した場合、どのような対応を行うか?1)Farge D, et al. Lancet Oncol. 2022;23:e334-e347.講師紹介

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考えがまとまらない【Dr. 中島の 新・徒然草】(488)

四百八十八の段 考えがまとまらない暑いですね。外に出る気がしません。毎日いるのは家か車か病院のどれか。ひたすらクーラーの効いたところで過ごしています。ただ、ベランダに干した洗濯物がよく乾くのだけは助かりますね。さて、先日来院した患者さんは30代の男性。主訴は頭痛、動悸、息切れ、微熱でした。これらの症状がひどいので会社を休んでいます。で、不明熱として当院の総合診療科に紹介されてきました。すでに前医で、レントゲンや心電図に加えて、膠原病スクリーニングや腫瘍マーカーを含む採血などがやり尽くされています。診断を付けるために私ができることなんか何も残っていません。なので、改めて病歴を確認しました。1ヵ月前に39度台の発熱が2~3日続いたそうです。それでコロナの検査をしたが、陰性でした。その後、熱は下がったのですが本調子になれません。仕事は現場の監督ですが、時には深夜近くに及びます。体がついていかないので、定時上がりの内勤に変えてもらいました。それでも倦怠感が続き、ついに休むに至ったとのこと。一番つらい症状は、体を動かした時の息切れと動悸。30代なのに走ったり階段を上ったりする気にはならないそうです。いくつかの医療機関を受診し、頻脈に対してβ遮断薬を処方されました。が、薬を飲んでも一向に良くなった気がしません。いろいろな医療機関を受診した後に、当院の総合診療科にたどり着きました。患者「仕事に戻りたいという気はあるんですけど、考えがまとまらなくて」中島「内勤の仕事に慣れていないのでしょうか?」患者「いや、前にも経験があるんで、そんなに難しい仕事ではないですね」中島「なるほど」患者「家でも物を考えるのが面倒になってしまって何もできないんですよ」息切れと動悸だけなら心臓や肺の疾患、もしくは貧血なども考えられます。でも考えがまとまらないという脳の症状もあるということは……ひょっとしてコロナ後遺症かも?確かにコロナ検査は陰性でした。しかし、検査の感度は70%しかありません。つまり、およそ3分の1のコロナは検査で見逃されるわけです。だから偽陰性だったのかも。そう考えると話の辻褄が合います。中島「もしかするとコロナ後遺症かもしれませんね。少し体調が良くなったとしても、あまり無理しないほうがいいですね」患者「会社のほうも休みにくくなってきたんで、そろそろ出勤したいんですよ」中島「内勤だったら何とかなりそうですか」患者「ええ」ということで「COVID-19後遺症:今後3ヵ月間の時間外勤務・出張を控えること」という診断書を作成しました。会社のほうはいいとして、もう1つの懸念が残っています。中島「家でゴロゴロすることを奥さんが許してくれるでしょうか」そう尋ねてみました。患者「理解してくれる……はずですけど」患者さんは目に見えて動揺しています。中島「お子さんは何歳でしたか?」患者「5歳と2歳です」中島「『育児で大変なのに、旦那は何もしてくれない』と奥さんに思われたりしませんかね」いくらご主人が会社で一生懸命働いているといっても、人というのは自分の目に入った情報だけで判断しがちです。患者「先生にそう言われると、だんだん心配になってきました」中島「まあ、そこはよく話し合って頑張ってください」第9波になってコロナ症例は増え続けています。その一方で、コロナ後遺症もよく目にするようになりました。若者にも軽症者にも起こるから厄介です。コロナをただの風邪と呼べるのは、もう少し先になりそうですね。最後に1句猛暑でも 頭の中は まだコロナ

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動物咬傷(蛇)【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第5回

今回は蛇咬傷についてです。私は小さいころにアオダイショウの首根っこを捕まえてかまれたことがありますが、大した傷もなく、とくに何の治療もしませんでした。しかし、蛇にかまれた患者さんは傷に関して困っているのではなく、「毒蛇かもしれない」という恐怖を感じていることが多いように思います。今回は毒蛇かどうかを見分けるコツとその治療を紹介します。<症例>10歳代、男子関東の公園に遊びに行き、蛇が泳いでいるのを見つけた。追いかけて捕まえたら指をかまれた。蛇の種類がわからず、親が毒蛇の可能性を考えて救急外来を受診させた。アレルギー歴、既往歴、内服薬:特記事項なし右手の人差し指に擦過創あり(図1)図1 擦過創のような傷画像を拡大する画像を拡大するこの患者さんの対応について順を追って考えてみましょう。現在日本には60種類程度の蛇が存在していると言われています1)。データは少ないですが、蛇咬傷による入院で最も頻度が高いのがマムシ、次いでハブ、まれにヤマカガシです2)。よって、今回はマムシとハブを重点的に記載し、最後にヤマカガシに触れます。毒蛇かどうかの判断(1)蛇の種類を特定するマムシは北緯30度(鹿児島県の口之島)~46度(日本の最北端)に広く生息し、ハブは北緯24度~29度と沖縄周辺に生息しています2)。そのため、かまれた地域でマムシかハブか悩むことは少ないです。では、マムシorハブvs.そのほかの蛇を区別するにはどうしたらよいでしょうか? 蛇の模様は個体差が大きいので手っ取り早く見分けるとしたら頭の形です。毒蛇は三角形の頭をしていることが多いです。とっさのことですので難しいですが…。マムシ体に斑紋があり、頭が三角形に近い形をしている。ハブ 毒腺と毒をしぼり出す筋肉があるため、あごが張った三角形をしている。大部分のハブの背中には、黄色をベースにした黒の絣模様があるが種類によって異なる。図2 左:無毒の蛇、右:毒蛇の頭部の例最近ではスマートフォンを持っている人が多いため、写真に撮って持って来てくれるケースが多くなりました。今回の患者さんも動画を撮ってくれていました。少し画像が粗いですがアオダイショウとわかります(図3)。図3 患者さんが持ってきてくれた動画の一部(2)かみ傷を確認する動画があったので本症例は毒蛇でないことがわかるのですが、それだと話が終わってしまうので、動画や写真がなかったとしましょう。その場合、かみ傷を確認します。冒頭の図1の写真を見てもらいたいのですが、擦り傷のようなかみ傷が多数あります。マムシやハブにかまれた場合はこういった傷にはなりにくいです。というのも、マムシやハブなどの毒蛇は毒を体内に注入するための鋭い2本の歯を持っています(図4)。図4 左:マムシの歯、右:ハブの歯このためかみ傷は2つの小さな穴が空いたような傷になり、図1のような傷にはなりにくいです(図5)。よって、本症例は毒蛇にかまれた可能性は低いと考えます。図5 マムシやハブのかみ傷のイメージ報告によると、2つ穴のかみ傷が毒蛇咬傷を示唆する感度は100%、陽性的中率は89%で、図1のような擦過創の場合の毒蛇以外の咬傷を示唆する陽性的中率は100%とのことです3)。(3)腫れ具合を確認するかみ傷で毒蛇であるかどうかはだいたい判断できますが、腫れ具合がおかしいときは悩むことがあります。毒素が入った場合、通常の咬傷では考えられない急速な腫脹が広がり、水泡などが伴うことがあります(図6)。「指先をかまれて2時間ほどしたら手首も腫れてきた」というのは通常の咬傷では起き得ず、感染が生じるにしても早すぎるため違和感を持ちましょう。一説によると受傷後、3時間経っても腫脹が進展している場合は重傷化の可能性があるとされています4)。よって、かまれてすぐに受診した場合は外来で数時間フォローする必要があります。時間単位で腫脹が進展する場合は毒蛇にかまれた可能性を考えましょう。本症例は、診察などを合わせて受傷から2時間ほど経過をみましたがわずかな腫脹のみでした。やはり毒蛇にかまれた可能性は低いでしょう。図6 マムシのかみ傷(聖隷横浜病院 入江康仁先生のご厚意で画像をご提供いただきました)以上が毒蛇かどうかを見分けるコツでした。では、診療所でできる毒蛇と毒蛇以外の咬傷の治療方針の決定についてです。蛇咬傷の治療(1)毒蛇以外の場合基本的に、犬や猫による動物咬傷と治療は変わりません3)。まず洗浄してガーゼで保護します。そして、抗菌薬の予防投与や破傷風の予防接種を検討します。本症例は擦過創程度であり、洗浄後にガーゼで保護して帰宅としました。(2)毒蛇の場合毒蛇にかまれ、腫脹が存在する場合は基本的に入院の適応があります。というのも、蛇の毒素は急速に進行し、筋肉の破壊による横紋筋融解、コンパートメント症候群、毒素による血液凝固障害などさまざまな症状が出現し、ショックや急性腎不全など命が脅かされることがあります5)。なので、毒蛇にかまれて症状があると判断した場合は早急に高次医療機関に紹介しましょう。ただし、毒蛇にかまれてもほとんど症状がない患者さんがまれにいて、この場合が悩みます。私自身、「草刈り中に蛇に手をかまれ、持っていた鎌で蛇の首を切り落としたらマムシだった」という強者のおばあちゃんを診たことがあります。かみ傷は2つ穴で確かにマムシにかまれたと考えられるのですが、局所の腫脹はほとんどなく、採血も何も異常がありませんでした。蛇にかまれて毒が入ることを「Wet bite」、無毒の蛇や毒蛇にかまれても毒が入らなかったとき、つまり咬傷による傷害のみの場合を「Dry bite」と言います。毒蛇は一度毒を出すと元通りになるまで14日かかると報告があり、毒がないという毒蛇側の要因や、ほかにもさまざまな要因がかかわることで毒蛇にかまれても20%程度がDry biteになります6,7)。どのようにフォローすべきか悩ましいところですが、毒蛇にかまれてDry biteと判断された場合、12~24時間の経過観察が推奨されており、局所症状の有無にかかわらず入院し、24時間後に何も症状がないことを確認して退院することが推奨されています5,8)。結局のところDry biteは最終的に何もなければDry biteだったという診断になります。ただ、ほぼ無症状の人を入院させるハードルは高く、Dry biteと考えられる局所の軽度の炎症のみの人なら6時間の経過観察で進展がなければ帰宅でもよいという報告もありますが、議論の余地があるようです8)。私は毒蛇咬傷の経験は5例で、Dry biteは2例しか経験がなく、いずれも総合病院の救急外来で診察しました。受傷後2~3時間経っても咬傷部位に変化がなかったものの、リスクを説明して入院を勧めました。2例とも入院を希望しなかったため、腫脹の出現など異変がある場合はすぐに受診するように指導して、翌日外来でフォローしました。重症化した場合は、血清の投与、減張切開、集中治療などが必要になることがあり、もし診療所で診察する場合は可能であれば対応できる病院に紹介するのがよいと考えます。今回は蛇咬傷の治療を紹介しました。私は、蛇にかまれた人に、今後は見つけても近づかない、草むらに入るときは手袋や長ズボンで防御するよう指導しています。近年はペットショップで購入した毒蛇にかまれたなどの報告もあります11)。それらが逃げ出した可能性もあり得るので、やはりむやみに近づかないのが重要です。蛇に関する豆知識意外に危険なヤマカガシ:ヤマカガシは1〜1.5mほどの大きさで、水田、河川付近に生息しています。牙は後方に位置し、毒腺はその根元に開口しています(図6)。ヤマカガシ毒の作用は、ほぼ血液凝固促進作用のみであり、ハブやマムシ毒のように直接組織を損傷させることはないため、局所症状がなく診断は難しいです。症状は受傷後数時間して、強烈な頭痛とともに血栓を生じ、梗塞部位からの出血症状(脳出血、歯肉出血)が出現します。ただし、報告数は40年間で34件しかなく珍しい疾患です9)。図7に示すように歯が後ろにあるため、よほどしっかりとかみつかれないと毒は入りません。そのため、かまれても毒が入らないケースが多く、医療者も無毒と考えていることが多いようです。実は私も無毒だと思っていました…。外観の観察によって蛇の種類を特定しようにも、ヤマカガシは地域によって色が違い、個体差が大きいため難しいです10)。もし迷うようでしたらジャパンスネークセンターの毒蛇110番という連絡先がありますので相談することも1つの手です。図7 ヤマカガシ(毒牙は棒の先端に乗っている小さなとげ)中枢側を縛るべき?傷口から毒を吸い出す?:昔の映画で毒蛇にかまれた際に、中枢側(指先であれば前腕)を縛るシーンがよく出てきました。これは、血流に乗った毒が中枢側に行かないようにするために行われたそうですが、残念ながら有効性は証明されず現在は推奨されていません。同様に、傷口に口を付けて毒を吸い出す処置も昔は行われていましたが、これも効果がなく、口腔内は雑菌だらけで感染のリスクを上げるため現在では推奨されていません。現在のところ傷口の処置で推奨されているのは患部の安静です5)。1)鳥羽 通. 爬虫両棲類学会報. 2007;2007:182-203. 2)Yasunaga H, et al. Am J Trop Med Hyg. 2011;84:135-136.3)Savu AN, et al. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2021;9:e3778.4)辻本登志英ほか. 日本救急医学会雑誌. 2017;2:48-54.5)Ralph R, et al. BMJ. 2022;376:e057926.6)Pucca MB, et al. Toxins(Basel). 2020;12:668.7)Young BA, et al. BioScience. 2002;52:1121-1126.8)Naik BS. Toxicon. 2017;133:63-67. 9)抗毒素製剤の高品質化、及び抗毒素製剤を用いた治療体制に資する研究 [AMED阿戸班] ヤマカガシ10)ジャパン・スネークセンター 身近な毒ヘビ11)大野 裕ほか.日本臨床救急医学会雑誌. 2022;25:735-739.

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静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(前編)【見落とさない!がんの心毒性】第23回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別30代・男性既往歴なし併存症健康診断で高血圧症、脂質異常症を指摘され経過観察喫煙歴なし現病歴発熱と咳嗽が出現し、かかりつけ医で吸入薬や経口ステロイド剤が処方されたが改善せず。腹痛が出現し、総合病院を紹介され受診した。胸部~骨盤部造影CTで右下葉に結節影と縦隔リンパ節腫大、肝臓に腫瘤影を認めた。肝生検の結果、原発性肺腺がんcT1cN3M1c(肝転移) stage IVB、ALK融合遺伝子陽性と診断した。右下肢の疼痛と浮腫があり下肢静脈エコーを実施したところ両側深部静脈血栓塞栓症(deep vein thrombosis:DVT)を認めた。肺がんに伴う咳嗽以外に呼吸器症状なし、胸部造影CTでも肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は認めなかった。体重65kg、肝・腎機能問題なし、血圧132/84 mmHg、脈拍数82回/min。肺がんに対する一次治療としてアレクチニブの投与を開始した。画像所見を図1に、採血データを表1に示す。(図1)中枢性DVT診断時の画像所見画像を拡大する(表1)診断時の血液検査所見画像を拡大する【問題1】DVTに対し、どのような治療が考えられるか?【問題2】筆者が本症例でがん関連血栓塞栓症のリスクとして注目した患者背景は何か?第24回(VTEの治療継続で生じた問題点とその対応)に続く。1)Dou F, et al. Thromb Res. 2020;186:36-41.2)Al-Samkari H, et al. J Thorac Oncol. 2020;15:1497-1506.3)Wang HY, et al. ESMO Open. 2022;7:100742.4)Qian X, et al. Front Oncol. 2021;11:680191.講師紹介

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患者情報から治療期間を評価して、漫然投与薬の中止を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第54回

 今回は、長期服用薬の治療期間を疑問に思い、患者情報を収集し直して漫然投与となりがちな薬剤の必要性を再考した症例を紹介します。副作用などの問題がなくても、治療の適応があるのかどうかを定期的に考える機会は必要です。急性疾患で処方された薬剤がいつまで必要なのか、慢性疾患であれば処方時点と現在で治療内容が妥当であるのか否かを、薬剤師の視点で評価しましょう。患者情報85歳、女性(施設入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム錠30mg 3錠 分3 毎食後2.トラネキサム酸錠250mg 3錠 分3 毎食後3.五苓散エキス顆粒 3包 分3 毎食後4.クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 3錠 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは半年前の施設入居時から上記の処方薬を服用していました。処方監査を実施していた薬剤師が、採血結果もなく、病歴も認知症のみなのになぜ止血剤および鉄剤を飲んでいるのか不明であったため、基礎疾患や治療経過を収集する治療計画(Care plan)を立案しました。当然、出血既往があると予測はつきますし、そのための貧血治療と考えるのが妥当ですが、いつ・どこの・どの程度の出血なのか明確でないことに違和感がありました。担当薬剤師へ情報を引き継ぎ、担当薬剤師が施設訪問時に看護師と入居前に入院していた病院の看護サマリーと診療情報提供書を確認しました。すると、繰り返す転倒から慢性硬膜下血腫が生じ、1年前に穿頭血腫ドレナージ術を施行していたことがわかりました。術後の再出血予防および血腫サイズの縮小などを目的に現行の治療薬が処方され、クエン酸第一鉄もそのときの採血結果をもとに追加されていました。そこで現在の主治医が外科医であることから現行薬の必要性を相談することにしました。医師への相談と経過主治医に電話で、長期的に現行薬を服用していて服薬アドヒアランスは維持されていることを伝えたうえで、病歴の聴取、今後の脳外科受診などの予定について確認しました。また、今後の治療方針も確認しました。主治医は病歴を把握していたものの、現行薬を今後どうするかについては保留中だったそうで、前回の術後頭部CT画像の確認から現行薬の必要性はないだろうという返答がありました。また、貧血治療も採血予定(Hb、フェリチン、TIBC、MCVなど)を組んだので、そこで鉄剤の中止を検討するとのことでした。最後に医師より、長期服用薬の評価は緊急性がなければ後回しになってしまうことが多いので、こういうアシストはとても助かるとお礼がありました。患者さんは現在も施設で転倒もなく、出血イベントも起きずに生活しています。鉄剤もその後の採血結果で異常所見はなく、治療は終了となりました。薬が終了したことで本人の服薬負担も看護師の与薬負担も減らすことができました。このように、病歴確認と見直しを行い、漫然投与となりがちな薬剤について今一度治療の適応があるのかどうか考える機会は必要です。治療継続の必要可否について確認する薬剤師のアプローチも多剤併用を予防するポジティブアクションに繋がると実感しました。

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分娩後異常出血、ドレープによる早期検出と一連の初期治療が有効/NEJM

 分娩後異常出血について、目盛り付き採血ドレープによる早期検出と、子宮マッサージ、オキシトシンやトラネキサム酸投与などによる一連の初期治療により、重度分娩後異常出血や出血による開腹手術または母体死亡の複合リスクの低下に結び付くことが示された。世界保健機関(WHO)のIoannis Gallos氏らが、ケニア、ナイジェリアなど80の病院を対象に行った国際クラスター無作為化比較試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2023年5月9日号掲載の報告。重度分娩後異常出血、出血による開腹手術や母体死亡の統合リスクを比較 研究グループは、経膣分娩を行った女性を対象に、分娩後異常出血に関する多種の介入を評価した。介入は、分娩後異常出血の早期検出を目的とした目盛り付き採血ドレープと、一連の初期治療(子宮マッサージ、オキシトシン、トラネキサム酸、静脈内輸液、検査、エスカレーション)で、介入群の病院に対しては実施戦略によるサポートを行った。対照群の病院では、通常ケアが行われた。 主要アウトカムは、重度分娩後異常出血(失血量1,000mL超)、出血による開腹手術、出血による母体死亡の複合だった。主要な副次アウトカムは、分娩後異常出血の検出、一連の治療順守だった。主要複合アウトカムの発生率、通常ケア群4.3%に対し介入群1.6% ケニア、ナイジェリア、南アフリカ共和国、タンザニアの2次レベルの病院、合計80ヵ所で、経膣分娩を行った21万132例を対象に試験を行った。 データの得られた病院および被験者において、主要アウトカムのイベント発生は、通常ケア群4.3%に対し、介入群は1.6%だった(リスク比:0.40、95%信頼区間[CI]:0.32~0.50、p

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採血時間が入院患者の睡眠不足に影響か

 早朝の採血は入院患者の睡眠に有害な影響を与えるが、それは依然として一般的な医療行為として行われている。そこで米国・イェール・ニューヘブン病院のCesar Caraballo氏らは、早朝採血の実施割合を調査したところ、午前4:00~6:59までの時間帯に最も行われ、採血の10分の4近くを占めていたことが明らかになった。ただし、本研究の終盤には採血時間がわずかだが遅くなっていた。JAMA誌オンライン版2023年1月17日号のリサーチレターでの報告。 2016年11月1日~2019年10月31日の期間、イェール・ニューヘブン病院に入院した成人患者すべての採血イベントについて電子健康記録を照会した。なお、救急部門や集中治療室などで実施される採血、入院後24時間以内に実施される最初の採血は除外した。 Kruskal-Wallis検定を使用して患者のサブグループ間での採血タイミングの違いを評価し、χ2検定を使用して午前4:00~6:59に収集されたサンプルの患者特性を比較した。本病院では主な臨床チームが採血に適したタイミングを指定してオーダーするがデフォルトでは午前6:00に設定されていた。 主な結果は以下のとおり。・入院患者7万9,347例から採取された567万6,092件の採血サンプルが含まれた。・そのうち、220万6,410件(38.9%)が午前4:00~6:59に採血されていた(4:00~4:59は8.9%、5:00~5:59は16.5%、6:00~6:59は13.5%)。・早朝の時間帯以外での全採血の20.7%が7:00~11:59に、28.2%が12:00~23:59に、12.2%が0:00~3:59に行われていた。・早朝採血の分布には、年齢層、人種、民族、性別でわずかではあるが統計学的有意差が認められた。 研究者らは、「早朝採血は、朝のラウンド中に患者の健康状態を評価し、場合によっては退院の決定を知らせるために必要になる場合があるが、睡眠時間中での緊急ではない検査の制限を検討する必要があるかもしれない。また、早朝採血による睡眠の中断がとくに高齢患者において、せん妄やポストホスピタル症候群のリスクを高める可能性があるかもしれない」とし、今後、早朝採血を制限して患者の睡眠を改善させるとともにケアの質に悪影響を与えることなく、患者の転帰を改善できるかどうかを評価する研究が必要だとしている。

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息切れの原因、TKIとの関連は?【見落とさない!がんの心毒性】第19回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別60代・女性主訴労作時息切れ現病歴5年前に発熱を契機に慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia: CML)と診断された。BCR::ABLチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor: TKI)としてイマチニブの投与が行われたが、血球減少のため不耐と判断され、3年前にニロチニブに変更された。その後BCR::ABLコピー数が上昇傾向にあったため、2年前よりダサチニブに変更された。1ヵ月前より労作時息切れを自覚し、精査が行われた。現症血圧 124/72mmHg、脈拍数 96bpm 整、SpO2 98%(酸素投与なし)、結膜貧血なし、頚静脈怒張あり、心音I音正常範囲、II音亢進、III/IV音なし、収縮期心雑音(胸骨左縁第3肋間で最強)、呼吸音清、下腿浮腫軽度採血白血球数 3520/μL、ヘモグロビン量 10.2g/dL、血小板数 13.8万/μL、尿素窒素 12mg/dL、クレアチニン 0.60mg/dL、総ビリルビン 0.4mg/dL、AST 31U/L、ALT 30U/L、LDH 222U/L、ALP 250IU/L、CRP 0.08mg/dL、BNP 30.5pg/mL、Major BCR::ABL IS 0.0053%胸部X線心胸郭比 52%、両側肺門部陰影拡大、肺うっ血/浸潤影なし、胸水なし、心電図:洞調律、II誘導P波先鋭増高、II・III・aVF誘導で軽度ST低下、QTc=409ms(図1)画像を拡大する息切れ出現後の心電図(上段)では、1年前(下段)と比較しII誘導でP波の先鋭増高を認め、右房負荷が疑われる。心エコー心室壁運動異常なし、左室拡張末期径/収縮末期径 45/27mm、心室中隔/後壁厚 8/8mm、左室駆出率 71%、心嚢液貯留なし、軽度僧帽弁閉鎖不全症、中等度三尖弁閉鎖不全症、三尖弁逆流最大血流速 (圧較差)3.2m/s(40mmHg)、下大静脈径 22mm、呼吸性変動低下【問題】本患者の診療に関する下記の選択肢について、間違っているものはどれでしょうか? 2つ選んでください。a.第2世代BCR::ABL TKIの投薬前後には定期的な心電図検査が必要である。b.ダサチニブの投薬前後には心エコー評価が必要である。c.診断のため右心カテーテル検査を行う。d.心エコー所見を基に肺血管拡張薬を開始する。e.CMLの病勢コントロールが良好であることからダサチニブを同量で継続する。CMLの治療成績はBCR::ABL TKIの登場により大きく向上し、多くの症例で分子遺伝学的奏効が得られるようになりました。第2世代以降のBCR::ABL TKIでは第1世代のイマチニブと比較し高い治療効果が期待できますが、長期毒性はイマチニブより重篤なものが多く、副作用管理が重要になります。第2世代のダサチニブはとくに胸水貯留や肺高血圧症の発症頻度が高く、多数のキナーゼをoff-targetとして阻害することが有害事象の頻度が高い原因と推測されています1,5,6)。ダサチニブは、Tリンパ球、単球 / マクロファージによる血管周囲の炎症や、活性酸素によるアポトーシス、内皮障害などにより肺血管抵抗上昇を来すと考えられています4)。心エコーにより肺高血圧症が疑われる頻度はイマチニブでは0.5~2.7%であるのに対しダサチニブでは5~13.2%と大きな差があり7,8)、イマチニブには肺血管抵抗低下効果も観察されています9)。両薬剤による肺高血圧症の発症頻度の違いの理由として、ダサチニブではイマチニブと異なり、非受容体チロシンキナーゼファミリーの一つであるSrcの阻害作用が強いことが可能性として挙げられますが、ダサチニブはSrc阻害とは無関係に内皮細胞機能障害を引き起こすことも報告されており4)、同じBCR::ABL TKIであるダサチニブとイマチニブが肺血管に対して異なる反応を示すことに対する明確な機序は解明されていません。(図2)肺血管におけるダサチニブとイマチニブの対照的効果 10)画像を拡大するダサチニブによる肺高血圧症のリスク因子として、年齢、心肺合併症、TKI投薬期間、3次治療以降のダサチニブの使用などが挙げられます8,11)。とくにこれらに該当する患者に対しては遅滞なく心エコーを行い、肺高血圧症の早期発見に努める必要があります。(謝辞)本文の作成に際し、九州大学病院 血液・腫瘍・心血管内科 森 康雄先生に監修いただきました。1)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;43:4229-4361.2)Humbert M, et al. Eur Heart J. 2022;43:3618-3731.3)日本循環器学会. 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)4)Guignabert C, et al. J Clin Invest 2016;126:3207-3218.5)Jacobs JA, et al. Pulm Circ. 2022;12:e12075.6)Weatherald J, et al. Eur Respir J. 2020;56:2000279.7)Cortes JE, et al. J Clin Oncol. 2016;34:2333-2340.8)Minami M, et al. Br J Haematol. 2017;177:578-587.9)Hoeper MM, et al. Circulation. 2013;127:1128-1138.10)Ryan JJ. JACC Basic Transl Sci. 2016;1:684-686. 11)Jin W, et al. Front Cardiovasc Med. 2022;9:960531.講師紹介

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高齢者へのDOAC、本当に減量・中止すべき患者とは/日本循環器学会

 高齢者の心房細動治療において、つい抗凝固薬を減量してしまいがちだが、それは本当に正しいのだろうか。今回、小田倉 弘典氏(土橋内科医院)が『心房細動抗凝固薬(アブレーションを望まない高齢のPAFなど)』と題し、第87回日本循環器学会学術集会のセッション「クリニックで選択されるべき循環器治療薬~Beyond guideline~」にて、高齢者心房細動の薬物療法における注意点を発表した。 小田倉氏はまず、以下の高齢者の症例を提示し、実際に直接経口抗凝固薬(DOAC)を処方するかどうか、またその際に減量するか否かについて問題提起した。高齢者へのDOAC減量と出血リスクの管理<症例>●年齢・性別:82歳・男性、体重:64kg、クレアチニンクリアランス(CCr):52 mL/min(血清クレアチニン[Cr]:1.0mg/dL)●主訴:ある日、脈をとったら不整で、心電図で心房細動と診断された。●服用歴:降圧薬、認知症治療薬、前立腺肥大症治療薬など6種類●患者背景:要介護2。トイレ歩行は可能だが受診時は車いす。転倒歴あり。長男夫婦と3人暮らしだが、日中は1人のことが多い。●CHADS2スコア:3点、HAS-BLEDスコア:1点 上記の高齢者の症例について、「DOAC各薬剤の添付文書にある減量基準、たとえば、アピキサバンは(1)80歳以上、(2)60kg以下、(3)Cr 1.5mg/dL以上のうち2つ以上が、エドキサバンは(1)60kg以下、(2)CCr 15~50、(3)P糖蛋白阻害薬服用のうち1つ以上が該当する場合にそれに当たるが、いずれにも該当していないので、この患者の場合、該当項目を見る限りでは処方可能であり、減量する必要もない」とコメント。 しかし、実際には高齢というだけでDOACの減量基準を満たさずとも減量する例が散見される。クリニックの患者が主体となった日本の高齢者心房細動に対する抗凝固薬療法に関する2つの試験からもその状況が見て取れる。・ANAFIEレジストリ1):3万2,275例(平均年齢81.5歳[85歳以上が26.1%]、経口抗凝固薬の服用:92.4%、ワルファリンTTR :75.5%、発作性心房細動:42%、認知症:7.8%[通院・在宅患者])ではunder-doseが16.8%、未承認低用量が3.7%。 ・GENERAL研究2):5,717例(平均年齢73.9歳、経口抗凝固薬の服用:100%、フレイル[要介護]:12.1%、認知症治療薬の併用:5.9%)ではunder-doseが27.3%。 では、実臨床で高齢者(75歳以上)に対しDOACをunder-doseする理由とは何か。35.8%でunder-doseを認め、脳卒中/全身性塞栓症が有意に多かったXAPASS study3)の結果によると「処方医は通常用量による出血リスクを最も懸念し、続いて高齢、腎機能低下を意識していた。一方、低体重や併用薬剤を選んだ者は少なかった」とコメント。 ところが、75歳以上の日本人で非弁膜症性心房細動患者を対象としたJ-ELD AF試験4)によれば、アピキサバン5mg/日(低用量)群と同薬10mg/日(通常用量)群に割り付け、脳卒中または全身性塞栓症、入院を要する出血について評価したところ、いずれの発生率も有意差が得られなかった。ただし、サブ解析で出血イベントの発生とアピキサバンの血中濃度の関係性を調べたところ、低用量群では血中濃度が高い(トラフ中央値:86ng/dL)群で出血性イベントが有意に多かった。その原因は明らかではないが、「減量基準以外のunknown factorsの存在が示唆される」と同氏は指摘した。DOAC減量基準を満たした患者の出血リスクに注力を これらの報告を踏まえ、同氏は「DOACの減量基準に該当しなければ用量を守り、減量基準を満たす患者は減量したうえで、いかに出血の関連リスクを減らせるかを考えることが重要」と述べ、「その関連リスクはDOAC減量基準やHAS-BLEDスコアに記載がないものにも注意を払う必要があり、改善可能なソフトプロブレム(上記unknown factorsにおおむね相当)と改善困難なハードプロブレムに分類できる。前者にはポリファーマシー(抗凝固薬と併用注意の薬剤を確認)、フレイル(転倒頻度や低体重を考慮)、認知症(服薬アドヒアランスを確認)、高血圧(外来での血圧130/80mmHg目標)が該当し、後者には腎機能低下や出血の既往があるだろう。後者では低用量投与を前提とし、2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン5)に従い、腎機能チェックの採血をCCr<60mL/minの患者では少なくともXヵ月(X=CCr/10)に1回実施すれば、リスク回避につながる」と対策を講じた。DOACの中止を考えるタイミング また、とくに高齢者ではDOAC中止を考える場面は多いが、具体的には以下が挙げられた。・出血したとき →出血の制御ができないような大腸憩室炎、蜂窩織炎などの既往歴がある場合 →生活面に支障を来すような重い後遺症が残る可能性のある場合・出血以外の副作用が出たとき・腎機能が低下してきたとき・アドヒアランス不良のとき・フレイル(要介護度)が進行した(寝たきりになった)とき 最後に同氏は「併存疾患の有無や身体機能レベルが個々で大きく異なるにもかかわらず、そもそも高齢者を1つのカテゴリーとして捉えることは不可能であり、多様な視点からのカテゴライズが必要となる。言うならば、“科学”と“生活”の両面からのアプローチが必要なのであり、それにはゴールはないため、考え続けることが重要である」と締めくくった。

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脂質異常症(高脂血症)とは?

脂質異常症(高脂血症)とは?血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を、脂質異常症といいます。脂質の異常には、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)、トリグリセライド(中性脂肪)の血中濃度の異常があります。これらはいずれも、動脈硬化の促進と関連します1)。脂質異常症の診断基準2)LDLコレステロールHDLコレステロール140mg/dL以上高LDLコレステロール血症120~139mg/dL境界域高LDLコレステロール血症40mg/dL未満低HDLコレステロール血症悪玉が多いタイプ善玉が少ないタイプ150mg/dL以上トリグリセライド (空腹時採血)(中性脂肪)175mg/dL以上高トリグリセライド血症中性脂肪が多いタイプ(随時採血)non HDLコレステロール170mg/dL以上高non HDLコレステロール血症(総コレステロール-HDLコレステロール)150~169mg/dL境界域高non HDLコレステロール血症1)厚生労働省 e-ヘルスネット善玉以外が多いタイプ脂質異常症(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-004.html)2)日本動脈硬化学会編. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. p22 表2-1より一部改変Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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