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Vol. 2 No. 2 心房中隔欠損症の最新治療戦略

赤木 禎治 氏岡山大学病院循環器疾患集中治療部はじめに国内におけるAMPLATZER® Septal Occluderを用いた心房中隔欠損症(atrial septal defect:ASD)に対するカテーテル治療は、治療症例数が3,500例を超え、成績も安定してきた。治療経験が増加していく中で、開始当初の小児を中心とした治療対象から、成人さらに高齢者までの幅広い年齢層が治療対象になってきた。本症は年齢によってその臨床像が大きく異なるため、特に成人期の患者では不整脈を中心とした心合併症に対する対応が重要となる。カテーテル治療に伴う合併症も報告されており、治療適応と合併症に対する知識と対応策を十分に理解しておく必要がある。カテーテル治療では経食道エコーを主体とする心エコー図の役割は極めて大きく、治療の安全な実施と確実な成功を直接左右する要素となる。心房中隔欠損症に対するカテーテル治療の歴史AMPLATZER® Septal Occluderはニッケル・チタン合金からできた形状記憶合金(Nitinol®)のメッシュで構成された円形の閉鎖栓である。金属メッシュ内部には血栓形成性を高めるポリエステル製の布製パッチが縫着されており、より速やかな完全閉鎖を導くことが可能である。閉鎖栓の末端は、ねじ状の接続部でデリバリーケーブルとつながっているため、閉鎖術中に閉鎖栓の位置を変更したり、カテーテル内に回収したりすることが可能である。日本への導入は欧米に比べ大幅に遅れたが、2005年に承認され2006年からは保険診療として収載された。2012年末までに国内での留置実績は約3,500例であり、年々症例数も増加している。国際的にはすでに10万例をはるかに超える実績があり、安定した治療成績が実証されている1)。海外にはこのほかにもゴアテックス膜とNitinol®ワイヤーから構成されるHELEX® Device、その改良型となるGORE® Septal Occluder、AMPLATZER®Septal Occluderと同じNitinol®メッシュで構成されるOcclutech®などさまざまなデバイスが存在する。カテーテル治療の適応基準AMPLATZER® Septal Occluderを用いたASDのインターベンション治療対象は、2次孔型心房中隔欠損症で、(1)欠損孔のバルーン伸展径が38 mm以下、(2)肺体血流比が1.5以上、(3)前縁を除く欠損孔周囲縁が5mm以上あるもの、または(4)肺体血流比が1.5未満であってもASDに伴う心房性不整脈や奇異性塞栓症を合併するもの、である。高度の肺高血圧を合併する例などASDの治療そのものが適応にならない場合は、インターベンション治療も適応とはならない。欠損孔の正確な部位診断と欠損孔周囲縁の評価には、経食道エコーによる評価が重要である2)。欠損孔周囲縁の評価で常に問題となるのは、大動脈周囲縁(前上縁)欠損例に対する適応判断である。経食道心エコー図で大動脈周囲縁が欠損した症例は、後述する心びらん穿孔を合併する可能性があるとして慎重な判断を要求されている。ただ、欠損孔の解剖学的特徴のみで、心びらん穿孔の発生をすべて説明することは困難である。また、大動脈周囲縁欠損は最も頻度の高いタイプであり、治療対象例の多くを占める。このような事実を踏まえ、2012年に米国FDAよりAMPLATZER® Septal Occluderの取扱説明書(instruction for use)の改訂が行われ、「前上縁欠損症例をカテーテル治療する場合には心びらん穿孔合併の発生に十分注意し、慎重なフォローアップを行うこと」という警告が表示されることになった。カテーテル治療の実際閉鎖術は、原則として全身麻酔下に施行する。サイジングバルーンを用いて欠損孔の伸展径を測定し、この径と同一もしくは1サイズ大きめの閉鎖栓を選択する。大腿静脈から左心房へ8~12 Fr(閉鎖栓の大きさで異なる)のデリバリーシースを挿入し、このデリバリーシース内に閉鎖栓を挿入し、留置部位までアプローチする。まず左心房側のディスクを開き、つづいて右心房側のディスクを開いて心房中隔の閉鎖を行う(図1)。それぞれのディスクが適切な位置で開いているかどうかを確認するためには、経食道エコーによるモニターが重要なポイントとなる。最近では、心腔内エコーによるガイド下に閉鎖術を施行する試みも行われている3)。 閉鎖栓が適切な位置に留置されたことが透視像および経食道エコーで確認されたら、デリバリーケーブルを回転させデバイスを離脱し、閉鎖術を終了する。閉鎖術後は抗血栓を目的に、アスピリンを6か月間服用する2)。心房性不整脈の合併などがなければ、ワルファリンなど抗血栓療法を用いる必要はない。図1 閉鎖術の実際画像を拡大するa. サイジングバルーンを用いて 欠損孔の伸展径の測定b. 左房側ディスクの展開c. 右房側ディスクの展開d. 留置形態が安定したのを確認して、ケーブルから離脱させる治療成績と合併症国内では、2012年末までに約3,500例のASDに対してカテーテル治療が実施されている。多くは小児期の患者であるが、80歳を超す高齢者まで幅広い年齢層で治療が実施されている。使用されたデバイスの平均径は17.5mmであり、30mmを超える閉鎖栓も数は限られるが使用されている。術中の急性期合併症として、留置術中のデバイスの脱落がある。脱落した閉鎖栓は経皮的、もしくは外科的に回収されている。また心びらん穿孔は術後72時間以内に発生する可能性の高い重要な合併症(発生率約0.2%)である。米国における外科治療との比較検討によるとカテーテル治療による重大な合併症(処置が必要な合併症)として、不整脈(心房細動や房室ブロック)、デバイスの脱落、脳血管塞栓症が報告されている4)。これら合併症の発生率は、外科手術の合併症発生率と比較し有意に低いものであったと報告されている。成人における心房中隔欠損症の特徴ASD患者の多くは、成人期までほとんど無症状に経過する。しかし、その生命予後は必ずしも良好であるとは限らない5)。未治療でも20歳までの自然歴は比較的良好であるが、30歳を過ぎると心不全死が増加し、生存率は急速に低下する。高齢者の卵円孔開存で明らかなように、欠損孔自体が加齢とともに拡大していくことも知られている。40歳以降には心房細動や心房粗動を合併する頻度が増し、それによって心不全が増強する6)。成人期ASD患者では、50代で15%、70代以降では60%以上と非常に高率に心房細動(atrial fibrillation:AF)を合併する。近年カテーテルアブレーションの技術が進歩しており、AFに対する肺静脈隔離術(pulmonary vein isolation:PVI)が一定の有効性を示している。このため、われわれはAFを合併したASD患者では、アブレーションの適応がある状態であればカテーテル閉鎖術に先立ってPVIを行い、再発がないことを確認して(通常3か月)、その後にASDのカテーテル閉鎖を実施している。一方、カテーテルアブレーションの適応とならない永続性AFの場合には、抗血栓療法を継続しながらASDのカテーテル治療を実施することができる。永続性AFを合併したASD患者においても、カテーテルによるASD閉鎖を行うことで、通常の成人症例と同様に有意な自覚症状の改善、BNP低下や心室のリモデリングが得られる7)。早期治療が重要であることに変わりはないが、AFが慢性化した病期においても、カテーテル治療は有用であり、積極的に考慮すべきである(図2)。図2 慢性心房細動患者に対するASDのカテーテル閉鎖術の効果画像を拡大する心房細動は継続しているが、ASDを閉鎖することでNYHA classは有意に改善する。肺高血圧合併例に対するアプローチ肺高血圧症はASDの約6~37%に認められ、予後、自覚症状、心房性不整脈発症に影響を及ぼす。一方でASD患者における肺高血圧の多くは非可逆性ではなく、閉鎖後にほとんどの症例において有意な肺動脈圧の低下が認められる。これまで、一般に肺血管抵抗が8~10単位以上の症例は、外科的閉鎖の禁忌とされてきた。しかしながら近年、エポプロステノール、シルデナフィル、ボセンタンなど肺高血圧に対する画期的な薬物治療が進歩しており、カテーテル治療を併用することにより、これまで治療の難しかった高度肺高血圧を合併した症例に対する治療適応の拡大が起こってくる可能性がある8)。高齢者に対するカテーテル治療の問題点高齢者ASDにおいて常に危惧される血行動態変化は、欠損孔閉鎖に伴う急性左心室容量負荷に対して、加齢のために拡張機能の低下した左心室がスムーズに対応できるかどうかである。実際にこれまでの閉鎖による急性期合併症として急性左心不全、肺水腫が懸念される。これはASD閉鎖による左室への急激な前負荷の増加に対し、左室が急性適応できないことが原因とされる。これらの疾患を有する症例や左心不全の既往がある症例において、われわれはSwan-Ganzカテーテルによる肺動脈楔入圧モニタリング下にASD閉鎖を施行している(図3)。術後術中のみならず術後急性期の管理も重要であるため、このようなハイリスク症例の術後は原則としてICU管理としている9)。図3 高齢者(82歳女性)ASDに対するカテーテル治療画像を拡大するa. 術前の胸部レントゲン像b. 左房側のディスクを開いたところ。36mmの閉鎖栓を留置している。c. 右房側のディスクを開いたところ。手技中は肺動脈楔入圧をモニターしている。d. 術後6か月の胸部レントゲン像特殊な心房中隔欠損症例(周囲縁欠損、多発性欠損)に対するカテーテル治療これまでのわれわれの検討から、従来カテーテル治療に適したと考えられていた心房中隔の中心部、あるいは欠損孔周囲縁がすべて5mm以上あるASDは治療対象全体の24%に過ぎず、多くの欠損孔は周囲縁の一部あるいは複数部の周囲縁が欠損していることがわかってきた(図4)。最も多いケースは大動脈側縁(前上縁)が欠損したタイプである。このような形態の欠損孔では、たとえ前上縁が欠損していても閉鎖栓が大動脈をまたぐように留置して閉鎖することが可能である(図5)。反対に、後縁が欠損したタイプでは、欠損した領域が小さい場合であれば閉鎖栓が心房壁を摘み上げるように留置され、閉鎖可能である。後下縁の欠損の場合も同様に、多くの場合は閉鎖栓の留置は可能であるが、広範囲な下縁欠損では留置を断念する症例も経験している。欠損孔が複数個存在する多発性欠損例では、欠損孔の位置関係、閉鎖栓の選択で慎重な判断が要求される。お互いの欠損孔が近接し(通常7mm以内)、1個の閉鎖栓で同時に覆うことが可能な場合には、1個の閉鎖栓を留置することで閉鎖可能である。しかしながら、それぞれの欠損孔が独立して存在する場合には、それぞれの欠損孔に別々の閉鎖栓を同時に留置して閉鎖する。さらにより多数の欠損孔がメッシュ状に存在する欠損孔の場合には、AMPLATZER® Cribriform Deviceを用いて、1個の閉鎖栓で同時にカバーすることも可能である。図4 カテーテル治療を実施したASD症例の欠損症周囲縁の評価(n=227)画像を拡大するすべての周囲縁が存在するのは全体の23%で、最も多い症例は大動脈周囲縁の欠損例である。図5a. 大動脈周囲縁欠損例の経食道心エコー図所見画像を拡大するb. 閉鎖栓留置後の所見。閉鎖栓が大動脈にまたがるように(Aサイン)留置されているのがわかる画像を拡大する心びらん穿孔(cardiac erosion)遠隔期合併症としては、閉鎖栓の脱落、不整脈や房室ブロックの合併などが報告されてきたが、最も注目されているのはデバイスに起因する心臓壁のびらん穿孔(erosion)の問題である10)。Aminらは、製造元のAGA Medical社に報告された合併症をもとにその成因を検討している。それによると28例中25例(89%)は大動脈側の辺縁(rim)が欠損していた症例であった。デバイスに起因するerosionで直接死亡した症例は断定されていないが、erosionそのものが全症例の0.1~ 0.2%に発生しているのは事実であり、慎重な対応が必要である。Erosion発生時期の多くは術後72時間以内である。術直後は穿孔に伴う胸痛、息苦しさなどの症状に注意し、さらに術後のエコー所見で心嚢液の貯留についての評価が重要である。Erosionを起こした症例は、欠損孔に対する使用デバイスのサイズが明らかに大きかったことが指摘されている。欠損孔に対して大きすぎるデバイスの選択・留置により(over sizing)、デバイスと心房壁の過度の圧迫、さらに大動脈壁との間の経時的な摩擦によって、心房もしくは大動脈壁の穿孔が起こるのではないかと推測されている。心房中隔欠損症に対するカテーテル治療の今後ASDに対する治療は、今後カテーテル治療が主流となることは間違いないと思われる。AMPLATZER® Septal Occluderは安全性が高くデバイスとしての完成度も高いが、今後より安定した治療効果が得られるような技術改善も期待される。カテーテル治療の場合、心腔内に金属異物を留置することが将来的な不整脈の原因となるのではないかとの危惧もあるが、これまでのわれわれの検討では、少なくとも成人期のASDでは、カテーテル治療は外科治療よりも術後の不整脈の発生率は有意に低いことが確認されている。カテーテル治療では、術後の不整脈の大きな原因である心房切開線を避けられることが大きな要因であると思われる。今後はカテーテル治療と外科治療の適応をどのように判断するかが主要なテーマになってくると思われる。成人例(特に高齢者)のカテーテル治療では、循環器内科医、心臓外科医、麻酔科医による同時に存在する併発症の管理、術後合併症の管理が重要であり、複数の領域にまたがる新しいチーム医療の構築が重要である。文献1)Akagi T. Catheter intervention of adult patients with congenital heart disease. J Cardiol 2012; 60: 151-159. 2)Oho S et al. Transcatheter closure of atrial septal defects with the Amplatzer Septal Occluder –A Japanese clinical trial–. Circ J 2002; 66: 791-794. 3)Kim NK et al . Eight-french intracardiac echocardiography: safe and effective guidance for transcatheter closure in atrial septal defects. Circ J 2012; 76: 2119-2123. 4)Du ZD et al. Comparison between transcatheter and surgical closure of secundum atrial septal defect in children and adults. J Am Coll Cardiol 2002; 39: 1836- 1844. 5)Murphy JG et al. Long-term outcome after the surgical repair of isolated atrial septal defect. N Engl J Med 1990; 323: 1645-1650. 6)Gatzoulis MA et al. Atrial arrhythmia after surgical closure of atrial septal defects in adults. N Engl J Med 1999; 340: 839-846. 7)Taniguchi M et al. Transcatheter closure of atrial septal defect in elderly patients with permanent atrial fibrillation. Catheter Cardiovasc Interv 2009; 73: 682–686. 8)Hirabayashi A et al. Continuous epoprostenol therapy and septal defect closure in a patient with severe pulmonary hypertension. Catheter Cardiovasc Interv 2009; 73: 688-691. 9)Nakagawa K et al. Transcatheter closure of atrial septal defect in a geriatric population. Catheter Cardiovasc Interv 2012; 80: 84-90. 10)Amin Z et al. Erosion of amplatzer septal occluder device after closure of secundum atrial septal defects: Review of registry of complications and recommendations to minimize future risk. Catheter Cardiovasc Interv 2004; 63: 496-502.

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第6回

第6回:無症状の成人における顕微鏡的血尿へのアプローチ 健診において尿試験紙検査は広く行われており、その際に無症候性血尿が認められることはよくあります。血尿の定義は、尿沈渣で赤血球5個/HPF以上とする事が多いです。これは日本の人口からの試算で、500万人近くになります。顕微鏡的血尿の頻度は加齢とともに増加し、男性より女性に多くみられます1)。尿潜血陽性時のアプローチについては悩ましいことが多いですが、患者と相談しつつ精査していくことになります。 以下、本文 American Family Physician 2013年12月1日号2)より顕微鏡的血尿1.背景2011年のUSPSTFによれば、無症状の成人に対しての膀胱がんスクリーニングに十分なエビデンスは認められない。しかし、健診では2%~31%に偶発的な血尿が認められており、エビデンスに則ったアプローチがプライマリ・ケア領域で求められている。大半の患者で原因が不明な事が多い一方、顕微鏡的血尿患者の5%、肉眼的血尿患者の30~40%までに悪性疾患が認められる。(表1) 【表1:顕微鏡的血尿の一般的な頻度】 不明 43~69% 尿路感染症 4~22% 前立腺肥大症 10~13% 尿路結石 4~5% 膀胱がん 2~4% 腎嚢胞性疾患 2~3% 腎臓病 2~3% 腎がん <1% 前立腺がん <1% 尿路狭窄性疾患 <1% 2.手順 1)尿試験紙検査が陽性で尿沈渣は陰性の患者では、6週あけて3回尿沈渣を行い、3回とも陰性であれば、追加の検査は不要である。 2)1回でも陽性であれば、尿路感染症や他の良性疾患(激しい運動、月経、最近の泌尿器科処置など)がないかを確認する。感染症治療後6週あけて、あるいは良性疾患の要因がなくなってから少なくとも48時間あけて、尿沈渣を再検、陰性なら追加検査は不要である。 3)これが陽性で、蛋白尿、赤血球円柱など腎疾患の可能性があれば、腎臓内科へ紹介する。腎疾患の可能性が低ければ、悪性腫瘍のリスクを評価し(表2)、初期評価として、病歴と身体所見、とくに血圧測定と腎機能評価を行う。また女性では内診を考慮し、男性には直腸診を行う。 【表2:危険因子】 35歳以上(日本のガイドラインでは40歳以上) 鎮痛薬の乱用 化学物質や染料への曝露 男性 喫煙者(既往も含む) 以下の既往 慢性的な体内異物留置 慢性的な尿路感染症 既知の発がん性物質や化学療法薬への曝露 肉眼的血尿 排尿時刺激症状 骨盤照射 泌尿器科疾患 3.画像診断【上部尿路評価】尿路造影CTは1回の検査で優れた診断的情報を提供する(感度91~100%、特異度94~97%)。腎機能低下例では、逆行性腎盂造影に単純CTまたは腎臓エコーを組み合わせて評価する(感度97%、特異度93%)。【下部尿路評価】リスク(表2)がある無症候性血尿患者には、年齢によらず膀胱鏡がすすめられる。尿細胞診は、膀胱がんに関して膀胱鏡に比べて感度が低く(48% vs. 87%)、リスクがない場合に、AUAガイドラインにおけるルーチン評価としてはもはや推奨されていない。4.フォローアップ適切な検査でも原因不明の場合には、尿検査を年1回、最低2年間行い、2回とも陰性であれば将来の悪性リスクは1%未満である。血尿が持続する場合は、3~5年以内に精査を繰り返すべきである。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 日本腎臓学会ほか. 血尿診断ガイドライン2013 2) Victoria J.Sharp,et al. Am Fam Physician. 2013;88:747-754.

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iPS研究の可能性、治療開発マップetc.~日本泌尿器科学会総会のハイライト

 来月4月24日より4日間、第102回日本泌尿器科学会総会(JUA)が開催されるにあたって、今月10日にプレスセミナーが開催され、学会長の筧 善行氏より企画の概要および見どころが紹介された。社会的視点から わが国の高齢化率は今後50年間で急激に増加する。泌尿器がんは高齢になるほど増加すること、排尿管理を必要とする高齢者が急増すること、医師自身の高齢化も進行することから、泌尿器科医療における役割分担が変わっていくことが予想される。今回、社会的視点からの企画として、以下の講演が予定されている。・高齢化社会における医療費増加抑制策としての個別化治療と日米の意識格差・米国医療の光と影「患者の権利」の視点から・待ったなしの医療制度改革、現状と展望若手医師の研究離れをどうにかしたい 近年、若手医師の専門医志向・研究離れが進んでいるため、研究の魅力にふれる機会として、以下の講演が企画されている。・科学嫌いが日本を滅ぼす:「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか?・尿路結石症研究の楽しさ、美しさを語る(仮題)・臨床研究の道標:7つのステップで学ぶ研究デザイン・がんの臨床研究:JCOGの歩みと今後の展望 さらに、泌尿器科領域へのiPS研究の可能性についての講演も企画されている。・iPS細胞から精子を作成・iPS細胞から腎臓細胞を作成・iPS細胞からがん細胞を殺すT細胞を作成各疾患の治療開発マップを作成 がん治療について、現在のがん治療は「治すこと」「救うこと」に重点が置かれているが、今後は「癒すこと」「やりすごすこと」「しのぐこと」「看取ること」が重要になってくる。泌尿器科学会では、泌尿器がんの治療開発マップを作成しており、今回の特別企画で、前立腺がん、尿路上皮がん、腎がん、精巣がんのマップについて報告される。このマップは、がんだけでなく、排尿障害、蓄尿障害についても企画されている。高度化・高品質化する手術に対して 現在、泌尿器がんの手術は高度化、高品質化しているが、その安全管理、危機管理について考える「泌尿器科手術の安全管理:情報の共有化を目指して」と題した特別企画が組まれている。香川といえば・・・ 今回の会長である筧氏が香川大学所属であることから、全国の泌尿器科医から各県1名ずつを公募し、うどん早食いグランプリ「U1グランプリ」が開催される。【第102回日本泌尿器科学会総会】■会期:2014年4月24日(木)~27日(日)■会場:神戸国際会議場、神戸国際展示場、神戸ポートアイランドホテル■会長:筧 善行氏(香川大学医学部泌尿器科 教授)■テーマ:’今日’を見つめ、’明日’を創る~良医は国を癒す~

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発毛効果の比較:フィナステリドvs.デュタステリド

 チリ・Centro Medico SkinmedのWalter Gubelin Harcha氏らは、男性型脱毛症の治療の有効性と安全性について、デュタステリド(商品名:アボルブ、わが国では前立腺肥大症治療薬として承認)とプラセボ、フィナステリド(同:プロペシア)を比較する無作為化試験を行った。その結果、24週時点の評価で、デュタステリドの発毛・育毛が、フィナステリドおよびプラセボよりも有意に増大し、忍容性も比較的良好であったことを報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2014年1月10日号の掲載報告。 試験は、男性型脱毛症の20~50歳男性を対象とし、デュタステリド投与を受ける群(0.02、0.1、0.5mg/日)、フィナステリド投与を受ける群(1mg/日)、プラセボを受ける群に無作為に割り付けられ、24週間治療を受けた。 主要エンドポイントは、24週時点の直径2.54cmにおける毛髪数であった。また直径1.13cmにおける毛髪数と太さ、研究者とパネルによる写真評価、ステージの変化、健康アウトカムなども評価した。 主な結果は以下のとおり。・総計917例の男性が無作為化を受けた。・毛髪数と太さは、デュタステリド群で用量依存的に増大した。・デュタステリド0.5mg群は、24週時点で、フィナステリド群およびプラセボ群と比較して、直径2.54cmにおける毛髪数と太さが有意に増大し、発毛の改善(正面撮影像:パネル写真評価)も認められた(フィナステリド群:p=0.003、p=0.004、p=0.002、プラセボ:すべてp<0.001)。・有害事象の発生数および重症度は、治療間で同程度であった。・以上のように、デュタステリドは、男性型脱毛症の男性において発毛と育毛を増大し忍容性も比較的良好であった。

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不眠症への行動療法、夜間頻尿を軽減できるか

 不眠症に対する行動療法は夜間頻尿の軽減につながる可能性が示唆された。米国・ピッツバーグ大学のShachi Tyagi氏らが、不眠症と夜間頻尿を併発している60歳以上の地域住民を対象に、行動療法を行った場合と情報提供のみを行った場合を比較検討した結果、報告した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2014年1月2日号の掲載報告。 研究グループは、慢性不眠症を呈する60歳以上の地域住民において、行動療法が夜間頻尿に及ぼす影響を評価することを目的に、睡眠への行動介入の無作為化対照試験の二次解析を行った。対象は、大学病院で登録された79例のうち、不眠症があり夜間に1回以上トイレに起きる30例であった。介入はNurse clinicianにより、簡易行動療法(BBTI)または情報提供(IC)が行われた。BBTI群(14例)では「ベッドにいる時間を少なくする」「規則正しい睡眠スケジュールを立てる」などの指導が行われた。IC群(16例)では印刷物が手渡された。ベースライン時と介入開始4週間後に、自己報告の毎晩(14日間)の夜間覚醒について評価した。ベースライン時に夜間トイレのために少なくとも1回起きた者を解析対象とした。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に夜間頻尿を示した患者において、14日間の夜間覚醒の回数は、BBTI群で6.5±4.8回の減少が、IC群では1.3±7.3回の増加が認められた(p=0.04、効果サイズ:0.82)。・ベースライン時の夜間頻尿エピソードで補正後も、その差は有意なままであった(p=0.05)。・不眠症と夜間頻尿を併発している高齢者において、不眠症に対する行動療法は、自己報告による夜間頻尿を改善させる可能性があった。この点について、さらに検討する必要がある。関連医療ニュース 睡眠薬、長期使用でも効果は持続 長期の睡眠薬服用、依存形成しない?! 自殺と不眠は関連があるのか

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閉経前女性の膀胱炎原因菌の予測能を飛躍的に高める方法/NEJM

 急性単純性膀胱炎の症状がみられる閉経前健常女性では、自然排泄中間尿の培養によって膀胱内の大腸菌を高率に予測でき、腸球菌やB型レンサ球菌が膀胱炎の原因菌となるのはまれなことが、米国・マイアミ大学のThomas M. Hooton氏らの検討で示された。女性の場合、自然排泄尿に尿道周囲の細菌が混入する可能性が高いため、培養結果の解釈が複雑になり、細菌尿が膀胱由来か尿道周囲由来かの判別が難しい。とくにグラム陽性菌の増殖を認める場合に、培養結果の解釈の指針となるデータは、これまでほとんどなかったという。NEJM誌2013年11月14日号掲載の報告。ペア検体を用いて陽性/陰性予測値を評価 研究グループは、閉経前女性の急性単純性膀胱炎の原因菌の同定における中間尿培養の意義について、カテーテル尿を対照に検討を行った。対象は、年齢18~49歳、全般的な健康状態が良好で、直近の1週以内に典型的な膀胱炎の症状(排尿障害、頻尿、尿意切迫)がみられた女性であった。 これらの女性から、中間尿検体の提出を受けたのち、尿道カテーテルにて培養用の尿(カテーテル尿)を採取した。これらのペア検体を用いて、菌種およびコロニー数を比較した。 主要評価項目は、カテーテル尿中の細菌の有無を対照とした場合の、中間尿中の細菌の陽性予測値および陰性予測値であった。中間尿中の大腸菌の陽性予測値は93% 2002年~2012年に、女性226例・236件の膀胱炎エピソードについて解析した。202組の中間尿とカテーテル尿のペア検体が評価の対象となった。年齢中央値は22歳(18~49歳)、排尿障害が99%、頻尿が98%、尿意切迫は96%に認められた。 カテーテル尿の142検体(70%)で尿路感染症の原因菌が培養陽性となり、そのうち4検体では複数の原因菌が同定された。中間尿では157検体(78%)が培養陽性であった。 中間尿中の大腸菌は、ごく少数でも膀胱内の細菌尿の強力な予測因子であり、102コロニー形成単位(CFU)/mLの陽性予測値は93%と高い値を示した(スピアマン順位相関係数:r=0.944)。 これに対し、中間尿中の腸球菌(培養の10%)およびB群レンサ球菌(同12%)は、コロニー数の多寡にかかわらず、膀胱内細菌尿を予測しなかった(スピアマン順位相関係数:腸球菌はr=0.322、B群レンサ球菌はr=0.272)。 中間尿に腸球菌、B群レンサ球菌もしくはその両方が認められた41件のエピソードのうち、61%においてカテーテル尿培養で大腸菌の増殖が検出された。 著者は、「急性単純性膀胱炎がみられる閉経前の健常女性では、自然排泄中間尿の培養により膀胱内の大腸菌の存在が証明されたが、腸球菌やB型レンサ球菌は確認されなかった」とまとめ、「これらのグラム陽性菌は大腸菌とともに検出されることが多いが、膀胱炎の原因となるのはまれであることが示された」と指摘している。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第1回

第1回:単純性憩室炎では、抗菌薬投与は回復を早めない 憩室炎の患者の多くは、腹痛を主訴に受診します。腹痛は、救急受診の10%程度を占める症状で、見逃すと重症化するものもあり、詳細な病歴と診察が必要とされます。憩室の頻度は高齢者に多く、40歳以下では10%以下ですが、85歳以上には80%以上存在する1)という報告があります。また、一般に西洋人の方が憩室を有する率が高いといわれていますが、食の西洋化によって、日本人にも増えてきていると考えられています2)。単純性憩室炎の患者の食事として勧められている“Clear Liquid Diet” とは、一日1,000kcal程度で、乳製品や脂肪分、食物繊維を含まない食事であり3)、日本では入院中の術後食をイメージしていただければと思います。 以下、本文 American Family Physician 2013年5月1日号1)より単純性憩室炎1.概要炎症が憩室のみに限局する状態であり、複雑性の憩室炎は膿瘍や蜂窩織炎、瘻孔、通過障害、出血や穿孔を伴うものをいう。2.症状 1)主な症状 左下腹部自発痛、圧痛、腹部膨満感、発熱 (「左下腹部のみに限局した痛み」陽性尤度比10.4) 2)その他の症状 食欲不振や、便秘、吐き気(「嘔吐がない」陰性尤度比0.2)、下痢、排尿障害3.検査 1)採血 : 末梢血液や電解質や腎機能などの生化学、尿検査や、CRP測定を行う。 2)CT : 最も有用な画像検査【Grade C】で、診断の決定と、病状の広がりや重症度を判断し、合併症を否定するのによい。 3)下部消化管内視鏡 : 複雑性の患者や高齢者で、症状が治まって4~6週間後に行うとよい。軽症で単純性の憩室炎の場合は、抗菌薬の投与が、回復を早めることはなく【Grade B】、合併症や再発を予防することはない。4.処置 1)経過観察 : 軽症で経口摂取が可能で、腹膜炎の徴候がなければ、Clear Liquid Dietで2、3日経過を見る。 2)入院(内科的対応) : 腹膜炎の徴候があったり、複雑性憩室炎の疑いがあれば、入院も考慮すべきである。 入院患者の治療として、補液や抗菌薬点滴を行う。 限局的に膿瘍があれば、CTガイド下の経皮的ドレナージを考えるべきである。 3)入院(外科的対応) : 急性憩室炎で入院している15~30%は入院中に外科的対応が必要とされる。 ラパロスコピーは開腹術と比較して、短期間の入院ですみ、合併症は少なく、入院中の死亡率も低い。 再発を繰り返す場合の外科的治療については、状態や既往歴、生活状況などを併せて個別的に考えるべきである。 4)再発予防 : 再発を予防するのは、食物繊維の摂取、運動、禁煙と、BMI 30以上の人は減量である。ナッツやコーン類を摂取しないことで、憩室症や憩室炎の発症率を下げる効果はない【Grade B】。本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Wilkins T, et al. Am Fam Physician. 2013 May 1;87:612-620. 2) 福井次矢ほか編.内科診断学.第2版.医学書院;2008.p.866. 3) The John Hopkins hospital/outpatient center clear liquid diet. The John Hopkins Medical Institutions.

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エキスパートDrへのQ&A

高齢者の水分制限(とくに夜間)をどの程度すべきでしょうか?高齢者であっても、水分、アルコール、カフェインの摂取は控えたほうがよいでしょう。高齢者の中には、飲水による「血液さらさら」効果を期待して過度の飲水をされる方がいますが、実際には、過度の飲水をしても血液粘調度は生理的な範囲内に留まり、いわゆる「血液さらさら」効果は認められないと報告されています1)。このことからも、虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが無い限り、睡眠前に水分をたくさん摂取する必要はないと考えます。就寝前の摂取はもちろんですが、夕食後にも摂取を制限することも有用です。高齢者では、お茶を飲まれる方も多いものです。「お茶を飲むなら夕方までにしてください」などと伝えることも有効です。水分摂取量の目安ですが体重の2~2.5%程度とされています。体重60kgの方であれば1日1200~1500mLとなります。ある程度、目安を示しながら水分制限を試みてください。1)Sugaya K,et al.Int J Urol 2007;14:470-472.夜間多尿が原因の夜間頻尿が最も困ります。実際に保険適応の薬もなく、ガイドラインの内容では対応できない症例が多いです。診療のコツを教えてください。『夜間頻尿診療ガイドライン』には、はじめに排尿日誌を記載いただき、尿量を把握したうえで診断を行うアルゴリズムが示されています。しかし、一般医家では、まず投薬してみて、効果があるかないかで判断するケースもあるのではないでしょうか。難治例には排尿日誌をつけていただくという方針でも結構かと思います。そのうえで、「夜間多尿」と診断された場合の対応ですが、水分、カフェイン、アルコールの過剰摂取が原因となっていることもあるため、まずは問診などで病因把握を行ってみてください。とくに就寝前の水分摂取が原因となる場合が多いので、その場合は水分制限が重要です。また利尿作用を有する薬剤を就寝前に服用しているケースもあります。とりわけ、利尿薬やCa拮抗薬は、服用者も多いので注意が必要です。その場合、薬剤を就寝直前に服用しないことはもちろん、逆に夕方までに服用していただき、就寝までに排尿してしまうなどの工夫で、就寝後の利尿を少なくすることができると期待できます。夜間頻尿については、本サイトの症例検討会でも取り上げていますので、そちらも参考にしていただきたいと思います。夜間頻尿で睡眠障害がある方に対して、睡眠薬を使用する場合に、どのような睡眠薬を推奨されますか?まず、患者さんの睡眠障害のタイプを把握することが大切です。寝入りばなにトイレに行きたくなる人やトイレが気になって寝付けないといった方は入眠障害に効く超短時間型が適切ですし、中途覚醒がある場合には短時間~中時間型でゆっくり眠らせることが重要になります。患者さんの不眠症のタイプに応じて適切な睡眠薬を選択することが望ましいといえます。ただし、最近、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が原因で頻尿になっている方もみられます。気道の狭い方に睡眠薬を投与することで、SASの症状を悪化させてしまう可能性もありますので、いびきがひどく、無呼吸になることがあるなどSASの可能性が疑われる場合には、SASの専門医に一度受診を勧めてみてはいかがでしょうか。過活動膀胱の薬物投与における、効果判定と薬剤の追加や変更のタイミングについて教えてください。効果判定は、I‐PSSやOABSSなどの質問票を用いるもよいかと思いますが、過活動膀胱は患者さんのQOLを向上させることが重要なため、患者さんに直接質問し、QOLの向上を効果判定基準にすることが重要だと思います。次に、判定の時期ですが、排尿障害治療薬の効果は一般的に3~4ヵ月程度で安定してくるため、その時点で一度効果を判定するのがよいでしょう。薬剤の追加や変更ですが、同じカテゴリーの薬剤であってもそれぞれ特徴があります。たとえば主要なα1遮断薬としてタムスロシン、ナフトピジル、シロドシンの3剤がありますが、各薬剤に特徴があります。具体的には、ナフトピジルは蓄尿障害に効果がある、シロドシンは排尿障害に効果がある、タムスロシンはその中間、などです。そこで、シロドシンで夜間頻尿が改善しない場合、ナフトピジルに変更する、タムスロシンで排尿障害が改善しない場合にはシロドシンに変更する、など患者さんの症状に応じて薬剤を変更することも有用と考えています。ミラベクロンの男性への投与は解禁と考えていいのでしょうか?また、ミラベクロンと抗コリン剤の併用について、適応や注意点などを教えてください。これまでもミラベクロンの男性への投与は禁止されていませんでしたが、警告欄に「生殖可能な年齢の患者には投与を出来る限り避ける」と注意喚起されていることから、投与を躊躇していた方も多いと思います。これは、生殖機能があるときの投与が推奨されない、ということですので、患者さんが子供を作る予定がないのであれば第一選択薬としてもよいでしょう。ただし、ミラベクロンも排出障害をまったく起こさないわけではありません。尿閉も報告されていますので、個人的には、単独投与よりはα1遮断薬と併用しながら慎重に使っていただきたいと思います。ミラベクロンと抗コリン薬の併用については、エビデンスが確立するまでは、まだ待っていただきたいと思います。現在、日本で臨床試験を実施中ですので、2剤の併用については試験結果の発表を待って判断すべきと考えています。

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エキスパートDrへのQ&A

前立腺肥大症、過活動膀胱合併例の治療法について教えてください。前立腺肥大症については、通常、排出症状と蓄尿症状の両方を合併している場合がほとんどです。特に、蓄尿症状がQOLを低下させる傾向にあります。その場合、α1遮断薬のみでは対応できないため、抗コリン薬を併用することになります。この2剤の併用は、エビデンスもあることから専門医は積極的に行っています。しかし、抗コリン薬は尿閉のリスクがあるため、一般医科の先生方に積極的に勧められるものではありません。一般医科で抗コリン薬を使用する場合には、まず残尿をモニターできる施設であることが必要となります。α1遮断薬投与しても、残尿が50mL以上を認める場合、抗コリン薬の投与は望ましくないと考えて下さい。次に、前立腺肥大症に夜間頻尿を合併している場合ですが、抗コリン薬を朝投与した場合は有効性が低下するといわれています。短時間作用型の抗コリン薬を就寝前1回または夕食後に投与することが有効といえます。排尿障害患者さんの治療において、専門医を紹介するタイミングについて教えてください。α1遮断薬を投与しても、50mL以上の残尿が認められる患者さんは専門医へ紹介ください。残尿のモニターが可能であれば抗コリン薬を併用してもよいですが、併用後残尿が50mLを超える場合にも相談いただく方がよいと思います。そのほか、排尿障害の背景にがんが隠れている可能性もあります。前立腺肥大症の診断の際には必ずPSAを測定してください。カットオフ値としては4.0ng/mLを参考としますが、若い方はより低めの値から注意して経過観察を行う必要があります。また血尿が持続する場合は、膀胱癌のほか、尿路結石などの可能性がありますので専門医へご紹介ください。デュタステリドは基本的にはα1遮断薬と併用するというスタンスでよいのですか?ファーストチョイスになりえますか?PSA低下作用や、高価なこともあり、基本的にファーストチョイスにはしていないのですが・・・。いかがでしょうか?デュタステリドは前立腺体積30mL以上の場合に適応になります。第一選択薬にもなりえますが、α1遮断薬と併用するというスタンスでよいでしょう。ただし性機能障害の副作用があるので、50代以下の男性に投与する場合はその点を理解していただいてから投与することが大切です。デュタステリドの効果発現には3~4ヵ月を要しますので、即時効果を期待する場合は、α1遮断薬との併用が必要になります。ただし、デュタステリドはPSAを低下させるため、前立腺癌の存在をマスクしてしまう可能性があります。投与中は必ずPSAをモニターしておくことが重要です。なお、デュタステリドはPSA値を低下させますが、がん発生抑制効果はないと考えられています。デュタステリドは約1年で3割程度前立腺体積を減少させ、PSA値を6ヵ月~1年で50%程度低下させます。投与後、徐々にPSAが増加するようであれば前立腺癌の可能性があると判断し、専門医へ紹介ください。デュタステリドの投与を中止すると前立腺体積も戻ります。数ヵ月程度で増加しますが、30mL以内に留まっている分にはデュタステリドの中止を継続して問題ありません。α1遮断薬と抗コリン薬の併用で十分な効果がない場合の次の一手について、漢方薬も含めて教えてください。漢方薬としては、八味地黄丸や牛車腎気丸があります。ガイドライン上の記載では推奨グレードC1「行ってもよい」となっています。治療選択肢のひとつにはなりますが、積極的に勧められるわけではありませんので、患者さんの希望などを加味したうえでご判断いただければと思います。

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排尿障害』アンケート結果

対象ケアネット会員の医師(一般内科・泌尿科)455名方法インターネット調査実施期間2013年9月10日~9月17日Q1先生が診療されている、薬物治療中の排尿障害患者さん(前立腺肥大症、過活動膀胱など)についてお伺いします。薬物治療期間で最も多い層をお選びください。Q2排尿障害の診断に、IPSS(国際前立腺症状スコア)、OABSS(過活動膀胱症状質問票)などの質問票を用いていますか?Q3「抗コリン薬で治療中の排尿障害患者さん」の残尿測定の実施状況についてお伺いします。先生の診療状況に最も近いものをお選びください。Q4PSA(前立腺特異抗原)検査についてお伺いします。先生の診療状況に最も近いものをお選びください。Q5生活習慣病と排尿障害の関係についても示唆される報告があるようです。生活習慣病の患者さんに、排尿障害の有無について確認することはありますか?2013年9月ケアネット調べ

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5-ARI、前立腺がんリスクを低減、重症がんは抑制せず/BMJ

 前立腺肥大症による下部尿路症状の治療として5α還元酵素阻害薬(5-ARI)の投与を受けた男性では、Gleasonスコア2~7の前立腺がんのリスクは低下するが、Gleasonスコア8~10のリスクには影響がみられないことが、スウェーデン・ウメオ大学のDavid Robinson氏らの検討で示された。2つの無作為化試験(PCPT試験、REDUCE試験)により、5-ARI投与は前立腺がん全体のリスクを23~25%低下させる一方で、Gleasonスコア8~10の前立腺がんのリスクはむしろ増大させることが示されている。この知見に基づき、米国食品医薬品局(FDA)は2011年、「5-ARIはより重篤な前立腺がんのリスクを増大させる可能性がある」との安全性に関する勧告を発表している。BMJ誌オンライン版2013年6月18日号掲載の報告。前立腺がんのリスクを症例対照研究で評価 研究グループは、下部尿路症状の治療として5-ARIの投与を受けた男性における前立腺がんの発症状況を評価する地域住民ベースの症例対照研究を実施した。 Prostate Cancer data Base Sweden 2.0から2007~2009年に前立腺がんと診断された男性のデータを抽出し、全国的な前立腺がんレジストリーなどを用いて前立腺がんの診断前に5-ARIを投与されていた患者のデータを収集した。 1症例に対し背景因子をマッチさせた5例の対照を無作為に選出した。2万6,735例の症例(平均年齢69.3歳、前立腺切除術3.7%)と13万3,671例の対照(同:69.3歳、4.2%)のうち、それぞれ1,499例、6,316例が5-ARIの投与を受けていた。Gleasonスコア8~10の診断の前に5-ARIを使用していたのは412例だった。Gleasonスコア8~10の前立腺がんのリスク上昇は認めず 全体の前立腺がんリスクは5-ARI投与期間が長くなるに従って低下し、投与期間が3年以上の男性における発症リスクのオッズ比(OR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.59~0.89、傾向性検定:p<0.001)であった。同様のパターンが、Gleasonスコア2~6および7の患者にも認められた(いずれも傾向性検定:p<0.001)。 これに対し、Gleasonスコア8~10の前立腺がんのリスクは5-ARI投与期間が延長しても低下せず、投与期間0~1年のORは0.96(95%CI:0.83~1.11)、1~2年のORは1.07(同:0.88~1.31)、2~3年は0.96(同:0.72~1.27)、3年以上は1.23(同:0.90~1.68)であった(傾向性検定:p=0.46)。 著者は、「前立腺肥大症による下部尿路症状の治療として5-ARIの投与を受けた男性では、Gleasonスコア2~7の前立腺がんのリスクは低下したが、最長で4年の治療を行ってもGleasonスコア8~10の前立腺がんのリスク低下のエビデンスは得られなかった」と結論し、「以前の2つの試験で報告されたGleasonスコア8~10の前立腺がんのリスク上昇は、本試験では確認されなかった。5-ARIは下部尿路症状や手術の可能性を抑制し、精神面におけるベネフィットや重篤な副作用がないという長所を持つことからバランスのよい治療法と考えられる」と考察している。

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退院後30日以内の再受診のうち救急部門受診が約4割/JAMA

 米国・エール大学医学部のAnita A. Vashi氏らは、米国内3州の約1年間の退院データ解析の結果、急性期病院からの退院後30日以内の救急部門再受診が成人患者で一般的にみられ、急性期病院の再受診患者のうち39.8%を占めることを報告した。再入院率は急性期治療後における医療ケアの質の改善の指標とされており、退院後早期の救急部門受診も同様に、退院後における急性期の医療ケアの質の指標とみなされているが、これまで退院後早期の救急部門利用に関する調査はほとんど行われていなかった。JAMA誌2013年1月23・30日号掲載の報告より。米国3州の503万件余の退院データを解析 研究グループは、2008年7月1日~2009年9月31日に、カリフォルニア州、フロリダ州、ネブラスカ州の急性期病院を退院した18歳以上の患者データ(Healthcare Cost and Utilization Project state inpatient and ED databases)を入手し前向きに解析した。解析には、402万8,555人の患者に関する503万2,254件の入院データが組み込まれた。 主要エンドポイントは退院後30日以内の、(1)救急部門を受診(再入院せず)した割合、(2)再入院(理由は問わず)した割合、(3)救急部門を受診し再入院した割合の3つとした。 解析患者の平均年齢は53.4歳であり、65歳以上は29.2%だった。退院後30日以内の急性期病院受診は17.9% 解析の結果、退院後30日間に、17.9%(95%信頼区間:17.9~18.0)が1回以上の急性期病院を受診していた。また、退院後に急性期病院を受診した123万3,402件のうち、救急部門の受診は、39.8%(同:39.7~39.9)だった。 退院1,000件につき、再入院を伴わなかった救急部門受診は、97.5件(同:97.2~97.8)であり、再入院は147.6件(同:147.3~147.9)だった。 再入院を伴わない救急部門受診の頻度は、乳房悪性腫瘍患者が最も低く、退院1,000件当たり22.4件(同:4.6~65.4)である一方、最も頻度が高いのは単純性良性前立腺肥大症患者で、退院1,000件当たり282.5件(同:209.7~372.4)だった。 退院後の救急部門受診の理由はさまざまであったが、入院時に受けた手術や処置、退院時の病状との関連が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)本記事に対するコメント(名郷 直樹 氏)国民皆保険の日本こそこういう解析を!

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女性医師1,000人に聞きました!出産後の復職どうする?復帰にあたっての不安材料は

先生の勤務先には、出産後に職場復帰された女性の先生はいらっしゃいますか?あるいは先生ご自身がまさに子育て真っ最中でしょうか。いまや国家試験合格者の3割が女性である現在、妊娠中のフォロー、出産・子育て期間中の業務分担をどうするかは避けて通れない問題です。今回は女性医師1,000人に、出産後の復職についてどのように考えるか、経験者の方へは経験談をお尋ねしました。制度の利用、上司・同僚の反応、仕事と家庭生活の両立、キャリア形成の壁などいくつもジレンマを抱えていることが明らかに…セキララコメントも必見です!コメントはこちら結果概要約7割の女性医師が時短・非常勤の勤務を望むが、経験者の半数近くがフルタイムで復帰今後出産を考えている女性医師のうち、施設の別を問わず『短時間あるいは非常勤で復帰したい』と回答したのは約7割。一方、実際に出産した医師の経験で最も多い回答は『同じ施設にフルタイム勤務』で37.7%。『別の施設でのフルタイム勤務』(8.4%)と併せると約半数がフルでの復帰という結果となった。50代以上では「時短勤務どころか育休すらなかったため」「妊娠中・授乳中も当直した」「夜間の呼び出しに子どもを連れて行った」といったエピソードが多く寄せられた。経験者のうち『時短・非常勤』を選択した医師は若い年代ほど増えるが、30~40代においても「フルで復帰するか退職かを迫られた」「上司の理解がなく、制度があっても使えなかった」といった声が多数見られた。いちばんの不安材料は『子どもを預ける施設』、病院に勤務しながら病児保育探しに奔走産後の生活を検討する際の不安材料について上位3つまで選択してもらったところ、経験者から最も多く挙がったのが『保育所・病児保育など施設の利用』で48.9%に上った。「自院の保育所は看護師しか利用できない」「自分が手術中に、発熱した子どもをすぐ迎えに来るよう保育所から連絡がきて途方にくれた」といったコメントが寄せられ、通常の保育所の確保に加え、病院勤務にも関わらず病児保育探しに奔走していることを嘆く声が多く挙がった。一方「子どもはペットではない、長時間預けっぱなしにできれば解決する問題ではなく、医師全体での勤務時間短縮が必要」といった意見も寄せられた。同僚の厳しい視線、精神的に耐えかねて退職・転職も産後の復帰形態を大きく左右する要因として、“上司・同僚の理解”を挙げる声が多く寄せられた。「施設の制度が整っていても、『所属科の前例がない』と言われる」「産後の当直免除について男性医師から『オレにも子どもはいる』などと反対された」などのほか、子どものいない女性医師の視線がいちばん厳しいといった意見もあった。周囲の冷遇に加えて、同僚の負担が増えることへの申し訳なさから退職を選んだとする回答も。子どものいる女性医師だけの問題ではなく、医師全体が過重労働であることの改善が必要との声も挙がった。家族の協力の有無に大きく左右される復帰形態特にフルタイム勤務の継続に関し、家族(特に実母)の育児協力の有無が大きいとした意見が多かった。実家から遠いその他の理由で協力が得られない状況の場合、時短・非常勤勤務を選ばざるを得ない医師が多いこともコメントからうかがえる。一方、「子どもはほとんど母が育てたようなもので、それでよかったのか疑問」といった声も。また夫も医師という場合は特に家事・育児への協力が得られない場合が多く、「夜中に患者が急変し、寝ている子どもをおいて出かけざるを得ず、綱渡りのような生活」など、周囲の環境と子ども、自分の心身のバランスに疲弊する日々を“綱渡り”と表現する医師も複数見られた。描いていた将来像に必要な知識・経験の不足から、やむなくキャリア転換も今後出産したいとする医師の最大の不安点として、『現場感覚の薄れ』『技術・知識の遅れ』が挙げられた。実際に経験者からは、「勉強や学会参加など自己研鑽に充てられる時間が大幅に減った」「病棟を担当できず知識・経験を蓄積できないため専門医取得ができないまま」、その他、本来の専門をあきらめ転科あるいは産業医や公衆衛生関係などに転向したというケースも寄せられた。設問詳細女性医師の出産後の復職についてお尋ねします。12月3日の長崎新聞によると『厚生労働省の2010年の調査によると、医師は全国に約29万5千人おり、そのうち女性は18.9%の約5万6千人。県内でも医師4062人のうち、15.3%の621人が女性で、1996年の327人からほぼ倍増した。20年後には医師の4人に1人が女性になるのではないかともみられている。しかし、医師不足などを背景に産休や育児休暇を取りにくいなど、職場環境が整備されていないために妊娠、出産を機に辞めてしまうケースもある。女性医師が増える中でそうした課題を放置しておくことは、医療崩壊を招く原因にもなるという(略)』とのこと。そこで先生にお尋ねします。Q1.ご自身について当てはまるものをお選び下さい。1.配偶者あり、子どもあり2.配偶者あり、子どもなし3.配偶者なし、子どもあり4.配偶者なし、子どもなしQ2.出産後数年間について、どういった働き方を選びたいですか?出産された方は当時の選択に近いものをお答え下さい。1.出産前と同じ施設にフルタイム勤務2.出産前と同じ施設に短時間あるいは非常勤で勤務3.一度退職し、別の施設でフルタイム勤務4.一度退職し、別の施設で短時間あるいは非常勤で勤務5.退職し、医師としての仕事はしない6.子どもをもうけるつもりはない7.その他(Q2で「子どもをもうけるつもりはない」を選択した方以外)Q3.出産後の生活をどうするか検討するにあたり、特に不安に感じることはありますか?出産された方はその当時の考えをお選び下さい(3つまで選択可) 1.医療技術・知識が遅れること 2.臨床現場の感覚が薄れること 3.勤務施設内で、短時間・非常勤勤務などの仕組みが整備されていないこと 4.勤務施設内で、先輩女性医師の実例があまりないこと 5.職場の同僚・上司の、理解・協力が得られるかどうか 6.託児所・保育所・病児保育など子どもを預ける施設の利用について 7.専門医など資格取得について 8.診療科選択、留学の有無などキャリア形成について 9.自分の働き方に対する、夫・家族との考えの違い10.仕事と家庭生活との両立について11.特にない12.その他Q4.コメントをお願いします(Q2.3の選択に関して思うこと、周囲の方を含め具体的なエピソード、出産された方は想像していたことと現実とのギャップ、施設や社会に望むことなどどういったことでも結構です)2012年12月19日(木)~29日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員の女性医師コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)【子どものいる医師】「託児所等は子供が病気になったとき預かってくれません。医療施設に勤めているのだから、そうなった時のサポートを配慮してくれたらいいのにと思いました。」(40代,内科,その他)「男性医師の感覚では、最も理解のある方々でさえ、子供を長時間預かる施設や病児保育所さえ開設すればよいと考える人が多いですが、子供はペットではないので勤務時間の短縮は不可欠。また、そして勤務時間短縮によってまず諦めなければいけないのは学会活動や研究、自己研鑽の時間となります。今の状況で子育て中の医師がバランスのよいキャリアを築くことはほぼ絶望的です。」(50代,麻酔科,一般病院)「17年前に第1子を出産。先輩女医の実例がほとんどなく、妊娠判明と同時に退職、医局に戻らされる状態でした。医局でも特に仕事に対する義務や強制はなく、自然と仕事の割合が減り家庭に入っていくという状態でした。しかしそれが前例となり、どんどん後輩達も出産後は当直なし・パートと負の連鎖となり、むしろ医局崩壊の一原因になったように思います。組織としての女医の未来のビジョンがあったらと思います。」(40代,小児科,一般病院)「医師としてキャリアを積むには病棟管理は必要。となると緊急呼び出しにも対応せざるを得ないが、子供が小さいうちは、夜間でもいつでも頼める人がいないと難しい。年老いた母に気軽に毎回お願いするのも気が引ける。信頼できる第三者にはなかなか巡り会えず、結局自分が非常勤でみている。外来だけで専門医の知識・経験の蓄積は難しいです。本当はフルタイム勤務したい。家事育児のサポートが必要。」(40代,腎臓内科,一般病院)「出産は女性にしかできないが、育児、家事は男性でもできる。男性の家事育児への積極的な参加が必要と思われる。男性は参加しているつもりでも、女性にしてみればまだ不十分と思うことはたくさんある。育児についての支援は、女性ばかりでなく、男性にも反映されるものである。」(40代,内科,一般病院)「出産前後で勤務先を変えるかどうかは出産前の勤務先が短時間勤務でも可能か、自宅から通いやすいか、職場での理解が得られるかなど、様々なことに影響されると思います。実際に産後、復帰に向けて勤務先と調整をしていく中では、事前に話し合っていた条件と少しずつずれる場合もあり、育児をしながらの復帰についてはまだまだ理解が得られにくいと感じています。保育園は長時間預かってもらえますが、小学校は下校が早い日も多く、仕事と育児の両立がより難しい。地域によって、学童保育の終了時間も様々なようです。」(20代,精神・神経科,一般病院)「勉強をする時間がない、病棟を持ちづらくなる、家事の負担は大きくのしかかる、加えて、とくに教育機関病院の場合診療時間を超えた仕事(研究会発表、学生の勧誘、指導など)ができないことで、年齢を重ねフルタイムで働いていても立場は研修医と同じ、それが現実です。」(40代,血液内科,大学病院)「祖父母の応援がない、子供が病気がちなど、どうしても突発での休み・早退が避けられないことがあります。特に医師は男性的社会なので育児に関して理解のない人が多い。『男性社会』でなく『男性的社会』というのは女性医師であっても理解のない人が数多くいることを指します。意識改革をしなければ働きにくい職場が減らず、復職しない又はフルタイムで働かない女性医師が増え、医師不足はどんどん加速すると思います。」(40代,放射線科,一般病院)「当時は院内保育所はあっても女医は利用できず、看護師さんのためだけのものでした。病院から一番近い保育所に預けましたが、手術中に保育所から電話がかかり、子供が発熱したのですぐに迎えに来て欲しいと言われ途方にくれたことがありました。「あと3時間何とかみていて欲しい、責任は自分が取るから」とお願いしたことが忘れられません。結局5時間後となり、保母さんたちから白い目で見られ針の筵のように感じました。病児保育がなかったことが一番つらいことでした」(50代,皮膚科,一般病院)「院内保育に預け、時短で勤務しています。時短ゆえ主治医免除なのですが、主治医制なので、担当がなく手持ち無沙汰なことも。周りは担当患者の仕事で忙しくしている中、どう観られているのだろうと気になります。手術も第2助手程度で、後輩たちが助手や執刀医として手術するのに焦りを感じます。かといって、主治医になって、こどもがインフルエンザにでもかかろうものなら遅刻、早退となりかねず・・・キャリアは頑張ればいつでも積めるが、子育ては今しかできない、そう言い聞かせて毎日仕事に向かっています。朝6時から夜11時、12時まで仕事をしているときにはつらいと思ったことはありませんが、今の勤務の方が精神的につらい。意外でした」(30代,産婦人科,大学病院)「勤務先は女性に優しい職場で、出産後は復帰を考えていました。 が、つわり時に半休を月1-2回取った時点で、”今後絶対に休まないという100%の保証ができないなら、年度末に辞めてもらう”と言われました。結局、妊婦検診のときの代診も他科Drに頼んで、必死で産休までつなげて職場を去ることになりました。産前、産後に使える制度があっても上司、同僚がそれを認めなければ何の意味もないと思いました。」(40代,腎臓内科,その他)「近くに頼れる親類がいないため、子供の急な病気の時や休日出勤、出張などで困る。自分はバリバリ働くタイプだと思っていたが、子供の病気の際などは置いて出たり病児保育に預けるのもはばかられ、結局比較的自由のきく研究職にとどまっています。一番仕事のできる30代をこのように過ごしてしまい、今後自分が医師としてどうやって生きていけばいいのかわからなくなることが多い。」(40代,消化器科,その他)「子供は急に病気をします。事前に急病時の体制を依頼し事務長も了解との事でしたが、実際は『代替えの医師はいない』と言われ困った記憶があります。診療所出向時は、3歳児と一緒に出勤した事があります」(50代,内科,一般病院)「子育てというと『3歳あるいは就学まで』ととらえられがちですが、子供の成長を見守る上では少なくとも大学入学までは親の目(見守り)が必要。子供一人あたり約20年間という長い目での支援が望まれます。具体的には小学生・中学生をひとり置いて、宿泊を伴う学会参加はかなりの困難が伴います。 未就学児であれば学会で託児が可能ですが、小学生以上はそれもありません。いざという時に子供を夜間、安心して任せられるサービスがあればと思います。保育園・学校・職場・学会活動、いつも「すみません」と謝ってばかりでちょっと疲れます。(心の中では「悪いことをしている訳ではないのに…」と独り言を言っていますが)」(50代,神経内科,一般病院)「どんな形でも働き続けていれば、いつかは貴重な戦力となりうる。子育ても社会貢献であり、プライベートなこととして切り捨てない社会であってほしい。子育ての経験は、患者に共感できる医師になるために大切」(50代,内科,診療所)「法的に産休があっても、教師の産休用員のような補填システムがないため同僚に多大な迷惑をかけることになり、精神的に非常につらい。また産休は6週(今は8週)しかないが、0歳児を預かる認可保育所でも4月時点で6カ月になっていなければ入れず、無認可保育所で浪人しなければならない。そういう制度の矛盾が障壁」(60代以上,内科,その他)「産休以外は働いてきました。子守りは両方の親に助けてもらいながら、2人目の出産後は夫の実家に同居。当時は出産した女性Drが復帰すること自体珍しく、出産前後の当直を免除する規定さえ院内にはありませんでした。妊娠4カ月目で当直の夜中にDOAがきて心マッサージをしながら病棟に挙げ、その後お腹が張って具合が悪くなり、やっと診療部長に当直免除を申し出たことを覚えています。今はだいぶん環境が整備されてきましたが、女性側から妊娠出産に関連する要望を主張しにくい雰囲気は続いていると感じます。また現在の女性医師復帰援助の流れ自体、『医師が不足しているから』であって、女性医師の生涯の負担の大きさについて本当に理解し改善しようとしているわけではないのではと皮肉に考えてしまいます。」(50代,神経内科,一般病院)「復帰に向けての研修制度のようなものがあれば利用したかった。フルタイム=朝から夜まで(残業有)の勤務・病棟主治医(休日回診、呼び出し有)と、パート=時短・外来のみの格差がありすぎ。もっと負担を軽減しながらも臨床の仕事が可能な制度の確立が必要と感じる。」(30代,消化器科,一般病院)「周囲の環境整備もとても大切ですが、一番大事なのは、子育てを楽しみながら、医者として第一線でよい仕事がしたいという高いモチベーションだと自分の経験上、確信しています。」(60代以上,眼科,大学病院)「専門医取得準備期間中に産休になりました。年齢的にも女性は専門医取得と出産は重なりやすいと思う。認定機関に連絡したところ、『産前6週、産前8週以上休むと専門医取得要件を満たさないため1年遅れになる』とのこと。産後8週の時点でまだ帝王切開の傷が痛んだし、歩くだけで痔になる状態での復帰をしましたが、産前産後の体調は全員が良好とは限らない。母乳も出ていたのにあきらめました。専門医を同級生が取っていく中で自分だけ遅れたくないとの思いで頑張りましたが、産休期間の取り扱いについてもう少し選択肢の幅を持たせてほしい」(30代,泌尿器科,一般病院)「女性医師は転地・休職・復職を余儀なくされがちである。その是非はさておき、キャリアが途切れがちであるからこそ資格取得は必須と考えられます。産休中の自宅学習についてプランニング・指導など厚生労働省が主導となりe-learning,各大学、大学院との連携モデルを確立していただきたい。男性の育児休業取得に繋がるよう確固なシステム構築をお願いしたい。医師はその人口問題に介入すべき職種と考える」(50代,内科,一般病院)「周囲におられる年配の女医は家政婦を雇って開業医を続けている人が多く、比較的若い女医さんは実家のお母様が同居され手助けをうけつつ勤務医を続けている人が多いように思います。逆に親のサポートがない女医さんは、子供を保育園に預けて勤務時間を短くされています。常勤で勤務しようと思ったら両親(特に実母)のサポートが不可欠のように思います。」(40代,耳鼻咽喉科,診療所)「育児と大学でのキャリアの両立を目指している。第1子出産時は産休のみの取得で復帰したが、キャリア上に受けた不利益を思い出すとなかなか第2子妊娠に踏み切れない。」(30代,神経内科,大学病院)「優秀でかつ人間的にも申し分ない女医の知人の多くが子どもをあきらめている。 こうした女性が子供を産まないことは社会にとって損失だと思う。」(40代,眼科,大学病院)「今は良い時代になったと思います。私はこどもと一緒に当直もしましたし、重症の患児がいるときは自分のこどもと小児科病棟で寝泊まりもしました。病児保育も未だそれほどなかった。核家族で、夫が産婦人科医で、私がフルタイムで働くことは無理で、2人目から非常勤に。ロールモデルもいなかったし、なにより孤独でした。」(40代,小児科,一般病院)「周囲の人々の協力なくしては、女性医師が仕事を続けていくことは不可能。保育園、自分の親、兄弟、知人、近所のおばちゃんなど、子育てに総動員。悩む時間すらもなかった、あのころが懐かしいなあ・・・」(50代,整形外科,診療所)「勤務医では周囲の理解が得られず、結局開業医をえらびました。」(40代,内科,診療所)「Q3は全部選びたいぐらいでしたが、上位3つにしました。 医師は“卒後○年目”で見られるので、年数だけ経ってしまい、復職した際の研修・指導が十分ではないのでは、などの不安があります。 医局などでの位置も産前より低いところに置かれているように感じます」(30代,代謝・内分泌科,一般病院)「しばらくは義母に子どもを預けて当直もしていましたが、どうしても帰宅時間が遅くて家事ができなくなり、当直なしの外来のみの個人病院へうつりました。そこで数年間働きましたが、自分の専門の患者さんを診る機会がなくなって技術も知識も古くなってしまいました。もう本来の専門分野の一線では働けないとあきらめています。」(50代,小児科,その他)「いわゆる「昇進」は遅れましたが、出産後研究生活で学位取得、専門領域での研究、学会発表等、得るものはたくさんありました。ただ、専門外来で予約制でしたので、子供が具合悪くても休めず、朝早く実家の母に1時間半かけて出てきてもらうことがあり「自分の子供は診られないの」と言われたのが、辛く、申し訳なかったです。」(50代,内科,診療所)「医師になるまでに、多くの税金や学費が使われている。女医は、出産育児などある一定の時期は、仕事をペースダウンせざるをえない。しかし、どのようなかたちであれ仕事を継続しやめないことが、社会への還元として重要と考える。そういう覚悟をもって、現在、育児と仕事を継続している。」(40代,耳鼻咽喉科,大学病院)「勤務先に病児保育室が併設されているのでとても便利です。保育園も勤務先から徒歩数分圏内。 発熱などで、園から連絡があったら、10分だけ仕事を中断し迎えに行き、そのまま病児保育室へ入れてます。恵まれた環境だと思います。育児が落ちつく数年間はお給料の安さや仕事の内容関係なく、今の環境で仕事する予定」(30代,小児科,一般病院)「当時は、フルタイムでの勤務でしたが、当直や病棟から外れて、外来、検査を中心とした仕事内容にかわりました。 周囲に女性医師が多く、経験した先輩に相談しながら、仕事を続けました。検査(心エコー)を中心に仕事をしましたが、のちにその仕事から、留学や論文に結び付き、帰国後の就職にも心エコーを中心の仕事に就くことができました。 出産を機に自分のできることが新たに見つかることもあるのだと思います。 若い先生にも、希望を持って仕事を続けていただきたいです。」(40代,循環器科,診療所)「就学前までは保育所やシッターサービス等、子供が病気の時や時間外、休日など保育をサポートしてくれる方法が複数ありました。むしろ小学校に入学し、1人で過ごさせるのが心配な1,2年生の頃、学童になじめなかったり、学童自体がなかったりして短時間勤務や休職を余儀なくされるケースが散見されました。低学年児童を抱えるワーキングマザーを支える方策(ワークシェアリングなど)がもう少しあった方がよいと思います。」(40代,産業医,その他)「私の働いている病院はとても制度も文化も恵まれていて、出産後、産休、育休をとって、娘が1歳から家庭医療の後期研修をスムーズにスタートし、育休中も給与はある程度保障されていましたし、働き始めても、こどもの急な病気などでの急な欠勤なども問題なく過ごすことができています。今後第2子も考えていますが、後期研修も途中で途切れても継続できる仕組みになっています」(20代,総合診療科,一般病院)「まだ勉強したいことも多いのにドロップアウトしそうで怖かった。大学院+パート勤務で復帰したが、子供の体調変化等で穴をあけがちで、気持ちと現実のギャップを感じました。周囲も忙しいし、身近に頼れる環境もなく皆さんに迷惑をかけた」(40代,内科,診療所)「看護師からの見えない意地悪に翻弄させられましたが、自分が先陣をきっているので、後輩たちが仕事をしやすいよう頑張り続けました。男性医師の三倍は仕事をしました。ひたすら根性です。子供の寝顔で救われました。」(50代,精神・神経科,一般病院)「出産まではほかの先生達とも問題なく仕事をしており、第1子出産後職場に復帰したところひどいいじめにあい、退職しました。その後もっと責任を持って働きたいのですが、近くの病院に適切な病院がなく、つらい思いをしています。子供をもつと他の医師と全く同じように働くことは不可能であり、 病院として枠組みをきちんと整備されていない現在、自分のような医師が多数いると思う」(30代,皮膚科,一般病院)「『夫も医師で経済的にも困っていないのにどうしてそんなに頑張るの?』と聞かれると心が折れそうになります。身近な友人や親戚から『子供がかわいそう』とか『しつけや教育が行き届かないのでは』と無神経な言葉を投げかけられることも。 そんな中、上司や同僚の励まし、夫の就業に前向きな姿勢に助けられています。」(30代,麻酔科,一般病院)「第2子出産後、仕事育児に関しての夫との考えの違いが広がった。第3子の妊娠中、育児と仕事に頑張りすぎ肉体的精神的無理がたたり、死産となった。この子の死をきっかけに夫と子育てについての歩み寄りができた。」(50代,小児科,一般病院)「実は、女性同士のほうがつめたい」(40代,腎臓内科,大学病院)「意外だったのは、独身女性の同僚や子育て経験のある15~20年上の女性医師の視線が1番厳しいこと。もっとも理解があるのは、同じ境遇か子育て世代の男性医師(特に奥様が女医の家庭)。」(20代,麻酔科,大学病院)「職場では、当時出産した女医はほとんどいなくて、こどもが1歳過ぎたら当直は当然という風潮がありました。が、こどもによって、母がいなくても夜寝られるかどうかは全く違い、私の場合は全く不可能でした。1年~小学校低学年の現在まで、当直でなく日直に振り替えてやらせてもらい、フルタイムの勤務を続けることができています。必要に応じて選択できるとありがたいです。 発熱時は、幸い主人の職場に病児保育があったので、外来に穴を開けずに済みましたが、働き続けるには、病児保育は必須と思います。」(40代,血液内科,一般病院)「出産前は大学病院に医員で勤めていました。出産時は当然のように一旦退職し、1年後に復帰しました。看護師は産休、育休などがきちんとあるのに、医師はやめてもらわなければ補充できないとのこと。すこし不満に感じました。」(40代,内科,一般病院)「大学院で研究をする・・という選択は時間的や精神的には非常に居心地がよかった。研究のペースを子供の病気などで都合することができたし、臨床に多忙を極める同僚にもあまりあてにされずに楽だったように思う。ただし、経済的な部分や臨床のスキルはどうしてもペースダウンしたが、その後非常勤として戻り、リハビリすることができた。」(40代,麻酔科,その他)「周囲は『働くのであれば前と同様に』って感じ。当直や緊急の呼び出しは無理なので、結局仕事をあきらめざるを得ない状況。健康診断ばかりで専門的な知識を活かす場所がない。周囲は別に頑張らなくてもいいんじゃないかという雰囲気。働きたいのに。」(40代,血液内科,一般病院)「短時間、非常勤のシステムがなく、自分のできないことをほかの医師に押し付けてしまう(当直、入院の受け持ち、救急など)ことに罪悪感を感じ、職場をやめた。」(40代,その他,その他)「大学病院勤務だが、附属の保育園が看護師しか利用できない。医師、検査技師、放射線技師、栄養士、医療事務など多数の女性職員がいるのに全く理解できない。一番困るのが病児保育や病後児保育の手配。せっかく病院が隣にあり、小児科も充実しているのだから是非とも院内保育園で病児保育を導入してほしい。」(30代,神経内科,大学病院)「多様な就労形態を許容するシステム作りが必要.例えば当直は一切しないが昼間はOK,という人と,当直も昼間の勤務もするという人との基本給が全く同じでは不公平感が生ずる可能性がある.基本給が同じで当直手当を手厚くするなど工夫が必要. 出産後の女性医師側も,日和らないでまずはフルで戻ることを考え,何が障害なのか,何ができないのかを考えて,戻るためにはどういう配慮が必要なのかを申し出るべき.最近は,出産したらフルで働きたくないから非常勤,という後ろ向きな人がいて不愉快かつ残念. 復帰は早い方がいい.時短でもいいから早く復帰する.育休が長い方がいいということは絶対ない.」(40代,産婦人科,大学病院)「いかに意識を維持するかが大切で、家族の考えも大きい。医師を妻にするという意義を良く考えていただきたいと思います。男性にも責任があります。」(50代,呼吸器科,大学病院)「働く母親にとっては自分の母親(もしくは実家)がしっかりとサポートしてくれている場合は比較的キャリアも子育ても安定しているケースが多いと思います。そうでなければ(自分含む)、自分が3役こなさなければならず、フルの仕事は厳しい。特に夫も医師で多忙である場合は余計困難 」(40代,腎臓内科,一般病院)「来年度から復職予定ですが、働き先は大学病院しかないと言われました。通勤にかなり時間がかかるため一歳の子供を一日12時間も保育園に預けることになり、心が痛みます。」(30代,代謝・内分泌科,大学病院)「上司が理解のある人で、その方のおかげで続けてこられたようなものだったと思う。今と比べ保育所も少なく、綱渡りのような生活だったが、続けてきてよかった。若い先生にも、短縮勤務でもいいから続けて欲しいと思うし、そのための助力としたいと願っています。医師会でも相談窓口を作っているので、困ったときには相談してみてください。医師会に加入していなくても構いません。」(50代,耳鼻咽喉科,その他)「実母と姑の全面的な応援により、仕事をすることができました。つらいことは沢山ありましたが、こどもは母が必死に仕事していたことをきちんと理解していました。 ただ、私のようなつらい思いは、娘や嫁にはさせたくありません。」(50代,耳鼻咽喉科,その他)「勤めていた施設に託児所がなく、別の病院に転勤しました。そこで二人目も出産しましたが、同僚の先生方が協力してくださるので、非常に快適に仕事を続けられました。職場の人間関係と院内保育園この二つが大事だと感じます」(40代,小児科,一般病院)「第1子妊娠時に痛烈な嫌味を言う上司がおり、大学では産後復帰は無理だなと思いました。復帰はアルバイトに行っていた先(保育所あり)の外来時短勤務を直接交渉してお願いしました。第2子出産後は家族のサポートが必要となるため転居し、以前お世話になっていた先輩に相談して新しい職場(保育所あり)で外来時短勤務で復職しています。実際に子供のことで急にお休みをせざるをえないことがあるので自分がやすんでも助けていただける環境を探しました。人の好まない仕事を率先してすることで他の先生方とのバランスをとって働いています。子供をもつまで救急対応をずっとしてきていたのでかなり違う状況になっているのが現状です。子供の成長をみつつ過ごせる時間をもつためには仕方がありません。」(30代,循環器科,一般病院)「独身の頃と同じように働きたいと思って努力したが、難しかった。身近な同僚、所属大学の医局は理解があったが、派遣先の病院では他科の男性医師から嫌味や陰口を言われ、辛かった。」(40代,眼科,一般病院)「主人も勤務医(中間職)で、子供が病気になった時も夜間の面倒はみられないと言われました。私も産前同様に仕事をしたかったが、夜間呼び出しに応じられないこともあり、短時間・非常勤勤務としました。」(40代,内科,診療所)「出産するまでは、育児中で当直をしない時短勤務の人が同じ職場にいると、働くモチベーションが激しく低下していました。自分が出産後に同様の勤務体制となったとき、同僚たちが同様に考えるのではないかと思い、時短勤務は自分としてしたくありませんでした。現在当直は免除させてもらってますが、それ以外はフルタイムで働いています。 周囲の人の理解とは言いますが、こちらが理解して欲しいと思っても、不公平と思ってしまうのは事実で、そう思われてまで働きたいとは思えません。」(30代,小児科,一般病院)「3人目を出産後、体力的にも精神的にもきつくなって、退職しました。一度退職してから、復職するのは大変でした。また、離職期間が長かったので、以前と同じような働き方はできなくなり、また専門医取得もできませんでした。」(50代,内科,診療所)「医師になった息子から『乳児期から何故自分を他人に預けてまで仕事をしたのか』と非難されました。仕事、育児、家事で息つく暇も無かった30年ほど前の自分の生活は、子供にとっては憎むべき姿だったのかと」(60代以上,内科,一般病院)「病院併設の保育園の充実が大切だと実感しました。当時無認可保育園でしたので保育士や職員のボーナスの獲得にバザーを開いたり寄付をお願いしたりしてなんとかしのぎました。技術的な遅れは後からとりもどせます。 最初はあせりましたが、63歳の現在もまだまだ勉強は続けています。家族や医局の先輩、後輩の理解があったこともラッキーだったと思います。娘たちも同じ職業を選んでくれました。大変な時は一時です。 恐れず、腐らず一生懸命やればなんとかなります。」(60代以上,循環器科,診療所)「職場で時間外勤務を免除してもらい、常勤で仕事を続けることができている。 しかし子供の病気の時に病児保育や親に頼らざるを得ず、場合によっては仕事を休まなければならないのでいつも綱渡りの状態。」(30代,代謝・内分泌科,一般病院)「出産前は脳神経外科専攻だったので、両立困難であった。私の場合は母親が子供をほとんど育ててくれたが、それはそれで寂しい思いもしたし、これでいいんだろうかとずいぶん迷った。結局は内科系に移らざるを得なかった」(60代以上,神経内科,一般病院)「子育てしながらフルタイムで働いていて、子どもの急な病気の時に、自分の外来を代われる医師がおらず、休むことが難しかった。ベビーシッター、病児保育、県外の祖父母など子どもをみてくれる人・場をやりくりしたり、夜中に患者さんが急変した時も、寝ている子どもだけを家において出かけることもあり、今から思い起こしても綱渡りのような生活だった。 一人で責任を負う形ではなく、仕事を同僚とシェアできたり、労働時間も個人の状況に合わせ、フレキシブルに選択できるような働き方ができると子育て中の女性医師は働きやすくなると思う。」(40代,小児科,一般病院)「単独主治医制でなく、複数主治医制になっていくことがこれからは必要と思う。」(40代,内科,一般病院)「臨床特有の「勘」が薄れてしまって、取り戻せるのかどうかがとても怖かったです。 出産して職場復帰して思うのは、「早めの復帰に限る」これに尽きます。 ただそれには、周囲の理解や環境整備がまだまだ必要だと思います」(30代,精神・神経科,一般病院)「出産後、大学勤務を退職し、夫の留学についていったが、子供が小さかったため自分はセミナーにしか参加できず、せっかくの海外留学の機会もうまく活かせなかった。また夫は医師であるため、育児を分担することはほぼ不可能で、帰国後も保育所、一時保育の問題から、常勤勤務、研究会、学会への参加は難しく、アルバイト生活を続けた。そのため、自分のキャリアは出産前から著しく後退してしまった。常勤復帰後、出産前に技術がもどるまで約2年がかかり、さらに専門医取得は同期男性と比べると4年以上遅れた。 常勤の職場や研究会にも保育所または学童等の施設を併設しなければ、女医が常勤で働くことは難しいと思われる。」(40代,基礎医学系,大学病院)「どんなに頑張っていてもつわりによる仕事の量激減で周囲の評価が下がる(出産経験のある女性医師からは理解が得られるが)。子供の突然の発熱などでの早退、休診の場合のフォロー体制、子供の迎え時間に制限があることなどなかなかまだ理解が得られにくい。『わかるけど、あとの仕事は誰がするの?』って感じです」(30代,外科,大学病院)「同僚に女性医師がいなかったので、その科の医局会(20名程度出席)で、『出産後はいつから当直が可能か』などその時点では答えることが困難な質問をいくつもされ、誰も助け舟を出してくれず、セクハラ・パワハラにあたるのではないかと思われる状況でした。若い医師であったならば退職に追いこまれていたかもしれません」(40代,内科,一般病院)「現在、子供2歳。フルタイムで夜間・休日呼び出しありの勤務であるが、正直きつい。近くに住む祖父母の助けを借りて何とかこなしているが、綱渡りのような日々である。そろそろ、勤務形態を変えようと思っている。」(30代,耳鼻咽喉科,一般病院)「保育園は子ども3人合わせて15年間通いました。毎朝診療前に保育園に送り届けるという戦争のような日々は、体力・気力が必要でとても疲れます。しかしこれなしには仕事も続けられず、フレキシブルな保育園の存在が大切」(50代,代謝・内分泌科,診療所)【子どものいない医師】「上司に来年度子供を作る予定だから妊娠中は当直業務からはずしてほしいというと『他の医師にしめしがつかない、今の働き方ができないなら辞めてもらう』といわれました。私だって働きたいけど、先輩たちの流産、切迫早産を見ているので退職することにしました。仕事を継続している医師でも、小学校に上がると子供を預けるシステムがなくなるためそこでやめざるを得ない、という人も。妊娠・育児しながら働きたい、けれども上司との意見の相違・医療界のシステム(36時間労働など)の問題でやめていく女医は本当に沢山いると思います。」(20代,心療内科,大学病院)「残念なことですが、女性が男性と対等になるには、同じではだめで、それ以上の働きを示す必要があります。 例え2~3か月の産休でさえ、劣ってみなされてしまいます。 そう考えると産む気になりません」(40代,形成外科,診療所)「出産適齢期に不妊治療を受けられるようにしてほしい」(40代,神経内科,その他)「出産後の女医が働きやすければ離職せず、独身女医や男性医師の負担も軽減するので、出産後の女医が働きやすい環境はすべての人にとって重要だと考えます。私の属する医局は今大変な人手不足ですが、職場環境が整備されていないため、医局を離れ民間病院に転職する女医が後を絶たないという悪循環。そういった女医のために、私たち後輩まで「女医はいつ妊娠してやめるかわからない」という目で見られて、非常に迷惑しているのも事実です。産後の女医ばかりに目が行って、独身女医や男性医師にしわ寄せが行くことはあってはならないと思います。この高齢社会では、男性医師も家族の看病や介護をする可能性は十分にあります。職場の全員が働きやすく、必要時は休みやすい環境を整えていくことが大切だと考えます。」(20代,産婦人科,一般病院)「医学部増設よりも女医の復職環境を整備する方が、医師不足の解決に繋がる」(40代,循環器科,診療所)「出産はしていませんが、介護でも結局同じことだと思います。経過さえ順調なら、ある意味出産のほうが気持ちの上での準備ができるだけよいのかも。患者から、医師は時間外対応も休日がつぶされても当然と思われているような状況では、一般病院は男女とも単身で親も元気というときでないと勤務は無理なのでは?」(40代,産業医,その他)「高齢となり、妊娠は難しそうです。当直して流産したことが悔やまれてなりません。」(40代,精神・神経科,一般病院)「今妊娠中ですが、不妊治療など含め理解を得ることが難しく、一生懸命働くことも一人の女性としての幸せも両方という選択肢を選ぶのが難しく感じてしまう。病院側は大事な戦力を最終的には失う方向になるのではないでしょうか。」(30代,消化器科,一般病院)「育児を理由に働かない先輩医師がいます。純粋に能力給が支払われるなら良いのですが。週4日外来のみ・入院診ない・オンコールや当直免除にも関わらず常勤扱いを受けている人をみると、働く意欲を失う」(30代,小児科,一般病院)「私は結婚しませんでした。どうしても医師として、しっかりした仕事をしたかった為です。周りの出産後の女医を見ていると、嫌な面が多くどうしても好きになれません。せっかく多くの税金を使って、あるいは親の金を使って医師になったのに辞めてしまう女医、そのために医学部に入れずに医師になれなかった人がでるんですよ、と言いたい。税金を、親の苦労を無駄にしている。仕事に出てくる人にも言いたい、仕事をするのなら、他医に甘えるな、負担をかけるな、どれだけ同僚に迷惑を掛けているかわかっているのか、と。」(60代以上,小児科,診療所)「キャリア・収入・勤務内容、これらに優先順位をつけて周囲と折り合っている女医さんは応援したいと思う。正直、自分のキャリアアップに繋がる仕事、収入に繋がる仕事はする、だが医局の皆でまわしている雑用は子持ちだからしない、という母親医師は応援したくない。周囲が納得して協力できるような体制も考えてもらえたらと思う。」(40代,内科,一般病院)「私の年代では育児をしながら仕事を続けている女性医師のロールモデルが身近にありませんでした。私自身こどもを持たない人生を選択しました。」(40代,精神・神経科,一般病院)「女性医師の出産や子育てを考えていくのはいいが、一方で結婚しない女性医師、子供を産まない女性医師、子供が産めない女性医師の気持ちは置き去りになっている気がする。ある意味、逆差別のような・・・。そう考えるのは、子供が産めない女のひがみでしょうか。」(40代,代謝・内分泌科,一般病院)「医師の世界は男性を中心に回っているので、結婚・妊娠・出産は考えられない状況にある。」(40代,代謝・内分泌科,診療所)「私の勤務先では女性医師の待遇改善を積極的に進めており、診療部長の先生や事務長が率先的に週30時間以上で常勤扱い、夜間オンコールや当直免除などを導入しているので、そういった病院を探して転職するのもよいかと思います。産婦人科のくせに医局員は妊娠出産禁止と言っていた大学病院とは大違いです。」(30代,小児科,一般病院)「女医さんが多ければ理解を得て働きやすいかと思いきや、若い女医さんが産休や当直免除に入ると晩婚の女医さんが妊娠出来なくて大変そう。男性と女性のバランスが大事。人手不足の診療科、医員を守れる医局かどうかは大事と思う。施設の整備(遅い時間の保育、病児保育)を進めて欲しい。」(30代,内科,大学病院)「欧米のように当たり前に働き方が選べたり、勤務時間の調整が受けられ、それに対して後ろめたさを感じないでいいようになればいいと思います。 男性医師がフルタイムで働けるのも、妻が女性医師の場合、そうやって時間をやりくりしているおかげだと思うから。 子育てで一時的に休職することは、とても大切なことだと思いますが、以後完全に医師をやめてしまう人に関しては少し憤りも感じます。 何のために医師になったのか。だったら、その人の代わりにずっと医師を続けられる人を合格させた方が社会にとって良かったのではと思います。」(30代,その他,一般病院)「出産後の女医が働きやすければ離職せず、独身女医や男性医師の負担も軽減するので、出産後の女医が働きやすい環境はすべての人にとって重要だと考えます。私の属する医局は今大変な人手不足ですが、職場環境が整備されていないため、医局を離れ民間病院に転職する女医が後を絶たないという悪循環。そういった女医のために、私たち後輩まで『女医はいつ妊娠してやめるかわからない』という目で見られて、非常に迷惑しているのも事実です。産後の女医ばかりに目が行って、独身女医や男性医師にしわ寄せが行くことはあってはならないと思います。この高齢社会では、男性医師も家族の看病や介護をする可能性は十分にあります。職場の全員が働きやすく、必要時は休みやすい環境を整えていくことが大切だと考えます。」(20代,産婦人科,一般病院)「2回の流産歴があり、通院しながら常勤で働いています。通院時間の都合もあり、専門病院の消化器内科から地域病院の内科に転職しました。無事に妊娠・出産する方も仕事を続けるにあたり苦労があると思いますが、不妊・不育症の場合は周りが気づかなかったり理解してもらえなかったりするので、本当のことを上司や同僚に伝えられず肉体的にも精神的にもつらかったことがあります。 専門分野は続けられないと思い半分あきらめていますが、非常勤でも勤務ができるところがないかまた探そうと思っています。 仕事は続けたいので、ワークシェアや非常勤など、ある程度自由の利く勤務体制が広まるといいなと思います」(30代,消化器科,一般病院)「家庭の協力がある先輩は上手に両立していて、独身の医者より活動的に働いていた。周囲の状況と本人自身の意思が、結果を左右すると思う。」(40代,麻酔科,診療所)「今妊娠中ですが、不妊治療など含め理解を得ることが難しく、一生懸命働くことも一人の女性としての幸せも両方という選択肢を選ぶのが難しく感じてしまう。病院側は大事な戦力を最終的には失うのでは」(30代,消化器科,一般病院)「両立という言葉はどちらも中途半端という意味に聞こえる」(30代,循環器科,一般病院)「外科医であるため妊娠から産後の落ち着くまでの期間は第一線を退かざるを得ないということが一番不安。現場に少しでも携われるように外来などにはできる限り関わっていたい。」(20代,外科,一般病院)「子供がいるという理由で、周りに何の配慮もなく早く帰り自分の論文を仕上げていた時には許せないと思った」(40代,内科,診療所)「診療体制としては主治医制度をやめていく方向とし,夫側は育児休暇を取りやすくする,本人側としては病児保育・24時間保育のある病院(もしくは確保できる病院環境)で出産・育児したり職場内で出産・育児期間が重ならないように計画するなどの工夫が必要。また両親・親族などの協力が得られない状況での出産・育児は無計画と言わざるを得ない。」(40代,その他,一般病院)「家庭を持ち、出産あるいは子供のいる同僚の手助けはもちろんしたいと考えています。しかし、「手助けされて当然」という受け身は納得いきません。全てではないが、そういった方に対しては、手助けするのも躊躇されます(終日の講習会や夜の飲み会などには出席するのに、午前中のみ1日のみの出勤を拒否される、とか)。」(30代,救急医療科,一般病院)「現在勤めている病院では、産休をとった先輩女性医師がおらず、自分が将来出産したり、復職したりする際、立場や勤務体制がまったく分からない。病院側からは、「将来出産しても勤務を継続してほしい」とのことだが、口約束であり心配である。出産・育児もしたいが、フルタイム勤務は難しいだろうし、親も年をとってきておりどれだけ子供を預かってもらえるか分からず、保育所の確保も難しそうで、不安だらけである。」(30代,眼科,一般病院)

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Step By Step!初期診療アプローチ【マイナー症候シリーズ】

第25回「動悸」第26回「肉眼的血尿」第27回「排尿障害」第28回「浮腫」 第25回「動悸」今回から4回にわたって[マイナー症候シリーズ]をお届けします。マイナーといっても決して「症例が少ない」わけではなく、意外と学ぶ機会が少ないという意味であり、症候としては非常にcommonなものばかりです。初回は「動悸」がテーマです。循環器疾患は当然ながら、他にも様々な全身の基礎疾患によって動悸は起こり得ます。状況によってはカルジオバージョンなどで早急に対処しなければならない場合も少なくありません。検査で代表的なものは12誘導心電図ですが、そのチェックポイントや問診・身体所見で把握すべきポイントについて解説します。また、動機が持続している場合はACLSプロトコールによって不整脈のコントロールを行いますが、その概要についてもお話します。第26回「肉眼的血尿」「肉眼的血尿」の症状のみを主訴として夜間救急などを受診するケースは多数とはいえませんが、この症候も必ず知識として身につけておかなければなりません。肉眼的血尿をみた時、それは何科の領域になるのでしょうか。当然ながら殆どの場合は泌尿器科、或いは腎臓内科の区分になります。それでは、そのどちらの科なのかを判断する根拠は何でしょう?それを考えるためには、先ず腎臓から尿細管を通って膀胱、排泄にいたる尿のメカニズムを知っておく必要があります。また、赤血球の性状による診断を行う場合によく用いられる「均一赤血球」「不均一赤血球」という言葉をより理解するために、今回は特別に模型を用いて解説します。百聞は一見に如かずの分かりやすさは必見です!第27回「排尿障害排尿障害をみるためには正常な排尿の生理を知らなくてはなりませんが、さて医学部で習ったかどうか? 今回もあいまいになってしまいがちな知識の整理と復習を兼ねて臨床に役立てるように学習してゆきましょう。排尿障害には麻痺などによる神経因性と、膀胱や括約筋、前立腺などの泌尿器が原因となるものがあります。神経因性による排尿障害は、主に痙性と弛緩性に分けられ、治療のための薬剤が違ってきます。また、臨床でよく遭遇する泌尿器系の障害による排尿障害には尿閉や無尿などがあります。いずれも1年目の研修医でも導尿などの処置ができなくてはなりません。更に持続的尿閉をきたしていれば緊急処置が必要な場合もあり要注意です。この機会に見極めのコツなどをしっかり覚えてください!第28回「浮腫」浮腫を主訴として来院する患者さんは多くはありませんが、医師として浮腫をみたことがない方はいないはずです。当直明けにご自身の足が浮腫んでいる…そんな方も多いでしょう。それでは一体どういったメカニズムで浮腫は起こり、どのように対処すべきなのでしょうか。浮腫が体内の浸透圧と血圧の不均衡によって起こるのは明白ですが、それを示す法則があります。その法則を使って浮腫を考えれば、原因が見えてきます。また後半は浮腫を来たす疾患でピックアップしなければならない心不全の評価についても詳しく解説します。

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