サイト内検索|page:3

検索結果 合計:187件 表示位置:41 - 60

41.

心不全患者における前立腺肥大症・前立腺がんが増加~日本のリアルワールドデータ

 前立腺肥大症および前立腺がんは心血管疾患リスクを上昇させる可能性がある。しかし、心血管疾患患者における前立腺肥大症や前立腺がんの有病率はわかっていない。今回、佐賀大学の兼田 浩平氏らが全国規模のリアルワールドデータで調査したところ、心血管疾患、とくに心不全による入院患者において、前立腺肥大症・前立腺がんの有病率が増加していることがわかった。Frontiers in Cardiovascular Medicine誌2023年10月19日号に掲載。 本研究は、日本の全国規模の循環器疾患診療実態調査(JROAD)のデータを用いた後ろ向き研究で、心血管疾患で入院した患者における前立腺疾患(前立腺肥大症・前立腺がん)の有病率と経時的推移を評価した。2012年4月~2020年3月における1,058施設の男性患者607万8,487例のデータを使用した。コクラン・アーミテージ傾向検定を用いて、調整オッズ比(aOR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・研究期間全体における前立腺疾患の有病率は5.7%(前立腺肥大症:4.4%、前立腺がん:1.6%)であった。年齢別では、65歳未満が1.1%、65~74歳が4.7%、75歳以上が9.9%と年代が上がるにつれ増加した(傾向のp<0.05)。・全体の有病率は時間の経過とともにすべての年齢層でわずかに増加していた。とくに2015年から2016年にかけて、また65歳以上において増加していた。・心不全で入院した患者は、心不全以外の心血管疾患(aOR:1.02、95%CI:1.01~1.03)や急性冠症候群(aOR:1.19、95%CI:1.17~1.22)で入院した患者と比べて、前立腺疾患の併存率が高かった。

42.

排尿の悩み、恥ずかしがらずに受診できる未来を目指して/ファイザー

 2023年10月19日、ファイザーは、「20年ぶりの疫学調査でわかった、過活動膀胱の最新実態と治療のこれから」と題したメディアセミナーを開催した。 過活動膀胱(OAB)は尿意切迫感を必須の症状とする症状症候群で、現在、1,000万人程度の患者がいると推計されている。その中でも、尿失禁は医師に相談しにくいことから、とくに女性では受診への抵抗感が強いとの報告もあり、症状があっても受診に至らないことや、患者と医師の間で診断や治療への認識に大きな差があることなどがOABの課題とされる。本セミナーでは、約20年ぶりに実施された下部尿路症状の疫学調査の結果について、日本大学医学部 泌尿器科学系 泌尿器科学分野 主任教授の高橋 悟氏が解説した。また、Ubie(ユビー)の代表取締役を務める阿部 吉倫氏が、OABの受診率向上におけるデジタルツールの可能性について語った。OAB診断時の検査は主に尿検査と超音波検査 OABは、尿意切迫感を必須症状とし、通常は頻尿や夜間頻尿を伴う症状症候群である。診断は尿意切迫感などの症状に基づくが、その際は過活動膀胱症状質問票が有用とされる。また、尿検査で血尿や膿尿、細菌感染の有無を確認するほか、超音波検査により残尿や膀胱の状態、がんや結石の有無を確認する。診断時の検査に対して怖いイメージを持ってしまっている患者もいるが、通常は痛みも伴わず負担が軽い検査で済むことが多い。OAB患者の受診率の低さが以前からの課題 本邦では2002年に下部尿路症状に関する初めての疫学調査が実施され、OABの有病率などが報告された。当時の調査では、全国の住民台帳から抽出した40歳以上の男女1万96人を対象とし、そのうち4,570人(男性60%)を解析対象とした。解析対象の平均年齢は60.6歳で、範囲は40~100歳であった。また、OABの定義は「排尿回数が1日8回以上かつ尿意切迫感が週1回以上ある場合」とされた。 2002年の調査の結果では、40歳以上の男女でOABに該当する人は全体で12.4%とされ、加齢に伴いその割合は高くなった。また、40歳以上でOAB症状を有する人は、全国で約1,000万人と推計された。一方で、OAB患者のうち医療機関を受診していたのは22.7%にとどまり、とくに女性では7.7%と受診率が低いことが明らかとなった(男性の受診率は36.4%)。この結果について高橋氏は、「女性は男性と比べて泌尿器科への受診に抵抗感を持ってしまっている」と語った。20年前からの課題は依然として存在 2002年の調査以降、本邦では長らく、下部尿路症状に関する疫学調査は行われてこなかった。しかし、日本排尿機能学会の前身である神経因性膀胱研究会が発足されてから50年の節目となる2023年において、インターネット上での約20年ぶりの現状調査が実施された。本調査では、20~99歳の合計6,000人(男女:各3,000人)が対象とされ、2002年の調査では対象でなかった20代と30代が追加された。また今回の調査におけるOABの定義は、「『尿意切迫感が週1回以上』に加えて、『昼間排尿回数が8回以上/夜間排尿回数が1回以上/切迫性尿失禁あり』のいずれかを満たす場合」とされた。 その結果、全体のOABの有症率は11.7%で、2002年の調査と同様に40歳以上に絞ると有症率は13.6%であった。また、夜間排尿回数や尿意切迫感、切迫性尿失禁などの有症状率は加齢と共に増加していた。一方で、OAB患者の受診率は男性で20.6%、女性で10.0%であり、2002年の調査と比較して大きな改善はみられなかった。高橋氏は「OABや下部尿路症状の診断に、侵襲的なものや恥ずかしさを伴う検査はなく、気軽に相談してほしい。そして、OABは医師に相談することで治療が可能な疾患であることを知ってほしい」と語った。患者体験の変化によりOAB患者の受診を促す 続いて阿部氏が、患者の受診率が低いOABの現状に対し、医療AIをどのように役立てることができるかについて語った。OABの課題には、「患者が自身の症状を病気と認知しておらず、加齢などが原因と思い込み、治るものと思っていない」「恥ずかしさにより受診をためらう人が多い」という2点があるという。 それを踏まえて阿部氏は、Ubie社の開発したAIを使った症状検索エンジン「ユビー」を活用した、適切な医療へのアクセス支援に向けた取り組みについて解説した。「ユビー」では、患者が自身の症状を入力することで、関連した参考病名を知ることができるほか、適切な診療科および近隣の医療機関を確認することもできる。 阿部氏によると、患者が症状と病気をひも付けて疾患の認知度を高めると、自身の疾患に対する納得度が醸成され、受診への不安を取り除くことができるという。実際にOAB患者に対して行ったアンケート調査では、「ユビー」に症状を入力して病気の可能性を感じたことや参考病名を見たことが患者の受診意欲の向上に寄与したとされ、OAB有症率が高い60代以上でも「ユビー」を利用して受診意欲が高まったという結果が明らかになったという。最後に阿部氏は、「泌尿器患者とかかりつけ医、専門病院、製薬企業をつなげたエコシステムを構築することで、誰もが適切な医療に出合える世界を目指したい」と語った。

43.

事例31 ベタニス錠の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、頻尿の患者にミラベグロン(商品名:ベタニス)錠50mg(以下「ベタニス」)を投与したところ、C事由(医学的理由による不適当)で査定となりました。ベタニスは、「選択的β3アドレナリン受容体作動性過活動膀胱治療剤」に分類されて後発品はありません。添付文書には、「生殖可能な年齢の患者への本剤の投与はできる限り避けること」との警告が表示されている以外は特段の留意事項はありません。効能または効果には、「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁」とあります。効能または効果に関連する注意の表示には、類似の症状を呈する疾患の除外診断を行った後に投与することが記載されています。ベタニスは、過活動膀胱用剤であることがわかります。傷病名をみると「夜間頻尿症」と状態を表す病名しか表示されていません。「夜間頻尿」だけでは「過活動膀胱」におけるものなのかどうか判別がつかないために、保険診療上適当でない投与として査定になったものと推測できます。査定の原因はレセプトチェックシステムで指摘があったにもかかわらず、「過活動膀胱」を追加しなくても査定はないだろうと修正せずに提出されたことによります。電子的な審査においては、本事例のような場合も厳密に審査されます。従来のように「これぐらいなら」が、通用しなくなっていることにご留意ください。ところが電子カルテ標準病名には「過活動膀胱における頻尿」がありません。「過活動膀胱」と「夜間頻尿」の2つの病名が必要となります。査定対策として、ベタニス投与時には処方システムに「過活動膀胱」に加えて「尿意切迫感」、「頻尿」および「切迫性尿失禁」の病名が必要な旨を表示させて医師による傷病名の確認を促し、レセプト担当には、レセプトチェックシステムで指摘があった場合には、必ず修正もしくはコメントを頂戴することを行うように説明して査定対策としました。

44.

軟骨無形成症〔ACH:achondroplasia〕

1 疾患概要■ 定義軟骨無形成症(achondroplasia:ACH、MIM100800)は四肢短縮型低身長症を呈する骨系統疾患の代表である。成人身長は男性で約130cm、女性で約124cmと低く著明な四肢短縮のため、患者は日常生活でさまざまな制約をうける。脊柱管狭窄のため中高年になると両下肢麻痺を呈したり、下肢アライメントの異常による変形性関節症を発症し、歩行障害を生じたりすることが少なくない(指定難病)。■ 疫学ACHの頻度は出生10,000~30,000に1人と報告されている。■ 病因ACHの97%以上に、染色体4p26.3に位置するFGFR3遺伝子のGly380Arg病的バリアント(ほとんどがc.1138G>A、ごく一部がc.1138G>C)を認め、遺伝型としての均質度は高い。遺伝様式は常染色体顕性遺伝であるが、約80%は新規突然変異によるものとされる。変異FGFR3は恒常的に活性化された状態にあり、軟骨細胞の分化、軟骨基質の産生および増殖が抑制される。軟骨組織を介して骨が形成される軟骨内骨化が障害されるため、長管骨の伸長不良、頭蓋底の低形成などが生じると考えられている。■ 症状ACHでは、近位肢節により強い四肢短縮型の著しい低身長、特徴的な顔貌、三尖手などがみられる(表)。成長とともに低身長が目立つようになる。思春期の成長スパートがみられず、この間にも相対的に低身長の程度が悪化する。成人身長は男性130cm程度、女性124cm程度である。顔貌の特徴は出生時からみられる。乳幼児期(3歳頃まで)に問題となるのは、大後頭孔狭窄および頭蓋底の低形成による症状である。大後頭孔狭窄では延髄や上位頚髄の圧迫により、頚部の屈曲制限、後弓反張、四肢麻痺、深部腱反射の亢進、下肢のクローヌスがみられ、中枢性無呼吸、脊髄症、水頭症、突然死の原因となる。ACHの脳室拡大は、2歳までに生じる可能性が最も高く、一般的には交通性であり、真の水頭症(神経症状を伴う脳室拡大)はまれであるが、重篤な合併症の1つである。上気道閉塞はよくみられ、10~85%の患者が睡眠時無呼吸や慢性呼吸障害の治療が必要とされる。胸郭の低形成が高度な場合、拘束性肺疾患や呼吸器感染症の反復、重症化も問題になる。中耳炎の罹患も多く、ACHの約90%で2歳までに発症する。多くは慢性中耳炎に移行し、30~40%で伝音性難聴を伴う。脊柱管狭窄は必発であり、幼児期に症状が発現することはまれであるが、成長とともに狭窄が増強し、しびれ、脱力、間欠性跛行、下肢麻痺、神経因性膀胱による排尿障害などを呈することが多い。40歳までに約7%の患者が手術を受けると報告されている。胸腰椎後弯、内反膝をよく認め、腰痛、下肢痛もしばしばみられる。乳児期に運動発達の遅延はあるが、知能は正常である。このほか、咬合不整、歯列不整がみられる。表 軟骨無形成症の診断基準A.症状1.近位肢節により強い四肢短縮型の著しい低身長(−3SD以下の低身長、指極/身長<0.96の四肢短縮)2.特徴的な顔貌(頭蓋が相対的に大きい、前額部の突出、鼻根部の陥凹、顔面正中部の低形成、下顎が相対的に突出):頭囲>+1SD3.三尖手(手指を広げたときに中指と環指の間が広がる指)B.検査所見単純X線検査1.四肢(正面)管状骨は太く短い、長管骨の骨幹端は幅が広く不整で盃状変形(カッピング)、大腿骨頸部の短縮、大腿骨近位部の帯状透亮像、大腿骨遠位骨端は特徴的な逆V字型、腓骨が脛骨より長い(腓骨長/脛骨長>1.1、骨化が進行していないため乳幼児期には判定困難)。2.脊椎(正面、側面)腰椎椎弓根間距離の狭小化(椎弓根間距離L4/L1<1.0)(乳児期には目立たない)、腰椎椎体後方の陥凹。3.骨盤(正面)坐骨切痕の狭小化、腸骨翼は低形成で方形あるいは円形、臼蓋は水平、小骨盤腔はシャンパングラス様。4.頭部(正面、側面)頭蓋底の短縮、顔面骨低形成。5.手(正面)三尖手、管状骨は太く短い。C.鑑別診断以下の疾患を鑑別する。骨系統疾患(軟骨低形成症、変容性骨異形成症、偽性軟骨無形成症など。臨床症状、X線所見で鑑別し、鑑別困難な場合、遺伝子診断を行う)D.遺伝学的検査線維芽細胞増殖因子受容体3型(FGFR3)遺伝子のG380R変異を認める。<診断のカテゴリー>DefiniteAのうち3項目+Bのうち5項目すべてを満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。または、Probable、PossibleのうちDを満たしたもの。ProbableAのうち2項目以上+、Bのうち3項目以上を満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。PossibleAのうち2項目以上+Bのうち2項目以上を満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。(出典:難病情報センター 軟骨無形成症)■ 予後積極的な医学的評価を行わない場合、乳幼児期に約2~5%の突然死が生じる。突然死の原因は主に無呼吸であると考えられている。大半が知能面では正常であり、平均余命も正常であるとされる。脊柱管狭窄に伴う両下肢麻痺や下肢のアライメント異常による下肢変形が経年的に増加する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)上記の症状と下記の骨単純X線所見と合わせて診断する(表)。骨X線所見にて、太く短い管状骨、長管骨の骨幹端は幅が広く不整で盃状変形(カッピング)、脛骨より長い腓骨、腰椎椎弓根間距離の狭小化、腰椎椎体後方の陥凹、坐骨切痕の狭小化などがみられる(表)。新生児期には、扁平椎を認めることがある。鑑別疾患として軟骨低形成症、変容性骨異形成症、偽性軟骨無形成症などが挙げられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 成長ホルモン(GH)治療ACHのヒトGH治療開始時の適応基準として、3歳程度以上、現在の身長が同性、同年齢の標準値-3SD以下、手術的治療を考慮するほどの大後頭孔狭窄、脊柱管狭窄、水頭症、脊髄・馬尾圧迫などの合併症がMRI ・CT所見上認められないこと。また、これらのための圧迫による臨床上問題となる神経症状が認められないことなどがある。GH治療の身長に対する短期的な効果はいくつか報告されている。5年間に身長SDSが低用量で1.3SD、高用量で1.6SD改善したという報告や、治療開始前に比べて成長速度が1年目に2.6cm/年、2年目に0.7cm/年増加したという報告がある。一方、3年間のGH治療で身長SDSの改善が0.3SDにとどまったという報告もある。成人身長の検討では、男性で0.6SD(3.5cm)の増加、女性で0.5SD(2.8cm)の増加がみられたと報告されている。■ C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)アナログ治療ACHに対してCNPアナログであるボソリチド(商品名:ボックスゾゴ)が2022年に製造販売承認された。国際多施設共同治験においてボソリチド群ではプラセボ群に比べて、52週において1.57cm/年の成長促進効果を認めたことが報告された。この成長促進効果は104週でも維持されていた。今後の中長期的な効果の検討が必要である。なお、ボソリチドは3歳未満の患者でも投与可能である。■ 四肢延長術:ACHの低身長、四肢短縮の改善のため実施されることが多い。創外固定器を用いた下肢延長術は長期の治療期間、高頻度の合併症がみられるため、脚延長術開始の意思決定は患者自身で行うことが望ましい。下肢延長術では8.4~9.8cmの平均獲得身長とされている。後遺症として、尖足、腓骨神経麻痺の残存、膝関節・足関節の外反変形、骨折、股関節の拘縮などが報告されている。上腕骨延長術も施行されているがまとまった報告は少ない。4 今後の展望新規治療として以下の第II相臨床試験が行われている。TransCon CNP(CNPアナログ/週1回注射)、Infigratinib(FGFR阻害薬/経口投与)、塩酸メクリジン(抗ヒスタミン薬/経口投与)、RBM-007(FGF2 アプタマー/1~4週間隔注射)。今後、成長障害や他の症状により有効な治療法が実施可能となることが期待される。5 主たる診療科小児科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 軟骨無形成症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター 軟骨無形成症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「先天性骨系統疾患の医療水準と患者QOLの向上を目的とした研究」(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報つくしんぼ-軟骨無形成症と骨疾患低身長の会(患者とその家族および支援者の会)つくしの会:軟骨無形成症患者・家族の会(患者とその家族および支援者の会)1)軟骨無形成症診療ガイドライン-日本小児内分泌学会2)GeneReviewsJapan:軟骨無形成症3)Hoover-Fong J, et al. Pediatrics. 2020;145(6):e20201010.4)Savarirayan R, et al. Nat Rev Endocrinol. 2022;18:173.公開履歴初回2023年8月7日

45.

バイアグラと酒の併用が生んだ悲劇【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第237回

バイアグラと酒の併用が生んだ悲劇illust ACより使用シルデナフィル(商品名:バイアグラ)は、海綿体の血管系に存在するホスホジエステラーゼ5を阻害することで陰茎の勃起を助ける働きがあります。シルデナフィルとアルコールを併用しても、ネットでは「とくに相互作用があるわけではないため安全」という見解が主流で、適度の飲酒の内服は可能と書いているウェブサイトのほうが多いと思います。Pandit JN, et al.Rare fatal effect of combined use of sildenafil and alcohol leading to Cerebrovascular Accident.J Forensic Leg Med. 2023;95:102504.これはインドから報告された法医学の症例報告です。インドでは、とくに若年層におけるシルデナフィルの無認可の流通が増えており、不適切な使用が懸念されています。シルデナフィルの副作用として、頭痛、顔面紅潮、鼻づまり、血圧低下などが報告されています。軽度の頭痛であれば心配不要ですが、今回紹介するのは脳出血によって死亡した症例です。とくに既往歴のない41歳男性が、女性とホテルの一室に宿泊していました。夜にシルデナフィル50mgを2錠、そしてアルコールを摂取していました。翌朝、彼は気分不良を訴え病院に搬送されましたが、残念ながら到着時にはもう死亡していました。解剖では、右大脳基底核から両側脳室、大脳皮質にかけて約300gの凝血塊を伴う脳浮腫が観察されました。ミクロでは、心室壁の肥大、肝臓の脂肪変性、急性尿細管壊死、高血圧性変化などが確認されました。40代の男性がシルデナフィルとアルコールを併用して、脳出血を起こし搬送された症例がトルコからも報告されています1)。こちらの症例は一命を取りとめています。シルデナフィルをアルコールと併用することはそもそも推奨されているわけではありませんが、常識的な低量アルコールによる大きな副作用は報告されていません。本当に両者の併用に何らかのリスク上昇はないのか、規模の大きな検討が必要かと思われます。1)Antar V, et al. Subarachnoid and intracerebral hemorrhage after alcohol ingestion and illicit use of sildenafil. Turk Neurosurg. 2015;25(3):485-487.

46.

わが国初の原発性手掌多汗症治療薬「アポハイドローション20%」【下平博士のDIノート】第123回

わが国初の原発性手掌多汗症治療薬「アポハイドローション20%」今回は、原発性手掌多汗症治療薬「オキシブチニン塩酸塩ローション(商品名:アポハイドローション20%、製造販売元:久光)」を紹介します。本剤はわが国初の原発性手掌多汗症の適応を有する治療薬であり、いわゆる「手汗」を抑制することで、QOLの向上や労働生産性の改善が期待されています。<効能・効果>原発性手掌多汗症の適応で、2023年3月27日に製造販売承認を取得し、6月1日より発売されています。本剤は抗コリン作用を有するため、閉塞隅角緑内障の患者、前立腺肥大など排尿障害のある患者、重篤な心疾患のある患者、腸閉塞または麻痺性イレウスのある患者、重症筋無力症の患者は禁忌となっています。<用法・用量>1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布します。1回の塗布量は、両手掌に対しポンプ5押し分が目安です。本剤は可燃性であるため、保存および使用の際には火気を避けます。<安全性>第III相比較試験において、下記の副作用が認められました。1~5%未満適用部位皮膚炎、適用部位そう痒感、適用部位湿疹、皮脂欠乏症、口渇0.1~1%未満適用部位紅斑、皮膚剥脱、口角口唇炎、尿中ブドウ糖陽性なお、重大な副作用として、血小板減少、麻痺性イレウス、尿閉(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、手のひらの皮膚から吸収され、エクリン汗腺の受容体をブロックすることで、発汗を抑えます。2.1日1回、就寝前にポンプ5押し分を目安として、両手の手のひら全体に塗布してください。3.起床後、手を洗うまでの間は、眼や塗布部位以外に触れないようにしてください。もし塗布時に眼に入った場合は、刺激や散瞳作用があるため、直ちに水で洗い流してください。4.眼の調節障害やめまい、眠気が現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作を行う際には注意してください。5.消化管運動が低下する恐れがあるので、消化器症状が現れた場合は使用を中止し、医療機関を受診してください。6.妊婦または妊娠している可能性のある人は医師に相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、わが国初の原発性手掌多汗症に適応を有する薬剤です。原発性局所多汗症は、頭部・顔面、手掌、足底、腋窩に温熱や精神的負荷の有無に関わらず、日常生活に支障を来すほどの大量の発汗が生じる状態で、そのうち手掌部に発現するものが原発性手掌多汗症です。国内における原発性手掌多汗症の有病率は5.33%で、学習効率や労働生産性の低下、精神的苦痛、対人関係への悪影響など、患者のQOLが低下することがあります。「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版」において、原発性手掌多汗症に対する第1選択の治療法は、20%~50%塩化アルミニウム外用療法および水道水イオントフォレーシス療法とされています。しかし、塩化アルミニウム外用薬は保険適用外であり、イオントフォレーシスは患者自身による機器購入または機器を有する医療機関への通院が必要です。本剤の有効成分であるオキシブチニン塩酸塩は、エクリン汗腺に発現するムスカリンM3受容体に対して抗コリン作用を有することにより、抑汗作用を示します。本剤の代謝物であるN-デスエチルオキシブチニン(N-Desethyloxybutynin:DEO)も臨床効果に関与することが示唆されています。なお、オキシブチニン塩酸塩は、頻尿治療薬のポラキスやネオキシテープと同じ成分です。12歳以上の原発性手掌多汗症患者284例を対象にした国内第III相比較試験において、投与4週後に発汗量が50%以上改善した患者の割合は、プラセボ群と比較して本剤群で有意に高いことが認められました。本剤塗布から手を洗うまでの行動制限を可能な限り少なくするため、日中の塗布を避け、1日1回就寝前に塗布します。万一、塗布時に眼に入った場合は、散瞳作用および眼刺激性があることから、直ちに水で洗い流します。また、発汗を抑制するため、気温や湿度が高い場所や運動時などでも汗が出ず、体温が上がる恐れがあるため、熱中症対策も指導しましょう。なお、なお、1回の塗布量のポンプ5押し分は約0.5mLに相当し、最初の空打ち分を差し引くと、1本で約7日分に相当します。手掌多汗症の患者のQOL低下はアトピー性皮膚炎やざ瘡よりも大きいという報告もあります。保険適用の治療選択肢が増えることは朗報です。関連サイトHamm H, et al. Dermatology. 2006;212:343-353.

47.

第168回 かつてのプラセボがいまや米国承認の勃起不全治療製品

かつてのプラセボがいまや米国承認の勃起不全治療製品英国の製薬会社Futura Medical社が開発した処方箋不要の勃起不全治療外用ジェル(商品名:Eroxon)の店頭販売が米国で承認されました1,2)。かつて同社は同社独自の経皮粘液(ジェル)DermaSysの一種(以下「DermaSys」)に血管拡張成分として知られるニトログリセリンを混ぜた塗り薬を開発していました。その開発品名はMED2005で、先々週の火曜日9日に承認されたEroxonの中身は本命だったMED2005ではなく、意外にもその単なる下地にすぎなかったDermaSysのほうです。ニトログリセリンを含まないDermaSysはFM57という名称の第III相試験でプラセボの役割を担いました。その試験結果は2019年12月に発表され、どういうわけかDermaSysはニトログリセリン入りのMED2005と同様の勃起機能改善効果を示しました。MED2005高用量投与群は元に比べて23.27%多い被験者が性交の間勃起を保つことができ、DermaSys投与群のその割合もほぼ同じで23.16%でした3)。というわけで残念なことにMED2005はDermaSysを上回る効果は認められませんでした。しかしDermaSys投与群のどの重症度の患者も勃起不全が元に比べて改善したことにFutura Medical社は勇気づけられ、新たな第III相試験に踏み切ります。米国FDA了承の計画に沿って実施された新たな第III相試験でDermaSysは幸いにもFutura Medical社の期待に見事に応え、勃起不全の有意な改善をもたらしました4)。被験者数96例の同試験で対照薬として使われた飲み薬(タダラフィル錠)に比べて効果の発現は早く、今やEroxonという商品名を冠するDermaSysは塗ってから10分以内に勃起を感じ取れるようになることが示されました。タダラフィル錠にその効果はありませんでした。試験の成功を受け、ニトログリセリンを含まないEroxonは医薬品ではなく事前の予定どおり医療機器の扱いで承認されました。主な成分は水とエタノール(アルコール)であり、処方箋不要で店頭で購入できます。勃起不全を患う22歳以上の成人男性が使えます。Eroxonを塗った部分はその揮発性成分(エタノールと水)の蒸発によって冷え、続いてゆっくりと温まります。その冷温反応が亀頭の神経末端を刺激することでペニスを膨らませ、性交に必要な固さの勃起を達成して維持できるようにします2,5)。米国でタダラフィルやシルデナフィルなどの経口薬(PDE5阻害薬)は医師の処方が必要で、たいていは事に及ぶ少なくとも30分前に服用する必要があります。一方、Eroxonは塗ってから10分以内に勃起できるようにします。Eroxonは米国に先立って欧州全域ですでに承認されており、ベルギーと英国で販売されています。Eroxonのホームページによると同剤使用者の約65%が勃起を維持して性交をやりおおせるようです6)。参考1)US FDA Grants for Over-the-Counter Marketing Authorization to Futura for Fast-Acting Topical Gel, MED3000, to Treat Erectile Dysfunction / BusinessWire 2)FDA Roundup: June 13, 2023 / PRNewswire3)Futura Announces Top-Line Results from MED2005 Phase 3 study in Erectile Dysfunction / GlobeNewswire4)Highly positive FM71 Phase 3 study results with all primary and secondary endpoints achieved, MED3000 remains on track to submit for FDA marketing authorization / BusinessWire5)Eroxon Product Leaflet6)Eroxonのホームページ

48.

手持ち不足の薬剤の処方依頼前に継続の必要性を再検討【うまくいく!処方提案プラクティス】第53回

 今回は、手持ちの薬がなくなって服薬ができていなかった症例を紹介します。患者さんの希望で処方依頼をするシチュエーションは多々ありますが、状態によっては継続ではなく中止を提案することもあります。治療効果を意識して体調の変化を確認しましょう。患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患気管支喘息、慢性気管支炎、前立腺肥大症、高血圧症、緑内障、便秘症、アレルギー性鼻炎介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.アジルサルタン錠40mg 1錠 分1 朝食後2.タムスロシン錠0.2mg 1錠 分1 朝食後3.ミラベグロン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.アンブロキソール徐放錠45mg 1錠 分1 朝食後5.ベポタスチン錠10mg 2錠 分2 朝夕食後6.モンテルカスト錠10mg 1錠 分1 就寝前7.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後8.センノシド錠12mg 2錠 分1 就寝前9.ヒアルロン酸点眼液0.1% 1日3回 両眼10.タフルプロスト点眼液0.015% 1日1回 両眼本症例のポイントこの患者さんは、施設入居から4日目に当薬局に訪問介入の依頼がありました。入居前は薬剤を自己管理していたようですが、過去の飲み忘れも含めて約1ヵ月半分の持参薬があり、用法ごとの残数もそろっていない状況でした(朝:42、昼:66、夕:58、就寝前:70日分)。気管支喘息の診断を受けていたとのことで、ブデソニド・ホルモテロールの空容器を持参していましたが、夜間は不安だからプロカテロール吸入薬も吸入したいので処方してもらいたいという患者さんからの依頼がありました。よくよく話を聞いてみると入居3週間前からブデソニド・ホルモテロールもプロカテロールも残薬がなくなっていて、手元にないと不安なので処方してほしいとのことでした。情報分析これまでの情報から私なりに分析してみました。まず、大量かつ不均等の持参薬から患者さんの服薬アドヒアランスは不良であることが想像できます。薬に対する依存度が強く、患者さんから医師にさまざまな薬を要望している様子もあったため、使用していた薬剤の種類と処方理由を明確にしておく必要があると考えました。なお、患者さんが要望している吸入薬はどちらも約1ヵ月間使用していませんでしたが、喘息発作などは起きていません。前医の診療情報書に目を通したところ、小児喘息や成人時期の喘息発作の経験はなかったものの、患者によると喘息の素因があるとのことで、感冒の際に希望があり処方しているという文面を確認することができました。患者さんはその後、長期間にわたって吸入薬を使用していました。基礎疾患にある気管支喘息の診断情報に疑問をもち、訪問診療医に相談することにしました。処方提案と経過患者さんとの初回面談から3日目に訪問診療医の初診があったため同行することにしました。診察前に、医師に初回面談時のやりとりを共有しました。入居前は服薬アドヒアランスが安定していなかったと考えられ、患者さんの希望から吸入薬が追加されている可能性があるものの、約1ヵ月間使用していなくても発作症状はないことなどを伝えました。医師からは、診察時に呼吸音や病状を確認し、診断の見直しをするという返答がありました。その結果、気管支喘息を積極的に疑う所見ではないので、このまま吸入薬をやめて様子をみようという判断になりました。その2週間後の診療でもその間の喘息発作は認められませんでした。患者さんからは、吸入の負担が減って精神的に楽になったと聞き、その後も状態が悪化することなく施設で穏やかに生活されています。

49.

【GET!ザ・トレンド】第2の聴診器ポケットエコーの進化はAirへ

(協力:GEヘルスケア社)医療検査機器の進歩は目覚ましいものがある。とくにCTやMRIは、さらに高画質化し、読影も立体的になるなど、最近ではソフトウェアの進歩も著しい。また、超音波も同様に高画質化、コンパクト化がはかられ、ベッドサイドではなくてはならない検査機器となりつつある。こうした診療機器を一堂に集めた国際医用画像総合展(ITEM 2023)が4月14日から3日間、パシフィコ横浜で開催される。ITEMの開催を前にCareNeTVやケアネットDVDでもお馴染みの白石 吉彦 氏(島根大学医学部附属病院 総合診療医センター センター長/隠岐広域連合立隠岐島前病院 参与)にポケットエコーの進化を振り返り、臨床現場での使い方のポイントや検査・読影のコツ、そして、今後の展望についてお聞きした。質問 ポケットエコーの進歩とハードウエアの課題について教えてください2010年にVscan(GEヘルスケア社製)がポケットエコーの嚆矢として発売されました。非常に衝撃的ではありましたが、当時は心エコーなど限定された部位・機能であり、現在のように処置などに使えませんでした。2010年に発売されたポケットエコーVscan(GEヘルスケア社製)その後、他のメーカーもポケットエコーを開発・発売していくなかで、先のVscanはプローブのデュアル化をしました。1個のプローブにセクタ型とリニア型が一体となり、携帯する機材の省力化で、臨床現場での使い勝手が向上しました。Vscan Dual Probe(GEヘルスケア社製)その間にも個々の機種は充電がしやすくなったり、起動までの時間が短縮化されたり、軽量化なども図られるとともに、本体の価格もかなり安くなっていきました。そして、現在の進化はVscan Air(GEヘルスケア社製)のように無線化であり、邪魔なコードがなくなり、プロ―ブを検査したいところに当て、機動性良く検査ができるようになりました。また、所見はタブレットやスマホに送ることができて、その画面で読影ができるようになりました。Vscan Air Carotid Artery(GEヘルスケア社製)臨床では、臨床判断と手技の向上に役立てる超音波検査を“point-of-care ultrasonography”(POCUS)と呼び、一般社団法人 日本ポイントオブケア超音波学会(j-pocus.com)が設立されるなど環境も大きくかわりつつあります。ポケットエコーで今後期待されることとしては、画質や画面の大きさ、価格、質の担保があります。たとえば、胆嚢炎について、本症では読影時に胆嚢壁の厚さや形状を知ることが大事です。ポータブルエコーでは、カラードップラーも使え、鮮明に壁の厚さもわかりやすい一方で、ポケットエコーではまだそこまで到達できていません。ほかに重要な点として非接触充電ができるようになったり、機能的にも良くなっていますが、「電池の持ち時間」がユーザーとしては気になります。もっと長時間使用できるようになって欲しいと思います。1点注意しなければいけないこととして、最近ではインターネットサイトで非常に安価なポケットエコーを入手することができます。サイトで買われたポケットエコーは、自己トレーニングなどでの使用は問題ありませんが、薬機法(医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品について安全性と、体への有効性を確保するための法律)を通っていない機器は、診療で使用すると法に抵触する恐れがあります。この点を医療者はよく理解して、診療にあたらなければいけないということがあります。質問 ポケットエコーの臨床現場での活用法やビギナー向けのポイントを教えてくださいポケットエコーは在宅診療をされている医療者などでは結構普及していますが、医師全体からすると、まだ5%も普及していません。理由はいろいろとありますが、はじめの頃は250万円くらいの高価なデバイスであったことが要因かと思います。ポケットエコーのメリットは、携帯性、経済性、起動時間の早さにあります。診療に使うことで診断精度と治療精度の向上が望めます。私の勤める病院では、看護師にも積極的にポケットエコーを扱ってもらっています。一例として「導尿」の有無の判断に膀胱にエコーを当て、導尿の必要があるかどうかを判断しています。導尿では、感染症のリスクや患者さんの羞恥心もあり、できればしたくない処置です。そこでエコーを当て要否を判断することで確実に導尿が必要な患者さんにだけ処置を施すことができます。これは全国でもまれかもしれません。また、膀胱の背側にある直腸の便を確認することもできます。膀胱横断面所見(提供:GEヘルスケア社)画像を拡大する診断の補助として、たとえばひざの腫れであれば、関節液の貯留か軟部組織の炎症による腫脹か、それ以外の原因なのか、ベテランでないと難しい診断もポケットエコーを使えば診断がし易くなります。触診した部位を見える化することによりポケットエコーで身体所見の診断の答え合わせもできます。ほかにもプライマリ・ケアでよくある主訴の「頻尿」では、問診では判断が難しい過活動膀胱か神経因性膀胱かどうかについて、ポケットエコーで膀胱の容量を把握し、残尿があるかないかを確認することができます。両疾患では治療薬も異なるので、適切な治療につなげることができます。エコーは軟部組織や水をよく描出するので胸水、肺B-line、胸膜、膝などの診断に強みを発揮します。今では初期の大動脈瘤の発見もできる精度であり、みつけることができれば予防的な治療も可能です。膀胱、前立腺所見(提供:GEヘルスケア社)画像を拡大する腹部大動脈所見(提供:GEヘルスケア社)画像を拡大する処置で使うのであれば、ひざの穿刺などで注射を必要な部位にピンポイントで施行できますし、膀胱、便秘、肺エコー、大静脈の点滴の適否、末梢血管確保についてポケットエコーは有効です。エコーを使用した処置により、ベテランでもそうでなくとも同じ視覚で処置ができるので、医療の均てん化にも役立つと考えています。質問 超音波所見の読影のコツやビギナー向けの学習法について教えてくださいエコーの上達については、とにかく「日々プローブを当てること」が基本です。自分でも仲間同士でもプローブを当て、手技や読影を訓練することです。もちろんこのときには指導する先輩医師の役割も重要ですし、身近にすぐできるエコーがあることも必要です。そういう意味ではポケットエコーは、エコーに馴染むという意味ではよいツールとなります。また、読影でわからない場合で先輩医師がいない場合には、成書やDVDなどで学習し、それでも難しいときは研修会などで勉強することが必要です。本当は、医学生のころからエコーに慣れ親しむのがいいのですが、現在、医学部でのエコーの講義や実習は、力の入れ具合に差があります。私が所属している島根大学医学部では、医学生にエコーの勉強会を実施していますし、エコーを使った診療の動画も島根大学医学部附属病院 総合診療医センターのサイトで公開して、学習のサポートを行っています。今年の7月には私が会長で行う「第15回 日本ポイントオブケア超音波学会学術集会」を島根で開催します。エコーに少しでも興味のある医療者にはぜひ参加していただきたいと思います。質問 ポケットエコーの将来の展望について教えてください診療でポケットエコーが普及していけば、診療ガイドラインなどにも記載されるようになるでしょう。日本ポイントオブケア超音波学会(JPOCUS)では、ガイドラインから試案を作成したりしていますし、日本救急医学会では「救急point–of–care超音波診療指針」を公開していますので、じわじわと臨床の中に入っていくと思われます。今後、プライマリ・ケアでも症状や病態の見える化は需要が増していきますので、「第2の聴診器」として医療者には必要な手技・スキルになると考えます。繰り返しますが、ポケットエコーの理想形としては、より小さく、軽く、鮮明な画像で、値段もお手ごろ、電池も長持ちし、操作も簡単、プローブのバリエーションもあり、そして、院内のPACSにつながるポケットエコーの登場を期待します。(インタビューは2023年3月6日に実施/ケアネット 稲川 進)

50.

高齢者へのDOAC、本当に減量・中止すべき患者とは/日本循環器学会

 高齢者の心房細動治療において、つい抗凝固薬を減量してしまいがちだが、それは本当に正しいのだろうか。今回、小田倉 弘典氏(土橋内科医院)が『心房細動抗凝固薬(アブレーションを望まない高齢のPAFなど)』と題し、第87回日本循環器学会学術集会のセッション「クリニックで選択されるべき循環器治療薬~Beyond guideline~」にて、高齢者心房細動の薬物療法における注意点を発表した。 小田倉氏はまず、以下の高齢者の症例を提示し、実際に直接経口抗凝固薬(DOAC)を処方するかどうか、またその際に減量するか否かについて問題提起した。高齢者へのDOAC減量と出血リスクの管理<症例>●年齢・性別:82歳・男性、体重:64kg、クレアチニンクリアランス(CCr):52 mL/min(血清クレアチニン[Cr]:1.0mg/dL)●主訴:ある日、脈をとったら不整で、心電図で心房細動と診断された。●服用歴:降圧薬、認知症治療薬、前立腺肥大症治療薬など6種類●患者背景:要介護2。トイレ歩行は可能だが受診時は車いす。転倒歴あり。長男夫婦と3人暮らしだが、日中は1人のことが多い。●CHADS2スコア:3点、HAS-BLEDスコア:1点 上記の高齢者の症例について、「DOAC各薬剤の添付文書にある減量基準、たとえば、アピキサバンは(1)80歳以上、(2)60kg以下、(3)Cr 1.5mg/dL以上のうち2つ以上が、エドキサバンは(1)60kg以下、(2)CCr 15~50、(3)P糖蛋白阻害薬服用のうち1つ以上が該当する場合にそれに当たるが、いずれにも該当していないので、この患者の場合、該当項目を見る限りでは処方可能であり、減量する必要もない」とコメント。 しかし、実際には高齢というだけでDOACの減量基準を満たさずとも減量する例が散見される。クリニックの患者が主体となった日本の高齢者心房細動に対する抗凝固薬療法に関する2つの試験からもその状況が見て取れる。・ANAFIEレジストリ1):3万2,275例(平均年齢81.5歳[85歳以上が26.1%]、経口抗凝固薬の服用:92.4%、ワルファリンTTR :75.5%、発作性心房細動:42%、認知症:7.8%[通院・在宅患者])ではunder-doseが16.8%、未承認低用量が3.7%。 ・GENERAL研究2):5,717例(平均年齢73.9歳、経口抗凝固薬の服用:100%、フレイル[要介護]:12.1%、認知症治療薬の併用:5.9%)ではunder-doseが27.3%。 では、実臨床で高齢者(75歳以上)に対しDOACをunder-doseする理由とは何か。35.8%でunder-doseを認め、脳卒中/全身性塞栓症が有意に多かったXAPASS study3)の結果によると「処方医は通常用量による出血リスクを最も懸念し、続いて高齢、腎機能低下を意識していた。一方、低体重や併用薬剤を選んだ者は少なかった」とコメント。 ところが、75歳以上の日本人で非弁膜症性心房細動患者を対象としたJ-ELD AF試験4)によれば、アピキサバン5mg/日(低用量)群と同薬10mg/日(通常用量)群に割り付け、脳卒中または全身性塞栓症、入院を要する出血について評価したところ、いずれの発生率も有意差が得られなかった。ただし、サブ解析で出血イベントの発生とアピキサバンの血中濃度の関係性を調べたところ、低用量群では血中濃度が高い(トラフ中央値:86ng/dL)群で出血性イベントが有意に多かった。その原因は明らかではないが、「減量基準以外のunknown factorsの存在が示唆される」と同氏は指摘した。DOAC減量基準を満たした患者の出血リスクに注力を これらの報告を踏まえ、同氏は「DOACの減量基準に該当しなければ用量を守り、減量基準を満たす患者は減量したうえで、いかに出血の関連リスクを減らせるかを考えることが重要」と述べ、「その関連リスクはDOAC減量基準やHAS-BLEDスコアに記載がないものにも注意を払う必要があり、改善可能なソフトプロブレム(上記unknown factorsにおおむね相当)と改善困難なハードプロブレムに分類できる。前者にはポリファーマシー(抗凝固薬と併用注意の薬剤を確認)、フレイル(転倒頻度や低体重を考慮)、認知症(服薬アドヒアランスを確認)、高血圧(外来での血圧130/80mmHg目標)が該当し、後者には腎機能低下や出血の既往があるだろう。後者では低用量投与を前提とし、2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン5)に従い、腎機能チェックの採血をCCr<60mL/minの患者では少なくともXヵ月(X=CCr/10)に1回実施すれば、リスク回避につながる」と対策を講じた。DOACの中止を考えるタイミング また、とくに高齢者ではDOAC中止を考える場面は多いが、具体的には以下が挙げられた。・出血したとき →出血の制御ができないような大腸憩室炎、蜂窩織炎などの既往歴がある場合 →生活面に支障を来すような重い後遺症が残る可能性のある場合・出血以外の副作用が出たとき・腎機能が低下してきたとき・アドヒアランス不良のとき・フレイル(要介護度)が進行した(寝たきりになった)とき 最後に同氏は「併存疾患の有無や身体機能レベルが個々で大きく異なるにもかかわらず、そもそも高齢者を1つのカテゴリーとして捉えることは不可能であり、多様な視点からのカテゴライズが必要となる。言うならば、“科学”と“生活”の両面からのアプローチが必要なのであり、それにはゴールはないため、考え続けることが重要である」と締めくくった。

51.

紹介先への情報欠落を防ぐ―安全な医療のために【紹介状の傾向と対策】第4回

<あるある傾向>患者を紹介されたとき、重要情報の欠落がある<対策>プロブレムや既往歴の取捨選択はご用心!紹介先が誰であれ、持っている情報は漏れなく伝える多忙な臨床業務の中で紹介状(診療情報提供書)の作成は負担の大きな業務の1つです。しかし、紹介状の不備は、依頼先(紹介先)の医師やスタッフに迷惑をかけるだけではなく、患者さんの不利益やトラブルにつながります。このため、できる限り依頼先が困らない紹介状の作成を心がけたいものです。以下は筆者自身が紹介状の記載において留意していることを箇条書きにしたものです。今回は(3)の「プロブレムと既往歴は漏れなく記載」についてお話ししましょう。【紹介状全般に共通する留意点】(1)相手の読みやすさが基本(2)冒頭に紹介する目的を明示する(3)プロブレムと既往歴は漏れなく記載(4)入院経過は過不足なく、かつ簡潔に記載(5)診断根拠・診断経緯は適宜詳述(6)処方薬は継続の要否、中止の可否を明記(7)検査データ、画像データもきちんと引き継ぐ他院に患者さんを紹介する場合も、院内で他科コンサルテーションする際も同様ですが、筆者はプロブレムや既往歴を漏れなく記載することが非常に大切だと考えています。これは、紹介(依頼)する側が把握・認識しているプロブレムを漏れなく伝えることが、紹介先(依頼先)の把握漏れを回避する上で重要だと考えるからです。この際に留意しているのは、“書き手自身の判断でプロブレムとして記載する内容を取捨選択しないこと”です。これは、依頼内容とは関係ないだろうと思った情報が、依頼された側の医師にとって、重要な情報だったことを何度も経験してきたからです。たとえば、緑内障の持病のある高齢者が、肺炎で内科に入院したときを想像してください。ご存じの通り、緑内障は使用できない薬剤が多い疾患の1つです。そんな患者さんが過活動膀胱症状のため内科の担当医が泌尿器科に紹介したとします。紹介された泌尿器科医が緑内障の有無を知らなければ(本来は処方前に泌尿器科医自身が患者さんに確認する必要がありますが)、緑内障に禁忌である薬剤を処方してしまうことが起きうると考えます。依頼側の医師がプロブレムや既往情報として把握している情報をきちんと記載し伝えることは、情報欠落によるトラブルを回避するために重要です。筆者が情報欠落を回避すべく心掛けているのは、日頃からカルテにプロブレムリストを作成することです。他科への受診歴があれば、その情報も確認し、プロブレムリストを作成しています。入院早期のうちに、一旦、しっかりとプロブレムリストやショートサマリーを作成するようにしています。大切なのは、既往疾患や手術歴も1つのプロブレムとして捉えることです。疾患は少なからず過去の既往歴や手術歴と関連があることが多々あります。たとえば胃の部分切除1つを挙げても、手術歴の情報は、謎の貧血データを見た時、それが過去の胃切除に由来するビタミンB12欠乏性貧血の可能性を示唆してくれます。患者が同一の医療機関内を受診しているのであれば、カルテ内を探すことで過去の情報を見つけることも可能です。しかし、患者が異なる医療機関に転院する場合は、それができません。転院の際に情報が引き継がれなければ、転院先も情報不足で困るかもしれません。とくに受け入れる側は、急性期医療機関からの詳細な情報を必要としています。急性期医療機関から回復期リハビリ病院、あるいは療養型病院、かかりつけ医へと、患者の移動に伴い情報も欠落せずにしっかり付いてくることが、その患者にきちんとした医療を提供する上で、とても重要だと考えています。今、患者の医療データは個々の病院の電子カルテに記載されていますが、これではどうしても医療機関ごとに患者情報や検査データが分散することになり、筆者は非常に効率が悪いと考えています。できることなら、患者自身が自らのカルテを保有し、各医療機関がそこにアクセスし、情報や検査結果を追記していくような形が取れれば、患者情報が一元管理できるのではないか…とも考えてしまいます。

52.

11月24日 いい尿の日【今日は何の日?】

【11月24日 いい尿の日】〔由来〕寒さが本格化してくる時期である11月の「いい(11)にょう(24)」(いい尿)と読む語呂合わせからクラシエ製薬株式会社が制定。寒さが増すと頻尿・夜間尿などの排尿トラブルが増えることから、その啓発や症状に合った治療を広く呼び掛けることが目的。関連コンテンツ女性の頻尿、どう尋ねるべき?【Dr.山中の攻める!問診3step】知っておきたい女性の排尿障害の診療【診療よろず相談TV】頻尿、排尿痛があるときの症状チェック【患者説明用スライド】尿が少ない・出ないときの症状チェック【患者説明用スライド】新・夜間頻尿診療ガイドラインで何が変わるか/日本排尿機能学会

53.

添付文書改訂:カナグルに2型糖尿病CKD追加/ツートラムにがん疼痛追加/コミナティ、スパイクバックスに4回目接種追加/エムガルティで在宅自己注射が可能に/不妊治療の保険適用に伴う追記【下平博士のDIノート】第100回

カナグル:2型糖尿病患者のCKD追加<対象薬剤>カナグリフロジン水和物(商品名:カナグル錠100mg、製造販売元:田辺三菱製薬)<承認年月>2022年6月<改訂項目>[追加]効能・効果2型糖尿病を合併する慢性腎臓病。ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く<Shimo's eyes>SGLT2阻害薬については近年、心血管予後・腎予後の改善効果を示した大規模臨床研究が次々と発表されています。本剤は2型糖尿病患者の慢性腎臓病(CKD)に対する適応追加で、用法・用量は既承認の「2型糖尿病」と同じとなっています。2022年6月現在、類薬で「CKD」に適応があるのはダパグリフロジン(同:フォシーガ)、「心不全」に適応があるのはダパグリフロジンおよびエンパグリフロジン(同:ジャディアンス)となっています。ツートラム:がん疼痛が追加<対象薬剤>トラマドール塩酸塩徐放錠(商品名:ツートラム錠50mg/100mg/150mg、製造販売元:日本臓器製薬)<承認年月>2022年5月<改訂項目>[追加]効能・効果疼痛を伴う各種がん<Shimo's eyes>本剤は、速やかに有効成分が放出される速放部と、徐々に有効成分が放出される徐放部の2層錠にすることで、安定した血中濃度推移が得られるように設計された国内初の1日2回投与のトラマドール製剤です。今回の改訂で、がん患者の疼痛管理に本剤が使えるようになりました。本剤を定時服用していても疼痛が増強した場合や突出痛が発現した場合は、即放性のトラマドール製剤(商品名:トラマールOD錠など)をレスキュー薬として使用します。なお、レスキュー投与の1回投与量は、定時投与に用いている1日量の8~4分の1とし、総投与量は1日400mgを超えない範囲で調節します。鎮痛効果が不十分などを理由に本剤から強オピオイドへの変更を考慮する場合、オピオイドスイッチの換算比として本剤の5分の1量の経口モルヒネを初回投与量の目安として、投与量を計算することが望ましいとされています。なお、ほかのトラマドール製剤(商品名:トラマール注、トラマールOD錠、ワントラム錠)は、すでにがん疼痛に対する適応を持っています。参考日本臓器製薬 ツートラム錠 添付文書改訂のお知らせコミナティ、スパイクバックス:4回目接種が追加<対象薬剤>コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(商品名:コミナティ筋注、製造販売元:ファイザー/商品名:スパイクバックス筋注、製造販売元:武田薬品工業)<承認年月>2022年4月<改訂項目>[追記]接種時期4回目接種については、ベネフィットとリスクを考慮したうえで、高齢者等において、本剤3回目の接種から少なくとも5ヵ月経過した後に接種を判断することができる。<Shimo's eyes>オミクロン株流行期において、ワクチン4回目接種による「感染予防」効果は短期間とはいえ、「重症化予防」効果は比較的保たれると報告されています。それを踏まえ、4回目の追加接種の対象は、60歳以上の者、18歳以上60歳未満で基礎疾患を有する者など、重症化リスクが高い方に限定されました。また、3回目以降の追加免疫の間隔はこれまで「少なくとも6ヵ月」となっていましたが、今回の改訂で「少なくとも5ヵ月」と短縮されました。追加免疫の投与量については、コミナティ筋注は初回免疫(1、2回目接種)と同じく1回0.3mL、スパイクバックス筋注の場合は、初回免疫は1回0.5mLですが、追加免疫では半量の1回0.25mLとなっています。参考ファイザー 新型コロナウイルスワクチン 医療従事者専用サイト武田薬品COVID-19ワクチン関連特設サイト<mRNAワクチン-モデルナ>エムガルティ:在宅自己注射が可能に<対象薬剤>ガルカネズマブ(遺伝子組み換え)注射液(商品名:エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/シリンジ、製造販売元:日本イーライリリー)<承認年月>2022年5月<改訂項目>[追記]重要な基本的注意、副作用自己投与に関する注意<Shimo's eyes>薬価収載から1年が経過し、本剤の在宅自己注射が可能となりました。承認された経緯としては、日本頭痛学会および日本神経学会から要望書が出されていました。自己注射が可能になることで、毎月の通院が難しかったケースでも抗体医薬を用いた片頭痛予防療法を実施しやすくなることが期待されます。本剤の投与開始に当たっては、医療施設において必ず医師または医師の直接の監督の下で投与を行い、自己投与の適用についてはその妥当性を慎重に検討します。自己注射に切り替える場合は十分な教育訓練を実施した後、本剤投与によるリスクと対処法について患者が理解し、患者自らの手で確実に投与できることを確認したうえでの実施となります。参考日本イーライリリー 医療関係者向け情報サイト エムガルティフェマーラほか:不妊治療で使用される場合の保険適用<対象薬剤>レトロゾール錠(商品名:フェマーラ錠2.5mg、製造販売元:ノバルティス ファーマ)<承認年月>2022年2月<改訂項目>[追加]効能・効果生殖補助医療における調節卵巣刺激[追加]用法・用量通常、成人にはレトロゾールとして1日1回2.5mgを月経周期3日目から5日間経口投与する。十分な効果が得られない場合は、次周期以降の1回投与量を5mgに増量できる。<Shimo's eyes>2022年4月から、不妊治療の経済的負担を軽減するために生殖医療ガイドライン等を踏まえて、人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」について、保険適用されることになりました。アロマターゼ阻害薬である本剤は、従前の適応は閉経後乳がんでしたが、不妊治療に用いる場合、閉経前女性のエストロゲン生合成を阻害する結果、卵胞刺激ホルモン(FSH)分泌が誘導され、卵巣内にアンドロゲンが蓄積し、卵巣が刺激されて卵胞発育が促進されます。ほかにも、プロゲステロン製剤(商品名:ルティナス腟錠等)は「生殖補助医療における黄体補充」、エストラジオール製剤(同:ジュリナ錠等)は「生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整」「凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期」、さらに卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤(同:ヤーズフレックス配合錠、ルナベル配合錠等)は「生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整」の適応がそれぞれ追加されています。バイアグラほか:男性不妊治療に保険適用<対象薬剤>シルデナフィルクエン酸塩錠(商品名:バイアグラ錠25mg/50mg、同ODフィルム25mg/50mg、製造販売元:ヴィアトリス製薬)タダラフィル錠(商品名:シアリス錠5mg/10mg/20mg、製造販売元:日本新薬)<承認年月>2022年4月<改訂項目>[追加]効能・効果勃起不全(満足な性行為を行うに十分な勃起とその維持ができない患者)[追加]保険給付上の注意本製剤が「勃起不全による男性不妊」の治療目的で処方された場合にのみ、保険給付の対象とする。<Shimo's eyes>こちらも少子化社会対策として、従前の勃起不全(ED)の適応は変わりませんが、保険適用となりました。本製剤について、保険適用の対象となるのは、勃起不全による男性不妊の治療を目的として一般不妊治療におけるタイミング法で用いる場合です。参考資料 不妊治療に必要な医薬品への対応(厚労省)

54.

女性の頻尿、どう尋ねるべき?【Dr.山中の攻める!問診3step】第13回

第13回 女性の頻尿、どう尋ねるべき?―Key Point―1日3L以上の排尿と強い口渇があるかを確認する2回以上の夜間頻尿があると生活に支障をきたす医師が質問をしないと女性は尿失禁を訴えないことが多い症例:76歳 女性主訴)頻尿現病歴)2週間前から頻尿と排尿時痛がある。近くの診療所で抗菌薬の処方を受けたが、症状の改善はない。尿の排出時、下腹部に痛みを生じる。3日前からトイレに間に合わず尿を漏らすことが増えてきたため紙パンツを使用するようになった。夜間の排尿回数は5回。熟眠できない。既往歴)変形性関節症薬剤歴)なし生活歴)機会飲酒、喫煙:5本/日(20歳~)身体所見)体温36.8℃、血圧132/80mmHg、心拍数86回/分、呼吸回数18回/分意識:清明腹部:軟。膨隆なし。下腹部に軽度の圧痛あり経過)尿意切迫感と頻尿、切迫性尿失禁の症状から過活動膀胱を疑い牛車腎気丸を処方した。尿意切迫感は改善を認めた。その後、ナースに「最近、子宮脱が気になっている」との訴えがあった。子宮脱も夜間多尿の原因となっていた可能性がある。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!年をとると過活動膀胱に罹患する割合が増加する(70代で20%、80歳以上で35%)1)カルシウム拮抗薬は夜間頻尿を起こす成人女性の25%に尿失禁がある【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】多尿(>3L/日)か確認する2)問診:口渇の程度、飲水量、塩分摂取量、利尿薬、アルコールやカフェイン摂取心因性多飲症では1日3~5Lの飲水により低ナトリウム血症を起こすスポット尿のナトリウム濃度(mmol/L)を17で割ると、尿1LあたりのNaCl量(g)が推定できる。この数値に尿量(L)をかければ1日あたりの推定食塩摂取量となる多尿があれば、尿浸透圧を測定する。250mOsm/kg以下ならば水利尿、300mOsm/kg以上ならば浸透圧利尿である水利尿の原因:尿崩症(中枢性、腎性)、心因性多尿浸透圧利尿の原因:糖尿病、薬剤(マンニトール)、ナトリウム負荷、利尿薬、腎不全【STEP3-1】夜間は何度トイレに起きるか就寝後に2回以上、排尿のため起きなければならない症状を夜間頻尿と呼ぶ健常者では抗利尿ホルモン(バソプレシン)は夜間に多く分泌されるため、夜間尿は少なくなる。<夜間頻尿の原因>夜間のみ尿量が多くなる夜間多尿、膀胱容量の減少(過活動性膀胱、前立腺肥大症、間質性膀胱炎、骨盤臓器脱)、睡眠障害<夜間多尿の原因>高血圧、心不全、腎不全、睡眠時無呼吸症候群、寝る前の水分過剰摂取【STEP3-2】尿失禁はあるか2)3)4)◆新たに出現した尿失禁の鑑別診断(DIAPERS)Drug(薬剤)Atrophic vaginitis(萎縮性膣炎)Endocrine(高血糖、高カルシウム血症)Stool impaction(宿便)Infection(感染症:とくに尿路感染症)Psychological(うつ、認知症、せん妄)Restricted mobility(運動制限)(表)尿失禁のタイプ画像を拡大する<参考文献・資料>1)日本泌尿器科学会:頻尿(ひんにょう)とは2)Harrison’s Principles of Internal Medicine. 2018. p294-295,p3432-3436.3)MKSAP19 General Internal Medicine1. 2021. p95-98.4)山中克郎ほか. UCSFに学ぶ できる内科医への近道. 改訂4版. 2012. p343.

55.

ファイザーの経口コロナ治療薬「パキロビッドパック」を特例承認/厚労省

 厚生労働省は2月10日、ファイザーが開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する抗ウイルス剤「ニルマトレルビル錠/リトナビル錠」(商品名:パキロビッドパック、以下パキロビッド)について、国内における製造販売を特例承認した。2021年12月24日に承認されたモルヌピラビル(ラゲブリオ)に続き、本剤は国内における2剤目の経口コロナ治療薬となる。2月27日までは、全国約2,000の医療機関における院内処方およびこれらの医療機関と連携可能な地域の薬局でパイロット的な取り組みを実施し、それ以降は全国の医療機関の入院・外来でも処方可能となる。 パキロビッドは、重症化リスク因子を有する軽症~中等症患者が投与対象。通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児に対し、ニルマトレルビル1回300mgおよびリトナビル1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与する。 本剤を巡っては、高血圧や高脂血症、不眠症などの治療薬において併用禁忌薬が多数あることから、審議会でも専門家から慎重な投与が必要との意見が出たという。本剤の添付文書には、下記39種の薬剤および含有食品について併用禁忌が明示されている。【併用禁忌】▼アンピロキシカム▼ピロキシカム▼エレトリプタン臭化水素酸塩▼アゼルニジピン▼オルメサルタン、メドキソミル・アゼルニジピン▼アミオダロン塩酸塩▼ベプリジル塩酸塩水和物▼フレカイニド酢酸塩▼プロパフェノン塩酸塩▼キニジン硫酸塩水和物▼リバーロキサバン▼リファブチン▼ブロナンセリン▼ルラシドン塩酸塩▼ピモジド▼エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン▼エルゴメトリンマレイン酸塩▼ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩▼メチルエルゴメトリンマレイン酸塩▼シルデナフィルクエン酸塩▼タダラフィル▼バルデナフィル塩酸塩水和物▼ロミタピドメシル酸塩▼ベネトクラクス▼ジアゼパム▼クロラゼプ酸二カリウム▼エスタゾラム▼フルラゼパム塩酸塩▼トリアゾラム▼ミダゾラム▼リオシグアト▼ボリコナゾール▼アパルタミド▼カルバマゼピン▼フェノバルビタール▼フェニトイン▼ホスフェニトインナトリウム水和物▼リファンピシン▼セイヨウオトギリソウ含有食品 また、併用に注意すべき薬剤なども多数記載されているので、処方の際には配慮が必要だ。詳細については、添付文書を参照されたい。

57.

排尿障害患者の悩み「飛行機に乗るとクラクラするんです」【スーパー服薬指導(5)】

スーパー服薬指導(5)排尿障害患者の悩み「飛行機に乗るとクラクラするんです」講師:近藤 剛弘氏 / 元 ファイン総合研究所 専務取締役動画解説ジスチグミンが処方されている患者が、3週間のニューヨーク出張に。枕が変わると寝つきが悪くなるという、その患者に処方されたのは…

58.

継続の必要性を評価してトラマドールカスケードを解決【うまくいく!処方提案プラクティス】第44回

 今回は、トラマドールの漫然服用に疑問を持ち、情報収集やモニタリングを行い、減薬につなげた事例を紹介します。トラマドールは弱オピオイドとしてオピオイド受容体に作用するものの、医療用麻薬としての規制を受けないことから、強い鎮痛効果を期待して整形外科や歯科領域で汎用されています。長期継続されている場合もあるため、処方目的や治療効果などから薬剤師の視点でも継続の必要性を評価する必要があります。患者情報70歳、女性(施設入居)基礎疾患高血圧症、認知症、過活動膀胱介護度要介護2服薬管理施設職員処方内容1.トラマドール・アセトアミノフェン配合錠 3錠 分3 毎食後2.ドンペリドン錠10mg 3錠 分3 毎食後3.オルメサルタン錠20mg 1錠 分1 朝食後4.エルデカルシトールカプセル0.75μg 1C 分1 朝食後5.ソリフェナシン錠5mg 1錠 分1 朝食後6.ドネペジル錠5mg 1錠 分1 朝食後7.ゾルピデム錠5mg 1錠 分1 就寝前本症例のポイントこの患者さんは、施設入居前からトラマドール・アセトアミノフェン配合錠を服用していました。初回の訪問診療に同行した際、鎮痛効果の評価のため、どこが痛むのか確認しました。しかし、とくに痛みの訴えはなく、体動時や就寝中の痛みもないことから、トラマドール・アセトアミノフェン配合錠の継続の必要性に疑問が湧きました。施設看護師に確認しても、入居時の申し送りでは触れられなかったそうでわかりませんでした。一方で、患者さんも施設スタッフも服薬する錠数が多くて負担になっていることを聞き取ることができました。さらに気になったことは、制吐薬のドンペリドンも同様に継続されていることでした。トラマドール導入時に嘔気対策として追加されたと推測できますが、お薬手帳を見ると半年以上も処方されていました。トラマドールの副作用である嘔気は数日程度で耐性ができて軽減するため、多くの場合は1~2週間で減量・中止に至ります。また、このまま継続した場合、ドパミン受容体遮断作用の弊害である錐体外路症状(薬剤性パーキンソニズム)や内分泌調節異常などのリスクも懸念されます。そこで、処方契機を調べるため、施設で保管されている診療情報提供書や退院時サマリー、多職種情報共有シート(フェイスシート)などを調査しました。過去の診療情報提供書によれば、約1年前に腰椎圧迫骨折の既往があり、手術後の疼痛コントロールを目的としてトラマドール・アセトアミノフェン配合錠が開始され、退院後は近医でそのまま継続されていたことがわかりました。処方提案と経過手術は1年以上前で経過もよく、現時点では痛みの訴えもないことから、トラマドール・アセトアミノフェン配合錠の中止は可能ではないかと考え、後日の訪問診療後に、医師にトラマドール・アセトアミノフェン配合錠からアセトアミノフェン単剤(900mg/日)への切り替えを提案しました。それに合わせてドンペリドンの中止も相談したところ、両方とも承認を得ることができました。その後、処方変更後の疼痛悪化や嘔気はなく、不安や不眠などの退薬症候の出現などもありませんでした。そのため、アセトアミノフェンを600mg/日(分2、朝夕食後)→300mg/日(分1、朝食後)と徐々に減らし、最終的に中止することを提案して、そのように処方調整していくことになりました。疼痛の出現などの評価は施設看護師にお願いしましたが、とくに問題はなく、患者さんは鎮痛薬から卒業することができました。今回の事例ではうまく減薬ができましたが、長期継続薬を減薬する際は、治療効果や中止の可否を評価するために、薬剤師から医師および多職種への積極的な介入が必要だと感じました。

59.

抗ムスカリンOAB治療薬と認知症発症リスク

 過活動膀胱(OAB)治療薬の使用による認知症発症リスクへの影響については、明らかになっていない。カナダ・トロント大学のRano Matta氏らは、抗ムスカリンOAB治療薬の使用と認知症発症リスクとの関連について、β-3アゴニストであるミラベグロンと比較し、検討を行った。European Urology Focus誌オンライン版2021年11月3日号の報告。 カナダ・オンタリオ州でOAB治療薬を使用した患者を対象に、人口ベースのケースコントロール研究を実施した。対象は、過去6~12ヵ月間で抗ムスカリンOAB治療薬またはミラベグロンを使用し、2010~17年に認知症およびアルツハイマー病と診断された66歳以上の患者1万1,392例と年齢および性別がマッチした非認知症患者2万9,881例。人口統計学および健康関連の特性に応じて調整し、認知症のオッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・過去6ヵ月間でソリフェナシンおよびdarifenacinを使用した患者は、ミラベグロンを使用した患者と比較し、認知症発症リスクが高かった。 ●ソリフェナシンのOR:1.24(95%信頼区間[CI]:1.08~1.43) ●darifenacinのOR:1.30(95%CI:1.08~1.56)・診断前6ヵ月~1年間でソリフェナシン、darifenacin、トルテロジン、フェソテロジンを使用した患者は、ミラベグロンを投与した患者と比較し、認知症発症率の上昇との関連が認められた。 ●ソリフェナシンのOR:1.34(95%CI:1.11~1.60) ●darifenacinのOR:1.49(95%CI:1.19~1.86) ●トルテロジンのOR:1.21(95%CI:1.02~1.45) ●フェソテロジンのOR:1.39(95%CI:1.14~1.71)・オキシブチニンまたはtrospiumでは、影響が認められなかった。この原因として、プロトパシーバイアスが考えられる。・本研究の限界として、アウトカムの誤分類や健康関連データベース使用による交絡因子の影響が挙げられる。 著者らは「診断6ヵ月前にソリフェナシンおよびdarifenacinを使用した高齢者、診断前年にソリフェナシン、darifenacin、トルテロジン、フェソテロジンを使用した高齢者では、ミラベグロンを投与した患者と比較し、認知症発症リスクが高かった。OAB患者の治療に際して、慎重な薬剤選択が求められる」としている。

60.

ドイツで産んでみた(3) ドイツの育児制度【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第8回

予定より1ヵ月早く出産切迫早産を乗り切り、36週で双子の女の子が誕生しました(緊急カイザーでした。ドイツでは“Kaiserschnitt”[カイザーシュニット]と言います)。NICUには10日ほど滞在し、無事に退院することができました。生後10分の娘2人とスリーショット子供が産まれた! と言うことを職場に伝えたら、いつもよくしてくれる医事課のおばさんから電話がかかってきました。「“Elternzeit”の申請と、“Elterngeld”の申請はちゃんとできてる? 忘れずに申請しなさい!」とのことでした。“Eltern”はドイツ語で「親」と言う意味です。“Zeit”は「時間」、“Geld”は「お金」です。直訳すると「両親の時間」「両親のお金」、ざっくり言うと「育休」と「両親手当」と言ったところでしょうか。そう言う制度があるのは知っていたのですが…。出産予定日が1ヵ月先だったので、正直あんまり調べてなくて…慌ててネットで調べました。日本も見習って欲しい手厚いドイツの出産育児制度ドイツは両親のどちらも育休を取る権利があります。最大で3年だったかな? 申請すれば必ず取れます。まとめて取らなくてもよい制度です。子供が3歳になるまで、気が向いたときに親はいつでも取れるという、素晴らしいシステムです。育休の後は、育休前のポジションが法律で保証されています。ちなみにその間の給料については、父母のうちの「働く側の親」に関して2ヵ月間は支払われます。「育児に専念する側の親」はもっと長い期間支払われるそうです(うちの奥様は専業主婦だったので請求できなかったんです…)。そして、それとは別に子供1人に対し、ベーシックインカムが支払われます。一人当たり月に200ユーロ(約2万5,000円)が18歳まで支払われます。オムツは安くて病院もタダ。とにかくドイツは育児に費用がかからない国なので、子供ができると黒字になるようにできています。休みも取れて、お金も儲かる。私の同僚は子供ができたときに「休みが取れる!」と言ってガッツポーズをしていました。ドイツも少子化が大きな社会問題となっていますので、国が非常に明解な対策を取っていることがわかります。

検索結果 合計:187件 表示位置:41 - 60