サイト内検索|page:29

検索結果 合計:628件 表示位置:561 - 580

561.

中等度~重度アルツハイマー病に対するドネペジルvs.メマンチンvs.両者併用vs.治療中止

 軽度~中等度アルツハイマー病に対するコリンエステラーゼ阻害薬のベネフィットは臨床試験により示されているが、中等度~重度に進行後もベネフィットが持続するかは明らかとなっていない。英国・ロンドン大学のRobert Howard氏らは、3ヵ月以上ドネペジル(商品名:アリセプトほか)を服用していた中等度~重度の居宅アルツハイマー病患者を対象に、同薬を中止した場合、継続した場合、NMDA受容体拮抗薬メマンチン(商品名:メマリー)に切り替えた場合、両薬を併用した場合とを比較する多施設共同二重盲検2×2プラセボ対照試験を行った。NEJM誌2012年3月8日号より。295例を4群に割り付け52週間治療、認知機能、ADLの改善度を評価 試験は2008年2月~2010年3月に、地域で暮らす中等度~高度[標準化ミニメンタルステート検査(SMMSE)スコア:5~13、スコアは0~30で高いほど認知機能が良好]アルツハイマー病患者295例(平均年齢約77歳)を対象に行われた。被験者は、ドネペジル投与継続群(10mg/日)、ドネペジル投与中止群(4週間5mg投与後5週目からプラセボ)、ドネペジル投与中止後メマンチン投与開始群(5mg/日から開始し4週目から20mg/日)、ドネペジル投与継続+メマンチン投与開始に割り付けられ、52週間治療を受け評価された。 共同主要アウトカムは、SMMSEスコア、ブリストル日常生活動作尺度(BADLS)スコア(スコア0~60、高いほど機能障害が大きい)とし、臨床的に意味のあるスコア差を、SMMSEは1.4ポイント以上、BADLSは3.5ポイント以上とした。ドネペジル継続にベネフィット 中止群患者と比較して、ドネペジル継続投与群はSMMSEスコアが平均1.9ポイント高く(95%信頼区間:1.3~2.5)、BADLSスコアは3.0ポイント低く(同1.8~4.3)、認知機能、機能障害とも有意な改善(いずれもP<0.001)、臨床的に意味のあるスコア変化が示された。メマンチン投与を受けていた患者は、メマンチン投与を受けていなかった患者との比較で、SMMSEスコアは平均1.2ポイント高く(同0.6~1.8、P<0.001)、BADLSスコアは1.5ポイント低かった(同:0.3~2.8、P=0.02)が、両スコアとも臨床的に意味のある最小変化値を下回っていた。 ドネペジルとメマンチンの有効性は、併用することで有意差が示されることはなく、そのベネフィットはドネペジル単独使用を有意には上回らなかった。これらの結果からHoward氏は、「中等度~高度アルツハイマー病患者では、ドネペジルの継続投与が、12ヵ月間にわたって、認知機能、機能障害の改善についてのスコア差が臨床的に意味のある最小数値を上回り、有意なベネフィットがあることが示された」と結論している。

562.

成人ダウン症の認知症に、抗アルツハイマー病薬は有効か?

 成人ダウン症患者の認知機能障害や認知症に対し、アルツハイマー病治療薬のメマンチン(商品名:メマリー)は効果を示さないことが、英キングス・カレッジ・ロンドンのMarisa Hanney氏らが行ったMEADOWS試験で示された。ダウン症患者のアルツハイマー病発症率はきわめて高く、40歳以上になると多くにアルツハイマー病に特徴的な病理学的な変化がみられるという。N-メチル-D-アスパラギン酸型(NMDA)グルタミン酸受容体拮抗薬であるメマンチンは、ダウン症の遺伝子導入マウスモデルで有効性が示されているが、ダウン症患者に対するアルツハイマー病治療薬の投与を支持するエビデンスは十分ではない。Lancet誌2012年2月11日号(オンライン版2012年1月10日号)掲載の報告。成人ダウン症に対するメマンチンの有用性を評価 MEADOWS試験は、成人ダウン症患者の認知機能障害に対するメマンチンの有用性を評価するプロスペクティブな多施設共同二重盲検無作為化試験。 対象は、英国とノルウェーの4つの学習障害センターから登録された40歳以上のダウン症または年齢を問わず認知症と診断されたダウン症の患者であった。これらの患者が、メマンチンあるいはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、52週の治療が行われた。 主要評価項目は、DAMESスコア(注意、記憶、実行機能からなるダウン症の認知機能評価尺度)および適応行動評価尺度I、II(ABS-I、-II)に基づく認知機能と適応行動機能の変化とし、ベースライン、12、26、52週に評価を行った。両群とも認知機能、適応行動機能が低下、有意差はなし 試験は2005年6月20日に開始され、2008年12月30日にフォローアップを終えた。173例が登録され、メマンチン群に88例(平均年齢51.7歳、男性57%、認知症35%)、プラセボ群には85例(同:51.0歳、56%、35%)が割り付けられた。メマンチン群のうちDAMESスコアは72例(82%)、ABSは75例(85%)で得られ、プラセボ群はそれぞれ74例(87%)、73例(86%)から得られた。 52週の治療後、両群ともに認知機能、適応行動機能の低下が認められたが、群間に有意な差はなかった。ベースラインスコアで調整後も、両群間のDAMESスコアの差は-4.1(p=0.36)、ABS-Iの差は-8.5(p=0.15)、ABS-IIの差は2.0(p=0.67)と有意差は認めず、むしろプラセボ群で良好な傾向がみられた。メマンチン群の10例(11%)、プラセボ群の6例(7%)で重篤な有害事象が認められた(p=0.33)。重篤な有害事象により、メマンチン群の5例、プラセボ群の4例が死亡した(p=0.77)。 著者は、「40歳以上のダウン症患者では、メマンチンによる認知機能障害や認知症の改善効果を示すエビデンスは得られなかった」と結論し、「アルツハイマー病に有効な薬剤が、成人ダウン症の認知機能障害に効果を示すとは限らないことが示唆された」と指摘している。

563.

直接的レニン阻害薬と他のRAS阻害薬の併用で高カリウム血症増加

直接的レニン阻害薬アリスキレン(商品名:ラジレス)は、ACE阻害薬やARBと併用すると、高カリウム血症のリスクを増大させることが、カナダ・トロント大学のZiv Harel氏らの検討で示された。アリスキレンなどのレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬は、うっ血性心不全や高血圧、蛋白尿などのさまざまな病態の管理に用いられているが、他のRAS阻害薬との併用における重篤な合併症として高カリウム血症や急性腎障害が知られている。アリスキレンと他のRAS阻害薬の併用に関する試験の多くは代用アウトカム(surrogate outcome)を用いているため、真の有害事象の検出能は低いという。BMJ誌2012年2月4日号(オンライン版2012年1月9日号)掲載の報告。アリスキレンの安全性をメタ解析で評価研究グループは、他のRAS阻害薬との併用におけるアリスキレンの安全性を検証するために、無作為化対照比較試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。Medline、Embase、Cochrane Libraryおよび2つの臨床試験のレジストリーを用いて、2011年5月7日までに出版された文献を検索した。アリスキレンとアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の併用療法と、これらの薬剤の単剤療法を比較した無作為化対照比較試験(治療期間4週以上)のうち、有害事象として高カリウム血症と急性腎障害に関する数値データを提示した試験を抽出した。変量効果モデルを用いて総合リスク比と95%信頼区間(CI)を算出した。併用時は血清カリウム濃度のモニタリングを10試験、4,814例が解析の対象となった。アリスキレンとACE阻害薬またはARBの併用療法では、ACE阻害薬単剤やARB単剤(相対リスク:1.58、95%CI:1.24~2.02)あるいはアリスキレン単剤(同:1.67、1.01~2.79)に比べ、高カリウム血症が有意に増加した。急性腎障害のリスクについては、併用療法と単剤療法で有意な差は認めなかった(相対リスク:1.14、95%CI:0.68~1.89)。著者は、「アリスキレンは、ACE阻害薬やARBと併用すると、高カリウム血症のリスクを増大させる」と結論し、「これらの薬剤を併用する場合は、血清カリウム濃度の注意深いモニタリングを要する」と注意を喚起している。(菅野守:医学ライター)

564.

経口抗凝固療法の自己モニタリング、血栓塞栓イベントを低減

患者自身が検査や用量の調整を行う自己モニタリングによる経口抗凝固療法は、本療法が適応となる全年齢層の患者において安全な治療選択肢であることが、英国・オックスフォード大学のCarl Heneghan氏らの検討で示された。ビタミンK拮抗薬による経口抗凝固療法を受ける患者は増加し続けているが、治療域が狭いため目標とする国際標準化比(INR)を維持するには頻回の検査や適切な用量の調整などを要するという問題がある。自己モニタリングは、その有効性を示す優れたエビデンスがあるものの、臨床導入には相反する見解がみられるという。Lancet誌2012年1月28日号(オンライン版2011年12月1日号)掲載の報告。自己モニタリングの意義を検証するメタ解析研究グループは、経口抗凝固薬の患者自身による自己モニタリング(自己検査[検査は患者が行い用量は医師が決める]または自己管理[検査、用量調整とも患者が行う])の意義を検証するために、自己モニタリングと医師によるモニタリングの有効性を比較した無作為化試験のメタ解析を行った。Ovid versions of Embase(1980~2009年)とMedline(1966~2009年)を検索し、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどで検索結果を調整した。UK National Research Register and Trials Centralなどで未出版の試験も検索した。抽出された全試験の著者と連絡を取り、死亡までの期間、初回大出血、初回血栓塞栓イベントに関する個々の患者データの提供を求めた。機械弁置換や心房細動の患者についても解析した。年齢別、対照群のケアのタイプ(抗凝固療法専門施設とプライマリ・ケア施設)、自己検査と自己管理、性別について、事前に規定されたサブグループ解析を行った。変量効果モデルで統合ハザード比(HR)を算出した。 血栓塞栓イベントが半減、特に55歳未満と機械弁置換患者で高い効果1992~2006年に患者登録がなされ、2000~2010年に発表された11試験(6,417例、1万2,800人・年)が解析の対象となった。全体の平均年齢は65.0歳(17~94歳)、女性が22%、心房細動患者は53%、機械弁置換患者は35.0%であった。血栓塞栓イベントは、医師によるモニタリング群に比べ自己モニタリング群で有意に減少した(HR:0.51、95%信頼区間[CI]:0.31~0.85)が、大出血(同:0.88、0.74~1.06)と死亡率(同:0.82、0.62~1.09)は両群間に差はみられなかった。特に、55歳未満の患者(HR:0.33、95%CI:0.17~0.66)と機械弁置換患者(同:0.52、0.35~0.77)で血栓塞栓イベントの抑制効果が高かった。85歳以上の患者(99例)では、自己モニタリングによる合併症の増加はみられず、死亡率は有意に低下した(同:0.44、0.20~0.98)。著者は、「経口抗凝固療法の自己検査および自己管理は、本療法が適応となる全年齢層の患者において安全な治療選択肢である」と結論し、「自己管理の選択肢は、適切な医療支援による保護の元で患者に提供すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

565.

選択的ニューロキニン1受容体拮抗型制吐剤 ホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド)

がん化学療法に伴う悪心・嘔吐に対する制吐剤として、選択的ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬であるホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド点滴静注用150mg、以下プロイメンド)が、2011年12月9日に発売された。本剤は、2009年12月に発売された経口制吐剤アプレピタント(商品名:イメンドカプセル)のプロドラッグ体の注射剤である。がん化学療法における制吐療法の現状と課題抗がん剤の有害事象の1つである悪心・嘔吐は、患者さんのQOLを著しく低下させ、治療継続を妨げる大きな要因となる。その発現時期により、抗がん剤投与後24時間までに発症する「急性」の悪心・嘔吐と、24時間以降に発症する「遅発性」の悪心・嘔吐に分けられ、急性には主にセロトニンが、遅発性には主に中枢でのサブスタンスPが関与するとされている。急性の悪心・嘔吐については、1990年代に発売された5HT3受容体拮抗薬により大きく改善されたが、遅発性の悪心・嘔吐には抑制効果が不十分であった。その後、サブスタンスPとNK1受容体の結合を阻害するアプレピタントが、急性および遅発性の悪心・嘔吐に対して高い有効性が認められ、2009年12月に発売された。さらに、2010年4月、半減期が長く遅発性の悪心・嘔吐にも効果を示す5HT3受容体拮抗薬のパロノセトロンが発売され、同年5月には日本癌治療学会から制吐薬適正使用ガイドラインが発行されたことにより、制吐療法への関心が高まった。しかし、患者さんが症状を訴えられずにいたり、近年普及してきている外来化学療法では、患者さんが自宅に戻るため悪心・嘔吐症状が把握しにくいなど、症状を見逃す可能性も少なくない。今後、患者さんの症状を拾い上げるためのさらなる工夫が必要と思われる。一方、アプレピタントは経口剤であることから、咽頭・喉頭・食道がんなどの患者さんでは服用が難しく、また、患者さんの認識不足や飲み忘れにより、処方しても服用されないことが懸念されることや、抗がん剤には点滴静注で投与される薬剤も多いことなどから、医療現場では注射剤の発売が期待されていた。注射剤により確実に投与可能今回、発売されたプロイメンドは、アプレピタントのプロドラッグ体であり、静脈内投与後、速やかにアプレピタントに代謝される注射剤である。そのため、経口剤の服用が困難な患者さんにも投与可能であり、飲み忘れを懸念することなく確実に投与できる。本剤1回点滴静注投与によって、急性・遅発性ともに、アプレピタント3日間投与と同等の効果が得られることが海外第Ⅲ相二重盲検比較試験において示されている。国内では、グラニセトロン(iv)+デキサメタゾンリン酸エステル(iv)の2剤併用群(標準治療群)と、この2剤にプロイメンドを追加した3剤併用群(プロイメンド群)を比較した第Ⅲ相二重盲検比較試験において、全期間における有効率がプロイメンド群64.2%と、標準治療群47.3%に比べて有意に(p<0.05)高い有効率が得られた。なお、本試験では26.4%に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。主な副作用は、便秘(9.2%)、ALT(GPT)上昇(6.9%)、しゃっくり(5.7%)、注入部位疼痛・滴下投与部位痛(5.2%)などであった(承認時)。また、重大な副作用として、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、穿孔性十二指腸潰瘍、アナフィラキシー反応が報告されている(アプレピタントでの報告を含む)。ガイドラインにおける推奨2010年5月発行の制吐薬適正使用ガイドラインでは、高度催吐リスクの抗がん剤・レジメン、中等度催吐リスクの抗がん剤・レジメンのうちカルボプラチン、イホスファミド、イリノテカン、メトトレキサートなどを使用する際には、アプレピタント+5HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用が推奨されている。すでに米国など世界30ヵ国以上でプロイメンドが発売されており、ASCOガイドライン(2011年改訂版)やNCCNガイドライン(2011年3月改訂版)には、プロイメンド+5HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用が追記されている。わが国の制吐薬適正使用ガイドラインにおいても、次回改訂時に追記されることが予想される。がん化学療法におけるQOL改善と治療継続に期待プロイメンドの登場により、アプレピタントが服用困難ながん患者さんへの投与が可能となった。また、患者さんの服薬コンプライアンスによらず、確実に投与できることも大きなメリットと言えよう。医療者側においても、点滴ラインから一連の投与を行うレジメンに組み込みやすいと思われる。がん化学療法においては、薬剤・レジメンの催吐リスク、性別、年齢、前治療などを考慮した適切な制吐剤により悪心・嘔吐を予防することが、がん治療の継続につながる。プロイメンドが、より多くのがん患者さんにおけるQOLの改善、がん化学療法の継続に貢献することが期待される。

566.

がん化学療法における制吐療法に新たな選択肢

がん化学療法に伴う悪心・嘔吐に対する制吐剤として、選択的ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬であるホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド点滴静注用150mg、以下プロイメンド)が、本日(12月9日)発売された。本剤は、2009年12月に発売された経口制吐剤アプレピタント(商品名:イメンドカプセル)のプロドラッグ体の注射剤である。がん化学療法における制吐療法の現状と課題抗がん剤の有害事象の1つである悪心・嘔吐は、患者さんのQOLを著しく低下させ、治療継続を妨げる大きな要因となる。その発現時期により、抗がん剤投与後24時間までに発症する「急性」の悪心・嘔吐と、24時間以降に発症する「遅発性」の悪心・嘔吐に分けられ、急性には主にセロトニンが、遅発性には主に中枢でのサブスタンスPが関与するとされている。急性の悪心・嘔吐については、1990年代に発売された5HT3受容体拮抗薬により大きく改善されたが、遅発性の悪心・嘔吐には抑制効果が不十分であった。その後、サブスタンスPとNK1受容体の結合を阻害するアプレピタントが、急性および遅発性の悪心・嘔吐に対して高い有効性が認められ、2009年12月に発売された。さらに、2010年4月、半減期が長く遅発性の悪心・嘔吐にも効果を示す5HT3受容体拮抗薬のパロノセトロンが発売され、同年5月には日本癌治療学会から制吐薬適正使用ガイドラインが発行されたことにより、制吐療法への関心が高まった。しかし、患者さんが症状を訴えられずにいたり、近年普及してきている外来化学療法では、患者さんが自宅に戻るため悪心・嘔吐症状が把握しにくいなど、症状を見逃す可能性も少なくない。今後、患者さんの症状を拾い上げるためのさらなる工夫が必要と思われる。一方、アプレピタントは経口剤であることから、咽頭・喉頭・食道がんなどの患者さんでは服用が難しく、また、患者さんの認識不足や飲み忘れにより、処方しても服用されないことが懸念されることや、抗がん剤には点滴静注で投与される薬剤も多いことなどから、医療現場では注射剤の発売が期待されていた。続きはこちら

567.

心房細動患者に対するapixaban vs. ワルファリン

心房細動患者の脳卒中または全身性塞栓症のイベント抑制効果について検討された「ARISTOTLE」試験の結果、新規経口直接Xa阻害薬apixabanはワルファリンと比較して、同イベント発生を約2割低下し、予防に優れることが明らかにされた。大出血発生については約3割低く、全死因死亡率は約1割低かった。ワルファリンに代表されるビタミン拮抗薬は、心房細動患者の脳卒中の予防に高い効果を示すが、一方でいくつかの限界もあることが知られる。apixabanについては、これまでにアスピリンとの比較で、同等の集団において脳卒中リスクを抑制したことが示されていた。米国・デューク大学医療センターのChristopher B. Granger氏を筆頭著者とする、NEJM誌2011年9月15日号(オンライン版2011年8月28日号)掲載報告より。18,201例を対象とした国際多施設共同無作為化二重盲検試験ARISTOTLE(Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation)試験は、39ヵ国1,034施設から登録された1つ以上の脳卒中リスクを有する心房細動患者18,201例を対象に行われた、国際多施設共同無作為化二重盲検試験であった。被験者は無作為に、apixaban投与群(5mgを1日2回)かワルファリン投与群(目標INR:2.0~3.0)に割り付けられ、中央値1.8年の間追跡された。主要アウトカムは、脳梗塞、脳出血、全身性塞栓症のいずれかの発生とされた。試験は非劣性を検討するようデザインされ、副次評価において主要アウトカムに関する優位性、大出血や全死因死亡に関する優位性が検討された。主要アウトカム発生について、apixaban群の非劣性、優位性が認められる結果、主要アウトカムの発生は、apixaban群1.27%/年、ワルファリン群1.60%/年、ハザード比0.79(95%信頼区間:0.66~0.95)で、apixaban群の非劣性(p<0.001)、優位性(p=0.01)が認められた。大出血の発生は、apixaban群2.13%/年、ワルファリン群3.09%/年、ハザード比0.69(同:0.60~0.80)で、apixaban群の優位性が認められた(p<0.001)。全死因死亡についても、apixaban群3.52%/年、ワルファリン群3.94%/年、ハザード比0.89(同:0.80~0.99)で、apixaban群の優位性が認められた(p=0.047)。また、脳出血の発生は、apixaban投与群0.24%/年に対し、ワルファリン群0.47%/年(ハザード比:0.51、95%CI:0.35~0.75、p<0.001)、脳梗塞または病型不明の脳卒中発生については、apixaban群0.97%/年、ワルファリン群1.05%/年(ハザード比:0.92、95%CI:0.74~1.13、p=0.42)であった。(朝田哲明:医療ライター)

568.

低リスク肺塞栓症の低分子量ヘパリンによる外来治療は入院治療に劣らない

低リスクの急性肺塞栓症に対する低分子量ヘパリンを用いた外来治療は、入院治療に劣らない有効性と安全性を有することが、スイス・ベルン大学病院のDrahomir Aujesky氏らの検討で示された。欧米では、症候性の深部静脈血栓症の治療では低分子量ヘパリンによる外来治療が通常治療とされる。肺塞栓症の診療ガイドラインでは、血行動態が安定した患者には外来治療が推奨されているが、現行の症候性肺塞栓症の治療の多くは入院患者を想定したものだという。Lancet誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月23日号)掲載の報告。外来治療の非劣性を評価する非盲検無作為化試験本研究は、4ヵ国(スイス、フランス、ベルギー、アメリカ)の19の救急診療施設の参加のもと、肺塞栓症の入院治療に対する外来治療の非劣性を評価する目的で実施された非盲検無作為化試験である。症状のみられる急性肺塞栓症で、死亡リスクが低い患者(肺塞栓症重症度インデックスでリスクがclass IあるはII)が、外来治療(看護師の指導でエノキサパリン1mg/kg×2回/日を自身で皮下投与し、24時間以内に退院)を行う群あるいは外来治療と同じレジメンを入院で施行する群に無作為に割り付けられた。外来治療群のうち自己注射が不可能な患者には、介護者あるいは訪問看護師が投与した。両群とも、経口抗凝固薬とビタミンK拮抗薬を早期に導入し、90日間以上継続することが推奨された。主要評価項目は、90日以内の症候性静脈血栓塞栓症の再発、14日あるいは90日以内の大出血などの安全性のアウトカムおよび90日死亡率とした。非劣性の定義は両群のイベント発生率の差が4%未満の場合とした。患者にも好評、在院期間の短縮に2007年2月~2010年6月までに344例が登録され、外来治療群に172例が、入院治療群にも172例が割り付けられた。評価可能例は、それぞれ171例、168例であった。外来治療群の171例のうち90日以内の静脈血栓塞栓症再発例は1例(0.6%)のみ、入院治療群では再発例はなく、非劣性の判定基準を満たした[95%上限信頼限界(UCL):2.7%、p=0.011]。90日死亡例は両群とも1例(それぞれ0.6%、95%UCL:2.1%、p=0.005)のみで、14日以内の大出血は外来治療群が2例(1.2%)、入院治療群では認めなかった(95%UCL:3.6%、p=0.031)。90日までに外来治療群の3例(1.8%)が大出血をきたしたが、入院治療群では認めなかった(95%UCL:4.5%、p=0.086)。平均在院期間は、外来治療群が0.5日(SD 1.0)、入院治療群は3.9日(SD 3.1)であった。著者は、「低リスク例の場合、肺塞栓症の入院治療を外来治療で用いても安全かつ有効と考えられる」と結論し、「患者にも好評で、在院期間の短縮につながるだろう」としている。(菅野守:医学ライター)

569.

脳卒中の2次予防におけるterutroban、アスピリンとの非劣性確認できず

虚血性脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴のある患者に対する抗血小板薬治療として、terutrobanはアスピリンと同等の有効性を示しながらも、非劣性基準は満たさないことが、フランス・パリ-ディドロ大学のMarie-Germaine Bousser氏らが行ったPERFORM試験で示され、Lancet誌2011年6月11日号(オンライン版2011年5月25日号)で報告された。同氏は、「現在でもアスピリンがgold standard」としている。脳卒中は世界的に身体障害、認知症、死亡の主要原因であり、虚血性脳卒中やTIAの既往歴のある患者は脳卒中の再発や他の心血管イベントのリスクが高い。terutrobanは、血小板や血管壁に存在するトロンボキサン-プロスタグランジン受容体の選択的な拮抗薬で経口投与が可能であり、動物やヒトでアスピリンと同等の抗血小板活性が確認されているという。世界46ヵ国802施設が参加、勧告により早期中止PERFORM(Prevention of cerebrovascular and cardiovascular Events of ischaemic origin with teRutroban in patients with a history oF ischaemic strOke or tRansient ischaeMic attack)試験は、非心原性脳虚血イベントの既往歴のある患者を対象に、terutrobanとアスピリンの脳および心血管の虚血性イベントの予防効果を比較する無作為化並行群間比較試験。2006年2月22日~2008年4月7日までに、46ヵ国802施設から過去3ヵ月以内に虚血性脳卒中を発症した患者、あるいは8日以内にTIAをきたした患者が登録され、terutroban(30mg/日)あるいはアスピリン(100mg/日)を投与する群に無作為に割り付けられた。患者と主治医には治療割り付け情報は知らされなかった。有効性に関する主要評価項目は、致死的/非致死的な虚血性脳卒中、致死的/非致死的な心筋梗塞、他の血管死(出血死を除く)の複合エンドポイントとした。非劣性の解析を行ったのち、優越性について解析することとし、intention-to-treat解析を実施した。なお、本試験はデータ監視委員会の勧告に基づき早期中止となっている。主要評価項目は同等だが、非劣性基準満たさず、安全性の改善も得られず1万9,120例が登録され、terutroban群に9,562例が、アスピリン群には9,558例が割り付けられた。それぞれ9,556例(男性63%、平均年齢67.2歳)、9,544例(同:62%、67.3歳)が解析可能であった。平均フォローアップ期間は28.3ヵ月(SD 7.7)であった。主要評価項目の発現率は、terutroban群が11%(1,091/9,556例)、アスピリン群も11%(1,062/9,544例)で、非劣性の判定基準(ハザード比>1.05)は満たされなかった(ハザード比:1.02、95%信頼区間:0.94~1.12)。2次評価項目(14項目)、3次評価項目(6項目)にも有意な差は認めなかった。小出血の頻度がterutroban群で有意に上昇した[12%(1,147/9,556例) vs. 11%(1,045/9,544例)、ハザード比:1.11、95%信頼区間:1.02~1.21]が、その他の安全性に関する評価項目に有意な差はみられなかった。著者は、「事前に規定された判定基準により、terutrobanのアスピリンに対する非劣性は確証されなかった。主要評価項目の発現率は両群で同等であったが、terutrobanは安全性についても改善効果をもたらさなかった」と結論し、「世界的にみて、有効性、耐用性、医療コストの観点から、現在もアスピリンは脳卒中の2次予防における抗血小板薬治療のgold standardである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

570.

かかりつけ医下の患者における、LTRAの喘息治療第一選択薬、追加薬としての有効性

ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)の有効性について、臨床実態の反映を企図したプラグマティックな無作為化試験の結果が報告された。英国・アバディーン大学プライマリ・ケアセンターのDavid Price氏らが、「これまでほとんどの喘息治療の試験は、“理想的な条件下にある特定の患者”を対象に行われてきた」として、英国医療技術評価プログラム(U.K. Health Technology Assessment Programme)からの委託を受け行ったもの。第一選択薬試験と追加薬試験の2つを並行で多施設共同にて行い、2年間の結果がNEJM誌2011年5月5日号に掲載された。12~80歳の喘息関連QOLが低くコントロール不十分な患者を対象に第1の試験は、LTRAの長期管理の第一選択薬としての有効性を吸入グルココルチコイド薬と比較した試験(第一選択薬試験)、第2の試験は吸入グルココルチコイド療法を受けている喘息患者への追加薬としての有効性を長時間作用性β2刺激薬(LABA)と比較した試験(追加薬試験)だった。被験者は、12~80歳の、喘息関連QOLが低く[簡易喘息QOL質問票(MiniAQLQ)スコアが6以下)、喘息コントロールが不十分[喘息管理質問票(ACQ)スコアが1以上)の、かかりつけ医のもとで治療を受けている患者が選ばれた。研究グループは患者を、かかりつけ医の管理下に置いたまま、2年間の非盲検試験に無作為に割り付けた。内訳は、第一選択薬試験にLTRA群148例、グルココルチコイド療法群158例、追加薬試験にLTRA群170例、LABA群182例だった。2ヵ月時点同等、2年時点ほぼ同等、とはいえ試験特性からのバイアスに留意を平均MiniAQLQスコアは、両試験とも2年間において0.8~1.0ポイント上昇した。2ヵ月時点の、各治療群間のMiniAQLQスコアの差は、同等性の定義(補正後平均群間差の95%信頼区間:-0.3~0.3)を満たした。第一選択薬試験での治療間の補正後平均群間差は-0.02(95%信頼区間:-0.24~0.20)、追加薬試験では-0.10(同:-0.29~0.10)だった。2年時点における平均MiniAQLQスコアについては、ほぼ同等に達していた。第一選択薬試験は-0.11(95%信頼区間:-0.35~0.13)、追加薬試験は-0.11(同:-0.32~0.11)だった。増悪率とACQスコアは、両群間で有意差が認められなかった。研究グループは、「2ヵ月時点の試験結果は、LTRAは多様なプライマリ・ケア患者のための長期管理の第一選択薬として、吸入グルココルチコイドと同等であること、また追加薬としてLABAと同等であることを示した。2年時点の同等性は証明されなかった」とまとめたうえで、「プラグマティック試験の結果は、治療群間のクロスオーバーとプラセボ群の欠如という点で制限があることを踏まえたうえで解釈すべき」と結論。「QOLの観点からの臨床的有効性について治療群間の差はわずかであることが示されたが、それがプラグマティック試験ならではの同等性へのバイアスであることを認識することが重要である。臨床での治療選択の意思決定は、プラグマティック試験と同時に従来の無作為化試験の結果をみることによってベストな選択肢を導き出せる」と述べている。(朝田哲明:医療ライター)

571.

ARBカンデサルタン、急性脳卒中への有用性:SCAST試験

血圧の上昇を伴う脳卒中患者における、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)カンデサルタン(商品名:ブロプレス)の有用性について、ノルウェー・オスロ大学のElse Charlotte Sandset氏らが実施したSCAST試験の結果が報告された。血圧の上昇は、急性脳卒中の一般的な原因であり、不良な予後のリスクを増大させる要因である。ARBは梗塞サイズや神経学的機能に良好な効果を及ぼすことが基礎研究で示され、高血圧を伴う急性脳卒中患者を対象としたACCESS試験では、カンデサルタンの発症後1週間投与により予後の改善が得られることが示唆されていた。Lancet誌2011年2月26日号(オンライン版2011年2月11日号)掲載の報告。1週間漸増投与の有用性を評価SCAST試験の研究グループは、血圧上昇を伴う急性脳卒中患者に対するカンデサルタンを用いた慎重な降圧治療の有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。北ヨーロッパ9ヵ国146施設から、18歳以上、症状発現後30時間以内、収縮期血圧≧140mmHgの急性脳卒中(虚血性あるいは出血性)患者が登録された。これらの患者が、カンデサルタン群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられ、7日間の治療を受けた。第1日に4mgを、第2日に8mgを投与し、第3~7日には16mgが投与された。患者と担当医には治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は、血管に関する複合エンドポイント(6ヵ月以内の血管死、心筋梗塞、脳卒中)および機能アウトカム(6ヵ月の時点において修正Rankinスケールで評価)とし、intention-to-treat解析を行った。主要評価項目に大きな差は認められず2,029例が登録され、カンデサルタン群に1,017例、プラセボ群には1,012例が割り付けられた。そのうち6ヵ月後に評価が可能であったのは2,004例(99%、カンデサルタン群:1,000例、プラセボ群:1,004例)であった。7日間の治療期間中の平均血圧は、カンデサルタン群[147/82mmHg(SD 23/14)]がプラセボ群[152/84mmHg(SD 22/14)]よりも有意に低下した(p<0.0001)。6ヵ月後のフォローアップの時点における複合エンドポイントの発生率は、カンデサルタン群が12%(120/1,000例)、プラセボ群は11%(111/1,004例)であり、両群間に差を認めなかった(調整ハザード比:1.09、95%信頼区間:0.84~1.41、p=0.52)。機能アウトカムの解析では、不良な予後のリスクはカンデサルタン群のほうが高い可能性が示唆された(調整オッズ比:1.17、95%信頼区間:1.00~1.38、p=0.048)。事前に規定された有用性に関する副次的評価項目(全死亡、血管死、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、心筋梗塞、脳卒中の進行、症候性低血圧、腎不全など)や、治療7日目のScandinavian Stroke Scaleスコアおよび6ヵ月後のBarthel indexで評価した予後はいずれも両群で同等であり、事前に規定されたサブグループのうちカンデサルタンの有用性に関するエビデンスが得られた特定の群は一つもなかった。6ヵ月のフォローアップ期間中に、症候性低血圧がカンデサルタン群の9例(1%)、プラセボ群の5例(<1%)に認められ、腎不全がそれぞれ18例(2%)、13例(1%)にみられた。この結果から、血圧の上昇を伴う急性脳卒中患者においては、ARBであるカンデサルタンを用いて慎重に行った降圧治療は有用であることを示すことはできなかった。

572.

心房細動患者のリスク層別化にはCHA2DS2-VAScスコアの方が優れる

心房細動患者のリスク層別化に、CHA2DS2-VAScスコアがCHADS2スコアよりも優れることが報告された。デンマーク・コペンハーゲン大学Gentofte病院循環器部門のJonas Bjerring Olesen氏らが、デンマーク国内登録心房細動患者データをベースにコホート研究を行った結果による。CHADS2スコアは脳卒中リスクの層別化に最もよく用いられてきたが、その限界も指摘され、2006年以降のACC・AHA・ESC各ガイドラインでは、その他リスク因子を加味することが示され、その後エビデンスが蓄積しCHA2DS2-VAScスコアとして示されるようになっていたという。BMJ誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月31日号)掲載の報告より。7万3,538例を対象に、CHADS2とCHA2DS2-VAScの血栓塞栓症の予測能を評価研究グループは、CHADS2スコアのリスク因子(うっ血性心不全、高血圧、≧75歳、糖尿病、脳卒中既往)と、CHA2DS2-VAScスコアのリスク因子(CHADS2因子に加えて、血管系疾患、65~74歳、性別、また75歳以上で脳卒中既往の場合はリスクの重みづけを倍加する)を評価し、いずれが血栓塞栓症の予測能に優れるシェーマかを検証することを目的とした。対象とした被験者は、1997~2006年にデンマーク国内データベースに登録された、ビタミンK拮抗薬を服用していなかった心房細動患者で、非弁膜症性心房細動患者12万1,280例のうち、適格であった7万3,538例(60.6%)を対象に検証を行った。主要評価項目は、脳卒中と血栓塞栓症であった。10年追跡時点のC統計量、CHADS2スコア0.812、CHA2DS2-VAScスコア0.888低リスク群(スコア0)における1年追跡時点での血栓塞栓症発生率は100人・年当たり、CHADS2では1.67(95%信頼区間:1.47~1.89)であったのに対し、CHA2DS2-VAScでは0.78(同:0.58~1.04)であった。中等度リスク群(スコア1)においては、同CHADS2スコアでは4.75(95%信頼区間:4.45~5.07)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアでは2.01(同:1.70~2.36)だった。これら発生率について示されたパターンは5年、10年追跡時点でも同様の結果が示された。また高リスク群はいずれのスコアも同じように、低・中等度リスク群よりも著しく高率な血栓塞栓症の発生を示した。血栓塞栓症の発生率は、スコアを構成しているリスク因子に依り、また両スコアとも血栓塞栓症イベントの既往に関連するリスクは過小に評価することが認められたという。低・中・高の各リスク群に層別化された患者の10年追跡時点でのC統計量は、CHADS2スコアが0.812(95%信頼区間:0.796~0.827)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアは0.888(同:0.875~0.900)であった。

573.

カンデサルタン vs. ロサルタンの心不全患者死亡リスク

心不全患者に対する、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のカンデサルタン(商品名:ブロプレス)投与は、同じくARBのロサルタン(商品名:ニューロタン)投与と比べ、死亡リスクが0.7倍と低いことが示された。これまでの研究結果から左室駆出率が低下した心不全患者へのARB投与は、死亡・入院リスクを低減することは知られているものの、ARB同士で、その効果を直接比較した試験はこれが初めてという。スウェーデン、ストックホルムSouth Hospital循環器部門のMaria Eklind-Cervenka氏らが、5,000人超の心不全患者について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月12日号で発表した。カンデサルタンまたはロサルタン服用の5,139人を追跡研究グループは、2000~2009年に、スウェーデンの心不全患者レジストリ「Swedish Heart Failure Registry」に登録された3万254人のうち、カンデサルタンまたはロサルタンを服用する5,139人について追跡した。カンデサルタンを服用していたのは2,639人、ロサルタンを服用していたのは2,500人だった。被験者の平均年齢は74歳(SD 11)で、うち39%が女性だった。2009年12月14日まで追跡し、両群の1年・5年の総死亡率について比較した。死亡リスク、カンデサルタン群がロサルタン群の0.7倍1年生存率は、カンデサルタン群が90%(95%信頼区間:89~91)に対しロサルタン群が83%(同:81~84)、5年生存率はカンデサルタン群61%(同:54~68)に対しロサルタン群が44%(同:41~48)であった(ログランク検定P<0.001)。プロペンシティ・スコア補正後の多変量解析の結果、ロサルタン群のカンデサルタン群に対する死亡ハザード比は1.43(同:1.23~1.65、P<0.001)であった。逆に、カンデサルタン群のロサルタン群に対する同ハザード比は0.70だった。結果は、層別解析でも変わらなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

574.

高血圧2010 第1回 減塩 2010 (1)患者さんの食塩摂取量を知る

第33回日本高血圧学会総会が10月15~17日に開催された。前回の開催以降、高血圧の領域では、レニン阻害薬、 ARBとCa拮抗薬の配合剤が発売され、これら薬剤の処方のあり方が話題になりがちではあり、本総会でもそれらを主眼としたセッションが開かれた。それらは他の情報ソースに任せるとして、ケアネットでは前回の総会が開催された 2009年10月からこの1年の間に影響力が大きい研究結果が発表された「減塩」「微量アルブミン尿」「降圧目標」の3つにテーマを絞り、学会での発表内容とこの1年間のトピックスをシリーズで採り上げたいと思う。第1回、第2回は「減塩」を採り上げる。現状:「1日6g以下」の減塩を指示している医師は3割未満 ―第33回日本高血圧学会総会より―久留米大学心臓・血管内科の甲斐久史氏らは「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」が実地医家における有用度および診療実態に関するアンケート調査結果を発表した。対象は福岡県内科医会と佐賀県医師会内科医部会の会員2,415 名に郵送し、896名から回答を得た(回答率37.1%)。1日の食塩摂取量をどのくらいに指導しているかという質問に対して、 JSH2009で推奨している「6g以下」と回答したのは30%未満であったの対し、「7g以下」が約17% 、「10g以下」が約16% 、「指示していない」が約23%にのぼった。+5g/日の食塩摂取により脳卒中が23%増える ―BMJ誌2009年12月5日号より―減塩の重要性を支持する新しい知見が昨年12月に得られた。この報告によると、塩分摂取量が多い群は、少ない群よりも脳卒中のリスクが有意に高く(相対リスク:1.23、95% 信頼区間:1.06-1.43 、p=0.007)、心血管疾患のリスクは有意差がないものの高い傾向がみられた(相対リスク:1.14 、95% 信頼区間:0.99-1.32 、p=0.07)。これは過去 40年に実施されたプロスペクティブ試験13件、19コホートをメタ解析し、17万7,025人(正常血圧者も含む、87,809 名は日本人)のデータから得られた結果で、1日の塩分摂取量が 5g多いと脳卒中のリスクが23%、心血管疾患のリスクが17%高まることを示した。弊社が実施したアンケートにおいても高血圧診療における減塩に関する重要度は他の生活習慣修正に比べて群を抜いて高い。高血圧診療において減塩が重要であると認識されているにもかかわらず、減塩指導が難しいのはなぜか。減塩指導の第一歩である食塩摂取量の評価にその一因がある。実際に患者さんの食塩摂取量を把握するのに難渋している先生方も多いと思われる。本総会でも、より簡便に、それであって正確に食塩摂取量を評価する方法について発表された。起床後第2尿は、24時間蓄尿に近い信頼性で食塩摂取量を評価できる ―第33回日本高血圧学会総会ポスター発表より―岩手県立中央病院の大本晃弘氏は、起床から臥位にならずに採取した「起床後第2尿」が簡便かつ「24時間蓄尿」に近い信頼性が得られることはすでに報告されているが、「随時尿」では食塩摂取量を過少評価することを発表した。減塩下における男性(n=53)の食塩摂取量を「24時間蓄尿」「起床後第2尿」「随時尿」によって評価したところ、それぞれ6.6±1.5g、6.2±1.7g、5.6±1.5gであり、随時尿による評価は24時間蓄尿に比べ、有意に低く評価された。女性では有意差が認められなかった。次に男性高血圧患者(n=22)において高食塩食を摂取した期間の「24時間蓄尿」「起床後第2尿」「随時尿」によって食塩摂取量を評価したところ、15.7±2.1g、16.2±2.3g、11.3±1.3gであった。これらの結果から、随時尿は24時間蓄尿に比べ、有意に低く評価し、特に高食塩摂取下では過小評価の程度が著しいことを示した。高血圧患者では正常血圧者より減塩モニタによる食塩排泄量が高値 ―第33回日本高血圧学会総会ポスター発表より―減塩モニタは、夜間尿(約8時間相当)の食塩量を電動法を用いて測定し、そこから24時間食塩排泄量を推定する。すでに減塩モニタを用いた自己測定が簡便かつ信頼性が高いことが報告されている。国立病院機構の今泉悠希氏は、減塩モニタを用いた自己測定によって高血圧患者、正常血圧者の食塩排泄量を家庭での自己測定により、30日間の平均値を比較検討した。その結果、高血圧患者の30日間平均食塩排泄量は9.1g/日と、正常血圧者の8.3g/日より高かった。特に肥満高血圧では9.6g/日と高く、非肥満群では8.1g/日と正常血圧者と同程度であり、肥満高血圧患者における減塩指導戦略の構築の必要性を訴えた。日本高血圧学会 減塩ワーキンググループの報告では、食塩摂取量の各評価法について信頼性と簡便性を比較しているが、「起床後第2尿」は、簡便性がやや劣るものの、信頼性はやや優れると評価し、「減塩モニタ」は、信頼性がやや劣るものの、簡便性が優れると評価している。診療現場で食塩摂取量を評価する目的は、正確性よりむしろ患者に減塩を継続しようという意識をもってもらうことであり、種々の評価法の特徴を把握し、診療現場に合わせて選択することが薦められている。では、減塩指導の方法についてどのような試みがみられているのだろうか。 次回は、減塩に対する試みの成果をレポートする。(ケアネット 藤原 健次)

575.

腎機能障害を伴う急性心不全患者へのrolofylline、治療薬としての将来性示されず

急性心不全患者では頻繁に有害転帰と関連する腎機能の低下がみられる。それら腎機能低下にはこれまでの実験・臨床研究から、アデノシンを介した対抗制御反応が関与する可能性が示唆されている。そこで米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校/サンフランシスコ退役軍人医療センターのBarry M. Massie氏ら研究グループは、アデノシンA1受容体拮抗薬rolofylline投与が、急性心不全患者の呼吸困難を改善し、腎機能を悪化させるリスクを減少し、より良好な臨床経過をもたらすとの仮説を検証する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験「PROTECT」を行った。NEJM誌2010年10月7日号掲載より。腎機能障害を伴う急性心不全患者2,000例超を無作為化研究グループは、発症後24時間以内の、腎機能障害を伴う急性心不全の入院患者2,033例を、1日30mgのrolofylline静注を最大3日間投与する群とプラセボを投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付け追跡した。主要エンドポイントは、治療成功、治療失敗、あるいは患者の臨床症状に変化なしとした。定義は、生存、心不全の状態、腎機能の変化に基づき行われた。副次エンドポイントは、治療後の持続性腎機能障害の発現、心血管または腎臓が原因の60日死亡率および再入院率とした。プラセボとの比較で有益性示されず結果、プラセボと比較して、rolofyllineの主要エンドポイントに関する有益性は示されなかった(オッズ比:0.92、95%信頼区間:0.78~1.09、P=0.35)。副次エンドポイントの持続性腎機能障害の発現は、rolofylline群で15.0%、プラセボ群は13.7%(P=0.44)だった。また、60日死亡・再入院率については両群で同等だった(rolofylline群30.7%、プラセボ群31.9%、P=0.86)。全体の有害事象の発生率は両群で同等だった。rolofylline群でのみ、てんかん発作がみられたが、これはアデノシンA1受容体拮抗薬の有害作用として知られる。これらの結果から研究グループは、「rolofylline投与が、主要臨床複合エンドポイントに良好な影響を与えることは認められず、腎機能や60日転帰も改善しなかった」と述べ、「腎機能障害を伴う急性心不全患者への治療薬としての将来性は示されなかった」と結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

576.

糖尿病とCAD有する患者への厳格血圧コントロール、心血管アウトカム改善認められず

高血圧治療ガイドラインでは、糖尿病患者の降圧目標は収縮期血圧130mmHg未満とする治療を行うことを提唱しているが、推奨値に関するデータは限られており、特に増大する冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者に関するデータは十分ではない。米国フロリダ大学のRhonda M. Cooper-DeHoff氏らは、糖尿病とCADを有する患者コホートにおいて、収縮期血圧コントロール達成と有害心血管アウトカムとの関連を評価することを目的に、「INVEST」試験参加者の観察サブグループ解析を行った。JAMA誌2010年7月7日号掲載より。厳格、通常、非コントロール群の有害心血管アウトカムを評価観察サブグループ解析が行われたのは、「INVEST」試験(International Verapamil SR-Trandolapril Study)参加者2万2,576人のうちの6,400人で、糖尿病とCADを有する50歳以上の人だった。参加者は、14ヵ国862施設から1997年9月~2000年12月の間に集められ、2003年3月まで追跡された。米国からの参加者の追跡評価は、全米死亡統計によって2008年8月まで行われた。INVEST参加者は、収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧85mmHg未満を目標に、降圧薬治療の第一選択薬はCa拮抗薬あるいはβ遮断薬を用い、併用薬として、ACE阻害薬か利尿薬または両剤を服用した。Cooper-DeHoff氏らは、被験者を、血圧コントロールが130mmHg未満を保持している場合は厳格コントロール群に、130~140mmHg未満の場合は通常コントロール群に、140mmHg以上だった場合は非コントロール群に分類し、全死因死亡、非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中の初発を含む、有害心血管アウトカムを主要評価項目に検討した。主要アウトカム、通常群12.6%、厳格群12.7%、補正後ハザード比1.111万6,893患者・年の追跡調査の間、主要アウトカムイベントを呈した患者は、厳格コントロール群286人(12.7%)、通常コントロール群249人(12.6%)、非コントロール群431例(19.8%)だった。通常コントロール群 vs. 非コントロール群の心血管イベント発生率は、12.6%対19.8%だった(補正後ハザード比:1.46、95%信頼区間:1.25~1.71、P<0.001)。一方、通常コントロール群 vs. 厳格コントロール群は、12.6%対12.7%(同:1.11、0.93~1.32、P=0.24)で、ほとんど違いは存在しなかった。全死因死亡率については、厳格コントロール群は11.0%、通常コントロール群は10.2%(同:1.20、0.99~1.45、P=0.06)。延長追跡評価を含むと、同22.8%、21.8%(同:1.15、1.01~1.32、P=0.04)だった。上記結果から、「糖尿病とCADを有する患者における収縮期血圧の厳格なコントロールは、通常のコントロールと比べて心血管アウトカムの改善には関連が認められなかった」と結論した。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

577.

主任教授 森田峰人先生の答え

子宮内膜症と低用量ピルについて子宮内膜症の治療で低用量ピルを使用することもあるかと思いますが、副作用の発現はどうでしょうか?私自身は内膜症を診るわけではないのですが、患者さんから相談を受けることがあるので、症例数が多いであろう大学病院臨床現場での状況を知りたいです。宜しくお願いします。OC(ピル)はエストロゲン+プロゲストーゲンの配合剤であることはご存じと思います。これらのホルモン依存性に副作用が発生すると考えられます。一般的にエストロゲンとしてエチニルエストラジオールが、プロゲストーゲンとしてノルエチステロン、デソゲストレル、レボノルゲストレルがあり、OCの種類によってこれらの組み合わせや1相性、2相性、3相性が存在します。一般的にエストロゲン依存性の副作用としては、悪心・嘔吐、頭痛、水分貯留、帯下増加などが、プロゲストーゲン依存性の副作用としては、倦怠感、抑うつ感、乳房緊満感などが、アンドロゲン依存性(プロゲストーゲンには男性ホルモン活性があります)の副作用として、体重増加、ニキビ、食欲亢進、性欲亢進、男性化兆候などがあります。これらの副作用発現率は各種プロゲストーゲンの種類により異なるとは思いますが、全体的な副作用発現率として、悪心・嘔吐は1.2~29.2%、頭痛は3.4~15.7%、体重増加は0.8~2.2%、乳房緊満感は0.1~20%等となっており、これらのマイナートラブルは、通常、3か月以内で消失するともいわれています。子宮内膜症患者さんの月経痛改善のための効果ですが、ほとんどの場合効果はあると感じています。しかしながら、OCの各種副作用の発現により、継続しての服用が困難になる場合もあります。そのような場合には、OCの種類を変更することで継続服用が可能になる場合が多々あり、1種類のOCがダメであってもあきらめる必要はありません。子宮頸がんワクチンの効果・副反応について最近、子宮頸がんワクチン接種に関して助成金が出るとか出さないとか、何かと話題になっていますが、そもそもこのワクチン、実際の効果は如何なものなのでしょうか?「日本人には合わない」などおっしゃっている先生もいるようです。また、副反応についても現場の見解を知りたいと思っています。差し支えない範囲で結構ですのでご教授お願いします。現在使われているワクチンはHPVの遺伝子型が16と18に対するものです。日本人の子宮頸がんに関連するHPV遺伝子型が16と18であるものは58.8%(16型44.8%+18型14.0%)と報告されています。海外の報告では16/18が70.7%(16型53.5%+18型17.2%)で、その他31,33,35,51,52,53,56,58,59,68の10の型が31.2%に検出され、その他の型が9.0%であったとなっています。日本人の統計で、このワクチンでHPV16/18型の感染による子宮頸がんの発生を予防できる全体に占める割合は60%弱ということになります。よって、16/18による子宮頸がん発生を100%抑制できるとして、ハイリスクHPV感染者の0.15%ががんになるのを防げる場合の、費用対効果がどうなるのかは現在のところはっきりしていません。さらに大切な事として、日本における子宮頸がん検診率は23%程度であり、この健診率を先進国並みの60~82%に持って行く方法を考える必要があると思います。副反応に関しましては、全てのワクチンに言えることですが、何らかの重篤な合併症が引き起こされる可能性は否定できません。一般的な副反応として、局所の疼痛や発赤は90%程度に認められておりますが、当院での接種に際しては、幸いなことに重篤な副反応には遭遇しておりません。今後、これらの副反応に関しましても日本におけるデータが集積されてくるものと思います。研修について産婦人科医を目指している医学生です。産婦人科医になるにあたり、小児科(NICU)を経験した方が良いと聞きます。また、病院によっては一定期間NICUへ行かせてくれるところもあると聞きます。大森病院さんでも、このように小児科(NICU)のことを勉強したり、経験したりする機会はあるのでしょうか?ホームページを拝見しましたが、その辺の情報がなかったので教えて頂ければと思います。東邦大学医療センター大森病院でも小児科(NICU)のことを勉強したり、経験したりすることになります。産婦人科のホームページで「入局希望の方へ」を見て頂くと「後期研修プログラム」として1年目に「産科・周産期」と記載してありますが、この期間に3か月間、新生児科(NICU/GCU)の研修を行うことになります。また、後期研修期間中に、「腫瘍」「生殖内分泌」を専門医レベルまで習得してもらうために、2年目「腫瘍」、3年目「生殖内分泌」を主な研修期間としてトータルで3年間での研修計画をたてています。その後に、さらに新生児科での研修を希望される場合には、適時相談により、更に高度な新生児科での研修を行うことも可能です。産科婦人科の専門領域について初期研修中の者です。最近、産婦人科医に興味を持つようになりました。産婦人科の専門領域を大きく分けると、周産期、婦人科腫瘍、生殖医学の3つと教わりましたが、どれを専門にするのか?を決めるのは、通常どの位のタイミングなのでしょうか?また、森田先生はいつ頃、どんな理由で今の専門(婦人科腫瘍でしょうか?)に決めたのでしょうか?場違いな質問でしたら申し訳ありません。宜しくお願いします。後期研修として産婦人科に進んだ場合、まず目指していただくのは産婦人科専門医です。当院でもまずはそれを第1目標にしています。通常、後期研修3年間(初期研修2年とあわせて卒後5年)が終了した時点で専門医の受験資格ができます。それまでは、「周産期」「腫瘍」「生殖内分泌」の3本の柱をしっかりと研修し、専門医取得を目指します。通常は、その後に専門性のあるサブスペシャリティの各種指導医や認定医取得、および研究などを行うことになります。自分自身の場合は、卒業が27年前ですので、現在のような初期研修、後期研修制度はなく、卒業して直ちに医局に入局し、2年間の研修医、その後2年間の関連病院での研修の後に、卒後5年目に大学に帰局して研究を始めるとともに、当時、黎明期であった婦人科内視鏡に興味を持ち、臨床では生殖医療や関連する子宮内膜症、子宮筋腫などの診療に携わってきました。自身のおかれている環境によっても、これら専門領域選択に適切な時期や場所が大きく異なる可能性もあります。まずは、興味を持ち、かつ、その領域にすすむ事ができる環境にあるかどうかの見極めは大切なことでないかと思います。また、産婦人科としてのジェネラリストを目指すという道もあります。妊娠糖尿病患者を診るときに気をつけること妊娠糖尿病患者を診るときに気をつけていることがありましたらご教授下さい。特に糖尿病専門医との連携方法で気をつけていることや、こうすると上手く行く!といったノウハウをお聞きしたいと思っております。私の病院には糖尿を診れる医師はいないため、いつも他院の先生方との連携になってしまいます。どのように連携するのが良いのか毎日模索している日々です。ご教授お願いします。ご質問いただきました内容に関して、的確にお応えできる回答を持ち合わせておりませんが、他院の先生と連携をとって妊娠糖尿病患者を診ておられるご苦労は大変かと思います。ご存じの対応であるとは思いますが、妊娠糖尿病患者に対しては、食事指導、運動療法からはじまり、妊娠中の運動療法は比較的制限を受けることから、食事療法のみで血糖コントロールが目標に到達しない場合には、迷うことなくインスリン療法を開始する、ということに尽きると思います。男性産婦人科医が気をつけること産婦人科は、女性医師と違って男性医師は色々と気を遣わないといけない科だと思います。先生が男性産婦人科医として気をつけている点を教えてください。産婦人科の診察対象は女性生殖器であることから、最近は、女性医師の診察を希望する患者さんも増加しています。まず、大切なことは、不安を抱いている患者さんに対して、出来るだけその不安を取り除き、適切な診療ができる環境を作り出すことにあります。一言で言い表すのは難しいですが、常に、そのような気持ちで患者さんと接するよう心がけています。また、男性医師は、診察の場面では必ず女性の看護師を同席させることも忘れてはならない事です。日本の産婦人科領域の臨床研究レベルについて海外に比べた時、日本の産婦人科領域の臨床研究はどの位の位置にいるのでしょうか?また、海外への留学は必要なのでしょうか?僕はまだ医学生なのですが、将来は先生のように研究も臨床もでき、多くの患者さんのライフスタイルにあった治療提案ができるドクターになりたいと思っています。日本の産婦人科領域の臨床研究レベルは決して諸外国に劣っているとは思いません。しかし、日本人であるが故の不利な点があります。世界で研究に対する評価を得るためには英文論文の執筆は不可欠です。しかしながら、日本ではやはり主に日本語による論文執筆が先になり、英文は後回しになる傾向があるように思えます。もちろん、英文の論文を多数輩出している優れた日本人研究者もたくさんいらっしゃいますが、大変な努力が必要であることは事実です。海外への留学に関する事ですが、この留学は研究留学のことと理解してコメントします。留学には、研究留学と臨床留学がありますが、現在、大多数を占めるのは大学医局からの研究留学です。しかし、研究留学は目的意識を高く持たないと得るものは少ないと思われます。必ずしも留学が必要である理由は存在しないと思います。臨床遺伝について大森病院さんのホームページで、臨床遺伝についての記載がありますがもう少し教えて頂けないでしょうか?今大学病院では、具体的にどんな研究や取り組みが行われているのか?どのような成果を上げているのか興味あります。是非宜しくお願いします。近年、疾患に限らず生命現象ほとんどが遺伝子によって制御されていることが解明され、注目を浴びています。臨床遺伝学は、基礎遺伝学(いわゆる遺伝学)と臨床をつなぐ重要な分野として発展してきています。さらに最近では、生活習慣病などの多因子疾患も、遺伝子が関与している事が判明しています。しかし、遺伝学的検査を行うときに、十分な説明がなされず、施行されたり、結果を適切に判断することが出来ず、誤った説明などがなされ、時に、患者、その家族に誤解を招く場合があります。大森病院には、日本人類遺伝学会、遺伝カウンセリング学会認定の、臨床遺伝専門医が2名(いすれも産婦人科医)がおり、専門医研修施設に認定されています。産婦人科領域、生殖遺伝(挙児希望、習慣流産など)、周産期遺伝(出生前診断、高齢妊娠など)を中心に、火曜日午後、遺伝相談外来として対応しています。また、内科、外科など他科の担当医と協力し、横断的に、遺伝学的検査施行時、結果説明時など患者、その家族と話し合う機会を設けています。窓口は、産婦人科外来となっており、電話にて担当医と受診の予約についてお話しいただけます。妊娠を控えている慢性腎臓病実臨床にて妊娠を控えている慢性腎臓病の患者に対してどのような降圧剤を選択するのがベストか、臨床研究などの結果があれば教えていただければ幸いです.まず、慢性腎臓病合併妊婦では早期に妊娠高血圧症候群をおこして、母児共に予後が悪い事はよく知られております。したがいまして、妊娠前に十分に腎機能検査を行い、GFR 50ml/分以下、血清クレアチニン1.5mg/dl以上、血清尿酸値6.0ng/ml以上、降圧剤投与での血圧160/110mmHg以上、あるいは腎生検にて活動性病変のある者には妊娠を許可すべきではありません。これらの条件をクリアして、血圧の管理を行い、拡張期血圧を90~100mmHgの範囲に、収縮期血圧155~160mmHgを超えない事を目標に、妊娠が成立しても継続して投与が可能な薬剤を選択する事が望まれます。第1選択はヒドララジンもしくはメチルドパになります。また、妊婦に対してはACE阻害剤、アンギオテンシン受容体拮抗薬は禁忌であり、妊娠前にこれらの薬剤によりコントロールされている場合には薬剤の変更が必要になります。したがいまして、妊娠を目指して降圧剤を使用する場合にはヒドララジンもしくはメチルドパによる良好なコントロールがその後の管理が行いやすい状況にすると思われます。月経か否か性器出血が主訴の患者さんで性成熟期で子宮がある場合、どれが月経なのか不正性器出血なのか分からないと言われます。まず頚部・内膜の細胞診はとり、経膣エコーを見るかと思いますが、産婦人科として出血が月経かどうかを判断する術はあるでしょうか。産後の不正出血などでも(明らかな遺残ではなく)それが月経なのか何なのか判断に迷うことがあります。お教えいただけないでしょうか。 性器出血の様子だけから判断することは困難です。出血の様子に加え経腟超音波所見は重要で、特に子宮内膜の状態は評価に大きく役立ちます。患者さんのもともとの月経周期や体型なども判断材料になる機会は少なくありません。総合的に評価することとなります。総括たくさんの、また様々な内容のご質問をいただきありがとうございました。産婦人科の3本柱は、「周産期」「腫瘍」「生殖内分泌」であり、まだまだ伝えきれないほどの魅力ある診療および研究分野がたくさんあります。少しでも興味を持って、産婦人科の世界に入ってきてくれる人たちが増えてくれることを願っています。主任教授 森田峰人先生「産科婦人科最先端治療は患者個々への対応が決め手」

578.

ACE阻害薬+Ca拮抗薬、高リスク高血圧におけるCKD抑制効果が明らかに:ACCOMPLISH試験2次解析

 ACE阻害薬ベナゼプリル(商品名:チバセンなど)とCa拮抗薬アムロジピン(同:ノルバスク、アムロジンなど)の併用は、心血管疾患のリスクが高い高血圧患者において慢性腎臓病(CKD)の進行の抑制効果が高いことが、アメリカChicago 大学Pritzker医学校のGeorge L Bakris氏らが実施したACCOMPLISH試験の2次解析で明らかとなった。本試験は、主解析でベナゼプリルとアムロジピンの併用が、ベナゼプリルと利尿薬ヒドロクロロチアジド(同:ニュートライドなど)の併用よりも心血管疾患罹患率および死亡率の改善効果が優れることが示されたため、平均フォローアップ期間2.9年の時点で早期中止となっている。進行期腎症ではRA系抑制薬と利尿薬の併用で降圧効果が得られることが多くの試験で示されているが、CKDの進行に対する固定用量による降圧薬併用の効果を検討した試験はないという。Lancet誌2010年4月3日号(オンライン版2010年2月18日号)掲載の報告。CKDの進行を評価する事前に規定された2次解析 ACCOMPLISH試験は高リスク高血圧患者を対象としたプロスペクティブな二重盲検無作為化試験。今回、研究グループは、本試験の事前に規定された2次解析として固定用量のベナゼプリル+アムロジピンとベナゼプリル+ヒドロクロロチアジドのCKD抑制効果について評価した。 2003年10月~2005年5月までに、5ヵ国(アメリカ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド)から心血管イベントのリスクが高い55歳以上の高血圧患者11,506例が登録された。これらの患者が、ベナゼプリル(20mg/日)+アムロジピン群(5mg/日)群(5,744例)あるいはベナゼプリル(20mg/日)+ヒドロクロロチアジド(12.5mg/日)群(5,762例)に無作為に割り付けられた。 用量は、推奨目標血圧を達成するように、無作為割り付け後1ヵ月が経過して以降は個々の患者の病態に応じて漸増した。事前に規定されたエンドポイントであるCKDの進行は、血清クレアチニン値の2倍化あるいは末期腎不全の発症(推定糸球体濾過率<15mL/分/1.73m2あるいは要透析の診断)と定義した。ACE阻害薬+Ca拮抗薬でCKDの進行が48%抑制 試験終了時点で、143例(1%)のフォローアップが完遂できなかった(ベナゼプリル+アムロジピン群70例、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群73例)。無作為割り付けされたすべての症例がintention-to-treat解析の対象となった。 CKDの進行がみられたのは、ベナゼプリル+アムロジピン群が113例(2.0%)と、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群の215例(3.7%)に比べ有意に低下した(ハザード比:0.52、p<0.0001)。 CKD患者で最も高頻度にみられた有害事象は、末梢浮腫[ベナゼプリル+アムロジピン群33.7%(189/561例)、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群16.0%(85/532例)、p<0.0001]であった。CKD患者における血管浮腫の頻度は、ベナゼプリル+アムロジピン群の方が高かった(1.6% vs. 0.4%、p=0.04)。 非CKD患者では、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群でめまい(20.3% vs. 25.5%、p<0.0001)、低カリウム血症(0.1% vs. 0.3%、p=0.003)、低血圧(2.3% vs. 3.4%、p=0.0005)の頻度が高かった。 著者は、「ベナゼプリル+アムロジピン併用療法は、腎症の進行をより遅らせるため、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド併用療法よりも優先的に考慮すべきである」と結論し、「これらの併用降圧治療のCKD抑制効果の優劣を確立するには、さらに進行した腎症を対象としたプロスペクティブ試験を行う必要がある」としている。

579.

利尿薬ベースの降圧療法、セカンドライン選択は?:住民ベースの症例対照研究

米国ワシントン大学心血管ヘルス研究ユニットのInbal Boger-Megiddo氏らは、利尿薬を第一選択薬とし降圧療法を受けている高血圧患者の、併用療法移行時の選択薬は、β遮断薬、Ca拮抗薬、RA系阻害薬いずれが至適かを明らかにするため、心筋梗塞および脳卒中の発生率を主要評価項目に、住民ベースの症例対照研究を行った。結果、Ca拮抗薬追加群の心筋梗塞発生リスクが、他の2群よりも高いことが明らかになったという。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月25日号)より。症例群353例、対照群952例で検討研究グループは本研究を実施した背景について、「ALLHAT試験で、低用量利尿薬が第一選択薬としてCa拮抗薬やRA系阻害薬よりも優れていることが示唆され、そのエビデンスを踏まえたガイドラインが米英で作成されている。一方で、降圧療法を受ける高血圧患者の半数は併用療法を要する。だが利尿薬ベースの患者の心血管疾患予防を見据えたセカンドラインの選択薬はどれが至適か明らかになっておらず、米国NHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)は、試験実施の勧告を出しているが、いまだ実施されていない」と述べている。試験は、ワシントン州シアトル市に拠点を置くヘルスケアシステム「Group Health Cooperative」の加入者データから、症例群353例、対照群952例の被験者を選定し行われた。症例群は、30~79歳の降圧療法を受けていた高血圧患者で、1989~2005年に致死性または非致死性の初回の心筋梗塞か脳卒中を発症したと診断記録があった人だった。対照群は、降圧療法を受けていた高血圧患者が無作為にGroup Health Cooperative加入者から選ばれた。なお、心不全、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎不全患者は除外された。+Ca拮抗薬は心筋梗塞リスクを増大する結果、心筋梗塞リスクについて、利尿薬+Ca拮抗薬群が、+RA系阻害薬群、+β遮断薬群よりも高いことが認められた。+β遮断薬群を基準とした、+Ca拮抗薬群の心筋梗塞リスクの補正後(年齢、性、服薬期間、喫煙、飲酒)オッズ比は、1.98(95%信頼区間:1.37~2.87)だった。脳卒中リスクについては、増大は認められず、オッズ比は1.02(同:0.63~1.64)だった。一方、+RA系阻害薬群の心筋梗塞および脳卒中リスクは、ともに有意ではなかったものの低く、心筋梗塞リスクの同オッズ比は0.76(同:0.52~1.11)、脳卒中は0.71(同:0.46~1.10)だった。研究グループは結果を踏まえ、「低リスクの高血圧患者を対象とした本試験で、セカンドラインにCa拮抗薬を選択することは、他の薬剤を選択するよりも心筋梗塞リスクが高いことが明らかになった。この結果はNIHCE(National Institute for Health and Clinical Excellence)ガイドラインを支持するもので、米国NHLBIが勧告する大規模試験を行うべきであろう」とまとめている。

580.

急性心筋梗塞後の抗血栓薬の併用数が多いと出血リスクが高まる

 初回心筋梗塞患者では、使用された抗血栓薬の数が多くなるに従って出血による入院のリスクが増大することが、デンマークCopenhagen大学Gentofte病院循環器科のRikke Sorensen氏らによる調査で明らかとなった。急性心筋梗塞の発症後は、虚血イベントの低減を目的にアスピリン(商品名:アスピリンなど)とクロピドグレル(同:プラビックス)の併用投与が推奨されているが、さらにビタミンK拮抗薬(同:ワーファリンなど)の追加が適応となる場合もある。一方で、抗血栓薬の多剤併用療法は出血リスクを高めるというジレンマがあるが、これまでに実施された臨床試験では主に効果に焦点が当てられ、安全性に関する検討は乏しいという。Lancet誌2009年12月12日号掲載の報告。初回心筋梗塞患者4万例を後ろ向きに解析 研究グループは、急性心筋梗塞に対する抗血栓療法に関連した出血による入院のリスクを検討するために、デンマークの全国的な登録データを基にレトロスペクティブな解析を行った。 2000~2005年までに初回心筋梗塞で入院した30歳以上の患者40,812例が解析の対象となった。退院時に処方されたレジメンによって、アスピリン、クロピドグレル、ビタミンK拮抗薬の単剤療法、アスピリン+クロピドグレル、アスピリン+ビタミンK拮抗薬、クロピドグレル+ビタミンK拮抗薬の2剤併用療法、これら3剤の併用療法に分類した。 薬剤曝露を時変的共変量とするCox比例ハザードモデルを用いて、出血による入院、心筋梗塞の再発、死亡について評価した。出血リスクは、アスピリン単剤が最も低く、クロピドグレル+ビタミンK拮抗薬併用群と3剤併用で実質的に高い 平均フォローアップ期間476.5日における出血による入院率は4.6%(1,891/40,812例)であった。 年間出血発生率(/人・年)は、アスピリン単剤群が2.6%と最も低く、クロピドグレル単剤群は4.6%、ビタミンK拮抗薬単剤群は4.3%、アスピリン+クロピドグレル併用群は3.7%、アスピリン+ビタミンK拮抗薬併用群は5.1%、クロピドグレル+ビタミンK拮抗薬併用群は12.3%であり、3剤併用群は12.0%であった。クロピドグレル+ビタミンK拮抗薬併用群と3剤併用群は実質的に発生率が高かった。 アスピリン単剤群をreferenceとすると、出血の補正ハザード比はクロピドグレル単剤群が1.33、ビタミンK拮抗薬単剤群が1.23、アスピリン+クロピドグレル併用群が1.47、アスピリン+ビタミンK拮抗薬併用群が1.84、クロピドグレル+ビタミンK拮抗薬併用群が3.52、3剤併用群は4.05であった。ビタミンK拮抗薬単剤群を除き、アスピリン単剤群よりも有意に出血リスクが高かった。 1年に1例の出血が発現するのに要する抗血栓療法施行例数は、アスピリン+クロピドグレル併用群が81.2例、アスピリン+ビタミンK拮抗薬併用群が45.4例、クロピドグレル+ビタミンK拮抗薬併用群が15.2例、3剤併用群は12.5例であり、クロピドグレル+ビタミンK拮抗薬併用群と3剤併用は実質的に出血リスクが高かった。 試験期間中に心筋梗塞を再発あるいは死亡した症例の割合は、非致死的出血が見られなかった群の18.4%(7,178/38,960例)に対し、非致死的な出血をきたした群は37.9%(702/1,852例)と有意に高かった(ハザード比:3.00、p<0.0001)。 著者は、「心筋梗塞患者では、使用された抗血栓薬の数が多くなるにしたがって出血による入院のリスクが増大した」と結論したうえで、「3剤の併用やクロピドグレルとビタミンK拮抗薬の併用療法は、個々の患者のリスクを徹底的に評価し、リスク/ベネフィット比を注意深く考慮したうえでなければ処方すべきでない」と指摘する。

検索結果 合計:628件 表示位置:561 - 580