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市中肺炎、12%が「不適切な診断」

 市中肺炎は一般的な疾患だが、診断の正確性とそれに関連する有害性についてはあまり知られていない。米国ミシガン大学・アナーバー校のAshwin B. Gupta氏らは市中肺炎の不適切な診断の特徴を明らかにすることを目的に、前向きコホート研究を行った。この結果はJAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年3月25日号に掲載された。 ミシガン州の48の病院で、市中肺炎を理由に入院し、入院1日目または2日目に抗菌薬投与を受けた成人患者を対象とした。調査は2017年7月1日~2020年3月31日にカルテレビューおよび患者への電話連絡で実施され、データ解析は2023年2~12月に行われた。 不適切な診断は、市中肺炎の徴候または症状が2つ未満または胸部画像検査が陰性の患者への抗菌薬投与と定義した。不適切な診断のリスク因子を評価し、不適切な診断とされた患者については30日間の複合アウトカム(死亡率、再入院、救急外来受診、C. difficile感染、および抗菌薬関連有害事象)を記録した。交絡因子および治療傾向を調整し、抗菌薬の完全投与(3日超)と短期投与(3日以下)に層別化して評価した。 主な結果は以下のとおり。・市中肺炎の治療を受けた入院患者1万7,290例のうち、不適切な診断の基準を満たしたのは2,079例(12.0%)だった。2,079例の年齢中央値は71.8(IQR:60.1~82.8)歳、女性が1,045例(50.3%)で、このうち1,821例(87.6%)が抗菌薬の完全投与を受けた。・患者全般と比較して、不適切な診断を受けた患者は高齢であり(10年当たりの調整オッズ比[AOR]:1.08、95%信頼区間[CI]:1.05~1.11)、認知症(AOR:1.79、95%CI:1.55~2.08)、または来院時の精神状態の変化(AOR:1.75、95%CI:1.39~2.19)を有する可能性が高かった。・不適切な診断を受けた患者において、抗菌薬の完全投与と短期投与の30日複合アウトカムに差はなかった(25.8% vs.25.6%、AOR:0.98、95%CI:0.79~1.23)ものの、完全投与は抗菌薬の有害事象リスクと関連していた(31/1,821例[2.1%] vs.1/258例[0.4%]、p=0.03)。 研究者らは「このコホート研究において、市中肺炎で入院した患者では、高齢、認知症、精神状態に変化がみられた患者では不適切な診断のリスクが高く、不適切な診断がされた患者は抗菌薬の投与が長期になり、それが抗菌薬の有害事象と関連することが示唆された」とした。

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再発性尿路感染症、治療後も続く痛みの原因を解明か

 尿路感染症(UTI)の再発を繰り返す人は、抗菌薬による治療後も骨盤部位の痛みや頻尿が続くことが多いが、その原因は不明だった。しかし、米デューク大学のByron Hayes氏らが実施した研究で、UTIの発症を繰り返すことで膀胱内に非常に感度の高い神経細胞が過剰に増殖することが、これらの症状を引き起こしている可能性のあることが明らかになった。この研究結果の詳細は、「Science Immunology」に3月1日掲載された。 この研究でHayes氏らは、尿検査では陰性であるが痛みが残存する再発性UTI患者とUTIではない対照の膀胱生検を行い、痛みや炎症の調節に関与する神経ペプチドのサブスタンスP(SP)レベルについて比較した。その結果、再発性UTI患者では対照に比べて、粘膜固有層でのSPレベルが有意に高いことが明らかになった。尿検査でも、再発性UTI患者ではSPレベルが高いことが示された。これらのことから、再発性UTI患者では感覚神経が高度に活性化しており、それが長引く痛みや頻尿の原因である可能性の高いことがうかがわれた。 次いで行ったマウスを用いた実験からは、マウスをUTIに繰り返し罹患させることで、感覚神経からの発芽(神経突起が伸びて成長する)が促され、その発芽は感染により呼び寄せられた単球と組織内在性のマスト細胞から産生された神経成長因子と関連していることが明らかになった。そこで、神経成長因子の活性を抑制する抗体をマウスに投与したところ、感覚神経の発芽が抑制され、腹部に機械的刺激を与えて評価した骨盤の過敏性が低下することが確認された。一方、未感染のマウスの膀胱に神経成長因子を注入すると、感覚神経の発芽が促され、骨盤の過敏性も亢進することが示された。 Hayes氏は、「UTIは通常、再発するたびに細菌が付着した上皮細胞が剥がれ落ち、近傍の神経組織が著しく破壊される。これにより、破壊された神経細胞の大規模な再生を伴う、損傷した膀胱の迅速な修復プログラムが作動する」と説明する。この反応はマスト細胞によって導かれるが、その過程でマスト細胞が神経成長因子を放出し、感覚神経が活性化される。その結果、SPが放出されて神経が過敏になり、患者はより多くの痛みを感じるようになるのだという。 論文の上席著者であるデューク大学病理学教授のSoman Abraham氏によると、UTIは女性での感染症の約25%を占めるという。同氏は、「その多くは再発性UTIであり、所定量の抗菌薬を服用しても、骨盤部位の慢性的な痛みや頻尿を訴える患者が多い」と説明し、「われわれの研究は、初めてUTIの治療後も続くこのような症状の根本的な原因を突き止め、新たな治療開発への道を切り開くものだ」と述べている。 Abraham氏はさらに、「この研究は、医療費を押し上げ、何百万人もの人(主に女性)の生活の質(QOL)に影響を及ぼしている不可解な臨床症状の解明に役立つ。マスト細胞と神経との間のクロストークを理解することは、再発性UTIに効果的な治療法を開発するために不可欠なステップなのだ」と話している。

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相手が退屈しない話し方をするには?【もったいない患者対応】第2回

相手が退屈しない話し方をするには?登場人物僕はどうしても話がくどくど長くなりがちで、患者さんに退屈そうにされてしまうので困っています。それは困ったねぇ。どうすれば最後までちゃんと相手に話を聞いてもらえるんでしょうか?話にメリハリをつける必要があるね。どんなに話の上手な人でも、話が一辺倒だと誰もついていけないからね。ふむふむ。ポイントがいくつかあるので、わかりやすく説明しよう。長い話は退屈なもの医師は患者さんに、専門的な内容を噛み砕いて説明しなければなりません。ときには、20分、30分と長時間一方的に話し続けてしまうこともあるでしょう。患者さんの身になってみると、これはなかなかつらいものです。たとえば、私たちが車を買いにディーラーに行き、店員から30分ぶっ通しで車の性能に関する話を聞く場面を想像してみてください。相当車に興味があって、背景知識が豊富にある場合を除いては、徐々に集中力が切れてくるのが自然ではないでしょうか。いくら自分が満足する車を買いたいと思っていても、そのうち、「もうよくわからないので、店員さんのおすすめの商品にします」と言いたくなってくるかもしれません。しかし、医療現場では患者さんが医師の話をきちんと理解していないと、大きなトラブルにつながるおそれがあります。では、集中力を切らさず、最後まで話を聞いてもらうにはどうすればいいのでしょうか?疑問を「先回り」するまず1つ目の方法として「先回り」があります。患者さんへの説明を繰り返し行っていると、患者さんが疑問に感じやすいポイントや、誤解しやすいポイントが次第にわかってきます。これを上手に先回りして伝えるのがコツです。たとえば、風邪で救急外来を受診した患者さんに対して、「風邪は抗生物質(抗菌薬)では治りません」「風邪薬は風邪の症状を抑える薬で特効薬ではありません」「解熱薬は 38℃以上の熱が出たときを目安に飲んでください」という3点を伝えたいとします。このまま情報を羅列して伝えてもよいのですが、疑問や誤解を「先回り」して、「抗生物質で風邪が治ると思っている人がいるのですが、実は治らないんです」「風邪薬は風邪の特効薬だと誤解している人がいますが、症状を抑えるだけなんですよ」「解熱薬はどのくらいの熱が出たときに飲めばいいのか、と疑問に思う人が多いので、私はいつも38℃以上を目安にするようお伝えしています」といった具合に説明します。前半の「疑問」「不安」「誤解」の部分で聞き手の共感を得られるので、患者さんの興味を一層引きつけることができるのです。風邪の場合はシンプルな説明で済みますが、複雑な話のときは、とくにこの方法が有効です。たとえば私なら、胆石症の手術前に、「胆石症は手術が必要です」「胆石症の手術は胆嚢自体を切除する手術です」「胆嚢を切除しても日常生活に支障はありません」と話したいときに、あえて、「胆石を薬で治せないのか? と疑問に思う人がいますが、実は手術でしか治せないんです」「胆嚢を取らずに胆石だけ取ったらダメなのか? と思う方が多いんですが、実は胆石だけを取ることはできないので胆嚢自体を切除するんです」「胆嚢は取ってしまって大丈夫かと不安になる人がいますが、心配はいりません。胆嚢はなくても困らない臓器なんですよ」といった形で抑揚をつけて話すようにしています。重要性の高低を伝える仮に30分間、病状説明をするとしても「すべての内容が同じくらい重要」というわけではないと思います。少なくとも、「最も重要でぜひ覚えておいてほしいところ」や「専門的なので必ずしも覚えなくてもいいところ」といった“重要性の高低”はあるでしょう。これを、話す前に逐一伝えておくのがコツです。たとえば、少し専門性の高い話題で「医師として患者さんに説明はしなければならないものの必ずしも覚えておく必要はない」という程度の内容であったときには、「いまから話すことは少し難しいので、覚えなくても大丈夫なんですが…」と言ったり、説明文を見せながら説明するときに、「ここは少し専門的なので、サラッと読み流していただいてもいいのですが…」と前置きを入れたりします。学生時代を思い出してみてください。学校や塾の授業で、最初は意気込んで話を聴き始めたのに、途中で難しい話が続くと途端に集中力を維持するのが難しくなった経験があるでしょう。患者さんも、私たちの説明を聞きながら常に100%の集中力を維持しておくことはできません。そこで、「ここの重要性は低いですよ」と事前に伝えることで、少し“息抜き”をしてもらうわけです。一方で、必ず理解しておいてほしい重要なことを説明するときは、「ここからは非常に重要な話になりますので、しっかり聞いていてくださいね」と前置きを入れることも大切です。ここで前項の“アウトライン”を使って、「ここから非常に重要な話を3つお伝えします」と話し始めてもよいでしょう。短い話であれば、話し始める前に、「今日お話しすることは10分くらいで終わる簡単な内容です」というように、長さの目安を伝えるのも有効です。たとえば、私たちが何か専門的なことを調べようとGoogle検索したときに、「3分でわかる! ○○の仕組みと使い方」というタイトルがあれば、クリックしたくなりませんか?知らないことを知ろうとするときは、誰しも「難しい話で理解できなかったらどうしよう」とストレスを感じています。最初の敷居を下げ心理的ストレスを軽くできれば、スムーズに話を聞き始めてもらえるということです。質問は最後にまとめて病状説明の際に、途中で患者さんに質問されて話を何度も遮られた、という経験をお持ちの方は多いと思います。あまりに頻繁に話を遮られるので、「いま私が話しています。私の話をまず聞いてください」と怒ってしまった医師を見たこともあります。ただ、どちらかというと「話を遮る勇気のある患者さん」のほうが少ないのが現実でしょう。医師に一方的に話されて、途中で疑問を抱いても、「話を遮るのは悪い」と思って聞き続け、「結局わからないことだらけだった」という思いで病院を後にする人は多いからです。そこで、途中で、「ここまでの話で何か疑問はありますか?」と伝えるか、途中で遮られずに話すべき内容だと思ったときは、事前に、「質問は最後に聞きますので、まず私の話を聞いてくださいね」と伝えるのが得策です。あるいは、途中で遮られても話の構成上とくに問題ないというケースであれば、「質問があれば途中で遮っていただいても大丈夫です」とお伝えするのもよいでしょう。こうすることで、患者さんはどのタイミングで質問すればいいのかが事前にわかるため、安心して話を聞くことができるのです。

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アレルギー性鼻炎か副鼻腔炎か?誤診の実態が明らかに

 実際には慢性副鼻腔炎(chronic rhinosinusitis;CRS)に罹患しているにもかかわらず、アレルギー性鼻炎と誤診され、CRSにはほとんど効果のない抗アレルギー薬を使用し続けている米国人が相当数いることが、新たな研究で示された。米シンシナティ大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科のAhmad Sedaghat氏らによるこの研究の詳細は、「Otolaryngology Head & Neck Surgery」に1月31日掲載された。 研究論文の上席著者であるSedaghat氏は、「われわれは、アレルギーとCRSが混同されたことで長い間苦しまざるを得なかった患者を数多く見てきた」と振り返る。同氏は続けて、「これまで、10年や20年、人によってはそれ以上にわたってアレルギーの治療を受けてきたにもかかわらず症状が改善しなかったと訴える患者を私は見てきた。しかし、それがCRSであることが判明し、われわれが適切な治療を開始したところ、症状は数カ月以内に改善した」と話す。 シンシナティ大学のニュースリリースによると、米国人の約15%がCRSに罹患しているという。CRSは通常、抗菌薬で治療されるが、やっかいなのはCRSの症状が鼻のアレルギー症状(アレルギー性鼻炎)と似ている点にある。Sedaghat氏は、「米国中西部で育った者として、実際に副鼻腔や鼻の症状が『アレルギー』と決めつけられがちであることは断言できる。なぜなら、アレルギー性鼻炎とCRSは、鼻閉や鼻汁などの特徴的な症状が共通しているからだ。また、いずれの疾患も副鼻腔に圧迫感をもたらすことがある」と話す。しかし、CRSとアレルギー性鼻炎は治療法が大幅に異なる。そのため、誤診された場合、数カ月から数年にわたって不要な苦しみが続くことになる。 今回の研究では、鼻にアレルギー症状が生じている219人(平均年齢44.3歳、女性63.9%)の患者を対象に、経鼻内視鏡検査と、Sino-Nasal Outcome Test(SNOT-22)と呼ばれる質問票による副鼻腔および鼻の症状の重症度と種類の評価が行われた。Sedaghat氏は、「われわれが患者の症状を評価するためにこの質問票を使用したのは、CRSとアレルギー性鼻炎の症状を同時に評価でき、それぞれについて別の質問票を使う必要がなかったからだ」と説明している。 その結果、これらの患者のうちの91.3%(200人)でアレルギー性鼻炎の診断が確定されたが、45.2%(99人)はCRSの診断基準も満たすことが明らかになった。 Sedaghat氏は、「それまで何年も抗アレルギー薬を服用していたとしても、CRSであることが判明すれば、症状を解消する治療法が見つかるかもしれない」と言う。また、同氏は「われわれの地域の多くの患者が抱えている極めて重要な問題に光を当てることができたのは喜ばしいことだ。アレルギー性鼻炎だと思って受診した患者のほぼ50%にCRSがあったのだ」と強調。その上で、「どれだけ多くの患者が適切な治療を受けていない可能性があるのか、またCRSの可能性を疑って受診することがどれだけ多くの患者に良い影響を及ぼす可能性があるのか、想像してみてほしい」と付け加えた。 さらにSedaghat氏は、CRSの誤診や過小診断に対する解決策は、それほど複雑なものではないと指摘し、「自分で簡単に回答できる自記式質問票などのツールは、アレルギーの治療では改善しない鼻や副鼻腔の症状を抱える多くの患者がCRSに対する追加治療を求めるべきかどうかの判断の助けになるだろう」と述べている。

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英語で「予防」は?【1分★医療英語】第123回

第123回 英語で「予防」は?《例文1》Do you recommend initiating antibiotic prophylaxis?(抗菌薬での予防を開始したほうがいいと思いますか?)《例文2》The oncology team has decided to use neutropenia prophylaxis.(腫瘍チームが好中球減少症の予防をすることを決めました)《解説》「予防」を示す英単語は、“prevention”と習ったかと思います。患者さんとの会話の際は一般的なこの表現を使いますが、医療者同士では“prophylaxis”(プロフィラクスィス:[病気の]予防)が使われることが多く、臨床ガイドライン等でもこちらが採用されています。“PrEP”(pre-exposure prophylaxis=曝露前予防)、“PEP”(post-exposure prophylaxis=曝露後予防)など、HIV曝露前後に予防として抗HIV薬を服用する意味の単語にも使われています。“prophylaxis”は少し長いので、カルテ等では略語の“ppx”と書くこともあります。同じ薬であっても、治療目的と予防目的では異なる用量で処方することも多く、注意が必要です。“therapeutic dose”は「治療目的の用量」、“prophylactic dose”は「予防目的の用量」を指します。薬のオーダーをするときや、スタッフとの会話の際に、間違いや勘違いがないよう気を付けてください。講師紹介

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電子カルテを通じた医師への警告で不要な検査が減少

 80歳の男性に定期的な前立腺がんの検査(PSA検査)を指示するために医師がコンピューターを操作していると、患者の電子カルテに派手な黄色の警告が表示された。そこには、「ガイドラインで推奨されていない検査をオーダーしています。PSA検査の結果に基づき行われる診断や治療が患者に有害となる可能性があります。正当な理由なく検査を行うと、不要な検査であることがカルテに記載されます」との警告文が表示されていた。 この警告文は、医師による高齢患者への不要な検査を減らすための戦略の一環として米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のStephen Persell氏らが作成し、試験的に導入したものである。同氏らの研究では、この戦略により18カ月後には不要なPSA検査が9%、女性での尿路感染症診断のための尿検査が約6%減少したという。Persell氏は、「われわれの知る限り、これはポイント・オブ・ケア(ケアが行われている場)での警告が全ての不要な検査や治療を有意に減少させることを示した初めての研究である」と述べている。この研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に2月6日掲載された。 この研究では、ノースウェスタン・メディスンに属する60施設のプライマリケア診療所の医師とその患者を対象に、医師の注意を患者が被る害に向けさせ、また、医師に過剰医療に対する社会的懸念や風評に対する懸念を考えさせることで、医師の意思決定がどのように変わるかが評価された。対象とされた医師は、行動科学に基づいた臨床意思決定支援ツールによる介入と症例ベースの教育を受ける群(30クリニックの医師187人、介入群)と、症例ベースの教育のみを受ける群(30クリニックの医師187人、教育群)に割り付けられた。意思決定支援ツールは、患者にもたらされる潜在的な害や結果に対する医師の責任を強調し、社会的規範を伝えるようにデザインされたものだった。 介入効果は、前立腺がんの既往歴がない76歳以上の男性に対するPSA検査、65歳以上の女性に対する非特異的な理由での尿検査、HbA1cが7%未満の75歳以上の糖尿病患者に対する血糖降下薬による過剰治療の3点について検討した。先行研究では、75歳以上の男性でのPSA検査は延命治療につながらないばかりか、不要な治療を受けることで尿失禁や性機能障害、直腸出血などが生じる可能性もあることが示されている。同様に、65歳以上の無症状の尿路感染症に対する抗菌薬による治療が健康を改善することを示したエビデンスもない。さらに、インスリンやスルホニル尿素のような糖尿病治療薬を使用している75歳以上の糖尿病患者の血糖値を低下させる治療も低血糖のリスクを高めるので危険である。 その結果、介入から18カ月後には、介入群では教育群に比べてPSA検査が8.7%、非特異的な尿検査が5.5%、糖尿病に対する過剰治療が1.4%少なく、介入が有効であることが明らかになった。 先行研究では、電子カルテを通じて医師にメッセージを配信することで不要な検査を減らすことが試みられているが、Persell氏らは今回の研究で、医師に影響を与え得る言葉の組み合わせを考え出すことができたと話している。同氏は、「患者にもたらされる潜在的な害に焦点を当て、社会的規範を共有し、社会的責任や風評への懸念を促進する要素を取り入れることが、これらのメッセージの効果につながったと考えている」と大学のニュースリリースで説明している。その上で、「臨床医にとって説得力のあるメッセージを、臨床医がオーダーを出す際に電子カルテを通じて配信することができるのなら、これはケアを改善する簡単な方法となるし、大規模な医療システム全体への適用も可能だ」と付け加えている。 研究グループは、このようなメッセージ配信による介入が、オピオイドや睡眠薬の処方、潜在的に危険な薬剤の組み合わせなど、他のタイプの過剰治療を減らす上でも有効であるのかを検討する予定だと話している。

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アラスカポックスウイルス、初の死亡例が報告される

 米アラスカ州保健当局は、同州の男性が、主に小型の哺乳類に感染する珍しいウイルスであるアラスカポックスウイルス(Alaskapox virus;AKPV)に感染して死亡したことを、「State of Alaska Epidemiology Bulletin」2月9日号で報告した。アラスカ州疫学課は、死亡したのは、キナイ半島在住の高齢男性で、がん治療による免疫抑制の既往歴があったことを説明し、「これは、入院と死亡に至った重症AKPV感染症の最初の症例だ。患者の免疫不全状態が病気の重症化に寄与したと思われる」と述べている。 アラスカ州保健当局によれば、2015年以来、AKPVのヒトへの感染例はわずか7例しか報告されておらず、この症例の男性が死亡した2024年1月以前に、AKPV感染が原因で入院した人や死亡した人はいなかったという。また、7人の感染者のうちの6人はフェアバンクスノーススター郡に居住しており、同郡ではアカハタネズミやトガリネズミがAKPVに感染していることが確認されている。 保健当局は、AKPV感染で現れる症状は、皮膚病変、リンパ節腫脹、筋肉痛や関節痛などであると説明している。米疾病対策センター(CDC)の疫学者Julia Rogers氏も、「AKPV感染症は症状が軽い場合が多いため、われわれが発見できなかった症例がこれまでにもあったかもしれない。AKPV感染症例の見つけ方を学ぶ医師が増えるにつれ、症例数は増加する可能性がある」とニューヨーク・タイムズ紙に話している。 今回の症例報告によると、男性は2023年9月に右腋窩に赤くて軟らかい丘疹があることに気付き、6週間で数回にわたってかかりつけ医と地元の救急外来を受診した。その際に男性は、よく世話をしている野良猫に引っ掻かれたことが何度もあると話したという。パンチ生検では、悪性腫瘍や細菌感染の証拠は認められなかった。男性には複数の抗菌薬が処方されたがどれも効果を示さず、倦怠感や、右腋窩と肩に痛みが生じ、丘疹も硬化していった。 男性の右腕は可動域が制限されるようになり、11月にその原因として蜂窩織炎の広範な進行が疑われて入院した。その後に移送されたアンカレッジの病院では、「焼けるような痛み」を訴えたという。右腋窩の生検部位は治癒しておらず、その周囲には灰色の凝集性プラークとともに大量の浸出液が認められた。CTとMRIによる検査では、右腋窩および肩に広範な筋炎が確認され、また、体全体に4つの小さな天疱瘡様の病変が認められた。 検査の結果、牛痘、天然痘、その他のウイルスへの感染の可能性は除外され、AKPVの感染症例と一致することが判明した。保健当局によると、この男性は入院中、傷が治るのに時間がかかり、栄養失調、急性腎不全、呼吸不全に陥り、2024年1月下旬に死亡したという。 男性を引っ掻いた野良猫は、エムポックスウイルスが属するオルソポックスウイルス属の検査でも陰性であったが、保健当局は、この野良猫が感染源である可能性があるとの見方を示している。アラスカ州疫学課のチーフJoe McLaughlin氏はニューヨーク・タイムズ紙に対し、「AKPVに感染した患者はいずれも猫か犬を飼っていた」と話している。 McLaughlin氏は、「AKPV感染症はまれであるため、アラスカの人々はこのウイルスを過度に心配すべきではないが、その存在に対する認識を高めるべきだというのが、われわれが伝えたい第一のメッセージだ」と話している。

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市中誤嚥性肺炎、嫌気性菌カバーは必要?

 誤嚥性肺炎の治療において、本邦では嫌気性菌カバーのためスルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)などが用いられることがある。しかし、海外では誤嚥性肺炎の0.5%にしか嫌気性菌が認められなかったという報告もあり1)、米国胸部学会/米国感染症学会(ATS/IDSA)の市中肺炎ガイドライン2019では、嫌気性菌カバーは必須ではないことが記載された2)。また、2023年に実施されたシステマティックレビューにおいて、嫌気性菌カバーの有無により、誤嚥性肺炎患者に転帰の差はみられなかったことも報告されている3)。しかし、本レビューに含まれた論文は3本のみであり、サンプルサイズも小さく、結論を導くためには大規模研究が必要である。そこで、カナダ・クイーンズ大学のAnthony D. Bai氏らは、約4千例の市中誤嚥性肺炎患者を対象とした多施設後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、嫌気性菌カバーは院内死亡リスクを低下させず、C. difficile大腸炎リスクを上昇させた。本研究結果は、Chest誌オンライン版2月20日号で報告された。 研究グループは、カナダの18施設において市中誤嚥性肺炎で入院した患者のうち、入院から48時間以内に抗菌薬が投与された3,999例を対象とした後ろ向き研究を実施した。セフトリアキソン、セフォタキシム、レボフロキサシンが投与された患者を非カバー群(2,683例)とした。アモキシシリン・クラブラン酸※、モキシフロキサシンが投与された患者、非カバー群の薬剤とクリンダマイシンまたはメトロニダゾールが併用された患者を嫌気性菌カバー群(1,316例)とした。主要評価項目は院内死亡、副次評価項目はC. difficile大腸炎の発現、治療開始後のICU入室であった。なお、両群間の背景因子を調整するため、傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いて解析した。※:本研究が実施されたカナダではSBT/ABPCが使用できないため、SBT/ABPCに相当するものとした。 主な結果は以下のとおり。・入院期間中央値は非カバー群6.7日、嫌気性菌カバー群7.6日であった。・院内死亡率は非カバー群30.3%(814例)、嫌気性菌カバー群32.1%(422例)であった。・傾向スコアによる背景因子の調整後の院内死亡リスクの群間差は1.6%(95%信頼区間[CI]:-1.7~4.9)であり、両群間に有意差は認められなかった。・C. difficile大腸炎の発現率は非カバー群0.2%以下(5例以下)、嫌気性菌カバー群0.8~1.1%(11~15例)であった。・傾向スコアによる背景因子の調整後のC. difficile大腸炎の発現リスクの群間差は1.0%(95%CI:0.3~1.7)であり、嫌気性菌カバー群で有意にリスクが高かった。・治療開始後のICU入室率は非カバー群2.5%(66例)、嫌気性菌カバー群2.7%(35例)であった。 著者らは、本研究には抗菌薬を必要としない誤嚥性肺炎患者が含まれる可能性があること、院外死亡や再入院の評価ができなかったこと、多くの患者で肺炎の原因菌が特定できていなかったことなどの限界が存在することを指摘しつつ、「誤嚥性肺炎において、嫌気性菌カバーは院内死亡率を改善せず、C. difficile大腸炎リスクを上昇させることから不要である可能性が高いと考えられる」とまとめた。

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新たな薬剤耐性大腸菌の広がりに科学者が警戒

 中国の小児病院で、抗菌薬に耐性を持つ大腸菌が新たに確認された。英国の研究グループによると、中国の病院で最も一般的となった薬剤耐性大腸菌は、最後の砦とされるカルバペネム系抗菌薬にも耐性を持つ配列タイプ(sequence type;ST)410に属する大腸菌(ST410)であるが、中国の小児病院で発生した2件の大腸菌アウトブレイクの背景には、B5/H24RxCと呼ばれるST410より強毒性の大腸菌が関与していたことが判明したという。英バーミンガム大学微生物学・感染症研究所所長のAlan McNally氏らによる研究で、詳細は、「Nature Communications」に1月12日掲載された。 この変異株は、非常に感染力が強く、従来の大腸菌より増殖スピードが速く、より多くの害を生物に及ぼすと研究グループは警鐘を鳴らしている。McNally氏は、「この新しい変異株は、抗菌薬に対する耐性が強くなるとともに病原性も増している。これは、これまでには見られなかった憂慮すべき傾向だ。この大腸菌が中国国外にも広がっていることが確認されている。世界中のサーベイランスラボが、この大腸菌を警戒すべきだ」と話している。 McNally氏らはこの研究で、2017年から2021年の間に中国の26の省で入院患者から採取されたカルバペネム系抗菌薬に耐性を持つ大腸菌(CREC)の388の分離株のゲノム解析を行った。これらの分離株は主に、尿(111点)、痰(64点)、血液(47点)の検体から分離されたものだった。 その結果、これらの株の中で最も多く認められたSTはST410(109株)であり、次いで、ST167(41株)、ST131とST617(12株ずつ)の順であった。2015〜2017年に実施された研究では、ST410はST131、ST167に次いで3番目に多いSTであったことから、CRECのポピュレーションが変化したことがうかがわれた。 ST410についてさらに詳しく解析したところ、通常よりも高い毒性や感染力を持つB5/H24RxCと呼ばれるST410のクローンが同定され、このクローンが、中国の小児病院で生じた2件のアウトブレイクの原因菌である可能性が示唆された。研究グループは、B5/H24RxCは、2006年に特定され、2015年から2021年の間に中国以外の10カ国で分離されたB4/H24RxCの進化型である可能性があると述べている。 論文の筆頭著者である、英ケンブリッジ大学獣医学分野のXiaoliang Ba氏は、「本研究は、大腸菌のような臨床的に重要な病原体における抗菌薬耐性の進化を浮き彫りにするものだ。また、世界的な公衆衛生において深刻化しているこの課題に対処するためには、各国が互いに協力しあって取り組むことが喫緊に必要なことを強調する結果だ」と述べている。

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090)お薬を多めに飲んじゃう患者さん!?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第90回 お薬を多めに飲んじゃう患者さん!?ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆先日外来で、前の週に切開排膿した炎症性粉瘤の患者さんを、処置室で診察しました。切開部位まわりの炎症もなく、きれいになっており、あとは傷がふさがるのを待つだけ、という状態。傷がふさがるまで創部のガーゼ交換だけ続けてもらい、先週処方した抗菌薬の内服は飲みきり終了でよい旨、お伝えしました。すると、患者さんから、漫画に描いたような返答が…。「いつも多めに飲んじゃうみたいで、もう2日前には終わってしまったんですよ~!」(笑顔)とのこと。内服薬で「飲み忘れがあり、余っている」というのはよく聞きますが、「多めに飲んでしまって、早く終わってしまう」というパターン(?)もあるとは…!?たくさん飲むと安心するのか? はたまた、飲んだことを忘れて、また飲んでしまうのか…?? そう言えば以前にも、「効き目が増すだろうと思って(自己判断で)倍の量を飲んでいました」という患者さんがおられました(そのときはたしか、鎮痛薬)。あらためて、「いろんなタイプの人がいるものだなあ」と思った次第です。お薬は用法用量を守って、正しくお使いください…!?それでは、また次の連載で。

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レジオネラ症への効果、キノロン・マクロライド・2剤併用で比較

 レジオネラ症は、レジオネラ肺炎を引き起こす。レジオネラ肺炎は市中肺炎の1~10%を占め、致死率は6.4%という報告もある1)。『JAID/JSC感染症治療ガイド2023』では、第1選択薬として、キノロン系抗菌薬(レボフロキサシン、シプロフロキサシン、ラスクフロキサシン、パズフロキサシン)、マクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン)が推奨されている2)。しかし、これらの薬剤による単剤療法や併用療法の有効性の違いは明らかになっていない。そこで、忽那 賢志氏(大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学 教授)らの研究グループは、DPCデータを用いて、レジオネラ症に対するキノロン系抗菌薬単独、マクロライド系抗菌薬単独、これらの併用の有効性を比較した。その結果、併用療法と単剤療法には有効性の違いがみられなかった。本研究結果は、International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2024年2月15日号で報告された。 研究グループはDPCデータを用いて、2014年4月1日~2021年3月31日までにレジオネラ症により入院した3,560例の患者情報を分析した。対象患者を入院から2日以内に投与された抗菌薬に基づき、キノロン系単独群(2,221例)、マクロライド系単独群(775例)、併用群(564例)に分類した。傾向スコアを用いた逆確率重み付け法により、併用群を対照として院内死亡率、入院期間、入院費用を比較した。 主な結果は以下のとおり。・調整後の院内死亡率は、キノロン系単独群4.6%、マクロライド系単独群3.1%、併用群4.5%であり、併用群と各単独群との間に有意差は認められなかった。・調整後の入院期間は、それぞれ12日、11日、13日であり、併用群と各単独群との間に有意差は認められなかった。・調整後の入院費用は、それぞれ53万4千円、50万9千円、55万7千円であり、併用群と各単独群との間に有意差は認められなかった。 著者らは、本研究結果について「レジオネラ症の治療において、キノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬を併用しても、単独療法と比較して大きな利点がないことが示唆された。副作用が増加する可能性を考慮すると、併用療法を選択する際には慎重な検討が必要である」とまとめた。

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単純性尿路感染症、新規経口抗菌薬gepotidacinが有効/Lancet

 世界219施設で実施された単純性尿路感染症の女性患者を対象とする無作為化二重盲検実薬対照第III相非劣性試験「EAGLE-2試験」および「EAGLE-3試験」において、新規経口抗菌薬gepotidacinはnitrofurantoinと比較し、治療成功率に関して非劣性(EAGLE-2試験)および優越性(EAGLE-3試験)が検証された。ドイツ・ユストゥス・リービッヒ大学ギーセンのFlorian Wagenlehner氏らが報告した。gepotidacinは、新規の作用機序を有するトリアザアセナフチレン骨格の抗菌薬で、他の抗菌薬とは異なる作用機序と独自の結合部位により細菌のDNA複製を阻害し、2つの異なるII型トポイソメラーゼ酵素をバランスよく阻害する。著者は、「gepotidacinは、臨床的に重要な薬剤耐性菌を含む一般的な細菌性尿路病原体に対して有効な新規クラスの経口抗菌薬として、患者に大きな恩恵をもたらす可能性がある」とまとめている。Lancet誌2024年2月24日号掲載の報告。gepotidacin群とnitrofurantoin群に無作為化、1日2回5日間経口投与 EAGLE-2試験およびEAGLE-3試験の対象は、出生時女性で妊娠しておらず、12歳以上かつ体重40kg以上であり、排尿困難、頻尿、尿意切迫感、下腹部痛の症状のうち2つ以上を有し、さらに、亜硝酸塩または膿尿(白血球数>15/HPF、白血球エステラーゼ3+または強陽性)が認められた単純性尿路感染症患者。 対象者を、gepotidacin群(1,500mgを1日2回5日間経口投与)またはnitrofurantoin群(100mgを1日2回5日間経口投与)に、年齢区分(18歳未満、18~50歳、50歳以上)および再発歴で層別化し、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、治療開始10~13日後の治癒判定(Test-Of-Cure:TOC)のための来院時における治療成功(細菌学的消失と臨床的消失の複合)であった。解析対象集団は、nitrofurantoin感受性の細菌性尿路病原体(≧105CFU/mL)を有し、試験薬を少なくとも1回投与された患者とした。非劣性マージンは、米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)のガイダンスに従って10%(片側p=0.025)とした。安全性は、無作為に割り付けられた試験薬を少なくとも1回投与された全患者を対象に評価した。10~13日後の治療成功率、gepotidacin群50.6~58.5%、nitrofurantoin群43.6~47.0% EAGLE-2試験は2019年10月17日~2022年11月30日、EAGLE-3試験は2020年4月23日~2022年12月1日に実施され、それぞれ1,531例および1,605例が無作為に割り付けられた(EAGLE-2試験:gepotidacin群767例、nitrofurantoin群764例、EAGLE-3試験:805例、800例)。両試験は中間解析の結果、有効中止となった。したがって、本報告の主要解析集団には、中間解析のデータカットオフ時点でTOC来院を満たした、または、TOC来院までに治療効果が得られなかったことが判明した患者のみが含まれた。 治療成功が得られた患者の割合は、EAGLE-2試験でgepotidacin群50.6%(162/320例)、nitrofurantoin群47.0%(135/287例)(補正後群間差:4.3%、95%信頼区間[CI]:-3.6~12.1)、EAGLE-3試験でそれぞれ58.5%(162/277例)、43.6%(115/264例)(補正後群間差:14.6%、95%CI:6.4~22.8)であった。gepotidacinは、両試験においてnitrofurantoinに対し非劣性であることが示され、EAGLE-3試験では優越性が示された。 主な有害事象は、gepotidacin群が下痢(発現率:EAGLE-2試験14%[111/766例]、EAGLE-3試験18%[147/804例])、nitrofurantoin群が悪心(発現率:4%[29/760例]、4%[35/798例])であった。ほとんどは軽度または中等度で、生命を脅かすまたは致死的な有害事象は認められなかった。

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薬歴からサルファ剤アレルギー患者の過敏症を回避【うまくいく!処方提案プラクティス】第58回

 今回は、化学構造式のスルホンアミド構造に目を向けて、類似構造を有する薬剤の薬剤過敏症を未然に回避した事例を紹介します。サルファ剤はスルホンアミド構造をもつ薬剤の総称1)ですが、意外な薬剤がこの構造を有していることがあります。副作用やアレルギーの記録を活用し、どのような有害エピソードがあったのかを聴取してみましょう。患者情報70歳 女性(外来)基礎疾患高血圧症、骨粗鬆症副作用歴「サルファ剤」とだけ薬歴に記載処方内容1.アムロジピンOD錠5mg 1錠 分1 朝食後2.カルベジロール錠10mg 1錠 分1 朝食後3.エルデカルシトールカプセル0.75μg 1カプセル 分1 朝食後4.アレンドロン酸35mg 1錠 起床時 毎週月曜日服用【新規処方】1.セレコキシブ錠100mg 2錠 分2 朝夕食後2.レバミピド錠100mg 2錠 分2 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんは、基本動作はすべて自立していましたが、今回腰を痛めて整形外科を受診しました。そこで鎮痛薬を希望し、セレコキシブとレバミピドが処方されました。当薬局で処方箋を受け付け、鑑査のタイミングで薬歴を確認したところ、サルファ剤のアレルギーが登録されていることに気がつきました。そこで患者さんに、感染症治療の抗菌薬で副作用が出たことがあったかどうか確認しました。すると、過去に尿路感染症治療で服用したスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠で全身に発疹と呼吸困難感が生じたと話してくれました。今回の処方薬をそのまま服用した場合、構造活性相関としてセレコキシブのスルホンアミド構造によりサルファ剤アレルギーが生じる可能性が高いため、医師に処方変更を提案することにしました。スルホンアミド骨格(セレコキシブ添付文書より)処方提案と経過医師に電話で、患者にサルファ剤によるアレルギー症状の既往があり、発疹と呼吸困難感が生じていたことを報告しました。今回処方となったセレコキシブもスルホンアミド構造を有していて、過敏症による有害反応の可能性があることを伝えました。医師より代替薬はどうしたらよいか相談があったので、安全面などを考慮してアセトアミノフェン500mg 3錠 分3 毎食後を提案し、了承を得ました。患者は、アセトアミノフェンを7日間内服して腰痛も改善し、その後はアセトアミノフェンも終了となりました。1)岡田 正人ほか. 薬局. 薬剤過敏症歴がある患者の薬物治療. 2018;69:63.2)セレコックス錠 添付文書

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A群溶血性レンサ球菌咽頭炎ってどんな病気?

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 (溶連菌感染症)ってどんな病気?• どの年齢でもみられますが、幼児期から学童期の小児で多く報告されます• のどの痛み、38度以上の発熱、倦怠感や嘔吐といった症状が多く、舌が真っ赤になり小さなブツブツができる「イチゴ舌」がみられることがあります• 多くの場合、熱は3~5日以内に下がり、症状は1週間以内に改善します• まれに重症化し、のどや舌・全身に赤み・発疹がひろがる「猩紅熱(しょうこうねつ)」に移行することがあります治療法は?他の人にうつさないようにするには?•症状があり、検査をして感染が認められた場合は、抗菌薬での治療を行います。腎炎などを防ぐため、症状が改善しても医師に指示された期間は薬を飲むことが大切です•咳やくしゃみなどのしぶきに含まれる細菌を吸い込む「飛まつ感染」、細菌が付いた手で口や鼻に触れる「接触感染」、食品を介して細菌が口に入って感染する「経口感染」があります•のどの痛みがひどい場合は柔らかく薄味の食事を工夫し、水分補給を心がけましょう•感染力は病気になりはじめの時期、症状が急に現れる時期に最も高いとされます•手洗い・うがいを行いましょう•マスクの着用も有効です出典:東京都保険医療局「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 (溶連菌感染症)について」国立感染症研究所「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは」Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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米国皮膚科学会がにきび治療ガイドラインを改訂

 米国皮膚科学会(AAD)が、2016年以来、改訂されていなかった尋常性ざ瘡(にきび)の治療ガイドラインを改訂し、「Journal of the American Academy of Dermatology(JAAD)」1月号に公表した。本ガイドラインの上席著者で、AADの尋常性ざ瘡ガイドラインワークグループの共同議長を務める米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院皮膚科のJohn Barbieri氏は、「今回のガイドラインには、新しい外用治療薬と経口治療薬に関する内容が含まれている」と述べている。 このガイドラインは、新たに実施したシステマティックレビューの結果を踏まえて2016年のガイドラインを改訂したもの。その主な内容として、エビデンスに基づく18項目の推奨事項と、にきびの管理に有益と考えられる実践(グッドプラクティス)に関する5つの声明が提示されている。 18項目の推奨事項のうち、「強い推奨」とされたのは7項目あり、その内容は以下の4点にまとめられる。・皮膚上のアクネ菌を抑制する効果がある外用過酸化ベンゾイルの使用。・毛穴の詰まりを改善し、炎症を軽減するためのアダパレン、トレチノイン、タザロテン、トリファロテンなどの外用レチノイドの使用。・細菌と炎症レベル低減のための外用抗菌薬、またはドキシサイクリンなどの経口抗菌薬の使用。・上記の全ての薬剤を必要に応じて併用すること。 また、グッドプラクティスに関する5つの声明は、以下の通りである。・にきびの管理には、それぞれの薬剤の作用機序を考慮した併用療法が推奨される。・経口抗菌薬の使い過ぎは薬剤耐性菌の出現や抗菌薬関連の合併症発生につながり得るため、限定的な使用にとどめるべきである。・経口抗菌薬は、過酸化ベンゾイルなどの他の局所療法薬と併用することで薬剤耐性菌出現のリスクを低減させることができる。・大きいにきびや結節がある患者に対しては、炎症と痛みを早く和らげるためにコルチコステロイドの注射療法が勧められる。・上記の外用薬や経口薬が奏効しない重症患者に対しては、イソトレチノインによる治療を検討する。 最後に、AADが「条件付き」とし、ケースバイケースで医師の判断に委ねた推奨事項として、以下のものがある。・治療薬の候補には、にきびを誘発している可能性があるホルモンを標的とするクラスコテロンクリームもある。また、経口避妊薬やスピロノラクトンなどのホルモン治療薬もホルモンバランスを原因とするにきびの治療に役立つ可能性がある。・サリチル酸クリームは毛穴の詰まりを解消し、皮膚の角質を除去する効果がある。・アゼライン酸クリームは、毛穴の詰まりを解消し、細菌を死滅させ、にきび跡のシミを薄くする効果が期待できる。・経口のミノサイクリンまたはサレサイクリンは、にきびに関連する皮膚の細菌と戦い、炎症を和らげる効果が期待できる。 このほかAADは、ケミカルピーリング、レーザー、光治療器、マイクロニードルなどによるにきび治療を推奨するには、裏付けとなるエビデンスが少な過ぎると述べている。また、食習慣の改善、ビタミンや植物性製品などの代替療法を支持するエビデンスも不足しているとしている。さらに、ブロードバンド光治療、強力パルス光治療、アダパレン0.3%ゲルの使用は非推奨とされた。 Barbieri氏はAADのニュースリリースの中で、「われわれは、にきび患者の抱える懸念に取り組み、最善の治療法を決めるために努力を重ねてきた結果、これまで以上に多くの選択肢を患者に提供することができた。これと同じくらい重要なこととして、皮膚科医は、これらの治療選択肢の全てにアクセスできるようにしておくべきだ」と述べている。

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グラム陰性菌血症への抗菌薬、早期経口スイッチの効果は?

 抗菌薬は多様な疾患に処方されており、経口投与は点滴投与と比較して医療者・患者負担が少ないが、その効果に違いはあるのか。合併症のないグラム陰性菌血症の患者を対象に、抗菌薬を早期に経口投与に切り替えた場合と静脈内投与を継続した場合の90日死亡リスクを比較した研究結果が発表された。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のSandra Tingsgard氏らによる本研究は、JAMA Network Open誌2024年1月23日号に掲載された。 本試験は、対象試験エミュレーションの枠組みを用いて実施されたコホート研究で、2018年~21年、デンマーク・コペンハーゲンの4病院で診療を受けた合併症のないグラム陰性菌血症の成人の観察データを対象とした。追跡期間は90日間で、初回血液培養後4日以内に経口抗菌薬に切り替えた場合と、5日以上静脈内投与を継続した場合の90日全死因死亡率を比較した。絶対リスク、リスク差(RD)、リスク比(RR)推定のため、プールロジスティック回帰を用いてintention-to-treat解析およびper-protocol解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・計914例(年齢中央値74.5歳、男性56.0%)が組み入れられ、433例(47.4%)が早期切り替え群、481例(52.6%)が長期静脈内治療群に割り付けられた。99例(10.8%)が追跡期間中に死亡した。・長期静脈内治療群は、早期切り替え群と比較して年齢が高く、菌血症の進行がより重篤で、合併症の負担が大きかった。ベースライン時にこれらの差を調整し、per-protocol解析ではベースライン時の交絡因子と時間変動交絡因子の両方を調整し、割り当てられた治療戦略からの逸脱例は除外した。・死亡率は、長期静脈内治療群のほうが高かった(69例[14.3%]対30例[6.9%])。intention-to-treat解析では、90日全死因死亡率は早期切り替え群で9.1%(95%信頼区間[CI]:6.7~11.6)、長期静脈内治療群で11.7%(95%CI:9.6~13.8)であり、RDはー2.5%(95%CI:ー5.7~0.7)、RRは0.78(95%CI:0.60~1.10)であった。per-protocol解析では、RDはー0.1%(95%CI:-3.4~3.1)、RRは0.99(95%CI:0.70~1.40)と、両群に差はなかった。 研究者らは「4日以内の早期に経口抗菌薬へ切り替えた場合の90日全死因死亡率は、静脈内治療を継続した場合と同程度であり、早期の経口投与切り替えが効果的な代替手段となる可能性を示唆している」としている。

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抗真菌薬の過剰処方が薬剤耐性真菌感染症増加の一因に

 米国では、医師が皮膚症状を訴える患者に外用抗真菌薬を処方することが非常に多く、それが薬剤耐性真菌感染症の増加の一因となっている可能性のあることが、米疾病対策センター(CDC)のJeremy Gold氏らによる研究で示唆された。この研究結果は、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」1月11日号に掲載された。 抗真菌薬に耐性を示す白癬(カビの一種である皮膚糸状菌を原因菌とする感染症)は、新たに現れつつある非常に大きな脅威の一つである。例えば、南アジアでは近年、外用や経口の抗真菌薬が効かない白癬が大流行した。このような薬剤耐性白癬の症例は米国の11の州でも確認されており、患者には広範囲に及ぶ病変が現れ、診断が遅れる事態が報告されているという。 抗菌薬の乱用が薬剤耐性細菌の増加につながるように、真菌も抗真菌薬に曝露すればするほど、薬剤耐性真菌が自然に増えていく。CDCのチームは、世界中で報告されている薬剤耐性真菌感染症の増加は、外用の抗真菌薬の過剰処方が原因ではないかと考え、2021年のメディケアパートDのデータを用いて、外用抗真菌薬の処方状況を調べた。データには、抗真菌薬(ステロイド薬と抗真菌薬の配合薬も含める)の処方箋の数量や処方者などに関する情報が含まれていた。 その結果、2021年にメディケアパートD受益者に処方された外用抗真菌薬の件数は645万5,140件であることが明らかになった。最も多かったのは、ケトコナゾールの236万4,169件(36.6%)、次いでナイスタチンの187万1,368万件(29.0%)、クロトリマゾール・ベタメタゾンの94万5,838件(14.7%)が続いた。101万7,417人の処方者のうち、13万637人(12.8%)が外用抗真菌薬を処方していた。645万5,140件の処方箋の40.0%(257万9,045件)はプライマリケア医の処方によるものだったが、処方者1人当たりの処方件数は皮膚科医で最も多く(87.1件)、次いで、足病医(67.2件)、プライマリケア医(12.3件)の順だった。さらに、645万5,140件の処方箋の44.2%(285万1,394件)は、処方数が上位10%に当たる1万3,106人の処方者により処方されたものだった。 Gold氏らは、抗真菌薬処方にまつわる大きな問題は、ほとんどの医師が皮膚の状態を見ただけで診断しており、「確認診断検査」を行うことがほとんどない点だと指摘する。さらに研究グループは、ほとんどの外用抗真菌薬が市販されていることを指摘した上で、「この研究結果は、おそらくは外用抗真菌薬の過剰処方の一端を示しているに過ぎない」との見方を示している。外用抗真菌薬の中でも、特に、ステロイド薬と抗真菌薬を組み合わせたクロトリマゾール・ベタメタゾンの多用は、薬剤耐性白癬の出現の大きな要因であると考えられている。この薬は、鼡径部、臀部、脇の下など、皮膚が折り重なる部分に塗布すると、皮膚障害を引き起こす可能性がある上に、長期にわたって広範囲に使用すると、ホルモンバランスの異常を引き起こすこともあると、研究グループは説明している。 こうしたことを踏まえて研究グループは、「真菌による皮膚感染症が疑われる場合、医療従事者は慎重に抗真菌薬を処方すべきだ」と結論付けている。さらに、「過剰処方や薬剤耐性真菌感染症の危険性を減らすために、医師は外用抗真菌薬や抗真菌薬・ステロイド薬配合薬の正しい使用法について患者を教育すべきだ」と付言している。

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市中肺炎、β-ラクタム系薬へのクラリスロマイシン上乗せの意義は?

 市中肺炎に対するβ-ラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用の有効性が報告されているが、これらは観察研究やメタ解析によるものであった。そこで、ギリシャ・National and Kapodistrian University of AthensのEvangelos J. Giamarellos-Bourboulis氏らは、無作為化比較試験により、β-ラクタム系抗菌薬へのクラリスロマイシン上乗せの効果を検討した。その結果、クラリスロマイシン上乗せにより、近年導入された評価基準である早期臨床反応が有意に改善した。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2024年1月3日号で報告された。 本研究の対象は、18歳以上の市中肺炎患者278例であった。主な適格基準は、敗血症の評価に用いられるSOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコア2点以上、プロカルシトニン値0.25ng/mL以上などであった。対象患者を標準治療薬(第3世代セファロスポリン静注またはβ-ラクタム系薬+β-ラクタマーゼ阻害薬静注)で治療を行うプラセボ群、標準治療薬にクラリスロマイシン(500mgを1日2回)を併用するクラリスロマイシン群に1対1に無作為に割り付け、7日間投与した。主要評価項目は、早期臨床反応※であった。※:治療開始から72時間後において、以下の(1)と(2)を両方満たすこと。(1)呼吸器症状の重症度スコアが50%以上低下(2)SOFAスコアが30%以上低下またはプロカルシトニン値が良好(ベースラインから80%以上低下または0.25ng/mg未満) 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目の解析には、プラセボ群133例、クラリスロマイシン群134例が組み入れられた。・主要評価項目の早期臨床反応を達成した患者の割合は、プラセボ群が38%であったのに対し、クラリスロマイシン群は68%であり、クラリスロマイシン群が有意に改善した(群間差:29.6%、オッズ比[OR]:3.40、95%信頼区間[CI]:2.06~5.63)。・新たな敗血症はプラセボ群24%、クラリスロマイシン群13%に認められ、クラリスロマイシン群で有意に少なかった(ハザード比:0.52、95%CI:0.29~0.93、p=0.026)。・重篤な有害事象はプラセボ群53%、クラリスロマイシン群43%に発現した(群間差:9.4%、OR:1.46、95%CI:0.89~2.35)。重篤な有害事象は、いずれも治療薬との関連は認められなかった。

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2023年、読んでよかった!「この医学書」/会員医師アンケート

2023年も多くの医学書が刊行されました。CareNet.comでは、会員医師1,000人(内科、循環器科、呼吸器科、消化器科、精神科/心療内科・各200人)に、「今年読んでよかった医学書」についてアンケートを実施しました(今年刊行された本に限らず、今年読んだ本であればOK)。アンケートでは「ご自身の専門分野でよかった本」「専門分野以外でよかった本」を1冊ずつ、理由も添えて挙げてもらいました。本記事では、複数の医師から名前の挙がった書籍を、お薦めコメントと共に紹介します(アンケート実施日:12月5日)。ぜひ、年末年始の読書の参考にしてください。内科幅広いテーマの書籍が「専門分野」として挙げられた内科。『今日の治療薬』(南江堂)、『ハリソン内科学』(メディカル・サイエンス・インターナショナル)、『当直医マニュアル』(医歯薬出版)といった「ド定番」のほか、糖尿病治療に関する書籍と「日本内科学会雑誌」を挙げる人が目立ちました。『ジェネラリストのための内科外来マニュアル 第3版』(金城 光代ほか[編]、医学書院、2023年)内科外来のトップマニュアルが6年ぶりの改訂。内科医以外からも多くの推薦がありました。●推薦コメント「外来診療に役立った」「疾患別に緊急性や重症度などを考えさせるように導く内容となっていて面白い」『胃炎の京都分類 改訂第3版』(春間 賢[監修]、日本メディカルセンター、2023年)多くの画像で胃炎を解説する定番書の改訂第3版。●推薦コメント「慢性胃炎に対する内視鏡的・肉眼的考察により、これまでの慢性胃炎の概念を体系化した書物」「臨床に生かせる」『内科学 第12版』(矢崎 義雄・小室 一成[編]、朝倉書店、2022年)初版は1977年、病態生理を中心に内科的疾患の最新の知見を集大成した改訂12版。●推薦コメント「鉄板です」「ザ・定番と思われるため」循環器科内科医からも多くの推薦があった『ジェネラリストのための内科外来マニュアル』のほか、個別テーマでは心電図、PCIを扱った書籍が多く挙げられました。『循環とは何か? 虜になる循環の生理学』(中村 謙介[著]、三輪書店、2020年)難解な循環の生理学を、深くかつわかりやすく解説。●推薦コメント「面白い」「知識の整理になった」『PCIで使い倒す IVUS徹底活用術 改訂第2版』(本江 純子[編]、メジカルビュー社、2020年)「もっとこうしたらIVUSをより有効に活用できる」という手順・方法などを、実例と共に解説。●推薦コメント「IVUSの基本的な読影やトラブルシューティングなど、理論的にわかりやすかった」「説明がわかりやすく、実践的」『心不全治療薬の考え方,使い方 改訂2版』(齋藤 秀輝ほか[編]、中外医学社、2023年)心不全治療薬の整理のほか、使い分けや未知の事柄も追記した実践的な書の改訂版。●推薦コメント「いつも参考にしています」「心不全治療薬の“革命”を経て…、U40新世代が作り上げるバイブル」呼吸器科「間質性肺炎」「肺がん」「喘息」「気管支鏡」「人工呼吸」「咳」など、「専門」とする書籍テーマのバリエーションが多様だった呼吸器科。回答者によってさまざまな疾患に対応していることが垣間見える結果となりました。『ポケット呼吸器診療2023』(倉原 優[著]、シーニュ、2023年)CareNet.comの連載でもおなじみの倉原氏による定番の一冊の最新版。●推薦コメント「毎年非常に詳しく書かれているから」「ガイドラインや最新の治療薬のアップデートを記憶するのに役立つ」「呼吸器診療のtipsがコンパクトにまとめられている」『誤嚥性肺炎の主治医力』(飛野 和則[監修]、吉松 由貴[著]、南山堂、2021年)飯塚病院 呼吸器内科の著者らによる誤嚥性肺炎診療の実践書。●推薦コメント「気を付けるポイントを再認識した」「読みやすく、わかりやすかった」『抗菌薬の考え方,使い方 ver.5』(岩田 健太郎[著]、中外医学社、2022年)未曽有のコロナ禍を経て、新たに刊行された改訂版。●推薦コメント「大学の授業で習うべき重要な内容」「基本的な抗菌薬の知識を臨床の面から解説してある」「普段何気なく使用している抗菌薬の使用方法を見直すきっかけになった」消化器科内科医からも多く挙げられた『胃炎の京都分類 改訂第3版』のほか、医学誌「胃と腸」や『胃と腸アトラス』を「基本知識、専門知識がよくわかる」「読影の参考になる」「症例問題集が面白く勉強になる」と推薦する声が目立ちました。『専門医のための消化器病学 第3版』(下瀬川 徹ほか[監修]、医学書院、2021年)消化器専門医が知っておきたい最新知見を各領域のエキスパートが解説。●推薦コメント「内容が新しくてよい」「専門医として知っておくべき内容がまとめてあり、わかりやすい」「網羅的に消化器病の知識が記されており、教科書兼辞書として重宝している」『カール先生の大腸内視鏡挿入術 第2版』(軽部 友明[著]、日本医事新報社、2020年)内視鏡手技をテーマとした書籍が多いなか、内視鏡挿入のテクニックを動画付きで解説した本書を挙げる人が目立ちました。●推薦コメント「図が豊富」「基本的な内容が理解できた」「わかりやすく、新しい発見があった」『患者背景とサイトカインプロファイルから導く IBD治療薬 処方の最適解』(杉本 健[著]、南江堂、2023年)炎症性腸疾患(IBD)の治療薬について、著者独自の観点から患者ごとの最適解の考え方を提供。●推薦コメント「目から鱗でした」「わかりやすく、的確な具体例もある」精神科/心療内科他科と比較して同じ本を選択した回答者が多く、刊行から時間が経過した本も多く選ばれる傾向がありました。『精神診療プラチナマニュアル 第2版』(松崎 朝樹[著]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2020年)精神診療に必要かつ不可欠な内容をハンディサイズに収載。●推薦コメント「ノイヘレン(新人)時代にこういった入門書があればよかった。今でも復習に役立つ」「内容がわかりやすくまとまっている」「最新の話題が記載されている」『[新版]精神科治療の覚書』(中井 久夫[著]、日本評論社、2014年)「医者ができる最大の処方は希望である」。精神科医のみならず、すべての臨床医に向けられた基本の書。●推薦コメント「読みやすい」「改めて読み直してみて、初心を思い出せた」『カプラン臨床精神医学テキスト 第3版』(井上 令一[著・監修]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2016年)DSM-5準拠、高評と信頼を得た最高峰のテキストの改訂版。●推薦コメント「精神科医が学ぶことがおおむね網羅されている」「DSM-5に準じ体系化されていて、たくさんの疾患が網羅されている」「精神科専門医試験もここから多く出ていた」専門も専門外も!「信頼のシリーズ」アンケートの設問では「事典やガイドライン、医学雑誌以外の本を推薦ください」と条件を付けたものの、医師にとって最も身近であるこれらの書籍や、医学生・研修医、非専門医、コメディカルを対象とした定番シリーズを挙げる方も多くいました。「極論で語る」シリーズ(丸善出版)●推薦コメント「循環器疾患についてメカニズムと対応方法をわかりやすく解説してくれる」(『極論で語る循環器内科』/循環器科)、「体液コントロールにおける腎臓の視点を取り入れることができる」(『極論で語る腎臓内科』/循環器科)「病気がみえる」シリーズ(メディックメディア)●推薦コメント「看護学校の講師をしていますが、初心に返ることができた」(循環器科)、「基礎の確認になった」(循環器科)「レジデントのための」シリーズ(日本医事新報社)●推薦コメント「内科診療の疑問をEBMの側面でまとめてくれている」(『レジデントのための 内科診断の道標』/精神科)、「実臨床に即しており、非常にわかりやすい」(『レジデントのための これだけ輸液』/呼吸器科)どの科も必須「このテーマ」新型コロナウイルス感染症が収まり切らないなか、「専門外」の良書としてどの科の医師からも名前が挙がった本には、感染症をテーマとするものが多数ありました。『レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版』(青木 眞[著]、医学書院、2020年)初版から20年。読み継がれてきた「感染症診療のバイブル」の最新版。●推薦コメント「抗菌薬の選択に参考となる」(呼吸器科)『感染症プラチナマニュアル Ver.8 2023-2024』(岡 秀昭[著]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2023年)2015年初版、ベストセラー「感染症診療マニュアル」の改訂第8版。●推薦コメント「実臨床に即しており、非常にわかりやすい」(呼吸器科)キラリと光る「新定番」絶対数としてはさほど多くないものの、最近刊行された注目の書籍が、複数の科の医師から「専門外の好著」として名前が挙がりました。『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』(松田 光弘[著]、医学書院、2022年)皮膚科疾患のロジックが身に付く、フローチャートを用いた解説が好評の一冊。●推薦コメント「皮膚科が苦手だったが、まさに目からウロコ」(内科)、「皮疹を診る際の皮膚科医の思考過程がよくわかる」(内科)、「他科の医師でも皮疹診療についての基本がわかる」(呼吸器科)『世界一わかりやすい 筋肉のつながり図鑑』(きまた りょう[著]、KADOKAWA、2023年)100点以上のオールカラーイラストで筋肉のつながり・仕組みを平易に解説した一般書のベストセラー。●推薦コメント「筋肉の解剖学的特徴がわかりやすい」(内科)、「イラストがよい、わかりやすい」(消化器科)『心電図ハンター 心電図×非循環器医』(増井 伸高[著]、中外医学社、2016年)非循環器医をターゲットに、即座に判断できない微妙な症例を集め、心電図判読のコツを紹介。●推薦コメント「実際の臨床の場面を想定した形での判断基準などがわかりやすい」(内科)、「知りたいことがコンパクトにまとめてある」(呼吸器科)こんな本も! 医師ならではの一冊医学書以外でも、医師ならではの視点から、熱のこもったコメントと共に寄せられた本がありました。『蘭学事始』(杉田 玄白[著]、緒方 富雄[校註]、岩波文庫、1959年)江戸後期、杉田 玄白が著した蘭学創始期の回想録。●推薦コメント「印象に残った」(呼吸器科)『医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者』(大竹 文雄・平井 啓[編著]、東洋経済新報社、2018年)●推薦コメント「インフォームドコンセントからSDMになり、なんとなく感じていた違和感が、行動経済学的な考え方によりすっきりした」(消化器科)『嫌われる勇気』(岸見 一郎・古賀 史健[著]、ダイヤモンド社、2013年)アドラー心理学を解説する、100万部突破のベストセラー。●推薦コメント「承認欲求に気付くことができた」(循環器科)『わたしが誰かわからない ヤングケアラーを探す旅』(中村 佑子[著]、医学書院、2023年)●推薦コメント「一体ヤングケアラーとは誰なのか。世界をどのように感受していて、具体的に何に困っているのか。取材はドキメンタリーを読むようだ」(消化器科)

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小児インフルエンザ治療でのタミフル使用の実態とは

 米国では、インフルエンザに罹患した小児にはタミフルなどの抗ウイルス薬を処方することが推奨されているにもかかわらず、その処方率は低く、特に2歳未満の小児では5人に3人が同薬を処方されていないことが新たな研究で明らかになった。米ヴァンダービルト大学モンロー・カレル・ジュニア小児病院の小児科医であるJames Antoon氏らによるこの研究の詳細は、「Pediatrics」に11月13日掲載された。 この研究は、IBM MarketScan Commercial Claims and Encounters Databaseを用いて、米国の50州での民間保険に関連する取引データの中から2010年7月1日から2019年6月30日の間の外来または救急外来での18歳未満の小児に対する処方箋の請求データを収集し、小児インフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬処方の動向を調査したもの。抗ウイルス薬の処方は、オセルタミビル(商品名タミフル)、バロキサビル(商品名ゾフルーザ)、またはザナミビル(商品名リレンザ)が処方された場合と定義された。主要評価項目は、小児インフルエンザ患者での抗ウイルス薬の処方箋受取率(抗ウイルス薬の薬局請求数を対象小児の総数で割ったもの)、副次評価項目は、インフルエンザの診断を受けた患者のうち抗ウイルス薬による治療を受けた患者の割合と、物価の上昇を考慮した抗ウイルス薬のコストとした。 その結果、研究対象期間中における治療用・予防用を合わせた抗ウイルス薬の処方件数は141万6,764件であり、そのほとんど(99.8%)がオセルタミビルであることが明らかになった。研究対象期間全体で、1インフルエンザシーズン当たりの抗ウイルス薬の平均処方件数は小児1,000人当たり20.6件であり、インフルエンザシーズンにより4.35件から48.6件の変動が見られた。 抗ウイルス薬により治療された患者の割合は、年齢層では12歳以上、インフルエンザシーズンでは2017/2018年シーズン、地理別では東南中央地域で特に高かった。これに対して、インフルエンザ合併症のリスクが高い2歳未満のインフルエンザ患者のうち、ガイドラインに則った抗ウイルス薬による治療を受けた患者の割合は40%未満(1,000人当たり367件の処方)と低かった。 物価の上昇を考慮した抗ウイルス薬の総コストは2億845万8,979ドル(1ドル150円換算で312億6884万6,850円)であり、1処方当たりのコスト(中央値)は111ドル(同1万6,650円)から151ドル(同2万2,650円)の間であった。 Antoon氏は、「ガイドラインでは、インフルエンザの小児患者に対しては、年齢を問わず抗ウイルス薬による治療が推奨されているにもかかわらず、われわれの研究から、2歳未満の小児で同治療が施されたのは40%に満たないことが明らかになった。また、全ての年齢層で抗ウイルス薬の使用率が低かったことも気に掛けるべき重要な結果だ」と話す。 また、インフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬の使用状況は、地域により大きく異なることも示された。この点についてAntoon氏は、「この結果は、特に最も弱い立場にある小児でのインフルエンザの予防と治療に改善の余地があることを浮き彫りにするものだ」との見方を示す。研究グループは、このような地域差が生じる原因として、小児に対する抗ウイルス薬の使用を推奨する国のガイドラインが周知されていない可能性や、副作用への懸念、あるいは薬効に対する信頼不足が存在する可能性があると推測している。 研究グループは、「今回の研究結果は、小児患者でのインフルエンザの管理の質を向上させる必要性を強調するものだ」と結論付けている。Antoon氏は、「外来で小児のインフルエンザ患者を治療することで、症状の持続期間、家庭内感染、抗菌薬の使用、中耳炎などのインフルエンザ関連の合併症が減少することが報告されている」と補足している。

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