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乳酸菌やビフィズス菌に抗菌薬関連下痢症の予防効果なし/Lancet

 抗菌薬関連下痢症(AAD)およびクロストリジウム・ディフィシル感染による下痢症(CDD)の予防治療として、乳酸菌とビフィズス菌を含む微生物製剤は有効ではないことが、英国・スウォンジー大学のStephen J Allen氏らが行ったPLACIDE試験で示された。広域抗菌薬を処方されている高齢の外来患者ではAADが高頻度にみられるが、CDDの場合は生命を脅かす病態が引き起こされる可能性がある。根本的な疾患メカニズムが完全には解明されないなか、AADの予防策として微生物製剤の検討が進められているが、有効性に関するデータは十分ではないという。Lancet誌オンライン版2013年8月8日号掲載の報告。約3,000例を無作為化試験で評価 PLACIDE試験は、抗菌薬を処方されている高齢の外来患者における微生物製剤のAAD予防効果を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験。英国の5施設から、経口または静注抗菌薬の投与を受けている65歳以上の外来患者が登録された。 参加者は、乳酸菌とビフィズス菌の複合菌株製剤(総菌数:6×1010、1日1回、21日間)を投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は8週以内のAADまたは12週以内のCDDの発症とした。 2008年12月1日~2012年2月28日までに2,941例が登録され、微生物製剤群に1,470例[年齢中央値77.2歳、男性52.9%、冬季(10~3月)の試験登録57.5%、高血圧53.5%、COPD 24.0%、糖尿病24.4%、過去8週以内の入院33.2%]が、プラセボ群には1,471例(77.0歳、46.2%、57.4%、55.7%、24.2%、21.4%、30.5%)が割り付けられた。AAD発症率:10.8 vs. 10.4%、CDD発症率:0.8 vs. 1.2% 使用された抗菌薬は、ペニシリン系が微生物製剤群71.6%、プラセボ群72.1%、セファロスポリン系がそれぞれ24.4%、24.2%であった。 CDDを含むAADの発症率は、微生物製剤群が10.8%(159例)、プラセボ群は10.4%(153例)であり、両群に差は認めなかった(相対リスク[RR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.84~1.28、p=0.71)。 CDDは、AADの原因としては頻度が低く、微生物製剤群が0.8%(12例)、プラセボ群は1.2%(17例)であり、両群で同等であった(RR:0.71、95%CI:0.34~1.47、p=0.35)。 全体で19.7%(578例)に重篤な有害事象が発現し、両群間に差はなかった。治療に関連した重篤な有害事象はみられなかった。頻度の高い有害事象としては、呼吸器、胸部、縦隔の疾患が微生物製剤群の5.6%(83例)、プラセボ群の5.9%(87例)にみられ、消化器疾患がそれぞれ3.0%(44例)、2.4%(35例)、心疾患が2.9%(42例)、1.9%(28例)に認められた。 著者は、「乳酸菌とビフィズス菌の複合菌株製剤によるADD、CDDの予防効果のエビデンスは得られなかった」とし、「今後、臨床試験を進めるには、ADDの病態生理の理解を深めることが必須である」と指摘している。

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直伝!Dr.守屋の素人独学漢方<下巻>

第7回「桂枝湯の鑑別:麻黄湯・葛根湯」第8回「桂枝湯の鑑別:柴胡湯類」第9回「婦人科三大処方~気血水の『血』を学ぶ」第10回「抑肝散と八味地黄丸~五臓の『肝』と『腎』を学ぶ」第11回「漢方理論にこだわらない方剤~芍薬甘草湯、排膿散及湯、桔梗湯」第12回「安全に漢方処方を始めるために」 第7回「桂枝湯の鑑別:麻黄湯・葛根湯」桂枝湯の使い方を覚えれば、その症状と比較して、麻黄湯症候群と葛根湯症候群も簡単にマスター出来てしまいます!キーワードは、八綱の「虚実」。患者さんに体力はありますか?熱は?発汗は?チェックすべき必須ポイントを絞り込んで、まとめて紹介します。そして、桂枝湯、麻黄湯、葛根湯の具体的な処方から、より効果を高めるための服用法、注意点まで伝授します!第8回「桂枝湯の鑑別:柴胡湯類」柴胡湯類3剤の鑑別を、まとめて解説!診察のポイントは、大きく3つ。「発症日数」と「寒熱」、そして「表裏」です。この3点から『太陽病期』と『少陽病期』を見分ければ、柴胡湯類もお手のもの。第7回で学んだ、太陽病期の方剤=<桂枝湯/麻黄湯/葛根湯>に加えて、少陽病期の方剤=<小柴胡湯/小柴胡湯加桔梗石膏/柴胡桂枝湯>の6剤を使いこなして、風邪診療の幅を一気に広げましょう!第9回「婦人科三大処方~気血水の『血』を学ぶ」婦人科三大漢方薬の処方ポイントを直伝!漢方では、生体内を循環する『気血水』の循環が乱れることによって、疾病状態が引き起こされると考えます。第9回は、「血」が滞ることによってもたらされる3つの症候群にフォーカス。<当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸>の適切な処方で、月経困難、貧血、めまい、倦怠感も驚くほど改善します!第10回「抑肝散と八味地黄丸~五臓の『肝』と『腎』を学ぶ」人体の多様な機能を5つの臓に割り当てて解釈する「五臓」から、肝と腎にフォーカス。肝の機能亢進に伴うイライラや怒りっぽさ、不眠には、抑肝散類がズバリ効きます!また、腎の機能低下に伴う集中力の低下、足腰の冷え、下肢しびれ感には、八味地黄丸類がオススメ!今回は、4つの方剤をマスターしましょう!第11回「漢方理論にこだわらない方剤~芍薬甘草湯、排膿散及湯、桔梗湯」方剤の中には、漢方理論にこだわらなくても症状のみで選択できるものがあります。こむら返りなど、四肢がつるときには、芍薬甘草湯。抗菌薬の全身投与がためらわれる小さな感染性炎症や膿瘍には、排膿散及湯。そして、急性の咽頭炎に即効で効くのは、桔梗湯。3つの方剤を、さっそく使いこなしましょう!第12回「安全に漢方処方を始めるために」自分自身や家族の風邪などに処方しながら、漢方の効果を実感してみましょう!そして、マスターした「方剤=症候群」にピッタリの患者さんが出てきたら、処方のチャンスです。初回の処方日数をいかに見極めるかも重要。慢性症状の長期治療では、まず2週間で効果が現れるかどうか、患者さんの声にしっかりと耳を傾けましょう。さらに大切なのが、副作用と安全性に関する知識です。「漢方に副作用はない」と思っている人は案外多いもの。生薬によっては、動悸や高血圧、低K血症といった副作用が伴うため十分な配慮が必要です。自分のペースで楽しく学びながら、漢方のレパートリーを増やしていきましょう!

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ピロリ菌の逐次的治療、7日間3剤併用に比べ良好/BMJ

 ヘリコバクター・ピロリ菌に対する逐次的治療の除菌効果は、7日間3剤併用治療に比べ優れるが、より長期の3剤併用治療やビスマス製剤ベース治療との間には差はないことが、イタリア・ヴェルシリア病院のLuigi Gatta氏らの検討で示された。標準治療であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)+クラリスロマイシン+アモキシシリン(またはメトロニダゾール)による3剤併用療法の除菌率は、現在、当初の目標値である80%に達しない状況にあるという。逐次的治療は、ピロリ菌の除菌治療薬として確立された既存薬を、同時ではなく逐次的に投与する方法で、クラリスロマイシン耐性菌に高い効果を示し、標準治療よりも優れた除菌効果をもたらす可能性が示唆されている。BMJ誌オンライン版(2013年8月7日)掲載の報告。逐次的治療の除菌効果をメタ解析で評価 研究グループは、ピロリ菌の逐次的治療の有効性を評価するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った。18歳以上の未治療のピロリ菌感染患者に対する除菌治療において、逐次的治療を従来治療や新治療と比較した無作為化対照比較試験を対象とした。 文献の収集には、3つの医学データベースを使用し、2013年5月までに発表された論文を検索した。また、欧州、米国、アジアの消化器関連の主要な6学会の抄録集を調べた。必要に応じて、未発表データを得るために著者と連絡を取った。 逐次的治療は、PPI(1日2回)+アモキシシリン(1g、1日2回)の2剤併用療法を5日間施行後、PPI(1日2回)+クラリスロマイシン(500mg、1日2回)+ニトロイミダゾール誘導体(1日2回)の3剤併用療法を5日間施行することとした。除菌率84.3%、耐性菌除菌率72.8% 46試験が解析の対象となった。逐次的治療に5,666例が、従来治療・新治療には7,866例が割り付けられた。逐次的治療の除菌率は84.3%(95%信頼区間[CI]:82.1~86.4)であった。 除菌効果は、逐次的治療が7日間3剤併用治療よりも有意に優れた(相対リスク[RR]:1.21、95%CI:1.17~1.25、治療必要数[NNT]:6、95%CI:5~7)。10日間3剤併用治療との比較でも、逐次治療は有意に優れたが、その優位性は小さかった(RR:1.11、95%CI:1.04~1.19、NNT:10、95%CI:7~15)。 逐次的治療と14日間3剤併用治療(RR:1.00、95%CI:0.94~1.06)、ビスマス製剤ベース治療(RR:1.01、95%CI:0.95~1.06)、非ビスマス製剤ベース治療(RR:0.99、95%CI:0.94~1.05)との間には差は認められなかった。 8試験で治療前の抗菌薬感受性試験に基づく除菌データが得られ、クラリスロマイシン耐性菌の除菌率は72.8%(95%CI:61.6~82.8)であった。 著者は、「従来治療や新治療の除菌効果は不十分であり、逐次的治療は7日間3剤併用治療よりも優れた」とまとめ、「地域の耐性菌発現状況のモニタリングに基づく治療が有用と考えられる。新薬の開発が必要であり、それまではより効果的な併用レジメンの組み合わせの探索を続けるべきである」と指摘している。

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H7N9型鳥インフル、初のヒト間感染の可能性/BMJ

 新型鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの初めてのヒト間感染と考えられる事例を、中国・江蘇省疾病管理予防センターのXian Qi氏らが確認し、BMJ誌オンライン版(2013年8月6日)で報告した。H7N9型ウイルス感染のほとんどは散発的に発生している。動物実験では、H7N9型ウイルスは飛沫を介して伝染する可能性が示唆されているが、これまでヒト間感染を示す明確なエビデンスはなかった。2番目の感染者に家禽との接触なし 2013年3月、江蘇省無錫市でH7N9型感染の家族内小集積(父親とその娘)が確認された。研究グループは、H7N9型ウイルスのヒト間感染の可能性とその影響を評価するために疫学調査を開始した。 2人の患者および家禽を含む生活環境から試料を採取し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法、ウイルス培養、赤血球凝集抑制試験を実施した。ほかの家族や医療従事者など、発症前の患者と接触のあった者の調査も行った。 最初の感染例である60歳の男性は、家禽との接触から5~6日目に体調を崩した。2例目となったのは32歳の彼の娘で、病院で感染予防をせずに父親の看病をしており、家禽との接触は確認されなかった。彼女は父親との最後の接触から6日後に症状を発現した。パンデミックな流行の可能性も考慮すべき 父親には10年以上にわたる高血圧の既往歴があった。2013年3月8日、発熱、咳嗽、息切れを発症し、同11日、左肺上葉の炎症で入院した。進行性の呼吸窮迫、持続性の高体温症、低酸素血症がみられたため、同15日、ウイルス性肺炎および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の診断でICUへ入室した。同18日、症状増悪のため別の3次病院のICUへ移送され、オセルタミビル(商品名:タミフル)治療が開始された。この間、下痢は認めなかった。5月4日、播種性血管内凝固症候群(DIC)および多臓器不全のため死亡。 娘は父親が3次病院ICUへ移送されるまで看病をしていた。3月21日、39.6℃の発熱と咳嗽を発症、同24日、左肺上葉の肺炎の診断で父親が転送された病院の呼吸器科に入院、白血球減少、リンパ球減少、軽度の低酸素症がみられた。同28日、持続性高体温症、呼吸不全、ARDSのためICU入室となり、人工呼吸、広域抗菌薬治療、オセルタミビル、免疫学的治療、蘇生輸液が行われたが、4月24日、多臓器不全および心停止にて死亡した。 2人の患者から分離されたウイルス株のゲノム解析では、8つの遺伝子はすべて遺伝学的にほぼ同一であった(類似性:99.6~99.9%)。また、系統樹解析では、2人の患者の分離株の8つの遺伝子はすべて同じ単系統群に属していた。 2人の患者と接触した43人のうち1人が軽度の症状を呈したが、rRT-PCRでH7N9型ウイルスは陰性であった。H7N9型ウイルスに特異的な血球凝集抑制抗体の検査では、43人のすべてが陰性だった。 著者は、「最初に感染した父親から娘へのヒト間感染の可能性が強く示唆され、伝染性は限定的で、非持続的であった」とし、「本研究は、H7N9型ウイルスのヒト間感染の可能性を示した初めての報告であり、パンデミックな流行の可能性も示唆される」と指摘している。

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インターネット研修、抗菌薬処方を抑制/Lancet

 プライマリ・ケア医に対しインターネットを利用した気道感染症治療に関する2つの研修を行うことで、抗菌薬の処方率が大幅に抑制されることが、英国・サザンプトン大学のPaul Little氏らGRACEコンソーシアムの検討で示された。プライマリ・ケアにおける大量の抗菌薬処方は、薬剤耐性の重大な促進要因とされる。処方は医師や患者への教育によって低下する可能性があるが、高度に訓練された教育担当員を要する場合が多いことから、簡便で効果的な研修法の開発が望まれている。Lancet誌オンライン版2013年7月31日号掲載の報告。クラスター無作為化試験で4群を比較 GRACEコンソーシアムは、インターネットを利用した気道感染症治療関連の研修法を開発し、その抗菌薬処方に対する効果を評価するために、国際的なクラスター無作為化試験を実施した。 欧州6ヵ国のプライマリ・ケア施設が、通常治療群、医師に対しC反応性蛋白(CRP)検査の研修を行う群、コミュニケーション技法の向上を目的とした研修を行う群、2つの研修の両方を行う群の4群に無作為に割り付けられた。 2010年10~12月に、割り付け前のベースライン調査が行われた。259施設に登録された6,771例[下気道感染症5,355例(79.1%)、上気道感染症1,416例(20.9%)]のうち3,742例(55.3%)に抗菌薬が処方されていた。両方の研修を行うのが最も効果的 2011年2~5月に、246施設を4群に無作為に割り付け、そのうち228施設(92.7%、医師372人)に登録された4,264例がフォローアップの対象となった。内訳は、通常治療群が53施設(870例)、CRP検査研修群が58施設(1,062例)、コミュニケーション技法研修群が55施設(1,170例)、CRP検査+コミュニケーション技法研修群は62施設(1,162例)であった。 抗菌薬処方率はCRP検査研修群が33%であり、CRP検査研修を行わなかった群の48%に比べ有意に低下した(調整リスク比:0.54、95%信頼区間[CI]:0.42~0.69、p<0.0001)。また、コミュニケーション技法研修群の処方率は36%と、コミュニケーション技法研修を行わなかった群の45%に比し有意に低下した(同:0.69、0.54~0.87、p<0.0001)。 抗菌薬処方率は、両方の研修を行ったCRP検査+コミュニケーション技法研修群が最も低く、リスク比は0.38(95%CI:0.25~0.55、p<0.0001)であった。 著者は、「プライマリ・ケア医に対するインターネットによる2つの簡便な研修は、いずれも抗菌薬処方の抑制に有効で、両方の研修を行った場合に最も高い有効性が示された」とまとめ、「このような母国語や文化的な境界を超えた介入が大きな成果を上げたことは、これらの介入が多くの保健システムにおいて広く実行可能であることを示唆する」としている。

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前医批判がもとで医事紛争に発展した手指切断のケース

整形外科最終判決平成15年2月14日 前橋地方裁判所 判決概要プレス作業中に右手第2指先端を負傷した24歳男性。キルシュナー鋼線による観血的整復固定術を受けたが、皮膚の一部が壊死に陥っていた。プロスタグランジンの点滴注射などでしばらく保存的な経過観察が行われたが、病院に対して不信感を抱いた患者は受傷から18日後に無断で退院。転院先の医師から「最悪ですよ。すぐ手術しなければならない」と説明され、指の切断手術が行われた。詳細な経過患者情報24歳男性経過平成10年11月9日午前9:00右手第2指をプレス機に挟まれて受傷。第1関節から先の肉が第3指(中指)側にずれるようにして切れ、めくれ上がり、傷口から骨がみえる状態であった。ただちに当該病院に運ばれ、キルシュナー鋼線2本を用いた観血的整復固定術を受けた。以下カルテ記載より11月9日朝9:00頃指を機械に挟まれた。挫滅創。11月10日(指の先端について)針の痛み刺激OK。知覚なし。(指の第1関節付近について)紫色不良。治療方針(非常勤整形外科医師のコメント)。伸筋腱は切れてはいなかったでしょうか。もしも切断されていて、創部切断を免れた場合は、腱縫合を2週間以内に考えた方がいいと思います。11月11日ワイヤー1本抜去(指の先端について)。血流弱い。→プロスタグランジン開始。1日120mg(生食100mL)を2回。11月13日包交、色良くなってきている。11月14日変化なし。11月16日包交、出血なし、膨張少し、色よい。11月17日(指の先端について)知覚なし。(指の第1関節付近について)色よい、ペンローズ抜去、明日よりヒビテン®浴開始。11月19日創きれい、色よい。11月21日創痛なし。(指の先端について)両側の知覚障害あり。(指のつめの根元付近について)この部分からの血流供給よい。11月22日膿はなく、出血もないが、創面はまだドライではない。11月24日X線写真の整合性よい。(指の先端のてのひら側について)壊死性皮膚、しかし感染はない。11月27日患者は「携帯電話を買いにいく」とウソをついて無断で当該病院を退院し、別病院を受診。そこの整形外科医師から、「最悪ですよ。すぐ手術しなければならない」と説明され、緊急で右第2指近位1/3の切断手術を受けた。別病院での手術所見指のてのひら側は、末節の一部を残してDIp(第1関節)にかけてまで黒く壊死になっていた。指の背側の中節の一部も壊死になっていた。これを切除していくと、軟部も壊死となっており、屈筋腱も壊死しており、Kワイヤーを抜去すると、DIp関節も壊死となっていたためにブラブラになってしまった。末節骨も壊死になっていた。このため、生存していた皮膚および中節骨の2/3を残して切断した。FDp(深指屈筋)も切除。FDS(浅指屈筋)は一部残した。生存していた皮膚を反転させ、縫合した。少し欠損は残ったが、これは肉芽が上がるのを待つこととした。鑑定書DIp以遠の挫創については、一般にマイクロサージャリーの適応はないとされ、本件のような骨折部の観血的創閉鎖術で問題ない。ただし結果論的には、予想以上に組織挫滅の大きかったことから、当初から切断術適応でも差し支えなかった症例である。また、術後の抗菌薬・血管拡張薬投与も適正であり、さらにその後の経過観察においても感染兆候なく、また、創部の処置も適正に行っていると認められる。別病院での手術所見からみると、軟部組織はもちろん、骨部分においても壊死に陥っており、予想以上に深部まで血管損傷・組織挫滅が強かったと認められる不全切断であり、最初からマイクロサージャリーを施行していたとしても、生着していた可能性は低かったと考える。切断はやむを得ない症例である。ただし、最初の手術の時点で切断可能性について十分に説明していなかったことがこのような紛争につながったのではないかと推測された。別病院の術中所見をみる限り、手術適応と手技に問題はないと思われる。ただし、被告病院に何の連絡もなく手術したことは、医療連携として問題である。当事者の主張患者側(原告)の主張被告病院の担当医師は整形外科の専門医ではないのに、キルシュナー鋼線を10回以上も入れ直すなど手術が粗雑であったため、指の組織の腐食が始まった。著しく汚染された傷でありながら、ゴールデンアワーに適切な洗浄、消毒および切除(デブリドマン)を怠り、原告自身に消毒を行わせるなどずさんな治療しかしなかった。しかも創部の疼痛や指先の感覚異常、色調変化を訴えていたが、担当医師らは聞き流して適切な治療を一切行わなかった。被告病院の担当医師が、患部の状態についてきちんと説明し、患者の要求どおり早期に別の医療機関でさらに検査および診療を受ける機会を与えていれば、自分の指の症状をある程度客観的に知ることができ、今後も被告病院で治療を続けるか、それとも別病院で治療を受けるかについて、自らの意思で選択することができたはずである。ところが、「入院中は、何も考えないで病気を治すことだけを考えなさい」、「血色の良い部分もあるので、悪い部分も良くなるでしょう」などというのみで、今後の治療方法などについて説明はななかった。病院側(被告)の主張担当医師は手の外科を専門とする形成外科医であり、手の手術経験は200例を超える。今回の手術ではキルシュナー鋼線は2回入れ直したにすぎない。負傷直後の段階で、適正な消毒、デブリドマン(除去施術)を行った。指の状態は、その後の点滴および消毒などの治療により改善傾向にあったのであり、時間を争って指を切断しなければならないほど悪化してはいなかった。患者自身に消毒させたというのは、ヒビテン®浴のことを誤解しただけである。担当医師は事あるごとに、患者に対し十分な説明をくり返した。当時の治療方針は、負傷部のデマルケーション(壊死部の境界線がはっきりすること)をみながら、植皮するか、最悪の場合には切断する予定であった。ところが、切断をすることもやむを得ないとの方向を検討し、患者に説明しようとしていた矢先に勝手に退院したため、説明の機会を失ったにすぎない。裁判所の判断被告病院では、手術の状況などを記載した手術記録をのこさず、さらにカルテにも記録していなかった。また、初診時に撮影したX線フィルムを紛失してしまったため、どのような手術が行われたのか、手術の状況はどうだったのかなどについて判断できない。ただし手術に際し、キルシュナー鋼線を10回以上も入れ直したと認めるに足りる証拠は何もないので、手術が粗雑であったとまで認めることはできない。担当医師は形成外科の専門医であり、手の外科の専門医でないとまで認めることはできない。カルテや看護記録の記載によれば、指の色が良くなってきた時期もあるので、一方的に悪くなっていったわけではない。また、感染症に対する予防措置や、指の血行障害の発生を防止する措置も十分に行っていたので、担当医師らによる治療が不適切なものであったと認めることはできない。別病院の医師が被告病院に無断で原告の指を切断し、また、手術中に指のポラロイド写真を撮影したり、指の組織検査の標本を採らなかったことから、指を切断する前に手術ミスを犯し、それを隠すために指を切断したのではないかなどと被告病院は主張するが、虚偽の事実を伝えて被告病院を抜け出し、無断で別病院の診察を受けに来たのであるから、すでに患者と被告病院との間の信頼関係は破綻していた。このような場合にまで、別病院の医師にそれまでの治療経過を被告病院に確認すべきであったとまでいうことはできない。結局のところ、被告病院における治療に強い不信感を抱いた原因は、被告病院の医師から指の状態や治療方針(指の切断の可能性など)などに関する説明がなかったためである。原告側合計670万円の請求に対し、合計110万円の判決考察ほかの病院で治療を受けていた患者が、紹介状もなく来院した時、どのように対応されていますでしょうか。もちろん、診察した時点で「正しい」と思った診断、あるいは治療方針を、患者にきちんと説明するのは当然のことと思われます。ただしその際に、前医の医療行為に対して配慮を欠いた発言をすると、思わぬ医事紛争へ発展する「不用意な一言」になりかねません。本件ではあとから振り返ると、最終的には手指切断を免れなかった症例と思われます。そして、被告病院の医師がとった初期段階の治療方針も、その後の別病院ですぐに切断手術が行われたのも、どちらも医学的にみて適切と考えられる医療行為でした。ところが、負傷から18日も経過した段階の所見をはじめて目の前にした医師が、それまでの治療経過をよく確かめずに、「最悪ですよ。すぐ手術しなければならない」などとコメントすれば、患者が被告病院を訴えたくなるのも当然でしょう。実際にこの一言をきっかけとして、4年以上にも及ぶ不毛な医事紛争へと発展しました。この事案を鑑定した整形外科専門医が、「被告病院に何の連絡もなく手術したことは、医療連携として問題である」と指摘したのは、きわめて当たり前の考え方であると思います。さらに被告病院は、「指を切断する前に手術ミスを犯し、それを隠すために指を切断したので、術中写真ものこさず、指の病理組織検査もしなかった」というような理解しがたい主張まで行い、「最悪ですよ」と批判した後医に対する敵意をあらわにしました。患者を前にして、自らの診断・治療に自信を持つ気持ちは十分に理解できますし、不適切な医療行為を批判したくなるのもよくわかりますが、同じ医師同士でこのような争いをするのは、絶対に避けたいと思います。とくにそれまでの医療行為に対して不満を抱く患者が、自分のことを頼って来院したような場合には、ほんのわずかな配慮によって患者の不信感を拭うこともできるのですから、前医の批判は絶対に避けなければなりません。最初に診た医師よりも、あとから診た医師の方が「名医」になるというのは、昔からいわれ続けている貴重な教訓です。本件では、患者が紹介状を持参せずに来院したので、何か「訳あり」であろうと初診時から予測することができたと思います。そこでまずは患者の言い分を聞き、そのうえで被告病院に電話を入れて治療状況を確認すれば、被告病院の立場にも配慮した説明(なるべく指を切断しないで残そうと努力していたのだけれども、当初のケガが重症だったので切断もやむを得ない段階にきている、というような内容)をすることができたと思います。そうしていれば、患者も納得して治療(手指の切断)を受け入れることができたでしょうし、医事紛争の芽を事前に摘み取ることができたかも知れません。もう一つの問題点として、被告病院では医師と患者のコミュニケーションが絶対的に不足していたと思われます。病院側は十分な説明を行ったと主張していますが、患者の印象に残った説明とは、「入院中は、何も考えないで病気を治すことだけを考えなさい」ですとか、指の色が悪いことを心配して質問しても、「血色の良い部分もあるので、悪い部分も良くなるでしょう」程度の曖昧な説明しか行わず、もしかすると切断するかもしれない、という重要な点には言及しなかったようです。このような患者の場合、勝手に離院するまでの入院中にはいろいろな徴候がでていたと思いますので、普段接する看護師や理学療法士などの意見にも耳を傾けて、不毛な医事紛争を避けるようにしたいと思います。本件は最終的には「説明義務違反」という名目で結審し、判決の金額自体はそれほど高額ではありませんでした。しかし、判決に至るまでに費やした膨大な時間と労力に加えて、患者への評判、社会的信用、医師同士の信頼感など、失ったものは計り知れないと思います。整形外科

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情報提供でプライマリでの抗菌薬使用が3割低下/BMJ

 急性呼吸器感染症への抗菌薬処方について、特別に訓練を受けた一般開業医が訓練を受けていない一般開業医に対して情報提供をすることで、同割合がおよそ3割低下した。抗菌薬を処方した場合でも、より狭域な抗菌薬であるペニシリンV投与の割合が増加した。ノルウェー・オスロ大学のSvein Gjelstad氏らが、400人弱の一般開業医を対象に行った無作為化試験の結果で、現状では急性呼吸器感染症に対し、過度な抗菌薬処方が広く行われているという。BMJ誌オンライン版2013年7月26日号掲載の報告より。2回訪問し、急性呼吸器感染症への抗菌薬投与に関するガイドラインなどを説明 研究グループは、ノルウェーの一般開業医79グループ・382人を対象に無作為化試験を行った。介入群の医師(39グループ、183人)には、特別な訓練を受けた一般開業医が2回訪問し、急性呼吸器感染症への抗菌薬投与に関するガイドラインや、最近のエビデンスについて説明をした。また、特別なソフトウエアを用い、その医師の前年の抗菌薬処方に関するデータを電子カルテから集め、それに基づいてディスカッションを行った。 対照群(40グループ、199人)には、70歳以上高齢患者への適切な処方に関する説明を行った。 主要評価項目は、抗菌薬の処方率と、ペニシリンV以外の抗菌薬の処方割合だった。介入群で抗菌薬処方率はおよそ3割減、ペニシリンV以外の抗菌薬の割合も減少 その結果、介入群のベースライン時の急性呼吸器感染症への抗菌薬処方率は33.2%から31.8%へ減少し、対照群は33.4%から35.0%へ増加し、介入群での有意な減少が認められた(オッズ比:0.72、95%信頼区間:0.61~0.84)。また処方された抗菌薬のうち、非ペニシリンV抗菌薬の占める割合も、介入群で有意に減少した(同:0.64、0.49~0.82)。 なお、患者1,000人当たりの抗菌薬処方件数は、介入群で80.3から84.6へ、コントロール群で80.9から89.0へ増加していたが、これは抗菌薬処方を必要とする急性呼吸器感染症(とくに肺炎)の患者数が増加したことを受けてのものであった。

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欧州では小児アトピーに免疫抑制薬を処方

 難治性小児アトピー性皮膚炎の処方薬について、欧州8ヵ国で行われたインターネットサーベイの結果、全身性の免疫抑制薬が幅広く多岐にわたって用いられていることが明らかにされた。英国・Guy's and St Thomas' NHS Foundation TrustのL.E. Proudfoot氏ら、ヨーロッパ皮膚疾患疫学ネットワーク(EDEN)のヨーロッパ重症小児アトピー性皮膚炎治療タスクフォース(ヨーロッパTREAT)が報告した。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年7月16日号の掲載報告。 従来療法に対し難治性を示す小児アトピー性皮膚炎において、全身性治療薬を用いることのエビデンスは不足している。そのため、患者の治療は、バリエーションが多いものになっている。 ヨーロッパTREATサーベイは、臨床における最新の処方データを集めて、特定の全身性治療薬の使用に影響している因子を特定すること、および適切な介入による臨床試験を行うための情報提供を目的に行われた。 Webベースで行われたサーベイには、ヨーロッパ8ヵ国の小児皮膚科学会および団体に所属する専門医が参加した。複数回答形式の質問票で、一般的診療データと同時に、難治性小児アトピー性皮膚炎での全身性治療薬に関する詳細な情報が集められた。 主な結果は以下のとおり。・サーベイ参加を呼びかけたeメールに対し、765人のうち343人(44.8%)から回答を得られた。回答者のうち、89.2%が皮膚科医であった。・重症アトピー性皮膚炎の子どもに対して、71%が全身性免疫抑制薬による治療を開始していた。・第一選択薬は、シクロスポリン(43.0%)、経口コルチコステロイド(30.7%)、アザチオプリン(21.7%)であった。・第二選択薬も、シクロスポリンが最も多かった(33.6%)。・第三選択薬は、メトトレキサートが最も多かった(26.2%)。・53.7%は、ルーチンで皮膚感染について調べ、全身性治療薬投与の開始に先立って皮膚感染症の治療を行うと回答した。・ヨーロッパ8ヵ国全体で、ペニシリンは抗菌薬の第一選択薬であった(78.3%)。・以上の結果を踏まえて著者は、「明らかなエビデンスベースがない中で、ヨーロッパTREATサーベイにより、難治性小児アトピー性皮膚炎において全身性の免疫抑制薬の処方が幅広く多岐にわたって用いられていることが確認された。この結果は、ヨーロッパ全体の患者の治療に関連する無作為化試験のデザインに活用すべきであろう」と結論している。

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小児急性中耳炎診療ガイドライン2013年度改訂版トピックス-肺炎球菌迅速検査キット導入の意義-

■2013年度改訂の背景小児急性中耳炎診療ガイドラインはエビデンスに基づいた推奨治療法の作成を目的とし、中耳炎患者の診断・治療に有益となることを目標としており、Minds(医療情報サービス)へも掲載されている。前回(2009年)の改訂以降、肺炎球菌ワクチンの国内導入、またテビペネムピボキシル(TBPM-PI)、トスフロキサシン(TFLX)などの新薬が認可されるとともに、2011年11月には肺炎球菌迅速検査キット「ラピラン®肺炎球菌HS」が保険収載され、診療ガイドラインにおけるこれらの位置づけを明確に提示することとなった。■主な改訂ポイント2013年版 小児急性中耳炎診療ガイドラインの主な改訂ポイントとして、以下の点が挙げられる。1)重症度スコアリング項目から「光錐」を削除し、スコア5点以下を軽症、6〜11点を中等症、12点以上を重症と再定義した。2)中等症、重症において抗菌薬投与後3日目に病態を確認する。3)治療薬として、新たに経口抗菌薬2剤(TFLX、TBPM-PI)を追加した。4)7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV-7)項目を追加した。5)迅速検査キット「ラピラン®肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)」を導入した。以下、今回の改訂の特徴の1つである肺炎球菌迅速検査キット「ラピラン®肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)」の位置づけや使用法について概説する。■肺炎球菌迅速検査キットの意義急性中耳炎においても原因微生物の同定は重要なステップである。従来からの起炎菌検査法であるグラム染色法は多忙な日常臨床のなかで実施することは難しく、また細菌培養法は結果まで数日を要するため、治療開始時点では起炎菌が不明な場合が多い。このような背景からも迅速検査キットの活用により治療前に原因微生物を推定することは有用である。「ラピラン®肺炎球菌HS」は、中耳炎および副鼻腔炎における肺炎球菌抗原診断として、国内で初めて保険収載された迅速診断薬(保険点数210点、判断料(月1回に限る)144点)で、早期の起炎菌検索に有用である。臨床性能試験における本キットの成績は培養検査と良好な一致率を示した(図1)。図1 迅速検査キット「ラピラン®肺炎球菌HS」の臨床性能試験成績画像を拡大するこれらの成績により、本キットは中耳炎や鼻副鼻腔炎の肺炎球菌感染診断に有用と考えられた1)。また中耳炎・副鼻腔炎合併症例を対象とした検討で、中耳貯留液の肺炎球菌培養検査を基準としたときに、鼻咽腔ぬぐいの培養検査と本キットの検査結果がほぼ同等の成績であったため、中耳貯留液の採取が難しい場合には、鼻咽腔の検体を代用できることが示唆された。 留意点として死菌検出、偽陰性(抗原量少ない場合)、鼻咽腔ぬぐい液では鼻咽腔定着細菌の検出などが挙げられる。本キットの診断意義としては、陽性:肺炎球菌が起炎菌、また死菌残存(中耳貯留液)、常在菌(上咽頭ぬぐい)もあり得る。陰性:インフルエンザ菌やMoraxella catarrhalisが起炎菌、非細菌性またはウイルス性、また肺炎球菌量が少ない(偽陰性)場合がある。■本キットの結果に基づく抗菌薬選択について本キットが陽性であれば、AMPC高用量、クラブラン酸・アモキシシリン合剤(CVA/AMPC)、テビペネムピボキシル(TBPM-PI)など、肺炎球菌をターゲットとした治療が考えられる。また、本キットは薬剤耐性菌やその他の起炎菌の情報は得られないが、2歳未満、集団保育、1ヵ月以内の抗菌薬前治療などの薬剤耐性菌リスク因子を考慮したうえで迅速キットを使用すれば早期の治療選択に役立てることができる。画像を拡大する■迅速検査キット使用のタイミング小児急性中耳炎診療において、次のような場合に肺炎球菌迅速検査キットの結果が参考になる(アルゴリズム中の*印)。1)軽症(スコア≦5点):(図2-A)   3日間の経過観察で改善せず、アモキシシリン(AMPC)を3日間投与しても改善が認められない症例の抗菌薬選択(3回目診察、4回目診察)。2)中等症(スコア6-11点):(図2-B)   AMPC高用量3日間による初回治療後に改善がみられない症例の抗菌薬選択(2回目診察、3回目診察)。3)重症(スコア12点以上):(図2-C)   初診時あるいは初回治療後に改善がみられない症例の抗菌薬選択。■図2 重症度別の治療アルゴリズムA. 軽症(スコア≦5点)画像を拡大するB. 中等症(スコア6~11点)画像を拡大するC. 重症(スコア≧12点)画像を拡大する■肺炎球菌迅速検査キットの使用法キットの使用法を図3に示す。抽出操作は約5分、反応時間は15分で、測定開始から15分が経過していなくても判定部に2本の赤い線が確認できた時点で陽性と判定可能である。図3 「ラピラン®肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)」の操作法および判定法画像を拡大する■まとめ治療開始の時点では起炎菌が不明なことが多い小児急性中耳炎診療の現場では、迅速検査キットの導入によって、早期の適切な治療アプローチが可能となり、治癒の達成、患児のQOLの改善とともに耐性菌や医療費の抑制にもつながると期待される。1)Hotomi M, et al. PLoS One. 2012; 7(3) :e33620.関連ニュース4年ぶりの改訂『小児急性中耳炎診療ガイドライン2013年版』発売【問い合わせ先】 大塚製薬株式会社 医薬情報センター〒108-8242 東京都港区港南2-16-4 品川グランドセントラルタワー電話:0120-189-840

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重症薬疹

薬剤性とウイルス性の発疹症の鑑別法について教えてください。これは難しい質問です。薬剤によって出来る発疹とウイルスによって出来る発疹はメカニズムが似ています。薬剤もウイルスもMHC(主要組織適合遺伝子複合体)を介してT細胞に抗原認識されるという点では同じであり、実際の鑑別も簡単ではありません。ただ、ウイルスには流行がありますし、麻疹や風疹などウイルスでは抗体価が上がります。鑑別では、これらの情報を有効活用すべきだと思います。重症薬疹の、ごく初期の場合の見分け方を教えてください。初期段階での重症化予測については盛んに研究を行っているものの、まだ結論にはたどり着かない状態です。“軽く見える薬疹が2日後に非常に重症になる”といった症例を臨床の場でも経験することがあります。実際、初期であればあるほど見分けは難しく、大きな問題です。しいてコツをあげれば、思い込みを捨てて経過を良く観察する事でしょう。経過を良く見ていると、問題の発疹の原因や悪化要因となっている病気の本態やその赴く方向・勢いが顕になり、おかしいと点に気づくようになります。そこが非常に大事な点だと思います。重症化する薬疹の診断基準や早期診断の項目で、とくに重要な項目はありますか?粘膜疹と高熱の発現は重要です。とくに熱については、高熱がなければウイルス関与の薬疹ではない事が多いといえます。いずれにせよ、この2項目が出た場合は、注意しなければいけないと思います。また一般検査では、白血球増多と白血球減少のどちらも要注意で、血液像で核左方移動を伴う好中球増多がるのなのか、異形リンパ球の出現とその増加があるのか、また特殊検査になりますがTh2の活性化を示唆する血清TARC値の上昇が見られるのかも、薬疹の病型・重症度・病勢を推定・判定する上で重要です。マイコプラズマ感染症に続発する皮疹と薬疹を鑑別する方法はありますか?この2つはきわめて似ています。しかしながら、マイコプラズマに続発する場合は、気道が障害される傾向がありますし、胸部所見からの情報も得られます。また子供よりも大人の方が鑑別難しい症例が多いといえます。これも一番のコツは経過をじっと観察し、通常の定型的薬疹と違うことに気づくことだと思います。同じ薬剤でも薬疹の臨床型には個人差があるが、その要因を知りたい。難しい質問ですが、その患者さんの持っている免疫応答性とそれに影響を及ぼす遺伝的・非遺伝的な各種要因に関係した患者さんの持っている特性などが影響するのでしょう。SJSからTENへの移行とありますが、病理組織学的に両者は別疾患と聞いたことがあります。疾患連続性について御教授ください。これにはいろいろな意見があります。SJSは、通常SJSの発疹の拡大と病勢の伸展・進行によりTENに移行します。しかし、TENの場合、SJSを経ないで現れるものもあります。そのため、現時点ではSJSからTENに移行するものは一群として考えているといってよいと思います。免疫グロブリンは、軽症でも粘膜疹があれば早期投与した方が良いのでしょうか?免疫グロブリンを用いるのは、通常の治療で治らない場合と明らかにウイルス感染があるなど免疫グロブリンの明らかな適応がある場合などに限ります。このような症例を除いては、早期に使わないのが原則だと考えます。また、高価であり保険の問題もありますので、当然ながら安易な処方は避けるべきでしょう。AGEPにおける、ステロイド投与適応の指標は?AGEPには原因薬を中止して治る例とそうでない例があります。ステロイド適応は原因薬をやめて治らない場合ですね。なお、AGEPの場合は、TENやSJSとは異なり比較的低用量のステロイドでも治る症例があることに留意すべきものと思われます。初期に判断が難しい際には、全身ステロイドは控えるべきですか?判断が困難な場合は、第一の選択肢は、まず専門医に紹介するべきでしょう。中途半端な治療の後、悪化してわれわれの施設に来られる患者さんも少なくありません。こういった医療が最も良くないといえるでしょう。そういう意味で、病気に寄り添い、責任を持ってとことん病気を見切ることが重要です。その経過中に無理だと判断したら専門の医師に紹介した方が良いといえます。重症薬疹の原因薬剤として意外なもの(あまり認識されていないもの)はありますか?抗痙攣薬、消炎鎮痛解熱薬(NSAIDs)、抗菌薬、痛風治療薬などが原因薬としてよく取り上げられますが、どんな薬剤でも起こり得ると思った方が良いと思います。被疑薬の特定が困難である場合、治療のために全て薬剤を中止することが多いですが、どのように因果関係を証明したらよいでしょうか?とくに多剤内服中の方について病気の程度によりますが、軽くて余裕があれば、怪しい薬剤から抜いていって、良くなったらその薬剤が原因である可能性が高いわけです。一方、薬疹の進行が激しく一刻の猶予もない場合は、すべて中止したほうが良いと考えます。そして、その症状が治るか収まるかして、ステロイドなどの治療薬を中止できるか、ある程度まで減量できた時に、推定される原因薬剤を用いて、患者さんの末梢血に由来するリンパ球の刺激培養(in vitroリンパ球刺激試験)を実施し、出来れば、in vivoのパッチテストも行い、原因薬を診断・推定することは今後の予防という視点からも重要です。

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Dr.岩田の感染症アップグレードBEYOND

第5回「尿路感染を舐めていないか?」第6回「解剖学(アナトミー)で考えるSSTI、骨・関節の感染症」第7回「スピードで勝負する髄膜炎」第8回「実は難しくない院内感染症」第9回「僕たちはそこで何ができるのか?被災地での感染症対策」 第5回「尿路感染を舐めていないか?」尿路感染は「難しくない」と思っている先生方はとても多いのですが、実はそこに落とし穴があります。尿路感染だと思って治療していたら実は○○だった…、という例には枚挙にいとまがありません。特にベテランの先生ほど、このピットフォールには陥りがちなのです。また、尿路感染=ニューキノロンという考え方も誤りです。実際、岩田先生のプラクティスで尿路感染にニューキノロンが使われることはほとんどありません。では、どうしたらいいのでしょうか?この回を見てしっかり学んでください。第6回「解剖学(アナトミー)で考えるSSTI、骨・関節の感染症」日常診療でもしばしば遭遇する、皮膚や軟部組織の感染症SSTI(Skin and Soft Tissue Infection)、骨、関節の感染症。実は、内科系のドクターはこれらが苦手な方が多いといいます。それは、感染した部位を外科的な視点で解剖学的に見ることが必要だから。単に、「腕」「足」の関節ではなく、その詳しい場所と、組織を特定しなければいけません。また、SSTIによく使われる第三世代セファロスポリンは明らかな誤用です。診断と治療の正しいアプローチを詳しく解説します。第7回「スピードで勝負する髄膜炎」頻度は高くないが、細菌性であれば命に関わる髄膜炎。全ての医師が少なくとも診断のプロセスを理解しておきたい疾患です。スクリーニング、腰椎穿刺、CT、抗菌薬の選択・投与、ステロイド使用の流れを覚えましょう。原因微生物も典型的なものだけでなく例外的な微生物に注意を払う必要があります。スピードを要求される対応のノウハウを身に付けましょう。第8回「実は難しくない院内感染症」入院中の患者さんが熱発した!担当医にとってこれほど気分の悪いことはありません。分からない原因、悩む抗菌薬の選択、耐性菌の不安。しかし岩田先生は、「外来の発熱患者さんに比べれば何百倍も簡単」と一刀両断。なぜなら、実は、感染症以外の鑑別を含めても、考えられる原因は数えるほどしかなく、それらを「ひとつずつ丁寧に精査していけば良い」だけのことだからです。院内感染症に使われる、カルバペネム、バンコマイシン、ピペラシリンといった広域抗菌薬についての誤用、誤解も明快に解説します。耐性菌に対する考え方もしっかり身に付けましょう。第9回「僕たちはそこで何ができるのか?被災地での感染症対策」2011年3月11日以来、岩田先生の医療に対する考え方は大きく変わったといいます。未曾有の大災害に対し、医師一人がいかに無力であるかを思い知り、しかし、それでもなお、何か出来ることがあるはずと、模索する日々。今回は、被災地での岩田先生自らの経験を踏まえて、避難所での感染症対策を解説します。非常時に感染症医として、医師として何が出来るか。それは、決して災害が起ってからだけの問題ではなく、常日頃のあなたの診療においても、考え、実践すべきことなのです。

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下肢の創傷処置後に発症したガス壊疽は医療ミスであると判断されたケース

外科最終判決判例タイムズ 495号167-176頁概要交通事故によって右脛骨・腓骨複雑骨折、約30cmの右下腿挫創を受傷した44歳女性。来院後直ぐに生理食塩水2,500mLを用いてデブリドマンを行い、ドレーン2本を留置して縫合後、下腿の鋼線牽引を行った。ところが、受傷後1週間目の抜糸時に強烈な悪臭を発し、ガス壊疽を発症していることが判明。右下腿切断を余儀なくされた。詳細な経過患者情報とくに既往症のない44歳女性経過1973年10月22日16:00自転車に乗って交差点を直進中、出会い頭に貨物自動車と衝突し、道路端の溝に落ちて受傷。16:20救急病院に到着。意識は清明で、血圧110/70mmHg、脈拍88/分。右脛骨・腓骨複雑骨折、右下腿部挫創と診断。とくに右下腿の挫創はひどく、長さ約30cm、筋肉、骨に達する不整形の傷口であり、内部は泥や土砂で著しく汚染されていた。ただちに創部に対し生理食塩水2,500mLを用いたデブリドマン(所要時間約30~40分)を行い、ドレーンを2本残して創傷を縫合した。下腿骨折に対しては鋼線牽引を行い、感染予防の抗菌薬、破傷風トキソイドを投与した。10月24日ドレーンからは排液がなかったので抜去。10月29日縫合部位の抜糸を行ったところ、傷口から特異かつ強烈な悪臭がみられガス壊疽と診断。生命の危険があると判断し、右大腿の切断手術を行った。当事者の主張患者側(原告)の主張ひどく汚染された骨折であったのだから、ガス壊疽発症を予防する注意義務があるのに、病院側は十分なデブリドマンを行わず、しかも創傷を開放性に処置しなかったためにガス壊疽を発症し、右大腿切断を余儀なくさせた。病院側(被告)の主張下肢挫創に対し30~40分もの時間を費やして十分なデブリドマンを行っているので医師に落ち度はない。本件のようなガス壊疽は相当の注意を払っても防ぎようがない。裁判所の判断事故直後からひどく汚染されていた右下腿挫創は、通常の医師がみればガス壊疽の危険性がきわめて高い状態であったことを容易に予見できた。そのため、まず創傷部位の徹底したデブリドマンを行うべきであり、デブリドマンの徹底さに自信がなければ創傷を開放性に処置すべき注意義務があるのに、担当医師はガス壊疽が発症する割合は低いものと軽信し、適切な初期診療を行わず右大腿切断へ至ったのは過失である。原告側4,660万円の請求に対し、2,937万円の判決考察外傷を扱う第一線の医師にとりまして、このケースはとても厳しい判決内容だと思います。汚染された創部に対し、通常の創傷処置を施してはいるものの、「ガス壊疽発症・下腿切断」という最悪の結果だけに注目して医療過誤と判定されたようなものだと思います。そもそも、医療技術の進歩や抗菌薬の発達にともなって、ベテランの整形外科医でさえもガス壊疽に遭遇するチャンスは少なくなったようですが、ひとたびガス壊疽を発症すると、医事紛争へと発展する危険があるということを考えておく必要があります。本件のように交通事故で運ばれた患者さんの右下腿に、長さが30cmにも及ぶざっくりと割れたような挫創があり、しかも土や砂がこびりついて汚染がひどければ、誰でも感染予防を第一に考えて徹底的なデブリドマンを行い、とりあえずは傷を縫合して抗菌薬、破傷風トキソイドなどを投与する、というのが普通の考え方だと思います。今回の担当医師は、生理食塩水2,500mLを用いてブラシによる創部洗浄を行い、土砂をできる限り取り除き、ドレーンを2本留置して創部を縫合しました。もちろん、感染症予防のために抗菌薬を投与し、破傷風トキソイドも注射し、毎日包帯交換を行って創部の確認をきちんとしていたはずです。そして、ドレーンからの排液はみられなかったため、受傷後2日目にはドレーンを抜去、創部に感染傾向はないことを確認しながら受傷7日目の抜糸へと至りました。その後、抜糸の時にはじめてガス壊疽発症に気付いたことになります。裁判官は、「デブリドマンの徹底さに自信がなければ創傷を開放性に処置すべき注意義務がある」と判断しましたが、はたして、ざっくりと口を開けた30cmにも及ぶ筋肉や骨にまで達した下腿の傷を、「ガス壊疽が心配だ」という理由で最初から縫合しないで開放創にするということができるでしょうか。もし最初から開放創とした場合には、創部の乾燥による2次的な神経損傷や筋肉の障害が引き起こされ、長期的にみた予後として下肢の筋力低下、尖足などが予想されるため、ほとんどの医師はまず縫合を試みると思います。すなわち、受傷直後のひどく汚染された創をみて、のちのち感染症のおそれはあるけれども、あえて開放創として下肢の筋力低下や尖足を招くよりも、いったんは縫合して様子をみる、という治療方法を選択するのが一般的だと思います。しかも、500mLの生理食塩水を5本も使って洗浄・デブリドマンを施していますので、処置としては十分といえるレベルではないでしょうか。「デブリドマンの徹底さに自信がなければ・・・」と裁判官はいいますが、自分の処置に完璧な自信を持つというのはとても難しく、結果が悪かったことに注目して医師にすべての責任を求めるという考え方にはどうしても納得がいきません。このように、本件は医師の立場では到底承服できない点が多々ありますが、一方で判決が確定した背景には、もう一つきわめて重要な要素がありました。それはこのコーナーでもたびたび取り上げている、「カルテの記載不備」です。担当医師のカルテには、受傷1週間後のガス壊疽発症に気付くまで、創部を観察した記載はほとんどありませんでした。本件は日本でも一流とされている総合病院で発生した事故でしたので、おそらく、毎日創部の消毒・包帯交換を行っていたと推測されます。ところが、抜糸するまで創部の感染傾向はみられなかったことをきちんとカルテに記載していなかったために、「ひどく汚染された創なのにきちんと経過観察をしていないではないか」という判断につながったと思われます。日頃の臨床では、何か陽性所見があれば必ずカルテに記載すると思いますが、異常がみられなければ(陰性所見は)あえてカルテには記載はしない、という先生方が多いと思います。本件でも担当医師は、「毎日傷をみて異常がないことを確認していた。カルテに何も書かないということは異常はないことと同じである」と主張しましたが、そのことを裏付ける書面は一切存在しないため、裁判では採用されませんでした。もし、抜糸に至るまでのカルテ記載のなかで、「創部に発赤・腫脹なし。感染傾向なし」という記載があれば、「毎日の診療の中でガス壊疽を含む創部感染に注意を払っていた」ということが証明され、「ガス壊疽発症は不可抗力である」という考え方にも説得力があることになり、「デブリドマンの徹底さに自信がなければ創傷を開放性に処置すべき注意義務がある」などという理不尽な判決には至らなかった可能性が高いと思います。あらためて、日々のカルテ記載はきわめて重要であることを痛感しますし、もし医事紛争へと発展した場合には、自分の身を守る唯一無二の証拠は「カルテ」であることを再認識させられる貴重なケースです。外科

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わきが治療としての経皮的エタノール注入療法

 わきが(腋臭症)治療として、経皮的エタノール注入療法(PEI)が有効かつ安全であることが報告された。中国医学科学院 中国協和医科大学のX. Han氏らが、PEI治療者165例に対して行った調査の結果で、術後の追跡調査(中央値14.5ヵ月)で、9割を超える人が治療成果に満足していることが示されたという。結果を踏まえて著者は、「PEIは手術に代わる治療の選択肢になると思われた。PEI治療には回復と術後の固定を最小化できるという利点があり、また安価で、相対的に安全、かつ外来手術で行える可能性もある」と報告をまとめている。Clinical and Experimental Dermatology誌2013年7月号の掲載報告。 わきがに対しては、アポクリン腺切除が頼みの治療となっており、そのほかのさまざまな治療法が試されてきたが、いずれも侵襲性の高い手術療法や治療であり、合併症の可能性も高い。 研究グループは、わきがに対する治療法としてのPEIの有効性と安全性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、両側性のわきが患者165例であった。・局所麻酔後、90%エタノール(片側につき平均8.9mL)を皮膚表面近くの汗腺がある皮下層に注射した。・フォローアップは、中央値14.5ヵ月(範囲:10~28)であった。・アウトカムについて、165例のうち80例(48.5%)が「非常によい」、72例(43.6%)が「よい」、10例(6.1%)が「普通」、3例(1.8%)が「不良」と評価した。・患者の大半(152/165例、92.1%)が治療結果を高く評価し、満足していた。・患者2例において、腋窩の皮膚に壊死が起こり、修復手術が行われた。・表在性表皮融解あるいは局所的皮膚壊死は15例で発生した。それらに対しては抗菌薬塗布による保存的治療を行い、後遺症を伴うことなく治癒した。

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ICUでのMRSA感染症を防ぐために有効な方法とは?(コメンテーター:吉田 敦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(117)より-

MRSAは、医療関連感染(Healthcare Associated Infections)の中で最も重要な微生物といっても過言ではなく、とくにICUでは問題になることが非常に多い。米国ではスクリーニングとして、ICU入室時に鼻腔のMRSAを調べ、接触感染予防策を徹底するよう義務づけている州がある。鼻腔にMRSAを保菌しているキャリアーからの伝播を防ぐ方法として、(1)抗菌薬であるムピロシンの鼻腔内塗布や、(2)消毒薬のクロルヘキシジンをしみ込ませた布での患者清拭を行って、除菌decolonizationできるかどうか検討され、それぞれ有効性が示されてきたが、誰にいつの時点で行えばよいかは不明であった。 そこで米国43病院、74箇所のICUを対象として、以下の3群に割りつけた。●グループ1:入室時に鼻腔のMRSAスクリーニングを行い、陽性者や過去にMRSA感染症の既往があった者は接触感染予防策を行う。●グループ2:グループ1と同様のスクリーニングを行うが、保菌・感染が判明した患者はムピロシンと2%クロルヘキシジンによる除菌と接触感染予防策を行う。●グループ3:スクリーニングは行わないで、入室者全例に除菌と接触感染予防策を行う。 この3群において、MRSA検出率と血流感染発生率を比較した。 全く対策を行わなかった時期と比べると、MRSA検出率はグループ1で8%、グループ2で25%、グループ3で36%減少し、血流感染率はグループ1で1%、グループ2で22%、グループ3で44%減少し、全例除菌の効果が最も著しかった。なお、血流感染では、MRSAによるものとその他の微生物によるものの両方が減少し、減少幅はグループ3で最も大きかった。 ムピロシンにより鼻腔の保菌が少なくなったこと、クロルヘキシジン清拭により皮膚の細菌数が少なくなったこと、さらに入室時から対策を開始できたことがグループ3での効果に結びついたと考えられる。対象を絞った対策よりも、ユニバーサルな除菌が効果的であったというのは、培養でとらえきれない(培養感度以下である)MRSAの存在や、多くの人が接し、患者・スタッフ間で伝播が生じやすいICUの環境を考えると理にかなっているといえよう。 日本ではかつてクロルヘキシジンによるアレルギー例が報告され、それ以来その使用に対して慎重であり、用いられている濃度も低い。今回の検討では、クロルヘキシジンの使用後に7例で局所の掻痒や発疹が出現したが、いずれも中止により改善したという。 本邦で通常行われている、対象を絞った方法では限りがあることも示されたわけであるが、今回の検討では、その後にMRSAの検出率が増加しなかったかも気になるところである。これまで、ユニバーサルなムピロシン使用は1年以内の短期的な抑制効果にとどまっていた例が報告されている。感染予防に対する職員個人の意識が持続できなければ、除菌を行っても早期に破綻してしまう。その意識をどのように維持させていくかが、最も重要かつ工夫しなければならない課題である。

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アスピリン喘息の患者に対し解熱消炎薬を投与し、アナフィラキシーショックで死亡したケース

自己免疫疾患最終判決判例タイムズ 750号221-232頁、786号221-225頁概要気管支喘息の検査などで大学病院呼吸器内科に入院していた42歳女性。入院中に耳鼻科で鼻茸の手術を受け、術後の鼻部疼痛に対し解熱消炎薬であるジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタレン)2錠が投与された。ところが服用後まもなくアナフィラキシーショックを起こし、呼吸困難から意識障害が進行、10日後に死亡した。詳細な経過患者情報42歳女性経過1979年(39歳)春痰を伴う咳が出現し、時に呼吸困難を伴うようになった。12月10日A病院に1ヵ月入院し、喘息と診断された。1981年夏安静時呼吸困難、および喘鳴が出現し、歩行も困難な状況になることがあった。8月11日再びA病院に入院し、いったんは軽快したがまもなく入院前と同じ症状が出現。1982年2月起坐呼吸が出現し、夜間良眠が得られず。体動による喘鳴も増強。6月近医の紹介により、某大学病院呼吸器内科を受診し、アミノフィリン(同:ネオフィリン)などの投与を受けたが軽快せず。9月7日A病院耳鼻科を受診し、アレルギー性鼻炎を基盤とした重症の慢性副鼻腔炎があり、鼻茸を併発していたため手術が予定された(患者の都合によりキャンセル)。9月27日咽頭炎で発熱したためA病院耳鼻科を受診し、解熱鎮痛薬であるボルタレン®、およびペニシリン系抗菌薬バカンピシリン(同:バカシル、製造中止)の処方を受けた。帰宅後に両薬剤を服用してまもなく、呼吸困難、喘鳴を伴う激しいアナフィラキシー様症状を起こし、救急車でA病院内科に搬送された。入院時にはチアノーゼ、喘鳴を伴っていて、薬剤によるショックであると診断され、ステロイドホルモンなどの投与で症状は軽快した。担当医師は薬物アナフィラキシーと診断し、カルテに「ピリン、ペニシリン禁」と記載した。この時の発作以前には薬物による喘息発作誘発の既往なし。1983年2月3日A病院耳鼻科を再度受診して鼻茸の手術を希望。この時には症状および所見の軽快がみられたので、しばらくアレルギー性鼻炎の治療が行われ、かなり症状は改善した。5月10日気管支喘息の原因検索、およびコントロール目的で、某大学病院呼吸器内科に1ヵ月の予定で入院となった。5月24日不眠の原因が鼻閉によるものではないかと思われたので同院耳鼻科を受診。両側の鼻茸が確認され、右側は完全閉塞、左側にも2~3の鼻茸があり、かなりの閉塞状態であった。そこで鼻閉、およびそれに伴う呼吸困難の改善を目的とした鼻茸切除手術が予定された。5月25日教授回診にて、薬剤の既往症をチェックし、アスピリン喘息の可能性を検討するように指示あり。6月2日15:12~15:24耳鼻科にて両側鼻茸の切除手術施行。15:50病室へ戻る。術後に鼻部の疼痛を訴えた。17:00担当医師が学会で不在であったため、待機していた別の当番医によりボルタレン®2錠が処方された。17:30呼吸困難が出現。喘鳴、および低調性ラ音が聴取されたため起坐位とし、血管確保、およびネオフィリン®の点滴が開始された。17:37喘鳴の増強がみられたため、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム(同:サクシゾン)、ネオフィリン®の追加投与。17:40突然チアノーゼが出現し気道閉塞状態となる。ただちに気管内挿管を試みたが、筋緊張が強く挿管困難。17:43筋弛緩薬パンクロニウム(同:ミオブロック4mg)静注し再度気管内挿管を試みたが、十分な開口が得られず挿管中止。17:47別の医師に交代して気管内挿管完了。17:49心停止となっため心臓マッサージ開始。エピネフリン(同:ボスミン)心注施行。17:53再度心停止。再びボスミン®を心注したところ、洞調律が回復。血圧も維持されたが、意識は回復せず、まもなく脳死状態へ移行。6月12日07:03死亡確認となる。当事者の主張患者側(原告)の主張1.問診義務違反アスピリン喘息が疑わる状況であり、さらに約8ヵ月前にボルタレン®、バカシル®によるアナフィラキシーショックを起こした既往があったのに、担当医師は問診を改めてやっていないか、きわめて不十分な問い方しかしていない2.過失(履行不完全)問診により発作誘発歴が明らかにならなくても、鼻茸の手術前に解熱鎮痛薬を使用してよい患者かどうか確認するために、スルピリンやアスピリンの吸入誘発試験により確実にアスピリン喘息の診断をつけるべきであった。さらに、疼痛に対しいきなりボルタレン®2錠を使用したことは重大な過失である3.救命救急処置気管内挿管に2度失敗し、挿管完了までに11分もかかったのは重大な過失である病院側(被告)の主張1.問診義務違反アスピリン喘息を疑がって問診し、風邪薬などの解熱鎮痛薬の発作歴について尋ねたが、患者が明確に否定した。過去のアナフィラキシーショックについても、問題となった薬剤服用事実を失念しているか、告知すべき事実と観念していないか、それとも故意に不告知に及んだかのいずれかである2.過失(履行不完全)スルピリン吸入誘発試験によるアスピリン喘息確定診断の可能性、有意性はきわめて少ない。アナフィラキシーショックを予防する方法は、適切な問診による既往症の聴取につきるといって良いが、本件では問診により何ら薬物によるアナフィラキシー反応の回答が得られなかったので、アナフィラキシーショックの発生を予測予防することは不可能であった3.救命救急処置1回で気管内挿管ができなかったからといって、けっして救命救急処置が不適切であったことにはならない裁判所の判断第1審の判断問診義務違反患者が故意に薬剤服用による発作歴があることを秘匿するとは考えられないので、担当医師の質問の趣旨をよく理解できなかったか、あるいは以前の担当医師から受けた説明を思い出せなかったとしか考えられない。適切な質問をすれば、ボルタレン®およびバシカル®の服用によってショックを起こしたことを引き出せたはずであり、問診義務を尽くしたとは認めがたい。このような担当医師の問診義務違反により、アスピリン喘息の可能性を否定され、鼻茸の除去手術後にアスピリン喘息患者には禁忌とされるボルタレン®を処方され、死亡した。第2審の判断第1審の判断を翻し、入院時の問診で主治医が質問を工夫しても、鎮痛薬が禁忌であることを引き出すのは不可能であると判断。しかし、担当医師代行の当番医が、アスピリン喘息とは断定できないもののその疑いが残っていた患者に対してアスピリン喘息ではないと誤った判断を下し、いきなりボルタレン®2錠を投与したのは重大な過失である。両判決とも救命救急処置については判断せず。6,612万円の請求に対し、3,429万円の支払命令考察本件では第1審で、「ボルタレン®、バシカル®によるアナフィラキシーショックの既往歴を聞き出せなかったのは、問診の仕方が悪い」とされました。この患者さんは弁護士の奥さんであり、「患者は知的で聡明な女性であり、医師のいうことを正しく理解できたこと、担当医師との間には信頼関係が十分にあった」と判決文にまで書かれています。しかも、この事件が起きたのは大学病院であり、教授回診で「薬剤の既往症をチェックし、アスピリン喘息の可能性を検討するように」と具体的な指示までありましたので、おそらく担当医師はきちんと問診をしていたと思われます。にもかかわらず、過去にボルタレン®およびバシカル®でひどい目にあって入院までしたことを、なぜ患者が申告しなかったのか少々理解に苦しみますし、「既往歴を聞き出せなかったのは、問診の仕方が悪い」などという判決が下るのも、ひどく偏った判断ではないかと思います。もっとも、第2審ではきちんとその点を訂正し、「担当医師の問診に不適切な点があったとは認められない」とされました。当然といえば当然の結果なのですが、こうも司法の判断にぶれがあると、複雑な思いがします。結局、本件はアスピリン喘息が「心配される」患者に対し、安易にボルタレン®を使ったことが過失とされました。ボルタレン®やロキソプロフェンナトリウム(同:ロキソニン)といった非ステロイド抗炎症薬は、日常臨床で使用される頻度の高い薬剤だと思います。そして、今回のようなアナフィラキシーショックに遭遇することは滅多にないと思いますので、われわれ医師も感冒や頭痛の患者さんに対し気楽に処方してしまうのではないかと思います。過去に薬剤アレルギーがないことを確認し、そのことをカルテにきちんと記載しておけば問題にはなりにくいと思いますが、「喘息」の既往症がある患者さんの場合には要注意だと思います。アスピリン喘息の頻度は成人喘息の約10%といわれていますが、喘息患者の10人に1人は今回のような事態に発展する可能性があることを認識し、抗炎症薬はなるべく使用しないようにするか、処方するにしてもボルタレン®やロキソニン®のような酸性薬ではなく、塩基性非ステロイド抗炎症薬を検討しなければなりません。自己免疫疾患

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尿道カテーテル抜去時の抗菌薬予防的投与、短期入院患者ではベネフィットがある/BMJ

 入院患者の尿道カテーテル抜去時の抗菌薬予防的投与について、カテーテルを受けていた期間が短期の患者については同投与をしたほうがベネフィットがあることを、米国・ワシントン大学のJonas Marschall氏らがメタ解析の結果、報告した。著者は、「患者がベネフィットを受けるかを見極めて投与を行えば、抗菌薬予防的投与の不利益(副作用、コスト、耐性菌の発生)は軽減できうる」と述べている。BMJ誌オンライン版2013年6月11日号掲載の報告より。2012年11月以前に発表された試験についてメタ解析 Marschall氏らは、尿道カテーテル抜去時の抗菌薬予防的投与が、尿路感染症のリスクを低下するのかを評価することを目的に、メタ解析を行った。 PubMed、Embase、Scopus、Cochrane Libraryを介して、2012年11月以前に発表された試験を検索しシステマティックレビューとメタ解析を行った。また、2006~2012年の米国感染症学会などの学会発表アブストラクトについてもレビューを行った。 適格としたのは、抗菌薬予防的投与により、短期(14日以内)尿道カテーテル抜去後の症候性尿路感染症を予防することについて評価を行っていた試験とした。対照群とのリスク比は0.45、NTTは17 システマティックレビューにより246件(PubMedを介した主要サーチ)と221件(PubMedほかを介したセカンドサーチ)の試験が検出され、そのうち適格基準を満たした7件(エンドポイントが尿道カテーテル抜去後の症候性尿路感染症であった)がメタ解析に組み込まれた。 7件のうち、6件は無作為化試験(5件は発表論文、1件はアブストラクト)、1件は非無作為化対照介入試験であった。7件のうち5件は、外科患者を対象としていた。また、試験間の抗菌薬の種類、投与期間、観察期間は不均一だった。 解析の結果、全体的には、抗菌薬予防的投与は患者のベネフィットと関連していた。介入群と対照群の尿路感染症リスクの絶対差(低下)は5.8%で、リスク比は0.45(95%信頼区間[CI]:0.28~0.72)。 尿路感染症1例の予防に必要な抗菌薬予防的投与(NTT)は17(95%CI:12~30)だった。

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予防的なマクロライド系抗菌薬の投与はCOPD増悪を抑制するのか?

 マクロライド系抗菌薬の予防的投与はCOPD増悪を抑制する有効なアプローチであることがマイアミ大学のElie Donath氏らにより報告された。Respiratory Medicine誌オンライン版2013年6月11日号の掲載報告。 マクロライド系抗菌薬は抗菌作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用など、さまざまな特性を有しており、COPDの増悪抑制に対して独特な利点を有している。近年、マクロライド系抗菌薬の予防的投与がCOPD増悪のリスクを低減させるかに関する研究が注目を集めているが、これら最近の知見が先行研究の知見にどの程度当てはまるかについてはほとんどわかっていない。 本研究の目的は、呼吸器関連のメタアナリシスから、COPD増悪の抑制に対するマクロライド系抗菌薬の予防的投与がコンセンサスのとれるものかを評価することである。 EMBASE、コクラン、Medlineのデータベースから関連のあるランダム化比較試験を検索し、6件のランダム化試験を同定した。プライマリエンドポイントはCOPDの増悪発生率であり、セカンダリーエンドポイントは全死亡、入院率、有害事象、少なくとも1回以上のCOPD増悪を経験する可能性であった。 主な結果は以下のとおり。・プラセボと比較してマクロライド系抗生物質を投与した群では、COPD増悪の相対リスクが37%減少していた(RR:0.63、95%信頼区間[CI]: 0.45~0.87、p=0.005)。・入院の相対リスクは21%減少していた(RR: 0.79、95%信頼区間[CI]: 0.69~0.90、p=0.01)。・少なくとも1回以上の増悪を起こす相対リスクは68%減少していた(RR :0.34、95%信頼区間[CI]: 0.21~0.54、p=0.001)。・マクロライド系抗生物質を投与した群では、全死亡の減少傾向や有害事象の増加傾向が認められたが、統計学的な有意差はみられなかった。 なお、今回の研究において、有害事象報告に一貫性が欠けていた点やメタアナリシス間で臨床的、統計学的に不均一性があった点についても著者は言及している。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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抗菌薬適正使用推進プログラム、広域抗菌薬の適応外使用を改善/JAMA

 小児プライマリ・ケア外来への抗菌薬適正使用推進プログラム(antimicrobial stewardship program)の導入により、細菌性急性気道感染症(ARTI)の診療ガイドライン遵守状況が改善されることが、米国・フィラデルフィア小児病院のJeffrey S. Gerber氏らの検討で示された。米国では小児に処方される薬剤の多くが抗菌薬で、そのほとんどが外来患者であり、約75%がARTIに対するものだという。ウイルス性ARTIへの抗菌薬の不必要な処方は減少しつつあるが、細菌性ARTIでは、とくに狭域抗菌薬が適応の感染症に対する広域抗菌薬の不適切な使用が多いとされる。JAMA誌2013年6月12日号掲載の報告。プライマリ・ケアでのプログラムによる介入の効果を評価 研究グループは、小児プライマリ・ケア医による外来患者への抗菌薬処方における、抗菌薬適正使用推進プログラムに基づく介入の効果を評価するクラスター無作為化試験を行った。 ペンシルベニア州とニュージャージー州の25の小児プライマリ・ケア施設のネットワークから18施設(医師162人)が参加し、介入群に9施設(医師81人)、対照群に9施設(医師81人)が割り付けられた。 介入群の医師は、プログラムに基づき2010年6月に1時間の研修を1回受講し、その後1年間にわたり3ヵ月に1回、細菌性およびウイルス性ARTIに対する処方への監査とフィードバックが行われた。対照群の医師は通常診療を実施した。 主要評価項目は、介入の20ヵ月前から介入後12ヵ月(2008年10月~2011年6月)までの、細菌性ARTIに対する広域抗菌薬の処方(ガイドライン規定外)およびウイルス性ARTIに対する抗菌薬の処方の変化とした。広域抗菌薬処方率が6.7%低下 広域抗菌薬の処方率は、介入群では介入前の26.8%から介入後に14.3%まで低下し(絶対差:12.5%)、対照群は28.4%から22.6%へ低下した(同:5.8%)。両群の絶対差の差(difference of differences:DOD)は6.7%で、介入による処方率の有意な抑制効果が認められた(p=0.01)。 肺炎の小児への広域抗菌薬処方率は、介入群が15.7%から4.2%へ、対照群は17.1%から16.3%へ低下し、介入による有意な抑制効果がみられた(DOD:10.7%、p<0.001)。一方、急性副鼻腔炎への処方率はそれぞれ38.9%から18.8%へ、40.0%から33.9%へと低下した(DOD:14.0%、p=0.12)。 A群レンサ球菌咽頭炎では、ベースラインの広域抗菌薬処方率が低く、介入による変化はほとんどみられなかった(介入群:4.4%から3.4%へ低下、対照群:5.6%から3.5%へ低下、DOD:−1.1%、p=0.82)。ウイルス感染症への抗菌薬処方にも同様の傾向が認められた(介入群:7.9%から7.7%へ低下、対照群:6.4%から4.5%へ低下、DOD:-1.7%、p=0.93)。 著者は、「プライマリ・ケア医の研修と、処方の監査、フィードバックを組み合わせた抗菌薬適正使用推進プログラムにより、小児に一般的な細菌性ARTIの診療ガイドラインの遵守状況が、通常診療に比べて改善された。一方、ウイルス感染症への抗菌薬処方については、介入の影響は認めなかった」とまとめ、「今後、外来における抗菌薬適正使用推進プログラムの有効性の促進要因や、一般化可能性、持続可能性、臨床アウトカムの検証を行う必要がある」と指摘している。

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炎症性バイオマーカー上昇、COPDの増悪リスク増大と関連/JAMA

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪の指標として、炎症性バイオマーカー(C反応性蛋白[CRP]、フィブリノゲン、白血球数)が有用な可能性があることが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMette Thomsen氏らの検討で示された。COPDにおける呼吸器症状の増悪は、長期に持続する重篤な有害作用をもたらし、増悪が気道感染症の原因となることも多い。急性発作時は循環血中の急性期蛋白質や炎症細胞が増加するとの報告の一方で、安定期COPDでは全身性の炎症反応は低いものの炎症性バイオマーカーの上昇がみられる場合があるとのエビデンスや、炎症性バイオマーカーの上昇が不良な転帰と関連するとの研究結果もあるという。JAMA誌2013年6月12日号掲載の報告。マーカー上昇とリスク増大との関連を前向きコホート試験で検証 研究グループは、安定期COPD患者における炎症性バイオマーカーの上昇が増悪のリスク増大と関連するとの仮説を立て、これを検証するためにプロスペクティブなコホート試験を実施した。 解析の対象は、Copenhagen City Heart Study(2001~2003年)およびCopenhagen General Population Study(2003~2008年)の参加者のうち、スパイロメトリー検査(6万1,650例)でCOPDと判定された6,574例[年齢中央値67歳、男性47%、2回以上の増悪歴あり127人、GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)のGrade A/B 6,016例、C/D 558例、GOLDのGrade 1/2 6,109例、3/4 465例]であった。 増悪症状の未発現時に、ベースラインのCRP、フィブリノゲン、白血球数の測定を行った。増悪は、経口コルチコステロイド薬の単剤または抗菌薬との併用による短期的治療が行われた場合、およびCOPDで入院となった場合と定義した。CRPは3mg/L、フィブリノゲンは14μmol/L、白血球数は9×109/Lをカットオフ値として高値と低値に分類した。軽度、増悪歴なしでも有意な増悪リスク因子に フォローアップ期間中に3,083回のCOPD増悪が認められた(1人当たり平均0.5回)。 フォローアップ1年目のバイオマーカー上昇なし(9/1,000人・年)との比較における増悪の多変量調整済みオッズ比[OR]は、1つのバイオマーカー上昇の場合は1.2(95%信頼区間[CI]:0.7~2.2、17回/1,000人・年)、2つ上昇の場合は1.7(95%CI:0.9~3.2、32回/1,000人・年)、3つでは3.7(95%CI:1.9~7.4、81回/1,000人・年)であり、上昇マーカー数が増えるに従って増悪リスクが増大した(傾向性検定:p=2×10-5)。 全フォローアップ期間を通じてのORは、1つのバイオマーカー上昇の場合が1.4(95%CI:1.1~1.8)、2つ上昇で1.6(95%CI:1.3~2.2)、3つでは2.5(95%CI:1.8~3.4)であった(傾向性検定:p=1×10-8)。 基本モデルに炎症性バイオマーカーを加えることで、C統計量が0.71から0.73へ改善された(p=9×10-5)。また、軽度COPDや増悪歴のないCOPD患者においても、全体的な相対リスクとの一致が認められた。 3つのバイオマーカー上昇を認める場合の増悪の5年絶対リスクは、GOLD Grade C/Dの患者が62%(バイオマーカー上昇なしでは24%)、増悪歴ありの患者は98%(同:64%)、GOLD Grade 3/4の患者は52%(同:15%)であった。 著者は、「CRP、フィブリノゲン、白血球数の上昇はCOPDの増悪リスクの増大と相関を示し、この関連は軽度COPDや増悪歴のないCOPD患者にも認められた」とまとめ、「リスクを層別化するには、今後、これらのバイオマーカーの臨床的な価値についてさらに検討を進める必要がある」としている。

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「寄り道」呼吸器診療 ―呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス

ひそかな人気ブログ「呼吸器内科医」を書籍化!! 呼吸器診療において多くの医師が悩んでいる、でも成書を調べても答えが見つからない―77の疑問。本書では、この疑問に真正面から取り組み、関連するエビデンス、著者の思い、診療で役立つポイントが示されています。著者は人気ブログ「呼吸器内科医」の倉原優先生(近畿中央胸部疾患センター呼吸器内科)。ブログ「呼吸器内科医」:http://pulmonary.exblog.jp内容例(詳しくは目次をご参照ください):気管支鏡時の抗菌薬にエビデンスはあるのか?結核患者さんとどのくらい接触したら自分にも感染してしまうのか?気管支喘息発作に対する全身性ステロイドの最適量は?胸腔ドレーン抜去前のクランプテストにエビデンスはあるのか?癌以外の呼吸困難感にモルヒネを使用してよいか?鎮咳薬で最も効果的なものは?吃逆の治療のエビデンスは?―など計77の疑問を解説!画像をクリックすると、一部がPDFでご覧いただけます。 「寄り道」呼吸器診療―呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス 定価 本体4,500円+税判型 A5判頁数 415頁発行 2013年5月編集 倉原 優(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)Amazonでご購入の場合はこちら

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