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新型コロナウイルス肺炎41例の臨床的特徴(解説:小金丸博氏)-1186

オリジナルニュース新型コロナウイルス、感染患者の臨床的特徴とは?/Lancet(2020/01/28掲載)論文に対するコメント: 2019年12月に中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス(2019-nCoV)による感染症が世界中に拡大しつつあり、本稿執筆時点(2020年2月4日)で確定患者は2万人を超え、そのうち約400人が死亡したと報告されている。そんな中Lancet誌オンライン版(2020年1月24日号)より、2020年1月2日までに新型コロナウイルス肺炎で入院となった41例の患者背景、臨床症状、臨床経過、放射線画像検査の特徴などが報告された。結果の概要は以下のとおりだが、今回の報告は肺炎を発症し入院となった重症患者のまとめであり、自然軽快する軽症例は含まれていないことに留意しながら結果を解釈する必要がある。患者背景: 患者の73%が男性で、年齢の中央値は49.0歳(四分位範囲:41.0~58.0)だった。32%が何らかの基礎疾患(糖尿病、高血圧、心血管疾患など)を有していた。66%が感染源と推測されている華南海鮮市場と何らかの接点があった。男性が多い理由としては、海鮮市場の関係者が多く含まれていることが要因と思われる。臨床症状: 頻度の高い症状は、37.3℃以上の発熱(98%)、咳嗽(76%)、呼吸困難(55%)、筋肉痛または疲労感(44%)だった。ウイルス性肺炎であるためか喀痰は28%とそれほど多くなかった。下痢などの消化器症状の報告は少なく、鼻汁、咽頭痛などの上気道症状をほとんど認めなかったことも特徴的である。臨床経過: 重症例では、発症から約1週間で入院、8日目ごろに呼吸困難が出現、9日目ごろに急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を合併し、10日目以降に集中治療室(ICU)へ入室するという経過をたどった。合併症としてARDS(29%)、急性心障害(12%)、2次感染(10%)などを認めた。32%がICUへ入室し、15%が死亡した。軽症例を含めれば、合併症発生率や致死率は低下することが予想される。放射線画像所見: 胸部CT画像では、98%で両肺野に浸潤影を認め、非ICU入室患者ではスリガラス影が典型的な所見だった。治療: 全例に抗菌薬の投与、93%に抗ウイルス薬(オセルタミビル)の投与、22%に全身ステロイド投与が行われた。ステロイドの有用性については、さらなる症例の集積が必要である。また、新型コロナウイルス感染症に対して、抗HIV薬であるロピナビルとリトナビルの併用療法の有用性を検討するランダム化比較試験が開始されている。 本論文は、新型コロナウイルス肺炎の臨床的特徴を初めて記載したものである。今後さらに症例を蓄積していくことで、軽症例や無症候例の存在、伝染性、正確な致死率などが判明していくと思われる。 コロナウイルスはいわゆる「風邪」の原因ウイルスであるが、ヒトに対して強い病原性を示したSARSやMERSの原因ウイルスでもある。今までの報告からはSARSやMERSほど致命率は高くないと考えられるものの、まだ明らかとなっていないことが多く、今後の動向を注視したい。医療従事者への院内感染事例も報告されており、手指衛生や咳エチケットなどの標準予防策に加え、適切な経路別予防策の実施を心掛けたい。

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抗菌薬が十分量処方されていなかったため上乗せを提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第14回

 今回は、動物咬傷による皮膚軟部組織感染に対する抗菌薬の処方提案です。病状の改善や耐性菌を生み出さないためには抗菌薬を十分量投与する必要があります。医師の選択した抗菌薬の種類だけでなく、投与量も適切かどうか確認するクセをつけましょう。患者情報50歳、男性(外来)体  重:60kg基礎疾患:高血圧症、糖尿病、足白癬既 往 歴:とくになし主  訴:ペットの犬に噛まれた右手の疼痛、発熱直近の検査値:血清クレアチニン(Scr)0.9mg/dL推算CCr:83.3mL/min処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.シタグリプチン錠50mg 1錠 分1 朝食後3.テルビナフィンクリーム 10g 1日1回 足全体4.エフィナコナゾール液10% 3.56g 1日1回 爪全体5.アモキシシリン・クラブラン酸配合錠250RS 3錠 分3 毎食後本症例のポイント糖尿病患者さんは、感染症に罹患しやすく、重篤化しやすいため、十分量の抗菌薬が処方されているか慎重に確認する必要があります。今回の患者さんは、糖尿病の基礎疾患があり、動物咬傷による皮膚軟部組織感染と推察できますので、アモキシシリン・クラブラン酸配合錠250RS 3錠/日(アモキシシリンとして750mg/日)では治療効果が十分ではなく、1,500mg/日程度が必要と考ました。しかし、アモキシシリンが治療に有効な力価になるまで配合錠を増量すると、クラブラン酸が高用量になり過ぎてしまいます。高用量のクラブラン酸は下痢や嘔気などの消化器症状が増加する懸念がある一方で、抗菌効果の増強にはならないと指摘されていますので良いところなしです。そのため、アモキシシリンの用量を上げたい場合は、アモキシシリン・クラブラン酸配合錠を増量するのではなく、アモキシシリン単剤を追加してアモキシシリンの力価だけを増やすことがあります。アモキシシリン・クラブラン酸配合錠とアモキシシリン錠の先発品名から「オグサワ」と呼ばれる有名な治療方法です。海外製品のアモキシシリン・クラブラン酸配合錠の標準比は、アモキシシリン:クラブラン酸=4:1だが、日本製品(成人用)は2:1でアモキシシリンの配合比が低い。アモキシシリン・クラブラン酸配合錠250RS 3錠/日にアモキシシリン単剤250mg 3錠/日を追加することでアモキシシリン:クラブラン酸=4:1となり、クラブラン酸を増量せずに十分量のアモキシシリンを投与することができる。処方提案と経過処方医に想定される起炎菌と重症度を確認したところ、傷の深さや発熱などの症状から重症度は高めで、ブドウ球菌や嫌気性菌を考えているとのことでした。核心の用量については、逆に抗菌薬の十分量について質問を受けたので、上記のアモキシシリン250mg/回を追加することで十分な治療効果が見込め、腎機能も推算CCrから問題ない旨をお伝えしました。その結果、処方はアモキシシリン錠250mg 3錠 分3 毎食後をアモキシシリン・クラブラン酸配合錠に同日数分上乗せするよう指示を受けました。数日後、医師より患者さんの体調が回復したというご報告と、オグサワの使用経験がなく不安があったが今後の診療でも活用していきたいというコメントを頂きました。1)Gilbert DNほか編. 菊池賢ほか日本語版監修. <日本語版>サンフォード 感染症治療ガイド2019(第49版). ライフサイエンス出版;2019.2)オーグメンチン配合錠インタビューフォーム

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出血ハイリスクの重症患者に対する予防的なPPI・H2RAは有用か?(解説:上村直実氏)-1177

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2RA)など酸分泌抑制薬は胃食道逆流症に対する有用性により世界中で頻用されている一方、長期投与による肺炎や骨折のリスク、腸内細菌叢の変化に伴うClostridium difficile(CD)感染症のリスク増加などを危惧する報告が散見されている。このように酸分泌抑制薬の有用性と安全性のバランスは臨床現場で最も注目されている課題の1つである。 重症患者が主体のICUにおいて消化管出血の予防処置としてPPIやH2RAが当然のように投与されているが、薬剤のリスクを考慮した有用性に関する確実なコンセンサスが得られていないのが現状である。今回、この予防投与の有用性を検証するために、研究デザインの質やバイアスリスクを詳細に吟味したシステマティックレビュー/ネットワークメタ解析の結果がBMJ誌に掲載された。選択された72研究1万2,660例について検討した結果、消化管出血のハイリスク患者ではPPIやH2RAの予防投与は臨床的に消化管出血を減少する成績が示された一方、リスクの低い患者においては出血予防の有用性は統計学的には少ないものとされている。 ICUでは抗菌薬の使用が多く、PPI併用によるCD感染症の増加が危惧されるが、本研究の結果からCD感染症は予想より少ないと思われた。一方、酸分泌抑制薬により肺炎を惹起するリスクが増加することは確かなようであり、医療現場ではさらなる注意が必要である。 最も高いレベルの『エビデンス』とされるメタ解析やシステマティックレビューの評価には、選択された研究論文の質はもとより結果の解釈が大切であり、さらに選択論文のアウトカムのみでなく各研究の調査因子の違いにも注意が必要であること、調査因子が多くなると研究結果が不均一になる傾向にあること等、本研究論文から得られる教訓は多かった。EBM全盛時代となっているが、エビデンスレベルを研究デザインにより設定することが適切であるのか、また実際の診療現場では『エビデンス』を参考資料として個々の患者に対する最善の対処を行っているのか考えさせられた次第である。

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インフルエンザ様疾患にも抗インフル薬が有益か/Lancet

 インフルエンザ様疾患でプライマリケア医を受診し、通常治療に加えオセルタミビルの投与を受けた患者は、通常治療のみの患者に比べ、平均で1日早く回復し、高齢で症状が重く、併存疾患があり症状持続期間が長い患者では回復までの期間が2~3日短縮することが、英国・オックスフォード大学のChristopher C. Butler氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月12日号に掲載された。欧州のプライマリケアでは、インフルエンザ様疾患への抗ウイルス薬の処方はまれだという。その主な理由は、プライマリケアの実臨床では抗ウイルス薬の効果はないとの認識があること、また、独立の臨床試験で、とくに利益を得ると予測される患者が特定されていないこととされる。欧州15ヵ国のプライマリケア施設が参加した実際的臨床試験 本研究は、欧州15ヵ国のプライマリケア施設で行われた実際的な非盲検無作為化対照比較試験であり、2016年1月15日~2018年4月12日の期間に患者登録が実施された(欧州委員会第7次研究開発枠組計画の助成による)。 対象は、年齢1歳以上、インフルエンザ様疾患でプライマリケア施設を受診した患者であった。インフルエンザ様疾患は、季節性インフルエンザ流行期に、自己申告による突然の発熱がみられ、1つ以上の呼吸器症状(咳、喉の痛み、鼻水、鼻づまり)および1つの全身症状(頭痛、筋肉痛、発汗/悪寒、疲労感)を伴い、症状持続期間が72時間以内と定義された。被験者は、通常治療+オセルタミビルまたは通常治療のみを行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは患者報告による回復までの期間とした。回復は、発熱、頭痛、筋肉痛が軽減または消失し、通常の日常活動への復帰が達成された場合と定義された。便益はインフルエンザ感染の有無にかかわらない 3回の季節性インフルエンザ流行期に3,266例(2015~16年:495例、2016~17年:1,225例、2017~18年:1,546例)が登録された。オセルタミビル群に1,629例、通常治療群には1,637例が割り付けられ、主要エンドポイントの解析にはそれぞれ1,533例(94%)および1,526例(93%)が含まれた。 ベースラインの年齢層別の患者割合は、両群とも12歳未満が14%、12~65歳が80%、65歳以上が6%であった。オセルタミビル群の56%、通常治療群の55%が女性だった。3,059例中1,590例(52%)が、PCRによりインフルエンザ感染症と確定された。 全体の回復までの期間は、オセルタミビル群が通常治療群に比べ短かった(ハザード比[HR]:1.29、95%ベイズ信用区間[BCrI]:1.20~1.39)。事前に規定された36のサブグループ(年齢層、症状の重症度、併存疾患の有無、症状持続期間で分類)のうち30サブグループのHRの範囲は1.13~1.72であり、類似していた。 オセルタミビルによる推定平均便益は、全体では1.02日(95%BCrI:0.74~1.31)であり、オセルタミビル群のほうが約1日回復が早かった。便益のサブグループ解析では、12歳未満/症状が重症でない/併存疾患なし/症状持続期間が短い集団の0.70日(95%BCrI:0.30~1.20)から、65歳以上/症状が重症/併存疾患あり/症状持続期間が長い集団の3.20日(1.00~5.50)までの幅が認められた。 インフルエンザ感染患者におけるオセルタミビル群の推定平均便益のHRは1.27(95%BCrI:1.15~1.41)、非感染患者のHRは1.31(1.18~1.46)であり、感染の有無にかかわらずオセルタミビルによる類似の便益が示された。 抗菌薬の使用割合(オセルタミビル群9%、通常治療群13%)は、オセルタミビル群で低く、家族内の新規感染(39%、45%)も少なかった。一方、医療機関への再受診(3%、4%)、X線で確定された肺炎(47%、57%)、市販のアセトアミノフェン(60%、64%)またはイブプロフェン(38%、41%)含有薬の使用の割合には差がなかった。 嘔吐/悪心の新規発症または増悪が、オセルタミビル群で21%(325/1,535例)に認められ、通常治療群の16%(248/1,529例)に比べ頻度が高く、症状軽減までの期間も長かった(HR:0.94、95%CI:0.86~1.01)。これ以外の症状は、オセルタミビル群のほうが迅速に軽快した。 重篤な有害事象は29件(オセルタミビル群12件、通常治療群17件)報告された。オセルタミビル群では、2件がオセルタミビル関連と考えられたが、残りの10件は関連がなかった。 著者は、「併存疾患を有し、体調不良が長く続く症状が重い患者や高齢患者では、オセルタミビルにより2~3日早い回復の可能性があるため、本薬を考慮してよいと考えられる」としている。

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増える梅毒妊娠症例、現代ならではの背景も

 国立感染症研究所が、今年1月から半年の間に医療機関を通じて報告された女性梅毒患者のデータを分析したところ、約1割が妊娠症例であることがわかった。わが国では、2014年ごろから男女間における梅毒感染報告が増え、それと並行して母子感染による先天梅毒の報告数も増加傾向にある。こうした状況を背景に、梅毒妊娠症例に着目し、国として初めて実態把握を行ったもの。分析を行った感染研感染症疫学センター・主任研究官の山岸 拓也氏は、「かなり憂慮する状況。治療可能疾患であることを患者に伝え、子供への感染リスクをできる限り排除していかなければならない」と話す。早期発見と適切な抗菌薬治療で母子感染を回避 梅毒は、すべての医師が診療から7日以内に届け出を求められている全数報告対象疾患であり、国の感染症発生動向調査によると、2013年以降、20代を中心に女性の梅毒報告数および先天梅毒報告数が増え続けている。 先天梅毒はTreponema pallidumが母子伝播することで発生し、母体が無治療の場合には40%の児が先天梅毒になるとされている。一方、梅毒感染妊婦に対しては、適切に診断され、抗菌薬治療を行うことで先天梅毒の発生を予防することが可能である。したがって、いかに早期発見と適切な治療に至るかが梅毒の母子感染の防止のカギになる。同時に、梅毒の感染経路を明確にすることも肝要である。 感染症発生動向調査では、今年1月1日から梅毒の届け出様式が変更され、妊娠の有無や、直近6ヵ月以内の性風俗産業の従事歴の有無が、新たに項目として追加された。感染研感染症疫学センターの取りまとめによると、この期間に届け出られた女性梅毒症例は1,117例であり、このうち「妊娠あり」とされた症例は106例であった。年齢別では、15-19歳が10例(9%)、20-24歳が38例(36%)、25-29歳が30例(28%)、30-34歳が20例(19%)、35-39歳が7例(7%)、40-44歳が1例(1%)であった。病型別では、早期顕症I期が5例(5%)、早期顕症II期が25例(24%)、無症候が76例(72%)であった。妊娠週数は、19週までが74例(74%)、20週以降が26例(26%)であった(残り6例は不明)。また「妊娠あり」症例のうち、性風俗産業従事歴については、「あり」が5例(8%)、「なし」が56例(92%)であった(残り45例は不明)。性産業従事歴なく男性パートナー由来も多数、その背景は これらの数字から見えてくる傾向がある。山岸氏によると、妊娠症例は性風俗産業従事歴のない20代後半から30代前半の女性が多く、感染源が男性パートナーである可能性が示唆されるということだ。これは、妊婦における感染が、同性間性交渉による感染および性産業従事歴による不特定多数の性交渉による従来の感染経路とは傾向が異なることを示している。 とはいえ、今回の取りまとめでは、「妊娠あり」の106症例のうち、半数近い45例については従事歴が明らかになっていない。山岸氏は、「従事歴なし」の場合は回答できるが、「従事歴あり」の人ほど回答をためらうケースが多いのでないかと指摘する。また、近年の性産業の多様化もあるという。つまり、実態のある店舗で報酬を取りながら性活動を行うのが必ずしも性産業従事者ではないということだ。たとえば、無店舗・派遣型のデリバリーヘルスや、出会い系サイトやSNSを介し、困った時だけ金銭と引き換えに性交渉に及ぶ“個人稼業”の人たちは、どこまで自身をセックスワーカーであると自覚しているだろうか。こうした背景を考えると、「不明」45例の実情が自ずと見えてくる。いずれにせよ、「性産業に対するハードルの低下と裾野の広がりも、梅毒症例増加の背景にあるとみられる」と山岸氏は話す。憂慮する状況に実効力のある対策を 今回の取りまとめでは、7割以上が無症候であったことから、妊婦健診が有効に機能していることが考えられるが、妊娠20週以上に診断された症例も26例(26%)認めた。この中には、未婚や経済的事情などで妊婦健診を受けないまま週数が経過した結果、判明が遅れたケースもあるが、妊娠20週を超えた段階で新たに感染することも考えられるという。つまり、妊娠が安定期に入って性交渉を再開した際、何らかの経緯で男性パートナーが保有する梅毒が感染するケースである。 こうしたことを鑑み、先天梅毒発生リスクに関連した背景要因を有する妊婦診療においては、妊娠中に疑われる症状が見られたら速やかに主治医に相談するよう促したり、妊娠中であっても避妊具を使用し、より一層慎重な性交渉を行うよう患者に指導したりする必要があるという。あるいは、妊娠初期に行われるスクリーニング検査を、妊娠中期および後期に行うことも、発見の機会を増やすために有効かもしれない。 一方、実数としては不明であるものの、これまでの調査で、梅毒感染がわかった段階で妊娠中絶を選択する妊婦もいるという。「適切な診断と治療によって、生まれてくる子どもの重篤な障害を回避できることを妊婦患者に伝え、性急な判断で中絶しないよう医療者が働きかける必要がある」(山岸氏)。 繰り返しになるが、梅毒の母子感染は診断と治療により防ぐことが可能である。冒頭に山岸氏が語ったような「かなり憂慮する状況」のただ中にあるのだとすれば、メディアなどが性産業従事者/利用者にモラルを社会的メッセージとして説くことも大事だが、医療者により実効性のある対策を講じていただきたい。

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第3世代セフェムを愛用する医師への処方提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第11回

 今回は、蜂窩織炎に対する抗菌薬の処方提案を紹介します。広域抗菌薬はカバーが広くて使いやすいのですが、薬剤耐性菌が世界的に懸念されている昨今ではターゲットを絞って適正な抗菌薬を適正量用いることが求められています。薬剤師も医師の治療方針を確認しつつ、積極的に処方設計に参画して適正使用を推進しましょう。患者情報70歳、女性(施設入居)体  重:42kg基礎疾患:高血圧症、鉄欠乏性貧血、慢性便秘症、骨粗鬆症、足白癬既 往 歴:68歳時に腰椎圧迫骨折(手術)主  訴:左下肢腫脹、痛みあり直近の採血結果: 血清クレアチニン0.8mg/dL処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.アルファカルシドール錠0.5μg 1錠 分1 朝食後3.酪酸菌配合錠 3錠 分3 毎食後4.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後5.リセドロン酸17.5mg 1錠 起床時 毎週月曜日6.クエン酸第一鉄ナトリウム錠 2錠 分2 朝夕食後本症例のポイント施設の担当看護師さんから、患者さんが左下肢の腫脹と痛みを訴えたため、臨時往診が行われたという電話連絡がありました。その際、「蜂窩織炎を発症しているようで、医師が抗菌薬をどうするか迷っている」という話を聞きました。そこで、すぐに医師に電話すると、「左下肢の蜂窩織炎を疑っているけれど、セフジニル100mg 3錠 分3でいいかな?」と相談されました。抗菌薬の処方提案においては、(1)感染臓器、(2)想定される起炎菌(ターゲット)、(3)感受性良好な抗菌薬の理解が必要不可欠です。蜂窩織炎は、真皮〜皮下組織を感染部位とした皮膚軟部組織感染症で、想定される起炎菌はβ溶血性連鎖球菌(A、B、C、G群)と黄色ブドウ球菌(メチシリン感受性:MSSA)です。医師が処方を検討しているセフジニルは第3世代セフェム系抗菌薬で、一部の口腔内連鎖球菌や大腸菌、肺炎桿菌もカバーする広域スペクトラムの抗菌薬です。本症例において、セフジニルも選択肢として挙げることは可能ですが、広域抗菌薬のため耐性菌産生の懸念があり、ターゲットを絞って治療を開始することが望まれます。また、バイオアベイラビリティーが25%程度と低く、この患者さんの場合は服用中のクエン酸第一鉄ナトリウムとの相互作用により、キレートが形成されて吸収が著しく低下することから、有効抗菌薬量としては高用量が必要なため適切ではないと判断しました。皮膚への移行性と起炎菌を考慮すると、アモキシシリンかセファレキシンが有効かつ適正と考え、処方提案することにしました。また、患者さんの腎機能がCCr:43.4mL/minと低下していることから、処方設計も併せてお伝えすることにしました。処方提案と経過医師に重症度や想定している起炎菌を確認したところ、軽症の蜂窩織炎で溶連菌群をカバーして治療したいという希望を聞き取りました。そこで、アモキシシリン250mg 6錠 分3 毎食後の内服を提案しました。しかし、セフェム系でなんとかできないかとの返答がありました。この医師は、普段は広域をカバーして安全性も高いと考える第3世代セフェムをよく処方しており、経口ペニシリン系の治療経験が少なくて不安だったようです。次に、患者さんの腎機能低下を考慮して、第1世代セフェムであるセファレキシン錠250mg 4錠 分2 朝夕食後の処方を提案し、承認を得ることができました。その後、患者さんは10日間の服薬を終了し、蜂窩織炎は軽快しました。1)Gilbert DNほか編. 菊池賢ほか日本語版監修. <日本語版>サンフォード 感染症治療ガイド2019. 第49版. ライフサイエンス出版; 2019年.2)セフゾンカプセルインタビューフォーム

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「抗微生物薬適正使用の手引き」第二版、乳幼児編が追加/厚労省

 2019年12月5日、厚生労働省は「抗微生物薬適正使用の手引き(第二版)」をホームページに公表した。抗微生物薬適正使用の手引きの主な改正点として、生後3ヵ月以上から学童期未満の「乳幼児編」が加わった。小児特有の副作用がある抗菌薬への注意事項として「小児における急性気道感染症の特徴と注意点」が盛り込まれ、「小児の急性気道感染症各論」「小児の急性下痢症」「小児の急性中耳炎」の項目が追加された。抗微生物薬適正使用の手引き第一版発行時からの要望を実現化 抗微生物薬適正使用の手引きの第一版は、学童期以降の急性気道感染症と急性下痢症を対象に、2017年6月に発表・発行。ところが、発行後にはさらなる抗微生物薬の適正使用推進や扱うべき領域拡大のため、学童期未満の小児を含めた改正が求められていた。 なお、抗微生物薬適正使用の手引きは、主に外来診療を行う医療対象者(とくに診察や処方、保健指導を行う医師)を対象としているため、外来診療時に多く処方される経口抗菌薬(第3世代セファロスポリン系、フルオロキノロン系、マクロライド系抗菌薬)を中心に、抗微生物薬の必要な状況などの判別支援に念頭をおいて作成されている。

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咽頭・扁桃炎に対するペニシリンV減量の試み(解説:小金丸博氏)-1153

 咽頭・扁桃炎は、プライマリケアの現場において抗菌薬の処方が多い感染症の1つである。今回、A群溶連菌による咽頭・扁桃炎に対して、適切な臨床効果を維持しながら抗菌薬投与量を減らすことができるかどうかを検討した臨床試験の結果が発表された。 本研究は、A群溶連菌による咽頭・扁桃炎に対して、ペニシリンV 800mgを1日4回5日間投与する群(計16g)とペニシリンV 1,000mgを1日3回10日間投与する群(計30g)の有効性と安全性を比較検討したランダム化非盲検非劣性試験である。6歳以上で、Centor criteria(38.5℃以上の発熱、圧痛を伴うリンパ節腫脹、扁桃に白苔の付着、咳の欠如)を3または4項目満たし、かつA群溶連菌迅速検査陽性の患者を対象とした。プライマリアウトカムである臨床的治癒率は、5日間投与群で89.6%、10日間投与群で93.3%であり(両群差:-3.7ポイント、95%信頼区間:-9.7~2.2)、非劣性が確認された。除菌率は5日間投与群で80.4%、10日間投与群で90.7%だった。患者の症状緩和までの時間は、5日間投与群のほうが有意に短かった(log rank検定でp<0.001)。1ヵ月以内の再発例はほぼ同数だった。有害事象は主に下痢、嘔気、膣の分泌物や掻痒であり、これらの症状は10日間投与群でより高率に長期間認めた。 スウェーデンでは成人のA群溶連菌による咽頭炎に対してペニシリンV 1,000mgを1日3回10日間(計30g)投与することが推奨されている。この治療期間はほかの国の推奨と同じであるが、総投与量はほかと比較して多い。ちなみに米国感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、ペニシリンV 250mgを1日4回、あるいは1回500mgを1日2回、どちらも治療期間は10日間(計10g)投与することが推奨されている。A群溶連菌による咽頭炎に対して抗菌薬を投与する主な理由は、急性リウマチ熱や糸球体腎炎などの合併症を防止することであるが、高所得国ではこれらはまれな合併症となっている。そのため、今日の主な治療目的は速やかな症状改善を得ることであり、同時に扁桃周囲炎、中耳炎、副鼻腔炎などの合併症を予防することである。 本研究では、A群溶連菌による咽頭・扁桃炎に対するペニシリンV 1日4回5日間の治療は1日3回10日間の治療に対して、臨床効果は非劣性であることが示された。投与期間を短縮することで抗菌薬の副作用の減少、服薬遵守率の向上、ヒト細菌叢への影響低下、社会全体の抗菌薬コスト削減などが期待できる。除菌率が10日間投与群のほうが優れていた点や急性リウマチ熱の発症率が評価されていない点が気になるが、高所得国においては5日間治療が代替となりうることを示した研究として評価できる。症状緩和までに要する時間は5日間投与群のほうが有意に短かったというのは興味深い結果であった。その理由として、1日4回投与というtime above MICを考慮した投与方法が有効性を高めた要因として考えられる。 残念ながら世界では標準治療薬であるペニシリンVは日本国内で発売されておらず、本研究の結果をそのまま日本の医療に当てはめることはできない。本邦ではA群溶連菌による咽頭炎に対してアモキシシリンを10日間経口投与することが推奨されている(JAID/JSC感染症治療ガイド2019)。当然ながら、本研究の結果をもってアモキシシリンの投与期間を5日間に短縮可能とは評価できない。

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第4回 疑義照会を恐れる薬剤師は「失格」

第4回 疑義照会を恐れる薬剤師は「失格」―医師との関わり方で注意している点はありますか?鈴木:医師の性格や関係性によって伝え方は異なりますが、ざっくばらんに話せる先生では、「抗菌薬のターゲットは何にしていますか?」ということから始まり、「それなら抗菌薬はこっちのほうがいいんじゃないですか? なぜなら~」と自分の意見を率直に伝えています。あまり関係性ができていない先生では、「こういう選択肢もあるんですがどう思いますか?」とお伺いを立てるようにしています。あと、顔のわからない関係で話すとうまくいかないので、挨拶に行ったり、抗菌薬の使い方の方針を聞きに行ったりして、知識共有してから疑義照会や処方提案をするようにしています。前医から引き継いだ処方をそのまま継続している医師も多いので、知識共有するのは大切だと思っています。笹川:今の若い子たちは、みんな真面目過ぎてポリファーマシーとかを印籠のように医師にかざして説得しようとしてトラブルになるっていうのはよく聞きますね。山﨑:ポリファーマシーの種々の判断基準は絶対的なものではないのですけどね。それは参考としつつ、患者情報を踏まえてどう考えるかということなのだろうとは思いますが。鈴木:個々の患者さんには当てはまらない判断基準に飛びついて、判断基準で推奨されていないからこの処方はダメだ、という薬剤師は何もわかっていないですよね。笹川:あと、薬剤師のよくない点は白か黒かで判断しようとするところ。灰色のときもあるっていうことを知っていてほしいですね。あいまいなのが嫌でやめる薬剤師もいるそうですが、そのあいまいさを受け入れて楽しむくらいでいいんじゃないでしょうか。山﨑:確かに、論文を読んでいくら調べてもわからないことはわからないんですよ。あいまいなことがあるということがわかるだけでもいいと思います。鈴木:あいまいなことが実は正解だったということもありますよね。そもそもポリファーマシーに行きつく前にワンステップあって、患者さんの基礎疾患などの基本情報を把握するのがベースと考えています。薬歴で患者さんの治療の流れや個別に抱えている問題が見えないままポリファーマシーの話をしても、医師からしたら患者の現病歴や既往歴をどこまで把握して意見してるの? なんの根拠があるの? っていう感じでしょう。基礎疾患などの基本情報を把握する力が必要です。笹川:すぐに薬のことにはいかずに、体の仕組み、生理学とか、解剖学とかから入るのも一手です。解剖学などは医師や看護師の共通言語ですが、薬剤師はその共通言語を知らないまま薬の話をするので医療者の中で浮いてしまうことがあります。医師向けや看護師向けの書籍はとても勉強になりますよ。共通言語を学べばコミュニケーションがうまくいきますので、そのうえで薬の話をするとよいと思います。山﨑:適切に提案できるのであれば、医師の診療報酬上のインセンティブもあるので、積極的に提案したほうがいいでしょうね。ただ、疑義照会に怒る医師に出会ったりして、怖くてできなくなるという話も聞きます。薬剤師の伝え方が悪かったのかもしれませんが、疑義照会が薬剤師の義務だと知らなかったという医師や疑義照会で助かったという経験の少ない医師にもお会いしたことがあります。そういう場合は医師も対応がきつくなるかもしれません。ただ、医師が怖くて疑義照会を避けるという薬剤師と会ったこともありますが、何かあったときに不利益を被るのは患者さんなので、そこは信念をもってやっていただけたらとも思いました。鈴木:患者さんを守らずに自分を守るっていうのはどうなんでしょうね。処方箋枚数とスピード調剤の薬剤師は淘汰される―疑義照会しない理由はほかにもありますか?笹川:私は調剤報酬にも問題があるのではないかと思います。できる薬剤師とできない薬剤師の報酬が同じっていうのは疑問です。できる薬剤師の評価っていうのは難しいので、かかりつけ薬剤師制度でカバーしようとしたのでしょうが、かかりつけに同意すると安くなるほうが良かったのではないかと思います。安いから同意するっていうのもあるかもしれませんが、待ってでもその薬剤師から指導を受けたいと思ってもらえるようになりたいんですよ。報酬が同じだとどうしてもスピード重視になりますよね。質よりも量・スピードを求め過ぎたのでは?山﨑:即座にそうなるというわけではないですが、アマゾンなどECサイトでの薬剤購入が普及したり、遠隔服薬指導や「調剤ハブ」(多店舗の調剤を集約して行うことができる薬局)などが現実化した場合に、スピード勝負だけでほかの要素でファンを獲得できていないと選ばれる理由がなくなってしまいます。笹川:みんな学校を卒業したときは意識が高かったはずです。なのに、置かれた環境がやりがいのある環境ではなかったので心が折れていくのかもしれません。―薬剤師ごとに評価が変わるシステムはできないのでしょうか?山﨑:システム畑の人と冗談交じりで話していたら、何らかの基準をもって良い服薬指導ができる薬剤師のデータが取れるのであれば、できる薬剤師にインセンティブを与える設計ができるのではないかという話題になったことがあります。MRの知人に聞くと、医師は患者さんが離れていかないように一定の競争をしている部分もあるとのことですが、薬剤師は頑張っても一定のパイの中で決まった報酬を得るという構造にあらがいづらいので、優秀な薬剤師が自然に評価され、能力の低い薬剤師は評価が低いという形になりにくい。なので、服薬指導の質やリピーター率などを数値化して、薬剤師の評価設計をしていくというのはアリかもしれません。鈴木:現状はさばいた処方箋の枚数で評価するしかないですからね。これだけ頑張っているのに、頑張っていない薬剤師や薬局と同じ扱いをされたくないですよ。山﨑:きちんと勉強してコミュニケーション能力も高い優秀な薬剤師から不満が出やすい状況は健全ではないですね。鈴木:たとえばの話ですが、重複投薬・相互作用等防止加算の40点は薬剤師の処方提案が評価される点数ですので差をつけられそうかなって思っています。残薬調整は誰でもできますが、この点数は、腎機能を評価して、投与量を調整・中止したり、新しい薬を提案したりするなどしっかりした知識が必要なものなので、もっと区分けしたり、報酬を高くしたりしてもいいと思います。提案した内容をレセプトに記入する必要があれば、それができるようになるために勉強もするでしょうし。いいことやっているのに、現状では残薬調整の30点と10点しか違わないんですよね。またまた感染症領域の話で申し訳ないですけど、患者さんの原因菌を想定した薬剤への処方提案をしてもただの日数調整と同じ点数というのは納得がいかないですよ。重複投薬・相互作用等防止加算は幅広く評価されますが、頑張っている薬剤師が評価される点数になったらいいなと思います。笹川:みんなが頑張っていることを学会などでも発信したら、知らない薬剤師にも広がっていきますし、どんどん知識やデータがたまれば厚生労働省に届く可能性はあると思います。そういう意味でも情報を発信することの重要性を感じます。―最後に若手薬剤師に向けてエールをお願いいたします。笹川:現場で患者さん、そしてその家族、医療者と一緒に悩みましょう。悩んだ数が、薬剤師としてのやりがいです。さあ、一緒に一歩踏み出しましょう。鈴木:目の前にいる患者さんにとってなくてはならない存在になって、患者さんの健康サポートのために惜しまず支援してみませんか? 薬剤師の仕事って、深掘りすればするほど楽しくこなすことができますよ。大学でやってきたことをさらにアップデートしてよりよい薬学的ケアを目指しましょう! 薬剤師のソコジカラを思う存分発揮して、一緒に頑張っていきましょう!山﨑:日々薬局の現場を支援する中で、薬局・薬剤師のポテンシャルや既得権益の枠を越えた職能の広がりを強く感じています。生き生きと働きながら患者さん、ひいては地域に貢献できる舞台はあります。一緒に頑張っていきましょう。

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第8回 必要な情報に効率よくアクセスする方法【外科医けいゆうの気になる話題】

第8回 必要な情報に効率よくアクセスする方法2019年9月14日に、単著『もう迷わない! 外科医けいゆう先生が贈る初期研修の知恵』という本を発売しました。近年、外科医が減少傾向にあることがよく話題に上ります。確かに、外科を志望する医学生や研修医の先生を見かける機会も、最近は少なく感じます。そこで本書ではまず、外科の楽しさや魅力について存分に書きました。続いて、外科に興味を持っている医学生の方々のため、外科医の仕事がどのようなものかについて具体的に紹介しました。後半は、外科に限らずどの科の医師でも必要になる、論文執筆や学会発表のための具体的なノウハウや、業績の管理の仕方、スタッフや患者さんとのコミュニケーションの取り方などについて、詳しく解説しました。合間には、外科医として働く中で印象深かったエピソードをコラムとして挟み、全体を通して楽しく読めるような本に仕上がっています。ご興味がありましたら、ぜひ書店で手に取っていただければ幸いです。さて今回は、本書の中の15本のコラムから、研修医の先生向けに、お薦めの項を1つだけ転載します。「研修医ノートのすすめ」研修医のうちは新しい情報に次々に触れることになりますが、これを全てインプットし、次の日から効率よくアウトプットできる人はいません。そこで、できるだけ早いうちから「研修医ノート」を作ることをおすすめします。このノートは、国家試験の勉強の時に作るノートとは全く別物です。そもそも、試験勉強のために用意するノートは、試験本番に見ることを想定していません(そんなことをすればカンニングになってしまいます)。一方、研修医ノートは逆に、臨床現場で何度も確認し、診療に活用できる具体的な情報集です。試験では、丸暗記によって9割の正答率を誇る人は優秀という扱いですが、臨床現場では、全てを丸暗記していなくてもいい代わりに、10割の正答率でないと使い物になりません。つまり、「答えが何かを暗記している人」より「答えがどこに書いてあるかを知っている人」や「答えを即座に確認できるようきっちり準備している人」を目指す方が望ましいのです。よって、仕事のできる医師になるためには、「必要な情報に効率よくアクセスできる方法を確立すること」が大切です。そこで作るべきなのは、現場でアウトプットの頻度が高い情報をまとめたノートです。例えば、研修医が優先すべき例として挙げられるのは、抗菌薬の種類とスペクトラム、腎障害の程度に応じた用量調節一覧経腸栄養剤の種類と水分量・カロリーの一覧低K、低Na血症を中心とした電解質異常の補正方法一覧などです。これに加えて、自分自身が日常診療で身につけた知識を、「イベント-disposition(何をすべきか、検査・治療など)」を対応させて、オリジナルのノートを作るのがよいでしょう。これを繰り返すうちに、使う頻度の高い情報は暗記しようと思わなくても自然に暗記できるようになります。私の場合は、腎機能に応じた抗菌薬の用量調節を丸暗記できていないため、ポケットに忍ばせたノートを即座に確認するようにしています。すぐに確認できれば、じっくり考えたり、スマホを取り出して検索したりするよりは圧倒的に早く対応できます。なお、ノートは白衣のポケットに入るサイズがよいでしょう。B5サイズのノートでは持ち運ぶのが難しく、臨床現場で容易に参照することができないため、私はB6サイズを使っています。もちろん、今は便利なタブレットやスマホのアプリがありますので、そうした便利な電子機器を使うのもよいでしょう。

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第3回 論文を読むのは目の前の患者のため

第3回 論文を読むのは目の前の患者のため―どのような方法で知識を得ようとしていますか?山﨑:書籍を読んだり人に聞いたりいろいろなウェブサイトを見たりはしますが、基本は泥縄式です。患者応対してうまく説明できなかった事例をファイリングしては調べていたので、必要に迫られて論文にあたることも増えました。そこから関連情報をひも付けて知識を広げました。たとえば、診療ガイドラインの推奨で判断がつかないことは多いですし、そういうときにどう説明すればいいか考えて調べて自分なりにわかりやすい言葉に落とし込むことは心掛けていました。患者さんの疑問を解決する情報を提供できるはずなのに、知識不足でできず後悔した経験も勉強を後押ししました。鈴木:疑問があったときは、最初は書籍とかガイドラインで調べると思いますが、その患者さんが何にも当てはまらないときに文献をあたれると、最終的な裏付けが自分でできるようになれるのかな、って思います。山﨑:そうですね。文献を読んでいてよかったと思うのは、ふとした患者の疑問に回答できることが増えたことや薬のリスクやベネフィットの感覚値がついたこと、情報の限界を感じられたことですね。たとえば、患者さんからつらい副作用発現の連絡を受けたときに、その薬剤を中止したらその程度症状発現のリスクが高まるのか推論できれば提案が変わりますし、抗菌薬を1日2回服用と3回服用の効果の違いの根拠を知っているだけでも別の提案ができます。時にはわからないことをこういう理由でわからないと言えることも大切かと思います。たくさん調べて役に立たなかったことも多いですが、役立った瞬間は少なくはなかったと感じています。笹川:人の得意分野は、書く、読む、聞く、話すなどいろいろなものがあると思いますが、得意なところを重点的に伸ばしていけばいいと思っています。私は自分で論文にあたるのは苦手だったので、得意な人が調べてまとめてくれたコラムや記事などを読んで勉強しています。知識は深いほうがいいのでしょうが、やはり得意不得意があって全部の分野が得意になるのは難しいんですよね。実際の業務では広く全体的にカバーするのも重要だと思っています。鈴木:全分野は無理なので、まずは自分が関わる頻度の高い診療科や患者さんの分野を頑張って深くしていけばいいのではないでしょうか。いろいろなことに手を付けるのではなく、目の前にいる患者さんにどういう人が多いのかを考えるほうが効率がいいですし。山﨑:確かに、疑問について調べるきっかけはいつも患者さんからもらっていました。目の前に課題があるわけですから、そこから深堀りしていましたね。鈴木:論文を使うのはかなり応用編だと思いますが、週刊誌のような雑誌にたまに載る「飲んではいけない薬」リストについて聞かれたときは論文が役に立ちますよね。山﨑:別の根拠を示して、こういう理由であなたは飲んだほうがいいと説明できると患者さんに安心してもらえます。実名で発信して輝け!―薬剤師の情報発信についてどう思いますか?笹川:薬剤師のブログなどはとても参考になりますが、ペンネームで執筆されていることが多いです。私は実名で発信することが大切だと思っていて、名前を伏せているのはもったいないと思っています。実名を出すのってリスクありますか?山﨑:私は匿名でホームページを運営していましたが、実名のほうが信頼は得やすいのでベターだとは思います。実名で運営していた時期もあって、結果的に日に2,000~3,000のアクセスが来るようになり、頻繁に詳細な病態や検査値など個人情報を添付して病気の相談をしてくる方が出てきました。無視するのも気の毒で回答していたのですが、身が持たなくて実名で運営するのを休止しました。患者さんの本当の悩みに触れた瞬間でもあり、信頼をおいてくれたからこそ相談してくれたのだと思いますが、目の前の医療従事者ではなく見ず知らずの私にネット上で判断を仰ぐことの危険性を問題視していたというのもあります。鈴木:私は実名を出したらいいと思っています。コラムを掲載していると、知り合いの薬剤師とかから反応があったりして、刺激を与えられている気がします。自分でもできるんじゃないか、わからないことがあれば鈴木に聞けばいいんじゃないかって。みんなで情報共有していくという意味でも実名の意味はあると思います。所属している薬局で取り組んでいることもアピールしたいですし。そうすると、そこの薬局の薬剤師はみんなできているんだな、って思うじゃないですか。笹川:輪が広がっていくと先生自身にもほかの薬局にもいい影響がありそうですね。私は勉強会をよく行っていますが、始めたきっかけは薬剤師が全然勉強していないことにモヤモヤを感じていたからなんです。本を読まない、情報を得ようとしない薬剤師もいて、差が顕著でしたので。それなら、これだけ知っていれば服薬指導できるということを教えたかったんです。もともと教えるのが好きで教師になりたかったので、エンターテインメント性を持たせて面白くやるということを心掛けました。鈴木:自分も講習会で積極的に講義していますが、根底には教えていきたい、伝えていきたいという思いがあります。みんなで頑張っていこうよ、っていうメッセージを出すためにそういう機会を積極的にもらっています。笹川:自分が接することのできる患者さんは限られていますから、自分だけが知っていても仕方ないんですよ。もっと発信して広げていけば、薬剤師全体の底上げになると思っています。―次回は、医師との関わり方について伺います。

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州による敗血症治療のプロトコール導入は、成人敗血症の院内死亡の減少に寄与したか(解説:吉田敦氏)-1141

 12歳の男児が敗血症で死亡したことを受け、ニューヨーク州は2013年に「Rory’s Regulations」を定めた。この規則はすべての急性期病院に対し、敗血症の早期診断と治療開始に関するプロトコールを導入し(たとえば抗菌薬ならば3時間以内に開始)、診療にあたること、ならびにその順守に関して職員の教育を行うとともに、順守割合と臨床的転帰について報告を求めたものである。 本研究はプロトコール導入が実際に成人の院内死亡の減少に寄与したかを、本規則が定められていない対照4州と比較して明らかにしようとした。プライマリーアウトカムは30日院内死亡率で、ニューヨーク州では規則導入の前後で26.3%から22.0%であったのに対し、対照4州では該当期間の変化は22.0%が19.1%となっており、ニューヨーク州では患者・病院特性と規則導入前からの傾向を調整しても、対照州に比べその減少幅は有意に大きかった。ただしセカンダリーアウトカムでは対照州に比較し、ICU入室率の減少幅は差がなく、入院期間の短縮幅とC. difficile発症率の減少幅はやや大きく、CVカテーテル使用率の減少幅は少なかった。 本研究は509ヵ所の病院を含む、合計101万の敗血症入院を解析した非常に大規模な試験である。ニューヨーク州の敗血症死亡率はもともと対照州より高かったが、対照州と比較して、病院の特徴が異なり(100床以下の医療機関や、規模の小さなICUが多い一方、教育病院の割合が高いなど)、ICU入室率やCVカテーテル使用率も低かった。つまり対照州のほうが、もともと規模の大きな病院でICUに入室させやすく、CVカテーテル使用率も高かったといえるであろう。また本研究では患者・病院特性の調整が行われたとはいえ、ニューヨーク州ではほかに患者背景、重症度、合併症、受診までの時間や経緯、医療保険などに、複雑かつ多様な要因があることも否めない。したがってニューヨーク州独自の事情が強く影響している下での、敗血症死亡率の低下、ICU滞在期間短縮を目指した努力が行われた結果をみていると考えたほうがよいと思われる。 複雑かつ多様な要因が影響している中、規則による介入が現場の診療の向上に寄与したかどうか、本論文のようにポジティブに関連付けることには、議論があるかもしれない。ニューヨーク州でのプロトコールの順守状況については情報がなく、さらにアウトカム指標としては5個のみで介入の効果をみているに過ぎない。現場での向上のプロセスの詳細は含まれていないが、介入によって実際のプロセスが具体的にどう変わり、どのように定着したか、読み手としてはそこが知りたいところではないだろうか。現在プロトコール導入を行う州が増えているとのことであるが、各州で行われているプロセス改善を目的とした現場での状況について、詳細な報告がまとめられることに期待したい。

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急増する電子タバコ関連肺損傷の臨床像が明らかに/Lancet

 電子タバコまたはベイピング関連肺損傷(lung injury associated with e-cigarettes or vaping:EVALI)は、重度の肺損傷や、全身および消化器症状と関連する新たな疾患であり、重症度は多岐にわたること、多くが抗菌薬やステロイドで治療されているが、臨床的に改善しても異常が残存する患者が多いことが、多施設共同前向き観察コホート研究で示された。米国・Intermountain HealthcareのDenitza P. Blagev氏らが報告した。米国では2019年3月からEVALIの発生が急増し現在も報告が相次いでいるが、本疾患の原因、診断、治療および経過は明らかになっていなかった。著者は、「EVALIの臨床診断は、感染症や他の肺疾患とオーバーラップしているままで、原因、適切な治療および長期的アウトカムを理解するには本疾患を疑う高度な指標が必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2019年11月8日号掲載の報告。米国ユタ州の総合医療システムで、前向き観察研究を実施 研究グループは2019年6月27日~10月4日の期間で、米国ユタ州の総合医療システムIntermountain Healthcareにおいて確認されたEVALI患者全例のデータを収集した。 中央管理組織としてソルトレークシティーに拠点を置くTeleCritical Careに肺疾患専門医および救命救急医からなる委員会を設け、症例の検証と分析を行った。また、カルテの再評価とユタ州保健局が実施した患者面接から、患者の症状、治療および退院後2週間のデータを抽出し、短期追跡結果をまとめた。電子タバコ関連肺損傷では、呼吸器症状のみならず消化器症状も顕著 Intermountain Healthcareの13施設において確認されたEVALI患者は60例であった。 60例中、33例(55%)が集中治療室(ICU)に入室し、53例(88%)が全身症状、59例(98%)が呼吸器症状、54例(90%)が消化器症状を呈していた。 57例(95%)にステロイドが投与され、54例(90%)はオーバーラップした症状と診断の不確実性のために抗菌薬が投与されていた。 6例(10%)は、2週間以内にICUまたは病院に再入院となった。そのうち3例(50%)は電子タバコまたはベイピングを再開していた。 退院後2週間の追跡調査を行った26例において、全例で臨床症状が改善しX線検査でも急性所見の改善は認められたが、症例の多くが、X線検査(15例中10例、67%)および肺機能検査(9例中6例、67%)で異常の残存が確認された。 死亡は2例であった。2例ともEVALIが死因ではなかったが寄与因子と考えられた。 なお、TeleCritical Careの委員会は今回の調査結果を基に、EVALIの診断と治療のガイドライン案を作成し公表もしている。

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COPDの3成分配合吸入エアゾール薬「ビレーズトリエアロスフィア56吸入」【下平博士のDIノート】第37回

COPDの3成分配合吸入エアゾール薬「ビレーズトリエアロスフィア56吸入」今回は、COPD治療薬「ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物製剤(商品名:ビレーズトリエアロスフィア56吸入)」を紹介します。本剤は、吸入薬を複数使用してもコントロールが不十分なCOPD患者に対し、治療効果とアドヒアランス双方の改善が期待されています。<効能・効果>本剤は、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド薬、長時間作用性吸入抗コリン薬および長時間作用性吸入β2刺激薬の併用が必要な場合)の適応で、2019年6月18日に承認され、2019年9月4日より発売されています。<用法・用量>通常、成人には、1回2吸入(ブデソニドとして320μg、グリコピロニウムとして14.4μg、ホルモテロールフマル酸塩として9.6μg)を1日2回吸入投与します。<副作用>第III相試験(KRONOS試験、PT010007試験、PT010008試験)の併合成績において、本剤が投与された639例のうち、臨床検査値異常を含む副作用が126例(19.7%)において認められました。主な副作用は、発声障害(3.1%)、筋痙縮、口腔カンジダ症(各1.4%)、上気道感染(1.3%)などでした。なお、重大な副作用として、心房細動(0.2%)、重篤な血清カリウム値の低下(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、気管支を広げるとともに炎症を抑えることで、呼吸を楽にして身体の活動性を改善するCOPDの治療薬です。2.1日2回、1回2吸入を、毎日なるべく同じ時間帯に、よく振ってから吸入してください。3.声枯れや感染症を予防するため、吸入後は必ず数回うがいをしてください。4.吸入器の小窓には、20きざみでおおよその残り回数が示されています。小窓の中央に「0」が表示され、それ以上進まなくなったら使用を中止して、新しいものに交換してください。開封するときは、キャップを外し、よく振って1度空噴霧する、という一連の操作を4回繰り返してください。5.口の渇き、目のピントが合いにくい、尿が出にくい、動悸、手足の震えなどの症状が現れた場合は、すぐに受診してください。6.COPDの治療では禁煙が大切なので、薬物治療とともに禁煙を徹底しましょう。7.週1回、本体から薬剤の入った缶と吸入口のキャップを外してプラスチック部分(アクチュエーター)をぬるま湯で洗浄し、洗った後はよく乾かしてください。<Shimo's eyes>本剤は、吸入ステロイド薬(ICS)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)の3成分が配合されたCOPD治療薬です。3成分配合のCOPD治療薬として、フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩ドライパウダーインヘラー(商品名:テリルジー100エリプタ)に続く2剤目となります。COPDの15~20%は喘息が合併していると見込まれているため、LAMAやLABAなどの気管支拡張薬だけでは症状のコントロールが難しい患者さんが少なくありません。本剤は、ICS/LABAやLAMA/LABAで治療していても症状が残存している患者さん、時折抗菌薬や経口ステロイド薬が必要となる患者さんなどで切り替えて使用することが想定されます。本剤はLAMA+LABA+ICSのトリプルセラピーを1剤で行うことができますが、3成分それぞれの薬剤に関する副作用には注意する必要があります。患者さんへ確認するポイントとしては、LAMAによる口渇、視調節障害、排尿困難、LABAによる不整脈、頭痛、手足の震え、ICSによる口腔カンジダ症などが挙げられます。本剤は、デバイスに世界で初めて「エアロスフィア」というpMDI(加圧噴霧式定量吸入器)が採用され、薬剤送達技術を駆使して調製された多孔性粒子が3種の薬剤を肺の末梢まで届けることが期待されています。pMDIなので、吸気力が低下している場合でも少ない負荷で吸入できますが、ボンベを押す力が弱い患者さんには吸入補助器具(プッシュサポーター)、ボンベを押すタイミングと吸入の同調が難しい患者さんにはスペーサー(エアロチャンバープラスなど)の使用を勧めましょう。COPD患者さんは、喫煙や加齢に伴う併存疾患の治療を並行していることが多く、アドヒアランスを向上させて治療を継続させることが重要です。COPD治療に、本剤のような3成分配合吸入薬を選択することで、患者さんの負担を増やさずに症状の改善およびアドヒアランスの向上を目指すことができるでしょう。

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製薬企業の“ギフト”が開業医の処方を左右/BMJ

 製薬企業から“ギフト”を受け取っていないフランスの一般開業医(GP)は、受け取っているGPと比べて、薬剤処方効率指標が良好で低コストの薬剤処方を行っていることが明らかにされた。フランス・レンヌ第1大学のBruno Goupil氏らが、製薬企業からの物品・金銭類提供と薬剤処方パターンとの関連性を評価する目的で、同国2つのデータベースを用いた後ろ向き研究の結果を報告した。世界保健機関(WHO)およびオランダに拠点を置く非営利組織のHealth Action International(HAI)による先行研究で、医療用医薬品のプロモーションが非合理的で高コストの薬剤処方と関連していることが示されており、フランスのGPが製薬企業から“ギフト”(物品、食事、交通費、宿泊等の提供)を受ける可能性があることから、研究グループはその実態と処方との関連を調べた。BMJ誌2019年11月5日号掲載の報告。フランスの2つのデータベースを用い、GP約4万1,000人について解析 研究グループは、国民健康保険システムで管理されている「National Health Data System」と「Transparency in Healthcare」の2つのフランスのデータベースを用いて解析した。 対象は、2016年において、5例以上の登録患者がいる民間医療機関(部門)のGP 4万1,257人で、医薬品・医療機器メーカーおよびほかの健康関連会社の報告に基づく“ギフト”の金銭価値に従って6つのグループに分類した。 主な評価項目は、診察(診療所または在宅)ごとの薬剤処方に対して国民健康保険から支払われた金額、および医師の特別手当と関連する実績を算出するために国民健康保険で使用される11項目の薬剤処方効率指標とした。統計解析は、医師および患者の特性を調整変数とし、有意閾値は0.001とした。“ギフト”を受け取っていない医師で低コストの薬剤処方頻度が増加 1回の診察で処方された薬剤の金額は、2013~16年にギフトを受け取っていなかったGP群(ギフトなし群)が、2016年にギフトを1回以上受け取ったGP群(ギフトあり群)と比べて有意に少なかった。2016年に1,000ユーロ以上のギフトを受け取ったGP群との比較では、ギフトなし群の処方金額は5.33ユーロ有意に少なかった(99.9%信頼区間[CI]:-6.99~-3.66、p<0.001)。 処方頻度も同様で、ジェネリックの抗菌薬(1,000ユーロ以上のギフトあり群との比較で2.17%[99.9%CI:1.47~2.88])、降圧薬(同4.24%[3.72~4.77])およびスタチン(同12.14%[11.03~13.26])の処方頻度はいずれも、ギフトなしGP群のほうが2013~2016年に1回以上ギフトを受け取ったGP群よりも有意に高かった(p<0.001)。 また、ギフトなし群は、2016年の報告で240ユーロ以上のギフトを受け取ったGP群と比較して、12週以上のベンゾジアゼピン系薬(240~999ユーロのギフトあり群との比較で-0.68%[99.9%CI:-1.13~-0.23])、血管拡張薬(1,000ユーロ以上のギフトあり群との比較で-0.15%[-0.28~-0.03])の処方頻度が有意に低かった(p<0.001)。さらに、2016年の報告で1,000ユーロ以上のギフトを受け取ったGP群と比較して、すべてのACE阻害薬およびサルタン系薬の処方頻度が有意に高かった(1.67%[0.62~2.71]、p<0.001)。 アスピリン、ジェネリックの抗うつ薬およびジェネリックのプロトンポンプ阻害薬の処方に関しては、有意差は確認されなかった。

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市中肺炎に新規経口抗菌薬lefamulinが有効/JAMA

 市中細菌性肺炎(CABP)患者において、lefamulinの5日間経口投与はモキシフロキサシン7日間経口投与に対して、初回投与後96時間での早期臨床効果が非劣性であることが示された。米国・Nabriva TherapeuticsのElizabeth Alexander氏らが、CABPに対するlefamulinの有効性および安全性を評価した無作為化二重盲検ダブルダミー並行群間第III相試験「LEAP 2試験」の結果を報告した。標準治療による抗菌薬耐性の拡大と安全性の懸念から、CABP治療の新しい抗菌薬が必要とされている中、lefamulinは、先に行われた第III相試験「LEAP 1試験」において、初回静脈内投与後経口投与への切り替えでモキシフロキサシンに対する非劣性が示されていた。JAMA誌オンライン版2019年9月27日号掲載の報告。lefamulin 5日間投与vs.モキシフロキサシン7日間投与、早期臨床効果を比較 LEAP 2試験は、2016年8月30日~2018年1月2日に19ヵ国99施設にて実施された。対象は、Pneumonia Outcomes Research Team(PORT)リスク分類がクラスII、IIIまたはIVで、X線所見により肺炎が確認され発症後7日以内、CABP症状(呼吸困難、新規咳嗽または咳嗽増加、膿性痰、胸痛)のうち3つ以上がみられ、2つ以上のバイタルサイン異常を有する18歳以上の成人患者738例であった。 対象患者を、lefamulin群(12時間ごとに600mgを5日間、370例)、またはモキシフロキサシン群(24時間ごとに400mgを7日間、368例)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、治験薬初回投与後96時間(±24時間)時点の早期臨床効果で、4つのCABP症状のうち2つ以上で改善を認め、CABP症状の悪化がなく、治験薬以外の抗菌薬治療を受けずに生存している場合に有効とした。 副次評価項目は、投与終了時評価(最終投与後5~10日間)における治験担当医師判定による臨床効果である。非劣性マージンは、早期臨床効果および治験担当医師判定による臨床効果に関して10%とした。 解析対象は、主要評価項目が無作為化されたすべての患者(intention-to-treat[ITT]集団)、副次評価項目が修正ITT集団および臨床評価可能集団であった。有効率はどちらも約91%、非劣性を確認 無作為化された738例(平均年齢:57.5歳、女性:351例[47.6%]、PORTリスク分類クラスIII/IV:360例[48.8%])のうち、707例(95.8%)が試験を完遂した。 早期臨床効果の有効率はlefamulin群90.8%、モキシフロキサシン群90.8%であった(群間差:0.1%、片側97.5%信頼区間[CI]:-4.4~∞)。治験担当医師判定による臨床効果は、修正ITT集団での有効率がlefamulin群87.5%、モキシフロキサシン群89.1%(-1.6%、-6.3%~∞)、臨床評価可能集団ではそれぞれ89.7%および93.6%であった(-3.9%、-8.2%~∞)。 治療下で発現した有害事象は、胃腸障害が最も多く報告された。発現率は、下痢がlefamulin群12.2%(45/368例)、モキシフロキサシン群1.1%(4/368例)、悪心がそれぞれ5.2%(19/368例)、1.9%(7/368例)であった。

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患者が抗菌薬を飲み切らない3つの理由【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第35回

2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が発表されてから、抗菌薬の処方や服薬についてさまざまな取り組みが行われてきました。医師と話をしたり、処方箋を受け取ったりするなかで、確かに抗菌薬の処方数が減ったという実感があります。医師や薬剤師の間では「抗菌薬は大部分の風邪に効かない」「処方された抗菌薬はすべて飲み切らなくてはいけない」は常識ですが、一般の方の意識はどうなのでしょうか。内閣府が行った世論調査でその実態が明らかになりました。内閣府は10月11日、薬が効かない薬剤耐性の感染症に関する世論調査を発表した。抗生物質を処方された際に医師や薬剤師の指示通り飲まないことがあると回答した人は13%だった。「途中で治ったらそれ以上必要と思わない」が理由として最多(52.3%)だった。指示を常に意識して服用している人は82%だった。薬剤耐性について知っているかを尋ねたところ「知っている」と答えた人は49.9%だった。「知らない」との回答は48.7%で拮抗した。(2019年10月11日付 日本経済新聞)この内閣府の調査は、2019年8月~9月に18歳以上の3,000人を個別面接して行われました。有効回答は1,667人でした。薬が効かない薬剤耐性の感染症に対する国民の意識を把握し、今後の施策の参考とすることが目的です。この調査の結果、抗菌薬が処方された場合に医師や薬剤師の指示を常に守って服用している人は82%でした。「意外と多いな」と思ったのは私だけではないでしょう。一方で、指示どおりに抗菌薬を飲まないことがある人は13%でした。この13%の人たちはどのような認識なのでしょうか。医師や薬剤師の指示どおりに飲めないことがあるのはなぜか、という問いでは以下のような結果となりました。途中で治ったらそれ以上必要と思わないから  52.3%薬を飲むのは最低限にしたいから  35.6%指示どおり飲むのを忘れてしまうから  34.7%この結果から、「薬は嫌い、最低限にしたい」「回復したら薬を中止したくなる」という心理が読み取れますので、服薬指導ではこの点を理解したうえで働きかけをするとよいと思います。たとえば、一辺倒に「最後まで飲んで」と正論を伝えるのではなく、「治ったらお薬を中止したくなるし、お薬は最低限にしたいと思われる方も多いんですよね」などと、よくある不安について話をして共感を得てから、必要なことに絞ってお伝えしてはいかがでしょうか。薬剤耐性の意味まで知っている人は少数派「薬剤耐性」という言葉については、知っている人は49.9%、知らない人は48.7%と真っ二つに分かれる結果でした。ただし、知っている人の中には「言葉だけ知っている人」も30%ほど含まれているので、言葉を知っていてかつ内容まできちんと理解している人はかなり少数派です。「薬剤耐性」という言葉は、私がITや金融など他業界の専門用語を難しいと思うように、一般の人には難しいのだと思います。「菌に抗菌薬が効かなくなる」「抗菌薬が効かない菌が体の中で増える」「それが日本だけでなく世界で起こっている」など、身近なことに感じてもらえるよう、少しでもわかりやすい言葉でお伝えできるとよいでしょう。2018年度の報酬改定では、抗菌薬処方を減らして適正使用を推進するために「抗菌薬適正使用支援加算」と「小児抗菌薬適正使用支援加算」が新設されました。2020年度の報酬改定でも新たな取り組みが評価されるかもしれません。一般の方の薬剤耐性の認識レベルも踏まえて、もうひと踏ん張りして対応を考えることが必要だと思います。

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経口の糞便移植で死亡例、その原因は?/NEJM

 糞便微生物移植(FMT)の臨床試験に参加した被験者で、死亡1例を含む4例のグラム陰性菌血症が発生していたことが明らかにされた。米国・ハーバード大学医学大学院のZachariah DeFilipp氏らによる報告で、そのうち術後にESBL産生大腸菌(Escherichia coli)血症を発症した2例(1例は死亡)は、別々の臨床試験に参加していた被験者であったが、ゲノムシークエンスで同一ドナーのFMTカプセルが使用されていたことが判明したという。著者は、「有害感染症イベントを招く微生物伝播を限定するためにもドナースクリーニングを強化するとともに、異なる患者集団でのFMTのベネフィットとリスクを明らかにするための警戒を怠らない重要性が示された」と述べている。FMTは、再発性/難知性クロストリジウム・ディフィシル感染症の新たな治療法で、その有効性・安全性は無作為化試験で支持されている。他の病態への研究が活発に行われており、ClinicalTrials.govを検索すると300超の評価試験がリストアップされるという。NEJM誌オンライン版2019年10月30日号掲載の報告。使用されていたのは検査強化前の冷凍FMTカプセル 研究グループは、術後にESBL産生大腸菌血症を発症した2例(1例は死亡)について詳細な調査報告を行った。 まずドナースクリーニングと、カプセル製剤手順を検証したところ、ドナースクリーニングは施設内レビューボードと米国食品医薬品局(FDA)による承認の下で行われており、集められたドナー便はブレンダーでの液化や遠心分離などの処置を経て懸濁化され、熱処理などを受けて製剤化が行われていた。ただし、2019年1月にFDAの規制レビューを受けてドナースクリーニングを強化していたが、件の2例に使用されたFMTカプセルは2018年11月に製造されたものであったという。この時に強化された内容は、ESBL産生菌、ノロウイルス、アデノウイルス、ヒトTリンパ親和性ウイルス タイプ1およびタイプ2抗体を検査するというものであった。規制レビューを受けた後も、それ以前に製剤化・冷凍保存されていたFMTカプセルについて、追加の検査や廃棄はせず試験に使用されていた。FMT前の被験者の便検体からはESBL産生菌は未検出 患者(1)は、C型肝炎ウイルス感染症による肝硬変の69歳男性で、難治性肝性脳症の経口カプセルFMT治療に関する非盲検試験に参加した被験者であった。2019年3月~4月に、15個のFMTカプセルを3週間に5回にわたって移植。術後17日(2019年5月)までは有害事象は認められなかったが、発熱(38.9度)と咳を呈し、胸部X線で肺浸潤を認めレボフロキサシンによる肺炎治療が行われた。しかし、臨床的改善が認められず2日後に再受診。患者(1)は、その際に前回受診時での採血の血液培養の結果でグラム陰性桿菌が確認されたことを指摘され、ピペラシリン・タゾバクタムによる治療を開始し入院した。培養されたグラム陰性桿菌を調べた結果、ESBL産生大腸菌であると同定された。患者(1)の治療はその後カルバペネムに切り替えられ、さらに14日間のメロペネム投与(入院治療)、さらにertapenem投与(外来治療)を完了後、臨床的安定性を維持している。フォローアップ便検体のスクリーニングでは、ESBL産生菌は検出されなかった。 患者(2)は、骨髄異形成症候群の73歳男性で、同種異系造血幹細胞移植の前後に経口カプセルFMTを行う第II相試験に参加していた。15個のFMTカプセルを、造血幹細胞移植の4日前と3日前に移植。造血幹細胞移植の前日に、グラム陰性菌血症リスクを最小化するためのセフポドキシム予防投与を開始した。しかし、造血幹細胞移植後5日目(最終FMT後8日目)に発熱(39.7度)、悪寒、精神症状の異変を呈した。血液培養の採血後、ただちに発熱性好中球減少症のためのセフェピム治療を開始したが、その晩にICU入室、人工呼吸器装着となる。予備血液培養の結果、グラム陰性桿菌の存在が示され、メロペネムなど広域抗菌薬を投与するが、患者の状態はさらに悪化し、2日後に重篤な敗血症で死亡した。最終血液培養の結果、ESBL産生大腸菌が検出された。 なお患者(1)(2)とも、FMT前の便検体からESBL産生菌は検出されなかったという。

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ありそうでなかった市中肺炎の教科書【Dr.倉原の“俺の本棚”】第24回

【第24回】ありそうでなかった市中肺炎の教科書呼吸器内科医が毎日のように出合う疾患が、市中肺炎。もちろん、かぜ症候群もコモンかつ大事な疾患ですが、両者の大きく違うところは、市中肺炎には適切な抗菌薬が必要であるという点です。病院では抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:AST)活動がさかんになって、不適切な処方をしていると第三者からの指摘が入る時代になりました。外来市中肺炎にとりあえずレスピラトリーキノロンを処方していたら、「ちょww、おまww」と言われます。『亀田流 市中肺炎診療レクチャー 感染症医と呼吸器内科医の視点から』黒田 浩一/著. 中外医学社. 2019市中肺炎については、研修医~若手医師向けに多大なニーズがあるにも関わらず、これに特化した医学書ってほとんどありません。どういう患者さんに市中肺炎を疑い、診断した後どのように重症度を評価し、そしてどの抗菌薬を使うか。全部きれいにまとまっているのがこの本です。私は、自身の著書で結構“チャラさ”を出してしまう性格なのですが、本書筆者の黒田浩一先生はロジカル&インテレクチュアル&トラストワージーです。私よりも3学年若い新進気鋭の感染症科医で、呼吸器内科医もやっておられるというから、親近感爆発尊敬マックス。この本が出版された直後、アメリカ胸部学会(ATS)/アメリカ感染症学会(IDSA)の市中肺炎ガイドライン1)が刊行されたのですが、黒田先生は近年のエビデンスもしっかり拾われているため、最新のガイドラインとほぼ相違ない内容になっていたのには驚かされました。ちなみに、くだんのガイドラインには「外来の市中肺炎でイチイチGram染色なんてやらなくてもいいよ」と書いてあるのですが、ちょっと暴論かなぁと思っています。みなさん、やりますよね?この本の帯には、ちょっと面白いことが書かれています。「呼吸器内科医は『画像』に強いが『微生物』に弱い?感染症医は『微生物』に強いが『画像』に弱い?」。これってまさにその通りで、私たち呼吸器内科医はあまりGram染色の向こう側にある微生物のキャラクターには注目せず、画像所見に重きを置いて重症度を判断してしまいがちです。反面、感染症医は、相手にしている微生物がどういうヤツらなのか、その顔色や見た目を観察することに没入してしまう。もちろん、両者の長所を融合させてこそ、適切な市中肺炎診療と言えるわけですが、2職種を経験している黒田先生だからこそ、バランスのとれた本書が完成したのだと確信しています。エビデンスベースドの市中肺炎診療をてっとり早く学びたい人には、オススメの一冊。『亀田流 市中肺炎診療レクチャー 感染症医と呼吸器内科医の視点から』黒田 浩一/著出版社名中外医学社定価本体3,600円+税サイズA5判刊行年2019年1)Metlay JP, et al. Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America Am J Respir Crit Care Med. 2019 Oct 1;200(7):e45-e67.

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日本で広域抗菌薬が適正使用されていない領域は?

 抗菌薬の使用量は薬剤耐性と相関し、複数の細菌に作用する広域抗菌薬ほど薬剤耐性菌の発生に寄与する。日本の抗菌薬使用量は他国と比べ多くはないが、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライドといった経口の広域抗菌薬の使用量が多い。AMR臨床リファレンスセンターは9月24日、11月の「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」を前にメディアセミナーを開催。日馬 由貴氏(AMR臨床リファレンスセンター 薬剤疫学室室長)、具 芳明氏(同 情報・教育支援室室長)らにより、最新の使用量データや市民の意識調査結果が報告された。2020年までに“経口の広域抗菌薬半減”が目標 国主導の「AMR対策アクションプラン」は、2013年比で2020年までに(1)全体で抗菌薬を33%減少、(2)経口の広域抗菌薬を半減、(3)静注薬を20%減少、を目標として掲げている1)。実際の使用量データをみると、人口千人当たりの1日抗菌薬使用量は、2013年と比較して2018年で10.6%減少している。このうち、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライドはそれぞれ17~18%ほど減少がみられる。 一方で、内服用抗菌薬と静注用抗菌薬に分けてみると、この減少は内服用抗菌薬によるもので、静注用抗菌薬の使用量は全く減っていない。日馬氏は、「全体として目標達成にはさらなる努力が必要だが、とくに静注用抗菌薬の使用削減については今後の課題」とし、その多くが高齢者で使用されていることを含め、効果的な介入方法を探っていきたいと話した。本来不要なはずの処方にかかる費用の推計値は年10億円超 非細菌性急性上気道炎、いわゆるかぜには本来抗菌薬は不要なはずだが、徐々に減少しているものの、2017年のデータでまだ約3割の患者に処方されている。セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライドがその大部分を占め、費用に換算すると年10億円を超えると推定される2)。非細菌性急性上気道炎への抗菌薬処方率を患者の年齢別にみると、19~29歳で43.26%と最も高く、次いで30~39歳が42.47%であった。日馬氏はまだ推測の域を出ないとしたうえで、「就労世代でとくに使われがちということは、仕事を休めないなどの事情から患者側からの求めがあるのかもしれない」と話した。 もう1領域、課題として挙げられたのが急性膀胱炎に対する抗菌薬使用だ。2016年のデータで、急性膀胱炎に対する抗菌薬処方はフルオロキノロンが52.4%と最も多く、第3世代セファロスポリンが38.9%と、広域抗菌薬がほとんどを占める2)。実際、日本のガイドラインではフルオロキノロンが第1選択になっている。しかし、欧米ではST合剤などが第1選択で、フルオロキノロンは耐性への懸念から第1選択薬としては推奨されていない。同氏は、「使用期間は長くないものの患者数が多いため、広域抗菌薬全体の使用量に対する寄与が大きい」とし、「必ずしも欧米との単純比較ができるものではないが、日本でも広域抗菌薬から狭域抗菌薬にスイッチしていく何らかの方策が必要ではないか」と話した。薬剤耐性=体質の変化? 患者との認識ギャップを埋めるために AMR臨床リファレンスセンターでは、毎年市民を対象とした抗菌薬に関する意識調査を行っている。2019年はEU諸国でのデータとの比較などが行われ、具氏が最新の調査結果を解説した。「抗菌薬・抗生物質はかぜに効果がある」という項目に対して「あてはまらない」と正しく回答した人は35.1%、「あてはまる」と誤った認識を持っている人が45.6%に上った。EU28ヵ国で同様の質問をした結果は正しい回答が66.0%となっており、日本では誤った認識を持つ人が多いことが明らかとなった。 「今後かぜで医療機関を受診した場合にどんな薬を処方してほしいですか?」という問いに対しては、31.7%の人が「抗菌薬・抗生物質」と回答。「だるくて鼻水、咳、のどの痛みがあり、熱は37℃、あなたは学校や職場を休みますか?」という問いには、24.4%が「休まない」、38.5%が「休みたいが休めない」と答えており、働き方改革が導入されたとはいえ、休みたくても休めない実情が明らかになっている。 また、薬剤耐性という言葉の認知度について聞いた質問では、50.4%が「薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがない」と回答している。「薬剤耐性とは病気になる人の体質が変化して抗菌薬・抗生物質が効きにくくなることである」という誤った回答をした人も44.3%存在した。具氏は、AMR臨床リファレンスセンターのホームぺージ上で患者説明用リーフレットの公開がはじまったことを紹介。「抗菌薬は必要ないと判断した急性気道感染症の患者に、医師が診察室で説明に用いることを想定したリーフレットなどを公開しているので活用してほしい」と話して講演を締めくくった。

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