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英語で「私なら~します」は?【1分★医療英語】第59回

第59回 英語で「私なら~します」は?What do you think is the best next step in this case?(この症例で、次のステップとして何が最善だと思いますか?)I would order an abdominal CT.(私なら、腹部CTをオーダーします)《例文1》I would start empiric antibiotics.(私なら、経験的な抗菌薬治療を開始します)《例文2》What medication would you choose?(あなたなら、どの薬を選択しますか?)《解説》今回ご紹介するのは、「私なら」「あなたなら」という仮定法を用いた表現です。「仮定法」というと、“if”を使うイメージかもしれませんが、日常会話では、“if”を使わずに仮定法が使われることがよくあります。“I would order an abdominal CT.”という文頭の文章の前に、“If I were you~”(もし私があなたなら)が省略されている、と考えるとわかりやすいかもしれません。結果として、「私なら、腹部CTをオーダーします」という意味になります。ここで注意が必要なのは、“I will do it.”と“I would do it.”では、「音は似ていても、意味は大きく異なる」ということです。たとえば、指導医との会話で、指導医が“I will do it.”と言った場合、それをやるのは指導医であり、下級医は任せておけばよい状況です。一方で、指導医が“I would do it.”と言ったのであれば、指導医は「私なら、それをやる」と言っているだけで実際に指導医がやるわけではなく、上下関係の中での発言であれば、少し丁寧に「それをやってください」と言っているのに近く、命令に近いニュアンスです。実は私も渡米したばかりの頃に、この聞き間違いをしたことがあります。指導医が“I would order…”と言っていたのを“I will order…”と勘違いして、「指導医がやってくれるのか」と思い込んでいたら、後で、「やっておいてと言ったのに、なんでオーダーしていないの?」と怒られたのです。その時、“I would…”の恐ろしさを知りました。一語の違いで意味が180度変わってしまうのです。“if”が登場しない仮定法、聞き間違いをするとこんな風に大きく意味が変わってしまうので、ぜひ注意して聞くようにしてください。講師紹介

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黄色ブ菌、大腸菌などの感染症関連死は依然多い/Lancet

 2019年の世界の感染症関連死は推定1,370万人で、うち黄色ブドウ球菌、大腸菌など33の細菌属・種が原因の死亡は770万人だった。また、同細菌による年齢標準化死亡率はサハラ以南アフリカのスーパーリージョンで最も高かった。米国・ワシントン大学のMohsen Naghavi氏ら、薬剤耐性の世界疾病負担(Global Burden of Antimicrobial Resistance)に関する研究グループ「GBD 2019 Antimicrobial Resistance Collaborators」が解析結果を報告した。先行研究により、薬剤耐性感染症と敗血症関連の死亡数が推定され、感染症が依然として世界の主要な死因を占めることが明らかになっている。公衆衛生上の最大の脅威を特定するためには、一般的な細菌(抗菌薬への耐性あり/なしの両者を含む)の世界的負荷を理解することが求められている中、本検討は、33の細菌属・種による11の重大感染症と関連する死亡について世界的な推算値を求めた初となる研究で、Lancet誌オンライン版2022年11月18日号で発表された。204の国と地域の33の細菌属・種による死亡数を推定 研究グループは、世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2019のメソッドと、薬剤耐性の世界疾病負担2019で記述されている特定条件を満たした部分集合データを用いて、2019年に発生した33の細菌属・種による11の感染症に関連する死亡数を推算した。本検討には、1万1,361調査地域年にわたる3億4,300万人の記録と分離株が包含された。 各病原体に関連した死亡数を3段階モデル(感染による死亡、感染症に起因する死亡のうち特定の感染症による死亡割合、感染症に起因する死亡のうち特定の病原体による死亡割合)を用いて推定した。推定値は、2019年における204の国と地域、全年齢、男女について算出。標準的なGBDメソッドに従って、対象の各数量の事後分布から1,000の2.5パーセンタイルと97.5パーセンタイルを抽出し、33の細菌属・種に関連する死亡と感染の最終推定値について95%不確実性区間(UI)を算出した。33細菌属・種の関連死、世界全死亡の約14% 2019年の感染症関連死は推定1,370万人(95%UI:1,090万~1,710万)で、そのうち33の細菌属・種(抗菌薬への耐性あり/なしの両者を含む)による11の感染症関連死は、770万人(570万~1,020万)だった。 2019年の33細菌属・種の関連死は、世界全死亡の13.6%(95%UI:10.2~18.1)を占め、敗血症関連の全死亡の56.2%(52.1~60.1)を占めると推定された。なかでも黄色ブドウ球菌、大腸菌、肺炎球菌、肺炎桿菌、緑膿菌の5種の病原菌が、調査対象とした細菌による死因の54.9%(52.9~56.9)を占めた。 死因となった感染症や病原菌は、地域や年齢により異なった。また、調査対象細菌による年齢標準化死亡率は、サハラ以南アフリカのスーパーリージョンで最も高く230人/10万人(95%UI:185~285)だった一方、高所得のスーパーリージョンで最も低く52.2人/10万人(37.4~71.5)だった。 黄色ブドウ球菌は、135ヵ国において細菌による死亡の最大の原因で、また、世界的にみて15歳超で最も多く死亡と関連していた。5歳未満の小児では、肺炎球菌が細菌による死亡の最大の原因だった。 2019年に、600万人以上が3種の細菌感染症で死亡しており、200万人超が死亡した感染症は下気道感染症(400万人)と血流感染症(291万人)の2種で、100万人超の死亡は腹膜・腹腔内感染症(128万人)によるものだった。 著者は、「今回調査した33細菌属・種は、世界的な健康ロスの実質的な原因であるが、感染症や地域によって分布にかなりのばらつきがあった。GBDレベル3の根本的な死因と比較すると、これら細菌関連死は2019年の世界で2番目に多い死因に分類される」と述べ、国際保健コミュニティで緊急に介入を優先すべき事項とみなすべきで、対応戦略として、感染予防、抗菌薬の最適使用、微生物学的分析能力の改善、ワクチン開発・改良、利用可能なワクチンのより広範な使用などを提言している。

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大腸手術前の予防的抗菌薬、経口・静注併用で手術部位感染減少/BMJ

 大腸手術を受ける患者では、予防的な抗菌薬の静脈内投与と経口投与の併用により手術部位感染が低下することが、最近の研究で示唆されている。フランス・Centre Hospitalier Universitaire de Clermont-FerrandのEmmanuel Futier氏らは、「COMBINE試験」において、待機的大腸手術を受ける成人患者では、術前に抗菌薬静脈内投与に加え経口ornidazoleの1g用量を単回投与すると、プラセボと比較して術後の手術部位感染が有意に減少し、術後の重度合併症も少ないことを示した。研究の成果は、BMJ誌2022年11月3日号に掲載された。フランスの無作為化プラセボ対照試験 COMBINE試験は、フランスの11施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照試験であり、2016年5月~2019年8月の期間に患者の登録が行われた(フランス保健省の助成を受けた)。 対象は、待機的に腹腔鏡または開腹による大腸手術を受ける成人患者であった。被験者は、術前の抗菌薬静脈内投与による感染予防処置の補助として手術の12時間前に、経口ornidazole 1gを単回投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、術後30日以内に手術部位感染(表層切開創、深部切開層、臓器/体腔)を発症した患者の割合とされた。副次アウトカムは、術後30日以内の手術部位感染の個々の感染の種類および重度の術後合併症(Clavien-Dindo分類のGrade3以上)などであった。縫合不全、敗血症/敗血症性ショックも低下 926例(平均年齢63歳、男性60%)が解析に含まれた。ornidazole群が463例、プラセボ群も463例だった。64%が結腸切除術、36%が直腸切除術を受け、74%は腹腔鏡手術だった。 術後30日以内の手術部位感染は、ornidazole群が463例中60例(13.0%)で発生し、プラセボ群の463例中100例(21.6%)に比べ有意に少なかった(絶対群間差:-8.6%[95%信頼区間[CI]:-13.5~-3.8]、相対リスク:0.60[95%CI:0.45~0.80]、p=0.001)。 手術部位感染のうち、深部切開層感染(4.8% vs.8.0%、絶対群間差:-3.2%[95%CI:-6.4~-0.1、相対リスク:0.54[95%CI:0.31~0.92]、p=0.03)と、臓器/体腔感染(5.0% vs.8.4%、-3.4%[-6.7~-0.2]、0.53[0.31~0.91]、p=0.02)はornidazole群で患者の割合が有意に低かったが、表層切開創感染(3.2% vs.5.2%、p=0.09)は両群間に有意な差は認められなかった。 術後30日以内の重度合併症(9.1% vs.13.6%、絶対群間差:-4.5%[95%CI:-8.6~-0.5]、相対リスク:0.63[95%CI:0.41~0.97]、p=0.03)もornidazole群で少なく、術後縫合不全(4.8% vs.8.0%、相対リスク:0.59[95%CI:0.36~0.99]、p=0.046)や、敗血症/敗血症性ショック(5.6% vs.9.1%、0.62[0.39~0.99]、p=0.046)にも臨床的に意義のある差がみられた。 死亡には差がなかった(30日時:0.4%[2例]vs.1.1%[5例]、p=0.27、90日時:1.1%[5例]vs.2.2%[10例]、p=0.20)。また、試験薬による重篤な有害事象は両群とも報告がなかった。 著者は、「これらの知見により、予防的経口抗菌薬投与の効果は、主に深部切開層感染と臓器/体腔感染の発生率の低減に起因すると示唆された」としている。

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2型糖尿病のCOPD重症化、GLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬が有効か/BMJ

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で2型糖尿病(DM)の患者において、GLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬は、スルホニル尿素(SU)薬と比べ、COPD増悪による入院リスクを約30~38%低減することが示された。また、GLP-1受容体作動薬は、中等度増悪リスクを37%低減した。一方でDPP-4阻害薬は、COPD増悪リスクの明らかな低減は認められなかったという。カナダ・マギル大学のRicheek Pradhan氏らが、英国国民保健サービス(NHS)データを基に行った住民ベースの3種実薬比較新規使用者デザインコホート試験の結果で、BMJ誌2022年11月1日号で発表した。3種の新規血糖降下薬vs.SU薬を評価 研究グループは、英国の全NHS病院入院データ「Hospital Episode Statistics Admitted Patient Care and Office for National Statistics」とリンクした、大規模プライマリケアデータ「Clinical Practice Research Datalink」を基に住民ベースコホート試験を行った。 被験者は、試験薬(GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、SGLT-2阻害薬)のいずれか、またはSU薬を、新たに服用開始したCOPD既往の2型DM患者だった。 第1コホートにはGLP-1受容体作動薬の服用を開始した1,252例とSU薬服用を開始した1万4,259例が、第2コホートにはDPP-4阻害薬服用を開始した8,731例とSU薬服用を開始した1万8,204例が、第3コホートにはSGLT-2阻害薬服用を開始した2,956例とSU薬服用を開始した1万841例がそれぞれ含まれた。 主要アウトカムはCOPDの重症増悪(COPDによる入院と定義)で、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、SGLT-2阻害薬それぞれについて、傾向スコア層別化重み付けCox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)値を推算して評価した。また、これら3つの試験薬が中等度増悪(同日に、COPD急性増悪の外来診断と、経口コルチコステロイドと抗菌薬の同時処方と定義)のリスク減少と関連するかどうかも検証した。COPD重症増悪リスク、GLP-1受容体作動薬は30%、SGLT-2阻害薬は38%低減 SU薬と比較して、GLP-1受容体作動薬はCOPD重症増悪リスクを30%低減した(100人年当たり3.5 vs.5.0、HR:0.70、95%CI:0.49~0.99)。また中等度増悪リスクも37%低減した(0.63、0.43~0.94)。 同様にSGLT-2阻害薬も、COPD重症増悪リスクを38%低減した(100人年当たり2.4 vs.3.9、HR:0.62、95%CI:0.48~0.81)。一方で、中等度増悪リスクの低減は認められなかった(1.02、0.83~1.27)。 DPP-4阻害薬は、COPD重症増悪リスク、中等度増悪リスクともに低減はわずかだった(それぞれHR:0.91[95%CI:0.82~1.02]、0.93[0.82~1.07])。

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「知らんけど」の謎【Dr. 中島の 新・徒然草】(451)

四百五十一の段 「知らんけど」の謎だんだん寒くなってきました。11月というのは秋だと思っていましたが、もう立派な冬ですね。ところで、今年の新語・流行語大賞候補の1つが「知らんけど」だとか。「オミクロン株」「キーウ」「メタバース」などとともに、30語の中に入っています。関西発の言葉ですが、全国的に使われ始めたということかもしれません。確かに、「知らんけど」はよく使います。3日に1回くらいは言ってるかな。でも関西以外で正しく使われているのでしょうか。いささかの疑問がありますね。なので、自分自身の感覚を説明したいと思います。よくある誤解として、「知らんけど」は責任逃れだ、という説があります。でも決して無責任で言っているわけではありません。100%の確信があるとは言えないけど、80%くらいの自信はある時に使います。また、似た響きの言葉に「知らんがな」というのがありますが、これはまったく別。「知らんがな」は「そもそも興味がない」という意味です。話を「知らんけど」に戻します。「知らんけど」を決してシリアスな場面で使わないようにしましょう。万一、使ってしまったら責任逃れにしか聞こえません。たとえば大臣が国会答弁で「我が国といたしましては国民の生命、身体、財産を守るために最善を尽くす所存であります……知らんけど」と言ったりしたらクビになることでしょう。また、病状説明で「現在、重症感染症に罹患しておられますが、抗菌薬で回復するものと信じています……知らんけど」などと言うと大変なことになります。「つい言ってみた」ということのないように注意しておきましょう。さらにネットで調べてみると、私自身も知らなかった詳細な情報が飛び交っています。関西では「なんでやねん!」と「知らんけど」は双璧だ。→ いやいや、使用頻度からもインパクトからも、前者の存在感のほうが大きいです。「そうなん?」と言われたら「知らんけど」と返してしまい、「結局知らんのかい!」と締めくくられる。→ これは高度過ぎますね、かなり練習しないと使えません。ムチャクチャ詳しく説明したあとで「知らんけど」ってボケるのが正しい使い方やぞ。→ そうそう! 無意識にこういう使い方をしています。まあ言葉というのは生き物なので、全国区になったら使い方も変わってしまうかもしれません。それはそれで楽しむことにいたしましょう。最後に1句霜月は ホントは冬だ 知らんけど

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2歳児の陰茎が絞扼されていたまさかの原因【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第220回

2歳児の陰茎が絞扼されていたまさかの原因pixabayより使用知り合いの小児科医に原稿を見てもらったところ、この連載の日本語タイトルだけで疾患を当ててしまいました。小児の陰茎絞扼の原因として絶対に押さえておかないといけない疾患ですね。アレですよ、アレ。Baarimah A, et al.Penile Hair Tourniquet Syndrome (PHTS): A Case Report of a Two-Year-Old Boy.Case Rep Urol. 2022;2022:8030934.2歳の男児が3日前から陰茎の腫脹と痛みを訴えていました。近くの小児科医は抗菌薬入りの軟膏と鎮痛剤を処方しましたが、症状は改善しませんでした。次第に尿閉が悪化していたことから、母親と共に救急外来を受診しました。陰茎は浮腫と圧痛がひどく、壊死には至っていないものの、変色が進んでいました。陰茎の基部に、ひどく絞扼されている部位があったそうです。拡大したところ、どうやら髪の毛が巻き付いているのでは…という結論に至りました。紛れもない、「ヘアーターニケット」です。これを読んでいる医師の皆さんは、ヘアーターニケットについてはもうご存じかと思いますが、一応確認しておきましょう。髪の毛や糸が、指先、場合によっては陰茎に巻き付いて、血行を阻害する状態のことです。濡れた髪の毛が体の一部に巻き付いて、乾くことでそれがギュっと引き締まって、このような病態になります。最初は、リンパと静脈の逆流が影響を受け、陰茎遠位部の浮腫と腫脹を引き起こします。これが進行し、最終的には動脈流に影響を及ぼし、陰茎の患部の虚血、最悪の場合、壊死、切断に至ります。陰茎切断はマジ勘弁です。この2歳児のヘアーターニケットの原因となっていた毛髪は、顕微鏡下で切断されました。8Frのカテーテルが通され、尿道が無事であることが確認されました。やれやれ、一安心です。この症例もそうでしたが、一般的にヘアーターニケットの原因となるのは母親の毛髪です。陰茎のヘアーターニケットの場合、赤ちゃんのおむつに毛髪が入り込んで、中で陰茎に巻き付いてしまうことが原因とされています1)。とくに子育て世代の読者の皆さんは、おむつの中に長い髪の毛を落とさないよう、注意が必要です。1)Rawls WF, et al. Case report: penile strangulation secondary to hair tourniquet. Frontiers in Pediatrics. 2020;8(8):477.

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フルオロキノロン系抗菌薬で自殺念慮リスクが増大?/BMJ

 2016年、米国食品医薬品局(FDA)は、フルオロキノロン系抗菌薬の枠囲み警告(boxed warning)の改訂において、自殺念慮のリスク増大との関連を示唆した。米国・ハーバード大学医学大学院のJunyi Wang氏らは、この関連について検討し、フルオロキノロン系抗菌薬の使用は、自殺念慮のリスクを実質的に増加させないことを確認した。研究の成果は、BMJ誌2022年10月4日号で報告された。肺炎、尿路感染症を対象とする米国のコホート研究 研究グループは、フルオロキノロン系抗菌薬の投与開始と、自殺傾向による入院または救急診療部受診との関連の評価を目的に、住民ベースのコホート研究を行った(米国・ブリガム&ウィメンズ病院などの助成を受けた)。 解析には、米国のIBM MarketScan databaseのデータが用いられた。対象は、年齢18歳以上、2003年1月~2015年9月の期間に、抗菌薬投与開始前の3日以内に肺炎または尿路感染症(UTI)と診断され、6ヵ月以上の抗菌薬の持続投与が予定されており、経口フルオロキノロン系抗菌薬または比較対象の抗菌薬の投与が開始された患者であった。 フルオロキノロン系抗菌薬は、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、gemifloxacin、オフロキサシン、ガチフロキサシン、ノルフロキサシン、ロメフロキサシン、besifloxacinが使用され、比較対象薬は、肺炎患者がアジスロマイシン、UTI患者はトリメトプリム・スルファメトキサゾール(TMP-SMX)であった。 傾向スコアマッチング法を用いて、肺炎およびUTIコホートの2つの抗菌薬群に、1対1の割合で参加者をマッチさせた。 主要アウトカムは、治療開始から60日以内の自殺念慮または自傷による入院または救急診療部受診とされた。入院・受診に至らない自殺念慮への影響は排除できない 肺炎患者55万1,042例(フルオロキノロン系抗菌薬群27万5,521例[平均年齢51.44歳、男性48.6%]、アジスロマイシン群27万5,521例[51.69歳、48.7%])と、UTI患者220万5,226例(フルオロキノロン系抗菌薬群110万2,613例[43.66歳、8.4%]、TMP-SMX群110万2,613例[43.76歳、8.1%])が、解析に含まれた。 60日の追跡期間中に、肺炎コホートで181件(フルオロキノロン系抗菌薬群91件[0.03%]、アジスロマイシン群90件[0.03%])、UTIコホートで966件(フルオロキノロン系抗菌薬群491件[0.04%]、TMP-SMX群475件[0.04%])の自殺傾向による入院または救急診療部受診が認められた。 自殺傾向による入院または救急診療部受診に関するフルオロキノロン系抗菌薬群の補正後ハザード比(HR)は、肺炎コホートではアジスロマイシン群との比較で1.01(95%信頼区間[CI]:0.76~1.36)、UTIコホートではTMP-SMX群との比較で1.03(0.91~1.17)であり、いずれも有意な差はみられなかった。 傾向スコアマッチングを行う前の全体のコホート(肺炎コホートの補正後HR:1.06[95%CI:0.84~1.35]、UTIコホート0.98[0.88~1.09])、および高次元傾向スコアマッチング法による解析(肺炎コホート1.02[0.76~1.38]、UTIコホート1.05[0.92~1.19])でも、主解析と一致した結果であった。また、性別、年齢層別、精神疾患の既往歴の有無別のサブグループ解析でも、結果は同様だった。 著者は、「フルオロキノロン系抗菌薬が自殺傾向による入院または救急診療部受診のリスクを実質的に増加させることはなかったが、リスクのわずかな増加や、入院・救急診療部受診に至らない自殺念慮への影響を排除することはできない」としている。

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第125回 学会提言がTwitterで大炎上、医療崩壊にすり替えた国産コロナ薬への便宜では?

土曜日の朝、何気なくTwitterを開いたらトレンドキーワードに「感染症学会」の文字。何かと思って検索して元情報を辿ったところ、行き着いたのが日本感染症学会と日本化学療法学会が合同で加藤 勝信厚生労働大臣に提出した「新型コロナウイルス感染症における喫緊の課題と解決策に関する提言」だった。提言は4つだが、そのすべてをひっくるめてざっくりまとめると、「現在の第7波に対応するには早期診断・早期治療体制の確立がカギを握る。そのためには重症化リスクの有無に関係なく使える抗ウイルス薬が必要であり、その可能性がある国産抗ウイルス薬の一刻も早い承認あるいは既存の抗ウイルス薬の適応拡大が必要」というものだ。どうやら発表された9月2日に厚生労働省内にある記者クラブで記者会見をしたらしいが、フリーランスの私は当然それを知る由もない。この点がフリーランスのディスアドバンテージである。国産抗ウイルス薬とは、塩野義製薬が緊急承認制度を使って申請した3CLプロテアーゼ阻害薬のエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)のことだ。同薬の緊急承認審議の中身についてはすでに本連載で触れた通り。連載では文字数の関係上、ある程度議論をリードした発言を抜粋はしているが、本格議論の前に医薬品医療機器総合機構(PMDA)側から緊急承認に否定的な審査報告書の内容が説明されている。その意味で、連載に取り上げた議論内容は少なくとも感情論ではなく科学的検討を受けてのもので、結果として継続審議となった。両学会の提言はそうした科学的議論を棚上げしろと言っているに等しい。もっとも両学会の提言は一定のロジックは付けている。それについて私なりの見方を今回は記しておきたいと思う。まず、4つの提言のうち1番目を要約すると「入院患者の減少や重症化の予防につながる早期診断・早期治療の体制確立を」ということだが、これについてはまったく異論はない。提言の2番目(新規抗ウイルス薬の必要性)は一見すると確かにその通りとも言える。念のため全文を引用したい。「現在使用可能な内服薬は適応に制限があり、60歳未満の方のほとんどは診断されても解熱薬などの対症療法薬の処方しか受けられません。辛い症状、後遺症に苦しんでいる方が多くいらっしゃいます。また、自宅療養中に同居家族に高率に感染が広がることが医療逼迫の大きな原因になっています。こうした状況を打開するためにも、ハイリスク患者以外の軽症者にも投与できる抗ウイルス薬の臨床現場への導入が必要です」私はこの段階でやや引っかかってしまう。確かに現時点で高齢者や明らかな重症化リスクのある人以外は解熱鎮痛薬を軸とする対症療法しか手段がない。しかも、現在の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の重症度判定は、酸素飽和度の数値で決められているため、この数字が異常値でない限りは40℃近い発熱で患者がのたうち回っていても重症度上は軽症となり、解熱鎮痛薬処方で自然軽快まで持ちこたえるしかない。それを見つめる医療従事者は隔靴掻痒の感はあり、何とかしてあげたいという思いに駆られるだろう。それそのものは理解できる。しかし、私たちはこの「思い」が裏目に出たケースを経験している。いわゆる風邪に対する抗菌薬乱用による耐性菌の増加、眠れないと訴える高齢者へのペンゾジアゼピン系抗不安薬の乱用による依存症。いずれも根本は医療従事者の“患者の苦痛を何とかしたい”という「思い」(あるいは「善意」)がもたらした負の遺産である。結果として、提言の2番目は言外に「何ともできないのは辛いから、まずは効果はほどほどでも何とかできるようにさせてくれ」と主張しているように私は思えてしまう。ちなみに各提言では、「説明と要望」と称してより詳細な主張が付記されているが、2番目の提言で該当部分を読むと、その主張は科学的にはやや怪しくなる。該当部分を抜粋する。「感染者に対する早い段階での抗ウイルス薬の投与は、重症化を未然に防ぎ、感染者の速やかな回復を助けるだけではなく、二次感染を減らす意味でも大切です」これは一般の人が読めば、「そうそう。そうだよね」となるかもしれない。しかし、私が科学的に怪しいと指摘したのは太字にした部分である。その理由は2つある。第1の理由は、まず今回の新型コロナは感染者の発症直前から二次感染を引き起こす。発症者が抗ウイルス薬を服用しても二次感染防止は原理的に不可能と言わざるを得ない。服用薬に一定の抗ウイルス効果が認められるならば、感染者・発症者が排出するウイルス量は減ると考えられるので、理論上は二次感染を減らせるかもしれないが、それが服用薬の持つリスクとそのもののコストに見合った減少効果となるかは、はなはだ疑問である。第2の理由は、提言が緊急承認を求めているエンシトレルビルの作用機序に帰する。エンシトレルビルは新型コロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害し、すでに細胞に侵入したウイルスの増殖を抑制することを意図した薬剤である。ヒトの体内に侵入したウイルスが細胞に入り込む、すなわち感染・発症成立を阻止するものではない。たとえばオミクロン株ではほぼ無効として、現在はほぼ使用されなくなった通称・抗体カクテル療法のカシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質と結合し、細胞そのものへの侵入を阻止する。もちろんこれとて完全な感染予防効果ではなく、厳密に言えば発症予防効果ではあるが、原理的には3CLプロテアーゼ阻害薬よりは二次感染発生の減少に資すると言える。現にオミクロン株登場前とはいえ、カシリビマブ/イムデビマブは、臨床試験で家庭内・同居者内での発症予防効果が認められ、適応も拡大されている。これに対してエンシトレルビルと同じ3CLプロテアーゼ阻害薬で、国内でも承認されているニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)では、家庭内感染リスク低下を評価するべく行った第II/III相試験「EPIC-PEP」でプラセボ群と比較して有意差は認められていない。これらから「二次感染を減らす意味でも大切です」という提言内容には大いに疑問である。そして提言の3番目(抗ウイルス効果の意義)では次のように記述している。「新しい抗ウイルス薬の臨床試験において、抗ウイルス効果は主要評価項目の一つです。新型コロナウイルスの変異株の出現に伴い、臨床所見が大きく変化している今、抗ウイルス効果を重視する必要があります」今回の話題の焦点でもあるエンシトレルビルの緊急承認審議に提出された同薬の第II/III相試験の軽症/中等症患者を対象とした第IIb相パートの結果では、主要評価項目の鼻咽頭ぬぐい検体を用いて採取したウイルス力価のベースラインからの変化量と12症状合計スコア(治験薬投与開始から120時間までの単位時間当たり)の変化量は、前者で有意差が認められたものの、後者では有意差が認められなかった。この結果が緊急承認の保留(継続審議)に繋がっている。提言の言いたいことは、ウイルス力価の減少、つまり抗ウイルス効果が認められたと考えられるのだから、むしろそれを重視すべきではないかということなのだろう。実際、3番目の提言の説明と要望の項目では、デルタ株が主流だった第5波の際の感染者の重症化(人工呼吸器管理を必要とする人)率が0.5%超だったのに対し、オミクロン株が主流の第6波以後では0.1%未満であるため、重症化阻止効果を臨床試験で示すことは容易ではないと指摘している。それは指摘の通りだが、エンシトレルビルの第IIb相パートはそもそも重症化予防効果を検討したものではない。あくまで臨床症状改善状況を検討したものである。しかも、この説明と要望の部分では「ウイルス量が早く減少することは、臨床症状の改善を早めます」とまるで自家撞着とも言える記述がある。ところがそのウイルス量の減少が臨床症状の改善を早めるという結果が出なかったのがエンシトレルビルの第IIb相パートの結果である。両学会は何を主張したいのだろう。一方で今回のエンシトレルビルの件では、時に「抗ウイルス薬に抗炎症効果(臨床症状改善)まで求めるのは酷ではないか」との指摘がある。しかし、ウイルス感染症では、感染の結果として炎症反応が起こるのは自明のこと。ウイルスの増殖が抑制できるならば、当然炎症反応にはブレーキがかからねばならない。それを臨床試験結果として示せない薬を服用することは誰の得なのだろうか?前述のように作用機序からも二次感染リスクの減少効果が心もとない以上、この薬を臨床現場に投入する意味は、極端な話、それを販売する製薬企業の売上高増加と解熱鎮痛薬よりは根本治療に近い薬を処方することで医師の心理的負荷が軽減されることだけではないか、と言うのは言い過ぎだろうか?さらにそもそも論を言ってしまえば、現在エンシトレルビルで示されている抗ウイルス効果も現時点では「可能性がある」レベルに留まっている。というのも前述の第IIb相パートは検査陽性で発症が確認されてから5日以内にエンシトレルビルの投与を開始している。この投与基準そのものは妥当である。そのうえで、対プラセボでウイルス力価とRNA量の減少がともに有意差が認められたのは投与開始4日目、つまり発症から最大で9日目のもの。そもそも新型コロナでは自然経過でも体内のウイルス量は発症から5日程度でピークを迎え、その時点を境に減少するのが一般的である。この点を考慮すると、第IIb相パートの試験で示された抗ウイルス効果に関する有意差が本当にエンシトレルビルの効果のみで説明できるかは精査の余地を残している。ちなみに緊急承認に関する公開審議では委員の1人から、この点を念頭にエンシトレルビル投与を受けた被験者の投与開始時点別の結果などが分かるかどうかの指摘があったが、事務局サイドは不明だと回答している。さらに指摘するならば同試験は低用量群と高用量群の2つの群が設定されているが、試験結果を見る限りでは高用量群での抗ウイルス効果が低用量群を明らかに上回っているとは言い切れず、用量依存的効果も微妙なところである。総合すれば、エンシトレルビルの抗ウイルス効果と言われるものも、現時点では暫定的なものと言わざるを得ないのだ。また、3番目の提言の説明と要望の項目では「オミクロン株に感染した際の症状としては呼吸器症状(鼻閉・咽頭痛・咳)、発熱、全身倦怠感が主体でこれ以外の症状は少なくなっています」とさらりと触れている。これは主要評価項目の12症状合計スコアで有意差が認められなかった点について、塩野義製薬がサブ解析でこうした呼吸器症状のみに限定した場合にプラセボに対してエンシトレルビルでは有意差が認められたと主張したことを、やんわりアシストしているように受け取れる。これとて緊急承認の際の公開審議に参加した委員の1人である島田 眞路氏(山梨大学学長)から「呼吸器症状だけ後からピックアップして有意差が少しあったという。要するにエンドポイントを後からいじるのはご法度ですよ。はっきり言って」とかなり厳しく指摘された点である。そしてこうしたサブ解析で有意差が出た項目を主要評価項目にして臨床研究を行った結果、最終的に有意差は認められなかったケースは実際にあることだ。いずれにせよ私個人の意見に過ぎないが、今回の提言は科学的に見てかなり破綻していると言わざるを得ない。そしてなにより今回の提言の当事者である日本感染症学会理事長の四柳 宏氏(東京大学医科学研究所附属病院長・先端医療研究センター感染症分野教授)は、エンシトレルビルの治験調整医師であり、明確に塩野義製薬と利益相反がある。記者会見ではこの点について四柳氏自身が「あくまでも学会の立場で提言をまとめた」と発言したと伝わっているが、世間はそう単純には受け止めないものだ。それでも提言のロジックが堅牢ならばまだしも、それには程遠い。まあ、そんなこんなで土曜日は何度かこの件についてTwitterで放言したが、それを見た知人からわざわざ電話で「あの感染症学会の喧々諤々、分かりやすく説明してくれ」と電話がかかってきた。「時間かかるから夜にでも」と話したら、これから町内会の清掃があって、その後深夜まで出かけるとのこと。私はとっさに次のように答えておいた。「あれは例えて言うと…町内会員らで清掃中の道路に町内会長が○○○したようなもの」これを聞いた知人は「うーん、分かるような、分からないような。また電話するわ」と言って会話は終了した。その後、彼からは再度問い合わせはない。ちなみに○○○は品がないので敢えて伏字にさせてもらっている。ご興味がある方はTwitterで検索して見てください。お勧めはしません(笑)。

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第29回 患者を帰す前の一工夫:病状や処方の説明を十分しよう【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)病状説明は、患者さんが陥りがちな点を踏まえた上で、具体的に、わかりやすく行おう!【症例】71歳男性。高血圧以外の特記既往なく、ADLは自立している。来院前日から喉の痛みを自覚した。来院当日起床時から倦怠感、発熱を認めた。別棟に住む孫が2日前に近医小児科で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性診断を受けており、濃厚接触はしていないものの心配になり受診。●受診時のバイタルサイン意識清明血圧148/91mmHg脈拍90回/分(整)呼吸20回/分SpO297%(RA)体温38.1℃所見全身状態は良好で、流行状況も考慮しCOVID-19迅速抗原検査を施行したところ陽性。飲食も可能であり、解熱薬のみの処方で帰宅の判断となった。〔初診外来での会話〕医師「コロナ陽性だったので、薬を出しておきますので、それで対応してください。保健所から連絡があると思うので、あとはその指示に従ってくださいね。お大事に」患者「あ、はい…」翌日、喉の痛みは改善傾向にあるものの、発熱が持続しているため再度受診したが…。COVID-19禍での外来診療みなさん、体調を崩してはいないでしょうか? 私が勤務する救急外来にも連日多くの患者さんが来院し、「コロナ疑いの患者さんもたぁくさん」という、そんな毎日です。なるべくなら自宅で経過をみることが可能な方への受診は控えてもらいたいと思いながらも、その判断って私たちが思っているほど簡単ではありません。まして子を持つ親であれば、子どもの体調には自分以上に心配になりますし、家族内感染の場合には自宅内隔離を実践しようとするも現実は難しく、日毎に症状を認める家族の対応に悩むことが多いでしょう。日本感染症学会、日本救急医学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本臨床救急医学会の4学会から「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」が8月2日に提出され、国民一人一人がこの内容を理解することも大切ですが、受診した患者さんに対しても意識させる必要があります1)。再受診患者を防ぐことはできないか救急外来で帰宅可能と判断した患者さんが数日内に再度受診することは、避けたいところですが珍しくありません。現在、ベッド事情が厳しい病院も多いことから、本来入院で経過をみることが望ましい患者さんを外来でフォローすることも増えているかもしれません。このようなケースは致し方ない部分もあるとは思いますが、なかには再度受診したものの、帰宅可能の判断となる患者さんもいます。その多くがちょっとしたことで防ぐことができるものであり、今回の事例ではその辺りを取り上げたいと思います。ちなみに、状態の悪化によって数日内に救急外来を再受診する患者さんは、そうでない患者さんと比較し、初診時に呼吸数が上昇していることが多く、呼吸数は臨床的悪化の独立した危険因子です2)。帰宅可能と最終判断する前に、呼吸数に着目することをお勧めします。バイタルサインは普段の状況で評価を最近は、呼吸困難を主訴に来院する患者さんが多いように感じます。その際、安静時のバイタルサインのみで帰宅の判断をしていないでしょうか。以前にもこの点は取り上げましたが(第12回 呼吸困難)、バイタルサインは「普段の状況」でも確認することを忘れないようにしましょう。普段歩行可能な方であれば、歩行してもらい、それでも症状の再燃が認められないかを確認しましょう。安静時、SpO2が問題ないから帰宅可能、それではダメですよ。歩いてもらったら、呼吸困難の訴えあり、呼吸数上昇、SpO2低下、そんな場合には再度精査が必要かもしれませんし、入院が必要かもしれませんから。帰宅の判断、その前に高齢者が多い救急外来では、特に表の内容を意識しましょう3)。肺炎や圧迫骨折、診断が正しく安静時に状態は落ち着いていたとしても、自宅では管理が難しいことはいくらでもあります。病気の重症度のみで帰宅or入院の判断ができないことを忘れてはいけません。表 帰宅の判断、その前に-高齢者がERから帰る前に必ず確認すべき8つのこと-画像を拡大するまた、救急外来で診断、治療介入し、その後の治療、経過観察をかかりつけの病院や診療所でフォローしていただくことも少なくありません。その場合も、このように対応する理由を患者さん、家族に理解してもらい、治療方針(ケアプラン)をかかりつけ医と共有する必要があります。紹介状は必須とは思いませんが、患者さんや家族が伝えることが難しい状態であれば、一筆でも簡潔に記載し、その助けとしてもらうのが望ましいでしょう。これを面倒くさいなどと思ってはいけません。薬の説明、ちゃんとしていますか?肺炎に対する抗菌薬や解熱薬、なんらかの痛みに対する鎮痛薬など、救急外来や一般の外来で処方することは日常茶飯事です。その際、薬の説明をどの程度行っているでしょうか?医療者に対して処方する場合には、薬の名前のみ伝えればよいかもしれませんが、一般の患者さんへ処方する際には、当然ながら十分な説明が必要です。みなさんが処方している薬を、患者さんは十分理解しないまま内服していることは少なくないのです。救急外来では、抗血栓薬や利尿薬を内服している患者さんに多く出会いますが、内服理由を確認すると「わからない」と返答されることもしばしばです(みなさんもそんな経験ありますよね?)。表にも「(5)新しい処方箋があれば、薬の相互作用について再確認して理解できているか?」という項目がありますが、救急外来では特に処方に関しては注意が必要です。初診の患者さんも多く、定期内服薬の詳細が把握できないこともあるかもしれません。また、アレルギーの確認を怠ってしまうかもしれません。しかし、それでは困ります。当たり前のことではありますが、きちんと把握する努力を怠らないようにしましょう。解熱鎮痛薬処方の際のポイントは?COVID-19の診断を受けた患者さんや家族から頻繁に相談されるのが、「熱が下がらない」、「喉の痛みが辛い」、「薬が効かない」といった内容です。外来診療中にも電話がかかってくることも多いです。そのような場合に、よくよく話を聞いてみると、病状の悪化というよりも薬の内服方法が不適切なことが少なくありません。薬が効かない? 本当は効いているんじゃない?患者さんが訴える「薬が効かない」、これはまったく効果がないというわけでは必ずしもなく、飲めば熱は下がるけれどもまた上がってきてしまう、その意味合いで使用していることもあるのです。これは薬が効いていないのではなく、薬効が切れただけですよね。つまり、薬の具体的な効果を説明していない、もしくは患者さんが理解していないが故に生じた訴えといえます。薬が効かない? 飲むタイミングの問題では?また、こんなこともあります。頭痛や喉の痛みを訴える患者さんが「薬が効かない」と訴えるものの、よくよく聞いてみると、「薬はあまり飲まない方がよいと思って、なるべく使用しないようにしていた。どうしても痛みが辛いから使用したがあまり効かない」と訴えるものです。なんでもかんでも薬を飲むのはお勧めできませんが、痛みに関してはピークに達してから内服するよりも、痛くなりかけている際に内服した方がピークを抑えることができ、症状はコントロールしやすいでしょう。片頭痛に対する鎮痛薬の内服のタイミングなど有名ですよね。さいごに今回の症例のように、COVID-19で予期される症状に関しては、具体的にいつどのように解熱鎮痛薬を使用するのかをわかりやすく説明する必要があります。「頓服」、この言葉も意外と伝わっていないので要注意です。薬剤師さんが丁寧に教えてくれる場合には問題ないかもしれませんが、市販薬や院内処方の場合には十分な説明がなされないこともありますよね。私は、解熱鎮痛薬を処方する際は、まずは毎食後に定期内服してもらい、症状が改善したら頓服へ切り替えていただくようにお話することが多いです。「今日、明日あたりは食後にこの薬を飲みましょう。朝起きて痛みがない、熱が下がって楽、そのような場合には、朝食後には飲まず、症状が出てきたら飲むようにしましょう」とこんな感じで説明しています。COVID-19の診断は、急性腹症や骨折診療に比べればすぐにつきます。診断に時間がかからないぶん、説明には十分時間をかけ、可能な限り患者さんの不安を取り除きつつ、不要な再受診を防ぐ努力をしていきましょう。1)「国民の皆さまへ 限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」2)Mochizuki K, et al. Acute Med Surg. 2016;4:172-178.3)Southerland LT, et al. Emerg Med Australas. 2019;31:266-270.

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この患者紹介は常識?非常識?【紹介状の傾向と対策】第1回

より良い患者紹介とは―患者紹介を深く考える現代医療は1つの医療機関のみで完結することがほとんどありません。患者を高次医療機関に紹介することもあれば、逆紹介されることもあります。また、院内でも他科に診療を依頼することもあれば、されることもあります。皆さまもご経験のとおり、臨床現場では、紹介状のやり取りを筆頭に、患者紹介に関する困り事やストレスを感じる場面は少なくありません。また、大学で私たちが受けた医学教育には、患者紹介のエチケットやマナー、診療情報提供書(以下、紹介状)の書き方などの実務的な講義はありませんでした。私が知る限り、患者紹介に関するルールやガイドラインも存在しません。そのためか、紹介状の質は非常に不均一だと感じています。しかし、患者紹介の仕方をルールやガイドラインで縛ることは、業務の柔軟性を損ないかねません。出来る限り、現場医師の自主努力に任されるのが理想だと考えていますが、最低限の患者紹介のエチケット・マナーに対し共通の認識を持つべきではないでしょうか。医師の7割が不満を抱えている、その理由は…本連載では患者紹介に関する医師同士のやり取り、診療科間の患者紹介をより円滑にするための方法を模索します。筆者が考える良い患者紹介とは、「最低限、紹介先の医師を困らせない」ことだと考えています。医師同士のやり取りの不調和は、最終的に患者さんの不利益につながります。そのためこの連載では患者を紹介するにあたり「すべきこと」「すべきでないこと」「留意すべきこと」をご提案していきたいと思います。第1回はその前段階として、勤務医、開業医の双方が各診療科の立場で何に困り、何にストレスを感じているか、現状を共有します。2022年2月にケアネットが「紹介状で困っていること」についてアンケートを実施しました。このアンケートには多くのフリーコメントが寄せられたので、その一部のコメントを見てみましょう。 「勤務医が感じる開業医への不満」併存疾患が多い患者は内科に丸投げ紹介先の診療科が不適切時間外・休日前の夕方ギリギリの紹介開業医の診療時間が過ぎると問い合わせても電話に出ない患者の言いなりで紹介してくる紹介についての患者説明と同意が不十分名刺に依頼を書く前医と患者間に生じたトラブルの情報を伝えない悪い情報を伏せている培養検体を取らず抗菌薬を開始してから患者を送ってくる処方理由が不明で問い合わせても不明のまま「開業医の勤務医への不満」必要な情報が記載されていない当該臓器以外の情報がない診断結果が分からない返信が遅い画像・採血データが添付されていない何も解決なく返される紹介の意図が不明患者への説明と紹介状の内容が食い違う抗血小板薬の継続期間の指示がない添付された画像を読み出せない<アンケート概要>内容  紹介状のやり取りで開業医/勤務医それぞれが困っていること、良かったと感じたことを調査実施日 2022年2月24日(木)調査方法インターネット対象  30代以上の会員医師 1,000人(開業医:500人、勤務医:500人)次回、具体的にどのような患者紹介をすればよいか、どのように紹介状を記載していけばよいか、考えていきたいと思います。

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原因不明の小児急性肝炎、英国44例の臨床像/NEJM

 2022年1月~3月に、英国・スコットランドの中部地域で小児の原因不明の急性肝炎が10例報告され、世界保健機関(WHO)は4月15日、Disease Outbreak Newsでこれに言及した。WHOはさらに、4月5日~5月26日までに33ヵ国で診断された同疾患の可能性例が少なくとも650例存在するとし、このうち222例(34.2%)は英国の症例であった。同国・Birmingham Women’s and Children’s NHS Foundation TrustのChayarani Kelgeri氏らは、今回、同施設に紹介された原因不明の急性肝炎44例の臨床像、疾患の経過、初期のアウトカムについて報告した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2022年7月13日号に掲載された。3つのカテゴリーの臨床アウトカムを評価 研究グループは、2022年1月1日~4月11日の期間に、同施設に紹介された原因不明の急性肝炎の小児について後ろ向きに検討を行った。 対象は、年齢10歳以下で、英国健康安全保障庁(UKHSA)による確定例の定義(2022年1月1日以降に10歳以下の小児で発症し、A~E型肝炎ウイルスや代謝性・遺伝性・先天性・機械的な原因に起因しない肝炎で、血清アミノトランスフェラーゼ値>500 IU/L)を満たした急性肝炎の患児であった。 これらの患児の医療記録が精査され、人口統計学的特性や臨床的特徴のほか、肝生化学検査、血清検査、肝臓指向性およびその他のウイルスの分子検査の結果と共に、画像上のアウトカムと臨床アウトカムが記録された。 治療は、同施設の急性肝不全プロトコールに準拠して実施され、広域スペクトル抗菌薬、抗真菌薬、プロトンポンプ阻害薬、ビタミンKの投与などが行われた。 臨床アウトカムは、(1)病態の改善(ビリルビン値およびアミノトランスフェラーゼ値の持続的な低下と、血液凝固能の正常化)、(2)肝移植、(3)死亡の3つのカテゴリーについて評価が行われた。90%でヒトアデノウイルスを検出、14%で肝移植、死亡例はない 急性肝炎で紹介された50例のうち、44例(年齢中央値4歳[範囲:1~7]、女児24例[55%])が確定例の定義を満たす肝炎を有していた。このうち13例が同施設に転院し、残りの患児は地元の施設で治療を受けた。2022年1月~4月の同施設への原因不明の急性肝炎による入院数および原因不明の急性肝不全による肝移植数は、いずれも2012~21年における年間症例数よりも多かった。 医療記録が入手できた患児(80%)は全例が白人であった。受診の主な理由は黄疸(93%[41/44例])が最も多く、次いで嘔吐(54%[24例])、下痢(32%[14例])、白色便(30%[13例])、腹痛(27%[12例])、嗜眠(23%[10例])の順だった。 ヒトアデノウイルスの分子検査を受けた30例では、27例(90%)が陽性であった。サイトメガロウイルス(CMV)は全例が陰性で、エプスタイン-バーウイルス(EBV)のカプシド抗原は2例が陽性で、核抗原は1例が陽性だった。 腹部超音波検査では、胆嚢壁肥厚が45%(20例)、軽度肝腫大が27%(12例)、軽度脾腫が18%(8例)で認められた。 38例(86%)は自然回復した。残りの6例(14%)は肝機能が持続的に悪化して急性肝不全に進展し、全例が肝移植を受けた。この6例中5例は急速に進行性の脳症を来し、黄疸発生から脳症発現までの間隔は6~7日だった。死亡例はなかった。肝移植を受けた6例を含む全例が自宅退院した。 UKHSAは、血液と肝組織のメタゲノム解析を行い、アデノ随伴ウイルス2やヘルペスウイルスを検出した。これらの所見の重要性については、現在、さらなる評価が進められている。 著者は、「多くの患児でヒトアデノウイルスが分離されたが、この疾患の病因におけるその役割は確立されていない」としている。

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処置後の予防的抗菌薬【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q25

処置後の予防的抗菌薬Q25症例とくに既往、アレルギー歴のない28歳男性、自宅でリンゴの皮剥きをしていた際に誤って左中指DIP腹側を切ってしまった。左中指DIP腹側に深さ3~4mm程度、長さ20mm程度の切創あり。明らかな神経障害や動脈性出血、腱損傷はなさそう。バイタルは安定しているが、止血をえられず、縫合処置が必要と判断される。非滅菌手袋もつけたし、指ブロックのうえ、創部を水道水でしっかり洗った。縫合し、ドレッシング材で被覆もしたぞ。あとは…創部の感染予防に抗菌薬を処方しないとな。何を処方しよう?

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バイクに乗ってアレが目に当たるとヤバイ【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第213回

バイクに乗ってアレが目に当たるとヤバイpixabayより使用われわれ異物論文の業界では、肛門、陰部に続く異物御三家が「眼」です。眼外傷は怖いです。いくつも論文を読んでいると、意外と眼予後っていいんだなと感じます。論文化されているものは、治療が成功した報告が多いですから、成功者バイアスが入っているのかもしれませんが…。Tamilarsan SS, et al.Ocular Injuries Due to Insect Spines (Ophthalmia Nodosa): Potential Hazard to Motorcyclists.Cureus. 2022 Mar 11;14(3):e23084.バイクに乗る時は、ヘルメットの着用が義務付けられています(道路交通法第71条)。50cc以下の原付も、走行時のヘルメット着用が義務付けられています。近所の大学生などが原付に乗っているとき、ハーフキャップタイプという眼が保護されていないヘルメットを被っていることがありますが、眼鏡をつけていない人などは、眼にほこりやゴミが入ることがあり、少し危険です。この論文は、バイクを運転している人で、運転中に昆虫が目に当たって眼球を損傷した4例のケースシリーズです。男性が3人、女性が1人で、年齢は18~24歳でした。視力が0.1まで低下した人もいました。全例に昆虫の毛状突起の角膜への侵入と、前房の障害が見られました。この昆虫の皮膚にある毛状突起が厄介で、これが角膜の中に入り込んでしまうと取れません。結節性眼炎に対しては、抗菌薬とステロイドの点眼をある程度継続する必要があります。前房から後房へ移動すると、眼科的には毛状突起が観察されなくなります1)。とにかく、眼を守るものを着用してバイクに乗りましょう、ということですね。ライダードクターの皆さんはご注意を。1)Ibarra MS, et al. Intraocular caterpillar setae without subsequent vitritis or iridocyclitis. Am J Ophthalmol. 2002 Jul;134(1):118-20.

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高齢患者の「薬が飲めなくなった」という状況に使えるのは?【非専門医のための緩和ケアTips】第30回

第30回 高齢患者の「薬が飲めなくなった」という状況に使えるのは?緩和ケアを実践していると、よく遭遇するのが「薬が飲めなくなった」という状況です。こんなとき、皆さんはどうしていますか? 症状緩和に必要な薬剤の投与を継続するための強い味方、皮下投与に関するお話です。今日の質問終末期、多くの患者さんは内服が難しくなります。がん疼痛などでオピオイドを使用していると、静脈投与に切り替えようと思っても末梢ルートが取れないことも多いです。貼付剤もあるのは知っていますが、レスキューが必要な場合、どのように対応すればよいのでしょうか?今回いただいた質問のような状況は、非常に多く経験します。終末期であれば内服ができなくなるのは当然のことです。また、がん患者や高齢者では、抗がん剤の影響や皮膚の脆弱性によって末梢ルートの確保が難しいこともよくあります。何度もルート確保に失敗すると、苦痛緩和のために行う処置が苦痛の原因になってしまう……。避けたい事態です。では、そんな時にどのようにすればよいのでしょうか? 緩和ケア領域では、しばしば皮下投与が行われます。今回の状況であれば、モルヒネやオキシコドンの注射薬がありますので、それらの持続皮下投与が使えます。皮下投与は静脈ルートの確保が必要ないので、手技的には非常に簡便です。認知症高齢者やせん妄患者が自己抜去してしまった際も、出血が少ないので安全です。また、投与可能な薬剤もオピオイドだけでなく、ハロペリドールや腸閉塞に対して使用するオクトレオチド、セフトリアキソンといった一部の抗菌薬も皮下投与が可能です。皮下投与には注意が必要な面もあります。一つは、静脈投与に比べて効果発現までに時間がかかる、という点です。非常に強い症状に対して急速な鎮静が必要、といった場合には向きません。また、皮下投与が可能な薬剤の多くは適応外使用となります。「経験上、安全かつ有効な投与が可能と見なされる」という位置づけで、この点は理解しておく必要があります。このあたりは皮下投与に限らず、緩和ケア領域で使用する薬剤では常に出てくる懸念です。オピオイドを皮下投与で行う場合は、少量ずつ持続投与します。そのために皮下投与用のデバイスが必要となり、多くの施設の緩和ケア病棟で利用されています。在宅医療の場合には、持続皮下投与のためのシリンジポンプが必要です。皮下投与が使えると、緩和ケアの対応の幅がぐっと広がります。デバイスが必要にはなりますが、ぜひ活用してください。今回のTips今回のTips内服が難しくなった患者さんには、皮下投与が有効です。

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「AZA」は何の薬?略語に潜む医療事故のリスク!?【知って得する!?医療略語】第14回

第14回 「AZA」は何の薬?略語に潜む医療事故のリスク!?AZAは何の薬を指す略語ですか?「AZA」と表記される可能性のある薬剤は複数あります。そのため、略語表記だけで薬剤名を判断するのは、少し慎重になる必要があります。本連載では医療略語を取り上げ、それにまつわる疾患や病態を紹介してきました。今回は医療略語について、筆者が普段考えていることや医療現場で感じてきたことを綴ります。近年の風潮かもしれませんが、メディアで略語表記を目にすることが増えた気がします。企業における役職1つを挙げてもCEO、CFO、CTO、CIS、COOなど英字略語表記をよく見かけます。しかし、筆者はパッとみた瞬間にその英字表記の意味や、その略語の原語が思い浮かばす、最初から日本語で書いたほうが分かりやすいのではないかと思う場面も少なくありません。ちなみに「CEO」は最高経営責任者、「CFO」は最高財務責任者、「CTO」は最高技術責任者、「CIS」は最高情報責任者、「COO」は最高執行責任者です。医療の世界でも略語表記はたくさんありますが、皆さんはカルテ記録で『AZA投与開始』という記録を見たとき、何の薬剤を想像しますか? 前後の文脈や使用された診療科などの情報がないと、略語を読み解くことは、なかなか難しいと思います。『AZA』という表記は、血液がんの治療に使用される「アザシチジン」を意図して記載される場合もあれば、免疫抑制剤の「アザチオプリン」あるいは利尿剤の「アセタゾラミド」も候補が挙がります。ある指導医がこのカルテ記載をもとに、研修医に処方を依頼したらどうでしょうか。指導医の意図したAZAと研修医の認識したAZAに違いがあったとしたら、それだけで医療事故が起きてもおかしくありません。なお、アセタゾラミドは「AZM」と記載されることもあり、抗菌薬のアジスロマイシン「AZM」と同一表記です。AZAから連想される薬剤●アザシチジン[Azacitidine]骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病治療薬●アザチオプリン[Azathioprine]免疫抑制薬●アセタゾラミド[Acetazolamide]炭酸脱水酵素阻害薬抗菌薬や抗悪性腫瘍薬をはじめ、多くの薬剤に略語表記があります。しかし、続々と新しい薬が登場する中で、略語表記は必ずしも特定の薬剤を指すとは限らず、一歩間違えれば誤認事故が生じるリスクを伴います。このことを私たちは改めて認識する必要があるのではないでしょうか。多忙な臨床現場において、略語を使用することは記載者の負担軽減にとても便利な手法です。しかし、その一方で読み手には略語の意味を読み解く必要があり、略語に突然遭遇すると戸惑いやストレスを感じさせるもの事実です。また、記載者が意図した意味に読み手が解釈しないリスクもあります。カルテをはじめとする医療記録は、多くの職種で情報を共有するものであるため、略語表記の使用は極力避け、可能な限り最小限に留めるのが望ましいと考えます。

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急性膵炎の抗菌薬処方はもう古い!?最新治療とは―診療ガイドライン2021発刊

 専門医でも抗菌薬や蛋白分解酵素阻害薬の投与が慣例となっている急性膵炎の治療。ところが、昨年12月に発刊された『急性膵炎診療ガイドライン2021年版(第5版)』で、遂に治療法へのメスが入ったのである。診断よりも治療法に重きを置いて今回の改訂がなされた理由について、急性膵炎診療ガイドライン改訂出版責任者の高田 忠敬氏(帝京大学附属病院)にインタビューした。 今回6年ぶりに発刊された急性膵炎診療ガイドライン第5版では、「予防的抗菌薬の投与がほぼ全例で行われている」「発症48時間以内の早期の経腸栄養が開始されていない」点を専門医に向けて問題提起している。急性膵炎の治療において栄養摂取は時間勝負であり予後改善の分岐点ともなることから、いかに早期に食事を開始するか、その方法や意義などが盛り込まれた。急性膵炎診療ガイドラインの推奨「予防的抗菌薬は投与しない」 急性膵炎診療ガイドライン2021年版のクリニカルクエスション(CQ13:予防的抗菌薬は急性膵炎の予後改善に有用か?)を見ると、予防的抗菌薬の投与について、軽症例の場合は「行わないことを推奨する」(強い推奨、エビデンスの確実性が高い)とされ、重症例もしくは壊死性膵炎の場合は「生命予後や感染性膵合併症発生に対する明らかな改善効果は証明されていない」(推奨なし)となった。ただし、胆石性膵炎で胆管炎を併発している場合のように予防的ではなく感染を伴った際には、治療薬として抗菌薬を使用する旨が記載されている。これについて高田氏は「現段階で重症例への予防投与も答えが出せない状況であるため、今後の研究が待たれる」と説明した。急性膵炎診療ガイドラインでは早期に経腸栄養を始めることが重要 続いて、軽症例の経腸栄養の早期開始について、同氏は「以前は腸を空にすることが善とされてきたが、近年では蠕動運動を保つという目的はもちろん、腸内環境を整えるためにも早期に経腸栄養を始めることが感染予防対策としても重要と報告されている」と述べた。また、急性膵炎診療ガイドライン2021年版のCQ16(重症急性膵炎に対する経腸栄養の至適開始時期はいつか?)が強い推奨、エビデンスの確実性高となっていることについて、「重症例の場合、通常の1.5倍ほどのカロリーが必要。それを補うためにも、腹痛や蠕動音が聴取できないなどの状態であっても禁忌条件に該当しない限りは静脈栄養に加えて経腸栄養を行うことが推奨される」とも説明した。*関連:CQ17 経腸栄養ではどこから何を投与するか?    CQ18 軽症膵炎ではどのように食事を再開するか? 重症例に対する、経腸栄養の禁忌条件や経腸栄養が可能な状態は以下のとおり。<経腸栄養の禁忌条件>1.高度の腸閉塞2.消化管閉塞3.消化管穿孔4.重篤な下痢5.難治性嘔吐6.活動性消化管出血7.汎発性腹膜炎8.膵性胸腹水<経腸栄養が可能な症状・所見>1.腹痛2.嘔気3.血清膵酵素上昇4.腸管蠕動音消失5.胃内容逆流(経鼻胃管からの排出)急性膵炎診療ガイドラインがスマホアプリとして初登場 一般的なガイドラインではクリニカルクエスチョンに対し解説が記載されていることが多いが、急性膵炎診療ガイドライン2021年版ではそれらを裏付けるための参考資料などはQRコードを利用して確認する仕様になっており、急性膵炎診療ガイドライン2021年版のp13などにもQRコードが掲載されている。それを読み取り、必要なページに瞬時にアクセスすることができるので、通常のガイドラインより必要な情報に集中することができる。また、急性膵炎診療ガイドライン2021年版Lはアプリにもなっているので、App storeにて書籍名を検索すれば誰でも無料で入手することができ、手軽に持ち歩くこともできる。 この機能に加え、患者がガイドラインを閲覧したり、医師がガイドラインを用いて説明したりする状況を鑑み「やさしい解説」が付記されている点も急性膵炎診療ガイドライン2021年版の大きなポイントで、患者に説明する際の使い勝手も良い仕様になっているので、まさに次世代ガイドラインとも言えるのではないだろうか。 最後に同氏は「抗菌薬投与も栄養管理も過去の経験則が代々引き継がれてきただけもので、エビデンスに基づく根拠がなかった。エビデンス重視の昨今において、ぜひ、本書もしくはアプリを活用いただき、最新の治療を理解いただくとともに悪しき慣習がなくなることを願う」と締めくくった。 なお、「日本消化器病学会誌」へ同氏の論文が、日本膵臓学会誌「膵臓」に『診療ガイドライン2021での巻頭言』が8月に掲載される予定だ。

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高リスクIgA腎症への経口ステロイドで転帰改善、用量は?/JAMA

 高リスクIgA腎症患者において、経口メチルプレドニゾロンによる6~9ヵ月の治療は、プラセボと比較して、腎機能低下・腎不全・腎疾患死亡の複合アウトカムのリスクを有意に低下させた。ただし、経口メチルプレドニゾロンの高用量投与では、重篤な有害事象の発現率が増加した。中国・北京大学第一医院のJicheng Lv氏らが、オーストラリア、カナダ、中国、インド、マレーシアの67施設で実施された多施設共同無作為化二重盲検比較試験「Therapeutic Effects of Steroids in IgA Nephropathy Global study:TESTING試験」の結果を報告した。本試験は、重篤な感染症が多発したため中止となったが、その後、プロトコルが修正され再開されていた。JAMA誌2022年5月17日号掲載の報告。メチルプレドニゾロンの用量を0.6~0.8mg/kg/日から0.4mg/kg/日に減量し、試験を再開 研究グループは、2012年5月~2019年11月の期間に、適切な基礎治療を3ヵ月以上行っても蛋白尿1g/日以上、推定糸球体濾過量(eGFR)20~120mL/分/1.73m2のIgA腎症患者503例を、メチルプレドニゾロン群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付けた。 メチルプレドニゾロン群は、当初、0.6~0.8mg/kg/日(最大48mg/日)を2ヵ月間投与、その後4~6ヵ月で減量・離脱(8mg/日/月で減量)するレジメンであったが、メチルプレドニゾロン群に136例、プラセボ群に126例、計262例が無作為化された時点で重篤な感染症の過剰発生が認められたため、2015年11月13日に中止となった。その後、プロトコルを修正し、メチルプレドニゾロン群は、0.4mg/kg/日(最大32mg/日)を2ヵ月間投与、その後4~7ヵ月で減量・離脱(4mg/日/月で減量)するレジメンに変更するとともに、ニューモシスチス肺炎に対する抗菌薬の予防的投与を治療期間の最初の12週間に追加した。 2017年3月21日に修正プロトコルで試験が再開され、2019年11月までに241例(メチルプレドニゾロン群121例、プラセボ群120例)が登録された。 主要評価項目はeGFR40%低下・腎不全(透析、腎移植)・腎疾患死亡の複合で、副次評価項目は腎不全などの11項目とし、2021年6月まで追跡調査した。メチルプレドニゾロン群で複合アウトカムが有意に減少、高用量では有害事象が増加 無作為化された503例(平均年齢:38歳、女性:198例[39%]、平均eGFR:61.5mL/分/1.73m2、平均蛋白尿:2.46g/日)のうち、493例(98%)が試験を完遂した。 平均追跡期間4.2年において、主要評価項目のイベントはメチルプレドニゾロン群で74例(28.8%)、プラセボ群で106例(43.1%)に認められた。ハザード比(HR)は0.53(95%信頼区間[CI]:0.39~0.72、p<0.001)、年間イベント率絶対群間差は-4.8%/年(95%CI:-8.0~-1.6)であった。 メチルプレドニゾロン群の各用量について、それぞれのプラセボ群と比較して主要評価項目に対する有効性が確認された(異質性のp=0.11、HRは高用量群0.58[95%CI:0.41~0.81]、減量群0.27[95%CI:0.11~0.65])。 事前に規定された11項目の副次評価項目のうち、腎不全(メチルプレドニゾロン群50例[19.5%]vs.プラセボ群67例[27.2%]、HR:0.59[95%CI:0.40~0.87]、p=0.008、年間イベント率群間差:-2.9%/年[95%CI:-5.4~-0.3])などを含む9項目で、メチルプレドニゾロン群が有意に好ましい結果であった。 重篤な有害事象の発現は、メチルプレドニゾロン群がプラセボ群より多く(28例[10.9%]vs.7例[2.8%])、とくに高用量群で高頻度であった(22例[16.2%]vs.4例[3.2%])。

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経口カルバペネム系抗菌薬テビペネム 重症尿路感染症でも有効(解説:宮嶋哲氏)

 多剤耐性グラム陰性桿菌に効果的な経口抗菌薬が必要とされているなか、テビペネムピボキシルハイドロブロミドは、βラクタマーゼ産生のフルオロキノロン耐性株など尿路病原性エンテロバクターに対して抗菌力を発揮する経口カルバペネム系抗菌薬である。 本研究は、テビペネム経口薬の非劣性に関する、欧米アフリカ諸国95ヵ所における国際多施設無作為化二重盲検比較の第III相試験である。試験デザインは、急性腎盂腎炎と複雑性尿路感染症を含む重症尿路感染症患者を対象に、テビペネム経口投与群(8時間ごと600mg投与)とertapenem静注投与群(24時間ごと1g投与)に1:1でランダムに割り付けている。主要評価項目はITT populationにおける投与19日目での全奏効率(臨床的治癒と良好な微生物学的奏効)、非劣性マージンは12.5%としている。 本研究に登録された成人1,372症例のうち、868症例が微生物学的なITT populationであった。ertapenem静注投与群の全奏効率61.6%に対して、テビペネム経口投与群の全奏効率は58.8%であった。臨床的治癒は、テビペネム経口投与群93.1%:ertapenem静注投与群93.6%であった。微生物学的奏効不良な症例のほとんどは再発性細菌尿を呈する無症候性患者であった。副作用に関しては、テビペネム経口投与群25.7%:ertapenem静注投与群25.6%であり、そのほとんどは軽度の下痢と頭痛であった。以上から、比較的重篤な急性腎盂腎炎と複雑性尿路感染症を伴う症例において、テビペネム経口薬は従来のカルバペネム静注薬に対して非劣性な抗菌力と同等な安全性を示した。 テビペネムピボキシルハイドロブロミドは、わが国で開発され2009年に製造販売承認を取得した経口カルバペネム系抗菌薬である。感染症治療上問題となっている多剤耐性菌に対して抗菌力を呈し、とりわけ経口薬による治療困難であった小児気道感染症例における有効性が示されてきた。本検討では尿路感染症でも有効性が示され、その臨床応用が期待されるが、薬剤耐性の観点から標準治療では効果が期待しえない症例に限定して使用することが望ましいと考える。

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コロナ外来患者に処方される抗菌薬、何が多い?/JAMA

 抗菌薬の使用は新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)を含むウイルスに対し、効果のない治療法であることは自明である。そこで、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のSharon V Tsay氏らは新型コロナ外来の高齢者に対する抗菌薬の処方状況を調査した。その結果、メディケア被保険者の新型コロナ外来患者の30%に抗菌薬が処方されており、そのうち50.7%がアジスロマイシンであったことも明らかになった。JAMA誌オンライン版2022年4月8日号にリサーチレターとして掲載された。 本研究は医療保険メディケアのキャリアクレームとパートDのイベントファイルを使用し、新型コロナ外来患者の診察とそれに関連して抗菌薬を処方された65歳以上の被保険者を特定。また、年齢、性別、人種、処方場所ごとに、抗菌薬を「処方された」または「処方されなかった」新型コロナ感染した被保険者の分布を比較するために、カイ二乗検定を行った。 主な結果は以下のとおり。・2020年4月~2021年4月の期間、116万9,120例が外来受診し、そのうち34万6,204例(29.6%)に抗菌薬が処方されていた。処方量は月ごとに異なり、新型コロナが感染拡大した2020~21年の冬にはその処方割合は高くなった(範囲:17.5%[2020年5月]~33.3%[2020年10月])。・処方は病院の救急外来が最も高く(33.9%)、次に遠隔診療(28.4%)、Urgent care*(25.8%)、診療所(23.9%)と続いた。・最も頻繁に処方された抗菌薬はアジスロマイシン(50.7%)であり、次にドキシサイクリン(13.0%)、アモキシシリン(9.4%)、レボフロキサシン(6.7%)だった。・アジスロマイシンの処方割合が最も高かったのはUrgent care(60.1%)で、遠隔医療(55.7%)、診療所(51.5%)、病院の救急外来(47.4%)と続いた。・年齢、性別、処方場所にも違いが観察された。・非ヒスパニック系白人患者には、ほかの人種および民族グループ(アメリカインディアン/アラスカ先住民24.1%、アジア/太平洋諸島人26.5%、黒人またはアフリカ系アメリカ人23.2%、ヒスパニック系28.8%)よりも頻繁に新型コロナに対して抗菌薬が処方されていた(30.6%)。*Urgent care:急病診療所。かかりつけの医師やクリニックが閉まっている場合に利用する施設 なお、研究者らは「新型コロナ治療にアジスロマイシンの利点は示されていないうえ、抗菌薬の耐性に影響を及ぼす。また、本研究は米国全人口やメディケア処方薬の適用範囲ではない65歳以上の集団を代表するものではないかもしれないが、外来患者での抗菌薬の処方を適正化し、高齢者集団における新型コロナのようなウイルス感染症に対する不要な抗菌薬の使用を回避することの重要性を強調する」としている。

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女性の頻尿、どう尋ねるべき?【Dr.山中の攻める!問診3step】第13回

第13回 女性の頻尿、どう尋ねるべき?―Key Point―1日3L以上の排尿と強い口渇があるかを確認する2回以上の夜間頻尿があると生活に支障をきたす医師が質問をしないと女性は尿失禁を訴えないことが多い症例:76歳 女性主訴)頻尿現病歴)2週間前から頻尿と排尿時痛がある。近くの診療所で抗菌薬の処方を受けたが、症状の改善はない。尿の排出時、下腹部に痛みを生じる。3日前からトイレに間に合わず尿を漏らすことが増えてきたため紙パンツを使用するようになった。夜間の排尿回数は5回。熟眠できない。既往歴)変形性関節症薬剤歴)なし生活歴)機会飲酒、喫煙:5本/日(20歳~)身体所見)体温36.8℃、血圧132/80mmHg、心拍数86回/分、呼吸回数18回/分意識:清明腹部:軟。膨隆なし。下腹部に軽度の圧痛あり経過)尿意切迫感と頻尿、切迫性尿失禁の症状から過活動膀胱を疑い牛車腎気丸を処方した。尿意切迫感は改善を認めた。その後、ナースに「最近、子宮脱が気になっている」との訴えがあった。子宮脱も夜間多尿の原因となっていた可能性がある。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!年をとると過活動膀胱に罹患する割合が増加する(70代で20%、80歳以上で35%)1)カルシウム拮抗薬は夜間頻尿を起こす成人女性の25%に尿失禁がある【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】多尿(>3L/日)か確認する2)問診:口渇の程度、飲水量、塩分摂取量、利尿薬、アルコールやカフェイン摂取心因性多飲症では1日3~5Lの飲水により低ナトリウム血症を起こすスポット尿のナトリウム濃度(mmol/L)を17で割ると、尿1LあたりのNaCl量(g)が推定できる。この数値に尿量(L)をかければ1日あたりの推定食塩摂取量となる多尿があれば、尿浸透圧を測定する。250mOsm/kg以下ならば水利尿、300mOsm/kg以上ならば浸透圧利尿である水利尿の原因:尿崩症(中枢性、腎性)、心因性多尿浸透圧利尿の原因:糖尿病、薬剤(マンニトール)、ナトリウム負荷、利尿薬、腎不全【STEP3-1】夜間は何度トイレに起きるか就寝後に2回以上、排尿のため起きなければならない症状を夜間頻尿と呼ぶ健常者では抗利尿ホルモン(バソプレシン)は夜間に多く分泌されるため、夜間尿は少なくなる。<夜間頻尿の原因>夜間のみ尿量が多くなる夜間多尿、膀胱容量の減少(過活動性膀胱、前立腺肥大症、間質性膀胱炎、骨盤臓器脱)、睡眠障害<夜間多尿の原因>高血圧、心不全、腎不全、睡眠時無呼吸症候群、寝る前の水分過剰摂取【STEP3-2】尿失禁はあるか2)3)4)◆新たに出現した尿失禁の鑑別診断(DIAPERS)Drug(薬剤)Atrophic vaginitis(萎縮性膣炎)Endocrine(高血糖、高カルシウム血症)Stool impaction(宿便)Infection(感染症:とくに尿路感染症)Psychological(うつ、認知症、せん妄)Restricted mobility(運動制限)(表)尿失禁のタイプ画像を拡大する<参考文献・資料>1)日本泌尿器科学会:頻尿(ひんにょう)とは2)Harrison’s Principles of Internal Medicine. 2018. p294-295,p3432-3436.3)MKSAP19 General Internal Medicine1. 2021. p95-98.4)山中克郎ほか. UCSFに学ぶ できる内科医への近道. 改訂4版. 2012. p343.

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