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090)お薬を多めに飲んじゃう患者さん!?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第90回 お薬を多めに飲んじゃう患者さん!?ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆先日外来で、前の週に切開排膿した炎症性粉瘤の患者さんを、処置室で診察しました。切開部位まわりの炎症もなく、きれいになっており、あとは傷がふさがるのを待つだけ、という状態。傷がふさがるまで創部のガーゼ交換だけ続けてもらい、先週処方した抗菌薬の内服は飲みきり終了でよい旨、お伝えしました。すると、患者さんから、漫画に描いたような返答が…。「いつも多めに飲んじゃうみたいで、もう2日前には終わってしまったんですよ~!」(笑顔)とのこと。内服薬で「飲み忘れがあり、余っている」というのはよく聞きますが、「多めに飲んでしまって、早く終わってしまう」というパターン(?)もあるとは…!?たくさん飲むと安心するのか? はたまた、飲んだことを忘れて、また飲んでしまうのか…?? そう言えば以前にも、「効き目が増すだろうと思って(自己判断で)倍の量を飲んでいました」という患者さんがおられました(そのときはたしか、鎮痛薬)。あらためて、「いろんなタイプの人がいるものだなあ」と思った次第です。お薬は用法用量を守って、正しくお使いください…!?それでは、また次の連載で。

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レジオネラ症への効果、キノロン・マクロライド・2剤併用で比較

 レジオネラ症は、レジオネラ肺炎を引き起こす。レジオネラ肺炎は市中肺炎の1~10%を占め、致死率は6.4%という報告もある1)。『JAID/JSC感染症治療ガイド2023』では、第1選択薬として、キノロン系抗菌薬(レボフロキサシン、シプロフロキサシン、ラスクフロキサシン、パズフロキサシン)、マクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン)が推奨されている2)。しかし、これらの薬剤による単剤療法や併用療法の有効性の違いは明らかになっていない。そこで、忽那 賢志氏(大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学 教授)らの研究グループは、DPCデータを用いて、レジオネラ症に対するキノロン系抗菌薬単独、マクロライド系抗菌薬単独、これらの併用の有効性を比較した。その結果、併用療法と単剤療法には有効性の違いがみられなかった。本研究結果は、International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2024年2月15日号で報告された。 研究グループはDPCデータを用いて、2014年4月1日~2021年3月31日までにレジオネラ症により入院した3,560例の患者情報を分析した。対象患者を入院から2日以内に投与された抗菌薬に基づき、キノロン系単独群(2,221例)、マクロライド系単独群(775例)、併用群(564例)に分類した。傾向スコアを用いた逆確率重み付け法により、併用群を対照として院内死亡率、入院期間、入院費用を比較した。 主な結果は以下のとおり。・調整後の院内死亡率は、キノロン系単独群4.6%、マクロライド系単独群3.1%、併用群4.5%であり、併用群と各単独群との間に有意差は認められなかった。・調整後の入院期間は、それぞれ12日、11日、13日であり、併用群と各単独群との間に有意差は認められなかった。・調整後の入院費用は、それぞれ53万4千円、50万9千円、55万7千円であり、併用群と各単独群との間に有意差は認められなかった。 著者らは、本研究結果について「レジオネラ症の治療において、キノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬を併用しても、単独療法と比較して大きな利点がないことが示唆された。副作用が増加する可能性を考慮すると、併用療法を選択する際には慎重な検討が必要である」とまとめた。

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単純性尿路感染症、新規経口抗菌薬gepotidacinが有効/Lancet

 世界219施設で実施された単純性尿路感染症の女性患者を対象とする無作為化二重盲検実薬対照第III相非劣性試験「EAGLE-2試験」および「EAGLE-3試験」において、新規経口抗菌薬gepotidacinはnitrofurantoinと比較し、治療成功率に関して非劣性(EAGLE-2試験)および優越性(EAGLE-3試験)が検証された。ドイツ・ユストゥス・リービッヒ大学ギーセンのFlorian Wagenlehner氏らが報告した。gepotidacinは、新規の作用機序を有するトリアザアセナフチレン骨格の抗菌薬で、他の抗菌薬とは異なる作用機序と独自の結合部位により細菌のDNA複製を阻害し、2つの異なるII型トポイソメラーゼ酵素をバランスよく阻害する。著者は、「gepotidacinは、臨床的に重要な薬剤耐性菌を含む一般的な細菌性尿路病原体に対して有効な新規クラスの経口抗菌薬として、患者に大きな恩恵をもたらす可能性がある」とまとめている。Lancet誌2024年2月24日号掲載の報告。gepotidacin群とnitrofurantoin群に無作為化、1日2回5日間経口投与 EAGLE-2試験およびEAGLE-3試験の対象は、出生時女性で妊娠しておらず、12歳以上かつ体重40kg以上であり、排尿困難、頻尿、尿意切迫感、下腹部痛の症状のうち2つ以上を有し、さらに、亜硝酸塩または膿尿(白血球数>15/HPF、白血球エステラーゼ3+または強陽性)が認められた単純性尿路感染症患者。 対象者を、gepotidacin群(1,500mgを1日2回5日間経口投与)またはnitrofurantoin群(100mgを1日2回5日間経口投与)に、年齢区分(18歳未満、18~50歳、50歳以上)および再発歴で層別化し、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、治療開始10~13日後の治癒判定(Test-Of-Cure:TOC)のための来院時における治療成功(細菌学的消失と臨床的消失の複合)であった。解析対象集団は、nitrofurantoin感受性の細菌性尿路病原体(≧105CFU/mL)を有し、試験薬を少なくとも1回投与された患者とした。非劣性マージンは、米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)のガイダンスに従って10%(片側p=0.025)とした。安全性は、無作為に割り付けられた試験薬を少なくとも1回投与された全患者を対象に評価した。10~13日後の治療成功率、gepotidacin群50.6~58.5%、nitrofurantoin群43.6~47.0% EAGLE-2試験は2019年10月17日~2022年11月30日、EAGLE-3試験は2020年4月23日~2022年12月1日に実施され、それぞれ1,531例および1,605例が無作為に割り付けられた(EAGLE-2試験:gepotidacin群767例、nitrofurantoin群764例、EAGLE-3試験:805例、800例)。両試験は中間解析の結果、有効中止となった。したがって、本報告の主要解析集団には、中間解析のデータカットオフ時点でTOC来院を満たした、または、TOC来院までに治療効果が得られなかったことが判明した患者のみが含まれた。 治療成功が得られた患者の割合は、EAGLE-2試験でgepotidacin群50.6%(162/320例)、nitrofurantoin群47.0%(135/287例)(補正後群間差:4.3%、95%信頼区間[CI]:-3.6~12.1)、EAGLE-3試験でそれぞれ58.5%(162/277例)、43.6%(115/264例)(補正後群間差:14.6%、95%CI:6.4~22.8)であった。gepotidacinは、両試験においてnitrofurantoinに対し非劣性であることが示され、EAGLE-3試験では優越性が示された。 主な有害事象は、gepotidacin群が下痢(発現率:EAGLE-2試験14%[111/766例]、EAGLE-3試験18%[147/804例])、nitrofurantoin群が悪心(発現率:4%[29/760例]、4%[35/798例])であった。ほとんどは軽度または中等度で、生命を脅かすまたは致死的な有害事象は認められなかった。

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薬歴からサルファ剤アレルギー患者の過敏症を回避【うまくいく!処方提案プラクティス】第58回

 今回は、化学構造式のスルホンアミド構造に目を向けて、類似構造を有する薬剤の薬剤過敏症を未然に回避した事例を紹介します。サルファ剤はスルホンアミド構造をもつ薬剤の総称1)ですが、意外な薬剤がこの構造を有していることがあります。副作用やアレルギーの記録を活用し、どのような有害エピソードがあったのかを聴取してみましょう。患者情報70歳 女性(外来)基礎疾患高血圧症、骨粗鬆症副作用歴「サルファ剤」とだけ薬歴に記載処方内容1.アムロジピンOD錠5mg 1錠 分1 朝食後2.カルベジロール錠10mg 1錠 分1 朝食後3.エルデカルシトールカプセル0.75μg 1カプセル 分1 朝食後4.アレンドロン酸35mg 1錠 起床時 毎週月曜日服用【新規処方】1.セレコキシブ錠100mg 2錠 分2 朝夕食後2.レバミピド錠100mg 2錠 分2 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんは、基本動作はすべて自立していましたが、今回腰を痛めて整形外科を受診しました。そこで鎮痛薬を希望し、セレコキシブとレバミピドが処方されました。当薬局で処方箋を受け付け、鑑査のタイミングで薬歴を確認したところ、サルファ剤のアレルギーが登録されていることに気がつきました。そこで患者さんに、感染症治療の抗菌薬で副作用が出たことがあったかどうか確認しました。すると、過去に尿路感染症治療で服用したスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠で全身に発疹と呼吸困難感が生じたと話してくれました。今回の処方薬をそのまま服用した場合、構造活性相関としてセレコキシブのスルホンアミド構造によりサルファ剤アレルギーが生じる可能性が高いため、医師に処方変更を提案することにしました。スルホンアミド骨格(セレコキシブ添付文書より)処方提案と経過医師に電話で、患者にサルファ剤によるアレルギー症状の既往があり、発疹と呼吸困難感が生じていたことを報告しました。今回処方となったセレコキシブもスルホンアミド構造を有していて、過敏症による有害反応の可能性があることを伝えました。医師より代替薬はどうしたらよいか相談があったので、安全面などを考慮してアセトアミノフェン500mg 3錠 分3 毎食後を提案し、了承を得ました。患者は、アセトアミノフェンを7日間内服して腰痛も改善し、その後はアセトアミノフェンも終了となりました。1)岡田 正人ほか. 薬局. 薬剤過敏症歴がある患者の薬物治療. 2018;69:63.2)セレコックス錠 添付文書

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A群溶血性レンサ球菌咽頭炎ってどんな病気?

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 (溶連菌感染症)ってどんな病気?• どの年齢でもみられますが、幼児期から学童期の小児で多く報告されます• のどの痛み、38度以上の発熱、倦怠感や嘔吐といった症状が多く、舌が真っ赤になり小さなブツブツができる「イチゴ舌」がみられることがあります• 多くの場合、熱は3~5日以内に下がり、症状は1週間以内に改善します• まれに重症化し、のどや舌・全身に赤み・発疹がひろがる「猩紅熱(しょうこうねつ)」に移行することがあります治療法は?他の人にうつさないようにするには?•症状があり、検査をして感染が認められた場合は、抗菌薬での治療を行います。腎炎などを防ぐため、症状が改善しても医師に指示された期間は薬を飲むことが大切です•咳やくしゃみなどのしぶきに含まれる細菌を吸い込む「飛まつ感染」、細菌が付いた手で口や鼻に触れる「接触感染」、食品を介して細菌が口に入って感染する「経口感染」があります•のどの痛みがひどい場合は柔らかく薄味の食事を工夫し、水分補給を心がけましょう•感染力は病気になりはじめの時期、症状が急に現れる時期に最も高いとされます•手洗い・うがいを行いましょう•マスクの着用も有効です出典:東京都保険医療局「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 (溶連菌感染症)について」国立感染症研究所「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは」Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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米国皮膚科学会がにきび治療ガイドラインを改訂

 米国皮膚科学会(AAD)が、2016年以来、改訂されていなかった尋常性ざ瘡(にきび)の治療ガイドラインを改訂し、「Journal of the American Academy of Dermatology(JAAD)」1月号に公表した。本ガイドラインの上席著者で、AADの尋常性ざ瘡ガイドラインワークグループの共同議長を務める米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院皮膚科のJohn Barbieri氏は、「今回のガイドラインには、新しい外用治療薬と経口治療薬に関する内容が含まれている」と述べている。 このガイドラインは、新たに実施したシステマティックレビューの結果を踏まえて2016年のガイドラインを改訂したもの。その主な内容として、エビデンスに基づく18項目の推奨事項と、にきびの管理に有益と考えられる実践(グッドプラクティス)に関する5つの声明が提示されている。 18項目の推奨事項のうち、「強い推奨」とされたのは7項目あり、その内容は以下の4点にまとめられる。・皮膚上のアクネ菌を抑制する効果がある外用過酸化ベンゾイルの使用。・毛穴の詰まりを改善し、炎症を軽減するためのアダパレン、トレチノイン、タザロテン、トリファロテンなどの外用レチノイドの使用。・細菌と炎症レベル低減のための外用抗菌薬、またはドキシサイクリンなどの経口抗菌薬の使用。・上記の全ての薬剤を必要に応じて併用すること。 また、グッドプラクティスに関する5つの声明は、以下の通りである。・にきびの管理には、それぞれの薬剤の作用機序を考慮した併用療法が推奨される。・経口抗菌薬の使い過ぎは薬剤耐性菌の出現や抗菌薬関連の合併症発生につながり得るため、限定的な使用にとどめるべきである。・経口抗菌薬は、過酸化ベンゾイルなどの他の局所療法薬と併用することで薬剤耐性菌出現のリスクを低減させることができる。・大きいにきびや結節がある患者に対しては、炎症と痛みを早く和らげるためにコルチコステロイドの注射療法が勧められる。・上記の外用薬や経口薬が奏効しない重症患者に対しては、イソトレチノインによる治療を検討する。 最後に、AADが「条件付き」とし、ケースバイケースで医師の判断に委ねた推奨事項として、以下のものがある。・治療薬の候補には、にきびを誘発している可能性があるホルモンを標的とするクラスコテロンクリームもある。また、経口避妊薬やスピロノラクトンなどのホルモン治療薬もホルモンバランスを原因とするにきびの治療に役立つ可能性がある。・サリチル酸クリームは毛穴の詰まりを解消し、皮膚の角質を除去する効果がある。・アゼライン酸クリームは、毛穴の詰まりを解消し、細菌を死滅させ、にきび跡のシミを薄くする効果が期待できる。・経口のミノサイクリンまたはサレサイクリンは、にきびに関連する皮膚の細菌と戦い、炎症を和らげる効果が期待できる。 このほかAADは、ケミカルピーリング、レーザー、光治療器、マイクロニードルなどによるにきび治療を推奨するには、裏付けとなるエビデンスが少な過ぎると述べている。また、食習慣の改善、ビタミンや植物性製品などの代替療法を支持するエビデンスも不足しているとしている。さらに、ブロードバンド光治療、強力パルス光治療、アダパレン0.3%ゲルの使用は非推奨とされた。 Barbieri氏はAADのニュースリリースの中で、「われわれは、にきび患者の抱える懸念に取り組み、最善の治療法を決めるために努力を重ねてきた結果、これまで以上に多くの選択肢を患者に提供することができた。これと同じくらい重要なこととして、皮膚科医は、これらの治療選択肢の全てにアクセスできるようにしておくべきだ」と述べている。

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グラム陰性菌血症への抗菌薬、早期経口スイッチの効果は?

 抗菌薬は多様な疾患に処方されており、経口投与は点滴投与と比較して医療者・患者負担が少ないが、その効果に違いはあるのか。合併症のないグラム陰性菌血症の患者を対象に、抗菌薬を早期に経口投与に切り替えた場合と静脈内投与を継続した場合の90日死亡リスクを比較した研究結果が発表された。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のSandra Tingsgard氏らによる本研究は、JAMA Network Open誌2024年1月23日号に掲載された。 本試験は、対象試験エミュレーションの枠組みを用いて実施されたコホート研究で、2018年~21年、デンマーク・コペンハーゲンの4病院で診療を受けた合併症のないグラム陰性菌血症の成人の観察データを対象とした。追跡期間は90日間で、初回血液培養後4日以内に経口抗菌薬に切り替えた場合と、5日以上静脈内投与を継続した場合の90日全死因死亡率を比較した。絶対リスク、リスク差(RD)、リスク比(RR)推定のため、プールロジスティック回帰を用いてintention-to-treat解析およびper-protocol解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・計914例(年齢中央値74.5歳、男性56.0%)が組み入れられ、433例(47.4%)が早期切り替え群、481例(52.6%)が長期静脈内治療群に割り付けられた。99例(10.8%)が追跡期間中に死亡した。・長期静脈内治療群は、早期切り替え群と比較して年齢が高く、菌血症の進行がより重篤で、合併症の負担が大きかった。ベースライン時にこれらの差を調整し、per-protocol解析ではベースライン時の交絡因子と時間変動交絡因子の両方を調整し、割り当てられた治療戦略からの逸脱例は除外した。・死亡率は、長期静脈内治療群のほうが高かった(69例[14.3%]対30例[6.9%])。intention-to-treat解析では、90日全死因死亡率は早期切り替え群で9.1%(95%信頼区間[CI]:6.7~11.6)、長期静脈内治療群で11.7%(95%CI:9.6~13.8)であり、RDはー2.5%(95%CI:ー5.7~0.7)、RRは0.78(95%CI:0.60~1.10)であった。per-protocol解析では、RDはー0.1%(95%CI:-3.4~3.1)、RRは0.99(95%CI:0.70~1.40)と、両群に差はなかった。 研究者らは「4日以内の早期に経口抗菌薬へ切り替えた場合の90日全死因死亡率は、静脈内治療を継続した場合と同程度であり、早期の経口投与切り替えが効果的な代替手段となる可能性を示唆している」としている。

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抗真菌薬の過剰処方が薬剤耐性真菌感染症増加の一因に

 米国では、医師が皮膚症状を訴える患者に外用抗真菌薬を処方することが非常に多く、それが薬剤耐性真菌感染症の増加の一因となっている可能性のあることが、米疾病対策センター(CDC)のJeremy Gold氏らによる研究で示唆された。この研究結果は、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」1月11日号に掲載された。 抗真菌薬に耐性を示す白癬(カビの一種である皮膚糸状菌を原因菌とする感染症)は、新たに現れつつある非常に大きな脅威の一つである。例えば、南アジアでは近年、外用や経口の抗真菌薬が効かない白癬が大流行した。このような薬剤耐性白癬の症例は米国の11の州でも確認されており、患者には広範囲に及ぶ病変が現れ、診断が遅れる事態が報告されているという。 抗菌薬の乱用が薬剤耐性細菌の増加につながるように、真菌も抗真菌薬に曝露すればするほど、薬剤耐性真菌が自然に増えていく。CDCのチームは、世界中で報告されている薬剤耐性真菌感染症の増加は、外用の抗真菌薬の過剰処方が原因ではないかと考え、2021年のメディケアパートDのデータを用いて、外用抗真菌薬の処方状況を調べた。データには、抗真菌薬(ステロイド薬と抗真菌薬の配合薬も含める)の処方箋の数量や処方者などに関する情報が含まれていた。 その結果、2021年にメディケアパートD受益者に処方された外用抗真菌薬の件数は645万5,140件であることが明らかになった。最も多かったのは、ケトコナゾールの236万4,169件(36.6%)、次いでナイスタチンの187万1,368万件(29.0%)、クロトリマゾール・ベタメタゾンの94万5,838件(14.7%)が続いた。101万7,417人の処方者のうち、13万637人(12.8%)が外用抗真菌薬を処方していた。645万5,140件の処方箋の40.0%(257万9,045件)はプライマリケア医の処方によるものだったが、処方者1人当たりの処方件数は皮膚科医で最も多く(87.1件)、次いで、足病医(67.2件)、プライマリケア医(12.3件)の順だった。さらに、645万5,140件の処方箋の44.2%(285万1,394件)は、処方数が上位10%に当たる1万3,106人の処方者により処方されたものだった。 Gold氏らは、抗真菌薬処方にまつわる大きな問題は、ほとんどの医師が皮膚の状態を見ただけで診断しており、「確認診断検査」を行うことがほとんどない点だと指摘する。さらに研究グループは、ほとんどの外用抗真菌薬が市販されていることを指摘した上で、「この研究結果は、おそらくは外用抗真菌薬の過剰処方の一端を示しているに過ぎない」との見方を示している。外用抗真菌薬の中でも、特に、ステロイド薬と抗真菌薬を組み合わせたクロトリマゾール・ベタメタゾンの多用は、薬剤耐性白癬の出現の大きな要因であると考えられている。この薬は、鼡径部、臀部、脇の下など、皮膚が折り重なる部分に塗布すると、皮膚障害を引き起こす可能性がある上に、長期にわたって広範囲に使用すると、ホルモンバランスの異常を引き起こすこともあると、研究グループは説明している。 こうしたことを踏まえて研究グループは、「真菌による皮膚感染症が疑われる場合、医療従事者は慎重に抗真菌薬を処方すべきだ」と結論付けている。さらに、「過剰処方や薬剤耐性真菌感染症の危険性を減らすために、医師は外用抗真菌薬や抗真菌薬・ステロイド薬配合薬の正しい使用法について患者を教育すべきだ」と付言している。

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市中肺炎、β-ラクタム系薬へのクラリスロマイシン上乗せの意義は?

 市中肺炎に対するβ-ラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用の有効性が報告されているが、これらは観察研究やメタ解析によるものであった。そこで、ギリシャ・National and Kapodistrian University of AthensのEvangelos J. Giamarellos-Bourboulis氏らは、無作為化比較試験により、β-ラクタム系抗菌薬へのクラリスロマイシン上乗せの効果を検討した。その結果、クラリスロマイシン上乗せにより、近年導入された評価基準である早期臨床反応が有意に改善した。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2024年1月3日号で報告された。 本研究の対象は、18歳以上の市中肺炎患者278例であった。主な適格基準は、敗血症の評価に用いられるSOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコア2点以上、プロカルシトニン値0.25ng/mL以上などであった。対象患者を標準治療薬(第3世代セファロスポリン静注またはβ-ラクタム系薬+β-ラクタマーゼ阻害薬静注)で治療を行うプラセボ群、標準治療薬にクラリスロマイシン(500mgを1日2回)を併用するクラリスロマイシン群に1対1に無作為に割り付け、7日間投与した。主要評価項目は、早期臨床反応※であった。※:治療開始から72時間後において、以下の(1)と(2)を両方満たすこと。(1)呼吸器症状の重症度スコアが50%以上低下(2)SOFAスコアが30%以上低下またはプロカルシトニン値が良好(ベースラインから80%以上低下または0.25ng/mg未満) 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目の解析には、プラセボ群133例、クラリスロマイシン群134例が組み入れられた。・主要評価項目の早期臨床反応を達成した患者の割合は、プラセボ群が38%であったのに対し、クラリスロマイシン群は68%であり、クラリスロマイシン群が有意に改善した(群間差:29.6%、オッズ比[OR]:3.40、95%信頼区間[CI]:2.06~5.63)。・新たな敗血症はプラセボ群24%、クラリスロマイシン群13%に認められ、クラリスロマイシン群で有意に少なかった(ハザード比:0.52、95%CI:0.29~0.93、p=0.026)。・重篤な有害事象はプラセボ群53%、クラリスロマイシン群43%に発現した(群間差:9.4%、OR:1.46、95%CI:0.89~2.35)。重篤な有害事象は、いずれも治療薬との関連は認められなかった。

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2023年、読んでよかった!「この医学書」/会員医師アンケート

2023年も多くの医学書が刊行されました。CareNet.comでは、会員医師1,000人(内科、循環器科、呼吸器科、消化器科、精神科/心療内科・各200人)に、「今年読んでよかった医学書」についてアンケートを実施しました(今年刊行された本に限らず、今年読んだ本であればOK)。アンケートでは「ご自身の専門分野でよかった本」「専門分野以外でよかった本」を1冊ずつ、理由も添えて挙げてもらいました。本記事では、複数の医師から名前の挙がった書籍を、お薦めコメントと共に紹介します(アンケート実施日:12月5日)。ぜひ、年末年始の読書の参考にしてください。内科幅広いテーマの書籍が「専門分野」として挙げられた内科。『今日の治療薬』(南江堂)、『ハリソン内科学』(メディカル・サイエンス・インターナショナル)、『当直医マニュアル』(医歯薬出版)といった「ド定番」のほか、糖尿病治療に関する書籍と「日本内科学会雑誌」を挙げる人が目立ちました。『ジェネラリストのための内科外来マニュアル 第3版』(金城 光代ほか[編]、医学書院、2023年)内科外来のトップマニュアルが6年ぶりの改訂。内科医以外からも多くの推薦がありました。●推薦コメント「外来診療に役立った」「疾患別に緊急性や重症度などを考えさせるように導く内容となっていて面白い」『胃炎の京都分類 改訂第3版』(春間 賢[監修]、日本メディカルセンター、2023年)多くの画像で胃炎を解説する定番書の改訂第3版。●推薦コメント「慢性胃炎に対する内視鏡的・肉眼的考察により、これまでの慢性胃炎の概念を体系化した書物」「臨床に生かせる」『内科学 第12版』(矢崎 義雄・小室 一成[編]、朝倉書店、2022年)初版は1977年、病態生理を中心に内科的疾患の最新の知見を集大成した改訂12版。●推薦コメント「鉄板です」「ザ・定番と思われるため」循環器科内科医からも多くの推薦があった『ジェネラリストのための内科外来マニュアル』のほか、個別テーマでは心電図、PCIを扱った書籍が多く挙げられました。『循環とは何か? 虜になる循環の生理学』(中村 謙介[著]、三輪書店、2020年)難解な循環の生理学を、深くかつわかりやすく解説。●推薦コメント「面白い」「知識の整理になった」『PCIで使い倒す IVUS徹底活用術 改訂第2版』(本江 純子[編]、メジカルビュー社、2020年)「もっとこうしたらIVUSをより有効に活用できる」という手順・方法などを、実例と共に解説。●推薦コメント「IVUSの基本的な読影やトラブルシューティングなど、理論的にわかりやすかった」「説明がわかりやすく、実践的」『心不全治療薬の考え方,使い方 改訂2版』(齋藤 秀輝ほか[編]、中外医学社、2023年)心不全治療薬の整理のほか、使い分けや未知の事柄も追記した実践的な書の改訂版。●推薦コメント「いつも参考にしています」「心不全治療薬の“革命”を経て…、U40新世代が作り上げるバイブル」呼吸器科「間質性肺炎」「肺がん」「喘息」「気管支鏡」「人工呼吸」「咳」など、「専門」とする書籍テーマのバリエーションが多様だった呼吸器科。回答者によってさまざまな疾患に対応していることが垣間見える結果となりました。『ポケット呼吸器診療2023』(倉原 優[著]、シーニュ、2023年)CareNet.comの連載でもおなじみの倉原氏による定番の一冊の最新版。●推薦コメント「毎年非常に詳しく書かれているから」「ガイドラインや最新の治療薬のアップデートを記憶するのに役立つ」「呼吸器診療のtipsがコンパクトにまとめられている」『誤嚥性肺炎の主治医力』(飛野 和則[監修]、吉松 由貴[著]、南山堂、2021年)飯塚病院 呼吸器内科の著者らによる誤嚥性肺炎診療の実践書。●推薦コメント「気を付けるポイントを再認識した」「読みやすく、わかりやすかった」『抗菌薬の考え方,使い方 ver.5』(岩田 健太郎[著]、中外医学社、2022年)未曽有のコロナ禍を経て、新たに刊行された改訂版。●推薦コメント「大学の授業で習うべき重要な内容」「基本的な抗菌薬の知識を臨床の面から解説してある」「普段何気なく使用している抗菌薬の使用方法を見直すきっかけになった」消化器科内科医からも多く挙げられた『胃炎の京都分類 改訂第3版』のほか、医学誌「胃と腸」や『胃と腸アトラス』を「基本知識、専門知識がよくわかる」「読影の参考になる」「症例問題集が面白く勉強になる」と推薦する声が目立ちました。『専門医のための消化器病学 第3版』(下瀬川 徹ほか[監修]、医学書院、2021年)消化器専門医が知っておきたい最新知見を各領域のエキスパートが解説。●推薦コメント「内容が新しくてよい」「専門医として知っておくべき内容がまとめてあり、わかりやすい」「網羅的に消化器病の知識が記されており、教科書兼辞書として重宝している」『カール先生の大腸内視鏡挿入術 第2版』(軽部 友明[著]、日本医事新報社、2020年)内視鏡手技をテーマとした書籍が多いなか、内視鏡挿入のテクニックを動画付きで解説した本書を挙げる人が目立ちました。●推薦コメント「図が豊富」「基本的な内容が理解できた」「わかりやすく、新しい発見があった」『患者背景とサイトカインプロファイルから導く IBD治療薬 処方の最適解』(杉本 健[著]、南江堂、2023年)炎症性腸疾患(IBD)の治療薬について、著者独自の観点から患者ごとの最適解の考え方を提供。●推薦コメント「目から鱗でした」「わかりやすく、的確な具体例もある」精神科/心療内科他科と比較して同じ本を選択した回答者が多く、刊行から時間が経過した本も多く選ばれる傾向がありました。『精神診療プラチナマニュアル 第2版』(松崎 朝樹[著]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2020年)精神診療に必要かつ不可欠な内容をハンディサイズに収載。●推薦コメント「ノイヘレン(新人)時代にこういった入門書があればよかった。今でも復習に役立つ」「内容がわかりやすくまとまっている」「最新の話題が記載されている」『[新版]精神科治療の覚書』(中井 久夫[著]、日本評論社、2014年)「医者ができる最大の処方は希望である」。精神科医のみならず、すべての臨床医に向けられた基本の書。●推薦コメント「読みやすい」「改めて読み直してみて、初心を思い出せた」『カプラン臨床精神医学テキスト 第3版』(井上 令一[著・監修]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2016年)DSM-5準拠、高評と信頼を得た最高峰のテキストの改訂版。●推薦コメント「精神科医が学ぶことがおおむね網羅されている」「DSM-5に準じ体系化されていて、たくさんの疾患が網羅されている」「精神科専門医試験もここから多く出ていた」専門も専門外も!「信頼のシリーズ」アンケートの設問では「事典やガイドライン、医学雑誌以外の本を推薦ください」と条件を付けたものの、医師にとって最も身近であるこれらの書籍や、医学生・研修医、非専門医、コメディカルを対象とした定番シリーズを挙げる方も多くいました。「極論で語る」シリーズ(丸善出版)●推薦コメント「循環器疾患についてメカニズムと対応方法をわかりやすく解説してくれる」(『極論で語る循環器内科』/循環器科)、「体液コントロールにおける腎臓の視点を取り入れることができる」(『極論で語る腎臓内科』/循環器科)「病気がみえる」シリーズ(メディックメディア)●推薦コメント「看護学校の講師をしていますが、初心に返ることができた」(循環器科)、「基礎の確認になった」(循環器科)「レジデントのための」シリーズ(日本医事新報社)●推薦コメント「内科診療の疑問をEBMの側面でまとめてくれている」(『レジデントのための 内科診断の道標』/精神科)、「実臨床に即しており、非常にわかりやすい」(『レジデントのための これだけ輸液』/呼吸器科)どの科も必須「このテーマ」新型コロナウイルス感染症が収まり切らないなか、「専門外」の良書としてどの科の医師からも名前が挙がった本には、感染症をテーマとするものが多数ありました。『レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版』(青木 眞[著]、医学書院、2020年)初版から20年。読み継がれてきた「感染症診療のバイブル」の最新版。●推薦コメント「抗菌薬の選択に参考となる」(呼吸器科)『感染症プラチナマニュアル Ver.8 2023-2024』(岡 秀昭[著]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2023年)2015年初版、ベストセラー「感染症診療マニュアル」の改訂第8版。●推薦コメント「実臨床に即しており、非常にわかりやすい」(呼吸器科)キラリと光る「新定番」絶対数としてはさほど多くないものの、最近刊行された注目の書籍が、複数の科の医師から「専門外の好著」として名前が挙がりました。『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』(松田 光弘[著]、医学書院、2022年)皮膚科疾患のロジックが身に付く、フローチャートを用いた解説が好評の一冊。●推薦コメント「皮膚科が苦手だったが、まさに目からウロコ」(内科)、「皮疹を診る際の皮膚科医の思考過程がよくわかる」(内科)、「他科の医師でも皮疹診療についての基本がわかる」(呼吸器科)『世界一わかりやすい 筋肉のつながり図鑑』(きまた りょう[著]、KADOKAWA、2023年)100点以上のオールカラーイラストで筋肉のつながり・仕組みを平易に解説した一般書のベストセラー。●推薦コメント「筋肉の解剖学的特徴がわかりやすい」(内科)、「イラストがよい、わかりやすい」(消化器科)『心電図ハンター 心電図×非循環器医』(増井 伸高[著]、中外医学社、2016年)非循環器医をターゲットに、即座に判断できない微妙な症例を集め、心電図判読のコツを紹介。●推薦コメント「実際の臨床の場面を想定した形での判断基準などがわかりやすい」(内科)、「知りたいことがコンパクトにまとめてある」(呼吸器科)こんな本も! 医師ならではの一冊医学書以外でも、医師ならではの視点から、熱のこもったコメントと共に寄せられた本がありました。『蘭学事始』(杉田 玄白[著]、緒方 富雄[校註]、岩波文庫、1959年)江戸後期、杉田 玄白が著した蘭学創始期の回想録。●推薦コメント「印象に残った」(呼吸器科)『医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者』(大竹 文雄・平井 啓[編著]、東洋経済新報社、2018年)●推薦コメント「インフォームドコンセントからSDMになり、なんとなく感じていた違和感が、行動経済学的な考え方によりすっきりした」(消化器科)『嫌われる勇気』(岸見 一郎・古賀 史健[著]、ダイヤモンド社、2013年)アドラー心理学を解説する、100万部突破のベストセラー。●推薦コメント「承認欲求に気付くことができた」(循環器科)『わたしが誰かわからない ヤングケアラーを探す旅』(中村 佑子[著]、医学書院、2023年)●推薦コメント「一体ヤングケアラーとは誰なのか。世界をどのように感受していて、具体的に何に困っているのか。取材はドキメンタリーを読むようだ」(消化器科)

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小児インフルエンザ治療でのタミフル使用の実態とは

 米国では、インフルエンザに罹患した小児にはタミフルなどの抗ウイルス薬を処方することが推奨されているにもかかわらず、その処方率は低く、特に2歳未満の小児では5人に3人が同薬を処方されていないことが新たな研究で明らかになった。米ヴァンダービルト大学モンロー・カレル・ジュニア小児病院の小児科医であるJames Antoon氏らによるこの研究の詳細は、「Pediatrics」に11月13日掲載された。 この研究は、IBM MarketScan Commercial Claims and Encounters Databaseを用いて、米国の50州での民間保険に関連する取引データの中から2010年7月1日から2019年6月30日の間の外来または救急外来での18歳未満の小児に対する処方箋の請求データを収集し、小児インフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬処方の動向を調査したもの。抗ウイルス薬の処方は、オセルタミビル(商品名タミフル)、バロキサビル(商品名ゾフルーザ)、またはザナミビル(商品名リレンザ)が処方された場合と定義された。主要評価項目は、小児インフルエンザ患者での抗ウイルス薬の処方箋受取率(抗ウイルス薬の薬局請求数を対象小児の総数で割ったもの)、副次評価項目は、インフルエンザの診断を受けた患者のうち抗ウイルス薬による治療を受けた患者の割合と、物価の上昇を考慮した抗ウイルス薬のコストとした。 その結果、研究対象期間中における治療用・予防用を合わせた抗ウイルス薬の処方件数は141万6,764件であり、そのほとんど(99.8%)がオセルタミビルであることが明らかになった。研究対象期間全体で、1インフルエンザシーズン当たりの抗ウイルス薬の平均処方件数は小児1,000人当たり20.6件であり、インフルエンザシーズンにより4.35件から48.6件の変動が見られた。 抗ウイルス薬により治療された患者の割合は、年齢層では12歳以上、インフルエンザシーズンでは2017/2018年シーズン、地理別では東南中央地域で特に高かった。これに対して、インフルエンザ合併症のリスクが高い2歳未満のインフルエンザ患者のうち、ガイドラインに則った抗ウイルス薬による治療を受けた患者の割合は40%未満(1,000人当たり367件の処方)と低かった。 物価の上昇を考慮した抗ウイルス薬の総コストは2億845万8,979ドル(1ドル150円換算で312億6884万6,850円)であり、1処方当たりのコスト(中央値)は111ドル(同1万6,650円)から151ドル(同2万2,650円)の間であった。 Antoon氏は、「ガイドラインでは、インフルエンザの小児患者に対しては、年齢を問わず抗ウイルス薬による治療が推奨されているにもかかわらず、われわれの研究から、2歳未満の小児で同治療が施されたのは40%に満たないことが明らかになった。また、全ての年齢層で抗ウイルス薬の使用率が低かったことも気に掛けるべき重要な結果だ」と話す。 また、インフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬の使用状況は、地域により大きく異なることも示された。この点についてAntoon氏は、「この結果は、特に最も弱い立場にある小児でのインフルエンザの予防と治療に改善の余地があることを浮き彫りにするものだ」との見方を示す。研究グループは、このような地域差が生じる原因として、小児に対する抗ウイルス薬の使用を推奨する国のガイドラインが周知されていない可能性や、副作用への懸念、あるいは薬効に対する信頼不足が存在する可能性があると推測している。 研究グループは、「今回の研究結果は、小児患者でのインフルエンザの管理の質を向上させる必要性を強調するものだ」と結論付けている。Antoon氏は、「外来で小児のインフルエンザ患者を治療することで、症状の持続期間、家庭内感染、抗菌薬の使用、中耳炎などのインフルエンザ関連の合併症が減少することが報告されている」と補足している。

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化学眼外傷【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第9回

今回は化学眼外傷についてです。洗顔料や洗剤、化粧品などの化学物質が目に入ったという経験は誰でも一度はあると思います。私も皿洗い中に洗剤が目に入って痛い思いをしたことがあります。私の場合は目を洗えば症状が消失しましたが、化学物質の種類や経過によっては失明の恐れがあることが知られているため、ちょっとした受傷でも恐怖を覚える患者さんは少なくありません。救急外来に化学眼外傷の患者さんが来るのはたいてい夜です。日中であれば眼科を受診するため、眼科以外の開業医の先生が診察する機会はまれかもしれません。しかし、万が一来院したときのために初療を知っておくことは重要です。今回は、化学眼外傷患者が受診した際にどのような対応が必要かを解説します。<症例>30歳、男性主訴目に殺虫剤が入った受診2時間ほど前、家に虫が入ったため殺虫剤を使用した。目を離したすきに子供が殺虫剤を使用し、それが患者の顔面にかかった。その後、目がひりひりするため電話で問い合わせをしてから受診。既往歴、アレルギー歴、内服薬、バイタル:特記事項なし両目に結膜充血ありこれは、私が近くに眼科がないとある南方の島の病院で働いていたときの症例です。眼科を受診するためには、船+車で3~4時間程度かかります。「眼科に電話で相談する」が最も適切な回答だとは思いますが今回はそれはナシにして…。眼表面の異物に対して非専門医ができる治療は「洗浄」です。とにかく洗います。上記の症例では電話で問い合わせがあったため、私は「まず10分間水道水で洗ってから来て」と伝えました。化学眼外傷の初療で重要なことは「なるべく早く洗浄して、化学物質を洗い流す」です1)。診療ストラテジー(1)視力評価視力は眼のバイタルサインと呼ばれるほど重要ですので、視力を必ず確認しましょう。視力検査のランドルト環があればよいのですが、なければ「いつもと見え方が違いますか?」と質問し、視力障害がないかを判断しましょう。(2)化学物質の評価次に、何が目に入ったか聞いてpHを調べてみましょう。目に入った成分のpHを調べる最も優れた方法はインターネットで検索することです。多くの患者は眼に入ったものが何かわかっていますので、「商品名、SDS※」もしくは「商品名、pH」と検索すれば大抵の商品のpHはわかります。※SDS:Safety Data Sheet(安全データシート)目に入ったものがわからない、もしくは商品名を調べてもわからない場合は、pH試験紙で眼表面のpHを調べて、正常範囲を逸脱しているかどうかを確認します。人間の眼のpHは大体6.5~7.0、高くて8.0で日内変動があります2,3)。これより大きく外れた場合は緊急性が高いです。眼表面のpHの測定をするには、尿試験紙のpHの部位を当ててもよいですし、pH測定用の試験紙でも構いません。pH試験紙のpHごとの色アルカリだとどす黒くなり、酸性だと明るい赤になります。試しに家にあったハイター(pH12)を試験紙に付けてみたところこんな色でした。ハイターをpH試験紙につけてみたちなみにこの患者さんの目に入った殺虫剤を検索したところ「pH 該当しない」となっていました。そのため眼表面のpHを測定したところ、pH7.0と正常範囲内でした(後日、「該当しないとはどういう意味?」と経済産業省に問い合わせたところ、「本当は掲載しなければならないそうで対応します」と返事をいただきました)。(3)pHで組織障害を推測成分が強酸(pH<4)もしくは強アルカリ(pH>10)の場合は可及的速やかに眼球の洗浄が必要となります。とくに強アルカリの場合、「水酸化イオンと陽イオンに解離し、細胞膜の脂肪酸を鹸化しながら、眼球の上皮、間質、内皮を破壊する」という事象が生じます。わかりにくいのですが、端的に言うと「傷が深い」です。この患者さんは眼表面のpHが正常範囲内なので組織障害は低いと考えました。(4)鎮痛、洗浄治療は洗浄です。とにかく洗うことが重要です。しかし、結膜や角膜に障害が強い場合は、痛みで目が開けられなかったり、水をかけられなかったりすることがあります。その場合は、オキシブプロカイン点眼薬を投与して除痛します。除痛ができたら洗浄を開始します。多くの文献では最低2Lの水道水もしくは生理食塩水での洗浄を推奨しています4,5)。瞼の裏などに洗い残しがあることがあるため、必ず上眼瞼、下眼瞼を順番に反転させて眼球を動かしながら奥まで洗浄しましょう。強酸や強アルカリの成分の場合、化学物質が洗い流されていることを確認することが重要です。洗浄後に再度pH試験紙を使用し、正常pHである6.5~8.0になっていることを確認できれば洗い流せたと判断します。強アルカリはなかなか落ちませんので注意が必要です。ハイターを触ったことがある方は、あのネトネトした感じが洗っても洗っても落ちないという経験があると思います。私は実際にアルカリ眼症の洗浄をしたことがありますが、10Lの生理食塩水で洗ってもまだpH試験紙がどす黒い色をしていました。結局眼科に相談し、さらに10Lを追加して洗いましたが、やはりどす黒く、再度眼科と相談して引き継ぎました。なお、本症例の疼痛は違和感程度であったため、鎮痛薬は使用せず2Lの水道水で洗浄して終了としました。(5)洗浄後洗浄後の対応ですが、私は強酸や強アルカリ成分による外傷、視力障害がある場合は必ず緊急で眼科に相談するようにしています。pHが逸脱していなくても、オキシブプロカイン点眼を使わなければいけないほど疼痛が強い場合は眼表面に強い障害を起こしている可能性が高いので、抗菌薬入りの点眼薬と内服の鎮痛薬を処方して後日眼科に相談しています。オキシブプロカイン点眼薬でなく、内服の鎮痛薬を処方する理由は、オキシブプロカイン点眼薬の連続使用により創傷治癒遅延が生じる可能性があるという報告があるためです。しかし、創傷治癒遅延が起こったと記載しているのは症例報告のみで、近年の複数のメタアナリシスでは有害事象の増加は認めなかったという報告もあり、今後のプラクティスは変化するかもしれません6)。オキシブプロカイン点眼薬の効果はとても良好なので、点眼して痛みがなくなったら「治った」と思い、その後眼科に行かずに悪化したという事例を聞いたことがあるので、もしオキシブプロカイン点眼薬を処方するときは必ず眼科に受診するように念押ししましょう。軽い疼痛や無症状であれば、2Lの水道水で洗浄して帰宅、何かしらの症状が生じるようなら眼科を受診するように指示します。本症例は洗浄後に症状が消失したのでとくに処方はなく、目の見えにくさや目の強い痛みが出た場合は眼科を受診するよう指示しました。化学眼外傷は非専門医にはとっつきにくいですが、なるべく早く洗浄することが重要です。万が一対処が求められたときの参考になれば幸いです。●成分がわからずpH試験紙もない場合眼に入ったものが何かわからず、pH試験紙もない場合はどうしましょう? 何があってもまずは洗浄です。先述したとおり2Lの水道水または生理食塩水で洗浄し、その後は症状に合わせて方針を決めます。軽い痛みで物もしっかり見えていれば洗浄で終了。強い痛みもしくは視力障害があれば、角膜に障害があると考えて眼科に紹介します。●オキシブプロカイン点眼薬がない場合鎮痛用の点眼薬がない施設もあるかもしれません。代替薬として比較的多くの病院にあるのがリドカイン製剤(スプレー、ゼリー、局所注射用)だと思いますが、眼球に滴下し使用することは推奨されていません。これは完全に私の見解ですが、疼痛が強いということは眼表面に強い障害が起きており、洗浄が必要な状態です。リドカイン製剤しかない場合であっても、リスク・ベネフィットを考えてその場にあるリドカインを使用して洗浄しても許容されるのではないかと考えます。●眼洗浄の裏技大量の生理食塩水などで洗い続けるのは大変ですし、洗浄のためにずっとそばにいなければなりません。そのため、ある程度洗浄したところで私は点滴の先を切り取って眼瞼の内側に当てて自然滴下で洗浄します。点滴を用いた目の洗浄1)Gelston CD. Am Fam Physician. 2013;88:515-519.2)佐々木 克哉. 日本眼科學会雜誌. 1995;99:676-682.3)Abelson MB, et al. Archives of Ophthalmology. 1981;99:301.4)Rodrigues Z. Emergency Nurse. 2009;17:26-29.5)Solim MAN, et al. Ther Adv Ophthalmol. 2021;13:25158414211030429.6)St.Louis WUSoMi. Topical Anesthetics for Corneal Abrasions.

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第173回 2024年度診療報酬改定、医療従事者の待遇改善を示す/厚労省

<先週の動き>1.2024年度診療報酬改定、医療従事者の待遇改善を示す/厚労省2.医師の働き方改革、宿日直体制の維持が困難に/日本医師会3.薬価差6.0%、薬価引き下げで医療費の抑制と賃上げ実現へ/厚労省4.梅毒感染者数、3年連続で過去最多を更新、全国的に急増5.移植医療推進へ、脳死判定から臓器摘出まで医療機関を全面支援/厚労省6.医師免許を含む40資格、マイナンバーで手続き効率化/厚労省1.2024年度診療報酬改定、医療従事者の待遇改善を示す/厚労省厚生労働省は、11月29日に開いた社会保障審議会の医療部会と医療保険部会で、2024年度の診療報酬改定の基本方針の骨子案を示した。骨子案によると、人口構造の変化に伴い、医療の支え手の長期的な不足が見込まれ、人材確保のために医療従事者の賃上げを推進する方針。厚労省は、看護補助者などの給与水準が低い医療従事者の処遇改善が求められており、重点課題の医療分野での働き方改革と人材確保に対処する。看護補助者などのコメディカルの賃上げは、医療分野で他産業に比べて遅れており、人材確保が急務とされ、長時間労働の改善も含まれている。このほか、診療報酬改定の基本方針には、地域包括ケアシステムの深化、医療DXの推進、質の高い医療の提供、医療保険制度の安定性向上などが挙げられている。さらに物価高騰や賃上げの状況を踏まえ、患者が必要とする医療を受けられるよう機動的な対応が強調されている。日本医師会など医療関係団体は、診療報酬の「本体」部分の大幅な引き上げを求めているが、財務省は診療報酬の「本体」部分の引き下げを提案しており、医療機関の経営状況や利益剰余金の活用を根拠にしている。医療従事者の待遇改善は、国の財政に大きな影響を与えるため、引き続き大きな関心を呼ぶとみられる。参考1)診療報酬 引き上げ?引き下げ?来年度改定に向け調整本格化へ(NHK)2)令和6年度診療報酬改定の基本方針(骨子案の概要)(厚労省)3)診療報酬改定の基本方針、厚労省が骨子案示す 社保審の医療部会と医療保険部会に(CB News)2.医師の働き方改革で宿日直体制の維持が困難に/日本医師会日本医師会は、11月29日に定例記者会見を開き、医師会が実施した「医師の働き方改革と地域医療への影響」に関する調査の結果を明らかにした。この中で、医師の働き方改革により、約3割の医療機関が将来的に宿日直体制の維持が困難になると回答していたと報告した。調査は、医師の働き方改革の準備状況や医師派遣の動向、宿日直許可の取得状況、および改革が医療提供体制に与える影響を把握するために行われた。調査は全病院および有床診療所を対象にして、1万4,128施設のうち4,350施設から回答を得ていた。調査結果によれば、医師派遣を行う医療機関の約68.1%が派遣を継続する予定であり、医師を受け入れる医療機関の約69.0%も継続を予定している。しかし、約7割以上の医療機関が宿日直許可を取得しているものの、将来的な維持には不安を抱えている。医療機関全体でみると、約54%が「とくに変化なし」と回答しているが、約30.0%が宿日直体制の維持が困難、約25.1%が派遣医師の引き上げ、約14.4%が救急医療の縮小・撤退を懸念している。地域医療提供体制に関しては、約37.7%が「とくに変化なし」と回答している一方で、約30.0%が救急医療体制の縮小・撤退、約19.9%が専門的な医療提供体制の縮小・撤退を懸念している。この調査結果を受け日本医師会の城守常任理事は、医師の派遣・受け入れについて、現時点で縮小や未定が約3割も存在し、今後の派遣状況によっては地域医療の提供体制に大きな影響が出る可能性があると指摘している。また、医師の働き方改革が将来の地域医療提供体制に及ぼす影響を「把握できていない」と回答した割合も高かったことを危惧している。今後、都道府県別に集計したデータを都道府県医師会にフィードバックし、行政と共有して地元の医療機関支援への検討材料にする計画であり、来年2月に再度調査を行う意向を示している。なお、厚生労働省は今月に入り、「医師の働き方改革」特設サイトを開設し、働き方改革について医療機関や医療従事者だけでなく、患者さんに対しても情報発信を進めている。参考1)「医師の働き方改革」特設サイト(厚労省)2)医師の働き方改革と地域医療への影響に関する日本医師会調査結果について(日本医師会)3)「宿日直体制の維持が困難」3割 日本医師会、働き方改革調査(共同通信)3.薬価差6.0%、薬価引き下げで医療費の抑制と賃上げ実現へ/厚労省厚生労働省は、12月1日に開いた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、2023年の医薬品価格調査の速報結果を報告し、市場実勢価格の平均乖離率が約6.0%であったことを明らかにした。薬価の乖離率は、2022年度と比較して1.0ポイント低下し、過去30年間で最も価格差が小さかった。この結果を受けて、政府は2024年度の診療報酬改定で薬価を引き下げる方針を示している。また、後発医薬品の数量シェアは約80.2%に上昇しており、政府の目標を上回っていた。厚労省は薬価の引き下げにより、国費ベースで最大900億円程度の医療費抑制が可能としており、医師や看護師などの人件費や技術料に当たる本体部分の引き上げに充てられる予定。ただし、医療職の賃上げ率は全産業平均の3.58%に対して2%程度と低く、医療機関の経営が厳しい状況が指摘されている。財務省は、コロナ対策による補助金投入などを理由に、本体部分の引き下げを求めており、年末まで引き続き議論を重ね、改定率が決められる見込み。参考1)令和5年医薬品価格調査(薬価調査)の速報値(厚労省)2)24年度の診療報酬改定で「薬価」引き下げ方針…仕入れ価格が6%低下受け医療費抑制図る(読売新聞)3)薬の市場価格、薬価を6%下回る 国費900億円程度抑制可能か(毎日新聞)4)医薬品は6.0%、材料は2.5%の価格乖離、「薬価の実勢価格改定」全体で1,200億円程度の国費縮減可能では-中医協総会(Gem Med)5)薬価乖離率は6.0%、厚労省速報 22年度比1.0ポイント縮小(CB News)4.梅毒感染者数、3年連続で過去最多を更新、全国的に急増日本全国で梅毒の感染者数が急増しており、とくに九州地方では人口比での報告数が多いことが明らかになった。2023年11月19日時点で全国の感染者数は1万3,251人に達し、これは前年の1万3,228人を上回り、3年連続で過去最多を更新している。大都市圏では、とくに感染者数が多く、東京都、大阪府、福岡県が多数を占めているが、長崎県や鳥取県など大都市圏以外の地域でも感染者が急増している。梅毒は性接触を主な感染経路とする細菌性の感染症で、初期には口や性器にできものができるが自然に消え、その後全身に発疹が出ることがある。適切な抗菌薬治療を受ければ完治が可能だが、放置すると重大な症状を引き起こす可能性があり、妊婦から胎児への母子感染のリスクもある。参考1)梅毒の感染者数が3年連続で過去最多を更新(NHK)2)梅毒の感染者数が急増 九州は人口比でも多め(朝日新聞)5.移植医療推進へ、脳死判定から臓器摘出まで医療機関を全面支援/厚労省厚生労働省は、国内の臓器提供者(ドナー)の不足に対処するため、移植医療の進展を妨げる要因を調査し、支援策を検討している。国内の約150病院を対象に脳死判定や臓器提供につながらなかった件数を調査し、2024年度に必要な支援を計画している。とくに、救急医療の現場で臓器提供の前提となる脳死判定について、家族への提案をためらっていることが一因とされている。わが国では、平成9年に「臓器の移植に関する法律」が施行され、平成21年に一部改正されている一方で、人口100万人当たりの臓器提供者数が米国の51分の1、韓国の9分の1と低く、臓器移植を希望する登録者約1万6,000人のうち、年間約400人しか移植を受けられていない現状。この問題に対応するため、厚労省は2024年度から、脳死判定から臓器摘出まで一貫して人材不足の病院を支援する取り組みを始める。これには、移植医療の実績が豊富な拠点病院から医師や看護師などを派遣する計画が含まれる。さらに、厚労省は拠点病院を再編し、「移植医療支援室」を持つ病院を拡充する。この拡充には、脳死ドナーからの臓器移植を実施することを条件にする。この新たなタイプの拠点病院から派遣される医療者は、臓器のチェックやドナーの全身管理、臓器摘出手術に至るまでの一連の流れに携わることとなる。参考1)脳死移植の支援拡充、「判定」から臓器摘出まで医療機関サポート(読売新聞)2)厚労省、連携体制を調査 要因探り人材面など支援 臓器提供者、米国の51分の1(日経新聞)3)法施行26年、脳死での臓器提供1,000件に 意思表示進まず海外と差 移植体制整備へ病院が連携(東京新聞)4)臓器移植医療対策のあり方に関する提言(厚労省)6.医師免許を含む40資格、マイナンバーで手続き効率化/政府政府は、令和3年1月に「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会」で取りまとめられた報告書をもとに、マイナンバー制度を活用して、医師や介護福祉士など約40の国家資格の事務手続きをデジタル化する計画を進めている。報告書によると、2024年度中に資格取得や変更などの申請手続きがオンラインで完結できるようになる。現在、資格取得時や引っ越しの際に、戸籍抄(謄)本や住民票の写しを提出する必要があるが、新システムではこれらの書類提出が省略できるようになる。この行政のデジタル化は、医療・福祉分野の31職種を含む約80の国家資格に適用される予定で、マイナンバーカードの専用サイト「マイナポータル」を通じて、資格情報とマイナンバーの連携が行われる。このシステムの稼働により、資格保有者と資格管理者の負担を軽減するほか、各種届出の漏れの防止や、個人の状況に応じたきめ細やかな就業支援を通して有資格者などの掘り起こしが可能となるなどメリットが見込まれている。参考1)社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用について(厚労省)2)「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会」報告書(同)3)マイナンバーカードの普及・利活用拡大(デジタル庁)4)医師や介護福祉士など40の国家資格、24年度中に手続きデジタル化…マイナ活用(読売新聞)

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小児感染症に対する抗菌薬、多くはもはや効果を見込めず

 薬剤耐性菌の増加に伴い、一般的な小児感染症の治療において長らく使用されてきた抗菌薬の多くがもはや効果を失っていることが、新たな研究で明らかにされた。論文の筆頭著者であるシドニー大学(オーストラリア)感染症研究所のPhoebe Williams氏は、「抗菌薬の使用に関する世界的なガイドラインにこの結果を反映させる必要がある」と述べるとともに、乳幼児や小児用の新しい抗菌薬の開発に重点を置くべきだと呼び掛けている。この研究結果は、「The Lancet Regional Health - Southeast Asia」に10月31日掲載された。 世界保健機関(WHO)は、薬剤耐性菌の増加を世界的な公衆衛生上の脅威のトップ10に位置付けている。世界全体では、毎年約300万人の新生児が敗血症を発症し、57万人が死亡しているが、その原因の多くは薬剤耐性菌に有効な抗菌薬がないことである。 Williams氏は、「薬剤耐性菌の問題は他人事ではなく、すぐそこに差し迫っている脅威だ。薬剤耐性菌は、われわれが考えている以上のスピードで増加している。多剤耐性の侵襲性感染症や年に何千人もの子どもの死亡を食い止めるためには、新しい解決策が早急に必要だ」と主張する。 Williams氏らの今回の研究は、東南アジアおよび太平洋地域の低・中所得世帯の子どもに処方された、経験に基づく抗菌薬治療がどの程度有効であるのかを検討したもの。研究グループは、システマティックレビューにより抽出した、11カ国で収集された6,648の細菌分離株の感受性データを使用してパラメーター化した、WISCA(weighted incidence syndromic combination antibiogram)と呼ばれる薬剤感受性のデータベースを構築。これにより、新生児と小児の敗血症や髄膜炎に対する治療において、WHOが推奨する特定の抗菌薬(アミノペニシリン、ゲンタマイシン、第3世代セファロスポリン、カルバペネム)がどの程度有効であるか(coverage)を推定した。 その結果、新生児の敗血症/髄膜炎に対して、アミノペニシリンは26%、ゲンタマイシンは45%、第3世代セファロスポリンは29%、カルバペネムは81%有効であることが示された。一方、小児の敗血症と髄膜炎に対しては、アミノペニシリンはそれぞれ37%と62%、ゲンタマイシンは39%と21%、第3世代セファロスポリンは51%と65%、カルバペネムは83%と79%有効であった。 こうした結果を受けてWilliams氏は、「小児や新生児に対する新たな抗菌薬による治療法の研究に、資金を優先的に投入する必要がある」との見解を示す。「抗菌薬に関する臨床研究は成人に焦点が当てられることが多く、小児や新生児は置き去りにされている。そのため、小児や新生児に対する治療法の選択肢は少なく、新しい治療法に関するデータも極めて限定的だ」と指摘する。 論文の上席著者で、アンコール小児病院(カンボジア)のカンボジア・オックスフォード・メディカルリサーチユニットのディレクターを務めているPaul Turner氏は、「この研究により、小児の重篤な感染症治療に有効な抗菌薬について、その利用可能性に関する重要な問題が浮き彫りになった。また、薬剤耐性菌の拡大状況をモニタリングするために、質の高い検査データが必要であることも明示した」と述べている。

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第72回 中国依存型から脱して、「ペニシリン危機」を乗り越えろ!

中国への原薬依存Unsplashより使用2018年に突如セフェム系抗菌薬の供給が危ぶまれる状況になったことを覚えているでしょうか。また、呼吸器内科では、とくにカルバペネム系抗菌薬の不足が一部の抗酸菌感染症で「標準治療ができない」という事態を引き起こしました。当時、ほとんどが中国に原薬の製造を依存してしまっており、何らかのトラブルで流通が懸念されると、日本のβラクタム系抗菌薬が壊滅的な事態に陥ってしまうのです。原薬に使われている化学物質は、2000年頃までは国内の供給だったのですが、コスト削減のため安価な中国製にスイッチされています。しかし、中国における原薬価格のダンピングによって、国内の原薬工場はほとんど閉鎖となりました。2015年1月に施行された環境保護法の全面改正により、原薬の値段がこの数年間で2倍以上に高騰しています。さらに、ジェネリック医薬品の台頭や医療費抑制もあって、抗菌薬の薬価は全体的に値下げが進んでいます。そのため、現在抗菌薬は製薬会社にとって儲からない製品になりつつあるわけです。2019年に、関連4学会が政府に要望書を提出し、とくに欠かせない薬剤の安定供給を要請しています。そして、2022年12月に、国民の医療において重要な抗菌薬としてペニシリン系抗菌薬およびセフェム系抗菌薬の原薬が国産化される方向になりました1)。ようやく、といったところです。公益財団法人日本感染症医薬品協会に「βラクタム系抗菌薬原薬国産化委員会」も設置されました。これによって原薬を国内で作っていこうという方向に舵が切られました。製造可能なメーカーは限られているペニシリン系では6-APAという原薬がカギを握っていますが、この生産には、菌株、大型培養設備、大量の水、廃水処理設備が必要になります。これが可能な医薬品メーカーは限られています。また、早くても2025年くらいから6-APAの製造が本格的に稼働することになりますので、原薬が日本で恒常的に流通するのはもっと先になるかもしれません。こういった施策が可能な大きな母体のメーカーは限られていますが、日本の感染症の未来のために、今こそ中国依存型を脱するときです。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律に基づく抗菌性物質製剤に係る安定供給確保について

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3日間のアミカシン吸入、長期挿管患者の人工呼吸器関連肺炎発生を軽減(解説:栗原宏氏)

Strong point ・多施設二重盲検ランダム比較試験で結果の信ぴょう性が高い・手技が簡便かつ重篤な副作用の発症が少ない・治療効果が臨床的に有意義研究デザイン上の限界・ICU、入院期間全体を短縮するかの評価は試されていない 人工呼吸器関連肺炎(VAP)は、気管挿管後48~72時間以上経過して発生する肺炎を指す。報告によって幅があるが全挿管患者の5~40%に発生するとされ、ICUでしばしばみられる感染性合併症である。死亡率は約10~30%と院内肺炎の中でもかなり高い。 気管チューブから侵入した細菌が気管チューブ、気管支肺胞系、肺実質で増殖することがVAPの原因となる。抗菌薬吸入療法はこれらの部位に直接高濃度の抗菌薬投与が可能であり、小規模試験のメタ解析によればVAP予防に有効であることが示されている。これを踏まえて、著者らは人工呼吸器導入後3日目以降に、1日1回3日間、理想体重1kg当たり20mgのアミカシン吸入療法を行い、VAPの発生率が減少するかを検討した。 VAPの発症は肺検体の定量的細菌培養で陽性、および白血球増多、白血球減少、発熱、胸部X線撮影で新たな浸潤影を伴う化膿性分泌物のうち、少なくとも2つを満たすと定義され、期間も28日間と実臨床に即した判定法といえる。 主要アウトカムは以下のとおりで、臨床的にも意義があると考えられる。・VAP発症:アミカシン群62例(15%) vsプラセボ群95例(22%)・VAP発症までの境界内平均生存期間(RMST)の群間差:1.5日(95%信頼区間[CI]:0.6~2.5、p=0.004)・侵襲的人工呼吸管理1,000日当たりのVAP初回エピソード発生頻度:アミカシン群16 vsプラセボ群23(発生率比:0.68、95%CI:0.49~0.94) ※RMSTは、「境界時間内のイベント発現までの時間に対する平均値」と定義され、短い観察期間でも生存曲線の要約情報を得ることができる。従来用いられていたCox比例ハザードモデルが厳密には適用できない場合があるため、新たな生存時間解析の指標として広まりつつある。 治療に起因する重篤な副作用(気管チューブの閉塞、気管支痙攣、呼気リンパフィルターの抵抗増加)はみられたが、1.7%(417例中7例)程度かつプラセボ群との有意差もなく、治療自体のリスクは低いと考えらえる。 本調査のアミカシン吸入療法によってVAP発症率を改善することが示されたが、デザイン上、28日間でのVAP発症の有無自体をエンドポイントとしており、ICU、入院期間全体の短縮に寄与するかは不明である。この点に関して今後の調査が期待される。 VAPの高い死亡率、治療の簡便さ、治療自体の危険性を総合的に考えると、長期の挿管が予想される患者に対して予防的なアミカシン吸入療法の実施は検討に値すると思われる。

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プライマリケアでの女性の尿路感染症への抗菌薬処方、介入で有意に減少/BMJ

 プライマリケアにおけるマルチモーダル(複数の方法による)介入が、女性の単純性尿路感染症(UTI)に対する第二選択の抗菌薬処方率および全抗菌薬処方率を有意に減少したことが、ドイツ・ブレーメン大学のGuido Schmiemann氏らが、同国5地域の一般診療所を対象に行った並行群間クラスター無作為化試験の結果で報告した。ドイツの総合診療医(GP)向け等のガイドラインでは、受診機会の多い女性のUTI治療について、抗菌薬投与の回避が望ましい軽症~中等症UTIでは対症療法を優先し、第一選択の抗菌薬も推奨薬が明確に示されている。この明確な推奨にもかかわらず、フルオロキノロンなどの第二選択の抗菌薬が依然としてよく用いられ(地域の一般処方率38~54%)、抗菌薬以外の治療をGPが選択することはまれだという。教育プログラムや処方のフィードバックなどの介入が不適切処方を減少することは示されているが、ガイドラインを推奨する介入プログラムについては、これまで検討されていなかった。BMJ誌2023年11月2日号掲載の報告。ドイツの128の一般診療所を、介入群vs.対照群に無作為化し評価 研究グループは、プライマリケアでのマルチモーダル介入によって、女性における単純性UTIへの第二選択の抗菌薬処方率および全抗菌薬処方率が減少するかどうかを調べた。 データは、2021年4月1日~2022年3月31日に、ドイツの5地域の、128の一般診療所で収集された。 一般診療所は介入群と対照群に、地域で層別化をして、ブロック法により1対1の割合で無作為化された(ブロックサイズは4つ、SAS ver9.4を使用)。 マルチモーダル介入は、(1)各診療所から参加したGPおよび患者に対するガイドラインの推奨、(2)抗菌薬耐性に関する地域データの提供および年4回のフィードバック(個々の第一選択と第二選択の抗菌薬処方率、地域内または地域を越えたベンチマークについての情報、および電話カウンセリングを含む)から構成された。対照群には介入に関する情報は提供されなかった。 主要アウトカムは、1年後の単純性UTIに処方された、全抗菌薬に対する第二選択の抗菌薬の割合とし、介入群と対照群の平均処方率の絶対差を算出して評価した。副次アウトカムは、1年後のUTI治療に対する全抗菌薬の処方率で、介入群と対照群の全抗菌薬処方率の平均値の絶対差を算出して評価した。 有害事象は、探索的アウトカムとして評価した。第二選択の抗菌薬処方率、全抗菌薬処方率とも有意に減少 無作為化された一般診療所128施設のうち、ベースライン(Qb:研究開始1年前の2020年の第1四半期のデータ)および各四半期(Q1~Q4)のデータが完全に入手できた110施設(介入群57施設[GP103人]、対照群53施設[100人])を最終解析の対象とした。一般診療所やGPの特性は両群で類似しており、地域差は若干みられたが、患者数(四半期当たり平均数)やGPの性別(両群とも男性48%、女性52%)、平均年齢(介入群50歳、対照群53歳)、職歴、雇用形態などに差はなかった。 全四半期(Qb~Q4の15ヵ月)において1万323症例が特定された。 12ヵ月後の第二選択の抗菌薬の平均処方率は、介入群0.19(SD 0.20)、対照群0.35(0.25)であり、介入前の処方率を調整後の平均処方率の群間差は-0.13(95%信頼区間[CI]:-0.21~-0.06、p<0.001)であった。 12ヵ月間のUTIに対する全抗菌薬処方率は、介入群0.74(SD 0.22)、対照群0.80(0.15)であり、平均処方率の群間差は-0.08(95%CI:-0.15~-0.02、p<0.029)であった。 両群間で合併症(腎盂腎炎、入院、発熱など)の症例数に差はみられなかった。

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第71回 セフトリアキソンとランソプラゾール併用で死亡リスク上昇?

にわかに話題となった併用Unsplashより使用X(旧Twitter)で「セフトリアキソンとランソプラゾールを併用すると死亡リスクが上昇する」という話が注目を集めました。なぜバズったかというと、この組み合わせが結構臨床で多いからです。セフトリアキソンは、呼吸器系などで頻繁に使用されるβラクタム系抗菌薬です。もともと内服していたり、消化器系の症状があったり、ステロイドが併用されていたりすると、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が併用されることが多くなります。代表的なPPIが、ランソプラゾールです。バズり元の論文は、カナダのオンタリオ州からの後ろ向き研究です1)。すでにセフトリアキソンとランソプラゾールの併用により、心電図上の補正QT間隔が延長することが示されているため、これが実臨床的にどう影響するかという検証になります。傾向スコア重み付け(IPTW法)を用いて解析したところ、ランソプラゾール群とその他のPPI群の調整後リスク差は、心室性不整脈または心停止で1.7%(95%信頼区間[CI]:1.1~2.3)、院内死亡で7.4%(95%CI:6.1~8.8)でした。NNH(number needed to harm)に換算すると、それぞれ58.8、13.5という結果でした(表)。表. セフトリアキソンとPPIの併用リスク(文献1より引用)結局どうする?セフトリアキソンとランソプラゾールがhERGカリウムチャネルを阻害してQT延長を起こす、というメカニズムとされています2)。これが心筋細胞の活動電位時間を規定する因子であることが知られています。今回の報告は、質の高いランダム化比較試験ではなく、後ろ向きコホート研究である点は解釈に注意が必要です。ランソプラゾールは各病院のフォーミュラリの推奨度が高い薬剤でもあるので、今後の動向には注意したいところです。参考文献・参考サイト1)Bai AD, et al. Ceftriaxone and the Risk of Ventricular Arrhythmia, Cardiac Arrest, and Death Among Patients Receiving Lansoprazole. JAMA Netw Open. 2023;6(10):e2339893.2)Lorberbaum T, et al. Coupling data mining and laboratory experiments to discover drug interactions causing QT prolongation. J Am Coll Cardiol. 2016;68(16):1756-1764.

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急性感染症での安全性、CFPM vs.TAZ/PIPC/JAMA

 先行研究でセフェピム(CFPM)は神経機能障害を、タゾバクタム・ピペラシリン(TAZ/PIPC)は急性腎障害を引き起こす可能性が指摘されている。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのEdward T. Qian氏らは「ACORN試験」において、急性感染症で入院した成人患者を対象に、これら2つの抗菌薬が神経機能障害または急性腎障害のリスクに及ぼす影響を評価し、タゾバクタム・ピペラシリンは急性腎障害および死亡のリスクを増加させなかったが、神経機能障害のリスクはセフェピムのほうが高かったことを報告した。研究の成果は、JAMA誌2023年10月24・31日の合併号に掲載された。米国の単施設の実践的な無作為化試験 ACORN試験は、セフェピムとタゾバクタム・ピペラシリンの安全性の評価を目的に、ヴァンダービルト大学医療センターの救急診療部(ED)または集中治療室(ICU)に入院した感染症疑いの成人患者を対象に行われた実践的な非盲検無作為化試験であり、試験期間は2021年11月~2022年10月であった(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、来院後12時間以内にEDまたはICUで医師により抗緑膿菌セファロスポリン系またはペニシリン系の抗菌薬がオーダーされた患者を、セフェピムまたはタゾバクタム・ピペラシリンを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、14日目までの急性腎障害の最重度の病期または死亡とし、5段階(0[急性腎障害なしの生存]~4[死亡])の順序尺度で評価した。副次アウトカムは、14日目の時点での主要有害腎イベント(死亡、新規腎代替療法、持続性腎機能不全などの複合)と、14日目までのせん妄および昏睡のない生存日数で評価した神経機能障害であった。セフェピムの神経毒性、腎機能低下や敗血症で多いとの報告も 2,511例を主要アウトカムの解析の対象とした。年齢中央値は58歳(四分位範囲[IQR]:43~69)、42.7%が女性であった。94.7%はEDでの登録で、77.2%は登録時にバンコマイシンの投与を受けており、来院から登録までの時間中央値は1.2時間(IQR:0.4~3.5)、54.2%が敗血症で、最も多く疑われた感染源は腹腔内と肺であった。セフェピム群に1,214例、タゾバクタム・ピペラシリン群に1,297例を割り付けた。 最重度の急性腎障害または死亡は、セフェピム群ではステージ3の急性腎障害が85例(7.0%)、死亡が92例(7.6%)で、タゾバクタム・ピペラシリン群ではそれぞれ97例(7.5%)、78例(6.0%)で発生し、両群間に有意な差を認めなかった(オッズ比[OR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.80~1.13、p=0.56)。 14日目の時点での主要有害腎イベントは、セフェピム群が124例(10.2%)、タゾバクタム・ピペラシリン群は114例(8.8%)で発生し、両群間に有意差はなかった(絶対群間差:1.4%、95%CI:-1.0~3.8)。 14日以内にせん妄および昏睡のない平均生存日数は、タゾバクタム・ピペラシリン群が12.2(SD 4.3)日であったのに対し、セフェピム群は11.9(SD 4.6)日と短かった(OR:0.79、95%CI:0.65~0.95)。また、14日目までに、セフェピム群の252例(20.8%)とタゾバクタム・ピペラシリン群の225例(17.3%)が、せん妄または昏睡を経験した(絶対群間差:3.4%、95%CI:0.3~6.6)。 著者は、「セフェピムは、血液脳関門を通過し、γ-アミノ酪酸受容体に対して濃度依存性の阻害作用を示し、症例集積研究やコホート研究において昏睡、せん妄、脳症、痙攣などの神経毒性を伴うことが報告されている。また、セフェピムによる神経毒性は、腎機能が低下している患者や、敗血症のような血液脳関門が障害された病態の患者で、より高頻度に発現するとの報告がある」と指摘している。

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再発性UTIに高周波電気療法が有効性を示す

 米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのPhilippe Zimmern氏らの研究で、再発性尿路感染症(UTI)に対する治療法の有効性が示された。この治療法は、高周波電気療法(electrofulguration)と呼ばれるもので、炎症を伴う感染した膀胱組織に電気刺激を加えて破壊する。研究では、再発性UTIに苦しんでいる多くの女性でこの治療法の効果が確認された。詳細は、「The Journal of Urology」10月号に掲載された。 一部の高齢女性は膀胱炎などのUTIの再発を繰り返し、そのたびに抗菌薬の処方を受けている。しかし、抗菌薬を継続的に、あるいは繰り返し使用すると耐性菌が増加し、UTIの治療がますます難しくなることがある。こうした状況が、敗血症として知られる危険な血液感染を招き、膀胱の外科的な切除に至る場合もある。 論文の上席著者であるZimmern氏は、別の研究グループによる動物を用いた研究論文を読んだことがきっかけで、UTIに高周波電気療法を試すことを思い付いたという。その研究では、膀胱の感染症では、まず膀胱の表面が細菌感染による攻撃を受け、より深い層に細菌が付着すること、また、そのようにして付着した細菌はバイオフィルムを形成することで自身を保護し、膀胱内に残存することなどが示されていた。Zimmern氏は、「細菌が膀胱内に存在することが証明されれば、高周波電気療法がこれらの患者に対する決定的な治療法になり得るという考えが浮かんだ」と言う。なお、米国立衛生研究所(NIH)の情報によると、高周波電気療法は、以前から膀胱の腫瘍を焼灼して切除する治療法として用いられている。 今回の研究でZimmern氏らは、2006~2012年に再発性UTIに対して高周波電気療法による治療を受け、その後5年以上にわたって経過が追跡された閉経後女性96人(年齢中央値64歳)の医療記録を調べた。追跡期間中央値は11年だった。 その結果、対象女性の72%が追跡期間中に臨床的治癒(年間のUTI再発が0~1回)に至り、22%はUTIが改善した(年間のUTI再発が3回未満)と判定された。治療の効果が認められなかった対象女性は6%だった。また、抗菌薬の継続投与を必要とした女性の割合は、高周波電気療法を受ける前の時点では74%に上っていたが、最終フォローアップ受診時にはわずか5%にまで低下していた。 Zimmern氏は、「膀胱に侵入する細菌は、種類が多様な上に組織への付着能力も異なっており、非常に複雑だ。われわれは、そうしたことを解明する必要がある」と語る。同氏はさらに、「興味深いことに、半数の女性には感染が認められない」と話す。同氏が関わっている別の進行中の研究では、こうした慢性的な感染に至らない女性で何が起こっているのか、またそのような女性はどのように慢性的な感染から保護されているのかを調べているのだという。 米ノースウェル・ヘルス泌尿器科のLouis Kavoussi氏は、標準治療に代わってこの種の治療法を患者に勧めるべきかどうかについて慎重な姿勢を示している。同氏は、「今後、追加の研究を行う価値があるかどうかを問われれば『イエス』と答えるが、高周波電気療法が万能の治療法、あるいは標準治療となる見込みはまずないだろう」と話す。 Kavoussi氏は、今回の研究参加者には高周波電気療法の後に長期間にわたって抗菌薬も処方されていた点を指摘し、「このことが治癒に大きく寄与した可能性がある」との見方を示している。

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