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801.

カルバペネム系抗生物質注射製剤「フィニバックス」 化膿性髄膜炎の効能・効果などの承認取得

 塩野義製薬は25日、カルバペネム系抗生物質注射製剤「フィニバックス点滴静注用0.25g、同0.5g、フィニバックスキット点滴静注用0.25g(一般名:ドリペネム水和物)」について、化膿性髄膜炎の効能・効果及び小児に対する用法・用量の承認を取得したと発表した。フィニバックスは緑膿菌に対しても強い抗菌力 フィニバックスは、同社で創製されたカルバペネム系抗生物質注射製剤で、グラム陽性菌からグラム陰性菌、好気性菌から嫌気性菌に対し強力かつ幅広い抗菌スペクトルを有し、特に、重症・難治性感染症の原因菌として治療上問題となっている緑膿菌に対しても強い抗菌力を示すことから、中等症から重症の各科領域感染症に有用性の高い薬剤として使用されている。日本国内では、0.25gバイアルの「フィニバックス点滴静注用0.25g」及び利便性・無菌性・確実性に優れた「フィニバックスキット点滴静注用0.25g」(注射用抗生物質とその溶解液のキット製品)に加え、昨年4月の高用量(1日最大3g)の用法・用量の承認取得を踏まえ、2011年11月より0.5gバイアルの「フィニバックス点滴静注用0.5g」を販売されている。

802.

単純性急性虫垂炎、一次治療の抗菌薬投与で合併症リスク3~4割低減

単純性急性虫垂炎への一次治療には、抗菌薬投与のほうが切除術に比べ、合併症リスクは3~4割低減することがあきらかにされた。英国・ノッティンガム大学病院のKrishna K Varadhan氏らによる、4つの無作為化比較試験の被験者900人を対象にしたメタ解析の結果で、BMJ誌2012年5月5日号(オンライン版2012年4月5日号)で発表した。合併症、治療有効性や入院期間、複雑性虫垂炎などを比較同研究グループは、4つの無作為化比較試験に参加した単純性急性虫垂炎の患者、計900人について、一次治療としての抗菌薬投与と虫垂切除術の治療アウトカムについて、メタ解析で比較した。被験者のうち、抗菌薬投与を受けたのは470人、虫垂切除を行ったのは430人だった。主要アウトカムは、合併症発症率とし、副次アウトカムは、治療有効性、入院期間、複雑性虫垂炎と再入院とした。抗菌薬治療群の合併症リスク31~39%減、治療成功率は63%その結果、抗菌薬治療群は虫垂切除群に比べ、合併症発症リスクが31%低かった(リスク比:0.69、95%信頼区間:0.54~0.89、p=0.004)。抗菌薬投与群から虫垂切除群へ移行した患者を除いて2次分析を行ったところ、抗菌薬治療群は虫垂切除術群に比べ、合併症発症リスクは39%低かった(リスク比:0.61、同:0.40~0.92、p=0.02)。抗菌薬治療群の治療成功率は、63%(438人中277人)だった。同群20%が症状再発のため再入院し虫垂切除を行ったが、そのうち穿孔性虫垂炎が認められたのは9人、壊疽性虫垂炎は4人だった。副次アウトカムの、治療有効性、入院期間、複雑性虫垂炎発症リスクについては、両群で有意差はなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

803.

O104:H4へのアジスロマイシン投与、排菌期間を短縮

腸管凝集性志賀毒素産生大腸菌(STEC O104:H4)の感染者に対し、アジスロマイシン(商品名:ジスロマック)を投与することで、排菌期間を短縮できることが示された。ドイツ・Schleswig-Holstein大学病院のMartin Nitschke氏らが、65人の感染者について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月14日号で発表した。STEC感染への抗菌薬治療は、溶血性尿毒症症候群(HUS)発症リスクを増大する可能性があるとして、あまり行われていないが、一方で、腸管凝集性大腸菌への抗菌薬投与は広く行われている。65人を約40日追跡研究グループは、2011年5月15~7月26日の間に、ドイツ・ルベックにあるセンター病院単施設で、STEC O104:H4に感染した65人について、アジスロマイシン投与の有無と、排菌期間について追跡調査を行った。被験者の中には、HUSを発症している人も、していない人も含まれた。発症後の追跡期間の平均値は、39.3日だった。主要アウトカムは、STEC O104:H4の保菌期間とアジスロマイシン投与の関係だった。長期保菌者発生、非投与群81%に対し、アジスロマイシン群4.5%被験者のうち、経口アジスロマイシンを投与したのは22人、投与しなかったのは43人だった。結果、28日超の長期STEC保菌者は、アジスロマイシン群が22人中1人(4.5%、95%信頼区間:0~13.3)だったのに対し、非投与群は43人中35人(81.4%、同:69.8~93.0)と、有意に高率だった(p<0.001)。アジスロマイシン群全員が、同服用終了後に、3回以上の便検査でSTEC陰性が得られ、再発は認められなかった。また、非投与群で長期STEC保菌者のうち15人について、アジスロマイシンを3日投与したところ、便検査でSTEC陰性が得られた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

804.

小児重症肺炎、地域の女性医療ワーカーによる診断と抗菌薬投与が有効

パキスタン農村部地域の女性医療ワーカー(LHW)は、小児重症肺炎の自宅での診断および治療において、十分な役割を果たし得ることが、パキスタン・Aga Khan大学のSajid Soofi氏らの調査で示された。肺炎は世界的に5歳未満の小児の主要な罹病および死亡の原因である。パキスタンでは、肺炎による死亡率は都市部に比べ医療施設が少ない農村部で高く、自宅で死亡する患児が多いという。Lancet誌2012年2月25日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。女性医療ワーカーによる重症肺炎管理の有用性を評価研究グループは、重症肺炎の管理において、地域の医療従事者による経口抗菌薬投与が小児の自宅での死亡率の抑制に有効か否かを検証するために、パキスタン・シンド州の農村地域であるMatiari地区でクラスター無作為化試験を実施した。地域の女性医療ワーカー(LHW)が、肺炎(WHO定義)が疑われる介入群の小児のスクリーニングを行い、重症肺炎と診断した小児には自宅でアモキシシリンシロップ(90mg/kg、1日2回;商品名:クラバモックス)を5日間経口投与した。対照群の小児には、コトリモキサゾール(ST合剤)を1回経口投与したうえで、近隣の医療施設に入院させて抗菌薬を静注投与した。両群ともに、第2、3、6、14日目にLHWが小児の自宅を訪問してフォローアップを行った。主要評価項目は、登録後6日目までに発生した治療不成功とした。18の地区(クラスター)を介入群あるいは対照群に無作為に割り付けた。治療不成功率:介入群8%、対照群13%2008年2月13日~2010年3月15日までに、生後2~59ヵ月の小児が登録された。介入群は2,341例(年齢中央値13ヵ月、男児56%)が、対照群は2,069例(同:10ヵ月、55%)が解析の対象となった。治療不成功率は、介入群が8%(187/2,341例)、対照群は13%(273/2,069例)だった。調整済みリスク差は-5.2%(95%信頼区間:-13.7~3.3%)であった。第6日目までに2例が死亡し、第7~14日の間に1例が死亡した。重篤な有害事象は確認されなかった。著者は、「パキスタン農村部の小児重症肺炎の自宅での診断および治療において、地域のLHWは十分な役割を果たすことができた」と結論づけ、「この戦略は、医療施設への紹介が困難な環境にある重症肺炎患児に対し有用であり、小児肺炎の発見や管理の鍵となると考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

805.

急性副鼻腔炎に対する抗菌薬治療、プラセボとの比較で症状改善みられず

急性副鼻腔炎に対するアモキシシリン(商品名:サワシリンほか)10日間投与の効果を、プラセボとの比較で検討した無作為化試験の結果、投与開始3日後、10日後での症状改善は認められなかったことが報告された。ただし7日後ではアモキシシリン群で有意な改善が認められたという。急性副鼻腔炎への抗菌薬投与に関するエビデンスは乏しいものの、医療現場では広く投与が行われている。本報告は、米国・ワシントン大学総合医科学部門のJane M. Garbutt氏らが、約170人について行った無作為化プラセボ対照試験の結果で、JAMA誌2012年2月15日号で発表した。アモキシシリン1,500mg/日を10日間投与、3、7、10、28日時点のアウトカムを評価研究グループは、2006年11月1日~2009年5月1日にかけて、米国ミズーリ州10ヵ所の医療機関で治療を受けた、合併症のない急性副鼻腔炎の成人166人(男性36%)について試験を行った。被験者を無作為に二群に分け、一方にはアモキシシリン1,500mg/日(1日3回投与、85人、平均年齢32歳)を、もう一方にはプラセボを(81人、同31歳)、それぞれ10日間投与した。被験者には、その他に、痛みや発熱、咳、鼻づまりの症状を抑える薬が必要に応じて5~7日間投与された。対症療法は92%(アモキシシリン群94%、プラセボ群90%、p=0.34)。主要アウトカムは、副鼻腔アウトカム尺度16により測定した生活の質(QOL)だった。副次アウトカムは、患者の後ろ向き自己評価による、症状や機能上の変化、再発や治療に対する満足度、副作用などだった。アウトカムの評価は、治療開始後3、7、10、28日後に、電話インタビューにより行われた。治療開始7日後のみで、アモキシシリン群の症状が有意に改善その結果、副鼻腔アウトカム尺度16の変化の平均値は、治療開始3日後でアモキシシリン群が-0.59に対し、プラセボ群は-0.54(群間差:0.03、95%信頼区間:-0.12~0.19)、10日後では同群間差0.01(同:-0.13~0.15)と、いずれも有意差はなかった。ただし、治療開始7日後の評価では、アモキシシリン群で改善幅が有意に大きく、群間差は0.19(同:0.024~0.35)だった。症状が改善したと答えた人の割合も、治療開始3日後がアモキシシリン群37%、プラセボ群34%(p=0.67)、同10日後がそれぞれ78%、80%(p=0.71)と、いずれの時点でも両群は同等だった。一方、治療開始7日後では、アモキシシリン群74%に対しプラセボ群が56%と、アモキシシリン群で有意に高率だった(p=0.02)。その他副次アウトカムについて、両群の差は認められなかった。重篤な有害事象は発生がなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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プライマリ・ケア医の抗菌薬使用減に有効な多面的教育プログラムが開発

英国・カーディフ大学プライマリ・ケア部門教授のChristopher C Butler氏らは、プライマリ・ケアでの抗菌薬使用の減少を目的とした多面的教育プログラム「STAR」を開発、臨床実践ベースの無作為化対照試験の結果、その使用減少が認められ、その後の入院や再受診、コストの有意な増大は認められなかったことが報告された。プライマリ・ケアでの抗菌薬は、有益性がほとんどないことが立証されているにもかかわらず、過剰に処方され続け、患者は不必要な有害反応に曝露されており、耐性菌発生を招いていることが指摘されている。Butler氏らは、診断能力のトレーニングによって、抗菌薬処方を減らす可能性があるとしてプログラム開発を行った。BMJ誌2012年2月11日号(オンライン版2012年2月2日号)掲載報告より。プログラム介入群と非介入群で無作為化試験Butler氏らが開発した教育プログラム「STAR(Stemming the Tide of Antibiotic Resistance)」は、多面的な内容(e-ラーニング、実際診療での経験学習と熟考を促す)で、局面に敏感となり(抗菌薬使用と耐性についてのデータに反応する)、以前に推奨されていた鑑別(使用について時間的な効率性を重視した診療戦略)を基本とする。その介入効果を検証するため、ウェールズと英国の68(GP)の診療所(患者約48万人のデータ)を対象に無作為化試験を行った。GPを、プログラムを受ける群(34ヵ所、介入群)と通常ケアを行う群(34ヵ所、対照群)に無作為化。無作為化前に試験への参加を了承していた医師は、介入群139人、対照群124人だった。解析は、68ヵ所全医師の診療データについて行われた。主要評価項目は、前年使用で補正後、介入後1年間の、全症例に対する抗菌薬使用件数(1,000診療・患者当たり)で、副次評価項目には、再受診、入院、費用などが含まれた。介入群の抗菌薬使用は年間4.2%減少結果、経口抗菌薬使用総計(1,000登録患者当たり)は、介入群で14.1件減った一方で、対照群は12.1件増加し、正味26.1件の差が生じていた。基線での使用について補正後、対照群と比較して介入群では、総経口抗菌薬使用の減少は年間4.2%(95%信頼区間:0.6~7.7)に上っていた(P=0.02)。使用減はペニシリナーゼ耐性ペニシリン(PRP)以外の全クラスの抗菌薬でみられ、個別にみると、フェノキシメチルペニシリン(ペニシリンV、使用減:7.3%、95%信頼区間:0.4~13.7)とマクロライド系(同:7.7%、1.1~13.8)の減少が大きく有意であった。入院、再受診(7日以内の気道感染による)については介入群と対照群に有意差は認められなかった。プログラムにかかった平均費用は、2,923ポンド(4,572ドル)/診療所だった。一方で、対照群と比べた介入群の抗菌薬使用コスト減は、5.5%で、1つの平均的介入によって年間約830ポンドの削減効果に匹敵する。

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急性単純性膀胱炎に対するセフポドキシムvs. シプロフロキサシン

急性単純性膀胱炎への抗菌薬投与について、セフェム系のセフポドキシム(商品名:バナンほか)はフルオロキノロン系のシプロフロキサシン(同:シプロキサンほか)に対し、非劣性を示さなかったことが報告された。米国・マイアミ大学のThomas M. Hooton氏らが、女性患者300人を対象に行った無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月8日号で発表した。フルオロキノロン系の抗菌薬は単純性膀胱炎に対し最も有効として一般的に使用されている一方で、その耐性大腸菌発生率の上昇が世界的に報告されており、最近公表された米国感染症学会のガイドラインでは、使用の制限が勧告されている。同疾患に対するセフポドキシムの使用については、これまで十分な検討データがなかった。3日間投与し、30日後の治癒率を比較研究グループは、2005~2009年にかけて、18~55歳の急性単純性膀胱炎と診断された女性300人を、無作為に二群に分け検討した。一方にはシプロフロキサシン(250mg、1日2回)を、もう一方にはセフポドキシム(100mg、1日2回)をそれぞれ3日間投与した。治療終了後、5~9日目と、28~30日目に、アウトカムを評価した。主要アウトカムは、30日後の診察時における臨床的治癒とした。副次アウトカムは、治療終了後5~9日目の診察時における、臨床的・微生物学的治癒と、両診察時における膣の大腸菌コロニー形成とされた。30日後臨床的治癒率、5~9日後微生物学的治癒率ともに非劣性示さずその結果、追跡不能を治癒とみなした場合では、30日後の臨床的治癒率は、シプロフロキサシン群が93%(150人中139人)に対し、セフポドキシム群は82%(150人中123人)で、治癒率格差は11%(95%信頼区間:3~18)と、事前に定義した非劣性マージン10%未満の基準を満たさなかった。また、追跡不能を治療に反応しなかったとみなした場合では、30日後臨床的治癒率は、それぞれ83%(150人中124人)と71%(150人中106人)で、治癒率格差は12%(同:3~21)で、非劣性マージン基準を満たさなかった。治療終了後5~9日目の微生物学的治癒率も、各群96%と81%、同率格差は15%で基準を満たさなかった。治療終了後の初回診察時に、膣大腸菌のコロニー形成が認められたのは、シプロフロキサシン群で16%に対し、セフポドキシム群では40%に上った。結果を受けてHooton氏は、「他の広域β-ラクタムへの重大な生態学的影響の懸念は残るが、セフポドキシムを急性単純性膀胱炎に対し、シプロフロキサシンに代わって第一選択薬として使用することは支持できない」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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前立腺生検、有害事象が再生検への消極性を招く

前立腺生検の忍容性は全般に良好だが、一部では疼痛や感染などの有害事象による重大な症状をもたらし、再生検に対する消極性や、プライマリ・ケアにおける医療資源の使用を促進することが、英国Sheffield大学のDerek J Rosario氏らが行ったProBE試験で明らかとなった。前立腺がんの診断では前立腺生検が重要だが、被験者の受容性(acceptability)や有害事象の影響、その結果としての医療資源の使用状況をプロスペクティブに検討した試験はほとんどないという。BMJ誌2012年1月21日号(オンライン版2012年1月9日号)掲載の報告。無作為化試験に組み込まれた前向きコホート研究ProBE(Prostate Biopsy Effects)試験は、進行中の多施設共同無作為化対照比較試験であるProtecT(Prostate Testing for Cancer and Treatment)試験の登録患者を対象に行われたプロスペクティブなコホート研究。経直腸的超音波ガイド下生検(TRUS-Bx)から35日以内に発現した有害事象の影響の評価を目的とした。ProtecT試験では、50~69歳の地域住民男性22万7,000人が前立腺特異抗原(PSA)検査のカウンセリングを受けるよう招聘された。そのうち11万1,148人がPSA検査を受け、PSA値 3~20ng/mLの1万297人がTRUS-Bxを推奨された。このうち、2006年2月~2008年5月までに8施設で抗菌薬併用下にTRUS-Bxを受けた1,753人(平均年齢:62.1歳、平均PSA値:5.4ng/mL)がProBE試験の適格例とされ、試験参加に同意した1,147人(65%、平均年齢:62.1歳、平均PSA値:4.2ng/mL)が登録された。生検時、7日目、35日目に、質問票を用いて疼痛、感染、出血の頻度と関連症状の影響を評価した。生検直後と7日目に再生検に対する患者の受容性を調査し、35日までの医療資源の使用状況を評価した。有害事象関連症状が大きな問題になることは少ない生検後35日までに疼痛を訴えたのは43.6%、発熱の訴えは17.5%、血尿が65.8%、血便が36.8%、血性精液は92.6%であった。これらの症状が中等度~重度の問題となったと答えた患者は少なく、疼痛が7.3%、発熱は5.5%、血尿は6.2%、血便は2.5%、血性精液は26.6%であった。生検直後に、中等度~重度の問題が生じた場合は再生検を考慮すると答えた患者は10.9%で、7日後には19.6%に増加した。再生検に対する消極的な姿勢は、初回生検時の好ましくない経験、特に生検時疼痛(p<0.001)、感染関連症状(p<0.001)、出血(p<0.001)と有意な関連がみられ、明らかな施設間差が認められた(p<0.001)。10.4%が医療施設(通常は担当GP)を受診しており、最も頻度が高かったのは感染関連症状であった。有害事象の重症度は再生検に対する消極的な姿勢と有意な関連を示した(p<0.001)。著者は、「前立腺生検は全般に良好な忍容性を示したが、一部では有害事象による重大な症状をもたらし、再生検への受容性やプライマリ・ケアにおける医療資源の使用に影響を及ぼした」と結論し、「有害事象プロフィールの施設間差は、局所麻酔薬や抗菌薬をより効果的に使用すれば患者のアウトカムが改善され、医療資源の使用が抑制される可能性を示唆する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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重症肺炎児への母親による抗菌薬投与、医療施設紹介よりも有効

パキスタンの重症肺炎の小児に対し、地域の女性医療従事者(LHW)が母親に経口抗菌薬を提供する方法は、LHWが経口抗菌薬を投与後に医療施設を紹介する標準治療よりも有用なことが、Save the Children USパキスタン支局のAbdul Bari氏らによる検討で示された。WHOの定義による重症肺炎児に対しては、経口コトリモキサゾール(ST合剤、商品名:バクタほか)を投与後に専門医療施設へ紹介することが推奨されている。しかし、医療資源が乏しい環境では患児が実際に専門施設を受診することは困難で、適切な治療へのアクセス率は低いという。Lancet誌2011年11月19日号(オンライン版2011年11月11日号)掲載の報告。母親による経口アモキシシリン投与の有用性をクラスター無作為化試験で評価研究グループは、重症肺炎の患児に対しLHWが経口アモキシシリン(商品名:アモリン、サワシリンほか)を用いて行う地域住民ベースの疾患管理の有用性を評価するクラスター無作為化試験を実施した。パキスタン・Haripur地区の28の医療施設を介入群と対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。対象は、試験対象地域に居住するWHOの定義による重症肺炎の生後2~59週の患児とした。介入群には、LHWから母親に使用の手引きとともに経口アモキシシリン(生後2~11ヵ月児:80~90mg/日あるいは375mg×2回/日、生後12~59ヵ月児:625mg×2回/日)が提供された。対照群では、LHWが初回分の経口コトリモキサゾール(生後2~11ヵ月児:スルファメトキサゾール200mg+トリメトプリム40mg、生後12~5年児:スルファメトキサゾール300mg+トリメトプリム60mg)を投与し、患児を標準的治療を行う医療施設に紹介した。参加者、医療提供者、効果判定者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、6日目までの治療不成功とし、クラスターで調整したper protcol解析を行った。治療不成功率が半減介入群に14施設(1,995例)、対照群にも14施設(1,477例)が割り付けられ、それぞれ1,857例、1,354例の患児が解析の対象となった。クラスター調整後の6日目まで治療不成功率は、介入群が9%(165/1,857例)と、対照群の18%(241/1,354例)に比べ有意に低かった(リスク差:-8.9%、95%信頼区間:-12.4~-5.4)。さらにベースラインの共変量で調整したところ、このリスク差は小さくなったが有意差は維持された(同:-7.3、-10.1~-4.5)。介入群で1例、対照群では2例が死亡した。有害事象としては、介入群で下痢が4例、皮疹が1例に、対照群では下痢が3例に認められた。著者は、「この地域住民ベースの疾患管理は、治療導入の遅れや、家計、医療費の負担を抑制し、重症肺炎児の標準治療となる可能性がある」と結論し、「本試験は同等性の検証を目的にデザインされたが、得られた知見は介入群の優位性を示すものであった」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

810.

ヘルスケア施設関連C. difficile感染と保菌、宿主因子と病原菌因子が異なる

 ヘルスケア施設関連での集団下痢症の主な原因であるClostridium difficile(C. difficile)感染症について、感染と保菌では、宿主因子および病原菌因子が異なることが明らかにされた。施設関連の同感染については、無症候でも保菌が認められる場合がある。カナダ・McGill大学ヘルスセンターのVivian G. Loo氏らが、カナダの6つの病院で15ヵ月間にわたり、C. difficile感染症患者と保菌患者の宿主因子および細菌因子の同定を行った前向き研究の結果、報告した。NEJM誌2011年11月3日号掲載報告より。カナダ6病院で前向き研究研究グループは、2006年3月6日~2007年6月25日にわたり、カナダのケベック州とオンタリオ州にある6つの国立病院で15ヵ月間にわたる前向き研究を行った。対象病院の患者に関して、人口統計学的情報、既知のリスク因子、潜在的な交絡因子などの情報収集と、週1回の便検体または直腸スワブの収集を行い解析した。C. difficile分離株の遺伝子型の同定はパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)にて行い、C. difficile毒素AおよびBの血清抗体値測定なども行った。合計4,143例の患者の情報が収集され解析された。感染例2.8%、保菌例3.0%で、北米PFGE1型(NAP1)株は感染例では62.7%、保菌例36.1%ヘルスケア施設関連C. difficile感染例は117例(2.8%)、保菌例は123例(3.0%)だった。ヘルスケア施設関連C. difficile感染例は、「より高齢」「抗菌薬・PPI使用」と有意な関連が認められた。一方保菌例については、「以前に2ヵ月間入院したことがある」「化学療法・PPI・H2ブロッカーを使用」「毒素Bに対する抗体」が関連していた。また、北米PFGE1型(NAP1)株を有していたのは、感染例では62.7%であったが、保菌例では36.1%だった。(武藤まき:医療ライター)

811.

麻酔記録と投与エラーを減らす新システムの有用性

麻酔薬に関する記録と投与エラーを減らすために開発された、マルチモードシステム「SAFERSleep」は、臨床でのエラー改善に有用なことが前向き非盲検無作為化臨床試験による評価の結果、報告された。記録の改善が主であったという。ニュージーランドのオークランド大学麻酔学部門のAlan F Merry氏らが、BMJ誌2011年10月8日号(オンライン版2011年10月4日号)で発表した。SAFERSleepは、ニュージーランド、英国のいくつかの病院で使用中で、特にオークランドの市立病院では2005年以来ほとんどの麻酔薬を対象として使用しているという。作業効率と無菌性を促進する新システム試験は、主要な第3次の高度機能紹介病院の5つの手術室で、同意を得た麻酔医89人が管理していた1万764例の薬剤投与があった1,075の症例について、新しいシステムと従来の手動記録による管理との比較が行われた。新しいシステムには、作業効率と無菌性を促進するため特注の薬品トレイと用途に見合ってデザインされたワゴンから構成され、一般的に使用される麻酔薬はあらかじめ充填されており、大きく読みやすいカラーコードラベルが貼付されている。バーコードリーダーはコンピュータ、スピーカー、タッチパネルとリンクしており、投与の直前に耳と目で選んだ麻酔薬を確認することができ、麻酔記録が自動的に編集され、もし投与開始15分以内に抗菌薬が投薬されない場合、また特定の手順、特に投薬前にラベルのスキャンニングがされていない場合、スクリーンと音声で警告が発せられる仕組みとなっていた。主要評価項目は、静脈注射の記録と投与のエラーの複合(直接観察、記録とバイアル中身との不一致の複合と断続的な視覚刺激への反応とした。副次評価項目には、患者のアウトカム、麻酔医の作業と作業負荷評価の解析、麻酔記録の読みやすさの評価、新システムの手順遵守の評価、参加者へのそれぞれのシステムのアンケート評価などが含まれた。読みやすい記録編集機能が麻酔医に好評、患者アウトカムと作業負荷は従来どおり投与エラーの全体平均は、100投与につき、新システムは9.1件(95%信頼区間:6.9~11.4)に対し、従来法は11.6件(同:9.3~13.9、9投与に1件)だった(格差のP=0.045)。新システムで最も多かったのは記録のエラーで、投与エラーはわずかだった。しかし、従来法と比較するとその差は有意ではなかった。投与エラーの割合は、麻酔医が新システムの2つの鍵となる原理(投与前バーコードスキャニング、音声喚起)を活用しなかった場合と比べて、常に活用した場合はより低かった。エラー平均は100投与につき、6.0件(同:3.1~8.8)vs. 9.7件(8.4~11.1)だった(P=0.004)。断続的な視覚刺激への反応は、新システムでは12%(58/471)、従来法では9%(40/473)だった(P=0.052)。新システムの記録はより読みやすく、麻酔医に好まれた。特に、長期、複雑、緊急の症例について評価が高かった。患者アウトカムや、麻酔医の作業負荷については新システムと従来法とに差は認められなかった。

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新生児敗血症への免疫グロブリン静注療法、転帰を改善せず

新生児敗血症に対する免疫グロブリン静注療法は、転帰に対する効果がないことが明らかにされた。国際新生児免疫療法試験(INIS)共同研究グループは、9ヵ国113施設で約3,500例の被験児を対象に行った結果による。新生児の主要な死因であり合併症をもたらす敗血症は、抗菌薬治療に加えた有効な治療が必要とされる。そうした患児に対して免疫グロブリン静注療法は全死因死亡を減らすことがメタ解析の結果、示されていた。しかし解析対象であった試験は小規模で、試験の質もバラバラであったことから、INIS共同研究グループが、国際化多施設共同二重盲検無作為化試験を行った。NEJM誌2011年9月29日号掲載報告より。9ヵ国113施設3,493例を対象に二重盲検無作為化試験試験は、2001年10月~2007年9月に、イギリス、オーストラリア、アルゼンチンなど9ヵ国113施設から、重度感染症が疑われるか、または認められ抗菌薬治療を受けていた新生児合計3,493例が登録され行われた。被験児は無作為に、多価IgG免疫グロブリン静注投与(投与量500mg/kg体重)群(1,759例)か、プラセボ群(1,734例)に割り付けられ追跡された。投与は2回ずつ行われ、1回目と2回目の間隔は48時間だった。主要アウトカムは、2歳時点の死亡または重度障害とした。2歳時点の死亡または重度障害、両群に有意差認められず結果、主要アウトカムの発生率について、両群に有意な差は認められなかった。免疫グロブリン静注群は39.0%(686/1,759例)、プラセボ群は39.0%(677/1,734例)で、相対リスク1.00(95%信頼区間:0.92~1.08)だった。その後の敗血症エピソードの発生率など、副次アウトカムの発生率についても同様に有意差は認められなかった。2歳児フォローアップにおいても、重度・非重度障害または有害事象の発生率に有意差は認められなかった。(武藤まき:医療ライター)

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戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

1985年新潟大学医学部卒業。現在、廿日市記念病院リハビリテーション科勤務。2001年1月~2004年2月までアメリカ国立衛生研究所に勤務した際、線維筋痛症に出会い、日本の現状を知る。帰国後、線維筋痛症を中心とした中枢性過敏症候群などの治療にあたっている。日本線維筋痛症学会評議員。著書に『線維筋痛症がわかる本』(主婦の友社)。線維筋痛症の現状先進国の線維筋痛症(fibromyalgia : FM)の有病率はわずか2%だが、グレーゾーンを含めると約20%になる。そのため、患者数が多いと予想される。また、先進国や少なくない非先進国ではFMは常識だが、日本ではまだよく知られていない。この疾患特有の愁訴を訴える患者さんを、プライマリ・ケア医や勤務医が診察する機会が多いと予測される。今回、FMの標準的な診療について、正しく理解していただくために診療のサマリーと診療スライドを公開させていただく。よりよい治療成績を求めることが臨床医の努めと考えているので、是非実践していただきたい。線維筋痛症の疫学・病態画像を拡大する腰痛症や肩こりから慢性局所痛症(chronic regional pain: CRP)や慢性広範痛症(chronic widespread pain: CWP)を経由してFMは発症するが、それまで通常10~20年かかる(図1)。FMの有病率は先進国では約2%、FMを含むCWPの有病率は約10%、CRPの有病率はCWPのそれの1-2倍である*1。FMの原因は不明だが、中枢神経の過敏状態(中枢性過敏)が原因であるという説が定説である*1。中枢性過敏によって起こった中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome)にはうつ病、不安障害、慢性疲労症候群、むずむず脚症候群などが含まれるが、FMはその代表的疾患である(図2)。画像を拡大する女性がFM患者の約8割を占める。未就学児にも発生するが、絶対数としては30歳代~60歳代が多数を占める。線維筋痛症の症状全身痛、しびれ、疲労感、感覚異常(過敏や鈍麻)、睡眠障害、記憶力や認知機能の障害などいわゆる不定愁訴を呈する。中枢性過敏症候群に含まれる疾患の合併が多い。痛みや感覚異常の分布は神経分布とは一致せず、痛みやしびれの範囲は移動する。天候が悪化する前や月経前後に症状がしばしば悪化する。症状の程度はCRP<CWP<FMとなる(図1)。線維筋痛症の検査・診断(2012年1月30日に内容を更新)画像を拡大する圧痛以外の他覚所見は通常存在せず、理学検査、血液検査、画像検査も通常正常である。従来はアメリカリウマチ学会(ACR)による1990年の分類基準(図3)が実質的に唯一の診断基準となっていたが、2010年(図4)*2と2011年*3に予備的診断基準が報告された。ACRが認めた2010年の基準は臨床基準であり、医師が問診する必要がある。ACRが現時点では認めていない2011年の基準は研究基準であり、医師の問診なしで患者の回答のみでも許容されるが、患者の自己診断に用いてはならない。2011年の基準は2010年の基準とほぼ同じであるが、「身体症状」が過去6カ月の頭痛、下腹部の痛みや痙攣、抑うつの3つになった。共に「痛みを説明できる他の疾患が存在しない」という条件がある*2、*3。1990年の分類基準は廃止ではなく、使用可能である*2、*3。CRPやCWPにFMと同じ治療を行う限り、FMの臨床基準には存在意義がほとんどない。どの診断基準がどのくらいの頻度で、どのように使用されるのかは現時点では不明である。画像を拡大する1990年の分類基準によると、身体5カ所、つまり、左半身、右半身、腰を含まない上半身、腰を含む下半身、体幹部(頚椎、前胸部、胸椎、腰部)に3カ月以上痛みがあり、18カ所の圧痛点を約4kgで圧迫して11カ所以上で患者が「痛い」といえば他にいかなる疾患が存在しても自動的にFMと診断される*1(図3)。つまり、圧痛以外の理学検査、血液検査、画像検査の結果は、診断基準にも除外基準にもならない。通常、身体5カ所に3カ月以上痛みがあれば広義のCWPと、CWPの基準を満たさないが腰痛症のみや肩こりのみより痛みの範囲が広い場合にはCRPと診断される。FMとは異なり他の疾患で症状が説明できる場合には、通常CRPやCWPとは診断されない。~~ ここまで2012年1月30日に内容を更新~~従来の基準を使う限り、FMには鑑別疾患は存在しないが、合併する疾患を見つけることは重要である。従来、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)、心因性疼痛、仮面うつ病と診断されたかなりの患者はCRP、CWP、FMに該当する。線維筋痛症の治療(2012年7月24日に内容を更新)画像を拡大する世界ではCWPに対して通常FMと同じ治療が行われており、CRPやCWPにFMと同じ治療を行うとFM以上の治療成績を得ることができる*1。FMの治療は肩こり、慢性腰痛症、慢性掻痒症、FM以外の慢性痛にもしばしば有効である。他の疾患を合併している場合、一方のみの治療をまず行うのか、両方の治療を同時に行うのかの判断は重要である。FMの治療の基本は薬物治療と非薬物治療の組み合わせである。非薬物治療には認知行動療法、有酸素運動、減量、禁煙(受動喫煙の回避を含む)、人工甘味料アスパルテームの摂取中止*4が含まれる(図5)。鍼の有効性の根拠は弱く高額であるため、週1回合計5回行っても一時的な効果のみであれば、中止するか一時的な効果しかないことを了解して継続すべきである。薬物治療の基本は一つずつ薬の効果を確認することである。一つの薬を少量から上限量まで漸増する必要がある。効果と副作用の両面から最適量を決定し、それでも不十分な鎮痛効果しか得られなければ次の薬を追加する。上限量を1-2週間投与しても無効であれば漸減中止すべきで、上限量を使用せず無効と判断してはならない。メタ解析や系統的総説により有効性が示された薬はアミトリプチリン〔トリプタノール〕、ミルナシプラン〔トレドミン〕、プレガバリン〔リリカ〕、デュロキセチン〔サインバルタ〕である*1、4。二重盲検法により有効性が示された薬はガバペンチン〔ガバペン〕、デキストロメトルファン〔メジコン〕、トラマドールとアセトアミノフェンの合剤〔トラムセット配合錠〕などである*1、4。ノルトリプチリン〔ノリトレン〕は体内で多くがアミトリプチリンに代謝され、有効性のエビデンスは低いが実際に使用すると有効例が多い。ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕、ラフチジン〔プロテカジン〕は対照群のない研究での有効性しか示されていないが、有効例が多く副作用が少ない。抗不安薬はFMに有効という証拠がないばかりか常用量依存を引き起こしやすいため、鎮痛目的や睡眠目的で使用すべきではない*1、4。また、ステロイドが有効な疾患を合併しない限りステロイドはFMには有害無益である*1。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は通常無効であるが、個々の患者では有効なことがある。個々の薬物の有効性のレベルは文献*1、4を参照していただきたい。論文上の効果や副作用、私自身が経験した効果や副作用、費用の点を総合的に考慮した私の個人的な優先順位は〔ノイロトロピン〕、アミトリプチリン、デキストロメトルファン、ノリトレン、メコバラミンと葉酸の併用、イコサペント酸エチル、ラフチジン、ミルナシプラン、ガバペンチン、デュロキセチン、プレガバリンである。これには科学的根拠はないが、薬物治療が単純になる。不都合があれば各医師が優先順位を変更すればよい。日本のガイドラインにも科学的根拠がないことはガイドラインに記載されている*5。筋付着部炎型にステロイドやサラゾスフファピリジン〔アザルフィジン〕が推奨されているが、それらはFMに有効なのではなくFMとは別の疾患に有効なのである。肺炎型FMに抗生物質を推奨することと同じである。線維筋痛症の治療成績画像を拡大する2007年4月の時点で3カ月以上私が治療を行った34人のFM患者のうち薬物を中止できた人は5人(15%)、痛みが7割以上改善した人が4人(12%)、痛みが1割以上7割未満改善した人が17人(50%)、不変・悪化の人が8人(24%)であった*1。CRPやCWPにFMとまったく同じ治療を行えば、有意差はないがFMよりはよい治療成績であった*1(図6)。※〔 〕内の名称は商品名です文献*1 戸田克広: 線維筋痛症がわかる本. 主婦の友社, 東京, 2010.*2 Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA et al: The American College of Rheumatology preliminary diagnostic criteria for fibromyalgia and measurement of symptom severity. Arthritis Care Res (Hoboken) 62: 600-610, 2010. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20461783*3 Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA et al: Fibromyalgia Criteria and Severity Scales for Clinical and Epidemiological Studies: A Modification of the ACR Preliminary Diagnostic Criteria for Fibromyalgia. J Rheumatol 38: 1113-1122, 2011. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21285161*4 戸田克広: エビデンスに基づく薬物治療(海外の事例を含む). 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 93-105.*5 西岡久寿樹: 治療総論. 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 82-92.質問と回答を公開中!

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COPD患者への増悪予防としてのアジスロマイシン

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者への増悪予防を目的としたアジスロマイシン(AZM)投与は、急性増悪の頻度を減らしQOLを改善することが、プラセボ対照無作為化試験の結果、報告された。米国・コロラド大学デンバー健康科学センターのRichard K. Albert氏らCOPD Clinical Research Networkが、増悪リスクの高い特定の患者1,557例を対象に、標準治療に加えアジスロマイシン250mg/日を1年間投与した結果による。ただし、被験者の一部で聴覚障害が認められたという。NEJM誌2011年8月25日号掲載報告より。250mg/日を1年間投与COPDの急性増悪は、死亡リスクの上昇や肺機能の急速な低下はもとより、本人の労働機会を奪い、開業医やER受診、入院機会の頻度を増し治療コストを上昇させる。標準治療〔吸入ステロイド薬、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬〕も頻度は減らすものの、なお年平均1.4回の急性増悪が認められることから、Albert氏らは、種々の炎症性気道疾患に有効なマクロライド系抗菌薬の予防的投与について検討した。試験対象となったのは、40歳以上のCOPDの増悪リスクは高いが、聴覚障害、安静時頻脈または補正QT間隔延長の著明なリスクはない患者であった。合計1,577例がスクリーニングを受け、うち1,142例(72%)が、標準治療に加えてアジスロマイシン250mg/日を1年間受ける群(570例)、または同プラセボを受ける群(572例)に無作為に割り付けられた。試験登録は2006年3月から始まり、1年間投与後2010年6月末まで追跡評価された。主要アウトカムは、初回急性増悪までの期間。副次アウトカムには、QOL、黄色ブドウ球菌や肺炎レンサ球菌などの鼻咽頭細菌コロニー形成、服薬アドヒアランスが含まれた。急性増悪の頻度減少、QOL改善も、一部患者で聴覚障害、耐性菌出現の影響は不明1年間の追跡調査を完了した患者は、アジスロマイシン群89%、プラセボ群90%であった。初回増悪までの期間の中央値は、アジスロマイシン群266日(95%信頼区間:227~313)に対して、プラセボ投与群は174日(同:143~215)で有意な延長が認められた(P

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ピロリ菌の除菌治療、4剤併用/連続治療は3剤標準治療よりも不良

ラテンアメリカのピロリ菌(Helicobacter pylori)感染患者の除菌治療では、標準的な3剤の14日間投与が、4剤の5日間併用治療や10日間連続治療よりも良好なことが、アメリカFred Hutchinsonがんセンター(シアトル市)のE Robert Greenberg氏らの検討で示された。ヨーロッパ、アジア、北米では、ピロリ菌に対するプロトンポンプ阻害薬+アモキシシリン+クラリスロマイシンによる標準治療は、これにニトロイミダゾールを加えた4剤の5日間併用治療や10日間連続治療よりも除菌効果が有意に低いことが報告されている。4剤レジメンは、3剤レジメンよりも抗生物質の用量が少ないため、医療資源が乏しい環境での除菌計画に適すると考えられる。ラテンアメリカはピロリ菌関連の疾病負担が大きい地域だが、除菌戦略に関する試験は少ないという。Lancet誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月20日号)掲載の報告。3つの治療法の除菌効果を評価する非盲検無作為化試験研究グループは、ラテンアメリカ地域におけるピロリ菌の除菌治療として、4剤の5日間併用治療および10日間連続治療の有効性を、標準的な3剤の14日間治療と比較する無作為化試験を実施した。2009年9月~2010年6月までに、6ヵ国(チリ、コロンビア、コスタリカ、ホンジュラス、ニカラグア、メキシコ)の7地域から尿素呼気試験でピロリ菌陽性と判定された21~65歳の患者が登録された。これらの患者が、ランソプラゾール+アモキシシリン+クラリスロマイシン14日間投与(標準治療)、ランソプラゾール+アモキシシリン+クラリスロマイシン+メトロニダゾール5日間投与(併用治療)、ランソプラゾール+アモキシシリン5日間投与→ランソプラゾール+クラリスロマイシン+メトロニダゾール5日間投与(連続治療)のいずれかを施行する群に無作為に割り付けられた。除菌効果は、無作為割り付け後6~8週に尿素呼気検査で評価した。治療割り付け情報はマスクされなかった。主要評価項目はピロリ菌除菌率とした。除菌率:標準治療82.2%、併用治療73.6%、連続治療76.5%1,463例が登録され、標準治療群に488例が、併用治療群に489例が、連続治療群には486例が割り付けられた。患者背景は3群でバランスがとれていた。標準治療群の除菌率は82.2%(401/488例)であり、併用治療群の73.6%(360/489例)よりも8.6%(調整後の95%信頼区間:2.6~14.5)高く、連続治療群の76.5%(372/486例)に比べ5.6%(同:-0.04~11.6)高かった。7つの地域のいずれにおいても、4剤レジメンの除菌率が標準治療よりも優れることはなかった。服薬アドヒアランスや重篤な有害事象の発生率の3群間の差は小さかった。著者は、「多様なラテンアメリカの地域集団におけるピロリ菌感染の治療法としては、標準的な3剤の14日投与が、4剤の5日間併用治療や10日間連続治療よりも良好であった」と結論したうえで、「特に医療資源の乏しい環境では、治療期間が短く低コストのレジメンが許容されるかもしれない」としている。(菅野守:医学ライター)

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重症感染症児への輸液ボーラス投与、48時間死亡率を上昇

 ショック患者への急速早期の輸液蘇生術は、救急治療ガイドラインに示されており、小児科における生命維持訓練プログラムでも支持されている。しかし、処置法、用量、輸液の種類に留意したエビデンスはなく、集中ケア施設がまず利用できないアフリカのような、医療資源が限られた環境下でのショック患児や生命に関わるような重症感染症児への治療に対する輸液蘇生の役割は確立されていない。そこでケニア中央医学研究所(KEMRI)のKathryn Maitland氏らは、アフリカ東部3ヵ国で輸液蘇生の効果を調べる無作為化試験を行った。NEJM誌2011年6月30日号(オンライン版2011年5月26日号)掲載より。アルブミンボーラス、生食ボーラスと対照群の3群に無作為化し48時間後の転帰を比較 研究グループは、ウガンダ、ケニア、タンザニアで、重症熱性疾患と循環不全で入院した小児を、5%アルブミン溶液20~40mL/kg体重ボーラス投与(アルブミンボーラス群)もしくは0.9%生食液20~40mL/kg体重ボーラス投与(生食ボーラス群)する群か、ボーラス投与しない群(対照群)の3群に無作為に割り付け検討した(A層試験)。このA層試験では、重症低血圧の小児は除外されB層試験にて、いずれかのボーラス投与群に無作為に割り付けられ検討された。 >被験児は全員、ガイドラインに基づく、適切な抗菌薬治療や静脈内維持輸液ならびに生命維持のためのトリアージや救急療法を受けた。なお、栄養失調または胃腸炎の患児は除外された。 主要エンドポイントは、48時間時点の死亡率とし、副次エンドポイントには、肺水腫、頭蓋内圧亢進、4週時点の死亡または神経学的後遺症の発生率などが含まれた。 A層試験は3,600例の登録を計画していたが、3,141例(アルブミンボーラス群1,050例、生食ボーラス群1,047例、対照群1,044例)が登録された時点でデータ安全モニタリング委員会の勧告により補充が停止された。 マラリアの保有率(全体で57%)、臨床的重症度は全群で同程度だった。ボーラス後48時間死亡率が有意に上昇 A層における48時間死亡率は、アルブミンボーラス群10.6%(1,050例中111例)、生食ボーラス群10.5%(1,047例中110例)、対照群7.3%(1,044例中76例)だった。生食ボーラス群 vs. 対照群の相対リスクは1.44(95%信頼区間:1.09~1.90、P=0.01)、アルブミンボーラス群vs.生食ボーラス群の相対リスクは1.01(同:0.78~1.29、P=0.96)、両ボーラス群vs.対照群の相対リスクは1.45(同:1.13~1.86、P=0.003)だった。 4週時点の死亡率は、それぞれ12.2%、12.0%、8.7%だった(両ボーラス群vs.対照群の相対リスクは1.39、P=0.004)。神経学的後遺症発生率は、2.2%、1.9%、2.0%だった(同1.03、P=0.92)だった。肺水腫または頭蓋内圧亢進の発生率は、2.6%、2.2%、1.7%だった(同1.46、P=0.17)。 B層では、死亡率がアルブミンボーラス群69%(13例中9例)、生食ボーラス群56%(16例中9例)だった(アルブミンボーラスの相対リスク:1.23、95%信頼区間:0.70~2.16、P=0.45)。 これらの結果は、施設間、サブグループ間(ショック重症度や、マラリア、昏睡、敗血症、アシドーシス、重症貧血の状態に基づく)で一貫して認められた。 研究グループは「医療資源が限られたアフリカでの重症循環不全児に対する輸液ボーラスは、48時間死亡率を有意に高める」と報告をまとめている。

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市中肺炎に対するデキサメサゾン補助療法で入院期間が短縮

免疫不全状態にない市中肺炎患者の治療では、抗菌薬に補助療法としてデキサメサゾンを追加すると、入院日数が短縮する可能性があることが、オランダ・St Antonius病院(ニューウェハイン)のSabine C A Meijvis氏らの検討で示された。追加に伴い高血糖の頻度が上昇したものの、重篤な有害事象はまれだった。市中肺炎治療の中心は早期診断に基づく適切な抗菌薬療法だが、ワクチンによる予防治療の導入や抗菌薬の進歩にもかかわらず罹患率、死亡率は高いままで、医療コストを押し上げている。補助療法の有効性が示唆されており、デキサメサゾン追加は全身性の炎症を抑制することで肺炎の早期消退をもたらす可能性があるが、抗菌薬への追加のベネフィットは不明だという。Lancet誌2011年6月11日号(オンライン版2011年6月1日号)掲載の報告。デキサメサゾン追加の入院期間短縮効果を評価するプラセボ対照無作為化試験研究グループは、市中肺炎患者の入院期間に及ぼすデキサメサゾン追加の効果を評価するプラセボ対照無作為化試験を実施した。オランダの2つの教育病院の救急外来を受診し、市中肺炎と診断された18歳以上の患者が、デキサメサゾン(5mg/日)あるいはプラセボを入院後4日間静注する群に無作為に割り付けられた。免疫不全状態の患者、迅速なICUへの搬送を要する患者、すでに副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬の投与を受けている患者は除外した。主要評価項目は入院期間であった。入院期間中央値が1日短縮、高血糖が高頻度に発現2007年11月~2010年9月までに304例が登録され、デキサメサゾン群に151例(男性56%、平均年齢64.5歳)が、プラセボ群には153例(同:57%、62.8歳)が割り付けられた。304例中143例(47%)は肺炎重症度指数(pneumonia severity index:PSI)でクラス4~5の患者であった(デキサメサゾン群79例、プラセボ群64例)。入院期間中央値は、デキサメサゾン群が6.5日(IQR:5.0~9.0)と、プラセボ群の7.5日(同:5.3~11.5)に比べ有意に短縮した(p=0.0480)。院内死亡や重篤な有害事象はまれで、両群間に差は認めなかった。重複感染がデキサメサゾン群の7例(5%)、プラセボ群の5例(3%)にみられた(p=0.54)。デキサメサゾンによると考えられる胃穿孔が1例(第3日目)に認められた。高血糖が、デキサメサゾン群で44%(67/151例)と、プラセボ群の23%(35/153例)に比べ有意に高頻度にみられた(p<0.0001)。著者は、「免疫不全状態にない市中肺炎患者の治療では、抗菌薬にデキサメサゾンを追加することで、入院期間を短縮できる可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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小児の細菌性髄膜炎に対するCTRX、5日間投与vs. 10日間投与/Lancet

発展途上国の小児において重大な疾病であり死亡の原因となっている細菌性髄膜炎に対して、静注の抗菌薬セフトリアキソン(CTRX、商品名:ロセフィンなど)が多くの国で推奨されているが、その至適な投与期間について確立されていない。アフリカ南東部のマラウイ共和国・マラウイ大学医学校小児科のElizabeth Molyneux氏らは、CTRXの投与期間について、5日間投与と10日間投与との同等性を検証する国際共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験を、2ヵ月~12歳児を対象に行った。Lancet誌2011年5月28日号(オンライン版2011年5月26日号)掲載より。細菌学的治療失敗、再発を主要アウトカムに無作為化試験試験は2001年9月~2006年12月にかけて、バングラデシュ、エジプト、マラウィ、パキスタン、ベトナムの5ヵ国10小児科病院の協力を得て行われた。いずれの病院も年間150例以上の細菌性髄膜炎患児を受け入れていた。対象は、細菌性髄膜炎の原因菌として肺炎レンサ球菌、インフルエンザ菌b型、髄膜炎菌を有した2ヵ月~12歳児。無作為化は、5日間のCTRX治療で臨床的に安定したと診断された1,027例を、均等にコンピュータ配分で、さらに5日間治療を行う群とプラセボ群とに割り付ける方法で行われた。割り付け情報は患児、保護者、また医療スタッフにも知らされなかった。主要アウトカムは、細菌学的治療失敗(脳脊髄液または血液培養検査で陽性)および再発。分析は、パー・プロトコール解析にて行われた。5日間で症状が安定したら投与を打ち切って問題ない解析に含まれたのは、1,004例(5日間治療群:496例、10日間治療群:508例)だった。治療失敗例は、5日間治療群、10日間治療群ともに0例だった。再発は、5日間治療群で2例が報告、うち1例はHIVを有する患児だった。10日間治療群では再発はみられなかった。抗菌薬投与の副作用は、両群とも軽度で同等に認められた。Molyneux氏は、「肺炎レンサ球菌、インフルエンザ菌b型または髄膜炎菌による細菌性髄膜炎を発症した2ヵ月~12歳児で、CTRXの5日間投与で症状が安定した患児は、問題なく投与を打ち切ってよい」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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2008年英国NICEの勧告による、歯科治療での抗菌薬予防的投与中止の影響

感染性心内膜炎のリスクが高いと思われる患者に対する抗菌薬の予防的投与は、いまだ多くの国で行われているが、英国国立医療技術評価機構(NICE)は2008年3月に、歯科の侵襲的治療に先立って行われる同抗菌薬予防的投与の完全中止を勧告した。シェフィールド大学臨床歯科学部門のMartin H Thornhill氏らは、このNICEガイドライン導入前後の同処置変化および感染性心内膜炎発生率の変化を調査した。BMJ誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月3日号)掲載より。ガイドライン後、予防的投与は78.6%減少、症例・関連死の増加傾向がストップ英国では全入院患者について、1次的退院診断名と最大12の2次的診断名がデータベース化されている。Thornhill氏らは、そのデータから、1次的退院診断名および2次的診断名として、急性または亜急性の感染性心内膜炎のデータがある患者を対象に、ガイドライン導入前後の比較研究を行った。主要評価項目は、予防的投与に用いられたアモキシシリン(商品名:サワシリンなど)3g単回経口投与またはクリンダマイシン(同:ダラシン)600mg単回経口投与の1ヵ月間の処方数、感染性心内膜炎の毎月の症例数、同疾患関連による病院死または口腔レンサ球菌によると考えられる感染性心内膜炎の症例数とした。結果、NICEガイドライン導入後、抗菌薬予防的投与の処方数は、月平均1万277例(標準偏差:1,068)から2,292例(同:176)と、78.6%(P<0.001)減少という有意に大きな変化がみられた。一方で、ガイドライン導入前にみられていた感染性心内膜炎の普遍的な増加傾向が、導入後は一転してみられなくなっていた(P=0.61)。非劣性試験の結果、ガイドライン導入後、症例増加については9.3%以上、また感染性心内膜炎関連の病院死増加については12.3%以上を削減した可能性が示された。ハイリスク患者への予防的投与についてはさらなる検証をThornhill氏は、「NICEガイドライン導入後、抗菌薬予防的投与の処方は78.6%も減少したにもかかわらず、導入後2年間の感染性心内膜炎の発症例または死亡率の増加を大きく削減していた。このことはガイドライン支持に寄与するが、今後もデータのモニタリングを行い、さらに臨床試験によって、特にハイリスク患者を感染から守るには抗菌薬予防的投与が有用であるのかどうか決定する必要がある」と述べている。

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急性虫垂炎に対する抗生物質治療 vs. 切除術

単純性急性虫垂炎の治療におけるアモキシシリン+クラブラン酸による抗生物質治療の効果は、緊急虫垂切除術よりも劣っており、現在でもgold standardは虫垂切除術であることが、フランス・アントワーヌ・ベクレール病院のCorinne Vons氏らの検討で明らかとなった。急性虫垂炎は、急性の腹痛で入院した患者の中で手術を要する頻度が最も高い疾患だという。4つの無作為化試験をはじめいくつかの検討で、単純性急性虫垂炎は抗生物質治療で治癒が可能であり、1次治療となる可能性もあることが示唆されている。Lancet誌2011年5月7日号掲載の報告。抗生物質治療の虫垂切除術に対する非劣性試験研究グループは、単純性急性虫垂炎の治療における抗生物質治療(アモキシシリン+クラブラン酸)の緊急虫垂切除術に対する非劣性を検証する非盲検無作為化試験を実施した。2004年3月11日~2007年1月16日までに、フランスの6つの大学病院からCT検査で診断された18~68歳の単純性急性虫垂炎患者が登録された。これらの患者が、アモキシシリン+クラブラン酸(体重90kg未満:3g/日、90kg以上:4g/日)を8~15日間投与する群あるいは緊急虫垂切除術を施行する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、介入後30日以内の腹膜炎の発生率とした。主要評価項目:8% vs. 2%243例が登録され、123例が抗生物質治療群に、120例は虫垂切除術群に割り付けられた。介入前に早期脱落した4例を除外した239例(抗生物質治療群120例、虫垂切除術群119例)がintention-to-treat解析の対象となった。30日以内の腹膜炎の発生率は、抗生物質治療群が8%(9/120例)と、虫垂切除術群の2%(2/119例)に比べ有意に高かった(治療群間差:5.8例、95%信頼区間:0.3~12.1)。虫垂切除術群では、事前にCT検査による評価を行ったにもかかわらず、予想外にも手術時に119例中21例(18%)が腹膜炎を伴う複雑性虫垂炎であることが判明した。抗生物質治療群120例のうち14例(12%、95%信頼区間:7.1~18.6)が30日以内に虫垂切除術を施行され、この14例と30日以内に追跡を中止した4例を除く102例のうち30例(29%、同:21.4~38.9)が30日~1年までの間に虫垂切除術を受けた。前者のうち急性虫垂炎であったのは13例(再発率:11%、同:6.4~17.7)、後者では26例であった(同:25%、18.0~34.7)。著者は、「急性虫垂炎の治療におけるアモキシシリン+クラブラン酸による抗生物質治療の緊急虫垂切除術に対する非劣性は確認されなかった。現在でも、緊急虫垂切除術は単純性急性虫垂炎の治療のgold standardである」と結論し、「CT検査に関する予測マーカーが同定されれば、抗生物質治療が有効な患者の選出が可能になるかもしれない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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