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心房細動をどこまで追いかけるか?(解説:香坂俊氏)-960

心房細動(AF)が塞栓性脳梗塞の原因であることは広く知られている(最近は国家試験でもよくこの内容が出題される)。そして、脳梗塞ハイリスク患者(CHADSスコア 2点以上など)に抗凝固療法を行うと、その発症を60~70%(!)カットできることも知られている。このことを踏まえて、心房細動を早期に見つけようという動きが世界的に盛んになっている。従来からの心筋梗塞や脳梗塞の予防というと、血圧を下げる、コレステロールを下げる、運動する、などという項目が並ぶことが多かった。が、汎用性は高いものの、これらの内容でカットできるイベント発症リスクは10~20%程度であり、この数値と比べるとハイリスクAF症例に対する抗凝固療法の強さは際立つ。今回の研究では、そのAFの早期検出を行うべく、ウエアラブル心電図(ECG)パッチの配布を行い、その検証を行った。試験のデザインは、ランダム化による即時モニタリング群(試験登録後即時に開始)とdelayedモニタリング群(4ヵ月遅れて開始)の比較である。その結果であるが、・新規AFの4ヵ月発見率は、即時モニタリング群3.9%、delayedモニタリング群0.9%であった。・そしてその後、パッチによる心電図モニタリングは、新規の抗凝固薬の開始(5.7 vs.3.7例/100人年)や循環器科の外来受診(33.5 vs.26.0例/100人年)に結びついた。注目すべきはこの研究の対象となった方々であるが、Inclusion Criteriaには・75歳以上、あるいは55歳以上(女性は65歳)で1つ以上のリスク因子がある方とされており、明らかにCHADS-VAScスコア2点以上というところを意識している。今後もこうしたウエアラブルデバイスの進展を踏まえ、「誰をより積極的にみていくか」ということが重要な課題になると思っているが、やみくもにスクリーニングを進めるのではなく、 そのモニタリングの結果を踏まえて治療方針が変わるというところを意識する必要があるものと考えられる(この研究でもしもCHADS-VASc 1点以下の人を対象としたとして、仮に無症候のAFが見つかってもなにもすることがない)。

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周術期の脳梗塞予防:卵円孔はターゲットとなりうるか?(解説:香坂俊氏)-941

 心臓には卵円孔foramen ovaleという部位が存在する。いや、「存在していた」と書くべきだろうか? 胎生期にはこの卵円孔が開いており、母体(胎盤)から回ってくる新鮮な血液をそのまま右房から左房へと流し込む役割を果たしている。しかし、胎児が母体の外に出て、最初の自発呼吸を行うや否やダイナミックに血行動態は変化し、左房側から卵円孔はFlap(蓋)をあてられ閉鎖してしまう。 しかし、この卵円孔にあてられた蓋はそれほど強固なものではなく、4人に1人くらいは押せば空く状態が維持されている。それでも普段は左房側の圧が右房側の圧よりも高いので問題ないのだが、たとえば息んだり咳をしたりして胸腔内圧が上がった時など、右房側の圧が一時的に左房側を上回ってパタパタと蓋が開いてしまうことがある。これが卵円孔開存(PFO:patent foramen ovale)と呼ばれる状況である。 このPFOがいま脳梗塞予防のターゲットとして注目を浴びている。右房側を流れている血液は静脈系の血液であり、ゆっくりと流れているので、ときどき下肢から血栓を運んできてしまう。普通はそうした小さな血栓は肺でフィルターされるのだが、PFOがあると(少ない確率ではあるが)血栓が直接動脈系に流れ込んできて脳梗塞などの動脈系の塞栓症を起こすことがあるとされている。 今回の論文では、このPFOを心臓手術のときについでに閉じてしまったらどうだろう、という仮説を後ろ向きに全米の手術データを用いて検証したものであり、非常にpromisingな解析結果が得られている。ただ、デザインが後ろ向きであるので、そのメインメッセージは「現場の医師が適切と考えた症例についてPFOを閉じていくことはよさそうだ」というお墨付き的な範疇に留まる。 昨今の画像技術の進歩によって、周術期の脳梗塞が思いのほか多いことがわかってきている(MRIは本当によく脳梗塞を見つける)。われわれの行ったレジストリ研究でも、冠動脈インターベンションの際に臨床的に重要な脳梗塞合併症が0.3%の症例でみられた(抄録、論文11月現在in press)。そのため、ハイリスク患者に対する積極的な抗凝固療法の施行などがハイリスク患者に関して議論されるようになってきているが、今回の結果を踏まえると、その議題の中にPFOの扱いに関する項目も足していったほうがよさそうである。PFOそのものを経皮的にカテーテルで閉じることも可能となってきており、ますます注目を集めるようになっており、今後の適応に関する議論の展開が注目されている。

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非心臓手術後の心房細動患者の血栓塞栓症リスクは?【Dr.河田pick up】

 循環器内科医は非心臓手術後に生じた心房細動に関するコンサルトを受けることが多い。心房細動は術後のストレスで生じただけなのか、また、術後ということもあり、抗凝固薬を継続すべきなのかの判断が難しいことが多い。今回は、非心臓手術後に発症した心房細動患者における血栓塞栓症リスクについてデンマークのグループが評価した論文を紹介したい。 非心臓手術後に発症した心房細動に対する長期の血栓塞栓症リスクはよくわかっておらず、脳梗塞の予防に関しての十分なデータがない。コペンハーゲン大学病院のJawad H. Butt氏らは、非心臓手術後に新たに発症・診断された心房細動患者における血栓塞栓症リスクを、非外科手術、非弁膜性心房細動患者と比較した。Journal of American College of Cardiology誌オンライン版2018年10月23日号に掲載の報告。 著者らはデンマークのナショナルレジストリを用いて、1996~2015年の間に非心臓手術後に心房細動を発症したすべての患者を同定した。これらの患者を、年齢、性別、心不全/高血圧/糖尿病/血栓塞栓症、虚血性心疾患の既往、診断年をマッチさせた、外科手術と関連しない非弁膜症性心房細動患者と1対4の割合で比較した。長期の血栓塞栓症リスクについては、多変量Cox回帰モデルを用いて解析された。 非心臓手術を受けた患者のうち、6,048例(0.4%)が術後の入院中に心房細動を発症した。頻度が多かったのは胸部・肺、血管、腹部手術であった。合計3,830例の術後心房細動患者を15,320例の非弁膜症性心房細動患者とマッチさせた。経口抗凝固薬は、退院後30日の時点で24.3%と41.3%の患者でそれぞれ投与されていた(p<0.001)。血栓塞栓症の長期リスクは両群で同様であった(千人年当たり、31.7イベントと29.9イベント、ハザード比[HR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.85~1.07)。フォローアップ期間中の抗凝固療法は、術後心房細動群(HR:0.52、95%CI:0.40~0.67)と非弁膜症性心房細動群(HR:0.56、95%CI:0.51~0.62)のいずれにおいても血栓塞栓症イベントリスクを同様に低下させていた。 著者らは非心臓手術後新規に診断された心房細動は、非弁膜症性心房細動と同様に血栓塞栓症の長期リスクがあると結論づけている。 術後の心房細動は一過性であり、予後は良いと考えられがちだが、今回の結果から、術後の心房細動に対しても非弁膜症性心房細動と同じようにリスクに応じた抗凝固療法を行う必要があると考えられる。術後のストレスに伴う心房細動か一過性か、そうでないのかを判断するのは非常に難しい問題だといえる。(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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冠動脈疾患の心不全、洞調律患者に対するリバーロキサバンの効果(COMMANDER HF)検証すべき仮説だったのか?(解説:高月誠司氏)-927

 本研究は、冠動脈疾患の心不全、洞調律患者に対するリバーロキサバンの効果を検証する二重盲検の多施設ランダム化比較試験である。プラセボ群とリバーロキサバン2.5mgを1日2回投与群の2群に分け、主要アウトカムは全死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントである。なぜ洞調律の冠動脈疾患の心不全例にリバーロキサバンを投与するのか、という疑問をまず持たれると思う。リバーロキサバンは非弁膜症性の心房細動の脳梗塞予防、深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症の予防・治療薬である。本研究の背景には慢性心不全増悪後に心不全の再入院や死亡を起こすことが多く、その原因としてトロンビン関連の経路により惹起された、炎症や内皮機能不全や動脈・静脈血栓症が考えられると記載されている。思い切った仮説を検証しに行ったものである。確かに重症心不全例は心房細動や深部静脈血栓症を合併しやすく、本研究では登録時に心房細動例は除外されたものの、その後に発症した隠れ心房細動例には、若干の効果があるかもしれない。 5,022例の患者がランダム化され、フォローアップの中央値は21.1ヵ月であった。結果は、主要アウトカムの1年あたりの発症率は、リバーロキサバン群で25.0%、プラセボ群で26.2%で、有意差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.84~1.05、p=0.27)。本研究では冠動脈疾患患者が対象で、93.1%の患者が抗血小板薬を内服し、34.8%の患者は2剤の抗血小板薬を内服していた。当然、出血性の合併症が危惧される。結果、致死的な大出血は両群間で差がなかったが、ISTHによる大出血がリバーロキサバン群でプラセボ群よりも多かった(年間発症率2.04% vs.1.21%、HR:1.68、95%CI:1.18~2.39、p=0.003)。また、プロトコールからの脱落率はリバーロキサバン群で年間あたり16.3%、プラセボ群で13.6%。理由の内訳は出血イベントがリバーロキサバン群で多かった。 本研究の結果はある意味予想どおりのnegative studyである。それを研究者が正直に発表すること、そしてnegative studyであっても雑誌がしっかり評価し公表することはきわめて大事である。ただ本研究の仮説、冠動脈疾患で洞調律の慢性心不全に抗凝固療法が有効か、これが検証すべき仮説だったかどうか、皆さんはどう感じられるだろうか。

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リバーロキサバン、 非心房細動・冠動脈疾患併発の心不全増悪に有効か/NEJM

 心不全は、不良な予後が予測されるトロンビン関連経路の活性化と関連する。フランス・Universite de LorraineのFaiez Zannad氏らCOMMANDER HF試験の研究グループは、慢性心不全の増悪で入院し、左室駆出率(LVEF)の低下と冠動脈疾患がみられ、心房細動はない患者の治療において、ガイドラインに準拠した標準治療に低用量のリバーロキサバンを追加しても、死亡、心筋梗塞、脳卒中の発生を改善しないことを示した。リバーロキサバンは、トロンビンの産生を抑制する経口直接第Xa因子阻害薬であり、低用量を抗血小板薬と併用すると、急性冠症候群および安定冠動脈疾患の患者において、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発生が低減することが知られている。NEJM誌オンライン版2018年8月27日号掲載の報告。32ヵ国628施設で、心不全増悪患者約5,000例を登録 本研究は、32ヵ国628施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Janssen Research and Development社の助成による)。対象は、3ヵ月以上持続する慢性心不全がみられ、LVEF≦40%、心不全増悪(インデックスイベント)による入院後21日以内で、冠動脈疾患を有し、ガイドラインに準拠した適切な薬物療法を受け、抗凝固療法は受けていない患者であった。心房細動がみられる患者は除外された。 2013年9月~2017年10月の期間に、5,022例(ITT集団)が登録され、リバーロキサバン(2.5mg、1日2回)+標準的抗血小板療法を施行する群に2,507例、プラセボ+標準的抗血小板療法を施行する群に2,515例が割り付けられた。追跡期間中央値は21.1ヵ月であった。 有効性の主要アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合であり、安全性の主要アウトカムは、致死的出血と、後遺障害が発生する可能性がある重要部位(頭蓋内、髄腔内、眼内など)の出血の複合であった。脳卒中は抑制、大出血リスクが高い 平均年齢はリバーロキサバン群が66.5±10.1歳、プラセボ群は66.3±10.3歳で、女性がそれぞれ22.0%、23.8%含まれた。心筋梗塞が76.2%、75.2%、脳卒中が8.3%、9.7%、糖尿病が40.8%、40.9%、高血圧が75.7%、75.0%に認められた。 有効性の主要複合アウトカムの発生率は、リバーロキサバン群が25.0%(626/2,507例)、プラセボ群は26.2%(658/2,515例)であり、両群間に有意な差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.84~1.05、p=0.27)。項目別にみると、全死因死亡はリバーロキサバン群:21.8% vs.プラセボ群:22.1%(HR:0.98、95%CI:0.87~1.10)、心筋梗塞3.9 vs.4.7%(0.83、0.63~1.08)、脳卒中は2.0 vs.3.0%(0.66、0.47~0.95)であった。 安全性の主要複合アウトカムの発生率は、リバーロキサバン群が0.7%(18/2,499例)、プラセボ群は0.9%(23/2,509例)と、両群間に有意な差はみられなかった(HR:0.80、95%CI:0.43~1.49、p=0.48)。項目別にみると、致死的出血(リバーロキサバン群:0.4% vs.プラセボ群:0.4%、HR:1.03、95%CI:0.41~2.59、p=0.95)および後遺障害が発生する可能性のある重要部位の出血(0.5 vs.0.8%、0.67、0.33~1.34、p=0.25)について両群間の有意差はなかったが、大出血リスクはリバーロキサバン群のほうが有意に高かった(3.3 vs.2.0%、1.68、1.18~2.39、p=0.003)。 著者は、「リバーロキサバンが心血管アウトカムを改善しなかった最も可能性の高い理由は、トロンビン介在性イベントは、心不全で入院したばかりの患者における心不全関連イベントの大きな要因ではないことである」とし、「事実、本試験で最も頻度の高い単一のイベントは心不全による再入院であり、アテローム血栓性イベントよりもむしろ心不全が、実質的な死亡割合に寄与している可能性がある」と指摘している。

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ファブリー病〔Fabry disease〕

ファブリー病のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 定義α-ガラクトシダーゼAの酵素欠損により心臓、腎臓などの組織を中心にグロボトリオシルセラミド(GL-3)が蓄積することにより、心不全、腎不全を来す疾患である。遺伝形式はX-連鎖の遺伝形式をとる。■ 疫学約4万人に1人と推定される。腎不全患者の0.2~0.5%、左室肥大の患者の4%、女性左室肥大の12%、男性脳卒中患者の4.9%、女性患者の2.4%。イタリアでは新生児男児3,100人に1人の頻度、台湾では1,250人に1人と患者頻度は高い。■ 病因ライソゾーム酵素であるα-ガラクトシダーゼの酵素欠損により全身組織にグロボトリオシルセラミド(GL-3)などの糖脂質が蓄積する(図1)。とくに血管内皮細胞に蓄積、心筋、腎臓、リンパ節、神経節など、全身組織に蓄積する。画像を拡大する■ 臨床症状(表1)ファブリー病の臨床症状は多彩である。小児期からの四肢の激痛、無痛、無汗などの自律神経症状、蛋白尿、腎不全などの臨床症状、不整脈、弁膜症、心不全などの心症状、頭痛、脳梗塞、知能障害などの神経症状、精神症状、皮膚症状として被角血管腫、難聴、めまい、耳鳴り、角膜混濁などの眼科症状、咳などの呼吸器症状などを認める。ファブリー病の臨床症状の進展は図1を参照。画像を拡大する■ 分類臨床的には「古典型」、心型、腎型といわれる「亜型」、「ヘテロ接合体女性患者」に分類される古典型(表2)では皮膚症状(被角血管腫)、自律神経症状(低汗、無痛、四肢痛など)を有する。心型、腎型ではこれらの症状は少ない。ヘテロ接合体女性患者では心症状が主体であるが、痛みなどは男性患者と同様に認められる。画像を拡大する■ 予後古典型の患者は早期の酵素補充療法をしないと、腎不全、心不全、脳梗塞で40~50代で死亡する患者が多い。心型、腎型では60~70代で死亡、ヘテロ女性患者は60~70代で心不全にて死亡する患者が多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)次の流れに従い、診断を行う。(1)臨床症状:小児期からの四肢の激痛、無汗、皮膚の被角血管腫、心不全、蛋白尿、腎不全、脳梗塞などの症状(2)血清、白血球、尿などでα-ガラクトシダーゼの酵素欠損を証明する(3)尿中GL-3の蓄積(4)皮膚での病理所見:電子顕微鏡でミエリン様蓄積物質を認める(5)遺伝子診断 3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ファブリー病の治療として対症療法と根治療法がある。表3に概略をまとめた。画像を拡大する1)対症療法(1)疼痛ファブリー病での痛みは、患者に大きな負担である。幼少時から四肢の灼熱感のある痛みが生じ、思春期はとくに強い。女性患者でも4~5歳から四肢の痛みを感じる患者がいる。痛みは四肢以外にも下顎、頸部などさまざまである。とくに梅雨の時期、夏などは疼痛が強い。カルバマゼピン(商品名:テグレトールほか)、ガバぺンチン(同:ガバペン)などが有効である。(2)消化器症状腹痛、胃痛、下痢などがみられ、整腸剤などの投与が有効である。(3)心肥大、心不全、不整脈徐脈性不整脈には、ペースメーカーが有効である。心筋保護作用としてのACE阻害薬、 ARBの投与が推奨される。高血圧、高脂血症の予防は重要である。(4)腎障害腎保護策のためにARB、ACE阻害薬は有効との報告がある。蛋白食制限、減塩は必要である。腎不全に対しての腹膜あるいは血液透析療法、さらには腎移植が試みられている。(5)脳梗塞脳梗塞の予防のためのアスピリン、抗血小板凝集薬の投与などの抗凝固療法が必要。(6)その他めまい、難聴などに対する対症療法として、めまいにはベタヒスチンメシル(同:メリスロンほか)、突発性難聴にはステロイドが使用される。2)酵素補充療法酵素補充療法は、現在遺伝子工学的手法の進歩に伴いαガラクトシダーゼAの酵素製剤が2製剤開発されている。アガルシダーゼ アルファ(商品名:リプレガル)とアガルシダーゼ ベータ(同:ファブラザイムほか)が開発されている。アガルシダーゼ ベータはCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞から遺伝子工学手法で作成された。投与量としては体重1kgあたりアガルシダーゼ アルファは0.2mg、アガルシダーゼ ベータは1mgを2週間に1回投与する。副作用としては蕁麻疹、悪寒、吐き気、鼻汁、軽度血圧低下、気道に違和感などの症状が見られるが、抗ヒスタミン薬、ステロイドの投与で軽快する場合が多い。副作用は投与後3~5ヵ月後に多く見られ、その後は軽快する場合が多い。そして、効果のポイントは次のとおりである。(1)痛みへの効果痛みは軽減傾向にある。発汗障害は改善傾向にある。(2)腎臓への効果腎臓、とくに腎血管内皮細胞でのGL-3の蓄積は除去される。糸球体のたこ足細胞でのGL-3の蓄積の除去には時間がかかる。GFRが60mL/min/1.73m2以上であれば治療後も維持できる。また、60mL/min/1.73m2 以下であれば、治療にかかわらず機能は低下することが明らかにされている。尿蛋白質では、蛋白の排泄が+1以上であれば酵素治療しても腎機能は低下するが、尿蛋白がマイナスであれば腎機能は悪化しない。(3)心機能への効果心筋の肥厚、左室心筋重量は酵素補充療法により減少する。左室機能改善の改善を認める。(4)脳神経系への効果酵素補充療法により血管の内皮細胞への蓄積は軽快するが、脳梗塞の所見は治療により変化はないと考えられる。また、白質変性への効果も少ない。(5)耳鼻科的効果酵素補充による聴力への効果はあまり期待できない。聴力検査で効果が認められていない。(6)眼症状への効果角膜に対する効果は軽快する傾向にある。網膜動脈閉塞で失明する。(7)皮膚症状への効果被角血管腫への効果は少ない。低(無)汗症への効果はみられ、酵素治療により汗をかくようになりQOLは上がる。(8)消化器症状への効果酵素補充療法により下痢などに対する効果が報告され、酵素治療とともに下痢、腹痛は改善傾向にある。体重は増加する患者が多い。4 今後の展望1)シャペロン治療低分子薬(デオキシノジリマイシンなど)は、ライソゾーム酵素のゴルジーライソゾーム系での酵素の合成、分解過程で作用する。すなわち変異酵素が分解促進、あるいは活性基が障害されている場合、シャペロンは有効であり、全体の約50~60%の患者の遺伝子異常に効果があるといわれている。ミガーラスタット(商品名:ガラフォルド)は、2018年5月に発売され、わが国でも保険適用となった。今後、効果や安全性について、さらに知見の積み重ねがなされる。2)遺伝子治療・細胞治療ファブリー病の最終治療としては、遺伝子治療法の開発が重要である。ファブリー病マウスを用いて「アデノ随伴ウイルス」(AAV)あるいは「レンチウイルスベクター」を用いての治療研究が進められており、モデルマウスではGL-3の臓器からの除去に成功している。また、骨髄幹細胞、あるいは間質幹細胞を用いて、遺伝子治療と組み合わせての治療効果も研究されている。3)ファブリー病のスクリーニングファブリー病の治療のためには、早期診断が重要である。早期診断のための新生児マス・スクリーニングも報告され、ガスリー濾紙血を用いて酵素診断することにより可能である。濾紙血による新生児スクリーニングでは、台湾でのファブリー病患者頻度は1/1,250(男児)、イタリアでは1/3,500(男児)、日本では1/6,500の頻度であり、決して珍しい疾患でないことが証明されている。また、ハイリスク患者スクリーニングとして、心筋症患者、左室肥大患者、腎不全患者、若年性脳梗塞患者にはファブリー病の患者の頻度が高いことが報告されている。早期診断により治療効果をあげることが重要である。5 主たる診療科腎臓内科、循環器内科、小児科、皮膚科、眼科、耳鼻科 など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療情報難病情報センター ライソゾーム病(ファブリー病を含む)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報ふくろうの会(ファブリー病患者と家族の会)1)Desnick RJ, et al. α-Galactosidase A deficiency: Fabry disease. In: Scriver CR et al, editors. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 8th ed. New York: McGraw Hill; 2001. p. 3733–3774. 2)Eng CM, et al. N Engl J Med. 2001; 345: 9–16.3)Rolfs A, et al. Lancet. 2005; 366: 1794–1796.4)Sims K, et al. Stroke. 2009; 40: 788-794.5)衛藤義勝. 日本内科学雑誌.2009; 98: 163-170.公開履歴初回2013年2月28日更新2018年9月11日

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心臓手術で「エキストラ」にできること(解説:香坂俊氏)-905

 床屋に行ったりすると、最後に整髪料を付けてくれたり、あるいはジェル等を使って髪形を整えてくれたりすることがある。たまに肩や首をマッサージしてくれることもある。筆者は顔のパックを試していきませんか、と言われたこともある(断った)。ケースバイケースだが、こうした【エキストラなサービス】は概して嬉しいものである。 これが心臓外科手術だったらどうだろうか? 通常心臓外科手術というのは、目的とする冠動脈バイパス術なり弁置換術なりを行って、サッと胸を閉じてしまうことがほとんどだが、たまに術者が【エキストラなサービス】としてちょっとした手技を追加してくれることがある。 その代表格が左心耳の閉鎖術ではないだろうか。この左心耳は左房で盲端になっており、肺静脈から流れてくる血液の一時的なバッファー(緩衝地)として働いている。が、心房細動になると、途端にお荷物となり、盲端であるがために血栓が好発し、脳梗塞を起こすことが知られている。なので、冠動脈バイパス術なり弁置換術なりの心臓手術を行うときに、もしその患者さんが心房細動を合併していたら、ついでに心臓外科医が左心耳閉鎖術も一緒にやってくれることはよくある(同意の上で)。 この左心耳閉鎖術の追加は、伝統的に「おそらく生理学的に問題ないであろうし、血栓もできなくなるだろう」と考えられ、とくにRCTが行われることもなく慣習的に続けられてきた。そこで、「大きなデータベースもあることだし、一度ここらで一度検証しておこうか」ということで、米国での解析が行われた。 用いられたのは10,520例の心臓手術患者のデータである。ちなみにすべての方が65歳以上で、心房細動を合併していた。エキストラに左心耳閉鎖術が行われていたのは3割程度であったが、可能な限り背景因子などを調整し、マッチさせて比較したところ、予想通り左心耳閉鎖が行われた患者で予後が良好だったとの結果が得られている(平均追跡期間2.6年で脳梗塞のハザードは33%程度低下)。 ただ、この研究に関しては後ろ向き研究に関する限界を踏まえて解釈せねばならず、現場の「心臓外科医」がベストの判断で行った結果を検証しただけであるので、この結果即すべての心臓手術患者さんに対して左心耳閉鎖術を行うということにはならない。また、抗凝固療法の扱いにも決まったルールがあったわけではなく、サブ解析では「抗凝固が退院後も続けられていた症例に限れば、左心耳閉鎖施行と予後改善に関連はなかった」とされている。 とりあえず今の段階で言えることは、心臓外科医が【エキストラなサービス】として選択的に左心耳閉鎖術を行っても害はなく(よかった!)、場合によってはメリットがあるかもしれないということになる。米国で左心耳閉鎖が行われた症例の割合が30%程度だった、というのも1つの指標として役に立つだろう(その割合を大きく超えて左心耳閉鎖を行った場合、今回の結果が当てはまらなくなる可能性が高い)。今後この領域には、ウォッチマンなど経皮的に左心耳を閉鎖できるデバイスが導入されてくるが、こうした新たな手法による適応の拡大にはRCTの施行を視野に入れた慎重な議論が必要だろう。

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高齢心房細動症例で心臓外科手術が行われる場合、外科的左心耳閉鎖術は有効か否か?(解説:今井靖氏)-896

 心房細動患者において血栓塞栓症の発症リスクは約5倍と見積もられており、その塞栓症予防としてワルファリンが唯一の治療選択であったところに経口直接抗凝固薬(DOAC)が加わった。しかしながら抗凝固薬投与は出血傾向を生じるという負の側面があり、その点において主な塞栓源となる左心耳を閉塞することで抗凝固薬に並ぶ、あるいは抗凝固療法との併用効果について期待されるところである。 とくにカテーテル技術を利用した経皮的左心耳閉鎖デバイスが複数開発され、日本でも限定された施設でトライアルが行われており近日上市される見込みである。また、経皮的に心外膜側から左心耳を縛り、左心耳との血流遮断を行うデバイスについても報告がなされるに至っている。何らかの理由で心臓外科手術を受ける患者においては、心臓外科手術の折に左心耳を外科的に閉鎖することが行われるが、その有効性についてのエビデンスはほとんどない状況がある。 今回取り上げたJAMAの論文は、この点を明らかにするものである。米国における成人心臓血管外科におけるメディケアに関連した後ろ向きコホート研究であり、65歳以上で冠動脈バイパス、僧帽弁または大動脈弁手術(冠動脈バイパス同時実施あり、なし)を施行された症例(2011~12年)が対象であり、2014年末まで最大3年間の追跡、それらのなかで外科的左心耳閉鎖の有無で評価がなされた。主要エンドポイントは血栓塞栓症であり、副次エンドポイントは脳出血、全死亡、血栓塞栓症・脳出血・全死亡の複合とされた。1万524例の心臓血管手術症例が含まれ、中央値では年齢76歳、39%女性、CHA2DS2-VAScスコアは4点、追跡期間2.6年であり、それらのうち、3,892例(37%)において外科的左心耳閉鎖術が施行された。外科的左心耳閉鎖を実施された場合はそうでない場合と比較すると、背景因子の補正前において有意にイベント発生が抑制されていた。 血栓塞栓症(4.2% vs.6.2%)、全死亡(17.3% vs.23.9%)、複合エンドポイント(20.5% vs.28.7%)と抑制されていたが、出血性脳卒中においては有意差を認めなかった(0.9% vs.0.9%)。統計学的補正を行った後においても、外科的左心耳閉鎖術は有意に血栓塞栓症(ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.56~0.81、p<0.001)、全死亡(HR:0.88、95%CI:0.79~0.97、p=0.001)、複合エンドポイント(HR:0.83、95%CI:0.76~0.91、p<0.001)を低下させた。しかしながら出血性脳卒中については有意差を認めなかった(HR:0.84、95%CI:0.53~1.32、p=0.44)。抗凝固療法実施のあり、なしで層別化したところ、抗凝固療法なしで退院した患者に限定すると血栓塞栓症(補正前:4.2% vs.6.0%、補正後HR:0.26、95%CI:0.17~0.40、p<0.001)の発生頻度を有意に抑制した。しかしながら逆に抗凝固療法がなされて退院した症例に限れば、左心耳閉鎖の有無による差異は認められなかった(補正前:4.1%vs 6.3%、補正後HR:0.88、95%CI:0.56~1.39、p=0.59)。心臓外科手術を実施される心房細動合併高齢症例においては、約3年間の追跡において血栓塞栓症における再入院を有意に低下させるという結果が示され、このエビデンスは外科的左心耳閉鎖の有用性を支持するものである。しかしながら、さらなるランダム化比較試験により、その有用性が確かめられる必要があると考えられる。 実臨床においては、発作性あるいは持続性心房細動を合併する症例で心臓血管外科手術が検討される場合に、外科・内科間で左心耳閉鎖の適否について十分に議論がなされるべきと考える。

130.

内科も外科も、今、左心耳がアツイ(解説:今中和人氏)-888

 本論文は、開心術のついでに左心耳を閉鎖すれば、後日の心原性塞栓が予防できて予後が改善する、という仮説を検証している。2009年からの約8年間に、全米のprivateないしMedicare被保険者7万5,782人が冠動脈バイパスか弁膜症手術を受け、その際5.8%(4,374人)が左心耳閉鎖術(LAAO)も受けた。このうち4,295人と、LAAOしなかった同数の患者とをマッチさせて、平均フォロー2.1年で比較した。LAAO群の患者分布に合わせているため、両群とも3/4にAFの既往があり、年齢68歳、単独バイパスが1,200例(オフポンプ900例)、弁手術が2,300例、バイパス+弁手術が750例程度であった。 結果は、1次エンドポイントである遠隔期の塞栓症と総死亡はLAAO群で有意に抑えられ、その差は経時的に拡大した。左房内血栓の9割は左心耳由来とされているから、ここだけ見ると素直に納得しそうになるのだが、2次エンドポイントである新規AF、遠隔期のAF関連の受診と入院は、逆に非LAAO群で有意に少ないという結果で一気に混乱し始める。 あれっ? AFが少ない群に血栓症が多発するなんて、おかしくないか? 実はAF既往の有無でサブグループ解析をすると、AF既往ありの患者ではLAAOは血栓症・総死亡ともHR0.7未満の強い抑制効果を示したが、AFの既往がない患者ではHR0.9以上で無効だった。しかしAF既往ありの患者が3/4を占めるので、全体ではLAAOは血栓症と総死亡を有意に抑制していた。一方、AF既往がある患者ではLAAOによる遠隔期のAFの増加はHR1.1程度とわずかだったが、1/4にあたるAF既往なしの患者でHR1.4以上の大幅増だったため、全体ではLAAO群で術後AFが有意に多くなった。 つまりLAAOはAFの既往がある患者にはとても有益だが、それ以外の患者にはやや有害、という結果だったのだが、AFの既往、弁膜症手術(とくに僧帽弁)、抗凝固療法が高率なLAAO群の患者構成をそのまま適用したため、「AFが少ない群に血栓症が多い」という不思議な、そしてmisleadingな結論が誕生した。もちろん、AFの既往がある心臓手術患者は3/4どころか少数派である。 さらにAFの「既往」という表現もひっかかる。既往と聞くと、手術時点ではAFでなかったかのような印象を受けるが、それでは新規AFが有意に少ない非LAAO群の血栓症がグングン増えたのが説明困難で、既往と言っても多くは手術時点で慢性AFかそれに準じる状態だったのだろう。実際、除細動歴も抗凝固療法もLAAO群に完璧にマッチされているし、本文には“prior”とか“history”と書かれているが、表では“AF at baseline”となっている。すなわち、心臓手術時点でAFか、頻繁にAFになる患者にはLAAOを積極的に施行し、そうでない患者では手を出さないのがよろしい、ということであろう。 なお本論文が一括しているLAAOであるが、閉鎖方法の議論が最近ホットで、単なるタバコ縫合ではかなりリークが多いが、2層に縫合しても遠隔期に3割程度が漏れるとの報告がある。一方、とくに左房壁の菲薄な症例での切除・縫合に伴う出血は、生命に関わるリスクであり、自動縫合器や外側からの閉鎖デバイスは本邦では保険適用とコストの問題のほか、正しく左心耳の基部を処置できるか、という本質的問題もある。Watchmanデバイスも登場し、AFと左心耳については、内科医も外科医も当分、目が離せない。

132.

NOACで頭蓋内出血は少なくなる?(解説:後藤信哉氏)-810

 各種NOACの第III相ランダム化比較試験にて、INR 2-3を標的としたワルファリン群に比較してNOAC群にて頭蓋内出血が少ないとされても、筆者の心には響かなかった。INR 1.9であればワルファリンを増量し、INR 2.9であってもワルファリンを減量しないような治療は、自らの日常診療と大きく乖離していたためである。また、NOAC登場前の観察研究にて、日本も世界もワルファリン使用時の頭蓋内出血発現率は0.2%程度とされていたので、その3倍も頭蓋内出血が起こることを示した第III相試験のメッセージは「INR 2-3を標的としたワルファリン治療は頭蓋内出血を増やす」のみであった。 米国には各種registryがある。本研究はAHAが主導するGet With The Guidelines-Strokeのデータベースを用いた。第一著者はDuke大学に留学している日本人である。データベースはしっかり構築されており、Duke大学の解析チームのデータ解析は信頼できる。後ろ向きの解析であるためN Engl J Med, Circulationには届かない。JAMAではデータベースの大きさと質、トピックの重要性が重視されたと考える。 頭蓋内出血にて入院した141,311例の対象症例のうち、15%弱は抗凝固薬使用中の症例であった。抗凝固薬使用中の症例のほうが高齢で、心房細動の合併も多かった。しかし、これらのリスク因子を補正しても、院内死亡率は抗凝固療法使用歴のある患者で高かった。ワルファリン使用歴の長い私はINR 2-3を標的としたワルファリン治療をしたことがない。多くの症例はINR 1.7前後で2を超える症例も少ない。ワルファリン群に比較してNOAC群のほうが、院内死亡率が低いとしているが、私のように低いINRにコントロールしている場合はNOACと差がない。 4つのNOACの開発試験に強く寄与して、また実臨床においてNOACが広く使用されていく現状を観察して、一貫して自らの中で変化しなかったNOACの評価は「NOACは頭蓋内出血を増加させる」「INR 2-3を標的としたワルファリン治療では容認できない重篤な出血リスクをもたらす」の2つであった。抗凝固療法は、重篤な出血リスクを増やす怖い介入である。禁煙して運動習慣をつけ、各種リスク因子を補正して総合的に脳卒中、血栓塞栓イベントを減らす努力を継続すべきである。

133.

脳内出血後の院内死亡、ワルファリンvs. NOAC/JAMA

 脳内出血(ICH)患者の院内死亡リスクを、発症前の経口抗凝固薬(OAC)で比較したところ、OAC未使用群に比べ非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)あるいはワルファリンの使用群で高く、また、NOAC使用群はワルファリン使用群に比べ低いことが示された。米国・デューク大学メディカルセンターの猪原拓氏らが、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)による登録研究Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke)のデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果、明らかにした。NOACは血栓塞栓症予防としての使用が増加しているが、NOAC関連のICHに関するデータは限られていた。JAMA誌オンライン版2018年1月25日号掲載の報告。脳内出血患者約14万1,000例で、抗凝固療法と院内死亡率との関連を解析 研究グループはGWTG-Strokeに参加している1,662施設において、2013年10月~2016年12月にICHで入院した患者を対象に、ICH発症前(病院到着前7日以内)の抗凝固療法による院内死亡率について解析した。 抗凝固療法は、ワルファリン群・NOAC群・OAC未使用群に分類し、2種類の抗凝固薬(ワルファリンとNOACなど)を用いていた患者は解析から除外した。また、抗血小板療法については、抗血小板薬未使用・単剤群・2剤併用(DAPT)群に分類し、3群のいずれにも該当しない患者は解析から除外した。 解析対象は14万1,311例(平均[±SD]68.3±15.3歳、女性48.1%)で、ワルファリン群1万5,036例(10.6%)、NOAC群4,918例(3.5%)。抗血小板薬(単剤またはDAPT)を併用していた患者は、それぞれ3万9,585例(28.0%)および5,783例(4.1%)であった。ワルファリン群とNOAC群は、OAC未使用群より高齢で、心房細動や脳梗塞の既往歴を有する患者の割合が高かった。NOAC群は、未使用群よりは高いがワルファリン群よりも低い 急性ICHの重症度(NIHSSスコア)は、3群間で有意差は確認されなかった(中央値[四分位範囲]:ワルファリン群9[2~21]、NOAC群8[2~20]、OAC未使用群8[2~19])。 補正前院内死亡率は、ワルファリン群32.6%、NOAC群26.5%、OAC未使用群22.5%であった。OAC未使用群と比較した院内死亡リスクは、ワルファリン群で補正後リスク差(ARD)9.0%(97.5%信頼区間[CI]:7.9~10.1)、補正後オッズ比(AOR)1.62(97.5%CI:1.53~1.71)、NOAC群でARDは3.3%(97.5%CI:1.7~4.8)、AORは1.21(97.5%CI:1.11~1.32)であった。 ワルファリン群と比較して、NOAC群の院内死亡リスクは低かった(ARD:-5.7%[97.5%CI:-7.3~-4.2]、AOR:0.75[97.5%CI:0.69~0.81])。 NOAC群とワルファリン群の死亡率の差は、DAPT群(NOAC併用群32.7% vs.ワルファリン併用群47.1%、ARD:-15.0%[95.5%CI:-26.3~-3.8]、AOR:0.50[97.5%CI:0.29~0.86])において、抗血小板薬未使用群(NOAC併用群26.4% vs.ワルファリン併用群31.7%、ARD:-5.0%[97.5%CI:-6.8%~-3.2%]、AOR:0.77[97.5%CI:0.70~0.85])より数値上では大きかったが、交互作用p値は0.07で統計的有意差は認められなかった。 なお、著者は、GWTG-Strokeの登録データに限定していることや、NOAC群の症例が少なく検出力不足の可能性があることなどを、研究の限界として挙げている。

134.

心臓手術時の左心耳閉鎖が血栓塞栓症リスクを低下/JAMA

 心房細動(AF)を有する高齢患者において、心臓手術と外科的左心耳閉鎖(surgical left atrial appendage occlusion:S-LAAO)の併施により、非併施と比べ3年後の血栓塞栓症による再入院リスクが低下することが示唆された。米国・デューク大学のDaniel J. Friedman氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。左心耳は、AF患者における血栓形成の鍵を握っており、心臓手術時に閉鎖または除去されることがある。S-LAAO併施で血栓塞栓症のリスクが低下するかについて、これまでエビデンスに限りがあった。JAMA誌2018年1月23/30日号掲載の報告。心房細動患者の心臓手術における外科的左心耳閉鎖の併施と非併施を比較 研究グループは、Society of Thoracic Surgeons Adult Cardiac Surgery Database(2011~12年)を用い、メディケア受給者の後ろ向きコホート研究を実施した。対象は、S-LAAOを併施または併施せずに心臓手術(冠動脈バイパス術[CABG]、僧帽弁手術±CABG、大動脈弁術±CABG)を受けた65歳以上のAF患者である(追跡調査:2014年12月31日まで)。 主要評価項目は、術後3年時までの血栓塞栓症(脳卒中、一過性脳虚血発作、全身性塞栓症)による再入院。副次評価項目は、出血性脳卒中、全死因死亡、および血栓塞栓症・出血性脳卒中・全死因死亡の複合エンドポイントなどで、いずれもメディケア請求データで確認し、S-LAAO併施例と非併施例について比較した。外科的左心耳閉鎖で血栓塞栓症による再入院率が低下 心臓手術が行われたAF患者は1万524例(平均年齢76歳、女性39%、CHA2DS2-VASCスコアの中央値で、このうちS-LAAO併施は3,892例(37%)であった。 追跡期間中央値2.6年において、全体で血栓塞栓症が5.4%、出血性脳卒中が0.9%に発生し、全死因死亡率は21.5%、複合エンドポイント発現率は25.7%であった。 S-LAAO併施例は、非併施例と比較して血栓塞栓症(4.2% vs.6.2%)、全死因死亡(17.3%vs.23.9%)、複合エンドポイント(20.5% vs.28.7%)(いずれも補正前)の発現が少なかったが、出血性脳卒中については差がなかった(0.9% vs.0.9%)。逆確率重み付け法で補正しても、S-LAAO併施は血栓塞栓症(部分分布ハザード比[SHR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.56~0.81、p<0.001)、全死因死亡(HR:0.88、95%CI:0.79~0.97、p=0.001)、複合エンドポイント(HR:0.84、95%CI:0.53~1.32、p=0.44)の有意な減少と関連していたが、出血性脳卒中との関連はなかった。 抗凝固療法なしで退院した患者群においても、S-LAAO併施は非併施と比較して血栓塞栓症の減少を認めたが(補正前発現率:4.2% vs.6.0%、補正後SHR:0.26、95%CI:0.17~0.40、p<0.001)、抗凝固療法ありで退院した患者群において差はなかった(補正前発現率:4.1% vs.6.3%、補正後SHR:0.88、95%CI:0.56~1.39、p=0.59)。

135.

深部静脈血栓症、カテーテル血栓溶解療法併用の効果(解説:中澤達氏)-802

 急性近位深部静脈血栓症の患者692例を、抗凝固療法単独と抗凝固療法+薬理機械的カテーテル血栓溶解療法(以下、カテーテル血栓溶解療法)に無作為に割り付けて追跡した。 フォローアップ中6~24ヵ月の血栓後症候群の発生について、両群間で有意差はなかった。(カテーテル血栓溶解療法群47%、抗凝固療法単独群48%、p=0.56)。一方で、カテーテル血栓溶解療法群では、10日以内の大出血イベントがより多かった(1.7% vs.0.3%、p=0.049)。フォローアップ24ヵ月間の全体でみた静脈血栓塞栓症の再発は、両群間で有意差はなかった(12% vs.8%、p=0.09)。 中等症~重症の血栓後症候群の発生は、カテーテル血栓溶解療法群18%に対し、抗凝固療法単独群は24%であった(p=0.04)。また、血栓後症候群の重症度スコア(Villalta scores)は、フォローアップ6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月いずれの時点の評価でも、対照群よりカテーテル血栓溶解療法群が有意に低かった(各評価時点におけるスコアの比較のp<0.01)。しかし、ベースラインから24ヵ月までのQOLの改善に関して、両群間で有意差はなかった。 急性近位深部静脈血栓症を発症した患者において、抗凝固療法にカテーテル血栓溶解療法を追加しても、血栓後症候群のリスクは低下せず、大出血リスクは高まることが示された。血栓後症候群は静脈弁破壊と内皮細胞障害で生じると考えられる。CaVenT研究では、カテーテル血栓溶解療法の有益性が示されたが、本研究では有益性はなく出血性イベントが増加した。 静脈弁破壊と内皮細胞障害が生じない内に血栓がなくなれば、血栓後症候群は発症しないであろう。 従って、効果は近位深部静脈血栓症発症から治療開始までの時間に依存していると思う。本研究の対象は、"急性"近位深部静脈血栓症と一括りにしている多施設研究であることが有益性を証明できなかった一因であろう。

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深部静脈血栓症、薬理機械的血栓溶解併用は有益か/NEJM

 急性近位深部静脈血栓症を発症した患者において、抗凝固療法に薬理機械的カテーテル血栓溶解療法(以下、薬理機械的血栓溶解療法)を追加しても、血栓後症候群のリスクは低下せず、大出血リスクは高まることが、米国・セントルイス・ワシントン大学のSuresh Vedantham氏らによる無作為化試験の結果で示された。近位深部静脈血栓症を発症した患者は、抗凝固療法を行っても血栓後症候群を呈する頻度が高い。研究グループは、薬理機械的血栓溶解療法は血栓を速やかに除去し、血栓後症候群のリスクを低減すると仮定し検証試験を行った。NEJM誌2017年12月7日号掲載の報告。抗凝固療法単独群と比較し、血栓後症候群の発生を評価 試験は、急性近位深部静脈血栓症の患者692例を対象とし、抗凝固療法単独(対照群)または抗凝固療法+薬理機械的血栓溶解療法(ステント併用ありまたはなしで、カテーテルまたはデバイスを介して遺伝子組換え組織プラスミノーゲンアクチベータを送達し、血栓を吸引または破砕する)に無作為に割り付けて追跡した。 主要アウトカムは、フォローアップ中6~24ヵ月の血栓後症候群の発生であった。血栓後症候群のリスクは低下せず、大出血リスクは増大 主要アウトカムの発生について、両群間で有意差はなかった。発生率は、薬理機械的血栓溶解療法併用群47%、対照群48%であった(リスク比[RR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.82~1.11、p=0.56)。一方で、薬理機械的血栓溶解療法併用群では、10日以内の大出血イベントがより多かった(1.7% vs.0.3%、RR:6.18[95%CI:0.78~49.2]、p=0.049)。フォローアップ24ヵ月間の全体でみた静脈血栓塞栓症の再発は、両群間で有意差はなかった(12% vs.8%、p=0.09)。 中等症~重症の血栓後症候群の発生は、薬理機械的血栓溶解療法併用群18%に対し、対照群は24%であった(RR:0.73、95%CI:0.54~0.98、p=0.04)。また、血栓後症候群の重症度スコア(Villalta scores)は、フォローアップ6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月いずれの時点の評価でも、対照群より薬理機械的血栓溶解療法併用群が有意に低かった(各評価時点におけるスコアの比較のp<0.01)。しかし、ベースラインから24ヵ月までのQOLの改善に関して、両群間で有意差はなかった。■「深部静脈血栓症」関連記事下肢静脈瘤で深部静脈血栓症のリスク約5倍/JAMA

137.

WATCHMAN留置後の血栓症の特徴を調査

 左心耳は非弁膜症性心房細動患者における血栓塞栓症の主要な発生源と考えられ、経皮的に左心耳を閉鎖することが、長期の抗凝固療法に代わる治療として使用される頻度が増えている。米国においては、WATCHMANが米国食品医薬局(FDA)が承認した唯一の左心耳閉鎖デバイスである。しかし一方で、WATCHMAN留置後、残存するデバイス周囲からの閉鎖漏れや予期できないデバイス関連血栓が懸念されている。Cedar-Sinai 医療センターのShunsuke Kubo氏、Saibal Kar氏ら研究グループは、心房細動患者におけるWATCHMANに関連した血栓形成の特徴や、その影響を調べた。Journal of American College of Cardiology誌2017年8月号に掲載。心房細動患者119例が対象、デバイス関連血栓症の発生率は3.4% 本研究では、2006~14年に連続してWATCHMANの植込みを受けた心房細動患者119例を対象とした。植込み後の経食道エコー(TEE)は、45日後、6ヵ月後、12ヵ月後に実施された。TEEで同定されたデバイス関連血栓の発生率、特徴と臨床経過が評価された。フォローアップのTEEにより、デバイス上に形成された血栓が4例(3.4%)に同定された。血栓が見つかった患者はいずれも慢性心房細動を有しており、血栓のない患者における慢性心房細動の有病率(40%)よりも高かった。また、血栓を有する患者においては、留置されたデバイスのサイズが大きかった(29.3±3.8mm vs. 25.7±3.2mm)。血栓を有するすべての症例で、研究のプロトコールで求められる抗凝固もしくは抗血小板療法が中断されていた。ワルファリンおよびアスピリンによる治療再開後、全症例で血栓の完全な消失がTEEにより確認された。全症例において、ワルファリンは6ヵ月で中止されたが、血栓の再発は認められなかった。フォローアップ期間の平均は1,456±546日で、血栓を有する患者における死亡、脳梗塞、全身の血栓症は認められなかった。短期間のワルファリン療法がデバイス関連血栓症に有効 本研究では、心房細動の頻度、デバイスのサイズ、抗凝固・抗血小板療法が、WATCHMAN留置後に生じるデバイス関連血栓に関与しうることがわかった。また、短期間のワルファリン療法はデバイス関連血栓症に有効であることが示され、その後の再発も認められなかった。■参考Incidence, Characteristics, and Clinical Course of Device-Related Thrombus After Watchman Left Atrial Appendage Occlusion Device Implantation in Atrial Fibrillation Patients(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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卵円孔開存は問題か?(解説:後藤信哉氏)-753

 胎児循環では心房中隔の一部としての卵円孔は開存している。出生とともに閉じるのが一般的である。剖検例を詳細に検討すると、20%程度の症例には機能的卵円孔開存を認めるとの報告もある。経食道心エコーでは心房の血流の詳細な検討が可能である。バブルを用いたコントラスト法により機能的卵円孔開存の診断精度も向上した。原因不明の脳梗塞の一部は、静脈血栓が開存した卵円孔を介して左房・左室と移動した血栓が原因と考えられた。とくに、出産時、潜水時などに比較的若いヒトに起こる脳塞栓には卵円孔開存を原因とするものが多いと想定された。 卵円孔が開存しても心負荷は増えない。将来の心不全を防ぐために卵円孔を閉鎖する必要はない。自分の患者が心房中隔欠損症の高齢出産のときには緊張する。1次予防は難しいとはわかっていても、入院時にできた静脈血栓が、腹圧増加時に欠損した心房中隔を介して重篤な脳卒中になるのが心配だからだ。卵円孔開存でも腹圧亢進時などには右・左シャントが起こりうる。1次予防は無理としても、卵円孔開存が明らかで、右・左シャントを介した脳梗塞を発症した後でも、われわれは診療に当たる必要がある。過去に抗血小板薬、抗凝固薬などの有効性が検証されたが明確な結論は得られなかった。卵円孔開存はまれではないが、原因不明の脳卒中を合併するリスクは少ないので、再発予防であってもランダム化比較試験を計画することは困難であった。今回はこの困難な領域において、複数のランダム化比較試験の結果が報告された。 Masらのフランスのグループは抗凝固療法よりも、抗血小板療法よりも、経カテーテル的卵円孔閉鎖と抗血小板薬の併用の予防効果が高いとした(Mas JL, et al. N Engl J Med. 2017;377:1011-1021.)。しかし、経カテーテル的卵円孔閉鎖時の合併症を考えると今後の標準治療に転換するほどのインパクトはない。難しいランダム化比較試験を完遂した努力は賞賛したい。Sondergaardらも同様のランダム化比較試験を行い、同様の結果をNEJM誌に発表した(Sondergaard L, et al. N Engl J Med. 2017;377:1033-1042.)。Saverらの結果も同様であった(Saver JL, et al. N Engl J Med. 2017;377:1022-1032.)。単独の試験の結果と比較して、複数の試験が同時に発表されれば、結果の信頼性は高い。しかし、SaverらはSt. Jude Medical社、SondergaardらはW.L. Gore & Associates社の助成研究である。自社のデバイスをうまく使える技術のある施設を選定したバイアスは否定できない。Masらの公的グラントによる研究も同様の成果を示しているので、技術の上手な術者であれば2次予防にはデバイスを考えてもよいのかもしれない。

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リバーロキサバンの安定型冠動脈疾患に対する効果(解説:高月誠司氏)-745

 本研究は、抗Xa薬リバーロキサバンの冠動脈疾患患者に対する心血管イベントの2次予防効果を検証した二重盲検試験である。2万7,395例の安定した冠動脈疾患患者を対象とし、リバーロキサバン2.5mg 1日2回+アスピリン100mgの併用群、リバーロキサバン5mg 1日2回単剤群、アスピリン100mg単剤群の3群に無作為割り付けした。主要評価項目は心血管死、脳卒中、心筋梗塞の複合エンドポイントで、平均23ヵ月の追跡期間である。 結果、主要評価項目の発生は、リバーロキサバン・アスピリン併用群のほうがアスピリン単剤群よりも少なかった(4.1% vs.5.4%、ハザード比0.76、p<0.001)。しかし、大出血の頻度はリバーロキサバン・アスピリン併用群のほうがアスピリン単剤群より多かった(3.1% vs.1.9%、ハザード比1.70、p<0.001)。ただし、脳出血や致死的な出血の頻度は変わらなかった。リバーロキサバン単剤群とアスピリン単剤群との比較では、主要評価項目は変わらなかったが、大出血はリバーロキサバン単剤群で多かったという。試験は主要評価項目において、リバーロキサバン・アスピリン併用群が一貫して優位であり、早期中止された。 抗Xa薬、抗トロンビン薬といった新規経口抗凝固薬は心房細動や深部静脈血栓症に対する抗凝固療法薬として広く使用されているが、冠動脈疾患に対する効果も検証されている。アピキサバンのAPPRAISE-2、リバーロキサバンのATLAS ACS-TIMI 51や最近報告されたダビガトランのRE-DUAL PCIなどの報告があり、後2者では肯定的な結果が得られている。本研究の特徴は安定した冠動脈疾患が対象で、心房細動の有無を問わないという点で、リバーロキサバン・アスピリン併用群のアスピリン群に対する有用性が明らかとなった。冠動脈疾患に対しても、抗Xa薬は有用と考えていいだろう。ただし、リバーロキサバン単剤群は5mg 1日2回、併用群のリバーロキサバンは2.5mg 1日2回という用法・用量で、これらはいずれも心房細動に対するそれとは異なる。 心房細動に対する用法・用量は、欧米では20mg 1日1回(減量時15mg 1日1回)、本邦では15mg 1日1回(減量時10mg 1日1回)であり、本研究では低用量を分服している。それでも、本研究のリバーロキサバン単剤群はアスピリン群よりも大出血の頻度が高かった。本研究はリバーロキサバン・アスピリン併用群でアスピリン群よりも、心血管死、脳卒中、心筋梗塞の頻度が少なかったが、サブグループ解析の結果では、その優位性は75歳以上の患者、体重60kg以下の患者では認めなかった。ワルファリンとは異なり、用量調節不要というのが新規経口抗凝固薬の利点であるが、用法・用量の設定が大事だということがわかる。 欧米人と日本人を比較すると、平均で約20kgの体重差がある。少なくとも本研究で用いられた用量は本邦で用いることはできないだろうし、本邦における検討が必要であろう。また、本研究では主要エンドポイントに致命的な出血や有症状の主要臓器の出血を加えたネットクリニカルベネフィットも併用群で頻度が少なかったと報告している。通常ネットクリニカルベネフィットの算出には症状によって重み付けし、たとえば脳出血は1.5倍や2倍として計算することがあるが、本研究では単純に頻度が比べられている。高齢者、低体重など出血が危惧される患者で本当にベネフィットがあるかどうか検証が必要である。

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PFO閉鎖術で脳梗塞再発が大幅に低減/NEJM

 卵円孔開存(PFO)との関連が考えられる原因不明の脳梗塞を呈し、関連する心房中隔瘤または心房間の大きな短絡が認められる患者に対して、PFO閉鎖術と抗血小板療法を組み合わせた治療は、抗血小板療法単独に比べ脳梗塞の再発を大幅に低減したことが示された。フランス・サン・タンヌ病院のJean-Louis Mas氏らが、663例を対象に行った非盲検無作為化試験の結果で、NEJM誌2017年9月14日号で発表した。これまでの試験で、PFO閉鎖術の脳梗塞再発予防に対する結論は得られていない。研究グループは、原因不明の脳梗塞患者および心エコーの特色が脳梗塞リスクを示す患者を対象に、抗血小板療法との比較において、PFO閉鎖術または抗凝固療法がベネフィットをもたらすかを調べる検討を行った。PFO閉鎖術+抗血小板療法、抗血小板療法単独、経口抗凝固療法を比較 Mas氏らは、PFOとの関連が考えられる脳卒中を発症したばかりで、関連する心房中隔瘤または心房間の大きな短絡が認められる16〜60歳の患者を、無作為に1対1対1に分け、PFO閉鎖術+長期抗血小板療法、抗血小板療法単独、経口抗凝固療法をそれぞれ行った(無作為化グループ1)。 また、別の無作為化グループとして、抗凝固薬またはPFO閉鎖術のいずれかが禁忌の患者を無作為に分け、禁忌ではない方の治療を行う群と、抗血小板療法を行う群に割り付けた(無作為化グループ2、3)。 PFO閉鎖術+抗血小板療法と抗血小板療法単独の比較については、無作為化グループ1と2を、経口抗凝固療法と抗血小板療法の比較については無作為化グループ1と3を、それぞれ統合して分析した。 主要評価項目は、致死的・非致死的脳梗塞の発症だった。PFO閉鎖術+抗血小板療法で脳梗塞再発リスクは0.03倍に 被験者総数は663例で、平均追跡期間は5.3年(標準偏差:2.0)だった。 脳梗塞を発症したのは、抗血小板療法単独群(235例)では14例だったのに対し、PFO閉鎖術+抗血小板療法群(238例)では再発例はなかった(ハザード比:0.03、95%信頼区間:0~0.26、p<0.001)。 一方で、PFO閉鎖術+抗血小板療法では、手技に関連する合併症が14例で発生した(5.9%)。また、心房細動発症率は、抗血小板療法単独群で0.9%だったのに対し、PFO閉鎖術+抗血小板療法群では4.6%で有意に高率だった(p=0.02)。重篤有害事象の発現率については、PFO閉鎖術と抗血小板療法群と抗血小板療法単独群の両群で同等だった(p=0.56)。 なお、経口抗凝固療法と抗血小板療法の比較では、脳梗塞を発症したのは経口抗凝固療法群187例中3例、抗血小板療法群174例中7例で、統計的有意差については検出力不足のため分析しなかった。

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