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ファブリー病〔Fabry disease〕

ファブリー病のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 定義α-ガラクトシダーゼAの酵素欠損により心臓、腎臓などの組織を中心にグロボトリオシルセラミド(GL-3)が蓄積することにより、心不全、腎不全を来す疾患である。遺伝形式はX-連鎖の遺伝形式をとる。■ 疫学約4万人に1人と推定される。腎不全患者の0.2~0.5%、左室肥大の患者の4%、女性左室肥大の12%、男性脳卒中患者の4.9%、女性患者の2.4%。イタリアでは新生児男児3,100人に1人の頻度、台湾では1,250人に1人と患者頻度は高い。■ 病因ライソゾーム酵素であるα-ガラクトシダーゼの酵素欠損により全身組織にグロボトリオシルセラミド(GL-3)などの糖脂質が蓄積する(図1)。とくに血管内皮細胞に蓄積、心筋、腎臓、リンパ節、神経節など、全身組織に蓄積する。画像を拡大する■ 臨床症状(表1)ファブリー病の臨床症状は多彩である。小児期からの四肢の激痛、無痛、無汗などの自律神経症状、蛋白尿、腎不全などの臨床症状、不整脈、弁膜症、心不全などの心症状、頭痛、脳梗塞、知能障害などの神経症状、精神症状、皮膚症状として被角血管腫、難聴、めまい、耳鳴り、角膜混濁などの眼科症状、咳などの呼吸器症状などを認める。ファブリー病の臨床症状の進展は図1を参照。画像を拡大する■ 分類臨床的には「古典型」、心型、腎型といわれる「亜型」、「ヘテロ接合体女性患者」に分類される古典型(表2)では皮膚症状(被角血管腫)、自律神経症状(低汗、無痛、四肢痛など)を有する。心型、腎型ではこれらの症状は少ない。ヘテロ接合体女性患者では心症状が主体であるが、痛みなどは男性患者と同様に認められる。画像を拡大する■ 予後古典型の患者は早期の酵素補充療法をしないと、腎不全、心不全、脳梗塞で40~50代で死亡する患者が多い。心型、腎型では60~70代で死亡、ヘテロ女性患者は60~70代で心不全にて死亡する患者が多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)次の流れに従い、診断を行う。(1)臨床症状:小児期からの四肢の激痛、無汗、皮膚の被角血管腫、心不全、蛋白尿、腎不全、脳梗塞などの症状(2)血清、白血球、尿などでα-ガラクトシダーゼの酵素欠損を証明する(3)尿中GL-3の蓄積(4)皮膚での病理所見:電子顕微鏡でミエリン様蓄積物質を認める(5)遺伝子診断 3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ファブリー病の治療として対症療法と根治療法がある。表3に概略をまとめた。画像を拡大する1)対症療法(1)疼痛ファブリー病での痛みは、患者に大きな負担である。幼少時から四肢の灼熱感のある痛みが生じ、思春期はとくに強い。女性患者でも4~5歳から四肢の痛みを感じる患者がいる。痛みは四肢以外にも下顎、頸部などさまざまである。とくに梅雨の時期、夏などは疼痛が強い。カルバマゼピン(商品名:テグレトールほか)、ガバぺンチン(同:ガバペン)などが有効である。(2)消化器症状腹痛、胃痛、下痢などがみられ、整腸剤などの投与が有効である。(3)心肥大、心不全、不整脈徐脈性不整脈には、ペースメーカーが有効である。心筋保護作用としてのACE阻害薬、 ARBの投与が推奨される。高血圧、高脂血症の予防は重要である。(4)腎障害腎保護策のためにARB、ACE阻害薬は有効との報告がある。蛋白食制限、減塩は必要である。腎不全に対しての腹膜あるいは血液透析療法、さらには腎移植が試みられている。(5)脳梗塞脳梗塞の予防のためのアスピリン、抗血小板凝集薬の投与などの抗凝固療法が必要。(6)その他めまい、難聴などに対する対症療法として、めまいにはベタヒスチンメシル(同:メリスロンほか)、突発性難聴にはステロイドが使用される。2)酵素補充療法酵素補充療法は、現在遺伝子工学的手法の進歩に伴いαガラクトシダーゼAの酵素製剤が2製剤開発されている。アガルシダーゼ アルファ(商品名:リプレガル)とアガルシダーゼ ベータ(同:ファブラザイムほか)が開発されている。アガルシダーゼ ベータはCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞から遺伝子工学手法で作成された。投与量としては体重1kgあたりアガルシダーゼ アルファは0.2mg、アガルシダーゼ ベータは1mgを2週間に1回投与する。副作用としては蕁麻疹、悪寒、吐き気、鼻汁、軽度血圧低下、気道に違和感などの症状が見られるが、抗ヒスタミン薬、ステロイドの投与で軽快する場合が多い。副作用は投与後3~5ヵ月後に多く見られ、その後は軽快する場合が多い。そして、効果のポイントは次のとおりである。(1)痛みへの効果痛みは軽減傾向にある。発汗障害は改善傾向にある。(2)腎臓への効果腎臓、とくに腎血管内皮細胞でのGL-3の蓄積は除去される。糸球体のたこ足細胞でのGL-3の蓄積の除去には時間がかかる。GFRが60mL/min/1.73m2以上であれば治療後も維持できる。また、60mL/min/1.73m2 以下であれば、治療にかかわらず機能は低下することが明らかにされている。尿蛋白質では、蛋白の排泄が+1以上であれば酵素治療しても腎機能は低下するが、尿蛋白がマイナスであれば腎機能は悪化しない。(3)心機能への効果心筋の肥厚、左室心筋重量は酵素補充療法により減少する。左室機能改善の改善を認める。(4)脳神経系への効果酵素補充療法により血管の内皮細胞への蓄積は軽快するが、脳梗塞の所見は治療により変化はないと考えられる。また、白質変性への効果も少ない。(5)耳鼻科的効果酵素補充による聴力への効果はあまり期待できない。聴力検査で効果が認められていない。(6)眼症状への効果角膜に対する効果は軽快する傾向にある。網膜動脈閉塞で失明する。(7)皮膚症状への効果被角血管腫への効果は少ない。低(無)汗症への効果はみられ、酵素治療により汗をかくようになりQOLは上がる。(8)消化器症状への効果酵素補充療法により下痢などに対する効果が報告され、酵素治療とともに下痢、腹痛は改善傾向にある。体重は増加する患者が多い。4 今後の展望1)シャペロン治療低分子薬(デオキシノジリマイシンなど)は、ライソゾーム酵素のゴルジーライソゾーム系での酵素の合成、分解過程で作用する。すなわち変異酵素が分解促進、あるいは活性基が障害されている場合、シャペロンは有効であり、全体の約50~60%の患者の遺伝子異常に効果があるといわれている。ミガーラスタット(商品名:ガラフォルド)は、2018年5月に発売され、わが国でも保険適用となった。今後、効果や安全性について、さらに知見の積み重ねがなされる。2)遺伝子治療・細胞治療ファブリー病の最終治療としては、遺伝子治療法の開発が重要である。ファブリー病マウスを用いて「アデノ随伴ウイルス」(AAV)あるいは「レンチウイルスベクター」を用いての治療研究が進められており、モデルマウスではGL-3の臓器からの除去に成功している。また、骨髄幹細胞、あるいは間質幹細胞を用いて、遺伝子治療と組み合わせての治療効果も研究されている。3)ファブリー病のスクリーニングファブリー病の治療のためには、早期診断が重要である。早期診断のための新生児マス・スクリーニングも報告され、ガスリー濾紙血を用いて酵素診断することにより可能である。濾紙血による新生児スクリーニングでは、台湾でのファブリー病患者頻度は1/1,250(男児)、イタリアでは1/3,500(男児)、日本では1/6,500の頻度であり、決して珍しい疾患でないことが証明されている。また、ハイリスク患者スクリーニングとして、心筋症患者、左室肥大患者、腎不全患者、若年性脳梗塞患者にはファブリー病の患者の頻度が高いことが報告されている。早期診断により治療効果をあげることが重要である。5 主たる診療科腎臓内科、循環器内科、小児科、皮膚科、眼科、耳鼻科 など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療情報難病情報センター ライソゾーム病(ファブリー病を含む)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報ふくろうの会(ファブリー病患者と家族の会)1)Desnick RJ, et al. α-Galactosidase A deficiency: Fabry disease. In: Scriver CR et al, editors. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 8th ed. New York: McGraw Hill; 2001. p. 3733–3774. 2)Eng CM, et al. N Engl J Med. 2001; 345: 9–16.3)Rolfs A, et al. Lancet. 2005; 366: 1794–1796.4)Sims K, et al. Stroke. 2009; 40: 788-794.5)衛藤義勝. 日本内科学雑誌.2009; 98: 163-170.公開履歴初回2013年2月28日更新2018年9月11日

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第4回 GERDを発症・増悪させにくいCa拮抗薬は?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 胃酸などの胃の内容物が食道に逆流して生じる胃食道逆流症(Gastroesophageal reflux disease:GERD)の原因の1つに、「下部食道括約筋(Lower esophageal sphincter:LES)」の機能低下があります。LESは胃と食道のつなぎ目にあり、胃酸の逆流を防ぐ筋肉ですが、加齢に伴う機能低下だけでなく、嗜好品や生活習慣および薬剤によっても緩まることがあります。GERDは頻度の高い疾患ですので、これらの悪化要因を把握しておくと服薬指導にとても有用です。MSDマニュアルには、下記の記載があります。「逆流をもたらす要因として、体重増加、脂肪食、カフェイン含有飲料、炭酸飲料、アルコール、喫煙、薬物がある。LES圧を低下させる薬物には、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬、カルシウム拮抗薬、プロゲステロン、硝酸薬がある」(参考文献1)より引用)実際、アムロジピンの服用開始後にGERDの症状が悪化したと訴え、医師からの指示でアムロジピンを中止したところ症状が改善した患者さんに、私も会ったことがあります。その件の因果関係は不明ですが、今回はCa拮抗薬とGERDの関連について検討した後ろ向きコホート研究を紹介します。Do calcium antagonists contribute to gastro-oesophageal reflux disease and concomitant noncardiac chest pain?Hughes J, et al. Br J Clin Pharmacol. 2007;64:83-89.対象となったのは、虚血性心疾患や硝酸薬の使用歴がなく、Ca拮抗薬を使用していた高血圧患者で、GERDの既往の有無および、Ca拮抗薬服用前と服用後でGERD症状に変化があったかどうかについてアンケート調査を行っています。15軒の薬局(地域薬局14軒、病院薬局1軒)から371例が登録され、平均年齢64歳、女性51.2%、男性48.8%でした。信頼度が高い方法というわけではありませんが、地域の薬局で研究を行うには現実的な方法ではないでしょうか。Ca拮抗薬服用前後におけるGERD症状の変化は下表のとおりです。画像を拡大するCa拮抗薬服用前からすでにGERDの症状がある130例中59例(45.4%)で、Ca拮抗薬服用により症状の悪化がみられています。症状の悪化の頻度がもっとも高かった薬剤がアムロジピン(61.3%、p<0.0001)で、もっとも低かったのがジルチアゼム(12.5%)という結果でした。Ca拮抗薬服用前にGERD症状がなかった241例においては、85例(35.3%)がCa拮抗薬服用によりGERDを発症しており、もっとも頻度が高かったのがベラパミル(39.1%、p=0.001)で、もっとも低かったのがジルチアゼム(30.7%)という結果でした。ニフェジピンの増悪リスクはジルチアゼムの4.22倍発症・増悪リスクがもっとも低かったジルチアゼムを基準とした場合の、GERD症状の増悪頻度のオッズ比は下表のとおりです。ニフェジピンやアムロジピンにおいて有意にGERDが増加しています。二フェジピンやアムロジピンの添付文書を参照すると、嘔気・嘔吐や腹部不快感、腹部膨満などGERDに類する副作用症状の記載はありますが、明示的にGERDの記載があるわけではないため見落としに注意が必要です。交絡因子を調整しきれる研究ではないため解釈に注意が必要ですが、血管平滑筋を緩めるCa拮抗薬がLESまで緩めてしまう可能性があることは、患者さんの症状を聞き取る際に頭の片隅に入れておくとよいでしょう。1)MSDマニュアル 胃食道逆流症(GERD)(2018年7月16日参照)2)Do calcium antagonists contribute to gastro-oesophageal reflux disease and concomitant noncardiac chest pain?Hughes J, et al. Br J Clin Pharmacol. 2007;64:83-89.

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世界初のアレルギー性鼻炎治療貼付薬「アレサガテープ4mg/8mg」【下平博士のDIノート】第2回

世界初のアレルギー性鼻炎治療貼付薬「アレサガテープ4mg/8mg」今回は、「エメダスチンフマル酸塩 経皮吸収型製剤4mg/8mg(商品名:アレサガテープ)」を紹介します。世界初の経皮吸収型アレルギー性鼻炎治療薬で、嚥下困難な患者さんへの安全な使用が可能であり、また、安定した血中薬物濃度の維持により、日中だけでなく、睡眠中や起床時にも効果の持続が期待されます。<効能・効果>アレルギー性鼻炎の適応で、2018年1月19日に承認され、2018年4月24日より販売されています。本剤は、アレルギー反応による肥満細胞からのケミカルメディエーター遊離抑制作用を持つ第2世代抗ヒスタミン薬です。1993年に同成分であるエメダスチンフマル酸塩の経口薬が、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹などを適応として発売されましたが、本剤の適応は、2018年5月末時点でアレルギー性鼻炎のみです。<用法・用量>通常、成人には1回4mgを胸部、上腕部、背部または腹部のいずれかに貼付し、24時間ごとに貼り替えます。なお、症状に応じて、1回8mgまで増量可能です。肝障害歴を有する患者さんは、本剤の使用により肝機能異常が発現する恐れがあるので、慎重投与が指示されています。<臨床効果>季節性アレルギー性鼻炎患者1,273例を対象とした、国内第III相二重盲検比較試験において、本剤貼付群(エメダスチンフマル酸塩として4mgまたは8mg)、プラセボ対照群、実薬対照群(レボセチリジン塩酸塩錠5mg)に1日1回2週間投与した結果、主要評価項目である鼻症状(くしゃみ発作、鼻汁、鼻閉)の合計スコア変化量において、本剤貼付群はプラセボ対照群に対し有意な低下が認められ、実薬対照群と同程度でした。<副作用>国内の臨床試験では、臨床検査値異常を含む副作用が1,060例中201例(19.0%)に認められています。主な副作用は、貼付部位紅斑116例(10.9%)、眠気52例(4.9%)、貼付部位掻痒感48例(4.5%)などでした。<患者さんへの指導例>1.くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状を改善するテープ製剤です。2.1日1回新しい薬に貼り替えますが、毎回貼る場所を変えてください。なるべく毎日同じ時間帯に貼り替えることが望ましいです。3.胸部、上腕部、背部または腹部で傷や赤みがない部位を選び、乾いたタオルなどでよく拭って清潔にしてから貼りましょう。4.テープが途中で剥がれた場合、すぐに新しいテープを貼り、指示されている貼り替え時間になったら、再度貼り替えてください。5.眠気が生じることがあるので、本剤を使用している間は、車の運転など危険を伴う作業はしないでください。また、眠気が強くなる恐れがあるので、飲酒も避けてください。6.本剤を使用中の授乳は避けてください(ラットで乳汁移行の報告あり)。7.現在服用中のアレルギー薬、ステロイド薬がある場合、自己判断で中止せず、必ず主治医・薬剤師に相談してください。<Shimo's eyes>世界初の経皮吸収型アレルギー性鼻炎治療薬で、1日1回の貼付で安定した血中薬物濃度を維持し、効果を持続させることができます。また、嚥下能力の低下や誤嚥リスクがある患者さんでは経口薬の服用が困難な場合もありますが、本剤であれば安全に使用することができます。家族や介護者が貼付したり、日々の服薬状況を目視で確認したりできるため、アドヒアランスの向上も期待できます。本剤を季節性鼻炎の患者さんに使用する場合は、好発季節を考えて、その直前から使用を開始し、好発季節終了時まで続けることが望ましいです。4mgよりも8mgを使用しているほうが眠気などの副作用が出やすくなるので、増量した直後は生活習慣や副作用の確認をより念入りに行いましょう。アレルギー性鼻炎の適応で承認された本剤のように、従来なかった分野や疾患で貼付薬が発売されています。患者さん個々のライフスタイルに合わせた治療で、生活の質を向上させるための選択肢が増えたのは喜ばしいことです。各剤形の特徴を理解し、必要に応じて処方提案できるとよいでしょう。

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難治アトピー、10年ぶりの新薬に期待

 2018年5月8日、サノフィ株式会社は、アトピー性皮膚炎(AD)に関するメディアセミナーを都内で開催した。本セミナーでは、「アトピー性皮膚炎初の生物学的製剤『デュピクセント(一般名:デュピルマブ)』治験のご報告~深刻な“Disease Burden”(疾病負荷)からの解放をめざして~」をテーマに、AD患者の経験談、新薬が拓くAD改善の可能性、治療の展望などが語られた。重症AD患者の日常生活を取り戻す可能性 田中 暁生氏(広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 皮膚科学 准教授)が、AD標準治療とその課題、デュピルマブの投与症例などについて説明した。 ADは、皮膚バリア破壊、免疫・アレルギー異常、かゆみの3病態が互いに連動しているが、保湿剤、ステロイド外用薬、免疫抑制薬、内服抗ヒスタミン薬を適切に使用することで、重症を含めたほとんどの患者は、寛解状態(湿疹のない状態)を得ることが可能であるという。しかし、これらの治療は、毎日広範囲に外用薬を塗布するなど負担が大きいため、間違った使い方や誤解により効果が得られない例が存在する点を田中氏は指摘した。 デュピルマブは、ADの代表的な3つの病態すべてに作用し、症状を改善する可能性がある。治験を担当した同氏は、「デュピルマブにより疾患がコントロールされ、患者さんが今まで制限されていた日常生活を取り戻す症例を経験した。新たな治療選択肢の登場が、AD治療の歴史を変える転換点になることを期待する」と語った。ガイドラインを順守し、デュピルマブの適切な使用を 次に、佐伯 秀久氏(日本医科大学大学院 皮膚粘膜病態学 教授)が、デュピルマブの治験成績を説明し、AD治療における今後の期待などを述べた。 ADの評価尺度として、臨床徴候をスコア化したEASIが国際的に用いられている。国際共同第III相試験は、中等~重症の成人AD患者を対象に行われ、ステロイド外用薬(ストロング)との併用で、治療期間52週における、デュピルマブの有効性と安全性が検討された。その結果、16週時点でEASIスコアは平均80.1%低下し、その後52週まで維持された。副作用は注射部位反応、頭痛、アレルギー性結膜炎などが発現したが、重篤な有害事象は対照群と比較して、発生件数に大きな差は認められなかった(デュビルマブ群14例、対照群16例)。 デュピルマブは、2018年4月、最適使用推進ガイドラインが厚生労働省より策定され、投与対象の条件について具体的に定められている。佐伯氏は、「ADはまず標準治療をしっかり行うことが重要。デュピルマブは、重症難治例や、副作用などにより既存の薬剤を使用できない例などの、アンメットニーズを満たす薬剤として期待できる」と語った。 最後に両医師が、ADの病態は、良好な状態が長期間続くほど、その後の経過も良い傾向にあると示した。「適切な治療により症状が大きく改善され、維持できたら、徐々に薬を減らしたり、間隔を広げたりできる可能性は十分に見込めるので、AD患者は積極的に目的意識を持つことが重要」だと締めた。疾病負荷は良質なコミュニケーションで改善の可能性 ADは、増悪・寛解を繰り返す慢性疾患である。患者数の増加が続いており、2014年の総患者数は推計45万6,000人、その2~3割が中等症以上といわれている。2017年にサノフィ株式会社が行った意識調査によると、ADによる生活の質への影響は85.7%、精神面への影響は79.3%の患者が感じており、患者の疾病負荷への理解や認識は、症状改善のための大事なファクターと考えられる。 現在、治療はガイドラインに基づいて行われているが、医師とのコミュニケーションが不足しているほど、症状の改善・寛解の割合は低いままだったという。医師はこの現状を把握し、身体症状以外の負荷についてヒアリングを行うなど、患者の気持ちに寄り添ったコミュニケーションを心掛けていくことが求められる。 ADの新薬は、ここ10年間登場していなかった。デュピルマブは、従来とはまったく異なる作用機序を持つため、既存治療で効果不十分な中等~重症患者に、待ち望まれた新薬と言える。なお、同薬は現在、コントロール不良の気管支喘息に対する適応の追加を申請中。■参考サノフィ株式会社 プレスリリース認定NPO法人 日本アレルギー友の会■関連記事アトピー性皮膚炎に初の抗体医薬品発売

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アレルギー性鼻炎に、初の経皮製剤発売

 久光製薬株式会社は、2018年4月24日、アレルギー性鼻炎を効能・効果とする、エメダスチンフマル酸塩(商品名:アレサガテープ4mg/8mg)を発売した。 本剤は、第2世代抗ヒスタミン薬で、TDDS(Transdermal Drug Delivery System:経皮薬物送達システム)技術を用いて開発された、全身性のテープ剤である。 アレルギー性鼻炎は、鼻粘膜のI型アレルギー性疾患で、原則として、発作性・反復性のくしゃみ、水様性の鼻漏、鼻閉を3主徴とする。季節性の場合は花粉症と呼ばれ、若年から老年まで、患者数の多い疾患である。本剤は、経皮吸収型製剤であり、1日1回で24時間効果が持続し、また、嚥下困難な患者にも安全に投与できることなどから、服薬アドヒアランスの向上が期待される。 本剤は、通常、成人には4mgを胸部、上腕部、背部または腹部のいずれかに貼付し、24時間おきに貼り替える。症状に応じて、1回8mgに増量可能。薬価は、4mgが67.5円/枚、8mgが93.1円/枚。副作用として眠気があるので、使用中には自動車の運転など、危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分な注意が指示されている。■参考久光製薬株式会社 プレスリリース

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ダニアレルギー対策は環境と免疫療法

 2017年11月21日、ダニアレルギー対策会は、都内においてダニアレルギー対策の啓発活動の一環として「知っておきたいダニアレルギー対策」をテーマに、メディアセミナーを開催した。セミナーでは、最新の診療情報の講演ほか、ダニアレルギー対策の各種製品展示などが行われた。 ※ダニアレルギー対策会は、ダニによる通年性アレルギー性鼻炎の認知向上と、その対策方法の啓発を目的に株式会社サンゲツ、塩野義製薬株式会社、ダイキン工業株式会社、帝人フロンティア株式会社の異業種4社により発足した団体。国民の4割が罹患しているアレルギー性鼻炎 セミナーでは、岡本 美孝氏(千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学 教授)が、「知っておきたいダニアレルギー対策~アレルギー性鼻炎患者1,600人の意識調査から見えた課題~」をテーマに講演を行った。 アレルギー性鼻炎とは、鼻粘膜のI型アレルギー疾患であり、原則的に発作性反復性のくしゃみ、水性鼻漏、鼻閉の3主徴とする疾患と定義されている。 疫学では、正確な統計はないとしながらも国民の約4割が罹患していると推定される。ダニなどを起因とする通年性アレルギー性鼻炎は男性に多く、学童に多いとされる。一方、花粉などを起因とする季節性アレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症)は女性に多く、とくに20~30代に多いとされているが、近年では低年齢化もみられるという。 アレルギー性鼻炎は自然寛解することは少なく、また、喘息発症の先行にアレルギー性鼻炎が多いことでも知られている1)。そして、現在行われている治療は、(1)抗原回避、(2)薬物療法、(3)免疫(減感作)療法、(4)手術療法、などがあると診療の概要を説明した。患者の3割が罹病歴20年以上 次にダニアレルギー対策会が企画・実施した「アレルギー性鼻炎患者実態調査」の結果について触れた。この調査は「通年性アレルギー性鼻炎患者の意識と行動について調査」(実施:2017年3月/対象:15~60歳の男女3万5千例/方法:インターネット調査)を目的に行われ、その結果、アレルギー性鼻炎の診断・自覚率では、現在診断中が14.9%、自覚しているが19.0%に対し、全体の6割強が何ら治療や疾患への自覚をしていないことが判明した。患者歴では、20年以上という患者が最も多く30.7%、10~20年未満が29.8%、5~10年未満が15.6%という順で、患者の長期罹病がうかがわれた。 この中よりさらに本調査として通年性・季節性アレルゲンの患者1,600例を抽出し、調査した。主に通年性アレルギー性鼻炎患者(n=800)の「症状の認識」につき、「重い」と感じる認識は全体では23.0%と多くはないものの、若年者では「重い」と感じる傾向が強いことがわかった。また、完治への希望については66.5%の患者が希望している半面、25.9%の患者しか「治療法によっては長期寛解が目指せる」ことを理解していないことが判明した。また、受診状況では、全体の62.4%が医療機関などでの治療を受けていない現状が示された。抗原回避の対策は環境整備と免疫療法 一般的な抗原回避の対策として、生活環境の整備が挙げられる。具体的には、ダニの繁殖を防ぐために寝具の天日干し、ソファーを布張りから皮など他の素材へ変更、防ダニ壁の採用、室内鉢植えの排除などがある。寝具、カーペット、カーテンなどを防ダニ効果製品へ変更する、エアコン・空気清浄機の設置なども効果的だという。 こうした生活環境整備以外にもアレルゲン免疫療法が勧められる。現在、アレルゲン免疫療法には、皮下免疫療法(SCIT)と舌下免疫療法(SLIT)があり2)、本療法は唯一アレルギー性鼻炎の自然経過を改善しうる治療とされ、その効果は治療終了後も長期間持続するという。免疫療法のメリットとしては、先述のほかに抗ヒスタミン薬や抗LT薬などの対症薬の使用低減、アレルギー性結膜炎や喘息への治療、喘息発症の予防、新抗原感作の抑制効果がある。デメリットとしては、遅効性ゆえに3年超の長期間にわたる投与や服薬が必要となり、SCITでは全身性のアナフィラキシーへの注意が、SLITでは口腔内のアレルギー反応への注意が必要とされるが、副作用は軽度であるという。 最後に岡本氏は「最近では、ダニアレルギー診療に関するウェブサイトも充実してきた。こうしたサイトも参考にし、疾患の知識を広げてもらいたい」と期待を述べ、レクチャーを終えた。■参考文献1)Yonekura S,et al. Acta Otolaryngol.2012;132:981-987. 2)松根彰志. 日本医事新報.2014;4687:31.■参考「通年性・季節性アレルギー性鼻炎患者の意識・実態調査結果」の詳細(塩野義製薬株式会社プレスリリースダニによるアレルギー性鼻炎に関する情報サイト(塩野義製薬株式会社)認定NPO法人 アレルギー支援ネットワーク ダニアレルギー

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経口抗うつ薬は慢性そう痒に有効か

 慢性そう痒は、QOLに大きな影響を及ぼす一般的な皮膚症状である。臨床医にとって治療はチャレンジングであり、経口抗うつ薬のような新しい治療選択肢の開発が求められている。そこでオランダ・Radboud University Medical CenterのTessa A. Kouwenhoven氏らは、慢性そう痒患者を対象とした経口抗うつ薬の臨床研究についてシステマティックレビューを行い、有効性について検討した。その結果、著者は「とくに尿毒症性そう痒、胆汁うっ滞性そう痒または腫瘍随伴そう痒患者で、局所治療や経口抗ヒスタミン薬が無効の慢性そう痒患者に対しては、経口抗うつ薬を考慮すべきである」との見解を示し、「無作為化比較試験に基づいたさらなるエビデンスが必要である」と提言している。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年10月12日号掲載の報告。 研究グループは、慢性そう痒に対する経口抗うつ薬の使用を評価する目的で、PubMed、EMBASE、CochraneおよびWeb of Scienceのデータベースを検索し、システマティックレビューを行った。 レビューには、慢性そう痒患者を対象に経口抗うつ薬の有効性を評価したオリジナルデータを含む研究が組み込まれた。無作為化比較試験に関してはCochrane Risk of Bias toolを用いて、観察研究に関してはNewcastle-Ottawa Scaleを用いてバイアスリスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、ミルタザピン、doxepinおよびfluoxetineの経口投与に関する計35件の研究を包含し評価した。・これらの研究の多くで、経口抗うつ薬による治療は、そう痒を顕著に改善することが示された。・ただし今回のレビューの対象は、主に非盲検試験、症例シリーズ研究および症例報告であり、レビュー勧告は限定的なものである。

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既存の抗アレルギー薬が多発性硬化症の慢性脱髄病変を回復させるかもしれない(解説:森本悟氏)-752

 多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は若年成人に発症し、重篤な神経障害を来す中枢神経系の慢性炎症性脱髄性疾患である。何らかの機序を介した炎症により脱髄が起こり、軸索変性が進行する。急性炎症による脱髄病変には一部再髄鞘化が起こるが、再髄鞘化がうまくいかないと慢性的な脱髄病変となり、不可逆的な障害につながる。現在MSの治療は急性炎症の抑制、病態進行抑制が中心であり、慢性脱髄病変を回復させる治療はない。これまでの研究で、第一世代の抗ヒスタミン薬であるクレマスチンフマル酸(clemastine fumarate:CF)が、前駆細胞(oligodendrocyte precursor cell:OPC)からオリゴデンドロサイトへの分化促進、髄鞘膜の伸展、マイクロピラーの被覆、を介した再髄鞘化効果を有することが、疾患動物モデルにより証明されている1,2) 。 本研究は、CFがMSの慢性脱髄病変を回復させる可能性を示した初めての臨床報告である。単施設でのdouble-blind、randomized、placebo-controlled、crossover trialであり、MS患者50例(平均罹病期間約5年、平均年齢40歳)を25例ずつ2群に分け、CFまたはプラセボを3ヵ月間投与し、その後入れ替えて2ヵ月間投与した。主要評価項目には、視覚誘発電位(VEP)における遠位潜時を用いている。VEP検査は網膜から後頭葉の視覚野にかけての視覚経路における神経伝達を評価する検査であり、一般的にP100(一次視覚野由来の波形)の潜時が延長していると、その経路に脱髄をはじめとした障害があることが示唆される。本研究では、P100潜時の延長のある症例のみ登録され、その短縮効果を評価している。 結果、CF投与期間にはプラセボ投与期間に比べ、VEPのP100潜時が平均1.7ms短縮し、さらに6ms以上改善した例もプラセボ投与期間に比べてCF投与期間で有意に多かった。しかし、臨床的な神経症状の改善効果やMRIにおける病変の変化は証明できなかった。有害事象としては疲労感の増悪が報告されたのみであった。 本研究では、MRIによる視覚路病変の詳細な質的評価を行っていないこと、主要評価項目であるVEPの改善効果が小さく、臨床症状やMRI画像所見の改善が証明できなかったことから、脱髄病変が回復したと結論付けるには慎重を要する。さらに、MS患者における総合障害度の評価基準であるExpanded Disability Status Scale(EDSS[0:無症状~10:死亡])は、対象患者で2程度と障害の比較的軽度な患者が対象となっている点は、治療反応性の観点から(残存するOPCやオリゴデンドロサイト、神経軸索の数などが治療反応性の因子として推測されるが)留意すべきと思われる。また、CFは日本においても抗ヒスタミン薬として臨床的に使用されており、その用量は2mg/日である。しかしながら、本研究での投与量は10.72mg/日と約5倍量を使用しており、長期的に投与した場合の副作用や他の薬剤との相互作用が懸念される。 考慮すべき点は残るものの、in vitro/in vivoモデルにおいてしっかりとした有効性が確認された薬剤であり、慢性の脱髄病変が回復する可能性が見いだされた重要な臨床試験報告であるため、今後の研究が期待される。 余談だが、MSの亜型と言われ、視神経に病変が強調される視神経脊髄炎関連疾患(NMOSD:neuromyelitis optica spectrum disorder)という概念が存在する。これらは、病変の首座がオリゴデンドロサイトではなくアストロサイトにあるとされているが、二次的な脱髄を伴うため、NMOSDに対してのCFの応用なども興味深い点である。

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認知症のBPSD、かかりつけ医は抗精神病薬を控えて

 2017年5月17日、日本老年精神医学会は、名古屋市で6月14~15日に開催される第32回日本老年精神医学会を前に、都内においてプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、新井平伊氏(順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学 教授/同学会 理事長)が、同学会の主な活動として、2016年に発表した「かかりつけ医のためのBPSDに対する向精神薬使用ガイドライン第2版」について、患者家族が最も苦慮する症状の1つである興奮性BPSDに対する薬物療法に焦点を絞り、その要点を紹介した。興奮性BPSDに、かかりつけ医が用いるべき薬剤は 抗精神病薬は、数多くの臨床試験によって有効性が実証されており、主に専門医を対象とした「認知症疾患治療ガイドライン2010」では、エビデンスレベルの高い選択肢として推奨されている。一方、実臨床で用いられるメマンチンやバルプロ酸や抑肝散などは、臨床試験数が少ないためエビデンスレベルが低く、場合によっては削除されることもある。加えて、認知症に対する抗精神病薬の使用は、死亡リスクを高めるとして、FDAおよび厚労省から警告が発出されている。このように研究と臨床の間にはギャップがあり、認知症を専門としないかかりつけ医においては、医療安全を最優先に考えた薬剤選択が必要であるとし、下記の選択基準を挙げた。(1)抗精神病薬を第1選択としない(警告が発出されている薬剤を第1選択としない)(2)初めに認知症に適応を有するメマンチンあるいはコリンエステラーゼ阻害薬が、次いでバルプロ酸、抑肝散が推奨される(3)上記の薬剤でコントロールが難しい場合は、専門医との連携を推奨する バルプロ酸や抑肝散については、臨床試験の数が少ないが、実臨床では有効であったとの報告を踏まえ、抗精神病薬を用いる前の選択肢として挙げている。また、メマンチンとコリンエステラーゼ阻害薬は、両剤ともに興奮性BPSDを発症・増悪させる可能性に留意する必要があると付け加えた。薬剤によるBPSDではないか、まず確認を メマンチンやコリンエステラーゼ阻害薬のほかにも、興奮性BPSDの症状を引き起こす薬剤が複数あるため、今回の改訂では治療アルゴリズムにおける“薬剤性の除外”を強調した。BPSD治療アルゴリズムでは、非薬物的介入を最優先で行うこととし、薬物療法を開始する際の確認要件に以下の4項目を挙げている。(1)ほかに身体的原因はない(とくに感染症、脱水、各種の痛み、視覚・聴覚障害など)(2)ほかの薬物の作用と関係ない(3)服薬順守に問題ない(4)家族との間で適応外使用に関するインフォームドコンセントが得られている BPSD様の症状を引き起こす可能性のある薬剤には、上記の認知症治療薬以外にもH2ブロッカーや第1世代抗ヒスタミン薬などが挙げられている。該当する薬剤の詳細は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」(日本老年医学会)の参照を勧めている。抗精神病薬を使用する場合は、10週間程度に BPSDに対する抗精神病薬の使用に慎重になるべき理由として、死亡リスクの増加がある。新井氏らが2016年に発表した1万症例のアルツハイマー病患者を対象とした前向きコホート研究において、新規に抗精神病薬を服用した患者では10週以降に死亡率が上昇したと報告している1)。この点から、やむを得ず新規に抗精神病薬を投与する場合は、10週間ほどに留め、常に減量・中止を考慮するのが望ましいとした。また、6ヵ月以上服用中の症例は比較的安全であるが、リスクベネフィットの観点からの判断が求められる。 最後に新井氏は、「認知症患者に対する抗精神病薬の使用による死亡リスクについては、FDAおよび厚労省の警告発出以来ほぼ11年が経過しているが、現在も十分な配慮が必要であり、非薬物療法および抗精神病薬以外の選択肢を優先すべきだ」と改めて強調した。関連サイト日本老年精神医学会厚生労働省 かかりつけ医のためのBPSDに対する向精神薬使用ガイドライン第2版参考文献1)Heii Arai, et al. Alzheimers Dement. 2016;12:823-830.

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Dr.宮本のママもナットク!小児科コモンプラクティス

第1回 熱性けいれん 第2回 運動発達の遅れ 第3回 母乳育児と体重増加不良 第4回 発達障害 第5回 食物アレルギー 第6回 子どもの風邪薬 子どもの診療には単に病気を治すという以上の難しさがあります。診断や薬剤の選択だけでなく、慌てるお母さんへ説明してもなかなか納得してもらえなくて困ったことはありませんか? このDVDでは、小児科専門医である宮本雄策先生が、小児を診療しているとよく出合う問題をピックアップし、臨床上のポイントをわかりやすくレクチャーします。それだけでなく、お母さんに対しての接し方や説明の仕方をロールプレーで実演するので、実際の診療に役立つこと間違いなしです。 宮本先生によるGノート(羊土社)での好評連載「小児科医 宮本先生,ちょっと教えてください!」との連動企画!ぜひGノートもチェックしてください!第1回 熱性けいれん2回目の熱性けいれんを起こした2歳児の母親が、診察室に駆け込んできました。「坐薬使ったほうがいい?」と心配しています。子どもはけいれんがおさまって、すっかり元の状態です。さてこんなとき、どんな対応をすればよいのでしょうか?熱が出たらすぐにジアゼパムを投与?慌てているお母さんを落ち着かせるためには?小児科専門医の宮本雄策先生が、わかりやすくレクチャーします。第2回 運動発達の遅れ 「1歳の息子がまだハイハイもつかまり立ちもしない」と話すお母さん。発達の遅れが疑われる子どもに対して、どんなところを確認すればよいのでしょうか?ポイントは、消えるべき反射、出現すべき反射。宮本先生が実際に行っているお母さんへの説明の仕方をぜひ参考にしてください。第3回 母乳育児と体重増加不良 母乳育児を続けたお母さんが、4ヵ月検診で「赤ちゃんの体重が増えてない」と怒られたとのこと。まず確認するのは、赤ちゃんの成長曲線です。どのような経過をたどれば正常で、どのような状況だと母乳不足なのか。大切なのは、「成長の過程を見る」ことです。第4回 発達障害 最近、「落ち着きがない」「集団生活になじめない」と、発達障害を心配して相談にくる親子が増えています。そもそも、発達障害とは何でしょうか?発達障害の子どもは叱ってはいけない?情報が錯綜する分野だからこそ、しっかりと筋道立てた宮本先生の解説はまさに納得です。第5回 食物アレルギー 外出先で親子丼を食べたら蕁麻疹が出た1歳6ヵ月の男児。即時型症状のある食物アレルギーの診断においては、最初の問診が重要です。いつ、何を、どのくらい食べて、症状が出たか。今までに食べられたものをきちんと確認しましょう。「もうその食材は食べさせられないの?」と心配するお母さんへの対応も必見です。第6回 子どもの風邪薬風邪症状の1歳6ヵ月男児。風邪薬をまったく飲まなくなったと、お母さんが困っています。薬を飲ませるときの宮本先生おすすめの方法や、それぞれの薬のメリットとデメリットについてわかりやすく解説。抗ヒスタミン薬を処方する際の、宮本先生が実践しているルールはとても参考になります。

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ドライアイ患者の主観的健康感を損ねる因子とは

 ドライアイでは、しばしば自覚症状と他覚所見の間に乖離がみられる。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのJelle Vehof氏は、この不一致が主観的健康感の指標であることを大規模な横断研究により示した。不一致に関与する因子も明らかにされ、「その因子を認識しておくことは、日常診療においてドライアイ患者の評価に役立つ」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2016年12月23日号掲載の報告。 研究グループは、オランダの3次ドライアイクリニックの患者コホートであるGroningen LOngitudinal Sicca StudY(GLOSSY)におけるドライアイ患者648例(女性82.7%、平均年齢±標準偏差55.8±15.6歳)を対象に、ドライアイの自覚症状と他覚所見の不一致に関する予測因子を検討した。 自覚症状はOcular Surface Disease Index(OSDI)質問票にて評価し、スコアに基づき0~1(合計スコアの最小値が0、最大値が1)にランク付けした。他覚所見は両眼の涙液浸透圧、シルマーテスト、涙液層破壊時間、角膜染色、結膜染色およびマイボーム腺機能不全により評価し、これら6つの検査から複合ドライアイ重症度スコアを算出後、同様にスコアに基づきランク付けした。 主要評価項目は、ドライアイの症状と所見の不一致に関与する因子(OSDIスコアランクと、ドライアイ重症度スコアのランクとの差)であった。 主な結果は以下のとおり。・他覚所見と比べ自覚症状がより強いことに有意に関連する因子は、慢性疼痛症候群の存在、アトピー性疾患、既知のアレルギー、抗ヒスタミン薬の使用(すべてのp<0.001)、うつ病(p=0.003)、変形性関節症(p=0.008)および抗うつ薬の使用(p=0.02)であった。・他覚所見と比べ自覚症状がより小さいことに関連する因子は、高齢者(p<0.001)、シェーグレン症候群(p<0.001)(原発性シェーグレン症候群:p<0.001、続発性シェーグレン症候群:p=0.08)、および移植片対宿主病(p=0.04)の存在であった。・他覚所見と比べ自覚症状がより強いことは、主観的健康感の低さ(p<0.001)と強く関連していた。

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肝臓病を「かゆみ」の視点で考える

 2016年3月15日、東京都中央区で大日本住友製薬株式会社により、「知られていない肝臓病のかゆみ」をテーマにプレスセミナーが開催され、2つの講演が行われた。肝臓病の「かゆみ」でQOL低下 初めに、鈴木 剛氏(東都医療大学ヒューマンケア学部 教授)より「肝臓病はかゆくなる?」と題した講演が行われた。 慢性肝疾患では、症状の進行に伴い「かゆみ」が生じることがあり、B型肝炎の8%1)、C型肝炎(肝硬変、肝細胞がん等を含む)の15~25%2,3)でかゆみの症状が発現すると報告されている。なかでも原発性胆汁性肝硬変(PBC)では、かゆみの発現率が69%と高い傾向にあり、そのうちの74%が睡眠障害を訴えたとの報告もある4)。日本でも「皮膚がかゆい(22.4%)」、「よく眠れない(18.8%)」といったアンケート結果が得られている。このように肝疾患におけるかゆみは、時に強く現れ、活動性や睡眠を著しく阻害するため、患者のQOLを低下させる原因の1つといわれている。 肝疾患によるかゆみは、「中枢性のかゆみ」であり、βエンドルフィン等(かゆみ誘発系)とダイノルフィン(かゆみ抑制系)のバランスが崩れ、βエンドルフィン等が増えることで引き起こされると考えられている。かゆみの特徴について、鈴木氏は「“かゆくて眠れない”、“全身に現れる”、“皮膚の病変がなくとも、掻痒感がある”、“抗ヒスタミン薬や鎮静剤などを投与しても、有効でない場合も多い”、“かゆい部分をかいても緩和されないことが多い”などが挙げられる」と述べた。さらに「慢性肝疾患に伴う掻痒症の患者数を推定するための医師調査を実施したところ、“かゆみを有する患者がいる”と答えた数が実際の患者数と比べ低くなる、つまり医師と患者のかゆみに対する捉え方が解離しているケースがある」と指摘した。肝疾患に伴う「かゆみ」は患者の立場で考える 次に、熊田 博光氏(虎の門病院分院長)より「慢性肝疾患に伴う掻痒症について」と題した講演が行われた。 肝疾患患者に実施された肝炎関係研究分野のアンケートによると、「体がだるい」、「手足がつる」、「体がかゆい」の順に訴えが多い。熊田氏は、「これらはC型肝疾患の3大症状だが、“体がだるい”は肝炎が完治すると改善し、“手足がつる”は芍薬甘草湯などの薬剤で改善がみられる。しかし、“体がかゆい”についてはもっと効果のある薬があれば…」と感じていたという。というのも、虎の門病院で肝疾患患者にかゆみのアンケートを実施したところ、かゆみを訴えた患者(肝疾患患者全体で35.7%、PBC患者で54.5%)のうち、従来のかゆみ止めで56.1%は良くなったが、43.9%は“かゆみが残る”、“良くならない”といった「難治性のかゆみ」を伴っていることが明らかになったためである。 昨年、肝疾患患者における、これら従来のかゆみ止めで効果不十分な難治性のかゆみに対して、ナルフラフィンによる治療が選択肢に加わった。熊田氏は、「この薬剤により、かゆみが抑えられ、よく寝られるようになるケースも多い。肝疾患患者の立場になって考えると、非常に大きな効果と言えるかもしれない」と述べた。続けて、「今、日本では脂肪性肝炎が増えてきている。この疾患は自覚症状がないため、患者を早期に見つけることは大切。今後は、かゆみを抑えるなど、肝疾患患者の生活環境を良くすることにも力を入れていく必要があるのではないか」と述べ、講演を締めくくった。参考文献1)Bonachini M. Dig Liver Dis. 2000;32:621-625.2)Cribier B, et al. Acta Derm Venereol.1998;78:355-357.3)南 健ほか. 日皮会誌. 2001;111:1075-1081.4)Rishe E, et al. Acta Derm Venereol. 2008;88:34-37.

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アレルギー性鼻炎を改善へ、世界初の舌下錠登場

 シオノギ製薬株式会社は、11月26日都内にて、世界初の舌下錠タイプのダニアレルゲン免疫療法薬「アシテア」の発売を記念し、岡本 美孝氏(千葉大学大学院医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学 教授)を講師に迎え、「患者さんのQOL向上をサポートするアレルギー性鼻炎治療」をテーマにプレス向けの説明会を行った。国民の4割が有病者 アレルギー性鼻炎とは、「鼻粘膜のI型アレルギー疾患で、発作性反復性のくしゃみ、水性鼻漏、鼻閉を主徴とする」疾患である。疫学的実態に関して、アレルギー性鼻炎全体の日本国内での有病率は約4割と考えられている。ダニが原因の代表とされる通年性アレルギー鼻炎はとくに男性に多く、花粉症に代表される季節性アレルギー鼻炎は女性に多い。患者数は季節性アレルギーで近年増加傾向にある。 現在、アレルギー性鼻炎の治療法として、「抗原回避」「薬物療法」「免疫(減感作)療法」「手術療法」「鼻処置」「患者とのコミュニケーション」がある。なかでも広く行われている「薬物療法」と「免疫(減感作)療法」に焦点を当て、解説がされた。 ケミカルメディエーター遊離抑制薬や抗ヒスタミン薬、ステロイド薬などの薬物療法は、現在最も多く行われている治療であるが、これらは対症療法であり、アレルギー症状の治療という根本的な解決になっていない。その一方で、原因アレルゲンを皮下注射することで治療していくアレルゲン免疫療法(減感作療法)は、体質改善が図られ症状が軽快するものの、治療期間が2年以上と長期にわたり、途中離脱する患者の割合も多い。薬物療法か、免疫療法か それでは、薬物療法と免疫療法のどちらの治療法が良いだろうか? アレルギー性鼻炎患者の長期経過を、千葉大学医学部附属病院 耳鼻科アレルギー外来で追跡調査した結果が報告された。 小児通年性アレルギー鼻炎(n=55)において、薬物療法で改善以上が25%だったのに対し、減感作療法2年未満では69%、同療法2年以上は77%と減感作療法のほうが高い数値を示していた。また、成人通年性アレルギー性鼻炎(n=31)では、薬物療法で改善以上が40%だったのに対し、減感作療法2年以上は81%だったという。こうしたことからもアレルゲン免疫療法は、治療終了後も効果が長期間持続することが期待されているという。 このように、アレルゲン免疫療法(減感作療法)のデメリットを払拭する薬剤が待ち望まれる中で、患者の利便性、非侵襲性、重篤な副作用の軽減を目指し、アシテアが開発された。1日1回、2分で終了 アシテアは、世界で初めてのダニアレルゲン舌下錠であり、次のような特徴を持つ。 対象患者は、ダニアレルギー性鼻炎の成人および12歳以上の小児。禁忌は、病因アレルゲンがダニ抗原ではない患者、ダニエキスにショックの既往のある患者、重症の気管支喘息患者、悪性腫瘍などの全身性疾患のある患者である。また、過去にアレルゲンエキスでアレルギー症状を発現した患者、気管支喘息患者、高齢者、妊産婦(授乳中も含む)、非選択的β遮断薬服用中の患者は慎重投与となる。 用法・用量は1日1回、1回投与量100単位から開始し、300単位まで増量できる。服用方法は、薬剤を舌下に入れ、そのまま溶解するまで唾液を飲み込む(約2分間)だけである。ただし、服用後5分間はうがい、飲食は控えなければならない。 国内での第II/III相試験によると、投与1年後のアシテア300単位(n=315)とプラセボ(n=316)との比較で、平均調整鼻症状スコア(くしゃみ発作、鼻汁、鼻閉など)は、アシテア群の最小二乗平均が5.0に対し、プラセボ群が6.11と有意差が認められた。また、「軽度以上の改善」と評価した被験者割合は、アシテア群(244/306例)が79.7%だったのに対し、プラセボ群(200/310例)64.5%と、同じく有意差が認められた。初回投与は医師の監視下で 副作用はアシテア群で66.8%の報告があったのに対し、プラセボ群は18.6%であった。副作用の重症度は、軽度(98.1%)がほとんどを占め、アナフィラキシーショックのような高度なものは報告されなかった。主な副作用は、頻度順に口腔浮腫、咽喉刺激感、耳そう痒症、口腔そう痒症、口内炎などが挙げられた。副作用の発現時期は半数以上が投与開始後2週間以内であり、継続投与により発現頻度、程度は減弱していくという。そのため、副作用への注意として、初回投与時は約30分間、医師の監視下に置き十分な観察を行う。また、免疫療法では患者の離脱率が高いために、事前にメリット(長期の症状改善、自宅で服薬など)とデメリット(長い治療期間、副作用など)を患者によく説明することが、治療のポイントとなる。 最後に「効果持続期間の検証や新たな副作用の出現など、臨床の場でさらに研究を進めるとともに、効果測定や予測バイオマーカーの開発などが待たれる」と今後の課題を述べ、レクチャーを終えた。詳しい商品情報は、こちら(ケアネット 稲川 進)関連コンテンツケアネット・ドットコム 特集「花粉症」はこちら。

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アナフィラキシーの治療の実際

アナフィラキシーの診断 詳細は別項に譲る。皮膚症状がない、あるいは軽い場合が最大20%ある。 治療(表1)発症初期には、進行の速さや最終的な重症度の予測が困難である。数分で死に至ることもあるので、過小評価は禁物。 ※筆者の私見適応からは、呼吸症状に吸入を先に行う場合があると読めるが、筆者は呼吸症状が軽症でもアナフィラキシーであればアドレナリン筋注が第1選択と考える。また、適応に「心停止」が含まれているが、心停止にはアドレナリン筋注は効果がないとの報告9)から、心停止の場合は静注と考える。表1を拡大する【姿勢】ベッド上安静とし、嘔吐を催さない範囲で頭位を下げ、下肢を挙上して血液還流を促進し、患者の保温に努める。アナフィラキシーショックは、distributive shockなので、下肢の挙上は効果あるはず1)。しかし、下肢拳上を有効とするエビデンスは今のところない。有害ではないので、薬剤投与の前に行ってもよい。【アドレナリン筋肉注射】気管支拡張、粘膜浮腫改善、昇圧作用などの効果があるが、cAMPを増やして肥満細胞から化学物質が出てくるのを抑える作用(脱顆粒抑制作用)が最も大事である。α1、β1、β2作用をもつアドレナリンが速効性かつ理論的第1選択薬である2)。緊急度・重症度に応じて筋注、静注を行う。血流の大きい臀部か大腿外側が薦められる3)。最高血中濃度は、皮下注で34±14分、筋注で8±2分と報告されており、皮下注では遅い4)。16~35%で2回目の投与が必要となる。1mLツベルクリンシリンジを使うと針が短く皮下注になる。1)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~30分間隔 [厚生労働省平成20年(2008)5)]2)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~15分間隔 [UpToDate6)]3)アドレナリン1回0.01mg/kg筋注 [日本アレルギー学会20141)]4)アドレナリン1回0.2~0.5mgを皮下注あるいは筋注 [日本化学療法学会20047)]5)アドレナリン(1mg)を生理食塩水で10倍希釈(0.1mg/mL)、1回0.25mg、5~15分間隔で静注 [日本化学療法学会20047)]6)アドレナリン持続静脈投与5~15µg/分 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)]わが国では、まだガイドラインによってはアドレナリン投与が第1選択薬になっていないものもあり(図1、図2)、今後の改訂が望まれる。 ※必ずしもアドレナリンが第1選択になっていない。 図1を拡大する ※皮膚症状+腹部症状のみでは、アドレナリンが第1選択になっていない。図2を拡大する【酸素】気道開通を評価する。酸素投与を行い、必要な場合は気管挿管を施行し人工呼吸を行う。酸素はリザーバー付マスクで10L/分で開始する。アナフィラキシーショックでは原因物質の使用中止を忘れない。【輸液】hypovolemic shockに対して、生理食塩水か、リンゲル液を開始する。1~2Lの急速輸液が必要である。維持輸液(ソリタ-T3®)は血管に残らないので適さない。【抗ヒスタミン薬、H1ブロッカー】経静脈、筋注で投与するが即効性は望めない。H1受容体に対しヒスタミンと競合的に拮抗する。皮膚の蕁麻疹には効果が大きいが、気管支喘息や消化器症状には効果は少ない。第1世代H1ブロッカーのジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)クロルフェニラミンマレイン酸塩(ポララミン®)5mgを静注し、必要に応じて6時間おきに繰り返す。1)マレイン酸クロルフェニラミン(ポララミン®)2.5~5mg静注 [日本化学療法学会20047)]2)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg緩徐静注 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)] 保険適用外3)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg静注 [UpToDate6)]4)経口では第2世代のセチリジン(ジルテック®)10mgが第1世代より鎮静作用が小さく推奨されている [UpToDate6)] 経口の場合、効果発現まで40~60分【H2ブロッカー】心収縮力増強や抗不整脈作用がある。蕁麻疹に対するH1ブロッカーに相乗効果が期待できるがエビデンスはなし。本邦のガイドラインには記載がない。保険適用外に注意。1)シメチジン(タガメット®)300mg経口、静注、筋注 [AHA心肺蘇生ガイドライン9)] シメチジンの急速静注は低血圧を引き起こす [UpToDate6)]2)ラニチジン(ザンタック®)50mgを5%と糖液20mLに溶解して5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【βアドレナリン作動薬吸入】気管支攣縮が主症状なら、喘息に用いる吸入薬を使ってもよい。改善が乏しい時は繰り返しての吸入ではなくアドレナリン筋注を優先する。気管支拡張薬は声門浮腫や血圧低下には効果なし。1)サルブタモール吸入0.3mL [日本アレルギー学会20141)、UpToDate6)]【ステロイド】速効性はないとされてきたが、ステロイドのnon-genomic effectには即時作用がある可能性がある。重症例ではアドレナリン投与後に、速やかに投与することが勧められる。ステロイドにはケミカルメディエーター合成・遊離抑制などの作用により症状遷延化と遅発性反応を抑制することができると考えられてきた。残念ながら最近の研究では、遅発性反応抑制効果は認められていない10)。しかしながら、遅発性反応抑制効果が完全に否定されているわけではない。投与量の漸減は不要で1~2日で止めていい。ただし、ステロイド自体が、アナフィラキシーの誘因になることもある(表2)。とくに急速静注はアスピリン喘息の激烈な発作を生じやすい。アスピリン喘息のリスクファクターは、成人発症の気管支喘息、女性(男性:女性=2:3~4)、副鼻腔炎や鼻茸の合併、入院や受診を繰り返す重症喘息、臭覚低下。1)メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソル・メドロール®)1~2mg/kg/日 [UpToDate6)]2)ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム(ソル・コーテフ®)100~200mg、1日4回、点滴静注 [日本化学療法学会20047)]3)ベタメタゾン(リンデロン®)2~4mg、1日1~4回、点滴静注11) 表2を拡大する【グルカゴン】βブロッカーの過量投与や、低血糖緊急時に使われてきた。グルカゴンは交感神経を介さずにcAMPを増やしてアナフィラキシーに対抗する力を持つ。βブロッカーを内服している患者では、アドレナリンの効果が期待できないことがある。まずアドレナリンを使用して、無効の時にグルカゴン1~2mgを併用で静注する12)。β受容体を介さない作用を期待する。グルカゴン単独投与では、低血圧が進行することがあるので注意。アドレナリンと輸液投与を併用する。急速静注で嘔吐するので体位を側臥位にして気道を保つ。保険適用なし。1)グルカゴン1~5mg、5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【強力ミノファーゲンC】蕁麻疹単独には保険適用があるがアナフィラキシーには効果なし。観察 いったん症状が改善した後で、1~8時間後に、再燃する遅発性反応患者が4.5~23%存在する。24時間経過するまで観察することが望ましい。治療は急いでも退室は急ぐべきではない13)。 気管挿管 上記の治療の間に、嗄声、舌浮腫、後咽頭腫脹が出現してくる患者では、よく準備して待機的に挿管する。呼吸機能が悪化した場合は、覚醒下あるいは軽い鎮静下で挿管する。気道異物窒息とは違い準備する時間は取れる。 筋弛緩剤の使用は危険である。気管挿管が失敗したときに患者は無呼吸となり、喉頭浮腫と顔面浮腫のためバッグバルブマスク換気さえ不能になる。 気管挿管のタイミングが遅れると、患者は低酸素血症の結果、興奮状態となり酸素マスク投与に非協力的となる。 無声、強度の喉頭浮腫、著明な口唇浮腫、顔面と頸部の腫脹が生じると気管挿管の難易度は高い。喉頭展開し、喉頭を突っつくと出血と浮腫が増強する。輪状甲状靭帯穿刺と輪状甲状靭帯切開を含む、高度な気道確保戦略が必要となる9)。さらに、頸部腫脹で輪状軟骨の解剖学的位置がわからなくなり、喉頭も皮膚から深くなり、充血で出血しやすくなるので輪状甲状靭帯切開も簡単ではない。 絶望的な状況では、筆者は次の気道テクニックのいずれかで切り抜ける。米国麻酔学会の困難気道管理ガイドライン2013でも、ほぼ同様に書かれている(図3)14)。 1)ラリンゲアルマスク2)まず14G針による輪状甲状靭帯穿刺、それから輪状甲状靭帯切開3)ビデオ喉頭鏡による気管挿管 図3を拡大する心肺蘇生アナフィラキシーの心停止に対する合理的な処置についてのデータはない。推奨策は非致死的な症例の経験に基づいたものである。気管挿管、輪状甲状靭帯切開あるいは上記気道テクニックで気道閉塞を改善する。アナフィラキシーによる心停止の一番の原因は窒息だからだ。急速輸液を開始する。一般的には2~4Lのリンゲル液を投与すべきである。大量アドレナリン静注をためらうことなく、すべての心停止に用いる。たとえば1~3mg投与の3分後に3~5mg、その後4~10mg/分。ただしエビデンスはない。バソプレシン投与で蘇生成功例がある。心肺バイパス術で救命成功例が報告されている9)。妊婦対応妊婦へのデキサメタゾン(デカドロン®)投与は胎盤移行性が高いので控える。口蓋裂の報告がある15)。結語アナフィラキシーを早期に認識する。治療はアドレナリンを筋注することが第一歩。急速輸液と酸素投与を開始する。嗄声があれば、呼吸不全になる前に準備して気管挿管を考える。 1) 日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン. 日本アレルギー学会;2014. 2) Pumphrey RS. Clin Exp Allergy. 2000; 30: 1144-1150. 3) Hughes G ,et al. BMJ.1999; 319: 1-2. 4) Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006; 117: 391-397. 5) 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアルアナフィラキシー.平成20年3月.厚生労働省(参照2015.2.9) 6) F Estelle R Simons, MD, FRCPC, et al. Anaphylaxis: Rapid recognition and treatment. In:Uptodate. Bruce S Bochner, MD(Ed). UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on February 9, 2015) 7) 日本化学療法学会臨床試験委員会皮内反応検討特別部会.抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン(2004年版).日本化学療法学会(参照2015.2.9) 8) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.第9章治療.In:食物アレルギー診療ガイドライン2012.日本小児アレルギー学会(参照2015.2.9) 9) アメリカ心臓協会.第12章 第2節 アナフィラキシーに関連した心停止.In:心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2010(American Heart Association Guidelines for CPR & ECC). AHA; 2010. S849-S851. 10) Choo KJ, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 4: CD007596. 11) 陶山恭博ほか. レジデントノート. 2011; 13: 1536-1542. 12) Thomas M, et al. Emerg Med J. 2005; 22: 272-273. 13) Rohacek M, et al. Allergy 2014; 69: 791-797. 14) 駒沢伸康ほか.日臨麻会誌.2013; 33: 846-871. 15) Park-Wyllie L, et al. Teratology. 2000; 62: 385-392.

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アナフィラキシーにおける皮膚症状と診断

はじめに アナフィラキシーは、狭義にはIgEを介する、複数の臓器における即時型アレルギー反応で、広義には、造影剤や非ステロイド系抗炎症剤(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs; NSAIDs)などによる、さらには明らかな誘因なく症状が出現する特発性のものを含む1-3)。皮膚症状に関する限り、誘因による表現型の違いは知られていない。 その症状は、マスト細胞が多く分布する皮膚、粘膜、気道、消化管に多く現れ、末梢血の血漿成分の漏出による循環動態の悪化と神経症状を伴うことが多い。なかでも皮膚症状はアナフィラキシーの80~90%で出現2,4)し(表1)、呼吸困難感、血圧低下など、他の生命に関わる症状に伴って出現した場合の診断的価値は高い。 表1を拡大する アナフィラキシーにおける皮膚症状アナフィラキシーによる皮膚症状は、臨床的にI型アレルギーにより生じる皮膚症状と同様である。すなわち、皮膚、粘膜に分布するマスト細胞の急速な脱顆粒により、ヒスタミンをはじめとするメディエーターが組織内に放出され、血管に作用して微小血管の拡張(紅斑)、血漿成分の漏出(膨疹)、知覚神経の刺激による瘙痒を生じる。この反応は、蕁麻疹と大きく重複するが、蕁麻疹のスペクトラムは広く、アナフィラキシーですべての蕁麻疹の臨床像が起こるわけではない。一方、もともと慢性に反復する患者がアナフィラキシーを生じた場合は、両者の皮疹を区別することは困難であり、臨床像により両者を区別することはできない。しかし、傾向として両者の違いはあり、その特性を認識しておくことは有用である。1)皮疹の範囲皮膚症状をアナフィラキシーの診断の根拠とするには、体表の広い範囲に皮疹が出現していることが大切である。果物や野菜を摂取して起こる口腔アレルギー症候群では、軽症例では口腔ならびに顔面皮膚、粘膜の発赤、腫脹などにとどまり、接触蕁麻疹でも軽度であれば皮疹は接触部位に限局した発赤ないし膨疹となる。WAO(World Allergy Organization) 3)および日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドライン2)では、アナフィラキシーの3項目を挙げ、そのうちのいずれかに該当する場合をアナフィラキシーと診断する。皮膚症状は、その3項目のうちの2項目に含まれ、具体的には「全身の発疹、瘙痒または紅潮」と定義されている。なお、アナフィラキシーでも皮疹がない、あるいは限局性の蕁麻疹が出現する可能性はあるが、日本アレルギー学会のガイドライン2)では、部分的な紅斑、蕁麻疹、膨疹はグレード1(軽症)に位置付けられている。2)膨疹と紅斑蕁麻疹では、初期は膨疹の周囲に広範囲の紅斑を伴うことが多く、浮腫の強い膨疹は白色になることもある。しかし、症状を繰り返すうちに紅斑の範囲は狭まり、慢性蕁麻疹の紅斑は膨疹の範囲に限局することが多い(図1)。私見ではあるが、アナフィラキシーにおける皮膚症状は紅斑が主体で、膨疹はないか、あっても散在する程度のことが多い(図2)。バンコマイシンを急速に点滴または静注することで生じるバンコマイシン症候群(またはレッドマン症候群)は、血中バンコマイシン濃度が上昇するために好塩基球からヒスタミンが遊離され、顔面、頸部に紅斑を生じる現象であるが、この場合も顔面、頸部のびまん性紅斑が主体で膨疹はその主役ではない。 図1を拡大する 図2を拡大する 図2(続き)を拡大する 一方、特発性の蕁麻疹でも体表の広い範囲に膨疹が出現することはあるが、その場合は比較的境界が明瞭で、多くの無疹部を確認できることが多い(図3)。浮腫が眼瞼、口唇に生じると、病変が深部に及び、血管性浮腫となることもある。 図3を拡大する 3)除外すべき皮膚症状アナフィラキシーに伴う皮膚症状の特徴は、個々の皮疹の形よりもむしろその経過にある。また、病態の中心は血管の拡張と浮腫にあって器質的変化を伴わないため、圧迫により消退しないことも診断の根拠にできる(図4)。なお、表在性の膨疹、紅斑を伴わない血管性浮腫は、遺伝性血管性浮腫またはアンジオテンシン変換酵素阻害薬内服中に生じる発作の可能性を考える必要がある。その場合は抗ヒスタミン薬、アドレナリンは無効で、前者には速やかなC1インヒビター(C1-INH)製剤の静注が必要である5)。 図4を拡大する おわりにアナフィラキシー様症状には、パニック発作、迷走神経発作など、アナフィラキシーとは取るべき対応がまったく異なる疾患を鑑別する必要がある。そのために、皮膚症状は重要な診断の助けになり、正確な観察を心がけたい。 1) The Centre for Clinical Practice at NICE. Anaphylaxis. NICE clinical guideline 134. NICE.(Accessed on February 9, 2015.) 2) 日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン.日本アレルギー学会;2014. 3) アナフィラキシーの評価および管理に関する世界アレルギー機構ガイドライン. Estelle F, et al. 海老澤元宏ほか翻訳. アレルギー.2013; 62: 1464-1500. 4) Joint Task Force on Practice Parameters; American Academy of Allergy, Asthma and Immunology; American College of Allergy, Asthma and Immunology; Joint Council of Allergy, Asthma and Immunology. J Allergy Clin Immunol 115: S483-S523, 2005. 5) 秀 道広ほか.日皮会誌.2011; 121: 1339-1388.

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長期抗コリン薬使用、認知症リスク増加が明らかに

 抗コリン作用を有する薬剤の累積使用量が多いほど、認知症およびアルツハイマー病の発症リスクが高まることが、米国・ワシントン大学のShelly L Gray氏らが行った前向き住民ベースコホート試験の結果、明らかにされた。抗コリン作用を有している薬剤は多い。これまでの検討で、抗コリン作用誘発性の認知障害は、抗コリン薬の中止により回復すると考えられている。一方で、抗コリン作用を有する薬剤が、認知症リスク増加と関連する可能性については、少数の検討しか行われていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「抗コリン薬の長期使用を最小限に抑えるため、薬剤に関連するリスクの可能性について医療関係者および高齢者の認識を高める努力が重要である」と指摘している。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2015年1月26日号の掲載報告。 試験は、ワシントン州シアトルの統合保険提供システムGroup Healthが実施した Adult Changes in Thought studyのデータを使用して行われ、抗コリン作用を有する薬剤の累積使用が、認知症発症の高リスクと関連するか否かを検討した。対象は、試験登録時に認知症を認めない65歳以上の3,434例であった。被験者の募集は1994~1996年、2000~2003年に実施され、2004年以降は、死亡による入れ替えが継続的に行われた。全被験者について2年ごとにフォローアップを実施。本報告には2012年9月30日までのデータが含まれている。抗コリン作用を有する薬剤の累積投与量は、薬物処方記録データを使用して、過去10年間に処方された標準的1日投与量の合算(TSDD)として算出した。なお、前駆症状に関わる使用を避けるために、直近12ヵ月間の薬剤使用については除外。累積投与量はフォローアップ時に更新された。主要評価項目は、標準的な診断基準を用いて評価した、認知症およびアルツハイマー病発症の有無とした。統計解析は、患者背景、健康に関わる行動、併存してみられる症状など健康状態で補正し、Cox比例ハザード回帰モデルを使用して行われた。 主な結果は以下のとおり。・処方頻度が高かった抗コリン薬の種類は、三環系抗うつ薬、第1世代抗ヒスタミン薬、膀胱に作用する抗ムスカリン薬であった。・平均フォローアップ期間7.3年の間に、797例(23.2%)が認知症を発症した(そのうち673例 [79.9%]がアルツハイマー病)。・10年間の累積投与量と認知症およびアルツハイマー病との間に関連がみられた(傾向検定のp<0.001)。・認知症に関して、抗コリン薬非使用に対する累積使用の調整ハザード比は、1~90TSDDの場合0.92(95%信頼区間[CI]:0.74~1.16)、91~365TSDDの場合1.19(同:0.94~1.51)、366~1,095TSDDの場合1.23(同:0.94~1.62)、1,095超TSDDの場合は1.54(同:1.21~1.96)であった。 ・アルツハイマー病に関しても、同様のパターンが示された。・2次解析、感度解析、事後解析によっても結果に変わりはなかった。関連医療ニュース 抗コリン薬は高齢者の認知機能に悪影響 ベンゾジアゼピン処方、長時間型は大幅に減少 統合失調症患者の抗コリン薬中止、その影響は

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アナフィラキシー総論 シンプル解説

1.疾患または病態の定義、概念 アナフィラキシーは、食物、薬物、蜂毒、ラテックスなどの原因物質により誘発される即時型アレルギー反応の一型であり、その症状は複数の臓器症状が短時間のうちに全身性に現れ、生命に危機を与えるものを指す。またアナフィラキシーのうち、血圧低下やそれに伴う意識レベルの変容を伴う場合を、アナフィラキシーショックという。 2.病態生理 アナフィラキシーは、典型的には原因物質が感作マスト細胞や好塩基球上のIgEを架橋することにより、系統的なメディエーターの放出および分泌により引き起こされる。メディエーターはヒスタミンやロイコトリエン、トロンボキサン、プロスタグランジン、PAFなどであり、これらは平滑筋攣縮、粘液分泌、血管拡張、血管透過性亢進などの作用を示す。 3.診断基準国際的には複数の診断基準があるが、わが国で採用されている診断基準を以下に示す。3つのクライテリアがあり、そのうちいずれかに該当すればアナフィラキシーと診断する。 1)患者が数分から数時間の経過において、「皮膚・粘膜のどちらか、または両症状」と「呼吸器症状か血圧低下または末梢循環不全」の合併がある。 2)患者が抗原に曝露されて数分から数時間に以下の症状が2つもしくはそれ以上出現した場合。(1)皮膚・粘膜のどちらか、または両症状、(2)呼吸器症状、(3)血圧低下または末梢循環不全、(4)消化器症状。 3)患者が既知の抗原に曝露されて数分から数時間の間の血圧低下。4.臨床症状アナフィラキシー症状は、その定義にもあるように全身的に現れる。このため、あらゆる症状が発現しうるといっても過言ではない。しかし症状出現頻度には大きな違いがある。1)皮膚症状最も現れやすい症状である(図)。皮膚症状は掻痒を伴う蕁麻疹が典型的であるが、掻痒は軽度もしくは伴わずに紅斑のみが広がっていくこともよく経験する。 図を拡大する 2)粘膜症状皮膚症状に次いで頻度が多い。主に口唇腫脹や、眼瞼腫脹、眼球粘膜症状、また口腔咽頭粘膜症状(イガイガ感、違和感など)がよく認められる。皮膚・粘膜症状は程度が強いと、外観的な重篤感をうかがわせるが、生命維持には関与しないので、重症度は高く捉える必要はない。3)喉頭症状(上気道)喉頭は容易には視認できないので、初期は患者の主観症状に依存する。しかし、進行すると窒息から致死の転帰をたどる可能性がある。患者は胸部圧迫感や胸部・喉頭絞扼感、喉頭違和感、嚥下困難感などの主観的症状、嗄声、無声など客観的症状、さまざま訴える。しかし、小児にはこれら主観症状の表出が不得手であり、検者は常に患児の喉頭症状に注意を払うべきである。4)呼吸器症状(下気道)喉頭症状も上気道、つまり呼吸器症状に本来は包含されるが、注意点が異なるので、便宜的に分けて表記した。下気道症状として散発的な咳嗽が、じきに連続性となり咳き込む。喘鳴などraleを伴うようになると呼吸困難症状も現れてくる。5)消化器症状腹痛、嘔吐が多く、時に下痢を認める。腹痛は主観的な症状であるので、重篤度を推し量るには難しい。まれであるが、腹痛の中に膵炎を発症している症例もあり、注意を要する。6)循環器症状血圧低下を代償するために、頻脈、顔面蒼白、四肢冷感、活動性の低下が初期に認められる(プレショック)。さらに低血圧に陥ると、意識レベルの悪化が進行し、持続すると多臓器不全に至る(ショック)。循環器症状は生命維持に直結するので、迅速で適切な対応が求められる。症状は抗原に曝露されてから速やかに出現する。食物・薬物で5分以内が25.8%、30分以内が56.1%、蜂毒では5分以内が41.4%にも及ぶ。ただし、なかには抗原曝露から1~2時間後に症状が誘発される場合もある。その進行はきわめて急速である。蜂毒によるアナフィラキシーの場合は秒単位、食物アレルギーや薬物では分単位で症状悪化を認めるため、急激な変化に即応できるような意識と体制が求められる。また初期症状がいったん収まった後、しばらくして再燃する二相性反応も知られる。その頻度は報告によりさまざまであるが、アナフィラキシー反応の6%で、初期反応の後1.3~28.4時間後に再燃したとする報告がある。初期症状におけるアドレナリン投与の遅れが二相性反応を誘発する指摘もある。5.治療1)アドレナリンアドレナリンがアナフィラキシー治療の第1選択薬であることはきわめて重要な知識である。アドレナリンは、アナフィラキシーによって生じている病態を改善させる最も効果的な薬剤である。アドレナリンの効果発現は早いが、代謝も早く(10~15分)、必要に応じて反復投与する。投与量は0.01mg/kg、投与経路は筋肉注射であり、添付文書には記載されているものの皮下注射は推奨されない。吸入による循環器系に対する効果は否定的であり、挿管時の経気道的投与とは一線を画して理解するべきである。アドレナリン投与の遅れが、致死と関連があるとする報告は枚挙にいとまがない。しかし日常診療においてアドレナリンは使い慣れない薬剤であり、治療指数(治療効果を示す量と致死量との比較)が狭く、また劇薬指定であることが影響して、その投与時期が遅れることがきわめて多い。致死の可能性がある症状、すなわちショックおよびプレショック、そして呼吸器(上下気道)症状に対して、迅速積極的に投与されるべきである。わが国では、アドレナリン自己注射薬(エピペン)が平成18年に小児にも適応となり、平成20年には学校・幼稚園、平成23年には保育所における注射が認められるようになった。医師は指導的な立場で、病院外でのアドレナリンの適正使用に貢献することが求められている。アドレナリンを米国だけはエピネフリンと公称するが、その歴史の事実は、高峰 譲吉氏が1900年に発見し、結晶化に成功した物質であり、そのときの命名がアドレナリンである。2)抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)アドレナリン以外の薬剤のアナフィラキシー治療における位置づけは実は低い。それにもかかわらず漫然と使用されている臨床現場があるのも事実である。抗ヒスタミン薬の蕁麻疹や掻痒に対する効果は明らかであるが、紅斑にすらその効果は限定的である。ましてショックはもちろん、呼吸器、消化器症状に対する効果は期待できない。さらに注射薬はその鎮静効果から、かえって患者の意識レベルの評価を困難にする。このため、安易な投与はむしろ避け、投与対象を慎重に考え、使用後は継続的なモニタリングを行い急変に備える。3)ステロイド薬抗ヒスタミン薬と同様、アナフィラキシーの急性期の治療に対するステロイド薬の効果に関するエビデンスはきわめて乏しい。それにもかかわらず、経験的に多用されている特殊な薬剤である。二相性反応に対する効果を期待されて投与されることが多いが、そのエビデンスも乏しい。漫然と投与して、モニタリングもせずに経過を追うことがあってはならない。4)その他呼吸器症状にはβ2刺激薬吸入が効果的なことが多い。また十分な酸素投与および輸液管理は基本であり。ショック体位を早期から取らせ、不用意な体位変換も避けるべきである。6.臨床検査 アナフィラキシーにおける臨床検査所見の価値はきわめて限定的である。なぜなら検査結果が出た時点では、アナフィラキシー症状の趨勢は決しているからである。 事後的にアナフィラキシー症状を確認する目的としては、マスト細胞や好塩基球由来のメディエーター(血漿ヒスタミンや血清トリプターゼ、PAFなど)の上昇はアナフィラキシーの存在を支持する。特異的IgE値や皮膚テスト(プリックテスト)の結果は、アナフィラキシーのリスクと一定の相関性があるが、強くはない。 7.小児期のアナフィラキシー 小児期のアナフィラキシーの主な原因は食物である。一般的にソバや落花生のアナフィラキシーリスクが高いと考えられるが、鶏卵、牛乳、小麦のリスクが低いわけではなく、同様の管理が必要である。 症状は、小児に限って発症しやすいものはない。しかし、成人と異なり、症状の表出が十分にできないため、気道症状やショック症状の初期症状、たとえば喉頭違和感や閉塞感、立ちくらみ、元気がなくなるなどの症状を、見落とさないよう気を付ける必要がある。疫学調査で、小児期のショック発生率が成人に比べて少ないのは、こうした症状が見落とされているためと考えられる。小児のアナフィラキシーが、成人に比べて軽症であると安易に考えないほうが良い。 アナフィラキシーの治療は成人と変わらない。アドレナリンが第1選択薬であり、投与量は0.01mg/kgで0.5mgを上限とする。 自己判断ができない小児期のアナフィラキシー管理は、保護者や日々の管理者が代行することになる。このためリスクの認識と発症時の対応方法を、彼らに十分に習熟させることが求められる。

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オマリズマブ、慢性特発性蕁麻疹の新たな治療選択肢?

 コロンビア・Fundacion Valle del LiliのDiana C Carrillo氏らは、慢性特発性蕁麻疹に対するオマリズマブの有効性および安全性を検討する目的で、プラセボを対照とした無作為化試験のシステマティック・レビューを行った。その結果、オマリズマブ300mgは抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1拮抗薬)が無効の慢性特発性蕁麻疹の治療に有効と考えられることを報告した。ただし、「効果的な治療期間を決定するためにさらなる検討が必要だ」とまとめている。World Allergy Organization 誌2014年12月31日号の掲載報告。 研究グループは、PubMed、Medline、EMBASE、Biomed Central、The Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、Wily、OVIDおよびHighwire Pressを用いて2014年5月31日まで(新しい出版物については2014年の9月30日まで延長)のデータを検索し、論文の言語は問わず難治性の慢性特発性蕁麻疹と診断された12歳以上の患者を対象とした無作為化プラセボ対照試験を選択した。 評価項目は週単位の蕁麻疹活動性スコア(UAS7)やかゆみ重症度スコア(ISS)で、2人の研究者が独立してレビューし、論文の質はコクラン共同計画のツールを用いてバイアスリスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった無作為化試験は5試験(合計1,117例)であった。平均年齢は42.07歳。大半が女性、白人種であった。・オマリズマブ投与群は831例(75mg投与183例、150mg投与163例、300mg投与437例、600mg投与21例)で、単回投与または4週ごと最大24週まで投与されていた。・オマリズマブ300mg投与では、3試験で主要評価項目の評価時期におけるUAS7のベースラインからの低下量がプラセボより大きかった(19.9 vs. 6.9、19 vs. 8.5、20.7 vs. 8.01;すべてp<0.01)。・また、4試験で主要評価項目の評価時期におけるISSのベースラインからの変化量がプラセボより大きく(-9.2vs.-3.5、p<0.001/-9.8vs.-5.1、p<0.01/-8.6vs.-4.0および-9.4vs.-3.63、ともにp<0.001)、2試験で血管性浮腫なしの日の割合が高かった(95.5%vs. 89.2%および91.0%vs. 88.1%、ともにp<0.001)。・オマリズマブの用法・用量、投与期間および追跡期間が異なっていたため、メタ解析は行われなかった。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第14回

第14回:乗り物酔い(動揺病)の予防監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 乗り物酔い(動揺病)の予防方法を、患者さんに聞かれることがあると思います。さまざまな予防法がありますが、基本的には、体調を整えて無理をしないことのようです。予防のための薬物使用としてGrade A1)として挙げられているスコポラミンの貼り薬は、日本では市販・処方箋処方ともに製品として販売していません。酔い止めとして市販されているトラベルミンなどにはスコポラミンが成分として入っていますが、医師が処方箋として処方するトラベルミン(ジフェンヒドラミンサリチル酸塩[第一世代抗ヒスタミン]、ジプロフィリン)には、スコポラミンは入っていません。市販薬を勧めてみることも選択肢の一つといえます。第一世代抗ヒスタミンでは、Cinnarizine(日本販売なし)、プロメタジン(商品名:ヒベルナ、ピレチア/動揺病として保険適用あり)がModerately Effectiveとして挙げられています1)。 以下、American Family Physician.  2014年7月1日号1) より1. 概論乗り物酔いは、ある種の揺れに体が巻き込まれて起こる症状である。前庭部や視覚、その他の感覚受容器での調整不全から起こると考えられている。嘔気が特徴であるが、胃の不快感や倦怠感、眠気、神経過敏がしばしば先に出現する。早くその症状に気づくことは大切であり、動揺病を防ぐための行動や薬での対策をすべきである。2. 非薬物療法乗り物酔いを引き起こしやすい状況を自覚して、天候不順時の移動を避けたり、起伏の激しい地形やカーブの多い路面を避ける。また、乗り物の最も安定した場所にいることにより不快な揺れを減らすべきである。具体的には、飛行機では翼上の座席、自動車では運転席あるいは前席、2階建てバスや電車では前の方の1階席の窓側、船では波の来る面に対して水面近くだが船首は避ける。ゆっくりした断続的な揺れは、症状を軽減する。水平線を眺めたり、自分で乗り物を運転する、動く方向に顔を向ける、目を閉じて横になる、視覚的な作業をしないなどがある(Grade C)。可能な限り、身体的(脱水や疲労、空腹など)、精神的、感情的に不快を及ぼしやすい要因を減らす。体を動かし続けることも試みるべきである。3. 薬物療法スコポラミンは予防の第一選択薬で、数時間前に経皮的に貼るか、1時間前に服用すべきである(Grade A 貼り薬:Most Effective、経口:Moderately Effective)。第一世代抗ヒスタミンは、鎮静的になるが、効果はある(Grade B)。第二世代以降の抗ヒスタミン薬やオンダンセトロン、根生姜などの有効性は乏しい。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Andrew Brainard, et al. Am Fam Physician. 2014 Jul 1;90(1):41-46.

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大人のアトピー治療、臨床からのエビデンス

 国際医療福祉大学病院 皮膚科 教授の大塚 勤氏は、臨床における成人アトピー性皮膚炎(AD)患者への、経口シクロスポリン治療と抗ヒスタミン薬治療の評価を行った。結果、両者を組み合わせた治療がより有効であることを報告した。International Journal of Dermatology誌オンライン版2014年10月14日号の掲載報告。 臨床においては多くの成人AD患者が、経口シクロスポリンまたは抗ヒスタミン薬の治療を受けている。大塚氏は、両治療の臨床および検査所見による効果の評価を行った。 25例の経口シクロスポリン治療を受けたAD患者(うち男性11例、16~42歳、平均26.2歳)と、23例の抗ヒスタミン薬治療を受けたAD患者(うち男性10例、15~32歳、平均年齢24.2歳)が対象であった。 検査所見は、高感度CRP、TARCなどで統計的に検討した。 主な結果は以下のとおり。・血清TARCは、経口シクロスポリン治療後(1,013±883pg/mL)が、治療前(3万8,194±4,678pg/mL)と比べて有意な減少を示した(p<0.02)。・末梢血好塩基球値は、同治療後(49.7±26.4×10-3個/μL)が、治療前(41.1±16.7×10-3個/μL)と比べてより有意な増加を示した(p<0.05)。・血清高感度CRP値は、抗ヒスタミン薬治療後(0.09±0.08mg/mL)が、治療前(0.13±0.12mg/mL)と比べて有意な減少を示した(p<0.05)。・末梢血好塩基球値は、同治療後(33.4 ±16.2×10-3個/μL)が、治療前(41.5±23.3×10-3個/μL)より有意に減少した(p<0.01)。

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