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B型肝炎の母子感染予防、テノホビルが有効/NEJM

 B型肝炎e抗原(HBeAg)陽性で、HBV-DNA量20万IU/mL超の妊婦に対し、妊娠30~32週からテノホビル・ジソプロキシル・フマル酸塩(TDF)の経口投与を始めると、母子感染率は低下することが示された。米国・ニューヨーク大学のCalvin Q.Pan氏らが、妊婦200例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2016年6月16日号で発表された。TDFを妊娠30~32週から出産後4週まで投与 研究グループは、HBeAgが陽性でHBV-DNA量が20万IU/mL超の妊娠中の女性200例を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方の群には抗ウイルス療法を行わない通常療法を、もう一方の群にはTDF(300mg/日)を妊娠30~32週から出産後4週まで経口投与した。すべての出生児に対して、免疫学的予防を実施。被験者のフォローアップは、分娩後28週まで行った。 主要評価項目は、母子感染率と先天異常の発生率だった。副次的評価項目は、TDFの安全性と、母体の分娩時HBV-DNA量が20万IU/mL未満だった割合、出産後28週時のHBeAgまたはB型肝炎表面抗原の消失や陽転の割合などだった。分娩後28週時の母子感染率、TDF群5%、対照群18% その結果、分娩後28週時の母子感染率は、intention-to-treat解析では対照群が18%(18/100例)に対し、TDF群が5%(5/97例)と有意に低率だった(p=0.007)。per-protocol解析では、対照群7%に対しTDF群は0%だった(p=0.01)。 分娩時のHBV-DNA量が20万IU/mL未満だった母体の割合は、対照群2%に対し、TDF群では68%と有意に高率だった(p<0.001)。 母子の安全性については両群で類似しており、クレアチンキナーゼ値の上昇は、TDF群で高率に認められた(p=0.006)が、先天性異常発生率について、対照群1%、TDF群2%と同等だった(p=1.00)。 また、TDF群では、TDF服用中止後、アラニンアミノトランスフェラーゼ値について正常値を上回る上昇がみられた人の割合が45%と、対照群の30%と比べて有意に多くみられた(p=0.03)。母体のHBV血清学的転帰は、両群で有意な差はみられなかった。

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慢性リンパ性白血病〔CLL : chronic lymphocytic leukemia〕

1 疾患概要■ 定義慢性の小型成熟Bリンパ球の単クローン性の腫瘍であり、末梢血、骨髄、リンパ節で増殖する。リンパ節外の病変はなく、末梢血では5,000/mm3以上の腫瘍細胞が観察される。通常腫瘍細胞はCD5とCD23との両者を発現する。■ 疫学欧米の成人の白血病のなかでは最も多く、10万人当たり3.9人の発症率であるが、東アジアでは少なく、日本では、およそ0.48人とする報告がある1)。欧米のアジア系移民でも少ないので、遺伝的素因が考えられている。■ 病因他の白血病、リンパ性腫瘍と同様、ゲノム異常によると考えられている。第13番染色体のmiR 15、16の欠失によるBCL2の活性化を始めとして、NOTCH1、MYD88、TP53、ATM、SF3B1などの遺伝子異常が複数関与している2)。■ 症状多くはまったく無症状であり、血液検査による異常値で発見される。一部、リンパ節腫脹、肝脾腫、体重減少、発熱、全身倦怠感、貧血症状を呈する例や繰り返す感染症から発見される例がある。また頻度は低いが、自己免疫性溶血性貧血、赤芽球癆、自己免疫性血小板減少症、無顆粒球症、低γグロブリン血症を合併することが知られている。■ 分類近縁疾患に、単クローン性B細胞リンパ球増加症(monoclonal B-cell lymphocytosis: MBL)と小リンパ球性リンパ腫(small lymphocytic lymphoma : SLL)がある。MBLは、健常人に認められるモノクローナルなBリンパ球の増殖である。臨床症状はなく、Bリンパ球は、CLLと同様の細胞表面抗原を呈していることが多いが、5,000/μL以下であるのでCLLの定義は満たさない。CLLへ進行することが知られている。SLLは、末梢血や骨髄への浸潤がないCLLと同一の腫瘍と考えられ病期や治療は低悪性度B細胞リンパ腫として扱われる。■ 予後一般に緩徐な経過をたどることが知られているが、初回診断時からの生存期間は症例により2~20年と大きなばらつきがあり、生存期間中央値は約10年といわれている。そのため治療開始時期の決断が困難であり、病勢を評価し、予後を予測するための臨床病期分類がいくつか報告されている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 診断基準末梢血中のリンパ球絶対数が3ヵ月以上にわたって、継続的に5,000/mm3を超えている。末梢血塗抹標本では、細胞質をほとんど持たない成熟小型リンパ球が一様に増加しており、フローサイトメトリーで、Bリンパ球がモノクローナルに増殖している。細胞表面抗原は、Tリンパ球抗原であるCD5およびBリンパ球抗原であるCD19、CD20、CD23が発現している。細胞表面免疫グロブリンやCD20の発現レベルは、正常Bリンパ球に比べて低いことが多い。免疫グロブリン軽鎖はκ型またはλ型のいずれかのみを発現している。■ 鑑別診断リンパ球数が増加する他の疾患との鑑別が問題となる。結核、梅毒、伝染性単核球症、百日咳、トキソプラズマ症などの感染症では、リンパ球増多を呈するが、いずれも反応性であり数週間で正常化する。CLL以外のリンパ増殖性疾患との鑑別も重要であり、hairy cell leukemia、prolymphocytic leukemia、large granular cell lymphocyte leukemia、mantle cell lymphomaを代表とする、リンパ腫の白血化などがある。■ 病期分類現在広く使われている病期分類には2種類ある。Rai分類(表1)は米国で、Binet分類(表2)は欧州で用いられており、リンパ節病変数および貧血、血小板減少の有無により分類する。画像を拡大する画像を拡大する■ その他の予後予測因子RaiおよびBinet分類により予後分類を行うが、low risk群に分類された症例のなかでも急速に進行する例がある。そのため、分子生物学的研究により、新たな予後因子も近年では提唱されている。(1)短いLymphocyte doubling time(LDT)(2)高い血清マーカー(LDH、β2 microglobulin、β2M)(3)免疫グロブリン重鎖変異(IgVH mutation)がない(4)CD38陽性(5)ZAP70(Zeta chain associated protein 70)が発現している(6)細胞遺伝学的検査での11q欠失・17p欠失が予後不良とされる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療開始時期Rai分類low risk群およびBinet分類A群の症例では、診断早期の治療が推奨されない。Rai分類intermediate・high risk群およびBinet分類B・C群の症例で治療開始が勧められる。ただし、intermediate risk群・B群においては、症状の出現まで経過観察が一般的である。一方で、リヒター症候群と呼ばれるトランスフォームを起こし、急速にリンパ節腫大を生じ、予後不良となることがある。無治療経過観察中に一転して、治療が無効となるので、患者説明の際に留意する。■ 治療薬剤現状ではCLLに対する標準治療は確立されていない。治療の選択肢が広がり、アルキル化剤に加えプリンアナログ、モノクローナル抗体が登場している。1)アルキル化剤クロラムブチルは、わが国では本疾患には未承認である。単剤治療について奏効率は40~60%で、完全寛解(complete response:CR)は4~10%であった3)。わが国では、シクロホスファミド(商品名: エンドキサン)が使用される。差違はほとんどないとされており、伝統的に併用療法中で用いられることが多いが、アントラサイクリンを加えるメリットはない4)。2)プリンアナログフルダラビンは(同: フルダラ)、わが国では静注薬に加え経口薬も承認されており、同等の効果が知られている。北米のintergroup studyでの、未治療CLLに対するフルダラビン単剤治療の第III相比較試験の結果5)では、奏効率60~70%であり、CR率も20~40%と良好なものであった。奏効率は有意差をもってクロラムブチルに優っており、無増悪生存期間(PFS)も有意に延長していた。しかし、クロスオーバーデザインであったためか、生存率の有意差は得られていない。3)モノクローナル抗体CD20に対する抗体のリツキシマブ(同: リツキサン)は、CLLに対しては単剤では奏効率10~15%と結果は乏しい6)。毒性として輸注関連反応が強く出現する可能性がある。オファツムマブ(同: アーゼラ)は、再発・難治性の場合に使用される。リツキシマブに比べてCD20エピトープに高い親和性で結合することと、結合後の解離速度が遅いことが特徴である7)。CD52に対するモノクローナル抗体であるアレムツズマブ(同:マブキャンパス)も再発・難治性の場合に用いられる。クロラムブチルとの第III相比較試験が行われ、奏効率83%、CR率24%でより高かったが、T細胞も抑制するためサイトメガロウイルスを始めとするウイルス感染の管理が重要である8)。4)併用療法フルダラビンとシクロホスファミドとの併用(FC療法)は、奏効率80~90%、CR率30~40%とフルダラビン単剤と比較して有効性が高い。PFSも有意に延長していたが、全生存期間(OS)については、観察期間が短い影響か、有意差は認められていない9)。フルダラビンとリツキシマブの併用(FR療法)も同様にフルダラビン単剤と比較して優れていることが示されている。リツキシマブとフルダラビンの同時投与法と連続的投与法の比較では、前者で奏効率90%(CR率47%)、後者で77%(CR率28%)であり、同時投与法が有意に優れていた10)。さらにフルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブの3剤併用(FCR療法)は、FC療法と比較され、CR率、OSで有意に優れていた11)。5)新規抗がん剤ベンダムスチン(同:トレアキシン)は、アルキル化剤とプリンアナログの両者の作用特徴を有する静注薬である。悪性リンパ腫に対する有効性が報告されているが、CLLに対しても第III相比較試験にてクロラムブチルよりも優れた有効性を示している12)。わが国でも、再発例に対して承認申請され認可待ちである(平成28年5月末現在)。BTKシグナルの抑制薬であるイブルチニブ(同:インブルビカ)が欧米だけではなく、わが国でも再発・難治例に対して承認され、米国ではPI3Kδを抑える idelalisibが認可されている。いずれも経口薬である。イブルチニブ13)は、オファツムマブに対して第III相比較試験で有効性のため中途終了、 idelalisibはリツキシマブ単独に比べて14)リツキシマブとの併用療法でPFSで優っていた。さらに高齢化などのために全身状態の悪い症例でchlorambucilとの併用で、あらたなCD20抗体であるobinutuzumab(GA101)は、リツキシマブよりPFSで有意に優っており15)、米国で承認されている。6)造血幹細胞移植若年者を主体に治癒を目指して同種造血幹細胞移植が行われ、40~50%の長期生存が報告されている。リツキシマブ、フルダラビン、ベンダムスチンを用いた骨髄非破壊的前処置を用いた移植成績は、第II相比較試験の結果ではきわめて良好であった16)。■ 合併症治療CLL患者では、正常リンパ球が低下しており、免疫不全状態にあることが多く、感染症の合併には常に注意を払う必要がある。P. jiroveciによるニューモシスチス肺炎、CMV感染、帯状疱疹を発症する危険性が高く、ST合剤や抗ウイルス薬の予防内服を検討する。4 今後の展望わが国でも米国発の経口薬である新薬が、使用できるように期待したい。5 主たる診療科血液内科、血液腫瘍科、血液・腫瘍科、造血器科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)アメリカ国立がん研究所のCLLの総合情報のページ(医療従事者向けの情報)1)Tamura K, et al. Eur J Haematol.2001;67:152-157.2)Puente XS, et al. Nature.2011;475:101-105.3)Dighiero G, et al. N Engl J Med.1998;338:1506-1514.4)CLL Trialists' Collaborative Group. J Natl Cancer Inst.1999;91:861-868.5)Rai KR, et al. N Engl J Med.2000;343:1750-1757.6)O'Brien SM, et al. J Clin Oncol.2001;19:2165-2170.7)Cheson BD. J Clin Oncol.2010;28:3525-3530.8)Lemery SJ, et al. Clin Cancer Res.2010;16:4331-4338.9)Flinn IW, et al. J Clin Oncol.2007;25:793-798.10)Byrd JC, et al. Blood.2005;105:49-53.11)Tam CS, et al. Blood.2008;112:975-980.12)Hillmen P, et al. J Clin Oncol.2007;25:5616-5623.13)Byrd JC, et al. N Engl J Med.2013;369:32-42.14)Furman RR, et al. N Engl J Med.2014;370:997-1007.15)Goede V, et al. N Engl J Med.2014;370:1101-1110.16)Kahr WH, et al. Blood.2013;122:3349-3358.公開履歴初回2014年07月01日更新2016年06月21日

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結節性多発動脈炎〔PAN: polyarteritis nodosa〕

1 疾患概要■ 概念・定義主として中型の筋性動脈が侵される壊死性動脈炎である。国際的な血管炎の分類であるChapel Hill Consensus Conference 2012分類(CHCC2012)1)では、血管炎を障害される血管のサイズにより分類しており、本疾患はmedium vessel vasculitis(中型血管炎)に分類されている。剖検時に動脈に沿って粟粒大から豌豆大の小結節が多発して認められる場合があり、KussmaulとMaierにより結節性動脈周囲炎として1866年に提唱された。現在では、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)の呼称が一般的に用いられている。本症の壊死性動脈炎は、肝臓、胆嚢、脾臓、消化管、腸間膜、腎泌尿生殖器、皮膚、骨格筋、中枢神経系、心臓、肺など全身に認め、とくに血管の分岐部が侵されやすい。肺では気管支動脈に病変を認め、肺動脈が侵されることはまれである。原則として腎糸球体は侵されない。■ 疫学50~60歳に好発し、男女比では男性にやや多い。厚生労働省より結節性動脈周囲炎として、特定疾患医療受給者証を交付された患者数は2011年の時点でおよそ9,000人であるが、この中には顕微鏡的多発血管炎の患者も含まれているので、PANの患者が実際にどのくらい存在するかは不明である。しかしながら、PANの患者数は顕微鏡的多発血管炎に比べて圧倒的に少なく、500人未満と推定される。2006年以降、PANと顕微鏡的多発血管炎は別個に登録されるようになったため、今後その実数が明らかになるものと思われる。■ 病因不明である。アデノシンデアミナーゼ2(adenosine deaminase 2: ADA2)の一塩基多型による先天的機能欠損が、小児期のPAN類似血管症の原因となることが報告されている2、3)が、成人例でADA2の量的または質的異常があるとの報告はない。本疾患に特徴的な自己抗体は知られていない。■ 症状発熱や全身倦怠感、体重減少のほか、急速進行性腎障害、高血圧、中枢神経症状、消化器症状、紫斑、皮膚潰瘍、末梢神経障害などの多彩な症状を呈する。■ 分類本症の組織学的病期はArkinにより、I期:変性期、II期:炎症期、III期:肉芽期、IV期:瘢痕期に分類されている(Arkin分類)。変性期には内膜から中膜にかけて、浮腫とフィブリノイド変性が認められる。炎症期には中膜から外膜にかけて、好中球、時に好酸球、リンパ球、形質細胞が浸潤し、フィブリノイド壊死は血管全層に及ぶ。その結果、内弾性板は破壊され、断裂、消失する。炎症期が過ぎると、組織球や線維芽細胞が外膜より侵入し、肉芽期に入る。肉芽期には内膜増殖が起こり、血管内腔が閉塞するほど高度になることがある。瘢痕期では、炎症細胞浸潤はほとんどみられず、血管壁は線維性組織に置換される。このような場合でも、弾性線維染色を行うと内弾性板の断裂が認められ、診断に有用である。また、これら各期の病変が、同一症例内に同時期に混在して認められることも特徴である。■ 予後本症の予後は急性期の治療によるところが大きい。副腎皮質ステロイドによる治療を基本としたフランスの臨床研究では、57例中48例(84.2%)が初期治療により寛解し、残りの9例中8例も免疫抑制薬の併用などにより寛解導入されている4)。しかしながら、寛解導入された56例中、26例(46.4%)で再燃しており、再燃率は比較的高いといえる。5年生存率は90%強である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)厚生労働省指定難病診断基準(難治性血管炎に関する調査研究班2006年改訂)に基づいて行われる(表1)。重症度に応じて、1度~5度に分類される(表2)。表1 結節性多発動脈炎の診断基準(厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班2006年改訂)【主要項目】1) 主要症候(1)発熱(38℃以上、2週以上)と体重減少(6ヵ月以内に6kg以上)(2)高血圧(3)急速に進行する腎不全、腎梗塞(4)脳出血、脳梗塞(5)心筋梗塞、虚血性心疾患、心膜炎、心不全(6)胸膜炎(7)消化管出血、腸閉塞(8)多発性単神経炎(9)皮下結節、皮膚潰瘍、壊疽、紫斑(10)多関節痛(炎)、筋痛(炎)、筋力低下2) 組織所見中・小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎の存在3) 血管造影所見腹部大動脈分枝(とくに腎内小動脈)の多発小動脈瘤と狭窄・閉塞4) 判定(1)確実(definite)主要症候2項目以上と組織所見のある例(2)疑い(probable)(a)主要症候2項目以上と血管造影所見の存在する例(b)主要症候のうち(1)を含む6項目以上存在する例5) 参考となる検査所見(1)白血球増加(10,000/μL以上)(2)血小板増加(400,000/μL以上)(3)赤沈亢進(4)CRP強陽性6) 鑑別診断(1)顕微鏡的多発血管炎(2)多発血管炎性肉芽腫症(旧称:ウェゲナー肉芽腫症)(3)好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧称:アレルギー性肉芽腫性血管炎)(4)川崎病動脈炎(5)膠原病(SLE、RAなど)(6)IgA血管炎(旧称:紫斑病性血管炎)【参考事項】(1)組織学的にI期:変性期、II期:急性炎症期、III期:肉芽期、IV期:瘢痕期の4つの病期に分類される。(2)臨床的にI、II期病変は全身の血管の高度の炎症を反映する症候、III、IV期病変は侵された臓器の虚血を反映する症候を呈する。(3)除外項目の諸疾患は壊死性血管炎を呈するが、特徴的な症候と検査所見から鑑別できる。表2 結節性多発動脈炎の重症度分類●1度ステロイドを含む免疫抑制薬の維持量ないしは投薬なしで1年以上病状が安定し、臓器病変および合併症を認めず、日常生活に支障なく寛解状態にある患者(血管拡張剤、降圧剤、抗凝固剤などによる治療は行ってもよい)。●2度ステロイドを含む免疫抑制療法の治療と定期的外来通院を必要とするも、臓器病変と合併症は併存しても軽微であり、介助なしで日常生活に支障のない患者。●3度機能不全に至る臓器病変(腎、肺、心、精神・神経、消化管など)ないし合併症(感染症、圧迫骨折、消化管潰瘍、糖尿病など)を有し、しばしば再燃により入院または入院に準じた免疫抑制療法ないし合併症に対する治療を必要とし、日常生活に支障を来している患者。臓器病変の程度は注1のa~hのいずれかを認める。●4度臓器の機能と生命予後に深く関わる臓器病変(腎不全、呼吸不全、消化管出血、中枢神経障害、運動障害を伴う末梢神経障害、四肢壊死など)ないしは合併症(重症感染症など)が認められ、免疫抑制療法を含む厳重な治療管理ないし合併症に対する治療を必要とし、少なからず入院治療、時に一部介助を要し、日常生活に支障のある患者。臓器病変の程度は注2のa~hのいずれかを認める。●5度重篤な不可逆性臓器機能不全(腎不全、心不全、呼吸不全、意識障害・認知障害、消化管手術、消化・吸収障害、肝不全など)と重篤な合併症(重症感染症、DICなど)を伴い、入院を含む厳重な治療管理と少なからず介助を必要とし、日常生活が著しく支障を来している患者。これには、人工透析、在宅酸素療法、経管栄養などの治療を要する患者も含まれる。臓器病変の程度は注3のa~hのいずれかを認める。注1:以下のいずれかを認めることa.肺線維症により軽度の呼吸不全を認め、PaO2が60~70Torr。b.NYHA2度の心不全徴候を認め、心電図上陳旧性心筋梗塞、心房細動(粗動)、期外収縮あるいはST低下(0.2mV以上)の1つ以上を認める。c.血清クレアチニン値が2.5~4.9mg/dLの腎不全。d.両眼の視力の和が0.09~0.2の視力障害。e.拇指を含む2関節以上の指・趾切断。f.末梢神経障害による1肢の機能障害(筋力3)。g.脳血管障害による軽度の片麻痺(筋力6)。h.血管炎による便潜血反応中等度以上陽性、コーヒー残渣物の嘔吐。注2:以下のいずれかを認めることa.肺線維症により中等度の呼吸不全を認め、PaO2が50~59Torr。b.NYHA3度の心不全徴候を認め、胸部X線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人口ペースメーカーの装着のいずれかを認める。c.血清クレアチニン値が5.0~7.9mg/dLの腎不全。d.両眼の視力の和が0.02~0.08の視力障害。e.1肢以上の手・足関節より中枢側における切断。f.末梢神経障害による2肢の機能障害(筋力3)。g.脳血管障害による著しい片麻痺(筋力3)。h.血管炎による肉眼的下血、嘔吐を認める。注3:以下のいずれかを認めることa.肺線維症により高度の呼吸不全を認め、PaO2が50Torr 未満。b.NYHA4度の心不全徴候を認め、胸部X線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人口ペースメーカーの装着、のいずれか2つ以上を認める。c.血清クレアチニン値が8.0mg/dLの腎不全。d.両眼の視力の和が0.01以下の視力障害。e.2肢以上の手・足関節より中枢側の切断。f.末梢神経障害による3肢以上の機能障害(筋力3)、もしくは1肢以上の筋力全廃(筋力2以下)。g.脳血管障害による完全片麻痺(筋力2以下)。h.血管炎による消化管切除術を施行。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)2006~2007年度合同研究班による『血管炎症候群の診療ガイドライン』の中で、「寛解導入療法と寛解維持療法の指針」が示されているので、以下に示す。■ 寛解導入療法1)副腎皮質ステロイドプレドニゾロン0.5~1mg/kg/日(40~60mg/日)を重症度に応じて経口投与する。腎、脳、消化管など生命予後に関わる臓器障害を認めるような重症例では、パルス療法すなわちメチルプレドニゾロン大量点滴静注療法(メチルプレドニゾロン500~1,000mg + 5%ブドウ糖溶液500mLを2~3時間かけ点滴静注、3日間連続)を行う。後療法としてプレドニゾロン0.5~0.8mg/日の投与を行う5)。2)ステロイド治療に反応しない場合シクロホスファミド点滴静注療法(intravenous cyclophosphamide:IVCY)または経口シクロホスファミド(CY)の経口投与(0.5~2mg/kg/日)を行う。IVCYは、シクロホスファミド500~600mg/生理食塩水または5%ブドウ糖溶液500mLを2~3時間かけて点滴静注し、4週間間隔、計6回を目安に行う6、7)。IVCY治療中は白血球減少に注意し3,000/㎜3以下にならないように次回のIVCY量を減量する。なお、CYは腎排泄性のため腎機能低下に応じて減量投与を行う(クラスIIb、レベルC)8)。表3に年齢、腎機能に応じたIVCY量を示す。なお、IVCYは経口CYに比べて有効性は同等だが副作用が少ないと報告されている9)。画像を拡大するその他の免疫抑制薬としてアザチオプリン、メトトレキセートも用いられる(クラスIIb、レベルC)9)。いずれも腎排泄性である。アザチオプリンは腎機能低下時には減量が必要であり、メトトレキセートは腎不全には禁忌である。3)重要臓器傷害の重症例肺・腎・消化管・膵などの重要臓器を2ヵ所以上傷害された重症例では、ステロイドパルスと共に血漿交換療法を行い、生命予後を改善させるようにする(クラスIIb、レベルC)10、11)。4)HBウイルス肝炎併発例活動性のHBウイルス肝炎を伴っている場合には、抗ウイルス薬および免疫複合体除去目的で血漿交換療法を併用する(クラスIIb、レベルC)5、6)。■ 寛解維持療法初期治療による寛解導入後は、再燃のないことを確認しつつ副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロン)を漸減し維持量(5~10mg/日)とする。副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の治療期間は原則として2年を超えない(クラスIIb、レベルC)12)。CYは3ヵ月間用い、その後寛解維持薬として、より副作用の少ないアザチオプリンに変更し、半年~1年間用いる(クラスIIb、レベルC)13)。なお、免疫抑制薬、血漿交換療法は、本疾患に対する保険適用薬でないため、投薬時には十分なインフォームドコンセントが必要である。4 今後の展望血管炎症候群の中でも、顕微鏡的多発血管炎などのANCA関連血管炎の病因・病態解明が進み、新規治療法が考案されてきているのに対し、PANに対する基礎研究ならびに臨床研究は、ここ数年あまり大きな進展が得られていないのが実情である。とはいえ、厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班をはじめとする地道な基礎的・臨床的研究が継続されており、その中からブレイクスルーが生まれることが期待される。5 主たる診療科膠原病・リウマチ科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 結節性多発動脈炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本血管病理研究会(医療従事者向けのまとまった情報)1)Jennette JC, et al. Arthritis Rheum. 2013;65:1-11.2)Zhou Q, et al. New Engl J Med.2014;370:911-920.3)Navon Elkan P, et al. New Engl J Med.2014;370:921-931.4)Samson M, et al. Autoimmun Rev. 2014;13:197-205.5)中林公正ほか. ANCA関連血管炎の治療指針. 厚生労働省厚生科学特定疾患対策研究事業難治性血管炎に対する研究班(橋本博史編). 2002;19-23.6)Gayraud M, et al. Br J Rheumatol. 1997;36:1290-1297.7)Guillevin L, et al. Arthritis Rheum. 2003;49:93-100.8)難病医学研究財団/難病情報センター 免疫疾患調査研究班(難治性血管炎に関する調査研究班). IVCY治療における年齢、腎機能に応じたシクロホスファミドの投与量設定表. 難病情報センター. (参照 2015.1月26日)9)Jayne D. Curr Opin Rheumatol. 2001;13:48-55.10)Guillevin L, et al. Arthritis Rheum. 1995;38:1638-1645.11)寺田典生ほか. 日内会誌. 1988;77:494-498.12)Guillevin L, et al. Arthritis Rheum. 1998;41:2100-2105.13)Jayne D, et al. N Engl J Med. 2003;349:36-44.公開履歴初回2015年05月15日更新2016年06月07日

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遺伝子型2/3型HCV、ソホスブビル+velpatasvirが有効/NEJM

 遺伝子型2および3型のC型肝炎ウイルス(HCV)感染患者の治療において、ソホスブビル(SOF)とvelpatasvir(VEL)の併用療法は、従来の標準治療に比べ持続性ウイルス学的著効(SVR)の達成率が優れることが、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のGraham R Foster氏らが実施した2つの臨床試験(ASTRAL-2、-3試験)で示された。ヌクレオチドアナログNS5Bポリメラーゼ阻害薬であるSOFは、リバビリン(RIB)との併用で2/3型HCVの治療薬として使用されている。VELは、すべての遺伝子型のHCVに抗ウイルス活性を有する新規NS5A阻害薬であり、SOFとの併用の第II相試験で慢性2/3型HCV感染患者において良好なSVR率が報告されている。NEJM誌オンライン版2015年11月17日号掲載の報告。遺伝子型別の2つの試験に800例以上を登録 ASTRAL-2試験は遺伝子型2型HCVを、ASTRAL-3試験は3型HCVを対象とする多施設共同非盲検無作為化第III相試験(Gilead Sciences社の助成による)。 対象は、両試験とも年齢18歳以上で、6ヵ月以上のHCV感染歴がある患者とし、インターフェロンを含むレジメンでSVRが達成されなかった患者を約20%、代償性肝硬変を有する患者を約20%登録することとした。 ASTRAL-2試験では、SOF(400mg)とVEL(100mg)を1日1回、12週投与する群(SOF+VEL群)またはSOF(400mg)とRIB(体重<75kg:1,000mg、≧75mg:1,200mg)を1日1回、12週投与する群(SOF+RIB群)に無作為に割り付けられた。ASTRAL-3試験では、SOF+VEL群はASTRAL-2試験と同じく12週、SOF+RIB群は24週の投与を行った。 主要評価項目は、治療終了から12週時のSVRとし、SVRはHCV RNA<15IU/mLと定義した。 ASTRAL-2試験では、2014年10月15日~12月18日に米国の51施設に266例が登録され、SOF+VEL群に134例、SOF+RIB群に132例が割り付けられた。ASTRAL-3試験では、2014年7月30日~12月17日に北米、欧州、オセアニアの8ヵ国の76施設に552例が登録され、SOF+VEL群に277例、SOF+RIB群には275例が割り付けられた。12週時SVR達成率:2型 99 vs.94%、3型 95 vs.80% 平均年齢は、ASTRAL-2試験が両群とも57歳、ASTRAL-3試験はSOF+VEL群が49歳、SOF+RIB群が50歳で、男性がそれぞれ64%、55%、61%、63%であった。ASTRAL-2試験は肝硬変患者が両群とも14%、既治療例がそれぞれ14%、15%含まれ、ASTRAL-3試験は肝硬変患者が29%、30%、既治療例は両群とも26%だった。 治療終了から12週時のSVR達成率は、遺伝子型2型HCVではSOF+VEL群が99%(95%信頼区間[CI]:96~100)と、SOF+RIB群の94%(95%CI:88~97)に比べ有意に良好であった(p=0.02)。3型HCVでは、それぞれ95%(95%CI:92~98)、80%(95%CI:75~85)であり、SOF+VEL群で有意に優れた(p<0.001)。 治療終了後の再燃が、2型HCVではSOF+VEL群には認めなかったが、SOF+RIB群で6例(5%)にみられ、3型HCVではそれぞれ11例(4%)、38例(14%)に認められた。治療中のウイルス学的治療不成功が、3型HCVのSOF+RIB群で1例に認められた。 3型HCVでは、未治療の非肝硬変例の12週時SVR達成率はSOF+VEL群が98%、SOF+RIB群は90%、肝硬変例はそれぞれ93%、73%であり、既治療の非肝硬変例は91%、71%、肝硬変例は89%、58%と、いずれもSOF+VEL群で良好な傾向がみられた。 最も頻度の高い有害事象は、疲労(2型:SOF+VEL群15%、SOF+RIB群36%、3型:SOF+VEL群26%、SOF+RIB群38%)、頭痛(18、22、32、32%)、悪心(10、14、17、21%)、不眠(4、14、11、27%)であった。有害事象による治療中止は、2型HCVのSOF+VEL群で1例(不安、頭痛、集中力低下で第1日に中止)、3型HCVのSOF+RIB群で9例に認められた。 重篤な有害事象は、2型HCVのSOF+VEL群で2例(1%、肺炎が1例、腸炎と腹痛が1例)、SOF+RIB群で2例(2%、関節炎が1例、うつ状態が1例)、3型HCVではSOF+VEL群が6例(2%)、SOF+RIB群が15例(5%)に発現した。 著者は、「代償性肝硬変例を含む遺伝子型2および3型HCVに対し、ソホスブビル+velpatasvir併用療法は、前治療の有無にかかわらずソホスブビル+リバビリンによる標準治療よりも高いSVR率を達成し、有害事象や検査値異常の頻度が低かった」とまとめ、「遺伝子型1、2、4、5、6型HCVを対象としたASTRAL-1試験の結果と統合すると、SOF+VEL併用の12週投与は遺伝子型にかかわらず高い有効性を発揮すると考えられる」と指摘している。

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C型慢性肝炎ジェノタイプ1型治療薬「ヴィキラックス配合錠」発売

 アッヴィ合同会社(本社:東京都港区、社長 : ジェームス・フェリシアーノ)は、ジェノタイプ1型C型慢性肝炎ウイルス(HCV)に感染した成人患者(代償性肝硬変を含む)の治療薬として「ヴィキラックス配合錠」(オムビタスビル水和物・パリタプレビル水和物・リトナビル配合錠)を11月26日に発売した。ヴィキラックスの薬価は1錠26,801.20円。 ヴィキラックスは、2種の直接作用型抗ウイルス剤であるオムビタスビルとパリタプレビルにリトナビルを加えた配合剤で、12週間にわたって固定用量を1日1回服用する。厚生労働省より2015年4月に優先審査対象に指定され、2015年2月の製造販売承認申請後、7ヵ月後の2015年9月承認された。 本承認は第III相臨床試験のGIFT-I試験を根拠とし、主要評価項目であるIFN治療の対象で肝硬変を発症していない高ウイルス量(≥100,000 IU/mL)の未治療患者においては、ウイルス学的著効率(SVR12)95%(n=106/112)であった。また、GT1b型C型代償性肝硬変患者を対象とした副次的評価項目では、SVR12が91%(n=38/42)であった。NS5A領域のY93変異(耐性変異)による影響では、変異なし症例でSVR12が99%(301/304)と非常に高い効果を示し、GT1b型感染患者の13%に見られた変異症例では83%(39/47)となった。 全治療群のうち、3例(n=3/363)が治療期間中にウイルス学的無効となり、8例(N=8/354)が治療後の再燃を示し、有害事象により治療を中止したのは3例であった。また、多く認められた有害事象(5%超)は、鼻咽頭炎、頭痛、末梢性浮腫、悪心、発熱、および血小板数減少であった。アッヴィ合同会社からのお知らせはこちら。

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C型肝炎治療が一変、時代は内服療法へ

 2015年7月14日、東京都中央区でギリアド・サイエンシズ株式会社(以下、ギリアド)の主催により、「国内のC型肝炎の70~80%を占める“ジェノタイプ1型”治療のこれから」をテーマに、C型慢性肝炎プレスセミナーが開催された。冒頭では、代表取締役社長 折原 祐治氏により同社の会社紹介が行われた。ギリアドについて ギリアドは、開発当初から患者さんの服薬アドヒアランスを考え、STR(single tablet resume)により、可能な限り1日1回1錠の薬剤を開発している。この特徴に加えて、アクセス・プログラム(薬剤の特許期間中、低所得国の患者さんであっても1日でも早く治療を開始してもらうためのギリアド・サイエンシズ独特のプログラム)を実施し、世界中の「治したい」に応えている点も特徴的である。 折原氏は、「C型肝炎だけではなく、今後はB型肝炎にも注力し、さらに並行してオンコロジー領域の新薬開発に取り組む」と今後の展望を述べた。インターフェロンフリー時代の展望 次に、溝上 雅史氏(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院 内科系統括部長、肝炎・免疫研究センター長)より「ジェノタイプ1型のC型慢性肝炎における最新治療~インターフェロンフリー時代の展望~」と題した講演が行われた。 わが国において肝がんは、男性、女性ともに部位別がん死亡数の上位を占め1)、予後不良な疾患といわれている。肝がんの発症原因は、約7割がC型肝炎ウイルス(HCV)の感染といわれており2)、わが国のHCV感染者は、150~200万人に上ると推測されている。 これまで、C型肝炎治療は、インターフェロンによる治療が一般的だったが、患者の多くが高齢(65~76%が60歳超)で合併症を有していることや、すでに治療経験があることなどから、インターフェロンが使えないケースや効かないケースが増加している。 こうした背景の下、インターフェロンフリーの治療薬発売が続いているが、今月3日、新たにジェノタイプ 1 型 C型慢性肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」(以下、ハーボニー、一般名:レジパスビル・ソホスブビル配合錠)が、製造販売承認を取得した。ハーボニーは、1)1日1回1錠、12週間の経口投与で治療を完了する抗ウイルス剤、2)SVR12率は100%を達成、3)治療歴、代償性肝硬変の有無、年齢および投与前のNS5A耐性変異の有無にかかわらず、SVR12率は100%、4)HCV RNA合成を直接阻害する世界初の核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤ソホスブビルとNS5A阻害剤レジパスビルの配合剤、5)良好な安全性と忍容性、などの特性がある。溝上氏は、「これまでHCV治療薬の課題とされている点をクリアする驚くべき薬剤」と驚嘆する。一方、「しっかり服用すれば効果が期待できる薬剤だが、中途半端な服用では、十分な効果が得られない。薬局などの力も借りて、患者さんにしっかりと服用してもらう工夫が必要だ」と指摘した。新薬を待つ患者の声 最後に、米澤 敦子氏(特定非営利活動法人 東京肝臓友の会 事務局長)より「患者視点からのC型慢性肝炎におけるアンメットニーズ~東京肝臓友の会の活動について~」と題した講演が行われた。 東京肝臓友の会は、肝臓病の相談や情報提供を行うほか、講演・交流・相談会を通じて肝炎対策の推進などを行う患者の会である。特徴は、相談を受ける東京肝臓友の会の方自身が、B・C型肝炎患者や自己免疫肝疾患などの治療経験者という点である。ここ最近、同社より発売されたソバルディや、ハーボニーの製造販売承認の取得に伴い、相談件数が増えているという。 米澤氏によると、実際の患者さんからの声として、「うつのため、インターフェロン治療が受けられなかったが、私でも新しい治療は受けられるか」などの相談や、「インターフェロン治療は、仕事との両立が難しく、仕事を辞めざるを得ないケースもあったが、今度の新薬はどうか」といった質問が増えてきているという。 米澤氏は、「薬価が高いため、服用できる患者さんが限られてしまったり、治療開始が遅れる、服用が続けられなくなるといった事態が問題だ」と述べた。 ハーボニーの登場により、今までのインターフェロン療法(注射剤、治療期間24週)から、治療期間12週(1日1回)の内服療法が可能になる。これにより患者さんの治療負担が軽減され、またSVR 100%と効果が優れていることから、実際に治療を受ける患者さんおよび医師からも大きな期待が寄せられている。本剤が1日でも早く患者さんの元へ届くことを願ってやまない。参考文献1)国立がん研究センターがん情報サービス2)工藤正俊 ほか. 肝臓. 2010; 51: 460-484.(PDF)

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特別編 MERSに気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

2015年5月末からの韓国でのMERS流行を受けて、日本国内でも危機感が高まっています。今回、緊急特集として拙著『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』(中外医学社)でおなじみの忽那・上村コンビが「MERSの気を付け方」について語ります。韓国へ焼肉に行く前に 上村「くつな先生、ちょっとお願いがあるんですけどいいですか?」 忽那「なんだ?」 上村「明日から韓国に焼肉を食べに行ってきますので、その間の当直をお願いしてもいいですか? 当直代は僕がもらいますんで」 忽那「ちょっと待て。いい訳ないだろう」 上村「大丈夫ですよ、先生にもキムチを買ってきますから」 忽那「そうじゃない。おまえ、今の状況がわかってないのか」 上村「わかってますよ。今は日韓関係が冷えきっているから渡航は控えたほうがいいんじゃないかってことでしょ? でもね、先生…逆にそんな今だからこそ思うんですよ、僕が焼肉を食べることで日本と韓国の距離が縮まれば最高じゃないかってね…」 忽那「何が『逆に』なのかわからんが、オレが言ってるのは、日韓関係のことじゃない。MERSだよ、MERS」 上村「またまた~。マーズレンS®のことをそんなオシャレな言い方しちゃって~、胃でも荒れてるんですか~?」 忽那「マーズレンS®は今関係ない! おまえ、ホントにテレビとか見てないんだな。MERSと言ったら『中東呼吸器症候群』のことだろ。韓国は今MERSで大変なことになってるんだよ!」 上村「いつから韓国は中東になったんですか!」 忽那「ああ、もう!おまえと話してると話が一向に進まないな! 中東ではやってた感染症が、韓国でも流行してるんだよ!」 上村「ふーん…中東呼吸器症候群って名前なのに中東だけじゃないんですか」 忽那「そうだ。サウジアラビアを中心に中東で流行しているMERSだが、これまでに25ヵ国で症例が報告されている(図1)1)。MERSは中東以外でも発生しているのだッ!」画像を拡大する 上村「でも発端となったのは中東からの輸入例ってことですよね?」 忽那「そのとおり! そして、その中でもイギリス、フランス、チュニジアでは輸入例を発端とした国内でのヒト-ヒト感染事例が報告されているのだッ!1)」 上村「オソロシス!!」 忽那「そう、恐ろしいね……そして2015年5月現在、韓国でも輸入例を発端としたMERSのヒト-ヒト感染がこれまでにない規模で起こっているんだ」 上村「なるほど…韓国でMERSってのはそういう意味だったんですね。じゃあ今は韓国でも10人くらいの患者が出てるんですか?」 忽那「10人なんてもんじゃない。とっくに100人を超えているレベルだ」 上村「ワンハンドレッド・パーソンズ! チャバイじゃないですか!それ、チャバイじゃないですか!」 忽那「2015年5月24日に、中東地域に渡航歴のある60代男性の確定例が報告されてからというもの、日に日に症例は増え、7月22日現在感染者は186人、死者は36人に達している。今や4次感染例まで報告されているんだ(図2)2)」画像を拡大する 上村「そうか…さっきの言葉は『韓国に旅行するのは危ない』って意味だったんですね」 忽那「まあ『韓国に旅行するとMERSに感染するぞ』って意味ではないけどね」 上村「えっ? 言ってることがわからないんですけど! 韓国ではMERS患者があふれてるんじゃないんですか?」 忽那「いや、今のところ韓国で報告されているMERS患者はすべて疫学的なリンクが追えている症例ばかりだし、しかもそのほとんどが病院内での曝露によって感染していると考えられている」 上村「じゃあ韓国に焼肉を食べにいっても、感染しないってことですか?」 忽那「まあ現時点では可能性はきわめて低いだろうね…でも、わざわざ今韓国にいくのはお勧めしないけど。帰ってきてから熱が出ようものなら面倒なことになるよ?」 上村「確かに…焼肉はMERSが落ち着いてからにしようかな…」 忽那「その前に、われわれはいつMERSが来てもいいように、十分な準備をしておくべきではないだろうか」 上村「ほほん。つまり『MERSの気を付け方』を知っておくということですね」 忽那「そういうことだ」MERSの実体は何だ? 上村「でも、そもそもMERSってそんなに怖い病気なんですか? マーズレンS®は効かないんですか?」 忽那「現時点でMERSに有効な抗ウイルス薬はない。それは胃薬であるマーズレンS®も例外ではないッ!」 上村「頼みの綱のマーズレンS®が…」 忽那「2012年4月から2015年6月10日までに全世界で1,288例のMERS症例が報告されているが、そのうち498例が亡くなっている。つまり致死率は38.7%ということになる」 上村「38.7%って…エボラ並みじゃないですか! MERS激ヤバでしょ! 終わりだ…もう世界は終わりだ~!」 忽那「落ち着けッ! MERSが恐ろしい感染症であることは間違いない…だが、実際のMERSの致死率はここまでは高くないだろう」 上村「実際のって…実際のMERSの致死率が38.7%って話でしょ~がよ!なに訳わかんないこと言ってるんですか!?」 忽那「感染症はしばしば軽症では、検査が行われずに見逃されやすい。逆に重症例はしっかりと診断されることが多い。つまり、見かけの致死率は高くなりやすい傾向にあるんだ。現に、積極的な検査が行われている韓国では、致死率は10%前後と低い状態にある」 上村「10%でも十分高いでしょ!」 忽那「そのとおり。いずれにしても怖い感染症には間違いないね」 上村「MERSの怖さはわかったんですが…どういう症例でMERSを疑ったらいいんでしょうか?」MERSへの対応 忽那「厚生労働省は、1.中東地域・韓国などの感染地域から帰国後14日以内に、38℃以上の発熱及び咳を伴う急性呼吸器症状を呈し、臨床的又は放射線学的に肺炎、ARDSなどの実質性肺病変が疑われる場合 2.発症前14日以内にそれらの国において、医療機関を受診もしくは訪問した者、MERSであることが確定した者との接触歴がある者、ヒトコブラクダとの濃厚接触歴がある者で発熱を伴う急性呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する場合 3.発症前14日以内にそれらの国によらず、MERSが疑われる患者を診察・看護もしくは介護していた者、MERSが疑われる患者と同居(当該患者が入院する病室又は病棟に滞在した場合を含む。)していた者、MERSが疑われる患者の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた者で発熱または急性呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する場合の3つのいずれかに該当し他の原因が明らかでない場合、MERS疑似症として対応するように、という通知を2015年6月4日に出している。これを念頭に置いておくことが重要だね」 上村「なんか言い回しが難しくてよくわからないんですけど!」 忽那「上村…『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』でさんざん教えただろう。輸入感染症で重要なのは『渡航地・潜伏期・曝露歴』の3つだと!」 上村「…ハッ! そうでした…友情ッ!努力ッ!勝利ッ!」 忽那「MERSの感染が持続的に見られているのは中東と韓国であること、MERSの潜伏期は2~14日であること3)、MERSの感染はラクダとの濃厚接触や病院内感染が多く、ヒト-ヒト感染では原則として飛沫感染であることを考えると、渡航地中東または韓国に渡航していたか潜伏期渡航から発症までが14日以内か曝露歴ラクダとの接触歴があるか、現地で病院を受診または入院しているか、MERS患者と接触があったかが重要ということになる。このポイントを覚えておくことが重要なんだ」 上村「なるほど…勉強になるっす!」 忽那「これらの疑似症に当てはまる症例は、ただちに保健所に連絡し、感染症指定医療機関(特定、第1種または第2種)に搬送され、地方衛生研究所で気道検体のPCR検査が行われることになる。ちなみに日本国内におけるMERS診断までの流れは厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/20150604_01.pdf)で確認することができるので、これも確認しておこう」MERSの診断と対策 上村「了解です!ちなみに中東呼吸器症候群っていうくらいだから、まず間違いなく呼吸器症状があるんですよね?」 忽那「呼吸器症状の頻度は高いと言われている…が、100%ではない。サウジアラビアで診断された47人のMERS症例の臨床症状がまとめられている4)が、それによると、発熱(>38℃) - 46人(98%)悪寒と戦慄を伴った発熱 - 41人(87%)咳 - 39人(83%)(乾性47%、湿性36%)息切れ - 34人(72%)血痰- 8人(17%)咽頭痛 - 10人(21%)筋肉痛 - 15人(32%)下痢 - 12人(26%)嘔吐 - 10人(21%) 腹痛 - 8人(17%)胸痛- 7人(15%)頭痛- 6人(13%) 鼻炎- 2人(4%)胸部X線所見の異常 - 患者47人(100%)となっており、咳や息切れも100%ではなく、また消化器症状や頭痛・筋肉痛といった全身症状もみられることがある。つまり、呼吸器症状がなければMERSの可能性は下がるが、完全に除外することはできないということになる」 上村「難しいなあ…なんか見逃しちゃうのが怖いんですけど」 忽那「少しでも疑わしい症例をみたら、ひとりで抱え込まずに保健所に相談するほうが安全だろうね」 上村「わかりました!悩んだらくつな先生を呼びます」 忽那「うん、悩んだら保健所に相談しようね」 上村「頼りないなあ…もし本当に疑わしい症例の対応をすることになったら感染対策はどうすればいいんですか?」 忽那「現時点ではまだ完全にはわかっていないこともあるけど、MERS-CoVは飛沫感染および接触感染で伝播すると考えられている。なので、WHOは飛沫感染予防策と接触感染予防策の徹底を推奨している5)」 上村「ふーん、N95マスクは要らないんですか?」 忽那「気管挿管や気管内吸引などのエアロゾルが発生するような場合には、N95マスクの着用を含む空気感染予防策を推奨している」 上村「ですよね~。なんとなくN95がないと不安なんですよ…」 忽那「確かにCDCはエアロゾル発生手技に限らず、空気感染予防策を推奨してるけどな6)。この違いは、まだMERSという感染症がよくわかっていないからということもあるだろうし、CDCは資源が豊富なアメリカのための機関であり、WHOは世界中の感染症対策のことを考えないといけない機関であり、途上国の状況も配慮した感染症対策を提示しなければならないという、それぞれの立場の違いも関係しているのかもしれないね」 上村「じゃあN95マスクを付けておいたほうが無難ってことですね!」 忽那「いや、現時点ではなんとも言えないなあ…でも大事なことは、中東からの輸入例が報告された国の大半ではMERSは広がっていないということだ。N95マスクにこだわらなくても、適切な接触感染予防策と飛沫感染予防策を行えばMERSの伝播は抑えられると思うよ」 上村「んな~る」Take Home MessageMERSを疑う手がかりは渡航地・潜伏期・曝露歴!MERS疑似症を満たす症例は、ただちに保健所に連絡を!MERSに対する感染対策は、接触感染予防策と飛沫感染予防策が重要!エアロゾル発生手技のときには空気感染予防策も!1)European Centre for Disease Prevention and Control. RAPID RISK ASSESSMENT. Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) 17th update, 11 June 2015.2)World Health Organization. Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) maps and epicurves. 3)Assiri A, et al. N Engl J Med. 2013;369:407-416.4)Assiri A, et al. Lancet Infect Dis. 2013;13:752-761.5)World Health Organization. Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS‐CoV) summary and literature update - as of 9 May 2014. 6)Centers for Disease Control and Prevention. Interim infection prevention and control recommendations for hospitalized patients with Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV). ※ イラスト協力:中外医学社『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』より転載

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「伝染性紅斑」と「手足口病」に気を付けろッ!

国立感染症研究所の『感染症週報』(2015年第21週)によると、「伝染性紅斑(リンゴ病)」と「手足口病」が、例年に比べ早いペースで感染が拡大している。小児だけでなく成人にも感染する疾患であることから、両疾患の概要とその対応策について、CareNet.comでお馴染みの忽那 賢志氏(国立国際医療研究センター 感染症内科/国際感染症センター)にお話を聞いた。伝染性紅斑(リンゴ病)の気を付け方約5年ごとに大流行を繰り返す伝染性紅斑は、ヒトパルボウイルスB19が原因となる感染症である。主に気道分泌物から飛沫する鼻水、咳・くしゃみで感染し、毎年、年始めから7月頃をピークに以降は減少していく。約5年ごとに大きな流行を繰り返す傾向があり、本年は、その大流行期に当たるのかもしれない。症候として、小児では、感染後10~20日の潜伏期間の後、頬に真っ赤な発疹が出現するのが特徴。また、先行する感冒症状として、頬に発疹が出る約7日前に発熱する患児もいるが、発熱がなく、急に発疹が出る患児もいる。そのほか、手足にレース様の紅斑の皮疹が出現する場合もある。成人では、頬に発疹が出ることはなく、四肢にレース様の紅斑が現れることがある。また関節炎の頻度が高く、時に歩行が困難になるくらいである。女性のほうが関節炎が起こりやすい。ウイルスの排出は、先行する感冒症状の時期に排出され、顕在症状期には感染は広がらないとされている。診断では、問診や視診などが中心となるが、患児では頬に紅斑が出るなど顕在症状があるので、診断はつきやすい。しかし、成人では関節炎や皮疹などにより、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)との鑑別診断も必要となるので、本来はパルボウイルスB19IgM抗体検査などで確定診断することが望まれる。現在パルボウイルスB19IgM抗体検査は妊婦以外では保険適用外のため、1日も早い保険適用を期待したい。治療については、抗ウイルス薬がないために、対症療法が行われる。本症は自然寛解する感染症であるが、発熱があれば水分補給をしっかりとし、関節炎などが強ければ非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの使用が必要となることもある。なおワクチンについては、現在有効なものはない。過去に1度罹患すると免疫獲得により再罹患はないとされている。成人の罹患はさまざまなリスクに注意注意すべきポイントとして、本症は小児と成人では症状が異なることである。成人では、妊婦が罹患した場合、胎児水腫などの発生が懸念され、自己免疫性溶血性貧血などの血液疾患の既往がある場合には一過性骨髄無形成クリーゼと呼ばれる合併症のリスクが、また免疫不全患者での慢性パルボウイルスB19感染では赤芽球癆による重症貧血などの合併症のリスクがあるので、外出時にマスクの着用や子供の多いところに出かけないなどの対策が必要となる。診療する医療側の対策としては、ウイルス排出時期にパルボウイルスB19感染症と診断することは難しいため、適切に感染対策を行うことは難しい。本症の流行期にはインフルエンザ流行期と同様に本症を疑う患者には、サージカルマスクや手袋を着用しての診療が望まれる。手足口病の気を付け方3種類のウイルスが交互に流行手足口病は、わが国では主にコクサッキーウイルスA6、同A16、エンテロウイルス71(EV71)などが原因となり、飛沫感染と接触感染(糞口感染も含む)などで感染する。毎夏にピークが来るが、秋から冬にかけても流行する。今季はコクサッキーウイルスA16が流行している模様である。重複することもあるが3種類のウイルスが交互に流行を繰り返すのが特徴で、年によって流行するウイルスは異なる。症候としては、3~5日間の潜伏期間の後、口腔内粘膜、手のひら、足の裏などに水疱性病変ができる。患児によってはひざ、ひじ、臀部などでも観察される。これは、成人もほぼ同様で、口腔内の水疱のため、嚥下がしづらくなるなどの主訴を経験する。水痘、単純ヘルペスと区別がつかないことがあり、鑑別診断で注意を要する。治療については、抗ウイルス薬がないために、対症療法が行われる。本症は自然寛解する感染症であるが、口腔内の水疱の痛みで水分補給が不足する場合など補液が必要となる。なおワクチンについては、現在有効なものはない。過去に1度罹患しても、原因ウイルスの違いにより、再度罹患することもあるので注意が必要である。インフルエンザと同様の対応で感染防止注意すべきポイントとしては、小児が罹患した場合、とくにエンテロウイルス71が脳炎、髄膜炎を引き起こすなど、重症化することもある。成人も同様に注意が必要だが、合併症の頻度は小児のほうが高いとされる。診療する医療側の対策としては、本症を疑う患者には、個室に入ってもらい、飛沫感染予防、接触感染予防を行う。また、インフルエンザ流行時のようにマスク、ガウン、手袋着用での診療が望ましい。トピックスとして、重症化した小児の脳症がとくに東南アジア、東アジアでは問題となっており、中国ではEV71ワクチンの開発が進められている(現在第III相試験)。流行を防ぐためにいずれの疾患も小児領域では、お馴染みの疾患であるが、どちらも成人にも感染し、重症化リスクを伴うものである。これからの流行拡大の注意喚起のために現在の状況を解説いただいた。両症ともにとくに家族内感染が多く、患者には、こまめな手指消毒や外出の注意などの指導で感染を防ぐ取り組みが必要とされる。関連リンク感染症週報(2015年第21週)

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HCV1型感染に経口3剤配合剤が高い効果/JAMA

 代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型感染者に対し、経口薬のみの3剤配合錠ダクラタスビル(商品名:ダクルインザ)+アスナプレビル(商品名:スンベプラ)+ベクラブビル(beclabuvir、国内未承認)の12週間治療は、87~98%と高い割合で持続的ウイルス学的著効率(SVR)を達成可能であることが示された。これまでにインターフェロンや直接作用型抗ウイルス薬(DAA)で治療を受けた人についても、同達成率は高かったという。米国・デューク大学のAndrew J. Muir氏らが、約200例の患者を対象に行った試験UNITY-2の結果、報告した。ダクラタスビルとアスナプレビルは日本で先行発売されている。ベクラブビルは非ヌクレオシド系NS5B阻害薬である。JAMA誌2015年5月5日号掲載の報告より。4ヵ国、49施設で試験を実施 UNITY-2試験は非盲検非対照無作為化試験で、2013年12月~2014年10月にかけて、米国、カナダ、フランス、オーストラリアにある49施設で、代償性肝硬変を伴うHCV遺伝子型1型感染者を対象に行われた。被験者のうち、インターフェロンやDAAで未治療の人は112例、すでに治療を受けたことのある人は90例だった。 同グループは全被験者に対し、ダクラタスビル(30mg)+アスナプレビル(200mg)+ベクラブビル(75mg)を1日2回、12週間投与した。 被験者を遺伝子型1aまたは1bで層別化し、無作為にリバビリン(1,000~1,200mg/日)またはプラセボを併用する群に割り付けて評価を行った。 主要評価項目は、治療12週後のSVR(SVR12)だった。リバビリン投与群でSVR12は未治療群98%、既治療群93% 被験者の年齢中央値は、未治療群が58歳、既治療群が60歳で、74%が遺伝子型1a感染者だった。 SVR12は、リバビリン投与群で未治療群が98%(97.5%信頼区間[CI]:88.9~100.0)、既治療群が93%(同:85.0~100.0)だった。プラセボ群では、それぞれ93%(同:85.4~100.0)と87%(同:75.3~98.0)だった。 なお、治療に関連する重度有害事象の発生は3例、有害事象による治療中止は4例だった。 治療により現出したグレード3または4のALT上昇は4例でみられ、総ビリルビン値の上昇がみられたのはそのうち1例だった。

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TAF配合の新規抗HIV薬、TDF配合薬に非劣性/Lancet

 HIV-1感染症の初回治療としての新規抗HIV薬配合薬エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/テノホビル-アラフェナミド(E/C/F/TAF、国内承認申請中)の安全性と有効性を、E/C/F/テノホビル-ジソプロキシルフマル酸塩(E/C/F/TDF、商品名:スタリビルド配合錠)と比較検討した2つの第III相二重盲検無作為化非劣性試験の結果が、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul E Sax氏らにより報告された。48週時点で両投与群とも90%超の患者で抗ウイルス効果が認められた一方で、腎臓と骨への影響は、E/C/F/TAF投与群がE/C/F/TDF投与群に比べて有意に低かった。著者は、「いずれの試験も、骨折や腎障害といった臨床的安全性イベントを評価する検出力はなかったが、E/C/F/TAFは、良好で長期的な腎臓および骨の安全性プロファイルを有すると思われる」と結論している。Lancet誌オンライン版2015年4月15日号掲載の報告より。TDF配合薬と比較、国際多施設共同の二重盲検無作為化非劣性試験 テノホビルのプロドラッグである既存のTDFは、血漿中の高いテノホビル濃度に関連した腎臓や骨への毒性作用を引き起こす可能性が指摘されている。TAFはテノホビルの新規プロドラッグで、TDFと比べて血漿中テノホビル濃度を90%低く抑えることを可能とした。第II相の試験において、TAF配合薬はTDF配合薬に比べて、eGFR、尿細管性蛋白尿、骨密度への影響の低下がみられ、腎臓や骨の安全性を改善する可能性が示唆された。同所見を確認するため第III相試験では、腎臓と骨の安全性に関するプロトコルを事前に規定して検討された。 報告された2つの試験は、日本を含む16ヵ国178施設の協力の下で行われ、推定クレアチニンクリアランス50mL/分以上で未治療のHIV感染症患者を対象とした。 被験者は、E/C/F/TAF(各含有量は150mg/150mg/200mg/10mg)またはE/C/F/TDF(TDF含有量300mg)を投与する群に無作為に割り付けられた。無作為化はコンピュータ生成配列法(4ブロック)にて行われ、HIV-1 RNA量、CD4数、参加国(米国とそれ以外)による層別化も行った。 主要アウトカムは、FDA が定義したSnapshot アルゴリズム解析を用いて、48週時点で血漿中HIV-1 RNA値50コピー/mL未満の患者の割合(事前規定の非劣性マージン12%)と、事前規定の48週時点の腎および骨のエンドポイントであった。 有効性と安全性に関する主要解析は、試験薬を1回受けたすべての患者を含んでintention-to-treatにて行われた。抗ウイルス効果は同等、腎臓と骨のエンドポイントはTAF配合薬のほうが良好 2013年1月22日~2013年11月4日に2,175例の患者がスクリーニングを受け、1,744例が無作為に割り付けられ、1,733例が治療を受けた(E/C/F/TAF群866例、E/C/F/TDF群867例)。 結果、48週時点の血漿中HIV-1 RNA値50コピー/mL未満患者の割合は、E/C/F/TAF群800/866例(92%)、E/C/F/TDF群784/867例(90%)、補正後両群差は2.0%(95%信頼区間[CI]:-0.7~4.7%)で、E/C/F/TAFのE/C/F/TDFに対する非劣性が認められた。 また、E/C/F/TAF群のほうが、血清クレアチニンの平均値上昇が有意に少なく(0.08 vs. 0.12mg/dL、p<0.0001)、蛋白尿(ベースラインからの%変化中央値:-3 vs. 20、p<0.0001)や、脊椎(同:-1.30 vs. -2.86、p<0.0001)および腰椎(-0.66 vs. -2.95、p<0.0001)の骨密度低下が有意に低かった。

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HCVとHIV重複感染に3D+リバビリンレジメン有効/JAMA

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)とC型肝炎ウイルス(HCV)の重複感染患者の治療において、インターフェロン(IFN)フリーの全経口3剤組み合わせ直接作用型抗ウイルス薬(3D)+リバビリン併用レジメンは、治療期間12週または24週についていずれも高い持続性ウイルス学的著効(SVR)率に結び付いたことが示された。米国ジョンズ・ホプキンス大学のMark S. Sulkowski氏らによる非盲検無作為化非対照試験TURQUOISE-Iのパイロット試験パート1aの結果、報告された。3Dレジメンは、オムビタスビル、パリタプレビル(またはリトナビル併用[パリタプレビル/r])、ダサブビルから成る。本検討の結果を受けて著者は、「重複感染患者について本療法の第III相試験を行うべき根拠が示された」とまとめている。JAMA誌オンライン版2015年2月23日号掲載の報告より。63例を対象に非無作為化非対照試験で12週、24週投与について評価 TURQUOISE-Iパート1a試験は、米国およびプエルトリコの17ヵ所で2013年9月~2014年8月に行われた。被験者は、HCV遺伝子型1型とHIV遺伝子型1型に重複感染しており、HCV未治療またはペグIFN+リバビリン治療が無効であった63例であった。被験者には肝硬変を有するものも含まれ、CD4+T細胞数は200/mm3超もしくはT細胞割合が14%超、血清HIV-1RNAはアタザナビルまたはラルテグラビルを含む抗レトロウイルス(ART)レジメンにより安定していた。 被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方は3D+リバビリンレジメンを12週(31例)、もう一方は同24週(32例)の治療を受けた。 主要評価は、治療後12週時点のHCV RNA<25 IU/mLで規定したSVR12達成患者の割合で検討した。SVR12達成患者、12週治療群94%、24週治療群91% 結果、SVR12達成患者は、3D+リバビリンレジメン12週治療群は29/31例で94%(95%信頼区間:79~98%)、同24週治療群は29/32例で91%(同:76~97%)であった。 SVR未達成だった5例の患者のうち、1例は同意の段階での中断例であり、2例はウイルス学的再発または再燃が確認され、2例はHCVの再感染が臨床歴および系統的エビデンスとして認められた患者であった。 最も頻度が高かった治療に関連した有害事象は、疲労感(48%)、不眠(19%)、悪心(18%)、頭痛(16%)であった。有害事象は概して軽度であり、重篤あるいは治療中断に至った報告例はなかった。 なお治療中にHIV-1再燃(200コピー/mL超)となった患者はいなかった。

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HCV治療レジメン、3剤目は直接作用型が有用/Lancet

 未治療の肝硬変なしC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型感染患者に対しソホスブビル+レディパスビルに直接作用型抗ウイルス薬を加えた3剤併用レジメンは、6週間で高率のウイルス学的著効(SVR)が示され忍容性も良好であることが、米国立衛生研究所(NIH)のAnita Kohli氏らによる概念実証(proof-of-concept)第IIA相コホート試験の結果、報告された。ソホスブビル+レディパスビル+リバビリンの3剤併用レジメンでは、高いSVRを得るには8週間が必要なことが先行研究で示されており、著者は「直接作用型抗ウイルス薬を加えた3剤併用は、肝硬変なしHCV遺伝子型1型感染患者の治療期間を短縮可能である」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年1月12日号掲載の報告より。 2種の直接作用型抗ウイルス薬で3剤併用6週治療のSVR12達成を評価 試験はNIHの臨床研究センターにて、非盲検にて行われた。3剤目として検討された直接作用型抗ウイルス薬はGS-9669、GS-9451でいずれも開発中である。直接作用型抗ウイルス薬は、HCV患者に対する高い治癒率と良好な忍容性が示されていた。 研究グループは、被験者を次の3群に割り付けて検討した。ソホスブビル+レディパスビルの2剤併用12週治療群、+GS-9669の3剤併用6週治療群、または+GS-9451の3剤併用6週治療群である。適格患者は、18歳以上、遺伝子型1型感染患者(血中HCV RNA値2,000 IU/mL以上)で、肝硬変を有する患者は評価から除外した。 主要エンドポイントは、治療後12週時点のSVRを認めた患者の割合(SVR12)とした。達成の目安は、HCV RNA値43 IU/mL未満とした。 2剤併用12週100%に対し、3剤併用は6週で95% 2013年1月11日~12月17日の間に、患者60例が登録され、3群に20例ずつ順次割り付けられた。 ソホスブビル+レディパスビルの2剤併用12週治療群20例は全例が、SVR12を達成した(100%、95%信頼区間[CI]:83~100%)。一方、+GS-9669の3剤併用6週治療群、+GS-9451の3剤併用6週治療群ともに19例(95%、同:75~100%)が、SVR12を達成した。なお、前者群の未達成1例は、治療完了後2週時点で再活性が認められたケースで、後者群の未達成1例は、4週間以降追跡不能となったケースであった。 有害事象の大半は軽度で、治療中断となった患者はいなかった。重大有害事象は2例に認められた(治療後の肝生検後の疼痛、めまい)が、いずれも試験薬とは無関係であった。

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腎移植後のBKウイルス尿症、キノロンで予防できるか/JAMA

 腎移植後レシピエントの重大合併症であるBKウイルス感染症に対して、移植後早期開始のレボフロキサシン(商品名:クラビットほか)療法(3ヵ月間投与)は、BKウイルス尿症発症を予防しなかったことが、カナダ・オタワ大学のGreg A. Knoll氏らによる、前向き二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果、判明した。BKウイルスの一般集団保有率は60~80%であり、移植後免疫療法は同ウイルスを再活性化することが知られる。ウイルス尿症に始まり、ウイルス血症、最終的にウイルス腎症に至る感染症の進行は、レシピエントの移植失敗に結びつくこと(10~100%)から問題視されている。今のところ同感染症に対する有効な治療戦略はないが、後ろ向き検討において、キノロン系抗菌薬の抗ウイルス効果が示されたことから、前向き試験による予防的投与の効果を検討する本試験が行われた。JAMA誌2014年11月26日号掲載の報告。移植後5日以内に3ヵ月間投与、プラセボ群と比較 試験は、2011年12月~2013年6月にカナダの7つの移植医療施設で行われた。被験者は、死体または生体腎移植を受けた154例で、移植後5日以内に開始する3ヵ月間のレボフロキサシン投与(500mg/日、76例)を受ける群と、プラセボ群(78例)に無作為に割り付けられ追跡を受けた。 主要アウトカムは、移植後1年以内のBKウイルス尿症発症(定量リアルタイムPCR法で検出)までの期間。副次アウトカムは、BKウイルス血症の発生率、ウイルス量最大値、拒絶反応、患者死亡率および移植片生着失敗率などであった。BKウイルス尿症発生のハザード比0.91で有意差なし、むしろ耐性菌リスク増大 本試験は、被験者154例のうち38例が追跡予定期間(12ヵ月)を完遂できなかった。38例のうち11例はウイルス尿症を発症したため、また27例はリスクが認められ、試験を早期に終了した(全被験者が完了した追跡期間は8ヵ月間)。全体の平均追跡期間は、レボフロキサシン群46.5週、プラセボ群46.3週であった。 BKウイルス尿症の発生は、レボフロキサシン群22例(29%)、プラセボ群26例(33.3%)で、両群に有意差は認められなかった(ハザード比:0.91、95%信頼区間[CI]:0.51~1.63、p=0.58)。また、各副次エンドポイントについても、両群間で有意差はみられなかった。 一方で、レボフロキサシン群でキノロン耐性菌感染症のリスク増大が認められた(58.3%vs. 33.3%、リスク比:1.75、95%CI:1.01~2.98)。また、有意ではなかったが腱炎リスクの増大も認められた(7.9%vs. 1.3%、リスク比:6.16、95%CI:0.76~49.95)。 試験期間中の腎機能は両群で同等であった。

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C型肝炎は内服でほぼ全例が治癒する時代へ

 C型肝炎ウイルスに対する治療は、2011年の直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals;DAA)の登場で大きく変換した。現在、効果のより高い薬剤・レジメンの開発が続いている。2014年11月26日、都内で開催されたC型肝炎プレスセミナー(主催:アッヴィ合同会社)にて、熊田 博光氏(虎の門病院分院長)がC型肝炎治療の進歩と著効率の変遷を解説、さらに開発中のレジメンを紹介し、「来年にはC型肝炎は内服薬のみでほぼ全症例が治癒する時代が到来するだろう」と予測した。■日本人で多いのは「ジェノタイプ1b型・高ウイルス量」 C型肝炎ウイルスの遺伝子型は民族によって異なり、日本人ではジェノタイプ1b型・高ウイルス量の患者が多く、5割以上を占める。しかしながら、1992年に承認されたインターフェロン(IFN)単独療法では、このジェノタイプ1b型・高ウイルス量の患者に対して、虎の門病院における著効率は11.7%と低く、全体でも著効率は3割と、つらい治療にもかかわらず7割が無効であったという。また、次に承認されたペグ-IFN+リバビリン(RBV)併用療法でも、2004年~2011年における、ジェノタイプ1b型・高ウイルス量の患者の著効率は48.8%と5割に満たなかった。しかし、2011年にDAAが登場し、IFN+RBV+プロテアーゼ阻害剤併用療法により、ジェノタイプ1型のSVR率は、初回治療例ではテラプレビルで73%、シメプレビルで88%、バニプレビルで84%と高い効果を示した。しかし、前治療無効例に対しては、順に34%、50%、61%と徐々に増えているものの低いことが課題であった。■IFNフリーの経口剤が登場 日本人のC型肝炎患者の特徴として、高齢者が多いこと、副作用(とくにIFN)に敏感なこと、高齢化のために欧米より肝がんの発生頻度が高いことが挙げられる。そのため、高齢者・うつ病・IFNが使えない患者にも使える、IFNフリーの経口剤治療が求められていると熊田氏は述べた。このような状況から、IFNフリーの経口治療薬であるダクラタスビル(NS5A阻害剤)+アスナプレビル(NS3阻害剤)併用療法が開発され、今年9月に両薬剤が発売された。 これら2剤の併用療法における第III相試験での著効率は、ジェノタイプ1b型のIFN治療に不適格の未治療または不耐容の患者で87.4%、IFN治療無効の患者で80.5%と、高い有効性が示された。また、この有効性には、性別、年齢、開始時HCV-RNA量、肝硬変などの背景因子の影響はみられなかった。有害事象については、鼻咽頭炎、頭痛、ALT増加、AST増加、発熱が多く、有害事象による投与中止例は5%であったと熊田氏は紹介した。■「前治療無効でNS5A・NS3耐性変異株あり」は著効率が低い この2剤併用経口療法の登場により、厚生労働省「科学的根拠に基づくウイルス性肝炎治療ガイドラインの構築に関する研究班 C型肝炎ガイドライン」が今年9月に改訂された。このガイドラインの治療選択肢の患者群ごとのSVR率をみると、・IFN適格の初回・再燃例:88%(IFN+RBV+シメプレビル3剤併用療法)・IFN不適格の未治療/不耐容例:89%(ダクラタスビル+アスナプレビル2剤併用療法)・前治療無効でNS5A・NS3耐性変異株ありの患者:43%(IFN+RBV+シメプレビル3剤併用療法)・前治療無効でNS5A・NS3耐性変異株なしの患者:85%(ダクラタスビル+アスナプレビル2剤併用療法)となる。 熊田氏は、前治療無効でNS5A・NS3耐性変異株ありの患者では43%と低いのが問題であると指摘した。■内服薬のみでほぼ全症例が治癒する時代が到来 最後に熊田氏は、わが国で経口剤のみの臨床試験がすでに実施されているレジメンとして以下を紹介し、このうち、ギリアド、アッヴィ、ブリストルの薬剤は来年には発売されるという見通しを語った。・NS5B阻害剤+NS5A阻害剤(ギリアド・サイエンシズ、2014年9月申請)・NS5A阻害剤+NS3阻害剤(アッヴィ、Phase3)・NS5A阻害剤+NS5B阻害剤+NS3阻害剤(ブリストル・マイヤーズ、Phase3)・NS5A阻害剤+NS3阻害剤(MSD、Phase2~3) これらレジメンの治療期間は12週と短くなっている。熊田氏は、これらの著効率が海外で95~100%、日本でもギリアドのNS5B阻害剤+NS5A阻害剤が99%(Phase3)、アッヴィのNS5A阻害剤+NS3阻害剤が95%(Phase2)と高いことから、「C型肝炎は内服薬のみでほぼ全症例が治癒する時代が到来するだろう」と述べた。

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アビガン錠、エボラ出血熱向けに生産

 富士フイルム株式会社(社長: 中嶋 成博)は、海外での使用を目的とし、エボラ出血熱対策として抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠200mg」(一般名:ファビピラビル)を追加生産すると決定した。 アビガン錠は、富士フイルムグループの富山化学工業株式会社が開発した抗インフルエンザウイルス薬であり、エボラウイルスに対して抗ウイルス効果を有するとのマウス実験の結果が公表されている。すでに、日本政府と協議のうえ、緊急搬送先の政府機関および医療機関から提供の要請に応え、西アフリカや欧州に搬送されたエボラ出血熱患者複に対し投与されている。 フランス政府とギニア政府はギニアにおいて、11月中旬よりエボラ出血熱に対するアビガン錠の臨床試験を始める予定。同社は、現時点で2万人分の錠剤を有し、原薬としてさらに30万人分程度の在庫を保有している。また、今後のさらなる臨床使用に備え、エボラ出血熱向けとしてのアビガン錠の生産を11月中旬より行う。 日本政府は、感染が広がるエボラ出血熱に対して、日本の企業が開発した治療に効果の見込める薬を提供する準備があることを表明しており、同社は日本政府と協議しながら、各国からの要請に応えていくという。富士フィルムのプレスリリースはこちら

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世界中で急拡大 「デング熱」の最新知見

 今夏、日本国内で、海外渡航歴がないにもかかわらずデング熱を発症した患者が発見された。日本国内での感染は1940年代前半の流行以来、実に約70年ぶりであり、患者数は158人に上った(2014年10月14日現在)。全世界では、現在25億人以上がデング熱流行地で生活している。そして、年間5,000万人以上がデング熱を発症しており、近年急速な広がりをみせている。 今回、デング熱に関する世界中の最新知見を、キューバのペドロ・コウリ熱帯医学研究所のMaria G Guzman氏らがまとめた。Lancet誌オンライン版2014年9月12日号の掲載報告。●世界中で急速な広がりをみせるデング熱 デングウイルスは過去20~30年間で、国内そして国境を越えて急速な広がりを見せており、今日では、蚊が媒介するウイルス性疾患の中で、最も流行し急速に拡大する疾患と考えられている。 デングウイルスは4つの抗原型(DENV1-4)に分類され、ヒトスジシマカを媒介として感染する。感染地域の広がりや感染例の増加、疾患の重症化に伴い、デング熱は社会的・経済的に重大な影響を持つ公衆衛生上の問題に発展してきた。●デング熱の発生率は過去50年で30倍に デング熱は、南アジアやアメリカ、大西洋、アフリカ、東地中海沿岸地域など100以上の国でみられる風土病であり、その発生率は過去50年間で30倍にも増加している。2013年の研究結果によると、年間3.9億人の感染者が発生し、そのうち、はっきりとした症状がみられたのは9,600万人であった(感染者数は2012年WHO予測の3倍以上)。●世界ではどのような策が講じられているか 現在、デング熱には有効な治療薬が存在しないため、対症療法を行っているのが現状である。そのため、世界各国で、デングウイルス学・病因学・免疫学の研究、抗ウイルス薬・ワクチンの研究・開発が行われてきた。さらに、デング熱のコントロールと予防に対して明らかに効果がある新たなベクターコントロール戦略が立案されるなど、各国で対策が進められている。しかし、このような対策が世界中で行われているにもかかわらず、実用化には至っていないのが現状である。●デング熱流行阻止に向け国際的な結束を 世界中でデング熱の予防・治療に対する基礎研究や橋渡し研究が行われてきた結果、確かに情報は蓄積されてきた。しかし、その一方で、デング熱の流行は依然として世界的な広がりをみせている。今後の流行を阻止するためにも、さらなる努力が求められる。 WHOによるデング熱予防・コントロールの世界的戦略では、2012年から2020年にかけて、少なくとも罹患率を25%、死亡率を50%減らすことを目標としている。しかし、この目標を達成するためには、デング熱の重大さを世界各国が真摯に受け止め、政府機関・地域社会・国際組織などが結束する必要がある。 以上が著者らによりまとめられた、デング熱の最新知見である。わが国でも、政府が定期的な情報発信や、徹底した予防・制御に努めたこともあり、次第にデング熱の流行は収まりを見せている。しかし、世界中でデング熱が急増している現状を鑑みると、来年も流行する可能性は否定できない。今後、デング熱に対し、国を挙げて何らかの対策を講じていく必要があるであろう。

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C型肝炎の適切な治療選択~ガイドライン改訂

 近年、C型肝炎に対する抗ウイルス薬の開発が進んでいる。昨年9月のシメプレビル3剤併用療法に続き、今年7月にインターフェロン(IFN)を併用しないダクラタスビルとアスナプレビルの併用療法が承認され、今後も新しい抗ウイルス薬の承認が期待されている。このたび、都内にて10月1日(水)に開催されたヤンセンファーマメディアセミナーで、武蔵野赤十字病院 副院長 泉 並木氏が「C型肝炎の最新治療と適切な治療選択の重要性」と題し、9月に改訂された日本肝臓学会の「C型肝炎治療ガイドライン(第3版)」の解説も含めて講演した。肝がん発症を防ぐためには早期の治療が必要 C型肝炎は肝がんの成因の約7割を占める。治療開始年齢と肝がん発症リスクの関係をみると、65歳以上で急激に発症リスクが増加することから、早期の治療が必要という。 治療の第一目標はC型肝炎ウイルス(HCV)の排除であり、抗ウイルス療法が原則である。抗ウイルス療法で使用する薬剤には、抗ウイルス蛋白や免疫を誘導するIFNと、HCVのプロテアーゼ・NS5Bポリメラーゼ・NS5Aを阻害する直接作用型抗ウイルス薬があり、これらの中から、プロテアーゼ阻害剤+ペグインターフェロン(Peg-IFN)+リバビリン、または、2つないしは3つの直接的抗ウイルス薬の組み合わせ(プロテアーゼ阻害剤+NS5A阻害剤、NS5A阻害剤+NS5Bポリメラーゼ阻害剤)が今後主流になる。シメプレビル3剤併用療法は、高齢者や女性にも高い効果 昨年承認されたシメプレビル+Peg-IFN+リバビリンの3剤併用療法は、国内臨床試験において、初回治療と再燃例に対し90%前後という高い抗ウイルス効果を示している。泉氏は、発売後の臨床成績として、武蔵野赤十字病院における2013年12月以降の導入症例101例の治療効果を紹介した。それによると、HCV RNA陰性化率は4週で83%まで達し、早期に効果が認められたという。また、国内臨床試験では対象となっていなかった70歳以上の高齢患者においても、65歳未満、65~69歳と同等の抗ウイルス効果がみられ、男女においても効果に差がなかったとのことである。一方、有害事象は、ほとんどがインターフェロンやリバビリンでみられる症状であり、唯一ビリルビン上昇がシメプレビルでみられる有害事象であるが一過性と説明した。治療選択は専門医の判断が必要 ダクラタスビルとアスナプレビルの発売に合わせて今年9月に改訂された「C型肝炎治療ガイドライン(第3版)」では、ゲノタイプ1b型・高ウイルス量症例に対する初回治療について、高発がんリスク群(高齢者かつ線維化進展例)・中発がんリスク群(高齢者または線維化進展例)・低発がんリスク群(非高齢者かつ線維化軽度例)ごとに、IFN適格例と不適格例に分けて治療の原則を提示している。 まず、IFN適格例では、すべてのリスク群でシメプレビル/Peg-IFN/リバビリン併用を原則としている。またIFN不適格例では、高発がんリスク群はダクラタスビル/アスナプレビル、中発がんリスク群はダクラタスビル/アスナプレビルもしくは治療待機としている。ただし、ダクラタスビル/アスナプレビル治療前には極力Y93/L31変異を測定し、変異があれば治療待機を考慮することとし、治療待機の場合の発がんリスクならびに変異例にダクラタスビル/アスナプレビル治療を行う場合の著効率と多剤耐性獲得のリスクを十分に勘案して方針を決定するとしている。また、低発がんリスク群には、早期の治療導入の必要性は少ないが、Y93/L31変異がない場合に限り、ダクラタスビル/アスナプレビル治療も可能という。 なお、ダクラタスビル/アスナプレビル治療の適応がIFN不適格な患者であるため、本治療を受けた患者については、以後のIFNを含む治療法は医療費助成の対象としない対応方針が示されている。 泉氏は、治療決定に際しては耐性ウイルスの有無を調べることが重要であると述べ、最適な治療選択や医療費助成を受けるために、専門医による判断が必要であることを強調した。日本肝臓学会「C型肝炎治療ガイドライン(第3版)」はこちら

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エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

 9月3日(水)、都内にて「西アフリカのエボラ出血熱ウイルス流行と国際社会の課題」と題し、国立国際医療研究センターメディアセミナーが開催された。今回のセミナーでは、実際に現地リベリアで患者の診療や医療従事者への指導を担当した医師も講演し、最新の情報が伝えられた。※画像は、出国時の体温検査(画像提供:国立国際医療研究センター 加藤 康幸氏)対応は1類感染症の疾患 「日本の医療機関における備え、感染対策の基礎」と題し、堀 成美氏(国立国際医療研究センター)が、わが国の感染症対策の概要について説明を行った。 エボラ出血熱は、感染症法上1類感染症として取り扱われており、特定の医療機関で診療を行うこと、また、現在、患者発生に備えて、厚生労働省検疫所や自治体と共同して感染症患者の移送などの訓練を行っていると述べた。ワクチン開発の現状 次に、「ワクチン、治療の現状と課題」をテーマに西條 政幸氏(国立感染症研究所)が、現在のワクチン開発の状況を説明した。 本格的なワクチン開発は、1995年のエボラ出血熱アウトブレイクより行われた。当初は、同疾患に罹患し回復した患者の血液輸血という、中和抗体投与療法から開始された。現在、ウイルス増殖を抑制する抗ウイルス薬T-705と中和活性を有する抗体製剤であるZMappが開発され、サルやマウスによる治験が行われている。 T-705は早い段階の投与で効果を発揮し、マウスについて感染6日後の投与では死亡例がなかったのに対し、8日後の投与では約半数が死亡する結果であったという。また、ZMappは、サルについて感染5日後に投与した群はすべて回復が認められたのに対し、コントロール群では8日以内にすべて死亡したことが報告された。 西條氏はワクチンの特徴として、感染を予防するものではなく、あくまで体内でのウイルス増殖を抑え、重症化を防ぐために使用されるものであることを強調した。 今後のワクチン使用の問題点としては、ヒトへの有効性のほか、安全性、情報開示などさまざまなことが挙げられると提起した。 また最後に、西アフリカの感染拡大について触れ、「ウイルスそのものに変化は見られないものの、感染拡大の阻止には苦慮している。拡大の阻止には、さらなる住民への教育、広報、医療機関への資材の提供などが期待される」と説明した。疾患への知識不足がさらなる感染を招く 続いて、「リベリアにおけるエボラ対策支援活動から」をテーマに、実際にリベリアで活動した加藤 康幸氏(国立国際医療研究センター)が最新情報を紹介した。 リベリアは、乾季のある熱帯雨林気候に属し、人口約420万人。今回の感染拡大は内戦後、国連による平和維持状態が続いている中で起こったものである。 エボラ出血熱は、現在5種類が特定されており、今回の流行はその中でも最強のザイール型と呼ばれているもの。首都を含む広範囲の感染拡大は、新興感染症では世界が初めて経験する事態で、WHO予測では2万人の感染者が予想されているという。 WHOによればエボラ出血熱は、人-人感染でうつり、2~21日で症状を発現、生存率は47%という特徴をもつ。そして、加藤氏によれば、現地では看護をする患者家族や医療スタッフへの感染例が多いとのことである。 典型症状は、出血よりも発熱、下痢と嘔吐であり、現地では、マラリアが通年で流行していることもあり、初期診断時に発熱症状の患者の鑑別診断に苦慮しているとのこと。確定診断は、PCR法による診断が行われ、現地では疑い例の段階で治療・隔離ユニットに収容される。 流行を抑えるためには、隔離と検疫が重要で、現地でも対策が取られているが、医療システムが崩壊していることもあり、順調には進んでいない。そんな中で、さまざまな国、機関の支援により医療の再構築がなされており、今回の支援活動では、感染防止の教育、発熱外来の設置、治療ユニットの設置などが行われた。 現地では、患者の1割が医療従事者であることから、医療従事者の感染防護としては、ガウンなどを重層する国境なき医師団の対策を採用している。また、始業時の体温チェック、バディ体制での病室入室時の防護服チェックなど、万全の態勢を期して臨んでいることなどが紹介された。 治療に関しては、エンピリック治療として抗マラリア薬や抗菌薬の投与が、支持療法として点滴、輸血などが行われている。さらに、疾患啓発や感染防止教育のために、回復患者が医療機関を巡回する取り組みが行われているそうである。 今後の課題として、エボラ出血熱について現地住民への理解の促進、現地の医療システムの復旧、政府などへの信頼性の回復、孤立化による物資不足の解消などが待たれる、と講演を終えた。詳しくは次のサイトをご参照ください。 国立感染症研究所 エボラ出血熱  厚生労働省 感染症法に基づく医師の届け出のお願い

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RSウイルス感染にGS-5806が有効/NEJM

 開発中の抗ウイルス薬GS-5806は、RSウイルス(RSV)感染健常人のウイルス量を減少させ、臨床症状の重症度を低下することが、米国・テネシー大学医学大学院のJohn P. DeVincenzo氏らの検討で示された。RSVは乳児の入院の主要な原因であり、重篤な疾患や死亡の原因としての認識が高まっているが、有効性が確認されている抗ウイルス治療はない。GS-5806は、ウイルスエンベロープの宿主細胞膜との融合を阻害することで、低ナノモル濃度でRSVの細胞内侵入を阻止する低分子量の経口薬である。NEJM誌2014年8月21日号掲載の報告。さまざまな用量をプラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、RSVの臨床株を鼻腔内に接種された健常成人において、GS-5806の有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。 被験者には12日間のモニタリングが行われた。RSV感染検査で陽性または接種5日後のいずれか早いほうの時点で、GS-5806またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。治療薬群は、用量の違いで7つのコホートに分けた。 コホート1~4はGS-5806 50mgを初回投与後25mg/日を4日間投与、コホート5は50mgを初回投与後25mg/日を2日間投与、コホート6は100mgを1回のみ投与、コホート7は10mgを初回投与後5mg/日を4日間投与した。コホート5、6、7の用量選定は、コホート1~4のデータの中間解析後に行った。 主要評価項目は、ウイルス接種後12日間を通じ、薬剤の初回投与以降に採取した鼻洗浄サンプル中の定量的RT-PCRアッセイで測定したウイルス量の曲線下面積(AUC)とした。副次評価項目は、初回投与から5日間の鼻汁の総重量、患者が日誌に記した症状スコアの変化のAUCなどであった。ウイルス量の減少と症状の軽減の関連を証明 コホート1~4には78例が登録され、治療薬群に39例(平均年齢28.6歳、男性74.4%)、プラセボ群にも39例(25.0歳、76.9%)が割り付けられた。 コホート1~4のRSV感染が成立した54例では、治療薬群はプラセボ群に比べウイルス量が少なく(補正後の平均値:250.7 vs. 757.7 log10プラーク形成単位等量[PFUe]×時間/mL、p<0.001)、鼻汁の総重量が低く(平均6.9 vs. 15.1g、p=0.03)、症状スコアのベースライン時からの変化のAUCが小さかった(補正後の平均値:-20.2×時間 vs. 204.9×時間、p=0.005)。コホート5、6、7でも結果はほぼ同様であった。GS-5806投与群で、好中球数の低下(15.4 vs. 0%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇(15.4 vs. 7.7%)などの有害事象の頻度がプラセボ群に比べ高かった。 また有害事象は、GS-5806投与群で好中球数の低下(コホート1~4 vs. プラセボ:15.4% vs. 0%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇(同:15.4% vs. 7.7%)などの頻度が高かった。 著者は、「健常成人を対象としたウイルス接種試験において、GS-5806治療はRSV量を低下させ、RSV感染による臨床症状の重症度を改善した」とまとめ、「この結果は、治療によるRSV量の減少が症状の重症度の軽減と関連することを示すものである」と指摘している。

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HCVに1日1回IFNフリーレジメンが有用/Lancet

 C型肝炎ウイルス(HCV)感染のインターフェロン(IFN)フリー治療として、シメプレビル+ソホスブビル併用療法は肝線維化の程度にかかわらず高い効果を発揮し、忍容性も良好であることが、米国・テキサス大学健康科学センターのEric Lawitz氏らが行ったCOSMOS試験で示された。HCV遺伝子型1型感染の治療は、従来のペグインターフェロン+リバビリン療法から直接作用型抗ウイルス薬を含むIFNフリーのレジメンへと進化している。シメプレビルは1日1回経口投与のNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬、ソホスブビルは1日1回経口投与のヌクレオチドアナログNS5Bポリメラーゼ阻害薬であり、いずれも未治療および既治療の遺伝子型1型感染患者の第III相試験で良好な持続的ウイルス消失(SVR)率を達成している。Lancet誌オンライン版2014年7月28日号掲載の報告。IFNフリーの併用レジメンの有用性を無作為化試験で評価 COSMOS試験は、慢性HCV感染患者に対するシメプレビル(SIM)+ソホスブビル(SOF)±リバビリン(RBV)併用療法の有用性を検討する非盲検無作為化試験。対象は、年齢18歳以上、血漿HCV RNA量>10,000IU/mL、HIV血清反応陰性で、代償性肝疾患がみられ、ペグインターフェロン+リバビリン療法が無効または未治療のHCV遺伝子型1型感染患者であった。 被験者は、SIM 150mg/日+SOF 400mg/日+RBV 1,000~1,200mg/日(24週)、SIM 150mg/日+SOF 400mg/日(24週)およびそれぞれを12週投与する4つの治療群に無作為に割り付けられた。さらに、肝線維化の指標であるMETAVIRスコア(F0[線維化なし]~F4[肝硬変])で2つのコホートに分けられた(コホート1[F0~F2]:前治療無効例、コホート2[F3~F4]:前治療無効例、未治療例)。 主要評価項目は、治療終了後12週時のSVR(HCV RNA量<25IU/mL、SVR12)の達成とした。安全性の解析はコホート1と2を合わせて行った。全体のSVR 12達成率は92%、RVR達成率は81% 2011年11月2日~2014年1月29日までに米国の23施設から168例が登録され、167例(コホート1:80例、コホート2:87例)が実際に治療を受けた。全体の年齢中央値は57歳、男性が64%、白人が81%、遺伝子型は1a型が78%、1b型が22%であった。 全体のSVR12達成率は92%(154/167例)であり、コホート1は90%(72/80例)、コホート2は94%(82/87例)であった。RBVの有無別のSVR12達成率は、RBV併用例が91%(98/108例)、RBV非併用例は95%(56/59例)であった。 未治療例のSVR12達成率は95%(38/40例)、前治療無効例は91%(116/127例)であった。また、12週治療例のSVR12達成率は94%(77/82例)、24週治療例は91%(77/85例)だった。 SVR12達成例は全例が治療終了後4週時のSVR(SVR4)をも達成しており、全体のSVR4達成率は91%以上であった。また、全体の迅速ウイルス消失(RVR、治療開始から4週以内のHCV RNA検出不能)の達成率は81%であった。治療期間中にウイルス再燃(viral breakthrough)を含むウイルス学的治療不成功を来した患者はいなかったが、治療終了後に6例でウイルスの再燃がみられた。重篤な有害事象、死亡は治療と関連しない 全体で最も高頻度にみられた有害事象は、疲労(31%[52/167例])、頭痛(20%[33/167例])、悪心(16%[26/167例])であった。 Grade 4の有害事象は、SIM+SOF+RBV(24週)群で1例(2%)、SIM+SOF+RBV(12週)群で1例(2%)、SIM+SOF(24週)群で3例(10%)に認められた。全体で発現率が5%を超えるGrade 3~4の有害事象は、血中アミラーゼ値上昇のみであった。血中アミラーゼ値上昇例は治療を継続したが、臨床的に膵炎を発症した患者はいなかった。 重篤な有害事象は、SIM+SOF+RBV(24週)群で3例(6%)、SIM+SOF(24週)群で1例(3%)に認められ、いずれもコホート2の患者であった。試験期間中に2例が死亡した(治療期間中は1例)。これら重篤な有害事象と死亡はいずれも治療とは関連しないと判定された。 有害事象による治療中止は4例(2%)みられた。いずれも24週治療の患者であったが、3例は12週以前に中止となった。 これらの結果に基づき、現在、リバビリンを使用しないシメプレビル+ソホスブビルの2剤併用療法の有効性と安全性を評価する第III相試験(OPTIMIST試験)が進行中だという。

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