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1.

移植患者に対するワクチン接種/日本造血・免疫細胞療法学会

 造血幹細胞移植後の患者において、ワクチン接種は感染症予防のための重要な手段となる。しかし、免疫再構築の個別性やワクチン免疫原性の低下、さらには費用・制度面の課題などにより、実臨床における実装状況には施設間差が見られる。 2026年2月27日~3月1日に開催された第48回日本造血・免疫細胞療法学会総会では、「移植患者に対するワクチン接種」をテーマとしたシンポジウムが企画され、国内実態調査、優先度の高い予防接種の科学的根拠、実臨床における運用体制という3つの視点から、移植後ワクチン接種の現状と課題が提示された。造血幹細胞移植後のワクチン接種に関する国内実態調査より 冒頭、黒澤 彩子氏(伊那中央病院 腫瘍内科)は造血幹細胞移植後のワクチン接種に関する日本国内の実態を把握するために実施された全国規模のアンケート調査の結果について報告した。本調査は、厚生労働科学研究費補助金による研究班の一環として行われたもので、日本国内の移植認定施設(成人診療科・小児科)を対象に実施され、85%(成人診療科施設86%、小児科施設85%)という非常に高い回答率が得られている。 移植後は免疫が再構築される過程で既存の免疫が失われるため、ワクチン再接種が必要とされるが、その方針や実際の接種状況、さらにワクチンで予防可能な疾患(vaccine-preventable diseases:VPD)の発症状況を把握し、今後の施策や提言につなげることが本調査の目的であった。 まず、ワクチン再接種に対する認識について、同種移植後では成人診療科・小児科ともにほぼ100%の施設がその必要性と重要性を認識しており、約75〜80%の施設で統一した接種方針が定められていた。一方、自家移植後では診療科間で大きな差が見られた。小児科では約70%が必要性を認識し、半数以上が統一方針を有していたのに対し、成人診療科では必要性の認識は24%にとどまり、方針を持つ施設はわずか6%であった。その背景として「有用性が低い」「コストの問題」などが挙げられ、自家移植後の位置付けが十分に共有されていない実態が浮き彫りとなった。 接種されているワクチンの種類にも違いがある。回答した成人診療科の80%以上が“推奨”と回答したものはインフルエンザウイルス、肺炎球菌、麻疹風疹混合(MR)であり、接種率についてはそのうちインフルエンザと肺炎球菌で高い(対象の半数以上に接種という回答が75%超)傾向にあった。一方、小児科ではMR、おたふくかぜ、水痘、ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib)、インフルエンザウイルスについて8割を超える施設が“推奨”とし、接種率も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を除いて成人診療科と比較して小児科で高かった。施設体制の面では、すべてのワクチンを院内で接種可能な施設は20〜30%にとどまり、70〜80%の施設ではワクチンの種類や症例によっては接種を他院へ依頼しているという現状が示された。 水痘・帯状疱疹対策では、成人診療科では不活化ワクチンの推奨が進む一方、高額な費用負担が障壁となっている。不活化帯状疱疹ワクチンは18歳未満に適応がなく、小児は水痘に未罹患なことが多いため、小児科では水痘予防として生ワクチンが主に使用されている。また、抗ウイルス薬は移植後1〜2年、あるいは免疫抑制薬終了時まで予防投与されることが多いが、投与のタイミングや中止時期には施設間でばらつきがあった。 VPDの発症経験については、成人診療科・小児科ともに60〜90%の施設がCOVID-19、インフルエンザ、帯状疱疹、肺炎球菌感染症などを経験しており、移植患者が依然として高リスクであることが示された。死亡例は成人診療科では半数以上の施設が経験しており、とくにCOVID-19の影響が大きかった。一方、小児科では80%以上の施設が死亡例なしと回答し、成人診療科と比べて致死的転帰は少ない傾向が見られた。注目すべきは、自家移植後であってもVPD発症は決して少なくなく、軽視できない点である。加えて、COVID-19については、致死率の観点からとくに成人診療科において重要な課題であることが示された。一方で、ワクチン接種率はインフルエンザや肺炎球菌と比較して低く、対象の半数以上に接種しているとの回答は50%未満にとどまっており、この点も本調査より明らかとなった。 ワクチン接種率向上のための課題として、保険収載、自治体等による費用助成、長期フォローアップ(long-term follow-up:LTFU)体制の強化、最新の推奨を反映した資材の整備などが挙げられた。総じて、同種移植後の再接種の重要性は定着している一方で、自家移植後の再接種に関する認識不足や成人領域での接種されるワクチンの種類が限定されていること、さらに自己負担による費用面の問題が大きな障壁となっている。今後は制度的整備と情報の標準化を進め、移植患者をVPDから守る体制の構築が不可欠であると黒澤氏は結論付けた。同種移植患者に対する優先度の高い予防接種に関する研究について 同種造血幹細胞移植後の長期生存例が増加する一方、晩期合併症としての感染症対策は依然として重要な課題となっている。とくに移植後晩期には液性免疫の回復が遅延し、VPDに対する防御能が十分に再構築されない症例が少なくない。このような背景において、冲中 敬二氏(国立がん研究センター東病院 感染症科/造血幹細胞移植科)は、同種造血幹細胞移植患者に対する優先度の高いワクチン接種について、晩期感染症の疾病負荷および再接種戦略の最新エビデンスを整理し講演した。 移植後晩期に問題となるのは、肺炎球菌などの被包化細菌、帯状疱疹・単純ヘルペスを含むヘルペスウイルス群、さらに呼吸器ウイルスなどである。なかでも、移植片対宿主病(GVHD)予防として普及した移植後シクロホスファミド(PTCy)を用いたレジメンでは、CD4陽性T細胞の回復遅延に加え、サイトメガロウイルス(CMV)感染や非CMVヘルペスウイルス感染(HHV-6血症)、呼吸器ウイルス感染などの増加が米国のレジストリ解析によって示唆されている。このように、移植後晩期には液性免疫不全のみならず細胞性免疫の再構築不全も問題となることは少なくない。 海外でのアンケート調査によると、成人患者の40%以上が移植後晩期にVPD(インフルエンザ様疾患、帯状疱疹、子宮頸部細胞診異常など)を経験していることが示されている。小児データベース研究では、VPD発症頻度は7%程度と低いものの、帯状疱疹や侵襲性肺炎球菌感染症、インフルエンザなどの発症中央値は移植後190~300日で、移植から6ヵ月以降に多いことがわかる。すなわち、移植後晩期も感染症のリスクは持続し、長期にわたる免疫学的脆弱性を前提とした管理が必要となる。 同種移植患者の市中肺炎罹患率は一般人口より著明に高く、原因菌として肺炎球菌が約9%と最も頻度が高く、重症化リスクも高いことが海外から報告されている。呼吸器ウイルス感染については、RSウイルス(RSV)、インフルエンザ、COVID-19の米国での罹患後30日以内の寄与死亡率が4~6%とされ、日本からはインフルエンザ罹患後90日以内の寄与死亡率が2.2%とのデータが示されている。日本では約4分の3の症例で発症48時間以内に抗ウイルス薬が処方されているのに対し、米国では同期間内に処方を受ける症例は約4分の1にとどまっており、この差が寄与死亡率の違いの一因と考えられる。呼吸器ウイルス感染症を疑う症状が出現した際には、速やかな受診を促す患者教育の重要性が示唆される。 院内感染で呼吸器ウイルス感染症に罹患した場合はさらに予後が不良であり、院内での伝播は防がなければいけない。このためには外来での呼吸器感染症状スクリーニング、必要に応じた迅速PCR診断、感染判明時の接触・飛沫予防策の徹底が推奨される。また、患者本人のみならず同居家族や医療従事者へのワクチン接種も重要な間接防御策となる。 免疫記憶の消失も見逃せない。国内データでは、麻疹・ムンプス・風疹(MMR)の抗体保有率が移植5年で50%未満に低下しえること、B型肝炎表面(HBs)抗体の陰性化が再活性化リスクに関与することが示されている。つまり、小児期に定期接種歴があっても、移植後の防御免疫は保証されないことになる。このため、移植後のワクチン再接種が重要となり、厚労科研研究班は優先度の高いワクチン再接種に関する研究を通じ、水痘、MMR、ジフテリア・百日咳・破傷風(DPT)、肺炎球菌、B型肝炎ウイルス(HBV)などのワクチン再接種戦略をレビューしている。加えて、帯状疱疹ワクチン、RSVワクチン、COVID-19ワクチンなど、新規・更新ワクチンの有効性データも蓄積されつつある。 冲中氏は、同種移植患者では、晩期においても液性免疫不全が残存し、VPDは現実的かつ重篤な脅威となるとし、「免疫再構築の特性、GVHD治療状況、地域流行状況を踏まえ、計画的かつ優先順位を明確にしたワクチン再接種を実装することが、長期予後改善には重要となる」と強調した。同種造血細胞移植患者におけるワクチン接種の実際 移植後の患者では、続発性免疫不全や既存免疫記憶の低下により感染症リスクが高まるため、移植後の再予防接種が重要であることは広く認識されている。しかし、実際にワクチン再接種を確実に実施するためには、院内外での運用体制の整備が不可欠となる。そこで、森 有紀氏(虎の門病院 輸血・細胞治療部/造血細胞移植後長期フォローアップセンター)は、実臨床でワクチン接種を円滑に進める具体例として、虎の門病院における体制整備や役割分担の取り組みを紹介し、移植後ワクチン接種を実装するためのポイントについて解説した。 移植後ワクチン接種の運用体制を整備するには、まず、どこで接種を行うのか(移植施設か他の医療機関か)を明確にする必要がある。そのうえで、どの診療科が中心となって担うのか(血液内科、感染症科、小児科、一般内科など)を決め、さらに看護師や薬剤師を含めた多職種連携を具体的に設計していくことが求められる。 虎の門病院では、LTFU外来で血液内科医が適応と開始時期を判断し、その後臨床感染症科医へ紹介して、詳細説明、スケジュール作成、実際の接種を行う分業体制を構築することで専門性を担保しつつ、マンパワーの軽減にもつながっている。 一方、他の医療機関に接種を依頼する場合、移植施設側が適応判断を行い、紹介状や説明文書、患者手帳などを活用して情報共有を徹底することが重要である。とくにクリニック等に紹介する際には、具体的な日程を記載した接種スケジュールの提案や、無断キャンセル防止に関する事前説明(ワクチンを個別に取り寄せる場合があるため)なども大切なポイントとなる。 接種手順は、適応・開始時期の判断、インフォームド・コンセント、接種スケジュール作成、接種、接種後の注意点説明の流れとなる。ガイドラインでは、不活化ワクチンは、GVHDの増悪がなければ移植後3ヵ月(種別により6ヵ月ないし12ヵ月)を経過した後接種可能となっているが、開始時期が遅いほど免疫応答が得られやすいとされる。生ワクチンは、免疫抑制薬が終了し慢性GVHDを認めなければ移植後24ヵ月以降で接種可能とされるが、十分な免疫回復や輸血および所定の薬剤との間隔などの条件を満たすことが前提となる。いずれにしても、個々の患者の状況に応じた判断が必要となる。 さらに、帯状疱疹ワクチン接種後の抗体価上昇や安全性に関する施設データの提示、情報共有テンプレートの整備などの実践的工夫も紹介された。一方で、多くが任意接種・自費負担であること、自治体助成が限定的であること、接種歴証明の困難さや年齢制限といった制度的課題も残されている。 最後に森氏は「移植後ワクチン接種は、単なる推奨事項ではなく、長期予後を左右する重要な支持療法である。各施設の実情に応じた体制構築と地域連携を通じて、標準化と実装を進めていくことが、今後の移植医療の質向上に直結する」と締めくくった。

2.

帯状疱疹、50歳未満でも罹患リスクが高くなる6つの併存疾患

 50歳以上および免疫不全を有する成人では、帯状疱疹の罹患リスクが高いが、18~49歳の併存疾患を有する患者における帯状疱疹罹患リスクについてのエビデンスは不足している。グラクソ・スミスクラインのRachel A. Cohen氏らによる米国の医療保険請求データを用いた大規模後ろ向き研究の結果、特定の併存疾患を有する若年成人(30歳以上)では、50~59歳の併存疾患および免疫不全のない成人と比較して帯状疱疹の罹患リスクが高いことが示された。Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2026年3月27日号掲載の報告。 本後ろ向きコホート研究では、2015~22年の米国におけるMerative MarketScan CommercialおよびMedicare Supplementalのデータが用いられた。併存疾患(喘息、慢性腎臓病[CKD]、慢性閉塞性肺疾患[COPD]、うつ病、糖尿病、ストレス、および外傷)を有する免疫不全のない若年成人(18~49歳)における帯状疱疹罹患率(IR)を、併存疾患および免疫不全のない成人(50~59歳)と比較した。 併存疾患および免疫不全のない50~59歳と比較した調整罹患率比(aIRR)について、非劣性マージン(95%信頼区間[CI]の下限:0.62)があらかじめ設定された。aIRRは、同等(aIRRの95%CIの下限>0.62かつ≦1.0)、有意に高い(同>1.0)、または結論不能(それ以外の結果)に分類した。帯状疱疹罹患の定義は、診断コードに加え、±7日以内の経口抗ウイルス薬の処方とした。感度分析として、併存疾患の数(1、2、または3以上)別に帯状疱疹の罹患率を検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象集団は、帯状疱疹罹患歴または帯状疱疹ワクチンの接種歴がなく18歳以上の2,067万3,677人。免疫不全症および自己免疫疾患を有する成人を除外後、併存疾患を有する成人は316万45人であった。・全体として、併存疾患を有する成人において3万1,995件の帯状疱疹発症が報告された。・帯状疱疹罹患率は、気管支喘息(aIRR:1.19[95%CI:1.10~1.29])、COPD(1.31[1.22~1.40])、うつ病(1.31[1.22~1.40])、糖尿病(1.18[1.06~1.32])、ストレス(1.28[1.11~1.47])、および外傷(1.25[1.17~1.34])を有する集団では30~39歳において、またCKD(1.50[1.28~1.77])を有する集団では50~59歳において、50~59歳の併存疾患および免疫不全のない成人と比較して有意に高かった(aIRRの95%CIの下限>1.0)。・感度分析の結果、帯状疱疹罹患率は併存疾患数の増加および年齢の上昇に伴って増加する傾向がみられた。

3.

日本人の腸内細菌叢、世界と異なる特徴は?

 ヒトの腸内細菌叢(マイクロバイオーム)は、宿主の免疫や代謝、健康状態と密接に関わっている。東京大学の西嶋 傑氏らの研究グループは、日本人5,000人以上の腸内メタゲノムデータを解析し、世界37ヵ国と比較した。その結果、日本人の腸内細菌叢にはビフィズス菌が豊富であり、9割が海藻の分解酵素を持つという独自の特徴や、腸内細菌叢の構成には特定の薬剤が大きく影響することなどが判明した。Proceedings of the Japan Academy, Series B誌2026年2月号に掲載。 本研究では、疾患(Disease)、薬剤(Drug)、食習慣(Diet)、アルコール、喫煙、睡眠などの生活習慣(Daily life)、などの詳細な情報と腸内細菌データを統合して収集した大規模オミクス研究基盤である「Japanese 4Dマイクロバイオームコホート」を用いて、日本人5,466人(平均年齢65.9±13.2歳、男性56.9%)の腸内メタゲノムデータを、世界37ヵ国3万1,695人のデータを比較解析し、日本人の独自性を特定した。さらに、1,500項目以上の変数を用いて、細菌叢の多様性に寄与する要因を評価した。 主な結果は以下のとおり。・日本人の腸内には、他の高所得国と比較してビフィズス菌(Bifidobacterium属)が豊富に存在することが認められた。これは日本人に乳糖不耐症が多く、乳製品を摂取して消化されない乳糖が腸に到達し、ビフィズス菌の増殖を促進する可能性が示唆されている。・日本人において、ノリやワカメなどの海藻に含まれる多糖類を分解する酵素遺伝子を持つ個人の割合が約90%に達し、欧米諸国(0~16.7%)より圧倒的に多かった。・腸内細菌叢の構成には、生活習慣よりも薬剤の影響が大きかった。関連の強い順に、胃腸薬、糖尿病薬、抗菌薬/抗ウイルス薬であった。・プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用は腸内細菌の多様性を上昇させる一方で、口腔内に多い細菌(レンサ球菌[Streptococcus属]、Lactobacillus属など)が腸内で増加し、日和見感染症の原因となる多剤耐性菌(肺炎桿菌[Klebsiella pneumoniae]、Enterococcus faecium、肺炎球菌[Streptococcus pneumoniae]など)の定着を促進するリスクが示された。・5種類以上の多剤併用により、有益な短鎖脂肪酸(SCFA)産生菌(Roseburia属、Dorea属、Faecalibacterium属、Alistipes属、Coprococcus属、Eubacterium属など)が減少し、日和見病原菌が増加して、腸内細菌叢の多様性が低下することが示された。 本研究により、日本特有の文化的・遺伝的背景によって形成された、集団特異的な腸内細菌叢の特徴が示された。著者らは、とくに高齢者における不要な薬剤の使用中止を含む薬物療法の最適化が、腸内環境の健全性を維持するうえで不可欠だと指摘し、国際的な腸内細菌叢データセットの構築は、精密医療(プレシジョンメディシン)を推進する鍵となるだろうとまとめている。

4.

テコビリマト、エムポックス感染者の臨床転帰を改善せず/NEJM

 成人のクレードIIエムポックスウイルス感染者において、p37エンベロープタンパク質を標的とする抗ウイルス薬テコビリマトは、プラセボと比較して臨床的回復までの期間を短縮せず、疼痛の軽減やウイルス除去の促進にも寄与しないことが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのJason Zucker氏らSTOMP/A5418 Investigatorsが行った「STOMP/A5418試験」で示された。テコビリマトは、天然痘の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ているが、前臨床試験などの結果に基づきエムポックスの治療薬候補として注目を集めていた。研究の成果は、NEJM誌2026年2月26日号で発表された。7ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 STOMP/A5418試験は、日本を含む7ヵ国の49施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(米国国立アレルギー感染症研究所[NIAID]の助成を受けた)。2022年9月~2024年10月に、年齢18歳以上、検査で確認されたクレードIIエムポックスウイルス感染者344例(年齢中央値34歳[四分位範囲[IQR]:28~40]、男性339例[99%])を登録した。 被験者は、テコビリマト(232例)またはプラセボ(112例)を、14日間経口投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、time-to-event解析で評価した臨床的回復とし、すべての皮膚病変がかさぶたを形成し落屑して治癒に至り、すべての肉眼的な粘膜病変が治癒するまでの期間と定義した。主要・副次アウトカムに差はない 336例が活動性の皮膚または粘膜病変を有しており、主解析の対象となった。症状発現から試験登録までの日数中央値は8日(IQR:6~10)、登録時の病変数中央値は9個(IQR:4~18)であった。122例(35%)が直腸炎を、116例(34%)が重度の疼痛を有しており、HIV陽性の337例のうち117例(35%)が「HIVと共に生きる(living with HIV)」の状態で、78例(23%)は少なくとも1回の天然痘またはエムポックスワクチンの接種を受けていた。 29日目までの、臨床的回復の推定累積達成率は、テコビリマト群が83%、プラセボ群は84%であった。臨床的回復の競合リスクハザード比(HR)は0.98(95%信頼区間[CI]:0.74~1.31)であり、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.89)。 副次アウトカムについては、ベースラインで重度疼痛を有していた患者における5日間の治療後の疼痛強度の軽減(群間差:0.1ポイント、95%CI:-0.8~1.0)、29日目までの病変の完全治癒(競合リスクHR:0.97、95%CI:0.75~1.26)、皮膚病変分泌物中のウイルスDNA消失(8日目の群間差:12%ポイント[95%CI:-2~26]、15日目の群間差:1%ポイント[95%CI:-10~13])のいずれにも、両群間に有意な差はなかった。Grade3以上の有害事象:4%vs.3% Grade3以上の有害事象は、テコビリマト群で4%(12/275例)、プラセボ群で3%(4/136例)に発現し、両群間に実質的な差はみられなかった(群間差:1%ポイント、95%CI:−5~5)。重篤な有害事象はそれぞれ6例(2%)および2例(1%)に発生した。死亡例の報告はなかった。 著者は、「本研究の結果は、クレードIエムポックスを対象としたPALM007試験の知見と一致する。これらの知見を統合すると、テコビリマトはクレードIおよびIIエムポックスに対する臨床的有効性を欠くことが示唆され、エムポックス治療のための治験薬を評価する無作為化対照比較試験の必要性を強調すべき状況にあると考えられる」としている。

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HIV-1感染症、ARTからドラビリン+islatravir切り替えによる有効性・安全性を確認/Lancet

 HIV-1感染症治療においてドラビリン/islatravir配合錠は、有効かつ良好な忍容性を示す、初となる非インテグラーゼ阻害薬(INSTI)ベースの2剤併用療法として有望であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のChloe Orkin氏らによる第III相無作為化実薬対照非盲検非劣性試験で示された。すべての国際ガイドラインでは、INSTIを含むレジメンが第1選択薬として推奨されているが、INSTI耐性の出現を示すWHOのデータが示されたことから懸念が生じている。ドラビリン/islatravir配合錠は、2つの強力な抗ウイルス薬からなる開発中の1日1回投与の配合錠で、相補的な作用機序および耐性プロファイルを有する。著者は、「広範なINSTI耐性の出現に対する懸念が高まる中、抗レトロウイルス療法(ART)の変更を必要とするHIV-1感染者にとって、この1日1回の配合錠は有望な選択肢となりうるだろう」と述べている。Lancet誌2026年2月7日号掲載の報告。ドラビリン/islatravir固定用量配合錠への切り替え、有効性と安全性を評価 研究グループは、成人HIV-1感染者において錠剤経口ARTの切り替え薬として、ドラビリン(100mg)/islatravir(0.25mg)の固定用量配合錠の有効性と安全性を評価した。 試験は、8ヵ国(オーストラリア、カナダ、コロンビア、日本、南アフリカ共和国、スイス、英国、米国)53ヵ所の研究・地域・病院ベースのクリニックで行われた。対象は、18歳以上の成人で、2剤または3剤の経口ARTレジメンを3ヵ月以上受けており、ウイルス量がHIV-1 RNA 50コピー/mL未満、治療失敗歴なし、ドラビリンに対する既知の耐性なし、活動性B型慢性肝炎でないこととした。 被験者をコンピュータ生成無作為化スケジュール法(ブロックサイズは3)で、ドラビリン(100mg)/islatravir(0.25mg)配合錠を1日1回投与する群またはベースラインARTを継続する群に2対1の割合で無作為に割り付け、48週間投与した。無作為化では、ベースラインレジメンの中心となる抗レトロウイルス薬のクラス(INSTI、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬)によって層別化した。 主要エンドポイント(治療を受けたすべての被験者で評価)は、48週時点でウイルス量50コピー/mL以上の患者の割合であった。非劣性は、治療群間差の多重性補正後95%信頼区間(CI)の上限が4%未満の場合と定義した。安全性の解析は、無作為化され試験薬を少なくとも1回服用した被験者を対象に行われた。48週時のウイルス量50コピー/mL以上の患者割合で非劣性 2023年2月20日~10月24日に、614例が適格性についてスクリーニングされ、553例がドラビリン/islatravir群(368例)またはベースラインART群(185例)に無作為化された。551例が割り付け治療を少なくとも1回服用した(ドラビリン/islatravir群366例、ベースラインART群185例)。 551例のうち、出生時男性332例(60%)、出生時女性219例(40%)で、年齢中央値51歳(四分位範囲:41~59)、250例(45%)が自己申告に基づく黒人またはアフリカ系米国人などだった(アジア人は両群ともに5%)。 48週時点でウイルス量50コピー/mL以上の患者の割合は、ドラビリン/islatravir群1.4%(5/366例)、ベースラインART群4.9%(9/185例)で、ドラビリン/islatravir群の非劣性が示された(群間差:-3.6%、多重性補正後95%CI:-7.8~-0.8)。 治療関連有害事象は、ドラビリン/islatravir群(44/366例[12.0%])がベースラインART群(9/185例[4.9%])よりも多く観察された(群間差:7.2、95%CI:2.2~11.6)。両群(ドラビリン/islatravir群vs.ベースラインART群)の発現率は、あらゆる有害事象(79.5%[291/366例]vs.83.8%[155/185例]、群間差:-4.3[95%CI:-10.7~2.8])、重篤な有害事象(6.3%[23/366例]vs.4.9%[9/185例]、1.4[-3.2~5.2])、有害事象による試験中止(0.5%[2/366例]vs.2.2%[4/185例]、-1.6[-4.9~0.2])で同等であった。 死亡が1例報告されたが(ベースラインART群)、治療とは無関係と見なされた。プロトコールで規定されたCD4陽性細胞数または総リンパ球数の減少により治療を中止した被験者はいなかった。 著者は、「安全性および有効性の知見は、長期作用型の可能性のある薬剤としてのislatravirの開発を進めることを支持するものである」とまとめている。

6.

アシクロビルとバラシクロビルに重大な副作用追加、エンシトレルビルの併用禁忌一部変更/厚労省

 2026年2月10日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出された。アシクロビル(経口剤、注射剤)とバラシクロビル塩酸塩(以下、バラシクロビル)の「重大な副作用」の追加、エンシトレルビル フマル酸(以下、エンシトレルビル)とロナファルニブとの併用が禁忌とされていたリオシグアトの併用注意への変更などが含まれる。アシクロビルとバラシクロビルの重大な副作用に「急性汎発性発疹性膿疱症」を追加 単純疱疹や帯状疱疹などの治療に用いられる抗ウイルス薬アシクロビルおよびバラシクロビルについて、国内外の急性汎発性発疹性膿疱症症例を評価した結果、因果関係が否定できない症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。重大な副作用として、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)に加え「急性汎発性発疹性膿疱症」が記載される。<対象医薬品>・アシクロビル(商品名:ゾビラックス)・バラシクロビル(同:バルトレックス)エンシトレルビルとロナファルニブ、リオシグアトは「併用注意」に 抗SARS-CoV-2薬エンシトレルビルおよび早老症治療薬ロナファルニブについては、これらの薬剤が強いCYP3A阻害作用を有することから、製造販売承認時より、ほかの強い CYP3A阻害薬を参考としてリオシグアトとの併用は禁忌とされてきた。今回、薬物相互作用に関するin vitro試験結果や安全性データベースにおける国内外の症例検索、文献検索などに基づき、相互作用によるリオシグアトの曝露量増加に伴う低血圧などに対するリスク最小化策がなされることを前提に、リオシグアトとエンシトレルビルまたはロナファルニブの併用を可能として差し支えないと判断された。 エンシトレルビルおよびロナファルニブの禁忌および併用禁忌の項からはリオシグアトが削除され、併用注意が新設されてリオシグアトが加えられ、臨床症状・措置方法として「リオシグアトの血中濃度を上昇させるおそれがある。本剤との併用が必要な場合は、患者の状態に注意し、必要に応じてリオシグアトの減量を考慮すること」と記載される。<対象医薬品>・エンシトレルビル(同:ゾコーバ)・ロナファルニブ(同:ゾキンヴィ)・リオシグアト(同:アデムパス)

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第299回 いよいよ明後日投票日、今回の各党の医療・社会保障政策は?~野党各党編

INDEX国民民主党日本共産党れいわ新選組減税日本・ゆうこく連合参政党日本保守党社民党チームみらいさて2026年2月8日投開票の衆院選に関連し、前回は与党の自民党、日本維新の会、最大野党の中道改革連合が掲げる医療・社会保障政策を取り上げた。今回は残る野党各党を取り上げる。国民民主党まずは昨今、議席増を続け野党内でも台風の目になりつつある同党は、5つの大きな政策を掲げ、そのもとで中項目(<>内)、さらに小項目(数字項目)を置き、小項目の下にさらにナンバリングした政策各論を提示している。その中身は以下に要約・列挙した。詳細は以下のとおり1.手取りを増やす<1.令和の所得倍増計画>1「消費」の拡大(1)介護職員、看護師、保育士等の給料倍増(介護職員、看護師、保育士等の給料、10年で倍増。処遇改善加算等を対象者に直接給付)(4)社会保険料軽減策の導入(社会保険料還付制度の導入、130万円の壁突破助成金の創設、社会保険料に上乗せされる「子ども・子育て支援金」の廃止)2「中小企業・非正規賃上げ応援10策」1)社会保険料負担軽減(中小・中堅企業の新規正規雇用の増加に伴う社会保険料の事業主負担の半分相当を助成)3.「人づくり」こそ国づくり<5.出産・子育て支援策の拡充と所得制限撤廃>8妊娠・出産に係る公費支援(不妊治療への公的支援やノンメディカルな卵子凍結の助成拡充、小児、若年性がん治療薬の妊孕性温存療法[精子・卵子保存]を保険適用、安全な無痛分娩を受けられる体制整備)9日本型ネウボラの創設(保健師・医師などによる妊娠時から高校卒業までの「伴走型支援」を制度化)<6.子どもの安全と福祉の確保>2子どもの死亡検証(チャイルドデスレビュー)の導入3ヤングケアラー対策(ヤングケアラー支援法の施行状況の検証、実態調査の定期的実施、実態調査に基づく効果的な支援の方法の調査研究)11介護と仕事の両立支援(ビジネスケアラー対策)12ダブルケアラー対策(ダブルケアラー支援法の制定)<10.現役世代と次世代の負担適正化と医療・介護の質向上を両立させる社会保障制度の確立>1年齢ではなく能力に応じた負担(後期高齢者の医療費自己負担の原則2割化、現役並所得者3割。現役並所得の判断基準での金融所得、金融資産等の保有状況を反映)2高齢者医療制度への公費投入増3科学的根拠に基づいた保険給付範囲の見直し(OTC類似薬の医療保険対象見直し、保険外併用療養費制度の弾力化)4ヘルスリテラシー教育の推進5セルフメディケーションの推進(医療用成分のスイッチOTC化推進、検査薬OTC化、リフィル処方箋普及)6中間年薬価改定の廃止(経済成長率を踏まえた新たな薬価改定ルールの策定、中央社会保険医療協議会への医薬品関連業種の代表者の追加)7予防医療・リハビリテーション(認知症・フレイルの予防、リハビリテーションの充実による健康寿命の延伸)8医療提供体制の充実、医療の質と効率の改善(1)医療従事者の負担軽減と働き方改革(医師・看護師・薬剤師等が実施可能な行為や役割の見直し、女性医療従事者の就業継続・再就職支援)(2)地域医療体制の見直しと機能強化(医師の地域偏在や診療科偏在の是正に資する診療報酬評価、かかりつけ医[日本版GP]・かかりつけ薬局[日本版CPCF]制度の導入、人頭払制度、薬剤師の職能活用、地域フォーミュラリー[医薬品の使用指針]の推進)(3)医療DXの推進(オンライン診療、標準型電子カルテ、電子処方箋の普及の推進、「全国医療情報プラットフォーム」の整備を通じた医療情報の共有化)9終末期医療の見直し10介護サービス・認知症対策の充実(訪問介護の基本報酬を引き上げ、全介護職員の賃金を引き上げ、介護福祉士の上位資格「地域包括ケア士(仮称)」の制度化)11介護研修費用の一部補助12介護福祉士国家試験に外国人人材向けの母国語併記13ケアマネジャー研修の負担の軽減(ケアマネジャー研修内容・体制の全国一律化)<12.ジェンダー後進国脱却、多様性社会実現>1生理、更年期障害政策(「生理の貧困」に対応した生理用品の無償配布)4.自分の国は「自分で守る」<1.防災・減災対策強化>4熱中症対策(公共施設、商業施設等の冷房設備を備えた「クーリングシェルター」の指定促進と周知、熱中症警戒アラートのわかりやすい発信と高齢者などへの周知)<3.「総合的な経済安全保障」の強化>1国内調達の拡充(1)国民の命と生活を守る医薬品や医療機器の安定供給確保(革新的新薬へのアクセス確保とドラッグラグ・ドラッグロス改善のため、欧米と比較して相対的に低い新薬収載時の価格算定方式を見直し、特許期間中の薬価維持制度、市場拡大再算定制度の市販後にイノベーションを再評価できる仕組みへ、共連れルール廃止、供給不安に陥っている医薬品について増産支援、不採算に陥ることのない薬価下支え制度、急激な物価高騰に対応できる制度の構築、医薬品メーカーの生産・在庫・出荷状況等を一元管理するデータベース構築)(2)イノベーション創出環境の整備(医薬品や医療機器での「社会課題(公的医療介護費、生産性損失)の解決につながるイノベーション」や「世界に先駆けて生み出されたイノベーション」、「医療の質の向上や医療の効率化に資するイノベーション」を積極的に評価、創薬エコシステム・イノベーション拠点を構築、医薬品や医療機器のイノベーションを促進に向けた各種法規制の国際的調和の推進、質の高い効率的な医療の提供と医薬品や医療機器の研究開発の効率化に向けた「仮名加工医療情報」の二次利用にかかる法整備、臨床試験等に活用しうるデータの標準化と信頼性確保等の推進、フェムテック関連医療機器や医薬部外品の届出、認証の円滑化) 以前から指摘していることだが、同党の医療・社会保障政策は与野党すべてを見回しても、もっとも充実していると言っていい。そして今回の内容は昨年の参院選時のものとまったく同じである。まあ、作り込んでいるがゆえに今さら変更の必要はないということなのだろう。日本共産党現存する日本最古の政党(1922年結党)である同党だが、今回公表された医療・社会保障政策は、かなり数が多い。以下に列挙する(歯科は除く)。詳細は以下のとおり患者負担増や保険料の負担増を起こさないための国費投入・国庫負担の引き上げを行い、診療報酬のさらなる増額・改善を進め、医療従事者の賃上げを実現「地域医療構想」による病床削減、強引な病院統廃合の阻止医師養成数の削減計画を中止し、「臨時増員措置」を継続するなど医師の計画的増員を推進病院の勤務医などの時間外労働上限を引き下げ看護師の計画的な増員を推進OTC類似薬の「特別料金」徴収の阻止70歳以上の窓口負担を一律1割に引き下げ、軽減・無料化を推進1兆円の公費投入増で国保料を協会けんぽの保険料並みへ保険料の「均等割」「平等割」を廃止。「所得割」の保険料率の引き下げ、低所得世帯に重い「資産割」改善生活困窮者の国保料を免除し国庫で補填「国保の都道府県化」による国保料引き上げに反対保険料滞納者への支援なしの10割負担(特別療養費の支給)の中止保険料滞納者の生活相談による収納活動へ転換保険料・窓口負担の軽減障害者、高齢者などの医療費無料化(現物給付)を行う自治体への国保の国庫負担を減額制度の中止国保法第44条の規定にもとづく、生活困窮者の窓口負担(一部負担金)の減免を積極的に推進国保組合が行う独自給付への国庫補助削減を止めて拡充へ18歳までの医療費無料化現役世代の窓口負担の2割への引き下げ高額療養費制度の改善・拡充後期高齢者医療制度の保険料・窓口負担の引き上げを中止。制度を廃止高齢者医療への国庫負担を増額し、現役世代の支援金負担、高齢者の保険料負担を軽減マイナ保険証の強制をやめて健康保険証を存続資格確認書はマイナ保険証の有無に関係なく国民全員に交付不具合続出のマイナカードによるオンライン資格確認の中止・見直し「子ども・子育て納付金」の廃止高額療養費制度の患者負担増案の“復活”を許さず、制度の改善高額療養費制度の負担限度額の上限を引き下げ、「1%」の定率部分を廃止高額療養費限度額の設定を“月ごと”から“治療ごと”に変更世帯の所得区分ごとに年間を通じた高額療養費負担上限額を設定3疾患(血友病、HIV、人工透析の腎臓病)限定の「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」を拡大し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養費給付制度(仮称)」を創設新型コロナ感染症の抗ウイルス薬などに公費補助の仕組みを設定し、患者の自己負担を、インフルエンザのタミフル並みに新型コロナワクチン接種の経済負担軽減の仕組みを創設新型コロナワクチン接種後の有害事象の原因を徹底究明と接種と症状との因果関係の認定に至らなかった事例も含めた幅広い補償・救済コロナ感染者や疑いのある人に対する十分な検査と治療の体制整備(救急・入院の拡充など「コロナ以外」の医療の逼迫が起こらないようにする体制の強化、高齢者・障害者施設、医療機関などにおける検査等の防護措置の実施を国が支援)国の負担で肺・心臓の長期的障害や筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)など、「コロナ後遺症」の治療・研究、患者への生活支援を推進コロナ危機の教訓を踏まえ感染症病床の2倍化、保健所の箇所・職員数の大幅増、集中治療室(ICU)設置を支援する制度の創設ワクチンや治療薬の研究・開発に対する財政支援、水際・検疫体制の抜本的な強化新興・再興感染症の発生・拡大に備える検査・医療体制を拡充し、体制・人員・資器材等を確保教育・保健の連携による性に関わる正しい知識の普及と予防法の周知、検査体制の強化、一般医療機関への情報提供による性感染症の予防・早期発見・治療の実現安全性・有効性が確認されたワクチンの公費接種事業を推進。ワクチン接種後に有害事象が起こった事例の原因の徹底究明と調査、被害者の治療・補償・救済を、国の責任で推進。医療費適正化計画の撤廃混合診療、保険外治療の拡大の阻止差額ベッド料などの自費負担を廃止株式会社による医療経営解禁を阻止協会けんぽへの国庫補助を法定上限の「20%」に引き上げ、労働者・中小企業の負担軽減にむけた、国の支援を強化国民の健診データ・情報の営利企業に引き渡しに反対薬価構造を根本的に見直し新薬などの高薬価是正で得られた財源を医療の充実や医療従事者の処遇改善などへ必須医薬品の安定供給を確保するため、後発品(長期収載品)の薬価を採算のとれる水準にするよう見直し。同時にメーカーに責任を課し、委託生産の規制強化や、原薬の国産化を推進無料低額診療への支援を強化し、薬剤費への制度適用を目指す医薬品・医療機器に偏った報酬評価のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価する診療報酬に改革「包括払い(定額制)」の導入・拡大に反対初・再診料、入院基本料の引き上げ標準算定日数を超えたリハビリを「保険外併用療養」とする制限を廃止人工透析「夜間・休日加算」を患者負担の軽減とともに適切な水準へ引き上げ出産一時金のさらなる増額と出産費用の無償化助産師の養成数を増やし、助産院へ公的支援助産院を地域の周産期医療ネットワークに位置付け、助産師と産科医の連携を国の責任で推進通常分娩の保険適用・窓口無料化の実現時は助産師による出産、妊産婦へのケアや各種指導なども産科医療機関との連携など安全確保を前提に保険適用医療事故の検証を行う調査機関に関する制度の改善産科医療補償制度の抜本的見直しを進めつつ、無過失補償制度を創設患者の権利を明記し、医療行政全般に患者の声を反映する仕組みをつくる「医療基本法」の制定現行の「診療明細書の発行」を見直し国の責任で、がんの専門医の配置や専門医療機関の設置を推進未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進保険診療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税を還付社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置、医療機関の概算控除の特例の継続・存続救急・救命体制への国の補助を2倍化。新しい国の補助制度をつくり、ICU病床(HCUを含む)の2倍化救急隊員の抜本増、ドクターヘリの充実、地域医療の再生とあわせた救急・搬送体制の整備・拡充国の責任で小児救急体制を整備し、新生児特定集中治療室(NICU)の増設はり・きゅうの保険適用の改善・拡充在宅医療・介護における駐車問題の解決 いやはや、今回の同党の政策の多いこと多いこと。ただし、率直に言えば既存政策への「反対」「撤廃」「中止」などの文言が多く、実現の可能性について、私個人は相当疑問符が付く。もっとも、どの政党も提案していない新型コロナワクチンの定期接種に関する接種費用補助は目を引く。この辺は他党に見習ってもらいたいものである。れいわ新選組ご存じ山本 太郎氏を代表とする同党だが、山本氏が「多発性骨髄腫の一歩手前」と公表し議員辞職。そして最近は共同代表の大石 あきこ氏が代わりにメディアに登場している。同党のマニフェストでは5つの大項目を掲げ、その下に具体的な政策を標榜している。以下、要約・列挙する。詳細は以下のとおり03.社会保険料は国のお金で引き下げる後期高齢者医療制度は廃止し、全額国費負担介護保険の国負担割合を50%以上に引き上げ04.生きててよかったと思える国~今すぐできる少子高齢化対策~介護・保育の月給10万円アップ民間事業者が少ない地域で介護士を公務員化し「公務員ヘルパー」を復活介護保険の利用者負担を一律1割。低所得者の利用料免除・減免を制度化要支援1、2のホームヘルプ、デイサービス利用の保険給付復活介護保険サービスを趣味など生活の充実にも利用可能に 上記以外にも「国立病院、公立病院の統廃合、病床の削減(地域医療構想)の中止」「マイナンバーカード廃止」「健康保険証の復活」などがあるが、基本的に同党も2025年の参院選と政策に変更はない。減税日本・ゆうこく連合衆院解散直前の立憲民主党と公明党の新党結成に反発した立憲民主党の原口 一博氏(元総務相)と、日本保守党を離党し、衆院内会派で「減税保守こども」を結成していた河村 たかし氏(元名古屋市長)、竹上 裕子氏、平岩 征樹氏、参政党を離党した鈴木 敦氏が参加して、原口・河村両氏が共同代表で結成した。当初5人の国会議員がいることで、政党要件を満たしたが、最終的には鈴木氏が出馬を見送ったため、現状は4人。今回は4つの大きなスローガンを公約として発表している。その中の1つ「三、日本救世【命・安全・教育】国民の命を利権から守り抜き、次世代へ豊かな国土を引き継ぎます」の項で以下のような公約を掲げている。詳細は以下のとおり命を守る決断:新型コロナワクチン(遺伝子製剤)の接種を直ちに中止し、被害の実態解明と全ての被害者の救済を最優先医療・福祉の最適化:ICTを活用した「かかりつけ医制度」の導入により、過剰医療や医療過誤を是正。難病・障害者基本法の改正により合理的配慮を徹底 2番目はまだしも、1番目ははっきり言っていただけない。ご存じのように共同代表の原口氏は、mRNAワクチンについて、かなり出所不明な情報を発信するワクチン懐疑派。このためmRNAワクチンの製造・販売元の1社であるMeiji Seikaファルマから、名誉棄損による損害賠償請求訴訟を起こされている。参政党さて、前回の参議院選も含め昨今の選挙では、国民民主党とともに議席を伸ばしている同党。以前も取り上げたように、失礼ながらややトンデモ政策が多いのだが、今回はどうだろう?今回は3つの柱と9の政策(<>内)を掲げ、9つの政策の下に詳細な説明も加わっているほか、分野別の詳細政策も掲げている。詳細は以下のとおり1の柱 日本人を豊かにする~経済・産業・移民~<政策1“集めて配る”より、まず減税>消費税減税と社会保険料軽減で国民負担率上限35%実現2の柱 日本人を守り抜く〜食と健康・一次産業〜<政策6 安心医療で健康国家>診療・介護・障害福祉報酬を抜本的に引き上げ、基礎年金の受給額の底上げ医療・介護・福祉従事者の賃金アップと過重労働の改善健康維持・重症化予防に取り組む人へのインセンティブ付与新型コロナ対応を検証し、実効的な感染症対策を再構築以下は「健康・医療」の分野別政策守る医療、正す医療。現場を救い、制度を持続させる仕組みを再構築診療・介護・障害福祉報酬(各サービスの公定価格)を抜本的に引き上げ、医療・介護・福祉従事者の賃金をアップし、過重労働を改善不必要な重複検査や過剰な治療・投薬等については、医学的妥当性を重視し、適正化かかりつけ医機能を重視し、継続的な健康管理や相談に取り組む医療機関を評価する報酬体系を検討OTC医薬品で対応可能な軽症疾患はセルフケアを基本とし、安易な処方を抑制(重症化や合併症のリスクが高い疾病での必要な治療・投薬を妨げるものではない)フリーアクセスで、いつでも何回でもどの医療機関でも受診ができる仕組みを見直す医療DXを活用し、業務効率化や研究開発に繋げる予防医療の推進により、医療費適正化と地域経済活性化を両立科学的根拠が確立した予防医療・重症化予防を段階的に保険対象へ生活習慣病、フレイル、認知症等について、予防・再発防止に取り組んだ医療機関を評価する制度を導入健康診断、重症化予防、生活習慣改善等により、医療費適正化に貢献した方を評価する仕組みを導入。評価に応じて、国内旅行クーポンや地域消費につながるインセンティブ制度を検討。新型コロナ対応とmRNAワクチン施策の検証~次なる感染症に備えるための、責任ある再構築政府で新型コロナ対応およびmRNAワクチン施策全体について、独立性・透明性を確保した検証実施を求め、検証結果を国民に分かりやすく公表mRNAワクチンは短期的な効果だけでなく、中長期的影響を見据えた安全性評価と治験・調査を徹底新型コロナウイルスを含む新興感染症でウイルスの発生経緯・拡大要因・対応について、政府が専門的かつ独立性の高い検証を実施WHOなど国際機関の情報や勧告などは、日本の実情に即して妥当性を科学的に評価し、主体的に判断できる体制を整備。国際機関の判断が日本の状況に適さないと合理的に判断される場合は、国内専門機関の評価を優先できる制度設計高リスク病原体を扱う国内研究施設について、立地、管理、運用に関する安全基準を厳格化し、事故・流出リスクを最小化科学的根拠の明確な提示と、国民一人ひとりの自己決定権を最優先とするワクチン政策ワクチン接種は、年齢・基礎疾患・重症化リスクを踏まえた任意接種を原則効果と副反応などのリスクについて、国民に分かりやすく情報提供接種後の健康影響について、中長期的な追跡調査と結果の公表を実施医師による副反応報告と健康被害救済制度への協力体制を強化がん・難病の“治療と生活”を国の責任でしっかり守る総合支援がん・難病に関し、国の責任で「治療と生活」を守る。診断の遅れ、手続きの壁、医療格差、地域格差をゼロへがん・難病の患者が抱える就労・学業・介護・移動・家族負担を含む「生活困難」に対し、医療にとどまらず、福祉・労働・教育・地域政策を束ねて一体で実装治療法の確立と新薬開発支援を拡充し、実用化までの期間短縮。そのための研究投資とデータ基盤整備を推進有効性が確認されたがん検診の費用補助等により、受診率を全国的に引き上げ老老介護やヤングケアラーを地域全体で支える仕組みを構築介護を社会の基盤へ:地域包括ケア強化と年金改革で老後不安を解消「65歳以上を高齢者」の定義の見直し介護報酬を引き上げ老老介護や介護離職を防ぎ、制度と地域で支える仕組み作り加算の申請手続きなど、行政が現場に要求する過剰な負荷を減らし、DX化も推進介護・医療・住まい等を包括的に捉えて、地域で密に連携する仕組み作りフレイル・認知症予防への積極的取組、地域の居場所・見守りを国が支援本人が望んでいない終末期における過度な延命治療を見直す本人の意思を尊重し、医師の法的リスクを回避するための尊厳死法制を整備人生会議(ACP)、事前指示書、生命維持治療に関する医師の指示書(POLST)の普及と制度的位置づけの明確化緩和ケア、在宅看取り、ホスピス等、尊厳を保持した医療の拡充終末期の延命措置医療費の負担の在り方の見直し さてざっと見まわすと、以前に本連載で批判的に捉えた予防医療のインセンティブ(Go Toトラベル)やすべてのワクチンを任意接種にするなど、まるで米国・保健福祉長官ケネディ氏のような政策が目につく。一方、がん・難病でのデータ基盤整備や介護での加算申請手続きの軽減などは玄人的な政策がある点も目を引く。誰かが入れ知恵したのだろうか?日本保守党移民反対を前面に打ち出す同党の医療・社会保障政策は結党以来、まったく変更はなく以下の2点である。詳細は以下のとおり移民政策の是正―国益を念頭に置いた政策へ健康保険法・年金法改正(外国人の健康保険・年金を別立てに)教育と福祉出産育児一時金の引き上げ(国籍条項をつける) そもそもシングルイシューの政党と言ってもよく、有体に言えば、少なくとも現時点では社会保障政策自体にそれほど強い関心はないのだろう。社民党旧日本社会党を源流とし、社会民主党、社民党と名称を変えてきた同党だが、最盛期の日本社会党時代に衆院で166議席も有していた議席は今やゼロ。参院で2議席のみである。今回は「社民党8つの提言」の中で「最低保障年金制度の樹立で老後の安心を!介護と医療の負担を軽減!」を掲げ、以下のような政策を提唱している。詳細は以下のとおり介護報酬を引き上げ、介護従事者の待遇を改善して人手不足を解消。混合介護と自由診療を規制高額医療費や一般用医薬品(OTC)医薬品の自己負担増に反対マイナ保険証の取得強制に反対し、紙の健康保険証を継続国公立病院の統廃合を認めない 今回唱えている政策は、ほとんどが前回の参院選時に掲げていたもの。唯一異なる点があるとするならば、「混合介護」と表現している介護の保険外サービス利用と自由診療の規制の点である。チームみらいAI研究者だった安野 貴博氏が創設した新党で、昨年の参院選では安野氏自身が比例で1議席を獲得して政党要件を満たした。2024年東京都知事選挙に立候補した時に本連載でも本人に取材し、安野氏の政策はアジャイルな設計で、有権者からの意見を受け付け柔軟に変化することがわかった。そのため、ここに記述したものも投票日までに変更されている可能性がある。政策は大きく3つの大項目で構成され、その下にテーマ(<>内)、さらに個別政策という構成。以下、要約・抜粋する。詳細は以下のとおり(2)「今」の生活をしっかり支援<経済財政・社会保障>現役世代の社会保険料負担を軽減し、フェアな税・社会保障制度を目指す「税収」(1)現役世代の過度な負担を回避し、国民全体で支えられる方法を検討(2)入国税や非居住外国人に対する固定資産税の引上げ、外国人旅行者の消費税免税制度の見直しなど日本の生活者に影響の小さい歳入源の拡充も検討「支出」影響が大きい方への配慮を行いながら、医療費の自己負担割合の一律3割を目指す。 加えて、「医療」パートに示す制度改革に取り組む<医療>1.医療の有効性・重要度に応じたきめ細やかな自己負担へ高額医療費制度の上限の拙速な引き上げを見直し中長期的に診療行為のエビデンス、費用対効果や重症度に基づく自己負担割合の複数段階化を検討電子レセプトに連携し窓口で即時に自己負担額が算出できるAI、システムの開発を支援。医療DXを推進する支援の枠組みも整備2.治療成果に報いる医療アウトカム評価制度の導入「どれだけ診療が行われたか」だけでなく、「どれだけ良くなったか」にも報いる医療制度への転換を目指し、成果連動型の診療報酬制度を導入(治療の効果が高い医療機関に対しての報酬加算、患者に対しての還元を設計し、医療機関・患者の双方に動機づけを行う)診療データを匿名化し、全国医療データベース(NDB)で一元管理。AIを活用した公平で迅速な評価を行う仕組みを整備(電子カルテの標準化、相互運用性の確保を推進。診療記録や検査結果をデータ化して治療成果を判定、成果加算が自動的に反映される仕組みを設計。アウトカム評価指標の提出、確認が行われることで医療機関の負担が増えないよう、民間企業と連携した電子カルテの解析システムの開発を促進)3.オンライン診療/処方受け取り方法を充実し、通院のない受診を実現オンライン診療普及のための診療報酬、インセンティブの設計(オンライン診療を普及促進の診療報酬の加算を検討)安全性を担保するためのガイドライン整備(本人確認、重症化時のバックアップ体制など、オンライン診療を安全に行い、標準的なサービスを担保するための規定を整備)薬の受け取りまでオンラインで完結するための枠組みの整備(自動運転やドローンでの配送物流コストの診療報酬での手当を検討)4.画像診断AIで見逃しリスクと医師不足の解消を同時にシステム導入費の補助による画像解析システムの導入診断AIへの加算を制定し継続利用を促進。AI画像解析の成果について評価を実施人とAIが協働する医療のルール整備<福祉>5.福祉・介護従事者の処遇改善・テクノロジーによる業務負担軽減を推進障害福祉・介護従事者の給与水準を全産業平均に近づける賃上げ方策の検討テクノロジー活用推進、福祉・介護従事者の待遇改善を目的とした基本報酬改定の検討生産性向上推進体制加算の拡充とテクノロジー活用を標準とした新たな報酬類型を創設施設類型を中心に進められている生産性向上推進体制加算の適用を在宅系サービスへ拡大福祉・介護職員等処遇改善加算による賃上げ効果を向上のため、テクノロジー活用と経営改善による利益を福祉・介護職員へ還元する制度の改定 さて比較的AIに懐疑的な人は、これらを見て「テクノロジーで解決できるほど医療は簡単ではない」と言うかもしれない。ただ、ここで提言されている政策をよく読めば、実はテクノロジー一辺倒ではないことがわかるのではないだろうか?たとえば、医療者が嫌うであろう診療報酬のアウトカム評価も何を行ったかの実績評価との併用で語っている。また、ここでは私が要約したが、実はチームみらいのホームページに行くと、それぞれの政策を掲げるテーマの背景まで深く分析している。私見を言えば、既存政党は長らく政治に関わりながら、こうした背景分析をきちんとしているだろうか?ここまで超長文、かつかなり駆け足で各党の政策を紹介した。このように駆け足になったのはひとえに戦後最短の選挙期間というのが最大の理由であるため、ご容赦願いたい。さて8日の投開票結果はいかに?

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第47回 脅威の致死率「ニパウイルス」について、私たちが知っておくべきこと

南アジアを中心に、散発的ながらも深刻な被害をもたらし続けている「ニパウイルス」。高い致死率とパンデミックを引き起こす潜在的なリスクから、世界保健機関(WHO)も「最優先で対策すべき病原体」の一つに指定しています1)。日本とニューヨークの医療現場ではもちろん出会ったことのない感染症ではありますが、最近になりインドで感染者が確認され、話題となっています。今回は、このウイルスの正体や感染の仕組み、そして希望の光となりうるワクチン開発状況について、これまで報告されている論文に基づいて解説します。「最優先病原体」ニパウイルスの正体とは ニパウイルスは、1998年にマレーシアで初めて確認されたウイルスで、オオコウモリを自然宿主としています1)。当初はブタを介してヒトへ感染しましたが、その後のバングラデシュやインドでの流行では、ウイルスに汚染されたナツメヤシの樹液を摂取することによる感染や、ヒトからヒトへの直接感染も確認されています2)。 このウイルスが恐れられている最大の理由は、その高い致死率にあります。流行の場所やウイルスの変異などによっても異なりますが、致死率は40%から、高い場合では75〜100%にも達すると報告されています1, 2)。ただし、新興感染症が生じた場合の常ですが、軽症者や無症状の患者は検出されていない可能性があり、実際の致死率は報告されている数値よりも低くなる可能性が高いと考えられます。しかしいずれにしても、新型コロナウイルスと比較すると、感染した場合の重症度は桁違いでしょう。 感染すると、発熱、頭痛、筋肉痛といった風邪のような症状から始まり、多くの場合は急速に悪化して重篤な脳炎を引き起こします2)。けいれんや意識障害が現れ、発症からわずか24〜48時間で昏睡状態に陥ることもまれではありません1, 2)。また、回復した場合でも、約20%の人に神経学的な後遺症が残るとされており、長期的な生活の質への影響も甚大とされています1)。ヒトからヒトへはどう広がるのか? 一般的にニパウイルスのヒトからヒトへの感染伝播(基本再生産数)は起こりにくいとされていますが、特定の条件下では「スーパースプレッダー」のような現象が起こりうることも指摘されています。この点について、バングラデシュでの14年間にわたる調査データがNew England Journal of Medicine誌に掲載されているのでご紹介します3)。 この研究によれば、ヒトからヒトへの感染リスクを高める要因として、呼吸器症状、年齢、濃厚接触かどうかといった点が指摘されています。 呼吸困難などの呼吸器症状がある患者は、そうでない患者に比べて、他者に感染させるリスクが劇的に高いようです。この研究では、呼吸器症状のない患者からの感染拡大は、きわめてまれであったのに対し、呼吸困難を伴う患者は感染源になりやすいことが示されています3)。これは、咳などによる飛沫が感染の主要なルートとなりうることを裏付けています。 また、患者の年齢が高い場合や、看病などで長時間(とくに48時間以上)患者と接した場合、または患者の体液に直接触れた場合に、感染リスクが有意に増加するようです。実際、配偶者への感染率は他の親族よりも高いという結果が報告されています3)。 こうしたデータは、私たちが住む地域で万が一感染者が発生した場合にどう行動すべきかを教えてくれます。つまり、呼吸器症状のある患者との接触には飛沫感染予防策を含む最大限の警戒が必要で、体液への曝露を防ぐための厳重な感染防御策も不可欠だということです。進むワクチン開発 現在、ニパウイルス感染症に対して承認された特効薬やワクチンは残念ながら存在しません1)。治療はあくまで症状を和らげる対症療法に限られており、これが高い致死率が報告される一因となっています。リバビリンなどの抗ウイルス薬が試されたこともありますが、その効果は限定的あるいは不明確のようです1)。 しかし、希望がまったくないわけではありません。すでに、ニパウイルスワクチンの第I相臨床試験の結果が発表されています4)。 この試験で用いられたのはサブユニットワクチン。これは、ニパウイルスと非常に似た構造を持つヘンドラウイルスのタンパク質(G糖タンパク質)を利用したもので、交差免疫(似たウイルスに対する免疫反応)によってニパウイルスも防ごうという戦略です。 この試験は18~49歳の健康な成人を対象に行われていますが、深刻な副反応や死亡例は報告されず、主な副反応は注射部位の痛みなどの軽度なものでした。 また、100μgのワクチンを28日間隔で2回接種したグループで最も高い効果が得られ、2回目の接種から7日後には、ニパウイルスに対する中和抗体(ウイルスを無力化する抗体)が劇的に上昇しました4)。 この結果は、まだ初期段階の試験ではあるものの、将来的にこのワクチンが実用化されれば、流行地域で感染拡大を防ぎ医療従事者を守る予防接種として使える可能性を示唆しています。今、どう向き合うか ニパウイルスは、現時点ではヒトからヒトへの感染伝播が起こりにくい以上、日本国内で大規模な感染流行が起こったり、世界的なパンデミックを起こすリスクは低いと考えられます。そこは冷静に捉えておくべきでしょう。しかし、グローバル化が進む現代において「対岸の火事」と決めつけることもできません。 同時に、私たち人間は無力でもありません。ワクチンのような科学の進歩が、着実に解決への道を切り開きつつもあります。今私たちに必要なのは、「ただ恐れる」ことではなく「解像度の高い理解」でしょう。病原体が身近になればなるほど、誤情報も増加します。データが示す科学的根拠とともに、今後の動向を冷静に見つめていく必要があります。 1) Madhukalya R, et al. Nipah virus: pathogenesis, genome, diagnosis, and treatment. Appl Microbiol Biotechnol. 2025;109:158. 2) Ganguly A, et al. The rising threat of Nipah virus: a highly contagious and deadly zoonotic pathogen. Virol J. 2025;22:139. 3) Nikolay B, et al. Transmission of Nipah Virus - 14 Years of Investigations in Bangladesh. N Engl J Med. 2019;380:1804-1814. 4) Frenck RW Jr, et al. Safety and immunogenicity of a Nipah virus vaccine (HeV-sG-V) in adults: a single-centre, randomised, observer-blind, placebo-controlled, phase 1 study. Lancet. 2025;406:2792-2803.

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日本人高齢者の緊急入院で死亡率が高いのは? インフルvs.コロナvs.RSV

 50歳以上(平均年齢81.4歳)を対象とした前向きコホート研究において、急性呼吸器症状による緊急入院では、RSウイルス(RSV)陽性者がSARS-CoV-2やインフルエンザA/B陽性者と比較して、30日全死亡率が高かった。このことからRSV感染症は、高齢者の看過できない死亡リスク因子であることが示唆された。本研究結果は、森本 剛氏(兵庫医科大学)らによって、Clinical Microbiology and Infection誌オンライン版2026年1月10日号で報告された。 研究グループは、日本の3施設(島根県立中央病院、洛和会音羽病院、奈良市立病院)において、急性呼吸器症状または徴候を呈して緊急入院した50歳以上の成人を対象に、前向きコホート研究「EVERY study」を実施した。登録期間は2023年7月1日~2024年12月31日とした。入院後24時間以内に採取された鼻咽頭ぬぐい液を用いて、FilmArray呼吸器パネル2.1による多項目遺伝子検査を行い、RSV、SARS-CoV-2、インフルエンザA/Bの陽性割合と臨床転帰(30日全死亡、下気道疾患[LRTI]、modified LRTI[画像所見を組み込んだ定義])を検討した。また、ワクチン接種歴(COVID-19[新型コロナウイルス感染症]ワクチンとRSVワクチンは過去に1回以上接種で接種あり、インフルエンザワクチンは当該シーズンに1回以上接種で接種ありとした)も調べた。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった3,067例(平均年齢81.4歳、男性55.3%)において、各ウイルスの陽性割合は、インフルエンザA/Bが2.3%、SARS-CoV-2が18.0%、RSVが1.6%であった。・解析対象(3,067例)のワクチン接種割合は、インフルエンザワクチン37.9%、COVID-19ワクチン62.3%、RSVワクチン0%であった。・抗ウイルス薬の投与割合は、インフルエンザA/B群62.3%、SARS-CoV-2群71.8%、RSV群0%であった。・30日全死亡率は、インフルエンザA/B群が2.9%であったのに対し、SARS-CoV-2群8.4%、RSV群14.3%であった。・インフルエンザA/B群を対照とした場合の30日全死亡の調整オッズ比は、SARS-CoV-2群が2.9(95%信頼区間[CI]:0.83~17.9)、RSV群が5.2(95%CI:1.2~36.7)であり、RSV群が高かった。・入院時のLRTIの割合は、インフルエンザA/B群88.4%、SARS-CoV-2群82.8%、RSV群87.8%であった。modified LRTIは、それぞれ95.7%、93.1%、93.9%といずれも高率であった。 本研究結果について、著者らは「急性呼吸器症状で緊急入院する高齢者において、RSVはインフルエンザやCOVID-19よりも高い死亡率に関連するリスク因子であった」と結論付けている。また「RSV陽性者の高い死亡率の背景には、抗ウイルス薬の使用機会がないことやワクチン未接種が影響している可能性がある」と考察し、日常診療におけるRSVの認識向上とともに、ワクチン接種を含む予防の重要性を強調している。

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RSV感染症とインフルの症状を比較、RSV感染症の重症化リスク因子は?

 RSウイルス(RSV)とインフルエンザウイルスはいずれも下気道感染症の主要な原因であり、冬から春にかけて流行することが多い。従来RSVは主に乳幼児の感染症として認識されてきたが、近年では、高齢者や基礎疾患を持つ人を中心に、成人においても重篤な下気道感染症や合併症を引き起こすとの報告が相次いでいる。こうした背景から、両ウイルスの臨床的特徴や予後への影響を比較した研究が行われた。中国・国立呼吸器疾患臨床研究センター(北京)のRui Su氏らによる本研究の結果は、International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2026年1月9日号に掲載された。 本研究は北京市の中日友好病院において、呼吸器疾患の流行期(2023年11月1日~2024年1月30日)に実施された。検査でRSVまたはインフルエンザA型の感染が確認され、入院した全成人患者を対象とした。RSV群、インフルエンザ群、両ウイルスの重複感染群の3群に分類し、臨床的特徴、併存疾患、治療法、合併症、転帰などを比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者538例の内訳は、RSV群162例(30.1%)、インフルエンザ群355例(66.0%)、重複感染群21例(3.9%)であった。重複感染群は最も高齢(中央値72歳)で喫煙者の割合が著しく高く(90.5%)、低酸素血症(71.4%)や呼吸困難(76.2%)を呈する頻度が高かった。・RSV群では痰を伴う咳の頻度が高く(62.3%)、インフルエンザ群は発熱(64.8%)および筋肉痛(14.6%)の頻度が高かった。・抗ウイルス療法の実施率はRSV群で最も低かった(24.1%)。一方で、抗ウイルス療法の実施率が最も高いインフルエンザ群において、合併症発症が最も多かった(99.2%)。・人工呼吸器の使用率は重複感染群で最も高かった(42.9%)ものの、全死亡率およびICU入院率では3群間で差を認めなかった。・RSV群の多変量解析では、喫煙(調整済みオッズ比[aOR]:2.61)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(aOR:2.99)、慢性心不全(aOR:3.71)、肺炎(aOR:3.14)が独立した予後不良因子だった。 研究者らは「RSVおよびインフルエンザウイルス感染症は合併症の負担が大きいという共通点はあるが、臨床的特徴はそれぞれ異なっている。COPD、心不全、肺炎を伴うRSV患者はよりリスクが高く、重複感染は人工呼吸器使用頻度の増加など、重症度をさらに深刻化させる。このため、RSVワクチン接種を含む、個別化された予防・治療戦略が必要である」としている。

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抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化には反対/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、1月7日に定例の記者会見を開催した。会見では、松本氏の年頭あいさつのほか、抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化に関するパブリックコメントへの意見、赤ひげ大賞の受賞者発表などが行われた。 松本氏は年頭のあいさつとして干支の「午」に触れ、自身が年男であることから「地域医療を守るという強い決意のもと、情熱的でかつエネルギッシュな1年としたい」と語った。また、箱根駅伝の青山学院大学の連覇を例に「選手への指導体制や人材育成、サポートなどが連覇に大切であり、これは医療にもつながる」と述べた。 2025年について参議院選挙や年末の補正予算編成、そして、令和8年度の診療報酬改定について振り返るとともに「OTC類似薬や高額療養費など、未解決の課題についても医療現場の意見が表明できる場に参加していきたい」と語った。 そして、2026年の抱負については、高市 早苗総理大臣が先ごろ表明した「国民会議」の立ち上げについて、さまざまな手段で医師会の意見を主張していくこと、現在最多の会員数17万8,593人を本年さらに更新できるよう、「引き続き努力し、会員数だけではなく、会員全体の力もしっかりと伸ばしていきたい」と抱負を述べた。個人にリスクを負わせるスイッチOTC化には反対 「抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化に関するパブリックコメント」について、常任理事の今村 英仁氏(公益財団法人慈愛会 理事長)が、医師会の考えを説明した。「抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化」について、医師会は反対の意を表明すると述べた。 その理由として以下の6つの項目を挙げた。・インフルエンザは、発熱やせきなどの軽症例にとどまらず、肺炎や脳症などの重篤な合併症を引き起こしうる感染症である。そのために抗インフルエンザ薬は、発症時期や症状の経過、基礎疾患の有無、年齢などを総合的に評価した上で、医師の管理下で適正に使用されるべき医薬品である。・スイッチOTC化により、医師の診断を伴わない患者の自己判断使用が拡大すると、「インフルエンザ以外の疾患に対する誤用」「投与開始時期を誤ることによる効果低下」「受診遅れによる重症化リスクの増大」などのさまざまな事態が懸念される。・抗インフルエンザ薬の不適切使用は、耐性ウイルス出現のリスクを高め、社会全体の感染症対策を脅かす公衆衛生上の課題になる。・高齢者や小児、妊婦、基礎疾患を有する方など、重症化リスクの高い人々に対しては、抗ウイルス薬の使用可否や投与方法を慎重に判断する必要があるが、こうしたリスク評価を個人の自己判断に委ねることで、重症例の増加や救急医療などの医療資源のひっ迫を招きかねない。・インフルエンザ流行期における受診動向や急性呼吸器感染症の感染状況の把握は、医療機関を通じて行われてきたことを踏まえ、スイッチOTC化により医療機関を介さない中途半端な治療が広がれば、流行状況の把握や適切な対策立案が困難となり、わが国全体の感染症対応力を低下させる恐れがある。・医薬品供給問題について、医療用製造ラインの一部をスイッチOTC製造ラインに変更することになれば、医療用抗インフルエンザ薬が必要なときに医療現場に届かないことが懸念される。 おわりに今村氏は、「社会保険料の削減を目的としたOTC類似薬やスイッチOTC化の推進は、必要なときに適切な医療を受けられない国民が増えることが危惧される。日本医師会としては、医師の診断と治療の下で国民の健康と安全を守り、国民皆保険制度を堅持する姿勢で今後も対応する」と述べた。 最後に常任理事の黒瀬 巌氏(医療法人社団慶洋会 理事長)が、第14回「日本医師会 赤ひげ大賞」として、大賞受賞者5人と功労賞受賞者20人の決定を報告し、会見を終えた。

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ヘルペス陽性早期アルツハイマー病、バラシクロビルは有効か?/JAMA

 神経科学的、疫学的、および電子的健康記録を用いた研究において、単純ヘルペスウイルス(HSV)がアルツハイマー病(AD)の病態形成に関与する可能性が示唆されている。米国・New York State Psychiatric InstituteのD. P. Devanand氏らは、早期AD症状を有するHSV(HSV-1またはHSV-2)陽性の患者を対象に、HSVに有効な抗ウイルス薬であるバラシクロビルの臨床的ベネフィットを検討するプラセボ対照無作為化試験「VALAD試験」を実施。主要アウトカムの認知機能の悪化に関して、バラシクロビルの有効性は示されなかったことを報告した。著者は、「早期AD症状を有するHSV陽性患者に対する治療に、バラシクロビルは推奨されないことが示唆された」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年12月17日号掲載の報告。対プラセボで78週の認知機能の変化を評価 VALAD試験は、臨床的にADが疑われると診断またはADバイオマーカーが陽性で軽度認知障害(MCI)と診断され、HSV-1またはHSV-2の血清抗体検査(IgGまたはIgM)が陽性、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが18~28の成人を対象とした。 試験は、米国の記憶障害に関する外来専門クリニック3施設で実施された。被験者募集は2018年1月~2022年5月に行われ、適格被験者はバラシクロビル4g/日投与群または適合プラセボ群に無作為に割り付けられ追跡評価を受けた。最終フォローアップは2024年9月であった。 主要アウトカムは、11項目のAlzheimer's Disease Assessment Scale Cognitive(ADAS-Cognitive)サブスケールスコア(範囲:0~70、高スコアほど障害が重いことを示す)について、78週時点における最小二乗平均(LSM)変化量であった。 副次アウトカムは、(1)Alzheimer's Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living(ADCS-ADL)スケールスコアのLSM変化量、(2)6つの脳領域(内側眼窩前頭皮質、前帯状皮質、頭頂葉、後帯状皮質、側頭葉、楔前部)に関する、18F-florbetapirを用いたアミロイドPETの標準化集積比(SUVR、高スコアほどアミロイドが高レベルであることを示す)のLSM変化量、(3)4つの脳領域(扁桃体、海馬、嗅内野、海馬傍回)に関する、18F-MK-6240を用いたタウPETの側頭葉内側部SUVR(高スコアほどタウが高レベルであることを示す)のLSM変化量であった。 有害事象の発現頻度を安全性アウトカムとした。バラシクロビル群のほうが認知機能の悪化が大きい 120例が無作為化され(バラシクロビル群60例、プラセボ群60例)、うち93例(77.5%、バラシクロビル群45例、プラセボ群48例)が試験を完遂した。被験者120例は、平均年齢71.4歳(SD 8.6)、女性が55%、ADと診断された者が75%、MCIと診断された者が25%であった。人種別では白人が両群とも76.7%を占めている。 78週時点で、11項目のADAS-CognitiveサブスケールスコアのLSM変化量(主要アウトカム)は、バラシクロビル群10.86(95%信頼区間[CI]:8.80~12.91)vs.プラセボ群6.92(4.88~8.97)であり、バラシクロビル群がプラセボ群よりも認知機能の悪化が大きいことが示唆された(群間差:3.93、95%CI:1.03~6.83、p=0.01)。 副次アウトカムは、いずれも78週時点で、(1)ADCS-ADLスケールスコアのLSM変化量はバラシクロビル群-13.78(95%CI:-17.00~-10.56)vs.プラセボ群-10.16(-13.37~-6.96)であり(群間差:-3.62、95%CI:-8.16~0.93)、(2)18F-florbetapirアミロイドPET SUVRのLSM変化量は0.03(-0.04~0.10)vs.0.01(-0.06~0.08)であり(群間差:0.02、-0.08~0.12)、(3)18F-MK-6240タウPET側頭葉内側部SUVRのLSM変化量は0.07(-0.06~0.19)vs.-0.04(-0.15~0.07)であった(群間差:0.11、-0.06~0.28)。 最もよくみられた有害事象は、クレアチニン値上昇(バラシクロビル群5例[8.3%]vs.プラセボ群2例[3.3%])、COVID-19感染(3例[5.0%]vs.2例[3.3%])であった。

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HIV、免疫療法により抗ウイルス薬を中断可能か

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の長期的なコントロール、そして将来的には治癒につながる可能性に期待が高まる研究結果が報告された。HIV感染者10人を対象にした研究において、数カ月にわたる免疫療法の後に抗レトロウイルス療法(ART)を中断したところ、6人の患者で数カ月が経過してもウイルスが緩やかにしか増加せず、1人では18カ月以上にわたりウイルス抑制が維持されたことが示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医学部教授のSteven Deeks氏らによるこの研究結果は、「Nature」に12月1日掲載された。 世界保健機関(WHO)によると、HIV感染者数は世界中で約4000万人に上る。ARTは非常に効果的だが、生涯にわたって薬を服用する必要がある。この研究では、ARTを受けている10人のHIV感染者に対して、次の3段階の免疫療法が実施された。まずHIVのGag保存エレメント(CE)を標的としたDNAワクチンにIL(インターロイキン)-12を併用して初回接種(プライム)を行った後にMVAワクチンでブースト(強化)。次いで、ART継続中に2種類の広域中和抗体bNAb(10-1074、VRC07-523LS)とToll様受容体〔TLR〕9作動薬を投与。最後に、ART中断時に再びbNAb投与するというものであった。 2022年の動物実験では、同様の治療法を受けたサルのほとんどでサル版のHIVを抑制できたことが報告されている。この研究を率いた米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのDan Barouch氏は、「この手法は、ウイルスに対する免疫学的制御を強化すれば、ART中止後のウイルスの再増殖を防いだり遅らせたりできる可能性があるという考えに基づいている」と説明している。 Deeks氏は、「この結果は刺激的であり、30年にわたって治療中断の研究を続けてきた私にとっても、これまでに類を見ない予想外の結果だった」とワシントン・ポスト紙に語っている。他の専門家も、この研究結果には期待が持てることに同意しているが、対照群を使ったさらなる研究が必要だと指摘している。メルボルン大学(オーストラリア)ドハティ研究所所長のSharon Lewin氏は、「この研究結果に非常に興奮している。小規模研究ではあるが、この分野に新たな方向性を与えるだろう。それは、この分野が切実に求めているものだ」と同紙宛てのメールの中で述べている。 今回の研究参加者の1人であるTom Perraultさん(60歳)は、研究参加前の2005年からHIV治療薬を毎日服用していた。ワシントン・ポスト紙の報道によると、Perraultさんは本研究の治療を受けた後、2021年7月に毎日の薬の服用を中止した。Perraultさんは、「7月も、8月も、9月も、10月も、ウイルスが増殖することはなかった。ふと、『自分の体がウイルスを抑えている。治療がうまくいっているんだ。これは、研究者の予想を上回る結果だ』と思った」と同紙に語っている。 その後、秋にウイルスの再増殖が認められたが、この経験が彼に希望を与えた。Perraultさんは、「あのときに感じた感動の深さに驚いた。突然、希望を抱く勇気が湧いてきた。誰だって、希望は持ちたいものだ。もしこの治療法が現実となれば、世界にとってどれほど素晴らしい贈り物になることか」と語った。 本研究ではまた、ART中止後にウイルスが再び増え始めた際、早い段階で活性化したCD8陽性T細胞の増加量が多かった参加者ほど、ピーク後のウイルス量が低く抑えられていたことが示された。論文の上席著者であるUCSFのRachel Rutishauser氏は、「これらの人の体内では、ウイルスが出現するとすぐにCD8陽性T細胞が対応する準備ができていたということだ」と説明している。同氏は、「われわれは、これが臨床で導入すべき治療法だと主張しているわけではない。この研究を踏まえ、次に考えるべきは、T細胞をどうすればさらに強化できるのかということだ」と強調している。

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化学療法中のワクチン接種【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第6回

化学療法中のがん患者は、化学療法の影響や原疾患により免疫力が低下しているため、感染症に罹患しやすく重症化しやすい傾向があります。国内のガイドラインやASCOガイドラインおいても、がん患者の治療やケアにおいて適切なワクチン接種がもたらす良い影響が述べられています。今回は固形がん化学療法中の患者を想定した、5つの主なワクチンの特徴や効果、推奨される接種時期についてお話しします。1)インフルエンザワクチン背景がん患者がインフルエンザに罹患した場合、死亡のリスクが高いことが複数の研究から報告されています。とくに肺がんや血液腫瘍患者はより重症化するリスクが高いことが知られています。インフルエンザワクチンは、A型(H3N2・H1N1)とB型の3株を含む混合ワクチンであり、世界的流行株とWHO推奨株に基づき毎年選定されるため、毎年の接種が推奨されます。健康な人における有効性は70~90%程度とされていますが、流行株との一致度により変動します。予防効果と安全性複数の研究から、血清学的な反応は健康な人と比較して劣る可能性はあるものの、予防医学的な意義は明らかであることがメタアナリシスにより示されています。近年、高用量インフルエンザワクチン(商品名:エフルエルダ筋注)が承認され、米国では65歳以上のがん患者に高用量ワクチン接種が推奨されています。化学療法中のインフルエンザワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。注意点リツキシマブやオファツムマブ、オビヌツズマブなどの治療後は、少なくとも半年間はワクチン効果が期待できない可能性があります。また、免疫抑制薬を服用中の患者でも効果が低い場合があります。接種時期インフルエンザワクチンは10~12月までの接種が推奨されています。化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種するのが理想ですが、治療中に流行期を迎える場合は接種時期を調整する必要があります。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。2)肺炎球菌ワクチン背景日本の成人市中肺炎では、肺炎球菌が最も頻度の高い起炎菌です。65歳以上や糖尿病・心不全などの基礎疾患を有する場合には、重症感染症を起こしうるため、肺炎球菌ワクチン接種が推奨されています。国内データでは、侵襲性肺炎球菌感染症の死亡率は約19%と高く、患者の約7割は65歳以上です。また、固形がん患者や脾摘患者が肺炎球菌感染症に罹患した場合、非がん患者と比較して死亡のリスクが高いことが報告されています。予防効果と安全性肺炎球菌ワクチンによる抗体価の上昇は、化学療法中であっても健康な人と同等であると報告されています。化学療法中の肺炎球菌ワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。ワクチンの特徴ポリサッカライドワクチン(ニューモバックス[PPSV23]:定期接種)と結合型ワクチン(キャップバックス[PCV21]、プレベナー20[PCV20]、バクニュバンス[PCV15])の2種類があります。免疫力をつける力(免疫原性)はPCV21/20/15のほうがPPSV23より高いです。日本ワクチン学会・日本感染症学会・日本呼吸器学会では、がん患者へのPCV20の1回接種もしくはPCV15とPPSV23の連続接種を推奨しています。画像を拡大する接種時期肺炎球菌感染症は1年を通して発生するため、季節を問わず接種が可能です。化学療法開始前(少なくとも2週間前)に接種、もしくは化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。3)帯状疱疹ワクチン背景水痘帯状疱疹ウイルス(ヘルペスウイルス3型)初感染は水痘として発症し、感染後に後根神経節に不活性状態で長期間潜伏します。その後、加齢・疲労・病気などで免疫が弱まるとウイルスが再活性化し、帯状疱疹として発症します。症状は片側に帯状に広がる発疹と刺すような痛みが典型的で、約10%の症例で帯状疱疹後神経痛が発生し、QOLを低下させる原因になります。免疫不全のない患者と比較して、固形がん患者は約5倍、血液がん患者は約10倍帯状疱疹の頻度が高いことが報告されています。画像を拡大する安全性化学療法中の帯状疱疹ワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。生ワクチンは、免疫低下患者(がん薬物療法中やステロイド使用中)には接種不可です。接種時期化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種します。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。4)新型コロナ(COVID-19)ワクチン背景がん患者はCOVID-19に罹患すると重症化しやすいため、ワクチン接種の利益は大きいです。そのため、基本的には接種を検討すべきとされています。ただし、がんの種類や治療内容、免疫状態により、効果や副反応が異なる可能性があります。治療のタイミングにより接種時期を調整したほうがよい場合もあります。副反応が治療の有害事象と区別しにくい場合があるため注意が必要となります。総じて、患者ごとの状況に応じて主治医と相談して判断することが重要と考えられます。予防効果と安全性ワクチンを接種したがん患者約3万例を対象とした観察研究が報告されており、がん患者であってもCOVID-19ワクチンを2回接種することで感染リスクが低下することが示されています。一方でワクチンの感染リスク低下効果は58%(非がん患者:90%以上)であり、がん患者ではワクチンの効果が減弱する可能性が示唆されています。とくにワクチン接種前6ヵ月以内に化学療法を受けた場合はワクチンの効果が低いことが報告されています。定期的な追加接種が推奨され、感染時は早期の受診と抗ウイルス薬治療が重要となります。接種時期基本的に最新の推奨スケジュールに従った接種が推奨され、明確な最適時期はまだ不明ですが化学療法の開始前に接種して、化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期を避けて接種することが望ましいです。抗CD20抗体(リツキシマブやオビヌツズマブなど)治療後半年以内はワクチンの効果が乏しいことが示されています。注意事項ワクチン接種により、接種側の腋窩・鎖骨上窩・頸部リンパ節の腫大が報告されており、PETでも集積を認めることがあり、転移との鑑別が必要になる場合があります。画像検査の際にはワクチン接種歴と部位の情報を得ておくことが望ましいです。5)RSウイルスワクチン背景高齢者、慢性の基礎疾患(喘息、COPD、心疾患、がんなど)、免疫機能が低下している人は、RSウイルス感染症の重症化リスクが高く、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる可能性があります。また、RSウイルス感染症は、喘息、COPD、心疾患などの基礎疾患の増悪の原因となることもあり、日本では約6万3,000例の入院と約4,500例の院内死亡が推定されています。米国での大規模データ研究では、がん患者がRSウイルス感染症に罹患した場合、非がん患者と比較して死亡のリスクが2倍以上高いことが報告されています。画像を拡大する接種時期化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種します。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。1)Kamboj M, et al. JCO Oncol Pract. 2024;20:889-892. 2)日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会. 新型コロナウイルス感染症とがん診療について(医療従事者向け)Q&A:2021.3)国立がん研究センター:がん情報サービス4)日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン2022年版. 金原出版:2022.5)アレックスビー筋注用添付文書6)アブリスボ筋注用添付文書講師紹介

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成人のRSウイルスワクチンに関する見解を発表/感染症学会、呼吸器学会、ワクチン学会

 日本感染症学会(理事長:松本 哲哉氏)、日本呼吸器学会(同:高橋 和久氏)、日本ワクチン学会(同:中野 貴司氏)の3学会は合同で、「成人のRSウイルスワクチンに関する見解」を12月9日に発表した。 Respiratory syncytial virus(RSV)感染症は、新生児期から感染が始まり、2歳を迎えるまでにほとんどの人が感染するウイルスによる感染症。生涯獲得免疫はなく、成人では鼻風邪のような症状、乳幼児では多量の鼻みずと喘鳴などの症状が現れる。治療薬はなく、対症療法のみとなるが、ワクチンで予防ができる感染症である。 RSV感染症は、基礎疾患を有する成人ではインフルエンザと同程度の重症化リスクを持つと考えられており、高齢者などはワクチンの任意接種対象となっている。2026年4月からは妊婦に対しRSVワクチンが定期接種になることもあり、今後、RSV感染症の予防対策の重要性はますます高まると考えられている。 3学会では、今般の見解について、「現時点でのRSVワクチンの科学的な情報であり、また接種の必要性を考える際の参考としていただきたい」と述べている。高齢者のRSV感染症の疾患負荷をワクチンで防ぐ1)主旨 RSV感染症は、国内外の研究報告をふまえると、高齢者、慢性呼吸器疾患、慢性心疾患などの基礎疾患を有する成人には、インフルエンザと同程度の重症化リスクを持つと考えられている。高齢者施設やハイリスク病棟での集団感染も報告されており、公衆衛生危機管理上の重点感染症にも分類されるRSV感染症の感染対策として、高齢者へのRSVワクチンの接種を推奨する。 今後、わが国でも死亡転帰など重症化に関する高齢者のRSV感染症の疫学情報のさらなる蓄積が望まれる。2)主なワクチン 現在、わが国で接種できるワクチンは任意接種として2つの組換えタンパク質ワクチンとmRNA(2025年5月承認、今後発売)がある。3)国内の高齢者における疾病負荷 2022年9月~2024年8月の2年間にわたり国内の4つの2次医療圏の急性期医療機関で実施された積極的サーベイランス研究で、RSV感染症による入院率は65歳以上人口10万人年当たり1年目29例、2年目36例、18歳以上のRSV感染症の院内死亡率は7.1%と報告されている。 わが国の2015~18年の医療保険データベースMedical Data Vision(MDV)を用いたRSV流行期と非流行期の時系列モデリング解析によって、全国のRSV関連入院率を推定した研究によると、65歳以上のRSV関連呼吸器疾患の入院率は10万人当たり96~157例と示されている。また、RSV感染症の文献をシステマティックレビューした報告によると、わが国の60歳以上の年間のRSVによる急性呼吸器感染症患者数は約69.8万人、入院患者数は約6.3万人、院内死亡者数は約4,500人と推定されている。4)慢性心肺疾患患者ではRSV感染症の重症化リスクが高まる 慢性心肺疾患を有する患者では、RSV感染症は重症化リスクが高まることが知られている。米国・ニューヨーク州のサーベイランス研究では、65歳以上のRSV入院率は1.37~2.56/1,000例であり、慢性閉塞性肺疾患、喘息、うっ血性心不全患者の入院率は、これらのない患者と比較して、それぞれ3.5~13.4倍、2.3~2.5倍、5.9~7.6倍高いことが報告されている1)。5)RSV感染症はインフルエンザと同程度の疾病負荷がある わが国の1,038例の呼吸器症状を有する救急入院患者を対象とした2023年7~12月に行われた前向き研究では、RSV感染症は22例が報告され、院内死亡率は13.6%(3/22)であったのに対して、インフルエンザは28例が報告され、院内死亡例はなかった2)。呼吸器症状を有しPCR検査を実施した外来および入院患者541例を対象に2022年11月~2023年11月の期間に実施された後ろ向き研究では、RSV感染症とインフルエンザの割合はそれぞれ3.3%と1.8%だった3)。また、30日間死亡率は、RSV感染症が5.6%(1/18)、インフルエンザでの死亡例はなかった。4つの2次医療圏における積極的サーベイランスの研究でも、18歳以上の肺炎または急性呼吸器感染症の入院患者におけるRSVとインフルエンザウイルスの陽性率は、それぞれ2.8%と3.3%であり、院内死亡率はそれぞれ7.1%と2.0%だった4)。6)高齢者施設ではRSVの集団感染が発生している 高齢者の介護施設などからRSVの集団感染の発生が複数報告され、重要な課題となっている。RSV感染症の小児における全国流行の時期に、高知県の老人保健施設の入所者110例中49例が発熱し、31例でRSV迅速検査が陽性を示し、基礎疾患を有する4例の高齢者がRSV感染を機に死亡した5)。また、富山県の介護老人保健施設では、入所者と職員あわせて49例に発熱や鼻汁などの症状がみられ、3人のPCR検査および遺伝子系統樹解析で同一のRSVが検出され集団感染と確定された6)。7)高齢者へのRSVワクチンの接種を推奨 RSV感染症は、高齢者および慢性呼吸器疾患・慢性心疾患などの基礎疾患を有する成人において、国内外でインフルエンザと同程度の重症化リスク(入院率や死亡率)があることが報告されている。RSVは、高齢者および基礎疾患を有する成人において、呼吸器感染症の主要な原因ウイルスと考えられるが、成人のRSV感染症には、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような抗ウイルス薬は存在しない。現在、複数のRSVワクチンが承認されているが、いずれも高い有効性と良好な忍容性を示しており、予防接種のベネフィットはリスクを上回ると考えられる。公衆衛生危機管理上の重点感染症7)に指定されているRSV感染症の感染対策として、RSVワクチンの接種を推奨する。なお、わが国ではRSV感染症による死亡者数をはじめ全国的な疫学データが十分ではないことから、今後わが国でも、死亡転帰など重症化に関する高齢者のRSV感染症の疫学情報のさらなる蓄積が望まれる。■参考文献1)Branche AR, et al. Clin Infect Dis. 2022;74:1004-1011.2)Nakamura T, et al. J Infect Chemother. 2024;30:1085-1087.3)Asai N, et al. J Infect Chemother. 2024;30:1156-1161.4)Maeda H, et al. medRxiv. 2025 Jun 20. [Preprint]5)武内可尚、他. 臨床とウイルス. 2022;50:139-142.6)米田哲也、他. 病原微生物検出情報月報(IASR). 2018;39:126-127.7)第94回 厚生科学審議会感染症部会. 重点感染症リストの見直しについて(2025年3月26日)■参考成人のRSウイルスワクチンに関する見解

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移植後再発抑止のための新規治療開発/日本血液学会

 2025年10月10~12日に第87回日本血液学会学術集会が兵庫県にて開催された。10月11日、内田 直之氏(虎の門病院 血液内科)、Konstanze Dohner氏(ドイツ・University Hospital of Ulm)を座長に、JSH-EHA Jointシンポジウム「移植後再発抑止のための新規治療開発」が行われた。登壇者は、Luca Vago氏(イタリア・San Raffaele Scientific Institute)、河本 宏氏(京都大学医生物学研究所 再生免疫学分野)、中前 博久氏(大阪公立大学大学院医学系研究科 血液腫瘍制御学)、名島 悠峰氏(がん・感染症センター都立駒込病院 血液内科)。白血病の再発メカニズムを解明し、再発予防を目指す 急性白血病に対する同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)は、継続的に進歩している。しかし、再発は依然として大きな臨床課題であり、移植後の再発に対する普遍的に認められた標準治療はいまだ存在しない。ドナーリンパ球輸注(DLI)、サルベージ化学療法、二次移植などの介入はいずれも効果が限定的である。 また、治療耐性に関する新たな知見にも注目が集まっている。かつては、治療が十分に奏効しない場合は、薬剤の増量などで対応することが一般的であった。しかし近年は、治療そのものが腫瘍の変化を誘発し、多くの場合、初期治療で用いられた作用機序が再発メカニズムに影響を及ぼしている可能性が指摘されている。 最近の研究では、allo-HSCT後の再発は、多くの場合、白血病細胞がドナーの免疫系から逃れるために獲得した免疫回避機構に起因することが示唆されている。Vago氏は「allo-HSCTのメカニズムは非常に複雑であり、ドナーの種類や抗ウイルス薬などにより予期せぬ影響を受けると考えられる。そのため、臨床試験においては広範な適応症だけにとどまらず、個別のサブセットを対象とした検討が求められる。より詳細なデータを集積することで、さまざまな再発パターンやリスク因子をより適切に定義し、再発予防につなげることが可能となるであろう」と今後への期待を語った。多能性幹細胞から再生したT細胞製剤の開発状況 現在行われているCAR-T細胞療法をはじめとするadoptive T cell therapyは、主に「時間」「費用」「品質」という課題に直面している。これらの課題を解決するため、河本氏らは、ES細胞やiPS細胞(iPSC)といった多能性幹細胞を用いたT細胞作製法の開発を進めている。本講演では、その開発状況について解説が行われた。 まず、iPSC技術を用いて抗原特異的T細胞のクローニングと増殖を行い、抗原特異的CD8 T細胞をiPSCにリプログラム化する。さらにそのiPSCから、腫瘍抗原特異的CD8 T細胞を再生することに成功した。 また、CD8α-βヘテロダイマーを発現する強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を作製できる培養法も開発している。このアプローチをallo-HSCTに応用するため、T細胞由来ではないiPSCに外来性のTCR遺伝子を導入する方法も開発した。 そして現在、京都大学医学部附属病院では、2年後の開始を目指して、WT-1抗原特異的TCR導入HLAホモiPSCから再生した細胞傷害性CTLを用いた急性骨髄性白血病(AML)治療の臨床試験の準備を進めている。さらに、白血病プロジェクトと並行してCOVID-19に対するT細胞療法の開発にも着手している。COVID-19は免疫不全患者にとって依然として脅威であり、一定の頻度で長期化する。この課題に対処するため、ワクチン接種を受けた健康なボランティアから、日本人の約60%が保有するといわれているHLAクラスIアレルであるHLA-A*24:02に限定された複数のSタンパク質特異的TCR遺伝子のクローニングも行っている。その結果、Sタンパク質特異的TCRを効率的に発現するCTLは、SARS-CoV-2に感染した肺胞上皮細胞を殺傷することが示された。現在、藤田医科大学病院において本プロジェクトの臨床試験準備も進行中である。 これら複数のプロジェクトにおいてどのような結果が示されるのか、今後も注目される。Ph陽性ALLにおけるallo-HSCTの位置付けとTKI予防的投与への期待 フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)は、従来の治療では困難であるとされてきた。しかし近年、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)や二重特異性抗体の登場により、治療レジメンは一変した。これに伴い、これまで必須と考えられていたallo-HSCTを行わなくても長期生存を達成できる可能性が高まっている。移植適応は、画一的なアプローチから、遺伝子解析や微小残存病変(MRD)評価に基づく個別化アプローチへと移行しつつあり、有害事象の認められる患者に限定される傾向にある。 一方、移植適応患者においては、再発リスクを低減するためのTKI予防的投与が注目されている。しかし、allo-HSCT後のMRD陰性患者に対するTKI予防的投与と、MRD陽性を契機としたTKI先制的投与との間で、予後や有害事象発現率などの違いはいまだ明確でない。また、TKIが奏効する可能性の高い患者集団の特定、最適な薬剤選択、治療開始時期・期間の設定なども課題として残されている。TKIの移植片対白血病(GVL)効果への影響や、移植片対宿主病(GVHD)リスクを見極めつつ、有害事象を最小限に抑える最適な投与レジメンの確立が求められている。 実臨床では、MRD陰性で移植を受けた患者では最低2年間のTKI投与を行う傾向があるが、とくに高リスク患者では、患者の希望も考慮したうえで無期限に治療継続することが一般的となっている。これらの戦略の妥当性については、今後さらなる検証と評価が必要である。 中前氏は「TKIと二重特異性抗体の併用療法の可能性、予後に関連する新たな遺伝子異常の同定、次世代シークエンサーを用いた高精度・高感度MRDモニタリング技術の進歩は、Ph陽性ALLの治療成績を向上させ、さらにallo-HSCTの適応をより明確にすることが可能になる」と期待を述べた。移植後再発の克服を目指した最適な維持療法を探求 allo-HSCTは、AMLや骨髄異形成症候群(MDS)といった高リスク造血器悪性腫瘍に対する治療において欠かせない治療となっている。支持療法により非再発死亡率は低下したものの、移植後の再発は依然として治療失敗の主因となっている。とくに非寛解状態、複雑核型、TP53変異といった予後不良因子を有する患者において、移植後の再発は顕著である。強度減弱前処置の普及と適応拡大は、効果的な再発予防の必要性をさらに浮き彫りにしている。名島氏は、移植後維持療法戦略のための包括的な枠組みの原則に基づき、最新の臨床エビデンスとトランスレーショナルな視点に焦点を当て、本講演を行った。 再発の多くは allo-HSCT後6ヵ月以内に発生するため、早期介入が不可欠となる。維持療法は、寛解期の患者に対する「予防的アプローチ」とMRDに基づく「先制的アプローチ」の2つに大別される。予防的アプローチは再発予防の可能性を高める一方で、過剰治療のリスクを伴う。MRDに基づく治療戦略は、より標的を絞った治療といえるが、高感度な検出や最適な治療タイミングに留意する必要がある。 アザシチジン(AZA)は、その免疫調節作用と忍容性から、維持療法の候補として注目されている。名島氏らは、移植後のAZAの実現可能性を検証するため、日本で多施設共同第I相試験を実施している。さらに、AZAとゲムツズマブ オゾガマイシンの併用療法についても評価を行い、allo-HSCT後の維持療法としてAZAレジメンが忍容性と中程度の有効性を示したことを報告した。 FLT3-ITD変異陽性AMLは高リスクサブタイプであり、現在もFLT3阻害薬の評価が活発に行われている。移植後患者を対象としたMORPHO試験では、ギルテリチニブによる維持療法が検討されており、主要評価項目である無再発生存率は全体では有意差が得られなかったものの、MRD陽性患者では改善が認められた。フォローアップ解析により、MRD陽性が、とくにNPM1遺伝子重複症例で有益性を示す強力な予測因子であることが確認され、FLT3阻害薬はMRD依存的なベネフィットを示す可能性があると示唆されている。 現在の維持療法では薬理学的戦略が主流となっているが、免疫学的アプローチも注目されている。日本で広く使用されているDLIは、これまでの経験からも明らかなように、移植後の免疫学的維持療法として有望である。 最後に名島氏は「これらさまざまな研究やすべての努力が、最終的に allo-HSCTを通じてより多くの造血器悪性腫瘍患者の命を救うことに役立つことを願っている」と自身の思いを語り、講演を締めくくった。

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第286回 医師も誤解している?マダニによるSFTSの傾向と対策

INDEXマダニによるSFTSの発生率、過去最高に冬も要注意!?SFTSに対するアンコンシャスバイアス治療薬への期待度マダニによるSFTSの発生率、過去最高に今年はダニ媒介感染症の重症熱性血小板減少症候群(略称・SFTS)の患者報告が過去最高を記録している。国立健康危機管理研究機構が発表している感染症発生動向調査週報1)の最新データとなる2025年第42週(10月13~19日)時点では、従来の過去最多である2023年の134例を上回る174例の患者が発生。また、今年はこれまで患者報告がなかった北海道、秋田県、栃木県、茨城県でも孤発的な事例が報告されている。改めて基礎知識を整理すると、SFTSは日本では2013年に初確認されたダニが媒介するSFTSウイルスを原因とする新興の人畜共通感染症である。潜伏期間は6~14日で、主な症状は発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)、頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹。特徴的な点は、病名でもわかるように検査値での顕著な血小板減少(10万/mm3未満)である。そしてSFTSで何よりも恐ろしいのは致死率が10~30%で、国内に常在する感染症の中では劇症型溶血性レンサ球菌感染症の致死率約30%に次ぐことだ。徐々に患者報告数も報告地域も拡大する中、一般人、医療者ともに対岸の火事とは言えなくなっている。以前の本連載で新型コロナウイルス感染症が今も高齢者で猛威を振るっていることを記事化したが、この取材に応じてくれた岡山大学病院感染症内科准教授の萩谷 英大氏との取材時間は約2時間におよんだ。実はこのうちの約半分は新型コロナから脱線し、萩谷氏が日常診療で接するSFTSの話となった。これがきっかけで私が理事を務めるNPO法人・日本医学ジャーナリスト協会でも10月10日に萩谷氏にSFTSをテーマに講演をしてもらったが、その内容の中にはかなり示唆に富むものが多かったので、今回はその内容を紹介したい。冬も要注意!?講演では、萩谷氏が2013~22年までに国内報告されたSFTS803例の解析結果を紹介した。それによると、この10年間の都道府県別の報告増加率のトップ5は順に三重県、島根県、岡山県、大分県、熊本県。患者発生率と環境要因との関連を解析した結果では、西日本で有意差があった環境要因は農地面積と農業人口であり、2022年までの発生件数を2ヵ月単位で分析すると、発生ピークは5~6月で、流行期は5~10月だった。ここまでは医療者もおおむね違和感はなく受け入れられるだろう。しかし、今回の萩谷氏の講演ではSFTSの意外な一面も“明らか”にされた。まず、前出の解析結果のように一般的にSFTSはマダニの活動期である春から秋にかけて発生する感染症だと考えられているが、実は真冬でもSFTSは発生しているのだ。たとえば直近の2024年の感染症発生動向調査週報によると、第2週(1月8~14日)に島根県と山口県で各1例、年末の第51週(12月16~22日)に長崎県で1例が報告されている。春から秋の時期と比べれば数は少ないが、こと西日本では通年で警戒しなければならない感染症なのである。また、講演の中で紹介された和歌山県での野生(野生化)動物のSFTSウイルス抗体陽性率調査の結果によると、アライグマ、アナグマ、シカ、ノウサギでは30%以上、ハクビシンで20%以上にものぼる。一般的な理解は、こうした動物を吸血したマダニが動物の移動とともに人間の生活圏に近い藪や草むらなどで落下して定着し、そこに入り込んだ人間がこうしたマダニに咬まれることで患者が発生しているというもの。これはおおむね正しいだろうが、萩谷氏が講演内で提示した自験例2例はこの理解の範疇をやや超えるものだった。SFTSに対するアンコンシャスバイアス2例のうち1例は同じマダニが媒介する日本紅斑熱の患者、もう1例がSFTSである。前者の患者は岡山市中心部在住、後者の患者は岡山県西部在住で、ともに問診ではマダニに咬まれるような野山に入った形跡はなかったという。しかし、よくよく話してみると、日本紅斑熱の患者は「ちょうどそのころお墓参りに行きました…」と語り、聞き出してみると墓地のある場所はダニ媒介感染症の好発地域、そしてSFTSの患者は自宅住所を地図上で検索してみると、その自宅が山に隣接する形で存在していた。つまり実際の推定感染地点は、私たちが一見SFTSと無縁と思っている場所にも点在しているのである。ちなみに萩谷氏によれば、西日本地域でSFTSの診療経験が一定以上ある医師にとっては、風評被害などが考えられるため公には明らかにしないものの、周辺のダニ媒介感染症好発地域はほぼ頭に入っており、患者の居住地や移動先などの地名を聞くと、ある程度はSFTSの可能性が判別できるという。また、前出の野生動物のSFTS抗体陽性率のデータ提示の際、萩谷氏が併せて提示したのが複数のマダニに咬まれた鳥の写真。マダニは哺乳類だけでなく、鳥類や爬虫類まで吸血することは知られている。このことから北海道の孤発例については「渡り鳥などにくっついたマダニが本州から北海道に移動して上陸したのだろうと個人的には想像している」と話した。これらを総合すると、SFTSに対して私たちがおぼろげに抱く「マダニの活動が活発な春から秋にかけて野山に入ることで感染しやすく、西日本に多い感染症」というイメージは、半ばアンコンシャスバイアスになっていることを自覚しなければならない。治療薬への期待度一方、過去の本連載でも触れたが、SFTSについては2024年に抗ウイルス薬のファビピラビル(商品名:アビガン)が承認された。この点について萩谷氏は「ウェルカムな部分はあるものの、本当に良いのか?とも思っている」との見解を示した。その理由は▽薬価が1錠3万9,862円で10日間の標準治療(90錠)の薬剤費総額が約360万円▽これまでの臨床試験が単群で投与群の致死率が医師主導治験で17.4%、企業治験で13%にとどまる、からだ。萩谷氏は「今回の承認は既存の対症治療での致死率が最大30%で、それよりも低い致死率を達成したことでアビガンが承認されたと理解している。しかし、十分とは言えないエビデンスの中で360万円の治療を全例に行う気持ちにはなれないのが正直なところ」と話した。いずれにせよ患者報告が拡大する中で、今回の萩谷氏の話はSFTSが思った以上に厄介な疾患であり、決して油断が許されない現状があることを何よりも雄弁に物語っている。 参考 1) 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト:感染症発生動向調査週報一覧

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どう診る? 小児感染症-抗菌薬・抗ウイルス薬の使い方

小児感染症の抗菌薬・抗ウイルス薬の使い方に自信がつく! 臨床現場に必携の1冊「小児診療 Knowledge & Skill」第2巻小児科診療において、感染症治療は抗菌薬や抗ウイルス薬の基礎的知識が不可欠である。一方で、感染症には多様なバリエーションがある。エビデンスやガイドラインに忠実に従うだけでは対応が困難な場面に遭遇したときに、どう対応するか?本書は病院で診療する医師がよく遭遇する感染症、とりわけ抗微生物薬による治療が考慮されるものを中心にとりあげた総論にて感染症の診断と治療の基本的なアプローチ、細菌感染症に対する抗菌薬の使い方、新しい診断法や治療をふまえた抗ウイルス薬の使い方を解説各論にて個別の感染症の診断と治療を解説という特色で、各疾患に造詣の深い医師が執筆。トピックスや臨床的な疑問を含め通常の成書よりも一歩踏み込んだ内容とした。単なる知識の羅列ではなく、読者が明日の診療で「どう考え、どう動くか」の手がかりとなるような情報となっている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するどう診る? 小児感染症-抗菌薬・抗ウイルス薬の使い方定価8,800円(税込)判型B5判(並製)頁数368頁発行2025年10月総編集加藤 元博(東京大学)専門編集宮入 烈(浜松医科大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第281回 コロナ治療薬の今、有効性・後遺症への効果・家庭内感染予防(後編)

INDEXレムデシビルエンシトレルビル感染症法上の5類移行後、これまでの新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の動向について、感染者数、入院者数、死亡者数から薬剤に関するNature誌、Science誌、Lancet誌、NEJM誌、BMJ誌、JAMA誌とその系列学術誌に掲載され、比較対照群の設定がある研究を紹介した(参考:第277回、第278回、第279回、第280回)。今回はようやく最終回として前回と同じ6誌とその系列学術誌を中心に掲載されたレムデシビル(商品名:ベクルリー)、エンシトレルビル(同:ゾコーバ)に関する比較対照群を設定した研究を紹介する。レムデシビル新型コロナウイルス感染症の治療薬として初めて承認された同薬。当初は重症患者のみが適応だったが、その後の臨床試験結果などを受けて、現在は軽症者も適応となっている。新型コロナ治療薬の中で、日本の新型コロナウイルス感染症診療の手引き1)に定義される軽症、中等症I、中等症II、重症までのすべてをカバーするのはこの薬だけである。この薬に関して前述6誌の中で2023年5月以降に掲載された研究は、2024年6月のLancet Infectious Diseases誌に掲載された香港大学のグループによる研究2)である。この研究は評価したい因果効果をみるのに理想的な無作為化比較試験(target trial)をイメージして、可能な限りそれに近づけるように観察データ分析をデザインしていく手法「target trial emulation study」を採用したもの。利用したのはオミクロン株系統が感染の主流となっていた2022年3~12月の香港・HA Statistics保有の電子健康記録。この中からレムデシビル単独療法群(4,232例)、ニルマトレルビル/リトナビル単独療法群(1万3,656例)、併用療法群(308例)の3群を抽出し、主要評価項目を全死因死亡率(90日間追跡、中央値84日)として比較した。レムデシビル単独療法群と比較したハザード比(HR)は、ニルマトレルビル/リトナビル単独療法群が0.18(95%信頼区間[CI]:0.15~0.20)、併用療法群が0.66(95%CI:0.49~0.89)でいずれも有意に死亡率は低下していた。副次評価項目については、ICU入室・人工呼吸器使用の累積発生率でのHRが、ニルマトレルビル/リトナビル単独療法群が0.09(95%CI:0.07~0.11)、併用療法群が0.68(95%CI:0.42~1.12)、人工呼吸器使用率はニルマトレルビル/リトナビル単独療法群が0.07(95%CI:0.05~0.10)、併用療法群が0.55(95%CI:0.32~0.94)で、いずれもレムデシビル投与群に比べ有意に低かった。ただし、ICU入室率のみでは、ニルマトレルビル/リトナビル単独療法群が0.09(95%CI:0.07~0.12)と有意に低かったものの、併用療法群では0.63(95%CI:0.28~1.38)で有意差はなかった。この臨床研究は結果として、レムデシビルに対するニルマトレルビル/リトナビルの優越性を示しただけで、オミクロン株系統以降のレムデシビルそのものの有効性評価とは言い難いのは明らかである。だが、対象6誌とその系列学術誌では、オミクロン株優勢期のレムデシビルの有効性を純粋に追求した研究は見当たらなかった。対象学術誌の範囲を広げて見つかるのが、2024年のClinical Infectious Diseases誌に製造販売元であるギリアド・サイエンシズの研究者が発表した研究3)だ。これはオミクロン株系統優勢期である2021年12月~2024年2月の米国・PINC AI Healthcare Databaseから抽出した後向きコホートで、新型コロナで入院し、生存退院した18歳以上の患者を対象にしている。レムデシビル投与群が10万9,551例、レムデシビル非投与群が10万1,035例と対象症例規模は大きく、主要評価項目は30日以内の新型コロナ関連再入院率。結果はオッズ比が0.78(95%CI:0.75~0.80、p<0.0001)で、レムデシビル群の再入院率は有意に低下していた。再入院率の有意な低下は、入院中の酸素投与レベルに関係なく認められ、65歳以上の高齢者集団、免疫不全患者集団でのサブグループ解析でも同様の結果だった。もっとも前述したように、製造販売元による研究であることに加え、対象者のワクチン接種歴や過去の感染歴が不明という点でイマイチ感が残る。一方、オミクロン株系統優勢期での後遺症に対するレムデシビルの有効性を評価した研究は対象6誌では見当たらない。オミクロン株系統優勢期という縛りを外すと、世界保健機関(WHO)が主導した無作為化比較試験「SOLIDARITY試験」の追跡研究として、Nature誌の姉妹誌Communications Medicine誌に2024年11月に掲載されたノルウェー・オスロ大学による研究4)がある。無作為化後、3ヵ月時点での呼吸器症状を中心とする後遺症を調査したものだが、対症療法単独群(一部ヒドロキシクロロキン投与例を含む53例)と対症療法+レムデシビル投与群(27例)との比較では有意差は認められなかった。エンシトレルビル言わずと知れた新型コロナウイルスに対する国産の抗ウイルス薬である。その承認時には主要評価項目の変更などで物議を醸した。該当6誌で研究を探して見つかったのは、JAMA Network Open誌に掲載された同薬の第II/III相臨床試験Phase3 part(SCORPIO-SR試験)の結果、まさに日本での緊急承認時に使用されたデータ5)のみである。改めてその内容を記述すると、発症から72時間未満にいずれも5日間投与されたエンシトレルビル1日125mg群(347例)、1日250mg群(340例)、プラセボ群(343例)の3群でオミクロン株感染時に特徴的な5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、疲労感)が消失するまでの時間を主要評価項目としている。この結果、エンシトレルビル群はプラセボ群と比較して5症状消失までの時間を有意に短縮(p=0.04)。症状消失までの時間の中央値は、125mg群で167.9時間(95%CI:145.0~197.6時間)、プラセボ群で192.2時間(95%CI:174.5~238.3時間)だった。また、副次評価項目では、ウイルスRNA量の変化が125mg投与群では投与4日目でプラセボ群と比較して有意に減少(p<0.0001)、感染性を有する新型コロナウイルス(ウイルス力価)の陰性化が最初に確認されるまでの時間がプラセボ群と比較して有意に短縮した(p<0.001)。ウイルス力価陰性化までの時間の中央値は、125mg群が36.2時間、プラセボ群が65.3時間だった。なお、エンシトレルビルに関しては米国での上市を念頭に置き、北米、南米、欧州、アフリカ、日本を含むアジアで軽症・中等症の非入院成人(ほとんどがワクチン接種済み)の新型コロナ感染者を対象にした第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SCORPIO-HR試験」(患者登録期間:2022年8月~2023年12月)も行われ、2025年7月にClinical Infectious Diseases誌に論文6)が掲載された。主要評価項目は新型コロナの15症状が持続的(2日以上)に消失するまでの平均時間だったが、エンシトレルビル群(1,018例)とプラセボ群(1,029例)との間で有意差は認められなかった。この主要評価項目はエンシトレルビルの承認申請を前提に米国食品医薬品局(FDA)との合意で決定されたものだったため、この結果を受けてエンシトレルビルの承認申請は行われていない。一方で塩野義製薬側は、ターゲットを曝露後予防にしたプラセボ対照二重盲検第III相試験「SCORPIO-PEP試験」を2023年から開始。同社の発表によると、試験は米国、南米、アフリカ、日本を含むアジアで実施し、新型コロナウイルス検査で陰性が確認された新型コロナ感染者の12歳以上の同居家族または共同生活者2,387例が登録された。同試験の結果は論文化されておらず、あくまで塩野義製薬の発表になるが、主要評価項目である「投与後10日までの新型コロナ発症者の割合」はエンシトレルビル群が2.9%、プラセボ群が9.0%であり、エンシトレルビル群は統計学的に有意に相対リスクを低下させたという(リスク比:0.33、95%CI:0.22~0.49、p<0.0001)。今後、塩野義製薬は各国で曝露後予防への適応拡大を目指す考えである。 参考 1) 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第10.1版)(厚生労働省 2024年4月23日発行) 2) Choi MH, et al. Lancet Infect Dis. 2024;11:1213-1224. 3) Mozaffari E, et al. Clin Infect Dis. 2024;79:S167-S177. 4) Hovdun Patrick-Brown TDJ, et al. Commun Med (Lond). 2024;4:231. 5) Yotsuyanagi H, et al. JAMA Netw Open. 2024;7:e2354991. 6) Luetkemeyer AF, et al. Clin Infect Dis. 2025;80:1235-1244.

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第280回 コロナ治療薬の今、有効性・後遺症への効果・家庭内感染予防(前編)

INDEXニルマトレルビル/リトナビルモルヌピラビルニルマトレルビルか? モルヌピラビルか?感染症法上の5類移行後、これまでの新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の動向について、その1(第277回)では感染者数、入院者数、死亡者数の観点からまとめ、その2(第278回)では流行ウイルス株とこれに対抗するワクチンの変遷(有効性ではなく規格などの変遷)、その3(第279回)ではワクチンの有効性について比較的大規模に検証された研究を取り上げた。今回は治療薬について、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッド)とモルヌピラビル(同:ラゲブリオ)について紹介する。もっとも、漠然と論文のPubMed検索をするのではなく、日本での5類移行後にNature誌、Science誌、Lancet誌、NEJM誌、BMJ誌、JAMA誌とその系列学術誌に掲載され、比較対照群の設定がある研究をベースにした。ニルマトレルビル/リトナビル2024年4月のNEJM誌に掲載されたのが、国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第II/III相試験「EPIC-SR試験」1)。新型コロナの症状出現から5日以内の18歳以上の成人で、ワクチン接種済みで重症化リスク因子がある「高リスク群」とワクチン未接種または1年以上接種なしでリスク因子がない「標準リスク群」を対象にニルマトレルビル+リトナビルの有効性・安全性をプラセボ対照で比較している。ちなみにこの研究の筆頭著者はファイザーの研究者である。主要評価項目は症状軽快までの期間(28日目まで)、副次評価項目は発症から28日以内の入院・死亡の割合、医療機関受診頻度、ウイルス量のリバウンド、症状再発など。まず両群を合わせたニルマトレルビル/リトナビル群(658例)とプラセボ群(638例)との間で主要評価項目、副次評価項目のいずれも有意差はなし。高リスク群、標準リスク群の層別で介入(ニルマトレルビル/リトナビル投与)の有無による主要評価項目、副次評価項目の評価でもいずれも有意差は認めていない。唯一、高リスク群で有意差はないものの、入院・死亡率がニルマトレルビル/リトナビル群で低い傾向があるくらいだ。実はEPIC-SR試験は、各国でニルマトレルビル/リトナビルの承認根拠となった18歳以上で重症化のリスクが高い外来での新型コロナ軽症・中等症患者を対象にした臨床試験「EPIC-HR試験」の拡大版ともいえる。その意味では、より幅広い患者集団で有効性を示そうとして図らずも“失敗”に終わったとも言える。有効性が示せたEPIC-HR試験と有効性が示せなかったEPIC-SR試験の結果の違いの背景の1つとしては、前者が 2021年7~12月、後者が2021年8月~2022年7月という試験実施時期が考えられる。つまり流行主流株が前者は重症化リスクが高いデルタ株、後者はデルタ株より重症化リスクの低いオミクロン株という違いである。このオミクロン株が流行主流株になってからの研究の1つが、2023年4月にBMJ誌に掲載された米国・VA Saint Louis Health Care Systemのグループによる米国退役軍人省の全国ヘルスケアデータベースを用いた後ろ向き観察研究2)である。最終的な解析対象は2022年1~11月に新型コロナの重症化リスク因子が1つ以上あり、重度腎機能障害や肝疾患の罹患者、新型コロナ陽性が判明した時点で何らかの薬物治療や新型コロナの対症療法が行われていた人を除く新型コロナ感染者25万6,288例。これをニルマトレルビル群(3万1,524例)と対症療法群(22万4,764例)に分け、主要評価項目を新型コロナ陽性確認から30日以内の入院・死亡率として検討している。その結果では、ワクチンの接種状況別に検討した主要評価項目の相対リスクは、未接種群が 0.60(95%信頼区間[CI]:0.50~0.71)、1~2回接種群が0.65(95%CI:0.57~0.74)、ブースター接種群が0.64(95%CI:0.58~0.71)で、いずれもニルマトレルビル/リトナビル群で有意なリスク減少が認められた。また、感染歴別での相対リスクも初回感染群が0.61(95%CI:0.57~0.65)、再感染群が0.74(95%CI:0.63~0.87)でこちらもニルマトレルビル/リトナビル群でリスク減少は有意だった。また、サブグループ解析では、ウイルス株別でも相対リスクを検討しており、BA.1/BA.2優勢期が0.64(95%CI:0.60~0.72)、BA.5優勢期が0.64(95%CI:0.58~0.70)で、この結果でもニルマトレルビル/リトナビル群が有意なリスク減少を示した。一見するとNEJM誌とBMJ誌の結果は相反するとも言えるが、後者のほうは対象が高齢かつ重症化リスク因子があるという点が結果の違いに反映されていると考えることができる。一方、新型コロナを標的とする抗ウイルス薬では、後遺症への効果や家庭内感染予防効果なども検討されていることが少なくない。後遺症への効果についてはLancet Infectious Disease誌に2025年8月掲載されたイェール大学のグループによるプラセボ対照二重盲検比較研究3)、JAMA Internal Medicine誌に2024年6月に掲載されたスタンフォード大学のグループによって行われたプラセボ対照二重盲検比較研究4)の2つがある。研究実施時期と症例数は前者が2023年4月~2024年2月で症例数が100例(ニルマトレルビル/リトナビル群49例、プラセボ/リトナビル群51例)、後者が2022年11月~2023年9月で症例数が155例(ニルマトレルビル/リトナビル群102例、プラセボ/リトナビル群53例)。両研究ともにニルマトレルビルの投与期間は15日間である。前者は18歳以上で新型コロナ感染歴があり、感染後4週間以内に後遺症と見られる症状が確認され、12週間以上持続している患者が対象。主要評価項目はニルマトレルビル/リトナビルあるいはプラセボ/リトナビル投与開始後28日目の米国立衛生研究所開発の身体的健康に関する患者報告アウトカム(PROMIS-29)のベースラインからの変化だったが、両群間に有意差はなかった。後者は18歳以上、体重40kg超で腎機能が保たれ、新型コロナ感染後、疲労感、ブレインフォグ、体の痛み、心血管症状、息切れ、胃腸症状の6症状のうち2つ以上を中等度または重度で呈し、90日以上持続している人が対象となった。主要評価項目は試験開始10週後のこれら6症状のリッカート尺度による評価だったが、こちらも両群間で有意差は認められなかった。家庭内感染予防についてはNEJM誌に2024年7月に掲載されたファイザーの研究者によるプラセボを対照としたニルマトレルビルの5日間投与と10日間投与の第II/III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験5)がある。対象は2021年9月~2022年4月に新型コロナの確定診断を受けた患者の家庭内接触者で、無症状かつ新型コロナ迅速抗原検査陰性の18歳以上の成人。症例数はニルマトレルビル/リトナビル5日群が921例、10日群が917例、プラセボ群(5日間または10日間投与)が898例。主要評価項目は14日以内の症候性新型コロナ感染の発症率で、結果は5日群が2.6%、10日群が2.4%、プラセボ群が3.9%であり、プラセボ群を基準としたリスク減少率は5日群が29.8%(95%CI:-16.7~57.8、p=0.17)、10日群が35.5%(95%CI:-11.5~62.7、p=0.12)でいずれも有意差なし。副次評価項目の無症候性新型コロナ感染の発生率でも同様に有意差はなかった。もっとも、この研究では参加者の約91%がすでに抗体陽性だったことが結果に影響している可能性がある。モルヌピラビルこの薬剤については、最新の研究報告でいうとLancet誌に掲載されたイギリスでのPANORAMIC試験6)の長期追跡結果となる。同試験は非盲検プラットフォームアダプティブ無作為化対照試験で、2021年12月~2022年4月までの期間、すなわちオミクロン株が登場以降、新型コロナに罹患して5日以内の50歳以上あるいは18歳以上で基礎疾患がある人を対象に対症療法に加えモルヌピラビル800mgを1日2回、5日間服用した群(1万2,821例)と対症療法群(1万2,962例)で有効性を比較したものだ。ちなみに対象者のワクチン接種率は99.1%と、まさにリアルワールドデータである。主要評価項目は28日以内の入院・死亡率だが、これは両群間で有意差なし。さらに副次評価項目として罹患から3ヵ月、6ヵ月時点での「自覚的健康状態(0~10点スケール)」「重症症状の有無(中等度以上)」「持続症状(後遺症)」「医療・福祉サービス利用」「就労・学業の欠席」「家庭内の新規感染発生率」「医薬品使用(OTC含む)」「EQ-5D-5L(健康関連QOL)」を調査したが、このうち3ヵ月時点と6ヵ月時点でモルヌピラビル群が有意差をもって上回っていたのはEQ-5D-5Lだけで、あとは3ヵ月時点で就労・学業の欠席と家庭内の新規感染発生率が有意に低いという結果だった。ただ、家庭内新規感染発生率は6ヵ月時点では逆転していることや、そもそもこの評価指標が6ヵ月時点で必要かという問題もある。また、後遺症では有意差はないのにEQ-5D-5Lと就労・学業の欠席率で有意差が出るのも矛盾した結果である。もっと踏み込めば、この副次評価項目での有意差自体がby chanceだったと言えなくもない。一方、前述のBMJ誌に掲載されたニルマトレルビルに関する米国退役軍人省ヘルスケアデータベースを用いた後ろ向き観察研究を行った米国・VA Saint Louis Health Care Systemのグループは同様の研究7)をモルヌピラビルに関しても行っており、同じくBMJ誌に掲載されている。研究が行われたのはオミクロン株が主流の2022年1~9月で、対象者は60歳以上、BMI 30以上、慢性肺疾患、がん、心血管疾患、慢性腎疾患、糖尿病のいずれかを有する高リスク患者。主要評価項目は30日以内の入院・死亡率である。それによるとモルヌピラビル群7,818例、対症療法群7万8,180例での比較では、主要評価項目はモルヌピラビル群が2.7%、対症療法群が3.8%、相対リスクが0.72(95%CI:0.64~0.79)。モルヌピラビル群で有意な入院・死亡率の減少が認められたという結果だった。ちなみにモルヌピラビル投与による有意な入院・死亡低下効果は、ワクチン接種状況別、変異株別(BA.1/BA.2優勢期およびBA.5優勢期)、感染歴別などのサブグループ解析でも一貫していたという。ニルマトレルビルか? モルヌピラビルか?新型コロナでは早期に上市されたこの2つの経口薬について、「いったいどちらがより有効性が高いのか?」という命題が多くの臨床医にあるだろう。承認当時の臨床試験結果だけを見れば、ニルマトレルビルに軍配が上がるが、果たしてどうだろう。実は極めて限定的なのだが、これに答える臨床研究がある。Lancet Infectious Disease誌に2024年1月に掲載されたオックスフォード大学のグループが実施したタイ・バンコクの熱帯医学病院を受診した発症4日未満、酸素飽和度96%以上の18~50歳の軽症例でのニルマトレルビル/リトナビル、モルヌピラビル、対症療法の3群比較試験8)である。実施時期は2022年6月以降でニルマトレルビル/リトナビル群が58例、モルヌピラビル群が65例、対症療法群が84例。主要評価項目はウイルス消失速度(治療開始0~7日)で、この結果ではニルマトレルビル/リトナビル群は対症療法群に比べ、ウイルス消失速度が有意に加速し、モルヌピラビル群はニルマトレルビル/リトナビル群との非劣性比較でモルヌピラビル群が劣性と判定された(非劣性マージンは10%)。さて、今回はまたもやニルマトレルビル/リトナビルとモルヌピラビルで文字数をだいぶ尽くしたため、次回レムデシビル(同:ベクルリー)、エンシトレルビル(同:ゾコーバ)でようやく最後になる。 1) Hammond J, et al. N Engl J Med. 2024;390:1186-1195. 2) Xie Y, et al. BMJ. 2023;381:e073312. 3) Mitsuaki S, et al. Lancet Infect Dis. 2025;25:936-946. 4) Geng LN, et al. JAMA Intern Med. 2024;184:1024-1034. 5) Hammond J, et al. N Engl J Med. 2024;391:224-234. 6) Butler CC, et al. Lancet. 2023;401:281-293. 7) Xie Y, et al. BMJ. 2023;381:e072705. 8) Schilling WHK, et al. 2024;24:36-45.

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