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女性の頻尿、どう尋ねるべき?【Dr.山中の攻める!問診3step】第13回

第13回 女性の頻尿、どう尋ねるべき?―Key Point―1日3L以上の排尿と強い口渇があるかを確認する2回以上の夜間頻尿があると生活に支障をきたす医師が質問をしないと女性は尿失禁を訴えないことが多い症例:76歳 女性主訴)頻尿現病歴)2週間前から頻尿と排尿時痛がある。近くの診療所で抗菌薬の処方を受けたが、症状の改善はない。尿の排出時、下腹部に痛みを生じる。3日前からトイレに間に合わず尿を漏らすことが増えてきたため紙パンツを使用するようになった。夜間の排尿回数は5回。熟眠できない。既往歴)変形性関節症薬剤歴)なし生活歴)機会飲酒、喫煙:5本/日(20歳~)身体所見)体温36.8℃、血圧132/80mmHg、心拍数86回/分、呼吸回数18回/分意識:清明腹部:軟。膨隆なし。下腹部に軽度の圧痛あり経過)尿意切迫感と頻尿、切迫性尿失禁の症状から過活動膀胱を疑い牛車腎気丸を処方した。尿意切迫感は改善を認めた。その後、ナースに「最近、子宮脱が気になっている」との訴えがあった。子宮脱も夜間多尿の原因となっていた可能性がある。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!年をとると過活動膀胱に罹患する割合が増加する(70代で20%、80歳以上で35%)1)カルシウム拮抗薬は夜間頻尿を起こす成人女性の25%に尿失禁がある【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】多尿(>3L/日)か確認する2)問診:口渇の程度、飲水量、塩分摂取量、利尿薬、アルコールやカフェイン摂取心因性多飲症では1日3~5Lの飲水により低ナトリウム血症を起こすスポット尿のナトリウム濃度(mmol/L)を17で割ると、尿1LあたりのNaCl量(g)が推定できる。この数値に尿量(L)をかければ1日あたりの推定食塩摂取量となる多尿があれば、尿浸透圧を測定する。250mOsm/kg以下ならば水利尿、300mOsm/kg以上ならば浸透圧利尿である水利尿の原因:尿崩症(中枢性、腎性)、心因性多尿浸透圧利尿の原因:糖尿病、薬剤(マンニトール)、ナトリウム負荷、利尿薬、腎不全【STEP3-1】夜間は何度トイレに起きるか就寝後に2回以上、排尿のため起きなければならない症状を夜間頻尿と呼ぶ健常者では抗利尿ホルモン(バソプレシン)は夜間に多く分泌されるため、夜間尿は少なくなる。<夜間頻尿の原因>夜間のみ尿量が多くなる夜間多尿、膀胱容量の減少(過活動性膀胱、前立腺肥大症、間質性膀胱炎、骨盤臓器脱)、睡眠障害<夜間多尿の原因>高血圧、心不全、腎不全、睡眠時無呼吸症候群、寝る前の水分過剰摂取【STEP3-2】尿失禁はあるか2)3)4)◆新たに出現した尿失禁の鑑別診断(DIAPERS)Drug(薬剤)Atrophic vaginitis(萎縮性膣炎)Endocrine(高血糖、高カルシウム血症)Stool impaction(宿便)Infection(感染症:とくに尿路感染症)Psychological(うつ、認知症、せん妄)Restricted mobility(運動制限)(表)尿失禁のタイプ画像を拡大する<参考文献・資料>1)日本泌尿器科学会:頻尿(ひんにょう)とは2)Harrison’s Principles of Internal Medicine. 2018. p294-295,p3432-3436.3)MKSAP19 General Internal Medicine1. 2021. p95-98.4)山中克郎ほか. UCSFに学ぶ できる内科医への近道. 改訂4版. 2012. p343.

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第108回 小児の原因不明の重症肝炎が欧州や米国で増えている

肝炎の主な原因ウイルスが見当たらない原因不明の重症肝炎が欧州や米国の10歳頃までの幼い小児に増えています1)。英国で主に10歳までの74例(49例がイングランド、13例がスコットランド、残りはウェールズと北アイルランド)、スペインで13歳までの3例が4月8日までに見つかっています2,3)。また、米国のアラバマ州で1~6歳の9例が見つかっており1,4)、デンマークとオランダでも似た病状が報告されています。英国とスペインのそれら小児に4月12日時点で死亡例はありませんが全員が入院を要し、何人かは非常に重篤であり、7例は肝臓移植を受けています。米国アラバマ州でも9例中2例が肝臓移植を必要としました4)。風邪を引き起こすウイルスの一員として知られるアデノウイルスがそれら重症肝炎の原因かもしれません。Scienceのニュースによると英国ではアデノウイルスが多ければ半数から検出されています1)。また、アラバマ州の9例では全員からアデノウイルスが検出されました。英国でのそれら急な重症肝炎の最初の10件は健康な小児に発生したものでした3)。ほんの一週間前まではいたって健康だった小児に発生しうる重症肝炎は深刻な事態だと英国イングランドのBirmingham Children’s Hospitalの小児肝臓研究医師Deirdre Kelly氏は言っています1)。ただし同氏によると幸いほとんどは自ずと回復しています。先週14日には英国スコットランドでの原因不明の小児重症肝炎流行の詳細がEurosurveillance誌に掲載されました5)。同地でのその流行は3~5歳の原因不明重症肝炎小児5人がわずか3週間にグラスゴーの小児病院で認められたことを受けて先月末3月31日に察知されました。スコットランドでのそのような肝炎の通常の発生数は年間4例未満ですが、流行察知後の調査の結果、今年に入ってから4月12日までに10歳以下の小児13人が原因不明の急な肝炎で入院していました。それら13例のうち1例以外は今年3~4月に生じています。飲食物の毒あたりやおもちゃなどの有害物質が原因かと当初は考えられましたが、今ではウイルスに目が向けられています。肝炎の主な原因であるA、B、C、E型肝炎ウイルスは英国やスペインの小児から見つかっていません。一方、ワクチン非接種の何人かからは入院の少し前か入院時に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が検出されました。また、多ければ半数からは肝炎の原因となることは通常稀なはずのアデノウイルスが検出されました。アデノウイルスは呼気中の液滴に含まれるかそれらが付着した表面や感染者に触れることで伝染し、嘔吐・下痢・結膜炎・風邪症状を引き起こすことが知られます。現時点ではそういうアデノウイルス絡みの原因が有力視されています。肝炎の原因となることがおよそ稀なアデノウイルスの仕業であるならそうさせる何らかの事態を背景にしているのでしょう。これまでとは一線を画す症候群と紐づく新たな変異株が発生しているかもしれないし、免疫が未熟な幼い小児をすでにありふれた変異株が酷く害しているのかもしれないとスコットランドの研究者はEurosurveillance誌で述べています5)。SARS-CoV-2感染(COVID-19)流行で足止めを食らった幼い小児はいつもなら接しているはずのアデノウイルスなどのウイルスの面々といまだ馴染めず免疫が頼りないままで未熟である恐れがあります。ノッティンガム大学のウイルス学者Will Irving氏によるとロックダウン明けの小児にいつものウイルス感染が増えており、アデノウイルス感染もその一つに含まれます1)。全員からアデノウイルスが検出された米国アラバマ州の9例のうち5例にはもっぱら胃腸炎の原因として知られる41型アデノウイルスが認められ、どうやら関連があるらしいとアラバマ州保健部門は言っています4)。アデノウイルス原因説が有力とはいえそれ以外の要因の検討もなされています1)。たとえば先立つCOVID-19の免疫への影響が他の感染を生じやすくしているのかもしれません。あるいはCOVID-19の長期の後遺症の一つと考えられなくもありません。それに未知の毒物に端を発している可能性もあります。参考1)Mysterious hepatitis outbreak sickens young children in Europe as CDC probes cases in Alabama / Science2)Increase in hepatitis (liver inflammation) cases in children under investigation / UK Health Security Agency3)Acute hepatitis of unknown aetiology - the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland / WHO4)Investigations of nine young children with adenovirus are underway / Alabama Department of Public Health (ADPH)5)Investigation into cases of hepatitis of unknown aetiology among young children, Scotland, 1 January 2022 to 12 April 2022 / Eurosurveillance

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新型コロナ第6波の重症化率と致死率/厚生労働省

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第6波のピークアウトがあいまいな中で、すでに第7波の気配もみられている。陽性者数が一番多かった新型コロナ第6波では、どれくらいの重症化率、致死率だったのだろう。 4月13日に厚生労働省で開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「第6波における重症化率・致死率について(暫定版)」が資料として発表された。新型コロナ第6波の重症化率と致死率、11万9,109例を対象に算出 解析は石川県、茨城県、広島県のデータを使用し、2022年1月1日~2月28日の期間における新型コロナ感染者11万9,109人を対象とした。年齢階級別、ワクチン接種歴別に重症化率および致死率を暫定版として算出した。 新型コロナの重症者は、人工呼吸器使用、ECMO使用、ICUなどで治療のいずれかの条件に当てはまる患者と定義し、重症化率は、経過中重症に至ったが死亡とならなかった患者、重症化して死亡した患者、重症化せず死亡した患者の合計を感染者数で割ったもの、死亡者は、新型コロナの陽性者であって、死因を問わず亡くなった者とした。 解析の結果、60代から新型コロナの重症化率と致死率が上昇し、とくにワクチン接種がない場合は、40代からも上昇していた。【全体】(単位は%)10代未満:重症化率0.02 致死率0.0010代:重症化率0.00 致死率0.0020代:重症化率0.02 致死率0.0030代:重症化率0.01 致死率0.0040代:重症化率0.05 致死率0.0250代:重症化率0.12 致死率0.0360代:重症化率0.58 致死率0.2970代:重症化率2.03 致死率1.2380代:重症化率4.25 致死率3.6790代以上:重症化率6.48 致死率6.21【3回ワクチン接種歴あり】10代未満:重症化率0.00 致死率0.0010代:重症化率0.00 致死率0.0020代:重症化率0.00 致死率0.0030代:重症化率0.00 致死率0.0040代:重症化率0.00 致死率0.0050代:重症化率0.00 致死率0.0060代:重症化率0.31 致死率0.3170代:重症化率0.95 致死率0.6380代:重症化率2.15 致死率1.7990代以上:重症化率0.97 致死率0.97【ワクチン接種歴なし】10代未満:重症化率0.02 致死率0.0010代:重症化率0.00 致死率0.0020代:重症化率0.00 致死率0.0030代:重症化率0.03 致死率0.0040代:重症化率0.09 致死率0.0950代:重症化率0.50 致死率0.1760代:重症化率1.72 致死率0.6370代:重症化率3.83 致死率2.0080代:重症化率7.62 致死率6.6390代以上:重症化率9.76 致死率9.33※なお、これらの数字は2022年3月31日時点のステータスに基づき算出されており、今後重症者数や死亡者数は増加する可能性がある点に留意してほしいと注意を促している。

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テビペネム ピボキシル、複雑性尿路感染症に有望/NEJM

 複雑性尿路感染症および急性腎盂腎炎の入院患者の治療において、テビペネム ピボキシル臭化水素酸塩の経口投与はertapenemの静脈内投与に対し有効性に関して非劣性で、安全性プロファイルはほぼ同等であることが、英国・Spero TherapeuticsのPaul B. Eckburg氏らが実施した「ADAPT-PO試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年4月7日号に掲載された。テビペネム ピボキシル臭化水素酸塩はカルバペネム系のプロドラッグであり、経口投与されると腸管細胞によって速やかに活性本体であるテビペネムに変換される。テビペネムは、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科やフルオロキノロン耐性菌などの多剤耐性グラム陰性病原菌に対し広域抗菌スペクトル活性を有するという。95施設の国際的な第III相非劣性試験 本研究は、複雑性尿路感染症および急性腎盂腎炎の入院患者の治療におけるテビペネム ピボキシル臭化水素酸塩とertapenemの有効性と安全性の比較を目的とする第III相二重盲検ダブルダミー無作為化非劣性試験であり、2019年6月~2020年5月の期間に中東欧、南アフリカ、米国の95施設で参加者の登録が行われた(米国Spero Therapeuticsと米国保健福祉省[HHS]の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、規制当局による現行のガイダンスに沿ったプロトコルで規定された疾患の定義の基準を満たす複雑性尿路感染症および急性腎盂腎炎の診断を受けた患者であった。 被験者は、テビペネム ピボキシル(600mg、8時間ごと)を経口投与する群またはertapenem(1g、24時間ごと)を静脈内投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、7~10日間(菌血症の患者は最長で14日間)の投与が行われた。 有効性の主要エンドポイントは、微生物学的intention-to-treat集団(複雑性尿路感染症または急性腎盂腎炎の診断が確定し、ベースライン時に尿培養が陽性のすべての患者)における治癒判定の受診時(19日目、±2日以内)の全奏効(臨床的治癒と良好な微生物学的反応の複合)とされた。非劣性マージンは12.5%。菌血症では治療終了時に90%を超える全奏効割合 1,372例の入院患者が登録された。このうち868例(63.3%)が微生物学的intention-to-treat集団(複雑性尿路感染症50.8%、腎盂腎炎49.2%)で、平均年齢(±SD)は58.1±18.3歳、女性が505例(58.2%)、中東欧の患者が856例(98.6%)を占めた。 治癒判定時の全奏効の割合は、テビペネム ピボキシル群が58.8%(264/449例)、ertapenem群は61.6%(258/419例)であり、加重群間差は-3.3ポイント(95%信頼区間[CI]:-9.7~3.2)と、テビペネム ピボキシル群のertapenem群に対する非劣性が確認された。 また、ベースライン時に菌血症が認められた患者の全奏効割合は、治療終了時がテビペネム ピボキシル群93.6%、ertapenem群96.2%で、治癒判定時はそれぞれ72.3%および66.0%(加重群間差:6.3ポイント、95%CI:-11.8~24.4)だった。 副次エンドポイントやサブグループ解析では、主解析の結果を支持するデータが得られた。たとえば、微生物学的intention-to-treat集団における治療終了時の全奏効割合は、テビペネム ピボキシル群が97.3%、ertapenem群は94.5%であった(加重群間差:2.8ポイント、95%CI:0.1~5.7)。 また、治癒判定時の臨床的治癒の割合は、テビペネム ピボキシル群が93.1%、ertapenem群は93.6%だった(加重群間差:-0.6ポイント、95%CI:-4.0~2.8)。治癒判定時の微生物学的反応は、それぞれ59.5%および63.5%で得られ(-4.5ポイント、-10.8~1.9)、治癒判定時に微生物学的反応が認められなかった患者の多くでは、無症候性の細菌尿の再発がみられた。 有害事象は、テビペネム ピボキシル群の25.7%、ertapenem群の25.6%で発現し、最も頻度の高い有害事象は軽度の下痢(テビペネム ピボキシル群5.7%、ertapenem群4.4%)と頭痛(3.8%、3.8%)だった。重篤な有害事象はそれぞれ1.3%および1.7%、投与中止の原因となった有害事象は0.1%および1.2%で認められた。 著者は、「ほかに有効な経口薬がない場合に、テビペネム ピボキシル臭化水素酸塩は、抗菌薬耐性の尿路病原体による複雑性尿路感染症および急性腎盂腎炎の治療選択肢となる可能性がある」としている。

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第97回 巨額のコロナ補助金による公立病院の収益改善を問題視/財務省

<先週の動き>1.巨額のコロナ補助金による公立病院の収益改善を問題視/財務省2.GW中も新型コロナ患者に対応できる体制確保を求める通知/厚労省3.コロナ禍で自殺者数が増加、自殺総合対策大綱の見直しへ/政府4.「かかりつけ医」以外の受診に定額負担、フリーアクセス抑制5.精神科の医療保護入院、「廃止」の文言を撤回/厚労省6.岸田首相、リフィル処方箋の推進を/経済財政諮問会議1.巨額のコロナ補助金による公立病院の収益改善を問題視/財務省13日に開催された財政制度等審議会の分科会において、財務省が新型コロナウイルス対策に投じられた巨額の補助金をめぐって医療機関経営実態の「見える化」を提言した。感染拡大中の病床確保支援、医療従事者への慰労金、院内感染対策、ワクチン接種体制確保などのために、緊急包括支援交付金として6兆円、病床確保のための緊急支援金0.3兆円などと、低く見積もっても約8兆円が使われた。病床確保料を受け取りながらも新型コロナ患者の受入れをしなかった病院が問題視されたこともあり、医療機関などへの財政支援の効果の検証が求められる。2020年度決算では、新型コロナ関連の補助金に支えられた形で、国公立病院の収益が急改善している。853病院ともっとも数が多い公立病院の合計収益は、2019年度における980億円の赤字から2020年度には1,251億円の黒字になるなど、国立病院機構傘下の140病院、地域医療機能推進機構の57病院を含む国公立病院の決算の分析結果を示した。費用対効果の面で補助金額が適切だったかどうか、問題提起する狙いがある。(参考)国公立病院の収益が急改善 20年度、コロナ巨額補助金で(東京新聞)コロナ対応に国費16兆円、4割が医療体制強化に…財務省幹部「検証が必要」財務省(読売新聞)コロナ対策、病院に8兆円 無駄排除へ実態検証欠かせず(日経新聞)2.GW中も新型コロナ患者に対応できる体制確保を求める通知/厚労省厚生労働省は、今年のゴールデンウィークを前に、各医療機関や自治体に対して、連休中に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者や疑い患者の増加が想定されるとして、引き続き診療・検査体制や入院体制を維持・確保することが重要とする通知を13日に発出した。とくに高齢者施設等における医療支援の更なる強化を始めとした流行再拡大への対応が求められる。連休時における発熱患者等の診療・検査医療機関やコロナ患者の受入れ医療機関など、十分な医療提供体制の事前調整や、COVID-19疑い例の相談窓口など、連休時においてもその体制を引き続き確保することなどが全9項目にまとめられている。(参考)ゴールデンウィーク等の連休時の保健・医療提供体制の確保について(厚労省)連休時も確保病床など即座に稼働できる準備を 厚労省、診療・検査・入院体制確保を要請(CBnews)ゴールデンウィーク中も十分な医療提供が行える体制を地域関係者で協議し、準備・周知を―厚労省(Gem Med)3.コロナ禍で自殺者数が増加、自殺総合対策大綱の見直しへ/政府厚労省「自殺総合対策の推進に関する有識者会議」は15日に報告書をとりまとめ、公表した。わが国では1998年以降、14年連続して年間自殺者数が3万人を超えていたものの、2006年に制定された自殺対策基本法や政府の自殺総合対策大綱に基づく取り組みの結果、2万人台に減少するなど、成果を挙げていた。しかし、2021年は女性や小中高生の自殺者が増え、総数は11年ぶりに前年を上回った。このため、女性や子供への支援強化として相談窓口の拡充や、若者の自殺対策のさらなる推進、報道等への対応を含め、今年の夏に政府は、現在の自殺総合対策大綱を見直す方針。(参考)女性、子ども「深刻な状況」 自殺対策の指針、見直しに向け報告書(朝日新聞)自殺対策、精神科医療につなぐ連携体制強化を 厚労省が有識者会議の報告書を公表自殺総合対策の推進に関する有識者会議報告書(厚労省)4.「かかりつけ医」以外の受診に定額負担、フリーアクセス抑制13日に開催された財務省財政制度等審議会の分科会において、「かかりつけ医」以外を受診した場合に、患者に対して新たな定額負担を求める意見が出された。これは2015年にも政府内で検討されていたが、「かかりつけ医」の定義が曖昧なため見送られた経緯がある。2025年には団塊世代が75歳以上となるため医療費の抑制が課題となっており、これに対して「量重視」のフリーアクセスを、必要な時に必要な医療にアクセスできる「質重視」に切り替えていく必要があるとし、財務省はこれを今年の夏の「骨太方針2022」に盛り込みたいとしている。なお、今年の夏には参議院選挙もあり、どこまで具体化するか注目したい。(参考)外来受診時の定額負担、再び俎上に「かかりつけ医」制度とセットで財務省提案(CBnews)「かかりつけ医」と医療の今後(読売新聞)5.精神科の医療保護入院、「廃止」の文言を撤回/厚労省厚労省は、14日に開催された「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」において、精神科病院に強制的に入院させる「医療保護入院」について、将来的な「廃止」という文言を削除した。民間団体「精神医療人権センター」によると、日本の精神科の強制入院率は欧州の3~4倍、人口100万人当たりで比較すると約15倍と世界的に見ても大きい。前回の検討会では、将来的な廃止も視野に入れ縮小する考えを示していたが、日本精神科病院協会(日精協)の委員が反発したため、表現を後退させた形。今後も、医療保護入院の見直しについては、できる限り入院治療に頼らない治療を行うことを原則として、それでも入院治療が必要な場合、できる限り本人の意思を尊重する形で任意入院を行うことが重要であるとした。入院医療を必要最小限にするための予防的取り組みの充実や、医療保護入院から任意入院への移行、退院促進に向けた制度・支援など、より一層の権利擁護策の充実を求めている。(参考)医療保護入院、廃止も視野に縮小へ 「任意」や退院促す(福祉新聞)医療保護入院、「廃止」を削除 精神科、厚労省が表現後退(東京新聞)第9回「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」6.岸田首相、リフィル処方箋の推進を/経済財政諮問会議今年の診療報酬改定で導入されたリフィル処方だが、現場では再診料が減ることを懸念した医療機関などによりあまり活用されていない。この現状に対して、岸田総理は13日に開催された経済財政諮問会議で、リフィル処方の使用促進を含む医療・介護サービス改革の継続・強化に取り組むことを明らかにした。民間議員からは、コロナの感染拡大を機に外来の受診回数が減少したデータを提示し、薬のみの診療は患者にとって過度な通院負担であった可能性があると指摘。患者の希望を確認、尊重する必要性があると求めた。(参考)岸田首相 諮問会議でリフィル処方の使用促進求める コロナ禍の経験踏まえた医療改革の継続・強化を(ミクスオンライン)「リフィル処方箋」医師及び腰「薬剤師が管理」抵抗 患者ニーズ置き去り(日経新聞)

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国内コロナ患者の血栓症合併、実際の抗凝固療法とは/CLOT-COVID Study

 国内において、変異株により感染者数の著しい増加を認めた第4波以降に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した際の血栓症の合併頻度や予防的抗凝固療法の実態に関するデータが不足している。そこで尼崎総合医療センターの西本 裕二氏らは国内16施設共同で後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、とくに重症COVID-19患者で予防的抗凝固療法が高頻度に行われていた。また、血栓症の全体的な発生率は実質的に低いものの、COVID-19が重症化するほどその発生率は増加したことが明らかになった。ただし、画像検査を受けた患者数が少ないため実質的な発生率が低く見積もられた可能性もあるとしている。Journal of Cardiology誌オンライン版2022年4月5日号掲載の報告。 研究者らが実施したCLOT-COVID Study(日本におけるCOVID-19患者での血栓症・抗凝固療法の診療実態を明らかにする研究)は、2021年4~9月に国内16施設でPCR検査によりCOVID-19と診断された入院患者を登録した後ろ向き多施設共同研究で、第4波と第5波でのCOVID-19患者の血栓症の合併頻度や予防的抗凝固療法の実態を把握することなどを目的に実施された。対象者は予防的抗凝固療法の種類と用量に応じて7グループ(予防用量の未分画ヘパリン[UFH]、治療用量のUFH、予防用量の低分子ヘパリン[LMWH]、治療用量のLMWH、直接経口抗凝固薬[DOAC]、ワルファリン、その他)に分類された。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19と診断されて入院したのは2,894例で、平均年齢(±SD)は53±18歳、男性は1,885例(65%)であった。また、平均体重(±SD)は68.9±18.5kg、平均BMI(±SD)は25.3±5.4kg/m2であった。・D-ダイマーが測定された患者(2,771例)の中央値は0.8μg/mL(四分位範囲:0.5~1.3)であった。・1,245例(43%)が予防的抗凝固療法を受け、その頻度は軽症9.8%、中等症61%、重症97%とCOVID-19の重症度が高くなるほど増えた。・抗凝固療法に使用された薬剤の種類や投与量は、参加施設間で大きく異なったが、予防用量UFHは55%(685例)、治療用量UFHは13%(161例)、予防用量LMWHは16%(204例)、治療用量LMWHは0%、DOACは13%(164例)、ワルファリンは1.5%(19例)、その他は1.0%(12例)で使用された。・入院中、下肢の超音波検査は38例(1.3%)、下肢の造影CTは126例(4.4%)が受け、55例(1.9%)で血栓症を発症した。そのうち39例(71%)は静脈血栓塞栓症(VTE)で、VTE診断時のD-ダイマーは18.1μg/mL(四分位範囲:6.6~36.5)、入院から発症までの日数の中央値は11日(四分位範囲:4〜19)であった。・血栓症の発生率は、軽症0.2%、中等症1.4%、重症9.5%とCOVID-19が重症化するにつれて増加した。・57例(2.0%)で大出血が発生した。・158例(5.5%)が死亡し、その死因の81%はCOVID-19肺炎による呼吸不全であった。 研究者らは、COVID-19入院患者への予防的抗凝固療法は重症例になるほど高頻度に行われていたが、治療方針が参加施設間で大きく異なっており、各施設の判断や使用可能な薬剤が異なっていた可能性を示唆した。また今後、国内のCOVID-19患者に対する至適な予防的抗凝固療法についてその適応や抗凝固薬の種類、用量を明らかにすべく、さらなる研究が望まれると結んだ。

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3回目接種3ヵ月後、日本の医療従事者での抗体価は

 追加接種(3回目接種)前に400U/mL前後だった抗体価は、追加接種1ヵ月後には2万~3万U/mLに増加し、3ヵ月後にはコミナティ筋注(ファイザー)、スパイクバックス筋注(モデルナ)ともにおおむね半分の1万~1万5,000U/mLに低下していることが報告された。なお追加接種約1ヵ月後の抗体価は、スパイクバックス筋注接種者で統計学的に有意に高値であった。1~2回目にコミナティ筋注を接種した国立病院機構(NHO)、地域医療機能推進機構(JCHO)の職員における前向き観察研究によるもので、順天堂大学の伊藤 澄信氏が4月13日開催の第78回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第1回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)で報告した。<研究概要>新型コロナワクチン追加接種(3回目接種)にかかわる免疫持続性および安全性調査(コホート調査)調査内容:・体温、接種部位反応、全身反応(日誌)、胸痛発現時の詳細情報・副反応疑い、重篤なAE(因果関係問わず)のコホート調査による頻度調査・SARS-CoV-2ワクチン追加接種者の最終接種12ヵ月までのブレークスルー感染率、重篤なAE(因果関係問わず)、追加接種者の最終接種12ヵ月後までのCOVID-19抗体価(調査対象者の一部、予定)・抗体価等測定のための採血は接種前、1、3、6、12ヵ月後(予定)調査対象:初回接種としてコミナティ筋注、追加接種としてコミナティ筋注またはスパイクバックス筋注を受けたNHO、JCHO職員・今回の報告のデータカットオフは2022年4月1日 抗体価の推移について主な結果は以下の通り。[コミナティ筋注を追加接種]・追加接種としてコミナティ筋注の投与を受けたのは2,931人(医師16.0%/看護師45.6%、女性68.0%、20代19.5%/30代25.0%/40代25.9%/50代21.2%/60歳以上8.4%)。・このうち抗N抗体陰性の487人について抗S抗体価をみたところ、追加接種前幾何平均抗体価は386U/mL(95%CI:357~418)だったのに対し、追加接種1ヵ月後は19,771U/ mL(18,629~20,984)となり、幾何平均抗体価倍率は51.2(47.7~55.1)倍だった。・年代別にみると、追加接種前は20代で634U/mLだったのに対し60歳以上では232 U/mLと年齢が高いほど低く、追加接種1ヵ月後では20代で22,474U/mL(追加接種前の35.4倍)、60歳以上では22,381U/mL(96.3倍)だった。・接種から3ヵ月後の抗体価が測定された440人について、3ヵ月後の幾何平均抗体価は10,376U/mL(9,616~11,196)だった。[スパイクバックス筋注を追加接種]・追加接種としてスパイクバックス筋注の投与を受けたのは890人(医師13.9%/看護師41.2%、女性62.1%、20代27.5%/30代26.1%/40代23.7%/50代17.5%/60歳以上5.1%)。・このうち抗N抗体陰性の482人について抗S抗体価をみたところ、追加接種前幾何平均抗体価は454U/mL(417~494)だったのに対し、追加接種1ヵ月後は29,422U/mL(27,495~31,483)となり、幾何平均抗体価倍率は64.8(60.3~69.7)倍だった。・年代別にみると、追加接種前は20代で701U/mLだったのに対し60歳以上では294 U/mLと年齢が高いほど低く、追加接種1ヵ月後では20代で32,080U/mL(追加接種前の45.8倍)、60歳以上では33,383U/mL(113.4倍)だった。・接種から3ヵ月後の抗体価が測定された92人について、3ヵ月後の幾何平均抗体価は14,719U/mL(12,380~17,500)だった。[全体のまとめ]・追加接種前抗N抗体が陰性で、追加接種1ヵ月後の抗体価を測定した972人の追加接種前抗体価は年齢が高くなるにつれて低値をとり、女性は高かった(ワクチン種別、2・3回目接種間隔で調整した重回帰分析)。・3回目追加接種1ヵ月後の幾何平均抗体価はコミナティ筋注19,771U/mL、スパイクバックス筋注29,422U/mL、幾何平均抗体価倍率はそれぞれ51.2倍、64.8倍で、スパイクバックス筋注の方が高かった。抗体価については、性・年齢および接種間隔を調整した重回帰分析で、スパイクバックス筋注の方が統計学的に有意に高値であった。・3回目接種3ヵ月後抗体価はコミナティ筋注、スパイクバックス筋注とも追加接種1ヵ月後の抗体価に比しておおむね半分に低下した。・幾何平均抗体価倍率は年齢とともに増加し、結果として1ヵ月後の幾何平均抗体価は年齢ごとの差はわずかで、女性がやや低値だった。

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女性のHIV感染予防にcabotegravirが有益/Lancet

 女性のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染予防において、長時間作用型注射剤cabotegravirは、1日1回経口投与のテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩+エムトリシタビン(TDF-FTC)と安全性・忍容性・有効性は同等であることが、南アフリカ共和国・ウィットウォーターズランド大学のSinead Delany-Moretlwe氏らによる「HPTN 084試験」の結果、示された。サハラ以南のアフリカ諸国を含む70ヵ国以上で経口避妊薬は導入されているが、スティグマや批判の声、暴力を振るわれる恐れといった日々の服用に対する高い障壁が存在することから、長時間作用型製剤が求められていた。結果を踏まえて著者は、「女性のHIV予防のための効果的な選択肢の拡充が、とくに必要性が最も高い状況にある女性にとって喫緊に求められていることから、今回のデータは、cabotegravirを選択肢に加えることを支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2022年4月1日号掲載の報告。8週ごと注射投与のcabotegravirと1日1回経口投与のTDF-FTCを比較 HPTN 084試験は、第III相の無作為化二重盲検ダブルダミー活性対照の優越性検証試験で、サハラ以南アフリカの7ヵ国20地点で行われた。参加者は18~45歳の生誕時女性で、過去30日間で2回以上の膣性交エピソードを報告し、HIVリスクスコアに基づくHIV感染リスクがあり、長時間作用型の可逆的避妊法の使用に同意した者を適格とした。 参加者は無作為に1対1の割合で、cabotegravirとプラセボTDF-FTCの投与を受ける群(cabotegravir群)またはTDF-FTCとプラセボcabotegravirの投与を受ける群(TDF-FTC群)に割り付けられた。試験薬を準備した試験地の薬剤師を除く試験スタッフおよび参加者は割り付けをマスキングされた。 参加者は、最初の経口薬導入フェーズ(ステップ1:1~4週)で、経口薬による連日投与を受けた(cabotegravir群には経口薬のcabotegravir(30mg)とプラセボTDF-FTCが、TDF-FTC群には経口薬のTDF(300mg)-FTC(200mg)とプラセボcabotegravirを投与)。続いてステップ2(5~185週)で、cabotegravir群には長期作用型注射剤cabotegravir(600mg)の8週ごと投与+プラセボ経口TDF-FTCの連日投与が、TDF-FTC群には経口TDF(300mg)-FTC(200mg)の連日投与+プラセボ注射剤cabotegravirの8週ごと投与が処方された。また、注射剤投与が中断となった参加者は、48週間にわたる非盲検下での経口TDF-FTCの連日投与が処方された。 試験の主要エンドポイントは、intention-to-treat集団におけるHIV感染の発生と、試験薬を少なくとも1回投与されたすべての女性におけるGrade2以上の臨床的および検査で確認されたイベントとした。cabotegravir群のHIV感染リスクが88%低下 2017年11月27日~2020年11月4日に、参加者3,224例(cabotegravir群1,614例、TDF-FTC群1,610例)が登録された。年齢中央値は25歳(IQR:22~30)、前月に2人以上のパートナーがいた参加者は1,755/3,209例(54.7%)であった。 感染発生は3,898人年で40例観察された(HIV発生率1.0%[95%信頼区間[CI]:0.73~1.40])。cabotegravir群は4例(HIV発生率は100人年当たり0.2例[0.06~0.52])、TDF-FTC群は36例(100人年当たり1.85例[1.3~2.57])で、cabotegravir群のHIV感染リスクはTDF-FTC群より88%低かった(ハザード比:0.12[95%C:0.05~0.31]、p<0.0001)。また、両群間の絶対リスク差は-2%(-1.3~-2.7)であった。 無作為抽出のTDF-FTC群405例のサブグループ解析において、毎日の使用を示すテノホビル濃度を有する血漿サンプル例は、812/1,929例(42.1%)であった。 注射の適用者は、全被験者(人年総計)の93%にわたっていた。 有害事象の発現頻度は、注射部位反応を除いて両群で同程度あった。注射部位反応は、cabotegravir群がTDF-FTC群に比べて頻度が高かったが(577/1,519例[38.0%]vs.162/1,516例[10.7%])、注射剤投与中断には至っていなかった。妊娠が確認されたのは100人年当たり1.3例(95%CI:0.9~1.7)、先天異常の出生児は報告されなかった。

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第104回 国産コロナ治療薬のネガティブ情報が流出、策士の仕業か!?

なんとも騒がしい。そんなに騒ぐべきことなのか? 何のことかというと以下の記事だ。「コロナの新飲み薬、動物実験で胎児に異常 塩野義『妊婦への使用は推奨されない』」(東京新聞)新聞記事を見ればわかるが、大元は共同通信の記事である。塩野義製薬が2月に条件付き早期承認制度で申請を行った新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の経口薬で3CLプロテアーゼ阻害薬(開発番号:S-217622)の動物実験で、催奇形性が確認されたという内容だ。その後の続報でこれが妊娠ウサギで起きていたことがわかっている。そしてこの件を報道各社が一斉に報じたことで13日に塩野義製薬がコメントを発表。その内容を見ても第一報は共同通信らしきことがうかがえる。コメントでは一般的な非臨床試験での結果であること、すでに厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告済みで、前述の承認申請でもデータを提出済みとしている。また、確認された催奇形性は臨床用量を上回るものだったことも記述がある。そもそも多くの方がご存じのように非臨床試験での催奇形性試験は、だいたい臨床用量・曝露量の10倍程度が一つの目安で、それ以内で催奇形性が認められた場合はおおむね添付文書に記載がされ、妊婦への投与が禁忌になる。そして、これまたすでにご存じのように特例承認されたMSDの新型コロナ治療薬のモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)でも催奇形性は報告されている。モルヌピラビルはプロドラッグなので、体内での主要代謝物のN-ヒドロキシシチジン(NHC)になり細胞に取り込まれる。非臨床試験では、NHC臨床曝露量の8倍相当量で妊娠ラットの器官形成期に催奇形性と胚・胎児致死、3倍相当量以上で胎児の発育遅延、NHC臨床曝露量の18倍相当量で妊娠ウサギの器官形成期の胎児体重の低値が認められている。このため妊婦または妊娠している可能性のある女性は禁忌で、妊娠可能な女性は投与中と最終投与後一定期間は適切な避妊を行うよう求められている。塩野義製薬が申請中のS-217622では、実際に臨床用量の何倍でこうした結果が出たかは現時点では不明。しかし、報道の影響で塩野義製薬の株価は12日終値の1株7,440円から、翌13日には最安値で6,252円まで1,000円以上下落。14日になってやや持ち直したが、株価は6,000円台後半をウロウロしている。塩野義製薬にとっては半ば迷惑な話だろう。そして今回の報道でSNS上などを見ていると、医師のアカウントから「これで発売されても使いにくくなった」という趣旨の発言は少なからず見受けられる。ちなみに過去の本連載(第101回)で触れたようにS-217622は現時点では有効性もまだ十分に示せているとは言えない。催奇形性が報告されていないファイザーのニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッド)がすでに発売されているため、そのような反応も当然だろう。もっともニルマトレルビル/リトナビルについては、いまだ供給量が少なく、院外処方の対応薬局は東京都内ですら10軒程度と言われる点が泣き所になっているようだ。さてその一方で一般人の反応を見ると、これはこれで悩ましい。やはり以前の本連載(第95回)でも記述したが、SNS上でやたらと「国産新型コロナ治療薬」にこだわる発言をする人などは、S-217622に期待を寄せていることが多い。またこうした人はドラッグ・リポジショニングで注目されながら、いまだ有効性を示す決定打のデータがない新型インフルエンザ治療薬ファビピラビル(商品名:アビガン)や駆虫薬のイベルメクチン(商品名:ストロメクトール)を早く承認すべきと声高に叫ぶ人たちと重なる。そうした人たちが今回どんな反応をしているか覗いてみると、「やっぱりアビガンのほうがましだったということはないですか」や「塩野義には悪いけど、やっぱりイベルメクチン」といった反応が散見される。しかしだ。ファビピラビルは臨床曝露量同程度かそれを下回る用量でサル、マウス、ラット、ウサギ、イベルメクチンも最高推奨用量の0.2倍でマウス、ラット、ウサギでの催奇形性がそれぞれ認められている。いずれも催奇形性だけ見れば、むしろS-217622やラゲブリオよりも慎重に扱わなければならない薬だ。このようなSNS上の動向を見るにつけ、ため息が出てしまう。そして今回、私が何とも奇妙だと思っていることがある。それは今回の第一報が「関係者への取材でわかった」とされている点だ。現在申請中であることを考えれば、催奇形性のデータを知っているのは(1)厚生労働省の医薬生活衛生局、(2)PMDA、または(3)塩野義製薬の内部ということになる。記者としての経験から推論すると、この中で情報を流した可能性が最も低いのは(3)塩野義製薬内部である。記者にしてみれば、この丈夫を流すのに何のメリットもないどころか今回の過剰反応のようなデメリットのほうが大きいからだ(ただ、前述の本連載でこの新薬候補に触れた時の状況を考えると可能性はなくもない)。となると残る2者がリーク元として考えられる。だとすると、なぜこの時期にこの情報を出したのだろうか? と正直いぶかってしまう。もしかして「早期承認の声が大きいことを懸念して鎮静化させるためのリークか?」とも勘ぐってしまう。ちなみに私は陰謀論がかなり嫌いなほうだ。そうした私自身が勘ぐってしまうほど、今回のリークは常道で考えれば誰にとってもメリットがない。「関係者」が悪気なく口走ったのだとするなら、少しは控えてはどうかと言ってしまうのは上から目線すぎるだろうか?

1910.

ファイザー製ワクチン4回目、オミクロン株への予防効果は/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のB.1.1.529(オミクロン変異株)の流行中に行った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の4回目接種は、3回のみ接種と比べて、SARS-CoV-2感染率およびCOVID-19重症化率を低下した。イスラエル・ワイツマン科学研究所のYinon M. Bar-On氏らが、オミクロン変異株流行中に同ワクチン4回目を接種した60歳以上125万人超を対象に行った試験の結果を報告した。イスラエルでは、2022年1月2日に、60歳以上を対象としたBNT162b2ワクチンの4回目接種を開始していた。NEJM誌オンライン版2022年4月5日号掲載の報告。対COVID-19感染・重症化予防効果を疑似ポアソン回帰で分析 研究グループはイスラエル保健省データベースを用いて、オミクロン変異株流行期間中(2022年1月10日~3月2日)にCOVID-19ワクチン4回目接種の対象だった60歳以上125万2,331人に関するデータを抽出・解析した。 感染率と重症COVID-19について、ワクチン4回目接種後8日以上経過した(4回接種)群と、3回のみ接種した(3回接種)群、また4回目接種後3~7日(4回接種早期)群を比較。発生率は疑似ポアソン回帰モデルを用い、年齢、性別、人口統計上の集団、暦日によって補正を行い推算した。重症COVID-19、3回接種群が4回接種群の3.5倍 補正前の重症COVID-19発生率は、4回接種群が1.5/10万人に対し、3回接種群は3.9/10万人、4回接種早期群は4.2/10万人だった。 疑似ポアソン回帰分析の結果、重症COVID-19の補正後発生率は、3回接種群が4回接種後4週経過群と比べて3.5倍(95%信頼区間[CI]:2.7~4.6)高かった。また4回接種早期群は、4回接種後4週経過群と比べて2.3倍(1.7~3.3)高かった。 3回接種群の同発生率は、4回目接種後2週経過群と比べても2.4倍(2.0~2.9)高かった。COVID-19重症化に対するワクチン予防効果は、4回目接種後6週間は減弱がみられなかった。 補正前の感染率は、4回接種群が177/10万人、3回接種群は361/10万人、4回接種早期群は388/10万人だった。補正後感染率は、3回接種群が4回接種後4週経過群と比べて2.0倍(95%CI:1.9~2.1)高く、4回接種早期群は4回接種後4週経過群よりも1.8倍(1.7~1.9)高かった。しかしながら、感染に対するワクチンの予防効果は、ワクチン接種後約4週間でピークに達し、その後は徐々に減弱し、8週後には感染リスクは3回接種群とほぼ同等だった。

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新型コロナ後遺症、多岐にわたる症状と改善時期/東京感染症対策センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波が懸念される中で新規の陽性患者だけでなく、COVID-19の後遺症の報告も医療機関で上がっている。厚生労働省は、2021年12月に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)」を作成し、全国の医療機関に診療の内容を示したところである。 今回、東京都は、3月24日に開催された東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議で「都立・公社病院の外来を受診した後遺症患者の症例分析」を発表した。これは、都の感染症に関する政策立案、危機管理、調査・分析などの感染症対策を行う東京感染症対策センター(東京iCDC)が取りまとめたもの。 分析の結果、症状では「倦怠感」「息切れ」「頭痛」などの症状が多く、出現時期も2週間未満での発症が多かった。 東京都では、HP上で後遺症の症状、体験談、相談窓口などを紹介する「新型コロナウイルス感染症 後遺症リーフレット」を作成・公開し、後遺症診療の啓発につとめている。調査の概要・対象:都立・公社病院のコロナ後遺症相談窓口から自院の外来受診につながった症例など、都立・公社病院の外来を受診した後遺症が疑われる患者の症例・期間:令和3年5月10日~令和4年1月28日に受診した症例・症例数:230例 年齢:50代、40代、30代の順 性別:男(60%)、女(40%) 重症度:軽症(54%)、不明(28%)、中等症I(8%)の順COVID-19後遺症の主訴の多くが倦怠感、息切れ、頭痛の3つ 次に調査結果の概要を示す。【1.後遺症の症状】・全症状(複数回答)倦怠感(93人)、息切れ(44人)、頭痛(38人)の順で多く、その他が128人・主症状(単一回答)倦怠感(52人)、息切れ(25人)、頭痛(23人)の順で多く、その他が49人・後遺症の症状の数(症例データ)1つ(35%)、2つ(27%)、3つ(27%)の順・訴える症状の数(相談窓口データ)2つ(34%)、1つ(30%)、3つ(19%)の順 症状は上位3つの主訴が多いが、「その他」も多く、多岐にわたる症状が多い。また、全体の65%が2つ以上の症状を訴えていたことが判明した。【2.後遺症の出現時期と改善状況】・後遺症の出現時期[発症からの期間](n=213)2週間未満(116人)、2週間以上1ヵ月未満(46人)、1ヵ月以上3ヵ月未満(40人)の順・直近受診日における改善状況(n=125)改善(68人)、症状継続(54人)、他院紹介(3人)の順 全体の約54%がCOVID-19発症から2週間未満であり、症状が継続していた。また、改善状況では全体の54%が直近受診日において改善していた。【3.治療・検査】 後遺症の治療法は確立されていないが、都立・公社病院では、症状に応じた検査・薬の処方など、対症療法を行っている。(1)倦怠感(n=52)・検査:血液検査(33人)、胸部X線(17人)、脳・頭部MRI(14人)など・治療:漢方薬(23人)、抗うつ薬(5人)、解熱鎮痛薬(4人)など(2)息切れ(n=25)・検査:胸部X線(20人)、血液検査(14人)、心電図(8人)など・治療:漢方薬(4人)、解熱鎮痛薬(4人)、咳止め薬(4人)など(3)頭痛(n=23)・検査:血液検査(16人)、脳・頭部MRI(9人)、心電図、胸部X線(ともに7人)など・治療:解熱鎮痛薬(9人)、漢方薬(4人)など 改善時期では、倦怠感が発症から1~3ヵ月、3~6ヵ月がほぼ同じ割合で多く、息切れは1~3ヵ月、頭痛は3~6ヵ月の回答が多かった。 東京iCDCは、以上の結果から「時間の経過とともに改善がみられる事例がある一方で、コロナ罹患時よりも重い症状となる事例、症状が長期に遷延し、仕事などを休まざるをえない事例もみられた。コロナ発症時から1~2ヵ月以上症状が継続するなど、後遺症が疑われる場合は、無理な活動は避け、かかりつけの医療機関や相談窓口などへ相談をしてほしい」と結んでいる。

1912.

ウクライナ語を新たに追加、医療通訳サービス活用を/日医

 ウクライナからの避難者やその親族等の支援として、日本医師会では医療通訳サービスに、2022年4月6日より新たにウクライナ語を追加した。同サービスは医師賠償責任保険の付帯サービスとして実施されているもので、ウクライナ語を含む19言語に対応。通訳者を介して話すことができる電話医療通訳とアプリを活用した機械翻訳の2つのサービスからなる。同日開催された日本医師会定例記者会見で、松本 吉郎常任理事が発表した。併せて、新型コロナウイルス感染症の影響や未収金発生状況等について審議結果をまとめた「令和2年・3年度外国人医療対策委員会報告書」の内容が公開された。特別な設備は不要、電話1本で利用可能 同サービスは当初東京オリンピックの開催に伴う外国人患者増加に向けた施策の一環として開始されたものだが、現在も継続されている。[電話医療通訳サービス概要]対応言語:19言語(英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・ベトナム語・タイ語・ロシア語・タガログ語・フランス語・ヒンディー語・モンゴル語・ネパール語・インドネシア語・ペルシャ語・ミャンマー語・広東語・アラビア語・ウクライナ語)対応時間:毎日8:30~24:00利用対象者:開設者・管理者が日本医師会A1会員である医療機関の医師・職員利用料:A1会員1人当たり年間20回まで無料※ウクライナから避難された患者やその親族における電話医療通訳については、対象言語に関わらず、年間20回の回数制限を除外して対応利用方法:事前登録完了後に通訳直通電話番号を案内→電話1本で利用可能外国人COVID-19患者への対応や未収金の発生防止にも活用を 「令和2年・3年度外国人医療対策委員会報告書」では、新型コロナワクチン接種のための手続きが日本語が十分に使える状況にない来日外国人にとって非常に難易度が高いこと、日本人と比べ自宅療養の比率が高くなる傾向が報告されていること、陽性判明から入院・入所までの手続きにおけるコミュニケーションが十分にとれていないケースも散見されることなどが指摘されている。 また、未収金の発生状況についても、厚生労働省「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」(令和3年3月)よりデータがまとめられている。令和2年10月の1ヵ月間で、外国人患者の受入実績のある2,195病院のうち、363病院(16.5%)が外国人患者による未収金を経験していた。発生件数は平均4.4件、総額は平均37.0万円で、500万円を超える事例が6件あり、最高額は約989万円だった。 松本氏は、ウクライナからの避難民や新型コロナ感染症患者への対応はもちろん、未収金の発生防止対策の1つとしても、円滑なコミュニケーション推進のために医療通訳サービスを活用してほしいと話した。

1913.

HPVワクチン接種者へのスクリーニング、陽性者にはコルポスコピーを/BMJ

 子宮頸がんの予防では、ヒトパピローマウイルス(HPV)の1次スクリーニングは細胞診よりも有効性が高いとされる。オーストラリア・シドニー大学のMegan A. Smith氏らは、これまでに十分な検討が行われていないHPVワクチン接種を受けた女性における子宮頸がんの1次スクリーニング検査の効果を評価し、コルポスコピー検査導入の決定に際しては、基本となるがんのリスクを考慮する必要があり、これに基づいてHPVスクリーニング検査を行えば、その結果がHPV16/18陽性の女性では、細胞診の結果にかかわらず、過去に繰り返しスクリーニング検査を受けている女性であっても、コルポスコピー検査で前がん病変やがんが発見される可能性が高いことを示した。研究の詳細は、BMJ誌2022年3月30日号に掲載された。オーストラリア350万女性の観察研究 研究グループは、オーストラリアのHPVワクチン接種済みの女性において、子宮頸がんの1次スクリーニング検査プログラムの開始から2年間の実態を調査する目的で、観察研究を行った(筆頭著者らはオーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]から給与支援を受けた)。 対象は、2017年12月1日~2019年12月31日の期間にHPVの1次スクリーニング検査を受けた女性であった。 1次スクリーニング検査でHPV16またはHPV18が陽性であった場合、液状処理細胞診でのhigh grade、low grade、陰性、不十分の集団に、HPV16/18以外の高リスクHPV型陽性者では液状処理細胞診でhigh gradeの集団に、コルポスコピー検査が行われた。 また、HPV16/18以外の高リスクHPV型陽性者には、液状処理細胞診によるトリアージが行われ、中等度リスク(low grade、陰性)の集団には、12ヵ月間のフォローアップHPV検査が推奨され、期間中に高リスクHPV型(HPV16/18およびHPV16/18以外)が陽性となった時点でコルポスコピー検査が導入された。 主要アウトカムは、初回HPVスクリーニング検査で陽性となり、コルポスコピー検査を受けた女性の割合と、子宮頸部上皮内新生物(CIN)Grade3以上、同Grade2以上およびがんの検出の短期的なリスクとされた。 スクリーニング検査の対象となった25~69歳の女性642万8,677例のうち350万7,281例(54.6%)が、2019年末までに初回HPVスクリーニング検査を受けた。がん検出率:HPV16/18陽性者0.98%、細胞診陰性でも0.32% 定期的にスクリーニング検査を受けた25~69歳の女性304万5,844例では、HPV16/18陽性率は2.0%、HPV16/18以外のHPV型陽性率は6.6%であり、ワクチン接種率が高い25~34歳の女性(76万8,362例)では、それぞれ2.2%および13.3%であった。 コルポスコピー検査を受けた女性の割合は3.5%で、12ヵ月間の再HPV検査を終了していない女性を考慮すると、6.2%に増加すると推定された。 子宮頸がんは、ベースライン時にHPV16/18陽性の女性の0.98%(456/4万6,330例)で検出された。このうち細胞診でhigh gradeの女性は子宮頸がんの検出率が4.4%(330/7,583例)とリスクが最も高く、陰性の女性でも0.32%(89/2万8,003例)と相対的に高いリスクを示し、これはlow gradeの0.26%(26/9,821例)と同程度であった。 ベースラインと12ヵ月後の双方においてHPV16/18以外のHPV型が陽性で、細胞診が陰性またはlow gradeの中等度リスクの女性(2万19例)は、重篤な病態のリスクが低かった(CIN Grade3以上:3.4%、がん:0.02%)が、このスクリーニングアルゴリズムでは、コルポスコピー検査を受けた62.0%に当たると推定された。 著者は、「これらの結果は、HPV16/18陽性の女性は子宮頸がんのリスクが高い(0.98%)ため、細胞診の結果にかかわらず、コルポスコピー検査を考慮する必要があることを示唆する」とし、「HPV16/18以外のHPV型が陽性で、細胞診が陰性またはlow gradeの女性では重篤な病態のリスクが低かったが、コルポスコピー検査を受けた女性の多くを占めていたことから、HPV検査を1回ではなく2回繰り返すことで安全に管理できる可能性がある」としている。

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こういうランダム化比較試験は仕方ない?(解説:後藤信哉氏)

 日本ではランダム化比較試験の多くが薬剤の臨床開発の一環としての治験として行われている。治験でないランダム化比較試験には薬を売るためのseeding trial(種まき試験)が多い。企業の利益と臨床試験が直結するため、規制当局による厳格な規制がなければ資本は何をするかわからない。 経済利益と直結する臨床試験と異なり、本研究は新型コロナウイルスという脅威にさらされた人類の治療法探索の一環として施行された研究である。新型コロナウイルス感染は血栓症のリスクを増やす。血栓イベント予防効果のある抗血小板薬は感染症の予後を改善するかもしれないとの仮説が検証された。 筆者は知らなかったが、世界には肺炎の予後改善を目指したREMAP-CAP試験という各種薬剤の効果を検証する継続的なランダム化比較試験の基盤があるらしい。本研究では新型コロナウイルス肺炎にてICU入院あるいは機械的補助循環・呼吸を要した重症例1,557例を対象とした。試験のendpointは登録後21日以内の機械的補助循環・呼吸を外れた日数とした。日数-1は死亡、日数22は無事退院となる。ランダム化はオープンラベルでアスピリン・P2Y12阻害薬使用ないし不使用である。 重篤な出血は増えるようだが、生存できる可能性は抗血小板薬を使ったほうがよい方向に見えるが統計学的に差異はなかった。1,400例以上集めても差がなかったことが示された。論文の著者はREMAP-CAP Writing Committee for the REMAP-CAP Investigatorsで個人ではない。人類のために能力のあるものが臨床試験にて医療のシステム的改善にチャレンジするとのランダム化比較試験のお手本のような例だと筆者は思う。

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第107回 自宅療養COVID-19患者へのまめな自動通知でパルスオキシメーターいらず?

ペンシルベニア大学が実施した無作為化試験の結果によると、自宅療養する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者にまめに通知して病状を把握して必要に応じて看護師等が事に当たる遠隔医療体制が整っていればパルスオキシメーターのような新手の装置の導入なしで入院や死亡を十分に防ぐことができるようです1,2)。2020年3月に同大学医学部(Penn Medicine)は自宅療養COVID-19患者を遠隔通信で見守る仕組みを開始しました。COVID Watchという名称のその取り組みでは呼吸困難の有無と体調はどうかを尋ねる文章通知が2週間のあいだ1日に2回自動配信されます。もし患者の呼吸がより困難になっているようであれば24時間対応チームの担当者から連絡があり3)、救急科(ED)に患者をすぐさま届けるか、遠隔での急診を手配するか、自宅での引き続きの様子見が指示されます。そのようにして入院が必要な悪化患者を容易に見つけ出し、あとは家で安全に過ごしてもらうCOVID Watchには開始以来のべ2万8,500人超の患者が参加しており、その効果は死亡率の低下となって現れています。COVID Watchで世話した患者3,448人とそうでない4,337人を比較したところ、30日間の死亡者数は前者ではわずか3人、後者では12人であり、COVID Watchは死亡率の実に68%低下と関連しました4,5)。COVID Watchでは悪化の兆しを患者の呼吸困難の自覚を頼りに読み取りますが、COVID-19患者が知らぬ間に被る低酸素状態をパルスオキシメーターで測定した酸素飽和度を頼りに把握して悪化を察知するのはさらに良さそうと考える向きもあります1)。COVID-19患者は呼吸困難などの発症に先立って血中酸素レベル低下を呈するとの報告があり、パルスオキシメーターでその低酸素を感知すれば入院が必要な患者をより早期に発見して急を要する治療をより素早く施して患者転帰を更に改善できるかもしれません。一見理にかなうパルスオキシメーターの使用はどうも抗いがたい説得力があるらしく、自宅療養COVID-19患者の遠隔体調把握の取り組みの多くでその使用が取り入れられています。しかしパルスオキシメーターの効果のほどの裏付けは乏しく、無作為化試験での検討はこれまでありませんでした。そこでペンシルバニア大学の研究者は2020年11月29日から去年2021年2月5日に募ったCOVID-19患者2,000人超をいつも通りのCOVID Watch手順のみの群かそれに加えてパルスオキシメーターも使ってもらう群に割り振って入院や死亡の予防効果を比較する無作為化試験を実施しました。その結果、余分な支出をしてパルスオキシメーターを使うひと手間の価値は残念ながら認められませんでした。試験参加から30日間を入院なしで生きながらえた日数平均の比較が試験の主な目的で、パルスオキシメーター使用群でのその日数はいつも通りのCOVID Watch手順群の29.5日とほぼ同じ29.4日であり、有意差はありませんでした。不安の程度も有意差はなく、パルスオキシメーターのおかげで患者はより安心して過ごせたというわけでもありませんでした。試験は体調の遠隔把握の取り組みに上乗せしてパルスオキシメーターを使った場合を検討したものであるという点を踏まえてその結果を解釈する必要があります。COVID Watchのような遠隔での世話を患者が受けられないのであれば自宅でのパルスオキシメーター使用は妥当な手段の一つとなり得るかもしれません。試験主導医師の一人Krisda Chaiyachati氏は次のように言っています2)。「自動配信の通知を利用する原始的な手段で遠隔対応すれば値が張る装置をあえて使わずとも十分に事足りるようです。自動通知を利用すればより少ない看護師の手配で多数のCOVID-19患者の世話が可能であり、そのような仕組みはCOVID-19に限らず他の病気の患者にも役立てられそうです」。他の病気にはたとえば高血圧、糖尿病、心不全などの慢性疾患が含まれます3)。参考1)Lee KC,et al. N Engl J Med. 2022 Apr 6. [Epub ahead of print]2)Pulse oximeters did not change outcomes for patients in COVID-19 monitoring program / Eurekalert3)Remote Monitoring of Patients with Covid-19: Design, implementation, and outcomes of the first 3,000 patients in COVID Watch. NEJM Catalyst. July 21, 20204)Delgado MK, et al.. Ann Intern Med. 2022 Feb;175:179-190. 5)Automated texting system saved lives weekly during first COVID surge / Eurekalert

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第96回 COVID-19レジストリ研究“ダッシュボード”公開/国立国際医療研究センター

<先週の動き>1.COVID-19レジストリ研究“ダッシュボード”公開/国立国際医療研究センター2.感染拡大を懸念し、新型コロナウイルス感染症対策分科会が緊急メッセージ3.医師大量退職の大津市民病院、理事長に次いで院長も辞任4.2021年の救命救急センター評価、S評価は96ヵ所/厚労省5.ヤングケアラー実態調査で小学6年生の15人に1人が家族の世話6.精神病院での身体拘束後の死亡事件、遺族と病院が和解1.COVID-19レジストリ研究“ダッシュボード”公開/国立国際医療研究センター国立研究開発法人 国立国際医療研究センターは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例データベース研究「COVID-19 REGISTRY JAPAN(COVIREGI-JP)」に登録されたデータ等を活用したダッシュボードを公開した。COVID-19と診断され、日本国内の医療機関に入院した患者を対象として、以下の情報が登録されている。(1)基本情報(年齢、性別、出生国、人種、感染に関する疫学的情報、基礎疾患、内服歴・治療歴など)(2)入院や治療に関する情報(症状、入院期間、治療方法、血液・画像検査の結果など)(3)感染症に関する情報(COVID-19の検査結果、その他病原体検査結果など)(4)その他(妊婦:妊娠期間、妊娠中の異常、妊娠転帰/小児:出生歴、ワクチン接種の有無など)本研究は、国際感染症センターと全国700余りの医療機関が共同で6万3,000例以上の症例を登録し、わが国で最大級のCOVID-19入院患者データを蓄積するレジストリとなっている。今後も研究を推進させるため、引き続きデータ登録や研究への参画を呼びかけている。ダッシュボードでは、重症患者の推移、年齢男女構成、症状、併存疾患、薬物治療、呼吸補助治療、喫煙状況などを一覧することができる。2022年4月11日時点のダッシュボード画面画像を拡大する(参考)コロナ入院患者の症状推移や治療状況などまとめたサイト公開(NHK)COVIREGI-JPダッシュボード公開について~COVID-19・レジストリ登録データを見える化しました~(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター)2.感染拡大を懸念し、新型コロナウイルス感染症対策分科会が緊急メッセージ政府は8日、新型コロナウイルス感染症対策分科会を開催した。今後の急激な感染拡大を防止して、社会経済活動を継続するための緊急メッセージを発信し、国民へ可能な限り早めの3回目接種などを呼び掛けた。まん延防止等重点措置の解除後、わが国でも海外と同様に、陽性者でオミクロン株BA.2が占める割合が増加し、感染再拡大の兆候が見られているため、適切なマスク着用など基本的感染対策の徹底が求められる。また、医療機関や自治体に対しては、高齢者施設で感染が疑われる人が出た場合、早期の医療介入や施設での感染対策のために手厚い支援をするよう求めている。(参考)高齢者対策重点に 感染急拡大で医療逼迫も 分科会(産経新聞)急拡大防止“追加接種やマスク着用を”分科会が緊急メッセージ(NHK)第7波対策、分科会で議論 社会経済活動の制限に賛否(日経新聞)3.医師大量退職の大津市民病院、理事長に次いで院長も辞任京都大学から派遣されている外科・消化器外科・乳腺外科などの医師19人の相次ぐ退職見込みが報道されている滋賀・大津市民病院は、若林 直樹院長が一連の責任をとる形で辞任することを明らかにした。後任の院長には、京都府立医大出身の日野 明彦氏(現・済生会滋賀県病院 院長補佐)が4月18日に就任する。なお、院長を辞任した若林氏は副理事長として、引き続き病院運営や診療に携わり新院長をサポートしていくとされる。一方、後任の理事長はまだ決まっておらず、大津市長が人選を急いでいる。(参考)大津市民病院 院長辞任発表“多くの医師退職問題で責任とる”(NHK)院長辞任→院長代行に 大津市民病院(読売新聞)大津市民病院の院長が辞任「責任を痛感」 医師大量退職問題、副理事長は継続(京都新聞)4.2021年の救命救急センター評価、S評価は96ヵ所/厚労省厚生労働省が、2021年「救命救急センターの充実段階評価の評価結果」を公表した。全国298ヵ所の救命救急センターが対象に行われた本調査は、1999年度から救命救急センター全体のレベルアップを図ることを目的として実施されており、最もランクの高い「S」評価を得たのは、東北大学病院、福島県立医科大学附属病院、筑波大学附属病院、自治医科大学附属病院、埼玉医科大学総合医療センター、手稲渓仁会病院、東京都立墨東病院、亀田総合病院、慈泉会相澤病院など96ヵ所。評価としては「A」が196ヵ所で最も多く、「B」は5ヵ所、「C」は1ヵ所となっている。評価の結果は、救命救急センター運営事業費の補助額と診療報酬に反映される。たとえば診療報酬では、「S」評価であれば救命救急入院料に救急体制充実加算1(1,500点)、「A」なら同加算2(1,000点)、「B」なら同加算3(500点)がそれぞれ上乗せされる。(参考)2021年の救命救急センターの評価、S:96か所、A:196か所、B:5か所、C:1か所に―厚労省(Gem Med)21年の充実段階評価「S」、救命センター96カ所「C」は1カ所、厚労省(CB news)5.ヤングケアラー実態調査で小学6年生の15人に1人が家族の世話厚労省は今年1月、介護など家族の世話をしている子供や若者(ヤングケアラー)の実態調査を行った。その結果、小学6年生の15人に1人、大学3年生では16人に1人が実際に家族の介護などをしていることが明らかとなった。平日1日あたり7時間以上を費やすと回答したヤングケアラーは7.1%であり、割合は家事や幼い兄弟姉妹の世話が多く、学業や健康面への影響が心配だ。(参考)“ヤングケアラー”国が初調査 小学生15人に1人「家族を世話」(NHK)ヤングケアラー、小6の15人に1人 1日7時間費やす例も 厚労省調査(日経新聞)小学生の15人に1人はヤングケアラー 長時間ケアが学校生活に影響(朝日新聞)6.精神病院での身体拘束後の死亡事件、遺族と病院が和解東京都足立区の精神科病院で、患者(当時54歳)が死亡したのは違法な身体拘束によるものとして、遺族が病院側に約6,200万円の損害賠償を求めた訴訟があり、東京高裁(足立 哲裁判長)で4月7日に和解が成立した。被告となった病院は、再発防止に努めるとともに、解決のため和解金を支払うこととなったが、金額は明らかにされていない。東京地裁の判決によると、双極性障害と診断されていた患者が2016年1月、足立区内の精神科病院を受診し、夫の同意下で入院したが、医療者側の指示に従わないため、医師の指示によって両腕・胴の拘束を開始した。7日後に解除されたが、直後に容体が急変し、肺塞栓症にて亡くなった。(参考)身体拘束後死亡、遺族と病院和解 東京高裁(日経新聞)身体拘束後に死亡、精神科病院側と遺族が和解 「一層の配慮」を約束(朝日新聞)

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妊娠中のコロナワクチン接種、周産期アウトカムへの影響は?/JAMA

 妊娠中の女性に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを接種しても、妊娠終了後の接種や非接種と比較して、母子における有害な周産期アウトカムのリスクの増加はほとんどみられないことが、カナダ・オタワ大学のDeshayne B. Fell氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年3月24日号に掲載された。オンタリオ州の後ろ向きコホート研究 研究グループは、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種の、周産期のアウトカムに及ぼす影響の評価を目的に、人口ベースの後ろ向きコホート研究を行った(カナダ公衆衛生庁の助成を受けた)。 解析には、カナダ・オンタリオ州のCOVID-19予防接種データベース(COVaxON)と連携させた出生レジストリ(Better Outcomes Registry & Network[BORN] Ontario)の2020年12月14日~2021年9月30日のデータが用いられた。 被験者は、妊娠中に少なくとも1回のCOVID-19ワクチン接種を受けた群、妊娠終了後に接種を開始した群、接種の記録がない群の3群に分けられた。 主要アウトカムは、母親では分娩後出血、絨毛膜羊膜炎、帝王切開による分娩(全体および緊急時)、新生児では新生児集中治療室(NICU)入室、分娩5分後の新生児Apgarスコア低値(7点未満)の発生とされた。リスク増大なし、ほとんどがmRNAワクチンである点に留意 9万7,590人(平均年齢 31.9[SD 4.9]歳)の妊婦が解析に含まれた。2万2,660人(23%)が妊娠中に少なくとも1回のワクチン接種を受け、このうち63.6%は妊娠第3期(妊娠期間中央値213日[在胎週数30週])に1回目の接種を受けており、99.8%(BNT162b2[Pfizer-BioNTech製]79.9%、mRNA-1273[Moderna製]19.9%)がmRNAワクチンであった。 これら妊娠中接種群は、妊娠終了後接種群(4万4,815人)と比較して、5つの有害な周産期アウトカムについて、統計学的に有意なリスクの増加は認められなかった。 すなわち、分娩後出血の発生率は、妊娠中接種群が3.0%、妊娠終了後接種群も3.0%(補正後群間リスク差:-0.28/100人[95%信頼区間[CI]:-0.59~0.03]、補正後リスク比:0.91[95%CI:0.82~1.02])で、絨毛膜羊膜炎はいずれも0.5%(-0.04/100人[-0.17~0.09]、0.92[0.70~1.21])と両群に差はなく、帝王切開による分娩は30.8%および32.2%(-2.73/100人[-3.59~-1.88]、0.92[0.89~0.95])と、妊娠中接種群のほうが低かった。また、新生児の2つのアウトカムはいずれも妊娠中接種群でリスクが低く、NICU入室は11.0%および13.3%(-1.89/100人[-2.49~-1.30]、0.85[0.80~0.90])、分娩5分後Apgarスコア低値は1.8%および2.0%(-0.31/100人[-0.56~-0.06]、0.84[0.73~0.97])だった。 また、非接種群(3万115人)と比較した場合の、妊娠中接種群における有害な周産期アウトカムの発生のリスクは以下のとおりであり、妊娠終了後接種群との比較とほぼ同程度であった。 分娩後出血(3.0% vs.3.4%、補正後リスク差:-0.32/100人[95%CI:-0.64~-0.01]、補正後リスク比:0.90[0.81~1.00])、絨毛膜羊膜炎(0.5% vs.0.3%、0.07/100人[-0.04~0.19]、1.20[0.90~1.59])、帝王切開による分娩(30.8% vs.28.5%、-0.97/100人[-1.81~-0.14]、0.97[0.94~1.00])、NICU入室(11.0% vs.12.8%、-0.93/100人[-1.52~-0.35]、0.92[0.87~0.97])、分娩5分後Apgarスコア低値(1.8% vs.2.0%、-0.23/100人[-0.47~0.02]、0.88[0.77~1.01])。 著者は、「これらの結果を解釈する際は、妊娠中のワクチン接種の多くは妊娠第2~3期に接種されたmRNAワクチンである点に留意する必要がある」としている。

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回復期患者血漿、ワクチン未接種のコロナ外来患者に有効か?/NEJM

 多くがワクチン未接種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の外来患者において、症状発現から9日以内の回復期患者血漿の輸血は対照血漿と比較して、入院に至る病態悪化のリスクを有意に低減し、安全性は劣らないことが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のDavid J. Sullivan氏らが実施した「CSSC-004試験」で確認された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年3月30日号に掲載された。米国23施設の無作為化対照比較試験 本研究は、COVID-19外来患者の重篤な合併症の予防における回復期患者血漿の有効性の評価を目的とする二重盲検無作為化対照比較試験であり、2020年6月3日~2021年10月1日の期間に、米国の23施設で参加者の登録が行われた(米国国防総省などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性で、COVID-19の症状発現から8日以内の外来患者であり、病態悪化のリスクやワクチン接種の有無は問われなかった。 被験者は、回復期患者血漿または対照血漿の輸血を受ける群(両群とも約250mLを単回投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、登録後24時間以内に約1時間をかけて輸血された後、30分間の経過観察が行われた。 対照血漿には、2019年に献血で得られたか、2019年12月以降にSARS-CoV-2陰性と判定された集団から得られた血漿が用いられた。 主要アウトカムは、輸血から28日以内のCOVID-19関連入院とされた。相対リスクが54%低下 1,225例(SARS-CoV-2陽性の判定はRNA検出が87%、抗原検出が13%)が無作為化の対象となり、このうち実際に輸血を受けた1,181例(年齢中央値43歳、65歳以上7%、50歳以上35%、女性57%[3例の妊婦を含む]、症状発現から輸血までの期間中央値6日)が修正intention-to-treat解析に含まれた(回復期患者血漿群592例、対照血漿群589例)。 ワクチンは、未接種が回復期患者血漿群83.3%、対照血漿群81.7%、部分接種がそれぞれ4.6%および5.3%、完全接種は12.2%および13.1%であった。 28日以内のCOVID-19関連入院は、回復期患者血漿群が592例中17例(2.9%)で認められ、対照血漿群の589例中37例(6.3%)と比較して有意に良好で(絶対リスク低下率:3.4ポイント、95%信頼区間[CI]:1.0~5.8、p=0.005)、相対リスクが54%低下した。1回の入院を回避するのに要する治療必要数は29.4例だった。 回復期患者血漿群の12例と対照血漿群の26例で、病態の悪化により酸素補給が行われた。対照血漿群の3例が、入院後に死亡した。 両群を合わせた入院患者54例のうち53例はワクチン未接種で、残りの1例は部分接種であり、完全接種はなかったため、ワクチン接種者における有効性の評価はできなかった。 Grade3/4の有害事象は89件発現し、回復期患者血漿群が34件、対照血漿群は55件であった。非入院患者では、16件のGrade3/4の有害事象が認められ、それぞれ7件および9件だった。 著者は、「これらの結果は、とくにワクチン配布に不均衡がみられる医療資源が乏しい地域において、公衆衛生上の重要な意味を持つ」とし、「将来のCOVID-19の世界的流行を想定すると、回復期患者血漿を迅速に投与できる輸血センターの設立が考慮すべき課題となるだろう。また、現在の世界的流行においても、モノクローナル抗体に対する耐性を持つSARS-CoV-2変異株が伝播し続けていることから、とくに地域で得られた最近の血漿には、循環する株に対する抗体が含まれるため、COVID-19回復期患者血漿の入手と配布の能力の開発が、有益性をもたらす可能性がある」と指摘している。

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5年間体温計が頚部に埋まっていた男【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第207回

5年間体温計が頚部に埋まっていた男photo-ACより使用5年間毎日体温を測っている、健康増進意欲の高い人はいるかもしれません。しかし、体内に体温計を5年間入れっぱなしにした人はそうそういないのではないでしょうか。来たぜ、久しぶりの異物論文!Yang L, et al.Unusual cervical foreign body - a neglected thermometer for 5 years: A case reportWorld J Clin Cases . 2021 Oct 26;9(30):9129-9133.32歳男性が、7日前から左頚部の知覚障害と運動制限が悪化したということで受診しました。実は5年前から頚部に軽い知覚異常を感じており、それが7日前に罹患した急性上気道炎によって悪化し、耐えがたい症状となったようです。画像検査を行うと、頚部に棒状の何かがあるではないですか。なんですか、これ?どうやら5年前からの頚部違和感というのが理由のようです。主治医は5年前に何があったのか、と問いました。当時、彼はどうやらヘロイン中毒になっていたらしく、水銀体温計を壊して水銀体温計の本体を意図的に飲み込んだことがあるようです。何やってんの。そのとき、救急外来を受診したのですが、内視鏡検査が行われ、「何もない」という結論に落ち着きました。ヘロイン中毒ということもあって、本人の妄想ではないかと片付けられてしまいました。このときに単純X線や頚部CTなどの画像検査を行っていれば体温計は発見されたのでしょうが……。この論文の異物は、水銀体温計でした。今はもう持っている人はまれでしょうが、細長いガラスの棒みたいなやつです。水銀って体によくないイメージですが、割れた体温計から漏れ出た水銀が、周囲の感染を抑えたのではないかと考察されています1)。漏れ出た水銀によって急性期感染症が抑えられ、5年間の時を経て、発見されたというわけです。1) Batchu H, et al. The effect of disinfectants and line cleaners on the release of mercury from amalgam. J Am Dent Assoc. 2006;137:1419–1425.

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第103回 24年度まで無料延長!今がチャンスの風疹抗体検査とワクチン接種

前回、新型コロナウイルス感染症の3回目接種の進捗が低調なのではないかと本連載で触れたが、以下の記事によると、実際にそうらしい。「ワクチン3回目、遅れる現役世代 対象の2割が未接種」(日本経済新聞)記事では3月末までに3回目の接種時期を迎えた現役世代の4人に1人は未接種とのデータを紹介。その背景について厚生労働省は副反応への懸念があると見ているとのこと。前回はそうした可能性があることを踏まえ、メッセンジャーRNAワクチンに比べて接種者が自覚する副反応頻度がやや低い「組み換えタンパクワクチン」の承認を急ぐべきだと私は主張したが、どうやらその点は実現しそうな見込みである。一方、岸田 文雄首相はワクチンの3回接種完了者向けにコンサートやスポーツ観戦などのイベントに割引を適用する「ワクワクイベント事業」の展開を検討していると報じられている。すでにこの種の振興事業に関しては、「Go To トラベル事業」の代替措置として観光庁が支援している「県民割」がある。これは新型コロナの感染状況がステージII以下の自治体で、新型コロナワクチンの2回接種完了あるいはPCR検査などの陰性を条件に居住県内あるいは隣接県への旅行代金を最大7割引にするというもので、4月6日現在、全国39道府県で実施中だ。4月1日からはこれが自県や隣接県のみならず、全国を6つに分けた地域ブロック内の旅行でも適用する「ブロック割」となり、条件も新型コロナワクチンの3回接種完了あるいはPCR検査などの陰性に切り替えられている(ただし、県内旅行の場合は知事の判断で従来のワクチン2回接種かPCR検査などの陰性結果の条件でも可)。この種の経済インセンティブによる「ニンジンをぶら下げ」手法には反発もあるようだが、行動変容などを促す場合にはある程度は必要だと個人的には思っている。さらに言えば、私はこのインセンティブ策を現在中断している「Go To Eat」へも拡大するとより効果的ではないかと考えている。ご存じのように、コロナ禍では飲食業界は新型インフルエンザ等特措法に基づく都道府県の営業自粛要請で最も大きな打撃を受けている。その意味では自粛要請期間すべてにきちんと応じた飲食店のみを対象に、前述のコロナワクチン接種の完了あるいは検査陰性を条件に飲食で割引が受けられるなどお得に使えるクーポン発行などをするという具合だ。ちなみにこうしたインセンティブ政策は、群馬県などのように地方自治体独自で行っているものもある。そうしたなかでさらに私見ではあるが、今回の新型コロナワクチンのインセンティブ策に乗っかる形で、時限措置としてインセンティブを与えたほうが良いのではないかと考えていることがある。それは中年男性への風疹ワクチン接種事業である。国内では2012~13年と2018~19年に風疹の大流行があり、その中核が過去に定期接種の機会がなく抗体保有率が低い中年男性だったことから、該当する1962年4月2日~79年4月1日生まれの男性約1,500万人を対象に無料抗体検査とその検査で風疹ウイルスに対する抗体価が低いと判断された場合のワクチン接種のクーポンが配布されてきた。この事業は本来ならば2021年度末で終了予定だったが、これまで検査を受けた人が約350万人と対象人口に比してかなり低い水準にとどまっていることから、2024年度末まで延長されることが決まった。コロナ禍による受診控えやワクチン接種がコロナにばかり注目が集まるなど、風疹ワクチン接種をめぐってはやや不運な状況が続いている。もっとも新型コロナをきっかけに良くも悪くもワクチンという存在に社会的注目が集まっていることや、4月からのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種勧奨再開などを踏まえれば、ワクチンを巡る状況にはフォローウインドの側面もある。中年男性への風疹ワクチン接種事業は対象も限定的なため、経済的インセンティブ措置を講じる場合も予算規模はより小さくて済む。さらにやや余計な物言いかもしれないが、風疹ワクチンが細胞性免疫の賦活効果が高い生ワクチンであることを考えれば、接種者では風疹以外の感染症への副次的効果も期待できる。その意味では今こそ風疹ワクチンの接種キャンペーンを行う絶好の機会だと思うのだ。

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