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呼吸器内科の必携本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第55回

【第55回】呼吸器内科の必携本はい、書評に自分の著書ほうりこんできたよー倉原。すいません。『ポケット呼吸器診療』が呼吸器内科をローテートしている研修医や若手医師に、オススメしている本ランキング第1位になっているそうで(当社調べ)、この連載の最終回に自著を宣伝させていただこうと思いました。4年以上続いたこの連載も、第55回でおしまいとなります。(´;ω;`)ブワッ『ポケット呼吸器診療2022』倉原 優/著. シーニュ. 2022年3月発売私は呼吸器内科が専門ですが、覚えたことをところてん式に忘れるくらい頭が悪い人間なので、何かしらメモを残しておかないといけません。その膨大なメモを本にしたのが『ポケット呼吸器診療』です。すぐに見たいよねーという情報をできるだけコンパクトに掲載して、それでいて持ち運びができるサイズにすること。そして毎年アップデート出版すること。これを自らに課しています。勉強することをやめるわけにはいかないので、かなりプレッシャーです。自分で実際に使ってみて、使いにくいなあと思ったところは削除したり、こんなことが書いてあったらいいのになあということは積極的に掲載しています。非常に自己中心的なマニュアルなのです、実は。刊行している出版社の社長の熱量がなかなかすごくて、「患者さんのためになる本を出すぞ」オーラが私とよくマッチしています。私は、普段から医学書を無茶苦茶たくさん買っていて、オススメしたい本はまだ山ほど眠っています。月1回の連載で、そこから厳選してたくさんの医学書を紹介してきました。医学書は読めば読むほど、「ああこのテーマではこういう切り口もあるんだなあ」と執筆する側としても非常に勉強になります。私も、とうとう不惑の40歳になりました。人生の渋い味を出していけるよう、頑張っていきたいと思います。ケアネットでは複数の連載が続く予定ですので、これからもケアネットと倉原 優をよろしく応援お願い申し上げます。おやいかん、ほとんど自分の話と挨拶で終わってしまった。ではまたいずれ!『ポケット呼吸器診療2022』著者倉原 優出版社名シーニュ定価2,200円(税込)サイズ17.2×10.5×1cm刊行年2022年

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第113回 規制改革推進会議答申で気になったこと(後編)PPIもやっとスイッチOTC化?処方薬の市販化促進に向け厚労省に調査指示

処方薬の市販化促進を進めるため厚労省に調査を指示こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この連載を読んでくれている友人から、「今年はMLBの話題が少ないね」と言われてしまいました。確かに少ないです。理由の一つはご存じのようにロサンゼルス・エンジェルスの絶不調です。約1ヵ月前は今年こそポストシーズンに行けるかもと思い、秋の“米国取材”の準備を始めていました。しかし5月後半から負けが続き、ジョー・マドン監督解任、14連敗とバッド・ニュースが続きました。6月9日(現地時間)は大谷 翔平選手の久しぶり“2刀流”の活躍で、なんとか連敗は止まったものの、その後も勝ったり負けたりとチームの調子は今ひとつです。観戦していると、野手陣の守備や走塁が日本の高校野球以下の時があって気になります(特にジョー・アデル外野手!)。この守りでは、甲子園でも1回戦止まりでしょう・・・。救いは、まだ残り100試合近くあることです。ポストシーズン進出を願って、エンジェルスとダルビッシュ有投手のいるサンディエゴ・パドレスの応援を続けたいと思います。さて、今回も前回に引き続き、規制改革推進会議答申で気になったことについて書いてみたいと思います。今回は、薬関連(処方薬の市販化、SaMD)についてです。欧米と比べ、まったく進んでいない医療用医薬品のOTC化規制改革推進会議は今年の答申、「規制改革推進 に関する答申~コロナ後に向けた成長の「起動」~」1)において、「患者のための医薬品アクセスの円滑化」の項目で、処方薬の市販化促進を進めるため、厚生労働省に次のように調査を指示しました。「厚生労働省は、医療用医薬品から一般用医薬品への転用に関する申請品目(要指導[一般用]新有効成分含有医薬品)について、申請を受理したもののいまだ「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で検討されていないものの有無を確認するとともに、令和2年度以前の申請に対していまだ結論が出されていないものについて、(ア)その件数、(イ)申請ごとに、その理由、(ウ)(イ)のうち厚生労働省及びPMDAの事業者に対する指摘に対して事業者によって適切な対応が行われていないために審査が進まないとするものについては当該指摘の内容、(エ)申請ごとに、当該申請品目の成分に関して、海外主要国における一般用医薬品としての販売・承認状況及び承認年度を調査する。」国はかねてからセルフメディケーションを推進すると言っているのに、緊急避妊薬や抗潰瘍薬など、欧米と比べ医療用医薬品のOTC化がまったく進んでいないことに業を煮やした上での対応と言えます。実際、米国などに旅行に行くと、日本では市販されていない医薬品がOTCとして普通に売られていることに驚くことがあります。だからといって大きな薬害が起こった、という報道は聞いたことがありません。日本の医療用から要指導・一般用への転用が、他国と比べて慎重過ぎて大きく遅れているのは確かなようです。日本OTC医薬品協会が“塩漬け品目”を調査実は、同様の指示は昨年の答申の中の「重点的に取り組んだ事項」で、「一般用医薬品(スイッチOTC)選択肢の拡大」として掲げられていましたが、検討はその後も進んでいませんでした。今回の規制改革推進会議の議論の過程では、2022年4月27日に開かれた「医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ」で スイッチOTCの選択肢拡大について議論されています。この場では、日本OTC医薬品協会が、新規性を有する品目における審査状況の調査結果(いわゆる“塩漬け品目”の実態)を報告。それを受け、厚労省による実態調査の早急な実施を22年度の答申に盛り込むことが提案され、今回の答申に至ったのです。同調査は、「スイッチOTC等新規性を有する品目について承認申請を行ったものの審査が開始されていないまたは審査中のまま停止している品目(塩漬け品目)」の実態を明らかにする目的で、同協会加盟者に実施されました。回答した16社から得られた結果によると、スイッチOTC(これまでにない医療用成分を配合する医薬品で厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議の審議対象)では10~15年経過が1品目、5~10年経過が4品目、5年以内が1品目あったとのことです。さらに報告では、これまでに評価検討会議でスイッチOTC化を拒否された項目と論点が示され、「いわゆる『塩漬け品目』では、これまでに拒否された理由と共通するような照会事項が多いと推測される」と、通り一遍の否決理由を批判しました2)。4年前にはプロトンポンプ阻害薬を巡り学会と内科医会で意見分かれる塩漬け品目の存在は、厚労省の「意図的な無為」によって生じていると考えられます。理由の一つとして言われるのは、スイッチOTCが増えることで医療機関の患者数が減ることを嫌う、日本医師会や診療所開業医からの反対です。かつてこんなことがありました。2018年3月に開かれた厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」において、スイッチOTCの候補として要望があった成分のうち、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールなどプロトンポンプ阻害薬(PPI)3成分について、日本消化器病学会と日本臨床内科医会で意見が大きく分かれたのです。日本消化器病学会は3成分のOTC化を「可」とし、「14日以内の短期使用であれば特段注意すべき点はなく、OTCとすることに問題はない」としました。一方、日本臨床内科医会は「不可」とし、理由としてPPIの有害事象や重大疾患のマスク作用、薬物相互作用の懸念などを挙げ、「これらの問題点を薬剤師がきちんと理解し販売できるか、購入数の制限がきちんと担保されるか、という第1類医薬品の販売体制も問題」と反対しました。ちなみにこの時、日本医師会常任理事の鈴木 邦彦氏(当時)も、「PPIはあまりに強力な薬。安易にOTC化するべきでない」と強く反対しています。結局、PPIはその後もOTC化されず、先述の日本OTC医薬品協会の塩漬け品目に掲載されるに至ったわけです。開業医や日本医師会の反対は「リフィル処方」に似た構造専門学会等がOKを出しているのに、開業医や日本医師会が「危ない。薬剤師に任せられない」と反論する状況、似たような話を最近どこかで聞きませんでしたか? そうです、2022年診療報酬改定で導入されたリフィル処方を巡る動きです。リフィル処方については、「第105回 進まないリフィル処方に首相も『使用促進』を明言、日医や現場の“抵抗”の行方は?」でも書いたように、現場の開業医たちの反対がことのほか強いようです。そこから透けて見えるのは、患者の再診回数減少に対する危機感です。スイッチOTCはリフィル処方よりも深刻かもしれません。再診どころか初診すら減る可能性があるからです。仮にPPIがスイッチOTC化されれば、消化性潰瘍や逆流性食道炎の初診患者が激減するでしょう。ただ、患者にとっては薬局で薬を買うだけで治るならば、そうしたいのが山々でしょう。国にとってもセルフメディケーションで十分対応できる病気ならば、保険診療の頻度を減らし、医療費を抑えたいというのが本音でしょう。今回の規制改革推進会議の調査指示をきっかけに、厚労省の日本医師会などに対する“忖度”が解消され、医療用医薬品から一般用医薬品への転用が加速するかもしれません。厚労省の調査結果を待ちたいと思います。SaMDは緩く迅速に承認しようという流れ規制改革推進会議の答申で気になった薬関連のもう一つは、SaMD(Software as a Medical Device:プログラム医療機器)についてです。答申では「質の高い医療を支える先端的な医薬品・医療機器の開発の促進」の項で、SaMDの承認審査制度の見直しや、審査手続きの簡素化、SaMDに関する医療機器製造業規制などの見直しを求めています。例えば、機械学習を用いるものは、SaMDアップデート時の審査を省略または簡略できるよう提言、2022年度中の結論を求めています。全体として、「緩く迅速に承認しよう」という方針に見えます。しかし、本連載の「高血圧治療用アプリの薬事承認取得で考えた、『デジタル薬』が効く人・効かない人の微妙な線引き」でも書いたように、こと「治療用」のSaMDについては、拙速で承認を急ぐよりもその効果や有用性の検証をもっと厳密に行い、効く人と効かない人の線引きをきちんとすることのほうが重要ではないでしょうか。ところで、治療用のSaMDは、処方しても通常の薬剤と異なり、薬剤師や薬局の介入は基本的にはありません。患者がアプリをスマートフォンなどにインストールして、プログラムをスタートさせるだけです。ゆえに、リフィル処方やスイッチOTCのような「診察回数が減る」「薬剤師に任せられない」といった問題は起こらないでしょう。その意味では、開業医や日本医師会にとってSaMDはそれほどやっかいな存在ではないはずです。しかし、よくよく考えると、SaMDがどんどん進化していけば「医師もいらない」ということになりかねません。もし、国がそんな未来までを見据えてSaMDに前のめりになっているとしたら、それはそれで恐ろしいことです。参考1)規制改革推進に関する答申 ~コロナ後に向けた成長の「起動」~/規制改革推進会議2)医療用医薬品から要指導・一般用医薬品への転用(スイッチOTC化)の促進/日本OTC医薬品協会

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中等症コロナ肺炎、ファビピラビル+カモスタット+シクレソニドで入院期間短縮/国内第III相試験

 中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、ファビピラビル、カモスタット、シクレソニド吸入剤による併用治療により入院期間を短縮したことが、単施設非盲検無作為化比較試験で示された。国際医療福祉大学成田病院の寺田 二郎氏らが、Lancet Discovery ScienceのeClinicalMedicine誌オンライン版2022年6月3日号で報告した。ファビピラビル、カモスタット、シクレソニド吸入の併用は入院期間を短縮 本試験は、COVID-19肺炎患者の重症化抑制に関するファビピラビル+カモスタット+シクレソニド吸入剤の多剤併用療法の有効性を検討する第III相試験である。国による予防接種推進前である2020年11月11日~2021年5月31日に、国際医療福祉大学成田病院において参加者を登録し、ファビピラビル単剤治療群とファビピラビル+カモスタット+シクレソニド吸入剤の多剤併用治療群に無作為に割り付けた。主要評価項目は入院期間。本試験はAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)助成によるもの。 ファビピラビル+カモスタット+シクレソニド吸入剤の多剤併用療法の有効性を検討した主な結果は以下のとおり。・参加者は121例で、ファビピラビル単剤治療群56例、併用治療群61例だった。・入院期間中央値は、ファビピラビル単剤治療群11日(95%CI:11~12)、併用治療群10日(同:9~11)で、併用療法群が有意に短かった(HR:1.67、95%CI:1.03~2.7、p=0.035)。・退院率は、中等症Iの患者(HR:2.01、95%CI:1.13~3.61)と60歳以下の患者(HR:2.92、95%CI:1.37~6.19)において有意に高かった。・試験開始4、8、11、15、29日目の体温、酸素使用量、呼吸数、酸素飽和度、重症度、人工呼吸器装着、ECMO使用、ICU管理、他の併用薬などの臨床所見の変化について、有意差は認められなかった。・有害事象発現率は、ファビピラビル単剤療法群57.1%、併用療法群55.7%と同等で、両群ともCOVID-19肺炎により1例ずつ死亡した。 著者らは「中等症のCOVID-19肺炎患者において、ファビピラビル、カモスタット、シクレソニド吸入の併用は安全性を懸念することなく入院期間を短縮し、早期退院に繋がることが期待される」と結論した。また、サブグループ解析結果から「これらの併用は重症患者には最適ではなかったが、若年層(60歳以下)や酸素療法を必要としない重症度の低い患者には、より有益な治療である」としている。

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ウパダシチニブ、中等~重症の潰瘍性大腸炎に高い有効性/Lancet

 中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎(UC)の治療において、経口選択的ヤヌスキナーゼ1(JAK1)阻害薬ウパダシチニブはプラセボと比較して、導入療法および維持療法として高い有効性と優れた安全性を有し、有望な治療選択肢となる可能性があることが、イタリア・University Vita-Salute San RaffaeleのSilvio Danese氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年6月4日号で報告された。3つの無作為化試験の第III相試験 本研究は、2つの導入療法試験(U-ACHIEVE substudy 2[UC1]、U-ACCOMPLISH[UC2])と、1つの維持療法試験(U-ACHIEVE substudy 3[UC3])から成る二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、UC1に39ヵ国199施設が、UC2に40ヵ国204施設が参加し、これらの試験で臨床的改善(Adapted Mayoスコアに基づく)が達成された患者を対象とするUC3には35ヵ国195施設が参加した(AbbVieの助成を受けた)。 導入療法試験では、年齢16~75歳で、少なくとも90日間が経過した中等症~重症の活動期UC患者(Adapted Mayoスコア:5~9、内視鏡サブスコア:2~3)が、ウパダシチニブ(45mg、1日1回)またはプラセボの経口投与を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。維持療法試験では、導入療法試験で8週後に臨床的改善が達成された患者が、ウパダシチニブ15mg、同30mg、プラセボの経口投与を受ける群に、1対1対1の割合で再び無作為に割り付けられ、52週の投与が行われた。 主要エンドポイントは、導入療法試験は8週後、維持療法試験は52週後の臨床的寛解(Adapted Mayoスコア≦2、Mayo排便回数サブスコア[SFS]≦1でベースラインより多くない、直腸出血スコア[RBS]=0、内視鏡サブスコア≦1で粘膜の脆弱性を伴わない)とされた。臨床的寛解:UCIは26%、UC2は33%、UC3は42%/52% UC1では、2018年10月~2020年9月の期間に、ウパダシチニブ45mg群に319例、プラセボ群に155例が、UC2では、2018年12月~2021年1月の期間に、それぞれ345例および177例が割り付けられた。UC3では、導入療法で8週後に臨床的改善が得られた451例(第IIb相試験から21例、UC1から278例、UC2から152例)が登録され、ウパダシチニブ15mg群に148例、同30mg群に154例、プラセボ群には149例が割り付けられた。 導入療法試験で臨床的寛解が達成された患者の割合は、ウパダシチニブ45mg群(UC1:26%[83/319例]、UC2:33%[114/341例])がプラセボ群(UC1:5%[7/154例]、UC2:4%[7/174例])に比べ、統計学的に有意に高かった(補正後群間差:UC1:21.6%、95%信頼区間[CI]:15.8~27.4、p<0.0001、UC2:29.0%、23.2~34.7、p<0.0001)。 また、維持療法試験で臨床的寛解が達成された患者の割合は、ウパダシチニブ群(15mg群:42%[63/148例]、30mg群:52%[80/154例])がプラセボ群(12%[18/149例])に比し、統計学的に有意に優れた(補正後群間差:プラセボ群と15mg群の比較: 30.7%、95%CI:21.7~39.8、p<0.0001、プラセボ群と30mg群の比較:39.0%、29.7~48.2、p<0.0001)。 UC1で報告の頻度が高かった有害事象は、鼻咽頭炎(ウパダシチニブ45mg群5% vs.プラセボ群4%)、クレアチンホスホキナーゼ値上昇(4% vs.2%)、ざ瘡(5% vs.1%)であった。UC2では、ざ瘡(7% vs.2%)の報告が多かった。また、2つの導入療法試験のいずれにおいても、重篤な有害事象(UC1:3% vs.6%、UC2:3% vs.5%)および投与中止の原因となった有害事象(UC1:2% vs.9%、UC2:2% vs.5%)の発現率は、ウパダシチニブ45mg群よりもプラセボ群で高かった。 UC3では、潰瘍性大腸炎の悪化(ウパダシチニブ15mg群13% vs.同30mg群7% vs.プラセボ群 30%)、鼻咽頭炎(12% vs.14% vs.10%)、クレアチンホスホキナーゼ値上昇(6% vs.8% vs.2%)、関節痛(6% vs.3% vs.10%)、上気道感染症(5% vs.6% vs.4%)の報告が多かった。また、重篤な有害事象(7% vs.6% vs.13%)と投与中止の原因となった有害事象(4% vs.6% vs.11%)の発現率は、いずれも2つの用量のウパダシチニブ群がプラセボ群に比べ低かった。 がん、中央判定による主要有害心血管イベント、静脈血栓塞栓症の報告はまれで、治療関連死はみられなかった。 著者は、「ウパダシチニブは経口投与の低分子化合物であるため、服薬順守の向上や免疫原性がないことなど、生物学的治療にさまざまな利益を付加する可能性がある」としている。

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OTC販売機や処方薬のコンビニ受け取り 変わる医薬品販売【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第90回

2022年度の調剤報酬改定で調剤料がなくなり、薬学的知見が必要ない業務に関しては、薬剤師以外の従業員がより効率的に行うという流れに変わってきています。そのような中、対面販売が原則の医薬品の販売や受け渡しにも新しい風が吹いています。大正製薬は5月31日、OTC薬を販売機で販売する実証実験をJR新宿駅で開始した。改札内のドラッグストア近くにOTC販売機を設置し、同社の第2類・第3類医薬品、医薬部外品の計約30品目を取り扱っている。期間は8月31日まで。同社は実証実験を通し、課題を検討した上で、将来は駅以外の場所にもOTC販売機を設置していきたい考えだ。(2022年6月1日付 日刊薬業)本コラム第67回でも紹介したOTC医薬品を自動販売機風の機械で販売するという実証実験がとうとう開始されました。このOTC販売機は目と鼻の先にあるドラッグストアが運営していて、そこには薬剤師や登録販売者がいるため薬機法には抵触しません。販売機のタッチパネルを操作して商品を選択すると、店舗の資格者がタブレット端末で確認し、販売を許可するという流れです。資格者からは購入者の顔を見ることができ、特定成分を含むOTC医薬品を販売する際の乱用防止対策も講じています。実証実験は3ヵ月間、10:00~18:00の運用ですが、将来的には深夜や空港・高速道路のサービスエリアなどでの活用も目指すとしています。画像を拡大するこのサービスの利用率や将来的な波及効果にも興味はありますが、私が一番驚いているのは、この実証実験の認定を取得したのが製薬会社であることです。製薬会社が医薬品を直接販売するというのは、この業界においてはとても珍しいことです。今後、直売のOTC販売機が増えていけば、この業界の流通構造にも影響が出てくるのではないかと思います。処方薬がコンビニで無料・24時間受け取り可能にそして、もう1つの新しい風は、処方された医薬品をコンビニで受け取れるというサービスです。ファミリーマートは5月25日、東京都内の店舗で処方薬を受け取れるサービスを5月26日に始めると発表した。凸版印刷グループのおかぴファーマシーシステムが運営する「とどくすり薬局」や提携する薬局でオンライン服薬指導を受けた場合、患者が指定した店舗に最短翌日に届ける。都内のほぼすべての2,400店舗で24時間利用できる。患者はおかぴのホームページで受取店舗を指定する。メールで届く認証バーコードを店頭で提示すると、ファミマの店員が直接手渡す。通常の宅配物と同様の梱包のため、店員からは中身がわからないようになっている。配送はヤマト運輸が担う。送料と手数料は無料。(2022年5月25日付 日本経済新聞)これまでもごく少数のコンビニ店舗での受け取りに関する実証実験は行われていましたが、東京都内のほぼすべてのファミリーマートで受け取ることができるようになります。流れは、受診した医療機関で「とどくすり」利用の希望を伝えて処方箋をFAX(または郵送)してもらい、オンライン服薬指導を受けて、指定したコンビニ店舗のレジで認証用バーコードを提示して受け取るというシンプルなものです。プライバシーは確保されつつも、バーコードによる確実な受け取り確認が可能です。まだ東京都内のみですが、いずれ同様のサービスが全国展開されそうな気がします。このサービスは、いわゆる0410通知(新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて)と、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和4年3月31日施行)に基づいて提供されています。「医薬品の販売は薬局で」というこれまでの常識は確実に変わりつつあり、患者さんのニーズや自分の業務を見つめ直すきっかけになりそうです。

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英語で「傷を見せてください」は?【1分★医療英語】第32回

第32回 英語で「傷を見せてください」は?I am concerned about infection.(感染症が心配なのですが…)Okay.Let me take a peek at the incision.(わかりました。傷を見せてください)《例文1》医師Good morning. Let me take a peek at the incision.(おはようございます。傷を見せていただけますか)患者Of course.(もちろんです)《例文2》医師Let me take a peek at the incision real quick.(さっと傷を見せてください)《解説》“Let me take a look”(見せてください)はよく知られている表現ですが、その変形として“peek”を使った表現です。“peek”は「ちらっと見る」という意味の動詞なので、“look”を使ったときよりも「短時間でさっと見る」というニュアンスになります。また、手術創など、衣服に覆われている場所にある傷を見るときにも“peek”を使うことで「覗き込む」ニュアンスが出ます。よく使われる場面としては、朝回診のときに患者さんと話をした後で“Let me take a peek at the incision.”と言いながら、素早く傷をチェックする、というのが代表的です。カジュアルなので患者さんにあまりプレッシャーを与えることなく傷の診察に移ることができ、非常に便利な表現です。ぜひ皆さんも使ってみてくださいね。講師紹介

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インフルエンザでも、mRNAワクチン第III相試験開始/モデルナ

 2022年6月7日、Moderna(米国)は季節性インフルエンザワクチン候補mRNA-1010の第III相臨床試験において、最初の被験者への投与を行ったことを公表した。 mRNA-1010は、世界保健機関(WHO)が推奨するA/H1N1、A/H3N2、B/山形系統およびB/ビクトリア系統の4つのインフルエンザ株の血球凝集素(HA)糖タンパク質がコードされた新規mRNAワクチン候補である。 本試験は、既存の季節性インフルエンザワクチンに対するmRNA-1010の安全性および免疫学的非劣性を評価することを目的とし、南半球諸国の成人約6,000人が登録される。Modernaは、必要に応じて、早ければ2022/2023年の北半球のインフルエンザシーズンにmRNA-1010の有効性確認試験を実施できるよう開発準備を進める。

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子宮頸がん検診の間隔、HPV陰性なら延長可能か/BMJ

 子宮頸がん検診の間隔は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の1次検査を受けることで、検査の方法を問わず延長が可能で、25~49歳の女性では検査陰性から5年まで延長でき、50~59歳の女性は5年以上に延長の可能性もあるが、個別受診再勧奨による再検査で陽転した女性では従来どおり3年の間隔を保持する必要があることが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMatejka Rebolj氏らHPV pilotの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年5月31日号に掲載された。英国134万例の観察研究 研究グループは、子宮頸がんの1次スクリーニングが陰性の女性における、Grade3以上の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3+)および子宮頸がんのリスクに関して、年齢別、検査法別のエビデンスの更新を目的に観察研究を行った(英国公衆衛生庁[イングランド]などの助成を受けた)。 解析には、2013~16年に英国で実施されたHPVスクリーニングの1回目と2回目のパイロット検査の実際のデータが使用された(追跡は2019年に終了)。134万1,584例の女性が解析の対象となった。 子宮頸がん検診には、HPV検査または液状化検体細胞診検査が用いられた。細胞診によるスクリーニングを受けた女性は、高Gradeの異常が認められた場合、または境界型か低Gradeの異常で、HPVトリアージ検査が陽性の場合に、コルポスコピーによる検査が勧められた。 HPV検査によるスクリーニングで陽性となった女性は、細胞診トリアージ検査で少なくとも境界型の異常がみられた場合、またはHPV陽性が持続し、細胞診で少なくとも境界型の異常が発現したため1次スクリーニングから12ヵ月か24ヵ月後に再HPV検査(早期の個別受診再勧奨[early recall]による)を受けたのち、コルポスコピーによる検査が勧められた。 主要アウトカムは、HPV検査陰性後のCIN3+および子宮頸がんの検出とされた。HPV mRNA検査とHPV DNA検査で検出能に差はない 24~59歳の女性では、1回目の検診で134万1,584例のうち30万677例がHPV検査を受け、70万6,820例は細胞診検査を受けた。CIN3+は、HPV検査で5,313例、細胞診検査では8,232例が検出され(検査1,000件当たり17.67 vs.11.65、補正後オッズ比[OR]:1.55、95%信頼区間[CI]:1.50~1.61)、子宮頸がんはそれぞれ259例および441例で発見された(0.86 vs.0.62、1.38、1.18~1.61)。 24~59歳の女性における2回目の検診時のCIN3+検出率は、1回目の検診でHPV検査を受け陰性だった女性が、細胞診検査で陰性だった女性よりも低く(検査1,000件当たり1.21 vs.4.52、補正後OR:0.26、95%CI:0.23~0.30)、子宮頸部の中間期がんのリスクも同様の結果であった(10万人年当たり1.31 vs.2.90、補正後ハザード比[HR]:0.44、95%CI:0.23~0.84)。これは、英国子宮頸がん検診プログラムの検診間隔3年を、少なくとも5年に延長できることを示す。 また、HPV検査陰性から5年後の2回目の検診において、50~59歳の女性で初めてCIN3+が検出されるリスクは、24~49歳の女性における検査陰性から3年後の2回目の検診時に比べて低かった(検査1,000件当たり0.57 vs.1.21、補正後OR:0.46、95%CI:0.27~0.79)。これは、50歳以上では、5年という現在の検診間隔を延長でき、50歳未満では3年の検診間隔が望ましいことを示唆する。 一方、HPVのスクリーニング検査が陽性で細胞診検査で異常がなく、個別受診再勧奨でHPV検査陰性の女性では、2回目の個別受診再勧奨による検査でCIN3+が検出される割合が、1次スクリーニング検査でHPV陰性であった女性よりも高かった(検査1,000件当たり5.39 vs.1.21、補正後OR:3.27、95%CI:2.21~4.84)。 検査法の比較では、HPV mRNA検査(APTIMA)とHPV DNA検査(cobasまたはRealTime)で、1回目の検査におけるCIN3+(補正OR:1.04、95%CI:0.96~1.12)および子宮頸がん(0.95、0.67~1.34)の検出能に差はなく、1回目の検査が陰性だった場合の2回目の検査におけるCIN3+(1.05、0.73~1.50)の検出能もほぼ同等であった。 著者は、「これらのデータは、検査法の種類や年齢を問わず、現在の検査間隔は延長可能であることを示唆するものである」としている。

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第104回 教授に指導医停止処分、試験要件の研修時間を水増しで/内科学会

<先週の動き>1.教授に指導医停止処分、試験要件の研修時間を水増しで/内科学会2.HPVワクチン副反応疑い症例15件、安全性に重大な懸念なし/厚労省3.感染症法改正で、民間病院に対する自治体の指揮権を強化へ4.骨太方針2022を閣議決定、デジタル化で医療制度改革を加速へ/政府5.医療保護入院の縮小は削除、虐待通報義務化も明記せず/厚労省6.手術動画の外部提供と利活用、指針作りを/コンピュータ外科学会1.教授に指導医停止処分、試験要件の研修時間を水増しで/内科学会日本内科学会は、新潟大学医学部の教授に対し3年間の指導医停止の処分をしたことが明らかになった。報道によると、処分を受けたのは消化器内科教授で同大病院の内科医科長。去年2月、専門医認定試験の受験要件に満たない9人の医局員に対して、研修時間に大学院での研究や当直勤務の時間を合わせて申告するよう指示していた。内科専門医の受験には、2年間の初期研修と、臨床病院で常勤する3年間の後期研修が原則必要だが、新潟大消化器内科では後期研修中の一部期間も大学院で研究に従事させた。学会への匿名の告発を受けた研修先の新潟大病院による調査で問題が発覚し、9人は受験できなかった。同時に研修プログラム責任者の別の特任教授も指導医を6ヵ月停止とする処分が出ているが、同大は別の医師を責任者とし、内科専門医の研修を続けている。今回、現行の専門医制度が2018年度に開始されて以降、最も重い処分となった。(参考)研修時間の水増し申告指示、新潟大医学部教授を処分 日本内科学会(朝日新聞)2.HPVワクチン副反応疑い症例15件、安全性に重大な懸念なし/厚労省厚生労働省は10日に第80回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会を開催し、HPVワクチンの副反応について検討を行った。HPVワクチン接種は2013年に定期接種となったが、副反応が報道されたのを機に積極的な接種推奨が中止されており、9年ぶりの2022年4月に再開された。積極的勧奨の再開後に報告された「サーバリックス(2価)」「ガーダシル(4価)」ならびに定期接種対象外の「シルガード9(9価)」の有害事象についてそれぞれ検討を行ったが、現時点でワクチンの安全性に重大な懸念はないとする見解がまとめられた。厚労省は今後も、およそ1ヵ月ごとに部会を開いて検証するという。(参考)子宮頸がんなど防ぐHPVワクチン 副反応疑い症例 15件報告(NHK)HPVワクチン「安全懸念なし」 厚労省専門部会、再開後初評価(毎日新聞)3.感染症法改正で、民間病院に対する自治体の指揮権を強化へ政府は、新型コロナウイルスの感染拡大時に、感染症指定医療機関だけでは感染者の受け入れをしきれず、病床確保に取り組んだものの適切な医療を維持できなかったことから、民間病院に対する自治体の指揮権を強化する感染症法改正案をまとめた。改正案では、公立・公的医療機関や大学病院に対して有事を想定した病床確保計画の策定を求め、自治体と協定の締結を行い、国や自治体の指示に従わない場合は医療機関名を公表できるようにする。岸田内閣は、内閣官房の新型コロナ感染症対策推進室と厚生労働省の対策推進本部などを統合した「健康危機管理庁」の創設を検討しており、国会へ法案の提出を目指し、今後の感染症対策に役立てたいとしている。(参考)病床確保、政府が医療機関へ指示権限 感染症法改正案、概要判明(毎日新聞)民間病院に直接指示 政府、新感染症に備え病床確保(日経新聞)感染症対策の司令塔、「健康危機管理庁」創設へ…厚労省と内閣官房の部署統合も検討(読売新聞)4.骨太方針2022を閣議決定、デジタル化で医療制度改革を加速へ/政府7日、岸田内閣は初の「経済財政運営と改革の基本方針」(通称:骨太の方針)をまとめた。この中で、経済社会活動の正常化に向けた感染症対策として、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた医療提供体制の強化とともに、感染状況や変異株の発生動向に細心の注意を払い段階的な見直しを行い、経済社会活動の正常化を目指す。また、医療DXを推進し、医療情報の基盤整備とともにG-MISやレセプトデータ等を活用し、病床確保や使用率、オンライン診療実績など医療体制の稼働状況の徹底的な「見える化」を進める。さらにワクチン接種証明書のデジタル化等により、入国時での効率的なワクチン接種履歴の確認など円滑な確認体制を進め、今後、医療のデジタル化推進にマイナンバーカードなどを活用することが盛り込まれている。政府はこれをもとに来年度の予算編成を行う方針だ。(参考)経済財政運営と改革の基本方針2022(内閣府)骨太方針2022を閣議決定、コロナ禍踏まえた医療提供体制改革、データヘルスの推進などの方向を明確化(Gem Med)骨太方針2022を閣議決定 「医療DX」は実行フェーズに 国民目線の医療・介護提供体制の改革へ(ミクスonline)5.医療保護入院の縮小は削除、虐待通報義務化も明記せず/厚労省厚労省は9日に「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」の報告書を取りまとめ、公表した。精神疾患を有する患者の数は増加傾向であり、2017年には約420万人となっている一方、自殺者数は2017年以降10年連続で減少していたが、2020年には増加に転じている。入院医療を必要最小限にするための予防的取り組みを充実させるとともに、精神障害者が強制入院(医療保護入院)となった場合、入院中に患者が同意できる状態になったら、「速やかに本人の意思を確認し、任意入院への移行や入院治療以外の精神科医療を行うことが必要である」とされる。当初案にあった医療保護入院の縮小方針は削除され、虐待通報義務化も明記されないなど、当事者や障害者団体からは「患者の権利が守られない」と批判の声が上がっている。(参考)「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」報告書について(厚労省)虐待通報義務化、明記せず 強制入院の縮小方針も削除 精神医療、厚労省検討会(共同通信)医療保護入院中の患者「意思確認し任意入院へ」厚労省が検討会報告書を公表(CB news)6.手術動画の外部提供と利活用、指針作りを/コンピュータ外科学会6月9~10日に東京で開かれた第31回日本コンピュータ外科学会大会において、手術動画の外部提供や利活用について討論がされた。今年、医療機器メーカーに白内障治療用眼内レンズの手術動画を提供した医師に、販売促進目的に現金提供がされたことが問題になったこともあり、手術動画の活用に当たって、ガイドラインの策定を求める声が上がった。(参考)“手術動画の活用 指針作り検討すべき” シンポジウムで意見(NHK)“手術動画”で医師に現金提供 業界団体がメーカーを調査(NHK)

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ワクチン接種者のlong COVIDリスク

 ブレークスルー感染者においてもコロナ罹患後症状(いわゆる後遺症、long COVID)が発現するか、米国退役軍人のコホート研究で調査した結果、急性期以降の死亡やコロナ罹患後症状発現のリスクがあることが確認されたが、ワクチン未接種の感染者より発現リスクが低いことが示された。本結果は、Nature Medicine誌オンライン版2022年5月25日号に掲載されている。 本調査では、2021年1月1日~10月31日の期間での退役軍人保健局の利用者で、ブレークスルー感染(BTI)群(3万3,940例)と、コロナ既往歴のない同時期対照群(498万3,491例)ほか、ワクチン未接種の感染群(11万3,474例)や、季節性インフルエンザ入院群(1万4,337例)など複数のコホートを構成し、2つの尺度でリスクを比較検証した。1つは死亡もしくは特定の症状発現(肺、心血管、血液凝固、消化器、腎臓、精神、代謝、筋骨格など)の補正ハザード比(HR)、もう1つは、BTI群におけるSARS-CoV-2検査陽性後6ヵ月間の各アウトカムについて1,000例当たりの補正超過負荷(excess burden)を推定した。 BTI群は、ジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチン初回接種から14日以上、もしくはファイザー製またはモデルナ製ワクチン2回接種から14日以上経過し、コロナ検査陽性後30日間生存した人が対象となる。ワクチン接種完了者のうちBTIの割合は1,000例当たり10.60例(95%信頼区間[CI]:10.52~10.70)だった。 主な結果は以下のとおり。・BTI群は同時期対照群と比べて死亡リスクが上昇しており(HR:1.75、95%CI:1.59~1.93)、BTI後6ヵ月の患者1,000例当たりの超過負荷が13.36例(95%CI:11.36~15.55)増加することが示された。・BTI群は同時期対照群と比べて、コロナ罹患後症状と考えられる症状を1つ以上経験するリスクが上昇した(HR:1.50、95%CI:1.46~1.54)。超過負荷はBTI後6ヵ月の患者1,000例当たり122.22例(95%CI:115.31~129.24)増加。・BTI群は同時期対照群と比べて、罹患後症状のリスクが次のように上昇した。肺機能障害HR:2.48(95%CI:2.33~2.64)、超過負荷:39.82(95%CI:36.83~42.99)心血管障害HR:1.74(95%CI:1.66~1.83)、超過負荷:43.94(95%CI:39.72~48.35)血液凝固障害HR:2.43(95%CI:2.18~2.71)、超過負荷:13.66(95%CI:11.95~15.56)疲労HR:2.00(95%CI:1.82~2.21)、超過負荷:15.47(95%CI:13.21~17.96)消化器障害HR:1.63(95%CI:1.54~1.72)、超過負荷:37.68(95%CI:33.76~41.80)腎臓障害HR:1.62(95%CI:1.47~1.77)、超過負荷:16.12(95%CI:13.72~18.74)精神障害HR:1.46(95%CI:1.39~1.53)、超過負荷:45.85(95%CI:40.97~50.92)代謝障害HR:1.46(95%CI:1.37~1.56)、超過負荷:30.70(95%CI:26.65~35.00)筋骨格系障害HR:1.53(95%CI:1.42~1.64)、超過負荷:19.81(95%CI:16.56~23.31)神経系障害HR:1.69(95%CI:1.52~1.88)、超過負荷:11.60(95%CI:9.43~14.01)・BTI群において、コロナ急性期に入院していない人よりも、入院した人、さらにICUに入院した人のほうが、罹患後症状のリスクが有意に上昇していた。・BTI群はワクチン未接種の感染群と比べて、死亡リスクが低く(HR:0.66、95%CI:0.58~0.74)、超過負荷は-10.99(95%CI:-13.45~-8.22)であった。・BTI群はワクチン未接種の感染群と比べて、罹患後症状のリスクが低く(HR:0.85、95%CI:0.82~0.89)、超過負荷は-43.38(95%CI:-53.22~-33.31)であった。・BTI群はワクチン未接種の感染群と比べて、調査した47の罹患後症状のうち24のリスクを低下させた。・BTI群は季節性インフルエンザ入院群と比べて、死亡リスクが高く(HR:2.43、95%CI:2.02~2.93)、超過負荷は43.58(95%CI:31.21~58.26)であった。・BTI群は季節性インフルエンザ入院群と比べて、罹患後症状のリスクが高く(HR:1.27、95%CI:1.19~1.36)、超過負荷は87.59(95%CI:63.83~111.40)であった。 研究グループはこの結果に対して、ワクチン接種は感染後の死亡と罹患後症状のリスクを部分的にしか減少させることができないため、SARS-CoV-2感染による長期的な健康への影響のリスクを軽減させるためには、ワクチンだけではなく予防対策が必要であるとしている。

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リサンキズマブ、クローン病の寛解維持療法に有効/Lancet

 インターロイキン(IL)-23のp19サブユニットを標的とするヒト化モノクローナル抗体リサンキズマブの静脈内投与による寛解導入療法で臨床的奏効が得られた中等症~重症の活動期クローン病患者の寛解維持療法において、リサンキズマブ皮下投与はプラセボ(休薬)と比較して、52週の時点での臨床的寛解率および内視鏡的改善率が高く、忍容性も良好で、有害事象の頻度には差がないことが、ベルギー・ルーヴェン大学病院のMarc Ferrante氏らが実施した「FORTIFY substudy 1(SS1)試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年5月28日号に掲載された。世界44ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 FORTIFY SS1は、活動期クローン病の寛解維持療法における、リサンキズマブ皮下投与の有効性と安全性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ(休薬)対照第III相試験であり、2018年4月~2020年4月の期間に、日本を含む44ヵ国273施設で参加者の登録が行われた(AbbVieの助成を受けた)。 対象は、リサンキズマブ静脈内投与による2つの寛解導入試験(ADVANCE試験、MOTIVATE試験)の参加者のうち、12週時に臨床的奏効が得られた患者とされた。2つの寛解導入試験の参加者は、年齢16~80歳で、中等症~重症の活動期クローン病(クローン病活動指数[CDAI]:220~450、平均1日排便回数4回以上または腹痛スコア2以上、簡易版クローン病内視鏡スコア[SES-CD]6以上[孤立性回腸病変の場合は4以上])の患者であった。 被験者は、寛解維持療法として、リサンキズマブ180mg(90mg製剤×2回とプラセボ×2回)、同360mg(90mg製剤×4回)、導入療法のリサンキズマブを休薬してプラセボ(休薬群、プラセボ×4回)をそれぞれ皮下投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、8週ごと(0、8、16、24、32、40、48週目)の投与が行われた。患者、担当医、試験関係者には、治療割り付け情報が知らされなかった。 主要複合エンドポイントは、52週の維持療法期間に少なくとも1回の投与を受けた患者における臨床的寛解(米国のプロトコルではCDAIが150未満、米国以外のプロトコルでは水様便または超軟便の平均1日排便回数が2.8回以下で、ベースラインより悪化せず、1日の平均腹痛スコアが1以下で、導入療法のベースラインより悪化しない場合)および内視鏡的改善(SES-CDがベースラインに比べ50%超減少[孤立性回腸病変でベースラインのSES-CDが4の患者ではベースラインから2以上減少]した場合)とされた。幅広い患者の新たな治療選択肢となる可能性 2つの寛解導入試験の参加者のうち542例がFORTIFY SS1試験に登録され、有効性の主解析には462例(intention-to-treat集団)が含まれた。リサンキズマブ180mg群が157例(平均[SD]年齢39.1[14.8]歳、女性57%)、同360mg群が141例(37.0[12.8]歳、43%)、休薬群は164例(38.0[13.0]歳、46%)だった。 CDAIに基づく臨床的寛解率(米国)は、リサンキズマブ360mg群が52%(74/141例)と、休薬群の41%(67/164例)に比べ有意に高かった(補正後群間差:15%、95%信頼区間[CI]:5~24、p=0.0054)。排便回数と腹痛スコアに基づく臨床的寛解(米国以外)の割合は、それぞれ52%(73/141例)および40%(65/164例)であり、リサンキズマブ360mg群で有意に優れた(補正後群間差:15%、95%CI:5~25、p=0.0037)。また、内視鏡的改善(米国および米国以外)の割合は、それぞれ47%(66/141例)および22%(36/164例)であり、リサンキズマブ360mg群で有意に良好だった(補正後群間差:28%、95%CI:19~37、p<0.0001)。 一方、リサンキズマブ180mg群と休薬群の比較では、排便回数と腹痛スコアに基づく臨床的寛解率(p=0.124)には差がなかったが、CDAIに基づく臨床的寛解率(55%[87/157例]vs.41%[67/164例]、補正後群間差:15%、95%CI:5~24、p=0.0031)および内視鏡的改善率(47%[74/157例]vs.22%[36/164例]、26%、17~35、p<0.0001)は、リサンキズマブ180mg群で有意に優れた。 より厳格な内視鏡的エンドポイントや複合エンドポイント、炎症性生物マーカーの結果には、リサンキズマブの用量反応関係が認められた。また、2つの用量はいずれも全般に良好な忍容性を示した。 有害事象の頻度は3つの群で同程度(リサンキズマブ180mg群72%、同360mg群72%、休薬群73%)で、重篤な有害事象(12%、13%、13%)や試験薬中止の原因となった有害事象(2%、3%、3%)の発現率もほぼ同じだった。3群で最も頻度の高い有害事象は、クローン病の悪化(11%、12%、17%)、鼻咽頭炎(9%、9%、14%)、関節痛(8%、9%、11%)、頭痛(5%、6%、6%)であった。重篤な感染症は、それぞれ3%、4%、4%で認められた。 著者は、「リサンキズマブ皮下投与による寛解維持療法は、疾患の経過に変化をもたらす可能性のあるエンドポイントを達成し、他の先進的な治療で不耐または効果が不十分であった患者でも有効性が観察されており、今後、幅広い患者にとって新たな治療選択肢となるだろう」としている。

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アストラゼネカ、新型コロナの新規抗体カクテル療法を国内承認申請

 アストラゼネカは6月9日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症抑制および治療を適応として、長時間作用型抗体の併用療法AZD7442の製造販売承認(特例承認)を厚生労働省に申請したことを発表した。AZD7442(海外での商品名:Evusheld)は、現在までにEUでの販売承認、英国医薬品医療製品規制庁の条件付き販売承認、米国食品医薬品局の緊急使用許可を取得している。 AZD7442は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染し回復した患者により提供されたB細胞に由来する、2種類の長時間作用型抗体であるtixagevimabとcilgavimabの併用療法だ。それぞれがSARS-CoV-2のスパイク蛋白に特異的に結合し、ウイルスのヒト細胞への侵入を阻止する。AZD7442を筋注で1回投与後、少なくとも6ヵ月間ウイルスからの保護が持続するという。 AZD7442のCOVID-19曝露前予防について、第III相試験PROVENTほか、The Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2022年6月7日付1)に掲載された第III相試験TACKLEなど、複数の臨床試験でプラセボ群と比較してCOVID-19の発症リスクが統計学的に有意に減少することが示されている。 第III相試験TACKLEは、2021年1月28日~7月22日に、米国、中南米、欧州、日本の95施設にて、910人が参加した無作為化二重盲検プラセボ対照試験。COVID-19発症から7日以内の軽症から中等症Iの入院していない18歳以上の成人を対象とした。そのうち併存疾患や年齢により重症化のリスクが高い患者が90%だった。被験者をAZD7442群(456例)とプラセボ群(454例)に分け、AZD7442群にAZD7442600mg筋注投与し、29日後までの重症化または死亡の相対リスクを調査した。 主な結果は以下のとおり。・AZD7442群はプラセボ群と比較して、重症化または死亡の相対リスクが50.5%(95%信頼区間[CI]:14.6~71.3)減少した。さらに、発症から3日以内に治療を受けた患者では88.0%(95%CI:9.4~98.4)、発症から5日以内に治療を受けた患者では66.9%(95%CI:31.1~84.1)減少した。・呼吸不全リスクが71.9%(95%CI:0.3~92.1)減少し、人工呼吸やECMOなどを必要とした患者は、プラセボ群11人(2.6%)に対して、AZD7442群3人(0.7%)だった。・有害事象は、AZD7442群が29%(うち重篤例7%)に対しプラセボ群は36%(うち重篤例12%)だった。最も多かったのはCOVID-19肺炎で、AZD7442群26例(6%)、プラセボ群49例(11%)に発生した。COVID-19による死亡は、AZD7442群3例、プラセボ群6例だった。 このほか、複数の独立したin vitroおよびin vivo試験により、オミクロン株に対する効果の検討も進められている。米国ワシントン大学医学部の研究結果によると、オミクロン株BA.2に対しても中和活性を保持しており、同研究ではin vivoにて、AZD7442がオミクロン株のウイルス負荷を軽減し、肺の炎症を抑制することが示された。さらに、英国オックスフォード大学が実施した非臨床試験では、オミクロン株の新たな亜種であるBA.4およびBA.5に対しても、中和活性を保持していることが確認されているという。

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mRNAコロナワクチンにギラン・バレー症候群の注意喚起/使用上の注意改訂指示

 厚生労働省は6月10日、新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:コミナティ筋注、コミナティ筋注5~11歳用、スパイクバックス筋注)について、使用上の注意の「重要な基本的注意」の項にギラン・バレー症候群に関して追記するよう改訂指示を発出した。ギラン・バレー症候群がコロナワクチン接種後に報告されている 今回の改訂指示は、第80回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第5回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)(2022年6月10日開催)における審議結果などを踏まえたもので、「重要な基本的注意」に以下を追加するよう指示がなされた。「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)接種後に、ギラン・バレー症候群が報告されている。被接種者又はその保護者に対しては、ギラン・バレー症候群が疑われる症状(四肢遠位から始まる弛緩性麻痺、腱反射の減弱ないし消失等)が認められた場合には直ちに医師等に相談するよう、あらかじめ説明すること。」

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第112回 「あなたの体温は23℃です」-こんな感染対策はもういらない!?

先日、ある一般の方から「結局、コロナ対策のマスクって自宅以外はどんな時に外して良いんですかね?」と尋ねられた。「いや、それはもうテレビで言っている通りなんですけど」と言いたかったが、尋ねてきた人はとにかく真剣そのものだったので、「たとえば、近所を散歩する時とかごみを捨てに行く程度、夜間に外を歩いていて周囲にほとんど人がいない時とかは、そもそも感染リスクが少ないシーンなので外していてもとくに問題はないと思います。周囲にたくさん人がいるか、他人と話す機会があるかどうかが基準になると思います」と答えた。すると、「人と話すつもりもその予定もなく外出している際に、偶然誰かと話す機会はありますよね?」と。いや、それを言い出しているとキリがないのだが。仕方なく、「その時はサッとマスクをつければ良いと思います」と返したが、「それだと相手は気分を悪くしないですかね?」とのこと。「『すみませんね。念のための感染対策ですから』とお伝えすれば、このご時世、理解してくれると思いますよ」と答え、なんとかようやく理解してもらうことができた。コロナの流行が始まった直後、政府の新型コロナウイルス感染症専門家会議の提言により作成された「新型コロナウイルスを想定した『新しい生活様式』の実践例」が公表されたことを記憶している人もいるだろう。当時、作成に関わったある関係者に「こんなことを言っては何ですが、あれって大きなお世話ですよね」と伝えたところ、「いや、私たちだってあそこまで細かなものを提言する気はなかったんですよ。ただ、お役所の事務方から『具体的に示してほしい』と言われたから、あそこまで書いただけで」と聞かされ、お気の毒様と思ったものだ。今現在、街中を見ていると、とにかく無駄だなと思う感染対策は多い。私がとくに思うのが非接触式体温計だ。そもそも新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)はご存じのように感染者の3~4割は無症状である。しかも、新型コロナではなくとも体温が37℃前後の人は少なくない。38℃超となったらもはや出歩けない人も相当数に上るはずである。加えて非接触式体温計は1~2℃の誤差は避けられない。昼食のために入った飲食店で非接触式体温計を当てられ、店員が「あれ?あれ?」と言いながら何度も測定を繰り返されたことは一度や二度ではない。ある時にその体温計のデジタル表示を覗いたところ「34.1℃」と表示されていて、やっぱり不正確なのだと実感したものである。しかし、何よりも一番驚いたのは首都圏のある地方都市のホテルでの出来事だ。エレベーター前に顔面を映すことで体温を測定する非接触式体温測定器が設置してあったのだが、その前を通り過ぎた際に機械音声で「あなたの体温は23℃です」とのメッセージが流れ、測定器に向かって思わず「私、生きてますんで」と言ってしまったことがある。また、スーパーのレジを担当する店員が常に手袋をつけているのも、正直いまだに慣れない。レジ担当者本人の感染対策という意味では多少意味はあるかもしれないが、あれをつけっぱなしの状態で接客されれば、新型コロナは別にして何らかの病原体で汚染されたものを、さらにパスしてしまう可能性はある。現在はスーパーやコンビニエンスストアに入店している客のほとんどがマスクをしていることが前提になっている以上、レジ前の床にあるソーシャルディスタンス用の印も意味はないだろう。実際にも有名無実化している。一方、コロナ禍を機に始まった対策の中で、私個人は限定的ではあれ残したほうが良いと思う対策もある。それはアルコール消毒だ。これについては賛否が分かれるが、私は飲食店に限って言えば継続しても良いのではないかと思っている。そもそも感染症対策は新型コロナが登場する以前から本来は必要なものであったはずだし、接触感染する感染症が少なくない中で、感染対策として手指衛生は基本中の基本である。その意味で飲食は飛沫感染だけでなく接触感染の危険性が高いシーンである。アルコール消毒に消極的な専門家の中には頻用による手荒れや最も基本中の基本の手指衛生手段である手洗いの軽視を危惧する声があるのは承知している。しかし、食事前の手洗いは基本とはいえ飲食店入店後にわざわざ洗面所に行くのは多くの人にとってかなりおっくうである。これを回避するなら飲食店入口に洗面所を設置するのが究極の対策になるが、店舗の構造変化を伴う以上、そう簡単ではない。とりわけコロナ禍で経済的に大きなダメージを食らった飲食業界にさらなる投資を強いるのは酷とさえいえる。また、アルコール消毒の機会が飲食店入店時だけならば過剰使用による手荒れは最小限に抑えられるとも言える。もちろんアルコール消毒も設置だけでは有名無実化する恐れはあるが、コロナ禍で多少なりともアルコール消毒が一般人にとって習慣化してしまったことを考えれば、入口にアルコール消毒を設置しているだけで、スルーする人もいる反面、しっかり消毒をする人もいるだろう。ないよりははるかにましと言える。今後の感染状況の収束次第でアクリル板やテーブルの過度な消毒はなくしてもかまわないとは思うが、こうした点から手指のアルコール消毒は社会全体での広い意味での感染対策として残してもいいのではないかと思っている。まあ、それにしてもいまだ街中が律儀にマスクを着用した人であふれる日本の状況を考えれば、こうした感染対策は「ポストコロナ時代の新しい感染対策」として要不要の実際も含めて公的に提示することが必要になるのかもしれないが。

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デルタクロン株、ワクチンや感染による免疫から逃避する?/NEJM

 新型コロナウイルスオミクロン株BA.3とデルタクロン株が、ワクチン接種や感染による誘導免疫を逃避するかどうかは不明である。今回、米国・オハイオ州立大学のJohn P. Evans氏らが、3種類の血清サンプルでオミクロン株BA.3とデルタクロン株に対する中和抗体価を調べた結果、BA.3株は免疫逃避変異株ではないが、デルタクロン株はBA.1株やBA.2株における強力な耐性を保持していることが示唆された。NEJM誌オンライン版2022年5月18日号のCORRESPONDENCEに掲載された。デルタクロン株はBA.1株およびBA.2株と同様の中和抗体耐性を示した Evans氏らは、オハイオ州立大学Wexnerメディカルセンターでワクチンを接種した医療従事者と、オハイオ州コロンバス地域でデルタ波とオミクロン波の各時期のCOVID-19患者から得た血清サンプルについて中和抗体価を調査し、スパイクタンパクにD614G変異*のある祖先株と、BA.3株とデルタクロン株に対する中和抗体価を調べ、BA.1株、BA.2株、デルタ株の既報のデータと比較した。*COVID-19流行早期からみられた変異で、現在は世界中で検出されるほとんどの株にみられる オミクロン株BA.3とデルタクロン株に対する中和抗体価を調べた主な結果は以下のとおり。・モデルナ製ワクチン(3人)もしくはファイザー製ワクチン(7人)を2回接種した医療従事者の2回目接種から3〜4週間後に採取した血清サンプルの中和抗体価を調べたところ、D614G変異株に対する抗体価と比較して、BA.3株に対する抗体価は3.3分の1、デルタクロン株に対する抗体価は44.7分の1だった(どちらもp<0.001)。また、同じ医療従事者における3回目接種(最初の2回と同じワクチンを接種)後の中和抗体価は、D614G変異株に対する抗体価と比較して、BA.3株に対する抗体価は2.9分の1、デルタクロン株に対する抗体価は13.3分の1だった(どちらもp<0.001)。デルタクロン株はBA.1株およびBA.2株と同様の中和抗体耐性を示したが、BA.3株は2回接種および3回接種の医療従事者のいずれの血清サンプルに対しても感受性が高かった。・デルタ波におけるICU入院患者18例(ワクチン未接種12例、2回接種5例、3回接種1例)の入院3日後に採取した血清サンプルの中和抗体価を調べたところ、D614G変異株に対する抗体価と比較して、BA.3株に対する抗体価はほぼ同じだったが、デルタクロン株に対する抗体価は137.8分の1だった。デルタクロン株の中和抗体耐性はBA.1株およびBA.2株と同様だったが、BA.3株は中和に対する感受性をほぼ維持していた。ワクチン接種患者(6例)は、ワクチン未接種患者よりもD614G変異株およびBA.3株に対する抗体価が大幅に高かったが、デルタクロン株はほとんど耐性だった。・オミクロン波の時期に入院したがICUには入らなかった患者(31例)の血清サンプルでは、デルタクロン株およびBA.3株の中和反応はD614G変異株の中和反応と同様であり、力価はデルタ波での患者サンプルよりも大幅に低かった。デルタクロン株およびBA.3株の中和反応はBA.1株およびBA.2株の中和反応と同様だった。・3回のワクチン接種を受けた医療従事者は、オミクロン波での感染者(ワクチン接種の有無によらず)よりも強力で幅広い免疫を持ち、D614G変異株に対する中和抗体価はオミクロン波での感染者の59.9倍、2回接種を受けた医療従事者の4.2倍、デルタ波での感染者の2.8倍であった。 これらの結果は、BA.3株は免疫逃避変異株ではないことを示し、それについて著者らは、BA.3株がBA.1株やBA.2株より受容体結合ドメインの変異の数が少ないためと考察している。一方、デルタクロン株は、BA.1株やBA.2株での強い耐性を保持し、デルタ波での患者の血清サンプルに対する感受性の増強は見られなかった。デルタ株由来の変異は中和耐性を弱めないようだと著者らは述べている。

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ワクチン忌避に対抗できるか?植物由来の新しいコロナワクチン(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 新型コロナウイルスに対するまったく新しいタイプのワクチンの効果がNEJM誌に報告された。本研究で検討された「植物由来ワクチンCoVLP+AS03」は、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)という植物内でコロナウイルスのスパイクタンパクを発現し、コロナ様粒子(CoVLP)とアジュバント(AS03)を組み合わせた新しいタイプのワクチンである。 本研究は、過去にコロナワクチン接種歴のない方で18歳以上の約2万4,000例が今回の接種対象となっている。1:1でワクチン接種群とプラセボ群に割り付けられ、コロナ感染が確認された165例での解析がなされている。結果は症候性コロナ発症に対する有効性は69.5%、中等症~重症コロナ発症に対する有効性は78.8%と比較的高い効果を示していることがわかる。90%以上の発症予防効果を誇る従来のmRNAワクチンと比較すると、この植物由来ワクチンCoVLP+AS03は数字上ではやや劣るように感じる。ただ、2つのワクチンを比較検討したわけではなく、研究が行われた時期や背景、患者群が異なるので一概に効果の違いはわからない。特筆すべきはワクチン接種群で重症例は認められなかったことと、コロナ診断時にプラセボ群はワクチン接種群に比べてウイルス量が100倍以上高かったことも、重要なポイントと考えることができる。副反応は、局所的な有害事象(92.3% vs.45.5%)も全身的な有害事象(87.3% vs.65.0%)もワクチン接種群の頻度が高かったことは理解可能であるが、Grade4や5の有害事象の報告は認められなかったことは評価される。 今回の研究の中で、コロナ感染が確認された165例中122例でウイルス配列が同定され、ガンマ株が43.4%、デルタ株が45.9%で大多数を占める。2021年3月~9月に行われた研究であり、時期的にオミクロン株は含まれていない。そのような時代背景の中でも症候性コロナ感染を約70%、中等症~重症を約80%抑えるという高い有効性が期待できるこの植物由来ワクチンCoVLP+AS03ではあるが、2022年6月の時点で80%以上の国民が1回以上のコロナワクチンを接種した日本においては、本試験の対象に該当する症例は限られている。また過去にコロナワクチン接種歴のない方で、かつ18歳以上が今回の接種対象となっているが、被検者の年齢の中央値が29歳ということで若年者が対象となっていることから、高齢者や基礎疾患を持つ方に対する有効性が示されたわけではないことは差し引いて考える必要がある。 まったく医学的ではないが、新しいコロナワクチンではあるものの「mRNA」や「ウイルスベクター」ではなく「植物由来Plant-based」ということで、今までのコロナワクチンに忌避感を示している方に少し受け入れられやすい可能性がある。ワクチン未接種者が本研究の主な対象ということで、今後のウィズコロナ時代においてさらに感染者や重症者に対する対策という意味では、もしかしたら1つの選択肢となりうる。今後幅広く活用されるためには、従来のmRNAワクチン接種後の交互接種のデータや、基礎疾患のある症例や高齢者に対するデータが補完されることを期待したい。

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ワクチン3回目、異種・同種接種での有効性~メタ解析/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのあらゆるプライマリ接種におけるブースター接種にはmRNAワクチンが推奨されること、異種・同種ワクチンの接種を問わず3回接種レジメンが、種々の変異株のCOVID-19予防に比較的有効であることを、中国・香港大学のWing Ying Au氏らが、システマティック・レビューとネットワークメタ解析の結果、報告した。ただし、3回接種レジメンのCOVID-19関連死への有効性については不明なままだったとしている。BMJ誌2022年5月31日号掲載の報告。ワクチン有効性、SUCRAスコアを比較 研究グループは、ブースター接種の有無を含む異種・同種COVID-19ワクチンレジメンのCOVID-19感染、入院および死亡に対する予防効果を評価するシステマティック・レビューとネットワークメタ解析を行った。 世界保健機関(WHO)の38のCOVID-19データベースについて、2022年3月から毎週検索を行う方法(Living systematic review)にて、COVID-19ワクチンの同種または異種レジメンの有効性について評価した試験を抽出した。ブースター接種の有無は問わなかった。 解析対象としたのは、ワクチン接種群と非接種群について、症候性や重症COVID-19、COVID-19関連の入院や死亡数を記録した試験だった。 主要評価項目は、ワクチンの有効性で、1-オッズ比で算出し評価。副次評価項目は、surface under the cumulative ranking curve(SUCRA)スコアとペアワイズ比較の相対的効果だった。 バイアスリスクについては、非無作為化介入試験バイアスリスク評価ツール「ROBINS-I」を、無作為化比較試験については、コクランバイアスリスク評価ツール「ROB-2」を用いて評価した。mRNAワクチン3回接種、免疫不全でも高い有効性 53試験を対象に、初回解析を行った。COVID-19ワクチンレジメンの24の比較のうち、mRNAワクチン3回接種が、非症候性・症候性COVID-19感染に対し最も有効だった(ワクチン有効性:96%、95%信頼区間[CI]:72~99)。 アデノウイルスベクターワクチン2回接種+mRNAワクチン1回接種の異種ブースター接種の非症候性・症候性COVID-19感染に対する有効性は88%(95%CI:59~97)と良好なワクチン効果が認められた。また、mRNAワクチン2回の同種接種の、重症COVID-19に対する有効性は99%(79~100)だった。 mRNAワクチン3回接種は、COVID-19関連入院においても最も有効だった(有効率:95%、95%CI:90~97)。mRNAワクチン3回接種者における死亡に対する有効性は、交絡因子により不明確だった。 サブグループ解析では、3回接種レジメンは、高齢者(65歳以上)を含むすべての年齢群で同程度の有効性が認められた。mRNAワクチンの3回接種レジメンは、免疫低下の有無にかかわらず比較的良好に機能することが認められた。 同種・異種のワクチン3回接種レジメンは、COVID-19変異株(アルファ、デルタ、オミクロン)のいずれに対しても、感染予防効果が認められた。

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サル痘に気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さん、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。さて、2年ぶりに連載が再開した「気を付けろッ!」ですが、いつの間にか私の所属も大阪大学に変わってしまいました(まあ変わったのもすでに1年前なんですが…)。冨樫義博先生(漫画家)が『HUNTER×HUNTER』(週刊少年ジャンプ)の連載再開に向けて動き出しているということで、私も頑張らなあかんな~と思い、筆を取った次第です。この連載とは別に『ちょっくら症例報告を書いてみよう』という連載も開始しましたので、こちらの連載の方はCareNet.comの担当者からは「最後に1つ書いて終わってください」と言われていますが、「いやいや、くつ王、連載やめへんで! CareNet.comの連載2本持ちをしている文豪(&遅筆)としてこれからも邁進してまいります」ということで今回は「サル痘」についてです。サル痘はアフリカ由来サル痘は、1970年にコンゴ民主共和国で初めてヒトでの感染例が報告されたサル痘ウイルスによる動物由来感染症です。サル痘という名前ですが、サルも感染することがあるというだけで、もともとの宿主はネズミの仲間のげっ歯類ではないかと考えられています。天然痘ウイルスやワクシニアウイルスと同じオルソポックスウイルスに属するサル痘ウイルスによる感染症であり、アフリカの異なる地域にそれぞれ別の系統が分布しています。コンゴ民主共和国などの中央アフリカのサル痘ウイルスよりも、ナイジェリアなどの西アフリカのサル痘ウイルスの方が病原性が低いことがわかっています。これまでに報告されているサル痘患者の大半はアフリカからのものですが、同様に近年、アフリカでサル痘患者が増えているとナイジェリアやコンゴ民主共和国などから報告されております。その理由として、天然痘の根絶後、種痘の接種歴のある人が減っていることでサル痘患者が増加してきているのではないかと懸念されています。アフリカ以外でも、まれに旅行や動物の輸入に関連したサル痘患者がアメリカ、イギリス、シンガポール、イスラエルなど海外でも散発的に報告されていました。ほかの感染症との鑑別とサル痘の主症状そんな中、2022年5月からイギリスを発端としてアフリカ以外の地域でサル痘の患者が急増しています。2022年6月2日現在、600人を超えるサル痘患者が30ヵ国から報告されています。これまでにわかっている確定例は大半が男性患者であり、20代~40代の比較的若い世代に多いことも特徴です。また、今回の感染者のうち、ゲイやバイセクシュアルなど男性とセックスをする男性、いわゆる男性同性間性的接触者(MSM)の間で発生したケースが多いことが指摘されています。表 サル痘、天然痘、水痘の特徴の違い画像を拡大する(文献5と6をもとに筆者が作成)サル痘は1980年に世界から根絶された「天然痘」に病態がとても良く似ており、症状だけでこれら2つの疾患を鑑別することは困難だと言われています。しかし、サル痘では人から人へ感染する頻度は天然痘よりも低く、また重症度も天然痘よりもかなり低いことが知られています。ヒトがサル痘ウイルスに感染すると約12日の潜伏期の後に発熱や発疹などの症状がみられます。アメリカにおける2003年のアウトブレイクの際にサル痘と診断された34人の患者では、以下の症状がみられました。●サル痘の主な症状発疹(97%)発熱(85%)悪寒(71%)リンパ節の腫脹(71%)頭痛(65%)筋肉痛(56%)この報告では発熱が発疹よりも2日ほど先行し、発熱は8日間、発疹は12日間続いたとのことです。通常、全身に発疹がみられますが、今回のアウトブレイクでは性器や肛門周辺にのみ発疹がみられた事例も報告されているようです。アフリカにおけるサル痘患者の致死率は約1〜10%とされていますが、先進国ではこれまでに死亡者は確認されていません。サル痘の皮疹は天然痘と非常に似ており、水疱がみられることが特徴です。同様に水疱がみられる水痘では、水疱の時期、痂皮になった時期などさまざまな時期の皮疹が混在しますが、サル痘や天然痘では全身の皮疹が均一に進行していくのが特徴です。天然痘と比べると、サル痘では首の後ろなどのリンパ節が腫れることが多いと言われています。診断は水疱内容物や痂皮などを検体として用いたPCR検査を行うことになります。サル痘が疑われた場合は、最寄りの保健所を経由して国立感染症研究所で検査が実施されます。サル痘の治療は治療は原則として対症療法となります。海外ではシドフォビル、Tecovirimat、Brincidofovirなど天然痘に対する治療薬が承認され、実際に投与も行われている国もありますが、わが国ではこれらの治療薬は現時点では未承認です。感染経路は、接触感染(サル痘ウイルスを持つ動物に噛まれる、引っかかれる、血液・体液・皮膚病変に接触する、サル痘に感染した人の体液・発疹部位)と飛沫感染(サル痘に感染した人の飛沫を浴びる)の2つと考えられています。今回のアウトブレイクでは、ゲイやバイセクシュアルなど男性とセックスをする男性(MSM)の間で発生したケースが多いことから、性交渉の際の接触が感染の原因になっているのではないかと疑われています。種痘(天然痘ワクチン)はサル痘にも有効です。コンゴ民主共和国でのサル痘の調査では、天然痘ワクチンを接種していた人は、していなかった人よりもサル痘に感染するリスクが5.2倍低かったと報告されています。しかし、1976年以降日本では種痘は行われていませんので、昭和50年以降に生まれた方は接種していません。院内感染対策については、サル痘患者における科学的研究はほとんどなく、そのほとんどがアフリカで実施されたものです。サル痘ウイルスの人から人への感染は、天然痘と同じメカニズム、すなわち飛沫または接触によって起こると考えられていますので、天然痘と同様に考え、標準予防策、接触予防策、飛沫予防策を行うことになります。なお、アメリカの疾病対策予防センター(CDC)は、サル痘ウイルスが空気感染する理論的なリスクがあるということで、可能な限り陰圧個室隔離の上で空気感染予防策を適用することを推奨しています。1)Rimoin AW, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107:16262-16267.2)Traeger MW, et al. Lancet Infect Dis. 2022;S1473-3099.3)Sklenovská N,et al. Front Public Health. 2018;6:241.4)Huhn GD, et al. Clin Infect Dis. 2005;41:1742-1751.5)McCollum AM,et al. Clin Infect Dis. 2014;58:260-267.6)Frey SE, et al. N Engl J Med. 2004;350:324-327.

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第112回 規制改革推進会議答申で気になったこと(前編)タスクシフトへの踏み込みが甘かった背景

「新型コロナは医療関連制度の不全を露呈させた」と答申こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週の過酷な皇海山登山の身体へのダメージがことのほか大きかったため、今週末は街で、映画を2本観て過ごしました。話題の2作、「シン・ウルトラマン」と「トップガン マーヴェリック」です。「シン・ウルトラマン」は庵野 秀明氏が企画・脚本・総監修ということで期待して観たのですが、今一つでした。「ウルトラマンの内面にまで迫った」と高く評価する映画評もありますが、個人的には少々理屈っぽく、かつ怪獣(禍威獣)も宇宙由来のものが主体で、これではウルトラマンではなくウルトラセブンではないか、と落胆した次第です。一方の「トップガン マーヴェリック」は、前作から36年ぶりの新作ですが、トム・クルーズの立ち位置(前回はやんちゃな戦闘機乗り、今回はやんちゃな若者を導く教官)や、前回エピソードの活かし方、圧倒的な空中戦のシーンなど、素晴らしい出来でした。時節柄、戦争や“敵国”の描き方への批判もあるようです。しかし、娯楽作としては群を抜いた映画だと感じました。映画評論家(で時代劇研究家)の春日 太一氏は、5月27日付の日本経済新聞夕刊の「シネマ万華鏡」で、「『トップガン』のファンなら誰もがそう夢想する何もかもを、本作は最高レベルで提示してくれる」と激賞しています。まったく同感です。個人的には、冒頭場面で主人公マーヴェリックが、36年前も乗っていたカワサキのオートバイ、GPZ900Rに今も乗っていることに、映画の作り手のこだわりを感じました。この映画はできるだけスクリーンが大きいIMAXシアターで観ることをお勧めします。さて、今回は政府の規制改革推進会議(議長:夏野 剛・近畿大学特別招聘教授/情報学研究所長)が5月27日に取りまとめた答申、「規制改革推進に関する答申~コロナ後に向けた成長の「起動」~」1)について書いてみたいと思います。同答申は、医療改革のためだけのものではありませんが、「新型コロナは医療デジタル化の遅れをはじめ医療関連制度の不全を露呈させた」と指摘、医療や介護に関する規制改革の項目が大きな柱となっています。医療DXの基盤整備に重点「医療・介護・感染症対策」については、表のような内容です。画像を拡大する表:規制改革推進会議答申に盛り込まれた「医療・介護・感染症対策」に関する項目「医療DXの基盤整備(在宅での医療や健康管理の充実)」のため、オンライン診療については、1)デジタルが不得意な高齢者らがデイサービス施設や公民館など、自宅以外でも受診できるようにする、2)患者の本人確認手続きを簡略化する…、ことなどを求めています。また、コロナ対応で特例的に認めている薬局での抗原検査キット販売の本格解禁も求めています。事前のオンライン注文を条件に、販売資格を持つ人がいないコンビニなどでも一般用医薬品を受け取れる制度の検討も要請しました。いずれも、コロナ禍で問題となった自宅での検査・療養態勢の充実のためです。政府は近く、この答申を反映した規制改革実施計画を閣議決定、同計画が今後の規制改革の指針となります。ワーキング・グループ委員は在宅医療寄り規制改革推進会議は、企業や医療現場などの生産性向上に向け、首相の諮問に応じて規制の緩和を議論する場です。内閣府に設置されており、行政改革推進会議などと併せてデジタル臨時行政調査会が統括しています。テーマごとにワーキング・グループを設けて関係省庁や有識者が参加して改革案をつくります。現在は「人への投資」「医療・介護・感染症対策」「デジタル基盤」など、5つの部会があります。医療・介護・感染症対策ワーキング・グループには5人の専門委員がおり、印南 一路・慶應義塾大学総合政策学部教授、大石 佳能子・株式会社メディヴァ代表取締役社長、佐々木 淳・医療法人社団悠翔会理事長・診療部長らが構成メンバーです。臨床の現場で働いているのは在宅医である佐々木氏のみです。大石氏は在宅医療も展開する用賀アーバンクリニックなどを運営する医療法人プラタナスの経営に関わるコンサルタント会社、メディヴァの社長ですが医師ではありません。ということで、専門委員は在宅医療の関係者に少々偏っている印象を受けます。タスクシェアは在宅現場の薬剤師の業務拡大のみそれはさておき、今回の答申で気になった点が2つあります。一つは、「医療人材不足を踏まえたタスクシフト/タスクシェアの推進」の項目です。タスクシフト/タスクシェアは、医師をはじめとする医療現場の働き方改革を進めていく中でとても重要な施策と考えられています。今回の規制改革推進会議の答申でも、人手不足が見込まれる介護施設で人員配置の基準緩和や、薬剤師などが看護の仕事の一部を担う「タスクシフト/タスクシェア」を求めてはいます。しかし、実際の医療現場の改革については、「在宅医療を受ける患者宅において必要となる点滴薬剤の充填・交換や患者の褥瘡への薬剤塗布といった行為を、薬剤師が実施すること」の検討を厚生労働省に求めたくらいで、特段踏み込んだ内容とはなっていません。「聖域になっていた医師の業務独占にもメスを入れるべきだ」と日経新聞医療関係職種のタスクシフト/タスクシェアについては、「第66回 医療法等改正、10月からの業務範囲拡大で救急救命士の争奪戦勃発か」でも詳しく書きました。2021年5月に成立した医療法等改正法によって、医師の負担軽減を目的に、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士の4職種の資格法が改正され、それぞれの職種の業務範囲が同年10月から拡大されました。昨年の規制改革推進会議の答申では、これらのタスクシフトの動きについて「規制改革実施計画通りの進捗を確認した。今後も引き続きフォローアップを行っていく」としていました。今回の答申についても、その先の大改革の提案を期待した向きもあったようですが、物足りない内容に終わっています。日本経済新聞の6月1日付の社説は「医療人材生かす幅広いタスクシェアを」というタイトルで、「医療従事者のタスクシェアはこれに限らず広く実現していくべきだ。例えば米国やカナダで、ワクチンを打つのは薬局の薬剤師の仕事だ。日本でも再教育を受けた薬剤師が打ち手になれば、感染症危機への対応力が高まる」、「聖域になっていた医師の業務独占にもメスを入れるべきだ。日本の看護師は医師の指示がないと湿布を貼ることすらできない。(中略)能力のある看護師は自らの裁量で一定の医行為を行えるよう法改正すべきだ」と、今回の答申の不十分さを厳しく指摘しています。診療看護師が医師の指示なしで診療行為ができるようになれば答申でタスクシフト/タスクシェアの項目が在宅における薬剤師の業務範囲拡大だけに留まったのは、夏の参議院選挙を前に日本医師会を刺激したくなかったから、との見方もあるようです。また、内容が在宅医療関係だけに絞られたのは、先述したようにワーキング・グループのメンバーに在宅医療の関係者が多かったことも関係しているかもしれません。私自身は、日医が“内紛”や会長選でバタバタしている今こそ、大胆なタスクシフト/タスクシェアの内容を盛り込むべきではなかったかと考えます。特に重要なのは、看護師業務の大胆な拡大でしょう。2017年4月に厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」が報告書を取りまとめました。同報告書は医師と他の医療職間で行う「タスク・シフティング(業務の移管)、タスク・シェアリング(業務の共同化)」を提言、新たな診療看護師(NP)の養成や、薬剤師による調剤業務の効率化、フィジシャン・アシスタント(PA)の創設などを盛り込みました。しかし、日本における診療看護師の制度自体はそれから大きくは変わっていません。今でも、2015年に創設された「特定行為に係る看護師の研修制度」に基づき、あらかじめ作成した手順書に沿って、特定行為をはじめとする診療行為しか行うことはできません。医師の働き方改革が叫ばれる中、多忙な医師の業務を軽減するには、診療看護師に相当の業務をシフトし、米国などにならって医師の指示がなくても一部の診療行為や医薬品の処方までできるようにすることだと思いますが、皆さんどう思われますか。併せて、老健施設の施設長も看護師が担えるようにすれば、介護の現場も大きく変わると思うのですが……。今回の答申で気になったもう一つは、薬(処方薬の市販化、SaMD)に関してです。それについては次回で。(この項続く)参考1)規制改革推進に関する答申 ~コロナ後に向けた成長の「起動」~/規制改革推進会議

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小児の中等症~重症尋常性乾癬、イキセキズマブは長期で有効・安全

 世界中の小児・青少年の約1%が尋常性乾癬にさらされているというが、また1つ朗報がもたらされた。中等症~重症の尋常性乾癬を有する小児に対し、生物学的製剤イキセキズマブの投与について、108週の長期的な有効性と安全性が確認されたことを、米国・ノースウェスタン大学フェインバーグ校のAmy S Paller氏らが報告した。 患者報告に基づくアウトカム改善と客観的測定による完全な皮膚クリアランスが示され、得られた奏効率は試験期間中維持されていた。また安全性は、同一集団において以前に報告された所見と一致しており、イキセキズマブ治療の既知の安全性プロファイルと一致していたという。JAMA Dermatology誌2022年5月号掲載の報告。 研究グループは、中等症~重症の尋常性乾癬を有する小児におけるイキセキズマブの有効性と安全性を評価する多施設共同無作為化試験「IXORA-PEDS試験」を行った。 被験者は、6~18歳未満、中等症~重症の尋常性乾癬を有し、スクリーニング時およびベースラインにおいてPsoriasis Area and Severity Index(PASI)スコア12以上、static Physician's Global Assessment(sPGA)スコア3以上、乾癬の影響を受ける体表面積(BSA)が10%以上で、光線療法または全身療法の対象患者であり、局所療法ではコントロール不良の乾癬を有している患者を適格とした。 被験者は、体重ベース用量のイキセキズマブを4週ごとに投与する群またはプラセボ投与群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。12週間のプラセボとの比較検討後に、患者は48週間の非盲検下でのイキセキズマブ維持療法を受けた(12~60週)。その後に最終的に108週まで試験は延長された。またサブ試験として、60週以降のイキセキズマブ無作為化中止試験の評価が行われた。 108週時点の有効性のアウトカムは、ベースラインからの75%(PASI 75)、90%(PASI 90)、100%(PASI 100)改善の達成患者の割合、sPGAスコア0~1または0達成患者の割合、およびItch Numeric Rating Scaleスコアがベースラインから4ポイント以上の改善であった(いずれも対レスポンダーで算出)。安全性アウトカムは、有害事象(AE)の評価(治療関連の緊急的AE、重篤AE、とくに注目すべきAEなどを含む)、および症状を認める身体領域のベースラインからの改善などであった(いずれも対レスポンダーで算出)。 カテゴリーアウトカムに関する紛失データは、修正nonresponder imputation(NRI)法を用いて補完が行われた。データ解析はintention-to-treatを原則とし、2021年5月~10月に行った。 主な結果は以下のとおり。・総計171例(平均年齢13.5歳[SD 3.04]、女児99例[57.9%])が、イキセキズマブ群(115例)またはプラセボ群(56例)に無作為に割り付けられた。・166例が維持療法期に組み込まれ、うち139例(83.7%)が108週の試験を完了した。・主要および副次エンドポイントは108週まで維持された。PASI 75を達成した患者割合は91.7%(86/94例)、PASI 90は79.0%(74/94例)、PASI 100は55.1%(52/94例)、sPGA0または1達成割合は78.3%(74/94例)およびsPGA0達成割合は52.4%(49/94例)であった。Itch Numeric Rating Scaleスコア4ポイント以上改善を報告した患者は55/70例(78.5%)であった。・108週時点で、爪乾癬の消失を報告した患者割合は68.1%(19/28例)、掌蹠乾癬の消失は90.0%(9/10例)、頭皮乾癬の消失は76.2%(63/83例)、性器乾癬の消失は87.5%(21/24例)であった。・試験期間の48週~108週の間に、炎症性腸疾患やカンジダ感染症の新規症例などは報告されず、新しい安全性に関する所見は認められなかった。

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