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鼻腔拭い液のコロナ検査、自己採取と医療者で結果は異なるか/JAMA

 4~14歳の小児が簡単な説明資材を視聴した後に自己採取した鼻腔拭い液からの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出率は、医療従事者が採取した鼻腔拭い液での検出率とほぼ一致したことが、米国・エモリー大学のJesse J. Waggoner氏らが実施した横断研究の結果、示された。SARS-CoV-2の検査が拡大しているが、小児の自己採取が検査の精度に及ぼす影響が不明であるため、14歳未満の自己採取による鼻腔拭い液を用いた検査は緊急使用許可(EUA)が得られていなかった。JAMA誌オンライン版2022年8月26日号掲載の報告。小児に自己採取についてビデオと印刷物で説明 研究グループは、2021年7月~8月の期間に、Children’s Healthcare of Atlantaの各施設において過去24時間以内に鼻咽頭スワブ検査でSARS-CoV-2陽性または陰性が記録された小児を募集し、参加の同意が得られた症状を有する4~14歳の197例を登録した(130例は救急外来で登録され、67例は電話連絡により検査会場に戻るよう依頼)。 鼻腔拭い液の自己採取についての短い説明ビデオをタブレットまたはスマートフォンで見てもらうとともに、文章と画像で示した説明資料(印刷物)を配布した。 その後、まず参加者に被験者は鼻腔拭い液を自己採取してもらい、次に医療従事者(小児科の看護師)が2回目の検体を採取した。 主要評価項目は、EUAを取得しているリアルタイムRT-PCR検査によるSARS-CoV-2検出と、サイクル閾値(Ct値)による相対定量の、自己採取と医療従事者採取の比較とした。自己採取と看護師採取での一致率は、SARS-CoV-2陽性も陰性も約98% 197例中1例は、医療従事者が採取した検体が無効であったため解析から除外された。196例のうち108例(55.1%)が男性で、年齢中央値は9歳(四分位範囲[IQR]:6~11)であった。 自己採取および医療従事者採取の両方でSARS-CoV-2陽性は44.4%(87/196例)、陰性は53.6%(105/196例)で、いずれか片方のみが陽性はそれぞれ2例であった。 自己採取と医療従事者採取の陽性一致率は97.8%(95%信頼区間[CI]:94.7~100.0)、陰性一致率は98.1%(95.6~100.0)であり、SARS-CoV-2のCt値に両群間で有意差は確認されなかった(Ct値の平均値±SD:自己採取26.7±5.4 vs.医療従事者採取26.3±6.0、p=0.65)。 なお、著者は、参加者が有症者に限定されていたこと、デルタ株の流行期であったこと、参加は自主的であり選択バイアスにつながる可能性があること、などを研究の限界として挙げている。

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オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化転帰(解説:寺田教彦氏)

 ニルマトレルビルは、本邦では商品名「パキロビッドパック(以下パキロビッド)」としてCOVID-19重症化予防薬として用いられている。「パキロビッド」はニルマトレルビルをリトナビルでブーストした薬剤であり、効果的な経口抗ウイルス薬である。ただし、リトナビル成分のため、併用禁忌や併用注意の薬剤が多いことが知られており、投薬時には投薬歴を確認する必要がある。 同薬剤は、症状を伴うCOVID-19に罹患した、重症化リスクの高いワクチン未接種の成人を対象とした試験(EPIC-HR試験)においてプラセボと比較して、入院または死亡のリスクを88%低減させ、高い有効性を示した(Hammond JS, et al. N Engl J Med. 2022;386:1397-1408.)。有効性の直接比較はされていないが、同様の患者集団で報告されたレムデシビルの有効性に匹敵し(Gottlieb RL, et al. N Engl J Med. 2022;386:305-315.)、モルヌピラビルの有効性に勝る可能性もあり(Jayk Bernal A, et al. N Engl J Med. 2022;386:509-520.)、本邦でも外来患者で重症化リスクの高い患者に用いられている。 2022年9月現在、新型コロナウイルスはオミクロン株が流行しているが、EPIC-HR試験はデルタ株流行下で行われた研究である。ニルマトレルビルのオミクロン株に対する抗ウイルス薬は実験室上のデータではあるが、BA.2.12.1、BA.4、BA.5の各系統の増殖を効果的に抑制することが示されたため、(Takashita E, et al. N Engl J Med. 2022;387:468-470.)、オミクロン株流行下でも有効性を期待され使用されていた。 ただし、オミクロン株流行下での同薬剤の有効性を臨床現場で評価したデータではないため、オミクロン株流行中のニルマトレルビル投与はCOVID-19重症化予防にどの程度寄与するかはエビデンスが乏しかった。今回の研究で、オミクロン株が急増しているイスラエルで、ニルマトレルビルの無作為化対照試験が行われ、オミクロン株でも重症化予防効果を確認することができた。さらに、実臨床で参考にできるポイントとして、ワクチン接種や罹患に伴う免疫状況や年齢によるサブグループ解析が行われている点がある。 EPIC-HR試験の対象と本邦の執筆時のCOVID-19罹患者の差異として、流行株が異なること以外にワクチン接種の有無があるだろう。本邦では新型コロナウイルスワクチン接種は進み、重症化する患者の減少に寄与した。しかし、ワクチンを接種していても高齢者や重症化リスクの高い患者の中には咽頭痛や倦怠感が強くなり、入院を要する患者がいることも事実である。2022年9月の本邦ではワクチン未接種者、COVID-19未罹患者の診療を行うことはあるが、それよりもワクチン接種済み患者や、COVID-19罹患歴のある患者の診療の機会のほうが多い。ワクチン接種歴のある患者についても、ニルマトレルビル投与は有意な重症化予防効果が得られるかは不明確であったが、本研究では免疫状態に関してもサブグループ解析を実施しており参考にできる。 本研究で、65歳以上の患者でCOVID-19による入院率は、ニルマトレルビル投与患者では14.7例/10万人日に対して、非投与群では58.9/10万人日(補正ハザード比:0.27、95%CI:0.15~0.49)であり、死亡ハザード比は0.21(95%CI:0.05~0.82)と有意差が認められた。 それに対して40~64歳の患者に関しては、COVID-19による入院率は、ニルマトレルビル投与患者では15.2例/10万人日に対して、非投与群では15.8/10万人日(補正ハザード比 0.74、95%CI:0.35~1.58)であり、死亡ハザード比は1.32 (95%CI:0.16~10.75)だった。 以上より、本文では65歳以上の患者では、ニルマトレルビル投与により入院率や死亡率は低下をしたが、65歳未満の成人に関しては明らかなメリットは判明しなかったと結論付けている。 確かに、上記の40~64歳未満の患者では有意差はないが、免疫状態も加味したサブグループ解析では、結果がやや異なる。ニルマトレルビルを投与された40~64歳患者で、入院調整ハザード比は免疫を有している患者では1.13(95%CI:0.50~2.58)ではあるが、免疫のない患者では0.23(95%CI:0.03~1.67)であった。 本研究の結果から、「パキロビッド」をどのような患者に用いるかについて考える。 臨床的な問題としては、重症化リスクにはさまざまな因子があり、ワクチン接種状況や年齢などの因子も関与するため、画一的に抗ウイルス薬の適応は決めることは難しいが、NIHのCOVID-19治療ガイドライン(Prioritization of Anti-SARS-CoV-2 Therapies for the Treatment and Prevention of COVID-19 When There Are Logistical or Supply Constraints Last Updated: May 13, 2022)では、抗ウイルス薬の使用を優先させるべきリスク集団を提案している。 今回の結果を参考にすると、65歳以上の重症化リスクがある場合はワクチン接種済(グループ3)でも、ワクチン接種なし(グループ2)でも投与のメリットが確認され、40~64歳でも重症化のリスクはあるがワクチン未接種(グループ2)ならば投与のメリットはありそうである。 最終的には個々の症例で検討する必要はあるが、本研究結果からも抗ウイルス薬の使用を優先させるべきリスク集団で3以上のグループで「パキロビッド」の投与は理にかなっていそうである。 流行株がオミクロン株に変化し、デルタ株と比較して入院を要したり重症化したりする率は低下してきた(Menni C, et al. Lancet. 2022;399:1618-1624.)。しかし、オミクロン株でもCOVID-19に伴い原疾患が悪化したり、もともと身体機能に余力が乏しい患者では入院を要したりすることもあり、内服で高い重症化予防率を示す「パキロビッド」は患者の重症化および入院予防の一助になる。抗ウイルス薬は高価な薬剤であり、また副作用を起こすこともあるため、慎重に適応を考える必要はあるが、投与が好ましい患者には適切に使われることを期待したい。 また、オミクロン株に対する抗ウイルス薬の効果に関しては、本論文以降に発表された研究で、オミクロン株BA.2流行中の香港において、モルヌピラビルとニルマトレルビル・リトナビル投与により、死亡、疾患進行、酸素療法をどの程度回避できるかの報告がある(Wong CKH, et al. Lancet Infect Dis. 2022 Aug 24. [Epub ahead of print])。コントロール群と比較してモルヌピラビル群は52%、ニルマトレルビル・リトナビル群は66%死亡リスクが減少していた。抗ウイルス薬のhead-to-headの比較ではないが、こちらの結果からも重症化リスクの高い外来患者では、可能な限り「パキロビッド」が投与できるように調整してみることが好ましいかもしれない。

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第10回 第7波で終わるはずもなく

第7波の収束と死亡者数全国各地のコロナ病棟で第7波の収束の兆しが見えてきました。新学期が始まってリバウンドする可能性もあったのですが、とりあえず第7波の喧騒もそろそろ落ち着いてきましたね(図1)。図1. 国内の新型コロナ新規陽性者数と死亡者数(筆者作成)現状をまとめてみましょう。感染者が急激に増えて死亡者数が問題になったのは第3波以降ですが、過去最多の死亡者数を記録したのは、執筆時点では第6波です。「ただの風邪だろう」と思われていたオミクロン株の伝播性が過去最悪で、多くの高齢者が死亡することになりました。第7波はBA.5が主体でした。第6波を超える感染者数だったことから、おそらく第7波の死亡者数が最多になるのではと予想されています。ピークアウトしつつあるとはいえ、第7波はすでに1万人の死亡者数を突破していることから、前波を超える死亡者数に到達するでしょう(図2)。図2. 新型コロナ 各波の死亡者数(筆者作成)現在、新型コロナ病床に残っているのは、施設や自宅に戻ることが難しくなった寝たきりの高齢者が主体で、後方支援病院に搬送が滞っている状況はコロナ禍初期からあまり変わらない光景です。いくら自治体が後方支援をお願いしても、過活動性の認知症の患者さんを引き受けてくれるところは多くありません。第8波はどうなる?第7波で終わって、第8波が来ないということは医学的にありえませんので、間違いなく第8波はやってきます。ただ、発生届を一定の重症度以上の患者さんに絞っている自治体が出てきており(宮城県など)、感染者数の全容が把握できない自治体は増えてくるかもしれません。となると、第8波がどのような年齢層にどのような重症度で広がっていくのかという解釈は後付けになってしまい、何となく医療逼迫度がこのくらいかなという印象を肌で感じながら立ち向かうことになると予想されます。いずれにしても日本はウィズコロナに舵を切らなければいけなくなったわけですから、第8波はほぼ現状の武器で立ち向かうことになります。感染者数がそこまで多くないように見えるのに、救急医療などがじわじわと逼迫する見えない恐怖と戦うような波にならないことを祈るばかりです。

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ブースター接種、異種のほうが効果が持続する可能性

 世界的に新型コロナワクチンのブースター接種が進む中で、同種・異種ワクチンのどちらがブースター接種により適しているかを検討した研究結果が発表された。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのC.Sabrina Tan氏らによる本研究は、JAMA Network Open誌2022年8月1日号に掲載された。 研究者らは、少なくとも6ヵ月前にBNT162b2(ファイザー製)の2回接種を完了した68例を対象に、ファイザー製とAd26.COV2.S(Johnson & Johnson製)によるブースター接種を行い、4ヵ月後の液性および細胞性免疫反応を評価した。 参加者の登録は2021年8月12日~10月25日に行われ、SARS-CoV-2感染既往がある場合、他のワクチンの接種を受けている場合、免疫抑制剤の投与を受けている場合は除外された。4ヵ月後にフォローアップを行い、データ解析は2021年11月~2022年2月にかけて行われた。主要評価項目は4ヵ月(16週)後の中和抗体、結合抗体、機能的抗体による免疫応答だった。 主な結果は以下のとおり。・68例中、27例がファイザー製(年齢中央値[SD]35[23~76]歳)、41例がJ&J製(36[23~84]歳)のブースター接種を受けた。56例(82%)が女性だった。・いずれのワクチンも、懸念される変異株に対するものも含め、体液性および細胞性免疫反応の増加と関連していた。・オミクロン株に対する中和抗体の値は、ファイザー製のブースター接種では2週目に中央値(IQR)1,018(699~1,646)をピークに、16週目には148(95~266)まで6.9倍減少した。J&J製では、4週目に中央値(IQR)859(467~1,838)をピークに、16週目には403(208~1,130)まで2.1倍減少した。 著者らは、「J&J製のアデノウイルスベクターワクチンはmRNAワクチンと比較して初期の抗体価は低いものの、16週後の抗体応答および防御効果についてはmRNAワクチンよりも持続していた。これらの知見は今後のブースター戦略に役立つものだ」としている。

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乳幼児の新型コロナ感染、約4割が無症状

 学校や保育所において小児の新型コロナの集団感染が多発しているが、小児は感染しても無症状であることが多く、感染防止には症状のスクリーニングでは不十分であることがわかったという。ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のRuth A Karron氏らによる本研究は、JAMA Network Open誌2022年8月31日号に掲載された。 この前向きコホート研究では、2020年11月24日~2021年10月15日に、0~4歳の子供が1人以上いるメリーランド州の175世帯の690人に対して調査を実施した。登録から8ヵ月間、参加者は毎週症状に関するアンケートに回答し、PCR検査によってSARS-CoV-2感染の有無を確認した。登録時および登録後約4ヵ月と8ヵ月後に採取した血清について、SARS-CoV-2スパイク抗体およびヌクレオカプシドタンパク質抗体を測定した。 登録時、0~4歳の125/256例(48.8%)が家庭外保育に、5~17歳の23/100例(23.0%)が学校に通っていた。成人の139/334例(41.6%)が家庭外で働いており、うち113例(81.3%)が職場で密接な他人との接触(約2m以内)を有していた。試験終了までに成人307/335例人(91.6%)、12~17歳の小児15/18例(83.3%)がCOVID-19ワクチンの完全接種を終えた。 主要評価項目は年齢層別のSARS-CoV-2感染の発生率、臨床的・ウイルス学的特徴、症状、および検出された最高ウイルス量と症状頻度で、検出された最大のウイルス量とSARS-CoV-2系統の相関関係を見た。 主な結果は以下のとおり。・登録された690例(女性355例[51.4%])のうち、0~4歳が256例(37.1%)、5~17歳が100例(14.5%)、18~74歳の成人が334例(48.4%)であった。・追跡期間中にSARS-CoV-2に感染したのは54例(7.8%)で、0~4歳児22/256例(8.6%)、5~17歳児11/100例(11.0%)、成人21/334人例(6.3%)であった。1000人週当たりの発生率は、0〜4歳児2.25(95%CI:1.28〜3.65)、5〜17歳児3.48(1.59〜6.61)、成人1.08(0.52〜1.98)であった。・0~17歳児は無症状感染者が成人よりも多く(11/30例[36.7%]vs.3/21[14.3%])、0~4歳児が無症状である率が最も高かった(7/19例[36.8%])。・検出されたウイルス量の最大値は、無症状者と有症状者、年齢群間で差がなかった。・症状の数は、成人ではウイルス量と有意な相関があったが(r=0.69、p<0.001)、小児では認められなかった(0~4歳:r=0.02、p=0.91、5~17歳:r=0.18、p=0.58)。 著者らは本研究の限界として、オミクロン株感染者が含まれていない点を挙げたうえで、「SARS-CoV-2感染は0~4歳児では無症状であることが多く、症状の有無や数はウイルス量と相関がなかった。これらの知見は、幼児を含む集団発生を予防するには、症状スクリーニングでは不十分である可能性を示唆している」としている。

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国内での3回接種によるBA.5への有効性など追加、コロナワクチンに関する提言(第5版)修正版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医科学研究所附属病院長])は、8月30日に同学会のホームページで「COVID-19ワクチンに関する提言」の第5版を一部変更・加筆した第5版修正版を公開した。 今回の修正版では、わが国におけるBA.5に対する3回目接種の有効性や5~11歳へのワクチンの有効性の情報を追加したほか、現時点の知見を追加している。修正版の主な改訂点【1. わが国で承認されているCOVID-19ワクチン】・5~11歳への接種にも努力義務を課すことが決定され、臨時接種対象者すべてに努力義務が課されることになった。・COVID-19ワクチンは他のワクチンと13日以上の間隔をあけて接種することとされていたが、インフルエンザワクチンに関しては接種間隔に関する制約がなくなり、同時接種も可能となった。【2. mRNAワクチンの有効性】(d. 3回目接種の有効性) 実社会でのBA.5に対するワクチン効果は、国内の16歳以上1,547人を対象としてBA.5流行中の7月に行われた症例対照研究の暫定結果が国立感染症研究所から発表された。これによると、mRNAワクチンを主体とするCOVID-19ワクチンの発症を指標とした有効率は、未接種者と比べて3回接種14日~3ヵ月で65%、3回接種後3ヵ月以降で54%で、2回接種と比較した3回接種の相対的な有効率も、3回接種14日~3ヵ月で46%、3回接種後3ヵ月以降で30%と、BA.5に対しても3回接種による有意な発症予防効果がみられている。(e. 4回目接種の有効性) 2022年7月22日に4回目接種の対象が18~59歳の医療従事者と高齢者施設などの従事者にも拡大。イスラエルの3万人弱の医療従事者を対象としたコホート研究では一定の発症予防効果があることが報告されている。これによると、オミクロン株流行下のブレークスルー感染率が、3回接種群では20%だったが、4回接種群では7%に減少していた。調整後のハザード比(HR)は0.56(95%CI:0.50~0.63)となり、4回目接種で発症リスクが約半分になることから、院内感染防止のためにも医療従事者などへの4回目接種が勧められる。(f. 5~11歳への接種の有効性) 小児の年代でファイザーのワクチン2回接種の有効性が報告され、シンガポールからはPCRで確認した感染予防効果が65.3%、入院予防効果が82.7%、イスラエルからは2回接種7~21日後の発症予防効果が48%とある。また、イタリアにおける後方視的研究では、感染予防効果が29.4%、重症化予防効果が41.1%、感染予防効果は2回接種後0~14日後の38.7%から43~84日後には21.2%に低下することが報告されている。これらの報告、とくに小児のCOVID-19の重症化予防効果が示されたことを踏まえて、日本小児科学会は「5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」で、健康な小児へのワクチン接種は「意義がある」から「推奨します」という表現に変更した。【4. 組換えタンパク質ワクチン ノババックスのヌバキソビッド(商品名)筋注】(b. 安全性) 心筋炎・心膜炎の有害事象は2022年7月10日時点で国内での報告はなし。一方、海外ではきわめてまれながら報告されているため、7月に添付文書の「重要な基本的注意」に心筋炎・心膜炎の報告があることが追加された。【6. COVID-19ワクチンの開発状況と今後の展望】・22年7月にファイザーから6ヵ月から5歳未満へのmRNAワクチンの承認申請が行われた。・武漢株とオミクロン株をもとにしたファイザーとモデルナの2価mRNAワクチンの臨床試験も開始され、2022年秋には実用化を目指して国内外で開発が進んでいる。わが国でも8月にファイザーが12歳以上、モデルナが18歳以上を対象とした2価ワクチン(武漢株とオミクロン株BA.1)の承認申請を行った。 

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サル痘予防が追加された乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」【下平博士のDIノート】第105回

サル痘予防が追加された乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」今回は、「乾燥細胞培養痘そうワクチン(商品名:乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16[KMB]、製造販売元:KMバイオロジクス)」を紹介します。本剤は、世界で感染が拡大しているサル痘の発症予防に用いることができる国内唯一のワクチンです。<効能・効果>本剤は、2004年1月に「痘そうの予防」の適応で販売され、2022年8月に「サル痘の予防」が追加されました。<用法・用量>本剤は、添付の溶剤(20vol%グリセリン加注射用水)0.5mLで溶解し、通常、二叉針を用いた多刺法により皮膚に接種します。回数は15回程度を目安とし、血がにじむ程度に圧刺します。なお、他の生ワクチンを接種した人には、通常27日以上の間隔を置いて本剤を接種します。他のワクチンとは、医師が必要と認めた場合は同時に接種することができます。<安全性>主な副反応は、接種部位圧痛、熱感、接種部位紅斑などの局所反応ですが、約10日後に全身反応として発熱、発疹、腋下リンパ節の腫脹を来すことがあります。また、アレルギー性皮膚炎、多形紅斑が報告されています。重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)、けいれん(0.1%未満)が設定されています。<使用上の注意>本剤は-20℃~-35℃で保存します。ゴム栓の劣化や破損などの可能性があるため、-35℃以下では保存できません。添加物としてチメロサール(保存剤)を含有してないため、栓を取り外した瓶の残液は廃棄します。<患者さんへの指導例>1.本剤を接種することで、痘そうウイルスおよびサル痘ウイルスに対する免疫ができ、発症や重症化を予防します。2.医師による問診や検温、診察の結果から接種できるかどうかが判断されます。発熱している人などは接種を受けることができません。3.本剤はゼラチンを含むため、これまでにゼラチンを含む薬や食品によって蕁麻疹、息苦しさ、口唇周囲の腫れ、喉の詰まりなどの異常が生じたことがある方は申し出てください。4.BCG、麻疹、風疹ワクチンなどの生ワクチンの接種を受けた場合は、27日以上の間隔を空けてから本剤を接種します。5.接種を受けた日は入浴せず、飲酒や激しい運動は避けてください。6.接種翌日まで接種を受けた場所を触らないようにしてください。接種翌日以後に、水ぶくれやかさぶたが出る場合がありますが、手などで触れないようにして、必要に応じてガーゼなどを当ててください。7.(妊娠可能な女性に対して)本剤接種前の約1ヵ月間、および接種後の約2ヵ月間は避妊してください。<Shimo's eyes>サル痘は、オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症です。これまでは主にアフリカ中央部から西部にかけて発生してきました。2022年5月以降は欧米を中心に2万7千例以上の感染者が報告されていて、常在国(アフリカ大陸)から7例、非常在国からの4例の死亡例が報告されています(8月10日時点)。WHOによると、現在報告されている患者の大部分は男性ですが、小児や女性の感染も報告されています。国内では感染症法において4類感染症に指定されていて、届出義務の対象です。サルという名前が付いていますが、もともとアフリカに生息するリスなどのげっ歯類が自然宿主とされています。感染した人や動物の体液・血液や皮膚病変、飛沫を介して感染します。潜伏期間は通常7~14日(最大5~21日)で、発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状に続いて発疹が出現します。ただし、常在国以外での感染例では、これまでのサル痘の症状とは異なる所見が報告されています。確定診断は水疱などの組織を用いたPCR検査で行います。通常は発症から2~4週間後に自然軽快することが多いものの、小児や免疫不全者、曝露量が多い場合は重症化することがあります。国内ではサル痘に対する治療方法は対症療法のみで、承認されている治療薬はありません。欧米では、天然痘やサル痘に対する経口抗ウイルス薬のtecovirimatが承認されています。日本でも同薬を用いた特定臨床研究が始まりました。乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」は、もともと痘そう予防のワクチンとして承認を受けていましたが、2022年8月にサル痘予防の効能が追加されました。本剤はWHOの「サル痘に係るワクチンおよび予防接種の暫定ガイダンス(2022年6月14日付)」において、安全性の高いワクチンであり、サル痘予防のために使用が考慮されるべき痘そうワクチンの1つに挙げられています。本剤は、サル痘や天然痘ウイルスと同じオルソポックスウイルス属の1つであるワクチニアウイルス(LC16m8株)の弱毒化生ワクチンです。ウイルスへの曝露後、4日以内の接種で感染予防効果が得られ、14日以内の接種で重症化予防効果が得られるとされています。接種後10~14日に検診を行い、接種部位の跡がはっきりと付いて免疫が獲得されたことを示す善感反応があるかどうかを確認します。他の生ワクチンと同様に、ワクチンウイルスの感染を増強させる可能性があるので、プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリンなどの免疫抑制薬は併用禁忌となっています。

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HEPAフィルター空気清浄機により新型コロナウイルス除去に成功/東大

 東京大学医科学研究所と国立国際医療研究センターは、8月23日付のプレスリリースで、河岡 義裕氏らの研究により、HEPAフィルターを搭載した空気清浄機を用いることで、エアロゾル中に存在する感染性の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を経時的に除去できることが実証されたことを発表した。なお本結果は、mSphere誌オンライン版8月10日号に掲載された。 本研究は、東京大学と進和テックの共同で行われた。本研究に用いられたHEPA(high-efficiency particulate air)フィルターは、米国環境科学技術研究所の規格(IEST-RP-CC001)で、0.3μmの試験粒子を99.97%以上捕集可能なフィルターとして定義されている。HEPAフィルターのろ過効果を検証するため、コンプレッサーネブライザーでSARS-CoV-2エアロゾルを試験チャンバー内に噴霧して満たした後、HEPAフィルター搭載の空気清浄機を毎時12回換気の風量で5分間、10分間、35.5分間稼働させた。所定の稼働時間後、チャンバー内のSARS-CoV-2エアロゾルをエアサンプラーで採取し、プラークアッセイを用いて、サンプル中の感染性ウイルス力価を測定した。さらに、1価の銅化合物を主成分とし、活性酸素を発生させてフィルター面に付着したウイルスを不活性化することができる抗ウイルス剤のCufitec®を塗布したHEPAフィルターを用いた場合でも、同様の条件で感染性ウイルス力価を測定した。 主な結果は以下のとおり。・HEPAフィルターによるウイルス除去率は、5分間、10分間、35.5分間の稼働時間で、それぞれ85.38%、96.03%、>99.97%だった。空気清浄機の稼働時間の経過とともに、ウイルス除去率が高くなることがわかった。・抗ウイルス剤Cufitec®を塗布したHEPAフィルターを用いた場合では、通常のHEPAフィルターとほぼ同等のウイルス除去率が認められた。 研究チームは本結果について、空間中のSARS-CoV-2を除去するためには、HEPAフィルター付き空気清浄機を室内の適切な場所に設置し、風量や風向きを適宜調整するなど適正に使用することが重要だとしている。また、HEPAフィルター付き空気清浄機を室内の換気と併用することで、より短時間で効率的に空間中のSARS-CoV-2を除去することが可能になり、さらに、抗ウイルス剤を塗布したHEPAフィルターを空気清浄機に取り付けることで、フィルターを交換する際の曝露リスクを減らせる可能性があると述べている。

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エバシェルドの追加など、コロナ薬物治療の考え方14版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏)は、8月30日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第14版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)の追加、治療薬の削除など整理も行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。全体の考え方について【2 使用にあたっての手続き】・チキサゲビマブ/シルガビマブとバリシチニブを追加【3 抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング】・「図 COVID-19の重症度と治療の考え方」の注釈を改訂。・「2 主な重症化リスク因子」で65歳以上の高齢者、悪性腫瘍、COPDなどの慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、脳血管疾患、肥満(BMI 30kg/m2以上)、喫煙、固形臓器移植後の免疫不全、妊娠後期など内容を改訂。・「3」で「一般に、重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は推奨しない」と改訂。・「表1 軽症~中等症I」で治療薬の使用を優先させるべきリスク集団を追加。・「4 抗ウイルス薬等の選択」で知見より「高齢者、複数の重症化リスク因子がある患者、ワクチンの未接種者などでは症状が進行しやすいことを踏まえ、患者ごとの評価において、中等症への急速な病状の進行など、非典型的な臨床経過の症例や免疫抑制状態などの重症化リスクが特に高い症例などでは、併用投与または逐次投与の適応を考慮する」と表現を改訂。個々の治療薬について【抗ウイルス薬】・レムデシビル(商品名:ベクルリー)の「投与時の注意点」で「7)2022年1月21日の中央社会保険医療協議会(中医協)において、保険医の指示の下で看護師による在宅・療養施設等の患者へのレムデシビル投与が可能となった」を追加。・モルヌピラビル(同:ラゲブリオ)の「入手方法」で「2022年8月18日に薬価収載されたことから、今後、一般流通の開始およびそれに伴う国購入品と一般流通品の切替えが行われる見込みである」を追加。・ニルマトレルビル/リトナビル(同:パキロビッドパック )の「国内外での臨床報告」で「10万9,254例の後方視コホート研究(65歳以上の高齢者ではニルマトレルビルの治療介入により入院の有意なリスク減少を認めた(HR:0.27、95%CI:0.15~0.49)。一方で40~64歳では、有意なリスク減少を認めなかった (HR:0.74、95%CI:0.35~1.58)を追加。また、投与時の注意点に「5)新型コロナウイルスワクチンの被接種者は薬剤開発のための臨床試験で除外されているが、市販後の評価では、高齢者での重症化予防などの有効性が示唆されている」を追加。そのほか、投与時の腎機能の評価の詳細についても追加。・ファビピラビルの項目は削除。【中和抗体薬】・「チキサゲビマブ/シルガビマブ(同:エバシェルド)」を新しく追加。〔国内外での臨床報告〕重症化リスク因子の有無を問わない、軽症~中等症IのCOVID-19外来患者822人を対象としたランダム化比較試験では、発症から7日以内のチキサゲビマブ/シルガビマブの単回筋肉内投与により、プラセボと比較して、COVID-19の重症化または全死亡が50.5%(4.4%対8.9%、p=0.010)有意に減少したなどを記載。〔投与方法〕・発症後通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射。・曝露前の発症抑制通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ150mgを併用により筋肉内注射する。なお、SARS-CoV-2変異株の流行状況などに応じて、それぞれ300mgを併用により筋肉内注射することもできる。〔投与時の注意点〕オミクロン株(BA.4系統及びBA.5系統) については、本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に本剤の投与を検討することなど。〔発症後での投与時の注意点〕1)臨床試験における主な投与経験を踏まえ、COVID-19の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと。2)他の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が投与された高流量酸素または人工呼吸管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある。3)COVID-19の症状が発現してから速やかに投与すること。4)重症化リスク因子については、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」などにおいて例示されている重症化リスク因子が想定。〔発症抑制での投与時の注意点〕1)COVID-19の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。2)COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者ではない者に投与すること。COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者における有効性は示されていない。3)本剤の発症抑制における投与対象は、添付文書においては、COVID-19に対するワクチン接種が推奨されない者または免疫機能低下などによりCOVID-19に対するワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある者とされているが、原発性免疫不全症、B細胞枯渇療法を受けてから1年以内の患者など免疫抑制状態にある者が中和抗体薬を投与する意義が大きいと考えられる。4)3)の投与対象者については、チキサゲビマブ/シルガビマブを用いた発症抑制を行うことが望ましいと考えらえる。〔入手方法〕本剤は、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、発症抑制としての投与について、対象となる免疫抑制状態にある者が希望した場合には、医療機関からの依頼に基づき、無償で譲渡される。・カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ)とソトロビマブ(同:ゼビュディ)の「投与時の注意点」として「1)オミクロン株(B1.1.529系統/BA.2系統、BA.4系統およびBA.5系統) では本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に投与を検討する」を追記。【免疫調整薬・免疫抑制薬】・シクレソニド(国内未承認薬)の項目を削除。【その他】・その他の抗体治療薬(回復者血漿、高度免疫グロブリン製剤)の項目を削除。・附表1と2の「重症化リスクを有する軽症~中等症IのCOVID-19患者への治療薬の特徴」の内容を更新。・参考文献を52本に整理。 なお、本手引きの詳細は、同学会のサイトなどで入手の上、確認いただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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MTX維持療法中のolokizumab、関節リウマチの改善率は?/NEJM

 メトトレキサート(MTX)による維持療法を受けている関節リウマチ(RA)患者において、インターロイキン-6(IL-6)を直接の標的とするヒト化モノクローナル抗体であるolokizumabを併用すると、12週の時点における米国リウマチ学会基準の20%の改善(ACR20)の達成に関して、プラセボと比較して優越性を示し、ヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体アダリムマブに対し非劣性であることが、オーストリア・ウィーン医科大学のJosef S. Smolen氏らが実施した「CREDO2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年8月25日号に掲載された。世界209施設の無作為化プラセボ対照・実薬対照第III相試験 CREDO2試験は、RA治療におけるMTXへのolokizumab追加の有効性と安全性の評価を目的とする24週間の二重盲検無作為化プラセボ対照・実薬対照第III相試験であり、2016年5月~2019年11月の期間に、米国、欧州、英国、アジア(韓国、台湾)、中南米の209施設で参加者の登録が行われた(ロシアR-Pharmの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、活動性のRAで、ACR-EULAR分類基準(2010年改訂版)を満たし、12週間以上にわたりMTX(15~25mg/週、この用量で許容されない有害事象がみられる場合は≧10mg/週[韓国は≧7.5mg/週])の効果が不十分で、66関節中腫脹関節が6ヵ所以上、68関節中圧痛関節が6ヵ所以上、C反応性蛋白>6mg/Lの患者であった。 被験者は、24週にわたり、olokizumab(64mg)を2週ごと、同4週ごと、アダリムマブ(40mg)を2週ごと、プラセボを2週ごとに投与する群に、2対2対2対1の割合で無作為に割り付けられた。全例でMTXの投与が継続された。 主要エンドポイントは、12週の時点におけるACR20(圧痛・腫脹関節数が20%以上減少、他の5つの項目のうち少なくとも3項目で20%以上の改善)の達成とされた。ACR20の達成について、olokizumab群のプラセボ群に対する優越性の評価とともに、olokizumab群のアダリムマブ群に対する非劣性の評価が行われた(非劣性マージンは、群間差の97.5%信頼区間[CI]下限値が-12ポイントとされた)。3割以上で感染症が発現 1,648例(intention-to-treat集団)が登録され、olokizumab 2週ごと投与群に464例、同4週ごと投与群に479例、アダリムマブ群に462例、プラセボ群に243例が割り付けられた。これら4つの群の平均年齢の幅は53.3~54.7歳で、女性の割合の幅は75.9~78.9%であった。1,479例(89.7%)が24週の投与を完遂した。 プラセボ群における12週時のACR20の達成割合は44.4%であった。これに対し、olokizumabの2週群のACR20達成割合は70.3%(プラセボ群との差:25.9ポイント、97.5%CI:17.1~34.1)、同4週群は71.4%(27.0ポイント、18.3~35.2)、アダリムマブ群は66.9%(22.5ポイント、95%CI:14.8~29.8)であり、2つの用量のolokizumab群はいずれも、プラセボ群に比べ有意に優れた(いずれもp<0.001)。 また、12週時のACR20の達成割合に関して、2つの用量のolokizumab群はいずれも、アダリムマブ群との差の97.5%CI下限値が-12ポイントを上回っておらず(olokizumabの2週群:3.4ポイント[97.5%CI:-3.5~10.2]、同4週群:4.5ポイント[-2.2~11.2])、2つのolokizumab群のアダリムマブ群に対する非劣性が示された。 一方、試験薬の1回目の投与以降に、初めて発現または重症度が悪化した有害事象が少なくとも1件認められた患者の割合は全体で68.0%であった(olokizumab 2週群 70.0%、同4週群70.9%、アダリムマブ群65.4%、プラセボ群 63.4%)。最も頻度の高い有害事象は、感染症(鼻咽頭炎、上気道感染症、尿路感染症など)だった(30.2%、34.0%、32.0%、34.6%)。また、試験薬の投与中止の原因となった有害事象は、それぞれ4.5%、6.3%、5.6%、3.7%で、重篤な有害事象は、4.8%、4.2%、5.6%、4.9%で認められた。 olokizumabに対する抗体は、2週群が3.8%、4週群は5.1%で検出された。 著者は、「RA患者におけるolokizumabの有効性と安全性を明らかにするには、より大規模で長期の試験が求められる」としている。

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第115回 感染症法改正、病床確保拒否する病院に罰則を/内閣府

<先週の動き>1.感染症法改正、病床確保拒否する病院に罰則を/内閣府2.オミクロン株対応の新ワクチン、今月中に接種開始へ/厚労省3.病院のかかりつけ医機能は中小病院が中心に/日本病院会4.日本ようやく「結核低まん延国」に/厚労省5.世界初の高血圧の治療アプリが保険適用に/厚労省6.介護保険の給付が10兆円越え、高齢化で過去最高に/厚労省1.感染症法改正、病床確保拒否する病院に罰則を/内閣府岸田内閣は、9月2日に新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた、次の感染症危機に備えるための具体策をまとめた。この中で、感染症法の改正を行い、感染症発生・まん延時に備えて、都道府県に対してあらかじめ、各医療機関と具体的な役割・対応について協定を締結しておくことを求める。さらに、公立・公的医療機関などや特定機能病院・地域医療支援病院に対しては、感染症発生時に担うべき医療の提供を義務付け、応じない場合は罰則を盛り込む方針を明らかにした。また、次の感染症危機に対して、政府の司令塔機能の強化するため、司令塔機能を担う組織として「内閣感染症危機管理統括庁(仮称)」を設置を盛り込んだ法案をこの秋の臨時国会に改正案を提出し、次年度の設立を目指す。(参考)第97回 新型コロナウイルス感染症対策本部(首相官邸)政府が新たな感染症対策 医療機関に罰則、23年度中に司令塔組織(毎日新聞)政府、病床確保拒否に罰則 5年度に司令塔組織創設(産経新聞)大病院の病床確保へ法改正 実効性に課題(日経新聞)2.オミクロン株対応の新ワクチン、今月中に接種開始へ/厚労省厚生労働省は9月2日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の議論で、オミクロン株対応ワクチン接種については、接種時期や接種対象者についての方針を取りまとめた。政府はすでにオミクロン株対応ワクチンの輸入を一部前倒しして開始しており、薬事承認を経て、9月中旬開催予定の分科会において、オミクロン株対応ワクチンの接種を特例臨時接種として諮問し、オミクロン株対応ワクチン接種を開始するとしている。各自治体に対しては、接種の準備を行い、開始時期は令和4年10月半ばを目途としているが、準備ができ次第開始する。また、現在、高齢者、重症化リスクの高い人や医療従事者など4回目接種の対象者に対して行なっている従来のワクチン接種について、2価のオミクロン株対応ワクチン(BA.1対応型)へ切り替えも早期に行うこととした。(参考)第36回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(厚労省)オミクロン株に対応した新型コロナワクチンの接種体制確保について(その3)(事務連絡)新ワクチン、今月半ばにも オミクロン対応、高齢者などから(東京新聞)オミクロン株対応ワクチン、今月半ばに配送開始…高齢者ら優先で接種(読売新聞)改良ワクチン3,000万回分 オミクロン型対応 19日ごろから配送(日経新聞)3.病院のかかりつけ医機能は中小病院が中心に/日本病院会日本病院会の相澤孝夫会長は、8月29日の記者会見で「かかりつけ医機能」について、「医師個人の機能ではなく、医療機関としての機能であるとして、かかりつけ医機能を推進する病院として『地域を支えていく中小規模病院』の機能を充実・強化が必要である」と見解を述べた。具体的な機能としたのは、地域の医療機関などとの連携や在宅医療支援、介護などとの連携について示した。日本病院会では、病院のかかりつけ医機能の在り方にさらに議論を進め、厚生労働省の「第8次医療計画等に関する検討会」に見解を示す見込み。(参考)病院のかかりつけ医機能、「中小規模病院」を中心に 日病が方向性(MEDIFAX)「かかりつけ医機能」、急病対応や総合診療などが最重要要素で、中小病院で充実していくべき-日病・相澤会長(Gem Med)4.日本ようやく「結核低まん延国」に/厚労省厚生労働省は、8月30日に2021年の結核登録者情報調査年報集計結果を公表した。これによると、わが国の2021年の結核罹患率(人口10万対)について、前年と比較して0.9減少し、人口10万人あたりの活動性結核患者の発生数が10人未満の結核の低まん延国となったことが明らかとなった。わが国は過去に結核が蔓延した影響があり、結核患者の高齢化はますます進行し、新登録結核患者のうち70歳以上が占める割合は63.5%と高く、引き続き対策が求められる。(参考)2021年 結核登録者情報調査年報集計結果について(厚労省)2021(令和3)年結核年報速報(疫学情報センター)日本、結核「低まん延国」に…人口10万人あたりの患者数が初めて10人を下回る(読売新聞)国内結核患者 過去最少「結核低まん延国」に コロナ対策影響か(NHK)5.世界初の高血圧の治療アプリが保険適用に/厚労省CureApp社は、禁煙補助に続いて、世界初の高血圧治療補助アプリ「CureAppHT」を9月1日に「成人の本態性高血圧症の治療補助」で保険適用されたことを受け、即日発売した。高血圧患者の行動変容を促し、生活習慣の改善による降圧効果を図るとする医療機器として認められた。6ヵ月を限度に毎月830点(初月のみ計970点)を算定するためには200床未満の医療機関では、地域包括診療料、地域包括診療加算、高血圧症を主病とする生活習慣病管理料のいずれかの算定実績が要件とされている。一方、200床以上の医療機関では、日本高血圧学会の定める「高血圧認定研修施設」であり、かつ22年度診療報酬改定で新設された「紹介受診重点医療機関」であることが要件とされた。(参考)CureAppが高血圧の治療用アプリを承認申請、薬なしで12週後の降圧効果を確認(日経クロステック)CureApp 高血圧治療補助アプリが保険適用、即日発売 生活習慣修正をトータルサポート(ミクスオンライン)中医協総会 CureAppの高血圧治療補助アプリは「新規技術料」で評価 使用実態のフォローアップを(同)6.介護保険の給付が10兆円越え、高齢化で過去最高に/厚労省厚生労働省は、令和2年度の介護保険事業状況報告の年報を8月31日に公表した。これによると、令和2年度の保険給付関係の累計の総数は、件数1億6,303万件、費用総額10兆7,247億円と過去最高となったことが明らかになった。給付費の内訳は、居宅介護(介護予防)サービス4兆7,872億円、地域密着型介護(介護予防)サービス1兆6,459億円、施設介護サービス3兆1,629億円となっており、要介護・要支援認定者数は、令和2年度末現在で682万人と前年度より13万人増加している。介護保険の給付費は過去20年間で3倍以上の増加となっており、今後はさらに団塊の世代が75歳以上となることで、介護費の増加は加速するとみられる。(参考)令和2年度 介護保険事業状況報告(厚労省)介護給付、初めて10兆円超え 20年度、高齢化で過去最高(共同通信)介護給付費、初の10兆円超え 20年度 20年間で3倍超、厚労省(CB news)要介護・要支援認定は過去最多の682万人 厚労省が20年度の年報公表、前年度比13万人増(同)

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インフルエンザと新型コロナ:動脈血栓の視点ではどっちが怖い?(解説:後藤信哉氏)

 新型コロナウイルス感染症の特徴として、深部静脈血栓症・肺塞栓症などの静脈血栓症リスクの増加が注目された。静脈血栓症リスクは、新型コロナウイルス以外の感染症でもICU入院例では高かった。インフルエンザなど他のウイルス感染と比較して、新型コロナウイルスにはACE-2受容体を介して血管内皮細胞に感染するとの特徴があった。血管内皮細胞は血管内の血栓予防にて死活的に重要な役割を演じている。新型コロナウイルス感染により血管内皮細胞の機能が障害されれば、微小循環の過程にて血小板、白血球が活性化し全身循環する血液の血栓性は亢進する。静脈血栓症以外に、心筋梗塞・脳梗塞などの動脈血栓リスクも新型コロナウイルス感染後に増加すると想定された。また、新型コロナウイルス感染症例の心筋梗塞、脳梗塞リスクの増加を示唆する論文も多数出版されている。 本研究は米国の健康保険のデータベースの後ろ向き解析である。新型コロナウイルス感染症にて入院した症例の静脈血栓、動脈血栓リスクは高いが、われわれに十分な経験のあるインフルエンザの入院例との比較において動脈、静脈血栓リスクを評価したのが本研究の新規性である。また、新型コロナウイルスのワクチン接種のインパクトの評価も志向している。もっとも、本研究は重症の入院例に限局しているので、ワクチンの血栓イベントに及ぼす効果は評価できないことを理解する必要がある。 ワクチン普及後でも、新型コロナウイルス感染症による入院後90日以内の動脈血栓イベント発症率は16.3%(95%CI:16.0%~16.6%)と高い。新型コロナは恐ろしい。しかし、インフルエンザでも入院例では90日以内に14.4%(95%CI:13.6%~15.2%)が動脈血栓を発症している。新型コロナは恐ろしいが、インフルエンザも怖い。動脈血栓イベントリスクは年齢に依存している。高齢者であれば、新型コロナであろうとインフルエンザであろうと入院後の動脈血栓イベントには注意が必要である。本研究では血管内皮細胞への感染を特徴とする新型コロナウイルスの血栓性亢進は静脈血栓のみにて確認された。米国の保険医療データベースのラフな解析の結果である。英国などの精緻なデータが待たれる。 時に、現在まで日本は全数把握を行政が主導してきた。全数把握しながら、日本のデータベースから新型コロナウイルスに関する科学的情報の発表は乏しい。労力をかけて情報を収集するのであれば、科学的情報を発信できる情報にしなければならない。厚労省に論文出版課などができれば科学的情報解析に目が向くだろうか?

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サル痘患者に遭遇する前に…押さえておきたい鑑別方法とワクチン接種の注意点

 国内でも症例がじわじわと増えているサル痘。皮膚病変だけではなく、扁桃炎や口腔病変が報告され、ペットからの感染リスクも出てきているというから、医療者はいつ自分が感染者対応に追われるかわからない。そんな時のためにもサル痘やそのワクチンの知識を蓄えておく必要がありそうだ。8月2日にはKMバイオロジク社の天然痘(痘そう)ワクチンLC16「KMB」にサル痘の効能追加が承認され、順次、感染リスクの高い医療者への接種が見込まれる。しかしこのワクチン、添付文書の用法・用量を見てみると“二叉針を用いた多刺法により皮膚に接種”となかなか特徴的である。 そこで今回、氏家 無限氏(国立国際医療研究センター/国際感染症センター トラベルクリニック医長・予防接種支援センター長)に協力いただき、同氏の所属施設が医療者向けに提供する動画「天然痘ワクチンガイド」とその補足情報についてお届けする。◆参考◆ 添付文書だけではわからない!?サル痘ワクチンの打ち方――― ―接種対象者は誰ですか? 厚生労働省の資料にも挙げられていますが、とくに泌尿器科、救急部門、皮膚科、眼科、性感染症を扱うクリニックの方が対象になるでしょう。また、患者検体を扱う臨床検査技師や保健所の方も該当すると考えます。―過去に接種経験があっても接種するべきでしょうか? 痘そうワクチンは1976年に定期接種が廃止されているので、1975年以前に生まれている方は接種経験があります。しかし、今回サル痘に効能追加が承認されたLC16ワクチンは当時打っていたワクチンとは異なります。また、海外ではハイリスク者には定期的な接種が推奨されています。加えて、今回の流行における感染者には接種歴のある方も一定数いるので、適応があれば、接種を受けることが望ましいだろうと思います。―接種方法と注意すべきポイントはなんですか。 サル痘の効能追加に伴い、LC16ワクチンの添付文書の用法・用量や妊婦、産婦、授乳婦等への接種の項などが改訂されたのでここは注意が必要です。痘そう予防の時の接種方法は「初種痘で5回、その他の種痘で10回」の記載でしたが、現在は「通常、専用の二叉針を用いて15回を目安」となっています[添付文書の6.接種時の注意(4)を参照]。また、妊娠している方に接種を行わないことが明記されました。―接種後は免疫獲得の指標となる「善感反応」を確認するそうですが、これについて教えてください。 善感反応とは、種の跡がはっきりと付いて免疫が獲得されたことを示す状態(接種部位の膿疱、硬結、痂疲などの局所反応が確認できた状態)1)のことで、接種10~14日後にその反応を確認します。見た目は米国・CDC(疾病予防管理センター)のホームページに具体例が提示してあるので参考にしてください。この反応の出方も個体差が大きく、ひとつの模範例を示すのはなかなか難しいです。また、接種部位には弱毒化されたワクチンのウイルスが存在しているので、触らないようにしてください。データは乏しいですが、完全に皮膚が良くなるまでは注意が必要だと思います。―副反応はどんなものが挙げられますか。男女差はありますか? 主な副反応として、過去の臨床研究2)では接種側の腋窩リンパ節腫脹が10~20%、37.5℃以上の発熱が1~3%程度報告されています。また、一般に安全性評価の臨床研究において女性のほうが副反応を報告しやすい傾向がありますが、重篤な副反応での明らかな性差は報告されていません。―――疑わないと診断できず、診断できないと感染対策につながらない このほか、氏家氏はサル痘が4類感染症に位置付けられていることや世界情勢を踏まえ、各医療者に向けて以下について強調した。 「サル痘は4類感染症のため感染症指定医療機関のみが診療するものではなく、さまざまな症状(皮膚病変、口腔病変、眼病変など)を有することから種々の鑑別疾患が挙げられ、誰もが診る可能性のある疾患だ。現在は海外での男性同士の性的接触が感染拡大の主な原因だが、感染がさらに広がると海外渡航歴がないなど典型的ではない患者が診断されることも想定される。そのため、感染症の非専門医であっても、今回の流行で報告されている症状や感染経路(性交渉などに伴う接触感染など)、世界の感染者数増加を踏まえ、鑑別疾患に挙がる疾患(水痘、梅毒など)3)4)が典型的な経過ではない場合では、ほかの疫学情報(性別、年齢、性交渉歴など)と併せて、サル痘を疑う目を持つことが重要である。“疑わないと診断できず診断できないと感染対策につながらない”という問題を起さないためにも、社会的に感染状況を評価するためにも、常に情報を更新しながら適切な診療にあたってほしい」サル痘は4類感染症、ただちに届出を サル痘を診断あるいは検体した場合には感染症法に従い、ただちに最寄りの保健所へ届出を行う必要がある。厚生労働省は「サル痘への対応」通知において、疑い例及び接触者に関する暫定症例定義を以下のように示している。1)「疑い例」の定義:原則、下記の[1]~[2]全てを満たす者とするが、臨床的にサル痘を疑うに足るとして主治医が判断をした場合については、この限りではない。[1]少なくとも次の1つ以上の症状を呈している。・説明困難*1な急性発疹(皮疹又は粘膜疹)*1:水痘、風疹、梅毒、伝染性軟属腫、アレルギー反応、その他の急性発疹及び皮膚病変を呈する疾患によるものとして説明が困難であることをいう。ただし、これらの疾患が検査により否定されていることは必須ではない。・発熱(38.5℃以上) ・頭痛 ・背中の痛み ・重度の脱力感 ・リンパ節腫脹・筋肉痛 ・倦怠感 ・咽頭痛 ・肛門直腸痛 ・その他の皮膚粘膜病変[2]次のいずれかに該当する。・発症21日以内にサル痘常在国やサル痘症例が報告されている国に滞在歴があった。・発症21日以内にサル痘常在国やサル痘症例が報告されている国に滞在歴がある者と接触があった。・発症21日以内にサル痘の患者又は[1]及び[2]を満たす者との接触があった。・発症21日以内に複数または不特定の者と性的接触があった。・臨床的にサル痘を疑うに足るとして主治医が判断をした。感染状況を患者に聞かれたら… 9月1日現在、WHO5)がまとめた報告によると、世界で5万496例が確定、301例が可能性ありと報告され、死亡は16例にのぼる。男性同性愛者を除いた感染経路を見ても半数以上が性的接触によるもので、医療従事者の感染もほとんどが地域社会で院内感染は少ないと記されている。 これらの報告を踏まえ、患者に感染力や感染経路について聞かれた場合の説明について「麻疹などの感染症のように必要以上に日常生活での感染を恐れる必要はない。法律上でも行動範囲の規制があるわけではなく、性交渉による接触感染を筆頭に考えられ得る感染経路(性感染症、飛沫感染、エアロゾル感染など)は多々あるものの、新型コロナウイルスでも実施している、密接を避ける、手洗いをする、換気を行うといった基本的な感染対策をしていれば、感染リスクは低い」と述べた。参考1)国際医療研究センター病院:天然痘(痘そう)ワクチンについて2)Saito Tomoya, et al. JAMA. 2009;301:1025-1033.3)国立国際医療研究センター 国際感染症センター:感染症対策支援サービス4)国立感染症研究所:令和4年度緊急企画サル痘研修会(令和4年7月29日開催)5)WHO:Emergency situation reports厚生労働省:サル痘厚生労働省事務連絡:サル痘に関する情報提供及び協力依頼について

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再発性多発性硬化症の再発率をublituximabが低減/NEJM

 再発性多発性硬化症の治療において、抗CD20モノクローナル抗体ublituximabはピリミジン合成阻害薬teriflunomideと比較して、96週の期間における年間再発率を低下させ、MRI上の脳病変を減少させる一方で、障害の悪化リスクを抑制せず、インフュージョンリアクションを増加させることが、米国・スタンフォード大学のLawrence Steinman氏らが実施した「ULTIMATE I/II試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年8月25日号で報告された。10ヵ国の無作為化実薬対照第III相試験 ULTIMATE I/II試験は、再発性多発性硬化症患者におけるublituximabの有効性と安全性を、teriflunomideとの比較において評価することを目的とする、同一デザインの2つの二重盲検ダブルダミー無作為化実薬対照第III相試験であり、2017年9月~2018年10月の期間に、10ヵ国の104の施設で参加者の登録が行われた(米国・TG Therapeuticsの助成による)。 対象は、年齢18~55歳、再発性多発性硬化症(McDonald診断基準[2010年改訂版]を満たす)と診断され、過去2年間に少なくとも2回の再発がみられるか、スクリーニングの前年に1回の再発またはMRI検査で少なくとも1つのガドリニウム増強病変(あるいはこれら双方)が認められ、脳MRIで多発性硬化症に一致する異常所見が確認された患者であった。 被験者は、ublituximabの静脈内投与(1日目に150mg、それ以降は15日、24週、48週、72週目に450mg)とプラセボの経口投与を受ける群、またはteriflunomideの経口投与(14mg、1日1回、95週目の最終日まで)とプラセボの静脈内投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは多発性硬化症の年率換算の再発率とされ、1人年当たりの確定再発数と定義された。階層的に順序付けされた6項目の副次エンドポイントが設定された。約半数でインフュージョンリアクションが発現 ULTIMATE I試験に549例(ublituximab群274例、teriflunomide群275例)、ULTIMATE II試験に545例(272例、273例)が登録された。modified intention-to-treat集団における4つの群の平均年齢の幅は34.5~37.0歳で、女性の割合の幅は61.3~65.4%であった。追跡期間中央値は95週だった。 年間再発率は、ULTIMATE I試験ではublituximab群が0.08、teriflunomide群は0.19(率比:0.41、95%信頼区間[CI]:0.27~0.62、p<0.001)、ULTIMATE II試験ではそれぞれ0.09および0.18(0.51、0.33~0.78、p=0.002)であり、両試験ともublituximab群で有意に低かった。 ガドリニウム増強病変数の平均値は、ULTIMATE I試験ではublituximab群が0.02、teriflunomide群は0.49(率比:0.03、95%CI:0.02~0.06、p<0.001)、ULTIMATE II試験ではそれぞれ0.01および0.25(0.04、0.02~0.06、p<0.001)であり、いずれの試験でもublituximab群で有意に少なかった。 2つの試験の統合解析では、12週の時点での障害の悪化の割合は、ublituximab群が5.2%、teriflunomide群は5.9%(ハザード比[HR]:0.84、95%CI:0.50~1.41、p=0.51)、24週時はそれぞれ3.3%および4.8%(0.66、0.36~1.21)であり、いずれも両群間に有意な差は認められなかった。 有害事象の統合解析では、ublituximab群の89.2%、teriflunomide群の91.4%で少なくとも1件の有害事象が発現し、Grade3以上の有害事象はそれぞれ21.3%および14.1%で認められた。 最も頻度の高い有害事象は、ublituximab群がインフュージョンリアクション(47.7%)で、次いで頭痛(34.3%)、鼻咽頭炎(18.3%)、発熱(13.9%)、悪心(10.6%)の順であり、teriflunomide群は頭痛(26.6%)、鼻咽頭炎(17.9%)、脱毛(15.3%)、インフュージョンリアクション(12.2%)、下痢(10.6%)の順であった。重篤な有害事象はそれぞれ10.8%および7.3%で、重篤な感染症は5.0%および2.9%で発現し、いずれもublituximab群で多かった。 著者は、「2つの試験とも、teriflunomideの先行研究に比べ障害の悪化の割合が低かったが、これは両試験の2つの群とも年率に換算した再発率が低かったため、再発に伴う障害の悪化の割合が低くなったことが原因の可能性がある」と指摘し、「既存の抗CD20モノクローナル抗体などの疾患修飾薬による治療との比較を含め、再発性多発性硬化症におけるublituximabの有効性と安全性を明らかにするために、より大規模で長期の試験が求められる」としている。

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第124回 全数把握見直し、流れ弾に当たるのは肥満の自覚がない自宅療養者

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まって以来、保健所や医療機関の負担増になっていたと言われる全数把握の見直しが31日にスタートした。今回の措置は厚生労働省がわざわざ「緊急避難措置」と銘打っているが、申し出を行った都道府県では新型コロナ発生届を簡略化できる。具体的には、全数把握から患者発生届義務の対象者を▽65歳以上▽入院を要する▽重症化リスクがあり、新型コロナ治療薬の投与が必要▽重症化リスクがあり、罹患により新たに酸素投与が必要▽妊婦、の範囲に限定する。9月2日からのスタート第1陣に名乗りを上げたのは宮城、茨城、鳥取、佐賀の4県。各地で不満がたまっていただろうと思われたわりには、手を挙げた自治体は思いのほか少なかった。さて今回の緊急避難措置に関する厚生労働省の事務連絡通知を眺めてみると、やはり急ごしらえである感は否めない。たとえば新制度に切り替えた都道府県では、前述のように発生届対象は限定されるが、対象外を含めた毎日の患者総数と年代別の内訳はなるべく把握するよう求められている。この点について事務連絡通知では以下のような記述がある。「医療機関が紙又はExcelで作成し、FAX又はメールで提出を求めることが想定される。ただし、報告様式や提出方法についてはこれに限るものではなく、都道府県において工夫し、より効率的な方法で行っていただくことは差し支えない。この際、都道府県が医療機関から直接報告を受ける等、効率的な運用を工夫いただきたい」もちろん、従来の全患者を把握するために厚生労働省が開発した「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(My HER-SYS)」への入力に比べれば、対象を限定し、それ以外は総数と年代別内訳を報告すれば良いという新制度で医療機関の負荷は改善されるだろう。しかし、HER-SYSと総数報告の2ルートでの報告が必要になるわけで、それ相当に現場は混乱するだろう。しかもこれを「都道府県が医療機関から直接報告を受ける等」となると、都道府県側は紙ベース、電子ベース、あるいはその混合の膨大なデータを集計することになり、事務方で汗水を流す作業が発生することになる。それを避けるためには都道府県が独自の電子集計システムを構築し、それを各医療機関に公開して入力してもらうという手が考えられる。しかし、そのためには予算確保と実際のシステム構築、運用テストが必要であり、一朝一夕に対応できるものではない。実際にシステムが運用できる段階になったとしても医療機関への周知徹底はこれまた大変な作業である。現在、都道府県単位でみると最も医療機関数が少ない鳥取県ですら984施設もある。もちろん各地域の医師会などを通じればやや効率的だが、それでも医療機関数が1万施設を超える首都圏や近畿圏の各自治体となると、かなり労力を割かねばならなくなる。この辺が今のところ手を挙げたのが4県にとどまる1つの理由かもしれない。そしてこの新たな発生届の対象でもやや面倒が生じる可能性がある。その代表例が報告対象となる「重症化リスクがあり、新型コロナ治療薬の投与が必要」という基準だ。通知では「新型コロナ治療薬」の範囲も厚生労働省作成の「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」に記載された治療薬がすべて網羅されており、文言上は至極まっとうだ。しかし、昨年のデルタ株による第5波で自宅療養者が増えた際にかなり問題となったのが、「隠れ重症化リスク」とでもいうべき肥満者の存在である。保健所のフォローアップ中に若年で重症化リスクはないと思われていたものの、実際に容体が急変して医師が駆け付けると肥満者で、血液検査を実施すると血糖値も高く、医療機関を受診したこともなかったので本人も気づいていなかったというケースだ。血糖値が高ければ、当然ながら緊急避難的なステロイド薬も使いにくい。一応、これまでの新型コロナワクチン接種の初回優先接種対象者や4回目接種対象者で「BMI 30以上」と規定はあるものの、そもそも一般人の多くは日常的に自分のBMIを計算しているわけではない。そのため自分が該当者と自覚していない人がそれなりに存在すると考えられる。というか、薄々気づいていても認めたくない人も少なくないだろう。医療従事者も「あなたは肥満ですか?」とは尋ねにくいケースも少なからず想定される。いずれにせよ、この部分は新制度では抜け落ちる危険性がある。そして都道府県による手挙げにした結果として、隣接する自治体で対応が変わってしまうケースも起こりえる。とくに首都圏のように居住地、勤務地が自治体をまたぐことが普通の地域では、そのことに伴う混乱も想定しなければならない。さらにすでに多くの自治体が懸念を示しているのが無症状・軽症者の自宅療養者の取り扱いだ。新制度を使えば、こうした人はMy HER-SYSへの登録が不要となるため、療養証明を入手できなくなる。すでに新型コロナに関わる民間医療保険では、新制度の報告対象者以外は保険金支払いの対象外にする見込みだと報じられているが、その場合、非対象者が支払った保険料の扱いはどうなるのか? さらに、勤務先などに療養証明提出などは求めないように国は再三呼び掛けているものの、それも十分ではない。ここに挙げた懸念はほんの一部に過ぎない。私個人は以前から新興感染症では逐次最適化、今風に言えば「アジャイル」な対応が必要だと主張しているが、第7波真っ盛りの中で、これほど多くの問題を置き去りにして進む今回の新制度に関しては「アジャイル」ではなく完全な「泥縄」だと言わざるを得ない。

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サル痘+コロナ+HIVのトリプル感染が初報告、臨床経過は?

 サル痘、新型コロナ、HIV感染症に同時に感染した症例がイタリアで報告された。患者の男性は、発熱や咽頭痛などが生じて新型コロナ陽性の診断を受け、皮膚病変が発現・悪化したため入院し、サル痘とHIVの陽性が判明した。イタリア・カターニア大学のSanti Nolasco氏らによる、The Journal of infection誌オンライン版2022年8月19日号掲載の報告。 本患者は、イタリア人の男性(35歳)で、スペインに2022年6月16日~20日の5日間滞在していた。その間、避妊具なしで男性と性交渉を行ったという。主な臨床経過は以下のとおり。2022年6月29日・発熱(39.0℃)、咽頭痛、倦怠感、頭痛、右鼠径リンパ節肥大が発現。2022年7月2日・新型コロナ陽性の診断。・午後には左腕に発疹が生じ始める。2022年7月3日・痛みを伴う小さな発疹が体幹、下肢、顔、臀部に生じる。2022年7月5日・発疹は広がり、凹状の局面に進行したため、男性は大学病院の救急科を受診し、感染症病棟に入院した。・発熱(37.5℃)、咽喉痛、倦怠感、頭痛は続いていた。<入院時の聴取事項>・2019年に梅毒の治療を行っていた。・2021年9月の検査ではHIVは陰性であった。・双極性障害のため、日常的にカルバマゼピン200mg/日を服用していた。・2021年12月に2回目のSARS-CoV-2ワクチン(ファイザー製)を接種していたが、2022年1月には新型コロナ陽性となっていた。<入院時の検査結果>・右手掌や肛門部を含む男性の体には、さまざまな進行段階の水疱、膿疱、凹状の局面などの皮膚病変が見られた。・両側の扁桃肥大以外の口腔粘膜は正常であった。・軽度の肝脾腫、右鼠径部の可動性かつ痛みを伴うリンパ節肥大があった。・C反応性蛋白の上昇(69mg/L[正常:0.0~5.0mg/L])、フィブリノゲン上昇(713mg/dL[正常:170~400mg/dL])、プロトロンビン時間の延長(1.21[正常:0.8~1.2])。・胸部X線では右肺野の透過性の低下が見られた。2022年7月6日(入院2日目)・皮膚病変やスペインの滞在歴により、サル痘の疑いが強くなったため皮膚病変の浸出液および鼻咽頭分泌物のスワブを採取して検査したところ、サル痘と新型コロナの陽性を確認した。・血清学的検査では、単純ヘルペス、淋病、クラミジア、リンパ肉芽腫は陰性であったが、HIVは陽性であった(ウイルス量23万4,000コピー/mL)。2022年7月7日(入院3日目)・ほぼすべての皮膚病変は痂皮に変化し始めていた。・新型コロナ治療のため、ソトロビマブ500mgが静脈内投与された。2022年7月9日(入院5日目)・ほぼすべての体調不良は回復し、臨床検査値も正常化した。2022年7月11日(入院7日目)・新しい皮膚病変はなかったが、口腔咽頭スワブでサル痘と新型コロナは陽性であった。・症状が改善したため、患者は退院し、自宅隔離となった。2022年7月19日・検査のため受診、口腔咽頭スワブでサル痘は陽性のままであった。・痂皮はほぼ完治し、小さな跡が残るのみであった。・HIV治療のため、ドルテグラビル、アバカビル、ラミブジンの3剤併用療法を開始した。 著者らは、「口腔咽頭スワブでサル痘ウイルスは20日後も陽性であった。患者は症状消失後も数日間は感染リスクがある可能性がある」と述べるとともに、「広く利用できる治療法や予防方法がないため、リスクが高い患者に対しては迅速に診断・検査を行う必要がある」とまとめている。

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モデルナとファイザーのBA.4/5対応追加接種用2価ワクチンを承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は8月31日付のプレスリリースで、モデルナとファイザーの新型コロナワクチンの緊急使用許可(EUA)を改訂し、野生株とオミクロン株BA.4/BA.5に対応した2価ワクチンで、既存の1価ワクチンの初回シリーズまたは追加接種から少なくとも2ヵ月後に、追加接種としての使用を承認したことを発表した。このたび緊急使用許可された2価ワクチンは「アップデートブースター(updated boosters)」とも呼ばれる。モデルナの2価ワクチンは18歳以上への単回追加接種、ファイザーの2価ワクチンは12歳以上への単回追加接種が承認されている。また、今回の承認に伴い、既存の1価ワクチンは、12歳以上への追加接種として使用できなくなる。 今回のFDAによる承認は、現在流通している1価ワクチンの安全性および有効性のデータ、オミクロン株BA.1に対応した2価ワクチンの臨床試験から得られた安全性および免疫原性データ、BA.4/BA.5に対応した2価ワクチンの非臨床データに基づいているという。BA.4/BA.5対応2価ワクチンは、既存の1価ワクチンおよびBA.1対応2価ワクチンと同じ製造プロセスのため、安全性のデータは相関するとしている。 モデルナのBA.1対応2価ワクチン追加接種における有効性の評価では、同社の1価ワクチン初回シリーズと追加接種1回を受けた18歳以上の約600例を対象とし、1価ワクチンもしくはBA.1対応2価ワクチンを2回目の追加接種として、1回目の追加接種から少なくとも3ヵ月後に投与した。2回目追加接種後28日時点で、2価ワクチンを接種した被験者では、BA.1に対する免疫反応が、1価ワクチン接種者よりも良好だったとしている。 モデルナのBA.1対応2価ワクチン追加接種における安全性の評価では、同社の1価ワクチン初回シリーズと追加接種1回を受けた18歳以上の約800例を対象とし、1価ワクチンもしくはBA.1対応2価ワクチンを2回目の追加接種として、1回目の追加接種から少なくとも3ヵ月後に投与した。2価ワクチンを接種した被験者において、最も多く報告された副反応として、注射部位の痛み、発赤、腫脹、疲労、頭痛、筋肉痛、関節痛、悪寒、注射した腕のリンパ節腫脹、悪心/嘔吐、発熱などがあった。 ファイザーのBA.1対応2価ワクチン追加接種における有効性と安全性の評価では、同社の1価ワクチン初回シリーズと追加接種1回を受けた55歳以上の約600例を対象とし、1価ワクチンもしくはBA.1対応2価ワクチンを2回目の追加接種として、1回目の追加接種から4.7~13.1ヵ月後に投与した。2回目追加接種後1ヵ月時点で、2価ワクチンを接種した被験者では、BA.1に対する免疫反応が、1価ワクチン接種者よりも良好だったとしている。また、2価ワクチンを接種した被験者において、最も多く報告された副反応として、注射部位の痛み、発赤、腫脹、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、発熱などがあった。 今回の2価ワクチン承認に伴い、モデルナおよびファイザーの既存の1価ワクチンは、モデルナの場合は18歳以上、ファイザーの場合は12歳以上に対する追加接種としての使用ができなくなる。既存の1価ワクチンは、引き続き、生後6ヵ月以上に対する初回シリーズの接種に使用することが許可されている。また、ファイザーの1価ワクチンは、5~11歳に対して、初回シリーズ接種の少なくとも5ヵ月後に追加接種として使用することができるとしている。

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医療者のコロナ感染リスク、着用マスクや累積曝露時間による

 COVID-19患者との接触機会の多い医療従事者の感染予防に、サージカルマスクよりレスピレーターマスク(FFP2、N95やDS2に相当)が有用であることが示唆されているが、科学的エビデンスは少ない。今回、スイス・Cantonal Hospital St. GallenのTamara Dorr氏らの医療従事者を対象としたコホート研究で、レスピレーターマスク使用がサージカルマスク使用より感染リスクが40%以上低くなること、COVID-19患者への累積曝露時間と感染リスクに用量反応関係があることが示唆された。JAMA Network Open誌2022年8月15日号に掲載。 本コホート研究の対象は、スイス北部および東部の7つの医療ネットワークに所属する医療従事者で、2020年9月から週1回12ヵ月間、症状に基づいた鼻咽頭スワブの検査結果、曝露、リスク行動について報告した。2021年9月に過去1年間にエアロゾル産生手技以外でCOVID-19患者との接触時に使用したマスクの種類(サージカルマスクのみ/レスピレーターマスクのみ/両方)を申告した。COVID-19患者への累積曝露時間は、自己申告による患者との接触回数と平均接触時間を掛けた。ベースライン時、2021年1月、同9月に抗ヌクレオカプシド抗体のスクリーニング検査を実施した。主要評価項目は、追跡調査中の新型コロナウイルス感染(自己申告による鼻咽頭スワブ陽性または抗ヌクレオカプシド抗体陽転、もしくはその両方)とし、累積曝露時間の倍加当たりの陽性率増加のオッズ比(OR)をレスピレーターマスクのみ使用した医療従事者とサージカルマスクのみまたは両方を使用した医療従事者に分けて算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象の医療従事者2,919人(年齢中央値:43歳、範囲:18~73歳)のうち、749人(26%)が新型コロナウイルスに感染していた。・新型コロナウイルス陽性率は、患者との接触がない医療従事者で13%だった。接触がある医療従事者では、レスピレーターマスクのみ使用した人が21%、サージカルマスクのみ/両方使用した人が35%で(OR:0.49、95%CI:0.39~0.61)、両群とも累積曝露時間が増えるに従って陽性率が増加した。・多変量解析では、家庭内接触あり(OR:7.79、95%CI:5.98~10.15)、COVID-19患者への曝露(累積曝露時間のカテゴリーごとのOR:1.20、95%CI:1.14~1.26)、レスピレーターマスクの使用(OR:0.56、95%CI:0.43~0.74)、ワクチン接種(OR:0.55、95%CI:0.41~0.74)が関連していた。 本研究では、医療従事者の新型コロナウイルス陽性率はCOVID-19患者の累積曝露時間と関連していた。また、今回の結果から、COVID-19患者に接触する医療従事者の業務関連リスクが、レスピレーターマスクの使用とワクチン接種により大幅に減少する可能性が示唆された。

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ニルマトレルビル治療、65歳以上のコロナ重症化を予防/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で重症化リスクが高くニルマトレルビル治療の適応があると評価された患者において、ニルマトレルビル治療により65歳以上ではCOVID-19による入院および死亡が有意に減少したが、40~64歳では有益性は認められなかった。イスラエル・Clalit Research InstituteのRonen Arbel氏らが、同国半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析し、報告した。ニルマトレルビル治療は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のデルタ変異株(B.1.617.2)に感染した高リスクでワクチン未接種の患者において有効性が示されているが、オミクロン変異株(B.1.1.529)によるCOVID-19の重症化予防に関するデータは限られていた。NEJM誌オンライン版2022年8月24日号掲載の報告。40歳以上の高リスクCOVID-19患者を対象に、ニルマトレルビル治療の有効性を検証 研究グループは、イスラエル国民の約52%、高齢者の約3分の2が加入している同国最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータを用い、同国でニルマトレルビル治療が開始された2022年1月9日から3月31日のデータを解析した。研究期間中、イスラエルではオミクロン株が優勢であった。 解析対象は、SARS-CoV-2感染が確認されCOVID-19と診断された40歳以上の外来患者で、重症化リスクが高くニルマトレルビル治療の適応があると評価された患者である。 主要評価項目はCOVID-19による入院、副次評価項目はCOVID-19による死亡で、時間依存共変量を用いるCox比例ハザード回帰モデルにより社会人口統計学的要因、併存疾患およびSARS-CoV-2免疫状態を補正し、ニルマトレルビル治療との関連を推定した。65歳以上では、非投与と比較しCOVID-19入院/死亡が有意に低減 計10万9,254例が適格基準を満たし、このうち3,902例(4%)が研究期間中に1回以上ニルマトレルビル治療を受けた。65歳以上は10万9,254例中4万2,821例(39%)で、このうちニルマトレルビル治療例は2,484例(6%)であった。 65歳以上において、COVID-19による入院は、ニルマトレルビル治療群で11例(10万人日当たり14.7)、未治療群で766例(10万人日当たり58.9)に認められ、補正後ハザード比(HR)は0.27(95%信頼区間[CI]:0.15~0.49)であった。また、COVID-19による死亡は、ニルマトレルビル治療群で2例、未治療群で158例に認められ、補正後HRは0.21(95%CI:0.05~0.82)であった。 一方、40~64歳の患者では、COVID-19による入院は、ニルマトレルビル治療群で7例(10万人日当たり15.2)、未治療群で327例(10万人日当たり15.8)に認められ、補正後HRは0.74(95%CI:0.35~1.58)であった。また、COVID-19による死亡は、ニルマトレルビル治療群で1例、未治療群で16例に認められ、補正後HRは1.32(95%CI:0.16~10.75)であった。

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新型コロナ発症抑制と治療に「エバシェルド」が特例承認/AZ

 アストラゼネカは8月30日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生抑制および治療の両方を適応として、同社の長時間作用型モノクローナル抗体の併用療法である「チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)」(販売名:エバシェルド筋注セット、以下エバシェルド)が、厚生労働省より製造販売の特例承認を取得したことを発表した。 新型コロナの発生抑制を適応としたエバシェルドの投与対象となるのは、成人および12歳以上かつ40kg以上の小児で、新型コロナワクチンの接種が推奨されない人、または、血液悪性腫瘍患者など、免疫機能の低下等によりワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある人となる。また、新型コロナ患者との濃厚接触者でない人のみ投与を受けられる。用法および用量は、筋肉内注射により、チキサゲビマブ150mgとシルガビマブ150mgの計300mgを投与する。なお、新型コロナの変異株の流行状況等に応じて、チキサゲビマブ300mgとシルガビマブ300mgの計600mgを投与することもできるとしている。 治療薬としてのエバシェルドの投与対象となるのは、成人および12歳以上かつ40kg以上の小児で、新型コロナ重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者となっている。用法および用量は、筋肉内注射により、チキサゲビマブ300mgとシルガビマブ300mgの計600mgを投与する。 効能または効果に関連する注意として、本剤の中和活性が低い変異株に対しては有効性が期待できない可能性があるため、最新の流行株の情報を踏まえ、本剤投与の適切性を検討することとしている。処方にあたり詳細については、添付文書を参照されたい。 今回の承認は、症候性COVID-19の曝露前予防の有効性を評価した、第III相PROVENT予防試験、外来患者を対象とした第III相TACKLE治療試験、および日本で実施された第I相臨床試験などのデータに基づいている。これらの臨床試験において、良好な忍容性が確認されている。 PROVENT試験では、エバシェルド300mg単回筋肉内投与により、プラセボ群と比較して症候性COVID-19の発症リスクを77%(95%信頼区間[CI]:46~90、p<0.001)減少した。中央値約6ヵ月の追跡期間での追加解析では、エバシェルドはプラセボ群と比較して発症リスクを83%(95%CI:66~91)減少し、1回の投与後6ヵ月間はウイルスからの保護が持続することが示された。 TACKLE試験では、病状発現から7日以内のCOVID-19外来患者において、エバシェルド600mg単回筋肉内投与により、29日目までのCOVID-19の重症化または全死亡(原因を問わない)の相対リスクが、プラセボ群と比較して50%(95%CI:15~71、p=0.010)有意に低減した。症状発現から3日以内にエバシェルドによる治療を受けた被験者の分析では、プラセボ群と比較してCOVID-19の重症化または全死亡のリスクが88%(95%CI:9~98)低減した。症状発現から5日以内にエバシェルドの投与を受けた被験者では、重症化または全死亡のリスクが67%(95%CI:31~84)低減したという。 なお本剤については、COVID-19の曝露前予防を適応として、米国(緊急使用許可)やEUなどで現在使用が許可されている。

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