サイト内検索|page:247

検索結果 合計:5541件 表示位置:4921 - 4940

4922.

これでC型肝炎を安全に完全に治せる?(コメンテーター:溝上 雅史 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(206)より-

今まで、C型慢性肝炎や肝硬変における根本的治療法としてはインターフェロン(IFN)ベースの治療しかなかったが、その持続的なウイルス消失(sustained virological response:SVR )は約50%で、さらに各種の高率な副作用で十分な治療を施すことができないという問題点があった。そこでHCVを直接叩く薬剤(directly acting antivirals (DAAs))が開発されたが、新規副作用や耐性株の出現があるにも関わらずそのSVRはそれほど改善されなかった。 2013年Gene EJ氏らは、C型肝炎40例に対してソホスブビル(SOF) (核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害薬)とRibavirinを一日1回12週飲ませるだけで、副作用がほとんどなくかつSVR 90%以上と報告した。その後、レディパスビル(LDV)(NS5A阻害薬NS5A領域に対するDAA)も追加することで、副作用がなくかつ95%以上の症例でSVRが得られた。この非常に良好な成績を受け、今までIFNベースの治療で無効だった人やすでに肝硬変に進展している人たちの治療をどうするかという問題点が大きくクロースアップされた。 本論文では、この米国における非盲検無作為化第III相試験で、IFNベース治療で無効の440例、内20%の肝硬変を含む、を対象として現在残された問題点に果敢に挑んでいる。 方法は、LDV-SOF(LDV 90mg/SOF 400mg配合薬、1日1回1錠、12週)、LDV-SOF+RBV(12週)、LDV-SOF(24週)、LDV-SOF+RBV(24週)の4つの治療群に無作為に分け、主要評価項目は治療終了後12週時のSVR率である。 結果は、12週時のSVR率は、LDV-SOF 12群が94%、LDV-SOF+RBV 12群は96%、LDV-SOF 24群は99%、LDV-SOF+RBV 24群も99%で、過去の対照例との間に有意な差を認めた(いずれもp<0.001)。さらに12週時にSVRを達成した427例全例が、24週時にもSVRを維持していた。 治療終了後にウイルス学的再燃と判定された患者は440例中11例(2%)で、LDV-SOF 12群が7例(6%)、LDV-SOF+RBV 12群が4例(4%)であった。このうち10例は治療終了後4週までに再燃し、12週以降に再燃した例はなかった。 多変量解析で検出されたベースライン時の予後予測因子は肝硬変の有無のみで、全体のSVR率は非肝硬変例が98%、肝硬変例は92%だった。 各群の有害事象はほとんどが軽度~中等度で、疲労感(21~45%)、頭痛(23~32%)、悪心(6~23%)であった。治療中止例はなかったとしている。 以上の結果を受け、本邦でも同様の治験がすでに開始され、本年2014年夏ごろには最終結果が報告される予定である。今後、この結果からC型肝炎治療は大きく前進し、C型肝炎撲滅の第一歩となると考えられる。

4925.

偽膜性大腸炎を診断できずに死亡に至ったケース

消化器最終判決判例時報 1654号102-111頁概要高血圧性小脳出血を発症した65歳男性、糖尿病、腎障害、および軽度の肝障害がみられていた。発症4日目に局所麻酔下にCT定位脳内血腫吸引術を施行し、抗菌薬としてセフォタキシムナトリウム(商品名:クラフォラン)、ピペラシリンナトリウム(同:ペントシリン)を開始した。術後2日目から下痢が始まり、術後4日目から次第に頻度が増加し、38℃台の発熱と白血球増多、CRP上昇など、炎症所見が顕著となった。術後6日目にはDICが疑われる状態で、腎不全、呼吸・循環不全となり、術後12日目に死亡した。解剖の結果、空腸から直腸にかけて著しい偽膜性大腸炎の所見が得られた。詳細な経過患者情報65歳男性経過1991年3月2日11:00頃法事の最中に眩暈と嘔吐を来して歩行不能となり、近医を経てA総合病院脳神経外科に搬送され、頭部CTスキャンで右小脳出血(血腫の大きさは3.8×2.5×2.0cm)と診断された。意識清明であったが言語障害があり、脳圧降下薬の投与、高血圧の管理を中心とした保存的治療が行われた。3月6日若干の意識障害、右上肢の運動失調がみられたため、局所麻酔下にCT定位脳内血腫吸引術が行われた。術後感染防止のため、第3世代セフェム(クラフォラン®)、広域ペニシリン(ペントシリン®)の静注投与が行われた。3月8日焦げ茶色の下痢と発熱。腰椎穿刺では髄膜炎が否定された。3月9日白血球15,000、CRP 0.5。3月10日下痢が5回あり、ロペラミド(同:ロペミン)投与(以後も継続された)。3月11日下痢が3回、白血球42,300、CRP 3.9。敗血症を疑い、γグロブリン追加。胸部X線写真異常なし、血液培養陰性。3月12日下痢が3回、チェーンストークス様呼吸出現。3月13日下痢が2回、血圧低下、腎機能低下、人工呼吸器装着、播種性血管内凝固症候群を疑い、メシル酸ガベキサート(同:エフオーワイ)開始。抗菌薬をアンピシリン(同:ビクシリン)、第3世代セフェム・セフタジジム(同:モダシン)、ミノサイクリン(同:ミノマイシン)に変更。以後徐々に尿量が減少して腎不全が進行し、感染や血圧低下などの全身状態悪化から人工透析もできないままであった。3月18日死亡。死体解剖の結果、空腸から直腸にかけて、著しい偽膜性大腸炎の所見が得られ、また、エンドトキシン血症の関与を示唆する肝臓小葉中心性新鮮壊死、著しい急性肝炎、下部尿管ネフローシス(ショック腎)が認められたため、偽膜性大腸炎により腸管の防御機能が障害され、細菌が血中に侵入し、その産生するエンドトキシンによる敗血症が惹起されエンドトキシンショックとなって急性循環不全が引き起こされた結果の死亡と判断された。当事者の主張患者側(原告)の主張小脳出血は保存的に様子をみても血腫の自然吸収が期待できる症状であり、手術の適応がなかったのに手術を実施した。1.死因クラフォラン®およびペントシリン®を中心として、このほかにビクシリン®、モダシン®、ミノマイシン®などの抗菌薬を投与されたことによって偽膜性大腸炎を発症し、その症状が増悪して死亡したものである2.偽膜性大腸炎について3月10~13日頃までには抗菌薬に起因する偽膜性大腸炎を疑い、確定診断ができなくても原因と疑われる抗菌薬を中止し、偽膜性大腸炎に効果があるバンコマイシン®を投与すべきであったのに怠った。さらに偽膜性大腸炎には禁忌とされているロペミン®(腸管蠕動抑制剤)を投与し続けた病院側(被告)の主張高血圧性小脳出血の手術適応は、一般的には血腫の最大経が3cm以上とされており、最大経が3.8cmの小脳出血で、保存的加療を行ううちに軽い意識障害および脳幹症状が発現し、脳ヘルニアへの急速な移行が懸念されたため、手術適応はあったというべきである。1.死因初診時から高血圧性腎症、糖尿病性腎症、感染によるショックなどの基礎疾患を有し、これにより腎不全が進行して死亡した。偽膜性大腸炎の起炎菌Clostridium difficileの産生する毒素はエンテロトキシンおよびサイトトキシンであるから、本件でみられたエンドトキシン血症は、偽膜性大腸炎に起因するとは考えがたい。むしろエンドトキシンを産生するグラム陰性桿菌が腸管壁を通過し、糖尿病、肝障害などの基礎疾患により免疫機能が低下していたため、敗血症を発症し、多臓器不全に至ったものと考えられる2.偽膜性大腸炎について偽膜性大腸炎による症状は、腹痛、頻回の下痢(1日30回にも及ぶ下痢がみられることがある)、発熱、腸管麻痺による腹部膨満などであり、検査所見では白血球増加、電解質異常(とくに低カリウム血症)、低蛋白血症などを来す。本件の下痢は腐敗性下痢である可能性や、解熱薬の坐薬の影響が考えられた。本件の下痢は回数的にみて頻回とまではいえない。また、腹痛や腹部膨満はなく、血清カリウム値はむしろ上昇しており、白血球やCRPから炎症所見が著明であったので肺炎や敗血症は疑われたものの、偽膜性大腸炎を疑うことは困難であった裁判所の判断1. 死因本件ではClostridium difficileの存否を確認するための検査は行われていないが、抗菌薬以外に偽膜性大腸炎を発生させ得る具体的原因は窺われず、また、偽膜性大腸炎はClostridium difficileを起炎菌とする場合がきわめて多いため、本件で発症した偽膜性大腸炎は抗菌薬が原因と推認するのが合理的である。そして、Clostridium difficileにより発生した偽膜性大腸炎により腸管の防御機能が障害され、腸管から血中にグラム陰性菌が侵入し、その産生するエンドトキシンにより敗血症が惹起され、ショック状態となって急性循環不全により死亡したものと推認することができる。2. 偽膜性大腸炎について一般的に医師にはさまざまな疾病の発生の可能性を考慮して治療に従事すべき医療専門家としての高度の注意義務があるのであって、本件の下痢の状況や白血球数などの炎症反応所見の推移は、かなり強く偽膜性大腸炎の発生を疑わせるものであると評価するのが相当である。病院側の主張する事実は、いずれも偽膜性大腸炎が発生していたことを疑いにくくする事情ではあるが、ロペミン®により下痢の回数がおさえられていた可能性を考慮して下痢の症状を観察するべきであった。そのため、3月11日から翌12日午前中までには偽膜性大腸炎が発生していることを疑うことが可能であり、その時点でバンコマイシン®の投与を開始し、かつロペミン®の投与を中止すれば、偽膜性大腸炎を軽快させることが可能であり、エンドトキシンショック状態に陥ることを未然に回避できた蓋然性が高い。2. 手術適応について高血圧性小脳出血を手術するべきであったかどうかの判断は示されなかった。原告側合計3,700万円の請求に対し、2,354万円の判決考察このケースは、脳外科手術後にみられた「下痢」に対し、かなり難しい判断を要求していると思います。判決文を読んでみると、頻回の下痢症状がみられたならばただちに(少なくとも下痢とひどい炎症所見がみられた翌日には)偽膜性大腸炎を疑い、確定診断のために大腸内視鏡検査などができないのならば、それまでの抗菌薬や止痢薬は中止してバンコマイシン®を投与せよ、という極端な結論となっています。もちろん、一般論として偽膜性大腸炎をまったく鑑別診断に挙げることができなかった点は問題なしとはいえませんが、日常臨床で抗菌薬を使用した場合、「下痢」というのはしばしばみられる合併症の一つであり、その場合程度がひどいと(たとえ偽膜性大腸炎を起こしていなくても)頻回の水様便になることはしばしば経験されます。そして、術後2日目にはじめて下痢が出現し、術後4日目から下痢が頻回になったという状況からみて、最初のうちは単純な抗菌薬の副作用による下痢と考え、止痢薬を投与するのはごく一般的かつ常識的な措置であったと思います。その上、術後に発熱をみた場合には腸以外の感染症、とくに脳外科の手術後であったので髄膜炎や肺炎、尿路感染症などをまず疑うのが普通でしょう。そのため、担当医師は術後2日目には腰椎穿刺による髄液検査を行っていますし(結果は髄膜炎なし)、胸部X線写真や血液検査も頻回に調べていますので、一般的な注意義務は果たしているのではないかと思います。ところが判決では、「頻回の下痢が始まった翌日の3月11日から3月12日午前中までには偽膜性大腸炎が発生していることを疑うことが可能であった」と断定しています。はたして、脳外科の手術後4日目に、頻回に下痢がみられたから即座に偽膜性大腸炎を疑い、発熱が続いていてもそれまでの抗菌薬をすべて中止して、バンコマイシン®だけを投与することができるのでしょうか。この時期はやはり脳外科術後の髄膜炎がもっとも心配されるので、そう簡単には抗菌薬を止めるわけにはいかないと考えるのがむしろ脳外科的常識ではないかと思います。実際のところ、脳外科手術後に偽膜性大腸炎がみられるのは比較的まれであり、それよりも髄膜炎とか肺炎の発症率の方が、はるかに高いのではないかと思います。にもかかわらず、まれな病態である偽膜性大腸炎を最初から重視するのは、少々危険な考え方ではないかという気までします。あくまでも推測ですが、脳外科の専門医であれば偽膜性大腸炎よりも髄膜炎、肺炎の方をまず心配するでしょうし、一方で消化器内科の専門医であればどちらかというと偽膜性大腸炎の可能性をすぐに考えるのではないかと思います。以上のように、本件は偽膜性大腸炎のことをまったく念頭に置かなかったために医療過誤とされてしまいましたが、今後はこの判例の考え方が裁判上のスタンダードとなる可能性が高いため、頻回の下痢と発熱、著しい炎症所見をみたならば、必ず偽膜性大腸炎のことを念頭に置いて検査を進め、便培養(嫌気性培養も含む)を行うことそして、事情が許すならば大腸内視鏡検査を行って確定診断をつけておくこと通常の抗菌薬を中止するのがためらわれたり、バンコマイシン®を投与したくないのであれば、その理由をきちんとカルテに記載することというような予防策を講じないと、医師側のミスと判断されてしまうことになると思います。なお本件でもう一つ気になることは、本件では手術直後から予防的な抗菌薬として、2種類もの抗菌薬が使用されている点です。クラフォラン®、ペントシリン®はともに髄液移行の良い抗菌薬ですので、その選択には問題ありません。しかし、手術時には明らかな感染症は確認されていないようなので、なぜ予防的な抗菌薬を1剤ではなくあえて2剤にしたのでしょうか。これについてはいろいろとご意見があろうかと思いますが、ことに本件のようなケースを知ると、抗菌薬の使用は必要最小限にするべきではないかと思います。消化器

4926.

新規経口薬、移植後サイトメガロウイルス感染の予防効果を確認/NEJM

 同種造血細胞移植後レシピエントの疾患・死亡リスクの原因となっているサイトメガロウイルス(CMV)感染に対して、新規開発中のレテルモビル(AIC246)が有意に同感染発生を抑制したことが第II相試験の結果、示された。米国・MDアンダーソンがんセンターのRoy F. Chemaly氏らによる報告で、最高用量240mg/日で最大抗CMV活性が認められ、安全性プロファイルは忍容可能なものであったという。CMV感染に対する有効な治療法は確立しているが、臨床的に重大な毒性作用や薬剤耐性があることから、新たな治療オプションの開発が求められていた。NEJM誌2014年5月8日号掲載の報告。レテルモビル60、120、240mg/日の12週投与の有効性と安全性を検討 レテルモビルは、新たな作用機序を有する経口抗CMV薬である。第II相試験では、レテルモビル60、120、240mg/日の12週投与の有効性と安全性について、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験にて評価が行われた。 被験者は2010年3月~2011年10月に19施設(ドイツ9、米国10)から集められ、試験適格であった131例が各用量投与群およびプラセボ群に無作為に割り付けられ評価を受けた。 主要エンドポイントは、予防の失敗(原因を問わない)であった。その定義は試験薬投与の中止(CMV抗原またはDNAの検出、終末器官の疾患発生、その他の理由による)とし、被験者は毎週、CMV感染についてのサーベイランスを受けた。240mg/日群で最も抑制、安全性プロファイルはプラセボ群と類似 試験薬各用量群における全要因による予防失敗率は、投与量が増すにつれて低下が認められた。プラセボ群における予防失敗率は64%であったが、レテルモビル60mg/日群では48%(p=0.32)、120mg/日群では32%(対プラセボp=0.01)、240mg/日群では29%(同p=0.007)だった。 Kaplan-Meier分析の結果、予防失敗までの期間については240mg/日群でプラセボ群との比較による有意な差が認められた(p=0.002)。 安全性プロファイルは、いずれもプラセボ群と類似しており、血液毒性や腎毒性の徴候は認められなかった。

4927.

1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第8回

第8回:爪甲真菌症:疑えば繰り返し検査を、治療は適切な抗真菌薬と期間で 日本医真菌学会の調査によると、爪甲真菌症を含むすべての皮膚真菌症は皮膚科の新患患者の12.3%を占め、皮膚科医としても頻度の高い皮膚感染症であるとされます1)。 またプライマリ・ケア医が関わる診療現場でも、直面する頻度の高い皮膚疾患であります。他の疾患をフォロー中に見つける場面は少なからずあり、診断・治療については現場で悩みながら、もしくは経験的に治療する場面もあるかもしれません。 以下、本文 American Family Physician 2013年12月1日号2)より爪甲真菌症1.概要爪甲真菌症は手指爪や足指爪の真菌感染症で、変色・肥厚・爪床からの分離を来す。爪甲真菌症は人口の10%程度に生じるが高齢者に多くみられ、60歳以上では20%、70歳以上ともなると50%もの有病率に至る。高齢者の有病率が増える背景としては末梢血管疾患、免疫異常、糖尿病との関連がいわれている。糖尿病があると1.9〜2.8倍にリスクが増加するともいわれる。HIVを基礎疾患に持つ人では15〜40%の有病率といわれる。2.微生物学的原因さまざまな原因菌があるが、最も多いのはTrichophyton(白癬菌属)の中の皮膚糸状菌である。他の菌種は、Candidaで手指爪に多く、慢性の粘膜皮膚カンジダ症でみられる。3.分類形態学的な観点からいくつかの種類に分類される。 遠位側縁爪甲下爪真菌症(DLSO):下爪皮から爪甲・爪床へ向かい広がっていく。爪は肥厚し崩れ、萎縮する。色調は黄〜白色もしくは褐色〜黒色へ変化する。頻度は最多。 全層性爪真菌症:爪が乳白色変化し、でこぼこで、層状に分裂した状態。稀である。DLSOの亜系とも考えられる。 近位爪甲下爪真菌症(PSO):爪の近位部の下で沈殿が積み重なった状態。近位から遠位へ進行し白色変化する。免疫抑制状態を示唆する。 表在性皮膚真菌症(SO):爪表面に線状横断するような粉状の変化がみられる。 全異栄養性爪真菌症(TDO):長期の感染により爪構造が完全に破壊される。4.診断爪の変色・変形・肥大・角化、爪下沈殿あり:爪甲真菌症疑い  ↓70%イソプロピルアルコールで消毒し、切り落とした爪や爪下沈殿からの検体を採取  ↓KOHを使用し検鏡  ↓陽性:治療開始:起因微生物を同定するための検査も考慮  ↓培養確認、またPAS染色でも評価(陰性の際もこの過程を)(※PAS染色の感度:82%培養[ 53%、KOH法 46%])(※培養とPAS染色を合わせることで感度を96%まで上げられる)  ↓陽性:治療開始陰性:他の部位からの検体採取を検討5.治療と効果 臨床的治癒:爪の80〜100%が正常形態になっていること 真菌的治癒:培養、検鏡で病原体が検出されないこと フルコナゾール 100〜300mg/週 3〜6ヵ月(手指)、6〜12ヵ月(足指)カンジダ種に対して効果。副作用は嘔気・嘔吐・下痢・腹痛・頭痛・発疹。臨床的治癒率 41%、真菌的治癒率 48%。 イトラコナゾールパルス法 200mg 2回/日を1週間内服/月 2ヵ月(手指)3ヵ月(足指)持続法 200mg 1回/日 6週間(手指)12週間(足指)カンジダ種、皮膚糸状菌、アスペルギルス種などに効果。副作用は嘔気・嘔吐・低カリウム・トランスアミナーゼ上昇・中性脂肪上昇・発疹。臨床的治癒率 70%、真菌的治癒率 パルス法 63% / 持続法 69%。 テルビナフィン 250mg 1回/日を6週間(手指)12週間(足指)糸状菌、酵母菌(カンジダなど)の一部に効果。副作用は胃腸障害・発疹・頭痛。臨床的治癒率 66%、真菌的治癒率 76%。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 日本皮膚科学会雑誌.皮膚真菌症診断・治療ガイドライン 2) Westerberg DP, et al. Am Fam Physician. 2013 Dec 1;88:762-770.

4928.

HCV遺伝型2、3型感染患者へもソホスブビル+リバビリン/NEJM

 C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝型2型または3型感染患者への治療として、ソホスブビル+リバビリン治療が、高い持続性ウイルス学的著効(SVR)を達成したことが示された。治療期間は、2型感染患者が12週間、3型感染患者は24週間だったという。ドイツのヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学医療センターのStefan Zeuzem氏らがヨーロッパ77施設から419例を登録して行った多施設共同の第III相無作為化試験の結果、報告した。NEJM誌オンライン版2014年5月4日号掲載の報告より。2型感染患者には12週間、3型感染患者には24週間で検討 HCV遺伝型6タイプのうち、2型または3型の感染患者は世界中で約30%を占めているという。現状では両者への標準治療は、ペグインターフェロン+リバビリンの24週間治療とされているが、研究グループはこれら患者に対するインターフェロンを用いないソホスブビル+リバビリン治療の有効性について検討を行った。 同治療に関するこれまでの臨床試験では、12週間治療で2型感染患者については高率のSVRが観察されたが、3型感染患者では低率だったことが報告されていた。そこで研究グループは、インターフェロンベース治療の有無を問わずに集めた両患者を対象とした試験を計画した。具体的には2型感染患者91例と3型感染患者328例を4対1の割合で、ソホスブビル+リバビリンまたはプラセボの12週間治療に割り付けて有効性を評価するプラセボ対照無作為化試験であった。 しかし試験開始後、他の第III相試験で、3型感染患者への16週間治療の有効性が報告された(対12週、非盲検試験)。そこで急遽プロトコルを変更し、3型感染患者への治療期間を24週間に延長し、プラセボ治療は中止とした。試験目的は再定義し記述的なものとすることとし仮説(2型感染患者への12週間治療の有効性を確認し、3型感染患者への24週間治療を評価すること)の検定は含まないこととした。 主要エンドポイントは、治療後の12週時点のSVRだった。SVR達成率はそれぞれ93%と85% 試験に登録され治療を受けた419例のうち、21%が肝硬変を有しており、58%にインターフェロンベースの治療歴があった。 結果、SVRの達成率は、12週間治療の2型感染患者では68/73例、93%(95%信頼区間[CI]:85~98%)で、24週間治療の3型感染患者では213/250例、85%(同:80~89%)だった。 3型感染患者について、肝硬変なしの患者では91%、ありの患者では68%だった。 最も頻度が高かった有害事象は、頭痛、疲労感、かゆみだった。

4929.

未治療HCVへのABT-450+リトナビル+ダサブビル、第III相試験/NEJM

 未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝型1型感染患者への治療として、リバビリンを用いないABT-450+リトナビル(ABT-450/r)+ダサブビルの12週治療が、高い持続性ウイルス学的著効(SVR)を達成したことが示された。オーストリア・ウィーン大学医学部のPeter Ferenci氏らが2件の第III相無作為化試験の結果、報告した。また、ウイルス学的失敗の割合は、リバビリンを用いるよりも用いなかったほうが、HCV遺伝型1a型感染患者では高かったが、1b型感染患者では示されなかったという。NEJM誌オンライン版2014年5月4日号掲載の報告より。遺伝子型1a型、1b型患者それぞれを対象に2つの第III相試験 先行研究により、リバビリンの有無にかかわらず、ABT-450/r+オムビタスビル+ダサブビルの非インターフェロン治療は、SVR達成など有効であることが第II相試験で示されている。 研究グループは、肝硬変のない未治療のHCV遺伝子1型感染患者を対象に、同レジメンの有効性と安全性を評価する2件の第III相試験「PEARL-III」「PEARL-IV」を行った。 PEARL-IIIは、遺伝子型1b型のHCV感染患者429例を対象とし、PEARL-IVでは同1a型患者305例を対象とし、それぞれABT-450/r+オムビタスビル(ABT-450 150mg、リトナビル100mg、オムビタスビル25mg)+ダサブビルと、リバビリンを投与または非投与(プラセボ)の群に無作為に割り付けて12週間の治療を行った。具体的には、1b型患者は、+リバビリン群210例、+プラセボ群209例、1a型患者はそれぞれ100例、205例に割り付けられた。 主要有効性エンドポイントは、治療終了後12週間のSVR(HCV RNA値25 IU/mL未満)の達成とした。SVR達成はいずれも高率、リバビリンを用いない1a型患者でSVRの失敗例が顕著 SVRの達成率は、いずれの遺伝子型患者群においても高率であった。1b型患者群では、+リバビリン群99.5%、+プラセボ群99.0%、1a型患者群では97.0%、90.2%であった。 また、1b型患者群では、治療後12週間のウイルス学的失敗は1例、2例についてはデータが入手できなかった。1a型患者では、リバビリンを用いないレジメンのほうが、ウイルス学的失敗が高率だった(7.8%vs. 2.0%)。 2試験ともに、ヘモグロビン値の減少が、リバビリンを受けている患者にいずれも顕著にみられた。2例の患者(0.3%)が有害事象のために試験薬を中断した。最も頻度が高かった有害事象は、疲労、頭痛、悪心であった。

4930.

小児結核、遺伝子診断で鑑別精度改善へ/NEJM

 英国・サセックス大学のSuzanne T. Anderson氏ら共同研究グループ(ILULU Consortium and KIDS TB Study Group)は、アフリカにおける小児結核の診断について、他疾患との鑑別に有用なデータが得られたことを報告した。小児結核については、微生物学的診断の困難さから真の世界的負荷はどれぐらいなのか明らかとなっていない。また過小診断により重篤になってからや死亡後に結核であったと確認されることも少なくなく、診断の改善が求められている。研究グループは、宿主血液の転写シグネチャーを用いることで、HIV感染の有無を問わずアフリカの小児における結核と他の疾患との鑑別が可能であるという仮説を立て検証試験を行った。NEJM誌2014年5月1日号掲載の報告より。診断シグネチャーを、宿主血液のRNA発現ゲノムワイド解析により特定 研究グループは、2008年2月~2011年1月にかけて、結核の疑いありとして評価を受けた南アフリカの小児655例、マラウイの小児701例、ケニアの小児1,599例について前向きコホート研究を行った。 被験児を診断結果に基づき、培養で確認された結核群、培養陰性の結核群、結核以外の疾患群、潜在性結核感染群に分類。結核とその他の疾患および潜在性結核感染とを鑑別した診断シグネチャーを、宿主血液のRNA発現ゲノムワイド解析により特定を行った。他疾患との鑑別感度82.9%、特異度83.6% 結果、南アフリカとマラウイの患児において、結核と他の疾患とを鑑別した51の転写シグネチャーを特定した(開発コホート)。 同データに基づくリスクスコアを、ケニアの患児(検証コホート)に当てはめて分析した結果、培養で確認された結核の診断に対して、感度は82.9%(95%信頼区間[CI]:68.6~94.3%)、特異度は83.6%(同:74.6~92.7%)を示した。 Mycobacterium tuberculosis培養陰性だったが結核治療を受けた患児(結核の可能性が非常に高い/可能性が高い/可能性がある患児)では、感度(実際の結核有病率との推定比較で算出)は、それぞれ62.5~82.3%、42.1~80.8%、35.3~79.6%だった。 対照的に、M. tuberculosisのDNA分子を検出するXpert MTB/RIF検査の感度は、培養で確認された結核群では54.3%(95%CI:37.1~68.6%)だった。また、培養陰性だったが結核治療を受けた患児のサブグループ群ではそれぞれ25.0~35.7%、5.3~13.3%、0%だった。同検査の特異度は100%だった。 これらの結果から著者は、「RNA発現シグネチャーから、アフリカの小児においてHIV感染の有無を問わず、結核と他の疾患との鑑別に有用なデータが得られた」と結論している。

4931.

ここから始めよう!みんなのワクチンプラクティス ~今こそ実践!医療者がやらなくて誰がやるのだ~

第1回 ワクチンプラクティスって何?第2回 学ぶべき4つのVとは?第3回 その打ち方は正しいのか? Vaccinological principle (1)第4回 ルールに沿って、しかし速やかに第5回 本当の重要性を知る B型肝炎、ヒブ/小児肺炎球菌 Vaccine formulation & VPD (1)第6回 子供だけに必要なわけじゃない 破傷風、百日咳 Vaccine formulation & VPD (2)第7回 軽んじてはいけない 麻疹・風疹、日本脳炎 Vaccine formulation & VPD (3)第8回 知られざる合併症 水痘、ムンプス Vaccine formulation & VPD (4)第9回 誤解されている HPV、成人肺炎球菌 Vaccine formulation & VPD (5)第10回 教科書には載っていない Vaccinee第11回 4Vで3Cを実践しよう(1) Common schedule & Catch-up schedule第12回 4Vで3Cを実践しよう(2) Communication on vaccine 肺炎球菌、ヒブワクチンが定期接種化されるなど、改善の兆しを見せる日本のワクチン事情ですが、先進国から比べればまだまだ不十分な状況に変わりはありません。正しいワクチン接種によって、多くの小児の命が救われ、麻痺や難聴などの高度障害を減らせるのです。にもかかわらず、接種率の低さ、任意接種扱いのままのワクチンが複数あること、Tdapなどのブースターワクチンの未整備など、問題は山積みです。こういった状況でありながら医学部ではワクチンを単独の教科として時間配分することは少なく、ワクチンに不安を感じる母親とのコミュニケーションが図れず、臨床現場で戸惑うこともあるのではないでしょうか?このコンテンツでは同時接種の可否、接種間隔、望ましい投与経路、副反応、疫学状況や救済制度はどうなっているか、などの問いに一つずつ触れています。現場で悩む医師の拠り所となるべく、正しいワクチンの知識を分かりやすく解説。患者さんの不安を払拭するためのコミュニケーションスキルアップの実演もあります。第1回 ワクチンプラクティスって何?今までワクチンのことを系統立てて学んだことはありますか?ワクチンプラクティスとは積極的にワクチンの正しい知識を学び、積極的に必要なワクチンの提案とコミュニケーション、そして接種を行うことです。このワクチンプラクティスには3つの要素(3C)があります。この3Cを知ることで母子手帳の空欄を埋めるだけという受け身から脱却し、正しいワクチンプラクティスを実践することが出来るのです。第2回 学ぶべき4つのVとは?ワクチンプラクティスを行うためには、どんな知識が必要なのでしょう?学習領域は膨大です。4つのVで整理して考えましょう。 すなわち、Vaccinological principle(ワクチン学の原則)、Vaccine formulation(個別のワクチン製剤)、VPD(ワクチンで予防可能な疾患ワクチンで予防可能な疾患)、そしてVaccinee(ワクチンの被接種者)です。これらを総合的に理解することで、正しいワクチンプラクティスを行うことが出来るのです。第3回 その打ち方は正しいのか? Vaccinological principle (1)ワクチンの投与経路、異なるワクチン同士の投与間隔、同時接種。これらについては日本だけのルールも存在し、正しく理解されてないことが多くあります。ワクチン学的に何が正しいのか理解し、臨床現場ではどう対応すべきか学びましょう。第4回 ルールに沿って、しかし速やかに接種禁忌や副反応、その対応法を知っておきましょう。また、接種注意や見合わせについては、海外のプラクティスとかけ離れた独自の「日本ルール」があります。これらを踏まえておくとどのようなプラクティスを実践すれば良いのかがわかります。第5回 本当の重要性を知る B型肝炎、ヒブ/小児肺炎球菌 Vaccine formulation & VPD (1) B型肝炎ワクチンは水平感染や性行為感染症を防ぐ有効策です。ヒブ/小児肺炎球菌ワクチンは、侵襲性の感染症を防ぐだけでなく、日常診療でも非常に重要な意味を持ちます。個別のワクチンの重要性を理解することでワクチンプラクティスの幅が広がります。第6回 子供だけに必要なわけじゃない 破傷風、百日咳 Vaccine formulation & VPD (2) 10年ごとのブースターが必要な破傷風。ある年齢以上の方は基礎免疫も有していません。また、新生児には致命的な百日咳から小さな命を守るために周りの人々がその免疫を持つ必要があります。成人でもDPTに工夫を施し、ブースター接種を行いましょう。第7回 軽んじてはいけない 麻疹・風疹、日本脳炎 Vaccine formulation & VPD (3)海外では麻疹・風疹の排除達成国が多数ありますが、日本ではワクチン接種率が低いなどの理由で未だに流行し、後遺症で苦しむ方がいます。また日本脳炎の発症は稀ですが、予後は極めて不良です。しかしいずれもワクチン接種を行えば予防可能なVPDなのです。第8回 知られざる合併症 水痘、ムンプス Vaccine formulation & VPD (4)水痘やムンプスは「罹って免疫をつける疾患」ではありません。水痘の感染力は強く、小児病棟の閉鎖が容易に起こります。ムンプスによる難聴は年間3000例発生し、予後も極めて不良です。ワクチンプラクティスで発症を予防し、その誤解を解きましょう。第9回 誤解されている HPV、成人肺炎球菌 Vaccine formulation & VPD (5) その名称から誤解を生むワクチンがあります。いわゆる子宮頸癌ワクチンは未だ子宮頸癌を減らしたというエビデンスがありませんし、成人肺炎球菌ワクチンも市中肺炎の発症を減らせるわけではありません。接種と同時に正しい知識を伝えることが重要です。第10回 教科書には載っていない Vaccinee ワクチンは年齢で一律に打てばいいわけではありません。VPDの感染リスクや、その考え方等を理解しましょう。これらは被接種者で異なり、教科書には載っていません。コミュニケーションを図って情報を集め、正しいワクチンプラクティスを実践しましょう。第11回 4Vで3Cを実践しよう(1) Common schedule & Catch-up schedule接種が必要なワクチンは多数存在します。接種スケジュールを立てる際は早見表を上手に活用しましょう。また、キャッチアップスケジュールを立てる場合際には被接種者ごとにVPDの感染リスクや、ワクチンに対する本人やその保護者の考え方にも耳を傾けることが必要です。4Vを学んでいれば、スケジュールの立案などは恐れるに足りません。第12回 4Vで3Cを実践しよう(2) Communication on vaccineテーマはコミュニケーション。ワクチン接種には必須となります。「詳しい知識がない」、「偏った考えを持っている」、「忌避しようとする方」に対しては非常にデリケートなコミュニケーションが要求されます。まずは正しい知識を伝え、疑問や不安に真摯に応えていきましょう。ワクチンを忌避する保護者の方たちには、「願っているのは子供の健康である」という共通の基盤をもとにコミュニケーションを取り続けることが重要です。

4932.

肝硬変なし未治療のC型肝炎に対するレディパスビル+ソホスブビル/NEJM

 肝硬変が認められない未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)感染患者に対するレディパスビル+ソホスブビル治療について、8週間投与が、同12週間投与やリバビリン併用投与と比べ、有効性において非劣性であることが示された。米国・バージニア・メイソン・メディカル・センターのKris V. Kowdley氏らが行った治験(第III相)の結果、明らかにした。NEJM誌オンライン版2014年4月11日号掲載の報告より。レディパスビル+ソホスブビルの8週投与を、12週投与、リバビリン併用と比較 Kowdley氏らは、肝硬変の合併症がなく、未治療のHCV遺伝子1型に感染した患者647例を対象に、オープンラベル無作為化比較試験を行った。被験者を無作為に3群に分け、1群にはレディパスビルとソホスブビルを、別の群にはレディパスビル+ソホスブビルとリバビリンをそれぞれ8週間、もう一群にはレディパスビル+ソホスブビルを12週間投与した。 主要エンドポイントは、治療終了12週後の持続的ウイルス消失(SVR)だった。主要エンドポイント達成率は8週群で94%、その他の群と同等 その結果、主要エンドポイントのSVR達成率は、レディパスビル+ソホスブビル8週群が94%(95%信頼区間:90~97%)、レディパスビル+ソホスブビル+リバビリン群が93%(同:89~96%)、レディパスビル+ソホスブビル12週群が95%(同:92~98%)と、いずれも同等だった。 レディパスビル+ソホスブビル8週群に比べ、レディパスビル+ソホスブビル12週群のSVR達成率は1%ポイント高く(97.5%信頼区間:-4~6%)、レディパスビル+ソホスブビル+リバビリン群は1%ポイント低いのみで(95%信頼区間:-6~4%)、いずれの群に対してもレディパスビル+ソホスブビル8週群の非劣性が示された。 レディパスビル+ソホスブビル8週群の被験者に、有害イベントによる治療中断はなかった。有害イベントは、レディパスビル+ソホスブビル+リバビリン群で最も多くみられた。

4933.

肺炎・気管支喘息で入院した乳児が低酸素血症となって死亡したケース

小児科最終判決判例時報 1761号107-114頁概要2日前からの高熱、呼吸困難を主訴として近医から紹介された2歳7ヵ月の男児。肺炎および気管支喘息の診断で午前中に小児科入院となった。入院時の医師はネブライザー、輸液、抗菌薬、気管支拡張薬、ステロイドなどの指示を出し、入院後は診察することなく定時に帰宅した。ところが、夜間も呼吸状態は改善せず、翌日早朝に呼吸停止状態で発見された。当直医らによってただちに救急蘇生が行われ、気管支内視鏡で気管分岐部に貯留した鼻くそ様の粘調痰をとりのぞいたが低酸素脳症に陥り、9ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報気管支喘息やアトピーなどアレルギー性疾患の既往のない2歳7ヵ月男児。4歳年上の姉には気管支喘息の既往歴があった経過1995年1月24日38℃の発熱。1月25日発熱は40℃となり、喘鳴も出現したため近医小児科受診して投薬を受ける。1月26日早朝から息苦しさを訴えたため救急車で近医へ搬送。四肢末梢と顔面にチアノーゼを認め、β刺激薬プロカテロール(商品名:メプチン)の吸入を受けたのち総合病院小児科に転送。10:10総合病院(小児科常勤医師4名)に入院時にはチアノーゼ消失、咽頭発赤、陥没気味の呼吸、わずかな喘鳴を認めた。胸部X線写真:右肺門部から右下肺野にかけて浸潤影血液検査:脱水症状、CRP 14.7、喉にブドウ球菌の付着以上の所見から、咽頭炎、肺炎、気管支喘息と診断し、輸液(150mL/hr)、解熱薬アセトアミノフェン(同:アンヒバ坐薬)、メフェナム(同:ポンタールシロップ)、抗菌薬フルモキセフ(同:フルマリン)、アミノフィリン静注、ネブライザーメプチン®、気道分泌促進薬ブロムヘキシン(同:ビソルボン)、内服テレブタリン(同:ブリカニール)、アンブロキソール(同:ムコソルバン)、クロルフェニラミンマレイン(同:ポララミン)を指示した(容態急変まで血液ガス、経皮酸素飽和度は1回も測定せず)。10:30体温39.5℃、陥没気味の呼吸(40回/分)、喘鳴あり。11:15喘鳴強く呼吸苦あり、ステロイドのヒドロコルチゾン(同:サクシゾン)100mg静注。14:00体温36.7℃、肩呼吸(50回/分)、喘鳴あり。16:30担当医師は看護師から「喉頭部から喘鳴が聞こえる」という上申を受けたが、患児を診察することなく17:00に帰宅。19:30喉頭部の喘鳴と肩呼吸(50回/分)、夕食を飲み込めず吐き出し、内服薬も服用できず、吸入も嫌がってできない。22:00体温38.3℃、アンヒバ®坐薬使用。1月17日02:20体温38.1℃、陥没気味の呼吸(52回/分)、喘鳴あり。サクシゾン®100mg静注。06:30体温37.1℃、陥没気味の呼吸、咳あり。07:20ネブライザー吸入を行おうとしたが嫌がり、機器を手ではねつけた直後に全身チアノーゼが出現。07:30患児を処置室に移動し、ただちに酸素吸入を行う。07:40呼吸停止。07:55小児科医師が到着し気管内挿管を試みたが、喉頭部がみえにくくなかなか挿管できず。マスクによる換気を行いつつ麻酔科医師を応援を要請。08:10ようやく気管内挿管完了(呼吸停止後30分)、この時喉頭部には異常を認めなかった。ただちにICUに移動して集中治療が行われたが、低酸素脳症による四肢麻痺、重度意識障害となる。10:00気管支鏡で観察したところ、気管および気管支には粘稠な痰があり、とくに気管分岐部には鼻くそ様の固まりがみられた。10月26日約9ヵ月後に低酸素脳症により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張肺炎、気管支喘息と診断して入院し各種治療が始まった後も、頻呼吸、肩呼吸、陥没呼吸、体動、喘鳴がみられ呼吸障害は増強していたのだから、気管支喘息治療のガイドラインに沿ってイソプレテレノールの持続吸入を追加したり気管内挿管の準備をするべきであったのに、入院時の担当医師は入院後一度も病室を訪れることなく、午後5:00過ぎに帰宅して適切な指示を出さなかった。夜間帯の当直医師、看護師も、適切な病状観察、病態把握、適切な治療を怠ったため、呼吸不全に陥った。病院側(被告)の主張小児科病棟は主治医制ではなく3名の小児科医による輪番制がとられ、入院時の担当医師は肺炎、気管支喘息の患者に対し適切な治療を行って、起坐呼吸やチアノーゼ、呼吸音の減弱や意識障害もないことを確認し、同日の病棟担当医であった医師へきちんと申し送りをして帰宅した。その後も呼吸不全を予測させるような徴候はなかったので、入院翌日の午前7:00過ぎに突発的に呼吸不全に陥ったのはやむを得ない病態であった。裁判所の判断入院時の担当医師は、肺炎、気管支喘息の診断を下してそれに沿った注射・投薬の指示を出しているので、ほかの小児科医師に比べて格段の差をもって病態の把握をしていたことになる。そのため、小児科病棟では主治医制をとらず輪番制であったことを考慮しても、患者の治療について第一に責任を負うものであり、少なくとも夜間の当直医とのあいだで綿密な打ち合わせを行い、午後5:00に帰宅後も治療に遺漏がないようにしておくべきであった。ところが、入院後一度も病室を訪れず、経皮酸素飽和度を測定することもなく、ガイドラインに沿った治療のグレードアップや呼吸停止に至る前の気管内挿管の機会を逸し、容態急変から死亡に至った。患者側1億545万円の請求に対し6,950万円の判決考察1. 呼吸停止の原因について裁判では呼吸停止の原因として、「肺炎や気管支喘息に起因する気道閉塞によって、肺におけるガス交換が不十分となり呼吸不全に陥った」と判断しています。そのため、小児気管支喘息のガイドラインを引用して、「イソプロテレノールの持続吸入をしなかったのはけしからん、気道確保を準備しなかったのは過失だ」という判断へとつながりました。ところが経過をよくみると、容態急変後の気管支鏡検査で「気管および気管支には粘稠な痰があり、とくに気管分岐部には鼻くそ様の固まりがみられた」ため、気管支喘息の重積発作というよりも、粘調痰による気道閉塞がもっとも疑われます。しかも、当直医が気管内挿管に手間取り、麻酔科医をコールして何とか気管内挿管できたのは呼吸停止から30分も経過してからでした。要するに、痰がつまった状態を放置して気道確保が遅れたことが致命的になったのではないかと思われます。裁判ではなぜかこの点を重視しておらず、定時の勤務が終了し午後5:00過ぎに帰宅していた入院時の担当医師が(帰宅後も)適切な指示を出さなかった点をことさら問題としました。2. 主治医制をとるべきか当時この病院では部長医師を含む小児科医4名が常駐し、夜間・休日の当直は部長以外の医師3名で輪番制をとっていたということです。昨今の情勢を考えると、小児医療を取り巻く状況は大変厳しいために、おそらく4名の小児科医でもてんてこ舞いの状況ではなかったかと推測されます。入院時の担当医師は、肺炎、気管支喘息と診断した乳児に対し、血管確保のうえで輸液、抗菌薬、アミノフィリン持続点滴を行い、ネブライザー、各種内服を指示するなど、中~大発作を想定した気管支喘息に対する処置は行っています。それでも呼吸状態が安定しなかったので、ステロイドのワンショット静注を2回くり返しました。通常であれば、その後は回復に向かうはずなのですが、今回の患児は内服薬を嫌がってこぼしたり、ネブライザーの吸入をさせようとしてもうまくできなかったりなど、医師が想定した治療計画の一部は実施されませんでした。そして、当直帯は輪番制をとっていることもあって、入院時にきちんとした指示さえ出しておけば、後は当番の病棟担当医がみてくれるはずだ、という認識であったと思われます。そのため、11:00過ぎの入院から17:00過ぎに帰宅するまで6時間もありながら(当然その間は外来業務を行っていたと思いますが)一度も病室に赴くことなく、看護師から簡単な報告を受けただけで帰宅し、自分の目で治療効果を確かめなかったことになります。もし、帰宅前に患者を診察し、呼吸音を聴診したり経皮酸素飽和度を測るなどの配慮をしていれば、「予想以上に粘調痰がたまっているので危ないぞ」という考えに至ったのかも知れません。ところが、本件では血液ガス検査は行われず、急性呼吸不全の徴候を早期に捉えることができませんでした。そして、裁判でも、「入院時の担当医師はほかの小児科医師に比べて格段の差をもって病態の把握をしていたため、小児科病棟では主治医制をとらず輪番制であったことを考慮しても、患者の治療について第一に責任を負うものであり、少なくとも夜間の当直医とのあいだで綿密な打ち合わせを行い、午後5:00に帰宅後も治療に遺漏がないようにしておくべきであった」という、耳が痛くなるような判決が下りました。ここで問題となるのが、主治医制をとるべきかどうかという点です。今回の総合病院のように、医師個人への負担が大きくならないようにグループで患者をみる施設もありますが、その弊害としてもっとも厄介なのが無責任体制に陥りやすいということです。本件でも、裁判では問題視されなかった輪番の小児科当直医師が容態急変前に患者をみるべきであったのに、申し送りが不十分なこともあってほとんど関心を示さず、いよいよ呼吸停止となってからあわてて駆けつけました。つまり、入院時の担当医師は「5:00以降はやっと業務から解放されるので早く帰宅しよう」と考えていたでしょうし、当直医師は「容態急変するかも知れないなんて一切聞いてない。入院時の医師は何を考えているんだ」と、まるで責任のなすりつけのような状況ではなかったかと思われます。そのことで損をするのは患者に他なりませんから、輪番制をとるにしても主治医を明確にしておくことが望まれます。ましてや、「輪番制であったことを考慮しても、(入院指示を出した医師が)患者の治療について第一に責任を負う」という厳しい判決がおりていますので、間接的ではありますが裁判所から「主治医制をとるべきである」という見解が示されたと同じではないかと思います。小児科

4934.

麻疹の流行、どう対応する

今年に入り患者数の増加が目立つ麻疹について、国立国際医療研究センター感染症内科/国際感染症センターの忽那賢志氏に、流行の現状と医療者の対応について聞いた。麻疹流行の現状本年第1~8週までの麻疹患者数は199例(2013年12月30日~2014年2月23日)と、すでに昨年1年間の麻疹患者数を超えている。昨年同期比では3.3倍と、季節性を考慮しても大きな増加である。この傾向は、昨年11月頃よりあらわれているという。麻疹は昨年からフィリピンで流行しているが、フィリピンから帰国感染者がわが国での流行の発端となっている。そこから拡大し、現在では海外渡航歴のない感染者も多い。参考:国立感染症研究所IDWRhttp://www.nih.go.jp/niid/ja/measles-m/measles-idwrc.html日本人における麻疹の問題日本人には麻疹の抗体がない方、あっても不十分な方は少なくないという。その原因のひとつは麻疹ワクチンの接種率である。麻疹ワクチンは、MMRワクチンの副作用の影響を受け、1990年代に接種率が減少している。また、ワクチン接種回数の問題もある。麻疹ワクチンは1976年に定期接種となったが、当初は1回接種であった。1回接種の場合、5%程度の方に抗体ができない、あるいは出来ても成人になって抗体が減衰することがある。2006年に麻疹ワクチンは2回接種となったものの接種率は高くなく、生涯ワクチン接種が1回で麻疹に罹患歴がないなど、麻疹ウイルスに対して免疫を持ってない成人が、わが国では7万人いるといわれる。麻疹はわが国における非常に重要な医療問題の一つだと忽那氏は訴える。麻疹の感染力は非常に強く、インフルエンザの約8倍、風疹の約2倍である(基本再生産数に基づく)。また、重症化することが多く、発展途上国では現在も年間50万人以上が死亡する。わが国でも、年間20~30人の麻疹関連死がある。さらに、肺炎、脳炎・脳症などの合併症を伴うこともあり予後も不良である。医療者の対応このような中、医療者はどう対応すべきであろうか。麻疹患者の受診に備え、忽那氏はいくつかの留意点を挙げた。医療者自身に麻疹の抗体があるか確認する麻疹(疑い)患者の診療は抗体のある医療者が行う当然のことではあるが、医療者自身が抗体価を測定し、基準値に達していなければワクチンを接種するべきである。ワクチン接種しても抗体価が上がらない方もいるが、これまでに1回しか接種していないのであれば、2回接種するべきであろう。疑い患者であっても陰圧個室で診察する麻疹は空気感染で伝播するため、周囲の患者さんや医療者に感染することも十分考えられる。疑い患者であっても隔離して陰圧個室で診療すべきである。東南アジア渡航歴があり発熱・上気道症状を呈している患者では麻疹を鑑別に加える麻疹は初期段階では診断が付けにくいケースもあるという。麻疹初期には発熱や上気道炎症状やといった症状(カタル症状)が出現するものの、皮疹が発現せず、数日後に皮疹が出てはじめて麻疹とわかることもある。このカタル症状の病期であっても感染力は強いため、皮疹が確認できなくとも、東南アジアなど麻疹が発生している国の渡航歴があり発熱がある場合は鑑別のひとつとして考えるべきである。また国内でも麻疹は増えており、渡航歴のない患者でも麻疹を疑う閾値を低くしておく必要がある。麻疹罹患歴があっても疑わしければ確認する幼少期の麻疹の診断は臨床症状のみに基いてで行っていることが多い。そのため、たとえ患者さんが麻疹の既往を訴えても、実際には麻疹ではなく風疹やその他の感染症であったということも考えられる。過去の罹患歴があるという場合も臨床的に麻疹が疑われる場合は、感染者との接触、ワクチン接種歴などを確認し、他の診断が確定するまでは麻疹として対応するのが望ましい。東南アジアでの麻疹は拡大し、現在はベトナムでも流行しているという。今後のわが国での大流行を防ぐためにも、流行の動向に留意しておくべきであろう。

4935.

未治療のC型肝炎に対するレディパスビル+ソホスブビル治療の有効性/NEJM

 未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝型1型感染患者の治療として、レディパスビル+ソホスブビル治療はきわめて高い有効性を発揮することが、米国ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのNezam Afdhal氏らが実施したION-1試験で示された。インターフェロンが使用できない患者に対する治療選択肢の確立が求められているが、現時点で米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ているインターフェロン・フリーのレジメンは1つしかない。一方、核酸型ポリメラーゼ阻害薬ソホスブビルとNS5A阻害薬レディパスビルの経口配合薬の第II相試験では、高い持続的ウイルス消失(sustained virological response:SVR)率が達成されている。NEJM誌オンライン版2014年4月12日号掲載の報告。治療終了後12週時のSVR率を歴史的対照と比較 ION-1試験は、未治療のHCV遺伝型1型感染患者に対するレディパスビル+ソホスブビル治療(LDV-SOF)の有用性を評価する非盲検無作為化第III相試験である。 参加者は、LDV-SOF(LDV 90mg/SOF 400mg配合薬、1日1回1錠、12週)、LDV-SOF+リバビリン(RBV)(12週)、LDV-SOF(24週)、LDV-SOF+RBV(24週)の4つの治療群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は治療終了後12週時のSVR率とし、歴史的対照の補正SVR率との比較を行った。SVRは、血清HCV RNA量<25IU/mLと定義した。治療期間延長の付加的ベネフィットは不明 本試験には、2012年10月17日~2013年5月17日までに米国および欧州の99施設から865例が登録された。LDV-SOF 12群に214例、LDV-SOF+RBV 12群に217例、LDV-SOF 24群に217例、LDV-SOF+RBV 24群にも217例が割り付けられた。 各群の年齢中央値は52~53歳、男性が55~64%、白人が82~87%、平均BMIは26~27であった。全体の67%が1a型であり、肝硬変例が16%含まれた。 12週時のSVR率は、LDV-SOF 12群が99%、LDV-SOF+RBV 12群は97%、LDV-SOF 24群は98%、LDV-SOF+RBV 24群は99%と高い値を示し、歴史的対照との間に有意な差が認められた(いずれもp<0.001)。 ウイルス学的治療不成功と判定されたのは3例のみで、このうち治療期間中に再燃した患者が1例(LDV-SOF 24群)、治療終了後に再燃した患者は2例(LDV-SOF 12群の1例[4週以内の再燃]、LDV-SOF 24群の1例[4~12週の再燃])であった。 各群の有害事象の発現頻度は79~92%で、そのうち重篤な有害事象はLDV-SOF 12群が1例(<1%)、LDV-SOF+RBV 12群は7例(3%)、LDV-SOF 24群は18例(8%)、LDV-SOF+RBV 24群は7例(3%)に認められた。 治療関連の有害事象による治療中止は、LDV-SOF 24群で4例(2%)、LDV-SOF+RBV 24群で6例(3%)認められたが、12週治療群にはみられなかった。頻度の高い有害事象として、疲労感(21~38%)、頭痛(23~30%)、不眠(8~22%)、悪心(11~17%)が挙げられた。 著者は、「リバビリンの併用や治療期間の24週への延長による付加的なベネフィットは明らかではなかった」としている。

4936.

既治療のC型肝炎に対するレディパスビル+ソホスブビル治療の有効性/NEJM

 インターフェロンベースの治療では持続的なウイルス消失(sustained virological response:SVR)が得られなかったC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝型1型感染患者に対し、レディパスビル+ソホスブビル配合薬の1日1回1錠投与による治療が有効であることが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのNezam Afdhal氏らが実施したION-2試験で示された。これら2つの薬剤は直接作用型抗ウイルス薬で、ソホスブビルは核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害薬、レディパスビルはNS5A阻害薬である。米国のガイドラインでは、既治療の1型感染患者に対しソホスブビル+NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬シメプレビル(±リバビリン)の併用療法が推奨されているが、これは第II相試験の限られたデータに基づくものだという。NEJM誌2014年4月17日号(オンライン版2014年4月11日号)掲載の報告。4つのレジメンを無作為化試験で評価 ION-2試験は、既治療のHCV遺伝型1型感染患者に対するレディパスビル+ソホスブビル治療(LDV-SOF)の有用性を評価する非盲検無作為化第III相試験。ペグインターフェロン+リバビリン(RBV)(±NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬)による治療でSVRが得られなかった1型(1a、1b)感染患者を対象とした。 参加者は、LDV-SOF(LDV 90mg/SOF 400mg配合薬、1日1回1錠、12週)、LDV-SOF+RBV(12週)、LDV-SOF(24週)、LDV-SOF+RBV(24週)の4つの治療群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は治療終了後12週時のSVR率とした。SVRは、血清HCV RNA量<25IU/mLと定義した。12週時SVR達成の427例は24週時もこれを維持 本試験には、2013年1月3日~2月26日までに米国の64施設から440例が登録された。LDV-SOF 12群に109例、LDV-SOF+RBV 12群に111例、LDV-SOF 24群に109例、LDV-SOF+RBV 24群には111例が割り付けられた。 各群の年齢中央値は55~57歳、男性が61~68%、白人が77~85%、平均BMIは28~29であった。全体の79%が1a型であり、20%に肝硬変が見られた。前治療でNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬の投与を受けていたのは52%であった。 12週時のSVR率はいずれの治療群も高値を示し、LDV-SOF 12群が94%、LDV-SOF+RBV 12群は96%、LDV-SOF 24群は99%、LDV-SOF+RBV 24群も99%に達しており、歴史的対照との間に有意な差を認めた(いずれもp<0.001)。12週時にSVRを達成した427例全例が、24週時にもSVRを維持していた。 治療終了後にウイルス学的再燃と判定された患者は440例中11例(2%)で、LDV-SOF 12群が7例(6%)、LDV-SOF+RBV 12群が4例(4%)であった。このうち10例は治療終了後4週までに再燃し、12週以降に再燃した例はなかった。 多変量解析で検出されたベースライン時の予後予測因子は肝硬変の有無のみで、全体のSVR率は非肝硬変例が98%、肝硬変例は92%だった。 各群の有害事象の発現頻度は67~90%で、ほとんどが軽度~中等度であった。有害事象に起因する治療中止例は認めなかった。高頻度に見られた有害事象は疲労感(21~45%)、頭痛(23~32%)、悪心(6~23%)であった。 著者は、「本試験で達成されたSVR率は、これまでに報告された1型感染患者を対象とした試験の中で最も高いものの1つである」としている。

4937.

トリクロサン被覆縫合糸、術後感染症リスクを減少せず/Lancet

 正中開腹術の縫合に、トリクロサンで被覆した縫合糸を使っても、被覆していない縫合糸を使った場合と比べて、術後30日以内の術部感染症の発症リスクは減少しないことが判明した。ドイツ・ハイデルベルク大学のMarkus K. Diener氏らが、約1,200例を対象に行った無作為化比較試験「PROUD」の結果、報告した。術後手術部位感染症は、最も頻繁な開腹手術後の合併症の1つである。トリクロサン被覆縫合糸は、その発生を抑制することを目的に開発されたものだった。Lancet誌オンライン版2014年4月4日号掲載の報告より。術後30日以内の手術部位感染発生率を比較 Diener氏らは、ドイツ国内24ヵ所の病院を通じ、2010年4月~2012年10月にかけて選択的腹部正中開腹術を行った18歳以上の患者、合わせて1,185例を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはトリクロサンで被覆した縫合糸を、もう一方には被覆していない縫合糸を用い、腹部筋膜の閉鎖を行った。 主要エンドポイントは、米国疾病予防管理センター(CDC)の適格基準に則った、術後30日以内の表層性または深層性の手術部位感染症の発生率だった。なお、患者と外科医、アウトカム評価者は、試験割り付けについてマスキングされていた。感染症発生率、重度有害事象発生率ともに両群で同等 結果、術後30日以内に手術部位感染を発生したのは、被覆縫合糸群の14.8%(587例中87例)に対し、非被覆縫合糸群16.1%(598例中96例)と、両群で有意差はなかった(オッズ比:0.91、95%信頼区間:0.66~1.25、p=0.64)。 また、重度有害事象発生率についても、それぞれ25.0%、22.9%と両群で同等だった(p=0.39)。 結果を受けて著者は「手術部位感染症を減らすために、革新的で、多様な戦略を、さらなる研究により開発し評価していく必要がある」とまとめている。

4938.

「適正使用を」-SGLT2阻害薬への想い-

 2014年4月17日、2型糖尿病治療薬のイプラグリフロジン(商品名:スーグラ錠25mg、同50mg)が発売された。イプラグリフロジンは日本初の選択的SGLT2阻害薬であり、糖尿病診療医からの注目も高い。そこで今回、アステラス製薬株式会社 本社担当者に話を聞いた。【SGLT2阻害薬への期待-低血糖リスク軽減と体重管理-】 2型糖尿病の治療は血糖管理を取り巻く諸問題に悩まされてきた。具体的には低血糖、体重増加などである。2014年、新たに登場した選択的SGLT2阻害薬イプラグリフロジンは、原尿からのグルコース再吸収に関わるSGLT2を選択的に阻害することで、余分なグルコースを尿から排泄させ血糖値を下げる。この作用はインスリン非依存的で、作用機序から低血糖が発現しにくいと考えられている。また、体重低下も期待されている。つまり「低血糖リスクの軽減」「体重コントロール」につながる薬といえる。【高齢者、女性、痩せ型、罹病期間の長い症例は注意】 しかし、新規作用機序の薬ゆえに安全性については慎重な判断が求められる。選択的SGLT2阻害薬全般にいえることだが、特に、浸透圧利尿による脱水、尿路・性器感染症、尿中ケトン体上昇には注意が必要である。この場を借りて、あらためて各項目について注意喚起をしたい。 「脱水」:高齢者、脳卒中リスク症例は避けるべきであり、とくに高齢者は脱水症状に気づきにくいことが考えられる。脱水を予防する為には、適度な水分摂取が必要となる。 「尿路・性器感染症」:日本国内での報告は海外よりも少ないものの、性器感染症はとくに女性で報告が多い。症状としてはかゆみやおりものがあるが、患者さん自ら訴え出るには抵抗感があるだろう。製薬会社提供の指導箋などをご活用いただくことで、患者さんの話しやすい環境作りの手助けになればと考えている。 「尿中ケトン体上昇」:インスリン分泌能が低下している場合、尿中ケトン体が上昇しやすい。インスリン分泌能が少ないと考えられる症例、たとえば、罹病期間が長い人や高用量のSU薬をすでに服用している人は注意が必要となる。 まとめると、高齢者、脳卒中リスク例、女性、痩せている方、罹病期間が長いなどインスリン分泌能が低下している方では注意が必要となる。【SGLT2阻害薬の投与を考慮すべき患者像は若く、太った患者】 以上のことを踏まえると、イプラグリフロジンの投与を考慮すべき患者像は若く、太っていて、罹病期間の短い方が望ましいといえる。太っている目安としては、いわゆるBMI 25以上の肥満傾向の患者が挙げられる。また、ベースラインの血糖値が高い方が効果を発揮しやすいとのデータから、投与前のHbA1c値が高い症例、具体的数値としては7.0%以上の場合、効果を発揮しやすいのではないかと考えている。【イプラグリフロジンは日本国内データと症例数が豊富】 イプラグリフロジンの血糖降下作用についても補足する。国内第III相試験の結果で、HbA1c変化量がイプラグリフロジン50mg投与でプラセボとの差が-1.24%と報告されており、優れた血糖降下作用が期待される。新薬ではあるが日本の治験データが多く、症例数が多いことが本剤の特徴である。ほかの経口血糖降下薬との併用試験についても二重盲検比較試験で実施した試験が多い。SU薬、BG薬、チアゾリジン薬の併用に関する3試験はいずれも二重盲検比較試験で実施されており、データのクオリティが高い。【SGLT2阻害薬は長期的に評価していただきたい】 現在、種々の選択的SGLT2阻害薬が登場し、各社が選択性、生物学的半減期、服薬コンプライアンスなどさまざまなメッセージを打ち出している。しかし、イプラグリフロジンも含め、いずれも臨床での使用はこれからであり、まずは適正使用を推進していきたいと考えている。乱暴な話だが、たとえば、80歳の痩せた女性や脳卒中のリスク症例への投与による予期せぬ副作用などが出てしまうことは新薬として望ましくない。だからこそ、SGLT2阻害薬のメリットが享受できる症例を選んでいただき、適正に判断をしていただけたらと願っている。また、使い方はさまざまだが、新患、既存薬への追加が望ましいと個人的には考えている。切り替えの場合、前薬のメリットがなくなる可能性がある。まずは、前述したような症例像へ、新規や追加といった形での処方を通じて、先生方の眼で「SGLT2阻害薬」という薬を評価いただきたいと考えている。【取材後記】 今回、印象深かったのは、アステラス製薬本社担当者の「SGLT2阻害薬の適正使用」を望む真摯な姿勢であった。新薬取材では得てして自社品のPRポイントを中心に語られることが多い。むろん、薬剤情報は重要だ。しかし、それ以上に適正な情報提供こそが製薬会社の責務であろう。安全性の部分へのコメントが多かった点に、命に関わる医薬品を販売する側としての正しい姿勢を感じた。今後、SGLT2 阻害薬の適正使用が進むことを期待している。

4940.

米国での医療関連感染、C.difficileが最多/NEJM

 米国疾病予防管理センター(CDC)のShelley S. Magill氏らは、複数地点で調べるサーベイ法で急性期病院における医療関連感染の発生について調べた結果、2011年時点で患者64万8,000例、72万1,800件の発生であったことを報告。また Clostridium difficile (C. difficile)感染症が最も多くみられ、引き続きC. difficile感染症に対する公衆衛生サーベイランスと予防への取り組みが必要であることを報告した。JAMA誌オンライン版2014年3月27日号掲載の報告より。全米10州183の急性期病院対象にサーベイ 医療関連感染の撤廃は米国保健福祉省の優先事項となっており、患者安全改善を維持し続けるため、その疫学を広くとらえるサーベイランスシステムが開発されてきた。しかし、1つのシステムでは、急性期治療を受ける患者集団のすべての医療を網羅した医療関連感染に対する負荷を推定することができない。たとえばCDC既存のサーベイランスシステムである全米医療安全ネットワーク(NHSN)では、各病院の報告はデバイス関連や一部の手術部位に関する報告に限られていることがほとんどで、国家的なスケールでの負担や分布のデータを得られない。そこでCDCでは2009年より、10州406病院に参加を呼びかけ、複数地点有病率サーベイ法を開発・試行してきたという。 開発したサーベイ法は、NHSN参加病院の入院患者を、ある特定の日に無作為に選択して調査するというもので、病院職員が人口統計学的および限定的な臨床データを集める。一方で、訓練を受けたデータ収集者がカルテを後ろ向きにレビューし、調査日の医療関連感染の発生を特定するというものであった。 サーベイの開発・試行は2011年には大規模施行に至り(目標232病院のうち183病院[79%])、調査データと2010年の全米入院患者サンプル(NIS)データを、年齢、入院期間で層別化し、2011年における急性期病院の医療関連感染の発生件数および入院患者数を推定した。肺炎、手術部位感染、消化器感染が多発、12.1%の要因はC. difficile 調査を行った183病院(150床未満51%、155~399床37%、400床以上12%)において、1万1,282例の患者のうち452例が1つ以上の医療関連感染を有していた(4.0%、95%信頼区間[CI]:3.7~4.4)。発生件数は504件で、最も頻度が高かったのは、肺炎(21.8%)、手術部位感染(21.8%)および消化器感染(17.1%)だった。また、最も多かった病原体はC. difficileだった(医療関連感染12.1%の要因)。 かねてより医療関連感染の予防計画の焦点であるデバイス関連の感染症(中心カテーテル関連血流感染、尿道留置カテーテル関連感染、人工呼吸器関連の肺炎など)は、25.6%だった。 これらデータからCDCは、2011年における全米急性期病院の医療関連感染の発生は患者数64万8,000例、72万1,800件に上ると推定している。なお、CDCがこれまでに発表した直近の報告では171万件/年(2007年発表)であった。 以上を踏まえて「本調査結果は、C. difficile感染に対する公衆衛生サーベイと予防活動を継続していかなければならないことを示すものであった」と述べ、また「デバイスおよび処置関連の感染が減少しているので、そのほかの医療関連感染を含むサーベイおよび予防活動を拡大すべきことを考えなくてはならない」とまとめている。

検索結果 合計:5541件 表示位置:4921 - 4940