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クランベリーカプセルは尿路感染症予防に有効か/JAMA

 介護施設に入所している高齢女性において、1年間にわたりクランベリーカプセルを投与したが、プラセボと比較して細菌尿+膿尿の件数に有意差は認められなかった。米国・エール大学医学大学院のManisha Juthani-Mehta氏らが、クランベリーカプセル内服の細菌尿+膿尿に対する有効性を評価する目的で行った無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果、報告した。細菌尿+膿尿は介護施設の高齢女性に多く、クランベリーカプセルはこうした尿路感染症(UTI)に対する非抗菌的な予防法として知られているが、その根拠には議論の余地があった。JAMA誌2016年11月8日号掲載の報告。185例に1年間投与、細菌尿+膿尿の頻度をプラセボと比較 研究グループは、2012年8月24日~2015年10月26日に、コネチカット州ニューヘイブンの50マイル(80km)圏内にある介護施設21施設において、長期入所中の65歳以上の女性185例(ベースライン時での細菌尿+膿尿の有無は問わない)を、治療群とプラセボ群に無作為割り付けし比較した。 治療群(92例)は、1カプセル当たり活性成分プロアントシアニジン36mgを含むクランベリーカプセル2個(合計72mg、クランベリージュース20オンスに相当)を、プラセボ群(93例)はプラセボ2個を1日1回内服した。 主要評価項目は、細菌尿(1~2種類の微生物が尿培養で105コロニー形成単位[CFU]/mL以上)+膿尿(尿中白血球陽性)とし、2ヵ月ごとに1年間評価した。副次評価項目は、症候性UTI、全死因死亡数、総入院数、多剤耐性菌(MRSA、VRE、多剤耐性グラム陰性桿菌)の分離数、UTI疑いに対する抗菌薬使用、すべての抗菌薬使用とした。 無作為化された185例(平均年齢86.4歳[SD 8.2]、白人90.3%、ベースラインで細菌尿+膿尿あり31.4%)のうち、147例が試験を完遂し、服薬アドヒアランスは80.1%であった。細菌尿+膿尿の頻度は両群で有意差を認めず 未調整前の解析において、計6回の尿検査で得られた全検体における細菌尿+膿尿の割合は、治療群25.5%(95%信頼区間[CI]:18.6~33.9)、プラセボ群29.5%(同:22.2~37.9)であった。一般化推定方式モデルによる補正後の解析では、両群間に有意差は認められなかった(それぞれ29.1% vs.29.0%、オッズ比[OR]:1.01、95%CI:0.61~1.66、p=0.98)。 症候性UTI発症数(治療群10件 vs.プラセボ群12件)、死亡率(それぞれ17例 vs.16例、100人年当たり20.4例 vs.19.1例、死亡率比[RR]:1.07、95%CI:0.54~2.12)、入院数(33件 vs.50件、100人年当たり39.7件 vs.59.6件、RR:0.67、95%CI:0.32~1.40)、多剤耐性グラム陰性桿菌関連細菌尿(9件 vs.24件、100人年当たり10.8件 vs.28.6件、RR:0.38、95%CI:0.10~1.46)、UTI疑いに対する抗菌薬使用(抗菌薬使用日数692 vs.909日、8.3 vs.10.8日/人年、RR:0.77、95%CI:0.44~1.33)、およびすべての抗菌薬使用(抗菌薬使用日数1,415 vs.1,883日、17.0 vs.22.4日/人年、RR:0.76、95%CI:0.46~1.25)で、有意差は確認されなかった。 著者は研究の限界として、試験登録時の細菌尿+膿尿の有無を制限していなかったことなどを挙げている。

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小児のワクチン接種、非特異的な免疫学的効果はあるか/BMJ

 小児へのワクチン予防接種の一部の試験では、非特異的な免疫学的効果を示唆する免疫反応の傾向やパターンが認められるものの、試験デザインの異質性のため臨床的に意味があるとは結論できないとの検討結果が、英国・オックスフォード大学のRama Kandasamy氏らによりBMJ誌2016年10月13日号で報告された。観察研究では、ワクチン予防接種による、全死因死亡への非特異的な効果の発現が示唆されているが、その免疫学的な因果関係の機序は明らかにされていない。非特異的な免疫学的効果を系統的にレビュー 研究グループは、小児へのワクチン定期接種(BCG、MMR[ムンプス、麻疹、風疹]、ジフテリア、百日咳、破傷風)による非特異的な免疫学的効果を同定し、その特徴を検討するために、文献の系統的なレビューを行った(WHOの助成による)。 1947~2014年1月までに医学データベース(Embase、PubMed、Cochrane library、Trip)に登録された文献(無作為化対照比較試験、コホート試験、症例対照研究)を検索した。 小児への標準的なワクチン予防接種の非特異的な免疫学的効果を報告した試験を対象とし、遺伝子組み換えワクチンやワクチン特異的アウトカムのみを報告した試験は除外した。異質性のためメタ解析は不可能 77件の試験が適格基準を満たした。37試験(48%)がBCGを使用しており、47試験(61%)が小児のみを対象としていた。ワクチン接種後1~12ヵ月の間に、最終的なアウトカムの評価が行われたのは54試験(70%)だった。 バイアスのリスクが高い試験が含まれ、すべての評価基準が低リスクと判定された試験は1つもなかった。全部で143項目の免疫学的変数が報告されており、きわめて多くの組み合わせが生成されるため、メタ解析は不可能であった。 最も多く報告されていた免疫学的変数はIFN-γであった。BCG接種を非接種と比較した試験では、接種群でin vitroにおけるIFN-γの産生が増加する傾向が認められた。 また、BCG接種により、カンジダ・アルビカンス、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌、リポ多糖類、B型肝炎由来の微生物抗原によるin vitro刺激に反応して、IFN-γ値が上昇することも確認された。 さらに、ジフテリア-破傷風(DT)およびジフテリア-破傷風-百日咳(DTP)のワクチン接種により、異種抗原に対する免疫原性の増大が認められた。すなわち、DTにより単純ヘルペスウイルスおよびポリオ抗体価が上昇し、DTPでは肺炎球菌血清型14およびポリオ中和反応の抗体が増加していた。 著者は、「非特異的な免疫学的効果の論文は、試験デザインに異質性がみられたため従来のメタ解析は行えず、質の低いエビデンスしか得られなかった」としている。

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小児のワクチン接種と死亡率、BCG vs.DTP vs.MCV/BMJ

 BCGおよび麻疹含有ワクチン(MCV)接種は、疾患予防効果を介して予想される以上に全死因死亡率を低下させ、ジフテリア・百日咳・破傷風の3種混合ワクチン(DTP)接種は逆に全死因死亡率を上昇させる可能性があることが、英国・ブリストル大学のJulian P Higgins氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、明らかとなった。これまでの研究で、麻疹やDTPなどのワクチン接種は、目的とする疾患の発症を顕著に減少させるにもかかわらず、目的の感染症以外に起因する死亡に影響を及ぼすことが示唆されていた。著者は、「今回の結果は、WHOで推奨されているワクチン接種の変更を支持するものではないが、ワクチン接種スケジュールにおけるDTPの順番の影響について無作為化試験で比較検討する必要がある」と述べるとともに、「すべての子供たちがBCG、DTP、MCVの予防接種を予定どおり確実に受けられるよう取り組むべきである」とまとめている。BMJ誌2016年10月6日号掲載の報告。5歳未満児コホート試験34件のシステマティックレビューとメタ解析を実施 研究グループは、5歳未満の小児におけるBCG、DTP、標準力価MCV接種の非特異的な影響や全死因死亡率への影響を評価するとともに、性別やワクチンの接種順序の修正効果について検討した。Medline、Embase、Global Index Medicus、WHO国際臨床試験登録プラットフォームを用い、各種臨床試験、コホート研究、症例研究を検索し、システマティックレビューとメタ解析を実施。組み込まれた研究の対象小児の重複を避けるため、地理的場所と時期で子供たちを出生コホートに分け、さらに同一出生コホートに関連する全論文を分類した。バイアスのリスク評価には、コクランツールを使用した。 出生コホート34件が本レビューに組み込まれた。一部は短期間の臨床試験で、ほとんどは観察研究であった。全死因死亡率に関しては大半の研究で報告されていた。全死因死亡率は、BCGと標準力価MCVで低下、DTPで上昇 BCGワクチン接種は、全死因死亡率の低下と関連していた。平均相対リスク(RR)は臨床試験5件で0.70(95%信頼区間[CI]:0.49~1.01)、バイアスリスクが高い観察研究9件(追跡期間がほとんど1年以内)では0.47(95%CI:0.32~0.69)であった。 DTP接種(ほとんどが経口ポリオワクチンと併用)は、バイアスリスクが高い研究10件で、全死因死亡率の増加の可能性と関連が認められた(RR:1.38、95%CI:0.92~2.08)。この影響は、男児よりも女児のほうがより強いことが示唆された。 標準力価MCV接種は、全死因死亡率の低下と関連していることが確認された(臨床試験4件でRR:0.74[95%CI:0.51~1.07]、観察研究18件でRR:0.51[95%CI:0.42~0.63])。この影響は男児よりも女児のほうがより強いようであった。 ワクチンの順番を比較した観察研究7件では、バイアスリスクが高いものの、DTP接種がMCVと併用あるいはMCV接種後で、MCV接種前より死亡率上昇と関連する可能性が示唆された。

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感染症診療とダニワールド[Enfectionシリーズ] Kindle版

新しい電子書籍シリーズの第1弾は「ダニ」!感染症診療に関する電子書籍シリーズ ”Enfection”。 その第1弾では「ダニ」を取り上げています。そして、「ダニ」といえば、『新興再興感染症に気を付けろッ!』で連載中の忽那賢志氏(国際医療センター)の存在を取り上げないわけにはいきません。ダニやダニに起因する感染症研究に邁進する、忽那氏の豊富な知見をここに結集いたしました。日常診療でももちろんお役に立ちます。主な内容は次の通りです。1.若者よダニを狩れ!2.日本のリケッチア感染症―ツツガムシ病と日本紅斑熱3.重症熱性血小板減少症候群(SFTS)―新しいマダニ媒介性ウイルス感染症が日本にもあった!4.ボレリア感染症―ライム病と回帰熱/5.アナプラズマ症―診断法の確立と実態解明を急げ!付.マダニ地図2016画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。   感染症診療とダニワールド定価 1,000円(税込)判型 kindle版頁数 66頁(※紙の本に換算した場合)発行 2016年10月編集 笠原敬(奈良県立医科大学 感染症センター)   忽那賢志(国立国際医療研究センター病院         国際感染症センター)

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世界の平均寿命、35年で約10年延長:GBD2015/Lancet

 1980年から35年間に、世界の年齢別死亡率は着実に改善し、この進展パターンは過去10年間持続しており、多くの国では当初の予測よりも迅速であったが、期待余命が短縮し、いくつかの死因の年齢標準化死亡率が上昇した国もあることが、米国・ワシントン大学のChristopher J L Murray氏らが実施したGlobal Burden of Disease Study 2015(GBD 2015)で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2016年10月8日号に掲載された。生存期間を改善し、寿命を延長するには、その時々の地域の死亡率や傾向に関する頑健なエビデンスが求められる。GBD 2015は、195の国と領地における1980~2015年の全死因死亡および249項目の原因別死亡を包括的に評価する世界的な調査である。新たな解析法による検討、GATHERに準拠 研究グループは、GBD 2013およびGBD 2010のために開発された解析法の改良版を用いて、年齢、性、地理、年代別の全死因死亡率を推算した(ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成による)。 GBD 2015では、エボラウイルス病を含む8つの死因が新たに加えられた。ほとんどの死因の予測値を生成するCause of Death Ensemble Model(CODEm)のほか、6つのモデリング法を用いて、原因別死亡率の評価を行った。 「保健推計報告の正確性、透明性のためのガイドライン(Guidelines for Accurate and Transparent Health Estimates Reporting; GATHER)」に準拠し、データ源とともに、解析過程の各段階を記述した。出生時期待余命が61.7歳から71.8歳へ、死亡数が増加し年齢標準化死亡率は低下 世界的な出生時の期待余命(寿命)は、1980年の61.7歳から、2015年には71.8歳に延長した。サハラ以南のアフリカ諸国では、2005年から2015年に期待余命が大幅に延長した国があり、HIV/AIDSによる大規模な生命の喪失の時代からの回復が認められた。 同時に、とくに戦争や対人暴力により死亡率が上昇した国など、期待余命が停滞または短縮した地域も多かった。シリアでは、2005年から2015年に期待余命が11.3年短縮し、62.6歳にまで低下した。 2005年から2015年に、全死亡数は4%増加したが、年齢標準化死亡率は17.0%低下しており、この間の人口増加と年齢構成の転換が示された。この結果は、全死亡数が14.1%増加したのに対し年齢標準化死亡率が13.1%低下した非感染性疾患(NCD)と類似していた。このパターンは、いくつかのがん種、虚血性心疾患、肝硬変、アルツハイマー病、その他の認知症にみられた。 これに対し、感染性疾患、妊産婦、新生児、栄養障害による全死亡数および年齢標準化死亡率は、いずれも2005年から2015年に有意に低下しており、その主な要因はHIV/AIDS(年齢標準化死亡率の低下率:42.1%)、マラリア(同:43.1%)、早産による新生児合併症(同:29.8%)、妊産婦の疾患(同:29.1%)による死亡率の低下であった。また、外傷による年齢標準化死亡率は、この間に有意に低下したが、例外として、とくに中東地域では対人暴力や戦争による外傷で多くの人命が失われた。 2015年における5歳以下の下痢による死亡の主な原因はロタウイルス性腸炎であり、下気道感染症による死亡の主原因は肺炎球菌性肺炎であったが、病原体別死亡率は地域によってばらつきがみられた。 全体として、人口増加、高齢化、年齢標準化死亡率の変化の影響は、死因ごとに実質的に異なっていた。SDIによるYLLの予測値と実測値 原因別死亡率と社会人口学的指標(SDI:学歴、出生率、1人当たりの所得に基づくサマリー指標)の関連の解析では、SDIの上昇にともなって、死因や年齢の構成が規則的に変化することが示された。 若年死亡率(損失生存年数[YLL]の指標)の国別のパターンには、SDIのみに基づくYLLの予測値との間にずれがあり、国や地域によって高度に不均一なパターンが明確に認められた。ほとんどの地域では、YLL増加の主要な原因は虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病であったが、多くの場合、地域内のSDIに基づくYLLの実測値と予測値の比には、顕著な不一致が認められた。 サハラ以南のアフリカのすべての国では、感染性疾患、妊産婦、新生児、栄養障害がほとんどのYLLの原因であり、依然としてマラリアやHIV/AIDSが早期死亡の主要原因の国では、YLLの実測値が予測値をはるかに超えていた。 著者は、「年齢標準化死亡率は改善したが、人口増加や高齢化が進んだため、多くの国でNCDによる死亡数が増加しており、これが保健システムへの需要の増加を招いている」とまとめ、「これらの知見は、SDIに基づく死亡のパターンを、より深く研究するための参考になるだろう」としている。

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リケッチア症に気を付けろッ!その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第24回となる今回は、「リケッチア症に気を付けろッ! その2」です。前回「次回は診断・治療・予防について述べたいと思いますッ!」と書きましたが、先に日本紅斑熱の疫学・臨床像についてご紹介させてください、すいませんッ!「日本」の名前が入った感染症日本紅斑熱という名前を聞いて何か気付きませんか…そう日本という名前が入っているのですッ! この名前のとおり、日本紅斑熱は日本で最初に発見された感染症です。というか、むしろ誰が日本紅斑熱を発見したのか? われわれ日本人医師は国試前に暗記しておかなければならないレベルです…そうレジェンド馬原文彦先生ですッ! 馬原先生が日本紅斑熱を発見された経緯は『日本紅斑熱の発見と臨床的疫学的研究』1)という論文が詳しいので、皆さんぜひ3兆回読みましょう。新しい疾患を発見するというのは臨床医として最高の業績ですよね。私も日本初となる輸入回帰熱を診断しただの、日本初となるジカ熱を診断しただの言っていますが、馬原先生の偉業に比べるとホントに霞んでしまいます。馬原先生がポケモンのカイリューだとすると、私なんてコラッタです。ツツガムシ病との違いさて、馬原先生が発見された日本紅斑熱は、前回お話したツツガムシ病と同じリケッチア症ですが、ツツガムシ病とは異なるところがいくつかあります。まず、日本紅斑熱を媒介するのはツツガムシではなくマダニです。とくにキチマダニ、フタトゲチマダニ、ヤマトマダニといったマダニが媒介すると考えられています。日本紅斑熱は、れっきとしたマダニ媒介性感染症なのですッ!そして、もう1つ日本紅斑熱がツツガムシ病と異なる点…それは日本における疫学です!ツツガムシ病が北海道を除く全国津々浦々でみられる感染症であるのに対し、日本紅斑熱は明らかに西高東低ですッ! チーバ(千葉)までは報告がみられますが、三重より以西の地域での報告が多くされているのです。疫学は診断のうえで非常に重要です! ご自身が勤務されている地域のツツガムシ病・日本紅斑熱の流行状況を確認しておきましょう。前回好評だった(かどうかは聞いてないのでわからないんですが)、流行地図の日本紅斑熱バージョンを作成しましたのでご参照ください(図)。画像を拡大する日本紅斑熱の臨床症状それでは臨床症状はどうでしょうか。ツツガムシ病と同じく日本紅斑熱では、発熱、頭痛、関節痛、皮疹といった症状がみられることが多いといわれています。とくに「紅斑熱」というくらいですから、紅斑はほぼ全例でみられます。賢明な読者の皆さまはそろそろお気付きでしょうか。「あれ…リケッチア症といえば皮疹なのに、肝心な皮疹の写真が1枚もないじゃないか…なんか手作り感満載の日本地図は載せるクセにいったいどういうつもりだ…」と。そうなんです! 僕、実はツツガムシ病に引き続き、日本紅斑熱の患者さんの皮疹の写真持ってないんです! よくそれでリケッチア症の原稿を書こうと思ったな、と思われそうですが、それくらい忽那は追い詰められているのだとお考えくださいッ! でもこの連載はインターネット…われわれにはハイパーリンクという強い味方がいるではないですか! 私が日本紅斑熱の皮疹の写真を持っていなくとも、ちょいとクリックすれば皮疹の写真へと飛んでいけます。ビバ! インターネット!というわけで「ちょい」としてください。ご覧いただけましたでしょうか。まあツツガムシ病と似て、あまり密集していない淡い紅斑ですね。しかし、ツツガムシ病と異なるところがあります。それは分布です! ツツガムシ病が体幹を中心に分布するのに対し、日本紅斑熱は四肢末梢に分布するのが典型とされます。そんなわけで日本紅斑熱では皮疹が手のひらにみられることもあります。また、刺し口の形状も異なるといわれています。具体的には、ツツガムシ病の痂皮の方が黒い部分が大きく、日本紅斑熱は黒い部分が小さくて周辺の発赤が大きい、という違いです。これも実際に写真をみてみるとおわかりいただけるかと思います(もちろん自分の写真ではありません)。ツツガムシ病の痂皮日本紅斑熱の痂皮そのほかにも、ツツガムシ病の潜伏期は10~14日であるのに対し、日本紅斑熱は2~8日と短いこと、日本紅斑熱に比べてツツガムシ病のほうが肝脾腫やリンパ節腫脹がよくみられることも臨床像で異なる点です。このようにツツガムシ病と日本紅斑熱は似て非なるものであり、どこが似ていてどこが異なるのかを知っておくと臨床上役立ちます。というわけで、ツツガムシ病と日本紅斑熱の疫学および臨床像の違いをまとめると表のようになります。画像を拡大する3回目となる次回こそ、ツツガムシ病と日本紅斑熱の診断・治療についてご紹介したいと思います。1)馬原文彦. モダンメディア. 2008;54:32-41.2)Mahara F. Emerg Infect Dis. 1997;3:105-111.

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関節症性乾癬の診療で大切なのはコラボ

 10月29日の「世界乾癬デー」を前に、日本乾癬学会、日本乾癬患者連合会ならびに製薬企業7社は合同で、「皮膚症状と関節症状を併せ持つ疾患『関節症性乾癬』」と題するメディアセミナーを都内で開催した。セミナーでは、皮膚科専門医、リウマチ科専門医、患者の3つの視点から本症の診療概要や現在の課題などが講演された。診断に有効な武器がない関節症性乾癬 はじめに皮膚科専門医の視点から奥山隆平氏(信州大学医学部皮膚科学教室 教授)が「関節症性乾癬とはどのような疾患か」と題し、早期診療の重要性と生物学的製剤の可能性について講演を行った。 乾癬は、全身に皮疹が散在する慢性的かつ難治性の皮膚疾患であり、わが国の乾癬患者は約56万人と推定されている。治療では、ファーストラインに外用療法が、セカンドラインでは紫外線療法が行われ、治療薬としてエトレチナート、シクロスポリン、メトトレキサート(保険適用外)、生物学的製剤などが処方される。 なかでも今回のテーマである関節症性乾癬は、乾癬に関節炎が足された病型として知られ、乾癬患者の中でも年々患者数が増えている疾患である。その発症パターンの多くは発疹が先行し、10年近く経過した後に関節炎症状が表れる1)など、罹病期間も長いという。 問題となるのは、現在、本症には診断に有用なバイオマーカーがないため、早期診断が難しいことである。また、患者さんも関節痛の診療の際、皮膚科ではなく、整形外科やリウマチ科を受診するために、疾患の本態がわからないまま診療が続けられ、治療の開始が遅れることであるという。 本症では、指が好発部位であり、また、脊柱が侵害されることもあり、早期診療が重要だが、病態初期はX線では発見できない。骨シンチグラフィーなどが有用とされているが、検査できる医療機関が限られているためになかなか普及しないのが現状である。 治療では生物学的製剤が、2010年から使えるようになり効果を上げているが、副作用とのバランスを見極めながらの治療が必要であり、再発もしやすいという。 おわりに奥山氏は、「今後、さらにリウマチ科や整形外科の先生に本症を知ってもらうことで、速やかな診療ができる体制の構築と乾癬患者さんへは、あらかじめ本症の特徴や病態を伝えておくことで、すぐに専門医へ診療がつながるような仕組みづくりが大事」と課題を提起し、レクチャーを終えた。関節症性乾癬の診断は他診療科とのコラボが大事 続いて、岸本暢将氏(聖路加国際病院リウマチ膠原病センター 医長)が、「リウマチ医から見たPsA(関節症性乾癬)」をテーマに、他診療科間での連携の重要性と本症の治療を解説した。 関節症性乾癬は、特徴的な所見をリウマチ専門医だけでみつけ、鑑別することは容易ではない。だからこそ、皮膚科専門医とのコラボレーションが重要であり、乾癬患者さんが痛みを訴える場合、リウマチ専門医の診療を受診することは大事だと強調する。 大都市における本症の患者数調査では、乾癬患者全体(n=3,021)の約15%(n=431)に患者が報告され2)、男性に多く、本症の患者さんの多くは皮膚科に通院し、関節痛があっても医師に伝えていないケースも多いという。 本症と関節リウマチとの鑑別診断では、足のかかとや足の裏にケブネル現象がないか、爪に炎症所見がないかの観察とともにCASPAR分類基準3)による診断が行われる。また、関節リウマチでは骨破壊だけが観察されるが、本症では骨新生もある点が鑑別で役に立つという。その他、鑑別疾患として、変形性関節症、肥満者であれば関節破壊や痛風も考えられるほか、感染症ではクラジミア、梅毒などにも注意が必要になる。 治療では、GRAPPA治療推奨4)が使われているが、MDA(中疾患活動性)基準5)も併用されている。最近では、2015年にGRAPPA治療推奨の最新版が提唱された6)。 たとえば末梢関節炎であれば、NSAIDsおよびステロイド関節内注射と併行して第1フェーズでは免疫調整薬(メトトレキサート、スルファサラジンなど)、生物学的製剤TNF阻害薬、PDE-4阻害薬(未承認薬)が推奨され、第2フェーズで生物学的製剤TNF阻害薬、IL-17阻害薬、IL-12/23阻害薬またはPDE-4阻害薬が推奨され、第3フェーズでは別の生物学的製剤への変更が推奨されているなど、体軸関節炎、腱付着部炎など病変に応じて、異なった治療推奨がなされている。 また、本症の治療戦略としては治療薬の他に、減量・運動・禁煙などの生活指導、整形外科と連携した身体器具の装着、関節へのピンポイント注射治療のほか、高脂血症、脂肪肝、うつ、線維筋痛症など併発症の治療も重要となる。 最後に岸本氏は「他科連携による的確な診断とタイミングのよい治療が患者さんの機能障害を防ぐ」と述べ、レクチャーを終えた。もっと知って欲しい関節症性乾癬 続いて30年以上乾癬に悩む患者さんが、患者視点から本症の悩みや課題を述べた。当初、乾癬の確定診断がつかず、身体的、精神的につらい時期を送ったこと。その後、本症が発症し、ベストな治療が受けられなかったときに、生物学的製剤の治療のおかげで関節の痛みが軽減、皮膚症状も落ち着いたことなどを述べた。 最後に目前の課題として、「本症では介護保険が使えないことや指定難病への未登録があり、今後も患者会などを通じ、厚生労働省へ働きかけていきたい」と展望を語った。(ケアネット 稲川 進)参考文献 1) Gottlieb AB, et al. J Dermatolog Treat. 2006;17:343-352. 2) Ohara Y, et al. J Rheumatol. 2015;42:1439-1442. 3) Taylor W, et al. Arthritis Rheum. 2006;54:2665-2673. 4) Ritchlin CT, et al. Ann Rheum Dis. 2009;68:1387-1394. 5) Coates LC, et al. Ann Rheum Dis. 2010;69:48-53. 6) Coates LC, et al. Arthritis Rheumatol. 2016;68:1060-1071.参考サイト 日本乾癬学会 日本乾癬学患者連合会

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高齢者の足関節骨折にはギプスか? 手術か?/JAMA

 不安定型足関節骨折の高齢患者において、close contact casting(ごく少量のパッドを用いた成形型膝下ギプス)は、外科手術と比べて6ヵ月後の機能予後が同等であり、高齢者に適した治療法である可能性が示唆された。英国、ジョン・ラドクリフ病院のKeith Willett氏らがAnkle Injury Management(AIM)試験の結果、報告した。足関節骨折は高齢者に多くの病的状態を引き起こすが、外科的固定術は感染症や他の回復中の合併症が課題となっていた。JAMA誌2016年10月11日号掲載の報告。60歳以上の不安定型足関節骨折患者620例を、手術群とギプス固定群に無作為化 AIM試験は、英国の主要な外傷センターおよび総合病院24施設で実施された、無作為化評価者盲検同等性比較試験であった。予備的試験が2004年5月に開始され、その後2010年7月~2013年11月に本試験が行われた(追跡調査は2014年5月に終了)。対象は、60歳以上の急性不安定型足関節骨折患者620例で、重篤な四肢虚血や末期患者、重度認知障害患者は除外した。手術群とギプス固定群に1対1の割合で無作為に割り付け、ギプス固定は訓練された外科医が全身または脊髄麻酔下で手術室にて実施した。 主要評価項目は、6ヵ月時のOlerud-Molander Ankle Score(OAMS:0~100で点数が高いほど良好な転帰で症状が少ない)で、同等性のマージンは±6点とした。また、副次評価項目はQOL、疼痛、足関節可動域、移動能力、合併症、医療資源の利用(手術時間、在院日数、調査期間中のケア)、患者満足度とした。ギプス固定群の6ヵ月時の機能予後は手術群と同等 無作為化された620例(平均年齢71歳、女性74%)中、593例(96%)が試験を完遂し、579例(93%)が割り付けられた治療を受けた。ギプス固定群の275例中52例(19%)は、その後、骨折整復早期管理のためにギプス固定治療経過中に許可されていた外科手術に変更された。 6ヵ月時において、足関節機能はギプス固定群と手術群で同等であった(OMASスコア:手術群66.0[95%CI:63.6~68.5] vs.ギプス固定群64.5[95%CI:61.8~67.2]、平均差:-0.6[95%CI:-3.9~2.6]、同等性p=0.001)。感染症および創離開は手術群のほうが多く(29/298[10%] vs.4/275[1%];オッズ比[OR]:7.3[95%CI:2.6~20.2])、治療関連合併症に対する手術室での追加施術も同様であった(18/298[6%] vs.3/275[1%];OR:5.8[95%CI:1.8~18.7])。 ギプス固定群では、レントゲン上の骨折変形治癒が多く(38/249[15%] vs.8/274[3%];OR:6.0[95%CI:2.8~12.9])、手術室で要した時間が手術群より少なかった(平均差[分/患者数]:-54[95%CI:-58~-50])。他の副次評価項目(QOL、疼痛、可動域、移動能力、患者満足度)に、有意差は確認されなかった。 著者は研究の限界として、外傷後関節炎などの長期的転帰が不明であること、試験期間中での外科医ごとのclose contact casting症例数に限りがあることなどを挙げている。

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A群レンサ球菌咽頭炎に最良の抗菌薬は?

 咽頭スワブでのA群β溶血性レンサ球菌(GABHS)陽性者において、咽頭痛に対する抗菌薬のベネフィットは限られ、抗菌薬が適応となる場合にどの薬剤を選択するのが最良なのかは明らかになっていない。今回、オーストラリア・クイーンズランド大学のMieke L van Driel氏らが19件の無作為化二重盲検比較試験を評価し、GABHSによる扁桃咽頭炎の治療におけるセファロスポリンとマクロライドをペニシリンと比較したところ、症状消失には臨床関連の差が認められなかったことが示された。著者らは、「今回の結果から、コストの低さと耐性のなさを考慮すると、成人・小児ともにペニシリンがまだ第1選択とみなすことができる」と記している。The Cochrane database of systematic reviews誌オンライン版2016年9月11日号に掲載。 著者らは、症状(痛み・熱)の緩和、罹病期間の短縮、再発の予防、合併症(化膿性の合併症、急性リウマチ熱、レンサ球菌感染後糸球体腎炎)の予防における各抗菌薬の効果比較のエビデンスと、副作用発現率の比較およびレンサ球菌に対する抗菌薬治療のリスク・ベネフィットに関するエビデンスを評価した。 CENTRAL(2016年第3版)、MEDLINE Ovid(1946年~2016年3月第3週)、EMBASE Elsevier(1974年~2016年3月)、トムソン・ロイターのWeb of Science(2010年~2016年3月)、臨床試験登録を検索し、「臨床的治癒」「臨床的再発」「合併症または有害事象、もしくは両方」のうち1つ以上を報告している無作為化二重盲検比較試験を選択した。 主な結果は以下のとおり。・ペニシリンとセファロスポリン(7試験)、ペニシリンとマクロライド(6試験)、ペニシリンとカルバセフェム(3試験)、ペニシリンとスルホンアミドを比較した1試験、クリンダマイシンとアンピシリンを比較した1試験、アジスロマイシンとアモキシシリンを小児で比較した1試験の合計19試験(無作為化された参加者5,839例)を評価した。・すべての試験で臨床転帰が報告されていたが、無作為化、割り付けの隠蔽化、盲検化に関する報告は十分ではなかった。・GRADEシステムを用いて評価されたエビデンス全体の質は、intention-to-treat (ITT)分析における「症状消失」では低く、評価可能な参加者における「症状消失」と有害事象では非常に低かった。・症状消失には差があり、セファロスポリンがペニシリンより優れていた(評価可能な患者の症状消失なしのOR:0.51、95%CI:0.27~0.97;number needed to treat for benefit[NNTB] 20、N=5、n=1,660;非常に質の低いエビデンス)。しかし、ITT解析では統計学的に有意ではなかった(OR:0.79、95%CI:0.55~1.12;N=5、n=2,018;質の低いエビデンス)。・臨床的再発については、セファロスポリンがペニシリンと比べて少なかった(OR:0.55、95%CI 0.30~0.99;NNTB 50、N=4、n=1,386;質の低いエビデンス)が、これは成人だけで認められ(OR:0.42、95%CI:0.20~0.88;NNTB 33、N=2、n=770)、NNTBが高かった。・どのアウトカムにおいても、マクロライドとペニシリンに差はなかった。・小児における1件の未発表試験において、アモキシシリン10日間投与と比べて、アジスロマイシン単回投与のほうが高い治癒率を認めた(OR:0.29、95%CI:0.11~0.73;NNTB 18、N=1、n=482)が、ITT解析(OR:0.76、95%CI:0.55~1.05; N=1、n=673)や、長期フォローアップ(評価可能な患者の分析でのOR:0.88、95%CI :0.43~1.82、N=1、n=422)では差はなかった。・小児では、アジスロマイシンがアモキシシリンより有害事象が多かった(OR:2.67、95%CI:1.78~3.99;N=1、n=673)。・ペニシリンと比較してカルバセフェムの治療後の症状消失は、成人と小児全体(ITT解析でのOR:0.70、95%CI:0.49~0.99;NNTB 14、N=3、n=795)、および小児のサブグループ解析(OR:0.57、95%CI:0.33~0.99;NNTB 8、N=1、n=233)では優れていたが、成人のサブグループ解析(OR:0.75、95%CI:0.46~1.22、N=2、n=562)ではそうではなかった。・小児では、マクロライドがペニシリンより有害事象が多かった(OR:2.33、95%CI:1.06~5.15;N=1、n=489)。・長期合併症が報告されていなかったため、稀ではあるが重大な合併症を避けるために、どの抗菌薬が優れているのかは不明であった。

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高リスク抜管後患者への高流量酸素療法、NIVに非劣性/JAMA

 高リスクの抜管後患者に対する高流量鼻カニューレ酸素療法は、再挿管および呼吸不全の予防に関して非侵襲的人工呼吸器療法(NIV)に非劣性であることが、スペイン・Hospital Virgen de la SaludのGonzalo Hernandez氏らが行った3施設604例対象の多施設共同無作為化試験の結果、示された。両療法とも再挿管の必要性を減じるが、高流量鼻カニューレ酸素療法のほうが、快適性、利便性、低コスト、付加的な生理学的機構の面で優っていた。今回の結果を踏まえて著者は、「高リスクの抜管後患者には、高流量鼻カニューレ酸素療法のほうが有益のようだ」とまとめている。JAMA誌オンライン版2016年10月5日号掲載の報告。抜管後72時間以内の再挿管および呼吸不全を評価 試験は、スペインの3ヵ所のICUで2012年9月~2014年10月にかけて行われた。クリティカルな疾患を有し、計画的な抜管の準備ができており、以下のうち1つ以上の高リスク因子を有する患者を対象とした。すなわち、65歳以上、抜管日のAPACHE(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)スコアが12超、BMIが30超、分泌物の管理不十分、ウィーニング困難または遷延、1つ以上の併存疾患あり、人工呼吸器装着の主要指標としての心不全、中等症~重症のCOPD、気道開存に問題、長期人口呼吸器(PMV)であった。 患者は抜管後24時間以内に、高流量鼻カニューレ酸素療法またはNIVを受ける群に、無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、抜管後72時間以内の再挿管および呼吸不全の発生で、非劣性マージンは10%と定義された。副次アウトカムは、呼吸器感染症、敗血症、多臓器不全、ICU入室の長期化、死亡、有害事象および再挿管までの時間などであった。高流量酸素のNIVに対する非劣性を確認 604例(平均年齢65±16歳、男性64%)が無作為に、NIV群(314例)、高流量酸素群(209例)に割り付けられた。 結果、再挿管を必要としなかった患者は、高流量酸素群66例(22.8%)、NIV群60例(19.1%)であった(絶対差:-3.7%、95%信頼区間[CI]:-9.1~∞)。また、抜管後呼吸不全を呈した患者は、それぞれ78例(26.9%)、125例(39.8%)であった(リスク差:12.9%、95%CI:6.6~∞)。 再挿管までの時間中央値について、両群間で有意差は認められなかった。高流量酸素群26.5時間(IQR:14~39)、NIV群21.5時間(10~47)であった(絶対差:-5時間、95%CI:-34~24)。 無作為化後のICU入室期間中央値は、3日間(IQR:2~7) vs.4日間(2~9)で、高流量酸素群が短かった(p=0.48)。 割り付け療法の中断を要した有害事象の発生は、高流量酸素群では観察されなかったが、NIVでは42.9%観察された(p<0.001)。

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ショック未発症の重症敗血症にヒドロコルチゾンは有用か/JAMA

 ショックを発症していない重症敗血症患者に対し、ヒドロコルチゾンを用いた補助療法を行っても、2週間以内の敗血症性ショック発症リスクは減少しないことが示された。集中治療室(ICU)内および院内死亡リスクや、180日時点の死亡リスクについても減少しなかった。ドイツ・シャリテ大学のDidier Keh氏らが、380例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、「検討の結果は、ショック未発症の重症敗血症患者に対するヒドロコルチゾン補助療法の適用を支持しないものだった」とまとめている。同療法は「Surviving Sepsis Campaign」において、難治性敗血症性ショックに対してのみ推奨されており、ショック未発症の重症敗血症に対する同療法については議論の的となっていた。JAMA誌オンライン版2016年10月3日号掲載の報告。14日以内の敗血症性ショックを比較 研究グループは、2009年1月13日~2013年8月27日にかけて、ドイツ国内34ヵ所の医療機関を通じて、重症敗血症で敗血症性ショック未発症の成人380例について、無作為化二重盲検試験を開始した。追跡期間は180日間で、2014年2月23日まで行った。 同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群(190例)にはヒドロコルチゾン200mgを5日間注入し、11日目までに徐々に減量・中止し、もう一方の群(190例)にはプラセボを投与した。 主要評価項目は、14日以内の敗血症性ショック。副次的評価項目は、同ショック発症までの期間、ICU内または院内の死亡率、180日死亡率、2次感染症発症率、ウィーニング失敗、筋力低下の発生率、高血糖症(血糖値>150mg/dL)発症率などだった。敗血症ショック発症率は、いずれの群も21~23% ITT(intention-to-treat)解析対象者は353例。平均年齢65.0歳、男性が64.9%だった。 敗血症性ショックの発症率は、ヒドロコルチゾン群が21.2%(36/170例)で、プラセボ群が22.9%(39/170例)と、両群で同等だった(群間差:-1.8%、95%信頼区間[CI]:-10.7~7.2、p=0.70)。 敗血症性ショック発症までの期間やICU内・院内死亡率も、有意差はみられなかった。28日死亡率は、ヒドロコルチゾン群8.8%、プラセボ群8.2%(差:0.5%、95%CI:-5.6~6.7、p=0.86)、90日死亡率はそれぞれ19.9%と16.7%(3.2%、-5.1~11.4、p=0.44)、180日死亡率は26.8%と22.2%(4.6%、-4.6~13.7、p=0.32)と、いずれも同等だった。 2次感染の発症率は、ヒドロコルチゾン群21.5% vs.プラセボ群16.9%、ウィーニング失敗は8.6% vs.8.5%、筋力低下30.7% vs.23.8%、高血糖症90.9% vs.81.5%だった。

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アジスロマイシン追加で緊急帝王切開の母体感染リスク低減/NEJM

 緊急帝王切開時の標準的な予防的抗菌薬投与に、抗菌スペクトルを拡大するためにアジスロマイシンを追加すると、術後の母体の感染リスクが低減することが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のAlan T N Tita氏らが行ったC/SOAP試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年9月29日号に掲載された。米国では、妊娠関連感染症は母親の死因の第4位を占めており、母体感染は入院期間を延長し、医療費を増加させる。帝王切開は最もよく行われる手術手技であり、子宮内膜炎や創感染を含む手術部位感染率は経膣分娩の5~10倍に達するという。2,000例以上の妊婦のプラセボ対照無作為化試験 C/SOAPは、緊急帝王切開を受ける女性において、標準的な予防的抗菌薬投与に、抗菌スペクトラムを拡大するためにアジスロマイシンを併用するアプローチの有用性を評価するプラグマティックな二重盲検プラセボ対照無作為化試験(Eunice Kennedy Shriver米国国立小児保健発達研究所の助成による)。 対象は、妊娠24週以降の単胎妊娠で、分娩時または破水後に緊急帝王切開が施行された女性であった。 被験者は、アジスロマイシン500mgを静脈内投与する群またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。すべての妊婦が、各施設のプロトコルに従って、切開の前または切開後可及的速やかに、標準的な予防的抗菌薬投与(セファゾリン)を受けた。 主要アウトカムは、術後6週以内に発生した子宮内膜炎、創感染、その他の感染症(腹腔または骨盤内膿瘍、敗血症、血栓性静脈炎、腎盂腎炎、肺炎、髄膜炎)であった。 2011年4月~2014年11月に、米国の14施設に2,013例の妊婦が登録され、アジスロマイシン群に1,019例、プラセボ群には994例が割り付けられた。主要アウトカムがほぼ半減、新生児の有害なアウトカムは増加せず 平均年齢は、アジスロマイシン群が28.2±6.1歳、プラセボ群は28.4±6.5歳であった。妊娠中の喫煙者がアジスロマイシン群でわずかに少なかった(9.5 vs.12.3%)が、これ以外の背景因子は両群で類似していた。帝王切開の手技関連の因子にも両群に差はなかった。 主要アウトカムの発生率は、アジスロマイシン群が6.1%(62/1,019例)と、プラセボ群の12.0%(119/994例)に比べ有意に良好であった(相対リスク[RR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.38~0.68、p<0.001)。 子宮内膜炎(3.8 vs.6.1%、RR:0.62、95%CI:0.42~0.92、p=0.02)および創感染(2.4 vs.6.6%、0.35、0.22~0.56、p<0.001)では有意な差が認められ、その他の感染症(0.3 vs.0.6%、0.49、0.12~1.94、p=0.34)には差はみられなかった。 副次複合アウトカムである新生児の死亡および合併症の発生率は、アジスロマイシン群が14.3%(146/1,019例)、プラセボ群は13.6%(135/994例)であり、差を認めなかった(RR:1.05、95%CI:0.85~1.31、p=0.63)。 母体の重篤な有害事象の発現率は、アジスロマイシン群が有意に低く(1.5 vs.2.9%、RR:0.50、95%CI:0.27~0.94、p=0.03)、新生児の重篤な有害事象には差がなかった(0.7 vs.0.5%、1.37、0.43~4.29、p=0.77)。 著者は、「抗菌スペクトラムの拡大を目的とするアジスロマイシンの追加により、新生児の有害なアウトカムを増加させることなく、母体の感染症が低減し、医療リソースの使用が抑制された」としている。

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多発性骨髄腫〔MM : multiple myeloma〕

1 疾患概要■ 概念・定義多発性骨髄腫(MM)は、Bリンパ球系列の最終分化段階にある形質細胞が、腫瘍性、単クローン性に増殖する疾患である。骨髄腫細胞から産生される単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)を特徴とし、貧血を主とする造血障害、易感染性、腎障害、溶骨性変化など多彩な臨床症状を呈する疾患である。■ 疫学わが国では人口10万人あたり男性5.5人、女性5.2人の推定罹患率であり、全悪性腫瘍の約1%、全造血器腫瘍の約10%を占める。発症年齢のピークは60代であり、年々増加傾向にある。40歳未満の発症はきわめてまれである。■ 病因慢性炎症や自己免疫疾患の存在、放射線被曝やベンゼン、ダイオキシンへの曝露により発症頻度が増加するが成因は明らかではない。MMに先行するMGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)や無症候性(くすぶり型)骨髄腫においても免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子や13染色体の異常が認められることから、多くの遺伝子異常が関与し、多段階発がん過程を経て発症すると考えられる。■ 症状症候性骨髄腫ではCRABと呼ばれる臓器病変、すなわち高カルシウム血症(Ca level increased)、腎障害(Renal insufficiency)、貧血(Anemia)、骨病変(Bone lesion)がみられる(図1)。骨病変では溶骨性変化による腰痛、背部痛、脊椎圧迫骨折などを認める。貧血の症状として全身倦怠感・労作時動悸・息切れなどがみられる。腎障害はBence Jones蛋白(BJP)型に多く、腎不全やネフローゼ症候群を呈する(骨髄腫腎)。骨吸収の亢進による高カルシウム血症では、多飲、多尿、口渇、便秘、嘔吐、意識障害を認める。正常免疫グロブリンの低下や好中球減少により易感染性となり、肺炎などの感染症を起こしやすい。また、脊椎圧迫骨折や髄外腫瘤による脊髄圧迫症状、アミロイドーシス、過粘稠度症候群による出血や神経症状(頭痛、めまい、意識障害)、眼症状(視力障害、眼底出血)がみられる。画像を拡大する■ 分類骨髄にクローナルな形質細胞が10%以上、または生検で骨もしくは髄外の形質細胞腫が確認され、かつ骨髄腫診断事象(Myeloma defining events)を1つ以上認めるものを多発性骨髄腫と診断する。骨髄腫診断事象には従来のCRAB症状に加え、3つの進行するリスクの高いバイオマーカーが加わった。これらはSLiM基準と呼ばれ、骨髄のクローナルな形質細胞60%以上、血清遊離軽鎖(Free light chain: FLC)比(M蛋白成分FLCとM蛋白成分以外のFLCの比)100以上、MRIで局所性の骨病変(径5mm以上)2個以上というのがある。したがって、CRAB症状がなくてもSLiM基準の1つを満たしていれば多発性骨髄腫と診断されるため、症候性骨髄腫という呼称は削除された1)。くすぶり型骨髄腫は、骨髄診断事象およびアミロイドーシスを認めず、血清M蛋白量3g/dL以上もしくは尿中M蛋白500mg/24時間以上、または骨髄のクローナルな形質細胞10~60%と定義された。MGUSは3つの病型に区別され、その他、孤立性形質細胞腫の定義が改訂された1)(表1)。表1 多発性骨髄腫の改訂診断基準(国際骨髄腫ワーキンググループ: IMWG)■多発性骨髄腫の定義以下の2項目を満たす(1)骨髄のクローナルな形質細胞割合≧10%、または生検で確認された骨もしくは髄外形質細胞腫を認める。(2)以下に示す骨髄腫診断事象(Myeloma defining events)の1項目以上を満たす。骨髄腫診断事象●形質細胞腫瘍に関連した臓器障害高カルシウム血症: 血清カルシウム>11mg/dLもしくは基準値より>1mg/dL高い腎障害: クレアチニンクリアランス<40mL/分もしくは血清クレアチニン>2mg/dL貧血: ヘモグロビン<10g/dLもしくは正常下限より>2g/dL低い骨病変: 全身骨単純X線写真、CTもしくはPET-CTで溶骨性骨病変を1ヵ所以上認める●進行するリスクが高いバイオマーカー骨髄のクローナルな形質細胞割合≧60%血清遊離軽鎖(FLC)比(M蛋白成分のFLCとM蛋白成分以外のFLCの比)≧100MRIで局所性の骨病変(径5mm以上)>1個■くすぶり型骨髄腫の定義以下の2項目を満たす(1)血清M蛋白(IgGもしくはIgA)量≧3g/dLもしくは尿中M蛋白量≧500mg/24時間、または骨髄のクローナルな形質細胞割合が10~60%(2)骨髄診断事象およびアミロイドーシスの合併がない(Rajkumar SV, et al. Lancet Oncol.2014;15:e538-548.)■ 予後治癒困難な疾患であるが、近年、新規薬剤の導入により予後の改善がみられる。生存期間は移植適応例では6~7年、移植非適応例では4~5年である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査血清および尿の蛋白電気泳動でβ-γ域にM蛋白を認める場合は、免疫電気泳動あるいは免疫固定法でクラス(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)とタイプ(κ、λ)を決定する。BJP型では血清蛋白電気泳動でMピークを認めないので注意する。血清FLCはBJP型骨髄腫や非分泌型骨髄腫の診断に有用である。血液検査では、正球性貧血、白血球・血小板減少と塗抹標本で赤血球連銭形成がみられる。骨髄ではクローナルな形質細胞が増加する。生化学検査では、血清総蛋白増加、アルブミン(Alb)低下、CRP上昇、ZTT高値、クレアチニン、β2-ミクログロブリン(β2-MG)の上昇、赤沈の亢進がみられる。染色体異常としてt(4;14)、t(14;16)、t(11;14)や13染色体欠失などがみられる。全身骨X線所見では、打ち抜き像(punched out lesion)や骨粗鬆症、椎体圧迫骨折を認める。CTは骨病変の検出に、全脊椎MRIは骨髄病変の検出に有用である。PET-CTは骨病変や形質細胞腫の検出に有用である。■ 診断診断には、前述の国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)による基準が用いられる1)(表1、2)。また、血清Alb値とβ2-MG値の2つの予後因子に基づく国際病期分類(International Staging System:ISS)は予後の推定に有用である。最近、ISSに遺伝子異常とLDHを加味した改訂国際病期分類(R-ISS)が提唱されている2)(表3)。ISS病期1、2、3の生存期間はそれぞれ62ヵ月、44ヵ月、29ヵ月である。ただし、これは新規薬剤の登場以前のデータに基づいている。表2 意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)と類縁疾患の改訂診断基準■非IgG型MGUSの定義血清M蛋白量<3g/dL骨髄のクローナルな形質細胞割合<10%形質細胞腫瘍に関連する臓器障害(CRAB)およびアミロイドーシスがない■IgM型MGUSの定義血清M蛋白量<3g/dL骨髄のクローナルな形質細胞割合<10%リンパ増殖性疾患に伴う貧血、全身症状、過粘稠症状、リンパ節腫脹、肝脾腫や臓器障害がない■軽鎖型MGUSの定義血清遊離軽鎖(FLC)比<0.26(λ型の場合)もしくは>1.65(κ型の場合)免疫固定法でモノクローナルな重鎖を認めない形質細胞腫瘍に関連する臓器障害(CRAB)およびアミロイドーシスがない骨髄のクローナルな形質細胞割合<10%尿中のM蛋白量<500mg/24時間■孤立性形質細胞腫の定義骨もしくは軟部組織に生検で確認されたクローナルな形質細胞からなる孤立性病変を認める骨髄にクローナルな形質細胞を認めない孤立性形質細胞腫以外に全身骨単純X線写真やMRI、CTで骨病変を認めないリンパ形質細胞性腫瘍に関連する臓器障害(CRAB)がない■微小な骨髄浸潤を伴う孤立性形質細胞腫の定義骨もしくは軟部組織に生検で確認されたクローナルな形質細胞からなる孤立性病変を認める骨髄のクローナルな形質細胞割合<10%孤立性形質細胞腫以外に全身骨単純X線写真やMRI、CTで骨病変を認めないリンパ形質細胞性腫瘍に関連する臓器障害(CRAB)がない(Rajkumar SV, et al. Lancet Oncol.2014;15:e538-548.)画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療方針IMWGではCRAB症状を有するMMのほか、CRAB症状がなくてもSLiM基準を1つでも有する症例も治療の対象としている。この点について、わが国の診療指針では慎重に経過観察を行い、進行が認められる場合に治療を開始することでもよいとしている3)。MGUSやくすぶり型MMは治療対象としない。初期治療は、自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(HDT/AHSCT)が実施可能かどうかで異なる治療が行われる3、4)。効果判定はIMWGの診断基準が用いられ、CR(完全奏効:免疫固定法でM蛋白陰性)達成例は予後良好であることから、深い奏効を得ることが、長期生存のサロゲートマーカーとなる5)。■ 大量化学療法併用移植適応患者年齢65歳以下で、重篤な感染症や肝・腎障害がなく、心肺機能に問題がなければHDT/AHSCTが行われる。初期治療としてボルテゾミブ(BOR、商品名:ベルケイド)やレナリドミド(LEN、同: レブラミド)などの新規薬剤を含む2剤あるいは3剤併用が推奨される3、4)(図2)。わが国では初期治療に保険適用を有する新規薬剤は現在BORとLENであり、BD(BOR、デキサメタゾン[DEX])、BCD(BOR、シクロホスファミド[CPA]、DEX)、BAD(BOR、ドキソルビシン[DXR]、DEX)、BLd(BOR、LEN、 DEX)、Ld(LEN、DEX)が行われる。画像を拡大する寛解導入後はCPA大量にG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を併用して末梢血幹細胞が採取され、メルファラン(MEL)大量(200mg/m2)後にAHSCTが行われる。BORを含む3剤併用による寛解導入後にAHSCTを行うことにより、60%以上の症例でVGPR(very good partial response)が得られる。自家移植後にも残存する腫瘍細胞を減少させる目的で、地固め・維持療法が検討されている。新規薬剤による維持療法は無増悪生存を延長させるが、サリドマイド(THAL)による末梢神経障害や薬剤耐性、レナリドミドによる二次発がんの問題が指摘されており、リスクとベネフィットを考慮して判断することが求められる3、4)。■ 大量化学療法併用移植非適応患者65歳以上の患者や65歳以下でもHDT/AHSCTの適応条件を満たさない患者が対象となる。これまでMELとプレドニゾロン(PSL)の併用(MP)が標準治療であったが、現在は新規薬剤を加えたMPT(MP、THAL)、MPB(MP、BOR)、LDが推奨されている3、4)(図3)。わが国でもLd、MPBが実施可能であり、BORの皮下投与は静脈投与と比較し、神経障害が減少するので推奨されている。画像を拡大する■ サルベージ療法初回治療終了6ヵ月以後の再発では、初回導入療法を再度試みてもよい。移植後2年以上の再発では、AHSCTも治療選択肢に上がる。6ヵ月以内の早期再発や治療中の進行や増悪、高リスク染色体異常を有する症例では、新規薬剤を含む2剤、3剤併用が推奨される3、4)。新規薬剤として、2015年にポマリドミド(同: ポマリスト)、パノビノスタット(同: ファリーダック)、2016年にカルフィルゾミブ(同: カイプロリス)が導入され、再発・難治性骨髄腫の治療戦略の幅が広まった。■ 放射線治療孤立性形質細胞腫や、溶骨性病変による骨痛に対しては、放射線照射が有効である。■ 支持療法骨痛の強い症例や骨病変の抑制にゾレドロン酸(同: ゾメタ)やデノスマブ(同: ランマーク)が推奨される。長期の使用にあたっては、顎骨壊死の発症に注意する。腎機能障害の予防には、十分量の水分を摂取させる。高カルシウム血症には生理食塩水とステロイドに加え、カルシトニン、ビスホスホネートを使用する。過粘稠度症候群に対しては、速やかに血漿交換を行う。4 今後の展望有望な新規薬剤として、第2世代のプロテアソーム阻害剤(イキサゾミブなど)のほか、抗体薬(elotuzumab、daratumumab、pembrolizumabなど)が開発中である。これらの薬剤の導入により、多くの症例で微少残存腫瘍(MRD)の陰性化が可能となり、生存期間の延長、ひいては治癒が得られることが期待される。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本骨髄腫学会(医療従事者向けの診療、研究情報)患者会情報日本骨髄腫患者の会(患者と患者家族の会の情報)1)Rajkumar SV, et al. Lancet Oncol.2014;15:e538-548.2)Palumbo A, et al. J Clin Oncol.2015;33:2863-2869.3)日本骨髄腫学会編. 多発性骨髄腫の診療指針 第4版.文光堂;2016.4)日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン.金原出版;2013.p.268-307.5)Durie BGM, et al. Leukemia.2006.20:1467-1473.公開履歴初回2013年12月17日更新2016年10月04日

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70歳以上高齢者に対する帯状疱疹サブユニットワクチンの有効性(解説:小金丸 博 氏)-596

 帯状疱疹の罹患率や、その合併症である帯状疱疹後神経痛の発生率は、年齢とともに増加することが知られている。帯状疱疹を発症した場合、抗ウイルス薬の投与によって罹病期間を短縮することはできるが、帯状疱疹後神経痛の減少効果は示されておらず、ワクチンによる予防効果が期待されてきた。日本や米国では、50歳以上の成人に対して帯状疱疹の予防に生ワクチンが認可されているが、帯状疱疹の予防効果は50%程度とそれほど高くなく、さらに年齢とともに有効性が低下することが指摘されていた。  2015年に、組み換え水痘帯状疱疹ウイルス糖蛋白EとAS01Bアジュバントを組み合わせた帯状疱疹サブユニットワクチン(HZ/su)の有効性が報告された。この試験は、50歳以上を対象としたもの(ZOE-50)であったが、今回は70歳以上の高齢者に対象を限定して、帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛へのサブユニットワクチンの有効性を検証するために、プラセボ対照ランダム化比較試験(ZOE-70)が行われた。ZOE-50と足し合わせた解析では、帯状疱疹に対する有効性が91.3%(95%信頼区間:86.8~94.5、p<0.001)、帯状疱疹後神経痛に対する有効性が88.8%(同:68.7~97.1、p<0.001)であり、プラセボと比較して高い有効性が示された。また、70~79歳と80歳以上の2群で有効性は同等であり、高齢者では有効性が低下した生ワクチンとは対照的な結果であった。 有効性、有害事象のデータを見る限り、非常に有望なワクチンと思われる。一般的に生ワクチンは免疫不全者では使用できず、高齢者に対しては不活化ワクチンのほうが安全に接種できる。安全性のさらなる確認は必要であるが、サブユニットワクチンの認可、導入が待たれる。 多くのワクチンでみられるように、帯状疱疹サブユニットワクチンの効果も経年的に減弱する傾向があるようである。今後は、どのくらいの期間ワクチンの効果が持続するのか、追加接種の必要性などについても検証する必要があると考える。

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抗TNF薬で効果不十分の関節リウマチ、生物学的製剤が優れる/JAMA

 抗TNF薬の効果が不十分な関節リウマチ患者の治療では、TNF以外を標的とする生物学的製剤のほうが、他のTNF薬による治療よりも有効性が高いことが、フランス・ストラスブール大学病院のJacques-Eric Gottenberg氏らが行ったROC試験で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌2016年9月20日号に掲載された。腫瘍壊死因子α(TNF-α)阻害薬は、メトトレキサートの効果が十分でない関節リウマチ患者のQOLを改善するが、約3分の1の患者は疾患活動性が持続し、効果は不十分とされる。これらの患者の治療選択肢の指針は確立されていない。治療医が薬剤を選択するプラグマティックな無作為化試験 ROC(Rotation or Change)は、TNF-α阻害薬の効果が不十分な関節リウマチ患者において、TNF以外を標的とする生物学的製剤と、他の抗TNF薬の有効性を比較するプラグマティックな非盲検無作為化試験(フランス保健省の助成による)。 患者登録は、2009年12月~2012年8月にフランスの47施設で行われた。対象は、年齢18歳以上、びらんを認め、疾患活動性スコア(DAS28-ESR)が≧3.2(範囲:0~9.3)であり、抗TNF薬の効果が十分でない関節リウマチ患者であった。 被験者は、TNF以外を標的とする生物学的製剤(non-TNF)に切り換える群または前治療薬とは異なる抗TNF薬(2nd anti-TNF)を投与する群に無作為に割り付けられ、52週の治療が行われた。 non-TNF群の薬剤は、アバタセプト、リツキシマブ、トシリズマブであり、2nd anti-TNF群にはアダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、ゴリムマブが含まれた。各群の薬剤の選択は、治療医の裁量とした。 主要評価項目は、24週時の欧州リウマチ学会議(EULAR)の反応基準で良好(good:DAS28-ESRが1.2以上低下し、3.2以下となる)または中等度(moderate:同0.6以上低下し、5.1以下となる)の達成率であった。主要評価項目:69 vs.52%、他の抗TNF薬も約半数に有効 300例が登録された。両群に150例ずつが割り付けられ、146例ずつが解析の対象となった。ベースラインの平均年齢は57.1歳(SD 12.2)、女性が83.2%を占めた。 罹病期間中央値は10.0年(IQR:4.0~18.0)、合成DMARDの前投与数中央値は2.0(IQR:1.0~3.0)であり、DAS28-ESRは5.1(SD 1.1)、健康評価質問票(HAQ)の機能障害スコアは1.3(SD 0.6)であった。 24週時のEULAR反応基準で良好/中等度の達成率は、non-TNF群が69%(101/146例)であり、2nd anti-TNF群の52%(76/146例)に比べ有意に優れた(欠測値データ補完[各群4例ずつ]によるオッズ比[OR]:2.06、95%信頼区間[CI]:1.27~3.37、p=0.004、絶対差:17.2%、95%CI:6.2~28.2%)。 24週時のDAS28-ESRのベースラインからの変化の平均値は、non-TNF群が2nd anti-TNF群よりも大きく(補正平均差:-0.43、95%CI:-0.72~-0.14、p=0.004)、12週時(-0.40、-0.70~-0.10、p=0.008)、52週時(-0.38、-0.69~-0.08、p=0.01)にも有意差が認められた。 低疾患活動性(DAS28-ESR<3.2)の達成率は、24週時(45 vs.28%、OR:2.09、95%CI:1.27~3.43、p=0.004)、52週時(41 vs.23%、2.26、1.33~3.86、p=0.003)とも、non-TNF群が2nd anti-TNF群に比べ良好であった。 また、寛解(DAS28-ESR<2.6)の達成率も、non-TNF群が2nd anti-TNF群よりも優れた(12週時:p=0.02、52週時:p=0.008)。一方、HAQには両群間に有意な差はなかった(12週時:p=0.09、24週時:p=0.44、52週時:p=0.75)。 重篤な有害事象は、non-TNF群が16例(11%)に18件、2nd anti-TNF群は8例(5%)に13件発現した。重篤な感染症は、両群とも7例(5%)に認められた。 著者は、「治療効果はnon-TNF群のほうが高かったが、2nd anti-TNF群でも約半数の患者で臨床的改善効果が得られた」としている。

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TAVR後の感染性心内膜炎、リスク因子と転帰は?/JAMA

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)において、若年、男性、糖尿病、中等度~重度大動脈弁逆流残存は、感染性心内膜炎(IE)のリスク増加と有意に関連しており、心内膜炎を発症した患者は院内死亡率および2年時死亡率が高いことが明らかとなった。カナダ・ラヴァル大学のAnder Reguerio氏らが、TAVR後にIEと確定診断された患者を対象とした後ろ向き観察研究の結果、報告した。外科的弁置換術はIE発症や死亡率の高さと関連が示唆されているが、TAVRについては症例数の少なさや追跡期間の短さなどにより、術後IE患者の臨床的特徴や転帰に関するデータは限られていた。JAMA誌2016年9月13日号掲載の報告。TAVR施行患者約2万人を後ろ向きに調査、IE発症率は1.1%/人年 研究グループは、TAVR後IEに関連する因子、臨床的特徴および転帰を検討する目的で、2005年6月~2015年10月に欧州・北米・南米47施設においてTAVRが実施された2万6例について調査し、TAVR後IE発症率およびIEによる院内死亡率を評価した。 TAVR後にIEを発症し確定診断がなされた患者は2万6例中250例で、発症率は1.1%/人年(95%信頼区間[CI]:1.1~1.4%)、年齢中央値は80歳、男性が64%であった。また、TAVR施行からIE発症までの期間は、中央値で5.3ヵ月(四分位範囲:1.5~13.4)であった。TAVR後IE患者の院内死亡率は36%、院内死亡の予測因子は心不全 TAVR後IE発症の高リスク患者特性は、年齢が若い(IE有:78.9歳 vs.IE無:81.8歳、ハザード比[HR]:年当たり0.97、95%CI:0.94~0.99)、男性(62.0% vs.49.7%、HR:1.69、95%CI:1.13~2.52)、糖尿病(41.7% vs.30.0%、HR:1.52、95%CI:1.02~2.29)、中等度~重度大動脈弁逆流(22.4% vs.14.7%、HR:2.05、95%CI:1.28~3.28)であった。医療関連IE(入院後48時間以内、または入院前に何らかのケアを受けており入院時の血液培養で陽性反応)は、52.8%(95%CI:46.6~59.0%)で確認された。主な起炎菌は腸球菌(24.6%、95%CI:19.1~30.1%)および黄色ブドウ球菌(23.3%、95%CI:17.9~28.7%)であった。 IE患者250例中、入院中に90例が死亡し、院内死亡率は36%(95%CI:30.0~41.9%)であった。14.8%の患者にはIEに対し外科手術が行われた(95%CI:10.4~19.2%)。院内死亡は、logistic EuroSCORE高値(23.1% vs.18.6%、オッズ比[OR]:1%増加当たり1.03、95%CI:1.00~1.05)、心不全(59.3% vs.23.7%、OR:3.36、95%CI:1.74~6.45)、急性腎不全(67.4% vs.31.6%、OR:2.70、95%CI:1.42~5.11)と関連していた。2年時死亡率は66.7%(95%CI:59.0~74.2%、死亡132例、生存115例)であった。

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帯状疱疹の新規ワクチンの有効性、70歳以上では9割/NEJM

 組換え水痘帯状疱疹ウイルス糖蛋白EとAS01Bアジュバントを組み合わせた帯状疱疹サブユニットワクチン(HZ/su)の70歳以上高齢者に対する予防効果について、帯状疱疹の有効性は約91%、帯状疱疹後神経痛に対する有効性は約89%であることが示された。オーストラリア・シドニー大学のA.L.Cunningham氏らが、約1万4,000例を対象に行った第III相のプラセボ対照無作為化比較試験「ZOE-70」の結果で、NEJM誌2016年9月15日号で発表した。すでに、50歳以上を対象にHZ/suの有効性について検証した「ZOE-50」試験では、帯状疱疹リスクがプラセボに比べ97.2%減少したことが示されていた。ワクチンを2ヵ月間隔で2回投与 研究グループは18ヵ国で集めた70歳以上の成人1万3,900例を無作為に2群に分け、一方にはHZ/suを、もう一方にはプラセボを、2ヵ月間隔で2回、筋肉投与した。 すでに実施済みのZOE-50試験と、今回の試験を合わせて、70歳以上への帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛へのワクチンの有効性について検証を行った。ワクチン有効性、帯状疱疹は91.3%、帯状疱疹後神経痛は88.8% ZOE-70被験者の平均年齢は75.6歳だった。 追跡期間中央値3.7年の期間中、帯状疱疹を発症したのは、プラセボ群223例だったのに対し、HZ/su群は23例と大幅に減少した(発症率はそれぞれ、9.2/1,000人年、0.9/1,000人年)。 帯状疱疹に対するワクチンの有効率は89.8%(95%信頼区間:84.2~93.7、p<0.001)で、70~79歳では90.0%、80歳以上では89.1%で、高年齢でも有効性は同等だった。 ZOE-50の70歳以上の被験者とZOE-70の被験者の計1万6,596例についてプール解析をしたところ、帯状疱疹に対するワクチン有効率は91.3%(同:86.8~94.5、p<0.001)、帯状疱疹後神経痛への有効率は88.8%(同:68.7~97.1、p<0.001)だった。 なお、接種後7日以内の自発的ではない注射部位や全身反応の報告は、HZ/su群(79.0%)のほうがプラセボ群(29.5%)よりも高率だった。一方で、重篤有害事象や免疫が介在していると考えられる疾患、死亡については、両群で同等だった。

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亜急性硬化性全脳炎〔SSPE : subacute sclerosing panencephalitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis: SSPE)は、1934年Dawsonにより急速進行する脳炎として初めて報告された。この疾患は、麻疹に感染してから数年の潜伏期間を経て発症する。発病後は数ヵ月から数年の経過(亜急性)で神経症状が進行し、病巣の性状はグリオーシス(硬化)であり、全脳を侵すことにより、亜急性硬化性全脳炎と呼ばれる。このように潜伏期間が長く、緩徐に進行するウイルス感染を遅発性ウイルス感染と呼び、ほかにはJCウイルスによる進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy: PML)が知られている。根本的治療法は確立されておらず、現在でも予後不良の疾患である。■ 疫学わが国での発症者は、麻疹ワクチンが普及する以前は年間10~15人程度であったが、麻疹ワクチン普及後は減少し、現在は年間5~10人程度となっている。男女比は2 : 1でやや男性に多く、潜伏期間、症状の発症とも女性と比較すると長く、遅くなっている。SSPEの発症年齢は平均12歳で、20代をピークに10~30歳代で96%を占める。麻疹ワクチンによるSSPEの発症は認められておらず、SSPE発症には直接的な麻疹ウイルス(MV)感染が必要であるため、発症予防には麻疹への感染予防が重要であるが、わが国では他の先進国に比べて麻疹ワクチンの接種率が低く、接種率向上が必要である。■ 病因SSPEの発症のメカニズムは現在まで十分には判明していないが、発症に関与する要因として、ウイルス側のものと宿主側のものが考えられている。1)ウイルス側の要因MVの変異株(SSPEウイルスと呼ぶ)が、中枢神経に持続感染することで起こる。SSPEウイルスは野生のMVと比較すると、M遺伝子やF遺伝子の変異が生じている。M遺伝子は、ウイルス粒子形成とカプシドからの粒子の遊離に重要なMタンパク質をコードし、Mタンパク質機能不全のため、SSPEウイルスは、感染性ウイルス粒子を産生できない。そのため隣接する細胞同士を融合させながら、感染を拡大していく。F遺伝子は、エンベロープ融合に関与するFタンパク質をコードし、一般にはSSPEウイルスはFタンパク質の膜融合が亢進しており、神経親和性が高くなっている。2)宿主側の要因幼少期にMV初感染を受けると免疫系や中枢神経系が十分に発達していないため、MVの脳内での持続感染が起こりやすく、SSPE発症リスクが上がる。ほかにSSPE発症に関わる遺伝的要因として、これまでにIL-4遺伝子多型とMxA遺伝子多型が報告されている。IL-4は、ヘルパーT細胞のTh1/Th2バランスをTh2(抗体産生)側に傾けるサイトカインで、SSPE患者ではIL-4産生が多いタイプの遺伝子多型を持つことが多いために、IL-4産生が亢進してTh2側に傾き、細胞傷害性T細胞の活性が抑えられて、MVの持続感染が起こりやすくなっていると考えられている。また、SSPE患者はインターフェロンによって誘導され、細胞内でのウイルス増殖を抑える機能を持つ、MxAの産生が多くなる遺伝子多型を持つことも知られている。MxA産生が多いと、中枢神経系のMV増殖が抑制され、MVに感染した神経細胞が免疫系から認識されにくくなり、中枢神経系での持続感染が起こりやすくなると考えられている。■ 症状と特徴初発症状として、学校の成績低下、記憶力低下、行動の異常、性格の変化があり、その後、歩行障害、ミオクローヌス、痙攣、自律神経症状、筋固縮を来し、最終的には無言・無動となり、死に至ることが多い。これらの症状の分類には、Jabbourが提唱した臨床病期分類が一般的に用いられる。■ Jabbourの分類第1期精神神経症状性格変化(無関心、反抗的)、学力低下、行動異常など第2期痙攣および運動徴候痙攣のタイプは全身強直発作、失神発作、複雑部分発作など運動徴候として運動機能低下、不随意運動(SSPEに特徴的な四肢の屈曲や進展を反復するミオクローヌス)第3期昏睡に至る意識障害の進行、筋緊張の亢進、球症状の出現による経口摂取困難、自律神経症状など第4期無言無動、ミオクローヌス消失全経過は通常数年だが、数ヵ月以内に死に至る急性型(約10%)、数年以上の経過を示す慢性型(約10%)がある。■ 予後SSPE症例は、無治療の場合は約80%が亜急性の経過をたどり、約1~3年の経過で第1期から第4期の順に進行し死亡する。約10%は発症後急速に進行し、3ヵ月以内に死亡する。また、残り約10%の進行は緩徐で、約4年以上生存する。無治療で寛解する症例や、寛解と増悪を繰り返す症例も報告されている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は、臨床症状を軸に血液、髄液、脳波、画像検査を統合して行う。■ 特徴的な検査所見1)麻疹抗体価血清および髄液の麻疹抗体価が上昇する。髄液麻疹抗体価の上昇はSSPEに特異的であり、検出されれば診断的意義が高い。SSPE患者の抗体価は異常高値が特徴とされたが、最近では、軽度上昇にとどまる症例も多く、注意が必要である。また、抗体価の推移と臨床経過は必ずしも一致しない。2)髄液検査多くの場合は細胞数・糖・蛋白とも正常だが、細胞数・蛋白が軽度上昇することもある。また、髄液IgGおよびIgG indexの上昇も認める。3)脳波検査Jabbour2期から3期にかけて、左右同期性または非同期性で3~20秒間隔で出現する周期性同期性高振幅徐波をほとんどの症例で認めるが、Jabbour4期になると消失する(図)。画像を拡大する4)画像検査MRIは、疾患の推移を評価するのに有用である。画像変化は臨床病期とは一致せず、主に罹患期間に依存する。病初期のMRI所見では、正常または後頭葉の皮質・皮質下に非対称なT2強調画像での高信号の病変を認める。病期の進行とともに脳萎縮が進行し、側脳室周囲に対称性の白質病変が出現・拡大する。5)病理病理所見の特徴は、灰白質と白質の両方が障害される全脳炎であることと、線維性グリオーシスにより硬化性変化を示すことである。組織学的には、軟膜と血管周囲の炎症細胞浸潤、グリア細胞の増生、ニューロンの脱落および神経原線維変化の形成、脱髄などの所見がみられる。炎症所見は、発症からの経過が長いほど乏しくなる。麻疹ウイルス感染に関連した所見として、核内および細胞質の封入体を認める。■ 鑑別診断SSPEは急速に進行する認知症、ミオクローヌス、痙攣などを来す疾患の一部であり、ADEM(acute disseminated encephalomyelitis)、亜急性および慢性脳炎、脳腫瘍、多発性硬化症、代謝性白質脳症、進行性ミオクローヌスてんかんなどが鑑別に挙がる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ イノシンプラノベクスイノシンプラノベクス(商品名: イソプリノシン)は、抗ウイルス作用と免疫賦活作用を併せ持つ薬剤で、保険適用薬として認可されている。通常50~100mg/kg/日を3~4回に分割し、経口的に投与する。これにより生存期間の延長が得られるとされている。副作用として、血中および尿中の尿酸値の上昇(18.8%)があり、注意を要する。■ インターフェロン(IFN)インターフェロンは、ウイルス増殖阻害作用を持つ薬剤であり、IFNα、IFNγともに保険適用薬として認可されている。イノシンプラノベクスとの併用により有効であったとの報告例を多数認める。通常100~300万単位を週1~3回、脳室内に直接投与する。副作用として一過性の発熱をほぼ全例で認める。頻度は低いが、アレルギー反応を来す症例も認める。イノシンプラノベクス経口投与とIFN髄腔内または脳室内投与を併用するのが一般的で、有効性は言われているものの進行を阻止した例はまれであり、治療効果として不十分と考えられている。■ リバビリン近年、研究的治療(保険適用外)として、リバビリンの髄腔内または脳室内投与療法が試みられている。リバビリンは、広い抗ウイルススペクトラムを有する薬剤であり、麻疹(SSPE)ウイルスに対しても優れた抗ウイルス効果を示す。直接脳室内に投与することで、髄液中のリバビリン濃度はウイルス増殖を完全に抑制する濃度に維持され、重篤な副作用を認めず、少数例ではあるが臨床的有効性が報告されている。しかし、病初期(Jabbour2期)に投与した症例においては、臨床症状に明らかな改善を認めたとする報告が多く、病期の進行した症例(Jabbour3期)では改善効果に乏しかったとする報告が多い。以上のことから、リバビリン療法は、リバビリンがウイルスの増殖を抑制して病期の進行を抑制する治療法であり、進行した神経障害を改善させるものではないと考えられている。■ 対症療法上記の治療のほかには対症療法として、ミオクローヌスのコントロールや呼吸管理、血圧コントロールなどの対症療法を行っていく必要がある。4 今後の展望SSPEの重症度の評価として、新たにトリプトファン代謝の主要経路であるキヌレニン経路の代謝産物の髄液中濃度について検討されている。SSPE群では対象例と比較し、髄液中のキノリン酸濃度が有意に高値であり、病期の進行とともに増加が認められている。代謝産物であるキノリン酸の増加はキヌレニン経路の活性化が示唆され、その活性化はSSPEにおける変異型麻疹ウイルスの持続感染に関与している可能性がある。さらにキノリン酸は NMDA型グルタミン酸受容体アゴニストとして興奮性神経毒性を持つため、SSPEにおける神経症状との関係が示唆されている。また、前述したが、研究的治療としてリバビリン髄腔内または脳室内投与が有望である可能性が考えられている。具体的な投与方法として、リバビリン1mg/kg/回、1日2回、5日間投与から開始し、1回量、投与回数を調整し、髄液リバビリン濃度を目標濃度(50~200μg/mL)にする。投与量が決定したら、5日間投与・9日間休薬を12クール(6ヵ月)継続するものとなっている。効果としては、国内で詳細に調査された9例において、治療前後の臨床スコアの平均は前が52.9、後が51.0であり、治療前後で有意差は認めなかった。しかし、イノシンプラノベクスとIFNの併用療法を施行された48症例では治療前後の臨床スコアは前が54.3、後が61.1と悪化を認めており、リバビリン脳室内投与群のほうが優る結果となっている。しかしSSPEは、症例により異なる経過をたどり、その経過も長いため、多数例の調査を行ったうえでの慎重な判断が必要である。5 主たる診療科神経内科および小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 亜急性硬化性全脳炎(一般利用者向けと医療従事者むけのまとまった情報)プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究班(医療従事者向けの情報)患者会情報SSPE青空の会(SSPE患者とその家族の会)1)厚生労働省難治性疾患克服研究事業 プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班. 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)診療ガイドライン(案)2)平成27年度(2015年度)プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班 総括研究報告書3)Gutierrez J, et al. Dev Med Child Neurol.2010;52:901-907.公開履歴初回2014年05月19日更新2016年09月20日

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可愛い孫は、肺炎を持ってくる

孫の世話に疲れる高齢者 大都市の待機児童の問題にみられるように、保育園や幼稚園に入所できず、祖父母に子供を預ける共働き世帯も多い。また、地方では、2世帯同居が珍しくなく、日中、孫の育児を祖父母がみるという家庭も多い。そんななか、預かった孫の世話に追われ、体力的にも精神的にも疲れてしまう「孫疲れ」という現象が、最近顕在化しているという。晩婚化のため祖父母が高齢化し、体力的に衰えてきているところに、孫の育児をすることで、身体が追いついていかないことが原因ともいわれている。家庭内で感染する感染症 そして、孫に疲れた高齢者に家庭内、とくに孫から祖父母へうつる感染症が問題となっている。子供は、よく感染症を外からもらってくる。風邪、インフルエンザをはじめとして、アデノウイルス、ノロウイルス、帯状疱疹など種々の細菌、ウイルスが子供への感染をきっかけに家庭内に持ち込まれ、両親、兄弟、祖父母へと感染を拡大させる。 日頃孫の面倒をみていない祖父母でも、お盆や年末、大型連休などの帰省シーズンに帰ってきた孫との接触で感染することも十分考えられ、連休明けに高齢者の風邪や肺炎患者が外来で増えているなと感じている医療者も多いのではないだろうか1)。ワクチンで予防できる肺炎 なかでも高齢者が、注意しなくてはいけないのが「肺炎」である。肺炎は、厚生労働省の「人口動態統計(2013年)」によれば、がん、心疾患についで死亡原因の第3位であり、近年も徐々に上昇しつつある。また、肺炎による死亡者の96.8%を65歳以上の高齢者が占めることから肺炎にかからない対策が望まれる。 日常生活でできる肺炎予防としては、口腔・上下気道のクリーニング、嚥下障害・誤嚥の予防、栄養の保持、加湿器使用などでの環境整備、ワクチン接種が推奨されている。とくにワクチン接種については、高齢者の市中肺炎の原因菌の約4分の1が肺炎球菌と報告2)されていることから、2014年よりわが国の施策として、高齢者を対象に肺炎球菌ワクチンが定期接種となり、実施されている。 定期接種では、65歳以上の高齢者に23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(商品名:ニューモバックスNP)の接種が行われ、平成30年度まで経過措置として65歳から5歳刻みで区切った年齢の該当者に接種が行われる。定期接種の注意点と効果を上げるコツ 定期接種の際に気を付けたいことは、経過措置の期間中に接種年齢に該当する高齢者が接種を受けなかった場合、以後は補助が受けられず自己負担となってしまうことである(自治体によっては、独自の補助などもある)。また、過去にこのワクチンの任意接種を受けた人も、定期接種の対象からは外れてしまうので注意が必要となる。 そして、ワクチンの効果は約5年とされ、以後は継続して任意で接種を受けることが望ましいとされている。 このほか高齢者においては肺炎球菌ワクチンだけでなく、同時にインフルエンザワクチンも接種することで、発症リスクを減らすことが期待できるとされる3,4)。低年齢の子供へのインフルエンザワクチンの接種により、高齢者のインフルエンザ感染が減少したという報告5)と同様に肺炎球菌ワクチンでも同じような報告6)があり、今後のワクチン接種の展開が期待されている。 普段からの孫との同居や預かり、連休の帰省時の接触など、年間を通じて何かと幼い子供と接する機会の多い高齢者が、健康寿命を長く保つためにも、高齢者と子供が同時にワクチンを接種するなどの医療政策の推進が、現在求められている。 この秋から冬の流行シーズンを控え、今から万全の対策が望まれる。(ケアネット 稲川 進)参考文献 1)Walter ND, et al. N Engl J Med. 2009;361:2584-2585. 2)日本呼吸器学会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 2007;15. 3)Maruyama T, et al. BMJ. 2010;340:c1004. 4)Kawakami K, et al. Vaccine. 2010;28:7063-7069. 5)Reichert TA, et al. N Engl J Med. 2001;344:889-896. 6)Pilishvili T, et al. J Infect Dis. 2010;201:32-41.参考サイト ケアネット・ドットコム 特集 肺炎 厚生労働省 肺炎球菌感染症(高齢者):定期接種のお知らせ 肺炎予防.JP

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非虚血性収縮不全の心不全例に対する予防的ICDは予後を改善しない(解説:今井 靖 氏)-591

 植込み型電気除細動器(ICD)は、虚血性・非虚血性心不全のいずれにおいても、心室細動・血行動態の破綻を伴う心室頻拍の既往例の再発予防(2次予防)として、また既往がなくともそのリスクが高い症例の予防(1次予防)として適応され、国内外いずれのガイドラインでも推奨・考慮される治療法として掲げられている。 虚血性心疾患による収縮不全に伴う心不全に対するICDの有用性は、複数の臨床試験により明らかになっているが、非虚血性心疾患については予防的ICDの意義はサブ解析で示されるのみである。 今回、NEJM誌に報告されたDANISH試験と呼ばれる研究は、冠動脈疾患によらない収縮不全を伴う症候性心不全(EF35%以下)1,116例を対象に、予防的ICDの有益性を無作為化比較試験により検証するものであった。ICD群に556例、非植込み(通常治療群、対照群)に560例が割り付けられた。両群とも58%が心臓再同期療法CRTを受けた。主要評価項目はすべての原因による死亡(総死亡)、副次評価項目は心臓突然死および心臓血管死とされた。 追跡期間の中央値は67.6ヵ月で、主要評価項目である全死因死亡率はICD群120例21.6%、通常治療群131例23.4%で、ICDによる有意な低下はみられなかった(ハザード比:0.87、95%CI:0.68~1.12、p=0.28)。心臓突然死は、ICD群24例4.3%、通常治療群46例8.2%(ハザード比:0.50、95%CI:0.31~0.82、p=0.005)とICD群で有意に低率であった。デバイス感染症は決して低くなく、ICD27例4.9%、通常治療群で20例3.6%、 p=0.29。まとめると、虚血性心疾患によらない収縮不全による心不全症例では、ICDによる生存率改善効果が示されず、またCRT植込みの有無によらないという結果であった。 米国におけるAHAガイドラインによれば、虚血、非虚血にかかわりなく収縮不全による有症候性心不全に対してはICDはクラスIA適応とされている。一方、欧州では非虚血についてはクラスIBと推奨を1ランク下げている。これらのガイドラインのよりどころとする臨床試験は10年以上前のものであり、虚血の評価も既往などに基づく分類であること、またCRT植込み症例は除かれている点で、論文根拠としては脆弱な面があり、今回の報告は意外な結果であったが、今後のICD適応判断に有益な情報を提供するものとなった。

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