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第90回 オミクロン株そのものを使った実験でワクチン追加接種の効果を確認

Pfizer(ファイザー)/BioNTech(ビオンテック)の1週間ほど前の発表1,2)に続き、Reutersが報じたイスラエルでの研究でも両社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2追加接種がどうやらオミクロン(Omicron)株に有効らしいことが示されました。BNT162b2を2回接種の人の血液はオミクロン株を全く中和できませんでしたが、3回目接種は中和活性を100倍ほど高めたとイスラエルのSheba Medical CenterのGili Regev-Yochay氏が先週土曜日11日に記者会見で発表しました3)。Regev-Yochay氏は同病院の感染症部門を率いています。その発表の3日前の8日水曜日に発表されたPfizer/BioNTechの研究1)によると、BNT162b2の2回接種を済ませた人の血清のオミクロン株に対する中和効果は著しく弱く、他のSARS-CoV-2株に対する中和活性の25分の1未満ほどでしかありませんでした。しかし3回目接種をした人のオミクロン株スパイクタンパク質に対する中和抗体活性は2回接種後に比べて25倍高く、3回接種後のオミクロン株中和活性は2回接種後の非オミクロン株中和活性に肩を並べるほどになると示唆されました。Pfizer/BioNTechとイスラエルの研究はどちらもオミクロン株への3回接種の効果を示すものですが中身が少し違っています。Pfizer/BioNTechの研究ではオミクロン株そのものではなくオミクロン株の変異を仕込んだ代理ウイルス(pseudovirus)が使われました3)。一方、イスラエルの研究はBNT162b2を2回接種してから5~6ヵ月経つ人と3回目接種してから間もない(1ヵ月後)人の血液のオミクロン株そのものへの効果を比較しており、オミクロン株そのものを使ったぶん実態により即しているようです。2回接種群と3回接種群の人数はどちらも20人です。ともあれBNT162b2の3回接種がオミクロン株に有効らしいことが2つの異なる研究で示されたことは頼もしい限りです。BNT162b2を3回接種すればオミクロン株からより確実に身を守れるとPfizerのCEO・Albert Bourla氏は言っています1)。米国の感染症対策の本丸・国立アレルギー感染症研究所(NIAID)を率いるAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)氏もBourla氏と似た考えのようです。ニュースのインタビューでファウチ氏は追加接種が最善(optimal care)であり4)、引き続き検討が必要ではあるもののオミクロン株に特化したワクチンを揃える必要はないかもしれないと言っています5)。米国でのオミクロン株感染は概ね軽症で済んでいる米国でのオミクロン株感染は初出の12月1日から1週間後8日までに22州で確認されています。経過が一通り判明しているそれらオミクロン株感染者43人を調べたところ多くがワクチン接種済みでしたが、幸いなことに概ね軽症で済んでおり、1人が2日間の入院を要したものの誰も死には至っていません6-8)。43人のうち34人(79%)はワクチン接種済みで、およそ3人に1人(14人)は追加接種済みでもありました。咳(89%;33人)、疲労感(65%;24人)、鼻水/鼻詰まり(59%;22人)を多くが呈し、他に発熱(38%;14人)、悪心嘔吐(22%;8人)、息切れ/呼吸困難(16%;6人)、下痢(11%;4人)、味覚や嗅覚の消失(8%;3人)が認められました6)。最も早い発症日は11月15日でした。検体採取からウイルス配列判明まで2~3週間を要したことから11月遅くに発生したオミクロン株感染の同定が近々続くだろうと著者は言っています。参考1)Pfizer and BioNTech Provide Update on Omicron Variant / BUSINESS WIRE2)ファイザー製コロナワクチン、3回接種でオミクロン株にも効果 / ケアネット3)Israeli study finds Pfizer COVID-19 booster protects against Omicron / Reuters4)Fauci says three shots of COVID-19 vaccine is 'optimal care' / Reuters5)Fauci says Omicron-specific version of Covid-19 vaccines may not be necessary / STAT6)CDC COVID-19 Response Team. MMWR. Morbidity and Mortality Weekly Report.2021 December 10 [Epub ahead of print]7)Most reported U.S. Omicron cases have hit the fully vaccinated -CDC / Reuters8)Early U.S. Omicron Cases Caused Mild Illness in Vaccinated / Bloomberg

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コロナ抗原定性検査の種類・活用方法を患者さんに聞かれたら/臨薬協など

 「ワクチン・検査パッケージ」ではPCR検査や抗原定量検査が推奨されているが、抗原定性検査の利用も可能とされ、9月からは薬局での販売も解禁されている。しかし、抗原定性検査は鼻腔ぬぐい液の採取が必要で使用に難しさがある点や、精度と活用方法を理解したうえでの使用が求められる点、未承認のキットも販売されている点など、課題も多い。日本臨床検査薬協会(臨薬協)は11月、抗原定性検査キットの適正な使用を促進し感染制御に資することを目的として、臨床検査振興協議会による一般消費者向けの啓発資料「医療用(体外診断用医薬品)抗原定性検査キットとは?」のウェブサイト掲載を受けて、ホームページ上で抗原定性検査キットの種類を「新型コロナウイルス感染症の医療用抗原簡易キット一覧」で公開している。抗原定性検査の結果=診断ではないことを理解してもらう必要 政府の新型コロナウイルス感染症対策本部では、制度開始にあたり公開した「ワクチン・検査パッケージ制度要綱」の中で、無症状者に対する抗原定性検査は、確定診断としての使用は推奨されないが、無症状者の感染者のうちウイルス量が多いものを発見することにより、事前に PCR 検査等を受検することができない場合にも対応する観点から、場の感染リスクを下げうるとの考え方に基づき、利用可能としている。 また、抗原定性検査の実施方法について詳細・留意点をまとめた「ワクチン・検査パッケージ制度における抗原定性検査の実施要綱」では、飲食店やイベント主催者等が抗原定性検査を実施する際は、担当者の研修受講や陽性者が出た場合の紹介先としての医療機関との連携を求めているほか、結果は、あくまでもワクチン・検査パッケージ制度においてのみ用いられるものであり、受検者が新型コロナ感染者の患者であるかどうかの診断には用いることができないと明記されている。抗原定性検査キットの購入から廃棄までの留意点をQ&Aで説明 臨床検査振興協議会による一般消費者向けの啓発資料「医療用(体外診断用医薬品)抗原定性検査キットとは?」では、キットの購入から検査実施とその後の対応、さらに使用済キットの廃棄までのプロセスにおいて留意すべき点を、イラストを用いながら解説している。設けられている8つのQは以下の通り:Q1医療用の抗原定性検査キットが薬局で買えるようになったと聞いたけど、抗原定性検査キットって何ですか?Q2抗原定性検査ってPCR 検査と何が違うの?Q3薬局には、「研究用」と書いてある検査キットも売っているけど「医療用」とは何が違うの?Q4薬局で普通に買えるの?Q5「医療用」の検査キットを買ってきました。でも、テレビで見たものと違うみたい…大丈夫なのかな?Q6なんだかインフルエンザの時の検査みたいですね。鼻の奥をぐりぐりされて痛かった記憶があるけど、自分で出来るか不安です。Q7結果が出たけど、どうしたらよいの?Q8検査キットは普通に捨ててよいの?抗原定性検査キットで製造販売承認を取得している製品を一覧化 「新型コロナウイルス感染症の医療用抗原簡易キット一覧」では、2021年11月17日時点で製造販売承認を取得している抗原定性検査キット16製品について一覧化して示している。それぞれの抗原定性検査キットで少しずつ使い方が異なっていることから、うちいくつかの製品については、各社のキットの使用上の注意点に関する動画等が閲覧できるサイトへのリンクが貼られている。

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第81回 医師79人の残業代未払い計1億円、3回目の勧告で支払いへ

<先週の動き>1.医師79人の残業代未払い計1億円、3回目の勧告で支払いへ2.オミクロン株懸念、海外渡航歴のある全陽性者に入院要請/厚労省3.年収200万円以上の後期高齢者の自己負担2割、来年10月から4.コロナ病床確保のため、感染症法改正案を来年の通常国会に提出へ5.自宅療養者へアビガンの不適切処方が問題に/千葉県6.介護老人保健施設で殺人事件、看護師が逮捕/茨城県警1.医師79人の残業代未払い計1億円、3回目の勧告で支払いへ医師の時間外労働について、すべての医師を管理職と位置付けて割増賃金を支給していなかったとして、宮城県の気仙沼市立病院が労働基準監督署から是正勧告を受けた。勧告に従い、未払いの賃金について、医師79人に計約1億円を年度内に支払う。これまでに同院は2017~2021年にかけて3回、同じ趣旨の勧告を受けていた。現在は診療科長以上を管理職とするよう規則を改めている。(参考)「医師は全て管理職」に是正勧告 残業代1億円支払いへ 気仙沼市立病院(河北新報)医師79人に残業代計1億円を未払い 宮城・気仙沼市立病院 病院側は全員に計1億円余り支払う方針(東日本放送)2.オミクロン株懸念、海外渡航歴のある全陽性者に入院要請/厚労省厚生労働省は、国内での新型コロナウイルスの変異型「オミクロン株」の感染予防策として、新型コロナウイルスの陽性者のうち、過去14日以内に海外渡航歴があるすべての人を入院させるよう、自治体に要請した。陽性者がオミクロン株に感染しているかどうかを調べるには時間がかかるため、結果が出るまではオミクロン株感染疑い例として扱うこととなる。オミクロン株の感染症例は、症状がある人は回復後に、無症状の場合は陽性確認6日後に、それぞれ2回連続で陰性を確認後に退院が可能となる。(参考)入国2週間以内の全陽性者を入院へ 厚労省、オミクロン警戒で要請(朝日新聞)オミクロン株 検疫外で初確認…岐阜の男性(読売新聞)3.年収200万円以上の後期高齢者の自己負担2割、来年10月から政府は、75歳以上の高齢者の医療費負担について、原則1割負担から年収200万円以上の場合2割へ引き上げる時期を来年10月とする方向で検討に入った。来年以降、団塊世代が後期高齢者に入ることを踏まえ、医療費の増加が見込まれている。政府は現役世代の負担増加を抑えるため、今年6月に医療制度改革関連法で2割負担の導入を決めており、来年の予算編成で導入時期を正式に決める。75歳以上の高齢者の窓口負担が2割となる対象者は約370万人だが、今後の医療費抑制策についてさらに検討を進めると見られる。(参考)75歳以上の医療費2割負担 来年10月から実施で検討 政府(NHK)75歳以上医療費2割負担、22年10月から 厚労省調整(日経新聞)4.コロナ病床確保のため、感染症法改正案を来年の通常国会に提出へ政府は、新型コロナウイルス感染症対策を強化するため、来年の1月に開会される通常国会に感染症改正案などを提出する見通しだ。新型コロナ患者に対応する病床を確保するために、国や自治体と医療機関が結ぶ協定を法律上の仕組みで実効性を高め、民間病院に対しても協議に応じるよう義務付け、平時から取り組みを進めるのが狙い。また、都道府県に対しても、自宅や宿泊施設での療養者の健康観察を義務付け、新たな公費負担医療制度を創設する見込み。(参考)感染症法改正案、22年国会提出 コロナ病床確保、検疫強化へ(東京新聞)医療機関と協定法定化 感染症法改正案全容判明(産経新聞)5.自宅療養者へアビガンの不適切処方が問題に/千葉県今年の8~9月、千葉県いすみ市の公立病院「いすみ医療センター」で、自宅療養中の新型コロナウイルス感染者90例以上に対して、抗インフルエンザ薬「ファビピラビル(商品名:アビガン)」を処方していた問題で、12月7日に記者会見を開き、不適切な処方だったとして謝罪した。厚労省は、ファビピラビルのコロナ患者への投与については研究名目で、患者の同意を前提に入院患者に限って認めていた。病院によれば、8月中旬は病床が逼迫した状況であり、当時同院のアドバイザーだった医師が、いすみ市が開催した会議で自宅療養者に対してファビピラビルを含めた複数の薬剤を投与する旨を発言し、保健所長も同意していたという。現在のところ、重篤な健康被害は確認されていない。(参考)自宅療養者へのアビガン処方 担当医「やむをえなかった」(朝日新聞)アビガン処方、車の窓越しに医師「コロナに打ち勝つぞ」…患者「説明理解できず」(読売新聞)10代含む自宅療養者90人にアビガン投与 厚労省通知に違反か 千葉・いすみ医療センター(東京新聞)コロナ未承認薬のアビガン処方、保健所長も同意…病院関係者の聞き取り開始(千葉日報)6.介護老人保健施設で殺人事件、看護師が逮捕/茨城県警茨城県古河市の介護老人保健施設「けやきの舎(いえ)」で、去年7月に入所中の男性が殺害されたとして、殺人容疑で当時介護職員として勤務していた元職員を茨城県警が8日に逮捕した。捜査関係者によると、この施設では複数の入所者の不審死が確認されており、県警が関連について調べている。死亡した76歳男性の死因は空気塞栓による急性循環不全であり、当日に同容疑者が普段は使わないシリンジ(注射筒)を使っているのを目撃され、同日に退職していた。容疑者は看護師の資格を持ち、昨年4月から介護職員として同施設で勤務し、研修中だった。(参考)76歳死亡の介護施設 複数不審死を確認 県警、関連調べる 茨城(毎日新聞)注射筒使用を同僚が目撃 逮捕の元職員、通常扱わず(日経新聞)古河の入所者男性殺害事件 遺体に「多量の空気注入」痕跡(NHK)

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事例039 食道カンジダ症で処方したフロリードゲルが査定【斬らレセプト シーズン2】

解説食道にカンジダがみつかり治療を開始した症例です。ミコナゾールゲル(商品名:フロリードゲル)経口用2%(以降「本剤」)を処方したところB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)で査定となりました。添付文書には、本剤は「通常、成人には一般名ミコナゾールとして1日200~400mg(ミコナゾールゲル 10~20g)を4回に分け、口腔内に含んだ後、少量ずつ嚥下する」、「本剤の投与期間は原則として14日間とする。なお、本剤を7日間投与しても症状の改善がみられない場合には本剤の投与を中止し、他の適切な療法に切り替えること」とあります。査定となったレセプトは、投与日数が56日分であり、添付文書の限度日数を大きく超えて過剰投与であることを理由に査定となったことがわかります。さらによく確認すると、投与量が1日量5gと明らかに少ない表示でした。カルテには「本剤56本 400mg分4×14」と処方があり、投与1週間後の効果確認の再診も確認できました。同様事例が複数みられたため原因を調べてみました。本剤は、5g(100mg)1本が製品単位です。内服薬に分類され、1g単位価格で薬価収載されています。事例では、1日量に換算して20g×14日分と入力すべきでした。会計担当者に確かめると、医師の処方の前段のみ捉え、製品単位の1本5gを56日分と誤入力していたものでした。製品単位と薬価収載単位が異なる場合によくみられる誤入力です。本例では、薬価も4分の1となるためにレセプトの取り下げを行い、正してから再請求しています。今後の査定対策として、レセプトチェックシステムにも登録をしました。しかしながら、同様の誤入力が発生しやすい抗がん剤などの高額薬剤は多数あります。レセプト請求と払い出し額に大きな差があるようでしたら、原因を調べていただくことをお勧めします。

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コロナワクチン3種の有効性、流行株で変化?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)、mRNA-1273(Moderna製)、Ad26.COV2.S(Janssen/Johnson & Johnson製)の3種類のワクチンの有効性は、デルタ変異株が優勢になるに伴ってやや低下したものの、COVID-19による入院に対する有効性は高いまま維持されていた。ただし、65歳以上でBNT162b2またはmRNA-1273ワクチン接種者に限ってみると、COVID-19による入院に対する有効率はわずかに低下していたという。米国・ニューヨーク(NY)州保健局のEli S. Rosenberg氏らが、同州データベースを用いた前向きコホート研究の解析結果を報告した。FDAが承認した3種類のCOVID-19ワクチンの有効性に関する、米国の地域住民を対象としたデータは限られており、ワクチンの有効性の低下が、免疫の減弱、デルタ変異株または他の原因に起因するかどうかについても不明であった。著者は、「今回の結果は、COVID-19患者を減少させるためには、予防行動に加えてワクチンが引き続き有効であることを支持するものである」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年12月1日号掲載の報告。NY州869万人における3種類のワクチンの有効性を検証 研究グループは、NY州における4つのデータベース(CIR、NYSIIS、ECLRS、HERDS)※を連携して、同州居住18歳以上の成人869万825例を対象とするコホートを構築し、BNT162b2、mRNA-1273およびAd26.COV2.Sワクチンの有効性を評価した。 評価項目は、2021年5月1日~9月3日における検査で確認されたCOVID-19に対するワクチンの有効性、ならびに2021年5月1日~8月31日におけるCOVID-19による入院(入院時または入院後にCOVID-19と確定診断)に対するワクチンの有効性で、接種したワクチンの種類、年齢、ワクチン接種完了月に準じて定義したコホートと、年齢別のワクチン未接種コホートを比較した。※CIR(Citywide Immunization Registry):NY市居住者のCOVID-19ワクチン接種に関する全データ、NYSIIS(New York State Immunization Information System):NY州およびその他の地域のCOVID-19ワクチン接種に関するデータ、ECLRS(Electronic Clinical Laboratory Reporting System):NY州のすべてのCOVID-19検査結果、HERDS(Health Electronic Response Data System):NY州内全入院施設の日次電子調査(COVID-19の診断が確認された人の全新規入院に関するデータ日次新型コロナ入院データを収集)2021年5月~8月に、3種類すべてで有効性が低下 対象期間中に、COVID-19は15万865例、COVID-19による入院は1万4,477例確認された。 流行中の変異株に占めるデルタ変異株の割合が1.8%だった2021年5月1日の週において、COVID-19に対する有効率中央値は、BNT162b2で91.3%(範囲:84.1~97.0)、mRNA-1273で96.9%(93.7~98.0)、Ad26.COV2.Sで86.6%(77.8~89.7)であった。 その後、有効率は全コホートで同時に低下し、全体の有効率中央値は5月1日の週の93.4%(範囲:77.8~98.0)から、デルタ変異株が85.3%を占めた7月10日頃には73.5%(13.8~90.0)、デルタ変異株が99.6%を占めた8月28日の週には74.2%(63.4~86.8)となった。 一方、COVID-19による入院に対する有効率は、18~64歳では明らかな経時変化はみられず、ほぼ86%以上で維持されていた。65歳以上では、BNT162b2またはmRNA-1273は5月から8月にかけて有効率が低下し(それぞれ94.8%→88.6%、97.1→93.7%)、Ad26.COV2.Sは経時的な変化はないものの他のワクチンよりも有効率が低かった(範囲:80.0~90.6%)。

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モノクローナル抗体ianalumab、中等~重症の原発性シェーグレン症候群に有効/Lancet

 原発性シェーグレン症候群(眼球や口腔の乾燥、全身症状、生活の質[QOL]の低下を特徴とする自己免疫疾患)の治療において、B細胞活性化因子(BAFF)受容体を阻害するモノクローナル抗体製剤ianalumab(VAY736)はプラセボと比較して、24週時の疾患活動性が用量依存的に低下し、忍容性や安全性も良好で感染症の増加は認められないことが、英国・バーミンガム大学病院のSimon J. Bowman氏らが実施した「VAY736A2201試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年11月30日号で報告された。19ヵ国の4群を比較する第IIb相用量設定試験 本研究は、中等度~重度の原発性シェーグレン症候群患者におけるianalumabの安全性と有効性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(第IIb相用量設定試験)であり、2017年6月~2018年12月の期間に、19ヵ国56施設で患者登録が行われた(Novartis社の助成を受けた)。 対象は、年齢18~75歳で、疾患活動性が中等度~重度(欧州リウマチ学会[EULAR]のシェーグレン症候群疾患活動性指標[ESSDAI]スコア≧6点)、症状の重症度が患者の許容範囲を超える(EULARシェーグレン症候群患者報告指数[ESSPRI]スコア≧5点)などの基準を満たす患者であった。 被験者は、3つの用量のianalumab(5mg、50mg、300mg)またはプラセボを4週ごとに24週間皮下投与する群に無作為に割り付けられた。患者と試験関係者には治療割り付け情報が知らされなかった。 主要アウトカムは、24週の時点での無作為化の対象となった全患者におけるベースラインから24週までのESSDAIスコアの変化量とされ、モデル化分析を用いた多重比較法で評価された。安全性の評価は、試験薬の投与を少なくとも1回受けたすべての患者で行われた。今後の臨床試験で、300mgが使用可能 190例が登録され、ianalumab 5mg群に47例、同50mg群に47例、同300mg群に47例、プラセボ群に49例が割り付けられた。各群の平均年齢の幅は47.9~52.5歳で、女性が各群の平均で87~98%を占めた。 検討された5つの用量反応モデルのうち4つで、全体的な疾患活動性(ESSDAIスコア)に関して統計学的に有意な用量反応関係が認められた(4つのモデルはいずれもp<0.025、1つのモデルはp=0.060)。 ESSDAIスコアは、3つの用量のianalumab群のすべてで、ベースラインから経時的に低下したが、用量が高いほど効果が大きく、24週時の効果は300mg群で最も優れた。ESSDAIスコアは、300mg群ではベースラインの13.1点から24週時には4.9点に、プラセボ群では13.0点から7.0点に低下した。300mg群における24週時のベースラインからのESSDAIスコアの変化量の、プラセボ群で補正した最小二乗平均は、-1.92点(95%信頼区間[CI]:-4.15~0.32、p=0.092)だった。 有害事象は、ianalumab 300mg群(94%)が、他の用量群(5mg群85%、50mg群83%)やプラセボ群(84%)よりもわずかに多かった。感染症は、ianalumab群(5mg群53%、50mg群47%、300mg群49%)がプラセボ群(57%)よりも少なかった。治療関連の重篤な有害事象は3例で4件認められた(プラセボ群の1例で肺炎、同群の1例で胃腸炎、50mg群の1例で虫垂炎と卵管卵巣膿瘍)。 著者は、「われわれが知る限り、この研究は主要エンドポイントを達成した初めての原発性シェーグレン症候群の大規模無作為化対照比較試験であり、これらの結果は、本症のメカニズムを探る研究が今後も続けられる可能性があることを意味する」と指摘し、「ianalumab 300mgは、今後の臨床試験で安全かつ有効な用量として使用できる」としている。

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第87回 生物兵器の道理で考えるとぞっとする!?オミクロン株軽症者を軽視するリスク

先週触れた新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のオミクロン株の感染者は、NHKのまとめたデータによると、8日18:30時点で世界53ヵ国・地域で検出され、日本国内でもすでに4例目が確認されている。先週の段階では南アフリカ(以下、南ア)で感染の主流がデルタ株からオミクロン株に移行しつつあったことから、感染力はデルタ株より強いことが示唆されるのではないかと触れたが、その可能性は先週よりも高まっていると言えそうだ。「8割おじさん」こと西浦 博氏(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻教授)が12月8日に開催された厚生労働省の第62回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに提出した資料によれば、南アのハウテン州での報告をベースにしたオミクロン株の実効再生産数はデルタ株の4.2倍だという。もっともこれはウイルスの素の感染力である基本再生産数ではなく、報告バイアスの可能性はすべて拭い切れていないことや、ワクチン接種歴や年齢などを加味できていないデータであること、南アのワクチン接種率は30%未満でワクチンより抗体価が低い自然感染での免疫獲得者が多い状態だったことなどが研究の限界として存在したことを西浦氏自身が指摘している。とはいえ、これまでデルタ株主流だった世界各国でオミクロン株の市中感染報告が増加している現状を考えれば、やはりデルタ株を超える感染力の強さという可能性はかなり濃厚と言える。その一方で、あくまで現時点の感染者の多くが無症候、軽症で、野生株や既存の変異株と比べて重症化リスクが上昇している可能性が見えていないことはやや好材料である。もっともこれも現時点での推測に過ぎない。ただ、そのためか「全世界からの外国人入国をストップさせている『鎖国政策』はやり過ぎではないか?」との意見がちらほら出ている。しかし、現時点では私はやむを得ないと思っている。この件は前回も簡単には触れたが、そもそも感染者が無症候、軽症だから気にしなくていいというのはやや極論に過ぎる。重症化リスクが高まっていないとしても、従来株ですら20%は重症化するのだから、感染力が強い可能性があるオミクロン株が流入すれば、日本国内でも大量の市中感染を産み出し、その結果、一定数の重症者が発生してしまう。しかも、現在の日本国内は、高齢者や基礎疾患保有者という重症化リスクの高い人の抗体価が低下し、3回目接種のスタンバイ状態となっている時期である。つまり、今が最もブレークスルー感染リスクが高まっている時期とも言える。加えて新型コロナをインフルエンザと同等に扱えるだけの対処手段はまだ乏しく、それは今申請中の新型コロナの経口治療薬であるモルヌピラビルが承認を受けても劇的に変化するとは断言し切れない。結果としてオミクロン株の流入とそれに伴う感染者の増加は、まだ仮縫いの新型コロナ医療体制を再び逼迫させる恐れがある。百歩譲ってオミクロン株感染者がほとんど重症化しないとしても、流入して感染が広がれば問題は多くなると感じている。そう思うのは、私が過去に共著ながら生物兵器テロに関する新書を執筆した際にお会いした、ある生物兵器の専門家が言っていた一言をふと思い出したからでもある。私はこの専門家にお会いした時、次のような質問を投げかけた。「ベネズエラウマ脳炎ウイルスなんて生物兵器として使えるんですか?」ベネズエラウマ脳炎ウイルスは、トガウイルス科アルファウイルス属に属するウイルスで人獣共通感染症を引き起こす。感染力が強く、10~100個のウイルスでも感染が成立し、ヒトでは2~5日間の潜伏期間を経て発熱・頭痛・筋肉痛などのインフルエンザ様症状が起こる。感染者の約1~3%が脳炎を発症し、そうした人の10~20%が死亡する。生物兵器の候補としてよく書籍や文献に登場するのだが、最終的な感染者の致死率は計算上0.1~0.6%と必ずしも高くない。私としては「その程度の致死率の低いウイルスが生物兵器として効果があるのか?」 という意味で、この専門家に質問したのだった。それに対するこの方の答えは次のようなものだった。「そりゃ致死率が高いもののほうが生物兵器としての効果が高いようにも思えますよね? でも必ずしもそうとは言えない。おおむね致死率が高い病原体は、感染力は低い。また、そうした病原体を生物兵器にすると、開発・使用する側もその過程で感染リスクを負う。これに対し、ベネズエラウマ脳炎ウイルスは開発・使用する側のリスクは低い。敵国に使う際の効果は、確かに殺傷能力という意味では低いが、感染力が強いため、一旦放出されれば次から次に敵側の戦闘員が感染してダラダラと発熱の症状が続いて戦闘能力が大幅に奪われる。感染が民間人に及べば、軍事力を底から支える敵国の経済が低迷し、敵国の継戦能力は軍事力と経済力の双方から削がれる。こう考えると実は最も生物兵器としては利用価値があるとも言える」さすがにこの回答には「なるほど」と唸ってしまった。ここで話をオミクロン株に戻そう。まさに感染力が強く重症化しにくい可能性があるオミクロン株は、ベネズエラウマ脳炎ウイルスと通じるものがある。そしてこのコロナ禍を契機に日本社会全体にようやく「風邪も含め、感染症が疑われる時は無理せず休もう」というごく当たり前の概念が定着しつつある。「風邪でも休めないあなたに…」といったCMコピーはもはや非常識と言い切ってもいい社会環境だ。とすると、オミクロン株による感染者がほぼ軽症か無症候だったとしても、感染者が激増すれば社会全体が経済活動の大幅な縮小を強いられることになる。そうなればようやく感染状況が落ち着いて再開されつつある経済への打撃はいかばかりだろうか? 「感染しても軽症だから」という思考は、社会全体が長らく続くコロナ禍で疲弊しすぎた故の副作用なのかもしれないが、SNSを中心にこの手の発言が比較的著名な言論人から出てくることには危惧の念しかないのである。

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ファイザー製コロナワクチン、3回接種でオミクロン株にも効果

 米国・ファイザー社は、12月8日に発表したプレスリリースで、現在拡大が懸念されているオミクロン株に対する同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの効果を調べた研究結果を公表した。それによると、初回接種(2回)では、野生株と比べ、オミクロン株に対する中和抗体力価が大幅な減少を示し、オミクロン株への保護効果が十分ではない可能性があるという。ただ、3回目の追加接種により、従来株と同等の効果が得られることも示された。同社は、より多くの人がまずは初回接種を完遂すると共に、COVID-19拡大防止には追加接種が必要であるとしている。 今回公表したのは予備的な実験データの段階だが、初回接種までの中和抗体力価は、野生株や従来の変異株などに比べ、オミクロン株に対しては有意に減少していたが、3回目の追加接種により、初回接種の25倍まで増強され、従来株並みの高い保護レベルが観察されたという。ファイザー社は、「初回接種によるコロナ重症化予防には引き続き有用だが、追加接種によりオミクロン株も含めたより高い予防効果が得られる可能性がある」とし、各国で進められている追加接種が、引き続きCOVID-19拡大防止に対する最善策であるとの見解を示した。 同社では、追加接種後のオミクロン株に対する中和抗体の持続性などを検討するため、さらにデータ収集を進めることにしている。

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医師が選ぶ「2021年の漢字」TOP5を発表!【CareNet.com会員アンケート】

毎年12月に発表される「今年の漢字」(主催:日本漢字能力検定協会)に先立ち、CareNet.com会員の先生方にも今年の漢字を選んでいただきました! 皆さんは、今年1年の世相を漢字1文字で表すとしたら、何を思い浮かべますか?それでは、医師に選ばれた「2021年の漢字」TOP5を発表します。イラスト内の漢字は、日本習字高等師範免許を持つケアネット社員による書き下ろしです!第1位「禍」第1位は、第2位と倍の差をつけた「禍」。2021年も、昨年に続き新型コロナウイルス感染症の影響が色濃い1年でした。医療現場にとっての第5波は、東京オリンピックよりも大きいインパクトだったようです。来年こそは、平穏な日常を取り戻したいですね。「禍」を選んだ理由(コメント抜粋)コロナ禍という一言に尽きると思う。(60代 整形外科/大阪)コロナ第5波が印象に残っているから。(30代 消化器内科/東京)まだまだコロナの影響が根強いため。(40代 内科/福岡)コロナに巻き込まれ、国も自治体も、個人も人生がかき回された1年だった。(30代 心臓血管外科/大分)コロナによる医療崩壊や度重なる自然災害など禍が絶えない年でした。(50代 泌尿器科/岩手)第2位「輪」第2位にランクインした「輪」は、1年遅れで開催された東京オリンピック・パラリンピックを連想させます。五輪の「輪」だけでなく、世界や人とのつながりを感じたという趣旨のコメントも多数寄せられました。開催には賛否両論ありましたが、無事に閉会でき安堵した方も多かったのではないでしょうか。同じく五輪から連想される「金」や「五」と答えた方もいらっしゃいました。 「輪」を選んだ理由(コメント抜粋)五輪があったとともに、「人の輪」を再認識したから。(30代 糖尿病・代謝・内分泌内科/京都)オリンピック。ワクチン接種が世界各国で行われており世界の輪を感じたから。(30代 精神科/茨城)諸外国と比較しまずまずの感染水準で東京オリンピック、パラリンピックを遂行できたため。記念すべきイベントだったと思います。(30代 耳鼻咽喉科/東京)激動の時代だったと思うがそこからの回復、復興をしている皆の協力をもっての輪、オリンピックの輪。(40代 麻酔科/静岡)■第3位「耐」第3位は「耐」でした。長らく続いた緊急事態宣言による大型商業施設や飲食店の休業、移動制限など、全国民が我慢を強いられた1年でした。医療従事者はさらに第5波への対応やワクチン接種業務などもあり、耐えに耐え抜いた年だったことと思います。1年間本当にお疲れさまでした。 「耐」を選んだ理由(コメント抜粋)2020年に続き、コロナウイルスのために耐える1年だった。(50代 内科/茨城)なかなか収束しない感染状況、自粛生活に耐え、勤務先でも急な退職が相次ぎ、業務増加に耐え…と耐える1年だった。(40代 精神科/熊本)生活、仕事のさまざまな局面で自粛を求められ、耐える一年であったから。(40代 消化器内科/茨城)第4位「忍」第4位の「忍」は、コメントにもあるように、「耐え忍んだから」という理由で選んだ方が多かったようです。とくに医療従事者の皆さんは我慢を強いられる場面も少なくなかったことでしょう。新たな変異株が現れ、先行きが不透明な状況ではありますが、年末年始は少しでも気の休まる時間が取れるとよいです。 「忍」を選んだ理由(コメント抜粋)コロナで国民みんなが耐え忍んだ年だから。(40代 内科/新潟)県外への移動禁止、3密回避など、我慢の一年だったから。(30代 その他診療科/静岡)コロナ禍も2年目となり、オリンピックや選挙などもあったが、大きな混乱もなくさまざまな社会活動を行えるようになっているのは、大勢の人々の忍耐力によるものだったと思う。(50代 麻酔科/兵庫)第5位「乱」第5位は、過去にも何度か登場している「乱」でした。コロナによる世の中や生活の「混乱」を連想した方が多かったようです。来年こそは、落ち着いた気持ちで過ごしたいものですね。同様の理由で「混」を選んだ方もいらっしゃいました。 「乱」を選んだ理由(コメント抜粋)コロナ、政治などいろいろなところで混乱があったから。(30代 泌尿器科/神奈川)新型コロナですべてが乱されたから。(50代 内科/埼玉)自分の生活が目まぐるしく変化して乱れた。(40代 呼吸器内科/大阪)これまで未経験な事態が重なった。(40代 循環器内科/東京)アンケート概要アンケート名『2021年振り返り企画!今年の漢字と印象に残ったオリパラ選手をお聞かせください』実施日   2021年11月15日~21日調査方法  インターネット対象    CareNet.com会員医師有効回答数 1,059件

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第87回 規制緩和を背景に「感染性胃腸炎」が例年並みに増加中

国内でも、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染者が見つかり始めているが、一方で別の感染症による患者数が増えている。ノロウイルスやロタウイルスなどにより腹痛や下痢、嘔吐などの症状が起きる感染性胃腸炎だ。例年は11月から増え始め、12月をピークにいったん減少し、1~3月ごろに再び増える傾向にある。12月のピークはノロウイルス、春のピークはロタウイルスによるもので、冬場に流行する感染性胃腸炎はウイルス性のものが多い。保育園や幼稚園、福祉施設などでの集団発生の多くはこの時期に発生し、少量のウイルスで感染するノロウイルスによるもの(ノロウイルス感染症)と推察される。子どもや高齢者では重症化や、嘔吐物による誤嚥性肺炎、最悪の場合は気道に詰まって窒息死することもある。また、ノロウイルス感染症の患者の糞便や嘔吐物には、大量のノロウイルス(感染者の吐物1g当たり100万個以上)が含まれており、適切な処理を行わないと2次感染も起こりうる。昨シーズンはコロナ禍による外出抑制で患者数は激減ところが、昨シーズンは過去に例がないくらい患者数が少なかった。その背景について東京都健康安全研究センターでは、コロナ禍で会食や外食の機会が減ったことによる影響が大きいのではないかと見ている。主な感染経路は経口感染で、人から人へ感染する場合と、食べ物から感染する場合などがあるからだ。しかし今シーズンは、規制が緩和され、人と会う機会も増えているため、11月から感染者数が増加し、例年並みのペースにまで近付いている。アルコール消毒より流水と石けん手洗いが効果商業施設などの入り口や家庭内でアルコール消毒が行われているが、感染性胃腸炎は通常の新型コロナ対策では防ぎ切れない。ノロウイルスやロタウイルスは、消毒剤への抵抗性が強く、消毒用アルコールはあまり効果がないと言われている。それより有効なのは、従来からの流水と石けんによる手洗いだという。国立感染症研究所によると、手のひら側はしわの多い部分や指の間、手の甲側は親指を中心に全体的に洗い残しが多いという。来院患者さんたちにも、意識してしっかりと洗うよう伝えたい。糞便や嘔吐物の処理には次亜塩素酸ナトリウム前述のように、糞便や嘔吐物を適切に処理することも重要だ。処理者は感染しないように、使い捨ての手袋やマスク、ガウンなどを着用する。また汚染した床は、乾いた嘔吐物が舞うことを防ぐため、乾燥させないよう速やかに、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系の消毒剤や家庭用塩素系漂白剤)で汚染場所の外側から中心に向かって浸すように拭くなど、汚染を広げないようにして処理する。じゅうたんなど次亜塩素酸ナトリウムを使いづらい場所で嘔吐した場合は、スチームアイロンによる熱処理が有効だ。ノロウイルスは熱に弱く、85度以上1分間以上の加熱で不活化するという。今の時期、新型コロナウイルスだけがクローズアップされ、その陰に隠れがちだが、経済活動が再び活気を取り戻し、着実に人流が増えている中、気を付けるべき感染症があることを改めて確認し、患者さんにも周知する必要があるだろう。

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mRNAワクチン後24週間の感染リスク、ワクチンで差はあるか/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン、「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)を接種後24週間の感染リスクは4.5~5.8件/1,000人と低率であることが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のBarbra A. Dickerman氏らによる、ワクチン接種済み米国退役軍人約44万人のデータの解析で明らかにされた。リスクは、BNT162b2よりもmRNA-1273で低く、こうした情勢はアルファ変異株、デルタ変異株が優勢だった時期にかかわらず一貫していたという。mRNAワクチンはCOVID-19に対して90%以上の効果があることが示されていたが、多様な集団におけるさまざまなアウトカムについて有効性の比較は行われていなかった。NEJM誌オンライン版2021年12月1日号掲載の報告。リスク因子に応じ、各ワクチン接種者を1対1でマッチングし追跡評価 研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)B.1.1.7変異株(アルファ株)が猛威を振るっていた2021年1月4日~5月14日にかけて、「BNT162b2」または「mRNA-1273」の初回接種を受けた米国退役軍人を対象に、電子健康記録を基に分析を行った。 接種者のリスク因子に応じて、各ワクチン接種者を1対1でマッチングし追跡評価した。アウトカムは、記録されたSARS-CoV-2感染、症候性COVID-19、COVID-19による入院やICUへの入室および死亡で、Kaplan-Meier推定量を用いてリスクを推算した。 また、B.1.617.2変異株(デルタ株)の影響を評価するため、別途2021年7月1日~9月20日にワクチン接種を受けた退役軍人を対象に試験を行った。感染、発症、入院リスクはBNT162b2接種群よりmRNA-1273接種群で低い 「BNT162b2」または「mRNA-1273」の接種者それぞれ21万9,842人について分析を行った。 アルファ株流行期24週間の追跡期間中の確定感染の推定リスクは、BNT162b2群が5.75件/1,000人(95%信頼区間[CI]:5.39~6.23)、mRNA-1273群が4.52件/1,000人(4.17~4.84)だった。 同リスクはBNT162b2群がmRNA-1273群より高く、1,000人当たりの過剰イベント数は、確定感染が1.23件(95%CI:0.72~1.81)、症候性COVID-19が0.44件(0.25~0.70)、COVID-19による入院は0.55件(0.36~0.83)、同ICU入室は0.10件(0.00~0.26)、同死亡は0.02件(-0.06~0.12)だった。 なお、デルタ株流行期に注目した12週間の追跡調査において、確定感染に対する過剰リスク(BNT162b2 vs. mRNA-1273)は、6.54件/1,000人(95%CI:-2.58~11.82)だった(リスク比:1.58、95%CI:0.85~2.33)。 結果を踏まえて著者は、「これらのワクチンについて有効性と安全性のさらなる比較評価が必要である」とまとめている。

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第87回 厚労省「対面での面会の検討」求めるも、空気感染濃厚のオミクロン株登場で対応再び難しく

コロナ禍の医療施設と社会福祉施設の面会方法の改善目指すこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は今年の山登りの反省会を兼ねて、山の仲間数人で埼玉県・奥武蔵の伊豆ヶ岳に行って来ました。西武秩父線の吾野駅から子ノ権現、天目指峠を経て伊豆ヶ岳、正丸峠という少々長いコース。行程後半、正丸峠にある奥村茶屋で名物のジンギスカンを食べるというのが毎年恒例の行事になっています。天気もよく紅葉もまだそこかしこ残っていて楽しめたのですが、4週間前に骨折した左手小指の固定がまだ取れていないので、急な登り下りで左手をつかないようにするのが難儀でした。山登りには足だけではなく、手の指も相当使っていることを実感した初冬のハイキングでした。さて、今回は厚生労働省が11月24日付で出したある事務連絡とオミクロン株の空気感染について書いてみたいと思います。事務連絡は、医療施設と社会福祉施設に対して適切な面会方法の検討を求める内容のものです。ただ、この事務連絡発出から2日後の26日、世界保健機関(WHO)は南アフリカなどで確認された新型コロナウイルスの新たな変異株「B・1・1・529」を、現在世界で流行の主流となっているデルタ株などと並ぶ「懸念される変異(VOC)」に指定、「オミクロン株」と命名しました。せっかくの事務連絡発出ですが、病院や高齢者施設での入院患者との面会は再び難しい状況になりそうです。「面会実施の方法について各医療機関で検討せよ」と具体的事例を紹介コロナ禍となって、医療機関や特別養護老人ホームなどで大きく変わったことの一つが面会の規制です。とくに長期療養のための病院や特養などでは、面会の禁止は入院患者や入所者の認知機能の低下にも関係するため、その対応の模索が続いていました。11月24日に都道府県、保健所設置市、特別区の衛生主管部に向けて発出された事務連絡「医療施設等における感染拡大防止に留意した面会の事例について」は、新型コロナウイルスの感染状況が一定程度に収まってきた国内の状況を踏まえて出されました。この事務連絡では、「『新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針』」(令和3年11月19日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)が決定され、面会については、面会者からの感染を防ぐことと、患者や利用者、家族の QOL とを考慮することとし、 具体的には、地域における発生状況等も踏まえるとともに、患者や利用者、面会者等の体調やワクチン接種歴、検査結果等も考慮し、対面での面会を含めた対応を検討すること、との方針が示され」たとして、「地域における感染の拡大状況や入院患者の状況等のほか、患者及び面会者の体調やワクチン接種歴、検査結果等を総合的に考慮した上で、面会実施の方法について各医療機関で検討すること」としています。その上で、コロナ禍での感染対策に留意した面会における具体的な事例を紹介、各衛生主管部局に医療機関への周知をお願いする内容となっています(社会福祉施設に対しては担当部局が異なるため別の事務連絡「社会福祉施設等における面会等の実施にあたっての留意点 について」が発出されています)。紹介された事例は、「アクリル板で仕切った面会室を利用」「ワクチン接種歴を参考とする」「タブレット端末を使ったオンライン面会」などで、厚生労働科学研究の研究班の資料を基にしています。オミクロン株登場で「空気感染」再び注目入院患者にとって面会は、家族や社会との接点を保ち、心の安定をもたらす重要な要素です。ゆえに国が「対面での面会」を進めるようアクションを起こすことは、歓迎すべきことだと思います。ただ、気になることもあります。オミクロン株の感染拡大で、感染防止対策が大きく変わりそうだからです。オミクロン株については12月5日現在、感染力がデルタ株より強い可能性があること、再感染のリスクが上がっている可能性があること、ブレークスルー感染を起こす可能性が高いことなどが報告されています。また、ホテルの廊下を挟んで「空気感染」した可能性についても報道されています。香港政府が11月25日に明らかにしたところでは、同じホテルの向かいの部屋にそれぞれ隔離されていた新型コロナウイルスワクチン接種済みの旅行者2人(南アフリカからの旅行者1人と、カナダからの旅行者1人)がオミクロン変異株に感染していることが確認されましたが、南アフリカからの旅行者1人が着用していたのはサージカルマスクではなく、呼気弁には吐く息のフィルター機能がなかったそうです。そのため、部屋のドアが開かれた際にウイルスが廊下に流れ、後者に感染させた可能性が示唆されました。この件には続報があり、12月6日付のBloombergの報道によれば、12月3日に発表された調査結果では、監視カメラの映像によって、2人とも部屋から出ておらず、人にも接触していないことが確認されたそうです。調査を行った香港大学の研究者らは「食事の受け取りや新型コロナ検査のために開けたドアを通じた空気感染が考え得る感染経路として最も可能性が高い」と指摘したとのことです。厚労省も10月に「空気感染=エアロゾル感染」を追認空気感染については、「第76回 『空気感染』主流説報道続々 “野球感染”リスクは球場によって大きく異なる可能性も」でも詳しく書きました。実は厚生労働省は10月下旬にサイトを更新し、新型コロナはウイルスを含んだ空気中に漂う微粒子(エアロゾル)を吸い込むことで感染する、との見解を初めて示しています。それまでは、飛沫感染と接触感染の2つしか挙げていませんでした。感染力が強いデルタ株による第5波を受け、換気対策を進める必要があると考えたためとみられます。更新されたのは、「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」の「新型コロナウイルス感染症にはどのように感染しますか」の項目。「感染者の口や鼻から、咳、くしゃみ、会話等のときに排出される、ウイルスを含む飛沫又はエアロゾルと呼ばれる更に小さな水分を含んだ状態の粒子を吸入するか、感染者の目や鼻、口に直接的に接触することにより感染します。一般的には1メートル以内の近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分であったり、混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています」と記され、エアロゾル感染(言うならば空気感染)の危険性を強調するに至っています。今回、感染力がより強いオミクロン株の感染拡大で、空気感染の危険性が再び注目されています。オミクロン株の感染力の強さとコロナの空気感染の関連がより明確になれば、医療機関での面会に限らず、飲食店や交通機関の感染対策なども大幅な見直し(アクリル板はナンセンス…など)を余儀なくされるでしょう。「終末期の患者が家族にずっと会えないと、悲劇的状況を生み出す」面会に話を戻すと、私が先日取材した、あるがんの患者団体の代表の方は、「とくに緩和ケア病棟などにおいて、終末期の患者が家族にずっと会えないと、悲劇的状況を生み出すこともある」と話していました。現在では、スマートフォンやパソコン、タブレット端末などを用いれば、自宅の家族と病院の患者とのコミュニケーションも相当程度可能となりますが、デジタルに弱い高齢者にはハードルが高い面もあります。そう考えると、リアルでの面会をどう安全に行うかは、それぞれの医療機関腕の見せどころと言えそうです。オミクロン株の動向が気になるところですが、「これだ!」という面会方法が、現場で“発明”されることを期待しています。

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「今後のコロナ医療に必要なことは?」感染症内科医・岡秀昭氏インタビュー(後編)

 2021年も残すところあと数週間。昨年の年明け早々に始まった新型コロナウイルス感染症との闘いは、2年近くになる。医療現場のみならず、社会全体を激変させたコロナだが、その最前線で治療に当たってきた医師は、最大の患者数を出した第5波を乗り越え、今ようやく息をつける状態となった。この休息が束の間なのか、しばらくの猶予となるのかは不明だが、諸外国の状況やオミクロン株の出現などを鑑みると、それほど悠長に構えていられないのが現在地点かもしれない。 第6波は来るのか。これまでのコロナ政策で今後も闘い続けられるのか―。地域のコロナ拠点病院で重症患者治療に奔走した感染症内科医・岡 秀昭氏(埼玉医科大学総合医療センター)に話を伺った。 前編「五輪の裏で医療現場は疲弊し、ギリギリまで追い詰められていた」はこちら。*******――当面続くと見られるコロナ診療。これまでの経緯を踏まえると、重症者に特化した病院とプライマリとの分担および連携が肝要では? そこが最も重要なポイントだと思う。結局、物事を回転させていくには、ヒト・モノ・カネのバランスが必要で、それらがすべて噛み合うことで回転し、物事が前に進んでいく。しかし、報道や国や政治が声高に強調するのは、モノとカネの支援。だから、「ベッドの占有率が〇%だ」とか、「日本は病床数が世界最大規模なのに、現場がなぜ回らないのか」というズレた議論、医療者はけしからんという論調になる。今、圧倒的に足りないのはモノでもカネでもなく、「ヒト」なのだということをきちんと理解してほしい。例えるなら、航空機のボーイングが何台もあって、飛ばせと言っても、小型機のパイロットしかいなければ飛ばせないのと同じ理屈だ。われわれ医療者に引き寄せて考えてみてほしい。医師免許を持っている人が全員、人工呼吸器を使えて、特殊な感染症が診られるのか。つまり、「ヒト」の考え方がまったく欠落している。今回、コロナで盛んにECMOが取り上げられたが、所有していたところで、それを扱える医療従事者がほとんどいないという現実がまったく知られていない。見当外れの世論を助長させた一端には、モノ・カネ偏重の政策とメディアの報じ方があったのではないかと考える。 コロナ医療を「ヒト」の視点で考える際、軽症と重症に分ける必要がある。軽症は、感染対策が可能な病院や医師ならば誰でも診られると言っていい。問題は、風評被害への懸念、未知の感染症への恐れなど、どちらかというと精神的側面が大きい。そもそも現時点で重症リスクがない患者には有効な薬剤がないので、軽症であれば、周りにうつらないように自然軽快を観察していくことになる。一方、重症者治療となると対応が大きく変わる。厳重な感染対策のもとで細やかな循環呼吸管理をしていかなければいけない。しばしば人工呼吸器やECMOの操作も必要となり、これは集中治療の領域だ。 日本の医療界は、歴史的に集中治療医と感染症医のような臓器横断的に診る医師が圧倒的に少ない。病床数が多かろうと、医師免許を持った人がそれなりにいたとしても、病床の大部分が療養型だったり、精神科病床だったりする。そのような中、カネを出してハード面を整えたとしても、十分に扱える人員がいないのが現状。重症者を診る医師が絶対的に足りないのは、そうした背景がある。 今後、第6波以降に重症者が増えたとしたら、再び医療逼迫が起きるのは必至。現在、感染者数は抑制できているが、今後は患者数が増えてきた場合に、重症者をどれだけ抑えられるかにかかっていると思う。軽症~中等症Iであれば、付け焼刃でも医師免許を持っている人たちへの促成教育は有効だと考える。実際、私は埼玉県に提案し、県のトレーナー制度でコロナ治療に協力してくれる医療機関、医師に対する指導をすでに始めている。しかし、重症を診る人材の育成は即席では難しく、短期的な視点では限界があり、重症者を診る人員が足りないという現実はそう簡単に変わらない。 今回のコロナ・パンデミックに関して新たな人材育成の猶予はないので、やはりポイントは「重症者を増やさない」ことに尽きる。国の対策としては、悪いほうにシナリオを考え、本当に機能する重症者病床は、これ以上増やせないことを理解してほしい。増やすことを仮定した対策ではなく、現状のベッド数で医療が回る対策が必要だ。 私の聞くところであるが、重症者を診るのが大学病院や一部の大病院に限られている上に、呼吸器内科、救急科、集中治療、感染症、総合内科のような一部の診療科の医師がほぼ診ている状態。自院に関しては、感染症と救急の医師に、少数の派遣医師で回しているのが実情。もともと人数の少ない診療科の医師だけで回さざるを得ず、皆が疲弊し切っている。 なぜ、救急や集中治療、感染症、総合診療の医師が育ってこなかったか。理由の1つは、専門としていまだに認められていないということ。麻酔科の経緯に照らして考えるとわかるだろう。外科医が1人で手術をする際、現在ならば麻酔科医が麻酔をかける。しかし、術後感染症が起きたとしたら、外科医が診ることになる。術後、抗がん剤治療を開始する場合、米国ではオンコロジストが担当するが、日本では外科医が抗がん剤治療も行う。さらには、緩和治療をも外科医が一手に引き受けなければならないのが実状。こんな多忙な外科医に、感染管理ができるのだからコロナを一緒にやってくれとはとてもじゃないが言えない。それどころか、本来やるべき手術などがいっさい回らなくなるだろう。それでもやるなら、通常医療を捨てざるを得ないという本末転倒に陥ることになる。その先には病院の収益の問題につながる。 将来的な対策として長期的視点で必要なことは、集中治療医、感染症科医を育て、それなりの病院では現在の麻酔科医のように必須にすること。これは外科医の負担軽減だけでなく、患者にとってもメリットが大きい。集中治療しかり、感染管理しかり、麻酔しかり、専門医が担当することは、医療の質の担保にもつながる。もはや、日本の根性論、精神的頑張りに負うような医療体制は通用しない。今回のコロナを巡る医療逼迫の背景にも、こうした日本独特の医療体制に一端がある。つまり、臓器別の縦割り診療科は認められているので志す人は多く、臓器に関係ない感染症科や麻酔科や集中治療といった横割りの診療科には人が来ない。今後のパンデミックに備えるには、こうした診療科の医師が足りていないということをまずは認め、本腰を入れて養成に入るべき。 感染症科医を例にすると、コロナのような何十年に1度という事態に直面した時には必要性が感じられるが、平時には割に合わないのではないか、というのが一般的な考え方で、経営にもそういう考え方の人が多いのは確かだ。しかしそれは間違っている。感染症指定医療機関でなくても、結核、HIVはもちろん、輸入感染症の患者が来る可能性は十分にあるし、多くの結核患者は咳や微熱で一般病院を受診し、診断を受ける。今回のコロナ禍で、「空気感染を予防できる設備がないのでコロナは診られない」という病院がいくつもあったが、それはおかしいとはっきり言いたい。 病院というのは、そもそもコロナにかかわらずインフルエンザでも結核でも水疱瘡でも日常的に診ている。感染症が未知の種類だから診られないというのはおかしい話で、どんな新興感染症が突然現れたとしても、周りの人が守られるような安全対策が取られているのが「病院」であるべき。何十年に1度のパンデミックに備えて設備投資するのは見合わないなどと言うのは本末転倒で、海外往来が当たり前のこの現代、もうすでにどこの病院にもそのような患者は来ていることを自覚し、備えるのが正しい在り方だろう。さらに、急性期病院は、例えば200床につき1人以上の感染症医を置き、診療報酬上でも加算化する。集中治療医に関しても、そういう形で、必要不可欠にしていくことで専門性が認められていくべきだと思う。他科から診察依頼やコンサルテーション があった場合にも、対価として診療報酬が支払われるべきだろう。そうでなければ、こうした専門医が定着するのは難しい。 私の懸念は、今回のコロナ禍の経験で、厚労省がますます病床数を増やそうという方向に加速していくことだ。必要なのは、増やすことではなく有効に回せるベッドをいかに残すか。診る医師も設備もないのに、病床数をやみくもに増やしても、「日本は世界に誇るベッド数を準備しているのになぜ回らない」と批判的な世論を生むだけだ。――メディアでは“幽霊病床問題”として大きくクローズアップされた。 その通り。まるで病院や医療従事者が対応していないかのような論調だが、そもそも人員が足らないのだから患者を受け入れられないのは当たり前。でも一般市民にはそれはわからない。厚労省は、ベッドの多さ、患者の多さを基準に病院を評価しがちだが、たくさん受け入れたことが偉いという評価基準それ自体が間違っている。その先、医療の実態はどうなのかというところまできちんと確認するべきだ。 当院は40床のコロナ病床を準備したが、人員に照らしたキャパシティを考慮すると38床の受け入れが限界だった。なぜなら、受け入れた患者さんはもちろん、働くスタッフの医療安全上の問題なども考えなければいけなかったからだ。例えば、50床あるのに患者2人しか受け入れないというのは明らかに悪質だが、7~8割の病床を埋めて頑張っているところを責めるのはおかしい。 ECMOの稼働率がメディアに取り上げられたこともあったが、それを扱える人的リソースの問題で「使わない」という選択をすること批判が集まった。しかしわれわれは、人工呼吸器よりも圧倒的に人的負担がかかるECMOにリソースを割くことよりも、その分、人工呼吸器の患者をより多く受け入れて、より多くの患者を救命しようという方針だった。 コロナはある意味、災害医療とも言える。そこにはトリアージの考え方があった。ECMOへのこだわりを持っていると、本来は受け入れられる人を受け入れられなくなり、助けられた人を助けられないということが起こり得た。――最後に、コロナ第6波あるいはもっと長い闘いを想定するとき、医療者はどう備えるべき? これからの戦略を立てる以前に、まずはこれまでの総括・検証が必要だ。少なくとも、五輪開催時期を巡っては、少しでも後ろ倒しにしてワクチン接種率を上げてからにすべきという医療者側の切実な訴えは、政府に聞いてもらえなかった。メディアでは、五輪までにコロナが収束するなどという“有識者”の発言もあったが、とんだデタラメだった。したがって、政策の検証だけでなく、どの専門家の発言が信頼に足るのかというメディアの発信の仕方についても検証が必要だろう。 次に、次のピークに向けた戦略として私が言えるのは、重症者病床がこれ以上増えないという仮定のもとで動くべきだということ。大事なのは「増やす」ではなく「増えない」前提のプランを準備し、明確にしておくこと。実際、第6波において重症者が増えるのか否かは不明だ。しかし、デルタ株に対して重症化を防ぐワクチンの効果は確実なので、ワクチン接種は引き続き進めていくべき。そして、抗体カクテルや今後登場するであろう治療薬をワクチン代わりにはしないこと。ただし、プライマリで重症化リスクのある患者に対し、抗体カクテルや治療薬が確実に使える体制を整えることはとても重要。これは、プライマリの先生方に望むことにもつながるが、軽症や中等症の治療を第5波まではわれわれがやってきた。今後は、プライマリの先生方と協力し、役割分担しつつ、重症者病床は現状から増えないという想定で、ワクチンや抗体カクテル、薬で治療を進めていくべきと考える。 もう1つ、医療にひずみが出ている問題がある。コロナ医療を巡っては、医療と報酬が見合っていない。中には、コロナ重症者を診るスタッフの給与よりも、ワクチン接種のアルバイト報酬のほうが高いといったケースも見られた。これは明らかにおかしい。病院に寝泊まりして、重症コロナ患者を懸命に診て疲弊しきっているスタッフの月給が、ワクチン接種に従事する人の日給と同程度なんてあんまりだと思う。 医療には、その負担や技術・能力に見合った適正価格がある。このような状況では、将来的にも感染症や集中治療を目指す医師はいないだろうと危惧する。将来的なことだけではなく、目下の第6波に備えるためのモチベーションにもつながる。医療の水準に対する正当な評価。これをなくしてコロナ医療は前に進まない。

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第89回 米国が自宅でのCOVID-19検査も無料化、英国は自宅治療を検討

6日のReutersのニュースによると、いまや米国で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン(Omicron)株感染が少なくとも16の州で認められています1)。それらオミクロン株感染の多くはワクチン接種済みの人に生じており、幸いなことに症状は軽度です。米国での先週の1日当たりのSARS-CoV-2感染(COVID-19)者数は平均約12万人(11万9,000人)でした。米国疾病管理予防センター(CDC)の長Rochelle Walensky氏によるとそれら新規感染のほぼすべて(99.9%)は依然としてデルタ株によるものです。しかしオミクロン株らしき報告は多くなっており、おそらくその感染数は今後増えると同氏は予想しています。さしあたり軽症ともっぱら報告されているとはいえまだはっきりしないオミクロン株感染重症度の見きわめに科学者が取り組み、保健部門がこれからの寒い季節の感染数増加への準備を進めるなか、米国政府はデルタ株やオミクロン株から同国民を守るための新たな対策を発表しました2)。今後は米国の誰もが家庭でのCOVID-19検査を無料で受けられるようになります。民間保険に加入している1億5,000人超は病院や薬局で検査を無料で受けられることに加えて自宅での検査も保険からの支払いで無料になります。民間保険に非加入の人は米国全域の2万を超える無料検査拠点を利用できることに加えて自宅でできる無料の検査製品を保健所や病院から配布してもらえるようになります。バイデン政権はワクチン接種を引き続き推進し、飛行機・鉄道・バスなどの公共交通でのマスク着用義務を継続します。マスク非着用の違反には罰金が課されており、最低でも500ドル、違反を繰り返す人は最大3,000ドルを払わねばなりません。米国が検査なら大西洋を挟んだその隣国・英国は家庭で使えるCOVID-19治療探しに取り組みます。COVID-19治療を同定して広める世界的な取り組みを率いてきたことを自負する英国はオミクロン株感染に弱そうな人を守るべく米国Merck(メルク)社の経口薬Lagevrio(モルヌピラビル/molnupiravir)を家庭に届ける試みを準備しているようです3)。その取り組みでは病弱な人や免疫が低下している人のCOVID-19検査陽性判定から48時間以内に同剤が自宅に届けられる予定です。家庭での治療が検討されるのはモルヌピラビルの他にもあるらしく、その詳細は追って伝えると政府の広報担当者は話しています。Reutersのニュースによると英国では先週末12月5日(日曜日)までに246人のオミクロン株感染が確認されています4)。12月5日の感染者数は86人でした。新たな決まりとしてイングランドはオミクロン株感染らしき人と接触した人に10日間の隔離を義務付けています5)。参考1)Omicron variant found in nearly one-third of U.S. states / Reuters2)President Biden Announces New Actions to Protect Americans Against the Delta and Omicron Variants as We Battle COVID-19 this Winter / WHITE HOUSE3)Covid antiviral pill molnupiravir/Lagevrio set for UK at-home trials / Guardian4)UK reports 86 new cases of Omicron COVID-19 variant, total 246 / Reuters5)New rules in response to Omicron variant / Gov.UK

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「五輪の裏で現場はギリギリまで追い詰められていた」感染症内科医・岡秀昭氏インタビュー(前編)

 2021年も残すところあと数週間。昨年の年明け早々に始まった新型コロナウイルス感染症との闘いは、2年近くになる。医療現場のみならず、社会全体を激変させたコロナだが、その最前線で治療に当たってきた医師は、最大の患者数を出した第5波を乗り越え、今ようやく息をつける状態となった。この休息が束の間なのか、しばらくの猶予となるのかは不明だが、諸外国の状況やオミクロン株の出現などを鑑みると、それほど悠長に構えていられないのが現在地点かもしれない。 第6波は来るのか。これまでのコロナ政策で今後も闘い続けられるのか―。地域のコロナ拠点病院で重症患者治療に奔走した感染症内科医・岡 秀昭氏(埼玉医科大学総合医療センター)に話を伺った。******* 今現在(11月8日)、コロナが始まって以来、一番落ち着いている。ここひと月近く、コロナの入院患者はいない。夏休みも取れなかった部下たちが、ようやく交代で休みを取ることができた。――最大のピークとなった第5波はどのような推移を辿り、減少傾向はいつごろから? まず、8月の上旬から逼迫感が出てきて、8月いっぱいはしんどかったと記憶している。それが9月に入り、患者が急激に減ってきた。8月と9月とでは状況がまったく違った。私自身、9月中旬には第5波の振り返りをする余裕も出てきて、9月後半にはずいぶん落ち着いていた。 過去の記録を見ると、9月7日時点で、入院数よりも退院数のほうが上回っている。9月13、20、27日と1週間ごとに、いくつかあったコロナ病棟を、患者の退院で空床化し、いったん閉鎖状態にしたのがこの時期だった。 振り返ると、五輪開幕の直前辺りから五輪期間中が最も大変だった。時期的にも、メディアでは五輪ばかりが話題になって、コロナの状況が取り上げられなくなっていた。 われわれの現場では、7月ごろからかなり危機感が募っていた。しかし一部の人が、重症者数は多くないので、医療体制は問題ないとメディアで公言し、五輪開催の機運が高まった。われわれもできる限りメディアの取材に応え、「重症者のピークは遅れてやってくるので、むしろこれから増える。楽観視しないでほしい」と切実な状況を訴えていたにもかかわらず、それは聞き届けられなかった。 私の主張はただ1つ、「五輪の延期」だった。今になってみてわかることだが、ワクチン接種が進んで落ち着いて来る時期、せめて10月以降になれば有観客でも開催できるはずだっただろうと思う。これは“後出しじゃんけん”ではなく、SNSでもたびたび発信していた。 しかし、菅 義偉前首相は、五輪開催を強行した。それが原因で感染者が増えたのかどうか、本当のところはわからない。しかし、五輪の裏で多くのコロナ患者が重症化し、医療が逼迫した結果、本来失わずに済んだ命が失われたことが紛れもない事実であることを伝えたい。 感染者数が減少にシフトしたかなりの要因は、言うまでもなくワクチンの普及によるものだろう。もうこれ以上の患者数になれば終わりだ……というギリギリまで追い詰められたところで、急速にブレーキが掛かった感覚だった。言い換えれば、われわれが治療に当たったそのころの重症患者のほとんどがワクチン未接種者、死亡も(免疫がつきにくい重篤な基礎疾患を有するなどの一部例外を除いて)、いずれも未接種者だった。五輪を強行開催した菅前首相に関して評価する点を挙げるなら、ワクチンを五輪に何とか間に合わせようと、かなりテコ入れしたことだろう。明らかにワクチン接種の急加速が入った。仮に五輪開催がなかったとしたら、あれほど接種が進まなかったかもしれない。そうなれば、第5波は高齢者を中心に重症者が増え、さらに大きなピークになっていた可能性がある。事実、第5波ピーク時の患者はワクチン未接種の40~50歳代が多かった。ワクチンが広がっていなかったら、さらに高齢者層が大きく上乗せされただろう。そうなれば死亡も格段に増えた可能性がある。 もう1つ、日本人の感染予防に対する意識の高さは、大いに評価されるべきだと思う。海外メディアが報じる現地の状況を見ると、マスクを着けていない人がいかに多いかがわかる。日本人の同調圧力とまでは言わないが、相互監視的に「ほかの人が着けてるから自分も着けなくては」という意識からか、外では皆がきちんとマスクを着用している。 この、ワクチン完遂率の高さと予防意識が、かなり第5波のブレーキには貢献したと考える。――第5波の渦中では、五輪開催と緊急事態宣言の発令などの相反する行動に多くの国民が矛盾と戸惑いを感じた。 さかのぼるが、第4波(2021年3月1日~6月20日)は、緊急事態宣言がスムーズかつ早く、大型連休前に発令された。あの発令については、医療者の中では高く評価されている。中には、「タイミングとして早過ぎるのでは」という指摘もあったようだが、先手を打って出せたのが第4波の宣言だった。ちょうど、より感染力の強いアルファ株に置き換わるタイミングだったにもかかわらず、少なくとも関東地域では比較的“ボヤ”程度で済んだ。ところが、第5波は違った。五輪という目標があり、そこに政治家たちが惑わされた。「そうたやすく宣言は出せない」という政府の思惑があったと思う。しかも、現場からの訴えを聞かず、「重症者は増えていない」というストーリーまで語ったのは間違いだった。あの時点で、すでに静観している場合ではなかった。 さらに、感染力が強いデルタ株の出現があり、より重症化しやすい特性もあった。そして、長らく続いた自粛ムードへの疲れと抑制効果の低下。国民はすでに相当な疲れと緩みを覚えていたし、そういう状況下にもかかわらず五輪は開催されるという。それなら、もう大丈夫なんじゃないかという形で、世論を割ることになってしまった。つまり、五輪開催と感染対策が矛盾し合うことになり、国民にうまく伝わらなかったのが、あの時期の日本だったと思う。――ワクチンに関して、ブレークスルー感染については現場で影響が? 自院では重症や中等症IIの治療がもっぱらで、在宅療養の軽症者は送られて来ない。つまり、ブレークスルー感染が起きていたとしても、現在の状況から推測できるのは、軽症で済んでいる、つまり重症化には至っていないということだ。したがって、ワクチンの90%の予防効果というのは、完全に100%防ぎ切るということではないにせよ、かなり予防できていて、ブレークスルー感染も想定の範囲内だということ。それでも重症化して送られてくるのは、重症化リスクを有するのにワクチン未接種の人とみて、第5波ではほぼ間違いなかった。 ワクチンが接種者のためだけと考えると、重症化しにくい年齢層にはその意義がなかなか見出しにくいかもしれない。ただ、これだけ効果があることがわかってきているコロナワクチンなので、自分も接種者となることで、社会の集団免疫を作る一員になるということ、それに協力することになる。今後、子どもへのワクチンも議論になってくるだろう。子ども個人の健康を守るという側面もあるが、もし第6波で重症者が多く出て来たら、子どもまで接種していかないと抑制できないのではないかと考える。それは子ども自身の現在だけでなく、成人した後の未来も守ることになり、ひいてはその周りの家族をも守ることになる。――米国ではすでに5~12歳まで接種対象が引き下げられている。 日本での導入には議論が必要になると思うが、ポイントとしては、子どもが感染したとしても重症化リスクは小さいということと、人種として多系統炎症症候群(MIS-C)を起こすアジア人が相対的に少ないという点がある。そして大人から子どもへの感染は多いが、その逆は少ないというのもある。その点で、周りを守るというワクチンの意義が、子供に関してはそこまで大きくないのではないかという指摘もある。治験では一定の効果が示されているが、副反応もあり、そこまでして子供に接種させるべきなのかというと、微妙だという意見もある。ワクチン供給量とのバランスという観点も考える必要があるだろう。もしくは、追加接種も含め途上国とのバランスという問題もあり、そこが崩れると輸入感染症になるという危惧が出てくる。 コロナに関しては、ある1つの国が“ひとり勝ち”というわけにいかない。今後、世界的に経済活動が再び活発化してきた時、海外との人流増加は避けられない。ビジネス相手国となるワクチン接種が遅れている一部のアフリカや南米、アジア諸国との行き来が増えれば、確実に入って来る。そうした点でも、世界のバランスをとってワクチン接種を進めていく必要がある。 抗体価は接種から半年で低下するのはすでに知られているが、デルタ株でも重症化を減らす効果は依然続いており、そこまで追加接種を慌てなくてもよいのではないかとは思う。一方で、ワクチンを2回打っていても免疫不全者、とくに抗がん剤治療中の患者や臓器移植患者には抗体が2回では十分につかず、ワクチンの予防効果が下がることがわかっている。今、追加接種が優先的に必要なのはそうした患者、もしくはその周りにいる医療従事者や家族だろう。更なる展望としては、抗体カクテル、モノクローナル抗体治療薬、経口薬も出てくるだろうが、高額な薬価の問題がある。抗体カクテルの重症化リスクがある患者への早期治療投与が有用ということはデータに示されているが、それも7割の重症阻止効果ということで、単純比較だがワクチンのほうが効果が高いことがわかる。また、曝露後予防には9割近い効果があるとされているが、推定薬価は30万前後と高額だ。これらの治療薬の効果が証明されているのは、重症化リスクがある患者に対してであり、リスクのない患者にはコストパフォーマンスも含め効果は不透明である。ワクチンが数千円ということを考えると、未接種者でも、万一感染したら皆が抗体カクテルや経口薬の治療が受けられ、効果もあるという理屈は間違っているという認識が必要だ。抗体カクテルは受動免疫で、一時的に外部から抗体を入れるという仕組み。つまり、入れた抗体がなくなれば無効になる。一方、ワクチンの免疫は接種によって能動的に免疫をつけるという仕組みなので、減弱するものの、長く効果が続く。しかもコストパフォーマンスも良い。抗体カクテルや治療薬が、ワクチンに置き換わるものでは決してないことも理解してほしい。 一部からは、「コロナを5類感染症に」という声が上がっているが、医療費が現在の全額公費負担から3割負担になるのだというところまで理解して言っているのかと問いたい。例えば、レムデシビルは1本6万円。入院初日はそれを2倍量使うので、2本で12万円。さらにその後4日間使うので、薬剤費だけで40万円近く掛かる。レムデシビルが必要な人は酸素やステロイド剤、場合によってはICUに入り、人工呼吸器が必要なケースもある。状況によっては、高価な生物学的製剤や抗菌薬も使う。相当額になる治療費を、現在は公費で全額負担しているのに、5類となった場合にはどうなるのか。高額療養費が適用されるかもしれないが、それでもかなりの額を患者自身が負担することになる。自己負担が大きく増えるということは、全員が望む治療を受けられるかどうかという観点からもかなり危惧する。それだけ最近の治療薬は高コスト。今後続いていくコロナ治療薬も、内服であってもそれなりに高額な薬価となるだろう。 また、コロナ治療薬に関しては、現在のところすべてが特例承認で迅速化が優先されているが、今までもガチフロキサシンやテリスロマイシンなどの抗菌薬などでIII相試験まで治験が進んで効果が確認されたにもかかわらず、いざ承認されて多くの患者に投与したら、低血糖や意識消失などの思わぬ副作用が確認されて使われなくなった例が複数ある。さらにもう1つの懸念は、感染症治療薬は、多用すればいずれは耐性化するのが常であるという問題がある。選択肢が増えてくるのはいいが、その裏にはたくさんの課題があることも忘れてはならない。 コロナに関して、ワクチンの副作用は気にする人が多いのに、治療薬だとなぜウェルカムなのかは疑問だ。治療薬にも副作用があって、新薬が怖いという点はワクチンと同じだ。治療薬を投与するのは、つまりコロナに罹患したということなので、後遺症の問題もある。やはり、感染するより未然に防げたほうがよいのは自明だ。したがって、治療薬が出てきたらワクチンは不要ということには決してならないということは強調したい。<後編に続く>

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mRNAコロナワクチンによる心筋炎・心膜炎、「重大な副反応」に追加/厚労省

 厚生労働省は12月3日、新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチンに対し『重大な副反応』の項に「心筋炎」と「心膜炎」を追記するよう、使用上の注意の改訂指示を発出した。対象製剤はファイザー社の「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:コミナティ)とモデルナ社の「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:(COVID-19ワクチンモデルナ筋注)。 今年7月の時点で重要な基本的注意に追記されていたが、その後の解析で各2回接種後の若年男性(10~20代)で頻度が高いことが示唆された。 このほか、『その他の注意』の項に注射部位反応に関する記載が新設され、「海外において、皮膚充填剤との関連性は不明であるが、皮膚充填剤注入歴のある被接種者において、コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)接種後に、皮膚充填剤注入部位周辺の腫脹(特に顔面腫脹)が報告されている」旨が追記された。

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第80回 オミクロン株を懸念、3回目接種の間隔見直し検討へ/厚労省

<先週の動き>1.オミクロン株を懸念、3回目接種の間隔見直し検討へ/厚労省2.医師の残業、年間上限導入で2024年から原則年960時間に3.地域医療構想の実現に向け、重点支援区域で準備が進む/厚労省4.がん診療連携拠点病院の指定要件を改定へ/厚労省5.新型コロナ後遺症についても診療の手引きを作成/厚労省6.コロナ経口薬molnupiravir、日本でも承認申請へ/MSD1.オミクロン株を懸念、3回目接種の間隔見直し検討へ/厚労省政府は新型コロナウイルスの新しい変異型オミクロン株の世界的な急拡大に対応するため、来年1月以降から本格的に取り組む予定であった3回目のワクチン接種について、諸外国と同様に2回目接種との間隔の短縮を検討している。12月2日に開かれた全国知事会と日本医師会のオンライン会合では、3回目接種の時期を「前倒しする必要がある」との意見で一致している。3回目の接種をめぐっては、ファイザー製ワクチン以外に、モデルナ製ワクチンの在庫も活用する方向で検討に入っており、早期の開始に向け、準備が進められる。(参考)オミクロン株2例目 政府 ワクチン3回目接種の間隔見直しも検討(NHK)首相、3回目接種前倒し表明へ モデルナ在庫を活用(日経新聞)3回目接種「前倒しする必要がある」…全国知事会と日本医師会が意見交換(読売新聞)2.医師の残業、年間上限導入で2024年から原則年960時間に厚生労働省は、11月30日に労働政策審議会分科会を開催し、医師の働き方改革に関する検討会報告書と医師の働き方改革の推進に関する検討会中間とりまとめを踏まえた医療法の改正に伴い、2024年4月から上限規制を適用することとなった。地域医療を担う医療機関などで特例水準(連携B、B、C-1、C-2)の医療機関で、長時間労働を避けられない場合は、医師労働時間短縮計画作成ガイドラインに基づいて医師労働時間短縮計画の立案と実施をもとに、都道府県の許可を受けた医療機関のみ年1,860時間とする省令案について了承した。なお、都道府県から指定を受けるためには、2021年10月~2022年9月末までに各医療機関が「医師労働時間短縮計画」を策定し、2022年度中に第三者機関による評価を受けたうえで、2023年度に都道府県に申請することが必要となる。(参考)医師残業、年1860時間 上限定める省令案了承(中日新聞)資料 医師の時間外労働の上限水準を超える時間外労働時間を設定する医療機関について(山形県)資料 労働基準法施行規則の一部を改正する省令案等の概要(厚労省)資料 医師の時間外労働規制について(同)3.地域医療構想の実現に向け、重点支援区域で準備が進む/厚労省厚労省は3日に「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」を開催し、地域医療構想の取り組み・検討状況について調査し、その結果について討論した。再検証対象の436医療機関において、2025年7月までに病床機能あるいは病床数を変更する予定と回答したのは340医療機関(全体の78%)だった。また、再検証の実施について合意済みまたは合意結果に基づいて措置済みの175医療機関において、2022年7月までに病床機能あるいは病床数を変更する予定と回答したのは150医療機関でほとんどを占めた。具体的には、医療機能(病床機能、診療科など)の集約化のために、医療機関の統合、地域医療連携推進法人の設立、在宅療養支援病院の指定など役割の明確化・変更など実施状況が共有され、今後も重点支援区域の設定を通じて国による助言や集中的な支援を行うこととした。なお、重点支援区域には、宮城県仙南区域、石巻・登米・気仙沼区域のほか、滋賀県(湖北区域)、山口県(柳井区域、萩区域)、北海道(南空知区域、南檜山区域)、岡山県(県南東部区域)、新潟県(県央区域)、佐賀県(中部区域)、兵庫県(阪神区域)、熊本県(天草区域)、山形県(置賜区域)、岐阜県(東濃区域)、新潟県(上越区域、佐渡区域)、広島県(尾三区域)の12道県17区域が含まれている。(参考)資料 地域医療構想に関する地域の検討・取組状況等について(厚労省)再検証対象の公立・公的175医療機関が合意済み 重点支援区域に新潟「上越」「佐渡」、広島「尾三」(CBnewsマネジメント)4.がん診療連携拠点病院の指定要件を改定へ/厚労省厚労省は11月30日にがん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループを開き、要件の見直しについて検討を行った。がん対策基本法に基づき閣議決定されている「がん対策推進基本計画」により、全国どこでも質の高い医療を提供することができるよう、がん診療の均てん化を目指して整備を進めてきたが、この整備指針の要件や、要件を満たせなくなった施設への対応などについて議論を行った。今後、2022年6~7月までに議論を重ね、整備指針を改定する見込み。(参考)資料 がん診療連携拠点病院等における指定要件の見直しについて(厚労省)2022年夏にがん連携拠点病院の指定要件見直し、高度型の意義、診療実績・体制要件等を議論―がん拠点病院指定要件WG(Gem Med)がん診療拠点病院、指定要件見直しの議論開始 厚労省WG、「望ましい」要件など論点(CBnewsマネジメント)5.新型コロナ後遺症についても診療の手引きを作成/厚労省厚労省は1日に新型コロナウイルス感染症について、「罹患後症状のマネジメント」を公表した。感染者数が減少する一方で、新型コロナウイルス感染からは回復したにもかかわらず“後遺症”と呼ばれるような症状に悩む患者が存在する。今回、診療の手引きの別冊として、回復後の経過を診るかかりつけ医がどのタイミングで専門医の受診を勧めるべきかなどについて書かれている。なお、新型コロナウイルス感染症の後遺症の頻度については、海外における45の報告から出された系統的レビューで、COVID-19の診断・発症・入院後2ヵ月あるいは退院・回復後1ヵ月を経過した患者のうち、72.5%が何らかの症状を訴えたと報告されている。倦怠感、関節痛、筋肉痛といった全身症状のほか、咳、喀痰、息切れなどの呼吸器症状、あるいは集中力低下、記憶障害、不眠、抑うつなどの精神・神経症状のほか、嗅覚障害・味覚障害などが含まれており、もっとも多いのは倦怠感(40%)だった。(参考)新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(厚労省)新型コロナ後遺症 初の医療関係者向け手引きを公表 厚生労働省(NHK)「コロナ後遺症」に初めての手引き 「患者の支援を」厚労省が公表(朝日新聞)6.コロナ経口薬molnupiravir、日本でも承認申請へ/MSD米メルク日本法人のMSDは、厚労省に新型コロナウイルス感染症に対する経口治療薬として抗ウイルス薬molnupiravir(モルヌピラビル)の製造販売承認を申請した。今回は特例承認の適用を求めており、今月中に厚労省の専門家部会で審議される見込み。軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症の入院していない成人患者を対象としてモルヌピラビルを投与した第III相MOVe-OUT試験の中間解析の結果、無作為割り付けから29日目までに入院または死亡した患者はモルヌピラビル群では7.3%(28/385例)、プラセボ群では14.1%(53/377例)と有意差を認めた(p=0.0012)。29日目までにモルヌピラビル群では死亡は認めず、プラセボ群では8例の患者が死亡した。(参考)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬として経口の抗ウイルス薬モルヌピラビルの製造販売承認申請 特例承認の適用を希望した申請(MSD)米製薬大手メルク 新型コロナの飲み薬 日本での使用 承認申請(NHK)コロナ飲み薬「モルヌピラビル」、オミクロン株にも有効な可能性…今月中に特例承認へ(読売新聞)コロナ飲み薬の承認を申請 米メルクのモルヌピラビル(産経新聞)

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固形がん患者へのブースター接種、抗体価の変化は?/JAMA Oncol

 積極的な治療を受けている固形がん患者では新型コロナウイルス感染症により予後が悪化するリスクが高く、また、化学療法を受けているがん患者ではBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer/BioNTech)による体液性応答が低下することが報告されている。今回、イスラエル・Hadassah Medical CenterのYakir Rottenberg氏らが、主に化学療法を受けた固形がん患者でのBNT162b2ワクチンの3回目(ブースター)接種後30日未満の体液性応答を調査したところ、ほとんどの症例でブースター接種後早期に抗体反応がみられたことがわかった。JAMA Oncology誌オンライン版2021年11月23日号に掲載。ブースター接種後にほぼすべてのがん患者で高い抗体価 本研究の対象は、Hadassah Medical Centerにおいて化学療法、生物学的製剤、免疫チェックポイント阻害薬、もしくはこれらの組み合わせで治療された固形がん患者で、BNT162b2ワクチンを2回接種していた患者。血液サンプルの採取日の中央値は、ブースター接種後13日(範囲:1~29)で、スパイクタンパク質結合抗体について分析した。 がん患者のブースター接種後の体液性応答を調査した主な結果は以下のとおり。・2021年8月15日~9月5日に37例がブースター接種後に血清学的検査を受けた。2回目接種とブースター接種との間隔の中央値は214日(範囲:172~229)、2回目接種と2回目接種後抗体測定の間隔の中央値は86日(範囲:30~203)だった。・年齢中央値は67歳(範囲:43~88)で、11例(30%)は転移がなく、19例(51%)は化学療法を受けていた。・1例(40代、dose-dense AC療法後パクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブによる術後補助療法中)を除いた患者が血清学的検査で陽性だった。さらに、化学療法の有無に関係なく、2回目接種後の反応が中程度または最小だったがん患者で、ほぼすべてのがん患者が高い抗体価を示し、有意に抗体価が増加した。・多重線形回帰の結果、2回目接種後の抗体価(p<0.001)と高齢者(p=0.03)がブースター接種後の高い抗体価と関連した。一方、性別、化学療法の有無、3回目接種と抗体検査の間隔との関連はみられなかった。

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ファイザー製ワクチン2回目後、90日から徐々に感染増加/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防におけるBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製、21日間隔で2回接種)は、2回目接種から数ヵ月後には重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の防止効果が低下し始め、2回目接種から90日以降はブレークスルー感染リスクが徐々に増加することが、イスラエル・Leumit Health ServicesのAriel Israel氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2021年11月25日号で報告された。イスラエルの後ろ向きのtest negative design研究 研究グループは、BNT162b2ワクチンの2回目接種後の経過期間とCOVID-19の罹患リスクとの関連を評価することを目的に、test negative designを用いた後ろ向き症例対照研究を行った(イスラエル・Leumit Health Servicesなどの助成を受けた)。 解析には、イスラエルの大規模な国立医療機関であるLeumit Health Servicesの電子健康記録(electronic health records)が用いられた。対象は、年齢18歳以上、2021年5月15日~9月17日の期間に逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)による検査を受け、ワクチンの2回目接種後少なくとも3週間が経過し、3回目の接種は受けておらず、COVID-19の既往歴がない集団とされた。 解析では、2回目接種からRT-PCR検査までの期間が90日未満の集団を参照として、30日ごとに90~119日、120~149日、150~179日、180日以上の集団に分けた。また、全年齢層のほか、3つの年齢層(60歳以上、40~59歳、18~39歳)に分けて解析が行われた。 主要アウトカムは、RT-PCR検査で検出されたSARS-CoV-2感染とされた。SARS-CoV-2陽性例と対照(陰性例)を、検査を受けた週、年齢層、人口統計学的集団(超正統派ユダヤ教徒、アラブ系住民、一般人口)でマッチさせた。条件付きロジスティック回帰を用いて、年齢、性、社会経済的状況、併発疾患で補正し、感染リスクの補正後オッズ比(OR)を算出した。ブレークスルー感染率:接種後90日未満1.3%から180日以上は15.5%に上昇 研究期間中に8万3,057例(平均年齢43.97[SD 16.89]歳、女性4万3,554例[52.4%])がSARS-CoV-2感染を検出するRT-PCR検査を受け、7,973例(9.6%)が陽性であった。2回目接種からRT-PCR検査までの期間中央値は164日(IQR:138~185)であった。マッチング後のコホートは、陽性例が6,320例、陰性例は3万1,600例だった。 マッチング前の集団における2回目接種後の経過期間(日数)中央値は、3つの年齢層のいずれにおいても、RT-PCR検査陽性例が陰性例よりも有意に長かった。すなわち、60歳以上では、陽性例が192日、陰性例は173日(p<0.001、標準化平均差[SMD]:0.61)、40~59歳ではそれぞれ185日および166日(p<0.001、SMD:0.62)、18~39歳では174日および164日(p<0.001、SMD:0.62)であった。 マッチング前の集団における2回目接種後のSARS-CoV-2陽性率(ブレークスルー感染の割合)は、接種後の経過期間が長くなるほど有意に高くなり、21~89日(参照集団)の1.3%に対し、90~119日が2.4%(OR:1.91、95%信頼区間[CI]:1.39~2.67)、120~149日が4.6%(3.67、2.75~4.98)、150~179日が10.3%(8.82、6.67~11.90)、180日以上は15.5%(14.10、10.68~19.01)と、経時的に上昇した。また、2回目接種から180日以上が経過すると、3つの年齢層のすべてでSARS-CoV-2陽性率が有意に上昇していた(p<0.01)。 マッチング後の集団における2回目接種から90日以上経過後の、参照集団(90日未満)と比較した感染の補正後ORは、90~119日が2.37(95%CI:1.67~3.36)、120~149日が2.66(1.94~3.66)、150~179日が2.82(2.07~3.84)、180日以上は2.82(2.07~3.85)であった(30日間隔ごとのp<0.001)。 著者は、「これらの知見の解釈は、観察研究デザインの制約を受けるが、3回目のワクチン接種の検討が必要であることを示唆する」としている。

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もはや「新型コロナ辞典」【Dr.倉原の“俺の本棚”】第48回

【第48回】もはや「新型コロナ辞典」新型コロナ系の本はたくさん刊行されています。しかし、おそらくこの書評を執筆している2021年11月1日時点で最高傑作と私が考えているのは、神戸市立医療センター中央市民病院のこのマニュアルです。フルカラーでむちゃくちゃ見やすいんですが、この本には、新型コロナのすべてが載っています。「この世のすべてをそこに置いてきた」と言ったのは、ゴールド・D・ロジャーという稀代の大海賊ですが、コロナのすべてを置いてきちゃったパネェ本が、コレです。『神戸市立医療センター中央市民病院 新型コロナウイルス感染症対策マニュアル』木原 康樹/監修. メディカ出版. 2021年10月発売当時ニュースにもなっていたのでご存じの人も多いと思いますが、神戸市立医療センター中央市民病院では、院内クラスターが出たことがあります。逆境に耐えて前に進むしかありませんでした。冒頭にある「第1種・2種感染症指定病院として自信満々であった自分たちの感染症対策が今回の新型コロナウイルス感染症には役に立たなかったことを潔く認める」という言葉、重みと覚悟を感じます。軽症から重症まで、院内が一致団結して多職種で新型コロナの対応に当たりました。一般的な新型コロナに対する感染対策だけでなく、入院時スクリーニングの是非、外来のチェックリスト、産科フローチャート、重症化した場合の酸素療法や人工呼吸器のマニュアル、多職種カンファレンス、家族への説明、面会の基準、精神科リエゾン、退院支援。何もかもが余すことなく記載されています。逆に何が書いていないのか、見つかりません。何より、新型コロナに立ち向かう1人ひとりのプロたちの矜持がビンビン伝わってくる内容で、世界に誇ることができる日本のマニュアルに仕上がっています。第6波、第7波がやってくるのかどうかわかりません。新たな新興感染症だっていつやってくるかわかりません。それに備えて、これは病院に1冊は置いてもらいたい「新型コロナ辞典」です。『神戸市立医療センター中央市民病院 新型コロナウイルス感染症対策マニュアル』木原 康樹 /監修.出版社名メディカ出版定価本体3,600円+税サイズB5判刊行年2021年

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