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爆笑マンガ付き感染対策本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第51回

【第51回】爆笑マンガ付き感染対策本感染対策の医学書って難しいです。医療従事者向けの書籍だと、どうしてもウイルスの学問的な話になってしまうので、気楽に読める本というのがなかなかないのです。『ねころんで読めるウィズコロナ時代の感染対策』矢野 邦夫/著. メディカ出版. 2022年2月発売メディカ出版からのこの本、気楽に読めること読めること。何なら、ねころんだ状態で、漫画でゲラゲラ笑うこともできます。まぁ、もともとそういうコンセプトの本なのですが。この「ねころんで読める」シリーズ、漫画が本当に面白くて、私はファンなので、おそらく全種類持っていると思います。私も実は、呼吸器シリーズを書いています!空気感染とエアロゾル感染の説明のくだりで、「人間は空を飛ぶことはできるのか?」という質問にどう答えるかという比喩が紹介されており、溜飲が下がります。オリンピックなどで、走り高跳びをすれば2.4m以上飛ぶかもしれませんが、棒高跳びにいたっては6mも飛べます。要は、物は言いようということですが、「新型コロナウイルスが空気感染する!」という話題が報道されたとき、ビビっていた医療従事者も多かったのではないでしょうか。うちのコロナ病棟でもザワついていました。新型コロナに関しては、とにかくデマゴーグがたくさん爆誕しました。堂々とデマをSNSで流しているインフルエンサーの下に、今でもプチデマゴーグがねずみ算式に生まれている状況です。私の勤務先にも、1年前よりも現在のほうが怪文書が届きやすくなりました。「ワクチンを接種するな、PCR検査をやめろ、間違った情報発信をやめろ」という内容が多いです。怪文書だけならともかく、一番許しがたいのは、グツグツ煮込んだ誤情報を書籍として刊行してしまう出版業界のモラルハザードです。ファクトチェックがまったく機能していないんですよね。アフターコロナについては、私も矢野先生と同じように考えています。ウィズコロナがいつの間にかアフターコロナになるのでしょう。もうコロナ禍に入って2年以上経つので、早く平和な時代が訪れてほしい。『ねころんで読めるウィズコロナ時代の感染対策』矢野 邦夫 /著.出版社名メディカ出版定価本体2,000円+税サイズA5判刊行年2022年

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第95回 救急も機能分化を、軽~中等症患者の受け皿になり得る「慢性期多機能病院」とは

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新規感染者数が1日10万人を超えているのに伴い、重症者数や救急搬送件数も増え、医療現場の負荷は段々限界に近付いている。ましてこの時期は、感染症だけでなく脳卒中や心筋梗塞などによる救急搬送も増える時期。コロナ対応シフトのしわ寄せは通常医療にも及んでいる。このような状況下、日本慢性期医療協会(日慢協)の武久 洋三会長は1月13日の定例記者会見で、重症患者は高度急性期病院で、軽~中等症患者は地域多機能病院でと、症状に応じて受け入れる医療機関を分けることを提案した。慢性期多機能病院の基となる「慢性期救急」の概念は、医療法人社団永生会の安藤 高夫理事長(前自民党衆議院議員、日慢協副会長)が2005年に提唱したもの。在宅や施設で慢性期療養中の患者が、誤嚥性肺炎や尿路感染症、低栄養、脱水、褥瘡、その他の感染症などで急性増悪した場合、慢性期治療病棟で入院治療を行うというもの。ただし、心筋梗塞や脳卒中発作、骨折、急性腹症、悪性新生物などは急性期救急で受け入れるとした。救急搬送された高齢者の9割は軽症・中等症消防庁が2021年に公表した「令和3年版 救急・救助の現状」によると、事故種別の搬送人員のトップは「急病」(65.2%)で、2位の「一般負傷」(16.4%)を大きく引き離している。「急病」の中身を傷病程度別・年齢区分別に見てみると、「高齢者(65歳以上)」では87.2%が軽症(外来診療)・中等症(入院診療)だった。年齢区分別の搬送人員の推移を見ても、平成12年の37.3%から令和2年の62.3%へと高齢者の割合は増加している。成年以下がこの20年間で20%減少する一方、高齢者は25%も増加している。この傾向に関して、武久会長は「高齢者の軽度救急患者が増えたのは、運転免許返納制度が大きく影響している」と話す。内閣府の令和3年版高齢社会白書によると、65歳以上の単独世帯もしくは夫婦のみの世帯は61.1%で、その割合は40年間で倍増。運転免許の返納により、軽症でも救急車を呼ぶようになったと考えられるわけだ。高齢者の軽症患者が救命救急センターに押し寄せたら、重症患者の受け入れに影響を及ぼすことになるのは必至だ。診療報酬は医療機関の救急受け入れの現状を反映せず救急に関する加算に、救急医療管理加算がある。救急搬送された重篤な患者を受け入れ、早期検査や治療の必要性を踏まえた入院基本料加算で、加算1(950点)と加算2(350点)がある。同加算は一般病床しか算定できないが、実際には救急指定を受けている療養病床を中心とした地域多機能病院(急性期多機能病院、慢性期多機能病院)でも地域の救急患者を受け入れている。しかし、療養病床では同加算は算定できない。算定対象患者以外の患者でも、数多くの急変症状の患者が24時間365日間、救急指定病院を受診している。同加算は「入院時に重篤な状態の患者に対してのみ算定できるもの」とされているが、算定対象患者の状態や判断基準にばらつきがあるといったことが問題視されてきた。そこで、2020年度診療報酬改定の際、レセプト摘要欄に該当する状態や、それぞれの入院時の状態に関する指標として、意識レベル(JCS)や血圧など、該当する状態を算定根拠として記載することなどが要件化された。2021年11月に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)の資料から同加算の内訳を見てみると、加算1の場合、10の該当項目のうち、「呼吸不全又は心不全で重篤な状態」と「緊急手術、緊急カテーテル治療・検査又はt-PA療法を必要とする状態」の2項目で全体の約半数を占めていた。加算2の場合、「その他の重篤な状態」が最も多く、60%以上を占めていた。救急患者別の受け入れを提案する武久日慢協会長このような結果から、武久会長は「軽~中等度の緊急処置が必要な高齢患者や、高度な技術を要する手術の必要がない軽症患者は、地域の中で、地域多機能病院で解決できる問題だ」と指摘。救急の二極分化に対処するため、本来の重症緊急救急患者は高度急性期病院に、軽~中等度の緊急処置が必要な高齢患者や、手術が不要な患者は地域多機能病院で受け入れるという方法を提案した。救急医療提供体制別に年間救急搬送件数を見ると、高度救命救急センターや救命救急センターは5,000件以上が最も多かったが、2次救急医療機関は分布がばらついていた(2019年開催の中医協資料より)。救急部門はあるが、いずれにも該当しない医療機関は500件未満が最も多かった。2020年度診療報酬改定で新設された加算に、地域医療体制確保加算がある。地域で救急患者を受け入れている2次救急病院などで医師の長時間労働が懸念されていることを受け、適切な労務管理の実施を前提に、「年間2,000件以上の救急搬送患者の受け入れ」など一定の実績を有する医療機関を評価する加算だ。医療機関のインセンティブになる制度改正をこれに対し武久会長は、「要件を緩和して1,000件以上にすべきではないか」と提案する。似たような救急搬送看護体制加算1の施設基準が年間1,000件以上であること、地域の急性期病院は1日3件程度であることが背景にある。このようにして、病床規模が200床未満の中小病院を中心とした「地域救急」患者の受け入れ病院に対する手厚い評価をすれば、軽~中等症患者を積極的に受け入れるインセンティブになる。オミクロン株の感染拡大に伴い、COVID-19患者が急増しているなか、軽~中等症患者までもが3次救命救急センターに押し寄せたら、本当に緊急処置が必要な患者に対応できない事態が起こり得る。救急の機能分化はそれを防ぐ手立てとなるだろう。

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オミクロン株、ブースター接種後の感染例を分析/Lancet

 世界的な流行を見せている新型コロナウイルスの変異株・オミクロン株は、mRNAワクチンの3回目接種(ブースター接種)後の感染例も報告されている。感染例の患者背景や臨床像の詳細が、Lancet誌オンライン版2022年1月18日号のCORRESPONDENCEで報告されている。 2021年11月下旬~12月上旬に、SARS-CoV-2ワクチン(少なくとも2回のmRNAワクチンを含む)を3回接種したドイツ人のグループが、南アフリカのケープタウンでオミクロン株によるブレークスルー感染を経験した。このグループは、5人の白人女性と2人の白人男性で構成され、平均年齢は27.7歳(範囲:25~39)、平均肥満度は22.2kg/m2(範囲:17.9~29.4)、関連病歴はなかった。 このうち4人はケープタウンの異なる病院で臨床研修を受けており、その他は休暇中だった。また、これらの人々は2つの無関係なグループに所属し、ケープタウンでCOVID-19に関するルールに則った通常の社会生活を送っていた。2021年11月上旬にケープタウンに到着した際、各人のPCR検査は陰性で、同種(n=5)または異種(n=2)ワクチンによる、ブースターまたは3回目接種の完了記録を提出していた。 6人がBNT162b2(ファイザー製)の2回(完全)接種を受け、うち5人が2021年10月または11月初旬にファイザー製の3回目(ブースター)接種を受けていた。残り1人は2021年10月初旬にモデルナ製の全量接種を受けていたが、これは当時の欧州医薬品庁の半量接種の推奨に則ったものではなかった。 7人目はChAdOx1-S(アストラゼネカ製)の初回接種後、1次免疫完了のためにBNT162b2を接種し、同ワクチンのブースター接種を受けた。モデルナ製のブースター接種例を除き、全接種が勧告に従ったものだった。一部の1次およびブースター接種時期が早かったのは医療関係者であったためで、SARS-CoV-2感染歴を報告した人はいなかった。 西ケープ州でSARS-CoV-2感染が著しく増加していた時期に、7人は2021年11月30日~12月2日に呼吸器症状を発症し、認定の診断機関がSARS-CoV-2感染症の陽性判定を行った。 症状が出てから2~4日後に綿棒と血清を採取した。すべての患者は国内で隔離され、21日間の観察期間中、毎日症状日記を用いて病気の経過を記録した。 病状は、米国国立衛生研究所のCOVID-19治療ガイドラインに従って、軽症(n=4)または中等症(n=3:息切れあり)に分類された。観察期間終了時(21日目)には2名が無症状となった。血中酸素飽和度(SpO2)は例外なく正常範囲(94%以上)を維持し、入院を必要とした患者はいなかった。 7人全員がオミクロン株の感染であった。綿棒溶出液のウイルス量は、4.07~8.22(平均値:6.38)log10コピー/mlであった。抗スパイク抗体のレベルは1万5,000~4万AU/ml以上の範囲であり、血清における平均値は約2万2,000AU/mlであった。 2回目のワクチン接種から21~37週間後にブースターワクチンが接種され、その22~59日後にブレークスルー感染が発生した。これは、2回目のワクチン接種から4週間後に報告されているレベルと同様であり、ブースターワクチンの接種後に期待されるレベルでもあった。 今回の調査結果は比較的若く、その他疾患のない人(n=7)の少数症例に限られているが、オミクロン株が生体内でmRNAワクチンによって誘導される免疫を回避できる、という証拠をさらに追加するものとなった。 ブースター接種は、オミクロン株による症候性感染を十分に防ぐことはできなかったが、病気の経過が軽度~中等度であったことから、重症化を防ぐことができると考えられる。しかし、長期的な後遺症の可能性は除外できない。 これらの結果は、オミクロン株の症候性感染をより確実に予防するためには、最新のワクチンが必要であること、医薬品以外の対策も継続すべきであることを示している。

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第6波での発症から悪化までの日数は/厚労省アドバイザリーボード

 第5波と比較して第6波では、発症から中等症II以上(中等症II、重症、死亡)への移行までの日数(最頻値)が4日短縮され、移行率は低いものの、移行例ではより短期間に悪化が進む可能性が示唆された。2月2日に開催された第70回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで、広島県健康福祉局の木下 栄作氏が「広島県新型コロナウイルス感染症J-SPEEDデータからの知見~第6波データ分析(速報)」を報告した。 分析に使われたデータは広島県内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者データで、第5波は2021年7月1日~10月31日公表患者について、第6波は2021年12月22日~2022年1月29日公表患者(デルタ株感染患者を含む)のデータを用いて分析している。広島県では1月上旬から急速な感染拡大がみられ、12月30日~1月4日での県内のスクリーニング検査では、オミクロン株の疑いのある割合が約8割と報告されている。第5波と比べ中等症II以上は顕著に減少、移行までの日数は短縮傾向 年代別に中等症II以上の割合をみると、第5波と比較して第6波ではすべての年代で顕著に減少。第5波で中等症II以上の割合が最も多かった60代以上(22.7%、234/1,031人)について第6波ではその割合が6.1%(225/3,678人)に、40~50代では第5波12.3%(361/2,936人)に対し第6波0.3%(20/5,904人)となっている。 発症(無症状や発症日不明の場合は陽性判明)から中等症II以上への移行までの日数を比較すると、第5波では最頻値が7日だったのに対し、第6波では3日と4日短縮している。中等症II以上に悪化した患者の8割は10日以内に悪化しており、50代以下ではより短く、8割が7日以内に悪化していた。 中等症II以上には高齢・性別・ワクチン接種(2回以上)が有意に関連 多変量解析により中等症II以上と関連するリスク因子をみた結果、第6波の解析対象データ(319例)では65歳以上(オッズ比[OR]:9.4、95%信頼区間[CI]:3.7~23.5、p<0.01)、男性(OR:2.2、95%CI:1.0~4.9、p=0.04)が有意に関連していた。また、ワクチン接種(2回以上)が中等症II以上に対する予防効果と有意に関連(OR:0.3、95%CI:0.1~0.7、p<0.01)していた。 65歳以上、男性、BMI25以上、高血圧・心疾患、糖尿病、認知症・精神疾患という6つのリスク因子についてその保有数と中等症II以上となるリスクの関連についてみると、リスク因子の数が多いほど中等症IIの割合が高く、全体の移行率は第6波で低いものの、その傾向は第5波と第6波で変わらなかった。第6波での60歳以上の重症化率は1.45%、致死率は0.96%(暫定値) そのほか、広島県のデータを使用し、2022年1月1日~1月14日の期間における新型コロナウイルス感染者7,542人を対象に、年齢階級別、ワクチン接種歴別に重症化率および致死率を暫定版として算出した結果も報告された。なお、人工呼吸器の使用、ECMOの使用、ICU等で治療のいずれかの条件に当てはまる患者を重症者と定義し、重症者には、経過中重症に至ったが、死亡とならなかった患者、重症化して死亡した患者、重症化せず死亡した患者が含まれる。また、ワクチン接種歴ありはワクチンを1回以上接種した者、ワクチン接種歴なしは未接種および接種歴不明の者が含まれる(1月26日時点でのステータスに基づき算出しており、重症者数や死亡者数は増加する可能性がある)。 全体として、60歳未満の重症化率は0.04%/致死率は0.00%、60歳以上の重症化率は1.45%/致死率は0.96%と算定された。ワクチン接種状況別にみると、ワクチン接種歴あり(1回以上)では、60歳未満の重症化率は0.02%/致死率は0.00%、60歳以上の重症化率は0.96%/致死率は0.55%。ワクチン接種歴なしでは、60歳未満の重症化率は0.09%/致死率は0.00%、60歳以上の重症化率は5.05%/致死率は4.04%だった。

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塩野義の経口コロナ治療薬、第IIa相試験で良好な結果確認

 2022年2月7日、塩野義製薬は開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬S-217622の第II/III相試験 Phase 2a partの結果速報に関する説明会を開催し、抗ウイルス効果に関してプラセボ群と比較して良好な結果が確認されたことを報告した。 第II/III相試験Phase 2a partでは、12歳以上70歳未満の軽症/中等症および無症候/軽度症状のみのSARS-CoV-2感染者を対象にS-217622の1日1回、5日間の経口投与による有効性および安全性が評価された。intention-to-treat(ITT)集団はS-217622低用量群16例、高用量群14例、プラセボ群17例の計47例であり、各群におけるワクチン接種者は14例(87.5%)、12例(85.7%)、12例(70.6%)であった。 主要評価項目である各時点におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量、ならびにウイルスRNA量のベースラインからの変化量について、S-217622低用量群・高用量群ともプラセボ群に対する速やかな減少が確認された。ウイルス力価についてはDay4(3回投与後)にはウイルス力価陽性(≧0.8 Log10[TCID50/mL])患者の割合をプラセボ群に比較して約60~80%減少させたほか、ウイルス力価陰性(<0.8 Log10[TCID50/mL])が最初に確認されるまでの時間(中央値)をプラセボ群の111.1時間(95%信頼区間[CI]:23.2~158.5)に対してS-217622低用量群61.3時間(95%CI:38.0~68.4)、高用量群62.7時間(95%CI:39.2~72.3)と約2日短縮した。 重症化抑制効果については、治験開始後に病態が悪化し、担当医師により入院、あるいは入院に準ずる治療が必要と判断された症例(Ordinal Scale 3以上への増悪)はプラセボ群2/14例(14.3%)に対し、S-217622投与群では認められなかった。 また、安全性についてはS-217622投与群において高比重リポ蛋白(HDL)減少例の発現が多い傾向が認められたが、ほぼ全ての有害事象は軽度なものであった。 今後、軽症/中等症については2月9日よりPhase 3 partに移行予定、無症候/軽度症状のみについてはPhase 2b/3 partを継続する。S-217622については今回得られた試験結果をもとに、引き続き国内における最速の承認を目指すという。

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コロナ感染の抑制、政府・対人信頼度と関連/Lancet

 パンデミックの発生以来、各国の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)死亡率は大きく変動している。それらの変動の要因を検証したところ、パンデミックへの事前対策指標の高低とは関連が認められなかった一方で、政府への信頼度や対人信頼度が高いこと、また政府内の汚職が少ないことが、同感染率の低下と関連していたことを、米国・ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)のJoseph L. Dieleman氏らCOVID-19 National Preparedness Collaboratorsが、177の国と地域のデータを基に検証し明らかにした。本検討は、将来のパンデミックへのより効果的な準備と対応のために不可欠な取り組みを明らかにする目的で行われたものだが、著者は、「今回の結果は、主要な修正可能なリスクに関する健康増進は、個々人が公衆衛生ガイダンスに抱く信頼を高めるようなリスクコミュニーケションやコミュニティ戦略へ、より大きな投資をすることで、死亡抑制に結びつくことを示唆するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2022年2月1日号掲載の報告。12のパンデミック事前準備指標、7つの医療体制能力指標などとの関連を検証 研究グループは177の国と地域および181の行政区画について、IHMEモデリング・データベースを基に、SARS-CoV-2感染率とCOVID-19死亡率を抽出し、累積感染率や感染致死率(IFR)を予測し、環境要因、人口統計学的要因、生物学的要因、経済学的要因について標準化し検証した。 感染率については、季節環境(肺炎のリスク比で測定)、人口密度、1人当たり国内総生産(GDP)、標高100m未満の居住人口割合、その他のβコロナウイルス曝露の代理変数を因子として盛り込んだ。 IFRについては、人口年齢分布、平均BMI値、大気汚染曝露、喫煙率、他のβコロナウイルス曝露の代理変数、人口密度、慢性閉塞性肺疾患(COPD)・がんの年齢標準化罹患率、1人当たりGDPを因子とした。 これらを、間接年齢標準化および多変量線形モデルを用いて標準化。標準化全国累積感染率とIFRについて線形回帰を用いて、12のパンデミック事前対策指標、7つの医療提供体制能力指標、その他10項目の人口統計学的・社会的・政治的状況との関連を検証した。 さらに、SARS-CoV-2感染率に影響を与える可能性のある重要な要因の経路を調べるため、対人信頼度、政府への信頼度や汚職の状況、人々の移動パターンの変化やCOVID-19ワクチン接種率との関連性についても検証した。デンマークレベルの対人信頼度に改善されれば世界の感染率は40.3%減少 2020年1月1日~2021年9月30日の、SARS-CoV-2累積感染率の変動の主な要因は、標高100m未満の居住人口割合(変動の5.4%[95%不確定区間[UI]:4.0~7.9])、1人当たりGDP(4.2%[1.8~6.6])、季節変化に起因する感染の割合(2.1%[1.7~2.7])だった。国別の累積感染率の変動については、その大部分が説明不能だった。 同期間のCOVID-19のIFRの変動に関する主な要因は、国の年齢構成(変動の46.7%[95%UI:18.4~67.6])、1人当たりGDP(3.1%[0.3~8.6])、国平均BMI(1.1%[0.2~2.6])だった。国別のIFR変動の44.4%(29.2~61.7)は、説明不能だった。 国の医療保障の目安となるパンデミック事前対策指標については、標準化感染率やIFRとの関連は認められなかった。 一方、政府への信頼度や対人信頼度、政府の汚職が少ないことと、低い標準化感染率について、強い統計的に有意な関連が認められた。これらの因子は、COVID-19ワクチンが広く普及する中~高所得国において、高いワクチン接種率とも関連していた。また、汚職が少ないことは移動の減少とも関連していた。  こうしたモデルの関連性に因果関係があると仮定した場合、すべての国の政府への信頼度または対人信頼度が、デンマークのレベル(全体の75パーセンタイルに相当)に達すれば、世界の感染率は、政府への信頼度の改善により12.9%(95%UI:5.7~17.8)、対人信頼度の改善では40.3%(24.3~51.4)、それぞれ減少できると予測された。同様に、すべての国のBMIが全体の25パーセンタイルに該当するよう抑制されれば、世界の標準化IFRは11.1%減少するとも予測された。

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オミクロン株への感染リスク、ワクチン未接種者は3回接種者の約5倍/CDC

 米国・CDCが新型コロナウイルスデルタ株出現前・出現時・優勢期およびオミクロン株出現時における、ワクチン3回接種(ブースター接種)の効果を調べた結果、3回接種者でデルタ株優勢期に高い感染予防および死亡抑制効果がみられ、オミクロン株出現期においても高い感染予防効果が認められた。とくに50~64歳と65歳以上でブースター接種による影響が大きかった。Amelia G. Johnson氏らがMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年1月28日号に報告した。 これまでに、デルタ株の出現とワクチンによる中和抗体の減少で、ワクチンの感染予防効果が低下し、一部の集団ではCOVID-19重症化も確認されている。CDCでは、ワクチンの2回接種および3回接種による効果を評価するため、米国の25の州・地域において、デルタ株出現前(2021年4~5月)、デルタ株出現時(2021年6月)、デルタ株優勢期(2021年7~11月)、オミクロン株出現時(2021年12月)の各時期で、年代(18~49歳、50~64歳、65歳以上)、ワクチン(ファイザー製、モデルナ製、Johnson & Johnson製)ごとに、未接種者、2回接種者(Johnson & Johnson製では1回)、3回接種者(Johnson & Johnson製では2回)における感染率、死亡率、発生率比(IRR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・米国25の州・地域において、2021年4月4日~12月25日に、18歳以上の新型コロナ感染が未接種者で681万2,040人、2回接種者で286万6,517人報告された。12月4日までに、未接種者では9万4,640人、2回接種者で2万2,567人がCOVID-19関連で死亡した。・2回接種者に対する未接種者の週平均感染IRR(未接種者の感染発生率/2回接種者の感染発生率)は、デルタ株出現前の13.9から、デルタ株出現時に8.7、デルタ株優勢期には5.1に減少し、2回接種者の感染予防効果が低下していた。・デルタ株優勢期の終盤(10~11月)において、未接種者の感染リスクは3回接種者の13.9倍、2回接種者の4.0倍だった。また、未接種者のCOVID-19関連死亡リスクは3回接種者の53.2倍、2回接種者の12.7倍だった。・オミクロン株出現時(12月)には、未接種者の感染リスクは3回接種者の4.9倍、2回接種者の2.8倍だった。・感染および死亡に対して3回目接種による影響が最も高かった年代は、50~64歳および65歳以上だった。

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COVID-19の急性呼吸不全、CPAP vs.高流量鼻腔酸素/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による急性低酸素性呼吸不全(AHRF)がみられる患者では、従来の酸素療法と比較して、持続的気道陽圧法(CPAP)は気管挿管や死亡のリスクを有意に低減するが、高流量経鼻酸素療法(HFNO)には有意なリスク低減効果は認められないことが、英国・ウォーリック大学のGavin D. Perkins氏らが実施した「RECOVERY-RS試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2022年1月24日号で報告された。48の急性期病院の無作為化3群比較試験 研究グループは、COVID-19関連のAHRFで入院した患者において、非侵襲性の呼吸療法による臨床転帰の改善効果の評価を目的に、適応的デザインを用いた非盲検無作為化3群比較試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]の助成を受けた)。 本試験には、英国およびジャージー代官管轄区の48の急性期病院が参加し、2020年4月6日~2021年5月3日の期間に参加者の募集が行われた。 対象は、年齢18歳以上のCOVID-19の確定例または疑い例で、AHRF(吸入酸素濃度[FIO2]0.40以上にもかかわらず、パルスオキシメトリで酸素飽和度[SpO2]94%以下)がみられ、治療の拡大を要する場合は気管挿管が適すると考えられる患者であった。 被験者は、CPAP、HFNO、従来型酸素療法(標準的な酸素マスクまたは低流量鼻カニュラによる酸素吸入)のいずれかを受ける群に無作為に割り付けられた。 主要転帰は、30日以内の気管挿管と死亡の複合とされた。 試験期間中に英国のCOVID-19患者数が減少し、財源に基づく参加者の募集期間(12ヵ月)が終了したため、2021年5月3日、本試験は参加者の募集を早期に中止した。17.1%でクロスオーバー、検出力不足の可能性も 1,278例(平均年齢57.4歳、男性66%、白人65%)が登録され、1,273例(CRAP群380例、HFNO群418例、従来型酸素療法群475例)が解析に含まれた。このうち1,260例(99.0%)で主要転帰のデータが得られた。また、17.1%で群間のクロスオーバーが行われた(CRAP群15.3%、HFNO群11.5%、従来型酸素療法群23.6%)。 30日以内の気管挿管または死亡は、CRAP群では377例中137例(36.3%)で認められ、従来型酸素療法群の356例中158例(44.4%)に比べ発生率が有意に低かった(群間差:-8%、95%信頼区間[CI]:-15~-1、p=0.03)。これに対し、HFNO群では415例中184例(44.3%)が30日以内に気管挿管または死亡となり、従来型酸素療法群(368例中166例[45.1%])との間に有意な差はみられなかった(-1%、-8~6、p=0.83)。 有害事象の発現は、CRAP群が34.2%(380例中130例)と最も高率で、HFNO群は20.6%(418例中86例)、従来型酸素療法群は13.9%(475例中66例)であった。重篤な有害事象は8例(CRAP群7例、従来型酸素療法群1例)で認められ、このうち4例(すべてCRAP群)が試験介入による「可能性が高い」または「可能性がある」と判定された。 著者は、「本試験は、HFNO群と従来型酸素療法群の比較において検出力不足であった可能性がある。今回の知見の解釈では、試験の早期終了と群間のクロスオーバーを考慮する必要がある」と指摘している。

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第98回 オミクロン株ワクチンは必要なさそう

サルへの投与試験の結果、Moderna社の目下の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)元祖ワクチンmRNA-1273追加接種はオミクロン(Omicron)株に合わせたワクチンmRNA-1273.529(mRNA-Omicron)追加接種に比肩して同株を含むどの変異株への抗体反応も有意に高めました1)。肺感染予防効果も同等でした。サルの鼻や気管にオミクロン株を投与して肺検体(肺胞洗浄液)を調べたところ培養可能なウイルスはmRNA-1273追加接種群とmRNA-Omicron追加接種群のどちらからも検出されず、かたや対照群では全頭から検出され、抗体などの免疫反応に有意差が無かったのと同様にmRNA-1273はmRNA-Omicronに引けを取らず肺感染を予防しました。それらの結果によると、オミクロン株仕様ワクチンを接種してもModernaの今のワクチンmRNA-1273を上回る免疫反応や感染予防効果はどうやら期待できそうにありません。人に投与する臨床試験での結果が必要ですが、今あるワクチンを作り変えてオミクロン株仕様ワクチンを何が何でも揃える必要はないと研究の代表者Daniel Douek氏は言っています2)。人での検討はすでに始まっており、Moderna社のオミクロン株仕様ワクチンの臨床試験が最初の投与に至ったことが先月26日に発表されています。時を同じくしてPfizerのオミクロン株仕様ワクチンの試験も先月末に始まっており、結果は今年前半には判明する見込みです3)。それらの臨床試験でのオミクロン株仕様ワクチン追加接種はサルでの試験と同様の結果になりそうとコーネル大学のウイルス学者John Moore氏は予想しています3)。オミクロン流行中、ワクチン非接種でのCOVID-19入院率は追加接種済みの23倍実際、現在使われているワクチンの追加接種でオミクロン株感染やその重症化を減らすことができていることが米国の最近の動向で示唆されています4)。米国・カリフォルニア州ロサンゼルス郡で去年2021年11月の最後の週に初めて確認されたオミクロン株感染はその後急激に増え、今年1月8日までの一週間には調べた検体のほぼすべて(99%)を占めるようになりました。同郡での今年1月8日までのその一週間のSARS-CoV-2感染(COVID-19)はワクチン接種未完了(ワクチン接種の記録がないか1回目投与から14日未満)の人に比べて決まりの回数接種済みの人は2分の1、追加接種もした人はさらに低くおよそ4分の1で済んでいました。また、COVID-19入院も同様でワクチン接種未完了の人に比べて決まりの回数接種済みの人はおよそ5分の1、追加接種もした人は実に23分の1で済んでいました。その結果はCOVID-19ワクチンがオミクロン株を含む変異株感染の重症化を防ぐことを先立つ幾つかの試験と同様に示しており、COVID-19ワクチンの一通りの接種と追加接種を促す取り組みがCOVID-19関連の入院や重病を防ぐのに不可欠と著者は言っています。ワクチン非接種でのCOVID-19死亡率は追加接種済みより97倍高い米国政府の感染症対策の顧問Anthony Fauci(アンソニー・ファウチ)氏をして“COVID-19ワクチン追加接種の大事さは強烈に明らか(really stunningly obvious)”と言わしめたデータが先週2日に大統領官邸で発表されました5,6)。発表されたのは去年2021年12月4日までの1週間の米国25地区のCOVID-19ワクチン非接種、一通り接種済み、追加接種済みの人の死亡率の比較結果です。COVID-19で死亡した人の割合は非接種だと10万人当たり9.7人、一通り接種済みだと10万人当たり0.7人、追加接種済みでもあると10万人当たりほぼ皆無の0.1人であり、非接種の人に比べて一通り接種を済ませた人のCOVID-19死亡率は14分の1、追加接種も済ませた人ではさらに低く非接種の人の実に97分の1で済んでいました。米国のオミクロン株感染は減少に転じており、先月1月末までの1週間の1日当たりのCOVID-19例数平均はその前の週に比べて36%少ないおよそ45万人(44万6,355人)でした6,7)。1日当たりのCOVID-19入院数平均は14%減って1万7,133人となりました。しかし1日当たりのCOVID-19死亡数平均は2,288人へと約4%上昇しており、その死亡を防ぐワクチン追加接種の重要さをファウチ氏が強調するのも無理ありません。参考1)mRNA-1273 or mRNA-Omicron boost in vaccinated macaques elicits comparable B cell expansion, neutralizing antibodies and protection against Omicron. bioRxiv. February 04, 2022 2)Omicron-specific booster may not be needed, U.S. monkey study finds / Reuters3)Study suggests Omicron-specific booster may not provide more protection. STAT4)Danza P, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Feb 4;71:177-181.5)Press Briefing by White House COVID-19 Response Team and Public Health Officials / White House6)White Houseでの発表に使われたスライド(2022年2月2日)7)Boosted Americans 97 times less likely to die of virus than unvaccinated; CDC predicts 75,000 more deaths by Feb. 26: Live COVID-19 updates / USA Today

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COVID-19入院時の患者に糖尿病の診断をする重要性/国立国際医療研究センター

 糖尿病は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクの1つであること、また入院中の血糖コントロールの悪化が予後不良と関連することが知られている。しかし、わが国では入院時点で新たに糖尿病と診断される患者の臨床的な特徴については、明らかになっていなかった。 国立国際医療研究センター病院の内原 正樹氏、坊内 良太郎氏(糖尿病内分泌代謝科)らのグループは、糖尿病を合併したCOVID-19患者の臨床的な特徴を分析し、その結果を発表した。この研究は2021年4月~8月に同院にCOVID-19と診断され入院した糖尿病患者62名を対象に実施された。 その結果、入院時に新たに糖尿病と診断された患者は19名で、糖尿病を合併した患者の約3割で、そのうち60歳未満の男性が12名(63.2%)と高い割合を占めた。また、この19名の患者では、糖尿病の既往や治療歴がある患者に比べて、入院中に重症化する割合が高く、入院初期の血糖コントロールが難しいことがわかった。重症化リスクの糖尿病を事前診療で察知することが重要【研究対象・方法】・2021年4月1日~8月18日までにCOVID-19と診断され、国立国際医療研究センター病院に入院した糖尿病患者62名・患者背景、重症度、血糖値の推移などのデータを集計・分析【研究結果】・62名の糖尿病患者のうち、入院時に新たに糖尿病と診断された患者は19名(30.6%)で、糖尿病の既往がある患者は43名(69.4%)。・新たに糖尿病と診断された患者のうち、60歳未満の男性は12名(63.2%)。・新たに糖尿病と診断された患者は、糖尿病の既往がある患者に比べて、入院中に重症化する割合が高い結果だった(52.6% vs. 20.9%、p=0.018)。・新たに糖尿病と診断された患者は、糖尿病の既往がある患者に比べて、入院後3日間の血糖値の平均が高く、糖尿病の初期の治療に難渋した。 今回の研究により診療グループは、「COVID-19の流行が続く状況でも、健康診断や人間ドックなどの受診を定期的に行い、糖尿病の早期発見や治療介入に繋げることが重要」と見過ごされていた点を指摘した。また、「『基礎疾患なし』と自己申告する患者の中に、一定数未診断の糖尿病患者が含まれていることが想定され、重症化リスクの高い患者の特定のため、今後はCOVID-19診断の段階で、可能な限り血糖値やHbA1cを評価することが望ましいと考える」と新規入院患者への対応にも言及している。

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ブースター接種、9種の組み合わせを評価~第I/II相試験/NEJM

 3種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン(mRNA-1273[Moderna製]、Ad26.COV2.S[Johnson & Johnson-Janssen製]、BNT162b2[Pfizer-BioNTech製])は、最初の連続2回接種(Johnson & Johnson-Janssen製は1回接種)での種類を問わず、12週間以上の間隔をあけた追加接種にどのワクチンを用いても、安全性プロファイルは許容範囲内であり、明らかな免疫原性をもたらすことが、米国・ベイラー医科大学のRobert L. Atmar氏らが実施した「DMID 21-0012試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年1月26日号に掲載された。9つの組み合わせを評価する米国10施設の非無作為化試験 本研究は、適応的デザインを用いた非盲検非無作為化第I/II相臨床試験であり、米国の10施設が参加し、2021年5月29日~8月13日の期間に参加者の登録が行われた(米国国立アレルギー感染症研究所[NIAID]の助成による)。 対象は、米国食品医薬品局(FDA)による緊急使用許可(EUA)の下で、12週以上前に、3種のCOVID-19ワクチンのいずれかの最初の連続接種を受け、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染歴やモノクローナル抗体の投与歴がない健康な成人であった。参加者の登録を迅速化するために、SARS-CoV-2検査は行われなかった。 被験者は、追加接種として、mRNA-1273(100μg)、Ad26.COV2.S(ウイルス粒子5×1010)、BNT162b2(30μg)のいずれかの接種を受けた(最初の連続接種とブースター接種で9つの組み合わせ)。 主要エンドポイントは、追加接種から15日目と29日目の安全性、反応原性、液性免疫原性とされた。 458人が登録され、追加接種として154人がmRNA-1273、150人がAd26.COV2.S、153人はBNT162b2を受けた(初回にAd26.COV2.Sの接種を受けた1人が、追加接種として予定されていたBNT162b2の接種を受けなかった)。9つの接種の組み合わせの平均年齢は48~57歳に、女性の割合は33~63%にそれぞれわたった。安全性プロファイルは最初の連続接種時とほぼ同様 追加接種の反応原性は、最初の連続接種で報告されたものとほぼ同様であった。重篤な有害事象は2件認められたが、いずれもワクチン接種とは関連がないと判定された。とくに注意すべき有害事象として、重度の嘔吐が1人(Ad26.COV2.S接種者)で発現した。 ワクチン接種と関連があると判定された有害事象は、mRNA-1273接種者で24人(16%)、Ad26.COV2.S接種者で18人(12%)、BNT162b2接種者では22人(14%)にみられたが、ほとんどが軽度または中等度であった。ワクチン接種関連の重篤な有害事象は4人で発現した(mRNA-1273接種者の1人で嘔吐、Ad26. COV2.S接種者の1人で嘔吐、同接種者の1人で疲労、同接種者の1人で異常感覚と不眠)。 注射部位の有害事象は頻度が高く、局所痛や圧痛が、mRNA1273接種者で75~86%、Ad26.COV2.S接種者で71~84%、BNT162b2接種者では72~92%に認められた。大部分が軽度で、重度は2人(mRNA-1273接種者とAd.26COV2.S接種者で1人ずつ)のみだった。倦怠感、筋肉痛、頭痛の頻度も高かった。 重度の全身性症状として、倦怠感/疲労が2.0~4.5%、筋肉痛が0~3.3%、頭痛が0.7~3.3%、吐き気が0~2.7%、悪寒が0~3.3%、関節痛が0.6~2.0%、発熱が0.7~2.7%でみられた。ほとんどの有害事象は、追加接種から3日以内に発現し、最初の連続接種のワクチンの種類や年齢層の違いで、発生頻度に明確なパターンはなかった。結合抗体価、中和抗体価、スパイク特異的Th1応答が増強 追加接種から15日までに、結合抗体価の幾何平均は9つの組み合わせで5~55倍に増加し、最初の連続接種がAd26.COV2.Sで、追加接種としてBNT162b2(34倍)またはmRNA-1273(55倍)の接種を受けた集団で増加が大きかった。 また、追加接種から15日までに、SARS-CoV-2 D614G変異の擬似ウイルスに対する中和抗体価の幾何平均は、9つの組み合わせで4~73倍に増加し、最初の連続接種がAd26.COV2.Sで、追加接種としてBNT162b2(36倍)またはmRNA-1273(73倍)の接種を受けた集団で大きく増加した。最初の連続接種と追加接種に同じワクチンを接種した集団では、中和抗体価の増加が4~20倍であったのに対し、異なるワクチンを接種した集団では6~73倍に増加した。 15日までに、SARS-CoV-2スパイク特異的1型ヘルパーT細胞(Th1)の応答は、最初の連続接種と追加接種ともAd26.COV2.Sを接種した集団を除く、8つの組み合わせで増強した。また、CD8陽性T細胞レベルは、最初の連続接種がAd26.COV2.S接種者でより持続的であり、最初の連続接種としてmRNAワクチンを接種し、追加接種としてAd26.COV2.Sを接種した集団では、スパイク特異的CD8陽性T細胞の大幅な増加が認められた。 著者は、「これらのデータは、COVID-19ワクチンの追加接種では、最初の連続接種と追加接種で同じワクチンを用いても、異なるワクチンを使用しても、症候性SARS-CoV-2感染症に対する感染予防効果が増強することを強く示唆する」としている。

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第88回 「みなし感染者」21都道府県が実施/搬送困難3週連続で過去最高

<先週の動き>1.濃厚接触者の発症など検査なしの「みなし感染者」、21都道府県が実施2.救急車の搬送困難事案、3週連続で過去最高に/総務省3.電子処方箋の運用、来年1月開始を目途/厚労省4.紹介受診重点医療機関、紹介状なしの初診で7,000円以上の負担導入へ5.原因不明の重症新生児41例の病名、ゲノム解析で判明/慶応大6.来年2月で経営終了の東海大学大磯病院、徳洲会が承継1.濃厚接触者の発症など検査なしの「みなし感染者」、21都道府県が実施コロナ感染拡大による医療機関や保健所の業務逼迫を緩和するため、同居家族などの濃厚接触者が発症した場合、抗原検査やPCR検査なしで医師が感染者とみなして保健所に届け出る運用を、東京・大阪をはじめ21都道府県が実施している。このうち、秋田、高知を除く19都道府県は、まん延防止等重点措置の適用地域である。神奈川県では、6~49歳までの重症化リスクの低い人や妊娠していない人を対象に、公費検査や抗原検査キットで陽性が判明した場合は、医療機関の受診を待たずに「自主療養」を選べる制度を1月28日から開始し、4日正午までに3,230人の患者が自主療養している。4日から、全国のCOVID-19重症患者は昨年9月以来1,000人を上回っており、6日は新規陽性者数が10万870人と日曜日としては過去最高を記録。厚生労働省はワクチンの3回目接種などの対策推進を指示している。(参考)早期治療狙う・保健所の負担軽減…検査せず診断、「みなし感染」21都道府県で運用(読売新聞)全国で初 自己申告による「自主療養」3200人余が申請 神奈川(NHK)新型コロナウイルス感染症 国内の発生状況(厚労省)2.救急車の搬送困難事案、3週連続で過去最高に/総務省消防庁は1日、救急搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」が、1月30日までの1週間で全国5,303件と過去最高を3週連続で更新したことを明らかにした。同庁によると、このうちコロナ感染が疑われる人は1,833件で、これまで最多だった第5波の1,679件(2021年8月15日までの週)を上回った。地域別で最多は東京消防庁(2,668件)で前週比1%の微増だが、コロナ疑いは22%増の806件だった。大阪市消防局は全体では28%増の527件で、コロナ疑いは43%増の205件。横浜市消防局は全体が4%増の297件、コロナ疑いは26%増の155件だった。(参考)救急搬送困難、3週連続で過去最多 コロナ疑いの困難事案も最多に(朝日新聞)救急搬送困難は5303件 3週連続で最多更新(日経新聞)3.電子処方箋の運用、来年1月開始を目途/厚労省厚労省は、31日に開催した社会保障審議会医療部会で、2023年1月に電子処方箋の運用を開始する方針を明らかにした。電子処方箋は、現在運用しているオンライン資格確認等システムを拡張し、処方箋の運用を電子で実施することで、直近の処方内容の閲覧や複投薬チェックなどの確認が可能となる。なお、利用に当たってはオンライン資格確認を導入している必要があるため、医療情報化支援基金の積み増しを行うなど未導入の医療機関に対して導入を働きかける。(参考)電子処方箋23年1月から、厚労省が関連法制を整備(日経新聞)電子処方箋 概要案内(厚労省)4.紹介受診重点医療機関、紹介状なしの初診で7,000円以上の負担導入へ厚労省は31日に開催した社会保障審議会医療部会で、患者の流れの円滑化を図るため、医療資源を重点的に活用する外来機能を持つ病院について、紹介患者への外来を基本とする医療機関(紹介受診重点医療機関)を明確にすることとし、外来機能報告制度を活用して、病院の外来機能による機能分化を図ることとした。これにより、病院における外来患者の待ち時間短縮や勤務医の外来負担の軽減、医師の働き方改革に寄与することが期待される。紹介受診重点医療機関になった200床以上の病院では、かかりつけ医からの紹介状を持参しない初診患者から7,000円以上の特別負担を徴収する義務が課されることになる(救急患者等の例外あり)。「紹介受診重点医療機関」の指定は、今春の外来機能報告制度によるデータ提出後に検討を行うため、2023年以降となるだろう。(参考)紹介受診重点医療機関や電子処方箋、国民に仕組みやメリットを十分に説明せよ―社保審・医療部会(Gem Med)紹介受診重点医療機関を定額負担の徴収対象に(日経メディカル)資料 紹介受診重点医療機関の検討について 第85回社会保障審議会医療部会(厚労省)5.原因不明の重症新生児41例の病名、ゲノム解析で判明/慶応大原因不明の病気を抱えた重症の新生児85例について、ゲノム(全遺伝情報)の解析を行い、そのうち41例の病名を突き止めたことを慶応大学が発表した。この41例は遺伝性疾患にかかっていることが判明し、約半数の20例で検査や治療方針の変更が行われた。この研究は新生児科医と遺伝学研究者からなる全国17の高度周産期医療センターからなるネットワークにより行われ、研究成果は小児科学分野を代表する国際誌The Journal of Pediatricsに掲載された。(参考)病気の原因がわからない赤ちゃんに対するゲノム解析の有用性を確認-全国で診断に難渋した85名の約半数で原因が判明(慶應義塾大学)原因不明の重症赤ちゃん、ゲノム解析で病名判明 慶大など、治療を改善(日経新聞)6.来年2月で経営終了の東海大学大磯病院、徳洲会が承継東海大学は、このほど神奈川県大磯町にある医学部附属大磯病院の経営を来年2月末で終了すると発表した。その翌月からは、医療法人 徳洲会が事業を継承し、引き続き地域の医療体制を維持するとしている。本病院は昭和59年に東海大学により開設され、21の診療科からなる大学附属病院として運営していたが、高齢化や人口減少のため、この10年で患者数が3割余り減少した。(参考)東海大、大磯病院を移譲 来年3月から徳洲会に事業継承へ(神奈川新聞)東海大学医学部付属大磯病院 来年2月末に事業終了へ(NHK)

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ブレークスルー感染、女性・30歳以上で起こりやすい?

 ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のJing Sun氏らが新型コロナワクチン接種後のブレークスルー感染*の発生率と発生率比(IRR)を特定することを目的とし、後ろ向きコホート研究を実施。その結果、患者の免疫状態に関係なく、完全ワクチン接種がブレークスルー感染のリスク低下と関連していることが示唆された。また、ブレークスルー感染が女性や30歳以上で起こりやすい可能性も明らかになった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2021年12月28日号掲載の報告。*本研究ではブレークスルー感染を、ワクチン接種の14日目以降に発症した新型コロナウイルス感染症と定義しており、2回目完了後の発症としていない。 本研究は、全米の新型コロナに関する臨床データを一元化しているNational COVID Cohort Collaborative(N3C)1)のデータに基づいて分析した。2020年12月10日~2021年9月16日の期間に新型コロナワクチンを1回以上接種した症例がサンプルに含まれた。また、ワクチン接種、新型コロナの診断、免疫機能障害の診断(HIV感染、多発性硬化症、関節リウマチ、固形臓器移植、骨髄移植)、そのほかの併存疾患、人口統計データを検証するにあたり、N3C Data Enclaveを介した。 この研究ではFDAが認可した3つの新型コロナワクチン(ファイザー製[BNT162b2]、モデルナ製[mRNA-1273]、J&J製[JNJ-784336725])と、そのほかのワクチン(アストラゼネカ製など)接種者が含まれた。また、完全ワクチン接種というのは、mRNAワクチンとそのほかのワクチン接種の場合は2回接種、J&J製の場合は1回接種と定義。部分ワクチン接種というのは、mRNAワクチンやそのほかのワクチンを1回のみ接種と定義付けた。2回接種または1回のみ接種後のリスクは、ポアソン回帰を使用して免疫機能障害の有無にかかわらず評価された。 主な結果は以下のとおり。・N3Cのサンプルには計66万4,722例が含まれていた。・患者の年齢中央値(IQR)は51歳(34~66)で、そのうち女性は37万8,307(56.9%)と半数以上を占めていた。・全体として、新型コロナのブレークスルー感染の発生率は、完全ワクチン接種者で1,000人月あたり5.0だった。しかし、デルタ変異株が主要株になった後は高かった(2021年6月20日以前と以降の1,000人月あたりの発生率は、2.2(95%信頼区間[CI]:2.2~2.2)vs. 7.3(95%CI:7.3~7.4)だった。・部分ワクチン接種者と比較し完全ワクチン接種者では、ブレークスルー感染のリスクが28%減少した(調整済みIRR [AIRR]:0.72、95%CI:0.68~0.76)。・完全ワクチン接種後にブレークスルー感染した人は、高齢者や女性が多かった。また、HIV感染者(AIRR:1.33、95%CI:1.18~1.49)、関節リウマチ(AIRR:1.20、95%CI:1.09~1.32)、および固形臓器移植を受けた者(AIRR:2.16、95%CI:1.96~2.38)では、ブレークスルー感染の発生率が高かった。・具体的には、ブレークスルー感染リスクは18〜29歳と比較して30歳以上で30〜40%増加した。・ブレークスルー感染リスクは併存疾患の数が増えるにつれて増加したが、このリスクは免疫機能障害の状態に関連しており、とりわけそれによってAIRRが弱められた。 免疫機能障害のある人は完全ワクチン接種しても、そのような状態ではない人よりもブレークスルー感染リスクはかなり高かったことを受け、研究者らは「免疫機能障害のある人は、ワクチン接種を完遂してもマスク着用やワクチンの代替となるような戦略(例:追加接種や免疫原性試験)が推奨される」としている。

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COVID-19、ICU退室から1年後の身体・精神・認知症状の割合は?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患し、集中治療室(ICU)で治療を受けた生存例では、1年後に約74%で身体症状が認められ、また約26%で精神症状が、約16%で認知症状が発現していたことが、オランダ・ラドバウド大学医療センターのHidde Heesakkers氏らが同国のICUで行った調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2022年1月24日号に掲載された。オランダの11のICUの探索的前向きコホート研究 本研究は、ICUで治療を受けたCOVID-19生存例における1年後の身体、精神、認知症状の発現の評価を目的とする探索的な前向きコホート研究で、ICU生存例(非COVID-19患者を含む)を対象とした多施設共同試験であるMONITOR-IC試験の一環として実施された。 対象は、年齢16歳以上のCOVID-19患者で、オランダにおけるCOVID-19急増の第1波の期間中(2020年3月1日~7月1日)に、同国の11の病院のICUに入室し、生存退院した集団であった。患者は1年間追跡された(最終追跡日は2021年6月16日)。 主要アウトカムは、ICU退室から1年後の自己報告式質問票で評価された身体症状、精神症状、認知症状であった。 身体症状については、フレイル(臨床フレイル尺度[≧5点])、疲労(Checklist Individual Strength下位尺度の疲労[≧27点])、身体機能障害の評価が行われた。精神症状は、不安(病院不安と抑うつ尺度[HADS]:下位尺度の不安[HADS-A]≧8点)、抑うつ(HADS下位尺度の抑うつ[HADS-D]≧8点)、心的外傷後ストレス障害(出来事インパクト尺度の平均値≧1.75点)で、認知症状は、簡易認知的失敗質問票14項目(≧43点)で評価された。30.6%で2領域以上、10.5%で3領域すべての症状 試験期間中にICUで治療を受け、病院を生存退院したCOVID-19患者452例のうち、302例(66.8%)が試験に含まれ、このうち1年後の質問票に回答した246例(81.5%、平均年齢61.2歳[SD 9.3]、男性176例[71.5%]、平均BMI値28.0[SD 4.5]、ICU入室期間中央値18.5日[IQR:11~32])が解析の対象となった。 ICU治療から1年後の時点で、身体症状が74.3%(182/245例)、精神症状が26.2%(64/244例)、認知症状は16.2%(39/241例)で報告された。2領域以上の症状は30.6%、3領域すべての症状は10.5%の患者で認められた。また、ICU入室前に就業していた生存者の57.8%で、仕事関連の問題(就業時間の短縮、病気による欠勤の継続など)が報告された。 身体症状のうち、フレイルが6.1%(15/245例)、疲労が56.1%(138/246例)、1つ以上の身体機能障害(新規、悪化)は67.1%(165/246例)で発現した。最も頻度の高い新規の身体機能障害は体力低下(38.9%[95/244例])で、次いで関節のこわばり(26.3%[64/243例])、関節痛(25.5%[62/243例])、筋力低下(24.8%[60/242例])、筋肉痛(21.3%[52/244例])、呼吸困難(20.8%[51/245例])の順だった。 精神症状では、不安が17.9%(44/246例)、抑うつが18.3%(45/246例)でみられ、心的外傷後ストレス障害は9.8%(24/244例)で発現した。また、認知症状では、認知的失敗質問票のスコア中央値は24.8点(IQR:12.8~37.0)であり、発生率は16.2%(39/241例)であった。 著者は、「他のウイルスの感染爆発(2003年のSARS、2012年のMERSなど)では、ICU生存例の約3分の1で退院後6ヵ月以降に精神健康上の問題が発生しており、これは今回の研究の1年後の発生率(26.2%)よりもわずかに高かった。また、非COVID-19のICU生存例では、1年後に77.0%で身体症状が、35.5%で精神症状が、14%で認知症状が発現したと報告されている。これと比べると、本研究の身体症状(74.3%)、認知症状(16.2%)の発生率は同程度であるが、精神症状(26.2%)の発生率は低かった。一方、職場復帰の問題は、非COVID-19のICU生存例では43%だったのに対し、本研究では58%であった」としている。

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第94回 コロナ禍3年目、人類の敵はコロナじゃなかった…

実はこの1週間で2度も「ええーーー!!!!」と思う経験をした。私の場合、昼食は自分の個人事務所の近傍にある飲食店を利用している。「この時期に?」と思われるかもしれないが、常にほぼ年中無休の一人仕事であるため、そのくらいしか気分転換はない。もっとも完全な黙食で、オーダーした料理が届くまではマスクをし、食べ終わったらマスクを装着してさっさと事務所に戻っている。本音を言うと、4人掛けテーブル席のような隣席との距離が保てるところに座りたいのだが、一人客だとカウンター席に案内されることが多い。最近では飲食店のカウンター席も隣のスペースとはアクリル板で仕切られていることがほとんどだが、言い訳程度の仕切りも少なくないので本音ではやや不安だ。先日の日曜日、近所のカフェに入った時は運よくテーブル席に座ることができた。もっともカウンター席からほど近いテーブル席。カウンター内にいる従業員とカウンター席に座る客との会話は丸聞こえだ。まあ、通常はそんなのも聞き流しているのだが、女性従業員が客に語っていたある一言が耳に入り、フリーズしてしまった。「まあ、私はさ、しっかり予防しているから。毎週イベルメクチン飲んで」医療従事者の多くがご存じのとおり、今回の新型コロナが流行した当初、治療薬がほとんどなかった際にドラッグ・リポジショニングとして注目された物の一つが駆虫薬のイベルメクチン(商品名:ストロメクトール)だ。これは北里大学特別栄誉教授の大村 智氏が発見した放線菌が生産する物質の化学誘導体で、大村氏はこの研究で2015年のノーベル医学生理学賞を受賞している。新型コロナに関しては北里大学による医師主導の臨床試験と国内製薬企業の興和による臨床試験が実施され、前者はすでに試験を終了してデータの解析中である。イベルメクチンに関しては発展途上国を中心に新型コロナに関する研究報告は数多い。しかし、その中身はかなり小規模の観察研究がほとんど。しかも、投与方法や併用薬も統一したものではなく、有効と断言できるエビデンスは、はっきり言って乏しい。しかし、SNS上では、一部の人がこの薬を「新型コロナの特効薬」と持ち上げ、同時に既存の新型コロナワクチンや治療薬に関する重箱の隅を突いたかのようなネガティブ情報の発信を行っている。表現は悪いがもはや「イベルメクチン真理教」である。手に負えないのは、こうした「信者」の考えに一部の研究者や政治家までも賛同を示していることだ。彼らのイベルメクチン支持には、「日本発の薬」だからというある意味ナショナリズム的な思考も見え隠れする。昨年、私はイベルメクチンについてSNS上でネガティブな言及をした際には、ほぼ丸2日も「信者」たちに絡まれるプチ炎上を経験したほどだ。一部の「信者」がわざわざ個人輸入までしてイベルメクチンの予防内服をしているとの投稿もSNS上では時々目にしていたが、私は人口1億人超の日本でのノイジー・マイノリティぐらいにしか思っていなかった。そのためリアルで当事者に遭遇してやや驚いたのだ。それでもノイジー・マイノリティにたまたま遭遇したのだろうと思って納得していた。この翌日、別の飲食店のカウンター席で昼食を取っていた最中、一つ離れた席に座っていた男性客と従業員の会話を聞いて再び驚いた。従業員「しかし、本当に感染の勢い止まらないですよね」男性客「自分は外回りで人に会うからさ、やれる対策は何でもやろうと思ってね。先月中旬から2週間に1回、イベルメクチンという薬を飲み始めたんですよ」私がたまたまノイジー・マイノリティに連日遭遇しただけという可能性は十分にある。とはいえ、気になったのは最初に遭遇した飲食店の女性従業員も、客との会話で今年に入ってから服用し始めたと話していたことだ。つまり私が遭遇した2人とも、オミクロン株による感染拡大に自身で対処しようと思い、ネットサーフィンで得た情報からイベルメクチンの服用に至ったということなのだろう。そうでもない限り、素人が新型コロナに対してイベルメクチン服用を思い立つことはほぼあり得ない。ちなみに『信者』らはイベルメクチンに関して“安全性の高さ”をやたらと強調するが、医療従事者の多くが知っているように、既存のイベルメクチンの安全性データの多くが、腸管糞線虫症への2回服用、あるいは疥癬への単回服用のデータであって、慢性的に服用する際の安全性は明らかではない。玉石混交の情報から「自分が見たい」あるいは「自分にとって耳触りの良い」情報のみを抽出できるネットの罪の部分が顕在化している一例といえばそれまでだ。しかし、前述のようにイベルメクチン問題では、この薬に好意的な一部の研究者、政治家がさらに「権威付け」してしまっているという最悪の構図も存在する。人の上に立つ、あるいは人前に出がちな人の科学リテラシーの程度次第で社会に計り知れない影響を与える可能性を街角で思い知らされた週となった。これがコロナ禍3年目の市中の様子の一端である。改めて肝に銘じておこうと思う。

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米国におけるNGS検査の実施割合と施設間格差(視聴者からの質問)【侍オンコロジスト奮闘記】第128回

第128回:米国におけるNGS検査の実施割合と施設間格差(視聴者からの質問)参考Robert NJ,et al.Biomarker tissue journey among patients (pts) with untreated metastatic non-small cell lung cancer (mNSCLC) in the U.S. Oncology Network community practices. J Clin Oncol.2021;39,supplFuerst ML, Less Than Half of NSCLC Patients Received Comprehensive Biomarker Testing in a Real-World Study. Cancer Terpy Advisor.Conference Coverage ≫ ASCO 2021 ≫ ASCO 2021 Lung Cancer In-depth

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mRNAワクチンの心筋炎リスク、年齢・男女別に2億人を解析/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン接種後の心筋炎リスクは、男女とも複数の年齢層で上昇し、とくに12~24歳の男性で2回目接種後に高かった。米国疾病予防管理センター(CDC)のMatthew E. Oster氏らが、米国の受動的なワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)を基にした解析結果を報告した。著者は、「心筋炎のリスクは、COVID-19ワクチン接種のメリットに照らして検討する必要がある」とまとめている。JAMA誌2022年1月25日号掲載の報告。米国VAERSへの心筋炎の報告を検証 研究グループは、2020年12月14日~2021年8月31日に、mRNAワクチン(BNT162b2[Pfizer/BioNTech製]またはmRNA-1273[Moderna製])を接種した米国の12歳以上の1億9,240万5,448例を対象に、接種後に発生した心筋炎のVAERSへの報告について解析した(データカットオフ日2021年9月30日)。 主要評価項目は心筋炎、副次評価項目は心膜炎の発生。VAERSへの心筋炎の報告は、CDCの医師および公衆衛生の専門家が検討し、CDCの心筋炎(疑いまたは確定)の定義を満たしているかを確認し、すべての年齢層についてまとめた。 年齢別および男女別に、粗報告率を算出するとともに、心筋炎の予測率を2017~19年の医療費請求データを用いて算出した。また、30歳未満で心筋炎の疑いあるいは確定した症例については、医学的評価および臨床医のインタビューを行い、可能な限り臨床経過(発症前の症状、確定診断検査の結果、治療、早期転帰など)をまとめた。2回目接種後の16~17歳・男性で心筋炎報告率が最も高く約1万人に1人 調査期間中、mRNAワクチンの接種は1億9,240万5,448例において計3億5,410万845回行われた。VAERSへの心筋炎の報告は1,991例で、このうちCDCの定義を満たした心筋炎患者1,626例が解析対象となった。心筋炎患者の年齢中央値は21歳(IQR:16~31)、症状発現までの期間中央値は2日(IQR:1~3)で、1,334例(82%)が男性であった。 mRNAワクチン接種後7日以内の心筋炎の報告は、BNT162b2ワクチン接種者が947例、mRNA-1273ワクチン接種者が382例であった。接種後7日以内の心筋炎粗報告率は、ワクチンの種類、性別、年齢層、1回目または2回目接種で異なっていたが、男女とも複数の年齢層で予測率を越えた。 ワクチン接種100万回当たりの心筋炎報告率は、12~15歳男性(BNT162b2ワクチン70.7)、16~17歳男性(BNT162b2ワクチン105.9)、18~24歳男性(BNT162b2ワクチン52.4、mRNA-1273ワクチン56.3)において2回目接種後に高かった。 詳細な臨床情報が得られた30歳未満の心筋炎患者は826例で、そのうちトロポニン値上昇が98%(792/809例)、心電図異常が72%(569/794例)、MRI所見異常が72%(223/312例)に認められた。96%(784/813例)が入院し、このうち87%(577/661例)は退院までに症状が消失した。最も多かった治療は、非ステロイド性抗炎症薬が87%(589/676例)であった。 なお、著者は研究の限界として、VAERSは受動的な報告システムであるため、心筋炎の報告が不完全で情報の質が多様であり、過少報告または過剰報告の両方があり得ること、ワクチン接種のデータはCDCへ報告された者に限られているため不完全であった可能性があることなどを挙げている。

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コロナワクチン、5歳未満への緊急使用をFDA申請へ/ファイザー

 米・ファイザーは2月1日付のプレスリリースで、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの緊急使用許可を、5歳未満の乳幼児にも拡大するよう求める申請手続きを開始したことを発表した。米国では、オミクロン株まん延下で小児COVID-19症例と入院が急増し、中でも4歳未満の乳幼児の感染例が160万超に上るという。米国では現在5歳以上がワクチン接種の対象だが、FDAが承認すれば、新たに生後6ヵ月~5歳未満への接種が可能になる。 本申請は、生後6ヵ月~5歳未満の小児に対し、3μg(12歳以上を対象としたワクチン30μgの10分の1用量)を2回接種するもの。ファイザーは、現在および潜在的な将来の変異株に対する高いレベルの保護を達成するためには、3回目の追加接種も必要になるとの考えだ。したがって、今回は想定されている3回接種のうち、初回として初めの2回接種について承認を求めているが、3回目の追加接種に関する試験データについても順次FDAに追加提出し、さらに承認の拡大を目指す方針。 翻って日本では、1月21日、ファイザー製の「コミナティ筋注 5~11歳用」の製造・販売が特例承認され、3月以降で接種が始まる見通しが立ったばかりの段階。諸外国では、イスラエルなどが5歳未満への接種を計画しているが、実施に至っている国はなく、世界に先駆けたFDAの判断が注目される。

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mRNAワクチン3回接種、オミクロン株とデルタ株への有効性は?/JAMA

 2021年12月10日~2022年1月1日に新型コロナウイルス感染症様(COVID様)症状を有し検査した人において、mRNAワクチンの3回接種は未接種および2回接種と比較し、オミクロン変異株およびデルタ変異株の両方に対して感染予防効果があることが認められた。米国疾病予防管理センター(CDC)のEmma K. Accorsi氏らが、症例対照研究の結果を報告した。ただし、その効果は、デルタ変異株に比べてオミクロン変異株で低いことが示唆された。JAMA誌オンライン版2022年1月21日号掲載の報告。2021年12月に米国の4,666施設で検査を受けた7万155例について解析 研究グループは、COVID-19のmRNAワクチン3回接種と症候性SARS-CoV-2感染との関連性を、変異株(オミクロン株およびデルタ株)別に推定する目的で、2021年12月10日~2022年1月1日に全米の薬局における検査プログラム(49州のCOVID-19検査施設4,666施設)で検査を受けた18歳以上のCOVID様症状を有する成人7万155例を対象に、診断陰性デザイン(test-negative design)を用いた症例対照研究を行った。 BNT162b2(Pfizer/BioNTech製)またはmRNA-1273(Moderna製)ワクチン3回接種(3回目の接種は検査の14日以上前かつ2回目の接種から6ヵ月以上経過)と、ワクチン未接種および2回接種のみ(2回目接種は検査の6ヵ月以上前、すなわちブースター接種の対象)を比較した。 主要評価項目は、オミクロン変異株またはデルタ変異株による症候性SARS-CoV-2感染。S遺伝子が検出されなかった(S gene target failure:SGTF)感染をオミクロン変異株陽性、非SGTF感染をデルタ変異株陽性とした。すなわち、N遺伝子およびORF1ab遺伝子のPCRサイクル閾値(Ct値)がありS遺伝子のCt値がないをSGTF、それ以外を非SGTFとした。 多変量多項ロジスティック回帰分析により、症例と対照における3回接種vs.未接種および3回接種vs.2回接種のオッズ(OR)を比較することにより、症候性感染とワクチン接種との関連を推定した。また、陽性例において、副次評価項目として、3つのウイルス遺伝子のCt値(ウイルス量に反比例)中央値を、変異株別およびワクチン接種の有無別で比較した。対未接種:オミクロン株67%、デルタ株93.5%、対2回接種:66%、84% 解析対象は、感染例が2万3,391例(オミクロン変異株1万3,098例、デルタ変異株1万293例)、検査陰性(対照)が4万6,764例(平均[±SD]年齢40.3±15.6歳、女性4万2,050例[60.1%])であった。 ワクチン3回接種者の割合は、オミクロン変異株感染例では18.6%(2,441例)、デルタ変異株感染例では6.6%(679例)であり、検査陰性では39.7%(1万8,587例)であった。また、2回接種者はそれぞれ55.3%(7,245例)、44.4%(4,570例)、41.6%(1万9,456例)であり、ワクチン未接種者はそれぞれ26.0%(3,412例)、49.0%(5,044例)、18.6%(8,721例)であった。 3回接種vs.未接種の補正後ORは、オミクロン変異株が0.33(95%信頼区間[CI]:0.31~0.35)、デルタ変異株が0.065(0.059~0.071)、3回接種vs.2回接種の補正後ORは、オミクロン変異株が0.34(0.32~0.36)、デルタ変異株が0.16(0.14~0.17)であった。 Ct値中央値は、オミクロン変異株およびデルタ変異株共に3回接種者で2回接種者より有意に高かった(オミクロンN遺伝子:19.35 vs.18.52、オミクロンORF1ab遺伝子:19.25 vs.18.40、デルタN遺伝子:19.07 vs.17.52、デルタORF1ab遺伝子:18.70 vs.17.28、デルタS遺伝子:23.62 vs.20.24)。

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