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2001.

抗ウイルス薬+ブースターで重症化を防ぐ経口COVID-19治療薬「パキロビッドパック」【下平博士のDIノート】第93回

抗ウイルス薬+ブースターで重症化を防ぐ経口COVID-19治療薬「パキロビッドパック」今回は、抗ウイルス薬「ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、SARS-CoV-2陽性で重症化リスクを有する軽症~中等症Iの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、臨床的回復までの期間を短縮し、重症化や入院・死亡を予防することが期待されています。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2022年2月10日に特例承認されました。なお、重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者に対する有効性は確立していません。<用法・用量>通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ニルマトレルビルとして1回300mgおよびリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与します。中等度の腎機能障害患者(30mL/min≦eGFR<60mL/min)の場合には、ニルマトレルビルとして1回150mgおよびリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与します。重度の腎機能障害患者(eGFR<30mL/min)への投与は推奨されていません。なお、SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに本剤の投与を開始することが望ましく、臨床試験において症状発現から6日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていません。<安全性>国際共同第II/III相試験の中間解析時点で認められた副作用は672例中49例(7.3%)で、主なものは味覚不全25例(3.7%)、下痢13例(1.9%)、高血圧(頻度不明)などでした。なお、重大な副作用として中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、肝機能障害(いずれも頻度不明)が設定されています。 <患者さんへの指導例>1.この薬は、新型コロナウイルスの増殖に必要な酵素を阻害する抗ウイルス薬と、この抗ウイルス薬の分解を抑えて血中濃度を維持する薬の2種類がセットになっています。2.食事の有無にかかわらず、朝と夕の1日2回、12時間ごとに服用してください。症状が改善しても指示どおりに5日分を飲み切ってください。3.飲み合わせに注意が必要な薬剤が多数ありますので、服用している薬剤や健康食品、サプリメント、嗜好品をすべて報告してください。4.服薬開始後、疲れやすい、体がだるい、力が入らない、吐き気、食欲不振などの症状のほか、異常が現れた場合はすぐに相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、COVID-19に対する抗ウイルス薬として特例承認されました。経口薬としては、2021年12月に特例承認されたモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオカプセル)に続く2剤目の薬剤となります。セットとなっている2剤のうち、ニルマトレルビルは新型コロナウイルスの増殖に関わるメインプロテアーゼの作用を阻害して抗ウイルス効果を発揮し、リトナビルは抗HIV薬としても用いられている強力なCYP3A阻害薬であり、ニルマトレルビルの濃度を上げるブースター薬として働きます。主な治療対象は、モルヌピラビルと同様に、重症化リスクの高い軽症~中等症Iの患者ですが、本剤は12歳以上(体重40kg以上の場合)から服用できます。ほかに軽症患者を対象とした薬剤としては、中和抗体製剤カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ注射液セット)と、ソトロビマブ(同:ゼビュディ点滴静注液)の2剤が承認されています。また、適応外ではありますが、2022年1月よりレムデシビル(同:ベクルリー点滴静注用)も限定された条件下で使用可能です。わが国も参加している国際共同第II/III相EPIC-HR試験の結果において、症状発現から3日以内に本剤の投与を受けた患者では入院・死亡リスクが89%減少し、5日以内に投与を受けた患者では88%減少しました。なお、各変異株に対する臨床試験の有効性データは現時点では得られていませんが、in vitroにおいてはオミクロン株ほか懸念すべき変異株に対する抗ウイルス効果が認められています。用法は、1日2回5日間の経口投与です。シート1枚が1日分となっており、1回にニルマトレルビル錠を2錠およびリトナビル錠を1錠服用します。なお、重度の腎機能障害患者には禁忌となっており、中等度の腎機能障害患者はニルマトレルビル錠を1回1錠に減量して服用します。この場合は薬剤の交付前に朝および夕の服用分それぞれからニルマトレルビル錠1錠を取り除き、取り除いた箇所に専用のシールを貼り付けてから交付します。不要な錠剤を取り除いたことを必ず患者さんに伝えてください。リトナビルはCYP3Aを強く阻害し、またニルマトレルビルおよびリトナビルはCYP3Aの基質となっています。そのため、併用に注意すべき薬剤が多数あり、併用禁忌薬としてはフレカイニド、アミオダロン、ピモジド、ピロキシカム、アゼルニジピン、リバーロキサバン、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、トリアゾラム、ボリコナゾールなど38成分とセイヨウオトギリソウが挙げられています。ほかにも注意すべき薬剤はあると考えられていて、国立国際医療研究センター病院が国内外の資料を基に作成した「パキロビッドパックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」を公開しています。本剤を使用する医療機関は、ファイザーが開設する「パキロビッドパック登録センター」に登録して配分依頼を行います。処方に際しては患者の同意書が必要であり、院外処方に際しては、対応薬局に処方箋とともに記入済みの「投与前チェックシート」を提出する必要があります。処方箋を応需した薬局薬剤師は、とくに併用薬に注意すべきであり、服薬中のすべての薬剤を確認しなければなりません。また、腎機能に応じて適切な投与量になっているかどうかのチェックも行いましょう。参考1)PMDA 添付文書 パキロビッドパック2)ファイザー 新型コロナウイルス『治療薬』医療従事者専用サイト パキロビッドパック

2002.

第101回 COVID-19入院患者の新たな糖尿病はたいてい一過性らしい

米国のマサチューセッツ総合病院の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者およそ2千人(1,902人)の電子カルテ情報を遡って調べたレトロスペクティブ試験結果によると、その入院時に新たに診断された糖尿病(NDDM;newly diagnosed diabetes mellitus)はたいてい一過性らしく、退院後間もなくおよそ正常な血糖値に多くの場合回復するようです1,2)。1,902人のうち約3人に1人(594人)に糖尿病が認められ、それらのうち77人(全被験者1,902人の4%、糖尿病患者594人の13%)の糖尿病は入院前には認められなかったもの、すなわちNDDMでした。NDDMのそれら77人のうち入院中に死亡した10人と消息が絶えた3人を除く64人のその後を調べたところ約1年時点(中央値323日)で半分に近い26人(41%)の血糖値は糖尿病の水準未満(正常か前糖尿病レベル)に落ち着いていました。追跡された64人のうち39%(25/64人)はインスリン投与頼りで退院しましたが約1年後のインスリン投与患者は僅か5人(7.8%)に減っていました。それに8割方のHbA1cは7%以下になっていました(HbA1c測定患者41人中33人)。NDDMの77人の半数近い33人(43%)は入院前の記録で前糖尿病が見つかっており、そのような前糖尿病患者の高血糖は比較的軽度でした。一方、入院前に医療と縁遠かったNDDM患者はより重度の高血糖を呈しました。それら所見によると、COVID-19入院患者の新たな糖尿病は新たに発症したものか単に新たに把握されたものか多くの場合不明瞭かもしれず、新たに発症した糖尿病というより新たに診断に至った糖尿病と捉えるほうがより適切なようです。実際今回の研究ではそう位置づけられています。NDDMに至った経緯はどうあれNDDM患者は入院前からの糖尿病患者に比べてC反応性タンパク質(CRP)等の炎症マーカーの値が高く、集中治療室(ICU)をより必要としました。それらに加えてNDDM患者の血糖値は退院後に改善していることも踏まえるとNDDMの後ろ盾はどうやら炎症反応であり、インスリンを分泌するβ細胞の破壊ではなくインスリンに細胞が反応し難くなるインスリン抵抗性がCOVID-19入院に伴うNDDMの主因らしきことを物語っています。ただし、インスリン不足を意味する糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)が糖尿病を新たに生じた患者と以前からの糖尿病患者の両方で多いことが複数の試験で示されており、インスリン抵抗性のみならず急なインスリン欠乏もまたNDDMの片棒を担いでいるかもしれません。今回の報告でのDKA発現率はNDDM患者では6.5%、以前からの糖尿病患者では11%であり、著者によると同等(comparable)でした。今回の報告はCOVID-19入院時のNDDMを長く追跡した研究のさきがけの一つであり、更なる試験で検証が必要です。また、COVID-19で急な高血糖が生じる仕組みを掘り下げていかねばなりません。参考1)Cromer SJ,et al. J Diabetes Complications. 2022 Feb 4:108145. [Epub ahead of print]2)Newly diagnosed diabetes in patients with COVID-19 may simply be a transitory form of the blood sugar disorder / Eurekalert

2003.

コロナワクチンの効果低下、変異だけが理由ではない/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを接種した成人では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタ変異株(B.1.617.2)が優勢となった時期には、ワクチンの感染防御効果が低下しており、変異株別の感染防御効果の違いとは別個に、mRNAワクチンの有効率は経時的に減少する可能性があることが、米国疾病予防管理センターのAmadea Britton氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年2月14日号に掲載された。米国のtest-negativeデザインの症例対照研究 本研究は、デルタ変異株が優勢となる以前の時期(前デルタ期:2021年3月13日~5月29日)と、その後の優勢となった時期(デルタ優勢期:2021年7月18日~10月17日)で、症候性SARS-CoV-2感染症とワクチン接種以降の日数の関連の評価を目的とする、test-negativeデザインを用いた症例対照研究である(米国疾病予防管理センターの助成を受けた)。 解析には、米国のIncreasing Community Access to Testing(ICATT)の6,884のCOVID-19検査施設のデータが用いられた。これらの検査施設で、2021年3月13日~10月17日の期間に、COVID-19様疾患を呈する患者181万4,383例が核酸増幅検査(NAAT)を受けた(20歳以上:163万4,271例、12~19歳:18万112例)。 ワクチンは、2つのmRNAワクチン(BNT162b2[Pfizer-BioNTech製]、mRNA-1273[Moderna製]、2回接種で完全接種)と、1つのアデノウイルスベクターワクチン(Ad26.COV2.S[Janssen/Johnson&Johnson製]、1回接種で完全接種)の3種が使用された。ワクチン接種者は、検査の14日以上前に完全接種を終了した集団が解析に含まれた。 主要アウトカムは、症候性感染症とワクチン接種の関連とされ、スプライン法に基づく多変量ロジスティック回帰分析によって算出されたオッズ比(OR)で評価された。12~19歳も成人と同様の結果 解析に含まれた181万4,383例(20~44歳59.9%、12~19歳9.9%、女性58.9%、白人71.8%)のうち、39万762例(21.5%)が検査陽性(症例群)で、142万3,621例(78.5%)は検査陰性(対照群)であった。 20歳以上の成人の完全接種者は、BNT162b2ワクチンが30.6%、mRNA-1273ワクチンが19.9%、Ad26.COV2.Sワクチンが4.5%で、45.0%は未接種者であった。 20歳以上では、BNT162b2ワクチンの2回目接種後14~60日の症候性感染症とワクチン完全接種のOR(初期OR)は、前デルタ期が0.10(95%信頼区間[CI]:0.09~0.11)と、デルタ優勢期の0.16(0.16~0.17)と比較して小さく、接種後の時間の経過(14~111日)とともに上昇していた(ORの月ごとの変化 前デルタ期:0.04[95%CI:0.02~0.05]、デルタ優勢期:0.03[0.02~0.03])。これは、ワクチン接種以降に、症候性感染症とワクチン完全接種の関連性が経時的に減弱したことを示す。 同様に、mRNA-1273ワクチンの初期ORは、前デルタ期の0.05(95%CI:0.04~0.05)からデルタ優勢期には0.10(0.10~0.11)へと上昇し、接種以降に経時的(14~266日)な増加が認められた(ORの月ごとの変化 前デルタ期:0.02[95%CI:0.005~0.03]、デルタ優勢期:0.03[0.03~0.04])。 また、成人でのAd26.COV2.Sワクチンの初期ORは、前デルタ期が0.42(95%CI:0.37~0.47)、デルタ優勢期は0.62(0.58~0.65)であったが、接種以降に、経時的に有意な増加はみられなかった。 一方、12~19歳の完全接種者は、BNT162b2ワクチンが33.7%、mRNA-1273ワクチンが3.7%、Ad26.COV2.Sワクチンが1.0%で、61.5%は未接種者だった。 12~15歳では、BNT162b2ワクチンの症候性感染症とワクチン完全接種の初期ORは、デルタ優勢期が0.06(95%CI:0.05~0.06)で、接種後14~127日に、月ごとに0.02(95%CI:0.01~0.03)ずつ上昇し、16~19歳では、初期ORはデルタ優勢期が0.10(0.09~0.11)で、接種後14~231日に、月ごとに0.04(0.03~0.06)上昇した。16~19歳におけるmRNA-1273ワクチンのデルタ優勢期の初期ORは0.06(0.04~0.08)、14~203日の月ごとのOR上昇は0.03(0.02~0.05)であり、Ad26.COV2.Sワクチンの初期ORはデルタ優勢期が0.46(0.30~0.62)で、経時的な変化はみられなかった。 著者は、「これらの知見は、ワクチンの変異株別の感染防御効果の違いとは別個に、mRNAワクチンの有効率は時間の経過とともに着実に減少する可能性があるとの見解と一致する」としている。

2004.

第91回 5~11歳への接種開始を踏まえたワクチン手引き第7版を公表/厚労省

<先週の動き>1.5~11歳への接種開始を踏まえたワクチン手引き第7版を公表/厚労省2.初の国産コロナ治療薬となるか?塩野義製薬が経口薬を承認申請3.2021年の死亡数6.7万人増で戦後最多、デルタ株の影響か/厚労省4.内科や外科を目指す若手医師が減少?新制度で問題は解消されるのか5.旧優生保護法による強制不妊手術、国に初の賠償命令/大阪高裁6.乳房インプラントによるリンパ腫の国内報告が新たに2例、計4例に1.5~11歳への接種開始を踏まえたワクチン手引き第7版を公表/厚労省厚労省は、5~11歳の小児への新型コロナウイルスワクチン接種について、副反応に対応できる医療提供体制の確保を確認の上、専門的な医療機関の見直しを検討するよう事務連絡を発出した。副反応に関する相談窓口の設置などにかかる経費は補助の対象となる。早いところでは2月末からワクチン接種が開始されるが、12歳以上への接種と異なり、有効成分量を成人の3分の1にするほか、ワクチン接種は努力義務ではなく、保護者の同意の上実施することになっている。乳幼児・小児に対して接種を行う場合は、保護者の同伴を求めることも含め、21日に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き」の第7版を公表した。(参考)5~11歳へのワクチン接種 自治体の必要経費 全額助成へ 厚労省(NHK)小児接種、副反応に対応可能な医療体制確保を 厚労省(CB newsマネジメント)新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の幼児児童生徒に対する実施についての学校等における考え方及び留意点等について(厚労省)2.初の国産コロナ治療薬となるか?塩野義製薬が経口薬を承認申請塩野義製薬は25日、新型コロナウイルスに対する経口薬の製造販売承認を厚労省に申請したことを発表した。本剤は新型コロナウイルスの増殖を抑制するプロテアーゼ阻害薬。12歳以上の軽症・中等症患者を対象とした臨床試験において、1日1回、5日間投与したところ、3回目の投与後に感染性ウイルスが検出された割合が10%未満となり、プラセボを服用した群よりも低かった。また、副作用も軽度だったとしている。承認されれば、軽症者向けの飲み薬としては3剤目、国内の製薬会社では初めてとなる。すでに製造を始めており、3月末までに1100万人分を生産し、4月以降は年間1,000万人分の供給体制の構築を目指す。現時点では臨床試験がすべて終了しておらず、この前に実用化できる「条件付き早期承認制度」の適用を求めている。(参考)塩野義、コロナ飲み薬を年間1000万人分供給へ…厚労省に製造販売の承認申請(読売新聞)塩野義製薬 新型コロナの飲み薬 厚労省に承認申請(NHK)塩野義がコロナ経口薬を承認申請、条件付き早期承認制度の適用を希望(日経バイオテク)新型コロナウイルス感染症治療薬S-217622の国内における製造販売承認申請について(塩野義製薬)3.2021年の死亡数6.7万人増で戦後最多、デルタ株の影響か/厚労省厚生労働省は25日、2021年12月の人口動態統計の速報を公表した。昨年亡くなった人は前年より6万7,745人(4.9%)増加し、戦後最多の145万2,289人だった。死者数の増加は2年ぶりで、新型コロナウイルスのデルタ株による影響が考えられる。死因が公表されている21年1~9月分のデータをみると、新型コロナによる死者は前年の同じ期間より1万4,563人多かった。東日本大震災の犠牲者も1万5,000人余りだったが、21年はコロナ禍の余波とみられる心臓など循環器系疾患の死亡が前年同期より1万人余り増加し、戦後最多の死亡数となった。なお、脳卒中など救急医療が必要な死因の死亡数は横ばいだったため、第5波の医療逼迫では死亡数の増加を防げたとみられる。ほかにも老衰1万5,035人、誤嚥性肺炎5,429人など増えており、いずれも高齢化が背景とみられる一方で、出生数は84万2,897人と過去最少であり、人口減少は加速している。(参考)21年の死者、戦後最多145万人 デルタ株流行が影響 厚労省速報(朝日新聞)死亡増加数は戦後最大 6万7000人増、震災時上回る 心不全などコロナ余波(日経新聞)人口動態統計速報(令和3年12月分)(厚労省)4.内科や外科を目指す若手医師が減少?新制度で問題は解消されるのか日本専門医機構は21日にオンラインで行った定例記者会見で、2022年度に専門医研修を開始する専攻医の領域ごとの採用者数を発表した。総数は9,519人と前年度より300人余り増加しているが、内科や外科が前年度に比べ減少している。地域医療の現場からは「内科医師が圧倒的に不足している」との声が強い。各学会からは「専攻医に占める内科のシェアが減少しており、将来の我が国の医療を考えたとき大きな問題である(内科)」「外科医不足は深刻で、まだまだ増やす必要がある(外科)」「ICTが発達する中で放射線科医の働き方は大きく変わっており、従前と同じ考え方で地域偏在などを議論することは難しくなってきている(放射線科)」などの意見が出ており、寺本 民生理事長は、「今後、『診療科、領域間の偏在』の是正を検討していく必要がある。ただしシーリング(採用数の上限設定)には負の面があることにも留意しなければならない」との考えを述べた。(参考)専門医を目指す医師 内科、外科が減少 診療科の偏在解消へ課題も(読売新聞)新専門医目指す「専攻医」の2022年度採用は9519名、「内科医不足の解消」などが今後の重要課題―日本専門医機構(Gem Med)5.旧優生保護法による強制不妊手術、国に初の賠償命令/大阪高裁旧優生保護法による「不良な子孫の出生防止」を目的に、知的障害などを理由に本人の同意なく不妊手術を強制された原告らの訴えに対して、憲法13条・14条に違反とし、国側に初の賠償命令がでた。これまでの地裁判決では、旧優生保護法による不妊手術を違憲としつつも、20年の除斥期間を理由に請求を退けてきた。今回の高裁判決は、被害者の救済を求めた原告らが、法改正直後であっても、社会的な差別や偏見などで原告の訴訟が難しかったことを考慮し、請求を退けた一審判決と異なり、国側に計2,750万円の賠償を命じた。(参考)除斥期間の例外を認定 被害者救済の道広がる 強制不妊訴訟の大阪高裁判決(産経新聞)旧優生保護法「違憲」、国に初の賠償命令 大阪高裁(日経新聞)6.乳房インプラントによるリンパ腫の国内報告が新たに2例、計4例に厚労省は、2019年から豊胸術や乳がん再建術に用いられるインプラント(ゲル充填人工乳房)のまれな合併症「乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)」について継続した情報提供を行っているが、このほど新たに2例の発症報告があったと発表した。国内ではこれまでに4例が報告されているが、現時点で死亡症例は認められていない。本製品は2019年7月、米国FDAの決定によりアラガン社が全世界を対象として自主回収(リコール)しており現在は流通していないが、該当する製品が挿入された患者のうち、2,200〜3,300人に1例(0.030~0.045%)でBIA-ALCLが発症している。発症までの期間は術後平均7~9年とされ、引き続き継続的な検診を呼び掛けている。(参考)人工乳房による悪性リンパ腫が国内でも散発、生涯にわたり「定期検診と自己検診」継続を―厚労省・関係学会(Gem Med)ゲル人工乳房でリンパ腫発症、国内3・4例目 継続的な検診を呼び掛け、厚労省(CB newsマネジメント)乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)についてよくあるご質問(日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会)ゲル充填人工乳房及び皮膚拡張器植込み患者等における乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)の発生及び植込み患者等に対する情報提供について(厚労省)

2005.

妊娠中のコロナワクチン2回接種、乳児の入院61%予防効果/CDC

 母親が妊娠中にCOVID-19ワクチンを2回接種することで、生後6ヵ月未満の乳児の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による入院を61%予防する効果があることが、米国の研究チームの調査で明らかになった。研究結果は、米疾病対策センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年2月15日号に掲載。 これは米国の研究チームOvercoming COVID-19が、2021年7月1日~22年1月17日、米国17州20の小児病院において実施したケースコントロール研究である。生後6ヵ月未満の入院乳児379例が対象で、このうちCOVID-19による入院が176例(症例群)で、COVID-19以外による入院が203例(対照群)だった。乳児の母親は、妊娠中にファイザー製またはモデルナ製のコロナワクチンを2回接種完了と、未接種の2グループに分類。症例群で母親がワクチンを接種していたのは16%(28/176例)だったのに対し、対照群で母親がワクチンを接種していたのは32%(65/203例)だった。 調査の結果、生後6ヵ月未満の乳児の新型コロナによる入院予防効果は、母親が妊娠中にワクチン2回接種完了で61%(95%信頼区間[CI]=31~78%)だった。このうち、妊娠初期(20週以前)に2回接種を完了した場合の効果は32%(95%CI=-43%~68%)だった(ただし、信頼区間が広いため慎重な解釈が必要)。妊娠後期(21週~出産14日前)では80%(95%CI=55~91%)だった。いずれにおいても、妊娠中のワクチン2回完了は、乳児の入院リスク低減と関連していることが示された。 症例群の43例(24%)がICUに入院した。このうち25例(15%)は重症で、入院中に人工呼吸器、血管作動性物質、ECMOなどを導入し、1例が死亡した。また、ICU入院の43例のうち、88%は母親がワクチン未接種であった。ECMO導入例(1例)と死亡例(1例)の母親は、いずれもワクチン未接種であった。 妊婦には3回目のブースター接種が推奨されているが、本研究はサンプル数が少ないため、その効果は不明だ。また今回の解析では、母親が妊娠前または妊娠中にSARS-CoV-2に感染していたかどうかを評価しておらず、それによって乳児が母体の抗体を得られたかもしれないことなどが、課題として挙げられており、妊娠前と妊娠中のワクチン接種のタイミングを比較検討する必要があるとしている。

2006.

コロナ重症化リスクを低減、パキロビッドパック第II/III相試験結果/NEJM

 重症化リスクがあるワクチン未接種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者に対し、ニルマトレルビル+リトナビル(商品名:パキロビッドパック)はプラセボと比較し、入院または死亡のリスクを約89%低下させ、安全性に明らかな懸念は認められなかった。米国・ファイザー社のJennifer Hammond氏らが、国際共同第II/III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験「EPIC-HR試験」の結果を報告した。ニルマトレルビルは、経口投与可能なSARS-CoV-2のメインプロテアーゼ(Mpro)阻害剤で、in vitroにおいて幅広い種類のコロナウイルスに対し強力なMpro阻害活性およびウイルス複製阻害作用を示し、マウスモデルにおいて経口投与により肺のSARS-CoV-2力価がプラセボに比べ有意に低下することが示されていた。NEJM誌オンライン版2022年2月16日号掲載の報告。ニルマトレルビル+リトナビル5日間併用投与、発症後5日以内に治療を開始 EPIC-HR試験の対象は、SARS-CoV-2陽性が確認され、無作為化の5日前までに症状が発現し、かつ無作為化時点でCOVID-19の徴候または症状が少なくとも1つあり、COVID-19の重症化リスクを有する18歳以上の成人患者であった。SARS-CoV-2感染歴、無作為化後48時間以内に入院を要することが想定される患者、ワクチン接種歴のある患者などは除外した。 対象患者を、ニルマトレルビル群(ニルマトレルビル300mgおよびリトナビル100mgを12時間ごとに5日間経口投与)またはプラセボ群に、1対1の割合で割り付けた(リトナビルは、ニルマトレルビルの主要代謝酵素であるCYP3A4を阻害することから、ニルマトレルビルの血漿中濃度を維持する目的で併用される)。 主要評価項目は、mITT集団(症状発現後3日以内に治療が開始され、モノクローナル抗体未投与)における28日目までのCOVID-19関連入院または全死因死亡のイベントが認められた患者の割合で、ウイルス量および安全性についても評価した。入院/死亡の患者の割合、プラセボと約6.3%差、相対リスク減少率は約89% 2021年7月16日~12月9日の期間に、世界343施設で合計2,246例がニルマトレルビル群(1,120例)およびプラセボ群(1,126例)に無作為化され、治療を受けた。 事前に計画された中間解析(全解析対象集団1,361例、このうち774例がmITT集団)では、主要評価項目のイベントが認められた患者の割合は、ニルマトレルビル群が0.77%(3/389例、死亡0)、プラセボ群が7.01%(27/385例、死亡7例)で、ニルマトレルビル群がプラセボ群より6.32%低かった(95%信頼区間[CI]:-9.04~-3.59、p<0.001、相対リスク減少率89.1%)。 最終解析(全解析対象集団2,246例、このうち1,379例がmITT集団)でも有効性は維持されており、主要評価項目のイベントが認められた患者の割合はニルマトレルビル群が0.72%(5/697例、死亡0)、プラセボ群が6.45%(44/682例、死亡9例)で、群間差は-5.81%(95%CI:-7.78~-3.84、p<0.001、相対リスク減少率88.9%)であった。 症状発現後3日以内に治療を開始した場合、治療開始5日目のウイルス量はニルマトレルビル群がプラセボ群よりも低く、群間差(補正後平均値)は-0.868 log10コピー/mLであった。 安全性解析対象集団(ニルマトレルビル群1,109例、プラセボ群1,115例)において、有害事象の発現率は両群で同等であった(有害事象:22.6% vs.23.9%、重篤な有害事象:1.6% vs.6.6%、投与中止に至った有害事象:2.1% vs.4.2%)。ニルマトレルビル群でプラセボ群より高頻度に発現した有害事象は、味覚障害(5.6% vs.0.3%)および下痢(3.1% vs.1.6%)で、死亡はプラセボ群でのみ13例認められ、すべてCOVID-19に関連した死亡であった。副作用の発現頻度は、ニルマトレルビル群(7.8%)がプラセボ群(3.8%)より高かったが、この差は主に味覚障害(4.5% vs.0.2%)と下痢(1.3% vs.0.2%)によるものであった。

2007.

新型コロナ感染、1年間の精神疾患リスクは?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者は、同時期のSARS-CoV-2非感染者および歴史的対照者と比較して、さまざまな精神疾患(不安障害、うつ病性障害、ストレスおよび適応障害、オピオイド使用障害、オピオイド以外の物質使用障害、神経認知機能低下、睡眠障害など)のリスクが高いことが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによるコホート研究で明らかとなった。著者は、「COVID-19生存者のメンタルヘルス障害に対する取り組みは優先課題である」とまとめている。BMJ誌2022年2月16日号掲載の報告。SARS-CoV-2感染者と、同時期の非感染者ならびにCOVID-19流行以前の対照者を比較 研究グループは、米国退役軍人省のデータを用い、2020年3月1日~2021年1月15日の間に少なくとも1回、SARS-CoV-2のPCR検査が陽性であった人(16万9,240例)を特定し、このうち陽性確認から30日後に生存していた人(COVID-19群15万3,848例)の転帰を調べ(追跡期間終了日:2021年11月30日)、精神疾患の発症リスクを2つの対照群と比較した。対照群は、COVID-19群と同時期にSARS-CoV-2の感染が確認されていない同時期対照群(563万7,840例)と、COVID-19流行以前の歴史的対照群(585万9,251例)である。 COVID-19と精神疾患発症との関連は、事前に定義した共変量およびアルゴリズムで選択された高次の共変量の両方に関して調整した逆確率重み付け法により、追跡期間中のハザード比(HR)と、各群における1年推定発生率の差に基づく1,000人当たりの1年間の補正後リスク差ならびにその95%信頼区間(CI)を算出した。同時期非感染者と比べ、何らかの精神疾患の診断・処方を受けるリスクが60%増加 COVID-19群では同時期対照群と比較して、不安障害(HR:1.35[95%CI:1.30~1.39]、群間リスク差11.06[95%CI:9.64~12.53])、うつ病性障害(1.39[1.34~1.43]、15.12[13.38~16.91])、ストレスおよび適応障害(1.38[1.34~1.43]、13.29[11.71~14.92])、抗うつ薬使用(1.55[1.50~1.60]、21.59[19.63~23.60])、ベンゾジアゼピン系薬剤使用(1.65[1.58~1.72]、10.46[9.37~11.61])の発生リスクが増加した。また、オピオイド処方(1.76[1.71~1.81]、35.90[33.61~38.25])、オピオイド使用障害(1.34[1.21~1.48]、0.96[0.59~1.37])、その他(オピオイド以外)の物質使用障害(1.20[1.15~1.26]、4.34[3.22~5.51])の発生リスクも増加した。 さらに、COVID-19群では同時期対照群と比較して、神経認知機能低下(HR:1.80[95%CI:1.72~1.89]、群間リスク差:10.75[95%CI:9.65~11.91])、睡眠障害(1.41[1.38~1.45]、23.80[21.65~26.00])の発症リスクも増加し、精神疾患の診断や薬の処方を受けるリスクも増加が認められた(1.60[1.55~1.66]、64.38[58.90~70.01])。 評価したアウトカムのリスクは、入院していない人でも増加していたが、COVID-19急性期に入院した人で最も高かった。 これらの結果は、歴史的対照群との比較においても一致しており、COVID-19で入院していない人vs.季節性インフルエンザで入院していない人、COVID-19で入院した人vs.季節性インフルエンザで入院した人、COVID-19で入院した人vs.その他の原因で入院した人、いずれの比較においても一貫してCOVID-19群で精神疾患の発症リスクが高かった。

2008.

第97回 “アジャイル思考”を得ない限り、日本は今のコロナ対策から抜けられない!?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の流行の主流がオミクロン株になって以降、よく耳にするようになったのが「オミクロン株による感染はただの風邪」という理屈だ。これはある意味では正しいかもしれない。少なくとも基礎疾患のない若年者にとっては、風邪に近いと言っても差し支えはないだろう。もっともこの一部の人にとっての「風邪」もワクチンの2回接種完了者が国内総人口の約8割を占めるワクチン効果が加味されている可能性が高いことも念頭に置かねばならない。この昨今、声高に語られる「オミクロン株感染風邪論」の背後には、過去2年以上の度重なる行動規制に対する恨み節が籠っていることは否定できない。なんせ、今回のコロナ禍によって発出された緊急事態宣言やまん延防止等重点措置(以下、まん防)に伴う経済損失総額は、野村総合研究所による試算で20兆円超。これは先日、衆議院予算委員会を通過した過去最大の2022年度予算の歳出総額107兆5,964億円の約20%に相当する。これ以外に数字に表れない損失もあることは周知のことで、いずれにせよ国民に大きな犠牲を強いていることは明確である。それ故に若年層を中心に「風邪ごときのとばっちりを食らうのはまっぴらごめん」との理屈が支持を受けるのも分からないわけではない。とはいえ、医学的に見れば、高齢者での新型コロナはただの風邪ではなく、その一撃で命を奪われる危険性は明らかにほかの感染症よりも高い。このように言うと、「残りの人生が少ない高齢者のために、なぜ前途ある若者が苦渋を強いられなければならない」という反論が常に飛び出してくる。実際、私の身近でもそうした声はよく聞く。こうした時に私は「重症化した高齢者にかかる莫大な医療費を負担するのは、結局若年層なので高齢者を感染から守ることは若年者を守ること」と伝えている。もっとも目に見えにくい負担を実感してもらうのはなかなか難しいのが現実だ。そうした中で「オミクロン株感染風邪論者」が最近引き合いに出すのが、欧州連合内で初めて新型コロナの感染拡大阻止関連規制のほぼすべてを撤廃したデンマークの事例だ。この措置は2月1日からスタートし、公共交通機関利用時のマスク着用義務、飲食店利用時などでのデジタル証明「コロナパス(ワクチン接種証明・PCR or抗原検査陰性証明)」の提示義務などが撤廃された。規制撤廃発表の記者会見では、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相が「さよなら規制、ようこそコロナ前の生活」と宣言したほど。ところが今のデンマークでは毎日3万人程度の新規感染者と30~40人の死者が報告されている。総人口約580万人のデンマークのこの状況を日本に当てはめると、毎日約65万人の感染者と700人前後の死者が発生している計算だ。現在1日の新規感染者8万人前後で、31都道府県に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくまん防を発令中の日本から考えれば驚くような決断である。デンマークの決定は感染者が増加していながら、重症者が増加していない同国内の感染状況データを根拠としている。ちなみに現在、デンマークでの感染の主流は、日本の報道では「ステルス・オミクロン」と称されるオミクロン株の亜種BA.2である。確かにオミクロン株はデルタ株と比較して重症化しにくいとは言われているが、感染者が増えれば、当然ながら重症者も増える。にもかかわらず、今回の決定に至った背景には、デンマーク国内の総人口に占める新型コロナワクチンの2回接種完了率が81.0%と日本と大差ないにもかかわらず、ブースター接種完了率が61.7%(2月22日付)と日本とは比較にならないほど高い現状を加味していると言われている(2月22日付の日本国内での2回接種完了率は79.1%、ブースター接種完了率は15.3%)。さらにデンマークの場合、現時点で65歳以上の高齢者のブースター接種完了率は約95%。重症化のハイリスク者に対しては4回目接種を計画し、新たな変異株の登場次第では4回目接種の対象を全人口に拡大することを視野に入れている。要は現状と将来の備えは日本とは比較にならず、デンマークを事例に挙げながら日本国内の対応を単純批判する「オミクロン株風邪論者」は自分の主張に合わせてファクトを都合良く切り貼りしているに過ぎない。だが、それ以上にデンマークと日本には根本的に大きな差があると個人的には考えている。というのもデンマークはすでに昨年9月に今回のような規制の大幅な解除を行いながら、その後の感染者増加に伴って規制を復活。そして再び今回の規制撤廃に至っている。要は状況に応じてアジャイルな対策を行っているのだ。「アジャイル」は、英語で「機敏な」という意味。最近ではソフトウェア開発などに関連してよく耳にするようになった言葉で、要は基本機能を実装したソフトウェアはすぐに実用を開始し、必要に応じて徐々にアップデートしていくということ。スマートフォン用アプリなどが代表例だ。ところが最初に何らかの商品やサービスを市場に出す際に完璧さを求めがちな日本ではこうした手法はあまり馴染みがない。私はもう一つの取材領域である国際紛争関係でこうした違いを実感したことがある。海外の紛争地域では、旧西側を中心とする欧米各国の軍が停戦監視などの平和維持活動(PKO)のために派遣されることが少なくない。そこで見かける各国の軍用車両は、基本型を軸にさまざまな派生型がある。派遣地域の地勢や気候の違い、技術革新に応じて基本型への追加改修キットがあり、結果として派生型の軍用車両が数多く存在するのである。何とも合理的だと思っていたが、日本の自衛隊ではこうしたケースは見かけない。ある時にこの点を防衛省関係者に尋ねたところ次のような答えが返ってきた。「新装備の予算要求の際、国会をはじめとする関係各方面からは考えられうる最上スペックを求められます。それが数年後に状況に合わなくなり、また新装備を導入しようとすると、『あの時、君たちは最上のものだと言ったじゃないか。じゃあ、あの時の提案は不備や間違いだったのか』と言われてしまうのです。ベストのものはその時々で変わるものなのですが…」新興感染症では、時間の経過とともに不明点が明らかになり、それに伴い対応策も大きく変更を迫られることが多い。しかし、前述のように日本ではもともとこうした変更に対する国民的許容幅は広くはない。アジャイルに過ぎないことが時に「場当たり」「なし崩し」と表現される。もっと端的に言えば、オール・オア・ナッシングな傾向とも言えるかもしれない。そしてこうした傾向は、オミクロン株登場後の新型コロナワクチンに対する世間の評価でも垣間見られる。オミクロン株に対する既存の新型コロナワクチンの感染予防と発症予防の効果がかなり低下したことは事実である。だが、2回目接種完了直後あるいは3回目接種終了後ならば、それでも6割程度の感染予防・発症予防効果はあることが分かっている。しかし、これを機にもともとワクチンに否定的ではなかった人からも「ワクチンに意味はない」「いまやワクチンは無効だ」という言説が目につくようになった。そして、国などが新型コロナ対策でマイナーチェンジをする時なども、「完璧さ」を目指す社会的雰囲気を受けたばつの悪さなのか、歯切れの悪い説明が目立つ。結局のところ、現在の「オミクロン株風邪論」や「感染症法での新型コロナの扱いは2類か5類か論争」も日本人のアジャイル感のなさゆえの結果とも思えてきて仕方がない昨今だ。

2009.

LINEチャットボットでコロナの隔離期間を自動計算

 新型コロナワクチンに関する情報提供を行う医師らが組織する「一般社団法人コロワくんサポーターズ」は提供するLINEボットサービス(関連記事:副反応は大丈夫?新型コロナワクチンの疑問に答えるLINEボット)の新機能として「コロナ待機期間 自動計算システム」を追加した。コロナの隔離期間や待機期間を計算 これまでワクチン接種の対象者や副反応の不安に対し、チャットボット機能を使った情報提供をしてきたが、今回の新機能「コロナ待機期間 自動計算システム」は「コロナ陽性者・濃厚接触者」「症状あり・なし」「陽性判定日」等の情報を入れることで隔離解除日を自動計算して教えてくれる。コロナ待機期間の自動計算システムの利用はLINE上で「コロワくんの相談室」を検索して友達追加するだけ、と簡便だ。 「コロワくんサポーターズ」の中心メンバーの1人である山田 悠史氏(マウントサイナイ医科大学 老年医学科フェロー)は、新サービス提供にあたり下記コメントを寄せている。 「『コロワくんの相談室』のLINE上で無料で使えるチャットボットで、新型コロナウイルスやワクチンの疑問に対する答えを最新の科学的知見に基づいて提供しています。20名ほどからなるチームがボランティアで作成やアップデートを行っており、最新のオミクロン株の情報なども検索できます」。 「今回の『隔離解除日の自動計算機能』は、オミクロン株の影響で感染者が増加し、多忙を極めているであろう医療従事者や保健所のスタッフの方、そして感染や濃厚接触後にお困りの方の助けになればという思いで作成しました。『隔離や自宅待機の解除の日はいつか?』という質問は、日々の診療の中でもよく聞かれる質問の一つでしょう。日本国内の基準は少し複雑なので、毎回それを確認する作業は忙しい日々の診療の負担になっているかと想像します。本サービスはコロナ感染者にも濃厚接触者にも対応しており、多くの医療機関や行政で活用頂ければ幸いです」。

2010.

国内オミクロン株感染者139例の臨床的特徴/感染研

 国立感染症研究所は、国内におけるオミクロン株の疫学的・臨床的特徴を迅速に把握することを目的として、検疫および国内にて初期に探知されたオミクロン株症例について、積極的疫学調査を行った。18日、第5報として収集されたすべての結果が報告された。【対象症例】 2021年11月29日~2022年1月12日までに本調査の協力医療機関に入院し診療を行った新型コロナウイルス感染者の中から、ゲノム解析によりオミクロン株感染が確定した139例。【調査方法】 退院後に調査票を用いて、基本情報、渡航情報、ワクチン接種歴、基礎疾患、入院時のバイタルサイン・臨床症状、入院期間中に観察された臨床症状、合併症、入院中の治療、入院経過・退院時転帰などの情報を収集し、疫学的記述を行った。【主な結果】・調査対象139例の内訳は、男性91例(65.5%)、女性48例(34.5%)であり、年齢の中央値は33歳(0-81)。20~50代が7割を占め、10代以下が2割、60代以上は1割だった。・BMIの中央値(四分位範囲)は22.3kg/m2(19.1-25.3)で、33例(23.7%)に喫煙歴、73例(52.5%)に飲酒歴を認めた。・5例(3.6%)に過去のSARS-CoV-2感染歴が認められた。発症から入院までの期間の中央値(四分位範囲)は3日(2-4)であった。・ワクチン接種歴は3回が3例(2.2%)、2回が86例(61.9%)、1回が4例(2.9%)、接種なしが46例(33.1%)。未接種者(1回接種・接種なし)50例は10歳未満が32%と多くを占めた。・何らかの基礎疾患を有した症例は30例(21.6%)であり、高血圧(12.2%)、脂質異常症(7.9%)、肥満(4.3%)の頻度が高かった。・入院時の体温、脈拍数、呼吸数の中央値(四分位範囲)は、それぞれ36.8℃(36.5-37.2)、86回/分(77-98)、18回/分(16-20)だった。酸素飽和度の中央値(範囲)は98%(95-100)で、1例が酸素2L/分の投与を必要とした(基礎疾患を有する80代のワクチン未接種者)。・入院時、106例(76.3%)が何らかの症状を認めていた一方、無症状者は33例(23.7%)で、うち5例が入院後に何らかの症状を認めた。・COVID-19診断による入院時の主な症状は、咳嗽(46.0%)、咽頭痛(33.8%)、37.5℃以上の発熱(30.9%)、鼻汁(18.0%)で、味覚障害・嗅覚障害はそれぞれ1例(0.7%)に認められた。・入院時、139例中124例が胸部X線検査もしくはCT検査を受け、7例(5.6%)に肺炎像を認めた(X線:3/108例、CT:5/45例)。血液検査所見は概ね正常範囲内だった。・139例中26例(18.7%)にCOVID-19への直接的な効果を期待して治療介入が行われ、113例(81.3%)が対症療法のみであった。ICUでの加療や、人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO)の使用といった重症治療を受けた者は認めなかった。・全入院期間の中央値(四分位範囲)は11日(9-14)で、細菌性肺炎や急性呼吸切迫症候群(ARDS)の合併例は認めなかった。・発症から退院までの期間に観察された主な症状は、咳嗽(56.8%)、37.5℃以上の発熱(56.1%)、咽頭痛(41.7%)、鼻汁(32.4%)、味覚障害(7.2%)、嗅覚障害(5.8%)だった。・28例(20.1%)が退院まで無症状で経過し、133例(95.7%)が自宅退院した。残りのうち4例(2.9%)は医療機関へ転院し、2例(1.4%)が医療機関以外の施設へ入所した。・ワクチン接種者、未接種者ともに死亡例は認めなかった。 なお、本調査結果はワクチン接種者と未接種者の比較を目的としたものではない。

2011.

COVID-19入院患者へのロナプリーブ、血清抗体の有無で有効性に差/Lancet

 COVID-19入院患者において、カシリビマブ・イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)の抗体カクテル療法は、血清陰性患者(液性免疫反応が起きていなかった患者)の28日死亡率を低下させたが、血清陽性患者の28日死亡率は低下しなかった。無作為化非盲検対照プラットフォーム試験「RECOVERY試験」の結果を、英国・オックスフォード大学のPeter W. Horby氏らRECOVERY試験共同研究グループが報告した。カシリビマブ・イムデビマブは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン上にあるそれぞれ異なる部位に非結合的に結合することにより、SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を阻害するモノクローナル抗体で、COVID-19外来患者における有効性が報告されていた。Lancet誌2022年2月12日号掲載の報告。COVID-19入院患者9,785例において、28日の全死因死亡率を比較 研究グループは、2020年9月18日~2021年5月22日に、英国の127施設において、RECOVERY試験に登録された患者のうち適格患者、すなわち臨床的にSARS-CoV-2感染が疑われるかまたは検査で感染が確認された12歳以上の入院患者9,785例を、標準治療群または標準治療+カシリビマブ・イムデビマブ群(カシリビマブ4gとイムデビマブ4gを単回点滴静注投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。治験責任医師とデータ評価者は、試験期間中、データの解析については盲検化された。 主要評価項目は28日の全死因死亡率で、まず、無作為時にSARS-CoV-2感染に対する抗体が検出されなかった患者(血清陰性患者)について評価し、その後、無作為化された全例を対象にintention-to-treat解析を行った。安全性は、カシリビマブ・イムデビマブの投与を受けた全例について評価した。血清陰性患者でのみ28日死亡率が低下 無作為化された計9,785例(標準治療群4,946例、カシリビマブ・イムデビマブ群4,839例)の患者背景は、平均(±SD)年齢61.9±14.6歳、症状発現からの期間は中央値9日(IQR:6~12)で、血清陰性が3,153例(32%)、血清陽性が5,272例(54%)、入院時の抗体の有無が不明な患者が1,360例(14%)であった。812例(8%)は少なくとも1回SARS-CoV-2ワクチンを接種していた。 血清陰性患者集団を対象とした主要有効性解析では、28日死亡率はカシリビマブ・イムデビマブ群24%(396/1,633例)、標準治療群30%(452/1,520例)であった(率比[RR]:0.79、95%CI:0.69~0.91、p=0.0009)。ベースライン時の抗体の有無にかかわらず無作為化された全例を対象とした解析では、28日死亡率はカシリビマブ・イムデビマブ群19%(943/4,839例)、標準治療群21%(1,029/4,946例)であった(RR:0.94、95%CI:0.86~1.02、p=0.14)。死亡率に対するカシリビマブ・イムデビマブの比例効果は、血清陽性患者と血清陰性患者で有意差が認められた(異質性のp=0.002)。 治療に起因する死亡は認められず、事前に規定した安全性評価項目(死因別死亡率、不整脈、血栓症、大出血イベント)について、意味のある群間差は確認されなかった。重篤な有害事象は7例(<1%)報告され(アレルギー反応3例、痙攣2例、急性飽和度低下1例、一過性意識消失1例)、いずれも治験責任医師によりカシリビマブ・イムデビマブ投与と関連ありと判定された。

2012.

第97回 「ブースター効果は5ヵ月」報道前に、メーカー幹部らが保有株を大量売却

新型コロナワクチンのブースター接種による重症化予防効果は、5ヵ月後に約30%に低下するという米疾病予防管理センター(CDC)の研究結果が報じられる間近に、米モデルナの経営陣が保有株を売却していたことがわかった。各国でブースター接種が進められる中、5ヵ月後に実質的な効果が失われるという研究結果もさることながら、公表される直前での保有株売却は、経営陣への不信感を招きかねない。米『ニューヨーク・タイムズ』の2月11日の報道によると、CDCが公表した研究結果は「新型コロナウイルス感染症ワクチンは、ブースター接種によって重症化を予防する効果は87%に達するが、5ヵ月後には31%に低下する」というものだった。ワクチン関連株価の下落にCDC研究結果が拍車をかける米メルクの新型コロナ経口治療薬モルヌピラビルが各国で承認されたり、世界で感染のピークアウトが指摘されたりした影響で、新型コロナワクチン需要を巡る減速観測が強まり、ワクチン関連株価は下落傾向にある。そのような状況下、CDCの研究結果がさらに株価下落に追い打ちをかけた。モデルナの株価は、2月14日だけで13%下落し、過去10ヵ月間の最安値(140ドル)を割り込んだ。デルタ株流行の最中にあった昨年8月の最高値から70%以上も株価を下げることになった。また、米ファイザーも同日、日本も特例承認した経口治療薬パクスロビド(パキロビッドパック)が期待されているにもかかわらず、株価が2%下落した。モデルナCEOら経営幹部が報道前に保有株を売り抜ける株価下落の原因は、ほかにもある。2月11日に開示された報告書で、モデルナの最高経営責任者(CEO)のステファン・バンセル氏(49歳)を含む4人の幹部が、前週に自社株を売却していたことが発覚したのだ。米国のCEOの報酬は超高額で有名だ。報酬として自社株やストック・オプション(自社株購入権)が提供され、固定報酬よりも短期~長期インセンティブの割合が圧倒的に大きい。とはいえ、CDCの研究結果公表の間近に保有株を売却したタイミングは、株式市場に不信感をもたらした。売却額が最も多いバンセル氏は、1株当たり約155ドルで約1万9,000株を売却し、税引き前で約300万ドル(3億4,500万円)を得たほか、これまでのコロナ・パンデミック期間に計200万株近くを売却したという。バンセル氏はフランス出身で、米イーライリリー・アンド・カンパニーのベルギー責任者や、フランスの体外診断薬メーカー・ビオメリューCEOを経て、2011年にモデルナCEOに就任、同社株式の9%を保有した。ちなみに、ファイザーCEOのアルバート・ブーラ氏(60歳)も2020年11月、コロナワクチンへの期待から株価が上昇する中、保有株13万株を売却して560万ドル(約5億9,000万円)を手にした。米国の経営者はビジネスライクだとはいえ、世界では累積感染者数が4億人を超え、累積死亡者数が600万人に上る状況下、自社製品のマイナス評価を前提に、保有株を売り抜けて巨額の私的利益を確保する経営陣の姿勢は、到底納得できるものではない。4次接種を見通したワクチン接種政策が必要ところで、コロナワクチン開発企業の株価が下がる傾向は、コロナ禍の終息を示唆しているのかもしれない。また、日本政府の専門家からは「感染拡大は2月上旬にピークアウトした」という指摘もある。しかし油断は禁物だ。感染後の後遺症や、基礎疾患を持つ人や高齢者の重症化・死亡リスクを考えると、やはりワクチン接種による感染予防の重要さに変わりはない。ワクチン開発企業トップのマネーゲームの動向にかかわらず、ブースター接種が遅れている日本では、その推進が急務だ。ワクチンの有効期間や新たな変異株の発生可能性などを踏まえれば、4回目接種を見通したワクチン施策をも考えなくてはいけないかもしれない。日本の政治家には、どうか目先のことに追われず、大局的な視点で政策を考えてほしい。国や国民の危機管理を担うことは、ビジネスとは違うのだ。

2013.

コロナ感染での獲得免疫、ワクチン接種で1年以上持続/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのSARS-CoV-2感染予防効果について、英国・Health Security AgencyのVictoria Hall氏らが、医療従事者約3万6,000例を対象に行った前向きコホート試験の結果、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の2回接種の有効率はChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)と比べて高率だが短期間であり、6ヵ月を過ぎると大きく低下することが示された。また、感染者の獲得免疫は、感染後1年で減衰するものの、ワクチン接種によって1年以上高率のままであることも示された。NEJM誌オンライン版2022年2月16日号掲載の報告。ワクチンと既感染による感染予防効果を検証 SARS-CoV-2への感染とワクチン接種による免疫獲得と感染予防の期間と有効性を明らかにするため、研究グループは、英国内でルーチンのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査を受けていた医療従事者3万5,768例を対象に前向きコホート試験を行った。 ワクチン初回接種から10ヵ月以内のワクチン有効性と、既感染による獲得免疫について、感染確定者のワクチン接種の有無別、また既感染で階層化することで評価した。 既感染の有無、ワクチンの種類と接種間隔、人口統計学的特性、および職場におけるSARS-CoV-2曝露で補正を行ったCox回帰モデルを用いて評価した。BNT162b2ワクチン、接種後約中央値201日後の有効性は51% 被験者3万5,768例のうち、SARS-CoV-2既感染者は27%(9,488例)だった。被験者のワクチン2回接種率は97%と高く、うちBNT162b2ワクチン2回接種を6週間以上の長期間隔で接種した人は78%、同6週間未満の短い間隔で接種した人は9%、ChAdOx1 nCoV-19ワクチンを接種した人は8%だった。 2020年12月~2021年9月に、SARS-CoV-2初回感染は2,747件、SARS-CoV-2再感染210件が報告された。 非感染・BNT162b2ワクチンの長期間隔接種者の補正後ワクチン有効率は、2回目接種後14~73日は85%(95%信頼区間[CI]:72~92)であったが、2回目接種から中央値201日後(四分位範囲:197~205)は51%(95%CI:22~69)だった。同有効性は、接種間隔が長期の場合と短期の場合では有意な差はなかった。 ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種者では、2回接種後14~73日の補正後ワクチン有効率は58%(95%CI:23~77)と、BNT162b2ワクチン接種群に比べかなり低率だった。 既感染による獲得免疫は、ワクチン未接種者では1年後に低下したが、18ヵ月以上前の感染者でもワクチン接種を行うことで、有効性は90%以上を維持し続けていた。

2014.

オンライン?現地?学会参加状況と今年の開催希望/会員医師アンケート

 新型コロナウイルス感染流行の影響で、この2年あまり、学術集会はオンライン・ハイブリッド形式での開催が主流になっている。オンライン化によって医師の学術集会への参加状況は変わったのか。2020年の調査(急増するオンライン学会、参加経験と満足度は?/医師1,000人に聞きました)に引き続き、会員医師1,000人に昨年の参加状況や今年以降に希望する開催形態を聞いた。 「2021年に参加した学術集会の総数」を聞いた質問では、「2」との回答者が最多(22%)だったが、「0」との回答者が13%いる一方で「10以上」との回答者4%いるなどバラツキが見られた。 年代別に見ると、30代は平均2.8回(うちオンライン参加2.4回)、40代は3.3回(同2.7回)、50代は2.8回(同2.6回)と大きな差はなく、かつオンラインで参加した割合が高かったが、60代以上は4.1回(3.0回)と参加数が多く、ほかの世代に比べて現地参加した人の割合が高かった。 「オンライン開催になったことで初参加した学術集会はありますか?」(カッコ内は回答者の標榜科)との質問では、「日本内科学会」(循環器内科、腎臓内科等)、「日本内科学会地方会」(内科)、日本感染症学会(内科、産婦人科等)、「日本禁煙学会」(外科)等の多様な回答が集まった。専門領域の中心となる学会ではないが、サブ領域や従来から関心のあった分野の学会がオンライン化で参加しやすくなったので参加してみた、という流れのようだ。 「現地/オンライン/ハイブリッドのうち、今後数年間における学術集会の開催形式として、希望する形式はどれですか?」という質問には、「ハイブリッド」が60%で圧倒的な支持を集め、「オンライン」は27%、「現地」は13%だった。 各開催形態のメリット・デメリットを聞いた質問においても、ハイブリッド形式は「時間効率がよく、ギリギリまで仕事ができる」「コロナの流行状況によって判断できる」とメリットを挙げる声が多数だった。ハイブリッド形式のデメリットとしては「特にない」という声のほか、「開催費用がかさんで参加料が高くなりそう」「開催者の手間が多くなる」といった、参加者よりも開催者側からの問題点を挙げる声が目立った。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中『オンライン?現地?学会参加状況と今年の開催希望/会員医師アンケート』<アンケート概要>・タイトル:オンライン学会の参加状況について・内容:2021年の学会参加状況と、2022年に向けて希望する開催形式について。・対象:ケアネット会員医師1,000人(勤務先の病床数20床以上)・実施期間:2021年12月20日(月)・調査方法:インターネット

2016.

症例報告は自分のキャリア形成である【ちょっくら症例報告を書いてみよう】第2話

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、臨床医が症例報告を書くことについて考えてみたいと思います。連載を読んでちょっとでも皆さまが症例報告を書くお役に立てましたら幸いです。前回は「自分が得た知識・経験を共有することの意義」について述べました。今回は症例報告をすることによる自身のキャリアにとってのメリットについて述べたいと思います。症例報告を積み重ねると「専門家」になる「症例報告なんて大した実績にならないし、自分のキャリアにとって無駄なんで…」なんて思っていませんか。症例報告が実績にならないというのは大きな誤解です。もちろん症例報告だけでアカデミックな地位が得られるわけではありませんが、自分の専門性を高めるためには大いに役に立ちます。私の人生最初の症例報告は、「回帰熱」という珍しい輸入感染症の症例でした。Kutsuna S, et al. The first case of imported relapsing fever in Japan. Am J Trop Med Hyg. 2013;89:460-461.〔被引用数:17〕「回帰熱ってなんやねん」と思われたかと思いますが、数日間熱が続いた後、1週間くらいの無熱期があり、また数日間発熱し…という発熱を繰り返す珍しい感染症です。記録が残っている範囲では、この報告が最初の日本での回帰熱の報告になります(ちなみに日本ではこれまでに2例の回帰熱が報告されており、どちらも私が診断しています)。このような珍しい症例報告をすると、何が起こるかというと、ときどき症例相談が舞い込んでくることになります。「この周期性発熱の患者さん、回帰熱の可能性ないですか?」「回帰熱の検査ってどこでできるんですか?」とかそういう相談です。こうした相談を受けていると、そのうち「回帰熱のことは忽那に相談すればいい」という流れになります。回帰熱なんて激レアな感染症なので、そんなに活躍の場はありませんが、とりあえず「誰も診たことがない疾患を診たことがある」というのは大きなアドバンテージです。症例報告は連鎖するさて、回帰熱の症例報告の影響は回帰熱だけに留まりません。たとえば私が書いた症例報告をインターネットでみつけた患者さん自身が「私も熱を周期的に繰り返してるんですが、回帰熱じゃないですか?」と受診されたことがありました。この方は回帰熱ではなく最終的に「成人発症PFAPA症候群」というこれまた日本初の症例ということがわかりました。Kutsuna S, et al. The first case of adult-onset PFAPA syndrome in Japan. Mod Rheumatol. 2016;26:286-287.〔引用数:19〕ここから私の興味は周期性発熱にも波及することになります。また、輸入感染症の世界にも足を踏み入れることになった私は、とりあえず自分の経験した珍しい輸入感染症の症例をひたすら報告していきました。当時はこれが自分の将来にどういう影響を与えるかなんてことはもちろん考えずに書いていました。その中に、「ジカウイルス感染症」の報告があります。Kutsuna S, et al. Two cases of Zika fever imported from French Polynesia to Japan, December 2013 to January 2014. Euro Surveill. 2014;19:20683.〔被引用数:212〕ジカウイルス感染症という、当時まったく不明であった蚊媒介感染症による輸入例を“Eurosurveillance”というヨーロッパCDCの学術誌に報告したものです。これも当時は日本第1例目と2例目だったわけですが、報告した当初は「また忽那がマニアックな症例報告を書いとるわ…ホンマしょーもない…」くらいに思われていたわけです。しかし、この後ブラジルでジカウイルス感染症がアウトブレイクし、「妊婦さんが感染すると児が小頭症になることがある」ということがわかりジカウイルス感染症は世界な注目を集めます。私の“Eurosurveillance”の報告は、日本最初の報告であったというだけでなく、尿からジカウイルスを検出したのが世界で初めてということもあって、尿検体を使った診断という点でも評価されました。症例報告で被引用数が200超えというのはなかなかではないでしょうか。こうした症例報告を経て、私は蚊媒介感染症の専門家としての確固たる地位を固めていったわけです(自分で言う)!症例報告は連鎖して、それがいつしか大きな円となり専門性へと繋がることがあるということですね。症例報告は医師の職務経歴書ということで、たかが症例報告、されど症例報告です。症例報告とは、自分はこういう症例を経験してきました、という言わば自己紹介のようなものであり、症例報告が自分自身のキャリアを形成していくことがあります。そして、その症例報告から派生して、別の症例報告に繋がることもあるし、それらの症例報告が繋がることでより広いカテゴリーでの専門性を身に付けることも可能になります。自分が経験した症例を報告することで発生するポジティブ・フィードバックを期待して、ガンガン症例報告していきましょう!!

2017.

第100回 COVID-19ワクチン接種後の90分間の運動で抗体反応が増す

アイオワ州立大学の研究チームが実施した無作為化試験の結果、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)ワクチンやインフルエンザワクチン接種後すぐから心拍数およそ120~140/分の運動を1時間半(90分間)したところその後数週間の検査でのそれらワクチンへの抗体反応が一貫して非運動群を上回りました1,2)。ワクチン接種前の運動が抗体反応を改善することは先立つ研究ですでに知られており、去年スペインの研究者Pedro Valenzuela氏等は運動がCOVID-19ワクチンのアジュバント(増強役)を担いうる可能性を示唆し、接種前の運動習慣や接種直前の単発の運動のCOVID-19ワクチン免疫反応への効果を調べることを提案しました3)。アイオワ州立大学のJustus Hallam氏等はその提案を受けて上述の試験を実施したわけですが、一捻り加えています。ワクチンの接種後に身体に負荷をかけると抗体反応が増すことが示されていることを頼りに、接種前の運動の効果ではなく接種後の有酸素運動が抗体反応にどう影響するかを検討しました。試験は週に2回以上の程々にきついかきつめ(moderate or vigorous)の運動習慣がある人を募って実施され、Pfizer/BioNTechのSARS-CoV-2ワクチン接種後に90分間の軽め~程々にきつめ(light- to moderate-intensity)の運動をした群のその後の検査での抗体反応は接種後に運動しなかった群を上述の通り上回りました。重要なことにCOVID-19ワクチン接種後に運動しても副反応は増えませんでした。ワクチン接種後の運動が抗体反応を上向かせる効果はどうやらCOVID-19ワクチンに限ったことではないらしく、インフルエンザワクチン2種類を接種した42人の検討でも同様の抗体反応増強効果が認められています。抗体生成を増やす役割を担う1型インターフェロン(1型IFN)を誘発するアジュバントはワクチンへの抗体反応を促すことが知られており、試験の運動時間を90分としたことはその長さの運動が1型IFNの一種・インターフェロンα(IFNα)を有意に増やすことが未発表ながら確認されていることを根拠の一つとしています。Hallam氏等はマウスの実験でその根拠がどうやら正しいことを確認しています。運動がワクチン接種の抗体反応を高める効果がIFNα阻害抗体をワクチン接種時に投与したマウスでは弱く、運動のワクチン抗体反応増強にはIFNαがどうやら貢献しているようです。インフルエンザワクチンの試験では接種後90分間の運動に加えてその半分の45分間の運動の効果も検討されました。というのも齢を重ねた成人には90分間の運動より45分間の運動のほうがより容易いであろうからです。結果はというと残念ながら45分間の運動のワクチン効果増強は認められず、運動しなかった群の抗体反応を上回りませんでした。研究者は1時間の運動ならどうかを調べるつもりです2)。試験では運動習慣がある人を募ったように、日頃運動していない人がCOVID-19ワクチン接種後に運動するという選択肢を選ぶことはおそらく土台無理な話で、その選択肢を選べるようにするにはまずは日頃の運動習慣を身に付けてもらう必要がありそうです。COVID-19患者およそ5万人を調べた試験4)では運動習慣がCOVID-19重症化を防ぐ効果があることが示されています。常に運動不足な人は必要とされる運動を日頃こなしている人に比べてCOVID-19入院、集中治療、死亡をより多く被っており、運動を促す保健の取り組みを優先し、いつもの診療で運動を後押しすることが必要と著者は結論しています。体力をつけることは若いころから始めるに越したことはありません。スウェーデンでの試験の結果、若かりし18歳ごろの心肺機能が高かった男性は低かった男性に比べてSARS-CoV-2感染しても大事に至ることは少なく、入院、集中治療、死亡をより免れていました5,6)。心肺機能が良好だった男性のCOVID-19死亡率は最も悪かった男性のおよそ半分であり、若いころの筋力が高いこともCOVID-19重症化し難いことと関連しました。COVID-19重症化を防ぎ、ワクチンの効果も高めうる運動で世間みんなの体力を底上げすることは感染流行の阻止に大いに貢献するでしょう5)。参考1)Exercise post-vaccine bumps up antibodies, new study finds / Iowa State University2)Hallam J,et al. Brain Behav Immun. 2022 Feb 5;102:1-10. [Epub ahead of print]3)Valenzuela PL, et al. Brain Behav Immun. 2021 May;94:1-3. 4)Sallis R, et al.Br J Sports Med. 2021 Oct;55:1099-1105. 5)Af Geijerstam A, et al. BMJ Open. 2021 Jul 5;11:e051316. 6)Highly fit teenagers coped better with COVID-19 later in life / Eurekalert

2018.

オミクロン株に対するコロナ治療薬の効果を比較検証/NEJM

 オミクロン株が世界中で猛威を振るう中、新型コロナウイルスの新たな治療薬の開発が進んでいる。国立感染症研究所の高下 恵美氏ら研究グループが、7種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬について、in vitroでのオミクロン株に対する効果について検証した。本研究の結果は、NEJM誌オンライン版2022年1月26日号のCORRESPONDENCEに掲載。ソトロビマブ、tixagevimab・cilgavimab併用はオミクロン株に対して中和活性を維持 今回、研究対象となった薬剤は、臨床試験中、FDA(米国食品医薬品局)で承認済み、日本で承認済みのものが含まれる。検証の結果、抗体薬のetesevimab・bamlanivimab併用とカシリビマブ・イムデビマブ併用(商品名:ロナプリーブ)のオミクロン株に対する中和活性は、著しく低いことがわかった。それに対し、tixagevimab・cilgavimab併用とソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)は、オミクロン株に対して中和活性を維持していることが判明したという。抗ウイルス薬のレムデシビル(商品名:ベクルリー)、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)は、オミクロン株の増殖を抑制することが示された。 オミクロン株は、初期のSARS-CoV-2と比較して、スパイク蛋白に少なくとも33の変異を有していることが判明しているため、FDAで承認されているモノクローナル抗体は、オミクロン株に対して効果が低い可能性があることが示唆されていた。 今回の検証では、7種類の抗体薬(etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブ、カシリビマブ、tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブ)の単剤および併用について、オミクロン株の培養細胞への感染を阻害(中和活性)するかどうかを、ライブウイルス焦点減少中和アッセイ(FRNT)を用いて、モノクローナル抗体の中和活性を評価した。 etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブ、カシリビマブ、tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブの単剤および併用について、オミクロン株に対する効果を検証した主な結果は以下のとおり。・etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブの単剤使用では、最も高いFRNT50値(>5万ng/mL)でも、オミクロン株に対する中和活性は見られなかった。・カシリビマブは、ベータ株、ガンマ株、オミクロン株に対して高いFRNT50値(187.69~1万4,110.70ng/mL)で中和活性を示したが、オミクロン株に対するFRNT50値はベータ株に対して18.6倍、ガンマ株に対して75.2倍高かった。・tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブの単剤使用は、ベータ株、ガンマ株、オミクロン株に対して中和活性を保持していたが、これらのFRNT50値は、ベータ株またはガンマ株に対して、オミクロン株は3.7〜198.2倍高かった。・etesevimab・bamlanivimab併用では、ガンマ株に対する中和活性が著しく低下し、最も高いFRNT50値(>1万ng/mL)でも、ベータ株とオミクロン株に対する中和活性は見られなかった。・カシリビマブ・イムデビマブ併用では、ベータ株、ガンマ株、デルタ株に対する中和活性は維持されたが、最も高いFRNT50値(>1万ng/mL)でも、オミクロン株に対する中和活性は見られなかった。・tixagevimab・cilgavimab併用では、ベータ株、ガンマ株、オミクロン株に対する中和活性は維持されたが、ベータ株またはガンマ株に対して、オミクロン株のFRNT50値は24.8倍~142.9倍高くなった。 また、3種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、PF-07304814)について、50%阻害濃度(IC50)を測定したところ、レムデシビルとモルヌピラビルは、オミクロン株に対する有効性が高く、PF-07304814は、オミクロン株に対する有効性が低いことが判明した。 本研究グループは、COVID-19治療薬がオミクロン株の増殖を効果的に抑制するのかどうかを動物モデルで引き続き検証する予定だ。

2019.

cemiplimab、再発子宮頸がんに有効/NEJM

 プラチナ製剤を含む化学療法による1次治療後に再発した子宮頸がん患者の治療において、完全ヒトプログラム細胞死1(PD-1)阻害モノクローナル抗体cemiplimabは単剤の化学療法と比較して、全生存期間が延長し、無増悪生存期間への効果は明確ではないものの、客観的奏効率や奏効期間も良好であることが、米国・カリフォルニア大学アーバイン校のKrishnansu S. Tewari氏らが実施した「EMPOWER-Cervical 1/GOG-3016/ENGOT-cx9試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年2月10日号に掲載された。全生存期間を評価する国際的な無作為化第III相試験 研究グループは、再発・転移を有する子宮頸がんの治療におけるcemiplimabの有効性と安全性の評価を目的に、日本を含む14ヵ国が参加する非盲検無作為化第III相試験を実施し、2017年7月~2020年8月の期間に患者の登録を行った(Regeneron PharmaceuticalsとSanofiの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、プラチナ製剤を含む化学療法による1次治療後に病勢が進行した再発・転移を有する子宮頸がん患者で、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現の有無は問われなかった。 被験者は、cemiplimab(350mg、3週ごと、静脈内投与)の投与を受ける群、または担当医が選択した単剤化学療法(ペメトレキセド、トポテカン、イリノテカン、ゲムシタビン、ビノレルビンのいずれか)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは全生存期間とされ、無増悪生存期間や安全性の評価も行われた。 本試験は、予定されていた2回目の中間解析(追跡期間中央値16.8ヵ月)で、扁平上皮がんにおける有効性に関する事前に規定された基準に則り、中止となった。死亡リスクが31%低減、奏効率と奏効期間は2倍以上に 608例の女性患者が登録され、2つの群に304例ずつが割り付けられた。全体の年齢中央値は51歳(範囲22~87)で、473例(77.8%)が扁平上皮がん、135例(22.2%)は腺がんまたは腺扁平上皮がんであった。また、259例(42.6%)が再発病変に対する全身治療を2ライン以上受けており、296例(48.7%)はベバシズマブによる治療歴を有していた。 治療期間中央値は、cemiplimab群が15.2週(範囲1.4~100.7)、化学療法群は10.1週(1.0~81.9)で、全体の追跡期間中央値は18.2ヵ月(6.0~38.2)だった。 全生存期間中央値は、cemiplimab群が12.0ヵ月と、化学療法群の8.5ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.56~0.84、両側検定のp<0.001)。化学療法群の全生存期間中央値は、トポテカンの6.5ヵ月からイリノテカンの11.9ヵ月までの幅が認められた。 組織型別の全生存期間中央値は、扁平上皮がん(11.1ヵ月vs.8.8ヵ月、HR:0.73、95%CI:0.58~0.91、両側検定のp=0.006)および腺がん/腺扁平上皮がん(13.3ヵ月vs.7.0ヵ月、0.56、0.36~0.85)のいずれにおいても、cemiplimab群で良好であった。 また、無増悪生存期間中央値は、両群間に大きな差はなかったものの、有意差がみられ、cemiplimab群で良好であった(HR:0.75、95%CI:0.63~0.89、両側検定のp<0.001)。扁平上皮がん(0.71、0.58~0.86、同p<0.001)では有意差があったが、腺がん/腺扁平上皮がん(0.91、0.62~1.34)では差がなかった。 客観的奏効率は、cemiplimab群が16.4%(95%CI:12.5~21.1)と、化学療法群の6.3%(3.8~9.6)に比し、有意に優れた(両側検定のp<0.001)。cemiplimabの投与を受けた患者のうち、腫瘍細胞のPD-L1の発現が1%以上の患者の客観的奏効率は18%で、発現が1%未満の患者でも11%であった。また、奏効期間中央値は、cemiplimab群が16.4ヵ月(95%CI:12.4~未到達)、化学療法群は6.9ヵ月(5.1~7.7)だった。 Grade 3以上の有害事象は、cemiplimab群が45.0%、化学療法群は53.4%で発現した。最も頻度の高いGrade 3以上の有害事象は、貧血(cemiplimab群12.0%、化学療法群 26.9%)、尿路感染症(5.0%、2.8%)、好中球減少(1.0%、9.0%)であった。治療中止の原因となった有害事象は、それぞれ26例(8.7%)および15例(5.2%)で発現した。免疫関連有害事象の発現率は、15.7%および0.7%だった。 著者は、「この試験では、腫瘍細胞のPD-L1の発現が1%未満の患者でも客観的奏効が得られた。PD-L1の発現状況の評価が可能な患者が少なく、cemiplimab治療の奏効におけるPD-L1の役割をどう解釈するかは、評価が難しい問題ではあるが、PD-L1陰性例にもcemiplimabが奏効する患者が存在する可能性があることが示唆される」としている。

2020.

第90回 外科医9人脳神経外科医5人退職に揺れ動く大津市民病院の今後は?

<先週の動き>1.外科医9人脳神経外科医5人退職に揺れ動く大津市民病院の今後は?2.乳腺外科医裁判の最高裁、有罪判決を破棄し高裁に差し戻し3.まん防適用地域で発熱外来のオンライン診療料が2倍に4.医師の働き方改革に向けて、スライド集やeラーニングを提供/厚労省5.労働時間調査から地方の周産期医療体制の崩壊を危惧/日本医師会6.国内医薬品ランキングトップは中外製薬、2位武田薬品/IQVIA調べ1.外科医9人脳神経外科医5人退職に揺れ動く大津市民病院の今後は?滋賀・大津市立大津市民病院は、京都大学から派遣されている外科・消化器外科・乳腺外科の医師9人が、今年3月末~6月末にかけて順次退職する意向を示している問題で、今後京大からの医師派遣が見込めず、同診療科では軽症患者の手術しか実施できなくなる恐れがあることを明らかにした。救急受け入れや新型コロナウイルスの診療体制にも影響する可能性がある。報道によれば、経営状況をめぐって理事長ら経営陣と外科医とで意見が対立し、理事長による「自身が名誉教授を務める京都府立医大から代わりの医師を派遣してもらう」という趣旨の発言に対し、外科医側は退職を強要するパワーハラスメントだと主張している。慰留は難しく、同病院へ多数の医師を派遣する府立医大からも同診療科への医師派遣は見込めないという。また、脳神経外科でも理事長が京都府立大学の医師3人を招き脳卒中科を新設するとして、「(京大の派遣)医師2人を減らすよう」求めたことから、京大側は「信頼をもとに人事関係を構築していくことが困難」と判断。今年度中に脳神経外科医5人の退職も想定されており、今後の行方が懸念される。(参考)大津市民病院、手術は軽症のみの恐れ 医師9人退職意向、京大から派遣見込めず(京都新聞)「9医師が退職意向」と医師側文書 大津市民病院が弁明(産経新聞)脳神経外科5人も退職の可能性 医師一斉退職意向の大津市民病院(毎日新聞)2.乳腺外科医裁判の最高裁、有罪判決を破棄し高裁に差し戻し手術直後の女性患者にわいせつ行為をしたとして準強制わいせつ罪に問われていた乳腺外科医に対し、最高裁判所第2小法廷は18日、上告審判決で二審・東京高裁による懲役2年の判決を破棄し、高裁に差し戻した。本事件をめぐっては、原告の訴えを元に幻覚やせん妄の可能性を否定した高裁判決や、患者胸部から採取された被告の唾液のDNAデータを捜査当局が処分していることなど、問題があるとされてきた。最高裁はこれらの問題について、科学的検討が不十分で審理不尽の違法があるとして、審理を差し戻すこととした。被告の弁護団は、最高裁が無罪を確定せず審理を差し戻したことについて、「さらに被告人に過酷な試練を与え、非人道的な判断」と批判した。(参考)逆転有罪の医師、審理差し戻し DNA「信頼性解明を」―術後患者わいせつ・最高裁(時事通信)「審理尽くされていない」 手術後わいせつ事件で有罪破棄、最高裁(朝日新聞)術後の準強制わいせつ事件 最高裁が男性医師の有罪破棄、審理差し戻し「鑑定結果の信頼性は不明確」(東京新聞)3.まん防適用地域で発熱外来のオンライン診療料が2倍に政府は、まん延防止等重点措置が適用されている地域で、自宅療養中の患者に対するオンライン診療報酬の上乗せを、従来の2倍となる5,000円に引き上げた。これにより、すべての自宅・宿泊療養者について、陽性判明翌日までに健康観察や診療を実施できる体制を確保する。ただし、医療機関が発熱外来を行っていること公表する、あるいは保健所から健康観察の委託を受けていることが条件となっている。(参考)オンライン診療の報酬、発熱外来公表で2倍に(日経新聞)自宅等療養するコロナ患者へのオンライン診療等、一定要件下で二類感染症診療加算×2(500点)を算定可―厚労省(Gem Med)新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その66)(事務連絡 令和4年2月17日)新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(令和4年2月18日変更)4.医師の働き方改革に向けて、スライド集やeラーニングを提供/厚労省厚生労働省は16日、「第4回 勤務医に対する情報発信に関する作業部会」で、2024年4月に始まる時間外労働規制の強化を前に、長時間労働が多い勤務医に対して情報発信する内容の検討や医療現場において行動変容を促す取り組みについて議論した。勤務医に向けて情報の周知を行うためにスライド集やeラーニング教材などのコンテンツを作成し、公式サイト「いきいき働く医療機関サポートWeb」から発信を行っていく。また、実際にモデル病院で、若手医師からベテラン医師、メディカルスタッフ、事務職も交えて意見交換を行う場を設け、「働き方改革に向けた課題抽出」を行った事例について共有し、このような場が「極めて有意義であった」とした。今後、働き方改革のためには「時間外労働を少なくする」だけでなく、業務の見直し、病院集約化が必要であり、今後現場に情報発信を行うために、25日に開催される第5回の作業部会で提言をまとめていく。(参考)医師の働き方改革、院内周知用eラーニング教材を作成「いきサポ」でコンテンツを公開、厚労省(CB newsマネジメント)多くの病院で「働き方改革意見交換会」実施を、働き方改革では病院集約化が必要―医師働き方改革・情報発信作業部会(Gem Med)5.労働時間調査から地方の周産期医療体制の崩壊を危惧/日本医師会日本医師会は16日の記者会見で、大学病院の産婦人科および周産期母子医療センターの指定を受けた一般病院産婦人科医師の時間外・休日労働時間に対する調査結果を公表した。その結果、約4割(39.4%)の医師がA水準の上限時間(年960時間)を越え、10%の医師が年1,860時間を超えている状態であり、2024年4月に続勤務時間制限や勤務間インターバル規制が行われた場合、連続勤務せざるを得ない地域では周産期医療体制の崩壊につながると指摘した。医師の派遣について、大学病院側で「今後も派遣を制限する可能性はない」と答えたのは約1割、「制限する可能性がある」と回答したところは約半数、判断がつかないとの回答も約4割あり、産科医の派遣を制限する病院が増加する可能性がある。周産期医療の維持と医師の健康確保の両立のためには、医師独自の宿日直基準を設ける必要性がある。(参考)産科医療機関における宿日直許可に関する調査結果(大学病院・周産期母子医療センター)について(日本医師会)資料 産科医療機関における宿日直許可に関する調査結果について(同)6.国内医薬品ランキングトップは中外製薬、2位武田薬品/IQVIA調べ医薬品開発や医薬品情報サービスを提供するIQVIAジャパンは、2021年の薬価ベースの国内医療用医薬品市場データを17日に公表し、総売上高が2年ぶりに前年を上回ったと発表した。薬価ベースで前年比2.2%増、金額では2,270億円増となる10兆5,990億3,100万円。市場別にみると病院、薬局が2年ぶりのプラス成長に戻ったものの、開業医は2年連続でマイナスに沈んだ。売上ランキングでは5期連続で過去最高益を確保した中外製薬がトップ、前年首位だった武田薬品は2位となった。中外製薬は主力品のアテゾリズマブ(商品名:テセントリク)やエミシズマブ(同:ヘムライブラ)が伸びたほか、新型コロナ関連で軽症~中等症IのCOVID-19に対して使われる中和抗体薬カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ)や、中等症IIからの重症患者に適応がある抗体医薬のトシリズマブ(同:アクテムラ)の売り上げ増加によると考えられる。国内市場は薬価改定や後発品推奨を受けて伸び悩んでおり、成長分野であるバイオ医薬品に力を入れてきた中外製薬の戦略が、今回、国内首位に押し上げる形となった。(参考)IQVIA・21年国内医療薬市場 中外製薬が首位奪取 製品トップはキイトルーダ 売上1000億円超に6製品(ミクスオンライン)国内医薬品市場 2年ぶりプラス…2021年、中外製薬が初の売り上げトップに(Answers News)IQVIA医薬品市場統計ー売り上げデータ(2021年1-12月)

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