サイト内検索

検索結果 合計:8件 表示位置:1 - 8

1.

酔っ払い? ン? 元酔っ払い?【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第2回

酔っ払い? ン? 元酔っ払い?Point外傷の病歴や、疑う所見を入念に確認すべし。時間経過で症状の改善が確認できるか?普段の飲酒後とは異なる腹部症状や、意識変容がないか?症例45歳男性。夜中の1時に歓楽街の路地裏で嘔吐を繰り返し、体動困難となっていたところを通行人に発見され救急搬送された。来院時は吐物まみれで臭いも酷かったが、本人は本日の飲酒は大した量でないという。頭部CTで頭部内病変がないことのみ確認し、外来の診察室で寝かせておくことにした。数時間後に様子を伺いに行くと嘔気・嘔吐が改善していないどころか頻呼吸、頻脈も認め、強い腹痛を訴えていた。慌てて施行した血液検査でアニオンギャップ開大のアシドーシスを認め、速やかにビタミンB1と糖の補充、補液を開始した。半年前に妻に捨てられてから自暴自棄となりアルコール漬けの日々を送っていたが、来院3日前から食欲不振があり、景気付けにと繁華街に繰り出したとのことだった。入院時のスクリーニングでCAGE 3点とアルコール依存症が疑われため、ベンゾジアゼピンの予防内服も開始し、本人に治療希望あったため精神科受診の手配もすすめられた。おさえておきたい基本のアプローチ酔っ払い患者だから、と門前払いしたり先入観をもったりするのは避け、むしろ普段より検査も多めにして、慎重に診察にあたり表1に挙げた疾患の可能性を評価しよう。表1 急性アルコール中毒を疑った際の鑑別疾患実際の診療現場では、患者は指示に応じないどころか悪態をつくなど、とても診察どころではない状況も多々あるが、モニター装着のうえ人目につく場所でこまめに様子を観察しよう。意識レベルの経時的な改善がなければ、ほかの原因を考慮すべきだ1)。図1にERでの対応の流れの一例を提示する。図1 ERでの対応の流れの一例画像を拡大する救急の原則はABCの確保にあり、泥酔患者に対してもまずは気道、呼吸、循環が安定していることを確認するようにしたい。外傷診療で生理学的異常、その後解剖学的異常を評価する流れに似ている。アルコール自体で呼吸抑制を来すには血中アルコール濃度(blood alcohol level:BAL)が400mg/dL以上とされ、めったに出くわさないが、吐物などによる窒息の危険は高く、気道確保の必要性について常に考慮しておく。友達が酔っぱらっていたら仰臥位に寝かさずに、昏睡体位をとろう。意識障害の対応の基本である血糖checkも忘れないようにする。糖尿病や肝硬変が背景になければアルコール自体による低血糖の発症は多くないのだが、小児ではその危険性が増すため2)、誤って口にしてしまった場合などではとくに注意したい。血糖補正の際は、ウェルニッケ脳症予防のために、ビタミンB1の同時投与も忘れずに。酔っ払いにルーチンに頭部CTをとっても1.9%しかひっかからない3)。したがって表2のように、外傷の病歴や、頭部外傷、頭蓋底骨折を疑う所見を認める際に頭部CTを施行するようにする。中毒患者では頸椎骨折の際に頸部痛や神経所見があてにならないケースがあるので、頸部もあわせてCTで評価してしまおう。表2 頭部CTを早期に施行すべき場合頭蓋底骨折を示唆する所見がある(raccoon's eye、バトル徴候、髄液漏、鼓膜出血)頭蓋骨骨折が触知できる大きな外力(転倒などではない)による外傷歴があり、意識変容を認めるBALで予測されるよりも意識状態が悪い意識レベルが著明に低下(GCS※≦13)しており、頭部外傷の病歴や懸念があるGCSが低下していく神経局在症状がある※GCS(Glasgow Coma Scale)落ちてはいけない・落ちたくないPitfallsBALはルーチンで測定しないアルコール中毒自体の診断にBALを測定する意義は限定的で、そもそも筆者の施設では測定ができない。GCSの低下をきたすのはBAL≧200mg/dLであったという前向き研究の結果があり4)、前述のように意識障害の鑑別としてアルコール以外の要因を考慮するきっかけにはなる。PointBAL測定は意識障害にほかの鑑別を要するときに直接の測定が困難な場合、浸透圧ギャップ(血清浸透圧-計算上の浸透圧:通常では体内に存在していない物質分の浸透圧が上昇しているため、ギャップが開大する)から算出が可能であり、とくにエタノール以外のアルコール属中毒の際に参考となる。くれぐれも飲酒運転を警察に密告するために用いてはならない。直接治療に関連のない行為を行い、その結果を本人の同意なく第三者に伝えることは守秘義務違反に抵触する。酔い覚ましに…だけの補液は推奨されない二日酔いの朝イチは3号液+ビタミン剤の点滴に限る…なんて先輩からアドバイスを受けたことがある者は少なからずいるだろうが、アルコールの代謝を担うアルコール脱水素酵素は少量のアルコールで飽和状態になってしまうため、摂取した量にかかわらず、体内では20〜30mg/dL/時程度の一定の速度でしかアルコールを代謝できない。Point補液は泥酔患者のER滞在時間を短縮しないアシドーシスや膵炎合併、脱水症など、それ以外に補液を施行すべき病態があれば別だが、泥酔患者でアルコールの代謝を早める目的のみで補液を施行することに効果はなく、ER滞在時間を短縮する結果とはならないことが報告されている5)。アルコール常習犯への対応は慎重に急性アルコール中毒にルーチンで血液検査を行う必要はないが、とくにアルコール依存患者や肝不全合併患者では、血液検査で肝機能や電解質(低マグネシウム血症や低カリウム血症)を確認する。合併症の1つであるアルコール性ケトアシドーシス(alcoholic ketoacidosis:AKA)は、アニオンギャップ開大のアシドーシス所見が決め手ではあるが、嘔吐による代謝性アルカローシス、頻呼吸による呼吸性アルカローシスを合併し、解釈が単純ではない場合がある。ここ数日経口摂取できていない、嘔気・嘔吐、腹痛があるなどの臨床症状から積極的に疑うようにしたい。AKAの治療は脱水の補正と糖分の補充であり、それ自体では致死的な病態とならない。経過でアシドーシスが改善してこないようなら表3の鑑別疾患も念頭に置きたい。なお、ケトン体の存在の確認に試験紙法による尿検査を使用しても、血中で増加しているβヒドロキシ酪酸は反応を示さないので注意されたい。表3 アルコール性ケトアシドーシス(AKA)の鑑別疾患糖尿病性ケトアシドーシス重症膵炎メタノール、エチレングリコール中毒特発性細菌性腹膜炎ワンポイントレッスンアルコール離脱症候群アルコール常用者で、飲酒から6時間以上間隔が空いた際に出現する交感神経賦活症状(発汗、頻脈など)、不眠、幻視、嘔気・嘔吐、手指振戦、強直間代性発作で鑑別に挙げる。診断基準はDSM-5で定められているので参照いただきたい。慢性的なアルコール飲酒は脳内のGABAA受容体の感受性低下とNMDA受容体の増加を起こしており、アルコール摂取の急激な中止により興奮系であるNMDA受容体が活性化して症状が出現する。図26)のような時間経過で振戦せん妄へと移行していくが、早期に治療介入することで予防できる。図2 アルコール離脱症候群の重症度と時間経過画像を拡大する軽症症状は見逃がされやすく、またけいれんは飲酒中断後早期から生じ得るため注意が必要だ。治療の基本はベンゾジアゼピン系で、アルコールと同様にGABAA受容体に作用させ興奮を抑制させる。けいれん発作中ならジアゼパム(商品名:セルシン、ホリゾン)5〜10mgの静注を行うが、ルート確保困難な際はこだわらず、ミダゾラム(同:ドルミカム)10mgの筋注・口腔内・鼻腔内投与を行う。内服投与の際には、より作用時間の長いジアゼパム(代謝産物まで抑制効果を有する)やクロルジアゼポキシドを選択すればよい。アルコールの嗜好歴がある患者が入院する際には、アルコール依存のスクリーニングに有用7)なCAGE質問スクリーニング(表4)8)を用いて離脱予防の適応を判断しよう。表4 CAGE質問スクリーニング画像を拡大するウェルニッケ・コルサコフ症候群、脚気心慢性のアルコール摂取状態ではアルコール代謝においてビタミンB1が消費されるようになり、まともな食事を摂らなくなることも合わさりビタミンB1欠乏症を生じる。このうち神経系異常を引き起こしたものがウェルニッケ・コルサコフ症候群(dry beriberi)、心血管系異常を引き起こしたものを脚気心(wet beriberi)で、両者のオーバーラップも起こり得る。ウェルニッケ脳症は急性で可逆的とされる脳症のため積極的に疑い治療介入をしたいところだが、古典的3徴とされる眼球運動障害(眼球麻痺・眼振)、意識変容、失調のすべてを満たすものは16%だったとの報告もあり9)、これにこだわると見逃しやすい。Caineらが報告した診断基準(表5)は感度85%、特異度100%と報告されており10)、ぜひとも押さえておきたい。ビタミンB1は水溶性で必要以上の量は腎排泄されるので、疑えば治療doseである高用量チアミンで治療開始してしまおう。表5 ウェルニッケ脳症診断基準勉強するための推奨文献Sturmann K, et al. Alcohol-Related Emergencies: A New Look At An Old Problem. Emergency Medicine Practice. 2001;3:1-23.Muncie HL, et al. Am Fam Physician. 2013;88:589-595.参考1)Nore AK, et al. Tidsskr Nor Laegeforen. 2001;121:1055-1058.2)Lamminpaa A. Eur J Pediatr. 1994;153:868-872.3)Godbout BJ, et al. Emerg Radiol. 2011;18:381-384.4)Galbraith S, et al. Br J Surg. 1976;63:128-130.5)Homma Y, et al. Am J Emerg Med. 2018;36:673-676.6)Kattimani S, Bharadwaj B. Ind Psychiatry J. 2013;22:100-108.7)Fiellin DA, et al. Arch Intern Med. 2000;160:1977-1989.8)Ewing JA. JAMA. 1984;252:1905-1907.9)Harper CG, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1986;49:341-345.10)Caine D, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1997;62:51-60.執筆

2.

コロナ禍を経て高知県民の飲酒行動が変わった?

 お酒好きが多いことで知られる高知県から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが終息した後も、人々が羽目を外して飲酒する頻度は減ったままであることを示唆するデータが報告された。同県での急性アルコール中毒による搬送件数を経時的に解析した結果、いまだ2019年の水準より有意に少ない値で推移しているという。高知大学医学部附属病院次世代医療創造センターの南まりな氏らの研究によるもので、詳細は「Environmental Health and Preventive Medicine」に10月8日掲載された。 COVID-19パンデミック中は、外出自粛、飲食店の時短営業などの影響を受け、高知県において急性アルコール中毒による救急搬送件数が有意に低下したことを、南氏らは既に報告している。その後、2023年5月にWHOが緊急事態の終息を宣言し、国内でも感染症法上の位置付けが5類となって、社会生活はほぼパンデミック前の状態に戻った。それによって、高知県民の飲酒行動が元に復した可能性があることから、南氏らは最新のデータを用いた検証を行った。 この研究は、高知県救急医療・広域災害情報システム「こうち医療ネット」のデータを用いて行われた。2019~2023年の救急搬送のデータから、解析に必要な情報がないもの、および急性アルコール中毒の記録が存在しない9歳以下と80歳以上を除外した10万7,013人を解析対象とした。このうち1,481人(1.4%)が、急性アルコール中毒による救急搬送だった。 救急搬送者数に占める急性アルコール中毒による搬送者の割合を経時的に見ると、パンデミック前の2019年は1.8%、パンデミック初期に当たる2020年は1.3%であり、その後、2021年と2022年は1.2%で、2023年は1.3%と推移していた。 2019年を基準として、年齢、性別、救急要請場所、消防管轄区域(高知市か高知市以外)、および重症度を調整し、救急搬送のオッズ比(OR)を算出すると、以下に示すように2020年以降はすべて有意に低値であり、2023年にわずかに上昇する傾向が認められた。2020年はOR0.79(95%信頼区間0.68~0.93)、2021年はOR0.74(同0.63~0.87)、2022年はOR0.72(0.61~0.84)、2023年はOR0.77(0.66~0.90)。 著者らは、「COVID-19パンデミックが終息し人々の生活パターンがある程度元に戻ったにもかかわらず、高知県での急性アルコール中毒による救急搬送は、若干増加しているとはいえ、いまだパンデミック以前のレベルに至っていない。この結果は、パンデミックを経て飲酒行動が変化したことを示唆している」と結論付けている。また、そのような変化が生じた背景として、特に急性アルコール中毒のハイリスク集団である若年世代の娯楽の多様化で、アルコール離れが生じた影響ではないかとの考察を加えている。

3.

パンデミックで急性アルコール中毒による救急搬送が有意に減少

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの最中に、急性アルコール中毒による救急搬送件数が有意に減少していたことが明らかになった。住民の飲酒量が多いことで知られる高知県のデータを解析した結果であり、高知大学医学部環境医学の南まりな氏、災害・救急医療学の宮内雅人氏らによる論文が、「Alcohol」に9月20日掲載された。 COVID-19パンデミックにより人々の生活が一変し、それにより救急搬送される患者の傾向にも変化が生じている。例えば交通事故による外傷が減り、ストレスが発症に関与しているたこつぼ心筋症が増えたことなどが報告されている。一方、飲酒行動に関しては、飲食店の時短営業や入店制限などによる飲酒機会の減少と、ストレス負荷による自宅での飲酒量の増大という相反する影響が考えられるが、南氏らが2020年春というパンデミック初期に高知県で行った研究では、急性アルコール中毒による救急搬送が減少していたことが明らかになっている。今回の研究では、パンデミックが長期化した以降もそのような傾向が継続しているのか否かを検証した。 この研究には、高知県救急医療・広域災害情報システム「こうち医療ネット」のデータが用いられた。2019~2021年の救急搬送の記録12万49件のうち、データ欠落、および急性アルコール中毒患者が発生していない10歳未満と80歳以上を除外した6万2,138件を解析対象とした。このうち926件(1.5%)が急性アルコール中毒によるものだった。 年次推移を見ると、2019年は2万2,289件中412件(1.9%)が急性アルコール中毒によるもので、2020年は1万9,775件中268件(1.4%)、2021年は2万74件中246件(1.2%)だった。全体として、急性アルコール中毒による救急搬送は、性別で比較した場合は男性に多く(66.1%)、年齢層では20代が最も多くを占めていた(37.2%)。 ポアソン回帰モデルにて、2019年を基準とする急性アルコール中毒による救急搬送件数の発生率比(IRR)を検討すると、2020年はIRR0.78(95%信頼区間0.67~0.91)と有意に低く、2021年もIRR0.73(同0.63~0.86)であり有意に低値だった。つまり、パンデミック初期に認められた急性アルコール中毒による救急搬送件数の減少は、パンデミックが長期化した2年目にも継続していたことが明らかになった。 著者らは本研究について、救急搬送以外の手段で受診した急性アルコール中毒患者も存在する可能性があること、県民の酒量が多く飲酒に寛容な高知県での調査であり、解釈の一般化が制限されることなどの留意点を挙げている。ただし後者については、「研究の限界点であると同時に、特異な飲酒文化で得られた貴重なデータでもある」と述べている。また、「パンデミックによって急性アルコール中毒による救急搬送が減少したという事実は、換言すれば、パンデミック以前の人々の飲酒行動に問題があったことを示唆している」との考察を加えている。

4.

第157回 コロナの影響で平均寿命2年連続で縮む/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ影響で日本人の平均寿命2年連続で縮む/厚労省2.日本の人口、全都道府県で初の減少、外国人増加が補う/総務省3.感染症対策を強化、感染症危機管理統括庁を9月1日に設置/政府4.保険証の有効期限見直し検討 マイナンバーカードへの不安払拭/政府5.神戸徳洲会病院、カテーテル処置後の死亡で行政指導へ/神戸市6.美容外科医が少女らをカラオケに連れ込み、未成年者誘拐容疑で逮捕/東京1.新型コロナ影響で日本人の平均寿命2年連続で縮む/厚労省厚生労働省は、2022年の日本人の平均寿命は女性が87.09歳、男性が81.05歳となり、いずれも前年より0.49歳と0.42歳短くなったことを明らかにした。これで平均寿命が2年連続で前の年を下回った。この大きな要因として新型コロナウイルス感染症による死者の増加が挙げられている。日本人の平均寿命は女性が世界1位であり、男性は4位に下がった。厚労省は今後の感染状況次第では、寿命が再び上昇する可能性もあるとしている。参考1)令和4年簡易生命表の概況(厚労省)2)去年の日本人平均寿命 2年連続で前年下回る 厚労省(NHK)3)日本人の平均寿命、男女とも2年連続で縮む 新型コロナ影響か(毎日新聞)4)平均寿命、2年連続で縮む コロナが最大の要因 簡易生命表公表(朝日新聞)2.日本の人口、全都道府県で初の減少、外国人増加が補う/総務省総務省がまとめた最新の人口動態調査によれば、わが国の人口は14年連続で減少し、初めて47都道府県すべてで人口が減少したことが明らかになった。その一方で、外国人の人口は過去最多の299万人に増加し、全都道府県で増えていた。わが国の人口減少に対して外国人の重要性が増しており、経済や社会の担い手として底支えをしていることが明らかになっている。東京都は外国人の増加により総人口は前年を上回っているが、日本人の減少は続いている。また、転入者が転出者を上回る「社会増」は東京、神奈川、埼玉、千葉、福岡、大阪、茨城、宮城、滋賀と都市部に人口流入が偏った傾向が続いている。参考1)住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(総務省)2)日本人、全都道府県で初の減少 外国人299万人が底支え(日経新聞)3)日本人の人口 14年連続減少 初めて47都道府県すべてで減る(NHK)3.感染症対策を強化、感染症危機管理統括庁を9月1日に設置/政府政府は、感染症発生時に司令塔機能を担う「内閣感染症危機管理統括庁」を9月1日に設置すると発表した。これは新型コロナウイルス禍で感染対策の初動が遅れた教訓を生かし、対応を強化するための措置。統括庁は内閣官房に置かれ、感染対策の立案や政府対策本部の運営、関係省庁の業務調整などを担う。同庁は、平時は38人が専従し、緊急時には101人に増員する。トップの「内閣感染症危機管理監」には栗生 俊一官房副長官が就任する見込み。感染症危機管理監を補佐する「内閣感染症危機管理対策官」には厚生労働省の医務技監の迫井 正深氏が着任する。このほか、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合した「国立健康危機管理研究機構」も新たに設立される。この新組織は「日本版CDC」とも呼ばれ、感染症の新たな発生に対して効果的に対応できる体制を整えることが期待されている。新型コロナ禍の教訓を踏まえ、次の感染症の発生に迅速で的確に対応する体制を整えることで、感染症対策の強化する。参考1)危機管理統括庁、9月1日設置を発表 経財相(日経新聞)2)感染症対応の司令塔「危機管理統括庁」9月1日設置 後藤担当相が発表(CB news)3)次の「コロナ」に即応できる? 新専門家組織の課題は?(毎日新聞)4.保険証の有効期限見直し検討 マイナンバーカードへの不安払拭/政府政府は健康保険証の代わりとして交付する「資格確認書」の有効期限を見直し、最長1年の制限を廃止し、現行の保険証と同じ有効期限に設定する検討に入った。現在は、2024年秋に健康保険証を廃止して、マイナンバーカードに一本化する方針だが、マイナンバーカードへの不安が相次いでおり、保険証廃止の延期も視野に入れている。政府内では「資格確認書」の利便性向上によりトラブルへの対策とし、国民の不安を払拭する狙いがある。参考1)来年秋の保険証廃止方針 週明けにも協議し対応判断 岸田首相(NHK)2)“マイナ保険証”「安心して活用できる環境を整備」 官房長官(同)3)「資格確認書」の有効期限で見直し案 政府、保険証廃止への批判で(朝日新聞)4)首相、健康保険証の廃止延期も視野…マイナンバーカードへの不安払しょく狙い(読売新聞)5.神戸徳洲会病院、カテーテル処置後の死亡で行政指導へ/神戸市神戸市にある神戸徳洲会病院で、カテーテル処置後に複数の患者が死亡した事案について、7月28日に神戸市保健所が3度目の立ち入り検査を行った。市側は安全管理に問題があるとして、行政指導を検討している。問題の背景には循環器内科の男性医師が、カテーテル室を実質的に1人で担っていた可能性が浮上しており、電子カルテの記載漏れも判明している。病院側は第三者機関による検証を依頼しており、カテーテル治療の再開は安全が確保されるまで控えると発表している。参考1)カテーテル処置後死亡 神戸市“安全管理体制に複数の問題点”(NHK)2)カテーテル治療後に死亡相次ぐ神戸徳洲会病院 市が行政指導へ カルテに記載なし、実質一人で業務か(神戸新聞)6.美容外科医が少女らをカラオケに連れ込み、未成年者誘拐容疑で逮捕/東京美容クリニックの医師2人が、7月25日に開催された花火大会帰りの10代の女子高校生2人をナンパし、カラオケ店に連れ込んだ疑いで逮捕された。容疑者の医師らは少女たちに酒を飲ませたとされ、少女の1人は急性アルコール中毒で病院に搬送された。容疑者らは大学時代の同級生で、未成年者だとは知らなかったと一部否認しているが、女子高校生らは高校生だと説明して、断っていた。参考1)少女2人をカラオケに連れ込む 誘拐容疑で美容外科医2人を逮捕(毎日新聞)2)有名美容外科クリニックの医師2人を逮捕 女子高校生2人をカラオケ店に連れ込み疑い 逃げるも連れ戻し…急性アルコール中毒で搬送 警視庁(TBS)3)「カラオケに行こうよ」と連れ込み…10代少女らを誘拐した疑いで美容外科医2人逮捕(FNN)

5.

ノルウェーで救急バイトするならこの日は避けろ!【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第224回

ノルウェーで救急バイトするならこの日は避けろ!Pixabayより使用メリークリスマス。クリスマスイブと大晦日のプライマリ・ケアや救急のサービス利用状況を、通常の土曜日と比べたノルウェーの報告です。うーむ、どっちがキツイんだろう…。Sandvik H.Emergency primary health care consultations on Christmas Eve, New Year's Eve and a normal Saturday.Tidsskr Nor Laegeforen. 2019 Dec 9;139(18).2008~18年の間に、ノルウェーで時間外当番医になった医師の診療報酬レセプトデータをもとにした研究です。クリスマスイブ、大晦日、1月の最終土曜日の診察・往診件数や診断名などを比較検討しました。通常の業務の代表日として設定された1月最終土曜日の受診者数は4万5,088人でした。クリスマスイブは3万6,045件(土曜の80%)、大晦日は5万377件(土曜の112%)という結果でした。クリスマスイブが少なく、大晦日が多いという結果でした。外傷に関しての相談は、通常土曜日の夜間で1,007件、クリスマスイブの夜間は453件(土曜日の45%)、大晦日の夜間は2,447件(土曜日の243%)でした。大晦日は、ノルウェーでは国をあげてカウントダウンの花火をする習慣があるため、外傷が多いようです。実際、熱傷に関する相談は大晦日の夜間で246件でしたが、クリスマスイブは13件(大晦日夜間の5%)、土曜日は11件(大晦日夜間の4%)と大きな差がありました。また、大晦日の夜間の急性アルコール中毒による受診は513件、クリスマスイブは53件(大晦日夜間の10%)、土曜日は260件(大晦日夜間の51%)という結果でした。みなさんもノルウェーで当直のバイトをする機会があれば、できるだけ大晦日を避けるようにしましょう。

6.

猛暑の日々【Dr. 中島の 新・徒然草】(231)

二百三十一の段 猛暑の日々地震、豪雨に続いて、大阪では猛暑の日々が続いています。先日はついに車の温度計での外気温が40度となり、エアコンを全力でかけてもなかなか涼しくなりませんでした。病院の建物の中も場所によっては暑く、何台もの扇風機が回っています。当然のことながら暑さにやられて担ぎ込まれてくる患者さんが多く、ベッドも不足勝ちです。あまりにも熱中症が多いので、救急外来では、あらかじめトレイの上に点滴セット、留置針、採血管などを並べたものを準備しておき、患者さんが来たらそのトレイと棚から生食500mLのバッグを持っていけばOKという工夫をしてみました。なんと日勤の終わりには準備していた5つのトレイが全部使われてしまいました。そのくらい多いのが熱中症です。なぜか昼間に熱中症が増えると夜には急性アルコール中毒が増えるような気がします。自分の飲める量を知らない若い人が運び込まれることが多いのですが、中には夜の商売をしている人が飲み過ぎて運び込まれることもあります。こういう人には「客に飲ませるのが仕事でしょ。自分が酔っ払ってどないするんですか!」という突っ込みが入れられます。泥酔した患者さんたちも翌朝になるとケロッとして帰宅されるのですが、先日の若い女子大生はなかなか帰ろうとしませんでした。看護師さんから聞いた事情とは・・・看護師「もうすっかり意識清明なんですけどね」中島「ほな、帰宅やな」看護師「お母さんが来るまで待っているみたいです」中島「そんなもん、自分で帰ったらエエやんか」看護師「服がドロドロになったんで、持ってきてもらうそうです」中島「しゃーないなあ」看護師「お母さんがパンツも持ってきてくれるらしいです」中島「なんじゃそりゃ? そっちもドロドロなんか」看護師「はい」中島「き、聞かなきゃよかった」回診で病室に行ってみると、母娘にペコペコ謝られました。中島「まあ、若いときはこんなこともありますよ。次から気をつけるようにしましょうね」さすがに説教するわけにもいかないので、爽やかドクターを装っておきました。というわけで最後に1句猛暑日は 色々ドラマが うまれけり

7.

神様、お静かに!【Dr. 中島の 新・徒然草】(208)

二百八の段 神様、お静かに!「深夜に急性アルコール中毒で運ばれたけどナース冷たすぎワロタ」というスレッドがネットに出ていました。よくできていたので笑ってしまいました。書いた人は宴会で酔いつぶれて病院の救急室に運ばれ、「扱いが悪い」と怒ってスレッドを立てたのだと思います。以下、御本人の台詞を引用します。読みやすいように句読点等を追加しました。不適切表現は●●にしておきます。医療関係者によるツッコミらしき部分は( )でくくりました。ゴミを扱うような対応でワロタ。あっ?こっちは金はらっとんじゃ、仕事しろ。(夜勤の仕事増やさないでね)増やすか増やさないかはてめぇが決めることじゃねーんだよ●●。点滴うつのクソだるそうにしててワロタ 。「帰れますよねぇ?」とか。帰れねーよ●●。(実際飲み会シーズンなると酒に飲まれた馬鹿共がER室占領するからな、邪魔邪魔)それが仕事だろ。甘えんな。「はい、車椅子も自分で乗ってねー」とか軽い感じで言ってきてワロタ 。無理に決まってんだろ、泣かすぞ。(というか、どうやれば緊急搬送されるくらい酔えるのか知りたい)ジョッキで日本酒2杯イッキしたあとから様子がおかしくなった。一番驚いたのは、「タクシーはあそこの電話で自分で呼べ」とか言われたことな。サービス悪すぎてくっそワロタ。悪態もここまでくると立派。医療関係者らしき人たちの反応もリアル。私も深夜の酔っ払いは苦手です。色々絡まれるし、神経に触ることも言われるし。でも、研修医や若い看護師さんたちにはよく言い聞かせています。「酔っ払いとケンカしてもいいことは1つもない」酒に酔った人に説教しても虚しいだけ。大人の対応をするしかありません。そして、自分にもこう言い聞かせています。「給料は我慢料」さっきまで悪口雑言を言ってた酔っ払いが大人しくなったと思ったら急変した、ということが時々あるので、我慢して丁寧な対応を心掛けた方が無難です。「酔っ払いは神様だと思え!」相手を対等の人間だと思うから腹が立つのです。でも、目の前で憎たらしいことを言っているのが神様だと思えば、不思議に腹も立ちません。思わず「神様、お静かに願います!」という台詞が口をつきそうになるくらいです。ま、本当に言ってしまったら、ただの阿呆ですけど。先日、酒を飲み過ぎて意識朦朧状態で救急搬送され、入院になった若い女性がいました。急変リスクを考えれば当然の判断です。でも、翌朝になって正気に戻った途端、怒って帰ってしまいました。帰るのはいいですけど、ちゃんと治療費を支払ったのでしょうか? 健康保険証を持っていたとも思えないし、なんだか怪しいですね。ということで深夜の救急、色々ありますが、最後に1句神様へ お願いします 支払いを

8.

倫敦通信(第2回)~医療と護身術

星槎大学客員研究員インペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院客員研究員越智 小枝(おち さえ)2012年11月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。先日一時帰国した際、薩摩の野太刀自顕流の伝承者である島津義秀さんとお話しさせていただく機会がありました。攻撃してくる相手を倒すための実践的なお話を色々聞けたので、「看護学部でも是非教えてあげたいですね」と言ったところ、「そんなに必要ですか?」とすこし驚かれたご様子でした。病院で起こる暴力行為は世間ではまだあまり認識されていないのかな、という印象を受けました。女性のスタッフが増えた昨今、夜間休日の病院で暴力行為に対応する管理職も男性とは限りません。私自身、当直中に病棟からこんな電話を受けたことがあります。「先生、○号室の意識障害の患者さんがボールペンを持って暴れていて…でも担当の先生が帰ってしまって…」確かに問題ですが、女医の私にどうしろと、という状況です。半ばやけくそで「つまり私にとり押さえてほしいってこと?」と聞くと、「はい。」とのお返事。さすがに苦笑しながら病棟まで行き、患者さんからボールペンを取り上げて転落防止を確認した上でご家族へ連絡しました。その後の署名などは全てフェルトペンを使いました。意識障害で病室から走り出してきた患者さんを「膝カックン」で転ばせ、看護師さんが噛みつかれている間にとり押さえたこともありますし、裸で暴れる若い男性を女性看護師と4人がかりでベッドに押し倒した(!)こともあります。この時は妊娠中の看護師さんが危うくお腹を蹴られるところでした。やり返すことは言語道断ですが、力の差がある上に防戦一方、という状況には辛いものがあります。ここで大事なことは、これらはいずれも一般病棟で起こったということ、患者さんは心神喪失状態であり、こちらの態度などで避けられる事件ではなかったということです。救急外来になると喧嘩の負傷者や酔っぱらい患者も多いため、状況はさらに悪化します。私の同僚だけでも救急外来で患者さんに殴られた女医さんが何人かいます。日本看護協会の調査では、身体的暴力・言葉の暴力を合わせると4人に1人の看護師が「暴力を受けたことがある」と回答しており、身体的暴力の96%は患者さんからの暴力だったとのことです(参照1)。英国でも状況は同様です。2000年に英国で行われた職種別の犯罪調査(British Crime Survey)によると、看護師が暴力行為を受ける確率は5.0%で、警備職(11.4%)の約半分のリスク。介護士は2.6%でこれも全職業の平均値の2倍以上となっており、医療関係者のリスクの高さがわかります(参照2)。言葉の暴力にいたると50%の病院職員が経験しており、暴力行為による医療費の喪失は年間6900万ポンドになるそうです(参照3)。英国NHS(参照4)では2001年からNHS Protectというプロジェクトを立ち上げてこれに当たっていますが(参照5)、驚くことに、その英国においても医療機関での迷惑行為が犯罪として認定されたのはつい最近の2009年であり、医療従事者が患者の暴力から保護されていない実情がうかがわれます。ではなぜ医療機関では暴力行為が多いのでしょうか?1つには、患者・医療者両方の精神的ストレスが挙げられます。入院生活や外来での待ち時間は、体調が悪い患者さんにとっては大変な精神的苦痛です。また、医療行為への恐怖が高まった結果、逆に医療に対する過剰な期待が裏切られた結果、暴力行為に至ってしまうこともあるそうです。それに対して医療関係者側でも、長時間勤務の過労状態の時に不適切な発言が増えるため、特に体力のないスタッフが衝突してしまう例が多い、と感じます。もう1つの原因は患者さんの意識状態の変容です。例えば急性アルコール中毒や急性薬物中毒による酩酊状態がこれにあたります。しかしこの「酩酊状態」はなにも中毒でなくとも起こり得ます。例えば痴呆、重症の肝臓疾患や甲状腺機能異常などの患者さんの意識障害は時折みられるケースです。また、24時間外に対して開けている病院という施設では、患者さん以外の方が乱入して暴力をふるう、という事件も起こり得ます。以前の勤務先では患者さんの家族が刃物を持って暴れている所を医師が確保した、などという話も聞きました。ではこのような行為に対して、どのような対策が取られているのでしょうか。多くのガイドラインで提示されているのは・相談窓口、報告システムの設置・警備員による巡回・診察室や待合室の間取りや物の配置・暴力行為を起こさないような環境作りといったものです。しかし、暴力行為の現場でスタッフ自身が身を守る方法については、あまり詳しく述べられていません。護身術の教育が病院単位でなされているところもありますが、学校教育としては導入されていないのが現状です。これについてNHSは「トレーニングと教育は重要だが、どのようなトレーニングが有効かというエビデンスは確立されていない」という大変英国らしいコメントを添えています。要するに費用対効果がよいかどうか分からない、ということでしょう。エビデンスを待つまでもなく、実際の現場では、一人ひとりが身を守る知識を持つことは最低限の職業訓練だと思います。腕や肩をつかまれた時に振り払う方法、暴れている患者さんから危険物(点滴台、置時計、ペンなど)を遠ざけること、横になっている人は額を押さえると暴れにくいこと、など。実践しないまでも、これらを知っているだけでもスタッフ自身の態度が変わります。怯えたり立ちすくむ新任スタッフはどうしても攻撃されることが多いため、これはとても大切なことなのです。また管理職の方は、看護師さんに暴力を振るう患者が、男性や医師(性別に関わらず)の前で急におとなしくなることも多い、ということも知っておく必要があります。これを把握していないと、「スタッフの態度が悪かったのだ」と解釈したり、暴力行為の危険性を低く見積もってしまうことがあるからです。暴力行為の危険は、専門・階級に関わらず、医療者にとって他人事ではありません。中学校では武道が必修化されましたが、医療系の学校でも、武道でなくとも最低限の護身術は教育してほしいな、というのが個人的な感想です。<参照>1.http://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/bouryokusisin.pdf2.http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200203/cmselect/cmpubacc/641/641.pdf3.http://www.designcouncil.org.uk/Documents/Documents/OurWork/AandE/ReducingViolenceAndAggressionInAandE.pdf4.NHS:National Health Service。イギリスの国営医療サービス5.http://www.nhsbsa.nhs.uk/Protect.aspx略歴:越智小枝(おち さえ)星槎大学客員研究員、インペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院客員研究員。1999年東京医科歯科大学医学部医学科卒業。国保旭中央病院で研修後、2002年東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科入局。医学博士を取得後、2007年より東京都立墨東病院リウマチ膠原病科医院・医長を経て、2011年10月インペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院に入学、2012年9月卒業・MPH取得後、現職。リウマチ専門医、日本体育協会認定スポーツ医。剣道6段、元・剣道世界大会強化合宿帯同医・三菱武道大会救護医。留学の決まった直後に東日本大震災に遭い、現在は日本の被災地を度々訪問しつつ英国の災害研究部門との橋渡しを目指し活動を行っている。

検索結果 合計:8件 表示位置:1 - 8