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第132回 エーザイのアルツハイマー病薬の第III相試験成功

エーザイのアルツハイマー病薬lecanemab(レカネマブ)が第III相試験(Clarity AD)で有望な認知機能低下抑制効果を示し、試験の主要目標やその他の副次目標一揃いを達成しました1,2)。lecanemabはアルツハイマー病の特徴として知られる脳のアミロイドβ(Aβ)病理の解消を目指すモノクローナル抗体です。-0.45点の意義Clarity AD という名称の同試験は2019年3月に始まり3)、早期アルツハイマー病患者1,795人が参加しています。lecanemabは2週間に1回静注され、18ヵ月時点の主要評価項目・CDR-SB点数上昇(悪化)をプラセボに比べて有意に抑制しました。CDR-SBは数ある認知症検査の1つで、もともとはアルツハイマー病の初めの病状を把握する検査として使われていましたが、10年ほど前の米国FDA方針以降臨床試験の転帰として受け入れられるようになっています4)。医師は患者自身、その介護者、家族からの情報や記憶や問題解決能力などの患者向け検査結果に基づいてCDR-SBの点数を計算します。CDR-SBの点数の幅は0~18点で、点数が高いほど病状が悪いことを意味します。そのCDR-SB得点の上昇をプラセボに比べて差し引きで0.45点、率にして27%減少させたことをエーザイは有意義(clinically meaningful)な結果であるとみなしました3)。一方、University College Londonの精神科医Rob Howard氏に言わせるとその差は小さすぎてプラセボとほとんど見分けが付きません5)。以前に同氏等は患者の日常に有意義な結果とみなすにはプラセボと少なくとも0.5かそれ以上の差が必要と主張していました5,6)。また、lecanemabが今回の第III相試験で示した認知機能低下の抑制を患者やその家族がどれほど実感したかはまだ判断不可能であり6)、そのためにはさらに情報が必要です。今後の追加情報はさておき、アナリストが成功水準とした率にして20~25%以上の対プラセボCDR-SB上昇抑制を上回る27%抑制をlecanemabは達成していますし、同剤が米国FDA承認を逃すというのはおよそありえなさそうです4)。影の立役者・北方の変異他のAβ標的抗体が軒並み難抗する中でlecanemabが大一番の第III相試験の成功にとうとう漕ぎ着けたのはなぜか? それは遡ること20年以上前に発表されたAβ前駆タンパク質変異の発見がだいぶ貢献しているようです。北方の(Arctic)国スウェーデンの人から見つかったその変異はアークティック変異(E693G)と呼ばれ、Aβのアミノ酸配列の22番目を変える変異であり、Aβ凝集(Aβプロトフィブリル)形成を促してアルツハイマー病を誘発します7)。Aβプロトフィブリルを除去するlecanemabは他でもないそのアークティック変異の発見者であるLars Lannfelt氏等が設立したスウェーデン拠点のBioArctic社とエーザイの共同研究によって誕生しました。lecanemabが認識するAβアミノ酸配列(エピトープ)は最初から16番目と、プロトフィブリルを形成したときの21~29番目領域です。その性質ゆえlecanemabは神経にどうやら有毒らしい可溶性Aβプロトフィブリルをより容易に優先して認識します3)。ライバルの足音lecanemabはClarity AD試験結果を含まない第II相試験結果を拠り所に取り急ぎの承認申請(Accelerated Approval)が米国FDAに提出されており、その審査結果は来年2023年1月6日までに判明します。取り急ぎではない不動の承認(traditional/full approval)を目指す申請も来年3月31日までになされる予定です。来月11月29日にはClarity AD試験結果の詳細がアルツハイマー病臨床試験会議(CTAD:Clinical Trials on Alzheimer‘s Disease)で発表されます。その会議ではRoche(ロシュ)の抗Aβ抗体gantenerumab(ガンテネルマブ)の第III相試験結果も発表され、さらに来年2023年中にはEli Lilly(イーライ・リリー)の抗Aβ抗体donanemabの大一番(ピボタル)試験結果も明らかになる見込みです4)。興味深いことに、lecanemabと同様にロシュのgantenerumabもアークティック変異を反映するAβアミノ酸22番目を含む領域を認識します。ただしlecanemabがAβプロトフィブリルに特異的なのに比べてgantenerumabはより非特異的であり、Aβ単量体にもより結合します8)。lecanemabの課題Clarity AD試験の被験者選択基準の1つは脳にアミロイド病変があることであり、その確認にはたいていPET撮影を必要とします。そういう画像診断の要件は同剤普及の足かせになるかもしれません4)。lecanemabの用法である隔週での静注も使用を諦める理由になるかもしれませんが、エーザイは投与がより容易なその皮下注射の臨床試験をすでに始めています1,2)。参考1)抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体「レカネマブ」について、1,795人の早期アルツハイマー病当事者様を対象としたグローバル大規模臨床第III相CLARITY AD検証試験において、統計学的に高度に有意な臨床症状の悪化抑制を示し、主要評価項目を達成 / エーザイ2)LECANEMAB CONFIRMATORY PHASE 3 CLARITY AD STUDY MET PRIMARY ENDPOINT, SHOWING HIGHLY STATISTICALLY SIGNIFICANT REDUCTION OF CLINICAL DECLINE IN LARGE GLOBAL CLINICAL STUDY OF 1,795 PARTICIPANTS WITH EARLY ALZHEIMER'S DISEASE / PRNewswire3)Topline Results of Clarity AD Conference for Media and Investors / Eisai4)Lecanemab can; now the wait for details begins / Evaluate5)Alzheimer’s drug slows mental decline in trial - but is it a breakthrough? / Nature6)Alzheimer’s drug results are promising - but not a major breakthrough / NewScientist7)Nilsberth C, et al. Nat Neurosci. 2001;4:887-93. 8)Science of the amyloid-b cascade and distinct mechanisms of action of lecanemab / BioArctic

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心不全未発症者、睡眠時無呼吸や質低下が心拡張機能障害と関連/兵庫医大

 心不全未発症の段階において、睡眠時の無呼吸と質の低下がそれぞれ独立した左室拡張機能低下の重要な予測因子であることを、兵庫医科大学糖尿病内分泌・免疫内科学講座の大学院生の木俵 米一氏らの共同研究グループが前向き研究で解明した。これまで、心不全患者では睡眠に関する問題が多く、睡眠が心不全発症と関連する可能性が指摘されていたが、無呼吸、短時間、質の低下などの睡眠関連因子を定量的かつ同時に評価し、左室拡張機能障害の進行に対する影響を直接検討した研究は報告されていなかった。Journal of American Heart Association誌オンライン版2022年9月21日号掲載の報告。 対象は、同大学が実施する全学横断的プロジェクト研究事業「Hyogo Innovative Challenge(HIC)」の一環であるHyogo Sleep Cario-Autonomic Atherosclerosis (HSCAA)コホート研究に登録された患者のうち、心不全未発症の452例。平均34.7ヵ月(中央値25ヵ月)追跡を行い、睡眠時の無呼吸、睡眠の時間と質が心拡張機能障害の進行にどのように関連するのかを前向きに検討した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、452例中66例で心拡張機能低障害が進行した。・カプランマイヤー解析の結果、中~重症の睡眠時無呼吸を有する患者および睡眠中の体動が多く質が低下した患者では、これらの因子がない/軽度の患者に比べて将来の心拡張機能障害を来す割合が高かった(それぞれp<0.01)。・睡眠の時間については、心拡張機能との明らかな関連は認められなかった(p=0.27)。・これらの因子の影響を患者背景も含めて検討したCox比例ハザードモデルでは、中~重症の睡眠時無呼吸を有する患者(ハザード比[HR]:9.26、95%信頼区間[CI]:1.89~45.26、p<0.01)および質の低下した患者(同:1.85、同:1.01~3.39、p=0.04)は、将来の心拡張機能の低下と有意な関連を示しており、これらの関係は互いに独立していた。

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日本人高齢者の睡眠時間と認知症リスクとの関係~NISSINプロジェクト

 大阪公立大学の鵜川 重和氏らは、身体的および社会的に自立した日本人高齢者における毎日の睡眠時間と認知症発症リスク(高血圧、糖尿病、心血管疾患などの併存疾患の有無にかかわらず)との関連を調査するため、日本人の年齢別コホートを行った。その結果、日々の習慣的な睡眠時間は、将来の認知症発症リスクの予測因子であることが示唆された。Sleep Medicine誌オンライン版2022年9月3日号の報告。 64~65歳の日本人1,954人(男性:1,006人、女性:948人)を含むプロスペクティブコホート研究を実施した。1日の睡眠時間、症状、人口統計学的因子、ライフスタイル特性に関するデータは、ベースラインアンケート調査および健康診断調査(2000~05年)より収集した。認知症発症は、厚生労働省が提唱する全国標準化認知症尺度を用いて確認した。認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、競合リスクモデルを用いた。死亡例も競合イベントとして扱った。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値は15.6年であり、その間に認知症を発症した人は260人であった。・併存疾患がなく、1日6~7.9時間の睡眠時間の人と比較し、認知症リスクが高かった人の特徴は以下のとおりであり、併存疾患と睡眠時間との間に有意な相関が認められた(いずれもp<0.001)。 ●1日の睡眠時間が6時間未満(HR:1.73、95%CI:1.04~2.88) ●併存疾患があり1日の睡眠時間が8時間未満(HR:1.98、95%CI:1.14~3.44) ●併存疾患があり1日の睡眠時間が8時間程度(HR:1.44、95%CI:1.03~2.00) ●併存疾患があり1日の睡眠時間が8時間以上(HR:2.09、95%CI:1.41~3.09)

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抗精神病薬の切り替え理由~システマティックレトロスペクティブレビュー

 多くの精神疾患患者で抗精神病薬の切り替えが行われているが、切り替え理由や臨床記録を研究した報告はほとんどない。米国・ザッカーヒルサイド病院のDaniel Guinart氏らは、抗精神病薬の切り替え理由についてレトロスペクティブに分析を行った。その結果、抗精神病薬の切り替え理由は性別により異なるようであったが、多くの場合、忍容性の不十分にあることが報告された。また、切り替え理由が適切に記載されていないケースが5分の1で認められた。The Journal of Clinical Psychiatry誌2022年9月5日号の報告。 1施設で抗精神病薬の切り替えを行った入院または外来患者において、切り替え理由および切り替えた薬剤の種類を明らかにするため、処方記録や処方箋の記載をレトロスペクティブにレビューした。2017年8月1日から270件に至るまで抗精神病薬の切り替えデータを収集し、検出力分析に必要な薬剤の種類および切り替え理由を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・クエチアピンから抗精神病薬以外に切り替えられた7件を除く263件の抗精神病薬切り替え事例を分析した(患者数:195例、年齢中央値:31歳[四分位範囲:24~47]、統合失調症:36.9%、双極性障害:27.7%、統合失調感情障害:18.5%)。・主な抗精神病薬の切り替え理由は、忍容性不十分(45.7%)、効果不十分/悪化(17.6%)であった。・抗精神病薬の切り替え理由は、人種(p=0.2644)、年齢(p=0.0621)、保険の種類(p=0.2970)による影響を受けなかったが、性別についてはいくつかの理由に関して不均一性が認められた(p=0.004)。・最も多かった切り替えは、第2世代抗精神病薬の経口剤(SGA-OAP)から他のSGA-OAPへの切り替えであり(155件、58.9%)、その理由は、忍容性不十分または効果不十分であった。・次に多かった切り替えは、第2世代抗精神病薬の長時間作用型注射剤(SGA-LAI)からSGA-OAPへの切り替えであり(11%)、その理由は、忍容性不十分、患者の好み、保険適用の問題であった。・SGA-OAPからSGA-LAIへの切り替えは、10.7%であった。・抗精神病薬の切り替え理由が適切に処方箋に記載されていたのは、208件(79.1%)であった。

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lecanemabが早期アルツハイマー病の症状悪化を抑制、今年度中の申請目指す/エーザイ・バイオジェン

 エーザイ株式会社とバイオジェン・インクは2022年9月18日付のプレスリリースで、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabについて、脳内アミロイド病理が確認されたアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)および軽度AD(これらを総称して早期ADと定義)を対象とした第III相Clarity AD試験において、主要評価項目ならびにすべての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成したと発表した。 Clarity AD試験は、早期AD患者1,795例を対象とした、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化グローバル臨床第III相検証試験。被験者は、lecanemab 10mg/kg bi-weekly投与群またはプラセボ投与群に1:1で割り付けられた。ベースライン時における被験者特性は両群で類似しており、バランスがとれていた。被験者登録基準においては、幅広い合併症あるいは併用治療(高血圧症、糖尿病、心臓病、肥満、腎臓病、抗凝固薬併用など)を許容している。試験実施地域は日本、米国、欧州、中国。 主要評価項目はベースラインから投与18ヵ月時点でのCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)の変化。主な副次評価項目はベースラインから投与18カ月時点での、アミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積、ADAS-cog14(Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale 14)、ADCOMS(Alzheimer’s Disease Composite Score)およびADCS MCI-ADL(Alzheimer's Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment)。 lecanemab:可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体で、ADを惹起させる因子の1つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されている。 今回発表されたClarity AD試験の主な結果は以下のとおり。・intent-to-treat(ITT)集団における解析の結果、投与18ヵ月時点での全般臨床症状の評価指標であるCDR-SBスコアの平均変化量は、lecanemab投与群がプラセボ投与群と比較して-0.45となり27%の悪化抑制を示し(p=0.00005)、主要評価項目を達成した。・また、CDR-SBは投与6ヵ月以降すべての評価ポイントにおいてlecanemab投与群がプラセボ投与群と比較して統計学的に高度に有意な悪化抑制を示した(全評価ポイントでp<0.01)。・副次評価項目であるアミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積、ADAS-cog14、ADCOMSおよびADCS MCI-ADLの投与18ヵ月時点での変化についても、すべての項目においてプラセボと比較して統計学的に高度に有意な結果を示した(p<0.01)。・抗アミロイド抗体に関連する有害事象であるアミロイド関連画像異常(ARIA)について、ARIA-E(浮腫/浸出)の発現率は、lecanemab投与群で12.5%、プラセボ投与群で1.7%だった。そのうち症候性のARIA-Eの発現率は、lecanemab投与群で2.8%、プラセボ投与群で0.0%だった。・ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、大出血、脳表ヘモジデリン沈着)の発現率は、lecanemab投与群で17.0%、プラセボ投与群で8.7%だった。症候性ARIA-Hの発現率は、lecanemab投与群で0.7%、プラセボ投与群で0.2%だった。ARIA-Hのみ(ARIA-Eを発現していない被験者でのARIA-H)はlecanemab投与群(8.8%)とプラセボ投与群(7.6%)で差はみられなかった。・ARIA(ARIA-Eおよび/またはARIA-H)の発現率はlecanemab投与群で21.3%、プラセボ投与群で9.3%であり、総じてlecanemabのARIA発現プロファイルは想定内であった。 本試験結果については、2022年11月29日にアルツハイマー病臨床試験会議で発表し、査読付き医学誌で公表する予定となっているほか、同社では本試験結果をもとに2022年度中の米国フル承認申請、および日本、欧州での承認申請を目指している。

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慢性期統合失調症患者に対する音楽療法の有効性および睡眠障害の予測因子

 統合失調症患者に睡眠障害がみられることは少なくない。このような場合、非侵襲的介入である音楽療法が有益である可能性がある。台湾・輔英科技大学のMei-Jou Lu氏らは、統合失調症患者の睡眠障害に対する音楽療法の有効性を調査した。その結果、統合失調症患者の睡眠障害に対する音楽療法のメリットが実証された。Archives of Psychiatric Nursing誌2022年10月号の報告。 慢性期病棟で睡眠障害を伴う統合失調症患者を対象に、プロスペクティブ研究を実施した。対象者は、標準療法のみを行う対照群と、標準療法に加えて4週間の就寝前音楽療法を行う介入群に割り付けられた。睡眠障害の重症度を測定するため、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。両群間のベースライン時と4週間後のPSQIスコアの変化を分析するため、一般化推定方程式を用いた。介入群における治療効果の予測因子の特定も試みた。 主な結果は以下のとおり。・対象は、介入群35例、対照群31例の計66例。・人口統計学的変数で調整した後、介入群のPSQIスコアの変化は対照群と比較し、有意に大きく(群×時間の推定値:-7.05、p<0.001)、音楽療法の有効性が示唆された。・無宗教の患者や慢性疾患を有する患者では、より優れた有効性が予測された。・高齢患者では、音楽療法の有効性が乏しい可能性が示唆された。・統合失調症患者に対する音楽療法の有効性が示唆される一方で、医療従事者は実臨床において統合失調症患者の重症度の変化を考慮する必要がある。

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認知症リスク低下に寄与する1日当たりの歩数

 認知症予防ガイドラインでは身体活動を推奨しているが、認知症の発症と歩数やその強度との関連は明らかになっていない。南デンマーク大学のBorja Del Pozo Cruz氏らは、英国成人を対象に毎日の歩数やその強度とすべての原因による認知症発症との関連を調査した。その結果、歩数が多いほどすべての原因による認知症発症リスクが低く、1日当たり1万歩を少し下回る程度の歩数が、最も効果的であることが示唆された。JAMA Neurology誌オンライン版2022年9月6日号の報告。 UK Biobankの集団ベース・プロスペクティブコホート研究(2013年2月~2015年12月)を実施し、フォローアップ期間は6.9年、データ分析は2022年5月に行った。10万3,684人中、有効な歩数データを有する40~79歳の成人7万8,430人を分析対象に含め、認知症発症はレジストリベースで2021年10月までに確認した。歩数計から得られた1日の歩数、1分当たり40歩未満の偶発的な歩数、1分当たり40歩以上の意図的な歩数、1日の最も歩数の多い30分間(ピーク30分間)における1分当たりの歩数(必ずしも連続とは限らない)を分析した。主要アウトカムは、致死的および非致死的な認知症の発症とし、入院記録またはプライマリケア記録と関連付けて収集するか、死亡記録の死因を参照した。歩数との用量反応関連を評価するため、Spline Cox回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象者は、平均年齢61.1±7.9歳、男性3万5,040人(44.7%)、女性4万3,390人(55.3%)、アジア人881人(1.1%)、黒人641人(0.8%)、混合人種427人(0.5%)、白人7万5,852人(96.7%)、その他または特定不能629人(0.8%)。・7万8,430人中866人が認知症を発症した(フォローアップ期間中央値:6.9年[6.4~7.5年]、平均年齢:68.3±5.6歳、男性:480人[55.4%]、女性:386人[44.6%]、アジア人:5人[0.6%]、黒人:6人[0.7%]、混合人種:4人[0.4%]、白人:821人[97.6%]、その他:6人[0.7%])。・分析では、1日の歩数と認知症発症との間に非線形の関連が認められた。・最大のリスク低下が認められた歩数は9,826歩(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.39~0.62)であり、リスクの低下が認められた最小の歩数は3,826歩(HR:0.75、95%CI:0.67~0.83)で、リスク低下は最大のリスク低下の50%であった。・偶発的な歩数で最もリスク低下が認められたのは3,677歩(HR:0.58、95%CI:0.44~0.72)、同じく意図的な歩数では6,315歩(HR:0.43、95%CI:0.32~0.58)、ピーク30分間の歩数では1分当たり112歩(HR:0.38、95%CI:0.24~0.60)であった。

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男女別、心血管イベントのリスク因子は/Lancet

 脂質マーカーとうつ病は、女性より男性で心血管リスクとの関連が強く、食事は男性よりも女性で心血管リスクとの関連が強いことが、カナダ・マックマスター大学のMarjan Walli-Attaei氏らによる大規模前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiological:PURE研究」の解析の結果、示された。ただし、他のリスク因子と心血管リスクとの関連は女性と男性で類似していたことから、著者は、「男性と女性で同様の心血管疾患予防戦略をとることが重要である」とまとめている。Lancet誌2022年9月10日号掲載の報告。35~70歳の約15万6,000例で、各種リスク因子と主要心血管イベントの関連を解析 研究グループは、現在進行中のPURE研究における、高所得国(11%)および低・中所得国(89%)を含む21ヵ国のデータを用いて解析した。 解析対象は、2005年1日5日~2021年9月13日に登録され、ベースラインで35~70歳の心血管疾患既往がなく、少なくとも1回の追跡調査(3年時)を受けた参加者15万5,724例であった。 主要評価項目は、主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全の複合)とした。代謝リスク因子(収縮期血圧、空腹時血糖値、ウエスト対ヒップ率、非HDLコレステロール)、血中脂質(総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロール/HDLコレステロール比、ApoA1、ApoB、ApoB/ApoA1比)、行動的リスク因子(喫煙、飲酒、身体活動、食事[PURE食事スコア])および心理社会的リスク因子(うつ症状、教育)と主要心血管イベントとの関連を男女別に解析し、ハザード比(HR)ならびに人口寄与割合(PAF)を算出した。脂質マーカーとうつ症状は、女性より男性で心血管リスク上昇 解析対象15万5,724例の内訳は、女性9万934例(58.4%)、男性6万4,790例(41.6%)、ベースラインの平均(±SD)年齢はそれぞれ49.8±9.7歳、男性50.8±9.8歳で、追跡期間中央値は10.1年(四分位範囲[IQR]:8.5~12.0)であった。 データカットオフ(2021年9月13日)時点で、主要心血管イベントは女性で4,280件(年齢調整罹患率は1,000人年当たり5.0件[95%信頼区間[CI]:4.9~5.2])、男性で4,911件(8.2件[8.0~8.4])発生した。男性と比較して、女性はとくに若年で心血管リスクプロファイルがより良好であった。 代謝リスク因子と主要心血管イベントとの関連は、非HDLコレステロールを除き、女性と男性で同様であった。非HDLコレステロール高値のHRは、女性で1.11(95%CI:1.01~1.21)、男性で1.28(1.19~1.39)であった。また、他の脂質マーカーも女性よりも男性のほうが一貫してHR値が高かった。 うつ症状と主要心血管イベントとの関連を示すHRは、女性で1.09(95%CI:0.98~1.21)、男性で1.42(1.25~1.60)であった。一方、PUREスコア(スコア範囲:0~8)が4以下の食事の摂取は、男性(HR:1.07[95%CI:0.99~1.15])よりも女性(1.17[1.08~1.26])で主要心血管イベントと関連していた。 主要心血管イベントに対する行動的および心理社会的リスク因子(合計)のPAFは、女性(8.4%)よりも男性(15.7%)で大きく、これは主に現在喫煙のPAFが男性で大きいためであった(女性1.3%[95%CI:0.5~2.1]、男性10.7%[95%CI:8.8~12.6])。

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第2世代抗精神病薬のLAIによる日本人統合失調症入院患者の身体拘束リスクへの影響

 第2世代抗精神病薬(SGA)の長時間作用型注射剤(LAI)が、経口抗精神病薬と比較し、再発時の精神症状の軽減に有用であるかは、よくわかっていない。福島県立医科大学の堀越 翔氏らは、日本の単一医療施設における4年間のレトロスペクティブミラーイメージ観察研究を実施し、統合失調症入院患者への隔離・身体拘束といった制限的介入の頻度(時間)に対するSGA-LAIの有用性を検討した。その結果、SGA-LAI使用により制限的介入の頻度および措置入院回数の減少が認められ、著者らは、SGA-LAIは再発時の精神症状の軽減につながる可能性があることを報告した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2022年9月5日号の報告。 2013年11月~2018年1月にレトロスペクティブミラーイメージ観察研究を実施した。最初に101例からデータを収集し、包括基準を満たした統合失調症患者38例を分析に含めた。主要アウトカムは、SGA-LAI使用開始前後2年間の制限的介入の頻度(時間)とし、副次的アウトカムは、入院回数(合計、任意入院、措置入院)、在院日数とした。制限的介入の定義は、隔離および身体拘束とした。 主な結果は以下のとおり。・制限的介入の平均時間は、SGA-LAI使用前の43.7時間から使用後の3.03時間へ有意な減少が認められた(p=0.021)。・SGA-LAI使用前後で、入院回数および在院日数は、以下のように有意な減少が認められた。 ●入院回数:1.03回→0.61回(p=0.011) ●在院日数:130日→39.3日(p=0.003)・とくに、措置入院回数(0.50回→0.26回)の有意な減少が認められた(p=0.039)。

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ドラマ「ドラゴン桜」(後編)【そんなんで結婚相手も決めちゃうの? 教育政策としてどうする?(学歴への選り好み)】Part 1

今回のキーワード学歴社会シグナリングランナウェイ遺伝子進化文化進化共進化大学助成金大学無償化前編で、学歴によって収入の割り増し(シープスキン効果)が起きることをご説明しました。中編では、だからと言ってその学歴差(教育格差)を縮めようとしても収入格差は縮まらない理由をご説明しました。そして、収入格差は「遺伝格差」が原因となっていることもご説明しました。さらに、どうやらこの学歴は、就職だけでなく、結婚においても、重んじられるようになってきているようです。今回は、引き続きドラマ「ドラゴン桜」を通して、このような学歴社会になってしまうそもそものメカニズム、そしてその行き着く先を、文化進化の視点で解き明かします。そこから、「遺伝格差」も踏まえて、これからの教育政策は教育政策をしないことであるという仰天の逆説を導き、学歴社会への今後の真の対策を考えてみましょう。なんで学歴社会になるの?桜木先生は、全校生徒の前で「東大に行け!」と力説しておきながら、「東大みたいなブランド、ありがたがっている連中…(略)みんなゲス野郎だ」と言い切りました。すると、矢島から「じゃあ、なんで東大行けって言ってるんだよ?」と突っ込まれるのです。桜木先生は、おもむろに答えます。「それはな、今のおまえには分からんだろ」「おまえらガキは、社会について何も知らないからな。いや、知らないと言うより、大人たちがわざと教えないんだ。その代わり、未知の無限の可能性だなんて、何の根拠もない無責任な妄想をおまえたちに植えつける。そんなもんに踊らされて、個性生かして他人と違う人生を送れると思ったら、大間違いだ。社会はそういうシステムになっちゃいない。それを知らずに放り出されたおまえたちに待っているのは不満と後悔の渦巻く現実だけだ!」と。桜木先生が説く「社会」とは、何でしょうか? それは、学歴社会です。学歴社会とは、社会において相手への評価(選り好み)に学歴が重んじられることです。ここから、このような学歴社会になってしまうメカニズムを、進化心理学の視点を交えて、大きく2つ挙げてみましょう。(1)シグナリング1つ目はシグナリングです。シグナリングとは、相手に自分のある情報を知らせるためにシグナル(信号)を出すことです。たとえば、鹿の角や猪の牙などの「武器」の大きさは、求愛をめぐるオス同士の序列(マウンティング)のシグナルになっています。彼らは草食動物であるため、その「武器」が狩りに使われることは実はありません。また、クジャクの飾り羽やカナリアのさえずりなどの「装飾」の美しさはメスへの求愛の誇示(セックスアピール)のシグナルになっています。人間について言えば、男性の論理性などの「男らしさ」はもともと狩りをするうえでの生存能力の高さのシグナルになっています。また、女性の共感性などの「女らしさ」はもともと子育てをするうえでの生殖能力の高さのシグナルになっています。なお、「男らしさ」「女らしさ」という言い回しは、あくまで原始の時代に求められた特性を便宜的に言い表したものです。多様化する現代社会において推奨されるものではありません。同じように、学歴は、前編でご説明した通り、知能の高さと性格の望ましさを証明している点で、現代の社会で就職先(さらには結婚相手)に対して自分がうまくやっていく能力(適応度)の高さを示すシグナルになっていることが分かります。(2)ランナウェイ2つ目はランナウェイです5)。ランナウェイとは、もともとオスのある特徴(シグナル)がその集団のメスから広く好まれるようになると、その特徴が生存で適応度を高めるかどうかとは関係なく、好まれ続ける(暴走する)ようになることです。たとえば、先ほどのクジャクの飾り羽やカナリアのさえずりは、オスに特有で、メスを惹き付けるためだけの特徴です。最初、その特徴は比較的に目立たなかったと考えられますが、求愛の「競争」によって、とても目立つように進化したのでした。なお、これらの特徴は、メスを惹き付ける点で生殖の適応度を高めてはいますが、天敵までも寄せ付けるくらい極端に目立つようになってしまったり、その「装飾」のために動きが鈍くなることで天敵から狙われやすくなってしまったら、生存の適応度を下げてしまうという代償があります。人間について言えば、男性の論理性は極端になると、理屈っぽさやこだわり(自閉スペクトラム症)という代償があります。実際に、この発症率は男性が女性の数倍高いです。一方、女性の共感性は極端になると、情緒不安定(境界性パーソナリティ障害)という代償があります。実際に、この発症率は女性が男性の数倍高いです。同じように、学歴は、当初はそのまま教育効果を表し、職業的に役立ち、生存の適応度を高めていました。しかし、社会でより好まれるようになってしまったことで、まさに学歴への選り好みが独り「走り」(独り歩き)して広まってしまい、ランナウェイの現象が起きてしまっていることが分かります。もはや、学歴は、クジャクの飾り羽と同じ「装飾」になってしまい、教育効果そのもので生存の適応度を高めることはなくなってしまったのでした。次のページへ >>

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ドラマ「ドラゴン桜」(後編)【そんなんで結婚相手も決めちゃうの? 教育政策としてどうする?(学歴への選り好み)】Part 2

学歴社会を推し進めるのは?厳密に言えば、先ほどの動物の選り好みは、その遺伝子が集団に広がっていくために長い年月がかかります。一方で、人間の学歴への選り好みは、比較的短期間で広がっています。一体何が推し進めているのでしょうか?それは、文化です。人間がほかの動物と決定的に違うのは、環境を変えられることです。そして、変えられたその環境からまた影響を受けるという相互作用を起こすことです。その環境の代表が文化なのです。このようにある行動をする遺伝子がその集団に広がっていく遺伝子進化と同じように、ある行動をする文化がその集団に広がっていくことを、文化進化と呼んでいます6)。この文化の起源は、私たち人類が部族をつくった約300万年前です。当時から、人類は狩りや育児の仕方を次世代に伝えるようになりました。これは、部族(集団)としては文化であり教育です。部族メンバー(個人)としては経験であり学習です。そして、これが、行動遺伝学における「環境」の起源と言えるでしょう。つまり、約300万年前以降の人類のほとんどの行動は、本能(遺伝)+文化(環境)から成り立っていると言えます。逆に言えば、約300万年以前の人類やほかのすべての動物の行動は、ほぼ本能(遺伝)だけとも言えます。なお、定住して家を作るようになった約1万数千年前から、人類は、部族だけでなく、家族単位でも生活圏(縄張り)を区切るようになりました。こうして、コミュニケーションの癖、生活習慣、好みなどの嗜癖の多様化がさらに進んだのでした。これは、家族文化とも言えます。これが、行動遺伝学における「家庭環境」の起源と言えるでしょう。この点でも、飲酒習慣や素行などは、本能(遺伝)+家族文化(家庭環境)+文化(家庭外環境)と言えるでしょう。なお、中編でも触れましたが、家族文化(家庭環境)は知能と収入に当初は影響を与えます。しかし、その影響力は、成人して最終的になくなるか、あったとしてもとても限られたものになります。学歴社会の行き着く先は?人間は、環境を変え、そして変えられた環境(文化)から影響を受けると、今度は長い時間の中で、人間(遺伝子)が淘汰されていくという相互作用も起こります。つまり、遺伝子進化と文化進化は共進化しています。ここから、共進化の例を3つ挙げます。そして、学歴社会が私たち人間に与える影響、つまり学歴社会の行き着く先を予測してみましょう。(1)調理する文化数十万年前に、人類が火を使うようになってから、食べ物を調理することで、消化しやすくなりました。このような環境では、消化能力が強くない人も生き残れます。すると、消化能力が弱い人類が増えていき、ますます調理をする文化が広がっていきます。こうして、現在のほとんどの人間は、生肉や腐ったものを食べるとお腹を壊すようになったのです。言い換えれば、調理の文化(環境)から影響を受けて、消化能力が強い遺伝子が淘汰され、なくなっていったのでした。(2)牛乳を飲む文化実は、世界中の成人の70%近くは、牛乳を飲んでも吸収できないです。もちろん、母親のおっぱいを飲む乳児は、牛乳も吸収できます(ただし推奨年齢は1歳を過ぎてから)。しかし、5歳を過ぎると、母親のおっぱいに含まれる乳糖(牛乳の成分と同じ)を分解する酵素がつくられなくなるため、牛乳を飲んでも吸収できなくなるのです。場合によっては、腹痛や下痢を起こします(乳糖不耐症)。一方で、残りの30%強の人は、大人になっても牛乳を吸収できて栄養にすることができます。そのわけは、約1万数千年前に農耕牧畜が広がってから、その人たちの祖先が、その家畜の搾乳を栄養として利用する地域にいたからです。先ほどの調理をする文化と同じように、牛乳を飲んで栄養にして生きていく文化の淘汰圧がかかったために、大人になっても牛乳を飲んで吸収できる遺伝子を持つ人が増えていったのでした。なお、チーズやヨーグルトなどの乳製品は、加工の過程で乳糖の割合が減っていくため、食べて吸収できる人が増えます。これは、牛乳が飲めない人たちが生きて行くための新たな文化的な適応であったと言えます。(3)お酒を飲む文化哺乳類の多くは、腐った果実(=果実酒)を食べると、分解する能力が低いためすぐに酔っ払います。ところが、ゴリラとチンパンジーはなかなか酔っ払わないことが分かっています。このことから、もともとの約1千万年前のゴリラとチンパンジーと人類との共通の祖先は、当時から「アルコール」を分解して栄養にすることができたと考えられています。そのわけは、彼らは、木から下りて地上で長い間を過ごすようになっていたため、地上に落ちて腐った果実(アルコール)も貴重な食料源として分解して消化するような遺伝的な適応をしたからでしょう。その後、約数万年前に、人類はアルコールを作るようになりました。同時に、当時からアルコール依存症が問題になっていたことが考えられます。すると、アルコールを飲まない(あまり飲めない)人が仕事仲間として、そして結婚相手としてより選ばれていくことが推測されます。このような当時の文化の淘汰圧によって、飲んだアルコールを分解できない遺伝子を持つ人が再び増えていったのでしょう。実際に、お酒があまり飲めない人は、とくに東アジアで多いのです。お酒を飲んで出てくる赤ら顔は「オリエンタルフラッシュ(東洋人の赤ら顔)」とも呼ばれます。そのわけは、もともと東アジアで稲作が盛んで、早くから米酒が醸造されていたことで、アルコール依存症が当時から社会問題になっていたからであると考えることができます。この詳細については、関連記事をご参照ください。以上を踏まえて、学歴社会の行き着く先が見えてきます。それは、学歴を重んじる文化の淘汰圧がかかると、知能が高くなる遺伝子を持つ人が増えていくことです。そして、牛乳(またはお酒)が飲める人と飲めない人がそれぞれいるのと同じように、知能の高い人と高くない人の集団が二極化していくことです。これは、知能における「遺伝格差」が広がることを意味します。一見、知能が高い人が増えるのはそれ自体むしろ良いことのように思われます。しかし、その知能とは、試験問題を解くことに特化した「知能」(情報処理能力)です。何か新しいものを生み出す創造性ではありません。AI化が進む私たちの日常生活にも共感的なコミュニケーションが求められる社会生活にも役に立つとは限らない、時代遅れの「知能」です。さらに問題なのは、その知能の高い人が高くない人を搾取する社会の仕組み(学歴社会)は変わらないどころか、強化される危うさもあるということです。この状態を前編では学歴階級社会とご説明しました。これは、牛乳が飲める人が飲めない人を搾取するのと大差ないくらい、実は不公平なものに思えてきます。この点で、中編でも触れた教育格差の名の下に、これまでの大学への助成金に加えて今後の学生への大学無償化を進めてしまえば、国は教育をする側だけでなく受ける側も含めた両方に資金援助をして、ますます教育ビジネス(前編を参照)に加担することになります。そればかりか、このように収入格差を縮めようと良かれと思って教育格差を是正しようとする取り組みは、皮肉にも、逆に学歴インフレ(前編を参照)を引き起こし、学歴を重んじる文化の淘汰圧を高めることになります。こうして、知能における「遺伝格差」をますます広げ、結果的に収入格差が広がった学歴階級社会をさらに「発展」させてしまうことになります。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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ドラマ「ドラゴン桜」(後編)【そんなんで結婚相手も決めちゃうの? 教育政策としてどうする?(学歴への選り好み)】Part 3

学歴社会にどうすればいいの?桜木先生は、全校生徒の前で「そういう世の中が気に入らねえんだったら、自分でルールを作る側に回れ」と言い放ちます。彼が言う「ルール」とは、まさに学歴社会という文化そのものでもあります。「ルールを作る側に回れ」とは、高い学歴を手に入れることであり、さらには学歴(知能)が高い人が高くない人から搾取しない新しい仕組みを作り直すことをほのめかしていると読み取ることもできます。それでは、そのためには、どうすればいいでしょうか? 文化的に促進したものは文化的に抑制できるという文化進化の特性を踏まえて、学歴社会への国家的な真の対策を大きく3つ挙げてみましょう。(1)収入格差そのものを縮める1つ目の取り組みは、収入格差そのものを縮めることです。なぜなら、問題なのは、中編でもご説明しましたが、教育格差ではなく、収入格差そのものだからです。そのための税制などの社会政策を進め、収入格差をコントロールすることです。実際に、高卒に対しての大卒の収入は、アメリカは1.7倍で、日本は1.4倍強でしたが、実はフィンランドは1.25倍です。フィンランドをはじめとする北欧諸国は、もともと福祉国家であり、収入格差が小さいことで有名です。このように、社会政策として、シープスキン効果を働きにくくすれば、学生が高い学歴に選り好みをすることは減るでしょう。(2)一般職の公務員は高卒者とする2つ目の取り組みは、一般職(専門職を除く)の公務員は高卒者とすることです。すでに、大学における教育効果はとても限定的であるとご説明してきました。一般職の公務員が大卒者である必要がないのです。能力(知能)や適正(性格)を知りたいのであれば、能力テストや適正テストを適宜すれば良いです。もちろん、大学教育がない分、職場教育を充実させることができます。大学教授による目的が曖昧な授業よりも、職場教育に特化した講師による目的がはっきりした研修講義のほうが、より実践的で教育効果が期待できるでしょう。このように、まず公的機関において、高卒者の採用の促進とその後の職場教育のモデルを示せば、一般企業においても高い学歴に選り好みをすることは減るでしょう。(3)大学教育への資金援助を減らす3つ目の取り組みは、大学教育(研究を除く)への資金援助を減らすことです。これは、教育政策として教育政策をしないという仰天の逆説です。たとえば、大学への助成金を段階的に減らしていくことです。また、学生への大学無償化などの政策はしないことです。結果的に、少子化のなか、大学はダウンサイジングを迫られるでしょう。しかし、これは、一般企業としてはごく当たり前のことです。効果が期待できないことに、投資することはできないからです。ただし、奨学金制度はむしろ充実させる必要があります。なぜなら、奨学金の対象は、もともと学力が高くて真面目な学生であるため、専門職や研究職においての教育の効果が期待できるからです。一方で、大学無償化の対象は、学力が高くて真面目な学生であるとは限らなくなるため、経営難の大学の延命に利用されるだけになってしまうからです。このように、大学は、「淘汰」されることで、専門職と研究職のための教育に特化した本来のあるべき姿に戻ることができます。大学は、国立研究所として位置付けられ、浮いた大学助成金は研究予算に回すことができます。そして、大卒者が減り、世の中の大半の人が高卒者になれば、社会において高い学歴に選り好みをすることは減るでしょう。すでに中編で、一般教養を学ぶ場が大学である必要がないことをご説明しました。そもそも大学の教育関係者は、実は研究職が専門で、教職を専門とはしておらず、教えることには実は長けているわけではないという現実もあります7)。もちろん、高校教育までは、職業訓練をしたり、社会性(社会適応能力)を高める場所として必要です。人生の正解とは?第1シリーズのラストシーン。桜木先生は、最後に東大特進クラスの生徒たちに言い残します。「入学試験の問題にはな、正解は常に1つしかない。その1つに辿り着けなかったら、不合格。こりゃ厳しいもんだ。だがな、人生は違う。人生には、正解はいくつもある。大学に進学するのも正解。行かないのも正解だ。スポーツに夢中になるのも、音楽に夢中になるのも、友達ととことん遊び尽くすのも、そして誰かのためにあえて遠回りするのも、これすべて正解だ。だからよ、おまえら生きることに臆病になるな」「おまえら、自分の可能性を否定するなよ。受かったやつも、落ちたやつもだ。おまえら、胸を張って堂々と生きろ」と。あれだけ最初に「東大に行け」と言っておきながら、最後は「(東大に)行かないのも正解だ」と言い切っています。また、彼自身が弁護士であり受験コンサルタントとして知能が高い側にいるはずなのに、「自分でルール(学歴社会にならない仕組み)を作る側に回れ」と言っていました。この点で、彼はトリックスターとも言えます。それを物語るのは、元暴走族上がりで東大に合格しながら進学しなかったという異色の経歴であり、弁護士として王道を歩まない彼自身の不器用な生き様であり、彼らしい世の中への反逆精神でしょう。しかし、現実的には、官僚や教育関係者など学歴(知能)が高い人たちは、その恩恵を受ける側なので、学歴社会の不公平さをうすうす分かっていたとしても、桜木先生のようにあえてその立場が危うくなることは言わないですし、あまり知りたいとも思わないでしょう。政治家も、今まで通り教育政策を充実させると言っておいたほうが聞こえが良くて支持が集まるので、その反対のことは言えないでしょう。では、このままの学歴社会でいいんでしょうか? 知能における「遺伝格差」によって、本人の努力ではどうしようもなく搾取される側になってしまっていいんでしょうか? その「遺伝格差」によって、親の「努力」(教育費をかけること)でもどうしようもなく自分の子どもが搾取される側になってしまっていいんでしょうか?もちろん、どんな社会にするかは政治が決めることです。しかし、政治をする政治家を決めるのは、やはり私たちです。となると、私たち一人一人がまず暴走(ランナウェイ)しつつある学歴社会という文化進化の危うさを理解することです。そして、逆にその文化(環境)を変えていくことで、知能における「遺伝格差」を広げないようにする必要があることを理解することです。すると、遺伝自体は変えられなくても、その遺伝と相互作用して顕在化させるかを左右する環境を変えることができます。これは、逆転の発想です。実際に福祉国家であるスウェーデンは、収入への遺伝の影響が小さいことが分かっています。つまり、収入格差の抑制が知能における「遺伝格差」の抑制につながっているというわけです。このような社会を実現するために、私たちは、遺伝と真摯に向き合う時期に来ています。貧富の差(収入格差)があるのは、「努力が足りなかったからだ」という自己責任論ばかりを唱えるのをそろそろやめる時期に来ています。遺伝の影響力はないとする考えほうが逆に遺伝の影響力を強める結果を招いているという逆説にそろそろ気付く時期に来ています。そして、遺伝の価値は、私たちの文化(環境)が決めているという側面に気付くことです。なぜなら、進化心理学の視点で考えれば、私たちの心は、学歴などによる不平等で不公平な社会ではなく、助け合いによるある程度平等で公平な社会をもともと望むからです。それは、私たちの心の原型が形づくられた原始の時代の部族社会をイメージすれば、分かるでしょう。もちろん、まったくの平等社会にはしないことです。なぜなら、旧ソ連がそうだったように、そんな社会は、こんどは努力をしなくなるという負の側面が出てくるからです。以上を踏まえて、桜木先生が最後に言い残したように、正解を求める生き方ではなく、どんな生き方でも正解と思えることが望ましいでしょう。そのために、私たち一人一人が、学歴という体裁ではなく、相性という中身によって、仕事もパートナー(結婚相手)も選んでいける時代にしていくことではないでしょうか? そんな心のあり方を育むことこそがこれからの教育であり、そんな生き方を促すことこそがこれからの社会と言えるのではないでしょうか?5)「進化と人間行動」P235:長谷川寿一ほか、東京大学出版会、20226)「文化がヒトを進化させた」P22:ジョセフ・ヘンリック、20197)「大学の常識は、世間の非常識」P119、P181:塚崎公義、祥伝社新書、2022<< 前のページへ■関連記事酔いがさめたら、うちに帰ろう。(前編)【アルコール依存症】

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夜間ブルーライトカット眼鏡による片頭痛予防効果

 片頭痛は有病率の高い一次性頭痛であり、現役世代で発症しやすいことから、生産性の低下による社会的損失につながることが問題視されている。国際頭痛分類第3版(ICHD-3、ベータ版)の診断基準では、片頭痛の発作時には過敏、とくに光過敏が認められ、光が頭痛の誘発因子であることが示唆されている。獨協医科大学の辰元 宗人氏らは、片頭痛発作の悪化につながる内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)への光刺激を減少させる夜間のブルーライトカット(Blue Cut for Night:BCN)眼鏡を開発し、その効果を検証した。その結果、ipRGCへの光刺激を減少するBCN眼鏡の使用は、片頭痛発作の軽減に有用である可能性が示唆された。Internal Medicine誌オンライン版2022年8月20日号の報告。 片頭痛患者10例を対象に、BCN眼鏡の使用を4週間実施した。BCN眼鏡の使用前後の頭痛日数とHeadache Impact Test-6(HIT-6)スコアを比較した。 主な結果は以下のとおり。・頭痛日数は、BCN眼鏡を使用する前の8.7±5.03日から、使用4週間後には7.0±4.37日へ減少する傾向が認められた。・副作用は認められなかった。

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SSRIによる消化器系副作用リスク~ネットワークメタ解析

 うつ病治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が広く用いられている。SSRIの最も一般的な副作用は、消化器系に関連する症状であり、うつ病患者のコンプライアンス低下につながる。そのため、消化器系に対するSSRIの安全性を評価することは重要である。これまで、SSRIと他の抗うつ薬における消化器系副作用リスクを比較したいくつかのメタ解析が報告されているが、中国・Inner Mongolia Medical UniversityのZhuoyue Wang氏らは、各SSRIの消化器系副作用リスクを比較するためネットワークメタ解析を実施した。その結果、消化器系副作用リスクについては、fluoxetineが最も明確な利点を示し、セルトラリンは消化器系副作用リスクが最も高い可能性があることを報告した。Therapeutics and Clinical Risk Management誌2022年8月13日号の報告。 システマティックに検索し、5種類のSSRI(fluoxetine、エスシタロプラム、citalopram、パロキセチン、セルトラリン)とプラセボを比較した30件のランダム化比較試験(5,004例)が抽出された。 主な結果は以下のとおり。・5種類のSSRIのうち、消化器系副作用リスクが最も低かったのはfluoxetine(0.548)であり、最も高かったのはセルトラリン(0.611)であった。・胃腸に対する忍容性について、エスシタロプラムは、パロキセチン(オッズ比[OR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.43~0.87)およびセルトラリン(OR:0.56、95%CI:0.32~0.99)よりも優れていた。

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伝統的な子供向けゲームがインターネット依存や社交性スキルに及ぼす影響

 伝統的な子供向けゲームは、小児の身体的、感情的、精神的な健康状態を保護する可能性がある。トルコ・Civril Sehit Hilmi Oz State HospitalのDilek Kacar氏らは、伝統的な子供向けゲームがインターネット依存、社交性スキル、ストレスレベルに及ぼす影響を評価するため、検討を行った。その結果、伝統的な子供向けゲームは、インターネットの使用を減少させ、社交性スキルの向上に寄与する可能性が示唆された。著者らは、小児期は身体的、認知的、心理社会学的な発達にとって重要な時期であり、子供たちの健康状態を保護し促進するため、学校での伝統的な子供向けゲームの実施は利用可能な介入であることを報告した。Archives of Psychiatric Nursing誌2022年10月号の報告。 対照群を用いた試験前後の準実験的研究を実施した。調査の母集団は、トルコの都市部にある2つの中学校の5年生および6年生(日本の小学5年生、6年生に当たる)で構成した。対象は、介入群20人および対照群22人の合計42人の生徒。評価尺度には、家族と子供のインターネット依存症尺度(Family-Child Internet Addiction Scale)、ソーシャルスキル尺度(Social Skills Assessment Scale、Social Skills Scale)、小学生用ストレス反応尺度(Perceived Stress Scale in Children [8-11 years])を用いた。介入群には、伝統的な子供向けゲームを8週間実施した。 主な結果は以下のとおり。・事前の調査では、インターネットの使用、社交性スキル、ストレスレベルは、介入群と対照群で有意な差は認められていなかった(p>0.05)。・介入後に調査した毎日および毎週のインターネット使用は、介入群と対照群で有意な差が認められた(p<0.05)。・介入群の社交性スキルに関する平均スコアは、対照群と比較し、介入後に上昇が認められた(p<0.05)。・ストレスレベルの平均スコアは、両群間で有意な差が認められなかった(p>0.05)。

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認知症の急性興奮症状を軽減する感覚に基づく介入

 認知症患者の興奮症状の発生を長期間にわたり軽減するための介入として、感覚に基づく介入(Sensory-based Intervention)が一般的に行われている。しかし、この介入の即効性に関するエビデンスは十分ではない。香港理工大学のDaphne Sze Ki Cheung氏らは、認知症患者の興奮症状軽減に対して使用されている感覚に基づく介入を特定し、これら介入の即時効果を調査した。その結果、認知症患者において興奮症状軽減に対する感覚に基づく介入の即時効果を検討した研究はかなり不足しているものの、音楽関連の介入における限られたエビデンスは有望である可能性が示唆された。Aging & Mental Health誌オンライン版2022年9月8日号の報告。 PRISMA ガイドラインに従い、システマティックレビューを実施した。Embase、Medline、PsycINFO、CINAHLより、2022年3月2日までに公表された研究を検索した。介入中または介入開始15分以内に測定した興奮症状の軽減効果を評価した。分析には、英語で公表されたランダム化比較試験または準実験的研究を含めた。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした研究は9件(ランダム化比較試験:2件、クロスオーバー試験:1件、準実験的研究:6件)であった。・すべての研究は西欧諸国で実施されており、対象者総数は246例であった。・音楽関連介入は、7件の研究で調査されており、副作用が発現することなく、興奮症状の軽減に効果的であることが示唆された。・すべての研究において、方法論的制限(単一群デザイン、盲検化、サンプルサイズの小ささ、正確性が不十分に報告された結果など)があった。・認知症患者の興奮症状に対する感覚に基づく介入効果を確認するためには、より厳密な研究が求められる。

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双極性障害患者の精神症状有病率~メタ解析

 幻覚や妄想は、双極性障害(BD)で一般的に認められる精神症状である。ノルウェー・オスロ大学のS. R. Aminoff氏らは、双極I型障害(BDI)および双極II型障害(BDII)における、精神症状の生涯および点有病率を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、BDIにおける精神症状のプールされた有病率は、これまで報告されていた値よりも高い可能性が示唆された。Psychological Medicine誌オンライン版2022年8月26日号の報告。 Medline、PsycINFO、Embase、Cochrane Libraryより、2021年8月5日までに公表された研究をシステマティックに検索した。成人BD患者における精神症状の生涯有病率を評価した研究54件(2万3,461例)および点有病率を評価した研究24件(6,480例)が選択基準を満たした。質および出版バイアスの評価を行い、有病率(95%信頼区間[CI])をランダム効果メタ解析で算出した。 主な結果は以下のとおり。・中程度以上の質を有する研究の評価では、精神症状のプールされた生涯有病率は、BDIで63%(95%CI:57.5~68)、BDIIで22%(95%CI:14~33)であった。・BDI入院患者における精神症状のプールされた生涯有病率は、71%(95%CI:61~79)であった。・外来患者またはBDII入院患者に関する研究はなかった。・BDIにおける精神症状のプールされた点有病病は、54%(95%CI:41~67)であった。・点有病率は、躁病エピソードで57%(95%CI:47~66)、うつ病エピソードで13%(95%CI:7~23.5)であった。・BDII、BDIうつ病、混合エピソード、BDI外来患者に関する十分な研究はなかった。

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自閉スペクトラム症から総合失調症への進展

 これまでの研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の小児は、その後の人生において統合失調症の発症リスクが高いことが示唆されている。台湾・高雄栄民総医院のTien-Wei Hsu氏らは、ASDにおける診断の安定性および統合失調症への進展に対する潜在的な予測因子について調査を行った。その結果、統合失調症と診断されたASD患者の3分の2以上が、ASD診断から最初の3年間で進展しており、人口統計学的特徴、身体的および精神的な併存疾患、精神疾患の家族歴が、進展の重要な予測因子であることが示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年9月3日号の報告。 対象は、2001~10年にASDと診断された青年(10~19歳)および若年成人(20~29歳)の患者1万1,170例。統合失調症の新規診断患者を特定するため、2011年末までフォローアップ調査を実施した。統合失調症への進展およびその予測因子を推定するため、時間のスケールとして年齢を用いたカプランマイヤー法およびCox回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・10年間のフォローアップ調査におけるASDから統合失調症への進展率は10.26%であった。・統合失調症と診断された860例中580例(67.44%)は、ASDと診断されてから3年以内に統合失調症と診断されていた。・特定された予測因子は以下のとおりであった。 ●年齢(ハザード比[HR]:1.13、95%信頼区間[CI]:1.11~1.15) ●抑うつ症状(HR:1.36、95%CI:1.09~1.69) ●アルコール使用障害(HR:3.05、95%CI:2.14~4.35) ●物質使用障害(HR:1.91、95%CI:1.18~3.09) ●パーソナリティ障害クラスターA群(HR:2.95、95%CI:1.79~4.84) ●パーソナリティ障害クラスターB群(HR:1.86、95%CI:1.05~3.28) ●統合失調症の家族歴(HR:2.12、95%CI:1.65~2.74)

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睡眠の質と片頭痛との関係

 睡眠状態と片頭痛は密接に関連しているといわれている。しかし、睡眠の質と片頭痛発症リスクとの関連をシステマティックに評価した研究はほとんどなく、性差や年齢差についてもよくわかっていない。中国・北京中医薬大学のShaojie Duan氏らは、睡眠の質と片頭痛発症リスクとの関連およびその性差や年齢差について調査を行った。また、睡眠の質と片頭痛患者の苦痛、重症度、身体障害、頭痛への影響、QOL、不安、抑うつ症状との関連も併せて調査した。その結果、睡眠の質の低下は、片頭痛発症リスクや片頭痛関連の苦痛と有意かつ独立して関連していることが明らかとなった。著者らは、睡眠の質の評価をより充実させることで、片頭痛患者の早期予防や治療に役立つであろうとまとめている。Frontiers in Neurology誌2022年8月26日号の報告。 対象は、片頭痛患者134例および年齢・性別がマッチした健康対照者70例。睡眠の質の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。睡眠の質と片頭痛発症リスク、頭痛関連の苦痛との関連を評価するため、ロジスティック回帰分析および線形回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛患者における睡眠の質の低下は、健康対照者と比較し有意に多くみられた(p<0.001)。・さまざまな交絡因子で調整した後でも、睡眠の質が低下している場合の片頭痛リスクは、睡眠の質が良好な場合の3.981倍であった。・サブグループ解析では、睡眠の質と片頭痛リスクの間に対し相加的に有意な影響を及ぼす因子として、性別、年齢、教育レベルが特定された(p for interaction<0.05)。また、女性、35歳以上の集団、教育レベルが低い場合において、より強い相関が認められた。・多変量線形回帰分析では、睡眠の質の低下が、片頭痛患者の苦痛、重症度、頭痛への影響、QOL、不安、抑うつ症状に有意かつ独立して関連していることが示唆された(p for trend<0.05)。

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成年後見制度の診断書を依頼されたら【コロナ時代の認知症診療】第19回

重度の認知症なのに、見逃されてしまいがちなケース認知症者をよくお世話している介護者にとって一番腹立つ台詞だとよく聞くものがある。「認知症だと聞いていたが、話してみたらおかしくない。これなら普通ではないか? どこがおかしいの?」といった発言である。認知症を専門としていない医師や、公証人ですらこのようなことをおっしゃることがある。そんな発言の理由は簡単である。認知症、とくにアルツハイマー型認知症の人では、まず見た目に愛想がよい。会話のうえではもっともらしくその場に合わせた態度をとる。また何か不都合な点が出ても上手に取り繕うことができる。さらに同伴の方などがいれば振り返って「そうでしょう、ねえあなた」という感じで振舞うこともできる。どれも教科書レベルで、アルツハイマー病型認知症者の対応上の特徴と記載されている。ところが多くの人は、認知症になると、暴言・暴力、徘徊・行方不明、便こねなどいわゆるBPSDが現れるものと思っている。だから穏やかな常識的対応に接すれば拍子抜けする。こうしたところから実際には重度の認知症なのに、認知症を知らない人からは、上のように言われてしまっても不思議ではない。成年後見制度の3つのランクとは?さて認知症を専門としていない医師でも、成年後見制度の診断書に記載を求められることが増えてきた。さらに鑑定書の作成が求められるケースもある。そこで前回は任意後見について紹介したが、今回は法定後見への対応の基本を述べてみたい。まず法定後見制度の利用は、認知症として事例性が明らかになってから出てくるのが普通である。たとえば、不必要で高額なものを契約した、通帳を繰り返しなくす、ATMが使えなくなった、明らかに財産管理ができなくなったなどである。前回も述べたように、こうした実態から経済的に判断能力がないため、財産管理や福祉サービスの契約が1人ではできないと考えられる人を裁判所が守ってくれるのが成年後見制度である。これには、補助、保佐、後見と3つのランクがある。まず難しいのは、こうしたランクは、MMSEや改訂長谷川式の点数から決められるのではないことである。つまり認知症の程度と経済的な判断力や意思能力が相関するわけではない。ではどのような区切りでもって3つを分けたらいいのだろうか。これに対する最高裁判所の公式文章1)では、補助支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することが難しい場合がある保佐支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない後見支援を受けても契約等の意味・内容をみずから理解し判断することができないとある。もっともこれでは具体的に見えてこない。よくよく探したら神戸家庭裁判所による具体的な記述2)があった。補助重要な財産行為(不動産・自動車の売り買いや自宅の増改築、金銭の貸し借り等)について、自分でできるかもしれないが、できるかどうか危惧がある保佐日常の買い物程度は単独でできるが、重要な財産行為(不動産・自動車の売り買いや自宅の増改築、金銭の貸し借り等)は自分ではできない後見日常的に必要な買い物も自分ではできず、誰かに代わってやってもらう必要があるとされる。主治医意見書作成のポイントさて診断書作成、ランク(3類型)決定で用いることができる診療録など手持ちの内部的資料と介護保険認定調査の結果など外部資料がある。今回は前者について説明する。手持ち資料の代表は、診療録である。また主治医意見書に加えてMMSEや改定長谷川式の成績、そして画像・血液検査データなどがある。診療録からは、ざっくりと3類型のどのレベルかの印象はつかめるかもしれない。とくに経済行為や契約に関わる出来事、たとえば不要な高額商品の契約や銀行でのトラブルなどにふれた記載には注意すべきだ。一方で、主治医意見書は大切である。とくに3.心身の状態に関する意見(1)日常生活の自立度等について、(2)認知症の中核症状、(3)認知症の行動・心理症状(BPSD)、これらがポイントとなる。MMSEや改訂長谷川式は簡易スクリーニング検査であって認知症の診断や重症度の評価をするものではない。しかしざっくりと重症度を知るのには有用である。それだけに1年に1度はこれらをやっておくと評価の定量的・縦断的な資料になり得る。なお画像検査などのデータは認知症の診断には役立っても3類型決定にはあまり有用でないだろう。本テーマに関連して、認知症の重症度をざっくりと判定するための、ある程度の信頼性を有する根拠について言及しておく。DSM5によれば、軽度 手段的日常生活動作の困難(例:家事、金銭管理)中等度基本的な日常生活動作の困難(例:食事、更衣)重度 完全依存とある。簡単であるだけにかえって評価が難しいと感じられるかもしれないが、質問したり観察したりすることは容易だろう。参考1)裁判所「成年後見制度における鑑定書・診断書作成の手引」2)神戸家庭裁判所「診断書(成年後見用)の作成を依頼された医師の方へ」

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