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夢で記憶が定着、レム睡眠とノンレム睡眠はどちらが重要?

 脳は睡眠中に記憶の整理などを行っていることが、近年明らかになっている。また、睡眠中には起床時の記憶が夢に登場することがあるため、夢が記憶の定着に関連しているのではないかといわれている。そこで、米国・ファーマン大学のLauren Hudachek氏らは、学習課題に関連する夢と睡眠後の記憶との関連について、システマティックレビューおよび16試験のメタ解析を実施し、夢と記憶の間には関連があることが明らかになった。また、記憶はレム睡眠よりもノンレム睡眠との関連が大きいことも示唆された。Sleep誌オンライン版2023年4月14日号の報告。 Pubmed、PsycInfo、Google Scholarより、「睡眠前に学習課題を実施し、睡眠後の記憶を検討した研究」「睡眠後の記憶向上と、夢に学習課題の内容がどの程度組み込まれているかを関連付けた研究」を検索した。その結果、16試験(効果数:45)が抽出された。これらについてメタ解析を実施し、学習課題に関係する夢と記憶の向上との関連を検討した。また、睡眠の種類(レム睡眠、ノンレム睡眠)、記憶の種類(陳述記憶[イメージや言語として想起でき、内容を陳述できる記憶]、手続き記憶[技能・習慣などの記憶]、空間記憶[空間や場所に関する認知記憶])別のサブグループ解析を実施した。関連の強さは標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を推定して評価した。 主な結果は以下のとおり。・学習課題に関連する夢と記憶について、有意かつ強い関連が認められた(SMD=0.51、95%CI:0.28~0.74、p<0.001)。・睡眠ポリグラフ検査を用いてレム睡眠中の夢(効果数:12)、ノンレム睡眠中の夢(効果数:10)と記憶の関連を検討した研究について解析した結果、ノンレム睡眠中の夢は記憶と有意な関連が認められたが(SMD=0.75、95%CI:0.23~1.28、p=0.010)、レム睡眠中の夢は記憶と有意な関連は認められなかった(SMD=0.32、95%CI:-0.09~0.74、p=0.116)。・記憶の種類(陳述記憶、手続き記憶、空間記憶)にかかわらず、学習課題に関連する夢と記憶について、有意な関連が認められた(いずれもp<0.05)。 著者らは「本研究により、学習課題に関する夢を見ることが記憶の増強と関連することが示され、夢の内容が記憶の定着の指標となる可能性が示唆された。さらに、夢と記憶の関係は、ノンレム睡眠のほうがレム睡眠と比較して強い可能性も示唆された」とまとめた。

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CGRPモノクローナル抗体に反応しやすい日本人片頭痛患者の特徴

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチドモノクローナル抗体(CGRPmAb)は、頭痛障害が従来の予防的治療オプションに奏効しない片頭痛患者にとって有用な薬剤であると考えられる。しかし、日本国内におけるCGRPmAbの使用実績は2年と短く、治療反応が得られやすい患者とそうでない患者を治療前に判別することは困難である。慶應義塾大学の井原 慶子氏らは、CGRPmAbに奏効した日本人片頭痛患者の臨床的特徴を明らかにするため、リアルワールドデータに基づいた検討を行った。その結果、年齢が高く、過去の予防薬治療失敗の合計回数が少なく、免疫リウマチ性疾患の病歴のない片頭痛患者は、CGRPmAbに対する良好な治療反応が期待できることが示唆された。The Journal of Headache and Pain誌2023年3月9日号の報告。 対象は、2021年8月12日~2022年8月31日に慶應義塾大学病院を受診し、3種類のCGRPmAb(エレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブ)のいずれかを3ヵ月以上処方された日本人片頭痛患者。痛みの質、1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、過去の予防薬治療失敗の回数など、対象患者の基本的な片頭痛の特徴を収集した。治療反応者の定義は、治療3ヵ月後にMMDが50%以上低下した患者とした。治療反応者と非反応者におけるベースライン時の片頭痛の特徴を比較し、ロジスティック回帰分析を用いて、統計学的な有意差を検証した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象の患者数は、合計101例(ガルカネズマブ:57例、フレマネズマブ:31例、エレヌマブ:13例)であった。・治療3ヵ月後の治療反応者は55例(54%)であった。・治療反応者と非反応者を比較すると、治療反応者は非反応者よりも年齢が有意に高く(p=0.003)、MHD(p=0.027)および過去の予防薬治療失敗の合計回数(p=0.040)が有意に少なかった。・日本人片頭痛患者におけるCGRPmAb治療反応の正の予測因子は年齢であり、負の予測因子は過去の予防薬治療失敗の合計回数、免疫リウマチ性疾患の病歴であった。

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NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 1

今回のキーワード感覚性言語(側頭葉のウェルニケ野)運動性言語(前頭葉のブローカー野)ミラーリング前適応失語症「言語遺伝子」(FOXP2遺伝子)発達性言語障害声認識(声紋)NHKの「おかあさんといっしょ」は、誰もが知っている幼児向けの音楽番組ですよね。子供は、テレビの前で、出演しているお友達たちと一緒に歌って踊りながら楽しく言葉を覚えています。どうやら歌と言葉は密接に結びついているようです。今回は、このテレビ番組をヒントに、発語(発声学習)のメカニズムを解き明かし、その起源に迫ります。どうやって言葉が出てくるの?最初に出てくる言葉(初語)は、1歳前後で、だいたい「まんま」「ぱっぱ」などです。「まんま」のように「ご飯食べたい」や「ママ来て」というさまざまな意味を持つ初語は、文としても成り立つため、一語文とも呼ばれます。そして、2歳で「でんしゃ、きた」「パパ、かいしゃ」などの二語文になっていきます。そして、4歳までには日常的な話し言葉(三語文)になっていきます。それでは、どうやって言葉が出てくるのでしょうか? ここから、発語(発声学習)のメカニズムを2つに分けて考えてみましょう。(1)発音を聞き分ける1つ目のメカニズムは、母音と子音のそれぞれの発音(音素)を聞き分けることです。このプロセスは、ちょうど1歳の初語が出てくるまで行われます。逆に、1歳以降は新しい発音の自然な学習が難しくなります。たとえば、日本語にない英語のLとRの発音は、その学習を1歳以降にしても、自然な聞き分けが難しくなります1)。逆に言えば、1歳になるまでの赤ちゃんは、英語のLとRを潜在的に聞き分ける能力を持っていると言えます。つまり、音素を聞き分ける能力の臨界期は1歳までということになります。臨界期があるのは、1歳以降は、1つ1つの音素を聞き分けるのではなく、すでに学習した音素の連続したかたまり(言葉)を聞き取ることに脳がエネルギーを注ぐ必要があるからであると考えられます。脳科学的に言えば、これらは感覚性言語(側頭葉のウェルニケ野)の発達です。(2)発音をまねる2つ目のメカニズムは、発音(音素)をまねることです。その前段階が喃語(乳児が発する意味のない声)です。そして、1歳前後になると発音しやすい音素から試すようになります。それが「ま」や「ぱ」なのです。初語が「ママ」であるのは、ママがママと呼ばせようとしたからというよりも、赤ちゃんが発音しやすいからでしょう。実際に、ほとんど言語の幼児語としての親の呼び名は「ママ」「パパ」のように呼びやすいものです。日本語の古語でも、母(はは)は「ぱぱ」「ふぁふぁ」、父(ちち)は「てて」「てぃてぃ」です2)。呼びやすさの観点から、昔の日本人はママを「ぱぱ」と呼んでいたのは納得できます。また、「ママ」のように音素を2回繰り返すのは、その方が赤ちゃんにとってインパクトがあり、また「て・に・を・は」などの機能語と区別できて、学習しやすいからであると考えられます。だからこそ、「手」「目」ではなく「おてて」「おめめ」なのです。よって、幼児期は「ないないするよ」「バイバイね」などの幼児語を周りが好んで使う方が、言葉の学習は進むでしょう。さらには、赤ちゃんが言った言葉を親などが繰り返すこと(ミラーリング)で、赤ちゃんの発音にフィードバックが働きます。こうして、言葉の発音を学んでいくのです。まさに、「学ぶ」の語源の「まねぶ」に通じます。なお、ミラーリングの詳細については、関連記事1をご覧ください。1歳以降は、音素の連続したかたまり(言葉)を聞き取るだけでなく、それを発することに脳がエネルギーを注ぐようになります。脳科学的に言えば、これは運動性言語(前頭葉のブローカー野)の発達です。こうして、音素を次々と切り替え素早く並べて、言葉にすることができるようになっていくのです。歌と言葉の関係は?「おかあさんといっしょ」では、「みんな~おっどろ~!」とリズムで呼びかけたり、歌のリズムに合わせてしりとりや言葉遊びをしています。このように、とくに発声学習の観点では、歌と言葉は切っても切り離せないようです。それは、なぜでしょうか?この答えは、進化の歴史から、発語は、歌の発声が進化の土台(前適応)になっていると考えられているからです3)。前適応とは、ある機能が進化の過程で別の機能に転用されている場合、もとの機能を指す用語です。たとえば、揚力を生み出す鳥の羽の前適応は、もともと羽毛による保温であったと考えられています3)。また、コイがほかの魚と違って高い音を聞き取ることができるのは、浮くための浮袋が内耳とつながるよう進化したからでした。つまり、コイの聴覚の前適応は浮袋による浮上だったと考えられています。同じように、歌うこと(発声)がまず先にあって、その後に話すこと(発語)が生まれたと考えられます。実際に、脳血管障害による失語症では、話せなくなったけど歌えるという場合があります。これは、言語の領域が左脳で優位であるのに対して、歌唱の領域は右脳を含め広範囲だからです。つまり、脳の機能としても、話すこと(発語)は、歌うこと(発声)をベースとしていることがわかります。このことからも、失語症へのリハビリとして、歌うことが注目されています4)。また、このことから、外国語を話せるようになるためには、まずその外国語の歌を歌うと学習の効果が上がりそうです。なお、歌の起源の詳細については、関連記事2をご覧ください。次のページへ >>

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NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 2

いつ言葉は生まれたの?発語(発声学習)のメカニズムは、発音(音素)を聞き分ける、発音(音素)をまねることであることがわかりました。そして、進化の歴史上、発語は歌うことの後に生まれたことがわかりました。それでは、いつ言葉は生まれたのでしょうか?その答えは、約20万年前(厳密には20万年前から約15万年前までの間)と考えられています。この根拠は、主に3つあります5)。(1)現生人類が誕生した時期1つ目は、現生人類(ホモ・サピエンス)が誕生した時期です。遺跡の発掘調査から、現代人と解剖学的にほぼ同じ骨格のサピエンスの化石で最も古い年代は約20万年前であることが定説となっています。なお、モロッコで出土した初期サピエンスの化石の年代が約30万年前であることが2017年に判明しましたが、頭蓋骨の形状が現生サピエンスとはやや異なっていた点で、言葉を持たなかったと推測されています。(2)現生人類がアフリカ内で拡散し始めた時期2つ目は、現生人類(ホモ・サピエンス)がアフリカ内で拡散し始めた時期です。古代ゲノム学の研究から、サピエンスが誕生地の東アフリカからアフリカの各地に拡散したなかで最も古い時期が、サピエンスの誕生と同じ時期の20万年前であることがわかっています。また、アフリカ内での人種分岐は14万年前~13万年前であることがわかっています。言葉の出現が、高度な道具の発明を可能にして拡散を促進した可能性が示唆されます。逆に、拡散が始まった時点で、まだ言葉(言語併合)が生まれていなかったとしたら、そのまま言葉を持たない文化の部族や人種が存在してもいいことになります。しかし、そのような部族は現存していません。もちろん、そんな部族はすでに絶滅した可能性も考えられます。(3)現生人類に「言語遺伝子」があること3つ目は、現生人類(ホモ・サピエンス)に「言語遺伝子」(FOXP2遺伝子)があることです。実際の臨床では、この遺伝子の変異によって発達性言語障害を引き起こすことがわかっています。これは、全般的な知的能力に問題はないのに、言語能力に限って著しい困難があることです。なお、古代ゲノム学の研究によって、約4万年前までサピエンスと共存していたネアンデルタール人とデニソワ人(この2つの人類亜種の共通の祖先は約80万年前にサピエンスと分岐)も、このFOXP2遺伝子を持っていることが判明し、言葉を話していた可能性が考えられていました。しかし、転写因子の結合に影響を与える置換が違うことが指摘されたことで、この遺伝子の発現の調節がうまくいかず、やはり言葉を話せなかったと推定されるに至っています。彼らは、言葉が生まれなかったことで、高度な道具を発明することができず、約7.5万年前に主たる出アフリカによって急激に増えたサピエンスとの生存競争に負けた(多少の異種交配はありつつも)と考えられています。ちなみに、「言語遺伝子」(FOXP2)の突然変異は、約6千万年前からの哺乳類の進化の過程で3回、そのうち2回は人類が誕生してからであることがわかっています6)。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 3

どうやって言葉は生まれたの?言葉が生まれた時期が、約20万年前(~約15万年前)であることがわかりました。それでは、どうやって言葉は生まれたのでしょうか? ここから、発語(発声学習)が生まれた要因を主に2つに分けて迫ってみましょう。なお、厳密に言えば、言葉は、発語、象徴、統語の主に3つの機能があります。今回は、発語にフォーカスしています。(1)うまい歌声を出す人類が歌うようになってから、歌の良し悪しによって結婚相手に選ばれるかが決まったのでしょう。つまり、より良い歌声を持つ人が選ばれ子孫を残すという淘汰圧がかかりました。こうして、喉・口・舌などの声道(発声器官)の構造が進化しました。さらに、この進化に連動して、それらを司る脳内の運動性言語(前頭葉のブローカー野)が進化しました。1つ目の発語が生まれた要因は、うまい歌声を出すことです。これが結果的に、小鳥のさえずりのように、多様な音素の発声をもたらしたのです。まず、舌や唇の位置取りによって子音が生まれたのでしょう。さらに、声道内の2つの違う音(周波数)の共鳴ができるようになって母音(共鳴音)が生まれたのでしょう。これらの子音と母音の組み合わせが、発語の起源なのです。また、人類は、共鳴音をより安定させるため、つまりより美しい歌声を出すために、進化の過程で声帯にある声帯膜と声帯嚢を消失させたと考えられています7)。これらは、チンパンジーなどの類人猿には存在する器官です。これらが存在することで、声帯の振動が不規則になり、彼らは逆にガラガラ声やかすれ声などのより「汚い」唸り声を大音量で出して、天敵や恋敵を威圧することができます。つまり、類人猿は安定しないけれど大音量の音源(声帯)で声を出すのに対して、人類は大音量ではないけれど安定した音源(声帯)で声を出すように進化したのでした。そもそも、人類は集団で天敵に対抗するようになったため、個人で大声や唸り声を出す必要がなくなっていたのでした。なお、発声学習が人間よりも進化している動物は、オウムやインコなどです。これらの喉には、鳴管という発声器官があり、人間の言葉(音素)をまねて自由自在に「オウム返し」をすることができます。この声まねは、天敵から身を守る擬態の一種と考えられています。(2)うまい歌声を聞き分ける歌う人類が増えるということは、当然ながらその歌を聞き取れる人類も増えます。ということは、歌の良し悪しがわかる人がより良い歌声を持つ人を結婚相手に選ぶでしょう。つまり、「良い声」を聞き分ける「良い耳」を持つ人が子孫を残すという淘汰圧がかかりました(共進化)。共進化とは、1つの機能(生物学的要因)が別の機能に影響を及ぼして共に進化していくことです。こうして、耳(聴覚器官)の構造が進化しました。この進化に連動して、それらを司る脳内の感覚性言語(側頭葉のウェルニケ野)が進化しました。2つ目の発語が生まれた要因は、うまい歌声を聞き分けることです。これが結果的に、多様な発音(音素)の識別をもたらしたのです。さらには、声の主を聞き分けることも進化したでしょう。これは、単に声の高さ(音高)によって男性か女性か子供かを聞き分けるだけでなく、母音の発音(共鳴音の音素)によって特定の誰かを聞き分けることです。なぜなら、集団生活をするなか、夜中や洞窟の中などの暗闇で頼りになったのは、顔や姿ではなく、単なる唸り声(音高)でもなく、かけ声(共鳴音の音素)だったと考えられるからです。これが、声認識(声紋)の起源です。たとえば、歌詞のないハミングよりも歌詞のある歌のほうが、声当ての正答率は明らかに高いでしょう。後編では、発声学習のメカニズムと起源を踏まえて、音感について掘り下げます。そして、より良い音楽教育、そしてより良い幼児教育を考えます。1)「言語の獲得・進化・変化」P86、P198:遊佐典昭、開拓社、20182)「昔の人は「はは(母)」をどう発音したか?」:2015年3)「こころと言葉」P30:長谷川寿一、東京大学出版会、20084)「歌うことは脳卒中後の失語症からの回復に役立つ可能性」:ケアネットHealthDay news、20235)「言語の獲得・進化・変化」P188、P189、P199:遊佐典昭、開拓社、20186)『「つながり」の進化生物学』P95:岡ノ谷一夫、朝日出版社、20137)「特集 鳴く動物 話すヒト」P34:日経サイエンス2023年1月号、日経サイエンス社<< 前のページへ■関連記事アンパンマン【その顔はおっぱい?】映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 1

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女性の認知症、出産回数・初産年齢との関連は弱い

 出産回数の多さや初産の年齢の高さが女性の認知症リスクと関連しているとされ、妊娠に伴う生理学的な変化への曝露と説明されてきた。しかし、社会経済学的およびライフスタイルの要因が関連しているとも考えられ、男性でも同様のパターンがみられる可能性がある。デンマーク・Statens Serum InstitutのSaima Basit氏らは、女性の出産回数の多さや初産の年齢の高さと認知症リスクとの関連性について、男女両方に当てはまるかを検討した。その結果、子供の数や親になる年齢と認知症リスクとの関連性が男女間で同様であることから、社会経済学的およびライフスタイルの要因が認知症リスクと関連している可能性が示唆された。BMC Neurology誌2023年3月1日号の報告。 対象は、1994~2017年にデンマークで40歳以上であった女性(222万2,638人)および男性(214万1,002人)。Cox回帰を用いて、子供の数および初産の年齢と認知症リスクとの関連を男女別に評価した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中の認知症発症は女性8万1,413人、男性5万3,568人、診断時の年齢中央値は女性83.3歳、男性80.3歳であった。・子供が2人以上の家庭は、子供1人の家庭と比較し、男女ともに全体的な認知症リスクがわずかに低かった(ハザード比[HR]範囲:0.82~0.91、p difference men vs.women=0.07)。・子供がいない場合の全体的な認知症リスクとの関連性は、男性と女性で統計学的な差が認められたが、その違いはわずかであった(男性のHR:1.04[95%CI:1.01~1.06]、女性のHR:0.99[95%CI:0.97~1.01]、p=0.002)。・親になる年齢と全体的な認知症リスクとの関連性も男女間で類似していたが、40歳以上の高齢での初産の場合は例外的であった(男性のHR:1.00[95%CI:0.96~1.05]、女性のHR:0.92[95%CI:0.86~0.98]、p=0.01)。・認知症のサブタイプと発症時期によるサブグループ解析では、いくつかの例外を除き、パターンおよび効果の大きさ(effect magnitude)は、男女間で同様であった。・通常の妊娠による生理学的な変化よりも、ライフスタイルや社会経済学的な要因が認知症リスクと関連している可能性が高いことが示唆された。

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第145回 5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府

<先週の動き>1.5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府2.コロナ後遺症の診療報酬、5月8日から特定疾患療養管理料を加算へ/厚労省3.緊急避妊薬の市販化、パブコメで97%が賛成/厚労省4.進まぬ電子処方箋、普及に向け、導入拡大を加速化/厚労省5.少子化対策の財源の議論開始、社会保険料や税で/財務省6.認知症患者の遺族が寄付金3億円をめぐって金沢医科大学を提訴/石川1.5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府政府は、新型コロナウイルス感染の感染症法での位置付けが5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行するのに伴い、新型コロナウイルス感染症対策本部を同日に廃止することを閣議決定した。5類移行後の公費負担での対応が大きく変わり、新型コロナウイルスのPCR検査や抗原検査を病院や診療所で行う場合も、検査キットを使用する場合も自己負担となる。また、各自治体による検査キット配布事業も終了となる。ただし、医療機関や介護施設などで陽性患者が発生した場合、医療スタッフなどへの検査を都道府県が実施する場合のみ行政検査として無料で実施される。そのほか、外来診療も従来は公費負担で行われていたものが、インフルエンザとほぼ同じ程度の自己負担が必要となり、入院時の医療費も同様に保険診療となるが、9月末までは、高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額する措置が講じられる。5月8日以降は、医療機関では「コロナ患者である」ことだけを理由とした診療拒否は「応招義務違反」となり、自院での対応が困難な場合には他の「対応可能な医療機関に対応を依頼する」あるいは「患者に対して対応可能な医療機関を伝える」ことを行うことが必要となる。(参考)政府 「5類」移行に伴い新型コロナ対策本部の廃止を決定(NHK)コロナ5類 感染した時は? 医療費負担 外出 療養支援 相談 証明書(同)コロナ「5類」正式決定 5月8日からどうなる?(同)「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」等の一部訂正について(厚労省)5月8日以降、「コロナ感染のみ」を理由とした診療拒否は不可、自院対応困難な際は「対応可能医療機関を患者に伝える」等の配慮を-厚労省(Gem Med) 2.コロナ後遺症の診療報酬、5月8日から特定疾患療養管理料を加算へ/厚労省厚生労働省は新型コロナウイルスに感染後のいわゆる「後遺症」について患者を診た医療機関の診療報酬を加算することを各都道府県に対して通知した。新型コロナ感染症の位置付けが「5類」に移行する5月8日から開始となる。加算対象は、新型コロナ感染と診断された3ヵ月目以降も後遺症が2ヵ月以上続く患者に対して、診療の手引きを参考にした診療に対して3ヵ月に1度、特定疾患療養管理料147点を加算する。支払いを受けるには、都道府県が公表している罹患後症状に悩む方の診療を行っている医療機関のリストに掲載されている必要がある。期限は令和6年3月31日。(参考)味覚・記憶障害など1年以上続くこともある「コロナ後遺症」、診療報酬を加算(読売新聞)コロナ後遺症の診療、3か月ごと147点 報酬特例で評価へ、来年3月まで(CB news)「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」にかかる疑義解釈資料の送付について[その2](厚労省)「コロナ後遺症の専門医療機関」を各都道府県で本年(2023年)4月28日までに選定し、公表せよ-厚労省(Gem Med)3.緊急避妊薬の市販化、パブコメで97%が賛成/厚労省厚生労働省は「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で緊急避妊薬を市販薬とするスイッチOTC化について検討を重ねてきた。去年12月から今年の1月にかけて厚生労働省が実施したパブリックコメントの結果、市販化に賛成の意見が約4万6,000件、反対の意見が約300件と、全体の約97%が賛成する内容だった。厚労省は5年前にも同様の検討を行ったが、このときは転売の可能性や不十分な性教育などを理由に「時期尚早」として見送られた経緯がある。しかし、2019年にはオンライン処方も可能になるなど環境の変化もあり、今後、同省は専門家を交えた検討会議の議論をもとに、結論を出す見込み。(参考)緊急避妊薬OTC化の議論、5月以降に 厚労省、パブコメ整理で大きくずれ込む(日刊薬業)緊急避妊薬の市販化 パブコメに4万6300件の意見 97%が賛成(毎日新聞)第22回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議(厚労省)4.進まぬ電子処方箋、普及に向け、導入拡大を加速化/厚労省厚生労働省は、4月28日に第2回電子処方箋推進協議会を開催した。この中で電子処方箋の導入状況は、4月23日時点で全国3,352施設で運用開始されていた。内訳は病院9、医科診療所250、歯科診療11、薬局3,082。同日公開された公的病院への導入計画に係る調査結果では、回答した施設のうち、令和5年度中に電子処方箋の導入予定の病院が214施設だった。寄せられた意見の中には、オンライン資格確認などシステム利用が伸び悩んでおり、導入後に電子処方箋の利用が伸びるのか疑問といった声が上げられている。電子処方箋導入施設の面的拡大を重点的に行うため、導入意欲が特に高く、稼働中または近日中に稼働予定の病院「気仙沼市立本吉病院」、「静岡市立静岡病院」、「公立松任石川中央病院」、「公立西知多総合病院」、「徳島市民病院」、「長崎みなとメディカルセンター」を中心に周辺施設の導入拡大を加速化する方針を固めた。(参考)第2回 電子処方箋推進協議会 資料(厚労省)電子処方箋「面的拡大」、導入意欲高い病院など中心に 厚労省(CB news)【電子処方箋】“面的拡大”、6病院を列挙/リフィル機能など先行検証/「気仙沼市立本吉病院」「静岡市立静岡病院」、「公立松任石川中央病院」、「公立西知多総合病院」、「徳島市民病院」、「長崎みなとメディカルセンター」(ドラビズ on-line)5.少子化対策の財源の議論開始、社会保険料や税で/財務省財務省は4月28日に財政制度等審議会を開催、少子化対策の議論に着手した。わが国でも、最終学歴が大卒以上の女性の出生こども数は近年増加しており、女性が出産・育児でキャリアを中断することに伴う機会費用が相当な額にのぼっていることが示唆されている。このため女性の出産支援がさらに必要であり、現時点では少子化対策予算として令和5年度の予算では国費6.3兆円が計上されているが、諸外国と比較すると、現金給付の割合が低いとの指摘もあり、財源について「企業を含む社会・経済の参加者全員が広く負担する新たな枠組みの検討が必要」と指摘がなされた。出席した委員からは社会保険料や税の組み合わせを財源とする意見が出た。この前日、内閣府は第2回のこども未来戦略会議を開催しており、財源について、社会保険料引き上げの案が浮上しているが、経済界や労働団体からは消費税を含む幅広い税財源の検討を求める声が出されていた。(参考)少子化財源、消費税含め議論を 労使、現役負担増に懸念-こども会議(時事通信)少子化財源、財制審で議論開始 「社会保険料や税で」(日経新聞)財政制度等審議会 財政制度分科会 財政各論(2)(財務省)財政制度等審議会 財政制度分科会 財政各論(3)(同)第2回 こども未来戦略会議(内閣府)6.認知症患者の遺族が寄付金3億円をめぐって金沢医科大学を提訴/石川認知症の疑いがある高齢患者の寄付をめぐって、3億円の寄付を患者にさせたのは無効だとして、患者の遺族が大学病院と当時の主治医を相手取って2億4,000万円余りの損害賠償請求を求める裁判を金沢地裁に起こした。訴えられたのは金沢医大病院。遺族によれば、患者は一昨年の1月に同院に入院し、認知機能の低下が指摘され検査結果で大脳の萎縮などが確認された。同年5月に大学創立50周年の募金に対して3億円を寄付し、同年10月に90歳で亡くなった。遺族がこの寄付を知ったのは死亡後。遺族らは「家族に確認することなく、認知機能の低下に乗じて非常識な金額を寄付させた」と主張し、金沢医科大学と当時の病院長で主治医だった男性に対し2億4,000万円余りの賠償を求めており、大学側は「寄付は正当な手続きをして受け入れている。今後、訴状内容を確認してから対応したい」としている。(参考)父親の3億円寄付「異常で不当」 遺族が金沢医大を提訴(産経新聞)認知症疑い患者の3億円寄付、原告代理人「寄付が原因で借金残る」「極めて異常な額」(読売新聞)認知症なのに「3億円を寄付させた」 遺族が金沢医大病院側を提訴(朝日新聞)認知機能低下の患者に巨額の寄付持ち掛け 遺族らが金沢医科大学を提訴(日テレ)

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仕事依存症になりやすい人の特徴

 リトアニア・ビータウタス・マグヌス大学のModesta Morkeviciute氏らは、完璧主義・タイプA性格・仕事依存症の関係性を、仕事に対する外因性のモチベーション、親の仕事依存度および要求が厳しい組織の影響を介し調査した。その結果、仕事依存症は個人の性格的な要因を発端とし、家族や組織の状況などが個人の性格的な要因の表出を高め、仕事依存症の発現を促進する可能性が示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年3月4日号の報告。 対象は、リトアニアのさまざまな組織の従業員621人。オンラインの自記式アンケートを用いて、横断的研究を実施した。仮説検証前に、状況変数に基づき対象者のサブグループを特定するため、潜在プロファイル分析(LPA)を実施した。仮説検証には、構造方程式モデリングを用いた。 主な結果は以下のとおり。・LPAでは、親の仕事依存に関する2つのプロファイル(親の仕事依存度が低い/高い)および要求が厳しい組織に関する3つのプロファイル(要求の厳しさがわずか/中程度/強い)が確認された。・要求の厳しさが強い組織の従業員では、完璧主義・タイプA性格・仕事依存症との直接的な関連性は、ポジティブかつ、より強力であった。・完璧主義・タイプA性格・仕事依存症の間接的な(外因性のモチベーションを介した)関係性は、親の仕事依存度が高い場合、ポジティブかつ、より強力であった。

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うつ病に対する遠隔医療介入の有用性~メタ解析

 うつ病患者の抑うつ症状、QOL、仕事や社会的機能に対する遠隔医療介入の治療効果を明らかにするため、台湾・亜洲大学のYin-Hwa Shih氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、遠隔医療介入はうつ病患者の抑うつ症状の軽減やQOL向上に効果的であることが報告された。Annals of Medicine誌2023年12月号の報告。 2021年3月までに公表された文献を、6つの電子データベース(MEDLINE、PubMed、PsycINFO、Scopus、Embase、CINAHL)でシステマティックに検索した。各文献のリファレンスリストは手動で検索した。対象は、うつ病と診断された患者の遠隔医療介入の治療効果を調査したランダム化比較試験。質的評価には、Joanna Briggs Instituteのチェックリストを用いた。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした17件の研究(2,394例)を分析に含めた。・11件のランダム化比較試験において共通のアウトカム指標が用いられており、メタ解析が実行可能であった。・遠隔医療介入は、うつ病患者の抑うつ症状(標準化平均差[SMD]:-0.44、95%信頼区間[CI]:-0.64~-0.25、p<0.001)およびQOL(SMD:0.25、95%CI:-0.01~0.49、p=0.04)に有益であることが示唆された。・仕事および社会的機能の分析には、データが不十分であった。・うつ病患者に対する遠隔医療介入は、抑うつ症状やQOLに良い影響をもたらすことが示され、より組織化された遠隔による精神医学システムを確立する臨床的意義が支持された。

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ミトコンドリアはアルツハイマー病の予防や治療の新たな扉を開くか

 アルツハイマー病リスクが高い人の特定は、予後や早期介入に重要である。縦断的な疫学研究では、脳の不均一性と加齢による認知機能低下が観察されている。また、脳の回復力は、予想以上の認知機能として説明されてきた。この「回復力(resilience)」の構造は遺伝的要因や年齢などの個人的特性と相関することが示唆されている。さらに、アルツハイマー病の病因とミトコンドリアの関連がこれまでのエビデンスで確認されているが、遺伝学的指標(とくにミトコンドリア関連遺伝子座)を通じて脳の回復力を評価することは難しかった。 中国・華中農業大学のXuan Xu氏らは、多遺伝子リスクスコア(PRS)により個人の脳の回復力レベルは特徴付けられるか、ミトコンドリア関連遺伝子座がPRSのパフォーマンスを改善し、アルツハイマー病の予防や診断において信頼性の高い指標となりうるかを調査した。その結果、脳の回復力を特徴付けるPRSの能力が確認され、さらに、いくつかのミトコンドリア関連遺伝子座を組み込むことで、脳の回復力の評価におけるPRSのパフォーマンスが向上する可能性が示唆された。Journal of Advanced Research誌オンライン版2023年3月14日号の報告。 探索サンプル1,550件および独立した検証サンプル2,090件を用いて、生物学的および統計学的側面からミトコンドリア関連遺伝子座を含む9種のPRSを構築し、それらをゲノムワイド関連解析(GWAS)から得られた既知のアルツハイマー病リスク遺伝子座と組み合わせた。個人の脳の回復力レベルは、8つの病理学的特徴を用いた線形回帰モデルにより包括的に評価した。 主な結果は以下のとおり。・PRSは、脳の回復力レベルを特徴付けることが確認された(ピアソン相関検定:Pmin=7.96×10-9)。・少数のミトコンドリア関連遺伝子座を組み込むと、PRSモデルのパフォーマンスを効率的に改善できることが示唆された(P値改善範囲:1.41×10-3~6.09×10-6)。・いくつかのミトコンドリア関連遺伝子座を組み込むことで、脳の回復力を評価する際のPRSパフォーマンスが有意に向上する可能性が示唆された。・脳の回復力に重要な役割を果たしている可能性があるミトコンドリアを標的にすることにより、アルツハイマー病の予防や治療の新たな可能性につながることが示唆された。

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実臨床におけるアリピプラゾール月1回製剤の評価~REACT研究

 統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬による治療は、さまざまなベネフィットをもたらす可能性がある。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのDaniel Schottle氏らは、実臨床におけるアリピプラゾール月1回製剤(AOM)の有用性を評価するため、ドイツとカナダで実施された2つの非介入研究の結果を分析した。その結果、AOM治療は、性別、年齢、罹病期間、疾患重症度を問わず、幅広い患者に有効な治療法である可能性が示唆された。BMC Psychiatry誌2023年3月14日号の報告。 ドイツとカナダで実施された2つの非介入研究よりプールしたデータを分析した。実臨床下において、患者に対しAOM治療を行った。6ヵ月間のデータを分析した。簡易精神症状評価尺度(BPRS)のドメインおよび項目、患者サブグループ(性別、罹病期間[5年]、ベースライン時の疾患重症度)のBPRS総スコア、全対象患者およびサブグループにおける臨床全般印象度の改善度(CGI-I)の評価、全対象患者における併存疾患に関するデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は409例。・併存疾患が認められた患者は65.5%であった。・すべてのBPRSドメインおよび項目で改善が認められた。・男女、罹病期間(5年以内または5年超)、ベースライン時の疾患重症度レベルの差異があったとしても、同様の改善が認められた。・若年、女性、短い罹病期間の患者において、より良好な結果が認められた。

1692.

第160回 アミノ酸服用がコロナ疲労に有効

たかがアミノ酸、されどアミノ酸。6種類のアミノ酸とその誘導体を成分とする経口薬の新型コロナウイルス感染症罹患後症状(以下、コロナ後遺症)改善効果が被験者41例の無作為化試験で示唆されました1)。コロナ後遺症は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染からずいぶん経つにもかかわらず疲労などの不調が続くことを特徴とし、いくつか示唆されている原因にはミトコンドリア機能低下や細胞のエネルギー生成障害が含まれます。SARS-CoV-2は自身の複製のためにミトコンドリアを乗っ取り、そのせいで代謝がより不効率な解糖系に切り替わってしまって慢性の疲労が現れると考えられています。その仮説に一致し、アミノ酸などを原料とするエネルギー生成障害がコロナ後遺症によく似た病態である慢性疲労症候群(CFS)の患者に生じることが知られています。今回紹介する試験で検討されたのは米国のバイオテクノロジー企業であるAxcella Therapeutics社がAXA1125という名称で開発している経口薬で、アミノ酸5つ(ロイシン、イソロイシン、バリン、アルギニン、グルタミン)とアミノ酸誘導体1つ(N-アセチルシステイン)を成分とします。AXA1125はより燃費のよいエネルギー生成反応である酸化的リン酸化の原料を生み出すβ酸化を促し、ミトコンドリア機能を改善します。試験には疲労を主徴とするコロナ後遺症患者41例が参加し、AXA1125を1日2回4週間服用する群とプラセボ群におよそ均等に振り分けられました。試験の一番の目的であったミトコンドリア機能指標の変化はAXA1125とプラセボで差がありませんでしたが、CFQ-11検査に基づく疲労の程度がプラセボに比べてAXA1125投与群のほうがより改善しました。CFQ-11検査は11の質問によって疲労の程度を見積もります。11の質問のうち7つは肉体的疲労、残り4つは精神的疲労を調べるものです。それぞれの質問への回答は0~3の4択で、患者は無症状なら0、最も重症なら3を選びます。すなわちCFQ-11合計点数の幅は0~33点で、点数が大きいほど深刻であり、24点以上は中等症~重症と判定されます。AXA1125投与群のCFQ-11合計点数の平均は投与開始前は中等症~重症域の26.2点でしたが、4週間の投与後にはその水準を脱して21.0点に落ち着きました。一方、プラセボ投与群ではほとんど変化がなく中等症~重症の水準のままでした。AXA1125投与のかいあって肉体的疲労が改善した患者ではミトコンドリア機能や6分間歩行距離(6MWD)の改善も認められました。プラセボ群ではそのような関連はありませんでした。Axcella社はより大人数を募る第IIb/III相試験の準備を進めており、本年2月にはその試験の開始が米国FDAに許可されています2)。となればすぐに始めたいところですが、いかんせん懐具合が寂しく、さらなる開発には救いの手や提携が必要との苦しい胸の内を同社が最近明かしています3)。資金難を乗り越えてAXA1125の開発が前進することは今回の試験を担った英国・オックスフォード大学のチームも望んでおり、コロナ後遺症に広く有効なことがさらなる試験で判明することを期待しています4)。 参考1)Finnigan LEM, et al. eClinicalMedicine. April 14, 2023. [Epub ahead of print] 2)Axcella Announces FDA IND Clearance Supporting Regulatory Path to Registration of AXA1125 for Long COVID Fatigue / BusinessWire3)Axcella seeks 'light speed' swing at long Covid, but needs cash / Endpoints4)Trial investigating potential treatment for fatigue relief in people with long COVID reports results / University of Oxford

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ビタミンD不足で認知症リスク上昇~コホート研究

 ビタミンD活性代謝物は、神経免疫調節や神経保護特性を有する。しかし、ヒドロキシビタミンDの血清レベルの低さと認知症リスク上昇の潜在的な関連については、いまだ議論の的である。イスラエル・ヘブライ大学のDavid Kiderman氏らは、25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の血清レベルの異なるカットオフ値において、ビタミンD欠乏症と認知症との関連を調査した。その結果、不十分なビタミンDレベルは認知症との関連が認められ、ビタミンDが不足または欠乏している患者においては、より若年で認知症と診断される可能性が示唆された。Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology誌オンライン版2023年3月8日号の報告。 イスラエル最大の医療保険組織Clalit Health Services(CHS)のデータベースより、患者データを収集した。各被験者について、調査期間中(2002~19年)の利用可能なすべての25(OH)D値を取得した。認知症の発症率は、25(OH)Dレベルの異なるカットオフ値で比較した。 主な結果は以下のとおり。・本コホート研究の対象は、患者4,278例(女性:2,454例[57%])であった。・フォローアップ開始時の平均年齢は、53±17歳であった。・17年間のフォローアップ期間中に認知症と診断された患者は133例(3%)であった。・完全に調整された多変量解析では、血清25(OH)Dの平均値が75nmol/L未満(ビタミンD欠乏)の患者は、同75nmol/L以上(基準値)の患者と比較し、認知症リスクが約2倍高かった(オッズ比:1.8、95%信頼区間:1.0~3.2)。・ビタミンDの欠乏(77 vs.81、p=0.05)および不足(77 vs.81、p=0.05)が認められる患者は、基準値の患者と比較し、より若年で認知症と診断された。

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統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには

 地域在住の統合失調症患者における身体的、精神的、社会的な併存症は、日常生活を妨げ、再入院リスクを上昇させる可能性がある。しかし、日本において、統合失調症患者の併存症に関する調査は、包括的に行われていない。藤田医科大学の松永 眞章氏らは、日本人統合失調症患者のさまざまな併存症の有病率を調査するため、有病率ケースコントロール研究を実施した。その結果、統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには、身体的、精神的、社会的な併存症を管理する効果的な介入が必要であることが示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年2月28日号の報告。 2022年2月に、有病率ケースコントロール研究として、統合失調症の有無にかかわらず20~75歳の日本人を対象とした自己申告によるインターネット調査を実施した。統合失調症患者と統合失調症でない対照群の身体的(過体重、高血圧、糖尿病など)、精神的(抑うつ症状、睡眠障害など)、社会的(雇用状態、世帯収入、社会的支援など)併存症の有病率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者223例および対照群1,776例が特定された。・統合失調症患者は対照群よりも、過体重である可能性が高く、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の有病率が高かった。・統合失調症患者は対照群と比較し、抑うつ症状、失業状態、非正規雇用の割合が高かった。・本結果は、地域在住の日本人統合失調症患者の身体的、精神的、社会的な併存症に対処する包括的な支援や介入の必要性を強調するものである。・統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには、併存症を管理する効果的な介入が必要である。

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大気汚染と認知症リスク (解説:岡村毅氏)

 黄砂の飛来がニュースになっているが、タイムリーに大気汚染が認知症発症とも関連するかもしれないという報告だ。喫煙等と比べると認知症発症に与える影響は小さいが、何せ逃げることができないリスクなので、人々への影響は大きい。 なお本論文では主にPM2.5を扱っているが、これは大気中に浮遊している直径2.5μm以下の小さな粒子を指し、化石燃料をはじめとする工業活動で排出されるものである。黄砂とは中国やモンゴルの乾燥域から偏西風に乗って飛んでくる砂塵であり、その大きさは4μm程度であるからほとんどがPM2.5ではない。 長期的にはPM2.5も黄砂も中国では減少傾向にあることも押さえておこう。一方でPM2.5は地球全体では工業化と共に増えている。 本研究は、これまでの大気汚染と認知症発症の報告のメタアナリシスであり、関連があると結論している。2μg/m3増加当たりのハザード比は全体では1.04(95% CI:0.99~1.09)と一見とても小さい。 しかし環境汚染と健康の研究では大体これくらいである。大気汚染による心血管疾患等で世界では年間700万人近くが死亡しているという報告もある1)。そして、その多くは発展途上国である。 とはいえ、このような研究ではバイアスの問題が難しい。そもそも認知症の診断技術は一貫して上がっており、診断は増えている。また大気汚染区域に住む人は貧困や学歴資本の少ない人が多い可能性があり(日本ではそのような可能性があるのかどうかは知らない)、これら自体が認知症発症リスクである。この論文はバイアスを厳密に評価したところも特徴である。 また認知症発症についても、個別に確認しているもの(Active Case Ascertainment)もあれば、保険データなどを使っているもの(Passive Case Ascertainment)もある。前者は信頼性が高いが、nは少なくなるし、後者はnが大きいが、やや雑なデータと言えよう。筆者によると前者のハザード比である1.42(95%Cl:1.00~2.02)が信頼できるのではと言っている。 いずれにせよ、結論としては、大気汚染は認知症発症とも関連する可能性が高そうである。きれいな空気が頭にも体にもよいというのは、われわれの直感とも一致する。 最後は精神科的な意見で終わっておこう。認知症リスクも増えるのだからクリーンエネルギーにしないといけません、と安易に言ってしまうと、「だからどうした」「それは意識高い系のたわごとだ」「フェイクニュースだ」「自分は石炭産業で食ってるんだ」「先進国はさんざん好き放題やってきて、いまになって上から目線だ」といった反論が来そうである。科学とは別の次元の二項対立は避けつつも、こうやって科学論文にすることに大きな意味がある。残念ながら人々が豊かな生活を夢見て行う古典的工業活動が大気汚染を起こし、大気汚染によってさまざまな病気(呼吸器系や心血管系)が増えているうえに、認知症までも増えるという事実を静かに噛みしめたい。

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児童虐待相談が多い都道府県は?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第232回

児童虐待相談が多い都道府県は?Unsplashより使用日本の児童虐待の現状について調べた北海道大学の研究です。Seposo X, et al.Child Abuse Consultation Rates Before vs During the COVID-19 Pandemic in Japan.JAMA Netw Open. 2023 Mar 1;6(3):e231878.一般公開されている2019~21年の月別児童虐待相談件数を入手し、47都道府県の児童虐待相談率を推定しました。この研究では、身体的虐待だけでなく、ネグレクトや心理的な虐待も含めています。コロナ禍の影響を考察するため、2019年をパンデミック前、2020~21年をパンデミック期間としています。2019~21年に、日本では年間平均で18万2,549件の児童虐待相談が記録されていました。相談率の中央値が最も高かった都道府県はどこでしょう。最も多かったのは、大阪でした(パンデミック期:人口10万人当たり134.85件[四分位範囲[IQR]:132.06~154.53]、パンデミック前:人口10万人当たり144.89件[136.60~159.46])。私が住んでいる都道府県なので、ちょっぴりショックでした。反対に、最も低かったのは鳥取県(パンデミック期:人口10万人当たり8.97件[IQR:7.57~13.73]、パンデミック前:人口10万人あたり7.29件[4.48~11.77])でした。パンデミックの間、児童虐待相談率が減少していることも示されました。これは救急外来受診率が低下したことと同じロジックで、コロナ禍で相談の閾値が高くなってしまったことが影響しているでしょう。児童虐待相談件数は、イコール児童虐待の件数というわけではありません。これについては本来であれば相関があるか検討されるべきですが、なかなか検証が難しいですよね。

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不眠症患者はどんな治療を望んでいるのか

 認知行動療法(CBT)を求める不眠症患者の睡眠薬使用に対する考えや、使用を減らしたいと願う予測因子について、米国・スタンフォード大学のIsabelle A. Tully氏らが調査を行った。その結果、CBTを望んでいる睡眠薬使用中の不眠症患者において、睡眠薬の必要性を強く示し、服用についての懸念が比較的少ないにもかかわらず、4分の3の患者が睡眠薬を減らしたいと望んでいることが示された。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2023年3月8日号の報告。 対象は「一般診療における段階的な睡眠療法の有効性に関するランダム化比較試験(RCT of the effectiveness of stepped-care sleep therapy in general practice:RESTING研究)」に登録された、50歳以上の不眠症患者245例。睡眠薬の使用患者と未使用患者の特性を比較するためt検定を実施した。睡眠薬の必要性および睡眠療法への懸念に関する考えの予測因子は、線形回帰を用いて評価した。睡眠薬への依存、薬物療法に対する考え、人口統計学的特徴を含め、睡眠薬を減らしたいと願う予測因子を患者間で調査した。 主な結果は以下のとおり。・睡眠薬を使用する患者は未使用の患者よりも、睡眠薬の必要性をより強く感じており、潜在的な害についての懸念が少なかった(p<0.01)。・睡眠に関連する認知のより強い機能不全は、睡眠薬を必要とする大きな信念や睡眠薬使用への懸念を予測した(p<0.01)。・睡眠薬を減らすことを望んでいる患者は、そうでない患者より、睡眠薬の依存度が高いことが報告されていた(p<0.001)。・自己報告による依存の重症度は、使用を減らしたいと望む最も強力な予測因子であった(p=0.002)。・CBTを望む睡眠薬使用中の不眠症患者は、睡眠薬の必要性を強く示し、服用についての懸念が比較的少ないにもかかわらず、その4分の3は睡眠薬を減らすことを望んでいた。・今後のRESTING研究では、セラピスト主導によるデジタルCBTが、不眠症患者の睡眠薬減少にどの程度貢献するか報告する予定である。

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新世代抗精神病薬の薬理遺伝学はどこまでわかっているのか

 個別化医療のフレームワークを考えるうえで、新世代抗精神病薬の臨床効果と遺伝子変異との関連を明らかにすることは不可欠である。薬理遺伝学的データは、重度の精神疾患患者の治療効果、忍容性、治療アドヒアランス、機能の回復、QOLの向上に役立つことが期待されている。ルーマニア・Dr. Carol Davila Central Military Emergency University HospitalのOctavian Vasiliu氏は、5つの新世代抗精神病薬(cariprazine、ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール、lumateperone、pimavanserin)の薬物動態学、薬力学、薬理遺伝学に関する入手可能なエビデンスを調査し、スコーピングレビューを行った。Frontiers in Psychiatry誌2023年2月16日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・25件の主要および副次的な情報源の分析および、5つの新世代抗精神病薬の製品特性の概要のレビューに基づくと、アリピプラゾールは薬物動態学と薬力学に関して、遺伝子変異の影響に最も関連性が高いデータを有しており、有効性および忍容性において有意な結果をもたらすことが示唆された。・アリピプラゾールを単剤療法または他剤との併用療法として投与する場合に、代謝酵素CYP2D6の状態の確定が重要である。・ドパミンD2、D3、セロトニン、5HT2A、5HT2C、カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ドパミントランスポーターDAT1をコードする遺伝子の対立遺伝子変異は、アリピプラゾールのさまざまな有害事象または臨床効果の変動と関連していた。・ブレクスピプラゾールは、CYP2D6の代謝状態や、CYP2D6またはCYP3A4の強力~中程度の阻害作用に関連するリスクについての特定の推奨事項からも、ベネフィットを得られることが示唆された。・cariprazineに関する米国FDAおよび欧州EMAの推奨事項では、強力なCYP3A4阻害薬または誘導体との薬物動態学的相互作用の可能性が言及されている。・cariprazineに関する薬理遺伝学データはわずかであり、lumateperone、pimavanserinの遺伝子-薬物相互作用に関するデータはいまだ不足していた。・新世代抗精神病薬の薬物動態および薬力学に対する遺伝子変異の影響を明らかにするためには、さらに多くの研究が必要である。・臨床医が特定の抗精神病薬の治療反応を予測し、重度の精神疾患患者の治療レジメンの忍容性を改善するためにも、このような研究は必要である。

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特殊詐欺とヒトの心理【外来で役立つ!認知症Topics】第4回

先日、弁護士たちと飲み会をした。その席で、お互いに関係しそうな今日の話題「特殊詐欺」に話が及んだ。「特殊詐欺は不安をあおる心理学作戦に立つ犯行だ。うまくいけば、犯人には濡れ手に粟ながら、このような作戦にはオリジナリティがいる。それだけにネタは限られ、簡単ではない。しかも募集によって、初めて会った悪者同士がチームプレーをせねばならない。それだけに連携ミスにつながりやすい。だから、この種の特殊詐欺から、今流行りの単純な強盗へとシフトする悪者グループが生まれる」とある弁護士が言った。これを受け、私はやられてしまう被害者の心理背景を考えてみた。古典的な詐欺と新手の詐欺の違いとは?オレオレ詐欺などの古典的な特殊詐欺の幕開けは、驚愕とともに恐れや不安といった被害者の基本情緒が揺り動かされることにある。オレオレに限らず、始まりは預貯金、キャッシュカード、架空料金請求など、どれにも共通だろう。逆に、新手とされる国際ロマンス詐欺は恋愛にもうけ話がミックスした、いかにもおいしそうな騙しのストーリー展開である。同じく新手とされる高級ブランド詐欺や海外投資の詐欺は、「この儲け話には特殊な背景があるから確度が高い」と騙す。また以前からあるのだが、コロナ禍で有名になったものに還付金詐欺がある。これらはどれも時宜を得た話題に儲けを結びつけた話を、いわば理論武装してヒトの欲を誘う。ヒトの情緒形成の初期に芽生える「快」・「不快」さてこれらに共通する心理学的要因を考えてみた。ブリッジェス(K. M. B. Bridges)という学者が提唱した情緒の分化樹形図という有名な説がある。その説では、生まれ、成長していく過程において、情緒はより高度なものへと分化していくと考える。2歳までに基本的な情緒の細分化がみられ、5歳頃には成人と同等の情緒が形成される。具体的には、新生児期の情緒は「興奮」のみだが、その後「快」・「不快」という2大情緒に分化する。そして生後数ヵ月で「不快」から恐れや怒りが分化してくる。すなわち、恐れは「不快」の大本からでた最初期の枝である。そしてこれは本来、危機回避のためにヒトに備わっている本能的な感情だと言われる。一方で「快」からは、早々に得意とか愛情が分化してくる。つまりこれらは、「快」の大本から出た初めの枝である。図1 情緒の分化樹形図画像を拡大する老化しようと認知機能が衰えようと、最初期にできたものは頑強で最後まで残ることは、情緒に限らずヒトの機能の多くに共通である。つまりオレオレ詐欺系は、「不快」から分化してヒトに根本的で強い「恐れ」に対する強烈なパンチから始まる。これはある意味わかりやすい。逆に新手のもうけ話は、「快」から早々に分化した得意とか愛情という、これも根強い原始情緒に結び付いている。たとえば、国際ロマンス詐欺は「快」が分化した愛情を突くものだろう。また高級ブランド詐欺や海外投資の詐欺などは「快」から分化した「得意」の情緒を満たしてくれるものかもしれない。「欲」と「孤独感」という弱点を突く詐欺ところでヒトには52種類の感情があるとされるが、何故かその中に「欲」がない。たとえば愛情や金銭に絡めて「…が欲しい」という情や心の方向性が「欲」だろう。心理学とは無縁そうだが、井原 西鶴は代表作『好色一代男』において「人間は、欲に手足の付いたる物ぞかし」と述べている。確かに、欲はこうした詐欺を考える上でも不可欠な視点である。要するに、オレオレ系に対しては、家族の安全や財産等を失いたくないという守りの欲が働く。また新手詐欺系では、もてる、儲かるなど、「もっともっと」の欲が刺激される。さて高齢者の心理特性の一つは孤独感だと思う。この孤独感は不安や恐れと強く結び付いているだろう。それだけにこの不安や恐れにいきなりパンチが当てられると、大概の高齢者は平常心を失うだろう。また、一見裏腹に見えるかもしれないが、新手詐欺もこの孤独感とのリンクがありそうだ。というのは、愛情や得意というのは、孤独下にあれば、一番得難いものだろう。新手詐欺は、そこに餌を垂らす犯罪だと考えれば、これもまた高打率のだましにつながるのだろう。特殊詐欺の被害者の9割弱が高齢者だとされる。これは認知機能低下の故ではないだろう。むしろこの孤独感が大きな原因だと考える。一方、少なくとも私の経験では、認知症の人はこうした特殊詐欺には引っかからない。というのは、犯人が繰り出す手口は、当事者にとっては難しすぎて、とても彼らの指示に従うことはできないだろう。実際のところ、やられてしまうのは、電話勧誘販売や家庭訪販(自宅を訪問して、商品やサービスなどを勧める商法)とかテレビショッピングという古典的で単純なものである。私が経験した限りでは、こうした状況で気安くサインをしたり、電話で注文したりすることでやられてしまうのである。

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片頭痛予防、日本人患者と医師の好みは?

 現在、日本における片頭痛の予防には、自己注射可能なカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体(mAb)のオートインジェクター(AI)製剤、非CGRPの経口剤などが利用可能である。米国・EvideraのJaein Seo氏らは、CGRP mAbのAI製剤と非CGRPの経口剤に対する日本人患者および医師の好みを調査し、両者にとってのAI製剤の相対的な重要性の違いを測定しようと試みた。その結果、多くの片頭痛患者および医師は、非CGRP経口剤よりもCGRP mAbのAI製剤を好むことが確認された。本結果から著者らは、日本人医師が片頭痛の予防治療を勧める際には、患者の好みを考慮する必要性が示唆されるとしている。Neurology and Therapy誌2023年4月号の報告。 反復性(EM)または慢性(CM)の片頭痛を有する日本人の成人患者および片頭痛を治療する医師を対象に、オンラインによる離散選択実験(DCE)を実施し、自己注射可能なCGRP mAbのAI製剤と非CGRP経口剤の2つについて好ましい仮説的な治療法を選択するよう依頼した。治療法は7つの治療属性で記述され、質問ごとに属性レベルは異なっていた。CGRP mAbの治療プロファイルの相対帰属重要度(RAI)スコアおよび予測選択確率(PCP)を推定するため、ランダム定数ロジットモデルを用いてDCEデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛を有する601人(EMの割合:79.2%、女性の割合:60.1%、平均年齢:40.3歳)および医師219人(平均勤続年数:18.3年)がDCEを完了した。・患者の約半数(50.5%)がCGRP mAbのAI製剤を支持しており、他の患者は同製剤に懐疑的(20.2%)または嫌悪感(29.3%)を示していた。・患者が最も重視した項目は、針の除去(RAI:33.8%)、注射時間の短縮(同:32.1%)、オートインジェクターの形状および皮膚圧迫の必要性(同:23.2%)であった。・多くの医師(87.8%)は、非CGRP経口剤よりもCGRP mAbのAI製剤を好んでいた。・医師が最も重視した項目は、投与頻度の少なさ(RAI:32.7%)、注射時間の短縮(同:30.4%)、冷蔵庫外での保管期間の延長(同:20.3%)であった。・治療プロファイルは、ガルカネズマブ(PCP:42.8%)が、エレヌマブ(同:28.4%)およびフレマネズマブ(同:28.8%)より、患者に選択される可能性が高かったが、医師の評価では3製剤のプロファイルのPCPは同程度であった。

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