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紫外線量と双極性障害リスクとの関係

 太陽光には、皮膚でのビタミンD生成を促す紫外線B(UVB)が含まれている。ビタミンDは、発育中から成人の脳機能にさまざまな影響を及ぼしている。しかし、多くの人々は、冬期にビタミンD生成を行ううえで十分なUVBを受けられない地域(北緯または南緯約40度以上)で生活を行っている。ドイツ・ドレスデン工科大学のMichael Bauer氏らは、世界の大規模サンプルを用いて、双極性障害の発症年齢とビタミンD生成に十分なUVBの閾値との関連性を調査した。その結果、UVBおよびビタミンDは、双極性障害発症に重大な影響を及ぼす可能性が示唆された。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月22日号の報告。 北半球または南半球の41ヵ国75の収集サイトより、双極I型障害患者6,972例のデータを収集した。ビタミンD生成に十分なUVBの閾値と発症年齢との関係を評価した(閾値を1ヵ月以上下回る場合、気分障害の家族歴、出生コホートを含む)。すべての係数は、p≦0.001で推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、70ヵ国582の地域で双極性障害を発症していた(平均発症年齢:25.6歳)。・ビタミンD生成に十分なUVBの閾値を1ヵ月以上下回っていた患者の割合は、34.0%であった。・UVBの閾値を1ヵ月以上下回っている地域の双極性障害患者は、発症年齢が1.66歳若かった。・本研究の限界として、患者のビタミンDレベル 、ライフスタイル、サプリメント使用に関するデータが欠如していた点が挙げられる。・双極性障害におけるUVBとビタミンDの影響については、さらなる研究が求められる。

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MIND食は認知症を予防せず/NEJM

 認知症の家族歴のある認知機能障害のない高齢者において、ベースラインから3年までの認知機能および脳MRIの変化は、MIND食(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)摂取群と軽度カロリー制限を伴う対照食摂取群で有意な差はなかった。米国・ラッシュ大学医療センターのLisa L. Barnes氏らが、米国国立老化研究所の助成を受けて実施した無作為化比較試験の結果を報告した。MIND食は、地中海食とDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension:高血圧を防ぐ食事法)を混成(hybrid)させたもので、認知症リスク低下との関連が推定される食品を含むよう修正されている。観察研究から得られた知見では、食事パターンが認知機能低下の予防に効果がある可能性が示唆されているが、臨床試験のデータには限りがあった。NEJM誌オンライン版2023年7月18日号掲載の報告。3年後の認知機能と脳画像アウトカムを比較 研究グループは2017年1月~2018年4月に、シカゴおよびボストンの2施設において、アルツハイマー型認知症の家族歴があり、モントリオール認知機能検査(範囲:0~30、低いほど認知機能が低下していることを示す)のスコアが22以上、BMI値が25以上、MIND食スコア(研究者によって考案され脳の健康に不適切な食事を検出するためにデザインされた14項目の食事質問票に基づく、範囲:0~14、低いほど脳の健康に関して不適切であることを示す)が8以下の不十分な食生活をしている65歳以上の高齢者を登録し、軽度カロリー制限を伴うMIND食群、ならびに同様の軽度カロリー制限を伴う通常食(対照食)群に、1対1の割合で無作為に割り付け、3年間、食事療法を行った。全参加者は、割り付けられた食事の順守に関するカウンセリングと、減量を促進するための支援を受けた。 主要エンドポイントは、全体的な認知スコアおよび4つの認知機能ドメインの各スコアのベースラインからの変化とした。認知機能は、一般公開されている12種類の認知機能検査で評価した。各検査の素スコアは、ベースラインの平均値および標準偏差を用いてZスコアに変換し、得られたZスコアは全検査を平均して全体的な認知スコアを作成するとともに、4つのドメインの検査を平均してドメインスコアを作成した(スコアが高いほど認知能力が高いことを示す)。副次エンドポイントは、MRIで得られた脳特性(全脳容積、海馬容積など)の測定値ベースラインからの変化とした。MIND食と通常食で認知機能と脳画像転帰に有意差なし スクリーニングを受けた1,929例のうち604例が登録され、MIND食群301例、対照食群303例に割り付けられた。参加者の93.4%が試験を完遂した。 全体的な認知スコアは両群ともベースラインから3年時まで改善が認められ、3年時のベースラインからの変化(Zスコア)はMIND食群で0.205、対照食群で0.170であり、平均群間差は0.035(95%信頼区間[CI]:-0.022~0.092、p=0.23)であった。 MRIによる大脳白質高信号域、海馬容積、灰白質および白質容積の変化は、両群で同程度であった。

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トランスジェンダーの自殺に関する疫学研究(解説:岡村毅氏)

 トランスジェンダーはいまや政治の最前線になってしまった。プーチン大統領はウクライナ侵略を西側の悪魔主義(ここにはトランスジェンダーも含まれる)との戦いだと規定しようとしている1)。米国では、民主党・都市部がトランスジェンダーに寛容、共和党・非都市部が非寛容と分断してしまった2)。英国でも、スコットランドが性別変更を容易にする方向に動いたが、イングランドが止めようとしている3)。日本では反共産主義と奇妙に融合した一教団が政界に隠れた影響力を保ち続け、トランスジェンダー等に反対してきたとされている4)。 このコラムでは特定の政治的な立場はとらず、精神科医として、トランスジェンダーの人の自殺と死亡率の論文を解説する。なおトランスジェンダーとは、生下時の生物学的性と、性自認が一致しない(トランス)人を指し、反対語はシスジェンダーである。高校の科学でトランスとかシスとか習ったのを覚えている人もいるだろう。 国民全員の医療データを解析できるデンマークからの報告である。トランスジェンダーの人をどうやって同定したのかというと、国民番号の下1桁の偶数奇数で性別がわかるのだ。これを「変更している人」がトランスジェンダーなのだ。逆に法的に性別を変更していない人は、この解析からは漏れている。加えて、精神科医療の登録データ、国内患者の登録データも国民番号とつながっている。したがってICD-10でF64 性同一性障害等と診断された人もすべて含まれている。 自殺企図は病院のデータベースからもってきている(したがって病院に搬送されていないものは漏れている)。自殺による死亡は死因統計からもってきている。 まずトランスジェンダーの人は時代とともに増加している。そしてトランスジェンダーの人の自殺企図は非トランスジェンダーの人より高い(全体では7.7倍)。しかし80年代、90年代、00年代、10年代でみると11.2、7.2、8.1、6.6倍と低下傾向ではある。死亡率は、自殺による死亡が3.5倍、それ以外は1.9倍である。両者合わせた死亡率は2.0倍だが、これも時代とともに2.2、2.4、2.1、1.7倍と低下傾向である。 以下は、あくまで私の個人的意見だ。 本人の世界を尊重し、希望を持って生きることを支援する、というのが精神科の本質的な仕事であるならば、トランスジェンダーの人の自殺企図や死亡率が高いことは精神科的には看過できない。政治的なことは置いておいて、合理的に守られるべきであろう。 また精神科の臨床においては、究極の内面世界が語られるので、社会的には開示していないがトランスジェンダーであるという人にも巡り合う。この論文では、性別変更、自殺企図での病院受診などに関与した人だけが同定されているが、社会の中でひそかに生きている人を含めると自殺リスクはもっと低いかもしれない(これは印象であり検証はできない)。 最後に精神科医としては「私たちが何者であるかは、私たちにもわからない」「私たちの人生は、私たちが何者であるかを探す旅である」「それは不安と隣り合わせだ」ともいえるので、トランスジェンダー反対が政治的な課題になっていることは、斜に構えた精神科医としては『不安な時代に、不安を減らすことを叫ぶことは政治活動戦略としては効果的だ』とみえる。なお本コラムでは、政府の使用や、ガイドラインも参考にして自死ではなく自殺を用いた。

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抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム~ナラティブレビュー

 重篤な精神疾患である統合失調症は、世界の障害の主な原因トップ10の1つであり、人口の約1%に影響を及ぼす。統合失調症に対する最良の治療選択肢として、抗精神病薬治療が挙げられるが、抗精神病薬治療では脂質異常症を含むメタボリックシンドロームリスクが増加する。実際に、統合失調症患者は、一般集団と比較し、メタボリックシンドロームリスクが高いといわれている。カナダ・マニトバ大学のPelumi Samuel Akinola氏らは、抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームの有病率、メカニズムおよび対処法について、まとめて報告した。Metabolic Syndrome and Related Disorders誌オンライン版2023年6月22日号の報告。 本研究は、ナラティブレビューとして実施した。PubMedを用いて電子データベースMedlineを検索し、抗精神病薬を使用した成人集団におけるメタボリックシンドロームの有病率および対処法を調査した研究を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬で治療されている患者におけるメタボリックシンドロームの有病率は、37~63%の範囲であった。・抗精神病薬の影響には、体重増加、腹囲の増加、脂質異常症、インスリン抵抗性2型糖尿病、高血圧などが含まれた。・メタボリックシンドローム発症を促進する薬剤として、クロザピン、オランザピンが報告されている。・メタボリックシンドローム患者では、代謝系副作用リスクの低い抗精神病薬(ルラシドン、lumateperone、ziprasidone、アリピプラゾールなど)を優先して用いる必要がある。・抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームに対する非薬物療法として、有酸素運動、食事カウンセリングが有効であることが確認されている。・このような患者の体重増加に対して有効性が確認された薬物療法は、ほとんどなかった。・抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームは、リスクを早期に認識し、注意深くモニタリングすることが求められる。・メタボリックシンドロームまたは関連症状に対する1次および2次予防は、抗精神病薬使用患者の死亡リスクの減少に役立つ可能性がある。

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donanemab、早期アルツハイマー病の進行を抑制/JAMA

 早期症候性アルツハイマー病でアミロイドおよびタウ沈着の病理学的所見が認められる患者に対し、donanemabはプラセボと比較して、76週時点で評価した臨床的進行を有意に遅延させたことが示された。所見は、低・中タウ病理集団と低・中+高タウ病理集団で認められたという。米国・Eli Lilly and CompanyのJohn R. Sims氏らが、1,736例を対象に行われた国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III試験「TRAILBLAZER-ALZ 2試験」の結果を報告した。donanemabは、脳アミロイド斑を除去するよう設計された抗体医薬。JAMA誌オンライン版2023年7月17日号掲載の報告。4週ごとにdonanemabを72週間投与 TRAILBLAZER-ALZ 2試験は、8ヵ国277ヵ所の医療研究センター/病院で18ヵ月間にわたって行われた。早期症候性アルツハイマー病(軽度認知障害/軽度認知症)で、PET画像診断でアミロイドおよび低/中程度~高度のタウ病理学的所見が認められる1,736例を対象に、donanemabの有効性と有害事象を評価した。被験者は、2020年6月~2021年11月に登録された(最後の被験者がプライマリケアを受診したのは2023年4月)。 研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはdonanemabを(860例)、もう一方にはプラセボを(876例)、4週ごとに72週間静脈内投与した。donanemab群に割り付けられた患者は、推奨用量の基準を満たした場合は、盲検下のままプラセボ投与に切り替えられた。 主要アウトカムは、ベースラインから76週までの統合アルツハイマー病評価尺度(iADRS)スコア(範囲:0~144、スコアが低いほど認知障害が大きいことを示す)の変化。アウトカム(主要・副次・探索的)は、ゲート付き24項目で、副次アウトカムには、臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB)スコア(範囲:0~18、高スコアほど認知障害が大きいことを示す)の各項目スコアの合計の変化も含まれた。統計学的検定は、多重比較のためのstudy-wise type I error rateを用い、有意水準α=0.05とし、低/中タウ病理集団のアウトカムについてはα=0.04を、高タウ病理集団を含めた統合集団については、α=0.01を割り当てた。iADRSスコア、CDR-SBスコアで進行遅延を確認 被験者1,736例(平均年齢73.0歳、女性996例[57.4%]、低/中タウ病理集団1,182例[68.1%]、高タウ病理集団552例[31.8%])が無作為化され、このうち1,320例(76%)が試験を完了した。 ゲート付き24項目アウトカムのうち、23項目でdonanemab群とプラセボ群に統計的有意差があった。76週時点のiADRSスコアの最小二乗平均(LSM)変化は、低/中タウ集団では、donanemab群-6.02(95%信頼区間[CI]:-7.01~-5.03)、プラセボ群-9.27(-10.23~-8.31)だった(群間差:3.25、95%CI:1.88~4.62、p<0.001)。低/中+高タウ集団(全体)では、donanemab群-10.2(95%CI:-11.22~-9.16)、プラセボ群-13.1(-14.10~-12.13)だった(群間差:2.92、95%CI:1.51~4.33、p<0.001)。 76週時点のCDR-SBスコアのLSM変化は、低/中タウ集団ではdonanemab群1.20(95%CI:1.00~1.41)、プラセボ群1.88(1.68~2.08)だった(群間差:-0.67、95%CI:-0.95~-0.40、p<0.001)。全体では、donanemab群1.72(95%CI:1.53~1.91)、プラセボ群2.42(95%CI:2.24~2.60)だった(群間差:-0.7、95%CI:-0.95~-0.45、p<0.001)。 画像所見で確認されたアミロイド関連の脳浮腫・滲出液の異常はdonanemab群205例(24.0%、症候性52例)、プラセボ群18例(2.1%、症候性0例)だった。注入関連反応は、donanemab群74例(8.7%)、プラセボ群4例(0.5%)で認められた。治療関連と考えられる死亡は、donanemab群の3例とプラセボ群の1例だった。

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ポジティブ思考トレーニングでうつ病リスクは軽減するか

 過去の記憶、未来の想像、今の状態と違う状態を考えるマインドワンダリング。とくにその頻度は、心理的ウェルビーイングに重要な役割を果たすといわれている。また、反復的なネガティブ思考は、うつ病の発症や持続のリスクと関連している。オランダ・フローニンゲン大学のMarlijn E. Besten氏らは、認知科学および実験臨床心理学の手法を組み合わせたマインドワンダリングによる反復的なネガティブ思考に対する影響を調査した。その結果、うつ病に対する脆弱性の根底にあるストレス誘発性のネガティブ思考は、ポジティブ空想により部分的に改善できる可能性があり、うつ病だけでなく不適応思考の特徴を有する疾患の治療に役立つ可能性があることを報告した。Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry誌オンライン版2023年6月16日号の報告。 対象は、ネガティブ思考およびうつ病に対する脆弱性が高い群42例、低い群40例。クロスオーバーデザインにて、ポジティブ空想1セッション、ストレス誘発1セッションの後、持続的注意課題(SART)を行った。介入前後の感情状態を測定した。 主な結果は以下のとおり。・ストレス誘発セッション後は、ネガティブ思考が増加したが、ポジティブ空想セッション後は、ポジティブ思考が増加し、ネガティブ思考が減少した。・ポジティブ空想セッション後は、ストレス誘発セッション後と比較し、仕事以外の思考、過去に関連した思考、ネガティブ思考が減少した。・ネガティブ思考を受け入れやすい人は、ストレスが少ない人と比較し、ポジティブ空想セッション後よりもストレス誘発セッション後に、タスク外の思考をより多く示した。・本研究の限界として、ベースライン測定が含まれていない点、SARTに自身の懸念事項を含めるとネガティブ要素につながる可能性がある点が挙げられる。

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食習慣と片頭痛リスクとの関係

 片頭痛発症に対する食事の影響は知られているものの、大規模サンプルにおける片頭痛リスクと食習慣との潜在的な因果関係については、よくわかっていない。中国・山東大学のXinhui Liu氏らは、食習慣と片頭痛発症リスクとの潜在的な因果関係および片頭痛リスク因子のメディエーターの役割を明らかにするため、本研究を行った。その結果、食習慣と片頭痛リスクとの関連が認められ、一部の食物は不眠症やうつ病にも影響している可能性が示唆された。Frontiers in Nutrition誌2023年6月7日号の報告。 大規模ゲノムワイド研究のサマリー統計に基づき、83の食習慣と片頭痛およびそのサブタイプとの潜在的な因果関係を調査するため、2サンプルのメンデルランダム化(MR)および双方向MRを実施した。また、ネットワークMRを用いて、片頭痛リスク因子のメディエーターの役割を調査した。 主な結果は以下のとおり。・複数のテストを補正後、遺伝的に予測された片頭痛リスク低下と関連する食物は、コーヒー、チーズ、脂っこい魚、アルコール(赤ワイン)、生野菜、ミューズリー、全粒粉/全粒パンであり、これらのオッズ比の範囲は0.78(チーズ、95%信頼区間[CI]:0.63~0.95)から0.61(飲酒者が通常の食事と一緒に飲む、95%CI:0.47~0.80)であった。・片頭痛リスクと正の相関が認められた食物は、白パン、コーンフレーク/フロスティ、鶏肉であった。・白パン、全粒粉/全粒パン、ミューズリー、アルコール(赤ワイン)、チーズ、脂っこい魚の摂取に対する遺伝的傾向は、不眠症および/またはうつ病のリスク上昇と関連しており、これらの食習慣が片頭痛発症のメディエーターである可能性が示唆された。・遺伝的に予測された片頭痛と飲酒の種類との間には負の相関があり、片頭痛と1日当たりの紅茶の摂取との間に正の相関が認められた。

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コロナ禍において、5歳児に4ヵ月の発達遅れ/京大ほか

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、学校や保育施設が閉鎖され、多くの乳幼児・子供が影響を受けた。これまで手薄だった未就学児を対象として、コロナ禍の影響を調査した京都大学医学研究科助教・佐藤 豪竜氏らによる研究結果が、JAMA Pediatrics誌オンライン版2023年7月10日号に掲載された。 研究者らは新型コロナ流行前から行っていた研究対象を再調査することで、コロナの影響を調べた。首都圏のある自治体の全認可保育所(小規模含む)に通う1歳または3歳の乳幼児887例に対し、2017~19年に1回目の調査、2年後に2回目の調査を行った。データは2022年12月8日~2023年5月6日に解析された。 追跡期間中にコロナ禍を経験した群とそうでない群の間で、3歳または5歳時(各年4月1日時点の年齢)の発達を比較した。乳幼児の発達は「KIDS乳幼児発達スケール」1)を用いて保育士が評価した。分析では、子供の月齢、性別、1回目調査時の発達、保育園の保育の質、保護者の精神状態、出生時体重、家族構成、世帯所得、登園日数などの影響が考慮された。 主な結果は以下のとおり。・5歳時点でコロナ禍を経験した群は、そうでない群と比べて平均4.39ヵ月の発達の遅れが確認された。一方、3歳時点で経験した群では明確な発達の遅れはみられず、むしろ運動、手指の操作、抽象的な概念理解、対子供社会性、対成人社会性の領域では発達が進んでいた。また、コロナ禍で、3歳、5歳ともに発達における個人差・施設差が拡大していることも明らかになった。・質の高い保育を提供する保育園に通っていた子供は、コロナ禍においても3歳時点の発達が良い傾向にあった。一方、保護者が精神的な不調を抱える家庭の子供は、コロナ禍における5歳時点の発達の遅れが顕著だった。 研究者らは、本研究で3歳と5歳で対照的な結果が示された点について、コロナ禍で保護者の在宅勤務が増え、より幼い年齢の子供は大人とのやり取りを通してさまざまなことを学ぶため、大人との1対1のコミュニケーションが発達において重要であり、在宅勤務によって保護者が子供と密に接する時間が増えたことで、コロナ禍が3歳児の発達にポジティブな影響を与えた可能性がある。一方、5歳児は発達段階において社会性を身に付ける時期で他者との交流が重要であり、コロナ禍によって保護者以外の大人やほかの子供と触れ合う機会が制限されたことが発達に負の影響を与えた可能性がある、とコメントしている。 また研究の限界として、一自治体のみのデータであること、観察できていない違いがあった場合には結果にバイアスが生じている可能性があることを挙げている。さらに、今回の研究でみられた発達の遅れはあくまで一時的なものであり、長期的な影響に関してはさらなる調査が必要だ、とまとめている。

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第156回 新型コロナ感染、全国で徐々に増加 43都道府県で前週を上回る/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ感染、全国で徐々に増加 43都道府県で前週を上回る/厚労省2.オンライン診療の実績、4割が「不眠症」偏りを懸念/厚労省3.日本の病院の4割が洪水浸水想定区域内に立地/日本病院会4.電子処方箋システムの導入進捗率わずか2%/厚労省5.病院でレジオネラ症集団感染2人死亡、空調設備が感染源か/宮城県6.カテーテル治療後の患者死亡問題、外部機関による調査を開始/神戸徳洲会病院1.新型コロナ感染、全国で徐々に増加 43都道府県で前週を上回る/厚労省厚生労働省によると、全国約5,000の定点医療機関から10日~16日までの新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は計5万4,150人で、1ヵ所当たりの平均は11.04人だった。前週比では20.8%増加し、43都道府県で前週を上回った。とくに西日本を中心に感染が広がっている傾向がみられる。新たな入院患者数は6,952人で前週から増加しており、感染の広がりに警戒が必要とされている。夏場の人の移動やイベントの増加により、さらなる感染拡大が懸念されている。専門家は亜型ウイルスの広がりに注意し、高齢者や基礎疾患を持つ人への感染リスクを低減する対策が重要だと指摘している。参考1)コロナ定点、前週比1.20倍=43都道府県で増加-厚労省(時事通信)2)新型コロナ、全国でじわじわ増加 専門家に聞く夏場の注意点は?(朝日新聞)3)コロナ感染、定点で拡大 1機関あたり10人超、5類移行後で初(日経新聞)2.オンライン診療の実績、4割が「不眠症」偏りを懸念/厚労省厚生労働省は、7月20日に中央社会保険医療協議会(中医協)「入院・外来医療等の調査・評価分科会」を開き、オンライン診療について検討した。この中で、オンライン診療の実績において再診料や外来診療料の傷病名の約4割が「不眠症」であり、初診料でも2割超を占めることが明らかとなり、オンライン診療の使い方が偏っている可能性を指摘する声も上がった。また、患者の近くに看護師がいる場合(D to P with N)のオンライン診療を推進する意見が相次いだ。D to P with Nのケースでは看護師の介在により予測範囲内の治療や新たな症状への検査が可能で、とくに離島や地方でのオンライン診療に有効とされている。厚労省では、オンライン診療について適切な評価を検討し、看護師の活用方法についても具体的に検討を行いたいとしている。参考1)オンラインでの再診の約4割が「不眠症」 対面診療が5割未満の医療機関で(CB news)2)患者の近くに看護師がいるオンライン診療推進「検討」中医協・分科会で厚労省(同)3)令和5年度 第4回 入院・外来医療等の調査・評価分科会(厚労省)3.日本の病院の4割が洪水浸水想定区域内に立地/日本病院会日本病院会によると、全国の主な病院の約40%が河川氾濫による洪水浸水想定区域内に立地していることが判明した。近年の豪雨災害では、浸水被害を受けた病院の医療体制が継続できないケースが増えている。そのうち、5メートル以上の深さを想定した浸水区域内に立地している病院は11施設存在していた。厚生労働省では、浸水対策に取り組む医療機関に補助制度を設け、病院を守る取り組みを支援している。災害拠点病院の中には、止水板を設置して浸水を防ぐなど、独自の対策を講じる病院もある。厚労省は補助制度の周知を広め、多くの医療機関で浸水対策が進むよう促している。参考1)病院の4割が洪水浸水想定区域内に、11施設は5m以上…豪雨で被災するケース相次ぐ(読売新聞)2)浸水被害も含めた、新たな医療機関の事業継続計画(BCP)策定に資する研究(厚労省)4.電子処方箋システムの導入進捗率わずか2%/厚労省今年の1月から全国で本格的に導入が始まった電子処方箋システムについて、導入している医療機関や薬局がわずか2%に止まり、目標達成は厳しい状況となっていることが判明した。厚生労働省の資料によると、全国の医療機関・薬局のうち約2万3千ヵ所に対して、導入済みはわずか4,690ヵ所で、そのほとんどが薬局となっていた。医療機関で電子処方箋の導入が進まない理由として、医療従事者の資格証明書「HPKIカード」の発行に時間がかかっているほかに、医療機関側の導入費用の負担が大きいため導入を見送っていることや、利点が周知されていない状況がある。その一方で、利用申請を完了させた医療機関や薬局は計5万5,999ヵ所であり、そのうち実際に運用開始しているのは計4,870ヵ所。運用は「マイナ保険証」への対応に必要なオンラインの資格確認システムを活用しており、患者本人の同意を得られれば複数の医療機関や薬局で直近に処方・調剤された医薬品の情報が参照できる。政府は2025年3月までに電子処方箋の普及を目指しており、第2フェーズで普及を加速する計画だが、オンライン資格確認システムの運用には問題も相次いでいる。参考1)電子処方せん対応の医療機関・薬局についてのお知らせ(厚労省)2)電子処方箋、導入わずか2%=運用半年、実績伸び悩む-厚労省「目標達成、厳しい」(時事通信)3)電子処方箋システム、計5.6万ヵ所が利用申請 厚労省集計、運用開始は計4,870ヵ所(CB news)5.病院でレジオネラ症集団感染2人死亡、空調設備が感染源か/宮城県宮城県大崎市の永仁会病院でレジオネラ症に感染した患者6人が集団発生し、そのうち80代の男性患者と40代の女性患者の2人が死亡した。感染の原因は空調設備にみつかったレジオネラ属菌で、2基の冷却塔からは通常の目安よりも最大97万倍の濃度の菌が検出された。宮城県で初の集団感染として、感染に注意するよう専門家は呼びかけている。レジオネラ菌は湿気の多い場所に多く生息しており、今年になって2月に老舗の温泉旅館でも検出され全国で報道されており、医療機関や介護施設でも設備機器の適切なメンテナンスが必要となる。参考1)レジオネラ菌による感染症の発生について(永仁会病院)2)病院でレジオネラ菌に空気感染か、2人目の死者…大崎市の永仁会病院(読売新聞)3)宮城の病院でレジオネラ菌、2人死亡1人重症 目安値の68万~97万倍(産経新聞)4)病院の患者6人がレジオネラ菌に感染 大崎(NHK)6.カテーテル治療後の患者死亡問題、外部機関による調査を開始/神戸徳洲会病院兵庫県神戸市の神戸徳洲会病院にて、特定の男性医師が行ったカテーテル治療の後に複数の患者が死亡したとされる問題で、病院は内部調査委員会を立ち上げ、さらに外部の専門家による調査を依頼することを発表した。カルテの記載不備や患者の死亡後の報告体制に問題があったことが判明しており、治療を受けた患者数は約100人に上るとされている。病院では医療事故による過失を含めて調査を進めるとしている。参考1)今回の一連の報道につきまして(神戸徳洲会病院)2)「カテーテル治療後に死亡」告発、神戸徳洲会病院が外部調査へ(読売新聞)3)カテーテル後に複数患者死亡 病院 第三者機関の検証を依頼へ(NHK)4)「カテーテル治療後に複数死亡」外部に検証依頼へ 神戸徳洲会病院の調査委「妥当性を検討していく」(神戸新聞)

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論文発表と映画製作の共通点から猫談義を楽しむ【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第62回

第62回 論文発表と映画製作の共通点から猫談義を楽しむ自分は映画が大好きです。映画監督ほどすばらしい仕事はないと思います。映画は、文学、音楽、演技、美術、デザイン、映像技術などの要素が組み合わさって作り上げられます。複数の芸術形式の融合を指揮する映画監督には総合力が求められます。いつかは映画監督としてメガホンを握ってみたいと夢見ております。論文発表と映画製作にはいくつか共通点があるように思います。論文発表も映画製作にも明確な構成が必要です。論文は導入、方法、結果、考察などのセクションで構成され、映画はプロローグ、展開、クライマックス、エピローグなどのセクションで構成されます。論文発表と映画製作には、訴えたいテーマがあることも共通です。論文は特定の研究問題を解決すること、映画はストーリーを通してメッセージを伝えることがテーマです。論文発表と映画製作は共に、創造性が求められる活動です。論文では新しい知見やアイデアを提案し、映画ではストーリーや映像表現を通じて観客を魅了する創造的なアプローチが必要です。完成までのプロセスにも共通点があります。論文では研究計画、データ収集、解析、執筆などのステップがあります。映画では脚本の執筆、撮影、編集、音楽の追加などの工程を経て完成します。医療の現場は人間の生と死をあつかう場所なのでドラマに満ちています。ですから映画の題材に病気や医療が使われることが多いのも当然です。医学領域の研究活動と映画製作には共通項が多いことも影響しているかもしれません。そこで医療関係者に観てもらいたい傑作映画を紹介しましょう。『だれもが愛しいチャンピオン』(原題:Campeones)、監督:ハビエル・フェセル、2018年製作、スペイン映画主人公は短気な性格のプロバスケットボールのコーチです。問題を起こしチームを解雇され、社会奉仕活動として障がい者バスケットボールのチーム「アミーゴス」のコーチを命じられます。選手たちの自由過ぎる言動に困惑しながら、純粋さや情熱、優しさに触れて一念発起します。コーチと選手が互いに支え合い成長していきます。チームは全国大会で快進撃します。実際の障がい者600人の中からオーディションで選ばれた10名の「俳優」が出演します。主演のひとり、ダウン症のヘスス・ビダルがスペインの映画賞であるゴヤ賞の新人賞を受賞したそうですが、その演技力を引き出した監督の手腕は賞賛に値します。この映画の日本公開には、日本障がい者バスケットボール連盟、日本自閉症協会、日本ダウン症協会などが後援しています。知的障がい者というタブー視される内容を描きながらネガティブな面がなく、爽やかな作品に仕上がっています。さすがラテンの国スペインです。説教くさいメッセージはないので気軽にご覧ください。自然に笑いながら、自然に胸が熱くなる、そんな作品です。医療と映画の相性は良いのですが、それよりも映画に欠かせない存在が猫です。美しい外観を持ち、しなやかで優雅な動きをする猫は、画面上で目を引く存在となります。猫の予測不能な行動や愛らしいしぐさは観客の関心を引きます。身近で親しみやすい猫は、映画に頻繁に登場するキャラクターです。では、画面を横切る猫が絶妙な映画を紹介しましょう。『ゴッドファーザー』(原題:The Godfather)、監督:フランシス・フォード・コッポラ、出演:マーロン・ブランド、アル・パチーノ、1972年製作イタリア系組織犯罪集団マフィアの内情を世に知らしめた名作です。マーロン・ブランドが演じるマフィアのボス、ドン・コルレオーネは、相手が貧しく微力な者でも、助けを求めてくれば親身になってどんな困難な問題でも解決します。映画の冒頭に、相談を聞くためのオフィスで、ドン・コルレオーネが手の中で猫をもてあそんでいます。コルレオーネ役のマーロン・ブランドに、猫は手を伸ばしたり、体の向きをくねくね変えたり、甘えきっています。マーロン・ブランドも猫が喜ぶポイントをまさぐり、猫好きの本性は明らかです。しかし、ドンとしての仏頂面を崩しません。リラックスした猫が、厳しいマフィアの行動原理を際立たせるシーンです。ここで猫を登場させるコッポラ監督は流石です。『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』(原題:A Street Cat Named Bob)、監督:ロジャー・スポティスウッド、出演:ルーク・トレッダウェイ、ルタ・ゲドミンタス、2016年製作ホームレス同然の貧しいストリートミュージシャンが1匹の野良猫との出会いによって再生していく姿を描く作品です。これは本当にオススメの映画なので、ネタバレしないように詳しく述べません。ボブが実話に基づく猫であることが驚きです。日本やハリウッドの映画は、動物が登場するとメロメロの甘い展開になることが常ですが、辛口な展開はイギリス映画を感じさせます。監督のロジャー・スポティスウッドは、『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』のメガホンも取っている実力派です。『猫が教えてくれたこと』(原題:Nine Lives: Cats in Istanbul/Kedi)、2016年製作これはドキュメンタリー映画で、上映時間も79分と手頃です。猫と人間たちの幸せな関係をとらえたドキュメンタリーです。ヨーロッパとアジアの文化をつなぐイスタンブールの街で暮らす野良猫が主人公です。生まれも育ちも異なる7匹の猫たちと人間たちが紡ぎ出す触れ合いは感動を与えてくれます。あなたの心が乾燥し、癒しが必要ならばご覧ください。必ずや効能を発揮します。論文発表と映画製作という情報発信の共通性を論じるつもりが、結局は猫好き談義になってしまいました。お許しください。

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双極性障害女性患者における抗精神病薬使用後の乳がんリスク

 統合失調症女性患者における抗精神病薬使用と乳がんリスクとの関連は、さまざまな疫学データより報告されている。しかし、双極性障害女性患者を対象とした研究は、これまであまり行われていなかった。香港大学のRachel Yui Ki Chu氏らは、双極性障害女性患者における抗精神病薬使用と乳がんリスクとの関連を調査し、統合失調症との比較を行った。その結果、統合失調症女性患者では、第1世代抗精神病薬と乳がんリスクとの関連が認められ、双極性障害女性患者では、第1世代および第2世代抗精神病薬のいずれにおいても、乳がんリスクとの関連が認められた。Psychiatry Research誌8月号の報告。 香港の公的医療データベースを用いて、双極性障害または統合失調症の18歳以上の女性患者を対象に、ネステッドケースコントロール研究を実施した。incidence density samplingを使用して、乳がんと診断された女性を対照群(最大10例)としてマッチした。 主な結果は以下のとおり。・症例群672例(双極性障害:109例)、対照群6,450例(双極性障害:931例)を分析対象に含めた。・第1世代抗精神病薬と乳がんリスクとの関連は、統合失調症(調整オッズ比[aOR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.17~1.90)または双極性障害(aOR:1.80、95%CI:1.11~2.93)の女性患者のいずれにおいても認められた。・第2世代抗精神病薬は、双極性障害女性患者のみで乳がんリスクと関連しており(aOR:2.49、95%CI:1.29~4.79)、統合失調症女性患者では有意な関連が認められなかった(aOR:1.10、95%CI:0.88~1.36)。・抗精神病薬を使用中の双極性障害女性患者の乳がんリスクについては、さらなる研究が必要とされる。

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日本人統合失調症患者の再入院予防に対する長時間作用型注射剤のベネフィット

 統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬のベネフィットに関するリアルワールドでのエビデンスは、とくに日本の就労人口において限られている。ヤンセンファーマのMami Kasahara-Kiritani氏らは、雇用されている患者を含む統合失調症患者の再入院予防に対するLAI抗精神病薬の影響を評価した。その結果、日本人統合失調症患者の入院予防に対するLAI抗精神病薬のベネフィットが示唆された。LAI抗精神病薬による治療を受けた患者は、フォローアップ期間中の入院期間および再入院リスクが有意に低下することが明らかとなった。Asian Journal of Psychiatry誌2023年8月号の報告。 日本医療データセンター(JMDS)の健康保険レセプトデータベースを用いて、レトロスペクティブ観察的集団ベース研究を実施した。対象は、2012年4月~2019年12月にLAI抗精神病薬を処方された就労者または被扶養者の統合失調症患者。LAI処方日をインデックス日とし、ベースライン時(インデックス日の365日前)の1年間のフォローアップ期間中におけるすべての原因による入院、精神医学的入院、統合失調症関連の入院を評価した。 主な結果は以下のとおり。・期間中にLAI抗精神病薬が処方された患者1,692例のうち、就労者患者55例(37.7%)、被扶養者患者91例(62.3%)を含む146例を分析対象とした。・平均年齢は37歳、女性は74例(50.7%)であった。・ベースライン期間中に入院しなかった患者は61例(41.8%)であった。・フォローアップ期間中に7日間以内の入院を経験した患者は、67例(45.9%)であった。・就労者は、被扶養者と比較し、フォローアップ期間中に入院しなかった患者の割合が高かった。 ●すべての原因による入院がなかった患者の割合:69.1% vs.61.5% ●精神医学的入院がなかった患者の割合:76.4% vs.67.0% ●統合失調症関連の入院がなかった患者の割合:87.3% vs.71.4%

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認知症に対するゲーム療法の有効性~メタ解析

 アルツハイマー病は、重度の神経変性疾患であり、直接的および間接的に大きな経済的負担をもたらす。しかし、効果的な薬物療法の選択肢はいまだ限られている。近年、認知症患者に対するゲーム療法が注目を集め、さまざまな研究が行われている。中国・北京大学のJiashuai Li氏らは、既存の研究データを統合し、認知症患者に対するゲーム療法の効果を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、ゲーム療法は、認知症患者の認知機能および抑うつ症状の改善が期待できる介入であることが示唆された。Worldviews on Evidence-Based Nursing誌オンライン版2023年6月12日号の報告。 認知機能、QOL、抑うつ症状をアウトカム指標とし、認知症患者に対するゲーム療法の影響を評価したランダム化臨床試験および準実験的研究を分析対象に含めた。トレーニングを受けた2人の独立した研究者により、研究のスクリーニング、品質評価、データ抽出を実施した。統計分析には、Review Manager(Revman)5.3およびSTATA16.0ソフトウエアを用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析には、12研究(877例)を含めた。・メタ解析では、ゲーム療法群は対照群と比較し、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが有意に高く、Cornell Scale for Depression in Dementia(CSDD)スコアが有意に低くかったが、QOLに関しては統計学的に有意な差は認められなかった。 【MMSE】標準化平均差(SMD):2.69(95%信頼区間[CI]:1.88~3.51、p<0.01) 【CSDD】SMD:-4.28(95%CI:-6.96~-1.60、p<0.01) 【QOL】SMD:0.17(95%CI:-0.82~1.16、p=0.74)・さまざまな種類のゲーム療法を組み合わせることで、認知症患者のさまざまな臨床症状を改善し、介入時間の違いが、アウトカムに影響を及ぼすことが示唆された。

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高まる「脳ドック」ニーズ、認知症を予測できるか?【外来で役立つ!認知症Topics】第7回

先日久しぶりに心が折れる診察をした。認知症疑いで初診した母と娘さんの診察の途中で、その母は「個人情報をなぜ言わねばならない」と立腹され、席を立たれたのだ。そこで娘さんに残ってもらい、認知症診断の道筋を説明したが、納得されなかった。「問診されるのはここだけでなくどこでもそうか? どうして血液やMRIなどの画像検査で診断できないのか?」と質問されてから帰られた。要は、「個人情報になることに触れられたくない人がいる。当方には不可欠な質問でも、虎の尾を踏みかねない」ということだ。われわれには当然過ぎるが、生活の自立困難、従来のレベルからの低下が認知症診断のコアである。だから個人情報レベルに立ち入らざるを得ない。しかしこれは自分たち医療者に限った常識と思わなくてはいけないか?と考えた。これまでの脳ドックの課題この画像診断だが、件の母娘の発言に出るように、世間では浸透し、高く信頼されているようだ。だから基本的にMRIとMRAを基本とした脳ドック施設が全国に1,000以上もあるのも頷ける。ただ従来は、その診断内容は比較的限られていた。脳出血や梗塞のような脳血管障害、脳萎縮には私も関心がある。しかし実際には、奇形や腫瘍などもときにあるが、数が一番多いのは副鼻腔炎だそうだ。またMRAでは未破裂動脈瘤がしばしば発見されるが、これはありがたい。ところで私の周囲に関する限りでは、脳ドックに行くことで認知症の危険性を知りたいという声が実は大きい。ところがこれは、従来アンメットニーズであったようだ。というのは、まず受診者の年齢が主に30~50代と比較的若い。それだけに海馬を始めとする側頭葉内側の萎縮などは時期尚早であろう。それ以上に、脳ドックの医師、多くは脳外科や脳神経内科さらに放射線科の医師にとって、認知症はこれまでは馴染みが薄かったと思われる。つまりアルツハイマー病、レビー小体型認知症、あるいは前頭側頭型認知症などは、ドックの診察において数も重要性もさほど大きなものではなかったかもしれない。それだけに従来はレポート作成において注目が少なかったかもしれない。30代から始まる脳萎縮さて先ごろ、ジョンズ・ホプキンス大学放射線科の森 進氏と『認知症を止める 「脳ドック」を活かした対策 異変(萎縮・血管)をつかんで事前に手を打つ』という書を出版した。この本では、森氏が日本人2万5,000人の脳健診データを基に作成した健康人の脳MRI/MRA画像データが基本になっている。ここには、中年期からの脳健康管理には、画像の数値化が不可欠とする森氏の考え方が基盤にある。アルツハイマー病など認知症の脳画像所見が検討されるときには、海馬を始めとする側頭葉内側、あるいは脳幹背側の萎縮などが問われがちだ。しかし森氏の考え方は、これらとは違う。脳全体としての萎縮は30代に前頭葉から始まり、また側頭葉や海馬は60代になって萎縮が目立ってくるという。そこで皮質(灰白質)だけではなく、白質を含めた脳全体の変化に注目したそうだ。そして脳構造の総和が反映され、撮影条件の差の影響を受けにくい脳室の容積が指標にされた。だから森進式の脳ドックのレポートには、脳質容積の測定結果を基にした結果が示される。ここが最大の特徴だろう。「認知症基本法」成立、予防のためのMRI/MRA活用へところで、この6月「認知症基本法」が成立した。これは今後認知症施策の根幹になっていくだろう。この特徴は、「予防」と「共生」にあるといわれてきた。ところが、さまざまにアイデアが出てきている「共生」に対して、「予防」は、その効果やエビデンスが弱いとされてきた。アルツハイマー病なら予防の本星は、脳脊髄液中のアミロイドβや、そのPET画像であろう。しかし患者さんの身体的負荷や経済的負担から、それらは容易ではない。だからそれらが少ないMRI/MRAは注目されるだろう。しかも「世界中で健常者のMRI/MRA所見が沢山あって正常が確立しているのは日本だけだろう」と森氏は言う。そうはいっても、まだ個人の数十年にわたる縦断的なMRI/MRA所見がそろっているわけではない。言うまでもなく望ましいのは、同一個人の縦断データ、つまり正常段階から認知症段階までの経時的な脳画像である。私は地域で、10年余り、MRI/MRA所見など認知症発症のリスクの縦断調査をしたことがある。その時の経験からして、ざっくり15年、1,000人以上の縦断データがあれば、認知症予測が多少とも正確にできるのではないかと思う。それが整えば、中年期以降のある一時点における脳画像所見があれば、将来の認知症発症をある程度の精度で予測することが可能になるかもしれないという意味である。おわりに、冒頭に紹介した母娘さんが期待するような、いわばオールマイティの診断能力を有するMRI/MRA所見の判読とその臨床応用は、そう簡単ではないだろう。けれども脳ドックにおいて自分のMRI/MRA所見を知り、中年期から生活習慣病等のリスクに備えていくなら、認知症予防とまで行かずとも、その発症の先延ばしは可能になると考える。

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コロナ罹患後症状における精神症状の国内レジストリ構築、主なリスク因子は?/日本精神神経学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行はすでに3年以上経過しているが、流行が長期化するほど既感染者が増加し、コロナ後遺症(コロナ罹患後症状、Long COVID)のリスクも上がる。コロナ後遺症は、倦怠感や認知機能障害といった精神神経障害が年単位で持続する場合もある。 国立精神・神経医療研究センターの高松 直岐氏らの研究チームは、こうしたコロナ後遺症の病態解明と新規治療法開発につなげるため、COVID-19感染後の精神症状を有する患者レジストリの構築を実施している。中間解析の結果、コロナ後遺症による有意な心理社会的機能障害の予測因子は、退職経験、主婦層、COVID-19罹患への心配や抑うつが中等度以上、ワクチン接種2回以下であることが示された。6月22~24日に横浜にて開催された第119回日本精神神経学会学術総会にて、高松氏が発表した。 本レジストリ、PSCORE-J(Psychiatric Symptoms for COVID-19 Registry Japan)の研究の正式名称は「COVID-19感染後の精神症状を有する患者レジストリの構築と病態解明及び新規治療法の開発に資する研究」。同センターの久我 弘典氏が研究代表を務める。COVID-19急性期患者(前向き)と過去にCOVID-19に感染した患者(後ろ向き)で16歳以上の人を対象に登録目標数1,000例とした、国内の多施設共同研究である。対象者に、頭部MRIや血液検査、認知機能検査(MOCA-J)、罹患後症状の重症度評価(CGI-S)などの医師による診察、および、スマートフォンを使って患者が自己回答する心理検査(ePRO)を定期的に実施した。対象者への「新型コロナウイルス後遺症の影響で、日常的な生活がこれまでと明らかに違いますか?」という質問で、当てはまる人をケース群、当てはまらない人をコントロール群とした。 本研究の医師の診察による予備的解析結果は以下のとおり。・ケース群43例、コントロール群29例の計72例が解析された。ケース群は女性67%、平均年齢44.9歳(SD 11.9)、コントロール群は女性66%、平均年齢42.1歳(SD 9.7)。・コロナ後遺症の重症度を臨床全般印象重症度スコアCGI-S(スコア範囲:1[正常]~7、スコアが高いほど重症)で評価したところ、コントロール群は29例すべて正常(1点)であったが、ケース群では、精神疾患の境界線上(2点)1例、軽度(3点)13例、中等度(4点)10例、顕著(5点)8例、重度(6点)10例であった。・抑うつをPHQ-9スコアで評価したところ、コントロール群は大半が正常だったのに対し、ケース群はCGI-Sで評価された重症度に比例してPHQ-9の重症度が高くなった。・ケース群では女性のほうが男性よりも有意に重症度が高い人が多かった。 ePROを使った患者アンケートでは、コントロール群115例、ケース群121例の計236例の結果が得られた。この回答を多変量解析し、コロナ後遺症による心理社会的機能障害の予測因子とオッズ比(OR)を推定した。主な結果は以下のとおり。・「COVID-19による退職経験がある」はOR:44.9、95%信頼区間[CI]:5.66~355.1(p<0.001)であった。・「主婦である」はOR:83.3、95%CI:3.15~2204.3、p=0.008であった。・「COVID-19感染が心配である(中等度)」はOR:11.9、95%CI:1.48~96.2、p=0.020、「同(重度)」はOR:56.1、95%CI:5.97~527.3、p<0.001であった。・「抑うつ(PHQ-9スコア)が中等度」はOR:7.02、95%CI:1.76~28.0、p=0.006、「同(重度)」はOR:12.3、95%CI:2.53~60.2、p<0.001であった。・「ワクチン接種が2回以下」はOR:14.2、95%CI:3.77~53.7、p<0.001であった。 高松氏は、本結果の制限として、対象者が国立機関の精神科を受診した比較的重症度の高い集団であるため、現時点では本邦の全体集団を表すものではないことを挙げつつ、今後の展望としてさらに被験者のリクルートを拡大する意向を示した。

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日本の双極性障害外来患者に対する向精神薬コスト~MUSUBI研究

 双極性障害の治療コストは、地域的要因および普遍的要因と関連しているが、西欧諸国以外からのデータは、限られている。また、臨床的特徴と外来薬物療法のコストとの関連性は、十分にわかっていない。札幌・足立医院の足立 直人氏らは、日本人の統合失調症外来患者における治療コストとその後の臨床症状との関連性の推定を試みた。とくに、医療費の大部分を占め、近年増加傾向にある医薬品コストに焦点を当てて調査を行った。その結果、日本における双極性障害患者の1日当たりの平均治療コストは約350円であり、患者特性および精神病理学的状態と関連していることを報告した。Annals of Medicine誌2023年12月号の報告。 日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査「MUSUBI研究」では、2016年に日本の精神科176施設の外来を受診した双極性障害患者3,130例を対象にレトロスペクティブに評価を行った。臨床的特徴および薬剤の処方状況を記録し、向精神薬治療の1日当たりの総コストを算出した。日本における双極性障害外来患者の年間医療コストは、人口統計に基づき推定した。1日当たりの医療コストと臨床的特徴との関連を評価するため、重回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・向精神薬の1日当たりのコストは、0~3,245円の範囲であり(平均349円、32.5米ドル相当)、指数関数的な分布がみられた。・双極性障害外来患者にかかる年間コストは、約519億円(5億1,900万米ドル)であった。・日本の双極性障害外来患者にかかる推定年間コストは、米国を除くOECD諸国と同等であり、一部のアジア諸国よりも高かった。・重回帰分析では、向精神薬の1日当たりのコストと強い関連が認められた因子は、社会適応、抑うつ症状、年齢、ラピッドサイクラー、精神症状、他の精神疾患の併存であった。

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第172回 long COVIDと関連する遺伝子領域を同定

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)と関連する6番染色体の遺伝子領域が見つかりました。16ヵ国での24試験のlong COVID患者6千人超(6,450人)とそうでない約110万人(1,09万3,995人)が全ゲノム関連解析(GWAS)で検討され、ほぼどの組織でも発現することが知られる転写因子FOXP4の遺伝子領域rs9367106地点の塩基がシトシン(rs9367106-C)の人のlong COVIDの発現率はそうでない人に比べて1.6倍高いことが示されました1,2)。rs9367106地点とlong COVIDの関連はFOXP4遺伝子発現の変化を介するらしく、遺伝子発現データベースGTExを解析したところrs9367106-Cの代理役rs12660421-Aと肺や脳の視床下部のFOXP4遺伝子発現亢進の関連が認められました。先立つ研究でFOXP4とCOVID-19重症度の関連が示されています。今回の研究でも同様の結果が得られており、COVID-19重症度がlong COVID発生におそらく一枚かむことがさらに裏付けられました。ただし、FOXP4遺伝子座とlong COVIDの結び付きはより強く、重症度だけで説明がつくものではなく、重症度とは独立したFOXP4とlong COVIDの関連がどうやら存在するようです。long COVIDの快復のほどは?世界の少なくとも6,500万人がlong COVIDを患っており、その数は日々増えています3)。頭痛、疲労、脳のもやもやなどの症状を特徴としますが、long COVIDの定義はいまだに議論されています。上述したような遺伝子解析の成果が出始めてはいるもののlong COVIDの生理学的な仕組みもこれから調べていく必要があります。しかしわかってきたこともあります。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が世界に広まり始めてから3年以上が過ぎ、long COVID患者のどれほどが快方に向かうかの目安となる試験結果2つがこの5月に報告されています。5月25日にJAMA誌に掲載された報告では米国の成人約1万人が調べられ、感染から6ヵ月時点でlong COVIDだった人の3人に1人が9ヵ月時点ではlong COVIDを脱していました4)。その約1週間後の5月31日にBMJ誌に掲載された別の報告はワクチン普及前にSARS-CoV-2感染した成人約千人の追跡結果です。それら感染者のうち5人に1人を超える22.9%は感染から6ヵ月経っても不調が続いていましたが、1年後のその割合は5人に1人に満たない18.5%に低下しました5)。2年後の不調患者の割合は17.2%であり、1年後とあまり変わりませんでした。すなわち感染から1年経つと不調の解消は頭打ちとなるようです。感染から1年後までは快方がより期待できるものの1年を過ぎるといよいよ慢性病態に陥るとBMJ報告の著者は言っています6)。参考1)Genome-wide Association Study of Long COVID. July 01 2023. medRxiv.2)Gene linked to long COVID found in analysis of thousands of patients / Nature3)Davis HE, et al. Nat Rev Microbiol. 2023;21:133-146.4)Thaweethai T, et al. JAMA. 2023;329:1934-1946.5)Ballouz T, et al. BMJ. 2023;381:e074425.6)Long COVID: answers emerge on how many people get better / Nature

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コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連

 これまで、コーヒー摂取と身体状態や死亡リスクとの関連性に関するエビデンスは蓄積されているが、精神疾患との関連性を評価した報告は限られていた。中国・杭州師範大学のJiahao Min氏らは、コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連を調査し、さらにコーヒーの種類や添加物による影響を検討した。その結果、コーヒーを1日当たり2~3杯摂取することは、メンタルヘルス改善のための健康的なライフスタイルの一環として、重要である可能性が示唆された。Psychiatry Research誌8月号の報告。コーヒーとうつ病および不安症との間にはJ字型の関連性 英国バイオバンクのデータを用いて、2006~10年のベースラインタッチスクリーンアンケートに回答した参加者14万6,566人のデータを分析した。フォローアップ期間中、2016年にこころとからだの質問票(PHQ-9)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)を用いて、うつ病および不安症の発症を確認した。コーヒーのサブタイプは、インスタントコーヒー、ひいたコーヒー、カフェインレスコーヒーとし、添加物にはミルク、砂糖、人工甘味料を含めた。関連性の評価には、多変数調整ロジスティック回帰モデルおよび制限付き3次スプラインを用いた。 コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連を調査した主な結果は以下のとおり。・コーヒーを摂取していた参加者は約80.7%、多くは1日当たり2~3杯(41.2%)摂取していた。・コーヒー摂取とうつ病および不安症との間には、いずれもJ字型の関連性が認められた。・精神疾患の発症リスクが最も低かったコーヒー摂取量は、1日当たり約2~3杯であった。・ひいたコーヒー、ミルク入りコーヒー、無糖コーヒーを1日当たり2~3杯飲んでいた参加者も、同様の結果であった。

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統合失調症治療の専門家、早期の長時間作用型注射剤使用を支持

 統合失調症は、精神症状、陰性症状、認知機能低下などを来す慢性疾患である。統合失調症患者は、一般的にアドヒアランスが不良であり、これに伴う再発によりアウトカム不良に至る可能性がある。抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)は、治療アドヒアランスを改善し、再発・再入院リスクを低下させることが期待される。初発や発症初期の統合失調症患者にLAIを使用することで、その後のベネフィットが得られる可能性があるものの、歴史的にLAIの使用は慢性期患者を中心に行われてきた。スペイン・マドリード・コンプルテンセ大学のCelso Arango氏らは、初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAI使用に関する専門家のコンセンサスを報告した。その結果、疾患の重症度、再発回数、社会的支援の有無にかかわらず、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療が支持された。しかし、この結果は臨床医の認識とギャップがあるため、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療に関するエビデンスを作成していくことが求められる。BMC Psychiatry誌2023年6月21日号の報告。 初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAI使用に関する専門家のコンセンサスは、3段階のデルファイ法プロセス(第1段階:紙面調査、1:1面談、第2~3段階:電子メール調査)を用いて収集した。文献レビューおよび専門家5人からなる運営委員会の意見に基づき、患者集団、有害事象マネジメント、機能回復に関するステートメントを作成した。専門家の意見が次の段階に進むかどうか、および合意レベルのコンセンサスが得られるかを分析ルールに従い判断した。中心傾向(最頻値、平均値)および変動性(四分位範囲)の測定値が報告され、パネリストがグループ全体の反応を参照し、以前の反応を評価することに役立てた。 主な結果は以下のとおり。・デルファイ法のパネリストは、フランス、イタリア、米国、ドイツ、スペイン、デンマーク、英国の7ヵ国でLAIによる統合失調症の治療経験を有する精神科医17人であった。・パネリストに対し3つのカテゴリ(患者集団、薬剤の投与量・マネジメント・有害事象、機能回復の領域および評価)に関する73のステートメントが提示された。・55のステートメントにおいて、コンセンサスとみなされる80%以上の合意が得られた。・合意度が低い(40~79%)または非常に低い(39%以下)項目は、初発および発症初期の統合失調症患者における投与開始時期、有効性の喪失時のマネジメント、ブレークスルーエピソードのマネジメントであり、現在のエビデンスギャップを反映していた。・初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAIのベネフィットが強調されており、再発、再入院、機能不全のリスク軽減に関するコンセンサスが得られた。・LAI使用に対しては、これらのベネフィットだけでなく、症状寛解を超えた長期的な機能回復との関連性が支持された。

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NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(中編)【そもそもなんで私たちは噂好きなの?じゃあこれから情報にどうする?(メディアリテラシー)】Part 1

今回のキーワード社会脳フリーライダー(反社会性パーソナリティ)社会的影響(同調)スリーパー効果信憑性(証拠)出どころ(情報源)ファクトチェックポスト真実前回は、噂好きの心理を掘り下げました。それにしても、そもそもなぜ私たちは噂好きなのでしょうか? 今回は、さらに噂好きの心理の起源に迫ります。これを踏まえて、私たちはフェイクニュースをはじめ、情報にこれからどう向き合っていけば良いかというメディアリテラシーについて、一緒に考えてみましょう。なんで噂好きの心理は生まれたの?前編で、噂好きの心理とは、びっくりしたい(新奇性)、信じたいものだけを信じる(確証バイアス)、同じ考えでつながりたい(同類性)という3つの要素があることを説明しました。それでは、そもそもなぜ噂好きの心理は生まれたのでしょうか? その起源を人類の心の進化の歴史からひもといてみましょう。約700万年前に人類が誕生し、約300万年前に父親が母子と同居して家族が誕生し、やがてその血縁が集まって部族が誕生しました(社会脳)。この詳細については、関連記事5をご覧ください。この当時から、人類は助け合い(協力)をして生存と生殖の適応度を高めるようになったわけですが、同時に協力して得た貴重な食料をこっそりかすめ取ったり、部族内の誰かのセックスパートナーを勝手に寝取ったり誘惑したりすることで、生存と生殖の適応度を高める種(フリーライダー)も現れたでしょう。なぜなら、進化の本来の姿は競争だからです。なお、フリーライダー(ただ乗り遺伝子)とはもともと、みんながお金を支払って乗り物に乗っているのに、自分だけただで乗ろうとする人(遺伝素因)のことを指します。この詳細については、反社会性パーソナリティの起源として、関連記事6の後半をご覧ください。そんななか、そのようなフリーライダーの裏切りを部族内で伝え合うことができれば、その人を部族から排除して、集団の協力関係が保たれます。排除されるとわかっていれば、裏切りの抑止にもなります。これが、噂の起源です。もっと言えば、噂はニュースの起源とも言えます。つまり、もともとニュースとは、現代のように一人ひとりが世の中の見識をただ広げて教養人になるためのさっぱりした個人的な興味関心ではなく、まずフリーライダーをあぶり出して集団の秩序を維持するためのじめじめした社会的な装置(機能)であることがわかります。だからこそ、現代の私たちは良い噂よりも悪い噂に敏感です。他人についてはもちろんですが、自分についての噂ならなおさらです。私たちのおしゃべりの大半は、共通に知っている人の噂話です。当たり前すぎて、逆に気にも止めなかったでしょう。そのマインドで、国内の事件報道や有名人を取り上げたワイドショーをつい見てみてしまうのです。また、噂は、単にその時の部族内だけでなく、語り継ぎや言い伝えによって、世代を超えた伝説や神話に形を変えていったのでしょう。それらは、共有すべき規範意識が込められることで、共同体への帰属意識(集団同一性)を高めます。これが、モラルの起源です。さらに、世代を超えて続く噂は、共通の生きる知識や知恵としても、集団の適応度を高めたでしょう。これが、文化の起源です。そして、その子孫が現在の私たちです。だからこそ、私たちは、映画、ドラマ、小説などのストーリーを好むのです。なんで噂の信憑性や出どころには疎いの?残念ながら、人類は、噂自体には敏感なのですが、噂の信憑性(証拠)や出どころ(情報源)まで敏感になるようには進化しませんでした。なぜでしょうか?その訳は、原始の時代の部族社会は、閉ざされていて、約100~150人までのお互いによく知っていて信頼関係がある人たちしかいなかったからです。そのため、いちいち毎回噂の信憑性や出どころについて疑う必要がなかったからです。もしも、嘘の噂を流す人がいれば、「狼少年」(これも寓話という形の噂)のようにすぐにばれてしまいます。そして、要注意人物(フリーライダー)として部族のメンバー全員からレッテルを貼られたり排除されたりして、嘘の噂をまた流すことができなくなるだけだったからです。実際の心理実験(アッシュの同調行動実験)では、まず被験者に「同じ長さの線はどれか」という質問をします。この場合の正答率はほぼ100%でした。次に、8人グループで同じ質問をして1人ずつ答えさせるわけですが、実は被験者は1人だけで、残りの7人は被験者ではなく、前もって間違った答えを同じように言うように指示されたサクラにすり替えます。すると、被験者の75%はその7人の間違った答えに同調したのでした3)。このことから、人は周りの意見に影響を受けやすいことがわかります。これは、前編でも触れましたが、社会的影響(同調)と呼ばれています。私たちは、周りの多くの人が同じ噂話をしていると、その信憑性はさておき、その噂を信じ込んでしまいやすいということです。別の心理実験では、「開発された新薬をすぐに使用できるようにすべきだ」という論説を、1つのグループに専門の学術誌(信頼性が高い情報源)の記事として読ませ、もう1つのグループには大衆雑誌(信頼性の低い情報源)の記事として読ませました。そして、その記事に納得するかの度合いを調べたところ、直後は当然ながら前者が高かったのに、1ヵ月後には差がみられなくなったという結果が出ました4)。つまり、読んだ内容は覚えていても、その出どころは忘れてしまっているのです。これは、スリーパー効果と呼ばれています。私たちは、信頼性の低い情報源でも、目に触れれば、潜伏工作員(スリーパー)が暗躍するように、知らず知らずのうちにすり込まれていくということです。皆さんも、人から聞いた話をいつの間にか自分の話として話している状況を、誰かから指摘されたり、逆に誰かに指摘した経験があるでしょう。次のページへ >>

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