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早期アルツハイマー病へのgantenerumab、2件の第III相試験結果/NEJM

 早期アルツハイマー病患者において、完全ヒトモノクローナルIgG1抗体のgantenerumabは116週時点のアミロイド負荷をプラセボより減少させたものの、臨床症状の悪化を抑制しなかった。米国・ワシントン大学のRandall J. Bateman氏らGantenerumab Study Groupが、30ヵ国288施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較第III相試験「GRADUATE I試験」および「GRADUATE II試験」(それぞれ15ヵ国156施設、18ヵ国152施設)の結果を報告した。アミロイドβ(Aβ)を標的とするモノクローナル抗体は、早期アルツハイマー病患者の認知機能や身体機能の低下を遅らせる可能性がある。gantenerumabは、Aβの凝集体に対して高い親和性を有しており、皮下投与のアルツハイマー病治療薬として開発が進められていた。NEJM誌2023年11月16日号掲載の報告。116週後の臨床認知症評価尺度6項目合計スコア(CDR-SB)を評価 研究グループは、陽電子放射断層撮影(PET)または脳脊髄液(CSF)検査でアミロイド斑が認められ、臨床認知症評価尺度(CDR)の全般的スコア(CDR-GS、範囲:0~3、スコアが高いほど認知障害が高度)が0.5または1、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが22以上(範囲:0~30、スコアが低いほど認知障害が高度)などのアルツハイマー病による軽度認知障害または軽度アルツハイマー型認知症を有する50~90歳の患者を登録し、gantenerumab群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 投与量は120mg(4週ごと、3回)より開始し、255mg(4週ごと、3回)、510mg(4週ごと、3回)と漸増した後、510mgを2週ごとに皮下投与した。 主要アウトカムは、116週時点のCDR6項目合計スコア(CDR-SB、範囲:0~18、スコアが高いほど認知障害が高度)のベースラインからの変化量であった。CDR-SBのベースラインからの変化量に有意差なし GRADUATE I試験に985例、II試験に980例が登録された。ベースラインのCDR-SBスコアは、それぞれ3.7、3.6であった。 116週時点のCDR-SBスコアのベースラインからの変化量は、GRADUATE I試験ではgantenerumab群3.35、プラセボ群3.65であり(群間差:-0.31、95%信頼区間[CI]:-0.66~0.05、p=0.10)、II試験ではそれぞれ2.82、3.01であった(-0.19、-0.55~0.17、p=0.30)。 116週時点の脳アミロイドPET画像におけるアミロイドのgantenerumab群とプラセボ群の差は、GRADUATE I試験では-66.44センチロイド、II試験では-56.46センチロイドであり、gantenerumab群でのアミロイド陰性状態の患者の割合はGRADUATE I試験で28.0%、II試験で26.8%であった。また2試験のいずれにおいても、gantenerumab群がプラセボ群と比較してCSF中のリン酸化タウ181濃度が低く、Aβ42濃度が高かったが、PETでのタウ凝集蓄積は両群で同程度であった。 浮腫を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA-E)は、gantenerumab群で24.9%に認められ、症候性ARIA-Eの発現率は5.0%であった。プラセボ群はそれぞれ2.7%、0.2%だった。

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税負担が重過ぎる!どんな節税対策している?/医師1,000人アンケート

 年末調整に確定申告…。年末から春にかけては税金を意識する機会が増える。さらに、最近では定額減税や新NISAスタートなど、税金に関する話題が増加している。ケアネットでは、会員の勤務医(勤務先病床数:20床以上)1,021人を対象に、「今年行った、来年やりたい節税対策」についてアンケートを実施した(調査日:10/6~8)。 「Q1.今年(2023年)の所得について、確定申告をする予定ですか?」という設問には、9割以上の医師が「はい」と答えた。確定申告の条件である「年収2,000万円超」「年間20万円以上の副収入」にほとんどの回答者が当てはまっているようだ。 「Q2.個人の節税目的で、今年利用した・する予定のものは?(複数回答)」という設問では「ふるさと納税」が842票となり、次点の「(年末調整や確定申告で申告する)生命保険料控除」に大きく差を付けて1位となった。「ふるさと納税」は30、40、50、60代すべてにおいて最も利用者の多い節税策だった(70代以上は「生命保険料控除」が最多)。30代では「ふるさと納税」の次に多く人が行っている節税策は「NISA」、続いて「iDeCo」だったが、ほかの年代では「生命保険料控除」が続いた。若い世代ほど民間の生命保険には加入せず、その分を自分で投資・運用するという傾向があるようだ。 「Q3.個人の節税目的で、来年利用予定・利用したいものは?(複数回答)」の設問では「ふるさと納税」が変わらずトップを占めたものの、来年から始まる「新NISA」のが話題の「NISA」を選択する人が各年代とも大幅に増加した。「今年利用した」の設問では回答者がゼロだった「法人設立」「不動産投資」の項目にも、少数ながら選択者がいた。 「Q4. 節税の知識を得るために、これまでにしたことは?(複数回答)」との設問では、「節税・税金をテーマにしたWeb記事・雑誌・書籍を読む」が最多で、約半数の回答者が選択した。「節税・税金に詳しい知人・友人に話を聞く」が29%、「節税・税金をテーマにしたセミナーに出席する」は6%が選択した。「税理士に相談する・税理士を雇う」という本格的な対策を行う人も8%いる一方で、「とくになにもしていない」という人が30%いるなど、医師の節税への関心は二極化しているようだ。 最後に「節税対策をはじめ、税金への思いや意見」を聞いたところ、「勤務医にとっては、税負担が多過ぎる」(60代・内科)、「頑張って働くほど損をする、と思わせる現行制度をどうにかしてほしい」(40代・皮膚科)という声が目立った。一方で、「納税は、国民の義務」(50代・形成外科)、「社会に対する義務、度を過ぎた節税はすべきではない」(60代・血液内科)といった、節税に批判的な意見も寄せられた。 総じて、回答者からは税負担そのものよりも「所得税、住民税の割合が大きい。収入に応じた特典を増やしてほしい」(40代・精神科)、「高所得者は税負担が大きいのに、所得制限のために利用できない制度が多いことが不満」(40代・呼吸器外科)といった、多くの税金を払っているのに再配分が不公平という意見や「ふるさと納税は企業に手数料が入るので、直接自治体に寄付する仕組みがほしい」 (60代・内科)といった、制度の不備を訴える声が目立った。 さらに「信頼できる節税対策情報を、どこから得ればいいのかがわからない」(40代・消化器外科)、「仕組みからよくわからないので、体系的に学びたい」(40代・内科)といった「税金制度が複雑でよくわからない」「税金・節税について学びたい」という声も多く寄せられた。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。https://www.carenet.com/enquete/drsvoice/cg004468_index.html さらに、ケアネットの連載「医師のためのお金の話」の執筆者による「医師が取り組むべき節税対策」をテーマにした特別寄稿も公開中。https://www.carenet.com/useful/okane/cg004466_index.html

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アミロイド陽性アルツハイマー病患者の皮質萎縮に対する炭水化物制限の影響

 インスリンレベルを低下させる炭水化物制限は、アルツハイマー病(AD)発症を遅らせる可能性がある。炭水化物の摂取を制限するとインスリン抵抗性が低下し、グルコースの取り込みや神経学的健康が改善すると考えられる。ADの特徴は、広範な皮質の萎縮だが、アミロイドーシスが確認されたAD患者において、正味炭水化物摂取量の低下が皮質萎縮の軽減と関連しているかは、明らかとなっていない。米国・Pacific Neuroscience Institute and FoundationのJennifer E. Bramen氏らは、炭水化物制限を行っているアミロイド陽性アルツハイマー病患者を対象に、中程度~高度の炭水化物摂取の場合と比較し、皮質厚が厚いとの仮説を検証した。Journal of Alzheimer's Disease誌2023年10月号の報告。 アミロイド陽性アルツハイマー病患者31例を、正味炭水化物のカットオフ値130g/日に基づき2群に分類した。皮質厚は、FreeSurferを用いて、MRIのT1強調画像より推定した。皮質表面分析は、クラスタワイズ回帰分析を用いて、多重比較のために補正した。群間差異の評価には、両側独立サンプルt検定を用いた。交絡因子を考慮した連続変数として正味炭水化物を用い、線形回帰分析も行った。 主な結果は以下のとおり。・正味炭水化物摂取量が低い群は、体性運動ネットワークおよび視覚ネットワークの皮質厚が有意に厚かった。・線形回帰では、正味炭水化物摂取レベルの低下は、前頭頭頂葉、帯状鞠膜、視覚ネットワークの皮質厚の厚さとの有意な関連が認められた。 著者らは「炭水化物制限は、AD患者の皮質萎縮を軽減する可能性がある。正味炭水化物摂取を130g/日未満に抑えることは、検証済みのMIND食を順守することにつながり、インスリンレベル低下による恩恵も受けることになるであろう」としている。

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日本における慢性疼痛・片頭痛患者の医療アクセスへの障壁

 慢性疼痛および片頭痛は、患者のQOLや生産性の低下などの経済的な負担が大きいにもかかわらず、十分に治療されていないケースが少なくない。治療を受けない理由を明らかにすることは、介護を求める行動を改善するための介入を可能にするためにも重要である。しかし、日本において、疾患特有の治療を受けない理由に関する報告は限られている。順天堂大学の唐澤 佑輔氏らは、慢性疼痛および片頭痛を有する未治療の患者における医療アクセスへの障壁を明らかにするため、調査を行った。その結果から、痛みに伴うリスクとその原因、安価な治療選択肢の利用の可能性、適切な治療施設へのアクセスについて患者教育を行うことで、治療率が向上する可能性が示唆された。Frontiers in Pain Research(Lausanne, Switzerland)誌2023年10月3日号の報告。 慢性疼痛および片頭痛患者を対象に、非介入的な横断的インターネット調査を行った。主要評価項目は、慢性疼痛および片頭痛の未治療の理由とした。副次的評価項目は、患者背景、患者報告ベースのアウトカム、ジェネリック医薬品またはオーソライズド・ジェネリック(AG)の認知度、医療アクセスに関する因子を含めた。 主な結果は以下のとおり。・2021年、慢性疼痛患者1,089例(未治療:605例、55.6%)および片頭痛患者932例(未治療:695例、74.6%)を対象に調査を行った。・治療を受けない理由は、慢性疼痛では「痛みを我慢できる」、片頭痛では「市販薬で疼痛管理が可能」であった。・未治療の慢性疼痛と有意な関連が認められた因子は、若年であること、最寄りの医療機関までの移動時間が短い、痛みが少ない、ADLスコアが高い、後発医薬品やオーソライズド・ジェネリック(AG)に対する認識の低さであった。・未治療の片頭痛と有意な関連が認められた因子は、女性であること、最寄りの医療機関までの移動時間が短い、人口5万人未満の自治体に居住、中等度~重度の痛みを経験、ADLスコアが高い、AGに対する認識の低さであった。・AGの認識率は、治療を受けた患者のほうが、未治療の患者よりも2倍高かった。

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回復期リハビリテーション病棟でのせん妄に対する向精神薬の減量

 川崎こころ病院の植松 拓也氏らは、同施設の回復期リハビリテーション病棟に転院してくる患者さんの多くが、急性期病棟入院時にせん妄に対する向精神薬処方が行われている現状を踏まえ、精神科医、薬剤師、リハビリテーション医が協力し、向精神薬減量への取り組みを行った。その結果から、急性期病棟で処方されている向精神薬の種類および用量を回復期リハビリテーション病棟で減量できる可能性があることを報告した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年10月26日号の報告。 対象は、2021年4月~2022年3月に川崎こころ病院の回復期リハビリテーション病棟を退院した患者88例。診療記録より基本的情報および向精神薬処方状況を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・入院時に向精神薬が処方されていた患者は55例(62.5%)であり、処方薬は2種類(中央値)であった。・退院時に向精神薬が処方されていた患者は41例、処方薬は1種類(中央値)へと有意な減少が認められた(p<0.05)。・入院時と比較した退院時の向精神薬処方量は、レンボレキサントは有意に高かったものの、抗精神病薬、ベンゾジアゼピン/非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、抗うつ薬、スボレキサント、ラメルテオン、バルプロ酸ナトリウムの処方は有意に低下した(p<0.05)。 著者らは、「この研究では患者数が限られており、患者の特性の違いによる選択バイアスが否定できないため、さらなる検討が必要である」としている。

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脳が萎縮していても、必ずしも認知症ではない?【外来で役立つ!認知症Topics】第11回

当クリニックでは、「『脳が萎縮している、認知症が疑われる』と言われました。本当に私は認知症なんですか?」と泣かんばかりの表情で初診する人が年間に数人はいらっしゃる。前頭葉萎縮と海馬萎縮脳の萎縮は2つに大別できる。まずは大脳半球を左右に分け前後に走る深い溝、すなわち大脳縦裂の前方が開いているので前頭葉萎縮があると言われた人である。「前頭側頭型認知症の疑いと言われました」と告げる人もいる。このタイプはこの画像所見だけで、下角の拡大などの所見がなければ、問題なしが普通である。しかしこのタイプの人には飲酒する人が多い。ざっくり言うと、相当の「吞兵衛」が少なくない。この飲酒と前頭葉萎縮の関係を報告した論文は、欧米でも国内でも出ている。もう1つが有名な海馬萎縮である。「海馬が痩せている、イコール、アルツハイマー病」という簡単な筋書きが世間一般はもとより、認知症を診る医師にもかなり浸透している。実際、海馬を含む側頭葉内側と知的機能との相関を、MRIの容量測定により検討することで、健康高齢者とごく軽度のアルツハイマー病患者の区別が、容量値により可能だとした報告もある。「海馬萎縮=アルツハイマー病」ではないこともあるだが、海馬萎縮が必ずしもアルツハイマー病であるとは言えない。意外なことに、海馬を含む側頭葉内側と認知機能の関連は最近まであまり知られていなかった。軽度認知障害(MCI)で有名なピーターセンらは、側頭葉内側の容積と記憶、言語、一般的な知的機能との相関を、アルツハイマー病患者と健康高齢者コントロールにおいて評価している。全体では、記銘や想起のテスト成績と海馬の容積は比例した。しかし健康高齢者とアルツハイマー病患者に分けてみたところ、こうした相関はアルツハイマー病患者群においてのみ観察されたという1)。一方で記憶に関わる海馬の役割は、PETなど脳画像技術の進歩、また記憶に関する新たな知見により見直されつつある。側頭葉内側の機能は記憶に限らないこと、また記憶のプロセス(記銘、把持、想起)には海馬以外に、側頭葉内側、間脳領域のみならず新皮質から小脳までもが含まれると分かっている。さらに健康高齢者において加齢によって影響を受ける脳構造を調べた研究もある。海馬を含む辺縁系の容積はいかなる認知機能(言語性ワーキングメモリー、言語性の明示的記憶、言語性プライミング)とも無関係という驚きの結果であった。このように海馬萎縮の背景は単純でない。アルツハイマー病とは別の病理学的な影響も受ける。世界最大のアルツハイマー病研究組織であるAlzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)のデータに、海馬萎縮に関与する遺伝子を調べた報告がある2)。ゲノムワイド関連研究(GWAS)から3つの遺伝子多型、すなわちTOMM40-APOC1領域にあるrs4420638、rs56131196、rs157582が関与すると報告されている。アルツハイマー病患者の海馬萎縮速度は3倍以上なおアルツハイマー病患者や健康高齢者において海馬はどの程度の速度で萎縮するのだろうか? アルツハイマー病における年間あたりの海馬萎縮率をメタ解析した報告がある。それによればアルツハイマー病患者での萎縮率は4.66%(95%信頼区間[CI]:3.92~5.40)、また健康コントロールでは1.41%(95%CI:0.52~2.30)であった3)。つまりアルツハイマー病患者では海馬の年間萎縮率は健康高齢者の3倍以上も大きい。以上をまとめると、知的健康でも海馬の萎縮を示す人がいる。1回の海馬萎縮のMRI画像によってアルツハイマー病の診断はできるわけではない。しかしアルツハイマー病になると海馬は規則的に萎縮していくということになる。海馬萎縮はVSRADで評価さてこれに絡めてわが国では、「海馬萎縮といえばMRI画像のVSRAD(Voxel-Based Specific Regional Analysis System for Alzheimer's Disease)」と定着している。確かにこのZスコアを使うことで、多くの場合、海馬萎縮が客観的に評価されてすっきりする。ところがMRI画像の視覚評価で海馬萎縮がはっきりしているのに、Zスコアが低い、つまり数字上はアルツハイマー病を示唆するとは言い難い症例がある。またその逆もある。つまり視覚評価とZスコアが乖離する症例が時にはある。こうしたケースでは、「VSRADの測定が誤っているのではないか?」とも尋ねられる。そうしたご意見には、次のようにお答えしている。「VSRADは絶対値の測定ではない。全脳に対する海馬領域の体積、正確に言えば、全脳の灰白質体積で正規化した海馬領域の灰白質体積を意味します。だから乖離がありえます」。もちろんすべてがそうだと言わないが、アルツハイマー病は海馬領域の選択的萎縮を示すため、視覚評価よりもVSRADのほうがアルツハイマー病の特徴を良く捉える。ちなみに私信(松田 博史先生)では、視覚評価による海馬萎縮からアミロイド沈着の可能性の診断率は60%ぐらいだが、VSRADによると70%を超えるとされる。参考1)Petersen RC, et al. Memory and MRI-based hippocampal volumes in aging and AD. Neurology. 2000;54:581-587.2)Wang WY, et al. Impacts of CD33 Genetic Variations on the Atrophy Rates of Hippocampus and Parahippocampal Gyrus in Normal Aging and Mild Cognitive Impairment. Mol Neurobiol. 2017;54:1111-1118.3)Barnes J, et al. A meta-analysis of hippocampal atrophy rates in Alzheimer's disease. Neurobiol Aging. 2009;30:1711-1723.

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地域のソーシャルキャピタルと認知症発症との関連~日本老年学的評価研究データ分析

 近年、社会や地域における、人々の信頼関係・結びつきを意味するソーシャルキャピタルという概念が注目されている。個人レベルでのソーシャルキャピタルは、認知機能低下を予防するといわれている。また、コミュニティレベルでのソーシャルキャピタルが、認知症発症に及ぼす影響についても、いくつかの研究が行われている。国立長寿医療研究センターの藤原 聡子氏らは、日本人高齢者を対象とした縦断的研究データに基づき、コミュニティレベルのソーシャルキャピタルと認知症発症との関連を調査した。その結果から、市民参加や社会的一体感の高い地域で生活すると、高齢女性の認知症発症率が低下することが示唆された。Social Science & Medicine誌2023年12月号の報告。 日本老年学的評価研究の9年間(2010~19年)にわたる縦断的データを用いて、分析を行った。対象は、7つの自治体、308のコミュニティに在住する65歳以上の身体的および認知的に独立した3万5,921人(男性:1万6,848人、女性:1万9,073人)。認知症発症は、公的介護保険の利用により評価した。ソーシャルキャピタルは、市民参加、社会的結束、社会的相互関係の3つの側面より評価した。性別で層別化し、2レベルのマルチレベル生存分析を行い、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は、6,245人(17.4%)であった。・認知症の累積発症率は、男性で16.2%、女性で18.4%であった。・共変量で調整した後、個人レベルの市民参加は、男女ともに認知症発症率の低下と関連が認められた。 【男性】HR:0.84、95%CI:0.77~0.92 【女性】HR:0.78、95%CI:0.73~0.84・コミュニティレベルの市民参加(HR:0.96、95%CI:0.93~0.99)および社会的結束(HR:0.93、95%CI:0.88~0.98)は、女性の認知症発症率の低下と関連していた。また、個人、コミュニティレベルを超えて、女性の社会的相互関係は認知症発症率の低下と関連が認められた(HR:0.95、95%CI:0.90~0.99)。 著者らは「地域社会における市民参加や社会的一体感を促進することで、認知症発症までの期間を遅らせたり、予防したりする可能性がある」としている。

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認知症の進行抑制に難聴治療がカギとなる可能性/難聴対策推進議員連盟

 国会議員で組織する難聴対策推進議員連盟が、「難聴対策で認知症の進行抑制-補聴器を用いた聴覚介入の有用性を」テーマに、メディアセミナーを開催した。セミナーでは、難聴と認知症の関係や難聴と社会的孤立や受傷リスクの増大、難聴患者の声などの講演が行われた。認知症のリスクが高いグループに聴覚機能介入は効果あり はじめにフランク・リン氏(ジョンズ・ホプキンス大学教授)が「認知症の進行抑制における聴覚介入の有用性-ACHIEVE試験の結果より-」をテーマに研究内容と今後の展望について説明した。 全世界で高齢化による認知症の患者が増加している。そんな中、中年期および老年期の難聴は、認知症の深刻なリスク因子であることが明らかになっている1)。 難聴になると、認知的負荷、脳への刺激減少、社会的孤立が進み、認知機能の低下や認知症をもたらすとされている。そこで、リン氏らの研究グループは、高齢者の加齢と認知機能の健康評価について研究するACHIEVE試験を行った2)。 本試験は、70~84歳の被験者977例について、認知症のリスクが高いグループ(ARICコホート)238例とリスクが低いグループ(De novoコホート)739例に分け、補聴器の装着とその教育についての介入を2018~22年に行い、その結果を解析したもの。 その結果、ARICコホートでは聴覚介入により3年後の全般的な認知機能の低下は48%抑制された。一方、De novoコホートでは効果は認められなかったが、その理由として認知機能の変化速度が遅いために3年の研究期間では効果観察が難しいことが推定された。  そのほか、全参加者で自己認識によるコミュニケーション能力の低下、孤独感、社会性にプラスの効果がみられた。 リン氏は、これらの結果を受けて、「米国では『聴力検査と聴覚介入への保険適用』『補聴器市場の発展とコスト削減促進の法規制』『啓発キャンペーンの実施』などを政府に求めていく」と展望を語った。難聴になると社会的孤立が進む つぎに内田 育恵氏(愛知医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 教授)が、「認知症だけじゃない! 難聴を放っておいてはいけない理由」をテーマに、難聴と就労、社会交流、受傷リスクの増加など3つの視点でレクチャーを行った。 「難聴と就労・雇用」について、アメリカとノルウェーの研究から難聴があると低所得、失業、非雇用などと有意な関連があったこと、また、難聴が仕事のパフォーマンスと有意な関連があることを示した。その一方で、英国や日本、デンマーク、フランスなど8ヵ国の調査から補聴器を使用すると難聴による就業上のデメリットをサポートできるという肯定的な回答がいずれも8割を超えていたという結果も示した。 「難聴と社会的交流」について、アメリカとわが国の研究から、難聴者は社会的ネットワークのサイズが小さく、人との交流に不利であることが示された。そこで、内田氏らは全国7つの大学と共同し、高齢者で補聴器装着初心者の6ヵ月の追跡調査を行った(HA-ProA study)。本研究は、平均年齢76.9歳(±6.6歳)の補聴器初心者94例を対象に行い、その結果、補聴器の導入前後で周囲との社会性が有意に変化していた。たとえば、86歳男性では家族や友人、医師などとの心理的距離は近くなるなど補聴器導入後に変化を起こしていた3)。 「難聴と転倒・事故受傷リスク」について、米国の研究では難聴があると転倒での受傷頻度や事故受傷のリスクが高かったことが説明された。とくに重度難聴者では事故全般のオッズ比は1.9倍、運転関連では2.4倍になるという報告も示された4)。 その一方で、補聴器を使用するとアルツハイマー病・認知症のハザード比は0.824、うつ・不安症では0.894、負傷をともなう転倒では0.871となる報告もある5)と紹介し、難聴には早期からの対応が必要だとレクチャーを終えた。 その他、難聴により人工内耳術を受け、補聴器を使用している患者さんの声として周囲の負担を軽減できたこと、仕事を続けることができたことなどが患者自身から語られた。 最後に総括として山岨 達也氏(日本聴覚医学会 理事長/東京逓信病院 病院長)が、難聴対策の重要性として聴覚障害者と災害について触れた。災害の際、聴覚障碍者は情報弱者となるとして、宮城県の災害事例を示し、被災死亡率が1.03%であったのに対し、障害者の死亡率は2.06%と2倍だったことを説明した。 そして、課題として、補聴器使用の段階ではすでに認知症が進んでいる可能性があり、高齢者の難聴スクリーニングが行われていないことが問題と指摘。今後自治体を中心に高齢者の聴覚検査を行うべきだと提案した。

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統合失調症患者における抗精神病薬誘発性糖尿病性ケトアシドーシスのリスク評価~医薬品副作用データベース解析

 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は、生命を脅かす重篤な状態であり、抗精神病薬により引き起こされる可能性がある。アジア人糖尿病患者は、白人と比較し、インスリン抵抗性が低いといわれている。これまでに報告されている抗精神病薬に関連したDKAの研究は、すべて欧米人を対象としているため、これらのデータが日本人でも同様なのかは、不明である。獨協医科大学の菅原 典夫氏らは、自発報告システムデータベースである日本の医薬品副作用データベースを用いて、抗精神病薬とDKAとの関連を分析した。その結果から、統合失調症患者のDKA発現にはオランザピン治療が関連していることが明らかとなった。とくに、男性患者において、DKAリスクが高いことも確認された。Journal of Psychosomatic Research誌オンライン版2023年10月19日号の報告。 2004年4月~2021年3月に独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出された有害事象報告書を用いて、レトロスペクティブにファーマコビジランスの不均衡分析を行った。対象集団は統合失調症患者7,435例であり、抗精神病薬に関連したDKAの報告は合計55件であった。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者のDKA症例55例のうち、DKA後の死亡した患者は3例(6%)であった。・DKAの兆候は、オランザピン治療後に報告されており、調整後報告オッズ比は有意であった(aROR:3.26、95%信頼区間[CI]:1.87~5.66)。・準選択法を用いた多変量ロジスティック回帰分析では、オランザピン治療症例1,399例において、DKA発現と関連していた因子は、男性であることだった(aROR:2.72、95%CI:1.07~6.90)。 結果を踏まえ、著者らは「本データは、統合失調症患者の抗精神病薬に関連するDKA発現を減少させるために、リスク管理やモニタリングに役立つであろう」としている。

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医師が取り組むべき節税対策とは?上手な節税を考えてみよう!

年末調整に確定申告…。年末から春は税金を意識する機会が増えます。さらに、最近では定額減税や新NISAスタートなど、税金に関する話題も増えています。ケアネットの連載「医師のためのお金の話」執筆者が、「医師のための上手な節税」を解説します。せっかく稼いだお金だから、できるだけ手元に残しておきたい! とくに高収入の医師には切実な願いではないでしょうか。しかし現実は税金が高過ぎて、給料明細を見るたびにため息が出る…。そんな方が多いことでしょう。そんな医師の強い味方となりうるのは「節税」です。しかし一言で節税と言っても、たくさんの種類があります。「候補が多過ぎてさっぱりわからない」「制度が複雑すぎてわからない」このような悩みを抱える医師は、きっとあなただけではないはず。ケアネットで、会員医師の方々を対象にした 「節税」に関するアンケートが公開されています。職場では大っぴらにしにくい話題ですが、ほかの人がどのような節税をしているのかはとても興味深いものです。アンケート結果から浮かび上がったのは、一般的に有名なものから、少数ではあるものの医師特有の節税対策まで…。私自身もとても参考になりました。貴重なアンケート結果を基にして、医師のための上手な節税について考えてみましょう。節税の制度が大きく変わる! 新NISAは絶対に押さえよう節税に関する今年最大の話題は、何といっても2024年1月から始まる新NISAではないでしょうか。NISAとは2014年から始まった少額投資非課税制度で、株式や投資信託の利益が非課税になります。NISAはうってつけな節税対策に思えますが、大きな欠点があります。これまでのNISAは非課税保有限度額が少なく、しかも非課税保有期間がわずか5年しかない、という制約がありました。保有期間が終了すると自動的に課税口座に移管されてしまい、その時点で含み損があると将来的に値上がりしても余分な税金が課せられます。しかし、同じ「NISA」でも、新NISAはこれまでのNISAとは似ても似つかない、素晴らしい制度に生まれ変わりました。大きな変更点は、非課税枠の上限金額が大幅に増えたことと、非課税保有期間の縛りがなくなったことです。極論すれば、これまでのNISAは期間終了時に株価が上昇していることに賭ける投機だったといえます。私がやりたいのは“投資”であり“投機”ではない…。このため、私は世間の盛り上がりとは裏腹に、完全無視を決め込んでいました。ところが、新NISAはこれらのデメリットのかなりの部分が解消されました。新NISA最大のメリットは、非課税保有限度額が1人当たり1,800万円に拡大されたことでしょう。このおかげで、必要十分なレベルの資産を非課税で保有できるようになりました。そして、新NISAでは非課税保有期間が無制限となったことも特筆するべき点です。期間の縛りがなくなったメリットは計り知れません。これまでのNISAと異なり、長期にわたって腰を据えて投資可能となり、また非課税のメリットを受け続けられるようになりました。これまでのNISAはお世辞にも推奨できるようなシロモノではありませんでしたが、2024年1月から始まる新NISAは違います。投資余力の大きな医師にとっても、真剣に取り組む価値のある節税制度だといえるでしょう。ハードルは高いが取り組む価値の大きなものとは?新NISAは万人向けの節税対策ですが、医師だからこそ取り組むべき価値のあるものもあります。その代表格は不動産投資です。不動産投資というと節税のイメージが大きいものの、うさんくささやハードルの高さも意識せざるを得ません。ケアネットが先日行ったアンケートでも、不動産投資に取り組んでいる人はあまりいませんでした。確かに不動産は投資額が大きく、気軽に取り組めるとは言い難いものです。しかし、ポイントさえ外さなければ、大きな節税効果が期待できるのもまた事実です。多くの医師が取り組む価値があるのは、個人所得税の節税対策としての不動産投資でしょう。具体的には不動産投資で出た赤字を、医師としての給与所得と損益通算して節税を図る手法です。この節税対策として、最も有名なのは新築区分マンション投資だと思います。職場によくかかってくる不動産投資の勧誘電話ですね。しかし、新築区分マンション投資は絶対に取り組んではいけない不動産投資の筆頭です。節税どころか、本当に「損」してしまいますから。それでは、個人所得税の節税対策として、どのような不動産投資がお勧めなのでしょうか。これには節税の仕組みを読み解く必要があります。税務上で不動産投資が赤字にならなければ、個人所得税の節税になりません。しかし、新築区分マンション投資のように本当に損をしてしまうと、本末転倒です。ここで重要なのは、税務上の赤字と実際の赤字は異なる、という点です。この違いは「減価償却」で生まれてきます。減価償却とは、建物取得金額を法定耐用年数に応じて費用計上する会計処理です。減価償却では、実際にお金が出ていかないにもかかわらず、帳簿上で費用計上可能となります。一応、新築区分マンション投資でも減価償却をうたってはいますが、物件価格が割高過ぎるので利益はほとんど出ません。お勧めは築古木造戸建投資でしょう。築22年超の古い木造物件は4年で減価償却できます。新築区分マンション投資の法定耐用年数は47年なので、圧倒的な節税効果が見込めます。ただし、築古木造戸建投資を実行するには専門的な知識が必要です。必ず専門家のアドバイスを聞きましょう!ふるさと納税は誰でもノーリスクで安心して実践できる新NISAや不動産投資の節税効果はわかりましたが、もう少し簡単で気楽にできる節税対策はないものでしょうか。そのようなニーズに応える筆頭は、ふるさと納税でしょう。ケアネットが先日行ったアンケートでも、8割以上の医師がふるさと納税に取り組んでいました。2023年10月から還元率が改悪されましたが、ふるさと納税が始まる前は還元率ゼロだったことを考えれば、ほとんど誤差範囲内だと思います。世間では10月までに駆け込みでふるさと納税するべしという論調がありましたが、一般の医師は無視しても問題ないでしょう。一方で、ふるさと納税のチョイスに時間をかけ過ぎるのは禁物です。膨大な数の返礼品があるので、ついつい「お得さ」をとことんまで追求してしまいがちです。しかし、ふるさと納税の返礼品は“オマケ”みたいなもの。そこに貴重な時間を振り分けても得るものは少ないでしょう。私がいつも心掛けているのは、ふるさと納税をできるだけ自動化することです。理想は、自動的にふるさと納税の返礼品が送られてくる状態です。もちろんまったく時間をかけないわけにはいきませんが、工夫次第で半自動化することが可能です。ふるさと納税の自動化でお勧めの返礼品は、お米の定期便です。3~12ヵ月の間、おいしいお米が毎月送られてくるパターンが多いです。一度寄付すると、あとは自動的に送られてくるのは魅力的です。お米の定期便には、もうひとつのメリットがあります。お米は精米すると劣化が早まるため、長く家に置いておけません。とくに夏場はお米が傷みやすいので要注意です。私は何袋も一気に頼んで数ヵ月置いていたところ、まずくなって閉口した経験があります。こうしたことなく、定期的に新鮮なお米が手に入るわけです。ふるさと納税はお得な制度ではあるものの、永続性に疑問があり、真剣に注力する類のものではありません。節税に取り組むのであれば、新NISAなどのしっかりした枠組みの制度を、腰を据えて研究することをお勧めします。

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日本人統合失調症患者の院内死亡率と心血管治療との関連性

 統合失調症は、心血管疾患(CVD)リスクと関連しており、統合失調症患者では、CVDに対する次善治療が必要となるケースも少なくない。しかし、心不全(HF)により入院した統合失調症患者の院内予後およびケアの質に関する情報は限られている。京都府立医科大学の西 真宏氏らは、統合失調症患者の院内死亡率および心不全で入院した患者の心血管治療との関連を調査した。その結果から、統合失調症は心不全により入院した非高齢患者において院内死亡のリスク因子であり、統合失調症患者に対する心血管治療薬の処方率が低いことが明らかとなった。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌2023年10月18日号の報告。 日本全国の心血管登録データを用いて、2012~19年に心不全により入院した患者70万4,193例を対象に、年齢別に層別化を行った。18~45歳の若年群2万289例、45~65歳の中年群11万4,947例、65~85歳の高齢群56万8,957例に分類した。すべての原因による死亡率、30日間の院内死亡率、心血管治療薬の処方について評価を行った。欠損データを複数回代入した後、混合効果多変量ロジスティック回帰分析を用いて分析した。ランダム効果の変数として、病院識別コードを有する患者と病院の特性を用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は、入院期間が長期化し、入院費用が高額になる可能性が高かった。・非高齢者群における統合失調症患者の院内死亡率は、非統合失調症患者と比較し、有意に不良であった。 【対若年群死亡率】7.6% vs. 3.5%、調整オッズ比(aOR):1.96、95%信頼区間(CI):1.24~3.10、p=0.0037 【対中年群死亡率】6.2% vs. 4.0%、aOR:1.49、95%CI:1.17~1.88、p<0.001・30日以内の院内死亡率は、中年群で有意に不良であった(4.7% vs. 3.0%、aOR:1.40、95%CI:1.07~1.83、p=0.012)。・高齢群の院内死亡率は、統合失調症の有無にかかわらず同程度であった。・β遮断薬およびACE阻害薬、ARB処方は、すべての年齢層の統合失調症患者で有意に低かった。 結果を踏まえ、著者らは「重度の精神疾患を有する患者では、心不全に対する十分なケアやマネジメントが必要である」としている。

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早期アルツハイマー病患者のQOLに対するレカネマブの有用性~第III相試験

 レカネマブは、アミロイドβプロトフィブリルに高い親和性を示すヒト化IgG1モノクローナル抗体である。第III相試験において、レカネマブは早期アルツハイマー病のアミロイドマーカーを減少させ、18ヵ月時点での認知および機能の臨床的エンドポイントの低下を軽減することが示唆されている。カナダ・Toronto Memory ProgramのSharon Cohen氏らは、Clarity AD試験での健康関連QOL(HRQoL)の結果について、評価を行った。その結果、レカネマブは、HRQoLの相対的な維持および介護者の負担軽減と関連しており、さまざまなQOL尺度においてベネフィットが確認された。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2023年号の報告。 Clarity AD試験は、18ヵ月にわたる多施設共同二重盲検の第III相試験である。参加者は、軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病による早期認知症と診断され、PETまたは脳脊髄液検査において脳アミロイド蓄積が認められた50~90歳。参加者には、プラセボまたはレカネマブ10mg/kg IVの隔週投与を行った。HRQoLは、European Quality of Life-5 Dimensions(EQ-5D-5L:患者)およびQuality of Life in AD(QOL-AD:患者および介護者)を用いて、ベースライン時および6ヵ月ごとに測定した。介護者に対してZarit Burden Interview(ZBI)を実施した。 主な結果は以下のとおり。・登録患者数は1,795例(レカネマブ群:898例、プラセボ群:897例)。・18ヵ月時点での対象患者におけるHRQoLは、ベースラインからの調整平均変化の低下がEQ-5D-5Lで49%、QOL-ADで56%減少した。・介護者におけるQOL-ADの低下は、23%減少した。・18ヵ月時点のベースラインからの平均変化調整後のZBIでは、介護者の負担増が38%減少した。・HRQoLの検査項目およびディメンションについても、レカネマブのベネフィットが示唆された。 著者らは「レカネマブは、これまで報告されている認知、機能、疾患進行、バイオマーカーに関連する尺度に対するベネフィットと合わせて、治療患者、その介護者および社会に対して、さらなるベネフィットをもたらす可能性がある」としている。

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小児・青年のうつ病に有用な運動介入とは~メタ解析

 中国・浙江師範大学のJiayu Li氏らは、小児および青年の抑うつ症状に対するさまざまな運動介入効果について評価を行った。その結果、運動介入は、小児および青年の抑うつ症状を有意に改善することが明らかとなった。とくに、有酸素運動が効果的であり、週3回、40~50分の運動介入を12週間行うとさらに有効であることが示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年10月11日号の報告。 2023年5月までに公表されたランダム化比較試験(RCT)を4つのデータベースで検索した。バイアスリスクの評価には、Cochrane collaboration toolを用いた。ペアワイズメタ解析、ネットワークメタ解析には、Stata 16.0ソフトウェアを用いた。 主な結果は以下のとおり。・RCT35件、5,393例を分析に含めた。・抑うつ症状に対し最も有意な効果が認められた運動介入は、有酸素運動(66.2%)であり、次いで集団トレーニング(62.5%)、レジスタンスエクササイズ(59.0%)、有酸素運動とレジスタンスエクササイズの併用(57.9%)であった。・15歳未満では、抑うつ症状の有意な改善が認められた(標準化平均差[SMD]:-0.41、95%信頼区間[CI]:-0.63~-0.19、p<0.01)。・健康者(SMD:-0.25、95%CI:-0.41~-0.08、p<0.01)、肥満者(SMD:-0.15、95%CI:-0.31~-0.00、p<0.01)、うつ病患者(SMD:-0.75、95%CI:-1.32~-0.19、p<0.01)のいずれにおいても、抑うつ症状の有意な改善が認められた。・30分の運動介入において有意な効果が認められ(SMD:-0.14、95%CI:-0.81~-0.01、p<0.01)、40~50分の運動介入が最も効果的であった(SMD:-0.17、95%CI:-0.33~-0.02、p<0.01)。・運動介入の頻度は、週3回で有意な効果が認められた(SMD:-0.42、95%CI:-0.66~-0.18、p<0.01)。

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抗精神病薬関連の流涎症に対する薬理学的介入~メタ解析

 抗精神病薬に関連する流涎症は大きな問題の1つであるが、エビデンスベースの治療ガイダンスは不十分である。イタリア・フェデリコ2世ナポリ大学のMichele Fornaro氏らは、抗精神病薬関連の流涎症に対する薬理学的介入について、ネットワークメタ解析を実施した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年10月11日号の報告。抗精神病薬関連の流涎症に対する治療反応が良好であった薬剤 成人患者を対象とした抗精神病薬誘発性流涎症に関するRCT研究(公開/非公開)をPubMed Central、PsycInfo、Cochrane Central database、Clinicaltrials.gov、WHO-ICTRP、中国電子ジャーナルデータベース(Qikan.cqvip.com)で検索した(2023年6月12日まで)。グローバル/ローカルでの不一致、出版バイアス、バイアスリスク(RoB2)、エビデンスの確実性を評価するため、サブグループ/感度分析を行った。主要有効性アウトカムは、唾液産生の変化(標準化平均差:SMD)、研究で定義された治療反応(リスク比:RR)とした。忍容性アウトカムは、すべての原因による中止(RR)をした。薬剤ごとに評価し、作用機序の評価は副次的なものとした。 抗精神病薬関連の流涎症に対する薬理学的介入についてネットワークメタ解析を実施した主な結果は以下のとおり。・34件のRCTをシステマティックにレビューし、33件(1,958例)をネットワークメタ解析に含めた。・抗精神病薬関連の流涎症に対するすべての介入は、精神疾患患者のクロザピン誘発性流涎症に対する介入であった。・プラセボと比較し、抗精神病薬関連の流涎症に対する治療反応が良好であった薬剤は以下のとおりであった。 ●メトクロプラミド(RR:3.11、95%信頼区間[CI]:1.39~6.98) ●シプロヘプタジン(RR:2.76、95%CI:2.00~3.82) ●スルピリド(RR:2.49、95%CI:1.65~3.77) ●プロパンテリン(RR:2.39、95%CI:1.97~2.90) ●ジフェンヒドラミン(RR:2.32、95%CI:1.88~2.86) ●benzhexol(RR:2.32、95%CI:1.59~3.38) ●doxepin(RR:2.30、95%CI:1.85~2.88) ●amisulpride(RR:2.23、95%CI:1.30~3.81) ●クロルフェニラミン(RR:2.20、95%CI:1.67~2.89) ●アミトリプチリン(RR:2.09、95%CI:1.34~3.26) ●アトロピン(RR:2.03、95%CI:1.22~3.38) ●astemizole(RR:1.70、95%CI:1.28~2.26)・作用機序別の評価では(28研究、1,821例)、抗ムスカリン薬(RR:2.26、95%CI:1.91~2.68)、ベンズアミド(RR:2.23、95%CI:1.75~3.10)、三環系抗うつ薬(RR:2.23、95%CI:1.83~2.72)、抗ヒスタミン薬(RR:2.18、95%CI:1.83~2.59)は、プラセボよりも良好であった。・直接比較では、astemizoleとイプラトロピウムは、いくつかの介入において良好な成績が認められた。・作用機序別の継続的な有効性は、ベンズアミドを除き、プラセボよりも良好であった。・夜間流涎症に関して、ベンズアミド、アトロピンは、プラセボよりも良好な結果は認められなかった。・便秘または眠気は、プラセボと比較し有意な差は認められなかった。

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第170回 外来管理加算の廃止提案に医師会は強く反発/中医協

<先週の動き>1.外来管理加算の廃止提案に医師会は強く反発/中医協2.地域医療構想で進む病床再編、急性期病床が減少、回復期は増加/厚労省3.日本の公的医療支出が高水準、病床数と在院日数で2位/OECD4.GLP-1受容体作動薬の供給不足、卸に対して美容目的の出荷抑制を指示/厚労省5.美容目的のエクソソーム使用に規制を、死亡事例の報告も/再生医療学会6.介護職員の待遇改善へ、来年2月から月6,000円の賃上げ決定/政府1.外来管理加算の廃止提案に医師会は強く反発/中医協厚生労働省は、中央社会保険医療協議会(中医協)の総会を11月10日に開催。2024年度の診療報酬改定に向けて議論が行われた。とくに外来医療に関する「外来管理加算(52点)」については、支払い側が廃止を求め、激しい議論となった。外来管理加算は、2008年の診療報酬改定で再診患者に対する計画的な医学管理を評価するため導入された。当初は「おおむね5分を超える診察」の要件(いわゆる「5分ルール」)が含まれていたが、医療現場の強い反発で、このルールは2年後に廃止された代わりに、「簡単な症状の確認」だけで処方を行った場合は加算を算定できないことが明確化されていた。支払側委員の松本 真人氏(健康保険組合連合会理事)は、外来管理加算の算定要件があいまいで、その評価の妥当性に疑問を提起した。さらに、外来管理加算と「特定疾患療養管理料」、「生活習慣病管理料」、「地域包括診療加算」の併せて算定が許される現状についても、患者や保険者にとって理解しづらいと指摘し、廃止を主張した。これに対して、診療側の委員たちは強く反発。長島 公之委員(日本医師会常任理事)は、松本委員の意見を「暴論」と断じ、まったく容認できないと強調した。池端 幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)も、廃止の主張に全面的に反対する意向を示した。参考1)中医協資料 外来(その3)について(厚労省)2)外来管理加算の廃止を主張、支払側の松本委員 長島委員は「暴論、容認できない」(CB news)3)「外来管理加算の廃止」の支払側提案に、診療側委員は猛反発、「かかりつけ医機能」の診療報酬評価をどう考えるか-中医協総会(1)(Gem Med)2.地域医療構想で進む病床再編、急性期病床が減少、回復期は増加/厚労省厚生労働省は、11月9日に「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」を開催し、地域医療構想の進捗について報告した。厚労省が最新の病床機能報告を基に行った集計によれば、2025年までに急性期病床が約7.1万床減少する一方、回復期病床は約7.9万床増加する見込み。政府は、高齢化や人口減少に対応するため、2025年までに各地域の医療体制を効率化することを目的として地域医療構想の実現を目指し、病床再編を行っている。病床再編により、一部の地域では医療機関の存続が危ぶまれ、とくにコロナ禍での病床削減への疑問符が生じている。たとえば、岐阜県東濃地方では、公営病院の病床数削減や民間への譲渡が進められているが、地域全体での病床利用率は高くなく、病床削減による共倒れの懸念が指摘されている。新型コロナウイルスのパンデミックは、病床削減の方針に再考を迫っており、急性期病床の役割の重要性が再認識されているが、今後は、コロナ禍の経験や在宅医療の需要も考慮に入れた新たな医療再編の議論が求められている。参考1)地域医療構想の進捗等について(厚生労働省)2)急性期7.1万床減少見込み、15-25年に 回復期は7.9万床増、全国ベースで(CB News)3)目標の2025年迫る「地域医療構想」 病床再編 議論が“再燃” 地域医療の崩壊に危機感(東京新聞)3.日本の公的医療支出が高水準、病床数と在院日数で2位/OECD経済協力開発機構(OECD)の最新報告によれば、わが国の公的医療支出はGDPの11.5%であり、政府支出の22%を占めることが判明した。これは、加盟38ヵ国中最高の割合であることが明らかになった。わが国の人口当たり病床数(12.6)は韓国に次いで2位で、平均在院日数も16.0日と、OECDの平均の約2倍である。人口1,000人当たりの医師数は2.6人で、OECDの平均3.7人に及ばない。また、わが国は、65歳以上の高齢者割合が29%と最も高く、1人当たりの受診回数も11回で2番目に多い。OECDは、これらの現状をもとにわが国の医療資源の効率的な活用を促している。人口10万人当たりの薬剤師数は199人でトップに立つ一方で、ノルウェーやスウェーデンの65歳以上の人口100人当たり介護従事者の数は約12人に対して、わが国は6.8人である。そのほか、開業医の電子カルテ利用率は平均93%に対し、日本は42%と低くOECDの武内 良樹事務次長は、わが国の医療提供の効率化と介護の費用対効果の向上を求めている。さらにわが国の病院依存型の医療制度が非効率であると指摘し、遠隔医療の利用拡大やかかりつけ医の医療質向上のほか、スキルの高い介護人材の確保と労働条件の改善も必要とも述べている。参考1)図表でみる医療 2023:日本(OECD)2)公的医療支出の割合、日本がトップ OECD、病床数・在院日数は2位(MEDIFAX)4.GLP-1受容体作動薬の供給不足、卸に対して美容目的の出荷抑制を指示/厚労省厚生労働省は、2型糖尿病治療に使用されるGLP-1受容体作動薬の在庫が逼迫していることを受け、7月下旬に医療機関と薬局に対して、GLP-1受容体作動薬の買い込みを控え、必要量のみの購入を行うよう求め、薬剤の適正使用を依頼した。GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病患者以外への使用(主に美容・痩身目的)については有害事象の報告もあり、懸念が広がる一方、海外承認のニュースにより急速に処方が増えている。厚労省は、2型糖尿病患者に対して適切に供給されるように、医薬品卸売販売業者に対して、注文を受けた際に治療目的を確認し、糖尿病治療以外の目的での使用が明らかな注文に対しては、納入を控えるよう11月9日付けで通知を発出した。参考1)GLP-1受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼(その2)(厚労省)2)GLP-1、糖尿病治療以外は納入しないよう卸に要請 厚労省(日刊薬業)5.美容目的のエクソソーム使用に規制を、死亡事例の報告も/再生医療学会厚生労働省が、11月10日に開催した厚生科学審議会の再生医療等評価部会で、日本再生医療学会は、細胞から分泌される微粒子「エクソソーム」が含まれる幹細胞培養上清液が、美容目的やアンチエイジング目的で自由診療の医療機関で使用されているとして、「何らかの規制下に置かれることが望ましい」とする提言書を国に提出した。エクソソームは組織再生を促す物質を含んでいるが、現行の再生医療の安全に関する法律の対象外のため、管理が不十分な場合には重大な事故を引き起こす可能性があると指摘されている。すでに、幹細胞培養上清液を使用した治療による患者の死亡事例も報告されており、研究者らはエクソソームの体内での効果や安全性に関する科学的根拠が不足しており、一部のクリニックが効果を誇張して宣伝されていることを問題視しており、大阪大学の曽宮 正晴助教は、このような未確立の治療法には倫理的、科学的な問題があると指摘している。これに対して、実施しているクリニックが所属している日本再生医療抗加齢学会側は、現在の状況を改善するためのガイドライン作成や問題点の精査を急務としている。参考1)エクソソーム等に対する日本再生医療学会からの提言(日本再生医療学会)2)幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について(再生医療抗加齢学会)3)エクソソーム 美容目的などに利用 “将来的に規制を”学会提言(NHK)4)エクソソーム治療「規制下が望ましい」学会が提言 死亡例の報告も(朝日新聞)5)幹細胞培養上清液で死亡例 研究者「エクソソームの投与で何かを治したと人で実証された例はない」「身体にリスクも」“若返りや美容効果”うたうクリニックに警鐘(ABEMA TIMES)6.介護職員の待遇改善へ、来年2月から月6,000円の賃上げ決定/政府政府は、介護職員と看護補助者の賃金を2023年2月から月額6,000円引き上げることを含む補正予算を閣議決定した。この措置は、介護分野と他の産業との間で開いた待遇格差を埋め、介護職員の離職を防ぐための措置で、賃上げには関連経費が2023年度補正予算案に盛り込まれ、都道府県を通じて事業所や医療機関に補助される。今回の賃上げは、介護報酬の3年ごと、診療報酬の2年ごとの見直しに先立つ「つなぎ」としての措置であり、来年度の報酬改定で恒久的な賃上げを目指している。厚生労働省によれば、2022年の介護職員の給与平均は29.3万円、看護補助者は25.5万円で、全産業平均(36.1万円)と比べて低く、介護分野では低賃金のために他産業への人材流出が続いており、離職者数が増加している。全国老人保健施設協会の調査では、介護職員の2023年度の賃上げ率は1.42%で、春闘の平均賃上げ率3.58%を大きく下回っている。岸田 文雄首相は、医療介護における賃上げや人材確保を重要な課題として挙げ、「必要な処遇改善の検討を行わなければならない」と述べている。参考1)介護職、月6000円賃上げ 人材流出抑制で-厚労省・補正予算(時事通信)2)介護職員の賃金、来年2月から月6000円引き上げ…離職の歯止め措置で補正予算案に盛り込む(読売新聞)3)コロナ交付金に6,143億円、補正予算案決定 月6千円相当の看護職賃上げへ(CB news

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軽度認知障害および早期認知症患者向けアプリの有用性を評価した

 順天堂大学の浜口 玲央氏らは、ライフクエストが開発した軽度認知障害(MCI)および早期認知症患者向けのスマートフォンアプリケーション「LQ-M/D App」の実現可能性、有用性、潜在的な効果を評価するため、本研究を実施した。Frontiers in Digital Health誌2023年9月12日号の報告。軽度認知障害および早期認知症患者向けアプリ使用患者20例で評価 「LQ-M/D App」は、認知機能、身体運動トレーニング、生活習慣の習得機能およびユーザーエンゲージメントを強化するために、アップデート後に追加された継続性向上機能を有するMCIおよび早期認知症患者向けのスマートフォンアプリケーションである。継続性向上機能としては、トレーニング内容の最適化、疾患教育機能、ファミリーアプリによる家族でのモニタリングの機能が含まれる。 単一施設によるアプリの使用状況、認知機能トレーニングおよび運動トレーニングの実施/中断、アンケート回答、認知機能評価に関するデータをレトロスペクティブに分析した。アプリ使用患者20例のうち、10例はアップデート前のバージョン、残りの10例はアップデート後のバージョンを使用した。 軽度認知障害および早期認知症患者向けアプリの有用性を評価した主な結果と結論は以下のとおり。・軽度認知障害および早期認知症患者向けアプリ「LQ-M/D App」は、効果的に使用されており、継続性向上機能がいくつかの点でアプリ使用にプラスの影響を及ぼすことが示唆された。・アプリの使用状況と認知機能との間に潜在的な関連が示唆されたが、データポイントのばらつきについては、慎重な解釈が求められる。・本研究の限界として、サンプルサイズの小ささ、単一施設試験である点、レトロスペクティブ研究である点が挙げられる。・今後、MCIおよび早期認知症のマネジメントに対する「LQ-M/D App」の有用性についてさらなる評価を行うためにも、より大規模なサンプルを用いた複数施設によるランダム化比較研究を行う必要がある。

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「産業医資格」、超人気の取得講座を受けるには…【実践!産業医のしごと】

産業医を始めるのに必要な資格とは産業医を始めるには、産業医の資格が必要です。最も知られているのは「日本医師会認定産業医」の資格ですが、産業医資格の取得にはそのほかにもいくつかの方法があります。産業医は、医師であり以下のいずれかの要件を備えた者であればよいとされています。産業医の要件(1)厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者(2)産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者(3)労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者(4)大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者この要件だけを見てもわかりにくいですね。結論から言えば、臨床を中心に働いている医師の方が産業医として働きたいと考えたら、日本医師会や産業医科大学が行う研修や講座を受けることをお勧めします。労働衛生コンサルタントは、実務経験を問われることが多く、産業医経験なしで挑むにはハードルが高いでしょう。数年の実務を経て受験するのがよいと思います。産業医資格を取得できる研修・講座について日々の仕事に忙しい医師にとって、自由に休みを取ることは難しく、産業医資格の取得では「研修のためのスケジュールを確保できるか」が一番の重要なポイントです。産業医研修の受講の仕方には、2つのパターンがあります。1)集中研修合宿のような集中研修で、トータル6~7日間(連続または数日間×複数回の分割)に産業医の資格を取得する方法です。短期間で取得できることから、夏休みなどをうまく利用し連続して研修を受ける医師が多いようです。そのようなスケジュールの確保が難しければ、数時間~1日など細かく分けて研修を受講し、必要な単位数を取得していきます。最近では産業医の人気も高まってきており、受講の募集が早期に締め切られてしまう傾向にあるようです。とくに、短期間で集中的に産業医資格を取得する研修は、人気チケットのように、参加枠を確保できるのかが一番の勝負となっています。以下に、短期間で取得できる集中研修を主催している施設を挙げました。スケジュールのめどが付いたら、募集開始初日に申し込むのがよいでしょう。産業医資格の集中研修を行っている施設一覧産業医科大学11月と2月に連続6日間(2023年度の場合)東京医科歯科大学8月頃に連続7日間帝京大学夏期(3日間)、冬期(4日間)の計7日間獨協医科大学8~9月の週末の合計6日間東北大学11月(2日間)、12月(2日間)、1月(2日間)の計6日間岡山大学7月(3日間)、9月(3日間)の計6日間2)産業医学基本講座集中研修以外では、「産業医学基本講座」という、東京と北九州で行われる産業医を体系的かつ集中的に講義と実習で学べる講座があります。たとえば、東京での開講は6~10月の約5ヵ月で、火・木曜日の夜間および隔週土曜日に行われます。受講を修了すると産業医資格の取得はもちろん、労働衛生コンサルタントの筆記試験の免除など多くのメリットがあるため、本気で産業医として働くことを考えている方にはこちらをお勧めします。産業医研修・講座の探し方についてここまでに紹介したように、産業医研修・講座はさまざまな時期や場所で行われるため、目的とする研修を効率よく探すことも重要です。以下のような情報源から受けたい研修を探し、スケジュールを確認して申し込みを行うとよいでしょう。1)日本医師会サイト(研修会検索)日本医師会のホームページから、産業医研修に関する情報を得られます。都道府県や研修種別で検索できるので便利です。2)都道府県医師会サイト医師会の研修会日程は、各都道府県の医師会サイトに記載されています。東京都は、東京都医師会のサイトで詳細を確認できます。3)その他産業医学振興財団や各都道府県の産業保健総合支援センターのサイトでも、産業医研修が案内されています。産業医学振興財団では、メールマガジンを使って財団が開催する産業医研修をタイムリーに知らせてくれます。今回は、産業医資格の取得の仕方について解説しました。先日、日本医師会認定の産業医研修を受けたことを証明する「単位シール」が、フリマサイトで販売されていたことがニュースになりました。産業医研修は、産業医に求められる幅広い知識を効率的に学べる貴重な機会であり、残念な話です。企業の産業医への期待値は高く、産業医の重要性と役割は年々増しています。産業医資格さえあればよかった時代は昔のこと。学んだことは、今後の実務にも役立つものばかりですので、最大限に研修を活用して、価値の高い産業医を目指しましょう。参考産業医について~その役割を知ってもらうために~/厚生労働省

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統合失調症患者のアルコール使用と自殺関連アウトカム~メタ解析

 自殺は統合失調症患者における不自然死の主な原因である。アルコール使用は統合失調症患者の併存疾患として一般的に認められ、自殺に対する修正可能なリスク因子である。英国・マンチェスター大学のLee D. Mulligan氏らは、統合失調症患者におけるアルコール使用と自殺関連アウトカムとの関係を定量的に調査するため、プロスペクティブ研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、統合失調症患者においてアルコール使用は、自殺関連アウトカムと大きく関連していることが示された。Psychological Medicine誌オンライン版2023年10月11日号の報告。 データベース(Medline、Embase、PsycINFO)より、2022年12月までに公表された横断的研究、症例対照研究、縦断的研究を、網羅的なキーワードを用いて検索した。オッズ比(OR)およびハザード比(HR)の算出には、DerSimonian-Laird法の推定による変量効果モデルを用いた。出版バイアス、研究の質の評価も行い、サブグループ解析およびメタ回帰を実施した。 主な結果は以下のとおり。・65サンプルで構成された50研究が適格基準を満たした。・全体として、統合失調症患者におけるアルコール使用は、自殺(OR:1.38[95%信頼区間[CI]:1.21~1.58]、HR:1.32[95%CI:1.00~1.74])、自殺企図(OR:1.69[95%CI:1.45~1.98])、自殺念慮(OR:1.69[95%CI:1.22~2.34])との関連が認められた。・出版バイアスは認められなかったが、自殺企図(I2=39.6%、p=0.01)および自殺念慮(I2=56.0%、p=0.01)の分析では、サンプル間の不均一性が中程度認められた。・サマリーエフェクトは、自殺企図に関する縦断的研究(OR:1.60、95%CI:0.86~3.00)および男女混合サンプルを用いた自殺念慮の研究(OR:1.63、95%CI:0.99~2.67)を除くすべてのサブグループで有意であった。 結果を踏まえて著者らは、「臨床医は、自殺予防の取り組みに焦点を当てるため、メンタルヘルスサービスにおいてアルコール使用を定期的に確認する必要がある」と述べている。

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ピカソ「泣く女」【なんでこれがすごいの?だから子供は絵を描くんだ!(アートセラピー)】Part 1

今回のキーワード器用さ(協調運動)発達性協調運動症イメージ力(概念化)アート・サヴァン(サヴァン症候群)自分語り(社会性)自閉症のこだわり(反復性)創造性自己治癒皆さんは、子供の描く絵を見て、おもしろいと思ったことはありませんか? 大人の常識にとらわれない視点や発想にびっくりさせられることがありますよね。子供はどうやって絵を描くようになるのでしょうか? そもそも私たちヒトはなぜ絵を描くようになったのでしょうか? そして、私たちは絵を見てなぜ心を動かされることがあるのでしょうか?今回は、ピカソの傑作の1つである「泣く女」を取り上げます。シネマセラピーのスピンオフバージョン、「アートセラピー」としてお送りします。この絵を通して、描く能力、描く起源、そしてアートの本質に、発達心理学、進化心理学、比較認知科学、神経美学の視点から迫ります。それらを踏まえて、医療の現場で行われるアートセラピーの効果を一緒に考えてみましょう。子供はどうやって絵を描くようになるの?ピカソの「泣く女」は、まさに子供が描くようなおもしろい絵です。彼は、もともと絵がとてもうまかったわけですが、途中からこのような絵をあえて描くようになりました。それでは、ピカソが注目したように、子供はどうやって絵を描くようになるのでしょうか? ピカソと子供の絵の共通点から、描くために必要な能力(機能)を主に3つ挙げてみましょう。(1)器用さ―協調運動ピカソの「泣く女」の絵は、輪郭がくっきりと描かれています。その太さはまばらで途切れているところもあり、滑らかではないです。よく言えば大胆不敵、悪く言えば不器用です。発達心理学的には、子供は1歳以降にペンで殴りがきができるようになり、2歳半以降に横線、縦線、円の模倣ができるようになります1)。1つ目の能力は、ペンなどで描く線の位置をコントロールする器用さ、つまり協調運動です。子供は自由に線を描くという運動遊びを通して、器用になっていきます。やがて、それが字を書く器用さにつながっていきます。逆に、いつまでも線がうまく描けず、手先が不器用なままの場合は、発達性協調運動症と呼ばれます。比較認知科学の視点では、チンパンジーをはじめ大型類人猿も絵筆で殴りがきができます1)。とくにチンパンジーは、模倣はできませんが、お手本の線に印づけをしたり、塗りつぶすことはできます。このことから、チンパンジーは1、2歳の子供と同じくらいの器用さがあることがわかります。ちなみに、ピカソは、あるチンパンジーの殴りがきの絵をオークションで買い取ってアトリエに飾っていたという逸話があり、インスピレーションのもとにしていたようです。(2)イメージ力-概念化ピカソの「泣く女」の絵は、泣いてくしゃくしゃになった表情と涙にぬれてくしゃくしゃになったハンカチがあえて連続的に描かれています。女性の顔の上半分は正面顔で下半分は横顔で、複数の視点からみたイメージを重ね合わせています(キュビズム)。よく言えば立体的で斬新、悪く言えば視点やイメージが定まっていないです。発達心理学的には、幼児の絵は、顔は真正面を向いているのに横から見た椅子に座っていたり、物が展開図のよう描かれていることがよくあります。人を描こうとすると、胴体がなく、頭からいきなり手足が生えているような絵(頭足人)になります。4歳まで、顔など上下の向きがあるものを逆さまや横向き(回転画)にして描いてしまうこともあります1)。2つ目の能力は、あるものをざっくりとした形で思い描くイメージ力、つまり概念化です。子供は、見たものではなく、知っているものを描くわけですが、絵本などからの模倣学習によって、より特徴や構図を細かく捉えることができるようになっていきます。こうして、子供の絵が、より多くの人が理解できる「普通」の絵になっていくのです。比較認知科学の視点では、ヒトの子供は2歳半以降に目がないチンパンジーの顔の絵に目を描き入れることができるようになります。しかし、チンパンジーはまったくできず、顔の絵の輪郭線をなぞるだけでした1)。このことから、チンパンジーは「ない」ものを認識できない、つまり目や口などの形のざっくりとしたイメージ(概念)がもともと頭の中になく、見たものを丸ごと捉えていることが示唆されます。だからこそ、目の前に他のチンパンジーが何頭いるかの瞬間記憶(映像記憶)において、チンパンジーはヒトよりも長けていることもわかります。逆に言えば、ヒトはチンパンジーよりも瞬間記憶が劣っているわけですが、これは、イメージ力(概念化)を進化させた代償と言えるでしょう。実際に、秀でた瞬間記憶によって写実的な絵を描く「アート・サヴァン」(サヴァン症候群)と呼ばれる人がまれにいます。しかし、彼らのほとんどは、もともと自閉症で、抽象的な話(概念化)ができません。彼らは、概念化の能力と引き換えに、瞬間記憶の能力を手に入れたと捉えることができます。ちなみに、ゾウは鼻で絵筆を持って、花の絵を描くことができます。ただし、これは、ゾウ使いが巧みに耳を引っ張るなどして、そう描くようにトレーニング(連合学習)をしただけであることがわかっています2)。ゾウは、自発的に描いているわけではなく、その絵の形を認識できているわけでもありません。つまり、形のある絵を描くことができるのは、やはりヒトだけであると言えます。(3)自分語り―社会性ピカソの「泣く女」のモデルは、ピカソの愛人の1人です。ピカソは、結婚をして子供がいながら、次々と愛人をつくっていました。この愛人ともう1人の愛人が、ピカソのアトリエで鉢合わせた時の逸話は有名です。ピカソは「どちらがこの場を出ていくかはっきりさせて」とこの2人に迫られるのですが、なんと「君たちが争って決めたらいい」と答えたのです。そして間もなく、彼の目の前で女性同士の取っ組み合いのけんかが始まったのでした。当時ピカソは、戦争を象徴する「ゲルニカ」の制作の真っ最中でした。「ゲルニカ」は、祖国スペインでの戦争だけでなく、自分のアトリエで自分をめぐっての女性同士の戦いも同時に象徴していたとも言えるかもしれません。彼は数年後、また別の愛人にこの時のエピソードを「最高の思い出の1つだったな」と面白がって語っていたのでした。この絵の背景を知れば知るほど、「泣く女」の真実が浮き彫りになってきます。そして、ピカソがいかに自分語りに長けていたのかがわかります。発達心理学的には、4歳以降でエピソード記憶が発達し、たとえば遊園地で家族が手をつないで笑っているワンシーンなど、エピソードの絵を描くようになります。そして、親などに「見て見て」と言うようになります。もちろん、親は「いいねえ」「よく描いたねえ」と褒めます。それは、写真のような正確な事実ではなく、その子が感じたその子にとっての真実です。その絵は親にとって、ピカソの絵と比べることができない宝物になります。3つ目の能力は、自分が見たものを周りに伝えようとする自分語り、つまり社会性です。子供は、ただ描くだけでなく、自分が見たものを絵にして周りと共有しようとするようになります。こうして、ピカソと同じように、絵にストーリー性やメッセージ性という価値が生まれるのです。比較認知科学の視点では、先ほどの目がない顔の絵に目を描き入れる実験において、そもそもチンパンジーは、たとえイメージ力があり目がないことを認識できていたとしても、そもそも「目がないこと(いつもと違うこと)を伝えたい」「足りない目を補って褒められたい」という発想自体がない可能性も考えられます。つまり、絵は、言葉と同じように社会性があることがわかります。逆に言えば、絵は誰かに見てもらうために描くのです。誰かに見てもらうことを想定せずに描く場合は、独り言と同じであり、自閉症のこだわり(反復性)など特殊な精神状態に限られます。次のページへ >>

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