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入院中の高齢者におけるせん妄が長期的な認知症リスクに及ぼす影響

 これまでの研究において、せん妄と認知症との関連性が示唆されているが、その多くは術後環境においての検討である。韓国・亜洲大学のGyubeom Hwang氏らは、幅広いリアルワールドデータを活用し、入院患者におけるせん妄とその後の認知症との関連を評価するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。The American Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2024年8月21日号の報告。 韓国の医療機関9施設より抽出された60歳以上の入院患者1,197万475例を対象に、分析を行った。せん妄の有無を特定し、傾向スコアマッチング(PSM)を用いて比較可能なグループを作成した。10年間の縦断分析を行うため、Cox比例ハザードモデルを用いた。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。すべての結果を集約し、メタ解析を実施した。さまざまなサブグループ解析および感度分析を実施し、各条件における結果の一貫性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1:1のPSM後、せん妄群および非せん妄群で合計4万7,306例がマッチングされた。・両群とも年齢中央値は75〜79歳、女性の割合は43.1%であった。・せん妄群は、非せん妄群と比較し、すべての原因による認知症リスクが有意に高かった(HR:2.70、95%CI:2.27〜3.20)。・認知症サブグループにおいても、せん妄群は、非せん妄群と比較し、認知症の発症リスクが高かった。【すべての原因による認知症または軽度認知障害】HR:2.46、95%CI:2.10〜2.88【アルツハイマー病】HR:2.74、95%CI:2.40〜3.13【血管性認知症】HR:2.55、95%CI:2.07〜3.13・これらのパターンは、すべてのサブグループおよび感度分析において、一貫していた。 著者らは「せん妄は、いずれの認知症タイプにおいてもリスクを有意に高めることが明らかとなった。これらの結果は、せん妄の早期発見および早期介入の重要性を示唆している」とし「せん妄と認知症とのメカニズムを明らかにするためには、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

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病気が潜んでいる“ふるえ”とは

患者さん、それは…ふるえ かもしれません!「ふるえ」とは、医学用語で振戦(しんせん)とも呼ばれます。主に手足、頭、声で起こります。寒さや緊張などのように生理現象で生じるものもあれば、パーキンソン病や本態性振戦という病気が原因で生じるものもあるので、以下のことが該当するか確認してみましょう。●いつ、症状が表れますか?□安静時 □ある一定の姿勢を保持した状態●症状が出るのは、どの部位ですか?□手指□声(のど)□頭部□動作時(箸やペンを持つ…)□顔面□足□体幹◆ある病気が潜んでいる“手のふるえ”は…• 安静時に手がふるえれば、パーキンソン病を疑います• 手のふるえで字がうまく書けないときは、本態性振戦であることが多いです• 甲状腺機能亢進症や尿毒症を発症していると、手がふるえます出典:今日の治療指針2020、MSDマニュアルプロフェッショナル版_振戦監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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患者満足度向上対策をクリニックの6割が実施/医師1,000人アンケート

 クリニックや病院などの医療機関を受診する際、どのような基準で選択するのだろう。いつもの「かかりつけ医」ならともかく、新しい医療機関を受診する場合、最近では、WEB上での「口コミ」なども参考にしている患者さんも多い。医療機関、とくにクリニックなどでは、この口コミを良くするために、さまざまな対策を実施している。そこで、今回0~19床に所属する会員医師1,000人に自院の患者満足度向上対策やその課題について聞いた。患者満足度向上の対策を行っているクリニックは6割弱 質問1で「自院で患者満足度を向上させる対策を実施しているか」(単回答)を聞いたところ、全体回答で「している」が58%、「していない」が42%と約6割弱のクリニックで患者満足度向上対策の実施を行っていた。年代別では、40代(66%)が1番多く実施し、60代以上(52%)で1番少なかった。 質問2で「実際に行った『診療に関する対策』」(複数回答)を聞いたところ、全体回答で「病状説明をわかりやすくする」(497人)、「急患への積極的な対応」(495人)、「予約制の実施」(430人)の順番で回答が多かった。 年代別では、20・30代では「急患への積極的な対応」、40代では「予約制の実施」、50代と60代以上では「病状説明をわかりやすくする」が1番多かった。目下の悩みは「人不足」、「患者満足度をはかる尺度がないこと」など 質問3で「実際に行った『診療以外の対策』」(複数回答)について聞いたところ、全体回答で実施していることは「自院サイト開設とこまめな更新」と「トイレなど診療室以外の清掃の徹底」(229人)が同順位で多く、次に「患者用の駐車場スペースの確保」(218人)が多かった。また、「していない」(380人)が全体数では1番多く、診療以外の対策は積極的にされていないことがわかった。そのほかの対策では「院内処方」や「カフェの開設」などの対策がされていた。 年代別では、20・30代、40代、50代では「自院サイト開設とこまめな更新」、60代以上では「トイレなど診療室以外の清掃の徹底」が実施項目で1番多かったが、「していない」が全年代を通じて1番多かった。 質問4で「満足度向上対策で苦労した・していること」(複数回答)について聞いたところ、全体で「とくにない」(398人)、「担当人員の不足」(193人)、同順位で「患者満足度をはかる尺度がない」「どの程度(期間や資金など)まで対策を講じればいいかわからない」(181人)の順で多かった。そのほかの項目では「ネットが使えない高齢者の問題」や「医師側の教育」などが課題として挙げられていた。 年代別では、全年代に共通して「とくにない」が1番多く、「患者満足度をはかる尺度がない」が次に共通して多かった。 質問5で「患者満足度対策に関連して印象深いこと・忘れられないことなど、エピソード」(自由回答)を聞いたところ以下のような回答が寄せられた(一部抜粋)。【実際に実施した/している患者満足度向上対策】・定期的なアンケート調査で患者意向を確認している〔小児科/50代〕・待合室での混み方で椅子の配置を変更した〔内科/50代〕・多くの患者さんは自身や家族のことなどの情報を話したがっているので、時間があれば傾聴する〔腎臓内科/70代〕・足に手が届かない高齢女性の足爪処置などはやってあげるとすごく喜ばれる。患者満足度向上には役立つ〔内科/60代〕【患者さんからの厳しい評価】・発熱外来で時間外や事前電話なしで来院する若い患者さんからGoogleの口コミで苦情を書かれる〔呼吸器内科/40代〕・身に覚えのないことで、口コミで低評価をつけられる〔皮膚科/50代〕【今後の課題】・待合室に病気に関する冊子やパンフレットを数種類置いても、来院者のほとんどが持っていかない〔内科/60代〕・長年通院し、良好な関係を保っていたと思っていた患者さんが突然他院に通院したりすると、何が不満だったのかわからなくなる〔内科/60代〕アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師1,000人アンケート クリニックの患者満足向上対策について

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日本人治療抵抗性うつ病に対するケタミン治療の有用性~二重盲検ランダム化比較試験

 治療抵抗性うつ病(TRD)に対しケタミンが抗うつ効果をもたらすことは、北米や欧州各国から頻繁に報告されているが、アジア人患者におけるエビデンスは、これまで十分ではなかった。慶應義塾大学の大谷 洋平氏らは、日本人TRD患者におけるケタミン静脈内投与の有効性および安全性を評価するため、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2024年8月30日号の報告。 TRDの日本人患者34例を対象に、ケタミン群(0.5mg/kg)またはプラセボ群にランダムに割り付け、2週間にわたり週2回、40分間静脈内投与を行った。主要アウトカムは、ベースラインから治療終了までのMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアの変化とした。副次的アウトカムは、その他のうつ病症状スコア、寛解率、治療反応率、部分反応率などであった。また、ベースライン時の臨床人口統計学的特性とMADRS合計スコアの変化との関連も調査した。 主な結果は以下のとおり。・ITT解析では、両群間でMADRS合計スコアの減少に有意な差は認められなかったが(−8.1±10.0 vs.−2.5±5.2、t [32]=2.02、p=0.052)、per-protocol解析では、ケタミン群はプラセボ群よりも、MADRS合計スコアの有意な減少が認められた(−9.1±10.2 vs.−2.7±5.3、t [29]=2.22、p=0.034)。・その他のアウトカムは、両群間で差は認められなかった。・ケタミン群はプラセボ群よりも有害事象の発現が多かったが、重篤な有害事象は報告されなかった。・ベースライン時のMADRS合計スコアが高い、およびBMIが高い場合、MADRS合計スコアの減少は大きかった。 著者らは「日本人TRD患者において、ケタミン静脈内投与は、プラセボよりも優れており、多様な民族におけるTRD患者の抑うつ症状軽減に対するケタミンの有用性が示唆された」と結論付けている。

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ケサンラ点滴静注液が早期アルツハイマー病治療薬として承認/リリー

 日本イーライリリーは9月24日付のプレスリリースにて、同日に厚生労働省より、早期アルツハイマー病(AD)治療薬「ケサンラ(R)点滴静注液350mg」(一般名:ドナネマブ)について、「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」を効能又は効果として、日本における製造販売承認を取得したことを発表した。ケサンラは早期AD治療薬として国内2製品目の承認 ケサンラは、アミロイドβプラークを標的とする早期AD治療薬だ。既承認のエーザイのAD治療薬「レケンビ点滴静注」(一般名:レカネマブ)に続く抗アミロイドβ抗体薬で、国内2製品目の承認となる1)。4週間隔で、少なくとも30分以上かけて点滴静注することにより、脳内に過剰に蓄積したアミロイドβプラークを除去する。本剤は、アミロイドPET検査によりアミロイドβプラークの除去が確認された時点で投与を完了する(アミロイドβプラークの除去が確認されない場合であっても、本剤の投与は原則として最長18ヵ月で完了する)。本剤の投与完了により、当事者および介護者の身体的、精神的な負担を軽減することが期待される。 ケサンラは、8ヵ国の1,736例が参加した第III相二重盲検プラセボ対照試験「TRAILBLAZER-ALZ 2試験」2)の結果に基づいて承認された。本試験では、アミロイドβ病理を示唆する所見が確認された60~85歳の早期AD患者を対象に、参加者を無作為に2群に分け、一方にはケサンラを(860例)、もう一方にはプラセボを(876例)、4週間隔で72週間静脈内投与し、安全性および有効性を評価した。参加者は、アミロイドβプラークがアミロイドPET検査の視覚読影で陰性と判定される最も低いレベルまで除去されたことが確認された場合、ケサンラの投与を完了し、残りの試験期間をプラセボ投与に切り替えた。 ケサンラの安全性および有効性を評価した主な結果は以下のとおり。・早期ADの中でもより早い段階にある参加者1,182例(脳内タウ蓄積レベルが軽度~中等度、MMSEスコア平均値約23)と、より進行した段階にあることを示す脳内タウ蓄積レベルが高度の参加者を含む参加者全体(MMSEスコア平均値約22)を、ケサンラ群とプラセボ群に分けて解析した結果、両集団ともにケサンラ群において、臨床症状の悪化が有意に抑えられた。・脳内タウ蓄積レベルが軽度~中等度の参加者のうち、ケサンラ群では、認知機能と日常生活機能を総合的に評価する統合AD評価尺度(iADRS)において、プラセボ群と比較して35%の有意な進行抑制が認められた。・高度のタウ蓄積を有する患者を含めた参加者全体においても、ケサンラ群のiADRSでは、プラセボ群と比較して22%の有意な臨床的進行抑制が認められた。・タウ蓄積レベルが軽度~中等度の参加者では、ケサンラ群においてプラセボ群と比較して、次の臨床病期に進行するリスクが39%低下した。・本試験に参加した日本人集団でも、参加者全体と同様の結果が確認された。・ケサンラ群において、アミロイドβプラークが試験開始時と比較して6ヵ月で平均61%、12ヵ月で平均80%、18ヵ月で平均84%減少した。・試験開始から12ヵ月後、ケサンラ群の66%において、アミロイドPET検査の視覚読影で陰性に相当するアミロイドβプラークの除去が確認された。・アミロイドβを標的とする治療に共通する副作用であるアミロイド関連画像異常(ARIA)のうち、ARIA-Eがケサンラ群の24.0%に発現し、症候性のARIA-Eがケサンラ群の6.1%に発現した。Infusion reactionは、ケサンラ群の8.3%に発現した。【製品概要】商品名:ケサンラ(R)点滴静注液350mg一般名:ドナネマブ効能又は効果:アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制用法及び用量:通常、成人にはドナネマブ(遺伝子組換え)として1回700mgを4週間隔で3回、その後は1回1,400mgを4週間隔で、少なくとも30分かけて点滴静注する。用法及び用量に関連する注意(添付文書から一部抜粋):本剤投与中にアミロイドβプラークの除去が確認された場合は、その時点で本剤の投与を完了すること。アミロイドβプラークの除去が確認されない場合であっても、本剤の投与は原則として最長18ヵ月で完了すること。【副作用について】 ARIAは、多くは無症状のため、定期的な核磁気共鳴画像(MRI)検査によって検出する。発生した場合は、脳の一部または複数の領域の一時的な浮腫として発現することがあるが、通常は時間の経過とともに消失する。脳の表面や脳内の小さな出血として認められることもあり、より広範囲な脳の領域で出血が起こることもある。ARIAは、まれに重篤となり、生命を脅かす事象となる可能性もある。本剤の投与により、アナフィラキシーを含むinfusion reactionsを起こす可能性があり、中には重篤で生命を脅かすこともある。これらが起こる場合は通常、投与中または投与後30分以内に発現する。副作用の1つとして、頭痛も多く報告されている。

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初発統合失調症患者の約40%が治療抵抗性の可能性あり

 初回エピソード統合失調症(FES)患者における治療抵抗性統合失調症(TRS)の有病率は、国際的およびオーストラリア国内で十分に調査されていない。オーストラリア・Graylands HospitalのMirza Detanac氏らは、FES患者コホートにおけるTRSの有病率を評価し、TRS患者の社会人口学的および臨床的特徴について、治療反応が認められたFES患者との比較を行った。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年8月28日号の報告。 2020年10月、西オーストラリアの早期精神疾患介入サービス(EPIS)4施設において、統合失調症と診断されたすべての患者(ICD-10)の人口統計学的、臨床的、治療関連のデータを2年にわたり収集した。TRSの診断には、慶應義塾大学の鈴木 健文氏らが2012年に報告したTRSの修正版診断基準を用いた。データ分析は、記述統計、マン・ホイットニーのU検定、Studentのt検定、False-Discovery Rateモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・FESと診断された167例におけるTRSの有病率は41.3%であり、EPIS間で差は認められなかった(p=0.955)。・TRS患者は、治療反応が認められたFES患者と比較し、自立度が低く(p=0.011)、失業期間が長く(p=0.014)、障害年金受給者になる可能性が高かった(p=0.011)。・さらに、症状がより重症であり(p=0.002)、精神症状の持続期間が長く(p=0.019)、入院回数が多く(p=0.002)、累積入院期間が長かった(p=0.002)。 著者らは「EPISでマネジメントされているFES患者では、抗精神病薬に対する治療抵抗性を示す患者の割合が、非常に多いことが明らかとなった。とくに、TRSと臨床的重症度の上昇、心理社会的および治療上の負担との関連性が確認された。これらの結果は、TRSの早期発見と、精神保健サービスにおけるTRSに対するよりタイムリーな専門的介入の必要性を浮き彫りにしている」と結論付けている。

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これでイノカ(INOCA)?これでいいのだ!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第76回

狭窄や閉塞のない原因不明の胸痛「本当に胸が痛いんです」外来の診察室で患者さんが話します。他病院を受診していたのですが、経過が思わしくなく当方を受診されたようです。「○○病院の循環器内科のお医者さんは、相手にしてくれないんです。本当に痛みがあるのに、心療内科に紹介するというのです。神経質だからとか、不安症だからという訳ではないんです。本当に胸が痛いんです。悔しいやら、情けないやら、先生、助けてください」患者は50歳の女性で、3ヵ月前から始まった胸痛を主訴に来院しました。胸痛は主に運動時に出現し、階段の上り下りや家事中に誘発されるそうです。前胸部に鈍痛として感じられ、締め付けられるような感覚を伴います。痛みは夜間にも現れることがあり、数分から10分程度持続します。全体的に疲れやすく、活動時に息苦しさもあるとの訴えです。○○病院を受診し、初診時の心電図や心エコーでは明らかな異常は認められませんでしたが、狭心症の疑いがあるからとの説明で心臓CT検査を受けました。その結果、冠動脈に狭窄や閉塞はなく大丈夫と言われたそうです。心臓CTを受ける前に、もし冠動脈に詰まりかけている部位があれば、入院してカテーテル治療が必要かもしれないと説明を受けたとのことでした。この時点までの医師の対応は、優しく患者に寄り添い、訴えにも親身に耳を傾けてくれたそうです。ところが、冠動脈に狭窄病変がないと結果が判明したときから、医師の対応が冷たくなり、症状を訴えても相手にしてくれなくなりました。近年注目されるINOCAこの患者さんのように、原因不明とされる胸痛に悩まされている方は、実は多く存在します。注目を集めている病態があります。目視できるサイズの冠動脈に閉塞や狭窄がない狭心症という意味で、虚血性非閉塞性冠疾患(Ischemic Non-obstructive Coronary Artery disease)といい、スペルの頭文字からINOCAと略され、「イノカ」と発音します。高血圧・糖尿病・脂質異常症などの動脈硬化リスクの高い患者では、冠動脈に明らかな閉塞・狭窄がみられます。一方で、動脈硬化リスクが低い患者では冠動脈が正常にみえることから、検査をしても異常なしとされることが多くありました。近年、INOCAを診断するための新しい検査機器が開発され、今まで診断することができなかった原因不明の胸痛に対する確定診断の道筋ができたのです。従来法の冠動脈造影検査が正常であっても、本当は心臓が血流障害のために悲鳴を上げている病態です。詳細は述べませんが、冠攣縮性狭心症や微小血管狭心症の可能性があります。微小血管狭心症とは、肉眼では見えない髪の毛ほどの太さ(100μm以下)の微小な冠動脈の動脈硬化や拡張不全、収縮亢進のために胸痛が生じるのです。この患者さんの場合、専用のカテーテル検査機器と解析ソフトを用いて微小血管の血流や抵抗値を測定し、微小血管狭心症の診断が確定しました。その病態に応じて内服薬を調整し、胸痛から開放されました。難しい症例は共感が薄れる?この例を通じて多くの考えることがありました。診断が難しい、あるいは治療が困難な症例に直面すると、医師は精神的な負担を感じやすくなります。これにより患者に対する対応が冷たくなったり、共感が薄れたりするのです。治療が順調に進み見通しが良い場合に、より共感的に対応することは簡単です。反対に、診断がつかない、治療の見込みがない場合には、距離を置いてしまう傾向があります。紹介した症例で最初に対応した○○病院の循環器内科医を責めている訳ではありません。医師であれば、誰でも思い当たる感情の揺らぎなのです。また「後医は名医」というように、情報が集約された時間的に後から診療する医師のほうが優位な立場にあることは明白です。とはいえ、どのような状況でも心の平静を保ち、フラットに対応できる精神力を維持することの大切さを学んだのでした。自分は、INOCAの症例に出会うたびに自問自答する呪文があります。「これでイノカ?」カンファレンスの場で声に出すと恥ずかしいので、心の中で唱えます。「これでいいのだ!」ご存じのように、バカボンのパパのあまりにも有名な決めセリフです。ザ・昭和のギャグアニメの主人公にして、私も最も敬愛する人物であるバカボンのパパは、バカ田大学を主席で卒業し、定職に就かず「これでいいのだ!」を合い言葉に、日々楽しく自由に生きる男です。美人の妻と、バカボンとはじめちゃんという2人の息子がいます。バカボンのパパの名言を紹介します。「わしはバカボンのパパなのだ。わしはリタイヤしたのだ。すべての心配からリタイヤしたのだ。だからわしは疲れないのだ。どうだ、これでいいのだ。やっぱり、これでいいのだ」バカボンという名前の由来は、サンスクリット語の仏教用語「薄伽梵(ばぎゃぼん)」という言葉という説もあるそうです。「これでいいのだ」は、お釈迦さまの「すべてをありのままに受け容れる」という悟りの境地に到達していることを示す言葉なのです。話が脱線したようですが、患者さんの訴える症状を否定することなく受け容れることが、INOCAの診断の鍵であることは間違いありません。「これでイノカ? やっぱり、これでいいのだ!」

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アニメ「インサイド・ヘッド2」(その2)【なんで不安やうつは「ある」の?どうすれば?(病的感情)】Part 1

今回のキーワード不安うつ偏桃体パニック発作ストレス関連成長(SRG)思春期危機自己イメージの安定「蛙化現象」前回(その1)に、映画「インサイド・ヘッド2」を通して、社会的感情の機能とその起源を解き明かしました。とくに、不快感情である恥ずかしさと悔しさ、相対的な不快感情であるうらやましさとねたましさは、ストレス反応として積み重なると、不安やうつなどの病的感情に発展します。それでは、そもそもなぜ病的感情は「ある」のでしょうか? そして、とくに不安が「暴走」したら、どうなるのでしょうか?今回(その2)は、再びこのアニメ「インサイド・ヘッド2」に登場する「大人の感情」のキャラクターから、この病的感情の機能とリスクを解き明かします。そして、より良い感情との付き合い方を一緒に考えてみましょう。病的感情の機能とは?それではまず、残りの2つの「大人の感情」のキャラクターの特徴を通して、病的感情の機能をまとめてみましょう。(1)シンパイ―不安シンパイは、細見でオレンジ色。大きな口をワナワナさせ、頭のてっぺんに伸びた傷んだ髪の毛は、すり減った神経のようです。シンパイは、「目に見える危険なものから守る」のが基本感情のビビリであると説明し、「(それに対して)私の役割は、まだ見えてない危険なものから守ること。未来を考えて計画を立てる」と自己紹介します。確かに、細見の体格はビビリと似ています。シンパイは「良くないことが起きた時のために、心の準備をしとかなきゃいけないの」と言います。1つ目の病的感情は、「心配性」「神経質」とも言い換えられる、不安です。たとえば、シンパイは、ライリーをヴァルたちと仲良くさせるために、逆にもともと仲良しだった2人を遠ざけます(回避)。試合で認められるために、朝練で同じシュートの練習を繰り返させます(強迫)。また、ヴァルたちに気に入られるために、好かれそうな曲やバンドの名前を思い出させようとします(同調)。このように、不安は、身を守り、地位(縄張り)を守り、周りに合わせる働きがあります。これが、不安の心理の機能です。不安は、感情でありながら、認知(思考)面にも大きな影響を与えていることがわかります。だからこそ、シンパイは「大人の感情」のキャラクターたちを率いているのです。なお、不安の起源の詳細については、関連記事1をご覧ください。(2)ダリィ―うつダリィは、くすんだブルーグレイ。けだるい様子で、いつもソファに寝転がり、だらだらスマホをいじっています。最初はこのキャラクターの役割がはっきりしません。もう1つの病的感情は、「無気力」「倦怠感」とも言い換えられる、うつです。たとえば、その後、ヴァルたちに気に入られるために、幼稚だと思われたバンドをライリーにわざと「大大だーい好き」と皮肉っぽく言わせます(マイナス思考)。そして、その1で説明した社会的感情である、さげすみを掛け持ちしているとも言えます。また、親の前では、ライリーを不機嫌でだるそうにさせます(反抗)。さらに、今回の映画では描かれていませんでしたが、一番の役割は、がんばりすぎたあとに脳を一定期間休ませることです。そもそも本来は弱っているからこそ、消極的になり、マイナス思考に陥るのです。これらが、うつの心理の機能です。なお、うつの心理の起源の詳細については、関連記事2をご覧ください。実はシンパイとダリィは表裏一体映画では、シンパイとダリィの2つの「大人の感情」のキャラクターが病的感情として登場していました。確かに、精神医学的にも、不安とうつとして分類します。ただ、脳科学的には、これらは同じく、脳の中にある感情中枢(扁桃体)が、不快感情(ストレス)によって過活動になり、動悸などの自律神経を亢進させている状態です。例えるなら、不安は、朝に遅刻しそうになって、最寄り駅まで全速力で走っている時のような、「脳の爆走」です。一方、うつは、その途中で息が上がっていったん動けなくなっている時のような、「脳の息切れ」です。この時、同じく、脳内のある神経伝達物質(セロトニン)が働きにくくなっています。つまり、一見真逆に見えて、その根っこは同じである点で、シンパイ(不安)とダリィ(うつ)は表裏一体と言えるでしょう。次のページへ >>

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アニメ「インサイド・ヘッド2」(その2)【なんで不安やうつは「ある」の?どうすれば?(病的感情)】Part 2

シンパイが暴走すると?―病的感情のリスクシンパイは、「もう、ライリーにヨロコビたちは必要ない」と言い出し、なんと司令部からヨロコビたちを追放します。そして、ライリーが生まれてからヨロコビたちが大事に育ててきた「私はいい人」というジブンラシサの花を引っこ抜きます。そして、シンパイたち「大人の感情」のキャラクターたちだけで、ライリーの感情をコントロールしようとするのです。やがてシンパイは、「未来をしっかり見据える。起こりうるミスを全部予想しておくよ」と言い出し、次々と最悪のシナリオの映像を映し出して、ライリーに想像させます。すると、ライリーは「私は全然だめ」という心の声が聞こえるようになり、夜寝つけなくなります。そして、夜にこっそりコーチの部屋に忍び込み、コーチの評価ノートをのぞき見します。ライリーは、不安のあまり善悪の判断がつかなくあり、打算的になっていくのでした。さらに、次の日の試合中に、不安に飲み込まれてしまい、過呼吸の発作(パニック発作)を起こしてしまうのです。これは、「脳の暴走」です。ちょうど、シンパイがあまりにも動き回るため、感情操縦デスクの周りにできたオレンジ色の大きな渦巻きとして描かれていました。その中では、シンパイが固まって動けなくなり、点滅していました。このままでは、このあとに「脳の息切れ」である、うつがやってきて、ぐったりとして動けなくなりしばらく何もできなくなることを暗示しています。つまり、ダリィの出番になりそうです。これらが、不安とうつという病的感情のリスクです。なんでシンパイは暴走したの?シンパイは、暴走する前に、「大事なのは、これまでのライリーがどうであるかよりも、これからのライリーがどうなるべきかなんだよ」「ライリーの将来のために、彼女は変わらなければならない」と言っていました。つまり、思春期とは、単に自分がどうしたいかだけでなく、周り(社会)がどうしてほしいかも意識する時期です。自分が自分のことをどう感じているかだけでなく、相手(社会)が自分のことをどう感じているかも重要になってきます。そんななか、仲良しだった2人の親友が違う高校に行くと聞かされて裏切られたと感じたこと、その2人に当てつけで無視したり皮肉を言ってしまったこと、そして念願のアイスホッケーのチームに入れるかどうかの試練に直面していることなどが重なって、大きなストレスになっています。これが、シンパイが暴走した原因です。ここで誤解がないようにしたいのは、私たちはこれらのストレスはないに越したことはないと思いがちですが、実はむしろ必要です。これらのストレスがあるおかげで、思春期の子供は、これらのストレスを乗り越えて自己成長するからです。これは、ストレス関連成長(SRG)と呼ばれています。ただし、これらの思春期のストレスを乗り越えられずに、過呼吸を繰り返したりだるさが続く場合があります。これは、思春期危機と呼ばれています。その原因は、大きく2つあります。1つは、いじめなどのようにストレスが大きすぎる場合です。もう1つは、不安を感じやすいなど、もともとストレスに弱い場合です。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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アニメ「インサイド・ヘッド2」(その2)【なんで不安やうつは「ある」の?どうすれば?(病的感情)】Part 3

本当のジブンラシサの花とは?ヨロコビたちが感情操縦デスクにようやく戻ってきたあと、ヨロコビはオレンジ色の感情の渦巻きの嵐の中で固まっていました。ヨロコビは、何とかシンパイをデスクから引きはがします。そして、もとのジブンラシサの花を戻します。しかし、シンパイから「ヨロコビの言う通りだよ。ライリーらしさは私たち感情が決めるものじゃない」と言われて、ヨロコビはハッとします。そして、さっき戻したばかりの花をまた引っこ抜くのです。すると、もともとジブンラシサの花が栄養源としている地下の「信念の泉」に流れ着いていた無数のさまざまな記憶のボールから、まるで芽のように光がどんどんと出ていき、新しいジブンラシサの花が現れるのです。そして、ライリーの心の声が頭の中に次々と響いていきます。「私はわがまま」「私はやさしい」「私は全然だめ」「私はいい人」…「私は強い」「私は弱い」「私は助けてもらいたい時もある」と。最後、ヨロコビは、新しいジブンラシサの花を抱きしめ、他の感情のキャラクターたちも次々と集まって抱きしめます。このシーンは感動的です。ジブンラシサの花とは、まさに自分らしさのメタファーであり、心理学では自我と呼ばれます。自分らしさとは、「私はこうだ」という自分に納得していることなのですが、実はそれは1つの「私」の良い面ではなく、だめなところも含めたいろいろな「私」の面をすべて受け入れるということなのです。すると、自分を大切に思えて、自分は大丈夫と思えてきます。自分は愛されるために完璧である必要はないと気付いていきます。それを、感情のキャラクターたち全員がジブンラシサの花をそのまま丸ごと全員で抱きしめるシーンとして、わかりやすく描いています。このように自分は完璧である必要はない、良いところもだめなところも含めてこれが自分だと思えることは、自己イメージの安定と呼ばれています。すると、やがて相手に対しても完璧であることを求めなくなります。良いところもだめなところも含めてこれが相手だと思えることは、他者イメージの安定と呼ばれています。こうして、相手も愛するために完璧である必要はないと気付き、相手も大切に思えるようになるのです。逆に言えば、自己イメージが安定していないと、相手に完璧さを求めてしまいがちになります。相手を理想化して、その後にちょっとでも違っていると幻滅することを繰り返してしまいます。これは、思春期の恋愛における「蛙化現象」を説明できます。「インサイド・ヘッド2」とは?「インサイド・ヘッド2」のキャッチフレーズは「どんな自分もまるごと好きになる」であり、テーマは「自分自身を受け入れる」でした。ラストシーンで、感情のキャラクターたちが、ジブンラシサの花をみんなで抱きしめたことで、過呼吸になっていたライリーは、その後に落ち着きます。そしてすぐに、もともと仲良しだった2人に謝り、仲直りします。そして、その後は、ホッケーの試合を心から楽しむのでした。彼女は、本来の自分らしさを取り戻し、さらに成長したのでした。自我とは、思春期になると、ヨロコビたち(基礎感情)が最初に主導したように「ただ自分はこうしたい」と好きに思うことではなく、シンパイたち(社会的感情)が主導したように「こうなるべき」と無理に思い込んだり損得勘定に走ることでもなく、「社会の中でこうしていきたい」と自然に自覚するようになることです。この先が、自我の確立です。そして、何より、その自我によって日々の人生を楽しむことでしょう。今回は、思春期になったライリーの成長を、感情のキャラクターたちと一緒に私たちも見守る構図になっています。世界中の親子にとっての普遍的な物語であり、思春期の子供に接する親だけでなく、まさに思春期の子供たちが自分の気持ちを俯瞰することにも役立つでしょう。<< 前のページへ■関連記事アニメ「インサイド・ヘッド2」(その1)【なんで恥ずかしくなるの?なんで恥ずかしさは「ある」の?(社会的感情)】Part 1ウォーキングデッド【この世界観だからこそわかる!「コロナ不安」への処方せん】ツレがうつになりまして。【うつ病】

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炭水化物カロリー比が高いとうつ病リスク上昇

 うつ病は、世界的に重大なメンタルヘルスの課題の1つである。中国・四川大学のYifei Tan氏らは、うつ病と炭水化物摂取カロリー比(CRC)との関連を明らかにするため、大規模な横断的研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年12月号の報告。 2005〜20年のNHANESデータベースのデータを用いて、Rプログラミング言語によりデータ分析を行った。うつ病の評価には、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。CRCは、総炭水化物摂取量の4倍を総カロリー摂取量で割ることにより算出した。CRCとうつ病との関連を調査するため、多変量ロジスティック回帰モデルおよび回帰スプラインモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・参加者データ9,254例中、1,530例がうつ病と診断された。・CRCが高く、54.1%(人口レベルの第4四分位[Q4])超の場合、抑うつ症状レベルが上昇した。・調整済み多変量ロジスティック回帰モデルでは、人口レベルの第1四分位(Q1)と比較し、Q4ではうつ病レベルが高く、うつ病リスクが高く、うつ病が人生に及ぼす影響が大きかった。【うつ病レベルが高い】β=0.5102、95%信頼区間(CI):0.2419〜0.7784、p=0.0002【うつ病リスクが高い】ハザード比(HR)=1.3380、95%CI:1.1331〜1.5812、p=0.0006【うつ病が人生に及ぼす影響が大きい】HR=1.5133、95%CI:1.1656〜1.9746、p=0.0020 著者らは「米国成人において、CRCが高いほど、抑うつ症状の可能性が有意に高まることが示唆された」と結論付けている。

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小児のPTSDに対する心理療法でトラウマの影響が軽減

 小児および青年における心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対するトラウマ関連のネガティブな影響の評価の重要性が、これまでの研究で示唆されている。PTSDの認知モデルでは、治療メカニズムがこれらの評価の軽減に有用であるといわれている。英国・イースト・アングリア大学のCharlotte Smith氏らは、PTSDに対する心理療法が、小児および青年のトラウマ関連のネガティブな評価をどの程度軽減するかを調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Behaviour Research and Therapy誌2024年11月号の報告。 2022年12月11〜12日に、4つのデータベース(PsycINFO、Medline Complete、CINAHL Complete、PTSDpubs)より検索を行った。バイアスリスクを評価するため、ROB-2評価ツールを用いた。 主な結果は以下のとおり。・本レビューには、13研究、小児および青年937例を含めた。・ランダム効果モデルを用いたメタ解析では、現在の治療法がトラウマ関連の評価に及ぼす影響は、統合エフェクトサイズが中程度であることが示唆された(g=−0.67、95%信頼区間:−0.86〜−0.48)。・研究間の異質性は中程度であり(I2=44.4%)、これらの結果を解釈するうえで、信頼性は向上した。 著者らは「レビューに含まれた試験のすべてが、バイアスリスクが低いと分類されなかったことに留意する必要はあるが、本結果は、小児および青年のPTSDに対する心理療法は、トラウマ関連のネガティブな評価を有意に軽減することを示唆している」としている。

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脳を使ってしゃべることができる未来が来る(解説:岡村毅氏)

 ブレイン・コンピュータ・インターフェースが注目を集めている。映画「マトリックス」などでも扱われており、ご存じの方も多いだろう。イーロン・マスク氏も「ニューラリンク」という会社を立ち上げている。 この論文は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者の脳の表面に電極を設置し、口を動かして発語しようとする電気活動を検出し、それを音声化することに成功したというものである。 米国・カリフォルニア大学のYoutubeで動画を見ることができるが、衝撃的そして感動的である。 2つの点からコメントする。 1つはALSの患者にとって福音となるという点である。 ALSは、運動神経の変性により、徐々に体が動かなくなり、呼吸や発語もできなくなるという疾患である。患者は考えることはできる、しかし、話そうとしても、話すために体を動かす神経系が障害を受けている。今この瞬間にも、考えたり、悩んだり、喜んだりすることはできる、しかし体はまったく動かないという状態の人がいることに思いをはせなければならない。 意識清明なのに体が動かないこと、コミュニケーションが困難であること、不本意な身体介護を受けなければならない可能性などのため、ALSの患者はしばしば耐え難い苦痛を持つ。このためALSはいわゆる「安楽死」の文脈で出てくる。社会的には安楽死が許されうるのは(1)耐えがたい肉体的苦痛、(2)死期が迫っている、(3)苦痛緩和が尽くされ代替手段がない、(4)患者の意思表示、の4つとされている(抜粋、1995年横浜地裁)。日本では「安楽死」などとお茶を濁して言うが、海外では、医師による自殺幇助(Physician-assisted suicide:PAS)が実際に行われてきた。近年はPASと積極的安楽死も含めて許容する国や地域が広がっていることを医療者は知っておくべきだろう。なお、映画監督のジャンリュック・ゴダール氏も2022年にPASで旅立った。 覚悟を持ってスイスなどの海外に渡り、自らの人生を終わらせる人のことがしばしば報道されるが、ALSの患者が多い。この問題では、「自らの人生を自己決定することは人権」という主張と、「これを許すと社会が弱い人を死に追いやる滑り坂になる」という主張が真っ向から対立している。これについて私は立場を表明しない。 ただ、医療者としては希望を語りたいものだ。本研究のように、しゃべれるようになる未来が見えてきた。あるいは最近もアクセプタンス&コミットメントセラピーという心理療法が効果的だという結果1)も出ている。ALSに関しては、対立の前提も常に変わり続ける。 2つ目は、心の中が見られてしまうのではないか、という危惧についてである。 心の中が見られているのではないか(厳密には自己と他者の境界があいまいになっているのではないか、筒抜けになっていないか)というのは、統合失調症の古典的症状である。この研究から、そのような危惧を持つ向きもあるかもしれない。 しかし、本研究は、話そうとして口周りを動かそうとする脳神経の動きを検出しているに過ぎない。SF映画のように脳の中から「概念」を検出しているのではないことに注意しよう。これを読んでいる人が生きているうちは、そのような荒唐無稽なことはできないだろう。あなたの考えや思考がもし外に取り出せたら、それはもはやあなたではない。単に口の動きを脳内から外の世界に出すことが可能になりつつあるのが人類の現在地だ。

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不眠症と心血管リスクとの関連~メタ解析

 不眠症と心血管疾患(CVD)との関連性は、観察研究により示唆されているが、その原因やメカニズムは明らかになっていない。中国・The First Affiliated Hospital of Xinxiang Medical UniversityのXuejiao Zhang氏らは、不眠症とCVDの潜在的な因果関係を調査するため、システマティックメタレビューおよび観察研究のメタ解析とメンデルランダム化(MR)研究を組み合わせて分析を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2024年8月21日号の報告。 2023年7月11日までに公表された英語論文をPubMed、Web of Science、Embaseより検索した。独立した2人の査読者により論文をスクリーニングし、潜在的なバイアスを最小限に抑えた。観察研究のメタ解析とMR研究により、不眠症と冠動脈疾患(CAD)、心房細動(AF)、心不全(HF)、心筋梗塞(MI)、高血圧(HTN)、脳卒中との関連性を評価した現在のエビデンスをまとめた。 主な結果は以下のとおり。・最終的な分析には、観察研究のメタ解析4件、MR研究9件を含めた。・観察研究のシステマティックメタレビューにより、不眠症は、AF、MI、HTNを含む多くのCVDの独立したリスク因子であることを裏付ける強力なエビデンスが得られた。・MR研究のメタ解析では、不眠症は、CAD、AF、HF、HTN、大動脈性脳卒中、虚血性脳卒中、原発性頭蓋内出血と潜在的な因果関係を有する可能性が示唆された。【CAD】オッズ比(OR):1.14、95%信頼区間(CI):1.10〜1.19、I2=97%【AF】OR:1.02、95%CI:1.01〜1.04、I2=94%【HF】OR:1.04、95%CI:1.03〜1.06、I2=97%【HTN】OR:1.16、95%CI:1.13〜1.18、I2=28%【大動脈性脳卒中】OR:1.14、95%CI:1.05〜1.24、I2=0%【虚血性脳卒中】OR:1.09、95%CI:1.03〜1.14、I2=60%【原発性頭蓋内出血】OR:1.16、95%CI:1.05〜1.27、I2=0%・不眠症と心原性脳塞栓症、小血管性脳卒中との因果関係を示唆するエビデンスは見当たらなかった。 著者らは「不眠症とCVDリスクとの間に因果関係のある可能性を裏付ける強力なエビデンスが得られた。不眠症の治療戦略は、CVD予防の有望なターゲットとなる可能性がある」と結論付けている。

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レビー小体型認知症に対する抗認知症薬の10年間フォローアップ調査

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のHong Xu氏らは、レビー小体型認知症(DLB)に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)とメマンチンの使用が、認知機能、主要心血管イベント、死亡率に及ぼす影響を評価した。Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2024年8月23日号の報告。 対象は、スウェーデンの認知症レジストリより抽出したDLB患者1,095例。DLB診断90日以内にChEIまたはメマンチンを開始した場合と抗認知症薬を使用しない場合の認知機能の軌跡、主要心血管イベント、死亡リスクに及ぼす影響を評価した。分析には、治療確率逆重み付けを用いた。 主な結果は以下のとおり。・ChEIの使用は、メマンチンおよび抗認知症薬未使用と比較し、フォローアップ時の認知機能低下の有意な遅延が認められた。【ChEI使用】ミニメンタルステート検査(MMSE):−0.39ポイント/年、95%信頼区間(CI):−0.96~0.18【メマンチン使用】MMSE:−2.49ポイント/年、95%CI:−4.02~−0.97【抗認知症薬未使用】MMSE:−2.50ポイント/年、95%CI:−4.28~−0.73・治療群間で主要心血管イベントに差は認められなかった。・ChEIの使用は、DLB診断1年後の死亡リスク低下との関連が認められた(調整ハザード比:0.66、95%CI:0.46~0.94)。 著者らは「DLB患者に対するChEI治療の潜在的なベネフィットが明らかとなった。ChEI治療は、5年間のフォローアップ期間にわたり認知機能低下を抑制した。死亡リスクの低下は、最初の1年間で認められるものの、その効果は1年後以降には持続しないことが示唆された」としている。

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愛情に関わる脳領域を科学的に証明

 愛情は脳のどこに存在するのだろうか。また何に対する愛情が最も強いのだろうか。機能的MRI(fMRI)を用いた新たな研究で、その答えが示唆された。それによると、愛情を感じているときには主に社会的手掛かりの処理に関連する脳領域が活性化し、最も強い脳活動を引き起こしたのは子どもに対する愛情であったという。アアルト大学(フィンランド)のParttyli Rinne氏らによるこの研究の詳細は、「Cerebral Cortex」に8月26日掲載された。 この研究は、6つの対象(恋人や配偶者、自分の子ども、友人、見知らぬ人、ペット、自然)に対する愛情に関する短い物語を聞き、それぞれについてじっくり考えている間の脳活動をfMRI検査により調査したもの。対象は、1人以上の子どもを持ち、愛情を注ぐ配偶者や恋人などがいることを報告した、28〜53歳の成人55人(平均年齢40.3歳、女性29人)だった。55人中27人はペットを飼っていた。 短い物語とは、例えば次のようなものである。「あなたは、生まれたばかりのわが子を初めて目にしています。赤ちゃんは柔らかく、健康で、元気いっぱいです。赤ちゃんの存在はあなたの人生で最大の驚きであり、赤ちゃんへの愛を感じています」「あなたが家のソファーでくつろいでいると、飼っている猫がやってきました。猫は、あなたの隣で丸くなり、眠たげに喉を鳴らしています。あなたはこの猫のことが大好きです」 fMRIによる観察の結果、愛情を感じているときの脳活動は、愛情を向ける対象によって異なるだけでなく、その対象が人間かそれ以外か(ペット、自然)によっても異なることが明らかになった。具体的には、人に対する愛情を感じているときには社会的認知機能に関わる脳領域が活性化し、また、愛情を注ぐ対象によって活性化の強さの異なることが示された。例えば、見知らぬ人に対する思いやりのような愛情を感じているときには、親密な関係を築いている相手に対する愛情を感じているときよりも脳の活性化が低かった。 脳が最も強く活性化したのは子どもに対する愛情を感じているときであり、その活性化の程度は他の脳領域にも影響を及ぼすほど強かった。Rinne氏は、「対象者に子どもに対する愛情を想像してもらった際には、脳の報酬系深部の線条体領域までが活性化した。これは、他の種類の愛情では見られなかった現象だ」と話す。 一方、自然やペットに対して愛情を感じているときには、脳の報酬系と視覚野が活性化するが、社会的認知機能に関わる領域は活性化しないことが示された。ただし、実際にペットを飼っている人がペットに対する愛情を感じているときには、ペットを飼っていない人に比べて社会的認知機能に関わる領域が有意に活性化していた。この結果についてRinne氏は、「ペットに対する愛情とそれに関連する脳活動の観察では、社会性と関係のある脳領域の活性の程度でその人がペットを飼っているかどうかを判断できることが分かった」と述べている。 Rinne氏は、「本研究によりわれわれは、これまでの研究よりも、さまざまな種類の愛情に関連する脳活動について、より包括的な知見を提供することができた」とアアルト大学のニュースリリースの中で述べている。

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セマグルチドを使用しても自殺リスクは上昇せず

 肥満症治療薬であるGLP-1受容体作動薬のセマグルチドの人気が急上昇する一方で、その潜在的な副作用に対する懸念も高まりを見せている。しかし、新たな研究により、そのような懸念の一つが払拭された。米ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院ペン自殺予防センター所長のGregory Brown氏らによる研究で、セマグルチドの使用により抑うつ症状や自殺念慮、自殺行動のリスクは増大しないことが示されたのだ。セマグルチドを有効成分とするオゼンピックやウゴービを製造するノボ ノルディスク社の資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「JAMA Internal Medicine」に9月3日掲載された。 2型糖尿病治療薬として開発されたセマグルチドは、臨床試験で肥満症治療薬としての有効性が明らかにされて以降、大きな注目を集め、今や医師が患者に週1回のセマグルチドの皮下注射を処方することは珍しいことではなくなっている。実際に、2023年には500万人もの米国人がセマグルチドを処方されており、そのような人の10人に4人は体重管理のために同薬を使用しているという。 この研究では、セマグルチドに関する4つの主要な臨床試験(第3a相STEP1、2、3試験および第3b相STEP5試験)の対象者から得たデータを用いて、週に1回のセマグルチド2.4mgの皮下注射が精神面にどのような影響を与えるのかが、プラセボとの比較で検討された。STEP1、2、3試験の対象者は総計3,377人(平均年齢49歳、女性69.6%)、STEP5試験の対象者は304人(平均年齢47歳、女性77.6%)で、いずれも肥満または過体重であり、STEP2参加者は2型糖尿病にも罹患していた。対象者の抑うつ症状はPatient Health Questionnaire(PHQ-9)で、自殺念慮と自殺行動はコロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)で評価されていた。 STEP1、2、3試験対象者のベースライン時のPHQ-9スコアは、セマグルチド群で2.0点、プラセボ群で1.8点であり、抑うつ症状は「ない/最小限」と判定されていた。治療開始から68週目でのPHQ-9スコアは、同順で2.0点と2.4点であり、解析からは、68週間にわたる治療により、プラセボ群と比べてセマグルチド群のPHQ-9スコアの重症度カテゴリーが上昇する可能性は低いことが示された(オッズ比0.63、95%信頼区間0.50〜0.79、P<0.001)。自殺念慮や自殺行動については、治療中に両群ともに1%未満の対象者が自殺念慮を抱いたことを報告していたが、両群間に有意差はなかった。STEP5対象者の結果も、これらの結果と同様であった。 Brown氏は、「セマグルチドを使用している過体重や肥満の人が抑うつ症状、自殺念慮や自殺行動を経験する可能性は確かにあるが、本研究結果は、セマグルチドを使用していない人が自殺念慮や自殺行動を経験する可能性も同程度であることを示唆している」と言う。 研究グループは、「これらの結果は、米食品医薬品局(FDA)によるセマグルチドの継続的な調査結果と一致している」とペンシルベニア大学のニュースリリースの中で指摘している。最新のデータ分析では、セマグルチドの使用が自殺念慮や自殺行動を引き起こすという証拠は見つからなかったことが報告されているという。 しかし研究グループは、今回の研究に精神障害を有する人が含まれていなかったことを踏まえ、「うつ病やその他の重篤な精神障害罹患者に対するセマグルチドの効果については、さらなる研究で検討する必要がある」と話している。

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精神疾患患者の認知機能と自殺リスクとの関連~メタ解析

 うつ病や双極性障害などの治療可能な精神疾患は、自殺リスク因子の大部分を占めており、これらの患者は神経認知機能障害を伴うことが少なくない。カナダ・トロント大学のGia Han Le氏らは、統合失調症感情障害、双極性障害、うつ病患者における認知機能と自殺念慮/自殺企図との関連を調査した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2024年8月19日号の報告。 2024年4月までに公表された研究をPubMed、Ovid、Scopusのデータベースよりシステマティックに検索した。認知機能と自殺念慮/自殺企図との関連についてエフェクトサイズが報告された適格研究を、ランダム効果モデルを用いてプールした。 主な結果は以下のとおり。・分析には、41件の研究を含めた。・統合失調症感情障害およびうつ病患者において認知機能と自殺念慮/自殺企図との負の相関が認められた。【統合失調症感情障害】自殺企図:Corr=−0.78(95%信頼区間[CI]:−1.00~0.98)、自殺念慮:Corr=−0.06(95%CI:−0.85~0.82)【うつ病】自殺企図:Corr=−0.227(95%CI:−0.419~−0.017)、自殺念慮:Corr=−0.14(95%CI:−0.33~0.06)・双極性障害の結果はまちまちであり、自殺企図と全般実行機能との間に有意な正の相関が認められ(Corr=0.08、95%CI:0.01~0.15)、感情抑制と負の相関が認められた。・処理速度、注意力、学習、記憶については、診断横断的にさまざまな結果がみられた。・本研究の限界として、サンプル構成や認知機能測定にばらつきがある点、個々の人口統計および併存疾患に関する情報を用いていない点が挙げられる。 著者らは「認知機能と自殺傾向との間に、診断横断的な関連性が認められた。とくに報酬機能における認知機能障害の相互作用が、精神疾患患者の自殺傾向の根底にある可能性が示唆された。また、衝動制御、計画、作業記憶の認知機能障害が、自傷行為や自殺に影響を及ぼしている可能性がある」としている。

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新たな抗PACAPモノクローナル抗体、片頭痛予防に有効か/NEJM

 片頭痛の新たな治療手段として、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)を標的とするアプローチの開発が進められている。デンマーク・コペンハーゲン大学のMessoud Ashina氏らは「HOPE試験」において、プラセボと比較してLu AG09222(PACAPリガンドに対するヒト化モノクローナル抗体)の単回投与は、4週間後の片頭痛の頻度を有意に減少させたことから、PACAPシグナル伝達の阻害は片頭痛の新たな予防的治療戦略となる可能性があることを示した。研究の成果は、NEJM誌2024年9月5日号に掲載された欧州と北米の無作為化プラセボ対照第IIa相試験 本研究は、片頭痛の予防におけるLu AG09222の有効性と安全性の評価を目的に、欧州と北米の25施設で概念実証試験として実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第IIa相試験(投与期間4週間、追跡期間8週間)である(H. Lundbeckの助成を受けた)。 年齢18~65歳、前兆のない片頭痛、前兆のある片頭痛または慢性片頭痛と診断され、発症時期が50歳以下で、過去10年間に2~4つの予防的治療を受けたが効果が得られなかった患者を対象とした。 被験者を、ベースラインでLu AG09222 750mg、同100mg、プラセボを単回静注投与する群に、2対1対2の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、1~4週目における1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの平均変化量であり、Lu AG09222 750 mg群とプラセボ群で比較した。750mg群で6.2日減少、プラセボ群より2.0日少ない 237例(平均年齢42.5歳[範囲19~65]、女性208例[88%]、白人237例[100%])を登録した。Lu AG09222 750mg群に97例、同100mg群に46例、プラセボ群に94例を割り付けた。 ベースラインの1ヵ月当たりの平均日数は、頭痛が17.4日、片頭痛が16.7日であり、1ヵ月当たりの頭痛または片頭痛の治療薬を使用した平均日数は13.1日であった。 片頭痛日数のベースラインから1~4週目の平均変化量は、プラセボ群が-4.2日であったのに対し、Lu AG09222 750mg群は-6.2日と有意に減少した(群間差:-2.0日、95%信頼区間[CI]:-3.8~-0.3、p=0.02)。 1ヵ月当たりの片頭痛の平均日数がベースラインから50%以上減少した患者の割合は、Lu AG09222 750mg群が32%、プラセボ群は27%であった。また、1ヵ月当たりの頭痛日数のベースラインから1~4週目の平均変化量は、Lu AG09222 750mg群が-5.8日、プラセボ群は-4.1日だった(群間差:-1.7日、95%CI:-3.5~0.0)。有害事象はプラセボ群に比べて多い 12週間における有害事象の件数(78件vs.45件)と1件以上発現した患者の割合(42% vs.32%)は、プラセボ群に比べLu AG09222 750mg群で多かった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(7% vs.3%)、鼻咽頭炎(7% vs.4%)、疲労(5% vs.1%)の頻度が高かった。 重篤な有害事象は、Lu AG09222 750mg群で1件発現したが、担当医により試験薬との関連はないと判定された。有害事象のために参加を取りやめたり、Lu AG09222の静注投与を中断することはなかった。 著者は、「これらの知見は、Lu AG09222によるPACAPシグナル伝達の阻害が、片頭痛の予防のための新しい、潜在的に有効なメカニズムであることを示しており、概念実証を確証するものである」としている。

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