サイト内検索|page:41

検索結果 合計:5819件 表示位置:801 - 820

801.

第249回 睡眠薬は睡眠中の脳の洗浄を妨げるらしい

睡眠薬は睡眠中の脳の洗浄を妨げるらしいアドレナリンの弟分の分子ノルアドレナリンの周期的放出と連動した血管収縮が、睡眠中の脳の老廃物を除去する脳脊髄液(CSF)流を生み出していることがマウスでの検討で示されました1~3)。また、定番の睡眠薬ゾルピデムは都合の悪いことに、ノルアドレナリンの周期的放出を抑制して脳のCSFの流れを妨げるようです。脳には体液を集めて移動させるリンパ管がありませんが、それに代わるグリンパティック系という仕組みを備えます。グリンパティック系は脳を浸すCSFを血管に沿った細道を伝わせることで、老廃物やその他の不要分子を洗い流します。グリンパティック系の流れは睡眠中に増えることが報告されています。グリンパティック系の発見を2012年に報告4)したロチェスター大学のMaiken Nedergaard氏らは、新たな研究で何が脳のCSFを流すのかをマウスを使って調べることにしました。血管を収縮させる神経伝達物質であるノルアドレナリンの量がマウスの脳で周期的に変動しており、およそ50秒ごとに最大になることが先立つ研究で知られています2)。Nedergaard氏らの新たな研究の結果、記憶や学習などの認知機能に不可欠な睡眠段階であるノンレム睡眠のときにノルアドレナリン量の増減に応じて脳の血管が伸縮して血液量が増減し、CSFが脳に入ったり出ていったりすることが示されました。そのようにしてノルアドレナリンの変動はノンレム睡眠時にポンプのようなグリンパティック系の働きを生み出します。覚醒しているときやレム睡眠時にはノルアドレナリンと血流量はあまり関連しませんでした。ノルアドレナリンがすべてではなくとも、グリンパティック系の流れの最も重要な原動力かもしれないとNedergaard氏は言っています2)。ヒトもマウスと同様に睡眠中にノルアドレナリンが周期的に放出されて血管が拍動するようであり、マウスと同様のポンプ機能がヒトの脳にもあるかもしれません。先立つ研究でゾルピデムは睡眠中の脳の活動や睡眠段階の長さを変えるらしいことが示されています。また、ゾルピデムに限らず睡眠薬はほぼどれもノルアドレナリンの生成を抑制します。そこで、Nedergaard氏らはマウス6匹にゾルピデムを投与してその影響を調べました3)。その結果、ゾルピデムを投与したマウスはプラセボ投与のマウスに比べて早く眠りについたものの、脳のCSFの流れが平均して30%ほど落ちていました。CSFの流れが滞ることは脳の洗浄が不調を来すことを意味しており、ノルアドレナリンを抑制する睡眠薬は脳が不要物を排出するのを妨げるかもしれません。今回の結果をもってゾルピデムの服用を止めるべきではありませんが、今ある睡眠薬が睡眠中の脳の毒素排出を実際に妨げるなら、そうしない新しい睡眠薬の開発が必要でしょう。さもなければ睡眠薬でむしろ睡眠が一層損なわれて脳が不調になってしまうかもしれません。別のチームが最近発表した研究で、睡眠中のマウスのノルアドレナリン量の周期的増減の幅が睡眠中の記憶増強に携わることも示されています5)。抗うつ薬のいくつかは睡眠薬とは反対に体内のノルアドレナリン量を上げる働きがあり、記憶に支障を来すかもしれません。睡眠中のノルアドレナリン量の波に影響しない薬の開発が必要だと研究者は言っています6)。参考1)Hauglund NL, et al. Cell. 2025 Jan 8. [Epub ahead of print] 2)Sleeping pills disrupt how the brain clears waste / NewScientist 3)Scientists uncover how the brain washes itself during sleep / Science4)Iliff JJ, et al. Sci Transl Med. 2012;4:147ra111.5)Kjaerby C, et al. Nat Neurosci. 2022;25:1059-1070.6)Stress transmitter wakes your brain more than 100 times a night – and it is perfectly normal / University of Copenhagen

802.

統合失調症患者の推定死亡率、男女間での違いは?

 統合失調症患者の早期死亡リスクに対する性差の影響は、不明である。カナダ・オタワ大学のMarco Solmi氏らは、統合失調症患者と性別で層別化した複数の対照群を比較し、すべての原因による死亡リスクおよび特定の死因での死亡リスクの違いを評価した。European Neuropsychopharmacology誌2025年2月号の報告。 統合失調症患者の死亡相対リスク(RR)を性別で比較するため、PRISMA 2020ガイドラインに従い、システマティックレビューおよびランダム効果メタ解析を実施した。出版バイアスの評価には、ニューカッスル・オタワ尺度(NOS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・43件の研究、統合失調症患者270万825例をメタ解析に含めた。・男女ともに統合失調症患者は、対照群と比較し、すべての原因による死亡率、自殺率、自然死率が高かった。 ●すべての原因による死亡率 【男性】RR:2.62、95%信頼区間(CI):2.35〜2.92 【女性】RR:2.56、95%CI:2.27〜2.87 ●自殺率 【男性】RR:9.02、95%CI:5.96〜13.67 【女性】RR:12.09、95%CI:9.00〜16.25 ●自然死率 【男性】RR:2.11、95%CI:1.88〜2.38 【女性】RR:2.14、95%CI:1.93〜2.38・性別による死亡リスクに、有意な差は認められなかった。・40歳未満の女性では、40歳以上の女性と比較し、年齢依存的に死亡リスクの増加が認められた(RR:4.23 vs.2.17)。・神経疾患(認知症)による死亡リスクは、男性のほうが女性よりも有意に高かった(RR:5.19 vs.2.40)。・死亡リスクの増加は、多くの場合、特定の修正可能なリスク因子との関連が認められた。 著者らは「死亡リスクの増加は、時間経過とともに改善が認められないため、修正可能なリスク因子の特定のためのさらなる研究および統合失調症の男女の身体疾患治療の改善が求められる」と結論付けている。

803.

片頭痛の引き金となる食べ物は?

 片頭痛は、激しい頭痛と一時的な運動および感覚障害を呈する神経疾患である。片頭痛の誘因には、発作に影響を及ぼす可能性のある内的および外的因子が関連している。片頭痛患者の中には、特定の食品摂取により発作が発現する患者も存在するが、アイスランドではこれらの関連は、これまで調査されていなかった。アイスランド・Landspitali National University HospitalのHadda Margret Haraldsdottir氏らは、アイスランドにおける片頭痛の症状と特定の食品摂取との関連を示す患者の割合を推定するため、本検討を実施した。Laeknabladid誌2024年12月号の報告。 アイスランドのFacebookグループ「Migreni」のメンバー(Facebook群)395人(回答率:Facebook群の19.6%)および神経内科医から治療を受けている患者(神経内科治療群)108人(回答率:神経内科治療群の65%)を対象に、電子アンケートを実施した。アンケートでは、特定の食品が片頭痛発作の引き金となる可能性があると思うかを調査した。アンケート回答の選択肢は、「全く/滅多にない」、「時々ある」、「頻繁にある」、「常にある」とした。その他の質問には、片頭痛の種類、薬物治療の有無、背景などを含めた。 主な結果は以下のとおり。・参加者466人中354人(76%)は、特定の食品摂取により片頭痛を引き起こすことが「頻繁にある」または「常にある」と回答した。・この割合は、Facebook群のほうが神経内科医治療群よりも高かった(78% vs.66%、p=0.007)。・最も一般的な食物関連の引き金は、赤ワインおよび食事を抜くこと(空腹)であり、50%以上で「頻繁にある」または「常にある」と回答した。・その他の食物関連因子として、白ワイン、リコリス、燻製肉などが報告され、参加者の20〜50%が回答した。 著者らは「これまで行われた他の研究と同様に、食物摂取は片頭痛の引き金となっている可能性が示唆された。しかし、これまでの研究では、食物関連因子としてリコリスの報告はなく、燻製肉はより一般的な因子であることが明らかとなった」と結論付けている。

804.

デジタルワークにストレスを感じているのはあなただけではない

 労働者は、デジタル技術が普及し、常に相手とオンラインでつながっていなければならないという状況に大きな負担を感じていることが、英国の調査で明らかになった。研究グループは、これは世界的な問題だとの考えを示している。論文の筆頭著者である英ノッティンガム大学心理学分野のElizabeth Marsh氏は、「われわれの研究で分かったのは、デジタル技術を活用した仕事(以下、デジタルワーク)には潜在的な負の側面があるということだ。そのような環境で求められる業務上の要求や激しさは労働者に過度の負担を与え、疲労やストレスを引き起こしている可能性がある」と述べている。この研究結果は、「Frontiers in Organizational Psychology」に12月17日掲載された。 Marsh氏は、「オンライン状態を常に保ってメッセージをチェックしなければならないというプレッシャーを感じると、仕事から離れることが心理的に難しくなる可能性がある」と同大学のニュースリリースで述べている。 今回の研究でMarsh氏らは、14人(男性43%、年齢中央値41歳)の労働者を対象に、デジタル技術を活用した21世紀の職場環境が労働者のウェルビーイングに与える影響について検討した。研究参加者には、ストレスや過負荷などデジタルワークの負の側面に焦点を当てた質問を用いた半構造化面接(平均34分間)を実施し、参加者のデジタルワーク環境での経験を探った。 その結果、人々の性格や傾向に基づく5つのテーマが特定された。一つ目は、「ハイパーコネクティビティ」である。これは、常にテキストメッセージや電子メールなどで連絡が取れる状態を保ち、顧客や同僚からの連絡に迅速に対応しなければならないというプレッシャーを感じている状態を指す。研究参加者の1人は、「常にそこにいなければならないように感じる。まるで、常に前進を意味する青信号を点灯させていなければならないような感じだ」と語ったという。 二つ目は、デジタルワークの中で発生するメッセージやアプリケーション、ミーティングなどへの対応が認知的過負荷を引き起こし、感情的な負担や注意の対立が生じる状態を意味する「テクノロジー関連の過負荷」。三つ目は、不安定なインターネット環境や新しいアプリの使いにくさなど、オンラインでの業務で遭遇する技術上の問題を意味する「デジタルワークのわずらわしさ」。四つ目は、情報や同僚との関係を構築する機会を見逃すことなどへの不安を意味する「見逃しに対する恐れ」。五つ目は、デジタルワークにより発生する健康上の問題を意味する「テクノロジーに起因するストレス」である。 参加者からは、「全てがオンラインになり、昼夜を問わずいつでも仕事に取り掛かれるようになったら、仕事を私生活から切り離すのが難しくなる」、「メールを受信したら〔……〕すぐに返信しなければならないというプレッシャーを感じる。そうしないと、『彼女は家で何をしているのだろう』と思われるかもしれないから」などの意見も聞かれたという。 Marsh氏は、労働者は、仕事と私生活の境界が曖昧になり、「勤務時間外」にも働かなければならないというプレッシャーを感じていることが多過ぎると指摘する。同氏は、「この調査結果は、デジタルワーカーのウェルビーイングを守るために、研究者と専門家の両方がデジタルワークの職務上の要求を特定し、理解し、緩和する必要があることを強調している」と結論付けている。

805.

抗精神病薬誘発性体重増加にGLP-1受容体作動薬セマグルチドが有効

 抗精神病薬誘発性体重増加は、患者および臨床医にとって重要な臨床課題であり、抗精神病薬使用患者の体重増加を予防または回復するための適切な介入が求められる。最近、肥満管理の新たなアプローチとしてGLP-1受容体作動薬が大きな注目を集めている。GLP-1受容体作動薬セマグルチドは、顕著な体重減少をもたらすことが明らかとなっている薬剤である。オランダ・マーストリヒト大学のBea Campforts氏らは、抗精神病薬誘発性体重増加に対してもセマグルチドが同等の体重減少効果を示すかを調査した。BMC Psychiatry誌2024年11月30日号の報告。 日常的な外来診療における抗精神病薬誘発性体重増加の治療に対するセマグルチドの有効性および安全性を評価するため、プロスペクティブ非ランダム化コホート研究を実施した。その後、メトホルミンを使用している抗精神病薬誘発性体重増加患者を対照群として、結果を比較した。 主な結果は以下のとおり。・16週間後の体重減少は、セマグルチド群(10例)で4.5kg(95%信頼区間[CI]:−6.7〜−2.3、p<0.001)、メトホルミン群(26例)で2.9kg(95%CI:−4.5〜−1.4、p<0.001)。・この結果は、平均体重減少率がセマグルチド群で4%、メトホルミン群で2.5%に相当する。・セマグルチド群におけるBMIの減少は−1.7kg/m2(95%CI:−2.4〜−1.0、p<0.001)、ウエスト周囲径の減少は−6.8cm(95%CI:−9.7〜−3.8、p<0.001)。・メトホルミン群におけるBMIの減少は−0.8kg/m2(95%CI:−1.4〜−0.3、p=0.001)、ウエスト周囲径の減少は−3.4cm(95%CI:−5.4〜−1.3、p=0.001)。・両群間で、統計学的に有意な差は認められなかった。・両群ともに副作用は、典型的に軽度、一時的であり、主な副作用は悪心であった。・さらに、精神症状の軽減、QOL向上が認められた。 著者らは「セマグルチドは、精神疾患患者の抗精神病薬誘発性体重増加に対し実行可能で効果的かつ安全な治療オプションであることが示唆された。これらの結果を裏付けるためにも、さらなる調査が求められる」と結論付けている。

806.

生成AIにも認知機能障害!?/BMJ

 主要な大規模言語モデル(LLM)の認知機能についてモントリオール認知評価(MoCA)テストなどを用いて評価した結果、ChatGPT-4oを除いたLLMで軽度認知機能障害の兆候が認められたことを、イスラエル・Hadassah Medical CenterのRoy Dayan氏らが報告した。人間と同様に年齢が認知機能低下の重要な決定要因であり、「高齢」すなわちバージョンが古いチャットボットはMoCAテストの成績が不良である傾向がみられたという。著者は、「これらの結果は、近くAIが人間の医師に取って代わるという想定に疑問を投げ掛けるものであり、主要なチャットボットの認知機能障害は医療診断の信頼性に影響を与え、患者の信頼を損なう可能性がある」と述べている。これまで複数の研究により、LLMはさまざまな診断において人間の医師よりも優れていることが示されているが、AI自体が認知機能低下を来すかどうかは評価されていなかった。BMJ誌2024年12月20日号掲載の報告。ChatGPT、Claude、Geminiの認知機能をMoCAテストなどで評価 研究グループは、公開されているLLMまたはチャットボットのChatGPT-4および4o(開発:OpenAI)、Claude 3.5 Sonnet(Anthropic)、およびGemini 1.0および1.5(Alphabet)を対象とし、テキストベースのプロンプトを介したLLMとのオンラインの対話について検証した。 MoCAテスト(バージョン8.1)を用い、患者に与える課題と同じ課題をLLMに与え、公式ガイドラインに従い神経科医が採点し評価した。追加の評価として、Navon図形、Cookie Theft Picture Test、Poppelreuterの錯綜図、Stroop testも実施した。 主要アウトカムは、MoCAテストの総合スコア・視空間認知/実行機能およびStroop testの結果であった。MoCAスコアが最も良好なのはChatGPT-4o、30点満点で26点 MoCAテストの総合スコア(30点満点)は、ChatGPT-4oが26点で最も高く、次いでChatGPT-4およびClaudeが25点であり、Gemini 1.0は16点と最も低かった。 MoCAテストの視空間認知/実行機能の成績は、すべてのLLMで低いことが示された。すべてのLLMがTrail Makingの課題および視空間認知機能の時計描画を失敗し、ChatGPT-4oのみアスキーアートを使用するよう指示された後で立方体の書き写しに成功した。そのほかの主な課題である命名、注意、言語、抽象的思考などはすべてのLLMで良好であったが、Geminiは1.0および1.5ともに遅延再生の課題に失敗した。 Navon図形では、すべてのLLMが小さな「S」を認識したが、大きな「H」の構造を特定したのはChatGPT-4oとGeminiのみであった。 Cookie Theft Picture Testでは、すべてのLLMがクッキーの盗難の場面を正しく解釈できたが、前頭側頭型認知症でみられる共感の欠如が示唆された。 Poppelreuterの錯綜図では、すべてのLLMがオブジェクトを認識できなかったが、ChatGPT-4oとClaudeはほかのモデルよりわずかに良好であった。 Stroop testでは、すべてのLLMが第1段階を成功したが、第2段階を成功したのはChatGPT-4oのみであった。

807.

1つ賢くなった2025年【Dr. 中島の 新・徒然草】(562)

五百六十二の段 1つ賢くなった2025年年末年始の九連休も終わっていよいよ仕事始め。新年最初の外来にお見えになったのは100歳の患者さん。この方、本来は昨年の12月に再診予定だったのですが、諸般の事情で今月になってしまいました。ともあれ、めでたいことには違いないので93歳の奥様と一緒に写真を撮りました。なんだかこっちまで長生きできそうです。さて、年末年始の長期休暇に、ネットで読んだ小説にびっくりさせられました。読んだのは小説というよりも評論といったものですが。その作者は、アガサ・クリスティの小説『The Mirror Crack'd from Side to Side(邦題:鏡は横にひび割れて)』の中に「mentally afflicted」という表現が出てくるけれども、これは作者の死後に書き換えられたのではないか、と疑っているのです。彼女は、原作ではretardedのような差別的表現があったのかもしれない、と推測していました。そういう経緯からか、彼女は英語版の古本を入手したいのだそうです。とはいえ、retardedというのはそんなに差別的響きがあるのでしょうか?われわれ医師は、mental retardationという言葉を普通に使ってきたと思います。なので、ChatGPTに尋ねてみました。「mental retardationというのは差別的響きがあるのか?」と。すると、こんな回答が返ってきました。*****(ChatGPTの回答 開始)*****はい、医学用語としての「mental retardation」はかつて広く使用されていましたが、現在では差別的または侮蔑的と感じられることが多くなっています。とくに日常会話や一般的な社会的文脈では、この言葉にはネガティブな響きがあり、不適切とされています。医学および診断における変化現在では、診断名として「intellectual developmental disorder(知的発達障害)」または「intellectual disability(知的障害)」が国際的に一般的になっています。例えば:アメリカ精神医学会(APA): DSM-5-TRでは「intellectual developmental disorder(intellectual disability)」という用語を採用。世界保健機関(WHO): ICD-11では「disorders of intellectual development」として分類。実践的なアドバイス医学的な場面では、最新の用語である「intellectual developmental disorder」または「intellectual disability」を使うことが推奨されます。患者やその家族に接する際には、より柔らかい表現や人間中心の言葉(例:「person with an intellectual developmental disorder」や「individual with an intellectual disability」)を用いることが望ましいです。*****(ChatGPTの回答 終了)*****調べてみると、確かに「intellectual developmental disorder(intellectual disability)」や「disorders of intellectual development」という用語が用いられています。ひょっとして自分だけがこのことを知らなかったのでしょうか?わざわざ周囲に尋ねるのも恥ずかしいので、カンファレンスで誰かがmental retardationという言葉を口にしたときに、すかさず「その言葉はもう古くて、今はintellectual disabilityと言うらしいぞ」とさりげなく突っ込むことにいたしましょう。読者の皆さんはご存じでしたか?私は1つ賢くなりました。最後に1句年明けて 機会をうかがう 新知識

808.

うつ病や不安症の予防に有効な飲み物を年齢別に分析

 メンタルヘルスには食習慣が関連しており、独立したリスク因子であることが示唆されている。しかし、飲料摂取とメンタルヘルスとの関連を年齢別に評価したエビデンスは限られている。中国・温州医科大学のJiali Xie氏らは、6種類の飲料とうつ病および不安症との関連を推定するため、UKバイオバンクのデータを用いて検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2025年2月15日号の報告。 食事に関するアンケートを1回以上回答したベースライン時にうつ病および不安症でなかった参加者18万8,355人をUKバイオバンクデータより抽出した。分析には、Cox比例ハザードモデルおよび置換分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・平均フォローアップ期間11.15年の間にうつ病を発症した参加者は5,884例(3.12%)、不安症を発症した参加者は6,445例(3.42%)であった。・60歳未満では、1日1杯以上の砂糖入り飲料(ハザード比[HR]:1.14、95%信頼区間[CI]:1.02〜1.28)および人工甘味料入り飲料(HR:1.23、95%CI:1.09〜1.38)の摂取は、うつ病リスク上昇と関連していた。・一方、純粋な果物/野菜ジュース(HR:0.81、95%CI:0.72〜0.92)およびコーヒー(HR:0.88、95%CI:0.81〜0.96)の摂取は、うつ病リスク低下と関連していた。・60歳以上では、純粋な果物/野菜ジュースおよびコーヒーの摂取量が多いほど、うつ病および不安症リスクの低下が認められた。・60歳未満では、砂糖入り飲料を純粋な果物/野菜ジュースまたはコーヒーに変更すると、うつ病および不安症リスクが軽減し、60歳以上では、ミルクを純粋な果物/野菜ジュースまたはコーヒーに変更すると、うつ病および不安症リスクが軽減した。 著者らは「飲料とうつ病および不安症との関係は、年齢により異なることが示唆された、メンタルヘルスのリスク軽減において、慎重な飲料選択が重要であろう」と結論付けている。

809.

高齢者の術後せん妄予防に最も効果的な薬剤は〜ネットワークメタ解析

 高齢患者における術後せん妄の発生率および死亡率は高く、予防戦略の必要性が求められている。さまざまな薬理学的予防戦略が有効であることが報告されているものの、高齢者を対象としたベネフィットや安全性は、依然として明らかになっていない。台湾・Chi Mei Medical CenterのTing-Hui Liu氏らは、高齢者患者における術後せん妄予防に対するさまざまな薬理学的介入の有効性をシステマティックに評価し、ランク付けするため、ネットワークメタ解析を実施した。Journal of Psychiatric Research誌2025年1月号の報告。 2023年8月1日までに公表されたランダム化比較試験(RCT)をPubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、PsycINFO、Google Scholarより検索した。対象RCTには、高齢患者における術後せん妄の薬理学的予防効果を調査した研究を含めた。事前に定義した事項に沿ってデータを抽出するため、PRISMAガイドラインを用いた。主要アウトカムは、術後せん妄の発生率とした。副次的アウトカムは、忍容性とし、すべての原因による中止または脱落率、すべての原因による死亡率により評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象RCT44件、対象患者1万1,178例をメタ解析に含めた。・これらの研究のうち、26件のRCTはプラセボのみとの比較試験であった。・プラセボと比較し、せん妄の発生率が有意に低かった薬剤は、次のとおり。【非定型抗精神病薬】オッズ比(OR):0.27、95%信頼区間(CI):0.12〜0.58【ハロペリドール】OR:0.42、95%CI:0.25〜0.71【デクスメデトミジン】OR:0.51、95%CI:0.37〜0.71【メラトニン受容体作動薬】OR:0.57、95%CI:0.33〜0.98・最も効果的な治療としてランク付けされた薬剤は、非定型抗精神病薬であった。・忍容性に関しては、プラセボまたは各薬理学的治療群において、脱落率およびすべての原因による死亡率に統計学的な差は認められなかった。 著者らは「高齢患者における術後せん妄に対する薬理学的介入は、非定型抗精神病薬、デクスメデトミジン、メラトニン受容体作動薬、ハロペリドールが効果的であることが特定された。とくに、非定型抗精神病薬は最も評価が高かった」とし「これらの結果をさらに確認するためにも、RCTの必要性が示唆された」と結論付けている。

810.

第248回 GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連

GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連セマグルチドなどのGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)とてんかん発作を生じにくくなることの関連が新たなメタ解析で示されました1)。たいてい60~65歳過ぎに発症する晩発性てんかん(late-onset epilepsy)を生じやすいことと糖尿病やその他いくつかのリスク要因との関連が、米国の4地域から募った45~64歳の中高年の長期観察試験で示されています2)。近年になって使われるようになったGLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬を含む新しい血糖降下薬は多才で、糖尿病の治療効果に加えて神経保護や抗炎症作用も担うようです。たとえば血糖降下薬とパーキンソン病を生じ難くなることの関連が無作為化試験のメタ解析で示されており3)、血糖降下薬には神経変性を食い止める効果があるのかもしれません。米国FDAの有害事象データベースの解析では、血糖降下薬と多発性硬化症が生じ難くなることが関連しており4)、神経炎症を防ぐ作用も示唆されています。晩発性てんかんは神経変性と血管損傷の複合で生じると考えられています。ゆえに、神経変性を食い止めうるらしい血糖降下薬は発作やてんかんの発生に影響を及ぼしそうです。そこでインドのKasturba Medical CollegeのUdeept Sindhu氏らはこれまでの無作為化試験一揃いをメタ解析し、近ごろの血糖降下薬に発作やてんかんを防ぐ効果があるかどうかを調べました。GLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の27の無作為化試験に参加した成人20万例弱(19万7,910例)の記録が解析されました。血糖降下薬に割り振られた患者は半数強の10万2,939例で、残り半数弱(9万4,971例)はプラセボ投与群でした。有害事象として報告された発作やてんかんの発生率を比較したところ、血糖降下薬全体はプラセボに比べて24%低くて済んでいました。血糖降下薬の種類別で解析したところ、GLP-1 RAのみ有益で、GLP-1 RAは発作やてんかんの発生率がプラセボに比べて33%低いことが示されました(相対リスク:0.67、95%信頼区間:0.46~0.98、p=0.034)。発作とてんかんを区別して解析したところ、GLP-1 RAと発作の発生率の有意な低下は維持されました。しかし、てんかん発生率の比較では残念ながらGLP-1 RAとプラセボの差は有意ではありませんでした。試験の平均追跡期間は2.5年ほど(29.2ヵ月)であり、てんかんの比較で差がつかなかったことには試験期間が比較的短かったことが関与しているかもしれません。また、試験で報告されたてんかんがInternational League Against Epilepsy(ILAE)の基準に合致するかどうかも不明で、そのことも有意差に至らなかった理由の一端かもしれません。そのような不備はあったもの、新しい血糖降下薬が発作やてんかんを防ぎうることを今回の結果は示唆しており、さまざまな手法やより多様で大人数のデータベースを使ってのさらなる検討を促すだろうと著者は言っています1)。とくに、脳卒中患者などのてんかんが生じる恐れが大きい高齢者集団での検討を後押しするでしょう。参考1)Sindhu U, et al. Epilepsia Open. 2024;9:2528-2536.2)Johnson EL, et al. JAMA Neurol. 2018;75:1375-1382.3)Tang H, et al. Mov Disord Clin Pract. 2023;10:1659-1665.4)Shirani A, et al. Ther Adv Neurol Disord. 2024;17:17562864241276848.

811.

向精神薬は死亡リスクとどのように関連しているか

 抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンなど向精神薬の使用は、統合失調症患者の死亡リスクに影響を及ぼす可能性がある。しかし、多くの観察研究では、向精神薬投与患者が必然的に生存している期間(フォローアップ開始から薬物治療開始までの期間)がある場合の不死時間バイアス(immortal time bias:ITB)は考慮されておらず、ITBを考慮しないと、向精神薬と死亡率との関連の解釈を誤認する可能性がある。カナダ・ラバル大学のSebastien Brodeur氏らは、抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンなどの向精神薬の累積投与量と統合失調症患者の死亡リスクとの関連を調査し、ITBを考慮しない場合の潜在的な影響についても評価した。JAMA Network Open誌2024年11月22日号の報告。高用量の抗精神病薬使用はITB補正後の死亡率上昇と関連が認められた 対象は、カナダ・ケベック州の行政データより抽出した2002〜12年に統合失調症と診断された17〜64歳の患者3万2,240例。データ分析は、2022年6月22日〜2024年9月30日に実施した。主要アウトカムは、すべての原因による死亡率とし、2013〜17年または死亡するまでの期間、フォローアップを行った。抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンの投与量で3群(低、中、高)に分類し、死亡リスクを評価した。ITB制御なしの時間固定曝露とITBを制御した時間依存曝露によるCox比例ハザード回帰モデルを行った。 向精神薬の累積投与量と統合失調症患者の死亡リスクとの関連を調査した主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は46.1±11.6歳、男性の割合は61.3%(1万9,776例)。・フォローアップ期間中に死亡した患者は1,941例(6.0%)であった。・時間固定法では、抗精神病薬と死亡率との間に用量反応関係は認められなかった。・しかし、高用量の抗精神病薬使用は、ITB補正後の死亡率上昇と関連が認められた(調整ハザード比[aHR]:1.28、95%信頼区間[CI]:1.07〜1.55、p=0.008)。・抗うつ薬に関しては、時間固定法では死亡リスクの減少が認められたが、ITB補正後では高用量のみで死亡リスクの減少がみられた(aHR:0.86、95%CI:0.74〜1.00、p=0.047)。・ベンゾジアゼピンに関しては、いずれの評価においても死亡リスク増加との関連が認められた。 著者らは「本結果は、統合失調症患者に対する抗精神病薬の有効性に異議を唱えるものではなく、長期的な死亡リスクに対する課題を提起するものである」としている。

812.

映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その4)【実は双極性障害から進化したの!?(統合失調症の起源)】Part 1

今回のキーワード双極性障害遺伝率共通の遺伝因子ランク理論(社会的地位理論)前適応双極性障害起源説敏感さ(過敏性)創造性前回(後編・その3)、統合失調症が昔から世界中で100人に1人発症する謎、青年期に発症する謎、途上国や田舎で回復しやすい謎を、この記事で提唱する「集団統合仮説」から解き明かしました。しかし、まだ謎が残っています。それは…統合失調症は一体どうやって生まれたのでしょうか? ヒントは、双極性障害との謎の関係です。今回(後編・その4)は、前回にも取り上げた映画「ミスト」とドラマ「ザ・ミスト」を踏まえて、統合失調症と双極性障害の謎の関係から、「統合失調症は双極性障害から進化した」という仰天の仮説を立てます。そして、いよいよ統合失調症の起源に迫ってみましょう。統合失調症と双極性障害の謎の関係とは?まず、統合失調症と双極性障害の相違点と共通点をそれぞれ3つの項目に分けて、その謎の関係に迫ってみましょう。なお、双極性障害の詳細については、関連記事1をご覧ください。(1)疫学まず、疫学においてです。その相違点として、一番は繁殖成功率です。統合失調症は男性20%、女性50%でかなり低下しているのに対して、双極性障害は男性75%、女性85%で比較的に保たれています1)。一方の共通点として、遺伝率は、統合失調症も双極性障害もほぼ同じく約80%です。共通の遺伝因子は、双極性障害の発症因子全体の約40%を占めています2)。実際に、家族歴では、統合失調症と双極性障害は同じ家系に混在していることが多いです。ちなみに、うつ病の遺伝率は約40%で、ストレスとの関係の方が大きいことが指摘されています。発症率は、統合失調症も双極性障害もほぼ同じく約1%で、性差がない点も同じです。ちなみに、うつ病は、約10%程度と高く、男性よりも女性が2倍多いです。発症年齢は、統合失調症も双極性障害もほぼ同じく20歳台が多いです。ちなみに、うつ病の発症年齢は、ストレスとの関係から中高年も多く、幅広いです。つまり、疫学的に、実は双極性障害は、うつ病よりも統合失調症に断然近いことがわかります。(2)治療次に、治療においてです。その相違点として、統合失調症には抗精神病薬、双極性障害には気分安定薬を主に使います。一方の共通点として、統合失調症にも気分安定薬、双極性障害にも抗精神病薬を併用することが多いです。実際に、抗精神病薬に気分安定薬を追加することで増強効果が発揮されるため、統合失調症の治療にも有効です。また、昨今の抗精神病薬は、抗幻覚妄想作用だけでなく気分安定作用もあり、気分安定薬として代用できるため、双極性障害にも適応があります。ちなみに、うつ病への気分安定薬の効果は限定的です。逆に、双極性障害への抗うつ薬の効果は無効です。それどころか、抑うつ状態から躁状態に転じるリスクもあります。つまり、治療的にも、実は双極性障害は、うつ病よりも統合失調症に断然近いことがわかります。実際に、双極性障害は、うつ病と誤診されると治療薬が違うので問題になりますが、統合失調症と誤診されても治療薬がほぼ同じなのであまり問題にならないです。治療薬の詳細については、心療内科・精神科の薬(2024)をご覧ください。(3)経過最後に、経過においてです。その相違点として、統合失調症は陽性症状(敏感さ)と陰性症状(鈍感さ)を繰り返し、双極性障害は躁状態と抑うつ状態を繰り返します。症状の中身(内容)としてはもちろん違います。そして、統合失調症には残遺症状(後遺症)があるのに対して、双極性障害にはないです。一方の共通点として、統合失調症の陽性症状と双極性障害の躁状態、統合失調症の陰性症状と双極性障害の抑うつ状態はそれぞれ重なります。つまり、名称が違うだけで、実は統合失調症の経過(形式)は、双極性障害と同じく2つの相(エピソード)を繰り返す「双極性」(循環性)です。ちなみに、うつ病の経過は、再発する場合は反復性ではありますが、「双極性」(循環性)ではなく「単極性」です。つまり、経過的にも、実は双極性障害は、うつ病よりも統合失調症に断然近いことがわかります。統合失調症と双極性障害は共通点が多すぎて、もはや同じ病態の症候群で、ただ表面的な症状だけで別々に分類されているにすぎないとも言えそうです。実際の脳画像の研究においても、統合失調症と宗教体験は同じ脳領域が過活動になっていることをその1で触れましたが、さらに双極性障害もこれらと同じ脳領域が過活動になっていることがわかっています3)。また、双極性障害とうつ病は同じ気分障害に分類されていながら、意外にもこの2つの正体はまったく別物であることもわかります。次のページへ >>

813.

映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その4)【実は双極性障害から進化したの!?(統合失調症の起源)】Part 2

統合失調症は双極性障害からどうやって生まれたの?統合失調症の起源は抽象的な思考が可能になった約10万年前であるとその2で説明しました。その後に人類がアフリカから大規模な拡散を始めたのは、約7万年前です。よくよく考えると、発症率をはじめ統合失調症の特徴は世界共通であることから、約7万年前にはすでに統合失調症は現在の形に「完成」されていたことになります。だとしたら、統合失調症は10万年前から7万年前の3万年間で進化したわけですが、単独で進化するには期間があまりにも短すぎます。一方で、先ほどの示した統合失調症と共通点の多い双極性障害の起源は、ランク理論(社会的地位理論)から、少なくとも人類が部族をつくるようになった約300万年前と推定できます。ランク理論の詳細については、関連記事2をご覧ください。以上を踏まえると、統合失調症の進化には双極性障害という土台(前適応)があった、つまり統合失調症は双極性障害から進化したという仮説を立てることができます。名付けて、統合失調症の「双極性障害起源説」です。それでは、統合失調症は双極性障害からどうやって生まれたのでしょうか? 次は、先ほどの経過の共通点と相違点から、大きく3つの段階で進化精神医学的に解き明かしてみましょう。なお、前適応の詳細については、関連記事3をご覧ください。(1)躁状態から敏感さが生まれたランク理論を踏まえると、約300万年前から人類は、躁状態によって「ボスザル」になり上がる種が現れていたでしょう。躁状態では、ハイテンションになり、興奮して怒りっぽくもなります。この易怒性は、躁状態の診断基準の1つです。そこから、被害的にもなりやすいことは容易に想像できます。これが、被害妄想の起源です。つまり、躁とは何かに敏感でもあるわけです。1つ目の段階は、躁状態から敏感さ(過敏性)が生まれたことです。わかりやすく言えば、過敏さは躁状態という「エンジン」によって生まれたということです。躁状態が、意欲だけでなく、思考や知覚、そして自我意識まで広がって活性化するイメージです。思考の過敏さは妄想、知覚の過敏さは幻覚です。ちょうど、ドラマ版のナタリーが動物と会話する状況が当てはまります。これは、精霊信仰(アニミズム)の起源でしょう。また、自我意識の過敏さは作為体験です。これは、自分を意識する感覚が過剰になると、自分ではない誰かが自分を意識している、つまり見られている感覚やコントロールされている感覚になることです。そして同時に、ないものをあるかのように感じて想像する能力でもあります。これが、いわゆる霊感(超越的な存在の実感)の起源です。ちょうど、ドラマ版で登場人物たちが「あの霧は私のことを知っている」と言い出し、霧の中で操られるシーンに重なります。もちろん、これはドラマの設定上の霧の仕業という演出ですが、あたかも作為体験のように描かれている点が興味深いです。なお、統合失調症の敏感さやそのメカニズムの詳細については、関連記事4、関連記事5をご覧ください。実際の臨床では、躁状態(双極性障害)による興奮と幻覚妄想状態(統合失調症)による興奮は、区別できないことが多いです。これらがそれぞれ極端になった病態は同じく緊張病と呼ばれます。また、統合失調症と双極性障害が合併した病態として、統合失調感情障害もあります。一方、幻覚妄想状態が一時的にだけ出てくる病態として、急性一過性精神病性障害があります。また、幻覚がなく妄想だけが出てくる妄想症という病態もあります。そして、明らかな幻覚や妄想がなく、もともと霊感が強いだけの統合失調型パーソナリティ障害という性格特性もあります。これらは、神のお告げを繰り返し聞くこと(幻聴)がないため、それができるリーダー(統合失調症)には負けるでしょう。そして、これらの病態は、統合失調症ほど「集団統合機能」として完成されていないからこそ、統合失調症のリーダーとの対立を引き起こさず、そのリーダーのフォロワーとしてサポート的な「集団統合機能」を発揮したでしょう。これらすべての病態を合わせて、統合失調症スペクトラム障害と呼んでいます。なお、統合失調症にまで発症していなくても、統合失調症スペクトラム障害の人がリーダーになる方法が、実はありました。それは、外的な影響(ストレス因子)によって、一時的に幻覚妄想状態になること、いわゆるトランスを繰り返すことです。たとえば、古くから多くのシャーマンがわざわざ幻覚作用のある毒キノコを食べて幻覚状態になっていたのは、このためです。また、夜通し同じお経(歌)を唱え続けたり、同じ仕草や振り付け(ダンス)を繰り返すのも、このためです。この時、疲れ果てて身体的なストレスから幻覚状態(せん妄)を引き起こしていました。これらは、原始の時代に、幻覚状態(統合失調症)になりきれない場合の「裏技」として発明された行動様式と解釈することができます。さらに、リーダーだけでなく、フォロワーも一緒に毒キノコを食べたり、一緒にお経(歌)や振り付け(ダンス)をすることで同調効果が高まり、集団がよりまとまったでしょう。(2)抑うつ状態から鈍感さが生まれた躁状態の「エンジン」は、アクセル全開で過敏性を生み出したわけですが、循環性であるため、一定期間で抑うつ状態というブレーキがかかります。つまり、敏感の真逆の鈍感にもなります。2つ目の段階は、抑うつ状態から鈍感さが生まれたことです。鈍感さとは、陰性症状として、感情鈍麻、無為自閉、認知機能障害などが挙げられます。これらは、抑うつ状態の抑うつ気分、興味・喜びの減退、思考制止に似ています。(3)敏感さが止められない状況で残遺症状が生まれた双極性障害に残遺症状がないことから、もともと統合失調症も残遺症状がなかったでしょう。しかし、躁状態の「エンジン」から生まれた敏感さは、とくに部族の危機が解決せずにリーダーシップを続ける必要がある状況では、ブレーキがかかりにくくなったでしょう。つまり、鈍感になるという休息ができない状況です。その代償が、脳の過活動による脳細胞の消耗です。簡単に言えば、「脳細胞の過労死」です。3つ目の段階は、敏感さが止められない状況(社会環境によるストレス)で残遺症状(後遺症)が生まれたことです。逆に、そのストレスがなければ、スムーズに陰性症状(鈍感さ)の時期を迎え、残遺症状は目立たないでしょう。これは、回復率への影響因子としてすでにその3で説明しました。実際に、かつてのアフリカのヌアー族という未開の部族社会についての調査研究によると、当時にやってきたヨーロッパ人やアラブ人たちの脅威によって、部族の団結を精力的に促す預言者(シャーマン)が出てきた一方、奇行が目立つ預言者(シャーマン)も出てきたとの報告がされています4,5)。まさに、この部族の危機は、その3で説明した先進国や都市部の生活環境のストレスに重なります。つまり、統合失調症の残遺症状については、うつ病と同じく社会環境によるストレスの要素が大きいと言えます。そして、この残遺症状が繁殖成功率を下げる要因にもなっているでしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

814.

映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その4)【実は双極性障害から進化したの!?(統合失調症の起源)】Part 3

統合失調症の起源は創造性じゃなかったの?統合失調症の「双極性障害起源説」について説明してきました。従来から、統合失調症の起源仮説として、創造性が挙げられています。統合失調症は、人類が創造性という能力を進化させた時の副産物であるという仮説です。確かに、創造性と幻覚妄想は、紙一重です。創造性とは、まさにないものあるかのように感じて表現することであり、作為体験に通じます。しかし、創造性は起源ではないと考えられます。その理由は3つあります。1つ目は、創造性が生まれたのは、早くても約5万年前であり、7万年前の出アフリカよりもあとです。もしも創造性が起源だとしたら、統合失調症の発症率などに地域差が生まれることになってしまい、世界共通であることを説明できなくなるからです。2つ目は、創造性が起源だとすると、その3で説明した発症率、好発年齢、回復率の謎のどれも説明できなくなるからです。3つ目は、創造性が「集団統合機能」のように生存や生殖の適応度を直接高めることがなく、進化の選択圧(淘汰圧)としては弱いからです。つまり、創造性もまた「集団統合機能」の副産物と言えるでしょう。創造性の起源の詳細については、関連記事6をご覧ください。ボスザルからリーダーに約20万年前に人類が言葉を話すようになり、約10万年前に抽象的な思考(概念化)ができるようになってから、敏感さ(過敏性)を得た人は、その超越的な存在の実感を神と呼ぶようになったでしょう。しかも、もともと躁状態であったことから、確信して断定的に言ったでしょう。こうして、双極性障害のボスザルになる機能は、統合失調症のリーダーになる機能に拡張されていったのです。これが、その2で説明した「集団統合仮説」です。統合失調症と同じく双極性障害も発症率が1%であることから、おそらく100人の部族には最終的に双極性障害と統合失調症が1人ずついたことになります。おそらく、生活環境(社会環境)が安定している時はハイテンションの双極性障害がそのままボスとなり、逆に生活環境が不安定な時はカリスマ的な統合失調症がリーダーに台頭するという役割分担をしていたのかもしれません。現在の調査研究でも、感染症が蔓延して生活環境が不安定な亜熱帯の地域ほど、宗教の数が増えていくことがわかっています3,6)。そのような地域の人々は、まさに映画版のカーモディさんやドラマ版のナタリーのような教祖(統合失調症)にすがってしまうのでしょう。実際に、その時代の社会情勢が不安定な時にこそ、カルトを含む宗教が盛り上がるのは、日本も含め歴史から学ぶことができます。だからこそアフリカのサバンナからグレートジャーニーへよくよく考えると、約20万年前から私たち現生人類(ホモサピエンス)の脳は構造的にも遺伝的にも大きく変わっていないです。この点を踏まえると、人類の概念化の能力や一部の人(統合失調症)の霊感の能力(超越的な存在の実感)は、約20万年前の時点ですでに潜在的に備わっていたと考えられます。それらが、ようやく約10万年前になって言葉によって表現され共有され、顕在化したのでしょう。つまり、10万年前から7万年前(出アフリカ)の3万年間は、統合失調症が進化した期間ではなく、すでに進化していた統合失調症の歴代のリーダーたちが「集団統合機能」を言葉(伝承)によって文化的に発展させる、つまり原始宗教を確立する期間であったのでしょう。そして、この原始宗教が約7万年前にようやく確立したからこそ、その時点でアフリカからの大規模な拡散、つまりグレートジャーニー(大陸大移動)が始まったのでしょう。かつてのアフリカのサバンナのボスザルは、「約束の地」(神が約束した新天地)へと導くリーダーになっていった…統合失調症の起源に根気強く迫っていくなか、そんな人類史の壮大な歴史にまで思いを馳せてしまいます。参考記事なお、さらに20万年前よりも以前に遡った概念化の心理機能とは、そもそも目の前にないものを存在として認識する心理機能(象徴機能)が考えられます。この詳細については、お化けの起源として、関連記事7をご覧ください。確かに、神とお化けは同じく、姿がよくわからないし、何かされそう…実は神はもともとお化けだった…!?1)「進化精神病理学」p.195、p.214:マルコ・デル・ジュディーチェ:福村出版、20232)「標準精神医学 第8版」p.306、p.329:医学書院、20213)「宗教の起源」p.246:ロビン・ダンバー、白揚社、20234)「ヌアー族」pp.323-324:エヴァンズ・プリチャード、平凡社、20235)「ヌアー族の宗教 下」p.231:エヴァンズ・プリチャード、平凡社、19956)「友だちの数は何人? ダンバー数とつながりの進化心理学」P127:ロビン・ダンバー、インターシフト、2011<< 前のページへ■関連記事映画「心のままに」(その1)【どうハイテンションになるの?そのあとは?(双極性障害)】Part 1映画「心のままに」(その1)【どうハイテンションになるの?そのあとは?(双極性障害)】Part 3NHK「おかあさんと一緒」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 1絵画編【ムンクはなぜ叫んでいるの?】ビューティフルマインド【統合失調症】ピカソ「泣く女」【なんでこれがすごいの?だから子供は絵を描くんだ!(アートセラピー)】Part 2絵本「ねないこだれだ」【なんでお化けは怖いの?なんで親は子供にお化けが来るぞと言うの?(お化けの起源)】Part 1

815.

体脂肪率が片頭痛の重症度と関連、とくに女性で顕著

 片頭痛は、悪心、光恐怖症、音恐怖症を頻繁に伴う反復性頭痛を特徴する疾患であり、その有病理は非常に高く、社会経済的負担の増大と関連している。近年、一般人口における肥満の割合は増加しているが、体脂肪率と重度の頭痛や片頭痛の発症率との関連は、あまり研究されていなかった。中国・重慶医科大学のRongjiang Xu氏らは、この課題を明らかにするため、体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛の発生率との関連を調査した。Cureus誌2024年10月26日号の報告。 対象は、1999〜2004年の米国国民健康栄養調査(NHANES)より抽出した5,060例。性別、貧困所得比(PIR)、学歴、喫煙状況、中程度の身体活動、高血圧で調整した後、制限付き3次スプライン(RCS)曲線およびロジスティック回帰を用いて、体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛の発生率との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者のうち、重度の頭痛または片頭痛が認められた患者は1,289例(25.5%)。・重度の頭痛または片頭痛を有する患者は、そうでない患者と比較し、女性の割合が高く、学歴、世帯収入、喫煙、アルコール摂取、糖尿病、高血圧が低い傾向であった。・とくに女性では、モデルにおいて体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛との間に有意な関連が認められたが、男性では認められなかった。・体脂肪率の四分位を用いた多変量ロジスティック回帰分析でも、同様の結果であった。 著者らは「関連変数で調整した後、体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛との間に正の相関が認められた。この関連は、とくに女性で強かった」としたうえで「肥満と片頭痛との関連は複雑であり、体脂肪率が片頭痛の悪化に及ぼす影響を明らかにするためにも、さらなる研究が求められることが浮き彫りとなった」とまとめている。

816.

不規則な睡眠は肥満に関連する肝疾患の特徴?

 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は、夜中の頻回な覚醒や、入眠後の覚醒時間の延長など、睡眠の断片化に関連していることが、新たな研究で明らかになった。バーゼル大学消化器・肝疾患センター(スイス)のSofia Schaeffer氏らによるこの研究の詳細は、「Frontiers in Network Physiology」に12月4日掲載された。Schaeffer氏は、「MASLD患者は、頻回な覚醒や覚醒時間の延長により、夜間の睡眠が著しく断片化していることが明らかになった」と話している。 MASLDは、肝臓に脂肪が過剰に蓄積する病態をいう。通常は、肥満や2型糖尿病と関連して生じ、肝臓に炎症や瘢痕化をもたらし、重症化すると肝不全に至る可能性がある。MASLDの世界的な有病率は25%程度と推定されている。マウスモデルを用いた過去の研究では、概日リズムの乱れが肝臓を含む複数の臓器の代謝に影響を与え、MASLDの発症に関与する可能性が示唆されている。また、睡眠に関する質問票を用いた研究では、MASLD患者における睡眠覚醒リズムの乱れも確認されている。 今回の研究でSchaeffer氏らは、手首に装着するタイプの加速度センサー(アクチグラフ)により、24時間連続で4週間にわたって記録された活動と休息に関する客観的なデータを分析して、MASLD患者と健常者の睡眠パターンを比較した。対象は、生検でMASLDが確認された35人(年齢中央値58歳)と健康な対照16人(同61歳)だった。睡眠リズムを整えるために、2週目に標準化された睡眠衛生教育セッションが1回実施された。 その結果、MASLD群は対照群に比べて、一晩当たりの覚醒回数が多く(8.5回対5.5回、P=0.0036)、入眠後の覚醒時間が長く(45.4分対21.3分、P=0.0004)、睡眠効率が低い(86.5%対92.8%)ことが明らかになった。客観的な睡眠時間に差は認められなかったが、MASLD群の自己報告による睡眠時間は対照群よりも短く(6時間対6時間45分、P=0.01)、睡眠潜時が長く、睡眠の質が低下していることが示唆された。標準化された睡眠衛生教育セッション後も、これらの睡眠パラメーターに変化は認められなかった。このほか、睡眠障害が心理的ストレスと関連していることを報告したのは、対照群ではわずか6%程度であったのに対して、MASLD群では32%に達していた。 Schaeffer氏は、MASLD患者の睡眠の質が低下する理由について、「根本的なメカニズムには、遺伝、環境要因、および免疫反応の活性化が関与していると考えられるが、最終的には肥満とメタボリックシンドロームが原因となっている」とジャーナルの発行元であるFrontiers社のニュースリリースで述べている。 また、論文の上席著者であるバーゼル大学消化器・肝疾患センターのChristine Bernsmeier氏は、「今後の研究では、MASLD患者の睡眠覚醒リズムを改善するために、継続的な睡眠カウンセリングセッションや光療法などの介入を他のライフスタイルの変化と組み合わせて検討する必要がある」と話している。

817.

映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その3)【こんなにユニークなのに…だから発症するのは昔から世界中で100人に1人の若者だったの!?(統合失調症の疫学)】Part 1

今回のキーワード発症率ダンバー数好発年齢回復率集団分裂仮説オープンダイアローグ前回(後編・その2)、統合失調症の機能とは、原始の時代に部族集団をまとめることであるという仮説を立てました。そして、「集団統合仮説」と名付けました。この仮説によって解ける統合失調症の謎があります。今回(後編・その3)は、前回にも取り上げた映画「ミスト」とドラマ「ザ・ミスト」を踏まえて、この「集団統合仮説」から、統合失調症の疫学的な謎を3つ解いてみましょう。なんで昔から世界中で100人に1人が発症するの?統合失調症になると、周りで誰も話していないのに声が聞こえてきたり、周りから何かされるのではないかと思い込んでしまい、社会生活が難しくなるわけですが、これほど症状がユニークであるにもかかわらず、このような人は、実は100人に1人はいます。皆さんが学校に通っていた時、その学校で同じ学年(100人程度)にいた知り合いのうち、1人はその後にこの心の病気を発症している計算になり、実はとても身近な病気です。この割合は、他の国でもだいたい同じです。しかも、100人に1人は、昔から大きく変わらないようです。1つ目の謎は、発症率(有病率)です。この答えは、原始の時代の部族集団の人数がちょうど100人程度だからです。その人数の集団に1人の統合失調症のリーダーが生まれるように進化したと考えることができます。この100人という数は、実際に原始の時代の部族集団の最終的な最大人数である150人以内に収まっています。この150人という数は、ダンバー数と呼ばれています。この「150人」を超えると、脳(認知機能)が集団のメンバー同士の人間関係を把握しきれなくなることがわかっています。この詳細については、関連記事1をご覧ください。よくよく考えると、この発症率の数値は絶妙です。その理由を、部族集団の人数が少ない場合、ちょうど良い場合、多い場合の3つに分けてそれぞれ考えてみましょう。(1)人数が少ない場合1つ目は、部族の人数が50人以下で少ない場合です。この時、統合失調症のリーダーが生まれる人数が0.5人を下回り、生まれない可能性の方が高くなります。しかし、人間に最も近いチンパンジーの群れの平均頭数が60頭であることから、この人数なら人間もチンパンジーと同じように、統合失調症のリーダーがいなくても、集団はまとまることができます。(2)部族の人数がちょうど良い場合2つ目は、部族の人数が50~150人でちょうど良い場合です。この時、統合失調症のリーダーが生まれる人数が0.5~1.5人となり、ほぼ1人生まれることになり、当然ながら、集団はまとまります。(3)人数が多い場合3つ目は、部族の人数が150人以上で多い場合です。この時、統合失調症のリーダーが生まれる人数が1.5人を上回り、2人生まれる可能性が高くなっていきます。これは、カーモディさんとナタリーが同じ集団にいるようなものです。この2人がすぐに対立するのは、容易に想像できるでしょう。そして、どちらかが自分の信者を引き連れて、「約束の地」(神が約束した新天地)を目指して出ていくでしょう。つまり、集団の人数が多くなりすぎたら、分裂を促す働きもあるわけです。そもそも150人を超えた時点で部族のメンバーたちの脳のキャパオーバーが起き始めます。この状況で、2人目のリーダーが現れて分裂が加速されるのは、集団の機能の維持としてとても適応的です。この点で、従来の統合失調症の起源仮説である集団分裂仮説が思い起こされます1,2)。ただし、集団分裂仮説は、統合失調症の人をあくまで「異端児」(アウトサイダー)として捉え、主流派から去っていく少数派グループと想定し、分裂することを優位な機能としています。また、先ほどの発症率やダンバー数を考慮していません。この記事で提唱する「集団統合仮説」というネーミングは、見てのとおり、この集団分裂仮説を文字っています。「集団統合仮説」では、統合失調症の人を主流派のど真ん中に想定し、まずまとまることを優位な機能としています。集団の人数が増えすぎた場合に限り、もともといる統合失調症のリーダーとさらに現れた2人目の統合失調症のリーダーによって半々に分裂が引き起こされ、引き続きそれぞれの集団がまとまると説明しています。なお、冒頭で1学年の人数が100人程度と想定しましたが、この記事をここまで読むと、そもそもダンバー数によって、無意識にも学年の人数や大学の学科の定員が100人程度になるように設定されているとも言えます。次のページへ >>

818.

映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その3)【こんなにユニークなのに…だから発症するのは昔から世界中で100人に1人の若者だったの!?(統合失調症の疫学)】Part 2

なんで青年期に発症するの?統合失調症は、男女を問わず、その多くが20歳台で発症します。結婚には当然不利になり、子孫(遺伝子)を残しにくいのにです。実際に、統合失調症の繁殖成功率は、男性20%、女性50%です1)。それにもかかわらず、遺伝素因は全人口の約30%と推定され3)、遺伝の影響度(遺伝率)が約80%と算定されており4)、遺伝子を残し続けていることになります。2つ目の謎は、好発年齢です。この答えは、リーダーに適した年齢だからです。厳密には、発症平均年齢は、男性27歳、女性30歳です。ピーク年齢については、男性が20歳台であるのに対して、女性は二峰性であり、1つ目のピークは男性と同じく20歳台で比較的に大きく、2つ目のピークは30歳台後半で比較的に小さいです5)。女性のピークが二峰性である原因も、リーダーに適した状態かどうかで説明することができます。それは、妊娠出産のタイミングです。当然ながら、妊娠出産の一定期間は、リーダーシップを発揮することが難しいです。よって、本来、発症するはずの年齢で、先に妊娠してしまったら、いったん発症が抑制され待機状態になるメカニズムが進化した可能性が考えられます。その根拠として、実際に、すでに発症した後に妊娠した場合、妊娠中の精神状態は比較的安定していることが多いからです。一方、出産後は、産褥期精神病(産後発症の統合失調症)という言葉があるように、発症リスクが上がるからです。また、2つ目の小さなピークである30歳台後半は、妊娠率が下がり始める時期に一致しているからです。男性よりも女性の方が、発症平均年齢がやや高いことも、妊娠出産で発症が一時的に抑制されるメカニズムが働いていることから説明できます。これ以外で、納得できる説明は見当たりません。逆に言えば、リーダーシップを発揮する年齢は、当時の平均寿命を考慮すれば、児童期以前(12歳以下)では早すぎて、中年期以降(40歳以上)では遅すぎることから、説明することができます。なお、妊娠出産(妊娠率)と関係して発症する精神障害として、実は摂食障害が挙げられます。この詳細については、関連記事2をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

819.

映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その3)【こんなにユニークなのに…だから発症するのは昔から世界中で100人に1人の若者だったの!?(統合失調症の疫学)】Part 3

なんで先進国よりも途上国で回復しやすいの?統合失調症は、なんと先進国よりも途上国でより速く回復するというWHOの調査結果が出ています3)。3つ目の謎は、回復率(寛解率)です。この答えは、より原始の時代に近い生活環境(社会環境)だからです。統合失調症の発症率はだいたい同じですが、その後に良くなるかの経過には地域差があることがわかっています。実際に、回復率が高いのは、先進国よりも途上国であるだけでなく、都市よりも農村であることもわかっています3)。イメージだけですと、途上国の方が、貧しく、不便で、正直不潔です。ストレスはとても高そうで、回復しにくそうです。一方、先進国は豊かで、便利で、清潔です。しかし、よくよく考えると、それは先進国にいる側の、そして統合失調症を発症していない側の発想です。先進国にいる場合、合理主義的であるため、ルールが多く、不合理なことを言う統合失調症の人たちの言動はより悪目立ちします。また、個人主義的であるため、人とのつながりが乏しく、孤独になりやすいです。リーダーシップを発揮するチャンスなどいっさいありません。さらに、衛生観念が厳しいため、統合失調症が慢性化した後遺症によって不潔になりがちになると、ますます受け入れられません。つまり、逆でした。ストレスが高いのは、統合失調症の人たちにとっては先進国であり、都会なのでした。よって、統合失調症の人は、途上国に移住することは現実的ではないにしても、なるべく自然が多い田舎に移住し、その共同体の中で人と触れ合い、マイペースでなるべく自給自足の生活をして、のびのびと暮らすことが適応的であることがわかります。まさに、原始の時代の共同体(部族社会)のイメージです。これは、「自然化」と呼ばれています5)。タイトルで「ユニーク」と表現しましたが、実は統合失調症がユニークなのではなく、現代の社会構造が彼らにとって「ユニーク」であるとも言えます。また、統合失調症のリーダーシップ機能を擬似的に発揮させて安定を図る取り組みとして、オープンダイアローグが挙げられます。これは、統合失調症の人に積極的に(オープンに)おしゃべり(ダイアローグ)をさせて受け止めることで、最近注目されています。よくよく考えると、この取り組みも従来の宗教活動に似ており、理に適っています。なお、合理主義、個人主義、清潔主義がより求められる先進国や都市で増悪する精神症状として、認知症の周辺症状(BPSD)も挙げられます。この詳細については、関連記事3をご覧ください。ただ、統合失調症は最近、軽症化しているのも事実です3)。遺伝素因の保因者は一定数いて発症率は変わらないとは言うものの、さすがに現代の社会構造のままでは、淘汰圧(選択圧)は免れないでしょう。つまり、遠い将来においては、発症率は下がっていくことが推定できます。その前兆として、軽症化していると解釈することができます。まだ残っている謎は?今回は、統合失調症の疫学をテーマに、その謎解きをしました。しかし、まだ謎が残っています。それは…統合失調症は一体どうやって生まれたのでしょうか?1)「進化精神病理学」p.195、p.198:マルコ・デル・ジュディーチェ:福村出版、20232)「臨床精神医学 こころの進化と精神医学」p.843:アークメディア、20113)「統合失調症」p.158、p.192、p.197、p.199:岡田尊司、PHP新書、20104)「標準精神医学 第8版」p.306:医学書院、20215)「統合失調症」p.5、p.169:村井俊哉、岩波新書、2019<< 前のページへ■関連記事映画「アバター」【私たちの心はどうやって生まれたの?(進化心理学)】Part 2映画「心のカルテ」(後編)【なんでやせ過ぎてるってわからないの?(エピジェネティックス)】Part 1ペコロスの母に会いに行く【認知症】

820.

アルツハイマー病治療の新時代、新規治療薬の承認でどう変わるか

 これまでのアルツハイマー病の治療では、症状重視の治療が何十年もの間、行われてきた。米国・アラバマ大学のDavid S. Geldmacher氏は、アルツハイマー病の対症療法の根底となるエビデンスおよび疾患進行を遅らせる可能性のあるアミロイド低下療法に関する新たなデータをレビューした。Continuum(Minneapolis, Minn)誌2024年12月1日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・2021年から、アミロイド低下モノクローナル抗体療法が臨床使用されるようになった。・2023年7月、米国食品医薬品局(FDA)より完全な承認を獲得した最初の薬剤としてレカネマブが承認された。・2024年7月には、ドナネマブも承認された。・これらの薬剤は、脳からアミロイドプラークを除去し、臨床的な疾患進行を遅らせるが、脳浮腫または滲出液貯留および脳出血を伴うアミロイド関連画像異常といわれる重大な有害事象を来す可能性がある。・そのため、定期的なMRIスキャンを含む広範な安全性モニタリングが求められる。・2023年には、ブレクスピプラゾールがアルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対して初めて承認された。・オレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサントは、以前に軽度および中等度のアルツハイマー病患者における不眠症の治療薬として承認されている。・軽度、中等度、高度のアルツハイマー病に対するアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の使用については、認知機能スクリーニング検査の変化以外のアウトカムを含め、確固たるエビデンスが報告されている。・より限定的な研究では、中等度および高度アルツハイマー病に対するメマンチンに使用が支持されている。・これらの薬剤は、主に認知機能低下を遅らせ、有害な行動の発現を抑制する。・認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する薬物療法は、予測が困難であり、ほとんどの臨床試験において、ネガティブな結果が報告されている。 著者らは「抗アミロイド療法は、アルツハイマー病の病理を一変させる初めてのFDA承認薬による治療オプションであるが、患者に対する全体的な有用性や価値を明らかにするには、もう少し時間が必要である」としている。

検索結果 合計:5819件 表示位置:801 - 820