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産業医に求められる3つのビジネススキル【実践!産業医のしごと】

はじめに産業医を選任するうえで、企業は産業医にどのようなことを期待しているのでしょうか。過重労働面談やメンタルヘルス対応、職場巡視などの専門性が産業医の基盤であることは当然ですが、これだけでは企業の期待に応えられていない可能性があります。先日、いくつかの産業医の人材紹介会社と話をする機会がありましたが、共通していたのは「産業医の交代に関する案件」が年々増加していることです。その背景には、産業医に対して、医療以外のビジネススキルへの期待があるといいます。そこで本稿では、産業医に求められる3つのビジネススキルについて解説します。1. ビジネスコミュニケーション医療の場面では、医師は指示者となることが多いですが、産業医は企業内でさまざまな立場の人々と関わります。その中で求められるのは、特別なテクニックではなく、ビジネスパーソンとしてのコミュニケーション力です。基本的には、医学用語を避けた平易な言葉での説明を心掛け、対等な立場での会話を意識します。また、以下のように相手によってアプローチの工夫を検討しましょう。経営層とのコミュニケーション経営層に対しては、データや数値を用いた簡潔な説明が求められます。医学的に正しいことを提案しても、感情で訴えるだけでは受け入れられる確率は下がります。必ず根拠となるデータや費用対効果を明確に示すことが重要です。人事部門とのコミュニケーション人事部門に対しては、具体的な施策と実行可能な計画の提示が重要です。定期的な情報共有を通じて施策の進捗状況や課題を共有し、必要に応じて計画を調整していきます。従業員とのコミュニケーション従業員に対しては、丁寧な傾聴と相談しやすい雰囲気づくりをすることで、健康相談の敷居を下げることができます。独立的かつ中立的な関わり方を意識しましょう。2. 時間管理の徹底時間管理は、企業との信頼関係を築くうえで基礎となるスキルです。企業からよく聞く不満の1つが、産業医の時間管理に関するものです。勤務時間の突然の変更やメールの返信の遅さは、信頼関係を損なう大きな要因となります。スケジュール管理の重要性産業医活動を円滑に進めるためには、年間スケジュールを企業と事前に共有し、計画的に業務を進めることが重要です。遅刻などがないように出務するようにしましょう。また、やむを得ない事情で予定を変更する場合も、速やかな連絡と代替案の提示が必要です。迅速なレスポンス対応メールなどのコミュニケーションツールへの返信は、基本的に24時間以内を心掛けましょう。とくにメンタルヘルス不調者への対応など、緊急に相談したい案件については、時間を融通するなどの柔軟な対応が求められます。3. 課題解決思考の提案産業医には、健康管理における課題を特定し、実現可能な解決策を提案する力が求められます。この際には、企業の経営資源(予算、人員、時間)を考慮した現実的なアプローチが重要です。課題の把握と分析企業のニーズを正確に理解することから始めましょう。健康診断や休職者の分析や職場環境調査の実施、産業保健スタッフや人事部門からの情報収集を通じて、課題を客観的に把握します。データに基づく分析は、経営層への提案時にも説得力を持ちます。実効性のある解決策の提案解決策には、短期的な対応と中長期的な視点の両方が必要です。たとえば休職者を減らしたいとして、3年程度の長期の目標を立て、その後に1年単位の施策を計画します。その際には予算、人員、時間などを検討しながら、既存リソースを活用し、1年ごとに効果を確認しながら施策を展開していくことが重要です。ビジネススキルの確認リストまとめ産業医の活動には、医学的専門性に加えて、ビジネススキルが不可欠です。ビジネススキルといってもハードルが高いものではなく、産業医を長く経験すれば自然と身に付いていくものだと思います。私の産業医経験から感じることは、企業は私たちを「従業員の健康に関する課題を共に解決してくれるパートナーになりうるか」を見ているということです。これらのスキルは、信頼を得て、頼られる産業医になるために必要不可欠な要素といえるでしょう。

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混合性うつ病の精神運動興奮に対するトラゾドンIVの有効性

 精神運動興奮は、混合性うつ病の困難な症状であり、多くの場合、臨床アウトカムを悪化させ、治療を複雑化させる。イタリア・シエナ大学のPietro Carmellini氏らは、混合性うつ病患者を対象に、トラゾドン静脈内投与(IV)の有効性および忍容性を評価するため、レトロスペクティブ研究を実施した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2025年1月13日号の報告。 対象は、混合性うつ病入院患者97例。症状重症度は、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)を用いて評価した。 主な内容は以下のとおり。・治療初期において、興奮、不安、易怒性の有意な低減が観察された。・相関分析では、トラゾドンIVの投与量とMADRS(r=−0.23、p<0.05)、GAD-7の項目5(r=−0.27、p<0.001)、CGI-S(r=−0.22、p<0.05)のスコア改善との間に有意な負の相関が認められた。・治療期間においても、GAD-7の項目5(r=−0.29、p<0.001)、CGI-S(r=−0.27、p<0.001)のスコア改善と負の相関が認められ、これは治療期間が長くなると効果が低減する可能性を示している。・回帰分析では、投与量ではなく治療期間がGAD-7の項目5およびCGI-Sのスコア改善に有意な影響を及ぼすことが示唆された。・トラゾドンは、忍容性が良好であり、軽度の副作用が11.3%の患者でみられた。 著者らは「混合性うつ病の興奮および関連症状の低減に対するトラゾドンIV治療、とくに初期段階での治療が有効であることを示唆しており、併せて治療期間を最適化することの重要性が示された。今後の研究において、個別化された投与戦略や長期アウトカムを調査する必要がある」としている。

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中等~重度の認知症、通常ケアvs.緩和ケア/JAMA

 中等度~重度の認知症患者には緩和ケアによる介入が必要とされる。米国・Regenstrief InstituteのGreg A. Sachs氏らは、IN-PEACE試験において、地域在住の中等度~重度の認知症患者とその介護者では、通常のケアと比較して緩和ケアを統合した認知症ケアの管理プログラムは、24ヵ月間を通して患者の神経精神症状を緩和せず、介護者の抑うつ状態や苦痛も改善しないことを示した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年1月29日号で報告された。インディアナ州中部地域の無作為化臨床試験 IN-PEACE試験は、中等度~重度の認知症患者とその介護者における、緩和ケアを統合した認知症ケアの管理プログラムの有用性を評価する無作為化臨床試験であり、2019年3月~2020年12月に米国インディアナ州中部の2つの施設で参加者を登録した(米国国立老化研究所[NIA]の助成を受けた)。 電子健康記録(EHR)をスクリーニングして年齢65歳以上の中等度~重度の認知症患者を特定し、介護者が認知症の病期を含む適格性を確認した。介護者は年齢18歳以上で、患者の日常生活の支援を行う中心的な人物とした。患者と介護者を1組として、緩和ケア群または通常ケア群に無作為に割り付けた。 介入は、研修を受けた看護師またはソーシャルワーカーからの毎月の電話、および介護者による患者の神経精神症状、介護者自身の苦痛、緩和ケアの問題(たとえば、アドバンス・ケア・プランニング、症状、ホスピスなど)の管理を支援するエビデンスに基づくプロトコールで構成された。通常ケア群では、介護者は認知症に関するリソースとなる情報を受け取り、患者は臨床医による通常のケアを受けた。 主要アウトカムは、Neuropsychiatric Inventory Questionnaire(NPI-Q)の重症度スコア(0~36点、高点数ほど患者の症状が悪化していることを示す)とした。副次アウトカムは、患者のSymptom Management in End-of-Life Dementia(SM-EOLD)スコア(0~45点、高点数ほど9つの症状のコントロールが良好であることを示す)、介護者の抑うつ(Patient Health Questionnaire-8:PHQ-8)スコア(0~24点、高点数ほど抑うつ症状が多いことを示す)、介護者の苦痛(NPI-Q distress)スコア(0~60点、高点数ほど苦痛が大きいことを示す)、および救急診療部受診と入院の複合イベントであった。NPI-Q重症度スコアの経時的な変化率に差はない 患者(平均年齢83.6歳、女性67.7%)と介護者(60.5歳、81.1%)の201組を登録した。緩和ケア群が99組、通常ケア群が102組であった。患者の96%がFunctional Assessment Staging Tool(FAST)のステージが6または7(中等度~重度の認知症)であり、患者と介護者の40%以上がアフリカ系アメリカ人だった。試験期間中に3組が脱落し、83例の患者が死亡した。 NPI-Q重症度スコアの平均値は、ベースラインにおいて緩和ケア群9.92点、通常ケア群9.41点、24ヵ月後はそれぞれ9.15点および9.39点であり(24ヵ月時の群間差:-0.24[95%信頼区間[CI]:-2.33~1.84])、ベースラインからの経時的な変化率に群間差を認めなかった(群と時間の交互作用のp=0.87)。救急診療部受診と入院の複合イベントは緩和ケア群で良好 24ヵ月時の患者のSM-EOLDスコア(群間差:1.74[95%CI:-1.03~4.50])、介護者のPHQ-8スコア(-0.05[-1.46~1.36])、介護者のNPI-Q distressスコア(-0.87[-3.83~2.10])については、いずれも両群間に有意な差はなかった。一方、救急診療部受診と入院の複合イベントは、緩和ケア群で少なかった(1例当たりの平均イベント数:緩和ケア群1.06 vs.通常ケア群2.37、群間差:-1.31[95%CI:-1.93~-0.69]、相対リスク:0.45[95%CI:0.31~0.65])。 著者は、「救急診療部受診や入院の減少は大幅な費用削減につながる可能性があるが、これは本試験の目的ではなく、今後、さらに評価を進める必要があるだろう」「患者および介護者の症状や苦痛に関するアウトカムがいずれも改善しなかったことは予期せぬ所見であったが、主な原因としてベースライン時の症状および苦痛の負荷が比較的低かったために、これらの結果が改善される範囲が限定された可能性がある」としている。

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日本における片頭痛治療パターン、急性期治療薬の過剰処方の可能性

 長岡技術科学大学の勝木 将人氏らは、日本における18歳以上の成人片頭痛患者に対する治療パターンを明らかにするため、メディカルビッグデータREZULTのデータベースを用いて、検討を行った。Cureus誌2024年12月18日号の報告。 REZULTデータベースの従業員ベースのレセプトデータを用いて、次の2つの要素について検討を行った。1つ目の要素(研究1)は、2020年に片頭痛と診断された患者における急性期治療薬の過剰処方率を評価するための横断的分析として実施した。過剰処方の定義は、トリプタンとNSAIDs、複数の薬剤の併用が90日以内に30錠以上または同一期間におけるNSAIDs単独で45錠以上とした。2つ目の要素(研究2)は、2010年7月〜2022年4月、初回片頭痛診断から2年以上にわたり患者フォローアップを行った縦断的分析として実施した。処方された錠数は、90日ごとに記録した。 主な結果は以下のとおり。・研究1では、2020年に評価された330万705例のうち、6万6,428例(2.01%)が片頭痛と診断された。・このうち、急性期治療薬が処方されていた患者は4万1,209例であった。・過剰処方は、NSAIDs単独群で9,280例(22.52%)、トリプタン併用群で2,118例(5.14%)に観察された。・さらに、6,412例(15.56%)において予防治療が行われていた。・研究2では、2年超のフォローアップを実施した684万618例のうち、29万6,164例(4.33%)に片頭痛の持続が認められた。・過剰処方率は、NSAIDs単独群で23.20%(6万8,704例)、トリプタン併用群で3.97%(1万1,755例)であり、1回以上の予防治療薬処方率は16.51%(4万8,886例)であった。・治療パターンは、地域の貧困指数、頭痛専門医の分布など社会経済的因子の影響が認められた。 著者らは「日本における片頭痛の実臨床データの評価により、予防薬処方の不十分、急性期治療薬の過剰処方が中程度〜高頻度に確認された」と結論付けている。

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COVID-19は筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群リスクを高める

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の発症リスクを高めるようだ。新型コロナウイルス感染者は、ME/CFSを発症するリスクが5倍近く高くなることが、新たな研究で示された。研究グループは、このことからME/CFSの新規症例がパンデミック前の15倍に増加している理由を説明できる可能性があるとの見方を示している。米ベイトマンホーンセンターのSuzanne Vernon氏らによるこの研究結果は、「Journal of General Internal Medicine」に1月13日掲載された。Vernon氏らは、「われわれの研究結果は、新型コロナウイルス感染後にME/CFSの発症率と発症リスクが大幅に増加することのエビデンスとなるものだ」と結論付けている。 米疾病対策センター(CDC)によると、ME/CFSの患者は慢性的な倦怠感に悩まされており、用事を済ませる、学校行事に参加する、仕事をこなす、シャワーを浴びるなどの日常的な活動を行った後には倦怠感が増幅するという。また、睡眠障害やめまい、記憶や思考能力の低下などの症状に悩まされることもある。これらの症状の多くは、COVID-19罹患後症状(long COVID)にも見られることから、研究グループは、両者の間に関連性があるのではないかと考えた。研究グループによると、EBウイルス(エプスタイン・バーウイルス)やロスリバーウイルスのようなウイルスによる感染症罹患者の11%も、ME/CFSの診断基準を満たすという。 今回の研究は、COVID-19の健康への長期的な影響に関するプロジェクトRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)の一環として、RECOVERの成人を対象とした縦断観察研究RECOVER-Adultのデータを用い、新型コロナウイルス感染者1万1,785人と非感染者1,439人を対象に、ME/CFSの罹患率と有病率を調査した。対象者は、新型コロナウイルス感染後のME/CFSの有無に基づき、ME/CFSの診断基準を満たす者、診断基準を満たさないがME/CFS様の症状がある者、ME/CFSの症状を報告しない者の3群に分類された。 新型コロナウイルス感染者のうち、531人(4.5%)がME/CFSの診断基準を満たし、4,692人(39.8%)がME/CFS様の症状を持ち、6,562人(55.7%)はME/CFSの症状を有していなかった。非感染者では、それぞれ9人(0.6%)、232人(16.1%)、1,198人(83.3%)であった。ME/CFSの100人年当たりの罹患率は新型コロナウイルス感染者で2.66件(95%信頼区間2.63〜2.70)であったのに対し、非感染者では0.93件(同0.91〜10.95)であった。ハザード比(HR)は4.93(同3.62〜6.71)であり、新型コロナウイルス感染がME/CFSの発生リスクを大幅に増加させることが示された。新型コロナウイルス感染者において最もよく報告されたME/CFSの症状は労作後の倦怠感で、全感染者の24.0%(2,830人)に認められた。さらに、新型コロナウイルス感染後にME/CFSの診断基準を満たした参加者の大多数(88.7%、471/531人)は、RECOVER研究で定義されるlong COVIDの基準も満たしていた。 研究グループは、「さらなる研究で、一部の新型コロナウイルス感染者が他の患者よりも感染後にME/CFSを発症しやすい理由を解明する必要がある」と結論付けている。

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適切な感染症管理が認知症のリスクを下げる

 認知症は本人だけでなく介護者にも深刻な苦痛をもたらす疾患であり、世界での認知症による経済的損失は推定1兆ドル(1ドル155円換算で約155兆円)を超えるという。しかし、現在のところ、認知症に対する治療は対症療法のみであり、根本療法の開発が待たれる。そんな中、英ケンブリッジ大学医学部精神科のBenjamin Underwood氏らの最新の研究で、感染症の予防や治療が認知症を予防する重要な手段となり得ることが示唆された。 Underwood氏によると、「過去の認知症患者に関する報告を解析した結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬の使用は、いずれも認知症リスクの低下と関連していることが判明した」という。この研究結果は、同氏を筆頭著者として、「Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に1月21日掲載された。 認知症の治療薬開発には各製薬企業が注力しているものの、根本的な治療につながる薬剤は誕生していない。このような背景から、認知症以外の疾患に使用されている既存の薬剤を、認知症治療薬に転用する研究が注目を集めている。この方法の場合、薬剤投与時の安全性がすでに確認されているので、臨床試験のプロセスが大幅に短縮される可能性がある。 Underwood氏らは、1億3000万人以上の個人、100万症例以上の症例を含む14の研究を対象としたシステマティックレビューを行い、他の疾患で使用される薬剤の認知症治療薬への転用可能性について検討を行った。 文献検索には、MEDLINE、Embase、PsycINFOのデータベースを用いた。包括条件は、成人における処方薬の使用と標準化された基準に基づいて診断された全原因認知症、およびそのサブタイプの発症との関連を検討した文献とした。また、認知症の発症に関連する薬剤(降圧薬、抗精神病薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬など)と認知症リスクとの関連を調べている文献は除外した。 検索の結果、4,194件の文献がヒットし、2人の査読者の独立したスクリーニングにより、最終的に14件の文献が抽出された。対象の文献で薬剤と認知症リスクとの関連を調べた結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬が認知症リスクの低減に関連していることが明らかになった。一方、糖尿病治療薬、ビタミン剤・サプリメント、抗精神病薬は認知症リスクの増加と関連していた。また、降圧薬と抗うつ薬については、結果に一貫性がなく、発症リスクとの関連について明確に結論付けられなかった。 Underwood氏は、「認知症の原因として、ウイルスや細菌による感染症が原因であるという仮説が提唱されており、それは今回得られたデータからも裏付けられている。これらの膨大なデータセットを統合することで、どの薬剤を最初に試すべきかを判断するための重要な証拠が得られる。これにより、認知症の新しい治療法を見つけ出し、患者への提供プロセスを加速できることを期待する」と述べた。 また、ケンブリッジ大学と共同で研究を主導した英エクセター大学のIlianna Lourida氏は、ケンブリッジ大学のプレスリリースの中で、「特定の薬剤が認知症リスクの変化と関連しているからといって、それが必ずしも認知症を引き起こす、あるいは実際に認知症に効くということを意味するわけではない。全ての薬にはベネフィットとリスクがあることを念頭に置くことが重要である」と付け加えている。

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犬を強く愛している飼い主ほど健康になれる?

 犬と暮らす人の中でも、犬への愛着が強い人ほど身体活動量が高くなっていることが明らかになった。国立環境研究所の谷口優氏と東京都健康長寿医療センター研究所の池内朋子氏による論文が、「PLOS One」に11月27日掲載された。同氏らは、「犬と暮らすことで得られる健康効果を説明する要因として、犬への愛着の強さが鍵を握っているのではないか」と述べている。 近年、犬の飼い主は健康状態が良好な人が多いとする研究結果が複数報告されてきている。谷口氏らも既に、犬と暮らす高齢者は身体機能が高いことや、フレイル(虚弱)や死亡に至るリスクが低いことを報告している。また、犬と暮らす高齢者の中でも、散歩などの運動習慣がある人において認知症の発症リスクが低くなることも報告している。しかし、なぜ犬と暮らす人の中で、運動習慣に差が生じるのかについては不明であった。 今回の研究は、一般社団法人ペットフード協会が2023年に実施したインターネット調査のデータを用いて行われた。この調査には日本各地に居住している20~79歳の犬猫飼育者1,683人が回答。このうち犬を飼っている1,041人を解析対象とした。 対象者の主な特徴は、平均年齢が52.5歳、女性57.5%、既婚者71.1%、戸建ての持ち家居住者70.0%、独居者10.4%で、平均年収は500~600万円であった。また犬の散歩の頻度は、1日2回以上が25.1%、1日1回から2回が3.8%、週3回から7回が45.8%、週3回未満が25.3%だった。国際標準化身体活動質問票で評価した中高強度身体活動量の平均値は、41.4METs時/週であった。 飼い犬への愛情の強さの評価には、既存の質問票(the CENSHARE Pet Attachment Survey)を用いた。この質問票は、「ペットとの遊びや運動に時間を使うか?」、「ペットはあなたの気分の変化に気づくか?」、「ペットを家族だと思うか?」などの六つの質問から成り、最大スコア24点で回答を評価し、点数が高いほど愛着が強いと判定する。本研究の対象者の平均値は18.8点だった。 犬への愛着の強さと散歩の頻度および身体活動量との関連性について、重要な交絡因子(年齢、性別、婚姻状況、同居家族、収入、自宅の形態)の影響を統計学的に調整した結果、犬への愛着が強いほど散歩の頻度が高いことが明らかになった(B=0.04、P<0.01)。そして、犬への愛着が強いほど、中高強度身体活動量が高いことも認められた(B=1.43、P<0.01)。 著者らは本研究を、「犬に対する愛着の強さと身体活動量の関連を明らかにした初の研究」と位置づけている。研究の限界点として、横断研究であるため愛着と身体活動量の因果関係は不明であることなどを考察した上で、「犬への愛着の強さが、日々の世話を通じて飼い主の運動習慣につながり、その結果、飼い主に健康障害が発生するリスクが低下すると考える」と総括。他方、「単に犬と暮らすだけでは、健康上のメリットを得られない可能性があることも示された」と付け加えている。

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スタチンと認知症リスクに関するメタ分析、最も顕著な予防作用が示された薬剤は

 世界の認知症患者数は、5,500万例に達するといわれており、2050年までに3倍に増加すると推定されている。心血管系への効果を期待し広く用いられているスタチンには、神経保護作用があるとされているが、認知症リスクに対する影響については、相反する結果が報告されている。ブラジル・アマゾナス連邦大学のFernando Luiz Westphal Filho氏らは、スタチンと認知症リスクとの関連を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Alzheimer's & Dementia誌2025年1月16日号の報告。スタチンで認知症に対し最も顕著な予防作用を示したのはロスバスタチン PRISMAガイドラインに基づきシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。関連する研究を、PubMed、Embase、Cochraneより検索した。性別、スタチンの種類、糖尿病の有無によるサブグループ解析を実施し、認知症、アルツハイマー病、脳血管認知症リスクを評価した。 スタチンと認知症リスクとの関連を評価した主な内容は以下のとおり。・55件の研究、700万例超の観察研究をメタ解析に含めた。・スタチン使用は、非使用と比較し、認知症リスクが有意に低かった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.82〜0.91、p<0.001)。・アルツハイマー病(HR:0.82、95%CI:0.74〜0.90、p<0.001)および脳血管認知症(HR:0.89、95%CI:0.77〜1.02、p=0.093)のリスク低下も認められた。・サブグループ解析では、2型糖尿病患者、3年以上スタチンを使用している患者、最大の保護作用が認められたアジア人集団において、認知症リスクが有意に低下していることが明らかとなった。【2型糖尿病患者】HR:0.87、95%CI:0.85〜0.89、p<0.001【3年以上スタチンを使用している患者】HR:0.37、95%CI:0.30〜0.46、p<0.001【最大の保護作用が認められたアジア人集団】HR:0.84、95%CI:0.80〜0.88・すべての原因による認知症に対し最も顕著な予防作用を示したスタチンは、ロスバスタチン(HR:0.72、95%CI:0.60〜0.88)であった。 著者らは「認知症予防に対するスタチンの神経保護作用の可能性が示唆された。観察研究の限界はあるものの、大規模データセットおよび詳細なサブグループ解析により、結果の信頼性は高まった。これらの結果を確認し、臨床ガイドラインを啓発するためにも、今後のランダム化臨床試験が求められる」としている。

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認知症ケアの方法間の比較:カウンターフレンチと、無農薬の農家レストランと、町の定食屋(解説:岡村毅氏)

 認知症と診断された人をどうやってケアするのがよいか、という実際的な研究である。1番目の群は「医療」で働いている専門家が、本人に合ったケアをコーディネートしてくれる。2番目の群は「地域」で働いている専門家が、いろいろとつないだりアドバイスしてくれる。3番目の群は、通常のケアである。これらを、認知症の行動心理症状(もの忘れ等の中核的な症状ではなく、たとえば、興奮とか妄想とか、介護者が最も困るもの)をメインアウトカムとして比較している。 説明の前に、認知症の医療のことを少し説明しよう。がんなどの古典的な医療提供体制としては、<調子が悪くてかかりつけ医に行く⇒異常があり大病院に紹介⇒大病院で精密検査しがんが見つかる⇒先端的チームによる素晴らしい手術を受ける⇒術後のケアを受ける⇒安定したらかかりつけ医に戻る>といった経過を取る。では認知症ではどうだろうか。かつては大学病院の認知症外来でも、がんなどと同じことが行われていた。<遠方から患者さんがやって来る⇒大学病院で平凡なアルツハイマー型認知症と診断される⇒大学病院に来続ける⇒ゆっくりと進行する⇒ある日通院できなくなり地域の資源を探し始めるがよくわからない>といった経過である。患者さんや家族にとって、大学病院にかかっている安心感がある以外にメリットのない構図である。 珍しい疾患や、診断が難しいもの(たとえば若年性認知症や、さまざまな希少な神経変性疾患)は大学病院等にかかる意味はあるだろう。しかし普通の認知症は、地域の医療機関や、地域の介護専門家と早期から関係をつくって、本人に合ったケアをコーディネートしたり、さまざまな地域資源のつながりの中でケアしたほうがうまくいく。そもそも大学病院等は、地域とは隔絶していることが多く、認知症ケアに関しては無力であることが多い(もちろん例外もあるだろうが)。 本研究は、「医療」に重きを置く、あるいは「地域」に重きを置くケアが、通常のケアよりも優れているのではないか、そしてどちらがより優れているのか、というのを検証している。 結果は、認知症の行動心理症状に関しては残念ながら3群に有意差はなかった。米国の「通常ケア」の実態を知っているわけではないが、ケアシステム間の比較は難しい。先端的なケア(1、2群のこと)のほうが優れていることは専門家なら誰でもわかっている。とはいえ、患者さんが大変な状況になったら、ケアシステムの中の人は、たぶん必死で助けようとするだろう。どのケアシステムにも、とても優れた専門家もいれば、そうでもない人もいる。なので行動心理症状のような「大変な事態」で比較してしまうと、ケアシステム間の差はうまく出なかったのだろう。例えて言うなれば、カウンターフレンチや無農薬の農家レストランは、町の定食屋に比べたら特別な体験を提供できるし、高いお金を取れる。ただし、空腹の人が飛び込んだ場合には、おいしさには3群に差はないだろう。 なお、メインアウトカムではないが、介護者の自己効力感(自分ならできるという感覚、ケアを安全に続けるためには必須の力であり、これがないと、自分がうつになったり、介護対象者を虐待するリスクが上がる)は1、2群が高かった。これは、当たり前ともいえる。介入群では意識の高い専門家が寄り添ってくれたのだから、自己効力感は上がるだろう。 私たちの研究チームでも、認知症の社会医学研究では、認知機能や行動心理症状などでは有意差を得ることが難しい。それは認知症が複雑な状態であり、認知機能や行動心理症状はその一部にすぎず、そして世界との絶え間ない交流という動的状態の中にあるからだ。そして世界もまたきわめて複雑だからである。私たちのチームでは本人・家族のウェルビーイングや自己効力感を使っている。私たちならメインアウトカムを行動心理症状にはしなかっただろう。

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アルツハイマー病患者に対する有酸素運動のベネフィット/BMJ Open

 アルツハイマー病患者の認知機能や実行機能に対する身体活動の影響は、数多くの研究で調査されているものの、その結果は完全に一致しているとはいえない。また、特定のトレーニングや使用する評価ツールに関する研究も、不十分である。中国・湖南渉外経済学院のLinlin Yang氏らは、有酸素運動がアルツハイマー病患者のQOL、認知機能、抑うつ症状に及ぼす影響を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Open誌2025年1月11日号の報告。 対象研究には、アルツハイマー病患者に対する介入として有酸素運動を用いたすべてのランダム化比較試験(RCT)を含めた。2024年3月12日までに公表された研究を、PubMed、Web of Science、Cochrane Library、EMBASE、Scopus、CINAHL、CNKIより、システマティックに検索した。2人の独立した著者により、定義された手法を用いてデータ選択、検索を行った。バイアスリスク、システマティックレビューおよびメタ解析、エビデンスの確実性の評価には、それぞれCochrane risk of bias tool、ランダム効果モデル、GRADE(Grading of Recommendations Assessment Development and Evaluation)ツールを用いた。研究間の異質性を評価するため、Stata MP V.18.0およびV.14.0を用いてメタ回帰を実施した。標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を算出した。データは、Cochrane CollaborationのReview Manager V.5.4を用いてレビューした。結果の安定性および信頼性を確認するため感度分析を実施し、出版バイアスを確認するためファンネルプロットおよびEgger's testを用いた。出版バイアスの修正および評価には、Duval and Tweedie clipping methodを用いた。 主な結果は以下のとおり。・有酸素運度は、アルツハイマー病患者の認知機能を向上させることが示唆された。・ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア、アルツハイマー病評価尺度の認知サブスケール(ADAS-cog)スコア、QOLの有意な改善が認められた。一方、抑うつ症状については、有意な差が認められなかった。【MMSEスコア】SMD:0.95、95%CI:0.58〜1.32、z=5.06、p<0.00001【ADAS-cogスコア】SMD:−0.67、95%CI:−1.15〜−0.20、z=2.77、p=0.006【QOL】SMD:0.36、95%CI:0.08〜0.64、z=2.51、p=0.01【抑うつ症状】SMD:−0.25、95%CI:−0.63〜0.13、z=1.27、p=0.21・サブグループ解析では、介入期間が16週超、介入1回当たり50分未満の場合、MMSEスコアの改善が認められた。・介入期間が16週超、介入1回当たり30分超の場合、ADAS-cogスコアの改善が認められた。・有酸素運動を週3回以上、介入1回当たり30〜50分以上を16週間継続した場合、QOLの向上が認められた。 著者らは「アルツハイマー病に対する有酸素運動は、認知機能およびQOLの改善に寄与するが、抑うつ症状には有意な影響を及ぼさないことが明らかとなった。ただし、含まれた研究の異質性の高さや質のばらつきを考慮すると、より科学的かつ客観的なRCTにより本結果を検証する必要がある」と結論付けている。

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 1

今回のキーワード家族システムエマニュエル・トッド地政学権威主義不平等個人主義化情報化硬直化文化進化文化結合症候群前回(その3)、逆に医療保護入院が必要とされてしまう現実的な理由は、強制入院への家族の同意が権利であり義務であると家族、社会、そして国が捉えてしまっているからであることがわかりました。そして、医療保護入院が廃止できない諸悪の根源が扶養義務であることを突き止めました。それでは、この扶養義務をはじめ、そもそもなぜ私たちはこれほどまでに家族のつながりにとらわれるのでしょうか? そして、なぜ私たちは人権意識が乏しいのでしょうか?今回(その4)は、映画「クワイエットルームにようこそ」を通して、新しい学問である地政学の視点から、これらの疑問を解き明かします。そして、日本ならではの根深い国民性を「直系家族病」と名付け、文化結合症候群として捉え直します。日本人の人権意識はどんだけ低いの?まずは、この映画で、日本人の人権意識の低さを描いたシーンをいくつか紹介します。今回、注目するのは、主人公の明日香と同棲していた放送作家の鉄雄です。彼は、明日香の「自殺未遂」騒動で、大事な企画会議をドタキャンしてしまいました。事情が事情なだけに釈明できないなか、なんとその罰ゲームとして、彼はその後の会議中に番組の企画でいきなり頭に布袋をかぶせられて目隠しのまま、拉致される形で成田空港に直行し、ミャンマーの奥地に連れて行かれます。まるで映画に出てくるテロリストによる誘拐のワンシーンのようです。そして、明日香が入院している精神科病院のホールのテレビに、「超緊急企画!会議バックレ作家、焼畑鉄雄、ミャンマー少数山岳民族R族の村にて、肩にオウムを乗せ、ファッションキャンペーン強行命令!行け!焼畑上等兵!肩にオウムを乗せて行け!」という興奮気味のアナウンスが流れ、鉄雄が映し出されるのです。そして、それを見ている患者たちみんながお腹を抱えてげらげら笑い転げるのです。これは、1990年代から2000年代前半にかけて大ヒットした某バラエティ番組を彷彿とさせます。今で言うリアリティ番組の先駆けだったわけですが、拉致や監禁が定番でした。当時、人権侵害は精神科病院の中だけではなかったのでした。そして、この状況は、げらげら笑っている患者たち自身の境遇に重なり、皮肉めいています。しかし、つい最近まで、この患者たち(医療保護入院)と同じように、日本人には見慣れた光景として、問題視されなかったのでした。明日香が医療保護入院を同意したことについて問いただした時も、鉄雄は「だっておれ基本、言われるがままじゃん」と開き直っています。彼は、明日香の人権よりも、医者などの「上(権威)に逆らわない」ことを選んでいます。これは、日本人の人権意識の低さをよく描いています。それでは、なぜ日本人の人権意識は低いのでしょうか? 実はこれは、家族のつながりにとらわれることと深く関係しています。どういうことでしょうか?次に、世界の国々の家族の形と国民性の関係から、この答えを導いてみましょう。次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 2

世界の国々の家族の形と国民性の関係とは?鉄雄を代表として日本人の人権意識は低いことがわかりました。一方で、明日香は、家族と絶縁していたわけですが、父の急死をきっかけに、わざわざ仏壇を買って実家に送りつけるシーンがありました。絶縁しているからと言って単純に割り切れないのでした。それでは、他の国ではどうでしょうか?ここから、世界の国々の家族の形(家族システム)を、地政学の視点から大きく2つ、細かく4つに分けて、国民性(文化)と関係づけてみましょう。この家族システムは、著名な歴史人口学者であるエマニュエル・トッド氏による分類を参考にしています1)。なお、地政学とは、地理と政治の関係を考える新しい学問です。この学問によって、地理的条件による家族のあり方(家族構成や家族関係などの家族システム)と国家のあり方(制度や政治体制などの国家システム)は、実は密接に関係していることを説明することができます。ちなみに、家族システムの進化心理学的な起源の詳細については、関連記事1をご覧ください。(1)核家族約700万年前に人類が誕生した当初は、まだ母親と子供たちのみが一緒に暮らす母子家庭でした。約300万年前に父親が加わって一緒に暮らすようになり、家族が誕生しました。そして、子供は、大人になったらもとの家族から離れ、自分の新しい家族をつくりました。大きく2つに分類した家族システムの1つは、核家族です。これは、父親と母親と未婚の子供たちが同居する、まさに核となる家族構成です。これが、最初の家族システムです。子供は、成人したら親と一緒にいないため、親の言うことを聞く必要はありません。もちろん、親も口出ししません。けがや病気などで働けなくなっても、そもそも一緒にいなくてわからないので、養うこと(扶養義務)はありません。つまり、このタイプの家族システムでは、家族にとらわれることはありません。もはや「縁」(つながり)が薄いので、明日香のように「絶縁する」という発想すらありません。そして、この家族のあり方はその社会のあり方に発展し、自由主義(個人主義)の文化を生み出します。もともとは狩猟採集生活をしており、食料は蓄えられません。そのため、その日暮らしで、新しい食料を求めて移動生活をしていました。ところが、約1万数千年前に、「肥沃な三日月地帯」(現在のイラク付近)で農耕牧畜革命が起こり、食料が蓄えられるようになりました。そして、定住生活が広がっていきました。すると、親は自分が死んだ後に、土地や家などの財産を子供に受け継がせること(相続)ができるようになりました。ここで、この核家族を古いタイプと新しいタイプの2つに分けて、その特徴をまとめてみましょう。a.絶対核家族1つ目は古いタイプの核家族、絶対核家族です。これは、相続を親の遺言によって自由に決める家族です。なぜなら、住んでいた土地がもともと寒冷で作物が育ちにくいなどの理由で、十分な財産を蓄えられなかったり、狩猟採集をそのまま続けていたことで、そもそも子供に相続する財産があまりないからです。たとえたまたま財産ができたとしても、世代交代をするたびに継がせていたわけでないため、子供たちに平等に分け与えるものだという意識が芽生えにくく、平等主義の文化は根付きません。このタイプの国は、もともと英国です。そして、だからこそ近世(16世紀)の英国で世界最初の公的扶助(救貧法)が生まれたのでした。この制度によって、扶養においての家族システムを国家システムが代わりに担うようになったのでした。一方で、相続への執着がないため、家族の伝統やしきたりに縛られず、発想が革新的になります。だからこそ近代(18世紀)の英国で最初に産業革命が起きたのでした。彼らの文化は、逆説的にも原始的で「野蛮」(より自由)です。だからこそ、利益を最大限に追及することができたのでした。そして、大英帝国が栄え、絶対核家族は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの現在の英語圏に広がっていきました。b.平等主義核家族2つ目は新しいタイプの核家族、平等主義核家族です。これは、相続を平等に分ける家族です。なぜなら、農耕牧畜が発展していったことで、世代交代をするたびに継がせる財産があるからです。そうなると、子供たちに平等に分け与える意識が働き、平等主義の文化が根付きます。一方で、相続がもらえるために多少は親に気を遣う分、そして平等主義である分、平等主義核家族は絶対核家族ほど革新的にはなれません。このタイプの国は、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどの西側の欧州です。また、かつてスペインやポルトガルから独立したラテンアメリカの国々です。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 3

(2)父系家族大きく2つに分類した家族システムのもう1つは、父系家族です。これは、先ほどの平等主義核家族から変わっていったタイプです。これをさらに古いタイプと新しいタイプの2つに分けて、その特徴をまとめてみましょう。なお、母系家族については、数がきわめて少ないために、この記事の分類には入れていません。a.直系家族約5千年前に最初の文明(メソポタミア文明)が、農耕牧畜革命と同じ「肥沃な三日月地帯」(現在のイラク付近)で誕生しました。当時、人口が増えていったことで、持てる土地は限られていき、争いも増えていきました。そのため、親は、土地や家の相続先を子供1人だけに絞り、しかもその1人を一番年上の男子(長男)としました。そして、家(財産)を守るために、長男は結婚してもそのまま家にとどまるようになりました。1つ目は古いタイプの父系家族、直系家族です。これは、子供(長男)が成人して結婚してさらにその子供が生まれても、三世代で同居し続ける家族構成です。他の子供(次男以下の息子)たちは結婚して家を出て、親が持っている限られた農地を部分的に借りる形(地主小作関係)で集約的な農作業を一緒に行いました4)。一方で、娘たちは他の家族の妻(嫁)になります。つまり、子供は、成人しても、結局親(娘は義理の親)と一緒にいることが多いため、親の言うことを聞く必要があります。もちろん、親は家長であるため、子供にいろいろ口出しして、けがや病気などで働けなくなったら養う必要(扶養義務)があります。逆に、親が年老いたら子供が介護します。つまり、このタイプの家族システムでは、家族にとらわれます。そして、この家族のあり方はその社会のあり方に発展し、権威主義の文化を生み出します。また、兄弟の序列が強く意識され、不平等を受け入れる文化が根付きます。相続先に娘は入っていない点で、必然的に女性差別も生まれます。こうして、貧富の差ができて、社会が階層化された封建社会が生まれました。この社会では、相続への執着が強いため、継承することに重きが置かれ、家族の伝統やしきたりに縛られ、発想が保守的になります。このタイプの国は、日本、韓国、北朝鮮などの東アジアと、ドイツ、スウェーデン、ノルウェーなどの欧州の東側や北側の一部の国です。ちなみに、江戸時代の日本の識字率が世界で断トツのトップだったのは、資産(相続)だけでなく、読み書きなどの文化資産も継承する文化が根付いていたからであると説明することができます。b.共同体家族約4千年前から、当時の中国でも直系家族が広がっていきました。ところが、紀元前4世紀頃に、モンゴルの遊牧民がやってきたことで、中国の家族システムは再び変わっていきました。そのわけは、彼らは軍隊(騎馬隊)でもあったため、兄弟が横並びになり、一致団結していたからです2)。2つ目の新しいタイプの父系家族、共同体家族(外婚型共同体家族)です。これは、子供(息子)たちが成人して結婚してさらにその子供が生まれても、家を出ずに全員で親と同居する家族構成です。娘たちは、結婚相手の夫の家で同居します。家族全員で農作業を一緒にするのは直系家族と同じですが、さらに家族全員で一緒に暮らす点が違います。そのため、けがや病気などで働けなくなったら、目の前にいるわけですから必ず養います。これは扶養義務というよりは、当然のことになります。大家族であることから、その人数を束ねる父親の権限は強くなります。この家族のあり方はその社会のあり方に発展し、強い権威主義の文化を育みます。また、一緒に暮らしているわけなので、当然相続も平等になります。これは、息子たち(男性)同士の平等主義の文化が根付きます。一方で、娘たちは、相続先に入っていないうえに、結婚相手の兄弟たちとも一緒に暮らすなかで立場的には弱く、女性差別が大きくなっていきます。このタイプの国は、中国、ロシア、ベトナム、キューバなどです。まさに、もともと共産主義圏の一党独裁(個人崇拝)の国が当てはまっています。なお、アラブ諸国などのイスラム圏も共同体家族です。ただし、いとこ婚が30~50%ときわめて多いという独特の特徴があり、内婚型共同体家族として区別されています。このわけは、やはり砂漠が多く水資源が乏しいことで、略奪などによって生死がかかっているため、なるべく信頼できる身内(部族)で固まろうとするからです3)。彼らの権威は、言うまでもなくイスラム教です。そして、娘たちはいとことして最初から許嫁になっている点でさまざまな制限をされてしまい、女性差別が最も深刻になっていることもわかります。ちなみに、英国が最も古い絶対核家族のままであるのは、島国であり、次々と新しい家族システムができていった「肥沃な三日月地帯」(現在のイラク付近)や中国などのユーラシア大陸の中心から遠く離れていて、そこで生まれた新しい文化がなかなか辿り着かなかったからであると説明できます。また、欧州の西側の国々が2番目に古い平等核家族のままであるのも、同じように説明することができます。ドイツ、スウェーデン、ノルウェーなどの欧州の一部の国については、平等主義核家族から直系家族には変われたのですが、その遠さからその後に共同体家族までは変わり切れなかったと説明することができます。日本、韓国、北朝鮮などの東アジアも同じように説明することができます。このように、方言と同じく、中心から離れた地域(周辺地域)ほど、古い文化(保守性)が同心円状に残るという法則は、周辺地域の保守性原則と呼ばれています1)。参考までに、人類の起源地であるアフリカは、核家族、直系家族、共同体家族、さらには一夫多妻制が混在しています。また、米国は、同じく絶対核家族である英国や他の英語圏とは違い、居住できる国土が広すぎることから、公的扶養の文化が根付きにくいことが指摘されています3)。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 4

結局日本人が家族のつながりにとらわれて、人権意識が低いわけは?入院中に明日香は、蕁麻疹が出ただけで看護師から「クワイエット行き」(隔離拘束)にさせられそうになりました。その時とっさに、蕁麻疹の様子をコモノ(明日香を訪ねてきた面会者)に携帯電話で撮らせます。すると、看護師から「閉鎖病棟では写真撮影は禁止ですよ」と言われ、それを取り上げられそうになります。権威主義の常とう手段、証拠隠滅です。しかし、ひるまず、「初耳ですね。ルールを提供する側なら、あらかじめルールを提示しておくのが、フェアなやり方なんじゃないでしょうか」と言い返すのです。当然の権利を主張した瞬間で、私たちもスカッとします。まさにこのフェアであることは、直系家族(権威主義)ではなく、核家族(自由主義)の価値観による人権意識です。しかし、明日香のような人は少ないようです。なぜでしょうか?この原因を、日本の歴史から解き明かしてみましょう。日本は、平安時代までは相続を分ける平等主義核家族でした。争いが増えた鎌倉時代(14世紀)以降に、一人だけ相続する直系家族が農家でも武家でも徐々に広がり、江戸時代に行き渡りました1)。そして明治になり、明治民法(1896年施行)によって家制度として初めて明文化されました。明治民法では、長男が代々家長(家督)となり、単独で相続を継ぐ権利を得ることとされ、その見返りとして家長はその家族(親族)のメンバーを扶養する義務を負うこととされました。これが、扶養義務の法的な起源です。これは、まさに直系家族という日本の家族システムをそのまま明文化したものです。当時の農村では、親族で集まった集落をつくっており、家督相続と扶養義務のセットはとても合理的でした。そもそも当時は、公的扶助(生活保護)が明確には確立していませんでした。すぐ近くに住む親族が一緒に農作業をしており、日常的にも経済的にも助け合うこと(扶養)は、ごく自然でした。そしてこれが、「子供(家長以外の家族)は成人しても親(家長)の言うことを聞くべきであり、困ったら親(家長)を頼るべきである」というその3で説明した現在の日本人の国民性の起源でもあります。以上から、鎌倉時代から現在まで約600年かけて、直系家族という日本の家族システムを確立させ、家族のつながりにとらわれるという日本独特の国民性(文化)を完成させたことになります。同時にこの600年間で、この家族システム(文化)に適応する人(遺伝子)がより生き残り、より子孫を残してきたことにもなります。それでは、そのような人(遺伝子)とはどんな特徴があるでしょうか?それは、権威にひれ伏し(受け身)、不平等でも恐縮して気を遣うこと(不安)です。まさに、先ほどの鉄雄の「だっておれ、言われるがままじゃん」というセリフです。さらに言えば、彼は番組企画で拉致された時も同じスタンスだったわけですが、そこまで彼ができるのも、その後の番組編集で「きっとおいしくしてくれる」というご褒美(権威)を薄々期待していたからです。あとで鉄雄が明かしたように、実は拉致されることはあらかじめ知らされており、パスポートも周到に用意していたのでした。たとえ人権侵害という形になっても「言うことを聞いていれば悪いようにはされない」という暗黙の了解の文化がそこにあります。実際の研究では、日本人は脳内物質の国際比較においても世界で最も受け身(ドパミン不足)で不安(セロトニン不足)になりやすいことがわかっています。この詳細については、関連記事2をご覧ください。なお、その記事では、受け身で不安になりやすい日本人の気質について、他の要因にも触れています。この受け身で不安になりやすい気質は、「自分はだめだ」という自己肯定感の低さにもつながります。その方が、直系家族の文化に適応できて都合が良いからです。むしろそうなる必要があったというわけです。実際の統計でも、日本人は世界で最も自己肯定感が低いことがわかっていますが、これにも納得がいくでしょう。このように、家族システムにおいても、文化進化と遺伝子進化は共進化していることが考えられます。共進化の詳細については、関連記事3をご覧ください。以上より、日本人が家族のつながりにとらわれ人権意識が低いのは、日本の家族システムが長らく直系家族であったために、権威主義と不平等を受け入れる文化進化と遺伝子進化が共進化してきたからであると説明することができます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 5

逆になんで今は家族のつながりにとらわれ、人権意識が低いのが当たり前に思えなくなってきたの?明日香が運ばれた救急病院で、救急医は鉄雄に「あんた、よっぽどひどいことしたんじゃないのか!」と、まるで一昔前の父親のように怒鳴っていました。その医者は勘違いしていたわけですが、そう言うのが正しいと思っている様子でした。また、すぐに退院したいと言う明日香に対して、担当看護師は「早期退院で自殺を繰り返されたら、責任を問われるのはこちら側ですから」と釘を刺していました。彼女は、自分たちが責任を取ると言い切れるほど正しいことをしていると思っているのでした。実際は、「権威は常に正しい(正しくなければならない)」ため、横暴にもなれて、しかも間違えるわけがないので責任を取ることはありません。これらは、典型的なパターナリズム(父権主義)で、直系家族の価値観(文化)に由来します。しかし現在では、このように父親が怒鳴るのは、モラルハラスメントと呼ばれます。医者が患者に説教するだけでもドクターハラスメントと呼ばれます。何が変わったのでしょうか? 言い換えれば、なぜ今は家族のつながりにとらわれ、人権意識が低いのが当たり前に思えなくなってきたのでしょうか?その答えは、戦後の社会構造の変化です。この変化を大きく2つ挙げてみましょう。(1)個人主義化戦後(1945年)からまもなく、家族システムが核家族である欧米による自由主義(個人主義)と平等主義の価値観による法整備が進み、相続は遺言か法定相続(平等原則)によるものとされ、夫婦間や兄弟間で不平等な家督相続(家制度)は廃止されました。そして、工業化や都市化に伴い、成人した子供は実家近くに住むとは限らなくなりました。また、長男であっても結婚して同居し続けるとは限らなくなりました。そして、2000年代以降の情報化によって、SNSをはじめとして便利な世の中になりました。一人でいても寂しさも紛らわすものはいくらでもあり、ますます個人主義化が進みました。このようにして、現在(2023年統計)では、核家族は約60%、一人暮らしは30%台で、戦前で圧倒的な多数派だった三世代世帯家族(直系家族)はごく数%の少数派になってしまいました。明日香のように家族関係は希薄となりました。このように、個人主義化によって現在の日本の家族システムが絶対核家族に変わってしまったからこそ、家族のつながりにとらわれるのが当たり前に思えなくなったのでした。(2)情報化これまで「権威は常に正しい」としてみんな受け入れていました。なぜなら、正しいかの真実(証拠)を確かめることができなかったからです。しかし、科学が進歩し情報化した現代では、正しさを測る判断基準(科学的根拠)に個人がアクセスできます。伝統や経験論で語られる政治、経済、医療、教育などのさまざまな権威が必ずしも正しくないということがバレてしまうようになりました。さらに、だれでもSNSで発信できるため、権威による横暴が映像や音声で詳らかに晒されるようになりました。もはや立場が上の人(権威)がその権威を守るために、隠蔽することも難しくなりました。このように、情報化によって「権威は常に正しい」という前提(フィクション)が崩れてしまい、人権よりも権威を優先することは難しくなってしまったからこそ、人権意識が低いのが当たり前に思えなくなったのでした。ちなみに、この点で、日本よりも権威主義の強い共同体家族の中国やロシアが、情報統制に必死になっているのも、理解できるでしょう。じゃあなんで当たり前に思えなくなっているのに変えられないの?今は、家族のつながりにとらわれ人権意識が低いのが当たり前に思えなくなっているのに、結局なかなか変えることができません。なぜでしょうか?その答えは、先ほど説明した日本人の受け身で不安になりやすい気質(遺伝子)はなかなか変わらないからです。この気質の人(遺伝子)が広がり多数派になるまで、鎌倉時代から少なくとも600年かかりました。一方、個人主義化(核家族化)という社会構造の変化が起きて、まだたかだか50年ちょっとです。この新しい文化が広がる、つまりこの文化に不適応な受け身で不安になりやすい気質(遺伝子)が減り(淘汰され)、適応的な積極的で不安になりにくい気質(遺伝子)が増える(選択される)には、まだ時間がかかることが推測できます。そして、この事実から、もともと直系家族の文化が、継承は得意であっても革新は不得意であり、その凝り固まった文化を引きずる状態(硬直化)を説明することができます。これを名付けるなら、「直系家族病」です。この病の症状は、医療保護入院を廃止できないだけにとどまりません。不登校、ひきこもり、新型うつ、非婚、少子化、介護、過激なバッシングなど、実は日本ならではの社会問題が挙げられます。つまり、これらの問題は、驚いたことに、この病の症状(結果)として説明できてしまい、根っこの部分ですべてつながっていたということになります。これは、もともと直系家族であった日本の文化に強く結びついた国民性であり国民病、つまり文化結合症候群と言えるでしょう。なお、文化結合症候群の詳細については、関連記事4をご覧ください。1)「我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上」p.68、pp.74-79、pp.87-88:エマニュエル・トッド、文藝春秋、20222)「家族システムの起源I ユーラシア 上」pp.208-209:エマニュエル・トッド、藤原書店、20223)「トッド人類史入門」p.123、p.143:エマニュエル・トッドほか、文藝春秋、20234)「現代家族のパラダイム革新」p.8:野々山久也、東京大学出版会、2007「直系家族病」(文化結合症候群)の関連記事不登校映画「かがみの孤城」(その1)【結局なんで学校に行けないの?(不登校の心理)】Part 3非婚私 結婚できないんじゃなくて、しないんです【コミュニケーション能力】過剰なバッシング(正義中毒)苦情殺到!桃太郎(後編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1<< 前のページへ■関連記事女性誌「STORY」(その2)【そもそもなんで溺愛は気持ち悪いの?どうすればいいの?(家族療法)】Part 2苦情殺到!桃太郎(後編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 2ドラマ「ドラゴン桜」(後編)【そんなんで結婚相手も決めちゃうの? 教育政策としてどうする?(学歴への選り好み)】Part 2NHK「やさしい日本語」【英語が話せないのは日本語が難しいから???実は「語学障害」だったの!?(文化結合症候群)】Part 1

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日本における妊娠中の抗うつ薬継続投与、約10年の変化は

 近年、複数の日本の学会より周産期の抗うつ薬治療に関する治療ガイドラインが発表されており、最新の動向や妊娠中の抗うつ薬継続投与を評価し、出産前抗うつ薬処方を最適化することが重要であると考えられる。東北大学の石川 智史氏らは、日本での2012〜23年における妊娠中の抗うつ薬処方の変化を評価した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年1月10日号の報告。 対象は、2012〜23年に日本で出産した女性。妊娠中の抗うつ薬処方率、傾向、継続性について、大規模行政レセプトデータを用いて評価した。年次変化は、出産時女性の年齢に合わせて調整された多変量ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・出産時の平均年齢が32.5歳であった女性17万9,797例のうち、妊娠中に抗うつ薬を処方されていた女性は1,870例(1.04%)。・抗うつ薬処方率は、2012年の0.63%から2023年の1.67%へと増加していた(p<0.0001)。・妊娠初期に抗うつ薬が処方されていた女性1,730例(0.96%)のうち、妊娠中に抗うつ薬処方を継続していた女性は670例(38.7%)であり、抗うつ薬継続率は2012年の19.51%から2023年の50.70%へと有意な増加が認められた(p<0.0001)。・妊娠中に最も処方されていた抗うつ薬クラスは、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり(0.74%)、なかでもセルトラリン(0.33%)およびエスシタロプラム(0.23%)の有意な増加が認められた。 著者らは「今回の評価には、妊娠中絶または死産に至った女性に対する抗うつ薬処方は評価されていない」としながらも「妊娠中の抗うつ薬処方および処方継続が一般的になっていることを考慮すると、妊娠前のケアおよび共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)の促進を含め、ガイドラインの内容が専門医および出産年齢女性により広まることが求められる」と結論付けている。

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認知症ケア、積極的介入でアウトカムに差はなし/JAMA

 認知症ケア専門家による医療システムを基盤とするケアとソーシャルワーカーや看護師による地域ケアのいずれにおいても、認知症患者の行動症状および介護者の負担に関して、積極的介入と通常ケア(介入なし)による有意な違いは認められなかった。米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのDavid B. Reuben氏らが、米国の4施設で実施した無作為化試験の結果を報告した。認知症に対するさまざまなケアの有効性は明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2025年1月29日号掲載の報告。医療システム型ケア、地域密着型ケア、積極的介入なしの3群に無作為化 研究グループは、地域居住の認知症患者とその介護者を、医療システムを基盤とするケア(医療システム型ケア)群、地域密着型ケア群、および積極的介入なし(通常ケア)群のいずれかに、7対7対1の割合で無作為に割り付けた。 医療システム型ケア群では、医療システム内の認知症ケア専門家がUCLAアルツハイマー病・認知症ケアプログラムに基づく包括的な認知症ケアを行った。地域密着型ケア群では、Benjamin Rose Institute on Aging(BRI)のケア相談モデルを用いてBRIケアコンサルタントとして認定されたソーシャルワーカー、看護師または認可セラピストが電話で包括的な認知症ケアを行った。通常ケア群では、追加の介入は行わなかった。 主要アウトカムは、介護者による認知症患者の神経精神目録-質問票(Neuropsychiatric Inventory Questionnaire:NPI-Q)の重症度スコア(範囲:0~36、高スコアほど行動症状の重症度が高い、臨床的に意義のある最小差[MCID]:2.8~3.2)、ならびに修正介護者負担指標(Caregiver Strain Index:CSI、範囲:0~26、高スコアほど負担が大きい、MCID:1.5~2.3)であった。また、副次アウトカムとして、介護者の自己効力感(範囲:4~20、高スコアほど自己効力感が高い)など3項目を評価した。 2019年6月28日~2022年1月31日に計2,176組(認知症患者とその介護者)が登録され、医療システム型ケア群1,016組、地域密着型ケア群1,016組、通常ケア群144組に無作為に割り付けられた。最終追跡調査日は2023年8月21日であった。積極的介入と介入なしでアウトカムに差はなし 認知症患者2,176例は平均年齢80.6歳、女性58.4%、黒人またはヒスパニック系20.6%、介護者2,176例は平均年齢65.2歳、女性75.8%、黒人またはヒスパニック系20.8%であった。主要アウトカムは参加者の99%以上で評価され、1,343例(登録者の62%、91%が生存しており、かつ試験を中止していなかった)が18ヵ月間の試験を完了した。 主要アウトカムに関して、医療システム型ケア群、地域密着型ケア群と通常ケア群との間に有意差は認められなかった。 NPI-Qスコアの最小二乗平均値(LSM)は、医療システム型ケア群9.8、地域密着型ケア群9.5、通常ケア群10.1であり、医療システム型ケア群の地域密着型ケア群との差は0.30(97.5%信頼区間[CI]:-0.18~0.78)、同通常ケア群との差は-0.33(-1.32~0.67)、地域密着型ケア群の通常ケア群との差は-0.62(-1.61~0.37)であった。 修正CSIのLSMは、医療システム型ケア群10.7、地域密着型ケア群10.5、通常ケア群10.6であり、医療システム型ケア群の地域密着型ケア群との差は0.25(97.5%CI:-0.16~0.66)、同通常ケア群との差は0.14(-0.70~0.99)、地域密着型ケア群の通常ケア群との差は-0.10(-0.94~0.74)であった。 副次アウトカムでは介護者の自己効力感のみが、両ケア群と通常ケア群を比較した場合に有意な改善が認められたが、ケア群間では有意差は認められなかった。介護者の自己効力感のLSMは、医療システム型ケア群15.1、地域密着型ケア群15.2、通常ケア群14.4であり、医療システム型ケア群の地域密着型ケア群との差は-0.16(95%CI:-0.37~0.06)、同通常ケア群との差は0.70(0.26~1.14)、地域密着型ケア群の通常ケア群との差は0.85(0.42~1.29)であった。

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血中セロトニン低下は認知症や神経精神症状にどう影響しているか

 脳内のセロトニン調節不全は、認知症や神経精神症状と関連しているといわれている。しかし、機能低下、認知機能障害、軽度の行動障害、脳萎縮などの認知症前駆症状を検出するうえで、血中セロトニン濃度の有用性は、依然としてよくわかっていない。シンガポール国立大学のMing Ann Sim氏らは、高齢者における血中セロトニン濃度と認知症や神経精神症状との関連を評価するため、5年間のプロスペクティブ研究を実施した。Brain Communications誌2025年1月9日号の報告。 対象は、ベースライン時に認知機能障害のないまたは認知機能障害はあるものの認知症でない高齢者。対象患者の神経心理学的評価を毎年行った。認知機能の評価には、モントリオール認知評価、Global Cognition Z-scores、臨床的認知症尺度(CDR)を用いた(機能低下:ベースラインから0.5以上の増加)。軽度の行動障害は、ベースラインおよび毎年のNeuropsychiatric Inventory assessment(NPI)、脳萎縮はベースラインMRIから皮質および内側側頭葉の萎縮スコアを用いて評価した。その後、ベースライン時の血中セロトニン濃度と神経心理学的および神経画像的測定とを関連付け、横断的および縦断的に評価した。さらに、血中セロトニン濃度と横断的脳萎縮スコアとの関連性も評価した。 主な内容は以下のとおり。・対象は191人の高齢者(認知機能障害なし:63人[33.0%]、認知機能障害はあるが認知症でない:128人[67.0%])。・ベースライン時に軽度の行動障害が認められた高齢者は14人(9.0%)。・セロトニンレベルの最低三分位の高齢者は、最高三分位と比較し、皮質萎縮スコアが高かった(調整オッズ比[aOR]:2.54、95%信頼区間[CI]:1.22〜5.30、p=0.013)。・セロトニンレベルは、横断的神経心理学的スコアまたは軽度行動障害スコアとの有意な関連が認められなかった(各々、p>0.05)。・フォローアップ期間中央値60.0ヵ月にわたる長期調査を完了した181人のうち、56人(30.9%)で機能低下が認められた。軽度の行動障害は、119人中26人(21.8%)でみられた。・最高三分位と比較し、セロトニンレベルの低さは機能低下リスクが高く(最低三分位の調整ハザード比[aHR]:2.15、95%CI:1.04〜4.44、p=0.039)、軽度の行動障害の発生リスクが高かった(最低三分位のaHR:3.82、95%CI:1.13〜12.87、p=0.031、中間三分位のaHR:3.56、95%CI:1.05〜12.15、p=0.042)。・セロトニンレベルの最低三分位と機能低下との関連は、軽度の行動障害の発生を媒介していた(aOR:3.96、95%CI:1.15〜13.61、p=0.029)。 著者らは「血中セロトニンレベルの低下は、ベースラインでの皮質萎縮と関連している可能性があり、認知症でない高齢者における機能低下や軽度の行動障害の早期マーカーである可能性が示唆された」と結論付けている。

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血清ビタミンDレベルと片頭痛との関連

 ビタミンDは片頭痛の発症と関連していると考えられているが、その関連の本質は、十分に解明されているとはいえない。いくつかの研究において、ビタミンD欠乏と片頭痛との関連が示唆されているが、一貫性はなく、決定的な結果が得られていない。中国・河南中医薬大学のShunfa Hao氏らは、ビタミンDと片頭痛の関連をより深く理解するため、本研究を実施した。その結果、血清ビタミンDレベルと片頭痛有病率との間に、負の相関が認められたことを報告した。PloS One誌2025年1月3日号の報告。 対象患者は、2001〜04年の米国国民健康栄養調査(NHANES)データより抽出した9,142人。血清ビタミンDレベルの定義は、25(OH)D2+25(OH)D3(nmol/L)とした。片頭痛に関する情報は、NHANES質問票のその他の頭痛の項より、自由記入に基づき収集した。ビタミンDと片頭痛リスクとの関連性の評価には、多重ロジスティック回帰、smoothed curve fitting、層別化解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛の有病率は20.53%であった。・血清ビタミンDレベルが低い人は、片頭痛の有病率が高かった。・完全に調整したモデルにおいて血清ビタミンDレベルの最高四分位群は、最低四分位群と比較し、片頭痛の有病率が16%低かった(オッズ比:0.84、95%信頼区間:0.71〜0.99)。・この結果は、層別化解析、smoothed curve fittingでも同様であった。

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2月3日 不眠の日【今日は何の日?】

【2月3日 不眠の日】〔由来〕「不眠」について、記念日を通して不眠の改善の適切な情報発信を行うことを目的に「ふ(2)み(3)ん」(不眠)と読む語呂合わせから治療薬などの販売を行うエスエス製薬が制定した。また、同じ語呂合わせから毎月23日も「不眠の日」と制定。関連コンテンツ睡眠で認知症予防、良質な睡眠を誘う音楽とは?【外来で役立つ!認知症Topics】高齢者の睡眠時間の目安は?【患者説明用スライド】小児期の睡眠障害、若年期の精神病リスクにつながる可能性バス運転手の危険運転に対する不眠症の影響睡眠が認知症発症に及ぼす影響

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