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妊娠中の新型コロナウイルス感染症へのワクチン接種は出産時合併症リスクに影響せず(解説:前田裕斗氏)

 新型コロナウイルス感染症は妊婦で重症化しやすいことが知られており、罹患によって母体死亡や帝王切開となるリスクが上昇することがすでに報告されている。一方、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が母体・胎児・出産にもたらす影響については大規模な研究報告がこれまでなかった。本研究はカナダ・オンタリオ州で行われた9万7,590人を対象とし、妊娠中にワクチン接種を行った群、産後にワクチン接種を行った群、ワクチン接種を行った記録のない群で出産時合併症の有無を比較した報告である。 結果として、産後大出血、絨毛膜羊膜炎(子宮内感染と考えてよい)、帝王切開、緊急帝王切開、NICU入院、新生児仮死いずれもワクチン接種群とその他の群の間で差は認められなかった。また、ワクチンを受けた回数、1回目に受けたワクチンの種類、ワクチン接種を受けた時期で層別化したいずれの解析でもやはり各群で合併症に差は認められなかった。 妊娠・出産合併症は頻度が低いことからワクチンの影響を見るためには大規模集団を対象とした研究が必要であり、本研究の結果は妊娠中のワクチン接種の安全性を示唆するものとして十分なものといえるだろう。もちろん、妊娠初期に接種した群が少ない、出産時合併症の診断は臨床的に行われ、しばしば過小評価されることがある点、未測定の交絡要因など研究としての限界はあるが、各種感度分析が行われており研究手法としても信頼のおけるものである。同時期に発表された北欧からの研究と併せ、妊娠中の新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種についての安全性が強く支持されたといえるだろう。

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オミクロン株BA.2などについて更新、COVID-19診療の手引き7.2版/厚労省

 5月9日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第7.2版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知を行った。 今版の主な改訂点は以下の通り。診療の手引き7.2版の主な改訂点【1 病原体・疫学】・オミクロン株のBA.2系統について更新・懸念される変異株の表を更新・COVID-19死亡者数の図を更新・国内発生状況でオミクロン株のBA.2系統への置き換わりについて更新・海外発生状況で世界の流行株(主にオミクロン株)と今後の公衆衛生措置などを更新【2 臨床像】・罹患後症状について定義付け、症状一覧の図を更新 (「後遺症」という用語を削除)【3 症例定義・診断・届出】・改訂点なし【4 重症度分類とマネジメント・重症度別マネジメントのまとめの図の治療薬の脚注を更新【5 薬物療法】・ソトロビマブ(ゼビュディ点滴静注液500mg)について2022年4月18日の添付文書改訂による、本剤のオミクロン株(B.1.1.529/BA.2系統)への有効性(効果減弱の可能性)について更新・ニルマトレルビル/リトナビルに関する記載について併用薬留意の文言を追加・S-217622に関する記載について開発対象と参考情報を更新【6 院内感染対策】・妊婦および新生児への対応について、帝王切開の分娩方法や感染妊婦の出生児接触の対応について更新

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第99回 長年続く産科「一人医長」、医療事故で新生児死亡/輪島病院

<先週の動き>1.長年続く産科「一人医長」、医療事故で新生児死亡/輪島病院2.原因不明の小児急性肝炎「可能性例」、国内で計7例に/厚労省3.コロナ関連死の推計を初公表、直接死の最大3倍/WHO4.新型コロナワクチン、2.4兆円もの調達費を問題視5.健康保険組合の赤字額2,770億円、今後急速な財政悪化か/健保連6.クレベリンのウイルス除去効果は科学的根拠なし/大幸薬品1.長年続く産科「一人医長」、医療事故で新生児死亡/輪島病院石川県能登北部にある市立輪島病院が、昨年6月に同院産婦人科で新生児が死亡したことを記者会見で明らかにし、院長と市長が謝罪した。輪島市側は全面的に責任を認め、同日に開かれた市議会臨時会で遺族に損害賠償金5,825万円を支払う議案を可決した。病院側によると、入院した妊婦を早産と誤って判断して陣痛促進剤の投与を続けたが、実際は常位胎盤早期剥離を起こしていた。さらに母体および胎児の状態悪化に対して、帝王切開ではなく吸引分娩で対応したところ、新生児は重症新生児仮死状態で生まれた。即時、救命処置と金沢市内の病院へ緊急搬送を行ったが、翌日の早朝、搬送先の病院で亡くなった。なお、母親の容態は回復している。院内の医療事故調査委員会は、妊婦への説明が不十分なまま主治医が時間休を取得し病院を離れたこと、助産師らとの情報共有がされなかったことを主たる要因と結論付けている。再発防止策として、緊急時の体制整備と医療従事者同士の情報共有の徹底を挙げた。現在、輪島、珠洲、穴水、能登の四市町(奥能登)には、分娩に対応できる産科医がこの1人しかいない。院長は会見で「医師に負担がかかっているのは事実」と説明。地域医療の維持についても考えていかねばならないだろう。(参考)輪島市長、院長が謝罪 輪島病院誤診 遺族に賠償5825万円(北国新聞)【石川】医療事故で新生児死亡 市立輪島病院 5825万円を賠償(中日新聞)市立輪島病院における医療事故について(市立輪島病院)2.原因不明の小児急性肝炎「可能性例」、国内で計7例に/厚労省厚生労働省は、英国やアメリカなどで報告が相次いでいる原因不明の小児急性肝炎の疑い例について、国内で新たに16歳以下の入院症例4件が報告されたと発表した。累計での報告数は7例となり、このうち新型コロナウイルスとアデノウイルスのPCR検査でそれぞれ1件ずつ陽性が報告されたが、現時点で確定例はない。こうした症例について、先月から自治体等に対し注意喚起および情報提供依頼を出し、GW前には感染症サーベランスおよび積極的疫学調査についての事務連絡を発出して情報収集に当たっている。なお、アメリカでは昨年10月から109人の患者報告があり、うち5人が死亡。世界保健機関(WHO)は、各国に該当する症例の報告を求めている。(参考)“原因不明” 子どもの急性肝炎 国内で新たに4人が同様の症状(NHK)米CDC、原因不明の小児肝炎を調査 5人死亡(CNN)小児の原因不明の急性肝炎について(厚労省)3.コロナ関連死の推計を初公表、直接死の最大3倍/WHOWHOは、2020年1月~2021年12月の2年間で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した死者数を約1,490万人とする推計結果を初めて公表した。少なくとも1,330万人、最大で1,660万人が亡くなったとされる。これに対し、各国がWHOに報告したCOVID-19が直接の死因となる人数の総計は同期間で542万人(22年も含めると624万人)であり、間接死も含めると最大3倍となる。なお、超過死亡の84%は東南アジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸に集中しており、このうち約68%は世界全体でわずか10ヵ国に集中していた。死亡例は高齢者で多く、また女性よりも男性に多かった(男性57%、女性43%)。(参考)コロナ関連死、20~21年は最大1660万人 WHOが初推計(AFPBB News)新型コロナ死者1490万人 WHOが推計発表、米大学集計の3倍(朝日新聞)14.9 million excess deaths associated with the COVID-19 pandemic in2020 and 2021(WHO)4.新型コロナワクチン、2.4兆円もの調達費を問題視新型コロナウイルス感染対策として、政府がワクチン調達のために2兆4,000億円もの巨額な予算を使ったことについて批判の声が上がっている。先月の財政制度等審議会でも、国内で想定された接種回数を上回る8億8,200万回分のワクチンを購入したことについて指摘されており、岸田総理は「必要な費用だった」と答弁している。ワクチン購入以外にも感染対策として巨額な費用が投じられており、メディアも含め、国民が関心を寄せている。政府はもっと開示を行っていくべきと考える。(参考)不透明なコロナ支出 ワクチンや病床確保に16兆円、さらに膨らむ恐れ(毎日新聞)コロナワクチン調達費2.4兆円 不透明さの背景に「秘密保持契約」(同)岸田首相 ワクチン2兆4000億円かけ購入 “必要な費用だった”(NHK)5.健康保険組合の赤字額2,770億円、今後急速な財政悪化か/健保連大企業の社員らが加入する健康保険組合の赤字が問題となっている。健康保険組合連合会(健保連)が発表した2022年度予算の早期集計結果の概要によると、今年度の収支は2,770億円の赤字と、昨年度の5,028億円の赤字に比べて改善したものの、赤字組合の割合はいまだ7割を占める。健保連によると、収支改善は新型コロナウイルスによる高齢者の受診控えによって、一時的に高齢者の医療費を補うための拠出金が減少したためとし、次年度以降、高齢者拠出金が急増することは必至であり、今後急速な財政悪化が予想される。国民皆医療制度の持続可能性を左右する問題であり、保険料引き上げ以外にも政府が医療費抑制のために対策を打ってくるだろう。(参考)健保組合7割赤字 全体赤字額2770億円 来年度以降急激な悪化か(NHK)大企業の健保、22年度は赤字幅縮小へ コロナで医療費減(日経新聞)令和 4 年度 健康保険組合の予算早期集計結果(概要)について(健保連)6.クレベリンのウイルス除去効果は科学的根拠なし/大幸薬品大幸薬品は、主力製品「クレベリン」の広告内容について、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に基づいた措置命令に従って、広告内容とパッケージを変更することを明らかにした。同社はこれまで同製品について「空間のウイルス除去・除菌・消臭に使用できる」などと広告に表示していたが、その効果を疑問視する声が寄せられていた。消費者庁は広告内容について、実際の効果よりも著しく優良あるかのよう表示したことは景品表示法に違反するとした。なお、製品の販売は続けられる方針だ。(参考)大幸薬品 「クレベリン」の広告表示 景品表示法違反を認める(NHK)クレベリンの浮遊ウイルス除去効果は「根拠ない」…大幸薬品「深くおわび」「返品は受け付けず」(読売新聞)弊社商品の表示に関するお知らせ(大幸薬品)

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手術室あるある【Dr. 中島の 新・徒然草】(423)

四百二十三の段 手術室あるあるもうすぐゴールデンウィーク!休みが近づくのは嬉しいものの、花粉症に悩まされる毎日です。今年はとくに花粉が多いのか、くしゃみが止まりません。なので、天気が良くても外出する気がせず、部屋に籠っております。そんな苦しい花粉症ですが、手術室に行くとピタリと止まります。というのも、手術室の空気には塵がほとんどないからです。自宅の部屋の1立方フィートの空気中の微粒子が、だいたい100万個程度のところ、クラス100の手術室だと、浮遊している微粒子は100個以下なので、花粉症対策には最適。さすがに手術室で鼻を垂れたり涙を流したりしている人はおらず、外科医にとっては安息の地であります。ところが、建物が古いせいなんでしょうね。ウチの手術室は室温調整が困難で、「暑い」と「寒い」の2つしか選択肢がありません。そのような場合には手術用下着の下にTシャツを着るなどしたうえで、「寒い」を選びます。とくに顕微鏡手術のときには、術者の座っている位置に天井からの冷風が直接当たるので、寒いことこの上ありません。微小血管吻合用の10-0の糸も、風にあおられて揺ら揺らしています。それでも諸般の事情で寒い方を選んでいるわけです。ところが、いきなり手術室が暑くなることがあります。「おい、やけに暑いぞ。温度下げてくれよ」と文句が出るのですが、「すみません。隣の部屋にカイザーが入ったんです」と、問答無用といわんばかりの返答。カイザーというのは帝王切開の俗称で、生まれてくる赤ん坊のために、あらかじめ室温を上げておくわけです。手術室の掟として、いかなる場合にもカイザーが最優先、というのがあります。なので我々も、熱帯気候の中で黙々と手術せざるを得ません。そんな中、突如「おぎゃあ、おぎゃあ!」という泣き声が聞こえてきます。隣の部屋にいる我々まで、ホッとするというか、嬉しくなるというか。ということで、全国共通の「手術室あるある」を述べさせていただきました。皆さん、花粉と戦いつつ、ゴールデンウィークを楽しみましょう。最後に1句花粉から 避難の先は 酷寒だ

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妊娠中のコロナワクチン接種、周産期アウトカムへの影響は?/JAMA

 妊娠中の女性に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを接種しても、妊娠終了後の接種や非接種と比較して、母子における有害な周産期アウトカムのリスクの増加はほとんどみられないことが、カナダ・オタワ大学のDeshayne B. Fell氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年3月24日号に掲載された。オンタリオ州の後ろ向きコホート研究 研究グループは、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種の、周産期のアウトカムに及ぼす影響の評価を目的に、人口ベースの後ろ向きコホート研究を行った(カナダ公衆衛生庁の助成を受けた)。 解析には、カナダ・オンタリオ州のCOVID-19予防接種データベース(COVaxON)と連携させた出生レジストリ(Better Outcomes Registry & Network[BORN] Ontario)の2020年12月14日~2021年9月30日のデータが用いられた。 被験者は、妊娠中に少なくとも1回のCOVID-19ワクチン接種を受けた群、妊娠終了後に接種を開始した群、接種の記録がない群の3群に分けられた。 主要アウトカムは、母親では分娩後出血、絨毛膜羊膜炎、帝王切開による分娩(全体および緊急時)、新生児では新生児集中治療室(NICU)入室、分娩5分後の新生児Apgarスコア低値(7点未満)の発生とされた。リスク増大なし、ほとんどがmRNAワクチンである点に留意 9万7,590人(平均年齢 31.9[SD 4.9]歳)の妊婦が解析に含まれた。2万2,660人(23%)が妊娠中に少なくとも1回のワクチン接種を受け、このうち63.6%は妊娠第3期(妊娠期間中央値213日[在胎週数30週])に1回目の接種を受けており、99.8%(BNT162b2[Pfizer-BioNTech製]79.9%、mRNA-1273[Moderna製]19.9%)がmRNAワクチンであった。 これら妊娠中接種群は、妊娠終了後接種群(4万4,815人)と比較して、5つの有害な周産期アウトカムについて、統計学的に有意なリスクの増加は認められなかった。 すなわち、分娩後出血の発生率は、妊娠中接種群が3.0%、妊娠終了後接種群も3.0%(補正後群間リスク差:-0.28/100人[95%信頼区間[CI]:-0.59~0.03]、補正後リスク比:0.91[95%CI:0.82~1.02])で、絨毛膜羊膜炎はいずれも0.5%(-0.04/100人[-0.17~0.09]、0.92[0.70~1.21])と両群に差はなく、帝王切開による分娩は30.8%および32.2%(-2.73/100人[-3.59~-1.88]、0.92[0.89~0.95])と、妊娠中接種群のほうが低かった。また、新生児の2つのアウトカムはいずれも妊娠中接種群でリスクが低く、NICU入室は11.0%および13.3%(-1.89/100人[-2.49~-1.30]、0.85[0.80~0.90])、分娩5分後Apgarスコア低値は1.8%および2.0%(-0.31/100人[-0.56~-0.06]、0.84[0.73~0.97])だった。 また、非接種群(3万115人)と比較した場合の、妊娠中接種群における有害な周産期アウトカムの発生のリスクは以下のとおりであり、妊娠終了後接種群との比較とほぼ同程度であった。 分娩後出血(3.0% vs.3.4%、補正後リスク差:-0.32/100人[95%CI:-0.64~-0.01]、補正後リスク比:0.90[0.81~1.00])、絨毛膜羊膜炎(0.5% vs.0.3%、0.07/100人[-0.04~0.19]、1.20[0.90~1.59])、帝王切開による分娩(30.8% vs.28.5%、-0.97/100人[-1.81~-0.14]、0.97[0.94~1.00])、NICU入室(11.0% vs.12.8%、-0.93/100人[-1.52~-0.35]、0.92[0.87~0.97])、分娩5分後Apgarスコア低値(1.8% vs.2.0%、-0.23/100人[-0.47~0.02]、0.88[0.77~1.01])。 著者は、「これらの結果を解釈する際は、妊娠中のワクチン接種の多くは妊娠第2~3期に接種されたmRNAワクチンである点に留意する必要がある」としている。

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妊産婦の新型コロナ感染、産科合併症と関連/JAMA

 妊娠中および出産後の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染は、妊産婦死亡または重篤な産科合併症の複合アウトカムのリスク増加と関連していることが、米国・ユタ大学のTorri D. Metz氏ら国立小児保健・人間発達研究所(Eunice Kennedy Shriver NICHD)のMFMU(Maternal-Fetal Medicine Units)ネットワークによる「GRAVID(Gestational Research Assessments of COVID-19)研究」で明らかとなった。これまで、妊娠中または出産後のSARS-CoV-2感染が重篤な産科合併症のリスクを特異的に増加させるかどうかはわかっていなかった。JAMA誌オンライン版2022年2月7日号掲載の報告。2020年3月~12月に出産した妊産婦、SARS-CoV-2感染者vs.非感染者 研究グループは、GRAVID研究に参加している米国の17施設において、2020年3月1日~12月31日の期間に出産した妊産婦1万4,104例について後ろ向きに解析した(最終追跡調査2021年2月11日)。 妊娠中または産後6週間以内にPCR検査または抗原検査が陽性であった患者をSARS-CoV-2感染者とし、同期間の無作為に選んだ日に出産しSARS-CoV-2検査が陽性でない非感染者と比較した。SARS-CoV-2感染者は、COVID-19の重症度でさらに層別化した。 主要評価項目は、妊産婦死亡、または妊娠高血圧症候群、産褥出血、SARS-CoV-2以外の感染症に関連する重篤な疾患の複合、主要な副次評価項目は帝王切開による出産であった。中等度以上感染者で、妊産婦死亡/産科合併症、帝王切開の発生率が有意に高い 解析対象1万4,104例(平均年齢29.7歳)のうち、SARS-CoV-2感染者は2,352例、非感染者は1万1,752例であった。 SARS-CoV-2感染者は非感染者と比較し、主要評価項目のイベントと有意に関連していた(13.4% vs.9.2%、群間差:4.2%[95%信頼区間[CI]:2.8~5.6]、補正後相対リスク[aRR]:1.41[95%CI:1.23~1.61])。 妊産婦死亡の5例はすべてSARS-CoV-2感染者であった。SARS-CoV-2感染と帝王切開との間に有意な関連はなかった(34.7% vs.32.4%、aRR:1.05[95%CI:0.99~1.11])。 COVID-19の重症度が中等度以上のSARS-CoV-2感染者(586例)は、非感染者と比較して主要評価項目のイベント(26.1% vs.9.2%、群間差:16.9%[95%CI:13.3~20.4]、aRR:2.06[95%CI:1.73~2.46])、ならびに帝王切開による出産(45.4% vs.32.4%、12.8%[8.7~16.8]、1.17[1.07~1.28])と有意に関連していた。 一方、軽度または無症状のSARS-CoV-2感染者(1,766例)は非感染者と比較して、主要評価項目(9.2% vs.9.2%、群間差:0%[95%CI:-1.4~1.4]、aRR:1.11[95%CI:0.94~1.32])、ならびに帝王切開(31.2% vs.32.4%、-1.4%[-3.6~0.8]、1.00[0.93~1.07])のいずれも有意な関連はみられなかった。

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第75回 新たに81件のワクチン健康被害が救済認定、計147件に/厚労省

<先週の動き>1.新たに81件のワクチン健康被害が救済認定、計147件に/厚労省2.国保、高所得者の保険料上限額を年3万円引き上げへ/厚労省3.主治医による小児アレルギーの情報提供が診療報酬の対象に/中医協4.帝王切開を架空請求、沖縄の産婦人科医院長を逮捕/沖縄県警5.贈収賄事件で製薬企業の会員資格停止、再発防止を/製薬協6.日大背任事件、大学理事長にも6,000万円の資金還流か/特捜部1.新たに81件のワクチン健康被害が救済認定、計147件に/厚労省厚生労働省は、22日に「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」を開催し、新型コロナウイルスのワクチン接種後に「アナフィラキシー」などを発症した81例について、予防接種との因果関係を審議し、全件を認定した。今回認定された81件のうち、70件が女性で、男女合わせた年齢別では40代が22件ともっとも多く、その次は20代・50代がそれぞれ15件、30代・60代は11件であった。このうちアナフィラキシーが45件、アナフィラキシー様症状が18件として認定された。これにより、新型コロナワクチン接種に関する健康被害の救済認定は計147人となった。(参考)コロナワクチン接種 81人を救済認定 医療費など支給へ 厚労省(NHK)アナフィラキシーなど「接種が原因」、新たに81人認定…国の救済適用計147人に(読売新聞)資料 副反応疑い報告の状況について(第71回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会)2.国保、高所得者の保険料上限額を年3万円引き上げへ/厚労省厚労省は、22日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、国民健康保険の加入者のうち、高所得者の保険料について、財政基盤の安定化、保険料の国民負担に関する公平性の確保のため、高所得者が保険料の賦課限度額までしか負担しない仕組みを改め、保険料の賦課限度額を引き上げるべきとして、保険料上限を現在の年99万円から3万円引き上げ、102万円とする案を示した。引き上げは、2022年度に実施する方針で、2年ぶりとなる。(参考)国民健康保険 高所得者の保険料上限額 引き上げ案了承(NHK)国民保険料の限度額上げ 厚労省案、3万円増え102万円に(日経新聞)資料 国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について(厚労省)3.主治医による小児アレルギーの情報提供が診療報酬の対象に/中医協厚労省は、22日に開催された中央社会保険医療協議会において、アレルギー疾患を持つ子供の主治医が、生活の注意点などを記載した文書を作り、学校や保育所に提供した場合、新たに診療報酬対象とすることについて提案し、了承された。今後、厚労省は来年4月の診療報酬改定に向け、対象となる学校など施設の範囲、年齢、疾患などの具体的調整を進める。(参考)アレルギー対応保険適用へ 主治医と学校の連携強化 来年4月にも、厚労省(産経新聞)アレルギー疾患の情報提供、診療報酬で評価へ 中医協・総会(CBnewsマネジメント)4.帝王切開を架空請求、沖縄の産婦人科医院長を逮捕/沖縄県警沖縄県警は、帝王切開を行ったように装って診療報酬を受け取った沖縄市内の産婦人科医師を20日に詐欺容疑で逮捕した。この医師は2018年6月に自らが経営する産婦人科医院で、自然分娩の妊婦について、緊急帝王切開術を行ったと偽って診療報酬を請求し、82万円を保険団体から受け取っていた。警察は、関係者からの情報を受け、今年の7月に病院から資料を押収し、捜査を進めて本事件が発覚した。その後の捜査によって、妊婦健康診査でも、実際には診察を行っていないのに、行ったとカルテを偽造し、架空請求を繰り返したことも明らかとなっている。(参考)診療報酬不正で産婦人科医を逮捕 詐欺容疑で沖縄県警(琉球新報)診療報酬だまし取った疑い 沖縄市の産婦人科院長を逮捕(NHK)妊婦健診でも架空請求か 「私一人だけで少なくとも50件」 複数の関係者が証言(沖縄タイムス)5.贈収賄事件で製薬企業の会員資格停止、再発防止を/製薬協日本製薬工業協会は21日の記者会見において、小野薬品工業による資金提供を受けた三重大学の贈収賄事件を受け、再発防止を目的に奨学寄付金の提供の在り方について再徹底するよう通知を発出した。製薬協は、奨学寄付金を自社医薬品に関する臨床研究に対する資金提供の方法として用いないことや、営業部門から独立した組織で利益相反を十分確認のうえ決定することなどの遵守を求めている。日本製薬工業協会は、社員2名が贈賄罪の有罪判決になったのを受け、小野薬品の製薬協の会員資格停止を9月に公表している。(参考)会員会社に対する処分について(製薬協)「処方拡大の見返り」賄賂認定…奨学寄付金の落とし穴(Answers)製薬協 奨学寄附金の在り方再徹底で通知発出 第三者供賄で小野薬品の会員資格停止受け(ミクスonline)6.日大背任事件、大学理事長にも6,000万円の資金還流か/特捜部日本大学附属病院の建て替え工事をめぐって、大学の資金2億円超を流出させた事件で逮捕された大阪の医療法人グループ理事長が、日本大学の理事長に「現金3,000万円を2回渡した」と供述していることが明らかになった。大阪の理事長は、業者選定前に大学側から入手した内部資料を都内の設計事務所に提供したことも明らかになっている。さらに、逮捕された日大元理事が、付属病院の医療機器調達に絡んで大学に約1億5,000万円を不正に支出させた疑いが23日に発覚し、特捜部は真相解明のために捜査を続けている。(参考)日大背任事件 元理事 実態のない契約書作り資金の一部還流か(NHK)「日大理事長に5000万円」複数回提供も供述 理事長は否定(産経新聞)「日大理事長側に6000万円」本人は否定、医療法人元トップ供述(日経新聞)医療機器巡り資金流出か 背任容疑の日大元理事1.5億円、地検解明へ(同)

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ドイツで産んでみた(1) ドイツの産婆システム【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第6回

私事ですが、ドイツで産まれた双子の娘達が、9月に満2歳の誕生日を迎えます。娘たちはドイツ産まれですが、妻がドイツ語に不自由だったために、本当に大変な出産となりました。しかし、移民国家であるドイツでは「ドイツ語の話せない患者」は珍しくないので、みんなに親切にしてもらいながら無事に出産にたどり着くことができました。私は、沢山の人に質問して、ネットで調べて、役所に何度も足を運んで制度を教えてもらって…と、今から思い返しても非常にタフな出来事でした。ドイツの産婆さん“Hebamme”妊娠がわかって、一番力になってくれたのが“Hebamme(ヘバメ)”と言われる職種の方です。いわゆる産婆さんです。ドイツでは産婆さんにかかる費用も保険で賄うことができます。このHebammeさんは、出産前から定期的に家に来てくれて、妊婦の診察をしてくれます。それに加えて、出産前に何を準備すべきなのか、などの指導をしてくれます。ただ、Hebammeさんは保育園並みに競争率が高いです。何ヵ所にも電話をかけて、ようやく見つかって来てくれたのは2児のママで30代前半の若いHebammeさんでした。いつもチャリンコで汗かきながらやってきて、ずっと笑顔で前向きな発言しかしない、明るい人でした。筆者の家族を担当してくれた明るいHebammeさん私の家族を担当してくれたHebammeさんは、出産前後の指導だけでなく、普段の生活のことでも全力でサポートしてくれる、熱い人でした。たとえば、注文したソファに不具合があったときも、代わりに電話で抗議してくれて、あっという間に新品に取り替えてもらったこともありました。妻が、切迫早産で3回、大学病院に緊急入院になったときも、毎回顔を出しに来てくれて、病棟の看護師さん達に「くれぐれも優しく対応してほしい」と言い続けてくれました。また、夜中に緊急で帝王切開になったときも駆けつけてくれたし、本当に力強い味方になってくれました。出産後も、赤ちゃんの洗い方からオシメの替え方まで、つきっきりで指導してくれました。彼女のおかげでドイツでの出産のストレスがどれだけ軽減できたかわかりません。核家族化の進むドイツでは、Hebamme制度は必須のシステムといえます。Hebammeさんには、「何がなんでも妊婦の味方になるんだ」という熱い人が多いそうです。その他、ドイツのシステムに助けられたことが多々ありましたので、次回も思い出しながら書いていきたいと思います。

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分娩様式と産後うつ病との関連~JECS研究

 産後うつ病は、母親の自殺などを含む健康への悪影響と関連している。分娩様式は、産後うつ病のリスク因子といわれているが、この関連を調査した大規模コホート研究は、あまり行われていなかった。大阪大学の馬場 幸子氏らは、出産1ヵ月後および6ヵ月後における分娩様式と産後うつ病リスクとの関連を調査した。Journal of Epidemiology誌オンライン版2021年7月31日号の報告。 単生児出産の母親8万9,954人を対象とした全国調査のデータを用いて、出産方法と産後うつ病との関連を調査した。産後うつ病の評価は、出産1ヵ月後および6ヵ月後にエジンバラ産後うつ病評価尺度(13点以上)を用いて測定した。産後うつ病のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、出産前の身体的、社会経済的、精神的要因で調整した後、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・産後うつ病の発症率は、出産1ヵ月後で3.7%、6ヵ月後で2.8%であった。・帝王切開は、自然分娩と比較し、1ヵ月後の産後うつ病リスクとわずかな関連が認められたが(調整OR:1.10、95%CI:1.00~1.21)、6ヵ月後の産後うつ病リスクとの関連は認められなかった(調整OR:1.01、95%CI:0.90~1.13)。・1ヵ月後の産後うつ病リスクとの関連は、出産前に心理的苦痛を有する女性において、より顕著であった(調整OR:1.15、95%CI:1.03~1.28)。・乳児に対する授乳方法で調整した後、これらの関連性が弱まることが示唆された。 著者らは「出産前に心理的苦痛が認められ、帝王切開により出産した女性では、産後うつ病のモニタリングを強化する必要がある」としている。

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オキシトシンによる分娩誘発、陣痛活動期に継続すべきか中止すべきか?/BMJ

 胎児の状態と子宮収縮のモニタリングが保証される環境において、オキシトシンによる誘発の中止は、帝王切開率のわずかな上昇につながる可能性があるが、子宮過刺激および胎児心拍異常のリスクを有意に低下したことが示された。デンマーク・Randers Regional HospitalのSidsel Boie氏らが、同国の9病院とオランダの1病院で実施した国際共同無作為化二重盲検比較試験「Continued versus discontinued oxytocin stimulation in the active phase of labour:CONDISOX」の結果を報告した。これまで4件のメタ解析では、いったん陣痛活動期に入れば、オキシトシンの投与を中止しても分娩の経過は継続し、帝王切開のリスクが低くなることが示されていた。しかし、2018年のCochrane reviewで過去の研究の質が疑問視され、多くの試験が、バイアスリスクが高いまたは不明と判断されていた。BMJ誌2021年4月14日号掲載の報告。オキシトシンが帝王切開率低下と関連するかを検証 CONDISOX試験の対象は、正期産、頭位、単胎で選択的陣痛誘発または陣痛前破水によりオキシトシンを投与された女性で、陣痛活動期(子宮口開大6cm以上、10分間に3回以上の子宮収縮)に入った時点で、オキシトシン継続群または中止群(プラセボとして生理食塩水を投与)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。施設、出産経験の有無およびオキシトシンの適応(選択的陣痛誘発、陣痛前破水)による層別化も行われた。 主要評価項目は、帝王切開による分娩であった。 2016年4月8日~2020年6月30日に、計1,200例が無作為化された(継続群593例、中止群607例)。帝王切開率は中止群と継続群で差はなし 帝王切開率は、中止群16.6%(101例)、継続群14.2%(84例)であった(相対リスク:1.17、95%信頼区間[CI]:0.90~1.53)。また、帝王切開歴のない経産婦94例における帝王切開率は、中止群7.5%(11/147回)、継続群0.6%(1/155回)であった(相対リスク:11.6、95%CI:1.15~88.7)。 オキシトシン中止は、分娩所要時間の延長(無作為化から分娩までの時間の中央値:中止群282分vs.継続群201分)、過剰刺激のリスク低下(3.7%[20/546例]vs.12.9%[70/541例]、p<0.001)、胎児心拍異常のリスク低下(27.9%[153/548例]vs.40.8%[219/537例]、p<0.001)と関連していたが、母体および新生児の他の有害アウトカムについては両群で類似していた。 なお、著者は研究の限界として、割り付けられた介入を受けなかった女性の割合がかなり高かったこと、助産師が分娩誘発を再開する場合にオキシトシンの使用を選択することが多かったことなどを挙げている。

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妊娠糖尿病スクリーニングの実用的無作為化試験(解説:小川大輔氏)-1376

 妊娠糖尿病は妊娠中に初めて発見された糖代謝異常であり、妊娠中に高血糖があると流産、形態異常、巨大児などの合併症が起こる危険性があるため、妊娠中は厳密に血糖の管理を行う。なお、妊娠前からすでに糖尿病と診断されている場合や、妊娠中に「明らかな糖尿病」と診断された場合は妊娠糖尿病とは別に区別されるが、厳格な血糖コントロールは妊娠糖尿病と同様に必要である。 妊娠糖尿病のスクリーニングとして、妊娠24~28週時に妊娠糖尿病スクリーニング検査が推奨されている。1段階法と2段階法の2つのスクリーニング法があるが、どちらを使用すべきかに関して専門家の合意は得られていない。従来からある2段階法(Carpenter-Coustan基準)に対し、1段階法(IADPSG基準)は一度のブドウ糖負荷試験で診断ができるというメリットがある。しかし、母児の周産期合併症に関するアウトカムについては不明であった。 今回ScreenR2GDM試験では、2万3,792人の妊婦を対象に妊娠糖尿病スクリーニング検査を無作為に1段階法と2段階法の2群に1対1で割り付け、周産期合併症や母体合併症について検討された1)。5つの主要アウトカムのうち、妊娠糖尿病の診断は1段階法のほうが多かったが(1段階法 16.5%、2段階法 8.5%)、その他の巨大児、死産などの周産期合併症や妊娠高血圧症、帝王切開などの母体合併症に関連する主要アウトカムには有意差を認めなかった。また副次アウトカムや安全性アウトカムにも有意な差がないことが示された。 これまでに妊娠糖尿病のスクリーニングで2段階法から1段階法にかえて初回帝王切開や新生児低血糖が増加したとの報告があったが2,3)、今回の大規模な実用的無作為化試験により周産期合併症と母体合併症に関連する主要アウトカムのリスクには、両スクリーニング法に有意な差はないことが明らかになった。いずれのスクリーニング検査法を用いるにせよ妊娠糖尿病と診断した後は、母児の周産期合併症を予防するために妊娠中の血糖管理を適切に行うことが重要である。そして妊娠糖尿病の既往があると、将来糖尿病やメタボリック症候群を発症するリスクが高いため、定期的なフォローアップが必要である。

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妊娠糖尿病スクリーニング、1段階法 vs.2段階法/NEJM

 妊娠糖尿病のユニバーサルスクリーニングでは、推奨されている2つの方法のうち、1段階法は2段階法と比較して妊娠糖尿病の診断の割合が約2倍に高くなるが、周産期合併症と母体合併症に関連する主要アウトカムのリスクには、両スクリーニング法に有意な差はないことが、米国・カイザーパーマネンテ・ノースウェストのTeresa A. Hillier氏らが実施した「ScreenR2GDM試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2021年3月11日号で報告された。妊娠糖尿病は頻度の高い疾患であり、母体と周産期の有害なアウトカムのリスクが増大する。米国では、妊娠女性に妊娠24~28週時の妊娠糖尿病ユニバーサルスクリーニングが推奨されているが、2つの推奨スクリーニング法のどちらを使用すべきかに関して専門家の合意は得られていないという。米国の2施設の実践的無作為化試験 本研究は、米国のカイザーパーマネンテ・ノースウェストとカイザーパーマネンテ・ハワイで行われた実践的な無作為化直接比較試験であり、2014年6月~2017年12月の期間に患者登録が行われ、新生児の出生(2018年)までアウトカムのデータが収集された(米国ユーニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健人間発達研究所[NICHD]の助成による)。 対象は、2つの参加施設を受診したすべての妊娠女性であった。被験者は、1段階スクリーニング法または2段階スクリーニング法を受ける群に無作為に割り付けられた。 1段階スクリーニング法では、ブドウ糖負荷試験が行われ、空腹時にブドウ糖75gを経口投与後に血糖値が測定された。2段階スクリーニング法では、GCT(glucose challenge test)として非空腹時にブドウ糖50gを経口投与後に血糖値が測定され、陽性の場合は、引き続きブドウ糖負荷試験として空腹時にブドウ糖100gを経口投与後に血糖値が測定された。 主要アウトカムは、妊娠糖尿病の診断、在胎不当過大児(在胎期間の標準出生時体重の>90パーセンタイル)、周産期の複合アウトカム(死産、新生児死亡、肩甲難産、骨折、分娩外傷に関連する腕または手の神経麻痺)、妊娠高血圧症または妊娠高血圧腎症、初回帝王切開の5つであった。副次アウトカムや安全性アウトカムにも差はない 合計2万3,792例の女性が妊娠糖尿病の2つのスクリーニング法に無作為化された(試験中に複数回妊娠した女性は、1種類以上のスクリーニング法に割り付けられた可能性がある)。1段階群が1万1,922例(平均母体年齢[±SD]29.4±5.5歳)、2段階群は1万1,870例(29.3±5.5歳)であった。割り付けられたスクリーニング法を実際に受けた妊婦の割合は、1段階群が66%と、2段階群の92%に比べて低かった。 妊娠糖尿病の診断を受けた女性の割合は、1段階群が16.5%、2段階群は8.5%であった(未補正相対リスク[RR]:1.94、97.5%信頼区間[CI]:1.79~2.11)。 intention-to-treat解析による他の主要アウトカムの発生率はいずれも、両群間に有意な差は認められなかった。すなわち、在胎不当過大児は1段階群8.9%、2段階群9.2%(補正前RR:0.95、97.5%CI:0.87~1.05)、周産期の複合アウトカムはそれぞれ3.1%および3.0%(1.04、0.88~1.23)、妊娠高血圧症/妊娠高血圧腎症は13.6%および13.5%(1.00、0.93~1.08)、初回帝王切開は24.0%および24.6%(0.98、0.93~1.02)であった。 妊娠糖尿病で補正後の解析、および妊娠糖尿病、事前に規定された他の共変量、スクリーニングの順守状況で補正後の解析でも、妊娠糖尿病の診断を除き、いずれの主要アウトカムにも有意な差はなかった。また、逆確率重み付け(inverse probability weighting)を行ったintention-to-treat解析でも、結果はほとんど変わらなかった。 副次アウトカム(巨大児[出生時体重>4,000g]、在胎不当過小児[在胎期間の標準出生時体重の≦10パーセンタイル]、インスリンや経口血糖降下薬による治療を要する妊娠糖尿病など)の多く、および周産期複合アウトカムの個々の構成要素、安全性アウトカム(新生児敗血症、新生児集中治療室への入室、早産など)についても、両群間に有意な差はみられなかった。 著者は、「1段階スクリーニング法では順守率が低かったが、この違いを考慮した解析でも、結果はほぼ同様であった」とまとめ、「実践的な試験の性質として、医療従事者は割り付けられたスクリーニング法や診断結果を知りうるため、これがいくつかのアウトカムに影響を及ぼした可能性は排除できない」と指摘している。

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妊婦におけるうつ病の重症度と周産期有害リスクとの関連

 妊娠中は、不安神経症やうつ病の発症に対する脆弱性が高まる。中国・中南大学のKwabena Acheampong氏らは、中等度~重度のうつ病と軽度のうつ病の妊婦における周産期の有害アウトカム発生リスクの比較を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2021年1月21日号の報告。 ガーナ・ベクワイ市のアドベンティスト病院で募集されたうつ病を有する妊婦360例を対象に、プロスペクティブコホート研究を実施した。2020年2月に調査を開始し、2020年8月までフォローアップを行った。うつ病の重症度評価には、Patient Health Questionnaires-9(PHQ-9)を用いた。重症度の定義は、中等度~重度をPHQ-9スコア15以上、軽度をPHQ-9スコア15未満とした。軽度うつ病と比較した中等度~重度のうつ病を有する妊婦の調整済み相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・中等度~重度のうつ病と分類された妊婦は、43例(11.9%)であった。・潜在的な交絡因子で調整した後、中等度~重度のうつ病を有する妊婦は、軽度うつ病と比較し、以下のリスクが高かった。 ●妊娠高血圧腎症(調整RR:2.01、95%CI:1.21~3.33) ●帝王切開(調整RR:1.78、95%CI:1.18~2.70) ●会陰切開(調整RR:1.66、95%CI:1.06~2.60)・一方、うつ病の重症度と周産期のアウトカムとの間に、統計学的に有意な差は認められなかった。 著者らは「中等度~重度のうつ病を有する妊婦は、妊娠高血圧腎症、帝王切開、会陰切開などのリスクが高かった」としている。

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母の子宮頸がん細胞が子に移行、国立がん研究センターが発表/NEJM

 国立がん研究センター中央病院の荒川 歩氏らは、小児の肺がん2例について、腫瘍組織と正常組織のペアサンプルを用いたルーチン次世代シークエンスで偶然にも、肺がん発症は子宮頸がんの母子移行が原因であることを特定したと発表した。移行したがん細胞の存在は同種の免疫応答によって示され、1例目(生後23ヵ月・男児)では病変の自然退縮が、2例目(6歳・男児)では腫瘍の成長速度が遅いことがみられたという。また、1例目は、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブを投与することで、残存するがん細胞の消失に結び付いたことも報告された。腫瘍組織と正常組織のペアサンプルを用いたルーチン次世代シークエンスは、わが国の進行がん患者を対象とした前向き遺伝子プロファイリング試験「TOP-GEAR」の一環として行われた解析で、114のがん関連遺伝子の変異を検出することを目的とする。1例目の患児に対するニボルマブ(3mg/kg体重を2週ごと)投与は、再発または難治固形がんを有する日本人患児を対象としたニボルマブの第I相試験で行われたものであった。症例の詳細は、NEJM誌2021年1月7日号で報告されている。HPVワクチン未接種の母親から生まれ、生後23ヵ月で肺がんを発症 1例目(生後23ヵ月・男児)は、湿性咳嗽が2週間続き地元の病院を受診。CTにて両肺気管支に散在する複数の腫瘍が確認され、VATS肺生検で限局性の腺分化を伴う肺神経内分泌がんであることが確認された。 母親は35歳でHPVワクチン未接種。出産前7ヵ月に行った子宮頸がん検査では陰性だったが、妊娠39週で経膣分娩、3ヵ月後に子宮頸部扁平上皮がんの診断を受けた。当時は組織学的特徴が一致せず、出生児へのがんの移行は疑われなかったが、両親の懸念に応じて頻繁にフォローアップを実施。ただし治療は行われなかった。 生後23ヵ月時に肺神経内分泌がん診断後1年で病勢が進行。3歳時に研究グループの病院に紹介され入院加療を受けた。驚くべきことに、その時点で病変の自然退縮が認められたという。残存病変は化学療法で一部は退縮したが、その他は進行。ニボルマブの第I相試験に組み込まれ、4サイクル投与後、病変の退縮を確認。用量を低減し計14サイクルを投与して7ヵ月間、新たな病変は認められなかった。その後、肺葉切除術を受け、12ヵ月時点で再発のエビデンスはみられていない。 一方、母親は最終治療(放射線+化学療法)から3年間で、肺・肝臓・骨転移がみられた。そして肺腫瘍の組織学的検査で、男児の肺と非常に類似した所見が認められたという。 その後、母子別々に行われた次世代シークエンスで、それぞれの腫瘍組織に複数の同じ遺伝子変異が存在することが確認され、またサンガーシークエンスで、両者の腫瘍組織がタイプ18のHPV陽性であることも認められた。子宮頸がんの母親から生まれた男児、6歳時に肺がんを発症 2例目(6歳・男児)は、左胸部疼痛で地元の病院を受診。左肺に6cmの腫瘤を認め粘液性腺がんと診断された。男児は化学療法を受けたが再発。左肺を全摘し15ヵ月のフォローアップ時点で再発は認められていない。 母親は、妊娠中に子宮頸がんが検出されたが、細胞診は陰性で、介入不要のがん細胞の安定化が認められたことから、妊娠38週で経膣分娩した。出産後、生検で子宮頸部の腺がんが判明し、分娩3ヵ月後に研究グループの病院に紹介され子宮および両側卵管の全摘手術を受けたが、術後2年後に死亡に至っている。 6歳時に男児が肺がんと診断された際、がんの母子感染は疑われなかったが、母親の子宮頸がん組織と男児の肺がん組織を用いた次世代シークエンスで同様の遺伝子プロファイルが認められ、また、タイプ16のHPV陽性であることも認められた。 なお、次世代シークエンスで、ほかにも母子移行が認められたケースはあったが、研究グループは、この2つのケースでは肺にのみがん細胞が観察されたことに着目。「母親のがん細胞は、羊水、分泌物、または子宮頸部からの血液に存在し、経膣分娩時に新生児が吸引した可能性がある」と指摘。子宮頸がんの母親には帝王切開を推奨する必要があることを提言している。

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自分で自分の帝王切開をやってしまった女性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第167回

自分で自分の帝王切開をやってしまった女性pixabayより使用私の指導医のFacebookページで知った論文なのですが、衝撃的だったので紹介したいと思います。Molina-Sosa A, et al.Self-inflicted cesarean section with maternal and fetal survival. International Journal of Gynecology & Obstetrics. 2004; 84 (3): 287-290. doi:10.1016/j.ijgo.2003.08.0182000年3月のことでした、40歳のメキシコ人女性が、出産間近の状態でしたが、病院に行くことができませんでした。夜から陣痛が始まり、かなり強くなってきました。そこで何を思ったのか、彼女は、刃渡り15cmはあろうかという包丁を取り出し、自分の腹部へザクッ!!キャーーーーー!!!まず、ほかにやれることはなかったのか……。右季肋部から恥骨部にかけて、17cmほど、包丁で皮膚を切り裂きました。もちろんこれ、麻酔なしでやったんでしょうね……。案の定、ハサミで臍帯を切断した後、いったん意識を失ってしまいました。その後、意識が回復し、4kmほど離れた病院に搬送されたそうです。そして、外科的修復が必要な状態にあったため、さらに高次病院へ搬送されました。その後、手術は無事に終了し、彼女は退院したそうです。現在は、親子ともに幸せに暮らしているとか。めでたしめでたし。それにしても、包丁で切った場所が消化器系ではなくて、子宮だったのが幸いでしたね。腕に自信がある皆さんも、ブラックジャックじゃないんですから、自分で自分の手術をしないように気を付けてくださいね。ちなみに、過去の自己帝王切開22例をまとめた珍しいレビューがあります1)。22例のうち7例は、自分の子供を殺そうとして(もはや帝王切開とは違いますね…汗)、4例には精神障害があり、8例は痛みがひどすぎて我慢できずに……ということのようです。1) Szabó A, et al. Auto-Caesarean section: a review of 22 cases. Arch Womens Ment Health. 2014 Feb;17(1):79-83.

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新型コロナ感染妊婦、転帰良好で母子感染はまれ/BMJ

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染し入院した妊婦のほとんどは、妊娠中期後半~後期で、重症ではなくアウトカムは良好であり、母子感染はまれであることが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のMarian Knight氏らが、同国でのCOVID-19で入院した妊婦を対象に、SARS-CoV-2感染の要因とその予後、ならびに母子感染について検討する前向きコホート研究の結果を報告した。なお、感染が認められ入院した妊婦の半数以上が黒人、アジア系および他の少数民族であったことから、著者はその割合の高さについて「早急な調査と解明が必要である」との見解を示している。BMJ誌2020年6月8日号掲載の報告。全英でSARS-CoV-2感染が認められ入院した妊婦427例について解析 研究グループは、英国の産科全194施設が参加しているUK Obstetric Surveillance System(UKOSS)のデータを用い、2020年3月1日~4月14日の期間にSARS-CoV-2感染が確認され入院した妊婦427例を対象に前向きコホート研究を実施した。 主要評価項目は、妊婦の入院率および新生児の感染率とし、妊婦の死亡率、レベル3の集中治療室(CCU)への入室率、胎児死亡率、帝王切開分娩率、早産率、死産率、早期新生児死亡率、新生児室への入室率についても検討した。妊婦の転帰は良好、母子感染はきわめてまれ SARS-CoV-2感染妊婦の推定入院率は、4.9/1,000人(95%信頼区間[CI]:4.5~5.4)であった。 妊娠中にSARS-CoV-2感染が認められ入院した妊婦427例中、233例(56%)が黒人・アジア系・他の少数民族で、281例(69%)が過体重または肥満、175例(41%)が35歳以上、145例(34%)に合併症があった。解析時点で161例(38%)は妊娠継続中であり、266例(62%)が出産または妊娠中断(生児出産259例、流産4例、死産3例)に至った。266例中196例(73%)が正期産であった。 人工呼吸管理を必要としたのは41/427例(10%)、死亡は5例(1%)であった。 新生児265例(双子6組を含む)中12例(5%)がSARS-CoV-2 RNA陽性で、このうち6例の感染が確認されたのは産後12時間以内であった。 なお、本研究は進行中であり、全感染率や無症候性感染に関するデータについてはまだ提示されていない。

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第5回 里帰り出産妊婦に立ちはだかる現代の“関所”

破水した妊婦を県立病院が受け入れ拒否こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件について、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、まもなくゴールデンウィークですが、4月20日、日本山岳・スポーツクライミング協会など山岳関係の4団体は、新型コロナウイルス感染防止のため登山の自粛を求める、「スポーツ愛好者の皆様へ」という声明を出しました。私も恒例の春山登山はあきらめることにしました…。さらに、南アルプスについては山梨県が、北アルプスについては岐阜県が、登山自粛の要請や「遭難したら、救助にいつもより時間がかかる」と呼びかけるに至っています。また、都道府県をまたいでの移動も自粛の方向性が強まっています。江戸時代のように県と県の間に“関所”ができそうな勢いです。さて、そんな中、今週気になったのは、首都圏から岩手県内に帰省した妊婦が破水して救急搬送されたにもかかわらず、2つの県立病院に帰省して間もないことを理由に受け入れを拒否された、というニュースです。第1報は4月22日のNHKニュースでした。報道によれば、受け入れを断ったのは、一関市にある県立磐井病院と北上市にある県立中部病院です。詳細は以下です。4月17日朝、首都圏から帰省していた妊婦が破水し、磐井病院(一関市)に電話で相談。しかし、「感染対策が整っていない」として受け入れを断られました。ここで県の周産期コーディネーターが仲介し、中部病院にも受け入れを打診しましたが、同様の理由で断られたとのことです。最終的に、実家から盛岡市内の病院に救急搬送され、PCR検査で陰性が確認された後、深夜に帝王切開で無事出産した、というのです。「帰省分娩の予約をされた皆さまも、お住いの地域での出産を」と学会これはとても悩ましいニュースです。岩手県は、全国で唯一、新型コロナウイルスの感染者が確認されていない都道府県です(4月27日現在)。水際対策を徹底させたい達増拓也知事は3月30日、感染が拡大している東京、神奈川、埼玉の1都2県から来県する人に対し、到着してから2週間程度は不要不急の外出を控えるよう求めていました。その後、4月16日に緊急事態宣言が全国に拡大されると都道府県をまたいだ不要不急の移動の自粛を要請しています。里帰り出産を巡っては、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が「移動する方がリスクになりかねない」として、急な帰省を控えるよう全国の妊婦に呼びかけました(4月7日)。これに呼応するように、地方の病院では里帰り出産の受け入れ中止を決定するところが増えてました。「移動するリスク」というよりは、首都圏等から感染した妊婦やその家族が来院することの院内感染リスクを勘案した呼びかけであったことは確かです。16日の緊急事態宣言の拡大を受け、同学会・同医会は21日に改めて、「帰省分娩の予約をすでにされた皆さまもぜひ、予約されている施設とご相談の上、状況によっては現在お住いの地域での出産をご考慮いただきたく存じます」とのメッセージを発信しています。岩手における県立病院の産婦人科部長や院長の「受け入れ拒否」の判断は、こうした行政や学会の動きに素直に従ったまでなのでしょう。しかし、破水した妊婦を受け入れない、という選択が、最悪の場合、どんな状況を招くかを想像しなかったのでしょうか。その点がまず、気になります。岩手は県立病院が多く、各地域の急性期医療の拠点は県立病院が担っていることを考えると、その足並みが揃っていない点も心配になります。なお、その後、県立病院を統括する県医療局は対応の見直しに乗り出し、2病院では手術室に陰圧装置を設置するなど受け入れ態勢の整備を進めている、とのことです。自宅での「オンライン出産」が増える?この一件は「里帰り出産」のケースですが、学会と医会の呼びかけを契機に、新型コロナ感染症の患者が多い首都圏や大都市では、数多くの「出産難民」が生まれてしまっているようです。里帰り出産を予定していた地方の病院から受け入れを拒否され、かたや首都圏で通っていた産婦人科や近隣病院はすでに出産の予約で一杯と「出産する病院が見つからない!」という人が増えているわけです。地方の病院から受け入れを拒否は、妊婦にとってはまさに“関所”です。直近の報道では、東京や埼玉の産婦人科医会が受け入れ可能な病院の調査を行い、「出産難民」解消に向けて動き出しているようですが、出産を控えた妊婦の不安は尽きないでしょう。もはや感染の有無は関係なく、首都圏から地方への「移動」そのものがリスクとして捉えられてしまうのですから…。それは登山も里帰り出産も同じです。最近オンライン取材をしたある在宅専門医は「入院中の安定した高齢者の中に『病院は怖い』と、退院して在宅医療に切り替える人が出ている」と話していました。体制の整備や自宅の準備はあるにせよ、近い将来、オンライン診療(観察)しながらの自宅出産、いわゆる「オンライン出産」が増えてくるかもしれません。

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新型コロナウイルス感染妊婦の臨床症状と垂直感染の可能性(解説:小金丸博氏)-1193

オリジナルニュース新型肺炎は母子感染するのか?妊婦9例の後ろ向き研究/Lancet(2020/02/17掲載) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する論文が次々と公表され、一般集団における臨床像、画像所見の特徴などが少しずつ判明してきた。これまで妊婦に関するデータは限定的であったが、今回、新型コロナウイルス肺炎と確定診断された妊婦9例の臨床症状と、児への垂直感染の可能性を検討した論文がLancet誌オンライン版(2020年2月12日号)に報告された。 妊婦9例の年齢は26~40歳で基礎疾患はなく、全例妊娠第3期だった。臨床症状としては、発熱(7例)、咳嗽(4例)、筋肉痛(3例)、咽頭痛(2例)、倦怠感(2例)を認めた。2月4日時点で感染妊婦に重症例、死亡例は確認されなかった。子宮内垂直感染の有無を確認するために、9例中6例で羊水、臍帯血、新生児の咽頭拭い、母乳中のRT-PCR検査が実施されたが、すべて陰性だった。 本論文では、新型コロナウイルス肺炎を発症した妊婦の臨床症状の特徴は妊娠していない成人と同様であり、妊娠後期に感染した妊婦から児へ垂直感染することを示すエビデンスは得られなかった。感染妊婦において重症例、死亡例を認めなかったのは朗報であるが、9例という少数の後ろ向き調査の結果のみで判断することには限界があり、さらなる症例の蓄積が必要である。 今回の妊婦はすべて妊娠第3期に新型コロナウイルス肺炎を発症しており、妊娠早期に感染した場合の妊婦や胎児への影響については評価できない。また、全例帝王切開術で分娩しており、経膣分娩した場合の産道感染のリスクについても評価することはできない。これらの疑問に対する答えは、今後の研究結果を待ちたい。 本邦でも感染者数が増加すると、妊婦の患者も含まれてくることが予想される。インフルエンザや風疹など妊娠中に感染すると妊娠経過や胎児へ影響を及ぼす感染症が多く存在するため、新型コロナウイルス感染妊婦においても慎重に経過を追う必要があると考える。

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新型肺炎は母子感染するのか?妊婦9例の後ろ向き研究/Lancet

 中国・武漢市を中心に世界規模で広がっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。これまでの研究では一般集団における感染ルートの検証が行われてきたが、妊婦のデータは限定的だ。武漢大学中南医院産婦人科のHuijun Chen氏らは、新型コロナウイルス陽性と確認された妊産婦について、臨床的特徴と垂直感染の可能性について検証した。Lancet誌オンライン版2月12日版に掲載。 本研究では、2020年1月20日~31日、武漢大学中南医院に入院した患者のうち、COVID-19と診断された妊産婦9例について、臨床記録、検査結果および胸部CT画像を後ろ向きにレビューした。垂直感染を裏付ける根拠として、羊水、臍帯血、新生児の咽頭スワブおよび母乳サンプルが採取された。 主な結果は以下のとおり。・妊産婦9例は26歳~40歳で、いずれも持病はなく、全例が妊娠第3期に帝王切開で出産した。・全例で出生が確認され、新生児仮死は見られなかった。・新生児9例はいずれも1分後アプガースコア(AP)が8~9、5分後APが9~10で正常だった。・妊産婦9例中7例で発熱が見られたほか、咳(4例)、筋肉痛(3例)、咽頭痛(2例)、倦怠感(2例)といった症状が確認された。・2月4日の段階で、妊産婦9例についてCOVID-19重症例および死亡例は確認されていない。・9例のうち6例について、羊水、臍帯血、新生児の咽頭スワブ、および母乳サンプルのウイルス検査が行われ、すべて陰性だった。・2月6日の段階で、新生児1例について、出生36時間後にウイルス検査で陽性反応を示した。・ただし、本症例については出生30時間後に採取されたサンプルであるため、子宮内感染が発生したかどうかは不明である。 本研究の9例は、妊婦が感染していたCOVID-19の母子感染リスクが不明であったため、帝王切開による分娩が選択されたという。著者らは、「この9例に限っては、妊娠後期にCOVID-19を発症した妊婦からの子宮内垂直感染を直接示すエビデンスがないことを示唆している」としながらも、「経腟分娩による母子感染リスクや、母体の子宮収縮がウイルスに及ぼす影響については、さらに調査する必要がある」と述べている。

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犬との暮らし、乳幼児の食物アレルギーを予防か

 わが国ではペットの飼育方法が変化し、近年、室内での飼育が進んでいる。それに伴いペット飼育と健康について高い関心が集まっているなかで、犬を飼うことが乳幼児にメリットを与えるという新たな知見が報告された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのThomas Marrs氏らは、食物アレルギー予防の無作為化試験「Enquiring About Tolerance(EAT)試験」に登録された生後3ヵ月の児1,303人について、犬猫飼育の有無とアレルギー発症との関連を調査。その結果、犬の飼育が食物アレルギー予防と関連する可能性が示されたという。Allergy誌オンライン版2019年5月11日号掲載の報告。 アレルギー疾患の負荷を軽減する鍵として、食物アレルギーの予防が挙げられる。食物アレルギーの発現リスクは環境曝露によって左右され、一部は、乳幼児期のマイクロバイオームの発達による可能性がある。しかし、これまでペット飼育など、潜在的に保護的な環境曝露が食物アレルギーにもたらす影響については、大規模調査が行われていなかった。そこで、研究グループはEAT試験の被験者のサブ解析を行った。 試験登録時、被験者のペット所有とアトピー性皮膚炎(AD)について、それぞれの有無を調査。3、12、36ヵ月時に経皮および血清での試験にて、食物およびエアロアレルゲン感作を調べ、1~3歳時に二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)を行い、食物アレルギーの状態を確認した。 主な結果は以下のとおり。・食物アレルギーと確認されたのは、完全データが得られた参加者のうち6.1%(68/1,124人)であった。・食物アレルギーと帝王切開、生後間もない時期の感染症または抗菌薬曝露との間に、有意な関連は認められなかった。・アトピー性疾患の家族歴、母親の犬/猫感作、および参加者のADを補正後、犬と暮らすことによって乳幼児期の食物アレルギー発症率が90%低下するという関連が認められた(補正後オッズ比[aOR]:0.10、信頼区間[CI]:0.01~0.71、p=0.02)。・2匹以上の犬と暮らしていた乳幼児49人では、食物アレルギー発症者が1人もみられず、用量反応関係があることが示唆された(飼育する犬が増えるごとのaOR:0.12、CI:0.02~0.81、p=0.03)。・犬または猫を飼うこととAD発症との間に関連性は認められなかった。

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