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女性誌「STORY」(その2)【そもそもなんで溺愛は気持ち悪いの?どうすればいいの?(家族療法)】Part 1

今回のキーワード近親相姦のタブー血縁認識表現型マッチングウェスターマーク効果親族呼称家族システム世代間の境界夫婦間の同盟前回(その1)は、溺愛の心理とその問題点を掘り下げました。その本質的な問題は、成長しても子供扱いすることで自立を阻むことでした。それにしても、自分のことは置いといて、そもそも溺愛する親御さんを気持ち悪いと思うことはありませんか? なぜなんでしょうか? それでもなぜ溺愛はやめられないのでしょうか? どうすればいいのでしょうか?今回(その2)も、前回取り上げた女性誌「STORY」の子育てコーナーの読者アンケートを踏まえて、逆に溺愛を忌避する血縁認識、溺愛を回避するために発達した家族システム、溺愛を駆り立ててしまうようになった社会構造の変化を進化心理学的に掘り下げ、その解決のための家族療法をご紹介しましょう。なんで子供への溺愛は気持ち悪いと思うの?子供への溺愛は、自立を阻むという合理的な問題だけでなく、気持ち悪いと思う感情的な問題もあります。そのわけは、はっきり言うと、近親相姦のタブーを連想してしまうからです。近親相姦は、遺伝的な近さから、奇形や免疫不全などのさまざまな遺伝病のリスクを高め、適応度を下げます。つまり、このタブーは、単に文化的な要素だけでなく、生物学的な要素も考えられています。ここから、血縁認識をキーワードに、子供への溺愛を忌避する原因を進化心理学的に、3つの段階に分けて掘り下げてみましょう。(1)匂い約4億年前に昆虫が誕生しました。そのなかの社会性昆虫のアリやハチはお互いの匂い(ある特定の化学成分)が似ていることで仲間(血縁者)であることを認識するようになりました1)。1つ目は、匂い(表現型マッチング)です。表現型マッチングとは、匂いのほかに見た目や鳴き声などの手がかりによる照合です。この血縁認識によって、血縁度が高ければ相手との協力行動が促進され、逆に生殖行動が抑制されます。だからこそ、人間においても、思春期の娘が父親の匂いを嫌悪する(敏感になる)わけです。この心理も進化の賜物であり、原始的な反応であることがわかります。よって、親から子供への溺愛も気持ち悪いと思われるわけです。ちなみに、父親は娘の匂いを嫌悪しません。また、母親と息子もお互いの匂いを嫌悪しません。その原因は、妊娠リスクから説明することができます。まず、父親も息子も当然ながら自分自身の妊娠リスクはありません。そして、娘が生殖年齢(思春期)に達する時にまだ父親の生殖年齢は終わっていないために娘の妊娠リスクが高いのに対して、息子が生殖年齢に達する時に母親の生殖年齢は終わりに近づいているために母親の妊娠リスクが低くなります。そのため、母親が思春期の息子の匂いを嫌悪して近親相姦を回避するよう進化する必要がそこまでないわけです。もちろん、血縁認識に関係なく、思春期の反抗の心理から、子供は親を嫌悪するよう進化しています。詳しくは、関連記事1をご覧ください。(2)馴染み約2億年前に哺乳類が誕生し、母親が子供におっぱいを授乳(哺乳)するようになりました。これが、母子家庭の起源です。そのなかで、さらに群れをつくるようになったリス(ベルディングジリス)は、匂い(表現型マッチング)よりも一緒にいて馴染みであることで仲間(血縁者)であることを認識するようになりました2,3)。2つ目は、馴染み(ウェスターマーク効果)です。ウェスターマーク効果とは、自分が幼い時からずっと同居するなどして一緒にいる相手には性的魅力が低くなることです。実際、イスラエルの集団農場(キブツ)で一緒に育てられた子供たち同士がその後に結婚しにくいことや、台湾でかつて存在した「シンプア婚」(実子の息子と養子の娘を結婚させる習わし)では出生率が低く離婚率が高いことがわかっています1)。つまり、生物学的に考えれば、幼馴染みや許嫁とはなかなか結婚しないことがわかります。この馴染みの影響は、もちろん同居する親に対しても当てはまるため、子供が親に性的魅力を感じることは気持ち悪いと思うわけです。だからこそ、親から子供への溺愛も気持ち悪いと思われるわけです。(3)家族の呼び名約700万年前に人類が誕生し、約300万年前に母親、父親、子供たちの家族(核家族)が誕生しました。そして、この家族を単位とする血縁集団(部族)は、時代が進むとだんだん大きく、最終的には100~150人になりました(ダンバー数)。この起源の詳細については、関連記事2をご覧ください。そして、約20万年前に言葉が誕生した時、部族の間ではお互いを名前で呼び合うようになったわけですが、家族の間では特別に家族内の関係性の呼び名を使うようになりました。3つ目は、家族の呼び名(親族呼称)です。親族呼称とは、ママ、パパ、ばあちゃん、じいちゃん、おばさん、おじさん、姉ちゃん、兄ちゃんなど家族の呼び名を優先的に使うことです。これは、血縁認識を生理的(無意識的)にだけでなく、認知的(意識的)にも高めます。つまり、家族の呼び名を使う相手には性的魅力が低くなります。だからこそ、親から子供への溺愛も気持ち悪いと思われるわけです。逆に言えば、夫婦は本来お互いに性的魅力を保っていることが望ましいわけですが、夫婦なのに子供の視点でお互いを「ママ」「パパ」と呼び合っていたら、認知的(意識的)に性的魅力を低くしてしまい、セックスレスになってしまうこともわかります。次のページへ >>

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女性誌「STORY」(その2)【そもそもなんで溺愛は気持ち悪いの?どうすればいいの?(家族療法)】Part 2

そもそも溺愛を避けるために発達した家族の形とは?子供への溺愛が気持ち悪いと思う原因は、匂い(表現型マッチング)、馴染み(ウェスターマーク効果)、家族の呼び名(親族呼称)という血縁認識によって近親相姦を回避しているからであることがわかりました。ここから、そもそもこの溺愛(近親相姦)を回避するために発達した家族システムを3つ挙げてみましょう3)。(1)核家族人類に比較的近い類人猿のゴリラ、オランウータン、テナガザルは、大人になるとオスもメスも親元を離れます。彼らの配偶システムには違いがあり、ゴリラは一夫多妻型(ハーレム型)の群れをつくり、オランウータンは単独型(母子家庭)、テナガザルは一夫一妻型(核家族)で群れをつくりません。1つ目は、核家族です。この家族システムは、オスもメスも親元を離れるため、きょうだい間、父娘間、母息子間のすべての近親相姦を回避できます。人類が誕生した約700万年前の当初は、まだ単独型(母子家庭)のままだったと考えられます。そして、先ほど触れたように、約300万年前に一夫一妻型(核家族)になったのでした。(2)父系家族人類に最も近い類人猿のチンパンジーは、大人になるとメスが親元を離れて他の群れに加わり、オスは親元に残り、オスたちだけに血縁のある多夫多妻型(乱婚型)の群れをつくります。2つ目は、父系家族です。この家族システムは、メスが親元を離れるため、きょうだい間と父娘間の近親相姦を回避できます。一方で、母息子間の近親相姦の回避は家族システムとしてはできません。人類は、約1万数千年前の農耕牧畜革命以降、食料の蓄積が可能になり、集団のサイズが大きくなっていきました。そして、約5先年前に最初の文明(メソポタミア文明)が生まれ、人口が増えていったことで、持てる土地が限られ、争いも増えていきました。こうして、腕力で頼れる男性が中心となる父系家族が現在に至るまで増えていき、封建社会を発展させたのでしょう。同時に、これは女性差別も生み出しました。ちなみに、父親が居座っている実家から娘が出ていくことを促すためにも、娘は父親の匂いをしっかり嫌悪することは適応的です。なお、女性差別の起源の詳細については、関連記事3をご覧ください。(3)母系家族先ほどのリスも、その後に誕生した真猿類も、大人になるとオスは親元を離れて他の群れに加わったりしますが、メスは親元に残り、メスたちだけに血縁のある群れをつくります。3つ目は、母系家族(母系社会)です。この家族システムは、オスが親元を離れるため、きょうだい間と母息子間の近親相姦を回避できます。一方で、父娘間の近親相姦の回避は家族システムとしてはできません。人類にも、母系家族はあるにはあります4)。ただ、人類の起源地であるアフリカの部族においても比較的少ないことから、原始の時代も少なかったことが推定できます。しかし、昨今、選択的シングルマザーが増えてきています。このような女性は実母を頼る傾向から、近未来では、再び母系家族も増えていき、家族システムが多様化していくことが予想されます。なお、選択的シングルマザーの詳細については、関連記事4をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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女性誌「STORY」(その2)【そもそもなんで溺愛は気持ち悪いの?どうすればいいの?(家族療法)】Part 3

それでもなんで溺愛しちゃうの?溺愛(近親相姦)を回避するために発達した家族システムとして、核家族、父系家族、母系家族の3つを挙げました。現在の家族システムは主に核家族であり、本来は溺愛しないはずです。にもかかわらず、現在、とくに日本では、なぜ溺愛してしまうのでしょうか?その原因を、社会構造の変化として、主に3つ挙げてみましょう。(1)子供がすぐに就職しなくなった―進学率の上昇戦前までは、中学校以上の進学率は低く、子供は思春期(12歳くらい)になると、農家などで一家の働き手として大人扱いされていました。しかし、現代は、15歳まで義務教育が課され、児童労働は禁止されています。ほとんどが高校まで進学し、さらに半数以上が大学まで進学し、卒業するのは22歳です。つまり、独り立ちする時期が10年延びています。1つ目は、子供がすぐに就職しなくなったからです。これは、親に経済的にも心理的にも依存する時期が必然的に10年延びていることを意味します。親の側からして見れば、その分、心理的な距離が縮まり過保護になる、つまり溺愛してしまうというわけです。なお、進学率の上昇は、学歴偏重の心理に置き換えることができます。その原因の詳細については、関連記事5をご覧ください。(2)子供がなかなか結婚しなくなった―晩婚化戦前まで、子供は成人すると、25歳前後で結婚していました。そして、伝統的には長男以外の子供は家を出ました。しかし、現代は、平均初婚年齢は30歳前後まで延びて晩婚化しています。つまり、結婚する時期が5年延びています。ちなみに、未婚で実家暮らし(親との同居率)は70%台で、生涯未婚率(非婚)も増え続けています。2つ目は、子供がなかなか結婚しなくなったからです。これは、親と同居する時期が必然的に5年延びていることを意味します。親の側からして見れば、その分、物理的な距離が縮まり過干渉になる、つまり溺愛してしまうというわけです。なお、晩婚化とつながる非婚の原因の詳細については、関連記事6をご覧ください。(3)子供をあまり産まなくなった―少子化戦後しばらくは、合計特殊出生率が4後半であり、家庭に子供が4、5人いるのが当たり前でした。しかし、現代(2023年)は、1.26と過去最低を更新し続けており、家にいる子供は1人か2人です。つまり、子育てへの労力が3分の1以下に減っています。また、さらにその子供が産む孫の数も少なくなり、先ほど触れた孫育ての心理(祖母効果)を発揮する状況も減っています。3つ目は、子供をあまり産まなくなったからです。これは、逆算すれば1人の子供に注ぐ子育てのエネルギー(コスト)を3倍まで増やせることを意味します。その分、経済的にも時間的にも心理的にも子供を大事にしてしまう、つまり溺愛してしまうというわけです。この点で、とくに専業主婦(主夫)や休業中の人など仕事をしていない人は、さらに時間とエネルギーが有り余っているため、リスクが高まります。なお、少子化の原因の詳細については、関連記事7をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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女性誌「STORY」(その2)【そもそもなんで溺愛は気持ち悪いの?どうすればいいの?(家族療法)】Part 4

溺愛しないためにはどうすればいいの?進学率の上昇、晩婚化、少子化という社会構造の変化によって、子供への溺愛を招いていることがわかりました。そして、その溺愛によって自立を阻み、さらに進学率の上昇、晩婚化、少子化を招いていることから、完全に悪循環に陥っていることもわかります。もうどうすればいいのでしょうか?やはり根っこの問題は、家族関係です。そして、この家族関係に介入していくのが家族療法です。最後に、家族療法を通して、溺愛しないための解決策のポイントを2つご紹介しましょう。(1)親子関係を線引きする―世代間の境界STORYの読者アンケートでは、溺愛が自立を阻む合理的な問題や気持ち悪いという感情的な問題の自覚があまりありませんでした。今回の記事を読むことで、その問題点や進化心理学的な背景を理解することができます。そうすれば、必然的にどうすれば良いかが見えてきます。1つ目は、親子関係の線引きです。これは、家族療法では世代間の境界と呼ばれています。親と子供は世代としても別々であり、子供の発達の段階によってその関係性を意識して変えていく必要があるということです。たとえば、幼児期は確かにお世話が必要です。しかし、身体的に自立する小学校以降になると、生活全般を基本的に本人に任せる必要があります。つまり、当たり前ですが、お風呂は一人です。朝起きるのもなるべく自分でできるように促します。そして、中学校以降(思春期)は、基本的に大人扱いして、本人に任せる必要があります。もちろん、困った時はすぐに助けますが、いつもは距離を置いて温かく見守ることです。その具体策については、ペアレントトレーニングとして、関連記事8をご覧ください。(2)夫婦関係をチームにする-夫婦間の同盟STORYの読者アンケートへの解説ページにおいて、とくに「母の息子愛」(2023年5月号)では、奇妙なくらい夫婦関係について触れられていませんでした。女性誌であることから、夫婦関係はアンタッチャブルであることがうかがい知れます。実は、子供への溺愛の原因は、親子関係にだけでなく、夫婦関係にもあります。夫婦関係が円満でなければ、それぞれが必然的に親子関係を強めようとします。これは、三角関係化と呼ばれています。つまり、溺愛は、実は親子の問題だけではなく夫婦の問題でもあるわけです。とくに日本は、家族システムとして父系家族(封建社会)による親子文化が根強く、核家族(個人主義)による夫婦文化がなかなか根付いていないことからも、親子ではなく夫婦の関係に重きを置く介入が必要です。2つ目は、夫婦関係をチームにすることです。これは、家族療法では夫婦間の同盟と呼ばれています。簡単に言うと、「親チーム」です。夫婦はパートナーでありチームメイトであり、子供の発達段階によってもその関係性を大きく変えない必要があるということです。たとえば、子供が思春期になっても、親はチームとして子供の支援者であり続けることです。そして、子供が巣立っても、チームメイトであり続けることです。その具体策については、カップルセラピーとして、関連記事9をご覧ください。さらに、夫婦関係が深刻で、すでに倦怠期に陥っている場合の具体策については、関連記事10をご覧ください。私たち自身の「STORY」とは?今回は、溺愛をテーマに女性誌「STORY」を取り上げました。家族療法の視点に立つと、子供への溺愛を自覚することは、親子関係だけでなく、夫婦関係も見直す良いチャンスであると言えます。その時、私たち自身が自分たち夫婦の「STORY」(物語)をつくっていくことができるのではないでしょうか?1)「進化と人間行動 第2版」P169-P171:長谷川寿一ほか、東京大学出版会、20222)「進化と人間行動」P91:長谷川眞理子ほか、放送大学、20073)「進化と人間行動」P97、P124、P127:長谷川寿一、東京大学出版会、20004)「女たちの王国 結婚のない母系社会 中国秘境のモソ族と暮らす」P186:曹操恵虹、草思社、2017<< 前のページへ■関連記事ドラえもん【子どものメンタルヘルスに使えるひみつ道具は?】映画「アバター」【私たちの心はどうやって生まれたの?(進化心理学)】Part 2そして父になる(その2)【なんで血のつながりにこだわるの?(血縁心理の起源)】Part 3カレには言えない私のケイカク【結婚をすっ飛ばして子どもが欲しい!?そのメリットとリスクは?(生殖戦略)】Part 1ドラマ「ドラゴン桜」(前編)【なんでそんなに東大に入りたいの? 学歴ブランド化の不都合な真実とは?(教育ビジネス)】Part 2私 結婚できないんじゃなくて、しないんです【コミュニケーション能力】コウノドリ(その2)【なんで子どもがほしいの? 逆になんでほしくないの?(生殖心理)】Part 2映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 3ドンファン【どう愛する?】

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学校健康診断に関する報道についての見解/日医

 2024年6月に群馬県みなかみ町の小学校で行われた健康診断において、医師が本人や保護者の同意を得ずに児童の下半身を視診していたことが明らかになり、学校健康診断に関する報道が過熱している。そこで、日本医師会常任理事の渡辺 弘司氏が、6月19日の定例記者会見で、日本医師会としての学校健康診断に関する見解を明らかにした。 まず、渡辺氏は、「学校健康診断のマニュアルである『児童生徒等の健康診断マニュアル』には、健康診断時に注意すべき疾病および異常として思春期早発症への言及がある。当該医師は小児内分泌の専門医であり、医学的に診察を行ったことの妥当性はある」としつつ、「一般的な学校健康診断では、児童・生徒全例に第2次性徴の診察を実施することは想定されていないことから、事前に保護者に説明する必要があった。学校設置者・学校・学校医の連携や共通認識が必要だったのではないか」と述べた。 学校健康診断の目的は、学校生活を送るに当たり支障があるかどうかについて疾病をスクリーニングし、健康状態を把握することであり、通常の診療とは状況も場所も異なる。そのため、「懸念される疾病などをその場で確認しなければならないという気持ちがあったとしても、子供のプライバシーにしっかりと配慮しながら学校検診を行わなければならないとあらかじめ理解する必要があった」と指摘するとともに、「法令に定める項目以外の検診項目を実施する場合やプライバシーや心情に関わるような場合では、事前に学校を介して保護者に説明し、同意を得る必要がある」と強調した。 最後に、「5月に発刊した『学校医のすすめ そうだったのか学校医』の活用を含め、学校医業務で配慮すべき内容を理解してもらえる仕組みが必要。文部科学省とも協議してできるだけ早く対応を進める」と述べ、児童・生徒、保護者が安心して学校健康診断を受けることができるよう、関係者と連携して取り組むことを明らかにした。

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女性誌「STORY」(その1)【息子を彼氏化するママ?娘にメロメロなパパ?その問題点は?(溺愛の心理)】

今回のキーワードストーカー共依存操作性空の巣症候群性的虐待モラルハラスメント母親の皆さんは、息子さんが好きすぎて「私好みになってほしい」「彼氏になってデートしてほしい」と思うことはありますか? 父親の皆さんは、娘さんにメロメロで、何でも買い与えて、いつまでも一緒にお風呂に入ってほしいと思うことはありますか? 一方で、このような関わり方に問題はないでしょうか?今回は、溺愛の心理をテーマに、時代を映す鏡の1つである女性誌「STORY」の子育てコーナーの読者アンケートを取り上げます。いつもと違い、シネマセラピーのスピンオフバージョン、「ケーススタディ・セラピー」です。彼女たちの本音を踏まえて、溺愛の問題点を掘り下げてみましょう。子供を溺愛する問題点とは?読者アンケートの中には、「子供を大切にする気持ちの何が悪いの?」というご意見もありました。いったい何が「悪い」のでしょうか?まず、親から子供への溺愛は、とくに異性間で起きやすいです。なぜなら、異性間では疑似的な恋愛関係になるからです。一方で、同性間では自分の配偶者をめぐる疑似的な恋敵の関係になるからです。これを踏まえて、まず母の息子愛、父の娘愛に分けて、その問題点をそれぞれ具体的にみてみましょう。(1)母の息子愛の問題点2023年5月号の208ページには、「『息子を彼氏化してしまうママ』の言い分」が紹介されています。ここから読み取れる母親の本音を3つご紹介します。「過剰な心配、詮索は当たり前。だって深く愛しているから」愛しているから知って当然という口実によって、交友関係をあれこれ聞き出そうとするだけでなく、持ち物チェック、携帯ののぞき見などの詮索を自己正当化しています。さすがに子供が思春期の場合は、信頼関係を損ねるため、決してお勧めできません。この発想は、典型的なストーカーの心理です。なお、父親が娘のことを詮索する場合は、「娘のインスタを必死でフォローする」など、ストーカー的であっても、あくまでルールは守ろうとする傾向があります。「成長しても今みたいに甘えてくれたら嬉しいなあ」いつまでも自分を頼りにしてほしい、世話を焼きたいと思う気持ちは、一見、愛情深く見えます。しかし、子供が思春期になって、お世話する必要がないのに無理やりお世話しようとすることは、自立を阻むため、お勧めできません。これは、典型的な共依存の心理です。なお、息子と違って娘には、単純に世話を焼くのではなく、同性モデルとして料理などのお世話の仕方を教える傾向があります。「下宿や寮生活をさせずに、できるだけ手元に置いておきたい」子供が自立のために家を出ようとすると、「私を見捨てる気なの?」などと言って、なるべく実家暮らしをするよう仕向けます。これは、操作性と呼ばれています。また、実際に子供が巣立った場合、その寂しさから、うつ状態になることを、空の巣症候群と言います。(2)父の娘愛の問題点2024年5月号の194ページには、「夫たちの『娘にメロメロ症候群』にご注意!」が紹介されています。ここから読み取れる妻の悩み、言い換えれば夫(父親)の本音を3つご紹介します。「願いをすべて叶えてあげる」これは、欲しいものを買い与えて手なずけようとする気持ちが見え隠れします。何かとプレゼントをしたがる人の心理にも通じます。プレゼントは感謝の印として本来ポジティブなものであるはずですが、やりすぎる場合は先ほどと同じ操作性という裏の心理にすり替わってしまいます。母親との違いは、母親は情緒に訴えてくるのに対して、父親は金品というモノで釣ろうとすることです。また、好かれたい気持ちが強いため、息子と違って娘には叱ることはあまりないです。「まだお風呂にも一緒に入っていて、シャンプーやリンスーもしてあげる」これは、幼児期にそうしていた習慣の延長という軽い気持ちがあるでしょう。しかし、身体的自立を終えた小学生になっても、抱っこなどの密なスキンシップ、裸を見る・見せることは、海外では性的虐待と見なされます。日本でそう認識されにくいのは、日本における性教育が子供だけでなく大人に対しても遅れているからです。「彼を連れてきた娘に、『あんな男やめとけ』と一方的だった」交友関係への口出しは、娘が大切だという気持ちからであるのはわかるのですが、「自分のものが取られる」という意識が強いようです。しかし、娘は、「もの」ではなく、自己決定する同じ人間です。親は意見を言ったり提案することはできますが、思春期、ましてや大人になっても、このような威圧的な態度を取るのは、モラルハラスメントに当たります。なお、母親の場合、父親ほどストレートではありません。息子の女友達が家に来ても表向きは愛想良く振る舞います。しかし、あとから難癖を付けたり、「帰りが遅かった」などと些細なことでその彼女の親や担任の先生に苦情を入れるなどして陰湿な傾向があります。ちなみに、このような母親と父親の子供への関わり方の違いは、男女の脳機能の違いから説明することができます。詳しくは、関連記事1をご覧ください。(3)共通する本質的な問題以上をまとめると、母親と父親に共通して、子供を溺愛する本質的な問題は、成長しても子供扱いすることで自立を阻むリスクがあることであることです。つまり、親の愛情が独善的で一方的な場合、いくら表向きに「子供のため」と言っても、その本音は「自分のため」であり、結果的に「子供のため」になっていないことになります。この状況に親自身が気付いていないこともあります。逆説的にも、大切にしすぎることは結果的に大切にしていないことになるわけです。そして、子供が思春期になった時、これが見透かされてしまうのです。なお、実際の教育心理学の研究でも、自立を促す親の子育ての姿勢がその後の子供(大学生)の心理的自立(自我の確立)を促すという結果が出ています1)。当然と言えば、当然です。逆に言えば、そうしない最悪のシナリオが、自我の拡散、つまり不登校やひきこもりであると言えるでしょう。これらの詳細については、関連記事2、関連記事3をご覧ください。1)高富莉那, 桂田恵美子. 臨床教育心理学研究 2011;37:27-32.■関連記事あなたには帰る家がある(前編)【なんで倦怠期になるの?】Part 2映画「かがみの孤城」(その1)【けっきょくなんで学校に行けないの?(不登校の心理)】Part 1サイレント・プア【ひきこもり】

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年収額に満足している診療科は?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2月20日(火)に会員医師1,004人を対象に、「年収に関するアンケート」を実施した。その中で、自身の年収額を妥当だと思うかどうか尋ねたところ、「そう思う」「ややそう思う」の合計が過半数を超えておおむね満足していることが伺えたが、「まったくそう思わない」と回答した医師も10%存在した。診療科別では、満足している診療科とそうでない診療科の差が明らかとなった。年収600万円未満の満足度が高い 年収額の妥当性について、全体では「そう思う」が25%、「ややそう思う」が36%、「あまりそう思わない」が29%、「まったくそう思わない」が10%であった。年収別の「そう思う」「ややそう思う」の割合は、600~800万円が44%、800~1,000万円が46%と半数を切ったが、その後は年収が上がるとともにほぼ上昇した。なお、600万円未満の「そう思う」「ややそう思う」の割合は55%で、うち「そう思う」が31%と満足度の高さが目立った。年代が上がるほど満足度も上昇 年代別の「そう思う」「ややそう思う」の割合は、35歳以下が52%、36~45歳が58%、46~55歳が62%、56~65歳が61%、66歳以上が70%であった。なお、最も多い年収帯は、35歳以下が1,000~1,200万円、36~45歳が1,400~1,600万円、それ以降の世代では2,000~2,500万円であった。女性の満足度が下がる 男女別では、男性は「そう思う」が25%、「ややそう思う」が35%、「あまりそう思わない」が29%、「まったくそう思わない」が10%で、女性はそれぞれ21%、40%、29%、9%であった。2022年に実施した同様の調査では、男性の分布は本年とほぼ同じであった一方、女性の「そう思う」は32%で、本年は約10%低くなっていた。とくに満足度が下がっていたのは、56~65歳と66歳以上の女性であった。大学病院の満足度が低い 勤務先別の「そう思う」「ややそう思う」の割合は、一般診療所が61%、一般病院が64%であったが、大学病院は45%と低かった。病床数別では、20床未満は71%、20床以上は60%であった。診療科別の傾向は? 「そう思う」「ややそう思う」と回答した医師の割合が50%以上であった診療科は下記のとおり(30人以上の回答が得られた診療科を抜粋)。精神科:78%泌尿器科:70%消化器内科:69%呼吸器内科:69%内科:64%小児科:62%神経内科:60%糖尿病・代謝・内分泌科:56%外科:50% その他、年代ごとの男女別、病床数別、勤務先別などの詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2024【第3回】年収額の妥当性

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英語で「深呼吸をしてください」は?【1分★医療英語】第134回

第134回 英語で「深呼吸をしてください」は?《例文1》Breathe in, breathe out.(吸って、吐いて)《例文2》Hold your breath, please.(息を止めてください)《解説》肺の聴診の際には患者さんに深呼吸をお願いしますが、こんなとき英語ではどのように言えばよいでしょうか。「深呼吸をする」は英語で“take a deep breath”といいます。このフレーズを用いて“Please take a deep breath.”や“Can you take a deep breath?”と表現すると伝わります。“breath”は呼吸を意味する名詞です。カタカナにすると「ブレス」ですが、日本人が苦手な“r”と“th”の発音が含まれているため、カタカナ英語では伝わりにくく、注意が必要です。自然に口から出てくるよう、しっかりと発音を練習しましょう。診察中に「吸って、吐いて」と患者さんに呼吸を促すときには、“breathe”(呼吸する、息をする)という動詞を用いて“Breathe in, breathe out.”と言います。動詞になると「ブリーズ」という発音になり、名詞とは発音が異なるので気を付けましょう。また、「息を止めてください」と言いたいときには、「止める」という動詞の“hold”を用いて、“Hold your breath.”と表現します。講師紹介

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鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2024[第2版]

9年ぶりの改訂!本邦の実情に即した鼠径部ヘルニア診療の決定版9年ぶりの本改訂ではMinds方式を採用し、さまざまな手術法が存在する鼠径部ヘルニア診療を、効果の差の臨床的意味(益と害のバランス)まで考慮し検証した。システマティック・レビューが困難な臨床疑問、今後の重要課題に対してもコラム形式等で解説。鼠径ヘルニアのほか大腿ヘルニア、小児ヘルニアも取り上げ、本邦の実情に即したガイドラインとなった。日本ヘルニア学会2021年版鼠径部ヘルニア分類に関するCQも掲載。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2024[第2版]定価3,630円(税込)判型B5判頁数144頁(図数:61枚、カラー図数:1枚)発行2024年5月編集日本ヘルニア学会ガイドライン作成検討委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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小児急性中耳炎診療ガイドライン 2024年版 第5版

大幅アップデートの最新版登場!6年ぶりの改訂となる2024年版では、以下多くのアップデートがなされています。肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)のエビデンスの強化や、従来からの抗菌薬適正使用に基づいた一部抗菌薬の用量・選択候補薬の見直し、軽症・中等症・重症のアルゴリズムを合体した「アルゴリズムのまとめ」の追加、重症度判定などの参考用の鼓膜画像の更新など、本ガイドラインの「中耳炎診療の基本を伝える」使命に則った大改訂版となりました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児急性中耳炎診療ガイドライン 2024年版 第5版定価2,860円(税込)判型B5判頁数116頁(図数:4枚、カラー図数:2枚)発行2024年5月編集日本耳科学会日本小児耳鼻咽喉科学会日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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抗ネフリン抗体、ネフローゼ症候群の活動性マーカーの可能性/NEJM

 成人の微小変化型と原発性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、および小児の特発性ネフローゼ症候群は、ネフローゼ症候群を引き起こす免疫介在性のポドサイト障害(podocytopathy)とされる。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのFelicitas E. Hengel氏らは、循環血中の抗ネフリン抗体(自己抗体)は、微小変化型または特発性のネフローゼ症候群の患者に多くみられ、これらの疾患の活動性のマーカーと考えられるとともに、スリット膜でのこの抗体の結合がポドサイト(糸球体上皮細胞[足細胞])の機能障害とネフローゼ症候群を誘発し、これは病態生理学的な意義を示すものであることを明らかにした。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月25日号で報告された。抗ネフリン自己抗体を解析する多施設共同研究 研究グループは、糸球体疾患(微小変化型、FSGS、膜性腎症、IgA腎症、抗好中球細胞質抗体[ANCA]関連糸球体腎炎、ループス腎炎など)の成人と特発性ネフローゼ症候群の小児、および対照群において、抗ネフリン自己抗体を解析する目的で多施設共同研究を行った(ドイツ研究振興協会[DFG]などの助成を受けた)。 また、遺伝子組み換えマウスネフリンを用いた能動免疫法により実験的マウスモデルを作製して解析を行った。 539例(成人357例、小児182例)の患者と117例の対照を解析の対象とした。成人微小変化型の44%、原発性FSGSの9%、小児特発性ネフローゼ症候群の52%で検出 成人患者では、微小変化型の105例中46例(44%)、および原発性FSGSの74例中7例(9%)で抗ネフリン自己抗体を検出したが、他の疾患の患者ではまれであった。 また、特発性ネフローゼ症候群の小児患者では、182例中94例(52%)で抗ネフリン自己抗体を検出した。 一方、免疫抑制療法を受けていない活動性の微小変化型および特発性ネフローゼ症候群のサブグループでは、それぞれ69%および90%と高い確率で抗ネフリン自己抗体を認めた。ネフリンを標的とした治療法開発の可能性も 抗ネフリン自己抗体の値は、成人、小児患者とも、試験開始時と追跡期間中に疾患活動性と相関を示した。 実験的な免疫法により、マウスにおいて、ネフローゼ症候群、微小変化型様の表現型、ポドサイトのスリット膜へのIgGの局在、ネフリンのリン酸化、重度の細胞骨格の変化を誘導することが示された。 著者は、「抗ネフリン自己抗体の測定は、微小変化型および特発性ネフローゼ症候群の診断、治療評価、予後予測において有用なツールになると考えられる。また、ネフリンを標的とした治療法の開発にも貢献する可能性がある」としている。

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第215回 乱立する一般社団法人の美容クリニック、院長の名義貸しも常態化、見て見ぬふりの厚労省も規制にやっと本腰か?

NHKが先頭に立って報道してきた美容医療のトラブル問題こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。最近気になっていることに電動キックボードがあります。東京の中心部の道路では、企業が貸し出すタイプ(シェアリングサービス)や個人所有の電動キックボードが増えており、素足むき出しの若者(とくに女子)などがヘルメットも被らずに疾走しています。学生時代からヘルメットにブーツでオートバイに乗ってきた私(最近では胸部ガードもしています)としては、危なっかしくて見ていられません。2023年7月の法改正では、個人所有、貸し出しにかかわらず、時速20km以下の電動キックボード(特定小型原付)は免許不要で、ヘルメットも努力義務となりました。いわゆる規制緩和ということでしょうが、交差点での直進・左折優先の常識も知らない輩が車道、歩道の区別なく走り回るというのはどうなんでしょう。おそらく、事故が多発して、再び何らかの規制がかかるのではないでしょうか。そもそもあの小さなタイヤ径だと、多少大きな石や障害物、段差にぶつかると簡単に転倒してしまいます。素足だと即、血だらけです。なお、個人的には子供を乗せて猛スピードで走る母親運転の電動ママチャリ(電動アシスト自転車)や、若者がしたり顔で無免許運転するペダル付き原動機付自転車が電動キックボード以上に恐いのですが、それについてはまた日を改めて。さて今回は、NHKが先頭に立って報道している美容医療のトラブル問題について書いてみたいと思います。こちらは公益法人制度改革という規制緩和によって、少々やっかいなことになっているようです。専門の医師などによる検討会を立ち上げ、適切な美容医療のあり方や対策を協議へ5月30日朝、NHKは「美容医療でトラブル増加 厚労省 検討会立ち上げ対策など協議へ」と題するニュースを放送、「脱毛や薄毛治療など自由診療で行われる美容医療をめぐって健康被害などの相談や契約上のトラブルが増加していることを受け、厚生労働省は専門家などによる検討会を立ち上げ、対策などを協議していくことになりました」と報じました。NHKニュースによれば、「保険診療の場合は、地方厚生局や診療報酬の審査支払機関による確認が行われているが、自由診療の場合、第三者が確認する制度がない」とのことです。自由診療であり、保険財政には直接影響が及ばない美容医療は、長年厚労省が放置してきた問題でもあります。NHKの報道が事実ならば、何らかの“規制”や“ガイドライン”導入などが行われるかもしれません。近年開設の多くの美容医療のクリニックが医療法人ではなく一般社団法人実は、NHKのこの報道には前段がありました。前日、5月29日の午後7時のニュースで、「一般社団法人のクリニック 都市部で増 医師『名義貸し』証言も」のニュースを放送、それに続く「クローズアップ現代」でも「追跡“自由診療ビジネス”の闇 相次ぐ美容・健康トラブルの深層」のタイトルで、その実態を詳細に報道しました。「厚労省 検討会立ち上げ」のニュースは、そうした一連の報道の最後に発信されたスクープだったわけです。5月29日のニュースと「クローズアップ現代」を観て驚いたのは、「国民生活センターによると美容医療をめぐるトラブルの相談件数は昨年度が5,833件で、5年前のおよそ2.9倍に増加」したという実態に加え、多くの美容医療のクリニックが医療法人ではなく、一般社団法人で開設されており、理事長は医師以外であるケースが少なくない、という事実です。「クローズアップ現代」では、取材班が東京23区や大阪市内の一般社団法人のクリニックを独自に調査した結果も報道していました。それによれば、「一般社団法人が運営するクリニックは298件、ほとんどがコロナ禍前後に設立され、6割以上が美容医療を行っている」とのことでした。管理者となる医師の「名義貸し」が疑われるケースもさらに、管理者となる医師(いわゆる院長)の「名義貸し」が疑われるケースもあるとのこと。大阪市内の美容クリニックの管理医師となっていた医師の「保健所の職員が来た時に1度だけクリニックに行ったが、それ以降は1度も出勤しておらず、“名義貸し”状態だった。管理医師をやっていたときは給料をもらっていた」というショッキングなコメントを紹介していました。つまり、医師以外、異業種のオーナーが医師にお金を払って院長の名義を貸してもらい、一般社団法人で美容外科のクリニックを開設、実際の美容外科の施術は形成外科が専門でもない医師をアルバイトで雇って対応――、というのが基本的なビジネススキームのようです。院長の名義貸しは、ほかの医療機関の院長や病院の常勤医などではできないため、「医師免許がある大学院生」や「病院の研修医」などを専門業者が仲介して紹介してもらうケースが多い、とのことでした。また、「クローズアップ現代」では、実際に施術を行う医師について、飲食店オーナーが経営するクリニックの元職員の「小児科や放射線科などが専門で美容医療の経験のない30人ほどの医師がアルバイトで集められシフトを回していた。トラブルが起きた際のマニュアルなどは整備されていなかった」という証言も紹介していました。監督官庁がなく野放しの一般社団法人クリニック一般社団法人は2008年の公益法人制度改革にともなって創設された新しい法人類型です。原則、医師が理事長となる医療法人とは違い、管理者となる医師(いわゆる雇われ院長)が用意できれば誰でも経営に参入することができるほか、都道府県の認可も不要で登記のみで設立できます。診療所という業態の開設は管轄する保健所の認可が必要となりますが、保健所の管轄地域にすでに一般社団法人の診療所があれば、ほぼ認可されるようです。つまり、すでに一般社団法人の美容外科が乱立している大都市部ならば、その開設は極めて容易と言えます。医療法人であったり、保険診療を行ったりしているのであれば、そのクリニックは厚生労働省の管轄となります。しかし、一般社団法人は監督官庁がなく、事業の報告義務もありません。文字通り“野放し”なのです。自由診療で行われる“アコギな医療”に鋭いメスを問題は、美容医療だけではありません。「クローズアップ現代」では、一般社団法人の自由診療クリニックが、がん免疫療法や再生医療の世界にも積極的に進出し始めているとも報じていました。法律の力が及ばず監督外、管轄外になることについて、役所は往々にして無関心かつ放置しがちです。臨床効果が確立していないにもかかわらず、自由診療で法外な治療費をふっかけてきた一部のがん免疫療法についても、これまでとくに明確な規制を設けることはしませんでした。今回、厚労省は、美容医療について専門家などによる検討会を立ち上げ、対策などを協議する、とのことです。電動キックボードやペダル付き原動機付自転車などは、被害が交通事故という「目に見えるかたち」で現れるので対策も比較的講じやすいですが、広く自由診療で行われる“アコギな医療”の多くは、根拠となる法律や規制も曖昧なため、実際の被害がなかなか表沙汰になりません。せっかくの機会ですから、そうした“アコギな医療”にもぜひ鋭いメスを入れてほしいですし、さらに言えば、「第184回 線虫がん検査『N-NOSE』、検査精度の疑惑が再燃、日本核医学会の中にあるPET核医学分科会・PETがん検診ワーキンググループが本格調査へ」で書いたような、臨床的な評価が定まっていないにもかかわらず、一般向け検査で荒稼ぎする一部の検査法も、そろそろ“放置”するのはやめていただきたいと思います。

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英語で「悪魔の代弁者を演じる」は?【1分★医療英語】第133回

第133回 英語で「悪魔の代弁者を演じる」は?《例文1》For the sake of argument, can you tell me your plan B if your initial therapy does not work?(議論を深めるためですが、もし最初の治療が有効でなかった場合のプランBを教えてもらえますか?)《例文2》I am not opposing the idea but just playing the devil's advocate.(私はその考えに反対ではないですが、あえて反論をしているだけです)《解説》日本語のことわざも同様ですが、英語の慣用句の中には、言葉どおりの意味ではなく、逸話などに基づいて、まったく別の意図で使用されるフレーズが多くあります。“play the devil's advocate”は直訳すれば「悪魔の代弁者を演じる」となります。私が最初にこのフレーズを聞いた際は、単語の意味はわかっても、意図するところはまったくわかりませんでした。このフレーズの由来はローマ教会の“devil's advocate”という役職に由来するとされており、“devil's advocate”は特定の宗教の儀式において、「負の情報だけを提供する役割」を担っていました。ここから、議論などの場で「あえて反論する」「反対役を買って出る」といった意味で使われます。英会話の聞き取りでは、このような慣用句が出てきた際に、真の意味を理解しておくことが重要です。“play the devil's advocate”は、直接的な表現である“for the sake of argument”と言い換えることもできます《例文1》。“play the devil's advocate”はどちらかというとポジティブな表現であり、「議論を深めるためにあえて反対の立場をとっているが、相手を批判する意図はない」というメッセージを伝えることができます《例文2》。講師紹介

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同世代・同診療科の医師の年収は?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2月20日(金)に会員医師1,004人(男性:875人、女性:129人)を対象に、「年収に関するアンケート」を実施した。その結果、80%の医師が昨年度の年収額は1,000万円以上と回答した。しかし、男女別にみると、男性では1,000万円以上が83%であったのに対し、女性は60%と男女差がみられた。全体の最多年収帯は1,400~1,600万円 全体で最も多い年収帯は1,400~1,600万円であった(全体の14%)。年代別では、35歳以下は1,000~1,200万円(20%)、36~45歳は1,400~1,600万円(23%)が最も多かった。それ以降の世代では2,000~2,500万円が最も多く、46~55歳では16%、56~65歳および66歳以上はそれぞれ15%であった。 年収1,000万円以上と回答した割合は、全体では80%であった。年代別では、35歳以下が65%、36~45歳が86%、46~55歳が88%と年齢が上がるごとに増加したが、56~65歳は84%、66歳以上は77%と減少した。 なお、2022年3月に実施した同様の調査では、全体で最も多い年収帯は2,000~2,500万円(全体の15%)であった。1,000万円以上は男性83%、女性60% 男女別にみると、男性では1,000万円以上と回答した割合は83%であったのに対し、女性は60%であった。最も多い年収帯は、男性が1,400~1,600万円および2,000~2,500万円(それぞれ14%)で、女性は1,200~1,400万円(15%)であった。診療科別の傾向は? 診療科別に昨年度の年収が1,600万円以上と回答した医師の割合は下記のとおり(30人以上の回答が得られた診療科を抜粋)。泌尿器科(60%)呼吸器内科(50%)消化器内科(47%)外科(47%)循環器内科(46%)精神科(45%)整形外科(45%)小児科(45%)内科(44%)神経内科(40%)糖尿病・代謝・内分泌内科(31%) その他、年代ごとの男女別、病床数別、勤務先別などの詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2024【第1回】昨年度の年収

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神経発達症群(講座 精神疾患の臨床 第9巻)

神経発達症の専門医はもちろん、専門としない精神科医にもお勧め近年の多くの調査では、人口の1割以上において、主要な神経発達症のいずれかに該当することが示唆されている。成人後に初めて診断されるケースも多く、児童や精神発達症を専門としていない精神科医も無視できない状況となっている。本書は、神経発達症群全般における概念や分類の歴史的変遷をはじめ、知的発達症、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、発達学習症を軸に、診断概念、病態、原因、治療・支援に関する現時点での最新知識を概観できるようまとめている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する神経発達症群(講座 精神疾患の臨床 第9巻)定価19,800円(税込)判型B5判(上製)頁数512頁発行2024年5月担当編集本田秀夫(信州大学教授)監修松下正明(東京大学名誉教授)編集主幹神庭重信(九州大学名誉教授)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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学校健診でのLDL-C測定、親の疾患発見にも寄与/日本動脈硬化学会

 家族性高コレステロール血症(FH)は、約300人に1人の頻度で存在する常染色体顕性(優性)遺伝性疾患である1)。出生時よりLDL-C高値を示し、心筋梗塞などの冠動脈疾患発症率は一般人より10倍以上高い。診断基準が明確化1,2)されているものの、診断率が低い疾患の一つある。香川県では、FHの小児を早期診断することで親のFHの診断につなげる取り組みに力を入れており、今回、南野 哲男氏(香川大学医学部 循環器・腎臓・脳卒中内科学 教授)が「小児生活習慣病予防健診により家族性高コレステロール血症(FH)のこどもと大人を守る」と題し、香川県で行われている小児生活習慣病予防健診事業3)や小児FHスクリーニングの全国展開への期待について話をした(主催:日本動脈硬化学会)。学校健診が大人の疾患発掘にも有用 小児生活習慣病予防健診とは、小学4年生(9~10歳)を対象に、将来の生活習慣病の発症を予防する目的で2012年より始まった香川県独自の健診事業である。県内17市町すべてで同じプロトコル(1:身長・体重、2:血液検査[LDL-C、HDL、TG、AST/ALT、血糖]、3:生活習慣に関するアンケート)に基づいて実施されている。健診自体は任意であるものの、毎年8,000人(対象者の92%以上)が受診し、実質的には、脂質ユニバーサルスクリーニングとみなすことができる。健診の結果がLDL-C>140mg/dLであれば、かかりつけ医へ受診・相談が推奨され、FHが疑われた場合、大学・基幹病院に紹介され、必要時、次世代シーケンサーを用いたFH遺伝子の検査を行う体制が構築されている。 FHは常染色体顕性(優性)遺伝性疾患であるため1)、同氏は「子供がFHだとわかれば、両親のいずれかもFHである。子供を動脈硬化から守るユニバーサルスクリーニングはもちろんのこと、リバースカスケードスクリーニングを実施することにより、親は冠動脈疾患発症前に治療を開始することができるようになった。現在までに400人以上の子供と親・兄弟のFHを診断した」と話した。香川のエビデンスが診断基準に採用 このほかにも、本事業で得られたデータ解析を担うことで、エビデンスの観点からもこの取り組みの重要性が認められている。「小児生活習慣病予防健診で得られたデータから、2017年のガイドラインではFH発見の感度が低いことが示され、見落とし症例が存在することが明らかになった。また、LDL-Cが250mg/dL以上の子供はすべて病原性遺伝子変異陽性であることも判明した。これらの結果を受け、22年に改訂された小児FHガイドライン1)では、香川発の科学的エビデンスが診断基準に採用され、見落としを減らすため”FH疑い“の概念が導入された。さらに、改訂版では“LDL-C≧250g/dLは“FH疑いと診断”することになった」と述べた。実際に2022年のガイドラインの診断基準をもって検証を行ったところ、FHの確定診断の感度は「特異度を維持したまま上昇」という結果が得られ、診断基準を作成して検証することの重要性も証明されたという。ただし、「親と子を別々に診察すると治療継続の低下やドロップアウトを招きかねない。それらを防ぐためにもFHの親子を一緒に診察することが鍵となる」と説明した。自治体事業から医学的結果を生み出す 世界最大規模の小児FHスクリーニング体制を誇る香川県。今後の課題として、親・子の疾患啓発、健診結果の活用・有用性の証明が求められるが、「現在、学校側より“子供から親にFHを教える課題を出す”案が検討されている。また、医療側の取り組みとして、心筋梗塞の既往者を対象としたFHスクリーニングを実施する取り組みを始めている。学校採血による小児生活習慣病予防健診を起点とした小児FHスクリーニングは、静岡県の一部(中東遠地域)ではすでに開始され、そのほかにも行政(市町)や医師会、アカデミアメンバーと協議を進めている」と、事業が広がりつつあることを示した。 最後に同氏は「オール香川(地方公共団体、県医師会、大学・病院、学会、FH家族/一般市民)で小児FHを見つけていこうと奮闘している。小児FHスクリーニング体制を構築することで、小児・成人ともにFHの診断率は飛躍的に向上することが期待される。この公衆衛生学的な取り組みにより、科学的エビデンスを集積し、政策提言を実現させ、全国展開を図りたい」と締めくくった。

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帝王切開で生まれた児は2回の麻疹ワクチン接種が必要

 帝王切開で生まれた児は、初回の麻疹ワクチン接種だけでは予防効果を得にくいようだ。新たな研究で、経膣分娩で生まれた児に比べて帝王切開で生まれた児では、初回の麻疹ワクチン接種後に免疫を獲得できないワクチン効果不全に陥る可能性が2.6倍も高いことが示された。英ケンブリッジ大学遺伝学分野のHenrik Salje氏らによるこの研究結果は、「Nature Microbiology」に5月13日掲載された。 研究グループは、「麻疹ウイルスは感染力が非常に強く、たとえワクチン効果不全率が低くてもアウトブレイク発生のリスクはかなり高くなる」と説明する。麻疹は、鼻水や発熱などの風邪に似た初期症状が生じた後に特徴的な発疹が現れる。重症化すると失明、発作などの重篤な合併症を引き起こしたり、死に至ることもある。1963年にワクチン接種が導入される以前は、麻疹により毎年推定260万人が死亡していた。 この研究では、中国の母親と新生児から成るコホートと小児コホートの2つのコホートから抽出された0歳から12歳の小児1,505人の血清学的データと実証モデルを用いて、出生後の抗体の推移を調べた。これらの試験対象者は、ベースライン時とその後6回の追跡調査時(新生児コホートでは生後2・4・6・12・24・36カ月時、小児コホートでは2013〜2016年の間にほぼ6カ月おき)に静脈血を採取されていた。 その結果、対象児ごとの差異はあるものの、出生時からワクチン接種後までの麻疹ウイルスに対する抗体レベルの変化を、かなり正確に予測できることが明らかになった。また、経膣分娩で生まれた児と比べて帝王切開で生まれた児では、初回の麻疹ワクチン接種がワクチン効果不全になるオッズが2.56倍であることも示された。初回接種後にワクチン効果不全が確認された児の割合は、帝王切開で生まれた児で12%(16/133人)であったのに対し、経膣分娩で生まれた児では5%(10/217人)であった。しかし、初回接種後にワクチン効果不全が確認された児でも、2回目の接種後には強固な免疫反応が認められた。 Salje氏は、「この研究により、帝王切開か経膣分娩かという分娩法の違いが、成長過程で遭遇する疾患に対する免疫力に長期的な影響を及ぼすことが明らかになった」と述べている。同氏は、「多くの児が麻疹ワクチンを2回接種していないことが分かっている。2022年に麻疹ワクチン接種を1回しか受けていなかった児の数は世界で83%に上り、これは2008年以降で最低の数字だ。そのような状態は、本人のみならず周囲の人にも危険をもたらしかねない」と危惧を示し、「帝王切開で生まれた児は、われわれが確実にフォローアップして、麻疹ワクチンの2回目接種を受けさせるようにするべきだ」と述べている。 帝王切開で生まれた児でワクチン効果不全に陥る可能性が高い理由について、研究グループは、腸内マイクロバイオームの違いによるものではないかと推測している。経膣分娩では、母親からより多様なマイクロバイオームが児に移行する傾向があり、それが免疫系に保護的に働く。Salje氏は、「帝王切開で生まれた児では、経膣分娩で生まれた児のように母親のマイクロバイオームにさらされることはないため、腸内細菌叢の発達に時間がかかる。このことが、ワクチン接種後のプライミング効果を低下させていると考えられる」との考えを示している。

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HPVワクチン接種プログラムの効果、社会経済的格差で異なるか?/BMJ

 以前の検討によってイングランドで観察されたヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種プログラムの高い予防効果は、その後12ヵ月間の追跡調査においても継続しており、とくにワクチンの定期接種を受けた女性では、社会経済的剥奪の程度5つの段階のすべてで子宮頸がんとグレード3の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3)の発生率が大きく低下したが、剥奪の程度が最も高い地域の女性では低下の割合が最も低い状態にあることがわかった。一方で、子宮頸がんの罹患率は、ワクチン接種女性において、未接種の女性でみられる社会経済的剥奪の程度による勾配はみられなかったことが、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のMilena Falcaro氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年5月15日号に掲載された。イングランド居住女性の観察研究 本研究は、2006年1月1日~2020年6月30日にイングランドに居住した20~64歳の女性を解析の対象とした住民ベースの観察研究である(Cancer Research UKの助成を受けた)。 イングランドでは、2008年にHPVワクチン接種が導入され、12~13歳の女児に定期接種が行われた。また、2008~10年には、より年長で19歳未満の集団を対象に接種の遅れを取り戻すためのキャッチアップ・キャンペーンが展開された。 2006年1月1日~2020年6月30日に、2万9,968例が子宮頸がんの診断を、33万5,228例がCIN3の診断を受けた。追加追跡期間の相対リスク減少率:子宮頸がん83.9%、CIN3は94.3% 12~13歳時にHPVワクチンの定期接種を受けた集団では、追加された12ヵ月間の追跡調査(2019年7月1日~2020年6月30日)における子宮頸がんおよびCIN3の補正後年齢調整罹患率に関して、ワクチン接種を受けなかった集団と比較した相対リスク減少率が、子宮頸がんで83.9%(95%信頼区間[CI]:63.8~92.8)、CIN3で94.3%(92.6~95.7)と大幅に低下していた。 また、2020年の半ばまでに、HPVワクチン接種により、687例(95%CI:556~819)の子宮頸がんと2万3,192例(2万2,163~2万4,220)のCIN3を予防したと推定された。 社会経済的剥奪の程度が最も強い地域に居住する女性では、ワクチン接種後の子宮頸がんおよびCIN3の割合は最も高いままであったが、剥奪の5段階すべてでこれらの割合は大幅に低下していた。健康格差の縮小をもたらす可能性も キャッチアップ・キャンペーンでワクチン接種を受けた女性のCIN3予防率は、社会経済的剥奪の程度が最も弱い地域に比べ最も強い地域で低く、16~18歳時に接種した女性では40.6%に対し29.6%、14~16歳時に接種した女性では72.8%に対し67.7%であった。 また、ワクチン接種を受けていない女性における子宮頸がんの罹患率には、社会経済的剥奪の程度が強い地域から弱い地域へと下方に向かう急峻な勾配を認めたのに対し、ワクチン接種を受けた女性では、もはやこのような勾配はみられなかった。 著者は、「本研究の知見は、十分に計画を立てて実行された公衆衛生介入は、健康状態を改善するだけでなく、健康格差の縮小ももたらす可能性があることを示している」としている。

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小児期の運動不足が若年成人期の心肥大と関連

 子どもの頃の運動量と若年成人期の心臓の大きさとの間に有意な関連があり、運動不足だった子どもは成人後に心肥大が見られるとする研究結果が報告された。東フィンランド大学のAndrew Agbaje氏の研究によるもので、詳細は「European Journal of Preventive Cardiology」に5月7日掲載された。 心肥大とは心臓のサイズや重量が過度に増大した状態であり、成人の心肥大は心血管疾患や早期死亡といったイベントのリスクを高める。小児期にはそのようなイベントの発生は少ないものの、心肥大自体は後年のリスク上昇につながる可能性がある。一方、成人では適度な運動が心血管の健康増進に役立つことが広く認識されている。しかし、小児期の運動習慣が心臓の形態に与える影響についてはよく分かっていない。これらを背景としてAgbaje氏は、子どもの運動習慣が、その後の心臓の形態や機能に及ぼす影響について、縦断的に検討した。 この研究は、英国の子どもとその親を対象に行われている出生コホート研究(ALSPAC)のデータを用いた二次分析として行われた。平均年齢11.75±0.24歳の子ども1,682人(女児62.7%)を約13年間にわたって追跡。日常の運動量は、11歳、15歳、24歳の時点で加速度計を4~7日間、身に着けて生活してもらい把握した。心臓の形態と機能については、17歳、24歳の時点で行った心エコー検査により、左室心筋重量係数(LVMI)や左室拡張能などを評価した。 研究参加者全体の座位行動時間を平均すると、ベースライン(11歳時点)が6時間だったものが、24歳時点では9時間となり、13年間で3時間増加していた。またLVMIは、17歳から24歳の7年間で平均3g/m2.7上昇していた。 運動量とLVMIの変化との関連性を解析した結果、小児期からの座位行動の累積時間の長さは、性別や肥満の有無、血圧レベルにかかわらず、LVMIの上昇幅が最大40%増えることと関連していた。その反対に、小児期からの軽強度運動の累積時間の長さは、LVMIの上昇幅が最大49%減ることと関連していた。また、軽強度運動の累積時間が長いと、左室拡張能などの指標も良好だった。なお、小児期からの中~高強度運動の累積時間が長いことは、LVMIの上昇幅が最大5%増えることと関連していたが、これは運動負荷に伴う生理的な変化と考えられるという。 Agbaje氏は、「子どもの頃の座位行動が成人後の健康上の脅威となるという報告が増えてきており、それらの知見を真剣に受け止める必要がある」と述べている。一方で同氏は、「軽強度運動は座位行動の弊害を打ち消す効果的な手段だ。毎日3~4時間の軽強度運動を続けるということは、それほど困難なことではない」と解説。子ども向きの軽強度運動の具体的な例として、外遊び、犬の世話、おつかい、徒歩または自転車での通学、公園の散歩、ガーデニングなどのほかに、バスケットボール、サッカー、ゴルフ、フリスビーといった競技性の高くないカジュアルなスポーツなどが該当するとのことだ。

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英語で「膿の切開と排膿」は?【1分★医療英語】第132回

第132回 英語で「膿の切開と排膿」は?《例文》医師To treat the abscess, the best course of action will be the I&D procedure, which stands for Incision and Drainage.(膿瘍を治療するために、最適な処置としてはI&Dです。これは切開排膿という意味です)患者Does the procedure hurt?(その処置は痛いですか?)《解説》今回は“I&D”という略語についての解説です。これは“abscess”(膿瘍)の切開排膿の処置を示す表現です。“Incision(切開)and Drainage(排膿)”という表現を略して、“I&D”と表現します。発音としては「アインディー」という感じです。“and”が文の間に入る際、英語だと「ン」のみしか発音しないので注意です。医療者間であれば、当たり前のように“I&D”という表現が使われます。口語のみでなく、カルテにも“I&D”と記載されることが多くあります。“I&D”のみでも“I&D procedure”でも構いません。ただし、医療に詳しい人でない限り患者さんはこの用語を知りませんので、使う際には《例文》のように、“Incision and drainage procedure”といった補足説明が必要でしょう。私が現場で働いている際にも「Please prepare the stuff forアインディー」といった感じで言われて「???」となった経験があるため、今回紹介させていただきました。この文は「切開排膿に必要なものを準備しておいて」という意味ですね。講師紹介

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