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母親のスマホ使用は乳児への語りかけの減少と関連

 母親がスマートフォン(以下、スマホ)を使っているときには、乳児への語りかけが16%減少し、乳児の言語発達に悪影響を及ぼす可能性のあることが、新たな研究で示唆された。1~2分程度の短時間のスマホ使用は、母親の乳児への語りかけをさらに減少させていたという。米テキサス大学オースティン校心理学分野のMiriam Mikhelson氏らによるこの研究結果は、「Child Development」に6月26日掲載された。 Mikhelson氏は、「新米の親へのアドバイスは、スマホの使用が子どものニーズに対応する親の能力に影響するということを認識することだ。子どもにとっては、自分の求めに応じて一貫性のあるケアを受けることが非常に重要だ。しかし、親がスマホに夢中になっていると、そのようなケアを受けにくくなることがある」と話す。 研究グループによると、親のスマホの使用は子どもの言語発達に影響を与える可能性が先行研究で示唆されているという。しかし、これらの研究結果のほとんどは、管理された実験室で親子を観察して導き出されたものである。これに対しMikhelson氏らは今回の研究で、実生活での母子のやりとりと親のスマホ使用との関連を検討した。具体的には、16人の乳児(平均月齢4.1カ月、白人75%、女児63%)に1週間オーディオレコーダーを装着し、その録音データを、1万6,673分に及ぶ親のスマホの使用時間と同期させて、スマホの使用が母親の乳児への語りかけにどのような影響を与えるのかを調べた。 その結果、母親のスマホの使用は乳児への語りかけの16%の減少と関連することが明らかになった。また、長時間の使用に比べて、短時間(1〜2分)の使用の場合には乳児への語りかけが26%減少することも示された。研究グループはこの点について、「長時間のスマホ使用では電話やビデオチャットなどでの会話を伴うことがあるため、乳児が耳にする音声の量が増えるのに対して、短時間のスマホ使用は電子メールのチェックやメッセージの送信のような非言語的な活動が主流となるからではないか」と推測している。 さらに、スマホの使用が母子のやりとりに与える影響は、特定の時間帯(午前9〜10時、正午から午後1時、午後3〜4時)に顕著になることも判明した。Mikhelson氏らは、「これらの時間帯は、食事の時間や、きょうだいが学校や保育園から帰ってくる時間など、母親が子どもと接する機会が多い時間帯と重なる」と指摘している。 研究グループは、「親は、スマホの使用が乳児への対応に与える影響を過小評価している可能性がある」と話している。Mikhelson氏は、「もちろん親の中には、仕事上の義務やその他の責任から、スマホを使わないでいることが難しい人もいるだろう」と一定の理解を示しつつも、「自分の育児の質に不安がある人に対して、われわれは、できる限り子どもに関心を向けるよう努力すること、そして、スマホがその能力をどの程度妨げているかについて自分に正直になることを勧めている」と語っている。そして、「スマホを極力使わないでおこうと思いながらも、ついついスマホを使っていると自覚することが、重要な第一歩だ」と付け加えている。 研究グループは、今後の研究では、メッセージングや電話などの特定のスマホの使用と、食事中や遊びの最中など異なる状況でのスマホの使用が、親の子どもへの語りかけに与える影響を調べる必要があるとしている。

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第219回 解消しない医薬品不足に厚労大臣が放った“迷言”とは?

「それはちょっとないんじゃないの?」と思わず、PCでニュース記事の画面を開きながら口を突いて出そうになった。7月4日に厚生労働大臣の武見 敬三氏がジェネリック医薬品企業(以下、GE企業)13社のトップを呼び、業界再編を促したと報じられたことについてだ。鎮咳薬不足の時も同じように製造企業を厚生労働省(以下、厚労省)に呼んで要請している武見氏に失礼かもしれないが、ややパフォーマンスじみているとしか言いようがない。民業であるGE企業トップを“呼びつけ”て「再編せい!」と号令をかけるのは、国務大臣として越権行為にすら映ってしまう。この日、武見氏は「薬の成分ごとの供給社数は、理想は5社程度」と具体的な数字を挙げている。確かに一つの目安かもしれないが、大臣という立場の人が口にすると一人歩きする懸念もあり、この辺は慎重な発言が求められる。そもそもこの件に関しては、武見氏に限らず、「雨後の筍のごとく存在するGE企業同士が合併してしまえばいいではないか?」と思う人は意外と多いのではないだろうか? だが、これは簡単ではない。以前、CareNeTV LIVEで講演した時にもお話ししたことだが、GE業界は近代経済学の世界でいう「完全競争」状態である。「完全競争」とは主に(1)市場に多数の企業がおり、どの企業も市場価格に影響を与えられない、(2)その市場への新規参入・撤退に障壁がない、(3)企業の提供する製品・サービスが同業他社と同質、の3条件を満たす市場を指している。完全競争市場の最大の特徴は、過当競争の結果、最悪は「企業の超過利潤がゼロ」状態に陥ることだ。再編となると避られない茨の道GE企業では完全競争の主要条件のうち(3)が再編を阻む大きな要因となる。その理由は、GE企業は複数社で同一成分の医薬品を提供しているからだ、たとえば降圧薬アムロジピンを製造するGE企業A社とB社が合併した場合、合併後の新会社がA社ブランドのアムロジピンとB社ブランドのアムロジピンを製造することはあり得ず、どちらかに統一する。よく企業同士の合併では「シナジー(相乗効果)」という言葉が聞かれるが、これは相互補完となるサービス(製品)がある場合のことだ。品目統合が必至のGE企業同士ではこの面でシナジーはほとんどない。しかも、公的薬価制度に則って販売されている医薬品では、重複品目の統合を企業が「一抜けた」的に行えるわけではない。通常、供給停止の場合、企業側は厚労省にまず「供給停止品目の事前報告書」を提出する。ここでは供給停止が医療上の不都合をもたらさないかが判断される。ちなみに事前報告書の提出時点で、製薬企業側は関連学会などから供給停止に関してすでに事前了承を取り付けていることが前提となっている。同報告書上、厚労省が供給停止に問題ないと判断してもことが済むわけではない。実はこの先に日本医師会の疑義解釈委員会があり、ここに厚労省が供給停止希望品目情報を上程し、同委員会に参集する医学系学会の全会一致で供給停止しても差し支えないと決定して初めて供給停止ができるという、やや不思議な慣例がわが国では続いている。同委員会が何をもって供給停止を了承するかの明文規定はなく、一方で従来から「不採算という理由だけで供給停止は認めない」との不文律があると言われる。おそらく国民の目から見ると、厚労省の先に日医の疑義解釈委員会という屋上屋があることは不可解極まりないだろうが、これが慣例なのだ。しかも、こうした手続きの間にさまざまな労力とコスト(金)が発生している。もしGE企業同士が合併するならば、数十~数百品目についてこの作業を行わなければならない。これ以外にも当然ながら企業同士の合併では、給与なども含めた社内制度、ソフト・ハード両面での物流や販売などの社内システムなどの統合も必要だ。製薬企業の場合、取引している医薬品卸が異なれば、その調整も必要である。企業同士の主要取引銀行が異なれば、この点もまとめねばならない。実はこの取引銀行の調整は、合併企業同士の主要取引銀行が都銀や地銀のライバル行同士の場合はかなり難儀な作業となる。また、合併する企業同士が規模に差がある場合、規模の大きい企業のほうが社内管理システムなどにおいて優れていることが多い。率直に言ってしまえば、規模の大きい側からすると、小さい側のシステムや管理部門の人材はほとんど不要と言ってもよい。つまるところ、GE企業同士の合併では、「スクラップ&ビルド」ではなく、「スクラップ&スクラップ」になる。持ち出しコストのほうが上回り、強いて言えば、そのシナジーは工場という製造部門くらいしかない。極端な話、中小GE企業が大手GE企業に買収される場合は、中小側が工場以外の人員整理、金融機関への債務返済、重複品目の薬価削除まで完了して、「あとはどうぞ」と差し出すくらいでなければ、大手側にメリットはほとんどない。しかも、日本の中堅GE企業は売上高で100~200億円くらいの規模はある。これをまともに買収するならば、将来価値の目減り分を折り込んでも、買収金額は最低数十億円になるだろう。しかし、国内大手GE企業の東和薬品や沢井製薬ですら、決算からわかる通り、現預金保有高は300億円に満たない。また、両社とも近年の医薬品供給不足に対応し、金融機関からの借り入れなどで400~500億円規模の工場新設をすでに行っている。これで企業再編を行えというのは無理筋である。厚労省が考える再編モデル、どれがいい?厚労省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」が5月末にまとめた報告書では、GE企業の協業について、▽大手企業が他の後発医薬品企業を買収し、品目統合や生産・品質管理を集約する等の効率化を実現▽後発品企業が事業の一部または全部を他の企業に譲渡▽ファンドが介在して複数の後発品企業や事業の買収を行って統合▽複数の後発医薬品企業が新法人を立ち上げ、屋号統一化の下、品目・機能を集約・共有、という4つのモデルを示している。しかし、前述のような事情を考えれば、どのモデルも容易ではない。そもそも同報告書では、こうした再編について政府による金融・財政支援などの必要性を強調しているが、これついて具体策はまだ出ていない。冒頭で取り上げた武見氏とGE企業トップとの懇談の場では、武見氏が国として支援策を講じていくとも口にしたらしいが、その支援策を用意したうえで呼びかけるのが筋ではなかろうか?同時に、報じられた記事の中で武見氏が「過度な低価格競争からも脱却する必要がある」と発言した点については、厚労相として形式的には言わねばならないのだろうが、「それ、言う?」と思ってしまった。現行の薬価制度とGE企業の性格上、低価格競争が起こるのは必然である。確かに2024年度薬価改定では、一部の不採算品目の薬価引き上げは行われた。しかし、これは対症療法に過ぎない。もっとも現行の薬価制度の薬価調査に基づく引き下げは仕組みとして理解はできる。これがなければ国民は高止まりの医薬品の入手を強いられることになるからだ。ただ、制度上で必然として起こっていることをGE企業だけのせいにするかのように発言するのは、これまたいかがなものかと思ってしまう。いずれにせよ、今、国に求められているのは業界再編がしやすい支援策の早急な策定である。掛け声だけの再編要請なぞ、国家権力によるパワハラに等しい。そしてこの間にも医薬品不足というツケを払わされているのは患者という名の国民一人一人であることを忘れてほしくはない。

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ネグレクトと虫歯の関連―児童相談所での調査

 虐待などの理由で児童相談所に一時保護された子どもを対象に、虫歯の有病率と虐待の関連を調べる研究が行われた。その結果、虐待の種類としてネグレクトを受けた子どもで虫歯の有病率が高いことが明らかとなった。新潟大学大学院医歯学総合研究科小児歯科学分野の中村由紀氏らによる研究であり、「BMC Public Health」に5月18日掲載された。 子ども虐待の報告件数は増加が続いている。子どもの虫歯を放置するなど、必要な歯科医療を受けさせないことは「デンタルネグレクト」と呼ばれ、歯科保健と児童福祉の両面から対策を講じることが重要である。虫歯を放置することは虐待の兆候とも考えられるが、虫歯と虐待は直接には関連していないことを示唆する報告もある。また、虐待の種類と虫歯の関係については十分に研究されていない。 著者らは今回、2015年1月~2019年7月に新潟県内の児童相談所に一時保護された2~18歳の子どもで、一時保護から2週間以内の534人(平均年齢10.4±3.85歳、男児308人、女児226人)を対象とする横断研究を実施。新潟大学の小児歯科医師と歯科衛生士が、歯科検診および歯の健康行動に関する問診を行った。虐待に関するデータは児童相談所から入手した。 その結果、対象者のうち323人(60.5%)が、虐待を理由に一時保護を受けていた。虐待の種類の内訳は、身体的虐待が176人(54.5%)で最も多く、ネグレクトが72人(22.3%)、心理的虐待が68人(21.1%)、性的虐待が7人(2.2%)だった。 児童相談所の子ども1人当たりの虫歯(未処置の虫歯+処置済の虫歯)の平均本数は、2~6歳、7~12歳、13~18歳の全ての年齢層で、2016年の厚生労働省の「歯科疾患実態調査」の結果と比較して有意に多かった。 児童相談所の子どもについて虫歯の有無と虐待の有無との関連を調べたところ、未処置の虫歯、処置済の虫歯、未処置の虫歯+処置済の虫歯のいずれを検討した場合も、年齢層にかかわらず、虐待との有意な関連は認められなかった。 次に、虐待の種類別に検討したところ、7~12歳の虫歯(未処置の虫歯、未処置の虫歯+処置済の虫歯)の有無と虐待の種類に有意な関連が認められ、ネグレクトの場合に虫歯の有病率が高いことが示された。未処置の虫歯の本数は、身体的・性的虐待(平均1.5本、中央値0.0本)と心理的虐待(平均1.5本、中央値0.0本)に比べ、ネグレクト(平均3.4本、中央値2.0本)の方が有意に多かった。未処置の虫歯+処置済の虫歯で比較しても同様に、身体的・性的虐待(平均2.3本、中央値1.0本)および心理的虐待(平均2.1本、中央値0.0本)よりも、ネグレクト(平均4.1本、中央値3.0本)で有意に多いことが明らかとなった。 今回の研究結果から著者らは、一時保護に至った理由が虐待かどうかにかかわらず、児童相談所の子どもは全国平均と比較して虫歯の有病率が高く、歯磨きの頻度が低かったとして、対策の必要性を指摘している。また、適切な歯科治療を受けようとしなかったり、受けられなかったりするのは、家族の孤立、経済的余裕のなさ、歯科治療の必要性の認識不足などの要因から生じる可能性にも言及し、「デンタルネグレクトと判断する前に、複数の要因を考慮しなければならない」と述べている。

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もし過去に戻れたらどの診療科を選ぶ?後輩には勧める?/医師1,000人アンケート

 厚生労働省が2024年3月19日に公表した「医師・歯科医師・薬剤師統計」の最新結果では、全国の医師数は34万3,275人で、前回調査(2020年)と比べて1.1%増加した。本調査では、前回調査時と比べて美容外科、アレルギー科、産科、形成外科などの診療科で医師数の増加がみられた。一方、気管食道外科、小児外科、外科、心療内科、耳鼻咽喉科などの診療科では医師数の減少がみられた(詳細は関連記事参照)。この結果には、ワークライフバランスや年収、やりがい、キャリアなどを含めた診療科への満足度が影響している可能性も考えられる。そこで、CareNet.comでは40~50代の医師1,005人を対象に、診療科への満足度に関するアンケートを実施した(2024年5月24~31日実施)。本アンケートでは、現在の診療科にどれだけ満足しているか、もし医学生や研修医に戻れるとしたらどの診療科を選ぶか、自身の診療科を医学生や自分の子供などに勧めるかを聞いた。医師の約4分の3が現在の診療科に満足 現在の専門の診療科について満足度を聞いたところ、「非常に満足」が20.7%、「満足」が54.4%であった。これらを合わせると約4分の3(75.1%)が満足していた。一方、「非常に不満」は0.7%、「不満」は3.5%であり、現在の診療科への不満を有している医師は少ないことが明らかになった。これらの結果について、診療科別に大きな違いはみられなかった。診療科を選び直せても現在の診療科を選ぶのは63.1%、人気は内科 次に、「もし医学生や研修医に戻れるとしたらどの診療科を選ぶか」を聞いた。その結果、「現在の診療科を選ぶ」と回答したのは63.1%であった。この割合は、皮膚科(76.3%)、救命救急科(73.5%)、精神科/心療内科(69.8%)、産婦人科(67.7%)、外科(67.7%)などで高かった。 また、「現在の診療科以外」を選択した371人について集計した結果、内科(12.9%)、皮膚科(7.3%)、放射線科(5.4%)、外科(5.1%)、美容外科(5.1%)が人気であった。医師は選ばないとの回答も2.7%あった。主な理由は以下のとおり。【内科を選んだ理由】・いろいろな症例がみられる(40代、精神科/心療内科)・手術はしたくない(50代、循環器内科)・開業を目指す(50代、腎臓内科)・自分の健康に寄与するから(40代、小児科)【皮膚科を選んだ理由】・目に見えて効果がわかるから(40代、神経内科)・開業もしやすい。ランニングコストが少ない(40代、腎臓内科)・美容皮膚科に携わりたいから(40代、整形外科)【放射線科を選んだ理由】・放射線治療がますます進歩すると考えているから(50代、脳神経外科)・主治医にならないから(40代、救命救急科)・若いころに戻るならば、リモート診療、AIの発達に向けて動いてみたいと思えたから(40代、精神科/心療内科)【外科を選んだ理由】・なり手が少なく社会的な意義が高そう(40代、糖尿病・代謝・内分泌科)・将来AIの台頭で、機械では代用できない技術が重宝されると思うため(40代、放射線科)・外科に憧れがある(40代、消化器内科)【美容外科/美容皮膚科を選んだ理由】・健康な方をより元気にする科であるため(40代、総合診療科)・保険診療はもう嫌(40代、内科)・お金と時間がありそうなイメージ(40代、脳神経外科)・美容に興味があるから(50代、精神科/心療内科)自身の診療科を勧めるのは26.6%、勧めないのは18.3% また、「医学生や自分の子供などに自身の診療科を勧めるか」を尋ねた。その結果、「強く勧める」が7.4%、「勧める」が19.2%であり、合わせて約4分の1(26.6%)が自身の診療科を勧めるという結果であった。一方、「強く勧めない」は5.3%、「勧めない」は13.0%であり、合わせて約5分の1(18.3%)は自身の診療科を勧めないという結果であった。 この結果を診療科別にみると、自身の診療科を勧める(「強く勧める」と「勧める」の合算)と回答したのは、内科系が31.9%と多い傾向にあり、外科系(23.9%)、産婦人科・小児科・救命救急科(21.9%)は少ない傾向にあった。外科系の診療科のなかでも、脳神経外科(6.3%)、外科(12.9%)、消化器外科(15.2%)などで少ない傾向にあった。 勧めない(「強く勧めない」と「勧めない」の合算)と回答したのは、内科系が13.4%と少ない傾向にあり、外科系(22.3%)、産婦人科・小児科・救命救急科(23.1%)は多い傾向にあった。こちらも外科系のなかで、脳神経外科(34.4%)、消化器外科(27.3%)、外科(22.6%)が多い傾向にあった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。現在の診療科の満足度は?過去に戻れるならどの診療科を選ぶ?/医師1,000人アンケート

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英語で「コロナ陽性です」は?【1分★医療英語】第138回

第138回 英語で「コロナ陽性です」は?《例文1》I tested positive for COVID.(コロナの検査が陽性でした)《例文2》If you test positive for COVID, you must be quarantined for 5 days.(コロナの検査が陽性の場合、5日間の隔離が必要です)《解説》新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以降、日本では「新型コロナ」という呼び方が定着しましたが、英語圏では「COVID(コヴィット)」と呼ぶことがほとんどです。「コロナの検査」は“COVID test”、「検査を行うための綿棒」は“COVID swab”と呼ばれます。また、“test”という動詞には「自動詞」と「他動詞」があり、自動詞では、「検査の結果~を示す」という意味になります。“(誰=主語)test positive/negative for(○○=検査内容)”という構文で、「“誰”が“○○”の検査を受けて陽性/陰性だった」という表現となり、医療者同士はもちろん、患者さんとの会話でも頻出します。なお、コロナに関連する単語でよく使われるものに“quarantine”(隔離)という単語があります。「クアランティーン」と発音し、“self-quarantine”(自主隔離)という用語もしばしば使われます。講師紹介

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第201回 医師多数県で医学部定員を削減、医師多数区域の開業要件も検討へ/厚労省

<先週の動き>1.医師多数県で医学部定員を削減、医師多数区域の開業要件も検討へ/厚労省2.コロナ後遺症、半年後も8.5%に深刻な影響/厚労省3.かかりつけ医機能、新たな報告制度で地域医療連携を強化へ/厚労省4.特定機能病院の要件、医師派遣機能も考慮して見直しへ/厚労省5.協会けんぽ、2023年度の黒字は4,662億円、高齢化で財政不安も/協会けんぽ6.旧優生保護法の違憲判決で国に賠償命令/最高裁1.医師多数県で医学部定員を削減、医師多数区域の開業要件も検討へ/厚労省厚生労働省は7月3日、第5回「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」を開き、2025年度の医学部定員について、医師が多い地域から医師が少ない地域に「臨時定員地域枠」を移行する方針を示した。医師多数県では2024年度の191枠が154枠に減少し、16都府県で計30枠減少する見込み。この調整により、医師少数県での地域医療の充実が期待されている。さらに、厚労省は「医師多数区域での開業要件」の検討も示唆し、医師偏在対策を総合的に進める方針で、無床診療所の開業制限や医師多数区域での保険医定員制などが議論の対象となるとみられている。地域枠の活用については、日本私立医科大学協会の小笠原 邦昭氏が、異なる診療科間での地域枠の交換を提案したほか、広域連携型プログラムの導入も評価されたが、調整のための時間が必要だという意見も出された。総合診療専門医の育成については、リカレント教育の重要性が指摘され、経済的インセンティブの必要性も強調された。さらに、サブスペシャリティ専門医の取得を容易にするための制度設計が求められている。新専門医制度について、日本専門医機構はシーリング制度の効果を検証中であり、制度改革の必要性を認識している。とくに、地域や診療科による偏在の是正に向けた取り組みが進められている。今後、厚労省は、各論点に関する議論を深め、年末までに「医師偏在対策の総合的なパッケージ」を策定する予定。これにより、地域間の医師の偏在が是正され、地域医療が向上することを期待しているが、偏在の是正が進むよう引き続き検討を重ねていくとみられる。参考1)第5回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会(厚労省)2)医学部臨時定員、医師多数県で25年度は30枠減へ 厚労省検討会(CB news)3)医学部地域枠を削減へ 厚労省、医師過剰の16都府県で(日経新聞)2.コロナ後遺症、半年後も8.5%に深刻な影響/厚労省厚生労働省の研究班は、7月1日に新型コロナウイルス(COVID-19)感染後の後遺症患者のうち、8.5%が感染から約半年後も日常生活に深刻な影響を受けていることを発表した。この調査は、2022年7~8月にオミクロン株流行期に感染した20~60代の8,392人を対象に行われた。アンケート結果では、感染者の11.8%にあたる992人が後遺症として長引く症状を報告。その中でも84人が「日常生活に重大な支障を感じている」と回答した。主な症状としては、味覚障害、筋力低下、嗅覚障害、脱毛、集中力低下、そして「ブレインフォグ」と呼ばれる頭に霧がかかったような感覚などが含まれる。とくに女性や基礎疾患のある人、感染時の症状が重かった人で後遺症の割合が高かった一方、ワクチン接種を受けた人ではその割合が低かった。この結果は、COVID-19の後遺症が長期間にわたり日常生活に大きな影響を及ぼす可能性を示しており、全国での他の医療機関でも同様の後遺症報告があり、医療体制や患者支援の改善が急務とされる。また、研究班が、一般住民を対象に感染者と非感染者を比較し、後遺症の頻度や関連要因を調査した結果、感染者の罹患後症状の頻度が非感染者に比べて約2倍高いことが確認された。今後、後遺症のリスク要因や長期的な影響についての詳細な研究が求められるために、厚労省では引き続き、COVID-19の後遺症に対する対応策を進める予定。参考1)コロナ後遺症8.5%「半年後も」日常生活に深刻な影響 厚労省研究班(日経新聞)2)コロナ後遺症患者、半年後も日常生活に深刻な影響8.5% 厚労省(毎日新聞)3)オミクロン株(BA.5系統)流行期のCOVID-19感染後の罹患後症状の頻度とリスク要因の検討(NCGM)3.かかりつけ医機能、新たな報告制度で地域医療連携を強化へ/厚労省2024年7月5日、厚生労働省が病院や診療所による「かかりつけ医機能」の発揮を促進するために「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」を開催し、これまでの議論をまとめた整理案を提示した。かかりつけ医機能については、2025年4月に施行される新たな報告制度を中心に据え、地域ごとに病院や診療所の役割を協議し、地域の医療機能の底上げを図ることを目的としている。整理案によれば、病院や診療所は「日常的な診療を総合的・継続的に行う機能」(1号機能)と、時間外診療や在宅医療、介護連携などの「2号機能」について、毎年1~3月に都道府県へ報告する。都道府県はこれらの報告を公表し、地域の「協議の場」で共有する。この「協議の場」には、都道府県や医療関係者だけでなく、市町村、介護関係者、住民・患者も参加し、地域の医療課題について協議するものとしている。厚労省は、1号機能として「専門を中心に総合的・継続的に実施」や「幅広い領域のプライマリケアを実施」などのモデルをガイドラインで示す予定。また、地域の医療連携を強化するため、複数医師による診療所の配置や、複数診療所によるグループ診療の推進も提案している。厚労省は、来年4月の報告制度発足に向け、自治体向けにガイドライン(GL)を作成する方針で、今月中に取りまとめを目指すとしている。参考1)第7回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会[資料](厚労省)2)かかりつけ医機能報告制度の詳細が概ね固まる、17診療領域・40疾患等への対応状況報告を全医療機関に求める-かかりつけ医機能分科会(Gem Med)3)かかりつけ医機能、対応可能な一次診療について「診療領域」で報告へ(日経ヘルスケア)4)「かかりつけ医機能」データ活用して役割協議 厚労省が「議論の整理案」示す(CB news)4.特定機能病院の要件、医師派遣機能も考慮して見直しへ/厚労省厚生労働省は、7月3日に特定機能病院の承認要件の見直しを議論する検討会を5年ぶりに開催した。特定機能病院とは、高度な医療の提供、高度医療技術の開発、および研修を行う能力を備えた病院とされ、現在、全国には特定機能病院が88施設あるが、うち79施設は大学病院。今回の検討会は、社会保障審議会の医療分科会が3月に提出した意見書を受け、特定機能病院の要件を現代の医療ニーズに合致させるための見直しを目指す。この日の会合では、以下の論点が示された。(1)高度な医療の提供の方向性、(2)医療技術の開発・評価の方向性、(3)医療に関する研修の在り方、(4)医師派遣機能の承認要件への組み込みなど。とくに大学病院からの医師派遣機能を承認要件に加えるべきだとの意見が出されたほか、論文発表の質の確保、特定機能病院の機能や役割を明確化する必要性も議論された。特定機能病院の承認要件は、病床数や診療科数、紹介率、逆紹介率、論文発表数など多岐にわたっており、これらの要件を満たすことで、高度な医療提供能力が証明される仕組みとなっている。一方、現行の承認要件は時代に合わない部分もあり、特定機能病院と一般病院との違いが曖昧になってきているという指摘もされている。検討会では、特定機能病院の機能をさらに細かく分類し、承認要件を見直す方向で議論が進められる見込み。たとえば、「特定領域型」の特定機能病院の承認要件を明確化し、地域医療への貢献や医師派遣機能も承認要件に加えることが検討されているほか、承認要件には医療の質や研究の質も考慮されるべきだとの意見も出されている。今後、厚労省は各論点に関する議論を深め、年内に取りまとめを行う予定で、これをもとに特定機能病院の承認要件が見直される。参考1)第20回特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会(厚労省)2)特定機能病院の要件見直し、年内をめどに取りまとめ 厚労省検討会 医師派遣機能の要件化求める声も(CB news)3)特定機能病院に求められる機能を改めて整理、類型の精緻化・承認要件見直しなどの必要性を検討-特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会(Gem Med)5.協会けんぽ、2023年度の黒字は4,662億円、高齢化で財政不安も/協会けんぽ中小企業の従業員やその家族が加入する全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)は、2023(令和5)年度の決算見込み(医療分)について公表した。それによると、2023年度の決算では、4,662億円の黒字を見込んでいる。黒字は14年連続で、賃上げによる保険料収入の増加が主な要因とみられる。協会けんぽの収入は前年度比2.7%増の11兆6,104億円で、賃金の伸びに伴い保険料収入が増えたことが背景にあり、とくに月額賃金が平均30.4万円と過去最高を記録したことが収入増に寄与した。一方、支出は11兆1,442億円で、前年度比2.5%増となった。支出の増加要因として、新型コロナウイルス禍後の社会活動再開に伴うインフルエンザなどの呼吸器系疾患の患者増加や75歳以上の後期高齢者医療制度への拠出金の増加が挙げられている。また、医療給付費は6兆4,542億円に達し、前年度に続いて過去最高を更新した。しかし、全国健康保険協会は、今回の決算の発表と同時に、今後の財政状況について楽観視できないとしている。その理由として、今後、加入者の高齢化や医療の高度化に伴い、団塊の世代が後期高齢者になる時期に支援金の急増が見込まれているためであり、財政の健全化と持続可能な運営が求められていく。参考1)2023(令和5)年度協会けんぽの決算見込みについて(協会けんぽ)2)「協会けんぽ」賃上げによる保険料増などで4,600億円余の黒字(NHK)3)協会けんぽ黒字、23年度4,662億円 賃上げで保険料増(日経新聞)6.旧優生保護法の違憲判決で国に賠償命令/最高裁旧優生保護法に基づく強制不妊手術を受けた被害者が国に損害賠償を求めた裁判で、最高裁判所大法廷は7月3日に「旧優生保護法が憲法違反である」と判断し、国に賠償を命じる判決を下した。旧優生保護法は、1948~1996年まで施行され、障害者を対象に強制的な不妊手術を認めていた。これにより約2万5,000人が手術を受けたとされる。最高裁は、旧優生保護法が「不良な子孫の淘汰」を目的にしており、障害者を差別的に扱い、生殖能力を奪うことは憲法13条および14条に違反するとした。また、不妊手術が当時の社会状況を考慮しても正当化できないとし、本人の同意があった場合も含めて手術の強制性を指摘した。さらに、国会議員の立法行為自体が違法であるとも断じた。国は20年以上前の不法行為について賠償請求権が消滅する「除斥期間」を理由に訴えを退けるよう主張したが、最高裁はこの主張を認めず、被害者の権利行使が困難であったことや旧法廃止後も補償を行わなかった国の姿勢を問題視し、除斥期間の適用を否定した。今回の判決で、国には被害者1人当たり1,100~1,650万円(その配偶者には220万円)の賠償責任が確定した。この判決は、全国の被害者救済に道を開くものであり、旧優生保護法の被害者の全面救済が期待される。政府は判決を重く受け止め、早期の対応を行う必要に迫られている。参考1)旧優生保護法は「違憲」 国に賠償命じる 最高裁、除斥期間適用せず(朝日新聞)2)旧優生保護法は憲法違反 国に賠償命じる判決 最高裁(NHK)3)旧優生保護法「違憲」、強制不妊で国に賠償命令…最高裁が「除斥期間」不適用で統一判断(読売新聞)

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熱中症も白内障リスクを高める可能性~紫外線対策も重要

 今夏も高温の日が続くことが予想されている。紫外線が眼病リスクを高めるという報告はこれまでも多くされてきたが、紫外線だけでなく、環境温度や熱中症の既往も白内障リスクを高める可能性があるという。2024年6月にジョンソン・エンド・ジョンソンが行ったプレスセミナーにおいて、金沢医科大学 眼科学講座 主任教授 佐々木 洋氏が「紫外線と高温環境が目に与える影響と対策」と題した講演を行い、これまで佐々木氏らの研究グループが行った調査データをまとめて報告した。紫外線と白内障の関係 佐々木氏らの研究グループは、これまで世界各地で紫外線被曝量と白内障リスクの関連について調査してきた。 中国・台湾の3エリアで行った生涯紫外線被曝量(COUV)と白内障リスクの関連の研究1)においては、人種を漢民族に絞り、COUV量の異なる三亜・太原・台中において年齢、性別、糖尿病の有無、眼軸長(強度近視)調整後の白内障リスクを比較した。その結果、これまでCOUVは水晶体皮質が白濁する「皮質白内障」の発症と関係が深いことが報告されていたが、この研究においては、COUVは水晶体核が硬くなる「核白内障」発症リスクとの関連が最も大きいことがわかった。この結果について佐々木氏は「皮質白内障には紫外線と関連が強い輪状型皮質白内障、紫外線と関連がないWatercleftsという白内障が進行し生じる車軸型皮質白内障があることがわかってきた。紫外線強度の強い地域では核白内障のリスクが急激に上昇することが、今回の結果に影響している可能性があると考えている」とした。 沖縄県・西表島の40歳以上の住民を対象とした研究2)では、幼年期の紫外線被曝量が成人後の白内障リスク因子として大きいことがわかった。同じ西表島在住の成人でも高校まで沖縄に在住していた群は、20代以降に移住した群よりも核白内障に8.67倍なりやすかったという。 さらに、世界各地の研究結果を比較すると、COUVが高い地域の在住者はそうでない地域の在住者と比較して総じて核白内障リスクが増すものの、COUVが同等の地域であっても屋外活動時間やメガネやサングラス装着習慣の有無によって発症リスクが大きく変わることも明らかになった。 白内障リスク対策は、紫外線被曝を防ぐことだ。具体的な方法として、日本において使用者の多い日傘は紫外線カット率が10~30%程度とそこまで高くない。帽子は種類によるが20~70%、サングラスは50~98%であり、帽子とサングラスを併用することで95~99%カットできる。UVカット機能のあるコンタクトレンズは角膜全体を覆い、耳側から入る光や反射光も防ぐことができるため有用だという。佐々木氏は「私たちは西表島で課外活動中の小学生にサングラスを掛けさせる運動を行ったこともあるが、子供がずっとサングラスを掛け続けることは難しい面もあり、ほかの対策を併用する必要があるだろう」とした。環境温度と白内障の関係 紫外線と白内障の関係について研究を続けると、改めて高温地帯で白内障発症リスクとの強い相関が確認された。「ここから、紫外線だけではなく、環境温度や体内温度も白内障リスクと関わりがあるとのではないか、という仮説が生まれた」(佐々木氏)。世界中で平均気温は上がり続けており、日本の平均気温は過去100年間で約1.5℃上昇し、都心部ではヒートアイランドの影響などでさらに上昇度が大きい。 名古屋工業大学・平田 晃正氏のチームは人体を対象とした複合熱解析手法により環境温度・湿度、深部温度、年齢、出生地域、太陽光曝露の有無などの因子が水晶体温度をどう変化させるのかについて、スーパーコンピュータを使った計算機シミュレーションにより予測できることを報告している。この研究結果を基礎研究データとし、これまでの眼疫学研究から得た核白内障の有病率とシミュレーションにより計算した水晶体温度の関連を併せて検討した結果、高温環境下、具体的には水晶体温度が37度以上の熱負荷が続くと、核白内障リスクが増す可能性が高いことが明らかになった3)。とくに熱帯地域や高齢者、屋外労働者などでリスクが高いことが明示された4)。続く研究によって核白内障リスクの寄与因子としては水晶体への熱負荷が52%+紫外線被曝が31%、その他加齢要因が17%であることが示された5)。熱中症と白内障の関係 佐々木氏らは、さらにこの研究を進め、高温多湿の環境が引き起こす疾患、熱中症が白内障リスクにつながるのかについても調査した。本研究(論文執筆中)では2016年1月~2023年2月の5年間のレセプトデータを用い、追跡可能だった255万8,593例を調査対照とした。対象者を熱中症、白内障、糖尿病の病名で分類し、年齢、性別、都道府県、糖尿病罹患歴の有無でマッチングコホートを作成し、追跡期間中の熱中症既往の有無により、5年間の年代別白内障発症率を比較した。 結果として、追跡期間中1回以上の熱中症既往のある人は、そうでない人に比べ、白内障リスクが3~4倍高く、その差は年代が上がるほど急激に開く傾向があった。「この機序としては、熱中症時の急激な体温上昇によって水晶体温度も上昇し、水晶体熱負荷が白内障発症リスクにつながった可能性があると考えている」(佐々木氏)。紫外線被曝と熱中症の予防が白内障リスクを低減 今後の課題として佐々木氏は「紫外線、環境温度・熱中症と白内障についての複合的な関連の解明をさらに進める必要がある。幼少期の紫外線被曝が白内障リスク上昇に関与している可能性を示唆する調査結果も出ているため、保護者や子供への啓蒙活動が重要になる」と述べた。とくに眼科医が少ない発展途上国において、白内障発症はそのまま失明につながることも多いため、啓蒙と対策は喫緊の課題だという。「日本においても紫外線・赤外線カットサングラス、UVカットコンタクトレンズなどを使った対策を普及させること、これと併せて熱中症予防対策を強化することが、白内障発症リスクを低減することにつながる」と強調した。 さらに「白内障というと、高齢者を中心にありふれた疾患であり、手術すれば治る、といったように捉えられることも多いが、手術をしても決して若い時の視力・見え方に戻るわけではない。さらに核白内障の初期症状は老眼であり、紫外線被曝や熱中症既往は30~40代といった若い時期の老眼リスクにもつながる。まずは予防が肝要だ」と、予防の重要性を重ねて訴えた。

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8年間レーザーポインタを自分の眼球に当て続けた男の子【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第260回

8年間レーザーポインタを自分の眼球に当て続けた男の子12歳の男の子が、少なくとも1年間続く両眼性の視力低下を訴えて来院しました。しかし、どうやらただの調節障害というわけではないようです。どういうことでしょう。Coombs RA, et al. Sneeze and burn: Macular scars secondary to sun- and laserbeam-staring to induce photic sneeze reflex.Am J Ophthalmol Case Rep. 2024 Jun;34:102018.彼には太陽や光を見たときにくしゃみが誘発される反射がありました。俗にいう、「光くしゃみ反射」です。花粉症のようにずっとくしゃみが起こるわけではなく、まぶしさを感じたときに1回か2回くしゃみが出るだけで終わります。彼にとってはそれが心地よかったのでしょうか、小さいころからその反射を誘発しようとしていたみたいです。赤いレーザーポインタが出てくる猫のおもちゃをこよなく愛し、それを眼球に当てるとくしゃみが出るので、日課にしていたようです。来院時、視力は右目20/30、左目20/40でした。細隙灯生体顕微鏡検査と眼圧は両目とも正常でしたが、眼底検査では萎縮性瘢痕がみられました。光干渉断層計(OCT)では、視野欠損部位に一致して網膜外層の構造異常(ellipsoid zoneの欠損、interdigitation zoneの消失)が確認されています。彼には、抗精神病薬を使用する注意欠陥多動性障害(ADHD)の既往がありましたが、内服している薬剤に光線障害の感受性を上昇させるものはなかったそうです。なので、純粋に8年間当て続けたがゆえの視力障害だったといえます。ちなみに今回の症例でみられた光くしゃみ反射ですが、ある調査では日本人の約4人に1人がこの反射を持っていることがわかっています1)。少し甘い基準で調査したこともあって、ほぼ確実に光くしゃみ反射を起こすのはこの半分くらい、約8人に1人と考えられています。顕性遺伝で親から子へ受け継がれていくこともわかっていて、くしゃみ反射を持つ家系では他の家族も光くしゃみ反射を持っていることが多いです。決して、眼球にレーザーポインタを当ててくしゃみを誘発させるといった真似はしないように。1)児玉正志、他. 東北地方における光刺激によって誘発されるくしゃみ反射に関するアンケート調査.医学と生物学. 1992;125(6):2159.

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小児期の睡眠障害、若年期の精神病リスクにつながる可能性

 短時間睡眠は、短期・中期・長期的に子どもの発達に有害な影響を及ぼす可能性があることがこれまでも報告されているが、新たな報告によると、小児期に持続的に睡眠時間が短いと、若年期の精神病発症リスクが上がる可能性があるという。英国・バーミンガム大のIsabel Morales-Munoz氏らによる本研究結果は、JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年5月8日号に掲載された。 研究者らは小児期における持続的な夜間睡眠時間の短さと、24歳時点での精神病体験(PE)および/または精神病性障害(PD)との関連、および炎症マーカー(C反応性蛋白[CRP]およびインターロイキン6[IL-6])が関連するかを検討するコホート研究を実施した。 英国の出生コホート研究であるAvon Longitudinal Study of Parents and Childrenのデータを用い、6ヵ月、18ヵ月、30ヵ月、3.5歳、4~5歳、5~6歳、6~7歳の時点の夜間睡眠データを収集した。24歳時にPEとPDをPsychosis-like Symptoms Interview(PLIKSi)で評価した。RP値とIL-6値は9歳・15歳時に血液採取で測定した。夜間睡眠時間の軌跡を検出するために潜在クラス成長分析(LCGA)を適用し、24歳時点の精神病転帰との縦断的関連についてロジスティック回帰を、CRP値とIL-6値が潜在的な媒体因子であることを検証するためにパス解析を行った。データ解析は2023年1月30日~8月1日に実施した。 主な結果は以下のとおり。・小児1万2,394例(女児6,254例[50.5%])、ロジスティック回帰とパス分析では若年成人3,962例(女性2,429例[61.3%])のデータが得られた。・LCGAにより、小児期を通じて夜間の睡眠時間が4クラスに分けられた。持続的睡眠時間が最も短い群(301例[2.4%])は、24歳時のPD(オッズ比[OR]:2.50、95%信頼区間[CI]:1.51~4.15、p<0.001)およびPE(OR:3.64、95%CI:2.23~5.95、p<0.001)のリスクが有意に高かった。・9歳時のIL-6値の上昇は、持続的な睡眠時間の短さとPD(バイアス補正推定値=0.003、95%CI:0.002~0.005、p=0.007)およびPE(バイアス補正推定値=0.002、95%CI:0~0.003、p=0.03)との関連を部分的に媒介していた。9歳時または15歳時のCRP値にこうした関連は見られなかった。 研究者等は「乳児期から小児期までの睡眠時間が持続的に短い群は、24歳時の精神病の有病率が有意に高かった。さらに、9歳時のIL-6値の上昇がこれらの関連を部分的に媒介しており、IL-6値で測定される炎症が潜在的な機序経路の1つである可能性がある。この結果は小児期における短時間睡眠への対処の必要性を強調しており、睡眠と炎症反応の両方に対する、将来的な介入に関する予備的な証拠ともなる」とした。

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アイカルディ症候群〔AS:Aicardi syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義アイカルディ症候群は、1965年にJean Aicardiによって報告された神経疾患である。脳梁欠損、脈絡網膜裂孔、点頭てんかん (infantile spasm) を典型的な3主徴とし、主に女児に認められる。なお、Aicardi-Goutie(eはアクサン・グラーヴ)res症候群とは別の疾患である。■ 疫学まれな疾患であり、正確な頻度は不明である。民族差はないと言われており、欧米では9~17万人に1例程度との報告がある。■ 病因現時点で不明である。患者の大部分が女児であることから、X染色体顕性遺伝(男児では致死性)または常染色体上の限性発現遺伝子の異常により女児にのみ発症するとも考えられている。■ 症状脳梁欠損、脈絡網膜裂孔、点頭てんかんを典型的な3主徴とするが、必ずしも3つがそろっているとは限らない。また、この3主徴以外にもさまざまな大脳形成異常、視神経の異常、その他のタイプのけいれん、さまざまな重症度の知的障害、側弯などの骨格異常が認められる。1)神経症状てんかんは、大部分の症例(>95%)に認められる。大部分の症例は1歳未満に発症する。点頭てんかんは早期にみられ、経過中にさまざまなタイプの薬剤治療抵抗性てんかんを発症する。脳波所見として、非対称性のサプレッション・バーストや両半球間の解離を伴う非同期の多巣性てんかん様異常がよくみられる。頭部MRIでは脳梁の異形成があり、大部分は完全脳梁欠損であるが、部分欠損の場合もある。主に前頭葉と傍シルビウス裂領域の多小脳回や厚脳回は典型的である。脳室周囲と皮質内の異所性灰白質もよくみられる。大脳の左右非対称、脈絡叢乳頭腫、脳室拡大、第3脳室や脈絡叢の脳内嚢胞がしばしばみられる。2)眼症状本症候群の特徴である脈絡膜裂孔は、網膜色素上皮とその下にある脈絡膜の白色または黄白色での円形で、境界部にさまざまな濃さの色素沈着を伴う、境界明瞭な色素脱失領域であり、視神経周囲の球後極に集簇することがある。 3)頭蓋顔面症状特徴的な顔貌として、短い鼻尖、鼻先が上向きで鼻梁の角度が小さい前顎骨、大きな耳、まばらな眉毛が含まれる。斜頭、顔面非対称性、時に口唇口蓋裂も報告されている。4)骨格症状半椎体、ブロック椎体、癒合椎体、肋骨の欠損などの肋椎体の異常はよくみられる。患者の1/3が著しい側弯症になる可能性がある。5)消化器症状便秘、胃食道逆流、下痢、摂食障害が認められる。管理上、てんかんの次に大きな問題となる症状である。6)悪性腫瘍腫瘍の発生率が増加することが示唆されている。良性腫瘍として脈絡叢乳頭腫や脂肪腫など、悪性腫瘍として血管肉腫、肝芽腫、髄芽腫、胚性がん、奇形腫など、さまざまなまれなタイプの腫瘍が報告されている。7)成長身長は7歳、体重は9歳まで一般集団と同じ程度であるが、それ以降になると一般集団より低くなるとの報告がある。8)内分泌思春期早発症、思春期遅延症の報告がある。■ 分類とくになし。■ 予後生命予後は不良である。個人差が大きくけいれんの重症度にもよる。平均余命は8.3歳との報告がある一方、寿命の中央値は18.5歳との報告がある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は臨床所見のみで行う。症状がそろっていれば男児でも診断される。1999年に報告されたAicardiによる診断基準案は以下の通りである。古典的3徴候の存在が本症候群の診断となる。古典的3徴候の2つに加え、少なくとも2つの他の主要な特徴または補助的な特徴の存在は、本症候群の診断を強く示唆する。■古典的3徴候での診断【古典的3徴候】点頭てんかん (infantile spasms)特徴的な脈絡膜裂孔脳梁欠損(部分的な場合もある)【主な特徴】皮質奇形(多くは小脳回)脳室周囲および皮質下の異形成症第3脳室および/または脈絡叢周囲の嚢胞視神経・視神経乳頭のコロボーマまたは低形成【支持特徴】椎骨および肋骨の異常小眼球症もしくは他の眼症状“Split-brain” 型脳波肉眼的大脳半球非対称性■研究班による診断基準わが国の研究班においても以下のような診断基準が提唱されている。【A.症状】●主要徴候1.スパズム発作[a]2.網脈絡膜ラクナ(lacunae)[b]3.視神経乳頭(と視神経)のcoloboma、しばしば一側性4.脳梁欠損(完全/部分)5.皮質形成異常(大部分は多小脳回)[b]6.脳室周囲(と皮質下)異所性灰白質[b]7.頭蓋内嚢胞(たぶん上衣性)半球間または第3脳室周囲8.脈絡叢乳頭腫●支持徴候9.椎骨と肋骨の異常10.小眼球または他の眼異常11.左右非同期性’split brain’脳波(解離性サプレッション・バースト波形)12.全体的に形態が非対称な大脳半球a.他の発作型(通常は焦点性)でも代替可能b.全例に存在(またはおそらく存在)【B.検査所見】1.画像検査所見:脳梁欠損をはじめとする中枢神経系の異常(脳回・脳室の構造異常、異所性灰白質、多小脳回、小脳低形成、全前脳胞症、孔脳症、クモ膜嚢胞、脳萎縮など)がみられる。2.生理学的所見:脳波では左右の非対称または非同期性の所見がみられる。ヒプスアリスミア、非対称性のサプレッション・バーストまたは類似波形がみられる。3.眼所見:網脈絡膜ラクナが特徴的な所見。そのほか、視神経乳頭の部分的欠損による拡大、小眼球などがみられる。4.骨格の検査:肋骨の欠損や分岐肋骨、半椎、蝶形椎、脊柱側弯などがみられる。【C.鑑別診断】以下の疾患を鑑別する:線状皮膚欠損を伴う小眼球症。先天性ウイルス感染。<診断のカテゴリー>A-1、2、4を必須とし、さらにA-5、6、7、8のいずれかの所見を認めた場合に診断できる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根本治療法はなく、対症療法のみである。スパズム発作と薬剤治療抵抗性けいれんの管理が必須である。診断時からの理学療法、作業療法、言語療法の開始が望ましい。側弯に伴う合併症予防のための適切な筋骨格系のサポートと治療が必要である。また、成長、栄養状態、発達の経過、呼吸機能と誤嚥のリスク、側弯の程度などについての定期的な評価が必要である。4 今後の展望原因遺伝子は未同定であるが、今後同定された場合には、発症のメカニズムが解明され、治療法が確立することが望まれる。5 主たる診療科小児神経科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病センター アイカルディ症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター アイカルディ(Aicardi)症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Gene Reviews Aicardi syndrome(医療従事者向けのまとまった情報)OMIM Aicardi syndrome(医療従事者向けのまとまった情報)1)Adam MP, et al(eds). GeneReviews. 1993.2)Kroner B, et al. J Child Neurol. 2008;23:531-535.3)Aicardi, et al. International Pediatrics. 1999;14:5-8.4)加藤光弘. てんかん症候群 診断と治療の手引き(日本てんかん学会編集). メディカルデビュー;2023.p.21-25.5)「稀少てんかんに関する調査研究」班 アイカルディ症候群 診療ガイドライン(第2版)公開履歴初回2024年7月4日

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亜鉛の測定が推奨される症状・タイミングは?

 近年、健康維持に重要な栄養素として注目を浴びる亜鉛。小児の発育や味覚異常に影響することはよく知られているが、ここ数十年で国内外の研究報告からさまざまな生理作用に関与していることが明らかになっている。先般、国内レセプトデータを解析して日本人の亜鉛不足者の特徴を発表1)した横川 博英氏(順天堂大学医学部総合診療科学講座 先任准教授)が「一般集団・患者群の血清亜鉛濃度の実際と低亜鉛血症患者の頻度やその臨床像」と題し、日本人の亜鉛欠乏の現状や検査の必要性について、6月4日に開催されたノーベルファーマのプレスセミナーにおいて解説した。亜鉛不足はなぜ起こる?年齢や性差は? 横川氏らが報告した研究1)からは、▽疾病の治療を受けている日本人の3人に1人は亜鉛欠乏症(60μg/dL)、▽加齢に伴い血清亜鉛濃度は低下、▽誤嚥性肺炎、褥瘡、サルコペニア、慢性腎臓病(CKD)を併存する患者の50%以上が亜鉛欠乏症で、その関連は誤嚥性肺炎、褥瘡、サルコペニア、COVID-19、CKDの順に高い、▽利尿薬、甲状腺ホルモン治療薬、貧血治療薬、全身性抗菌薬による治療患者の50%以上が亜鉛欠乏症で、その関連は利尿薬、全身性抗菌薬、貧血治療薬、甲状腺ホルモン治療薬の順に高い、などが示唆され、この結果に対し「これらの治療薬を使わなければならない患者の状態では亜鉛欠乏を引き起こすことが多い、と解釈するのが妥当」と同氏は補足した。 また、性別や年齢でこの結果を振り返ると、男性の場合は60歳以上から、女性では70歳以上から血清亜鉛濃度の低下が顕著になっている。加えて、厚生労働省の国民健康・栄養調査報告2)おける亜鉛摂取データによると、男性は全年齢において亜鉛摂取量が不足しているのに対し、女性では50代までは摂取量が不足しているも60~70代の摂取量は推奨量と同等であった。 これを踏まえると、栄養素や健康に対する意識の差が血清亜鉛濃度にも表れている可能性がある。実際に日本人の亜鉛不足には摂取食品の変化が影響しており、「日本人が低亜鉛に陥っている原因の1つは、元来の主食である米の消費量が減り、米や雑穀から得られる亜鉛などの摂取量が低下していること。米飯(精白米)の100gあたりの亜鉛含有量は多くはない(0.6mg)ものの、主食の役割を考えるとその影響は大きい。このほかにも亜鉛を多く含む上記3品には牡蠣(13.2mg)、豚レバー(6.9mg)、牛肩ロース(5.6mg)がある3)ので、これらの摂取を意識した食生活が重要」と食事に対する意識を促した。亜鉛不足による症状 そもそも亜鉛とは、生体内の300種以上の酵素、サイトカイン、ホルモンなどに関与している栄養素で、主に筋肉(60%)、骨(20~30%)、皮膚・毛髪(8%)、肝臓(4~6%)、消化管・膵臓(2.8%)、脾臓(1.6%)などに分布している。そのため、小児の身長の伸びや味覚の維持をはじめ、皮膚代謝、生殖機能、骨格の発達、精神・行動、免疫機能にまでその影響は及ぶ。そして、亜鉛不足に関連する症状を以下のように列挙すると、身長の伸びを除き、実は高齢者にみられる症状の多くと合致することから、横川氏は「“加齢によるもの”に留めてしまうのではなく、このような症状がある場合には、一度、亜鉛測定することを推奨する」と注意喚起した。<亜鉛不足に関連する症状>味がわからない、食欲がない、皮膚炎、生殖機能の低下、脱毛、傷が治りにくい、元気がない、貧血、骨粗鬆症、口内炎、風邪をひきやすい、下痢、身長の伸びが悪い亜鉛を測定するタイミング この10年で医療機関での亜鉛の検査数4)は加速度的に増加し、メディカル・データ・ビジョンの急性期病院の医療情報データベースを用いて亜鉛を検査した診療科比率を算出したところ、外来では内科(19%)、小児科(10%)、外科(8%)で、入院では内科(27%)、腎臓内科(7%)、外科(6%)で主に検査が行われており、「褥瘡管理や経管栄養などを行っている患者への栄養アセスメントの観点から検査件数が増加傾向にある」と見解を示した。では、前述のような亜鉛欠乏を想起するような症状がない場合、亜鉛を測定するタイミングはあるのだろうか? 横川氏によれば、「特徴的な症状がなく、一見、不定愁訴のような訴えの場合でも、まず亜鉛欠乏も疑ってみることが、診断のきっかけになることもあり得る」と説明した。 最後に同氏は、「血清亜鉛濃度の低下は、腎疾患や肝疾患はもちろんのこと、加齢による亜鉛の消化管吸収低下が原因で生じることもある。そのため、消化器領域の診療においても上述のような症状がみられる患者に遭遇した際には、低亜鉛を意識した検査を行ってほしい。そして、亜鉛欠乏にも配慮した併存疾患の治療を行ってほしい」と締めくくった。

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メンタルヘルスに長期的影響を及ぼす小児期逆境体験

 3万人弱の日本人を対象とした横断調査から、小児期に受けた虐待、いじめ、経済的困難といった逆境体験は、成人期のメンタルヘルスに悪影響を及ぼしていることが明らかとなった。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野の西大輔氏、佐々木那津氏らによる研究の成果であり、「Scientific Reports」に5月26日掲載された。 従来、小児期逆境体験(adverse childhood experience;ACE)として虐待や家庭の機能不全が検討されてきたが、最近では学校でのいじめ、慢性疾患、自然災害なども含まれるようになっている。ACEは成人後のメンタルヘルスの問題につながる可能性が指摘されているものの、広義のACEの長期的影響を検討した研究は少ない。また、ACEに関する研究は米国のものが多いことから、日本人を対象とした研究が求められている。 そこで著者らは、「日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題による社会・健康格差評価研究(JACSIS研究)」より、2022年9月のオンライン調査データを用いて、ACEと成人期のメンタルヘルスとの関連を検討した。対象者は18~79歳とし、経験したACEの種類と数について、15項目の質問票「ACE-J」により評価した。また、「K6」という尺度により心理的苦痛を評価し、合計得点が13点以上だった人を「心理的苦痛が強い」と判定した。 解析対象は計2万8,617人(平均年齢48±17.1歳、男性48.9%)であり、15のACEのうち1つ以上のACEを経験していた人の割合は75%に上った。経験割合が多かったACEは、心理的ネグレクト(38.5%)、貧困(26.3%)、学校でのいじめ(20.8%)だった。経験したACEの数は平均1.75±1.94であり、14.7%の人が4つ以上のACEを経験していた。女性は男性と比べ、ACEの数が有意に多く(1.85対1.65)、性的虐待の経験割合が有意に高かった(6.9%対1.8%)。年齢層別には、貧困の経験割合は50~64歳で29%、65歳以上で40%、学校でのいじめは若年層で21~27%、65歳以上で10%だった。 また、心理的苦痛が強いと判定された人は全体の10.4%だった。ACEの経験数が増加するほど心理的苦痛が強い人の割合が高まり、18~34歳かつACEの数が4つ以上で、その割合が最も高かった(40.7%)。ACEの数が同じ場合、若年層は高齢層と比較して心理的苦痛が強い人の割合が有意に高かった。 次に、ロジスティック回帰分析を用い、背景の差(年齢、性別、婚姻状況、世帯収入など)を統計学的に調整して検討したところ、全てのACEは、心理的苦痛が強いことと有意に関連していることが明らかとなった。具体的なオッズ比(95%信頼区間)は、学校でのいじめが3.04(2.80~3.31)、慢性疾患による入院が2.67(2.29~3.10)、自然災害が2.66(2.25~3.13)だった。また、ACEの数が4つ以上の人では、1つもない人と比較したオッズ比が8.18(7.14~9.38)に上った。 今回の研究の結果から著者らは、「ACEはメンタルヘルスに長期的な影響を及ぼしていた」と総括し、ACEを減らすためのさらなる研究と対策の必要性を指摘している。

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魚の骨が喉に刺さった【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第16回

救急外来には、喉に魚の骨が刺さったという主訴で受診する患者さんが時々います。魚骨の研究では、魚骨が刺さる部位で最も多いのは扁桃(69%)です1)。プライマリケア医が診察して対処できるのは中咽頭(図1)までの範囲で、それより深い場合は喉頭ファイバーや上部消化管内視鏡を用いて除去する必要があります。今回は、プライマリケア医が何をどこまで行い、どういったときに専門科に紹介する必要があるかを解説します。図1 頭頚部の構造画像を拡大する<症例>48歳、男性主訴喉に魚の骨が刺さった。夕食にタイを食べていたところ、喉に痛みが出現した。水を飲んだりして工夫をしたが改善しないため受診した。このような患者さんが来院したら、皆さんはどうしますか? すぐに耳鼻科に行ってもらうというのも間違いではないですが、今回は自分で対応する方向で検討してみましょう。(1)魚の種類を把握するまず魚の種類を把握しましょう。咽頭異物を生じる魚の頻度は、ウナギ(11.9%)、サケ(11.9%)、アジ(10.8%)となっています。上位の魚の多くは骨が細くて柔らかく、中咽頭に刺さる可能性が高いです。一方、タイなど大きな魚の骨は固くて太く、中咽頭では刺さらずに下咽頭や食道で刺さる可能性が高くなります2)。消化管を穿孔するリスクがあるためより慎重な精査が必要です。今回の症例はタイであるため、太い骨かつ下咽頭より以遠に骨がある可能性が高いです。(2)口腔内を診察する基本的に風邪症候群の際に咽頭を診察するのと変わりなく、舌圧子を用いて診察します。しかし、魚骨を発見した際に魚骨を除去するためには片方の手が空いている必要があります。ペンライトを使用すると片方の手がふさがるため、ヘッドライトがあると便利です。また別の方法として喉頭鏡で舌を圧迫して視野を確保する方法があります(図2)。魚骨を取る器具は、骨がつまめれば何でも大丈夫です。私はよく長攝子を用いています。本症例は咽頭を診察しましたが骨はありませんでした。図2 喉頭鏡で舌を圧迫(3)内視鏡またはCTを実施この場合、下咽頭から下に魚骨が刺さっている可能性が出てきます。舌圧子では視認が困難で、上部消化管内視鏡や喉頭ファイバーが必要になるためコンサルトを考えます。ただし、一度刺さった骨が自然に脱落することがあり、抜けた後の刺激であたかもまだ骨が残っているような症状を生じることがあるため、コンサルトするにしても本当に骨があるかどうか確認する必要があります。CT検査が除外に有用で、感度は100%近いと報告があります3)。本症例はCTを撮影したところ図3のように骨が見つかったため、耳鼻科にコンサルトして喉頭ファイバーで除去されました。図3 CTで骨を確認上記が基本的なマネジメントになります。プライマリケア医が行うのは(1)と(2)だと思います。(2)で解決できなければ、日中であれば対応できる耳鼻科の受診を勧めてください。魚骨が残っている?咽頭を調べても骨が見つからないけれども喉に違和感があると訴える患者では、マネジメントに迷うことがあります。日中であれば耳鼻科受診を勧めるのですが、夜間ですぐにCTが撮れない場合や、小児でむやみにCTを撮ることは勧められない場合もあります。報告によると、魚骨の3割程度は自然脱落し、脱落しやすいのは横向きに刺さった骨だそうです2)。基本的に、細い骨が横、太く固い骨が縦に刺さりやすいといわれています。よって私は、「魚骨が刺さった」と訴える患者を診察した場合、アジなどの骨が細い魚で、違和感程度で水を問題なく飲める場合は、脱落した可能性が高いと考えます。翌日も症状が持続する場合は耳鼻科受診を勧めています。1)Swain SK, et al. Science Direct. 2017;18:27-30.2)Shishido T, et al. PLoS One. 2021;16:e0255947.3)Debasis D, et al. Emerg Med J. 2007;24:48-49.

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果汁100%ジュースの摂取は体重増加と関連

 果汁100%ジュースの摂取は、小児と成人ともに体重増加と関連する可能性があることを示したレビューが、「JAMA Pediatrics」に1月16日掲載された。 トロント大学(カナダ)のMichelle Nguyen氏らは、小児および成人における果汁100%ジュースの摂取と体重との関連を評価した研究を特定するため、システマティックレビューを行った。 小児を対象とした17件の研究を解析した結果、果汁100%ジュースを1日当たり1杯(237mL)追加するごとに、BMIが0.03高くなることが判明した。成人を対象とした研究は25件抽出された。エネルギー摂取量を調整していないコホート研究では体重増加(0.21kg)との関連が認められた一方、エネルギー摂取量を調整していた研究では反対の結果が得られた(-0.08kg)。成人を対象としたランダム化比較試験では、果汁100%ジュースの摂取と体重との有意な関連は認められなかった。 著者らは、「今回の結果は、カロリーの過剰摂取と体重増加を防ぐために果汁摂取量を制限するガイドラインを支持するものである。果汁100%ジュースと体重に関するさらなる試験が望まれる」と述べている。 著者数人は、さまざまな医療団体との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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2つの変異を持つインフルエンザウイルス、タミフルが効きにくい可能性も

 米国の保健当局が、米国内で2つの変異を併せ持つH1N1インフルエンザウイルスの感染者が2例、確認されたことを報告した。米疾病対策センター(CDC)の研究グループによると、この変異株は、ウイルス表面のタンパク質であるノイラミニダーゼの2カ所に変異(I223VとS247N)を持ち、代表的な抗インフルエンザウイルス薬であるオセルタミビル(商品名タミフル)の効果を減弱させる可能性があるという。このインフルエンザウイルスの二重変異株に関する研究グループの分析結果は、CDCが発行する「Emerging Infectious Diseases」7月号に掲載された。 この最新の分析結果は、2024年3月に香港の研究グループが「The Lancet」に発表した、これら2つの変異がオセルタミビルへの耐性を高めている可能性があることを示した報告書に続くものだ。CDCの研究グループによる実験では、この二重変異株のオセルタミビルに対する感受性は、これまでのいくつかのインフルエンザウイルスの変異株と比べて最大で16倍低いことが示された。 ただしCDCは、現時点ではパニック状態になる必要はないとの見解を示している。CDCのスポークスパーソンはCBSニュースの取材に対して、「この二重変異株は、より新しい薬であるバロキサビル マルボキシル(商品名ゾフルーザ)などのオセルタミビル以外の抗インフルエンザウイルス薬に対する感受性は保持していた。そのため、直ちに現在の臨床判断を変える必要性はない」と話すとともに、ワクチン接種はこの二重変異株に対しても保護効果があるとしている。 CDCの報告書によれば、「この二重変異株は、複数の大陸の国々に急速に広がっている」ものの、現時点ではまだまれだという。二重変異株は、2023年5月にカナダのブリティッシュコロンビア州の症例で初めて確認されて以降、アフリカ、アジア、欧州、北米、オセアニアから総計101症例が報告されているとCBSニュースは報じている。米国の2症例は、2023年の秋から冬にかけてコネチカット州保健局とミシガン大学の研究室で検出された。 CDCのスポークスパーソンは、「次のシーズンにこの二重変異株がどの程度流行するかは不明だ。同ウイルスの感染拡大と進化の状況について監視を続けることが重要だ」と話している。 CDCによると、オセルタミビルは最も広く使用されている抗インフルエンザウイルス薬である。2023年に「Pediatrics」に発表された研究によると、小児に処方される抗インフルエンザウイルス薬の99.8%をオセルタミビルが占めているという。また、CBSニュースは、2024年に酪農場で発生し、現在も流行が続いている鳥インフルエンザに感染した人の治療にもオセルタミビルが使用されていると報じている。

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インフルエンザには麻黄湯?【漢方カンファレンス】第4回

インフルエンザには麻黄湯?以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】30代女性主訴発熱、咽頭痛既往特記事項なし病歴職場でインフルエンザが流行中。昨晩、ゾクゾクとした悪寒と咽頭痛があり、体温38.6℃。朝起きても悪寒と発熱が持続。インフルエンザが心配で受診。副作用が怖いので抗ウイルス薬はなるべく飲みたくない。外来待合室では、全身の関節痛があり椅子にじっと座れないほどきつくて体を動かしている。現症身長172cm、体重70.4kg。体温38.7℃、血圧112/80mmHg、脈拍86回/分 整。顔面紅潮あり、咽頭発赤あり、扁桃肥大なし、白苔なし、頸部リンパ節腫脹なし、呼吸音異常なし。インフルエンザ抗原検査(+)。経過受診時「???」エキス1包+「???」エキス1包を外来で内服。(解答は本ページ下部をチェック!)15分後悪寒が軽減して、少し関節痛が楽になったため改めて「???」エキス3包+「???」エキス3包分3で処方。(2~3時間おきに内服し、帰宅して安静にするように指導)当日帰宅後、2回目を内服して布団に入った。1時間後に発汗し始めた。発汗後、衣服を着替えて就寝。翌日翌朝には解熱して、咽頭痛もなくなり気分もすっきりした。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】<冷えの確認>悪寒はありますか?ゾクゾクして鳥肌が立っています。体熱感はありますか?熱っぽい感じがあります。<温冷刺激に対する反応を確認>のどは渇きませんか?いま、温かい物と冷たい物ではどちらが欲しいですか?のどが渇きます、冷たい水が飲みたいです。<ほかの随伴症状を確認>のどの痛みは強いですか?体の節々が痛みますか?そのほかに、鼻汁、咳、痰はありませんか?汗をかいていますか?とてものどが痛いです。手足の関節や腰が痛くてじっと座るのがつらいです。咳が少しあるくらいで、汗はかいていません。横になりたいほどの倦怠感はありませんか?横になりたい感じはありません。ただ、体の節々が痛くて、こうして座っているのもつらいです。【診察】顔色は紅潮で、手足を触診すると熱感を感じた。また、脈診では浮で、反発力が強い脈(脈:浮、強)であった。また、後頸部から背部を触診すると、鳥肌がたっており、汗をまったくかいていなかった。カンファレンス今回は、インフルエンザの症例ですね。インフルエンザといえば麻黄湯(まおうとう)が有名で、有効性を示すRCTもいくつか知ってます1-3)。本症例も麻黄湯といいたいところですが、病名からすぐに飛びついてはいけないのでしたね。素晴らしい! それでは、早速、漢方診療のポイント(1)である病態の「陰陽」(寒と熱どちらが主体か)を考えます。風邪などの急性熱性疾患の場合、ゾクゾクとした悪寒だけでは「陰陽」どちらの病態か区別するのは困難で、悪寒以外の自覚症状、顔色、咽頭痛や倦怠感の程度などから陰陽を判断します(表1)。顔面紅潮があって、咽頭痛も強く、体熱感を自覚して冷たい水を好むということから「陽証」だと思います。そうですね。今回は「陽証」でよいですね。その次は、闘病反応の程度を示す「虚実」の判定を行う必要があります。急性疾患で「陰陽」・「虚実」を判断するには脈の診察がとくに重要だよ! 本症例では、悪寒があって脈が浮・強となっていることに着目すると、太陽病・実証と考えられるよ(太陽病の解説は本ページ下部の「今回のポイント」の項を参照)。太陽病の際に闘病反応の程度である「虚実」に関して、脈の所見以外に着目すべきポイントがあります。漢方医の診察からどの点かわかりますか?闘病反応ということは、咽頭痛や咽頭発赤の程度ですか?咽頭痛や咽頭発赤の程度からも闘病反応の程度を推測できるね。もう1つ大事な所見として、発汗の有無がポイントだよ。汗がない場合は闘病反応が強い(実)、汗をかいている場合は闘病反応が弱い(虚)と判定するんだ。太陽病では、悪寒があることが前提なので、悪寒があるにもかかわらず皮膚のしまりがなく、じわっと汗が出ている状態は闘病反応が弱い(虚)と考えるんだ。問診だけでなく患者の首筋に手を当てて、発汗の有無を確認することも大切だね。なるほど、本症例は、脈の反発力が強くて、悪寒がして汗がないことから「実証」ですね。それではやはり、汗がなくて、関節痛もあるので麻黄湯が適応になりそうです。たしかに麻黄湯は悪寒がして体の節々が痛い、「太陽病・実証」に適応になり、インフルエンザによくみられる闘病反応に類似していることから、インフルエンザに頻用されるようになりました。しかし、本症例ではさらに着目すべき特徴として、口渇があって冷たい物を飲みたいという所見があげられます。これは身体にこもった熱を冷ます作用のある石膏(せっこう)を含む漢方薬の適応を示唆する所見です。さらに「じっとしていられないほどつらい」というのも大切なキーワードです。本症例をまとめると以下のようになります。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?悪寒、脈:浮、冷たい飲み物が欲しい、顔面紅潮→熱が主体(太陽病)(2)虚実はどうか発汗なし、脈:強→実証(3)気血水の異常を考える気血水の異常ははっきりしない(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む悪寒あり、発汗なし、口渇あり、じっとしていられないほどつらい解答・解説【解答】本症例は、太陽病・実証で、発汗作用に加えて身体にこもった熱を冷ます作用がある石膏が含まれる大青竜湯(だいせいりゅうとう)が適応になります。大青竜湯はエキス製剤にないので、麻黄湯と越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)を合わせることで代用します。【解説】一般的に風邪のひき始めの悪寒がある時期を太陽病といいますが、悪寒と同時かその後に熱の病態を示唆する所見があることが前提です。大青竜湯は、「太陽病・実」(脈が浮・強、発汗なし)の場合に用いる漢方薬で、麻黄湯の特徴である関節痛に加え、身体に熱がこもっている状態を示唆する「口渇があり、冷たい水が飲みたい」場合に適応になります。また、漢方では身の置きどころがないほどひどくつらがる状態を「煩躁(はんそう)」といい、「煩躁」も大青竜湯を用いる指標の1つです。悪寒と関節痛がある場合でも、「口渇」、「煩躁」のどちらかがあれば、麻黄湯でなく、大青竜湯が適応になります。葛根湯(かっこんとう)も「太陽病・実証」に用いる漢方薬ですが、麻黄湯や大青竜湯のように全身に及ぶ症状はなく、項(うなじ)のこわばりが目立つ場合に適応になります(表2)。なお、麻黄湯や大青竜湯の処方日数は長くても3日間までとします。内服方法も、処方せん上は毎食前に1日3回としますが、実際には、発汗があるまで2~3時間おきに内服した方がより効果的で、即効性が期待できます。ただし、高齢者では麻黄の副作用(交感神経刺激作用による動悸・不眠などや胃腸障害)が出現しやすく注意が必要で、基礎疾患によっては間隔を詰めた内服を避ける場合もあります。さらに、漢方薬を内服するだけでなく、発汗を促すために、温かくして安静にする、冷たい飲食物を避けるなど養生の指導も必要になります。今回のポイント「太陽病」の解説太陽病は風邪のひき始めのように、悪寒に加え、脈が表在性に触知できる浮である時期を太陽病(陽の始まりという意味)といいます。風邪の発症から間もない時期で典型的には発症から1~2日間の急性期です。脈浮は体表面(表)で闘病反応が起こっている時期であると考えます。表に病気の主座があることから葛根湯や麻黄湯などの漢方薬で発汗させて治療します。次に太陽病と診断した後は、虚実の判定を行います。虚実は脈を押し込んで全体から受ける反発力をみます。少しの力でペシャンとつぶれて触れなくなるような脈は「弱」で虚証、反発力が充実していれば「強」で実証と診断します。太陽病では舌や腹部の所見は参考にしないことに注意してください。参考文献1)Kubo T, Nishimura H. Phytomedicine. 2007;14:96-101.2)Saita M, et al. Health(NY). 2011;3:300-303.3)Nabeshima S, et al. J Infect Chemother. 2012;18:534-543.

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アトピー性皮膚炎の症状を改善するレブリキズマブ発売/リリー

 日本イーライリリーは、アトピー性皮膚炎の治療薬である抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブ(商品名:イブグリース)を2024年5月31日より販売を開始した(製造販売承認日は2024年1月18日、薬価収載日は2024年4月17日)。このレブリキズマブの販売に合わせて、都内で「アトピー性皮膚炎患者さんの抱えるアンメットニーズおよび新たな選択肢」をテーマにメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、皮膚科専門医によるアトピー性皮膚炎の現状と課題、患者さんの意識調査の結果、レブリキズマブの臨床試験について説明が行われた。アトピー性皮膚炎の患者さんは10人に1人の時代 「アトピー性皮膚炎患者さんのアンメットニーズについて」をテーマに中原 剛士氏(九州大学大学院 医学研究院 皮膚科学分野 教授)が、現在のアトピー性皮膚炎の診療状況や患者さんなどへのアンケート調査の結果を解説した。 日本アレルギー学会発行の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021』の定義では、「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」とされ、アトピー素因は(1)家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)があること、または(2)IgE抗体を産生しやすい素因とされる。そして、最近の研究では免疫細胞が放出するサイトカインが痒みの情報伝達を担うことが解明され、サイトカインを抑止する治療薬の開発も行われている。 治療では、主流となるステロイドの外用薬のほか2008年に経口の免疫抑制剤、2018年には注射の生物学的製剤、2020年には経口・外用のJAK阻害薬、2022年には注射の生物学的製剤が承認され、今では全身療法の治療薬も開発され、発売されている。 疫学として10人に1人の患者さんが現在ではアトピー性皮膚炎と推定され、非常に身近な皮膚疾患となっている。症状の特徴として「強い痒みを伴う発疹」が1番の問題であり、この発疹が広がると患者さんは睡眠を妨げられる、皮膚をかくことで外見に赤みなどが目立つなどでQOLを著しく低下させる。これらの症状は、5歳くらいまでに患者さんの約80%に出現し、中でも乳児期の発症が多いとされている。 アトピー性皮膚炎の治療目標は、「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持すること」であり、「このレベルに到達しない場合でも、症状が軽微ないし軽度で、日常生活に支障を来すような急な悪化が起こらない状態を維持すること」とされ、病状が安定した状態であれば、長期寛解を目指すこともできる。 そのためには、炎症に対する外用療法が行われるが、その際には「適切な強さの外用薬を、適切な量、適切な期間に外用する」の3つの要素が重要となる。治療では、大きく2つの時間の流れがある。最初に外用薬をしっかり速やかに使う「寛解導入」と皮膚の炎症を抑え、スキンケアと同時に皮膚の湿疹がない状態を維持する「寛解維持」に分かれるが、「コントロール不良」「使える治療薬の制限」「外用薬の塗布不足」などの事由で寛解維持が難しい患者さんも多く、課題となっている。アトピー性皮膚炎の患者さんの半数以上は現状の治療に満足していない 次に「アトピー性皮膚炎患者さんと一般生活者に対する意識調査」の結果について触れ、アトピー性皮膚炎患者が日常生活で困っていることや治療への満足度の結果などを報告した。この調査は、2024年1月にWEBにてアトピー性皮膚炎患者436人と一般生活者309人の合計745人に行われたもの。 主な調査結果は以下のとおり。・患者の平均発症年齢は8.3歳で9歳以下が67%だった。・患者さんが主に困っていることは、「塗り薬の塗布に時間がかかること」(33.5%)、「保湿に時間がかかる」(30.5%)、「塗り薬がべたつき不快」(29.4%)の順で多かった。・患者さんがアトピー性皮膚炎で諦めたことは、「素材を選ばす服を着用」(74%)、「プールや海に行く」(65%)、「ピアスなどのアクセサリーの着用」(65%)の順で多かった。・アトピー性皮膚炎の治療のための通院を多忙ゆえに先送りした患者さんは71%に上り、治療に使う時間がないほうがよいと考える患者さんは94.3%だった。・治療の満足度については、「(非常に・やや)満足している」と回答した患者さんは44%だった。・医師とのコミュニケーションの満足度では「(非常に・やや)満足している」と回答した患者さんは、生物学的製剤とJAK阻害薬を使用している患者さんで73%、生物学的製剤とJAK阻害薬を使用していない患者さんで54%と治療薬の違いにより回答割合が異なった。 最後に中原氏はアンケートの結果を踏まえ「アトピー性皮膚炎の患者さんは、きちんと通院し、医師と積極的に困りごとについてコミュニケーションをとることで、最適な治療の選択につなげてほしい」と語りレクチャーを終えた。4週間隔の投与で患者さんのQOLを改善する治療薬 「アトピー性皮膚炎治療の新たな選択肢イブグリースについて」をテーマに板倉 仁枝氏(日本イーライリリー 研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部/医師)が、レブリキズマブの特徴と臨床試験の概要を説明した。 レブリキズマブは、アトピー性皮膚炎の中心的メディエーターであるIL-13に高親和性で結合するヒト化抗ヒトIL-13モノクローナル抗体。IL-13受容体複合体(IL-4Rα/IL-13Rα1)の形成を阻害することで、それを介したIL-13シグナル伝達を特異的に阻害し、アトピー性皮膚炎の病態形成を抑制する。通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児に対し、初回および2週後に500mg、4週以降は250mgを2週間隔で皮下投与するが、患者の状態に応じ4週以降は250mgを4週間隔で皮下投与することもできる。なお、薬価は、250mgオートインジェクター、250mgシリンジともに6万1,520円となっている。 レブリキズマブの第III相の臨床試験は大きく6つの試験で構成され、とくに“ADhere J(KGAL)試験”では、わが国のアトピー性皮膚炎患者の導入期・維持期で局所コルチコステロイド(TCS)との併用療法での効果が評価された。本試験では、30日のスクリーニング期間後に導入期としてレブリキズマブ250mg 2週間隔(Q2W)+TCS(n=123)、同250mg4週間隔(Q4W)+TCS(n=81)、プラセボQ2W+TCS(n=82)の3群に分け16週間観察した。その後、維持期としてレブリキズマブ250mgQ2W+TCS(n=32)、同250mgQ4W+TCS(n=33)、同250mgQ4W+TCS(n=38)、プラセボQ2W+TCS(n=11)に分け、52週間の効果を評価した。 その結果、16週時のベースラインからのDLQIスコア*4ポイント以上の改善達成率は、プラセボ+TCS群(n=63)が20.6%だったのに対し、レブリキズマブ250mgQ4W+TCS群(n=60)が53.3%、同250mgQ2W+TCS群(n=96)が68.8%と有意に改善していた。 また、16~68週時のDLQIスコア4ポイント以上の改善維持割合は、レブリキズマブ250mgQ4W/Q4W+TCS(n=18)で72.2%、同250mgQ2W/Q2W+TCS(n=18)で77.8%、同250mgQ2W/Q4W+TCS(n=18)で83.3%だった。 安全性について、導入および維持期を通じて重篤な有害事象は3.6%で報告され、主な有害事象としては上咽頭炎、結膜炎、頭痛、発熱などが認められた。 板倉氏は最後に「レブリキズマブは、導入期からの効果と長期に持続する効果を通してアトピー性皮膚炎の症状のみならず治療負担の軽減に貢献できる新たな治療選択肢となる」と展望を語った。*DLQIスコアとは、皮膚疾患が患者のQOL(Quality of Life)に与える影響について評価する指標。10項目の質問からなり、30点満点で評価し、5点以上の改善は、臨床的に意義がある改善とされている。アトピー性皮膚炎、乾癬、慢性蕁麻疹などで使用される。

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子どものスクリーンタイム削減に親がすべきこととは?

 常にスマートフォン(以下、スマホ)を手にしている子どもに対してフラストレーションを抱えている親にとって心強い研究結果が明らかになった。子どもをスマホやダブレット、テレビなどのスクリーンベースのデバイス(以下、デバイス)から引き離すことは可能なことが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のグループによる研究で示されたのだ。同研究では、食事中や就寝時にデバイスの使用を禁止すること、親自身が適切にデバイスを使用する姿を子どもに見せることの2つの実践が最も効果的であることが示されたという。この研究の詳細は、「Pediatric Research」に6月5日掲載された。 論文の筆頭著者である、UCSFベニオフ小児病院の小児科医であるJason Nagata氏は、「この研究結果は、親がトゥイーン(8〜12歳の子ども)やティーンに使える具体的な戦略を示しているという点で心強い。その戦略とは、スクリーンタイムに制限を設けること、子どものデバイスの使用状況の把握に努め、寝室にいる間や食事の時間にはデバイスの使用を禁じることだ」と話す。さらに「子どもに説教している親自身も、これらのことを実践するよう心がけるべきだ」と付け加えている。 Nagata氏らは、米国の思春期の脳の発達に関する研究(ABCD研究)の参加者のうち約1万人の12~13歳の子どものデータを分析した。ABCD研究では、親が「わが子はデバイスを使いながら眠りにつく」などの項目についてどの程度当てはまるのかを、1(全く当てはまらない)から4(強く当てはまる)までの4段階で回答していた。その後、親の評価により子どもの1日のスクリーンタイムをどの程度予測できるのかを調べた。なお、この年代の子どもを対象に選んだ理由についてNagata氏は、「スマホやソーシャルメディアを利用する機会が増える時期であり、その後の習慣を形作る時期でもあるため、思春期が始まったばかりの頃の子どもを対象に調べたいと考えた」とUCSFのニュースリリースの中で説明している。 その結果、子どもの就寝時のデバイスの使用は、1日当たりのスクリーンタイムの1.60時間の増加と関連することが明らかになった。同様に、食事中のデバイスの使用と、親が子どもと一緒にいるときにもデバイスを使用する「悪い手本」である場合も、スクリーンタイムはそれぞれ1.24時間と0.66時間の増加に関連していた。 一方で、食卓や寝室でのデバイスの使用を禁止するルールを設けることは、子どもの1日当たりのスクリーンタイムの1.29時間の減少につながっていた。また、食事中や就寝時の子どものデバイスの使用状況を監視することも効果的で、1日当たりのスクリーンタイムは平均で0.83時間減っていた。このほか、効果がない対策があることも分かった。デバイスの使用を「ご褒美」や「罰」として用いている親の子どもでは、1日当たりのスクリーンタイムが平均で0.36時間長かった。 Nagata氏は、「子どものデバイスの使用時間を減らすために親にできることの中で最も重要なのは、寝室でのデバイスの使用を禁止することかもしれない。就寝時のスクリーンタイムによって思春期早期の健康や発達に不可欠な睡眠時間が減ってしまう。親は、子どもの寝室にはデバイスを置かないこと、夜間にはデバイスの電源や通知をオフにすることを検討するのが良いだろう」と話している。

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親の経営するクリニック、継ぐべきか?【Dr.大塚の人生相談】

13年目の医師です。整形外科で勤務医をしています。父が整形外科の開業医をやっており、周りは僕が父の跡を継ぐものだと思ってます。ただ、父は継げとか言うことはありません。まだ、自分が開業医になる目標などは持てていません。父に自分に継がせる意向があるかを確かめたほうがいいでしょうか?(今回の相談者:えにぐまさん)ぼくは、医者の子供には「2種類のタイプ」があると思っています。親の背中に憧れて医者になるタイプと、親の背中に絶望して医者にだけにはならないタイプです。まず、前者。前者の家庭は、良好な親子関係が多いと思います。親が子供に進路を強要することはまずありません。子は、親が医者として働く姿を見て、ごくごく自然と医者になることが多いように感じます。また、母親の理解もあり、お父さんの働く姿を子供の前で悪く言いません。もちろん、不満もあるでしょう。昭和の医者なんて、ブラックな環境が当たり前でしたから、お母さんもだいぶ我慢してきたはずです。しかし、心の何処かで医者である夫を尊敬しています。そういう空気が家庭内に溢れていると、子供は誰から言われることなく医者の道を志します。一方の後者、親の背中に絶望して医者だけにはならないタイプは多数のパターンがあります。親子関係が悪いところもあるでしょうが、すべてがすべてそういうわけではないでしょう。親子仲良しでも「医者にだけはぜったいにならない」と公言する医者の子供はいます。これは病院でがんばって働いていても、家でかっこいい姿を子供にみせられなかった親に多いと思います。全力で臨床やってクタクタになって帰ってきて、休みの日は死んだように寝る。その姿を見た子供は、「医者、しんどそう」と思いがちです。実際は、仕事が楽しかったりするんですけどね……。さて、相談者さんのお父さんは、ご本人さんになにも言わないタイプなんでしょうね。医者になると決めたときも、親御さんはなにも言わなかったんじゃないでしょうか?でも、お父さんはあなたが医者になることを心から喜んでいたはずです。今回のご相談の件に関しても、直接相談したところで、病院を継ぐかどうかは自分の好きなように決めたら良い、と応えるんじゃないのかしら。そうなるとあなたは混乱するわけです。どっちが父親が喜ぶかな、と。ここで親の気持ちを言ってしまうと、あなたのお父さんはあなたが病院を継いでくれたら少なからず嬉しい。でも、あなたのやりたいことを差し置いてまで、自分の病院を継いでほしくない。お父さんの一番の願いはきっと、あなたが医者という仕事を楽しんでやっていることと、その姿を見ること。病院を継いだとしても、「留学もしたかったなぁ」とか「もう少し技術を磨いておきたかったなぁ」なんていう後悔する姿を見たくはないはず。いろんなことに挑戦して、楽しんで、結果としてお父さんの病院を継ぐのがあなたの目標になったときに、開業したら良いんだと思います。ただね、親もいつまで元気でいるかわかりません。お父さんを喜ばせたいと思うあなたの気持ちは文章から伝わってきます。お父さんがお元気なうちに、いろいろ話しておくことは大事なんじゃないかなぁ。改まって「病院継いで欲しいの?」なんて聞かなくても、自分の仕事について少しでも話してあげたら、お父さんはすごく喜ばれると思います。

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英語で「絶飲食」は?【1分★医療英語】第136回

第136回 英語で「絶飲食」は?《例文》患者 I am hungry, Can I eat something?(おなかがすいたのですが、何か食べてもいいですか?)看護師The doctor instructed you to be on NPO for the procedure this afternoon.(この午後の検査のために、医師から絶飲食の指示がありました)《解説》今回は“NPO”という表現の解説です。元々はラテン語で“nil per os”を指し、英語では“nothing by mouth”が同じ意味になります。直訳では「口から何も入れない」つまり「絶飲食」という意味です。米国の医療現場ではこれを略した“NPO”(エヌピーオー)という用語を頻繁に使います。手術、全身麻酔の前や経口摂取が困難で輸液のみで管理したいときに、「“NPO”にしましょう」というように使われます。「彼は絶飲食です」と伝えたいときには、“He is on NPO”というように“on”を用います。補足ですが、《例文》の“procedure”という単語は、医療の領域においては広く「手技を用いるもの」全般を指します。ですので、胃カメラ、生検、手術などは全部“procedure”で表すことが可能です。講師紹介

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