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子どもの成績向上には知能だけでなく非認知能力も必要

 子どもが学業で良い成績を収めるために重要なのは知能だけではないことが、英ロンドン大学クイーン・メアリー校心理学分野のMargherita Malanchini氏らの研究で示された。良い成績を収めるためには、知能に加えて意欲や自己管理能力などの非認知能力も知能と同じくらい重要であることが、遺伝的データで示されたという。この研究結果は、「Nature Human Behaviour」に8月26日掲載された。 Malanchini氏は、「われわれの研究は、知能こそが優れた学業成績の主な要因であるとする長年の仮説に疑問を投げかけるものだ」と言う。その上で、「われわれは、根性や忍耐力、学問への関心、学ぶことに対する価値観などの非認知能力が優れた学業成績を予測する重要な因子であること、さらに、その影響力は、時の経過とともに徐々に強くなることを示す説得力のあるエビデンスを得た」と付け加えている。 この研究は、学業成績の追跡調査が行われた7~16歳のイングランドとウェールズの子ども1万人以上を対象としたもの。Malanchini氏らは対象者のDNAを分析し、それぞれの子どもが学校でどの程度の成績を収められるかを予測する多遺伝子リスクスコア(PRC)を構築した。 その結果について、論文の共著者である英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のAndrea Allegrini氏は、「われわれは、非認知能力に関連する遺伝的な影響が小中学校時代の学業成績を予測すること、その予測能は年齢とともに徐々に強まることを突き止めた。例えば、7歳時から16歳時までにその影響力はほぼ2倍に高まっていた」とロンドン大学クイーン・メアリー校のニュースリリースの中で説明。「義務教育が終わる頃には、非認知能力に関連する遺伝的要因が、認知能力と同程度に学業成績を予測する上で重要になっていた」としている。 研究グループはさらに、兄弟姉妹の比較により、遺伝的要因とは別に、共通の家庭環境がどのように影響を与えているかを調べた。その結果についてAllegrini氏は、「家族全体のプロセスが重要な役割を果たす一方で、家族内でも、非認知的な遺伝的特徴が学業成績に与える影響が徐々に増すことが明白に示された。このことは、子どもが自分の性格や気質、能力に基づいて自らの学習経験を積極的に形成し、自分の強みを強化するフィードバックループが生まれている可能性を示唆している」と指摘している。 「これらの結果は、優秀な成績を収めるためには知能だけでは必ずしも十分ではなく、意欲や好奇心などの特性も大きな役割を果たすこと、また、その一部は遺伝的な要因にとどまらず、家庭や学校の環境にも左右されることを意味する」とMalanchini氏らは説明する。 Malanchini氏は、「われわれの教育システムは、これまで認知発達に重点が置かれてきた」と指摘。「今こそ重視すべき点を見直し、非認知能力を育むことも同等に重視すべきだ。それによって、あらゆる生徒にとって、より包括的かつ効果的な学習環境を作り出すことができる」と述べている。

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9月20日 子供の成長啓発デー【今日は何の日?】

【9月20日 子供の成長啓発デー】〔由来〕内分泌疾患の患者や家族の支援団体で構成する国際組織“International Coalition of Organizations Supporting Endocrine Patients(ICOSEP)”が設立された日を記念し、2013(平成25)年に「子どもの成長啓発デー実行委員会」が制定。子どもの内分泌疾患に関する正しい知識の普及、内分泌疾患の早期発見・早期治療の促進、成長曲線の普及と利用促進を目的に啓発活動が行われている。関連コンテンツビタミンD依存症【希少疾病ライブラリ】週1回投与のヒト成長ホルモン製剤「ソグルーヤ皮下注5mg/10mg」【下平博士のDIノート】見分けづらい・見逃しやすい酵素欠損がもたらす疾患『ムコ多糖症』

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第114回 10月からの新型コロナワクチンの値段がヤバイ

10月から定期接種次の新型コロナワクチンの案内はいつ来るのかと待ちわびていたら、秋冬のインフルエンザワクチン接種と時期を合わせるかのように定期接種が開始されることになりました。「2,000~3,000円なら余裕で打つっしょ!」と思っていたら、われわれ非高齢者の医療従事者の自己負担額は…1万5,300円!!!グハッ!鉄板焼の高級店のカウンターで、神戸牛フィレ肉をカットしてもらうくらい高いでんがな!もともと新型コロナワクチンというのは、1回接種すると原価で1万5,300円かかるのです。そもそもが高い。65歳以上の高齢者や、60~64歳の重度の疾患がある場合には定期接種が適用され、安い値段で接種できるような仕組みになっています。この負担軽減は、国と自治体の両方が頑張ってくれていて、渋谷区や足立区のように、高齢者の場合は無料で接種できるところもあるようです。問題はわれわれ任意接種世代です。過去には医療従事者にも新型コロナワクチンの接種費用が減免された時代もありましたが、今やもう一般の方々と同じ扱いです。当院のスタッフに聞いたところ、打たない人のほうが多かったです。子供についても、何らかの助成があってしかるべきと思いますが、今のところ自治体に委ねられているようです。ワクチン流通量は?これまで圧倒的なシェアを得ていたmRNAワクチンが流通量のほとんどを占め1)、おそらく主にこれが選択されるでしょう(表)。SNSで炎上気味のレプリコンワクチンについては400万回程度の流通です。画像を拡大する表. 10月以降流通する新型コロナワクチン(筆者作成)レプリコンワクチンについては、mRNAを自己複製できるという意味ですが、この言葉が独り歩きして、周囲にシェディングをもたらすなどというデマが広まっているようです。生物学の知識があれば、誤ったことであることは読者の皆さんもおわかりかと思いますが…。レプリコンワクチンは、1本16人分なので、集団接種とかそういうことになったら使いやすいかもしれませんが、クリニックや医療機関では外来用に使いづらいかもしれません。外来で聞かれることが増えた最近外来で、「10月以降、新型コロナワクチンを接種すべきかどうか」という質問を患者さんからよくいただきます。個人的には、「これまでインフルエンザワクチンを接種していたなら検討いただく形でよい」と返しています。ただ、この値段だと、全員に強くお勧めするとは簡単に言えなくなりました。最近だと、帯状疱疹ワクチンもそれなりに高いですが、今後ワクチンの原価は上がってくる時代なのかもしれません。参考文献・参考サイト1)厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 予防接種課. 2024/25シーズンの季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの供給等について(2024年9月2日)

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第230回 Amazonファーマシー 、配送料660円の返金まで6日もかかった利用経験から考えたこと

薬局もAmazonファーマシーのカスタマーサービス窓口もグダグダこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は栃木県と群馬県の県境にある白根山に登ってきました。群馬県側の日光白根山ロープウェイで標高2,000mまで行き、標高 2,578mの白根山に登り、前白根山を経て栃木県側の湯元温泉に下りるルート。天候はまずまずでよかったのですが、白根山から湯元までの下山ルートが超急坂な上に、崩壊箇所も多く難儀しました。群馬県に比べ、栃木県が登山道の整備にお金をまったくかけていないことを実感しました(2年前の皇海山の道も悪かったです)。このままだと、5年先には廃道になるかもしれません。湯元〜白根山間を行かれる予定の方はご注意を。あわせて、東武日光駅前の夜の店じまいの早さにも驚きました。まだ浅草行の特急があるのに、18時半で駅前の土産物屋はおろか駅構内の売店すら閉まっていました。真っ暗な駅前通りを外国人観光客が右往左往していました。世界遺産の最寄り駅でのこの”やる気”のなさ。「地方創生」を声高に叫ぶ政治家の皆さんに、ぜひ視察していただきたいと思いました(とくに栃木県立足利高校出身の茂木 敏充氏)。さて、今回は7月に鳴り物入りで事業をスタートした「Amazonファーマシー」について書いてみたいと思います。8月にある病気で医療機関を受診し、せっかくだからとAmazonファーマシーを利用してみました。開始からまだ1ヵ月弱だったためか、現場の薬局もAmazonのカスタマーサービスの窓口もグダグダで、今後の事業展開に少なからぬ不安を感じました。薬剤師によるオンライン服薬指導を受けた後で自宅などで処方薬を受け取るシステムAmazonがAmazonファーマシーの事業開始を発表したのは7月23日です。Amazonショッピングアプリをプラットホームにして、日本国内でオンライン服薬指導から処方薬の配送までのサービスが利用できるというものです。具体的には、スマートフォンのAmazonショッピングアプリ上で、電子処方箋の「処方内容(控え)」の用紙、または「引換番号」の写真を撮りアップロード。その後、ビデオ通話で薬剤師によるオンライン服薬指導を受けた後に自宅などで処方薬を受け取る、という流れです。配送方法は通常のAmazonによる配送ではなく、薬局側が独自に手配する仕組み。温度管理や麻薬・向精神薬など、流通上の管理が必要な薬剤は、薬局側が店舗での受け取りを判断する場合があるとのことです。利用できる薬局は7月23日のサービス開始時点で、アインホールディングス、ウエルシアホールディングス、クオールホールディングス、新星堂薬局、中部薬品、トモズ、ファーマみらい、薬樹、ユニスマイルの各グループ薬局としています。Amazonは薬局側から初期費用や月額費用などは徴収せず、患者側の手数料で事業を賄うとのことです。また、メドレーが提供している患者向け総合医療アプリ「CLINICS」と連携し、診療から薬の配送までをオンライン上で一気通貫で利用できるとのことです。Amazonファーマシーはパソコンでは利用できずスマートフォンのみ8月某日、とある医療機関で電子処方箋を発行してもらった私は、帰宅してからパソコンで近隣のウエルシア薬局を探し出し、そこを利用しようと考えました。パソコンを立ち上げていたので、そのままAmazonサイトに行き、電子処方箋の「処方内容(控え)」をアップロードしようとしたのですが、まずそこでスタック。Amazonファーマシーのシステムはパソコンでは利用できず、スマートフォンのAmazonショッピングアプリ上でしか使えないからです。気を取り直して、スマートフォンのアプリから近隣のウエルシア薬局の店舗を選ぼうと思ったのですが、なんとそこの店舗が出てきません。まだ全店舗対応というわけではないようです。ということで、少々遠い店舗を選択、電子処方箋の「処方内容(控え)」をアップロードしてオンライン服薬指導の時間を予約しました。薬は今日中に欲しいので、1時間後にしました。オンライン服薬指導のシステムが立ち上がらず電話で服薬指導オンライン服薬指導の予約時間になり、スマートフォンを持って待機しましたが、5分経っても服薬指導が始まりません。これは困ったなと思っていたところに、予約したウエルシア薬局の薬剤師から私のスマートフォンに電話がかかってきました。「オンライン服薬指導のシステムが立ち上がらないので、電話で服薬指導をしたい」ということで、会話による簡単な服薬指導を受けました。その後で私の方から「薬は今日欲しいので店舗に取りに行きます。配送でなくてもいいです」と伝えました。すると薬剤師は「システム上、配送料はもう課金されています」と言われました。「それはないんじゃないですか?」と言ったのですが、「Amazonのシステムで決済されてしまっているので現状、取り消せません」と繰り返されるだけ。仕方がないので、「配送料はいいですからとりあえず取りに行きます」と行って電話を切り、店舗に向かいました。「代金はショッピングアプリ上で決済されてしまっているので、店舗ではどうしようしようもない」本来なら、服薬指導後に配送か店舗受け取りかを決められるようになっているはずです。店舗に行って聞いてみると、「通常、オンライン服薬指導の画面でその選択ができるはずだが、今回はそのシステムが稼働せず、電話による指導が終わると、配送料660円も課金されていた」とのこと。「代金はAmazonショッピングアプリ上で決済してしまっているので、店舗ではどうしようしようもない」と言われてしまいました。また、「オンライン服薬指導ができなかったのは店舗のせいか、Amazonのせいかもわからない」とも。とりあえず660円は諦めて、薬を持ってとぼとぼと家路につきました。660円返金されるも「薬局のミスだったのか、Amazonの問題だったのかわからない」660円(吉野家の牛丼並盛とお新香が買えます)をどうしても取り返したい考えた私は、家に着いてからパソコンでAmazonファーマシーのカスタマーサービスの電話番号(通常のショッピングとは別の窓口でした)を探し出し、電話をかけて担当者に起こった事柄を説明しました。しかし、おそらくバイトであろう担当者にいくら説明しても明快な答えが返ってきません。挙句の果て、「上の者と協議して来週、またかけ直す」と言われました。金曜だったので月曜まで待て、ということのようでした。翌週月曜、その担当者から電話がかかってきましたが、再度起こった事柄や店舗名をヒアリングするだけで、660円返金されるかどうかの答えは得られず、またまた「再度連絡する」と伝えられたのみでした。事態が動いたのはその3日後です。今度は薬を受け取ったウエルシア薬局の店舗から電話がかかって来ました。「660円を店舗で返金するので来て欲しい」とのことでした。というわけで、Amazonファーマシーにぼられそうになった660円は無事返ってきました。ウエルシア薬局の薬剤師に聞くと、相変わらず原因は不明で、「薬局のミスだったのかAmazonのシステムの問題だったのかまだわからない」とのことでした。660円の返金はAmazonとウエルシア本部のやり取りで決まったようです。当日に薬を受け取れない点は大きなネックというわけで、カスタマーハラスメントを起こしそうになるくらいイラついたAmazonファーマシーの「660円返金問題」ですが、システムの未完成ぶりと、カスタマーサービスの脆弱ぶり(電話対応にあたる人が事業内容を十分理解していない)を実感した次第です。メディアなどは、Amazon自体は医薬品在庫や店舗、薬剤師を持たないこのシステムをほめそやしますが、実際に利用してみると、利用者が当日に薬を受け取れない点は大きなネックだと感じます。風邪などで今すぐ熱を下げたいときなどは、翌日の薬剤到着まで待つのはつらいでしょう。一方、いつも飲んでいる生活習慣病の薬剤を配送してもらったり、リフィル処方で活用したりする分にはいいかもしれません。8月21日付日本経済新聞は「『Amazon処方薬」が問う医療DXの遅れ』と題する社説を掲載、「サービスの利用に必要な電子処方箋の発行に応じる病院や診療所はまだわずか」だとして、調剤業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)化のためにも「電子処方箋が医療のデジタル対応の基幹機能の一つであることを考えれば、期限を区切って処方箋を紙から電子に全面移行することも検討すべきだ」と書いていますが、並行してデリバリーの部分、薬の配送の効率化・迅速化も進めるべきでしょう。「医療機関から自宅に帰ったら薬がすぐ届く」というのが一つの理想像Uberのように薬も即時配送が実現すれば、電子処方箋やAmazonファーマシーの業態もそこそこ普及していくのではないでしょうか。「医療機関から自宅に帰ったら薬がすぐ届く」というのが一つの理想像だと思います。そのためには、服薬指導の効率化も検討する必要がありそうです。「服薬指導なんて、薬剤情報提供書を渡すだけで実質何もしていないのだから、本当に必要な時以外は“なし”にしてもいいのに」という意見を述べる人もいます(「第126回 アマゾン処方薬ネット販売と零売薬局、デジタルとアナログ、その落差と共通点(前編)」参照)。その部分にも思い切ってメスを入れてこそ、真の調剤業務のDXが実現するのはないかと思います。

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わが国初のダニ媒介性脳炎予防ワクチン「タイコバック水性懸濁筋注」【最新!DI情報】第23回

わが国初のダニ媒介性脳炎予防ワクチン「タイコバック水性懸濁筋注」今回は、組織培養不活化ダニ媒介性脳炎ワクチン(商品名:タイコバック水性懸濁筋注0.5mL/小児用水性懸濁筋注0.25mL、製造販売元:ファイザー)を紹介します。本剤はわが国初のダニ媒介性脳炎の予防ワクチンであり、致死的な経過および後遺症の予防が期待されています。<効能・効果>本剤は、ダニ媒介性脳炎の予防の適応で、2024年3月26日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>初回免疫の場合、16歳以上には1回0.5mL、1歳以上16歳未満には1回0.25mLを3回、筋肉内に接種します。2回目接種は1回目接種の1~3ヵ月後、3回目接種は2回目接種の5~12ヵ月後に接種します。免疫の賦与を急ぐ場合には、2回目接種を1回目接種の2週間後に行うことができます。追加免疫の場合、16歳以上には1回0.5mL、1歳以上16歳未満には1回0.25mLを筋肉内に接種します。<安全性(0.5mL製剤の場合)>重大な副反応として、ショック、アナフィラキシー、多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、脊髄炎、横断性脊髄炎、脳炎(いずれも頻度不明)があります。その他の頻度の高い副反応として、注射部位疼痛(35.0%)、下痢(10%以上)があります。10%未満の副反応には、注射部位出血、注射部位腫脹などの局所症状、上気道感染、浮動性・回転性めまい、悪心、嘔吐、腹痛、皮膚そう痒症、発疹などがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ダニ媒介性脳炎を予防するためのワクチンです。2.ワクチン接種したすべての人で、ダニ媒介性脳炎ウイルスへの感染が完全に予防されるわけではありません。マダニに咬まれるリスクが高い環境下では、虫よけ剤の使用や皮膚の露出を少なくするなど、基本的な感染リスク低減対策をとってください。3.接種は、3回の接種を行う「初回免疫」と必要に応じて接種を行う「追加免疫」があります。初回免疫1回目の接種のみでは、発症の予防を期待することはできません。4.ショック、アナフィラキシーが現れることがあるので、医師の監視下で接種を行います。接種後、少なくとも15分間は座って安静にしてください。<ここがポイント!>ダニ媒介性脳炎(tick-borne encephalitis:TBE)は、TBEウイルスを保有するマダニに咬まれることで感染・発症します。TBEは重度の急性臨床経過をたどり、日本に多い極東亜型ウイルスの感染では、7~14日の潜伏期間後に頭痛、発熱、悪心、嘔吐が現れ、進行すると精神錯乱や昏睡、痙攣などの脳炎症状が生じることがあります。致死率は20%以上で、生存者であっても30~40%に後遺症が残るとされています。TBEに対する抗ウイルス治療はなく、対症療法が中心となります。本剤はTBEを予防するためのワクチンで、TBEリスク地域でレクリエーションや農業・林業などの野外活動でマダニに咬まれるリスクがある人に接種が推奨されます。ただし、接種したすべての人で感染が予防されるわけではないので、マダニに咬まれるリスクが高い場合には、虫よけ剤の塗布や防護服の着用または皮膚露出を避けるなど、感染リスク低減のための基本的な対策が重要です。本剤は、TBEウイルスをSPF発育鶏卵から採取したニワトリ胚初代培養細胞で増殖させ、得られたウイルスをホルムアルデヒドで不活化した後、精製し、安定剤およびアジュバント(水酸化アルミニウム懸濁液)を加えたものです。TBEウイルスに感染歴のない日本人健康成人および健康小児を対象とした国内第III相試験(B9371039試験:初回免疫)において、本剤を3回接種した4週間後にTBEウイルス中和抗体陽性率は成人および小児とも90%以上に達しました。また、追加免疫における海外第IV相試験(223試験)や免疫持続性における海外第IV相試験(690701試験、691101[B9371010]試験)で本剤の有効性が確認されています。なお、ダニ媒介性脳炎ワクチンは、医療上の必要性が高いワクチンとして厚生労働省からの要請を受けて開発されました。

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第232回 食塩水点鼻で風邪の小児が2日早く回復

食塩水点鼻で風邪の小児が2日早く回復食塩水の点鼻が風邪の小児の回復を早めました。英国・エジンバラ大学のSteve Cunningham氏が欧州呼吸器学会(European Respiratory Society:ERS)年次総会で発表したELVIS-Kids試験結果によると、親が塩を溶かして作る濃い目の食塩水の点鼻でくしゃみや鼻詰まりなどの風邪症状が、そうしなかった小児に比べて2日早く治まりました1,2)。Cunningham氏によると、子供は1年に多ければ10~12回も風邪を引きます。風邪症状を引き起こしうるウイルスは200種を超えます3)。ゆえにそれら全般を網羅してかつ有効な治療を開発するのは困難であり、アセトアミノフェンやイブプロフェンの服用などの治療のほとんどは風邪の期間の短縮ではなく症状を緩和するのみです。Cunningham氏いわく、風邪の回復を早めうる治療はありません。しかし例外的に有望な効果を示しているものがあります。その1つが食塩水の点鼻です。食塩水の鼻への注入や噴霧が症状を減らし、回復を早めることや他の人へ移してしまうのを減らしうることが成人患者を募った先立つ試験で示唆されています4,5)。また、ELVIS-Kids試験を率いたSandeep Ramalingam氏によると、南アジアの人は風邪治療としてしばしば食塩水で鼻をすすいだりうがいをしたりしています。同氏はその治療が本当に効くのかどうかを確かめたいと思っていました。Ramalingam氏の願いがかなって実現したELVIS-Kids試験は6歳までの小児407例を募り、濃い目の食塩水を点鼻する治療といつもの手当てが比較されました。食塩水を点鼻する群の親には海塩を手渡し、それを溶かして2.6%の食塩水を作り、子への1日4回以上の点鼻を症状が解消するまで続けるように指示しました。食塩水の点鼻をしない群の親は子に店頭販売の薬を与えたり、体を休めたりすることを促すなどのいつもの手当てをしました。被験者の小児407例のうち風邪を引いたのは301例で、食塩水を点鼻する群に割り振られたその約半数の150例の風邪症状は、食塩水の点鼻なしの151例に比べて2日早く解消しました。食塩水点鼻群の風邪症状の期間は6日間、食塩水の点鼻なしの群は8日間でした。また、食塩水点鼻群の小児は薬の使用が少なくて済みました。食塩水の点鼻は他の人に風邪を移し難くする作用もあるようで、食塩水点鼻小児の同居人は風邪症状の発生をより免れていました。食塩水点鼻小児の同居人のうち風邪症状を発生したのは半数に満たない41%でしたが、食塩水点鼻なしの小児の同居人はおよそ5人に3人(58%)が風邪を引きました。食塩水点鼻治療の親の反応は良く、そのおかげで子が早く回復したと82%の親が判断しました。また、同じく8割強の81%の親は次も食塩水を点鼻すると言っています。塩は言わずもがなナトリウムと塩素でできています。その塩素が点鼻食塩水の効果を担うのかもしれません。鼻や気管の内側を覆う細胞は塩素を使って抗ウイルス作用を担う次亜塩素酸を作ります。食塩水などで塩素を増やすことはそれら細胞の次亜塩素酸生成を促し、その結果ウイルス複製が収まり、ウイルス感染期間が短縮し、症状の解消を早めうるとCunningham氏は説明しています。ただし、科学ニュースNewScientistによると、米国・バンダービルト大学のWilliam Schaffner氏はその説明を疑っています。ただの水やより低濃度の食塩水を投与する群が試験にあったとしたら、点鼻食塩水がウイルスを討って回復を早めたのか単に鼻粘膜を潤すことで症状を緩和したのかがわかったかもしれないと同氏は述べています6)。参考1)Saline nasal drops reduce the duration of the common cold in young children by two days / European Respiratory Society2)A randomised controlled trial of hypertonic saline nose drops as a treatment in children with the common cold (ELVIS-Kids trial)/ European Respiratory Society (ERS) Congress 20243)About Common Cold / CDC4)Little P, et al. Lancet Respir Med. 2024;12:619-632. 5)Ramalingam S, et al. Sci Rep. 2019;9:1015.6)Evidence mounts that saline nasal drops and sprays help treat colds / NewScientist

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小児の風邪への食塩水点鼻、有症状期間を2日短縮か/ERS2024

 食塩水は風邪症候群の症状の軽減に用いられることがあるが、小児における有効性は明らかになっていない。そこで、上気道感染症を有する小児に対する高張食塩水の点鼻の有用性を検討する無作為化比較試験「ELVIS-Kids試験」が実施された。その結果、高張食塩水を点鼻することで有症状期間の中央値が2日短縮することが示された。2024年9月7~11日にオーストリア・ウィーンで開催された欧州呼吸器学会(ERS International Congress 2024)において、英国・エディンバラ大学のSteve Cunningham氏が報告した。 本研究は、0~6歳の小児407例を対象とした。高張食塩水を点鼻する群(食塩水群)と通常どおりの治療を行う群(通常治療群)に1対1に無作為に割り付け、上気道感染症の発症がみられた301例に対して割り付け治療を実施した。食塩水群は、各鼻孔に3滴ずつ1日4回以上の高張食塩水(2.6%)の点鼻を症状の改善まで行った。評価項目は、日誌評価に基づく上気道感染症の症状、喘鳴などとした。 主な結果は以下のとおり。・有症状期間中央値は、通常治療群が8日(四分位範囲:5~11)であったのに対し食塩水群は6日(同:5~9)であり、食塩水群が有意に短縮した(p=0.004)。症状が認められてから24時間以内に点鼻を開始したサブグループでは、食塩水群で有症状期間が有意に短縮したが(p=0.002)、24時間超経過してから点鼻を開始したサブグループでは、有症状期間の短縮はみられなかった。・ライノウイルスのみが検出されたサブグループにおいて喘鳴がみられた割合は、通常治療群が18%であったのに対し食塩水群は4%であり、食塩水群が有意に低かった(p=0.014)。・対象の小児の家族に上気道感染症の発症がみられた割合は、通常治療群が61%であったのに対し食塩水群は46%であり、食塩水群が有意に低かった(p=0.008)。・市販薬の使用は、通常治療群が36%であったのに対し食塩水群は25%であり、食塩水群が有意に少なかった(p=0.04)。

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国内初承認のダニ媒介性脳炎ワクチンを発売/ファイザー

 ファイザーは9月13日付のプレスリリースにて、成人および小児におけるダニ媒介性脳炎の発症を予防する国内初の承認ワクチン「タイコバック(R)水性懸濁筋注0.5mL」および「タイコバック(R)小児用水性懸濁筋注0.25mL」(一般名:組織培養不活化ダニ媒介性脳炎ワクチン)を、同日より発売したことを発表した。 本剤は、1970年代にIMMUNO社が開発した不活化ダニ媒介性脳炎ウイルスワクチンで、最初に市販された組織培養由来ダニ媒介性脳炎ワクチン。その後の改良を経て、ダニ媒介性脳炎の流行国を中心に使用されている。ファイザーは、2015年にバクスターから本剤の製造販売承認を承継した。 ダニ媒介性脳炎は、ダニ媒介性脳炎ウイルス(tick-borne encephalitis virus:TBEV)を保有するマダニに刺咬されることで感染する疾患だ。急性ダニ媒介性脳炎の経過や長期的転帰は、感染したTBEVの亜型により異なる。日本では、北海道で極東亜型ウイルスが分布していると報告されており、感染すると徐々に頭痛、発熱、悪心、嘔吐などの髄膜炎症状が現れ、脳脊髄炎などを発症すると、精神錯乱、昏睡、痙攣、麻痺などの中枢神経症状を呈する。極東亜型の致死率は20%以上で、生存者の30~40%に神経学的後遺症がみられるなど、最も重篤な経過をたどると報告されている1)。しかし、有効な治療法がなく、本ワクチンによる予防が重要な役割を担うと見込まれている。 海外では、英国、ノルウェー、フランス、ドイツ、ロシアを含むヨーロッパ、東アジアなどで毎年1万~1万5,000件の発生が報告されているものの、日本では2018年に発生した国内5例目以降の報告はなかった。しかし、2024年6月に札幌市で6例目、7月に函館市で7例目の発生が報告された2)。これまでに国内で報告された7例はすべて北海道で発生しているが、原因不明の中枢神経系疾患患者の血液を後方視的に調査した報告では、東京都、岡山県、大分県でTBEV抗体陽性例が示されている3,4)。また、栃木県、島根県、長崎県などにおいても抗TBEV抗体を保有する動物が確認されていることから、これらのウイルスが国内に広く分布していることが示唆されている4,5)。ダニ媒介性脳炎は、疾患認知や検査体制が十分に整っていないなどの理由から、急性脳炎などを発症しても診断に至っていない可能性が示唆されており、本邦におけるダニ媒介性脳炎の実態は十分に把握されていない。 本剤は1970年代から欧州を中心に広く使用されており、本邦では「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」にて医療上の必要性が高い医薬品と評価され、2019年9月19日にファイザーが厚生労働省から本剤の開発要請を受けた。この開発要請を受け同社が実施した国内第III相試験の結果などに基づき、2024年3月26日に承認された。本剤の接種により、TBEVに感染する可能性のある地域居住者や、ダニ媒介性脳炎の流行地域への渡航者の感染を予防することが期待される。<用法及び用量>タイコバック(R)水性懸濁筋注0.5mL・接種対象者:16歳以上の者・初回免疫の場合、1回0.5mLを3回、筋肉内に接種する。2回目接種は、1回目接種の1~3ヵ月後、3回目接種は、2回目接種の5~12ヵ月後に接種する。免疫の賦与を急ぐ場合には、2回目接種を1回目接種の2週間後に行うことができる。・追加免疫の場合、1回0.5mLを筋肉内に接種する。[用法及び用量に関連する注意]・追加免疫について、必要に応じて3回目接種の3年後に追加免疫を行い、以降は16~60歳では5年ごと、60歳以上では3年ごとの追加免疫を行うこと。・0.25mL接種対象者には使用しないこと。タイコバック(R)小児用水性懸濁筋注0.25mL・接種対象者:1歳以上16歳未満の者・初回免疫の場合、1回0.25mLを3回、筋肉内に接種する。2回目接種は、1回目接種の1~3ヵ月後、3回目接種は、2回目接種の5~12ヵ月後に接種する。免疫の賦与を急ぐ場合には、2回目接種を1回目接種の2週間後に行うことができる。・追加免疫の場合、1回0.25mLを筋肉内に接種する。[用法及び用量に関連する注意]・追加免疫について、必要に応じて3回目接種の3年後に追加免疫を行い、以降は5年ごとの追加免疫を行うこと。・0.5mL接種対象者には使用しないこと。水性懸濁筋注0.5mL、小児用水性懸濁筋注0.25mL共通事項・2回目接種意向に接種が中断された場合は、できるだけ速やかに接種し、以降の接種を継続すること。・医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができる。・初回免疫完了前にダニ媒介性脳炎ウイルスに感染するリスクがある場合(ダニ媒介性脳炎流行時期における流行地域への渡航等)は、その前に本剤を2回接種すること。

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第210回 在宅医療の看取り件数が急増、訪問看護も利用拡大、コロナ禍で在宅ケアが進展/慈恵医大

<先週の動き>1.在宅医療の看取り件数が急増、訪問看護も利用拡大、コロナ禍で在宅ケアが進展/慈恵医大2.2025年度専攻医募集数のシーリングは継続、シーリング逃れに対策を/厚労省3.大学病院の医師、残業時間の上限緩和申請は4割に、研究時間不足が課題/全国医学部長病院長会議4.医療訴訟の発生率、東京・大阪が高く、茨城、福島、岐阜などは低め/東邦大5.働き方改革の影響で9大学病院が医師派遣の取り止めや中止を検討/全国医学部長病院長会議6.「疲労回復」謳う美容医療、治療効果にエビデンスなし、クリニックを提訴/消費者機構日本1.在宅医療の看取り件数が急増、訪問看護も利用拡大、コロナ禍で在宅ケアが進展/慈恵医大新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、在宅医療における看取りが急増したことが、東京慈恵会医科大学の青木 拓也准教授らの研究で明らかになった。調査は、2020年4月の緊急事態宣言を境に、終末期医療の利用や自宅での看取りが急増したことを示している。病院での受診控えや面会制限が影響し、在宅でのケアが選ばれるケースが増えたと考えられる。研究チームは、厚生労働省のNDBデータベースを用いて2019~2022年にかけて在宅医療サービスの利用動向を分析。訪問診療に大きな変化はみられなかったが、往診や終末期医療は増加傾向にあった。また、訪問看護の利用件数も増加しており、とくに医療保険適用型の訪問看護費が過去10年間で5.4倍に増加していることが、共同通信の分析で明らかになった。利用者数が4倍近く増加したことに加え、1人当たりの費用も1.4倍に増えたことが、費用増加の主因とされる。医療保険適用型の増加幅は介護保険適用型を大幅に上回っており、入院患者の早期在宅復帰を促す政策や、医療保険には利用限度額がないことが背景にある。訪問看護を巡っては、精神科や難病患者を対象にした診療報酬の過剰請求が指摘されており、利益を目的にした一部事業者による制度の乱用が費用増加の一因とも考えられている。財務省はこの問題を医療財政の圧迫要因として問題視しており、今後の対策が注目される。参考1)自宅でのみとり急増 緊急事態宣言境に、終末期医療も 受診控え、面会制限影響か・慈恵医大など(時事通信)2)医療保険の訪問看護費5倍 10年間、1人当たりも増加(共同通信)2.2025年度専攻医募集数のシーリングは継続、シーリング逃れに対策を/厚労省厚生労働省は、9月9日に医師専門研修部会を開き、日本専門医機構が提案した2025年度の専攻医募集に関するシーリング案を審議し、特別地域連携プログラムにおける新要件を却下する方針を決定した。この結果、2024年度と同様のシーリングを継続することになった。新要件は、医師充足率が0.7以下(小児科は0.8以下)の都道府県で医師を1年以上派遣する案だったが、地域内での医師偏在を助長する恐れがあるとの意見が相次ぎ、採用を見送った。今後、1ヵ月以内に厚生労働大臣の意見として正式に日本専門医機構に伝達する予定。一方で、「シーリング逃れ」と呼ばれる問題が引き続き指摘されている。これは、シーリング対象外のプログラムが、実際にはシーリング対象地域で長期間の研修を行う形態を指し、その実態把握と報告が求められている。また、特別地域連携プログラムに関しては、地域偏在是正の実効性を検証し、今後の改良が提案される予定。厚労省は、医師偏在是正に向けた総合的対策を2024年末までに策定する予定であり、9月5日に開いた社会保障審議会・医療部会では、医師偏在是正に向けた対策を議論し、偏在是正のために若手医師だけに負担をかけるのではなく、即戦力となる40歳以上の医師に対する施策の強化が求められている。参考1)令和7年度専攻医募集におけるシーリング案に対する厚生労働大臣からの意見案(厚労省)2)医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージの骨子案について(同)3)2025年度プログラム募集専攻医シーリング数(案)(日本専門医機構)4)2025年度の新専門医目指す専攻医募集、「玉突き案」は却下、「シーリング逃れ」の実態を解明-医師専門研修部会(Gem Med)5)医師偏在対策の総合パッケージ策定に向け医療部会で議論スタート「若手医師による偏在対策はもう限界」、少数区域に中堅医師の派遣求める声も(日経メディカル)3.大学病院の医師、残業時間の上限緩和申請は4割に、研究時間不足が課題/全国医学部長病院長会議9月11日に全国医学部長病院長会議は、医師の働き方改革施行後の令和6年4月の状況について、大学病院の医師の働き方改革に関するアンケート調査結果を発表した。これによると、大学病院に勤務する医師のうち、時間外労働の上限緩和を申請した医師が4割に達したことが明らかになった。これは2024年4月に導入された医師の働き方改革に伴い、年間960時間の時間外労働上限が1,860時間に引き上げられる特例措置を活用した結果で、2022年の調査時の34%から増加している。調査は全国82の大学病院を対象に行われ、約4万2,000人の医師のうち41%が特例措置を申請していることが判明した。また、医師の約56%が週平均5時間以下の研究時間しか確保できていないことが指摘され、とくに20歳代の医師では96%がこの状況にある。若手医師が診療業務に追われ、十分な研究時間が確保できていない実態が浮き彫りとなり、医療の将来に重大な影響を及ぼす可能性があると懸念されている。一方、労働時間の短縮は徐々に進んでおり、週50時間未満で勤務する医師の割合は49.6%となり、2022年の調査よりも8.1ポイント増加している。複数主治医制の導入や業務の時間内完了を進める取り組みが功を奏しているが、週60時間以上働く医師が依然として3割を超えており、とくに外科や小児科での改善が求められている。また、大学病院の給与に関しては、20歳代医師の87%、30歳代では51%が年収500万円未満であることが明らかとなり、国立病院や一般医療機関と比べて低い水準にあることが問題視されている。働き方改革を進めるためには、ICTの活用やタスクシフトの推進が求められており、診療報酬による支援が必要とされている。参考1)大学病院の医師の働き方改革に関するアンケート調査結果2)医師の残業時間、4割が上限緩和申請 大学病院団体調べ(日経新聞)3)若手医師の研究時間が少なく「医療の将来に重大な影響」 医師の働き方改革で調査(産経新聞)4)週50時間未満勤務の大学病院医師49.6% 4月時点 22年7月から8.1ポイント増(CB news)4.医療訴訟の発生率、東京、大阪が高く、茨城、福島、岐阜などは低め/東邦大学東邦大学薬学部の平賀 秀明講師らの研究グループは、最高裁判所の協力を得て2005~2021年にかけて全国の地方裁判所に提訴された医事関係訴訟の都道府県別発生率を調査した結果、発生率に地域差があることを明らかにした。今後、地域ごとの医療安全対策や医療事故後の患者応対、訴訟実務における指針として活用されることが期待される。調査によると、人口100万人当たりの医事関係訴訟発生率が全国平均(6.30件/年)と比べて有意に高い地域は東京都(12.97件/年)および大阪府(10.99件/年)。逆に、発生率が有意に低い地域は茨城県(1.77件/年)、福島県(1.93件/年)、岐阜県(2.50件/年)など12地域に及ぶ。また、医療機関1,000施設当たりや医師・歯科医師1,000人当たりの発生率においても、東京と大阪が高く、茨城、福島、岐阜などでは低い傾向がみられた。この地域差の要因については、医療機関側の過誤が少ないことや、弁護士不足による訴訟へのアクセスの違いが影響している可能性が指摘され、追加解析が進められている。今後、地域ごとの実情に応じた医療訴訟対策が求められる。この研究は、2024年7月31日に『医療の質・安全学会誌』に公開された。参考1)最高裁判所の協力を得て医事関係訴訟の都道府県別発生率を調査~発生率における地域差の存在が明らかに~(東邦大学)2)東邦大学 医事関係訴訟の都道府県別発生率に地域差 東京、大阪が高く、茨城、福島、岐阜等12地域は低い(ミクスオンライン)5.働き方改革の影響で9大学病院が医師派遣の取り止めや中止を検討/全国医学部長病院長会議2024年4月に始まった医師の働き方改革により、全国9つの大学病院が他の医療機関への医師派遣を取りやめ、または中止を検討していることが明らかになった。この調査は、全国医学部長病院長会議が82の大学病院を対象に実施したアンケート結果から判明したもので、働き方改革に伴う時間外労働の制限が影響を及ぼしている。調査結果によると、82の大学病院のうち、9つの病院が派遣中止や検討をしており、24の病院では勤務体制の見直しが進められている。具体的には、勤務間インターバルの導入などにより、医師の負担軽減を図る取り組みが行われている。一方、53の病院では現時点でとくに派遣に関する変更はないとされている。働き方改革により、医師の労働時間は減少傾向にあるが、とくに若手医師は診療業務、教授クラスの医師は研究業務に影響が出ている。若手医師の78%が診療時間の増加を感じており、教授の66%が研究時間の減少を挙げている。これにより、研究の遅れや診療体制の見直しが必要となっている。全国医学部長病院長会議の相良 博典会長は、「大学病院は地域医療にとって重要な存在であり、派遣中止が広がれば医療崩壊のリスクが高まる」と懸念を表明。今後、国に対して待遇の改善や医師確保に向けた対策を求めていく考えを示している。医師派遣の中止や制限が進むことで、地域医療に大きな影響を与える可能性があり、早急な対応が求められている。参考1)大学病院の医師の働き方改革に関するアンケート調査結果(全国医学部長病院長会議)2)全国9大学病院 ほかの医療機関への医師派遣 取りやめ 中止検討(NHK)3)医師派遣の取りやめ・中止検討、大学病院1割超で 4月時点 AJMC調査(CB news)6.「疲労回復」謳う美容医療、治療効果にエビデンスなし、クリニックを提訴/消費者機構日本特定適格消費者団体「消費者機構日本」は9月10日、東京都渋谷区のクリニック「サカイクリニック62」を相手取り、同クリニックが提供する自由診療に関するインターネット広告の表示が景品表示法における「優良誤認表示」に該当するとして、広告の停止を求める訴訟を東京地裁に起こした。クリニックは「疲労回復」や「アンチエイジング」などの効能を謳ったが、これらの効果には医学的なエビデンスがなく、厚生労働省も安全性に関する注意喚起を行っていた。提訴の対象となったのは、点滴や温熱療法など8種類の治療法に関する広告で、これらに関する効果を裏付ける客観的な医学的証拠がないことが問題視された。とくに「エクソソーム点滴療法」などの治療法は、その安全性が確認されていないとされており、消費者団体は「このままの状態が続くことが患者の利益を損なう」と指摘している。この訴訟は、医療機関による広告が景品表示法違反に問われた初のケースとなる。自由診療は保険診療とは異なり、高額で提供されることが多く、効能のエビデンスが不十分なまま提供される治療が広がっている現状がある。今回の訴訟は、こうした問題を是正し、消費者の利益を保護する狙いがある。また、訴訟に至るまでの経緯として、消費者機構日本が、4月にクリニックへ広告の削除を要請したものの、クリニック側のウェブサイトの改修対応などが遅れたこと、そして、当初「来年に改訂予定」として広告の表示を続けていたが、最終的には削除作業を進めていることを公表した。今回のケースは、自由診療分野における医療広告の規制が緩く、消費者保護が不十分であることを示しているとされ、今後も消費者機構日本は、同様の訴訟を展開し、他の医療機関に対しても適切な表示を促す姿勢を示している。参考1)再生医療・免疫療法と称する自由診療行為を行う医療社団法人サカイクリニック62(渋谷区)に対し、インターネット上の広告表示が優良誤認表示に該当するとして差止請求訴訟を提起しました(消費者機構日本)2)医療広告で「疲労回復」効能なし 消費者団体が東京・渋谷のクリニック提訴(産経新聞)3)「アンチエイジング」「睡眠の質改善」…自社サイトで優良誤認表示にあたる表現があるとしてクリニック側を提訴 原告「自由診療分野はやりたい放題」(TBS)4)「自由診療は野放しになっている」 “ネット広告”が「優良誤認表示」に該当するとして、消費者団体が医療クリニックに差し止め請求(弁護士JPニュース)

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アニメ「インサイド・ヘッド2」(その1)【なんで恥ずかしくなるの?なんで恥ずかしさは「ある」の?(社会的感情)】Part 1

今回のキーワード恥ずかしさ(羞恥心)悔しさ(後悔)うらやましさ(羨望)ねたましさ(嫉妬心)うぬぼれ(傲慢)誇り(自慢)あわれみ(同情)さげすみ(軽蔑)自分を恥ずかしく思う一方で、そうじゃない人をうらやましく思ったり…逆に自分はモテると思う一方で、そうじゃない人を気の毒に思ったり…このように、皆さんは人間関係で沸き起こる感情に日々とらわれていませんか? この感情は、社会的感情と呼ばれています。なぜこのような感情は出てくるのでしょうか? そもそもなぜこのような感情は「ある」のでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、アニメ「インサイド・ヘッド2」を取り上げます。このアニメに新たに登場する「大人の感情」のキャラクターを通して、社会的感情の機能とその起源を掘り下げてみましょう。なお、すでに「インサイド・ヘッド1」の記事で、基本感情について解説しました。また、この続編記事では自由意志について解説しました。詳細は関連記事1、関連記事2をご覧ください。社会的感情の機能とは?インサイド・ヘッド1に引き続き、舞台は再びライリーの頭の中。そこでは、ヨロコビ、ビビリ、イカリ、ムカムカ、そしてカナシミの5つの感情のキャラクターたちが、変わらず彼女をずっと見守り続けていました。そんな中、ライリーが13歳になり思春期に入った時、さらに4つの「大人の感情」のキャラクターが現れます。それではまず、そのうちの2つの「大人の感情」のキャラクターの特徴を通して、私たちの社会的感情の機能をまとめてみましょう。(1)ハズカシ―羞恥心ハズカシは、大柄でショッキングピンクの色。パーカーを着ており、恥ずかしくなった際にはそのパーカーのフードで顔を隠す癖があります。ヨロコビと握手する時、緊張から手汗がかなりありました。ライリーがホッケー合宿で憧れの先輩ヴァルに初めて会った時、舞い上がってぎこちないダンスをしてしまいますが、この時にハズカシはライリーの顔を赤くさせます。この社会的感情は、まさに恥ずかしさ(羞恥心)です。顔を隠すのは、いわゆる「穴があったら入りたい」「その場から消えたい」という気持ちで、自己縮小感と呼ばれています1)。大柄なハズカシだからこそ、小さくなろうとするギャップがおもしろいです。これは、社会的な欲求の1つである、相手(社会)から好かれたいという愛情欲求(自己肯定感)が満たされていないことへの反応です。つまり、羞恥心とは、とくに見た目や立ち振る舞いなどのもともとの資質において、相手(集団)から受け入れられない状況への不快感です。逆に言えば、そうならないようにするため、相手に好かれるような見た目や立ち振る舞いをするようになります。これが、恥ずかしさの心理の機能です。恥ずかしさとよく似た社会的感情として、悔しさ(後悔)があります。これは、もう1つの社会的な欲求である、相手(社会)に期待されたいという承認欲求(自己効力感)が満たされないことへの反応です。とくに能力や努力において、相手(集団)から受け入れられない状況への不快感です。逆に言えば、そうならないようにするため、相手の期待に応えようと努力するようになります。これが、悔しさの心理の機能です。また、時として申し訳なさという罪悪感に発展します。たとえば、ライリーは更衣室で一緒にいた仲良しの友達とついはしゃいでしまい、気が抜けているとコーチに目を付けられたシーン。そのために、チームメンバー全員がラインダッシュさせられますが、その後にライリーはヴァルに謝りに行きます。これがまさに気が抜けていた後悔からの罪悪感です。この感情に特化したキャラクターは今回の映画には登場しておらず、この先で説明するシンパイが掛け持ちしていました。なお、恥ずかしさと悔しさは、得られないのが愛情欲求か承認欲求かという違いがありますが、日常的にはかぶっています。このシーンにしてもそうでしたが、一緒になって使われていることが多いです。(2)イイナー―羨望イイナーは、小柄で緑色。うるうるした大きな目で上目遣いをしており、まるで物欲しげな子犬のようです。ライリーがヴァルに初めて会った時、憧れのあまり、イイナーは、ヴァルのハイライトにしてある赤い髪にライリーの手を伸ばさせます。この社会的感情は、まさに「いいなあ」といううらやましさ(羨望)です。これは、相手の承認欲求が満たされていることへの反応です。相対的に言えば、自分の承認欲求が満たされていないことへの反応です。そうならないようにするため、期待に応えようと私たちは努力するようになります。これが、うらやましさの心理の機能です。そして、好感が伴えば、賞賛の心理に発展します。うらやましさとよく似た社会的感情として、ねたましさ(嫉妬心)があります。うらやましさは自分が持っていないもの(持つべきもの)を相手が持っていることへの反応であるのに対して、ねたましさは自分がもともと持っているもの(持つべきもの)を相手に取られることへの反応です。その多くがパートナーの愛情であることから、この記事では、わかりやすさを優先して、ねたましさは相手の愛情欲求が満たされてしまうことへの反応と分類します。同じく、この心理のおかげで、そうならないようにするために、パートナーなどの親しい人により好かれるかかわりをするようになります。これが、ねたましさの心理の機能です。うらやましさとねたましさの違いも、得られないのが愛情欲求か承認欲求かで分けましたが、実際はごっちゃになって使われることが多いです。ちなみに、うらやましさはポジティブなニュアンスがありますが、ねたましさはネガティブなニュアンスがあります。この点で、ねたましさのキャラクターは、今回の映画には登場していないのですが、名付けるとしたらイイナーに対して「ヤダナー」でしょう。ちょうど、仲良しの2人がライリーとは違う高校に揃って行くことを知った時の裏切られたような感情です。ねたましく、恨めしくも思うシーンですが、基本感情のカナシミが代わりに動こうとしていました。なお、ねたましさの心理の詳細については、関連記事3をご覧ください。次のページへ >>

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第113回 経鼻インフルワクチン「フルミスト」を使いますか?

フルミスト登場私は子供の頃、注射されるのが恐怖だったのですが、「全然怖くないやい!」と言いつつ強がっていました。インフルエンザワクチンは例外なく腕に注射されるため、とくに小さな子供ではなかなか大変なことがあります。さて、鼻に噴霧するタイプのインフルエンザワクチン「フルミスト®」が今年から使用されます。2003年にアメリカで、2011年にヨーロッパで認可されたもので、世界から10年以上遅れて日本でようやく認可されました。めっちゃ遅いやんけ!と思いましたが、しばらくH1N1株に対する有効性が疑問視されてきて、中央で揉まれていた時期があるようです。保存状態も含めていろいろと改善点が判明し、その後国際的にも推奨されたことが、承認の後押しとなっています。このフルミスト、針を刺さないため、「痛くない」というメリットが期待されています。対象年齢は?フルミストの対象年齢は、2歳以上19歳未満です。2歳未満の子供に対しては喘鳴のリスクが増加したという報告があり、使用が認められていません。また、国際的には49歳まで使用可能ですが、日本の薬事承認は上限19歳未満で、これも注意が必要です。要は、子供のためのワクチンなのですよ、これは。フルミストは、不活化ワクチンではなく、弱毒化したウイルスを使った「生ワクチン」なので、妊婦や免疫不全状態にある方には使用できません。もちろん、注射で用いられてきた従来の不活化ワクチンは、2歳未満でも妊婦でも接種可能です。フルミストの効果は?鼻粘膜の表面に直接免疫を成立させることから、高い感染防御効果が期待できます。とくに小さな子供に対しては、従来の注射不活化ワクチンと効果は同等で、感染の成立を約7割減らすとされています。また、重症化リスクを軽減する効果が示されています。「接種しても感染した」とおっしゃる人が一定割合いますが、全員に効果があるわけではなく、コミュニティ全体でリスクを低減する効果を期待して接種することになります。フルミストの注意点は?これも上述したように、2歳未満、妊婦、免疫不全のある人には使えないことです。需要が一番高い層には不適なので、従来の注射不活化ワクチンを使用ください。注意点としては、生ワクチンなので、経鼻接種後に鼻水や咳などの風邪症状がみられる場合があることです。そのため、喘息や鼻詰まりが強い子供では、接種を避けたほうがよいでしょう。副反応で風邪症状が出現した場合、生ワクチンなので接種から2週間程度、インフルエンザ抗原検査が「陽性」になってしまう可能性があります。この解釈には注意が必要でしょう。その他、卵アレルギーやゼラチンアレルギーのある人も避けたほうがよいとされています。費用が確定すれば、すぐにでも接種が始まるでしょうね。

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生殖補助医療で生まれた子供のがんリスクは?

 体外受精をはじめとする生殖補助医療によって生まれる子供の数は年々増え続け、日本では2021年に約7万人、出生児全体の約11.6人に1人となっている。一方で、小児がんは小児における主要な死因の1つであり、生殖補助医療に使用される治療法はエピジェネティックな障害や関連する先天奇形の可能性があるため、小児がんリスク因子の可能性が指摘されている。フランス医薬品・保健製品安全庁のPaula Rios氏らは生殖補助医療後に出生した小児と自然妊娠で出生した小児を比較し、全がんおよびがん種別にリスクを評価した。JAMA Network Open誌2024年5月2日号掲載の報告。 本コホート研究は、フランス全国母子登録(EPI-MERES)のデータを使い、2010~21年にフランスで出生した全出生児を対象とした(2022年6月30日まで追跡調査)。データ解析は2021年12月1日~2023年6月30日に行われた。生殖補助医療の新鮮胚移植(ET)、凍結融解胚移植(FET)、人工授精(AI)を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・この研究には852万6,303例の小児が含まれ、平均年齢6.4(SD 3.4)歳、男児51.2%、96.4%が単胎、12.1%が出生時に在胎週数に対して小さめの体重、3.1%が先天性異常を持っていた。・このうち生殖補助医療後に出生した小児は26万236例(3.1%)で、内訳はETが13万3,965例(1.6%)、FETが6万6,165例(0.8%)、AIが6万106例(0.7%)であった。・中央値6.7(四分位範囲:3.7~9.6)年の追跡期間中に計9,256例のがん患者が確認され、うちETが165例、FETが57例、AIが70例だった。・自然妊娠で出生した小児と比べた全がんリスクは、ET(ハザード比[HR]:1.12、95%信頼区間[CI]:0.96~1.31)、FET(HR:1.02、95%CI:0.78~1.32)、AI(HR:1.09、95%CI:0.86~1.38)のいずれも有意差は認められなかった。・一方で、急性リンパ性白血病のリスクは、自然妊娠で出生した小児と比較して、FET後に出生した小児で高かった(20例、HR:1.61、95%CI:1.04~2.50、リスク差[RD]:100万人年当たり23.2)。・さらに、2010~15年に出生した小児では、自然妊娠で出生した小児と比較して、ET後に出生した小児で白血病のリスクが高かった(45例、HR:1.42、95%CI:1.06~1.92、RD:100万人年当たり19.7)。 研究者らは「このコホート研究は、ETまたはFET後に出生した小児は、自然妊娠した小児と比較して白血病のリスクが高いことを示唆している。限られた症例数ではあるが、生殖補助医療の利用が増加し続けていることから、このリスクを今後も監視していく必要がある」としている。

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英語で「試行錯誤」は?【1分★医療英語】第147回

第147回 英語で「試行錯誤」は?《例文1》Finding the right dosage was a hit and miss process.(適切な投薬量を見つけるのは、当たり外れのあるプロセスでした)《例文2》This cancer protocol was refined through an iterative process.(この「がんプロトコール」は反復プロセスを通じて洗練されました)《解説》“trials and errors”(試行錯誤)は、「何度も試しては失敗し、その経験から学びながら、最適な解決策を見つけるプロセス」を指します。医療現場においては、新しい治療法や診断法を開発する過程で頻繁に使われる表現です。たとえば、新しい治療法の開発中、医療チームが何度も試行と失敗を重ねて効果的な治療法を見つけることがあります。また、複雑な症例を診断するには、さまざまな種類の検査が必要になることも多く、そのような状況を適切に説明することは患者の診療への理解度を高めるために重要です。「試行錯誤」に類似した表現としては、“hit and miss”(当たり外れ)という表現があり、これは「成功と失敗が混在して起こるプロセス」を示します。たとえば、「適切な投薬量を見つける」ときには、成功と失敗が混在するプロセスになるため、こうした場合は“hit and miss”が使われることが多くなります。“iterative process”(反復プロセス)は、「繰り返し改善を行うアプローチ」を指し、「治療計画などが複数の実践を通じて洗練されていく」というような状況を説明するときに役立ちます。講師紹介

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第231回 コウモリが減って乳児死亡が増加

コウモリが減って乳児死亡が増加米国のコウモリが謎多き真菌感染症でおよそ20年前に大量に死に始め、その数が大幅に減っています。Science誌に報告された新たな解析1)によると、コウモリの激減で人間も知らぬ間に思いもよらぬ影響を受けていたようです。その影響とは乳児の死亡率上昇です。農家にとってコウモリはただで害虫を駆除してくれる貴重な存在です。害虫を含む昆虫をコウモリが一晩で捕食する量は実に自分の体重の40%かそれ以上に達します。コウモリのその無償の奉仕は1年間当たり少なく見積もって37億ドル、多ければ530億ドルもの価値を生み出していると推定されています2)。米国でのコウモリの大量死は、欧州から紛れ込んだPseudogymnoascus destructansと呼ばれる真菌が広まって、同国の北東部で2006年に始まりました3)。冷温を好むP. destructansは冬眠中のコウモリの鼻のあたりで増えて鼻を白くします。それゆえコウモリのP. destructans感染症は白鼻症候群(White-nose syndrome:WNS)と呼ばれます。WNSの主な害は、餌の乏しい時期にコウモリを冬眠から早く目覚めさせてしまうことです。WNSで目覚めてしまったコウモリは寒さゆえカロリーを多く摂取する必要がありますが、いかんせん捕食がままならず、たいてい冬を生きて越すことができません。WNSの破壊力は凄まじく、わずか7年で500万匹を超える北米のコウモリがそのせいで死んでいます。その激減は“風が吹けば桶屋が儲かる”とは反対の悪い影響を巡り巡ってヒトの健康にもたらしたようです。新たな解析によると、捕食者であるコウモリがWNSで減ったことでまずは昆虫が増え、続いて農家は殺虫剤をおよそ31%多く使うようになりました。その殺虫剤使用の増加と並行し、コウモリが大量死した地域では環境毒素の指標としてよく使われる乳児死亡率が平均およそ8%上昇していました。殺虫剤やその他の農薬とヒトの健康への害の関連の裏付けがいくつか存在します。政府は及ぼしうる害を検討したうえでそれら農薬の使用を許可しています。それでも農業従事者や世間の人は農地からの浮遊や地下水に混入した農薬成分を被るかもしれません。殺虫剤はコウモリほど害虫予防に役に立たず、むしろ経済的損失をどうやら招いたことも新たな解析で示唆されています。農作物は質が低下したらしく、その販売収入は29%低下しました。その結果、コウモリが大量死した地域の農家は2006~17年に殺虫剤の費用と減収で合わせて269億ドル損したと推定されました。また、乳児の過剰な死亡は124億ドルの損失を招いたと推定され、コウモリ大量死地域は2006~17年に乳児の死亡と農家の損を合わせて394億ドル損したようです。コウモリが昆虫を抑え込めなくなることが強いる莫大な社会的負担に比べ、コウモリを保つための費用はそれほどかからないでしょう。自然の価値をもっと知ってその保護政策に活かしていく必要があると今回の解析の著者のEyal Frank氏は言っています4)。今回の解析をただ1人で行ったFrank氏によると、コウモリのいくらかの群れが回復し始めている兆しはあるものの、元どおりに増えるまでには数十年かかりそうです。Frank氏の所属団体はコウモリの冬眠場所に昆虫がより集まるように明かりをつけ、コウモリが十分食べられるようにする取り組みをしています5)。また、廃鉱の空調を調節してコウモリのねぐらとして好ましい温度になるようにする検討も他の自然保護団体が始めています。参考1)Frank EG. Science. 2024;385:eadg0344.2)Boyles JG, et al. Science. 2011;332:41-42.3)Loss of bats to lethal fungus linked to 1,300 child deaths in US, study says / Guardian 4)The collapse of bat populations led to more than a thousand infant deaths / Eurekalert 5)My jaw dropped’: Bat loss linked to death of human infants / Science

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AIにより自閉症の早期発見が可能?

 人工知能(AI)モデルにより、自閉症スペクトラム障害(ASD)を発症する可能性が高い小児を見つけ出せる可能性のあることが、カロリンスカ研究所(スウェーデン)女性・小児保健部門のKristiina Tammimies氏らによる研究で明らかになった。Tammimies氏らによると、このAIモデルは、広範な評価や臨床試験をせずに2歳以下の小児から簡単に得られる医療データを用いてASDに特有のパターンを探し出すもの。実際に、1万2,000人弱の小児のデータを用いてテストしたところ、ASD児の約80%を特定できたという。この研究結果は、「JAMA Network Open」に8月19日掲載された。 この研究でTammimies氏らは、Simons Foundation Powering Autism Research for Knowledge(SPARK)データベースの、ASDのある児とない児1万5,330人ずつ(計3万660人、平均月齢106カ月、男児63.5%)のデータセットを用いて、ASDを予測するためのAIモデルを構築した。このモデルは、対象者が24カ月未満時に親が報告した、簡単に得られる情報の中から28個の指標を選び出し、これをもとに4つの機械学習アルゴリズム(ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、XGBoost)を用いて構築された。 テストデータを用いてそれぞれのモデルの予測能を検証したところ、最も優れているのはXGBoostモデルであることが判明した(ROC曲線下面積0.895、感度0.805、特異度0.829、陽性的中率0.897)。Tammimies氏らはこのモデルをAutMedAIと名付けた。また、予測には、児が初めて笑った月齢、初めて短文を話した月齢、偏食の問題の存在の3つの因子が強い影響を及ぼすことも判明した。別の検証コホート1万1,936人を用いて検証したところ、モデルはASD児の78.9%(8,262人)を正確にASDであると判定した。 研究グループは、ASDの早期診断は重要だと強調する。なぜなら、ASDに対する効果的な治療や介入を早く受ければ受けるほど、良好な転帰が望めるからだ。論文の筆頭著者であるカロリンスカ研究所のShyam Rajagopalan氏は、「この研究結果は、比較的限定的で容易に入手できる情報からASDの可能性がある個人を特定できることを示している点で重要だ」と話す。その上で、「この予測モデルにより早期診断と介入の条件が劇的に変化し、最終的には多くの人々とその家族の生活の質が向上する可能性がある」と話している。 研究グループは目下、考慮するパラメーターに遺伝情報を追加する可能性も含め、AIプログラムをさらに改良する作業を進めている。Tammimies氏は、「このモデルが臨床現場に導入できるほど信頼の置けるものであることを保証するためには、厳密な作業と慎重な検証が必要だ。ただし、一つ明確にしておきたいのは、われわれが目指しているのこのモデルを医療にとって価値ある診断ツールにすることであり、ASDの臨床評価に取って代わることを意図したものではないということだ」と話している。

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事例007 医療情報取得加算の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説今回は同月内に初診料を2回算定して査定された事例です。1回目は簡単な処置のため、即日治癒宣言をしたことがカルテに記入されており、患者が任意に中止した場合にあたらないため、同月内であっても初診料を算定しました。マイナ保険証を毎回利用されています。情報アクセスへの同意を確認して 「A005注15 医療情報取得加算2」(以下「同加算」)をそれぞれに算定しました。初診料の査定はなかったものの同加算2が1回分、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。査定の理由を調べるために計算担当に尋ねました。すると、2回目受診が再診料の場合は同加算4を算定できるために、2回目の初診料でも算定可能と考え、入力時にエラーも出なかったために算定されたものでした。しかしながら、「同加算1または2について同一の保険医療機関において同一月に同一の患者について、他の疾患で初診料を2回算定した場合、同加算は2回以上算定できない」との疑義解釈(その1 問13)が発出されています。事務的点数で1点とはいえ査定には変わりありません。計算担当者には、同一項目に対して2回以上算定できない項目であることを告げ、レセプトチェックシステムを設定して査定対策としました。なお、令和6年12月から紙の保険証が発行されなくなり、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行します。その準備に、同年10月には医療機関別のマイナ保険証利用率に応じて「A000注16 医療DX推進体制整備加算」が充実されます。同年12月には同加算はマイナ保険証を利用しない場合の1点のみに改正され、令和7年8月には後期高齢者用の紙の保険証も有効期限が切れてマイナ保険証に切り替わります。受付時の混乱を最小限にするために、窓口の対応手順の見直しが必要となるでしょう。

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ヘルスリテラシー世界最低国の日本、向上のカギは「がん教育」

 現在、小・中・高等学校で子供たちが「がんの授業」を受けていること、そしてその授業を医師などの医療者が担当する可能性があることをご存じだろうか。 2024年8月27日、厚生労働省プロジェクト「がん対策推進企業アクション」メディアセミナーで、中川 恵一氏(東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授)が「がん教育の意味」をテーマに、ヘルスリテラシーから考えるがん教育、授業の効果、医療者による授業などについて解説した。ヘルスリテラシーの欠如と学校がん教育 ヘルスリテラシーとは「健康情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力」を指すが、先進国以外も含む調査において、日本のヘルスリテラシーは最低レベルであることが報告されている1)。 がんはヘルスリテラシーを高めることでコントロールできる側面があるが、日本においては、予防につながる生活習慣の理解や早期発見のためのがん検診受診率などに課題が多い。また、受動喫煙対策やワクチン接種など、がん対策の遅れの背景にも、ヘルスリテラシーの欠如があるという。 中川氏は、がん予防に関わる費用を他国と比較した場合、日本では教育や情報提供に占める割合が少ないことを示したうえで、今後国民のヘルスリテラシーを向上させうる「学校がん教育」への期待を語った。がん教育の効果の検証 がん教育は、教育カリキュラムの基準となる学習指導要領に2017年から明記されており、全国の小・中・高等学校で授業が始まっている。がん教育の一般認知度はまだ高いとはいえない状況だが、子供が授業で学んだことを親と話したり、がんについて学ぶ授業があることを親が知ったりすることで、大人のヘルスリテラシー向上も期待されている。 実際に、香川県の中学校におけるがん教育授業開始後に、町内の大腸がん検診受診率が向上したという報告もある。また、授業を受けた子供の知識やリテラシーが向上したことも報告されている2)。ただし、授業を受けた子供の成人後の検診受診意向の変化などについてはまだ調査が不十分であり3)、がん教育の長期的な効果の検証が求められる。高知県では、がん教育授業を受けた卒業生を対象に、子宮頸がんワクチン接種の有無などを含む行動変容について今後調査する予定である。医療者のがん教育参画への期待 がん教育をより効果的なものとするために、医療者やがんサバイバーなど、外部講師の授業への参画が期待されている。しかし、令和5年度の調査4)では、がん教育授業を実施した学校のうち、外部講師が授業を実施した割合は中学校で16.4%、高等学校で11.3%にとどまっており、この向上が課題の1つとなっている。 中川氏は「がん教育は、(死のイメージが強い)がんを題材とすることで、子供たちが命の大切さや死について考える大事な機会になる」としたうえで、医療者やがんサバイバーなどの参画の重要性を語った。さらに、学校医はがん検診受診促進やがんの緩和ケアに関わる機会もあるため、外部講師としての活動も期待されると述べた。 東京都で多くのがん教育授業を実施している南谷 優成氏(東京大学医学部附属病院 放射線科 助教)は、医学生にも授業を担当してもらっているという。授業を行うことは、患者教育やヘルスコミュニケーションについて学ぶ機会となるため、医療者にもメリットがあると語った。また、授業のインパクトを残すことは重要であり、そのためにも学校の教師ではなく外部講師が授業を実施する意義があると述べた。 高いヘルスリテラシーを持つ医療者ががん教育に参画することで、国民全体のヘルスリテラシーのさらなる向上が期待される。

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ADHDとASDを鑑別する多遺伝子リスクスコア、統合失調症との関連は?

 統合失調症は、臨床的にも遺伝学的にも特殊な疾患であり、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)とも遺伝的因子が類似している。最近、ADHDとASDを鑑別するゲノムワイド関連研究(GWAS)が実施されている。岐阜大学の蔵満 彩結実氏らは、ASDとADHDを鑑別する多遺伝子リスクスコア(PRS)が、統合失調症患者の認知障害や皮質構造の変化と関連しているかを調査した。European Child & Adolescent Psychiatry誌オンライン版2024年8月7日号の報告。 GWASデータ(ASD:9,315例、ADHD:1万1,964例)に基づき、統合失調症患者168例におけるASDとADHDを鑑別するPRS(ADHD高リスクでASD低リスク)を算出した。言語理解(VC)、知覚統合(PO)、ワーキングメモリー(WM)、処理速度(PS)などの認知機能は、WAIS-IIIを用いて評価した(145例)。34の両側脳領域の表面積および皮質厚は、FreeSurferを用いて調べた(126例)。PRSと統合失調症患者の認知機能および皮質構造との関連性を調査した。 主な結果は以下のとおり。・ADHD高リスクを示す高PRSは、4つの認知領域のうち、WMの障害と関連が認められた(β=−0.21、p=0.012)。・ASD高リスクを示す低PRSは、統合失調症患者の次の脳領域の表面績の減少と関連が認められた。【左内側眼窩前頭皮質】β=0.21、p=0.000829【左嗅内皮質】β=0.21、p=0.025【左中心後回】β=0.18、p=0.00752【右紡錘状皮質】β=0.17、p=0.00664【左紡錘状皮質】β=0.17、p=0.00777・高PRSは、左右の横側頭葉における皮質厚の減少と関連していた(左:β=−0.17、p=0.039、右:β=−0.17、p=0.045)。 著者らは、「ADHDとASDを鑑別するPRSは、統合失調症患者の皮質構造および認知機能と関連していることが明らかとなった。これらの知見は、統合失調症の異質性は、統合失調症以外の神経発達および精神疾患に関連する遺伝的因子が部分的に関与している可能性があることを示唆している」としている。

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anorexia nervosa(神経性やせ症)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第11回

言葉の由来「神経性やせ症」は英語で“anorexia nervosa”といいます。この病名はギリシャ語の“anorexia”とラテン語の“nervosa”に由来します。“anorexia”は、「否定」を表す“an”と「食欲」を表す“orexia”をつなげた単語で、文字通り「食欲がない」ことを意味します。一方、“nervosa”はラテン語で神経を表す“nervus”に由来し、「神経性の」という意味です。“anorexia nervosa”という病名は、19世紀後半に英国のウィリアム・ガル医師によって付けられたとされています。彼は、「主に若い女性に発生する、極度の衰弱を特徴とする特異な病気」について複数の症例を報告し、精神的および神経的な要因が関与するとして、このような病名を付けました。“anorexia nervosa”に関連する医学用語として、“bulimia nervosa”(神経性大食症)があります。“bulimia”は“anorexia”と同じくギリシャ語です。“bulimia”は牛を意味する“bous”と、飢えを意味する“limos”を組み合わせた単語で、「牛のような飢え」、つまり「異常な食欲」を意味します。“bulimia nervosa”は“anorexia nervosa”が名付けられた約100年後の1970年代に、英国の精神科医ジェラルド・ラッセル医師が命名しました。当時は“anorexia nervosa”の疾患の一部と考えられていましたが、過食とそれに続く補償行動を特徴とする精神的な障害である“bulimia nervosa”は、“anorexia nervosa”とは異なる病気である、と定義したのです。併せて覚えよう! 周辺単語無月経amenorrhea徐脈bradycardia骨粗鬆症osteoporosis栄養失調malnutrition認知行動療法cognitive behavioral therapyこの病気、英語で説明できますか?Anorexia nervosa is an eating disorder characterized by an intense fear of gaining weight, a distorted body image, and extreme efforts to control weight, often through severe calorie restriction and excessive exercise. This can lead to dangerous health complications due to malnutrition.講師紹介

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マイコプラズマ肺炎ってどんな病気?

マイコプラズマ肺炎ってどんな病気?• マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することによって起こります• 14歳以下で多く報告されていますが、大人もかかることがあります• 感染後2~3週間の潜伏期間があり、発熱や倦怠感(だるさ)、頭痛、咳などの症状がみられます(咳は少し遅れて始まることもあります)• 咳は熱が下がった後も長期にわたって(3~4週間)続くのが特徴です• 多くの場合は気管支炎ですみ、軽い症状が続きますが、一部の人は肺炎になったり重症化することもあるので、注意が必要です治療法は?•他の人にうつさないようにするには?抗菌薬により治療します※ただし、大人で肺炎を伴わない気管支炎であれば、抗菌薬治療は行わないことが推奨されています•咳が長引くなどの症状があるときは、医療機関で診察を受けましょう出典:厚生労働省「マイコプラズマ肺炎」•感染した人の咳のしぶき(飛沫)を吸い込んだり、身近で接触したりすることにより感染します•流水と石けんによる手洗いが大切です•タオルの共用はしないようにしましょう•咳の症状がある場合には、マスクを着用するなど咳エチケットを心がけましょうCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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