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非専門医とはすでに同等!?医師vs.生成AIの診断能力を比較

 生成AIと医師の診断能力を比較した系統的レビューおよびメタアナリシスの結果、非専門医と比較した場合の正確度の差はわずか0.6%ほどにとどまった(p=0.93)。さらに、一部の最新モデルでは、統計学的な有意差は認められなかったものの非専門医をわずかに上回る性能を示していた。大阪公立大学の田北 大昂氏らによる、NPJ Digital Medicine誌2025年3月22日号掲載の報告より。 本研究では、診断業務における生成AIモデルの妥当性を検証した研究を対象に、2018年6月~2024年6月までに発表された文献の系統的レビューおよびメタアナリシスを実施した。 主な結果は以下のとおり。・複数のデータベースから計1万8,371件の文献を抽出し、重複や基準を満たさないものを除外したうえで、最終的に83件の研究を対象にメタアナリシスを行った。・最も多く評価されていたモデルはGPT-4(54件)およびGPT-3.5(40件)であった。・レビュー対象の診療科は、一般内科が最も多く(27件)、放射線科(16件)、眼科(11件)、救急科(8件)、神経科(4件)、皮膚科(4件)、耳鼻咽喉科(2件)、精神科(2件)と続き、消化器科、循環器科、小児科、泌尿器科、内分泌科、婦人科、整形外科、リウマチ科、形成外科が各1件であった。・生成AIモデルの全体的な正確度は52.1%(95%信頼区間[CI]:47.0~57.1%)であった。・生成AIモデル全体の診断性能は、医師全体(医師の正確度が9.9%高[95%CI:-2.3~22.0%]、p=0.10)および非専門医(非専門医の正確度が0.6%高[95%CI:-14.5~15.7%]、p=0.93)との間に有意な差は示されなかった一方、専門医と比較すると有意に劣っていた(正確度の差:15.8%[95%CI:4.4~27.1%]、p=0.007)。・GPT-4、GPT-4o、Llama 3 70B、Gemini 1.0 Pro、Gemini 1.5 Pro、Claude 3 Sonnet、Claude 3 Opus、Perplexityなどいくつかのモデルは、非専門医と比較してわずかに高い診断性能を示したが、その差は統計学的に有意ではなかった。・一般内科と多くのその他の診療科との間に有意な診断性能の差は認められなかったが、泌尿器科および皮膚科においては有意な差がみられた(p<0.001)。 著者らは、多くの対象論文がバイアスリスクを抱えていること、異なる患者集団やより複雑な現実のシナリオを反映した場合は生成AIの性能が下がる可能性があることなど本研究の限界を挙げたうえで、生成AIは現時点では専門医のレベルには達していないものの、非専門的な分野での活用や教育ツールとして有益な可能性があると結論付けている。

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5価髄膜炎菌ワクチン、単回接種で良好な免疫応答/Lancet

 生後9~15ヵ月の乳幼児における通常小児ワクチンに併用接種する髄膜炎菌ワクチンについて、血清型A、C、Y、W、Xを標的とする5価髄膜炎菌結合ワクチン(NmCV-5)の併用接種は、承認済みの4価髄膜炎菌結合ワクチン(MenACWY-TT)の併用接種と比較して安全性に問題はなく、非劣性の免疫応答が惹起されたことが、マリ・Centre pour le Developpement des Vaccins-MaliのFatoumata Diallo氏らNmCV-5 EPI study teamによる第III相単施設二重盲検無作為化対照非劣性試験の結果で示された。侵襲性髄膜炎菌感染症は、アフリカのセネガルからエチオピアにかけて広がるmeningitis belt(髄膜炎ベルト)と呼ばれる国々において、壊滅的な被害をもたらす公衆衛生上の問題となっている。2020年の世界保健総会(World Health Assembly)で導入・承認された「2030年までに髄膜炎を克服するための世界的なロードマップ」では、蔓延している髄膜炎菌血清群に対する予防拡大の必要性が、5つの血清型に対する手頃なワクチンを導入するための戦略目標とともに示されていた。Lancet誌2025年3月29日号掲載の報告。NmCV-5 vs. MenACWY-TTの免疫応答を比較 試験は、マリの首都で最大都市のバマコにあるワクチン開発センター(Centre pour le Developpement des Vaccins)で、現地乳児拡大予防接種プログラム(Expanded Program on Immunization:EPI)を完了した生後9~11ヵ月の乳児を募集して行われた。 参加者は9-month EPI受診時に、髄膜炎菌ワクチンを9-month EPI受診時(9ヵ月時接種群)または15-month EPI受診時(15ヵ月時接種群)に接種するよう無作為に1対1.2の割合で割り付けられ、それぞれの指定接種群でNmCV-5またはMenACWY-TTのいずれかの接種を受けるように無作為に割り付けられた。 試験ワクチンと指定されたEPIワクチンは、割り付けを盲検化されていない試験担当者によって準備・接種された。親または保護者、研究者およびその他すべての試験スタッフは、髄膜炎菌ワクチンの割り付けを盲検化された。 髄膜炎菌ワクチンは、生後9ヵ月で麻疹・風疹ワクチン(1回目)および黄熱病ワクチンと同時に接種、または生後15ヵ月で麻疹・風疹ワクチン(2回目)と同時に接種された。 主要エンドポイントの免疫応答(seroprotective response)はウサギ補体血清殺菌抗体価が8以上と定義し、ワクチン接種後28日目にこの反応を示した5つの髄膜炎菌血清群それぞれの参加者割合の差を推定した。評価はper-protocol集団で行った。 事前に規定した非劣性マージンは、両年齢群の5つの血清群すべてで-10%とした。血清型X群に関するNmCV-5の免疫応答の非劣性は、MenACWY-TTの最も低い血清型群(A群、C群、W群、Y群間で)の免疫応答と比較し評価した。安全性は副次エンドポイントであり、修正ITT集団(無作為化された髄膜炎菌ワクチンを接種された全参加者)で6ヵ月間にわたり評価した。NmCV-5の5つの血清型すべてでMenACWY-TTに対して非劣性 2022年3月24日~8月15日に1,325例が登録され、9ヵ月時接種群に602例が、15ヵ月時接種群に723例が無作為化された。髄膜炎菌ワクチンは、9ヵ月時接種群では602例のうち600例が同一期間に接種された。15ヵ月時接種群600例への髄膜炎菌ワクチンは、2022年9月27日~2023年2月6日に接種された。また両群で、400例がNmCV-5を、200例がMenACWY-TTの接種を受けた。 非劣性を評価したper-protocol集団には、9ヵ月時接種群564例(NmCV-5接種373例、MenACWY-TT接種191例)と15ヵ月時接種群549例(NmCV-5接種367例、MenACWY-TT接種182例)が含まれた。9ヵ月時接種群のper-protocol集団において、NmCV-5接種とMenACWY-TT接種の免疫応答率の差は、血清型A群で0.0%(95%信頼区間[CI]:-1.0~2.0)、C群で-0.5%(-2.3~1.9)、W群で-3.0%(-6.3~0.8)、Y群で-3.0%(-5.4~-0.4)であった。X群については、MenACWY-TT接種のW群との比較で非劣性が評価され、免疫応答率の差は2.3%(95%CI:0.3~4.7)であった。 15ヵ月時にNmCV-5接種を受けた参加者とMenACWY-TT接種を受けた参加者の免疫応答率の差は、血清型A群で0.8%(95%CI:-0.6~3.7)、C群で-0.8%(-3.3~2.5)、W群で0.3%(-1.8~3.5)、Y群で1.4%(-0.6~4.8)であった。X群については、MenACWY-TT接種のY群との比較で非劣性が評価され、免疫応答率の差は1.9%(95%CI:0.0~4.4)であった。 両群のNmCV-5の免疫応答率は、5つすべての血清型について、MenACWY-TTの免疫応答率に対して非劣性であった。 6件の重篤な有害事象が記録されたが、ワクチン接種に関連するものとはみなされなかった。

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母乳育児は子どもの血圧低下に関連

 母乳育児には、子どもの血圧を下げる効果があるようだ。最新の研究で、生後1週間と1カ月時点で腸内細菌の多様性が高く、特にビフィズス菌に代表されるBifidobacterium属が多く存在する場合、6カ月以上にわたる母乳育児が6歳時の血圧に対して保護的に働く可能性のあることが明らかになった。米コロラド大学アンシュッツメディカルキャンパスのNoel Mueller氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Heart Association」に2月27日掲載された。Mueller氏は、「われわれの研究結果は、幼児期の腸内細菌叢が小児期の心血管の健康に潜在的に重要な意味を持つことを示唆している」と話している。 この研究でMueller氏らは、デンマークの小児喘息に関する研究(Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood 2010)に参加した526人の子どもを対象に、乳児期の腸内細菌の多様性や組成と小児期の血圧との関連と、その関連に母乳育児が与える影響について検討した。生後1週間、1カ月、1年時点に対象児から採取された便検体の分析により腸内細菌に関するデータを得た。また血圧は、3歳時と6歳時に測定した。 解析の結果、全体的には腸内細菌の多様性と血圧との間に関連は認められなかったが、母乳育児の期間が関連に大きく影響することが示された。具体的には、腸内細菌の多様性が高い場合、母乳育児期間が6カ月以上だった子どもでは血圧が低くなる傾向が認められたのに対し、6カ月未満だった子どもでは血圧が高くなる傾向が認められた。また、生物の多様性の指標であるシャノン指数が1上昇するごとに、母乳育児期間が6カ月以上だった子どもでは6歳時の収縮期血圧が1.86mmHg低下していたのに対し、6カ月未満だった子どもでは0.73mmHg上昇していた。さらに、生後1週間および1カ月の時点で2種類のBifidobacterium属(Bifidobacterium-a976、Bifidobacterium-78e)の量が多い場合、6カ月以上の母乳育児は、6歳時の収縮期血圧の低下と関連していることも示された。 研究グループは、腸内細菌が、特に母乳で育てられた子どもの血圧を改善する可能性のあることに対しては、いくつかの理由が考えられると話す。例えば、特定の腸内細菌は、乳児の母乳の消化を助けるように進化したことが考えられるという。これらの細菌は、分解する母乳がなければ、代わりに乳児の腸の内壁を餌にしてしまうことがあり、その場合、細菌や脂肪が血流に入りこむ「リーキーガット(腸管壁浸漏症候群)」と呼ばれる症状を引き起こす可能性があるという。また研究グループは、リーキーガットは、成人の血圧上昇や炎症と関連があると指摘する。 研究グループは、「小児期の血圧が成人期まで持続するパターンは明らかになっており、それが長期的には健康に影響することを考えると、この発見は公衆衛生にとって重要な意味を持つ」と話す。その上で、「われわれの研究結果は、腸内細菌叢の最適な発達のためだけでなく、生涯にわたる心血管の健康を改善するためにも、乳児期を通して母乳育児を促進することの重要性を強調している」と付言している。

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全身性強皮症診療ガイドライン 2025年版

7年ぶりに全身性強皮症のみ独立させ改訂新版として刊行!本ガイドラインは2017年発行「全身性強皮症・限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン」から全身性強皮症のみ独立させて改訂し、新版として刊行したものである。新たに骨関節病変と小児の2項目が追加され、CQ数は各項目で増減があり、全体として26個増えた。診断基準・重症度分類は変更がないが、CQでは新規治療薬に関するエビデンスが記載されている。全身性強皮症診療に関わるすべての医師必読の1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する全身性強皮症診療ガイドライン 2025年版定価4,400円(税込)判型B5判頁数228頁発行2025年1月編集厚労科研 強皮症研究班ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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海外番組「セサミストリート」(続編・その1)【実はこだわりは能力だったの!?だから男の子に多いんだ!(自閉症の機能)】Part 1

今回のキーワード社会的コミュニケーションの障害共感性反復性システム化パターン・シーカー胎児期アンドロゲン仮説指比超男性脳自閉症は、子供の時からコミュニケーションがうまくできないと同時に、こだわりが強すぎるという特徴があります。それでは、なぜそうなってしまうのでしょうか? なぜ男の子に多いのでしょうか?今回は、海外番組「セサミストリート」のキャラクターの1人であるジュリアを取り上げます。このキャラクターを通して、まず自閉症の症状をまとめ、こだわりを機能として捉え直します。そして、有力な原因仮説をご紹介し、男の子(男性)にとても多いわけを解き明かしてみましょう。なお、現在の自閉症の正式名称は、自閉スペクトラム症(ASD、Autism Spectrum Disorder)です。この記事ではわかりやすさや呼びやすさを優先して、あえて自閉症という従来名称を用います。また、このキャラクターの動画は、公式チャンネルから見ることもできます。ちなみに今回は、海外番組「セサミストリート」を扱った記事の続編になります。本編については、関連記事1をご覧ください。自閉症とはどんなものなの?ジュリアは、オレンジの髪の毛でグリーンの目。エルモの幼なじみです。ただ、エルモのような普通の子供とはちょっと様子が違い、彼女は自閉症であると説明されます。それでは、自閉症とはどんなものなのでしょうか? まず、ジュリアの特徴を大きく2つ挙げて、自閉症の主な症状をまとめてみましょう。(1)コミュニケーションがうまくできないジュリアは、みんなで絵を描いている時、ビッグバードから何度も話しかけられますが、まるで無視しているかのように絵を描き続けます。ビッグバードが「ジュリアは僕のことをあまり好きじゃないみたい」と悲しそうに言うと、大人のアランが「ジュリアはねえ、何か聞かれてもすぐには答えられないことがあるんだよ」「ジュリアはあんまりしゃべらないんだ」とフォローします。しかし、しばらくすると、ジュリアは「あそぼ、あそぼ」と急に言い出し、笑い出します。気を利かせたアランが「鬼ごっこしたいみたいだね」とフォローします。一方で、アビーから「一緒に遊んでもいい?」と話しかけられた時は、ジュリアはアビーの方を見ないで、「一緒に遊んでもいい?」とオウム返しをしていました。このように、話しかけられても聞こえていなかったり、聞こえていても視線をあまり合わせず、意味がわからないためにうまく返事をしなかったり、逆に急にテンションが上がって独り笑いをしたり、一方的に話し続けたりする特徴は、自閉症の1つの特性、社会的コミュニケーションの障害です。簡単に言うと、コミュニケーションのやり取りがうまくできないことです。脳機能としてみると、これは生後から共感性がうまく発達しないことが挙げられます。共感とは、まさに共に感じて、相手と同じ気持ちになる心理です。これがないと、必然的に人への興味が出てこなくなります。すると、コミュニケーションをしようとせず、身振りも言葉もなかなか発達しなくなるのです。この詳細については、関連記事2をご覧ください。(2)こだわりが強すぎるジュリアはいつもテンションが上がると、「ぼよん、ぼよん、ぼよん」と独り言を言いながら、両手をぶらぶら(ひらひら)させて動き回る癖があります。一方、いつもの読み聞かせの時間が、アランの急な用事で中止になった時、エルモたちは「しょうがないよね」と諦めますが、ジュリアだけは「おはなし!おはなし!」と聞き分けなく騒ぎ続け、パニックになります。また、消防車のサイレンの音が聞こえてきた時は、耳をふさぎ、具合が悪くなります。そして、体全体のハグが苦手なため、「指先だけハグ」をします。このように、同じ言葉や動きへの執着(常同)、習慣への固執(パターン行動)、そして特定の音や接触への敏感さ(感覚過敏)などの特徴は、自閉症のもう1つの特性、反復性です。簡単に言うと、こだわりが強すぎることです。脳機能としてみると、これは生後からシステム化の能力が発達しすぎていることが挙げられます。システム化とは、原因と結果のつながりのパターン(システム)を見つけ出そうとする心理です。そのために、五感が研ぎ澄まされてもいます。たとえば、「ネコ、ネコ、イヌ、ネコ、ネコ、イヌ、次は何が来るかな?」と言われて、クッキーモンスターが「ブタ!?」と当てずっぽうで答える一方、ジュリアは「ネコ」と即答し、「ジュリアはパターンを見つけるのがうまいね」とほめられます。つまり、こだわりは、パターンを見つけ出す能力でもあります。そんな彼らは、パターン・シーカーと呼ばれています1)。つまり、システム化は、パターンを見つけ出すと同時に、パターンにとらわれる(こだわりが強くなる)という二面性があるわけです。このシステム化と先ほどの共感性の詳細については、関連記事3をご覧ください。次のページへ >>

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海外番組「セサミストリート」(続編・その1)【実はこだわりは能力だったの!?だから男の子に多いんだ!(自閉症の機能)】Part 2

なんで自閉症になるの?自閉症は、コミュニケーションがうまくできない、こだわりが強すぎるという症状があることがわかりました。それでは、なぜそうなるのでしょうか?その答えは、胎児期に男性ホルモンが多すぎていたからです。これは、胎児期アンドロゲン仮説と呼ばれる有力な原因仮説です2)。アンドロゲンとは、男性ホルモンの総称です。その代表が、テストステロンです。もともと胎児のデフォルトは女性です。遺伝的に男性の場合は、胎児期に自らのY染色体の発現によって精巣からこの男性ホルモンを分泌して(ホルモンシャワー)、体と心(脳)を男性化させていきます。その量が多すぎるのが自閉症の原因だということです。実際の研究では、妊娠6ヵ月時に採取した羊水中の男性ホルモン濃度が高ければ高いほど、4歳時と8歳時のそれぞれの共感性の指数が低くなり、システム化の指数が高くなるという結果が出ています2)。これは、自閉症形質の発現を意味します。また、薬指の長さに対する人差し指の長さの比較(指比)の研究では、一般女性→一般男性→自閉症の人(男女とも)の順に人差し指が短くなっていくことが確かめられています3)。これは、胎児期の男性ホルモン濃度が高くなっていく順番と同じです。なお、自閉症は男女とも人差し指が同じくらい短くなることから、自閉症の発症には胎児期の男性ホルモンが相当影響していることが示唆されます。実際の臨床でも、胎児期に先天的に男性ホルモン(厳密にはテストステロンではなくデヒドロエピアンドロステロン)濃度が高い病態(先天性副腎過形成症)では、男女ともに顕著に人差し指が短くなっていることが確かめられています。そして、システム化の指数が高くなるという結果が出ています4)逆に、胎児期に男性ホルモン(テストステロン)濃度が低い病態(クラインフェルター症候群、アンドロゲン不応症)の男性は、人差し指が長くなっていることも確かめられています。さらに、自閉症の男性の精通の時期は平均よりも早くなる一方、自閉症の女性の初潮は平均よりも遅くなることもわかっています2)。逆に、自閉症の人はオキシトシン濃度(女性ホルモン)が平均を下回っていることもわかっています2)。オキシトシンは「絆ホルモン」とも呼ばれ、これが少ないと人とのコミュニケーションへの動機づけ(共感性)が低くなります。さらに、脳の画像研究においては、一般的に女性よりも男性の方が脳の非対称性が大きいことがわかっていますが、自閉症の人はその非対称性がさらに大きくなっていることもわかっています5)。以上より、自閉症とは、男性的な脳機能が過剰になった状態、つまり超男性脳とも呼ばれています。そして、だからこそ自閉症は男の子(男性)に多いのです。実際に自閉症の80%は男性です。ちなみに、ジュリアは、女の子の設定になっています。この多様性の時代、発症率が低い女の子(女性)をあえて自閉症のキャラクターにしたのでしょう。定型発達においても、システム化は、明らかに女の子よりも男の子が高いです。たとえば、男の子(男性)は、乗り物、仕組み(ルール)、戦い(スポーツ)、勝ち負けなど、ものや結論(結果)への興味が強いです。そして、成長すると、理屈っぽくなる分、女性ほど察しようとしないです。一方で、共感性は、明らかに男の子よりも女の子が高いです。たとえば、女の子(女性)は、ぬいぐるみ集め、人形遊び、料理、おしゃべりなど、人や関係性(プロセス)への興味が強いです。そして、成長すると、情緒的になる分、男性ほど説明しようとしないです。つまり、システム化とは、とくに男性にもともと備わっている能力であると言えます。そして、その能力が高まりすぎた状態を自閉症と呼んでいると言えます。それでは、システム化が高くなると、なぜ連動して共感性が低くなってしまうのでしょうか? 言い換えれば、なぜ自閉症はコミュニケーションの障害とこだわりはセットなのでしょうか?(次回に続く)1)ザ・パターン・シーカーpp.93-95:サイモン・バロン・コーエン、化学同人、20222)自閉症スペクトラム入門pp.134-135:サイモン・バロン・コーエン、中央法規、20113)指からわかる男の能力と病p.31、pp.100-101:竹内久美子、講談社α新書、20134)共感する女脳、システム化する男脳pp.186-187:サイモン・バロン・コーエン、NHK出版、20055)脳からみた自閉症p.129:大隅典子、講談社、2016自閉症についての関連記事大人の自閉症への対応のコツ結婚できない男【空気を読まない】[改訂版]<< 前のページへ■関連記事海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 1伝記「ヘレン・ケラー」(前編)【何が奇跡なの? だから子供は言葉を覚えていく!(象徴機能)】Part 2ガリレオ【システム化、共感性】

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その3)【だから子供の自己肯定感も自殺率も世界最悪なんだ!じゃあどうすればいいの?(ブラック教育文化)】Part 1

今回のキーワード学習指導要領同年齢同学年(学級固定化)教育の平等教育の公平人権意識異年齢教育前回(その2)、ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」のいくつかのシーンを通して、同調圧力、モラルハラスメント、スケープゴートがはびこる学校での生徒と教師のそれぞれの心理を解き明かしました。このような日本の学校教育の危うさを踏まえると、実はこの映画は、日本の社会問題でもある、以下の3つの現象の謎を解くための大きなヒントになりそうです。不登校の生徒数が過去最多を更新し続ける現象子供の自己肯定感が世界で最低レベルである現象1)子供の自殺率が世界でトップレベルである現象2)今回(その3)、引き続きこの映画のいくつかのシーンを通して、教師たちも不安で受け身になってしまった原因に迫ります。それを踏まえて、これからの子供が学校を楽しむ、そして人生を楽しんでいくためにどう学校制度を改革すればいいのかを一緒に考えていきましょう。なお、この映画はドキュメンタリーであり、実在する人物が登場していますが、この記事で教師個人を批判する意図はまったくありません。あくまでその教師たちすら巻き込む文化としての日本の学校教育の危うさを批判しています。そもそもなんで先生も不安で受け身になってしまったの?―「ブラック教育文化」あるさりげないワンカットでは、1年生の子供たちが自分の大きなランドセルを棚に無理やり押し込もうとする様子が映し出されます。彼らがこれから画一的な学校教育という枠組みに無理やり押し込まれる姿に重なり、痛烈な皮肉のように見えてしまいます。そして、先生たちもまたその枠組みに押し込まれていたのでした。教師たちの心理は、生徒たちと同じように、やることが多すぎて実は不安で楽しめない、やることを変えられなくて実は受け身で選べないということがわかりました。それでは、なぜ生徒たちだけでなく、教師もそうなってしまっているのでしょうか?そのわけは、戦後に学力の地域差をなくすという「教育の平等」の名のもと、学習指導要領、検定教科書、同年齢同学年(学級固定化)の教育政策が徹底されたからです。そして、教師が生徒を高度に管理するようになったからです。しかし、同時にそれは、教師も教師同士で管理される側になってしまったのでした。昭和までは、学校で生徒をコントロールするため、教師による体罰をはじめとしてさまざまな懲戒権が当たり前のように行使され、社会で受け入れられていました。そして、この記事で何度も登場する同調圧力、モラルハラスメント、スケープゴートも学校教育として根付いていったのでした。これを名付けるなら、「ブラック教育文化」です。このネーミングは、ブラック校則にちなんでいるわけですが、実は、日本の学校にはただ「ブラック校則」があるのでなく、その根っことなる「ブラック教育文化」が潜んでいたと言えます。しかし、時代は変わりました。令和では、情報化とあいまって個人主義の価値観が完全に広がり、人権意識が高まりました。映画では、ある先生が「(クラス全員が)チームとして一体になれ」と力説していましたが、もはや令和の社会ではそうする必要も、そうする価値も置かれなくなりました。そうしたい人だけがそうすればいいだけで、そうしたくない人を巻き込む(強制する)のは、やってはいけないことと認識されるようになったのです。こうして、ようやく人権意識が世界基準に追い付いたのです。この変化によって、体罰だけでなく、同調圧力、モラルハラスメント、スケープゴートを使うという手段も、社会ではアウトになりました。たとえば、学習塾、習いごと、スポーツチームなどでは、ビジネスだけに人権意識には敏感です。テレビやネットでも、人権侵害の話題はすぐにニュースになります。近所の人から怒鳴られるようなことがあれば、すぐに警察に通報するご時世です。家庭でも、少子化であることもあり、子供は大切にされています。ところが学校に限り、指導という建前のもと、少なくとも教師たちは同調圧力、モラルハラスメント、スケープゴートの手段はセーフだと思い込んでいるのでした。そして、その事実が、この映画で世界に発信され、明るみになってしまいました。これは、人権意識が、学校外(社会)では高まっているのに学校内では高まっていないというギャップがあるという現実です。そのギャップが開けば開くほど、子供は学校に行きたがらなくなり、自己肯定感が下がり、そして自殺率が増えていくわけです。これが、この記事の冒頭で触れた謎の答えです。逆に、昭和までは体罰などのもっと激しい人権侵害があったのに、このギャップがなかったことで、それが「当たり前」のように受け止められました。そのため、不登校は目立たず、子供の自己肯定感は問題にされず、子供の自殺率は低かったのでした。簡単に言えば、学校の外と比べて、相対的に中での自分の人権が尊重されていないために、それらの手段が「当たり前」ではなく「異常であり苦痛である」と認識するようになったのでした。これは、同僚、友人、知人などの身近な周りの人たちと比べて、自分が経済的、人間関係的に恵まれていないと不満を抱く心理(相対的貧困、相対的剥奪)と似ています。実際の研究では、令和の時代において、小学校での同調圧力が高ければ高いほど、自己肯定感は低下することがわかっています3)。なお、文化進化の視点から見た学校(学歴社会)の歴史の詳細については、関連記事1をご覧ください。また、生徒や教師が受け身である原因は、「ブラック教育文化」だけでなく、さらにその根っこには日本人ならではの「直系家族の文化」の影響が考えられます。この詳細については、関連記事2をご覧ください。次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その3)【だから子供の自己肯定感も自殺率も世界最悪なんだ!じゃあどうすればいいの?(ブラック教育文化)】Part 2

じゃあどうすればいいの?今後、「ブラック教育文化」で硬直化した学校は、不登校でますます生徒は減り続け、メンタルダウンや就職敬遠でますます教師も減り続けるでしょう。もはや、学級崩壊ならぬ「学校崩壊」です。それでは、この「ブラック教育文化」をホワイトにしていくために、どうすればいいのでしょうか?最後に、抜本的な改革案を、大きく2つ挙げてみましょう。(1)生活指導を減らす1つ目は、生活指導を減らすことです。生活指導は、従来から生徒を管理するという裏の目的があったこともあり、令和の時代には明らかにやりすぎています。生徒だけでなく、先生にとっても負担であり、その多くが合理的な理由のないものであることをすでにご説明しました。結局、それでも生徒たちに何とかやらせるために、先生たちは同調圧力、モラルハラスメント、スケープゴートという不適切な手段を使わざるをえませんでした。ただ、よくよく考えると、そうでもしなければできないことは、もはや最初からしない方がいいです。たとえば、給食当番や掃除当番などエッセンシャルな役割や、生徒たちが喜ぶ修学旅行などの行事は残します。一方で、運動会や音楽会などの行事を縮小化し、入学式、卒業式、始業式、終業式などの儀式を簡素化または廃止します。そもそも、世界的に見て、このような儀式を仰々しくやっている国は他にありません。何度も座ったり立ったりして礼をさせられるのは、信仰心(同調圧力)を高めることを目的とした宗教儀式と同じです。だからこそ、それを明らかにしたこの映画が海外から興味深く見られるのです。すでに、コロナ禍をきっかけに、行事は簡素化されましたが、もとに戻っている学校もあるようです。東京の一部の地域では、スペースの確保を理由に、上靴が廃止されました。いかにも学校らしい理由付けですが、とくに理由付けをしなくても上靴は廃止するべきです。よほど山奥の学校で、土足で土や泥を校舎に運んでしまうという問題があれば別ですが、現在日本のほとんどの通学路は舗装されており、上靴を履き替える合理的な理由はなくなっています。そうすることで、同じ靴を履くという同調の心理や、靴をきれいに揃えるかどうかの同調圧力を根本からなくすことができます。また、髪型や服装などを制限する校則は廃止します。このような校則は、昭和に同調圧力を高めるために利用されていたのですが、令和では、明らかな人権侵害です。世界でこんなことをしている国は、どこかの独裁国家ぐらいです。不適切であることを私たちが発信し続ける必要もあります。すでに、そう発信し続けるNPO団体もあります。理想的には、企業に社員が相談できるハラスメントの窓口があるのと同じように、学校に生徒や教師が相談できる人権擁護の窓口が設置されるべきでしょう。つまり、生徒や教師を監視する学校を今度は社会が監視する必要があります。(2)授業や行事を選べるようにする2つ目は、自分のレベルに合ったレベル分けの授業ややりたい行事を選べるようにすることです。逆に言えば、自分のレベルに合わない授業ややりたくない行事には参加しなくていいということです。まず、授業について、その1でもご説明しましたが、画一的な一斉授業のために、できる生徒は先に進めず、できない生徒は置いていかれていました。しかし、現在、学力の地域差が改善され、もはや「教育の平等」を図ることは一定の役目を終えました。今こそ、「教育の公平」にシフトチェンジする時です。たとえば、学習指導要領の達成目標を緩和させ、1人1人の生徒のレベルにあった授業を保護者と相談しながら選んでもらうことです。委員会活動やクラブ活動と同じです。すでに算数はレベル分けが行われている学校が多いです。次はやはり英語です。英語は、語学力だけに個人差(遺伝の違い)や家庭環境の違いの影響が大きく反映されるために、画一的に授業が進められないことから、すでに授業時間数を増やすことへの慎重論が出てしまっています。しかし逆に言えば、だからこそレベル分けが必要なのです。学習塾や習いごとでは当たり前のやり方です。むしろ、これらの教育ビジネスが日本でとくに盛んになってしまっているのは、それだけ学校の教育が機能していない証であると言えます。レベル分けをして、学校がもっと機能的になれば、必然的に学習塾に行く必要がなくなるので、これまで家計を圧迫していた教育費を減らせるでしょう。次に、行事についてですが、 運動会、音楽会などで事前に練習をする取り組みをしたいのなら、希望の生徒をまず募ることです。これは、修学旅行についても言えます。強制参加とせず、参加しない権利を尊重することです。さらに、同年齢同学年の縛りを緩和させ、小学校に入学させる年齢を6歳±1歳として幅を持たせること(異年齢教育)です。その後に、生徒のレベルに合わせて、レベル分けの授業を受けることで、早く進級する場合もあればなかなか進級しない場合も出てきます。さらに、小学校を早く卒業する生徒と遅れて卒業する生徒が出てきます。つまり、入学、進級(学年)、卒業の時期をすべて選ぶようにするのです。これは「教育の公平」のために必要なことです。もちろん、保護者と相談しながら、あえて早く進級しないという選択をすることも可能です。重要なことは、学ぶ内容やスピードを学校から押し付けられるのではなく、生徒が自分で納得して選ぶことです。こうして、進学・進級が流動的になり、生徒の年齢と学年・学級が固定化されないため、同調圧力が弱まり、必然的に入学式や卒業式などさまざまな儀式が簡素化されるでしょう。なお、教育の平等と公平の詳細については、関連記事3のページの後半をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その3)【だから子供の自己肯定感も自殺率も世界最悪なんだ!じゃあどうすればいいの?(ブラック教育文化)】Part 3

新しい「日本人のつくり方」とは?ラストシーンで、その1で登場した1年生の女子は、音楽会の本番に臨む直前、他のメンバーから「私たちは心臓のかけらで、みんなが揃ったらこんな形(両手でハート形をつくる)になる。で、1人こんなふうにずれたら、もう心臓はできない」と言われて、「私たちは過酷な楽器だよ」という名言を残します。まさに従来の「日本人」がつくられる瞬間を見ているようでした。微笑ましく見える一方で、やはり危うさもはらんでいます。それだけに、彼女の将来の行方も気になります。この映画は、「外国から見た日本の小学校とは」という視点で、海外の関係者や私たちに改めて学校教育のあり方を考えさせてくれました。それは、海外の学校としてはまだやり足りないと気付かされ、日本の学校としてはもうやりすぎだと気付かされるというギャップです。この映画をきっかけに、私たち一人ひとりが学校教育のあり方について情報発信をどんどんしていけば、小学校をより良くしようという社会的なムーブメントを起こせるはずです。その時こそ、新しい「日本人のつくり方」が見えてくるでしょう。それは、生徒たちそして先生たちが、日本人の本来の良さである規律、協調性、忍耐力を保ちつつ、同時に不安や受け身にならず、もっと学校を楽しみ、もっと自分の学び方そして生き方を選ぶことです。それは、映画で先生たちが繰り返し強調していた「自分らしさ」(アイデンティティ)と「自主性」(勤勉性)を真の意味で育むことでしょう。なお、今回は、小学校の教育改革についてまとめました。中学校の教育改革については、関連記事4をご覧ください。1)「高校生の生活と意識に関する調査」における国際比較、文部科学省、20172)こどもの自殺の状況と対策p.54:厚生労働省、20243)小学校段階における同調圧力に対する自己肯定感の影響と居場所感について:松井柚子・高平小百合、日本教育心理学会、2020<< 前のページへ■関連記事映画「バッド・ジーニアス」【学歴社会を引っくり返す⁉(カンニング教育革命)】Part 2映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 4映画「バッド・ジーニアス」【学歴社会を引っくり返す⁉(カンニング教育革命)】Part 3映画「かがみの孤城」(その3)【この城が答えだったんだ!(不登校への学校改革「かがみの孤城プロジェクト」)】Part 3

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細胞免疫療法~CAR T-cell・T-cell engager~の進歩と今後の展望/日本臨床腫瘍学会

 手術療法、抗がん剤療法、放射線療法に続くがん治療の第4の柱として、細胞免疫療法が国内外で徐々に広がりつつある。とくに、最近は通常の免疫機能などでは治癒が困難な難治性のがんに対する治療法として、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法やT細胞誘導抗体(T-cell engager:TCE)が、一部の血液がんに対する効果的な治療法として期待されている。 2025年3月6~8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、日本血液学会と日本臨床腫瘍学会の合同シンポジウムが開催され、細胞免疫療法の現状や課題、今後の展望などについて議論が交わされた。CAR-T細胞療法に残された課題に挑む CAR-T細胞療法は細胞免疫療法の1つとして、とくに一部の血液がんに対して高い治療効果を発揮している。一方で、CAR-T細胞療法にはサイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性のような有害事象、再発率の高さ、固形がんに対する限定的な効果、さらには高額な製造コストなどが解決すべき課題として残されている。 このような背景の中で、玉田 耕治氏(山口大学大学院医学系研究科 免疫学講座)らの研究グループは、固形がんに対する高い効果が期待できる次世代(第4世代)のCAR-T細胞の開発に取り組んでいる。固形がんに対してCAR-T細胞療法が効果を発揮するためには、腫瘍部分でのCAR-T細胞の集積と増殖が必要となる。玉田氏らは、免疫機能を調整する能力をCAR-T細胞に追加することでこの問題が解決できると考え、T細胞の生存や増殖を刺激するサイトカインであるIL-7とT細胞や樹状細胞の遊走や集積を促進するケモカインであるCCL19を同時に産生する7×19 CAR-T細胞を開発し、これをPRIME(Proliferation-inducing and migration-enhancing)CAR-T細胞と名付けた。マウスモデルを用いた研究により、7×19 CAR-T細胞は、内因性腫瘍抗原に対するエピトープ拡散を誘導することで、強力な抗がん効果を発揮することが証明された。また、がん患者の末梢血単核球細胞(PBMC)由来の7×19 CAR-T細胞の抗腫瘍効果なども確認されている。これらのことから、「PRIME CAR-T細胞は固形がんに対する画期的ながん治療法となることが期待され、近い将来、固形がんに対するCAR-T細胞の臨床研究が日本で実施される可能性がある」と玉田氏は述べた。 一方で、CAR-T細胞療法には高い製造コストがかかり、1回の投与で数千万円という高額な治療費を要することが大きな課題となり、とくに開発途上国においては治療の実現を拒む主な要因となっている。そこで、高橋 義行氏(名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学)らの研究グループは、製造コストを下げるために独自で安価なCAR-T細胞の製造法を開発した。従来、CAR-T細胞はウイルスベクターを用いた遺伝子を導入する方法で製造されてきたが、高橋氏らは非ウイルスベクターによるpiggyBacトランスポゾン法を用いてCAR-T細胞の培養を行うことに成功した。本法は酵素べクター法の1つで、ウイルスベクターを用いた方法に比べて製造方法が簡便かつ安価であり、ウイルスベクターを用いた従来の方法と同様の治療効果が期待できるという。 そして、高橋氏らは再発または難治性のCD19陽性急性リンパ性白血病患者を対象に、piggyBacトランスポゾン法にて製造したCD19標的CAR-T細胞療法の第I相試験を実施している。CD19標的CAR-T細胞1×105/kgを1回投与するコホート1(16~60歳、3例)とコホート2(1~15歳、3例)、3×105/kgの1回投与に増量するコホート3(1~60歳、3例)において、投与後28日時点で全例に完全奏効(CR)が認められ、2例が再発した。なお、本剤を投与した全例の末梢血で、piggyBac CAR-T細胞の増殖が観察されていた。 さらに、高橋氏らはタイのチュラロンコン大学からの要請を受けてCAR-T細胞療法の臨床研究を支援している。同氏らと同じ方法で製造されたCD19標的CAR-T細胞療法を受けたタイの悪性リンパ腫患者5例の全例で効果が確認され、その中の1人は投与後1ヵ月で多発していた腫瘍が消失し、1年後には寛解となっていた。 これまでの成果を踏まえ、高橋氏は、「安価な製造コストを実現することで、世界中でCAR-T細胞療法が普及することが期待される。また、日本の知的財産を活用した純日本製のCAR-T製剤が承認されれば、日本の医療費削減にもつながるのではないか」と結論した。iPS細胞技術を用いた若返りT細胞療法の開発 これまで、難治性のエプスタイン・バー(EB)ウイルス関連リンパ腫に対して、末梢血由来細胞傷害性T細胞(CTL)を体外で増殖して再び体内に戻すCTL療法が試みられてきたが、治療効果は十分ではなかった。これは、CTLが標的抗原に持続的に曝露されると疲弊してしまうためで、この問題を解決するために安藤 美樹氏(順天堂大学大学院医学研究科 血液内科学)らの研究グループは、iPS細胞技術を用いることで疲弊したT細胞を若返らせる技術を開発した。EBウイルス抗原特異的CTLからT細胞由来のiPS細胞を作製し、再びCTLに分化誘導することで若返ったCTL(rejT)となり、rejTはEBウイルス感染腫瘍を縮小することなどが確認された。さらに、EBウイルス抗原のLMP2に対するrejTをマウスに投与すると、EBウイルス関連リンパ腫に対する強い抗腫瘍効果を示しながら末梢血でセントラルメモリーT細胞として存在することが確認され、LMP2-rejTは生体内でメモリーT細胞として長期間生存することで難治性リンパ腫の再発抑制効果を維持することが示唆された。 また、安藤氏らはCARによる抗原認識とT細胞受容体(TCR)による抗原認識の両者を兼ね備え、2つの異なる受容体により効率よく腫瘍を攻撃するiPS細胞由来2抗原受容体T細胞(DRrejT)を作製した。マウスモデルによる検討では、DRrejTはEBウイルス関連リンパ腫に対して、単一標的のrejTやCARに比べて抗腫瘍効果は高く、効果が長期間持続することが示された。 加えて、小細胞肺がん(SCLC)にGD2が高発現していることに着目して、iPS細胞から分化誘導したCTL(rejT)にGD2標的CARを導入する方法でGD2-CARrejTを作製すると、SCLC対する強い抗腫瘍効果を示すとともに、末梢血由来のGD2-CAR-Tよりも有意に生存期間を延長した。 さらに、同様の方法でiPS細胞からヒトパピローマウイルス特異的rejT(HPV rejT)を誘導したところ、末梢血由来HPV CTLと比較して子宮頸がんをより強く抑制していた。しかし、患者由来のCTL作製は時間とコストがかかり実用化は難しく、他家iPS細胞を用いた場合は免疫拒絶反応などが問題となる。そこで、安藤氏らはCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いてHLAクラスIを編集した健常人由来のHPV rejTを作製したところ、免疫拒絶反応を抑えながら子宮頸がんを強力に抑制し、長期間の生存期間延長効果も認められた。このような結果を踏まえ、現在、HLAクラスIを編集したHPV rejTの安全性を評価する医師主導第I相試験が進行しているという。 安藤氏は、「iPS細胞技術を活用することで、迅速かつ何度でも十分量のDRrejTを作ることが可能で、“Off-the-shelf”療法として大いに期待できる」と締めくくった。固形がんに対する細胞免疫療法の臨床開発状況と展望 固形がんに対する細胞免疫療法としては、CAR-T細胞療法、CAR-NK細胞療法、CARマクロファージ(CAR-M)療法、TCR-T細胞療法など、数多くの臨床試験が実施されているが、日本で承認されている治療法はまだ存在しない。 CAR-T細胞療法は、CD3ζ単独のCARが第1世代、CD3ζに副刺激分子のCD28や4-1BBを1つ足したものが第2世代、2つ足したものが第3世代と呼ばれ、とくに2010年に登場した第2世代以降のCAR-T細胞療法は、B細胞性白血病/リンパ腫に高い有効性を示してきた。さらに、サイトカイン分子によりT細胞の活性化シグナルを増強させるように設計された第4世代のCAR-T細胞療法の開発が進んでいる。 固形がんに対するCAR-T細胞療法の開発の問題点として、北野 滋久氏(がん研究会 有明病院)は、免疫抑制性の環境が形成される腫瘍微小循環(TME)による有効性と持続性の低下、高いCRSのリスク、on-target/off-tumor 毒性(OTOT)、抗体薬物複合体(ADC)やTCEとの競合などを挙げる。現在、これらの問題を解決するためにさまざまな技術開発が進められており、その一例として、第4世代のCAR-T細胞療法によるTMEの調整、CRSを回避するための抗IL-6受容体抗体や免疫抑制薬の予防的投与の研究、主要組織適合性複合体(MHC)/ペプチド複合体の標的化や三重特異性抗体などによるOTOTへの対応のような研究が進行しているという。 また、CAR-T細胞療法に続く有望な細胞免疫療法として、北野氏はTCR-T細胞療法にも注目している。TCR-T細胞療法は、患者からリンパ球を採取し、がん抗原特異的なTCRをT細胞に導入して再び患者に輸注する治療法で、がん関連抗原であるNY-ESO-1を標的とした高親和性TCRを用いた滑膜肉腫患者を対象とした第I/II相試験では、有効な成績が示されていた。CAR-T細胞療法は細胞表面の抗原を標的とするのに対して、TCR-T細胞療法の標的は細胞内タンパク質と糖鎖であり、最近ではネオアンチゲンを対象としたTCR-T細胞療法の開発も進められている。リンパ系腫瘍に対する細胞免疫療法(CAR-T、BiTE)の現状と今後の展望 CAR-Tと二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を用いた細胞免疫療法は、B細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫など、さまざまな種類のリンパ系悪性腫瘍の治療に用いられている。大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)を例にとると、CD19を標的としたCAR-T細胞療法やCD20とCD3を標的としたBiTE抗体療法が臨床使用されている。 LBCLに対するCAR-T細胞療法としては、tisa-cel、axi-cel、liso-celがそれぞれの臨床試験の結果を基に3rdライン以降の治療薬として最初に承認された。その後、初回治療に対する治療抵抗例や、初回治療による寛解後1年以内の再発例を対象にした臨床試験において、標準治療(化学療法+自家移植)を上回るCAR-T細胞療法の有効性が示されたことを受け、axi-celとliso-celは2ndラインでの使用も認められることとなった。このような現状を踏まえ、伊豆津 宏二氏(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)はCAR-T細胞療法について、「再発または難治性のLBCL患者の治療にパラダイムシフトをもたらした」と述べた。さらに、今後は高リスクなLBCL患者に対する1stラインでの使用や、ほかのサブタイプによるCAR-T細胞療法の開発などが期待されるという。 加えて、伊豆津氏はCD20とCD3を標的としたBiTE抗体療法について、LBCLに対する2ndラインの有用性について検討した臨床成績、さらには現在進行中の1stラインにおける有用性を評価する臨床試験の概要についても言及した。 最後に、CAR-T細胞療法やBiTE抗体療法のようなT細胞リダイレクト療法には、有効性の長期持続が困難、抗原回避や耐性、CRSなどの有害事象、長い製造時間、高額な製造コスト、最適な治療順序の決定など、解決すべき課題が多く残されていることを伊豆津氏は指摘し、講演を締めくくった。

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世界初!デューク大学の医師らが生体ドナーからの僧帽弁移植に成功

 米デューク・ヘルスの医師らが、世界で初めて心臓ドナーから提供された僧帽弁を用いた移植手術を成功させたことを、2月27日報告した。この画期的な手術により、米ノースカロライナ州の3人の少女の命が救われたという。 この手術は、ノースカロライナ州ウィルソン在住のJourni Kellyさん(11歳)が、デューク大学で心臓移植手術を受けたことで可能になった。医師らは、彼女の元の心臓から健康な弁を二つ取り出し、他の子どもに移植したのだ。 弁の一つは、ノースカロライナ州シャーロット在住のクロスカントリーランナー、Margaret Van Bruggenさん(14歳)に移植された。Margaretさんは重度の細菌感染により緊急に僧帽弁置換術を必要としていた。もう一つの弁は、ノースカロライナ州ペンブローク在住の9歳のKensley Frizzellさんに移植された。Kensleyさんは、先天性の染色体異常であるターナー症候群で生まれ、心臓に構造的な異常が認められたため、生後2カ月を迎える前に、すでに2回の心臓手術を受けていた。 現在、心臓弁の置換を必要とする子どもは、無細胞生体弁か機械弁のいずれかを移植される。ただ、いずれの弁も、子どもの身体的な成長とともに大きくならないため、数カ月以内に機能不全を起こすことが多い。「子どもには、良い弁の選択肢がない」とデューク大学医学部外科分野のDouglas Overbey氏は言う。「どちらのタイプの弁を使おうと複数回の手術が必要になるし、いずれ機能不全に陥ることも避けられない。子どもの成長に伴い弁が合わなくなるため、おそらくは6カ月後に再び同じ手術を行い、新しい弁に取り替えなければならない。このことを親に説明するのは、本当に辛いことだ」と話す。 デューク大学の新しいアプローチは、提供された心臓の生体弁を使用するもので、「部分心臓移植」と呼ばれている。生体弁を使えば、子どもの成長とともに弁も成長するため、将来の手術の必要性を減らせる可能性がある。デューク大学は、2022年にこの技術を開発して以来、米食品医薬品局(FDA)の指導下で、これまでに20件の部分心臓移植手術を行っている。 今回の3例の手術は、Journiさんが突然の心不全でデューク大学に緊急搬送されたときに始まった。Journiさんは心臓移植リストに載せられた。彼女の両親は、移植後に元の心臓の一部を提供する意思はあるかを尋ねられたという。Journiさんの継母であるRachel Kellyさんはそのときのことを、「彼らは、Journiの心臓の健康的な部分を、他の子どもを助けるために使えると説明してくれた。私たちが次に聞いたのは、『どこにサインすればいいの?』だった」と振り返る。その後、Journiさんの心臓移植の実施が可能になったとき、彼女の元の心臓の弁がMargaretさんとKensleyさんの心臓に完全に適合することが判明したという。 Margaretさんは、心内膜炎と呼ばれる重篤な細菌感染症の経験後に僧帽弁に大きな穴が開き、健康状態が急速に悪化し始めていたまさにそのタイミングで、Journiさんの生体弁を移植されたという。Margaretさんの母親であるElizabeth Van Bruggenさんは当時の心境を、「Margaretは入院していて、私たちは彼女を失う可能性もあった。でも、彼女はとても勇敢だった。だから、私も勇敢にならなければならないと思った。彼女には、世界に貢献できることが、まだたくさんある」と語る。 一方、ターナー症候群に関連した心臓病を抱えていたKensleyさんにとって、この移植は長く続いた一連の心臓手術の終わりを意味するかもしれない。Kensleyさんの父親であるKenan Frizzellさんは、「手術が必要だとは思っていたが、こんな選択肢があるとは思っていなかった。科学の進歩という観点から見ても、一般人の視点から見ても、この状況はこれまででは考えられないようなことだ。この手術の実現にどれほどの調整が必要だったのか私には想像もつかないが、恩恵を受けた家族の一員として、ただ感謝するよりほかない」と話している。

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平均4ヵ月の交際期間、見るべきポイントは?【アラサー女医の婚活カルテ】第10回

アラサー内科医のこん野かつ美です☆前々回・前回は、結婚相談所(以下、相談所)でのお見合いで遭遇した、“クセ強め”なお相手たちとの面白エピソードをお届けしました。お楽しみいただけたでしょうか?今回は、相談所で「仮交際」や「真剣交際」をする際に気を付けると良いことを、筆者なりに分析してみました。それではどうぞ。相談所での交際期間は「平均4ヵ月」!相談所の婚活は「お見合い→仮交際(複数人との同時交際OK)→真剣交際(1対1での交際)→成婚(プロポーズ)」という流れで進みます(詳しくは第3回を参照)。大手連盟のIBJが発行した『2023年度版成婚白書』によると、同連盟での相談所婚活において、成婚者は男女とも平均交際期間「4ヵ月程度」という短期間で結婚までの意思決定をしており、これは一般的な平均交際期間「4.3年」のわずか12分の1だそうです1)。このようにきわめて短い交際期間の中で、自分とお相手の結婚観を擦り合わせて、「このお相手は自分に合うかどうか」を見定める必要があるわけです。私自身は、相談所での活動期間中、夫と出会うまでに5~6人ほどの方と交際しました。その経験を踏まえて、仮交際・真剣交際の間に確認しておくべきポイントをギュッとまとめてご紹介したいと思います。仮交際の間に確認すべきこと複数人との同時交際OKな「仮交際」から、1対1の「真剣交際」に進むということは、すなわち、真剣交際のお相手ただ1人を残して、ほかの候補者を“切り捨てる”ということです。お相手候補を一度切り捨ててしまったら、復縁は(絶対にできないわけではないものの)困難なので、これはそれなりにリスクを伴います。夫と出会う前、何人かのお相手から真剣交際の申し込みを頂いたのですが、その中に「僕はこん野さんと真剣交際に進みたいのですが、こん野さんのお返事を聞く前に、大切なお話があります」と、改まった様子で話してくださった方がいました。詳細は伏せますが、私はこの話を聞いたうえで、よく考えた末に真剣交際をお断りする決断をしました。結婚のご縁はなかったものの、デリケートな問題について話してくださったことに感謝していますし、きっと私のほかに素敵な方に巡り会われただろうと思います。お互いに貴重な時間と機会を無駄にしないために、将来の結婚生活に関わる事柄については、このように真剣交際に進む前のタイミングで申告・確認しておくことが必要でしょう(もちろん、お相手と一緒に過ごしていて楽しい、心地よい、ということは大前提です)。将来の結婚生活に関わる事柄というのは、具体的には、以下のようなことです。・子供を望むかどうか結婚を考えるうえで、家族計画のビジョンを共有することは欠かせません。双方が子供を望み、かつ双方が合意するならば、男女ともにこの段階でいわゆる「ブライダルチェック」を受けるのも1つの手です(これは真剣交際に進んだ後でもよいのかもしれませんが)。ただし、医師の皆さまならよくご存じのとおり、不妊の原因は多岐にわたるため、一般的なブライダルチェックの結果に問題がないからといって、必ず子供を授かるという保証はありません。それもあって、私も夫も検査を受けませんでした。また、ブライダルチェックを受けるのならば、仮に結果に問題があった場合はどうするのか(それでも交際継続するのか、別れるのか)という点は、検査を受ける“前に”2人でよく話し合っておく必要があると思います。なお、お見合いや初回デートのタイミングで、男性側から「子供は何人欲しいか」という話題を出されたことが何度かありました。あくまで私の個人的な考えですが、まだお互いのことをよく知らない段階で性交渉を連想させるような話をすることには、抵抗感を覚えました。避けて通ることのできない話題ではありますが、ある程度信頼関係を築いた後のほうが無難だと思います。・宗教的なことお相手本人が問題なかったとしても、家族が新興宗教などに入信しているような場合、将来的に大きな問題に発展する恐れがあります。・持病の有無・経済的な事情借金や奨学金返済義務の有無、貯金があるかどうかなどは、家庭を築いていくうえで重要な要素です。お相手の金銭感覚を推し量る指標にもなります。私の場合、夫と真剣交際に進む前にお互いの預金通帳を見せ合いました。真剣交際で確認すべきこと 前項に書いたような“条件的な部分”の擦り合わせができたら、真剣交際ではその方の“人間力”をより深く知ることが大切だというのが私の持論です。私が思うに、学歴や年収といった客観的な“スペック”の面では、そんじょそこらの男性(←失礼!)は女性医師にはなかなかかなわないでしょう。だからこそ、誤解を恐れずに言えば、学歴や年収が自分よりも“格下”のお相手と結婚したときに、長い結婚生活の中で、お相手のことを知らず知らずのうちに“見下してしまう”ことが起こりうるのではないか、と思います。これは双方にとってきわめて不幸なことです。そのため、私が婚活をしていたころは、お相手の「ここは尊敬できる/自分よりも優れている」という美点(つまり“人間力”)を見つけたい、と考えながら活動していました。たとえば家事能力が高い/やる気がある女性医師の“スペック”の高さに対して卑屈にならず、フラットに接してくれる(でも尊敬はしてくれる)波長がばっちり合う相手の立場に立ってものを考えられる(将来妊娠・出産する場合、女性の身体に掛かる負担をおもんぱかることができる)などです。余談ですが、夫の美点は「自分から“折れる”ことができる」ことです。結婚生活の中でぶつかったことは何度かあったものの、夫が声を荒げる場面をほとんど見たことがありません。私はまあまあ気が強いほうなのですが(婚活中は少し猫をかぶっていたかもしれません[笑])、夫と冷静に話し合いができるからこそ、相談所婚活の短い交際期間でも結婚に踏み切れましたし、今でも心地よい関係が続いているのだと思います。いかがでしたか?次回は、忙しい医師にとって悩みの種となる“婚活と仕事の両立”について、筆者なりのコツをご紹介したいと思います。お楽しみに。参考1)成婚白書/IBJ

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第3回 加速する高齢化と揺らぐ老年医療──迫り来る「専門医不足」の波

近年、こちらアメリカでも高齢化が急速に進んでおり、2020年の65歳以上の人口は5,580万人(総人口の16.8%)でしたが、2050年までにおよそ8,200万人(22.8%)に達すると予測されています1)。こうした状況下で注目されるのが、高齢者の医療を専門とする「老年医学」の医師不足です。今回はそんな問題を取り上げた記事をご紹介します。アメリカが直面する深刻な高齢化の現実Business Insiderの記事によれば、老年医学を専門とする医師の数は、2000年代初頭では1万人に上ったのが、今では約7,400人にまで減少しているといいます2)。その一方、今後の需要を考えれば、3万人が必要になると推定されており、現在の医療システムはすでに歪みを来し始めています。多くの病院や診療所が、限られたマンパワーの中で数多くの高齢患者を抱え、予約待ちリストが数ヵ月単位で埋まってしまうところも珍しくありません。著者の私自身、そうした現場で働いていて、身近に感じている問題ですが、このような事態は、老年医療現場の負担を今後もますます増大させ、ケアの質低下を招きかねない大きな課題となっています。敬遠される老年医学の専門性と複雑さ老年医学の道を選ぶ医師が減っている背景には、複雑な高齢者医療の現場があると考えられます。高齢者は複数の慢性疾患を同時に抱えることが多く、服薬管理だけでも薬が20種類近くに及ぶケースもあるため、医師には高い総合診療能力が求められます。にもかかわらず、報酬水準や社会的評価の面で老年医学は決して高待遇とはいえず、若い医師は循環器内科や腫瘍内科など、より専門性が高く高収入が見込まれる分野に進む傾向があります。さらに、高齢者医療を敬遠する理由として、現場での負担感や繁忙度の高さを挙げる声も少なくありません。実際、多くの医療現場でマンパワーやベッド数が圧迫され、介護施設ではスタッフ不足による新規入所者の受け入れ制限も行われている状況が報告されています。日本はさらに深刻この話題は、当然日本にとっても対岸の火事ではありません。現状の医療システムで十分高齢者医療は成立していると思われる方も少なくないかもしれませんが、本当に最適な医療が行われているのかには疑問が残ります。日本における高齢者人口は2024年時点で約3,625万人(総人口の29.3%)に上り、日本は主要国で最も高齢化率が高い国です3)。また、今後も高齢化率の上昇は続く見通しで、2040年には高齢化率34.8%と推計されています 。日本の高齢者人口は今後数十年にわたり高水準を維持し、総人口に占める割合も3人に1人から、将来的には2人に1人近くになると見込まれています。そんな中、老年科専門医の数が少ないことは、日本では話題にもあまり上らない課題です。国内の老年科専門医の数は1,800人前後です。この数字は、小児科専門医(約1万6,000人)の1割にも満たず、日本の医師全体(約34万人)からみるとごくわずかです4)。拡大する高齢者人口の規模に対して老年科専門医の数は非常に少なく、地域によっては老年医学を専門とする医師がほとんどいない状況も指摘されています。これからの高齢社会を支えるために老年医学の専門家が不足している現状は、患者だけでなく社会全体にとっても看過できません。寿命が延びるほど、転倒予防から認知症ケアまで多面的なサポートが必要になり、そうした問題に対処する十分なスキルを持つ医師や看護師、また介護スタッフなどとの連携がますます重要になります。記事でも示されているように、対策として研修プログラムの拡充や魅力的な給与体系の再検討、医療補助スタッフの育成支援などが鍵となりますが、今のところ劇的な打開策は見えていません。こうしたギャップを埋め、高齢者一人ひとりに適切な医療を提供するためには、日米両国ともに、老年科専門医の育成では足りず、医療従事者全体で高齢者医療に対応できる体制を整えていく必要があるでしょう。そのためには、医療系学生のうちからそうした学びを深めることができる仕組みこそが大切ではないかと感じています。参考文献・参考サイト1)United States Census Bureau. 2023 Population Projections for the Nation by Age, Sex, Race, Hispanic Origin and Nativity. 2023 Nov 9.2)Sor J. America's aging population faces a growing shortage of geriatric care. Business Insider. 2025 Mar 9.3)総務省統計局. 統計からみた我が国の高齢者. 2024年9月15日.4)Arai H, Chen LK. Aging populations and perspectives of geriatric medicine in Japan. Glob Health Med. 2024;6:1-5.

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その2)【なんで生徒も先生も楽しくなさそうなの?なんで先生はそこまでしてしまうの?】Part 1

今回のキーワード不安受け身アイデンティティ勤勉性べき思考学習性無力感不登校教師のメンタルダウン皆さんが小学生だった時、学校は楽しかったですか? 皆さんに小学生のお子さんがいるなら、お子さんは学校に楽しく行っているでしょうか?前回(その1)、ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」のいくつかのシーンを通して、日本の学校教育の良さが、ルールを守る規律、周りに合わせる協調性、努力する忍耐力であることがわかりました。一方で、その裏返しでもある危うさは、周りと同じことをやらせすぎる同調圧力、言いなりにさせるモラルハラスメント、吊し上げをするスケープゴートであることがわかりました。今回(その2)、引き続きこの映画のいくつかのシーンを通して、そこまでされてしまった生徒たちの心理、そこまでしてしまう教師たちの心理に迫ります。なお、この映画はドキュメンタリーであり、実在する人物が登場していますが、この記事で教師個人を批判する意図はまったくありません。あくまでその教師たちすら巻き込む文化としての日本の学校教育の危うさを指摘しています。そこまでされると生徒たちはどうなってしまうの?放送係の6年生の男子と女子が、卒業式を間近にして、放送室でおしゃべりをしています。彼女から「卒業、嬉しい?」と聞かれると、彼は「悲しいと寂しい」と答えます。さらに彼女から「もっといろんなことに責任を持たなきゃいけない? 大人になるって感じちゃう?」と核心を突かれると、「感じちゃうから嫌だ。子供のままでいたい」と正直に答えていました。決して楽しみにはしていないようです。彼のなかにはどんな心理があるのでしょうか?ここで、大きく2つ挙げてみましょう。(1)楽しめない―不安になりやすい彼らは「責任」という言葉を意識していました。この映画に登場する先生たちもたびたび使っていました。つまり、責任という名の、やらなければならないことやダメ出しをされることが先々にどんどん増えていくとプレッシャーを感じ、萎縮してしまっています。不安そうで、決して楽しみにはしていません。1つ目の心理は、楽しむことができず、不安になりやすいことです。この原因として、もともと不安になりやすい気質(遺伝)が考えられますが、それと同じかそれ以上に校則や役割があまりにも多すぎる学校環境が考えられます。その1でもご説明しましたが、そんな学校環境のなかでの生徒同士の同調圧力によって自分らしさ(アイデンティティ)が削がれていくために、自分はこうなりたいというワクワクした将来像が見えてこず、漠然とした不安があるだけなのでした。心理学では、これをべき思考と呼んでいます。こうであるべき、こうでなければならないという規律や役割などの多数派(主流秩序)が求める価値観にとらわれてしまうということです。また、先生たちは、頑張ればできると思い込んでいるため、「責任」という言葉を通して「頑張ること」を最優先にしていることも要因です。逆に、できていても頑張っていなければ、認めようとしません。また、楽しめているかどうかにについてはいっさい触れられず、むしろ最初から楽しもうとすると頑張っていないと見なされ、「不真面目だ」という圧までかけられます。楽しむことができるのは、頑張って何かができたあとだけのようです。確かに、その1でも登場した1年生の女子のように、頑張ればある程度できるようになります。しかし、不安のなりやすさと同じように、頑張るという忍耐力(パーソナリティ)やできるという認知能力にも、遺伝的な違いがグラデーションのようにあります。たとえば、頑張って伸びる人と潰れる人、走って速い人と遅い人がいるのと同じです。さらに言えば、楽しんで伸びる人と伸び悩む人もいます。つまり、生徒の個性(遺伝)によって頑張ることと楽しむことのバランスを取り、何よりも生徒を不安にさせなくする必要があります。先生たちが遺伝についての知見を先入観なく受け入れることができていない時点で、やはり時代遅れになっています。なお、認知能力(知能)とパーソナリティへの遺伝、家庭環境、学校環境(家庭外環境)のそれぞれの影響の度合いについては、関連記事1の後半以降をご覧ください。次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その2)【なんで生徒も先生も楽しくなさそうなの?なんで先生はそこまでしてしまうの?】Part 2

(2)選べない―受け身になりやすい彼は、「子供のままでいたい」と言っていました。一方で、6年生の教室で先生が「中学校に言ったら提出物が多くなる。このまま(提出物を忘れる状態)じゃかなり危険だぞ」と忠告していました。確かにその通りです。しかし、そんな脅し文句ばかり言われていると、彼のように、早く大人になって好きなことをしたい、つまり自分の生き方を選びたいという期待や夢が膨らみません。2つ目の心理は、選ぶことができず、受け身になりやすいことです。この原因として、もともと受け身になりやすい気質(遺伝)が考えられますが、それと同じかそれ以上に校則や役割があまりにも多すぎる学校環境が考えられます。その1でもご説明しましたが、そんな学校環境のなかでの教師たちによるモラルハラスメントによって自主性(勤勉性)が育まれないために、自分からこうしたいというエネルギーが沸いてこず、ただ指示待ち人間になっているだけなのでした。心理学で、これは学習性無力感と呼ばれています。できないことを繰り返し強いられることによって、自分はできない(無力である)と学習してしまうのです。また、「責任」という言葉が便利に使われて、「やるべきこと」が限りなく多いことも要因です。逆に、やりたいことを選び、やりたくないことを選ばないという選択の自由がほとんどなく、自由にしようとすると先生の言うことを聞いていないと見なされ、「偉そうだ」という圧までかけられます。確かに、給食当番と掃除当番は、日々の社会的な活動として意味づければ「やるべきこと」でしょう。そして、学校の勉強ももちろん「やるべきこと」です。しかし、運動会、卒業式などの行事の練習を生徒全員が揃って数週間前からすることは、どうでしょうか? ある先生は「運動会の表現を通して、殻を破ってほしい」と言い、運動会の練習を必死に取り組む理由を力説していました。しかし、それは参加するという選択を自らしてこそです。強制されている限り、そうなる根拠はありません。つまり、実はこのような行事を強いるのには合理的な理由がなく、決して「やるべきこと」ではありません。また、先ほど触れたように認知能力には個人差(遺伝的な違い)があるのに、授業内容はすべて画一的で詰め込まれています。レベル分けもほとんどされていないので、自分のレベルに合わない授業を選ばない(自分のレベルに合う授業を選ぶ)という選択肢がないです。あえて選ばないとしたら、すべてを選ばない、つまり不登校の一択しかありません。よくよく考えると、本来の責任の意味は、自分が自由に選んだものに対して負うものです。自由と責任はセットです。つまり、最初の時点で選ばない権利(拒否権)があるはずです。自分で納得して選ぶからこそ、その行動への責任感が芽生えます。しかし、学校で使われる「責任」の多くは、一方的に押し付けられたタスクであり、選ばない権利がありません。しかも、その1でもご説明した通り、その多くが合理的な理由がないものです。つまり、学校で使われる「責任」の正体とは、生徒にとって「責任」という名の衣をかぶった「強制労働」であり、生徒を「奴隷」として逃がさないための都合の良い美辞麗句であったことがわかります。そんななかで、この真実にいち早く敏感に気付いて逃げ出した生徒が、不登校と呼ばれるのです。そしてそんな生徒たちは、学校には絶対に行きたがらないのに、学習塾や習いごとには抵抗なく行くのです。つまり、不登校の原因は、生徒だけでなく、このような学校の時代遅れのやり方にもあったというわけです。これが、不登校が増え続ける最大の原因でしょう。なお、不登校の心理の詳細については、関連記事2をご覧ください。そもそも責任とは、大人になるにつれて自由とセットでだんだんと増えていくものです。なぜなら、大人になる(自立)とは、自分の行動を自分で決めて、自由に生きていくことだからです。そこには、楽しみがあり喜びがあります。その自由に対して責任があるのです。つまり、小学生の時からむやみに、しかも一方的に押し付つけるものではないです。そんなことをしてしまったら、自分が自由に選んで責任を取るという大人になるための練習ができなくなります。なお、実際に、国際比較において、日本人は最も不安になりやすく、最も受け身になりやすい国民性であることがわかっています。この詳細については、関連記事3のページの後半をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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小児・青年期の肥満の有病率は上昇傾向で今後も増加が予想される。対策が急務だが、経済発展の背景にある格差拡大が問題ではないか(解説:名郷直樹氏)

 180ヵ国の5~24歳の小児・青年期の男女を対象として、1990年から2021年にかけての過体重、肥満の有病率データから、2022年から2050年にわたる過体重、肥満の有病率を予想した論文である。 いずれの年代、いずれの地域においても、1990年から2021年までの過体重、肥満の有病率が上昇している。南北アメリカ、ヨーロッパで有病率が高く、アジア、アフリカでは有病率は前者ほど高くはないが、高い増加率が認められる。 実際の数字を見てみると、全体の集計の青年期では1990年の過体重が8.0%、肥満が1.9%、2021年にそれぞれ13.7%、6.6%へと増加。小児期でも過体重が6.7%から11.2%、肥満が2.0%から6.9%に増加している。日本が含まれる東南アジア、東アジア、オセアニアでは、青年期の過体重が5.2%から11.6%、肥満が0.8%から4.7%に増加、小児期では過体重が4.6%から9.7%、肥満が1.2%から5.9%にそれぞれ増加している。絶対値で見ればアジアの肥満の有病率は西欧より低いものの、30年間の増加率でみると西欧を上回り、青年期の肥満が470%、小児期では404%の増加である。 小児・青年期の肥満は将来の心血管疾患、肝疾患、腎疾患などのリスクであり、いったん肥満になると改善が困難なこともあり、その予防が重要である。しかし、この論文でも示されているように、高収入の集団で最も肥満の有病率が高く、肥満は経済発展の印でもある。ただ、これは高収入ほど肥満が多いというよりは、高収入の社会で格差が大きいことが問題なのかもしれない。経済の発展に伴う格差の拡大により、高収入集団の低所得者が栄養の偏りから肥満を来す面がある。格差の是正が肥満対策に対して重要なポイントだろう。 また日本の現状を考えたとき、この格差是正は喫緊の問題だろう。貧困率の上昇や少子化対策にも重なる。さらに日本での問題を考えた場合、肥満だけでなく、やせの問題もある。肥満は健康上の問題としてだけでなく、見た目の問題もある。とくに見た目を重視し過ぎる極端なやせはもっと問題にされてもいいのではないか。健康の面で見れば、BMI 18未満は30以上に匹敵する不健康な状態だ。体重減少をもたらすGLP-1作動薬が肥満でもないやせを希望する人に対して大量に使われることで、糖尿病患者に薬が届かないという異常な状態が出現している。日本においては肥満だけでなく、やせの有病率と健康との関連を調べるのも重要ではないだろうか。

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帝王切開は子どもの成長に影響しない?

 帝王切開(CD)で生まれた子どもと、長期的な健康や発達における悪影響との間には有意な関連はないとする研究結果が報告された。0.5~9歳までの全原因入院、肥満、発達マイルストーン(発達がどこまで進んでいるかという指標)といったさまざまな評価項目で有意な関連は認められなかったという。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・衛生学分野の松本尚美氏らによるこの研究結果は、「Scientific Reports」に1月20日掲載された。 出産方法は長期的に見た場合、子どもの健康と発達に影響を及ぼすことが示唆されてきた。CDは、母子の安全確保のため、ある特定の臨床的状態のときに実施される。しかしながら、この外科的介入が子どもの身体的成長、認知発達、慢性疾患のリスクなどさまざまな側面に及ぼす潜在的な影響については現在も議論が続いている。松本氏らは、「日本産科婦人科学会周産期登録(PRN)データベース」にリンクされた「21世紀出生児縦断調査」を利用して、CDと子どもの健康および発達との関連を調査した。 本研究では、出生日、性別、出生時体重、出生時の母親の年齢、在胎週数の情報を使用し、PRNデータベースと21世紀出生児縦断調査を組み合わせた独自のデータセットを作成した。最終的に、2010年5月10日から5月24日に出生した2,114人(正常分娩群;1,351人、CD群;763人)を研究に含め、0.5~9歳までに発生した複数の転帰を評価した。 入院(呼吸器感染症と胃腸疾患による入院、および呼吸器感染症と胃腸疾患を含む全原因入院)は1.5~5.5歳までの調査で報告された0.5~5.5歳までの入院経験と定義。過体重・肥満は、世界保健機関(WHO)の基準に基づいたBMIスコアを用いて5.5歳と9歳で評価された。発達のマイルストーン(運動、言語、認知、自己制御、社会情緒、注意、適応能力、素行など)は2.5歳、5.5歳、8歳で評価された。 潜在的な交絡因子を調整して解析した結果、CDは全原因入院(調整リスク比1.25〔95%信頼区間0.997~1.56〕)、5.5歳(同1.05〔0.68~1.62〕)および9歳(0.83〔0.52~1.32〕)での過体重・肥満、およびさまざまな発達マイルストーンを含むほとんどの転帰と有意な関連は認められなかった。また、多胎出産および早産の状態別に層別化したサブグループ解析を行った結果、多胎出産ではいくつかの発達マイルストーンと、早産では胃腸疾患による入院といくつかの発達マイルストーンに、それぞれCDとの関連が高い傾向が認められたが、いずれも有意ではなかった。 本研究の結果について、研究グループは、「今回の研究で得られた知見は、子どもの親や医療従事者に安心感を与えるものではあるが、統計的に有意でないからといって、必ずしも臨床的に関連する影響がないことを意味するわけではない。今後の研究では、より長期間の追跡調査、サブグループ解析のためのサンプルサイズの拡大、腸内細菌叢の活性化など潜在的な媒介因子のより詳細な評価を検討すべきである」と総括した。なお、本研究の限界については、比較的小規模のサンプルサイズで日本の子どものみを対象としていること、高リスク妊娠の症例が多いデータセットであることから一般化できない点などを挙げている。

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たった1時間のスクリーンタイムの増加で近視リスクが上昇

 目を細めながらスマートフォン(以下、スマホ)を見つめたり、タブレットやテレビなどのスクリーンを凝視したりする時間が長くなるほど、近視になるリスクも高まることが、新たなエビデンスレビューで明らかになった。1日当たりのデジタル機器のスクリーンを見る時間(スクリーンタイム)が1時間増えるごとに近視のリスクが高まり、近視になりやすい傾向(近視のオッズ)が21%上昇する可能性が示されたという。ソウル国立大学校(韓国)医学部眼科学准教授のYoung Kook Kim氏らによるこのレビューの詳細は、「JAMA Network Open」に2月21日掲載された。 Kim氏らによると、2050年までに世界の人口の約半数が近視になると予測されているという。米国眼科学会(AAO)によると、近視とは、近くのものははっきり見えるが遠くのものはぼやけて見える状態のことを指し、例えば、手元の地図を確認することはできても車の運転では眼鏡やコンタクトが必要になる。同氏らは、「近視患者の急激な増加の予測は、都市化が進んだ社会でよく見られる環境要因に後押しされている可能性が高い。その主な要因として挙げられるのは、近くを見る活動(近見作業)の増加と屋外での活動の減少だ」と指摘する。 さらにKim氏らは、スマホやタブレットなどのスクリーンを伴う機器が、「近見作業の新たな形をもたらした」と述べる。その上で、「より低年齢でスマートデバイスを使用する子どもが増え、スクリーンタイムが長くなりつつあることを考慮すると、スクリーンタイムと近視の関連について理解を深めることは急務である」と主張している。 Kim氏らは今回、45件の先行研究の33万5,524人(平均年齢9.3歳)のデータを統合して解析した。その結果、1日当たりのスクリーンタイムが1時間増えるごとに近視のオッズが21%上昇するという、有意な線形の用量反応関係が示された(オッズ比1.21、95%信頼区間1.13〜1.30)。次に、非線形の用量反応メタアナリシスを行い、スクリーンタイムの増加と近視リスクとの関連を検討した。その結果、近視のオッズ比は、1日当たりのスクリーンタイムが1時間の場合で1.05(95%信頼区間1.01〜1.09)、2時間で1.29(同1.18〜1.41)、3時間で1.65(同1.39〜1.96)、4時間で1.97(同1.56〜2.40)、5時間で2.24(同1.67〜3.01)であった。Kim氏らは、「近視リスクはスクリーンタイムが1時間を超えると4時間まで顕著に上昇し、4時間を超えると上昇の仕方が鈍化することが示された」と述べている。 こうした結果を受けてKim氏らは、「このレビューでは、1日当たり1時間未満のスクリーンタイムが安全性の上限となる可能性があり、4時間の長さに至るまで近視のリスクが高まることが示された」と結論付けている。 このリスクは、読書をしたり何かを書いたりするなどの近見作業とは独立して存在するとKim氏らは述べている。同氏らは、「デジタル機器のスクリーンの使用と、他の近見作業がトータルで近視のリスクに寄与し、全体的な用量反応傾向に影響を及ぼしている可能性はある」と説明する。その上で、「このことは、単にスクリーンタイムを減らして従来の近見作業を優先するだけでは効果的な予防戦略にならない可能性を示唆している」と付け加えている。また、「全般的な近見作業を最小限に抑え、屋外で過ごす時間を増やすように促すことは、近視リスクを軽減するためのより効果的なアプローチになるだろう」と述べている。

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asthma(喘息)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第22回

言葉の由来「喘息」は英語で“asthma”ですが、この言葉の起源をたどると、古代ギリシャ語の“aazein”という動詞に由来するそうです。この動詞は、「激しく息をする」という意味合いを持つ言葉です。14世紀後半に英語に導入され、「息苦しい発作や胸の圧迫感を伴う呼吸障害」を表す医学用語として使用され始めました。この当時は、まだ現在のように病名として定義されておらず、呼吸困難がある患者全般に対する呼称として“asthma”あるいは、“asthmatic”という形容詞が使われてきたようです。なお、後者の“asthmatic”は、喘息患者をラベリングする(=患者を病気そのもので定義付けてしまう)使い方をされることが多いので、現在は使用を避けるのが好ましいといわれています。現代の医学では、喘息は慢性炎症性気道疾患の病名として用いられていますが、このような病気としての言葉の定義付けがされたのは、19世紀に入ってからのようです。併せて覚えよう! 周辺単語呼吸困難dyspnea喘鳴wheeze急性増悪acute exacerbation吸入ステロイドinhaled corticosteroids気管支拡張薬bronchodilatorsこの病気、英語で説明できますか?Asthma is a chronic inflammatory disease of the airways characterized by episodes of wheezing, shortness of breath, chest tightness, and coughing. These episodes can be triggered by allergens, physical activity, or respiratory infections.講師紹介

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5~24歳の肥満者数、この30年で3倍に/Lancet

 1990~2021年にかけて世界のあらゆる地域で過体重と肥満が大幅に増加しており、増加を抑制するための現行の対策が小児期・青年期の世代で失敗していることが、オーストラリア・Murdoch Children 's Research InstituteのJessica A. Kerr氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2021 Adolescent BMI Collaboratorsの解析で明らかとなった。結果を踏まえて著者は、「2021年以降も、小児期・青年期の過体重の有病率は高いままで、将来的に肥満集団はさらに増加すると予測される。世界のすべての地域、すべての人口集団で増加が続き、2022~30年に大きな変化が起こると予測されるため、この公衆衛生上の危機に対処するため早急な行動が必要である」と述べている。Lancet誌2025年3月8日号掲載の報告。1990~2021年の180の国と地域5~24歳のデータを解析 研究グループは、GBD 2021の確立された方法論を用い、1990~2021年の小児期・青年期における過体重と肥満の推移をモデル化し、2050年までの予測を行った。モデルの主要データには、180の国と地域から収集された1,321件の測定データが含まれた。 これらのデータを用い、1990~2021年における204の国と地域での過体重と肥満の年齢標準化有病率を、性別、年齢層別、国・地域別に推定した。年齢層は、学童期(5~14歳、通常学校に通い児童保健サービスを受ける)と学生期(15~24歳、徐々に学校を離れ、成人向けサービスを受ける)に分けた。 1990~2021年の推定有病率は時空間ガウス過程回帰モデルを用いて、2022~50年の予測有病率は現在の傾向が継続すると仮定した一般化アンサンブルモデリング法を用いてそれぞれ算出し、1990~2050年の各年齢、性別、地域の人口集団について、肥満の割合と過体重の割合の対数比から肥満の過体重に対する優位性を推定した。2050年までに世界的に過体重と肥満の有病率が増加 1990~2021年にかけて、小児期・青年期における過体重と肥満の合計有病率は2倍、肥満のみの有病率は3倍となった。2021年までに、肥満者数は5~14歳で9,310万人(95%不確実性区間[UI]:8,960万~9,660万)、15~24歳で8,060万人(7,820万~8,330万)と推定された。 2021年の過体重および肥満の有病率は、GBD super-regionの中で北アフリカ・中東(アラブ首長国連邦、クウェートなど)で最も高く、1990~2021年にかけて増加率が最も高かったのは東南アジア・東アジア・オセアニア(台湾、モルディブ、中国など)であった。 2021年までに、両年齢層の女性は、オーストララシア(オーストラリアなど)および北米の高所得地域(カナダなど)の多くの国で肥満優位状態であり、北アフリカ・中東(アラブ首長国連邦やカタールなど)およびオセアニア(クック諸島やサモアなど)の多くの国でも、男女ともに肥満優位状態に移行していた。 2022~50年にかけて、過体重(肥満ではない)の有病率は世界的に安定すると予測されたが、世界人口に対する肥満人口の絶対割合の増加は1990~2021年の間より大きくなり、2022~30年にかけて大幅に増加し、この増加は2031~50年の間も続くと予測された。 2050年までに、肥満有病率は北アフリカ・中東(アラブ首長国連邦、クウェートなど)で最も高くなると予測され、肥満の増加は依然として東南アジア・東アジア・オセアニア(東ティモール、北朝鮮など)に加え、南アジア(ネパール、バングラデシュなど)でも増加すると予想された。 15~24歳と比較して5~14歳のほうが、ほとんどの地域(中南米・カリブ海地域および高所得地域を除く)で2050年までに過体重より肥満の有病率が高くなると予測された。 世界的には、2050年までに5~14歳のうち15.6%(95%UI:12.7~17.2、1億8,600万人[1億4,100万~2億2,100万])、15~24歳のうち14.2%(11.4~15.7、1億7,500万人[1億3,600万~2億300万])が肥満になると予測された。 また、2050年までに、5~14歳の男性では、肥満(16.5%[95%UI:13.3~18.3])が過体重(12.9%[12.2~13.6])を上回り、5~24歳の女性および15~24歳の男性では過体重が肥満を上回ると予測された。 地域別では、北アフリカ・中東および熱帯中南米の5~24歳の男女、東アジア、サハラ以南のアフリカ中央部と南部、中南米の中央部の5~14歳の男性、オーストララシアの5~14歳の女性、オーストララシア、北米の高所得地域、サハラ以南のアフリカ南部の15~24歳の女性、北米の高所得地域の15~24歳の男性で、2041~50年までに肥満優位状態に移行すると予測された。

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