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診療科別2025年上半期注目論文5選(消化器内科編~消化管領域)

Multicentre randomised controlled trial of a self-assembling haemostatic gel to prevent delayed bleeding following endoscopic mucosal resection (PURPLE Trial)Drews J, et al. Gut. 2025;74:1103-1111.<PURPLE試験>:十二指腸・大腸内視鏡的粘膜切除術後の後出血予防における止血ゲル、後出血率の低下効果は認められず欧州で行われた本ランダム化比較試験では、10mm以上の十二指腸腫瘍または20mm以上の大腸腫瘍に対する十二指腸・大腸内視鏡的粘膜切除術(EMR:Endoscopic mucosal resection)後において、止血ゲル投与群の後出血率は11.7%(14/120例)、非投与群の後出血率は6.3%(7/112例)であり、止血ゲルの後出血予防効果は示されませんでした。止血ゲルは、内視鏡治療後の人工潰瘍出血に対する新規の止血予防でしたが、その有効性が証明されなかった点は、今後の内視鏡治療において重要な知見です。Perioperative Chemotherapy or Preoperative Chemoradiotherapy in Esophageal CancerHoeppner J, et al. N Engl J Med. 2025;392:323-335.<ESOPEC試験>:切除可能食道進行腺がんへの周術期化学療法(FLOT療法)、術前化学放射線療法(CROSS療法)と比較して3年および5年生存率を有意に改善欧州で行われた本ランダム化比較試験では、切除可能食道進行腺がんに対して、FLOT(フルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン+ドセタキセル)周術期化学療法(術前+術後)の3年生存率は57.4%、5年生存率は50.6%であり、CROSS(カルボプラチン+パクリタキセル)術前化学放射線療法の3年生存率50.7%、5年生存率38.7%と比較して優越性が認められました。進行食道腺がんにおける周術期化学療法の生存率向上効果を示した重要な知見です。Stool-Based Testing for Post-Polypectomy Colorectal Cancer Surveillance Safely Reduces Colonoscopies: The MOCCAS StudyCarvalho B, et al. Gastroenterology. 2025;168:121-135.<MOCCAS試験>:大腸ポリープ切除後のサーベイランス、便検査の活用で大腸内視鏡検査の実施回数を削減できる可能性欧州で行われた本試験では、大腸ポリープ切除および結腸直腸がん治療後、家族性大腸がんリスクを有する集団に対して、大腸内視鏡検査施行前に実施したmt-sDNA testと2種類の便潜血検査1回法(FIT:Fecal Immunochemical Test)によるadvanced neoplasiaに対する曲線下面積(AUC)は0.72、0.59~0.61でした。オランダ人口モデルを用いたシミュレーションにより、大腸内視鏡検査後のサーベイランスに便検査を行うことで、大腸内視鏡検査回数を低下させ、コスト効率の向上が期待できることが示唆されました。Effect of an Endoscopy Screening on Upper Gastrointestinal Cancer Mortality: A Community-Based Multicenter Cluster Randomized Clinical TrialXia C, et al. Gastroenterology. 2025;168:725-740.<食道がん・胃がん死亡率への上部消化管内視鏡検診の効果>:高リスク地域で1回の上部消化管内視鏡検診が食道がん・胃がん死亡率を有意に低下本試験は、中国の40~69歳の住民を対象とするクラスターランダム化比較試験です。食道がんおよび胃がんの年齢調整死亡率が全国平均の3倍以上の中国の高リスク地域において、1回の上部消化管内視鏡スクリーニングが食道がんおよび胃がんの死亡リスクを7.5年間で22%低下させることが示されました。本試験は、上部消化管内視鏡検診の有効性を明確に示した初めてのランダム化比較試験です。Vonoprazan as a Long-term Maintenance Treatment for Erosive Esophagitis: VISION, a 5-Year, Randomized, Open-label StudyUemura N, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2025;23:748-757.<VISION研究>:H. pylori未感染の逆流性食道炎患者に対するボノプラザン長期維持療法、5年間の安全性を証明強力な胃酸分泌抑制は、高ガストリン血症を引き起こし、胃がんや胃神経内分泌腫瘍のリスクと懸念されています。本ランダム化比較試験では、Helicobacter pylori(H. pylori)未感染で維持療法が必要な日本の逆流性食道炎患者に対して、ボノプラザン10mg群とランソプラゾール15mg群を比較しました。その結果、5年間の追跡で両群ともに胃がんおよび胃神経内分泌腫瘍の発生は0人でした。本試験は、H. pylori未感染患者におけるボノプラザンの長期安全性を支持する重要なエビデンスを示しました。

3.

大腸がんスクリーニング、CT検査が便中DNA検査よりも有用か

 大腸がんのスクリーニングにおいては、マルチターゲット便中DNA検査(mt-sDNA検査)よりも大腸CT検査(CT Colonography;CTC)の方が、臨床的有効性と費用対効果の点で優れていることが、新たな研究で示された。米ウィスコンシン大学医学部・公衆衛生学部放射線医学・医学物理学分野のPerry Pickhardt氏らによるこの研究結果は、「Radiology」に6月10日掲載された。 大腸がんのスクリーニングでは、現在も大腸内視鏡検査が主流であるとPickhardt氏は説明する。大腸内視鏡検査は侵襲性が高いものの、検査中に前がん状態のポリープを切除できるため、依然として検診のゴールドスタンダードであるという。しかし、鎮静薬を使い、細くて柔軟なチューブを肛門から結腸に挿入するこの検査に不安を感じ、mt-sDNA検査かCTCを選択する患者は少なくない。mt-sDNA検査は、患者から採取した便サンプルに含まれるDNAを解析して腫瘍細胞に由来する変異遺伝子や異常なメチル化パターンなどを検出する。一方、CTCでは、肛門から炭酸ガスなどを注入して大腸を膨らませた状態でCT撮影を行い、ポリープなどの病変の有無を調べる。 メディケアは現在、mt-sDNA検査とCTCの両方をカバーしている。このことからPickhardt氏らは、これらの侵襲性の低い2種類の検査方法の臨床的有効性と費用対効果を直接比較することにした。そのために同氏らは、米疾病対策センター(CDC)の2017年のデータを基にマルコフモデル(ある状態の別の状態への変化を確率的に予測するモデル)を構築し、45歳の米国人口を代表する1万人の仮想的なコホートを対象に、3つの大腸がんスクリーニング戦略を評価した。3つの戦略とは、1)3年ごとのmt-sDNA検査、2)従来型CTC戦略(6mm以上のポリープは全て内視鏡的切除を行い、検査を5年間隔で実施)、3)CTCサーベイランス戦略(6〜9mmのポリープに対しては3年ごとにCTCで経過観察を行い、10mm位以上のポリープは内視鏡的切除を行う)であった。 その結果、大腸がんの累積発症率は、スクリーニングを受けない場合での7.5%(752人)から、mt-sDNA検査を受けることで59%(310人)、従来型CTC戦略を受けることで75%(190人)、CTCサーベイランス戦略を受けることで70%(223人)減少することが示された。 また、全ての戦略において増分費用効果比(ICER)が支払い許容額の基準である10万ドル/1QALY(質調整生存年)を大きく下回り、これらの戦略はスクリーニングを受けない場合と比べて費用対効果が高いと考えられた。1QALY獲得するのにかかる費用は、mt-sDNA検査で8,878ドル(1ドル145円換算で約128万7,000円)であった。一方、CTCの両戦略は、スクリーニングを行わない場合よりも1人当たりの総医療費が少なく(スクリーニングなし:4,955ドル〔約71万8,500円〕、CTCサーベイランス戦略:3,913ドル〔約56万7,000円〕、従来型CTC戦略:4.422ドル〔約64万1,000円〕)、費用対効果が優れているとともに医療費の節約にもつながることが示された。 研究グループは、「これらの結果は、CTCが従来の大腸内視鏡検査やmt-sDNA検査の中に「正当な最前線のスクリーニングオプション」として加わることができることを示している」と結論付けている。 ただし、CTCを受けるには、検査の前に強力な下剤を使用して結腸を空にする必要がある。それでもPickhardt氏は、「CTCは骨粗鬆症や動脈硬化などの他の問題を調べるのにも有用だ」とメリットを強調している。 研究グループはまた、今回のシミュレーションはこれまでの研究結果と一致しているものの、シミュレーションでは検査方法と大腸がん発症率の低下との間の直接的な因果関係を証明することはできないことにも言及している。

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7月14日 内視鏡の日【今日は何の日?】

【7月14日 内視鏡の日】〔由来〕「7(な)」と「14(いし)」と読む語呂合わせから内視鏡医学のさらなる発展と普及を願い、内視鏡医学研究振興財団が2006年に制定。1950年に世界で初めてわが国で胃カメラによる胃内撮影に成功した。それ以来、内視鏡は消化管のがんなどの早期発見・治療のために大切な役割を果たしている。また、内視鏡は、泌尿器科、呼吸器科、耳鼻咽喉科など幅広く用いられ、進化発展している。関連コンテンツマスクが胃カメラの飛沫拡散を予防【患者説明用スライド】上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の略語はどれが正しい?【知って得する!?医療略語】H. pylori検査と除菌後胃がん、知っておくべき7つのQ&A肥満者の鎮静下内視鏡検査、高流量鼻カニューレ酸素投与で低酸素症が減少/BMJ検査時間帯で異なる大腸内視鏡の精度、解決策は?

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マルチターゲット便DNA検査は免疫学的便潜血検査よりも大腸がん発見のコストが高い

 マルチターゲット便DNA検査(MSDT)および次世代MSDT(N-G MSDT)を用いたスクリーニングは、免疫学的便潜血検査(FIT)と比較して、発見できるAdvanced neoplasiaや早期大腸がん(CRC)1例当たりのコストが高いというリサーチレターが、「Annals of Internal Medicine」に5月13日掲載された。 ドイツがん研究センターのHermann Brenner氏らは、MSDTがFITと比較して高感度であり、米国でCRCスクリーニングに使用される機会が増えていることに着目し、2件の研究の結果に基づいて、FIT、MSDT、N-G MSDTを用いたCRCスクリーニングにおいて発見できる標的所見1件当たりのコストを比較検討した。 その結果、便検査で陽性となった場合の大腸内視鏡検査実施率を60%と仮定した場合、発見されるAdvanced neoplasiaまたは早期CRC1例当たりのスクリーニングコストは、MSDTおよびN-G MSDTを用いたスクリーニングで、FITを用いたスクリーニングよりも約7~9倍高くなることが分かった。FITを用いたスクリーニングと比較して、MSDTあるいはN-G MSDTにより追加で早期発見されるCRC1例当たりのコストはいずれも70万ドルを超え、これはFITで発見されるCRC1例当たりの約40倍および30倍に相当した。MSDTおよびN-G MSDTの1回当たりのコストが100ドル(現在のコストの20%未満)に引き下げられたとしても、MSDTまたはN-G MSDTにより追加で発見されるCRCまたはAdvanced neoplasia1例当たりのコストは、依然としてFITより何倍も高くなると考えられる。 著者らは、「今回の結果は、米国におけるFIT使用率の低下とMSDT使用率の上昇という現在の傾向を逆転させることができれば、得られるものが非常に大きい可能性を示している」と述べている。

6.

PPI・NSAIDs・スタチン、顕微鏡的大腸炎を誘発するか?

 顕微鏡的大腸炎は、高齢者における慢性下痢の主な原因の1つであり、これまでプロトンポンプ阻害薬(PPI)や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、スタチンなどの一般的に用いられる薬剤との関連が指摘されてきた。しかし、スウェーデンで実施された全国調査の結果、これらの薬剤のほとんどは顕微鏡的大腸炎のリスクを増加させない可能性が示唆された。本研究は、Hamed Khalili氏(米国・マサチューセッツ総合病院)らの研究グループによって実施され、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2025年7月1日号で報告された。 研究グループは、スウェーデンの65歳以上の住民280万例超の処方、診断、生検データなどを用いて本研究を実施した。本研究ではtarget trial emulationのデザインを用いて、顕微鏡的大腸炎との関連が指摘されているPPI、NSAIDs、SSRI、スタチン、ACE阻害薬、ARBの各使用群と非使用または代替薬使用群を比較した。主要評価項目は12ヵ月、24ヵ月時点における顕微鏡的大腸炎の累積発症率とした。 主な結果は以下のとおり。・すべての群において、12ヵ月、24ヵ月時点の顕微鏡的大腸炎の累積発症率は0.5%未満であった。・PPI(vs.非使用)、NSAIDs(vs.非使用)、スタチン(vs.非使用)、ACE阻害薬(vs.カルシウム拮抗薬)、ARB(vs.カルシウム拮抗薬)の使用は、顕微鏡的大腸炎の発症リスクを上昇させなかった。・12ヵ月時点における顕微鏡的大腸炎の発症リスクは、SSRI群がミルタザピン群と比較してわずかに高かった(リスク差:0.04%、95%信頼区間:0.03~0.05)。ただし、SSRI群は大腸内視鏡検査の施行率が高く、サーベイランスバイアスの可能性が示唆された。 本研究結果について、著者らは「顕微鏡的大腸炎の引き金となることが疑われてきた薬剤の大半について、因果関係を示すエビデンスは得られなかった」と述べている。

7.

血中循環腫瘍DNA検査は大腸がんスクリーニングに有用か/JAMA

 平均的リスクの大腸がんスクリーニング集団において、血液ベースの検査(血中循環腫瘍DNA[ctDNA]検査)は大腸がん検出の精度は許容範囲であることが実証されたが、前がん病変の検出にはなお課題が残ることが、米国・NYU Grossman School of MedicineのAasma Shaukat氏らPREEMPT CRC Investigatorsによる検討で示された。大腸がん検診は広く推奨されているが十分に活用されていない。研究グループは、血液ベースの検査は内視鏡検査や糞便ベースの検査に比べて受診率を高める可能性はあるものの、検診対象の集団において臨床的に実証される必要があるとして本検討を行った。結果を踏まえて著者は、「引き続き感度の改善に取り組む必要がある」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年6月2日号掲載の報告。大腸内視鏡検査を参照対照法として、大腸がんに対する感度などを評価 研究グループは、大腸がんの平均的リスク集団において、開発中のctDNA検査の臨床パフォーマンスを、参照対照法として組織病理学的な大腸内視鏡検査を用いて評価する前向き多施設共同横断観察研究を行った。 対象は、大腸がんリスクが平均的で、標準的な大腸がんスクリーニングを受ける意思がある無症状の45~85歳。参加者には、採血後に大腸内視鏡検査を受けることが求められた。 試験は、米国49州とアラブ首長国連邦の計201施設で行われ、参加者は2020年5月~2022年4月に登録された。血液検体は試験地での採血およびモバイル採血にて収集された。 参加者、スタッフ、病理医は血液検査結果が盲検化され、臨床検査も大腸内視鏡検査の所見を盲検化して実施された。 事前に規定された主要エンドポイントは4つで、ctDNA検査の大腸がんに対する感度、進行大腸腫瘍(大腸がんまたは進行前がん病変)に対する特異度、進行大腸腫瘍の陰性的中率、進行大腸腫瘍の陽性的中率であった。副次エンドポイントは、進行前がん病変に対する感度であった。大腸がんの感度79.2%、進行大腸腫瘍の特異度91.5%だが、進行前がん病変の感度は12.5% 臨床検証コホートには結果が評価された2万7,010例が包含された。年齢中央値は57.0歳、55.8%が女性であった。73.0%が白人で、アジア系は8.8%。 ctDNA検査の大腸がんに対する感度は79.2%(57/72例、95%信頼区間[CI]:68.4~86.9)、進行大腸腫瘍に対する特異度は91.5%(2万2,306/2万4,371例、95%CI:91.2~91.9)であった。進行大腸腫瘍の陰性的中率は90.8%(2万2,306/2万4,567例、95%CI:90.7~90.9)、進行大腸腫瘍の陽性的中率は15.5%(378/2,443例、95%CI:14.2~16.8)で、すべての主要エンドポイントが、事前に規定した受容基準を満たした。 進行前がん病変に対する感度は12.5%(321/2,567例、95%CI:11.3~13.8)で、事前に規定した受容基準を満たさなかった。

8.

患者ナビゲーション導入でリスクを有する患者の大腸内視鏡検査受診率がアップ

 患者に対する個別サポートが、大腸がんリスクを有する患者の大腸内視鏡検査受診率を高めるのに役立つことが新たな研究で示唆された。免疫学的便潜血検査(FIT検査)によるスクリーニングで大腸がんリスクが判明した後に大腸内視鏡検査を受けた人の割合は、患者ナビゲーターが割り当てられた人の方が、単に検査結果を知らされただけの人よりも高かったという。米アリゾナ大学がんセンター人口科学副所長のGloria Coronado氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に4月1日掲載された。 患者ナビゲーションとは、米国の複雑な医療制度の中で患者が円滑かつ適切に医療を受けられるように支援する制度のことであり、その役割を担う人は患者ナビゲーターと呼ばれる。米疾病対策センター(CDC)による地域予防サービスガイド(Guide to Community Preventive Services)では、患者ナビゲーションの導入が推奨されている。しかし、患者ナビゲーションが、大腸がんリスクを有する人における大腸内視鏡検査の受診率向上に寄与しているのかどうかは不明である。 大腸がん検診では、毎年のFIT検査か、10年ごとの大腸内視鏡検査を選択することができる。大腸内視鏡検査は侵襲的な検査であり、準備として強力な下剤を服用する必要があるため、多くの人がFIT検査を選択する。しかし、便の中に血液やがんの遺伝物質が見つかった場合には、ただちに大腸内視鏡検査を受ける必要がある。Coronado氏は、患者がフォローアップの大腸内視鏡検査を遅らせた場合、大腸がんで死亡するリスクが7倍高くなると指摘する。Coronado氏は、「FIT検査で異常が確認された患者は、大腸がんの発症リスクやがんが進行してから発見されるリスクが高まる。そのため、できるだけ早く大腸内視鏡検査を受けることが重要だ」と話す。 Coronado氏らは今回、FIT検査の結果が陽性だった患者を対象に、患者ナビゲーターを割り当てることで大腸内視鏡検査の受診率が向上するのかを調査した。対象として、米ワシントン州西部で32カ所のクリニックを運営する連邦政府認定医療センターであるシーマーコミュニティーヘルスセンターの50〜75歳の患者985人が登録された。対象者は、患者ナビゲーターを割り当てられる群(患者ナビゲーション群)と、検査結果だけを知らされる通常ケア群にランダムに割り付けられた。 患者ナビゲーターは、FIT検査で陽性と判定された患者が大腸内視鏡検査を受けるようにするために、平日の午前8時から午後6時の間に最大で6回、患者に連絡を取ることを試みた。12回試みても連絡が取れなかった患者には、フォローアップの手紙を送付した。通常ケア群に対しては、最大2回の電話と大腸内視鏡検査の予約を促す手紙の送付という従来の方法が取られた。 967人を対象にITT解析が行われた(患者ナビゲーション群479人、通常ケア群488人)。このうち、フォローアップの大腸内視鏡検査を受けた患者の割合は、患者ナビゲーション群で55.1%、通常ケア群で42.1%であり、患者ナビゲーション群の方が高かった(リスク差13.0%、95%信頼区間6.5〜19.4)。また、患者ナビゲーション群では、通常ケア群に比べて大腸内視鏡検査を受けるまでの期間も平均27日短縮された。 こうした結果を受けてCoronado氏は、「本研究により、患者ナビゲーターがFIT検査で異常が認められた患者を支援することでフォローアップの大腸内視鏡検査の受診率が向上し、検査を受けるまでの時間も短縮されることが明らかになった。このプロセスを通じてのガイダンスにより、がんが早期発見され、患者の生存率が向上する可能性がある」と述べている。また同氏は、「患者ナビゲーションを標準化することで、クリニックは患者に検査結果を通知し、大腸内視鏡検査の重要性を理解できるように支援する手順を確立できる」と話している。

9.

大腸がん死亡率に対する大腸内視鏡検査と2年ごとの便潜血検査の有用性(解説:上村直実氏)

 日本対がん協会の報告によると、2023年の部位別がん死亡数を死因順位別にみると、男性は肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がん、肝臓がんの順に多く、女性は大腸がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、胃がんの順となっている。同年の大腸がん罹患者数は14万8,000人で死亡者数が5万3,000人とされており、罹患者のうち3人に1人が死亡する可能性が推測される。このように、大腸がんは肺がんの次にがん死亡者数が多い疾患であるが、早期がんの完治率は90%以上という特徴を有する疾患であり、早期発見、とくに検診が非常に重要である。 大腸がん検診に関して、直接の大腸内視鏡検査を行う米国に対して、欧州やオーストラリアでは免疫学的便潜血検査(FIT)を用いた検診が主流である。今回、スペインの15施設において2年ごとのFITを用いた検診と1回だけの大腸内視鏡検査を行う検診の各検診プログラムの参加率と10年後の大腸がん死亡率を比較した検討結果が、2025年3月のLancet誌に報告された。結果は、両プログラムへの参加率は大腸内視鏡検査より2年ごとのFIT検診が有意に高く(31.8%vs.39.9%)、10年時の大腸がん死亡率についてはFITベースの検診と大腸内視鏡検査プログラムが同等(0.22%vs.0.24%)であった。すなわち、大腸がん予防のために10年に一度大腸内視鏡検査を行うか、2年に1回FIT検査を行うことが推奨される結果となっている。 日本では、早期発見するための方策として住民検診でFITの2日法が推奨されており、FITによる1次検診から精密検査の内視鏡検査へ誘導する方法が確実に施行されれば、大腸がん死亡者数が激減することが容易に予測される。しかしながら、日本大腸肛門病学会によると、住民検診におけるFIT受診率は20%であり、そのうち便潜血陽性でも精密検査である大腸内視鏡検査を受けているのは60%とされている。なお、大腸がんが発見されるのは全体の0.1〜0.2%とされているが、このうち7割が早期がんで根治可能である。検診受診率が低い点が大きな課題であり、受診率の向上へ向けてさまざまな取り組みが策定されているのが現状である。 これに対して、大腸がん死亡率が高い筆頭国であった米国では、近年大腸がん死亡率が著明に低下している。驚くことに人口が日本の約3倍近くもあるにもかかわらず、本邦の大腸がん死亡者数よりも少なくなっている。米国では50歳を過ぎた国民に通常数十万円を要するCSを1回だけ無償で提供しており、大腸がん検診受診率が約70%と日本に比べて非常に高くなっている。このように、米国と本邦の大腸がん死亡率の差は、検診受診率の差が大きな一因と考えられる。 日本では、マンパワーや費用の問題から住民検診において大腸内視鏡検査を直接用いることは難しい状況である。したがって、FITにより検診に対する参加率をさらに向上させる対策と国民の啓蒙が重要であるとともに、一般診療現場において熟知すべき重要な研究結果と思われる。

10.

大腸がん死亡率への効果、1回の大腸内視鏡検査vs.2年ごとの便潜血検査/Lancet

 大腸がん検診への参加率は、大腸内視鏡検査より免疫学的便潜血検査(FIT)のほうが高く、大腸がん関連死亡率について、本研究で観察された参加率に基づくとFITベースのプログラムは大腸内視鏡検査ベースのプログラムに対し非劣性であることが確認された。スペイン・バルセロナ大学のAntoni Castells氏らCOLONPREV study investigatorsが、スペインの8地域における3次医療機関15施設で実施したプラグマティックな無作為化比較非劣性試験「COLONPREV試験」の結果を報告した。大腸内視鏡検査とFITは、平均的なリスク集団(大腸がんの既往歴または家族歴のない50歳以上の人々)における一般的な大腸がんスクリーニング戦略である。中間解析でも、FIT群は大腸内視鏡検査群よりスクリーニング参加率が高いことが示されていた。Lancet誌オンライン版2025年3月27日号掲載の報告。10年時大腸がん死亡率を比較検証 研究グループが適格としたのは、大腸がん、腺腫、炎症性腸疾患の既往歴、遺伝性または家族性大腸がんの家族歴(第1度近親者が2人以上大腸がんと診断、または1人が60歳未満で大腸がんと診断)、重度の合併症、あるいは結腸切除術の既往歴がない、50~69歳の健康と推定される人であった。適格者はスクリーニングへの招待前に、1回の大腸内視鏡検査群、または2年ごとのFIT群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、10年時大腸がん死亡率、重要な副次エンドポイントは10年時大腸がん発生率などで、intention-to-screen集団で評価した。非劣性マージンは絶対差0.16%ポイント未満とした。10年時大腸がん死亡率FIT群0.24%、大腸内視鏡検査群0.22%で、FITは非劣性 2009年6月1日~2021年12月31日に、5万7,404例が大腸内視鏡検査群(2万8,708例)またはFIT群(2万8,696例)に無作為化された。intention-to-screen集団は、大腸内視鏡検査群が2万6,332例、FIT群が2万6,719例であった。intention-to-screen集団における何らかのスクリーニングへの参加率は、大腸内視鏡検査群31.8%、FIT群39.9%であった(リスク比:0.79、95%信頼区間[CI]:0.77~0.82)。 10年時大腸がん死亡リスクに関して、FITの大腸内視鏡検査に対する非劣性が認められた。大腸内視鏡検査群では0.22%(死亡55例)、FIT群では0.24%(死亡60例)であり、リスク差は-0.02(95%CI:-0.10~0.06)、リスク比は0.92(95%CI:0.64~1.32)であった(非劣性のp=0.0005)。

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新たなリスクスコアで若年層の大腸がんリスクを予測できる?

 新たに開発された臨床的因子に基づくシンプルなリスクスコアが、進行性腫瘍(advanced neoplasia;AN)の発症リスクが高く、大腸内視鏡検査によるスクリーニングの開始が推奨される45歳未満の人の特定に有用な可能性のあることが明らかになった。ANとは、10mm以上の管状腺腫、または絨毛成分を含む腺腫(管状絨毛腺腫、絨毛腺腫など)、高度異型腺腫、10mm以上の鋸歯状病変、異形成を伴う鋸歯状病変、鋸歯状腺腫、浸潤性腺がんを包括する概念である。米クリーブランドクリニックの消化器科医であるCarole Macaron氏らによるこの研究は、「Digestive Diseases and Sciences」に2月13日掲載された。 この研究は、2011年から2021年にかけて第3次医療機関で大腸内視鏡検査を受けた18〜44歳の成人9,446人(平均年齢36.8±5.4歳、女性61.0%)を対象にしたもの。Macaron氏らはまず、対象者を、ANが確認された症例群(346人)と、大腸に異常がないか非進行性腫瘍(NAN)のみが確認された対照群(9,100人)に分類した。その上で、4,723人をトレーニングセットとして抽出し、多変量ロジスティック回帰分析を用いてさまざまなリスク因子とANの関連を評価した。 ANと有意な関連を示す因子として、大腸がんの家族歴(第一度近親者、その他)、BMI、喫煙(元喫煙者、現喫煙者)が特定された。この解析結果を基に各リスク因子にポイントを割り振ったスコアモデル(1〜12点)を作成し、検証セットでも、ANと同様の有意な関連を示すかを検証した。その結果、モデルの予測精度は中程度であり、妥当性が確認された。最後に、全データセットにスコアを適用してAN検出率を推定したところ、1点の場合で1.8%、9点以上で14%超であり、スコアが高いほど検出率も上昇することが確認された。 研究グループは、「このリスクスコアに基づくことで、医師は45歳未満の成人の大腸がんやがん化する可能性のあるポリープを発症するリスクを推定できる。リスクがあると予測された人は、現在推奨されている年齢よりも早い段階で大腸がん検診を受け始めることができる」と述べている。 Macaron氏は、「現在、大腸がん発症に対するリスクが平均的な人の場合、検査を開始する推奨年齢は45歳だが、データによると、若年性大腸がんと診断された患者の約半数は45歳未満だ」と指摘する。その上で同氏は、「このリスクスコアは、45歳未満の患者に対するスクリーニング検査推奨の個別化に役立つ」と述べている。

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第236回 はしか患者が全国で32人と急増、厚労省・外務省が注意喚起/厚労省

<先週の動き> 1.はしか患者が全国で32人と急増、厚労省・外務省が注意喚起/厚労省 2.大腸がん検診、精度管理と受診率向上が急務 /国がん 3.2025年度の専攻医は過去最多の9762人、外科医が増加/専門医機構 4.マイナ保険証トラブルが多発、9割の医療機関で発生 /保団連 5.医療費4兆円削減? 社会保障改革でOTC類似薬の保険適用除外を巡り3党協議へ 6.地域医療構想推進区域を全国決定 兵庫県の「東播磨」も指定/厚労省 1.はしか患者が全国で32人と急増、厚労省・外務省が注意喚起/厚労省日本国内で、はしか(麻しん)の患者報告が増加しており、注意が必要となっている。国立感染症研究所の調査によると、今年の患者数はすでに32人に達し、昨年の総患者数に迫る勢い。とくに、ベトナムへの渡航歴がある患者が多く報告されている。患者の年齢層は20~30代が中心で、全患者の7割近くを占めている。はしかは感染力が非常に強く、空気感染、飛沫感染、接触感染によって人から人へと伝播する。免疫のない人が感染すると、ほぼ100%発症すると言われており、発熱、咳、鼻水などの風邪のような症状や、発疹が現れる。重症化すると肺炎や中耳炎を合併し、脳炎を発症する場合もある。こうした状況を受け、厚生労働省と外務省は、国民に対し注意喚起を行っている。海外渡航を予定している人は、渡航先の流行状況を確認し、予防接種歴を確認することが推奨されている。予防接種を受けていない場合は、渡航前に接種を検討することが重要である。 参考 1) 麻しんについて(厚労省) 2) 海外における麻しん(はしか)に関する注意喚起(外務省) 3) 麻しん累積報告数の推移 2018年~2025年(第1~11週)(国立感染症研究所) 4) はしか患者報告相次ぐ 全国で32人 ベトナム渡航で感染か(毎日新聞) 2.大腸がん検診、精度管理と受診率向上が急務/国がん国立がん研究センターは、大腸がんの死亡率低減に向け、全国統一の検診プログラム導入を提言する「大腸がんファクトシート」を公開した。ファクトシートによると、わが国における75歳以上の大腸がん年齢調整死亡率は、諸外国と比較して高い水準にある。1992年から導入された便潜血検査による対策型検診は、死亡率の減少に一定の効果をみせたものの、その減少幅は他国に比べて緩やかである。この要因として、住民検診、職域検診、人間ドックなど、多岐にわたる検診が混在し、精度管理指標の評価が困難であることが指摘されている。結果として、検診の効果が十分に発揮されていない可能性がある。提言では、検診プログラムの全国統一化、または全数把握システムの構築を求め、データの一元管理による精度管理の向上、受診率・精密検査受診率の向上が重要であると強調している。現状では、大腸がん検診の受診率は低迷しており、2023年度の住民検診受診率はわずか6.8%に止まる。また、職域検診など、法的根拠のない検診も存在し、データが十分に公表されていない点も課題となっている。ファクトシートでは、大腸がんの病態、罹患・死亡の動向、リスク要因、検診、治療、今後の対策など、多岐にわたる情報が網羅されている。とくに、日本人のリスク要因として「喫煙、飲酒、肥満、高身長」が挙げられ、食生活や運動習慣の改善が重要であることが示された。また、便潜血検査の有効性が改めて示される一方で、大腸内視鏡検査については、現在進行中の大規模試験の結果を踏まえた慎重な検討が必要とされている。国がんは、今後の対策として、日本人に適した予防法の確立、全国統一プログラムによる検診の実施、受診勧奨の強化、精度管理の徹底などを提言している。とくに、大腸内視鏡検査については、有効性の検証とともに、対象者、処理能力、精度管理、安全性、検査歴などの課題解決に向けた検討を求めている。 参考 1) 大腸がんファクトシート(国立がん研究センターがん対策研究所) 2) 大腸がん検診、全国統一のプログラム実施を 諸外国より高い死亡率 国がんがファクトシート公開(CB news) 3) 大腸がんの罹患数・死亡数低下に向け、まず住民検診、職域検診、人間ドック等に分かれている「がん検診データ」を集約し実態把握をー国がん(Gem Med) 3.2025年度の専攻医は過去最多の9,762人、外科医が増加/専門医機構日本専門医機構は、2025年度の専攻医採用数は過去最多の9,762人となる見込みであることを明らかにした。医学部定員の増加を背景に、全体として採用数は増加傾向にある。とくに、医師不足が深刻な外科では、前年度比56人増の863人と増加が顕著であった。耳鼻咽喉科も72人増と大幅な伸びを示した。一方、精神科、産婦人科、放射線科などでは減少がみられた。地域別では、東京近郊で増加傾向にあるが、医師不足が深刻な東北地方での増加は限定的。この地域偏在の解消に向け、2026年度からは新たなシーリング制度が導入され、医師不足地域との連携を促進する仕組みとなる。専門研修と並行して研究を目指す「臨床研究医コース」は、25人と増加に転じた。機構は、2026年度に研究奨励賞を創設するなど、研究医育成への支援を強化する方針を示している。また、機構では、医師の地域・診療科偏在を解消しつつ、質の高い専門医育成を目指すため、今後も制度の改善に取り組むとしている。 参考 1) 2025年度専攻医採用数一覧(日本専門医機構) 2) 来年度の専攻医数、過去最多に(Medical Tribune) 3) 新専門医目指す「専攻医」の2025年度採用は9,762名、外科専攻医が増加、東北地方での専攻医増は限定的-日本専門医機構(Gem Med) 4.マイナ保険証トラブルが多発、9割の医療機関で発生/保団連マイナ保険証の利用を巡り、全国保険医団体連合会(保団連)が実施した調査で、医療機関の約9割で何らかのトラブルが発生していたことが明らかになった。トラブルの内容としては、氏名や住所の漢字が正確に表示されないケースが最も多く、次いでカードリーダーの接続不良や認証エラー、資格情報が無効となるケース、マイナ保険証の有効期限切れなどが報告されている。これらのトラブルにより、医療機関では窓口業務の負担が増加し、とくに高齢者を中心に、カードリーダーの使用が困難な患者や、使用方法を理解できない患者への対応に時間を要している。また、資格情報などの確認が取れるまで、患者に医療費を全額負担させるケースも発生している。保団連は、こうした状況を受け、トラブル時にバックアップとなる健康保険証の存続を訴えている。従来の保険証は、患者が医療機関を受診する際に資格を証明する重要な役割を果たしており、医療機関と患者の双方にとって有益であることが調査結果からも示唆されている。マイナ保険証の利用には、初診の患者の登録が簡単になる、資格情報の確認がオンラインで可能になるなどのメリットもある。しかし、トラブル発生時の対応に時間がかかることや、再診の患者が多い現状を考慮すると、マイナ保険証のメリットは限定的であるという指摘もある。さらに、マイナンバーカードのICチップに搭載されている電子証明書の有効期限は5年であり、2020年にマイナポイント事業でカードを作成した人の更新時期が迫っている。今後、電子証明書の失効によりマイナ保険証が利用できなくなる人が増加し、医療現場でのトラブルがさらに多発することが懸念されている。 参考 1) 保険証発行停止後の医療現場のマイナ保険証トラブルは? 8,000医療機関から回答(保団連) 2) マイナ保険証エラーで「いったん全額負担」1,720件 医療機関を全国調査したら「トラブルあった」9割(東京新聞) 3) マイナ保険証移行後にトラブル 9割の医療機関で 保団連の中間集計(CB news) 4) “マイナ保険証”使えず医療費「患者が全額負担」のケースも多数…保団連が現場トラブルの実態を報告(弁護士JP) 5.医療費4兆円削減? 社会保障改革でOTC類似薬の保険適用除外を巡り3党協議へ自民・公明・維新の3党は3月27日に、社会保障改革に関する協議体の2回目の会合を開き、OTC類似薬(市販薬と類似の医療用医薬品)の保険適用除外について、来週開催される次回の会合で議論することを決定した。維新の会の岩谷 良平幹事長は、会合後の記者会見で、主な議題は協議テーマの選定であり、1回目の会合に続きOTC類似薬の保険給付の見直しを提案したと説明。これに対し、自民・公明両党は改革案の提出を求め、岩谷幹事長は弊害や課題を整理し、協議を進める考えを示した。また、自民・公明両党は専門家を招いての議論を提案したが、維新の会は迅速な改革を主張し対立。結果として、次回の会合に専門家を招くことは見送られた。一方、日本医師会はOTC類似薬の健康保険からの適用除外に強く反対している。保険適用除外による患者の経済的負担増加や受診控えによる健康被害、薬の適正使用が困難になることを懸念している。とくに高齢者や基礎疾患を持つ患者への影響は大きく、医療費全体の増加も指摘した。ドラッグストア協会は、医療費抑制には理解を示しつつも、患者の負担増を懸念し、財源の活用方法を含めた議論を求めている。3党は今後、週1回のペースで協議を重ね、5月中旬までに一定の方向性をまとめる予定。しかし、専門家の参加や改革案の内容を巡り、早くも意見の隔たりが表面化しており、議論の行方は不透明である。 参考 1) 社保改革で実務者が初会合 自公維3党協議(日経新聞) 2) OTC類似薬の保険適用除外、3党で来週協議へ 専門家の出席巡り激しい応酬も 社会保障改革(CB news) 3) 社会保険料の削減を目的としたOTC類似薬の保険適用除外やOTC医薬品化に強い懸念を表明(日医ニュース) 4) ドラッグストア協会 OTC類似薬の保険適用除外論議にコメント(ドラビズオンライン) 6.地域医療構想推進区域を全国決定 兵庫県の「東播磨」も指定/厚労省厚生労働省は、地域医療構想の実現を加速化するため、各都道府県に「推進区域」を設定する取り組みを進めており、新たに兵庫県の「東播磨構想区域」を推進区域に追加した。これにより、全都道府県から計74ヵ所の推進区域が出そろった。高齢化の進展に伴い、2025年度には、人口の大きなボリュームゾーンを占める「いわゆる団塊の世代」がすべて75歳以上の後期高齢者となる。これに伴い、今後、急速に医療ニーズが増加・複雑化することが予想される。地域医療構想は、こうした医療ニーズの増加・複雑化に対応できるような効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するために、各地域で進められている取り組みである。しかし、2025年度を目前に控えた現時点でも、地域医療構想の実現に向けた取り組みの進捗状況は地域によって大きなばらつきがある。具体的には、「病床の必要量と2025年の病床数見込みとの乖離があり、それに関する分析が進んでいない地域がある」「医療提供体制の課題解決に向けた工程表作成が進んでいない地域がある」といった状況となっている。さらに、すべての構想区域で、救急医療提供体制や医師確保など、医療提供体制に何らかの問題を抱えていることが判明している。そこで厚労省は、地域医療構想実現に向けた動きを加速化するため、2024年3月に、各都道府県におおむね1~2ヵ所ずつ「推進区域」を指定し、当該区域において「推進区域対応方針」を作成し、地域医療構想実現に向けた取り組みを加速化する方針を固めた。推進区域は、厚労省と都道府県とで調整し、データ特性だけでは説明できない病床数の差異や、再検証対象医療機関の対応状況、その他医療提供体制上の課題などを総合的に勘案して設定される。各都道府県は、2024年度中に、推進区域の地域医療構想調整会議で協議を行い、当該区域における将来のあるべき医療提供体制、医療提供体制上の課題、当該課題の解決に向けた方向性・具体的な取り組み内容を含む「区域対応方針」を策定し、それに基づく取り組みを推進することが求められる。また、推進区域のうち10~20ヵ所程度は「モデル推進区域」として指定され、厚労省による技術的・財政的支援が行われる。 参考 1) 地域医療構想における推進区域及びモデル推進区域の設定等について(厚労省) 2) 推進区域74ヵ所出そろう、兵庫の「東播磨」追加 25年の地域医療構想 モデル推進区域は16ヵ所(CB news) 3) 地域医療構想実現に向けた取り組みの加速化を目指す【推進区域】、兵庫県明石市、加古川市など含む「東播磨」区域を追加決定-厚労省(Gem Med)

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血液検査で大腸がんを正確に検出/ASCO-GI

 実験的な血液検査をベースにした大腸がんスクリーニング検査により、平均的な大腸がんリスクを有する45歳以上の成人において、大腸がんを効果的に検出できることが示された。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のAasma Shaukat氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025、1月23〜25日、米サンフランシスコ)で発表された。Shaukat氏は、「このような血液検査は、大腸がんのスクリーニング検査の受診率を高めるのに役立つ可能性がある」と述べている。 現状では、大腸がんのスクリーニング検査のゴールドスタンダードは大腸内視鏡検査であるが、この検査では事前に下剤服用や食事調整などの準備が必要な上に、検査時には麻酔や鎮静薬を使用する。便中の血液の有無を調べる便潜血検査も大腸がんのスクリーニングに用いられるが、現在のガイドラインでは毎年の検査実施が必要である。こうした現状を踏まえてShaukat氏は、「便利で安全、かつ実施も容易な新たな大腸がんスクリーニング検査の手段が求められている」と話す。 Shaukat氏らの研究(PREEMPT CRC)は、全米200カ所以上の施設で登録された、平均的な大腸がんリスクを有する45歳以上の成人を対象に、Freenome社の血液検査をベースにした大腸がんスクリーニング検査の有効性を検討している最大規模の研究である。2024年の報告では、この検査は、大腸がんに対する感度が79.2%、advanced colorectal neoplasia(ACN;直径10mm以上の腺腫と大腸がんを包括する概念)に対する特異度が91.5%、ACNの陰性的中率(NPV)は90.8%、陽性的中率(PPV)は15.5%、進行前がん病変(APL)に対する感度は12.5%であることが報告されていた。 今回の研究では、この検査が標準的な米国人口においてどのように機能するかを評価するために、米国の年齢層や性別の分布に基づく重み付けを行った上で解析を実施した。解析対象は、PREEMPT CRCに登録された3万2,731人のうち、評価可能な血液サンプルと大腸内視鏡検査のデータが完備した2万7,010人(年齢中央値57.0歳、女性55.8%)であった。 その結果、大腸がんに対する感度は81.1%、ACNを持たない人に対する特異度は90.4%、ACNを持たない人に対するNPVは90.5%、ACNのPPVは15.5%、APLに対する感度は13.7%であることが示された。 この研究には関与していない、米イェール大学医学部消化器腫瘍学主任のPamela Kunz氏は、「この血液検査は、大腸がんスクリーニングの検査法の選択肢に新たに加わるものだ」と述べている。同氏は、「これらの結果は、このような血液検査が、平均的なリスクを持つ米国人口の大腸がんスクリーニング検査において、便利で効果的な選択肢となる可能性があることを示している」と話す。 研究グループは、大腸がんのスクリーニングの検査法としてのこの血液検査の長期的な影響について研究を続ける予定であるとしている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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医師による腺腫検出率が大腸がんリスクに影響する(解説:上村直実氏)

 大腸内視鏡検査の精度は施行医の力量に大きく左右されるものであるが、内視鏡医の技量を比較するための明確な尺度に関して信頼できるものがあるわけではなく、消化器内視鏡学会の認定専門医の有無や経験年数などに頼っているのが現状と思われる。欧米では、大腸内視鏡医の力量の尺度として、一般的に大腸内視鏡検査における腺腫検出率であるAdenoma Detection Rate(ADR)が用いられている。今回、ポーランドにおける大腸がん検診プログラム受診者の検査後の大腸がん発生率と検査施行医のADRとの関連を比較した研究結果が、2024年12月のJAMA誌に発表された。 この研究では、医師789人のADRについて暦年ごとに、腺腫または大腸がんを検出した大腸内視鏡検査数/大腸内視鏡検査の総数で算出して、ADRの実数値およびADRの変化と検査後に発見された大腸がん発生率との関連を検討した結果、ADRが改善した医師の患者では大腸内視鏡検査後の大腸がんリスクが有意に低下することが示されている。 当然の結果のように思われるが、日本では医療保険制度の違いもあり、内視鏡医の技術や力量を数字で評価することはなく、上述したように学会の専門医かどうかや町の評判に頼っているのが現状であろう。各医師や施設間における技術レベルの違いに関する問題は、内視鏡診療のみでなく外科系手術などの技術力の差は確かに存在するのであるが、この技術・能力の違いが患者の予後に及ぼす影響に関する研究は乏しく、統計学的に明らかになるようなエビデンスを創出することは大変難しいものと思われる。 確かに、大腸内視鏡検査は医師の技術力により苦しい検査になったり楽な検査になったりすることは、ちまたでよく聞かれるところである。患者さんが上手な内視鏡医による検査を望むのは当然であるが、日本の国民皆保険制度の下では医者を選ぶことは難しいのが現状である。各内視鏡医の技術力を向上するために、学会および各施設における教育プログラムの充実が企画されていると同時に、人工知能(AI)のサポートによる検査の精度向上が期待されている。今後、各医師の技術・能力が数値で評価される時代が来るのかもしれない。

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診療科別2024年下半期注目論文5選(消化器内科編)

Histological improvements following energy restriction and exercise: The role of insulin resistance in resolution of MASHMucinski JM, et al. J Hepatol. 2024;81:781-793.<MASHにおけるカロリー制限・運動療法の有用性>:肝臓、体組成、心肺フィットネスが大幅に改善代謝機能障害関連脂肪性肝炎(MASH)患者に対しカロリー制限、運動療法を同時に行うことにより肝臓、体組成、心肺フィットネスが大幅に改善することを証明しました。同治療によるMASH肝組織改善が、肝臓ではなく筋肉のインスリン感受性と関連していたことがとても興味深いです。Long-term liver-related outcomes and liver stiffness progression of statin usage in steatotic liver diseaseZhou XD, et al. Gut. 2024;73:1883-1892.<MASLDにおけるスタチンの有用性>:全死因死亡・肝関連有害事象発生を有意に低下国際共同研究で7,988例の代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者を平均4.6年観察。スタチンの使用は全死因死亡を76.7%、肝関連有害事象発生を62%低下させました。またスタチン使用は、フィブロスキャンで測定した肝硬度の進行も軽減させました。Alternating gemcitabine plus nab-paclitaxel and gemcitabine alone versus continuous gemcitabine plus nab-paclitaxel after induction treatment of metastatic pancreatic cancer (ALPACA): a multicentre, randomised, open-label, phase 2 trialDorman K, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2024;9:935-943.<ALPACA試験>:転移膵がんにおけるGEM+NabPTX減量療法の有用性と忍容性進行膵がんにおいてGEM+NabPTX療法は有害事象のため忍容性が問題となっていました。今回、 GEM+NabPTX を3サイクル実施後、 GEM+NabPTXとGEM単独投与を交互に行う減量レジメンが、従来の治療と同等の全生存期間と、より良好な忍容性を示すことが報告されました。[177Lu]Lu-DOTA-TATE plus long-acting octreotide versus high-dose long-acting octreotide for the treatment of newly diagnosed, advanced grade 2-3, well-differentiated, gastroenteropancreatic neuroendocrine tumours (NETTER-2): an open-label, randomised, phase 3 studySingh S, et al. Lancet. 2024;403:2807-2817.<NETTER-2試験>:進行NENに対する1次治療としてPRRTが有用これまで神経内分泌腫瘍(NEN)に対するPRRTは2次治療以降のレイトラインでの導入が推奨されてきましたが、本研究によりGrade2、3の高分化型NENにおいて1次治療でのPRRT早期導入の有用性が報告されました。Risk of colorectal neoplasia after removal of conventional adenomas and serrated polyps: a comprehensive evaluation of risk factors and surveillance use Polychronidis G, et al. Gut. 2024;73:1675-1683.<大腸がん・ポリープの再発予防>:高リスクの大腸ポリープは3年以内のサーベイランス大腸内視鏡が有益advanced adenomaのサーベイランスの最適な間隔は明らかではありませんでしたが、今回の報告では高リスクポリープが見つかった患者は、その後の大腸がんおよび高リスクポリープのリスクが高いため、3年以内の早期監視が有用である可能性が示されました。

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医師の腺腫検出率改善が大腸がんリスク低下と関連/JAMA

 大腸がん検診プログラムで大腸内視鏡検査を受ける参加者において、医師の腺腫検出率(ADR)の改善が大腸がんリスク低下と統計学的に有意に関連することが示された。ただし関連が認められたのは、医師の改善前のADRが26%未満であった場合のみであった。ポーランド・Maria Sklodowska-Curie National Research Institute of OncologyのNastazja D. Pilonis氏らが、大腸がん検診プログラムのデータを用いた観察研究の結果を報告した。ADRの改善が大腸がん発生率の低下と関連しているかどうかは明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2024年12月16日号掲載の報告。年30件以上大腸内視鏡を実施している医師の検査を受けた参加者について解析 ポーランドでは2000年以降、ポーランド在住の50~66歳または大腸がんの近親者がいる40~49歳のすべての人を対象に、大腸内視鏡検査による大腸がん検診プログラム(PCSP)が実施されている。 研究グループは、PCSPにて2000年10月1日~2017年12月31日に大腸内視鏡検査を受けたすべての人を、スクリーニング大腸内視鏡検査日から死亡または追跡期間終了時(2022年12月31日)まで追跡し、PCSPデータベースおよびポーランドのがん登録より大腸がんの診断および死亡に関するデータを取得した。 また、PCSPにて2000~2017年に大腸内視鏡検査を実施した医師で、年30件以上の内視鏡検査を実施した医師を対象にADRを算出した(各医師について暦年ごとに、腺腫またはがんを検出した大腸内視鏡検査数÷大腸内視鏡検査の総数で算出)。 主要評価項目は、ADRの改善と大腸内視鏡後の大腸がん発生率との関連であった。Joinpoint回帰分析を用い、大腸内視鏡検査後の大腸がん発生率を、ADRが改善した医師と改善しなかった医師で比較した。ADRは、データセットの六分位に基づき6つのカテゴリー(0~13%、>13~18%、>18~22%、>22~26%、>26~31%、>31~63%)に分類し、少なくとも1段階改善または最高位にとどまった場合をADR改善と定義した。検査後大腸がん発生率の変化が示されたADRの変曲点は26% 年30件以上の内視鏡検査を実施した医師は789人、それら医師の内視鏡検査を受け適格基準(最初のスクリーニングで大腸がんと診断されていない、など)を満たした参加者48万5,615人(平均年齢57[SD 5.41]歳、女性が59.6%)が解析対象となった。ベースラインの医師のADRは中央値21.8%(四分位範囲:15.9~28.2)、最高値は63.0%であった。 追跡期間中央値10.2年において、大腸内視鏡検査後の大腸がんの診断は1,873例、大腸がん関連死亡は474例に発生した。 Joinpoint回帰分析の結果、大腸がん発生率の変化が示されたADRのjoinpoint(変曲点)は26%であった。ADRが26%の医師の患者の、大腸内視鏡検査後の大腸がん発生率は27.1(95%信頼区間[CI]:20.6~33.7)/10万人年。 ADRがベースラインでは26%未満で追跡期間中に改善が認められた医師の患者では、大腸内視鏡検査後の大腸がん発生率は31.8(95%CI:29.5~34.3)/10万人年であったのに対し、改善しなかった医師の患者では40.7(37.8~43.8)/10万人年で有意差が認められた(差:8.9/10万人年、95%CI:5.06~12.74、p<0.001)。 一方、ベースラインのADRが>26%の場合の大腸がん発生率は、追跡期間中に改善が認められた医師の患者で23.4(95%CI:18.4~29.8)/10万人年、改善がみられなかった医師の患者で22.5(18.3~27.6)/10万人年で有意差はみられなかった(差:0.9/10万人年、95%CI:-6.46~8.26、p=0.80)。

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一部の主要ながんによる死亡回避、予防が治療を上回る

 「1オンスの予防は1ポンドの治療に値する」は、米国の建国の父ベンジャミン・フランクリンの有名な格言の一つだが、がんに関してはそれが間違いなく当てはまるようだ。米国立がん研究所(NCI)がん対策・人口科学部門長のKatrina Goddard氏らによる新たな研究で、過去45年間に、がんの予防とスクリーニングによって子宮頸がんや大腸がんなど5種類のがんによる死亡の多くが回避されていたことが明らかになった。この研究の詳細は、「JAMA Oncology」に12月5日掲載された。 Goddard氏は、「多くの人が、治療法の進歩がこれら5種類のがんによる死亡率低下の主な要因だと考えているかもしれない。しかし、実際には、予防とスクリーニングが死亡率の低下に驚くほど大きく貢献している」と話す。さらに同氏は、「過去45年間に回避されたこれら5種類のがんによる死亡の10件中8件は、予防とスクリーニングの進歩によるものだ」と付け加えている。 この研究でGoddard氏らは、人口レベルのがん死亡率データを用い、Cancer Intervention and Surveillance Modeling Network(CISNET)が開発した既存のモデルを拡張して、1975年から2020年の間に回避された乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんの累積死亡数に対する予防、スクリーニング(前がん病変の除去や早期発見)、および治療の寄与度を定量化した。介入としては、肺がんは喫煙量の削減による一次予防、子宮頸がんと大腸がんは全がん病変の除去を目的としたスクリーニング、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、前立腺がんは早期発見、乳がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんは治療の寄与度についてそれぞれ評価した。なお、研究グループによると、これら5種類のがんが、新たに診断されるがんと死亡者のほぼ半数を占めているという。 その結果、対象期間中に、予防、スクリーニング、および治療により、これら5種類のがん患者の推定594万人が、がんによる死亡を回避しており、このうちの80%(475万人)は、予防またはスクリーニングによる回避と推定された。介入の寄与度はがん種により異なっていた。乳がんでは、回避された死亡の25%(26万人)はスクリーニング(主にマンモグラフィー)によるものであり、残りの75%(77万人)は治療によるものであった。子宮頸がんでは、回避された死亡の100%(16万人)が、スクリーニング(パップテストやヒトパピローマウイルス〔HPV〕検査)と前がん病変の除去によるものであった。また、大腸がんでは、回避された死亡の79%(74万人)はスクリーニング(大腸内視鏡検査など)による早期発見や前がん性ポリープの除去によるもので、残りの21%(20万人)は治療の進歩によるものであった。さらに、肺がんでは、回避された死亡の98%(339万人)は喫煙量の削減によるものであり、前立腺がんでは、回避された死亡の56%(20万人)はスクリーニング(PSA検査)によるものであった。 こうした結果を受けてGoddard氏は、「これらの調査結果は、検討した全てのがん領域で強力な戦略とアプローチを継続する必要があることを示唆している。がんによる死亡率低下に役立つのは、治療の進歩と予防・スクリーニングの両方なのだ」と話している。研究グループは、HPVワクチン接種による子宮頸がん予防や胸部X線検査による肺がん検診などの新しい戦略により、近年、さらに多くの死亡が回避されている可能性が高いことを指摘している。これらの対策は、本研究期間中は普及していなかった。 研究論文の上席著者であるNCIがん予防部門長のPhilip Castle氏は、「これら5種類のがんの予防およびスクリーニングの普及と利用を最適化し、特に十分な医療を受けられていない人が恩恵を受けられるようにする必要がある。また、膵臓がんや卵巣がんなど、致命的になる可能性の高い他のがんによる死亡を回避するための新たな予防およびスクリーニング方法を開発する必要もある」と述べている。

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便秘【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第21回

便秘は古今東西いろいろな場面で遭遇します。しかし、「便秘でしょ」と軽く考えていると痛い目を見ることがあります。今回は救急外来での症例を通じて、便秘診療の注意点を確認してみましょう。<症例>80歳、女性主訴便秘病歴3日くらい前から排便がなく、1時間前から腹痛を訴えている。本人が「便秘かも」と言っており、浣腸を希望して受診した。思わず「浣腸しておいて」と言いたくなるかと思いますがそこはぐっと我慢して、ステップを追って診察していきましょう。ステップ1 本当に便秘?と疑う腹痛の鑑別は多岐にわたります。鑑別を記載すると膨大になるため割愛しますが、患者さんが「便秘のようだ」というときに、「本当に便秘?」と常に疑う必要があります。まれに尿閉を便秘と訴える患者さんもいます。「便秘で浣腸」という行為は、医療者以外でも一般的に行っている対処方法ですが、浣腸でも重篤な合併症を生じる可能性があります。浣腸は下行結腸・S状結腸あたりから直腸膨大部までの腸管内容物を排除することを目的としています。腸管壁の脆弱性を生じる疾患(憩室炎など)があった場合、圧をかけることにより消化管穿孔のリスクになるという報告があるため1)、安易に便秘と診断して浣腸することは控えるべきです。この患者さんの腹部の所見は、左下腹部に圧痛を認めるものの腹膜刺激症状はなく、直腸診では便塊を触れるのみで腫瘤の触知は認めませんでした。本人曰く、排尿は来院前に済ましているとのことで尿閉は否定的でした。他に腹痛を生じる疾患は認めなかったため、便秘と診断しました。ステップ2 治療便秘は16%の人が経験し、60歳以上となると33.5%の人が罹患するという報告があります。便秘の種類としては器質性と機能性に分けられます。器質性は腫瘍や炎症などによる腸管の狭窄、蠕動低下を来した状態であり、適切に治療しないと重篤化するため早期の発見が必要です2,3)。機能性は器質性以外の便秘で、腸管蠕動の低下や脱水により便が固くなり、排便が困難となり発症します。この患者さんは直腸診で硬便を触れるため機能性の便秘の可能性が高いと判断したところで、看護師より「摘便しましょうか?」と提案がありました。便秘の治療はさまざまです。この患者さんのように、すでに便が直腸下部にある場合、坐剤、浣腸、摘便がよい適応になります4)。私は肛門近くに便塊がある場合(糞便塞栓)、可能な限り摘便した後に浣腸をしています。固い便が肛門をふさいでいると浣腸や坐剤がうまく使用できないと考えるからです。患者さんに摘便、浣腸を行ったところ大量の排便があり、患者の腹痛はきれいに消失しました。なお、80歳という年齢を考えると、器質性の便秘の可能性も最後まで否定できないため、必ず大腸内視鏡検査を進めましょう。ステップ3 便秘を繰り返さないための指導便秘になるたびに浣腸をする人がいますが、浣腸は頻度が高くはないとはいえ消化管穿孔などの重大な合併症や習慣性を招くという報告があります5)。機能性の便秘を生じる原因は多岐にわたり、原因を1つに絞るのは難しいと言われています2)が、最も頻度が高い原因は生活習慣(食物繊維の不足、脱水、運動不足など)とされ、適度な飲水、運動が便秘の頻度を下げるという報告があり重要です6)。そして忘れてはいけないのが薬剤性です。便秘を生じる薬剤は、Ca拮抗薬、抗うつ薬、利尿薬など多岐にわたります。必要な薬は内服しなければいけませんが、昨今では高齢者のポリファーマシーが問題になっており、処方薬の調整のきっかけにしてもらいたいと考えます7)。この患者さんの内服薬は降圧薬くらいで、運動不足が便秘の原因と言われたことがあるため可能な限り体を動かしているとのことでした。生活習慣でこれ以上改善するのは難しいと判断し、薬剤投与を行うこととしました。わが国の慢性便秘症診療ガイドラインでは、「浸透圧下剤(酸化マグネシウム)」、「上皮機能変容薬(ルビプロストンなど)」が最も強く推奨されています4)。私は中でも安価で調節がしやすい酸化マグネシウムを好んで処方しています。投与後の反応は患者によって異なるため、330mgを毎食後で開始して、処方箋に「自己調節可」と記載し、患者さんに説明したうえで調節してもらっています。酸化マグネシウムを増量しても効果が乏しい場合は刺激性下剤を追加しています。酸化マグネシウムを投与する際に注意してほしい合併症が高マグネシウム血症です。投与量(≧1,650mg/日)や投与期間(36日以上)、腎機能障害(糸球体濾過量<55.4mL/min)、血中尿素窒素の上昇(≧22.4mg/dL)によってリスクが増加すると報告があり、長期投与を行う場合は漫然と処方するのではなく、定期的な血中マグネシウム濃度の測定が必要です8)。腎機能障害があるなどリスクが高い場合は、上皮機能変容薬を選択しています。この患者さんには酸化マグネシウムを処方し、近医に通院して加療を継続してもらうこととなりました。便秘という疾患は多くの人が経験する疾患であり、便秘が主訴の患者さんに対して「便秘だろう」という先入観で診察を怠ると痛い目にあうことがあります。積極的に介入していきましょう。1)大城 望史ほか. 日本大腸肛門病学会雑誌. 2008;61:127-131.2)Forootan M, et al. Medicine(Baltimore). 2018;97:e10631.3)Black CJ, et al. Med J Aust. 2018;209:86-91.4)日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断治療研究会. 慢性便秘症診療ガイドライン2017.南江堂;2017.5)Niv G, et al. Int J Gen Med. 2013;6:323-328.6)Leung L, et al. J Am Board Fam Med. 2011;24:436-451.7)大井 一弥. YAKUGAKU ZASSHI. 2019;139:571-574.8)Wakai E, et al. J Pharm Health Care Sci. 2019;5:4.

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大腸がん検診、現時点では血液検査よりも大腸内視鏡検査が優れる

 大腸がん検診において、新たな検査選択肢である血液検査は大腸内視鏡検査ほど有効ではないことが、米スタンフォード大学医学部消化器・肝臓内科学教授のUri Ladabaum氏らのレビューによって明らかになった。血液検査を推奨通りに3年に1回受けている人では、大腸内視鏡検査を10年に1回受けている人と比べて、大腸がんによる死亡が約2.5倍多く発生すると推定された。Ladabaum氏らは、大腸内視鏡検査や便の検査ではなく血液検査を選択する人が多くなると、大腸がんによる死亡が増加するとの予測を示している。この研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に10月29日掲載された。 米食品医薬品局(FDA)は2024年7月、大腸がんリスクが平均的な人に対する大腸がん検診として血液検査を初めて承認した。この承認は、約8,000人を対象とした臨床試験の結果に基づき決定されたもの。同試験では、血液検査によって大腸に腫瘍のある人の83%以上で大腸がんを検出できることが示されていた。しかし、この検査によって、前がん病変である大腸ポリープを検出できた人の割合は約13%に過ぎなかった。 大腸内視鏡検査は簡単な検査とは言い難い。この検査を受ける人は、前もって強力な下剤を飲んで腸を完全に空にしなければならず、検査に際しては鎮静薬の投与も必要となる。しかし、医師が検査中に前がん病変のポリープを見つけた場合には、その場でそれを取り除くことができることから、この検査によって大腸がんは予防可能ながんの一つになった。Ladabaum氏は、「このことは、大腸内視鏡検査ががんを予防する可能性もあるユニークながん検診の手段であることの理由となっている。それにもかかわらず、検診を全く受けていない人、あるいは推奨されている頻度で検診を受けていない人は数多くいる」と指摘する。 便検査または血液検査の結果が陽性となった患者は、がんまたはポリープがあるかどうかのダブルチェックのため大腸内視鏡検査を受けるよう促される。Ladabaum氏らは今回の研究で、市販されているか開発段階にある6種類の血液検査、便検査、および大腸内視鏡検査のデータを収集して統合した。次に、この統合データを使って各スクリーニング法による大腸がん検診を受けた人における大腸がんの新規症例と大腸がんによる死亡の相対発生率を推定した。 その結果、10年ごとに大腸内視鏡検査を受けた場合、10万人当たり1,543人が大腸がんを発症し、672人が死亡すると推定された。また、1年から3年ごと(検査によって異なる)の便検査では、10万人当たり2,181~2,498人が大腸がんを発症し、904~1,025人が死亡すると推定された。さらに、3年ごとの実施が推奨されている新しい血液検査では、10万人当たり4,310~4,365人が大腸がんを発症し、1,604~1,679人が死亡すると推定され、死亡者数は、大腸内視鏡検査を受けた場合の約2.5倍に上った。このほか、血液検査と比べて大腸内視鏡検査と便検査の方が費用対効果に優れていることも示された。 Ladabaum氏は、「第一世代の血液検査は、大腸がん検診のパラダイムにおける実に素晴らしい進展である。しかし、現時点では、大腸内視鏡検査や便検査を受ける意思があり、それが可能であるなら、血液検査に切り替えるべきではない」と主張している。また同氏は、「何も検査を受けないよりは血液検査を受ける方が、はるかに良い選択であることは確かだ。しかし、大腸内視鏡検査から第一世代の血液検査に切り替える人がいるのであれば、集団としての転帰が悪化し、医療費が上昇することになる」とスタンフォード大学医学部のニュースリリースの中で指摘している。その上で、「最善のシナリオは、大多数の人は引き続き大腸内視鏡検査または便検査を受け、これら2つの選択肢であれば検診は受けたくないという強い抵抗感を持つ人だけが血液検査を受けるようにすることだ」との考えを示している。

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GLP-1受容体作動薬が消化管の内視鏡検査に影響か

 上部消化管内視鏡検査(以下、胃カメラ)や大腸内視鏡検査では、患者の胃の中に食べ物が残っていたり腸の中に便が残っていたりすると、医師が首尾よく検査を進められなくなる可能性がある。新たな研究で、患者がオゼンピックやウゴービといった人気の新規肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)を使用している場合、このような事態に陥る可能性の高くなることが明らかになった。米シダーズ・サイナイ病院の内分泌学者で消化器研究者のRuchi Mathur氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月1日掲載された。 GLP-1受容体作動薬には胃残留物の排出を遅延させる作用があり、便秘を引き起こすこともある。このため、この薬の使用者では、全身麻酔を必要とする処置を受ける際に食べ物を「誤嚥」するリスクが増加する可能性のあることが指摘されている。Mathur氏らは、GLP-1受容体作動薬使用者では消化管に残留物が見られることがあり、それが内視鏡検査で鮮明な画像を得る上で障害になる可能性があると考えた。 そこでMathur氏らは、2023年1月1日から6月28日の間に胃カメラか大腸内視鏡検査、またはその両方を受けた過体重または肥満の患者209人のデータを後ろ向きに解析した。209人中70人がGLP-1受容体作動薬使用者(GLP-1群、平均年齢62.7歳、女性36人)、残りの139人は非使用者(対照群、平均年齢62.7歳、女性36人)であった。胃カメラのみを受けたのはGLP-1群23人、対照群46人、大腸内視鏡検査のみを受けたのはGLP-1群23人、対照群45人、両方の検査を受けたのはGLP-1群24人、対照群48人だった。 胃カメラのみを受けた対象者のうち胃残留物が認められた者の割合は、GLP-1群で17.4%(4人)であった。これに対し、対照群と、胃カメラと大腸内視鏡検査の両方を受けた患者で、胃残留物が認められた対象者はいなかった。 また、大腸内視鏡検査または胃カメラと大腸内視鏡検査の両方を受けた患者のうち、「腸管の準備が不十分」(便が残存しているなど腸管洗浄が不十分な状態)であった者の割合は、GLP-1群で21.3%(10/47人)に上ったのに対し、対照群では6.5%(6/93人)であった。 ただし、研究グループは良い知らせとして、GLP-1受容体作動薬使用の有無に関係なく、対象患者において誤嚥、呼吸困難、誤嚥性肺炎は発生しなかったことを挙げている。 それでも研究グループは、「胃や腸に食物や便が残留するリスクの上昇は憂慮すべきことだ」と注意を促す。なぜなら、そのような状態での内視鏡検査は、「病変の見逃しや患者の不満、処置のキャンセル、医療資源の浪費といった重大なリスク」をもたらすからだという。 研究グループは、「本研究結果は、内視鏡検査前のGLP-1受容体作動薬の使用に関するガイドラインの更新が必要かどうかを判断するために、さらなる研究が必要であることを示唆するものだ」との見方を示している。

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