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健康づくりには、まずは「きれいな空気」から!?

ダイキン工業株式会社は5日、全国の20代~60代の男女1万人を対象に実施した「空気に対する意識変化」をテーマにしたアンケートの結果を発表した。調査の結果、9割以上の人が空気と健康の関係性を認識しており、”健康づくりには「きれいな空気」が欠かせない”という意識を持っていることがわかった。今まで日常生活の中で気にならなかった「空気」と「健康」の関係を、昨年のパンデミック騒動で、多くの人が意識するようになったと考えられる。調査では、「きれいな空気」が、具体的にどのような効果・影響を与えるかを聞いたところ、「健康を促進する」(28.5%)という回答が最も多く、続いて、「病気を予防する」(16.1%)、「気管支・肺によい」(15.7%)と、身体面での“健康”に与える効果・影響が上位3 位を占める結果となった。また「空気」が気になる時を聞いたところ、1 位「風邪・インフルエンザのシーズン」、2 位「近くに喫煙者がいる時」、3 位「交通量の多い道路を通る時」、4 位「花粉のシーズン」という結果になった。いずれも、身の回りの「空気」の変化によって、健康が脅かされるという危機感を感じる時、健康を守るために「空気」を意識する傾向があると考えられる。併せて、「風邪・インフルエンザのシーズン」(18.1%)と「風邪・インフルエンザなどにかかった時」(4.9%)を比較すると、インフルエンザにかかった後よりも、かかる前の“予防段階”に、より敏感になっていることがわかるという。詳細はこちらhttp://www.daikin.co.jp/press/2010/101105/index.html

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禁煙法施行で小児喘息入院が著明に減少:スコットランド

スコットランドでは2006年3月に禁煙法が施行され、公共の場における喫煙が全面的に禁止された。これまでの研究では、施行後、パブで働く従業員における呼吸器症状が減少したとの報告がなされている。本論は、英国グラスゴー大学公衆衛生部門のDaniel Mackay氏らによる、職場などに限定することなく受動喫煙曝露のなくなった集団において呼吸器疾患が減少したかどうかを調査した初の報告で、小児喘息による入院率減少を評価した結果、関連が認められたと報告している。NEJM誌2010年9月16日号より。禁煙法は小児喘息による入院を減らしたかを評価Mackay氏らは、人口510万人のスコットランドの急性期病院で普及している入院診療データ記録SMR01から、2000年1月~2009年10月までの15歳以下の小児喘息による全入院記録を収集した。データは、年齢群、性別、社会経済水準五分位群、居住地域(都市部か地方か)、月、年別で補正後、負の二項回帰モデルを適合し、小児喘息による入院率の検討が行われた。喘息による入院は年5.2%増から18.2%減と著明に減少禁煙法施行前、喘息による入院は1年につき平均5.2%(95%信頼区間:3.9~6.6)の割合で増加していた。一方、禁煙法が施行された2006年3月26日時点の入院率と比較して、法施行後は1年につき平均18.2%減少した(同:14.7~21.8、P

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経口ビスホスホネート製剤と食道がんリスクとの関係

 骨粗鬆症の予防や治療に用いられる経口ビスホスホネート製剤を服用する患者には、消化不良、吐き気、腹痛、びらん性食道炎、さらに食道潰瘍といった副作用が一般にみられることは報告されている。さらに最近の症例報告では、食道がんリスクの増加が示唆されている。英国オックスフォード大学のJane Green氏らのグループは、「経口ビスホスホネート製剤服用者において食道がん(胃・大腸ではない)リスクは増加する」との仮説検証を目的に、UK General Practice Research Databaseを用いたコホート内ケース・コントロール解析を行った。BMJ誌2010年9月11日号(オンライン版2010年9月1日号)より。英国40歳以上住民を対象にケース・コントロール解析を実施 解析に用いられたデータベースは、英国のプライマリ・ケア対象住民約600万人を擁する。その中から、ビスホスホネート製剤の処方記録のあった40歳以上男女で、1995~2005年に、食道がん(2,954例)、胃がん(2,018例)、大腸がん(1万641例)と診断された人をケース群とし、ケース群1症例につき、年齢、性、一般医療、観察期間で合致した各5例を対照群とし検証が行われた。 主要評価項目は、喫煙、飲酒、BMIで補正後の、食道・胃・大腸がん発生の相対リスクとした。「10回以上」「5年以上」服用者の食道がん発病率は、非服用者の倍と推計 経口ビスホスホネート製剤を過去に1回以上処方されたケースでは、処方されたことのないケースと比較して食道がんの発病率は高まった(相対リスク:1.30、95%信頼区間:1.02~1.66、P=0.02)。 食道がんリスクは、1~9回処方されたケース(同:0.93、0.66~1.31)と比べて10回以上処方されたケース(同:1.93、1.37~2.70、不均一性P=0.002)で、また3年以上服用していたケースで有意に高かった(平均5年、処方なしのケースに対する相対リスク:2.24、95%信頼区間:1.47~3.43)。 食道がんリスクは、ビスホスホネート製剤のタイプによる有意な違いはなかった。 10回以上処方された場合のリスクは、年齢、性、喫煙、アルコール摂取、BMIによる変動はなかった。また、骨粗鬆症、骨折、上部消化器疾患、さらに制酸薬、NSAIDsやステロイドの処方による変動もなかった。 胃がんと大腸がんは、ビスホスホネート製剤処方との関連は認められなかった。「1回以上処方」対「処方なし」の相対リスクは、0.87(95%信頼区間:0.64~1.19)、0.87(同:0.77~1.00)だった。 研究グループは、「食道がんに関する特異性は試験の方法論的な限界の反証となる」としつつ、「食道がんリスクは、経口ビスホスホネート製剤の10回以上の処方、または5年以上にわたる処方によって増加する」と結論し、「ヨーロッパと北米の60~79歳の食道がん発病率は、非服用者は5年で人口1,000対1だが、服用者では1,000対2に倍増することが見込まれる」と述べている。

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麻酔による合併症リスクが高い患児をいかに同定するか?

手術時の麻酔施行前に、International Study Group for Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)の改訂質問票で評価を行えば、周術期の呼吸器合併症のリスクが高い患児を同定可能なことが、オーストラリア、プリンセス・マーガレット小児病院(パース)麻酔科のBritta S von Ungern-Sternberg氏らが行ったコホート研究で示された。小児における麻酔に起因する疾患や死亡の主要な原因として、周術期の呼吸器系の合併症が挙げられる。これまでに合併症のリスク因子の報告はあるが、臨床における高リスク患児の同定法は確立されていないという。Lancet誌2010年9月4日号掲載の報告。単一施設における前向きコホート研究研究グループは、家族歴、麻酔法と周術期呼吸器合併症の関連を評価するプロスペクティブなコホート研究を実施した。2007年2月1日~2008年1月31日までにプリンセス・マーガレット小児病院で外科的あるいは内科的介入、待機的あるいは緊急処置として全身麻酔を施行された全患児を前向きに登録した。手術当日に、担当麻酔医がISAACの改訂質問票を用いて喘息、アトピー、上気道感染症、受動喫煙などの既往について調査した。麻酔法および周術期にみられたすべての呼吸器合併症が記録された。呼吸器疾患の既往歴、上気道感染症などがあると合併症リスクが増大12ヵ月後までに1万496人の患児から得られた9,297の質問票が解析の対象となった。患児の平均年齢は6.21(SD 4.8)歳であった。周術期の呼吸器合併症として気管支攣縮、喉頭痙攣、咳嗽/酸素飽和度低下/気道閉塞について解析した。呼吸器疾患の既往歴(夜間乾性咳嗽、運動時喘鳴、過去12ヵ月で3回以上の喘鳴、現在あるいは過去の湿疹の病歴)は、気管支攣縮(相対リスク:8.46、95%信頼区間:6.18~11.59、p<0.0001)、喉頭痙攣(同:4.13、同:3.37~5.08、p<0.0001)、周術期の咳嗽、酸素飽和度低下、気道閉塞(同:3.05、同:2.76~3.37、p<0.0001)の発現と有意な関連が認められた。上気道感染症は、症状がみられる場合には周術期の呼吸器合併症のリスクを増大させた(相対リスク:2.05、95%信頼区間:1.82~2.31、p<0.0001)。上気道感染症が手術前の2週間以内にみられた場合は周術期呼吸器合併症のリスクが有意に増大した(同:2.34、同:2.07~2.66、p<0.0001)のに対し、感染が手術前2~4週の場合は有意に低下していた(同:0.66、同:0.53~0.81、p<0.0001)。家族の2人以上に喘息、アトピー、喫煙の既往歴があると、周術期の呼吸器合併症のリスクが増大した(いずれも、p<0.0001)。麻酔の導入は吸入薬よりも静注薬の方が合併症のリスクが低く(いずれも、p<0.0001)、麻酔の維持は静注薬に比べ吸入薬が低リスクであった(いずれも、p<0.0001)。気道の確保は、研修医に比べ小児麻酔専門医が行う方が合併症リスクは低く(いずれもp<0.0001)、気管内挿管よりもマスクを使用する方が低リスクであった(いずれもp<0.0001)。著者は、「手術時の麻酔施行前の評価により、周術期の呼吸器合併症のリスクが高い患児を系統的に同定することが可能であり、それゆえターゲットを定めた特異的な麻酔法がベネフィットをもたらす可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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脳卒中の90%は、10のリスク因子に起因:INTERSTROKE試験

脳卒中リスクの約90%が10のリスク因子に起因し、降圧や喫煙制限の実施、身体活動や健康的な食事の推奨といった介入により、脳卒中の世界的負担は実質的に低減しうることが、カナダMcMaster大学地域健康調査研究所のMartin J O’Donnell氏らが実施した症例対照研究で示された。脳卒中は世界第2位の死亡原因であり、ほとんどの地域では成人の後天性身体障害の主要原因である。一方、脳卒中の世界的負担に対して種々のリスク因子がどの程度寄与しているかは不明であり、特に低~中収入国における調査が遅れているという。Lancet誌2010年7月10日号(オンライン版2010年6月18日号)掲載の報告。リスク因子と脳卒中との関連、疾病負担への寄与の程度などを評価INTERSTROKE試験の研究グループは、既知の緊急を要するリスク因子と脳卒中の主なサブタイプの関連を明らかにし、これらのリスク因子が脳卒中の負担にどの程度寄与するかを評価し、さらに脳卒中と心筋梗塞のリスク因子の違いを探索的に検討することを目的に、大規模な標準化症例対照研究を実施した。2007年3月1日~2010年4月23日までに、低~中収入国を中心とする22ヵ国84施設から初回急性脳卒中(症状発現後5日以内、入院後72時間以内)の症例および年齢と性別をマッチさせた脳卒中の既往歴のない対照が登録された。すべての参加者が質問票に回答して身体検査を受け、ほとんどが血液および尿のサンプルを提供した。脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中と個々のリスク因子の関連の指標として、オッズ比(OR)および人口寄与リスク(PAR)を算出した。虚血性脳卒中は10項目すべてが、出血性脳卒中は5項目が有意なリスク因子試験開始からの累積症例数が3,000例[虚血性脳卒中2,337例(78%)、出血性脳卒中663例(22%)]となった時点で、対照3,000人とともに解析を行ったところ、有意差を認めた脳卒中のリスク因子は以下の10項目であった。(1)高血圧の既往歴[OR:2.64、99% 信頼区間(CI):2.26~3.08、PAR:34.6%、99% CI:30.4~39.1](2)喫煙(OR:2.09、99% CI:1.75~2.51、PAR:18.9%、99% CI:15.3~23.1)(3)ウエスト/ヒップ比(三分位の最低値に対する最高値のOR:1.65、99% CI:1.36~1.99、PAR:26.5%、99% CI:18.8~36.0)(4)脳卒中に関連する食事のリスクスコア(三分位の最低値に対する最高値のOR:1.35、99% CI:1.11~1.64、PAR:18.8%、99% CI:11.2~29.7)(5)規則的な身体活動(OR:0.69、99% CI:0.53~0.90、PAR:28.5%、99% CI:14.5~48.5)(6)糖尿病(OR:1.36、99% CI:1.10~1.68、PAR:5.0%、99% CI:2.6~9.5)(7)アルコール摂取[月に30杯以上飲酒する者あるいは大酒飲み(月に1回以上、5杯以上飲酒する日がある者)のOR:1.51、99% CI:1.18~1.92、PAR:3.8%、99% CI:0.9~14.4](8)社会心理的ストレス(OR:1.30、99% CI:1.06~1.60、PAR:4.6%、99% CI:2.1~9.6)およびうつ病(OR:1.35、99% CI:1.10~1.66、PAR:5.2%、99% CI:2.7~9.8)(9)心臓の原因(OR:2.38、99% CI:1.77~3.20、PAR:6.7%、99% CI:4.8~9.1)(10)アポリポ蛋白B/A1比(三分位の最低値に対する最高値のOR:1.89、99% CI:1.49~2.40、PAR:24.9%、99% CI:15.7~37.1)これらのリスク因子を合わせると、全脳卒中のPARの88.1%(99% CI:82.3~92.2)を占めた。高血圧の定義を「高血圧の既往歴あるいは>160/90mmHg」に変更すると、全体のPARは全脳卒中の90.3%(99%CI:85.3~93.7)に達した。虚血性脳卒中ではこれら10項目がいずれも有意なリスク因子であったのに対し、出血性脳卒中の有意なリスク因子は高血圧、喫煙、ウエスト/ヒップ比、食事、アルコール摂取の5つであった。これらのデータをふまえ、著者は「脳卒中リスクの約90%が、10のリスク因子によって起こることが示唆される。降圧や喫煙制限の実施、身体活動や健康的な食事の推奨といった介入により、脳卒中の負担は実質的に低減する可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

1506.

中咽頭がん患者の死亡リスク、HPV腫瘍陽性群は陰性群より58%低い

ヒトパピローマウイルス(HPV)腫瘍陽性は、中咽頭がん患者生存の強い独立した予後因子であることが明らかにされた。HPVに起因する中咽頭扁平上皮がんの生存率は良好だが、HPV腫瘍が有意な独立予後因子であるかどうかはわかっていなかった。テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのK. Kian Ang氏らが、ステージIII、IVの中咽頭がん患者を対象にHPV腫瘍と生存率との関連を後ろ向きに分析した結果による。NEJM誌2010年7月1日号(オンライン版2010年6月7日号)掲載より。放射線療法の違いによる死亡リスクの有意差は認められなかった被験者は、放射線療法に関する加速分割照射法(360例)と通常分割照射法(361例)を比較する無作為化試験「RTOG 0129」の参加者[両群ともシスプラチン(商品名:ブリプラチンなど)併用]で、頭頸部に扁平上皮がんを有していた。そのうち、中咽頭がん患者でHPV腫瘍の状態が判明した323例を、HPV陽性がん(206例、63.8%)とHPV陰性がん(117例)に分類し、比例ハザードモデルを用いて両群間の死亡リスクを比較した。被験者登録は2002年7月から2005年5月に行われ、追跡期間の中央値は4.8年だった。試験全体の3年生存率は、加速分割照射法群(70.3%)と、通常分割照射法群(64.3%)で同等だった(P=0.18)。加速分割照射法群の死亡ハザード比は0.90(95%信頼区間:0.72~1.13)、有意差は認められなかった。グレードの高い急性(P=0.21)あるいは後発性(P=0.18)の毒性の発生率も両群で有意差はみられなかった。4つの因子で患者を、死亡リスク低~高の各群に分類中咽頭がんでHPV腫瘍陽性患者の3年生存率は、同陰性患者より良好だった(82.4%対57.1%、log-rank検定P<0.001)。年齢、人種、腫瘍・リンパ節転移ステージ、喫煙曝露、治療割り付けについて補正後、陽性群の死亡リスクは陰性群より58%低かった(ハザード比:0.42、P<0.001)。また死亡リスクは、喫煙曝露(箱-年)が増えるほど有意に増大した。さらに研究グループは、喫煙曝露の状況も判明していた被験者(266例)のデータを解析することで、「HPV腫瘍の状態(陽性か陰性か)」「喫煙曝露(10箱-年超か以下か)」「腫瘍ステージ(HPV陰性・10箱-年以下の患者でT2–T3かT4か)」「リンパ節転移ステージ(HPV陽性・10箱-年超の患者でN0–N2aかN2b–N3か)」の4つの因子で患者の死亡リスクを、低リスク群、中等度リスク群、ハイリスク群に分類できたことも報告している。(医療ライター:武藤まき)

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糖尿病の血管疾患リスクはどの程度? 70万人のメタ解析

糖尿病の存在は、肥満、脂質異常、高血圧など従来のリスク因子とは別個に、血管疾患リスクを約2倍に高めることが、Emerging Risk Factors Collaborationが実施した102もの試験のメタ解析で明らかとなった。糖尿病は冠動脈心疾患や脳卒中のリスク因子として確立されているが、年齢、性別、従来のリスク因子の有無などでリスクの程度はどれくらい変化するのか、致死的心筋梗塞と非致死的心筋梗塞、虚血性脳卒中と出血性脳卒中とでは糖尿病の影響はどの程度は異なるのかという問題は未解決のままだ。さらに、非糖尿病患者における血糖異常の意義についても同様の問題が残されているという。Lancet誌2010年6月26日号掲載の報告。糖尿病の血管疾患リスクを定量的に評価するメタ解析研究グループは、血管疾患リスクに及ぼす糖尿病の影響を定量的に評価することを目的に102のプロスペクティブ試験のメタ解析を行った。Emerging Risk Factors Collaborationが実施した試験から血管疾患の既往のない患者を抽出し、個々の患者の糖尿病、空腹時血糖値およびその他のリスク因子の記録について解析した。個々の試験を年齢、性別、喫煙状況、収縮期血圧、BMIで補正して回帰分析を行い、これらのデータを統合して血管疾患に対するハザード比(HR)を算出した。糖尿病の血管疾患に対するHRは1.73~2.27、空腹時血糖値の関連はわずか102のプロスペクティブ試験から抽出された69万8,782人(5万2,765人が非致死的あるいは致死的血管疾患を発症、849万人・年)が解析の対象となった。糖尿病の冠動脈心疾患に対する補正HRは2.00(95%信頼区間:1.83~2.19)、虚血性脳卒中に対する補正HRは2.27(同:1.95~2.65)、出血性脳卒中は1.56(1.19~2.05)、分類不能の脳卒中は1.84(同:1.59~2.13)、その他の血管死の合計が1.73(同:1.51~1.98)であった。脂質、炎症、腎機能のマーカーでさらに補正しても、HRに明確な変化は認めなかった。冠動脈心疾患に対するHRは男性よりも女性で高く、70歳以上よりも40~59歳で、非致死的疾患よりも致死的疾患で高かった。成人の糖尿病有病率を10%とすると、血管疾患の11%が糖尿病関連と推算された。空腹時血糖値は血管リスクと直線的な関連はなく、3.90mmol/Lと5.59mmol/Lで有意な差はみられなかった。空腹時血糖値3.90~5.59mmol/Lの場合と比較して、空腹時血糖値≦3.90mmol/Lの場合の冠動脈心疾患に対するHRは1.07(95%信頼区間:0.97~1.18)、5.60~6.09mmol/Lの冠動脈心疾患に対するHRは1.11(同:1.04~1.18)、6.10~6.99mmol/Lでは1.17(同:1.08~1.26)であった。糖尿病歴のない集団では、従来のリスク因子のほかに、空腹時血糖値や空腹時血糖異常に関する情報を付加しても、血管疾患の検出基準が改善されることはなかった。著者は、「糖尿病は、他の従来のリスク因子とは別個に、広範な血管疾患のリスクを約2倍に上昇させる。非糖尿病集団では、空腹時血糖値の血管疾患リスクとの関連はわずかであった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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血中ビタミンB6とメチオニン値が高濃度だと、肺がんリスクは大幅減少

血中ビタミンB6とメチオニン値が高濃度だと、低濃度の人に比べ、肺がん発症リスクはおよそ半減するようだ。フランスInternational Agency for Research on CancerのMattias Johansson氏らが行ったケースコントロール試験で明らかになったもので、JAMA誌2010年6月16日号で発表した。これまで、ビタミンBのがん発症予防に関する研究は、主に葉酸塩値の大腸がん発症予防効果について行われ、ハイリスク集団についてその抑制効果を前向きに示すことはできなかったという。肺がん発症の約900人とコントロール群約1,800人を分析同研究グループは、1992~2000年にかけて、10ヵ国51万9,978人を対象に行った前向きコホート試験、European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition(EPIC)のうち、血液採取データがある38万5,747人について追跡した。結果、2006年までに肺がんを発症した人は899人いた。そのコントロール群として、国や性別、誕生日、血液採取日をマッチングした1,770人を選び、両群の血中の4種のビタミンB(B2、B6、葉酸塩のB9、B12)とメチオニン、ホモシステイン濃度を調べ、肺がん発症率との関連を分析した。ビタミンB6濃度の最高四分位範囲の肺がん発症リスク、最低四分位範囲の0.44倍、メチオニンは同0.52倍喫煙の有無を補正した上で、血中ビタミンB6濃度が最も高い四分位範囲の最も低い同範囲に対する、肺がん発症に関するオッズ比は、0.44(95%信頼区間:0.33~0.60、傾向に関するp

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40代以上喫煙者の約3人に1人がCOPD予備軍

株式会社プラスアールは25日、同社が運営するモバイルサイト「禁煙のミカタ(http://nosmoke.netclinic24.com/)」上にて実施したCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の啓発およびCOPDチェックから、40代以上の喫煙者の34.4%がCOPD予備軍であることがわかったと発表した。この調査は、同社が日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社から情報提供を受け、2009年11月1日から2010年4月30日にかけて20代から80代の喫煙者20,154名に対して行われたもの。調査概要は、「息苦しい」「痰がでる」「咳がでる」などの症状関連ワード、「禁煙」「たばこ」などのたばこ関連ワード、「肺がん」「COPD」などの疾患名ワードを中心に検索エンジン経由で集客を行い、疾患の啓発およびチェックへの誘導を実施したとのこと。本調査の結果、1,983名(9.8%)もの人が「COPDの可能性が高い」と診断され、40代以上の喫煙者に限るとその割合は34.4%と高かった。しかし、そのうち禁煙の意思を示した人は12.9%と少なく、COPDの恐ろしさに対する理解が十分でないことも明らかになった。 また、35歳以上の高リスク層も併せた上でチェック後に呼吸器科専門医のリストを提示し、実際の受診率についても調査した。(調査依頼数1,254名、有効回答数182名)その結果、12%がチェック後に専門医の受診をしており、「これから受診したい」と回答した60%を含めると、72%がチェック後の受診に対して前向きな姿勢を示していることもわかった。 詳細はプレスリリースへhttp://www.plusr.co.jp/news/20100525.html

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カナダの冠動脈性心疾患死亡率低下、医療の進歩とリスク因子の減少が要因

カナダでは1994年以降、冠動脈性心疾患による死亡率が低下傾向にあるが、その要因として、内科・外科治療の進歩と、総コレステロール値の低下などリスク因子の減少にあることが明らかになったという。カナダSunnybrook Health Sciences CentreのHarindra C. Wijeysundera氏らが、地域住民を対象に行った前向きコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月12日号で発表した。1994~2005年、冠動脈性心疾患死は35%減少同研究グループは、1994~2005年にかけて、オンタリオ州に住む25~84歳を対象に、試験を行った。急性心筋梗塞や急性冠症候群といった8つの冠動脈性心疾患に対する、エビデンスで裏づけられた治療法と、喫煙や糖尿病といった6つのリスク因子について、それぞれ、冠動脈性心疾患死との関連を分析した。その結果、調査期間中のオンタリオ州の年齢補正後冠動脈性心疾患死亡率は、人口10万人中191人から125人へと、35%減少していた。2005年には、7,585人の冠動脈性心疾患による死亡が削減できたと推定された。死亡率低下要因の43%が治療の進歩、48%がリスク因子の減少同死亡率低下の要因としては、その43%が内科・外科治療の進歩と考えられ、なかでも急性心筋梗塞(8%)、慢性安定冠動脈疾患(17%)、心不全(10%)に対する治療進歩が大きく関与していた。リスク因子の減少傾向も、3,660人の冠動脈性心疾患死を予防または遅らせることができたと推定され、同死亡率低下の要因の48%に関与していた。なかでも、総コレステロール値の低下(23%)、収縮期血圧の低下(20%)の影響が大きかった。一方で、糖尿病罹患率や肥満指数(BMI)の増加は、冠動脈性心疾患死亡率増加の、それぞれ6%と2%に関与していた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ワクチンで予防できる唯一のがん?

2010年4月22日、星陵会館(東京都千代田区)において自民党ワクチン政策に関する議員連盟主催の「子宮頸がんを撲滅するためのワクチン普及に向けたシンポジウム」が開催された。自治医科大学附属さいたま医療センター産科婦人科教授の今野良氏は基調講演に登壇し、子宮頸がんの病態、ワクチンによる予防とその普及における問題点について語った。今野氏はまず、わが国における子宮頸がんを取り巻く状況を話題とした。子宮頸がんは検診などで早期に発見できれば、前がん病変である異形成の段階(0期)で円錐切除術を行って妊孕性を保つことや、子宮全摘術、場合によっては円錐切除術により根治が可能である。子宮頸がんのリスクファクターには免疫低下状態や喫煙などがあるが、検診を受けないことも問題である。30年前、日本は子宮頸がん検診の先進国であったが、現在の受診率は欧米と比較すると極めて低い。検診受診率が常に低い国では子宮頸がん発生率が年齢とともに増加する傾向があるが、現在のわが国の発生ピークはおよそ35歳であり、30年前の受診率の高さが40代以上の女性における発生率の低さに寄与しているのだろうとのことである。また、20~30代の発生率上昇に伴い、死亡率も上昇傾向にある。一方、子宮頸がんの自然史はかなり解明されており、発生原因の多くはヒトパピローマウイルス(HPV)感染によることがすでに明らかとなっている。HPVは性交渉で感染し、女性の8割に感染歴があるとされるがほとんどは一過性であり、持続感染した場合に子宮頸がん発生のリスクとなる。タバコは肺がん発生のリスクを10倍高めるとされているが、ハイリスクのHPVである18型は子宮頸がんのリスクを500倍以上高めるという報告があり、がんの中でも抜きん出て相関が強いといえる。これらを踏まえ、初のがん特異的予防ワクチンとして、HPVワクチンが開発された。HPVのタイプは多様であり、現在のワクチンは子宮頸がんの原因として最も高頻度に発見されている16型と前述の18型の感染を予防するものである。このワクチンを性活動前の女性に接種したところ、約70%の子宮頸がん予防効果がみられた。加えて今野氏は、検診受診率の高い国では子宮頸がん発生率が低いというデータを示しながら、ワクチンによる一次予防(対象は11~14歳女児)と、二次予防としての定期的な検診で子宮頸がんはほぼ撲滅できると述べた。2009年4月のWHO Position Paperにおいては、「HPV関連疾患が公衆衛生上重要である」ことと「国家的なHPVワクチン組み込みを推奨する」ことが明記されている。また、わが国の12歳女児全員にワクチンを3回接種した場合の試算では、ワクチンの総費用は約210億円となる。対して、治療費は約170億円が節減でき、約230億円の労働損失額を加えると約400億円を抑えられ、全体では約190億円の費用削減となるため、医療経済的には便益がコストを上回るとのことである。今野氏は、国を上げて国民の意識を高めている事例として、イギリスでテレビ放送されている子宮頚がんワクチンの啓発コマーシャルを紹介し、本講演を終えた。(ケアネット 板坂 倫子)

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同時多発テロ「9.11」救助隊員、7年後の肺機能

2001年に米国で起きた同時多発テロ「9.11」事件の際、世界貿易センターで救助活動に携わった数千名のニューヨーク市消防局(FDNY)の隊員(消防士・救急医療サービス隊員)は、大量の粉塵に曝されたことによる重大な肺機能低下に至った。米国モンテフィオレ医療センター&アルバート・アインシュタイン医科大学呼吸器病学部門のThomas K. Aldrich氏らは、粉塵曝露の長期の影響を評価しようと、7年後の隊員たちの状況を調査した。結果、大多数がその後も肺機能が回復せず低下した状態のままであることが判明したという。NEJM誌2010年4月8日号掲載より。現役・引退含むFDNY隊員約1万2千名のFEV1推移を追跡Aldrich氏らは、2000年3月12日~2008年9月11日の間にルーチンで12~18ヵ月間隔で行われてきた、FDNY隊員(現役・引退含む)のスパイロメトリ検査に基づくFEV1を分析した。対象となったのは、2001年9月11日~9月24日の間に世界貿易センターで救助活動にあたっていた1万3,954名のFDNY隊員。そのうち本試験には1万2,781名(91.6%)が参加した。分析されたスパイロメトリ検査結果数は61,746件だった。追跡期間中央値は、消防士が6.1年、救急医療サービス(EMS)隊員が6.4年だった。消防士13%、EMS隊員22%が肺機能異常から回復せず追跡最初の1年間の、平均FEV1は、全員が有意に低下していた。喫煙歴のない消防士の低下(439mL低下、95%信頼区間:408~471)が、喫煙歴のないEMS隊員の低下(267mlL、同:263~271)と比べて、より大きかった(両低下の比較ともP

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社会経済状況が低階層は高階層に比べ総死亡リスクが1.6倍

社会経済状況が低階層の人は、高階層に比べ、総死亡リスクが1.6倍に増大することが、英国公務員を対象とした「Whitehall II」調査の分析で明らかになった。特に、食事内容や運動など、健康に関する行動様式の違いが主な原因だという。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)疫学・国民健康研究センターのSilvia Stringhini氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2010年3月24/31日合併号で発表された。低階層と高階層の死亡率格差は1.94/1,000人・年「Whitehall II」調査は1985年にスタートし、35~55歳の英国ロンドンに住む公務員を対象とした、前向きコホート試験。研究グループはそのうち、2009年4月まで追跡した、合計9,590人について、分析を行った。社会経済状況については調査開始時点で、公務員の等級によって、高・中・低の3段階に分類。また、喫煙やアルコール摂取、食事内容、運動については、追跡期間中4回にわたり調査を行った。追跡期間中の死亡は、654人だった。これについて、性別と誕生年について補正を行った後、社会経済状況の違いについてみてみると、低階層の死亡リスクは、高階層に比べ、1.60倍だった(死亡率格差:1.94/1,000人・年)。階層による死亡リスク格差の72%は行動様式が原因試験開始時点における健康に関する行動様式をモデルに盛り込むことで、先の階層による死亡率格差は、42%減少した。さらに、同行動様式を時間依存性共変数として盛り込んだところ、同格差は72%も減少した。なかでも、心血管疾患による死亡リスクの格差は、行動様式を試験開始時点のみ入れた場合で29%、時間依存性共変数として入れた場合で45%それぞれ減少し、非がん・非心血管疾患による死亡リスクは、それぞれ61%、94%減少した。これは、試験開始後以降の行動様式もモデルに盛り込むことで、食事内容や運動、アルコール摂取の総死亡リスクに関する説明力が、7%から17%、5%から21%、3%から12%へ、それぞれ増大したことによるという。なお、喫煙については、行動様式を試験開始後以降も盛り込んだ場合でも、32%から35%と、大きな差はみられなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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急性胸痛でICU治療、入室時の仰臥位収縮期血圧が高いほど1年死亡リスクは低い

急性胸痛により集中治療室(ICU)で治療を受けた患者のうち、入室時の仰臥位収縮期血圧が高い人ほど、1年後の死亡リスクは低下するようだ。スウェーデンLinkoping大学医学健康科学部門のUlf Stenestrand氏らが、約12万人の患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年3月24/31日合併号で発表した。ICU入室時仰臥位収縮期血圧を四分位範囲に分類Stenestrand氏らは、1997~2007年にかけて、急性胸痛によりICUで治療を受けた11万9,151人について、入室時の仰臥位収縮期血圧を調べた。研究グループは被験者を同血圧の測定値によって、「Q1:128mmHg未満」「Q2:128~144mmHg」「Q3:145~162mmHg」「Q4:163mmHg以上」の四分位範囲に分類し、1年後死亡率との関係について分析した。追跡期間の平均値は、2.47年(標準偏差:1.5年、範囲:1~10年)だった。「163mmHg以上」群の1年死亡リスクは、「128~144mmHg」群の0.76倍補正は、年齢、性別、喫煙、拡張期血圧値、入・退院時の降圧薬の服用、退院時の高脂血症薬と抗血小板薬の服用について行った。その結果、入室時の仰臥位収縮期血圧「Q4:163mmHg以上」が、1年死亡リスクが最も低く、「Q2:128~144mmHg」群に対するハザード比は0.76(95%信頼区間:0.72~0.80)だった。Q2群に対するハザード比は、「Q1:128mmHg未満」群では1.46(同:1.39~1.52)、「Q3:145~162mmHg」群は0.83(同:0.79~0.87)だった。Q2群と比べた1年死亡絶対リスクは、Q4群が21.7%、Q3群が15.2%それぞれ低かった一方、Q1群は40.3%高かった。Q4群と比較したQ2群の予後悪化の独立因子は、BMI、前歴にあり、狭心症、急性心筋梗塞に患者を限定した場合も、Q2群と比べたQ4群の1年死亡絶対リスクのハザード比は、0.75(同:0.71~0.80)と低かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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肥満者は肝硬変リスクが高い

肥満は、肝硬変の発生率を増すようだ。英国オックスフォード大学がん疫学部門のBette Liu氏らが、英国中年女性を対象に行った前向き試験「Million Women Study」からの結果で、致死性肝硬変のうち約17%は、肥満に由来するもので、アルコール由来の約42%に匹敵するものだという。BMJ誌2010年3月20日号(オンライン版2010年3月11日号)掲載より。平均56歳の女性123万を6.2年追跡「Million Women Study」は、1996~2001年に英国とスコットランドの公的医療機関であるNHS乳がんスクリーニングセンターで参加者を集め、その入院や死亡情報をルーチンに集約している情報センターの記録を追跡調査し行われた。参加者は計123万662人で、平均年齢(募集登録時点)は56歳、平均6.2年追跡された。主要評価項目は、肝硬変による初回入院または死亡の相対リスクおよび絶対リスク。年齢、試験への募集期間、アルコール消費量、喫煙、社会経済学的状態、身体活動で補正が行われた。肥満で飲酒習慣のある女性は特に注意追跡期間中、肝硬変による初回入院または死亡は1,811例だった。BMIが22.5超の女性は、その値が増すほど肝硬変の発生率が高まった。BMIが5単位増すごとに補正後肝硬変リスクは28%増大(相対リスク:1.28、P

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学歴差による死亡格差が年々広がっている、原因は?

平等・非平等主義社会を問わず欧米各国で、受けた教育レベルの違いによる死亡率の差が拡大しているとの報告がされている。平等主義を掲げる福祉国家モデルとされるノルウェーではどうなのか。格差の現状と、これまでの調査ではほとんど行われていない長期動向調査が、ノルウェー国立衛生研究所疫学部門のBjorn Heine Strand氏らにより行われた。1960~2000年にかけての同国中高年を対象とした原因別死亡率を追跡する前向き研究で、学歴差による死亡率の差、またその差をもたらしている主な原因について調査が行われた。BMJ誌2010年3月13日号(オンライン版2010年2月23日号)掲載より。40年間でどの学歴群も死亡率は低下したが……研究グループは、1960年、1970年、1980年、1990年時点で45~64歳だった4コホートを、それぞれ10年間にわたって追跡した。追跡期間中、死亡者数は35万9,547例、3,290万4,589人・年分のデータが得られた。主要評価項目は、「全死因死亡」「肺・気管・気管支がんに起因する死亡」「その他のがん」「心血管疾患」「自殺」「外因」「慢性下気道疾患」「その他の原因による死亡」とした。受けた教育のレベル(低・中・高学歴)の違いによる死亡率の差を、絶対指数・相対指数で求め検討した。結果、死亡率は1960~2000年にかけて、いずれの学歴群でも低下していた。また同40年間で、成人に占める低学歴群の人は激減していた。しかし、低学歴群の死亡率は相変わらず他の学歴群よりも高く、また同期間で高学歴群の死亡率がより低下したため、学歴の違いによる死亡率の差は広がっていた。絶対指数でみた低学歴群の死亡率と高学歴群の死亡率差(傾斜指数)は、40年間で男性は2倍に(105%増)、女性は3分の1の増加(32%増)していた。相対指数でみると、死亡率差は、男性は1.33から2.24(P=0.01)に、女性は1.52から2.19(P=0.05)へと広がっていた。男性は心血管系と呼吸器系、女性は呼吸器系が格差の要因男性における格差拡大は、主に「心血管疾患」「肺がん」「慢性下気道疾患」が原因だった。女性の格差拡大の原因は、主に「肺がん」「慢性下気道疾患」にあった。また女性では男性と異なり、心血管系に起因する死亡率の格差は縮まっていた。一方で、喫煙が関連していると思われる慢性下気道疾患が格差拡大に寄与していた。研究グループは、「平等主義を掲げる福祉国家ノルウェーだが、学歴差による死亡格差は、1960年~2000年の40年間で大幅に拡大していた」と結論。「我々の調査は、次の主張に対するエビデンスを示したと言える。すなわち、平等主義を掲げた社会政策だけでは死亡格差をなくすことはできないこと、教育レベルの違いによると思われる生活習慣の違いが問題であるということだ」と報告をまとめている。

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1日1gの減塩は降圧薬を上回るか?

減塩への取り組みがもたらす健康へのベネフィットはいったいどれぐらいなのか? 米国カリフォルニア大学医学部疫学・生物統計学部門のKirsten Bibbins-Domingo氏らは、米国35~84歳の冠動脈疾患(CHD)政策モデルを使って、1日1~3gの減塩でもたらされる健康へのベネフィット(心血管イベント、全死因死亡、医療費など)を、コンピュータシミュレーションした。日本やイギリスなど多くの国では、食品業界を巻き込んでの、加工食品への塩分量表示や公衆教育を通じた減塩に対する意識喚起が行われている。一方、米国では塩分摂取量が年々上昇しており(2005~2006年:目標5.8g未満に対し男性10.4g、女性7.3g)、その約8割が加工食品からの摂取で、研究グループは公衆衛生改善を提起するため本研究を行った。NEJM誌2010年2月18日号(オンライン版2010年1月20日号)掲載より。1日3gの減塩で年間最大CHDは12万件減、脳卒中6.6万件減、心筋梗塞9.9万件減Bibbins-Domingo氏らは、1日最高3g(ナトリウム換算1,200mg)減塩することによりもたらされるであろうベネフィットを、CHD政策モデルを用いて算出した。年齢、性、人種別ごとの心血管疾患の発生率およびそれにかかる医療費を推計し、減塩への取り組みとその他の心血管疾患リスクを低減するための介入との効果を比較。また、減塩への取り組みと降圧薬療法との費用対効果の評価も行った。結果、1日3gの減塩によって、CHDの年間新規発症件数は6万~12万件、脳卒中は3万2,000~6万6,000件、心筋梗塞は5万4,000~9万9,000件それぞれ減少することが予測された。全死因死亡数は年間で4万4,000~9万2,000件の減少が予測された。1日3gの減塩で毎年医療費約1~2兆円削減可能減塩への取り組みによるベネフィットは全国民が受けることが示されたが、特に黒人で高く、また女性は脳卒中減を、高齢者はCHDイベント減を、若い人は死亡率低下というベネフィットをより受けるであろうことが示された。減塩がもたらす心血管イベントへのベネフィットは、喫煙、肥満、コレステロール減を国民レベルで広めることのベネフィットと同等だった。また、1日3g減塩達成を推進することによって、19万4,000~39万2,000 QALYs(質調整生存年数)を蓄えることが、また医療費は毎年100億~240億ドル(約9,000億~2.2兆円)節約できることが示された。さらに、減塩量がたとえわずか1日1gで、2010年から始めて10年かかったとしても段階的に達成できさえすれば、すべての高血圧患者への降圧薬療法よりも費用対効果は大きいことも予想されたという。Bibbins-Domingo氏は、「減塩できた量がわずかでもあっても、心血管イベントおよび医療費を大幅に減らすことに結びつく可能性がある。わずかな目標であってもこれを公衆衛生の目標とし、早急にアクションを起こすべき必要がある」と強調している。(医療ライター:武藤まき)

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妊婦の年齢、拡張期血圧、喫煙などが、妊娠第一期の胎児の発育遅延に関連

妊婦の年齢や拡張期血圧、喫煙などが、妊娠第一期の胎児の発育遅延に関連していることが明らかにされた。同時期の胎児の発育遅延は、早産や低出生体重、2歳までの発育促進の遅滞などとも関連していたという。オランダ・エラスムス医療センターのDennis O. Mook-Kanamori氏らの研究グループ「Generation R Study Group」が、1,600人超の母親とその子供について調べたもので、JAMA誌2010年2月10日号で発表した。喫煙者・葉酸非摂取の妊婦と、非喫煙者・葉酸摂取では胎児頭臀長の差は3.84mm研究グループは、オランダ・ロッテルダムを起点に被験者を登録した前向きコホート試験を行った。試験には、2001~2005年にかけて、妊娠期間が明確な1,631人の妊婦が登録され、妊娠10週0日目と13週6日目に、それぞれ超音波検査で胎児頭臀長の測定が行われた。その結果、妊婦の年齢が高い方が、妊娠第一期の胎児頭臀長が長く、1歳上がる毎に0.79mm増加した。また、拡張期血圧やヘマトクリット値が高いほど、胎児頭臀長は短かった(拡張期血圧は1標準偏差値増す毎に、-0.40mm、ヘマトクリット値は同-0.52mm)。妊婦が喫煙者で葉酸を摂取していない場合には、喫煙をせず適切な葉酸摂取をしていた妊婦と比べ、同期の胎児頭臀長は3.84mm短かった。妊娠第一期に発育遅延があると、早産リスクは2.1倍、低出生時体重リスクは2.4倍に妊娠第一期に胎児の発育が正常だった群と発育遅延がみられた群では、妊娠期間37週未満での早産の発生率はそれぞれ4.0%と7.2%(補正後オッズ比:2.12、95%信頼区間:1.24~3.61)、出生時体重が2,500g未満だった割合は3.5%と7.5%(同:2.42、1.41~4.16)、妊娠期間に比べ小さく生まれた割合は4.0%と10.6%(同:2.64、1.64~4.25)と、いずれも有意差があった。また、妊娠第一期の胎児頭臀長が短いほど、生後2年までの発育促進がみられた(標準偏差スコア2歳につき0.139増大)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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利尿薬ベースの降圧療法、セカンドライン選択は?:住民ベースの症例対照研究

米国ワシントン大学心血管ヘルス研究ユニットのInbal Boger-Megiddo氏らは、利尿薬を第一選択薬とし降圧療法を受けている高血圧患者の、併用療法移行時の選択薬は、β遮断薬、Ca拮抗薬、RA系阻害薬いずれが至適かを明らかにするため、心筋梗塞および脳卒中の発生率を主要評価項目に、住民ベースの症例対照研究を行った。結果、Ca拮抗薬追加群の心筋梗塞発生リスクが、他の2群よりも高いことが明らかになったという。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月25日号)より。症例群353例、対照群952例で検討研究グループは本研究を実施した背景について、「ALLHAT試験で、低用量利尿薬が第一選択薬としてCa拮抗薬やRA系阻害薬よりも優れていることが示唆され、そのエビデンスを踏まえたガイドラインが米英で作成されている。一方で、降圧療法を受ける高血圧患者の半数は併用療法を要する。だが利尿薬ベースの患者の心血管疾患予防を見据えたセカンドラインの選択薬はどれが至適か明らかになっておらず、米国NHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)は、試験実施の勧告を出しているが、いまだ実施されていない」と述べている。試験は、ワシントン州シアトル市に拠点を置くヘルスケアシステム「Group Health Cooperative」の加入者データから、症例群353例、対照群952例の被験者を選定し行われた。症例群は、30~79歳の降圧療法を受けていた高血圧患者で、1989~2005年に致死性または非致死性の初回の心筋梗塞か脳卒中を発症したと診断記録があった人だった。対照群は、降圧療法を受けていた高血圧患者が無作為にGroup Health Cooperative加入者から選ばれた。なお、心不全、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎不全患者は除外された。+Ca拮抗薬は心筋梗塞リスクを増大する結果、心筋梗塞リスクについて、利尿薬+Ca拮抗薬群が、+RA系阻害薬群、+β遮断薬群よりも高いことが認められた。+β遮断薬群を基準とした、+Ca拮抗薬群の心筋梗塞リスクの補正後(年齢、性、服薬期間、喫煙、飲酒)オッズ比は、1.98(95%信頼区間:1.37~2.87)だった。脳卒中リスクについては、増大は認められず、オッズ比は1.02(同:0.63~1.64)だった。一方、+RA系阻害薬群の心筋梗塞および脳卒中リスクは、ともに有意ではなかったものの低く、心筋梗塞リスクの同オッズ比は0.76(同:0.52~1.11)、脳卒中は0.71(同:0.46~1.10)だった。研究グループは結果を踏まえ、「低リスクの高血圧患者を対象とした本試験で、セカンドラインにCa拮抗薬を選択することは、他の薬剤を選択するよりも心筋梗塞リスクが高いことが明らかになった。この結果はNIHCE(National Institute for Health and Clinical Excellence)ガイドラインを支持するもので、米国NHLBIが勧告する大規模試験を行うべきであろう」とまとめている。

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肺がん診断後の禁煙により予後が改善

早期肺がんの診断後に禁煙を開始すると、喫煙を継続した場合に比べ65歳以上の患者の予後が改善することが、イギリス・バーミンガム大学タバココントロール研究センターのA Parsons氏らによる系統的なレビューで示された。喫煙は原発性肺がん発症のリスク因子であり、生涯喫煙者は生涯非喫煙者の20倍のリスクを有するとされる。一方、肺がんと診断されたのちの禁煙が予後に及ぼす影響については明らかにされていなかった。BMJ誌2010年1月30日号(オンライン版2010年1月21日号)掲載の報告。肺がん診断後の禁煙が予後に及ぼす影響を評価した試験を系統的にレビュー研究グループは、原発性肺がん診断後の禁煙が予後に及ぼす影響のエビデンスについて系統的レビューを行った。データベース(CINAHL、Embase、Medline、Web of Science、CENTRAL)を用い、発症時の病期や腫瘍の組織像にかかわらず、肺がん診断後の禁煙が予後に及ぼす影響を評価した無作為化対照比較試験および縦断的観察研究を抽出し、各論文に掲載された文献リストの論文にもあたった。2名の研究者が別個に個々の論文をレビューし、適格基準を満たす試験を選択した。変量効果モデルを用いて各試験のデータを統合し、不均質性の評価にはI2 statisticを使用した。このレビューで得られた診断後の喫煙継続者と禁煙者の死亡率に基づいて生命表をモデル化した。これを用いて早期非小細胞肺がんおよび限局型小細胞肺がんの5年生存率を推算した。非小細胞肺がん、限局型小細胞肺がんとも、5年生存率が2倍以上に解析の対象となった10試験のうち9試験では、ほとんどの患者が早期肺がんと診断されていた。早期非小細胞肺がんでは、診断後も喫煙を継続した患者の全死亡率は禁煙した場合の約3倍であり(ハザード比:2.94)、再発率は約2倍(同:1.86)に達した。限局型小細胞肺がんでは、全死亡率が約2倍(ハザード比:1.86)、2次原発がんの発現率が4倍以上(同:4.31)、再発率が約1.3倍(同:1.26)であった。非小細胞肺がんにおいて、禁煙ががん特異的死亡率や2次原発がんの発現に及ぼす影響を解析した試験はなかった。得られたデータに基づいてモデル化した生命表では、65歳以上の非小細胞肺がんの場合、喫煙を継続した患者の5年生存率が33%であったのに対し、禁煙した患者では70%に達した。限局型小細胞肺がんの5年生存率は、喫煙者の29%に対し禁煙者は63%であった。著者は、「早期肺がんの診断後の禁煙は予後を改善することが示唆された」と結論し、「生命表では、禁煙の肺がん抑制効果によって防止された死亡の予測値が、禁煙の心呼吸器疾患の抑制効果で防止された死亡の数よりも大きかったことから、禁煙のベネフィットは主にがんの進行の抑制によるものと考えられる。早期肺がんが見つかった場合は禁煙を勧めるべきであろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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