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禁煙補助薬として抗うつ薬は有用なのか

 抗うつ薬は禁煙を助ける可能性があるといわれている。米国・バーモント大学のJohn R Hughes氏らは、抗うつ薬が禁煙を補助するかどうかを検討するため、Cochrane Tobacco Addiction Group Specialised Registerを用いてレビューを行った。その結果、ブプロピオン(国内未承認)とノルトリプチリンは長期的に禁煙を補助する可能性があること、一方でSSRIやモノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬は禁煙を助けないことを報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2014年1月8日号の掲載報告。ブプロピオンほか抗うつ薬治療による長期禁煙を助ける効果の安全性を評価 抗うつ薬が禁煙を助ける可能性があるとされる背景には、少なくとも3つの理由がある。第1に、ニコチン離脱によりうつ症状が引き起こされる、あるいは大うつ病エピソードが促される可能性があるため、抗うつ薬がこれらを軽減する可能性がある。第2に、ニコチンは抗うつ作用を有している可能性があり、それが喫煙の継続につながっていると考えられる。このため、抗うつ薬がニコチンの作用を代替しうるという理由である。3つ目の理由として、いくつかの抗うつ薬は、ニコチン依存の背景に存在する神経経路に対するMAO阻害や、受容体に対するニコチン性アセチルコリン受容体阻害など、特異的な作用を示す可能性が挙げられる。 本レビューでは、長期禁煙を助けるための抗うつ薬治療の効果と安全性を評価した。Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、MEDLINE、EMBASE、PsycINFOにおける試験の報告、および2013年7月におけるその他のレビュー、会議録を含むCochrane Tobacco Addiction Group Specialised Registerを検索した。禁煙について抗うつ薬とプラセボまたは代替の薬物療法を比較した無作為化試験を適格とし、再発予防、禁煙再開または喫煙量の軽減を図る薬物療法の用量比較試験も含めた。追跡期間が6ヵ月未満の試験は除外した。検討した抗うつ薬はブプロピオン、イミプラミン、ノルトリプチリン、パロキセチン、セレギリン、セルトラリン、ドキセピン(以下、国内未承認)、フルオキセチン、ラザベミド、モクロベミド、S-アデノシル-L-メチオニン [SAMe]、セントジョーンズワート、トリプトファン、ベンラファキシン、ジメリジンであった。データを抽出し、Cochrane Collaborationによる標準的手法でバイアスを評価した。主要アウトカムは、ベースライン時における喫煙者の追跡6ヵ月以降の禁煙とし、リスク比(RR)を算出した。禁煙については各試験で適用可能な最も厳格な定義を用い、可能であれば生化学的妥当性の割合を算出した。適切と考えられる場合は固定効果モデルを用いてメタ解析を行った。ブプロピオンとノルトリプチリンの作用機序はニコチン置換において有効 ブプロピオンほか抗うつ薬治療による長期禁煙を助ける効果の主な評価結果は以下のとおり。・2009年以降にアップデートされた24件の新しい試験が特定され、計90件の試験を検索した。このうちブプロピオンに関する試験が65件、ノルトリプチリンに関する試験が10件あり、大半はバイアスリスクが低いか不明であった。・単剤療法で質の高いエビデンスが認められた。ブプロピオンは長期禁煙を有意に延長させた(44試験、1万3,728例、RR:1.62、95%信頼区間[CI]:1.49~1.76)。・試験の数と被験者数が少ないため、中等度の質のエビデンスは限られていた。ノルトリプチリンは単剤療法において、長期禁煙を有意に延長した(6試験、975例、RR:2.03、95%CI:1.48~2.78)。・ニコチン置換療法(NRT)へのブプロピオン追加(12試験、3,487例、RR:1.9、95%CI:0.94~1.51)またはノルトリプチリン追加(4試験、1,644例、RR:1.21、95%CI:0.94~1.55)による長期的ベネフィットの追加について、十分なエビデンスは示されなかった。・直接比較のデータは限られていたが、ブプロピオンとノルトリプチリンの効果は同等で、NRTへの影響は同程度であった(ブプロピオン対ノルトリプチリン 3試験、417例、RR:1.30、95%CI:0.93~1.82/ ブプロピオン対NRT 8試験、4,096例、RR:0.96、95%CI:0.85~1.09/ ノルトリプチリンとNRTの直接比較試験はなし)。・ブプロピオンとバレニクリンを比較した4試験のプール分析から、ブプロピオンはバレニクリンと比較して有意に中断が少なかった(1,810例、RR:0.68、95%CI:0.56~0.83)。・メタ解析により、ブプロピオン服用者における重篤な有害事象の発現率について、有意な増加は検出されなかった。信頼区間が狭く有意差は出ていなかった(33試験、9,631例、RR:1.30、95%CI:1.00~1.69)。・ブプロピオン使用に際し、約1,000人に1人で痙攣のリスクがあることが示唆されていた。また、ブプロピオンには自殺のリスクもあるが、因果関係は明らかではない。・ノルトリプチリンは重篤な副作用を示す可能性があるが、禁煙に関する少数の小規模試験では重篤な副作用はみられなかった。・SSRIそのものによる有意な影響はみられなかった[RR:0.93、95%CI:0.71~1.22、1,594例、2試験はフルオキセチン、1試験はパロキセチン、1試験はセルトラリン]。また、NRTへの追加に関しても有意な影響はみられなかった (3試験フルオキセチン、466例、RR:0.70、95%CI:0.64~1.82)。・MAO阻害薬[RR:1.29、95%CI:0.93~1.79、827例、1試験はモクロベミド、5試験はセレギリン]、非定型抗うつ薬ベンラファキシン(1試験、147例、RR:1.22、95%CI:0.64~2.32)、セントジョーンズワートによるハーブ療法(ヒペリカム)(2試験、261例、RR:0.81、95%CI:0.26~2.53)、または栄養サプリメントSAMe(1試験、120例、RR:0.70、95%CI:0.24~2.07)において、有意な影響はみられなかった。・以上のように、抗うつ薬のブプロピオンとノルトリプチリンは長期禁煙を助け、両薬剤とも治療中断に至る重篤な有害事象はほとんどないことが判明した。ブプロピオンとノルトリプチリンの作用機序はその抗うつ作用に依存せず、ニコチン置換において同程度の有効性を示すことが示唆された。なお、ブプロピオンはバレニクリンと比較して有効性が低かったが、この知見を確認するためにはさらなる研究が求められる。

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夜間血圧は慢性腎臓病の発症に関連~大迫研究

 自由行動下血圧は標的臓器障害との関連が報告されているが、慢性腎臓病(CKD)発症の予測に意味を持つかどうかは確認されていない。仙台社会保険病院の菅野 厚博氏らは、大迫研究(Ohasama Study)において、一般の日本人843人のベースライン時の自由行動下血圧とCKDの発症率との関連を検討した。その結果、夜間血圧がCKD発症の予測因子として日中の血圧より優れており、CKDへの進行リスクの評価には自由行動下血圧測定が有用と考えられることを報告した。Journal of hypertension誌2013年12月号に掲載。 著者らは、ベースライン時にCKDを発症していなかった一般の日本人843人について、自由行動下血圧を測定し、その後のCKD[尿蛋白陽性もしくは推算糸球体濾過量(eGFR)60mL/分/1.73m2未満]の発症率を調べた。ベースライン時の自由行動下血圧とCKD発症率との関連について、性別、年齢、BMI、習慣的な喫煙、習慣的な飲酒、糖尿病、高コレステロール血症、心血管疾患の既往、降圧薬の服用、ベースライン時のeGFR、フォローアップ検査回数、ベースライン検査の年について調整したCox比例ハザード回帰モデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は62.9±8.1歳で、71.3%が女性、23.7%が降圧薬を服用していた。・追跡期間中央値は8.3年で、その間に220人がCKDを発症した。・日中および夜間の収縮期血圧の1標準偏差増加によるCKDの調整ハザード比は、それぞれ、1.13(95%CI:0.97~1.30)、1.21(95%CI:1.04~1.39)であった。・日中と夜間の血圧を同じモデルに相互に調整した場合、夜間血圧のみがCKDの独立した予測因子のままであった。

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2型糖尿病では診断時に肥満な人ほど死亡率が低いのは本当か?/NEJM

 2型糖尿病診断時のBMIと全死因死亡リスクにはJ字型の関係がみられ、標準体重の患者が最もリスクが低いことが、米国ハーバード公衆衛生大学院のDeirdre K Tobias氏らの検討で確認された。2型糖尿病患者における体重と死亡の関連は未解決の問題である。標準体重に比べ過体重や肥満の患者のほうが死亡率が低いことを示唆する報告があり、肥満パラドックス(obesity paradox)と呼ばれている。NEJM誌2014年1月16日号掲載の報告。2つの前向きコホート試験のデータを解析 研究グループは、2つの大規模な前向きコホート試験のデータを用いて、2型糖尿病患者におけるBMIと死亡の関連につき詳細な解析を行った。 Nurses’ Health Study(NHS)およびHealth Professionals Follow-up Study(HPFS)の参加者のうち、2型糖尿病の診断時に心血管疾患およびがんがみられない集団を対象とし、BMIは診断直前の体重および身長から算出した。 Cox比例ハザードモデルを用いて多変量解析を行い、BMI別の死亡のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。BMIは、18.5~22.4、22.5~24.9(参照値)、25.0~27.4、27.5~29.9、30.0~34.9、≧35.0の6段階に分類した。健康的な体重の維持が肝要 本検討では1万1,427例(NHS:8,970例、HPFS:2,457例)が解析の対象となった。糖尿病診断時の平均年齢は、NHSが62歳(35~86歳)、HPFSは64歳(41~91歳)であった。平均観察期間15.8年で3,083例が死亡した。 2型糖尿病患者のBMIと全死因死亡にはJ字型の関係が認められた。すなわち、HR(95%CI)は、BMI 18.5~22.4の群が1.29(1.05~1.59)、22.5~24.9群は1.00、25.0~27.4群は1.12(0.98~1.29)、27.5~29.9群は1.09(0.94~1.26)、30.0~34.9群は1.24(1.08~1.42)、≧35.0群は1.33(1.14~1.55)であった。 このBMIと全死因死亡の関係は、生涯非喫煙者では線形であった(BMIの低い群から高い群の順にHRが1.12、1.00、1.16、1.21、1.36、1.56)が、喫煙経験者では非線形であった(1.32、1.00、1.09、1.04、1.14、1.21)。また、診断時に65歳未満の患者では、BMIと全死因死亡の間に直接的な線形傾向が認められたが、65歳以上の場合はこのような関係は認めなかった。 著者は、「全死因死亡のリスクは標準体重の患者が最も低かった。糖尿病の診断時に過体重または肥満のみられる患者は標準体重患者よりも死亡率が低いとのエビデンスは得られず、肥満パラドックスは確認されなかった」とし、「過体重や肥満と他の重要な公衆衛生上の問題(心血管疾患、がんなど)との関連を考慮すると、糖尿病の管理では喫煙状況にかかわらず健康的な体重を維持することが肝要である」と指摘している。

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高齢の乾癬患者、非アルコール性脂肪性肝疾患併発が1.7倍

 高齢の乾癬患者は、非乾癬患者と比べて非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を有する割合が1.7倍高いことが、オランダ・エラスムス大学医療センターのElla A.M. van der Voort氏らによる住民ベースのコホート研究の結果、明らかにされた。最近のケースコントロール試験で、乾癬患者でNAFLDの有病率が上昇していることが観察されていた。研究グループは、NAFLDを伴うことは乾癬の至適治療の選択に関連することから、住民ベースコホートで、その実態を明らかにする検討を行った。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2013年12月24日号の掲載報告。 本検討は、大規模前向き住民ベースコホート研究「Rotterdam Study」の参加者である、55歳超の高齢者を登録して行われた。 NAFLDは、ほかの肝疾患を有しておらず、超音波検査で脂肪肝と診断された場合と定義し、規定アルゴリズムを用いて乾癬を有する被験者を特定した。 多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、人口統計学的因子、ライフスタイルの特徴および検査所見で補正後、乾癬とNAFLDに関連が認められるかどうかを調べた。 主な結果は以下のとおり。・合計2,292例の被験者が分析に組み込まれた。平均年齢は76.2±6.0歳、女性58.7%、BMI:27.4±4.2であった。・被験者のうち、乾癬を有していた人は118例(5.1%)であった。・NAFLDの有病率は、乾癬患者46.2%に対し、乾癬を有していなかった参照群は33.3%であった(p=0.005)。・乾癬は、NAFLDと有意に関連していた。アルコール消費量、喫煙量(パック/年)、喫煙状態、メタボリック症候群の有無、アラニンアミノ基転移酵素(ALT)値で補正後も、乾癬はNAFLD発症の有意な予測因子のままであった(補正後オッズ比:1.7、95%CI:1.1~2.6)。・今回の調査は、断面調査であった点において限界があるが、以上のように、高齢の乾癬患者でNAFLDを有している人は、非乾癬患者と比べて70%多いとみられた。そのリスクは、一般的なNAFLDリスクとは独立していた。

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タバコ規制、精神疾患患者には効力弱い/JAMA

 2004~2011年の間に、精神疾患患者においても喫煙率の低下はみられたが、精神疾患を有さない人の低下と比べるとその割合は有意に少なかったことが示された。一方で精神疾患患者の禁煙率は、精神科治療を受けている人が受けていない人と比べて有意に高率だったという。米国・ハーバード・メディカル・スクール/ケンブリッジ・ヘルスアライアンスのBenjamin Le Cook氏らが報告した。米国では大幅な喫煙率低下が進んできたが、「タバコ規制運動」は精神疾患患者よりも一般集団にフォーカスされてきた。精神疾患患者では喫煙率やニコチン依存の割合が高いという背景がある。JAMA誌2014年1月8日号掲載の報告より。精神疾患患者の喫煙率低下の傾向と治療と禁煙の関連を調査 精神疾患患者における喫煙率の低下傾向と、治療と禁煙との関連を調べる調査は、全米対象で行われた2つの代表的な住民サーベイ「MEPS(Medical Expenditure Panel Survey:2004~2011)」と「NSDUH(National Survey of Drug Use and Health:2009~2011)」を用いて行われた。MEPSは、精神疾患等の患者と非患者の喫煙率の傾向を比較しており、NSDUHは精神疾患治療を受けた人と受けなかった人の喫煙率を比較していた。MEPSには3万2,156例の精神疾患患者(重度の精神的苦痛、うつ病の可能性あるいは治療を受けている)と、非精神疾患の回答者13万3,113例が含まれていた。NSDUHには、精神疾患患者で生涯喫煙者である1万4,057例が含まれていた。 主要評価項目は、現在の喫煙状態(主要解析、MEPS対象)と、過去30日間喫煙しなかった生涯喫煙者の禁煙率(副次解析、NSDUH対象)であった。精神疾患のない人と比べて減少率に2.3%の有意な差 補正後喫煙率は、精神疾患のない人では有意に低下したが(19.2%から16.5%、p<0.001)、精神疾患患者ではわずかな低下にとどまった(25.3%から24.9%、p=0.50)。両者間の減少率には有意な差がみられた(2.3%、95%信頼区間[CI]:0.7~3.9%、p=0.005)。 前年までに精神科治療を受けた人は受けていない人と比べて、禁煙者の割合が多い傾向がみられた(37.2%対33.1%、p=0.005)。 以上を踏まえて著者は、「2004~2011年に、精神疾患患者の喫煙率低下は、精神疾患を有さない人と比べて有意に少なかった。一方で、喫煙率は、精神科治療を受けている人のほうが高率であった」とまとめ、「この結果は、一般集団をターゲットとするタバコ規制政策と禁煙介入が、精神疾患を有する人には効力を発揮していないことを示唆するものである」と指摘している。

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タバコ規制から50年で平均寿命が20年延長/JAMA

 米国では、1964年以降に実施されたタバコ規制により、800万人の早期死亡が回避され、平均寿命が約20年延長したと推定されることが、イェール大学公衆衛生大学院のTheodore R. Holford氏らの検討で示された。2014年1月は、米国で最初の喫煙と健康に関する公衆衛生局長官報告から50周年に当たる。同報告の影響力は大きく、喫煙による損失の低減に向け、政府や非政府組織(NGO)、民間企業によるさまざま取り組みを呼び起こした。JAMA誌2014年1月8日号掲載の報告。実際の調査データと、規制がないとした場合の推定データを比較 研究グループは、1964年以降に実施されたタバコ規制との関連において、喫煙関連死低減のモデルの確立を目的とする調査を行った。 出生時期が同じコホートにおいて、実際の喫煙状況を調査し、タバコ規制が実施されなかった場合のシナリオに基づく喫煙状況を推定した。喫煙の死亡に及ぼす影響を分析した研究から得られた全国的な推定死亡率および死亡率比を用いて、喫煙状況別の死亡率を算出した。 1964~2012年の喫煙状況に関する聞き取り調査のデータに基づいて実際の喫煙関連死亡率を算出し、タバコ規制がないとした場合の推定死亡率との比較を行った。主要評価項目は早期死亡の回避数および救済生存年数とし、全般的な健康アウトカムの指標として、喫煙量の変化に伴う40歳時の余命の変化の評価を行った。規制により40歳時の余命が約30%延長 1964~2012年における喫煙関連死亡数は1,770万人と推定された。これは、タバコ規制が実施されなかったとした場合の喫煙関連の早期死亡数よりも800万人(男性530万人、女性270万人)少なく、タバコ規制の成果と考えられた。 タバコ規制により救済された総生存年数は1億5,700万年(男性1億1,100万年、女性4,600万年)で、平均19.6年と推定された。40歳時の平均余命は男性が7.8年、女性は5.4年延長し、そのうちそれぞれ2.3年(30%)、1.6年(29%)がタバコ規制によると推算された。 著者は、「タバコの規制により、800万人の早期死亡が回避され、平均寿命が19~20年延長したと推察される」とまとめ、「タバコ規制は公衆衛生学的に重要な成果を挙げているが、今後も、全国的な死亡者数に及ぼす喫煙の影響の低減に向けた努力を継続する必要がある」と指摘している。

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糖尿病は前立腺がんの死亡リスクを2割以上増加させる

 2型糖尿病が前立腺がんによる死亡と全死因死亡のリスク増加に関連していることが、カナダ・ジューイッシュ総合病院のLeah Bensimon氏らの大規模コホート研究で示唆された。著者らは、さらに「高インスリン血症などの糖尿病関連の代謝障害が、がんの悪性度と関連しているかもしれない」としている。Cancer causes & control誌オンライン版2014年1月3日号に掲載。 この研究は、英国における4つのデータベース(the National Cancer Data Repository、the Clinical Practice Research Datalink、the Hospital Episodes Statistics database、the Office for National Statistics database)を結合して実施した。1998年4月1日~2009年12月31日に新たに非転移性前立腺がんと診断された男性を2012年10月1日まで追跡した。2型糖尿病患者とそれ以外の患者を比較し、前立腺がんによる死亡および全死因死亡の調整ハザード比と95%信頼区間(CI)をCox比例ハザードモデルにて算出した。すべてのモデルを過度の飲酒、喫煙、合併症、前立腺がん関連変数を含む、多くの潜在的な交絡因子で調整した。 主な結果は以下のとおり。・コホートは1万1,920例で、そのうち当初から2型糖尿病であった患者は1,132例(9.5%)であった。・平均追跡期間4.7年(SD:3.0年)の間の死亡例は3,605例(6.4%/年)であり、そのうち前立腺がんによる死亡が1,792例(3.3%/年)であった。・2型糖尿病は、前立腺がんによる死亡リスクにおける23%の増加(HR:1.23、95%CI:1.04~1.46)、全死因死亡リスクにおける25%の増加(HR:1.25、95%CI:1.11~1.40)と関連していた。

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COPD患者へのβ遮断薬投与:原則禁忌だが、心筋梗塞後の予後は良好/BMJ

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者へのβ遮断薬治療は、気道けいれんを誘発する可能性があるため原則禁忌とされているが、心筋梗塞後の生存率を有意に増大することが、英国住民ベースのコホート研究の結果、明らかにされた。死亡ハザード比は、心筋梗塞発症前から服用していた患者で0.59、発症入院時に服用を開始した患者では0.50と、いずれの時期に開始した場合でも生存率の増加と関連していた。β遮断薬は心筋梗塞後の死亡および再発リスクを低下し、COPD患者にも有益であるとのエビデンスは積み上がってきているが、同患者への使用は制限され続けている。今回の結果を踏まえて著者は「処方されないことが同患者の心筋梗塞後の死亡を増大している可能性があり、われわれの知見は、心筋梗塞後のCOPD患者にβ遮断薬がより広く使用されなければならないことを示唆するものであった」とまとめている。BMJ誌オンライン版2013年11月22日号掲載の報告より。初発MIのCOPD患者、β遮断薬治療有無・開始時期と生存の関連を調査 本検討は、心筋梗塞(MI)初発のCOPD患者について、β遮断薬処方の有無および治療開始時期が生存と関連しているかどうかを調べること、また関連の規定因子を明らかにすることを目的とするものであった。 2003~2011年の英国MIレジストリ(Myocardial Ischaemia National Audit Project:MINAP)とGeneral Practice Research Database(GPRD)を結びつけ、電子カルテ記録を基に分析を行った。 被験者は、2003年1月1日~2008年12月31日に初発MIがMINAPに記録されたCOPD患者で、GPRDまたはMINAPにMI既往の記録がなかった患者だった。 主要評価項目は、β遮断薬処方有無別のCOPD患者におけるMI発症後の、死亡に関するCoxハザード比(HR)(年齢、性別、喫煙状態、服薬状況、併存疾患、MIタイプ、梗塞重症度などの共変量で補正)だった。退院日からのフォローアップ開始でも入院時処方開始と同程度の保護効果 解析には1,063例が組み込まれた。そのうち、β遮断薬の非処方患者は586例(55.1%)、MI発症前から処方を受けていたのは244例(23.0%)、MI入院時に処方が開始されたのは233例(21.9%)だった。 結果、追跡期間中央値2.9年において、MI入院時処方開始群において、有意に大幅な生存ベネフィットがあることが認められた(完全補正後HR:0.50、95%信頼区間[CI]:0.36~0.69、p<0.001)。また、MI発症前処方開始群でも、有意な生存ベネフィットが認められた(同:0.59、0.44~0.79、p<0.001)。これらの処方有無間の差は、傾向スコア分析でも同様の結果が得られた。 また、退院日からフォローアップを開始した場合でも、エフェクトサイズはわずかに減弱したものの、入院時処方開始と同程度の保護効果がみられた(同:0.64、0.44~0.94、p=0.02)。

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造血細胞移植後の重大な心血管疾患リスクを減らすには?

 造血細胞移植後の心血管疾患リスクに対する生活習慣の影響について、米国フレッドハッチンソンがん研究センターのEric J. Chow氏らが検討した。その結果、医師が心血管リスク因子と生活習慣に注意を払うことにより、造血細胞移植後の重大な心血管疾患の罹患率を減少させる可能性が示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2013年12月2日号に掲載。 著者らは、1970年~2010年に1年以上治療を受けた造血細胞移植後の生存者(n=3,833)について、2010年~2011年に、心血管の状態およびそれに関連する生活習慣因子(喫煙、食事、レクリエーション的な身体活動)を調査した。データが得られた生存者(n=2,362)を、マッチングさせた一般集団サンプル(国民健康栄養調査:n=1,192)と比較した。 主な結果は以下のとおり。・造血細胞移植後生存者(年齢中央値:55.9歳、移植後期間中央値:10.8年、同種移植の割合:71.3%)は、国民健康栄養調査参加者と比べ、心筋症(4.0% vs 2.6%)、脳卒中(4.8% vs 3.3%)、脂質異常症(33.9% vs 22.3%)、糖尿病(14.3% vs 11.7%)で高い割合を示した(すべてp<0.05)。高血圧の有病率は同等(27.9% vs 30.0%)であり、虚血性心疾患は造血細胞移植生存者のほうが低かった(6.1% vs 8.9%、p<0.01)。・造血細胞移植後生存者において、高血圧、脂質異常症および糖尿病は、虚血性心疾患や心筋症における独立した危険因子であり、喫煙は、虚血性心疾患と糖尿病と関連していた(オッズ比[OR]:1.8~2.1、p=0.02)。肥満は、移植後高血圧、脂質異常症および糖尿病の危険因子であった(OR:≧2.0、p<0.001)。一方、果物や野菜の低摂取は、脂質異常症および糖尿病の高リスクに関連し(OR:1.4~1.8、p≦0.01)、低レベルの身体活動は、高血圧や糖尿病の高リスクに関連していた(OR:1.4~1.5、p<0.05)。・造血細胞移植後生存者において、健康的な生活習慣は、調査したすべての心血管関連リスクを減弱させた。

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抗精神病薬治療は予後にどのような影響を及ぼすのか

 抗精神病薬治療中の患者では、いくつかの心血管リスク因子(糖尿病、肥満、喫煙、脂質異常症)を有する割合が高く、脳卒中の有病率が有意に高いことなどが明らかにされた。これには、服用する抗精神病薬が定型あるいは非定型かによる違いはみられなかったという。スペイン・Institut Catala de la SalutのX Mundet-Tuduri氏らがバルセロナで行った断面調査の結果、報告した。Revista de Neurologia誌2013年12月号の掲載報告。 研究グループは、プライマリ・ケアでの長期の抗精神病薬治療における心血管リスク因子(CVRF)および血管イベントについて明らかにするため断面調査を行い、抗精神病薬の治療を受けている患者と受けていない患者とを比較した。対象は、2008~2010年にバルセロナのプライマリ・ヘルスケアセンターを受診した患者。身体測定、臨床検査値、CVRFを評価し、また被験者を成人/ 高齢者、服用している抗精神病薬(定型/ 非定型)でそれぞれ層別化し評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、抗精神病薬を処方されていた1万4,087例(治療群)と、受けていなかった1万3,724例(処方を受けていた患者と同一の年齢・性別:非治療群)の合計2万7,811例であった。・治療群の患者のうち、非定型薬を処方されていたのは63.4%であり、リスペリドンの処方が最も多かった。・治療群は、肥満(16.9% vs. 11.9%)、喫煙(22.2% vs. 11.1%)、糖尿病(16% vs. 11.9%)、脂質異常症(32.8% vs. 25.8%)の有病率が非治療群よりも有意に高かった(p<0.001)。・また、治療群では脳卒中の有病率が、成人患者群(オッズ比[OR]:2.33)、高齢者群(同:1.64)のいずれにおいても、非治療群より有意に高かった。冠動脈性心疾患(CHD)の有病率は、両群で同程度であった(OR:0.97)。・治療群の患者において、抗精神病薬の定型または非定型の違いによる差はみられなかった。関連医療ニュース 抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大 非定型うつ病ではメタボ合併頻度が高い:帝京大学 統合失調症患者、合併症別の死亡率を調査

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手術を受けた慢性副鼻腔炎患者では喘息の診断が不十分:日本人における検討

 副鼻腔の手術を受けた慢性副鼻腔炎患者では、喘息の診断が不十分であり、とくに高齢者でその傾向が強いことが、理化学研究所統合生命医科学研究センター 呼吸器・アレルギー疾患研究チームの田中 翔太氏らにより報告された。Allergology International誌オンライン版2013年11月25日の掲載報告。 慢性副鼻腔炎は臨床的に鼻ポリープの有無により二分される。慢性副鼻腔炎は地理的要因による差異が大きく、多様性のある疾患である。鼻ポリープのある好酸球性の慢性副鼻腔炎は症状が重症化しやすく、喘息合併の頻度も高い。異なる民族集団における疫学的研究の進展により、慢性副鼻腔炎の病理生理学についての理解が深まってきた。そこで、内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)を受けた難治性の慢性副鼻腔炎患者の臨床的な特徴を報告する。 慢性副鼻腔炎の患者210例を集め、内視鏡検査、CTによるLund Mackayスコア、末梢血の好酸球増加、喫煙状況を調べた。ほかにも、喘息の合併や年齢、肺機能の影響について調べた。 主な結果は以下のとおり。・末梢血好酸球が増加していた患者において、鼻ポリープのない慢性副鼻腔炎患者の13%、鼻ポリープのある慢性副鼻腔炎患者の20%では、喘息と診断されていないにもかかわらず、閉塞性の肺機能障害(FEV1/FVC(一秒率)< 70%)が認められた。・過去に喘息と診断されたことがない60歳以上の非喫煙患者で、かつ末梢血の好酸球が増加していた鼻ポリープのある慢性副鼻腔炎患者の50%において、FEV1/FVCが 70%未満であった。 慢性副鼻腔炎と喘息の関連が明らかになったとはいえ、難治性の慢性副鼻腔炎の管理にあたり、今後もなお喘息のような閉塞性気道疾患の合併に十分注意していく必要がある。

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Vol. 2 No. 1 これからの血管内治療(EVT)、そして薬物療法

中村 正人 氏東邦大学医療センター大橋病院循環器内科はじめに冠動脈インターベンションの歴史はデバイスの開発と経験の蓄積の反映であるが、末梢血管の血管内治療(endovascular treatment: EVT)も同じ道を歩んでいる。対象となる血管が異なるため、冠動脈とは解剖学的、生理学的な血管特性は異なるが、問題点を解決するための戦略の模索は極めて類似している。本稿では、末梢血管に対するインターベンションの現況を総括しながら、今後登場してくるnew deviceや末梢閉塞性動脈硬化症に対する薬物療法について展望する。EVTの現況EVTの成績は治療部位によって大きく異なり、大動脈―腸骨動脈領域、大腿動脈領域、膝下血管病変の3区域に分割される。個々の領域における治療方針の指標としてはTASCIIが汎用されている。1.大動脈―大腿動脈 この領域の長期成績は良好である。TASCⅡにおけるC、Dは外科治療が優先される病変形態であるが、外科治療との比較検討試験で2次開存率は外科手術と同様の成績が得られることが示されている1)。解剖学的外科的バイパス術は侵襲性が高いこともあり、経験のある施設では腹部大動脈瘤の合併例、総大腿動脈まで連続する閉塞病変などを除き、複雑病変であってもEVTが優先されている(図1、2)。従って、完全閉塞性病変をいかに合併症なく初期成功を得るかが治療の鍵であり、いったん初期成績が得られると長期成績はある程度担保される。図1 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢画像を拡大するDistal bypass術により救肢を得た透析例が数年後、膝部の難治性潰瘍で来院。腸骨動脈から大腿動脈に及ぶ完全閉塞を認めた(a)。ガイドワイヤーは静脈bypass graftにクロスし(b)、腸骨動脈はステント留置、総大腿動脈はバルーンによる拡張術を行った。Distal bypass graftの開存(黒矢印)と大腿深動脈の血流(白矢印)が確認された(c)図2 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢(つづき)画像を拡大する2.大腿動脈領域 下肢の閉塞性動脈硬化症の中で最も治療対象となる頻度が高い領域である。このため、関心も高く、各種デバイスが考案されている。大腿動脈は運動によって複雑な影響を受けるため、EVTの成績は不良であると考えられてきた。しかし、ナイチノールステントが登場し、EVTの成績は大きく改善し適応は拡大した。EVTの成績を左右する最も強い因子は病変長であり、バルーンによる拡張術とステントの治療の比較検討試験の成績を鑑み、病変長によって治療戦略は大別することができる。(1)5cm未満の病変に対する治療ではバルーンによる拡張術とステント治療では開存性に差はなく、バルーンによる拡張を基本とし、不成功例にベイルアウトでステントを留置する。(2)病変長が5cm以上になると病変長が長いほどバルーンの成績は不良となるが、ステントを用いた拡張術では病変長によらず一定の成績が得られる。このためステントの治療を優先させる。(3)ステントによる治療も15cm以上になると成績が不良となりEVTの成績は外科的バイパス術に比し満足できるものではない2)。開存性に影響する他の因子には糖尿病、女性、透析例、distal run off、重症虚血肢、血管径などが挙げられる。また、ステント留置後の再狭窄パターンが2次開存率に影響することが報告されている3)。3.膝下動脈 この領域は、長期開存性が得難いため跛行肢は適応とはならない。現状、重症虚血肢のみが適応となる。本邦では、糖尿病、透析例が経年的に増加してきており、高齢化と相まって重症虚血肢の頻度は増加している。重症虚血肢の血管病変は複数の領域にわたり、完全閉塞病変、長区域の病変が複数併存する。本邦におけるOLIVE Registryでも浅大腿動脈(SFA)単独病変による重症虚血肢症は17%にとどまり、膝下レベルの血管病変が関与していた(本誌p.24図3を参照)4)。この領域はバルーンによる拡張術が基本であり、本邦では他のデバイスは承認されていない。治療戦略で考慮すべきポイントを示す。(1)in flowの血流改善を優先させる。(2)潰瘍部位支配血管すなわちangiosomeの概念に合わせて血流改善を図る。(3)末梢の血流改善を創傷部への血流像(blush score)、または皮膚灌流圧などで評価する。従来、straight lineの確保がEVTのエンドポイントであったが、さらに末梢below the ankleの治療が必要な症例が散見されるようになっている(図4)。創傷治癒とEVT後の血管開存性には解離があることが報告されているが5)、治癒を得るためには複数回の治療を要するのが現状である。この観点からもnew deviceが有用と期待されている。治癒後はフットケアなど再発予防管理が主体となる。図4 足背動脈の血行再建を行った後に切断を行った、重症虚血肢の高齢男性画像を拡大する画像を拡大する新たな展開薬剤溶出性ステントやdrug coated balloon(DCB)の展開に注目が集まっており、すでに承認されたものや承認に向け進行中のデバイスが目白押しである。いずれのデバイスも現在の問題点を解決または改善するためのものであり、治療戦略、適応を大きく変える可能性を秘めている。1.stent 従来のステントの問題点をクリアするため、柔軟性に富みステント断裂リスクが低いステントが開発されている。代表はLIFE STENTである。ステントはヘリカル構造であり、RESILIENT試験の3年後の成績を見ると、再血行再建回避率は75.5%と従来のステントに比し良好であった6)。リムス系の薬剤を用いた薬剤溶出性ステントの成績は通常のベアステントと差異を認めなかったが、パクリタキセル溶出ステントはベアメタルステントよりも有意に良好であることが示されている7)。Zilver PTXの比較検討試験における病変長は平均7cm程度に限られていたが、実臨床のレジストリーでも再血行再建回避率は84.3%と比較検討試験と遜色ない成績が示されている8)。Zilver PTXは昨年に承認を得、市販後調査が進行中である。内腔がヘパリンコートされているePTFEによるカバードステントVIABAHNは柔軟性が向上し、蛇行領域をステントで横断が可能である。このため、関節区域や長区域の病変に有効と期待されている9)。これらのステントの成績により、大腿動脈領域治療の適応は大きく変化すると予想される。膝下の血管に対しては、薬剤溶出性ステントの有効性が報告されている10)。開存性の改善により、創傷治癒期間の短縮、再治療の必要性の減少が期待される。2.debulking device 各種デバイスが考案されている。本邦で使用できるものはないが、石灰化、ステント再狭窄、血栓性病変に対する治療成績を改善し、non stenting zoneにおける治療手段になり得るものと考えられている。3.drug coated balloon(DCB) パクリタキセルをコーティングしたバルーンであり、数種類が海外では販売されている。ステント再狭窄のみでなく、新規病変に対しバルーン拡張後に、またステント留置の前拡張に用いられる可能性がある。膝下の血管病変は血管径が小さく長区域の病変でステント治療に不向きである上に開存性が低いためDCBに大きな期待が寄せられている。このデバイスも開存性を向上させるデバイスである。成績次第ではEVTの主流になり得ると推測されている。4.re-entry device このデバイスは治療戦略を変える可能性を秘めている。現在、完全閉塞病変に対してはbi-directional approachが多用されているが、順行性アプローチのみで手技が完結できる可能性が高くなる。薬物療法の今後の展開薬物療法は心血管イベント防止のための全身管理と跛行に対する薬物療法に分類されるが、全身管理における治療が不十分であると指摘されている。また、至適な服薬治療が重要ポイントとなっている。1.治療が不十分である 本疾患の生命予後は不良であり、5年の死亡率は15~30%に及ぶと報告され、その75%は心血管死である。このことは全身管理の重要性を示唆している。しかし、2008年と2011年に、有効性が期待できるスタチン、抗血小板薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の投薬が、虚血性心疾患の症例に比し末梢動脈閉塞性症の症例では有意に低率であると米国から相次いで報告された11, 12)。この報告によると、虚血性心疾患を合併しているとわかっている末梢閉塞性動脈硬化症ではスタチンの無投薬率が42.5%であったのに対し、虚血の合併が不明の末梢閉塞性動脈硬化症では81.7%が無投薬であった12)。本邦においても同様の傾向と推察される。本疾患の無症候例も症候を有する症例と同様に生命予後が不良であるため、喫煙を含めた全身管理の重要性についての啓発が必要である。2.いかに管理すべきか? PADを対照に薬物療法による予後改善を検討した研究は少なくサブ解析が主体であるが、スタチンは26%、アスピリンは13%、クロピドグレルは28%、ACE阻害薬は33%リスクを軽減すると報告されている13)。さらに、これら有効性の高い薬剤を併用するとリスクがさらに低減されることも示されている12)。冠動脈プラークの退縮試験の成績は末梢閉塞性動脈硬化症を合併すると退縮率が不良であるが、厳格にLDLを70mg/dL以下に管理すると退縮が得られると報告されており14)、PADでは厳格な脂質管理が望ましい。 抗血小板薬に関しては、最近のメタ解析の結果によると、アスピリンは偽薬に比しPAD症例で有効性が認められなかった15)。一方、CAPRIE試験のサブ解析では、PAD症例に対しクロピドグレルはアスピリンに比しリスク軽減効果が高いことが示されている16)。今後、新たなチエノピリジン系薬剤も登場してくるが、これら新たな抗血小板薬のPADにおける有効性は明らかでなく、今後の検討課題である。また、本邦で実施されたJELIS試験のサブ解析では、PADにおけるn-3系脂肪酸の有効性が示されている17)。 このように、サブ解析では多くの薬剤が心血管事故防止における有効性が示唆されているが、単独試験で有効性が実証されたものはない。さらには、本邦における有効性の検証が必要になってこよう。3.再狭窄防止の薬物療法 シロスタゾールが大腿動脈領域における従来のステント留置例の治療成績を改善する。New deviceにおける有用性などが今後検証されていくことであろう。おわりにNew deviceでEVTの適応は大きく変わり、EVTの役割は今後ますます大きくなっていくものと推測される。一方、リスク因子に関しては、目標値のみでなくリスクの質的な管理が求められることになっていくであろう。文献1)Kashyap VS et al. The management of severe aortoiliac occlusive disease Endovascular therapy rivals open reconstruction. J Vasc Surg 2008; 48: 1451-1457.2)Soga Y et al. Utility of new classification based on clinical and lesional factors after self-expandable nitinol stenting in the superficial femoral artery. J Vasc Surg 2011; 54: 1058-1066.3)Tosaka A et al. Classification and clinical impact of restenosis after femoropopliteal stenting. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 16-23.4)Iida O et al. Endovascular Treatment for Infrainguinal Vessels in Patients with Critical Limb Ischemia: OLIVE Registry, a Prospective, Multicenter Study in Japan with 12-month Followup. Circulation Cardiovasc Interv 2013, in press.5)Romiti M et al. Mata-analysis of infrapopliteal angioplasty for chronic critical limb ischemia. J Vasc Surg 2008; 47: 975-981.6)Laird JR et al. Nitinol stent implantation vs balloon angioplasty for lesions in the superficial femoral and proximal popliteal arteries of patients with claudication: Three-year follow-up from RESILIENT randomized trial. J Endvasc Ther 2012; 19: 1-9.7)Dake MD et al. Paclitaxel-eluting stents show superiority to balloon angioplasty and bare metal stents in femoropopliteal disease. Twelve-month Zilver PTX Randomized study results. Circ Cardiovasc Interv 2011; 4: 495-504.8)Dake MD et al. Nitinol stents with polymer-free paclitaxel coating for lesions in the superficial femoral and popliteal arteries above the knee; Twelve month safety and effectiveness results from the Zilver PTX single-arm clinical study. J Endvasc Therapy 2011; 18: 613-623.9)Bosiers M et al. Randomized comparison of evelolimus-eluting versus bare-metal stents in patients with critical limb ischemia and infrapopliteal arterial occlusive disease. J Vasc Surg 2012; 55: 390-398.10)Saxon RR et al. Randomized, multicenter study comparing expanded polytetrafluoroethylene covered endoprosthesis placement with percutaneous transluminal angioplasty in the treatment of superficial femoral artery occlusive disease. J Vasc Interv Radiol 2008; 19: 823-832.11)Welten GMJM et al. Long-term prognosis of patients with peripheral artery disease. A comparison in patients with coronary artert disease. JACC 2008; 51: 1588-1596.12)Pande RL et al. Secondary prevention and mortality in peripheral artery disease: national health and nutrition exsamination study, 1999 to 2004. Circulation 2011; 124: 17-23.13)Sigvant B et al. Asymptomatic peripheral arterial disease; is pharmacological prevention of cardiovascular risk cost-effective? European J of cardiovasc prevent & rehabilitation 2011; 18: 254-261.14)Hussein AA et al. Peripheral arterial disease and progression atherosclerosis. J Am Coll Cardiol 2011; 57: 1220-1225.15)Berger JS et al. Aspirin for the prevention of cardiovascular events in patients with peripheral artery disease. A mata-analysis of randomized trials. JAMA 2009; 301: 1909-1919.16)CAPRIE Steering Committee. A randomized, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischemic events(CAPRIE). Lancet 1996; 348: 1329-1339.17)Ishikawa Y et al. Preventive effects of eicosapentaenoic acid on coronary artery disease in patients with peripheral artery disease-subanalysis of the JELIS trial-. Circ J 2010; 74: 1451-1457.

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コーヒー・緑茶と上部気道消化管がんリスクとの関連~コーヒーと緑茶では逆

 上部気道消化管がんリスクにおけるコーヒーや緑茶の影響ははっきりしていない。これらは通常摂取するときに高温であるため、その潜在的なリスク増加により、含まれる成分の抗発がん作用の評価に交絡が生じている。愛知県がんセンター研究所疫学・予防部の尾瀬 功氏らは、コーヒーや緑茶の摂取と上部気道消化管がんのリスクとの関連を評価するために、ケースコントロール研究を実施した。その結果、コーヒーの摂取は上部気道消化管がんのリスク低下と関連する一方、緑茶はリスク増加と関連する可能性があることを示唆した。International Journal of Cancer誌オンライン版2013年12月6日号に掲載。 本研究では、2001年~2005年に愛知県がんセンターを受診した上部気道消化管がん患者961例と、がんではない外来患者2,883例が登録された。コーヒーや緑茶の摂取量やその他のライフスタイル要因に関する情報は、自記式質問紙を用いて収集した。 主な結果は以下のとおり。・コーヒー3杯/日以上の摂取は、上部気道消化管がんと有意に逆相関していた(オッズ比:0.73、95%信頼区間:0.55~0.96)。・逆に、緑茶3杯/日以上の摂取は、上部気道消化管がんと有意な正の相関がみられた(オッズ比:1.39、95%信頼区間:1.13~1.70)。・これらの関連性は、頭頸部がんでは明らかであったが、食道がんでは明らかではなかった。・頭頸部がんとコーヒー摂取との関連は非喫煙者・飲酒者でのみ観察され、緑茶摂取との関連は非喫煙者・非飲酒者で認められた。・各交絡因子による層別においても、これらの関連は同様であった。

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日本を含む主要国の喫煙率の最新情報を発表~国際肺がん連盟による21ヵ国同時調査

 がんはわが国の死因の約3割を占め、その中でも肺がんが約2割と最も多い。肺がんの7割は喫煙が原因とされ、禁煙によって肺がんの発症を大幅に減らせることは確実である。 このたび、喫煙率と肺がん初期症状の認知度について、肺がん患者支援団体の国際組織である国際肺がん連盟(Global Lung Cancer Coalition:GLCC)が、2013年6月~8月、世界同時にアンケート調査を実施した結果が報告された。その中で、日本では男性の喫煙率が高く、また喫煙者における肺がん初期症状の認知度が低いことが示された。11月22日(金)、都内で開催された日本肺癌学会主催プレスセミナーにて、GLCC日本代表の澤 祥幸氏(岐阜市民病院診療局長)が報告した。日本では喫煙率の男女差が大きい GLCCの調査は今回が2回目(1回目は2010年)である。今回は2013年6月2日~8月16日に21ヵ国(文末の【試験概要】を参照)の成人に対して、喫煙状況(喫煙者率)と肺がん初期症状の認知度について、電話または対面での聞き取り調査を行った。わが国では、7月5日~15日に1,204人に対して、電話により聞き取り調査を実施した。 その結果、現喫煙者(現在習慣的に喫煙している)の割合は、ブルガリア(41%)、スペイン(33%)、フランス(30%)が高く、スウェーデン(12%)とオーストラリア(13%)は低かった。日本は24%と、21ヵ国中7番目に多く、既喫煙者(以前習慣的に喫煙していたが現在喫煙していない)の割合は21%であった。非喫煙者(習慣的に喫煙した経験がない)の割合は、エジプト(70%)が最も高く、次いでメキシコ(66%)、イタリア(60%)で、日本は55%であった。既喫煙者の割合が高かったのは、2010年からタバコ規制を強く推進しているカナダ(31%)、ノルウェー(29%)、スウェーデン(29%)であった。 喫煙者率の男女差は顕著であり、ほとんどの国で女性と比較して男性の喫煙者率が高かった(現喫煙者率:女性18%に対し男性28%、既喫煙者率:女性17%に対し男性26%、非喫煙者率:女性64%に対し男性46%)。日本の現喫煙者率は、女性10%に対し男性38%と、男女差がとくに大きかった。澤氏は、「喫煙者率の男女差が大きいということは、たとえば家庭内で、非喫煙者である女性が受動喫煙により肺がんになる危険があるということ」と懸念する。GLCCでもこれを非常に問題視しているという。 一方、WHOによると、男性の喫煙者率が減少しているのに対して、欧州では女性の喫煙者率が上昇傾向にあり、カナダ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、スイスでは喫煙者率の男女差がなかった。日本では喫煙者のほうが肺がん症状の認知度が低い 肺がん初期症状の認知度については、呼吸困難(40%)と非特異的な咳嗽(39%)が他の症状を大きく上回った。咳嗽関連の症状や疲労の認知度は10%以上であったが、ばち状指(1%)と頸部リンパ節腫脹(2%)の認知度は低かった。日本では、非特異的な咳嗽の認知度が50%と最も高いが、それに比較して呼吸困難の認知度が22%と低いことが特徴的である。 また、肺がんの初期症状をまったく知らない回答者の割合は全体で23%であったが、国による違いが大きく、エジプト(48%)、アルゼンチン(42%)で高いのに対し、フランス(7%)、アイルランド(9%)では低かった。このように国による認知度の違いが大きいことから、認知度の向上にはキャンペーンが有効と考えられた。 さらに、現喫煙者、既喫煙者、非喫煙者ごとに肺がん初期症状の認知度をみたところ、日本では、非喫煙者、既喫煙者、現喫煙者の順で低くなっており、澤氏は「喫煙者のほうが肺がんを心配していないと考えられる」と指摘した。【調査概要】●調査期間:2013年6月2日~8月16日●調査対象(カッコ内は人数):オーストラリア(1,000)、アルゼンチン(500)、ブルガリア(1,148)、カナダ(1,005)、デンマーク(650)、エジプト(1,009)、フランス(953)、英国(957)、ドイツ(1,073)、アイルランド(1,000)、イタリア(510)、日本(1,204)、メキシコ(600)、オランダ(1,004)、ノルウェー(529)、ポルトガル(1,203)、スロベニア(580)、スペイン(500)、スウェーデン(550)、スイス(510)、米国(1,000)計21ヵ国の成人(成人年齢は各国の定義による)●調査方法:電話または対面による聞き取り●調査内容:喫煙状況と肺がん初期症状の認知度の2項目-喫煙状況現喫煙者(現在習慣的に喫煙している)、既喫煙者(以前習慣的に喫煙していたが現在喫煙していない)、非喫煙者(習慣的に喫煙した経験がない)の3群に分類した。-肺がん初期症状の認知度回答者に初期症状を思いつく限り挙げさせ、それを「非特異的な咳嗽」「継続する咳嗽」「悪化していく咳嗽」「血痰」「咳嗽または呼吸時の痛み」「呼吸困難」「嗄声」「嚥下困難または嚥下痛」「体重減少」「食欲減退」「疲労・エネルギー低下」「胸部感染症持続」「胸部・肩部痛」「頸部リンパ節腫脹」「指先の肥大化(ばち状指)」「その他」「肺がん初期症状を知らない」の17種の回答に分類した。●結果解析:年齢、性別とともに集計し、各国の成人人口で重み付けして解析

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非定型抗精神病薬との併用、相互作用に関するレビュー

 統合失調症や双極性障害の治療では抗精神病薬や抗うつ薬、気分安定薬、抗てんかん薬などさまざまな薬剤が用いられることも少なくない。米国・マーサー大学のWilliam Klugh Kennedy氏らは、第二世代抗精神病薬(SGA)について、臨床において重要となる薬物相互作用を明らかにすることを目的に文献レビューを行った。その結果、SGAには臨床において重大な薬物相互作用の可能性を増大するさまざまな因子があることを報告し、臨床医はそれらについて十分に認識すべきであると述べている。CNS Drugs誌オンライン版2013年10月30日号の掲載報告。 本レビューは、SGAが統合失調症、双極性障害およびその他精神病において主軸の治療となってきたこと、また抗うつ薬、抗てんかん薬と共に用いられる頻度が高く、さまざまな薬物動態学的、薬力学的およびファーマシューティカルのメカニズムにより薬物相互作用が起きる可能性が知られていることなどを踏まえて行われた。 主な知見は以下のとおり。・各SGAの薬物動態学的プロファイル(とくに第1相、第2相試験の代謝について)は、有意な薬物相互作用の可能性を示唆するものである。・薬力学的相互作用は、薬剤が類似のレセプター部位活性を有する時に引き起こされ、付加的あるいは拮抗的な効果を、薬物血中濃度を変化させることなくもたらす可能性があった。さらに、薬物相互作用のトランスポーターが漸増を続け、薬物動態学的および薬力学的相互作用を生じる可能性があった。・ファーマシューティカルな相互作用は、薬物の吸収前に配合禁忌薬物が摂取された場合に生じる。・多くのSGAの薬物血中濃度は、近似の範囲値であった。薬物相互作用は、これら薬剤の濃度が著しく増減した場合に、有害事象や臨床的有効性を低下させる可能性があった。・SGAの最も重大な臨床的薬物相互作用は、シトクロムP450(CYP)システムで起きていた。そしてSGAの薬物相互作用のほぼすべては、創薬、プレ臨床の開発の段階で、既知のCYP発現誘導または抑制因子を用いた標準化されたin vivoまたはin vitroの試験において特定されていた。・治療薬モニタリングプログラム後は、臨床試験と症例報告において、しばしば、さらなる重大な薬物相互作用を特定する方法が報告されている。・複数薬物間の相互作用があるSGAの中には、SSRIとの併用により重大な薬物相互作用が生じる可能性があった。・カルバマゼピンやバルプロ酸のような抗てんかん作用のある気分安定薬や、フェノバルビタールやフェニトインのようなその他の抗てんかん薬は、SGAの血中濃度を減少する可能性があった。・プロテアーゼ阻害薬やフルオロキノロン系のような抗菌薬も同様に重要であった。・用量依存性と時間依存性は、SGAの薬物相互作用に影響する、さらに2つの重大な因子であった。・喫煙をする精神疾患患者の頻度は非常に高いが、喫煙はCYP1A2発現を誘導する可能性があり、それによりSGAの血中濃度を低下する可能性がある。・ジプラシドン、ルラシドン(いずれも国内未承認)は、薬物吸収を促進するため食事と共に摂取することが推奨されている。そうしないと、バイオアベイラビリティが低下する可能性がある。・以上を踏まえて著者は、「臨床医は、SGAの臨床で重大な薬物相互作用を増大する可能性のあるさまざまな因子について認識しておかなくてはならない。そして、最大な効果をもたらし、有害事象は最小限とするよう患者を十分にモニタリングする必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 新規の抗てんかん薬16種の相互作用を検証 抗精神病薬アリピプラゾール併用による相互作用は 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か?:藤田保健衛生大学

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マンモグラフィで健康女性の死亡リスクを予測できる!?

 乳腺が高密度な組織(dense)は乳がんの危険因子である。一方、乳がんリスクの評価以外での、マンモグラフィ画像の予後予測的な価値はほとんど知られていない。米国・国立加齢研究所のRachel A Murphy氏らは、乳がんではない女性において、dense領域・非dense領域・全乳房領域・%dense(乳房中のdense領域の割合)について、全死因死亡リスクとの関連を前向きに検討した。その結果、dense領域や%denseが大きいことが死亡率低下に関連することを報告した。PLoS One誌2013年10月25日号に掲載。 著者らは、乳がん検診プログラム「Breast Cancer Detection Demonstration Project」より、当初健康であった女性4,245人において、スクリーニングマンモグラムからプラニメーター測定値を用いてdense領域と全乳房領域を評価した。乳房におけるdense領域の割合を%dense、全乳房領域とdense領域との差を非dense領域(脂肪組織)とした。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)はCox比例ハザード回帰により推定した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間28.2年の間に1,361人が死亡した。・年齢調整モデルでは、非dense領域あるいは全乳房領域が大きいことが死亡リスク増加と関連し(各々HR:1.17、95%CI:1.10~1.24 / HR:1.13、95%CI:1.06~1.19、SD毎)、dense領域あるいは%denseが大きいことが死亡リスク低下と関連していた(各々 HR:0.91、95%CI:0.86~0.95 / HR:0.87、95%CI:0.83~0.92、SD毎)。・これらの関連性は、人種、教育、マンモグラムの種類(X線あるいはゼログラム)、喫煙状況、糖尿病や心疾患による調整で減少しなかった。・BMIで追加調整するとこれらの関連性はすべて減少したが、dense領域(HR:0.94、95%CI:0.89~0.99、SD毎)および%dense(HR:0.93、95%CI:0.87~0.98、SD毎)については、統計的に有意のままであった。

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わが国のHIVの現状 ~抗HIV療法関連の骨粗鬆症、腎機能障害、代謝性疾患が問題に~

約30年前は死に至る病と言われていたHIV感染症。現在は、定期的な受診と適切な服薬継続により長期にわたり日常生活を続けることが可能になり、慢性疾患と考えられるようになりつつある。しかしながら、日本では感染者が増加傾向にあり、新たに抗HIV療法に関連した代謝性疾患などが問題となっている。このたび、途上国のエイズ対策を支援する『世界エイズ・結核・マラリア対策基金』の支持を決定する技術審査委員の1人である、しらかば診療所 院長の井戸田 一朗氏が、ヤンセンファーマHIV/AIDSメディアセミナー(2013年10月29日開催)でHIVの現状や課題を紹介した。性感染症にかかるとHIVにかかりやすい井戸田氏のクリニックは、セクシャル・マイノリティ(同性愛者、バイセクシャル、トランスジェンダーなど)を主な対象として2007年に東京都新宿区に開院した。現在、同クリニックには約400人のHIV陽性者が定期的に通院しているという。井戸田氏が性感染症にかかった男性にHIV検査を勧めて検査した結果(自分で希望した人は除外)、淋菌感染症患者では20%、梅毒患者では13%、尖圭コンジローマ患者では26%がHIV陽性であった。井戸田氏は、「性感染症、とくに淋菌感染症、梅毒、尖圭コンジローマにかかった人は、HIV感染症も検査することが大切」と強調した。男性間の性的接触による感染が増加わが国の性感染症の報告数は全体的に減少傾向にあるが、新規HIV感染者とAIDS患者数は年々増加している。その内訳をみると、異性間性的接触による感染はほとんど変化がないのに比べて、男性間性的接触による感染の増加は著しく、2011年では全体の64%を占めていた。人口当たりのHIV陽性累積数は、都道府県別では、東京、大阪、茨城、長野、山梨の順で多く、HIV感染者とAIDS患者の6割が関東に集中している。男性間性的接触をする男性(MSM:men who have sex with men)の割合については、2005年度国勢調査における対象地域(関東、東海、近畿、九州)の男性では、性交渉の相手が同性のみ、もしくは両性である割合が2.0%(95%CI:1.32~2.66%)と報告されている。井戸田氏は、MSMにおけるHIVや性感染症の流行の背景として、解剖学的差異、性交渉の様式、ハッテン場・インターネットでの出会い、薬物(アルコール含む)、心理的要因を挙げた。HIV陽性者の予後と今後の課題HIV陽性者の予後は、抗HIV療法の登場により、20歳時の平均余命が36.1歳(1996~1999年)から49.4歳(2003~2005年)に延長した。また、抗HIV療法の登場により、カポジ肉腫や非ホジキンリンパ腫などのエイズ関連悪性腫瘍が減少する一方で、非エイズ関連悪性腫瘍(肛門がん、ホジキンリンパ腫、肝がん、皮膚がん、肺がん、頭頸部がん)が増加してきている。HIV陽性者においては脳心血管イベントの発生率が上昇する。禁煙によりそのリスクを下げることができるが、井戸田氏によると、同院を訪れるHIV陽性MSMでは喫煙者が多く52%に喫煙歴があったという。また、最近、抗HIV療法に関連した骨粗鬆症、腎機能障害、代謝性疾患(脂質異常症、糖尿病)が問題となっている。井戸田氏は、HIVに直接関係のないこれらの疾患について、「それぞれの分野の先生に診てもらえるとHIV陽性者や拠点病院にとって大きな支えになる」と各領域の医師からの協力を期待した。(ケアネット 金沢 浩子)

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成人市中肺炎のリスクとなるライフスタイル・基礎疾患は?

 市中肺炎は、成人、とくに高齢者において高い罹患率および死亡率をもたらす。スペイン・バルセロナ大学のAntoni Torres氏らは、PubMedの構造化検索により、欧州における成人市中肺炎発症率の最新データとライフスタイルや市中肺炎の危険因子に関するデータを同定し、成人市中肺炎のリスク増加と喫煙などのライフスタイル因子や基礎疾患との関連を検討した。Thorax誌2013年11月号に掲載報告。市中肺炎のリスク増加に関連したライフスタイルの因子は? 主な結果は以下のとおり。・成人市中肺炎全体の年間発症率は、1,000人年当たり1.07~1.2、人口1,000人当たり1.54~1.7であり、年齢の上昇とともに増加した(65歳以上で1,000人年あたり14)。・男性のほうが、女性、慢性呼吸器疾患患者、HIV感染症患者より、市中肺炎発症率が高かった。・市中肺炎のリスク増加に関連したライフスタイルの因子は、喫煙、過度の飲酒、低体重、子どもや歯科衛生状態が悪い人々との定期的な接触であった。・合併症(慢性呼吸器疾患、慢性心血管疾患、脳血管疾患、パーキンソン病、てんかん、認知症、嚥下障害、HIV、慢性腎疾患、慢性肝疾患)が存在すると、市中肺炎リスクが2~4倍増加した。

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「咳だけ」、「痰だけ」のCOPDは死亡率が増加しない可能性も

 軽症から中等症のCOPD患者において、咳と痰の両方があると死亡リスクが高まることが、ジョンズ・ホプキンス大学のNirupama Putcha氏らにより報告された。また、これら2つの症状がある場合、呼吸器疾患による死亡も多くなることもわかった。Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease誌オンライン版2013年10月15日の掲載報告。 COPD患者において咳と痰は一般的な症状である。過去の研究では、これらの症状と全死亡や肺機能との関係については意見が分かれていた。そこでCOPD患者における咳や痰が全死亡や呼吸機能にどのような影響を与えるのか検証した。 対象は肺健康調査のデータから、軽症から中等症の気流制限が認められた5,887人の喫煙者とした。各症状群(咳のみ、痰のみ、咳と痰の両方)のベースラインと、12.5年間の全死亡と呼吸機能の経年変化との関係を調べた。平均年齢は48.5(±6.8)歳で、63%が男性、4%がアフリカ系のアメリカ人であった。「咳のみ」群は17%、「痰のみ」群は12%、「咳と痰の両方」群は31%であった。 主な結果は以下のとおり。 ・「咳のみ」群、「痰のみ」群では、全死亡との関連は認められなかった。・「咳と痰の両方」群では、年齢、性別、人種、5年間の喫煙状況、pack yearを指標とした喫煙歴、無作為化グループ間、予測1秒率のベースラインでの補正後も、全死亡のリスク上昇が認められた(ハザード比:1.27、95% Cl:1.02~1.59) 。・「咳と痰の両方」群は、これらの症状がない群に比べ、呼吸器疾患による死亡が多いことがわかった。・「咳と痰の両方」群はFEV1(一秒量)のベースラインより48mL低かったが(95% Cl:-90~-6)、「咳のみ」群および「痰のみ」群では、ベースラインとの差は認められなかった。 今回の研究結果は、有害事象が起こるリスクがより高いCOPD患者の集団を見極める一助となるであろう。

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