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タバコをやめると太る!?

タバコをやめると太る!? 禁煙後2~3年の間に、3~5kgの体重の増加がみられるものの、その後は元に戻るという報告が多数あります。 たとえ増えた体重が戻らなくても、喫煙を続けた場合に比べて、寿命に与える影響は少ないことが知られています。 健康のために体重を増やさないことは重要ですが、そのために喫煙を続けていては、本末転倒になってしまいます。たとえ体重が増えたとしても、禁煙で身体は健康に近づきます。タバコはやめましょう!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2017 CareNet, Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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キノコ摂取頻度が高いほど認知症リスク低い~大崎コホート研究

 in vivoやin vitroの研究においてキノコの神経保護作用や認知症を予防する可能性が示されているが、キノコと認知機能低下の関連について調べたコホート研究は少なく、関連が明らかになっていなかった。今回、一般住民を対象とした大規模前向きコホートである大崎コホート研究2006において、キノコの摂取頻度が高い高齢者では認知症発症のリスクが低いことが、世界で初めて明らかになった。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2017年3月13日号に掲載。 本研究の対象は、調査開始時点で65歳以上であった宮城県大崎市の住民1万3,230 人。ベースライン時のアンケート調査により、キノコの摂取頻度で「1回未満/週」「1~2回/週」「3回以上/週」の3群に分け、「1回未満/週」群を基準として、認知症発症との関連を検討した。ハザード比は、性別、年齢、BMI、既往歴(脳卒中、高血圧、心筋梗塞、糖尿病、高脂血症)、教育、喫煙、飲酒、歩行時間、心理的ストレス、食物摂取量などの因子を調整し算出した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間は5.7年間で、認知症発症率は8.7%であった。・キノコの摂取頻度が1回未満/週の群と比べた認知症発症の調整ハザード比(95%信頼区間)は、1~2回/週では0.95(0.81~1.10)、3回以上/週は 0.81(0.69~0.95)であった(傾向のp<0.01)。・この逆相関は、最初の2年間で認知症を発症した参加者と、ベースライン時に認知機能が低下していた参加者を除外した場合も同様であった。 なお、本研究の限界として、認知症の臨床診断データがなくアウトカムに誤分類が含まれていた可能性がある点、キノコ摂取頻度をベースライン調査のみで評価しているため頻度の変化が考慮されていない点、キノコの種類が不明である点などがある。

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やはりthe lower the betterだった(解説:興梠 貴英 氏)-659

 これまでコレステロール低下療法のエビデンスにおいて、スタチンが数の上で圧倒的に多かった。しかもezetimibeは試験デザイン上の問題から、なかなかthe lower the betterを示すことができなかった。そのため、PCSK9の機能喪失変異に伴う心血管リスク低減という疫学的な知見や、PCSK9阻害薬の第II相試験の予備的な結果で心血管リスクが低減することが示唆されたということはあったものの、PCSK9阻害薬による実際の介入で心血管系エビデンスを減らすのかについては、きちんと実施された臨床試験の結果を待たなくてはならなかった。 さて、本FOURIER試験では動脈硬化性心血管疾患を有しており、LDL-Cが70mg/dL以上ですでにスタチン治療を受けている2万7,564例の患者をエボロクマブ群、プラセボ群の2群にランダム割り付けして中央値2.2年間追跡した。患者背景で興味深いのは、8割以上が陳旧性心筋梗塞の患者であり、またそれにもかかわらず、喫煙者の割合が3割弱もいることである。つまり、心血管疾患の再発のリスクが高い集団であるが、結果は血清LDL-C濃度においてはエボロクマブ群でLDL-C 30mg/dL、プラセボ群で86mg/dLという差がつき、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイント発生をエボロクマブ群で有意に低下させたというものであった(NNT=67例)。また、開発段階で可能性が示唆された認知機能への影響を含む副作用には、両群間で差が認められなかった(注射部位の副反応を除く)。 本試験の結果は、2年余りという比較的短い期間ではあるが、LDL-Cを30mg/dLまで低下させても安全上の問題がないこと、またその範囲でPCSK9阻害薬でLDL-Cを下げても、心血管系イベントについてthe lower the betterであることを示すものであった。本試験には日本人も参加していたので、今後サブ解析で日本人に関する結果が出てくることにも期待したい。

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2型糖尿病患者、食事が頸動脈内膜中膜厚に関連

 カナダ・トロント大学のLaura Chiavaroli氏らが、2型糖尿病患者の食事と頸動脈超音波検査(CUS)による頸動脈内膜中膜厚(CIMT)との関連を調査したところ、CIMTの低値が、豆類・炭水化物の高い摂取量、総脂肪・飽和脂肪の低い摂取量と有意に関連していた。この結果は、2型糖尿病の心血管疾患リスク管理における食事の潜在的役割を示唆している。BMJ open誌2017年3月22日号に掲載。 本研究では、同様の方法で収集された3件の無作為化比較試験から、325例の2 型糖尿病患者(最近の心血管イベントなし、スクリーニング時にHbA1cが6.5~8.0%、経口糖尿病治療薬を服用中)について、CUSによるCIMT、7日間の食物記録による食物摂取量の登録時のデータを横断的に分析した。 主な結果は以下のとおり。・CIMTは、豆類の摂取(β=-0.019、p=0.009)、糖質の摂取(β=-0.004、p=0.008)、グリセミック負荷(β=-0.001、p=0.007)、デンプンの摂取(β=-0.126、p=0.010)と有意に逆相関していた。・年齢・喫煙・心血管イベントの既往・降圧薬・糖尿病治療薬・超音波検査技師で調整した多変量回帰モデルにおいて、CIMTは総脂肪(β=0.004、p=0.028)と飽和脂肪(β=0.012、p=0.006)摂取量と直接関連していた。

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喫煙者は末期腎不全リスクが約2倍

 喫煙は、糖尿病患者における慢性腎臓病(CKD)発症の主要な危険因子として確立されているが、CKDの独立した危険因子かどうかはエビデンスが一致していない。中国・上海中医薬大学のJia Xia氏らが、成人一般集団における前向きコホート研究をメタ解析したところ、喫煙がCKD発症の独立した危険因子であることが示唆された。Nephrology, dialysis, transplantation誌オンライン版2017年2月27日号に掲載。 著者らはMEDLINEとEmbaseにおいて2016年5月31日までの論文の中から、一般集団での喫煙状態とCKDの相対リスクを報告している前向きコホート研究を検索した。ランダム効果モデルを用いて、統合相対リスク(SRR)と95%信頼区間(CI)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・CKD発症例6万5,064例を含む、15件の前向きコホート研究を解析した。・生涯非喫煙者と比較して、CKD発症のSRRは、喫煙経験者で1.27(95%CI:1.19~1.35)、現在喫煙者で1.34(同:1.23~1.47)、過去喫煙者で1.15(同:1.08~1.23)であった。・末期腎不全のSRRは、喫煙経験者で1.51(95%CI:1.24~1.84)、過去喫煙者で1.44(同:1.00~2.09)、現在喫煙者で1.91(同:1.39~2.64)であった。・これらの研究にはかなりの異質性が認められた。・蛋白尿の5,747例を含む3件の前向きコホート研究を追加すると、一般集団における喫煙と蛋白尿の関連は認められなかった。

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多枝病変STEMI、非責任病変へのPCI追加は有用か?/NEJM

 多枝病変を有する急性期ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の治療において、梗塞責任動脈へのプライマリPCI施行時に、非責任動脈へ冠血流予備量比(FFR)ガイド下に完全血行再建術を行うと、責任病変のみの治療に比べ心血管リスクが低減することが、オランダ・マーススタト病院のPieter C Smits氏らが行ったCompare-Acute試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年3月30日号(オンライン版2017年3月18日号)に掲載された。STEMI患者の責任病変へのPCIは血流を回復して転帰を改善するが、非責任病変へのPCIの追加の意義については議論が続いている。非責任動脈への介入の有無別のMACCEを評価 本研究は、欧州とアジアの24施設が参加した医師主導の前向き無作為化試験であり、2011年7月~2015年10月に患者登録が行われた(Maasstad Cardiovascular Researchなどの助成による)。 梗塞責任動脈へのプライマリPCIが施行された多枝病変を有するSTEMI患者885例が、非責任動脈へFFRガイド下血行再建術を追加する完全血行再建群(295例)またはこれを追加しない梗塞動脈単独治療群(590例)に無作為に割り付けられた。 PCIはエベロリムス溶出ステントが望ましいとされた。完全血行再建群では、非責任動脈への介入は全般に責任動脈への介入時に行われたが、担当医の裁量で遅延も可とされた(72時間以内が望ましい)。梗塞動脈単独治療群にも、完全血行再建群と同様のFFR測定が行われたが、その後の処置は行われず、測定結果は患者および担当医には知らされなかった。 主要評価項目は、12ヵ月時の全死因死亡、非致死的MI、血行再建術(PCI、CABG)、脳血管イベントの複合エンドポイント(MACCE)とした。梗塞動脈単独治療群では、プライマリPCI施行後45日以内に臨床所見に基づいて行われた待機的血行再建術はイベントに含めなかった。MACCEが65%低下、血行再建術は約3分の1に ベースラインの平均年齢は、完全血行再建群が62±10歳、梗塞動脈単独治療群は61±10歳、男性がそれぞれ79.0%、76.3%を占めた。喫煙者が梗塞動脈単独治療群で多かった(40.8 vs.48.7%、p=0.03)が、これ以外の背景因子には両群に差はなかった。 1年時のMACCEは、完全血行再建群が23例、梗塞動脈単独治療群は121例に発現し、100例当たりのイベント発生はそれぞれ8例、21例と、完全血行再建群が有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.35、95%信頼区間[CI]:0.22~0.55、p<0.001)。 死亡率は完全血行再建群が1.4%(4例)、梗塞動脈単独治療群は1.7%(10例)(HR:0.80、95%CI:0.25~2.56)、MIの発生率はそれぞれ2.4%(7例)、4.7%(28例)(0.50、0.22~1.13)であり有意な差を認めなかったが、血行再建術は6.1%(18例)、17.5%(103例)(0.32、0.20~0.54、p<0.001)と、完全血行再建群が有意に優れた。脳血管イベントの発生率は、それぞれ0%(0例)、0.7%(4例)だった。 副次評価項目のうち、心臓死、MI、血行再建術、脳卒中、大出血の複合エンドポイント(NACE:8.5 vs.29.5%、HR:0.25、95%CI:0.16~0.38、p<0.001)、心不全、不安定狭心症、胸痛による入院(4.4 vs.8.0%、0.54、0.29~0.99、p=0.04)、1年以内に行われた待機的または緊急の初回血行再建術(6.4 vs.27.3%、0.47、0.29~0.76、p=0.002)が、完全血行再建群で有意に良好だった。 FFR関連の重篤な有害事象が梗塞動脈単独治療群の2例(0.2%)に発現した。1例は、FFRワイヤーにより非梗塞右冠動脈に解離が生じ、結果として閉塞を来し、梗塞が引き起こされて院内で死亡した。もう1例は、FFR抜去後に非梗塞左冠動脈前下行枝が閉塞したため、ST上昇を来し、胸痛が再発した(PCIは成功)。 著者は、「この完全血行再建群のリスク低減は、主に血行再建術の必要性が低下したことによる」と指摘している。

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冠動脈疾患と脳卒中における危険因子の違い

 冠動脈疾患(CHD)と脳卒中には共通のリスク因子があるが、CHDと脳卒中との関連の大きさや向きが異なる因子がある。藤田保健衛生大学の松永 眞章氏らは、アジア人におけるCHDと脳卒中による死亡において、各リスク因子による影響が異なるかどうかを、日本人の大規模コホート研究であるJACC(Japan Collaborative Cohort)Studyで検討した。その結果、高血圧との関連は一致したが、喫煙や糖尿病など他のリスク因子については一致しなかった。Atherosclerosis誌オンライン版2017年3月6日号に掲載。 本研究は、ベースライン時にがん、CHD、脳卒中の既往がない40~79歳の10万4,910人について、1988~2009年に追跡調査した。競合リスク分析を用いて、各リスク因子と2つのエンドポイント(CHDと脳卒中)との関連の違いを調べた。また、各リスク因子の集団での影響を推定するために、これらのエンドポイントにおける人口寄与割合も計算した。 主な結果は以下のとおり。・中央値19.1年間の追跡期間中、CHDにより1,554人が死亡し、脳卒中により3,163人が死亡した。・高血圧とCHDとの関連性は、大きさ・向きとも脳卒中と類似していた(多変量調整ハザード比におけるCHD vs.脳卒中:男性 1.63 vs.1.73、女性 1.70 vs.1.66)。・これらの関連の大きさは、喫煙(同:男性 1.95 vs.1.23、女性2.45 vs.1.35)および糖尿病(同:男性 1.49 vs.1.09、女性 2.08 vs.1.39)では異なっていた。・人口寄与割合は、CHDにおいては男性では喫煙、女性では高血圧が最も高く、脳卒中においては男女とも高血圧が最も高かった。

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決!一問一答 質問8(続き)

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決!一問一答質問8(続き) Cox比例ハザードモデルとは?(その2)質問8(その1)日頃、文献や論文を読んでいると、よくこのような記載があると思います。「…Cox比例ハザードモデルを用いた解析の結果、プラセボに対する製品Aのハザード比は0.8(95%信頼区間:0.7~0.9、p<0.01)であった…」今回は、この「ハザード比の信頼区間」についてご説明いたします。■ハザード比の信頼区間信頼区間は“confidence interval”といい、頭文字をとって“CI”といいます。信頼度95%のハザード比の信頼区間を“95%CI”といいます。信頼区間は、とあるデータが何万人(母集団)もの人に当てはまるかどうかを分析するものです。100%に当てはまるのではなく、母集団の95%について当てはまるかどうかをみるものです。ハザード比が0.8で、95%CIが0.7~0.9という結果について解釈してみましょう。ハザード比の0.8ですが、別の患者さんを調べたら異なる値かもしれません。仮に別の患者さんを調べる臨床検査を100回とすれば、95回は0.7~0.9に収まり、5回は外れるということです。前回のその1でハザード比が「1」を下回れば、製品Aはプラセボに比べ死亡率を低下させる(延命効果がある)といえることを述べました。ハザード比の95%CIは、100回中95回とほとんどが1を下回っているので、製品Aは延命効果があったと判断します。ハザード比の95%CIが0.9~1.1と1を挟んでいたとします。別の患者を調べたら、ハザード比が1を下回ることもあれば上回ることもあるということです。1を下回れば効果あり、上回れば効果なしですので、延命効果があったかどうか、わからないということになります。前回の事例でもう一度みてみましょう。下図は事例としてカプランマイヤーの生存曲線の観察データを示しています。図 カプランマイヤーの生存曲線の観察データ表1 事例の基礎データ表2に、この事例におけるハザード比の95%CIを示します。表2 ハザード比と信頼区間処方薬剤の95%CIは0.071~2.116で1を挟むので、製品Aはプラセボに比べ延命効果があったといえません。喫煙の有無の95%CIは0.087~2.654で同じく1を挟んでいます。これにより、非喫煙喫煙に比べ死亡率を低下させるとはいえません。どちらも、この例題では症例数が少なく、両群の有意差はわからなかったといったほうがよいでしょう。今回のポイント1)信頼区間とは100%に当てはまるのではなく、母集団の95%について当てはまるかどうかをみるもの!2)95%CIが「1」を挟むと、母集団において「差があった」とはいえない!3)95%CIが「1」を挟まなければ、母集団においても「差がある」といえる!インデックスページへ戻る

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狭い店なら吸ってもいい!?

狭い飲食店なら吸ってもいい!? 広い店はたくさんのお客さんが利用します。→受動喫煙の被害を防ぐために、全面禁煙が多くなっています。 狭い店ならばお客さんが少ないので、被害もなくなるのでしょうか?→そんなことはありません!空間が狭いと、煙が高濃度に立ち込めます。つまり…1人当たりの受動喫煙の被害は、狭い飲食店のほうが大きいかもしれません。狭い店こそ禁煙を!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2017 CareNet, Inc. All rights reserved.

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妊婦の肥満、子の脳性麻痺と関連?/JAMA

 母親の過体重や肥満は、早産、新生児仮死関連合併症、先天奇形のリスクを増加させ、これらの病態が新生児の脳性麻痺と関連することが知られているが、母親の過体重、肥満の重症度と子の脳性麻痺の直接的な関連やそのメカニズムは不明とされる。この問題を解明するために、米国・ミシガン大学/スウェーデン・カロリンスカ研究所のEduardo Villamor氏ら研究グループは、地域住民をベースとするレトロスペクティブなコホート研究を実施した。研究の成果は、JAMA誌2017年3月7日号に掲載された。142万例以上の子で、脳性麻痺と母親のBMIの関連を評価 本研究では、妊娠早期のBMI値と、妊娠期間別の脳性麻痺発生率の関連が検討され、媒介因子の評価が行われた。1997~2011年にスウェーデンで単胎児として出生した子と母親の全国的な登録データが用いられた。子の脳性麻痺の追跡調査は2012年まで行われた。 妊娠早期のBMIは、妊娠中の初回受診時に妊婦によって報告された身長と体重から算出した。妊婦の90%は、妊娠14週以内に初回の受診をしていた。WHO基準に従い、低体重(BMI<18.5)、標準体重(同18.5~24.9)、過体重(同25.0~29.9)、肥満1度(同30.0~34.9)、肥満2度(同35.0~39.9)、肥満3度(同≧40.0)に分類した。妊娠期間は、正期産(≧37週)、中等度早産(32~36週)、超早産(28~31週)、極早産(22~27週)に分けて解析した。 主要評価項目は脳性麻痺の発生とした。妊婦の出産時年齢、出身国、学歴、パートナーとの同居、身長、妊娠中の喫煙、出産年で補正したハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 142万3,929人の子が解析の対象となった。平均妊娠期間は39.8(SD 1.8)週、51.4%が男児であった。母親の肥満度が上がるほど増加、早産児では関連なし フォローアップ期間中央値7.8年(IQR:4.3~11.7)の間に、3,029人の子が脳性麻痺と診断された(発生リスク:生児出生1,000人当たり2.13人、発生率:1万人年当たり2.63人)。 母親の脳性麻痺リスク因子として、低学歴、北欧以外の国の出身、パートナーと同居していない、初産および経産回数が4回以上、低身長、妊娠中の喫煙、糖尿病性疾患、高血圧性疾患が挙げられた。 また、子の脳性麻痺リスク因子は、男児、短い在胎週数、器械分娩、分娩時外傷、出生時体重が<10および>97パーセンタイル、新生児感染症、新生児仮死関連合併症(胎便吸引、低酸素性虚血性脳症と関連疾患、新生児発作)、Apgarスコアが<7点、先天奇形(染色体異常、心血管奇形、神経系奇形など)であった。 母親の妊娠早期の平均BMIは24.5(SD 4.4)であった。低体重が2.4%、標準体重が61.8%、過体重が24.8%、肥満1度が7.8%、肥満2度が2.4%、肥満3度は0.8%であった。母親のBMIカテゴリー別の脳性麻痺児の数は、低体重64人、標準体重1,487人、過体重728人、肥満1度239人、2度88人、3度38人であり、1万人年当たりの発生率は、それぞれ2.58、2.35、2.92、3.15、4.00、5.19人だった。 標準体重の母親の子との比較における脳性麻痺の補正HRは、低体重が1.09(95%CI:0.84~1.41)、過体重が1.22(同:1.11~1.33)、肥満1度が1.28(同:1.11~1.47)、2度が1.54(同:1.24~1.93)、3度は2.02(同:1.46~2.79)と、肥満度が上がるほど上昇し、有意な関連が認められた(傾向検定:p<0.001)。 脳性麻痺児のうち、正期産は71%、中等度早産は13%、超早産は10%、極早産は6%であった。脳性麻痺発生率が、母親の過体重、肥満の重症度が上がるにしたがって上昇したのは、正期産の子のみであり(傾向検定:p<0.001)、早産児では有意な関連を認めなかった。 媒介分析では、母親の肥満が正期産児の脳性麻痺を引き起こす可能性と最も関連の強い媒介因子は新生児仮死関連合併症(45%)であり、次いで低Apgarスコア(30%)、器械分娩(17%)、神経系奇形(13%)の順であった。 著者は、「母親の過体重、肥満は子の脳性麻痺の発生率と有意に関連するが、これは正期産児に限られ、新生児仮死関連合併症の寄与が大きいと考えられる」とまとめ、「高い肥満有病率と、最も重症度の高い肥満の持続的な増加を考慮すると、母親の肥満と子の脳性麻痺の用量-反応的な関連は、公衆衛生学上の深刻な問題となる可能性がある」と指摘している。

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大腿骨頚部骨折の再手術率は固定法で異なるか? /Lancet

 大腿骨頚部骨折の手術後に再手術となることが多いが、これは骨折部の固定法に関連しているのか。カナダ・マックマスター大学のMohit Bhandari氏らFAITH研究チームが、国際多施設共同無作為化試験にて、再手術のリスクとしてsliding hip screw法 vs.cancellous screws法の比較検討と、その他キーとなるアウトカムについて調べた。その結果、固定法の違いに有意差はなかったが、喫煙・転位または基部骨折の患者群ではsliding hip screw法を用いるほうがよい可能性が示されたという。Lancet誌オンライン版2017年3月2日号掲載の報告。初回手術後24ヵ月以内の再手術を評価 試験は8ヵ国81の医療センターから、50歳以上の加齢性の大腿骨頚部骨折で骨折固定法の施術を必要とした患者を集めて行われた。 被験者は、コンピュータによる最小化無作為法にて、sliding hip screw法(サイドプレート付きの1本の長尺スクリューを用いて固定)を受ける群と、現行標準法とされるcancellous screws法(複数の短尺の海綿骨ねじを用いて固定)を受ける群に割り付けられた。手術担当医と患者は盲検化を受けなかったが、データ解析者は、治療割り付けを知らされなかった。 主要アウトカムは、初回手術後24ヵ月以内の再手術(骨折治癒促進のため)、疼痛減、感染症の治療、機能改善とし、intention-to-treat法にて解析した。主要解析では有意差なし 2008年3月3日~2014年3月31日の間に、1,108例が無作為化を受けた(sliding hip screw群557例、cancellous screws群551例)。被験者は70~80歳代の女性が多く、骨折は転倒によるもの、孤立性、非転位性の患者が大半を占めた。 24ヵ月以内の再手術は、主要解析においては両群に差は認められなかった。sliding hip screw群は107/542例(20%)、cancellous screws群は117/537例(22%)であった(ハザード比[HR]:0.83、95%CI:0.63~1.09、p=0.18)。 大腿骨頭壊死症(AVN)は、sliding hip screw群がcancellous screws群よりも発生頻度が高かった(50例[9%] vs.28例[5%]、HR:1.91、1.06~3.44、p=0.0319)。しかしながら、医学的な有害事象の発生件数は、両群で有意差はみられなかった(p=0.82)。たとえば、肺塞栓症(2例[<1%] vs.4例[1%]、p=0.41)、敗血症(7例[1%] vs.6例[1%]、p=0.79)などで有意差がなかったことが報告されている。 また、サブグループ解析で、現在喫煙者(HR:0.39、p=0.02)、転位骨折群(0.57、p=0.04)、基部骨折群(0.24、p=0.04)でsliding hip screw群の優位性が示された。

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あの有名な汚染物質の発生源は…

あの有名な汚染物質の発生源は…ベンゼン鉛シアン化合物カドミウムヒ素ポロニウム……見つかれば大騒ぎになるこれらの物質。意外と近なところにありますが、どこにあるでしょう?豊洲(築地市場移転先)の地下水タバコに含まれる成分この事実を知っても、まだあなたはタバコを吸いたいですか?社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2017 CareNet, Inc. All rights reserved.

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決!一問一答 質問8(その1)

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決!一問一答質問8 Cox比例ハザードモデルとは?(その1)生存率の分析の手法に、カプランマイヤー法、Cox比例ハザードモデルがあります。これらの手法は、ある事象が起こった群と起こらない群の2群に対して、時間的な要素を考慮して解析する方法です。目的変数は「アウトカム」とも呼ばれ、死亡/生存(時には、再発する/再発しない、寛解する/寛解しないなど)の2群のカテゴリーデータになります。カプランマイヤー法について、「わかる統計教室 第1回」で詳しく説明していますので、そちらを参照ください。■Cox比例ハザードモデル(Cox回帰モデル)Cox比例ハザードモデルは、死亡/打ち切りのデータから生存率を求め、生存率の時間的な要素を考慮し、生存率に影響を及ぼす変数との関係式を作成する方法です。つまり、治療法や背景因子などが生存期間に与える影響を評価する際に用います。関係式の目的変数(アウトカム)は1、0の2値データです。1、0データは死亡/打ち切りにとどまらず、死亡/生存、再発する/再発しない、寛解する/寛解しないなど、いろいろな場面が想定されます。説明変数は、生存率に影響を及ぼす治療方法や性別、年齢、BMIなどの背景因子が用いられます。Cox比例ハザードモデルは、説明変数のハザード比を算出します。ハザードは危険を意味するので、生存でなく死亡に対するリスクを示す尺度です。ハザードは、ある時点の瞬間における死亡率であり、時間とともに変化します。単位は「人/単位時間」ということになります。下図は事例としてカプランマイヤーの生存曲線の観察データを示しています。図 カプランマイヤーの生存曲線の観察データそれでは、表1から目的変数(アウトカム)を「1:死亡、0:打ち切り」、説明変数を処方薬剤、喫煙の有無としてCox比例ハザードモデルを適用し、処方薬剤、喫煙の有無のハザード比を求めてみましょう。目的変数(アウトカム)は、死亡(再発)など危険要素を1、ほかを0とします。説明変数が2分類のカテゴリーデータの場合、死亡率が低いと仮定するほうを1、ほかを0とします。製品A、非喫煙を1としました。表1 事例の基礎データ■ハザード比の結果表2に関係式の回帰係数とハザード比を示します。表2 関係式の回帰係数とハザード比ハザード比は次式によって求められる値です。ハザード比=e回帰係数 ただし、eは自然対数の底で、2.7183…です。【計算例】薬剤のハザード比=e-0.950=0.387 Excelの関数=EXP(-0.950)Cox比例ハザードモデルを使って目的を解明する場合、危険度の高さを示す回帰係数でなく、ハザード比を用います。ハザード比から、説明変数がアウトカムに対して、どれくらい寄与しているかを調べることができます。たとえば説明変数が、「治療方法P、治療方法Q」の場合、ハザード比からアウトカム発生確率(死亡率)は、PはQに比べ何倍高いかを示せます。また、3年間の観察期間において、アウトカムが「1:死亡、0:打ち切り」のハザード比が「1.5」だったとします。この場合の解釈は、「治療方法Pは、Qに比べ、3年の間に死亡する度合いは1.5倍高い」となります。つまり治療方法Pは、Qに比べ、良くないということです。この例題のハザード比は「0.387」で「1」を下回りました。この場合の解釈は、アウトカム発生確率(死亡率)は、製品Aはプラセボに比べ0.387倍高いとなります。つまり製品Aはプラセボに比べ、死亡率を61.3%(=1-0.387)減少させ、製品Aの延命効果はあったと解釈されます。喫煙の有無のハザード比は0.480なので、非喫煙喫煙に比べ死亡率を52.0%減少させたとなります。次回は、ハザード比の信頼区間についてご説明いたします。今回のポイント1)ハザード比は「1」が基準となり、「1」の場合は説明変数の値が変化しても、アウトカム発生までの時間に変化はないことを意味し、「1」より大きい場合はリスクが高くなり、「1」より小さい場合はリスクが小さくなることを表している!2)ハザード比が「1」を超えている場合は、「死亡や病状進行のリスクが対照群に比べて○○%高くなる」ということになる!3)逆に、ハザード比が「1」を超えていない場合は、「死亡や病状進行のリスクが対照群に比べて○○%低くなる」ということになる!インデックスページへ戻る

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2型糖尿病、併存疾患ごとの超過死亡リスク

 2型糖尿病の患者は、大血管疾患・慢性腎臓病・慢性呼吸器疾患・がん・喫煙習慣を伴うことが多い。山梨大学の横道 洋司氏らは、これらを伴う2型糖尿病患者の超過死亡リスクについて、バイオバンク・ジャパン・プロジェクトのデータを用いて定量化した。その結果、慢性腎臓病・大血管疾患・慢性呼吸器疾患の既往、もしくは現在喫煙している糖尿病患者において高い死亡リスクが示された。著者らは、糖尿病の予後改善のために併存疾患の改善および禁煙の必要性を提言している。Journal of epidemiology誌オンライン版2017年2月10日号に掲載。 著者らは、2003~07年のバイオバンク・ジャパン・プロジェクトのデータから、利用可能な2型糖尿病患者 3万834例のデータを分析した。追跡期間中央値は男性が8.03年、女性が8.30年であった。糖尿病患者の死亡率は、大血管疾患・慢性呼吸器疾患・慢性腎臓病・がん・喫煙習慣の有無別にCox比例ハザードモデルおよびカプランマイヤー推定を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・糖尿病患者の死亡における調整ハザード比(HR)は、男性 1.39(95%CI:1.09~1.78)、年齢10歳増あたり 2.01(同:1.78~2.26)であった。・各併存疾患および喫煙習慣の調整HRは、大きい順に慢性腎臓病 2.03(同:1.67~2.47)、大血管疾患 1.77(95%CI:1.42~2.22)、現在喫煙 1.74(同:1.30~2.31)、慢性呼吸器疾患 1.58(同:1.08~2.31)、がん 1.16(同:0.86~1.56)、であった。

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第34回 真実を曇らせる後知恵バイアスとは?

■今回のテーマのポイント1.耳鼻科疾患でもっとも訴訟が多い疾患は、急性喉頭蓋炎である2.急性喉頭蓋炎に関する訴訟においては、診断の遅れと気道確保が争点となる3.司法および鑑定意見書を書く医師は、後知恵バイアスの存在を知り、適切な判断をすることが難しいということを理解すべきである■事件のサマリ原告患者X被告Y病院争点診療上の見逃しによる四肢麻痺障害に対する責任結果原告勝訴、2億832万円の損害賠償事件の概要喫煙者である50歳男性(X)は、平成9年8月4日、喉の痛みを感じたため、A医院を受診し、内服薬を処方されました。しかし、帰宅後ものどの痛みが持続し、夜中には38.2℃まで発熱。翌朝には、朝食のパンを飲み込むのも困難な上、呼吸もしづらく息苦しさを感じるようになりました。そのため、同日、XはY病院を受診。耳鼻科のB医師は、問診および簡単な検査の結果、Xに対して「のどが少し炎症を起こしているがたいしたことはない」として、のどにルゴール液のような薬剤を塗り、内服薬を処方しただけで、それ以上の注意を与えることもなく帰宅させました。しかし、Xは、Y病院から帰宅した後,のどの痛みがますます強くなり、粘調の痰がのどに絡む、声が出にくくなるなど病状が悪化していきました。Xの妻(C)は、Y病院への再度の受診を勧めましたが、Xは、たった今受診し、薬も出されたからこの薬が効いてくれば良くなるはずであるとして、Cの勧めに応じませんでした。ところが、Xは、同日午後5時20分ころ、痰を吐き出そうとして呼吸ができなくなったことから、救急車でD大学救急救命センターへ搬送されました。Xは、D大学救急救命センターでの気管内挿管などの救命措置により、生命を取り留めたものの、喉頭の浮腫、蜂窩織炎(急性喉頭蓋炎)により、気道閉塞、窒息状態になり、低酸素脳症から脳に不可逆的な障害が残り、四肢体躯麻痺の状態となりました。これに対し、Xは、Y病院の耳鼻科で所見の重大性が看過されたことなどにつき、Y病院の設置者である国に対して、2億1,932万円の損害賠償請求を行いました。事件の判決前記認定にかかる発症・受診から入院に至るまでの経過をみると、X(当時50歳、喫煙者)は、平成9年8月4日、咽頭痛を訴え、A医院で診断を受けたが、同日夜には熱が38度2分に上がり、咽頭痛及び嚥下痛を訴えており、翌5日午前に被告病院で受診した後、同日午後には症状が急速に悪化し、午後5時ころには呼吸困難に至ったというのであるから、アの〔1〕ないし〔4〕*の特徴に全て合致し、これに、XがA医院における診断に納得せず、自己の症状に尋常でないものを感じ、さらに精密な診断を受けようと考えて翌日妻Cを付き添わせて国立総合病院であるY病院に赴いたことを考慮すると、Xは、遅くとも被告病院において受診を受けた時点では、既に急性喉頭蓋炎に罹患しており、その後、次第にその症状が進み、呼吸困難に至ったものとみるのが自然であるというべきであって、Y病院で診断を受けたときは、Xは急性咽喉頭炎(喉頭粘膜に発赤、腫脹をきたす急性炎症であり、かぜ症候群の部分症状のことが多い)に罹患していたにすぎず、その直後に、急性喉頭蓋炎に発症し、急激に悪化していったとみるのは極めて不自然である。以上の検討結果によれば、B医師が、Y病院において、Xの診断をした際、喉頭蓋の発赤及び腫脹を確認することが可能であったものと推認されるから、B医師はXに対し急性喉頭蓋炎であるとの診断を下すことができ、この診断に基づく適切な処置をとることができたものというべきである。・・・(中略)・・・以上によれば、B医師には、Y病院において、Xの診断をした際、喉頭蓋の発赤及び腫脹を確認することが可能であったにもかかわらず、患部についての慎重な観察や各症状についての十分な検討を欠いたために、Xが罹患していた急性喉頭蓋炎に対する適切な処置をとることをしなかったという過失が認められる。なお、付言するに、発赤、腫脹というのは、要するに炎症所見であり、喉頭全体に発赤があるのであれば、炎症が始まったことを示しているのであって、仮にB医師が診断した時点では、発赤のみであったとしても、以後腫脹を伴ってくる可能性を有するというべきであるから、急性喉頭蓋炎が窒息など生命に重大な危険を及ぼす病気であることを考慮すれば、医師としては、急性喉頭蓋炎の可能性を排除するのではなく、むしろその可能性を考えて、Xをそのまま帰宅させることなく、引き続き経過観察をするなどの適切な処置をとるべきであったといえるから、いずれにしろ過失は否定できないところである。以上により、原告一部勝訴(約2億832万円の賠償)。*〔1〕日本では成人男子(特に中年男性、喫煙者)に発症例が多い、〔2〕発症から入院までの期間は、平均的には2、3日程度であるが、急速に進行し、気道閉塞を来すこともあり、症例によっては急激に増悪し、発症後数時間から24時間で窒息に至ることがある、〔3〕37℃5分以上の発熱を伴うことが多い、〔4〕ほとんどの症例に、咽頭痛、嚥下痛(嚥下障害)が認められる(※判決文中、下線は筆者による加筆)東京地判平成14年3月13日 判時1812号116頁ポイント解説●耳鼻科疾患の訴訟の現状今回は耳鼻科疾患です。耳鼻科疾患で最も訴訟が多いのは急性喉頭蓋炎(約15%)であり、以下、中耳炎、耳下腺腫瘍と続いています。急性喉頭蓋炎に関する訴訟の原告勝訴率は、85.7%と非常に高く、また、平均認容額も約7,851万円と高額になっています(表1、2)。これは、急性喉頭蓋炎による気道閉塞により、死亡や四肢麻痺などの重い障害が生ずること、そして、急性喉頭蓋炎は働き盛りの中年男性や小児に多い疾患であること(表2から50代男性の事例が(2)(5)(6)、小児の事例が(3)(4))によると考えられます。画像を拡大する画像を拡大する急性喉頭蓋炎に関する訴訟の争点で最も多いのは診断の遅れ(5件71.4%)であり、次いで気道確保(3件42.9%)となっています。診断の遅れが争われた訴訟では、5件中3件(60%)で過失が認定されています。気道確保について争われた訴訟では、気管内挿管や外科的な処置(輪状甲状靱帯切開など)が適切になされたかどうかが争点となり、3件中2件で過失が認定されています(表3、4)。画像を拡大する画像を拡大する●いわゆる「地雷疾患」に対する司法の理解今回取り扱った急性喉頭蓋炎のような診断が困難であり、かつ、急速な転帰をたどる疾患の診断につき、結果の重大性を過大視して医師に過失を認めることは、およそ不可能を強いるものであり、問題があるといえます。さらに今回の事例は、第24回「劇症Ⅰ型糖尿病の事例」とは異なり、過失相殺すらなく約2億円もの額が認容されています。急性喉頭蓋炎以外にも、急性冠症候群、心筋炎・心膜炎、解離性大動脈瘤、くも膜下出血、髄膜炎・脳炎など、とくに非典型的な症例であった場合には、診断が困難であり、かつ、急速な転帰をたどる疾患においては、しばしば同様の訴訟が起きています。もちろん、医師もできる限り見逃しのないよう努力をしていますが、100%の診断をすることは不可能です(最近話題のIBM Watsonですら100%ではありません)。このような医療の現実を無視した判決が出されてしまうと、萎縮医療が加速することとなり、結果として患者、国民が困ることとなります。このような判断がなされる背景には、後知恵バイアスが大きく寄与しています。医療と司法の相互理解の中で、しばしば問題になるのが、「医師は結果がわからない状況で、今ある情報だけを基に判断をしていくのに対し、司法は悪い結果が起きてから、振り返って、すべての情報を知ったうえで判断をしていく点が大きく異なる」ということです。振り返って過去の判断を評価する場合、人間には必ず強力な後知恵バイアスがかかります。故意事案であれば、後知恵バイアスは大きな問題とはなりがたいのですが、過失事案では後知恵バイアスが強力であるが故に、しばしば現実を無視した不当な評価がなされます。まずは、司法関係者および鑑定書を書く医師が、後知恵バイアスの存在を知り、メタ認知できるよう学習することが求められるのです。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)東京地判平成14年3月13日 判時1812号116頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。

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「カイジ」と「アカギ」(後編)【ギャンブル依存症とギャンブル脳】

今回のキーワードカジノを含む統合型リゾート(IR)行動経済学システム化報酬予測ニアミス効果損失回避欲求自助グループ(GA)なぜギャンブルは「ある」の? -ギャンブル脳ギャンブルをするのは男性が多いという理由について、因果関係、上下関係、契約関係を重視するという男性ならではのシステム化の心理があることが分かりました。それでは、そもそもなぜギャンブルは「ある」のでしょうか?その答えは、原始の時代に生きるか死ぬかの「ギャンブル」をして生き抜く遺伝子が現代の私たち(特に男性)に引き継がれているからです。これは、ギャンブル脳と呼ばれています。そして、これによって日常生活に支障を来している場合が、ギャンブル依存症と言えます。また、ギャンブル脳を含め人の心理行動と経済活動の関係を研究するのが、行動経済学です。ここから、このギャンブル脳を、3つの要素に分けて、その進化心理学的な起源を探ります。そして、その行動経済学的な応用を紹介しましょう。(1)「想像するだけでワクワクする」a. 報酬予測1つ目は、「想像するだけでワクワクする」という報酬予測(動機付けサリエンス)です。これが、心を奪われるという心理につながっていきます(渇望)。例えば、「勝った時の興奮が忘れられない」「あのスリルをもう一度味わいたい」「ルーレットが回っている瞬間が最も興奮する」という気持ちです。これは、ギャンブルに限らず、例えば「旅行は計画している時が一番楽しい」「遠足の前日は眠れない」など、初めてで不確定ですが、楽しいことが予測される非日常の直前の心理が当てはまるでしょう。この報酬予測の心理を引き出すには、すでにその快感(報酬)の体験をしていることが前提です。この点で、パチンコや競馬などと違い、宝くじにおいては、基本的に勝ちの快感の体験を味わうことはできません。よって、その代わりに、宝くじの当選額を億単位まで増額し射幸心を煽った上で、当選の疑似体験をCMで植え付けることが盛んに行われます。実際に、サルによる動物実験でも実証されていますが、確実な報酬よりも、不確実な報酬の「待ち時間」に、最も脳内で快楽物質(ドパミン)が放出されていることが分かっています。そして、この不確実で大きな報酬の繰り返しによって、「待ち時間」の快楽物質(ドパミン)の放出がより早く、より多くなっていきます。逆に言えば、「待ち時間」のあとの実際の快感(報酬)は、「待ち時間」の最中の快感(報酬)よりも相対的に目減りしていきます。簡単に言えば、実際に勝った喜びの快感が麻痺していき、「もっともっと」という心理が強まっていきます(耐性)。さらに、この相対的な快感の目減りにより、日常生活で他の喜びも麻痺していきます。ちなみに、パーキンソン病の患者が治療薬であるドパミン刺激薬を内服すると、8%がギャンブル依存症になることがアメリカでは報告されています。また、ドパミン部分作動薬のアリピプラゾールによってギャンブル行動が悪化したケースも報告されています。同じように、注意欠如・多動性障害(ADHD)の治療薬である精神刺激薬のメチルフェニデートも、ギャンブル行動の悪化が懸念されます。そもそも、ADHDの特徴である衝動性は、ギャンブル障害のリスク因子でもあります。b. 強めるのはこの報酬予測をより強めるには、自分がギャンブルの過程にかかわることです(直接介入効果)。例えば、スロットマシンで、3つ数字が揃うのを何もせずにじっと待っているよりも、スロットのスタートとストップのタイミングを決められるようにした方が、よりのめり込んでしまいます。また、パチンコの出玉率は、台ごとに1段階から6段階までの設定が可能で、「勝ちやすい台」「負けが込む台」という偶発性がわざと演出されています。台選びによって少しでも勝敗を左右させる余地があると、まるであたかも自分の運命を自分で選んでいる感覚になるからです。競馬予想で言えば、馬や騎手の過去の成績や現在の状態の下調べを入念にすればするほど、予想への思い入れが強くなり、期待感が増していく心理が当てはまります。よって、勝負の結果にそのまま関与できる賭け麻雀、賭けポーカー、賭けゴルフなどは、より依存性が強いギャンブルであり、ほとんど全ての国で禁止されています。c. 進化心理学的な起源原始の時代、生きるか死ぬかの最中、獲物が罠にかかる直前、獲物を仕留めようとする直前に、より興奮する種がより生き残ったのでしょう。なぜなら、その「待ち時間」に仕留めた時の喜びをすでに噛みしめていた方が、より粘るからです。農耕牧畜の安定した文明社会では、そのような生きるか死ぬかの状況はなくなりました。しかし、その興奮を求める心理は残ったままなのでした。まさに「ハンターの血」が騒ぐとも言うべき狩猟本能です。原始時代の狩猟採集社会では、獲物はとても希少で限られていました。ところが、現代のギャンブル産業では、あたかも無限の「獲物」があるかのように演出できるようになりました。そんな中、「ハンター」の心理が過剰になり、制御ができなくなった状態が、ギャンブル障害です。d. 行動経済学的な応用この報酬予測の心理は、ギャンブル産業だけでなく、ビジネスの様々な場面で応用されています。例えば、それはあえて行列をつくり並ばせることです。飲食店に「行列のできる~」という触れ込みで駆け付ける人は、待っている間に、すでに想像してその味を噛みしめて、期待感を高めています。遊園地のアトラクションで並ぶ人は、その待ち時間が長ければ長いほど、その価値があると思い込んでいきます。高級デパートの買い物を楽しむ人は、あえて少ない支払い担当の店員がいる売り場で待たされてじらされたり、あえて支払いの手続きが多かったりすると、お買い上げの瞬間のテンションを上げていきます。ちなみに、このテンションの欲求が病みつきになったのが、オニオマニア(買い物依存症)です。また、部下とのコミュニケーションの場面などで、褒めるべき時に、毎回正確に褒めるよりも、何回かに1回はあえて褒めない方が、逆に褒められたい気持ちを煽ることができます。ただし、これを連発すると、気分屋に思われて、信頼関係がうまく築けなくなる危険性があります。また、これを依存的で自尊心の低い人に悪用すると、マインドコントロールに陥る危険性があります。動機付け(報酬予測)を高める直接介入効果としては、あえて選ばせる、あえて言わせることです。例えば、プレゼンテーションをする時に、選択式のクイズを設けたり、参加者にどんどん質問したり、どんどん意見を言わせたり、グループワークを取り入れて発表してもらったりするなどの参加型にした方が、より満足度(報酬)が高くなります。禁煙外来やアルコール依存症外来でも、説教や非難によって患者を受け身にさせるよりも、本人に禁煙や断酒のメリット(報酬)を考えてもらい、本人からその決意を引き出すかかわり方が効果的であることが分かります。(2)「あと少しだったのに」a. ニアミス効果2つ目は、「あと少しだったのに」というニアミス効果です。これが、「惜しい」「次こそは」「もう1回」という心理につながっていきます。実際に、ケンブリッジ大学の心理実験では、スロットマシンの「当たり」の時と同じように、「僅差のハズレ」の時も脳の報酬系の活動が高くなることが実証されています。ご褒美は、少なすぎる状況では、もちろん快感は得られにくく、やめてしまいます。逆に、多すぎる状況では、快感が鈍って飽きてきます。つまり、時々の少し足りない状況で、「もっと」という興奮が高まり、熱中するというわけです。これは、すでにパチスロ業界では応用されているようです。例えば、「7-7-7」のように同じ数字が3つ揃えば大当たりですが、あえて「7-7-6」「7-7-8」が出る頻度を30%程度に設定すると、客をその台に引き留めやすくなると言われています。当たり率は、不正がないように機器の1つ1つが厳密に審査されていますが、ハズレの数字の何が出るかの操作をするのはグレーゾーンのようです。確率論的に考えると、僅差の数字の揃いであっても、バラバラの数字の揃いであっても、ハズレはハズレであり、次に当たりが出る確率が上がることは全くないです。宝くじでも、分かりやすく応用されています。それが前後賞です。これは良心的です。ただ、例えば「6億円が出やすい土曜日」「この店で6億円の当たりが出ました」とまことしやかに宣伝されるのはどうでしょうか?「じゃあ、この曜日のこの店ならもしかして・・・」とつい思ってしまうでしょうか? これは、事実には違いないでしょうが、よくよく考えると、実はとても滑稽な宣伝文句です。なぜなら、単純な確率論なので、その事実に基づいて宝くじを買った人の当たる確率が上がることは全くないからです。そして、逆に確率が上がるとしたら、公営ギャンブルで不正が働いているわけで大問題になってしまうからです。b. 強めるのはこのニアミス効果をより強めるには、ギャンブルを何度もやりやすい状況をつくることです。例えば、カジノでは、アルコールは無料で、窓がなく昼か夜か分からず、音響効果も加わり、陶酔空間を演出させています。また、ラスベガスやマカオでは、カジノ直結の高級ホテルを格安にして、レストラン、バー、プール、エステ、劇場、遊園地、ショッピングモールなどありとあらゆる施設を気軽に利用できるようにして、お祭り気分を味わわせます。さらには、上客にはカジノまでの往復の航空チケットを無料にすることもあります。これらは、「コンプ」(complimentary)と呼ばれています。直訳すると「褒め言葉」となりますが、まさに、このようなおもてなしで気持ち良くなってもらって、カジノでたくさんお金を落としてもらうのです。そして、カジノの売り上げによって、他の不採算の施設費をカバーします。これが、カジノを含む統合型リゾート(IR)というビジネスモデルのからくりです。c. 進化心理学的な起源原始の時代、獲物を惜しくも捕り損なった時、その直後にもう一踏ん張りして、その瞬間に全てを賭ける種が生き残ったでしょう。なぜなら、獲物も追われ続けて疲れているので、次に仕留められる確率が上がるからです。しかし、現代に行われるギャンブルでは、「獲物」を仕留める確率は、当然のことながら一定です。パチンコやスロットもコンピュータで正確に制御されており、毎回完全にリセットされます。そして、この心理が発揮されることを逆手に取って、あたかもあと少しで「獲物」が仕留められるかのように演出できるようになりました。そんな中、「ハンター」の心理が過剰になり、制御できなくなった状態が、ギャンブル障害です。d. 行動経済学的な応用このニアミス効果や「コンプ」(おもてなし効果)は、ギャンブル産業だけでなく、コミュニケーションの場面でも応用できます。例えば、部下を叱る時に、「仕事ができていない」「きみはだめだ」と言うよりも、「あともうちょっとで完璧な仕事ができたのに」「きみは惜しい」と言う方が、仕事への意欲を引き出せます。逆に、褒める時に、「完璧な仕事ができた」「きみはすごい」と言うよりも、「良い仕事をした」「だけどここがクリアできたら完璧だった」と言う方が、仕事への意欲を維持させます。つまり、赤点で全く褒めないのではなく、満点で全く叱らないのでもなく、どちらにしても90点程度の「惜しい」という評価をすることが有効であるというわけです。また、女性が男性からデートのお誘いを受ける時に、快諾するよりも、思わせぶりにしつつもなかなかOKを出さない方が、男性のテンションを上げ、女性への好意を増すでしょう。これは、男性が「女性を口説き落とすことに喜びを感じる」という心理も納得がいきます。さらに、「コンプ」の発想を理解すれば、どんな相手とも日々気持ち良くさせる声かけをして気に入ってもらえている方が、コミュニケーションがスムーズになると分かるでしょう。(3)「損を取り返したい」a. 損失回避欲求3つ目は、「損を取り返したい」という損失回避欲求です。前回紹介したカイジの仲間の坂崎のように、「負けた分を取り返す」ためにさらにギャンブルに深追いする心理です(負け追い行動)。もともと人間の脳は利得よりも損失に大きな反応を示し、その反応の大きさ(価値)は金額に正比例せずに緩やかに頭打ちになっていくことが分かっています(グラフ1、プロスペクト理論)。つまり、得するより損することに敏感で、さらなる大損よりも現在の損に囚われてしまいやすいということです。b. 強めるのはこの損失回避欲求をより強めるには、時間の経過によって先々の利得の価値が下がって、目先の報酬の価値が上回ることです(遅延報酬割引)。例えば、真面目にこつこつ働いて借金を返して、将来に確実にすっきりするよりも、不確実なギャンブルに賭けて手っ取り早く借金をチャラにして今すっきりしたいという心理です。そう思うのは、ギャンブルの繰り返しによる脳への影響として、理性的な報酬回路(前頭葉)よりも、衝動的な報酬回路(扁桃体)の働きが優位になってしまうからです。先ほどの報酬予測の説明でも触れましたが、ギャンブルの繰り返しによって、報酬が得られるかもしれない「待ち時間」への快感が鋭くなり、逆に、実際のその報酬や日常生活での他の報酬への快感は鈍くなります。さらには、最近の脳画像研究では、報酬だけでなく、罰にも鈍くなることが分かっています。よって、この快感への鈍さを代償するためにますますやり続け、ますます高額の賭け金を出すと同時に、負け(罰)をますます顧みなくなります。つまり、ギャンブルによる先々の大きな損には目が向きにくくなり、目先の損得にばかり目が行き、「一発逆転」や「一か八か」という心理で、より短絡的になっていくのです。c. 進化心理学的な起源原始の時代は、いつもその日暮らしです。「今ここで」という状況でぎりぎりで生きていました。このような極限状況の中、得るよりも失うことに敏感な種が生き残るでしょう。なぜなら、たくさん食料を得ても、冷蔵庫がないので、保存はできずに腐らせてしまうだけだからです。逆に、少しでも奪われたり腐らせたりして食料を失えば、その直後に自分や家族の飢餓の苦しみや死が待っています。借金のようにどこかから借りてくることはできません。つまり、食料をたくさん得れば得るほど、正比例して幸せというわけではないでしょう。逆に、食料を失えば失うほど、正比例して不幸せ(恐怖)というわけでもないでしょう。そもそも食料はたくさんあるわけではないので、失った食料が多かろうと少なかろうと飢餓の苦しみや死には変わりがないからです。こうした種の生き残りが現在の私たちです。よって、現代の「食料」であるお金の価値は、正比例せずに緩やかに頭打ちになるというわけです。実際に、収入と満足度の関係性がそうです。しかし、現代の文明社会では、ギャンブルで負ければ、限りなく「食料」を失うことができます。しかし、その損失に正比例して苦痛を感じるわけではありません。借金をして一時しのぎをすることもできます。つまり、現代の「食料」を量産できる貨幣と借金の制度による文明社会で、「ハンター」が、損を取り返そうとし続けた結果が、ギャンブル障害です。d. 行動経済学的な応用この損失回避欲求の心理は、ギャンブルだけでなく、ビジネスの様々なところで応用されています。例えば、宣伝文句では、「買ったらお得」よりも「買わなきゃ損」の方がインパクトがあります。人は、「得しますよ」と言われるより「損しますよ」と言われる方が耳を傾けます。本日限定のオマケを付けるという商法は、オマケを付けるという点では得ですが、明日に買えばオマケが付かないという点で損であり、とても有効です。子どものしつけや教育にしても健康検診にしても、「放っておくと取り返しのつかないことになります」と言われると、半分脅しのようにも聞こえるくらい効果があります。さらに、依存症の治療でも応用できそうです。例えば、禁煙促進の研究報告では、禁煙が継続できたら単純に報酬をあげるよりも、失敗したら罰金を課す方式を追加したところ、禁煙成功率が有意にあがったということです。ギャンブル依存症にはどうすれば良いの?これまで、ギャンブルの起源を、進化心理学的に解き明かしてきました。それでは、ギャンブル依存症にはどうすれば良いでしょうか?このギャンブル対策への答えも進化心理学的な視点で考えてみましょう。そもそも生物の原始的な行動パターンは、接近か回避です(図1)。食料や生殖のパートナーへの接近を動機付けるのが快感や快楽です(ドパミン)。その一方、天敵や危険な状況からの回避を動機付けるのが不安や恐怖です(ノルアドレナリン)。快感になる状況を想像して快感になることが報酬予測(動機付けサリエンス)です。その一方、不安になる状況を想像して不安になることを予期不安と言います。過剰な予期不安がパニック障害の症状の1つとして治療介入が必要であると理解できるように、過剰な報酬予測はギャンブル依存症の症状の1つとして治療介入が必要であると言えます。つまり、パニック障害と同じように、ギャンブル依存症は病気であり、単純に自己責任として切り捨てるべきではないということです。つまり、ギャンブル依存症の治療には、本人と社会の両方に責任があります。この点を踏まえると、最も重要なポイントは、できるだけギャンブルには、個人として近付かない、社会として近付かせないということです。これは、ギャンブルに限らず、アルコールや薬物など依存症の治療の全般に言えることでもあります。それでは、ここから、個人と社会の2つの視点で、その治療や対策を考えてみましょう。(1)個人―ギャンブルに近付かない個人の視点として、ギャンブルに近付かないために、主に3つの取り組みが有効です。1つ目は、ギャンブルを断つ決意をして、ギャンブル関連の情報を身近に触れない取り組みを自らすることです。例えば、ギャンブルについての雑誌、スポーツ紙、テレビ番組を見ないことです。パチンコや競馬場などの近くは避けて通ることです。2つ目は、ギャンブルに近付かない代わりに、別のより健康的な「ギャンブル」に近付く、つまり目を向けることです。例えば、それは、新しい仕事であったり、新しい人間関係です。3つ目は、近付かない状態を維持するために、自助グループ(GA)に参加し続けることです。これはアルコール依存症の自助グループ(AA)と同じように、自分と同じ仲間とつながっていることは、ギャンブルに近付くことを引き留めます。ちなみに、ギャンブル依存症への治療薬としては、日本では保険適応外ですが、ナルトレキソン(オピオイド拮抗薬)があります。ちょうどアルコール依存症への治療薬として2013年に日本で発売開始されたアカンプロサートと同じ抗渇望薬に当たります。(2)社会社会の視点として、ギャンブルに近付かせないための最も手っ取り早い方法は、全面禁止です。これは、文明社会が始まった古代から、その当時の統治者が行ってきた長い歴史があります。しかし、この問題点は、けっきょく隠れてやる人々が現れ、それにまつわるトラブルが繰り返され、取り締まりきれないということです。私たちは、その現実を歴史から学ばなければなりません。よって、落としどころは、ギャンブルを娯楽としてある程度認めつつも、厳しい制限をかけることです。その制限とは、主に3つの取り組みがあげられます。これは、個人の対策の何倍にも増して有効で重要なことです。1つ目は、ギャンブルへの行動コストを上げることです。行動コストとは、行動をするために、時間、労力、金銭などのかかる費用(コスト)です。一番分かりやすいのは、場所制限です。ギャンブルができる場所が限られている、または遠くて気軽には足を運べないという場所が望ましいです。また、ギャンブル産業への入場料の徴収も有効です。実際に、海外のカジノでは自国民が入場する場合にのみ入場料を徴収して、あえて敷居を高くして、ギャンブル依存症の対策をしています。時間制限も有効です。これは、営業時間をもともと健康的な活動時間帯の9時から5時までに限定することです。逆に、判断力が鈍る夜間にはギャンブルをさせないことです。2つ目は、ギャンブル行動の見える化です。見える化とは、その名の通り、ギャンブルをどれだけしているか本人に見えるようにすることです。そのためにも、まず個人のギャンブルを管理するため、「タスポ」(タバコ購入のための成人識別ICカード)よりもさらに厳格な身分証明書の発行が必要です。年齢制限はもちろんのこと、損失合計金額などの表示による注意喚起が有効です。また、損失金額が加速している場合は、ギャンブル依存症のリスクを警告して、ギャンブル専門の医療機関や自助グループ(GA)の紹介をすることも有効です(責任ギャンブル施策)。さらに、本人の届け出によって、ギャンブルができないようにするシステムも有効です(自己排除システム)。これは、ちょうどアルコール依存症の人が、お酒を飲むと気持ち悪くなる抗酒剤をあえて内服し続けることに似ています。3つ目は、手がかり刺激を制限することです。手がかり刺激とは、ギャンブルを想像してしまうようなきっかけの刺激です。ちなみに、ギャンブルの手がかり刺激への反応は、最近の脳画像研究によっても裏付けられています。例えば、パチンコ、宝くじ、競馬などのCMや雑誌・新聞の宣伝が分かりやすいでしょう。これほど多くのギャンブルの宣伝が日本では当たり前のようにされているのは世界的に見れば異常です。駅前にだいたい1つはある、ど派手で目立つパチンコ店もそうです。また、手がかり刺激への反応性をそもそも高めないために、未成年にはなるべく触れさせないことも有効です。なぜなら、ギャンブルも、アルコールやタバコと同じように、発達段階の未成年の脳への刺激(嗜癖性)が特に強いからです。海外では、映画の喫煙シーンがR指定になるくらいです。 最後に、ギャンブルとは?カイジの仲間の坂崎が大負けからの大当たりで大逆転になりそうでならないシーン。その瞬間に、彼は「溶ける溶ける…!」「限りなく続く射精のような…この感覚っ…!」「ある意味桃源郷…!」と叫びます。快感と恐怖が入り交じり、完全にシビれてしまいます。ここで気付かされるのは、坂崎が最高の快感を得たその場所は、本当の「桃源郷」ではなく、生死のかかったギャンブルという修羅場であったということです。本来、快感や快楽は桃源郷にあり、不安や恐怖は修羅場にあると私たちは思いがちです。しかし、これまでのギャンブル脳の心理をよく理解すれば、実は、最高の快感は桃源郷にはありません。なぜなら、桃源郷では、全てが理想的に満たされ続けており、快感(ドパミン分泌)が鈍っているからです。簡単に言うと、桃源郷には、その状態に飽きてしまって、わくわくはありません。もちろん、修羅場では、全く満たされていないため、快感(ドパミン分泌)はほとんどありません。つまり、最高の快感は、桃源郷に苦労して向かっている修羅場の中でこそ感じるものであるということです。それが、生きている実感であり、生きる原動力です。原始の時代と違い、現代は「ギャンブル」のような生活をしなくても無難に生きていけるようになりました。そうなるとそこは、桃源郷でも修羅場でもない退屈なところです。何もしなければ、わくわくして生きている実感はないでしょう。つまり、その実感を得るためには、私たちはそれぞれの「桃源郷」を目指して、必死に「修羅場」をかいくぐることをあえてすることが必要になります。ギャンブルの心理の本質を理解した時、私たちは、「カイジ」や「アカギ」から、ギャンブルのマイナス面だけでなく、生き方としてのプラス面も含めて、より多くのことを学ぶことができるのではないでしょうか? 1)福本伸行:人生を逆転する名言集、竹書房、20092)松本俊彦ほか:物質使用障害とアディクション 臨床ハンドブック、星和書店、20133)臨床精神医学、行動嗜癖とその近縁疾患、アークメディア、2016年12月号4)蒲生裕司・宮岡等編:こころの科学「依存と嗜癖」、日本評論社、2015年7月号5)帚木蓬生:ギャンブル依存症国家・日本、光文社新書、20146)岡本卓、和田秀樹:依存症の科学、化学同人、2016

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増加する多発性硬化症の第1選択薬となるか!?

 2月15日、バイオジェン・ジャパン株式会社は、都内において多発性硬化症治療薬フマル酸ジメル「テクフィデラ カプセル120/240mg」の発売に伴うプレスセミナーを開催した。セミナーでは、多発性硬化症診療の最新の知見のほか、テクフィデラの今後の治療での位置付けなどが講演された。40年で40倍以上患者が増えた多発性硬化症 セミナーでは、吉良 潤一氏(九州大学大学院医学研究院 脳研 神経内科学 教授)を講師に迎え、「さまざまな課題をかかえる多発性硬化症~テクフィデラ承認の意義~」をテーマに講演が行われた。 はじめに多発性硬化症(MS)の疫学として、わが国では約1万9,000人を超える患者(指定難病医療受給者証所有者数)がおり、その数も1970年代との比較で40倍を超える数になっていること、毎年患者数は増加していることが説明された。 また、MSの発症では、遺伝因子と環境因子(たとえば高緯度、EBウイルス、ビタミンD欠乏、喫煙、生活の欧米化など)の相互作用が判明しているものの、明確な機序はいまだ解明されていないという。障害部位により多様な症状が出現 MSは、中枢神経の髄鞘が障害される脱髄性疾患であり、最近の研究では、確実なエビデンスはないものの中枢神経髄鞘抗原を標的とする自己免疫性疾患であるともいわれている。そのため、発症するとその多くが再発と寛解を繰り返し、再発寛解型、2次性進行型、1次性進行型の3つの類型に分類される。 症状は、脊髄、視神経、大脳、小脳、脳幹の部位で、それぞれ運動機能、感覚機能、自律神経、高次脳機能が障害され症状として現れる。たとえば、大脳の運動機能が障害されれば片麻痺や単麻痺が、視神経の感覚機能が障害されれば視力低下、視野欠損、中心暗点などの症状が出現する。特徴的な前駆症状としては、急に疲れやすくなったり、新しいことが覚えられないなどが挙げられるという。 診断としては、現在、有用なバイオマーカーがないために、除外診断による診断がなされる。また、MRIや髄液検査、誘発電位検査による検査所見で確定診断を行う。とくにMSでは早い時期から2次進行期(現在2次進行期に有効な治療はない)が始まるケースが多いために、MRI検査で病期進行のモニターが望まれる。MS治療薬の現状と課題 現在MSの治療は、発症後の再発寛解期に主に行われている。痙縮、疼痛などへの対症療法をはじめ、急性期にはステロイドパルス療法が施行される。また、MSでは再発予防のために疾患修飾薬(DMD)を使用し、進行を抑える治療が行われている。 現在DMDの第1選択薬は、インターフェロンβとグラチラマーがあり、さらに第2選択薬としてフィンゴリモド、ナタリズマブ、アレムツズマブが病勢により適応される。しかし、実臨床の場ではDMDの使用は、薬剤の価格ゆえに40~50%未満にとどまるという。また、第1選択薬が注射薬ということもあり、アドヒアランスの観点からも使いづらく、第2選択薬でも長期の使用で進行性多巣性白質脳症(PML)の発生リスクがあるなど注意が必要とされている。 DMDでは、妊婦や小児への負担が少なく、長期安全性があり、就労・就学にも差し支えのない治療薬の導入が望まれているという。患者さんに使いやすいDMDの登場 今回発売されたテクフィデラは、経口薬という特徴を持ち、抗炎症作用と神経保護作用の両輪でMSの進行を抑制する。2013年には米国で、2014年には欧州で承認され、すでに全世界で21万人が使用している。 治療効果として、海外治験では投与開始後2年間でみた年間再発率がプラセボ群(n=771)の0.37と比較して、テクフィデラ群(n=769)では0.19と49%減少していた。また、国際共同治験では、投与開始後の12~24週を観察した新規Gd造影病巣の総数でプラセボ群(n=113)の4.3と比較して、テクフィデラ群(n=111)では1.1と84%減少していた。 安全性では、報告数の多い順に潮紅、下痢、悪心、腹痛などの有害事象があるが、重篤な事象は報告されておらず、投与された最初の1ヵ月間での報告が多かったという。 処方のポイントは、少量から徐々に増やしていくこと、3ヵ月に1回は病状進行の様子をモニターすること、また、視神経脊髄炎に使用すると重篤な再発を起こすことから使用前に鑑別診断をすることが重要だという。 最後に吉良氏は私見として「フィンゴリモドと同等の作用があり、将来的に第1選択薬として使用されると期待している。経口薬という最大の特徴は患者さんの負担を軽くする」と展望を述べ、レクチャーを終えた。

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BRAF変異肺がんにダブラフェニブ・トラメチニブ併用:EMAが肯定的見解

 欧州医薬品庁(EMA)のヒト用医薬品委員会(CHMP)は、BRAF V600E変異陽性の進行性または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)治療として、ダブラフェニブ(商品名:タフィンラー)とトラメチニブ(商品名:メキニスト)併用療法の承認を推奨した。 当申請は、他施設、非無作為化、オープンラベル試験第II相試験に基づくもの(3つの連続したコホートからなり当該結果はコホートB)。 この第II相試験の対象は1つ以上のプラチナベースの化学療法を受け増悪したBRAF V600E変異を有するStage4のNSCLC患者で、北米、欧州、アジアの9ヵ国30施設から57例が登録された。患者は ダブラフェニブ150mg×2/日とトラメチニブ 2mg×1/日の投与を21日サイクルで受けた。主要評価項目は主治医判定による客観的奏効率(ORR)、副次的評価項目は無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、および安全性。 患者の中央値年齢は64歳で、98%は腺がん、72%が元喫煙者、33%が2ライン以上の前レジメンを受けていた。併用療法のORRは63.2%(95%CI:49.3~75.6)。PFS中央値は9.7ヵ月(95%CI:6.9~19.6)、6ヵ月PFSは 65%(95% CI:51~76)、DOR中央値は9.0ヵ月(95%CI:6.9~18.3)であった。OS中央値は分析時点では未達、6ヵ月OSは82%であった。ちなみに、ダブラフェニブの単独使用(コホートA)のORRは33%、PFS中央値は5.5ヵ月であった。よくみられた有害事象(AE)は、発熱、悪心、嘔吐、下痢 、無力症、食欲減退であった。Grade3/4のAEは49%でみられた。AEによる減量または投与中止は、それぞれ35%、14%の患者でみられた。(ケアネット 細田 雅之)関連情報欧州医薬品庁(EMA):ニュースリリース(PDF)当第II相試験原著:Planchard D, et al. J Clin Oncol. 2016 Jun 6.[Epub ahead of print]当第II相試験(ClinicalTrials.gov)

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飲酒行動と喫煙行動、同じ遺伝子多型が影響?

 アルデヒドデヒドロゲナーゼ2(ALDH2;rs671、Glu504Lys)およびアルコールデヒドロゲナーゼ1B(ADH1B;rs1229984、His47Arg)の遺伝子多型は、飲酒行動に強く影響することが知られている。愛知県がんセンターの正岡寛之氏らは、喫煙行動と飲酒行動が関連するというエビデンスから、ALDH2とADH1Bの遺伝子多型が喫煙開始とも関連する可能性を検証するために大規模な横断研究を行った。その結果、飲酒量や頻度のほか、これらの遺伝子多型の組み合わせにより、喫煙開始を予測しうることが示唆された。Drug and alcohol dependence誌オンライン版2017年2月1日号に掲載。 本研究では、2001年~05年に愛知県がんセンター病院の初診外来においてがんではないと診断された患者を調査した(生涯非喫煙者4,141例、喫煙経験者2,912例)。無条件ロジスティック回帰モデルを用いて、生涯非喫煙者と比較した喫煙経験者の喫煙開始のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・過度の飲酒は、喫煙経験の可能性が高いことと関連していた。・飲酒行動の調整後における喫煙のORは、ALDH2 Glu/Gluを持つ患者と比較して、ALDH2 Glu/Lysを持つ患者では1.71(95%CI:1.49~1.95)、ALDH2 Lys/Lysを持つ患者では2.28(同:1.81~2.87)であった。・ALDH2 Glu/GluとADH1B His/Hisの組み合わせを持つ患者と比較した喫煙のORは、ALDH2 Glu/GluとADH1B Arg/Argの組み合わせを持つ患者(アルコールに最も不耐性の集団)が2.44(95%CI:1.84~3.23)と最も高く、ALDH2 Lys/LysとADH1B His/Hisの組み合わせを持つ患者(アルコールに最も耐性の集団)は0.83(同:0.57~1.21)と最も低かった。 著者らは、「この結果はALDH2とADH1Bの遺伝子多型で制御されるアルコール耐性が喫煙開始に関連することを示唆し、喫煙率を減らすための標的介入の開発を促進する」としている。

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